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1962-04-26 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十六日(木曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   委員の異動 四月二十四日委員亀田得治辞任につ き、その補欠として田中一君を議長に おいて指名した。 四月二十五日委員田中一辞任につ き、その補欠として野溝勝君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            荒木正三郎君            永末 英一君            市川 房枝君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            岡崎 真一君            高橋  衞君            林屋亀次郎君            堀  末治君            山本 米治君            木村禧八郎君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            原島 宏治君            大竹平八郎君            須藤 五郎君   國務大臣    大 蔵 大 臣 水田三喜男君   政府委員    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    中小企業庁長官 大堀  弘君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    大蔵省主計局主    計官      高柳 忠夫君    大蔵省理財局資    金課長     鈴木 喜治君    農林省農地局参    事官      堀  直治君    中小企業庁振興    部長      加藤 悌次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○財政法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。  財政法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと整理して伺いますが、この二十九条の改正が問題になった発端は、三十五年の補正予算自然増収産投会計繰り入れるということであったわけですね。それが発端であるわけですね。そこで、あのときいろいろ財政法で問題になったのですが、そこでこの法律を、この改正案とそれから改正しない場合と、産投に関連して起こった問題の解釈にどういう違いが出てくるのか。この改正によって、それが財政法違反でない、こいうことを明確にするために改正したのでしょう。そうですね。そこで、この改正によってあの産投への繰り入れ追加予算財政法違反でない、こういうことを明確にするために改正したわけですから、どういう点が明確になったか。
  4. 上林英男

    政府委員上林英男君) 現行財政法二十九条によりましても、三十五年度補正予算によります産投資金への繰り入れに関しましては、政府といたしましても、あの際御答弁申し上げましたように、違法であるとは考えておらないわけであります。ただ、再度にわたりましていろいろ御議論がございましたわけでございまするので、そういうような疑義を今後は起こさないようにという観点から、この財政法の二十九条の改正につきましていろいろ研究をいたしたわけでございます。その結果の結論といたしまして、財政制度審議会におきましての結論が、お手元に参っておりまする財政法二十九条の改正についてでございまするが、ここにもはっきり述べられておりまするように、前通常国会議論になりました論点のうち二つ問題があろう。  一つは、財政法規定から申しますると、その年度のうちにおきましては国庫の外へ金が出ないような場合でありましても、経費であるというふうに明定されているわけではございまするが、ごく常識的な考え方からいたしますると、後年度投資に備えて、その年度内におきましては国庫の外に金が払い出されないようなものが「必要避けることのできない経費」であるかどうかということについてはいろいろ議論が起こるであろう。したがって、この点を明確にいたしますために、国庫内の移しかえにとどまるようなものについても補正予算対象になり得るということをまず明示したらいいのではないか、というのが第一点でございます。第二点は、「必要避けることのできない」という言葉語感の問題でございますが、この言葉の与えまする語感が、いかにもそれがなければ国政の運営が不可能になるような性質を有するもののみが補正予算対象になるというような語感を与える。しかしながら、実際の運営といたしましては、補正予算はみだりに組むべきでないという原則に基づきまして、特に緊要である経費限り補正予算を組むというふうに解せらるべきであるし、また実際の運用もそうなっておるので、この実態に合わせてその言葉を直したらどうだろう、こういう二つ観点からの修正をいたしておるわけでございます。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、財政法の二条の三項の規定では「第一項の収入及び支出には、会計間の繰入その他国庫内において行う移換によるものを含む。」と、これをここに挿入したわけですね。それから、もう一つは、「必要避けることのできない経費」という規定では、その国庫外支出しないにもかかわらず、国庫内の移しかえだけの場合では「必要避けることのできない経費」ではないというような解釈が起こる可能性があるから、そこで「特に緊要となった経費」というように書いた、こういうことなんですね。
  6. 上林英男

    政府委員上林英男君) 大体御趣旨のような問題点であると考えるのでございまするが、まず、経費の問題につきましても、常識的な見方からいえば、当該年度にすぐ使い切れないような金は経費といえないじゃないかというような御議論もあるかと思います。「必要避けることのできない経費」というようなものは、後年度投資に備えるようなもの、それは来年度まで待てないことではないかというような御議論は確かにあることと考えるわけでございますけれども、そういうような点につきまして、制度的に見まして、その年度に使い切ってしまわない金、後年度の準備的な意味において財源を充実しておくというような必要性自体も、そのときの政治上の、あるいは財政上の判断において緊要と考えられる場合においては、そういう財政上の措置もとり得ることが適当であろうということを考えるわけでございまして、したがいまして、再度にわたりまして、いろいろの御議論がございました点でもございまするから制度といたしましてはそういう道も必要に応じて開き得るということを明確にしておいたほうがよいのではないか、こういうふうに考えて改正したわけでございます。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に伺ったら、その「必要避けることのできない経費」というのと、「特に緊要となった経費」という規定との間には、そんなに違いはないのだ、実質的には違わないのだと言われましたけれども、違わないなら、何も僕は変えなくてもよさそうにも思ったのですけれども、しかし問題が、それよりも今の規定ですね、現在の規定では、「必要避けることのできない経費……に不足を生じた場合」、「不足」という規定がそこにつくわけですね、今度は「不足」を削っておるわけです。現行では「不足」というその規定は、「必要避けることのできない経費」にもこれは関連するわけですね。これは両方に関連するわけでしょう。「法律上若しくは契約上国の義務に属する経費」と、それから「必要避けることのできない経費若しくは国庫債務負担行為」とに不足を生じた場合、こう解釈すべきでしょうね。
  8. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御指摘の点につきましては、明治憲法及び明治会計法大正会計法も含めてでございますが、その当時におきましては、不足という言葉は、御存じのように、不足という言葉予算外に生じた経費という二つ観念がございまして、それに応じまして第一予備金、第二予備金などの制度があったわけでございますから、したがって、この「経費」が「不足」にかかるかどうかということにつきましては、実質的にも意味がある議論であったわけでございます。しかしながら、現在の憲法におきましては、不足という言葉を用いまする場合には、項の金額がございまするものにつきまして不足をいたします場合と、予算がございませんで、金を出したい、しかしながらもちろん予算がないので金が出せない、いわゆる昔の第二予備金的なものにつきましても不足という言葉表現をいたしておりますので、実際問題といたしまして、この「不足」がどこにかかるかということは、解釈論としてあまり現在の状態では意味がないわけでございます。確かに、文理上から申しますれば、御指摘のとおり、この「経費若しくは国庫債務負担行為……に不足を生じた場合に限り」と、こういうふうに読むのが文理上正しいのではないかと考えております。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですかね。僕はね、産投会計繰り入れと関連しまして、この「必要避けることのできない経費……に不足を生じた場合」と、この「不足」という視定が非常に実質的にも意味を持っておると思うのですがね。たとえば三十五年度補正予算において産投会計繰り入れをやるわけですね。ところが、三十五年度にそれを計上しておいて、それで産投会計資金繰り入れるわけですね。そうして、三十六年度に使う。その場合、三十六年度不足が生ずるか生じないかは、未来のことでわからぬわけでしょうが。そうでしょう。それで、三十六年度自然増収がたくさんあった場合には、その自然増収でまかなってもいいわけですよね。いいわけでしょう。ですから、三十五年度においても財政投融資計画がありまして、その投融資計画に基づいて投融資をやっているわけなんですが、それに不足を生じたという場合には、補正予算当該年度不足を、これを追加予算として計上することができる、これはわかります。三十五年度年度内ですから。しかし、年度を越えた分については、それは緊急避くべからざるという問題と関連してきますね。それは緊急かどうかということとも関連いたしますが、しかし、将来に属することにおいて不足を生ずるか生じないかということは、これはわからぬわけですよ。しかも、実際問題としては、三十六年度になったら自然増収がたくさんあるわけですね。千七百億あるいはそれ以上も、第一次、第二次補正予算を組んだ後においても、これは自然増収があるわけでしょう。不足を生じていないことは明らかですよ、全体の予算からいって。ですから、そういう意味からいっても、この不足ということは、この不足を生じたという場合は、当核年度のことをさしているのであって、これは当該年度を越えちやいけない。いけないというよう、こういう規定では当該年度を越えるわけにいかない。非常に明確ですよ。ですから、違反するという問題も、そういう論点からも起こってくると思うのです。ですから、この「不足」という規定は現在では実質的に意味がないというお話ですけれども、私は意味があると思うんですよ、その点は。それでなければ、どうして「不足」という規定をわざわざ入れたか。それで、これは僕は平井君の解説を読んだんですよ。財政法を作りました平井君の解説を読んだら、平井君はやはりこの「不足」という規定両方にかかるものと解釈すべきだ、こういうふうに説明しております。ですから、そんな実質的に意味ないものを、ここに規定に私は入れるはずがないと思うんですよ。意味があるからこそ入れたのであって、それを今度は取っちゃったわけです。そこにいろいろな、また国会違反だとかなんとか言われるといけないというふうに考えられたんでしょう。今度の場合は、これははっきり「不足」という規定は、「法律上又は契約上国の義務に属する経費」についてのみ「不足」という規定をしまして、それから今度は、「必要避けることのできない経費」、これを「緊要となった経費」に改正しますがね。それのほうについては「不足」という規定は除いちゃってあるわけです。ここにやはり今度の改正一つのねらいがあると思う。今までは「不足」は両方にくっついておったのですが、今度は「不足」というのは片方だけに明確にしてしまったわけです。そうして「必要避くことのできない経費」のほうについては、「不足」という規定をはずしてしまっているわけですね。
  10. 上林英男

    政府委員上林英男君) ただいまの御質問のうちの、まず「経費」の問題でございまするけれども、これは産投会計から投資をするという意味経費ではないわけでございます。産投会計におきまする資金を充実する、そうして後年度投資に備えて産投会計への繰り入れということが補正予算の「経費」でございます。したがいまして、産投会計資金を充実しておく必要がある。しかしながら、その充実する経費がない。そこで、産投会計への繰り入れ経費不足を生じた、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、私が申し上げましたのは、この「不足を生じた場合」というのも、どこまでかかるかという議論が、明治憲法あるいは明治会計法大正会計法においてあったわけでございます。当時政府側といたしましては、この「不足」にかかるのは、あとの「契約上国の義務に属する経費不足を生じた場合」であって、その前にありまする「必要避くことのできない経費」、または、その当時は国庫債務負担行為はございませんでしたが、そういう経費は「不足」にかからない。したがって、必要避くことのできない経費限り補正予算を作成し得ると、こういうふうに読むべきである、こういう御答弁をいたしまして、国会ではいろいろ御議論があったわけでございます。そのありました意味と申しまするのは、不足という意味、これは憲法上、不足と申しますると、予算の項の金額がある、それが足りなくなった、こういう場合に用いた表現であったわけでございまして、全然予算に項がない場合には、予算外支出という格好でとらえられておったわけでございますから、そういう予算外支出の場合に補正予算が組めるかどうかという実質的な意味におきまして、この言葉が「不足」にかかるかどうかという議論があったわけでございます。しかしながら、現在の憲法におきましては、先ほど申し上げましたように「不足」という用語は両者を含めまして用いているわけでございます。したがいまして、この「不足」がどちらにかかるかということは、実質論といたしましてもさほど意味がない、こういう意味を申し上げたわけでございます。  それから、第三の「不足を生じた場合に限り」ということを取った意味と申しまするのは、私は実はもっと別のところに私ども考え方におきましては理由があったわけでございます。と申しまするのは、現在の二十九条の書き方によりますと、追加予算対象といたしましては「経費若しくは国庫債務負担行為…に限り」という書き方になっておりまするので、この間若干議論があるところでございます。たとえば継続費総額というものは経費であるのか、国庫債務負担行為ではございませんが、経費であるのかどうか。年割額については明らかに経費でございまするが、継続費総額につきましては経費ではないのではないか、形式的に申しますと。したがいまして、継続費総額を増加いたしまする場合には、追加予算ではないのではないかという形式論があるわけでございます。あるいはもし借金を増加するというような場合に、おおむね予算総則でその限度を書くわけでございます。その限度をふやしまする場合にも、厳密にこの「経費」という文言にとらわれて読みますると、それも追加予算ではないのではないかという議論もあったわけでございます。しかし、実費的に申しますると、やはり追加予算と申しまするのは、現在の規定にございますように、国が債務負担しあるいは国費の支出を要するときには国会の議決が要るようになっておりますので、そういうように国の支出なり債務負担なりを増加せしめるようなものが、追加予算の本体としてつかまえられるべきものではなかろうか、こう観念をいたしたわけでございます。したがいまして、表現といたしましても、憲法用語にならいまして、経費支出または国の債務負担を行なうために予算追加を行なう必要がある場合に、追加予算という概念でもってとらまえていったほうがより合理的な制度ではないか、そういう観点から文言の表明を改めた、こういうことでございます。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういたしますと、経費不足というのは予算不足ですね。財政法の二十四条ですか、「予見し難い予算不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる。」、この場合の予算不足というふうに解しているわけですか。
  12. 上林英男

    政府委員上林英男君) 「経費不足」と書いてございますのは、今御指摘のように、予算不足という意味と同じような意味であると解しているわけでございます。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 問題はこの資金にあるのですね。ですから、結局国庫外支出しなくても、それが二条の三項ですと、「会計間の繰入その他国庫内において行う移換によるもの」も歳出ですか、収入及び支出に含む、こういう解釈に立っているから、国庫外に対する支出として観念してこの補正予算を組んでいるのではない。その限りにおいてはそれはそうでしょう。しかし、今度実質論になりますわな、問題は。実際にはそれは三十六年度産投会計支出に充てられるということなんでしょう。そこは非常に何というか、法律形式上はそれで一応財政違反でないような形が整えられますけれども実質論として、年度独立原則にこれが違反するかどうかということは、やはり問題として残りますね、その点は。それは残るでしょう。その点、どうですか。
  14. 上林英男

    政府委員上林英男君) 確かにおっしゃる点、よくわかるのでございまして、当該年度のほんとうの産投会計からの投資に当たるものではないではないかという意味におきまして、確かに、先ほど申し上げましたように常識的な意味と申しますか、そういうような意味におきまして、いろいろ御議論があったことは私どもも存じておりますので、そこで、そういうような議論が起こらないように、制度といたしましてはもちろん財政上、政治上の判断によりまして緊要かどうかということを判断いたしまして、補正予算として御議論いただくということになることと存じまするけれども制度といたしましては、すでに二回の前例もあるわけでございますし、必要性に応じまして、そういう道も開いておくことが適当であるという観点から、この制度を直したわけでございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも、私はそこが非常に何か官僚的な改正だと思う。もっと率直に、改正するなら、それはまたわれわれは、改正がいいか悪いか別ですけれども資金についてのやはり規定をすべきじゃないかと思うのです。たとえば財政の弾力的な運用をするために、その資金が一応その年度内においての会計間の繰り入れではあるが、実質的には年度を越えて支出する経費であっても差しつかえないという規定を入れれば、はっきりしてくるのです。けれども政府解釈はあくまでも年度内支出なんだ。それを財政法二条の三項の規定建前にしてやるわけですよ。あくまでも、会計間の移しかえでも、それは年度内支出なんだ、財政法二条の三項によるそれは支出規定されているんだ、こういう解釈なんですよ。だから、財政法上はそういう観念でそれは説明がつきますよ。しかし、実際は、その経費は一応基金に入れておいて、それはこの解釈によれば年度内歳出でもちろんあるでしょう。財政法二条の三項の建前にすれば、そうです。しかし、実質はそうじゃないのです。年度を越えてそれは国庫外支出すべきもの、いわゆる三十六年度産投会計支出として使うのでありますから、それははっきりそういう説明もされているのですし、はっきりそういう説明になっているのですよ。実質はそうじゃないのだ。何か非常にその点は形式論です。  一番これは問題になるのは、会計年度独立原則ですね。それから、予算単一主義とか、そういうものの原則実質的に反するかどうかが問題なわけです。実質論が重要なんです。だから、実質的にそういうものは会計年度独立原則も、経済事情の変化によって昔のような財政民主主義の窮屈な規定ではこれはまかない切れなくなってきているのだから、その例外としてそういうことは認めろという規定になれば、これについてはまた議論がありますけれども、非常にはっきりしてくるのですね。ですから、資金というものは、これはくせ者です。資金そのものをプールしておいて、それをあくまでも年度内歳出である。しかし、実質的には年度を越えて支出するものなんですから、それははっきり説明されているのですから、だから、資金というものは元来そういうプールしておいて必要なときに使うものでありましょうけれども、この資金というものが非常にばく然としている。もう少し資金についての規定が何かはっきりさせられないと、そういうことは乱用されて、会計年度独立原則予算単一主議原則というものを私は乱すおそれが十分にあると思うのです。この資金そのものについて、財政制度審議会で論議がありませんでしたか。
  16. 上林英男

    政府委員上林英男君) ただいまの資金の問題についてでございますが、おっしゃいましたような年度独立原則、あるいは総計予算主義というような建前から申しますと、資金はこれの例外をなすものでございます。したがいまして、今おっしゃいましたようないろいろの問題点につきましては、資金性質から出て参ります性質でございます。  なお、今の資金について、財政制度審議会でも議論が出なかったかというお尋ねでございますが、確かに資金というものはなかなかむずかしいわかりにくい問題だという意味で、資金につきましても、私ども財政制度審議会で御説明もし、御議論もございましたわけでございます。ただ、これにつきましては、財政制度全般の問題にも関係がございますので、今後の財政法全般の問題の一環として研究をしようということになっております。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この資金規定は、財政法四十四条に基づいて資金か設定するわけですね。
  18. 上林英男

    政府委員上林英男君) 資金と申しますのは、一会計年度内に消費し尽くすことを予定しない金でございます。したがいまして、一会計年度以上にわたって消費され回転していく金でございますから、その性格といたしまして、年度独立原則のらち外にあるものであり、ある意味におきましては、総計予算主義例外をなすものでございます。したがいまして、そういうようなものを設けますことは、みだりに設けるべきでございませんので、そういうものを設けます場合は必ず法律をもって設けなさいという趣旨うが、この四十四条の規定趣旨でございます。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法律をもって定めれば、幾ら資金を作ってもいいということになっているのですね。そうですか。
  20. 上林英男

    政府委員上林英男君) 資金としてのおのずからなる性質があるわけでございます。先ほど申しましたように、一会計年度内に消費し尽くせないようなことを予定しております金銭でございます。したがいまして、その年度で使い切ってしまうようなものは、必ず歳計を通しましてやって参りますので、資金を設ける必要がないわけでございます。そういうような資金を設ける必要性があるかどうかという問題であるかと考えます。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはずいぶん、私は、いろいろなあれで乱用されてもおりますし、乱用される危険があると思います。海外協力基金、あれはやはりこの四十四条に基づいて設けられたのですか。
  22. 上林英男

    政府委員上林英男君) あれはたしか法人でございまして、政府の外に出まして、政府とは独立いたしました一つ法人でございます。基金という言葉は、そういう資金を主体にした法人という意味におきまして、基金という言葉を用いているのだと思っております。したがいまして、この財政法四十四条の資金ではございません。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどういうんですかね。法人としてあれを設けて、政府が出資をするわけですね。三十七年度も出資が行なわれることになったんですね。あれは一般会計から支出するんですか、産投のほうから支出するんですか。
  24. 上林英男

    政府委員上林英男君) 一般会計からの出資でございます。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この間、あの事業計画と実績を伺ったんですがね。とにかく非常な、何というか、ひどいことになっているんですね。百六十何億出資されておって、十三億ぐらいしか融資していないんですよね。で、三十七年度の計画を加えても十五億円ぐらいであって、百六十何億も出資が行なわれていると、こういうような非常に不効率な運営になっているんですがね。それは直接——しかし、それも一つ資金の形ですがね。そういうのはどういうふうになるのかな。しかし、そういう形も政府資金を持つことなんでしょうね。
  26. 上林英男

    政府委員上林英男君) 財政法四十四条の資金と申しまするのは、国庫資金といたしまして、何と申しまするか、一年度内に使い切れないことを予定している金といたしまして持っておる金でございます。一年内で使うというつもりであるならば、歳計に計上をいたしまして使用していくわけでございますけれども、その歳計外に、いわば、何と申しますか、出しました金といたしまして、その本来の目的に従いまして、たとえば産投資金でございますと、後年度投資に備えるために歳計外としてたくわえられており、それが必要になりますると、さらにその資金を引き出しまして投資をすることになりますと、産投会計の歳入にとり、さらに産投会計歳出として払っていく、こういう金でございます。ただいまの海外経済協力基金と申しまするのは、国庫と違いました別個の法人でございます。御指摘の問題でございますると、たとえば政府関係機関に出資をするという場合も、広い意味では国の資金であるということは言えると思いまするけれども財政法四十四条でつかまえております資金と申しまするのは、先ほど申しておりまするように、予算総計主義、あるいは単年度主義、年度独立原則、そういうようなものの観点からはみ出しました国の持っておりまする金銭、こういう概念でございまするから、したがいまして、海外経済協力基金への出資とかあるいは政府機関への出資というものは、財政法四十四条の資金ではないわけでございます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、財政制度審議会では、財政法六条との関係はどういう議論が行なわれましたか。
  28. 上林英男

    政府委員上林英男君) 六条の関係につきましても、この二十九条の問題にからみまして議論がございました。しかしながら、この六条の規定につきましては、非常に広範な影響を及ぼす問題でもございまするし、たとえば、この六条の規定自体は、現在の国債の残高の情勢から見れば、あるいはこの際もっと発展的な考え方に変えたらどうだろうという御議論もあったわけでございまするけれども、いずれにいたしましても、財政制度の根幹の問題でもありまするし、さらに、ちょうど三十七年度予算の問題とも関連いたしまして、たとえば景気調整資金というようなもの、あるいはその他の剰余金をもっと活用する方法というようなものにつきましては、なお慎重に研究すべきではなかろうか。あるいは減債基金の問題にも関連いたすわけでございますし、ちょうど三十八年度にも外債の償還などが集中するというような関係もございまして、なお財政法全般の問題の一環として研究をしようということになっておるわけでございます。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その自然増収をそういう資金繰り入れてしまうと、それは六条との関係が出てくるわけですが、その年度内——特に最近自然増収が非常に多くなってきていますわね。で、われわれとしては当然年度内に減税すべきであるとか、あるいは年度内において社会保障その他そういうものの補正を組んでいくべきだというふうにわれわれは考えるわけですが、そういう場合に、自然増収資金繰り入れてしまうと、それがまあできなくなる。そういう点は何も——資金というものは非常に政府にとっては重宝なものでしょうけれどもね、われわれとしては非常に割り切れないものになってくるわけですね。  それと、三十七年度予算の編成の過程で問題になりましたいわゆる景気調整資金ですね、これについてやはり財政制度審議会で意見を求めましたのですか。
  30. 上林英男

    政府委員上林英男君) 実は昨年からずっと御審議いただきました財政制度審議会は、二十九条の問題を主として御議論を願ったわけでございまして、したがいまして、財政制度全般につきましてはそのあとでということでございましたので、必ずしも本格的にこれに取り組んでいただいたわけではございません。ただ、それに関連いたしまして、そういうような制度も考えられるではないかという御議論もないではなかったかと覚えておりまするけれども、特にこれをどうすべきであるという皆さんの御意見はなかったように考えております。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十七年度予算を編成する過程において、景気調整資金を設けたらどうかという意見は大蔵省ではあったわけですね。
  32. 上林英男

    政府委員上林英男君) 予算編成の過程におきましては、いろいろ研究もいたし、勉強も、いたしましたわけでございますけれども、固まったものといたしましてはなかったわけでございます。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 かりに景気調整資金というものを設ける場合、そういうものの資金の性格はどういうふうにお考えですか。自然増収をもって補正予算を組んで、それを資金繰り入れるというのが三十五年度の場合だったのですが、そうして年度を越えて実際にはこれを支出する。景気調整資金の場合はどうなんですかね。それとは違いますね。あらかじめそういう資金を設ける、その場合は財政法でいうとどういう規定になるのですか。それは会計年度独立原則に反するのじゃないかという考えがしますけれどもね。
  34. 上林英男

    政府委員上林英男君) 景気調整資金と申しますのは、考え方によりましていろいろな考え方がとられると思います。実は、いろいろと勉強はいたしましたわけでございまするけれども、まとまったものは実はもちろんございませんし、確定された概念もないわけでございます。当時私ども研究をいたしましたのは、たとえば外国の制度ども勉強いたしたわけでございますけれども、外国におきまして、景気調整資金と銘を打ちましてやっておるというものは、まずほとんどないように私記憶しております。実際問題として、そういうような役割を果たしますいろいろの機能はあるようでございますが、そういうようなものをこのうちからいろいろ研究したことはあるわけでございますけれども、具体的にどういうアイディアでどういうふうに考えていこうということも、実はまだ未熟な段階でございますので、ここではまだちょっと申し上げかねる段階でございます。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いろいろ諸外国の例を研究してみたが、どうもいい知恵がないといううので、結局後退して、そこで予約繰り延べという形に後退したようにわれわれは新聞等で見ておりますが、これについてはどうお考えですか。
  36. 上林英男

    政府委員上林英男君) 今の御指摘の点につきましても、実は熟した考え方ではないうちに新聞などで伝えられたわけでございまするので、経過といたしましては、いろいろ勉強いたしたわけでございまするけれども政府といたしまして確定した概念ではなかったわけでございます。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その予約繰り延べについて、十四条の三、繰り越し明許ですね、繰り越し明許ですね、繰り越し明許の規定で、予約繰り延べをやる場合この規定でできるのではないか、こういわれておったのですが、そういうふうに解釈されておるのですか。
  38. 上林英男

    政府委員上林英男君) 繰り延べ予約ということが新聞に伝えられたわけでございますが、今申しましたように、まだ確定した概念ではなかったわけでございます。そういうことを考える場合に、繰り越し明許費の規定で十分であるかというような研究はいたしましたことがございまするけれども、そのやり方いかんによりまするわけでございまするし、またある意味におきましては、そういうことを打ち出す場合の政治的なあるいは財政政策的な判断という問題も加味いたしました制度としてはどういうものがよかろう、いろいでごろな観点から議論をいたしたことざいまして、実はまだ繰り延べ予約自体をどういうふうな格好でやるかということも固まった段階に至らないうちに、構想自体というものがなくなったわけでございます。特にこうという結論はもちろんないわけであります。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これと関連して、前に予算委員会で、政府が景気調整のために節約とか繰り延べを行なうという場合、それは私、修正予算を組まないとそれは少なくとも節約、繰り延べのその額にもよりましょうけれども、それはやはり修正予算を組まなければならない。それにもかかわらず、政府は前に一割ですか節約を行なったわけです。これは実行予算的なもので、法ではそれは許されないのだ。だから、節約をする場合には、やはり修正予算を出して国会の承認を得てやるべきだ、こういうふうに私申しましたら、それはこの十四条の三の繰り越し明許の規定があるから、その範囲内でやるのだから、これは違反でないのだ、こういうふうに言われたわけですよ。これに関連して法制局長官が、今の歳出予算については、それは歳出の最高限度国会が承認をしたものであって、その実行についてまでも国会がこれを、何というか、議決をしているものではないのだ、こういう答弁をされたわけですよ。政府はそう考えておるのですかね。憲法八十三条ですか、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」、この場合ですね、歳出の最高限度国会が議決したものであって、これを必ずしも政府が全部実行しなければならぬ、その実行の責任については政府はあるものではないのだ、全部使わなくてもいいのだ、こういう説明をされたのですよ、法制局長官は。これは旧憲法のもとではそうですね。そういうふうに解釈されていたと思うのですよ。やはりそういう解釈ですか、政府は。
  40. 上林英男

    政府委員上林英男君) 法制局長官のおっしゃられたことでございまするけれども、私も、予算法律的な効力、歳出法律的な効力というものは歳出の最高限度であると考えております。またそれを、予算をそのときどきの経済情勢に応じまして最も効率的に使っていく責務は内閣にあるものと考えております。したがいまして、予算が議決されました金額一ぱいに必ず全部使うということは、もちろんその予算の効力から参るものではない。したがいまして、その与えられた予算をできる限り有効に効率的に使っていく、むだなものはもちろん支出をしないという建前であるべきものだと考えております。もちろん、今御指摘にございましたような憲法八十三条の規定もございまするわけでございまするので、また旧帝国憲法時代と違いまして、予算の増額修正の問題もあるわけでございます。したがいまして、国会が御議決になりまして増額をいたしましたものを、政府限り、政府判断でみだりにこれを削るということも適当でないわけでございまするけれども、また政府国会の御議決になりました予算を忠実に実行する責務は当然有するのでございます。したがいまして、その国会の議決を経ました財政計画自体を大幅に変更するというような場合には、修正予算として国会の議決を得てこれをやっていくことがより民主的であるということは、言うまでもないことでございます。  ただ、繰り越し明許費につきましては、これは予算をもちまして、翌年度に一定の場合におきましては繰り越してこれを使用するということを御議決をいただき、御承認をいただいておるわけでございまして、一方におきまして、先ほど申しましたように、予算を最も効率的に経済情勢に応じて使って参りますこと自体も内閣の責務でございます。その方針に従いまして、どうしても繰り越しせざるを得ないというような場合におきましては、明許繰り越しによりまして繰り越すということも、政府に与えられました責務を果たすゆえんであるわけでございまして、特に修正予算を提出する必要はないと、こう考えるわけでございます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 だから、要するに、その国会における歳出予算の議決というものは、その目的に従って内閣の支出し得る限度をきめたものである。それと同時に、そればかりではなくて、その目的に盛られた施策を実行する責任も定めているものであると、こういうふうに理解すべきではないかというのが私の質問の趣意なんですが、そうなんじゃないですかということなんです。
  42. 上林英男

    政府委員上林英男君) おっしゃられます御趣旨につきましては、そのとおりでございます。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのとおりでしょう。それはそれでいいのです。  それでは、その場合、繰り越し明許の場合ですね、これは景気調整のために予算を節約したり繰り延べする場合にですね、景気調整のために、この前やったことを一つの具体的な事例として例にとりますけれども、これは繰り越し明許の規定があるからそうやってもいいんだというわけには私はいかないと思うのですよ、繰り越し明許の規定で。景気調整のための節約とか繰り延べは、これは十四条の三の繰り越し明許の規定解釈はできないんではないかと思うのです。繰り越し明許はもうはっきり、「歳出予算経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に繰り越して使用することができる。」と規定してあるのであって、「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるもの」と、非常にはっきりと限定してあるわけですね。限定してあるわけですよ。したがって、景気調整のために節約するというような場合は、この規定では私は解釈できないと思うのですがね。どうですか。どうもこの規定をたてにとって、政府は実行予算的なものをやっていこうとしていると思うのです。また、事実やってきているわけです。で、今後たとえば繰り延べの予約ですか、予約繰り延べといいますか繰り延べ予約といいますか、それをやるときも、十四条の三で、とにかく繰り越し明許を予算総則にちゃんとうたえば、それはできるのだと、こういうふうに政府は考えてやっていこうとしているのじゃないかと思うのですがね。この点は私は問題があると思うのですが、どうですかね。
  44. 上林英男

    政府委員上林英男君) 繰り越し明許費は、十四条の三にございまするように、年度内支出を終わることができないような性質を持っている経費、たとえば経費支出に関連いたしまして、自然的な条件あるいは社会的な条件というような影響を受けやすいようなもの、たとえば用地補償とか、あるいは天候のかげんとか、あるいは外国との契約のために相手方の状況によってその年度に必ずしも支出が終わらないというような見込みのある経費につきまして、あらかじめ国会の議決を経まして翌年度に繰り越すものでございます。その、そういうものに指定をされまして、繰り越し明許費としての要件を満たしました場合におきまして、その執行に当たりまして、先ほど申しておりまするように、予算歳出はできる限り経済情勢に合わせまして、かつ効率的に使っていくという内閣の責務に応じまして、これを支出して参るわけでございます。その執行過程におきまして、これをあるいは抑制をするなりその支出の調整をはかる必要がある場合におきまして、それの必要性に基づきまして、客観的な必要性に基づきまして、年度内にその支出が終わらないというような場合におきましては、やはりこの十四条の三によりまして繰り越しができるものと私どもは考えております。  今御指摘の点につきまして修正予算を組め、こういうお話でございまするけれども、繰り越し明許費として翌年度に繰り越して支出をするつもりでおるわけでございます。修正予算ということになりますると、これた減額修正するということになってしまいまするわけでございまして、したがいまして、翌年度以降も使えない。また翌年度にはあらためてこれを歳出として計上し、議決を経るという格好になるわけでございますから、そういうことではないわけでございまして、これはあくまでもその年度歳出権を翌年度に繰り越しまして使用していくということでありますから、あらかじめ国会の議決を経ましたところに従いまして、政府の与えられております権能によりまして、これを繰り越して使用していくという建前をとるわけでございまするから、特に修正予算を組む必要はないのではないかというふうに考えております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、予算運営を効率的に行なう、それから経済情勢の変化によってそれを節約したり繰り延べしたりすることが悪いと言っているのではないのです。その場合には、十四条の三における繰り越し明許費の規定によって、これはそういうことができるというわけにいかないと思うのですよ。これには繰り越し明許を許される場合の条件がはっきり書いてある。「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるもの」とはっきり書いてある。ですから、景気調整でやるという場合には、どうしても、それは金額にもよりましょうが、これはやはり実行予算的なものではいけないのであって、そうしたら、旧憲法のもとにおけるのと同じことになっちゃうわけですから、やはり修正予算というものでやらなければならない。国会の承認を得ればいいということです。国会の承認を得ないでやるということは、私はこれは憲法にも財政法にも違反するのではないか、こういうことを言っているわけです。ですから、繰り越し明許というものの性格と、それから景気調整をやる場合の節約とか繰り延べというのとは、性質が違うと思うのです。それをこれでみんな解釈してしまおうというところに無理がある、私はこういうのです。これはやはり議論のあるところだと思うのです。
  46. 上林英男

    政府委員上林英男君) お答えを繰り返すことになると思いますけれども、繰り越し明許費といたしましては、こういう要件の備わりましたものを翌年度に繰り越して使用することができるようにあらかじめ国会の議決を経たものでございます。一方におきまして、政府は、先ほどから申し上げておりますように、予算の執行につきましては、景気動向その他を通じまして最も効率的にこれを使っていく責務を有するわけでございます。その責務を果たしまする過程におきまして、一定の、こういう翌年度に繰り越して使用することを認められております経費につきまして支出の調整をいたしました結果、当該年度に使い切らないという場合におきましては、翌年度に繰り越してこれを使用するということは、十四条の三の規定よって政府に与えられました権限であると考えておるわけであります。  これを修正予算にしろというお話でありますと、むしろこれを減額修正と、したがいまして、歳出権から落としてしまうということになるわけでございます。これは私どもの意図しておるところではございません。景気の動向に応じましては、その年度に使うかもしれませんし、場合によりましては来年度に使っても、要するに与えられました全歳出は最も効率的に使っていく、翌年度にまたがって、翌年度支出になるかもしれませんが、翌年度におきましてこれを御議決の趣旨に従って使っていくという趣旨でございますので、これを減額修正をするという方法はとらないで、むしろ与えられました権限に基づきまして、繰り越して翌年度に使用すると、こういうことにいたしたということでございます。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは考え方はわかるのですけれども、しかし、それだからといって、実行予算的なものをやっていいということにはならぬと思うのです。じゃあ、実行予算的なものをやっていいというですか。
  48. 上林英男

    政府委員上林英男君) 実行予算という言葉の問題でございますけれども、確かに、背の憲法におきましては、予算歳出権の効力というものは政府国会から与えられました財政権の最高限であるという解釈に徹底をいたしておりましたので、その範囲内におきましては、これを政府の手におきまして支出をやめてしまうということが行なえたわけでありますけれども、現在の憲法のもとにおきましては、憲法第八十三条の趣旨にかんがみまして、そういうふうに政府に与えられました歳出権限の問題でございましても、これを大幅に削減してしまうというような場合には、むしろ修正予算制度を開いたわけ、でございますので、それによって処理をするわけでございますけれども、この景気調整のための明許繰り越しの繰り延べと申しまするものは、今申しましたような実行予算の概念ではないのであります。先ほどから申し上げておりますように、これを減額修正するわけではございません。予算執行の過程におきまして支出統制を行なっていく必要性があった、その結果これを翌年度に繰り延べてこれを支払わなければならない、こういう場合には、あらかじめ御議決を得ましたところに従って繰り越しして使用をしていくということでございますから、これを修正予算として提出する必要はないと私どもは考えておるわけでございます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、繰り越し明許という規定を、何といいますか、乱用して、そうしてあらかじめ景気調整に備えるためにそういう必要のない経費までも予算総則規定を入れておけば、とにかくそういう運用ができるわけですからね。まあ政府としては大事をとって、どの予算でも繰り越し明許のあれを予算総則に書いておけば、いざというときには出せるのだと、そうしてそれを景気調整の手段に使うと、こういう弊害はないかと。私はそういう弊害が出てくるのじゃないかと思うのですよ。ところが、それは実際にはその性質上どうしても年度内支出を終わらない、こういうものは当然繰り越し明許の規定でいいわけですよ。だけれども、そうでないものにも、とにかく予算総則にそういうものを書いておけばできると、こういうことになるわけでしょう、この規定というものは。そうすると、実態と合わなくて、それが乱用されることになるんではないかと、こういうことを私は言っているわけなんですけれどもね。
  50. 上林英男

    政府委員上林英男君) ただいまの明許繰り越し費に該当いたしまする経費でございまするけれども、先ほども申し上げましたように、明許繰り越し費に指定いたしまする経費は、客観的な要件といたしまして、自然的条件あるいは社会的な条件の推移によりまして、年度内支出を終わる見込みがないということの性質を持っておるものでございます。したがいまして、主として公共事業費的なものがこれに該当するわけでございます。そのほか外国との交渉を有するものとか、もういろいろなそういう性質を有するものが該当するわけでございます。したがいまして、すべてのものがこの経費に該当するというわけではないわけでございます。その年度に必ず払ってしまわねばならぬようなもの、たとえば給与費とか、あるいはちょっとしました備品とか、そういうようなもにつきまして明許繰り越し費として指定すべきものではないということは、十四条の三からも明らかであります。ある意味におきましては、そういうような公共事業費的なものが景気調整の観点からは最もそれの対象になりやすい経費であることもまたいわれるわけでございます。したがいまして、この何かすべてのものにつきまして繰り越し明許費に指定して乱用するのではないかという問題につきましては、十四条の三につきまして繰り越し明許費に指定するものはおのずから限定されているわけでございます。そういうことでその心配はないのではないかというふうに考えております。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、まあ全般的に考えて、どうも政府の考えは旧憲法的な考えであって、歳出予算国会の議決というのは支出し得る限度をきめたものであって、何も使わないでもいいと、どうもこういう考えが、すなわち旧憲法的なものが強いのじゃないかという気がするわけです。それと関連していろいろ質問したわけですがね。  ところで、財政法全般改正に関して大蔵省は何か作業をやっておりますか。
  52. 上林英男

    政府委員上林英男君) 財政法につきましては、確かにいろいろ、ことに最近に至りまして御議論のあるところでございますし、この財政法自体も新憲法が制定をされましたときに早々の間に制定をされましたものでございまして、その多くは大正会計法を引き継いだ分野が少なくないわけでございますから、多少長期間にわたってもこれをもう一ぺん全面的に再検討したいという気持は持っております。したがいまして、今回この改正案に一緒にお願いをいたしておりまするように、会長を大蔵大臣にいたしましたし、あるいは臨時委員を設けることができるようなことをお願いをいたしておるわけでございまして、そういうことが成立をいたしました暁におきまして、財政制度審議会におきましても今後十分研究を進めて参りたい、このように考えておるわけでございます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いつごろまでに作業をやると、そういう具体的なまだめどはついていないのですか。
  54. 上林英男

    政府委員上林英男君) これからいろいろと御議論も願う予定にいたしておるわけでありますし、問題は財政法の問題でございまするから、国政の運用に非常に密接に関係がございます重大な問題でございますので、慎重に研究をいたして参りたいと思っておりますので、特にいつまでというようなめどを立てている問題ではございません。
  55. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  56. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。  それでは、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩    ————・————    午後一時四十四分開会
  57. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続き、財政法の一部を改正する法律案について質疑を続行することにいたします。  ただいまの政府側出席者は、大蔵省堀本政務次官、石野主計局長、吉岡理財局次長、上林規課長、経済企画庁大來総合計画局長、農林省堀参事官であります。  質疑のある方は御発言願います。
  58. 野溝勝

    野溝勝君 財政法の一部改正とは直接関係はありませんが、関連して質問をいたしたいと思います。最初に主計局長と農林省の関係当局に質問をいたします。  先日私がテレビを見ておりましたら、「日本の谷間」という題で長野県伊那の災害状況がつぶさに報道されておりました。それと相前後いたしまして、私も四月中旬に現地で災害地帯の復旧状況を視察して参りました。全くテレビの「日本の谷間」にあるごとく、実に惨状そのものでありまして、まだ復興したのは三割というような状態であります。で、この間における復旧関係の財政措置がどういうふうに行なわれておりますか。一応臨時措置法ができまして、それに基づいてそれぞれの措置はされておると思いますが、現状はそんな状態であって、全く災害に対する政府の措置というものがまことに目に余るものがあるのでございます。この際、農地関係の当局の意見と、さらに予算関係を持っておる主計局の当局の意見を聞いておきたいと思うのでございます。ひとつ、一応農林当局のほうからお答えを願いたいと思います。
  59. 堀直治

    説明員(堀直治君) 長野県は、三十六年度伊那谷を中心といたしまして大災害を受けまして、農地、農用公共施設に甚大な被害を出したわけでございます。で、すぐにこれが復旧につきまして査定をいたしまして、予算の手当等をいたしたわけでございます。ただいまのところ、三十六年度におきましては、農地関係の災害のために四億七千万円、公共施設の関係で十億五千八百余万円の金を支出いたしまして、これが復旧に当たり、なお引き続いて、ただいま、第三十七年度といたしましては、第一次割当といたしまして、農地については五千三百万円、施設については九億九千九百万円を出しまして復旧を急がせているわけでございます。  しかし、農地、農用公共施設は、いずれも建設省関係の河川その他の復旧と相待って行なう必要もございますので、三十六年度においては、これの予算がまだ百パーセントは消化いたしておりません。で、ただいまの割当につきましては、三十七年度につきましてもまあ十分というわけではございませんので、今後も復旧事業の進捗を見て、なお追加割当をしていく予定でございます。
  60. 野溝勝

    野溝勝君 大蔵当局から御所見を、お伺いいたします。
  61. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 災害の復旧につきましては、特に農地関係の災害復旧につきまして、個別の地域及びそこの事業の進捗関係等につきましては、農林省のほうで担当をされまして、今お答えがあったとおりだと思いますが、全般的な考え方といたしましては、財政支出が多過ぎるというような意見も一般的にはございますけれども、災害復旧というものは非常に大切であるという考えに基づきまして、三十六年の補正と三十七年の本予算を通じまして、三十六年災につきましては、従来の一般原則の進捗率よりも若干早めるというような考え方で、予算につきましては努力をいたしている次第でございます。
  62. 野溝勝

    野溝勝君 まあ通り一ぺんのお答えはあったのでございますが、実際に諸君も調査をされていると思うのですが、あの災害には二百数十名近くの死傷者を出して、さらに実際農業経営が全然復興できないような災害にあって、その生活資金にすら困る、さらに移住家屋の問題についても考えてもらいたいということで、もう強い要請があったわけです。そういう点について、一応通り一ぺんの予算は計上されましたが、今の移住家屋の問題並びに生活面に対する問題等に対しては、具体的にどういうふうに一体処置されているのか。もっと具体的に内容を詳しくひとつお答えを願いたい。
  63. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ただいまのお尋ねは集団移住のお話かと思いますが、これにつきましては、予算上の措置といたしましては、三十七年度予算の総則におきまして、農林省の災害復旧費を自治省のほうに移しかえてこれを移用することができる、こういう規定を総則の中に置いてございます。現在、自治省と農林省との間で、この問題につきましては具体案の作成についての話し合いが行なわれております。私どものほうも、こういう考え方で総則に規定があるわけでございますから、問題は、そういう意味においては方向としてきまっているわけでございます。したがいまして、具体的な案がきまり次第実施するということで、目下農林省においても具体案の作成に努力をしておられるものと了解いたしておりますが、その点につきましては、農林省からもお答えいただいたほうがいいかと思います。
  64. 堀直治

    説明員(堀直治君) 集団移住の問題につきましては、自治省のほうからもお話がございして、私どものほうでもこれの具体的な問題について種々検討いたしております。ただし、農地災害あるいは公共施設の災害を復旧しませんで、その者が全部移住するというものでないというと、あとで何戸か残りますというと、農地あるいは施設の相当部分を工事として仕事をしなければなりませんので、できるだけ集団が望ましいという問題で、まだ具体的にどの地区をどれだけの金で動かすかということはきまっておりませんけれども、そういったようなこまかい点の打ち合わせを数回やっておりまして、ほぼ結論も出ておりますので、この点がきまり次第、金を移して、自治省のほうでその措置をとっていただくというふうにしたいと考えております。
  65. 野溝勝

    野溝勝君 私はこの際に申し上げたいのですが、ああした災害のあったときには、当時はそれぞれの当局も非常に熱意を示されておったのでございますが、時間がたつに従って、せっかく天災融資法に基づくような、あるいはそれ以上の特別立法を考えてやろうと、衆参両院でこれを練り、また当局もそれに照応して考えられておったのですが、依然として今日まで、三十四年の災害を、まだ検討中だとか、まだ自治省からあれが出てこないとか、いや数回にわたって話をした、ようやく具体案ができつつあるというようなことでは、全く災害を受けた被害者というものは何とも言えない悲愴なものなんですよ。そういうことは当局としてもわからぬわけではないと思うので、私はこの際にひとつ関係当局に、近いうちにやるということでなくて、もう具体案ができたなら、大体いつごろまでにまとめて処理をするというようなことを、この際私は明言をしてもらいたいと思う。地元関係者、被害者は、あすの生きる希望さえもなくなっているわけですから、それについて責任を持ったお答えを願いたい。ただ抽象的じゃ、聞き飽きたよ、そんなことは。できないなら、どこに欠陥があるかということを言って下さいよ。どういうことがあって進まないということを言って下さい。
  66. 堀直治

    説明員(堀直治君) これは自治省と農林省と両方なものでございますから、私のほうだけでいつまでという明言はできかねますが、ただいまのところ、自治省と相談いたしまして、おそくも来月中には実施をいたしたいというふうな考えで進めております。
  67. 野溝勝

    野溝勝君 ただいま、堀参事官の答弁では、おそくも来月中にこれは処理したい、こういう話でございましたから、それは一応了承するとして、来月に処理をするというその具体案の骨子というものを、もっと具体的にお答え願いたい。
  68. 高柳忠夫

    説明員(高柳忠夫君) 金額の具体的な内訳については、まだきめてございませんが、大体支出する方向といたしましては、土地の買い上げ費、移転先の水道、それから道路の改良費、移転のための当面の補償資金、こういったようなふうなものを考えております。
  69. 野溝勝

    野溝勝君 高柳君にちょっとお伺いしますけれども、道路の改良費についてはどういうものですか。
  70. 高柳忠夫

    説明員(高柳忠夫君) 集団移住先にまあ適地が見つかりました場合に、そこに農業を営み、または交通の便利をよくするために、従来道路が不足しているような場合を調べまして、それに便利なような道路をつけたい、こういう考え方でございます。
  71. 野溝勝

    野溝勝君 県のほうからはそれぞれまとめて中央に要請をしてあると思いますが、県のほうの要請に対しましては、大体中央当局との間で調整済みでございますか。
  72. 高柳忠夫

    説明員(高柳忠夫君) 大蔵省といたしましては、県と直接折衝を持っておりませんので、県のほうはおそらく自治省及び農林省のほうへ話がいっていると思います。私のほうは県の話は直接伺っておりません。
  73. 野溝勝

    野溝勝君 それでは、堀君にひとつ。
  74. 堀直治

    説明員(堀直治君) これは窓口が自治省でございまして、私のほうも総ワクについての相談はございますけれども、具体的な、村の何戸をどういうふうに移住させるという問題は来てはおりません。ただその部分が災害復旧をやる必要がなくなるかどうかという点での打ち合わせをやっておるわけでございます。
  75. 野溝勝

    野溝勝君 自治省の関係官をひとつ呼んでいただきます。  大体大蔵当局と農林当局の考えがわかりまして、私はそれ以上こまかくはお伺いいたしません。来月にはおそくも成案を得て具体化するということでございますので、ひとつこの際私から強く要望して、皆様の一そうの努力を願いたいと思います。  次に、私が伺いたいのは、この財政法とも関係があるのでざごいますが、財政投融資関係の費目を検討してみると、第一が国民生活向上、生業安定というものがまた入っておるんですが、これは何だか私はよくわからぬのですけれども、国民生活安定向上で尽きておると思うんだが、特に生業安定ということはどういう意味ですか。どなたでもよいから、答弁してもらいたい。
  76. 上林英男

    政府委員上林英男君) 産業投資特別会計法の一条におきましては、産業投資特別会計を設置いたしまする理由といたしまして、「経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって投資を行なう」ということを掲げております。この目的の範囲におきまして、財政資金をもちまして投資を行なうのが廃業投資特別会計でございます。この経済の再建とか、産業の開発とか、貿易の振興とかいうことによりまする国の施策で財政投融資を行ないまする特別会計という趣旨で、ここに規定されておるわけでございます。
  77. 野溝勝

    野溝勝君 そういうことは一般的な事務的なことで、そんなものは国民生活安定向上で尽きておることで、こんな文句を入れられぬでも用は足りておると思う。しかし、それはまあ別にあっても差しつかえないことでございますから。その内容を見ると、住宅、中小企業、農林漁業金融、上下水道、文教施設、地域開発云々、こういうことになっておるのでございますが、今回の財政投融資額を見ると、八千五百九十六億、そのうち国民生活方面には五一・二%、資本関係というか、財閥関係というか、とにかくこの方面は、産業基盤整備、輸出振興、基幹産業として四八・八%、国民生活のほうに五一・二%の配分率でできております。ところで、新聞ではいろいろ伝えられておりますが、解放地主の生業資金として二十億の措置を講ずるということなんでございますけれど、それは一体どこから出るのですか。
  78. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御指摘の点につきましては、国民金融公庫への出資二十億円のお話であると考えますが、これにつきましては、一般会計からの支出でございます。
  79. 野溝勝

    野溝勝君 まあ一般会計からの支出ということならば、ここの産投とは別なものでございますから、これ以上触れませんが、財政法とは関係あるわけですね。そうすると、財政法から見て、一般会計から出すというのであれば、それはどういう名目で出すのですか。
  80. 石野信一

    政府委員(石野信一君) お尋ねの点にぴったりお答えすることになるかどうかわかりませんが、要するに、一般会計から二十億国民金融公庫に出資をいたしますのは、これは必ずしも農地被買収者の関係の貸付と結びつくわけではございませんで、これは国民金融公庫全体の資金の量の問題及び資金コストの問題というものを考えまして、従来国民金融公庫は一般会計から出資をいたしておりますので、したがいまして、二十億一般会計から出資をいたすわけでございます。したがいまして、国民金融公庫の全体の資金の原資、その運用として、国民金融公庫の貸付の一部として二十億円を被買収者の関係に貸し付けると、こういうことでございます。したがいまして、一般会計から出します場合には、これは特にその二十億を被買収者のために使うのだというふうに結びついているわけではございません。
  81. 野溝勝

    野溝勝君 そうすると、この産投予算のうちで、中小企業方面に対して千二百十五億が配分されていますが、これは貸し出しワクで三十六年に比較して一八%増になっています。しかし、これは他に比べて増のパーセンテージが低いように思う。このようになったのは、その二十億というものがこっちのほうから回るやつをあっちのほうへ引きずっていっているというようなことがあるとも思われるのだが、その間の事情はどうかね。これは中小企業局長にもお伺いしたいのでございますけれども、まあ主計局長から。
  82. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ちょっと、はなはだ恐縮なんですが、今の産投予算とおっしゃっておりますのは、財政投融資計画でございましょうか。その計画の分数の表か何かですか。
  83. 野溝勝

    野溝勝君 そうそう。
  84. 石野信一

    政府委員(石野信一君) そういたしますと、さっきから申し上げております一般会計とか産投会計予算でなくて、財政投融資計画全体の配分の比率の問題をおっしゃっておるわけでございますか。
  85. 野溝勝

    野溝勝君 そう。
  86. 石野信一

    政府委員(石野信一君) それじゃ、理財局のほうからお答えいたします。
  87. 鈴木喜治

    説明員(鈴木喜治君) ただいまの先生のお話は、財政投融資についての使途別分類を基礎にしてのお話かと思いますが、ただいまの国民公庫に対する一般会計の出資は財投計画の一応外になっております。これは外と申しますのは、機関別の表には載っております。その機関別の表の自己資金の欄に含まれておる、こういうことでございます。したがいまして、使途別分類のほうには、財政投融資計画八千五百九十六億の使途別分類をやっておりますので、自己資金分につきましてはそういうものはやっておりません。そういう点かと思います。
  88. 野溝勝

    野溝勝君 そうすると、その二十億というのは自己資金分として扱われておる、こう解釈していいですか。
  89. 鈴木喜治

    説明員(鈴木喜治君) 財政投融資計画は、御承知のように、産投会計からの出資及び資金運用部簡保資金からの融資、それに政府保証をつけました交付債借入金、これの合計を産投予算の計として上げておりまして、各機関別に見ますと、その資金量を決定しますのは、そのほかの回収金でありますとか、一般会計からの特別の出資とか、こういうのを合わせて、それも自己資金としまして合計を出しております。したがいまして、産投予算に載りませんが、各機関の資金量には載っている、こういうことでございます。
  90. 野溝勝

    野溝勝君 そうすると、それでは今の二十億融資の問題については、ほかの機会にまたひとつ聞くことにいたしまして、次に私がお伺いしておきたいことは、この財政法が、憲法において明確になっておるにかかわらず、どうも最近の動きを見るというと、財政法が何だかわれわれの理解のできないようなふうに応用されておるように見られるのでありますけれども、これはまことに遺憾だと思います。たとえば産投でもそうですし、産投の中に含まれているガリオア・エロアというような、この資金ですけれども、これなどは、最初吉田内閣当時におきましては、別に、これは借り入れたものというようなことで国会の承認を得た覚えは決してないのでございますが、それが今度は払うときには国会の承認を得るんですけれども、こういう点が実に私どもはよくわからぬのです。きょうは、これは非常に政治性もあることだと思いますので、大臣もおりませんから、この点は私は質問は後日にいたすことにいたしたいと思いますが、まあこういうようにあいまいな点がたくさんあるのですね。特に憲法の第八十三条には「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」、第八十五条には「国費を支出し、又は国が債務負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」、だから今のガリオア・エロア資金というのは実におかしいのだ。ああいうおかしな、わからないようなことがだんだん、都合のいいようにこれを解釈していくということになると、今後の財政計画というものは非常に混乱してくると思うのです。この点は、すでに予算委員会等におきましても相当論議になりまして、大蔵大臣も非常に苦しい答弁をされておったのでございますけれども、こういうものに基づいてできる施策というものは、これは将来非常に問題を起こすと思いますので、いずれまあ大臣が来た際にこれらもあわせて私は質問したいと思っていますが、きょうはその点は省略いたします。  そこで、特に財政に関係したことですけれども、最近中小企業が非常に経済上行き詰まりまして、金融面もありますし、その他ありますけれども政府の施策が徹底しないということで、各地に問題を起こしている。こういう点について、特に将来の中小企業というものをどういうふうに一体育てていこうというのか、あるいは貿易の自由化にあたって、経済上、金融上いろいろの問題を起こしているのですけれども、中小企業の指導育成に当たられている官庁の中小企業局長も来ておられることでありますので、この際私は見解をお伺いしておきたいと思う。特に今、中小企業基本法とかなんとかというものができると言っておりますが、そんなものよりも、現実の中小企業者が困っている問題をどういうふうに一体解決し、どうしていこうとしているのですか。もっと具体的にいえば、貿易の自由化といいましても、資金量のない中小企業などはこれすらも私は受けて立つことができいと思うのです。そういうような場合に、一体どういうふうに考えておられるのか、この点ひとつお伺いしたい。
  91. 加藤悌次

    説明員(加藤悌次君) ただいまの先生の御質問、まことにごもっともな御意見だと思っております。中小企業と申しましても、いろいろその規模におきましても、また業種におきましても、非常に種々雑多に分かれておりまして、これをどういうふうな考え方で処理するかということは非常にむずかしい問題がございますが、私ども簡単に申しますと、今しきりに言われております大企業との間の二重構造の解消、つまり生産性にいたしましても、あるいは中小企業に働く従業員の所得にいたしましても、大企業との間に非常に格差があるという点でございまして、この格差をできるだけ縮めていくということに中小企業の行政の重点を考えておるわけでございます。  そういう考え方からいたしまして、何よりも中小企業の体質の改善、具体的に申しますというと、経常の近代化と申しますか、これを進めていきたいということで、経営の近代化のためにいろいろ施策を講じておりますが、何よりも生産性を引き上げるための措置といたしましては、設備の近代化をはかる必要があるのではなかろうかということで、これは相当国の予算もつけまして、設備の更新等の助成をやっているわけでございます。国の助成といたしましては、近代化助成費と、申しておりますが、本年度予算で三十五億、それから協同組合等の共同施設に対しても助成をやっておりますので、こういうものを合わせますと、四十七億五千万円ばかりの助成をいたしているわけでございます。なお、それだけでは十分ではございませんので、問題になります中小企業の金融の疎通の問題といたしまして、やはりそれと並行して重点として考えているわけでございます。  で、中小企業の金融は、何と申しましても、一般的に大企業と比べて金融ベースに乗らないという点がわれわれは頭痛の種になっているわけでございまして、そういう点から、今問題になっております産業投資特別会計からの出資もその一つでございますが、いわゆる政府金融機関、あるいはこれに準ずる商工組合中央金庫等に対する政府財政資金を投入していただきまして、こういったものを中小企業の設備の近代化なりあるいは投資、運転資金の一部にということで、これを重点的に中小企業に流しまして、それと同時に、民間の一般の、中小企業専門金融機関は当然でございますが、その他の市中銀行あるいは地方銀行もまた政府財政資金に誘導されてそちらへ向くというような方向で考えておるわけでございます。先ほどちょっとお話ございましたが、本年度の中小企業向けの財政投融資金額、これは昨年度に比べまして三四%ばかりふえております、トータルして千百二十五億でございますので。商工組合中央金庫に対する産投からの出資二十億も、その一部になっておるわけでございます。全体の先ほど一八%というお話があったわけでございますが、これは昨年の当初の中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫、こういった三つの機関の全体の貸付規模を今年度の計画と比較してみますというと、一八%ふえておると、こういうことになっておるわけでございます。中小企業というのは、後承知のように、非常に景気変動に左右され、その影響をまともに受ける。最近問題になっております大企業の金融逼迫のしわ寄せを受けるというふうな懸念もございますので、はたしてこの貸付規模でいいかどうかという問題もあるわけでございますが、これは今後の経済情勢の推移を見ながら十分対処していきたいというふうに考えております。それから、中小企業の体質の改善の中でもう一つ重点として考えられますのは、経営のやり方が非常に非近代的と申しますか、いわゆる大福帳式の経営が非常に多いわけでございます。また、技術についても非常に立ちおくれが顕著であるということでございまして、こういった経営の両あるいは技術の面の改善ということで、これもかなりの国家予算で助成いたしまして、それの近代化のための指導助成をしておると、こういう状況にあるわけでございます。  それから、さらに、まあ輸出振興等にも関連するわけでございますが、中小企業のもう一つの非常な欠点と申しますのは、お互いの競争が非常に激しい。そのために原価を切っても品物を売るというふうな状況がございまして、これは非常に中小企業全体のためにも困るし、また特に当該生産する物が輸出品である場合には、非常なダンピングというようなことで、長い目で見たわが国の商品の輸出振興という面から非常に問題がございますので、そういった面の措置といたしましては、弱い中小企業者がお互いに集まって一つの組織を作って、その組織の中でひとつ協同してやっていこうじゃないかという考え方から、これは組織は今大ざっぱに申しますというと二つの類型に分かれておりますが、一つは、大企業に対抗するため弱い者がお互いに集まってまとまるという意味で、いわゆる協同組合と申しておりますが、そういった組織をいろいろ指導していく。それから、過当競争が非常に激しい、しかもこれが輸出の上にも非常に影響があるという面におきましては、中小企業の団体組織法というのがございますが、その中で商工組合という組織がございまして、この商工組合という場でいろいろと中小企業の方が過当競争をやめようではないかというふうな考え方から参りまして、いろいろ協定、約束をいたしまして、安売りをしない、あるいは無謀の設備競争をしないというふうなことで、この商工組合と前に申しました事業協同組合、この二つを組織の中心として組織化を推進するというふうな考え方で進めておるわけでございます。  それから、もう一つ、特に最近問題になっております小規模零細事業者、これは半ば企業であるとともに生業である。特にこの中には多数の小売業者等も含まれるわけでございますが、そういったものにつきましては、税制の面でも金融の面でも、それから組織の面でも、また特別の対策を持っておりまして、本年度もさらに、予算の面等におきましても、あるいは金融の制度の面の上におきましても、新しくいろいろの面を考えておりまして、そういった小規模零細事業者の事業の安定あるいは発展をはかりたい。  まあ、大ざっぱに申し上げますというと、そういった面からいろいろ現在措置を講じておるような次第でございます。
  92. 野溝勝

    野溝勝君 今、中小企業庁の振興部長からいろいろとお話がございましたが、私の聞きたいのは貿易関係のことですがね。貿易関係はどのくらいの比率になっておるのですか、中小企業と大産業との。
  93. 加藤悌次

    説明員(加藤悌次君) これははっきりした統計がございませんで、推定の面も相当あるわけでございますが、最近の推定の数字を見ますと、大体全体の輸出品のうちで、金額で五二、三%くらいのものが中小企業で直接生産なりあるいは関与したものの金額である、こういうことであります。
  94. 野溝勝

    野溝勝君 その最近の資料を、また出して下さい。
  95. 加藤悌次

    説明員(加藤悌次君) ちょっとお尋ねしたいのですが、非常にむずかしい統計でございまして、ごく最近のものがなくて、昭和三十三年くらいまでのものならできると思うのでございますが、一応そういうことで……。
  96. 野溝勝

    野溝勝君 そこで、今、振興部長は税金の面でも考えておるというがね、税金の面では考えておると言えないのだ。たとえば地方税などについても、所得税の問題はさることながら、今度は住民税を改正して、それで都道府県民税の税率が従来は〇・八%から五・六%までの累進であったものを、今回の改正は所得百五十万円を境として二%と四%の比例税率に改正しようとしているんですよ。そうなってくると、実に零細所得者は二倍半という増税みたいな結果になるのですよ。そういう点はどういうふうに一体税制上努力しておると言われるのですか。中小企業庁長官も来たから、ひとつ長官から。
  97. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 税制の問題につきましても、私どもとしましては、所得税あるいは地方税その他全般にわたりまして、できるだけ中小企業の負担を軽くする意味において、大蔵省に御配慮を願って参っておるわけでございます。ただいまお尋ねの点、私ども計画のところは低くなっておるものと考えておりましたのですが、ただいまお尋ねでちょっと理解がいきませんもんですから、なお検討さしていただきたいと思います。
  98. 野溝勝

    野溝勝君 どうもまだ深くその点は当局も検討されておらぬようでございますから、十分こうした点はひとつ検討されまして、善処を願いたいと思います。  次に、私がお伺いしたいことは——経済企画庁の大来さん見えておりますか。あなたはたびたび紙上で、なかなか堂々たる御意見を吐かれているのですけれども、私もあなたの良心的な意見に対しましてはある程度納得するものもあるのです。しかし、あなたが、昨年の経済審議会第三部会における審議の中で、所得倍増計画に関し、三十一年度、三十二年度の国民所得なり投資なり々基準にするには、その当時、三十五年の大きな経済構造の変化で違いがあり過ぎると強調されている。その説は正しいと思ったが、何ゆえその後においてあなたの説が政府に強く滲透しなかったか。この点、私も非常に不愉快に思っているのですけれども、経済審議会の結論というものは、その当時と今日とどういうふうに一体考えられておられるのか、この際あなたの御意見を拝聴したいと思うのですけれども
  99. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) ただいまお尋ねの点は、昨年、かなり前の経済審議会の審議の問題につきまして、ある新聞に出ました記事のことかと存じます。当時倍増計画がアフター・ケアということで、計画と経済の実際の動きと対比するような検討をいたしておりました際に、この倍増計画の作成は、経済審議会で昭和三十五年のまあ春から夏、秋にかけておもに作業をやっておりまして、そのときに国民所得経済計算の実績といたしましては、昭和三十三年度までしかまだできておりません。これは私どものほうの研究所で毎年国民所得統計を作成しておりますが、そのために三十三年が当時一番新しい国民所得の実績でございまして、それから従来の経験から考えまして、単年度だけをとりますと、景気変動の影響がいろいろございますので、三十一、三十二、三十三と、三十一年は相当景気のいい年でございました。三十二年も比較的よくて、三十三年はややなべ底不況といわれた年でございますが、そういう景気の一循環を含んだような時期をとりまして、それを計算の出発点にいたしたわけでございます。ところが、昭和三十四年以降非常に急激な成長がございまして、ことに経済構造といいますか、投資と消費の関係で、全体の国民総生産の中で投資に向けられる部分の割合がかなり大きく変わって参ったわけでございます。簡単に申しますと、三十一——三十三年当時は、三割程度が大体政府、民間を通じます投資として用いられておったのでございますが、三十四年、三十五年は三割五分前後が投資に向けられるような経済の構造になったわけでございます。当時私どもとしましては、これはやはり一面におきまして景気の変動が反映している。大体において景気上昇期には投資率が上昇いたしまして、景気の沈滞期、停滞期には投資率が下がるというのが従来からの実績でございますので、三十四年度あるいは三十五年度の上昇期に投資率が上がることは当然予想されるわけでございますし、倍増計画というのは約十年という長期の期間でございますので、短期の変動をそのまま用いることはできないわけでございますが、それにしても、従来の投資の水準よりやや高くなってきた。これがどの程度が短期的な問題であり、どの程度が長期的な傾向であるかということが問題になりますというような事実を、たしか会議で説明いたした記憶がございますので、経緯は大体そんなことであったかと存じます。
  100. 野溝勝

    野溝勝君 大臣も来ておりますので、この際、私が大臣のほうに先に簡単に御質問しておきたいと思います。大蔵大臣、先ほどですね、まあ経済全般に関係したことでございますので、私は主計局長と農林省の当局に質問したんですが、それはあなたも御心配を願いました長野県、まあ全国的にそうですが、長野県が一番災害がひどかった。その災害に対して、今日三割くらいしか復興しておらぬわけです。それで、こまかいことを先ほど聞きました。ところが、当局は、来月中に成案をまとめて具体的に措置をするということになっておる、こういうお答えでした。ですから、大臣もひとつ、この災害に対する措置に対して促進をするように、あなたからも御鞭撻を願いたい。この点をあなたからお答えを願えれば、私のあなたに対する質問はそれで終わる。
  101. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 承知しました。
  102. 野溝勝

    野溝勝君 そこで、ひとつお伺いしておきたいのですが、最近の国際収支の事情を見ても、依然として三億七千万ドルの赤字を出しておるのでございますが、これで政府当局は強がりを言っておりますけれども、実際これは人民から見ると、どうも日本の経済は不安定ということに尽きると思うのでございますがね。何かいいそれを裏づけるようなものはありますかな。今までの抽象的なお答えだけでは、具体的にこういうふうに赤字が出てくる情勢のもとにおいては、われわれは信頼ができないですがな。たとえば貿易関係におきましても、先々明るい情勢は見えないし、さらに金融関係においても、先ほど来中小企業のほうでも言いましたごとく、資金関係が円滑にいかないためにせっかくの計画もなかなか思うように運ばぬというようなことであると思う。ひとつこの際、あなたの所見をお伺いしたいと思います。
  103. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 今資料を持ちませんですが、貿易関係は御承知のように、三十六年度を締めまして、経常収支の赤字が十億ドル、資本収支の黒字が六億二千何百万ドルということで、総合収支では三億七千何百万ドルかの赤字を出すということでございますので、三十六年の当初における政府の国際収支の見込みというものも大きく狂ったことは事実でございます。したがって、昨年の後半からこの国際収支の均衡回復ということを重点に置いたいろんな施策をとって参ったのでございますが、この施策は私は今のところ経済のいろんな面に効果を出してきております。ことに国際収支の面におきましては、それまで毎月一億ドルぐらいずつの赤字になっておったものが、その赤字幅がだんだんに狭まって参りまして、三月には経常収支の赤字も非常に少なくなって、総合では黒字を出しておりますが、そこまで国際収支の姿はよくなってきているということはまず事実でございます。というのは、輸入が鈍化してきましたし、輸出は少しずつ伸びてきている。特に対米輸出が昨年に比べて非常によくなってきましたから、そういう面におきまして国際収支の赤字幅というものははっきり減って参りました。  しかし、ただ今後の見通しの問題としましては、高水準の生産が私どもの見込みのとおり落ちてこない。この調子でいくというと、先行き輸入が減っていくという傾向が見られませんので、今政府の予想しているような四十八億ドルの輸入で済む状態になるかどうかということについて非常に問題が出て参りましたので、私どもはその方向を心配していろいろの現状分析を各関係省とも連日やっているという状態でございますが、確かに一、二、三というふうに政府が最初考えたような生産の減退というものはない、多く見られない状態ですが、過去二回のときを見ますというと、やはり引き締め政策というような政策をとった効果というものはたいてい六カ月目に出ているというような数字になっておりますが、それから見ますと、今度は引き締め効果というものが生産段階に響く効果というものは一、二カ月ずれているということは事実でございますが、しかし、製品在庫のほうが非常に多くなっているというような実情から見ますというと、私はこの四月から生産調整も行なわれていく段階にも入っていると思いますので、この四月の数字がまだわかりませんが、四月から生産がある程度落ちていくということだけはもう必至でございますし、電力量の消費から見ましても、そういう結果が四月には出てくると思いますので、この四月、五月の傾向を見れば大体輸入の動向というのもはっきりいたしますし、政府の当初の見込みどおりの、大体ことし一年間で総合収支の赤字も一億ドル程度に食いとめるというのが、今のところの運営の目標でございますので、その程度のもので少なくともいく。それよりよくしようというのが私どもの考えでございますので、そういうふうな運営はどうしてもやるつもりでございますが、今の、ほかのほうの効果ははっきり出てきているのに、生産段階における効果がまだ十分でないという問題が、この四月、五月、どういくかという見方に私はかかっているのじゃないかと考えております。今のところは、国際収支の赤字が多く出るというふうな情勢にはなっておりません。信用状のベースのあれから見ましても、機械受注は激減しておりますが、機械受注の様子を見ましても、今後相当大きい設備投資が起こって、生産がそう落ちなくて、輸入がふえて、国際収支が大きく悪化をするというような方向は現在のところ示していませんが、しかし生産水準のあり方によっては、そういう後半期均衡させるという見込みがくずれるかもしれぬというような心配は十分ございますので、私どもはこの一、二カ月の様子を見ていろいろ対処したい、こういうふうに考えております。
  104. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 委員長から各委員に申し上げます。大蔵大臣は正四時にイギリス商務長官と面会の約束がありますので、三時五十分まで出席いたしますことを御了承願います。  野溝委員に申し上げますが、大臣に対する質疑者がほかにもありますので、その点をお含みの上御質問願いたいと思います。
  105. 野溝勝

    野溝勝君 もう一点、この際お聞きします。大蔵大臣はただいまのようなお答えをしておりますけれども、これは佐藤通産大臣が来ておるとよかったのでございますけれども、来ておりませんので、この際お伺いしておくのですが、通産相は九日の日に、貿易関係の有力メンバーと懇談をいたしまして、その際に、三十七年度の輸出目標四十七億ドル達成のため各商社は昨年度の実績を一五%上回る輸出を責任を持って努力してほしいということを要望したらしいのですが、諸種の事情から勘案して、なかなか容易でないと思うのです。しかし、また一方、貿易業者の答えとしては、それを達成するためには五つの問題を出しておるわけです。一つは、輸出保険、輸出金融を強化してもらいたい。あるいは、過当競争防止に努めるが、なかなかむずかしい事情だ。三番目には、通関手続の簡素化、港湾設備の整備を進めてほしい。四つは、共産圏との貿易は政治と切り離して実施する政策を打ち出してほしい。五が、通産、大蔵、外務省らの関係官庁間の仕事の割り振りをはっきりしてもらいたい。こういう五つが要望されておるわけです。先ほどの中小企業庁の意見によりましても、中小企業のほうでも五一%ないし五二%は、貿易の量としての比率を中小企業は守っておるわけなんですね。そうすると、この方面の努力を払わぬで、ただ大手メーカーや貿易業者の協力というだけでは、なかなか計画がうまくいかないと私は思うのです。特に大手商社もこういうことを言っておるのですが……。そこで、大蔵大臣としましては、通産大臣とも始終打ち合わしておることと思いますが、この一五%増といいますが、前年度を一五%上回らなければ輸出目標を達することができないと言っておるわけです。この点の展望につき、大臣の御所見では私は甘いように思うのです。それから、それに対してはこういうことをしてもらいたいということを五つ出しておるのですが、そのうち共産圏との貿易は政治と切り離して実施するような努力をしてほしいというのです。こういう点について大臣初め政府当局間では具体的な話をしたことがあるでしょうか。その点に対する、これは大臣個人の所見でもよろしゅうございます。
  106. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) それはもう、たとえば共産圏貿易についての延べ払い条件の問題とかというような問題は、通産、大蔵が始終事務的にも連絡してやっておることでございますし、共産圏貿易はこの際できるだけ振興するという方針で、まあ打ち合わせをしながらやっておりますので、これは実績を見ればおわかりと思いますが、新しい協定によっても相当今年度はこの面でも貿易は拡大するという方向になっておりますし、この方針はもう政府部内ではっきり確立して、方針としてやっております。
  107. 野溝勝

    野溝勝君 日ソ貿易のほうにおきましては、そういう大臣の御所見は私もわかるですが、日中貿易のほうは依然として政府は力をあまり入れてはおらぬのじゃないですか。こういう点は、大臣、これはもう率直に反省されたほうが私はいいと思うのですが、その点についての困難な点があったら、ここでお答え願いたいと思うのです。
  108. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) これは日中貿易を促進するにましたことはございませんし、日本にとっていいことであり、また中国の現状から見ましても、中国建設が日中貿易の促進によって利するところが大きいという現状ははっきりしておりますので、この打開はどうしても私どもは必要だと考えて、すでに何年か前でしたか、ああいう形で、徐々に日中貿易の拡大をはかってきたのをああいう事情で一時中断されたということは、私非常に遺憾と思っておりますが、何とかこれを打開する方法はないかということで努力をしましても、現状においては、もう御承知だと思いますが、そういう事情でこれが進まずにいるということでございますので、これは両国がもう少し適当な話し合いという方法を講じて打開しなけりゃならぬと思いますが、やはり障害は何といっても私は中国のほうの方針や態度にあるので、なぜ西欧諸国そのほかとの貿易においてはこの政経分離をはっきりして、それにこだわらずにやっておりながら、対日貿易についてはこれは不可分であるという方針で臨まれるか。政経というものを別に、貿易は貿易というふうに別に分離して臨むという一つの方針があるのなら、日本との貿易打開の問題は立ちどころにできる問題でございまして、やはりこういう方針については、われわれの努力が足らないといえば足らないことでございましょうが、そういう点の踏み切り方いかんによってこれは進展する問題だと思っていますので、私どもはこういう問題についてやはり中国へも相当働きかけをすべきだと考えております。
  109. 野溝勝

    野溝勝君 それじゃ、もうお答えは願わぬでもよろしいのですけれども、何といいますか、日本の経済的危機の際にこれを乗切りるということが第一なんでして、あまりに一つ政治的論議で、一つ政治評論みたいなことで政治を私は扱うべきものじゃないと思うです。やはり中国の方では政経は分難すべきものはない——もちろん分離するといってみたところで、実際においては政治、経済は分離するなんというそんな理論のあるものでもないし、また言うこと自体が実際はおかしいです。それよりも、当面の日本の経済的な一つの不安を乗り切るにはどうするかというところに重点を置かれて、当局もひとつ善処してほしいと思うです。特にアメリカにばかりそう気がねをしなくても、私は日本の人民としては、人民の幸いになるということのほうが政府としてはやるべきものである、こういうふうに考えております。しかし、今お話のありましたごとく、政府としても、われわれ社会党の政府じゃないから、そうしろと言ってみたところで、それはあんたのほうでもそうは聞けない点もあるかもしれない。しかし、この際はやはり人民の不安を解消するということに重点を置いて努力されたほうが私は正しい政府のあり方だと、こういうふうに解釈しております。そういうふうに善処を願いたい。
  110. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) まあ古い話ですが、私が通産省に参りましたときには、向こう側との話において政治と経済は別だ、そういう方針でいこうじゃないかというところにある程度の合意があって、それを土台にして日中貿易を一億ドル近いところまで持ってくることを現に私はやって参ったのですが、その後ああいうことになってとまってしまったということを見ますと、私は昔の経験から見まして、一ぺんそういう踏み切り方をして、それを前提として進めてあるところまで行っておったのですから、これがまたお互いにもとの立場でさらに出直して日中貿易を促進しようじゃないかという話が少なくともつかぬはずはないという気がします、両国が努力するなら。それを政治論でそういうふうに不可分であるというふうに原則をきめられていったのでは、これは現実問題として一歩も進まない、これが今の姿じゃないかと思っております。
  111. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連して。野溝さんの関連で一言。野溝さんの質問に関して、大蔵大臣も努力するとおっしゃっておりますね。それはまことにけっこうだと思うのですが、実際に具体的にどういう努力をしていらっしゃるのですか。それが一つも私たちにもわからぬし、中国側にもわからないわけですよ。中国側も、日本の政府が誠意を持って努力するのだといえば、これは話が僕は結びついてくると思うのですがね。何も具体的に努力しないで、努力する努力すると言っているだけで、そうして何か事があると、それを打ちこわすようなことになってくるのでは、これは中国側だってどうにもならぬ問題だと思うのですがね。水田大蔵大臣、どういう努力をしていらっしゃるのですか、実際に。ちょっとこの際一ぺん、重要な点ですからね。
  112. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) まあ実情を言ったら、努力したがっておるが水をかけられちまうほうが多いという現状だと思います。むしろ社会党やあなた方のほうが行ってその筋ぐらいつければいいのですが、政経不可分論に同調なんか皆されてこられたのでは、とっつきがなくなってしまうということになるのですから、これはそんなことい言わぬで、貿易は貿易で別にひとつやろうじゃないかという努力を、私どももしますから、ひとつ話しいいほうの人もそういう方向でいってくれなければいかぬと思うのです。
  113. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ただ、いいけれども、もう一点だけ言っておきますよ。それは僕らだって大いに努力していますよ。昭和二十八年以来各党の議員が行って筋道をつけたのも、その一つの現われですね。私は、常に社会党と共産党はそれはもう一番熱意を持ってやっているということが言えると思うのですよ。しかし、政府が誠意を見せないから工合が悪いのですよ。何も政府にやってくれと私たち言いませんよ。それは政府がやるのが一番いいのだけれども政府は黙っておってもいいけれども、誠意を示さなければだめですよ。誠意を示さなければ向こうが信用しないですよ。これはまあ水かけ論になるかわからぬけれども、しかし、大蔵大臣があそこまで言うなら、何とか政府としても誠意を見せたらどうだ。そうしたら話が進むと思うのですよ。社会党も共産党もやってこいというなら、行きますよ。私たちは喜んで行きますよ。行きますけれども政府が誠意を見せないで、私たちが積み重ねた石ころをさいの河原の何じゃないけれども、すぐこわすことばかり政府はやってくれるから、できないので、大いに誠意を持ってやって下さいよ。重要な問題ですよ、これは。大蔵大臣が誠意をもってやると言っているのだけれども、具体的に問題が何にもないから僕は言うのですけれども、まだたくさん質問したいのですよ、そういうことについて。
  114. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) いろいろ、われわれも今そういう問題については考えております。
  115. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も、中共貿易問題が出たので、若干質問したいというふうに考えるのですけれども財政法二十九条の問題について特に大臣に質問をする、そういう約束をしておる関係で、せっかくの中共貿易の質疑にちょっと水を入れるような格好になって実は恐縮しているのですが、約束は約束ですから、二十九条の問題について大蔵大臣に質問をいたします。中共貿易の問題については、この会期中にあらためてひとつ時間をとってやる、こういうふうにしてもらいたいというふうに考えるわけです。  そこで、私が大臣に質問したい点は二つあるわけですが、その一つは、二十九条の改正ですね、この問題を検討される場合に、今政府がとっている金融政策あるいは財政政策ですね、そういうものと関連をして検討をされたかどうか。これは非常に抽象的な質問ですから、もう少し具体的に申し上げますが、政府は昨年の九月以来景気調整のために主として金融面から引き締め政策を推進されてきた。けれども、この財政面からの景気調整政策、こういうものはほとんどないといってもいいんじゃないかと、こういうふうに私は感じておるわけです。特に昭和三十七年度予算、これは私本会議の質問でもちょっと触れたのですが、二兆四千億というこれは確かに大型予算です。税の自然増収が相当多額に上っておる。で、その自然増収をほとんど財政支出に組み入れて、そして大型予算を作った。こういう点から考えると、政府は金融引き締めによって景気調整をはかろう、そういう政策と、それから三十七年度のいわゆる大型予算——税の自然増収を減税にも若干充てましたれけども、その額は非常に小さい。大部分は大型予算に組み入れた。このことはやはり景気調整とは反対の、むしろ景気を刺激する、そういう性格を三十七年度予算は私は持っていると思うのです。ですから、どうもこの間に矛盾した考え方、こういうものがあるように判断せざるを得ないわけですね。こういう点から、三十七年度予算を組むときに、やはり景気調整のための財政支出という問題を大蔵省としては検討されなければならぬ問題であったと思うのですね。そういう問題がどういうふうに検討されたのか、またこれが財政法上いろいろ疑点があったのかどうか。どうも私ども見ておって、政府の施策にちぐはぐがある、金融政策と財政政策においてちぐはぐがある、こういう感じを強く持っておるわけです。大蔵大臣、こういう点を率直に、もう予算も通っているんですから、ひとつ率直にお話し願って、答弁してもらいたいというふうに思うんです。  で、どうも今度の二十九条の改正は小手先の細工にすぎないんじゃないか。特に前の国会で大蔵大臣は、この委員会でもお話しになったようですが、いろいろ疑義がある、次の国会ではこれは手直しをすると、こういうお話がありました。そういう委員会なり、予算委員会でもあったんだろうと思いますが、そういう関係でとりあえずこういうことをやったんじゃないかという、非常に小手先の感じを受けて、いわゆる財政法全般の検討をしないで、まだ終わらないで、これだけひとつ約束をしたからやるというふうな、そういう感じを非常に受けるんです。また、政府のとっている政策との関連においても、もっと深く財政法を検討する必要があると思うのです。そういうこともなされないで、この国会でそういうことを言い出されておる。何かその場のがれのような、率直にいってですよ、感じを受けているわけです。ですから、この際率直に、私の先ほど申し上げたような点について、率直な見解を伺っておきたい、かように思うんです。
  116. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 財政法全体については、これは本格的に検討すべき問題がたくさんございますので、これは私どももいろいろ検討しておりますが、大きい問題をも含んでおりますので、これは早急の期間では結論がなかなか出ませんので、間に合いませんでした。しかし、全体の検討とは別に、財政法二十九条の問題はすでに国会で疑義を生じており、政府側もこの問題は検討して解決するという約束をしたものでございますから、財政法全体の検討とは切り離して、本年度においてはこの問題の疑義をなくして解決するという点にしぼって、この問題だけの解決をはかったということは事実でございます。ですから、今後まだ財政法全体の問題としては、私ども引き続き検討していくつもりでございます。  それから、景気調整との問題でございますが、やはり内需を抑えるというような、そうして国際収支を改善するというような目標を持っておる以上は、金融政策と対応した財政政策を用うべきことは当然でございまして、それをどういう形でこの調整をするかということについては、当然予算編成方針をきめるときに論議した問題でございますが、まあその過程において、当然、そういう目的である場合には、やはりよその国でもやっているように、減税という措置自身はおかしいじゃないかと、そういう目的を持つときの財政政策としては、むしろ増税という手がほんとうのあれではないかという問題も当然出て参りましたが、御承知のように、日本の税が、今実際において国民の負担実質において高いときでございますから、なかなか景気調整策としての増税というものをやるべきかどうか、その効果というようなものを考えて、まずこれは、私どもは今度はそういう増税策というようなものはとらぬということにしますし、その次はやはり支出を抑えるということはしなければなりませんが、その場合に、どれが必要経費でありどれが押えられる経費であるかという検討をいたしますというと、いい悪いにかかわらず、民間の経済が伸びてしまって、あれだけの設備投資が行なわれるということになりますというと、今後経済の均衡発展というものをはかると、そうして安定成長の線に持っていくという財政の役割を果たそうとする限りは、いろんなところにできた不均衡の是正というものは、これはやはり政策的に若干の問題があってもやらなければならぬ施策だということになりますというと、公共投資、それからやはり安定成長の基礎は社会保障の充実という、この問題を抜くわけには参りませんので、こういう点についての経費を今削減できる時期かどうかというようないろんな検討をしますというと、やはりそういう財政が当然果たさなければならぬ役割、それを果たすことによって安定成長の基礎がここで固まるという仕事をほうっておくということはできないという面から、まず必要経費の計算をするということで、必要な支出はこれは確保するという方針が当然立てられなければなりませんし、それともう一つは、今度は支出を多くするということの効果と減税の効果が、どちらが有効需要への喚起への寄与率が多いかというような問題になりますというと、支出をふやすよりもこれは減税というほうがそういう点においては景気調整策としては有効という結論から、減税もこの際思い切ってやって、そうして全体の支出は必要なものにとどめてあとを押える、そして予算規模を調整するということが一番現実的な方針でありはしないかというような、各諸点からの検討をやって、一応私ども予算規模、それに対応した減税の規模というものをきめたというのがいきさつでございます。  さて、そこで、それじゃ三十七年度にもっと調整の余地はなかったかというと、まだ私はあったとは思います。思いますが、それと三十六年度財政との結びつきの関連において議論が出ましたが、結局経済は続いておるんだし、国の財政というものも切り離されている問題ではございませんので、三十六年度に起こった事態のまだ後半が残っているときですから、財政政策としては、まず三十六年度の自然増を大きくたな上げして、必要最小限度補正予算にとどめて、残るものは大きくたな上げするという考え方が一番適切だ。その考えを入れて三十七年度との財政計画のつながりをつけることがいいという方針から、まず三十七年度の自然増を、二千億近いものになるでしょう、これをたな上げするという方針をとりましたので、この方針自体が相景気当の調整策としては実際には効果のあるものと思っておりますので、それとのつながりで三十七年度予算編成をやっているのですから、したがって、三十七年度内においてはそういう調整的な機能を果たす予算がそう多くなくてもいいと。千億程度のものを私たちは考慮したつもりでございますが、その程度の調整案である程度やっていけるのじゃないかということを考えて、その予算の編成をやったということでございまして、三十七年度自体の中にも、予算委員会でたびたび説明していますように、すぐに単年度の消費になってしまわないという資金への繰り入れというような性格を持ったものも相当考慮されてあるというのでございますから、それらの措置によって、特に経済が普通にいくのなら、三十七年度繰り延べというような、昨年度のような措置を何とかとらなくても済む程度の予算の立て方にしたいということも考えて、いろいろつき合わせて予算編成をやりましたので、したがって、よくこれは繰り延べをするということを予定しておるかどうかということもございますが、そういう三十六年度のたな上げ措置とあわせての考慮をやっておりますので、普通に、経済が見込みどおりいくのなら、特に繰り延べというような大きい措置をとらなくても済む程度の予算と、私どもはこう思っておるのですが、まあこれについて大き過ぎるとかどうとかいう、いろいろ御批判はございますが、私どもとしてはそういう計算も相当してやったつもりでございます。
  117. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 まあ政府の考えは一応今説明があったのですが、しかし、結果として考えた場合、その後の日本の経済の実情ですね、そういうものを考えた場合に、やはり三十七年度の二兆四千億という大型予算ですね、これが景気を刺戟しておるということは私は事実だと思うのですね。これは否定できないと思のですがね。そのために景気の調整が非常にその面から困難な度合いがふえているのじゃないか、こういうふうに思われるのですがね。最近の物価の高騰、そういう問題は、それは予算だけの理由ではないと思うのですよ。けれども、いわゆる政府がこれだけの大きな予算を組むということが直接間接にやはり物価の高騰を来たしておる、あるいは景気を全般的に刺戟しておるという事実は、おおうことができないのじゃないか、そういうふうに感じます。
  118. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 大型というのですが、三十六年度の歳入の実績を見ますというと、三十六年度の実績に対しては、私ども当初予算を終むときには千五百億くらいの増しか見ていないということでございますので、今までの経済の伸び方、予算のふくれ方から見まして、金額的にこの三十六年度より実質的に千五百億円以内でしょう、ふえ方が。それしか見ていないのですから、経済が伸びてきた実態に比べてみますというと、三十七年度予算額がそんなに大きいというものかどうか。編成した私どもの感じといたしましては、そういう感じがしないのです。ですから、初年度地方税、中央税を通じて千三、四百億の減税というものを入れて、減税の幅との調節で減税程度しか——程度でもないですが、実績に比べて千五百億円しか予算はふえていないということでございますので、税収の面から見込みをつけましても、どうしてもとにかく無理した額でないのじゃないかという私は気がしています。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連しまして。今荒木委員の質問に対して大蔵大臣は、三十六年度と三十七年度両方予算を通計しまして、そうして景気調整的な手がとられておると、三十六年度は約二千億くらい自然増収が第一次、第二次補正予算の済んだあとにおいてあったが、それはたな上げしておるのだ。それから、三十七年度予算においても、大体千億から千五百億くらい実際の購買力にならないような、たとえば公債償還とか産投会計繰り入れとか、そういうものもあるから、そこで実質的にはそんなに大型ではない、こう言われているのですね。ところが、荒木委員は、それにもかかわらず、実際においてはそういう景気調整的な実績が現われていないと。現実に私もそう思うわけですよ。その原因は、結局、財政の引き揚げを日銀の貸し出しで大体カバーしていると思うのですね。大体、日銀の貸し出し増加が財政の引き揚げに見合っておるわけです。また、政府もそういう方針をとっていると思うんですね。それから、外為のほうもそうですね。外為の引き揚げに対しては日銀でこれをカバーする。もちろん、財政の引き揚げの資金と日銀から出てくる資金とは、これはルートが多少違うでしょう。違いますけれども、全体から見る資金の需給ということから見ましたら、引き揚げ措置を財政ではとっておるけれども、景気調整的な措置をとっておるけれども、一方日銀のほうでこれをカバーするのでありますからね、日銀貸し出しで、ですから、実際的には調整がとれていない。そこで、現実に景気調整の実際の効果が現われてこないということになるんじゃないですか。ですから、三十六年度一千億引き揚げをしたから、これが景気調整になっていると、こう言いましても、これは日銀の貸し出しとの関係も考えなければ、私はそう言えないのじゃないかと思うのです。そこのところですね。  ですから、最初三十七年度予算を編成するときにいろいろ議論があったのでございましょう……。たな上げ資金を作るとか、あるいは繰り延べ予約をするとか、いろいろ議論があったと思うんですよ。それで、まあ結果としては、自民党のほうから反対があったようにも新聞では伝えられておりましたが、そういう措置は講じないで、そうして予算を編成したことになっていると思うのですね。ですから、私は、景気調整がこんにな重要な段階になっておるのですが、下期になると、この大型予算の影響が現実に出てくると思うのです。下期に、現実にですね。だから、ほんとうに景気調整として考えるならば、減税幅をもっと大きくすべきだったと思うのですね、大蔵大臣の言われたように。財政支出よりは減税のほうに向けたほうが景気調整機能が大きい。それは蓄積も行なわれますからね。全部消費するわけじゃありませんから。財政支出の場合は全部支出になりますからね。ですから、やはり荒木委員が言われるように、やはり大型予算というものが今の景気を刺激する要素になっているのではないかと、私も思うんです。それは、景気調整的なことを大蔵大臣は考えておられるけれども、それは日銀貸し出しで帳消しになっているのですよ。この点も何回も御質問しているのですが、この点は、実際、そういうふうにお考えにならないといけないじゃないですか。これは大蔵大臣なりあるいは政府委員に伺うんですが、その実態に即して御説明願えればけっこうです。その点、いかがですか。
  120. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) それは、揚げ超分のは貸し出しでふえているという姿は、確かにそうなっておりますが、しかし、そういう姿になったからといって、現実に経済が大きくふくれているときに、必要通貨量を潤沢に出しているかどうかという見方は、また別に見なけりゃなりませんので、むずかしい問題ですが、そういう形で、やはり日銀が窓口を通じて締めに締めても貸し出しがそれだけふえているということは、抑制されていないということではございませんので、それでも必要通貨量というようなものから見ましたらどれだけの締めになっているかという問題は、まだあとに残りますので、計算どおり政府で押えたものがそっくり行っていないじゃないかということも言えないと私は思っています。それでなけりゃ金融がもっと詰まらないで済むはずでございますが、明らかに金融が引き締め政策によって、今、詰まっているのですから……。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、その点は、財政が景気調整機能を果たしているかどうかを判断する場合に、その財政の引き揚げ超過分は日銀貸し出しでカバーしていることは事実なんです。それとそれとは、まあ私は一応別問題になってくると思う。ですから、そうやっていったのでは、財政の無気調整機能というものが実際には、いわゆるフィスカル・ポリシーと言っておりますけれども、果たせないのではないか。  それで、お伺いしたいのは、政府原則として財政の引き揚げ超過及び外為会計のあの引き揚げ超過については、日銀でこれをカバーする原則方針をとっておられるでしょう。まず、その点をお伺いしたいですね。そういう方針じゃないですか、一応。
  122. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ちょっと技術的な面もございますので、私からも御説明いたしたいと思いますが、財政の引き揚げ超過分を日本銀行の貸し出しでカバーをするという方針をとっているということではもちろんないわけでございます。ただ、実際問題として、通貨量というものが、経済の運営に必要なものが供給されていく、その場合の全体の量が支出等の関係から多過ぎるか少な過ぎるかという問題はありますけれども、とにかくそのときの経済に必要な通貨量というものは出ていく。出ていくその出て行き方が財政の払い超を通じて出るか、あるいは日本銀行の貸し出しのルートで出るかということになりますから、したがって、財政のほうが引き揚げ超過になりました場合に、経済の全体の伸びというものに見合う通貨量が従来より増加していくという形になりました場合に、その揚げ分よりも日本銀行の貸し出しがら出るほうが多くなるということになりますわけでございます。したがいまして、問題は結局、財政金融を通じて全体としての経済の運営の量と申しますか、規模と申しますか、それが国際収支等の点からいって多過ぎるか少な過ぎるかというような問題になるわけでございます。そういう意味では、今の経済情勢をどう見るか、今後だんだんと国際収支も回復していくというふうに見ていくのか、今のは大き過ぎかそうでないと見るかという問題だと存じます。したがいまして、この財政の景気調整作用という点につきして、私どももいろいろ理論的に考えているのですが、一がいにただ規模規模ということで、規模だけを問題にされますのも、またある意味ではまあ行き過ぎと申しますか、完全ではないということでございます。  と申しますのは、財政の役割というものもございます。まあ年々この景気調整のために、財政で、非常に緊縮財政を組むということになりますと、今まあ財政需要というものは日本の経済において非常に強いわけでございますが、これは災害関係とか公共事業、道路関係、その他社会保障関係、いろいろ考えまして、非常に財政需要は強い。そういうことであります場合に、年々の景気調整ということに重点を置いて、財政の規模を大きくしたり小さくしたりということはなかなかむずかしいのでございます。まあそれは百億、二百億調整するということでしたら、可能でありましょうが、その前の年に比べて千億減らすとかというようなことは、とうていできないというようなことになりまして、ある意味では程度問題になるかと思います。そういうことと同時に、長い目で見た場合に、財政が非常に必要な措置を怠っていくというようなことになりましても、経済の全体のバランスを失するという問題になりまして、なかなかその点がむずかしい点でございます。  その場合に、減税と歳出との関係で、どっちが景気調整的にあまり景気を刺激しないかという点で、一般的に減税のほうが刺激しないということはいわれますけれども、やはり歳出の、支出性質にもよりましょうし、その場合に、財政支出と減税とは、先ほど大臣のお話にもありましたように、相当歳入があるという場合に、それを減税さえすれば、財政規模さえ小さくすれば、それで刺激が避けられるというふうに、一がいにも言えないという問題もあるわけでございます。まあ減税の消費に対する刺激という面もあるわけでございます。そういう意味においてなかなかむずかしい問題もございまして、それじゃ財政のほうでたな上げをしたらどうかという議論もあるわけでございますが、これもまたたな上げをいたしました場合は、結局財政の引き揚げになります。引き揚げになった分だけ全部貸し出しのほうはそのままに押えて、通貨の収縮をはかるということが可能かどうかということになりますと、これは必ずしも経済の実態に合わない。そこで、まあ結局はそういったことで、財政の引き揚げ超過の部分をどの程度金融がカバーするか、その金融のカバーの仕方ということが実際問題としての景気へのコントロールと申しますか、経済に対するコントロールを果たしてきているというのが、従来の日本の経済の運営におけるやり方と申しますか、そういうふうになってきておると思うのでございます。そういう意味におきまして、財政法改正上景気調整資金を作ったらどうかとか、たな上げ資金を作ったらどうかと、まあいろいろ問題としては考えて研究をして参るべきでございまして、私どもはそういうことをいろいろと、まあいろいろの角度から研究はいたしておるのでございますが、外国のように公債を発行しておりまして、財政規模のほうを変更しないで、景気の悪い場合にはむしろ公債を発行して減税をすると、逆に景気のいいときには公債を減らして増税をするというようなふうな形には、今の日本の経済の情勢からぐすには参りません。そういうようなこともございまして、いろいろの問題を考えますと、これは慎重に十分検討する心要があるというので、今度の財政法ではとりあえずこの二十九条の改正ということで、今後そういった問題もよく検討したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ荒木さんが次の御質問ございますから、この点については簡単に質問いたしますが、要するに、今の日本の経済は自動調節機能というものがなくなっているわけですね。たとえば金本位じゃございませんから、管理通貨制ですから、金本位ならば自動的な調整ができるのですけれども。それから、為替相場も一ドル三百六十円でフィクスしているでしょう。為替相場によっても調整できない。それから、金利についても、かなり人為的な金利ですね。資金の需給関係に応じてこの金利が定まっているのじゃないのです、日本の場合はね。外国の金利が安いが、日本の金利が高過ぎるから、かなり人為的に金利を下げて指導していくということを大蔵大臣も言われておるのですからね。この自動的に調整する機能がないわけですよ、日本ではね。まあ日本ばかりでもないでしょうけれども、とにかく現状においてはありません。ですから、それは結局計画に基づいてやるより仕方がない、ほんとうはですね。単なる財政金融だけでなく、全体の長期計画を立てるならば、実施計画、まあ三カ年くらいなら三カ年、五年なら五年、計画的な実施計画というものを立てなければならぬわけですよ。それに基づいてやれば、そういう景気変動というものは一応調整できると思うのです。それなくしてやるものですから、そこで、やれ財政面で調整するとか、金融面で調整するといっても、実際にはさっきお話しのように、心要通貨量を供給しなければならぬということで財政揚げ超になればそれは補わなければならぬ、ということで、景気調整にはならぬ、財政面からですね。結局そこにあるのじゃないかとも思うのですね、結論は。そうじゃないでしょうかね。
  124. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 私からお答えするのがいいかどうかわかりませんが、今おっしゃる計画経済にしろというお話になりますと、これは基本的な考え方の問題で、計画経済になればすべてが計画どおりにいくかどうか。また、その場合にいわゆる統制的な国民の需要に対する影響とか、いろいろな問題があります。そういう意味で、基本問題で計画経済がいいか自由主義経済がいいかという問題は、これは考え方の相違かということになるかと思いますが、まあ今の経済でもできるだけそういう意味で自然調節的なことも考慮しながら、そうかといって昔の金本位制時代のようなことはもちろんできません。そういう意味で、管理通貨制度の範囲内で自然的な調整作用でいきながら調節をやっていく。結局、財政、金融と申しましても、両方とも大きな意味ではパブリック・ファイナンスであり、財政も、金融といえば金融、一般の金融と一緒になっての調整でございますから、そういった意味で、引き揚げ超過になれば、その場合の通貨量の確保をカバーする場合の金融の働き方というようなことは、総合的に考えられながら調整がされていく、こういうふうにいくべきじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも、今非常に日本経済の調整ということは非常にむずかしい、混迷に陥っているのじゃないかと思うのです。私は今すぐに統制経済、統制計画経済を言っているわけじゃありません。その前段の今の資本主義の経済のもとでも、一応三カ年あるいは五カ年ぐらいの財政でも実施計画というものを一応立てれば、違ってくると思うのです。こんなに長期所得倍増計画を打ち出しても、財政についてはちっとも計画というものがないでしょう。ですから、そんな十年も先の実施的な計画を立てろといっても無理ですよ。だから、少なくとも三カ年ぐらいについては実施計画を一応立って、それに合うようにいろいろな施策というものを調整していけばいいのですけれども、そうじゃなく、長期計画は立っていて、あとは出たとこ勝負ですよね。全体の通貨量を幾らといったって、これは幾らが心要通貨かなんというようなことは、はっきりきまりっこないですよ。物価が上がれば、上がっただけまた必要通貨ということになっちゃうのですからね。何をもって心要通貨とするかというようなことは言えないわけですね。ですから、やはり一番の私は盲点はそこにあると思うのですがね。だから、財政だって三カ年くらいの計画をはっきり立てるべきだと思うのですね。そういうものがないから、努力目標だといったって、努力していないですよ。実際は流されているのですから。実際は流されちゃっているのですから。そういう点に問題があるのじゃないかと思うのですよ。結局、実施計画がないということでしょう。つまり、財政でも金融でも、あるいは産業、貿易についていっても、当年度だけの見通しというものを作るだけでしょう。その見通しも、これはどうしてもそこまで持っていくという見通しじゃないのですね。努力目標なんです。努力目標ならほんとうは努力をするべきなんだけれども、努力もしないわけですね。情勢が変化してくれば、これをどんどん修正していっちゃうのですからね。そこに一つあるのじゃないか。計画性がないのですからね。計画性がないということですね。ですから、今すぐに社会党が政権を取って、それで計画的なものをやる。社会党がやる場合でも、かなり弾力的にやらなければならぬと思うのですがね、結論的には。すぐに自主的な直接統制をやるということを意味しているのじゃないですよ。
  126. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) ですから、問題はむろん、統制経済じゃないのですから、政府の思うとおりにはいかない。政府は、じゃ全く何の方針も持たないかと申しますと、そうじゃなくて、御承知のように、三カ年まあ平均年九%程度の成長という一つのものさしを持って、そのものさしによった年度々々の設備投資もこのぐらい、何をこのくらいという一つのものさしは持って方針はやっているのですが、その場合、この統制経済でなくても、政府の行政指導で果たし得る部門ということも、相当これは無視できない。あるのですから、この機能を十分に発揮できるかどうかということも一つの問題でございますが、昨年は六月からそういう問題を始めて、何とか三兆六千億前後の設備投資に抑えたいという目標で、行政指導面は相当やったつもりですが、まあ実績から見ますと、やはり三兆九千億前後の設備投資になったという結果がややわかりかけて参りましたので、ことしはそういう引き締め政策をやっても、ただ引き締め一点はりじゃなくて、やはり政府が目標を持っている以上は、それに沿った行政指導も行なうべしという考えで、今行政指導段階で、裏ではいろいろ今やっておるときでございますので、こういうものも、これは相当の効果を今後、昨年と違って早目にことしはやっておりますから、これも相当私はことしは効果を発揮するのじゃないかと思っておりますので、問題は、一つの政策をやるときに、まだ政府がやり得る部面は十分に政府の力を活用しろということで現実に対処するよりほかには仕方ないと思いますので、今私どもはそのつもりでいろいろの行政指導面でこの政府の線に沿った経済の押え方ということをやっておりますが、ことしは特にこの面に私どもは力を尽くすべきだと思っております。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの際一ぺんはっきり聞いておきたいと思ったのですけれども予算委員会などで時間がありませんから聞かなかったのですが、総理は行き過ぎ行き過ぎと言いまして、九%の目標を立てたのだけれども、民間の成長意欲が強くて一四四%になった、こういうのでしょう。そういうとき、民間で設備投資が行き過ぎるのはこの資金の調達ができるからでしょう。私、資金調達ができなければ行き過ぎるはずがないと思うのですよ。それで、もう自己蓄積資金ではもちろん足りないのです。銀行の借り入れで大部分やっているわけですね。そういうときに、銀行の蓄積資金では足りなくて、日銀から非常に借りているわけです。一兆三千億くらいになっています。そのとき日銀の貸し出しで調整すれば、これは行き過ぎないで済むわけでしょう。そこに一番私は問題があると思うのです。もし日銀で金を貸さなかったら、拡張できないのですからね。そこのところでどうして締められないのかというのですね。それで、もう自主調整なんか一生懸命やっていますね。ですから、日銀でどうしてそれは調整できないのかというのです。私はそれが一番けじめだ、と思うのです。それは金利を上げたということも一つありますね。金利だけでは、先行きがもっと経済が大きくなるという見通しなら、少しぐらい金利を上げても、もっと高い金利でも活用する。こういうのでは金利を上げても意味がないというのが、池田さんの考え方ですね。量的規制が必要だと、こう言われるのですけれども、量的規制を日銀でやったらよさそうなものですよ。一応、それはどうしてできないのかというのです。今の建前ではできないのですか。たとえば適格担保を持ってきて貸してくれといえば、これは拒否できない。どうしてもできないわけですね。しかも、担保のあれを、だんだん資格を緩和しつつあるのじゃないですか。ですから、それを僕はきびしくやれば、そこで押えられる、これよりほかないと思うのです、行き過ぎを押える方法は。最後に金がなければ拡張できないのです。それをどうして押えられないのですか。それで行き過ぎちゃうといったって、どんどん貸し出しをしておるわけです。
  128. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) だから、昨年の十月以来そういう形で引き締め政策をとって押えにかかっているということで、今それをやっている段階で、それにさらに今年度は当初から行政指導という面も相当強く押し出してやっておりますから、この二つが重なればある程度の効果を発揮するだろう。現に引き締めの効果は、生産段階に現われないだけで、あとは現にそういう押え方をしているから、ここで効果が出てきているのでございまして、もう少しのところだと私は思っております。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、日銀でそれができるわけですか、できるんですか、そういう量的規制を今の建前で。
  130. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) これは現実にやっております。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 できるなら、どうしてこんなに行き過ぎちゃったんですか。三兆六千億くらいというのを、ほとんど三兆九千億になってしまって。日銀が貸し出さなければそうなりっこないんですよ。
  132. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) ですから、そういう締める営業政策をとるというので、とった場合には、その効果がいつ出てくるかというのは、従来の例から見ても、大体半年でその効果を期待できるというのが例ですが、今回の場合はややずれてくるという感じはしますが、その効果ははっきり今出てきて、四月ころから生産調整の段階に必ず入っていくというのが私どもの見通しでございます。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それができるのに実際にこんなに行き過ぎちゃったというのは、私はおかしいと思うんですよ。総理は、民間の成長意欲が強かったと言われるんですけれども、しかし、日銀で規制できるものを、それが規制できなかったんです、結果からいって。今後そうすると言ったって、私は実際問題として、大きな会社が……。
  134. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) ですから、四月ころにやっているということでしたら、また効果は別でしょうが、私どもは十月からこれをやったんで、今やっているということでございます。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際問題としてですね。
  136. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) おそかったとか、早かったとかいうことになると、もちろん議論がございますが、やり出してからの効果というものは今出てきている、こう見ているんです。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金利の機能というものを大蔵大臣はどういうふうにお考えですか、金利の調整機能。これは藤山さんと政府はちょっとそこに何か違うところがあるんですけれどもね。政府はあまり景気調整機能というものを見ていないんです。量的のほうを見ている。そこの点、どうです。金利の景気調整機能というものをどの程度……。
  138. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 時間が……。
  139. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 時間が来たようですから。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金利だけ一応。
  141. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 金利の調整機能は、われわれも認めますから、引き締め政策については七月に続いて公定歩合の引き上げをやって、この経済情勢の推移に対応して金利を上げるという措置をとっているわけでございます。
  142. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 第一問の問題は、木村委員からも、非常に補充してやっていただいたので、私は景気調整の政策を財政面からとっていく場合に、今の財政法で十分やれるのかどうかというふうな問題についてお尋ねしたいというのが趣旨であったんです。それで、財政法の一部改正で二十九条の改正だけが出ているわけですね。しかし、先ほど大蔵大臣の答弁にもあったように、財政法全般について、この法案の提案理由の中にもありますけれども、検討する必要があるということで、財政制度審議会を拡充するといいますか、強化する、こういう措置もこの法案でとろうとしておられるわけです。そのいう段階において、これだけ一つ取り上げて急いで改正する必要があるのかどうか。もう少し全般的な検討をする、その上でやっておそくはないんじゃないか。特に二十九条の改正は、実質的な面の改正じゃないんだからというふうな答弁を先ほどから何べんも聞いているわけですね。それをあえてせられる理由がわれわれには明白でないわけですよ。
  143. 石野信一

    政府委員(石野信一君) お尋ねの点は、先ほどもちょっとお答えの中で触れたのでございますが、財政で景気調整をやるという問題については、私どももいろいろどういう措置でやったらいいか、またその場合の理論的と申しますか、実際に景気に対してどういう効果を持つかというような問題について、これは簡単にただ規模さえ小さくすればいいというふうに言えない問題でございまして、今の木村委員のお尋ねの金融の調整機能の問題と申しますか、総合的に財政、金融を通じて考えなければならないというような問題もございます。そういうような意味で、財政の景気調整の問題というようなことも非常に重要な問題があることは私どもも認識しておりまして、そういった問題については今後とも十分研究して、要すれば財政法改正もお願いするということにいたしたいと思うのでございますが、ただ、今回のこの二十九条の改正の問題でございますが、これは経緯がございまして、御承知のとおり、三十五年度補正予算のときに、こういう規定解釈、読み方の問題につきまして議論国会においても生じたわけでございます。まあ政府与党の考え方としては、現行規定財政法違反ではないということで解釈をいたしておるわけでございますけれども、とにかく国会でそういう論議が免ずるということについては、やはりそこを検討して論議がないようにする。たとえば文章で、必要避くべからざるという言葉、これは例などを申し上げて恐縮でございますけれども財政制度審議会でも出た話でございますが、たとえばポマードか男がつける、これは必要避くべからざるものであるかどうか、必需品であるかどうかということになると、まあなくてももちろんやっていけるという意味では、必要避くべからざるじゃないけれども、しかし、やはり一般の常識からいえば、ポマードというものは必要であろうというような意味で、必要避くべからざるという言葉が、非常に限定して解釈した場合には、非常に排除的と申しますか、限定されてしまうというような語感の問題等もございます。また、問題になりました国庫内での資金の移動というような場合は、補正予算対象になるかどうかというような問題も、議論対象として論議されることになるわけでございます。そういう意味におきまして、国会においてそういう問題が議論されたということを私どもとしては念頭に置きまして、今回そういった問題の改正をお願いして、議論を疑義なくしたい、こういうふうに考えた次第でございまして、全体的の財政法改正の問題、これについての研究必要性というものは、私ども十分認識いたしておりまして、今後ともそれをやっていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。今の例を出されるのは、決して私は悪いというのではありませんけれども、ポマードの例を話されましたが、それと違うのですよ。これは必要避くべからざるというのが問題になりましたのは、当年度に使わないのでしょう。それは会計間の移しがえなんですよ。だから、当年度に使わなければ、これは緊急とは言えないじゃないかということが一つ結論になっているのです。だから、同じポマードでも、今使わないで来年使うのなら、そのポマードは緊急であるとするかという問題なんですよ。例なんですよ、ポマードの例は、ただ、ポマード自身が緊急であるかないかということよりも、むしろ当年度に使わないで、来年度に、次年度に使うのを、ただ会計間の移しかえだけでやるというのは、これは緊急じゃないんじゃないかという議論です。そうなると、こういうふうに改正しても、その問題はやっぱり解決しないのじゃないかと思うのです。
  145. 石野信一

    政府委員(石野信一君) その問題、けさ上林政府委員からもお答えした問題だと思いますので、簡単に申しましたが、結局当時の、問題になりましたときも、政府考え方といたしましては、要するにその資金繰り入れること自体が必要であるということでございまして、それをいつ使うというような問題として、実質的な意味でのその金の外部への支払いという問題とは、一応切り離して二十九条としては読むべきであると、こういうことでございます。必要避くべからざるという文句につきましての疑義があり得るからということを先ほど申しましたのは、それは必ずしも三十五年度のときの問題としてでなくて、たとえばまあこれは例をいろいろ出しますとかえって適当でないかもしれませんけれども、まあ災害は、ともかくこれはすぐに復旧するために必要だろう、しかし、それじゃベースアップはどうか、これは本年度中にぜひやらなければならぬか、来年度からでもいいかということになりますと、まあその必要避くべからざるという言葉だと、強く解釈すると、まあ必ずしもやらなくてもいいんじゃないかという例になる。そういうような例が必ずしも適当ではないものと私も思いますけれども、そういった意味の、補正予算のために必要避くべからざるという言葉は、語感としてちょっと強過ぎるのではないかということで、財政制度審議会でもそういう話が出たわけでございます。ただ、決して三十五年度のときの分だけで申しているわけではございません。そういった意味語感を整備したいし、それからその条文全体の態勢を整備したい、そういうふうな考え方から、今度の改正をお願いしているわけでございます。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは私は、改正しても、やはり三十五年度に問題になったことは依然として、決してこれは解決しないと思うのです。ですから、荒木委員も、改正しても実際この改正によってどこが違ってくるのか了解に苦しむという御意見だったと思うのです。たとえば「当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。」と、こういうふうに今度新しく入れたのですが、これはどうなんですか。緊要であってもなくても、当該年度において国庫内の移しかえを含むのですかどうか、これは緊要と関連があるのですかないのですか。
  147. 上林英男

    政府委員上林英男君) 当該年度において国庫内の移しかえにとどまるものは、すべてこの補正予算対象にする意味ではございません。それが財政上、政治上の判断によりまして、特に緊要であると判断されました場合に、追加予算対象になるわけでございます。ただ、ここでお答え申し上げますのは、先ほどからも主計局長申しておりますように、産投の場合のはけさほども御答弁申し上げましたように、産投からの出資というのは経費であるわけではないわけでございます。産投資金の充実に必要なために産投資金繰り入れをする。産投資金を充実して後年度投資に備えるという必要性がこの判断対象になるわけでございます。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、国庫内の移しかえの場合でも、それが緊要でない場合はこの対象にならない、緊要であるものは対象になる、こういうのですか。
  149. 上林英男

    政府委員上林英男君) お説のとおりでございます。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合、産投のこの前の例をとれば、当年度支出しないのに緊要と言えますかどうか、そういう問題がやっぱり依然として残ると思うのです。
  151. 上林英男

    政府委員上林英男君) 繰り返して申し上げるわけでございまするけれども経費というものは何かということになりますと、資金を充実するために資金繰り入れを行なうというのが経費でございます。したがいまして、その経費——その繰り入れられました資金から、さらに、産投会計が受け入れまして、産投会計として投資に充てるという問題は、また別の問題でございます。したがいまして、判断といたしましては、産投資金を充実する、そして後年度に備える、こういうことが心要であるかどうか、その判断の問題になるわけでございます。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこはよくわかっているのですよ、私はね。問題は、支出する前の資金の充実でしょう、資金の充実が緊急であるかどうか、心要避くべからざるものかどうかということですよ、それはね。実際問題としては、たとえば三十六年度になれば自然増収がたくさんあるのですから、実際問題としては。そこで、三十五年度の補正でやらなくても、結果論からしてはできたはずですよね。緊要じゃないのですよ。緊急じゃありません。できなかったわけですよ。ですから、そこはその判断に基づくわけですがね、緊要であるかないかという。しかし、法を改正したからといって、その問題は依然として解決しないでしょう、問題は。十年度支出しないのに資金を充実するということ、資金支出であるからということですね。財政法二条の三項によってですよ。それがね、資金の充実することが緊要であるかどうかということになるのですね、今度は。そういう問題ですよ。
  153. 石野信一

    政府委員(石野信一君) おっしゃるとおり、要するにその資金を充実することが緊要であると政府判断するかどうか、それを国会に諮って、国会がそれを緊要と認めて予算を認めるかどうかという問題になるわけでございます。したがいまして、従来の規定でございますと、国庫内の移しかえにとどまらない支出として外へ出ないものは、これは心要避くべからざる経費じゃないじゃないかというような議論もありまして、そういう点はそうじゃなくて、その資金を充実するということは、たとえば自由化なら自由化に備えて産投会計資金を充実しておくということが心要である、これが現在政府の施策として緊要であるというふうに判断をいたしますれば、それによってこの当該年度においては国庫内の移しかえにとどまるものがございましても、それはやはり緊要であるという判断のもとにこの規定補正予算が組めるという、こういうことでございます。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはね、御説明はそれでわかるのですが、あのときに議論になった問題は、これで片づかないです、やはり。一つは片づくでしょう。今主税局長が言われたように、その国庫外支出しないものは緊要でないと今までは解釈されておったわけです。今度は国庫外支出しなくても、財政法二条の三項のような規定によって移しかえもそれは緊要の対象になるのだと、こういうお話ですね。ところが、あのときもう一つ問題になったのは、当年度に使わないものはこれは緊要ではないのじゃないかという議論なんですね。それが一つあるわけですよ。当年度に使わないものは緊要でないのじゃないかという。ですから、当年度に使わない——どうしても使わなきゃならぬということは、これはどうしても緊要なわけなんですからね。こういうように改正して、その国庫内の移しかえというものもこれは含まれることになりましたけれども、あのときに問題になった議論は、依然として、これは判断の問題になるかもしれませんけれども、依然としてこれでは解消していないのですよ。
  155. 石野信一

    政府委員(石野信一君) あのときに問題になったことが解決しないとおっしゃるのは、あのときに本質的な点についての意見が対立したと申しますか、違ったということでございますから、そうだといたしますれば、その問題がすべてここで解決したというふうにはとれないという御意見もあるかと思います。しかしながら、あのときから政府は一貫して申しておりますのは、とにかくその資金の充実をすること自体、それがその繰り入れることが当該年度で使うという意味であって、それがその経費支出である。したがって、その年度において資金の充実をはかるということが緊要であると政府判断した場合には、現行規定でも読めるが、その点を「特に緊要となった経費支出」として、「国庫内の移換えにとどまるものを含む。」ということで、その考え方をはっきりさせるということでございます。この緊要であるかないかの具体的な問題についての議論は、これはたとえば先ほど申しましたような意味での、給与のベースアップのための補正予算というようなものについても、それが緊要であるかないかというような議論は、これは議論のしようによっては幾らでもそういう議論も立てられるわけであって、結局、緊要かどうかという判断は内容のいかんによるわけでございます。資金の充実をはかることが緊要であると政府判断し、予算の審議を願いました場合には、それが緊要であるかどうか、国会で御審議の上で、緊要であるということで多数の賛成を得れば、この予算は成立、こういうことになるわけでございます。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 要は、二十九条の規定が、やたらに追加予算を申請して、そうして予算がいわゆる複雑になり、簡明でなくなる、また予算の膨張を来たす、そういうことを避けるためにこの規定を設けたわけですよ、二十九条というのは。二十九条の趣旨はここにあると思うのです。それを、当年度に使わないものまで緊要と認めて、そうして追加予算対象にできるというふうにするところに、一つ問題があると思うのです。そこに問題がある。これはなるべく、追加予算を極力避けるというのが原則なんです。そういうための規定なんです。これは御承知のように、旧会計法で規定してあるわけです。旧会計法で非常にきつくしてあると思うのです。なぜきつくしたかというと、それは今お話しのように、予算を簡明にし、そうして予算の膨張を防ぐということが趣旨なんでしょう。そういうところから非常に後退するわけなんですよ、趣旨としては。
  157. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 私ども、今回の改正補正予算を安易に組むというような考え方は全然ございません。ただ、先ほどから申し上げますように、財政法というものは一つのワクと申しますか、箱のようなものでございまして、したがいまして、いろいろの場合、たとえば資金繰り入れを行なった当該年度でも一部使いますけれども、次の年度以降にも使うというような場合もあり得ましょうが、そういうような意味で、資金を充実するというようなことも一体補正予算対象としていいかどうかというようないろいろ議論が生ずる。そういう意味での疑義と申しますか、議論を生ずるという点は、やはり国会ではそういう議論があったということを一つの参考にして、それを直して、疑義なり議論がないように考えていくというほうが私どもとしてはいいんじゃないか。これは読めるからそれでいいのだということでいくよりは、そういうような考え方をしたほうがいいんじゃないか、そういうふうに考えるわけでございます。といって、これで甘くしようという考えは私どもは持っておりません。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 考えを持っていなくても、こういうふうに改正すればそうなってしまう。前よりもゆるくなることは事実です。これは旧会計法よりきつくしているのですよ。きつくしたのだ。ですから、どうしても当該年度で使わないものまでやはり追加予算対象にならせる、またそれを容易ならしめる規定改正であるということは、もう疑いないわけでしょう。
  159. 上林英男

    政府委員上林英男君) 現行の第二十九条は、大正会計法のほとんどそのままの規定か掲示いたしております。したがいまして、たとえば、読み上げてみますと、「必要避クヘカラサル経費法律又ハ契約ニ基ク経費不足ヲ生シタル場合ヲ除クノ外追加予算ヲ提出スルコトヲ得ス」、こういうのが大正会計法でございます。したがいまして、現行財政法二十九条はこの条文をひらがなにいたしましたことと、それから国庫債務負担行為などが加わりましたので、そういう変化がございますが、現行会計法の二十九条は大正会計法そのままを継受したといって差しつかえないと考えております。  また、もう一つの、この改正の条文によって甘くなるのじゃないかという点につきましては、先ほどから主計局長お答え申し上げておりますとおりでございますし、それから先ほどごらんいただきました財政制度審議会結論の中におきましても、みだりに補正予算を組むことはいかぬと、大正会計法の精神についてはこれを変更してはいかぬけれども、しかし、語感の問題としていろいろな議論もあることであるから、実際の運営に即して言葉も考え直したらどうかという、こういう御意見になっているわけでございまして、私どももこの規定改正によりましてこの運用を甘くするという考えはないわけでございます。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際の経過を見ると、結局補正しなくてもよかったものを補正したことになりますよ。財源が三十五年度に充実しなければならぬものではなかったわけですよ。自然増収資金を充実したけれども、結果においてはそうではないでしょう。そういうことをわれわれあとでわかっておりますから、あとでですね、三十六年度自然増収がうんとあるじゃないですか。ですから、あのとき緊急として——、緊急といいますか、三十六年度に十分財源があるのでありますから。で、そういう点を結果において考えますと、私はそういう後年度においての支出においては、後年度のやはり歳入との見合いにおいてそのときにきめればいいのですよ。
  161. 石野信一

    政府委員(石野信一君) あのときも、政府側で御答弁申し上げておるとおりでございますが、要するに、自由化の関係等から財政投融資のための産投会計資金をこの際充実するということが必要であるという判断のもとに、補正予算を組んだわけでございます。これはまあそれが緊要であったかないかというような議論につきましては、あるいは必要避くべからざるものであったかないかという議論につきましては、結局まあ政府がそれを判断し、国会が御判断を最終的にはされるということになるのでございまして、一つ一つ補正予算の内容が、これが緊要であるとかないとかいうことで、財政法違反するかどうかということになりますと、まあ結局最終的に国会で御判断をいただくと、こういうことになると思うのでございます。そういう意味におきまして、まあ私どもとしましても、補正予算を安易に組みたいという気持はもちろんないわけでございます。先ほど来たびたび申しますように、要するにいろいろの関係で必要な補正予算について疑義が起こるということがないように、規定を合理的に改めるということだけを目標としたものでございます。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際から見まして、三十六年度は景気調整のために繰り延べしなければならぬ、そんなようなことまでしておるでしょう。そうしておきながら、三十五年度においてはその資金を充実しなければならぬという。ですから、結果から見ると、実際それじゃおかしいと思う。それはもっと慎重にすべきであって、当該年度に実際問題として支出しないなら、それをむやみに、これは自然増収をやはりその年度の前に使うとかあるいは不用に立てるとか、そういうふうにすべきですよ。そうしてその翌年度において使うものについては、あるいは資金を充実するについては、翌年度の歳入との関連において考えるべきだ。ことに、大体三十六年度自然増収は相当あるということが予想されておったのですから、資金的にいえば、三十五年度にどうしてもあの自然増収繰り入れなければならぬというものではなかったのです、実際問題としては。ですから、問題になったのです、あのころ。どうしてもそうしておかなければ、あの資金の充実がどうしても必要遅くべからざるものだったということであるならば、仕方がないのですけれども、財源的に見まして、あのときの自然増収繰り入れなければならぬというならばしょうがないのですね。結果から見まして、ちっとも緊要でもなかったわけですね。ですから、やはり当該年度支出しないものを資金繰り入れてむやみに補正予算の、追加予算対象にすることを容易ならしめるような改正はすべきじゃないと、私はそう思うのです。もっと窮屈にしていいのであって、それは政府としてはそうしたいでしょう。しかし、納税者のこの立場に立ちますと、それはもっと窮屈にすべきで、二十九条を入れた趣旨はそこにあるのであって、窮屈だ窮屈というあれで、だから、何でも緩和する、そんな安易な気持ではいかぬと思うのですね。
  163. 上林英男

    政府委員上林英男君) 産投資金を充実しておく必要性があるかどうかという問題は、まさに政治上、財政上の判断でございまするので、この判断につきましてはいろいろ御議論があるかと思います。この判断に伴いまして、前国会法律論まで行きましたゆえんのところをいろいろ考えてみますると、これは確かに必要避けることができないと、現行法では書きっぱなしでございまするので、御承知のように、現実に支出をされることがその年度にはないということもありまして、いろいろ御議論法律論にまで及んで参ったというのが実情であろうかと考えております。私どもから申しますと、財政法の二条によりまして、そういうふうな国庫内の移しかえでありましても、これは経費である。したがって、補正予算対象になる当該年度経費であるということでございますから、違法ではない、こう考えるのでございまするけれども、常識的な見方の中には、今申し上げましたような点で御議論があるかと思います。そこで、この改正におきましては、カッコ書きにおきまして、当該年度において国庫内の移しかえにとどまって国庫の外には出ないものであっても、補正予算対象として御議論はいただけるものである。そういうような経費につきましても財政上、政治上の判断として、そこにたとえば資金をためておくということが必要であるかどうかという判断の問題として今後御議論を願い、法律論といたしましては、今申し上げましたように、そういう国庫の中にとどまって国事の外には当該年度には出ていかないという金であっても、それは補正予算対象として御議論いただくということをはっきり明示をいたした、こういう格好になっているわけでございます。
  164. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 時間がおそいので、やろうということになれば、明日に延ばしたらいいと思うのですが。
  165. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  166. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それじゃ、速記をつけて。
  167. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、大蔵大臣に一問だけ質問をして、そうしてあと用事で退席されたので、第二問を質問をしておきたいのです。しかし、これは今木村委員が触れられた問題になるわけですが、私は財政法二十九条を改正しても疑義はやはり依然として残る、残るのじゃないか、そういう見解を持っているわけなんですね。それの一つの理由は、三十五年度の第二次補正の際に、三百五十億を産投会計繰り入れて、そうして三十六年度と三十七年度に使うというあの補正予算のときに問題になったのは、二十九条だけではないと思うのですよ。やはり財政法の第六条、それから財政法の十二条ですね、これが相当議論になったと思うのですね。そうすると、財政法二十九条だけを改正しても、第六条との関連ですね、これはまあ私が申し上げるまでもないと思いますが、まあその財政法第六条の問題とそれから財政法十二条ですね、この問題は依然として残ると思うんですね。そうすれば、政府が言っておるように、二十九条を改正すればもう将来あまり議論がないんだと、これで疑義がなくなるんだというふうには解釈できないと思うんですがね。特に財政法十二条については、今木村委員から繰り返し詳細に質問があった点ですね、そういう議論、それから第六条の議論ですね、これは依然として残ると私は思うんですがね。大蔵省のほうの見解はどうですねか。
  168. 上林英男

    政府委員上林英男君) 確かに今の二つの条文につきましての御議論は前国会でもございました。ただ、これは法律論的に申しますときわめて明快であるということで、特にその財政制度審議会結論にも載っておらないわけでございまするが、財政制度審議会におきましても、この問題を議論をいたしまする前段階として、もちろん国会で御議論になりました点についてつぶさに検討されたわけでございます。しかしながら、まず第一の、十二条によりまする会計年度独立原則でございまするが、これは当該年度におきまする経費はその年度の歳入をもって支弁しなければならないということになっております。で、この産投資金への繰り入れの場合を考えて参りますと、経費といたしましては、先ほどから御説明申し上げておりまするように、資金への繰り入れでございます。その資金への繰り入れ当該年度自然増収でまかなうわけでございまするから、当該年度経費当該年度の歳入でまかなうということで、これは年度独立原則に反するものではないわけでございます。ただ、それが結果的に見ますると、国庫の外へ金が出るというのは確かに翌年度以降でございまするが、これはその資金としての持っておりまする性格によるものでありまするわけでございまして、翌年度以降国庫の外に払い出されまする場合には、先ほどから申し上げておりまするように、別途特別会計の歳入として受け取り、特別会計歳出としてまた御審議を願って支出をしていく、こういうことになるわけでございまするから、そちらのほうの関係は今申しましたように資金の性格によるものであるわけであります。  それから、第二の、財政法六条の規定によりまする剰余金の問題でございまするが、この剰余金は決算上の剰余金を意味しているものでございます。したがいまして、その産投資金への補正予算繰り入れにつきましては、年度進行中の話でございまするので、この六条の規定には該当しないわけでございます。結局、補正予算対象として支出し得る経費ということをお認めいただきました場合には、その経費支出いたしまする以上、どのような経費におきましても自然的に剰余金が減って参るわけでございます。したがいまして、問題は財政法六条の問題ではなくして、その経費補正予算の要件として財政法二十九条に該当するかどうか、こういう問題に尽きるのではないかということになるわけでございます。したがいまして、特に六条及び十二条につきましては、今回の改正からははずれているわけでございます。
  169. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ほどから木村委員からもたびたび質問があったように、財政法十二条との関連において、二十九条を、資金繰り入れ経費でそういう法改正をすること自身に疑義がある、こういう意見が出ているわけなんです。私どもそういう感じを強くするわけなんですね。会計年度独立建前からいけば、産投会計繰り入れるということが一応支出というふうな考え方が全然できないかどうか、問題があると思うんですがね。実際使わないんですからね。繰り入れたにすぎないんですからね。やはり議論としては私は残ってくると思うんですよ、どうしても。
  170. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ちょっと、実質論法律論とは少し食い違っているのかと思いますが、法律論で申しますと、今の第六条の問題あるいは第十二条の問題、これは資金制度というものは財政法上認められておるわけでございます。したがいまして、補正予算でなしに、かりに本予算のときに資金を積んでおいても、その年度にそれを使わないで次の年度で使うという場合もあり得るわけでございます。そういう意味におきまして、資金制度というものから来る一つの特色でございます。したがいまして、問題は結局財政法二十九条で、補正予算としてそういうものに繰り入れる場合にそれが心要欠くべからざるものとして認められるものか。これはまあ政府としては、政治的にも財政的にも心要であると判断して、それを補正予算に組むということでございまして、資金に入れる場合、したがって、心ずしも当該年度で使われない場合でもそれは財政法違反ではないのであるということをはっきりさせたいということでございまして、具体的にそういう今後出てくる問題が緊要であるかないかということにつきましては、個々の補正予算の内客によって判断をいただく、こういうことに相なるわけでございます。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。さっきの六条との関連がないと、年度途中であるからね。しかし、それは自然増収でしょう。大体自然増収は、もしそのままにしておけば、決算剰余金になるわけですね。ですから、やはり関連あるのじゃないですか。歳計剰余金じゃない、決算剰余金で、そして年度途中だから、だから直接関係ないといっても、もしやらなければ自然増収となって決算剰余金となるべきものでしょう。ですから、やはりあるのじゃないですか。そういう意味では、六条と関係があるのじゃないですか。
  172. 上林英男

    政府委員上林英男君) 実質的にお説のとおりでございまするけれども、これはすべての補正予算を組みました場合にその自然増収が減るわけでございます。したがいまして、補正予算としてお認めをいただいた経費支出しました以上、すべて決算上の剰余金が減るわけでございます。財政法六条の規定意味いたしておりまするところは、すべてのそういう支出が終わりました決算上の剰余金につきまして、その二分の一以上を翌々年度までに債務償還に充てなさいということでございます。したがいまして、自然増収すべてを充てなさいという意味ではございません。年度が経過しました後の剰余金の二分の一以上を債務償還に充てなさいというわけでございます。したがいまして、この本件の問題につきましては、個々の、ほうっておけば決算上の剰余金になったものをなぜ補正予算で切ってしまったかという、こういう御議論になるわけでございまして、これは結局補正予算として適当であったかどうか、心要であったかどうかと、こういう御議論に還元してくる問題でないかと考えるわけでございます。
  173. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、まあ木村委員からちょっと質問されたので、次の問題に移ってみたいと思います。  今度の改正で、追加予算とそれから修正予算、これを一本にまとめるような、補正予算として一本にまとめるような改正になっておるわけですね。ところが、現行法では追加大修正予算とは区別しておるわけですね。その区別の一番大きな点は、追加予算の場合は、予算作成後に生じた理由に基づいて組む。だから、予算作成後に生じた理由によって追加予算を作成して国会に提出することになっております。修正予算の場合は、予算の成立後に生じた理由によって国会へ提出する、こういうふうに区分されておるわけなんですね。これを改正によって、いずれも予算作成後に生じた理由によって追加もできるし修正もできる、いわゆる補正予算を出すことができる、こういうふうに変わってきおるわけですね。そこで、私は事実上の取り扱いについて少しお尋ねしたいと思うんですが、政府予算を作成して国会に提案した、そうして衆議院で審議されておるという段階に、修正をも含めた補正予算を出せるということになりますね。従来はそういうことはできなかったんじゃないかと私は思うんですが、どうですか。
  174. 上林英男

    政府委員上林英男君) お説のとおりでございます。
  175. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、衆議院で審議しておる段階で政府予算の修正をするということは可能になったわけですね。これは、予算の提出権が政府にある、そういう建前からいって、政府予算の審議中に政府みずからが修正できるというふうに改正するということは、これは予算の提出権を持っている政府に対してあまりにも私は予算の編成権というものを転視した改正になるんじゃないかという感じがするんですがね。
  176. 上林英男

    政府委員上林英男君) ただいまの御設例でございますと、衆議院の段階にまだ当初予算がありまする場合のことでございまするが、その場合におきましては、現在の段階で、もし出しました予算追加及び減額を含めました修正を加えたいという場合にどういう措置があるかという問題でございますが、現在の法律の段階におきましては、そういう場合には、国会法の規定によりまして、政府修正を行なうか、あるいは予算を撤回いたしまして出し直すという道があるわけでございます。実際問題としては、これは今おっしゃいましたように、いろいろ政治的な問題もございましょうし、あるいは一たんきめた予算を変えるということはよほどの変革がなければ行なわれないのが通例かと考えます。しかしながら、予算を提出いたしました後に、今申しましたような政府修正の格好で、あるいはたしか撤回もいたした例があったかと思いますけれども、そういう格好で出し直した例がございます。したがいまして、そういう場合が皆無であるということはあり得ないのではないかと考えております。  なお、これを、今まで二つに分かれておりましたのを一つにいたしました理由といたしましては、確かに現在の法律によりますると、追加予算と修正予算があたかも別々にあるかのような規定の仕方になっておりまするけれども運営の実態といたしましては、両者一体として運営されておるのが実情でありまするし、両者一体として運営いたしまする以上、要件自体も統一をしたほうが便宜であるということが考えられるわけでございます。たとえまして申しますると、さらに予算が衆議院を通過いたしまして参議院に回っておるその段階において、何か当初考えなかったような事態が起こった、したがって、予算をこの場合に追加をしたいという場合は、現行規定でも追加ができるわけでございまするが、その財源がないと。したがって、その財源として既定費の、すでに提出しておりまする予算のうちから求めるという場合には、修正が含まれるわけでございまして、その場合にはもう国会法の規定によりまして政府修正なり予算の撤回なりができませんわけでございます。そういう場合もあり得るということが予想されるわけでございまするから、そういう場合には、要件を統一いたしておきましたほうが、論理的にも、また現在補正予算として一体として運営している実態から申しましても、合理的になる、こういう考え方でこの要件を統一したと、こういうわけでございます。
  177. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、現行法であれば、国会で審議中に予算政府が修正するということはできないんじゃないですか、撤回以外にないんじゃないですか。
  178. 上林英男

    政府委員上林英男君) 国会法上の五十九条におきまして、「内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となった議案を修正し、又は撤回するには、その院の承諾を要する。但し、一の議院で議決した後は、修正し、又は撤回することはできない。」、こう規定をされております。したがいまして、もちろん議題となりましたあとにおきましては院の承諾が必要でございますが、その承諾がございました場合においては、政府におきましてこれを修正しあるいは撤回をいたしまして出し直す。ということが可能であるわけでございます。もっとも、ただし書きにございまするように、一院を通過いたしましたあとはこの道がないわけでございます。
  179. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、国会法五十九条と、それから現行財政法二十九条の後段の関係はどうですかね。予算の成立後でなければ修正することができないというのと、どういう関係になりますか。
  180. 上林英男

    政府委員上林英男君) 現行法によりますると、当初予算が両院の議決と申しますか、自然成立を含めまして成立をした後でなければ減額ができない。したがいまして、どの院にかかっている間でも修正はできないと、こういうことになるわけでございます。
  181. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、改正法ではそれができるということになりますね。国会法では院の許諾がなければできないというのと、二十九条の改正法ではこれは許諾がなくてもできるということになるのですか。
  182. 上林英男

    政府委員上林英男君) その修正という言葉でございまするが、国会法の規定によりまする修正といいまするのは、案自体を修正することでございます。したがいまして、財政法二十九条によりまする予算の修正とは意味が異なるわけでございます。何と申しますか、国会法の修正の場合におきましては、本予算そのものを修正をいたしまして改正をして出すということになるわけでございます。ところが、財政法二十九条の予算の修正といいまするのは、その部分、当初予算とは別に、何といいますか、法律改正案と同じように、一つのまた違った議案として国会に提出する、こういうことになるわけでございます。これに反しまして、国会法の五十九条のは、原案そのもの、したがいまして、議案自体は追加にならないわけでございます。もとのままの一つの議案ということになるわけでございます。
  183. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 けれども、修正を含めた補正予算を出す場合ですね、本予算に計上されている予算が減額するということが起こってくるでしょう。本予算自身を変更さす。本予算自身が全然変更にならないで修正ということは考えられないですからね。そうすれば、本予算の内容があるいは増額されるあるいは減額されると、そういうことを伴ってくるのじゃないでしょうか。
  184. 上林英男

    政府委員上林英男君) 補正予算は、補正予算として独立ではございませんので、補正予算が通りました暁におきてはましては、本予算に編入をされます。ただ、国会審議のやり方といたしましては、本予算自体が一つの議案でございます。それから、財政法二十九条によりましてその予算の修正を行ないましたときには、本予算とは別に予算の修正という議案があるわけでございます。ところが、国会法の五十九条の場合には、本予算自体が修正をされて、それが一つのもとのままの議案として御審議になる、こういう手続の違いがあるわけでございます。
  185. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから、もう一つは、衆議院を通過した場合ですね、そうして参議院で審議されている段階ですね、その場合に政府が修正を含めた補正予算を出すという場合には、どういう手続になりますか。
  186. 上林英男

    政府委員上林英男君) 予算が参議院において審議をされておりまするときにおきましては、これが中身が追加予算だけでございますると、現行規定によりましても、追加予算だけを衆議院へ提出することは可能でございます。ただし、予算の修正減額の場合には、本予算が通過をいたしません間は、現行ではそういう予算の修正は出せないわけでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、この補正予算として一体として運営されている観点から、これを要件を統一したいということをお願いいたしておりますわけでございまするので、この法律案改正が成立いたしました場合におきましては、追加も修正も含めまして、参議院で当初予算が審議の段階におきましても補正予算を提出することができると、こういうことになるわけでございます。
  187. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 その場合は、一般の法律案と同等に扱われるわけですか。衆議院との関係はどうなんですか。
  188. 上林英男

    政府委員上林英男君) この点はもちろん憲法原則によりますわけでございまするから、すべて衆議院が先議になるわけでございます。
  189. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、予算が参議院で審議されておると。しかし、これを補正する——修正を含めた補正をしたいという場合に、政府補正予算を出す場合ですね、それは衆議院から出てくるわけですね。衆議院から審議が提案されて、そしてこっちへやってくる、参議院へやってくる、そういうことになりますか。
  190. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御指摘のとおりでございます。
  191. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、参議院で審議している段階において、この本予算は修正されるんだということがはっきりわかりながら、その原案そのものを可決するということが起こってきますね、可決するということ。そういった場合に、内容が修正されるということは明白になっておるのに、原案に賛成してそれを成立せしめるということには矛盾は起こらないのですか。
  192. 上林英男

    政府委員上林英男君) 法律論的にはあるいはそういうことも考えられるかと思いますが、実際の運営といたしまして、あるいは同時に参議院において議決されるというような場合もあるかもしれませんし、その辺のところは、実際の運営の問題として行なわれていくのではないかと思います。法律的に申しますれば、議案が別でございまするから、当初予算としては当初予算としての御審議をいただき、その場合におきましては、もちろんそういう修正予算が提出されておりまする場合には、そういう修正予算が提出されているということを念頭に置かれての御審議になるということは当然のことであると思いまするけれども、これは同じようなことは法律案につきましてもあり得るわけでございまして、法律案におきましては、別にその辺の事情の変更というようなものの時期の制限がございませんので、まずある法律が提出されておって、それが衆議院先議で行なわれ、参議院に行っておるという段階におきまして、それをまた事情の変更により、改正法律案が衆議院から追っかけてくるという場合もあり得るわけでございまして、そこいらの議決なりいろいろの手続につきましては、法律案と全く同じ関係になるわけでございます。
  193. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さっきの六条の問題ですがね、蒸し返すようですが、自然増収を、自然増収は、当該年度支出として追加予算を組むという場合には、これは六条との関係がないと思うのですが、しかし、それを当該年度じゃない後年度支出とするための資金繰り入れるということは、やはり六条との関係が起きてきませんか。当該年度に使う分については自然増収が食われると、それだけ決算剰余金が減るわけですがね。それはあなたのさっき言われたとおりですよ。しかし、それは後年度支出繰り入れる場合ですね、それはやはり問題になりませんかね。
  194. 上林英男

    政府委員上林英男君) その点は、また繰り返しになるわけでございまするけれども補正予算でお願いしました支出と申しますのは、産投資金への繰り入れというのが経費でございまするし、それが産投資金繰り入れました瞬間におきまして、これは一般会計歳出として、国の一般の国庫金から落ちるわけでございます。
  195. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは当該年度支出ですね。
  196. 上林英男

    政府委員上林英男君) はあ。したがいまして、その分につきましては、資金の形態で後年度投資にたくわえられた格好になるわけでございます。さらにこの資金を例としてはあまり適当な例ではございませんが、貯金を資金にしました、その貯金をした瞬間に、これは一般会計支出として落ちていくわけでございます。この貯金をおろして参りまして、翌年度以降の投資に充てる、こういう場合におきましては、資金自体は歳入歳出外でございますから、支出をいたしまするときは歳出外で資金から出て参りますけれども、これを受けまするのは産投会計の歳入として受け取ります。そうして投資として出しまする場合には、産投会計歳出として出ていく、こういう仕組みになっているわけです。
  197. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかるわけですよ。ですから、理屈をいえば、理屈とすれば、やはり当該年度支出なんですよ。産投資金支出するわけです。しかし、実際には後年度でしょう。ですから、やはりそれは実際問題としては、六条との関連はやはりあるわけですよ。
  198. 石野信一

    政府委員(石野信一君) 先ほど申し上げましたように、実質論法律論との違いだと思うのでございますが、それはおっしゃるとおり、その金が出なかったじゃないか、それをもし使わないで、一般会計にそのまま置いてあったら、剰余金になったじゃないかというふうにおっしゃれば、そういう関連があるといえばあるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、資金というものの性格から、これは会計年度独立原則に対する例外としてそういう制度があるわけでございます。したがいまして、本予算で剰余金というものを作りましても、それがしたがって全部なり一部なりが後年度で使われたということになりまして、その後年度に使われる分は剰余金であったかというような実質の問題はやはりあるわけでございます。そういう意味におきまして、資金という制度から、それが会計年度原則例外的なことになります関係でございまして、法律的には、ただいま上林政府委員がお答えしましたように、当該年度支出としてその繰り入れが行なわれた残りの部分が剰余金に関係を持つと、こういうことになるわけでございます。実質的に関連があるわけじゃないかという御意見だと思いますけれども法律論としては、それで断ち切られることになるわけでございます。
  199. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、決算剰余金というものは当該年度支出した残りですね。残りが決算剰余金になるのでしょう。そうですね。まあ資金は一応別にして考えれば。そこに資金というものが出てくるわけです。そこで、われわれが常識的に考えれば、その当該年度に使う資金ならまあいいのです。それは自然増収をそれだけ当該年度で食っちゃって、それでそれだけ減っていいかどうかは、これはまた国会できめるべきものでしょう。それはまた議論があると思うのです。しかし、実質的にそれが次年度に、同じ資金であっても、理屈としてはそうでしょう、資金支出すれば、当該年度支出ということになりますけれども、しかしほんとうに使うのは後年度に使うのだということになると、実質論としてどうなんですか。決算剰余金として、やっぱり本来の意味の決算剰余金というものを考える場合、どうなんですか。そこのところはどうもよくわからないのですが……。
  200. 上林英男

    政府委員上林英男君) この六条の規定は、もちろん一般会計の決算上の剰余金を申し上げておりますことは御承知のとおりでございます。たとえば一般会計から特別会計繰り入れをするということがございます。その特別会計繰り入れました場合に、特別会計で心ずしもそれを全部使わなかったという場合があるわけでございます。そういう場合におきましても、もちろん特別会計繰り入れてしまったということによりまして、一般会計歳出は完了いたしたわけでございまするから、それを差し引きましたものがこの六条によりまする決算上の剰余金となるわけでございます。国庫といたしましては、確かにまだ一般会計から特別会計繰り入れましたものが特別会計としての資金として国庫に残ってはおりますけれども、そのものをこの六条の規定による決算上の剰余金とは申さないわけでございます。今回の場合は資金でございまするが、資金の性格は、けさほども申し上げましたように、一会計年度で使ってしまうことを予定しない金銭でございます。したがいまして、資金にほうり込みました瞬間から、その資金というものは会計外と申しますか、年度独立原則その他の例外になるわけでございます。したがいまして、資金繰り入れました瞬間に、もちろん国庫の中にはとどまってはおりますけれども、別の資金として経理せられることになるわけでございまして、したがって、資金繰り入れた瞬間にこれは歳出が完了し、したがって剰余金——この六条によりまする剰余金の中からは当然落っこってくる、こういうことでございます。
  201. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ほかに御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  203. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は財政法の一部を改正する法律案に反対をするものです。  今回の財政法二十九条の改正のねらいは二つあると思うのです。一つは、国民から収奪し続けた税収入などの余剰金を具体的に使途を定めないままで産投会計繰り入れる。しかも、会計年度を越えて政府は自由に使えることができるようにするものであります。これは使い道もはっきりしない歳出予算の処理について国会政府に白紙委任状を与えることになるのであって、明らかに「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」という憲法八十三条を破壊するものであります。さらに、これは産投会計繰り入れることによって所得倍増政策の破綻により促進された経済危機に際して、独占資本を救済し、その補強をはかろうとすることを意図しているのであります。つまり、本法案は、独占資本には玉手箱、国民にとっては落とし穴であります。  本法案のもう一つのねらいは、追加予算と修正予算補正予算一本に統一するとともに、予算作成後に生じた緊急の事態に弾力的に対処するという名目で、実際には明治憲法下でとられた実行予算制度に道を開こうとするところにあります。この結果、国会は、政府が自己の判断と意思でもって処理してしまったあとで、それを事後承認するだけの地位にけ落とされてしまい、主権者である国民は、こうして国会を通じて政府財政政策を監視し、監督し、管理することが、法経過の上でもますます不可能にされるのであります。  歴代保守党政府は、憲法規定する財政民主主義原則を破り、国会予算審議権、財政の監督の権限を縮小し、財政運用権を一手に収めようと企図してきました。そのために政府財政法を自分の都合のよいように拡大解釈してきただけでなく、それを八回も改正していたのであります。中でも昭和二十七年と二十九年の改正は重要な意義を持つものであります。二十七年改正は講和条約、安保条約発効に伴う新たな反動体制強化のための財政政策を推進するための財政法の改悪を行なったのであります。すなわち、新憲法で否定した継続費財政法十四条の二で復活し、また従来の明許繰り越しの条文の中に新しく予算成立後の事由に基づく繰り越しを追加したのであります。こうして政府財政政策の権限を大幅に拡張して、独占資本と軍国主義の復活強化のための財政処理上の条件を作ったのであります。二十九年改正もMSA協定に伴い再軍備及び産業軍事化政策に照応し、国庫債務負担行為の年限を三年以内から五年以内に延長したのであります。以上のような財政法改悪の推移を歴史的に見ると、歴代の保守政権が米日独占資本のための軍事的、政治的、経済的政策に照応して、一貫して財政法の民主的権利を骨抜きにしてきたことがはっきりするのでありまして、今回の二十九条改正もまた新安保条約下の池田内閣の財政経済政策、所得倍増政策のその破綻に照応した改正であります。こうして現在、一方では国の予算の仕組みはますます複雑多岐にわたり、国民はますます予算の実態がわからなくされ、他方では政府財政運営の権限がますます強められてきているのであります。  現在財政の仕組みはどうなっているでしょうか。一般会計のほかに特別会計と称するものが四十一、政府関係機関と称するものが十三もあり、そのほか公団、事業団、さらに特殊会社と称するものが二十もあるのであります。これらはすべて政府の出資、融資で成り立っているものであります。特別会計予算額は一般会計の二倍にも達しており、政府関係機関の予算はほぼ一般会計にひとしいのであります。しかも、これらは一般会計から独立して、つまり財政法の制約をこえて、繰り越しや継続から公債発行に至るまですべてできるようになっているのであります。そのほか、さらに膨大な財政投融資があります。これは単に一般的計画が国会の審議の対象になるだけであります。これで国民が国会を通じて政府予算の全貌、財政政策のすべてにわたって管理し監督することができるでありましょうか。できないことは明らかであり、これが日本の財政の実際の仕組みであります。  今回の財政法二十九条の改悪も、単に財政技術上の問題ではなく、さきに述べたような財政の仕組みと政府の軍国主義、帝国主義復活及び独占資本救済の政策を遂行するための財政処理の便宜を拡大するものであります。  私は、以上のような見地から、この法案に反対をするものであります。
  204. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、この法案の改正に反対の意見を表明するものであります。  詳細につきましては質疑の段階で明らかにいたしましたが、反対の第一点といたしましては、この二十九条の改正によりまして、補正予算の提出、これは現行法によりますとかなりきびしい制限を付しておるのであります。しかし、今度の改正によってこの制限をゆるめるという結果になることは疑いの入れないところであります。そういうことは、今日の憲法規定、それから財政法全般趣旨から見まして、いわゆる会計年度独立原則から見まして、その趣旨や精神に違反する、そういう疑念を持つのであります。それが反対の第一点であります。  それから、第二点といたしましては、先ほどの質疑でも述べましたが、二十九条の改正で疑義を解消するということはできないと私ども考えます。依然として財政法十二条、あるいは六条との関連において疑義があり、今後も論議される、こういうことは必至であると思うのです。  そういう意味において、この二十九条の改正は、いわゆる国の予算についての国会の監督権と申しますか、そういうものが一方ではゆるまってくる。そうして政府補正予算を容易に提出できる、そういうことになって、新しい憲法の精神に違反——違反といいますか、その趣旨に遠ざかってくるのじゃないかという感じを強くいたします。そういう点で反対をいたすものであります。
  205. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ほかに御意見もなければ、これにて討論を終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。財政法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付案どおり可決することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  207. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 多数でございます。よって、本案は衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会    ————・————