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政府委員(関之君) お答えいたします。少し講釈みたいになりますが、
公安調査庁の
発足当初からの
業務内容の発展の概況と、そして最後のお尋ねのいろいろの個々の
問題点があるが、その解決の仕方についての今日まで私どもがいたしてきたことの要旨を御
説明申し上げたいと思います。
公安調査庁は御
承知のとおり、破壊活動防止法というただ
一つの
法律に基づきましてそれを実施する役所でございます。それで、破壊活動防止法におきましては、中心に暴力主義的破壊活動という、これは
刑法の規定でございまして、内乱であるとかあるいは政治
目的の騒擾とか殺人とか、そういう
刑法の概念を借りてきまして、破壊活動というものを規定しているわけです。これが第四条に規定してあるわけです。その破壊活動をなす可能性のある
団体を一応
調査しているわけです。そしてその
団体が破壊活動を一回いたして、さらに継続または反復してこれを行なう危険性が認められる場合、こういうふうに認められる場合、これを別の公安審査
委員会に提示いたしまして、そして判断を求める、こういうところでありまして、
公安調査庁の仕事はその事前の
段階、すなわち破壊的な容疑の
団体を
調べる、こういうのが
公安調査庁の責任であるわけであります。そこで、暴力主義的破壊活動でありますが、これは非常に概念がコンクリートになっておりまして、今申し上げたようにすべて
刑法の規定を借りてきごておりますので、かつての治安維持法のような工合に無限にこれが拡張乱用されるというようなことは
考えられないと由しましようか、そういうことがないようにという工夫のもとに
刑法の規定を借りて規定しているわけであります。そこで、そういうような態勢のもとにスタートいたしましたときには、全体で一千七百二十一人の職員がいたわけであります。その中で
調査官は一千三百十二人というのが
調査官、
あとは
事務官でございます。
調査官としてでなければ
調査ができない、こういうことになっておりまして、一千三百十二人ばかりの者が全国の各府県に
地方公安調査局ないし
公安調査局がございまして、それが総計五十ございまして、それが各地においてその
調査の仕事をいたす、
破防法に命ぜられたる業務を遂行して参ったわけであります。
さて、そこで業務を、遂行いたして参りまして、しからば
破防法のものさしから見まして当たる
団体があるかないかということでございましたが、今日までのところ、一応諸般のその
団体の行動あるいは綱領等に基づくその
意見の主張から、そしてその具体的な現実的な行動から見まして、大まかにいたしまして、左のほうが五つ、右のほうが五つというものが一応
破防法の線において
調べをいたしておる、こういうことになるのであります。左のほうは、これは
日本共産党を初めといたしまして、在日朝鮮人総連合、そうして全学連と称する全
日本学生自治総連合、
日本社会主義学生同盟、これは社学同、それから共産主義同盟、これは共同、こういうものの今日までの十年間における現実的な行動というもの、これは
破防法上一応破壊的な容疑の
団体として
調べているのが現状であります。それから右のほうでございますが、これはやはり五つございまして、大
日本愛国党とか、あるいは治安確立同志会その他三つばかりの
団体を右のほうの破壊的容疑のあるものとして
調べておるのでございます。さてそこで問題は、これらの
団体の
調べ方になるわけでありまして、
調査の
調べる
目的は、これらの
団体を
破防法上から見て、かりに
委員会に提訴した場合にどういうことが問題になるかということを一応頭の中に入れまして、そうしてその
団体の危険的なる行動を中心として
調べるわけであります。それは
団体の組織性あるいは構成員、
団体の構成員の行為というようなことを
調べていくことに相なるわけであります。それは規制の場合の効果ということが、どういうような
法律上のちょっとこれはむずかしい問題になりますが、そういう点も考慮いたして、そういうふうな組織性あるいは構成員の構成員性というような点を中心としてその
団体の活動全体を見ていくということに相なるわけであります。
さてそういうふうにいたしまして、左五つ、右五つの
団体を今日まで
調べておりまして、したがって、それ以外の
団体につきましては、私どもがここで
調査をするということは毛頭
考えていないわけであります。ただ、ここで申し上げておきたいのは、右のほうの
団体でございますが、これは最近の情勢から見まして、この五つのほかにいろいろのものがございまして、深く注意をしなければならない、こういう
意味において実は注意をいたしておるわけでありますが、私どもといたしましては、明確にそういうものが認められるもの以外については、
破防法上の
調査をしてはならないように、これは
破防法の
国会審議の際における
国会の当時のいろいろな
意見から見ましても、乱用してはならない、あるいはこれをもって
国民の基本的人権を侵害したりあるいは労働
組合その他の行為に介入してはならないということが二条、三条の規定に、
調査の指針ないしは規制の基本の指針として掲げられておりまして、すでにそういうことを中心として全然
関係のない
団体には御迷惑のかからぬようにということを中心として
考えてきているわけであります。ところが、ここで問題になりますのは、たとえば
日本共産党というものが空中にあるというわけではございませんで、それは現実の社会現象としてあり、また、党員が各種大衆
団体の中に入って、しかもそこで党の勢力を拡大強化せんとしているのが事実なのであります。さてそこで、それらとどういうふうに、全然
関係のない
団体に御迷惑をかけずにうまく
調べていくかという問題がしたがって法の運用において私どもが最も苦心しているところであります。それで、今日まで実は
調査を進めて参りまして、これは
破防法上の
調査という点から見て、なるほど初めのころは手なれないこともありまして、いろいろ
調査官にも
法律の
趣旨がわからずに、何でもかんでも
団体は
調べればいいのだという気持を持っていた者もなかったではないようであります。まあ当初からその点を非常に心配をいたしまして、局のような小さい
公安調査庁は役所でございますが、
研修所を作っていただいたわけであります。まあそういう心配があるから、よくそこで職員に
研修訓練を与えるようにという立法のときの御
趣旨で、小さい役所でございますが、
研修所を作っていただきまして、そこでまず
法律の
趣旨、
調査権の限界、
範囲ということにつきまして繰り返し繰り返し
研修し、勉強し、そうしてまたそのときどきに起きましたいろいろの
事件を取り上げて
訓練をし、
研修をいたして参ったのであります。それで二、三申し上げますと、たとえて申しますと、
一般の
共産党を調へるのに関連して、たとえば
関係のない
組合の情報という問題に関連いたしますが、ある
調査官が、
共産党の情報もくれ、
組合の情報もくれといったときに問題があって、いろいろ
調べてみるとそういうことがわかりました。そういうことはわが庁に関する事項ではないからそういうことはいけない、こういたしまして、正当な処分と申しましょうか、まあ処置をとってその職員の責任をとったことがあるわけであります。その他いろいろのケース、ケースごとに御迷惑のかからないようにという
趣旨から、いろいろ
紛争の、
事件が起こりましたらそれを通じて正しい姿に
調査権がいくようにということを注意いたしている次第でございます。それで
調査官全体がただいまお尋ねの、人間形成の観点から見て、まあ何でもかんでもごしょごしょやって、そうして短兵急に片づけてそうして敵を射るのも何とも思わずに全部やってしまえというような気持になって、そうして権限を振り回してえらい御迷惑をかけるというような方向にいきはしないか。問題々々を夫解決に残しておいてそうしてそれが積み重なっていってある種の悪い風習が
調査官の
調査の仕方あるいは仕振りに積み重なっていってしまわないかという御心配でございますが、実は私どももなれっこになってそういうことになるのを非常に実は心配いたしているのでありまして、今申し上げたように、いやしくも二条、三条の精神に反するような問題につきましては厳格な処置をとってやる、そうしてまた、こういうものはこの
範囲はよろしいのだ、この
範囲はいけないということを個々の事例に即して
研修所で研究をさせ、そうしてこれを
一般調査官に通知いたしているわけであります。ここまではいけない、ここまでは大体よい、ここまではよかろうというふうにいたしておるわけであります。それで、どうも仕事の
内容が
一般的にスパイであるとかいうふうに新聞には呼ばれておるようなことに関連いたしておりまして、なかなかその問題がむずかしい実は問題でございまして、今申し上げたように、対象
団体だけを正確にねらって、その他に迷惑がかからぬという一線は、率直に申しまして私がここで全責任をもって間違いなく実施されるとも私は実は申し上げかねるわけでございまするが、むずかしい問題でございますが、私どもの意のあるところは実は今申し上げたような苦心をいたしておる次第でございまして、いろいろだだいまも高知のほうの問題がございまして、山本
委員さんからいろいろお尋ねを受けておりまするが、そういう問題もそういう過程における
一つの問題としまして、十分に
検討をいたしてあやまちなきを期したい、こういうふうに
考えておる次第でございます。