○成田
説明員
日本の石油の価格は、石油の自由化を前にして非常に過当競争の結果下がって参ったのでございます。そして去年の夏ごろ、来年の十月――従ってことしの十月ということになりますが、原油の自由化をやるという
政府の
決定がありまして、それ以来非常に急速に値段が下がって参ったのでございます。その結果、最近の五、六月ごろの価格で見ますと、大体石油の原価九千八百五十円くらい、これがコストだと思うのでありますが、これに対しまして九千百円くらいの原価を大幅に割ったような値段がつくられて参ったのであります。そしてその後さらに七月、八月、そして十月からの自由化というので、さらに下がって、おそらく原価を現在キロリッター当たり千円以上割っておったのではないかというような状態になっております。従って、通産商といたしまして石油審議会というのがありまして、これは石油業法の運用のための審議会でございますが、第四回の運輸審議会が十月の十日に開かれまして、ここへこの状況を、石油の価格が暴落している、こういう状況を報告して実情を訴えたのでございます。それでその審議会におきましていろいろな
意見がありましたが、
日本の基礎
産業である石油
産業がこういう原価を千円も割っておるような状態、これを放任していいかどうかという非常に真剣な討議がなされまして、何らかの価格是正
対策が必要なんではないかというように審議会の大方の
意見が一致したのでございます。それで、じゃ価格是正
対策としてどういう方法があるかという問題に入りまして、これは業界の建値制とか、業界の自主的な
措置によってやる方法と、石油業法のちょうど十五条にこういう不況の場合に標準価格という制度がありますが、このいずれによってやるかという問題が次の第五回の審議会、十月の二十九日に行なわれましたのですが、そこにおきましていろいろ討議されまして、結局業界の自主的な調整は独禁法の
関係もあるし、とてもできない問題でもあるし、それに石油業法がそういう場合を予定して標準価格制度というのがとられておりますので、これをやるべきじゃないかというような結論に達して、そしてその後審議会の中に小
委員会をつくりまして、三回にわたって標準価格をいかにして設定するかという問題が討議されたのでございます。それで、その小
委員会において一番問題になりましたのは、標準価格の、これは全体の平均でございますが、この水準をどこまでにするか、これに対しましては、石油
産業がある程度利潤を得るような、原価に利潤をプラスした水準のものでないといけないという
意見と、今現在のような非常に不況下において原価をプラス・アルファするというようなアルファを認めるのは、需要
産業の影響ということを
考えましても適当じゃないのじゃないかという
意見と二つに分かれまして、結局原価ベースの低い方をとるべきじゃないかというので、九千八百五十円というのが平均原価――石油会社が現在十六、七ありますが、その平均の原価九千八百五十円というのがとられたのでございます。
それからもう
一つの大きな問題は、この平均原価を、石油には揮発油からC重油までいろいろな製品がありまして、これがいわゆるどんぶり勘定みたいになっておりまして、この原価を油種別にどういうふうに配分するかというような問題が第二の大きな問題になったのであります。これは結局揮発油と重油との振り合いをどうするかという問題でございます。これに対しましては、
日本の石油価格は、外国に比べますと、揮発油が国際的には若干安くて重油が高いという状況にありますが、
産業界あたりからは国際価格に合わせるべきじゃないかというような
意見も出ましたのが
一つと、それから去年の四月から揮発油が三千四百円増徴になっておりますが、その揮発油税の増徴分を石油業界が全部かぶって、そして値段がどんどん下がっておったという情勢を
考えますと、揮発油の負担分を重油よりも大きく負担をすべきじゃないかという
意見もかなり強くありましたのでありますが、これはガソリンの大幅引き上げ問題は非常に物価上も問題があるというので、両方、重い方も軽い方も平均的な配分方法で揮発油なりあるいは重油の値段をとったのでございます。その結果、十一月の五日に第六回の審議会をやりまして、ここにおいて標準価格としまして揮発油一万一千三百円、C重油六千八百円という
決定になりまして、これが十一月の十日付で官報で告示をされまして、標準価格の設定ということになった次第であります。