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政府委員(浜本一夫君)
行政事件訴訟法の施行に伴う
関係法律の
整理等に関する
法律案について、逐条説明を申し上げたいと思います。
本日議題になっております
行政事件訴訟法の施行に伴う
関係法律の
整理等に関する
法律案についですでにその提案理由の説明がございましたので、以下さらにそれを敷秘して御説明申し上げます。
初めにお断わりいたしておきたいと存じますが、本整理法案は、数多くの行政法規を諸種の角度から
改正し、さらにこれを法案としての形式を整えるため各省別に配列いたしております
関係上、これを逐条的に条文の順序で説明いたしますと、
改正理由の説明が重複して、わずらわしいばかりでなく、かえってその趣旨が明確を欠くことになるおそれがございますので、
改正趣旨の種類に応じてこれを提案理由の説明にありましたように四分類いたしまして、その種類別に
改正条項を取り上げ、それについての説明をいたすことにさせてい
ただきたいと存じます。
まず第一に、現行の各秘行政法規における訴訟に関する
規定について、
行政事件訴訟法案の趣旨にのっとり、それとの関連における所要の整備をいたしておりますが、これにつきましては、さらにその
内容を四つに分けて御説明申し上げます。
その一は、独占禁止法、公職選挙法等における訴訟に関する
規定に所要の
改正を加えております。すなわち、まず第三条の独占禁止法の
改正におきましては、同法第八十二条第二項が
裁判所に審決の違法のほかに当、不当についての判断権またはその変更権を与えているかのように
規定していますのは、
裁判の性格にかんがみ適当でないと考えられますので、これを削除するとともに、これに伴って、同法第八十三条中の字句を整理いたしております。
次に、第七条の土地調整
委員会設置法の
改正におきましては、同法第五十五条及び第五十六条の
規定を改め、
委員会は、申請を認容した裁定を取り消す判決が確定したときは、判決の趣旨に従い、あらためて申請に対する裁定をしなければならないとしておりますが、この趣旨は、かような、実質証拠の有無が
裁判所の判断の対象となるものにつきましては、
取り消し判決の拘束力が
行政事件訴訟法案第三十三条第三項の
規定だけでは明らかでないばかりでなく、従来、この点については、
解釈上疑義があったところでもありますので、特にこれを明らかにすることにいたしたものであります。なお現行の同法第五十五条第一項を削りましたのは
先ほど申し上げました独占禁止法第八十二条第二項を削除したのと同趣旨でありますし、さらに第五十三条第三項を改めましたのは独占禁止法の建前と同様に新証拠の取り調べの必要があるときは、
裁判所は、
事件を
委員会に差し戻すこととするためのものであります。
次に、第十五条の弁護士法の
改正におきましては、同法第十六条または第六十二条の
規定が処分の違法または不当を理由として訴えを提起することができるといたしておりますうち、当、不当を理由とする点は先に申し上げましたように不適当でありますので、これを削るとともに、所要の字句の整理をいたしております。
次に、第四十三条の性病予防法の
改正は、同法第二十五条を
行政事件訴訟法案第三条の
規定に応じてその表現を改めましたもので、その実質には変更はございません。
次に、第百四条の労働組合法の
改正におきましては、同法第二十七条第八項の
規定の趣旨が
行政事件訴訟法案第十条第二項との関連において従来以上に明確を欠くことになりますので、これを削除いたしまして、そのかわりに新たに使用者は、中央労働
委員会に再審査の
申し立てをしたときは、その中し立てに対する中央労働
委員会の命令に対してのみ、
取り消しの訴えを提起することができるといたしますとともに、この訴えについて
行政事件訴訟法案第十二条第三項の
規定の適用がない旨を念のため明らかにすることにいたしております。また、同法同条第十一項の
規定につきましては、従来から
解釈上の疑義が少なくありませんでしたので、この際、この訴えに準用または適用される
規定の範囲を明確にいたすことにしたものであります。
次に、第百十八条の地方自治法の
改正におきましては、同法第七十四条の二における署名の効力を争う訴訟については、その性質上これを専属管轄とするのを適当といたしますので、その旨の
規定を置くとともに、この訴訟についての
行政事件訴訟法案の
規定の適用
関係を明確にする
規定を置くことといたしております。
次に、第百二十一条の公職選挙法の
改正におきましては、まず同法第二百十九条の選挙訴訟または当選訴訟に関する訴訟法規の適用について、
行政事件訴訟法案第、五条及び第四十三条との関連において、
規定の整備をいたすことといたし、同法案の諸
規定の準用において、この種訴訟の迅速処理の必要から関連
請求の併合等を所要の場合以外は制限し、また、この訴訟の性質上準用するのを不適当とする
規定を除外することといたしております。また、このような訴訟法規の適用についての
規定の整備は、第二十四条の選挙人名簿に関する赤松についても同様の趣旨に基づきこれを行なっております。次に同法第三十四条、第二百三条、第二百四条、第二百七条及び代二百八条の訴訟における被告適格についての
規定が不備、不統一でありましたのを改め、いずれも選挙管理
委員会または中央選挙管理会とすることに統一し、また、第二十四条の選挙人名簿に関する訴訟の管轄を専属管轄とするのを適当と考え、その旨の
規定を設けることといたしております。
その二は、第十九条における国の
利害に
関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する
法律を一部
改正いたしました点であります。その
改正点の
一つは、同法第五条に一項を加え、下級行政庁が当事者または参加人となる訴訟についてその上級行政庁の職員を指定代理人となし得る道を開いた点でありまして、これは、
行政事件訴訟法案がその第十条第二項に
規定しておりますように、いわゆる原処分中心主義を採用いたし、下級行政庁を当事者または参加人とする訴訟の増大が予想されますので、現行租税法規のとっている建前を一般化して、これに対処することとしたものであります。第二の
改正点は、同法第七条として一条を新たに加え、地方公共団体その他政令で定める公法人の事務に関する訴訟について、これら公法人の求めがあるときは、法務大臣においてその所部の職員を指定代理人とすることができることにいたした点でありますが、このうち地方公共団体の事務に関する訴訟につきましては、地方自治の本旨を考慮しこれとの調整をはかった
規定を置くことといたしております。なお、
現行法規におきましては、各種公法人の訴訟につき法務大臣が監督する旨の
規定が多々ございますが、これらの訴訟につきましては右第二点の
改正によりまかなうことといたし、法務大臣の監督
規定は削除することといたしました。第八条、第二十三条、第三十三条、第四十六条、第五十七条、第八十二条、第八十三条、第百十六条、第百二十二条による
改正がそれであります。なお、現行の職業安定法第六十条の
規定も不要の
規定でありますので、第百七条による
改正でこれを削除いたしております。
次にその三は、
取り消し訴訟の出訴
期間に関する特別
規定を整備いたした点であります。この出訴
期間が短期に過ぎることは望ましくありませんので、第十五条、第四十二条、第百二十四条における弁護士法等の
改正により短期の出訴
期間を調整いたし、また、
取り消し訴訟についての特別の出訴
期間が
現行法上不変
期間であるかどうか必ずしも明確でありませんので、第三条、第七条、第六十七条、第百四条、第百二十四条における諸法規の
改正により、これを不変
期間とすることを明らかにいたしております。
次にその四は、現行諸法規における訴訟に関する
規定のうち不必要なものを整理することにした点であります。まず、河川法等若干の法規におきましては、旧行政
裁判所時代の訴訟に関する
規定が未整理のまま
現行法として残存し、そのため
解釈上無用の疑義を生じておりましたので、第百十条ないし第百十二条、第百十五条における
改正によりこれらの
規定を削除することといたしております。また、行政処分に対し
裁判所に出訴することができる旨の
規定を置いている法規が少なくありませんが、これは当然のことを
規定しているにすぎませんので基本法たる行政
事件訴訟についての
法律が整備されるこの際、これら不要の
規定を第五条、第六条、第二十条、第二十一条、第二十九条、三十条、第九十四条等における
改正により削除いたすこととしております。さらにまた独占禁止法、海難審判法においては執行停止に関する
規定を特に設けておりますが、
行政事件訴訟法案において、執行停止
制度が整備されることになっているのに関連して、不必要なばかりでなく、かえって疑義の生ずる余地を残すこともなりますので、第三条、第九十七条における
改正によりこれを削除いたすことにしております。
次に
改正項目の第二といたしまして、特定の処分につき訴願を前置する
規定を設けることにいたしました点について申し上げます。この趣旨並びにその選定基準につきましては、すでに提案理由の説明において明らかにされたところでございますが、さらに若干これを敷衍して御説明いたしますと、
現行法上訴願ができる処分は、訴願法によるものと特別法によるものとをあわせて、約三百に達する
法律に
規定されており、また、行政不服審査法案によりさらに広く概括的に認められることとなるわけでありますが、その中から特に訴願を前置する必要のある処分に限ってこれを前置する
規定を置くこととし、その選定にあたりましては、提案理由の説明にありました三つの基準に照らし、これに合致するもののみを認める方針のもとに各種行政法規に
規定されています処分をしさいに
検討し、その結果、五十数個の
法律のみを取り上げることといたし、さらにこれらの
法律において
規定される処分についても、できるだけ特定の処分に限定してこれを認めることといたした次第であります。これを本
法律案の条文別に申し上げますと、第一条ないし第三条、第九条、第十二、第十二条、第十六条ないし第十八条、第二十二条、第二十七、二十八条、第三十二条、第三十四、三十五条、第三十七条、第三十九条、第四十七条ないし第五十五条、第五十九、六十条、第六十二条、第六十七、六十八条、第七十条ないし第七十四条、第七十八条ないし第八十一条、第九十二条、第百二条、第百五、第百六条、第百八条、第百十条、第百十七条ないし第百十九条、第百二十三条、第百二十五条による
改正でありまして、これを選定基準との比較において申し上げますと、大量的処分としては、恩給法、生活保護法、健康保険法、農地法、鉱業法、地方税法等が、専門技術的処分としては核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する律法、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する
法律、
外国為替及び
外国貿易管理法、外資に関する
法律、計量法等がこれに当たり、さらに第三者的機関によって裁決がなされる処分としては、犯罪者予防更生法、関税法、文化財保護法、道路運送法、建築基準法、国家公務員法等がこれに当たるものと考えたわけでございます。
次に
改正項目の第三として、各種行政法規に
規定する処分のうち若干のものについて、いわゆる裁決主義を
規定いたすことにしております。
行政事件訴訟法案第十条第二項は、
取り消し訴訟において原処分の
取り消しの訴えをもって本則とする建前をとっておりますが、特定の処分につきましては、その処分の性質、裁決の
手続及び性質等を勘案いたしますと、原処分でなく訴願の裁決のみを訴訟の対象とするのを適当とするものがあるわけでありまして、
現行法上も海難審判法、特許法、土地調整
委員会設置法等において、その趣旨の
規定が見受けられるのであります。本
法律案におきましても、かような見地から諸種の
法律に
規定する処分を
検討し、
現行法の
規定するもののほかにも、若干のものについては、その性質上、裁決主義をとることを適当と認め、その旨の
規定を置くことといたしております。その一は、農産物、船舶、計器等が所定の基準に合致するかどうか等の技術的検査におきましては、検査についての不服
申し立てに対して行なわれる再検査の結果のみを訴訟で争うこととするのが妥当と考えられますので、第二十四条、第二十五条、第六十一条、第六十三条、第六十九条、第七十二条、第八十五条においてその旨の
改正を行ない、また、その二として、土地改良法におけるように訴願の裁決が実質的には最終処分に当たると考えられるものにつき属しても、これのみを争うこととするのが妥当でございますので、第四十二、第五十八条、第百二十三条による
改正によりその旨の
規定を置くことといたしました。
改正項目の第四といたしまして、各種行政法規における損失補償の額等を争う訴訟についての
規定を整備いたしております。これらの訴訟につきましては、土地収用法、特許法等最近の
立法にかかるものでは、起業者等実質上の当事者を被告とする旨を定め、当事者訴訟といたしておりますが数多くの行政法規においては、いまだに行政庁か損失補償の額等を決定する旨の
規定をされているのみでありまして、そのためこれを争いますには、当該決定をした行政庁を被告とする抗告訴訟の形式によらざるを得ないこととなるわけであります。しかしそれでは、額そのものが直接に判決で決定されないため、これを争う国民にとって不便である、はかりでなく、その争訟の性質にも適合しないと思われますので、
行政事件訴訟法案により当事者訴訟の
規定が整備されるこの際、それらの損失補償等の額についての行政庁の決定を争う訴訟は、これをすべて当事者訴訟といたすことにしたのであります。本法案における第二十六条、第三十六条、第三十九条ないし第四十一条、第四十四、四十五条、第五十六条、第五十九条、第六十一条、第六十四条ないし第六十六条、第七十三条、第八十四条、第八十六条ないし第八十九条、第九十五、九十六条、第九十八条、第百一条、第百十一条ないし第百十五条による
改正がそれであります。また、これらの訴訟についての出訴
期間の
規定が不備、不統一でありますので、第九、第十条、第九十六条、第九十八条による
改正により新たに出訴
期間を定め、また、第三十八条、第七十三条、第七十五条ないし第八十条、第九十三条、第九十九条、第百一条、第百九条による
改正によりあまりに短い出訴
期間を適当な
期間に延長するとともに、第三十九、四十条、第九十二条による
改正によりあまりに長い出訴
期間はこれを適当の
期間に短縮することといたしました。なお、補償額の決定につき行政上の不服の
申し立てを許し、これに対する決定が実質的な処分と認められますものについては不服の
申し立てに対する決定に対して当事者訴訟を認めるのが適当でございますので、第九条ないし第十一条による
改正によりその旨の
規定を設けることといたしており、また、補償額について行政庁の決定を介在させることの、要がないものについて、第三十一条により所要の
改正を行なっております。
以上が本
法律案における本則の大要でございますが、これまで言及いたしませんでした第四条、第十四条、第九十、第九十一条、第百条、第百三条、第百二十条による
改正は、いずれも単に
行政事件訴訟法案または本
法律案の他の
規定との関連等における字句の修正または準用条文の変動による整理をいたしておるものにすぎません。
最後に、附則について、申し上げます。
附則第一項は、本法案の施行期日につき、
行政事件訴訟法案と同様、今年十月一日から施行いたすことにしております。附則第二項は、経過措置に関する一般
原則を
規定したものでありまして、通常の例にならったものであります。附則第一三項は、本則においてすでに申し上げましたように新たに若干の処分について裁決主義を採用いたしましたが、本法施行の際現に係属している原処分についての訴訟については、なお、従前の例によることにいたしたのであります。附則第四項は、本則において若干の
裁判管轄といたしましたので、本法施行の際現に係属している訴訟については、なお、従前の例によることとして無用の混乱を防ぐことといたしております、附則第五項は、本法案で
取り消し訴訟及び当事者訴訟の出訴
期間を整備いたしておりますが、中には出訴
期間を短縮したものが若干ありますので、本法施行前の処分についてのかかる出訴
期間は、なお、従前の例によることとし、逆に出訴
期間を延長したものについては、本法施行前の処分で本法施行の際その出訴
期間が満了していないものについては本
改正法を適用いたすこととしております。附則第六項は、すでに申し上げましたように、損失補償の額等を不服とする訴訟について新たに出訴
期間を定めたものがありますので、本法施行前の処分についての出訴
期間を本法施行の口から起算いたすこととしたものであります。附則第七項は、本法案において損失補償の額等を不服とする訴訟を当事者訴訟といたしたものが数多くございますが、本法施行の際抗告訴訟として係属いたしておるものについては引き続き従前の例によるといたしますとともに、当事者の便宜をおもんぱかって当該訴訟を当事者訴訟に変更する道を開いたものであります。附則第八項は、右の訴えの変更につき所要の
規定を準用いたすことにしております。附則第九項は、本法案で公職選挙法における訴訟に関する
規定を
改正いたしておりますが、同一の選挙等については、同一の
法律が適用されるのが望ましいわけでございますので、
改正規定は、その施行後に行なわれる選挙等についてのみ適用することといたしたわけであります。
以上、簡単でありますが、本法案の説明を終わります。説明の不十分な点につきましては、御指摘により補足申し上げたいと存じます。