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1962-03-27 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十七日(火曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員の異動 本日委員前田久吉君辞任につき、その 補欠として村山道雄君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            荒木正三郎君            市川 房枝君    委員            青木 一男君            岡埼 真一君            高橋  衛君            田中 茂穂君            林屋亀次郎君            堀  末治君            村山 道雄君            山本 米治君            木村禧八郎君            平林  剛君            原島 宏治君            大竹平八郎君            須藤 五郎君   政府委員    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太明君   法制局側    法 制 局 側 斎藤 朔郎君   説明員    大蔵大臣官房財    務調査官    佐竹  浩君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国民貯蓄組合法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○入場税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○トランプ類税法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税制調査会に、この点について今度は諮問されたですか。国民貯蓄組合法非課税限度を五十万円に上げるについて、諮問いたしましたかどうか。前回の三十万円に上げるときには諮問しておりますが、今回はなぜ諮問しなかったですか。
  4. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 当時はこの話がまだ具体的に出ておりませんで、正式には、はっきり記憶しておりませんが、正式な諮問はしていないと存じます。ただ、この貯蓄組合限度引き上げの問題というのは、去年でも問題になりまして、やはり正式に取り上げた議題ではありませんでしたが、委員の方でこのことに言及されて、中には、やはりこの問題はそろそろ限度をある程度引き上げ方向で解決すべきである、こういう発言をされた委員があったことだけは記憶しております。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですか。この際限度引き上げてもよろしいという意見を述べた委員もあると。しかし、反対意見委員はなかったのですか。反対意見を述べた委員はございませんでしたか。
  6. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) そのときは、たしか正式に議題で取り上げなかったものですから、ある特定委員がその問題にちょっと個人的の御意見として言及されて、措置法についても貯蓄奨励という点でたとえばということで、こういうことを御発言になって、それについて反対意見が開陳されるような事情になかった、そういう空気でなかったわけでございます。一人の方が言われて、それなりに済んでしまった、こういう事情でございます。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点は、正式に今回は諮問されなかったから、そういう賛成、反対の正式な意見が十分開陳されなかったということが了解できますが、それでは、この前諮問しているわけですね、前回三十万円のときに。そのときに、第三回の税制企業合同部会に提出されました租税特別措置に関する問題点としまして、その中で特に貯蓄奨励のための減免措置関係について、諮問が行なわれていますね。で、その中で、国民貯蓄組合法に基づく貯蓄奨励策について、特に次の諸点に関連してどう考えるかという諮問事項を出しております。その中で特に、窓口組合地域組合等現状から見て、貯蓄奨励策としての国民貯蓄組合制度が現実に果たしている機能。第二に、この制度が、戦時地域組合中心とする貯蓄増強のためにとられた措置であって、現在の実情に沿わないこと。また適正な執行が困難であること等から見て、これにかえて新しく少額貯蓄に対する免税制度を創設すること。第三は、郵便貯金利子非課税措置との関連。こういう内容諮問をしておるわけですね。で、これに対してどういう答申がなされたかですね。
  8. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 今、実は答申案を持っておりませんので、正確なことはあれでございますが、たしか去年は否定的な方向での答申がなされたように覚えております。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなんでございましょう。そこで、今回三十万円を五十万円に上げる場合に——前回答申では否定的な答申であったわけでしょう。今回の場合は、前回否定的な答申がなされた趣旨、精神、それから理由ですね、やはりそういうものを十分考慮して、三十万円を五十万円に上げる措置考えたかどうか。この前の答申理由とか、その趣旨、そういうものを私は全然無視しているのじゃないかと思うのです。その事情は私は同じであると思うのです。三十万円に上げるときの事情、上げるときには答申は否定的な答申をしているのですね。しかし、それは三十万円を五十万円に上げるときにも同じであると私は思うのですよ。それだのに、なぜ三十万円を五十万円に上げるときにはこういうふうになったのか。
  10. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 前回答申の際には、確かに否定的な方向での答申がなされておりましたが、その際、国民貯蓄組合制度改正という問題を当時は問題にしなかったわけですね。現状国民貯蓄組合制度のもとでどうするかという問題、しかも、その限度引き上げの問題も、中心として考えられましたのは、やはり国民貯蓄組合非課税限度プロパーの問題として論じられているのでございます。そういう意味で、われわれは乱用の多いこの制度をそのままにしておいて、しかも国民貯蓄組合だけ上げるというその方向に対しては反対である、こういう答申がなされたわけでございますが、今回は実は郵便貯金預入限度引き上げの問題から関連しておるわけであります。これは預入限度の問題でございまして、これは直接には税制の問題ではなくて、むしろ金融の問題でございます。  で、結果といたしまして、郵便貯金利子非課税とするということは長年やっておるわけでありまして、その意味で税に響いて参ります。その点につきましては、これは正式には郵便貯金預入限度引き上げるかどうかという問題については、税制調査会討議事項にはなっておりません。ただ、一般貯蓄奨励に関する税制上の奨励措置いかん奨励措置に関する批判いかんという議題の際に、相当委員の方は、郵便貯金のような零細預金利子については非課税とするという十分の理由現状から見てあるのではなかろうか、こういう意見が少数あったわけでございます。そういうことにかんがみまして、今度郵便貯金預入限度、これを五十万円に引き上げる、その結果非課税になりますが、それをわれわれのほうで強く反対するというわけには参らなかったわけであります。そういたますしと、今度は金融関係からのそれとのバランスで、国民貯蓄組合限度引き上げの問題、こういう問題がそのほうから起こって参るわけであります。  そこで、われわれのほうといたしましては、現行貯蓄組合制度このままでは、われわれとしてはどうしても承認しがたい。これに関して従来乱用がいわれておりましたから、その点に関する抜本的な改正がなければ、たとえそれが限度引き上げというものが直接的には郵便貯金預入限度とのバランスで発生した問題といっても、税制上は困る、こういうことでいろいろ折衝いたしまして、今回銀行当局のほうでも、それじゃまあ抜本的に改正しようということになりまして、それで今度のような措置を講ずることになったわけでございます。こういたしますと、まあ両方預入限度引き上げとそれから乱用防止、この両方を両々相待ってやった場合のあとの姿を考えてみますと、税制上もなるほど限度は上がりますけれども、税制上としては現状よりは一歩前進である、こういう見通しのもとにわれわれも賛意を表したわけでございます。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも私は納得できないのですね。郵便貯金の問題とちょっとこれは性質が違うように思うのですね。これは荒木委員も前に質問されたようですけれども、大体、この国民貯蓄組合の支配的な組合形式窓口組合ですね。それで、前回答申の際の討議内容を見ますると、五千二百万人の国民貯蓄組合員のうち七七%に当たる四千万人が窓口組合員で、約二兆一千億円の総預金のうち八五%の約一兆八千億円が窓口組合預金で占められている。そこで、発生的には国民貯蓄組合という以上、組合員相互連帯意識のもとに相互貯蓄に励むというのがその趣旨であったであろうが、現在では単に少額預金利子非課税にするための一つの手段と考えられている、こういうふうに述べられているのですよ。そうして結論として、年間所得七十万円をこえる所得者は、全体の納税者のうちの約七%にすぎない状況であるから、現在の所得水準国民貯蓄組合乱用傾向の中では、三十万円の限度額引き上げが適当ではなく、軽々に実施すれば、一〇%分離課税によるわずかな収入まで失うことになると思われる。それで、乱用が非常に著しいから、三十万円でも乱用がひどかったわけですね。これを五十万円に引き上げたら、これはもっと乱用がひどくなると思うのですね。それに対してこの乱用を防ぐ措置を講じていますけれども、この大部分窓口組合なんでしょう。窓口組合なんですから、適正にこれを防止するといっても、私は実際問題としてできないのじゃないかと思うのですよ。  それで、前に諮問いたしましたこの制度は、戦時地域組合中心として貯蓄増強のためにとられた措置であって、現在の実情に沿わないこと、また適正な施行が困難であること等から見て、それにかえて新しく少額貯蓄に対する免税制度を創設すること、こういう諮問をされておるわけですね。ですから、なぜこれをやめまして少額貯蓄に対する免税制度を創設するという新しい措置を講じようとしなかったか、私がお聞きしたいのはその点と、それからこの前の答申において、この少額貯蓄に対する免税制度の創設についての学識経験者の、あるいは専門家のそういう意見というものはなかったのでございますか。また、それに対する大蔵省側意見等も聞きたいわけです。
  12. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 後段の問題からお答え申し上げますと、まあこの論理として考えられる問題として、去年はその問題をお話ししたわけでございます。で、国民貯蓄組合のようなものは乱用が多い。それから、はたして貯蓄増強という意味があるかどうか。それから、ねらうところは少額貯蓄免税するということではなかろうか。それから、もう一つ言いましたことは、いろんな措置について、いろいろな投資形態について優遇措置が講ぜられているけれども、その投資形態いかんを問わず、それが社債であろうが何であろうが、たとえば株であろうが預金であろうが、すべてどんな投資にしてもある一定額だけ少額のものを免税するという措置をとった場合とどう違うのか。それから、税制上はそのほうがベターではなかろうか。こういう一つの理論的の問題として提示したわけでございます。ちょうどこれから全く新しい税制を、ちょうど白紙に絵をかくように、新しい税制をしくとした場合の論理的の問題として提示したわけでございます。そのとき、私記憶しておりますのはいろいろ話はございましたが、そうすべきだというような結論も実はなくて、いろいろの御討議がなされたときに、少なくとも今の郵便貯金のような零細なものは別途に考えていいんじゃないか、こういうことが相当なる委員からの発言がございまして、実際論として現在の制度をすべて少額貯蓄制度に切りかえろという意見は、あるいは結論はなかったと存じております。  それから、五十万円にすると乱用がふえるではないかというお話でございますが、これは乱用がふえるという問題は、実はそれとは直接関係ないんだろうと思うのでございます。ただ現在でも乱用のあるところを、五十万円にすれば少しワクが広がるわけでございます。ですから、その限りにおきましては乱用は少なくなるといいますか、回数にすれば少なくなる。それから、金額でいえば、現行のままの制度であれば、金額としてはふえる傾向になると思うのであります。  われわれ、今度の貯蓄組合抜本的改正と並行いたしまして、今度限度引き上げに踏み切りましたのは、実はいろいろ銀行協会等としばしば協議を持ったわけでございます。一体なぜ乱用ということがこれだけやかましく言われているのに行なわれているのかということを率直に尋ねまして、まあわれわれの見るところ、この貯蓄組合の加入に免税制度を作っておいても、結局銀行間の預金争奪だけの話じゃないか、そのために一体消費に回るものが貯蓄に回るとかいう問題についてはそれほど関係ないんじゃなかろうか、あるいは株に向かうべきものがそのために預金に来るというようなことも、論理として言えても、実際に実感としてはそれほど多いことはないんじゃないか、また乱用については銀行もよく御存じのはずなんじゃないか、こういうことをわれわれとして述べたわけでございます。だから、これを一体防止するにはどうしたらいいか、それは制度抜本的改正その他ありますけれども、現行法のもとにおいても乱用防止が十分できるんじゃないか、お互い預金争奪戦であってみれば、金融界全体としてみれば益するところがないんじゃないかというところを率直に述べたわけでございますが、そのときに銀行界方々の個人的の御意見としては、確かに君の言うとおりかもしれぬ、しかし残念ながら預金獲得競争が始まっておってみれば、これはなかなか急に現行制度のもとにおいてやめるわけにはいかぬのだ、新しいスタートをしてもらって、制度改正する、みんなが今度は新しい制度のもとにおいて一せいに乱用防止銀行側もその趣旨で決定して運用するということであれば、これはおのずからいくであろう、要するに競争してきているんだ、だから今の制度のままこれをやめろといってもそれはうまくいかぬのだ、どこか踏み切りが必要なんだという話でございます。われわれもその点はごもっともだと思うわけでございます。  それからまた、従来の乱用の形を見ましても、ほとんどが店内におきます分割あるいは仮装名義、こういう形が大部分でございます。銀行もその事情を知っているものが相当多うございます。また、銀行もそのことを否定しているわけじゃございません。問題は、やはり納税者方々が今のような乱用防止を保障する制度がない上に、銀行がすでに預金獲得競争のために、そのラインでもって走り始めた。それを停止するということはむずかしい。銀行方々も、われわれも、好んでこんなことをやっているんじゃない。益するところはちっとも銀行相互間においてないんで、要するに競争激化のための一つの要素が加わっているにすぎない。そういう意味で、ぜひ何らかの機会に切りかえる措置が必要だということは、われわれはそう思うということでございます。  われわれはその話を聞きまして、確かに実際問題としてそうであろう、こういうふうに考えたわけでございまして、今度の国民貯蓄組合法改正もまた中心点はそこをねらっているわけでございます。銀行確認権限その他、制度的にも手を加えましたし、一番大事なことは、やはり銀行がこの制度趣旨をよく理解して、そして預金者にもそのように御協力願うように、銀行自身預金者の指導をしていただく、銀行がその気になってやっていただく、これが最も根本的な問題だと思っているわけでございます。その意味で、われわれはこの制度によりまして、この運営面で新しいスタートが始まるというふうに見ているわけでございます。そういうことから参りますと、なるほど限度引き上げることにいたしましたけれども、その答えとして、現在よりは相当分割その他からいいまして、金額的には今よりもはるかにそれらの措置によって減収が少なくなってくるだろうと思う。それから、法規が守られるという形で、これが運営されるだろう、こう期待しているわけでございます。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは甘いですよ、そんな考えで運営されたら。私は銀行制約説を言うわけではありませんけれども、三十万円でも非常に弊害があったのです。大体、荒木委員も前に質問されたのですけれども、五十万円の貯蓄をするというものは、相当高額所得者ですよ。その答申の報告でも、「国民貯蓄組合のあっ旋する貯蓄利子非課税とされる貯蓄額限度である三十万円については、郵便貯金預入限度の引上げの要請と関連して検討を行なわれ、」とあり、総理府統計局昭和三十四年度貯蓄動向調査をもとにして作成した調査によれば、年間所得階層八十万円ないし九十万円の階層で、初めて二十七万円程度の預貯金を持っていることを示している、こうあります。二十七万円の預貯金を持っている者は、大体年間所得階層八十万円から九十万円の者です。三十万円ならもっと所得は多いのです。五十万円だったらもっと多いのです。これは一般庶民大衆関係ないのですよ。ほとんど関係ありません。高額所得者層に対する優遇措置ですよ。しかも、こういうものは不労所得です。こういう不労所得に対する課税資産所得、こういうものに対して非常に優遇している。資本蓄積の建前から、配当控除とかあるいは利子分離課税をやっている。  実益があるならいいのですが、私はこれは実益がないと思う。非常に高額所得者層優遇措置であると同時に、さっきあなたが言われましたけれども、これによって乱用防止されると言いますけれども、三十万円が五十万円になれば、高額所得者は一そう非課税恩典を受けやすくなるわけですよ、五十万円になれば。これは二口までいいのですから百万円までですよ。百万円の貯蓄というのはちょっとわれわれ、自民党の方はどうかしれませんが、われわれには縁が遠いのですがね。そうなれば、ますます乱用が行なわれることは明白ですし、三十万円で乱用が行なわれたのに、五十万円になれば乱用されるのはあたりまえじゃありませんか。  それにまた銀行態度ですね、それは私はここではあまりはっきり申しませんが、われわれそういうあれを知っているわけです。われわれのところへ来るのですから、こういう恩典がございますと。それで競争をやっているのですよ。銀行投資融資につきましても、高度成長政策に関連して、政府がいかに自主調整自主調整と言ったって、なかなかできないのですよ。今の資本主義の経済の制度のもとで、銀行にそういう良心的なものを求めたって、それは無理なんですよ。そんなことはできっこありませんよ。甘いですよ、さっきの考えは。  だから、やはり制度的にそういうことを、乱用ができないようにするには、やはり非課税限度をかなり低いところにしまして、それで全般に零細貯蓄に対して非課税にすると、こういうやはり新しい制度に切りかえたほうが私はすっきりしていいですし、それでまた効果があるのじゃないかと、こう思うわけなんです。今度の改正は、どうしても私は実益がないと思うのです。前のは、答申趣旨は私はもっともだと思うのです。どうしても私はこれは納得いかないのです。  その二つの点ですね。銀行態度ですね、そんなに良心的に考えられるかどうかということ、それから非常にこれは高額所得層優遇措置なんです。実際に庶民大衆にはこれは無縁のものであると、こう思うのです。この二つの点について。
  14. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 今後の、この改正に伴う銀行態度がどうなるかという問題でございます。われわれは、この問題で、従来銀行といろいろ接触を保つ機会は多いわけでございますが、特にこの乱用防止の問題が非常ないわば国民的な批判の対象にこの数年来なってきたということは、先生も御承知のとおりだろうと思いますけれども、この点につきましては、銀行側相当神経を使っております。それで、われわれが個人的に伺いましても、はっきりいって、これは金融界全体としては、お互いにこの乱用を利用するということによって何らの利益はないということはよくわかっているそうでございます。しかも、昨年あたりに源泉徴収監査相当やりまして、本税で約二十数億、加算税を入れますと三十億余りの追徴をいたしたわけでございます。これはことごとく銀行負担になっております。しかも、その負担のみならず、その監査に伴う銀行業務の立場でいいますと、監査されること自体、これがおそらく預金というものを扱っております銀行にとっては耐えがたいところであるということをしみじみと言っておられるわけでございまして、その点には私は隠れも何もないと思うわけです、そういったいきさつもありまして、かねがね、できればこんな乱用をしないで済めばそれにこしたことはないという考えを持っております。去年の監査裏づけ等からいいましても、われわれはその真意に疑いを持つわけに参らぬわけでございます。もちろん、今度の制度そのものが抜本的に、たとえば名寄せするとか、住所地に全部その資料を名寄せするというわけにいきませんから、それはなおそういう意味では、最終的にもう全部乱用を断ち切るというところまではあるいはいかないかもしれません。しかし、一方におきまして、銀行側のそういう態度が十分期待できますとともに、他面におきまして、銀行預入者に対していわゆる確認の今度は権限もあるわけでございます。納税者のほうもそれは税金が安くなればそれにこしたことはないと、こういう心理も働きましょうが、同時にまた、上がったことでもあるし、そういうことまでしたくないという気持も、人間でございますので働くだろうと思うわけでございます。また、銀行のほうにおきましては、今度の制度が主として今の店内分割とか、あるいは仮装名義、この点を中心としての制度改正にとどまっておりますために、今後店舗の違う場合の乱用については、金融検査等において、十分その点にも注意を払おう、こういう配意も実はなされているわけでございます。こういった点を考え合わせますと、実は私は、結果に対する見通しとしては、先生とは違いまして、現状よりは相当よくなるであろう、こういう私は見通しでございます。  次に、この問題は高額所得者だけの優遇ではないかという問題でございます。これはまあ所得の種類でいいますと、これは勤労所得者だろうが、自由所得者だろうが、あるいは事業所得者だろうが、そういう所得者特定のものにしないで、それらの人たち預金利子についてのある限度における非課税の問題でございます。したがいまして、問題は非常に高額所得者だけになるかならぬか、こういう問題でございますが、先ほど先生の引かれました統計、これは内閣のほうで作りました貯蓄動向調査答えから見ますと、確かに先生のおっしゃっているような趣旨はあると思うのでございます。その点は、今の郵便貯金預入限度、現在の三十万というところに行っているものがそれほど多くないということとまさに同じような傾向を示しているわけでございます。しかし、われわれは今の預入限度引き上げという問題、それからこれを金額考えるのか、郵便貯金というもの、その性質考えるのかというところがあるわけでございます。で、長年の間、郵便貯金については、そういう零細なる人たちが、あるいはそういう人たちの利用するものとして考えられておる預金でございますので、これの引き上げについて、それが結果的に免税になるといって、それだけの理由で非常に反対するわけに参りません。税制調査会におきましても、先ほど言いましたように、こういうものこそいわば、何といいますか、零細預金の本源的な蓄積なんだから、特に免税する必要があるという御意見もあるところでございます。そういうバランスからいきますと、なるほど統計から見ますとそういうことになりますが、やむを得ないことではなかろうかという工合に考えているわけでございます。  なお、この統計自体、われわれはこの統計は、おそらくこれなりの統計としては、調査の結果としては疑っておりません。ただ、いろいろな方面で、この統計を見せますと、どうもこの統計自体が真実を反映しているかどうかということについて、いろいろな例をあげて、どうもこの内閣統計というやつは、もちろんこれは聞き取り調査による統計だろうと思いますが、貯蓄に関する限り、少し過小に出ているじゃないかというようなことは各方面で言っております。われわれはそれに対して、根本的にこの統計は間違っていると言う根拠はありませんけれども、しかし、まあ一般方々にこの統計を見せますと、やはり預金というものについてはなかなか調査がむずかしいから、これが少し低水準に出過ぎているんじゃないかという批判があるということだけ御参考に申し上げておきます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 五十万円に引き上げたけれども、五十万円じゃないですよ。二口までいいんでしょう。これはまあほかの非課税と合わせますと、百万円までということになるのですね、実際は。ですから、この五十万円に上げるということは、百万円までなのですよ、実際には。相当高いですよ。  それから、これは今起こってきた問題じゃないわけですよ。それはもう局長さんもよく御承知なわけですよ。昭和三十一年の臨時税制調査会答申においても、国民貯蓄組合乱用の問題が批判され、省令改正も行なわれて、仮装名義の使用を禁止する措置は講ぜられたが、この乱用傾向は改善されず、従前より激化したようにさえ見える、そういう措置を講じたのだけれども、むしろ激化したように見受けられるという答申のわけですね。ですから、これはよほど根本的にもっと考える必要があるのではないかと思うのです。五十万円といっても、実際にはこれは百万円ですよね。ですから、いろ  いろ今御答弁がありましたけれども、私は実際問題として実益がなくて、むしろかえって弊害のほうが大きいのではないか。大体この金額が大きいですよ。窓口組合預金が全体の貯蓄組合預金の八五%というのでしょう。一兆八千億円ですね。これが全部みんな乱用だとはもちろん言えないと思いますけれども、さっきお話がありましたように。しかし、非常に大きく乱用がされておるということは、これはもう疑いのないことだと思うのです。実際にわれわれも実際を知っているわけです。そういういろいろと御答弁がありますけれども、銀行預金操作の実情から見ますと、これを上げたら、私はかえって乱用が生ずる。どうもこれは当局側の見方が甘い。これはもう昭和三十一年ごろからずっと問題になってきているのですから、ここらでもっとすっきりした形に私はする必要がどうしてもあると思うのです。これはどうしても割り切れない。百万円ですものね。百万円の貯蓄というと、その所得額というのは相当大きいものですよ。これは私は何としても割り切れません。
  16. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 今度の改正案によりますと、限度は、なるほど法律上の限度は、二口、二種類でございますから、百万円になります。しかし、実際問題は、これでごらんになるように窓口が大部分でございまして、ほとんどが銀行預金でございます。おそらくそれは信託銀行に、信託にも預けた、あるいは預金にも預けた場合になるとか、あるいは地域組合、あるいは職域組合で二種類に加入した際の法律上の合計最高限度が百万円になるということでございますけれども、実際の利用の状況からいいますと、信託を利用されるということは、これは免税だけでやるわけではございません。やはりいろいろな自分の金繰りの関係、あるいは自分の投資の腹づもりでおやりになるわけでございます。ほとんど大部分の方は、預金を一種類に実際問題としては限定されるわけでございます。そういう問題としてみますと、われわれは実際的には五十万だというふうに考えるわけでございます。法律上はなるほど百万円でございますが、実際の状況を考えますと、大部分の人にとっては限度というものは五十万円に働いてくるというわけでございます。現在のところは、先般もなんでございましたが、見ておりますと、一千万円ぐらいの預金を三十口ぐらいに分けるということでございます。われわれが一番好ましくないのはこの形でございます。ですから、これは五十万円にしてみても、三十口に分けるか二十口に分けるかという問題でございます。したがって、問題はそういう分けるということをわれわれは徹底的にやって押える方向に向かうほうが、現状より少なくとも一歩前進だ、こういう考えを持っているわけでございます。  その見地からいいまして、それからまた従来の大部分店内分割または仮装名義の問題でございます。しかも金融機関は、大部分事情を知っておる。  金融機関は、これを何とかして、国民の批判を受けまして、自分たちもやめたいという。この気持の真意は私はそうだろうと思います。ただ、やめる方法をどうするか、そのきっかけをどうするか、ここに問題のポイントがあるのだろうというふうに考えておるわけであります。そういった意味からいいますと、今度の改正によりまして全部乱用を一時に断ち切るということはあるいは困難かもしれませんが、相当程度現状よりもその点については前進を見るものというふうにわれわれは見通しを持っておるわけでございます。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大部分五十万円と言いますけれども、その五十万円というのは、それ自身が相当高額所得層なんですよね。それからさらに、大部分以外の少数の人、そういう人たちは百万円の人もあるわけですよね。そういう高額所得層に対する——これは引き上げなくても、三十万円で零細の貯蓄者は恩典を受けるわけですよね。五十万円に上げなくても、私は一向差しつかえないと思うのですよね。  それと、もう一つ伺いたいのは、これはいわゆる会社預金といいますかね、社内預金とか言っていますが、それなんか、やはり対象になるわけですね。職域組合は対象になりますね。
  18. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 対象になります。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今実情をおわかりでしょうか。そういう国民貯蓄組合と社内預金との関係……。
  20. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) お答え申し上げます。ただいまお話しの点は、いわゆる勤務先預け金と称しておるものに当たるかと思うわけでございますが、これにつきましては、いわゆる悉皆調査的に調査を最近いたしたものは実はございません。そういう意味で、いわゆる最近における詳細な実態というものは計数的には実はないわけでございますが、実は以前に、三十四年当時各財務局、財務部を通じまして調査をしたものがございます。それによりますと、大体当時の預金の残高で九百十九億円、当時調査をいたしました会社、工場数約六千四百ばかりございますが、そこでの預金残高が、ただいま申しましたような九百億円ございます。ただ、これはあるいは全部を尽くしているかどうか、ちょっとそこは疑問でございますが、大体大勢は言えるのではないか。ただ、その当時におけるいわゆる貯蓄組合のほうの分類で申しますと、職域組合でございますね、職域組合ということでやっておりました預金残高は大体千九百億円ぐらいございました。そこで、大体どうもその半分くらいに当たるわけでございますね、今の数字だけで申しますと。ただ、先ほど申し上げましたように、九百億円というものがすべてを網羅しているかどうか、多少疑問でございます。その点、いきなりつき合わせるわけには参りませんけれども、大体そういう姿でございます。現在でどうか、いわゆる勤務先預け金そのものについての実態計数は現在ではございませんが、いわゆる職域組合として把握しております金額、それの預金残高は三十六年の三月現在で約四千億円でございます。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど千九百億円職域組合の貯蓄、これに対して九百十九億というのは、国民貯蓄組合関係と推定されるのですか。
  22. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) さようでございます。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、現在三十六年三月約四千億円の職域組合の貯蓄に対してざっと半分と見てもいいのですかね。
  24. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) どうもその点が正確にデータがなくて申しわけないのでございますが、おそらく先ほど申し上げました千九百億円のうちの九百ということに把握されておりますが、実際には千九百の大部分がどうも勤務先預け金ではないかと思われます。そういう面から申しますと、ただいまの四千億に対して、おそらくはその大部分のものが勤務先預け金と見られるのではなかろうか。ただ、これはあくまで推定でございますので、そのように実は見ておるわけでございます。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この預金は、銀行法上どういう性質預金でございますか。
  26. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) これは銀行法にいう預金の受け入れという、いわゆる金融機関としての銀行が受け入れる預金ではないわけでございます。ただ、これは御承知のように、労働基準法によりまして、労使間の協定によって従業員から使用者が預かっておる、そういう種類のものでございます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど実態的な調査を十分やっておらないというのですが、これは銀行法の適用を受けないから、大蔵省としてそういう調査をやっておらないということなんですか。銀行法の適用は受けないのですか。
  28. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 御指摘のように、銀行法の適用外でございます。銀行法の適用は受けません。ただ、これは先ほど申し上げましたように、根拠法規としては労働基準法によって規制されております。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 不特定多数の人からそういう預金を預かって、そしてこれは銀行法の適用を受けないというのは、どういうわけですか。
  30. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) まあ先生の御指摘のお話は、おそらく「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」のことをおっしゃっていらっしゃるのだろうと思いますが、この出資の受け入れの法律では、いわゆる不特定多数の者から出資を受け入れてはならぬという規定がございます。ただ、第二条で、別に法律に定めるところによってやるものは、これは除くということがございますので、銀行法等によるものは、もちろん除かれるのみならず、先ほど来申し上げております労働基準法という根拠法を持っておりますものは、やはりこれは除かれるというふうに実は解釈をいたしておるわけでございます。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もし弊害があった場合には、どうするのですか。たとえば、ある会社が従業員に社内預金をさしている。で、御承知のように、非常に金利は高いのですよ。その会社がつぶれたような場合、どうなるのですか。
  32. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) まさに御指摘のような心配があるわけでございますが、それにつきましては、労働基準法の中に規定を設けまして、つまり使用者が従業員から預かり金を受け入れました場合のいわゆる預かり金の管理規程と申しますか、どういうふうに管理していくかという管理規程を定めなければならない。で、それを主務官庁に届出をする。この場合は、労働大臣に届け出る必要があるということが一つ。それから、従業員のほうから返還の請求が行なわれましたときに、これはもちろん返還しなければならぬということを義務づけておるわけでございます。そのほか運営の状況を見まして、もしも好ましくないというような事態が見られました場合には、これの中止を命ずることもできるというような規定があるわけでございます。これは労働基準法の中でそういうことを規定をいたしております。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 労働基準法との関連は、これからあとで開きますが、今までそういう弊害があった実例ですね、会社がつぶれたようなケース、そればかりでなく、今度は従業員が退職するような場合、いろいろその退職について制約を受けたり、あるいはその他労働条件等について不利な取り扱いを受けたり、そういう事例があるやに聞いておるのです。それは調査されましたですか。
  34. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 特別の個々のケースについて、必ずしも全面的に把握をいたしてはおりませんのでございますが、ただいま先生御指摘のように、確かにいろいろ心配があるわけでございます。たとえば、会社がつぶれた場合にどうなるか。それにつきましては、会社がつぶれまして、たとえば会社更生法の適用を受けていくというような場合に、一体この預金の扱いはどうなるかというような点を見ますと、これはいわゆる給料、賃金等と同じような扱いを受けまして、いわゆる先取得権で保護されるという形にはなっておるわけでございます。ただ、全体として見ますると、いわゆる預金者保護ということ、一般金融機関における預金者保護という考え方が、必ずしも本件についてはそのまま同じように考えられない面があるのではないか。と申しますのは、一般金融機関でございますと、まさにいわゆる不特定多数の人々から預金の受け入れをするわけでございます。ところが、本件につきましては、あくまで労使間の話し合いで労使間の協調関係を基礎にして成り立っておるものでございます。したがいまして、使用者側、従業員側、お互いに納得をいたしまして、そういういわば契約関係に入るという性質のもので、いわゆる不特定多数という概念には必ずしも当たらない。で、つまり会社の従業員という特定された範囲内の人々が、そこの雇用主との間でいわば特約をするという関係でございますので、どうも問題が、いわゆる労使間の関係というところに非常に重点が置かれておるように実は思うわけでございます。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは重点を置かれておるように思われるというんですけれども、あなた実際を御存じだと思うのですがね。そんなものじゃないですよ。社内預金はかなり利回りが高いでしょう、金利が。ですから、一応会社と話し合いでやるとしても、親戚とか近所の人のそういうあれまでも持ってきて、会社に預けるという傾向もないとはいえないのですよ。そういう実態をあなたは十分把握されていますか。で、その金額が非常に多いので、そういう事例もあるやに私も聞いておるのです。そういう実態を把握されましたですか、調査をされましたですか。
  36. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) その点につきましては、実はその詳細な実態は把握いたしておりません。ただ、私どもの耳にも寄り寄りいろんな話が入ってはおります。ただ、その中で、先般ちょっと聞きましたことは、たとえば退職をしたあともその人の預金がその勤務先預け金の中に残っておったというような事例がどこかにあったというような話も、ちらと聞きました。これはよく考えてみますと、退職してから後に新たに預け入れるということでございますと工合悪いかもしれませんが、たまたま在職中からずっと積んでおったのを、やめた後もそのまま残っておった。いずれは整理しなくちゃならぬけれども、過渡的に残っておったものというふうに善意に解すれば、必ずしもそう一がいにとがめるわけにもいかぬのじゃないかと思いますが、しかし、制度性質上そういうことがやはり許されてはなりません。また、ただいま御指摘のように、親類縁者等が高利につられて入ってくるというようなことでは、これはまたまさに乱用でございますので、そういうようなことが行なわれませんように、これはまあ十分注意して指導を行なって参らなければならぬ、かように存じております。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、大蔵省労働基準法のほうに譲ってしまいまして、これを銀行法の対象にしないというのはおかしいと思うのですよ。金額も非常にたくさんありますし、本質は預金じゃありませんか。そうして会社が銀行業務を行なっているのと同じですよ、預け入れについては。こういうことを労働基準法に譲るというのはおかしいですよ。どうしてこういうものを労働基準法に譲るのですか。これは預金ですよ。明らかに預金ですよ。ですから、これは大蔵省の銀行法の適用を受けさせるべきであり、そうして大蔵省が監督すべきですよ。
  38. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 確かに先生御指摘のような面があるということは、私も実は考えております。ただ、これは労働基準法ができてから生まれたという性質のものじゃございませんで、淵源をたずねますと相当古いものなのでございます。戦前から会社の内部において慣行としてそういうことが行なわれておった。それを戦後、労使間、ことに従業員の利益を保護するというような面から、労働基準法によってこれをいわば法制化された、法制化してそのルートに乗せたいというような沿革もございます。そこで、そういう何分にも多年にわたる実質的な慣行として労使間に行なわれておりますもので、これをにわかに根本的に変えてしまうということもなかなか社会の実態に合いにくいのではないだろうかという実は懸念もあるわけでございます。確かに、おっしゃるように、一面から見ますと預金性質を持つものでございましょう。それだけに、万一理事者のほうにおいて欠けるところがあったらどうするかという問題は確かにございます。それについては実はかねてからいろいろ検討はいたして参っておるわけでございますけれども、何分にもただいま申し上げましたような事情がございまして、結局労使間の協調関係を基礎に行なわれている一種の慣行ということになりますと、やはりある程度これを尊重していかなければならぬ。それと、労使間のそういう慣行尊重の気持と、それから今先生御指摘のような預金者保護の気持と、どこで調和させていくかということがなかなかむずかしい問題ではないかと思います。それにつきましては、先ほど申し上げましたような労働基準法の規定もございますが、必ずしもそれだけで十分とも言えないかもしれません。幸いにして、今日までそういう事態が起こっておりませんものですから、まだいいわけでございますが、その点、将来のことを考えますと、確かに先生がおっしゃるようなことを十分考えていかなければならぬということを私どもとしては痛感いたしておる次第であります。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に保全経済会という例もあるのですから、こういう実質的には預金業務ですよ、そういうのを特定の会社に許していいのかどうか、これは問題ですよ。ですから、これは根本的にやはり考えなければならないと思うのです。そればかりでなく、あなたは労働基準法、労働基準法と言っておりますが、労働基準法の適用を受けるには条件があるわけでしょう。労働基準法に基づいて預金業務をやって  いくには条件があるはずですよ。どういう条件において労働基準法によって社内預金を許しておるか。
  40. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) これはいわゆる強制預金禁止の規定でございます。強制的にそういうものを受け入れるということはいけない。そこで、いわゆる使用者側と従業員側との間における行為でありまして、つまり組合があるものならばその組合との協定、組合がなければ従業員過半数との協定というものが前提になっていると考えます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そればかりじゃないでしょう。集めた資金の使途について問題があるのじゃないですか。運転資金にしてどんどん使っていいのですか。
  42. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 労働基準法では、その資金の使途につきましては、そこまで制約をいたしておらないと私は存じております。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは労働者の福利厚生に役立つという条件、前提のもとにそういうことは許されているのであって、会社が運転資金にこれを使うということで許されているものじゃないと思うのですよ。そうしたら、特定の事業会社が銀行業法に基づかないで労働基準法に基づいて、労使の間の話し合いがあればいいというので、預金をどんどん集めて運転資金に使う。そして銀行で借りるよりは安い。安いからそれを運転資金として、あるいは設備資金として、運用しているかもしれません、その一部を。かもわかりません。そういう行為が実際許されるのか。それは労働者の福利厚生に役立つという前提のもとに私は許さるべきものだと思うのですよ。ところが、最初はさっきお話しのように、出発は労使の慣行からこういう社内預金が行なわれると言われましたが、その出発当時と現在とは実情は非常に違うのですよ。会社が銀行で借りるよりは社内預金のほうが安いから、そこで会社の運転資金にそれを使っているわけなんでして、そういうことでもし会社がつぶれたらどうなるのですか。非常な問題ですよ。保全経済会と同じようなことが起こりますよ。
  44. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) まさに御指摘のように、つまり従業員の福利厚生ということがもちろんねらいでございます。私が先ほど申し上げましたのは、法律上のつまり制限はないということを申し上げましただけでございまして、あくまで精神は先生御指摘のとおりのことで運用されねばならぬと思っております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は今何を持っておりませんが、それは単に精神だけじゃなくて、法律にそういうあれがあるように聞いておったのですが、労働基準法をよくお調べになって下さい。それは労働者、従業員の福利厚生に役立つという条件においてそういうことが許されるということに。前に私がこのことを質問したことがあるのですが。
  46. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) ただいま御指摘の点は、つまりそういういわゆる勤務先預け金ということをやること自体でございますね、その受け入れて預けていくということ自体が、従業員の福利厚生の一環となるという趣旨でいわれておることだと思います。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすれば、福利厚生の範囲を逸脱しているじゃありませんか。
  48. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) つまり、私が申し上げておりますのは、普通であれば従業員は一般金融機関やなんかに預けにいっていいわけでございますね。けれども、同時に自分の社内においてそういうものを預かる仕組みがあるということは、従業員にとっても非常に便宜でございますし、というようなことで、そこでそういう勤務先預け金というその制度そのものが、これは従業員にとっていわゆる福利厚生施設のいわば一環になるのだという趣旨、これははっきりいたしておるわけでございます。と同時に、その結局資金の運用によって得る利益、これはやはり従業員の福利厚生施設等にやはり還元されてくるというようなことも当然やはり伴ってくるのではないかと思います。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実態はそうじゃないですよ。そういう従業員の福利厚生に役立つ範囲内においてなら、何もわれわれ問題にしていないのですよ。今そうじゃないですよ、実態は。ほとんど会社の運転資金の調達の一つの機関になっているのですよ、それは。当然、銀行法の適用を受けるべきですよ。どうして大蔵省はにえ切らない態度をとっているのですか。
  50. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) まあ、御指摘のように、あるいは受け入れた資金を自分の社の運転資金等に活用しておるという面も、それはあるかもしれません。あるかもしれぬけれども、それに対して私どもの先ほど来申し述べております基本的な考え方と申しますか、これはやはり古いつまり労使間の慣行というものがあって、それに基づいて行なわれておるということであるとすると、なかなかどうもにわかに切りかえるということはむずかしい。そこで、この辺のところのかね合いを十分考えながらやっていかなければならぬじゃないか。先生非常に、どうも大蔵省ははなはだ煮え切らぬじゃないかというおしかりを受けるわけでございますけれども、実はそういうような事柄の沿革、事態、歴史といったようなものからいろいろございますものですから、にわかに割り切れないと申し上げておるわけであります。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 少しも前進がないじゃありませんか。今急に改めるということも困難だということだけれども、しかし、さっきこれはやはり預金業務に類するような点もあるのだというお話でしょう。ですから、何とか考えなければならぬ点もあるのだというなら、それならそういう方向に向かって何か措置をするとか、いわば急激にこれを全部変えることが困難ならば、そういう方向に向かって、銀行法の適用を受けさせるような方向に向かって何か措置しなければならぬと私は思うのです。今後の考え方はどうなんです。やはり何ともならぬ、このまま放任しておくよりしようがない、という今の御意見のように受け取れるのですけれども、何ら前進がないですよ。保全経済会みたいな例が過去にあるのですから、そういうものが起こってから騒いでもしようがないですよ。われわれがそういうことを質問するのは、未然にそういうことがないように、また、労使の慣行云々と言いますけれども、そういうことが正常なる好ましい労使の慣行に役立つかどうかも問題ですよ。問題があるのですよ。
  52. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) いわゆる金融の立場から申しますと、こういうようないわゆる預け金というものはいわゆる正規の金融機関に預けていただきたいというのが率直な気持でございます。しかしながら、先ほど来申しておりますように、この制度が、いわば使用者にとってもそれはプラスかもしれませんが、同時に従業員の側のいわば便宜というようなことから発して、労使間のいわば慣行というようなことで動いておる面もあるものでございますから、一がいにみんな銀行に持っていって下さいというわけにも参りません。確かに先生御指摘のような点は、前々から私どもとしてもいろいろ考えておるところでございますけれども、ただいま、るる申し上げておりますような事情もございまして、まだなかなかにわかにというわけには参りません。しかし、十分検討して参りたい。  ただ、ここで申し上げたいのは、いわゆる保全経済会の事件がございました。御承知のように、これはいわゆる匿名組合というものを使って、一種の法の盲点をついたような形でございます。それで、こういうことが続発してはいけないということから、これは先生十分御承知のようなことで、「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」というものが制定を見たわけでございますが、保全経済会の場合におきましては、いわゆる匿名組合の規定にただ載っておるだけでございますので、何らいわゆる預金者保護的な規制の制度も何もなかったわけでございます。ところが、今申しておりますような勤務先預け金につきましては、労働基準法の中にそれらのいわゆる規制規定というものがございまして、主務大臣がこれを監督するという道が開かれておるわけでございます。ただ問題は、そういう主務大臣の監督がはたして徹底して行なわれておるかどうかということになりますと、これはあるいは御指摘のようにいろいろな問題があるかもしれません。それについてはあくまで法の精神にのっとった指導監督の強化ということをやはり私どもとしては徹底的に考えなくちゃならぬのじゃないか。ただ、その点、保全経済会とはだいぶ趣は異にしておるという点は御了解をいただきたいと思うのでございます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは趣は異にしておりますけれども、もしつぶれたような場合は同じような影響が出てくるという意味において言ったのです。それは趣が異なることは、あなたがおっしゃるとおりです。実際は、大蔵省は大きな会社の力に押されているのですよ。実際問題としてそうなんです。実際は銀行法を適用したいのだけれども、どうも大会社はその社内預金を使って、銀行で借りるよりも金利が安いから、それで非常に重宝しておるわけなんですね。これは銀行法の適用をすれば、それは禁止しなければならぬわけです。銀行業務である以上は、銀行がやらなければなりませんから、やっちゃいけないわけなんですから、ほんとうは銀行法の建前からいえば。そうなれば会社はたいへんですから、非常な強い圧力が来ると思うのですよね。それはまあ労働省を通じて来ると思うのです。今隠れみのは労働基準法ですよ。労働基準法によって労使の慣行上認められているという建前で、そういうことを手がつけられない、そういう実態だと思うのですがね。これは私の感想ですから、実態は私はそのとおりだと思うのです。今答弁を求めてもこれは無理でしょうから、私は今後大蔵省はやはり銀行法を適用するという建前でこの問題を考うべきだと思うのです、基本的にはですよ。そういう方向考えられるかどうか、この点伺っておきたいと思います。
  54. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) もしもその制度を根本的に変えるという場合で物事を考えました場合に、おそらくそういう場合には、銀行法適用というような形と申しますよりも、つまり正規の金融機関に預金を持っていってもらうという態勢を確立するほうがむしろ正常化としてはいいのじゃないか。つまり、ある程度確かに社内にそういうものを置いておいたほうがいいという事情もございましょうが、それを置きながら、さらに銀行法適用ということも、実は先生先刻御承知だと思うのでございますが、銀行法は御承知のように、預金の受け入れと手形の割引並びに貸付をあわせ営むものということでできておるわけでございます。したがいまして、勤務先預け金に銀行法適用ということになりましても、ちょっとそこは法体系としてなかなかむずかしい問題もございますし、ですから、どういう形が一番いいのか、それについてはもちろん十分考えなければならぬと思いますが、先生のおっしゃることもよくわかりますので、十分検討させていただきたいと思います。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が銀行法適用と言うことは、銀行法に違反するものであるから、それは禁止すべきだという意味なんですよ。銀行法に違反するのだ、銀行法の建前からそういう解釈をとるべきであって、そういう解釈をとれば、これは事業会社は銀行業務を行なうことができない。事業会社が銀行業務を行なっているということなんです。実質的には銀行業務ですよ。それで、預金と貸付というのも、それは自分自身でそれを運用しているわけですよね。非常に変態的な運用なんです。ですから、それはそういう意味で私は言っているのですよ。禁止するというお考えはないのですか、そういう方向で。
  56. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 御趣旨は非常によくわかります。まことにごもっともだと思うのでございますが、ただいま申し上げましたいろいろ歴史的背景とか、社会的慣行とか、いろいろなものが相錯綜しておる問題でございますだけに、私どもはどうもここで直ちに将来禁止の意向ありということをなかなか軽々にどうも申し上げられないところでございまして、なお十分検討をさせていただきまして、もちろん今に始まったことではございません、かねがねこの問題は研究はしておるわけでございますが、今後ともさらに研究を重ねさせていただきまして、その上でどういう方法がいいかということをひとつ御相談をしたいと思います。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、この問題はこの程度にいたしまして、もう一つ、ほかの委員の御質問もあろうかと思われますので、国民貯蓄組合の問題に関連して、利子分離課税の特例ですね、これについて質問しておきたいんですが、今国会に、貯蓄増強資本蓄積の促進のための措置として、国民貯蓄組合非課税限度、これを三十万円を五十万円に上げるというのと、もう一点、利子分離課税の特例、これを一年延期するという法律案が出ておるわけで、二つあるわけです。これは同じ趣旨から出ていると思うのです。いわゆる貯蓄増強促進という趣旨から資本蓄積に役立てる、こういう意味から出ていると思うのです。これについてはこれまでの税制調査会答申趣旨を十分反映して、そうして今度法律案を出されたんですか。
  58. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 分離課税を一年延長することにつきましては、今度これは税制調査会答申そのものでございます。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合、これまでいろいろ議論があるんですけれども、これはこういう措置は廃止すべきだという——これは時限立法ですが、廃止すべきだという、またそういう時期に来ていると、こういう意見がなかったんですか。
  60. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これは昨年におきまして、主として掘り下げての議論は昨年行なったわけであります。これが分離課税、分離一〇%という制度が、課税の公平という線からいえば決して好ましい線ではない、これについて何らかの一つの対策を持たねばいかぬ、しかしその問題はいわば不表現資産に対する投資所得、これに対する税制バランス全体の問題だ、株の配当に対する課税上の処遇をどうすべきか、この問題との見合いにおいて検討さるべき問題である。ところで、株の問題につきましては、御案内のようないわゆる二重課税の問題があるわけでございます。各国それぞれ二重課税の排除の制度を持っているところも持たぬところもございます。日本の場合、去年は二重課税を排除するけれども、ある程度排除するけれども、その排除の方法としてある程度法人の支払い段階において排除するという方法、これを今自己資本等の比率を直すという方向とにらみ合わせて、それを導入すべきである。そこで配当を損金に算入するか、あるいは限度を設けて損金に算入するということによって、今度は受け取り段階での税額控除方式あるいは受け取り段階での益金不算入方式、これについての規制を加えるべきである、同じ二重課税防止の方法をとるにしても、こういう論議がかわされました。しかし、それは今度は投資所得に対する税制利回りその他に尽大なる影響を及ぼすことになる、投資界に非常な撹乱を起こすことになるから、とりあえずの措置として、去年とりましたような支払い配当に対して損金算入ではなくて、一定の軽減税率適用という方式を採用すると同時に、受け取り段階における控除方式あるいは益金不算入方式に対してある歯どめをこれに見合って加えた。しかし、これは暫定的なものであるから、この措置をいかにするかということについては、さらに今後検討すべきだ、こういう答申が昨年実はなされておるわけであります。本年も引き続きその問題を検討したわけでありますが、何分にもこの制度の適用が昭和三十六年四月一日以後開始した事業年度から初めて適用になるわけであります。したがいまして、事業年度終了でいいますと去年九月末決算、この分の法人支払い配当について初めてその税率三八が二八に下がる、片や今の個人の税額控除方式に対する四分の一制限というものは、これは三十七年分からでございます。したがいまして、まだ実施されていないわけでございます。で、この結果は来年の三月十五日になって出て参るわけでございます。  そういう措置を講じましたのでありますが、とりあえず、今度の実施の結果についてどういうふうに考えるかというアンケートを、産業界、金融界、証券界、経済研究会、それぞれに対しまして発しました。そのアンケートを出しました回答は、まだ何分にも実施早々であって、その功罪はわからない。だから、しばらくこのまま現行措置は据え置くべきである。その結果が出てくるときまで今の制度をむやみに動かすべきではない、こういう意見が圧倒的でございまして、税制調査会にはその資料をなまで出しまして、実はこういうことになっているがいかがしたものでございましょうという相談をしたわけでございますが、税制調査会でも、この問題は経済界に非常に甚大な影響を及ぼす問題であるから、アンケートの結果どおりなお慎重な態度をとるべきである、こういう結論になりまして、とりあえずここでまた一年検討、できるだけ勉強して参るつもりでございますが、とりあえず一年間据え置くという考え方に立ったわけでございます。  したがいまして、今の預金利子に対する課税をどうするか、この問題もこれとのバランスにおきまして、どうしてもこまかい方向についてはいろいろな議論もございますが、これらとの見合いの問題でございますので、一年延長するということにいたしたわけでございます。最近における貯蓄増強傾向というようなことももちろんございます。ございますが、税制の面で根本的な問題としては、そちらのほうとの関連を考えて延長するということで、この点は税制調査会は満場一致その問題を同時に解決をはかるべきだという答申になっている次第でございます。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、税制全体から見まして、この資本蓄積も非常に大切であるということもわかるのでありますが、税負担の公平という立場からいいまして、担税力のある資産所得に対する課税が非常に軽くて、他の税金との間に非常に不均衡、不公平が生じていると思うわけです。で、この利子所得は配当所得に次いで非常に担税力のある所得であることはもう御承知のとおりですよ、資産所得は。で、これは答申にもありますけれども、この「利子分離課税制度は、利子所得を他の所得と総合することなく……上積税率一〇%をこえる所得階層に対しては、減税の効果をもつ。」、たとえば最高で七〇%の適用を受けている人は六〇%に減税になるわけです。こういう結果になるわけですよ。したがって、それは非常に何というのですか、減税効果は大きいのであって、担税力のあるほうに非常にたくさんの減税をすることになるわけですね。こういうことはどうしてもわれわれ容認できないわけです、負担公平の原則の見地から。  従来税金の取り方として、前に私は池田総理の大蔵大臣のときに質問したことがあるんでんが、必ずしも負担の公平の原則のみから税金を取るものでないということを述べたことがあるんです。それは資本の蓄積という立場からも考える必要がある、負担の公平の立場からのみ税金はかけるばかりでない、こういう御答弁があったわけです。終戦直後、それから昭和三十年、三十一年ころまでは、なるほど日本の経済は戦争で破壊されて、資本蓄積は非常に重要であったわけです。それで、そのための税制面からのいろいろな優遇措置というものは、私もこれは無理からない点があったと思います。しかし、昭和三十一年以後においては、それはもう資本蓄積は非常に急速に進んでおり、最近では、全体として日本はまだ資本蓄積は諸外国に比べて足りない足りないといいますけれども、最近では行き過ぎているではありませんか。行き過ぎているのですよ。そしてあまり設備投資が行き過ぎちゃって、国際収支が赤字になる、あるいは物価が騰貴したり、あるいは労働不足が生じたり、あるいはまた経済基盤、道路港湾、工業用水、運輸交通等と生産設備との間にアンバランスが生じている、こういう弊害さえ出てきているわけですね。ですから、今後はやはり負担公平という点を重視して、そうして課税考える段階に来ているのではないか、こう思うのですよ。  そういう立場からいって、担税能力のある、いわゆる資産所得に対する課税というものは考え直さなければならないのじゃないか、いわゆる負担公平の原則から見まして。資本蓄積も私は大切じゃないということは決して言わないですけれども、あまりにアンバランスになっている。今までの経過があるんですからね。経過があるんですから、今までどおり資本蓄積にあまりに重点を置き過ぎた税体系というものは、ここでやはり考え直さなければならぬのじゃないか。それから、もう一つ、戦争中に設けた税制というものがありますが、そのなごりもかなりあるわけですね。そのなごりもあります。そういうものもやはり考え直さなければならないと思いますが、この点は今後十分私は留意されたいと思うのです。  そこで、では本年度はこの利子分離課税の特例が一年まだ延期するとして、来年度についてはどういうお考えを持っておりますか。
  62. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) ただいま申しましたように、配当に対する税制をどうするか、これとのバランスにおいて、理論的に負担論の問題になります。政策論ではなくて負担論、プロパーの問題として、配当に対する課税を法人、個人を通じてどうするか、それとのバランスにおいて預金に対する課税はどうあるべきか、これが一つの論点になると思います。もう一つの問題は、これは実行上の問題でございます、預金について。しかし、それを実現する方法はどんな方法があるかという問題がおそらく出てくるだろうと思うのです。  で預金に対する課税、これを戦前からずっと見て参りますと、先生御案内のように、非常に変わっておるわけでございます。これはもちろん政策問題もあったと思いますが、一つは、その実務上の問題が多分に影響したのだろうと思います。私の記憶している限りでも、昭和十五年以前は、第三種は総合でございましたが、第二種は今のような預金、公社債の利子というものは分離課税でございました。昭和十五年の根本的税制改正、これで総合の建前を全部とりまして、いわゆる分類所得税と、それから一般所得税というふうにしまして、公社債、預金利子についても総合する建前をとりましたが、しかし暫定的に源泉選択制度を設けたということでございます。戦後になりまして、特にシャウプが参りまして、これはやはりアメリカと同じような論理でいけば総合すべきであるということで、総合を一年間だけ実施いたしました。ところが、その実施の結果、直ちに廃止しまして、源泉選択の復活、こういうことになりまして、その後はあるいは分離一〇%、五%とか、あるいは長期のものを非課税にする、続いて短期も非課税にして、全面的に非課税にしたことはございます。その後、短期課税、長期だけ残しまして、三十四年に長期も全部非課税という扱いをやめて、三十四年の四月から今日の体系になったわけでございます。  その預金利子に対する課税の変遷が示しておりますように、もちろんそのときどきにおける政策問題もあるいはあったと思います。しかし、実際上、課税上の技術として総合課税を理論どおり直ちにいけるかどうかという問題、それをやったときどんな問題が起きてくるか、これの見通しが必要なわけです。考えられます点はおっしゃるように、中にはその預金利子について上積み税率七〇の場合もございましょう。場合によると、所得税のかからいな階層もあるのです。どの辺が一番重いか、いろんな所得階層があるわけです。それらの問題を考えて、総合するというこの方向については、われわれは別にこの考え方を、総合した場合の負担というものをねらう方向については決してわれわれは反対しておるわけではございません。ただ、先ほど言ったように、配当との関係を若干考慮しなければなりませんが、それ自身の方向としては、総合的な負担方向をねらいまして、実行上どういう方法があるか、こういう問題があるかと思います。  そういう点でございますので、われわれは今後は、今後一年間は従来と同じようにこの問題を検討し続けようと思っております。しかし、はなはだ遺憾なことでございますが、非常に事柄のむずかしい問題でありますので、来年まで必ず一つの確定的な解答を出して、国会に提案いたしますというところまで、実は断言するほどの自信がありません。その点だけ率直に申し上げておきます。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全体の税制のあり方としまして、このシャウプ勧告のときは直接税中心で、そして資産所得あるいは譲渡所得等についても課税するという方針がとられたわけです。どうも私の感じとしましては、シャウプ税制部分的にいろいろ変えちゃいまして、資産所得者、あるいは資本にとって有利な面をどんどんはずしちゃって、そのために税制が非常に乱れてきたという面もあると思うのです。私は今後やはり、今までは大体において資本蓄積ということが中心でしたが、税制の全般を見まして、そういう方向にどんどん改正されているのです。一時は株式の譲渡所得に対しても、これは最初課税したわけです。一年くらい課税したのです。しかし、非常に手続がめんどうだという理由のもとに、これはやめちゃったわけです。登録が非常にめんどうだというので。しかし、できないことはないですが、これなんかも非常に割り切れないのです。株式の譲渡所得もこれを野放しにしておくことは、どうしても割り切れないのです。徴税技術上非常にむずかしい点があるかもしれませんが、その点は何かやはりかける必要があるのではないかと思うのです。今後はやはり負担の公平というものに重点を置いて、やはり税制考えていくべき段階に来ているのではないかと思います。そういう方向税制というものを考えるべきではないかと思うのですが、この点についての御意見をひとつ。  最後に、こまかいことなんですが、今度府県民税ですか、府県民税においても配当控除を認めることになるようですが、この点どうも私よくわからないのですが、国税のほうにおいて配当控除があって、府県民税においてまた配当控除が行なわれるというのは、どうも私よく意味がわからないのですが、この点どうですか。
  64. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 前段の問題で、負担の公平ということに中心を置くべきだということは、われわれも先生と全く同感でございます。ただ、われわれは、これは実際施行された場合のことを考えておりますので、要するに正直者がばかを見るということがないように、この点を実行の最後まで考えて、負担論を考えつつ、同時にそれが単なる理論ではなくて、実施されるわけでございますので、非常に正直者だけがばかを見る、こういう方法をとりたくないということをあわせ考えつつ、この問題を検討して参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、ただいまの住民税の配当控除の問題がございます。これは御承知のように、昨年までは住民税の課税標準は国税の所得税額でございまして、したがいまして、その本文方式では当然その配当控除の問題にはならなかったわけでございます。問題にならなかったわけでございますが、昨年切りかえまして、いわゆる国税の自動的の増減税がそのまま地方財政に移るということが、そのまま影響を及ぼすということは、地方財政の自主性という点からいって非常に問題がある。お互いに財政事情の違う問題を、自動的に影響を及ぼすということについては問題があるということからいたしまして、昨年の答申に基づいて実は三十六年にこの影響を遮断したわけでございます。したがいまして、今日は所得控除になっておるわけでございます。それで、国税のほうの税額控除は、国税にかかる分の法人税と所得税間の二重課税の調整をやっておるわけでございます。したがいまして、地方税については当然、その他の法人住民税とそれから個人住民税、この調整の問題を残すわけでございまして、今度は分離した関係上、そのことが地方税の中に配当控除という形で現われてきたと、こういういきさつでございます。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点ちょっとよくわからぬのですけれども、それじゃ最後に質問しておきたいのですが、きのう実は私、予算委員会で質問したのだけれども、時間がなくて十分に御答弁得られなかったのですが、この点具体的にひとつ御質問しますから、具体的にひとつ答えていただきたいのですね。というのは、課税最低限度の問題ですね。それで、総理府統計局から五分位階層別の勤労者の所得調査が出てきたのですね。それを見ますと、三十六年度において一番所得の少ない階層、第一分位ですね、これは個人で月収大体一万六千円ですね。その人が赤字なんです。三千円くらいの赤字なんですね。そうしますと、三十七年度の税制改正をやって、独身者の課税最低限度は大体十三万円くらいですね。十三万九千円くらいじゃないかと思うのです。そうしますと、赤字の所得者に対してやはり税金がかかるということになるわけでございます。ですから、私は、課税最低限度を大体二十万円くらい、月収一万六千円の人には税金はかからないくらいにすべきじゃないかと思うのですね。諸外国と比べましても、著しく課税最低限度が日本の場合は低いのですね。これは国力が違うから違うという面もあるかもしれませんけれども、とにかく諸外国に比べれば非常に低いわけです。それで、ひとつ、これは所得階層によっていろいろ違うでしょうけれども、やはり最低生計費というものを——そういう低所得層にとっては、これは最低生計費を食い込むような税金になっておるのじゃないかと思うのです。  それで、この答申では、課税最低限度については最低生計費をかなり上回っているというように書いてあるのですね。しかし、所得階層別に見ますと、必ずしも私はそう言えないと思うのですよ。低所得層の方は実際の家計は赤字なんです、総理府統計局から出しましたあれでは。ですから、その点で、もう少し私は課税最低限度引き上げる必要があるのじゃないかと思うのです、二十万円くらいに。どうしても一万六千円の人に税金、所得税がかかるというのでは、これは少し私は苛酷じゃないかと思うのですよ。最近学校を出てすぐ会社に勤めるでしょう。一万円ちょっとで、すぐ税金、所得税がかかるというのでは、これは私は少し酷じゃないかと思うのです。もう少しその点、課税最低限度引き上げる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  66. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 五分位の最近の統計、実はわれわれ部内でこの間調べたのでございますが、今手元に持っておりません。おりませんが、今お話聞きまして、一つは五分位のところの第一分位の平均一万六千円、その家族構成ごとの赤字状況が、ぜひとも課税最低を比べる場合に必要なデータだと思います。独身者の場合のときに、そのうちに独身者がどのくらいおって、それでその所得は平均幾らになっている、その赤字がどのくらいになっている、それで二人家族の場合はどうということがぜひ必要であろうと思います。もう一つは、それはおそらくそれを最低生活費といいますか、通常生活費といいますか、支出のレベルがいわゆる低い階層でございますから、上のことはないでしょう。上のことはないでしょうが、その階層における平均生活費がデータになるだろうと思うのであります。われわれも検討……。これも先生よく御案内でございますので申し上げませんが、最低生活費の問題を三つの角度から計算いたしまして、しかもその計算方法はかなりシビアな方法でございますが、その方法から見ると、現在の課税最低限はその考えられる最低生活費よりもいずれも二、三割方上回っておる、こういうことにはなってございます。  で、各国との関係でございます。これはもちろん所得の絶対額が違いますので、税制上の課税最低限、それも相当違います。で、標準世帯の夫婦子三人の場合をとってみますと、アメリカで円に直すと百二十万円、西独で八十万円、英国が七十万円、それに対しまして日本の場合は今度の改正でようやく二年かかって八万円くらい上げてきたわけでございますが、それでもなお四十一万四千円くらい平年度ベースで、ということで、絶対額として低いという、おっしゃるとおりでございます。所得の割合でどうかということは、なかなかむずかしゅうございます。平均所得として、家族平均世帯当たりの平均所得に対する課税最低限の割合ということから見ますと、日本はそれらの国よりはかなり高位にあるということも、数字の示すところでございます。しかし、それだからといって、相対的にいえば高いのだという結論も直ちにできないのだろうと思います。問題は、要はその実態をよく見まして、現在のものが無理かどうか、その判断にかかることと思っております。将来の問題といたしまして、われわれは所得税の税負担というのは、非常に減税に減税を続けて参りまして、相当程度今日まで、昭和二十五年以来、減税に減税を続けておりますので、相当程度高いものになったと思いますけれども、なお諸外国に比べて税負担が多いようでございます。特に課税最低限、これは中小所得者の問題でございますので、でき得る限り引き上げ方向で今後とも検討して参りたいということを思うことには変わりはございません。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと、資料を要求したいのです。今の課税最低限の限度をきめる場合の最低生活費ですが、最低生計費、それの計算の仕方の三つあるのを、三つの角度から計算されているということですが、時間がありませんから、その計算方法、資料として出していただけませんか。これは載っておりますか。
  68. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 載っております。三十四ページ以下、詳細な注をつけまして書いてございます。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですか。それならよろしゅうございます。それではまた資料を見まして、そうして……。  どうもわれわれの実感、その実感と、統計的に計算した結論とは違う点があるわけですね。どこが違うか。これは必ずしもこの生計費の問題ばかりでなく、たとえば物価騰貴の影響なんかについても、政府が出してきている統計と——政府はそんなに上がらぬ上がらぬというのが出てくるのですが、実感としてはみな、非常に値上がりの影響を受けて苦しいと、こうなっていますね。ですから、そういう点がありますから、これはもう少し掘り下げて検討いたしたいと思います、その点はね。  それから、物価騰貴の影響を税制面ではどう考慮したかということが、この答申にはあまり物価騰貴との関係がないわけですね。あまり考慮されておらないですよ。ですから、今度配偶者控除、基礎控除を一万円ずつ上げましたが、三十六年の物価の騰貴の工合、それは所得階層別にまた見なければならぬと思いますが、それとこの一万円の基礎控除の引き上げとがマッチしているかどうか、これも問題があるのじゃないかと思うのですがね。前に御説明がありましたが、われわれ機械的に単純に計算してみると、どうしてもつじつまが合わぬわけですよ。前に四万五千円の五人家族の世帯について、大体所得税と住民税が四百四十円減税になる、それから間接税が三百円減税になるとして、七百四十円減税になる。ところが、物価が三%上がりますと、その家計費の膨張が、四万五千円ですと、この八割を家計に使うとして、大体千九百八十円家計費が膨張するのですね。そういうつき合わせをやっていきますと、どうも減税してもらっても、物価が上がってしまったのでは、その限りにおいては家計は楽にならないという計算がどうしても出てくるのですよ。ところが、主税局長さんがこの前説明されたような計算で説明されますと、そういうことがないという説明になってくるのですがね。その点はわれわれの実感との間にどうしても納得いかない点があるのですよ。この点、何とか納得するように御説明してもらいたい点と。  それから、もう一つ、前に私が資料を要求しましたね。五十万円の年収の人と五十五万円の年収の人との今度の減税なり税負担の割合を調べてみると、五十万円の人より五十万円の人のほうが重くなるわけですね。それは当然なんです。しかし、五十万円と五十五万では、物価が一割上がった場合には——購買力が同じであるという前提になるわけです。購買力が同じである場合、五十万円の税負担と五十五万円の税負担を比べなければならないわけですね、ほんとうは。そうすると、税負担は重くなるわけです、五十万円だけを見ますと。それは確かに減税になり軽くなるのでありますけれども、物価が上がっておりますから、五十万円と五十五万円とを比較しなければならない。そういうふうに比較すると、やはり同じ購買力でありながら、名目所得がふえることによって税負担率が重くなるわけですね。こういう点もやはり私は考慮をしていただかなければならぬのじゃないかと思うのですがね。この点、どうなんですか。どうもわれわれの実感と減税と物価との関連ですね、納得いかないのですがね。何かわかりやすくそこのところを説明していただけませんか。
  70. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 税制は、物価の移動があった場合には、その移動のあった状況で重いか軽いか、重いとしたらどう直すのか、どこをどういうふうに体系的に直すのか、この問題であろうと思うわけです。物価と直接——物価は上がった、それ減税だ、物価が下がった、それ増税だ、こういうものではなかろうと思います。また、税制はもしそうやろうとしても、税制の技術的限界からしてできるわけもないわけでございます。そういう意味でわれわれは、物価が下がれば増税、物価が上がれば減税、こういうふうには考えてございません。すべてそのときにおける状態を考えまして、そのときに税負担として重いか重くないか、重いとしたらそれを体系的にどう整理すべきであるか、こういう問題として実は問題を考えておるわけであります。したがいまして、われわれ、しかし同時に、物価の動向と申しますか、こういうことは、しかし同時にその実質所得もずっと上がっているわけであります。したがって、それを物価が上がる前、たとえば三十五年ごろのベースの実質所得で直せば幾らになるか、そのときの税制、その当時の税制、三十五年のときの名目所得に対してそのとき幾らの税金がかかっておって、可処分所得が幾らか。今度物価が上がりました。しかし、三十七年度の名目所得は三十五年度の実質所得のベースで引き直せば、三十五年度ベースでの実質所得に換算すれば幾らになるか、今度の税制では幾らになるか、可処分所得はどれくらいふえるか、こういう計算はもちろんいたします。その場合の減税のメリットは、可処分所得の増加に対して減税はどれだけ寄与しているか、こういう計算はもちろん参考までに一応大数計算としてやってみるわけでございますが、ただ、物価が上がったからすぐどの税を減税、あるいは物価が下がったからどの税を増税と、こういうふうには残念ながら税制のほうでは考えておりませんし、また技術的にも非常に困難の問題です。ほとんど不可能ではなかろうか。大数観察上そういう裏づけ的な調査はもちろんいたしますけれども、そういうことで税制考え方は進んでいるわけであります。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が言っているのは、物価が上がったからすぐ減税せよとか、物価が下がったから増税せよと、そういう意味で言っているのではなくて、減税した場合に、中小所得者の家計負担が実際において軽くなるかならぬかという、そういう実態を見る場合、物価騰貴との関係を見ると、実態はそれは大蔵省だけの責任ではないのです。政府の総合政策の結果として、これは物価が上がってきているわけです。そうすると、実態は、物価が上がると減税をやってもそれだけ減税効果が減殺されてしまう、あるいはまた減税以上に物価騰貴による家計負担の増大がもたらされる、そういう結果になるのではないか。ことに三十七年度の減税を見た場合、そういう実態になっているのじゃないかと。実態の理解なんですよ。そのことを御質問したわけですがね。物価が上がったからすぐ、減税をしろ、物価が下がったから増税をしろと、そういう意味で質問しているのではないのです。実態把握なんですよ。だから、ほんとうに物価騰貴をも含めてほんとうに家計負担の軽減になっているかいないかを知りたい。われわれはなっていないというあれが数字で出てくるのですよ、計算すれば。これが実感なんですよ。ことに低所得者層については物価騰貴の影響は大きいですから……。そういうふうな計算はしておりませんですか。
  72. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) その三十六年度の物価騰貴、これはもう大体実績が出ております。したがいまして、実績計算、これは相対計算をやっているわけです。先生のおっしゃるのは、おそらく階級別に負担関係は出ますが、物価騰貴の影響というのがなかなか階級的に出ません。われわれが現にやりましたのは、相対計算であります。消費者物価を使っております。卸売物価を使いません、家計ということで、ですから、三十五年度分対三十六年度分、これはそれぞれの物価の比率も、実績もわかっておる。それから、実質所得の伸びもわかっております。税制もわかっております。それで、今言った計算をして、どれだけ可処分所得がふえたか、それでその場合の可処分所得の増加に対して、三十六年度の減税はどれだけ影響したか、この計算、推計数字は持っております。三十七年度分につきましても、同じ推計はしております。ただ、おっしゃるように、消費者物価の伸びを、これは見通しによっておりますので、二・八%ですか、二・八%の伸び、こういう計算でやっております。そういたしますと、いずれも、実質所得において相当程度の増加を示すとともに、その税負担の軽減が何処分所得の増加に対してどれぐらい寄与しているか、こういうことになって参るわけであります。しかし、三十七年度分は何分にも、今の経済見通しの数字、それから予算のベースとなった基礎そのものを使って推計計算をやっておる、こういうことであります。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 資料だけ要求しておきます。三十六年度二・八%、消費者物価の騰貴、それを前提としての推計ですか、試算みたいなもの、それは資料としていただけるのですか。
  74. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 承知いたしました。
  75. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今の木村さんの質問に関連してですけれども、物価騰貴の指数というもの、これはわれわれもいろいろ問題にしているわけですがね。大体は経済企画庁のあの統計を基準にしてやっているのですか。それから、実質的家庭支出の騰貴なんというものは、たとえば東京あたり別に出ていますね。これと企画庁のあれを見ると、かなり変わっている。それから、これはまた必ずしも権威があるとはいえないのだが、実際の生活の各家庭を調べたもの、これは大ざっぱにいって三十五年度と三十六年度と比較して三割八分から四割ぐらいふえている。そういう点、一体どれを一番対象にしてやっているのか、全体的にそういうものを平均して出しているのか。ただ経済企画庁だけやっていると、これは僕らからいわせればマジックなんですね。その点、どうなんです。
  76. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 結論から申しますと、経済企画庁の小売物価指数を使っております。その場合には、消費者指数というものは、これは生活内容の向上を伴った数字が出ているわけでございます。したがいまして、その前年度と比較する場合に、生活内容の向上を伴った分、これを使うわけには参りませんので、それでまあ卸売物価を全然排除いたしまして、小売物価指数、それがそのまま単位としての支出についてはそれが直接家計に響くもの、こういう前提で計算してございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、料金類は入らないのですか。鉄道運賃値上げとか、電気、ガス、水道料金、そういう料金類は小売物価には入らないでしょう。
  78. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 入っているか、どうか、ちょっと……。入っていないとすれば、その問題はあるわけであります。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近その問題が大きいのじゃないですか。鉄道運賃とか、私鉄運賃とか、それから電気料金の値上げとか、それからパーマとか、理髪とか、料金類のサービス料金の値上げというものは小売物価には入っていない。それですから、消費者物価というものが必要になってくる。消費者物価は生活向上の部分を含んでいるといいますが、必ずしも——まあ何か大体推定で、生活向上分を排除してやはり計算できるのじゃないですか。小売物価じゃ少しおかしいですね。
  80. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) どうも私が間違ったようです。この経済企画庁の消費者物価指数、これを使ってございます。したがって、実際はまあ料金も入っておるだろうと思います。
  81. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今の経済企画庁の消費者物価指数だけですか。あと東京都とか、そういうものについてのあれは勘案してないのですか。
  82. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これは全国計算でありますので、われわれの計算しておりますのは、その消費者物価指数一本で計算しております。それから、対象になりますのも全国の所得税の納税者、これを対象にしておるわけであります。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは全体に影響する問題でしてね。いつもこういう問題について十分とことんまで審議しないで終わるのですがね。実は、これが狂うと全体が狂ってくるわけですよ。いろいろな減税なり何なりの一番基礎になるのです。それから、課税最低限度というものをきめる一番基礎、生計費をきめる一番の基礎になるでしょう。それが今大竹さんが言われたように、やはり経済企画庁の——総理府統計局ですよね。消費者物価指数だけでやっているというのでは、これは大蔵省らしくないな。もう少し総合的にほかのいろいろな指数も勘案してやられる必要があると私は思いますよ。そういう点、どうですか。
  84. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 先生のおっしゃったような考慮、これももちろん必要だと思います。そういう意味で、一応の裏づけ計算はやっておるわけでございます。しかし、まあ先生の言うように、さらに実証的に地域別に階層別にどうなるか、こういうところまでは実際は行っておりません。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ことに総理府統計局の消費者物価指数を昨年の九月から変えたのですね、作成方法を変えたのです。それはいろいろな消費性向も変わってきているから変えたといいますけれども、従前の指数より低く出るように変わっておるのですよ。そういう点にもやはり問題があるのですね。それはそのままのあれでいいかどうかということも、また問題があるのですね。値下がりするようなものを入れて、それから値上がりの大きいものを除くような形に変えてきたのです。ことに最近生鮮食料品とか、そういうものの値上がりの大きいもののウエートを落としちゃって、たとえば自動車とかルーム・クーラーとか、カー・クーラーとか、そういうあまり上がらない、むしろ下がるようなものをウエートをふやしたでしょう。その理屈として、最近は大衆消費財の消費が多くなって、昔と消費内容が変わってきておるからと、こういうのですけれども、しかし現在生鮮食料品なんかどんどん上がっているのに、そういう過程において、そういう作成方法を変えておるということは、何か非常に意識的な、政治的なように解されるのですね。時期も悪いですしね。そういう点を大蔵省はもっといわゆる自主的な立場で、そういうふうに統計は変えたけれども、やはり大蔵省としてはもっと自主的にその変えた統計だけをもとにしてやっているんじゃございませんと、もっといろいろ総合的に考えているというぐらいの、それぐらいの権威がほしいですね。
  86. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) では、一時半まで休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      —————・—————    午後一時五十九分開会
  87. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再会いたします。  まず、入場税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は御発言を願います。
  88. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この前の委員会で社会教育局長の出席を求めておきましたが、社会教育局長は御出席になっておりますか……。それでは、社会教育局長が来るまでに、大蔵省の方に一、二点質問をすることにします。  みなし課税という問題で少しお聞きしたいのですが、日本の舞踊家なり音楽家でみなし課税相当痛めつけられて苦労している向きがある。というのは、自分が研究発表するときに、入場料を取らないでほとんど招待でやっておるわけです。それにもかかわらず税金がかかって、赤字の上に赤字を重ねなければならぬといって非常に困っている向きがあるのですが、大蔵省はそういう酷なことをやっているのですか、どうですか。
  89. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) この点につきましては、従来から料金が特に低い場合、あるいは形の上ではただで入りますという場合においても、バランスをとる必要で課税しているわけでありまして、そのときの算定の基礎といたしましては、大体原価で計算して課税するということによっておりますので、この料金の算定が特に酷なことはないと、かように考えております。
  90. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 課税は、入場料を取って、その入場料が主催者のふところに入る、その金額に対して課税するのでしょう。税金というのは、切符を買って入る、その入る人に対して切符の高に応じて税金がかかるのでしょう。ところが、切符を買って入っていないんですよ。それじゃ課税の対象がないんじゃないんですか、切符を買って入っていなければ。
  91. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 従来の、これは実は今度改正を加えまして、従来は料金を低くする、あるいはただだといっておるときに、この場合実際がそうであるのか、あるいは裏で反対給付を取るのか、実際経済取引でございますので、ただということは通常考えられないわけでございます。そういう意味で、従来は脱税防止の見地から強く考えまして、そういう場合には経費課税をいたしますという規定があったわけでございます。今度はその点、今先生がおっしゃるような方向で、取り締まりは取り締まりということにいたしまして、実際がただであるのなら入場者は料金を払っていないわけでございますからこれは課税しないということに今度の改正で改めようということにしたわけでございます。
  92. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大体日本の税金は申告制度であるべきものなのですよ。しかし、表面申告制度をうたいながら実際は賦課課税になっているのですよ。だから、ただでやりましたといって申告しているにもかかわらず、やっぱり税務署の認定で、そうじゃあるまい、いわゆる国民を罪人扱いして、そしてお前のところはただでやっているというのはうそだ、これだけ入場料を取っているのだろう、そういうものの見方でみなし課税というものをつけてやってくるのですよ。ただでは音楽会なんかやるまいというけれども、音楽家というのは自分の研究発表は非常に熱心なのです。研究発表するには人に来てもらわなければ困るのですよ。だから、身ぜにを切ってでも、ただでも実際に音楽会はやるのですよ。ところが、税務署の考え方でいくと、金に目のくらんでいる税務署だから、だから、そういうただで研究発表をやるような奇特な考えはないというようなそういう推測をして、そういう行為に対して課税するのはけしからぬ。これこそほんとうに、表面は申告制度云々といいながら、賦課税的な、いわゆる税務署の認定を押しつけているやり方じゃないですか。どこで認定するのです、ただかどうかということを。
  93. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) ただかどうかということは、その対価を領収しているか対価を領収していないかということによってきまるわけでございます。
  94. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 じゃ、対価を領収していないということをはっきり主催者が申告したら、どうするのですか。
  95. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) そのことが事実でありますれば、今度の改正で原則としては課税いたさないことに改正しているわけでございます。
  96. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 原則でないのはどうなんですか。
  97. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) その場合、特別の資格によってやるそのものだけをただにするというような場合を、想定しているわけでございます。
  98. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 特別の資格というのはどういうことですか。特別の資格というのはどういうことなんです。
  99. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これはいずれ政令段階で明らかにしたいと思いますが、考えておりますのは、その形を入場料という形ではなくて、しかし実際には会費とかその他の対価を取っている。それが結局回り回って入場料に経済的には合致する。それで十分採算が合うのだ、そう意味の特別の資格を持っているものだけを、いわゆる入場の際だけはただにする、こういうようなものについては、これは非課税にする理由なし、こう考えておるわけでございます。
  100. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今度の国税通則法でもやはり申告ということは使っていますよ、言葉の上で。しかし、最後の決定は、それは税務署長の考え方と一致したときは申告を採用するけれども、一致しないときは税務署長の認定を重要視するということが国税通則法の十六条にうたわれている。だから、今あなたは申告々々と言うけれども、音楽の研究発表に関しても、こちらは無料でやりました、全部招待でやりましたといって申告しても、それでもあなたのほうはそれを承認しないで、そんなばかなことがあるか、音楽会がただでやれるはずがない、費用も要るだろう、だから、その費用に対して課税するのだといって、あなたのほうで勝手にそういうものを作って、そして課税するということがこれまであったが、今後そういうものないという保証は全然ないのですね。今度の国税通則法の十六条を見ても、そういうことはない。これまでよりももっと激しく、いわゆる税務署の一方的な認定で課税することになってくるのだというふうにわれわれは解釈する。ほんとうに音楽家が研究発表をただでやろうという意欲が大蔵省には、大蔵官僚には理解できないのです。しかし、芸術家というものはそんなものじゃない。絵かきさんでも、自分の絵を見てもらうためにはただでも展覧会をやりたいのが、絵かきさんの気持です。音楽家にも同じ気持があるわけです。それがどうしても大蔵省には理解できないのですか、どうですか。実際そういう場合に税を絶対かけませんか。
  101. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 先ほど申しましたような意味におきまして、実質的にそれが無料であれば課税いたさないことになっております。  それから、申告納税と認定の関係でございますが、今度は入場税については申告納税に切りかえるわけでございます。しかし、申告納税の場合でも、税は入場税ならばどういう場合にかかり、その場合の課税標準はどうなるかということは、法律並びに政令ではっきりルールはきめるわけでございます。その上に立って申告納税していただくわけでございます。そのルールと違っているという場合に、違う処分がもちろんあり得るわけでございます。国税通則法十六条の問題は、実はこれとは関係ないことでございまして……。
  102. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 精神において同じだよ。
  103. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 十六条は結局、税金の租税債権がいつ成立するか、いつ確定するかということを書いておるわけでございます。納付は、具体的に確定した租税債権でなければ納付の問題は起きてこない、こういうことを書いておるにすぎないわけでございます。十六条というのは、その場合に成立即直ちに確定するもの以外、一定の手続をとって確定するものはどんなものであるかということを概括的に書いておるのでありまして、で、申告納税方式によるものは原則として申告によっていくのだ。ただ、本人が申告しなかったときあるいは申告した金額政府調査と違っておる場合には、その増差額——違うという場合には過大という場合もございます、その減差額については、これは更正処分によってその部分だけ増加あるいは減少するのだ。単にそう書いておるわけでございます。原則としてほとんど申告納税でございますが、賦課課税として残る部分も税の性質上あるわけでございます。こういったものは税務署長の決定によって確定するのだということを、技術的に書いておるわけです。で、決定してから、初めてそれぞれの決定した部分について納付の問題が起きます。納付すればもちろん消滅するわけでございます。そういう手続規定でございまして、あそこの十六条というものは特にそれ以上のものではないわけでございます。納付の前段階として確定方式をうたい、ついでそのあとの条文で、それぞれどうしていつまでにどんな手続でその部分を確定していくかということをうたっておるにすぎないのでございまして、先生のおっしゃるように、あれが非常に従来の課税制度を変えたとかあるいは確定について全く理由なくしてあの規定を設けた、こういう性質のものではございません。
  104. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 十六条の問題に関しては、国税通則法の審議のときにまた議論しましょう。今、入場税の問題やっていますから、その問題は触れないでおきましょう。  それでは、もう一度尋ねておきますが、音楽家とか舞踊家、また演劇家が無料でやって研究発表を見てもらうというときに、実際に——今度実際の手続ですよ、実際にそれを大蔵省に認知させる手続というのは、どういうふうに具体的にしたらいいのですか。
  105. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) それは課税標準の申告は要りません。ただ、こういうことをやりますということだけを、法律が定めておりますので、その申告だけが要るわけでございます。
  106. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、演奏会をやるについて、舞踊会や発表会をやるについて、まずもって私たちは今度はこうこうこういう舞踊会あるいは音楽会を招待制度でやります、こういう様式によってやりますということを、税務署に届け出たら、税務署はそれをそのまま信用して、そうして無税にするのですか。
  107. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 信用するか信用しないかという問題は別でございます。それが事実でありますればそのとおりになりますし、違っておれば違うことになるというのが法律の精神でございますし、また税務署もその法律に従って動くわけでございます。
  108. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 従来、それが事実であっても税金をかけてくるから、問題になるのですよ。みんな舞踊家など困って問題にしておるわけです。以後そういうことは絶対ありませんというならばともかくですよ。
  109. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 従来はただで入場している場合も、これは課税するという原則を、経費で課税標準を見て課税するという建前をとっておったわけです。したがいまして、それは経費課税として調査を要したわけでございますが、今度はその点は、取り締まりは別途やることにいたしまして、ただのものであればそれは課税しない、こういうふうに変えておりますので、事実あらゆる意味でその対価がないということになりますれば課税しないわけでございます。
  110. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあこの問題はこの程度にしておきましょう。  それから、入場税法の一部を改正する法律の第一条に「次に掲げる場所への入場には、この法律により、入場税を課する。」「映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を多数人に見せ、又は聞かせる場所」、こういうふうに書いてあるのですね。そうすると、多人数に見せること、聞かせることに税金がかかると理解していいですか。
  111. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) その場所への入場という消費行為をとらえております。場所への入場という行為をとらえております。しかし、あとでごらんになるとわかりますように、その場合の課税標準はあくまでもその入場の対価として受け取った金額でございますので、結論的にいえば、その場合に領収すべき金額、これが課税の対象になるわけでございます。
  112. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 じゃ、やっぱり先ほども申しましたように、要するに入場料を払って入場しなければ課税はされないということなんですね。
  113. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 原則はさようでございます。ただ、先ほど申しましたように、その税はやはり経済的、実質的に考えますので、入場するほうの側が、名義がどうあろうとも、実際は入場の対価と考えられるもの、これを払っておれば、それは非課税にはならない、こういうことでごいます。
  114. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ、あなたが気がついているらしいから僕聞きますが、労音という組織、これはたびたび言いますが、これは自分たちで会費制度で演奏会をやって聞いている団体なんです。だから、入場料を払っているのじゃないんですよ。自分たちで持ち寄ってやっているのですよ。入場料を取る人はだれもないのです。だから、こういう行為に税金をかけることはできないわけなんですね。それで、見せる行為でもない。自分たちが金を出し合って自分たちが聞く会なんです。だから、この条項に合わないと私は思うのですよ。どういうことなんですか。聞かせるのでも、聞かせてもらうのでもない。自分たちが聞くという行為しかないのです。しかも、自分たちで会費を払い合ってやる。だれも会費を取ってもうける人もない。だから、この条項に合わぬように思うのですが、どうですか。
  115. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これは現行法の第二条第三項に書いてあるわけでございます。この点は今度の改正にはないわけでございますが、「この法律において「入場料金」とは、興行場等の経営者又は主催者が、いずれの名義でするかを問わず、興行場等の入場者から領収すべきその入場の対価をいい、当該入場料金について課される入場税額に相当する金額を含まないものとする。」ということでございます。したがいまして、経済的に見まして、それが対価と認められるかどうかということによってきめるわけであります。
  116. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、大蔵省は税金を取っているんですから、現在対価と認めているわけなんですか。
  117. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 現在課税になっていると聞いております。したがいまして、当然対価と見ているのだろうと思います。
  118. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ところが、あれは対価じゃないんですよ。私は最も卑近な例をあげて言いましたが、自分のところの家庭のサロンにおいて少人数が集まって、そうして自分たちのポケット・マネーを出し合って謝礼して音楽会を開いた、それがだんだん大きくなって人数が入らなくなったから、たまたま一つのホールを借りてやるんだ、だから対価として自分たちは払っているんじゃなしに、要するに演奏家に対する謝礼としてお互いに持ち合うという意味でやっているので、入場料を取るとかいう行為とは違っているということを私は言っているんです。だから、これに合わないんじゃないかということを言っておる。
  119. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) そこで問題がありますので、法律は、名義のいずれとするかを問わず——謝礼の意味で出しました、あるいは入場料の意味で出しましたとか、あるいは事務費支弁の意味で出しましたとか、そういうことを問いませんと書いてあるわけです。もちろん通常の入場料からいいましても、その原価でいいますれば、それはコストのものもございましょう、それから利潤に相当するものもございましょう。コストといいましても、従業員に払うものもございましょうし、また演技者に対する謝礼もございます。また俸給で払うか謝礼で払うか、いろいろなことがございましょう。しかし、普通の入場料を分析してみましても、それは要するにいろいろな原価要素があり、あるいはマージンがあり、謝礼があると思うのです。しかし、それは対価であることには違いはないと思うのです。そういう意味でございますので、通常の入場料といっても、これはそれぞれの人たちがどういう原価計算をやり、どういうふうにしてマージンを加え、そうして入場料を幾らにするかということは、それぞれ主催者が自分できめることでございます。そういう意味でございますので、それと同じようなバランスにおきまして、対価と認められる限り、その名義の何たるを問わず、それはやはり入場料金なんだということを、普通の入場料とのバランス考えてここで規定しておるわけです。
  120. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、主税局長、一軒の家で十人なり二十人集まってやる場合も、そういう意味からいえば、やっぱり課税すべき性質のものと違いますか。
  121. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 対価には違いないと思います。
  122. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それなら、課税するのは当然じゃないか。なぜ課税しないのか。対価として認めるなら、課税するのは当然じゃないか。あなた、対価だから課税するんだと言った。
  123. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) その点は、まあ税でございますから、実際問題もございます。そういう意味で、法律では一条で書いてございまして、「催物」というのは、最後のところにありますように、「多数人に見せ、又は聞かせるものをいう。」ということにいたしまして、さらに第七条でそのことを具体的にみなす場合をうたってあるわけでございます。二号で「入場につき、通常、入場料金を領収して催物を行なう興行場等において、」ということで、おのずからそれが興行場というものになるかならないかということで、そこの見解を法律上は一応区分しておるわけであります。
  124. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 多数とは何人ですか、何人から多数になるのですか。
  125. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これはやはり興行場といわれる、これは一つの日本語の概念でございます。法律用語も結局、最後は日本語の通常の常識的な概念、これできめることだと思っております。
  126. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 多数というようなはっきりしない言葉を使って、多数だったら取るんだ、少数だったら取らない。それに対して、多数と少数の限界をどこに置くか、問題になるのじゃないでしょうか。
  127. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 通常の場合にはその問題はないわけでございます。普通入場料金を取っておりますのは、それぞれ施設を持っております。ですから、そこにはほとんど問題はないので、いわゆる直接入場料金という形をとらないで会費でやっているような場合、そういう場合が現実的には問題になるわけでございます。そのために今の七条ですか、現行法の七条で「興行場」、こういうふうにうたっているわけでございます。ですから、通常の興行場という言葉に含まれる常識的の概念、これによって実際の可否は取り扱っているということでございます。
  128. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 興行場というのは興行を目的として建設した建物をいうのですから、学校の講堂でやったら、学校の講堂は興行場じゃないでしょう、概念でいったら。学校の講堂は興行場じゃないですよ。じゃ、学校の講堂でやった場合は税金かからないんですか、どうなんですか。
  129. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 「興行場」というのは、興行場として特に設けられた施設という意味ではございませんです。当該催しものに関して興行する場所という意味でございます。
  130. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 学校の講堂なんか興行する場所じゃないですよ。たまたま人数が大きくなっかたから、一つの家ではできなくなったから、学校の講堂を借りてやろう。そこで、問題になるのは多数とは何か、何人以上が多数だということが問題になるわけですね。あなた、多数だ、多数にはかける、少数にはかけない。——じゃ多数と少数との境目をどこに置くかということが一つの問題になる。「興行場」というのは、興行をやる場所として建築してその目的で登記されている場所をいうのか、それとも学校の講堂でもそこで興行すれば、学校の講堂は興行場になるのか、その二つの問題をはっきり答えてもらいたい。
  131. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 後の場合は、これははっきりしております。学校の講堂を使ったからといって興行にならぬとはいいません。これははっきりしております。ただ、そのスケールの問題として、興行場がどこに限界があるかといったら、これは普通の日本語の問題だと、こう言わざるを得ないわけでございますが、実際問題として個人の家庭で少人数がやっているというような場合に、それをおそらく興行場とは読まないのではなかろうか。これは法文の上から普通の日本語の解釈として考えた場合、そうではなかろうかと思います。
  132. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、同じ対価であっても、個人の家庭においてやる場合は……。個人の家庭でも相当大きいホールを持っているところがあるのですよ。富豪のサロンなんかに行くと、百人も二百人も入るところがあるんですよ。ところが、外で興行場に扱われているところでも、百人も五十人も入らない場所もあるのですよ。外でやる場合にはそれが興行場と認められて、個人の家庭でやれば二百人入っても百人入っても興行と認めないで無税になる。そこに不合理があると思う。だから、僕は、人数でどこからどこまでが課税の対象になるのか、場所はどこかということを聞いている。
  133. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) あらゆる法律の限界線の問題でございますが、これは通常あり得る場合の平均値でもって限界線を引かざるを得ないわけでございます。それだからといって、個人の、たまたま一人呼んだという場合、全部これを課税の対象にするということは、とうてい、これは入場税の性質からいいまして、また執行の限界からいいまして、無理でございます。そういう意味で、通常あり得る形を考えて法律は作ってございます。そういう意味で、そういうこともあるかもしれませぬが、あった場合に、おっしゃるように不均衡ではないかというお話でございましょうが、税法の上では、そういう場合を通常想定しないで限界線を引いているということでございます。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題はこの程度にしておきましょう。  今、文部省の社会教育局長が見えているので、少し社会教育局長に質問したい。社会教育局長は社会教育の立場から、やはり娯楽施設に課税することが妥当であるかどうか、娯楽施設に対してどういう見解をお持ちか。
  135. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 娯楽施設その他につきましての課税の問題を、どうも私の立場として特別の意見を持っておりません。ただ、私どものほうで考えますことは、芸術振興という意味におきまして、いい芸術というものができるだけ国民大衆に親しまれるという観点から、経費というものができるだけかからないほうがいいということは、一般的に私たちの考え方でございます。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、要するに国民の文化を高める立場から、また国民の生活を潤す立場から、この両面から見て、すぐれた芸術ですね、娯楽に対しては課税をしないほうが好ましいという見解ですね。
  137. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 税制全般について、およそ税をかけることがいいか悪いかというような立場は、文部省だけの立場で申せないことでございまして、これは全般の財政の収支の問題とも関連あることでございます。また、そういういろいろの諸般の事情を前提に置きまして、芸術関係の仕事というものは、それに携わる者にとりましても、それを享受する国民の側からいいましても、できるだけいいものが経費がかからないで見られることが理想である、かように考えるわけであります。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 僕は、社会教育局長の立場で言うならば、入場税もなしですべての文化的なものにあらゆる国民が接しられるということが一番好ましいことだというふうに考えていらっしゃるだろうと思うのですよ。これが社会教育局長の立場だと思うのですよ。そういうふうにはなっていなくても、希望としてはそういう立場にあるだろうと思います。また、そうあるべきもんだと思うのです。しかるに、料金を払う上に税まで課せられるということは、やはりこれは僕は不合理だと思うのです。それに対してあなたの率直な気持を披瀝してもらったらそれでいいのです。あなたは税務署やそんなことは考慮する必要はないのです。あなたは社会教育の立場で答えてもらったらいいのです。
  139. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 芸術関係の催しにつきまして課税されることが低減されることは、私どもとして希望するところであります。
  140. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは少し芸術論になって、私あまりやりたくないことなんですけれども、しかし、何が純音楽であるか純音楽でないか、純舞踊であるか純舞踊でないかという問題が、課税の問題の論議の中で出てきたわけです。それで、私はこの税制調査会の第一次答申関係資料集の第二という中をずっと調べてみますると、ここに純音楽と純ならざる音楽との区別が出ておるのですよ。だれがこういう区別をしたのだといって大蔵省に聞いたら、そうしたら、文部省の社会教育局が出した資料だということを聞いた。そこで、私は何を根拠にして文部省の社会教育局がこういう資料を出したか、こういう点であなたの出席をわずらわしたわけなんです。これはやはり明らかにしておかなければならぬ問題があると思うのです。民族的にも、やはり明らかにしておかなければならぬ問題があると思うのです。あなたは、民謡というもの、民族音楽、民族舞踊、これは一体どこから生まれてきたものだとお考えですか。
  141. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) はなはだしろうとで、お答えすることも私の知識に余ることでございまして、どうも専門の方にお答えするのも恐縮でございますが、それは各民族の歴史的伝統によっていろいろだろうと思いますけれども、やはり民族舞踊というものは、古来それぞれの民族の生活、あるいは祭典、宗教、そういうものから生まれてきたものだと考えます。
  142. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、この日本の民族の持っている日本の民族舞踊、民族音楽というものは、これは非常に重要な民族の宝だと私は思うのですが、局長はどういうふうにお考えですか。
  143. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 日本の民族舞踊は、芸術の観点から見ましても、われわれが伝統を顧る上におきましても、それから将来新しい芸術を生み出す一つの動機として、創作家が刺激を受けるという立場から申しましても、重要なことでございまするので、文部省といたしましても、芸術祭には、全国にわたりまして保存されております民族舞踊については特に一部門を設けている次第でございます。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その点については、あなたと私と同じような意見になると思います。民族音楽、いわゆる民謡も民族舞踊も、民族の宝として尊重しなければならぬとうとい遺産だということについては、あなたも異論はないように思います。それでは、外国の民謡と日本の民謡とはどういうふうに区別します。どう違うのですか、扱いにおいて。
  145. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) この現行法の四条二項に関連する国税庁の通達に関連して御質問だろうと思いますが、そのもとには、文部省社会教育局から、その通達が作られます際に、御指摘のように、ある程度専門家意見も聴取しまして、しかしその前に申し上げておきたいのは、法四条第二項に掲げております趣旨と申しますのは、やはり交響楽云々の研究発表というような、そこにおのずから私どもは通常の興行、商業ベースによるいろいろの興行ということだけにまかしておいては、いろいろな分野の芸術家が発表することが非常に当時の状況としては困難なもの、それに対して一般のものよりも低い課税をする、そしてその芸術の振興に役立てるという趣旨であったと思うのであります。でございますから、これがやはりその当時におきまして行なわれました、いわゆるパーフォーマンスの形態でありますとか、それを担当いたします芸術家とか、そういうような要素と、それから現実に行なわれておって、いろいろはんらんしております商業的な興行によって十分行なわれておるというものとの対比を考えて、こういうものはひとつ安くしてもらいたい、こういう趣旨で国税庁にもお願いしたものと思うのでございまして、今この一つ一つを取りまして、私どもはこれが一つの作り方自体で、それが芸術であるとかないとかいうようなことは、私たちとしても議論すればきりがないことなんじゃないか、かように考えております。
  146. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 僕の質問少し勘違いして、税金のほうにばかり話を持っていこうとするけれども、あなたに税金の質問をしようと思ってあなたに来てもらっているのではないのです。税金の問題には触れないでいいです。私が今質問しましたのは、この報告書を見ると、外国の民謡と日本の民謡とを区別した条項があるわけです。そこで、外国の民謡と日本の民謡とはどう違うのか、扱いにおいてどう違うのか、こういう質問をしているわけです。
  147. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 民族舞踊を基本にいたしまして行なわれます芸術活動がいろいろございまするが、別にそれが外国の民族のものであるか、日本の民族のものであるかということで、芸術上の軽重があろうとは考えておりません。
  148. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、日本の民謡も民族舞踊も、外国の民謡も外国の民族舞踊も、同じく各民族の伝承の宝として、遺産として、ひとしく尊重するということですね。ひとしく芸術性を認めるということですね。間違いありませんか。
  149. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) そのとおりでございます。
  150. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、すぐ結論にいきたいのだが、もう少し話してみましょう。民族音楽というものは一体どういう過程を経てできるものですか。
  151. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 私も詳しいことを存じませんけれども、古いものはやはり民族の祭事等が起源になっておるものが多かろうと思います。
  152. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その答えは違うのですね。要するにそれは民謡です。民族舞踊です、僕の言うのは。民族音楽、いわゆる今われわれがこれから発展させていかなければならぬ日本音楽というものですよ。それはどういう過程を経て何を根幹として作られていくものか。
  153. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) われわれが先祖以来持っておりました音楽的な蓄積と、それから他の文化に接触していろいろ啓発を受けるものと、それが相互にいろいろな作用をなして、新しい時代の民族の音楽が形成される、かように考えております。
  154. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、そういう面から、とにかく民族音楽の効用、民族音楽を創造していく上からも、この民謡の重要性というものははっきりするわけですね。そうですね。それじゃ、この報告書の八百七十四ページの(3)のところに、「純音楽等とその他の音楽等との区分の現行取扱における例示」として、「(イ)純音楽とその他の音楽の区分をみると、たとえば民謡又は俗曲は純音楽ではないとしているが、一般に民謡といわれるものでも、たとえば「サンタルチヤ」「ボルガの船唄」等の歌曲の範囲に属するものは純音楽の取扱としている。」、ここで明らかに、ソビエトやイタリアの民謡サンタ・ルチヤもボルガの船唄も民謡ですが、それと日本の民謡とをはっきり区別しておる。差をつけておるのですよ。これは一体、どういうことなんですか。
  155. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) そこで、具体的にこの課税上の取り扱いということで、その区分が出ている……。
  156. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 何で課税上こんな区分をしなければならないか。よけいにおかしいじゃないか。芸術上に区分をするのはおかしい。なぜ課税上にそれは区分しなければならないか。
  157. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) それは先ほど申しましたように、現行法の第四条の第二項がやはりふまえますところは、研究発表する場合の特別扱いとして考え方があって、やはり一般の商業ベースによる興行というものでなかなか芸術発表の機会のない、そうして同じように取り扱っては経済的になかなかいかない、そういう実演芸術家の便宜をはかるという趣旨で、差を設けたことでございまするから、現実に行なわれておりますことを土台にして、そういうような区別を設けておる、かように考えております。
  158. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、税金の問題にあなた触れる必要がないと言っているのですよ。僕が今質問しておるのは、税金の問題に触れているのじゃないのですよ。ひとしく、他民族の民謡も重要ならば、わが民族の民謡も重要なんです。ひとしく尊重しなければならぬ同じ民謡なのです。しかるに、なぜサンタ・ルチヤ、ボルガの船唄を純音楽扱いとして、日本の民謡、われわれが最も尊重、よその外国の民謡を尊重する以上に尊重しなければならぬ民族の宝ですよ。この民族の宝であるところの日本の民謡をなぜ純音楽として扱わないか、その理由は何だというのですよ。
  159. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 芸術的に考えまして、外国のものと、わが国のものとを差別すべき理由はないと思っております。
  160. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、ここに純音楽と純音楽ならざるものというふうに、各条項に分けることはおかしいでしょうが……。
  161. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) そこで、先生が出されたものは、税の問題としてお出しになっていることでございます。
  162. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 税の上でなぜ区別しなければならぬか、わけを言ってごらんなさい。どういう法的な根拠によってそういうことを言うのですか。
  163. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) それは当時入場税法の四条二項が設けられた時期におきまして、やはり交響楽、器楽等のもの、そういうものは研究発表するという、その一般のちまたにあふれております商業的な興行というものと同じに扱われても、やはり実演芸術家の発表に困難を来たすという、そういう前提があってできていることでありまするから、そこでいろいろ区分いたします場合にも、純粋の芸術論という観点でなくて、そういう法律の趣旨から見まして、一般に通俗的な興行でどんどん行なわれているものよりは、より困難なものを保護しよう、こういうことであります。
  164. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはわかりました。通俗的なものであるか、研究的なものであるかということは、発表形式ですよ。発表されるものの内容ではないのですよ、発表形式ですよ。それじゃ、日本民謡を研究会で発表したら、純音楽と認めるのですか。これにはそういうふうになっていないじゃありませんか。サンタ・ルチヤ、ボルガの船唄がシンフォニー形式でやった研究発表をするのは純音楽と認める。日本の民謡はそうではない。日本民謡だって、研究発表をやる場合だってたくさんあるのですよ。そういうものの考え方がだんだん広がってしまって、おかしいことになっているのです。今例をあげると、大阪のほうで茶音頭という尺八の曲を演奏する人があるのですが、これは音頭の曲である、踊りの曲じゃないか、純音楽ではないという意見を立てた人がある。表題の日本民謡何々を主題としたる音楽というのをやった。これは民謡だ。民謡を発展さして純音楽に転ずる。今僕が純音楽という言葉を使うと語弊があるから、使ってはいけないけれども、そうすると、日本の民謡というものはみんな純音楽ではないという、こういう判断ですよ。それがあなた方の判定から来ている。日本の民謡だって純音楽会で演奏する場合がたくさんあるのです。何で外国のサンタ・ルチヤやボルガの船唄は音楽会で発表され、研究会で発表されるから純音楽と認められて、なぜ日本の民謡は研究会で発表しても音楽と認めないのか。民謡を発表するものは全部純音楽でない。今まで税金で二割と四割の差別を受けてきているのですよ。そういう不合理が起こってきておるのですよ。そういう点を伺っているのです。
  165. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 先生が後段でお話しになりましたように、日本民族の、日本の民謡を主題としたものがやはりまあ純音楽、といっては同じ語句を繰り返すことになりますけれども、芸術性の高いものでありますれば、当然他のものと区別する理由はないと思います。
  166. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、その報告書は誤りだということになりますよ。それに、なお続けていきますと、こういうことになる。「また、小うた、端うたその他これに類する俗曲は純音楽とは取扱っていないが、長うた、謡曲、ときわず、清元、新内等は純音楽としている。」、これはどういうふうな根拠で分けるのです。これは分けた理由を僕は聞きたい。僕は音楽専門家だが、この分け方がわからないのだ。僕は音楽の専門家だが、局長にわかっても僕にはわからないのだ。これは何なんだ。
  167. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 邦楽における区分でございますが、これはやはり繰り返しになりますが、課税上の取り扱いとして分けたものであることは間違いないと思います。
  168. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あんたに課税の話を聞いておるのじゃないのですよ。課税の話は、大蔵省の主税局長がおるから、主税局長に聞いたらいいのだ。僕は芸術家の立場から何でこういうふうに分けたのか、音楽上分けた理由を聞かして下さい。
  169. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 音楽上と申しましても、音楽上のことをどう入場税で取り扱うかということでございますから、そういうことを申しておるのでございまして……。
  170. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、なぜ純音楽なんという言葉を使うのだ。純音楽と純音楽ならざる音楽というふうに、音楽を分けておる。税金で分けておるのじゃない。音楽の内容で分けておるから、音楽の内容で分けた理由を聞きたい。税金は音楽の内容じゃないよ。税金で音楽の内容が左右されたら、たまったものじゃない。
  171. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 邦楽の発表の問題といたしまして、やはり宴席で当時としてはもっぱら歌われるものとか、あるいはそういう即興的なもの、あるいはすさびであるとかというようなものということを、まとまった芸術形態として取り上げるということではなくて、発生的には同じものでありましても、すでに古典化して相当の発表形式をとるような一群のものを区別したのだと思っております。
  172. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こんなわからぬ人を相手に芸術論を戦わしても、これはだめだけれども、しかし、これははっきりしておかなければならないのです。(「あまりいじめなさんな」と呼ぶ者あり)いじめるわけじゃない。だけれど、ああいう人がこういうことを支配するのだから、重要ですよ、日本の芸術上。日本の端唄、小唄というのは、僕に言わしたら、シューベルトのリードにも匹敵するほどの日本の代表的なリードですよ、これは。よく聞いておきなさい。長唄や清元以上に芸術性の高いものですよ。純粋芸術ですよ。最も純粋なものが民謡なんです。長唄なんか、純粋度からいったら、端唄よりも芸術的には純粋じゃないのですよ。ああいうものは踊りの伴奏として作られたものですから、純粋じゃないのです。僕はドイツに音楽の勉強に行って、向こうの音楽をたくさん聞いて帰りましたよ。それから、アメリカを通ってサンフランシスコに着いたときに、サンフランシスコのすし屋さんに僕は行った。そこで聞かされたものは何かというと、日本の流行歌だったのです。僕は実に不愉快千万でした。日本の流行歌というものは、世界じゅうで最も下等な音楽だ、低級な音楽だと思いながら、悲観して帰ったのです。それで船へ乗った。船へ乗って、船のサロンで僕は端唄のレコードを聞いた。そのとき僕は救われたような思いがした。それで僕は日本に失った自信を、端唄を聞いたときに取り返したのです。実際日本に何とすぐれたものがあるか、これはドイツで聞いたシューベルトのリードに匹敵する価値があるものだと思った。そのときに僕は初めて再認識したのです。それを純音楽ならざる部類に入れておるのじゃ、僕はしんぼうできないじゃありませんか。がまんできないじゃありませんか。  それから、シンフォニーが、課税の対象としてもしもシンフォニーが純音楽ならざるところに入れたらば、純音楽でなくなってしまうのですか。これは税金の場で話をするからこういうことになってしまう。そうじゃない。音楽そのものの内容で、純音楽ならざるものと純音楽であるものと区別するならまだわかるが、あんたは税金の対象として考えた場合を理由にして、こういうりっぱなもの、最もわれわれが尊重しなければならぬ民謡や、またそれに匹敵するような小唄、端唄類を純音楽ならざるものとして蔑視しておるのじゃありませんか。この税金の中に日本の民謡やそういう民族的なものを蔑視しており、外国の民謡をそれより高度に扱っておる精神が表われておるから、僕は腹が立って仕方がない。どうですか。
  173. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 私どもが芸術に関係する行政をいたします場合に、たとえば芸術祭のようなものであるとか、あるいはいろいろな選奨制度があるという場合に、およそ芸術上の観点から、芸術上だけの価値判断から日本のものを軽視するとか、それからこの種類のものはこうだというようなことはいたしておらないのであります。
  174. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、何で区別するのか。区別した根拠は何かというと、あなたは税金だ、税金だと言うじゃありませんか。そういうものは長唄や何かで、税金の関係で、とにかくここにわけのわからない大蔵大臣が出てきて、シンフォニー、あんなものは娯楽だ、あんなものは純音楽じゃないという決定をして、税金の課税上そういう手配をしたら、シンフォニーは純音楽でなくなるのですか。そうじゃないでしょう。税金の上では、あなたの言うように、大蔵大臣の、大蔵官僚の心がまえ一つで、いつでも純音楽であったり純音楽ならざるものになっちゃうのでしょうか。僕は、だから税金の上で言うのじゃないのだ、ほんとうに芸術上の立場でこういう区別をするのはおかしいじゃないかと言っておるのです。だから、あなたもそうですと言ったらそれで済む話なのです。あなたがそれに抗弁するから、僕は追及するわけです。
  175. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 私の申しておりますのは、現行法で、そういう全般の研究発表云々という建前で、その興行形態とかそういうものを考えるから、そういう観点に立つ区別が、語句として純音楽——芸術上の価値判断として、歴史上の価値判断として用いられた用語ではないのであって、これは税法上の取り扱いとして出てきた言葉であるということを申したのであります。しかし、それが現実にだんだん変化して参りまして、そうしていろいろの分野におきまして、古来のもの、あるいは従来は宴席の余興であったようなものが舞台芸術として発表の機会というものがだんだん出てくる、それぞれの関係者の努力によって形成されてくるという段階になって参りますので、その適用の困難等を考えまして、今回この区別をなくして、税の問題として処理されることになったのだろうと思いますが、その点については、文部省としてもその区分がなくなっていくことにつきましては賛成でございます。
  176. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 小唄や端唄が宴席上に歌われるから、これは純音楽として扱われないといいますがね、サンタ・ルチヤでもボルガの船唄でも、宴席で歌われるのですよ、外国へ行ったら。日本でも歌われますよ。僕ら宴席で歌いますよ。だから、宴席で歌われるということが純音楽とは何かという区別をする理由にならないのです。しかも、端唄を作った人、小唄を作った人は、これは宴席で酒を飲んで女にふざけながら歌って下さいといって作ったのじゃないのです。もっと芸術的な創造意欲で作られたものです。それがたまたまそういう機会に歌われたからといって、そのものを侮辱するには当たらないじゃないか。芸術の評価をしなければならぬ文部当局としては、それはおかしいじゃないですか。
  177. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 先ほど申しましたように、文部省として芸術全般について、どの分野についても、これはいいものであるか悪いものであるかというような価値判断をいたしたことはないのであります。
  178. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 じゃ、もう一つ聞いておくがね、くどいようですが、サンタ・ルチヤ、ボルガの船唄と日本の民謡とを区別した理由は何です。税金じゃないですよ。
  179. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 言葉を返すようでございますが……。
  180. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それなら税金でもいい。税金でも、何で区別するのですか。
  181. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 税の上で現行法が取り扱いをいたした趣旨というものが、やはり芸術家の研究発表というものの興行がいろいろ困難である、それを一般の商業の形態でどんどん行なわれているものよりは発表の機会を容易にするために、あるいはそれが国民に享受をできるように差をつけたということでございますから、その観点から見まして、そのときの時点におきまして、たまたまどれが宴席で行なわれるかということを申したのではないのでありまして、もっぱら興行形態として、芸術発表の形で行なわれるようなその種のものを一群のものとして取り扱ったということだろうと思います。
  182. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、日本の民謡もそういう芸術的な演奏会において発表される場合は、純音楽として取り扱うのですか。
  183. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) そういう問題が、だんだん実際の適用上困雑になってくるであろう、その点でその区別をしないという考え方になってきたのだろうと思うのでありまして、そうすれば、今先生のおっしゃいましたような、まあ税の問題であるかもしらぬけれども、文言の必要によって価値判断までされるというような危険性がないという意味で、私どもは差別がなくなって全般に入場料が低減されるという方向に賛成でございます。
  184. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、この純音楽という「純」という言葉を使ったことは妥当ですか、妥当でないですか、どちらです。
  185. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) これはお言葉でございますが、いろいろお考えがあろうかと思いますが、しかし非常に典型的な例をもって参りますれば、それはやはり正統な音楽というものと、もっぱらすさびとしてだけで、それほど国民の常識として芸術的に評価されていないというものとのおおむねの区分は、典型的なものについてはあり得るだろうと、しかし、おっしゃるように、その限界とかあるいは発生の歴史とかというものを見ますければ、それは他の事柄と違いまして、白黒といってすべて線を引きがたいものであるということは私も承知しております。
  186. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 「純」という言葉ね、非常に誤解しやすいのですよ。誤解しやすいというか、「純」といえば純粋な音楽だというわけですね。純粋な音楽にサンタ・ルチアや、ボルガの船唄を入れて、純粋ならざる音楽に日本の民謡を入れるから、僕はおかしいじゃないか、間違いではないかと、こう言うのです。あんた、どう思いますか。
  187. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 芸術上の問題につきまして、「純」という意味を純粋音楽であるとかあるいはそういうふうに言いますれば、これは芸術上の用語として特定の概念を生ずることでございまして、御承知のようにかなり厳密な意味の概念規定のあることでございますから、そういう芸術上の意味で、純粋音楽というようなことの意味で、そのまま法律上の用語で使うことは私は適当でない。これはやはり芸術上の問題にゆだねるべき事柄だと思います。
  188. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、僕はここに「純音楽」という言葉を使って、この音楽を区分することは妥当ではない、適当ではないと、私はそう思うのです。だから、そういうことをあなたに言ったわけです。よく今後いろいろ問題にぶつかるだろうから、そういう場合よく考えて、言ってもらいたい。  要するに、われわれが今音楽上一番重要視しなけりゃならぬことは、日本の民謡の再認識ですよ。民謡の再認識です。十九世紀当時、ソビエトの音楽でもヨーロッパ追随だったわけです。イタリア、ドイツの追随だったわけです。しかし、グリンカが生まれて、ソビエトロシア独得の、要するに民族音楽を作らなきゃならぬ、それでなくちゃよその国と何も対抗できないというような見地から、やはりそして自分の民族に最も理解される音楽を作らなきゃならぬという立場で、民族音楽が創造を始めたわけです。そのときに何を根幹としてそれを作るかということで、まずぶつかった問題は民謡なんです。民謡を研究して、だから、グリンカ初めムソルグスキーやリムスキー、コルサコフ初め、全部ロシアの民謡を素材にして、そして今世界に雄飛するような、ああいうすばらしいロシア音楽というのができたわけです。日本はこれからやらなきゃならぬ。その仕事があるわけですね、日本の音楽界では。そのときに、日本の民謡は純音楽ではない、サンタ・ルチアやボルガの舟唄は純音楽だというような区分をしておっては、それでは成り立たぬでしょう。そういうすばらしい仕事をしていかなくちゃ、日本としては恥かしいことですよ。だから、僕は特に文部省の社会教育局長を呼び出して、それをはっきりと認識してもらうために僕は質問の形式をとってやったわけです。よく御理解になったものと思いますが、今後そういう扱いはしないでほしい。  第一、芸大の学長だった下総君、あれが日本の民謡をアレンジして、三部合唱や四部合唱にしていますよ。あれがもし演奏会で演奏されれば、これは民謡として純音楽扱いしないのですか、どうなんですか。
  189. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 現行でも——これは私、不正確でございまして、当たっているかどうかわかりませんけれども、古来の民謡というようなものに取材いたしまして、そしてりっぱな形で行なわれるものは、私はここで書いている「民謡又は俗謡その他これらに類するもの」というふうには、現行法でも私は考えなくていいのじゃないかと思います。
  190. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、そういうものは純音楽と認めるということ。しかし、現在までそういうことがなされなかったんです、これまで。今度税金の上では純音楽も何もなくなって、一律に一〇%になりました。しかし、これまでは民謡に取材したものは、やってもそれは純音楽と認めないで、みんな二、三〇%の税金をかけられてきた。そういう不合理があったわけです。だから、そういう不合理を起こした原因は、あなたのところにあるんだ、社会教育局に。だって、そういう答申からそれが起こっているんだし、だからあんたがその責任を一身に引き受けなくちゃならない問題なんですよ。それよりも、やはり日本の民謡をもっと尊重しなさいよ。端唄や小唄をもっと尊重しなさいよ。そんな中で、純音楽、不純音楽というような、そんな区別はつけるべき性質のものじゃないのです。一様に尊重して、そして文部省が先頭に立って、日本の古来の美風を尊重し、民族を象徴したようなりっぱな音楽の生まれるように文部省がやってもらいたい。この程度で私の質問をやめます。
  191. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 入場税法に関連して二、三質問したいと思いますが、この前に資料提出を要求しておいたのですがね。学校教員が引率した場合ですね、いわゆる衆議院の修正です。学校の教員が引率をして映画等を見た場合に、入場料金はどれくらいになっているのか、またどれくらいの人数が入っているのか、そういう資料を出してもらうように話をしておったのですが、それがまだ出ていないわけです。だから、説明でもいいです。まああれば、どれくらいの料金で入っているか。
  192. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 資料は実はきょうは整っておりません。さっそくでき得る限りの資料を集めたいと思います。われわれが今まで聞きましたところでは、あるいは若干の資料をサンプル的に調べた範囲では、大体三十円以下が多いようでございます。しかし、ものによりましては七十円、あるいはもっとそれ以上のものも若干ございます。衆議院の修正に関連いたしまして問題になりましたのは、児童演劇という問題がございまして、実は児童演劇といわれるものについて料金を見てみますと、これもわれわれが調べた範囲では、三十円以下のものが多いようでございます。
  193. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、与党の議員からこれをきょうじゅうに上げてほしいという強い要求があるのですよ。資料をあした、あさってということになれば、この法案をきょう上げるわけにいかないという格好になってくるのですがね。だから、これはできるだけ正確に答弁してもらいたいと思うのです。必ずしも資料提出を私は要求しません。  というのは、私の心配している点は、いわゆる免税点を三十円から五十円に引き上げた。それは私いいと思うのですよ。しかし、実際問題として免税点が五十円に引き上がったということによって入場料がだんだん上がってくるんじゃないか、三十円から五十円に上がってくるんじゃないか、かえってこのために児童の負担が増加するんじゃないかということを心配しているわけなんです。だから、この衆議院の修正案については若干の疑問を持っているわけなんです。そこで、お尋ねしているわけなんです。一体今幾らで入っているのか。大体の様子としては三十円以下で入っているということであれば、何も修正する必要は起こってこない、こういう考えを持つわけです。ですから、今の点をひとつできるだけ正確に詳細に報告してもらいたいと思うのです。
  194. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 実はこの観点から、学校の先生が引率するものについてどういう料金構成になっているかということについて統計はとっておりません。それで、先ほどお話がありましたので、至急サンプルだけ、いわゆる児童演劇というようなもの、それに関連して若干のケースを集めたものに基づくことを今お話し申し上げているわけでございます。そういうサンプルでございましたら、これはございます。そのとき見ますと、大体三十円以下が大部分のようでございます。  今、先生がおっしゃいました、かえってそれをやると上がるかどうかという問題でございますが、われわれも一ぺん考えてみましたが、これは映画等につきましては、それぞれみな料金の定めがございまして、早朝興行とか、そういうときに多く引率しておるようでございます。したがいまして、こういう料金の定めのあるものについては、まずその憂いがないのじゃないか。問題は今の児童演劇とかいうことでございまして、一般に初めからもうそういうものをねらっておると、こういうことでございますが、理屈でいいますと、もとより税金を下げたことでございますから、それだけ原価要素が下がっているわけでございますから、少なくとも上がるというふうにはならないわけだろうと思うのでございます。今後は税金がかかりません。  それから、今まで税金はかかっておりました。従来の税込み、たとえば三十円は今度は幾らになりますかと、こういうわけですが、今回免税になった部分、たとえば三円なら三円の部分、それがそのとおり引き下がるかどうかという点は、まあ経営が苦しいとかなんとかありますから、だから、ほかの入場税の減税と同じような問題が理論的にはあるはずでございます。ただ、それだからといって、今後の税のかからない料金は、それは三十円というやつを上げましょうということには直ちにいかぬのではなかろうかという感じはいたします。ただ、心理的にはこういうことは働くかもしれません。これは心理の問題でございます。今までは、税込みは三十円の範囲内の見せものしか、なまものしかやれなかった。見せものというとなんでございますが、そういうようなものしかやれなかった。今度は免税点が五十円になったから、だからもう少しいいものを作ろう、こういう意欲は、何分それは芸術の話でございますから、そういう意欲は働くかもしれません。そういたしますと、これは経済問題でなくて、いわば心理的な問題、あるいは製作意欲の問題、これはあるかもしれぬと思います。しかし、下げたことによって同じ出しものに、従来税込み三十円のものが、自動的に税抜きで、税がかからない状態で三十円以上にはね上がるという問題はないだろう。その減税になった三円の分については、普通ならば当然下げてしかるべきものを、経営が苦しいから、そこが少し食い込むか食い込まぬかというあたりが、経済問題としてはあるのじゃなかろうか、かように考えておるわけであります。
  195. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは判断の問題ですから、質問はやめておきます。  次に、今度の減税によって入場料を下げる、減税分だけ下げる、これは行政指導でやる、こういうことです。私がちょっと前に聞いたのですが、プロ野球等についてはまだ応諾していないという話を聞いたのですが、これはどうなっておりますか。
  196. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これはなかなか、酒税、それから物品税につきましては、各界とも、酒税は特にそうでございますが、全面的に協力する。基準価格は四月一日を期して、今の実際の価格を減税額だけ単位当たり下げます、そのことを明示いたしますということを、それぞれの団体が言っております。物品税につきましても、通産省を中心にいたしまして、執行面では国税庁と緊密な連絡をとりまして各業界に当たっております。おおむね全部協力いたします。若干技術的にむずかしい問題がございますが、そのかまえとしては、全面的に協力するかまえで進んでおるわけでございます。  これに対しまして、入場税関係につきましては、従来はなかなか全面的に下げるというわけには参りません、こう言っておったのでございます。まあ半分くらいはやりますが、あとは内容を向上させるということによって、質のいいものを出します。だから、そのほうに向けさせてほしい。それは製作のほうに四分の一、それから見るほうの施設の改善に四分の一、内容のサービスの改善に充てる分があるから二分の一程度に引き下げはしんぼうしてほしい、こういうことを言っておったわけでありますが、これは大蔵省のほうから強硬に申し入れまして、その問題は、減税の際はとにかく引き下げてほしい、将来いいものを作った上で、料金を上げるか上げないかは、これはお客との相談の問題だから、その上でやるべきであるということを強硬に申し上げまして、最近に至りまして、協会のほうも全面的に今度は引き下げに協力いたしますということを言っております。ただ、そのときに、それらの役員の方々は、われわれの統制力の及ぶところは、実は都市は全部及びます。だから、そこは全部協力するようにわれわれも責任を持って指導するけれども、いなかのほうの、小さい三流、四流になると、場合によると統制力の及ばないところもある。それから、非常に苦しいところもあるから、その辺が全部われわれの指導に従うという保証はわれわれとしても申し上げかねます、こういうことを言いながら、かまえとしては全面的に協力の線を打ち出しているのでございます。
  197. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 プロ野球の問題はどうですか。
  198. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 目下の段階では、盛んに交渉している段階でございます。漸次全面協力の線が強くなりつつあるというところでございますが、全部の人たちが踏み切った、こういうところまでにはまだ至っていないようでございます。
  199. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そのほかにありませんか。
  200. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 相撲協会のほうは、全面的に下げる、五月興行といいますか、五月場所から全面的に入場税は下げるということを確約しております。
  201. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから、私は、今度一律に一〇%に引き下げたですね。競馬とか競輪、モーターボート、これも一〇%ですね、入場料の税は。映画も、演劇、音楽も一〇%。どうも私ふに落ちないのですが、この関係は、こういう射幸的競馬とか競輪、こういうものと、映画、あるいは先ほどだいぶ問題になっておった音楽ですね、そういうものと同一に考えるという考え方自身が、どうも私は理解しかねるのですがね。その間の政府考え方を説明してもらいたいと思います。
  202. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) まあ競馬、競輪、こういう催しについてのいろいろな社会的感覚はあるかと思います。ところが、入場税でございますので、入場料金を対象にしておるわけでございます。それで、原則といたしましては、その料金の多寡、これが税では問題になるということでございます。競輪、競馬については、もちろん入場料金のほかに車券を買うだろうと思います。あるいは馬券を買うだろうと思いますが、これは入場税の対象には実はしていないわけでございます。そういう意味でいいますと、料金で申しましても、これは三十五年度の実績でございますが、競馬で平均三十四円十五銭、競輪で二十三円八十二銭、それからモーターボートが十二円七銭。それからこれらの全部の平均をとってみますと、三十五年度には七十六円二十三銭、映画で七十三円三十銭、こういうことになっているわけであります。こういうところの料金構成を見てみますと、その催しものが不健全であるかどうか、あるいは好ましいかどうか、これはいろいろお話はあろうかと思いますが、税の観点では、こういう料金から見まして、特に税率に差等を設けなければならないと、こういう結論は出ないだろうというところでございます。
  203. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは、私は入場料金の高で入場料金に対して税をかけるというだけでは十分ではないと思うのです。やはりその内容がどうかということによって考えられないですか、これは。
  204. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これはもう御承知のように、従来、改正前も料金区分でいっておるわけでございまして、七十円以下一割、七十円から百円まで二割、百円超三割、ただ特定なものにつきましては例外規定がございました。今度はこれを一率に一割にする。この一律に一割というところが、入場税というものの消費の性質から考えてみまして、一割が適当であるということにいたしたわけでございます。その際、論理としては、たとえば二百円以上のものについてはなお二割という点を残すべきではないか、こういう議論もあったわけでございます、中途の段階では。しかし、それを残しましても、全体のパーセントテージで五%ぐらいでございます、料金で。しかし、もうそういう入場税の中にさらにこまかい区分を作るというよりも、間接税全体の体系ということになりますと、そういうものであっても、他の消費税とのバランスでいってみると、一割ぐらいが適当であろう。これは通行税についても、一等を今度は二割から一割にしたわけでございます。その辺のバランスからいえば、全体のバランスがかえってとれるという考え方に立ったわけでございます。そういたしますと、今度は逆に今の競馬、競輪というようなものだけについて、ほかは全部下げる、このときに、今度は全然別種の考えを入れまして、新しい構想に立って差別税率を盛るということには踏み切れなかったわけでございます。
  205. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は主税局長の考え方に賛成しかねるのです。理解しかねるのです。それはこの第二種に属する展覧会、博覧会、遊園地、これも入場料を取っていますよ。しかし、無税にしたでしょう。私は無税にするという趣旨は賛成ですよ。しかし、入場料に税金をかけるというならば、その理屈でいうならば、これは税金をかけるべき筋合いですよ。しかし、かけないのは、展覧会、博覧会、遊園地というような性質から考えて、税をかけることは適当でないと、こういう考えじゃないでしょうか。したがって、競馬や競輪を同じように考えるといようなことは、私は一貫していないと思うのです。入場料に税金をかけるのだというふうな一本やりの理屈でいった場合に、これは何で免税にしたのかと言いたくなりますが、どうですか。
  206. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 論理でいいますと、およそそういうものについても課税すべし、こういう議論があると思いますが……。
  207. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 いや、課税すべしとは言っていない。
  208. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) ただ、われわれの感触でいいますとやはり入場税というものは、特にそれが消費税体系の中に取り込まれているということを考えますと、それが相当誤楽性を持った料金である。ここにわれわれは間接税体系の中の入場税として考えておるわけであります。その中に、もちろんそれはその差といっても分量的な問題でございましょう、程度の問題でございますが、まあたとえば遊園地、こういったときと、今の演劇、映画というところには、かなり違いがあるのじゃなかろうか……。
  209. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 内容が違うでしょう。
  210. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) これは社会的な感覚でございます。子供連れで日曜日に遊園地に行った。なるほど施設を利用するために、料金は取っておる。これをやはり一種の娯楽的な消費税として、特別の消費税の体系の中に現段階で取り込まないとどうしてもいかぬかどうかというあたりでございます。そういう意味で、遊園地は私は一番そうだろうと思います。それから博覧会、展覧会。博覧会と申しましても、展覧会と申しましても、実際申しますといろいろなものがあると思います。しかし、まあ税のことでございますので、それほどこまかい区分もできませんし、またこまかい区分をすることによってかえって執行上、先ほどいろいろな技術論が展開されておるのでありますが、不公平になることも考えられます。そういうことから、この辺に一つの差を設けるとすれば一つのラインではなかろうか、こういう考えで今回はずしたわけでございます。
  211. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この前にも説明がありましたけれども、イギリスあたりでは映画に対して免税措置をする、これは私は非常な英断であると思うのですね。やはり健全な娯楽に対して税をかけるという考え方は、これはやめたほうがいいのじゃないかと思うのですがね。まあ国家の財政収入の問題もあるだろうと思うのですがね。そういう点で、今回のかなりの減税は認めます。ですから、その努力は認めますけれども、将来の方向としては、私は競馬、競輪まで免税にしろと言ってはいないのですよ。しかし、健全な娯楽ですね、映画とかあるいは演劇とか音楽とか、そういう健全な娯楽に対しては今後も減税をする。あるいは理想としては免税にするという方向に努力していくべきではないかというふうに考えるのですがね。これは主税局長に答弁をしてもらって、それからひとつ、政務次官、政治的な立場でもって答弁して下さい。
  212. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) われわれは、入場税が過日問題になっておりましたが、今度五割以上の減税を断行したつもりでございまして、実際申しますと三割から一挙に一割に落としたわけでございます。現在の段階では、この程度の負担はやむを得ないのではなかろうかと考えております。将来の問題につきまして、これがやはりこういう課税としては最低率の一割という課税が適当だ、課税するとしても一割が適当だ、こういう判断に基づいてやっておるわけでございます。ですから、各種の消費税のうち、最も大衆性のあるものだというふうにはわれわれも考えておるわけでございます。今後この負担をさらに軽減し、さらに撤廃できるかという問題、これは将来の財政需要の問題あるいは経済の伸び等に伴う税収等の問題がございます。われわれはそういうこの入場税の性質ということにかんがみまして、将来もっと負担を軽減できる状態が来ることが望ましいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  213. 堀本宜実

    政府委員(堀本宜実君) ただいま主税局長からお答えいたしましたように、将来の財政収入その他から、今直ちにこれが撤廃をするわけにはなかなかいかないと思いますが、これは私の個人の意見になるかとも存じますけれども、健全な娯楽というものそれ自体は、やはり明日の創造といいますか、一つの生活の力になるものだと存じますので、理想的に申し上げますと、やはり税金は取らない。いろいろ選択してやらなければならぬことは当然でございますが、おおむね健全な娯楽というものは、取らないほうがよろしいのではないか、こう考えるのでございます。しかし、今も申し上げましたように、これを撤廃、非課税といたしますことは、国家財政等から直ちには困難であろうかと存じますが、将来は慎重に研究しなければならぬことである、かように私考えます。
  214. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、主税局長にお尋ねいたしますが、今連絡によりますと、衆議院で国税通則法並びに国税通則法の関係法令整備法が、本会議で通過したという話でありますが、しかし衆議院で、国税通則法の何条でしたか、十三条、十四条じゃないかと思うのですが、修正になっているのですね。私は前から、この委員会でも問題にしているわけです。この入場税の場合でも、二十八条は国税通則法の十三条を基礎にしてできている。したがって、国税通則法の審議を見ないで入場税法をここで決定することはできない、こういう法案審議の問題について主張しているわけです。やはり衆議院は、その点修正になってきているわけですね。そうすると、参議院でこの法案をこのまま可決したとしても、これはあとからまた修正されるということになる。こういう点について、どういうふうにお考えになっておるか、お考えを聞きたいと思うのです。
  215. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 実はきのう、衆議院の委員会におきまして、修正案が出たわけでございます。この修正案は、もちろん、国税通則法の十三条そのものを根本的に改正いたしまして、これは納税義務に関する問題については、政府原案では、各税の適用に関して「法人とみなす。」と、こうありましたのを、この通則法の適用について法人とみなすということにしまして、各税について人格なき社団が納税義務があるかないかという問題は、すべて各税法にまかしたわけでございます。それと同時に、各税法の納税義務に関する規定をこの政府の提案以前の現行法の姿にすべて戻しました。  同時に、両罰規定につきましても、実は三つタイプがございます。一つは、この通則法の整備に伴う法律によりまして、その両罰規定を入れようとしているものが、幾つかあったわけでございますが、それは整備法の原案そのものを修正しまして直さないところで出しますと、こうやりました。それから、おっしゃるようにここにかかっております入場税、あるいは酒税、トランプ類税、物品税につきましては、これは各税法の中に、人格なき社団に関する両罰規定を提案してございます。これはまだ国会に係属中でございます。これも今度の整備法の原案に追加いたしまして、これらの提案しているものは削除するということで、整備法で直すことにいたしました。なお、すでに参議院、国会を通過いたしました相続税、印紙税、それから通行税、これは両罰規定を持ったまま通過したわけでございますが、この整備法で追いかけてその分を削除して現行法のままの形にする、こういうことになりました。したがいまして、結論から申しますと、納税義務に関する両罰規定も、現行法と全く同じになるという形において、国税通則法並びに国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律が、修正されて委員会を通過したわけでございます。したがいまして、これが国会を通るということになりますと、結果におきまして現行法と全く同じ形になる、こういうことでございます。
  216. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、入場税は、今、審議の段階ですから別ですが、すでに相続税法、印紙税法は成立したわけですね。同じ国会でそれを、成立したものをまた修正する、そういうことは前例がありますか。前例があれば、話してもらいたい。非常にこれは変則な事態だと私は思うのですがね。
  217. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 具体的な前例を今ちょっと覚えておりませんが、これは衆議院の委員部のほうへ話をいたしましたら、もちろんこれは法律的に可能である、のみならず前例があるやに聞いております。詳しいことはあとで調べたいと思います。
  218. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういうことは前例がありますか、前例があれば……。
  219. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 今、委員部のほうにすぐ聞かせにやりましたから……。
  220. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、この入場税法、もう間もなく採決ということになると思うのですが、しかし入場税法の二十八条、これは当然もう削除になることはわかり切っている。それをわかり切っていながら、委員会でこれを採決するということは、どういうことになるのですか。これをこのまま採決するということは、どういうことになるのでしょうか。
  221. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) どういう意味になるかと申しますと、衆議院ではこういうことを言っておりました。かりに、今まで両罰規定を持たない各税法に両罰規定が入っております。しかし、これは、国税通則法の十三条が通らなければ、これは印刷にすぎぬ、死文になってしまう。したがって、問題は、通則法十三条がどうなるかということによってきまるのだ。だから、その問題はそれとして、通則法の問題として考えて、この審議をする、こういうことで実は通過して参ったわけでございます。
  222. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、この問題について、入場税法については、政府に対する質問はこれで終わりますが、参議院の法制局長を呼んできてもらいたい。法制的な手続の取り扱いについてちょっと尋ねておきたい。     —————————————
  223. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それでは、国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  224. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この非課税扱いになる三十万円を五十万円に引き上げた問題、これは前の委員会でかなり質問をしましたので省略をいたしますが、今度は新しくこの有価証券を非課税扱いにするということに——これは命令で追加するというふうになっておるのですか。
  225. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) これは従来の法律でも有価証券は貯蓄の対象として定められておりました。その場合に、国債、地方債というふうに法律上はっきり掲げられておったわけでありますが、今回改めようとしておりますのは、従来の国債、地方債等をこれは引き続き対象として考えております。ただ、そのほかに、従来のいわゆる国債、地方債として特掲されておるもの以外、やはり減税対象として考えるべき有価証券というものが出てくるわけであります。これに備えて、一応法律上は有価証券ということで言っておきまして、その内容についてこれを命令で定める、かようにいたしておるわけであります。
  226. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、私の言葉づかいが間違っておったのかもしれませんが、今度命令で新しく追加するものはいわゆる投資信託ですね。これを追加しようというのじゃないですか。
  227. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 御指摘のいわゆる公社債投資信託の問題につきまして、これはいわゆる審議と申しますか、検討の対象にはなっておるわけでございますが、まだその点についてはっきり結論を実は得ておりません。目検下討中の段階であります。
  228. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この前の委員会で、たしか私は政府が今考えているのは公社債の投資信託、これを入れたい、こういうふうな説明があったと思うのですがね。今だいぶ違いますね。説明が。
  229. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) どうも失礼いたしました。私の言葉が足りないためにたいへん失礼いたしましたが、対象として入れる道を開く。ただ、いつこれを入れるか、どういう方法で入れるかということについて実は検討いたしておる。入れることは予定しております。
  230. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の説明ではどうもあいまいなように思うのですが、入れる道を開く、いつ入れるかわからないということはどういうことですか。政府としては入れようと考えているのか、あるいはそんなことはきまっていないのか、説明してもらいたいと考えます。
  231. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 政府といたしましては、入れたいと思っておるわけであります。ただ、問題は、現在の公社債投資信託、これは先生十分御承知かと思うのでございますが、現状の姿に実はいろいろ問題がございます。先般の証券取引審議会におきましても、いわゆる健全な貯蓄手段、つまり健全な貯蓄手段としての態勢を整えるように改善を要する点がある、こういう御意見でございました。その線に沿って改善に努めておるわけであります。そこで問題は、健全な貯蓄手段として確立をされるということが必要でございますので、その点につき現在検討をいたしております。したがいまして、いわゆる健全な貯蓄手段ということで態勢が確立いたしますれば、これを直ちに取り入れる、かように考えております。
  232. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題について銀行協会等が強く反対しているというような新聞報道がありましたが、銀行協会の反対している理由は何ですか。
  233. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 銀行協会がことに積極的に反対をしているというわけではないと思うのでございますが、おそらくは、ちょうどこの四月、本国会を通過さしていただきました暁に、四月一日から実施に移るわけでありますが、その間に半年間経過期間がございまして、従来のものを逐次整理して新法に載せて参る、そういう経過の間のいろいろ事務が錯雑するという問題もございましょう。そのような状態のときに、また新たないわゆる貯蓄手段としてのものが登場してくるということが、多少あるいは心理的に不安を持つ向きもあるいはあるのかもしれません。しかし、協会として積極的に反対しているということではないと思います。
  234. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 どうもこの問題、すっきりした答弁を得られないように思うのですが、投資信託、これは不安定な要素を持っておる。私もそう思うのですが、それをどういうふうに措置をすれば不安定な要素がなくなってくるのか。
  235. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) これはやはり一番大きなポイントは、もともと公社債投資信託と申しますものは、公社債がいわば主たる財産構成となる、そういう信託財産を予定いたすわけでございます。したがいまして、こういうものに向かってくるつまり資金と申しますか、これはいわば長期の安定した貯蓄というものを吸収して参ることが主眼だろうかと思います。その意味で、現在の制度というものが発足早々でございまして、若干まだ不備がありますために、必ずしも長期安定貯蓄として落ちつかせるという態勢においていささか欠けるところがあるのじゃないか。まあ、端的に申しますと、つまりいわゆる換金性と申しますか、売り戻し、解約というものが比較的容易にできる。また、途中でごく短期に売り戻しをいたし、もしくは解約をいたしました場合にも、かなりの利回わりに回わるというようなことで、本来長期安定して落ち着くべきものが、そこへ短期的な資金が出入りいたすというようなことが実は実情でございます。これではもともと公社債投信というものを設けられた本来の趣旨が十分に達成されておらないうらみがあるものでございますから、そこでその点における、つまりいわゆる長期安定貯蓄の形態としてふさわしいような形に持っていく、こういうことが主眼になろうかと思います。
  236. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 公社債の投資信託ですね、これは流通性の問題がだいぶ、流通性ですね、売買ですね、非常にやかましい問題となっておったのですが、これは大蔵省としてはどういう考えを持っておりますか。
  237. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) ただいま御指摘の問題につきましては、先般二十三日、例の証券取引審議会がございまして、まあ大蔵省はかねてから公社債の流動化対策という問題につきまして審議会の意見を求めておったわけでございます。それに対しまして意見が取りまとめられて出て参ったわけでございます。私どもといたしましては、この審議会の御意見に沿って本件を処理して参りたい、かように考えております。
  238. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 どういう内容か、説明して下さい。
  239. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 一口に申しますと、いわゆる本来の意味における公社債の流動化対策という問題は、いわゆる価格が自由にきめられるということが前提にならなければならない。それにはやはり金融その他のいわゆる環境が正常化してこないと、それも実現しがたい。現在の段階では、いわゆる自由な価格で取り引きをするということは、実際上なかなかむずかしいわけでございます。そういうような事態においてこの流動化を考えた場合にはどういう方法があるかということになりまして、一つは証券金融会社を通じて融通をいたす、担保金融をいたすということが考えられておるのでありますが、これについては、現在のような時点で行ないますと、一方的な買い取り機関に化するおそれがある、つまり売りばかりございまして買いがないということになって、結局、証券金融会社か一種の買い取り機関として公社債を出さなければならぬような状態になる。これはやはりそのしりが日銀信用ということに結びついて参りますと、いわゆる日銀の追加信用によって公社債が発行されるという結果になりかねない。これは好ましくないから、その案はとらない。結局、結論としましては、公社債に関係の深い市中銀行、いわゆる証券会社との間の取引銀行があるわけでございますが、その引銀行お互い協議をいたしまして、そうしてこの金融の疎通について考える。その場合に担保としていわゆる公社債というものを取っていくことも考えていく。ただ、それについての具体的ないろいろ実施にあたっての方法等については、なお大蔵省、日本銀行等の関係者において十分協議してきめることが望ましい、こういう内容でございます。
  240. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記をとめて。   〔午後三時五十二分速記中止〕   〔午後四時十一分速記開始〕
  241. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて下さい。     —————————————
  242. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 入場税法の一部を改正する法律案議題といたします。
  243. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 法制局長に質問いたしますが、今参議院で入場税法を審議しているわけですが、その入場税法の二十八条に「(法人でない社団又は財団で管理人の定めがあるものの管理人を含む。)」、こういうカッコ書きが入っているのですが、このカッコ書きは、国税通則法の第十三条及び第十四条を受けてきておるというふうに私は考えるわけです。国税通則法の第五節「人格のない社団等」というところにこの基礎があるというふうに考えておるわけですが、ところが、先ほど衆議院のほうで、この第十三条と第十四条は削除になったというふうに私は聞いておるのです。削除して議決された。そういたしますと、今ここで審議しております入場税法の二十八条、これは生きているのか、あるいはもう死んでおるのか、その判断が私どもとしては明確でないわけですよ。生きておるものとして採決するのか、死んだものとして採決するのか、法的にどういう関係になるのか説明をしてもらいたい、こういうふうに思うのです。
  244. 斎藤朔郎

    ○法制局長(斎藤朔郎君) 二、三回前の当委員会で、国税通則法の十三条とそれから入場税法の二十八条との関係につきまして御質問を受けまして、そのときに御説明申し上げましたのでございますが、たしかそのとき荒木先生御不在のときだったのかと存じますが、そのときも申し上げましたように、ただいま御審議中の入場税法の二十八条の改正規定、すなわち「法人の代表者」の下に「(法人でない社団又は財団で管理人の定めがあるものの管理人を含む。)」、これを加える部分と、それから新しく第二項を二十八条に加えるこの部分とは、国税通則法十三条を前払として改正せられる規定でございますので、かりに国税通則法の十三条の規定が将来通らずに、入場税法の二十八条の改正案そのままの形の法律が先に成立いたしました場合においては、入場税法の二十八条の改正規定の改正部分は死文とか空文になるので、その点は何らの改正を加えなかった現行法の二十八条と同じだと、そういう工合にするより仕方がない、こういうように申し上げましたのでございますが、ただいま御質問の点は、衆議院のほうで国税通則法の十三条と十四条を削った形で上げられたということを前提にして、本委員会において二十八条の改正規定をこのまま上げるということがどういうことかという御質問でございますが、それは字句としては、二十八条の改正規定そのままの字句が委員会として御決定になるわけですが、それが法規範化して効力を持つかどうかということは、後日国税通則法の審議の際に衆議院と同様の議決が本院でなされて、それが法律として後日成立すれば、先に決定された二十八条の改正規定は空文になるし、またかりに、後日の審議の経過において、国税通則法の十三条、十四条の規定が——これは机上の空論でございますけれども、十三条、十四条の規定が、将来衆議院の議決とは違って、そのものが法律として成立したとかりに仮定いたしますれば、そのときは、二十八条の改正規定は息を吹き返して動いてくる、こういう関係になるわけでございますから、本委員会入場税法の二十八条を政府提案のままで議決をするということは、後日の通則法の十三条、十四条の規定の運命によって生きるか死ぬかはきまってくる、こういう状態で議決されることになるかと思います。
  245. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、委員会では一応これはこのまま採決するといたします。しかし、これを本会議にかけた場合疑義が生じてこないかどうか、このままで。衆議院の審議ではこの基礎になる十三条、十四条はすでにもう削除されて消えている、こういうことが明白な段階において本会議にかけた場合、このままかけていいものかどうか、あるいはもうそういうことはわかっておれば、これを政府は修正するなり何なりして、この委員会で採決し、そして本会議で議決するというふうに持っていくのが妥当でないかというふうにも考えられるのですが。
  246. 斎藤朔郎

    ○法制局長(斎藤朔郎君) お答え申し上げます。純法律論として申しますれば、本委員会入場税法改正案をこのまま可決されまして、なお本院の本会議でこのまま入場税法改正案が可決されましても、他院であります衆議院の国税通則法の議決がたとい十三条、十四条を削除するという内容のものでありましても、私は法理論としては差しつかえはないと思います。何となれば、通則法の運命は、まだ衆議院の議決だけではさように確定はいたしておらぬわけでございますから、先ほども仮定の問題として申し上げましたが、将来の国会の審議において十三条、十四条が復活することが絶対にないということは、法律論としては言えないわけでありまして、その点はまだ通則法は不確定な状態にあるものでございますから、入場税法の二十八条をそのほうの運命に託して議決をするということはかまわぬと思います。ただ、技術的に、荒木先生御指摘のとおり、それじゃ入場税法の二十八条の規定をこの際修正してしまったら、きれいさっぱりと現行法の形にしてしまったらどうかということも、これは技術的に可能でございますし、そういうこともできますが、そうすれば今度は向こうの国税通則法のほうで十三条、十四条がかりに復活してきた場合は、またそのほうの手当が要するということになりますので、技術的には両方の方法が考えられますので、入場税法の規定をこのまま上げるということは、現在の段階においては法律論としては差しつかえないと考えます。
  247. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういう前例があれば、その前例をひとつ説明してもらいたいと思います。
  248. 斎藤朔郎

    ○法制局長(斎藤朔郎君) ちょっと急なことで、今法制局で調べ上げた前例は、私まだ承知いたしませんけれども……。
  249. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  250. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。     —————————————
  251. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。——別に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  253. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ただいま議題になっております国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案につきまして、社会党を代表して反対意見を述べます。  その反対理由の第一点は、免税額を三十万円から五十万円に引き上げておりますが、その根拠が薄いということであります。年間所得が八十万円から九十万円の人で二十七万円くらいの貯蓄しかない、あるいは九十万円から百万円の人で三十七万円の貯蓄しかない、こういう統計が出ておるわけであります。こういう点から考えると、五十万円に引き上げるという必要がないというふうに考えられます。それから、反対の第二点といたしましては、こういう恩典は結局高額所得者にこれを乱用する機会を与える、このために脱税が行なわれるというおそれが十分にあります。このことは従来の例から見ても明らかであります。そういう点で、高額所得者を擁護するためにできたものだというふうに考えざるを得ないのです。こういう二点をあげて反対をするものであります。
  254. 原島宏治

    ○原島宏治君 国民貯蓄組合法は、今まで話がありましたとおり、従来これを悪用するという点が論議されてきたのでありますが、今後も多分にそうしたおそれがあると思うのです。そこで、政府といたしましては、この際行政上の指導監督を徹底していただいて、乱用等のないように十分気をつけていただくことを要望して、本案に賛成いたします。     —————————————
  255. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 委員の異動について報告いたします。  本日付をもって委員前田君が辞任され、その補欠として村山君が委員に選任されました。     —————————————
  256. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ほかに御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  258. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  260. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に、トランプ類税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。——別に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。トランプ類税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  263. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  264. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  265. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に、入場税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質議のある方は御発言願います。——別に御発言もなければ、これにて質議は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  266. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  267. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表いたしまして、この法案に反対意見を述べたいと思います。  大体、文化生活、娯楽に課税すること自体が不当である。この入場税は、僕は憲法の精神にも反しておると思うのです。入場税は、合計しましたところによりますと、百億足らずの税額と聞いているわけです。今日税金は、毎年自然増で非常にたくさんの税金が集まり、またこの委員会で審議されるところの租税特別措置法、この租税特別措置によりまして多額の税金が独占資本やなんかにとにかく免除をされているというこの現状を見ますならば、わずか百億足らずの税金を大衆のふところから取り立てるというような、そういうことは私は即刻やめるべきものだ、こう思うのです。大蔵当局の答弁によりますと、音楽会へ行く人の入場税を取るのは、これは担税能力があるからだ、こういうふうな言い方をしておりますが、はたして音楽会に行く人に担税能力があるから音楽会に行くかどうかということは、大きな問題があると思います。かりに生活保護を受けている人が音楽会に行った場合、生活保護を受けている人に担税能力があるから音楽会に行くということは私は言えないと思います。いわゆる所得税をかけられるレベル以下の人でも音楽会にたくさん行き、また映画会にもたくさん行くというのが私は現状だと思います。それは人生に潤いを与えるために文化生活の立場からやっているわけで、担税能力があるからどうのこうのという、こういう筋合いのものでは私はないと思います。だから、こういう課税はやめなければいけない。私は、娯楽というものは人間が生きていく上において食糧にもひとしいものだと思うのです。食糧に税金がかからないように、やはり娯楽には税金はかけるべきでないと思います。こういう観点から、わが党は入場税撤廃を主張して今日まできておりますが、その立場から私はこの入場税法にも断固として反対せざるを得ないのであります。
  268. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、ただいま議題になっておる法案について、日本社会党を代表して賛成の意見を述べます。  日本社会党の方針としては、原則として映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ等の入場税を廃止する、廃止すべきという考えは持っております。しかし、そういう立場からいえば、今回の改正はなお不満な点があります。けれども、従来こういう入場税に課せられた三〇%、二〇%、あるいは一〇%という課税を、一律に一〇%に引き下げたということは、これはかなりの減税であります。それから、第二種の展覧会、博覧会、遊園地等の入場税を廃止したということは非常な進歩であります。漸進的なものではありますが、かなりの減税をしておる、そういう意味において賛成するわけであります。ただ、将来の問題としては、やはりこういう税は廃止すべきであるという方針で政府においても十分検討してもらいたい、こういう要望を付して賛成意見を述べます。
  269. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ほかに御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。入場税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  271. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十八分散会      —————・—————