○北村暢君 なかなか、
大臣はすぐ
地方農林局にくっつけて
答弁せられる。私はこの
地方農林局の問題の以前の問題をやっているので、実際にここの
国会の国立図書館からベルト
地帯の
農業近代化のいろいろな
実態調査をやったものが出ておるのでありますが、ここで非常に例が出ておるのです。それは
構造改善対策として行なわれておる愛知県の例なんでありますが、しかも、この愛知県の愛知用水がすでにもう通りまして、そしてやっている地区に
構造改善事業が指定をされておる。それを今その
町村が受けるか受けないかということで
計画を立てている。これは今申したように、愛知用水といえば多
目的ではやりましたけれども、受益
地域が二県十市二十三町三村というのですから、膨大な
事業である。しかも、これは全額愛知用水が
事業をいたしまして、それから受益者が今後金を払っていく。こういう受益者が払っていく。こういうところなんです。しかも、さらに指定をされたのが二カ所あるようでございますけれども、実際にはこの愛知用水の、あれだけ大がかりでやったものが、愛知用水そのものがその後における
農業計画というものの
計画性というものがなかった。あるいは
地域の受益者の住民に対して愛知用水の効果というものについて知らされていない。農民は非常に無知である。したがって、せっかく愛知用水をやった、
実施した水利
事業、開拓、こういうものの効果が、非常に今やろうとしている
構造改善事業と密着しておらない、こういう実例があるのです。ここに出ておるのは三好という地区の例が出ておるわけでありますが、相当な開拓地もあるわけなんです。しかしながら、それが
経営規模を
拡大するというような生きた形の自立経営ということと結びついておらない。こういう例がある。これはいかに
農林省が、そういうこれだけの
機構を持っておって、そしてずさんな
計画で
実施されたかといういい例だと思うのです。したがって、今愛知県知事はこれに対して愛知県としての実は
計画を、
地方の
計画協議会をもって
計画を立てて、これからやろうということのようであります。それが三十三年から四十年までで七百十二億円の
事業量をもって資金を投下してやろう、こういう段階にあるわけです。愛知用水、豊川用水、こういう国営
事業を根幹として、これからこの
地域の開発
計画をやろう、こういうのに七百十二億かけてやろうというのですね。ところが、これに対して
構造改善事業というのは、今
大臣から言わせれば、相当ゆとりがある。一億一千万でも、二億でも、三億でもいいような話でございますが、しかし、それも一億一千万という、一般地区にして九千万のうち四千五百万が国の補助、
あとはこれは自まかないで金融その他でもってやらなければならない問題が出てくる。したがって、今直ちにこういう負担を負わなければならない、こういう問題ですね。しかし、そういう負担を金融その他で借金をして
計画をやるわけですから、
構造改善事業といえどもただではできない。かなり金かけてやる。そのやり方が、
一つにはこの
農林省の
構造改善の
実施基準というものが非常にきびしいために、水田地区ならば、水田対象の電熱育苗施設、十七馬力以上のトラクター、自走式コンバインダー一カ所百五十ヘクタールを対象として、大規模の穀物乾燥施設、
近代化施設の
設置、機械化の導入、省力
農業こういうようなものが、
一つ水田の例をとるというと、こういう基準で、これに該当しないところはなかなかふるいにかかって許可は、基準に適しないわけです、何ぼ出しても。それで、まさしく出させ方は自主的な形になっている。いろいろ基準を示してありますけれども、市
町村なりあるいは農民の
農業協同組合その他の意見を聞いて自主的に
計画をして出せ、これは村長なり市長はない頭をしぼってずっと
計画を出す。出すんだが、この基準に当てはまらないためにだめだ、こういうことになる。こういうことなんです。しかも、こういう
果樹地帯、あるいは酪
農地帯、
畜産地帯、みな違う。それが養豚とか養鶏とかいうものは
一つの基準を、どういう基準を示しているかはっきりは知りません。知りませんが、一例をあげれば、今言ったような基準でもって
計画は出さしておいて、それをふるいにかけて、これではなかなかだめだと突っ返す。そういうやり方でやっているのです。したがって、
生産農民は実際には
畜産もやりたい、何もやりたいと思っても、この一定の規模におけるそういうものが成り立たない限りは、たとえば
畜産地帯であるということなら、その中に養蚕をやっている者とかなんとかおった場合に、成り立たない。そういうものをひっくるめて養蚕を
転換しなければならないというような、そういうやり方をやっている。したがって、この基準に該当しないものですから、これは返上するという形が随所に出てきている。
構造改善事業のいわゆる首唱者でありました河野さんの、全国で有名な神奈川県の津久井農協すらこれは返上をしておるのです。そういう
実態にある
構造改善事業というものは、私は、今
大臣の
心配されているのだと言われたことが、これは役人的な気持から、かつての新
農村というものが、いわゆる放送施設をしただけでおざなりの新
農村だ、こういうことの批判を受けることをきらっているかどうか知りませんけれども、
〔
委員長退席、
理事下村定君着席〕
今度の場合、こういう非常な過酷な基準でもってやっておる。それがもう
実態だ。どこもここも落第をする。こういう状況です。したがって、これでは
基本法で私どもが
説明を聞きましたものと全く違う。ここで第一条の、先ほど言った国と
地方公共団体の相協力するという問題なんですが、そういう中で、
地方公共団体の
施策は、
農業団体の自主的な活動と相待って講ぜられるべく、第一条の
目的達成のためには、
農業団体の活動に期待すべきものがあるのであります、こう言っている。したがって、この
構造改善事業なんかも、
農業団体、農民の自主的な活動というものを相当取り上げなければならないはずなんだ。ところが、今のやり方は、上から県に市
町村に、市
町村の
計画が出てきたものについてふるいにかける。こういうことなんで、農民の意思、
農業協同組合の意思というものが受け入れられないような形になっておる。これでは
構造改善事業を民主的にやろうと言ってもできない。ここに私は戦後の
農林省の悪いくせである権力
行政、上から下へ押しつけるところの
行政というものがこの
構造改善事業の中に現われている、このように思うのです。これはもうまことに
農業基本法の精神から言えば反することなんだ。それが今日平然として行なわれておるという問題なんです。したがって、これは私は
地方農林局を設けるとか設けないとかという問題以前の問題なんだ。
農林省の官僚的な上から押えつけるところの権力
行政というものが、いまだになくならない。それが今日のこの
構造改善事業の中にはっきり現われているのだと、私はそう思っている。したがって、これは
農林省の
行政のあり方、
考え方というものは、
大臣のおっしゃったような形にはなっておらぬ。ここに私は問題があると思うのです。これはもう事実の例としていろいろな例がございますが、今言ったこの愛知県の例なんかも、非常に条件のいいところですらそういうことなんです。したがって、土地条件のいいところですらそういうふうな状況であるから、この
構造改善事業が、ここの文章でも言っているように、どういうふうな形で行くのであるか。また農道をつけるとか、あるいは若干の土地改良をやるとか、こういうようなことでおざなり的にこの
構造改善事業は終わってしまうのではないかということを実際に行って見てきた人が
心配をしているのであります。これが全国各地に相当出てきているということを
大臣は知らなければならぬ。そこで
大臣は先ほど、これは少なくてもいいのだ。少なくても納得の中でやってもらえばいいのだ。これでは私は
計画というものは成り立たないと思うのです。そうじゃなしに、なぜ少なくなるかというこの根本の問題を、私は
農林省は重大な反省をすべきだと、こう思うのです。