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1962-11-09 第41回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十一月九日(金曜日)    午前十一時三十九分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 保科善四郎君    理事 淡谷 悠藏君 理事 川俣 清音君    理事 小松  幹君       相川 勝六君    井出一太郎君       稻葉  修君    宇田 國榮君       江崎 真澄君    大石 武一君       仮谷 忠男君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    周東 英雄君       中曽根康弘君    中村三之丞君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       船田  中君    三池  信君       山口 好一君    井手 以誠君       大原  亨君    木原津與志君       高田 富之君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    永井勝次郎君       野原  覺君    長谷川 保君       矢尾喜三郎君    山口丈太郎君       佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣臨         時代理     川島正次郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         自 治 大 臣 篠田 弘作君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 河野 一郎君  委員外出席者         内閣官房長官  黒金 泰美君         人事院事務官         (事務総局給与         局次長)    尾崎 朝夷君         防衛施設庁次長 山上 信重君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    鈴木  昇君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部施設対策課         長)      鶴崎  敏君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         厚生政務次官  渡海元三郎君         農林事務官         (大臣官房長) 林田悠起夫君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         通商産業事務官         (石炭局長)  中野 正一君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君         建 設 技 官        (道路局次長) 尾之内由起夫君         自治事務官         (財政局長)  奥野 誠亮君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十月二十七日  委員櫻内義雄辞任につき、その補欠として池  田正之輔君議長指名委員に選任された。 同日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  櫻内義雄君が議長指名委員に選任された。 十一月九日  委員八田貞義君、保岡武久君、宇田國榮君、内  田常雄君、橋本龍伍君、山本猛夫君、堂森芳夫  君及び横路節雄辞任につき、その補欠として  稻葉修君、北澤直吉君、船田中君、山口好一君、  仮谷忠男君、三池信君、大原亨君及び矢尾喜三  郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻葉修君、北澤直吉君、船田中君、山口好  一君、仮谷忠男君、三池信君、大原亨君及び矢  尾喜三郎辞任につき、その補欠として八田貞  義君、保岡武久君、宇田國榮君、内田常雄君、  橋本龍伍君、山本猛夫君、堂森芳夫君及び横路  節雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより予算委員会を開会いたします。  予算実施状況について調査を行ないます。  発言の通告がありますので、順次これを許します。  なお、念のため申し上げますが、お一人当たりの持ち時間は理事会の申し合わせによって三十分といたしましたので、御了承願います。  井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手委員 短時間の間でありますけれども、特に田中大蔵大臣に対して、来年度経済見通しと、来年度予算財源、この二点についてお伺いをいたしたいと思います。  政府はこの間の十一月二日の閣議で今後の財政経済運営方針をきめられたと承っておりますが、その中で、来年度、三十八年度経済成長をどうお考えになっておりましたか、どう政府で統一されたか、その点を承りたいと思います。経済成長率だけでけっこうです。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 事務当局から答弁させます。
  5. 山本重信

    山本説明員 お答えいたします。  十一月二日の閣議におきまして、当面の経済情勢及び三十八年度経済につきまして宮澤経済企画庁長官から発言をいたしたわけでございます。私が承知しておりますところでは、特に正式に閣議決定をするとか閣議了承をするというような性質のものではなかったように存じております。その発言の中に、三十八年度経済につきましては、個人消費及び財政支出は一応増加が見込まれますが、設備投資在庫投資は場合によっては三十七年度を下回り、経済成長率は本年度に引き続き低い水準で推移すると見込まれる、こういう趣旨のことが入っております。特に何%とかいうような数字は詰めておりません。
  6. 井手以誠

    井手委員 ただいま、経済見通しについて、経済成長率数字については聞いておらないということですが、何回もその点については新聞で報道されております。名目では七%、実質では五%台だと報道されておるのであります。  そこで、企画庁にお尋ねしたいのは、実質五%台を維持するためにはよほどの積極的な財政的手を打たねばならぬと言われておりますが、その通りですか。そういうふうに長官は何回もお話しになっておりますが……。
  7. 山本重信

    山本説明員 お答えいたします。  名目七%、実質五%という数字は、実はまだ最終的に固まっていないのでございまして、私たちの作業はおそくとも十二月の半ばくらいまでに仕上げをいたしたい、このように考えております。この数字をまたまとめますのには、経済企画庁だけでなく、関係の大蔵省、通産省とも十分に協議をしてきめる必要がございます。今の段階ではまだそうした協議を一切いたしておりません。今後検討して参りたいと思っております。ただ、経済企画庁の内部で議論をいたしましたときの感触で申し上げますと、かりに実質五%、名目七%というような数字考えますと、ある程度積極的な下ざさえの策をする必要があるのではないかという感触だけは持っております。
  8. 井手以誠

    井手委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、今企画庁からは数字は申されなかったけれども、閣議では、大体こういう見通し企画庁は持っておるということを大蔵大臣はお聞きになったのでしょう。
  9. 田中角榮

    田中国務大臣 経済企画庁から今御答弁を申し上げた通り、来年度実質的な経済成長率見通しとしてつけることは困難な段階であるという前提で話し合ったわけでございます。先月の初めに、経済企画庁試算として、今年度名目六%、実質四・五%という試算数字を出しましたが、その問題に対しても、今非常に経済が微妙な段階でありますので、これから下期の実勢を十分見きわめつつ、先ほど申し上げましたように、十二月の初めないし半ばまでには来年度成長率をきめたいという考えでございます。
  10. 井手以誠

    井手委員 重ねて大臣にお伺いいたしますが、今のままの情勢でいきますならば、特別に政府財政的な手を打たない限り、本年よりも経済成長率は悪くなるのではないかという、ただいまもそういう御説明がありましたし、そういうふうに新聞では報道されておるのでありますが、大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  11. 田中角榮

    田中国務大臣 非常に微妙な段階でありますので、明確に予測をして申し上げることはできないと思いますが、宮澤経済企画庁長官談話として出しました通り、このままの状態でいけば来年度設備投資も本年を上回るというような予測はできませんので、今年度と同程度もしくは横ばいくらいしか見れない、また、多少経済指数を上げるということになれば、内容はこれから検討しなければならないけれども、ある意味において公共投資等刺激面を一応考慮する必要があるというようなことが経済企画庁長官談話であり、閣議もそれを了解したわけであります。
  12. 井手以誠

    井手委員 このままの情勢を推し進めていくならば本年度実質四・五%の成長程度ではないかという政府考えであることがわかりました。  次に、企画庁にお伺いをいたしますが、鉱工業生産は最近どうなっておるのか。改定された経済見通しでは大体三〇〇くらいでございますが、九月はすでにかなり上回っておると考えます。従って、改定の見通し三〇〇から考えますと、すでに四月から三〇四である、三〇五であるというふうに上回っておりますから、三〇〇という経済見通しを維持していきますためには、鉱工業生産はずっと落ちなくてはならぬのであります。受注もだいぶ減っておると聞いております。従って、今後の鉱工業生産見通しはどうであるか。今から暮れまで、来年の春の模様、その後の傾向見通しについて伺いたいのであります。
  13. 山本重信

    山本説明員 お答えいたします。  最近の鉱工業生産の足取りを、いわゆる季節修正を施しました数字で申し上げますと、四月が二九七・八で、三月に対して三・六%ダウンいたしました。五月が三〇五・六、これは前月比で二・六%の上昇、さらに、六月は三〇九・一と上がりまして、対前月比で一・一%の上昇、七月は三〇四・四、対前月比一・五%の減、八月は三〇一・二、〇・八%の減、最近の九月では三〇四・二、前月比で〇・七%の増となっております。  ただいま御指摘のように、若干当初見通しに比べますと生産下降の仕方が鈍い感じはございますけれども、やや大ざっぱに申しますと、大体傾向としては弱含み推移してきておる。そうして、今後の見通しといたしましても、需要面動向等から判断いたしますと、鉱工業生産はやはり弱含み推移するのではないかと思います。最近の一つの現象といたしましては、鉱工業生産が私たちが予想したほど急激に下落しておりませんので、製品在庫が若干ふえる傾向が出ております。そのために市況が必ずしも好調でございません。こういった状況がなおしばらく続いて、鉱工業生産は弱含み横ばいという状態を年末、年度末まで続けるのではないか、このように考えております。
  14. 井手以誠

    井手委員 鉱工業生産は来年の三月の年度末までは弱含みであるというお話がございました。  そこで、重ねてお伺いをいたしますが、今の稼働率はどのくらいになっておりますか。三月を頂点に稼働率はずっと下がっておると考えます。すでに八〇%を割っておると考えますが、どのくらいになっておりますか。  もう一つ尋ねたいのは、ただいまあなたのお話では、三月までは弱含みである、鉱工業生産はやや落ちていくということでございましたが、いつごろから生産は上がる見込みですか。来年の秋ごろですか、再来年になりますか。
  15. 山本重信

    山本説明員 お答えいします。  製造工業稼働率でございますが、本年の一−三月は八六・八%でございましたが、四−六月には八二・一%と下落いたしております。九月の数字はまだわかっておりません。  それから、今後の生産動向につきまして、いつごろから上昇に転ずるかという御質問でございます。これは先の見通しの中でも特に見通しの困難な問題でございまして、ただいま私たちが本年度の下期及び来年度経済見通し検討いたしておるわけでございますが、その検討事項の中の最もむずかしい、また重要な問題でございますので、これから十分に勉強いたしたいと思っております。現在の段階ではその点につきましてまだ明確なお答えを申し上げることができません。
  16. 井手以誠

    井手委員 それでは、経済見通しについて総括的に大蔵大臣にお伺いをいたします。ただいままでの企画庁説明では、鉱工業生産は来年三月まではやや下がっていく、その後上がる見通しについてはなかなか判断しにくいという、割に暗い見通しのようでありました。これは間違いないようです。製品在庫はだんだんふえて参っております。そこで、多くの財界その他の見通しでは、景気回復は来年の秋、いな、再来年、昭和三十九年の春過ぎになるのではないかという意見が非常に強いのであります。この間池田総理は日経連の総会において、今のままの状態でいけば不景気が今後も続いていくという演説をなさっておるのであります。また、今の企画庁説明でも、今のままでいけば来年も四・五%程度経済成長であるという話であります。この不景気について大蔵省はどういうふうに見通しを持っておられますか。これは今後の予算編成の基礎になりますからお伺いをいたしたいのでありますが、現在の状態をどの程度の不景気とお考えになっておるのか。今後いつごろこの不景気回復に向くとお考えになっておるのか。多くの人々の間では、不景気がだらだら来年一ぱい、再来年の春まで続くのではなかろうかという見通しが非常に多いのでありますが、田中さんのお考えを承っておきたいのであります。
  17. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げております通り国際収支改善対策最終段階に至っておりますし、数字の上では一応去年政府考え国際収支改善対策はおおむねその実をあげた、こういうふうに見ておるわけでありますが、この国際収支改善の姿に比較して、国内的には、ある産業に対しては非常に不況感が強いという現象も現われておることは、その通り承知をいたしております。しかし、数字の上で鉱工業生産政府考えたよりも比較的下がっておらないというような数字も出ておりますし、現在、経済状態としては三十七年度の下期をどういうふうに持っていかなければいかぬのかということに対して微妙な段階でもあり、慎重に推移を見ながら適切な施策をやっていかなければならない段階だと考えておるわけであります。でありますので、このままの状態政府が当初考えたような施策のままでいくと、先ほど経済企画庁の方から述べました通り、来年度景気回復はそう簡単にできないというふうになりますので、御承知通り金融施策をやりまして、現在必要なところには資金的な措置その他の需要面の喚起も行なっておるわけであります。また、鉄鋼等に対しては、御承知通り、十八次造船の早期契約、それから開発銀行政府負担割合をふやすとか、また、石炭産業に対してもてこ入れ施策を行ないたいとか、いろいろな面を現実に合わせて今施策を行ないつつありますので、来年一年間だらだらで相当低い数字に押えるということよりも、一体来年のいつごろから上向きにできるのか、また、具体的にどういう施策をやればいいのかというような問題に対して、慎重に検討いたしておる段階でございます。
  18. 井手以誠

    井手委員 それでは、田中さん、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。今の状態でいくならば、来年の暮れまで、あるいは場合によっては再来年の春までだらだら不景気が続く見込みであるから、そうなさないためにも、来年の秋までには景気回復の糸口をつかむために、財政的な積極的な手を打ちたい、こういうお考えでございますか。
  19. 田中角榮

    田中国務大臣 財政的に刺激政策をやるということを明らかにする段階ではありませんが、財政金融その他各般の施策を行ないつつ、いい意味景気調整策考えている段階である、こういうふうに申し上げておるのであります。
  20. 井手以誠

    井手委員 大蔵大臣、重ねてお伺いいたしますが、それはいつごろ景気上昇めどにしてそういう対策を立てられますか。来年の下半期はなかなか今のままでは困難であるということでありますから、来年の暮れまでには何とかして景気上昇めどをつかみたいというお考えですか。そのめどを聞きたい。
  21. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げております通り昭和三十七年度の問題も、現在下期に入ったばかりでございますので、下期に対してどのような施策を行なっていかなければならないかという問題があるわけでありまして、現状認識を深めながらケース・バイ・ケースでいろいろな施策を現在行なっておるわけであります。この政府が行ないつつある施策の結果、来年度どういう数字が見込まれるかという問題まであわせて検討しながら、十二月の初めもしくは十二月の半ばまでに来年度見通しを立て、その数字を根拠として予算その他の体制をきめたいという考えでございます。
  22. 井手以誠

    井手委員 大事な点ですからまたお伺いいたしますが、上半期はとても困難だ、下半期上昇させたいというのが、この間二日の閣議意思統一であったと聞いております。そこで、来年の秋の十月ごろをめどにお考えになっておるのか、暮れをめどにお考えになっておるのか、一応のめどはあるはずです。いわゆる積極的な財政政策金融政策考えるというならば、めどがあるはずです。そのめどを聞きたいのです。
  23. 田中角榮

    田中国務大臣 来年一ぱい不景気のまま、下降のままでいくようなことは全然考えておりません。できるだけ早い機会に、緩慢な、また長期安定的な方向をとりたいということを今考えておるわけでございます。
  24. 井手以誠

    井手委員 時間がありませんので、不満ですけれども、次に進みますが、その景気回復積極的施策というのは、三十七年度補正予算起点としてお考えになるのか、三十八年度予算からお始めになるのか。公共投資をうんとやろうとお考えになっておる、そのいわゆる積極的政策というのは、補正予算起点でありますか、三十八年度予算起点でありますか。
  25. 田中角榮

    田中国務大臣 財政的に積極的な手を打たなければならないかどうかも今慎重に検討中でありますが、三十七年の補正予算積極面を組み入れるというふうなことは現段階において考えておりません。でありますから、これからの事情を十分検討しながら、三十七年度補正予算は十二月の初めに開かれる国会に提出をするわけでありまして、まだ一カ月あるわけでありますので、その間の経済上の見通し十分立てながら、現状に即応して遺憾なきを期して参りたいという段階でありますので、現段階で申し上げれば、三十七年度補正で直ちに景気刺激要因を含まなければならないというような考えには立っておりません。
  26. 井手以誠

    井手委員 政府は、十二月初めの第一次補正、さらに来年二月ごろの第二次補正考えておるようでありますが、第二次補正についてはどういうお考えですか。第二次補正についてそういうお考えをお持ちになりますか。
  27. 田中角榮

    田中国務大臣 現在まだ第二次補正を出すとも出さないともきめておるわけではありません。また、第一次補正内容そのものに対しても、推移を十分見て、これから一カ月のうちに、また皆さんの御意見もお聞きをしながらきめたい、こう言っておるのでございますので、第二次補正に対して現在の段階で言明はできません。
  28. 井手以誠

    井手委員 主税局長にお伺いをいたします。  先刻経済見通しについて論議をいたしましたが、五%程度経済成長では一体どのくらいの自然増収が見込まれますか。国民所得に対する弾性値と申しますか、一・五を下回るという話でありますが、私が今まで大蔵省から聞いたところでは、経済回復しないときには、つまり、好景気から不景気になり、不景気が続いたときには一〇%の自然増収はなかなか困難であるということを何回も大蔵省から説明を受けておりますが、来年度見通しはどうでございますか。
  29. 村山達雄

    村山説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問は、五%経済成長があるときにどれくらい税収があるかというお話でございますが、これは実はその年々によりまして過去の経緯を見ておりますと非常に違います。従いまして、一般的に国民所得あるいは国民総生産が五%伸びたときに税の弾性値幾らであるかということは、そのカーブの型によって違いますので、一がいに申し上げられません。ただ、過去十年ぐらいの平均値を出してみますと、一・四七とかいう数字が出ております。ただ、これをよく見てみますと、たとえば昭和三十二年には弾性値二・六八、それから三十三年では〇・三二、こういう非常に違う過去平均弾性値が一・四七とかいう数で出ておるわけでございまして、従いまして、国民総生産の伸びが五%の場合に一義的にどういう数字になるかということはちょっと申し上げかねまして、それぞれ、個人消費なり、あるいは財政支出なり、あるいは生産指数なり、あるいは給与なり、そういう個々の課税対象ごとに、その型がどうなるか、しかも期間的にそれがどういう推移をたどるか、その辺を見て参りませんと、要するに積み上げ計算をしないと税収は出て参らない、かように考えておるわけであります。
  30. 井手以誠

    井手委員 私がお伺いしているのは、この間の閣議経済企画庁から提案され、これを閣議で了承されたその内容についてお伺いしておるわけです。個人消費は一〇%程度設備投資その他は、先刻御説明があった通り名目七%、実質五%、それに基づいてどのくらいの見通しかと聞いておるのです。一〇%くらいの増収が見込まれるのか、どのくらいか。
  31. 村山達雄

    村山説明員 ですから、それでは増収がどれだけ出るかということは、それだけのデータでは出ませんと申し上げているわけでございます。
  32. 井手以誠

    井手委員 はっきり出なくとも、大体の見当はつくでしょう。つかぬようなことでは局長は勤まらぬでしょう。
  33. 村山達雄

    村山説明員 その数字とは無関係に、一般に言われていることで、来年度一体どれくらい出るかという話は方々で聞かれるわけでございまして、その点は、積算ではございませんが、いろいろな数字を勘案いたしまして、来年度二千億から二千五百億程度は少なくとも出るであろう、こういうことはお答え申し上げているわけでございますが、しかし、これも一々データがわかりませんので積み上げ計算ではございませんが、いろいろ試行錯誤もいたしまして、その辺は間違いないところであろう、こういうことをお答え申し上げております。
  34. 井手以誠

    井手委員 主計局長にお伺いいたしますが、今来年度自然増収は二千億から二千五百億だという。いろいろな剰余金、三十六年度分の剰余金、あるいはその他の増収分二、三百億と予想されておるようでありますが、加えてどのくらい新たな財源が見込まれますか。
  35. 石野信一

    石野説明員 ただいまのお尋ねは、租税収入、実収入が二千億ないし二千五百億ふえた場合に、前年度に対して来年度どの程度財源の増が見込まれるか、こういう御質問だと思いますが、前年度剰余金の増が千三百七十六億ございます。雑収入二百億と計算いたしますと、二千億の場合に約三千五百億、それから二千五百億といたしまして約四千億、こういうことに相なります。
  36. 井手以誠

    井手委員 三十八年度のすでに政府方針やその他できまったいわゆる当然増といわれるものはどのくらいですか。当然増と予想されるものは三千億か四千億か、どのくらいです。
  37. 石野信一

    石野説明員 いわゆる当然増ということをよく申しますけれども、これが何を当然増と見ますか、また、その当然増の見方によりましてもいろいろございまして、そういう意味で、政府方針としてきまった当然増が幾らかというふうな御質問に対しましては、現在の段階ではまだお答えいたしかねる段階でございます。
  38. 井手以誠

    井手委員 なおその点についてはお伺いしたいのですが、時間がございませんので、ここで大臣にお伺いいたしますが、経済成長は、先刻来話があったように、政府が積極的な手を打って実質五%台ということでございまして、増加財源というのは三千五百億円から四千億円。そうなりますと、それではとても積極的な景気刺激策はやれないと思うのです。一体、大蔵大臣は、いわゆる金づくりというものをどういうふうにお考えになっておるのか。財政投融資関係でありますが、政府保証の債券をうんとお出しになるおつもりなのか。あるいは、外為会計の一千六百億円ですか、あのインベントリーを取りくずすようなお考えですか。また、剰余金を半分は国債償還に充てるということになっておりますが、財政法を改正してこれを使おうという説もあるやに承っておるのであります。きのうですか出ましたエコノミストには、あなたはなかなか勇ましいことをおっしゃっている。大蔵大臣は、最近、非常に慎重になったということが言われたり、また、そのあくる日の新聞には、地金が出たと言われたり、どちらがほんとうなのかよくわからない。ほんとに健全財政を貫こうというお考えなのか、あるいは、景気刺激のために、いわゆる公債政策と同じようなそういう政府保証の債券をお出しになろうとするのか、どうやって景気刺激をおやりになろうとするのか、いわゆる金づくりに対する大蔵大臣のお考えを承っておきたいと思う。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろ、健全財政になったり地金が出たりということが私に言われておるようでありますが、その通り考えだと思います。私は、就任をいたしましたときにはっきりと自分の考え方を述べておるのでありますが、財政責任者はあくまでも健全財政主義を貫かなければならないという基本態度に対してはいささかも変わっておりません。しかし、経済というものは国民すべての生活を意味するのでありますから、理論と理屈だけで推し進めていって、その過程において国民生活にマイナス面が出てもいいのだというような考え方は持っておりません。健全な財政政策を貫きながら、その上にいかに合理的な財政金融政策を行なうかというにあると思いますので、社会のマイナス面に対しては適宜適切なる施策を行ないますという面を取り上げれば地金が出たと言われるかもわかりませんが、それをもって健全財政という基本的な思想なり態度なりをくずすものではないという考え方をとっておるわけであります。また、日本の現状というものがそんなに割り切った理論的なものだけで推し進めていけるというようにたんたんたるものではないというふうに私は現状認識をいたしておるわけであります。でありますから、財政金融各般の施策に対してはあくまでも健全財政を貫くということでありますので、現在の段階で言い得ることは、国債を発行するとかということは考えておりません。それから、インベントリーを取りくずすというようなことも考えておりません。しかし、財政でなければ刺激できないとか、財政でなければあらゆる施策は行なえないというのではありませんので、財政金融経済各般の施策をいかに合理的に調和をせしめるかというところにあると思いますので、私が先般来からいろいろな民間金融機関等に要請をして、お互いの意思の疎通をはかり、現状認識に対しては十分の検討を行ない、適切な施策を行なおうというような措置をとっておりますのは、かかる観点に立って施策を行なっておるのでありまして、三十八年度の問題に対しても、財政金融経済施策のあらゆる面からの総合調和を考えて対処して参りたいということであります。
  40. 井手以誠

    井手委員 一方では健全財政を貫き、一方では景気刺激策をやるということは、そんな軽わざはできないはずですよ。それじゃどういうふうにして金をつくろうとなさるのですか。公債は発行しない、インベントリーは取りくずさない、財政法を改正して剰余金を活用することについてはお話しになりませんでしたけれども、それもおそらくおやりにならぬでしょう。そうすると、結局それはどういうことになりますか。政府保証債券をお出しになる、——ことしは千四百八十億か出ておりますが、それを二千億でも二千五百億でもよけい出そう、そして買いオペをやろうという考えですか。
  41. 田中角榮

    田中国務大臣 来年の経済見通しを立てて政府が三十八年度予算を編成いたしますときに、来年度のおおむねの経済成長率はこのようにしなければならない、このように決定をした場合に、どのような施策を行なわなければならないかという問題はおのずからそこできまるわけでありまして、それに対処しての財源措置を考えて参るという考え方をとっております。
  42. 井手以誠

    井手委員 その場合に、今まで論議したように、あまり増加財源は見込まれないのですから、積極的な景気刺激策をやるというならば、財政金融一体の政策をやろうというなら、ただいま言った政府保証の債券をよけいに出さなければならぬと思うのです。それでなければ、あなたの言う一兆円近い財政投融資の財源を確保することはむずかしいと思う。そこをあなたはお考えになっておるのか。また、よくあなたがお話しになっておる買いオペというものは、いつごろからそれをやり出して、どのくらいやろうとなさっておるのか、それを伺いたい。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 買いオペレーションについては、御承知通り、先般発表しました日銀の新しい施策の一つとして買いオペの制度を設けたわけであります。日銀と大蔵省の間で十分調整をとりながら適切な時期に行なうということでありまして、現在、いつ、総ワクどのようなものに限定して買いオペを行なうかという問題に対しては、まだ決定しておりません。  それから、景気刺激を行なうということを前提にお話をしておられまして、一兆円になんなんとするような財政投融資の原資をいずこに求めるというように局限して言われておりますが、先ほどから申し上げるように、十一月一ぱい慎重に経済の実勢を見ながら、来年度この予算でどういう面に重点を置くべきかというような問題を検討して参りまして、財政、またもう一つは財政投融資のワク、また民間の資金をいかに活用できるか、また外国に対する政府保証債の問題、その他民間会社自体の外資を受け得るものの見通しも現在検討しておりますので、それらを総合して考えて参りたいということでございます。財政投融資のワク一兆円ということを今言われましたが、三十八年度財政投融資のワクが一兆円でいいのか、一兆円をこすのか、一兆円以内で押え得るのか、財源的の面から見た問題もございますが、また必要であるならば施策によって原資を得る道も考え得るというふうに考えております。
  44. 井手以誠

    井手委員 それでは、最後に伺います。ただいま御答弁の中にありました外債の問題、これをお出しになるお考えなのかどうか、これが一つ。それから、来年度の税の自然増収はほとんど勤労所得税だと思います。ことしは四百万人の納税人員がふえました。来年はさらにふえるでしょう。そういった勤労者のことを考えて、大蔵大臣は減税をおやりになるのかどうか。数字その他については今は申せないでしょうが、あなたの決心のほどをこの際承っておきたい。減税ということになりますと、腹がわかるとお互い心がまえも違ってくる。所得税を中心に減税の意思があるかどうかを承っておきたい。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 外債を発行するかしないかという問題に対しては、現在まだ検討中でありまして、こうするともしないともとこで言明できる段階ではございません。  減税に対しては、御承知通り、第三者構成の税制調査会がございまして、政府はこれに対して赤裸々に来年度税収見通しその他に対して申し上げて、減税に対しては二つ今考え方がありますが、ただいまあなたが言われた通り、所得税減税というような方向で底上げをしたいという考え方が一つと、もう一つは、時限法にしろ政策的にどうにも減税をやらなければならないというような問題が議論をせられております。一つの施設の問題にしても、電力の問題にしても、税制でまかなうもの、三者三存というような問題が議論をせられておりますから、このような問題や、大都市に対する過当集中を排除する場合、低開発地の開発促進とか、また住宅その他に対しての政策減税等も言われておりますので、どういうところでバランスをとればいいのかを、あげて調査会に一任しておるのでございます。
  46. 井手以誠

    井手委員 あなたの腹を言いなさい。あなたの考えを。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 税制調査会でももちろん私の腹を聞きたいと言っておりますが、現在のところは税制調査会の結論待ちというところでありまして、もう少したって、税制調査会の御意見も聞きながら、税制調査会の審議を拘束しないような状態でということで、現在慎重にいたしておるわけでございます。
  48. 塚原俊郎

    塚原委員長 長谷川保君。
  49. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間の関係上、厚生、文教行政の点を二、三伺ってみたいと思います。  まず厚生関係を伺ってみたいと思います。  最近、御承知のように、日本人の平均寿命というものが非常に伸びまして、男六十六才、女七十一才というようなことになりまして、大へんけっこうなことでございますけれども、このけっこうなことの裏に、実に痛ましい問題を見るのであります。最近政府でお出しになりました印刷物によりましても、老人の自殺率は世界一だということになっております。人口十万単位六十才以上の老人の自殺数は三十五年で四千六百四十四人。ことに、高年令層になりますと、その自殺率が著しく多いのでありまして、人口十万単位で見まして、六十才から六十四才で自殺率が四二、六十五才から六十九才で五三・七、七十才から七十四才で六三、七十五才から七十九才で八三・五、八十才以上になると八九・一という。この自殺の人口十万単位の全体が三十五年が二二・七ということを見ますと、高年令層では実に四倍というような驚くべき数になっております。これは西欧諸国の二、三倍というようなことでありまして、これに対する十分な対策は、だれが見ても、もはや早急にしなければならぬことは明らかであります。これらに対して厚生省は一体どういうお考えを持っておるか、伺いたい。
  50. 渡海元三郎

    ○渡海説明員 増加して参りますわが国人口の中に占めます老人層に対しまして深い御認識を持たれました御見識、全く同感でございます。今自殺の問題を取り上げまして老人のことを申されましたが、御指摘の通りでございます。私もその統計をながめまして驚いたような次第でございますが、この老人の人口は逐次増加を続けるのが今後の趨勢であろうと思います。先進国の統計を見ましても、わが国はまだ昭和四十三年度に総人口の一割ということになっておりますが、イギリスあたりではもうすでに三十年ほど前にその数を突破して、現在では一八%になっておると聞いております。わが国も先進国並みに増加させなければならないし、増加して参ると思います。このような趨勢に対しまして、老人対策に抜本的に取り組まなければならないという考えより、政府といたしましても十分の対策を立てるべく鋭意努力中でございまして、厚生省といたしましても、来年度予算におきましては、特に老人対策に対しましては重点を置きまして、あらゆる新規の事業も加え予算を要求しておるような次第でございますが、なお、根本には、わが国におきまして老人がいかなる地位にあるべきかということを基本とする老人福祉法の制定も、ぜひとも次の通常国会で成案を得て御審議を仰ぐという段階に持っていきまして、老人対策の万全を期したい、かように考えておる次第であります。
  51. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 大蔵大臣も今お聞きの通り、これは実に痛ましい限りの数字が出ておるのであります。今度の来年度予算の概算要求について厚生省の分をちょっと見たのでありますが、老人対策費を六十九億円ほど要求していらっしゃる。これは三十七年度の約二倍に当たる額でありますけれども、ただいまも大蔵大臣のお聞きのように、実に老人の自殺が驚くべき数であるというような事態をお考えになりますならば、私として大蔵大臣に特に注文しておきたいのは、この際やはりこの対策として厚生省の要求は十分満たされまして、——私は厚生省の要求でも実際においては足らぬと思う。この点は十分大蔵大臣は留意されて、このような六十才以上の老人で一年間で四千六百四十四人も自殺をするというような事態をなくしていただきたい。日本の社会保障制度というものについて、これから池田内閣は一生懸命でやって、池田内閣がいつまで続くか知りませんけれども、十年間に西欧諸国の現在の社会保障の下の段階までこぎつけたいというように言っていらっしゃいますけれども、ことに、こういうような老人の自殺をして参ります原因というもの、これは、日本の社会保障制度の非常な足らなさ、そういう点が何といっても大きな原因であろうと思うのであります。そういう点で、この老人対策に対して特別な配慮をしてもらいたいと思うが、大蔵大臣はその点どんなふうにお考えになっておりますか。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  老人の自殺による死亡率というものについて、今私は御発言承知をいたしたわけでありますが、いずれにしても、日本における自殺率は世界の何番目というように非常に高いようであります。老人に対しては、特に老人福祉の面に対して重点的な施策を行なわなければならぬことはもう当然であります。大蔵省といたしましても十分これが対策考えておるわけでございます。  なお、来年度の厚生省の老人対策予算としまして、看護ホームというもので三億六千万円でありますか要求しておりますが、三十六年度の老人ホームの利用率は九七・四%というようで、実際まだ一〇〇%まで使われておらない。これは、厚生省の言い方としては、二月、三月ごろ時期の悪いときに死亡率が非常に多いとか、また、自分の居住地に近いホームに入りたいというようなことでありますので、郡部にあるものは利用度が少ないとか、また、居住地の市郡内でつくろうとすれば土地が入れないとか、いろいろな問題がありますが、いずれにしても、お説のように、老人対策については国会においても老人福祉法が制定せられるような気運にありますし、これらの問題に対して真剣に考え、対処していくべきだという考えでございます。
  53. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今お話しの、老人ホームに一〇〇%定員だけ入っておらないということ、この問題に非常に大きな問題がある。これは、一般の老人ホームでは現在確かに空床がある。どうして空床があるかというと、これは、政府昭和三十五年度の高齢者の調査によると、六十五才以上の老人の二〇%が病弱または臥床しておる。ところが、こういう方たちは、一般の老人ホームのやり方では、事務費あるいは措置費が少ないために、この人たちを入れたのではやれないのです。経済的に成り立たないのです。ここに大きな問題がある。経済的に経営が成り立たないようになっておる。そこで、この病気を持っておる老人、あるいは臥床しておる人はもちろんでありますけれども、これは一般老人ホームは断わってしまう。入れないのです。そこに空床のできる大きな原因がある。でありますから、今度は、わずかにまだ日本で二つしかありませんけれども、看護老人ホームの方に行ってみますと、入りたいという希望者が殺到しておる。こういう事態をわれわれはよく見なければいかぬと思う。それで、この看護老人ホームの問題を初めて厚生省が今度取り上げまして、正規に予算の要求をなさっておる。あるいは老人保養所も同じようなものでありますけれども、これの予算の新規要求をなさる。これも非常にいい。ただ、問題は、この概算要求を見ましても、老人保養所と看護老人ホーム合わせて三億八千万です、施設補助が。保護費がわずか五千万です。こればかりのものではどうにもならぬ。先ほど申しましたように、やがて一千万にもなろうという人々、その老人たちのうちの二〇%くらいが病気を持っておる人です。でありますから、こんな対策ではどうにもならぬのであります。これは初めて芽を出したことでありますからこういうことでございましょうけれども、こんなことではどうにもならぬ。  それから、いま一つ考えておかなければならぬことは、なぜ老人が自殺するかということです。これは、スエーデン、デンマークの老人ホームを見ましても、そこで自殺する人が相当ある。それは何かというと、かしこにおいては、あまり社会保障が発達し過ぎたために、肉親の者がもう老人ホームに見舞いにも行かない、こういうことで、肉親に対する愛情に飢えて死ぬわけです。ところが、日本では、社会保障もだめならば、同時に、家族制度が崩壊をして、そこに全く愛情に飢えた老人たちが生きがいを感じなくなった。人間というものはやはり愛の中で、生きがいを感ずるものだと思うのです、若くても年とっても。それが愛情を感じない。この点は一般の老人ホームの経営の点でも考えなければならぬ点だと思うのです。だから、単にりっぱな設備をつくっただけでは老人は満足しない。そこにやはり深い愛情がある施設になりませんと、あたたかい施設になりませんと老人は自殺するという形になってくる。こういう点で、厚生省も大蔵省もともに、措置費、保護費、事務費等を十分にもっと見なければいかぬ、つまり、ほんとうにあたたかいものができていくだけの経済的な裏づけというものをちゃんとしてあげなければいかぬということを思うのです。また、老人ホームをつくっていくときに、そういう愛情のあるもをつくっていかなければならぬ。従って、職員等も、単に役人の古手が回っていけばいいなんという安易な考え方でなくて、もっと真剣に考えてもらいたい。わずか一年間に六十才以上の者が四千六百四十四人も自殺する、こういうようなことが絶対あってはならぬと思います。  看護老人ホームや老人保養所をつくっていこうという考え方を今お出しになったことについては、私は非常に賛成であります。非常にいいことだと思うのでありますけれども、ただ、問題は、それを経営して参りますのに、聞くところによりますと、たとえば看護老人ホームの看護婦の配置の数、これを、病院ではいわゆる基準看護に一類、二類、三類とあるわけですけれども、これよりも低いものになさるようであります。これは非常な間違いであります。どうして間違いかと申しますと、この看護老人ホームに入るような老人の中には、要するに老耄の人が非常にあるのであります。老耄のために一日じゅううんこを方々になすりつけるというような老人がたくさんあります。あるいは、一日じゅう、夜も昼も大きな声で叫んでおるというような老人があります。私はこの実態をよく見ておるのでありますけれども、その実態を見ていきますと、病院の看護婦ではとてもできない。もっと徹底した老人専門の看護婦でなければこの扱いはできないということをしみじみと思うのであります。そういうような、ふいてやってもまたすぐうんこをなすりつけるというようなことをしている年寄りを見ますし、また、おむつで取らなければならぬという者が非常にたくさんございます。看護老人ホームのおそらく半分はそういう人になると思います。そうなりますと、これは容易なことではありませんで、今厚生省が考えているような一類あるいは二類、三類以下の看護をやろうというようなことでは、ほんとうに長い間日本のために社会のために働いてくれて、その生涯を終わるときに至って、今申しましたような親切な、ほんとうにあたたかい愛情をかけた看護をする、みとりをしてあげるというようなことはとてもできないのであります。そうなりますと、やはりさびしくなって死ぬという形になっていくと思います。でありますから、今初めてこの看護老人ホームあるいは老人保養所というものをつくっていくとしますと、これについて、十分な人員の配置、また、この保護費等を考えてあげる必要がある。厚生省が今考えておるのを私が聞いたところによりますと、そんなことではほんとうのものはできない、こういうことを思うのであります。  どうか、こういう点は一つ、時間がありませんからこれ以上申しませんけれども十分に考えてこの計画を進めてもらいたい。大蔵大臣にも、ぜひこの点は十分考えてやってもらいたいということをお願いいたしておきたいと思います。  それから、生活保護のことをちょっと一言だけ伺っておきたいのでありますが、聞くととろによりますと、米価を一二%一月からアップするということでありますが、それと関連して、生活保護の保護費、低所得階層全般にわたることでもありますけれども、要保護の人々と、またその他の低所得階層に対する対策、これについて厚生省はどう考えておるのか。一月から米の値段を上げるということをもしなさるとするならば、当然保護基準の引き上げということも考えなければいかぬと思うのでありますけれども、これは補正予算で出すのか出さないのか、この点を伺っておきたい。あるいは来年度予算ではこれをどう考えておるのか、伺っておきたいと思います。
  54. 渡海元三郎

    ○渡海説明員 米価の値上げに伴いますところの生活保護法の基準の引き上げにつきましては、当然、米価の値上げと時を同じうして基準の改定をそれだけ引き上げたい、かように考えております。これを補正で、第一次補正に乗せるかどうかということにつきましては目下大蔵当局と検討中でございます。  なお、その他の一般低所得者対策につきましては、あらゆる社会保障制度の拡充ということを行ないまして、できるだけ影響の少なくなるように目下鋭意検討を続けておる状態でございます。
  55. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 不況の深化とともに低所得階層対策を十分に考えなければならないときがきているわけでありますけれども、最近知ったことでありますが、東北地方のある県では生活保護世帯が九千三百世帯ある。ところが、これ以下の生活をしている世帯が数倍に達していると言われております。また、私も先般九州の炭鉱地帯を少しく拝見したのでありますけれども、生活保護世帯の方々と、それ以下の生活をしなければならないほんとうの低所得階層との生活格差が逆に広がってくる。そのために当局は生保の大幅引き上げをむしろ喜ばないというような、全くさか立ちをしたような考え方をするというようなことを伺うのであります。この点は、私は、従来の生活保護の適用等を見ておりましても、社会福祉事務所、あるいは社会福祉司というような人々があまりに厳格に、ミーンズ・テストをいたしましたり、あるいはわずかな財産があるというようなことで適用しなかったり、しかもそれは処分のできない財産である、そういうようなことがあったり、あるいはまた民法の扶養義務のことをあまりに厳格にやるために、実際生活保護の適用を受けたくてもできないというケースがたくさんあることを承知しているのであります。こういうことについて、この不況の深化とともに十分考えていきませんと、自殺と犯罪の原因にこれがなっていくということは当然考えられるのであります。これらについて来年度予算におきましては、相当に行政のやり方を手心を加えて予算を十分にとる必要がある。そうしないと自殺、犯罪の件数が増してくるのじゃないか、こういうように思うのでありますが、これらについて来年度は生活保護基準を相当に上げるやにも伺っております。その点はどういう見通しであるか、伺っておきたい。
  56. 渡海元三郎

    ○渡海説明員 生活保護の受給者とそれ以下の生活を行なっておる者もあるというふうな御指摘でございますが、大体そういうふうなことがあってはならないのでございます。しかしながら、事実あのときの制度では、町村長が責任を持ってこれを行なうという時代でございましたので、私自身生活保護の決定を行なってきたものでございますが、収人面あるいは資産面等を考慮いたしまして、なかなか一律には参りがたい困難な部面がございますが、ただいま御指摘になりましたような事項があり得るということは、現実では私もこれを認めるにやぶさかでございませんが、そういうようなことをなくするために、係員を指導いたしまして鋭意それらの皆無に努めたい、かように考えております。  なお、ただいまこういった階層の格差が開かないために生活保護法の基準額を引き上げること自身を喜ばないというふうなことをお聞きいたしましたが、私は、生活保護法の基準はそういったものによって制限されるべきものではなく、必要な限度まで、また国の財政力に応じて引き上げるべきである、かように考えております。来年度におきましても、そのようなつもりで現在大蔵省に対し概算要求をしておるような次第でございます。
  57. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間がありませんから、文部大臣に少し伺いたいのであります。  それは高校生急増対策の問題であります。御承知のように、高校の入学問題が昨年来、ことに全国民の強い関心事になりました。昨年八月、母親大会が開かれ、その後十二月には総評、中立労連、日教組、日高教あるいは母親大会、子供を守る会、東京、京都の全員入学促進会議というような人々が全国協議会を組織して、十二月八日には内閣官房長官に要求書を提出してあるはずであります。また全国知事会や全国の教育長会議におきましても決議をいたしまして、これが十分な施策をしてもらうように、文部省の方針をもっと変えてもらうようにということを要求されておるようであります。また、私ども予算委員が国政調査で全国各所に参りましたが、どこへ参りましても、第一に要求されたのは、高校生急増対策の文部省のやり方をもっと変えてほしい、こういうことでございます。私どもの報告書にもそれは明確に書かれておるのでありますが、文部省は、その後これらについてどういう措置をとられたか、何だか補正予算を出されるようにも伺っておらないのでありますけれども、どういうような措置をとられたか、またとっていかれるつもりであるか、伺いたいのであります。
  58. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。高校急増問題につきましては、国をあげて関心を持っていただいておる当面の課題であることを承知いたしております。今のお尋ねは、この正月、閣議でもってきめました線を変えるかどうかということ、補正予算を出すかどうかという二点かと拝察いたします。正月にきめました線はくずさないで参りたいと思います。補正予算は、でき得るならば提案したい、こういう気持でせっかく自治省、大蔵省とも相談中でございます。
  59. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は、文部省の高校生急増対策要綱を見まして、どうも文部省は正確に事態を見ようとしていなかったというように思うのです。それは昭和三十六年に、御承知のように中学卒業百四十万人、そのうち高校進学をしました者が九十四万人、六六%という実績があったのであります。ところが、三十七年は百九十六万人の中学卒業の予定である。それに対して百二十万人の高校入学志願者があるだろう、つまり六〇%になるだろうという見込みをつけた。三十八年も同じく六〇%の見込み、三十九年は六一%、四十年は六三%というような見込みをしておられる。三十六年に明らかに六六%という実績があったものを、それをあえてこういうように小さく見ていこうとした。三十七年度につきましては、全国の知事会でも実態調査をして六三・九%と言っておるのである。これをこのようにわざわざ小さく見込んでいったところにこの問題の根本的な間違いがあった。正確に事態を見ようとしないで、ただ予算措置の問題だけでこういう無理をしていったように私には考えられるのであります。この点、この急増対策要綱自体が間違っていないと思われるのか、つまり三十七年以降でも大体六〇%くらいで推移する、こういうお考えであるのか、伺いたい。
  60. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 進学率の推定は、いわば予算のような性質を持っておると思います。予定しました進学率と現実とある程度の誤差があるのは本来やむを得ない問題かと心得ます。従って、ことさら低く見たり、ことさら高く見たりするというようなことは必要のないことでございまして、三十五年の実態をとらえまして、六〇%と推定したことは御指摘の通りでございますが、三十六年の実績が三十五年に比べまして比率が非常に高かった、このこともむろん承知いたしますが、ただ三十六年度の実績は生徒数が減りまして、収容関係におきましても、以前の数年に比べれば幾らか違いのある要素もある。そういういろいろなことを総合いたしまして六〇%、しかも三十五年度の実績は、希望者は実質九〇何%、一〇〇%近く収容し得ております。そういう率でもございます。そこで六〇%というのを押えたわけでございまして、今後に向かっては、実績をとらえまして将来の趨勢をさらに検討し直しまして、ある程度の進学率の補正というものも必要であろうかと考えております。
  61. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は、その三十七年度の急増して参りまする高校生の対策でも、学校新設に対して文部省は、公立を二十七万人、私立を四万人、増築を公立が六十万人、私立が二十六万人、それからいわゆるすし詰めにしていこうというのが公立が三十六万人、私立が十三万人というように計画をされておりますが、ずいぶんこれは無理だと思うのであります。すし詰めにしていって生徒を教育しようなんということはずいぶんむちゃだと思うのでありますが、時間がありませんから、この点これ以上伺いませんが、ことに構造比率の問題で、文部省は、鉄筋が六で、鉄骨が一で、木造が三というように言っている。全国知事会の実態調査では、鉄筋、鉄骨が九〇%以上だという。今度は建築単価の点を見て参りますと、文部省は坪五万五千円と多分計算をしておったと思うのであります。実態はどうしても八万円かかる。どんなに少なくとも八万円かかる。そうすると、これの三分の一なら三分の一の補助、あるいは二分の一の補助ということになりましても、なるほど二分の一とか三分の一ということはわれわれがきめるわけでありますけれども、それを実際において坪建築単価を五万五千円で見ていくとなりますと、実際はその率まで補助しないという形になってしまう、それよりはるかに低いものになってしまう、こういう形になるわけですね。こういうところに各地方の都道府県などで非常に困っている問題がある。だから私は実際に言って、法律で二分の一の補助とか三分の一の補助をつけるとかいうことをしましても、行政当局が、われわれのきめましたものを勝手に単価を五万五千円にするとか、あるいは実際においては、構造比率というものを、やりもしないのに非常に木造を見ていくというようなことで、全国知事会の実態調査のように九〇%以上が鉄筋、鉄骨であるというのに、これを七〇%しか見ない。こういうことになりますと、実際において地方は非常にひどい目にあう。そうして高校生急増対策が実際にはうまくいかない。こういう事態になれば、今度一体文部省あるいは大蔵省は、こういうような建築単価の問題などはどういうように変えるのか。また、今のでも、法律でたとえば二分の一とか、三分の一とかきめましても、あるいはわれわれがそういうことをきめましても、実際においてそういうような低いものでやられたのではできないという形ができてしまうのであるが、これらについてはどういう対策を立てていくのか。先ほどお話の、補正予算を組みたいと考えておると言われるが、組まなければできない。当然組んでもらわなければならぬのでありますが、これについて文部大臣、どうお考えですか。
  62. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今御指摘の単価、構造比率ともに、補正予算を組むとしますれば考慮に入れて組みたい、かように思っております。ただ一般論として申し上げますと、構造比率にしましても、都道府県のそれぞれの負担力、負担意思というものが事前にわからない意味がありまして、従来の実績上構造比率はこんなふうに見込めばよかろう、単価についてもほぼ同様なことが言えるとは思いますが、少し意味が違うといたしましても、そういう予想のもとに予算も組み、地方財政計画も立てるわけでございますために、結果としましては、都道府県としては、私どもが想像しましたよりは、高校に対しては構造比率は、もっと鉄筋、鉄骨でやりたい、こういうことがその後において起こってくる。従来の実績に比べれば比率が非常に高まるということのための誤差が出てくるのが最大の原因かと思います。単なる概念論でいけば、一たんきまりました補助予算ないしは地方財政計画の算出基礎等は、あくまでも予算でありますために、決算的な補助もしくは決算を見て補てんするという考えでございませんために、ある程度は現実問題としてはやむを得ないかと思いますが、今度、高校生急増対策として国民的関心を持っております課題でございますゆえに、また特に教育の問題でもありますから、そのことに関心を持ちまして、できることならば可能な限りの補正をしたい、こういう考えで臨もうとしておるわけであります。
  63. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 最後であります。  今のような問題を考えましても、どうも文部省のやり方に非常な無理がある。この点は、私は大蔵省の責任かもしれないと思いますけれども、非常に無理なこと、できないことをやっていこうという形が見えるのであります。こういう点は一つ大いに補正予算を組んで、全国の親たち、また学生生徒たちの要望を十分満たすように、心配がないように、何十万人も中学浪人ができるというようなことがないように、文部省、大蔵省ともに十分御尽力をしてもらいたいということを希望しておきます。
  64. 塚原俊郎

    塚原委員長 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  65. 塚原俊郎

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。高田富之君。
  66. 高田富之

    ○高田(富之)委員 私は、最近における公共料金の引き上げにつきましての政府のお考えをただしたいと思うのでありますが、時間の関係もありますので、主として消費者米価の値上げに関連した質問に限りたいと思います。  実は先般来政府としましても、消費者物価の非常な急速度の値上がり傾向ということにつきましては、本委員会におきましても、何回かこれに対して相当強力な措置を講じて値上がりを抑制するという態度を表明されておるわけであります。しかしながら、その後の実績を見ますというと、全部言明とは全くたがいまして、物価はいよいよ上昇傾向を早めております。特に最近の私鉄、それから電気料金、さらには近くバス料金、新聞代、あるいはついに決定打ともいうべき消費者米価の値上げというように、相次いで政府がイニシアチブをとりまして物価の引き上げにいよいよ拍車をかけておるという状態にあるわけでありまして、国民としましては、この状態に対しまして非常な憂慮をしておるわけであります。わが党としましても、先般来政府に対しまして、国会におきましても、あるいは院外におきましても、いろいろな方法で強く公共料金の引き上げをしないようにということを再三にわたって要望して参りましたが、ついにこれらの国民の声を十分にお取り上げにならないで、公共料金の引き上げに踏み切ってこられたのであります。この際まず最初に、いろんな問題にこまかくは触れませんが、総合的な消費者物価の抑制策ということについて、何べんもこれはやっていただいておるわけであります。経済企画庁長官にお聞きしたいのですが、単なる口頭禅に終わっているのじゃないかというのが、ほんとうにこれは国民の偽わらざる批判でございますので、この際、もう一ぺんあらためて、消費者物価の値上がりを抑制するために、政府としてはどのような考えで、どのような具体的な、基本的な措置を講ずる態度であるのかという点を、まず最初に明らかにしていただきたいと思います。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、私鉄の運賃その他御指摘のものにつきましては、いずれも相当長い年月据え置きになっておりまして、他の物価との比較におきまして事情万やむを得ないものを、政府といたしましても、あらゆる角度からなるべく小幅にということで努力をいたしまして、値上げを認めておるものでございまして、基本はどこまでもあまり値上げをせぬで、安定していかなければならぬという方針には違いないのでございます。
  68. 高田富之

    ○高田(富之)委員 まあ基本的な考え方としては、なるべく値上げをしない考えに変わりないとおっしゃるのですが、たとえば、具体的に今のように公共料金につきましては、審議会でありますとか聴聞会とかというようなことで、一応の意見は聞いておるけれども、主管官庁は責任を持って決定する、こういうことになっておりまして、大体やはり生産者なり当該関係者、資本家団体なりの意向というものが、多少値切られはしますけれども、究極的にはのまれる、機構的にこういう仕組みになっておると思うのです。いろいろ世論もありまして、私鉄料金のごときは、全く上げなくてもやっていけるじゃないかという議論も相当あるし、また一般消費者、利用者の側から見ますと、まことに了解に苦しむという点もありますが、機構的にもこれを吸収していく制度がないと思うのです。ですから、もし政府があくまでも押えるというお考えに変わりがないとおっしゃれば、ここらあたりで、やはりなるべく重要物資なり、特に公共料金などにつきましては、これの決定については何か法的な根拠を与えまして、さらに各方面の意見もそこに入ってくる、そうして権威ある決定機関を持つ、法的根拠も与える。そういうことを抜本的に何か考えていただかないと、ただ現状を繰り返されただけでは、国民に承服しない。こう思うのでありますが、そういう点についてのお考えが何かありましたら、伺っておきたいと思うのです。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように今経済企画庁長官外遊中でございまして、私は臨時に代理をしておりますので、私からお答えをするのは適当ではないと思いますので、一つそういう基本的な問題につきましては、いずれ経企庁長官が帰りましてからお答えを申し上げることにいたしたいと思います。
  70. 高田富之

    ○高田(富之)委員 それでは時間がありませんから、消費者米価の値上げにつきましてお聞きしたいのでありますが、まず第一に大蔵大臣から、この消費者米価値上げの理由が、やはり財政上の見地にあるというふうに聞いておるわけなんですが、大臣としては、そのように理解してよろしいのですか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 財政上の理由のみではありません。御承知通り食管制度の中で何回か消費者米価の値上げ及び生産者米価の値上げに際しまして論じてきた問題でありまして、三十七年度予算ベースでは四千二百万石、外麦の勘定を入れて七百四十一億の赤字の予算を組んでおるわけであります。その後、御承知通り今年四千五百万石をこえるような政府買入量の増大がございましたし、三十二年から消費者米価は据え置きになっておりますので、このままで推移すれば、外麦勘定の赤字を入れて千四百億にも上るということでありますので、これらの問題をすなおな立場で米審に考えていただくということで、農林大臣から諮問をし、答申を得て決定をいたしたわけであります。なお、一般会計からの繰入れ額が千億をこすと、食管そのものにも問題が波及をしてくるし、当然何らかの処置をしなければならないというような議論は、過去何回かの審議にあたって議論をせられてきたわけであります。でありますので、千億をこすというような状態になれば、他にも重要な政策がたくさんありますので、食管の赤字はそのままに据え置くべきか、また、ある程度消費者に負担をしてもらい、その財源を別に財源として他の政策に盛るべきかはあげて米審の決定にゆだねたわけでございます。
  72. 高田富之

    ○高田(富之)委員 しかし、米価審議会では、おっしゃるような一本のはっきりした答申はなかったはずでありまして、やはりいろいろの意見が突き合わされて答申されている。結局、決定は政府の断にかかっておったわけであります。ただいまのお説を聞きましても、やはり理由が財政上の赤字の問題ということに聞きとれるわけです。しかし、財政上の理由でこれを出すことは不適当だという答申も中にあったと思うのでありますが、それだけの理由でありますと、これは相当大きな問題を含んでいるじゃないかと思いますが、そもそも現在食管制度というものがあり、その食管制度がどれだけの役割を果たしておるかというようなことを、生産者の立場、消費者の立場、全国民の立場から見た場合には、相当の大きな評価があるわけでありまして、ただ財政上の理由だけでもって簡単に消費者価格を動かすというようなことになりますと、そのもとをなす制度そのものの問題は、ほとんど実質的にはそれによってくずされるというふうなこともあるわけでありまして、納得に苦しむ点であります。特にただいま御説明の千何百億と申されますけれども、それが全体が何か大きな赤字のような御説明をなさるのもいかがかと思われるのでありまして、当然必要な行政上の諸経費、集荷上の経費、その他金利とかいろいろありまして、そういうものは、当然かからざるを得ない政府の費用と見ていいのではないかと思うのでありますが、そういう点からもう少し厳密に、もしあなたが財政上の理由を特にそういうように重視されるならば、厳密にされまして、もう一度はっきりその理由を明らかにしていただきたいと思います。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、今般の消費者米価の値上げは、財政上の理由のみから値上げを求めたのではありませんということを申し上げておったわけであります。今までの審議の過程におきまして、一般会計からの繰り入れが千億をこすような場合になると、やはり別な問題からもこの問題は検討せらるべきであるという問題も一つの理由でありますし、もう一つは千四百億にもなるという問題もありますし、なお、先年から食管会計そのものに対してのいろいろな問題もありましたが、私たちは、現在の段階においてまだ食管会計が必要であるという考え方を持っておりますので、食管会計を当分存続せしむるという立場に立っておると、やはりある程度理解を求めるにしても、程度の問題がありますというようなことを申し上げたわけであります。理屈を一応申し上げますと、今度の生産者米価値上げによって、四千五百万石ないし四千五百万石以上も政府が買い入れなければならないということになりますと、先ほども申し上げました通り外麦勘定を入れて千四百億に近い一般会計からの繰り入れを要するという問題が一つあります。それからもう一つは、昭和三十二年から五カ年間にわたって全然据え置きであるという問題が一つあります。それから第三点としては、昭和三十二年に政府に答申をせられた当時の米価審議会の答申は、国民生活の食料費の中に及ぼす影響というものの限度を三二・五%ですか、三三%というような数字をあげて、これ以内であれば影響は少ないというような見解を明らかにいたしておるわけでございます。それから千三、四百億にわたる一般会計からの繰り入れ額を、もしそのまま消費者米価に転嫁をすると仮定をすると幾ら上げればいいかというふうに計算をしてみますと、三二%上げると一般会計からの繰り入ればゼロになるわけであります。でありますから、一本の理屈で言えば、三三%まで上げても答申のワク内だという考え方も一応あるわけでありますが、こんな棒のような考え方をしたわけではありません。しかも二三%上げて一般会計からの繰り入れをゼロにして、来年度生産者米価もあるのだからというような含みを持ってそういう限度一ぱい上げてもらいたいということを申し出たわけでもないのであります。いろいろな諸般の情勢をつぶさに勘案をいたしまして、農林大臣としては一六%の値上げをぜひやっていただきたい、こういうことが農林大臣試案として考えられるものでございますと、こういうことで申し上げておったわけであります。私たちも、財政上の理由からだけ言えば二三%までということも言い得るのでありますが、先ほども申し上げたように、消費者物価の問題もありますし、当然政府が負った方がいい費用もありますので、それらを十分検討した結果、一六%程度の値上げができないものだろうかということで御審議をわずらわしたわけでございます。その後答申もありましたし、ただいまあなたが申された通り、御批判の御意見もありましたので、そういうものを十分尊重して一二%という値上げ幅を決定いたしたわけでございます。
  74. 高田富之

    ○高田(富之)委員 そうしますと、結局一二%にきめたということは、財政当局の考えからすれば、最も少ないところにきまったということになるわけなんですが、そういうことになりますと、おそらく今後もしも生産者米価が上がりますと、当然また消費者米価も上げざるを得ない、上げてほしいということに財政当局としてはならざるを得ないのじゃないか。ただいまのお話の二三%上げておけば、ここ若干の間は生産者米価が上がっても大したことはないけれども、ぎりぎり一ぱいの一二%であれば、当然来年度生産者米価を引き上げるということになりますと、さらに消費者米価の方を据え置くということも困難にならざるを得ないということになると思うのですが、その点はいかがですか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 来年度生産者米価がどういうふうに決定されるかは全く未確定の問題でございます。しかし、生産者米価に対しては、御承知通り農家所得補償制度がありまして、制度上もこれは自動的に決定をするというような状態であることは御承知通りであります。しかし私は、生産者米価が上がったから、そのまま消費者米価にスライドすべきものだとは考えておらないわけであります。その間においては各般の状況を十分検討して、しかも食管制度というものの現状にも徴して、この程度はやむを得ないだろう、この程度は一般会計でまかなうべきであるし、この程度は消費者米価値上げによってまかなうべきものであるというようなことに対しては、第三者構成である審議会の議を経て決定をするという慎重な態度をとっておるわけでありますので、来年度生産者米価が上がるかどうかということもまだ未確定ではありますし、また、よしんば上がるということがあっても、それが直ちに消費者米価にはね返るものだというふうには理解しておりません。
  76. 高田富之

    ○高田(富之)委員 今度の消費者米価の値上げに関連いたしまして、むしろこの際食管制度そのものを改変していく、改廃していく方向で検討すべきではないかといったような議論が、政府部内からもあるいはその他の方面からも出されておるわけであります。問題は非常に重大であると思うのでありまして、あいまいではやはり非常に不安を与えるわけでありますから、明確にしておきたいと実は思うわけです。今度の消費者米価の値上げに対しまして、生産者団体としましては、消費者の米価を上げることに賛成はしておらないわけであります。もちろん全く反対というものもあり、また、その点につきましては非常にむずかしいというような態度をとっておるところもありますけれども、決して賛成はしておらぬというのはどこにあるかといえば、結局この問題が、申すまでもなく食管制度自体をゆるがさざるを得ない方向に事実上持っていかれる、世論の方向もそういうふうにリードされるであろうし、また制度的に言いましても、こういうふうなことをおやりになりますと、結局は、生産者価格と消費者価格というものが切り離されたものでないということになるわけでありますから、そういう点で非常な不安を持っておるわけであります。ですから、ここではっきりしていただきたいことは、現在の食管制度というものを改変する意図があるのかないのか、来年度生産者米価については、生産者所得補償方式によりまして、諸物価も上がっており、労賃も上がっておりますので、当然適当な値上がりがなければならないということは申すまでもないと思うのでありますが、それらの点についての態度は、政府としては変わらないのか変わるのかという点を、一つはっきりとお聞かせ願いたいのであります。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 はっきりと答えよということでありますが、はっきりと答えるにはあまりにも重要な問題でありまして、なかなかはっきりお答えできないわけであります。私も先ほど申し上げた通り、現在の段階において食管制度を持続するという建前で今度の消費者米価の値上げを諮問いたしたわけであります。これは昭和三十六年度か三十七年度予算編成の当時、大蔵省事務当局との間にいろいろな折衝等がありましたときに、三十八年度には食管制度の改廃を含めても検討するというような話があったとかないとかいう問題を、私たちも耳にいたしたわけでありますが、そういう問題が出るだけでも大へんな議論を呼び起こす問題でありまして、なかなか理論的に割り切ってというような簡単な問題ではなかろうというふうに私自身考えておるわけであります。今言われた通り生産者米価と消費者米価との間に画然たる区別がない以上、来年生産者米価が上がるということが必至であるとすれば、当然また消費者米価も上がる。そんなことをしてイタチごっこというような状態を続ければ、食管制度をやめた方がいいというような議論も起こり得るので、賛成もしておらぬという議論も十分わかります。同時に、私が先生ほど申し上げた通り、一般会計からの繰り入れが無制限に繰り入れられるのだというようなことになると、純経済理論からいっても、食管制度の問題に対して手をつけたらいいじゃないかという、別な角度からの議論も起こったし、また起こり得るのであります。いずれにも割り切れないでおるところが、だらしがないと言えばだらしがないのでありますが、食管問題は、農村の問題、いわゆる日本の農村という現実を考えると、しかく簡単に割り切れないのが現実じゃないかと思われるわけであります。でありますから、今度の答申の中にも非常に傾聴すべき議論がございまして、私たち検討しておるのでありますが、食管は現在のままで当分制度上認めていくということを前提として考える場合、生産者所得補償方式のほかに、消費者の米価決定に対しても何か法定制度のような、いわゆる生産者の米価をきめると同じように、少しものさしをつくってはどうかというような御意見もあったようでありまして、それらの問題を含めて今慎重に検討いたしておるのでございます。
  78. 高田富之

    ○高田(富之)委員 事はきわめて重大でありまして、この問題だけをやっておりましても、まだまだ相当いろいろ申し上げなくてはならぬことがあるわけですが、時間がありませんので、残念ながら次会に譲らざるを得ないのですけれども、ただ問題は、私が申し上げたいことは、財政上の理由が相当大きな理由をなしておりますけれども、実際これだけ大きな役割を果たしておる制度というものはなかなかないので、当然正規の政府が負担すべきと思われる行政費などを引きました残りはそう大きなものではないし、全予算に占めるパーセントも非常に小さなものです。ところがこの役割は、今の農業生産に対する安定という意味では決定的な役割を果たしておりますし、一方消費者に対しては、特に低所得階層——一千万といわれておりますけれども、そのつかみ方もむずかしいでしょうけれども、全体としての消費生活の安定というものは、これによって非常に大きなおもしをなしておりますし、そういう点から言えば、考え方だと思うのですけれども、今の額は決して大きなものではない。本来農業というものは、政府が大きく社会的な出費をして改善していくということなしには成長についていけない産業でありますから、それを安上がりにしよう、なるべくこれは金かけぬというようなことであっては、問題は解決しないと思うのです、それらの点はまたあとの機会に申し上げるといたしまして、この際もう一つ伺っておきたいのは、特選米を値上げと同時につくる、こういう構想のようなんですが、内容がどうもはっきりしないのでありますけれども、一体これはどういうものをどの程度そういうふうにして、また幾らぐらい値段の格差をつけるつもりなのか、それを一つ御説明願いたいと思います。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 消費者米価の値上げは、御承知通り閣議の責任において内閣で決定いたしたわけでありますが、これは主管大臣は農林大臣でございます。農林大臣としては——一部特選米制度を設けるということだけが閣議の決定でありまして、これが特選米の制度、それから単価、運用その他に対しては、現在まだ閣議に報告がございません。農林省、食糧庁当局において今鋭意検討しておる段階だと存じまして、詳細が決定いたしておりませんことを申し上げておきます。
  80. 高田富之

    ○高田(富之)委員 その点は新聞にもある程度構想が出ておるわけなんですが、あんなふうなものをおやりになる方針を進めておるのですか、どうですか、ちょっと食糧庁長官に……。
  81. 大澤融

    ○大澤説明員 特選米ですけれども、これは閣議できめましたのは、今の食糧管理制度の中でいわば量の問題を扱っておるわけであります。しかしながら、一時のように需給の窮迫しておるときと比べまして、今日のように需給が非常に緩和しておるというようなときには、消費者が量だけではもう承知しない。むしろ質の問題についていろいろ注文があるわけです。そういう消費者の要望にこたえて、品質というようなものを加味して、高くても品質がよければいいんだというような消費者の要望にこたえようという意味で、ああいうことが考えられたと思うのであります。その内容は一体どういうものをどれだけ充てて、あるいは一般の米とどのくらいの価格差をつけるかというような、今お尋ねの点ですが、そういうことを含めまして、私どもいろいろ今作業を進めておる階段でありまして、まだ、最終的な結論を得て、ここでいろいろ事こまかに申し上げるというような段階には立ち至っておりません。
  82. 高田富之

    ○高田(富之)委員 大澤さん、もう一ぺんお伺いしますが、結局はやることはやるとおきめになっているのですが、そうしますと、一二%値上げの上にそれがプラスされることに結果としてはなりますから、一二%よりも大幅な値上げになるんだということは閣議できまっておるわけですね、どうですか。
  83. 大澤融

    ○大澤説明員 一二%上げます米のほかにそういうものをつくるということでございます。
  84. 高田富之

    ○高田(富之)委員 もう時間が来てしまいましたのであれですが、今の特選米の問題なんかがからんでくることを考えますと、これはいよいよ——一般には一二%、一二%と説明をし、PRをしておるけれども、事実は一二%じゃないんだということであって、まことにそこら辺も、国民に対しては正直なやり方ではないのじゃないか。これだけの大きな関心事であって、米がどれだけ値上げになるかという決定的に重大なことを、一二%だけははっきりさしておいて、あとの量もまだきまっておらない。もっと高い米をその中からつくるというようなことは、これは全く国民を愚弄しておるんじゃないかと言わざるを得ないのであります。それから、そういうことをやれば、これは技術的にも相当むずかしいことですから、結局、配給機構、制度というものも相当大幅に変わってこざるを得なくなる。第一、心配になりますことは、結局そんなことで配給米が高くなれば、ヤミだって、せっかくここへ来ましてヤミがだんだん減ってきて、予約売り渡しのルートに乗ってきているというのが、またこれがくずされるという傾向にもなるでしょうし、これは単に消費者の消費生活を苦しくするという意味において重大であるばかりでなくて、やはりこれは食管制度自体にも触れる非常に大きなところへ、もはや手を触れておると言わざるを得ないのであります。従って私どもは、決定をしたとはいっても、まだ実施をしておらないわけでありますから、この際、そういう点については、一つ根本的な考え直しを強く御要請したいと思うのです。もう少し慎重に、事の重大性をお考えになって、あらためて再検討されるように強く御要請申し上げまして、こまかい点は次の機会にもう一度お尋ねしたいと思います。
  85. 塚原俊郎

    塚原委員長 小松幹君。
  86. 小松幹

    ○小松委員 時間がないからすぐ質問に入ります。  きょう出ておられる防衛庁関係はどなたでしょうか。
  87. 塚原俊郎

    塚原委員長 山上防衛施設庁次長と鈴木施設部長、上田経理局長も間もなく入ると思いますが、まず大蔵大臣にどうぞ。
  88. 小松幹

    ○小松委員 それでは大蔵大臣にお尋ねしますが、ことしあらためて沖繩基地におる米軍の演習場を大分県の日出生台に施設したい、こういうことで今折衝段階でございますが、これは過去の平和条約締結以前に、アメリカ軍がこの日出生台の演習場を使用したのでありますが、その当時の被害の補償ができていない。それを今年度予算にも盛っていない。その辺のところをどう大臣としてはお考えか。補償を来年度予算に持とうとするのか、あるいは本年度補正予算に出そうというお考えなのか、その辺の御答弁をお願いします。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。  日出生台の演習場の問題については、御承知昭和三十二年の二月までの演習に対する補償ということで、地元との相談もまとまり、もうすでに十七億余の支出が行なわれておるのでありますが、ことしの十月からこの演習場を再使用するということになったわけであります。これに対しては、今までの年次計画によってダムの築造等進めておるわけでありますが、現地は、再使用ということを契機にして、これが工事の促進というような問題に対して相当強く要求いたしておることを承知をいたしております。この問題については、新しい再使用の事態もあるものでありますから、防衛庁当局からの予算要求を待ちまして、大蔵省といたしましても、現地に即した処置をいたしたいということで、今折衝いたしておる段階でございます。
  90. 小松幹

    ○小松委員 大臣は、その当時のことや、実際の内面のことはあまり詳しくないと思います。けれども一応予算関係の大臣としてお尋ねしますが、今十七億補償が出ている、こう言われましたけれども、それはほんとうかどうか。私の聞く限りでは十三億だ。しかも大体調達庁の方で一応目通しをしたところの予算、いわゆる被害補償額は総額二十七億を第一次で見ているわけです。その二十七億のうち十三億、今大臣のおっしゃったお答えによれば十七億実際に支出済みということになるわけでありますが、また最近調達庁の方で町村長を集めて、さらに災害等の被害があるならば再申請をせよというので、放置されておったところの被害を再び町村長が集めて参りました。それが二十四億追加されております。合わせると五十一億の総額、一応そのあと追加された二十四億については最近町村長が出したのであって、関係者としては未確定要素があるかもしれませんけれども、大体二十七億というものは一応了承しておる線だと思うのですが、それをわずか十三億、あるいは大臣のおっしゃるように十七億で済まして、また再び米軍を引き入れようとするところに問題があるわけでありますが、この点、今予算策定のときでございましょうが、調達庁の方、あるいは防衛庁の方からどういうような予算折衝をされておるのか、その点のところを詳しく承りたい。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 大分県の日出生台の問題は、昭和二十一年の六月から昭和三十二年十月までの十一年間の問題として、現在までの累計は、農業被害等に対する金銭補償が約二億円、防災ダム建設等に対する補助金その他が約十五億円、十七億と申し上げたわけです。この問題については、厚生大臣の西村英一さんもあなたと同じく大分県選出でございますので、何回かこの間の事情に対しては地元の陳情をいただいたわけであります。また陳情に対して、私の方でも防衛庁に対して、再使用という新しい事実があるのだから、これら地元民の要望に対して一体どういうふうになっているのか、防衛庁側の意見も聞いたり、また大蔵省としてもそれに対応しようというように話し合っておるのでありまして、防衛庁側の要請もありますし、一部予備費の使用ができるのか、また三十八年度予算でどういうふうにするのか、三十七年度の既定予算のワク内でどの程度移流用ができるのかというような問題まで現実問題を取り上げて検討するようにということを事務当局をしてやらしておる状況でございますので、前向きの姿勢でこれを片づけようという考えであることを申し上げておきます。
  92. 小松幹

    ○小松委員 大蔵大臣が前向きの姿勢でこれに補償しようということはわかりますが、さて調達庁なりあるいは防衛庁の方で具体的に本年度予算範囲内でどういう考えを持っておるのか、来年度予算にどういう具体的な案を持って大蔵省と折衝しておるのか、これは抽象論でなくて承りたい。
  93. 山上信重

    ○山上説明員 長官がちょっと労務関係で不在でございますので、私からかわりましてお答え申し上げたいと思います。  防衛庁関係の日出生台に対しまするいろいろな旧時代の補償工事等につきましては、ただいま大蔵大臣から包括的にお話がございましたように、現在までの実施といたしましては、三十六年度までに約十三億四千万円ばかりを支出いたしております。それから本年度の予定といたしまして、本年度に特に繰り上げて実施いたしまする予定分を含めまして三億四千万円、合計いたしまして十七億円ばかりのものを計画いたしておるわけでございます。これらの内容につきましては、いろいろな特損の問題、あるいは防災工事、あるいは農業用水路、あるいはダム等の計画を実施いたしておるのでございます。本年度の分もそれの工事の一部実施というようなものが内容の主たるものになっておるのでございます。われわれの方といたしましては、これだけでもって全部のものが終わったのではなくて、今後、今までの分につきましても、先般御案内のような調査団が参りまして、いろいろ現地について調査いたしておりますが、それらを検討いたしまして、今後の補償工事その他の事務処理をいたして参りたいと存じておる次第でございます。今日の段階におきましては、現在までの調査の結果をさらに十分審査をいたしましてまとめて参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  94. 小松幹

    ○小松委員 本年度三億四千万円出した、それはあなたの方の予算項目ではどこから支出したか、それを承りたい。
  95. 山上信重

    ○山上説明員 予算といたしましては、相当こまかくなっておるのでございますが、提供施設中間補償費、それから特別損失補償費、特別損失防止対策工事費補助金、それから基地周辺特別整備補償事業費等々となっておる次第でございます。
  96. 小松幹

    ○小松委員 施設提供等関連補助金はどのくらい出ましたか。
  97. 山上信重

    ○山上説明員 補助金の特別損失防止対策工事補助金は一億七百万円くらいの予定になっております。
  98. 小松幹

    ○小松委員 そうすると、予算項目で施設提供関連補助金の町村等補助金十分の十というあのワクは、一億三百万の予算しか計上してないのですが、一億三百万の予算計上で一億以上出しておるというのはどうもおかしいと思うのです。予算の項目の中に町村等一〇〇%補助率が総額で一億三百四十四万一千円になっておる。どこか移用したのですか。それから中間施設補助費は何ぼ組みましたか。これは当初予算よりもオーバーした額を大分だけにやってやるのですよ、あなたの言う計算でいけば。
  99. 山上信重

    ○山上説明員 中間補償金は、三十七年度計画では二千五百九十万円ぐらいの予定になっております。
  100. 小松幹

    ○小松委員 それから施設提供関係工事補助金は。——わからないですか。——あとからでいいです。  これは、大臣、当初計画してないのですが、予算はどういうような格好で使っているのですか。これは日出生台の演習場が当初予算には含まれていなかったと思うのです。それを三億何ぼ出したというのは、あっちこっちから拾い集めて出したのか。どういう格好で出しているのか、その辺のところを伺いたい。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 この問題は、どういうふうに移流用しておるのか、つまびらかにはしておりませんが、一億程度は移流用をやっておるようであります。私は、この問題が起きましてから主計局に命じまして、一体今までの問題はどうなっておるのか、それから今年度はどういう状況で、何に幾ら使っておるのか、また地元の要求というものは、それにプラスをしてどういう仕事を要求しておるのか、地元が納得せられるような状態はどういうのかということを調べさしておる状態であります。
  102. 小松幹

    ○小松委員 私がそれを詳しく調べたのは、大体補償費というのも、町村工事補助費に多く使って、直接災害を受けた地元住民の補償というものが軽んぜられておる。町村長や、そういう人たちを納得させる道路補修費とか、あるいは水害対策の費用とかいうものは、割に関連して出しておるけれども、肝心かなめの被害者、農民の被害、あるいは流弾で足をけがしたとか、あるいは不当な発砲によって足を切断したというような個人の被害については、きわめてやっていないわけなんです。いまだにまだ残っておる。そういうことで、どうもその辺の補償のあんばいが、町村長だけ納得させればいいではないかという考えに立っておるのではないかという心配がある。それと、今あなたがおっしゃられなかった来年度予算にどういう折衝をしておるのか。何か抽象論のお答えでしたけれども、もはや予算編成は抽象論ではないと思うのです。三十八年度予算の中に、調達庁として日出生台関係の補償を、過去の補償はどう考えておる、これから先の補償はどう見るというその数字が出ておらなければ……。もはや予算編成は最後のまとめの段階にきておると思うのです。その辺のところ、幾ら補償を予算要求しておるのか、承りたい。
  103. 山上信重

    ○山上説明員 来年度予算につきましては、先ほど失礼いたしましたが、現在のところ、事務的に要求いたしておりますものといたしましては、各種の補償金あるいは工事費等を合計いたしまして約五億円程度のものを要求いたしております。これは防衛施設庁分といたしまして五億円程度のものを要求いたしております。なお、そのほかに農林関係の工事費を入れまして、合計いたしまして、全体で約六億円のものを要求しておるように思っております。
  104. 小松幹

    ○小松委員 来年度予算に、総額六億円を要求しておる。その総額の内訳はどういうようになっておるか、ちょっと承りたい。
  105. 鈴木昇

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  日出生台関係の昭和三十八年度予算要求につきましては、防衛施設庁の関係の分といたしまして約五億でございまして、そのほかに、施設提供等諸費でまかなう、農林省の所管いたします部分が約二億一千万円ばかりございます。  内訳を申し上げますと、施設提供等諸費の中の防衛施設庁関係分は、演習場内の採草、スズタケ等の採取不能によります補償金関係が二千二百万円、それから演習場内の農作物の減収補償でございますが、これが百七十万円、それから演習場の外にございます農地等が、演習場内から流れてくる水などで収穫が減収するというものの補償でございますが、これが五千四百万円、それから災害防止の関係といたしまして、大分川、福万川、笠置川の砂防、堰堤等に二億七千六百万円、それから返還されました道路の工事の補助金が千四百万円でございます。それから漁業補償費が約五百万円、それから演習場の荒廃によりまして飲料水等が飲めなくなるというようなことで、各部落等の簡易水道と申しますか、飲料水の関係を措置するというもの等、基地周辺の特別整備補償費といたしまして一億二千万円、合計いたしまして、先ほど申し上げましたように五億になるわけでございます。このほかに、農林省の関係といたしまして、先ほど申し上げましたように、ダムやら用水路を整備する、これは前年から継続して参っておるものでございますが、二億一千方円、合計いたしまして七億余になるわけでございます。
  106. 小松幹

    ○小松委員 来年度予算要求の内訳は、六億でなくて、七億二千万円ということになるわけですね。
  107. 山上信重

    ○山上説明員 その通りです。
  108. 小松幹

    ○小松委員 漁業補償などを加えておる点から見ると、今度新しく米軍が入ってくることに伴う漁業補償を含めておるが、七億のうちで、過去補償というのは幾らになりますか。過去の損害補償、これから将来の補償というふうに時間的に前後に分けますと、七億をどう分けますか。
  109. 鈴木昇

    ○鈴木説明員 ただいま申し上げました数字のうち、漁業補償を除きましてはほとんど過去の分でございます。過去の演習等の原因で発生した被害の救済措置ということでございます。
  110. 小松幹

    ○小松委員 そうすると、漁業補償五百万円を除いた大部分は、過去の補償に充てて考えておる予算要求だ、こう考えていいですか。
  111. 鈴木昇

    ○鈴木説明員 その通りです。
  112. 小松幹

    ○小松委員 その次に承りますが、実際に二十七億の過去補償を要求されている。今十七億の過去補償があれば、もうあと大体十億が一応査定された補償だと思うのですが、そうなると、七億では、まだ未知な点があるのか、もうこれで打ち切りなのか、わからない点があるから、来年度は補償に載せていないのか、過去補償はこれで打ち切りなのか、その辺をはっきりさせていただきたい。
  113. 鈴木昇

    ○鈴木説明員 打ち切りではございません。今までにわかったととろを集積いたしまして、来年度にはっきりしたものをこれだけ要求する、こういうことであります。
  114. 小松幹

    ○小松委員 上陸地点の漁業補償ですが、ある一定の禁止期間、十日間前後、春秋二期二十日間の漁業補償の問題がありますが、禁止区域を設定いたしまして、その中に相当母艦なりあるいは上陸用舟艇等が入って参りますと、あの関の江地区は相当魚族の繁殖した定着網のところなんですが、それはどういう補償の形をとろうとお考えになっているんですか。直接補償、間接補償、あるいはそのほかの補償の仕方があると思いますが、その辺はどういうように考えておられるか。
  115. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 ただいまお話のありました、上陸に伴って漁業経営上に与えた損失の補償の問題でございますが、これにつきましては、従来当庁としまして一定の要領、基準がございまして、それによって与えた損害と過去の漁業実績を比較して算定しまして、それに対して適正な補償をするということになっております。
  116. 小松幹

    ○小松委員 それに関連してでありますが、地元の意見を聞くという場合に、行政官庁である知事あるいは市町村長の意見は聞いておられるようでもあります。しかし、それは行政官庁であって、地元の漁業組合あるいは区民の意見というものを十二分に聞かなければならないと思いますが、その聞く場合の窓口の単位は、どういう補償にしても、あるいは被害にしても、ただ町村長あるいは知事だけに聞くのか。区民あるいは漁業組合——まあ部落民といえば区民ととってもいいと思います。隣保班まで加えなくてもいいでしょうが、こういう区民の意見というものはどういう形で聞くおつもりか。実際の窓口です。
  117. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 お答えいたします。  一体こういった補償事務の窓口をどういうふうにやるかというお話でございますが、従来やっておりますのは、大体漁業協同組合を単位として事務を進めております関係上、組合単位でその組合員の意向を取りまとめていただいた上で、それを勘案して査定をする、こういうふうにしております。なお、その組合からの申請に対しましては、もちろん地方公共団体の長の意見を付してくるということになっておりますので、この点も考慮の上で処理しております。
  118. 小松幹

    ○小松委員 漁業の場合には漁業組合でいいですが、上陸地点の区民が反対だという意見、あるいはこうしてもらいたい、こういう施設をしてもらいたい、区民の意見としてはこれだけの補償をしてもらいたい、たとえば一番着弾地点の中須部落ではこうしてもらいたいという、いわゆる区民の要求に対してはどういうお取り上げをするつもりか。
  119. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 ただいまのお話は、漁業補償の問題とは直接関係がないように伺いますが、この提供の問題に関しましては、地元の人々からいろいろ要望があるということはよく承知しております。従いまして、その個々の声を大体において地方公共団体の長が反映していただくと申しますか、その意見を通してわれわれはそれに対する対策を考慮するというふうにやっております。
  120. 小松幹

    ○小松委員 知事なり市町村長が、まあやむを得ない、仕方がないから、これだけの道路をつくれば、こうしてもらえたら来ても仕方がないという消極的な賛成を示した場合に、地元の区民が区民大会なり区民の総寄りによって、来ては困る、反対だという決議をした場合には、一体どう処置をなさるおつもりなのか、その辺を承りたい。
  121. 山上信重

    ○山上説明員 ただいま施設対策課長から御説明いたしましたように、地方の公共団体の長を通じていろいろ地元の御意見なり御意向なりを伺った上でやって参る、こういうつもりでおります。従いまして、そういったようないろいろな状態、あるいは区民等の全体の意思かどうであるかというようなことがはっきりいたしました場合は、そういうような御意見も十分参酌して参りたい、こういうように考えております。
  122. 小松幹

    ○小松委員 十分参酌するということは抽象論的にわかりますけれども、具体的にある一つの部落、たとえば中須部落から、自衛隊の着弾地点にあるから、その射撃方向を百八十度転換してもらいたいという要望が出た場合に、それをどういうように皆さん方は承諾しあるいは受けてやれるのか。現に中須部落からは、着弾地点はとても住むことができない、だから今の防衛庁の演習地でも大へん迷惑して、毎日稲刈り時にすわり込みをしたり交渉をしたりしておるが、アメリカがまた実弾演習をすればさらにそのことがひどくなるのですけれども、中須部落の区民の着弾地点を百八十度方向転換をしてもらいたいという要望に対しては、こういう問題は受けて立たないのか、無視していくのかどうか、その辺を承りたい。
  123. 山上信重

    ○山上説明員 射撃の方向なり何なりの問題につきましては、これは自衛隊の演習なり方針なりというものと関連いたしますので、私から軽々にお答えできないかと思いますが、これは、そういったような問題等につきましては、自衛隊の射撃あるいは自衛隊の演習計画、そういったようなものもございますので、自衛隊等と十分分相談して参りたい。百八十度全部変えなければいかぬかどうかというようなことにつきましては、そういった御意見あるいは演習場としての技術的な問題、それから現地の実情、これらいろいろ相談して参らなければならぬかと思っております。
  124. 小松幹

    ○小松委員 御相談はいいですけれども、区民はそういう要望をしておる。自衛隊の演習すらそういう希望を出しておる。ましてアメリカさんの演習においておやです。そうなれば、要求は同じだと思うのです。だから射撃方向を変換するということの区民の総意をどう調達庁なりあるいは防衛庁としては受けて立つのか、これは関の江海岸のいわゆる古市区民の大会でも、上陸地点変更の総意が出ているわけです。上陸地点変更の意向と中須部落の着弾地点を百八十度変えてもらいたいという意見は、区民の切なる総意なんですから、その総意をどう受けて処理していこうとするのか、この点について責任ある答弁を承りたいのでございますが、お答えできませんか。
  125. 山上信重

    ○山上説明員 私どもの方といたしましては、地方の御意向はできるだけ尊重して参りたいと思います。自衛隊となお十分相談して参りたいと思います。
  126. 小松幹

    ○小松委員 地方の意向を尊重するということの具体性ですけれども、責任ある答弁が得られませんから、次回に譲りまして、では大臣に一言最後のくくりとして……。  最近キューバ問題が起こりましたとたんに、この演習は延期という電報が一本舞い込んだわけでありますが、これは国民としてどう解釈したらいいのか。実は演習はことしの十一月、おそくとも十二月の初めには第一回の演習をやる、こういうように言っておったのですが、キューバ問題が起こったとたんに演習を中止するというおふれが出たわけです。その辺の関連、国際情勢との関連は、大臣はかつて沖繩の基地問題で日本の軍備と憲法問題について放言をなさっておりますが、その辺のところの御解釈をどうするか。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  私は財政担当でありますので、補償その他の問題に対して今検討を鋭意進めておるのでありまして、その過程においても、米軍がなぜにやめたのか、また、やめたような通知をどういうふうに出したのか、全然承っておりません。
  128. 小松幹

    ○小松委員 調達庁の方はどう解釈するか。
  129. 山上信重

    ○山上説明員 米軍の内容的なことについては承っておりません。米軍の御都合だと思います。
  130. 小松幹

    ○小松委員 責任のある答弁が得られませんが、私は、最後に、もう時間がありませんが、実は沖繩米軍の演習といってもあるいは軍事基地といっても、キューバのいわゆる軍事情勢というものがぴんぴん、日本の単なる演習問題でも、響いてくるわけなんです。この問題の発展いかんでは、沖繩米軍もくぎづけになるでしょうし、本年度内の演習の第一回の予定ということがおそらく不可能になったのだろう、かように考えますと、日本の軍事基地の提供あるいは演習基地の提供ですらも、国際情勢の緊張の中にあっては考慮されているわけでございますから、私は、こういう問題については、今の世界が平和の方向に向かうのか、緊張の態勢に舞い戻るのかというようなことを考えた場合には、こういう演習基地などというものはありがた迷惑なんです。つくらない方がいいんだ、また、区民も大きな被害を受けて、そういうことの渦中に巻き込まれることをおそれておりますが、この点について調達庁の方はどう考えておるのか。実際こういう問題は、どう国際情勢とにらみ合わせながらこういうことを進めておるのか、これは責任者おりませんけれども、だれかお答え願って、それで私の質問を終わります。だれかお答えできる人があったら一つ。
  131. 山上信重

    ○山上説明員 私からお答えするのは適当でないかと思いまするけれども、われわれといたしましては、今日の日本の政府方針にのっとりまして演習場その他の施設を維持いたしておるのでございまして、今後もこれからの点につきましては、政府方針にのっとって維持管理いたして参りたい。また、国際情勢等の影響につきましては、私ども直接にこれをどうするというふうには参らぬかと思っております。
  132. 塚原俊郎

  133. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、理事会の約束に従いまして、予算補正の問題に限りまして、特にわが党の方針を明らかにしながら、政府の今問題の補正考えておられる最中の考え方を伺いたいと思うのでありますが、時間がなかなか制約されて、ございませんので、まず補正予算の基本的な考え方についてお伺いをし、そのあとで石炭対策等の補正項目の二、三につきまして、具体的に伺いたいと思います。  大蔵大臣にお伺いいたしますが、時間がありませんから、一つ端的にお答えをお願いしたいと思います。  新聞等の伝えるところによりますと、今度の補正をめぐりましてまだどうもあまり方針が明らかにされておらぬようでありまして、従って、大体補正は一次、二次と二回にわたってやるだろうという話ですが、そのような方針ですか。
  134. 田中角榮

    田中国務大臣 補正を一次、二次にわたって行なうような考えを現在持っておりません。臨時国会に対して現在考えておりますのは、人事院の給与勧告の問題、それから今度出されております石炭調査団の答申に基づきまして政府で鋭意作業中でありますから、その問題が結論が出れば、そういう問題を含めて、財政法二十九条の精神にのっとって国会の審議を仰ぐという考えでありまして、その後の第二次補正等は現在のところ考えておりません。
  135. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 二次補正考えておられないというお話でありますが、そうすると、今のお話のような項目を中心に、目下大体どれくらいな規模の第一次補正考えておられますか。
  136. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院の問題は、御承知通り、今地方公共団体の負担の問題がまだ決定をいたしておりませんので、これを早急に結論を出したいという段階でございます。  なお、第二の石炭問題については、先ほど申し上げた通り、鋭意作業中でありまして、これが全貌をつかむ状態になっておりません。
  137. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 全然角度を変えまして、先ほど来、特に午前中の井手委員からの質問に対する大臣の答弁で、現在の経済情勢並びに景気見通し等につきましては、相当深刻なお話し合いがなされております。従いまして、日本の財政経済をあずかっておられる大蔵大臣としては相当な腹があるだろうと思います。まず、先ほどの話から私ども推定をいたしましても、補正財源としてこれからの残された三十七年度財源として使える見込みのある金は、大体どれぐらいあり得るとお考えになりますか。
  138. 田中角榮

    田中国務大臣 税収入を九月の末までの実績で検討いたしますと、大体年度末をもって千億弱と考えております。
  139. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 千億弱の財源は、目下特に金融政策を緩和方向に向けられようとしておる際に、金融政策に対して一つの筋金を入れる意味においても、経済方針を立て直す意味からも、その財源補正として使い得るものであり、使うことが妥当だとお考えになりませんか。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 補正として使い得るものだとは考えておりますが、現在その予定せられる財源を何に使うかは検討中でございます。
  141. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 大体いつごろまでに検討を終えられますか。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 十二月の七日ないし八日に臨時国会が開かれる予定と承っておりますので、十一月の末ぐらいまでには財源見通しをつけたり、また、先ほど申し上げたような石炭の問題、人事院の問題、その他補正要因となるべきものの実態を詰めてきめたいというふうに考えております。
  143. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 目下検討中である段階に立ちまして、次の歳出補正項目として考えておられる問題を逐次申し上げますから、考えておられるかおられないか、お答えを願いたいと思います。  言うまでもなく、第一は石炭対策費、第二番目は同じく石炭関係の離職者対策費、それから言うまでもないことでありますが、三番目に公務員の給与改定費、四番目に米価や一般物価値上げに伴う生活保護基準の改定及び日雇い登録労務者の給与の引き上げ、五番目に高校建設のための追加費用、六番目に海運、非鉄金属、中小企業関係の財政支出など、大体六項目については検討されておりますか。
  144. 田中角榮

    田中国務大臣 第一、第二の石炭の問題は、臨時国会が開かれるという一つの要因に石炭問題対策というのがあったのでありますから、できるだけ早く、結論を得次第に、当然第一、第二の問題は、補正の必要な事態においてはこれを盛るべし、こういうふうに考えております。第三の問題については、先ほど申し上げた通り、地方負担の問題がございますが、当然一般会計、特別会計等がございますから、これらは補正予算に計上すべきであります。第四点以下に対しては、補正に盛るような状態になるかどうかさだかでありません。ただ、四点目の米価引き上げに対しての起こり得る低所得者の問題については、十二月の一日から消費者米価引き上げと同時に、二・一七%でありますか、引き上げようということを厚生省告示でやろうということにいたしておりますので、これが必要な財源は三億程度だと思いますが、これらの問題を補正に計上しなければならないのか、現在の使用残でまかなえるのか、その他の問題に対しては、現在事務当局をして検討せしめておる段階でございます。
  145. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 事務の作業の内容と離れまして、基本的には大蔵大臣は——最初の問題に戻りますけれども、現在の経済状態並びに鉱工業生産下降から、特に在庫品の増加傾向、さらにまた、来年の秋ごろまでに景気回復する見込みがこのままではなかなか立ちそうにないこと、この辺を前提として今御承知のような公定歩合の引き下げの問題であるとか、買いオペの問題であるとかという金融緩和の方策をとられつつありますけれども、そういう政策とともに補正予算考える際には当然考えられなければならぬのは、大体一千億程度財源があるとするならば、これを最も筋道を立てて、そして適切なる予算補正の中に織り込むべきだ。要望は御承知のように五、六項目より以上も各省から出ているはずでありますから、この内容の必要性という問題もありましょうけれども、大体必要なものばかりが出てきつつあると思いますが、問題は財政経済政策で、それを財源措置でのみ込むかのみ込まないかという腹だろうと思います。私どもは現在の経済状態から見ますと、大体一千億程度財源があるとすれば——先ほどは第二次補正は行なわれないという方針のようでありますが、どうもその作業が進まないので、先のことは答えられないというくらいの状態にしかほんとうは受け取れないのであります。第一次、第二次の問題を含めまして、年度補正として一千億程度財源で、今ずらっと羅列されており、各省から要求の出ている問題は、その財源の範囲内で消化をして、そして現在の経済状態に対処すべきであると私は考えるのでありますけれども、基本的な大蔵大臣の腹の中をお聞かせいただきたいと思います。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど井手委員の御質問にもお答えをしました通り、健全財政基調をあくまでも貫きながら、しかし、今年度下期の経済状態、来年度昭和三十八年度経済見通し等について現在慎重に実情を検討いたしておりまして、これに対しててこ入れを必要とするような問題がもしありとすれば、随時適切なる処置をとって国内均衡をはかって参りますということを申し上げておるわけであります。しかも、この国内均衡をはかるという問題は、五月の内閣統一見解にも明らかに公表しておるものでありますので、その線に沿って適切なる手段を尽くして参るということでございます。それが三十七年度補正項目として取り上げ、一般財政のワクの中で処置すべき事項が生まれるかどうかという問題は、なお検討に待たなければならないわけであります。先ほどから申し上げておる通り財政金融、それから財政投融資、経済政策その他を総合的に調和を保って調整をはかって参るということを申し上げております過程において、現在直ちにこれら諸条項を三十七年度補正に組むというふうに言い切れない段階であるということだけは御了解を願えると思うわけであります。
  147. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がありませんので、先に進みたいと思いますが、最後に特に希望を申し上げておきたいと思います。  大体、われわれが目下の情勢政府のやり方を検討して参りますと、いろいろ考えました中で、今度の補正に織り込まれる分は、三百億をこすか四百億に満たないかという程度のものではなかろうかというふうにわれわれは推定をしますし、さらにまた、多分二次補正は必要ではないかと思いますが、しかしながら、政府の作業の過程におきましては、二次補正の問題については、なお完全に五里霧中の状況のような印象を受けるわけであります。現下の経済情勢から見ますと、この状態は、むしろ政府の怠慢として責めらるべきものであり、特に政策の混迷として私どもは相当強く追及せざるを得ない気持がするわけであります。格別に最近における公定歩合の引き下げだとか、買いオペ措置だとか、その他の単なる一時的の株価対策に終始するようなせつな的な対策でもってうろうろされたのでは、とてもやり切れない状態のように私ども考えるわけであります。どうか予算補正考えられるにあたりまして、当然にほんとうは——おそらく三十八年度の本予算方針が、つまり中性的なものであるか、積極的なものであるか、その方針が出しにくいがために、補正予算の面にもこんがらがって現在のような混迷を来たしておるのではないかと思いまするが、すみやかに政府は現在の情勢をはっきりと見きわめられまして、そして的確な方針を立てられるように希望いたします。私どもとしましては、繰り返すようでありますが、大体九百億から一千億程度補正をして、財源も可能であるし、経済状態その他から見て、それらの補正は必要であるという方針で臨んでおりまするので、御了承おきを願いたいと思います。  次に、具体的な問題に入りまして、まず通産大臣に、今度の臨時国会の一番中心の問題でありますところの石炭対策につきましてお伺いをいたしたいと思います。これも時間がありませんから、根本に入っていくわけにもいきませんので、まず臨時国会対策としての基本的な考え方について、私どもの考えを率直に述べて、御意見を承りたい。  第一の問題は、離職者対策に対しては、今いろいろな関係で法上の不備もあると思いまするので、従って、制度として臨時国会で法制的に大きな改正をすべきではないかと思うが、その方針はあるかないか。第二に、現在の石炭鉱業審議会を臨時国会中にでも拡大強化をしまして、直ちに基本計画と年次計画の作成の作業に入られるべきではなかろうか。そして第三番目に、基本計画が策定されるまでの期間をほっぽらかしておくのではなくて、政府は調査団の答申があるのでありますから、その調査団の答申に即して、従来の石炭政策の強化を暫定的にでも実施すべき体制を強化さるべきではあるまいか。この意味からしましても、この臨時国会におきまして、短期の臨時措置としても石炭産業臨時措置法ともいうべきものを私どもは策定すべきである、こう考えております。この基本的な三点について、法制上の措置、並びに審議会の答申を待っておる間になお基本計画並びに年次計画の作成の作業を促進する措置をとらるべきこと、並びに最後の石炭の臨時措置法ともいうべきものを制定すべきであるという考え方についての方針を承りたいと思います。  さらにまたあわせまして、現在の問題でありますところの補正予算の関連におきまして、新聞等の伝えるところによりますと、その関係の費用として、一般会計の六十億とそれから財政投融資六十億を要求されておるようでありますけれども、そしておそらくこの考え方は、一−三月の経費としてお考えになっておるのであろうし、大蔵省もそういう方針を強く要望しておるのであろうかと思いますが、このような石炭対策の根本的な問題というのは、事実上このような費用は、言うなれば事業費、事業投資の性格を持ったものであります。従って、私は、一−三月に限った必要額の計上という考えから少しはみ出して、いわゆる繰り越し明許費の制度をはっきりと考えながら大幅に計上して、長期的な展望に立った積極策を予算措置に盛らるべきだと思いますけれども、方針をお伺いいたしたい。  それからあわせて、労働大臣に、同じような観点でありますが、今度の離職者対策の費用といたしまして六十億程度補正を要求されておるようでありますけれども、これの現在の状況伺いますと同時に、この補正に対する離職者対策考え方と来年度予算に対する考え方の基本をお伺いいたしたいと思います。
  148. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えを申し上げます。  石炭対策の問題につきましては、ただいま調査団の報告も出ておりまして、これに基づいて内閣といたしましては石炭対策関係閣僚会議もつくりまして、今せっかくこれに対する措置を処理いたしておる段階でございます。そこで、その中において予算の問題あるいは法律の問題等いろいろございますが、こういう問題もあわせて今研究をいたしておる次第でございまして、まず質問の第一点でありまする、離職者に関する何か法律を今度の臨時国会に出す方針であるかどうかというお話でありますが、この問題についても、これは基本の問題と関連をいたしましてただいませっかく研究をしておるところでございます。  それから補正予算を組む場合において、単に来年の一−三月の分だけではなくて、もっと長期の見通しに立った予算の組み方をしなければ、実際の運営に支障を来たす、また石炭対策として適切な方法にならないじゃないかという御質問かと思うのでありますが、これはごもっともな御意見でございまして、私たちとしては、少なくとも明年度予算の分までも含めて一応考えをまとめつつある段階でありますけれども、しかし、明年のみならず、ずっと今後長い間にわたってどういうふうな措置をとっていくかという計画についても、十分一つ研究をしながら、そうして大体の構想の上に立っての補正予算というものであるべきかと考えて、研究をしておるのでございます。  なお、この際に石炭に関する臨時措置法のようなものをつくってはどうか、こういうようなお話でありますが、これも必要がございますればもちろんつくらなければいけませんので、そういうことについて、全般の問題についてただいまいろいろと事務当局の間においても研究をいたさせておりまして、大体総理が帰ってこられる前後を期して方針を決定いたしたい、かように考えておる次第であります。
  149. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 石炭鉱業における離職者対策でございますが、雇用の安定を確保いたしますためには、従来の対策を一段と強化いたしますとともに、新しく抜本的な対策を早急に実施する必要がある、かように考えまして、これに要する財源について補正予算を要求いたしておるわけでございます。  その内容は、おおむね石炭鉱業調査団の答申の大綱に従ったものでございますが、第一には、石炭鉱業の合理化を進める進め方と雇用対策の計画とが歩調を合わせますように、十分に連携をとってやっていきたいと思っております。  第二には、離職者に対しまして、政府は安定した転換職場をできるだけつくり出すという努力をいたしますと同時に、政府関係機関への率先採用及び政府関係事業、政府関係融資による雇用増、離職者の吸収ということをやりたいと思っております。  第三には、今後の離職者対策といたしましては、特に合理化による離職者に焦点を合わせまして進めていくつもりでございますが、このためには、新たにこれら離職者を対象といたしました求職手帳制度を設け、手帳交付者に対する集中的な職業訓練、職業紹介を行なうほか、求職中の生活の維持についても万全を期するようにいたしまするし、また、他の地域への移転就職についても、これをより容易にするために、大量の住宅を建設したいというようなことを内容といたしておるわけでございます。そして今年度と来年度を通じまして計画を進めたいと思うのでございますが、一応今年一−三月の分を補正予算として要求し、来年度の分は来年度予算を要求いたしておりまして、その間の仕事につきましては、できるだけ一貫性を保ち、また連携を保つようにいたしたいと存じております。
  150. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 石炭対策の問題は、離職者の問題を含めまして、おそらく次の臨時国会の最大の問題になろうかと思います。従って、問題は非常に深刻でありますが、本日は時間がございませんので、一つこの次に十分承らしていただきたいと思います。あと、時間がありませんから、私は問題点だけを羅列をいたしまして、時間のあります限りの御答弁をいただきたいと思います。  第一に、中小企業の年末金融の問題につきまして、政府は、十月二十六日の閣議でありましたか、中小企業金融公庫や国民公庫、商工中金等に約二百五十億円、それから市中銀行に対する買いオペ百五十億円、合わせて四百億円程度の金額を決定したように伝えられておりますが、そのような方針であるかどうか。そのような方針であった場合に、この中の買いオペの百五十億というのは、実際は本年六月の買いオペ分を引き上げる、その穴を埋めるだけの結果になるわけでありますから、従って貸付ワクの増加にはならないのではないかと考えられるわけであります。従いまして、それらの問題はなお微妙でありますが、大体年末の金融対策としてはその程度のものを考えられておるのであろうか。もしそうであるとするならば、現状に対しましてははなはだ不足するものであって、これは一つ一段とお考えを願いたい。特に目下長期資金が必要な状態であろうと思われますので、この辺も十分考慮された方針補正段階で織り込まれたい、こう思います。  さらに、今度は第二番目に、先ほど長谷川委員から御質問のありましたところの生活保護基準の引き上げの問題につきまして、厚生大臣がお見えでないようでありますので、渡海次官、もしできたらお答えを願いたいと思いますが、先ほどの長谷川さんの質問に対する御答弁では、大体米価の値上げに見合うようなものは今度の補正でまかないたい、こういう方針に承ったと思います。そして先ほど大蔵大臣の話によりますと、大体そのための生活保護基準の引き上げをまあ二・一%程度という話が出ておるのだという程度に伺ったのでありますが、現在そのようなものであるかどうか。しかしながら、基本的には生活保護基準の引き上げという問題が単なる米価の引き上げに見合うだけの内容のものでは、これははなはだ不満足な内容を持つものであって、本格的な生活保護の内容そのものを引き上げるという考慮が必要なはずである。従いまして、厚生省におきましては、漏れ承りますと、来年度予算の要求としては、生活保護基準を二一・三五%引き上げの要求を出しておられるとか。もしそのような方針があるとするならば、この問題は、当然に二・一%引き上げた上に、さらにそれに増加さるべき内容のものだと私どもは承知をせざるを得ないのでありまして、そういう内容になってこそ初めて本格的な生活保護基準の引き上げの内容に相当するものだと思いますが、そういう方針で進まれるのかどうか。そうしてまた、二一・三五%の要求の根拠がありましたならば、お示しをいただきたい。  なお、もう一つ、先ほど高田さんの御質問の中で、農林大臣がお答えになっておりましたところの消費者米価の値上げの問題というのは、これもほんとうにわが党もあげて高田さんの御意見に全面的に賛成でありますことを、農林大臣おられぬようでありますが、一つぜひ御了承を願いたい。この際こそはまさに本格的に食管制度そのものを改正しなければならぬ段階に来ておると考えられる。格別に、農業収入の半分以上が供米代金の収入であるという現状から見るならば、生産者米価は、再生産費用と農家所得を保障する額がこれによって償われなければならないのはあたりまえのことでありまして、会計上の会計技術の立場から、一般会計からの食管会計への繰り入れを単なる赤字補てんという意味に見るのは、ほんとうは妥当ではないのでありまして、私どもは、そのような内容のものは、むしろあくまでも主要な農業政策費の内容を持つものと見て、会計技術上の問題とこんがらがらないように一つ処置を願いたい。これはおそらく今度の三十八年度予算にもわたっての重大問題となろうと思いますが、高田さんの御意見に全面的に賛成をいたしながら、政府に警告をいたしておきたいと思います。  時間もなさそうでありますが、最後にもう一つ、長谷川さんの質問にお答えになった文部大臣方針についてでありますが、相当明確に、正月の線をくずさずに、高校増設のための進学率を見て、今度の補正に盛りたいという方針であり、同時にまた、その中には単価並びに構造比率の問題も入れるという方針であったように承ります。しかし、そのような方針であるとするならば、今ちらちらしておるような金額ではこれは決して目的に沿い得るものではないことは、むしろ文部大臣の方がよく御承知のことだろうと思います。  従って、私はつけ加えることをいたしませんが、一口だけつけ加えることを許していただきますならば、池田総理大臣は人づくりの問題を今金看板のように掲げられ、同時にまた、文部大臣もおそらくその方針でこの問題に取り組まれようとしておるのだと思います。もし人づくりの問題が、観念的、精神的な単なる人間の鋳型を皆さん方がお考えになって、その鋳型の中に人間をはめ込めようというお考えであるならば、これこそ全くひどい問題の提示になるだけだと思います。私どもは、人づくりを考えられるならば、まず人をつくる入れ物を基本的に充実させることを必要とする。一番先に、これは文部大臣自身がよく御承知のように、私ども自身が子供を学校に預けようとした場合に、その学校の先生方が、実際は夏休みであるとかあるいはその他の場合でも、どこかの講習会で費用をとってこなければならぬとか、あるいはまた夜学に出てかせがなければならぬとか、あるいはよその子供を預かって家庭教師でその内容を償わなければならぬとか、預けた子供に専念でき得るような生活根拠を与えずに、その人に本格的に自分の子供が預けられる状態であるかどうか。私は、人づくりの問題の第一の基本に、この先生方の基本的な待遇改善の問題について本格的な取り組み方をしていただきたい。  第二番目には、今ここで問題が出ておるように、子供を預けて入れるところは学校であり、勉強するところは学校でありますから、先ほどお話によりますと、三十六年度も収容し得ておるというお話でありますが、これはすし詰めにすれば何ぼでも収容し得るわけであります。しかしながら、条件は決してそのような状態ではありませんので、人づくりの問題の第二の条件としては、あくまでも校舎の問題や研究施設等の、そのような設備の充実の問題と本気に取り組んでいただきたい。  そして最後に、人づくりの問題の第三番目としては、今は学校に入るのも金、就職するのも金。本来最も人をつくらなければならないもとであるところが金で買われなければならぬような現状であることは、文部大臣も御承知のはずであります。従って、貧乏人が学校に行けずに、金持ちだけが学校に行けて就職できるような状態にしておいて、青少年の教育問題であるとか、あるいは人づくりの問題なんぞを云えされることの方が、ほんとうはおかしいと思う。もし本格的に人づくりの問題をお考えになるならば、まず先生方の待遇改善の問題、施設の充実の問題、貧乏人も能力があるならば大手を振って学校に入れる状態をつくられることこそが、本格的な人づくりの基礎であろうかと思うわけであります。一つ十分に検討して、今度の補正予算並びに三十八年度予算に盛り込まれる現実の政策として取り組まれんことを特に希望いたします。
  151. 塚原俊郎

  152. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は、災害関係についてお尋ねをいたしたいと思います。  本年は、幸いに全国的に見ますと災害が少なかった。しかし、九州の一部、北海道においては集中激甚災害があったわけであります。従って、大蔵大臣の腹組みからいえば、災害引き当て予算心組みの額からいえば、非常に少額で済む。従って、部分的に起こった災害に対しては、手厚く行き届く対策が行なわれるのではないかということが期待されるわけであります。  そこで、大蔵大臣にお伺いいたしますが、予備費から流用いたして立てて参りました災害対策、これは今までにどのくらいであるのか、また、来たるべき臨時国会までの間にどのように予備費から支出を予定しておられるのか、これが一つ。  それから、来たるべき臨時国会に対して、現地の調査その他いろいろおやりでありましょうが、そういう実情に基づいてどのくらいの総ワク、あるいはもっと中身がわかりますならば、公共災害に対してどのくらい、農業災害に対してどのくらい、被災者に対する生活関係においてどのくらいというふうに、大ワクでけっこうでありますが、そういう腹づもりはどのくらいのワクで考えておられるか、こういうことを伺いたいと思うわけです。
  153. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  公共土木災害は、本年度はないないと言われておりながら、八百六十億くらいあるわけであります。その中で、北海道は百七十二億というところであります。御承知通り、当該年災につきましては、三、五、二の比率で三年間で行なうことになっておりますが、現在まで予備費で出しましたのは六十億くらいではないかと思いますが、この数字に対しては、あとから事務当局をしてお答えをいたさせます。  それから農業災害につきましては、十一月の一日に天災融資法の発動をいたしまして、融資総額は三十八億、北海道分二十三億円というような状態でございます。現在これらの問題に対しては査定を続けておりますので、査定の済み次第、できる限り予備費をもって早急に支出をいたして復旧に当たらせたい、こういうふうに考えておるわけでございます。今年のように、全国的な大災害がなかった場合には、過年災等があるのでありますから、こういう問題や、それから災害助成の問題、改良復旧等を含めた問題等に対しても、できる限り復旧を進めるという体制で参っておるわけでございます。
  154. 永井勝次郎

    ○永井委員 第二点の臨時国会に対する予算措置、計画……。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 八百六十億でありますから、三、五、二の三、二百七十億ということになりますと、足らないわけでありますが、これが現在査定中でありまして、不足であれば補正予算に計上する、こういうことになるわけで  ございます。
  156. 石野信一

    石野説明員 先ほど数字、大体大臣のおっしゃった通りでありますが、今まで公共土木施設の災害で予備費を支出いたしました分が五十大億、さっき大体六十億とおっしゃった数字であります。予備費はなお百二十八億残っております。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 臨時国会等でどういうふうに災害の経費を組むかということにつきましては、これは本年度の災害、ただいまの大臣お話は被害額でございますから、国費として要る額はそう大きくならないわけでございます。従いまして、予備費でまかなえるかと思いますけれども、過年災の関係等も全体の補正予算の編成方針というもので検討いたして参りまして決定いたしたいと存じますので、ただいまのところ、どの程度組みますか、申し上げられる段階にございません。御了承いただきたいと思います。
  157. 永井勝次郎

    ○永井委員 当面の対策としては、予備費流用で間に合うと思います。臨時国会に臨む対策としましては、その前提になるのは、激甚災害の指定が行なわれるかどうかということで国費負担が相当動いてきますし、それからその地域におけるこれからの対策の方向が大きく変わってこようと思います。そこで、激甚災害に対して現在どのような状態にあるか。激甚災害については、先般の国会でこれが立法化されたわけでありますが、御承知通り、これには三十幾つの政令が出されませんと、具体的な実施はなかなか困難であろう、こう思う。これは防災会議にかけまして実施に移されることになるわけでありましょうが、予算の前提となりますこの激甚災害に対する指定、指定の前提となります政令、中央防災会議の審議状況、こういうものが今日確定しませんと実施にならぬと思うのでありますが、これはどのような状態になっているか、お尋ねいたします。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 激甚災害の指定基準につきましては、各省間で今話を詰めておる状況であります。大蔵省が特にこの査定をきびしくしようなどという考えは毛頭持っていませんで、大いに前向きの姿勢でやりたい、こういうことでございますから、暫時お待ちいただきますれば、これが各省の意見をまとめ得る段階でございます。
  159. 永井勝次郎

    ○永井委員 この法律は、大臣も防災会議のメンバーでありますから御存じだと思いますが、本年の四月一日から実施することになっております。災害はもう数カ月前に起こって、臨時国会はあと一カ月弱よりないというとの段階において、まだこの政令ができていない、激甚災害に対する指定基準がきまっておらない、こういう事務的な運びの中で、一体現地が——北海道などはもう寒さの中にふるえながら、この指定がされるかどうか、政府の手厚い救済の手を待っておるわけであります。私は、その点においてずいぶん怠慢ではないか、こう思うわけであります。これは大蔵大臣だけの問題ではないわけでありますから、各省間で何だかんだといって小田原評議をしていましたら、本年度内に政令指定なんかできないのではないか、政令が出ないのではないか、こう思うのですが、来たるべき臨時国会における予算査定に間に合うように政令が実施されるのかどうか。これは御承知のように、従来あった特例法その他をまとめましてこれにしたわけでありますから、少なくもその指定基準はそれから前進するということはあっても、これはあたりまえだと思うのですが、いやしくも後退のそしりがあってはならぬと思うのですが、その指定基準の姿勢について、大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。それから政令はいつごろまでに出すのか、それを伺います。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知通り、既応の災害特例法の基準によって考えておりますので、これよりも後退するような考え方は持っておりません。政令基準については、早急に決定をして御趣旨に沿いたい、こういうふうに考えております。
  161. 永井勝次郎

    ○永井委員 これは、いろいろ伺うところによりますと、各省からいろいろなものを持っていく、大蔵省が一番きびしくて、ばっつばっつと削る、そういうことで、激甚災害としての見せものにしている、看板にしていて、実際に指定に該当するような条件は、ばっつばっつと切り捨てる、なるたけ金を使わないようにするというようなことがもっぱら伝わっておるわけであります。そういうことがあるのかないのか。政令がこんなにおくれているのは、一体問題はどこにあるのか、これを明確にしていただきたい。
  162. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、過去の災害特例法の基準をもってしておりますから、大蔵省がそれよりも過酷な基準を適用しようなどという考えは、ごうまつも持っておらないことを明らかにいたしておきます。おくれると、すべてが大蔵省大蔵省ということになるようでありますが、そういうことはございませんし、先ほども申し上げました通り、前向きの姿勢で、しかも被災者の実情に対して十分実情を注視をしながら、可及的すみやかに復旧の実を上げたいという姿勢であるということを明らかにして、御了解を賜りたいと思います。
  163. 永井勝次郎

    ○永井委員 農林省は見えておりますか。
  164. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 官房長が来ております。
  165. 永井勝次郎

    ○永井委員 大体本年の災害の実情については、大蔵大臣承知であろうと思いますが、政令が出なくても、大体の大よその見当で、九州及び北海道の本年の災害は激甚災害の指定を受けられる実情にあるかどうか。大よその見当でいいですが、指定するおつもりであるかどうか、承っておきたい。
  166. 田中角榮

    田中国務大臣 あまりこまかいものでありますから、事務当局をして答弁させます。
  167. 石野信一

    石野説明員 先ほどお話がございますように、要するにその指定の基準を今各省間で検討しておるわけでございます。従いまして、その基準がきまりませんと、どれが入るかということはきまらぬわけでございますから、ただいま、北海道が入るかどうかということはお答えできないわけです。
  168. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうしますと、まだ政令が出ない、基準をごたごたやっておるという。臨時国会は、一カ月あとに控えておる。そこで問題になるのは、国民経済に著しい影響という抽象的な言葉で表現されている、それをどう具体的に基準をきめるかというのが問題だと思うのですが、大体今までの各省折衝の間で、そういう基準が煮詰まってきていると思うのです。そういうことからいえば、現地の実情も把握しているのですから、大体こんなに幅があるのならなんですが、大体このぐらいのところに幅がきていれば、これでこの基準に入るかどうかという見当はつくと思うのですが、重ねて局長に、その審議過程の指定基準から見て、入るか入らないかという見当を伺っておきたいと思います。
  169. 石野信一

    石野説明員 ただいまその基準を、過去の五年間でとるか、十年間でとるかというような点で、各省間で相談をいたしておるわけでございますが、またその逆に、どれを入れるためにどういう基準をきめるかというような考え方になりましても、弊害もございまして、とにかく基準をきめるのが先だと思います。従いまして、今の段階でどれが入るか入らないかという見当を申し上げるのは、差し控えさせていただきたいと思います。
  170. 永井勝次郎

    ○永井委員 もっとお尋ねしたいのですが、時間がございませんが、三十幾つの政令をこれから出さなければ、これは曠職のそしりは免れないと思います。一つがんばってやっていただきたい。  それから、従来やってきたよりうんと後退するような形でこの基準をきめるということになりますれば、あらためて次の国会で、ここで相まみえて、大蔵大臣がずっと前向きでやるのだということについて重ねて責任を追及しますから、その方面は特に熱心な大蔵大臣でありますから、財布のひもを握ったとたんに人間が変わるようなことのないように期待しておきたいと思います。重ねて御答弁があれば承ります。
  171. 田中角榮

    田中国務大臣 各省別の意見の中にも、基準に対してはあまり異論が大きく差がないようであります。ただ具体的な地域指定という問題に対して、まだ時間的に幾らかの余裕がほしいといわれておりますが、永井さんただいまの御発言もありましたので、今月一ぱいにはすべてを決定する、それよりもできるだけ繰り上げてやるように事務当局を督励いたします。ことし災害がなかったのであり、特に被災地が低開発地の北海道と九州でありますから、そういう問題に十分注意をして、うしろ向きに指定をしないようにいたします。
  172. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいまの大蔵大臣の答弁に期待と希望をかけまして、臨時国会の予算案を見守りたいと思います。  次に農林省に伺いますが、北海道における本年災害のために、非常な窮状にあるわけであります。時間がありませんから、私はいろいろ申し上げたいこともありますが、九号、十号による災害と、それから長雨湿潤という気象による災害と、こういうものが二つ加わっておるわけであります。ところが降雨量というもので気象庁のなにを見ますと、そう大したことはないようです。しかし、私はことに気象庁の統計を持ってきておるのですが、九月の上旬、中旬、下旬というようにずっと拾ってみますと、八月の初めごろから旬計いたしまして、一旬のうちに天気であった日は一日あるいは二日で、多いか少ないか、ほとんど雨の降らない日がない、こういうような実情にずっとなっています。ですから、単に降雨量というトータルだけでこれを決定はできない、そういう点も見なければいかぬ。それから収穫量におきましては、畑作関係などは、たとえばバレイショなどは一〇一%の収穫だ、平年作より一%多い、こういう数字の結果が出ている。そして統計調査事務所に聞きますと、ことしは非常にひどいのだという。現地ではひどいのだということを認めながら、統計の作業の数字の中では、一〇一%というように平年よりも多いという数字が出ておるのであります。聞きますと、過去五カ年を分母として、ことしの収穫を割るのでありますから、この過去五カ年の間には、二カ年間非常な凶作があります。そういう小さな分母で割るものですから、ことしのこのような災害が、一〇一%というような平年より多いという数字になって現われてくる。これは、やはり作業における適正な基準であるかどうかということが問題でありますし、機械的な数字では、現地の実情というものは把握できない。そういう数字に現われたものと現地の実情とが、そういうふうに食い違うという場合は、どっちに農林省が基礎を置いてやるかといえば、現地の実情に基礎を置くべきが正しい。数字だけに基礎を置くというような間違いを犯さないように警告しておきたいと思うのでありますが、そういう前提に立ちまして、ことしの農業災害に対する飼料作物に対する補助、水稲の種に対する補助、畑作物に対するいろいろな補助、これはあるもののは三分の一、あるものは二分の一と、それぞれ違いますけれども、こういった関係について、現地の要望がどのように入れられるのか、これに対する所見を伺いたいと思います。
  173. 林田悠起夫

    ○林田説明員 私から概括的にお答え申し上げますと、えさの問題につきましては、先生おっしゃいましたように、本年度は飼料作物が非常に不作でございまして、そういうふうな関係から、まず天災融資法におきまして、えさを買い得るところの資金を供給するということを一つすでに実施をいたしておるわけでございます。そのほかに、飼料作物の再播州種子の購入費につきまして、現在予算を要求中でございます。それから農産物関係に対しましては、まず農薬を散布いたしまして、被害を未然に防ぐというようなことをやっておりますので、これに対する農薬の散布の費用、それから稲とか、あるいはバレイショ、雑穀等の種子の費用につきまして、予算を要求しておるような次第でございます。
  174. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に篠田自治大臣にお尋ねします。  現地の事情については、私から申し上げるまでもなく、大臣はよく御存じだと思います。このように非常な災害を受けたその公共団体としては、税の減免をしなければならぬ、その反面、いろいろな救済事業をやらなければいかぬ、財政需要がふくれていく、一方は収入を減免し、一方は支出をふやしていかなければならぬ、こういう実情にありますので、市町村の財政、道の財政というものは非常に困窮してきておるわけであります。そこで、ことしのような年こそ、特別交付税の調整において十分現地の実情が吸い上げられ、それに対して適切な対策が立てられるということが望ましいわけでありますが、これらの特別交付税の調整に対してどのようなお考えがあり、どの程度の措置が今後期待できるのか、これらについて伺いたいと思うのであります。昨年度における特別交付税の配賦額が、北海道の場合、道が七億三千万円市町村が九億二千七百万円、このくらいの程度でありましたが、ことしは少なくも四倍か五倍くらいの金額が見積られてもいいのではないか、こう思うのでありますが、自治大臣の手元におけるこれらの作業の実情を伺いたいと思います。
  175. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 九号、十号台風、並びに長雨による災害等につきましての被害、あるいはそれに伴う市町村の税の減免、あるいは救済事業によるいろいろな支出、こういう問題につきましては、御承知通り、私もあなたと同じように一番心配しておるのです。幸いに自治大臣の職にありますから、あなたが御心配されるようなことは一切しません。必ず前年度に増して心配のないようにやります。ただしかし、その数字につきましては、何ぼ出すかというようなこと、また何ぼ考えておるかというようなことにつきましては、昨年の数字は持っておりますけれども、ことしは、少なくも事務当局が出す案よりは、私の方がもっと考えておりますから、どうか一つ御安心願いたいと思います。
  176. 永井勝次郎

    ○永井委員 気前がよさそうでありますし、またその気前に期待しても、十分なエネルギーを持っておると思いますから、よけいなことは申しません。その努力に期待をいたします。  次は林野庁長官、北海道における累年の災害というものは、やはり多年にわたる乱伐の結果だと思いますし、それからまた、そういう山地の荒廃に対して、十分の手当ができないという結果だろうと思うのです。先般も道南の方で、バスが山くずれによってああいう悲劇を起こしたというのも、これはそういう場所に起こったから、社会的な注目を引いたのでありますが、そういう事例はもう各地にあると思うのです。その事柄は、数字によっても明らかでありまして、昭和三十五年四月から始まりました治山十カ年計画、その後における民林関係の災害復旧の達成率を見ますと、二九・八%です。約三割よりこれが手当できていない、七〇%は災害復旧ができないで、そのままほったらかしておる、傷はどんどん大きくなっていくという実情は、これだけの数字でも明らかだろう、こう思うのでありますが、治山に関してどのような今後措置をとられるのか、そしてこのアンバランスをどう埋めていくのか、その関係を伺いたいと思います。
  177. 吉村清英

    ○吉村説明員 お答えいたします。  北海道の災害に対します治山の問題でございますが、北海道は、従来気候その他によりまして、また地形の関係もございまして、災害が比較的少なかったかと存じます。ここ数年非常な災害を受けておられるわけでございますが、私どもも、治山事業につきましては、極力早期に復元と申しますか、対策を講じなければならないということで努力をいたしておるところでございます。それで、一般の崩壊の復旧につきましては、激甚地におきまして四カ年ということにしております。三十六年度には、特に北海道はひどい災害を受けたわけでございますが、この災害を合わせまして、逐次完全な復旧をいたしますように、年次の計画をいたしまして実行をいたしておるわけでございまして、逐次、崩壊地が増大することのないように工事も進めますし、また伐採の面につきましても、かような情勢下に北海道が置かれるというような事態に対しましては、十分経営案等も検討いたしまして、その被害が最小限度に食いとめられますよう、特に予防治山に力を入れたいというように考えておる次第でございます。
  178. 永井勝次郎

    ○永井委員 今長官から、予防治山に力を入れる、前向きで問題を処理しようという意欲に対しては、敬意を表するものでありますが、実際は、予算の裏打ちは思うようになかなかいっておらない。北海道は、治山については歴史が新しい、それから地域が非常に広大である、それから奥地の開発というようなことがすさまじくどんどん運んでいく、また河川流域の開発状況がどんどん変わっていく、こういうふうに大きく諸条件が変わっていくのに、治山の方がそれに伴わないというアンバランスが、累年の災害になっておると思うのでありまして、この点は、特に今後力を入れていただきたいと思うのであります。  建設大臣はおられますか——これは、しかし事務当局や何かではできないことだ。いわゆる実力大臣として、何でも、昼工事をやらないで夜やれ、それから、ここを何月までにやれというような、そういう力を持っておるという大臣に私は質問したいと思ったんですが、事務当局から一つ伝えてもらいたいと思います。  ことし北海道における災害というものを検討いたしますと、やはり河川関係の不十分な措置というものが特に目立ってきておる。最近の北海道における累年の災害というものは、治山の関係、治水の関係、こういうところに原因があると思うのです。たとえば北海道の幹川である石狩川、これが、明治四十三年から着工しているんですね。そうして今日まで五十四年間、五十四年間この工事をやって、そうして工事の完成度はどのくらいかというと、三十七年末においてその進捗率は三二・四%だ、驚くべきものなんですね。それで、たとえば十勝川は、これは大正十二年に着工いたしました。そうして三十七年末の進捗率は二五・一%、常呂川は、大正十年から始まって今日まで二四・四%、こういう進捗率をもっていきますと、石狩川は百五十年かからなければ完成しない。これから百年待たなければ直らない。そういう百年河清を待つというのは、ほんとうにうそでない石狩川の実情だ、こう思うのです。そうして、それじゃ現在やっている設計というのはどうかというと、その年次において若干の修正は行なわれましたけれども、何十年か前の設計なんです。だから現状に合わないのです。それでいて、こういうふうにおくれている。だから、現地では、これは天災ではなくて人災だ、こういう恨みと嘆きとを与えている。そうして行政に対して少しも信頼しない。大臣が来て見ていったって、慰めの言葉だけで何ができるかというふうに、それほどもう精も根も尽きているというのが現地の姿だろうと私は思うのです。こういう実情に対して、部分的に直せば直すほど、その以外のところがさらに災害が累積されていく、水をかぶる、こういう実情に対して、建設省はどう考えているのか。河野さんがいたら、実力者がこの問題に対してどう取っ組んで、どう処置するのかということを聞きたかったのですが、事務当局の月並みな答弁だろうと思いますが、これは一応伺っておきたい。
  179. 山内一郎

    ○山内説明員 御承知のように、非常に大災害が連続して起こっておりますが、それに対しましては、災害復旧だけではとても防ぐことはできない、これはもう明らかな事実でございます。どうしても治水対策を立てまして、長期的な計画のもとに防災事業をやっていく、こういうことが必要かと思われます。これに対しましては、昭和三十五年度を初年度といたしまして、治水十カ年計画というものができたわけでございますが、それに基づいてただいままで事業を実施をして参ったわけでございます。その進捗の工合は、十カ年計画を十年でやるよりもスピードは上がっております。十カ年計画樹立後、何とかして大幅に繰り上げをしたい、こういうことでスピードは上がって参っておるのでございますが、なお最近のような大災害の連続では、これでは対処できない、こういうことで、今後その計画を検討いたしまして、さらに大幅な実施をやる、あるいは計画を拡充をする、こういうことでやって参りたいというように考えております。  ただいま河川の基本計画のお話もございましたが、全体というものは一応つくっておりまして、それを部分的にどういう順序でやって参るか、こういうことで非常に苦心をして参っておりますが、何とかしてその個所ごとでも効果が上がるように、こういうことを十分配慮して今後やって参りたい、こういうふうに考えております。
  180. 永井勝次郎

    ○永井委員 最後に、たとえば直轄河川十カ年計画、この十カ年計画が終わったときにどのくらい進捗するかといえば、北海道の場合二三・九%、特殊河川が二三・九%、国費維持河川が二三二%、直轄調査が二四・七%、補助河川に至ってはもう問題にならない、一〇%限界、これが十カ年計画の実態です。十カ年の間に事柄が起こらなければいいが、十カ年にはどんどん起こってくる、さらに拡大してくる。石狩川の場合、これから百年たたなければ予定計画は立たないというのですから、もってわれわれの時代にはとてもこれは話にならぬ。こういう実情がもう計数的にもはっきりしている。わかっているのにぐずぐずしているというのは、怠慢です。また、ほんとうに何とかしなければならぬということがわかってやらないというのなら、これは愚劣です。怠慢と愚劣は私は許せないと思うのです。現地の被害を受ける住民の身になってみれば、これは国に政治がないのか、こういう憤りを感ずるのです。そうしてその災害を受けたって、これは激甚災害の指定を受けるかどうか、これは怪しげな状態で、慰めの言葉だけでほったらかしになっている。かつて中国においては、災害を受けると、そこの町村長が一筆書いて、この者どもは災害を受けて食えないんだから、皆さんどうかよろしく頼むといって、一札を書いて旅に出す。そうして隣の村に千人か千五百人そろって行く。長くいられては困るから、おかゆをたいて食わしてすぐ隣へ送ってやる。どんどん行っているうちに、死んだりこじきになったり、いつの間にかいなくなる。これの繰り返しをやっていたのが中国の状況です。それと同じだ。大蔵大臣、一つそういう気持を持って、現地の実情に対処して、住民の身になってやってもらいたい。こっちは百年たったらできるのだという、こんなのんきな話をしているのですが、これだけを私は申し上げまして、時間がありませんから、終わります。
  181. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 辻原君。
  182. 辻原弘市

    ○辻原委員 最初に公務員の給与改定についてお伺いをいたしておきたいと思います。  人事院の方は、総裁以下、人事官、給与局長、いずれの方々も、どうしても差しつかえのためきょうお出ましになっておらないようでありますので、基本的な問題については、お伺いをいたすことをやむを得ず避けたいと思いますが、従来きまっております方針については、出られておる説明員の方でもお答えができると思いますから、それらの点に限って一つお尋ねをいたしておきたいと思います。  まず、人事院が八月十日に勧告をいたしました。その勧告をいたすについて基点にとっておるのは、本年の四月における民間と公務員全体の給与差でありますが、その差を縮めるために、これは人事院に課せられておる情勢適応の原則からして、この給与差というものを縮めるための勧告だと私は受け取っておるわけであります。もちろん人事院のあり方なり勧告内容その他については、われわれ各般の意見を持っておりまして、この問題については、時間があればお尋ねをいたしますが、少なくとも勧告の本文に盛られておりますものは、どの時限において較差をなくしようと考えたかという点はきわめて重要な点ではありますけれども、すでに定まっておる点でありますから、あらためて一つお答えをいただきたいと思います。官民の較差をいつの時限において是正されようという考えで勧告を出したのかということです。
  183. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 お答えいたします。人事院としましては、毎年四月現在におきまして給与調査をいたしまして、その較差を考慮いたしまして勧告をするということでやって参っておるわけでございます。
  184. 辻原弘市

    ○辻原委員 私のお伺いしているのは、基準は四月にとったが、較差をいつの時限で縮めようと考えたかということです。これは勧告全体の中心的な問題だと思うのです。だから、四月の調査に基づいてやったというだけでは不十分で、いつの時限においてその較差を縮めようと考えて勧告をしたかという点を、一つはっきり明らかにしておいていただきたい。
  185. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 今申し上げました通り、四月現在において調査をいたしまして、その結果確実につかまれました較差を考慮いたしまして、民間にバランスをとるように給与改善をするということで勧告をいたしておるのであります。
  186. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、どうもはっきりしませんので、政府伺います。担当大臣の大橋さんが出ておられますが、すでに閣議決定をせられて、あなたの方は勧告以前にも、しばしば勧告が出れば尊重するということをおっしゃっておったし、出てからも、何か尊重したかのごとき言明をされておったようでありますから、決定をされた以上、人事院の内容については、十分精査をされておると思いますので、ただいま私が伺っておるいつの時限で較差を是正しようとしたかという点、これはすでにあなたの方の決定案なんですから、それについての政府の見解を一つ承っておきたい。
  187. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お答えいたします。  政府といたしましては、人事院の勧告を受けましてこれを検討いたしたのでございますが、政府の理解するところによりますと、人事院の勧告の内容というものは、較差の是正を五月一日にさかのぼって行なうことが望ましい、こういう趣旨の勧告と了解いたしております。
  188. 辻原弘市

    ○辻原委員 大橋さん、まぎらわしい言葉は避けていただきたいと思います。望ましいとか、あるいは要望するということではなくて、その趣旨にぴちっと来ている表現をとってもらいたいと思うのだが、あなたの今の御答弁は、人事院の勧告を政府が受け取ったときに、政府としてこの勧告はどういう形で、いつの時限で改定しようかという問題については、人事院は四月の調査に基づいて、五月一日をもって較差を是正しようと考えたので、政府もその通り考えた、こういうことですね。そうですか。
  189. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府は、人事院の考えが、較差の是正を五月一日現在にさかのぼって実行することが望ましい、こういう考えだと了解いたしたわけであります。
  190. 辻原弘市

    ○辻原委員 さかのぼって、さかのぼらぬということは、実施がおくれたからそういうことが言えるのであって、私は、勧告案そのものの中に、一体この是正をいつしようかという考え方がどこにはっきり出ているか、それはいつだということをお尋ねしているわけです。しかし、大体わかりました。ともかく五月でもって改定をしたいということ、これは、人事院、間違いありませんね、今政府はそう受け取ったと言うのですが。
  191. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 五月から実施していただきたいということでございます。
  192. 辻原弘市

    ○辻原委員 五月から実施じゃなくて、問題は、五月から実施をしていただきたいというのは実施時期の問題であるが、官民較差がどういう形に出て、四月の調査でいけばそれが少なくともこうなった、その較差を縮めるために勧告が出た、従って、その較差はいつから縮めてもらいたい、こういう勧告が出ているわけですね。その時期が五月だと今大橋さんがおっしゃったのですね。
  193. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 いつから較差を縮めるかという時期につきまして、人事院の考えは、それを五月にすることが望ましい、こういう表現があったわけであります。
  194. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、人事院に伺いますが、少なくとも勧告は、全体を通じて一つの体系があると思います。その体系によれば、四月の調査をとったということは、少なくともこの官民較差というものを、その四月の時限に基づいて当然三十七年度中になくしてしまうということが原則であり、方針でなければならぬ、こうわれわれはあなたの方の勧告を見て受け取っているわけであります。いっその改定をやってもいいという問題ではなくて、理論上そういうことにこれはなってくると私は思うのでありますが、その点は、ただ五月にやることが望ましいという程度ではなくて、少くともその較差をなくするための一応の時期というものが、全体を通じてはっきりしていなければならぬと思うのであります。それはいつまでかということを私はお尋ねしたいのですが、これはどうなんですか。
  195. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 勧告といたしましては、五月から実施することが適当と考えるということであります。
  196. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、逆にお尋ねをいたしますが、大橋さん、この勧告を実施すれば、官民較差は九・三%だというわけですね、その九・三%が是正される時期はいつになりますか。これはこまかい問題ではなくて全体を通ずる重要な問題だと思う。これは、いつも、勧告があって、それから政府が受け取って政府案として国会がきめる。その官民較差、いわゆる公務員法によって示されている情勢適応の原則によって較差を縮めなければならぬというのは、いつ終了をするのか。政府はそれをどう受け取っておるのですか。  時間の節約上、研究している間に人事院に伺います。人事院はその点はどう考えていますか。
  197. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 人事院としましては、四月現在において調査をいたしまして、その結果に基づきまして、五月から実施することが適当と考えるということで勧告をしておるのでございます。
  198. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうは尋ねておらぬのですよ。あなた方は、四月の調査に基づいて五月一日に切りかえて下さいという勧告を出したが、実際にいつ九・三%の較差がなくなるかということを言っておるのです。較差が九・三%、それを縮めるために引き上げ率をきめた。そうして政府に勧告をした。その人事院勧告を政府が尊重したと言っている。それをそのまま実施したならば、いつ較差が是正されるのかとお尋ねしている、常識的に。それはどうなんですか。きわめて常識的な質問じゃありませんか。出しっぱなし、やったけれども、較差が是正されるのか是正されないのか、それがわからないようなことで、一体どうするのですか。その時期はいつか、明らかにして下さい。
  199. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 人事院の勧告は、今年の四月における較差を直ちに全部是正しろという内容にはなっておりませんので、これを相当期間かかって逐次に是正していくようにという内容考えております。
  200. 辻原弘市

    ○辻原委員 だから、私はお尋ねをしておるのです。政府が受け取って精細に検討されたならば、四月の調査に基づいて五月実施を勧告した場合には、それではいつこの較差は是正が完了いたしますかということをお尋ねしている。
  201. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 大体九カ月で是正措置が完了する、こういうふうに考えます。
  202. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の点は、今回の給与改定について私は非常に重要な一点だと思うのです。何となれば、今までの給与改定というのは、これは、だれが考えてもこれだけの開きがあって、それを縮めるためにその措置をやるのだから、その調査をやった月を基点として直ちに切りかえる、直ちに是正をするというのが建前であったと思うのです。ところが、今回の人事院の勧告は、今確かに大橋さんのおっしゃった通り、四月の調査に基づいておりながら、実際の切りかえが行なわれ、較差が是正されるのは最長九カ月を要するというふざけた勧告をなしておる。もちろんそれにはいろいろ理由はありましょう。その個々の理由についての議論を私はここで戦わそうとは思わない。思わないが、平たく言ってみても、四月に九・三%の開きがあるならば、できるだけそれに最も近い時期において切りかえるということが、資料的にも、また行政措置としても正しいやり方だと思う。その後において情勢はどんどん変わります。最近のような経済情勢の中で、物価の値上がりがどんどん進んでおる。民間の方だって、いろいろな経済上の変転によって給与状態は違ってきておる。だから、その違ってくることを前提にしながら、ともかく九・三%の較差是正をやりましょうなどという人事院勧告は、私は全くやり方としてはふざけておると言うのです。きょうは総裁もおいでになっておらぬから、そのことを次長であるあなたに申し上げるわけではありません。ありませんが、そういうことなんです。  そこで、私が人事院総裁にかわって、ここでその人事院の考え方を言えば、最長九カ月だけれども、五月から実施すれば、最長九カ月で、一月ですね。一月までには大体いわゆる較差是正という勧告の目的が達成される、こういうような考え方で出しておるし、予算も、これは会計法の規定によって年を越すわけにはいかぬ。その措置は年度中にやらなくてはいかぬ。とすれば、勧告実施も、予算上の措置も、少なくとも三十七年度内ということに区切られておると、私は常識的に理解をする。そうじゃありませんか。その点は、次長、どうですか。これは重要な点なんですよ。その年に出した勧告が、来年でも再来年でもいいなんていうばかなことはないでしょう。その点はどうですか。
  203. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 もちろん、勧告は、私どもが調査をしました結果に基づいてやっておりますので、できるだけ早くやることが当然だというふうに私どもは考えております。
  204. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは、次長さんを責めるわけではないのですから、なまで言ってもらったらいいと思うのです。なるべく早くということじゃないのですよ。そうでしょう。大蔵大臣、どうですか。人事院の勧告が出た。なるべく早く、これは年度を越してでもやってかまわないんだ、そういうふうな考え方で受け取っているのですか、政府は。その点、どうなんですか。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 給与に関する人事院の勧告が出ましたならば、政府は、過去の例にもあります通り、これを尊重して実施をいたします、こう言っておるのでありますから、できるだけ早い機会に実施をするということは当然であります。が、しかし、財政需要というものはそれだけのものではありませんから、諸般の情勢を勘案しながら、尊重の線をくずさずこれを実施に移すということであると思います。
  206. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっと大蔵大臣、そんな声明書みたいな答弁を要求しているのじゃないのです。人事院が勧告をしますね、三十七年の四月に調査をやり、その結果が出た、そうして五月一日から切りかえてもらいたいという勧告をしましたね。その勧告を受け取った場合に、その意味は、少なくとも三十七年四月の調査なんだから、三十七年度の措置としてやってくれという意味だなあ、こういうふうに理解をして、政府は三十七年度の措置としておやりになるのでしょう、こうお尋ねしている。そうでしょう。
  207. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、たびたび申し上げておるのであって、人事院の勧告は、政府は尊重いたします。でありますから、四月の時点において計算をしたものであり、五月にさかのぼって実施せられたいということでありますから、政府ももちろん、でき得る限り五月一日に近い時期で実施をしたいということを考えておったのでありまして、考え方は皆さんと同じであります。が、しかし、その後の諸般の情勢を勘案して、十月一日に実施をせざるを得なかったという事実はございますが、態度としては、また基本的な姿勢としては、人事院勧告を尊重し、五月一日にできるだけさかのぼって行なおうと努力をしたわけであります。
  208. 辻原弘市

    ○辻原委員 人事院の方、おわかりになりましたね。私のお尋ねしている趣旨は、あなたの方の、四月の調査に基づいて五月の一日に切りかえるということを勧告したのは、少なくとも三十七年度の措置を要求されたもので、まあ政府も、ほぼそれに近い考え方でもってやろうとしておるわけです。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 人事院は、本来、それはどうなのかと聞いておる。当然年度内の措置としてそれを強く要求しているはずだと私は理解をするから、あらためて伺っているのですが、どうも答えがはっきり出ないから、いま一度、人事院のいわゆる勧告実施についての態度を聞いておきたい。
  209. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 人事院といたしましては、勧告通り実施していただきたいというふうに念願しております。実施時期につきましても、勧告に申し述べておりますので、それに沿ってやっていただきたいというふうに、強く念願しております。
  210. 辻原弘市

    ○辻原委員 年度中実施ということで要求しているのかどうかということで尋ねているのだよ。その点について答えてもらいたい。
  211. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 勧告に書いてあります通りに実施していただきたいということを、強く念願しておるのであります。
  212. 辻原弘市

    ○辻原委員 それだけで時間を食ってしまうと困りますから。  そこで、大橋さん、今だんだんお尋ねをしましたら、大蔵大臣の趣旨も、政府考え方も、人事院の方も——きょうは総裁、人事官、給与局長が出られておりませんから、どうも歯にきぬ着せたような格好になりますけれども、しかし腹の中ははっきりしていると思うし、常識的には明らかだ。五月実施を迫っている以上、私は年度内措置にきまっておると思う。そこで、その実施を、今大蔵大臣も言われましたけれども、十月にずらした、その理由は、財政的理由に基づくとおっしゃった。しかし一面、今度は、しかしながら人事院の勧告を尊重いたしましたと、こう申されておる。何か話が矛盾しておりませんかと私はお尋ねするわけだが、そこで、大橋さん、私は、いつかの人事院勧告のときにもお尋ねしたのでありますが、人事院が勧告したその内容についての取り扱いというのは、政府はどうされるのですか。詳細に内容検討した上、当然それについての取り扱いをきめられると思うのでありますが、その辺のところをちょっと伺いたいのですが、内容を詳細検討されたかどうか。
  213. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 人事院の勧告は、十分に検討いたしました。
  214. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうしますと、十月にずらしたということは、これは私の理解では、大蔵大臣その他がおっしゃられるいわゆる尊重したということにはならぬと思うのですが、その点は、大橋さん、どうですか。
  215. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 十分に尊重いたしたつもりでございますが、しかし、人事院の勧告の内容が、文字通り確実に実施されたという意味ではないと思います。
  216. 辻原弘市

    ○辻原委員 重要な発言をされたと私は思うのです。それは、今まで一般的、抽象的に尊重したというが、内容は、少なくとも人事院の勧告なんというのは、現在の社会通念からすればきわめて低いものです。二千円弱のベース・アップなどというものは、今の物価の上昇から見ると、別に資料をとるまでもない、非常に低いものです。その内容すらチェックした。今大橋さんが認められた通り、一応できるだけ尊重いたしましたけれども、内容については、逐一それを採用したとは考えないとおっしゃった。これは、裏を返せば、勧告を尊重していないということなのです。そうでしょう。できるだけやったけれども、やらなかった点もあったということです。そうでしょう。しかも、私が先ほどからお尋ねをいたしておる十月実施にずらしたということは、五月から十月の間給与の改定が行なわれなかったというだけの意味ではない。それはどういうことになるかというと、先刻もあなたから話のあったように、今度の給与改定というのは、調査をした時期から一応の完了まで、少なくとも九カ月かかる。そうでしょう。今度十月に実施をずらしたらどういうことになりますか。これは、私はこの席上ですから、こまかいことを申し上げる時間がない。しかしながら三カ月、六カ月、九カ月、こういうふうに区切って、いわゆる暫定仮定俸給というものを設けてある。それにぶつかるものは、三カ月を要するもの、六カ月を要するもの、九カ月を要するものでしょう。最長が九カ月、そうなると、その九カ月を要するものというのは、十月に実施した場合にはいつになりますか。明年、三十八年の六月じゃありませんか。それだから私は人事院にお尋ねをしておるし、そういうような、少なくとも人事院は、正確なデータをもってやった、こうおっしゃっておる。おっしゃっておるなら、その時限に最も近い、今大蔵大臣も言われた比較的近いところということは、三十七年四月をとって、それに近い時期で切りかえをすることが望ましい、それに近づけたとおっしゃっておる。どうですか。三十七年四月の調査が、実施の完了するのは三十八年の六月です。これはどうですか。早いですか。尊重したのですか。人事院は、この点はどうなのですか。そういうふざけた調査結果に基づいた改定がありますか。大橋さん、その点はどうですか。
  217. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、十分誠意を持ってこの内容検討いたしまして、そうしてでき得る限り尊重をいたしたのでございますが、財政事情その他の理由によりましてかような結果になりましたことは、まことに遺憾に考えております。
  218. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで、大橋さんは遺憾と言われたけれども、これは遺憾以上のものです。実際それがいかんのじゃ。(笑声)そういうような、ただ言葉でもってことをすればいい。しかも一応表面づらだけ、四月調査をいたしまして、五月に人事院はやってくれと言うけれども、財政上の理由で十月までずらしました。そこだけを聞いて、そこだけを見れば、まあ六カ月ずれただけだというふうに受け取れる。ところが、中身を一枚へくってみると、さにあらず、実際の切りかえというものは、はるか遠く、来年六月にならなければその完了ができない。いわゆる両年度にまたがってやろうというような給与改定というものは、今まで私は例を見ないと思うのです。その根本的な態度は、人事院にもあるが、しかし時間がありませんから、それ以上は追及いたしません。しかし、大橋さんが遺憾であると言われた通り、私はこの政府のとった態度はまことに不都合である。同時に、これは将来の給与の改定なり、あなた方が責任を持っておるいわゆる——本来ならば給与というものは、これは労使双方が協議に基づいてきめるものであるが、それが日本の場合には、占領下の特殊事情から、いまだに公務員に対しては何ら労使間においてきめるという慣行が行なわれていない。そのかわりに人事院というものがあることは、申すまでもないと思う。その人事院が、どんどん物価が上がり、どんどん民間との差が大きくなっておるのに、のんべんだらりと一年半かかって給与改定をいたしましょうというようなことで、どうして一般の公務員がおさまるかということです。しかも、両年度にまたがるということは、次のあなた方が資料をとり、次の情勢適応に対する人事院の態度を私は拘束するものだと思うのです。これは、非常に政治的判断を要する問題だから、次長さんにお答えを願うことは無理かもしれませんが、しかし、理論的にそうでしょう。次長さん、どうですか。私の貧弱な頭をもってしてもそう感ずるのだ。頭脳明晰な、ともかく人事院の少なくとも給与局の次長さんであられるならば、そういうやり方が次にどう影響してくるかということぐらいはお考えになるでしょう。どうなんです。来年の六月、さっきもあなたは冒頭に言われた、毎年人事院としては四月の調査をとってやっております。来年の四月の調査はどうされますか。一つ人事院にお答えを願いましょう。
  219. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 来年の調査につきましては、毎年四月にやっておりますことと同じ調査をおそらくやることになるんじゃないかというふうに考えられるのでございますが、その結果を見まして、どういう内容にするかということを検討するということになるんじゃないかというふうに考えております。
  220. 辻原弘市

    ○辻原委員 次長さん、私はこういうお尋ねをしておるのです。毎年四月に少なくとも調査をやられる。そのときには、一応その方法が正しいかどうかは別として、数字については結論が出る。ところが今回のベース改定をやる、人事院が五月ということで、政府がすなおに実施しておるなら問題はないでしょう。しかし十月にずれてやったという限りにおいては、実施の完了時期というものは来年の六月に延びる。従ってあなたが調査をやろうとしておる四月の時限においても、まだ切りかえ中なんです。新しい公務員の給与が確定されない。その時期に、どうして調査をやるかということです。ただ推定見込みの調査はできるでしょう。しかし推定見込みでは、今まで人事院はやっておらないはずです。その過程にある、切りかえ途上にある調査をどうしておやりになるかということなんです。これで、しかし議論をするわけではありません。そういう事態が起きてくるから、必ず結果として現われるのは、物価が上昇し、官民較差がさらにひどくなってきても、人事院としては勧告をまたぞろサボるという結果が起きてくる。だから、私は今それを警告をしておるのです。だから、政府財政的理由というようなことで、人事院がやっておる内容というものは、大きくゆがめられておるのです。ただ単に実施時期をずらしたという問題でなく、内容方針全体の一つの構想というものを、政府の十月実施はこわしておるということを指摘しておるのです。——大蔵大臣、それじゃやりますか。
  221. 田中角榮

    田中国務大臣 議論を申し上げるつもりではございませんが、非常にこれは重要な問題でありますから、もっとひらたく国民の前にも明らかにしなければならない問題でありますから、私の考え方を端的に御参考までにお聞きをいただけばいいと思うのですが、人事院の給与に関する勧告が国会及び内閣になされることによりまして、内閣は当然これを尊重するということは、これは原則的には当然のことだと思います。また、内閣もそのような姿勢をとっております。過去においてもその通りであり、今回の勧告においてもそういうことを言っております。また、理論的に言いますと、四月現在において積算せられたものに対して八月に勧告をせられたものであっても、五月一日から実施をするようにという勧告でありますから、五月一日にさかのぼれば一番いいことは言うを待たないと思います。しかし、これが六カ月おくれて十月一日から施行せられたからといって、勧告を無視したものであるとは考えておらないわけです。それには立場を変えてお考えになっていただくとよくわかるのですが、人事院勧告が裁判所の確定判決のように予算編成権を拘束したような法制になっておりません。人事院は確かに第三者的な中立的な機関として政府に対して勧告をする。しかし、政府は、御承知の諸般の財政的事情を勘案しながら、その当時の状況を見て人事院勧告を受け入れられる限度というものを見て、何月何日からこれを施行する、こういうことになっておるのであって、必ずしも、私は、人事院が五月一日からだと言っておることと、政府が十月一日でやむを得ないと言って国会に議決を求めてくる状態との間には法律上のそごはないというふうに考えております。  それから、もう一つは、これは事実論になって御議論のあるところかもわかりませんが、実際上から考えてみると、去年は十月一日から行なわれております。これも五月一日のやつを十月に引っぱったのじゃないかという議論を言われれば議論の存するところではありますが、十月一日からやっておるのであって、一年間というもの、経済のテンポが非常に早いですし、民間の給与も急速に上がってき、物価も上がってきておるときだから、一年間に二回勧告をしても一向差しつかえないんだという議論も起きますが、では、全然逆に、民間給与ベースが下がるということを考えて、来年の四月ごろには民間給与ベースが下がった、しかし、四月直ちに勧告ができなくて、また計算をしておると来年の八月になるわけであります。八月になるときに、民間の給与は現実的に下がったから一般給与を四月一日に遡及して下げろという議論にはならないのであって、私は、この問題に対しては、いいことは遡及することが一番いいことでありますが、やはり、財政が行政府の責任に法律上なっておる以上は、勧告をしてから実施までの間には所要の財政的手続が行なえる時間くらいを与えて勧告するのが至当だろうという考え方を前にも述べたことがありますが、そんないろいろなことを申し上げると、戦後の法律や組織上でいろいろな問題は存するところではありますが、これが必ずしも人事院の勧告を尊重しないということにはならないというふうに考えております。
  222. 塚原俊郎

    塚原委員長 辻原君に申し上げますが、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急き願います。
  223. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は大蔵大臣がそういう議論をされるとは思わなかったのです。私は、引き上げる場合だから勧告通り実施しろ、引き下げる場合だからこれはやらなくてもいい、そういうような議論をしているんじゃなくて、人事院勧告をあなた方が尊重されると言うから、それによってはたして尊重しているかどうかを確かめておる。大蔵大臣、去年とことしの勧告は違いますよ。私が冒頭に申し上げたように、今までのやつはその切りかえ時限において較差是正というものが行なわれるということが前提でやられている。今度のやつはかなりの期間をもって切りかえをしようとしている。そこに違いがあるから言っているのです。だから、去年十月にずらしたけれども年度内にやれた、ことしも同じことだからやれるだろうというのじゃないのです。それは誤られないようにお考えをいただきたい。  それから、法律上の制約権が人事院にないからこそ、あなた方は尊重すると言うし、人事院もまたロジックをきちっと合わせましてあなた方に要求をされている。その意味から言っているわけです。だから、いろいろ財政上の理由、検討の期間等々もあるからこれはずらしたってやむを得ぬだろうなんというニュアンスでもって話をされたのでは、前提がくずれて、お話になりません。そうではなくて、尊重する限りにおいては、人事院の勧告というものは年度内実施なんです。だから、年度内に官民較差の是正をやるということが少なくとも政府に要求をせられた人事院の態度である。それにこたえなければならぬということです。それにこたえておらないじゃないか。だから、根本的に人事院の勧告は内容的にも尊重していませんぞということを私は指摘している。しかし、時間が経過したようでありますから、この問題はまたいずれ詳細に大橋さんとやりましょう。  次に、官房長官、幸いに見えておりますから伺います。政府は尊重すると言った。あなたも言われた。それから、決して人事院には圧力をかけておりませんと言われた。ところが、勧告が、今回のものが八日に出る予定が十日に延びた。その八日の予定日の二日前に、あなたは何と言われたか。前総裁がなくなられたので、勧告は新しい総裁がきまってからやるべきである、こういう談話を発表せられましたね。覚えておりますか。
  224. 黒金泰美

    ○黒金説明員 後任総裁の人事を進めております際に、いつごろでありましたか、いつごろこの手続が終わりそうかというお話があったのに対しまして、私どもとすれば、後任総裁について、三人の人事官でありますから、三本足のかなえがそろったあとで十分おきめ願った方が適当ではないか、かようなことを申したことはございます。
  225. 辻原弘市

    ○辻原委員 申すまでもなく、人事院というのは少なくとも独立機関です。しかも、国家公務員法によれば、人事官会議というものは必ずしも全員がそろわなくてもできる。もちろんこれはそろわれることがベターであることは申すまでもないところでありますけれども、しかし、勧告寸前になって不幸にして総裁がおなくなりになった。それについて人事院の勧告を左右するかのごとき発言政府の官房長官がやるということはよろしくない。少なくとも人事院がしっかりしておればそういうことはないと思うのだけれども、最近の人事院はよろよろしている。そのときにあなたが言われたことは、至大に影響していると私は理解する。その結果が二日ずれて十日になったとは、私も確たる証拠がありませんから申しませんが、影響していることは事実なんです。この一事をもってしても、現在の人事院と政府との関係というものは必ずしも対等の立場ではない。すなわち、人事院は第三者的な中立機関としての存在価値を今日もはや失っていると言わざるを得ない。しかも、そういう立場にある人事院を政府はえてして軽視しがちであります。軽視するから、その勧告についての取り扱い等まで官房長官が云々をするという不届きなことが起こる。厳に慎んでもらいたい。  時間がありませんからそれ以上のことは言いませんが、あなた方は、尊重する、決して干渉はいたしません、圧力はかけませんと言っているけれども、少なくとも、今回の勧告の過程を見れば、また政府閣議決定のその結果を見れば、尊重もしておらなければ、逆にまた非常な干渉をしているということが明白である。これでは、公務員に十分な能率を要求することもできなければ、また、労働三権にかわる措置としての政府・人事院が持っている給与に対する責任を果たしたということは言い得ないと思う。本日は人事院裁総も出ておられませんから、私は人事院総裁にもいろいろ申し上げたいことがありますが、それは次回に譲っておきましょう。  しかし、大橋さんから、必ずしも全面的に尊重したとは申されない、遺憾であったということを承りましたので、少なくとも、政府としても、今後そういう遺憾であったということをここで申されなければならぬような措置は行なわれまいと私は善意に解釈をいたしまして、他にたくさん質問もございますけれども、時間も過ぎましたので、簡単にして、これで終わりたいと思います。
  226. 塚原俊郎

    塚原委員長 野原覺君。
  227. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、公務員の給与に関する問題と、それから文教の若干についてお尋ねをいたしますが、同僚の辻原君から給与に関する問題の質問を申し上げましたので、関連がありますから続けて給与の点を最初に取り上げたいと思うのであります。  ただいま、辻原君の質問に対して、給与担当の大橋労働大臣から、人事院の勧告につきましては政府はその内容を十分に検討をいたしました、こういう御答弁があったのであります。それならば、私はお聞きをしたいのです。今日、公務員の諸君が、物価の値上がりにも今度の人事院勧告は及ないではないか、こう言っているのですが、この点はあなたは給与担当大臣としてどうお考えでございますか、お伺いいたします。
  228. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国家公務員法にきめてありまするところに従いますると、人事院は民間の給与水準と現行の公務員の給与水準とを比較してその較差が五%以上になった場合には給与についての勧告をしろ、こういうことになっておるようでございまして、今回の人事院の勧告は、この民間給与との較差ということを主眼にしてなされたものと考えております。
  229. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大橋さんは私の質問に答えてほしいのです。物価の値上がりにも及んでいないではないかというのです。今度の人事院の勧告は物価の値上がりにも及んでいないのではないか、こういう声があるわけです。政府はどう考えるかと聞いておる。簡単におっしゃって下さい。いやそんなことはない、それは物価の値上がりに及んでないはずはないと検討されたでしょう。今度の人事院勧告が物価の値上がりにも及ばない勧告だということになると大へんなことですよ。これはどうですか。
  230. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 人事院の勧告は、いろいろな要素を検討された上で結論を出されたものと思っております。
  231. 野原覺

    ○野原(覺)委員 昨年の四月から本年の四月までの物価の値上がりは、総理府の統計によれば七・八%です。ところが、人事院の今度の勧告は、切りかえ時には七・一%、千九百三円、これははっきり説明書に載っております。七・一%。及んでいないのですよ。それは、人事院の勧告というものは物価の値上がりを参考にいたします。物価の値上がりだけではいたしません。民間賃金との較差が標準であることは当然でありますけれども、参考にしなければならぬ物価の値上がり七・八%、——昭和三十六年の四月から三十七年の四月までの物価の値上がりというものは七・八%。これは全国都市の集計で総理府の発表です。及んでいないのですよ。こういう点も政府検討したかどうかということを私は尋ねておるのでございますけれども、遺憾ながらそれに対する十分な答弁がない。あなたの方は何にも検討していないのです。  そこで、お尋ねを次にいたしますが、辻原君の質問に対して、あなたはこう答えたのです。民間賃金との較差は九・三%、これは人事院の勧告にあるわけです。この九・三%の賃金較差の解消は九カ月で是正されるとただいまあなたは断言をされたのです。これは是正されますか。  私はまず人事院にお尋ねいたします。この人事院の勧告によれば、九・三%の民間賃金との較差は九カ月で完全に是正されますか。まず人事院の御答弁をお願いしたい。
  232. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 お答えいたします。  勧告の内容は、九・三%の較差があったのでございますが、その内容といたしまして、実施時期におきまして俸給表の面におきましては七・一%、それに逐次切りかえによりまして七・九%ということになっておるのでございますが、さらに暫定手当の改正の関係及び調整措置を加えまして、それらの関係は実施時期に大体行なわれるというふうに考えておるのでございますけれども、それを合わせまして大体九・三%になるというふうに考えておるのでございます。
  233. 野原覺

    ○野原(覺)委員 人事院はそういう重大なことを説明書にもなぜ書かないのか。あなたの方はこの勧告の正文にも書いていないし、あなたの方の説明書を読んでみるというと、逐次切りかえを行なうことにより最終段階においては俸給表の改定により七・九%の引き上げとなる予定になっている。逐次切りかえを行なう期限は九カ月です。そうして最終段階は七・九%としておるのです。九カ月たって完全に九・三%の較差の解消はできない、こういう疑問をこの説明書では持つですよ。ところが、今あなたの答弁を聞きますと、暫定手当の改正、それから調整措置ですが、こういうものをやれば完全に九・三%になるとあなたは言われますが、では、暫定手当は何%で、調整の方は何%ですか。数字をもって示して下さい。九・三の較差解消かどうかということが今度の人事院勧告の基本的な課題なんだ。民間賃金との差は九・三になりました。今度の勧告はこれを埋めるかどうかが問題です。では、暫定は幾らで、調整は幾らですか。私はここで算術の足し算をやってみますから、おっしゃって下さい。
  234. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 暫定手当の関係は前の勧告でございまして、この関係が実施されます場合には、三年間で行なわれるのでございますけれども、一年につきまして〇・三%の総体としての改善が行なわれるというふうに計算されるのでございます。それ以外に、俸給表の改定に伴いますところの調整措置といたしましては若干のものがございますということを説明資料に書いてございます。その関係は、その内容といたしましては非常にこまかい内容でございまして、具体的な内容、非常にこまかい計算を今やっているところでございまして、まだ詳細になかなか——計算上むずかしい問題がございますけれども、総体としておおむね九・三%になるというふうに考えているのでございます。
  235. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いいかげんな答弁はしないでほしい。三十分に時間が制限されておるから、私、追及しますというとこれだけで時間をとるから、どうせこれは補正予算が出ましたときに本格的にあなたの方の責任は追及いたします。だから、なるべく人事院の方は伏せておきたいのでありますが、七・九%に〇・三%を寄せて八・二ですよ。これに若干の調整と申しますけれども、それはあなたは言えないでしょう。今検討しているのでしょう。八・五になるやら八・六になるやらわからぬですよ。この人事院勧告では九・三%の解消の措置にならぬじゃないか。九・三%の較差というものが出てきた、この較差にも問題があるのです。この較差も、これは日経連なりそれから政府の筋からあなたの方は圧力を受けて、そうして独立機関としての役目を果たしていない。日経連の方は、人事院の給与勧告が実は民間賃金に今度ははね返るというので大へんなことであった。何ですか一体。労働組合の団体交渉権その他を押えた代償に人事院を置いたのですよ。もっと見識を持ってやってもらいたい。あなたは次長ですから、これ以上のことはあなたには言わない。きょうは佐藤総裁が見えていかないから、私はこれで終わりますけれども、九・三%にならぬ。  大橋さん、あなたの方もよく検討してもらいたい。では、その調整の方は幾らですかということを人事院にあなたは問い合わせましたか。それから、暫定手当はどれだけでございますか。それで九・三%になるという確信を給与担当大臣としてお持ちになるなら、その数字をおっしゃっていただきたい。あなたの方にも給与審議官がおるはずだ。総理府に十名近い人がいる。そういうことをやったかどうかです。人事院の勧告をうのみにしておりはしませんか。これははっきり御答弁を願いたい。
  236. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私どもの検討を申し上げますと、この勧告実施に際しまして、即時俸給が改定になりますものが六・六%でございます。それから、即時に昇給いたしますものが〇・五%でございます。これを合計いたしますと七・一%に相なります。それから、昇給の三カ月短縮によりまして〇・八%に相なります。九カ月後において、さらにこれの累計が、このほかに〇・九というものが加算されます。これらの昇給措置によりまして、手当等にはね返りがあるのでございますが、この手当のはね返りを計算いたしますと、〇・二でございます。従って、この勧告の内容は、全体で九・〇%、ほぼ九%と見ております。残りの〇・三%は、昨年十二月の勧告によります暫定手当の引き上げが充当されまして、これらを合計いたしまして九・三%になる、こういうふうに一応私どもは検討の結果計算を出しております。
  237. 野原覺

    ○野原(覺)委員 御答弁としては一応九・三のつじつまを合わせましたね。この点は苦心のある御答弁であったろうと思いますが、あなたがおっしゃいました〇・二とか〇・三とか〇・九というこの数字自体が実は問題なんです。私ども検討いたしております。しかし、今この問題をここでは残念ながらできないのです、時間の制限があるから。これは私は申し上げておきます。もう少し検討しておいて下さい。いずれ臨時国会では私ども数字をもって政府と対決をいたしますから。だから、その際に、あなたの方も国会に対して立法措置等予算の提案をされる以上は、確信のあるところのものを出してもらわなければ審議はできないのですから、これだけ申し上げておきたいと思う。  それから、黒金官房長官、あなたは辻原君からいろいろ指摘をされましたが、佐藤さんが人事院総裁になったのは何月でしたか。本ぎまりになったのは何月ですか。
  238. 黒金泰美

    ○黒金説明員 九月三日の発令と記憶しています。
  239. 野原覺

    ○野原(覺)委員 八月八日に勧告をするのが例年の慣例です。それを八月十日にしたのです。九月の三日ですか、それまで勧告はできないじゃないですか、あなたの論法からいけば。政府は公務員の給与に対する責任機関ですよ。公務員の給与の責任者は国会じゃなく政府なんですよ。給与の決定権は国会にあるけれども、その実施は、あなたの方が公務員の生活のめんどうを見なくちゃならぬのですよ。じゃ、後任総裁がきまるまで勧告すべきでないというあなたの意見から言うならば、九月何日まで勧告はできないじゃないですか。あなたは、人事院はそのために待てと言うのですか。これを称して干渉であり圧力だと私どもは見ておのです。一体、これは、池田さんにあなたはお伺いを立てて、池田総理の見解、閣議の決定であのような新聞発表をしたのか、それとも、官房長官個人のこれは勝手な放言であったのか、この点は承っておきたいのです。
  240. 黒金泰美

    ○黒金説明員 いろいろな事情で総裁後任の発令が延びましたことは、残念に考えております。
  241. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういうこともあり得ることでございますから、国家公務員法では、人事院会議は二人で会議ができることになっているのだ。入江さんがなくなったのは七月二十五日ですよ。八月八日には勧告するというので、人事院はすっかり準備ができておる。入江さんが脳溢血で倒れたのは七月十一日です。入江さんの意見は十分入っておる。あなたの言うことは、勧告を引き延ばす手じゃありませんか。五月一日を十月一日にする、また社会党から攻撃をされるから、勧告を延ばしておけというずるい手じゃありませんか。そうとられてあなたは弁解ができますか。そういうことは今後注意しなさい。  文部大臣にお尋ねします。  あなたは大学の管理運営に関する立法を通常国会に出される、こういう新聞報道が出ておるのでございますが、それは事実でございますか。
  242. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 新聞報道とおっしゃいますが、どういうことをおっしゃっておるかよくわかりませんけれども、すでにして中教審の答申が出ておりますので、それを受け取って、できるだけすみやかに、可能な限りは、できれば通常国会に間に合うものは間に合わせるという態度が私どもとしては当然であろう、そんなふうなことを私申したことはございますが、おっしゃるような、具体的に新聞記事になるようなことは申したことはございません。
  243. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いや、あなたの談話が問題なんですよ。申したことございますがと言いますけれども、あなたがそういう談話を出したから新聞記事ができ上がったのですから、通常国会に出すというのが文部省のお考えでしょう。この点をまずはっきりさしていただきたいと思うのであります。  それから、中教審の答申があったからと言いますけれども、中教審の答申は、文部大臣、あれは最終答申じゃないのでしょう。いかがですか。
  244. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 第一の点は、今申し上げた通りでございます。御答申をいただいたらば、教えていただいたわけですから、その知恵を拝借に及んで、立法措置を講ずべきものは講ずる、こういう考えで臨むべきものだ、さように思っております。  それから、第二の点ですけれども、中間報告という銘を打って出されておることは事実でございますが、それぞれ、中間報告、今まで出ましたものも一つ一つが完結しておる。諮問は六つ出されておりますが、まだ四つしか出てない、まだ未完成だという意味合いであろうと私は存じております。
  245. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうなりますと、その中間報告だけで立法措置をとる、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  246. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 その通りでございます。
  247. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは、お尋ねいたしますが、あなたが、大学の管理運営に関する立法を通常国会に提案する、それを目途に努力しておると言われるならば、その提案される管理運営の立法の内容、範囲、そういう点を承りたいと思います。
  248. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 目下事務当局検討中でございます。大体の線は、中教審の答申の基本線そのままでいきたいという気持でおります。
  249. 野原覺

    ○野原(覺)委員 最も大事な点は、これは大学側との間にあなたがいろいろ議論をされました、大学の学長の人事を初めとする教員人事です。大学の教員人事について、文部大臣は一体これをチェックする権限があるのかないのか、こういうことが大学の自治ということと関連して問題になっております。この点についてはどういうお考えを持って立法をなさるのか、承っておきたいと思う。
  250. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 大学の学長その他につきましては、現行法において文部大臣が任免権を持っておるということに相なっておると承知いたしております。
  251. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部大臣の職責という項で中教審から答申が出ておりますが、この点は文理の解釈上いろいろ疑義があります。ところが、私が不思議に感じてなりませんのは、東京大学総長の茅先生が中央教育審議会の委員なんです。そうして、中間報告を出されましてから、あなたの方に京大の平澤総長とともに文書をもって申し入れに行かれた。その文書を新聞で拝見いたしますと、学長の任命等大学の人事について文部大臣がいわゆる拒否権を有すべきでないことはわれわれの基本的見解である、こう言っておる。中教審で相当この問題では発言もし、中核的な存在であった茅総長がこう言っておるのです。拒否権を有すべきでないと茅さんは言っておる。これが基本的見解であったのだ。その先に、先般の中教審においてもその審議の経過にかんがみれば拒否権を採用していないことは明らかである、こう言っておる。拒否権はないというのです。中教審のメンバーの茅総長は、拒否権はないと言っている。あなたは、拒否権はある、ころ受け取っておる。これはどちらですか。
  252. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 そういうふうな新聞記事が出ておることは承知いたしております。また、お目にかかったときも、それらしいお話がございました。ですけれども、文部大臣の任命権というのは、今度諮問されました事柄そのものではないので、現行法にあるのでございます。現行法の任命権というものはいかなるものかということは、中教審で審議されるべき議題外であり、また、その解釈は、政府としての国民に責任を持った立場における解釈以外にはなかろう、こういう気持でおるのでございまして、厳密な法律論を今ここで申し上げる時期ではないと申しますか、能力がないと申し上げねばならぬかと思いますが、現行法は任命権を与えておる。それはいかなるものかということは、課題として別個のことと思っております。
  253. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は現行法を問題にしておるのじゃないのです。あなたは、立法の中には中教審の答申をそのまま書くこともあり得るという御答弁があったわけですね。だから私は、中教審の答申を問題にしておる。先ほど新聞でも問題になりましたが、中教審の中間報告のそのまた中間報告、これが新聞にすっぱ抜かれたのです。あれを見ますと、確かに文部大臣の拒否権というのが明記されてあったように私は記憶いたします。第三者の中央機関を設けて、そこに諮ってチェックするのだ、こういうのが中教審の最初の考えであったのです。ところが、あれが新聞ですっぱ抜かれて全国の論争の課題になるや、中教審は、その後国立大学協会の意見等も参酌して、拒否権という文字はどこにも使ってないのです。この審議の経過から言っても文部大臣が拒否権を持つというような見解は間違いだ、茅総長はこう言ってあなたに申し入れをしたでしょう。あなたと話し合いをしたでしょう。文部大臣の見解に茅さんは納得してお帰りになりましたか。これはどうですか。いや、文部大臣のおっしゃる通り、私の誤解でした、こう言って中教審の一メンバーである茅総長がお帰りになられたかどうか、承っておきたいと思う。
  254. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 中教審の中間報告で任命権に触れておりますことは、野原さんも御承知のように、任命権を行使するにあたっては、文部大臣が、国民に対する、国家社会に対する責任という立場と、大学の自治を尊重するという立場を十分に考えてこれを行使しなければならないという趣旨になっておるのでありまして、現行法の任命権そのものを否定しているという内容ではむろんないのであります。従って、さっきも申し上げましたように、任命権というものはいかなるものかということにつきましては、中教審の御審議外のことであって、拒否権などという権利が特別にあるものとは私は思いませんが、むしろ、中央の機関に諮ってということがあったのが削られたのは、かえって非民主的になるのではなかろうかというふうな気持も持っております。ただし、さっき申し上げましたように、政府側に立ちましての法律的な厳密な最終的意見は差し控えさせていただきたいと思います。  なお、茅さんには、そういうこともいろいろとお話をしまして、大体御理解いただいたと思っております。
  255. 野原覺

    ○野原(覺)委員 拒否権があるという考えであなたが立法措置をとるということを茅総長は理解した、こう受け取ってよろしいのか。あなたが次の通常国会にとる立法措置の中身は、文部大臣に拒否権であるという考え方で立法措置をとるんだ、そのことを茅総長は了解した、こう承ってよろしゅうございますか。
  256. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 あまり学問的なことは存じませんが、憲法学者等は、ノートレヒトという意味においては、任命権者が拒否する場合があることは当然だという見解が一般の見解だと承ります。そういうことも話し合いました。そういう意味においては茅さんも御理解がいったように思います。
  257. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いったように思う、あなたの独断でなければしあわせでありますけれども、私どもの仄聞するところによれば、いっていない。場合によっては、中教審の重要なメンバーでもございますし、この問題は重大ですから、中教審の一メンバーとして、あるいは次の国会では茅先生にもお越しいただかなくてはならぬかと思うのです。これはいっていらっしゃらないように私どもは聞いておるのであります。  それから、同じく平澤さんと茅さんが申し入れされましたその中に、大学の自主的改善に待つべきものであるから、そのために大学は今日努力をしておるではないか、どういう立法措置を考えたらよいか努力しておるではないか、検討しておるではないか、文部大臣も大学の自治を尊重されるというお考えがあるならば、この際一挙に次の国会で立法措置をとられることは待っていただきたい、大学自体も検討しておるから待っていただきたい、非常な混乱を巻き起こすからもっともっと意見を聞かなければならぬという申し入れが第二項にあるのでございますが、これをもうあなたは無視されて、こんなものはどうでもいい、次の国会でしゃにむにやってしまうんだというお考えで立法の準備をしておるのかどうか、承っておきたいと思います。
  258. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 しゃにむにやってしまうんだという大それた気持はございません。ただ、思いますことは、昭和三十五年の五月二日に、前松田大臣のときに、大学制度一般について、大学人と一緒になって国民の大学らしくするために、もし必要であるならば立法措置ないしは予算措置等が要るであろうという気持のもとに、六項目の諮問をされております。いわば、文部省にかわって客観的な冷静な立場で御検討をお願いして、知恵を拝借に及ぶようなことであったわけでありますが、その御答申が出ました以上は、それを真剣にまじめに受け取って、立法措置を講ずべきものありせば講ずる、予算的措置を講ずべきものありせばその手配をするということは、当然の文部省としての立場上やるべきことだとは思っておりますけれども、両学長が来られたこと、そのことすらも無視して、めちゃくちゃにやるなどという意思は毛頭ございません。当然の順序として、準備いたしまして、間に合うものならばなるべくすみやかに国会に御提案申し上げて御審議を願うことが当然の職責である、そう思っておるだけでございます。
  259. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私の言っておる意味は、あなたは一挙に立法措置をとることをおやめになられたらどうかということを申し上げておるのです。大学でも自主的に検討しておるのですから、そこら辺とも十分意見を交換しながらやられるべきじゃないか。その意見交換がまだ十分でない。茅さんも平澤さんも納得してはおられないのです。これは茅さん・平澤さん個人の問題ではないのです。大学の学問の自由、言論の自由、憲法にも関する問題になってくるわけでございますから、次の国会で立法措置をとるということをこの際思いとどまっていただいて、これらのたくさんの良識ある方の意見も聞くということが正しいのではないかと私は思いますが、いかがですか。
  260. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 野原さんのおっしゃる意味で思いとどまらねばならないとは思いません。思いとどまらないで、誠実に準備を進めていって、間に合うならばなるべく早い機会に国会で御審議願うということにするのでなければ職務怠慢だと思います。なお、中教審の答申は、今まで出ました範囲については実質上最終的なものと受け取ることはさっき申し上げました。ですから、茅さん方がどういうお気持で新聞に出たようなことをおっしゃるかということはわからないでもございませんけれども、しかし、それは中教審の委員としてではなしに、大学の学長というお立場で、いわば半ば個人的におっしゃったと思います。国立大学協会の意見というものは、全部中教審と御相談なすって答申には取り入れられておるわけでございますから、あれ以外には中教審のメンバーとしての御意見はないはずと心得ます。その他政治的な御判断等が、政治家じゃないにいたしましても、社会情勢その他をごらんになって、希望的なお気持はあったにはあったかもしれません。しかし、それは今申し上げたような文部省のとるべき態度とは別個の問題だと思います。
  261. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間がありませんからこれで終わりたいと思います。
  262. 塚原俊郎

  263. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、予算の執行面から二、三お尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、これは私非常に遺憾に思うのでありますが、十月十日前後を通じまして、新幹線の土地買収問題にからみまして非常にいまわしい報道がせられております。国家的な大事業として、この東海道新幹線の工事が進められている際、こういう問題が大きく社会をにぎわすに至りましたことは、私どもまことに残念に思うのでありますが、まず運輸大臣にお尋ねいたしますが、一体運輸省は、国鉄の工事等に対しましてどういう監督を行なっておられるのか、それを承りたいと思います。
  264. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答え申します。  新幹線が非常に重要である、東海道線の輸送が詰まっておって隘路である。これを打開するためには非常な超スピードでりっぱな鉄道をこしらえるべく努力するように私は監督しております。しかし、汚職の問題が起こりましたことは私は遺憾といたしまして、そのつど国鉄当局へ警告を発しております。私の調べたところによりますと、汚職に関する問題が土地に関して四つ、東洋電機に関する車両に関して一件、これだけありまして、そのつど警告を発して、さようなことのなからしめるよう努力を国鉄幹部へ要求いたしております。
  265. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 事が起こりましてからいかに監督をきびしくいたしましても、それは戻らないことであると思います。こういうようないまわしい事件が起こりますのは、平素の監督指導が不十分なのであって、事故が起こってからいかに監督をきびしくいたしましても、それでもって国民が納得するものではない、また行政上から見まして適切なものではないと考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  266. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お説の通りでございます。ゆえに事件の起こるたびに警告を発しておるのでございますが、何と申しましてもなかなか多数の人間でございますから、中に不心得な者も出るのは、私としてはなかなか防ぎ切れない、かように思って非常に残念に思っております。
  267. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、そういう答弁では全部は納得することはできない。少なくとも国鉄におきましては、国鉄を退職した者がそのまま手をこまねいて生活苦にあえぐとは決して申せないのであります。今日では国鉄一家ということが世間では常用語のようになっておる。そこでなぜそういう問題が起こるのかということを運輸省としてはよく監督をして、しかるべき適切な行政指導を行なうべきものと思うのです。ところが、そういうことが野放しにされておるということでは、私は、行政は少しもされていないと言って過言ではないと思う。責任ある運輸省として、これはまことに遺憾に思うのですが、一体国鉄が今日関連事業と言いますか、国鉄の従来幹部であった者が組織しておる会社が、あるいは工事に、あるいは倉庫や荷役、運送関係に、あるいはその他のことにどれだけ関連を持っておるかをお調べになり指導されたことがありますかどうか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  268. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 具体的に陸運なら陸運、海運なら海運その他に、何カ所に何人関係しておるかということは、調査を命じておりますが、なかなか調査が行き届かないという点は御了承願いたいと思います。
  269. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それでは私はまことに怠慢だと思うのです。私どもの調査では、今直接関係しておるところが、これは大ざっぱなことでありますけれども、工事関係においても十七社ある、荷役、運輸、倉庫関係におきましては五社、その他のいわゆる車内における販売やそういった関連しておるものが四社。これは国鉄に対して要求してもこれ以外は出してこない。こういう資料もろくすっぽ出してこないような不誠意さだ。そうしておいて日本開発会社のようなものを相手にして、そうして社会の指弾を買うようなことをやる。これは私は国鉄の諸君にも言いたいのですけれども、あまりにも綱紀の弛緩がはなはだしいと思う。同時に、運輸行政上から見て、こういった監督行政をやっているようなことで、一体運輸省に国民が何を期待するのか、私はまことに遺憾に思うのですが、今後こういったものに対する指導、運営の行政上の措置をどうおとりになる考えか、一つその点をお聞かせ願いたい。
  270. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 遺憾の点があるのを見つかり次第適当に処理してきておるつもりでございます。
  271. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は運輸大臣はもっと親切な人だと思っておりました。しかし、今の答弁は、あなたが質問者になって逆に考えられた場合、あなたはその答弁で得心なさいますか。何もないじゃありませんか。そんなことで運輸行政をやっておられるから、まことに遺憾に思うことは、今日の運輸行政というものは何をやっているのかわからないし、一体運輸省というものはどこにあるのかわからないのです。こういうことを言っています。今日の運輸行政というものは何も独立した行政をやっておらぬ、何一つするにも経企庁の命令通りだ、一体運輸大臣は何をやっておるんだ、こういうことをちまたでやかましく言っていますよ。今日の経企庁なんというものは、戦時中の企画院総裁がやっておるのとまるっきり一緒なんです。道路を一つ直すにしても、あるいは鉄道を一つつくるにしても、何にしてもかににしても、経企庁のお声がかからなければ何もできぬような運輸行政で一体何をするのです。運輸大臣はこれについてどう思われますか。
  272. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私は、今おっしゃったようなふうには考えておりません。私は私の考えで、経企庁とは合議すべきことは合議し、運輸省の意見を通すべきところは通してやっております。
  273. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 時間がありませんから、私は国鉄にお伺いします。今運輸大臣質問をいたしましたが、今度の新幹線について土地の買収等はどの程度実際に進んでおるのか、また工事の進捗状況は一体どの程度ほんとうに進んでおるのか。われわれが今まで行政調査やその他でいろいろ伺いましたが、聞くところによると、どうも体裁をつくろっておるだけで、実質的には今まで説明を受けたことがほんとうに進んでいるとは考えられないような節が多いのでありますけれども、一体これはどういうことになっておるのか。それからもう一つは、土地買収の方法がちまたに伝えられるような方法であるとするならば、これは改善をしなければならぬと思うのです。土地買収の方法をどういう方法でやっておるのか、この二つについてお答え願いたいと思います。
  274. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 こまかい問題でございますから事務当局をして答えさせます。
  275. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 東海道新幹線の全体の工事の進捗状況は、用地の関係につきましては、大部分の用地の買収はすでに決定いたしておりまして、用地代の支払い等もあと若干残っておりますが、ほとんど全区間にわたりまして用地を確保することはすでにできましたので、これら全区間にわたりまして目下工事を進捗せしめつつあるわけでございます。そして工事の中で特に長大なトンネルあるいは橋梁等、工事に長期間を要するものにつきましては、早目に着工いたし、また御承知のごとく丹那隧道等すでに貫通いたしたものもございますし、全体から申しますと、工事の進捗状況はおおむね順調に進んでおるということを申し上げられるのではないかと思っております。大体の状況はそういうことでございます。
  276. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それは私が今までに聞いた説明なんです。ところが、実際にはまだ困難な個所が数カ所残っておると聞いておるのです。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 しかも、まだその中には全然手のつけられないような状態にあるものもあるという。しかるに、そういう安直な考えでこれが進められると思われますかどうか。また土地の収用方法などいろいろの点があるが、これは変えることができぬといわれておる。従って膨大な金になっても自力でこれを解決しなければならぬようなことがあるといわれておる。これらの点についてはどうなんですか。これは予算上大へん問題になると思いますから、お伺いしておきたいと思います。
  277. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほど、ほとんど全区間にわたって必要な用地は確保されましたということを申し上げましたが、きわめて小部分、ごく部分的には、御指摘のように、どこかで家が一軒非常に話がもめておって立ちのかない者があるとか、あるいはその他の問題で地元との間にいろいろもつれた話等がありまして、まだ片づいておらないというところもございますけれども、それは全区間から見ますとほんの数カ所でございまして、近いうちにいずれも話をつけて円満に買収することができるという見通しでおりますので、それほど御心配をおかけしなければならぬということにはなるまいというふうに思っております。
  278. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今は新線の建設に血眼になっておる。新線の建設というものがなるほど急を要することはだれもが認めているところですから、私もそれは否定いたしません。しかし、だからといって幾ら金をかけてもいいというものではないと私は思う。そんな放漫なやり方をしろとは言っていないと思うのです。しかるに、説明によりますと、この計画がなされたのは昭和三十二年の物価を基礎にしている。その後鉄道が敷かれるということになって、たちまち土地の値段が高騰した。そのために予算が膨大な数字に上り、従って本年度予算においても百九十億以上の金が不足をする。従って、周辺のいわゆる第二次五カ年計画に基づきまする保安施設の増強あるいはまた輸送力の増強その他の必要な施設の改善等に要する費用がどうも狂いそうだ、こういうようなことが言われておるのであります。なるほど新線をつくるということについては、それは重大でありましょうけれども、   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 そのために今日三河島事件やあるいはまた南武線のごとき事件が起きておる。こういうときに、そういったいわゆる第二次五カ年計画に基づいて行なわれる必要なる措置が、来年度予算において変更されるようなことがあれば、これは私は重大問題だと思う。それは東海道新幹線を敷いてなるほど東京−大阪間は便利になるかもしれないけれども、その周辺の地域の犠牲によってこれが行なわれるということになれば、私は国民全体が納得をしないことになると思う。一体これをどう処理されるつもりか。この経費の膨大化してくる膨張をどういうふうにまかなっていこうとするか、どういう処置をとられようとするか、一つその見通しについて大蔵大臣からお答えいただきたいと思います。
  279. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。御承知通り昭和三十六年から四十年までに新幹線を含めた五カ年計画が提出をせられておりますが、それによると九千七百五十億、こういうのであります。内訳が、一般改良が八千十五億、東海道新幹線が千七百三十五億、こういうことでありますが、その後物価の値上がりその他いろいろな事情で一般改良計画で千七百三十七億、それから新東海道線で九百五十四億。新東海道線は、千七百三十五億に対して九百五十四億の増高分を出してきておるわけでありますから、あわせて二千六百八十九億。一般の改良の方が千七百三十七億を入れて九千七百五十二億でありますから、九千七百五十億を一兆二千四百四十一億というふうに改良増高したいというような考えを国鉄当局は今持っておるようでございますが、この問題に対しては予算編成の過程において一つ十分検討しなければならないという考えでございます。また、一部においては値下がりをしておるものもありますし、これが内訳に対しては、ただいまのような問題もありますので、十分内容精査をいたします。いたしますが、新幹線にブレーキをかけるというようなことはないように、やはり考えなければいかぬと思います。同時に、ブレーキをかけないからといって、新幹線だけに重点を置いて、一般的なものが犠牲になってはこれはたまったものではないという気持は全国的にございます。中には新幹線に対して百億ばかりやむを得ず持っていったのではないかというような話もあります。それは一体どこから持っていったのだ、こういうと、一般改良費でもって今年度計画に入っておる地域で削られたとしたら、これはまた大へんな問題も起こすわけでありますし、こういう問題に対しては年次計画の内容も十分検討しながら、運輸省とも、国鉄、三者の間に十分検討して、国会で御報告のできる段階において財政措置を行なうというような基本的考えを持っております。
  280. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 大蔵大臣は大へんなことを言われた。この第二次輸送力増強計画というものは、これはわれわれに約束されたことですよ。国民に約束されたことですよ。それを検討し直すとは一体どういうことになるのですか。そうなれば勢い新幹線のために莫大な金を削られるということになるじゃありませんか。そんなことじゃ困りますよ。——それでは、そこは違っていれば違っているで釈明してもらいたいと思います。
  281. 田中角榮

    田中国務大臣 現在国会でもって御承知になっておるものは一般改良費が八千十五億、新東海道線が千七百三十五億、合計九千七百五十億というものが国会に出ているわけです。われわれも承知をしております。それに対してあらためて新幹線は九百五十四億も、いろいろ物価の値上がりだとか地価の値上がりだとかそういう問題で千七百三十五億のほかに九百五十四億かかりまして、千七百三十五億でできる予定だったものが二千六百八十九億かかります。こういうことが今出ておりますが、これをうのみにするわけには参りません。こういう問題に対しては十分内容を精査もいたし、運輸省との間にも意見を調整をし、また、国鉄の事情も十分聞かなければ、これをうのみにするわけにはいきませんが、だといって新東海道線の緊要な事情にブレーキをかけるようでは困りますので、工事を進めていける範囲内において内容を精査をいたします。それで三者が十分納得して国会に責任を負えるような態勢で臨みたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  282. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、それならば今言われた内容について、どういう内容をもって精査検討されようとするのか、これを私は聞きたい。そうでないと、これはみな納得しないと思います。
  283. 田中角榮

    田中国務大臣 まだこれはほんとうの大ざっぱな数字でありまして、私はこまかい問題を承知をいたしておりませんが、いずれにしても先ほどあなたが言われた通り、私もまた同感であります。三河島事件にもある通りに、新東海道線が急ぐからといって、ほかのところを削ってきたり、ほかの保安施設や改良施設が手控えになったり、また、地方格差の是正とかいろいろな問題があるにもかかわらず、その計画を無断で縮小して新東海道線につぎ込むとか、そういう問題は困りますから、そういう問題は原計画を進めるようにしながら、実際のこの九百五十四億というものはどういうものであるのか、私もまだ承知をいたしておりませんが、いずれにしてもこれを決定するときには、運輸省の御意見も聞き、また大蔵当局の意見も十分申し上げて、少なくとも国鉄、運輸省、大蔵省三者が国会、国民に対して責任を負えるような態勢まで詰めます。こういうことを申し上げたわけでありまして、内容に対しても、もしあれでしたら国有鉄道当局から説明させます。
  284. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 内容についてはそれではまた後刻尋ねることにいたしまして、時間がありませんから大ざっぱにいきます。国鉄にお伺いしますが、今運輸大臣が認められたように、土地問題については事件が起こっておる、まことに遺憾だ、こういうふうに認められておるのです。ところが、国鉄当局が過般の運輸委員会あるいは参議院における答弁等において、新聞の報道や雑誌の報道は、それは違うのです、あれは極端にいうとうそを言っているんだと言わんばかりの答弁をされておるのです。私は、いまだかつてそういうような、全然虚構な報道をして、報道機関の権威を失墜するようなことはあり得ないと信じておるのです。だれもそれは全面的にその通りでございといって自分のとった行為を不利に陥れるような弁解はしないと思う。しないと思うけれども、そういうことは、私は心の底に、たといそれが全部がそうでないにいたしましても、やはり反省をして、謙虚な気持でまみえるだけの態度があってしかるべきではないかと思うのです。一体この日本開発会社というのは、これは国鉄の元職員であった中地氏が社長になっておるのだそうだが、この中地新吾氏と国鉄との関係は新聞にも報道されておる通りで、この事実というものは私は間違いないと思うのですけれども、これは否定されますかどうですか。
  285. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お答え申し上げます。  過去におきまして、いろいろな問題で汚職容疑というようなことを出しましたことについては、私どもといたしましてもざんきの至りにたえない次第でございまするが、今お尋ねになりました中地氏の会社との関係につきましては、過般来他の委員会等において関係者から御答弁も申し上げたところでございますが、十月十日前後の新聞に出ました一番要点と思われますのは、何か中地という人の関係しておる会社から、特に国鉄が高い値段で土地を買っておるのじゃないのか、そのことに関連していわゆる汚職に類するようなことがあったのではないかというような点が大きく取り上げられておりましたので、私どもといたしましても、もしその通りの事実があったといたしますればまことに申しわけもございませんし、大へんなことでございますので、私どもといたしましても、さっそく十分部内でわかります限りのことを取り調べておるわけでございまするが、調べましたところでは、新聞に報道されたような事実は認められませんので、そういう意味のことを御答弁申し上げたのであると思います。そういうわけでございます。
  286. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 時間がきましたから、私は運輸省と建設省に——建設省おられますな、もう一問だけお伺いをいたします。  最近の道路行政については、河野建設大臣が非常にはっぱをかけて進められておるようでありますし、大蔵省もそれを認めて予算は十分つけておるようでありますから、大へんけっこうだと思うのですが、しかし、建設省が出した車両制限令、御存じですか。この車両制限令によりますと、五メートル五十以下の一車線においては二百メートルごとに六メートル五十の待避線をつくらなければならぬ、こういうきびしい制限を付して、これは来年の七月でその猶予期限が切れると聞いております。もしそういうことになると、国道もまだ六メートル五十に整備された国道ばかりではございません。はなはだしいところは三メートル九十、四メートル二十という道路がおもでございます。北陸地方においてもそうだと思いますが、大蔵大臣、どうです。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 それでただこういうものを出して、そしてこの道路に合う自動車を走らせない場合にはその型式を変えさせるとか、あるいは臨時バスの増発はまかりならぬとか、こんなきびしいことを言っておいて、道路五カ年計画などと政府はたびたび計画はお出しになるけれども、一向に——その計画に基づくものは、国道であるとか、あるいは名神国道のごとき新線であるとか、派手なところは一生懸命やっておられますけれども、肝心の政府の言われる地域格差の是正であるとかなんとかいうことで、農村方面やあるいは僻地方面からどんどん今日では都市へ働きに出ておる人々に対しても、こういう制限令があったら身動きとれぬじゃないですか。運輸省はどういう見解でおられるか。それから大蔵省は、こういうものを建設省が出す限りにおいては大蔵省もこれはお認めになっておるのだろう。それならば、その責任上道路の整備については一体どういうようにされるのか。これは国道だけではない。県道、市道を含めて、一体これに適応するところの道路の拡幅工事についてどういう工合に予算をつけられるつもりか。来年度までにこんなものが解決できると思われるのかどうか。建設省としてはこういうような制限令を出しておいて、そして道路の拡幅工事や何かが間に合うと思っておるのか。大衆に迷惑をかけずに、この制限令をあくまでもたてにしてこういう制限を付そうとされようとするのか、それぞれお答えを願いたいと思います。
  287. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  道路整備の急であるということは、もう私が申し上げるまでもなく、皆さんも御承知通りであります。現在法律に基づいて道路整備五カ年計画ということで、二兆一千億計画で道路整備を行なっておるわけでありますが、この計画自体も小さいというふうにも言われております。しかし、これは来年度に二兆一千億計画を、二兆五千億にも三兆にも三兆五千億にも改定しなければならぬという議論がありますが、私はこの道路五カ年計画にずっと初めから関係しておるものでありますので、二兆一千億を二兆五千億、三兆円に変えても、必ずしも大幅に伸びるかどうかは、財源の問題として問題はあると考えております。それは御承知昭和二十七年に道路整備費の財源等に関する臨時措置法というのが出まして、当時年間八十四、五億であった道路費用が、少なくとも三十六年から五カ年間二兆一千億という、当時からいうと一番予算の中で伸びたのは道路の整備ではありますが、しかし、経済の伸び方、都市に対する産業人口の過度集中というような面から比較してみますと、まだまだ道路整備というものが非常におくれておるという事実は御指摘の通りでございます。でありますから、道路整備に対しては、有料道路法というような法律も抱き合わせたりしていろいろな施策を行なっておるわけでありますが、これをもって万全であるというふうにはとても考えられない。まさに道路整備は焦眉の急であるというふうに考えられます。三十八年度からどのように道路整備の財源をつけ得るかは、なかなかむずかしい問題ではありますが、いずれにしても、最重点的な投資として何らかの処置をしなければならないということは考えております。今御指摘になりましたのは、きっと都市における制限だと思いますが、私もその内容は十分承知はいたしておりませんが、日本では、先ほどあなたが言われた通り、二メートル七、八十から三メートル、四メートル、四メートル五十、五メートル五十、六メートル——六メートルの道路というのは、十五万キロのうち全く幾らもないというような状態でありますが、そこに全然道路幅員に関係のない大型バスの運行を免許しておる。すでに免許されておる運行を停止するわけにはいかないので、やむを得ず待避場をつくれというような基準を設けたのだと思います。一応のめどとして来年の七月という制限令を設けたと思いますが、これは全く過渡的な現象でありまして、それで解決できる問題ではありませんし、そんなことを来年の七月までに全部やれということになれば大混乱にもなるであろうと思います。しかし、それが全然なくて今まで通りでいいということになると、もうバスが通ったら全然人が通れない、自転車も家の中に飛び込まねばならぬというような、非常に細い特殊な路地もたくさんありますので、そういう問題はできるだけ早い機会になくするような状況まで道路整備を進めなければならぬだろう、かように考えておるわけであります。
  288. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 運輸省どうですか。
  289. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  御指摘のようなことは、実際さきに大蔵大臣から言われたように、道路計画が整備しない限り行なわれないことなんですから、道路計画と相待ちまして改善すべきは改善し、そのようにできたところはそれでいくというように私は考えております。私も制限令のこまかい内容をよく存じませんから、私の考えだけを申しておきます。
  290. 尾之内由起夫

    ○尾之内説明員 車両制限令は昨年の七月に公布になりまして、昨年の九月から一部を除きまして施行いたしておりますが、ただいまお話のございました問題は、路線をきめて通っておりますバスまたはトラックについての問題でございます。これにつきましては猶予期間を置きまして、三十九年の七月までに何らかの方法で通れるようにするというようなことになっております。それで猶予を置きましたのは、御指摘のように、こういうバスあるいはトラックが通れなくなりますと、一般大衆に大へん迷惑を与えますので、その間にできるだけ道路を直す、あるいは車両の小型化をはかる、あるいは経過地を変えるというようなことで、できるだけそういう支障がないようにする期間を与えるためにそういう措置をとったものでございます。もともとこの制限令は、御承知のように狭い道路に大型の車両が通りまして、非常に交通の危険を伴う、あるいは道路が破損する、こういったことを防止するためにとられた措置でございまして、車両を通さないということが目的ではございませんので、私ども五カ年計画でもできるだけそれに間に合いますように手当をしたいという考え方で、ただいまそれぞれ各地区におきまして建設関係、運輸関係、警察関係、三者の協議会を開きまして、どこがどういうふうに困るであろうかということをよく調べまして、それの対策をとるように準備いたしております。そういうような方針で進んでおります。
  291. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 時間を超過しましたからこれでやめますが、このことで大混乱が起きないように、一つ国道、県道の適切な個所についての重点拡幅を実施するように、できればこの補正予算ででもやらなければならぬのですから、一つ希望いたしておきます。
  292. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 川俣君。
  293. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がなくなって参りましたので、一問だけお尋ねと意見を述べたいと思うのであります。  それは三十七年の林業関係の予算実施状況から見て、三十八年の予算編成について十分意を用いていただかなければならないという点だけを指摘したいと思うのです。そこで三十七年の予算状況から見まして、最も問題になる点を指摘いたしたいと思うのですが、林野庁が林野行政及び森林経営を行なっていく上に問題となる点は何かというと、森林経営を行なう上に経営規程というものがありまして、それに準拠して行なうということが原則になっております。ところが、これに従わないで運営が行なわれたりいたしておるのではないか、その規程の基準になっておりまするのは第二条ですが、「国有林野は、国土の保全その他国民の福祉の増進を図ることを旨とし、森林資源の培養、森林生産力の向上及び経営の合理化に努めて、経営しなければならない。」というのが経営の目的になっております。それで具体的な方針として出されておるのは、三条の二号ですが、「伐採跡地及び未立木地」まだ木が育っていない土地「に対する植栽、」木を植えることです。「林相の改良、」これは森林をいい状態に改良するということです。「林分の保有その他により、森林資源の培養及び森林生産力の向上を図ること。」こうなっておるのであります。林野庁が誤っておるのか、大蔵省が理解がないのかわかりませんが、問題になる点はどういうことか、大臣にわかりやすいように言います。林野庁は木を切れば黒字だし、木を植えれば赤字だと言う。普通ならば、設備投資が過剰だ、過剰投資はいけないということがありますけれども、森林においては三十年、四十年後の育成が必要でありますから、それを伐採するには三十年後、四十年後であります。従って、これは今投資が行なわれましても、過剰投資という形ではないわけです。ことに森林資源が荒廃をしてきておるのでありまして、いつ伐採をするかということは、国民経済の伸展に寄与するために伐採をしなければならないでありましょう。従って、国民経済が非常に発展をしたときには増伐をしなければならないでありましょうし、今日のように木材の需要が緩慢になって参りまして、むしろ軟調になったときには、価格の調整の上からも伐採を制限をすることが必要になっておるのじゃないか。その反面において、未立木地であるとか伐採跡地については造林を進めていかなければならぬのではないか。これが造林すれば赤字だなんということは聞いたことがありますか。大蔵大臣、農業上は生産というのは金をおろして育成する二とが生産なんです。そうじゃないですか。ところが林野庁は切ることが生産だ、こう言うのです。植えることが出費であって、切ることが生産だという、こういう考え方なんです。林野庁の生産班というのは切る方なんです。植える方じゃない。林野のどの規程から見ましても、生産というのは植えることになっておるにかかわらず、切ることが生産だと言う。大蔵省も今年のバランスを考える上から、植えることの支出の方は押えて切れと言う。それでは日本のこの経営規程に基いてやっておらないということになるんだが、これは大蔵省が悪いのか、林野庁が悪いのか、大蔵大臣、どう判断になりますか、この点をお聞きしたいのです。
  294. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  どうも釈迦に説法のようになって恐縮だと思いますが、さすがに御専門でりっぱな御意見であります。私たちも国有林野に対しては新しい角度から国有林野行政、また林野特別会計というもののあり方を新しい視野で検討段階に至っておるだろうということは考えておるわけでございます。林野に対しては大体三つくらいに私たちもしろうとながら考えておるのであります。今言われた一般論、いわゆる総体的に国有林野のあり方に対してのお考えが一つありますし、また地域的な問題としては、北海道は町村で持て余しておりますから、これは一つ買い上げてもらわなければいかぬし、そうして南九州あたりは取り上げたものを明治初年に返って町村財政に無償払い下げをしなければいかぬ、こういう大きな問題があります。その上なお林野の再編というものを十分検討して、しかる後に国が一体どういう責任において植林をし、伐採という場合に対しては、需要供給に対してのバランスをどうとるかということを当然考えて、その上に国有林野の持つ特別会計のおおむねのワクをきめていく時期だろうというふうに考えまして、今までの長い間の、明治からの林野特別会計の数字だけを追って考うべきではないというぐらいには考えております。  もう一つは、林野のいわゆる材木という問題だけではなく、いわゆる植林をするということによって国が恩恵を得る水源涵養の問題、それから治山の問題、治水の問題等もありますので、こういう問題も合わせて、長い伝統を持つ林野行政ではございますが、専門家だけの目で見るよりも、より高い目から第三者の知恵も入れて検討を必要とするときだろうというふうに考えてはおります。おるだけであってまだその結論が出ませんので、金を出すというところまではいきませんが、しかしこれはいろいろな問題、特に植林の問題、伐採したあと必ず植えなければいかぬ。木は少なくとも三十年かかるのでありますから、そういう長期な先行き投資というものに対しては、当然考えていかなければいかぬということでありますので、今までは林野が悪いとか大蔵省が悪いとかお考えにならないで、一つ新しい視野と角度で林野行政を考える、こういうふうにお願いできれば幸甚だと考えます。
  295. 川俣清音

    ○川俣委員 これに続いて一点だけ申し上げておきますが、第六回の森林組合の全国大会においても、最近の国民経済の発展に対応するため木材の需要構造の変化に応じた生産量の増大、林業経営の改善による生産性の向上並びに林業所得の増加をはかる必要があるとこう述べております。これは与党の方が会長もやっておりますし、私も必ずしも野党の立場からばかりではなくして、全国会的な考え方で善処を望みたいのです。今大蔵大臣は、惰性でやっておるのを新しい角度から検討しなければならない、こういうことでしたが、それを信用しますが、それではこの三十八年度予算編成の上にそういう点が現われるということを期待してもよろしいですか。ここの答弁だけであとは濁すというようなことは、あってはならないと思うのです。
  296. 田中角榮

    田中国務大臣 特に期待されるほどの結論が出るかどうかわかりませんが、これはなかなか大きな問題でありまして、やはり皆さんのような御意見を十分しんしゃくしてやらなければならない問題でありますが、重点的な問題として、今までのように、特別会計の中の赤字だからどうだとかいう近視眼的な問題で見るべきではないということだけは申し上げ得ると思います。
  297. 川俣清音

    ○川俣委員 大体これで了承しますが、特別会計の中には、歳計剰余金といって、大蔵省からお世話にならないでも持っておるのです。大蔵省がむしろこれを利用しておるだけなんです。
  298. 田中角榮

    田中国務大臣 わかっております。
  299. 川俣清音

    ○川俣委員 わかっておるなら、それだけわかっておるなら、ここで言明できるはずじゃありませんか。新しい方針予算を組むというだけならばできないことはないでしょう、それだけわかっておるなら……。
  300. 田中角榮

    田中国務大臣 もう少し時間をいただきまして……。
  301. 川俣清音

    ○川俣委員 時間といってももう編成方針に入っているはずです。
  302. 田中角榮

    田中国務大臣 査定中でありますから……。
  303. 川俣清音

    ○川俣委員 査定はだめなんです。今まで惰性でできた予算でなければ大蔵省は認めないから、惰性に基づいた従来だけの範囲内でしか予算要求できないような考え方になっておる。それが問題なんですよ。
  304. 田中角榮

    田中国務大臣 慎重にかつ勇気を持って前向きにやります。
  305. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会