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1962-03-14 第40回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十四日(水曜日)    午後二時五十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員杉原荒太君及び藤田藤太郎君 辞任につき、その補欠として井川伊平 君及び藤原道子君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            加賀山之雄君    委員            井川 伊平君            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            古池 信三君            櫻井 志郎君            下村  定君            田中 啓一君            館  哲二君            野本 品吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            亀田 得治君            木村禧八郎君            高田なほ子君            羽生 三七君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            市川 房枝君            牛田  寛君            岩間 正男君   国務大臣    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    労 働 大 臣 福永 健司君   政府委員    経済企画政務次    官       菅  太郎君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局次    長       谷村  裕君    厚生大臣官房会    計課長     今村  譲君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省医務局長 川上 六馬君    厚生省社会局長 大山  正君    厚生省児童局長 黒木 利克君    厚生省保険局長 高田 浩運君    農林政務次官  中野 文門君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房予    算課長     檜垣徳太郎君    農林省振興局長 斎藤  誠君    食糧庁長官   大沢  融君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告をいたします。  昨日白木義一郎君及び本日藤田藤太郎君、杉原荒太君が辞任せられ、その補欠として牛田寛君、藤原道子君及び井川伊平君が選任せられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、先日委員長に御一任願いました公述人の選定につきましては、お手元にお配りしてございまする名簿のとおり決定いたしましたので、御了承を願いたいと存じます。   —————————————
  4. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昨日、委員長及び理事打合会におきまして、一般質疑の取り扱いについて協議いたしましたので、その内容について報告をいたします。一般質疑は本日より開始し、質疑時間及びその各会派への割当並びに質疑順位につきましては、総括質疑と同様にすることといたしました。さよう取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  6. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより一般質疑に入ります。藤原道子君。
  7. 藤原道子

    藤原道子君 私はこの際、医療制度について御質問いたしたいと思いますが、まず十三日の毎日新聞によりますと、広島長崎原爆病院におきまして、非常に最近ガン患者がふえてきて、はなはだしきは半数に及ぶ者が死亡しておる。にもかかわらず病院ガン関係施設ができてない。これを日赤病院に依頼してわずかにしのいでおりましたけれども日赤でもすでに手をあげてしまった。で、これを厚生省に相談して何とかしてほしい、こういうことを申し出ているけれども厚生省もなかなか腰が重いというようなことが報じられておりますが、これが事実であるかどうか。また原爆によって侵されたものと推定される肺ガン喉頭ガン、これが非常にふえておるのに、これを厚生省対策を今まで放置されておる。さらに地元から要望されたのにもかかわらず、いまだ腰をあげていないというようなことは許されないことと思いますが、これに対してのこの新聞の伝えることが真実であるかどうか、もし真実とするならば、対策をどう立てるつもりであるか、これをまず最初にお伺いしたいと思います。
  8. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。原爆患者関係でございますが、最近の状況から申しますと、比率的にガン患者の率が多くなっておるという事実はあるように思います。これは白血病関係の率が減って参りました。さような関係で、率が高くなっておるように聞いておるのであります。またこの治療施設といたしましては、お話にもございましたように地元赤十字病院が輻湊いたしておりまして、十分なベットがない、こういうような状況でもございますので、もよりの国立病院、その他の連携をとりまして、その対策に支障のないようにやっていきたいということで、せっかく指導いたしておるところであります。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 せっかく指導しておるというだけのことでは、まことに満足がいかないのでございますが、さらに厚生省では、原爆症に対して喉頭ガンとそれから肺ガン原爆によるものと推定するけれども、その他の機能におけるガンは、原爆によるものとは認めないというような態度をとっておられると聞きますが、それは少し過酷のように考えますが、ほんとうにそうですか。
  10. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 専門のことになりますので、政府委員からお答えをさせていただきます。
  11. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 原爆医療につきまして、原爆医療法の中に原爆医療審議会というものがございまして、厚生大臣医療の方針をきめるには、この審議会意見によってきめるということになっております。これで従来皮膚ガンあるいは今お話肺臓ガン喉頭ガン、それから肝臓ガン、こういうようなものをケースに応じまして認定いたしまして、これを先例といたしまして拡大しておる。現在では約七種類のガンにつきましては対象にいたしておるわけでございます。またその他内臓のガン要請はございますけれども、これが放射能被害と関連が学術的に認められたということで審議会が認定したものは、次々とこれは対象にいたしております。
  12. 藤原道子

    藤原道子君 私は病気というものは、どんどん進行する状態にもかかわらず、そういう場合にも、やれ認定がどうだとか、審議会がどうだとかというようなことで人命が失われていくことは、多々例があると思うのです。そうでなく、ガンならば、たとえば原爆症であろうとなかろうと、広島長崎において起こったこれらの被害を国としては当然責任を持ってやるのが私は妥当だと思う。厚生省のこうしたことに対する態度は逃げ腰であり及び腰であって、まことに納得しがたいものがございます。私はこれらのことに対しては、地元の強い要望、これら患者の切なる願いを聞き上げて、さっそく対策を立てられますことを強く要望いたします。
  13. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 原爆症であろうとなかろうとというようなお話でございますが、そのとおりだと私は思います。原爆症であろうとなかろうと、患者につきまして厚生省としてさらに進展をはかって参らなければならない状態にあるということは、よく自覚しておるつもりであります。できるだけその努力をいたしたいと存じておるわけでございます。ただ原爆医療法関係につきましては、原爆医療法として特別な扱いをいたしておりますので、これに伴ういろいろな手続を必要とする、こういうことになっておるわけでございますので、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  14. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。ガン研究について国として十分な予算措置がはたしてできているかどうか、これが一つです。若干の予算のふくらみを見せているようですけれども、必ずしも本格的には進んでおらないという世評もあります。現在のガン研究所の中に、今指摘された原爆後遺症によるガン研究等について、どういうような研究措置が現在とられておるか、二点についてお尋ねをいたします。
  15. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ガン研究につきましては、国民の皆さんの非常に関心の深いところでございまして、政府といたしましては、これが研究の促進のために極力努力しておりますが、御承知のように国立ガンセンターというものも、せんだってようやく発足いたしましたようなわけで、今人員ないし設備等整備に努めておるところでございますが、ここではもちろんあらゆる関係につきまして研究を進めて参りたいと考えておる次第でございます。なおまたガン対策といたしましては、国立ガンセンターのほかに、都道府県立ガンセンターについても漸次整備をはかって参りたいと存じます。来年度予算には、都道府県立ガン治療施設の助成に関する予算も若干ちょうだいしておるようなわけでございますが、この問題につきましては十分関心を払いますとともに寸今後ますます努力をしたいと思います。(「大蔵大臣予算が少ないから……」と呼ぶ者あり)
  16. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算は、厚生省と相談の上で私どもはこれは査定し、計上しておるのでございます。
  17. 藤原道子

    藤原道子君 厚生省と相談して予算を出すという御答弁でございますが、厚生省から要求いたしましても、大蔵省でいつもばっさり切っているじゃありませんか。私は医療問題につきましても昨日委員会質問したのでございますけれども、納得がいかないのです。したがって、きょうは大蔵大臣総理に十分お伺いをしたい、こういうことで総理も御出席を求めておりましたが、御出席がないのは非常に遺憾でございます。(「一般質問だから」と呼ぶ者あり)私は総理に十分お伺いをしたい。というのは、かつて総理衆議院におきまして、日本医療制度については欠陥があることを認める、こういうことを言っていらっしゃいます。ところが、それに対してどういう行政指導をなされたのか、どういう対策をしてこられたか、総理人命に対する心がまえを総理から直接聞きたかったのです。したがって、きょうは一般質問だから総理お出ましにならないとおっしゃいますが、一般質問総理が出て悪いということはない。私は当然出ていただくべきだと、こう考えて今要求したところが、こちらでもじゃもじゃ言っていらっしゃる。非常に遺憾であります。私は非常に残念でございますが、与えられた時間も限りがございますので、質問を続けます。  そとで、委員長にお伺いいたしますが、総理お出ましになれない理由は、どういうことなんですか。
  18. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 私から藤原君にお答えを申し上げますが、私の今まで知っておりまする限りにおきましては、総括質問において総理を中心として質問をする、一般質問に入りましては、総理国政全般責任者として非常に多忙なことでもありまするから、この一般質問においては各省大臣がみなそれぞれ担任をいたしておりますので、その各省大臣に対して詳細に御質問を願う、こういうようなことにして、国会とそれから政府との間の協力関係を持っていくというようなふうに了承いたしておるわけであります。どうしてもしかし総理にこれを聞かなければならぬというお考えでございましたならば、あるいはまた締めくくりの総括質問もございまするから、そういう機会にひとつお述べを願いたい、こう考えるわけです。
  19. 藤田進

    藤田進君 議事進行について。委員長がそういうふうに言われるということになれば、理事としても議事進行発言をせざるを得ないのですが、一般質問であっても総理が所要の場合は出てこられている先例は多々あるのであります。今例示せよと言われればいたしますが、今委員長が言われた理由じゃなくて、質問者においてはできれば所管大臣にという要請であれば、質問者はがまんするかもしれません。今の委員長の御発言は少し先例その他にもとる点があります。その点はもっと委員長、御勉強の上に御勉強していただいて、質問者に何らかの要請をされることが至当であろうと私は思う。
  20. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君は予算委員会についてはほんとうのベテランでありまして、私も教えていただかなければならぬわけであります。したがいまして、私もなるべくはそういうような国会政府との協力関係を、大体そういうことで進めていくのがよくはないかと思いまするが、しかし藤原さんには、今藤田君のお教えもありますから、ひとつできるならば厚生大臣に詳細に、あるいは大蔵大臣にお問いを願って、どうしても総理意見を聞かなければならぬという御要請であれば、その点はまた別にひとつ私も考慮いたします。それでひとついかがでございましょうか。藤原さん二人の大臣にひとつ十分突っ込んでお聞きを願いたいと思います。
  21. 藤原道子

    藤原道子君 私は最初も申し上げましたように、総理に、日本の今の悲惨な医療状態をよくわかってもらい、総理医療欠陥を認めておいでになるにもかかわらず、今日までこれが放置されておる、どういうお考えであるかを、私は人命を尊重すればこそ真剣にお伺いしたがった。したがいまして、総理に対する質問はまた後日に譲りまして、やむを得ませんので、関係閣僚に対しての御質問を続けたいと思います。  私はすでに灘尾厚生大臣にもお伺いしたのでございますが、今の医療実態は目に余るものがあるのでございます。しかも、それが医療従事者の非常な人員不足、ここに起因していると思います。今日の入院患者の実例を見ますと、夜勤などは一人で百人から三百四、五十人担当させられておるようでございます。夜中喀血患者が出て、ブザーを押しても看護婦はやってきません。それは看護婦さんは百人以上三吾人からの病床を巡回しているのですから、夜中喀血をした、看護婦がこない。入院をしておりながら、医者にも見てもらえない、看護婦もこないで死んでいく患者が国の病院で出ておるのです。あるいはまた、重症患者が放置されておりますために、天井からひもをつるして、これにすがって起き上がらなければ用が足せないのです。命綱と呼んでおります。患者にとってただ一つの命の綱だ。こういうことが国の病院で行なわれていいものでしょうか。私はこの点などに対してもっと認識を深めてもらわなければ困る。ところが厚生省では、医者がついていても喀血の場合には死ぬ場合もあるのだ、こういうことを言っていらっしゃる。ありますよ、確かに。私も看護婦でございますから、そばにいたって患者喀血で死ぬことはあるのです。けれども入院しておりながら、医者もいない、看護婦もいない、そこでさびしく死んでいった場合に、家族としてあきらめきれないのが私はあたりまえだろうと思う。これらに対して、私はこの席上であらためてお伺いしなければならない。さらに、もしも事故死の場合には、看護婦刑事責任が問われている。人手が足りなくて、一人で多くの患者を見さしておいて、事故死になれば看護婦刑事責任に問われる。こういうものがあっていいものかどうか。私はこの点についてあらためて厚生大臣の御決意を伺いますと同時に、こうした重労働を許しておることに対しまして、労働大臣はどうお考えになるか、この点もあわせてお伺いしたいと思います。
  22. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 病院実情について、実は昨日も藤原委員からいろいろ質疑伺いまして、私も教えられるところが多かったのであります。今日医者不足いたしておりますとか、特に言われておるのが看護婦不足の問題でございます。確かに厚生省といたしましても、全体的に見ました場合に、看護婦が足らないというような事実は認めざるを得ないと思います。これの充足につきまして、いろいろ苦慮いたしておるような状況でございます。お話の中に、まことに悲惨な事例を御引例になったわけでございますが、具体的なケースにつきましては、私自身は承知いたしておりませんけれども、もし医者がいない、看護婦がいない、そのために放置されておって、そうして死なれたというふうな事例があるとするならば、それはほんとうに相済まぬことであります。これはしかし、個々のケースについて考えてみなければならないと私は思うのでございますが、その点につきましては、従来もやっておることと思いますけれども、ことに国立関係病院でありますとか、療養所等につきましては、その実際の診療の状況等につきまして、さらに一段と視察を重ね、実情の把握に努めまして、改善を要する点につきましては急速に改善をして参りたい、かような考えをいたしておるわけでございます。何さま人手不足ということがいわれているわけでございますので、厚生省関係といたしましては、看護婦の配置の問題等につきましても、努力をいたしておりますのでありますけれども、なかなか思うようにも参りません。参りませんけれども、ある病院療養所から他の病院療養所に移せば、それによって一応間に合うというふうな問題もございますので、そういう点についての努力もいたしたいと存じます。また、人手不足に対する看護婦養成の問題でありますとか、あるいは処遇の改善でありますとか、こういう問題につきましても、さらに積極的に努力をいたしたいと思っております。
  23. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 医療機関に働く人々、ことに看護婦さんは、人の生命及び健康を預かる立場人たちでありますので、こういう人々労働条件につきましては、私どもも深い関心を持っている次第でございます。こういうことにまずいことがありますと、いろいろ憂慮される事態が起こる。現に一昨年以来たくさん問題等も起こっておりますので、私どもといたしましては、労働基準法上の指導監督につきましては、特に看護婦さん等につきまして重点をおきまして、昨年、今年等、そういうことにつきまして特段の力を注いでいる次第でございますが、御指摘のように、なかなか人手不足その他の事情がありまして、私どもから見ましても、満足な姿でないということを遺憾とする次第でございます。したがって、私どもは、先刻申し上げましたように、労働省の立場といたしまして、法の建前から、できるだけの指導監督を強化していきたい、こう考えているわけでございます。
  24. 藤原道子

    藤原道子君 できるだけの指導監督をしておいでになる、こうおっしゃいますけれども、どの程度の指導監督をしてきたか、ちっとも改められていないじゃありませんか。さらに灘尾厚生大臣が、もしそういう事例がありとすればと、こういうことをおっしゃった。まだ、私のきのうの御質問でも納得していらっしゃらないと思う。私は、ここにございますのは、私たち考えれば、あるいは看護学院では脈をとるときには、一人々々がとらなければいけない、ところがこのごろは大部屋に対しては人手が足りないので、タイム・ウォッチで、ただいまから脈摶をとります、用意して下さい、用意ドン、号令をかけます。患者人々々に脈をとらせている事例があるじゃありませんか。あるいはまた、インターフォンで、今お脈は幾つございましたか、患者自身がとっている、これでいいでしょうか。こんなことは看護学院では教えておりません。数だけを見れば事足りるのじゃない。脈の性質を見るところに看護婦の技術が必要になる。こういうことをしている。あるいは点滴注射、このごろは医療がだんだん高度化してきて、ほとんどの静脈注射点滴注射になっている。これはそばにいて、患者の顔色を見ながら、脈をみながらやるのがほんとうでございます。ところが、それだけの準備をしたら、看護婦さんは、ここまで薬がきたら知らせて下さいよ、あとには重症患者がうつろな眼でじっと注射器を見ながら注射をしているじゃありませんか。これが国立病院の姿です。ちゃんとここに写真をとっている。命綱写真もございます。こういうことで、それで日本医療行政が事足りるでしょうか、ここに問題があると思う。ところが、これは看護婦が足りないといえば、いや、空床があるからどうだとか、やれ、何だとか言っていらっしゃいます。ところが、これは厚生省が出している資料でございます。この厚生省資料を見ますと、昭和二十八年には一万三千五百八十七人であった。ところが三十五年には一万三千八百五十人で、わずかしかふえていない。仕事量におきましては、手術は一・六倍にふえている。分娩は二・三倍、調剤は一・九倍、エックス線は一・五倍、病理検査は一・二倍とふえている。仕事量は倍にふえている。しかしながら、従事者はほとんどふえていない。これで仕事がやれるでしょうか。これは明らかに政府の低医療政策が災いしていると思う。私は、こういう実態社会の人が聞きましたならば、入院するのもちゅうちょするでしょう。こういうことに対して、至急に対策を立てるべきだと思いますけれども厚生大臣はどうお考えですか。さらに、費用を詰めて詰めてこられました大蔵大臣、どうお考えでございましょうか。厚生省が要求をしても、たとえば四四制に看護婦を切りかえるときに、厚生省では千六百人を要求したのです。大蔵省は三百七人しか認めていない。千六百人と三百七人では非常に開きがあり過ぎると思う。こういうふうに大蔵省が押えるから、こういうしわ寄せは患者にき、従業員にくるのだと思いますが、これに対しての御答弁を求めます。
  25. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) だんだんと医療施設等もふえて参りまして、看護婦を必要とする施設数もふえてきておるわけであります。それを充足するだけの看護婦の数が足りない、こういうふうな現状になっておるわけでございますけれどもお話の中に出ておりました国立関係病院療養所等におきましても、実は相当な欠員がある。この欠員をまず充足したいというのでいろいろ苦慮いたしておるところであります。その欠員の穴埋めもなかなか思うように今日まで参っておらないことは非常に残念に思っておりますけれども、一そうこの方面については努力もしたいと考えております。なお、看護婦充足対策といたしまして考慮すべき点は、いろいろあろうかと思う。私もこの状態を座視するわけにはもちろん参りません。なるべくすみやかに成果を上げるように努力いたしたいと考えまして、具体的な対策をもう一ぺんはっきりしたものを出してほしい。これによってできるものからどんどんやっていこうじゃないか、こういうつもりでせっかく勉強してもらっているところでございます。なお、また、根本的な看護婦養成制度でありますとか、看護婦の資格でありますとか、そういうような点につきましても検討を要するものがあろうかと思います。これらの制度的な問題につきましては、現に医療制度調査会でもいろいろ御検討を願っておるところであります。これも推進をはかりますると同時に、当面なすべきことについて、なるべく早く措置をいたしたいという考えのもとに、せっかく勉強してもらっているところでございます。
  26. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一つ一つの問題がみんな費用に関することのようでございますので、総括してお答えいたしますが、私もそういうところまで手の届くだけの財政力を、国がほんとうに早くつけたいと考えております。各省から要求されている施策についての概算は、御承知のとおり三兆億円に上っておりまして、これだけの予算支出ができるとすれば一各官庁の、主管官庁のいろいろな施策に対して対処できると思いますが、これを今の国の財政力から見て、私どもは今度は二兆四千億円に圧縮いたしましたが、じゃあ、どこを圧縮するかということになりますというと、そこに急を要する問題、どうしても基本的な問題として解決しなければならぬ問題とか、いろいろございまして、その重要度に応じてこの予算の査定をやって、その各概算要求の削減に当たったわけでございますが、御承知のとおり、社会保障制度の社会保障費につきましては、一昨年とことしでは千二百億円増額をするくらいに私どもは非常にこれを重く見て予算の配賦をやったつもりでございます。じゃあ、このうちでどこを重点的に見たかと申しますと、やはり何といっても医療制度が重要だということを考えて、本年度の補正予算でも、来年度の予算でも、この点についての予算強化をやっておりますが、また、その医療制度のうちでもどこが重要かとなりますというと、この際はやはり結核に対する対策というものが厚生行政としては一番必要なことだ、日本中の結核患者を全部助けられるのならけっこうでございますが、命令入所にしましても、これはその趣旨から見て、低所得層の患者を家族から隔離するということがそのうちでも一番重要だ。まず制度が、新しい制度ができたんですから、そこに重点をおいて、今年度はこの程度でやろうというふうに、同じ厚生行政のうちでも厚生省と十分相談の上で、差し迫ってどれを一番重要に見て強化するかというようなところがら予算の配賦をやって、全体の予算を押えているというのでございますから、この一つ一つで見たら非常に不満足な点はあろうと思いますが、これは順を追ってだんだんに強化して行く以外には私は方法はないだろうと思います。厚生省予算についても、私どもは相当この予算については配慮を行なっているつもりでございますが、まだそういうこまかいところまでなかなか手の届かぬということは、これは遺憾だと思っております。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 私、納得できません。冗談じゃないです。国の施策で何が大事かといえば、命ほど大事なことはない。国民の健康の保持が最優先しなければならぬと思う。あなたは今結核予防法をまず取り上げるとおっしゃるけれども、結核予防法のほうから参りましても問題があるじゃございませんか。今社会保障が、特に医療保障のほうがふえたとおっしゃるが、大ワクの中で検討してみますとむしろ減っています。率からいえばそうふえておりません。ことに予防法におきまして命令入所患者を最優先する、まず家族の感染を防ぐのだとおっしゃる。ところが、鹿児島県その他では、この命令入所を受けない県があるじゃありませんか。これは一体どうなんです。あるいはまた、厚生省では命令入所の対象者を九万二千人と要求しております。ところが、大蔵省ではこれを六万二千人に減らしております。専門家の厚生省がこのくらいの対象者があるから予算に計上して要求した。大蔵省はきんちゃくのひもを締めるためにこれを六万二千に減らしておるじゃありませんか。ところが、三十七年度、この一月現在ですでに六万二千人いる。おそらく二月、三月で六万四千人を突破するであろうと厚生省は言っております。ところが、予算書を見ると六万二千しか決定していない。これで結核予防法を重点的に扱ったとおっしゃる。さらに、この決定をいたしましても、看護婦不足だからといって命令入所患者を断わっておる病院が出ております。重症患者入院を拒否する病院が出ております。幾ら結核予防法でそうしたとしても、看護婦がいなければ病院は運営できないのですよ。ここをどうお考えでございますか。
  28. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) だから今申しましたように、各官庁の要望は大きい。これを査定して減らすということが非常にむずかしゅうございますが、しかし、国の施策全般の均衡をとってこの仕事はやるよりほかございません。命令入所の問題も、三十六年度下半期からようやく実施した制度で、国費八割負担という制度はまだ実施して、ことしの予算は、三十七年度は二年目でございますので、その一挙に、要求が九万何千ありましても、やはりさっき申しましたように、まず低所得層の隔離ということを中心にそれに重点を置いて、そうでないほうを少しあと回わしにしてもらおうという比重をつけて、今年度はその程度にお互い話し合ってきめたということでございまして、どの予算を見ましても概算要求どおりに行なっている予算というものは一つもございません。予算委員会に行きますと、大型予算を組んだと非常に批判されるのですが、各委員会の要望はあなたと同じように、なぜここにもっとつけないか、つけないかという国会の要求で、おそらく四兆億円くらいの要求を各委員会を歩くと受けるというくらいのことですが、これはこういう時期に、国が財政力に応じた予算を組むというのは当然ですから、各官庁の言ったとおり全部予算が盛られるというものじゃございませんで、そのうちに比重をつけて、九万の要求があっても、今年度二年目の施策としては六万くらいでがまんしようという措置も、これはやむを得ないのじゃないかと私は思っております。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。大蔵大臣の御説明どうしても納得いかないのですが、まず第一に、今、藤原委員質問していますような、末端における人命に関するような非常な重大な問題が起こっているわけですね。これも結局予算の問題に帰するのですが、大蔵大臣はその末端のほうに予算が行きわたるような財政力をつけたいと言われるわけです。財政力については、もうこれは十分についているはずであります。その点については、大蔵大臣、もう財源がないとは言えないと思うのです、また言わせません。三十六年度は約二千億円の自然増収があるのでしょう。それを使わないで三十八年度にこれを景気調整として繰り越されるわけですよ。だから財源がないとは絶対に言えないですね。財源がないとは絶対言えません。あるのに、どうして末端にしみわたるような今藤原委員が言われるような、もう人命に関する重大な問題が起こっているじゃありませんか。ここまで予算がいかなければ、社会保障費いかにふえてみたところで、末端にしみわたらなければ何にもならぬ。財源関係では、これはもう十分財源はある。  それから第二点は、三十七年度の社会保障費は千何百億ふえた、こうおっしゃいますが、しかしそのふえる率ですね。全体の予算二五・四%ふえているのでしょう。社会保障費は一八%程度しかふえておりません。一番ふえているのは、公共事業費が二七%ぐらいふえているのですよ。非常な不均衡ですね。しかも、三十六年度における全体の予算の中に占める厚生省社会保障費の予算の比率が、三十七年度にかえって低下しているのですよ。比率は下がっているのですよ。ウエートが下がっているのです。これは非常に問題じゃないですか。予算の性格というのは、各費目のバランスでしょう、大蔵大臣言われるようにバランス、そのバランスが社会保障関係費は低いじゃありませんか。ここが問題なんです。藤原委員の問題にしておるのも、この点だと思う。財源があるのに、どうして今重大な問題が現実に起こっているのに、人命に関するのに、なぜ予算がつげられないか。厚生省が要求するたんびにこれを削っているのでしょう。ですからどうしたって納得でませんよ、今の大蔵大臣お答えでは。概算要求、概算要求はこれは削ったと言われるけれども、概算要求はいつでも例年の予算編成に見るように、これは一応削減される、また削減されると思ってかなり大きく要求している面もあると思うのですよ。
  30. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その点はこの間お答えしましたように、予算の中で一般経費、通常経費とみなされないものか、ことしの予算の中には御承知のとおり相当多く入っております。さらに災害復旧費のごときも入っておりますが、そういう特別の、通常の経費とみなされないものを引いた予算の伸び率は私は大体一九・何パーセントというふうに思っております。で、その実質に比べますというと、公共事業費は二六%伸びておりましても、災害関係のものも入っておりますので、その率はそのとおりには多くなっておりませんし、今度はこの社会保障費におきましても、今の経費を省いたものの比率を見ますというと、そう二〇%以上もこうしているのですから、一般の伸び率よりはこれは多くなっていまして、そこらの権衡はずっととって、大体御説明しましたように、公共事業、社会保障、それから文教、それからもう一つは減税、ここにこの予算の比重を置いておるということは、前から御説明申し上げましたとおりでございまして、この点は私ども相当見まして、本年度の社会保障費も額としてはふえておりますが、これは今おっしゃられた個々のような問題はあるでございましょうし、またそのためにこそ、一歩々々とこの予算強化を今までやってきたわけでございますが、ただ御質問が、なぜ厚生省が言っただけそのとおりの金が出せぬかというところに比重があるような御質問だと受け取りましたので、なかなかそうはいかぬということをお答えしただけでございます。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 大蔵大臣にもう少し真剣に考えて、問題をすりかえないでほしいのです。あなたが先ほど結核予防法を最重点で取り上げたんだとおっしゃる。現在六万二千人入院しているのですよ。それだのに、あなたのきめたのは六万二千人なんです。これで結核予防法に重点を置いているといわれるかということなんです。結核患者は、菌を出している者が命令入所するのでしょう、これを放置すれば伝播していくじゃありませんか、ここが問題なんです。そういうあなたの考えからごらんなさい。東京都あたりにおいてはオリンピックのためにうき身をやつしちゃって、ことしすでに七千二百人もいるのに、来年度予算には五千五百人しか計上していない、そういう状態にあるのです。だから、何が何であろうとも、人の命を大事にするのが私は政治として非常に大事なことだと思う。それを聞いたのです。厚生省の要求どおりに出さないから文句を言うから文句を言ったのだと、こんな答弁ないでしょう。現実に患者がいるから問題になっている。ところが、こういう中でもさらに命令入所の資格を得ても看護婦がないからこれを拒否しておる、こういうことが許されるのですか、私はここに問題があると思う。あるいはまた、政府は赤字のところはどんどん病院を閉鎖してもいいのだからなんという暴言を吐いている。こともあろうに、灘尾厚生大臣が一月七日に奈良におかれまして、赤字病院なら閉鎖してもやむを得ないじゃないか、日赤は中小企業だから経営が成り立たなければ、これはやめてもやむを得ない、こういうことを放言していらっしゃる、記者会見の席上で。こういう頭で医療行政をやられちゃかなわないということなんです。これが政治の姿です。私は赤字だからやめるとか、予算がないから看護婦養成もできなければ、医療法も進まないのだ、これは逃げ口上です。私は医療で金をもうけて黒字になる方がおかしいと思う。しかも、公的医療機関は赤字であろうと黒字であろうと、いや赤字になるものを引き受けてやっていくのが公的医療機関の性質だと思う。私は今まで灘尾さんに敬意を表してきた。ところが、一月の新聞を見てびっくりしちゃった、あなたはそういうことを言っていらっしゃるでしょう、赤字ならどんどん閉鎖したって仕方ないのだ。ところがですよ、そういうことになれば、国民皆保険を売り物にしていらっしゃる現政府はどうなる、国民皆保険になって僻地の病院はどうなるのですか、僻地の医療政策はどうなるのですか。赤字であろう、不便であるところにこそ、国の医療は手を伸ばすべきものである、私はそう考えますが、厚生大臣大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  32. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 命令入所の予算の問題についてお話がございましたが、御承知のように、昨年の十月から実施いたしましたものでございます。本年度はこれを平年度化しまして予算を組んだわけでございますから、程度の重い者、またことに所得の低い人を対象といたしまして、この予算を組みましたわけでございます。厚生省としましては結核の状況にかんがみまして、今後さらにこの予算の充実をはかって参りたいというような心持であります。なお、看護婦が足りないからとかというようなことで命令入所の人を断わったというふうなお話でございますが、これは私としましては全く残念なことでございます。そういうふうな、もしほんとう看護婦が足りないために、命令入所の人たちを断わるという事態があるといたしますれば、よほど指導に努めなければならぬと私は思います。また、かりにある療養所なら療養所で扱えないといたしましても、この人たちをどういうふうに扱うかということについて、親切な配慮が第一線でなければならないと私は思うのでございます。その辺のことにつきましては、十分今後とも指導に努めていくつもりでおります。  それから、病院の赤字の問題につきまして、私が何か新聞で人に話したことについてのお話がありましたが、一般的に申しました場合において、赤字だからすぐやめたらいいじゃないかと、そう単純なものでないことは、これはもちろんそのとおりだと私も思うのでございます。しかし、個々の病院というものをとらえて考えます場合においては、その病院としてはこれ以上やっていけないというふうな場合もあろうかと思うのであります。そういう場合にはこれはやむを得ない。ただ、それがなくなりました場合に、あとどうするかというような問題をあわせて考えていかなければならないかと私は思うのでございます。そのために、その地方で病院もなければなんにもなくなってしまうというふうな事態と、しからざる事態と、おのずから違ってくるだろうと私は思うのでございます。一般論といたしまして、赤字ならやめたらよろしいと、そういう単純な考え方は私はいたしておりません。ただ、具体的な個々の病院につきまして、どうしても経営ができない、これ以上続けることはできないというようなやむを得ない事情がある場合には、それに固執いたしますよりも、さらに他の考え方をする必要がある場合もあろうかと私は思うのでございます。さように御了承願いたいと思います。
  33. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公的医療機関整備の問題につきましては、ただいま国のやっておりますことは、病床のない地区に対する病床の整備、それから僻地診療所の整備というものについては、補助金を出し融資をするという財政援助を行なっておりますし、また、僻地の診療所の運営費の赤字については、これは補助金を支出しておる。そこまでの対策はできておりますが、一般の公的医療機関の赤字について補助金を出すというところまでは現在いっておりません。
  34. 藤原道子

    藤原道子君 医療機関のないところは考慮しておる。こういうことでございましたが、日赤の、このごろ病院放棄と私たち呼ぶんですけれども、方々に起きているんです。これは主として日赤に起こっております。山形県の東根ですか、あそこは、御案内のように、三市一カ町村に病院らしい病院はないんです。そこにたった一つ日赤病院があった。ところが、去年の八月これを閉鎖した。地元民は、それを力の限り存続してほしいと陳情しておる。けれども、ついに、赤字なるがゆえということが口実で、当時の腹では自衛隊を百人、百床は入院させるんだということが言われていたようでございますが、とにもかくにも去年の八月閉鎖されました。そして今度またこの四月から再開されるということでございますが、組合立で再開される。どうしても必要だから組合立でもやっていこうということになった。こういう場合は一体どう考えになるか。こういうことが、とにかく御答弁の中にもちらちら出て参りますところに、あなた方の医療に対する考え方が現われていると思って非常に残念です。広島の糸崎の日赤病院、環境もすばらしいし、非常な歴史のある療養所。ところが赤字だからこれを閉鎖するんだ、こういうことが言われている。ところが、この間私行ってみましたら、病院は荒れ果てているにもかかわらず、このごろでは黒字になってきた。赤字だから閉鎖するといったんだから、黒字になったらどうするんだといっても、いえ、もうあそこは閉鎖する、けれども患者はいる、どんどん評判がよくなった、こういう例もあるので、もう少しこの点は、医療従事者が、今の人数ではやれないから何とかしてくれ、こういう運動を起こすと、まるでかたきのようにして、そこをつぶそうとしてかかっておるとしか私たちには思えない。けれども努力して黒字になってきておるところもある。もっと医療というものを公平な立場考えていただきますると同時に、なぜ看護婦さんたちが騒ぐのか、なぜ病院ストが起こるのか。今度の病院スト等に対しましては、社会の非難はなんにも起こっちゃいないじゃありませんか。ここにあなた方の今までの無理が積み重なってきたから、今日の実情を来たしているのだということを反省されまして、今後の医療には格段の努力をしてもらわなければならないと思います。したがいまして、私はこの結核予防法は、予防法であるから、菌が出なくなればすぐ退院させている、あるいは入院を拒否しても仕方がない、あるいは予算を組まなくても仕方がない。逃げ道がございます。二十九条を改正いたしまして、結核法として、国が責任を持って、経済上、医療上、環境上の差別を撤廃して、完全社会復帰まで、少なくとも結核患者と精神病は国が見るべきものだと考えますが、この二十九条を改正して、そういうふうに踏み出されるお考えはないかどうか。私はそうすべきだと思いますが、その点について。
  35. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 結核対策は、政府としましても年来重要な施策といたしまして、これが推進に努めて参りましたことは、これは御了承いただけるだろうと思います。また、精神病につきましては、これまた大きな問題といたしまして、今日、政府といたしましても重大な関心を払っておる問題でございます。この結核対策の推進につきまして、予防、治療あるいはその後の社会復帰、こういうような問題について、もっともっと施策を充実して参るという事柄につきましては、私どもも全く同感でございます。今お話しのように、法律を改正してどうしようということまでは考えておりませんけれども、結核対策の充実という見地から、この問題につきましては、今後ともに私ども検討を重ねて参りたいと思います。
  36. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私はあなたのお考えと全く同じでございまして、何といっても、社会保障の中心は、病気に対する措置であろうと思います。そのうちでも、やはり特に結核に対する対策は重要であって、これはひとり人命の問題じゃなくて、これが日本の貧困の大きい原因ともなっているということを考えますと、そのほかにもいろいろやりたいことはあると思いますが、やはりこの問題に最重点を置いて、そこらあたりから社会保障の軌道、医療制度の問題も軌道に乗せていくというのが本筋だというふうに考えまして、先ほど申しましたように、昨年度から、まずこの対策を強化しようということになりまして、本年度は二年目でございますが、三年目、四年目と、順を追ってこの問題の解決を一番急ぐべきだと私は思っておりますので、今後の予算編成の方向もそういう方向へ向かっていきたいと考えております。
  37. 藤原道子

    藤原道子君 もっと追究したいのですが、時間がないので残念でございます。  そこで、幾ら法律を作っても、看護婦が足りなければやっていけませんが、政府看護婦充足に対する対策を、はっきり具体的に出してほしいことが一つと、それから今の看護婦の定数を増加してもらいたい。それから、夜の看護婦の一人勤務をなくしてもらいたい、若い看護婦が棟を隔てた病床まで、二個病棟、三個病棟を一人で夜勤をしている。こういうことは絶対にやめてもらいたい。それから、夜勤の回数を減らしてもらいたい。それから産休代替要員を確保してもらいたい。ところが、この代替要員の日当が、日当になっているのですけれども、三百三十円だったのが、今度三百五十円に上がりましたけれども、これは少し無理だと思います。今、看護婦のような技術者が三百五十円でくる人はございません。もっとこの点は考えてもらわなきゃ困る。それから、休憩時間をきめてもらいたい。深夜勤務、一人で何百人も扱っているのに、休憩時間はないのです。はっきりと休憩時間をきめてほしい。したがいまして、一人勤務では休憩がとれないわけでございますから、一人勤務は絶対になくしてもらわなきゃ因る。  もう一つ、今度の看護婦の補充について、千八百万ばかり貸費制度にとっておられますが、これでは不十分です。したがって、有資格者も四十万人いるのに、実働はわずか十六万何千しかおりません。なぜ看護婦が職を離れるか。結婚してもやれるように対策を立てるべきだと思います。と同時に、住宅の問題と、病院に託児所が必要だ、今働いている看護婦さんが、一人のときはやれるけれども、子供が二人になったら勤務はできませんと、こう言っております。四十万の有資格者はいずれも有能な人なんで、有能な看護力が埋もれております。わずかな学院の卒業生では、とても日本医療に間に合いませんので、現に資格を持っておる者を起用すべきだと思いますが、その対策伺います。この際、医療法の抜本改正をして、医療従事者には、ひとつ最低基準、最低賃金制を設けてもらいたい。そうしなければ今後の医療従事者は得られないと思いますので、この点のひとつ御覚悟を聞きたい。と同時に、厚生大臣がいばっておいでになる四四制も、今では、ほとんど実を結んでおりません。一日七時間三十分働いて、小刻みに四時間を出していくと、こんなことでは休んだことになりませんから、休日の前日の半どん、休日後の半どんというふうにして、明確に四四制の名をあげる、実を結ぶように御配慮が願いたい。この点についてての御答弁伺います。
  38. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 看護婦充足対策といたしまして、先ほども申し上げたことでありますが、いろいろ検討を現にいたしておるところでございます。直ちに実行できるものについては、もちろんすみやかに実行に移したいと、かように考えますし、また、基本的な問題に触れるというような問題につきましては、十分検討を加えた上で結論を出したい、かように考えておる次第でございます。一応私どもの当面考えております問題といたしましては、看護婦養成所の拡充をはかって、養成数をふやしていくということを考えなければならぬと思います。このためには国の予算も必要とすると、こういうことにも相なりましょう。また、今度の予算で御審議をお願いしておりますけれども看護婦職員の修学資金を貸与する制度、これも来年度から実施するわけでございますが、これも将来だんだん拡充して参りたいと考えておるような次第でございます。  それから、看護婦の毎日やっておられます仕事につきましても、必ずしも看護婦でなければならないというものでないものもあろうかと思います。看護業務の整理ということも考えてみたいと、こう思うのであります。そして看護婦としての能率を上げていただくようにしたらどうであろうかということも考えておる次第でございます。  また、今お話の中に、処遇の改善に関する問題がいろいろございました。代替制度の問題でございますとか、あるいは夜勤の問題でございますとか、いわゆる四四制の確実な実施、こういうことについての御意見でございましたが、かような問題につきましても、私どもとしましては、積極的に取り上げまして検討いたしたいと存じます。  それから、現実に看護婦の資格を持ちながら、看護婦業務に従事しておられない方が相当おるということは、御指摘のとおりだと思います。かような人たちを何とか看護婦戦線に出ていただくようにいたしたいと、こういう気持を持っております。いわゆるパート・タイム制の実施を促進するというようなこともひとつ考えてみたいと考えておるような次第でございます。  なお、先ほど養成のことも申し上げましたが、現に養成所がありながら、そこで定員一ぱいには養成していないというふうな事例もあるようでございます。ここらも十分にその施設を活用いたしまして養成を促進いたしたいと存じております。また、恒久的な対策としましては、先ほども一言いたしたところでございますが、看護婦の資格の問題につきまして、あるいは教育制度の問題につきまして、あるいはまた業務の内容の問題につきまして、さらに検討をすべきものがあろうかと存ずるのでございまして、部内でも研究をいたしておりますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、医療制度審議会も、現にこの問題につきましていろいろ検討を願っているところであります。すみやかにその成案をいただきまして、厚生省といたしましても善処したいと考えているような次第でございます。  それから、看護婦の最低賃金と申しますか、この問題につきましては、これはよほど検討を要する問題と存じますけれども、労働省のほうにもいろいろ御研究もあろうかと思います。私どものほうといたしましても、看護婦の処遇の問題として、さらに検討さしていただきたいと思います。
  39. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。厚生大臣、私はよく聞くのですが、昼間はまだしも、国立病院入院しておって、夜間病気が急変すると、助かる命も助からない、こういう不安を持っている患者が相当国立病院にいるわけですね。それは昼間もさることながら、夜間になるとお医者さんと看護婦さんが非常に不足しているということから、そういう不安におののいているわけなんです。先刻以来、藤原委員質問に対して、灘尾さんらしく、慎重に誠実に答弁を返されておりますけれども、その点は多といたしますけれども、国民として承りたい点は、少なくとも国立病院において、いつからお医者さんと看護婦さんを、入院している患者に、療養に差しつかえないように与えて下さるか、いつごろからそれを与えて下さるような見通しを立っておられるか。そのためにどういう具体的な方策を立てられようとしておられるか、その点を承りたい。  それで私は、さらにもう一点承りたい点は、先ほど木村さんからも質疑がありましたが、問題は、私は予算の性格と、財政投融資計画のその性格にあると思う。池田内閣の一国務大臣として抵抗を感じられないかどうか。国立病院において医者看護婦患者に供給するということは、三十六年度における増加財源、三十七会計年度に予想される増加財源からいって、やれないとは言わせない。そういうことは言えないと思うのです。やる気になったら十分やれるだけの、もう会計年度当初から増加財源があるわけだから、閣内において経済閣僚に押されておられるのではありませんか。一般会計予算を見ましても、あるいは財政投融資計画を見ましても、必要ではありましょうけれども、産業基盤育成強化というところに非常に偏向しています。これは何ぴとが見ても偏向しておられます。これを是正しない限り、それは藤原委員の御要望の点に沿うことは、なかなか私は不可能だと思うのです。こういう予算の性格なるものについて、日本の厚生行政の最高責任者として抵抗を感じられないかどうか。このことは私は非常に重要だと思いますので、お医者さんと看護婦さんは、いつから患者にお与え下さるかということとあわせて承っておきたいと思います。
  40. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 看護婦充足の問題、医者充足の問題は、必ずしも予算の問題ではないのでございます。究極するところは予算ということになるかもしれませんけれども、必ずしもそうじゃない。現に国立病院あるいは療養所におきまして、看護婦の定員が余っている、医者の数が予算としてはあるのだ、これを充足することが実は非常にむずかしい、こういう状況になっているわけでございます。予算の額をふやしますことも大事でございますが、現にいただいております予算をフルに活用して、そうして不足人員をなるべく充足するという努力をまずもって傾けなければならぬと思うのでございますけれども、これが御指摘のありますように、思うように参っておらない。まことに残念に思っているわけであります。何とか努力をいたしまして、この充足をはかって参りたい。それにつきましては、当面われわれの手で改善できるものはすみやかに改善したい、この心持でもって今やっているところでございます。何月の何日からというわけには参りませんけれども、私どもとしましては、この努力はもちろんまじめにひとつやって参りたいと、かように考えている次第でございます。  なお、予算について抵抗を感じないかということでございますが、これはおそらく各省大臣みな感じているだろうと私は思うのであります。ひとり厚生大臣だけではない。正直に申しまして、厚生大臣として考えれば、もっとほしいということはもちろんでございますけれども、これは国全体の財政の上から申しまして、本年度はこの程度だということで私ども納得いたしているところでございます。また、決して私は自画自賛をしようなんということは夢にも思っておりませんけれども、ただ、予算の率だけでひとつごらんにならないで、多少中身についても、幾らか進んだ点もことしは入っているというふうな点もごらんおきを願いたいと思うのでございます。予算の総額、ことに社会保障費の充実ということにつきましては、われわれは不断の努力を払いまして、また、明年度を期してひとつやって参りたいと思う次第でございます。
  41. 藤田進

    藤田進君 関連。まあ大蔵大臣を前にされて、厚生大臣としては以上のように申さなければならぬ事情もありましょう。しかし、私は、所管大臣とされましては、福永労働大臣も含めて、そのことも聞こえておりませんか。福永さん、あなたにも質問があるのですが、いやしくも国務大臣となり、所管大臣となられた以上、自分がこれをやってみたい、池田内閣としての大きな政策はありましょう、しかし、所管大臣国務大臣として自分はこうしてみたいという、その理想と現実の政策をやはり持ってもらいたい。これは今の医療行政そのものが、大きくは今の与党、政府を通じての資本主義的な自由主義の政策、私は、医療政策医療制度について、あるいは施療について資本主義のあり方が一体いいのかどうかということは、これは経済政策なり観念を離れて考え直してもらいたい、必ずしもみずからの親や、あるいは兄弟や子供という、身近な悲哀を感じなくても、世上見られてひしひしと感じてもらいたい。私は古い例は出しません。けさも登院いたしますのに、九時半に、先駆がついて、そうしてまあゴー・ストップがあるかどうかしれないけれども、およそ今の交通難、交通事情というものは全然あれではわからないだろうという感じを受けて参りましだ。私自身も、バスにゆられ、あるいはひしめく、ことに婦人労働者なんか、これではほんとうに親としても心配するであろうと思われるような地下鉄に押し込められて登院しておりますが、これを一転して、医療考えてみましても、私はみずから体験をしてきております。長男や、そうして相当な年になった長女を失って、何らの治療も受けず、診断も受けずに、そのまま十日目には死んでしまった。有名なこれは病院です。ところが、金があれば今はもっとあれでしょう。私は二年ほど前の話を申し上げるわけです。毎日八千円の医療費を、部屋代を出せば病院長も来てくれる、あるいはそのかかっている部長も訪れてくれる。そうして右から左に、健康保険の対象外の医療も、まあ何万円か出せばしてくれる。みずからの会計はどうあろうとも、助けたいために無理をいたしますが、結局今の行政というものは、医療についていえば、全くの資本主義な、自由主義なというか、こういうのが実態ですよ。私は感じてきておるんです。一々その病院とか何とか申し上げません。それが目的じゃありません。私は、やはり各省関係大臣においてこうしてやる、大蔵大臣も、第一番に人命というものが大事であると言われておりますが、現実の予算について、私も長くこの一般予算について、この会議では総理以下の御答弁を聞いてきました。それぞれについて重要だ、今度はどうしようと言われます。しかし、今、藤原委員が尋ねておる問題は、なるほど病院で死ぬか生きるかの闘病生活をしておる人のため、これを看護する人々のため、これはおよそ来たる参議院選挙においても、選挙などということは、(「質問々々」と呼ぶ者あり)これが質問だ、ことごとくが。それぞれについて判断をして、選挙などに行けるようなひまのあるような人たちとか——これは身の情勢から見てできない人です。これは病院には不在投票がありましょう、このじみな選挙、票に関係を持たないような人々について、じみちな問題について取り上げておる。その答弁としては私は非常に不満足です。ことに木村委員も言われたように、予算もまず組めば組める、余剰の財源もある。結局行き当たるところ、大蔵省だけがどうでもこうでもないと言われるけれども、私が聞いておる、あるいは実態を把握するときに、私は与党にも問題があると思っております。灘尾厚生大臣が要求されても、大蔵省がどうにもきかない。厚生省に関する限り、あるいはその他もそうですが、ことに各省のうちでも、医務局その他にいろいろやってみますというと、どうしてもわれわれはがんばったけれども大蔵省がきかないんだ。大蔵省だけが悪くなっているのが現実ですよ、これは。大臣はそう言われないけれども、その大蔵省もけしからぬと思う。同時に、池田内閣もけしからぬ。(「長いぞ長いぞ」「質問々々」と呼ぶ者あり)今ヤジを飛ばしている与党もけしからぬ。もっと医療行政について真剣に考えられるべきである。具体的に聞きますが、福永労働大臣灘尾厚生大臣、水田大蔵大臣、あなたの娘さんをナイチンゲールとか、あるいは白衣の天使として看護婦にいたしますか。おそらくしないはずです。これはわれわれも病院生活をしてみて、感謝にたえない人々は多い。けれども、それにあなた方の、じゃ、かわいい娘をナイチンゲールや白衣の天使にするかというと、していない、していないでしょう。あれば御答弁願いたい。それは予算的に何だかんだ世に言うけれども病院のいろいろな会合に私どもはたえず参ります。医療職、看護職、先般研究職やあるいは医療職について若干の是正をするとかいわれたけれども、今養成所を若干ふやされようと毛、充実されようとも、根本の問題はそこだけではございません。御承知だと思う。あれほど国家試験その他やかましい中に、そうして……。
  42. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君、質問の要旨を述べて下さい。
  43. 藤田進

    藤田進君 全部要旨ですよ、これが。私は、そういう笑い顔でヤジを飛ばすような真剣味のない人たちを疑う。委員長もそうだ。あなた方実際こういう立場に遭遇してごらんなさい、わかりますから。今聞いている若い人たちは、病院とか医者とか医療とかいうことは頭にないかもしれない。実際に当面してごらんなさい、こんなほんとうに情けないことはない。そうしてさらにこれはどこの、何になるかもしれないが、死んでごらんなさい、金次第だ、七万円だ五万円だ三万円だということで、葬式費用がランクがついておりますよ、行ってごらんなさい。東京都だって、大きな銀行のような入口に、七万円出せばその火葬場のかまの中へ入っていく。そうでない者は裏口の石炭でたいてくれるんですよ。これが自由主義か、資本主義かと、私は身をもって感じました。  それはそれとして、もっと養成所とか何とかいう、看護職についても抜本的に私は考えてもらわなければ、どうぞお大事にといって患者から離れて、体温計を見にきてもあたたかい気持か、どうか。これはいろいろ事情がありますから、私は具体的に言いませんけれども医療費だけ払って、今あたたかい看護を受けて帰れるような病院があったら教えてもらいたい。税外負担というかですね。私は大蔵大臣におかれても、与党が何といおうと国民は支持します、もっときぜんたる態度でやってもらいたい。これらに対して具体的に、今申し上げたそれぞれについてお答えをいただきたい。私は真剣に言っているのですよ。
  44. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 医療の問題について、まことに真剣なお話がございまして、私どもも非常に教えられるところがあるわけでございます。申すまでもなく、国民の健康を守っていく、健康を増進していくということが国の非常に大きな、むしろ中心の考え方でなければならないと思います。その意味におきましては、厚生省が果たす役割は非常に重い毛のがあると私は思います。疾病の予防につきましても、まだまだ至らぬところがあると思います。同時にまた治療の面におきましても、決してこれが完全であるとはいえないという点も多々あろうかと思うのであります。また治療そのものはともかくといたしましても、今お話になりましたように、患者に接する医療従事者のその態度、そのやり方というふうな問題につきましても、あたたかい態度でもって親切にやってもらわなくちゃならぬわけであります。その辺につきましても、あるいは不十分な点も私はないとは申しません。こういうような点及び改善を要する点は多々あるということは私ども認めざるを得ないのであります。その点につきましては、藤田さんにおきましても私の気持と気持において私は変わりがないと思います。そういう点につきましては、われわれといたしましても、医療制度というものの検討の上に検討を現に続けておるわけでございますけれども、お心持のような点をさらに織り込みまして、医療制度検討を重ねて参りたいと思います。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 社会保障行政のうちでは、何といってもさっき申しましたように医療行政と、それから生活保護行政が中心であろうと考えます。厚生省の行政を見ましても、との二年間、特に医療行政と取り組んでおったことは事実でございますし、私どももその厚生省の方向に応じて、予算の問題におきましても、これは相当この二カ年間の予算をごらん下されば、ある程度の医療関係の行政強化はやってきておるつもりでございますが、ようやく日本のこういう制度もここで方向が出てきて軌道が敷かれたという、実際問題としては、本格的な社会保障制度がまだ日本としては始まったばかりというふうに私ども考えています。したがって、この二年間の敷かれた軌道に乗った今後は、内容の強化をやっていくことが大切だろうと考えておりますので、そういう方向で努力したいと思います。
  46. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 人の生命、健康を預かるような看護婦さん等の労働条件の維持、向上につきましては、厚生省とも相談いたしまして極力労働省といたしましても努力をいたしたいと考えます。その他いろいろお説を今藤原さんと藤田さんから伺いましたが、大いに今後の参考にいたしたいと思います。
  47. 藤原道子

    藤原道子君 予算はあるけれども人が得られない、十分消化し切れない、その原因がどこにあるとお考えになっておるか、伺いたい。結局、看護婦が足りない足りないといったって、ことしは看護婦の志願者も減っておる、これは魅力がないからです。人間らしい生活ができないからです、ここに問題がある。さらに、これは東京都の保健所の実態でございますが、保健所にも医者もいなければ保健婦も足りない。この充足状況を知りたい。と同時に、このごろ保健所の仕事がずいぶんふえておる。ところが、東京都でお医者さんの募集をしているのですが、初任給が月に二万六千円——お医者さんです。五年たって三万二千円、十年たって三万九千円。最近聞くところによると、医者の初任給を四万円にしないならば、国立関係へは医者を回さないというような決定をしておる医科大学も出ておるということを聞いておる。看護婦に至りましては、最低五千円くらいの看護婦さんもある。これでは希望者がなくなるのはあたりまえだと思う。これは一体どうなんです。したがいまして、このごろ病院へ行っても、保健所へ行っても、待ち時間が三時間、四時間がざらでございます。赤ちゃんをおぶって保健所へ行って、時間がちょっと足りなければみんな追い帰されておる、こういう保健所があるでしょうか。これはほんとうにそうなんです。だから、世にいっております、待ち時間三時間、診察は二分。火のけのない寒いところで病人が待たされておる。これでは私たちがまんできないじゃありませんか。したがって、まず医療従事者の最低賃金をおきめになって、せめてもう少し色のついた給与にしなければ希望者は得られません。私はこれを憂えるものです。したがいまして、看護婦の給料が悪い、労働が過重である、さらに准看の将来の希望がないというところにも問題がある。進学コースを出て参りましても、勉強二年して資格をとって戻ってくれば、勉強しなかった人よりも低い給与になる。これがもとの、その資格をとらなかった人と同程度になるには、今度若干改正になりましたが、それでも四、五年かかるのです。こういう状態で人が得られますか。私は看護婦というものは非常に大事なものだから、高い教養が必要であることを承知しております。しかし、高等学校へ行く人が六割五分とすれば、優秀な中学生の三割五分というものの中から看護婦になりたい人があるのですよ。だから、やはり教科課程に差をつけて、資格を一本看護婦にすべきだという主張をして参りました。さらに今度の准看にいたしましても、かなり准看のほうがふえておるのですから、しかも正看のやる仕事をみんなやらされておるのですから、それで差があるのだから、通信教育であるとかなどで基礎教養を深めることによって、四年か五年たったら国家試験を受けて、そして看護婦の資格を与えるべきだと思いますが、厚生大臣、どうお考えですか、これが一つ。  それから労働大臣伺いたい。深夜長い間の勤務をしておりますが、看護婦には休憩時間がなくてよろしいものでしょうか、これを伺いたい。
  48. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 保健所につきましても、医療従事者不足しておるという実情を私も残念ながら認めざるを得ないのであります。その処遇の改善につきましてもだんだんと改善をして参っておりますけれども、まだこれでは十分でないという点があるかとも思うのです。漸次改善に努めて参りたいと思います。なお、看護婦養成につきましてお話がございました。この点につきましては、今のお話になりましたような点は私どもとしましても十分考慮に入れて検討していきたいと思っております。
  49. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 看護婦さんの場合に時間外労働につきましては、労働協定を締結した場合におきましても一定限度、たとえば一日二時間、一週間で六時間、一年を通じて百五十時間に法は制限をいたしておりまするし、その他いろいろ規定も設けておるわけでありますが、看護婦さんのような非常に神経を使う仕事によりましては、無理は私は禁物である、こういうように考える次第でございまして、休憩等につきましても、規定といたしましては六時間について四十五分、八時間について一時間が最低限度に、こう法は要求をいたしております。したがって、私どもはこの基準法上の規定を守っておるかどうかということにつきましては、先刻も申し上げましたように、大いに他の種の仕事よりは重点を置いた事業として今年あたりは基準法上の監督も非常に強化をいたしておる次第でございます。ただし、これは法律でこうきめておることであって、厚生省においては私も今申し上げますように、仕事の性質上限度は限度といたしまして、できるだけこの神経を使う仕事をなさる方々についていい条件で働かせてもらうこと、これは私どもといたしましても望ましいところでございます。
  50. 藤原道子

    藤原道子君 どうも何んだかよくわからないのですが、それを調査なさいまして、その休憩時間を守っていた病院がありますか。
  51. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 守っておるところもあるし、すでにそれで違反をいたしているというのでそれぞれ処置いたしましたところもございます。そこで、私どもが先ほどから申し上げておりますように、今後ともより一そう基準法上の監督を厳にして参りたい。また先ほども申し上げておりまするように、単に基準法上の監督、監督というよりも、やはり主管庁である厚生省においても、われわれとともにこういうことのないようにいろいろこれを督励していただくように協議をして参りたい、こう思います。
  52. 藤原道子

    藤原道子君 不満足でございますが、時間がなくて残念です。  そこで灘尾さんにお伺いいたします。長時間の間に四十五分なり一時間の休憩時間は基準法で定められておる。夜間には看護婦さんが一人なんです。一人が四十五分も一時間も休憩したらその間の患者はどうなる。したがって、私は断じて二人勤務でなければ病院の勤務は勤まらない、こういうことになると思いますが、いかがでございますか。
  53. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 労働基準法上の規定はこれは守らなくちゃならぬと私ども思います。ことにこれが国立であります以上、なお守っていかなければならない、さように考えるわけであります。したがって、これに事実上違反しておるというような事実がありまするならば、われわれこれはよほど指導に努めなければならぬと、かように存じておる次第でございます。  夜間の勤務がどういうふうな状態になっておりますか、私つまびらかにいたしておりませんけれども、一人を二人にしなければならぬというふうな状態であるかどうか、その辺はなおよく調べさしていただきたいと思います。決して私どもとしては逃げ口上を申し上げておるわけじゃございません。十分この点は検討さしていただきたい。
  54. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連。藤原委員は今労働大臣の御答弁に不満の意を表されたわけです。問題は、労働基準法は働く者の憲法です。これはもう違反させてはならない。してはならない。しかし、現在この憲法を守るための労働基準監督官、これの人員というものは充足されておらない。労働基準監督官は司法警察権を持っている。こういう権能を持っている。基準法を守るべく立ち向かっている。そういう職責にある人です。しかし、その数が十分に充足されておらないというのが現状だろうと思う。一昨日の私の質問に対しても、労働者の条件を守るために労働福祉員制度を充実するのが、これが重点だという答弁をされたが、それも実際には予算面において減額されている。そういうふうに、労働基準法を守るということが逆の方向にいっている。今の灘尾厚生大臣の御答弁にしても、人員が足りなければ必然的に働く者にとって過重な条件が加わってくる。車の両輪のごとくに、この労働基準法を守るような態勢をとっていかなければならないが、一体この労働基準監督官がどのような監督をせられておるのか。そうしてその人員が十分に充足されているのであろうか、私は非常な疑問を持つものであります。この点について御答弁をわずらわしたい。
  55. 福永健司

    ○国務大穂(福永健司君) 御説のごとく、今労働基準法上の監督にあたります者の定員は少ないのでございます。率直に私はそう思います。今年これにつきましては財政当局にも強く要求をいたしまして、増員方を交渉いたしておるのであります。今年もある程度は成果を上げたんでございますが、決して十分の成果とは申せません。若干増員という程度でございます。一方、お話のように、監督を必要とする事業所等は非常な数でございます。そこで勢い非常に多くの事業所をそれぞれの監督にあたる人間がこれを担当するということになりますと、なかなか十分に参らないわけでございます。そこで私どもは今後より一そう定員の獲得を考えなければなりませんし、いかにして現有の定員で監督を強化するかということで、この点は若干乗りもの等の機動力を増すようにすることも今年いたしました。これも私は決して十分とは考えておりません。ただいま御鞭撻もいただきましたし、従来とも大いに努力いたしておるのでございますが、まだ十分な成果を上げておらないことは私は率直に認めざるを得ないと思います。そこで、今後一そうただいま御指摘もいただきましたような趣旨によっての努力をいたしたいと存ずる次第でございます。
  56. 藤原道子

    藤原道子君 十分でないどころじゃございません。この間、浜松の監督局へ行きましたら十六万の労働者で、中小企業が多いところで、あすこに所長初めたった五人です、所長を含め五人です。これで何の監督ができますか。  私は時間がないので、先に進まざるを得ません。灘尾さんにお伺いいたします。今一人で不十分だと思うときには考慮しますと、こういう御答弁だと思うのです。したがって、一人勤務を夜間の場合はなくするということと私は理解いたします。  そこで次に、生活保護の問題でございますが、時間がありませんので省略いたしまして、物価が上がっているのに、たった二二%の引き上げでは不満足でございます。下層階級の生活の苦しさの実態は目にあまるものがございます。しかも二二%引き上げたといいながら実質的には減っていることになるのですがね。二二%引き上げたかわりに対象者が減っている。結局、だから差引、引き上げたかわりに対象者を締め出している。二二%上げたというが、予算は一〇%しか上がっておらない、ここに問題がある。だから、突き詰めていけば対象者が減らされる、ボーダーラインがふえている、こういう結果になっておりますので、この際、さらに思い切ってこれを二倍くらいに引き上げるべきだと思います。  それから、こうした生活保護の過酷さが岡山療養所の朝日患者の訴訟事件に発展したと思う。裁判所におきましても、あまりにも過酷である扱いに対して、結局一入院患者に勝訴の判決が与えられた。ところが厚生省は、藁で用をたしておる人もある、あるいははだしでとんで歩いていても健康に育っているから、この基準は健康で文化的なものであると反論しておる、そうして厚生大臣は控訴していらっしゃる。こんなことは国際的に言って恥かしいことだと思う。だから灘尾さんは省内の人の圧力に屈することなく、面子を捨ててこの際控訴を取り下げるべきであると私は考えます。これを強く求めますが、お考えはいかがでございますか、これは重大問題ですから。(「朝日判決に対する厚生省態度がおかしいですよ」と呼ぶ者あり)
  57. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 生活保護の基準につきましては、たびたび申し上げておるところでございます。三十六年度から引き続いて今回また予算を一三%上げるわけでございますので、二年間には約四〇%上げることになりますけれども、決してこれが十分なもの、豊富なものとは考えておりませんけれども、かなり引き上げてきたことになろうかと思います。さらにまた今後も国民経済の伸長に伴いまして、また一般国民の消費生活の状況とにらみ合わせまして、この方面のことは努力をいたしまして漸次引き上げたいと思うわけでございます。ただ対象者を減らしておるということでございましたが、さような心持ちは実は少しもございません。その点はひとつそうでないということを御了承願いたいと思うわけでございます。  朝日判決の問題でございますが、厚生省といたしましては当時の状態のもとにおきまして、これが不法であるというようなことには承服しかねるものがあって控訴いたしたものでございます。これはその判決の結果に待ちたいと思います。それを今私取り下げようという考えは持っておりません。
  58. 藤原道子

    藤原道子君 そこが官僚的だというのです。結局あのときまではたった六百円だったのですね。ちり紙が一日一枚半だったわけです。だから喀血をしてもふく紙がなくて新聞紙でふいて、舌がざらざらで血が出る、用便をたすにも紙がないという実情だったじゃありませんか。だから勝訴の判決があった途端にあなたは引き上げたじゃありませんか、日用品費を勝訴の判決があってから今日までに三回引き上げて倍になった、生活保護法はわずかに基準が上がっただけだけれども、朝日判決によって入院患者の日用品費は倍になっておる、六百円だったのが千二百円に引き上げを認められておる、これは何と抗弁なさっても過酷であったということを認められたからこうなったと思う。それだのにそれによって裁判を起こして勝訴になって、百パーセント面子にかられて厚生大臣が控訴していらっしゃる。弱い者の味方になって、弱い者の心のよりどころが厚生大臣じゃありませんか。この点は私は強く反省を求めて、直ちに控訴は取り下げて、日本の恥を海外にさらさないようにしてもらいたい。
  59. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。厚生大臣に端的にお聞きしますが、第一審判決に対する上告の理由、これをもう少し具体的に説明してほしい。ともかく今の裁判制度からいきますと相当やはり時間がかかるわけでして、このことは病人にとっては耐えられぬことである。そんなこともわかっていてあえて控訴をされる、具体的に一つもう少しはっきりとお答えを願いたい。
  60. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 厚生省といたしましては、その当時の処置といたしまして、これが不法であるというふうには考えていなかったわけでございます。これが不法であるという判決を受けましたので、事柄を明らかにする意味におきまして控訴いたしましたようなわけでございます。
  61. 亀田得治

    ○亀田得治君 そのことをもう少し具体的に説明して下さい。そんな抽象的なことじゃいかんよ。質問に対する答えになっていないですよ。裁判官の言うことに対して不服だったから、そんなことは最初答弁と一緒です。なぜ不服なんだと、それを明確に。
  62. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 東京地方裁判所の判決は、生活保護法による入院患者の日用品費は最低限度の必要額にも不足していること、及び国立療養所における被保護入院患者にとって、補食は治療上不可欠であることを前提としておるものであります。しかしながら政府としてこれらの判断に承服しかねるものがございますので、控訴の手続をとりましたようなわけでございます。
  63. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんな、多少言葉を足して長くするというだけであって、補食が必要だ。裁判所の判決では言うておる。なぜ必要がないと判断——必要がないと厚生省はおっしゃるわけでしょう。だから病院における実態をあなたの方でちゃんとつかまれて、そういう補食なんか必要でないのだ、病院ではこれこれやっているから十分なんだ、そういうふうに具体的な理由をはっきり出して下さい。
  64. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 具体的なということでございますが、厚生省としましては当時の取り扱いが別に不法であると、かように考えていないわけです。日用品費にいたしましても、補食の問題にいたしましてもさように考えておりますので、これが不法であると、こういうことになりましたので、事態を明らかにするために控訴をいたしましたようなわけでございます。厚生省としては、その判決を待っているようなわけでございます。
  65. 藤原道子

    藤原道子君 その答弁答弁になりませんよ。今度控訴に対して証人を出そうと思えば、証人にみんな圧力がきているじゃありませんか、厚生省から。実に卑劣でございます。そういう考えでやるから、世の中の悲劇がおさまらないのですよ。  さらにまた、恥を海外にさらしていることの一つに、予防ワクチンを有料にしている、WHOでも日本のことを物笑いにしているじゃありませんか。私は、予防接種は病を防ぐ、こうした意味からいって、国の施策で一切無料でやるべきである、かように考えますが、予防接種法を改正いたしまして、予防は一切無料にする、こういうようにすべきだと思いますが、お考えはいかがですか。さらに昨年度は、小児麻痺の生ワクチンは無料で投与しながら、本年度有料にしたのはどういうわけか、この点を伺いたいと思います。  それからさらに、私は病人と同時に子供は大事にされなければならないと思う。だから小児麻痺の問題も最初にわれわれは取り上げております。今全国のお母さん方から、すべての乳幼児に牛乳をせめて一本無償で飲ましてもらいたい、こういう署名がたくさんきております。ここに一部を持って参りましたが、たくさんのこの陳情書が参っております。聞くところによれば来年度から体力テストも政府では始めるらしい、こういうことが報じられております。ところが十分栄養も取れない子供たちがたくさんございますので、この際児童福祉法ではなくて、私はすべての児童に牛乳一合飲ます政府の愛情がほしい、子供はすべて差別なく愛せられなければならない。国家社会は無差別に子供を愛育する責任がある、こういう立場に立ちまして私はすべての児童に牛乳一合の無償配給を強く要望するものでございますが、政府の御所信を伺いたいと思います。
  66. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤原君、持ち時間は終了いたしました。
  67. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 乳幼児を健康に育てることが非常に大切なことでありますのはお話のとおりであります。お話のように乳幼児に牛乳を飲ませたらどうか、こういうふうな強い御希望があるということも私ども承知いたしております。この問題につきましては、かりに全国の乳幼児に飲ませるということになりますとどうなりますか、相当な財政的な負担もかかると思いますし、また牛乳の確保という点から申しましても、かなり問題があろうかと存じますけれども、乳幼児の健康を維持し、増進するということにつきましては、私どもも積極的な気持を持っておる次第でございますので、お話の問題につきましては、さらにわれわれといたしましても検討してみたいと思っている次第でございまして、実際問題としてなかなか難点が出てくるのじゃないかと思いますけれども、心持ちといたしましては非常にいいことである、こう思っておるわけでございます。その意味で検討いたしてみたいと思う次第であります。  それからワクチンの無料接種の問題でございますが、これも無料接種を反対する理由一つも私どもにはないわけでありまして、ただ御承知のように、従来この問題は社会防衛的な性格もございますが、同時に御本人にとりましても利益のあることでございます。また同時に費用負担の関係から申しまして、財政上の難点もあるわけでございます。さようなことで有料で接種するというような仕組みをいたしております。ただ貧困な人の場合でありますとか、あるいは臨時に臨時接種というようなものをやりますときには、これは公費の負担でやっております。ポリオの問題につきましては、昨年もいわゆる臨時緊急の措置といたしましてやりましたが、これは無料でございました。今回はそれに続いているような措置でございますが、原則にもどりまして、一応国といたしましては有料で配っているわけでございます。地方といたしましては、その後の実情に応じまして相当その辺につきましては考えて、かなり無料にしてやっておられる地方もあったように聞いているわけでございます。建前といたしましては今申しましたような次第で、取り扱いが違っておるわけでございますが、この医療問題につきましては、将来のワクチン対策といいますか、予防接種対策として、厚生省としてももっと考えなければならないというように私も考えておる一人でございます。今後の問題といたしまして検討いたしていきたいと思います。
  68. 藤原道子

    藤原道子君 時間がなくなったのですが、当局の答弁がよろしきを得ればもっとスムースにいくのです。私、質問を半分で打ち切らなければならないのは非常に残念です。ただ、今貧しい人には無料でやるという……。
  69. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤原君、何を御要求ですか。
  70. 藤原道子

    藤原道子君 ところが天竜荘の国立療養所では、生活保護患者からも流感の予防接種に百五十円とっている例がございます。私は、地方では無料でやっていると言うけれども、地方へ何でもしわ寄せさせちゃいけないですよ。やはり国が責任を持ってやるべきなんです。  私は、終わりに際しまして、厚生大臣に強くなってもらい、大蔵大臣にはもっと国民に愛情を持って予算考えてもらい、それから労働大臣はもっとまじめに一つ労働行政をやってもらいたいのですよ。あなたは病院を調査したなんということはありません。もう少ししっかりお願いしたい。これで質問を終わります。(拍手)
  71. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤原君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  72. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、田中啓一君。
  73. 田中啓一

    ○田中啓一君 私は、農業基本法の施行に関連をいたしまして、関係大臣質問をしたいと存じます。(「大臣がいないぞ」と呼ぶ者あり)関係大臣おいでにならぬ方もございますが、それは政務次官なり、事務当局なりでやむを得ないと考えております。  農業基本法は、御承知のように非常に広範な規定でございまして、これの施行の任に当たる所管省というものはひとり農林省だけではございませんで、各省にわたることはそれぞれ各省の責任においてやってもらいたい。しかもそれが総合的にいかなければ効果をあげることはできませんので、しばしば繰り返し、国のあらゆる施策において総合的に本法の目的を達するようにしてもらいたい、という義務を課しておるわけでございます。そこでそれらの関係大臣にお伺いするわけでございますが、農業基本法を作りましたころ、かつまたその背景をなす構想というものは、前後してできました政府の長期経済計画、所得倍増計画といわれておるものでございます。その国民経済全体の一環としての農業というものは今後こういうふうに進ませたいものだと、こういう構想になっておると思うのであります。そのうち、私は、当時本法制定の準備時代に考えておりましたところよりも、年を追うに従って著しく勢いを増してきたものは、農業の中に、農家に生まれた者が第二次、第三次産業へ出ていく勢いが非常に増したということだと思うのであります。わが国の農業の性格というものは、長い間いわゆる六百万の農家、千五百万人の農業就業者、これはちっとも変わらない。零細農というのがわが国農業の性格で、まるで宿命のごとく考えられておったのでございますが、その千五百万人というものが非常な勢いで減り出した。これはもうこの国会に農林省から出しておいでになります、農業の動向に関する年次報告で明らかでございましょう。数字を申し上げるまでもないと思います。しかも、農業基本法は、家族経営の発展でいこう、こういうことが明らかでございます。別段、株式会社を作ったり、あるいは生産協同組合を作ったりしてやっていく、こういうことではございません。作ってもよろしいが、本来いくべき姿は家族経営だ、しかもそれをできるだけ大きくしていくのがよろしい、それに向かって政府は施策をとっていく、こういうことになっておるわけだと思うのであります。そこで、家族経営を大きくしようといったところで、千五百万あるいは六百万の農家からよそへ出ていく者がなければ、とうてい残ったものが大きくなる、こういうことはあり得ないのでありますが、国民経済のいわゆる高度成長、こういうところから非常に出てきだした。しかも、もう全国的に就業者不足で、前質問者藤原さんの御質問をみましても、病院看護婦さんが不足しておる、こういうお話でございます。至るところそういう現象でございまして、そこでどうしても、少数の農業就業者で、これまでの農業が作りましたもの、あるいは今後の経済発展に伴いましてそれ以上のものを作っていく、こういうことをやればやれるチャンスに初めて日本経済は恵まれたわけです。そこで、わが国経済の二重構造の底辺をなしておるというこの零細農を脱却して、りっぱな農業経営というものができ上がっていくチャンスを迎えたわけでございます。でありますから、大体今六百万の農家で約六百万町歩の田畑を耕しておるんでありますから、まあ早い話、一町自作農、こういうことでございますが、その農業就業者が減っていけば、結局、一軒の農家で、二町、三町、四町、五町と、こういうように、機械化、有畜化というようなことで多くの田畑を耕し、経営規模を大きくし、内容を高めていく、こういうことになると思うのであります。そこで、いろいろとそのための施策というものは、農業動向調査報告のほかに、もう一つ農業基本法に規定がありますように、政府が今後講じようとする農業施策、こういうものもやはり国会提出する義務がございますので、お出しになっておりまして、まあこれには一応講じようとする政策というものは網羅をしてございますので、りっぱなものでございますが、さて、今の農村から非常に激しい勢いで人が出ておる、人が減っていく、そういうふうな状況に応じて、そうして一町自作農という零細農から今後農業をやっていこうという人のところへ土地が相当に集まらなければ、大きい百姓にはならぬわけでございますが、結局これは、予算を見ましてもございますように、自作農創設資金という名目で、三十六年度は巨億、三十七年度は百三十五億、このように貸すことになっております。どうせほとんど農業のほうには自分で土地を買う十分な資金はないと思いますから、どうしても一時貸さなきゃならぬと思うのでありますが、このどんどん農村から人が出ておるのに照応して自作農創設資金を貸していく、こういうことのためには、一年目億そこらではとうてい勢いにはついていけぬ。と申しますのは、今日一反でも十万円ぐらいは少なくもいたしましょう。一町買えば百万円でございます。そうすると、百億というのは一万町歩動くだけでございます。六百万町歩の農地というものは、十年前後の間にどうしても二、三百万町歩は動かなければ、この勢いにはついていけぬだろう。ついていけなかったならば、耕さざる土地ができるおそれが多分にある。農業荒廃、国土荒廃のおそれが多分にある。このように実は心配されてならないわけでございます。したがって、この際ひとつ政府としては、画期的に自作農創設資金を増される御用意があるかどうか、農林省並びに大蔵省にお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  74. 中野文門

    政府委員(中野文門君) 自作農創設資金の大幅増額に関しまする御質問でございますが、申し上げるまでもなく、家族経営の近代化と自立経営の育成のためには、規模拡大のため自作地取得資金を活用することが必要でありますから、資金ワクの拡充を行なうことといたしまして、三十七年度の取得資金ワクを、三十五億円増額いたしまして、百三十五億円にいたしておるのでございまして、お説のとおりでございますので、自作農維持創設資金のワクの拡大につきましては、一そう努力をいたしたい、かように存ずる次第でございます。
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 自作農創設資金で重要なのは、今後の方向としては、お説のように、維持資金ではなくて、取得資金だろうと思います。そういう意味におきまして、維持資金は六十億で増額いたしませんでしたが、取得資金を三割五分増加するという措置をとりましたが、問題は、今言ったような方向がどう出てくるか。動き出すのは大体これからでございますので、このやはり実情を見た結果、資金が必要であるといえば、私どもさらに強化することはやぶさかでございませんので、とりあえず本年度としましては、三割五分程度の増額で大体やっていけるのじゃないかと私ども考えております。
  76. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。ただいまの答弁は、たいへん重要な問題に農業問題として触れているわけですが、第一、農林大臣が出ておらぬのは、たいへん遺憾です。田中さんはどういう御了解をお与えられになったか知りませんが、審議はやはり全部がやっているわけでありますから、田中さんが農業基本法の問題で御質問をされる、当然、私たちは、農林大臣から非常に重大なやはり答弁がある、こういうふうに期待しておるわけで、これはぜひ農林大臣を引っぱってきてもらいたい。  農林大臣も欠けておりますが、どうも見たところ、こちらのほうの頭数も一つほど足らぬようでありまして、委員長、このままで……、(「そんなことはない、余っておる」と呼ぶ者あり)こちらのほうも定足数がそろっておるなら、その点はいいでしょう。  私は、ただいまの答弁は、政務次官からされたわけですけれども、非常に重大な問題を含んでいるわけです。たとえば、百三十五億、取得資金を昨年よりも三十五億ふやした、こう言われましたけれども、実際の農地価格の値上がりの状況から見ますると、三割程度ふやしましても、私は、面積の面では、むしろ取得面積というものは減るというふうに考えるわけなんです。決して、これは前進ではないわけなんであります。こういう点については、これは農林大臣として、農業経営の規模の拡大という問題にも関連するわけでして、ぜひ大臣をひとつ引っぱってきて、ここら辺の問題についての関連質問をぜひさせてもらいたいと私は思っているのです。  それからもう一つは、ただいまの大蔵大臣答弁によりますと、何か自作農維持資金で、大事なのは、維持資金ではなしに、取得資金だ、こういうふうな意味のことをおっしゃいましたが、これもたいへん法律の精神をいつの間にか変えておるわけでして、あの法律では維持資金というものが根本であったわけです。取得資金というのは、むしろ従であったわけなんです。そういう法律の趣旨が、いつの間にかこう曲げられておるような答弁をなさっておるわけです。農林大臣はこの点についてどういうようなお考えをお持ちになるのか、その点も私は重大な問題ですから、たまたまお聞きした以上は、はっきりさせてもらわなければならぬ。  この二点につきまして、ひとつ農林大臣に、ぜひお越し願って、御答弁を願いたい。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長、農林大臣はどこに行っていらっしゃるの。
  78. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長は、質問者も、また理事諸君も、御了解のものと思っとったわけなんですが、そうでないのですか。(「委員長、知っているのか」と呼ぶ者あり)いや、委員長知らない。
  79. 田中啓一

    ○田中啓一君 議事進行。  私は了解いたしております。それは、他にどうしても欠けられない用事があるということでございましたので、用事の内容を私は根堀り葉堀り聞いておりませんが、そのように農林省から伺っておりますので、私は政務次官並びに関係の当局という者でよろしいと思っております。しかし、今、関連質問で、(「質問者が了解しているのだからよろしい」と呼ぶ者あり)それぞれ所管庁の答弁を求めておられますから、所管庁から答弁を願いまして、私は質問を続けたいと思います。
  80. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 関連質問者がぜひ農林大臣出席を御要求になるということでありますれば、今連絡いたします。  それじゃ、田中さん、ひとつ先をお続け下さい。
  81. 田中啓一

    ○田中啓一君 関連質問に対する答弁を……。
  82. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 答弁は今できない。
  83. 田中啓一

    ○田中啓一君 農林大臣はそうであろうが、大蔵大臣はおられます。
  84. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大蔵大臣、いかがですか。農林大臣は今出席をしてもらうように要求いたしますから……。質疑者が御了解になっているものと、また理事の方も御了解になっているものと私は思っていたのですが、今関連質問者が、ぜひ農林大臣出席を要求する、こういうことですから、今連絡をいたします。
  85. 田中啓一

    ○田中啓一君 大蔵大臣答弁をどうぞ。
  86. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) それじゃ、亀田君の御質問のうちに、大蔵大臣の御要求もあったのでしょうか。
  87. 田中啓一

    ○田中啓一君 そうです、ありました。説明いたしますと、自作農創設維持資金というものは、維持と創設と両方の資金であるが……。
  88. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 田中君、立って、ひとつ発言を要求してやって下さい。
  89. 田中啓一

    ○田中啓一君 よろしゅうございます。(「関連質問まで説明せんでもいい」と呼ぶ者あり)
  90. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、維持資金も大切でございますし、取得資金も大切でございますが、農林省と私どもの話し合いの過程におきましては、維持資金は今までの実績によりましても前年どおりということでがまんできるが、取得資金に対する需要はこれではいかんということで、百九十五億円財政投融資をきめるにあたっては、増加分の三十五億円は取得資金中心につけてほしいということで妥結したのでございますので、この実態は農林行政のほうに聞いていただかなければ……。
  91. 田中啓一

    ○田中啓一君 今ここで、どれほど増加をする計画を持っているという私言明を追及しようとは思っておりません。というのは、なかなかどれくらい要るかということは、計画を立てるのにむずかしいことでございます。しかしながら、もうすでに農業就業者が離れていく動向というものは明らかになっているわけであります。しかも、これを契機として、ひとつ零細農から脱却しようということが、所得倍増計画におきましても、この農業基本法におきましても、非常に望ましいこととして、このチャンスをのがすべからず、こういうことに協調しているわけでございます。したがって、今日のごとく農業就業者の減っていく傾向が顕著になりました以上は、これはおそらく、この事態をしっかりとつかまえるということは、ひとり農林省だけではない、経済企画庁、あるいはまた、その人は大体第二次、第三次産業に行っているのでございますから、通産省、どう工業は発達していくのか、こういうようなところからこれをつかまえなければなるまいと思うのであります。  したがって、私のお伺いしたいのは、この見込みを立てる計画とでも申しましょうか、つまり、所得倍増計画も、ごく基本の方向を書いているだけでございます。農業基本法は、もとより法律でございますから、基本的な方向をあげているだけでございますが、それに従ってひとつ作業をやっていただかぬと、大蔵省でも、どれだけ金を出していいかということは、これはおわかりにならない。そのための経済企画庁や、農林省、あるいは通産省でございますから、一体どのような勢いでこの残った農家に土地を相当集中していかなければ円満に農基法の目的は達せられないのかどうか、こういうひとつ作業的な政策をお立てになる心づもりになってもらいたい、こう私は思うのでございますが、この点は経済企画庁並びに農林省から御答弁を願いたい。そうでないと、農業荒廃、国土荒廃、こういうことにどうもなるおそれが多分にございます。なるべく早くひとつおやりを願いたい。御用意のほどを両省からお伺いをいたしたいと思います。
  92. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、今、農林大臣はこっちに出向いてきておるそうですから御了解願います。  政府から田中君の質問に答えて下さい。
  93. 中野文門

    政府委員(中野文門君) ただいまのお話でございますが、お説のように、農村人口というものが年々減少しておる実態に即しまして、たとえば専業農家の耕作反別が大体一町歩と心得ておりますが、一町歩でよいか悪いか。むしろでき得れば二町歩あるいは三町歩の農地というものが専業農家では必要ではないかというような問題等々ございますが、ただいまの御質問の趣旨に対しましては、十分に検討善処いたしたいと、かように考えております。
  94. 菅太郎

    政府委員(菅太郎君) ただいまお話の最近離農をいたしまして第二次産業、第三次産業へ出ていく人々の数がだんだんふえつつあることは、私どものほうで確認をいたしております。離農をしていく人々が今まで耕しておりました耕地を農協の組合に寄託をするとか、あるいは残って耕すことを希望する人々に譲るとかいう問題は、私はお話のとおり、なかなか重要な問題であると考えるのでございまして、そういう点につきましては、経済企画庁としましても、経済審議会の人的能力部会におきまして、大いに検討を加えておるところでございます。まだすぐ的確なる結論が出ませんけれども、差し迫った問題の一つとして、できるだけ早く結論を出したいと思って努力を払うつもりでございます。
  95. 田中啓一

    ○田中啓一君 自作農創設資金に関することはこれで終わりにいたしますが、今御答弁を伺っておりまして、だんだんこの農業就業者の減っていく勢いを御認識のようでありまして、非常にけっこうでありますが、一つ申し上げておきたいことがございます。  それは農業生産性というものを、ずいぶん農業基本法ではやかましくいっております。また農家生活水準ということもやかましくいっております。ところが、農業生産性というものを表わすのに、農家におる、いわゆる農業就業者として農林統計に出ております約千四百万ぐらいの人間の頭数でもって、そうして農業生産の総価額を割ったものをもって農業生産性を表わす数字にしておられます。したがって、第二次、第三次産業の生産性に比べますると、約四分の一でございます。ところが、農家の生活水準を言い表わすときには、農家全体の所得をもって表わしておられます。したがって、農家所得というものは、御承知のように、兼業農家が四百万もおるのでありますから、農業所得とほぼひとしい農外所得というものをもって農家所得にしておられるわけであります。そこで、私申し上げたいのは、実は農外所得が半分の農家の所得を構成しておるのであるから、半分の人は実際は農業には従っておりませんよということだ。千四百万というけれども、実際は七百万くらいの人が農業をやっておるのでありまして、その七百万の人が六十万も七十万も減っていくのでありますから、これは非常な勢いだと見なきゃならぬでしょう。そういう事態をよくひとつ分析、認識をして、早く農業経営拡大の量的な政策をひとつ立てていただきたい。そういう注文をしておきまして、この問題は離れることにいたします。  そこで、農林大臣がいらっしゃいましたから、関連質問……。
  96. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、農林大臣が見えましたから、先ほどのあなたの趣旨を簡単に。
  97. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連質問で農林大臣にお聞きしたわけですが、おられなかったから質問を繰り返します。  先ほど出ました問題は、自作農の維持資金の例の取得資金ですね。これが昨年よりも今年は約三割予算ではふえておるわけです。しかし、実際の農地価格の高騰等のことを考慮に入れますと、金額はふえておりましても取得面積という立場から考えますと、決してふえないというふうに私たち考えるわけですが、農林大臣はこの点をどういうふうに理解しておられるか。これをひとつ明確にしてほしい。  それからもう一点は、それに関連するわけですが、農林大臣の就任後における農業問題に対する姿勢、考え方などをときどき拝聴するわけですが、それによりますと、どうもこの経営規模の拡大、適正化、こういったようなことに対しては、大して興味を持っておらない。きわめて消極的。この点は、農基法が昨年政府で立案された当時、その当時とだいぶ姿勢が違っているのじゃないかというふうな疑問を私たちが持っておるわけなんです。そうして、そういう点はあまり力を入れないで、いや適地適産とか、いや新しい技術の導入が必要なんだといったようなことを主として強調されておるように私たちは受け取るわけなんです。それでは、従来から問題になっておる基本的な零細農というこの問題というものは決して解決はできない。農林大臣の言う適地適産とか、新しい技術の導入ということは、当然これは問題ではありますが、しかし、基本的にはやはり経営規模の拡大という問題は大きな問題であると私は思う。その点について河野農林大臣は周東農林大臣とは多少考え方が違うのじゃないかというふうな感じを持っておるわけなんです。その点についての考え方を明確にしてほしいわけです。そういうところから、たとえば維持資金の、農家の取得資金の増額の問題にいたしましても、あの程度でいいといったような、軽く考えておられるのではないかというふうな関連があるわけでして、お聞きするわけでございます。
  98. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。いろいろ理論はございますけれども、実際を離れて運用は私はできないと思います。亀田さん御承知のとおり、今の土地の価格にいたしましても、これを統計をとって調べてみますと、全国的に見れば、われわれがはだ身に感ずるような高騰の数字は出ておりません。ところが、実際買うということになれば、相当に値段を出さなければ買えない。そこで、今適正規模、耕地の拡大というようなことに重点を置いて、そうでなければ自立農家はできぬという一本調子の考え方で進もうとしたならば、一体どういうことになるだろうか。私はなかなかそういうものは言うべくして行なわれるものじゃない、こう思うのでございます。したがって、そんなことは去年からわかっておるとおっしゃるかもしれませんが、昨年農基法をいろいろ調査検討し、立案いたしました当時と、その後の農地の高騰の状態、また農民諸君のその後の実際の動き等を、現に、現地においてこれを把握してものを進めて参ろうとするときに、私は、なかなか土地の移動ということも相当困難がございますし、また、わずかなものでも放してこれをわきに処分して、そうして自分は農業を離れて全然他の方面に職場を探すというような人が一体どのくらいあるだろうか、どういうふうになるかというと、むしろこれは兼業農家というような方向で現に動いておるのが実情でございます。私は決して経営規模の拡大に反対するものでもなければ、これに対して意欲が少ないものでもございません。したがって、土地の造成については、極力これをやらなければいかぬ。むしろ沿岸の埋め立て等の非常に単価の高くつく、さらにまた手間のかかるものよりも、すぐに使える原野の開墾、草地の造成という方法を手っとり早くやったほうがよろしい。そうして経営規模をなるべく拡大していくことが必要である。そのほうについては相当に努力を払って参っておるわけでございます。でございますが、今申されますように、予算が少ない。私もお話のとおりと考えます。しかし、これにどの程度つけたら御満足がいくかしりませんが、そうしましたところが、所期の目的をこれで達成できるか、この道へ行けるかというと、なかなか今の農村の実情はそうは参らなかろうと私は思うのでございます。いたずらに土地の価格が高騰するだけだということも私は事実じゃなかろうかと思うのでございます。それもやり、これもやりというようなことでなければ、農村の問題を解決することはなかなかむずかしいというふうに考えてこの処置をとっておるのでございます。
  99. 田中啓一

    ○田中啓一君 幸い農林大臣おいでになりましたので、自作農創設資金の問題はこれまでにすると申しましたが、もう少し申し上げてみたいと思います。また御所見を伺いたいと思います。  一カ月ほど前に、東京毎日新聞の論説記事を読みますると、千葉県の成田市のある地区で、新聞を見ると、それがどうやら今農林省がやっていらっしゃるパイロット地区になっておるかのようにも思いましたが、その辺はしかとは存じませんが、農家六百戸ほどある地区で、ひとつ工場を誘致して、六百戸のうち二百戸くらいが専業農家で今後やっていこう、四百戸くらいは工場従業者になろう、こういうような相談がまとまって、今やっておる。それはたいへん望ましいことじゃないかと、こういうことが出ておりました。私も、そういうふうにうまいこといけば非常にけっこうだ、こういうふうに実は思ったのでございます。そしてまた、その新聞の調子では、ひとりその地区だけではなくて、随所にそういうような機運が動いておる、こういうことでございました。そこで、そうなると、その新聞にも大体六百戸の農家で、六百町歩ほどの農業地区のようにございましたが、結局四百町歩か三百町歩の土地が動かなければならない、こういうことになろうかと思うのでありますが、そうすれば、どうしても専業農家でやっていこうという方は、それだけの土地を適正な値段で買う、こういうことになると思うのです。したがって、農林大臣のおっしゃるとおり、実際にはなかなかどう動いていくかはむずかしいものだと私も思います。それからまた農家が土地を捨てて離村してしまうのではなくて、なるべくならば環境のいい農村におって、少々の兼業農家でもかまいません、工場にも通う、こういうような生活形態というものは、おそらく私は日本社会構成としては望ましいものだと思うのであります。したがって、私はあまり兼業農家というものは気にしないのでございますが、しかし実質はそういうように、土地は経営のあるところへ動いていかなければならぬ、こういうことになろうと思うのでございます。そういうような点をやはり私は国としては早目にキャッチをして、農家がそう動いていくのに支障のないように準備をしてやる、こういうことがなからねばならぬ、こういうように思うのでございます。農林大臣がちょうどおいで下さいましたから、ひとつ御答弁をお願いいたします。
  100. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話の場所については、私は話は聞いておりませんから、どうなっておるか事情はわかりませんが、そういう例は全国に非常に多いと思います。また私の生国の神奈川県にも、各町村に例がございます。しかし、そういう場合に、自分の持っておるものが工場敷地にかかった場合は工場で買い上げる、工場の住宅に買い上げるということはございますが、そうでないものは土地が動いて、自分が工場に行くのだから、自分の今まで作っておったものを売って、そして工場へ行って働くという場合は非常に少ないのでございます。ほとんどそれは、せがれが工場に勤める、おやじが勤める、あとは皆で助け合ってやる。そのために、わが党としては協業の経営を推奨するということもいたしておるわけでございまして、われわれといたしましても、兼業農家もしくは協業経営というようなことも大いに考えて、むろんそれを移動するものを阻止してやろうとは考えませんけれども、移動の場合には、むろんけっこうでございますが、全国例を見ますと、そういう場合に、その人の手によって土地が移動するというような、そのために資金がほしいという要望があるようには聞いておりません。
  101. 田中啓一

    ○田中啓一君 今の千葉県成田地区のことは、つまり徹底的に農村まで工場が入っていくということなんです。これはまあ工業そのものを、やっぱり立地条件ではなかなかむずかしい条件があると思いますが、できる工業の種類によりましては、私はまあ大都市に集中するとか、あるいは都市に集中するというのじゃなくて、現在のその農家から、百姓はあまりやらないのだけれども工場へ通う、こういうような生活形態というのは非常に望ましいことであり、かつまた今の、結局は零細業脱却の、二重構造解消の、これが一番きめ手になるかと実は思うのでございます。それらに関しましてひとつ工業御所管の通産大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 工業は、御承知のように、地方分散といいますか、やはり大都市集中、このことが、一面地域的な格差を大ならしめるということで、これは、そういう意味ではやはり分散を進めていかなければならない。このことは同時に、先ほど来お話のありました事柄と幾分か違うかもわかりませんが、農業構造の改善にも必ず役に立つものである、かように私ども考えるのでございます。ことに今、耕地自身が拡大されない、甲の者から乙の手に移るというような土地取得ということで農業規模が拡大されるということを考えると、やはり地方に工業が興ることが望ましいことではないかと思うのです。ところで、農業について適地適作というようなことがいわれますように、工業自身も、やはりその適地適作、立地条件、なかなかやかましいようでございます。そういう事柄がございますが、通産省としては、本省並びに通商局等に立地指導室というものがございまして、工業の立地指導室、そこで平素からいろいろ調査を進めております。また、産業界から権威のある方に、工業分散指導員というようなものを委嘱いたしまして、各地を調査していただいて、ただいま申し上げるような地方工業分散、その計画をそれぞれ進めておるわけでございます。また最近、御承知のように、この国会に企画庁から提案されております地方工業都市整備計画等もございますから、こういうものと相待ち、まして、農業構造の改善にも協力するつもりでございます。冒頭に御意見を述べられた点は、こういうことかと存じます。
  103. 藤田進

    藤田進君 ちょっと一言、関連。農林大臣、御苦労さんです。私はこれに関連して、大規模になりますと、農地法によって農地の転用が農林大臣の所管になって参りますね。ところが、実際の末端で困っているのは、これは文部省所管に多い事例でございますが、どこの所ということが目的じゃございませんので、文部省のほうで例をあげますと、先般通過いたしました新しく五年制の高等専門学校を設立したいという許可申請、内々には話が済んでいましても、文部省としては、その校舎敷地あるいは運動場、一連の公有地について、農林大臣が農地の転用許可をしたという、その証明書を持ってこなければ、文部省は設立認可が与えられないと称する。だめです、これは。それから、農林省のほうへその旨を持っていくと、農林大臣のほうでは、大臣みずからではございませんが、いやいや、それは文部省の設立の認可書を持ってくれば、農地転用の許可をいたしますと。幸いに荒木文部大臣御同席でございますが、これでは、いよいよ四月一日から開校しなければならぬ、募集もしなければならぬ、ところが基礎工事も何もできない、文句言うならやっておこう、というようなことに実際はなりますけれども、これでは、農林大臣が悪いのか、文部大臣が悪いのか、前に進まないのですよ。文部省は、農地の転用認可を持ってこいと言うし、あるいは農林省は、今言ったように、文部省の認可の証明書を持ってこいと言う。そういうキャッチ・ボールをしているのが、これは一例ですが、現在の行政の実態なんです。それぞれの所管大臣について、その解決についてお答えをいただきたい。これは、通産大臣お答えになりました工業用地についても同様な実例があります。
  104. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私、そういう事例にまだぶつかりませんのでございますが、この機会に明確にいたしておきます。公共用敷地等につきましては、少しもこれを停滞する、押えるということはいたしておりません。全部即時認可するということにいたしておりまして、そういう例があろうとは考えておりません。もしあるならば、それは、農林省のほうにおきましては、農地の転用は、公共用敷地につきましては、これは例外の処置をとりまして、今設備投資の抑制を、一時抑制するというらち外に置いて取り扱っておるということは決定いたしておりますから、その点御了承願います。
  105. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お話の高等専門学校につきましては、学年進行で参りますので、四月からの開校にあたりましては、現実問題として仮校舎で発足をいたします。校舎等ができ上がりますまでには、一年はかかるわけでございますが、私のほうも、現実問題として、その悩みを訴えられたことは、まだ直接聞いておりません。なお、十二新設を予定いたしております中で、半分近いものが大体国有地を使うことで行けそうでございます。その他、そうでないところでも、農地をつぶして校舎敷地にするということは、原則として避けたいという指導の毛とに動いております。現実問題が今後出て来ますれば、農林省とも相談をするということになりましょうが、当面は、具体問題としては、その関係のものはございません。
  106. 藤田進

    藤田進君 そうなると、こういう公的な所で両大臣が言われると、何か架空のことを申し上げたようで、実例を言いたいんです。これはしかし、事務当局が忠実なるがゆえに所管大臣まで行っていないかとも思います。実例が今度の高等専門学校設置について実はあるんです。農地を転用しないようにという指導なり、それはまあそれとしていいでしょう。しかし事実問題として、東京を初め、大阪、名古屋等々、既成都市の内部においては非常にむずかしい。したがって、郊外地にこれを求めていくということは現実にあるじゃありませんか、今度認可されたうちに。これが実際にはぶつかっている。ですから、今、唐突の質問かもしれませんので、私はこれ以上追及いたしませんが、省内を調整されて、今の答弁のとおり、ことに文部大臣の言われるような、農地転用は原則として避けたいということは、これはもう無理があります。そういうものが全部であるということになれば、重ねての御答弁をいただきたい。現実はそうじゃございません。
  107. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  十二校の半分近いものが国有地を使うことでいけそうな状態でございます。その他は、あるいは御指摘のように、農地を使わなければならないという所も出てくるかと思いますが、その具体問題としましては、まだ私のととろまでは渡っておりませんということを申し上げたのでありまして、しかし、一般的な考え方として、なるべく農地をつぶさないでいけるものはいきたいという方針でおりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  108. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) この機会に、私も明確にいたしておきますが、御承知のとおり、その農地が五千坪以下の場合には、府県知事に委任いたしております。それ以上のものは農林省でやっております。農林省でやる場合は、今申し上げたとおりに、公共用に使う場合には、これはいやしくも停滞しないということできめておりますから、これはなお、多少下のほうでもしそういうことがありましたら、即時に私のほうでは認可することにいたしているのでございますから、その点、ひとつ明瞭にいたしておきます。
  109. 田中啓一

    ○田中啓一君 農業基本法の第二条並びに第十九条でございますが、実は法文を読むことがはやりますので、ちょっと読みますが、第二条第一項七号に、「近代的な農業経営を担当するのにふさわしい者の養成及び確保を図り、あわせて農業従事者及びその家族が」云々と、こういう、この養成及び確保をはかる。十九条のほうは、教育、研究の事業は徹底してやる。こういうことをそのためにやるということが書いてあるわけでございます。ところが、今その確保がはなはだ危うい状態になってきた。これも、私が先ほど申しました、農村から離れる人が非常にふえる。あるいは通う人が非常にふえる。そこで、新学率——中学校、高等学校の卒業生の農家に残る者の人数を見ますると、三十年が二十六万人、三十五年が十二万人、昨年三十六年は七万七千人でございます。六百万の農家というものが維持されていくのには、毎年男女合わせて四十万人ずつ農家に残ってくれぬと、六百万の農家は維持できません。しかし、日本の農業、六百万町歩ぐらい、さらに開墾、埋め立てをやるにしましたところで、おそらく一千万町歩前後のものでございましょうが、決して六百万の農家がなくちゃならぬことはない。いわんや、先ほど申しましたように、二重構造解消ということになれば、やはり一戸々々の農家が大きくなり、農業生産性を高めていく、こういうことで、むろんおそらく半分か三分の一でよろしいのでございましょう。しかし、三分の一としましても、二百万の農家というものをずっと今後やっていくということにしましても、それは四十万の三分の一で、十三万何がしというものは、男女合わせると必要なわけでございます。ところが、たったこれだけしかない。大学を卒業した者が農家に残らぬことは、ほとんど九九%残らぬと言ってよろしいわけでございます。そうしますると、現在の農業高等学校というものも相当数はあるのでございますが、これは、農業者を作るには十分役立っておらぬということに私はなると思うのであります。そこで私は、文部大臣に本日お出ましを願ったのは、これは、農業教育というものを徹底的にひとつこの際は、ほんとうに農業基本法の期待しているような近代的農業を担当するにふさわしい人間を養成する所にしなければ、これはもう目的を達しがたいと思うので丈ね。それは私は、どうしてもこの農業高等学校というものは、これはむろん、小学校、中学校あるいは上の大学の点についても改善するところはたくさんあると思いますが、まず中心は農業高等学校だと思うのであります。特設して、相当の広さの農場を持って、しかも私は、その農場の中には、自立経営可能な農家ということを中軸にこの農業基本法はできておるのでありますから、そういう農業をやっていけるような農家を少なくとも一戸は置いて、そうして自立経営可能な農家で、このようにやりさえずれば、所得も今のような零細なものじゃなくて、百五十万円、二百万円、こういうので、りっぱな文化水準に達した生活ができるのだ、また、こういう農業ならば、青年が未来を託するにしても魅力があるはずだ、こういう私は実物教育をおやりにならなければならない。今までのように、学問を切り売りしたり、おざなりの実習をしてみたところで、とうてい自立経営可能な農家とはどんなものだということはわかりゃしませんのです。事実今日の日本の農業を探してみますれば、一県に二戸や三戸はそういう農家もございます。やっておる農家はございます。またやらんとして、もうやがてなるだろう、あすはなりそうというような農家も私は知っております。ですから、模範農家を置くということには、必ずしも私は事を欠かぬと思っております。そのようなひとつ産業教育振興法の考え方をもう一段と飛躍的に徹底的になさいまして、文部省で、そういうひとつ農業教育というものをお考え願えないか、こういう、まことにやぶから棒の話かもしれませんが、私は、もう今日の日本の経済、農業等の事情、いろいろ教育のことなど考えまして、これが農業基本法に期待するところを実現するのには一番正当な道で、本道で近道だ、こういうように実は思うのでございます。ひとつ御所見を伺いたいと思います。
  110. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 田中君、持ち時間を終了いたしました。
  111. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  今、田中さんがおっしゃったような、ある程度今後の理想形態を、あるいは理想的の内容を念頭に置いた施策はまだやっていないと申し上げたほうが適当かと思います。ただ、明年度から、高等学校につきましては、新しい教育課程が発足することになっております。その面で、一般的に申し上げて、農業高等学校における近代的の学校の授業等をやる意図をもって発足することになっておりますが、農業基本法制定前からの検討の結論でございまして、農業基本法が意図するところを今ある程度理想の形でお話になりました意味にぴたっと合うものとは必ずしも言えないと思います。その点では、今後検討さしていただきたいと思いますので、当面、三十七年度の予算に一億三百万円でございましたか、新規に予算を要求いたしまして、農業高等学校における畜産科あるいは園芸科あるいは農業科等の科目の内容につきまして、教える内容を現実的に、近代的なものに置きかえたい、そういうふうにいたしますために、約百学科くらいにつきまして、各都道府県にそれを実施してもらうための、三分の一の補助金ですけれども、助成をいたしまして、幾らかでも今のお話の線に沿いたいという考え方でおるわけでございます。今後最も典型的な見本になるような農業高校を一つでもまず作って、右へならえ式の模範になし得るような構想も、まさに御指摘のとおり、一考の余地があろう、かように思います。今後の検討をさしていただきます。
  112. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。農林大臣がいらっしゃっていますので、先ほど田中委員の御指摘になりました地区は、成田市の豊住地区だと思いますが、その地区の実態を申し上げますと、大体専業農家は二町前後の単作であります。現状におきましても人手不足で、福島あるいは山形から相当労働人口の補足をいたしております。ここに工場が参りますならば、一応兼業農家の形態をとって、農家収入そのものは上がる家庭があるかもしれませんが、一方において専業農家はますます労働人口の不足に悩むわけであります。ですから、農業基本法の運営で、もっと積極的に、政府のいう協業ですか、共同経営方式というものにプレミアムをつけて、むしろ喜んでそちらへ進めるような方策を立てなければ、工場誘致をして工業と農業と併立させるような方法をとっても、実質的には動いて参らないと思うのであります。この点、現状においては、兼業農家のほうがむしろ機械化している。専業農家は、機械化したくても機械が購入できない。東京近郊の農家を見れば、こういう実態であります。これは、農林大臣御承知のとおりだと思います。こういう状態に、共同経営の方式というものをむしろ後退させて、個人の農家経営だけを拡大させるような農業基本法を持っていっても、私は農業収入の増大にはならないと思うのでありますが、農林大臣は、この点をむしろ共同経営方式を進めるような、進めれば都合がいいようなこういう考え方に基本法を変えていくようなお考えはございませんか、どうですか。伺います。
  113. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私はわが国の農業が非常に各地各様風俗、習慣の違いますように、いろいろ違っておると思うのであります。また、その人情が違うように、どういう形態を好むかということも違うと思うのであります。でございますから、たとえば社会党さんのように協同がいいだろう、わが党がいうように基本法がいいだろう、またどれがいい悪いといって議論してみても、地方の実情というものを無視してどれでなければならぬというのは出てこぬのじゃないだろうか。また、今お話のように、地方に工場誘致いたしましても、その誘致いたしました工場のできたあとの農業の形式が、そこでどういう農作物が主として行なわれるかということによって労力の関係も違ってくると思うのであります。したがいまして、私は実情に即した方法を十分相談相手になって奨励していくということでいくことが一番いいのであって、一つの方式をもってこれに臨むということは、適当でないのじゃないだろうか、したがって、全国各農村ごとに構造を十分検討いたしまして、そうしてその地方に合った農業構造の改善をして参るということでいくことが一番適当じゃなかろうか、こう考えておるのでございまして、(「成田のことを聞いておるのです。」と呼ぶ者あり)成田の場合については、私はよく実情を知りません。知りませんが、やはりどういう方法でやるかということは、その実情によって考えるよりほかに仕方がないだろうと思うのであります。もし必要があれば、さっそく調査をいたしまして、実情をよく調べまして、そしてどうなっているか、どういう形式のものが入るのか、先ほどお尋ねでございますが、六百町歩のところへ二十町歩の工場ができるというところがある、そこでちょっとそれだけではお答えしにくうございます。
  114. 加瀬完

    ○加瀬完君 おそれ入りますが、もう一つ関連。農家収入を上げるために、農業地域に工場を誘致すれば農家収入が上がる、こういう簡単な考え方では農林大臣はお進めにならない、こう了解してよろしいと思うのでありますが、それはそれでいいです。質問を続けます。  そこでそうであるならば、各地各様とおっしゃいましても、田中委員の御指摘のように、労働人口はどんどん減ってくる。農業労働人口が減ってくる。で、それはほとんどが工業労働人口に転換をしていく、こういう中で農業という産業自体を維持させるのには、農業という産業自体を維持できるような方式を考えていただかなければ、各地各様だけでは問題の解決にならないと思う。農業基本法というものをお出しになったのですから、農業基本法のどこに中心を置いてやっていくか。機械力とかなんとかいっても、機械力を導入できるのは兼業農家で、専業農家はむしろ収入が少なくてどうにもならぬ、こういう事態を解決できるような基本法の運用をしていただかなければならないじゃないか。それには共同経営をしていただくことによって農業経営の収入が上がるという方策を政府で裏づけていただく以外に全国に通ずる道はないのではないか、この点のお考えを伺っているのであります。
  115. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) こういうことを申してどういうことか知りませんが、私は労働力の足らないところに工場を誘致されるようなことはないのではなかろうか。大体土地もあるし、敷地もある、その地方に労働力が比較的ある場合に、工場が行く。労働力のないととろに、工場が土地だけがあったからといって行かぬだろうと思う。また第二には、そういうふうにして労働力が非常に減った場合に、これは共同経営がいいじゃないか、共同経営がいい場合には、共同経営でやる、これを拒否するわけじゃございません。しかし、今日までの経過からいいますと、わが国で共同経営が全国的にうまくいくわけには参らぬのではなかろうか。それは皆さんの選挙区でも御存じのとおりでございます。これを推奨いたしましても、なかなかすぐにそれにいくということはむずかしい。したがって、これがだめだという意見を私は全然持っておりません。持っておりませんから、これはどこまで参りましても、最小限度販売、購買等の共同ということは、これは絶対しなければならない。個人でこれからの農業をやっていくという、これは私はいいと言うことはできません。どこまでも共同販売である、それから共同購入という角度でどうしてもいかなくちゃならぬということは、私もぜひそうありたいものだというようにやっておるつもりでございます。経営の共同化というところまでは、なかなかこれを推し進めようとしましても、農村がこれをすぐ受け入れるかどうかということになりますと、非常に受け入れが困難でございます。困難なところに無理にこれが補助をする、これでなければ補助をしないというのは行き過ぎじゃないかと思いますので、地方の実情考えつつ奨励して参るということでいきたい、こう考えております。
  116. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 田中君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会