○田畑金光君 私は、民主社会党を代表し、ただいまなされました
安井国家公安委員長の
報告に対し、以下二、三の
質問を
総理以下
関係閣僚に対して行なわんとするものであります。
去る十二日、旧
軍人右翼グループによる反共
クーデター計画が発覚し、首謀者等十三名が逮捕されたという報道は、その時代錯誤の暴挙に
国民を憤激させると同時に、昨年の安保闘争以来の
右翼テロと同じ社会的背景から生まれておるという事実に照らし、あらためて社会的危険性を
指摘せざるを得ません。従来の一連のテロ行為が一人一殺主義であったのに比し、今回のそれは、明らかに集団的
計画的犯行であったということでございます。戦後の
右翼は、
思想も組織も持たず、一人一党で、むき出しに
左翼との対決だけが表面に出ていますが、最近は、
右翼なりに指導理念や運動
方向を組織化し、集団化しようとする
傾向が見られます。今回の
事件は、思考停止病患者によってなされた単純なる暴行
事件だという見方をする向きも一部にはあるのでありますが、五・一五
事件の
関係者があり、旧
陸士出身者という経歴や年令から見ましても、従来の
右翼と異なるものであることを見落してはなりません。ことに、今日
クーデターが成功するには、軍の背景と財界の援助を必要とするといわれていますが、
自衛隊に働きかけ、財界に手を伸ばしたということを見ますときに、社会的背景はもっと広くして深いことを認めざるを得ません。
したがって、今後の
右翼対策は、従来の
個人テロ中心から、さらに
右翼全体の
動向を把握し、
監視することが必要であり、対策もまたそれに対応すべきだと考えますが、安井
委員長の所見を承ります。
さらに、
政府はさきの通常国会において、
浅沼事件、
嶋中事件の発生にかんがみ、
右翼の取り締まりには万全を期し、
資金源等についても
調査し、必要に応じては公表することも約束したはずでございますが、
右翼の
動向、ことに
行動右翼の最近の
傾向、そうして今、
安井国家公安委員長は答弁をなさらなかったのでございますが、
資金源等について、その後の
調査の経過をこの際明らかにしていただきたいと思います。
今回の
事件が事前に発覚し、
未然に防止されたことは幸いでございますが、先ほどの
報告にもありますように、今回の
検挙は全国的規模においてなされております。また、押収物件について見ましても、彼らが
計画的に集団的殺人を
計画したことは明らかでございます。今回の
事件は、警職法、安保闘争、春闘、
政防法闘争を通じ、
左翼の勢力がますます台頭し、
わが国にも今に
共産革命がくるかもしれないという一種の恐怖観念にかられ、加うるに、最近の
韓国における
クーデターの成功に刺激されたものといわれております。五・一五
事件や二・二六
事件当時に比べ、今日は社会的
情勢は一変しておることは事実でございますが、しかし、この
種事件はナンセンスだとする
傾向もあるが、これを甘く見ることは危険だと考えます。かつて五・一五
事件や二・二六
事件を引き起こした青年将校が、当時愛国心の発露であるという世間の一般の同情からいたしまして、社会全体の風潮を、いよいよ
国家主義、軍国主義のあらしの中に巻き込んで、ついに破局に導いたことは、歴史の教訓でございます。
右翼は、昔から、人のつながりや、財政面において保守党やその末端の組織に、あるいは財界と密接な
関係にあることは、世間周知の事実と言われております。この際、最も重要なことは、
政府が
右翼テロに対しきぜんたる
態度をもって臨むことでございます。同情的にながめることは、将来にさらに大きな禍根を残すものでございます。
警視庁は、
殺人予備罪と銃砲刀剣不法所持で逮捕したといっておりますが、
捜査の進展によっては内乱予備陰謀罪の適用や、背後
団体については破防法の適用も考慮中と言われておりまするが、この際、法務大臣の見解を承っておきたいと思います。
池田
総理は、昨日、衆議院本
会議において、野党の
質問に対し、このような事態が起こらないようにするために、
政治の
姿勢を正し、
民主主義の
ルールを守り、
政治を秩序正しく運営していくよう
努力したいと答えておりますが、一般論としてはしごく当然であり、賛成であります。しからば、具体的に
政治の秩序を正すとは何か、
民主主義の
ルールを守るとは何であるか、明らかにしてもらいたい。
今回の
クーデターの
計画の
動機と
目的は、政財界を中心とする各界の粛正にあると公言いたしております。直接的には
共産革命の恐怖であるが、これに対する対策がない現
内閣の転覆を
計画しておるのであります。これを要するに、歴代保守
内閣の失政の
責任、
池田内閣の
政治の貧困によるものと言わなければなりません。
最近の政界の腐敗は目に余るものがございます。武州鉄道汚職
事件の
中心人物と見られておる楢橋元運輸大臣は、釈放後の
記者会見で、
政治献金を受けた事実は認めるとはっきり申しております。
政治献金であって、わいろではないと言っております。ただ、世間の常識からみまして不思議にたえないのは、現職の、免許権を持つ運輸大臣が、その監督下にある業者からもらっても、何ら法律上、
政治道義上やましくないとするこの
態度でございます。民主
政治の基本は、選挙界がきれいであることが出発点であります。椎名前通産大臣の
昭和三十三年総選挙における違反
事件は、選挙史上特筆すべき
内容でございますが、その総括
責任者が三年有半行方不明であったのであります。六十九才に達するこの老人は、最近地下から姿を現わし、
目下司直の取り調べを受けておると聞いておりまするが、椎名御夫人が一切の
責任を負い、主人が知らぬ存ぜぬでは、世の中に通用できる常識ではございません。
朝日新聞が「最近の三党」と題して各党の生態を描いておりますが、それにも明らかなように、自民党
内閣は派閥構成
内閣であります。岸前
総理は、たとえ口先にしろ党の一本化を主張されましたが、池田
総理は完全に派閥連合の上に政局の安定、それは
国民のための安定ではなく、池田派閥のための安定を第一義と心得ております。イデオロギーよりも派閥的
利益の寄り合いであるところに、そもそも
政治の混乱があります。議会制
民主主義の重点が多数決の
尊重であるだけに、この派閥的
動きによって党の
行動に首尾一貫性を欠くことは、
日本の議会制度の致命的な欠陥であります。
国民に公約した重要法案も、党内思惑が災いして流れてしまう。ILO条約批准に伴う
池田内閣の醜態は、
国民に対する公約無視であるだけでなく、国際信義を失墜するものでございます。重税、汚職、失業をなくすることが
クーデター首謀者の目標でありましたが、
池田内閣の経済成長政策が破綻をもたらし、勤労
国民にその犠牲をしわ寄せしていることは、社会不安の大きな要素をなしております。
政治の
姿勢を正すには、まず池田
総理みずから
政治家として与党全体の統率を厳正にし、派閥の
利益のためや特定
少数グループの
利益のためでなく、
国民全体のための
政治を行ない、腐敗を追放することが、左右両翼の
暴力主義を排除する大道であると私は考えますが、
総理の見解を承ります。
また、
政治の
姿勢を正すには、単に
政府、与党のみでなく、国会全体として
努力すべきことは当然であると思います。昨年の安保国会のあとを受けまして、特に総選挙に際し、三党首は国会正常化を
国民に公約いたしましたが、その直後の第三十八通常国会は、相変わらず混乱のうちに幕切れになり、国会正常化の具体的方法を見出すことがこの国会に持ち越されました課題でございます。議会は言論の府であって物理力行使の場ではございません。このような
傾向をなくするためには、国の重要な
施策や
国民の自由と
権利につながる重要法案等は、選挙に際し
国民の審判を受けるという慣行を作ることが大切であると思いまするが、
総理の見解を承っておきます。
今回の
クーデターの
対象に労働界の首脳部が置かれたということは、注目すべき事柄でございます。今なお、
わが国の社会的土壌には、労働運動を罪悪視する者もございまするが、
国民の正しい
権利意識培養のため、
政府の
施策を強く要求するものであります。が、同時に、
わが国労働運動や社会運動の一部に、
政府の
憲法軽視を
理由に現行法秩序をじゅりんしてはばからず、
国家民族の
利益を無視して恥じない風潮が見受けられますることは、われわれの深く遺憾とするところでございます。非合法的
行動により合法面を拡大する行き過ぎた
行動は、自由にして民主的労働運動のとるべき
態度では断じてなく、深く
反省を求めるものであります。これらの
傾向も、帰するところは、
池田内閣の近代的労働政策や
憲法に対する
順法精神の欠除に
原因があると私は考えますが、この際、
総理の所信を承っておきたいと考えております。
最後に私は
防衛庁長官に
お尋ねいたしますが、今回の
事件で注目することは、
事件の
中心人物に旧
陸士の卒業生が
参加しておること、これらの同期生が
自衛隊には約五百名前後おるということでございます。今日までの
調査の結果は、
自衛隊には
関係者がないということで、けっこうでございますが、今日の
情勢があすも続くとは考えられません。新聞の伝うるところによりますると、
計画への
参加を勧められた
自衛隊員は、時期尚早ということで拒否したといわれておりますが、きわめて危険なことだと言わなければなりません。防衛庁
幹部は、
社会人としての
民主主義教育が隊員に徹底しているから、乗ぜられるすきはないと公言いたしておりますが、これらの首謀者は
自衛隊と接触が深かったことは事実であります。桜井徳太郎のごときはしばしば防衛庁に出入りし、話によると、この人の話も聞いたということでございます。事実とすれば、
思想的な影響を受けていることも否定できないでございましょう。また国史会という
団体が
クーデターの原動力となっておりますが、これに加担した者はないのかどうか。かりにないといたしましても、現行
自衛隊法の
もとでは、
自衛隊員が国史会に
参加する。