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1961-12-15 第40回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十二月十五日(金曜日)    午前十時四十五分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二号   昭和三十六年十二月十五日    午前十時開議  第一 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(蚕糸   業振興審議会委員)  第二 中央選挙管理会委員及び同   予備委員指名   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (蚕糸業振興審議会委員)  一、日程第二 中央選挙管理会委員   及び同予備委員指名  一、一部右翼、旧軍人等による不穏   計画に関する安井国務大臣報告   —————————————
  2. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国会法第三十九条但書規定による議決に関する件(蚕糸業振興審議会委員)を議題といたします。  内閣から、衆議院議員荒舩清十郎君を蚕糸業振興審議会委員に任命することについて、本院の議決を求めて参りました。  同君が同委員につくことができると議決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) 御異議ないと認めます。    ————————
  5. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) 日程第二、中央選挙管理会委員及び同予備委員指名。  指名する委員及び同予備委員の数は、それぞれ五名でございます。
  6. 鍋島直紹

    鍋島直紹君 中央選挙管理会委員及び同予備委員指名は、いずれも議長に一任することの動議を提出いたします。
  7. 米田勲

    米田勲君 私は鍋島君の動議に賛成いたします。
  8. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) 鍋島君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) 御異議ないと認めます。  よって議長は、中央選挙管理会委員山浦貫一君、大浜英子君、芹澤彪衛君、藤牧新平君、山崎廣君を、同予備委員近藤英明君、小島憲君、岡崎三郎君、木原実君、米山雄治君を指名いたします。    ————————
  10. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) 安井国務大臣から、一部右翼、旧軍人等による不穏計画について、発言を求められております。  この際、発言を許します。安井国務大臣。   〔国務大臣安井謙登壇拍手
  11. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 一部の右翼、旧軍人等による不穏計画について、御報告いたします。  警視庁では、かねてから、一部右翼、旧軍人らの少数グループが、政府要人などに対し不穏計画を企てている事実を探知し、内偵捜査を進めていたのでありますが、本月十二日早朝、千葉、福岡、長崎、埼玉、佐賀、各県警察協力もとに、この計画中心人物と見られる元川南工業社長川南豊作国史会主宰者陸士六十期生小池一臣日本学生改新会会長元菊旗同志会中央委員篠田英悟の外、元陸軍少将桜井徳太郎、五・一五事件関係者三上卓ら十二名を殺人予備罪の容疑で、また三無塾塾長川下佳節銃砲刀剣類等所持取締法違反現行犯で、それぞれ逮捕いたしますとともに、関係個所三十二カ所を捜索し、ヘルメット三百八十八個、防毒マスク百個、作業衣九十九着、戦闘帽九十九個、日本刀八振、ライフル銃二丁、その他の証拠品を差し押えたのであります。同人らの身柄は、一件書類とともに、十四日、東京地方検察庁に送り、引き続き警視庁東京地検において取り調べ中であります。  同人らの不穏計画動機目的、犯罪事実の詳細につきましては、今後の取り調べ、捜査により、漸次明らかにされると思いますが、ただいままでの捜査の結果によりますと、同人らは、わが国現状不満を持ち、現状打開のためには、政府要人などを殺害する等の非常手段もやむなしと考え、幾たびか謀議を重ね、武器入手などの準備をしていたという疑いがきわめて濃いのであります。  浅沼事件嶋中事件以後、警察におきましては、右翼テロその他直接行動未然防止最大努力を払って参ったのでありますが、本年当初以来、一部右翼の言動の中には、緊迫した国際情勢、また軍事基地闘争政防法闘争などの現状から、共産革命への危機感を深めるとともに、一方これに対する政府施策にあきたりないものがあるとして、批判的傾向を強め、さらに五月、韓国に発生したクーデター拍手を送るような向きもございましたので、このような情勢の中で、一部右翼のはね上がり的な危険な動きに対し特に注意をしていたのであります。ところが、たまたま本年九月初めごろ、一、二の県警察から、某歴史研究グループによる不穏計画についての情報がございましたので、この情報もとにし、鋭意捜査を進めました結果、さきに申し述べましたように、一部右翼、旧軍人らが、政府要人などに危害を加える目的謀議を重ね、武器の収集などの準備をしている疑いが濃くなったので、事を未然に防止するため、このたび早期検挙を実施したのであります。  現在までの取り調べの結果では、今回の事件は、一部のはね上がった右翼分子と終戦当時陸士在学中のきわめて一部の者によって計画されたものでありまして、既存の右翼団体や、陸士五十九期、六十期生の間に幅広い連絡があるという事実もなく、また、その動機原因背後関係などにそれほど根深いものはない模様であります。  以上、今回の事件の概要を申し上げましたが、警察といたしましては、今後も、一般国民の御協力もとに、この種危険な政治的暴力の排除に最善の努力を払って参りたいと存ずるものであります。(拍手
  12. 平井太郎

    ○副議長平井太郎君) ただいまの発言に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。加瀬完君。   〔加瀬完登壇拍手
  13. 加瀬完

    加瀬完君 私は、日本社会党を代表いたしまして、右翼クーデター事件につき、関係閣僚お尋ねをいたします。  出先警備当局が、今までのひより見的な右翼優遇主義を捨てて、断固、本事件を摘発いたしました点は、敬意を表するにやぶさかではありません。しかしながら、暴徒クーデターの要因が政府施策にあるというに至りましては、強く政府反省を求めざるを得ないのであります。このような立場で、以下九点につき質問を進めます。  まず、質問の第一点は、公安委員長説明によりますと、「国の現状不満を抱き、政府要人殺害謀議を重ねてきた」とありますが、彼らが、現政府の、すなわち池田内閣の施政のいかなる点を不満としたのか。また、本事件につき、大平官房長官は、政治姿勢を正す必要がある、こう記者会見で述べておられますが、今後いかなる点の姿勢を正されるのか。この二点をまず総理において明確にしていただきたいのであります。  質問の第二点は、治安当局に対してでありますが、まず、ライフル銃日本刀、こういった凶器出所及び鉄かぶと等出所クーデター決行計画具体的作成の時期、襲撃対象とその手段方法、特に、押収した武器等の数からいたしますれば、決行の際はかなりの人員を動員できる態勢にあったと推量されます。したがいまして、いかなる者に参加を勧奨したか、参加勧奨対象交渉経過について、明らかにせられたいのであります。  次に、情報を前もって入手しながら、この情報の中には、ライフル銃日本刀等凶器を収集し、または使用をいたしておりました事実があるにもかかわらず、今日までこれを泳がせておったわけでありますが、泳がせておりました理由は何でありますか。また、この間、政府警察当局から、何月何日、どういう内容情報を得られたか。それに対して政府はいかなる措置を指令したか。その情報民間情報なのか、政府機関情報なのか。内容をも含めて、この間の経緯を詳しく御説明を願いたいのであります。  質問の第三点は、浅沼嶋中事件以来、われわれは右翼動向に対しまして厳重なる監視当局に要求して参りました。本事件においても、反動分子自衛隊に働きかけたといわれております。そこで、当然監視を続けていたであろう法務当局、特に公安調査庁に聞きますが、かかる右翼急進分子動向自衛隊とのつながり、特に警戒中の急進分子の氏名、この分子に働きかけられた自衛隊員、特に自衛隊最高幹部某氏川南とは特殊関係にあるはずでありますが、本事件について話しかけがこの某氏に行なわれたかどうか。さらに、三上卓氏は自衛隊関係があるはずであります。この線からの働きかけはなかったのか。以上に対する自衛隊当局がとって参りました措置について述べられたいのであります。  さらに加えて、本事件について自衛隊の一幹部は、旧陸士思考停止教育原因であると、こう語っておりますけれども、それならば、将来自衛隊に限ってかかる事件に巻き込まれる心配はないという、現自衛隊における思考停止教育ではない本物の教育の、たとえば憲法順守のためいかなる具体的な教育方法が講じられておるか、この具体的な御説明を願いたいのであります。  質問の第四点は、資金関係であります。本事件資金は、だれによっていかに集められたか。右翼団体との横の関係はなかったのか。密貿易麻薬売買等との関係はなかったのか。特に、右翼資金源密貿易ルートとして、韓国ルート香港ルートがうわさされておりますが、本事件貿易をも含めて第三国との関係はなかったのか。なお、治安当局が現在まで動向警戒中の右翼団体とこれが資金現況はどうなっておりますか。支出内容をもあわせて、その後の調査内容をこの際報告を願いたいのであります。   〔副議長退席議長着席〕  質問の第五は、本事件は、韓国クーデターに影響されたと伝えられておりますが、韓国クーデター政府みずからが是認しているところに問題がないのか、こういう点について質問を重ねます。日本国憲法精神は、軍部クーデターをいかなる理由があろうとも認め得べきものではありません。このことは、憲法の条文を引くまでもなく明々白々であります。しかるに池田内閣は、韓国軍暴力革命首相みずからが握手を求めている態度を示しております。この首相態度は、暴徒行動に是認と奨励を与えている以外の何ものでもありません。(拍手)この点われわれは、韓国軍閥政権に対して今まで総理のとってきた媚態外交に強い反省を促したいと思いますが、総理の御所見を伺います。  質問の第六は、かかる反動計画を使嗾するものに、政府民主主義軽視の風潮が起因になっております点であります。かつて、本院において紛議を重ねました破防法においてすら、同法第三条には、規制の基準として、「いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限してはならない。」、このように規定してあります。これは民主主義における基本的人権内容でもありますし、民主主義の保障をはっきり規定していることでもあります。しかるに、最近の政府姿勢は、公安条例等行政措置によりまして、司法権以上に、基本的人権制限を加えているのであります。これは政府みずからの憲法軽視であり、反民主主義行動と言わなければなりません。この点を、公安条例判決におきまして、最高裁の藤田裁判官は、「規定内容自体に、乱用を防止すべき最大限度の考慮が払われていなければならない。」、「運用のいかんに責めを帰せんとするがごときは法規の規範性を無視するものである。」、このようにその違憲性判決内容で述べておられます。こういう順法精神、為政者としての憲法順守反省が、歴代保守党内閣には非常に欠けております。この民主主義軽視態度を今後改めようとは思わないのか。重ねてこれまた総理に所信を伺います。  質問の第七点は、これも憲法軽視の一例でありますが、現憲法最大特徴は、平和と基本的人権尊重であることは、論を待つまでもありません。しかるに、政府治安対策は、この平和並びに基本的人権に主目的を置いてはおりません。公共安全秩序のためには基本的人権制限しようとしているのが、今日の施策方向であります。基本的人権尊重することが公共福祉を守ることである、こう憲法規定されておりますのに、公共福祉の名のもとに、個人の自由が、国民の諸権利制限をされ、かつまた、国民の諸権利の要求が時の政府方針に合わなければ、これを犯罪視する傾向が顕著になって参りました。明らかな憲法の逆行であります。しかも政府のこの傾向は、ますます度を増してきております。今、反動分子政府方向に刺激をされまして、「国家のために」の美名のもとクーデターを公然と是認したといたしますれば、責任は一体だれにあるのでありましょうか。重ねて聞きますが、政府政治姿勢を正すとは、憲法軽視と誤まられる施策については反省を加え、基本的人権尊重を政策の上に顕著に今後は打ち出していく、こう解釈してよろしいかどうか、お答えをいただきます。  さらにわれわれは政府に聞きたいのでありますが、本事件のごとく、特に右翼団体等憲法否定行動に対しまして、政府は今までどういう具体的行動をつかんでいるのか、またこれらの行動にどう措置をとってきたか、反憲法運動に対する政府の護憲の事実を示していただきたいのであります。  質問の第八点は、わが国にこの種暴力肯定の反民主主義的思想が根強いことは、悲しいかな、いなむわけには参りません。したがって、政治の要は、これに養分を与えるか、水をからしてこれを絶滅するか、この点にかかっておりますこともまた論を待ちません。本事件未然に防ぎ得たけれども、かつて政府が発表をいたしました二十余の危険団体、この団員一万人、特に要注意人物マークをいたしました者千五百人、これらの監視は現在十分に行なわれているのでありましょうか。また、今後もしこの種事件の発生が全然ないと言い切れますか。さらに、この種事件を繰り返さないための具体的措置をどのように確立されておるのか。これらの点を明らかにされたいのであります。  質問の第九点は、政府政治責任についてであります。明治から大正、昭和初期にかけて君主国家でありました当時は、この天皇主権に対する侵犯事件について、当時の内閣はいかなる政治責任をとったかは、各位が御存じのとおりであります。それがよし捜査検討の余地ある問題であっても、内閣政治責任を負って総辞職をいたしました。これは、単に不敬罪が存在していたばかりではなく、旧憲法においてすら主権に対する委任責任を明らかにする意味が込められていたはずであります。主権者に対する内閣責任の明示であります。天皇に対する責任ではなくて、主権者国民に対する政治責任は、今日こそ、より明らかにされねばならないはずであります。本事件は、憲法の保障する主権在民、すなわち憲法にきめられた国民主権を、暴力をもって国民から奪い取ろうとする事案であります。これ以上の国民主権に対する侵犯はないわけであります。しかも、池田内閣に至りまして、このような主権侵犯あるいは反民主主義行動は、浅沼事件嶋中事件と重なり、さらにこのたびのようなクーデター計画と発展をして参りました。池田内閣が、国民主権に対する、日本国憲法に対する侵犯を許容しているとも見られるのであります。かつて民主主義のない時代でも、主権侵犯に対しましては総辞職をもってその責任を明らかにいたしました。今、民主憲法もとで、主権者に対する激しい侵犯に対しまして、政府が何ら政治責任を明らかにしないのは、いかなる理由によるのでありましょうか。もしそれ、池田内閣政治姿勢を正すというならば、暴徒にまで「失業、重税、汚職のない政治を」と言わせておるかかる事件を発生させました政治責任を、国民の前に謝罪すべきであります。みずからを正して民主主義を守る気魄があるかどうか、最後お尋ねをいたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  今回の事件はまことに遺憾なことでございまして、将来かかることの起こらないよう万全の措置を講じたいと考えております。  御質問の第一点の、いかなる点について不満があってああいうことを計画したかということにつきましては、目下調査中でございます。  それから、政治の姿を正す、これは、いついかなるときにおきましても政治の姿を正しくしなければなりません。で、政治の姿を正しくするということは、政治行政の運営を正常化しまして、ほんとうに正しい民主主義ルールを実現する、こういうことであると考えておるのであります。  次に、今回の事件韓国軍事革命との関係でございまするが、私は、外交は必ずしもその相手国政治形態によってやるべきものじゃございません。やはり世界の平和と、また自国の利益ということを考えるべきでございます。そうして韓国朴政権は、将来近いうちに文民政治に移行すると宣言いたしております。私は、日本利益のために韓国との関係を正常化することが必要であると考えて、交渉をいたしておるのであります。  次に、公安条例改正は非民主的だとおっしゃいまするが、公安条例改正は各地方の議会の議決を経て行なっておるのでございまするから、私は非民主的とは考えておりません。また基本的人権尊重しなければならぬことは当然でございます。しかし、この基本的人権につきましても、公共福祉のためにはある程度の制約を受けるということは憲法に明示してあるのでございます。われわれは基本的人権をできるだけ尊重しながら、そうして片一方では公共福祉を守ることに専念いたしておるのであります。  なお今回の事件について政府がこれを許容しているというふうなお言葉でございますが、われわれは決してそういうことはいたしておりません。こういう事件につきまして内閣が直ちに総辞職をするということが民主主義ルールに乗っているかどうかということにつきましては、国民が批判すると考えております。(拍手)   〔国務大臣安井謙登壇拍手
  15. 安井謙

    国務大臣安井謙君) お答えいたします。  検挙あるいは捜査におきまして多数の証拠品をとっておりますが、この入手経路あるいは具体的な襲撃の時期、対象動員人数、これは目下鋭意取り調べ中でございまして、先ほど報告した程度でございます。  なお情報出所が一体どこか、また検挙はどういう時期を選んで検挙したのか、こういうお問い合わせでございますが、情報出所につきましては、御報告のとおり、地方の一、二の県警察から、国史会グループ不穏な挙動がある、こういう情報を探知いたしました。それに基づいて傍証を固めておったものでございます。  なお、この不穏計画の実行がはたしてとの程度熟しておったか。——どちらかというと、この不穏計画がなされておるという傍証が固まりましたために、むしろ未然に、早期検挙をしたという形になっておろうかと思います。  資金出所につきましても鋭意探索中でございますが、目下のところ、右翼その他の特殊の団体から連絡があるといったふうなものは出て参っておりません。  なお、従来のこの要注意人物を十分マークしておるか、今後はどうかといったようなお尋ねに対しましては、十分従来ともそういった要注意人物につきましてはマークをいたしております。今後もかかることのないように、十分の関心を持ってこれからも注意をして参りたいと思っておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣植木庚子郎君登壇拍手
  16. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 浅沼事件あるいは嶋中事件以後における右翼団体等急進分子に対する調査その他どういうふうにしているかという御質問がございました。その点についてお答えいたします。  ああした不祥なる事件以来、法務省所管公安調査庁当局といたしましては、右翼動向についても十分気を配って調査を進めておるのでございます。元護国団常務理事小島某が、その主宰する「思想研究」という雑誌、それの昨年一月号並びに昨年の八月号に、クーデター必然性あるいはクーデター合理性ということについて意見を発表しておるのでございます。しかし、これは小島某が研究した結果の個人的意見を述べておるものでございまして、団体としての意見ではございません。また、右翼団体に属する人たちの中には、若干個人的にクーデター的方法による国家革新の必要を主張しておるものもあるやにうかがわれますが、今日まで調査し得ましたところでは、団体組織をもってクーデターを云々しておるというのは、私たち調査の状況ではわかっておりません。さようなものはないのでございます。ことに最近の急進分子動き方といたしましては、いろいろな反共的な激しい活動を展開しておるように思われますが、しかし、その動きたるや、単なる個人動きであるようにも思えますが、しかし、この点については十分配意をして、今日もなお調査を続けておるところでございます。  これら右翼団体資金源等の問題について御質問がございましたが、密貿易あるいは麻薬売買等によってこうした資金を得ておるのではないかという御質問がございましたように思います。これにつきましても、われわれもこの種の情報は得ておりますので、鋭意調査をいたしておりますけれども、まだ的確なる資料を得るに至っておりません。おおむねわれわれの調査するところでは、やはり従来同様に、当該団体機関紙購読料でありますとか、入会金でありますとか、あるいは会費とかいったようなもの、あるいは寄付金というようなものをもって、その資金に充てておるように思われるのでございます。  以上御報告申し上げます。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇拍手
  17. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 三上川南というような人から自衛隊の一部について接触のあった事実はございません。自衛隊員のごく少数の者に、同期生というような関係で面会を求められた等の事実はございまするけれども、今回のこの不穏計画のごときものを打ちあけられた事実もございません。  また、教育方法でございますが、国防の基本方針にもございますように、民主主義を基調といたしましたわが国の安全と独立を守るということでございまして、教育基本方針民主主義に置き、そうして、広い視野に立った、社会人としてもりっぱになりまするような、そうした基本的な考え方で教育をいたしておる次第でございます。(拍手)   〔加瀬完発言の許可を求む〕
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 加瀬完君。   〔加瀬完登壇拍手
  19. 加瀬完

    加瀬完君 安井国家公安委員長に伺いたいのでありますが、第三国関係、あるいは密貿易、こういう点は植木さんがお答えになりましたけれども、捜査担当者でありまするあなた方のほうで、少なくも川南並び三上密貿易関係の経歴があるわけでありますから、もっと綿密な調査がなされているはずであります。重ねてこの点を伺います。  それから法務大臣に伺いますが、国家公安委員長の御説明によりますと、地方警察からの情報であった、こういう話である。それならば、公安調査庁右翼急進分子に対しましてどういう調査を現在まで行なっておったのか。たとえば、調査費左翼に幾ら、右翼に幾ら使われたか。ほとんど対象左翼関係で、右翼に対しては調査が行なわれておらないということは、たびたび指摘をされておる点であります。この点がどういう数字になって現われておるか。詳しく説明をされたいのであります。  防衛庁長官に伺いますが、あなた方の幹部の一人は、陸士教育はかたわの教育だと指摘をしておりますが、それならば、自衛隊教育がかたわでない、陸士教育とこういう点で違っておるという、具体的な、たとえば憲法をいかに守ろうとする教育をしておるかという、具体的な問題を出せ、こういう質問をしておるわけでありますから、具体的にお答え願いたいと思います。  総理最後に伺いますが、事件は遺憾であった、しかし、やめるかやめないかの責任国民がきめると言うけれども、国民主権委任されてあなたは内閣を組織しておる。したがいまして、主権侵犯のような国民に相済まない事態が生じましたならば、委任をされているあなた自体が出処進退をきめるべきで、主権者にきめていただくというものではないはずであります。旧憲法におきましても、内閣責任制というものは明らかであります。その点を伺うのであります。  公安条例は非民主的ではない、非民主的でないという証拠として、地方の議会がきめたのだと、こうおっしゃった。そうではない。議会がきめたものでも非民主的なものは、政府が、憲法を守っていくという大筋からいえば、指導によりまして、憲法に違反するような方向から憲法の本筋にもどすように、指導、助言、援助をする責任というものが政府にはあるはずであります。こういうことが行なわれておらないという点を指摘しておるのであります。  外交は外国の政治形態で取り扱うべきものではないと、こうおっしゃる。それならば、ソ連に対して、中国に対して、政治形態のいかんにかかわらず、国民が要望している外交を積極的に進めるべきでありましょう。そちらのほうには背を向けておって、クーデターによりまして新しい政権を作った韓国にだけ握手を求めておることは、媚態外交と筋が違うのではないか、こういう点を伺っておきたい。重ねてお答えをいただきます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 再質問の順序によってお答え申し上げます。  今回の事件について、いわゆる国民に対してああいう態度をとった。そうして国民から負託を受けている内閣は、こういう事件が起こったら辞職すべきではないか、こういうことでありますが、私は辞職する必要はないと思います。もし辞職する必要がありとすれば、それは国民の世論によってきめるべきで、こういう問題が起こるたびに内閣辞職することは、ほんとうの議会主義、民主主義ではないと、私は考えております。  次に、公安条例の問題についてお答えいたしますが、基本的人権はあくまで尊重しなければなりません。しかし、社会福祉公共の安全ということは、これは非常に必要なことでございまするから、これを守るために、われわれはある程度の基本的人権を制約することは、憲法の認めるところであります。われわれは、その線に沿って進んでおるのであります。  なお、外交問題につきまして申し上げまするが、その政治形態のいかんを問わず、われわれは外交を正常化することに努めております。したがいまして、ソ連ともやっております。ソ連とも外交交渉をしております。韓国ともそうしようとしておるのであります。中共の問題は、たびたび申し上げますがごとく、われわれは二つの中国というものを認めておりませんし、台湾政府——中華民国政府と正常な国交を結んでおります。しこうして、その後において、中共政府——北京政府が出てきたのであります。これは重要な問題でございまするから、これをいかにするかということを、今国連で相談いたしておるのでございます。決して私は矛盾した態度をとっておりません。御了承願います。(拍手)   〔国務大臣安井謙登壇拍手
  21. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 資金源につきましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、鋭意これは取り調べ中でございまして、密貿易とかその他の関係も、むろんあわせて調べておるのでございますが、現在のところ、そういったことでまだ発表と申しますか、御報告を申し上げるような材料がないわけでございます。(拍手)   〔国務大臣植木庚子郎君登壇拍手
  22. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  右翼団体に対しましての公安調査庁当局におきましてのその後の調査は、浅沼事件嶋中事件等が起こりますあの前におきましては、仰せのとおり、やや経費の充当の仕方、人員の配置の仕方等の点についても、遺憾の点がないことはなかったように感ぜられましたので、あの事件以来、人員の配置も特に増加いたしまして、経費の配分におきましてもこの点に留意をして、そうして団体動きを極力でき得る限り綿密に調査をすることを進めておるのでございます。しかし、何分にも御承知のとおり、間接の調査でございますから、なかなか思うように、十二分の資料が集まっておるかと言われますと、その点については、なお勉強の余地があると、かように考えておる次第でございます。われわれといたしましては、今後ともなお一そうこういう点につきまして遺憾のないように努力をいたして参りたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇拍手
  23. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、教育の基本は民主主義に置いてございます。さらに、広い視野に立った人間を作り上げるために、単に軍事面ばかりではなく、経済、文化その他にわたった教育を施しておることが、戦争前の教育とは違っておると思います。(「憲法を教えておるのか」と呼ぶ者あり)もちろん憲法を十分に教育いたしておる次第でございます。(拍手)   —————————————
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 田畑金光君。   〔田畑金光君登壇拍手
  25. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、民主社会党を代表し、ただいまなされました安井国家公安委員長報告に対し、以下二、三の質問総理以下関係閣僚に対して行なわんとするものであります。  去る十二日、旧軍人右翼グループによる反共クーデター計画が発覚し、首謀者等十三名が逮捕されたという報道は、その時代錯誤の暴挙に国民を憤激させると同時に、昨年の安保闘争以来の右翼テロと同じ社会的背景から生まれておるという事実に照らし、あらためて社会的危険性を指摘せざるを得ません。従来の一連のテロ行為が一人一殺主義であったのに比し、今回のそれは、明らかに集団的計画的犯行であったということでございます。戦後の右翼は、思想も組織も持たず、一人一党で、むき出しに左翼との対決だけが表面に出ていますが、最近は、右翼なりに指導理念や運動方向を組織化し、集団化しようとする傾向が見られます。今回の事件は、思考停止病患者によってなされた単純なる暴行事件だという見方をする向きも一部にはあるのでありますが、五・一五事件関係者があり、旧陸士出身者という経歴や年令から見ましても、従来の右翼と異なるものであることを見落してはなりません。ことに、今日クーデターが成功するには、軍の背景と財界の援助を必要とするといわれていますが、自衛隊に働きかけ、財界に手を伸ばしたということを見ますときに、社会的背景はもっと広くして深いことを認めざるを得ません。  したがって、今後の右翼対策は、従来の個人テロ中心から、さらに右翼全体の動向を把握し、監視することが必要であり、対策もまたそれに対応すべきだと考えますが、安井委員長の所見を承ります。  さらに、政府はさきの通常国会において、浅沼事件嶋中事件の発生にかんがみ、右翼の取り締まりには万全を期し、資金源等についても調査し、必要に応じては公表することも約束したはずでございますが、右翼動向、ことに行動右翼の最近の傾向、そうして今、安井国家公安委員長は答弁をなさらなかったのでございますが、資金源等について、その後の調査の経過をこの際明らかにしていただきたいと思います。  今回の事件が事前に発覚し、未然に防止されたことは幸いでございますが、先ほどの報告にもありますように、今回の検挙は全国的規模においてなされております。また、押収物件について見ましても、彼らが計画的に集団的殺人を計画したことは明らかでございます。今回の事件は、警職法、安保闘争、春闘、政防法闘争を通じ、左翼の勢力がますます台頭し、わが国にも今に共産革命がくるかもしれないという一種の恐怖観念にかられ、加うるに、最近の韓国におけるクーデターの成功に刺激されたものといわれております。五・一五事件や二・二六事件当時に比べ、今日は社会的情勢は一変しておることは事実でございますが、しかし、この種事件はナンセンスだとする傾向もあるが、これを甘く見ることは危険だと考えます。かつて五・一五事件や二・二六事件を引き起こした青年将校が、当時愛国心の発露であるという世間の一般の同情からいたしまして、社会全体の風潮を、いよいよ国家主義、軍国主義のあらしの中に巻き込んで、ついに破局に導いたことは、歴史の教訓でございます。右翼は、昔から、人のつながりや、財政面において保守党やその末端の組織に、あるいは財界と密接な関係にあることは、世間周知の事実と言われております。この際、最も重要なことは、政府右翼テロに対しきぜんたる態度をもって臨むことでございます。同情的にながめることは、将来にさらに大きな禍根を残すものでございます。警視庁は、殺人予備罪と銃砲刀剣不法所持で逮捕したといっておりますが、捜査の進展によっては内乱予備陰謀罪の適用や、背後団体については破防法の適用も考慮中と言われておりまするが、この際、法務大臣の見解を承っておきたいと思います。  池田総理は、昨日、衆議院本会議において、野党の質問に対し、このような事態が起こらないようにするために、政治姿勢を正し、民主主義ルールを守り、政治を秩序正しく運営していくよう努力したいと答えておりますが、一般論としてはしごく当然であり、賛成であります。しからば、具体的に政治の秩序を正すとは何か、民主主義ルールを守るとは何であるか、明らかにしてもらいたい。  今回のクーデター計画動機目的は、政財界を中心とする各界の粛正にあると公言いたしております。直接的には共産革命の恐怖であるが、これに対する対策がない現内閣の転覆を計画しておるのであります。これを要するに、歴代保守内閣の失政の責任池田内閣政治の貧困によるものと言わなければなりません。  最近の政界の腐敗は目に余るものがございます。武州鉄道汚職事件中心人物と見られておる楢橋元運輸大臣は、釈放後の記者会見で、政治献金を受けた事実は認めるとはっきり申しております。政治献金であって、わいろではないと言っております。ただ、世間の常識からみまして不思議にたえないのは、現職の、免許権を持つ運輸大臣が、その監督下にある業者からもらっても、何ら法律上、政治道義上やましくないとするこの態度でございます。民主政治の基本は、選挙界がきれいであることが出発点であります。椎名前通産大臣の昭和三十三年総選挙における違反事件は、選挙史上特筆すべき内容でございますが、その総括責任者が三年有半行方不明であったのであります。六十九才に達するこの老人は、最近地下から姿を現わし、目下司直の取り調べを受けておると聞いておりまするが、椎名御夫人が一切の責任を負い、主人が知らぬ存ぜぬでは、世の中に通用できる常識ではございません。  朝日新聞が「最近の三党」と題して各党の生態を描いておりますが、それにも明らかなように、自民党内閣は派閥構成内閣であります。岸前総理は、たとえ口先にしろ党の一本化を主張されましたが、池田総理は完全に派閥連合の上に政局の安定、それは国民のための安定ではなく、池田派閥のための安定を第一義と心得ております。イデオロギーよりも派閥的利益の寄り合いであるところに、そもそも政治の混乱があります。議会制民主主義の重点が多数決の尊重であるだけに、この派閥的動きによって党の行動に首尾一貫性を欠くことは、日本の議会制度の致命的な欠陥であります。国民に公約した重要法案も、党内思惑が災いして流れてしまう。ILO条約批准に伴う池田内閣の醜態は、国民に対する公約無視であるだけでなく、国際信義を失墜するものでございます。重税、汚職、失業をなくすることがクーデター首謀者の目標でありましたが、池田内閣の経済成長政策が破綻をもたらし、勤労国民にその犠牲をしわ寄せしていることは、社会不安の大きな要素をなしております。政治姿勢を正すには、まず池田総理みずから政治家として与党全体の統率を厳正にし、派閥の利益のためや特定少数グループ利益のためでなく、国民全体のための政治を行ない、腐敗を追放することが、左右両翼の暴力主義を排除する大道であると私は考えますが、総理の見解を承ります。  また、政治姿勢を正すには、単に政府、与党のみでなく、国会全体として努力すべきことは当然であると思います。昨年の安保国会のあとを受けまして、特に総選挙に際し、三党首は国会正常化を国民に公約いたしましたが、その直後の第三十八通常国会は、相変わらず混乱のうちに幕切れになり、国会正常化の具体的方法を見出すことがこの国会に持ち越されました課題でございます。議会は言論の府であって物理力行使の場ではございません。このような傾向をなくするためには、国の重要な施策国民の自由と権利につながる重要法案等は、選挙に際し国民の審判を受けるという慣行を作ることが大切であると思いまするが、総理の見解を承っておきます。  今回のクーデター対象に労働界の首脳部が置かれたということは、注目すべき事柄でございます。今なお、わが国の社会的土壌には、労働運動を罪悪視する者もございまするが、国民の正しい権利意識培養のため、政府施策を強く要求するものであります。が、同時に、わが国労働運動や社会運動の一部に、政府憲法軽視理由に現行法秩序をじゅりんしてはばからず、国家民族の利益を無視して恥じない風潮が見受けられますることは、われわれの深く遺憾とするところでございます。非合法的行動により合法面を拡大する行き過ぎた行動は、自由にして民主的労働運動のとるべき態度では断じてなく、深く反省を求めるものであります。これらの傾向も、帰するところは、池田内閣の近代的労働政策や憲法に対する順法精神の欠除に原因があると私は考えますが、この際、総理の所信を承っておきたいと考えております。  最後に私は防衛庁長官お尋ねいたしますが、今回の事件で注目することは、事件中心人物に旧陸士の卒業生が参加しておること、これらの同期生が自衛隊には約五百名前後おるということでございます。今日までの調査の結果は、自衛隊には関係者がないということで、けっこうでございますが、今日の情勢があすも続くとは考えられません。新聞の伝うるところによりますると、計画への参加を勧められた自衛隊員は、時期尚早ということで拒否したといわれておりますが、きわめて危険なことだと言わなければなりません。防衛庁幹部は、社会人としての民主主義教育が隊員に徹底しているから、乗ぜられるすきはないと公言いたしておりますが、これらの首謀者は自衛隊と接触が深かったことは事実であります。桜井徳太郎のごときはしばしば防衛庁に出入りし、話によると、この人の話も聞いたということでございます。事実とすれば、思想的な影響を受けていることも否定できないでございましょう。また国史会という団体クーデターの原動力となっておりますが、これに加担した者はないのかどうか。かりにないといたしましても、現行自衛隊法のもとでは、自衛隊員が国史会に参加する。
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が超過しました。
  27. 田畑金光

    ○田畑金光君(続) あるいは政治結社に参加することも、これは自由でありましょう。こういった法体系のもとにおいて、当局は、このような危険な分子自衛隊員が隔離されるために、どういう方法を講じようとなさっておられるのであるのか。文民優先の原則は、一つ一つの具体的な内容を積み重ねることによって、初めて確保されるものであると私は考えまするが、この際、防衛庁長官の御意見を承りまして、私の質問を終わることにいたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治の姿をただすことにつきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。  また、私は組閣にあたりまして、適材適所主義をとって強力な内閣を作っております。わが党は一糸乱れざる体制で進んでいるのでございます。  なお、政防法あるいはILO条約の審議につきまして、いろいろ御批判があるようでございますが、この両案とも国会に提案し、片一方を継続しているのであります。これを数をもって押し切るというふうなことは、あなたはそうお考えになるかもわかりませんが、私は、民主主義ルールでないから、正常な審議を願っておることでございます。私は、これがほんとうのいわゆる政治の姿を正しくするゆえんであると考えております。(拍手)   〔国務大臣安井謙登壇拍手
  29. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 政治的な暴力の排撃につきましては、従来ともこれは十分力を尽くして要望して参っておるつもりでございまするが、今後ともこれにつきましては、さらに戒心をいたしたいと存じております。  今度の事件に関しまして、右翼団体からの資金あるいは財界との関係といったようなものにつきましても、いろいろと調査中ではございますが、現在のところ、そういった特殊のものから資金が出ておるという線は浮かんでおりません。(拍手)   〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍   手〕
  30. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  今回の事件につきまして、検挙の際の罪名が、殺人予備あるいは銃砲刀剣類等所持取締法違反というようなことで、十三名のうち十二名は前者の殺人予備の罪名、あとの一人が殺人予備及び銃砲刀剣類等の所持違反の問題で検挙いたしたものでございます。その後、検察当局におきまして、警察当局と力を合わせて調査をいたしまして、昨夜十時をもちまして、当初の罪名、検挙のときの罪名と同じ罪名のもとに勾留請求をいたしました。これが、今後内乱の予備陰謀でありますとかあるいは破防法に該当するかしないかというような問題につきましては、今後の調査を待ちまして十分厳重なる処断をいたしたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇拍手
  31. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 先ほど加瀬さんにお答え申し上げたように、今回の問題につきまして、具体的な内容その他を示されて勧誘されたというような事実はございませんので、したがいまして、先ほどお言葉にありました時期尚早といったような答えをした事実もございません。とにかく、この五十九期、六十期というのは終戦まぎわでございまして、一期三千人近くの卒業生が出ておるのでございまして、したがって、これらの人たちに同期生的な意識と申しますか、そういうものは非常に薄いように聞いております。いずれにいたしましても、今後も十分に民主主義教育を徹底いたしまして、そうしてさらに文民優先の原則を確立いたしまして、いかなる誘いにも乗らないように、さらに十分な注意をいたしたいと存じております。(拍手)   —————————————
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 常岡一郎君。   〔常岡一郎君登壇拍手
  33. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 私は、ただいま議題となりました安井公安委員長報告に関連いたしまして、首相並びに防衛庁長官に、以下三点についてお尋ね申し上げたいと思います。  質問に先だちまして、このたびの事件に遺憾しごくの意を表します。人類の文化を向上させてきたものは、人間を尊ぶ考え方と、真理を愛し、あくまで真理を追求する努力であります。これが人間の幸福を育ててきた根源であります。賢明なる民族は、すべての力をこの人間の尊重と真理の追求に集中して、幸福な社会を作っております。愚かなる民族は、その大本を忘れ、暴力によって骨肉相はみ同胞相殺し合う不幸な悲劇を繰り返しております。だから、法を破り、人間を尊ばぬ暴力は、人類共同の敵でありますので、どうしても根絶せねばならぬと信じます。われわれは、かつて五・一五事件暴力を許したために、次から次に一波万波を生み、ついには国を破滅のふちに追いやった愚かさを反省して参りました。暴力は、国家の場合にも、団体や階級の対立の場合でも、個人の場合でも、たとえそれが右翼であろうと左翼であろうと、常に絶対に文明の敵として排除しなければならぬものであると信じます。しかし、一国政治責任を負う人にとっては、現われて参りました事柄に対して、深くその原因を洞察せられ、強く反省することが大切であると思いますから、以下三点について質問をいたします。  第一点、政治姿勢を正すということについてお尋ねをいたします。首相は、昨日来、たびたび政治姿勢を正すと強く説いておられますが、それがどういう意味に悟ればいいのであろうか、お尋ねいたします。首相のお言葉によりますと、国会運営上の姿勢を正す意味に、主としてとられておるようでありますが、もちろんこれも根本の一つであると思います。しかし、それだけではなくて、国民の生活と直接つながる政治の面は行政の面であります。その行政の最高の責任者である首相は、今までの行政府のあり方について、責任政治の建前から見て遺憾な点があるということはお考えにならないでしょうか。すべて責任を感ずることが責任政治の健全なる歩みでありますが、その責任が持てなくなるような行政の姿になっておる点はないでしょうか。  一例をあげて申し上げますと、各省の行政の責任者は各省大臣でありますが、その大臣の寿命を私は調べてみまして、あまりに短いのに驚いたのであります。そこにいろいろな疑惑と政治のよごされる病根があるのではないかとさえ考えられたのであります。最近十三年間の大臣になった方々の数は百六十五人の多数に上っておられます。その大多数の人々は一年足らずでかわっておられます。短い人はわずかに四カ月足らずであります。長い人でも大部分の方々が一年足らずでかわっておられます。大臣の名前を国民が記憶したころはすでにかわっておられる。こういうことで本腰を入れて国民の期待に沿うような仕事ができるものでしょうかということであります。国民大多数の疑惑がそこにわいて参ります。大臣の席はそれほど軽々しいものであろうか、もっと落ちついて仕事をしてもらう道はないのだろうか、それとも大臣のいすが派閥の対立のかけ引きに使われたり、あるいは総裁選挙の暗い取引材料にされるようなことはないだろうかとさえ疑われております。もしそうであるならば、金権政治の不潔さをそこに感ぜられるわけでありますが、このままでよいのであろうかという点についてお尋ね申し上げます。  第二点、治安対策についてお尋ね申し上げます。いかなる名パイロットも飛行機がなかったならば空は飛べません。文明は、人間がいろいろな道具を作って、それを上手に使ってきたから進んで参ったのであります。これが人類の幸福を増していく道であります。治安当局は、はたしてこのよき道具たる法的保護を受けているとお考えになるでしょうか。十年後の日本を考えますときに、まことに暗い思いをいたします。年々月々犯罪はふえております。ちまたに罪の温床となる不潔が渦巻いております。政治は、現われてきた社会悪を一掃するだけでは済みません。その病根となる、罪の温床となるものを取り除く勇気が要ります。それを取り去る力もない弱い政治、無力貧困なる政治であるとするならば、そこに信頼が失われ、今、不信の声が沸いております。だれが考えても今の社会を正常とは思えません。悪の、罪の温床となるものがたくさんあります。エロ雑誌のはんらん、不良出版の一つを考えましても、目に余るものがあります。純真な青少年の心を虫ばむものが野放しにされておる姿、これには憤りすら感じられております。テレビなどの影響を受けて、不良の暴力ざたはちまたに絶えません。これは興隆する民族の正しきあり方ではなく、それに逆行するものであります。日本のこの現状を立て直すためには、よほど重大な決意が要ります。このとき、政治責任をお持ちになる首相に一大決意を期待してやまないのであります。したがって、治安対策について十分な備えを望んでやみません。  そこで特にお尋ねいたします。数々の治安に関する立法が提出されましたけれども、ほとんど生まれかけては流産しております。そのまま全くほうって置かれております。これをこのままでよいとお考えになるでしょうか。この流れていった原因はどこにあると考えられるでしょうか。かくのごとく治安立法がいつも中途で立ち消えになるのは、自民、社会両党の取引に使われていると言われることは、悲しいことであります。妥協がときによっては政治の要諦であるかもしれませんけれども、それはあくまで話し合いによらなければならぬものであって、断じて力に屈してはならない。それが反対党の力ずくの阻止におびえた結果であるとするならば、民主主義破壊の姿となります。民主議会の多数決の原則をみずから破るものであり、議会政治否定の責任の一半は、暴力に屈した政府及び与党もまた負わねばならぬ点ではないかと考えます。どうか、善良なる国民の社会不安を取り除くために、治安立法はこのままでいいかという問題についてお尋ねをいたします。  第三点、自衛隊精神的根幹についてお尋ね申し上げます。このたびの事件が、自衛隊に働きかけたが、幸いに火が燃えつかなかったのは、喜びにたえません。しかし、このたびの事件は、背景も力もない、子供らしいやり方であったから、だれも相手にしなかったとも言えます。もし今後、相当強力な組織を持つ団体と、大きな動員力を持つものに誘われたならば、はたして大丈夫であろうかと疑うものであります。五・一五事件も二・二六事件も、わずか一個大隊の人々が立ち上がることによって、全体が動かされております。すべては人間の心が主体となっております。科学は月の世界に人間を送り、人間を宇宙人として解放しようとしております。しかし同時に、同じその科学は、死の灰を降らせて、人間を地上に葬らんとしております。これは結局、人間の心の持ち方の良否によるものであります。料理を作る人が主人と口論して、同じほうちょうで主人を殺したこともあります。自衛隊がいかにりっぱな武器を持ちましても、精神的基調が狂えば、国を誤る凶器となります。防衛庁長官は、自衛隊法に基づく教育をしているので心配はないと言われますが、それだけではどうも安心ができない。
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 常岡君、時間が参りました。
  35. 常岡一郎

    ○常岡一郎君(続) 自衛隊法がありながら、決算委員会で汚職や批難事項について、毎年必ずきまって防衛庁長官は、おわびと遺憾の意を表しております。これだけでも、自衛隊にみなぎる精神の清潔と強固さを疑いたくなります。だから、自衛隊法のどこにそれほど安心できる点があるのか。要点だけでもお示しを願いたい。  以上質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  私は、政治の姿を正すということは、昨日来言っているのではございません。組閣以来常に言っているのでございます。具体的に申しますると、先ほど来申し上げておりますごとく、政治と行政の運営を正常化し、そうして社会秩序の平穏を維持し、国民の信頼、また、内外の信頼を高めるということでございます。個人行動につきましては、やはり身をおさめ家をととのえるという昔の言葉があるとおりです。政治的にも、あるいはまた、個人生活におきましても、姿を正していくということは政治の根本であることは、組閣以来常に私は申しているわけでございます。しかもこれは、常に、いかなるときでも必要であると私は考え、そうしてけんけん服膺している次第でございます。  なお、内閣閣僚の更迭の問題でございますが、先ほど申し上げましたごとく、適材適所主義により、内外の情勢に即応して閣僚を入れかえるということは、やむを得ないことだと思います。できるだけ長くおってもらう必要のある方々には長くおってもらう。かえたほうがいい場合にはかえるということでいっているのであります。  なお、治安対策につきましての御質問でございまするが、いたずらに法を制定し組織を強化するばかりが治安対策ではございません。しかし、今回のような、政治目的暴力を使おうとする者がある、あるいはそういうおそれのある場合におきましては、私は、立法も必要であると考えているのであります。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇拍手
  37. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 自衛隊教育訓練に精神面が必要であることは、仰せのとおりでございまして、現在におきましても、そうした方面に十分に留意をいたしております。過般も、防衛庁長官から「自衛官の心がまえ」というものを部隊に示して、その一つのよりどころとさせているような次第でございます。自衛隊法によって教育すると申し上げましたのは、服務の本旨が自衛隊法五十二条にございまして、厳正な規律、あるいは徳操を養うこと、人格の尊重、使命の自覚というようなものを中心にしているわけでございます。いずれにいたしましても、こうした精神面を十分に教育をしますと同時に、広い視野に立った人間を作るということが目的でございまして、そうした教育をいたす限りにおきまして、民主的な手段によらざる直接行動などは絶対に排撃するという風潮は、十分に作り上げていけるものと考えている次第でございます。(拍手
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四分散会