○中田吉雄君 私は、ただいま
提案の
石油業法案に対し、
日本社会党を代表し、
池田総理、佐藤通産
大臣及び関係
大臣に若干の
質問をいたしたいと存じます。
本
法案は、最終案に至るまで二転三転、大きく後退いたしました。すなわち、石油と他のエネルギーとの調整や販売価格変更の勧告権の削除、輸入業を許可制から届出制に変更、再
検討条項の挿入等、重要な点はことごとく骨抜きになっています。この種
法律には当然あるべき立ち入り検査権が削除されていますが、国内の産業には立ち入り検査ができるのに、なぜ外資系石油会社にはそれができないのでありましょう。かくて国際石油資本の意を迎え、国籍不明の
石油業法案になりましたことは、わが党の最も遺憾とするところであります。(
拍手)また、古典的な自由経済の概念にとらわれ、エネルギー政策において近代国家の果たすべき役割の認識に欠け、国がやらねばならない太い線が一本欠けています点は、わが党の了解できないところであります。しかも、このザル
法案といわれます本
法案に対してさえ、国際石油資本の意を受けて審議未了にするのであるとの言説が公然となされています。もしそのような事態が起こりますれば、この十月に自由化を控え、石油業界には重大な事態が起こるやもしれません。これに対する
池田総理の不動の方針をお
伺いしたいと存じます。また、この程度の政策ではとうてい不十分と思いますが、御
所見をあわせてお
伺いいたします。
第二に、総合エネルギー政策の樹立と、エネルギー審議会の設置についてであります。現在は、石炭から石油、ガスヘと、消費構造が移り、原子力発電は、
昭和四十五年には重油発電に対抗できょうといわれております。したがって、エネルギー政策は、単に石油プロパーの問題でありますばかりでなく、第一に、石油と石炭、その他のエネルギー間の調整であり、第二に、その国際性と民族性のかね合いの問題であります。したがって、それぞれのエネルギー源が将来どうあるべきかを明確に位置づけいたしまして、しかる後に、総合政策の一環として、この
石油業法案のごとき業種別の対策がとらるべきだと思う次第であります。しかるに、今回の
政府のごとく、総合対策なしの
石油業法案では、車の両輪の片方を欠きまして、総合性と一貫性がなく、真のエネルギー政策の名に値いいたしません。今日の石炭産業の不況、深刻かつ悲惨な炭鉱労働者の現状は、今日までの歴代保守
政府のエネルギー政策に対する無為無定見のいたせる結果と断ぜざるを得ない次第であります。(
拍手)
わが党は、本日、自主性、公共性、自給性及び
統一性の四原則に基づくエネルギー基本法の要綱を発表いたしまして、近々今
国会に
提案する予定であります。すでに
国会でもこの件は決議されていますが、これを尊重される意思がおありであるかどうか。また、少なくとも、エネルギー政策に関する審議会を
法律に基づいて設置する必要があると存じますが、
池田総理の御
所見をお
伺いいたします。
第三に、石油自由化と、国産、準国産原油対策であります。
わが国が、ひもつきでない純然とフリーハンドに輸入できます石油はわずかに一五%といわれています。したがって、無
条件に自由化に移行いたしました場合には、従来、外貨割当
制度で調整して参りました特殊原油の取引は重大なる支障を来たし、国産原油、準国産原油は壊滅的な打撃を受けましょう。しかるにこの
法案では、この点は全く触れていません。九八%を輸入する
わが国が、
一定量を国の
影響のもとに置かずして、国際石油資本の善意だけに期待いたしまして、石油供給の安定的かつ低廉なる供給を確保するというごときは、全くナンセンスと言わなくてはなりません。世界の中で、日本ほど国産原油に冷淡な国はなく、また、これほど野放しのまま石油輸入を自由化しようとする国はありません。このような
政府は、日本
国民と国内産業のための
内閣でなしに、国際石油資本の代弁者にすぎないと言っても言い過ぎでありません。池田
内閣のもと、再軍備費が二千億円以上も計上されていますが、石油在庫二週間分で
わが国の安全保障が保てるというごときは、驚くべき錯覚と言わなくてはなりません。それはともかくといたしまして、石油供給の自主性確保のため、特殊原油引き取りの国策会社を設立するかどうか再
検討すべきだと思いますが、今後
提案の用意があるかお尋ねいたすものであります。
第四に、ソ連石油についてであります。EECの経済的優位性の一つは、加盟六カ国が接続いたしまして、輸送コストが最低であるという点であります。われわれは、運賃コストを最低にいたしますために、体制が違いましても近隣の中ソとの共産圏貿易は不可欠でございます。三十六年度に石油類輸入に約二億ドルの船賃の支払いをいたしましたが、ソ連原油は良質かつ低廉であり、国際石油資本を規制し、海運支出節減のためにも、ソ連石油の輸入は真剣に再
検討すべきではないでしょうか。今春ソ連は、イルクックからナホトカまで四千五百キロという巨大なパイプ・ラインの建設用としての油送管と原油とのバーター貿易を提唱いたしています。私は、このパイプと原油のバーター取引こそ、共産圏貿易にともすればありがちな不安定性を除き、ソ連をしてせっかく投下いたしましたパイプ・ライン施設の償却のためにも、石油取引を一そう安定性のあるものにすると言えると思う次第であります。イタリアの石油政策を背負っていますエニーの発展は、ソ連原油の大量輸入によるものであります。同じく自由主義の国でありますイタリアができますのに、日本ができないはずはございません。ソ連提唱のバーター貿易の
内容、ソ連原油に対する
政府の基本的な
態度をお
伺いいたします。
第五は、石油と石炭の関係であります。欧州経済協力機構加盟十八カ国のエネルギーの構成比は、一九六〇年石炭六二・三%であって、合理化が一そう進んでいますOEECが、
わが国の三八・三%よりはるかに高い割合で石炭を使っている点は、教訓的と言わなくてはなりません。これはエネルギー・コストが工業生産費の中でわずかに一、二%であって、エネルギー源転換による利益は言われるほど多くないからであります。
わが国でも全製造業では三・七%であります。しかも、エネルギー・コストの比較は、単に表面上の価格だけでなく、何よりも、石炭関係人口五百万を初めとし、安定的供給の確保、外貨節約、雇用の拡大や地域経済の発展等、より広い意味での経済合理性と、
国民経済全体の立場から決定されなくてはなりません。炭労の
諸君は、大いに働き生産を上げれば上げるほど自分たちの首を切られてしまいます。それは五千五百万トンの出炭規模の壁であります。また、資材価格の値上がり等もあり、炭価引き下げのためには、出炭規模の拡大は今や必至であります。池田
内閣の所得倍増計画の矛盾から、すでに前提
条件が狂ってきました今、五千五百万トンの出炭規模、トン当たり千二百円の炭価引き下げの合理化計画は、不可能と言わなくてはなりません。これはエネルギー革命の名のもと、国際石油資本のための合理化計画と言っても言い過ぎではありません。したがって、長期の展望と広い
国民経済的視野に立ちまして、出炭規模の拡大、雇用の安定、最賃制の実施等を含む石炭政策を根本的に転換し、もって国内資源の開発と
国民経済の発展をはかるべきだと思う次第であります。これに対する佐藤
大臣の御
所見をお
伺いいたすものであります。
第六に、エネルギー対策と財政金融政策についてであります。
政府は、電源開発関係には過去五カ年間に三千億の国家資金を出していますが、同じエネルギー産業であります石油精製部門には、たった三十億にすぎません。したがって、石炭産業は、資金不足を、過去十カ年間に一億五千万ドル、三十六年度だけで一億五千万ドルと外資にたよっています。この誤った財政金融政策こそ、
わが国石油産業を国際石油資本に従属させ、原油のひもつき買い取りを余儀なくさせたものと言わなくてはなりません。しかも、
昭和三十六年度には、油関係で、原油関税百四十億円、揮発油税千六百三十三億円、軽油引取税二百五十四億円、合計二千億からの税収入がある次第であります。道路がよくなれば石油消費が伸びるといっただけではなしに、石油に対しても固有の政策があってしかるべきだと思う次第であります。石油産業の自主性を高め、その健全なる発展のために、電力産業と同様の
措置がとらるべきだと思いますが、水田
大臣の御
所見をお
伺いいたします。
各国とも国内地下資源開発のための探鉱活動に異常な努力を払っています。たとえばフランスでは石油及びガス資源の開発に年間千五百億円以上の投資を行ない、そのうち国内向けに八百億円もの投資をいたしております。イタリア、西独等みなしかりであります。かくて一九四五年、終戦の年に、フランスは石油二万九千トンでありましたものが、一九六一年にはガスを含め二百十七万トン、西独は五十六万トンであったものが六百二十二万トンヘと飛躍的に増大しております。
わが国は二十九万六千トンでありましたものが、やっと六十二万トンになったにすぎません。
昭和三十七年度の探鉱予算は数億円にすぎません。これで一体何ができるでありましょう。
政府には地下資源対策はないと言っても過言でない次第であります。地下資源の開発には長い年月と多額の経費を必要とし、私企業の力のみをもってしては十分な開発は期待できず、特に、探鉱は国の責任において積極的推進と助成が必要だと思います。御
所見をお
伺いいたします。特に、探鉱助成金は中小企業の探鉱に限るということですが、
政府は自由化の
影響を正しく評価いたしておりません。国産原油のコストは現在トン当たり七千二百円ですが、この十月石油輸入を自由化いたしますれば、原油輸入価格は五千円を下回るでしょう。一挙にトン当たり二千円以上の値下がりでは、配当をゼロにいたしましても、R・P指数、すなわち埋蔵量確保と生産の関係を正常に保つことは困難になって参ります。税制の根本的な
改正か、探鉱費の助成なしには、資産の食いつぶし以外には道がないわけであります。われわれは、国内産業を破壊する自由化に強く
反対し、探鉱費の予算について理解のある答弁を求めるものであります。
最後に、石油会社の国際契約の
内容であります。外資系石油会社は、石油購入のひもつき契約をたてに、公然とアラビア石油の引き取りを拒否しているとのことであります。かかる契約は、明らかに独禁法第六条一項に違反し、その契約は無効であると言わなくてはなりません。しかるに、佐藤公正取引
委員長は、去る三月十三日の
衆議院本
会議において、「現在のところ、外資系会社がアラビア石油会社の原油引き取りを拒否しているとの事実はないように見受けられます」との、はなはだ自信のない答弁をされていますが、いかなる根拠に基づくか、その
理由並びに契約
内容をはっきりいたしていただきたいと思います。また、国際的協定や契約をした場合は、口頭または文書、いずれの契約たるとを問わず、三十日以内に契約の写しを公正取引
委員会に
提出する義務を課しています。しかるに、ほとんどの会社は公取を無視いたしまして届出をしないといわれています。もしそうでありますれば、独禁法第六条二項の違反と言わなくてはなりません。外国の石油会社と提携している外資系石油会社は、外資比率の多寡のいかんにかかわらず、完全なひもつきであって、原油の自主買付の割合はゼロと称されています。したがって、石油の自由化は、国際石油資本にとっては自由化であっても、国内の外資系会社には全く不自由化であります。石油の安定的かつ低廉なる供給を確保いたすためには、かかる外国石油会社との不当な提携
条件を改めさせるととが先決
条件だと思いますが、この点、佐藤通産
大臣にも御意見をお
伺いしたいと思います。
自由化を控え、石油行政の足がかりを作られようとする努力を認めるにやぶさかではございませんが、不十分きわまるものであることを指摘いたしまして、私の
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕