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説明員(
竹内寿平君)
最高裁判所事務当局から
資料として当
委員会に提出してござます「
交通事件の
迅速処理に関する
簡易共用書式(いわゆる「
交通切符」)(仮称)」と称するものと、それからそれの「採用による
交通事件の
処理手続要綱案」というものが出ておるわけでありますが、それをごらんいただきますと、大体この
制度の運用の仕方、ねらいというようなものが簡明に書いてあるわけでございます。そこで、その
内容につきまして御
説明を申し上げる前に、なぜこういう
制度をとる必要があるというふうに私
どもが
考えるに至ったかということをちょっと申し上げまして、御参考に供したいと思うのでございます。
御
承知のように、
交通事件は非常に近年増加して参りました。その数は、
裁判所の全
受理事件、
検察庁の全
受理事件を見ましても、非常に大きなウエートを占めているのでございます。それで、
交通違反の
事件でございますが、
日本は
年間交通事故によって死亡します者が非常に多いのでございまして、こういう
人身事故並びに大きな
物件事故を伴いますこの
交通違反というものを減少し、ないし食いとめていくということには、どうしたらいいかということでございますが、これにつきましては、いろいろ
考え方がございまして、ただいま取り締まっております
取り締まりが少し手ぬるいのではないか、もう少し
程度の高い
取り締まりを実施する必要があるのではないかというのが
警察取締当局のお
考えでございます。私
どもも、
外国の
例等に徴しまして、そういう
考え方に実は賛意を表しておるのでございます。しかしながら、この
取り締まりを強化いたしまして、
事件の送致を受けましても、現在の
検察庁の
処理能力、さらには
裁判所の
処理能力というようなものを
考えてみますると、今の
取り締まりを若干強化しますことは、
全国的に見ますと、必ずしも受け入れが不十分だというのではございませんが、
大都市等におきましては、これ以上強化いたしますと、なかなかさばききれないという現況でございます。そこで、
検察におきましては、
相当なものを放任せざるを得ないような
状況になっているのだということから、何とかその放任されているものにつきましても処罰的な制裁を加えて、そして
取り締まりの実をあげる必要があるというような
考えになりまして、いろいろ実は案を
考えておったのでございますが、そのこまかい案は申し上げなくても、すでに
新聞等で御
承知のことと思いますが、それらの案には一長一短ございまして、なかなか
理想案に近いものができにくかったのでございますが、幸い、昨年来、私
どもの
手元におきましても、このような
状態に対処するために、特に
外国、と申しましても、
アメリカの
交通切符制度というようなものを
研究して参っておりまして、この
アメリカの
交通切符制産をそのまま
日本に適用しますことは、
裁判組織等の
関係から申しまして、
アメリカのとおりには参らないのでございますし、また、
交通事情、
道路事情等も、
日本と
アメリカとは違うのでございまして、これに何がしかの
修正を加えまして、
日本に適用できるものかどうかというようなことを実は
研究して参ったのでございますが、今言ったような情勢が、本年の二月から三月にかけまして、機運が熟して参りましたので、三者で話し合いまして、
相当な
修正と申しますか、補正をいたしまして、
アメリカのいいところを
日本の
制度に乗せて運用するというような線で実は話し合いました次第でございまして、その
結論と申しますものは、実はまだ最終的には出ておりませんが、大体は三者の間で
意見の一致しております案としまして、お
手元に配付しましたかりのものができたのでございます。
この案の骨子をなしておりますのは、
手続の面におきまして、
迅速化、
合理化がはかられ、
実体面におきましても公正な、しかも
実質的な
危険防止の観点から危険なる
行為を取り上げて類型化して、その処罰の実をあげていくということにあるのでございます。そしてその最も長所と申しますものは、従来取り扱って参りました
やり方、この
やり方について、法規の改正をせずして、この
切符制を採用することによって、今のような
目的を果たす
方法、こういうことになるのでございますが、
現行の
手続によりますと、これは大ざっぱな
見込み計算でございますけれ
ども、大体現在の
検察官が現場で
違反を摘発いたしまして、それから
裁判所で
裁判を受けて、一応
手続が終了してしまうという時間を、それぞれの役所で占めております割合をずっと合計して
計算してみますると、約四時間くらいかかる。それに待ち時間その他を加えますので、
相当関係者も取り調べのために時間を空費するわけでございまするのみならず、またそのために
相当、たとえば墨田の
交通裁判所のごときものは、一日に二千六百人から三千人というような日もありまして、
裁判所というよりも、何か雑踏のちまたといったような
感じのするような
状態でございますが、これらも、
一つは
手続が長いことと、待ち時間が長いこと、
事件が多くなってきているというようなことから生じている現象でございます。それをずっと今の
手続だけで時間を割り出してみますと、約四時間くらいかかると思うのでございますが、これをもし
切符制度に移しましてやりますと、
警察、
検察、
裁判の各段階において時間が非常に省略されて参りますのでおそらくは四十分から五十分の範囲内で済む。
つまり四時間が一時間以内に圧縮されるというようなことになりまして、この時間だけから
受理件数を多くすることができるというふうには参らぬと思いますが、少なくともこの
手続が円滑に運用されまするならば、今の
受理件数がかりに二倍になりましても、
現行のままで一応
検察庁も
裁判所も受け入れ態勢を整えていくことができるのじゃないかというふうに
考える次第でございます。
もう一回、先にちょっと触れました点でございますが、
取り締まりが弱いのではないかという、その疑念の点でございますけれ
ども、はたしてこの
取り締まりが強くなれば
事故は少なくなっていくかどうかということは科学的に必ずしも明確ではないのでございますけれ
ども、
アメリカにおける二、三十年の歴史を持っておるこの
切符制度でございますが、この
アメリカにおける実績を学問的に
研究しましたいろいろな文献がございますのでありますが、それらの
研究の結果によりますと、
取り締まり指数という
考え方がございまして、危険なる
違反行為を実際に起こる
事故で割りますと、たとえば百の
取り締まりをしたのに対して
事故が十ありますと、その割りました十という数字が出ますが、これが
取り締まり指数でございまして、この
取り締まり指数が、
事故を減らしていくにはどのくらい
指数が上がっていくのがいいかという
研究があるわけでございまして、それによりますと、十五ないし二十五くらいの
指数になりますと、
事故は減少の傾向を示してくるというようなことが科学的に立証されておるようでございまして、この
考え方は、
アメリカでは一般に
承認されておる
考え方のようでございます。先ほど申したように、
交通事情が違いますので、
日本でそのままの
指数がすぐ
取り締まりの最も適当なものとはならないと思いますが、
日本の現状についてこれを見ますると、大体この
取り締まり指数は七から十前後ではなかろうかというふうに思うのでございまして、今の
アメリカの
計算によりますと、もう倍から三倍くらいまで
取り締まりをいたしませんと、
交通事故を減少させるということは言い得ないのではないかというふうなことも一応
資料といたしまして
考えられるわけでございまして、そういうことを根拠といたしまして、今のような
制度に踏み切って参った次第でございます。近く、明日でございますか、
あとは少年の
交通違反をこの
切符制にどういうふうに乗せていくかというようなことが、三者の間で協議をいたしまして、
結論を得る
予定でございます。大体大綱におきましては三者一致しております。その
結論を得ましたならば、これを
一つのモデル・フォームといたしまして、実施いたします庁に示し、それぞれの庁で、地元の
警察、
検察庁、
裁判所、
家庭裁判所等で話し合いまして、これをできるだけ近い機会から実施に移して参りたいというふうに
考えておるのでございます。
もし御
質問がございましたらば、係の者からもなお
内容につきまして御
説明を申し上げます。