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1962-05-07 第40回国会 参議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月七日(月曜日)    午前十時三十一分開会   ―――――――――――――   委員異動 五月五日委員井川伊平辞任につき、 その補欠として野本品吉君を議長にお いて指名した。 五月六日委員野本品吉君及び鈴木恭一辞任につき、その補欠として井川伊 平君及び大川光三君を議長において指 名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     松野 孝一君    理事      青田源太郎君            井川 伊平君            亀田 得治君            大谷 瑩潤君    委員            井野 碩哉君            加藤 武徳君            西田 信一君            野上  進君            林田 正治君            高田なほ子君            赤松 常子君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君   政府委員    法務省訟務局長 浜本 一夫君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総長      下村 三郎君    最高裁判所事務    総局総務局長  桑原 正憲君    最高裁判所事務    総局総務局第一    課長      長井  澄君    最高裁判所事務    総局行政局長  仁分百合人君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   法制局側    法 制 局 長 斎藤 朔郎君   説明員    法務省訟務局参    事官      杉本 良吉君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○行政事件訴訟法案内閣提出、衆議  院送付) ○行政事件訴訟法施行に伴う関係法  律の整理等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (交通事件の処理に関する件)  (裁判所職員臨時措置法に基づく公  平委員会の運用に関する件)  (裁判所書記官代行制度運営に  関する件) ○裁判所法附則第三項改正に関する請  願(第八七号)(第二三二七号)  (第二四六四号)(第二四六五号)  (第二四九一号)(第二四九二号)  (第二五一七号)(第二五一八号)  (第二五二六号)(第二五二七号)  (第二五二八号)(第二五二九号)  (第二五三〇号)(第二五三一号)  (第二五三二号)(第二五四五号)  (第二五六六号)(第二五九一号)  (第二六三一号)(第二六三二号)  (第二六三三号)(第二六三四号)  (第二六三五号)(第二六三六号)  (第二六三七号)(第二六三八号)  (第二六三九号)(第二六四〇号)  (第二六四一号)(第二六四二号)  (第二六四三号)(第二六四四号)  (第二六四五号)(第二六四六号)  (第二六四七号)(第二六四八号)  (第二六九四号)(第二八一〇号)  (第二八一一号)(第二八一二号)  (第二八四七号)(第三三四五号)  (第三四〇二号)(第三六〇一号) ○皇室をひぼうする者を処罰する法律  制定に関する請願(第四〇一号)  (第六八五号)(第一一六八号)  (第一八〇九号)(第一八八〇号)  (第二一六四号)(第二一八〇号) ○皇室尊厳をおかす者を処罰する法  律制定に関する請願(第四〇二号)  (第五〇五号)(第五三一号)(第  五三二号)(第五八一号)(第六一  九号)(第六八六号)(第八一三  号)(第八四一号)(第八六六号)  (第八七九号)(第九〇四号)(第  九一七号((第九三八号)(第九三  九号)(第九八三号)(第一〇一九  号)(第一〇二七号)(第一〇六五  号)(第一〇六八号)(第一〇八九  号)(第一〇九〇号)(第一〇九一  号)(第一〇九二号)(第一一三四  号)(第一一五九号)(第一一六九  号)(第一二〇五号)(第一二〇六  号)(第一二八八号)(第一二八九  号)(第一三〇五号)(第一三二二  号)(第一三五〇号)(第一三六四  号)(第一四五〇号)(第一四五一  号)(第一五九八号)(第一七五一  号)(第一八〇八号)(第一九一三  号)(第二九六四号)(第一九八六  号)(第一九八七号)(第一九八八  号)(第一九八九号)(第二〇四二  号)(第二〇四三号)(第二〇四四  号)(第二〇四五号)(第二〇四六  号)(第二〇四七号)(第二一二六  号)(第二一六三号)(第二二〇六  号)(第二二〇七号)(第二二二九  号)(第二二九三号)(第二二九四  号)(第二三一四号)(第二三三四  号)(第二三六六号)(第二三六七  号)(第二三七七号)(第二三八九  号)(第二四六〇号)(第二四八九  号)(第二五二四号)(第二五三七  号)(第二五四三号)(第二五四四  号)(第二五六〇号)(第二五七一  号)(第二五七二号)(第二五八一  号)(第二五九〇号)(第二六二七  号)(第二六二八号)(第二六六八  号)(第二七〇六号)(第二七五四  号)(第二九九九号)(第三三七二  号) ○皇室尊厳を守るための法律制定に  関する請願(第五〇六号)(第五三  三号)(第六二三号)(第六八七  号)(第七五九号)(第七六〇号)  (第七六四号)(第七六五号)(第  八三二号)(第八七二号)(第九〇  三号)(第九〇七号)(第九一八  号)(第九一九号)(第九二八号)  (第九三五号)(第九三六号)(第  九三七号)(第九八四号)(第九八  五号)(第九八六号)(第九八七  号)(第九八八号)(第一〇一八  号)(第一〇二八号)(第一〇三七  号)(第一〇三八号)(第一〇三九  号)(第一〇四〇号)(第一〇四一  号)(第一〇四二号)(第一〇六二  号)(第一〇六三号)(第一〇六四  号)(第一〇六七号)(第一〇九三  号)(第一〇九四号)(第一一一四  号)(第一一一五号)(第一一一六  号)(第一一三一号)(第一一三二  号)(第一一三三号)(第一一四五  号)(第一一五〇号)(第一二〇三  号)(第一二〇四号)(第一三〇六  号)(第一三一一号)(第一三二〇  号)(第一三二一号)(第一三四二  号)(第一三六九号)(第一四五二  号)(第一四五三号)(第一四五八  号)(第一五二五号)(第一五三二  号)(第一五九〇号)(第一七〇三  号)(第一七二五号)(第一七四八  号)(第一七四九号)(第一七五〇  号)(第一八一一号)(第一八四九  号)(第一八七七号)(第一八七八  号)(第一八七九号)(第一九一四  号)(第一九一五号)(第一九三八  号)(第一九三九号)(第一九九〇  号)(第一九九一号)(第二〇四八  号)(第二〇四九号)(第二〇五〇  号)(第二〇八八号)(第二二〇八  号)(第二二二八号)(第二二九五  号)(第二二九六号)(第二二九七  号)(第二二九八号)(第二三三五  号)(第二三七六号)(第二三九〇  号)(第二四一四号)(第二四六一  号)(第二四六二号)(第二四六三  号)(第二四九〇号)(第二六二九  号)(第二六三〇号)(第二六六九  号)(第二九六〇号)(第三〇〇〇  号)(第三二三六号)(第三二七六  号)(第三三一八号)(第三五二二  号)(第三五二九号)(第三五三二  号)(第三五七五号) ○皇室尊厳護持法律制定に関する  請願(第二〇八九号) ○政治的暴力行為防止法案反対等に関  する請願(第一二五二号)(第一二  五三号)(第三二九六号)(第三三  八五号)(第三四八八号)(第三五  〇九号) ○政治的暴力行為防止法案反対に関す  る請願(第三四八七号)(第三五〇  〇号)(第三五〇一号)(第三五〇  六号)(第三五〇七号)(第三五〇  八号)(第三五四五号)(第三五四  六号)(第三五四七号)(第三五四  八号) ○政治的暴力行為防止法案即時撤回等  に関す請願(第二〇五四号)(第二  〇五五号) ○印鑑法制定に関する請願(第一六一  五号) ○浦和家庭裁判所独立に関する請願  (第一七〇〇号) ○鹿児島県西之表市に鹿児島地方裁判  所支部等設置請願(第二〇五三  号) ○東京法務局足立出張所移転反対に関  する請願(第二〇五一号) ○東京法務局江戸川出張所移転拡張に  関する請願(第二〇五二号) ○継続調査要求に関する件   ―――――――――――――
  2. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまから法務委員会開会します。  この際、委員異動について御報告申し上げます。  五月六日付をもって鈴木恭一君が辞任され、その補欠として大川光三君が選任されました。  以上であります。   ―――――――――――――
  3. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 理事補欠互選を行ないます。  去る五月五日、理事井川伊平君が一時委員辞任せられましたため、理事に一名の欠員が生じておりますので、この際、その補欠互選を行ないたいと思います。互選方法は、慣例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認めます。  それでは、私より井川伊平君を理事に指名いたします。   ―――――――――――――
  5. 松野孝一

    委員長松野孝一君) それでは、暫時休憩いたします。    午前十時三十二分休憩    ――――・――――    午前十一時五十分開会
  6. 松野孝一

    委員長松野孝一君) これより法務委員会を再開いたします。  行政事件訴訟法案及び行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。  ただいま浜本訟務局長及び杉本参事官が出席しておられます。御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 質疑の時間があまりありませんので、きわめて要点のみについて触れていきたいと思います。  例の本法案総理大臣異議に関する問題でありますが、この点は、前回にもすでに若干質問をいたしましたが、その際にも申し上げましたように、この制度のできた沿革というものは、これはもう当時の資料によって明白であると思います。なお、前例等から見ましても、世界に類のない、現在の日本だけにある制度である、こういうことも明白である。また、六名の参考人意見を参議院では承ったわけですが、ほとんどの方が、この制度には消極的な意見を述べておるわけです。したがって、私も当然この制度には反対をしておるわけですが、かりにこの制度を認めるにしても、十分しぼりをかけておく必要がある、こういうことはまあ当然言えると思う。そういう立場から若干お聞きしておきたいわけでありますが、この法案の二十七条の三項ですね、三項を拝見いたしますと、例の「公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示す」と、こうなっておりますが、これは単なる注意的な規定だ、こういうふうに逐条説明ではなっておるわけです。私はこれは単なるそういう注意的なものじゃなしに、やはり今申し上げたような趣旨から言いましても、十分制度にしぼりをかけるという立場から言うならば、これはやはり必要的な条件だというふうに、はっきり規定をすべきではないか、こういうふうに少なくとも考えるわけですが、なぜ、せっかく規定を設けながら、その規定は単なる注意的な規定だ、こういう弱いものにしておくのか、この点が了解できないわけです。お答えを願いたいと思います。
  8. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) この「公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」ということ自体は、そもそも執行停止にあたりましての一つの消極的な要件にされておるところであります。この執行停止をするについての要件として掲げられておりますものについては、もちろん、これは要件でありますから、消極、積極ともにつまり法律面から要件とされるわけでございます。概念的には、あるいは字句においては、同じく「公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある」という事柄でありましても、内閣総理大臣異議を述べます場合にも、この点はむしろ要件とは考えられないのでありまして、つまり政治的な考慮からかような事情があるのだということを要求されるわけなんでありまして、その点がおのずと、事柄要件である場合と、それから、政治的な考慮を払わなければならぬという立場からする場合の「公共福祉」というものと、取扱いを異にせざるを得ないものと私どもは考えるのでありまして、これは政治的な考慮から述べるのでありますから、処分あるいは停止決定法律的な要件という立場からは考えておりませんで、したがって取扱いは、そこに理論上異ならざるを得ないと私どもは考えておるのであります。したがいまして私どもは、これは注意的と申しますか、要件の場合とは、処分もしくは停止決定要件の場合とは違った取り扱いをしておるつもりであります。おのずとそれが字句に現われまして、「事情を示すものとする。」事情を示さなければならないという言葉を用いませんで、「示すものとする。」という字句によって私どもはそれを現わしたつもりであります。  繰り返して申し上げますれば、他方は要件であり、こちらのほうは政治的な考慮であるというところから、取り扱いを異にせざるを得ないと考えておるのであります。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、この問題は、大臣事務総長がそろった上でさらに確かめることにいたしまして、他の問題をその間に触れておきます。  一つは、法案の三十条です。例の行政庁裁量の問題でありますが、どうもこの三十条の書き方では、行政庁立場が有利になり過ぎるのではないか、こういう感じを私は持つわけであります。行政庁のほうでは、何か行政事件が起きた場合に、それは自分のほうの裁量権範囲内の問題だ、こういうことを主張証明するのは、これはきわめて簡単だと思うのですね。ところが原告のほうは、いやそれは乱用だと、乱用しているのだと、こういうことの証明が必要になってくるわけでしょう。ところが、実際問題としては、そういう中間の問題というものが相当考えられるのじゃないか。なるほど範囲としては、裁量権範囲内のものであるというふうに考えられるけれども、しかし、どうもやり方が不公平だ、結果から見てはなはだ正義に反する。しかし、その乱用という場合まではいかない。乱用というのは、相当私は条件がきつくしぼられてくるのじゃないかと思う。そういう感じがするわけでして、裁量権範囲内であれば、乱用というような、特別非常な不都合があったと、こういうことだけしか取り消し対象に、できないというのは、国民に対してきつ過ぎるのじゃないかという感じを持っておるのです。そこら辺は、立案過程でもおそらく問題になったろうと思いますが、その辺の問題について、もう少し提案者考え方をはっきりしてほしいと思います。
  10. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 本来、自由裁量に属する処分につきましては、およそ裁量権範囲内の処分であります限りは、当不当の問題は起きましても、違法の問題は起きないのでありますから、司法権の本質上、当不当の判断裁判所にはないわけでありまして、いやしくも自由裁量に属する処分に関しましては、裁量権範囲内の処分であれば、違法という判断は、つまり司法裁判所から消極的な判断は受けることがないのが当然なんであります。ただ、その場合に、本条において、裁量権範囲をこえた場合に限ると、こうやっておきますと、しからば、形式的には、裁量権範囲ではあっても乱用している場合はどうかという疑問が起きますので、おそらくまた判例でも、そういった条文の場合には、形式的な裁量権範囲であっても、乱用に当たる場合には違法だという判決例が出ることが予想し得ますから、本来からいえば、裁量権範囲をこえた場合だけを本条に扱っておけば十分だと私ども考えたのでありますけれども、そこのところはなお、形式的には裁量権範囲ではあっても、乱用している場合は違法であると、取り消すことができるというように、解釈を容易にするために、あるいはまた、処分を受けた者の利益を明文をもって保護するためにつけたのでありまして、具体的な事案にわたらなければ、この乱用というものがどういうふうに作用するようになってくるか、抽象的にはちょっと論じにくいように思うのでございます。理論的に申しますならば、もっぱら裁量権範囲をこえた場合だけをきめておけば足ると私どもは考えて、おります。なおかつ、形式的には、裁量権範囲ではあるのだが、乱用という場合も遺法の判断を受ける、処分取り消しを免れないのだということを、むしろ解釈の疑問を防ぐためにつけたつもりであります。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 この三十条にいう裁量権乱用ということの解釈が、判例なりあるいは学説等によって、今後相当ゆるく扱われていくということになれば、私が今心配したような問題についても、正義の観点から救済できるという場合もあろうと思いますが、ただ、普通の感じとしては、乱用といいますと、やはり行政庁が相当意識的に不都合なことをやっている、こういったような場合が予想されるわけなんです。いや、そういうふうに窮屈に考えないのだということになるかならぬかは、今後の問題ですね。  そこで私は、たとえば西独行政裁判所法の百十四条を三十条と比較してみたわけですが、この西独法の場合には、「裁量法律上の限界をこえ」、まあこれは日本の場合と一緒ですが、そのあとが違うわけです。すなわち、「または授権目的に適合しない方法裁量が行使された」とあります。だから、行政官庁にまかされている使命といいますか、任務に適合しないような方法裁量が行使された、こういう表現を使っている。これは、もちろん私は、乱用している場合は当然これに入ると思うのです。ところが、乱用とまではいかぬでも、公平という原則から見ても、どうも結果的に、ある特定の人について非常に気の毒な結果が出て参ったような場合も、私は、こういう西独法のような規定の仕方でやればやはり入ってくるのじゃないか。そのほうが私は、行政権によって不都合な扱いを受けた人の権利を守っていこうという趣旨からするならば、適切なように思うわけなんです。その点は、どういうふうな感じで受け取られますか。
  12. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 今御提示になりました西独法規書き方、つまり、正当な授権範囲をこえると、さような場合には、私も本条にいう乱用に当たると考えます。いずれにしましても、この乱用という概念が、きわめて抽象的な、一般的な概念でありますから、結局するところは、将来の判例の発展に待つほかはないのでありまして、亀田委員の御心配のような事態は、おそらくは、実際問題としては起きるおそれがないと私は信じております。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 裁判所のほうで適当な判例上の解釈が確立していけば問題はないと思いますが、たとえば、こういう場合には乱用のうちに入れていいかどうかということを具体的にお聞きいたしますが、ある行政官庁が、許可申請なら許可申請に対して不許可処分をした。その際に、もちろん、その行政官庁としては、許可許可裁量権を持っておる。そうして今までたくさんの人に許可を与えておる。その例から見るならば、当然この場合も許可になってくるべきものだというふうに思われるような場合、しかし、それは裁量権範囲内にある。そういう場合に、どうも甲というやつは憎いやつだと、あいつを少しいじめてやれということで、ことさらに理屈をつけて不許可にしたということなら、これは私は、当然この乱用に入ると思うのです。乱用というのは、やはりそういう主観的な要素というものが言葉意味としては若干加わっておる、常識的には。ところが、決してその行政庁としては、そういう意地の悪い考え方は別にないのだ、ただまあ多少こう判断に誤りがあって不許可にした。なるほどあとから言われてみると、今までの例に比較すると、多少これはきつかったかもしれない。結果から見てきついようだ。多少じゃなしに、相当きついようだと、結果から見て。そういう場合には、本人としては別に悪意等はないわけですね。しかし、結果から見てはなはだ不公平だ。こういうような場合には、これは裁量権範囲をこえているとは言えないと思う。しかし、それはやはり乱用という言葉を広く解釈して、乱用であるとして、取り消し訴訟対象にできるかどうか、そういう点はどうです。
  14. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) ただいまの状態で、そういった個々の問題について、これは乱用になる、これは乱用にならぬというように、画然とお答えすることは、私にもその能力がありません。ありませんが、おっしゃるような事案をもう少し補足して設例をいたしますならば、申請人申請がまさに自由裁量、つまり許可さるべき裁量範囲内に属し、何らこれを拒否する消極的な事由がないにもかかわらず、当該申請人個人にだけ不利益を与えるという意図のもとに……。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そういう意図はないのだ。
  16. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) その場合にだけ不許可にする、あるいは却下にするというのでありますれば、多くの場合に、乱用になるのではないかと私は考えます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そういう意図をもってやれば、これは私は乱用だと思います。だが、そういう意図まではなしに、いつの間にかそういう結論になった。しかし、結果から見てはなはだ不当だ。まあそういう意味で、裁量権範囲をこえる場合、あるいは範囲内であっても、その乱用のあった場合だけに裁最処分取り消し対象にするのだという、その規定の仕方に少し問題がある。西独法の百十四条のように、行政庁がまかされたその目的に適合しないような方法裁量が行なわれた場合にも、というふうに書いてあれば、私が今心配したような、その中間のような場合にも、これは救われるわけなんです。そこをまあ聞いておるわけなんですがね。まあ個々の具体的な事案になれば、各関係者がいろいろ主張して、適当な結論も出るのかもしれないと思いますが、立法としては、もう少し幅のある規定の仕方が適当ではないかと思うのですが、事務総長も来られましたが、なお、法制局長も来られたようですが、ちょっと御意見参考に聞かしていただきたいと思います。どうぞ事務総長から。
  18. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) ただいま亀田委員の御質問で、主観的に害する意図があるということがはっきりいたしますと、これはもう乱用になると思いますが、結局そういう意図がないということに相なりますと、どの限度まで裁量権が与えられておるかということは、法規目的から引き出してくる以外にはないんじゃないか。したがいまして、抽象的に、主観的意図がないから直ちに乱用ということは考えられないということが言えるかどうかということは、ちょっと疑問に感ずるわけでございます。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、大体私の心配しておるような、主観的な意図はないけれども、結果としてははなはだ公平を欠く、正義に反するといったような場合に、その行政庁処分を相手に提訴できるかどうかという点がはなはだあぶなくなるわけですね。それで、先ほど私が読み上げました西独法のような規定であれば、主観的な要素は別として、ともかく行政庁にまかされた目的に適しないような裁量の仕方をやった場合にもやはり訴訟対象になるんだ、こういうふうにしておく必要が立法上あるのではないかと思うわけなんですが、法制局長、御意見どうですか。
  20. 斎藤朔郎

    法制局長斎藤朔郎君) 今入ってきたばかりで、どういう問題かわかりませんが……。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 この三十条の裁量処分取り消しに関する規定ですね。「行政庁裁量処分については、裁量権範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を、取り消すことができる。」こうなっているんです。問題は、裁量権範囲をこえてはおらない、しかし、乱用とまではいかないんだ、乱用というやつは、甲が何か申請してきたが、あいつはこの間おれに文句を言いよったから、この辺でちょっととっちめてやれといったようなことで、当然許可すべきものを許可しない、これはもう裁量権範囲内であっても乱用の典型的なものでしょう。ところが、そうではなしに、決してそういう主観的な意地の悪い考えなどをもってやったわけではない、ところが、結果から見ますると、従来の例等に比較して、はなはだ正義に反する、不公平だ、しかし、それは行政庁裁量範囲内にあるんだ、こういうようなことになりますと、その気の毒な人を救わないで、ほうっておいていいというものでは私はないと思うんです。行政上の今度の不服審査の対象にはもちろんなるようですが、裁判の段階においても、もう少し広くそういうものも入り得るように規定しておくべきじゃないか。この「濫用」という言葉裁判所が適当に拡張して、そういう偶然に行政目的に反するような結果が出ておるような場合にも広げて解釈していくということになれば、それはまあいいかもしれませんが、必ずしもそうなるとは限らない。で、そういうたとえば西独の新しい行政法等を見れば、百十四条、これをちょっと見て下さい。こういう授権目的にふさわしくないような裁量をやった、そういうような場合にも取り消し訴訟対象になると規定してあるわけですが、そういう規定の仕方なら非常に広いですわね。乱用はもちろん入る。乱用以外のものも入ってくる。しかし、もちろん私も、それはいわゆる不当と思われる行政行為を無限に対象にすべきだというところまで言っているわけでもない。しかし、ともかく乱用にはならない、裁量権範囲内だと、それ以外は全部だめだと、これではやはりふさわしくないんじゃないかという意味でお聞きしたわけですが、どうでしょうか。
  22. 斎藤朔郎

    法制局長斎藤朔郎君) 非常にむずかしい問題でございまして、根本的に考えて参りますと、結局は、司法権行政権のバランスの問題だと思うのでございますが、私、ただいまお示しの西独の条文をよく研究はいたしておりませんけれども、「裁量法律上の限界をこえ」というのは、こちらの裁量範囲をこえ、これに当たるのだと思うのですが、この裁量範囲をこえとか、裁量権乱用ということでございますと、これは一つの司法判断の分野に属するものだと考えられるわけでございますけれども、「授権目的に適合しない方法裁量が行使されたとき」という言葉を、私今初めてこの訳文を見ました感じといたしましては、むしろそれは、行政権プロパーの考え方に基づいて判断をすることになろうかと思いますので、そういう分野は、司法判断じゃなくて、むしろ行政的の判断なんで、これはまあ西独は、司法裁判所じゃなくて、行政裁判所のほうのようでございますが、司法判断としては、そこまで行くことは私はいかがなものかと、むしろどちらかと申せば行き過ぎじゃないかというような感じをいたすのでございますが、この機会に個人的のことを申しまして恐縮でございますが、私も本来司法官出身でございますので、司法権の行使についてのいろいろの問題については、常に興味を持って考えて参りましたのでございますが、かつて大阪高等裁判所に在職しておりました当時に、日本の法哲学会の年報に、「法と国家権力」という論文の寄稿を求められまして、そのときに自分の意見を発表したことがございますが、それは、当時たまたま例の解散無効の訴訟が第一審の裁判があった当時でございまして、その当時に、私が痛切に感じましたことは、司法権に対する信頼を高めるというようなことは、われわれとしては常に熱意を持って考えなければならぬことでございますけれども、むやみやたらに司法の分野を広げ過ぎますと、本来司法の判断に適しないものまで自分の仕事に取り入れますと、かえってその泥をひっかぶることになるので、それは決して司法権に対する信頼を確保するゆえんでないんじゃないか。司法というものは、本質はあくまで消極的な、受け身のものであって、司法の機能にあまりに積極的な作用を持たせますと、いい場合はいいのでございますが、一たびそれが不当に運用されることになりますと、いわゆる司法ファッショというような、非常に強い権力でございますので、それが誤って運用されるということになりますと、非常に危険な場合もできますので、司法権行政権のバランスを考える国会側の立場としては、司法権範囲を極度に広げることについては、相当慎重に考えなければならぬのじゃないかというように考えますので、一応ただいまの御質問に対して、御質問の趣意には沿わない答弁にはなりますけれども、私、平素から考えておりますことでございますので、私見を申し述べさせていただきました次第でございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 そういう問題は、本法の第一条から始まって、全部に関連しておる問題でして、そういう今抽象的な議論をされますと、そのこと自体について若干またお聞きをしたり、議論に花が咲くことになるわけですが、これは、時間もありませんので、省略しておきますが、その司法の判断が消極的なものだとか、行政にはなるべくタッチしないのだというような考え方が、これは伝統的な考え方であることは私も承知しておる。しかし、それではどうもいかぬのではないかと、権利が侵害される者の立場から見て、そういうやはり考え方がまた一方では出ているわけです。やはりその考えが私は成長しつつあると思うのです。しかし、その考え方を成長させたところで、この行政のあらゆる分野について司法審査をやっていくということを認めるという意味では私はないのですよ。これは、総理大臣みずからが政治的判断をやるような問題とは、これはまた別個の問題です。ところが、末端の行政庁などがぽんぽこいろいろな不当なことをやるという場合に、それは補量の範囲内であり、乱用にならなければ、それはもう仕方がないのだと、これでは、私はやっぱり新しい司法の行き方ではないと思う。どこに線を引くかは問題があろうと思う。だから、そういう意味で、そこら辺の問題が、今後学者なりあるいは裁判所判例等によって、どちらのほうに進むかというゆとりのあるような規定にやっぱりしておくべきではないか。これを何かここでかちっと縛ってしまって、これ以外はだめだというような印象を与えるものでは、やはりこの実際の問題に当面した場合に、裁判官が、これは救ってやりたいと思っても救えないというような事態等もできたりして、立法としてはやはりまずいのではないかという感じを持っているわけです。まあしかし、これは幾ら議論をしておっても、これだけで一日もかかりますと、会期もきょうで一ぱいでありますので、一応この程度にしておきます。
  24. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  25. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 速記を始めて。
  26. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、今亀田委員のお話を聞いておりまして、ちょうど三十条のところで、この前参考人の方から、いろいろ個々の内容について御意見が出たわけでございまして、単なる「裁量権範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り」ということでは、言われたように、何と申しましょうか、受ける国民からいえば、非常に幅が狭い。ですから、ここにもっと、公平でない取り扱いがされたときとか、あるいは正確でない処分をされたときとかいう言葉をもっと入れたらいいんじゃないか、これだけでは、少し受ける側からいえば狭過ぎる、こういうふうな御意見があったのでございますが、ここにそういう言葉で表現するお考えはございませんでしょうか。
  27. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 繰り返し同じ答弁を申し上げて、はなはだ恐縮なんでありますが、司法裁判所で、審査を受けますのは、事柄が違法であるかどうかという以外には私はあり得ないと考えるのであります。しこうして、自由裁量に属する行政処分が違法である場合と申しますれば、裁量権範囲をこえている場合と、なお注意的に申しますれば、これに匹敵するものとして、裁量権乱用に当たる場合、この二つしかあり得ませんので、それ以外の事項は、本来司法審査にわたる事項ではないと思います。
  28. 赤松常子

    ○赤松常子君 いろいろ、司法上と申しましょうか、こういう立法上の言葉というようなものがいろいろございましょうが、私どもしろうとでございますから、あまりよくわかりません。しかし、これを扱う場合に、今言ったように、国民の諸権利があまり拘束される、阻害されるというようなことのないようにお願いしたいということが私どもの願いでございます。  それから、もう一つお尋ねしておきたいことでございますが、国民の立場から、私も込めてでございますけれども、この法案をちょっと一読いたしましても、私、初めよくわからない。ましてや、国民一般の方々にはこれが難解な内容ではないかと思うのでございますが、そういう国民が訴訟を起こしますような場合、やはり訴訟の代理人に頼むとか、あるいは国選弁護人制度の利用だとか、そういうことにたよると思うのでございますね。そういう場合に、何か私ども国民の今申します権利が守られるような、たとえば訴訟の救助制度というようなものとこの法案とはどういう関係にあるのか。特に、第八条でございますか、訴願前置主義が廃止されるという建前に立ちますので、今申しますような、国民が一番守られるような救助制度というものとどういう具体的に関係を考えておいでになるのか。
  29. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 御承知のように、本法案は、行政事件訴訟に関する手続法でありますので、今御指摘のようなことについては、直接の関係は持っておりません。訴訟一般について、本法におきましても、第七条で規定のない事項は民訴の例によることになっておりますから、訴訟救助も受け得るわけでございます。また、そのほかの点で、弁護士会などを通じて、必要があれば弁護の手を差し伸べてもらえる場合もあることはあろうと思いますが、さような事項は、実は本法案とは直接の関係は持っておりません。訴訟救助と申しますれば、第七条によりまして、民訴一般につきまして訴訟救助が行なわれます場合につきましては、行政事件訴訟におきましても、やはり訴訟救助を受け得る関係にはなっております。
  30. 赤松常子

    ○赤松常子君 どうも私がしろうとで、よくわからないのでございますけれども、私が申したいのは、国民一般が、自分が非常に不利であるというような場合に、何か救済の要求方法というものが手近にもっと考えられないかというようなことなんでございますけれども、まあ今度内閣委員会で、行政不服、審査法でございますか、それとの関連もあると思うのでございますけれども、国民が不利を受けた場合に、この法案以外に、何か訴訟救済というものが具体的にはかられないものであろうか。それでもなおはみ出て不利を受けるような場合がありはしないか。
  31. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 御心配の場合に、十分な満足なお答えになるかどうか、ちょっと私にはわからぬのでありますが、行政処分に関します限りは、訴訟に行く前に、実は多くの場合に訴願という制度がございます。ことに、本法案と同時に、内閣委員会で御審査を願っております行政不服審査法におきましては、旧来の訴願法とは異なりまして、訴願事項を概括的に、すべての行政処分に関して訴願の手続ができるように、つまり不服審査が、不服の申し立てができるように救済の道を広げております。のみならず、行政庁は、処分をいたします際に、この処分に対してはこういった官庁にこういった方法で不服の申し立てができるということを教示しなければならないような親切な規定もおいております。もちろん本法案自身が、必ずしも訴願を経なければ訴訟を起こせないという建前ではございませんので、訴願前置を原則として廃止はしておるのでありますが、訴訟になります以前にさような手続を経た上で、なおかつ不服な場合に司法裁判所に訴えるという段階になってくるのが通常であろうと思いますので、本法案とは直接の関係はございませんが、行政不服審査法との関係で、行政処分に関しましては、これら二つの法律施行されました暁には、旧来以上に国民の権利を守ることには、行政庁は十分の配慮を用いるものであるということを申し上げていいかと思うのであります。
  32. 赤松常子

    ○赤松常子君 そうすると、この二つの法律によって、国民はまあ完全に守られるという御見解でございましょうか。これの二つの法律以外にはみ出るような場合はございませんでしょうか。
  33. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 両法案を含めまして争訟法と申しますならば、争訟法の建前からは、今赤松委員のおっしゃるようなものにこたえる制度は、今のところ私はないように考えます。これは、一般の通常民訴につきましても実は同じなんでありまして、まあそれが基本的人権に関しますような場合には、法律扶助について相当額の予算を法務省の人権擁護局が持っておりまして、あるいはそういった方面に申し出ればそういった場合には、弁護士をつけてもらえるという場合はあると思いますけれども、手続法自身には、民事訴訟法にいたしましても、また本法案にいたしましても、あるいはまた、行政不服審査法におきましても、赤松委員のおっしゃるような具体的な特別な制度は考えられておりません。
  34. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一つ、私のお聞きしたいのは、いろいろ法律ができますが、これでもまだ救えない場合がありはしないかという、その心配なんです。大体これで国民の立場というものは、国民の権利というものは、こういう場合においては救助され、救われるとお考えでございましょうかというのです。そのお尋ねです。
  35. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) ちょっとお答えになるかどうかわからぬのでありますが、行政処分に関します限りは、違法な処分による被害は本法によって救われるというふうに私どもは考えておるのであります。たとえば、資力が少なくて弁護士さんを頼めない、適切な訴訟がやれないというような事実上の問題は、これは別でありますが、さような場合には、民事訴訟法におきます訴訟救助の制度がありますし、それからまた、ただいま申し上げました人権擁護局が持っております予算の範囲内では法律扶助を受け得るわけであります。手続法といたしましては、違法な処分による被害はこれによって救済し得ると考えるので、事実上の問題は、今申し上げましたように、訴訟扶助なり、あるいは訴訟救助なり、法律扶助なり、あるいは法律救助なりを求めることになるかと思いますけれども……。
  36. 赤松常子

    ○赤松常子君 これでおしまいにいたしますけれども、私はしろうとでございまして、この前の参考人の御意見のときに伺ったのでございますが、まだまだこの行政事件訴訟法は不十分な段階にある法律だというお話があったんです。それで私は、不十分であれば、これからはみ出す場合がありはしないかという、そういう心配を持っておりますものですから、もっとほかに、救助法の拡充であるとかというものが必要ではないか。不十分であれば、まだこれから完全なものができるべきではないか。その段階において国民の諸権利は阻害されて、そのまま放置される心配はないか、その点をお尋ねしているのです。
  37. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) よく御趣旨がわかったようであります。参考人意見で、御指摘のような事項に触れましたのは、私どもの理解いたします限りでは、処分を違法であるといって取り消されただけでは、なお国民の権利は十分には保護されておらないので、ある種の場合には、行政庁処分をすると同じような、国民に有利な処分をすると同じような、給付の訴訟であるとか、あるいは義務づけ訴訟なんていうものも認める必要があるのじゃないかというふうなことを参考人は言われたと思うのであります。また、まさにわが国の学者の間にもあるいは実務家の間にも、そういった立場をとって、本法案はまだ十分でない、完全でないという批評をなさる方もございます。また、この立案の過程におきましても、確かにそういった意見も大いに戦わされた結果がこういう結論になってきた、法案としてまとまってきたわけなんでありまして、その点は、本法案の第二条におきまして、行政事件訴訟というのはこういうものをいうのである、こうここにあげておりますが、本来行政事件訴訟と申しますのは、公権力の行使に関する不服の訴訟、きわめて抽象的、概念的に申しまするならば、これで尽きておるのであります。したがいまして、この三条の二項から五項までにあげておりますのは、今の日本の学説、判例の大勢において認められております種類の類型の行政訴訟をあげまして、その類型の行政訴訟について特殊の手続法を設けんとするものでありますので、これ以外に、つまり公権力の行使に関する不服の訴訟で、ここにあげております類型以外の訴訟が許されるか許されないかということについては、本法案は具体的には触れておりません。でありますから、これ以外の、論者の言う義務づけ訴訟あるいは給付の訴訟が許されるか、あるいは許されないかということは、今後の学説、判例の健全な発展に待つという意味で、私どもはそこには実は触れなかったのであります。でありますから、赤松委員があるいは論者のようなお立場にお立ちになれば、まだ本法案は不十分ではないかというふうにお考えかと思いますけれども、私ども、数年の間法制審議会で論を練りました結果出てきたものがこういったことになってきましたので、私どもは、そのいずれの立場にも実は立っておりません。その点は、将来の学説、判例の健全な発展に待つ。言いかえて申し上げますならば、白紙の立場で臨んでおるというつもりでおります。これはもちろん私個人の意見ではございませんで、立案者としての公的な意見であります。私個人は私個人の意見を持っておりますけれども……。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 亀田委員質問中でありますから、若干私の質問はダブるようになるかもしれませんが、二、三お尋ねしてみたいと思います。  国民の権利救済の制度としてこの法案をお出しになった意図については、十分私ども了解するところです。しかし、訴願制度については、従来から数々問題もあって、憲法が発生時に直すべきであったという意見もあったわけです。ところが、そういう願いというものは相当長い間続いてきている。年数にすれば、大体十五年たっているわけです。どうしてこの行政事件訴訟法案が、そういう願いがあるにもかかわらず、今日までかなりの時間を要してきたのか。そういういきさつ等についてお尋ねをしてみたいと思います。それが第一点です。
  39. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) ただいまの御質問の点でございますが、実は、この法案で一番最初に問題になりましたのは、現行法で申しますと、行政事件訴訟特例法の第二条の訴願前置の規定でございます。訴願前置の規定、この規定が設けられるにつきまして、若干議論はありましたのですが、ともかく現行法として、訴願を経てからでなければ裁判所行政事件訴訟を提起することができない、こういう建前がとられております。しかし、この現行法の規定は、ただいま高田委員のおっしゃいましたように、その前提になっている訴願法をそのままにしておいて、不備不当なままにしておいて、訴願を経てからでなければ出訴することができないという、こういう建前をとったものですから、国民の権利救済にとって非常な不便を生じました。  その不便の生じた第一の点は、まず、訴願事項があいまいであるということでございます。訴願法の規定を見ていただきますと、水利、土木に関する件だとか、あるいは租税の賦課徴収に関する件であるとか、あるいは地方警察に関する件であるとかというようなことでございまして、はたしていかなる事項について訴願を経てからでなければ裁判所に出訴できないのかという点が、これは専門家でもよくわからないような状況になりまして、したがいまして、国民のほうでは、これが訴願できる事項であるか、祈願できない事項であるかということがわからないままで、裁判所にいきなり出訴いたしまして、したがって、裁判所のほうでは、これは訴願ができる事項であるから、ただちに裁判所に出訴することができないということで、門前払いをくっていたという弊害が一つあったわけでございます。  それから第二は、訴願期間でございます。訴願をすることができる期間、これが自創法とかあるいは各特別法でもって、十日であるとか、あるいは一週間であるとか、あるいは二週間であるとかいうような、きわめて短い訴願期間が設けられておりまして、したがって、行政事件訴訟特例法のほうで訴願前置主義をとっているために、その期間が厳守されませんと、ひいては訴訟も起こすことができない、こういうふうな弊害がありました。この弊害が一番多く現われましたのが、自作農創設特別措置法によりますところの買収処分等についての取り消し訴訟でございます。  それから弊害の第三は、訴願というのは、これは本来そうでございますが、上級の行政庁に対して訴願をしなければならない、こうなっているわけでございます。しかし、上級の行政庁というのが、今日のように行政組織が複雑になってきますと、はたして上級の行政庁がどこであるかということが国民にははっきりとしないわけでございます。それにもかかわらず、行政事件訴訟特例法のほうでは、そのはっきりとしない上級行政庁に対して訴願を経てからでなければ出訴することができない、こういう建前になっておりまして、したがいまして、上級行政庁がわからんものですからして、訴えを提起することができないで、泣き寝入りになっていた、こういうようなことになっていたのであります。
  40. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと御発言中ですが、その弊害はわかっているわけです。そういう弊害がわかったから、戦後、憲法が発生した当時から、今日の日本の訴願制度については改めなければならないという声は古くから出ていたことを承知しているわけです。つまり、今あなたがいろいろな点を指摘せらたような国民の権利救済が必ずしも妥当ではない、かくかくしかじかの理由でこれは直さなければならないという声は、何も今上がっていたわけじゃないわけですね。訴願制度についての検討は、憲法が発生した当時からいろいろやかましく言われたことは、私もいろいろの文献で見ておる。ところが、ようやく憲法発生後十五年たって、案がまとまって、その期間が非常に長過ぎた。どういうわけでそんなに長引いたかということについて伺いたかったんですが、今、欠点だけを言われておるようですが、なぜ私がそういう御質問を申し上げたかというと、一部では、第三条の抗告訴訟の点などについては、これは官庁立法じゃないかといわれるほど、国民の側に立つのではなくして、むしろ官庁側の便利がいいようにという、いわゆる官庁立法じゃないかというような批判も濃いわけです。官庁立法といわれるようでは、これは、国民の権利というものは必ずしも救済されないんではないかという裏返しの批判があるわけですね。特に三条の第四項は、第四項だけにとどまらないで、本文の三十六条では、さらにこれをきつく強調している面が見られる。つまり、これが官庁立法ではないかというようなそういう批判を受けておるので、私は、官庁側の意見などばかりよけい聞いておって、ほんとうに国民の権利救済というところに徹さない部面があるから、なぜそんなに長引いているのかということを裏返して質問したわけです。それに対して、官庁立法の性格はないんだとおっしゃるならば、どういう点でないのかということをもう少し詳しく言っていただきたいのです。もし言わするならば、この四項のようなのは、当事者訴訟と同じくしたらいい。仮処分執行停止にすればなおいいんじゃないですか。どうもこの四項などは、私はしろうとでよくわかりませんが、四項は、現行法では規定がない。農地改革の場合、地主側がこういうことを出したことがあるという前例を文献で見たわけですけれども、どうも官庁立法のにおいが強い、こういわれておるわけです。そういう疑問に対して、もしここでお答えいただけるならば、その疑問を解くに足る法文にあてはめて、三十六条はしぼっていなんだというふうに、明快に御答弁をいただきたいと思う。
  41. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 三十六条でございますが、これは……。
  42. 高田なほ子

    高田なほ子君 抗告訴訟のところですよ。三十六条の関連。
  43. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 三条の四項と、それから三十六条の点でございますが、無効確認訴訟につきまして、特にこういう三十六条のような規定を設けたわけでございますが、これは、権利の救済を狭めたというようなことではないつもりでございます。と申しますのは、三十六条の後段を見ていただきますと、「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り」無効等確認の訴えを提起することができるということでございまして、農地の買収処分について申し上げますならば、農地の買収処分の無効確認というような、そういう訴訟的に申しますと疑問があるような訴訟を提起しなくても、国なりあるいは売り渡しを受けたその者に対して、普通の民事訴訟と同じ格好の訴訟、つまり所有権確認の訴えであるとか、あるいは登記抹消の請求というような、そういう普通の訴訟を起こして下さいといのでありまして、そういう普通の訴訟目的を達成することができない場合には、これは無効等確認訴訟というものが認められるというだけでございまして、従来の権利の救済の窓口を狭めるとか何とかということはないつもりでございます。したがいまして、そういう普通の所有権確認なり、あるいは登記抹消の請求ということになりますと、四十五条を開いていただきますと、四十五条では、見出しとしまして、「処分の効力等を争点とする訴訟」、こういうことになっておりまして、この中で、これは性格から申しますと普通の民事訴訟でございますが、しかし、その争点となっておりますのが行政庁処分であるということのために、若干行政庁訴訟参加であるとか、あるいは職権証拠調べの規定を準用するという格好で規定しているわけでございまして、それからまた、その出訴期間等につきましても、これはほとんど変わらないわけでございます。従来も、無効等確認の訴えにつきましては、出訴期間の制限はないわけでございます。今度も、普通訴訟で所有権確認等の民事訴訟を起こせば、出訴期間の制限はないわけでございます。  それからまた、三十六条にからみまして、それでは無効等確認の訴訟が起こせると思って起こしたところが、三十六条の制限によって起こせないという場合はどうなるのかということでございますが、その場合には、三十八条で取消訴訟に関する規定を準用いたしております。二十一条で、かりに無効等確認の訴えが三十六条の要件に該当しないという場合であっても、ほかの訴訟、つまり先ほどから申し上げておりまする所有権確認の訴えというような普通の訴訟へ訴えを変更することができる、こういう道を開いておりますので、三十六条を一見いたしますと、何か国民の権利の救済を制限したような感じを与えはいたしますけれども法律的にはそういうことはないようにいたしておるつもりでございます。
  44. 高田なほ子

    高田なほ子君 わが党のベテランが見えましたがら、私は、あと疑問の点を二点だけ尋ねて終わりますが、どうも私が指摘した点について、官庁立法というにおいのある所はこのほかにもまだ多いわけです。たとえば、今いろいろ御説明があったわけですが、もしほんとうに三十六条が三条のしぼりでないとするならば、無効確認の訴えはやや乱用されている面はあると思いますが、しかし、処分をした行政庁が被告になるというような、そういう制度というものが活用されなければ、あなたの御説明はつかないと思います。説明は非常に簡潔ですけれども、私はそう思う。それは意見の相違だと言えばそれだけだと思います。しかし、ほんとうに国民の権利を救済するというならば、そういうような形になっていいのじゃないか。  それから二十五条の執行停止のところも、これは、執行停止要件をひどくしぼってあるでしょう。二十五条の二項、三項がそうです。二項本文の中に書いてあるのは、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるときは」云々、こういうような条文でしぼっています。それから三項も、「公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは」、こういうふうにして、執行停止要件というものを非常にきつくしぼっている。このことは、国民の権利救済の側に必ずしも万全の役を果たすというふうには考えられない。要するに、国民の権利救済に対する一つのブレーキではないかという疑問がそこに出てくるわけです。これが官庁立法といわれる一つの問題点です。  もう一つの問題点は、しばしば問題になっている三十一条の問題でありますけれども、これなんかは、もう明らかに行政庁側に非常に有利な特例である。私は、現在のわが国の行政事件――まあ数字は的確でないかもしれませんが、この前どなたかに質問したときに、的確に数字をお答えにならなかったので、調べてみましたから、一年間に大体六百五十件くらいあるそうですね、行政事件。そこで、戦後十年間通して見ると、国民の勝訴になったという部分はわずかに二五%であるというように、国民の権利救済というのは非常に少ないわけです。そういうわけでありますから、官庁立法といわれるようなにおいのある部分については、これは、政府当局としてもかなりのやはり御注意なり、今後の運営については御留意いただかなければならない点ではないか、こういうような希望を持つわけです。したがって、今例として出しました二十五条の二、三項のしぼりはどういう作用をするか、三十一条の行政庁側に有利な特例であるという私のこの言い分に対して、的確な御答弁がいただきたいのですが、特に三十一条は、「処分又は裁決を取り消すことが公共福祉に適合しないと認めるときは」云々と、こういうふうになっておる。しかも、裁判所は違法覚書だけできることになっている。これではたいへんまずいんじゃないか。裁判所は、場合によっては請求を棄却することができるんだと書いてある。その場合に、裁判所は請求を棄却するという権能をここで明記するならば、請求棄却の理由というものを当然明示しなければならないという私は国民に対する義務があるのではないかという、そういう考え方を持っているわけなんです。従来もそういう例はたくさんあるかもしれませんけれども、特に三十一条のこの取り扱い等については、今後の運営について、請求権の棄却という問題については、相当の深い配慮が必要になってくるのではないか、こういうような疑問を持つものであります。どうぞ私の今の質問に対して御答弁をいただきたいと思いますが、時間の都合上、私は再質問を避けたいと思いますから、裁判所側からも、当局側からも、また法務大臣からも、私の質問に対してお答えをいただきたい。
  45. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) ただいま御指摘の数点につきましては、拝聴しておりますと、おおむねの場合、国民の個々の権利の救済の問題、それといわゆる公共福祉を守るということ、その間における要するに比較検討の問題になろうかと思うのであります。もちろん、この法律が国民の個々の権利救済を最も尊重して考えなければならぬことは言うまでもございません。したがいまして、全体にわたっての今回の改正、全面的改正も、それを十分尊重いたしまして、その方針のもとに立案をしておるのでございますけれども、しかしながら、また憲法上におきましても、御承知のように、公共福祉のためには、個人の持っております憲法上許されたる権利でありましても制限を受ける場合があることは、御承知のとおりでありますが、その精神もまた同様に、個々の権利を尊重して参りたいけれども、しかしながら、それがそうすることによって公共福祉に大きな支障が起こるというような場合には、まあ行政権の最終の目標といたしましては、やはり国民全体の公共福祉を守っていくということも、これまた一つの大きな目標でなければならぬのであります。したがいまして、この間において、どうもどちらのほうを特に強く考えるかという問題によって非常に見解が分かれると思いますが、この法律案において考えておりますことろは、個々の権利の救済を第一の目標にしますが、しかし、万やむを得ざる場合に、公共福祉のために放置するわけにいかぬ、あるいはその権利の主張をそのまま認めるわけにはいかぬというような場合には、やむを得ず公共福祉のほうを優先させて参らなければならぬという場合があり得るということを前提に、非常に制限に制限を重ねた上でこうした条文が残っているということでございます。この点は、したがいまして、われわれこの法律の定めるところによって運営をいたします場合には、ほんとうに公平な立場に立ち、しかも、法の精神とするところ、あるいは憲法の基本的に考えておるその公共福祉という問題も十分深く慎重に検討の上で運営をしなければならないものと、かように考える次第でございます。
  46. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) ただいま法務大臣がお述べになりましたことと全く同じ見解であります。
  47. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一問だけ。  法務大臣の御答弁は、それでよく私はわかるわけです。また、そういう注意をしなければならない、慎重な注意が必要であるということはよくわかります。しかし、原則問題をここで繰り返したくはないわけですけれども公共福祉と個人の権利という問題は、しばしば問題になったところで、もし公共福祉がやむを得ざる場合に優先するということをかりに認めれば、当然三十条の「裁量処分の取消し」等については、これは相当やはり研究しなければならぬ問題点ではないかということを私は指摘しなければならないと思う。つまり、三十条の「裁量処分の取消し」は、裁判官の考え方によることによることになっているわけです。「裁量権範囲をこえ」というようなばく然たる言葉は、せんじ詰めていくと、裁量権範囲ということは、そうすると一体どういうことなんだ、これはまあ通常社会の通念上から見て云々という答弁きりできないでしょう。それからまた、こういう「範囲をこえ又はその濫用があった場合」、どのような場合に一体乱用だといわれるのかというように、裁量処分の第三十条の取り消しというような点は、やはり公共福祉というものも一応ここでもって大きくかまえておれば、特にこの三十条の運営の面については、十分に厳格に規定しなければならないものである。「裁量処分の、取消し」というものは、こういうばく然たる「裁量権範囲をこえ」とか、それから「濫用があった場合」とか、こういう裁判官の考え方によってどうにでもなるというのではなくて、厳格に規定されなければならない。私をして希望としていわしめるならば、裁量処分が公平でないときは云々というくらいな、それくらいな明確な厳正な規定というものが三十条運営の中に加味されることが望ましいのではないか。こういうふうに、まあ大臣のお気持ならば、そうあるべきではないかという意見を持っておるわけなんです。これはあくまでも私の意見でありますから、将来私の発言が記録に残っておるわけですから、どうぞひとつこの法案法律として生きた場合に、十分にお考えいただくことを希望いたします。大臣から特に私は答弁を要求はいたしません。意見として申し上げます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 大臣が出席までに問題になりました総理大臣異議の問題に返りたいと思うのですが、先ほども申し上げたとおり、この制度は、沿革的にもGHQの意見によって挿入されたものであることは、これはもうはっきりしておる。どこの国にもない。行政権司法権の関係が適当なところにとどまらなければならぬ、そんな抽象論はもうわかっているのです。それはお互いにわかっているわけです。そこで、そういう立場を認めながらも、このような司法裁判所の決定を総理大臣異議によってひっくり返していくといったような制度はどこにもないわけなんです。そんなことが起きないように、司法裁判所がみずから自制をしていくという問題は、各国とも、みんな判例学説等によって、おのおのの国に適したやはり線というものが確立され、努力されておると思う。それは、そういうことにまかすべき問題なんです。司法裁判所が一たん判断したものを、全然系統の違うものが横から出てきて待ったをかける、御破算になる、どこにもないのですよ、これは。したがって私は、これは参考人の御意見だってもほとんどそれです、六人とも。大臣もお聞きになったはずです。だから、この制度は、絶対これは了承できない。しかし、やむを得ず設けるといたしましても、そういうことですから、十分なしぼりをかけておく、これは私は必要だと思う。そういう立場から先ほど質問をしていたわけですが、そこで、この二十七条の第三項ですね。総理大臣がそういう異議を述べる場合に、理由をつけるわけですが、その理由においては、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示さなければならないと、義務的な規定になっていないわけですね。「示すものとする」。そうして逐条説明でもそうですが、先ほどの訟務局長のお答えも、これは注意的な規定なんだと、そういたしますと、そのような事情というものが示されておらないような異議の申し立てでありましても、一応それで通ることになるのですね。これは単なる注意的な規定だと、こう言われておる。私は、これははなはだ不当だと思うのです。制度を置くこと自体に問題があるのです。しかも、第三項をわざわざこういうふうに置きながら、それは単なる注意的な規定なんで、そこまではっきり書いてなくたっていいんだ。そんなことではとても了承できない。これはどうですか。法務大臣、それから最高裁当局の意見も聞きたいわけです。抽象論は別として、このような例外的な制度ということを考えるならば、単に注意規定として置いておくんだといったような、そんなことでいいのかどうか。
  49. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) 二十七条の三項の逐条説明のときに申し上げておるそうでありますが、私は、その二十七条の二項、三項をあわせ読んで考えました場合に、「前項の異議には、理由を附さなければならない。」これは、理由をつけなきゃならぬという義務規定です。そうしてその理由については、すなわち三項では、「前項の異議の理由においては、内閣総理大臣は、処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。」こう書いてあるのでありますから、この条文を読みましての私の解釈としましては、理由を付さなきゃならぬ、理由にはこういうことを示すものとする、とあるのですから、単なる注意規定と読むのは、私はどうかと考えます。むしろ、理由を付さなければならぬ、その理由に対してはこうこうこういうことの事情を示すものとするというのですから、その理由の中に、公共福祉に反し、重大な影響を及ぼすという事情を明らかにするということが当然総理大臣として考えなければならぬ趣旨のものではなかろうかと、私はそう考えます。ただ、今も政府委員の私語によって説明を聞きますと、個々逐条説明のときに、ややこの点が私の今申し上げる解釈よりは少し弱い、ルーズになっている点があるように思いますが、私は、少なくとも私としてこの条文を読み、かつ実行する場合の考え方としては、私が今申し上げたような趣旨解釈してやるのが当然じゃなかろうかと、私はそう考えます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 大臣のそういうお答えでありますと、こちらは納得できるわけですが、それならば、どうもこの逐条説明書を書きかえてもらわぬといかんですね。どうなんですか。
  51. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 今の点は、大臣がお答えになったと同じ解釈でもって逐条説明いたしているわけでございまして、逐条説明のほうで、第三項は訓示規定というふうに解しますというふうに申し上げているのは、これは、この規定の性質がそういうのだということを申し上げているわけでございます。ごらんになっていただきますとわかりますように、「前項の異議の理由においては、内閣総理大臣は何々するものとする」と、これは、しなければならないといたしましても当然のことでございますが、内閣総理大臣に向けられた規定でございます、三項というのは。したがいまして、この規定それ自身の性格から申しますと、これは訓示規定だということを申し上げているわけでございます。ただ、二項の解釈として、先ほど大臣から御説明がありましたように、その理由を付したか付さないのかということ、これは裁判所判断でございまして、その場合に、三項のような、そういう内容を具体的に書いたものでなくては理由を付したことにならないのかどうかということの裁判所判断になりますと、それは効力規定だとか何とかという問題じゃございませんですからして、おそらく解釈としましては、そういう具体的に理由が書いてないことには理由を付したことにはならないだろう、こういうことでございまして、逐条説明書のほうでは言葉が足りませんものですから、ただいまのような御批判があったと思いますけれども、私どもといたしましても、その間の実質的な解釈につきましては変わらないように思います。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 これは非常に重要な点ですが、現行特例法の第十条の第二項と第三項がただいま問題になっている点でありますが、現行法の場合には、「前項但書の異議は、その理由を明示してこれを述べなければならない。」こう書いてありますが、この場合に、これは義務規定というふうな解釈がされておらないでしょう。現行法においても、これは訓示的なものだというふうに裁判所等の扱いがなっているはずです。現行法で義務規定のような書き方をしながら、なおかつ、それが注意的なものだ、こういうふうな扱いをされておるのに、現行法よりももっと弱い見方をここでしながら、こういう弱い見方をした場合には、これは全く意味のない規定になるおそれもあるわけです。理由なんかどうでもいいのだ、ともかく総理大臣異議があるのだ、その一発でいけるようになりはせぬか。大体現行法の扱いというものがやはりもとになって、この新法の解釈等も今後なされると思う。そういう点で関連するから聞くわけですが、これは最高裁のほう、どうですか、そうなっているでしょう。この文字は今私が申し上げたようになっておりまするけれども、その点……。
  53. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 文字に多少の相違はあるようでございますけれども、立案の趣旨においては、たいして変わりはないのじゃないかというふうに私ども考えておるのでございます。この異議に「理由を附さなければならない。」これは、現行法におきましても、効力規定というふうに解釈されておるわけでございまして、ただ、何らのこの具体的な事情を示しておらない、こういった場合には、これは理由が付せられていないというふうに見ていいのではないかというふうに考えるわけでございます。ただ、抽象的に申し上げますと、それではどの程度の具体的な事情を示す必要があるかという問題になりますと、理由の明示があると認められる程度の具体性はなければならないということになるかと思います。それでは、どの程度の具体性があったらこの理由が示されたことになるかどうかという問題になりますと、これは、各個のケースによっていろいろ違いが出てくるかと思いますので、各個の場合について判断していくより仕方がないのじゃないかというふうに考える次第でございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 私のちょっと思い違いかもしれませんが、現行法では、理由の明示というのがやはり効力規定になっておるのですか、そういう扱いに。
  55. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) そういう解釈になっておると思います。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 それは間違いないですか、法務省のほうは。
  57. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 私、従来御説明申し上げました逐条説明の今の論点に当たります部分、やや筋が妥当を欠く点があって、誤解を招いているように私は実は思うのです。もちろん、二十七条の二項においては、理由を付さなければならぬのであり、三項では、その理由はかくかくのものであるとありますから、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を理由として付さなければならぬことは、当然効力規定であり、要件であることは、これは間違いない。ただ、公共福祉に重大な影響を与えるおそれのある事情裁判所はその場合に判断をして、ちっとも公共福祉に重大な影響を及ぼさぬじゃないかと言われては困りますので、その点については効力規定ではないと申し上げておるのでありまして、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのあるような事情を理由において述べなければならぬことは、これはもちろん要件です。ただ、お前の言うことを見て、ちっとも公共福祉に重大な影響が及ばぬじゃないかというふうに、及ぶか及ばぬかということについて、裁判所において判断権があるというふうには解しない、その意味において、私どもは訓示規定だというふうに申し上げたのであります。公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれある事情を理由として付さなければならぬ、これは要件であることは間違いない。それは現行法においても同じであるというふうに私ども考えておるのであります。逐条説明におけるこの部分がやや妥当を欠きましたために各種の誤解を招きました点は、私どもの責任であると思います。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 配付された資料によりますと、「内閣総理大臣異議陳述に関する資料」ですね。この中の目次三の第十番目ですね。第十番目のものについては、異議の陳述書というのは裁判所に出ていないようですね。こういうものの扱いというものは、一体どういうことになったのですか。公共福祉に重大な影響を及ぼす、そういう理由の明示というものが効力要件だというのであれば、少なくともそれは文書によってちゃんと出すということでなければ、これは常識に反しますね。
  59. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 亀田委員はどういう主張に基づいておっしゃるか知りませんが、私の記憶に残っております限りにおきましては、この内閣総理大臣異議を文書によらず単に口頭で述べたという事実はないと記憶しております。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 これは私の読み違いでしょうか。結局、異議陳述件が裁判所に行かないうちに問題が解決した、そういうことですか、この十番目のやつは。異議の申し立てがあって、そうしてその申し立てに基づいて却下された。この表では、そういうふうに見えるわけですが、そういうわけじゃないのですか。口頭で述べたのかというふうに私は見たわけですが、この十番目の事件というのは、どういうふうになっておるのですか。やはり却下処分していますね。そうして裁判所に対しては、異議の申し立ては決定前にしておることはしておる。しかし、陳述書は出ておらないと書いてあるから、私は疑問を持つわけなんです。それなら口頭か、裁判所に対して総理大臣が電話でもしたのかという疑問を持つわけですね。この表にそう書いてある。したがって、効力要件だとは言いながらも、ともかく総理大臣のほうから何か書いて持ってきたら、それで認める、そういう軽い扱いをしておるのじゃないかという疑問を持つわけなんです。書類すら出ておらないものを、異議の申し立てがあったというふうに認めるなんというのはもってのほかだと思う。法律にはそんな、件数によって出せとは書いてないけれども、それは当然なことでしょう。一々そんなことを書いておる必要はない。
  61. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 先ほど、私の記憶にそういうものはないと申しましたが、亀田委員の御指摘によりますと、明らかに十番目の事件は、特に「本件についての異議陳述書は裁判所に提出されなかった」と書いてありましたので、出されなかったことがあるかと思いますが、その間の事情は、もう少し取り調べた上で……。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 「取り調べた上で」と言ったって、国会はきょうで終わるわけでして、まあ会期延長でもしていただたら、ゆっくりこれはお尋ねできるわけで、継続審議にしてもらいましょうか。委員長のほうでお願いできればいいわけですが、つまりこの点は、効力規定と注意規定と二つに分けますと、何か型が二つしかないようでありますが、しかし、実際の判断においては、非常にルーズにやっているんじゃないかと、たとえば、公共福祉に重大な影響があるという文字さえ書いてあれば、それで正式な異議だと、まあそんな簡単なものでなくても、一応二十行か三十行、適当に、抽象的に書いてある、そういうことなら、それでもういいんだといったような考え方が従来の取り扱いにもあるんじゃないかと思うし、また、この立案者の皆さんにもそういう気持があるんじゃないか、そういうことでは、これは私は死んでしまうと思うんですね。幸い法務大臣は非常に、これはここに書いてあるように、しっかりと書いてもらわなければいかぬのじゃと、こうおっしゃっているから、まあその精神で裁判所のほうもしっかりやっていもらうとうことなら、まあ不承々々だが、これは了解もするわけですが、裁判所のほうはどうですか。
  63. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) この点は、裁判所でいろいろな会同を開きました節にも問題になったところでございますが、やはり具体的に、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示さなければならない、程度は、先ほど申し上げましたように、過去の事件についていろいろあると思いますけれども、大体その線で裁判官の頭は固まっておったんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら、結局、具体的に、公共福祉に重大な影響を及ぼす事情を書いてない場合には、総理大臣異議として取り上げない、そういうふうに理解していいですね。
  65. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) これは、裁判所個々の裁判官の判断に持たなければならないかと思いますが、口頭の異議も許されるということになれば、異議としては一応成立するかもしれませんけれども、ただ、異議としての効力がない。理由が、具体的な事情が示されなくて、理由になっていない。こういうことに理由が示されていない。こういうことになれば、異議としての効力がない、異議として扱わない、こういう扱いになるんではないかと私は考えるわけでございます。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 これは口頭でもよろしいんですか。提案者、どうなんです。
  67. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) この異議の陳述は、これは、法律的には、口頭でももできるという建前であろうと思います。ただ、先ほどから問題になっております三項でございますが、三項は、従来異議の理由を明示しなければならないというふうになっているにかかわらず、抽象的な異議の陳述がなされていたといううらみがございましたので、現行法のそういう欠点を補うために、三項で、訓示規定としまして、できるだけ具体的に書くようにという、そういうことでつけ加えたわけでございますから、現行法にプラスした規定である、こういうつもりでございます。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 それで、具体的に明示すれば、それはやってきて口頭で述べてもいい、総理大臣が直接来ることはないでしょうが、総理大臣の代理として、そうして口頭でしゃべってもいい、そんな解釈が一体出てくるのですか。それは、口頭とか文書とかは、もちろんここに書いてありませんよ。ないけれども、口頭でもいいということは、そんなこと言えますかね。総理大臣が来て口頭というなら、これは面接ですから、私はまだいいと思う、ある場合によっては。そんな文書を作っているひまもない、すぐ、閣議が終わって東京地裁へ走っていかなければならぬといったような場合は、それはそれでもいいかもしれない、具体的な陳述が大臣みずからあれば。だけれども、それ以外は、それはほとんど、もし口頭であるとしたら、それは代理の場合が多いでしょう、代理や電話の場合が。そんなことは当然、この総理大臣異議制度が認められている趣旨からいって、事情を明確にしておかなければならないという必要性からみて、そんな口頭でもいいというようなことは言えないわけでしょう。口頭にこだわるわけじゃないですけれどもね。口頭でもいいというようなものの言い方は、何かこう軽くあしらっているようで、はなはだおもしろくないわけなんです。そんなことが議事録に載ることは、はなはだ私はおもしろくないと思って確かめるわけですが、これは常識じゃないですか。こんな口頭じゃいかぬでしょう。
  69. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 口頭でもよいと申し上げたのは、法律の形式論から言いますと、必ずしも文書による必要はないという解釈になりますということを申し上げましたので、実際上、従来も、口頭で内閣総理大臣の黒磯が述べられたという事例はございませんし、それからまた、おっしゃいますように、この制度趣旨からしても、将来にわたっても、そういう口頭による陳述というなことはないであろうというふうに思われます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 時間的に制約されていますから、できるだけ私も簡潔に大事な点だけ聞いているわけですが、簡潔にお答え願いたいですが、しかし、先ほど局長から、お調べの上でと言われました、この「日本炭鉱労働組合に対する緊急調整処分執行停止事件」ですね。これにおいては、異議の申し立てはあったことは明確なんです。しかし、陳述書が出ておらない。これはおそらく、おれは総理大臣の代理だと言って、知事かだれか知らぬが、出てきたに違いない、こういう事例があるわけなんです。だから、こういうことはいけないというなら、この二十七条において、「内閣総理大臣は、裁判所に対して文書をもって」、こういうふうにしておいてもらいませんといけないと思う。まああなたのほうで、解釈として、ともかくそういう口頭などは認めない解釈だ、こういうことをはっきりおっしゃるならいい。だけれども、そうもおっしゃらない。まあ法文の解釈としては、口頭もあり得るというようなことをおっしゃるのでは、はなはだ私は不適当だと思う。
  71. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) この内閣総理大臣異議陳述に関する資料の二十八ページの十、日本炭鉱労働組合に対する緊急調整処分執行停止事件、これは、かっこしてありますように、「本件についての異議陳述書は裁判書に提出されなかった、」こういうように、これは、一応法務省のほうで用意だけはいたしましたのですけれども、結局は、内閣総理大臣異議は申し立てがなかったということで、ただ参考資料としてここにつけ加えたというだけのことでございます。これは参考資料として、不必要なものまでこの中に、今まで一応作ったものを全部あげただけでございます。これを裁判所に提出したかどうかということと関係がないわけでございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 日本炭鉱の事件では、陳述書が提出されなかったでしょう。そう書いてあるのじゃないですか。そうすると、口頭というようなことは認めないわけですね。  もう一つは、今度の制定では、国会に報告するとなっているでしょう。ということは、総理大臣の行為について国会の批判を受ける、そういうことになるでしょう。そうすれば、当然異議を述べたときの理由というものをその時点においてはっきりしておく必要があるでしょう。そのときはうやむやなことを口頭で言うたり、あるいは異議の内容を適当にばく然と書いておいて、いよいよ国会が近くになって、追及されそうだからというので、適当にまたそのうち考え出して書くというようなことになるでしょう。それでは、国会に対して報告をして、総理大臣のそういう行為についてほんとうの批判を受ける、もし間違っておったら、追及されても仕方がないという建前から言うてもおかしいわけですね。異議の時点においてそのことをはっきりしておく必要がある。今度は国会の報告という点があるから、よけいそうなるわけでしょう。そうなりませんか。
  73. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 実際上は、すべてそういうことになると思います。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 では、そういうわけで、今まで以上に、この規定は、公共福祉に重大な影響を及ぼすという点の具体的な明示と、こういうものが必要なんだというふうにひとつ理解をしておきます。  それからもう一点ですね。二十七条の第六項、「内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、第一項の異議を述べてはならず、」となっているのですが、例の法制審議会の答申案では、「真にやむをえない場合のほか、」こう書いてありますね。なぜこういうふうに多少やわらげるような表現を用いる必要があるのか。例外規定なんですから、そしてどの条文もほとんど答申案どおりの条文化をやっているのです。まあ多少違う点はありますが、しかしこれなどは、実質的に違いないんだというならば、何もそんな形容詞を特にいじくってみる必要がないわけですね。おそらくこれは、行政側から、ここはもうちょっとやわらげてくれといったような要請等もあったんじゃないかと思うのですが、なぜこんな、ことさらにこの答申案と違った形容詞をお使いになるのか、御説明を願いたい。
  75. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) おっしゃるとおり、法制審議会の答申の際には、「真に」という形容詞がついておりました。しかし、これを法文化するにあたりまして考えてみますと、「真にやむをえない」、「やむをえないと」いう言葉自体が、「真に」があってはむしろおかしいと考えまして、無用な修飾語であると考えましたのでありまして、趣旨は同じであります。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 だから、おそらくそれは趣旨は同じだというふうにお答えになるでしょうか、趣旨は同じなら、答申案どおりやったらいい。やはり第三者に与える印象を強めたという感じを持ちます。
  77. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 「真に」をとりましたのは、日本語として、「やむをえない」という概念上、「真に」ということがないほうがいいと思ってとりましたので、行政庁から圧迫を受けたために取ったわけでもありませんし、また、「真に」を取ることによってそういった概念に違いを来たすとは私ども、少しも考えておらぬのであります。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 いやそれは、普通の日本語としては、ほんとうにやむを得ないというのと、やむを後ない場合というのと、非常に違うのじゃないですか。そんなことを、幾ら法律だって、法律の世界の用語は別だなんて、そんなことは成り立ちませんよ。
  79. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) これは、ただいま同長が答弁いたしましたような趣旨でございますが、法制局の審査の段階で、「真にやむをえない」という言葉を、こちらのほうといたしましては、今鶴田先生から御意見がありましたように、やはり置いておいてくれたほうがしろうとわかりがしていいのじゃないか、また、ほんとうの気持が出るのじゃないかということを法制局のほうに言いましたところが、「真にやむをえない」という言葉は、ほかの法律では使っていない、そういう場合でも、法律の用語としては、「やむをえない」という言葉を使うのだということを、ほかの法律の例をあげられまして、そういうふうにすべきだということで、全く技術的な経過をたどってこういうことになったわけでございますから、御了承いただきたいと思います。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 ほかの法律でも使用されている例は、私はあると思うのです。あるはずですよ。絶対ないですか。それは、調べてみたらどうなるかわかりませんが本件は、やはり三権分立という問題、裁判所総理大臣との関係、こういうことでありまして、この関係は日本じゅう一つしかないのです。一つしかないのだから、その一つのことに対し、適切な言葉を使ったってちっとも差しつかえないですよ。日本総理大臣が何人もいるなら別ですが、現象が一つだから、この場合だけは特にしぼっていくということで少しも差しつかえないと思います。はなはだ私は答申案にこういう「真に」という言葉が入っておらなければ、これは了承します。わざわざ入っているものを削る必要がないのじゃないか。しかも、この答申をやるときには、訟務局長だってちゃんと委員で出ているわけです。これはやはり一番いいと思って、そうやったに違いない。それが法案にされる段階で変わっている。この答申の作成者は全部法律家です。
  81. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 「真にやむをえない」という文言が入りましたのは、実は、私が非常に関係が深いのでありまして、法制審議会の最後の段階で、従来まとまりましたものが法制審議会の総会で認められるか認められないかというきわどい段階になりまして、これは経過を申し上げるのでありますが、私と津田調査部長とが日本弁護士連合会のおも立った方のところに参りまして、そしてそれでは内閣総理大臣異議乱用されない担保として、抽象的ではあるが、こういった制約を文言の上に表わした上で総会を通してもらうようにということで、かれこれ協議をいたしました結果、真にやむを得ない場合でなければ述べてはならないということにいたしたらいかがなものでありましょうかと言いましたところが、まあそれは自分はいいと思うが、他の長老にも語ってみようということで、すぐその場で、電話で長老の方に相談をなさいまして、そうしてまた、私のほうでは、杉本参事官がその近くにおったものですから、すぐまた杉本参事官をその場に電話で命び寄せまして、こういうことならいいということになりそうだが、差しつかえないかということで、私どものほうも三人協議をし、また、弁護士会のほうも電話でお打ち合わせの上で、それではよかろうと、その場合に、たまたま「真に」という言葉が入ったのでありますが、私ども、別段「真に」があるからないからということで云々したのではないのでありまして、たまたま「真に」という言葉を使ったものですから、それが入ったのでありまして、さて条文化する段階になりまして、やむを得ないという概念に「真に」があってはおかしいと、こういう注意を法制局から受けました結果、「真に」を削りまして、意味に少しも変らぬという前提で、「真に」を削っただけでありまして、それを削ったことに対して、これが狭く解される、あるいはルーズに解されるというふうには私ども少しも思っておりません。あるいは一般の方には、そういった御疑念をお抱きになるようなことも考えられるかと思いますけれども、それは、私どもから言わせれば、ちょっと言葉は適当を欠きますが、無用の御心配であると申し上げるより、いたし方がないと考えます。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 この制度を存置するかどうかは、法制審議会でも、結局は、これは多数決ですれすれのところで通っているわけなんです。そういう経過もあって、第六項のようなものが出てきておるわけですから、私は、答申案どおりの表現にしてほしかったと思うんですが、結局は、そうすると、この法案どおりの表現であっても、答申案の第六項と意味は少しも変わらない。別にそれよりも弱くしたつもりのものではないと、こういうふうに理解していいですね。
  83. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 全くそのとおりでございます。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 まあその点はその程度にしておきます。  それから、この異議を述べる経路ですね。これは現実にはどういうふうになっておるか、その点の御説明をお願いしたいんです。昭和二十五年の十一月三十日に、次官会議の決定で一応取り扱いの申し合わせができておるようですが、まあだいぶ時間もたっておるわけですが、現状について御説明を願いたいと思います。
  85. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 亀田委員の御指摘の資料に明らかでありますように、その申し合わせ以後におきましては、所管の大開と法務大臣とが連名で内閣総理大臣申請をする、それ以外には異議は述べないという実例を打ち立てまして、自後それを守っております。また、実際上の経過といたしましては、所管の行政庁から私どものほうに異議を述べてもらいたいということを言って参りますと、私どものほうで、はたしてそれが内閣総理大臣異議を述べるに値する事案であるかどうか、真にそういった事情があるのかということをよく審査いたしました上で、内閣総理大臣異議を述べるべきであるということになりますれば、行政庁のほうの側にもその旨連絡いたしまして、今言った双方の大臣の連署のもとに内閣総理大臣申請をする、そして異議陳述書というものを作って、判こをもらうという実際上の経過をたどっております。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、まあ行政庁からそこの主管の大臣に連絡が来る。主管の大臣から法務大臣のほうに相談がある。その後に総理大臣のほうに行くということのようですが、その順序が逆になるようなことはないのですか。つまり、関係行政庁から自治大臣なら自治大臣のところに要請がある。自治大臣総理大臣にそれを要請するる。総理大臣は、よし、わかった、しかし関係があるようだから、法務大臣とも一応相談せいといったような経路をとることはないか。総理大臣のところに行く前にまあ総理大臣自身の行政処分はもちろん別個ですよ。私の今申し上げているのは、それ以外のいろいろな問題がありますわね。そういうものについてのことなんですが、総理大臣のほうへ先に行ってただ形式だけ法務大臣も一応通す、そんなようなことは絶対ないわけですか。
  87. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 従来、私の関係しました限りにおいては、そういうような事例は一件もございません。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 そういう場合にこの法務大臣の扱いですね。これはどうなんでしょうか。法務大臣は、他の行政官庁と多少は違うとは言いながら、しかし、やはり行政官庁総理大臣の管轄下にあるわけですね。  したがって、この法務大臣のところにおける扱いが非常に重要になるわけですが、私の聞きたいのは、比較的やはり裁判所との関係というものは、法務大臣が一番強いわけですね、まあ行政上の組織上の問題などは一応離れて考えて、実質的な面で。そういう点等を活用されて、一応裁判所側の意見等も聞いてみる係争事件のかかっておる裁判所の裁判官の意見という意味じゃないのですよ、私は。最高裁なら最高裁としてのいはゆる――総理大臣のほうは、これは行政権ということで来るわけですからね。だから、こっちのほうはやはり司法権個々の具体的な事件についての立場とは多少違った、広い意味でのそういう立場からの意見の反映というものは、私は必要なんじゃないか。しかしそれが、制度がこういうふうになっておりますから、それをいかにしてそういうふうにするかは、なかなか技術的にむずかしい点があろうと思うのですがしいから、もう全然そういう点は法務大臣の良識でやるのだということでいくのか、そこら辺のところをお聞きしたいと思います。
  89. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 今の亀田委員のおっしゃるような事項は、かりにその事件を担当しております裁判官でないといたしましても事柄は司法行政に関するものでございませんから、裁判長に意見を徴してもおりすせんし、また徴すべきでないと私は考えます。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 徴すべきではないというのは、多少行き過ぎじゃないですかねこの経路が違いますからね。最高裁と行政官庁だから徴しにくいというならわかりますが徴すべきではないというのは、多少これは行き過ぎだ。というのは、本来一方で裁判所が問題を処理している。そこへ総理大臣がのこのこと顔を出してきているわけですから、そのことが問題なのです。どこまで出さしていいのかということだから、それは当然すべての案件について必要はないかもしれませんが、問題によっては、やはり司法という立場からの意見も聞いてみるということは、判断する上において必要だと私は思うのですがね。
  91. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) お言葉を返してたいへん恐縮なんでありますが、こういう制度を作るかどうかについては、それは最高裁の意見を徴しなければならないと思いますが、具体的な事案において最高裁判所意見を徴するということは、司法と行政の混淆であると私は思います。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 それは混淆してしまっているのですよ。この制度が混淆してこの混淆がもうともかく行き過ぎて侵害している、司法の分野を。それはなるべくしたくない、こうおっしゃっているわけでしょう。だから、それならば、運用上一応その意見参考に聞いてみて、そうして法務大臣意見をきめていくということでちっとも差しつかえない。もうこの裁判、まざってしまっているのです。国会まで入っているのでしょう、この問題に。だからこんな問題を、こういう総理大臣報告という制度を設けたために、実際は、この立法府の国会までがこれに巻き込まれることにいつの間にかなってしまっているのです。国会の批判は、この総大理臣から報告書がが出てくる、それに対して批判が超こるわけです。その批判は、総理大臣のやった異議の部分だけの批判だと、それは皆さんはそうおっしゃるかもわかりませんよ。しかし、そんなわけにいかない。批判するということになれば、やはり裁判所停止決定をやったことが一体よかったか悪かったのか。停止決定後における――今度の場合も出せるのですから、どうしても議論はそうなりますよ。そうしなければ、総理大臣がやったことが正しいかどうかということがやっぱりほんとうの批判にならぬでしょう。だから、混淆してしまっているのですよ、実際のことを言うと。そんなに混淆がいやだったら、こんな制度やめたらいい。やめて、あるいは裁判所執行停止が行き過ぎだったというなら、それは学者なりの判例批判ということもあるのだし、または世間の批判というものもあるのだし、そういうものにまかしてですね。たとえばアメリカのように、裁判所はできるだけやはり大統領の面接やったことについてはタッチしないようにしていこうといったような慣行等が自然にできていくということにまかしてもこれはいいわけなんです。だからこれは、もう混同してしまっておるんだが、混淆してしまっているんだが、その混淆してしまっているんだが、その混淆が行き過ぎないようにするには、裁判所意見を法務大臣が非公式に聞いておやりになることは少しもそんな悪いことじゃないと私は思うのですがね。意見を聞いた場合に、それは何らかの現在の制度法規に抵触するとか、そんなことはありますか。共同事業になっていますがね、この問題は、三権の。
  93. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) お言葉を返してまことに恐縮なんでありますが、さような場合に、最高裁判所意見を聞くといたしましても、最高裁は意見を述べる制度が私はないと思います。また、意見を求める窓口さえもないと私は思います。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 意見を述べる窓口がないとおっしゃるけれどもね。そんなことはないでしょう。最高裁のほうは、そのような窓口ないですか。こういう問題について、三権分立、自分の職場が侵害されやせぬかというような問題になるわけですね行き過ぎた異議の申し立てがあったら、やはりそうなりますよ。まあその辺の判断にまかそうという程度なら、それはいいだろうが、総理大臣が、自分がやった、それがはなはだしく不当だから、裁判所が、それはけしからぬと出てきた場合に、それをとめようとする、その場合に、最高裁がだまって見ている、それはおかしいじゃないですか。具体的な係争についての憲法の最後の審判者と、こういうことになっているわけです。係争事件について、一応は例外はありますよ、こういう場合に、一体最高裁は窓口ないですか。事務総長答えて下さい。
  95. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) お尋ねを十分理解できない点もあるのでございますが、お尋ねは、そういう異議を申し立てる場合に、法務省のほうから最高裁のほうに何らかの意見を聞くことになっているかというように伺ったのですが、裁判所と申しましても、御承知のとおりに、各個々の事件を取り扱います裁判所はおのおの独立でございますので、そういう具体的な事件について、かりに法務省のほうから意見を求められましても、これはお答えいたさないだろうと思うのでございます。そういう意味におきましては、裁判所には窓口がないと申し上げていいかと思うのでありますが、ただ、あるいは最高裁の事務総局のそういう行政事件等を行政の面から取り扱っております局にお尋ねがあれば、あるいは何らかの意見を申し上げることができるかと思いますが、それは、そういう意味では窓口はあるかと思いますが、しかし、それは単なる参考に御意見を申し上げるということでありまして、法務省としては、これはそう重視はされないだろうと思うのであります。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁がそんな弱い消極的なことを言うておってどうするのですか。そうすると、法務大臣にお尋ねしますが、そういう最高裁判所ですね。司法側の立場等も自分のほうで考えて、この意見をきめるのだ、こういうふうに理解していいですか。また、聞かぬかもしれんけれども、それはわしのほうでちゃんと研究していくのだ、そういうふうに理解していいのですか。
  97. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) 御質問のような事態に直面した場合の法務大臣の措置といたしましては、従来の判例、慣例、あるいは法律解釈等々を十二分に部内において尽くさなければならぬと思います。そうした場合に、先ほど亀田委員もちょっといみじくもお触れになりましたように、やはり法務大臣としては、良識に従って慎重に事を処理すべきものである、その良識に従って慎重に事を決する場合に、どういうような研究をするか、どういうような勉強をするかということは、これはひとえに法務大臣の責任においてやるべきでありまして、今、法律にこうした行政権司法権との間の関係に微妙な問題のあるこうした問題について、今後これをどう、手続上必ず意見を徴するか徴せぬとかいうようなことは、私といたしましては差し控えるべき問題である、あくまで法務大臣としては、良識に従って、法令、判例、慣例等を十二分に研究をし、事態を十二分に察して、そうして事の決定をいたすべきものと、かようにお答え申し上げたいと思います。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっとこれは資料にあったかもしれませんが、確かめておきますが、従来行政庁のほうから、総理大臣異議の申し立てをしてくれという申し立てがありまして、結局法務大臣との折衝がうまくいかないでだめになったと、要求があったにもかかわらず、それが出せなかったというようなのは、今までに幾つくらいございますか。
  99. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 数を私は覚えておらぬのでありますが、そういう大臣に一々相談申し上げるまでもなく、こんな事件は異議を述べるべきものでないというので、私どものほうでアウトにした事件は相当数ございます。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 いやまあ、あなたのほうでアウトにしたのも含めてだ。大臣の耳に入れたのも入れぬのもあるでしょうが、全体で幾つくらいありますか。まあ一つや二つ違ってもいいですが……。
  101. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) 大臣まで私のほうから上申をして、大臣のほうからいかぬと言われたのは、私の記憶にはございません。私どもの手元でアウトにしたのは十数件あると思います。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 組局異議を述べたのが、この資料によりますと十八。そうすると、半々くらい、まあまあというところですか。  それから、これも井川さんなり、いろいろ御質問がすでにあったと思うのですが、どうしても大臣異議制度を認めるとしても、了承できないのは、停止決定後にはなおかつ異議の申し立てを許す、これはほんとうに、こう例外的な規定という立場から見ると、行き過ぎではないかと思う。事件が持ち上がってくれば、当然行政庁にかるわけですから、裁判所に対して行政庁からその段階で意見が述べれるわけですね。停止決定されちゃ困る、公共福祉立場から見て因るという事情は、その段階でまず述べたらいい。ところが決定された。決定されるおそれがあると見た場合には、総理大臣がそこで乗り出して言うたらいい。そこまでないと思えば、直接当事者となっている行政庁裁判所において主張したらいいわけなんです。ところが、それがどうしても予定どおりいかぬ、総理大臣異議が述べれなかった、述べる機会がなかったということになれば、その決定に対して、またすぐ即時抗告の方法で、上のほうで審理できるわけですね。だからそういう道があるのですから、せめて、まあこの総理大臣異議制度を認めるとしても、現行法では、これはまあ決定前に、異議があれば早う出せと、総理大臣立場異議があるなら、そうなっているわけですわな、現行法では。それをさらに強めて、裁判所が決定してしまった後でも出せると、そうしたら、裁判所はまた、異議が出てきたら、決定したのを今度は取り消すと、そういうふうに、非常に強めておるわけですね。強めるまでの必要は私はないと思うのですが、どうしてこういうことになったのですかね。どうせ前もあとも一緒だというような簡単なことでやられたのじゃたいへん迷惑ですが、どうなんですか。
  103. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) その点につきましては、現行法においても同じなんでありますが、執行停止の決定をする前に裁判所意見を求められますのは、きわめて早急な期日を指定されまして、場合によりましては、電話で、三日以内に意見を述べろという場合さえも実例として私は経験しておるのであります。それでありますから、事柄が中央官庁の所在地である東京地方裁判所におきます場合には、おっしゃるとおり、異議を述べるべき事件ならば、 その裁判所の指定した期間内に総理大臣異議を用意するということも必ずしも不可能ではございません。ただ、遺憾ながら、行政庁日本全国にまたがって散在いたしており、したがって、処分行政庁の所在地におきまして提起されます行政事件訴訟におきまして、裁判所が具体的に指定されました期間中に、期日までに、裁判所に対して内閣総理大臣異議申立書を提出するということが間に合わない事例が往々にしてございます。また、実際上の実情は、申しましたような実情でありますが、もちろん、裁判所が決定後でありますから、そういうことが好ましくないということは言えるかと思いますが、私どもは、事柄の性質上、それは固有の司法事件ではないと考えておりまするので、好ましくはありませんが、決定後において異議を述べることも司法権に対する侵害であるというふうには、私ども理倫的には考えておらぬのであります。したがいまして、今申しましたような実情やむを得ぬ場合も予想されますので決定後にも述べることができるというような制度に実はいたしたのであります。その点が、現行法の最高裁判所解釈結論とは、本法案は多少行き過ぎであるとおっしゃれば、行き過ぎであるかもしれませんが、何分にも、今言いましたような実情から、決定後にも述べなければならぬような必要が起きる場合が、事態が想像されますので、考えられますので、一歩踏み切って進んだということになったのであります。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 その決定後に述べるような場合には、前の決定に対してとりあえず即時抗告をして、その段階で述べていく、そうすると、抗告というものは、当然制度上、前の決定批判段階なのですから、そこヘスムーズに入っていくわけですね。そのほうが自然なんです。即時抗告の段階にこれは総理大臣異議を取り入れていく、もし取り入れるとしても。ところが、決定後にも述べてもいいというやつは、即時抗告の道をとらないで、ともかく決定したものを、横から出てきて、ばちゃんと鈍器でなぐりつけるようなやり方なんですよ、これは。結果においては同じでしょう、即時抗告のところへ持ち込ますのも。
  105. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) お言葉を返してはなはだ恐縮なんでありますが、本法案をお読み下さればわかりますように、この場合の即時抗告には、民訴の即時抗告と違いまして、執行停止効力は持っておりません。ですから、即時抗告の段階で争っていけば事が足るというような事案は、むしろ内閣総理大臣異議を申し述べるのにふさわしくない事件なんでありまして、即時抗告を持っておられないというような場合が、むしろ内閣総理大臣異議を申し述べる必要のある事件に当るのであります。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 即時抗告によって執行が停止しないようになっているわけだが、それはあなた、自分のほうで意見を述べることをうっかりしておったのだから、それは仕方がないですよ。  それから、この規定によりましても、そういう事情が明確になれば、裁判所が早く決定する、即時抗告の決定ということもあり得るわけでしょうし、何かやはりできるだけ、私の言うのは、裁判所の普通のルールの上に載せやっぱりやっていく、そのことが大事じゃないかということを言っている。そんな異例な事柄をみだりに拡張することは、これははなはだおもしろくない。ほかに方法がないと、これしか。今までそんなに不便なことがあったのですか。
  107. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) ちょっと先ほど申しあげるのを一項落としたのでありますが、内閣総理大臣異議申立書を準備する期間が間に合わないという場合のほかに、一たん停止決定があった後にそういった事情が起きる場合も考えられます。それからまた、従来そういった例があったのかとおっしゃいますのに対しましては、私が経験いたしましたのでは、市町村の廃置分合に関する知事の処分が争われまして、執行停止の申し立てがございました。ところが一方、補欠選挙か総選挙のときでありましたかわかりませんが、選挙の期日が差し迫っておりまして、この執行を停止をされたのでは選挙事務が行なえなくなる、実際上行なえなくなるという差し迫った事情がございまして、執行停止に対する内閣総理大臣異議の申し立てをした事案がございます。さような二つの理由から、繰り返して申し上げれば、内閣総理大臣異議の申立書を準備する期間が裁判所の指定期日に間に合わなかったという場合、また、停止決定後にそういった事情が新たに発生するという、二つの場合が考えられますので、今亀田委員のおっしゃるように、即時抗告という方法によって停止決定事案の当、不当を争う道のほかに、事柄がなかなか公共福祉に重大な影響を及ぼす事案を含んでおりますので、そういった道を残しておく必要があると、私ども考えた次第であります。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの程度にこの問題はいたしまして、次に、訴願前置に関する点を若干お聞きしておきます。  結局、私たちの心配しますのは、今回の第八条によりまして従来の訴願前置主義というものを廃止したわけですが、ただし書きの例外がついておる、こういうことになるわけです。このただし書きに関連いたしまして、各省から、おれのこの法律についてはただし書きを適用してくれといったような要求が今回もだいぶあったようです。結局きまったのは、法律としては五十幾つ、こういうことになっておりますが、要求はどれくらいあったんですか。数だけ言って下さい。
  109. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) これは、約二百の法律について訴願前置を設けてくれというような要求がございました。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、それをこう四分の一にしぼった、その努力は非常に私たち多とするものです。しかし、基本的にそういう強大な欲望があるわけですね。これに対して、法律を作るときには、厳密に、いや、それは認めるべきだとか、認めるべきでないとか、こうやりますけれども、案外できてしまうと、いつのまにかぼつぼつ例外がふえていきまして、日ならずというほどまでではないでしょうが、年ならずして、いつのまにか全部復活していたということになりかねないわけです。これに対しては、今後どういうふうにお考えになっているのか。各省の法律を作る場合に、この行政訴訟と審査請求との関係につきまして、必ずこう法務省のほうに連絡されるのだ、こういうふうなことにでもなっているのかどうか、その点を確かめておきたい。
  111. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) ただいま杉本参事官がお答え申し上げましたように、このたびの整理法案を作る段階におきましても、この約二百の法律にわたる行政処分について訴題前置を要望するという行政庁側の熾烈な要求があったわけでございますが、行政庁といえども、この訴願前置の例外に関する基準が三つあって、その三つの基準に当たらなければ前置は認められないのだということは承知をいたしておるのでありまして、ただ、自分のほうのこれこれの処分はこの三つの基準のうちのこれに当たるのだ、これに当たるのだから訴願前置を許してほしい、認めてほしいというふうに言ってくるのでありまして、三つの基準を度外視したような要求は今日までなかった。したがって、今後におきましても、われわれが逐条説明なり提案理由なりで説明しておりますように、三つの基準に該当するかどうかを厳密に審査した上で訴願前置を認めるということになるかと思います。もちろん、この法制の建前といたしましては、私ども、そんな全部の法律立案過程において審査する機関ではございません。事柄は、法制局がそれを守ってくれるかどうかということでありますが、現在おります法制局の職員の間では、今後の立法についても、訴願前置に関する限りは、これはやはり法務省の了解を得なければ訴願前置を認めないことにするということを法制局のほうでも言っておりますので、これは、私どもに関する限りでは、守られておるものと思われますので、これがむやみに例外がふえていくということは、私どもは心配はいたしておりません。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 現在までに訴願等、つまり行政上の不服申し立て方法ですね。そういうことによって国民の権利が救済された、行政赤松まで持っていかないで、そういう統計がありましたら、ちょっと数字だけ聞いておきたい。
  113. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) これは、行政不服審査法のほうにおいて資料として出されるという予定でございまして、こちらのほうは、資料として用意いたしておりませんが、若干部のものは手元にございすので、ごらんいただけると思いますけれども、今この席には持ち合わせておりません。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 私の聞くのは、たとえば、一万件行政不服方法による申請があった、そのうち何パーセントくらい救済されたか、そういう統計があるかということです。
  115. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 今申し上げたように、統計としてはございます。しかし、それは処分によって非常に救済率というのは違うわけでございまして、たとえて申しますと、税法上の処分というようなものになりますと、再調査請求、審査の請求というのがありまして、その再調査請求というのは、確定資料に基づく処分が、最初の段階の課税処分がなされておりませんものですから、それを再調査請求でもって補うというような趣旨も含まれておるわけでございます。そういうものになりますと、救済率は非常に高い。地方税にしましても国税にしましても、そういう審査の請求、広い意味においての審査の請求の段階において救済されるという率は非常に高いわけでございます。しかし、そうでないものにつきましては、そうまで救済率が高くない。いろいろなニァアンスがございまして、率もしたがって違うわけでございます。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 問題によって違うことは想像されるわけですが、大まかなところを聞いておりわけです。
  117. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 今申しました税法上の処分について申しますと、約四割から五割近く救済されておる、こういうように記憶しております。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 そのほかの処分は、農地関係とか、いろいろたくさんあるでしょう。
  119. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 今、計数のことでございまして、ここであまり記憶の確かでないことを申し上げて、かえって間違うおそれがございますので、ちょっとはっきり申し上げられません。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 税金の場合は、絶対税金を納めぬという人はないので、結局金額の差になるわけなんでして、それがどの程度になったらこれは救済されたと見るか見ぬかという、そこら辺のこれは程度の問題です。ところが、それ以外のことに、普通はなかなか救済されていないのですよ、大体において。そういうところに、この行政訴訟と審査請求との関連性の問題があるわけなんでしてね。これは理屈だけでは、私はどっちがいいかということはなかなか判断できないと思うのです。やはり今までは行政庁に持っていったって聞いてくれぬ、こういうところにやはり日本における特殊な事情があるのです、アメリカ等の場合だと、訴願前置は例外でありながら、大いに審査請求のほうが発達しているように聞いているのは、それは、やはりアメリカの行政制度が民主化されていて、なるほどおれは間違っておったと思ったら、みんな直していく、だから、行政訴訟よりもそっちのほうが発進していっているということだろうと思うのです。そういうわけですから、この段階では、やはり審査請求を強制していくような、そういうことはまだまだ私はいけないと思うのです。行政関係がきちっと民主化すれば、それは私は、行政を通してこいというのも、相当なやはり理由があると思うのです。そういう意味で今度は法を改正されたのでしょうから、その例外を大いに乱用されて、原則と例外が反対になってしまうというようなことにならぬように、これはひとつ、法務大臣考え方をちょっと確かめておきたいわけです。
  121. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) 従来のたくさんにありました訴願前置の法制を整理いたしまして、そうしてその整理の際に三つの基準を止めて、先刻来、政府委員または当局から御説明申し上げているような結論に相なりましたので、今後の問題といたしましても、われわれといたしましては、極力この三つの基準というものを厳重に解釈いたしまして、でき得る限り国民の権利の伸張に資するように持って参りたい、かように考えます。もちろん、その過程におきましては、行政庁意見と相当深く折衝しなければならぬ場合も起ころうと思いますけれども、われわれは、この行政訴訟事案を扱います担当の機関といたしまして、この法律の精神を十分今後においても生かして参りたい、かように考える次第であります。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 もう一つ、先ほど局長の答弁の中にあった点ですが、本法案の第八条のただし書きを適用するような法律を作る場合には、必ず法制局は法務省に連絡をする、了解を求めてやる、こういう約束になっておるとおっしゃっておるわけですが、これは、法制局長官を特に呼んで確かめなくても、これははっきりとした約束であるかどうか。この点、大臣から直接お聞きしておきたいと思います。
  123. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) 私のほうの訟務局長と法制局の次長との間で話し合いを遂げた問題だそうでございまして、その点は、法制局の次長としても、おそらく上司に十分伝えてあるものというように承知しておるということでございます。したがって、私といたしましても、適当な、なるべく早い機会に長とも話し合いをいたしまして、その方針が実行されるように努力をいたします。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、次長と局長の間での直接の話し合いのようでありますが、本来ならば、ここで長官なりあるいはその上の責任者に来てもらって、明確にしておくべきこれは実に重大な問題なんですが、時間等の関係もあって、ただいまの大臣の言明というものを信頼して、一応そういうふうに理解をいたしておきます。  それから次に、仮処分の関係について若干お尋ねいたしておきます。新法では、第四十四条で、行政訴訟について仮処分というものを全面的に排除する、こういう規定を置かれたわけでありまするが、私は、これは少し性急過ぎるのではないかという感じを持っているわけです。といいますのは、御承知のように、現行法のもとにおいても、無効確認訴訟のような場合には、仮処分規定の適用の余地がある。こういうことは、たとえば田中二郎さんでもそういう意見を持っております。また、そういう理論に立ったと思われる判例も若干あるわけですね。だから、こういう点は、取消訴訟については、現行法にはああいう具体的な規定があるわけですから、この点はいたし方がないとしても、そのほかの行政事件全部について排除するような規定というものを今設けることは、私は行き過ぎじゃないか、もう少しいろいろな事件についてどうなるかというような点は、学説なり判例の推移というものを見て差しつかえないんじゃいか。こういう四十四条のような規定が置かれますと、どういう必要性が出て参りましても、もう法律上それはせきとめられてしまうわけですね。はなはだこれは、そういう点でおもしろくないと私は思うわけなんです。私も、行政上の仮処分というものはどの程度まで認めるべきかということを今ここで積極的に申し上げているわけじゃない。こういう問題については、ずいぶん関係専門家がやはり頭をひねっている問題ですから、もう少し実際の推移にまかすべきじゃないか、こういう気持を持って見ているわけですが、どうしてこういう四十四条のような規定を置いて、ぴしゃっとふたをされてしまったのか、その点をお聞きしたい。
  125. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) 四十四条の規定というのは、これは現行の行政事件訴訟特例法の十条の七項の規定をここに移しただけでございまして、その趣旨は変わっていないつもりでおります。そこで、なぜ執行停止規定から特に取りはずして、第五章の補則のところに移したかということになると思いますが、これは、現行法の規定の位置が大体がおかしいじゃないかという意見が多うございまして、現行法は、この十条の七項として、仮処分に関する規定の排除の規定を設けておりますけれども、それは、何も本案が行政処分の取消訴訟であるというような問題じゃなくて、行政庁処分については、民事訴訟の仮処分規定を適用しないわけですから、そういうことになりますと、その本案が、行政事件の場合もありますし、民事事件の場合もある。とにかく行政庁処分については仮処分規定を適用しない。そういう趣旨であるとしますならば、これを本法案について申しますと、二十五条のところに引き続いて置くというのは、むしろおかしいわけでございますので、補則のところに移したわけでございます。制度趣旨といたしましては、従来からの趣旨を受け継いでいるわけでございまして、趣旨においては変わりはないというふうに考えます。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、従来の学説、判例は、たとえば現行特例法の第一条、「行政庁の違法な処分の取消」と書いてある。したがって、主としてこれは、何といいますか、取り消し訴訟といったようなことが主たる対象となって考えられておるように私は資料を拝見しておるわけです、したがって、無効確認などの訴訟につきましては、仮処分制度は、これは考えられるというような有力な学説が実際上出ておるわけですね。だから、それを独立の規定としてこういうふりに書かれますと、一切の行政訴訟がこの対象に入って参りまして、現在学説、判例上争っているものまでが非常に無理な形で終止符を打たれる。これは私は行政権をかばい過ぎると思うのです。現に本案の審議の過程でも明確になりましたように、たとえば義務づけ訴訟の問題、こういう問題も、今後の学説、判例――現在は少数説であっても、それがどんどん認められていくことを何も本法案の第三条が否定するものじゃないと、こう言うておるわけですね。それならば、義務づけ訴訟に関連して仮処分というものはよけいこれは出てくる可能性はあるわけなんです。民事訴訟法の規定でいう完全な意味での仮処分規定の適用が妥当かどうかということは、これは私は問題があろうと思う。ありましても、その事柄によっては本案として義務づけ訴訟を認めるのであれば、その三分の一なり五分の一程度の要求であれば仮処分として認めていいじゃないかというような問題というものは私は出てくると思う。そんなものが全部排除されるような印象を与えるから、私は、どうも行き過ぎだ、こういう感じがするわけですが、そういうことにこういう条文ができますとなるじゃないですか。現在の規定が、非常に中途半端な格好で十条の七項あたりにちょこんと入っているもんですから、学者でも、実務家でも、軽くこれを見まして、そうしてあと理論で補っていっておるのが現状ですね。その定説のない問題について、この段階で私は行政庁側に味方したような規定をばしっと置くことははなはだ行き過ぎだと思うんですが、どうしても。これは局長どうですか。一方で義務づけ訴訟を認めると言っているのだから、行き過ぎでしょう。
  127. 浜本一夫

    政府委員浜本一夫君) もちろん、亀田委員のおっしゃるように、現在のわが国の段階におきましても、公法上の仮処分制度を認めるべきだという意見もございます。ございますが、私どもは自分の意見でこういった条文を置いたんじゃございませんので、数年間法制審議会の段階で得た結論法案化いたしたのでありまして、ともあれ現在の段階を基準にいたしますならば、やはり公法上の仮処分は認めないほうがいいという意見が多かったのでございまして、勢い、こういった四十四条のような規定を、どこに置くかは別にいたしまして、設けなければならぬことに相なったのであります。また、今後そういった公法上の仮処分も認めるべきだという意見が強くなり、それが支配的になる、また裁判所の段階でもそういった判例が優位を占めてくるようになりますれば、あるいは一部改正というような形でもって改正をしなければならぬ時代が来るかもしれませんが、現在の段階では、ともあれこういった法案を作らなければならぬような答申を得たわけです。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの点は、非常に私は問題だと思うのです。最近のアメリカなり西独等の法律などをざっと読みましても、権利の救済のために必要があれば、もちろん大統領の権限等に入り込んでいくことは別といたしまして、必要なことは認めて、いったらいいじゃないか。あんまり行政とか司法とかやかましく言わない。権利侵害ということが問題じゃないか。私はこれは英米法の非常にすぐれた点だと思うのですよ、着眼点としては。ドイツのような行政優位のかちかちのところでも、占領されてからの影響かもしれませんが、やはりそういう考え方が非常に強くなってきているわけですね。そういう際に、四十四条のような規定ははなはだ不適当――将来そういうものの必要性が出てくれば一部改正の必要もあるかもしれないとおっしゃるわけですが、そういう自信のないものなら、これはもう少し自然の成り行きにまかすということであるべきじゃなかったかと考えるわけです。  もう一つ簡単にやっておきましょう。この第九条「原告適格」のところに、「法律上の利益を有する者」という表現があるわけです。それから三十六条、これは「無効等確認の訴え」のところでありますが、ここにも「法律上の利益を有する者」と、こういう表現が使われております。これは、私は従来の概念としてはその辺のところが一応正しいのかとも思いますが、しかし、法律上の利益とまでははっきり言えないかもしれないが、非常な迷惑を受けていて、行政権の行使について黙って見ておるわけにはいかない。実際上いろんな影響を受ける。これは私人間の争い、その点に私は特徴があると思うのです、一つは。だから、そういう単なる事実上の不利益といったようなことじゃなしに、その中間にあるようなもの、そうしてそれをほうっておくのがやはり気の毒だと思われるようなものについては、この法律の利益というものの解釈裁判所が広く解釈していけばある程度救われるかもしれませんが、立法としてももう少し工夫していいのじゃないか。本法は、行政権立場に立った特殊性というものを相当織り込んできている。ところが、権利を侵害される者の立場において、そういう特殊な事情というものは、私人間と違ってまた予想できるわけですね。だから、そういうものについては、やはり訴える権利を認めるというふうなことが立法上必要ではないか。法律上の利益であるかどうかといったふうなことをあまり厳格に言わないで、ともかく行政権の行使によって迷惑を受けた方は訴えてこい、アメリカ法などは非常に平たくそういう考え方で書いておりますわね。あまりこれはルーズな規定もいかぬでしょうが、旧来の非帯に狭い概念である「法律上の利益を有する者」といったような表現だけに限る必要はないのじゃないか、もう少し広くすべきじゃないかというふうに考えるのですが、これはどうです。
  129. 杉本良吉

    説明員杉本良吉君) この第九条の「原告適格」の規定でございますが、これは本来から言うならば、訴えの利益があるかどうか、法律上の利益があるかどうかというような点につきましては、これは立法的に解決すべきことじゃないと思っておるわけでございます。これは裁判所個々の具体的な事案について判断すべき事柄でございますから、こういう規定というのは元来設けないほうがむしろいいというふうにも言えると思いますが、ただこの法律案では、あとのほうに出て参りますように、民衆訴訟であるとか、機関訴訟というような、法律が認めた場合にだけ原告適格がある、こういう建前をとっておりまする訴訟につきまして規定を設けておりますので、いわゆる普通の取り消し訴訟というものはそういうものじゃないということを反面から言うために、ここで原告適格の規定を特に設ける、これが一つのこの規定を設けます理由でございますが、もう一つの理由は、このカッコの中にありますように、「処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。」と、これを実ははっきりと書きたかったわけでございます。と申しますのは、このカッコの中につきましては、これは従来の裁判所の多数の見解によりますと、むしろこれは訴えの利益はない。たとえて申しますと、議員が懲戒処分を受けた、あるいは除名処分を受けたというような場合に、その除名処分取り消し訴訟と提起している、その附にその当該議員の任期が過ぎてしまったという場合におきましては、もはやその任期満了によってその当該議員は地位を失うことになりますから、裁判所がそれを取り消すという実益はなくなるわけでございます。そういうことから、従来の多くの判決例では、そういう場合にはもはや訴えの利益はないということで却下もしくは棄却しているのが普通でございますけれども、しかし、そうなりますと、その除名処分が違法であることによって、その受けた損害を救済されなければならぬという、そういう権利が残っている場合につきましての救済がもうできなくなるおそれがありますので、それで、そういう場合を救済するために、このカッコの中で、法律上の利益ということを拡大すると申しますか、はっきりさしたと申しますか、そういう必要性からこういう規定を設けることになったわけであります。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 だから、ただいまの御答弁からもわかりますように、「法律上の利益」というのは、非常に狭くやはり解釈されておるわけですよ。そういう点で、実際文句のある人がぽんぽんはねられるということは不親切だと――利益を害せられておるのに、それが法律上か、法律上でないかというのは、そんなに大きな問題じゃないですよ。法律家にとっては問題かもしれません。だから、お前の言うておることは筋が通らぬというなら、最終的にこれはけったらいいので、入口においてお前はいかなる資格を持っているかということをそんなにやかましく言うのはよろしくないと思うのですね。行政事件においては、私は特にその点はやはり大事だと思います。これも真してほしい点ですが、しかしどういうふうに直すかということになると、なかなか問題でしょうが、まあ裁判所のほうでは、だからそういう、実際の事情というものを考えて、あまり法律上というようなことにやはりとらわれぬようにして、実際の権利救済に親切にやはり運用をしてもらうといいのですが、大体裁判所というのは不便なところで、事務総長がそうだからと言うてそうなるわけでもないし、はなはだそこら辺が困るわけですが……、まあこの程度にしておきましょう。一週間分の質問を二、三時間でやったものですから、たいへん私も不如意でありまして、心残りがするわけですが、最後に法務大臣に一点だけ確かめておきます。  ともかく、今回の法律改正、新しい法案の形でこう出ておるわけですが、現在現行法がこれは不十分だということで、新しい装いをもって出てきたわけですが、現行法は、戦前の行政裁判制度というものをもう根本から変えて、そうして行政行為による権利の侵害、これに対して司法審査をやっていく、こういう制度が戦後確立したわけなんですね。行政権でやっておって、行政権同士でごちゃごちゃ内輪で適当なことをやっておることは許さぬ、これは非常にやはり大事な精神というものがここで確立された。私はこの意義というものはきわめて大きいと思うのですね。現行法について、ごちゃごちゃと、あそこが抜けている、ここが文字がおかしいとか言いますけれども、その点を私はやはり見のがしてはならぬし、そうして今後ともその点はしっかりとしたやはり一つの大きな柱として守っていくべきだと思う。まあ枝葉末節のところを議論しておりますと、いろいろ分かれますが、そういう点では私は少しも提案者とも意見が違わぬのではないかと思うのですが、ただ具体的に現われた改正点が必ずしもそうはなっておらぬと思ったものだから、いろいろ聞いておるわけですが、そのこまかいところは抜きにして、戦後確立された行政行為に対する司法審査という、この大精神ですね、これは決して変わらぬのだ、今後もこれは堅持していくのだ、この点ははっきり大臣のほうで言明できるかどうか、この点をひとつ最後にお伺いしたいと思います。
  131. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御指摘の点は、同様に、私もそれを理想として進むべきものと考えております。
  132. 井川伊平

    井川伊平君 この際、法制局長にただ一点だけお伺いいたしておきますが、ただいま衆議院の内閣委員会におきまして、行政不服審査法関係の法案が審議されておりますが、内閣委員会におきましては、本日その審議が完了するとは見通しのつかない関係にあるように考えられますが、さような場合において、当委員会におきましてただいま審議中の本法案を先に成立せしめることは、これは何か実害があるかないか、この点を確かめておきたいと思います。
  133. 斎藤朔郎

    法制局長斎藤朔郎君) ただいま衆議院の内閣委員会におきまして、行政不服審査法案と、その施行に伴う関係法律整理等に関する法律案が審議中でございます。当委員会におきましては、行政事件訴訟法案とその施行に伴う関係法律の整理に関する法律案が付託されております関係にあるわけでございますが、同じ条文を二段がまえで改正すること、すなわち、甲の法律案関係法律を改正し、それから乙の法律案で同一の関係法規の改正をする場合に、第一次の甲法律案による改正の結果を受けて、乙の法律案においては第二次の改正をしておる。こういう関係に立つ法律案が同一国会に提出されることは、例は少なくないのでございますが、多くの場合においては甲法律案、乙法律案両方とも同時に成立いたしておりますか、あるいは第一次的の改正法律が先に成立して、第二次的の改正法律あとを追っかけて成立する、こういう形になっておるのでございまして、さような場合においては問題は起こらないのでございますが、行政不服審査法関係と行政事件訴訟法関係との条文の整理の仕方を見ますと、本委員会に付託されておりますほうの改正は第二次的のものでございまして、第一次的の改正は衆議院の内閣委員会に継続しておるものでございますので、そのほうが――先ほども井川委員がおっしゃいましたように、衆議院にかかっておるほうの第一次的の改正法律案が今どうなるか見通しがわからぬという場合に、第二次的の改正法律案であります本委員会に付託されております二法案を先にあげて法制上差しつかえないかということでございますが、かような関係に立つ二つの法律案の前後して成立いたしましたとき、すなわち、第二次的の法律案が先に成立して公布されてしまい、そして次の国会以後において第一次的の改正法律あとで成立して公布される、こういう場合になった場合に、はたしてその二つの法律案のねらっておる改正が実行できるかどうかということになりますと、これはいろいろの場合がございまして、本委員会に付託されております行政事件訴訟関係と、衆議院内閣委員会の行政不服審査法関係だけについて申しますと、幸いにしてこれは関係法律すべて施行期日が本年の十月一日というだいぶ先になっておりまして、しかも十月一日までには本院議員の通常選挙が行なわれるわけでございまして、通常選挙が行なわれますれば、国会法二条の三の二項の規定によりまして、新議員の任期の始まります七月八日から三十日以内に臨時国会を召集しなければならぬということは、国会法によって義務づけられておるわけでございますが、その通常選挙後の臨時国会は、第一のねらいとしては本院の構成をきめるということにあるわけでございますけれども、国会の権限としては、臨時国会でありましても、通常国会でありましても、変わりはないのでございますから、その臨時国会において必要な法案の審議ということはなされるわけでございますから、現在衆議院内閣委員会にかかっております行政不服審査関係の法案が、継続審査になりますか、あるいは審議未了になりますか、私にもわかりませんけれども、おそらくは、継続審査になりますれば、その次の臨時国会で審議せられましょうし、審議未了になれば、次の臨時国会でもう一度同一の法律案が再提出されることとなりましょうから、いずれにいたしましても、七月下旬から始まる臨時国会において行政審査法関係の二法案の運命をわれわれは見きわめることができるのでありますから、もし次の臨時国会で行政不服審査法関係の二法案が成立すれば、この本院に付託になっております二つの法案が先に成立して公布されておりましても、その施行期日が本年の十月一日でございますから、その十月一日に四法案すべて足をそろえさえすれば、改正は順調に行なわれるわけでございます。もし不幸にして次の臨時国会でも行政不服審査法関係の二つの法律が成立しそうもないという見通しが確実になりますれば、そのときには、すでに公布されております――おそらく、すでに公布されておりますというのは、きょう本院でこの二法案が成立いたしますれば、すでに公布されておる状態になっておりますものですから、その次の臨時国会で行政不服審査法関係の法案が成立の見込みがないという見通しに立てば、そのときになって行政事件訴訟法関係の二法案施行期日に手当を加えるという方法をとりさえすればいいのでございますから、本日の段階において、本院に付託されておりますこの二法案を、行政不服審査法の関係を考えずに成立なされましても、それは法制上支障はないと存じます。これはすでに、先ほどから何度も申しておりますように、臨時国会が召集を義務づけられておるので、その際に関連法案の運命もきめて、それによって、手当をしていけばいいという機会があることが確実であるという特殊事情によるわけでございますが、私の説明をもう少し敷衍いたしまする意味で、先国会にやはりこういう同じような関係の起こりましたことがございまして、それは……。
  134. 井川伊平

    井川伊平君 その程度でけっこうです。
  135. 斎藤朔郎

    法制局長斎藤朔郎君) それでは、先国会の例はやめるといたしまして、ただいま申し上げましたような関係でございますから、本委員会で議決になりましても、法制上支障は起こることはない、こういうことでございます。
  136. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御質疑はございませんか。――なければ、両案に対する質疑は終局したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより討論に入ります。両案について御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  138. 青田源太郎

    青田源太郎君 私は、自由民主党を代表して、両法案に対し賛成の意を表するものであります。  すでに、法案は、現行行政事件訴訟特例法を全面的に改正し、行政事件訴訟手続を統一、一般法として立案されたもので、現在の学説、判例で認められた最大限を盛り込んだ点、また不統一多岐にわたる各種行政法規との関係も整理統一した点において、現行法より数段進歩した立法と認められますので、法案成立後、行政事件訴訟の円滑な運営は今後の判例等の健全なる発展に待つこととし、この際、すみやかに法案を成立させ、国民の権利の伸張並びに行政の運営に寄与することが緊要と存ずるのであります。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました行政事件訴訟法案(以下本法案という)外一件につき、反対するものであります。  本法案は、現在の行政事件訴訟特例法(以下、単に現行法という)にとってかわるものであります。私たちも、現行法が決して完全なものでないことを認めるのでありますが、しかし、現行法は、戦前の行政裁判制度を根本的に改め、行政権による侵害に対し国民の権利を擁護するために果たした役割は非常に大きいのであります。したがって、たとえ現行法を改めるとしても、その特徴は十分これを保持しながら改正作業を行なうべきであります。しかるに、本法案は必ずしもそのようなはっきりした態度をとっていないのであり、かえって反対に、行政権のために国民の権利を抑制する方向すら示している点があるのであります。以下、そのおもな点につき、具体的に論及してみたいと思うのであります。第一に、現行法の総理大臣異議制度を存続しようとしている点であります。本法案の二十五条によると、行政処分によって法律上の利益を侵害された者が、その取り消しを求めて訴えを提起しても、行政処分の効力、処分の執行等は当然には停止しないのであります。しかし、そのままに放置したのでは、提訴者に取り返しのつかぬ事態になると思われる場合には、一定の要件のもとに、裁判所は行政処分の効力、処分の執行等を一時停止することができるとしておるのであります。ところが、本法案二十七条によると、内閣総理大臣公共福祉に重大な影響ありと考える場合、この執行停止に対し異議を述べることを許しておるのであり、その異議が出ると、裁判所はそれに拘束されて、執行停止することができず、また、すでに執行停止しておるときは、それを取り消さねばならぬことになるのであります。元来、二十五条によって執行停止するにあたっても、行政庁意見を述べる機会を与えられており、裁判所公共福祉という点も考慮しながら決定するのであります。しかも、裁判所の決定に対しては、即時抗告の道も開かれておるのであって、行政庁といえども、この裁判のルールに従って主張すべきものであります。しかるに、二十七条のごとき規定を置き、有無を言わさず裁判を拘束することは、全く筋違いでありまして、このような制度を存続することは、三権分立の国政の基本的秩序を乱るものであります。元来、このような制度は、世界中どこにも見られないものであります。行政権優位の戦前の日本の行政裁判制度にすらなかったものであります。このような制度が現行法に導入されたのは、戦後の特殊事情によるものでありまして、当時、日本側で立案いたしました行政事件訴訟特例法案は数種ありましたが、そのいずれにもこの制度は入っておりません。ところが、昭和二十三年二月に入り、国会提出を前に、その法案について日本側とGHQとの間で意見交換が行なわれたのでありますが、その際、GHQ側からこの制度を強く持ち出されたのであります。GHQは、裁判所判断で占領政策が妨害されることをおそれたのであります。日本側は、司法権に対する侵害になるとして強く反対し、何回も交渉した結果、らちがあかずに、ついに押し切られてしまったのであります。現行法を改正するとするならば、そのような経過で生まれたこの制度こそ、まっ先に廃止すべきであると考えます。しかるに、本法案は、この異例とも言うべき制度を存続するばかりでなく、ある点では、たとえば裁判所の決定後にも総理大臣異議を出し得る点等では、一そうその制度を強化しておるのでありまして、はなはだしく不当と言わねばなりません。  次に問題になるのは、行政訴訟と行政上の審査請求との関係であります。御承知のとおり、現行法は原則として訴願前置主義をとっております。すなわち、訴願など、行政庁に対する不服申し立ての方法が、ある場合には、その方法を用いた後でなければ行政訴訟を提起できないとしておるのであります。しかしながら、行政権偏重のわが国の実際に徴するに、訴願などの方法で国民の権利が救済されたことは少ないのであり、そこで、本法案は、第八条において、行政上の審査請求と行政訴訟とを同時並行的に起工してもよし、あるいはいずれを先にし、あるいはいずれか一つ方法のみをとってもよいとし、国民の自由としたのであります。行政庁が国民の不服申し立てを謙虚に聞いてくれれば、国民は何を好んで費用をかけて行政訴訟の道を選びましょうか。国民がいずれの道を選ぶかは、今後の行政庁のあり方一つにかかっておると言わねばなりません。ところが、これに対し、第八条第一項ただし書きは、本法以外の法律で例外規定を設けて、まず審査請求することを義務づけ得る旨、規定したのであります。これでは、せっかくの改正も台なしになってしまうおそれがあるのであります。すでに本法案とともに審議されておる行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案によって、五十数個の法律について例外を認めておるのであります。今後、各行政庁が自己の所管の法律についてそのような例外規定を設けようと努力するであろうことは、今回の第八条ただし書きに関する関係官庁間の交渉を振り返ってみても予想されるのであります。政府は例外が今後ふえないよう努力する旨、答えており、われわれもその努力を期待するのでありますが、しかし、各行政庁の執拗な圧力が、結局第八条の原則と例外をひっくり返してしまうおそれが消えておらないのであります。元来、現行法の訴願前置主義の原則も、総理大臣異議制度と同様に、GHQの要求で成立したものであることは、当時の資料によって明白なのでありまして、今回の改正を機会に、せっかく訴願前置主義の廃止の方針をとりながら、この例外規定を設けたことは、はなはだ遺憾であると言わなければなりません。  第三点は、本法案第三条の表現方法であります。提案者は、第三条は、抗告訴訟を同条の第二項ないし第五項のものに限定する意味でなく、それ以外の訴訟、たとえば義務づけ訴訟処分権不存在確認訴訟などについても、将来の学説、判例によって、是認されるものは同条の第一項にすべて含まれる旨、述べておるのであります。もし、そのような意味であるならば、第三条第一項は、「この法律において抗告訴訟とは、次のものをいう」とし、新たに第六項を設け、「その他行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」というふうに規定したほうが、はるかに明確であります。このことは、決して単なる表規方法の差異として軽く見ることができないのであります。すなわち、たとえば、いわゆる義務づけ訴訟について見まするに、世界の立法の傾向は、これを是認する方向にあるのでありまして、わが国においてこそ、現在は少数説でありましても、必ず学説、判例が漸次その方向に向かうものと期待できるのであります。ところで、本法案が、この機会に、そのような新しい訴訟の発達に対して、積極的に前向きの姿勢を示すかどうかということは、今後の学説、判例の動向にも影響するものと考えられるのでありまして、もし提案者の説明のごとくであるならば、私たちが提案したように明確に書いておくことが一番時宜に適しているのではないかと考えるのであります。  次に、第四点として、民事訴訟の仮処分制度を全面的に排除したことは少し軽率ではないかと考えるのであります。  すなわち、現行法のもとにおいても、たとえば確認訴訟につきましては、民事訴訟の仮処分規定を用いる余地がありとする有力な学説もありまするし、少数ながら判例も存在するのであります。しかるに、本法案は、第四十四条においてはっきり、一切の行政訴訟につき民事訴訟の仮処分制度を排除したことは、少し行き過ぎであると言わねばなりません。このようなことは、もう少し学説、判例の実際の推移を見守るべきではなかったかと考えられるのであります。ことに、提案者の説明によっても、理論的には、将来義務づけ訴訟などを排除していないのでありますから、それらの各種の訴訟と関連いたしまして、仮処分に関する民事訴訟規定が働く余地も予想されるのであります。そういう段階で、その途中で、事前に、一切の行政訴訟について仮処分の道を遮断したことは、はなはだ遺憾であると考えるのであります。  以上、要するに提案者は、説明としては、本法案は、戦後確立されました行政に対する司法審査の制度の根幹を変えるものではない旨述べているのでありますが、しかし、本法案を具体的に検討いたしますると、国民の権利擁護よりも、行政の便宜に重きを置こうとしておる点が見られるわけでありまして、その点、はなはだ遺憾であります。社会党は、こういう立場から、国民の権利を擁護するためにという立場から、本件二法案反対するものであります。
  140. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御意見もないようでございますが、両案に対する討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  行政事件訴訟法案並びに行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の両案を一括して問題に供します。  両案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  142. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 多数でございます。よって両案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   ―――――――――――――
  144. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  先般理事会において、今期国会における当委員会の審査及び調査の成果をもととし、特に重点と思われる問題について、政府及び裁判所当局に対し決議を行なったらどうかとの御意見があり、協議を重ねて参りましたが、この際、これらの点について委員各位に御協議を申し上げたいと存じます。速記を中止して。   〔速記中止〕
  145. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 速記を始めて。  ただいま御協議願った結果、交通事件の処理に関する件、裁判所書記官代行制度運営に関する件及び裁判所職員臨時措置法に基づく公平委員会の運用に関する件の三件について協議を行なうことに御意見が一致し、文案を決定いたしました。この際、文案を提案者から御朗読願います。
  146. 井川伊平

    井川伊平君 私は、交通事件の処理に関する決議につきまして、案文並びにその理由を説明いたしたいと存じます。まず、案文を先に朗読いたします。   政府並びに裁判所当局は、大都市における道路交通事件の激増に鑑み、速かに現行制度に再検討を加えると共に裁判官、検察官及びその他の関係職員の増員並びに之に伴う諸施設の整備を図り、事件処理の適正迅速の要請に対処すること。  右決議する。  以上であります。理由を簡単に説明いたしますと、近時大都市における交通量の激増に伴い、交通事犯も、とみに増加の一途をたどりつつありますことは、すでに御承知のとおりであります。しかるに、これらの事件の処理に当たる人的機構、物的施設は著しく手不足、狭隘を告げ、きわめて遺憾の状態にあります。そこで、この種激増する交通事犯を迅速適正に処理するため、早急に裁判官、検察官その他の関係職員の増員並びに所要施設の拡張整備をはかる必要を認め、この決議案を提案するに至った次第であります。以上。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 私は、決議案を二つ提案をいたします。  まず、裁判所職員臨時措置法に基づく公平委員会の運用に関する決議を朗読いたします。   裁判所当局は、裁判所職員臨時措置法に基づく公平委員会の特質に鑑み、公正を期するため、この委員会の構成並びに運用に特段の配慮をすること。  右決議する。  理由につきましては、すでに関係法案の審議の際に十分私たち意見も述べましたので、ここでは省略をいたします。裁判所といたしましても、最近は、非常にこの問題については公正を期するべく努力をされておることは、質疑の過程等においても明らかになったわけでありまするが、何分にもこの制度そのものが、他の行政官庁の職員の場合と変わった特質を持っておるわけでありまして、それに対する特殊立法がなさるべくしてなされておらない。そういう不自然な状態等にもありまするので、今後一そう運用面でひとつ公正を期するよう努力をしてもらいたい、こういう意味で、この決議案を提案したわけであります。次は、    裁判所書記官代行制度運営に関する決議   政府及び裁判所当局は、代行書記官及び代行調査官が現に担当しつつある事務の質、量に鑑み、これらの者の勤労意慾、業務能率の向上を図るため可及的速かに左記事項の実現に努力すること。  一、書記官及び調査官の増員並びに之に伴う諸施設の整備を図ること。  二、現行の代行書記官及び代行調査制度は現在暫定的制度として規定されているが、之をなるべく早い機会に本来在るべきかたちに改めること。  右決議する。  若干御説明いたしますと、裁判官の不足という問題は、非常に大きな問題になっておりまして、今国会におきましても、臨時司法制度調査会設置法というものまでそのために置かれるというふうに、世間の注目を浴びておるわけでありますが、しかし、裁判所の仕事は、裁判官だけではいけないわけでありまして、それと一体となって仕事をしていただく書記官、調査官、こういう方々の充実がやはりそれに伴わなければいけないわけでありまして、そういう点が、私たちの基本的な問題として考えておる点であります。  いろいろこまかい点につきましては、関係法律あるいは今国会における国政調査に関連していろいろ質疑もし、意見等も述べた中で、おおよそ問題点が出ておるわけでありまするから、あらためてここで指摘をすることは省略いたします。ただ、例の代行書記官、代行調査官の問題、これは、はなはだ不自然な格好でいまだに残っておるわけでありまするが、これは、来年度の予算におきましては、ぜひとも全部こういうものがなくなるように、ひとつ努力をしてもらいたい。われわれ法務委員としても、その努力はしなければならないと思いますが、遠からず来年度の予算折衝等も始まるわけでありまして、今度こそ、ひとつ十分この点について努力をしてほしい。もちろん、昨年は相当努力をされ、成果もあがっておることでありまするが、それ以上のひとつ努力を要請したいという意味で、この決議案を出した次第であります。
  148. 松野孝一

    委員長松野孝一君) お諮りいたします。  ただいま提出されました交通事件の処理に関する決議案、裁判所書記官代行制度運営に関する決議案及び裁判所職員臨時措置法に基づく公平委員会運営に関する決議案の三決議案を、いずれも本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、ただいまの三決議に対する当局側の所信を聴取いたします。
  150. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) ただいま御決議になりました三つの決議につきましては、政府の直接担当いたしまする部分はもちろんのこと、政府の間接的にいろいろ関係を持つ部分もございますが、こうした点につきましては、政府当局といたしまして、御決議の趣旨を体し、今後も万全の努力をいたしたい、かように考える次第でございます。
  151. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 裁判所としての意見を申し上げます。  関係法律規定に従いまして、また、ただいまの本委員会の御決議の趣旨にかんがみまして、適正なる司法行政の運営に努力する所存でございます。
  152. 高田なほ子

    高田なほ子君 今、三つの決議案が上程せられて、政府当局の明確な御問答をいただいたことに深く謝意を表するものです。  この席で申し上げることについて、どうかと考えておりましたが、本国会もきょうで最終日であります。私は、法務委員として議席を占めている間に、足かけ七年の長きにわたって皆さんにお世話になりました。法務委員として、一番私の重点を置いて考えてきましたことは、やはり青少年問題でありました。青少年をめぐる諸問題について、政府当局としても、十分のお考えを持ってこられたわけでありますが、従来青少年問題については、予算の面では、必ずしもその処置が十分ではないという姿が従来続いているわけです。私は、この席から議員として政府に御要望申し上げるのは、おそらくきょうでおしまいであろうと思いますので、特に、政府当局におかれて、青少年問題をめぐる諸問題については、特段の予算措置を講ぜられて、どうかわが国の青少年問題が世界の水準に達するまでに特段の御努力を願いたいということを強く御要望申し上げたいと思うのです。  いろいろ理事等との連絡若干不備でありましたために、最終段階に、この種の問題が決議としてあげられなかったことについて、はなはだ私として心残りと思いますので、この点、政府に御要望申し上げて、政府当局の御見解を御表明いただき、また、委員各位におかれましては、実に長い間いろいろ御支援、御指導下さいましたことに、つつつしんでお礼を申し上げるとともに、この国会で青少年の問題を取り上げるという委員会は、当委員会以外にはないのです。どうぞひとつ、この点もお含み下さいまして、今後の御検討をお願い申し上げながら、政府の強い御熱意を要望する次第です。
  153. 植木庚子郎

    ○国務大臣植木庚子郎君) ただいまの高田委員の青少年問題についての烈々たる御発言の趣旨、全く同感でございまして、深く敬意を表します。私といたしましては、青少年問題のゆるがせにすべからざることをつとに考えておりまして、できるだけの努力をいたしましたが、なお不十分のために御希望に沿い得なかったことをお詫び申し上げますとともに、今後この問題に努力すべく、実はいろいろ研究を始めております。もちろん、青少年問題は、法務省だけではできない広範囲の、各省に関係を持つものでありますから、それぞれ関係の筋にお話も寄り寄り進めるつもりでおりますが、私自身の法務省所管といたしましては、すでに新年度から、この問題について、事務当局の間で特別なる会合を持ちまして、三十八年度以降といわず、年度内からも、でき得る限りひとつ、この問題の解決の曙光でも見出すべく努力をいたしているという次第でございますから、何とぞ今後とも一そうの御鞭撻をお願い申し上げたいと思います。   ―――――――――――――
  154. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、請願の審査を行ないます。  本委員会に付託されております請願第八七号外二百六十二件の請願を一括議題といたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  155. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 速記を始めて。  それでは、暫時休憩いたします。    午後三時四十五分休憩    ――――・――――    午後三時五十三分開会
  156. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまより法務委員会を再開いたします。  ただいま理事会において協議の結果、請願第八七号ほか四十三件の裁判所法附則第三項改正に関する請願請願第一七〇〇号浦和家庭裁判所独立に関する請願請願第二〇五三号鹿児島県西之表市に鹿児島地方裁判所支部等設置請願請願第二〇五一号東京法務局足立出張所移転反対に関する請願請願第二〇五二号東京法務局江戸川出張所移転拡張に関する請願、以上四十四件は採択したらいかがかということに話がまとまりましたが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、ただいま採択されました四十八件の請願の報告書については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   ―――――――――――――
  159. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 次に、継続調査要求についてお諮りいたします。  検察及び裁判の運営に関する調査は、従来より調査を続けて参りましたが、会期も切迫し、会期中に調査を完了することは困難でありますので、本院規則第五十三条により、継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の内容及びその手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  次回は、五月八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会