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1962-04-18 第40回国会 参議院 商工委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十八日(水曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————   委員異動 本日委員椿繁夫君辞任につき、その補 欠として阿具根登君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     武藤 常介君    理事            赤間 文三君            剱木 亨弘君    委員            上原 正吉君            大泉 寛三君            川上 為治君            高橋進太郎君            吉武 恵市君            阿具根 登君            阿部 竹松君            近藤 信一君            吉田 法晴君            田畑 金光君   政府委員    通商産業省石炭    局長      今井  博君    通商産業省鉱山    保安局長    八谷 芳裕君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   参考人    日本石炭協会会    長       萩原吉太郎君    日本石炭鉱業連    合会専務理事  長岡  孝君    日本炭鉱労働組    合事務局次長  岡  松雄君    全国石炭鉱業労    働組合中央執行    委員      早立 栄司君    全国鉱業市町村    連合会会長   坂田九十百君    九州鉱害対策被    害者組合連合会    会長      栗田 数雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○産炭地域振興事業団法案内閣提  出、衆議院送付) ○鉱山保安法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 武藤常介

    委員長武藤常介君) これより商工委員会を開会いたします。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法案鉱山保安法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、三案につきましてはお手元に配付いたしましたプリントのとおり、六名の参考人の方から意見を伺うことにいたしました。なお、昨日報告いたしました参考人のうち、全国石炭鉱業労働組合書記長菊地勇君は、都合が悪く出席できない旨連絡がありましたので、同組合中央執行委員早立栄司君に出席を求めましたので、御報告いたしておきます。   —————————————
  3. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 委員異動がありましたので御報告いたします。  本日椿繁夫君が辞任され、その補欠として阿具根登君が選任されました。   —————————————
  4. 武藤常介

    委員長武藤常介君) それでは、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところ本委員会のために御出席を賜り、まことにありがとうございました。委員一同にかわり厚くお礼を申し上げます。  石炭問題の重要性につきましては、私から申し上げるまでもなく、特に昨年来その対策が強く叫ばれ、諸種の施策が講ぜられて参ったのでありますが、今回提案されました合理化法改正案外二件の審査にあたりまして、すでに御連絡申し上げましたとおり、合理化政策に関連する石炭政策産炭地域振興方策産炭地における閉山後の住民対策合理化法改正鉱害問題等諸般の問題について、特に御造詣の深い皆様方から忌憚のない御意見を伺い、私どもの今後の審議に資したいと存ずる次第でございます。  なお、議事の進め方でありますが、最初に御一人大体十五分程度で御意見をお述べ願いたい。御意見開陳が全部終わりました後に各委員から質問を行なうことといたしたいと存じますが、萩原長岡参考人からよんどころない御用のため早目に退席いたしたい旨の申し出がありましたので、両君に対する質疑は、両君の御意見開陳に引き続いて行なうことといたしますので、各位の御了承をお願いいたします。  それではまず日本石炭協会会長萩原吉太郎君にお願いいたします。
  5. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) 日本石炭協会会、長の萩原でございます。本日のお呼び出しの中で、特に合理化政策に関連する石炭政策についてという一項がついております。これを中心として意見を申し述べさしていただきたいと思うのであります。  昨年において、石炭問題の問題点というものは、非常にはっきりして参ったようであります。しかし私は、この個々の問題にわたらず、石炭経営者自身努むべきことは何であると考えているか、これが第一であります。  第二に、石炭鉱業はいろいろ政府に陳情し、要請はいたしておりますが、どういう考えで要請しているか、その根底の思想につきまして、合理化政策に関連させながら申し上げたいと思うのでございます。  石炭協会では、石炭鉱業努むべきことは、スクラップ・アンド・ビルドを実行することが中心であると考えております。また、これが石炭政策の本筋であろうと考えておるのでございます。能率向上原価引き下げは、全産業を通じて経営常道でございますが、石炭鉱業の場合、消費構造の変化によって重油に圧迫されていく避けがたい運命にありますだけに、その産業存続をかけての重要な課題なのでございます。もとより、これだけで燃料革命に対抗し得ませんことはもちろんでありますが、まず、これを実行しなければ、他の政策効果はあげられないと考えておるのでございます。国家経済観点からいって、換言すれば、エネルギーのセキュリティのために、石炭鉱業存続は絶対に必要であるということは、今日議論の余地がないようでございます。関連産業エネルギー・コストを少しでも引き下げるようにしてその存続をはかることが、石炭鉱業経営者責任であると考えております。そこで、スクラップ・アンド・ビルド方式石炭鉱業者努むべ石炭打開策の最大の眼目と信じているのでございます。世界石炭政策は、スクラップ・アンド・ビルド遂行に重点をおいております。わが国においても、昭和三十四年の石炭合理化法で、スクラップ・アンド・ビルド法案のかなめとなっております。しかるに、その後の経過を顧みますと、石炭鉱業能率向上において計画以上の実績を示しました。それにもかかわらず、原価計画どおりに下がらず、他面千二百円の値下げを忠実に実施して参りましたために、各企業の業績は極度に悪化いたしまして、そのために金融の道は閉ざされ、増加資金は期待し得ない。そのために、スクラップ・アンド・ビルド遂行は困難な状態に立ち至ったのが現状でございます。その原因考えますと、千二百円引き下げ決定にあたって、政府が言明した財政的措置は講ぜられておりません。また、物価の高騰、運賃の引き上げ等によって、こうした状態に追い込まれたのでございます。  昨年末来、石炭政策が再び重大な問題として大きくクローズアップされましたのも、こうした結果でございまして、起こるべくして起こってきたのでございます。加うるに、スクラップ・アンド・ビルドの結果として、多くの離職者を生み、五千五百万トンのワクに縛られている関係上、能率向上をすればするほど離職者を生まなければならないという結果となっているのでございます。三十四年の石炭合理化法においては、この離職者社会的側面に対する対策が不十分でありましたこともまた、石炭問題が今日大きな問題として再燃した原因でもあります。本日付議されます石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正は、この実情にかんがみて、これが欠陥補正のための予算措置を実施するための手続と思います。一歩問題点の解決に前進したものでございますが、率直、に申し上げますれば、これでは全く不十分であり、弥縫的措置にすぎません。石炭鉱業の問題を根本的に解決するものに足るとは考えられないのであります。しかし、本月四日政府が示しました新政策によって、はっきりと路線が敷かれ、積極的意図を示されておりますので、私は、今後の政府措置に多大の期待をかけまして、緊急措置として、この一部改正案が成立することを望んでいるのでございます。  去る五日、政府の提示いたしました政策を見ますと、総合エネルギー政策の確立を約束したことは、問題の核心に取り組もうとするものであり、また、人員整理の問題に秩序を与えんとするものであり、しかも、特段金融措置をすると納束をいたしているのでございます。この機会をお借りして、議員の皆様に、政府がその新政策具体化を強く実行いたしますよう御協力下さいますようにお願い申し上げる次第でございます。  政府は、労使双方に対して、一時合理化計画を中止させ、また、紛争行為を禁じてまで約束いたしたものでありますので、あえて政府みずから新たなる責任の生ずることを承知の上でこの新政策を示されたものであります。この前向きの姿勢は、従来ないことであり、私は政府の熱意を信頼するものでございます。これが、ただ、問題を他日にずらすというような結果になるようなことは、断じて許されないことでございます。  次に私は、この機会に、石炭協会政府に、石炭鉱業存続再建のために諸般政策を実施するよう、政府に要望しており、また、関連産業に協力を求めておりますのは、単に救済とか同情とかを願っているものではない、国家繁栄のためにかくあるべきであるということを言っているのであるということを御理解願いたいのでございます。自由主義経済のもとにあっては、自由競争が原則であり、エネルギー自由選択常道だ、これが経済発展に役立つのだという考えがありますが、そもそも自由主義経済思想は、私企業立場に立って自由競争により優勝劣敗による、それが即経済繁栄をもたらすものであるというこの思想は、二十世紀後半においては修正されなければならないと思うのであります。つとに二十世紀における正統派経済学の泰斗であるアルフレッド・マーシャルが、国家総体繁栄という立場を基盤として、自由主義経済思想を生かすことが二十世紀後半の課題なりと喝破いたしておるのでございます。現に世界先進国実情を見ましても、西独の社会市場経済、またアメリカの二重経済、フランスの混合経済もこの思想の方向をたどっていると見られるのでございます。国民経済的に考えますれば、各産業の調整のとれた発達が望ましいのでございます。また、野放し自由競争経済をゆだねるわけにはいかないのであります。国家経済の危険と不安なき経済安定性考えなければならないのでございます。ここに、エネルギー安定のために石炭鉱業存続消費構造変革にもかかわらずはからなければならない論拠があるのでございます。もし石炭鉱業国家繁栄に対し意義がないか、または意義がなくなった場合には、政府は混乱なき廃止をはかることが仕事となるのでございましょう。外国資本によりエネルギー支配の危険、一朝有事の際のエネルギーの途絶の危険を防止するために、国内のエネルギーが大切であるといたしますれば、政府がこれが存続のために財政的金融的処置を講じますということは、私企業救済とか同情とかいうものではないのであります。燃料革命に直面しているというこの特段状態のもとにあって、私企業の力だけでは存続をはかることができないからなのでありますから、政府国民経済的立場から、これに協力して、石炭産業存続をはかろうということでございます。これは救済というべきものではなく、当然の国家経済政策と見るべきものだと考えるのでございます。財政的金融処置を講ずるにあたって、とかく一私企業国民の税金をもって救済することはあやまっているかのごとき議論をなす人もあります。また、他産業との財政処置バランスの上から異論を差しはさむ向きもありますが、私は、政府は当然なすべきことをなすという信念のもとに効果のあるような資金処置を断行していただきたいと願ってやみません。自由主義経済運営は確かに競争ではありますが、その競争によって弱者を滅ぼしていくよりは、国民経済繁栄には、その弱者を強めて、生かしめていくことのほうがよりすぐれた自由経済運営だということを、御承知ケネディ大統領最高ブレーンであるガルブレイスは言っておるのであります。また彼の名著「ゆたかな社会」におきましても、自由主義経済のもとにあって、自由競争経済の安定とは絶えず同謝すべきものであることを見のがしていることは間違いであるということを言っておるのでございます。  なお、他の二法案につきましては、特に私がここに意見を申し上げるまでもないと考えております。ただ一点、産炭地事業を起こし、離職者石炭鉱業みずからの手で収容しようということは石炭各社の熱願であります。その新規企業に対しまして、産炭地域振興事業団法案に掲げる施策のうち、この方面特段の御配慮を願いたいと思うのでございます。
  6. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 次に、日本石炭鉱業連合会専務理事長岡孝君にお願いいたします。
  7. 長岡孝

    参考人長岡孝君) 日本石炭鉱業連合会長岡でございます。本日は、参議院におかれまして三法案、特に合理化政策に関連する石炭政策について、私ども参考人としての意見をお求め下さいましたことはまことに光栄と存ずる次第でございます。  経営者の側の基本的の覚悟並びに認識と申しますか、さようなことにつきましては、ただいま日本石炭協会長から親しくお話しがございましたので、大筋のことにつきましてはすべて略させていただきまして、日本石炭協会の所属以外の、中には五十万トン以上も出しておりまする炭鉱もあるのでありまするが、全国にわたる、昨年の半ばで約五百二十五ほどの炭鉱経営者の側を代表いたしまして、何か今日の時点において御参考になるかと思われる点を具体的に二、三申し上げたほうがよかろうかと存じております。  一番始まりは、俗にいいまする中小炭鉱が、いかに金に、ことに設備の金に窮屈で苦しんでおるかということを少しく具体的にお耳に達したらどうかと思っております。  最近、私どもの仲間の炭鉱から、八十一ほどの炭鉱から取りました資料を調べて参りますると、昭和三十五年度設備投資としては四十二億円ほどの金を投じたのだ。投じた実績を書いてくれと、こう言って出しましたところが、四十二億円ほどのものを投じたのだ、こう書いてあるのであります。それで前々、いろいろの席で申し述べておりまするように、なかなか、いわゆる大手炭鉱に比べまして、一鉱一炭坑が多いのでございまするので、これは大観いたしますのに、信用力その他も少ない中で、どうしてそんな金を投じられたかと思うくらいでございまするのですが、それに対して国のほうの金が、国の機関から出た金がどのくらいあるだろうかというのを調べてみましたところが、御案内の、三十五年度から始まりました近代化資金というのが、第一種で二億二千万円ほど、第二種で一億一千万円ほど、合計三億四千万円ほどが三十五年度に借りられたわけでございます。これが無利子の金でございます。そのほかに国家関係金融機関は、開銀中小公庫というものがございまして、これらからも相当の規模の大きい炭鉱は金を借りられるわけでございます。幾ら借りているかというのを見ましたら、三十五年度において、開銀のほうから八億一千万円ほど、中小公庫から六億四千万円ほど借りられたようでございます。ところが開銀のほうに対しましては、その年に、その年度に七億六千万円返しております。八億一千万円借りて七億六千万円返してしまっておる。中小公庫のほうからは、六億四千万円借りて五億四千万円返してしまっておるのでございます。したがいまして、開銀のほうの正味手に残る金は四千万円ほどになる。公庫のほうは一億円ほどになる。合計しまして一億四千万円ほどにしか純増はならないという勘定になりまして、先ほどのせっかく三十五年度から始まりました近代化の無利子のお金の三億四千万円を加えましても、四億九千万円ほどのものしかならない。そのものを含めて、先ほど申しましたような四十二億円ほどの設備資金を投下したのだと、こういうことは、どうもどうしてそうやってできたかというのは、むしろ不思議なくらいなんでございます。さような状態でありまして、これが三十六年度に入り、今年は三十七年度でございますから、さようなことができれば、まだしもまだしもと思いまするけれども、昨年度から本年度に入りましては、御案内のとおり、諸炭鉱資材の値上がりと一緒に金融の大きな引き締めがございまするので、本年度あたりはおそらくそういう姿でありましたら、経営を続けていくことはもうむずかしいのではないだろうかというふうにさえ思っているのでございます。  しかし一方御案内のように、自衛上も、やはり仕上がりは安くして参りませんければなりませんので、勢い炭は相当設備をよくして出さなければならない。それではことし、三十七年度に、先ほどの八十一ほどの炭鉱は、一体どのくらいの設備資金を投ずるつもりなのかという質問に対する答えは、五十八億円ほどの設備資金に投じたいのである。一体それはどうして、手に入れるだろうかというふうに心配をいたしているわけでございます。そこで、先ほど萩原会長もお触れになりました、四月六日の政府閣議決定でございますが、特段金融措置を、合理化近代化というような方面について考えると、こういうことでございましたので、特段ということはなみなみならぬということでございましょう。額につきましても、なみなみならぬ新たな取り扱いをなさる御所信でございましょう。それから流れまする実際のルートについても、特段ということは普通ではない、まあ非常なといいますか、普通には考えられないくらいの道をあけて流れるようになさる、こういう御所信だろうと確信いたしているわけでございます。単なる新聞あたりでよくいう、作文とかお題目とかいうものであるはずはないのでございまするから、そこのところにつきましては、先ほど日本石炭協会長も申されましたように、わが日本政府に、ほんとうに信頼をいたしまして、特段政府機関からの金の流れる方法を、額においても、筋道においても、お開きをいただけるものだろうと確信をしておりますので、国会におかれましても、さような観点を特にお強めをいただきたいと思っております。金の話は、御案内のように、日本の一流の一般紙においても、すでに述べておりまするし、石炭鉱業だけでなく、日本産業界を代表しております経団連のエネルギー対策委員長の言葉においても、国はけちけち金を出し惜しみすることなく、この際思い切って出さないと、将来国のために得ではないと思うということを、いずれも述べております。今日においては皆様先生方はもとより、日本の世論であると思っておりまするので、これは大手中小を問うわけではございませんが、特に中小の側がさような羽目に陥っていることを、お耳に達しまして、特段のお力添えを願いたいと思っている次第でございます。  次に、今度はやめていくほうの炭鉱の話でございます。御案内のように、六百三十万トンの現在の炭鉱整備ワクは、今七十万トンでありますか、百万トンでありますか、新年度に残って行なわれております。新しい年度からは、新しい方式によって、六百二十万トンのワクが、本日意見をお聞きになりました合理化法に盛られて進む予定でございます。いずれもけっこうなことでございまするが、私どもの特にお耳に達したいことは、今までの六百三十万トンもあるワクが、なぜ今日七十万トンあるいは百万トンまだ残っておるかということでございます。これは調査その他の手順がやはり早くない点もございましょう。また、買い取りの申請をいたしておりまするものの手続上の書類の不備ということもございましょう。が、大方——きょうは九州のほうの市町村の方、鉱害関係の方が参考人としてこちらの席にお見えになっていらっしゃいますので、私などよりもはるかによく御承知でこざいましょうが、やはり大方鉱害関係のあるためにおくれておるというような事態だと思うのであります。これは、鉱害処置はもとより鉱業権者責任でありますることは申すまでもないのでございまするが、まあいわば戦争によってあるところで払いましたのとちと似たような、全くわれわれの予期しない世界的の油の下落というような目にあいまして、直面いたしまして、安定した鉱害は、御承知のように臨時石炭鉱害復旧法もございまして、だんだん復旧して参れるのでございますが、安定いたしませんものについて、普通のときでありますれば、将来十年なり、二十年なりにわたって必ず復旧するというつもりでやって参りまするけれども、ただいまのような経営そのものが激変いたしまするような時代には、なかなか安定いたしません鉱害に対して準備をするほどの余裕もございませんし、まあかりに準備をいたそうといたしましても、御案内のように、安定いたしました鉱害復旧のための金を積み立てる場合には、損益計算損金算入が認められまするが、未安定のものにつきましては、さようなことはできない。これは余裕のありましたときの話でございまするけれども、さようなことも関係いたしまして、安定したものの、まだ復旧が完成しない、また、未安定のものというのが錯綜いたしておりまするため、炭鉱整備事態が渋滞しているように思われまするので、私の考えでは、何かこれには新たな国のほうの力が、伸べられるような方法がなかろうか、かように考えておるわけでございます。  それから、新しく六百二十万トンのワクが本法律によって追加せられようといたしておるのでございまするが、本三十七年度は、御案内のように、また仕上がりを低下をさせるためには多少とも増産をしなければならんような羽目に陥っておる。で、増産をいたします——新鋭炭鉱増産するのは、当然の構造変革に伴うことだと思うのでありまするが、それにあわせまして、老朽炭鉱、殊に大規模老朽炭鉱はさっさと整理をしなければ、需給は安定いたしませんと思います。で、こちらに岡さんなり、早立さんなり、労働組合の方々がおいでになりまする前で、いかにもこう整理のようなことをきわ立てて印すようなことに相成りまして恐縮ではありまするけれども、何と申しましても、非常な過剰な炭をもって鉱業そのものを安定させるということは、これはまずは困難の状態ではなかろうかと思うので、この際、従来のような社会的意味のありまする炭鉱整備でなく、需給関係に直接関係のありまするような大規模炭鉱整理を、三十七年度に現実に行なわなければいけないのだと私は信じておる次第でございます。  なお第三に、需要を広げ、価格を安定させる方法といたしましては、私どもはやはり一般炭を出しておるものが大部分でありまするので、電力消費に待たなければならぬと思っております。そこで電力会社に対する引き渡し、それから新しくできまする発電所については特に工場立地をお考えをいただいてお建てになるような方針の御指導を願って、炭は主として電気のほうに向けられるように願わしく、そして油は、これは電力会社がおたきになる限りは無税の油をおたきになって、その両方の燃料バランスの上に適当な電力料金を設定するように国で御指導なされ、電力料金の中で石炭鉱業向けについては、現在電気供給規程にございまするような農事用灌漑用水用電力料と同じような一般の大口、小口とかけ離れた安い電力料金の設定を含めた電力料金を設定なさるようにしむけられたらばよろしいのではないかというふうに私は考えております。  時間がございませんので、気づきました、あるいは御参考になると思われまする二、三の点につきましてだけ述べさせていただきました。
  8. 武藤常介

    委員長武藤常介君) それでは、初めにお断わりいたしましたとおり、萩原長岡参考人に対する御質疑があれば、この際発言を願います。
  9. 阿部竹松

    阿部竹松君 時間どのくらいですか、両参考人
  10. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 両参考人は、最初に述べたとおり三、四十分だろうと思うのです。
  11. 阿部竹松

    阿部竹松君 協会の萩原会長さんに一、二点お伺いいたしますが、会長さんのお話の中でいろいろと参考になる御意見がございましたが、その中で、五日の日に政府が出された総合エネルギー対策を大いに歓迎する、これによってしっかりとやっていただきたい、こういう発言がございましたが、五日に政府が出されたエネルギー対策の中の石炭の問題、これは炭労と政府が話し合ってきめたことを指しておられるんですか。
  12. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) お答えいたします。政府と炭労とその総合エネルギー政策についてどういうふうな話し合いをされたか、その席に出ておりませんから私としてはわかりませんが、いずれにいたしましても、石炭産業存続という意味においては、関連する電力、石油、また需用家というものを総括的に見て、その中で調整をした上でなければ安定した基盤というものはつかめない。そういう意味でこの総合エネルギー政策が樹立されることを望んでいるということを申し上げましたのでございまして、総合エネルギー政策について、政府と、どういうふうに総合エネルギー政策はあるべきであるという具体的な内容については実は私は聞いておりません。もしおわかりであったらその点についてお話しいただいてお答えいたしたいと思います。
  13. 阿部竹松

    阿部竹松君 さいぜんのお話の中で、四月五日云々ということでその政府の総合エネルギー対策をいろいろと申し述べておられましたんで、そうすると、当時の政府の石炭に対する意見の発表というものは、たまたま炭労対池田総理、あるいはその他閣僚の皆さん方とおきめになったのが新聞その他に発表になっておったものですから、萩原会長さんの言われる政府エネルギー対策というものは、今申し上げた件を指しておられるのか、このように私は聞いたんですがね。
  14. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) 政府が先般数項目にわたって炭労に対して回答されました、あれは各項目ですが、その一つとしての総合エネルギー政策、私はこの対策全般については路線を敷かれて非常にけっこうである。しかし総合エネルギー政策の中身については、いまだ政府は何らの表示をしてないととっております。それでたとえばいろいろな処置をこうとるということを、その一つ一つよりも、その一項である総合エネルギー政策を樹立すると、その総合エネルギー政策というもの自体については、どういうふうな政策を打ち出すかということは、私は今後にあると考えております。
  15. 阿部竹松

    阿部竹松君 もう一点、たいへん恐縮ですがお尋ねしたいのですが、実は私どもときどき委員会参考人の方においでを願って、皆さん方はわれわれより専門家でおありなんですから造詣が深いわけで、きわめて参考になる意見をお聞きするのですが、予算委員会その他のあらゆる委員会に、委員各位がひとつ参考人をお招きして意見を聞こうではないかということで、皆さん方に勉強していただいて委員会参考意見を聞く、しかし私の承知しておる限りでは、なかなか皆さん方の御意見というものが政府政策に盛られてこない。したがって、われわれも微力ですからやむを得ないわけですが、きわめて参考人の方には気の毒だと思っておるわけです。ですからあまり参考人の方にしつこくお尋ねするのもどうかと思いまするし、遠慮するのが当然かもしれませんが、ただ萩原会長さんに一点お伺いしたいことは、会長さんというお立場になるか、あるいは北炭の社長さんというお立場になるかは別として、去年ですか、一昨年か、会長さんのところの赤間とか万字、美流渡、この会長さんの傘下の三つの山が、第二会社ですか、あるいは系列の違った会社になったのですか、僕はその会社の内容はわかりませんけれども、とにかく会長さんのほうから切り離されたということは事実なんですね。そうしますと、私どもは現在の日本経済状態から見て——これは石炭ばかりに限らぬと思うのですが、なかなか世の中がきびしくなってくると、中小企業ではあらゆる廃業がなかなか成り立っていかぬと、したがって大企業へ大企業へと系列化したり、一本化する、こういう要素が強い中で、斜陽産業といわれて、当てはまる青葉かどうかわからぬけれども、かえって石炭産業大手ではやっていけぬけれども中小炭鉱ならやっていけるというこの理屈が私はわからぬわけです。大手であれば機械化するとか、あるいは坑内外の近代化を行なうという理屈もございましょう。しかし中小になると資力も乏しいものですから、さいぜん連合会の長岡さんの話にもございましたが、借りた金より払った金が多いほどであって、幅があるけれども、若干差があるくらいだというようなことで、中小企業のほうが金回りが悪い、当然なことかもしれませんけれどもたいへん気の毒な話である。ところが大手のほうは若干、市中銀行でも国の金でも融資する率が多いにもかかわらず、大手ではできないけれども中小企業だったらやっていけるというこの理屈をひとつお教え願いたいわけなんです。私どもはどうもそういう点が納得いかぬのです。こういう点はいかがでしょうか。
  16. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) ただいまの御質問は非常に何と申しますか、中心をついた御質問でありまして、ここにわれわれ経営者としても非常に悩みがあることを感じております。これはむしろ私は協会長としてよりも、ただいま阿部さんのお尋ねのように、他社がどういう意見を持っておるか知りませんが、北炭の社長としてお答えいたします。そうしてまた、現に三山の分離をやった当事者としてお答えいたしたいと思うのでございます。  私のところで三山を分離いたしましたことは二つの面を経営者として考えております。それは確かに三山を分離いたしました根底をなすものは何であるかと考えますと、これは私企業としての経営者考えであって、北炭というものが、能率の悪い、赤字の山を切り離したのは、いかにいろいろのことを申しましても、それが根本なのでございます。そうして、その結果をみますと、これが分離した結果というものは相当の成績をあげておる、あるいは黒字に転じておる。そこでそういう行き方をたどったのでございますが、私は一面においては、こうした行き方というのは、やっておる本人が申すのは、はなはだ恐縮でございますが、私自身といたしましては、こういう行き方というものが私企業立場を離れて石炭鉱業全体としてみて、はたしてこれがプラスであるかマイナスであるかという点については、非常に悩みがあるのでございます、これは。そうして、こうした行き方でやっていくというよりも、むしろこれをもしどうして本成り立たないものであれば閉鎖していくのがほんとうじゃないか、ところが、この行き方をとりましたことは、多くの労務者を抱えておるために、一方では会社の経営を強固にしろということと、一方ではそれのほうがかえって人員の整理離職者を出すよりいいというところからやったのでございますが、ただいまこういうふうな考えでやったのでございますが、悩みと申しますのは、おそらく阿部さんも言葉には出して申されませんが、なぜそのほうがいいというのだ、それを教えてくれ、この質問の中には、おそらくそれは分離した会社というものの労働条件の低下というものによって生きているのではないか、こういう点をうちに持っての御質問であると解釈いたすのでございます。まさに私はこれは北炭の社長として言うわけでございます。労働条件は、残っておる石炭、私の会社の各山よりも、これは分離した会社においてはその当初においては変化がないとしても、たつに従ってこれは労働条件が低下すると考えておるのであります。そうしてそこに私の悩むところがありますので、これははたしてこういう方策というものが、これはすでに二年もたっておりますが、われわれとしては分離していくことによってプラスとなった面は、非常に労働者が働き出した、その能率のほうに働き出したという点はとるけれども、非常に同じかまの中で飯を食っていたものが、非常に労働条件の低下を来たすということについては私としては遺憾に思っております。そうして、私としてはせめてそうした意味において、分離した三山においても非常にそういう点については配慮を加えておるというふうな思想のもとに立っておるのでございます。今般の政府の提示によっても、この分離というのは非常に規制されて参りました。これは私としても非常に追い込まれてきている状態において、答礼同種の傾向を持っておる。しかし、これはその方向が非常に便乗的に利用されるということがはたしてどうであるかということでありまして、討論としては非常に支離滅裂な点もありますが、これは私の心情において支離滅裂な点もありますので、ありのままの自分の考えを申し上げて、答弁になるかならないかわかりませんが、自分の気持として、この点はこれがいいのだと言い切って、これがあらゆる面から見て完全な方法なんであるとは考えているのではない、その裏にはそうした悩みがあるということだけの御答弁で御勘弁願いたいと思います。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 他の委員からの質問もあると思いますし、参考人の方もお急ぎと思いますから、両参考人の方に一点ずつだけ御質問申し上げます。  萩原会長の御説明の中で五千五百万トンで頭打ちされておるのに能率を上げねばいけないから、ますます整理をしなければならぬと、これが私どもの一番焦点だと思っておるわけです。そうすると、今の状態から将来の見通しを考えて、今の石炭業界で何千万トンが妥当だとお思いになるか、今の設備機構あるいは人員あるいはさらに設備は革新されていくと思うのですが、何千万トンまで日本で出せるか、この点をお聞きしたいと思います。  それから長岡参考人に御質問いたしますが、最後のほうで油を、無税で電力にたかして、そうして、安い電力炭鉱に回してもらいたいと、こういうような御意見があったと思うのです。私どもこの問題についてもいろいろ論議をいたしたことがございますが、そのときに私どもはおっしゃるように、安い油を入れて、石炭と抱き合わせで全般的な安い電力料金にすべきである。もちろんその前に総合エネルギー対策というのがあって、一体何対何で石炭と油の比率をきめて、たけばどのくらい石炭を使えるか、そうして、値段はどのくらいになるか。こういうことを考えたわけですが、長岡さんの御説明を聞いておれば、石炭だけに安くせいということになれば、電力の編成というものが非常に大きな問題になってくると思うのです。九州等は電力会社、石炭をたくさんかかえておるけれども、今度は中国、関東付近で石炭というのはほとんどない。そうすると、おのずから電力の値段に開きが出てくる、こういう弊害が私はあると思うのです。そういう点から、どういうようにお考えになっておりますか。私ども考えておるものと非常に一致した点がございますので、それをひとつお聞かせ願いたい。  以上二点を御質問いたします。
  18. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) ただいま五千五百万トンがどうだということについての御質問であります。これは石炭合理化法のひとつの具体的に中心となっておる点だと思いますが、この五千五百万トンに決定した、何と申しますか、基礎といいますか、論拠は何であるかと考えます。これは決して石炭鉱業設備その他の能力から出し得る限度という意味ではないのでございます。むしろ生産の面よりも需要の面を考えて、その方面からこれは決定されたものと考えるのでございます。  そこで、五千五百万トンの需要と限定したのはどういうわけかと、こういうことに問題は移るのでございますが、私はこれはまず一国を見ず、世界の各国の傾向を見たいと思うのであります。これは理論的の根拠としては不十分ではありますけれども、現実の根拠としては成り立つものだと思うのでございますが、各国においても、いずれにおいても、一割は需要は減退するものと見ているのであります。その是非は別として、そういう具体的な見解に立っておるのでございます。中にはロビンソン報告のように、横ばいである、十五年間横ばいであろうという見方をしておる。これは最近の見方でありますが、三年前私が各国を回りましたときは、一割減というのが、これは各国を通じての統一見解でございました。たまたま当時石炭合理化法が制定されたのでございます。そうしたことからいって、わが国においても、横ばいがおそらく需要の限度であろうということから、おおよそ五千五百万トンというワクが制定されたと考えるのでございます。もとより、ただいま申し上げましたとおりに、能率をあげるに従って五千五百万トンのワクに縛られれば離職者をよけい出す。その意味において五千五百万トンというものは、理論的にいえばさらに拡大されたほうがよりよい総合的な政策になるのじゃないかという理論は、これは一つの方向として成り立つと私は考えておるのでございますが、遺憾ながら政府においてこの需要の面において自由主義の経済において各消費産業について需要を——よけい使わせるというような強行処置はとり得ない。ただ望み得ることは、政府においてみずからこの需要の分野を開拓することを起こしていくということの窓外には望み得ない。こういう点から見て、それだからよいということでは私はないのでございまして、先ほど申し上げましたとおり、ワクを縛れば能率を上げれば離職者を出さなければならぬのだと言ったことは、それでよいのだということではなくして、それだけに深刻な問題である。さればといって五千五百万トンを現実を無視して増ワクするということは、結局はこれは貯炭としてはね返ってくると、こう考えておるのでございます。ただ、これは、今日われわれが石炭協会といたしましても、五千五百万トンのワクの堅持を主張いたしたのでございます。  ただ、この機会にややわきへそれるようでございますが、将来の問題として、私は、この五千五百万トンのワクを最後まで守ることが正しいのかどうかという疑念があるということに触れさしていただきます。これは関連産業その他で取り違えられては困るのでありますが、五千五百万トンを現状に置いたままでよいか。しかしながら、との石炭存続の大きな原因となっておりますのはセキュリティの問題。非常に需要が増大していった中において五千五百万トンと限られたものだけを国内エネルギーをしばっておいて、今なればまだこれが一朝途絶いたしましても役に立ちますけれども、非常に増大した需要の中において国内資源が五千五百万トンぐらいのものであって、もし途絶した場合、もしくは外国の資本によって市場が制覇された場合、この五千五百万トンだけで役に立つかどうか。こういうふうな国家経済の上、大きく見れば国家安全の上から見て、五千五百万トンというものは、われわれが現在合理化法に示された路線を一応達成いたしました暁においては、そういうふうな見地からさらに五千五百万トンを需要の増大に従ってこれをセキュリティに役立つように増大する方法はないか、ということは現実の消費構造の変化なんですが、この現実というものを離れて政策的に考えなければならないときが必ずくると思います。その意味においては、炭労側の主張しております拡大ということとは、そういう一点においては、私は、その政策として考えるときがくるぞ。今言ったところでこれは役に立たない。しかし他日は必ずそういうときがくる。もしセキュリティというのが正しい理論であるなれば、必ずそうならなくちゃならない、こう考えておるのでございます。
  19. 長岡孝

    参考人長岡孝君) たいへん取り急ぎましたので、言葉が足りませんでしたので……。従来私どもが主張といいますか、申し述べて参りましたことを幾つもかためて一ぺんに申しましたものですから、あるいは私の申し上げたいと思いましたことがちょっとそのとおりにはお受け取りいただけなかったように存じております。まことに恐縮でございます。  第一に私どもは各方面に訴える場合に、何と申しましても千八百万トンほどの炭を現在実勢力として出しておるのでありますが、その中で、御案内のように、無煙煽石が八、九十万トンから百万トンくらいでございましょう。それから強粘——なかなか買ってもらえないのですけれども、強粘が五、七十万トンでございましょうか。残りは全部一般炭でございます。一般炭についての需要先は、御案内のように、セメントのごときは、もう二、三年前、あの三十四年の十二月に合理化計画を立てられました時分に、私どもはセメントなども相当つかめると思っておったのですが、これは今日では全くもうどしどし油だけに変わっておりまするので、まあ頼みに思うのは政府の力の及ぶ電気事業じゃないだろうかとこう思う。その点をまず強調いたしたいということが一つでございます。  さて、そこで、それじゃどうして電力にとってもらえるだろうかということでございますが、これは、御案内のように、長期契約という方法ももちろんございます。けれども、まあ私も昔から石炭をやっておりますが、何といっても割高のものをほんとうに責任をもってとってもらうということは、なかなかむずかしいことだと思うのであります。したがいまして、ただいまあまり唱えられないかもしれませんが、私どもは、石炭の総合政策は数量だけの位置を決めるのではなんにもならないのでありまして、やはり価格政策にとどめをささなければならんと、こう思いまするので、油との価格のバランスということは同じにするというドラスチックなことはともかくといたしまして、ある程度相当の関税、消費税というものでバランスをとっていくべきものであるという主張は、もう依然として私どもは確信をもって変えないのでございます。そこで、油に対しては、あえて現在の定率の原油一〇%というのをもっと変えても、輸出品に及ぼすエネルギーといいますか、燃料の影響力はそうあるはずはない。あまり資料はございませんが、聞き学問ではまあ二、三%ぐらいだという点から、関税、消費税を課すべきだという主張をいたしておるわけでございます。その場合に、しからばわが石炭のお得意様である電力にやはり痛い油を買わせるということではまずいだろうというので、電力についてはガス事業とかあるいはナフサを作る場合のごとく無税になすったらいいでしょう。この辺はこのごろ衆議院あたりで大へんエネルギーを論ぜられる際に、原油だきまで論じておられるように拝聴いたしておりますが、原油だきが行なわれるか行なわれないかはともかくといたしまして、電気事業者のおたきになる燃料は、よそから入れてくる油に関するものは無税になすったらいいでし、よう。そこで石炭の価格については、先ほど申しました一般的には関税でバランスを、油に対する関税または消費税をつけたものである程度のバランスをとり、そして電力料金というものは、これは現在の日本におきましては、御案内のとおり通産外臣が握っておいでになりますのでございますから、きちっと、先ほど阿具根委員のおっしゃいまするように、安い油とまぜてたけばそんなに高くならないだろうと思うのであります。万一ちょっとぐらい高くなりました場合をも考えまして、高くなっても、石炭鉱業に対しては、御案内のような電力料金の設定方法は、まあ現状ではいろいろの要素がございます、その中で特徴の非常にありまするのは、普通の深夜に使うとかいうようなことではなく、また大口小口の区別でなく、受電設備の区別でなく、むずかしいことのようでございまするが、農地用の灌漑用水用電力料金という特殊の産業向けの特定の電力がございますね、現在供給規程にぴしっとございますから、そういうものがなぜ保安を重要視する炭鉱電力に新設できないものだろうかということを考えておる。これはもう各方面に私ども述べておりまするので、それらを総合いたしましてといいますか、みなのしゃべったことを責任をもちまして、一ぺんに短時間でしゃべりましたので、ただいまのようなことになったのだと思っております。
  20. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ二、三簡単にお尋ねしたいと思うのですが、萩原会長が公述されるときおくれて参りまして全部の話は承っておりませんので、そのことはひとつお許し願いたいと思いますが、  まず第一にお尋ねしたいことは、四月五日の閣議決定と申しますか、政府の方針が、石炭に関する新政策が、炭労、全炭鉱に示されて、一応新たな、それを契機に政府石炭政策が発足した、こういう形になっておるわけです。あの提示された政府案については、石炭協会、あるいは本日お見えになっておられる中小の団体である日本石炭鉱業連合会にはあらかじめ相談があったのか、なかったのか、経営者の皆さん方の御意見等をあらかじめ政府は聞いてあのような案を出したのかどうか、これをまず承りたいと思うわけです。先ほどのお話によると、何か全然相談もなかったというようなお話があったようにお聞きしましたが、この政府案によりますと、たとえば調査団を派遣して、調査団の出す結論を尊重する、その結論に基づいて政府が具体的な措置をするまでは、経営者の側も人員整理はやめる、労働組合は争議行為をやめる、労使の相互関係政府提案の一番大事な骨子になっておるわけで、そういう点から見るならば、当然経営者の皆さんにもあらかじめの相談があったと、こうわれわれは見ておるんですが、それはあったのか、なかったのか、それをまずひとつ簡単でけっこうでございますから、お聞かせ願いたいと思います。
  21. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) あったといえばあったようであります、なかったといえばなかったようなのが現実であります。私たちといたしましては、炭労に対する回答ということを主眼として、ああいうふうな回答を出された、そういう意味において、われわれにあらかじめどういう回答をしようかとか何とか言ってこなかったということはやむを得ないと思っております。しかしわれわれの意見というものはすでに述べられておるのであるから、われわれの意見というものを全然無視して炭労に回答するものではないということで、私は納得いたしておるのでございますが、回答の内容についてどうするかということは遺憾ながらつんぼさじきに置かれました。しかしあったといえばあったようだと申しました意味は、これはなかったといえばなかった、あったといえばあったという意味で、あったというのは、回答の日になって、これはもうでき上がったものを、大体こういうふうな回答になるだろうということを提示を受けました。しかし回答の案文そのものというものは、炭労に対する回答の前であるからといって、案文そのものの明確なものをちょうだいできませんでした。しかしなるほどそうかと思って、知っているけれども、われわれその当日やっていたところが、案文そのものは炭労側からだろうと思うんですが、りっぱに流れてきて、それをわれわれ拝見した、こういうふうな結果で、私のほうには全然話がなかったというわけではないけれども、こういう回答をするようになるんだという話は当日まではありませんでした。これはあったといえばあったということになりますが、さればといって、回答の作成にあたってあらかじめ話があったかといえば全然ないんですから、それをでき上がったものを見せられて、なかったといえばないというような、そういうふうな状態で四月五日というものは経過いたしました。五日前にはございません。
  22. 長岡孝

    参考人長岡孝君) 田畑委員の御質問でございますが、ありのままに申し上げれば、私どもは五日の昼過ぎでございましたか、通産省のほうから、政府はかくかくのことをやることを明日閣議できめるはずであるというお話を伺いました。あした閣議できめるはずであるというお話を——お話を伺いました。そこでその後に私は、読売新聞の論説委員の方が通産大臣に質問をして、通産大臣が答えておられるのをラジオで伺いましたが、これは——これはということは、閣議の決定は、政府といたしましていろいろの社会経済の問題を憂えて、自分で自分を縛る決定をしたのである、こういうようにラジオで伺いました。私もさようだと思っております。したがいまして、私どもは石炭の政策があれでおしまいになったとか、あれで賛成であるとか、反対であるとか、かようなことは一切言わぬことにいたしておるわけでございます。今後まだどしどし言うべきことはびしびし申すつもりでおります。
  23. 田畑金光

    ○田畑金光君 その辺のいきさつはよくわかりましたが、そこで萩原会長にもまた長岡専務理事にもお尋ねいたしますけれども、先ほどお話を伺っておりますと、今度の閣議決定によって新たな政府石炭政策が発足する、これに対して業界としても非常な期待を寄せられておるようです。ただ世間でいろいろな批判を加えておるのを聞いておりますと、どうも今度の政府決定というのは、あまりにも政治的に走ったんじゃないだろうか、上すべりだけで、表面だけこれはなでているんでなかろうか、こういう見方をしておる人もあるわけです。権威ある調査団がわずか二カ月、三カ月で困難な石炭問題について公正妥当な結論が出るのだろうか、こういう心配をする人もあるわけで。もうすでに何年にもわたって、石炭鉱業審議会を中心に、石炭問題についてはあらゆる角度から検討し、それぞれの問題について意見の集約もなされている、あるいは労働省なり通産省の所管においても十分のこの問題については調査をし、計数的にも問題は問題点として出されているはずだ、二、三カ月の調査団ではたして権威ある調査結果が期待できょうか、かりに期待できるとしても、あまりにも大きな責任を調査団だけにげたを預けるような結果になっていはせぬかという、いろいろと意見があるわけです。先ほど萩原会長は、ちょっと私聞き漏らしたのであるのかもしれませんが、今度の政府石炭政策に非常な関心と期待を寄せておられるというお話ですが、政府は六つの点を具体的にあげているわけです。六つの具体的な項目のうち、どの点が石炭業界としては一番期待されておる内容であるのか。たとえば、先ほど質問のありました第二会社の問題とか、組夫の雇い入れについてのいろいろな規制措置であるとか——これは皆様にとっては痛い問題であると思うのです。まさかこれに経営者の人方は大いに賛成だということで、新政策賛成だと言われているのじゃないと思うのです。どの点を一番経営者の皆さんとしては賛成をなさっておられるのか。これを具体的にひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  24. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) 先般の政府石炭政策について、世上いろいろの批判を加えております。新聞紙上において加えておるようでございます。私はこれは、その批評を加えておるのは間違っていると言いたいのであります。なぜなれば、政府が事情のいかんを問わずに、ああした一つの前向きの線を示した場合に、たとえば具体的内容がないとかいろいろなことを上すべりであるとか、政治的であるとか、こういうふうなことを申しますけれども、いやしくも一つの線を拡大してやっていこうという場合に、いたずらに批判を加えるということは遺憾なことだと、私たち石炭経営者といたしましては、これにに対して、政府の今までにない熱意に対して非常に敬意を払っておる次第でございます。  三カ月の調査、これがそのくらいのことで十分な調査ができるか、こういう点でございますが、私はこう解釈いたしておるのでございます。石炭問題が、合理化法以来、論議されて数年になります。この委員の人たちは十分これを検討しておったはずでございます。この三カ月の期間というものは、個々の点においてやっていったら、こまかい点はいろいろあるけれども、一応問題の所在をつかんでおる人たちでありますので、これをこの機会において一つの決定をする、そのために三カ月の期間をもってだめ押しの調査をするものと、こう解釈いたしておるのでございます。そしてただいまも申された、これは調査団に非常な責任を負わせる結果になるのじゃないか、こう申しますが、私は、これらの、今、世評に上っております人たちというものは、石炭政策について大いに発言し、大いにこれを引きずってきた人たちであります。政府が調査団を作るにあたって、もし責任を云々するなれば、この人たちは今日まで何のために発言していたのかと、私はそう申したいのでありまして、この調査団というものの結果は、三カ月であっても十分の結論を生み出すものと私は期待しておるのでございます。  次に第二点の、今般の政府処置において何を重点的に見るかと、こういう御質問でございます。ただいま、その中の租鉱その他の問題に関して、経営者としてはのみがたいことであろうという御質問がございましたが、私は、あれを一括して——あの一つ一つというよりも、これが無秩序なる人員整理ということは、経営者立場としても取り得ないのでございます。この石炭問題の重大となっております一つは、雇用する労働者が多い、これの幸福ということを考えることが一つの大きな眼目となっておるのでございまして、政府がこの石炭処置によって、われわれに一つの秩序を与えた整理を行なわせようということは、私企業立場から申しますなら、非常に痛いところもありますが、私はそうあってしかるべきものと考えておるのでございますし、また総合エネルギー政策においても、安定の場を生み出したい、すべて掲げました点は、私としては全部にわたって賛意を表しておるのでございます。しからばその最終点は何だ、こういうことになりますが、いずれの項をあげて、いずれの項においてりっぱなものを作り上げ結論を出しましたところで、これに対する資金の裏づけなくしては、これは絵にかいたぼたもちであるのでございまして、私は、第五項の、特段金融措置を講ずる、この一項が最も大切であり、これによって他の掲げられた項目全部が筋金が入ってくるものだと考えておるのでございます。現に過去を顧みましても、通産省においてもいろいろな案がございましたが、なぜ効果があがらなかったかというと、この金融措置と財政措置ということになると、この理論や何かすっかり忘れてしまって、ほかの立場からいって、金を出さないことをもって最もうまい政治であるというように考え違いをしてくるというところに、今日までの石炭政策が失敗した最大の原因がある、私はこういう意味において、これは商工委員会でありますが、むしろ大蔵委員会というものは、この点について十分大蔵省というものを督励していただきたい、こう思っておりますので、第五項を私はすべての政策実施において、これに筋金を通すためにはこれが最大のものになると、こう考えております。
  25. 武藤常介

    委員長武藤常介君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  26. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 速記を起こして。
  27. 田畑金光

    ○田畑金光君 たいへん萩原会長からいいところに触れてこられたので、もっと質問を続けたいと思ったのですけれども、今の金融措置ですね、これによると第五項目ですが、第五項目がこれは一番大事な点だろうと、われわれも業界の人方の御意見だろうと推察できましたが、今お話を聞いてさらにその点は確信を深められたわけです。石炭協会からの資料を先般いただいたわけですけれども、たとえば三十六年の上期の期末の決算残高ですか、借入残高、設備資金が五百四十八億、運転資金が四百二十一億、かれこれ九百六十九億という借入残があるわけですね、約一千億です。ところが毎年開銀からの資金というものは八十億で押えられておるわけですね。今石炭向けの政府資金というのは開銀から八十億、それから例の合理化資金というのが、ことしは昨年より本約十億ふえて三十二億と、こういうことになっているわけですが、皆さんとして具体的にどの程度の資金というものが、政府のほうから今申したような形の資金というものが協力できれば、炭鉱合理化近代化のためにこれらがやっていけるのだというような数字的なもの等を持って政府に当たっておいでになるのかどうか、こういうことをわれわれはたから見て疑問に感じておるわけですが、そういうような数字的なもの等を皆さん方はお持ちであるかどうかということが一つですね。  それからもう一つ関連して、皆さん方としては社債とか増資とかいうことによって今日までやってきたが、もう限度がきた、そこでこれからは財政資金等の大幅な投下を願わなくちゃならぬ、こういう御意見もありますようだし、またもう一つは、やはり価額の面から競合エネルギー競争することはもはや限度にきた。しかし千二百円のコスト引き下げは、どこまでもわれわれはこれは実行するが、やはりその際それをやっても、なかなかエネルギーとの競争には限界があるのでこの際、価格差補給金ということを考えてもらわなくちゃならぬ、そういうようなお考えもときに萩原会長の構想の中等にはあったように私は新聞で読んでいるわけですが、そういう点について萩原さんの御意見をこの際承っておけば、ちょうど今商工委員会では石炭関係法案の審議を進めておりますので、参考になるから一つお聞かせ願いたいと思います。
  28. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) 第一問の、協会としていろんな陳情をしておるが、数字があるのかという御質問でございますが、私どもの協会としましては、四十年までに石炭鉱業が黒字——少なくとも安定した立場に立つというためにどれだけの資金が要るかということは、数字は持っております。ただこれを大臣にも、先般のときにも示しませんでしたのは、まださらに検討すると同時に、いたずらに早く数字を出すということはどうかということで、むしろ協会の技術的方法としてこれを差し控えておるわけでございますが、目の子だけを申しますれば、四十年までに千三百億の資金を財政資金で出してほしい、こう考えております。  ただ第二の増資、社債、これは石炭鉱業においては期待し得ません。それでまた市中銀行に対しての融資も今日では揚超でありまして、期待し得ない。これは今日まで追い詰められた赤字経営に対しては、市中銀行としてはこれは当然であろうと思うのでございます。そこで現実の問題としても、政府の財政資金にたよらざるを得ないということが事実であり、また現実の問題を離れても、私は理論としても政府がこの資金を出してしかるべきものだと考えておるのでございます。  第三点において千二百円の値下げすらも困難な状態である——これについては、千二百円の値下げということは一つの路線としてわれわれは必ず守るといっております。私はこの裏には第一問の数字にありますとおり、この政府がきめた千二百円の路線が守れないような状態になってきた原因においても、単に石炭経営者にのみ課すべからざるものがあるという意味からいって、私はこの点においても政府特段の配慮をわずらわしたいと考えておるのでございます。  さらに引き下げたあとにおいても、重油との価格競争ができるのか、こういうことでありますが、理論として私は重油と石炭の価格を比較して、そうしてその安定をはかろうということでは、これはとうてい達成し得ません。それなればこそ、一つの革命なのであります。しからばその革命ということであれば、石炭の価格は、ある程度において、価格の比較において重油に追いつくというような思想は、これはやめて、価格の点においては石炭と重油と遮断すべきである。そうして国家的に必要な産業であるとするなれば、これを先ほど長岡さんからお話があって、いささか私と考えを異にしておるのでございますが、関連産業にこれを政府の力をもって負担さすべき問題ではないと考えておるのでございます。私もかつて、昭和三十四年合理化法のとき各国を回りまして、政府石炭政策に関する意見書を提出いたしました。その中に、重油に対する、石油に対する関税の一項をあげておりまして、当時佐藤大蔵大臣でありますが、一〇%、あれを実現いたしたのでございますけれども、これは財源がないというから、そういうことでありました。私としては、本来言うなれば、世界的傾向からみましても、一日も早く石油関税というものはなくなることを望んでおります。そうして、こうして価格において関税によって価格を近づけることによってこれを防ごうということは、顧みますと、エネルギーのコストを引き下げることによって価格の接近を保とうということで、私は一国の経済全般から見れば不利であると考えておるのでございまして、そうした観点から見まして、ただいま御指摘のありました価格差補給金というものへ入っていったのでございます。若干関税から価格差補給金へ参ります経過において、四年前から比べまして、御叱責を受けますれば、思想的に変化をいたしております。しかしこれは三年間の研究の結果として私自身としても変化を認めながら、それでよいということで変わってきたのでございまして、第二問で御質問のありましたとおり、石炭鉱業救済においては政府は五項に掲げることにおいて、政府の財政資金をもって石炭鉱業へ注入して、これの存続をはかるべきものだ、これは自分でその経営に当たり、その協会長を務めておる者が言うのは非常に恐縮であり、僭越のようではありますけれども、私はあくまでも理論的にそうあっていいんだ、これは決して政府救済を求めているんじゃないのだ、政府はそうするのが当然であるという考えでおるのでございます。
  29. 長岡孝

    参考人長岡孝君) 先ほど田畑委員から、先般の四月の六日でございますかの閣議の決定に対してどういう考えでおるかという御質問でございましたが、日本石炭鉱業連合会としては一番重要視いたしておりまするのは、ここにもしるしをしておりますやはり特段金融措置でございます。  それから第二の日本石炭鉱業連合会のほうとしては、およそどのくらいの金を期待しているのかという点につきましては、ただいま手元に明確なものはございませんけれども、三十七年度日本石炭鉱業連合会所属の比較的大きい、年間六万トン以上くらいの出炭力を持っております山からとりました資料について見ますれば、設備資金として五十八億ほどを投じたい、こういうことが炭鉱の言い分でありますので、そのカバレージ大体七五%くらい、金のほうで七五%くらいと見ますれば、全般では七、八十億円の設備をいたしたいという考え方を持っております。これは今まで毎年炭鉱から資料をとっておりまするのとそう離れてはおりません。三十八年度以降はそれより少ないと思っております。したがいまして、三十七年度においては七、八十億円の設備投資をいたしたい。  さてそこで問題は、先ほども三十五年度実績について申し述べましたように、何を申しましても自力で調達をいたしまする力は少のうございますので、たいへん希望が大きいようでありますけれども、かねがね私どもは七割くらいまでは一つ政府関係機関から金融を仰ぎたい。そういたしますと七七、四十九、約五十億円というものを政府関係機関から期待しておるのだということは、他の機会におきましても申し上げておりますところでございます。
  30. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間がございませんから簡単に一点だけ萩原さんにお尋ねをしたいと思うのです。石炭問題、私企業の限界を越す段階に来ているというお話ですが、それから第二会社、それから粗鉱問題等についても悩みがある、好ましいことではないというお話があり、無秩序の人員整理をやっていくということは、これは望ましいことではないし、石炭対策についての閣議決定の中に、雇用あるいは労働者の生活問題について考えなければならぬ、あるいは施策をするのは当然だというお話がございましたが、その私企業の限界を越しておる石炭問題を、先ほどの陳述では、政策に期待すると、こういうことでしたが、私も閣議決定中心をなしますのは、第五項に重点を置かれましたけれども、全体を通じて流れる毛のは雇用でありあるいは生活だと思うのであります。生産あるいは流通機構あるいは総合エネルギー対策として全体が問題になっておるわけでありますが、そこで私企業の限界を越しておる云々のお考えならば、政府が自由主義あるいは私企業を基礎にしておるということで、その点について遠慮があるようでありますけれども、論ぜられておる鉱区の整理統合あるいは生産機構の問題についても、少なくとも選炭あるいは混炭については共同化が行なわれておるわけでありますが、特に流通機構の整備等になりますと、石炭専用船だけでなしに、流通機構全般について改善あるいは共同化、私企業以上の社会化と言えるかどうかわかりませんけれども、従来のいわれるような個人企業中心では解決の方向が出て参らぬと考えるのでありますが、鉱区の整理統合あるいは生産機構の改善、流通機構等について、私企業の限界を越した点を政府政策だけでなくて、これを推進する鉱業権者の代表として御意向がございますかどうか、その点だけ伺いたい。
  31. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) 第一問といたしましてお尋ねのありました私企業の限界を越えるということであります。私はかねがね政府が何らの処置をとらなければ私企業としての限界を越えるということを指摘しておりますが、私の思想として、また経済的の効果から見て国営には反対でございます。反対でありますればこそ、そうなることをおそれて政府にいろいろの処置を要請いたしておるのでございます。私はかつて英国に参りまして、石炭公社の副総裁に会って、英国の国営は成功であったか、失敗であったかという質問を発しました。そのときの答弁で、実は自分も国営になる前は、大きな炭鉱会社の社長であった。今この副総裁の立場においてあなたの質問には立場上答えることができないけれども、国営になる前に、政府はなぜ、それになる前にそうならないでいけるかどうかの行動をとらなかったか。これは今日でも非常に遺憾に思っている。現に英国の石炭公社の赤字、国家に負担させるのは実に莫大である。これは石炭鉱業責任があるということから政府も指弾しているが、もし私企業において政府がこれだけの金を投入、負担する覚悟があったならば、こういう結果になったのなら、それだけの金を使わずにもっと効果的であったろうと申しました。経営において国営は非能率である、この点は明らかであります。実績が、幾多の事実が示しておるのでございまして、国営には反対である。しかも現実においては、もし政府がこれに対して何ら、英国においていきなり飛び込んだように、何らの処置を講じなければ、そういう結果になりますよということを私は強く言いたいのでございます。  次に先般の政府の示しました第二会社あるいは粗鉱の問題で御指摘がございました。私は自分でやっておりながら申すのはおかしいのでございますが、人間の思想は日に月に進んで参ります。また反省もいたします。ゆえに自分の行動と矛盾するようなことを申し上げるようでございますけれども、これについてもこうした点について十分な調査と政府その他各方面意見によってかくあるべしということは、無秩序なる人員整理これは縛られてくるという結果が終局において生まれるということは賛成であります。ただそうしたことをやる場合に、縛ることだけをもって終わられちゃ困るので、なぜそういうことをわれわれ石炭鉱業各社がやるかということは追い詰められてきたということであります。そこで処置を講じ、労務者に対しては秩序ある見通しの立った首切りというが、人員整理を行なうという施策を講ずる。裏においてはそれと同時に、これに対して裏づけというものを考えてもらわなくちゃ困るのであります。ただこれによって秩序だてばいいが、その結果、経営に及ぼす影響ということは、是非、の問題じゃなく、現実の問題であります。これに対して裏づけの処置が講ぜられてあれば——長い目で見れば結局労務者にはね返ってくる。会社はますます困難になるという意味で、あの政策は裏づけというものがあれば、単に現われたところだけで経営者というものは反対するということはないのでございます。  それから第三に鉱区の整理あるいは流通機構の改善は、私企業ではできないのかというような御質問でございますが、私はそう考えておりません。鉱区の整理ということは早くからいわれております。よく考えてみれば、これは整然たる能率あるところの形において鉱区を整理していくことは理想であります。新たにスタートを切るのならよろしい。しかし個々に錯綜して多くの行動を各会社でなされておる。こうした現状から見て、整理というものは非常に困難であるが、困難であっても、もしこの点においてこの鉱区というものはこうしたほうがしかるべきだというふうな具体的の例をあげ得ますれば、私は石炭鉱業者としては断行すべきである。遺憾ながら名前において、整理は非常にけっこうなようでありますが、どこをさし、どこに何があるかということは、遺憾ながら通産省においても指摘し得ないと思うのであります。またわれわれもそうしたところの該当のところはなかなか発見し得られない。ただ整理すべきだという炭鉱においてこれは整理すべきである。もしそれが必要であり、これがこういう点でこうであるというのならば、私企業においては、政府において多くの要請をしておる石炭鉱業において、みずからもこれを断行する覚悟を持っておりますから、私企業においてもできないとは申せないのであります。私事になって恐縮でございますが、現に私のところだけの例を見ましても、三菱大夕張鉱区はなくなってきてしまっておる。これは数年前のことであります。しかも夕張から言えば遠隔の地にあるために、あの大夕張の施設というものは、もしここであれがむだになったらというような、いろいろな観点において、三菱大夕張の鉱区を分譲いたしております。また本年初頭の問題でありますけれども、住友が幌内方面において縦坑をおろしました。その縦坑をおろしたところが、私のほうの鉱区との境におろした。しますれば住友がこちらだけ掘るよりも、左に掘ったら同時に右も掘るほうが効果的であるということから、あそこの鉱区を住友に譲りました。われわれは個々の問題において、もしそれが効果的であるということが認められるならば、自分の鉱区を譲るにやぶさかではありません。これは私のところばかりでなく、今日の情勢においては、かつての私企業的観念の強かった時代は別として、今日の段階においては各社の社長もこれを指摘し、政府において、この整理統合というような題目でなく、一つ一つの事例を持ってくるなれば、これがよろしいということになれば、これに協力して断行するにやぶさかでありません。したがいまして、私企業においてもやり得ることであり、また流通機構の改革においても同様、われわれは現にその方向に向かって動いておるのでございまして、これは私企業において十分にやり遂げ得ることと考えておるのでございます。これを委しまするに、ごしんしゃく願いたいということは、今日われわれは政府に理論としてもかくあるべきということを、多くのいまだかってない要請をいたしておりますだけに、自分みずからも顧みて、決して経営者とかあるいは私企業、一会社の利益という立場にとらわれていかずして、この石炭鉱業の危機を乗り越えようという決意でございまして、少なくとも石炭協会の根本思想は、現在私協会長をいたしておりますが、そうした方向に持っていくべきである、あるいはそうでない会社があっても、多数の決議をもってその方向に持っていきたいということが私の念願でございまして、こうしたことにあるということを御理解を願いたいと思うのでございます。
  32. 武藤常介

    ○委長員(武藤常介君) それでは萩原さん、長岡さん、どうも御多用のところありがとうございました。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  33. 武藤常介

    委員長武藤常介君) それでは速記を起こして。  次に、日本炭鉱労働組合事務同次長岡松雄君にお願いいたします。
  34. 岡松雄

    参考人(岡松雄君) ただいま御紹介をいただいた炭労の岡であります。実は、私ども今まで政府に対してもあるいは国会においては商工委員会社会労働委員会等に組織を代表してしばしば意見陳述を行なって参りました。したがって本日は、案内によりますと、合理化関係する石炭政策について、こういうことでありますから、重点的に要点だけひとつ意見の開陳を行ないたいと思います。  そのまず第一の問題として、実は、石炭政策についての基本的な意見の相違がございます。それは、拡大生産方式をとるか、あるいは五千五百万トン方式をとるかということでございます。本問題については、先ほど阿具根先生と萩原参考人との間に若干の質疑がありました。私どもは拡大生産を主張するその根拠として、国内資源の尊重活用、雇用問題の解決、それから安全保障、さらに産炭地の疲弊による社会不安の排除、国民経済的視野に立つ石炭の評価、こういうことを根拠として拡大生産を主張して参りました。したがって今日、抜本的な対策を立てていただいて石炭産業の恒久安定をはかるべきであるというのが、基本的な考え方の骨子であります。一方、政府のほうは、いわゆる経済合理性の追求による価格競争、これを問題の中心に据えて、現在の合理化政策ができていますから、結局は、合理化遂行過程における若干の矛盾あるいは合理化遂行するにあたっての障害の排除、こういうことにどうしてもなります。したがってその現われが、今回の合理化臨時措置法の一部改正、こういうことになったのだろうと思います。したがって、今後の石炭政策については、ぜひひとつこの拡大生産をとるべきか、それとも五千五百万トンを維持すべきかという点については、特に各先生方の御検討をわずらわしたいと思います。  第二の問題ですが、現在の合理化の現状の把握についてのいちじるしい認識の相違がございます。実は、本日配布を願った石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律の提案理由の中に、こういうことがあります。「今日までのところ、ほぼ基本路線に沿った合理化効果を上げてきたのであります。」、こういう認識をもしお持ちだとすれば、私はこれは誤まりではないか。具体に反論をいたしたいと思います。  実は、昭和三十四年の十二月に合理化審議会の基本問題部会から答申をされた内容は、これは先生方もおわかりだと思いますが、生産、流通、経営、労働、各面にわたって体系的な適切な措置を段階的にとるべきである。これが答申の骨子であります。政府に対しては、総合エネルギー政策を確立をして、体系的な石炭対策をとって産業安定をはかるべきである。こういう石炭対策についての基調の答申がございました。これが今日実施されているのかどうか。さらに三十五年の九月に、合理化審議会の生産部会から具体的な答申がなされております。  その内容をひもどいて見ますと、まず第一に、産炭構造近代化という問題があります。私も基本的には産炭構造近代化に不可欠の条件を持つのは鉱区の整理統合だと思いますが、このことに対する意見はさておいて、実は三十五年の三月に、当時、全国に散在する炭鉱の数は六百二十四というふうに発表されました。それを昭和三十八年度においては、三百八十四炭鉱整理縮小するというのが第一の問題であります。三十六年九月現在で、それがどのような整理が行なわれたのか、これは五百九十七炭鉱という数字が計上されております。おそらく今月においてもこの五百九十七炭鉱からそう多く減っているという状態ではないのではないか、だとするならば、昭和三十八年度において、産炭構造近代化をはかるためには、約二百の炭鉱整理しなければならない、こういうことになります。したがって、こういうことができるのだろうか、この方針が忠実に実行されておるのだろうかという点を第一の疑問点として出してみたいと思います。  それから第二の問題なんですが、生産能率の問題を三十八年度中において二十六・二トンに上げるという計画がございます。今日、三十六年の十一月に二十三・七トンという実績になっております。これも実は三十五年の答申当時から見ますと、相当能率は上昇しておりますけれども、これは人員整理による能率の上昇である。能率の算定は、総出炭を労働者の総在籍で除しておりますから、結局人を減らせば能率が上がります。しかし、この人減らしの具体的な方法についてはしばしば私も委員会において申し上げたのですが、これはたとえば坑外における関連部門の切り捨て、坑内外の人減らし、こういう方法をとっております。したがって、石炭産業に必要のない作業場を閉鎖をする、あるいは切り離すということではありませんから、一応在籍労働者から切り離して請負あるいは臨時作業員を採用して継続する、こういうことになりますと、若干の労働力は低減されてくる、いずれにしても根本的な解決になっておらない、その現象が今日若干能率が上がっても生産面におけるそのコストが低減されていないという矛盾が露呈されております。  それから第三の問題なんですが、これは生産構造の機械化、合理化、このことも積極的に推進をするという答申がなされておりますが、現在の近代化合理化資金は大平資本の一部の炭鉱合理化には確かに役立っております。先ほど長岡参考人からも意見陳述があったのですが、産炭構造の非常なウエートを持つ中小炭鉱に対して、現在の近代化合理化資金がどれほど本来の目的を達しているのかということになりますと、ほとんどその実効の点においては見るべきものがない、こういうふうに申し上げざるを得ません。  第四の流通機構の合理化についてであります。これも答申は特に流通機構の合理化によって中間経費の節減をはかるべきだ、こういう答申がなされました。先生方御存じのように、今回の三十七年度の予算によって若干の流通機構の改革の予算措置がとられた。しかし、答申がなされてから今日まで、この流通面における合理化には手がつけられておらない状態であります。  それから第五の問題ですが、千二百円下げの状態がどうなるか、これは私労働組合立場から言うのはおかしいのですが、答申をされたあの時点では、経営者が公表した八百円の下げ、それから政府が諸施策を強化をすることによって四百円、いわば千二百円の下げが想定される、こういう答申の内容でありました。今日大手のほうでは諸資材の値上がりがコストにはね返って四百円だと思っております。中小のほうは二百八十円ないし三百円だと思っております。この点若干理解に苦しむのでありますが、いずれにしても値上がりが三百円から五百円の間にある、こういうことになりますと、物価の横ばいを前提とした千二百円の下げが現在できる状態にあるのかないのかという問題がございます。  最後に、実はこの人員整理の問題なんですが、答申の時点では約二十八万人の炭鉱労働者がおります。今日炭鉱労働者の数は十九万六千人になっております。計画では昭和三十八年度中に十七万六千人にするという計画であります。したがって、このように三十四年の十二月の答申なり、あるいは三十五年の九月に行なわれた生産部会の答申の具体的な合理化についての施策がどの面で実施をされ、どの面が実施をされなかったのか、極言でたいへんおそれ入るのですが、六項目にわたる合理化に関する答申の中で、いわゆる実施をされたのは首切りによる人員整理だけであるということを、今私が申し上げた具体的な内容から先生方に御理解をいただけるんではないかと思います。  したがって、現在のこの合理化の現状を、基本路線というのは、三十四年の合理化審議会の答申なり、三十五年の合理化審議会の生産部会の答申をもしさすとするならば、私は決して基本路線に沿った合理化の実効を上げている現状ではない、こういうふうに判断をいたします。したがって、今後私どもどういうそれでは石炭産業合理化を望むのかという点について若干意見を申し上げたいと思います。  実は四月の五日に政府から私ども要求した拡大安定の問題と、雇用安定の問題、最低賃金の確立という三項目について政府回答が行なわれました。先ほど経営側の参考人から若干意見があったところですが、六項目にわたる回答の中心は、私は少なくとも一つは総合エネルギー政策の確立に踏み切ったと、こういうふうに理解をいたします。もう一つは、石炭産業の雇用を中心とする総合的な調査を行なう、このことが今度の政府回答のいわば柱ではないのか。さらに加えて政府と炭労との会見の席上、池田総理は次のような発言をなされました。新政策政府考えているのは、第一に雇用の問題である。第二に国際収支の問題である。第三に安全保障の問題である。私はこのことを骨子として今後の石炭政策を推進をしたい、うそを申しません、こういう席上総理の言明があったわけです。したがって、今の合理化政策に関する諸問題は、池田総理がたまたま通産大臣のころに策定された石炭産業合理化の方針であります。したがって、今日、今申し上げた三つの点を新しい石炭政策の基本的な方針として総理が言明されておりますから、このことが基盤となって今後の石炭対策が行なわれることを私は信じております。したがって、先ほどの、これは田畑先生と萩原参考人の間で質疑があったんですが、かりに今度の調査団が三カ月、あるいは六カ月かかることは、私はまだ予測の限りではありませんけれども、おそらくこの調査団にしろ、あるいはエネルギー審議会の討論にしろ、やはり政府が言明したこのことが中心になって討論されるのが当然ではないのか、こういうふうに判断をいたします。  したがって、まず第一に今後の石炭政策で私どもが望みたいのは、ただいま申し上げた総合エネルギー対策の確立をぜひ次期国会には立法措置によって確立をしていただきたいと思います。実はすでにヨーロッパに対する石炭の調査団、あるいは石油の調査団、今回の石油業法の提案、で、三十四年の十二月の合理化審議会も総合エネルギー政策をすみやかに確立せよという答申がございます。加えて三十九国会で三党一致の決議の中でも、総合エネルギー政策の早急な確立をするということがうたわれました。したがって、今日このことはもう国会はもちろんのことですが、世論としても私は常識ではないのか。しかも、その素地はできておる。政府が踏み切れば総合エネルギー政策というものは早急に確立をされる段階にあるというふうに理解をいたします。したがって、ぜひ本件については基本的な石炭対策の柱として諸先生方の御検討を願いたいと思います。  それから第二の問題ですが、具体的な施策として、私はまず第一に、雇用安定を基盤として今後の石炭対策を立てていただきたいと思います。これは理由のないことではございません。先ほど申し上げたように、政府が当初立てた全国炭鉱労働者は十七万六千人に対して現在はどうか、十九万六千人であります。おそらく計画の八〇ないし九〇%が遂行されているのは、この人員整理の問題だけでありますから、その人員整理合理化関係では非常に矛盾として露呈をしたのが、人員整理を行なったんだけれども、コストの低減にはならなかった、こういうことがありますから、この際人員整理を歯どめをすることによって、やはり本来の石炭産業合理化にとりかかる必要がある。それは何か、生産面における近代化、機械化の問題があります。あるいは技術面の合理化の問題もありましょう。こういったところに、まず第一に手をつけなければ、首切りが合理化だ、こういう今までの考え方を持っている限り、本来の合理化にならない。こういう考えを持っておりますから、ぜひ雇用安定を基盤とした今まで政府合理化の方針の中に取り入れておった具体的な内容を、今後強力に推進をする、こういうことで踏み切っていただくべきではないのか、こういうふうに考えます。  それから次の問題ですが、実は日本石炭産業の一番盲点になっているのは、大体国内資源としての石炭が幾らあるのか、どういう状態に置かれているのか、掘れるのか、掘れないのか、そういった基本的な調査が行なわれていないということであります。したがって各企業ごとの埋蔵炭量の調査なり、賦存状態の調査が行なわれておりますから、行なわれていない部面の埋炭調査なり、賦存状態調査を実施する必要がある。これがなければ、今後の大型炭鉱化といいますか、集約炭鉱といいますか、そういった方向での合理化計画は立たない。今までこういった方面について非常にずさんであったために、国家資金を投入しながら、今日第二会社に移行しなければならない、こういった例が非常に多くあるわけです。ですから今回、政府回答にある雇用を中心とする総合的調査、この内容に、ぜひ今提起した埋蔵炭量なり、この炭がどういう状態にあるかという調査を、基本的な合理化計画を立てるためにも、ぜひ実施をしていただきたいと思います。これがなければ、今政府がいうスクラップ・アンド・ビルドという政策は具体的には実施されません。こういうふうに私ども考えます。  それから最後に、流通過程における合理化の問題でありますが、これも今度予算で石炭専用船を作るということが可決をされておりますが、これだけでは、その問題の解決にはならない。答申にも規格売炭という問題を取り上げております。販売機構の一元化を研究しろということが取り上げられました。こういった流通面における合理化を積極的に取り上げれば、政府がいう千二百円の下げを、首切りでない他の合理化で吸収することが可能だ、こういうふうに判断いたします。時間の関係で、それでは具体的にその内容を解明するいとまがないのは残念でございますけれども、以上、基本的な政策についての考え合理化の現状の把握の仕方について申し述べました。  最後に、今後石炭政策について何を望むのかという点で、六点にわたって申し上げた次第ですが、今まで私どもは、しばしばこういった内容を中心意見陳述を行なって参りましたが、ぜひ今日申し上げたこの諸点については、先生方の格段の御検討をお願いをいたしたいと思います。以上で意見を終わりたいと思います。
  35. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 次に、炭鉱業労働組合中央執行委員早立栄司君にお願いいたします。
  36. 早立栄司

    参考人早立栄司君) 私、全炭鉱早立でございます。本日御下問の石炭関係法案並びに合理化政策に関連しまして、私ども炭鉱の態度を簡潔に申し述べたいと存じます。  まず最初に、私ども従来から石炭産業を安定化するための私どもとしての考え方を具体的にいろいろの機会に申し述べて参りましたが、本日は、それらのこまかい点について申し述べることを差し控えまして、ただ一点、基本的な私ども考え方を申し上げたいと思います。それは、ただいま炭労の岡さんから意見がありまして、拡大生産方式考え方ということが述べられましたが、その点について、若干私ども炭鉱としては異なった考え方を持っております。  私ども炭鉱は、石炭産業を安定化し、その中において炭鉱労働者の生活の確立、向上をはかっていこう、そういう立場で問題を考えました場合に、やはり三、四年前に出されました石炭鉱業審議会の答申に基づいて、すなわち日本石炭産業を安定化するための当面の対策の基調として、国内炭三十八年度までに五千五百万トン、炭価千二百円引き下げという路線を進めていく、こういう基本的な基調が出されておりますが、この基調にのっとって石炭産業の安定化施策、言いかえますと近代化施策を推進し、そのことによって、石炭産業企業の基盤を近代化し確立することが必要である。そういうことを今日サボリ、あるいはその基調からはずれた誤まった施策を行なっていく限りにおいて、労働者に対するところの非常にきびしいもろもろの問題が将来において、より以上大きな問題として現われて参る、こういうふうに考えているわけであります。  したがいまして、かなりその近代化施策の推進途上において労働者として忍びがたい面がありますが、とにもかくにも昭和三十八年度までに、こういう基調のもとに、石炭産業企業の近代的な基盤を確立するということをしなければならない。そういうことをする以外に、将来におけるわれわれの生活の安定向上というものが達せられないという立場で、この基調の推進に今日まで当たって参りました。同時にその基調に沿って、労使間において行なうべき諸問題につきましては、十分労使間の話し合いを通じて今日まで努力して参ったのでありますが、さらに、そういう基調に沿ったところの施策を推進するにあたって必要な政策的な諸事項、つまり政府において石炭産業に施すべき必要な施策、あるいは最近の事情のもとにおいて、今の合理化路線を進み得ないような新たな障害が出て参ってきておりますから、そういう障害を除去するための政府施策、こういうものを政府に向かって求めて参ってきたわけであります。同時にそのことは昨年来、私ども具体的にいろいろ項目をあげ、その施策について政府あるいは関係方面に要請して参ったわけでありますが、とにもかくにも三十八年度までは、そういう態勢で石炭産業企業の基盤の安定化を期そうということで進んで参ってきております。  そこで本日、御下問のあった三法案につきましても、私どもの今申し述べたような基本的態度のもとに、これを検討いたして参りますというと、第一番に、鉱山保安法改正に関する問題でありますが、これは石炭産業を安定化するためのもろもろの体質改善施策を通じて、その結果として、本来の保安の完備が達成されなければなりませんが、残念ながら現状においては、その体質改善の遂行と相待って、それと関連して、かえって従来よりも保安面において感化するという傾向本間々見受けられてきておりますので、こういった面については、ぜひとも体質改善途上の一つの障害、問題点として保安に対する完備対策を充実すべきである。こう考えて参りましたが、幸いにして保守委員会等において、との問題が取り上げられ検討された結果として、今日一応の中間報告が出され、それに基づいて出されたところの法の改正案でありますから、これについて、今日の段階で私どもは賛成を申し上げるわけであります。同時にまた、この改正のみによって保安が完備するものではありませんから、保安委員会の決議にもありますように、さらに今後保安法の改正についての検討を進めることによって、将来、より抜本的な保安法の改正の行なわれますことを期待する次第であります。  それから第二に、石炭鉱業合理化臨時措置法改正についてでありますが、この中で新しい方式によって、さらに六百三十万トンのスクラップ計画が出されております。そのことはそこに働く労働者の面から見た場合に、非常にわれわれ労働組合としてたえがたい問題でありますが、最初に申しましたように、そういうことを行なう以外に石炭産業を安定化する道がないというように私どもは基本的に割り切って進んで参ってきておりますので、そういう立場から非近代的な非態率な炭鉱をスクラップ化して、石炭産業全般についての近代的な粒のそろった炭鉱を作り上げていくという立場から、この法案について賛成を申し上げると同時に、さらにその六百二十万トンのスクラップ化に伴って生ずる離職者について、一つはその雇用対策政府責任を持って確立をするということと、さらに離職金が今日まで支給されておりますが、それはわずかに平均賃金の一カ月分相当額ということになって、同時にその程度の予算措置しか講じられておらないように承知をいたしておりますので、この際離職金につきましても、従来の倍額の二カ月分程度を支給するという立場のもとに、必要な予算措置を護ずるようにお願いをいたしたいと思います。そういう面の期待とお願いとを含めて、この法案について私どもは賛成をいたしたいと思います。  それから、第三に産炭地域の事業法案でございますが、石炭の需要確保、あるいは産炭地域における炭鉱離職者の雇用機会の拡大というような面から考え産炭地域の振興ということが必要なことは、ここで申し上げるまでもないと思います。その線に沿いまして、具体的にそうした施策を行なうための事業団が今日作られる段階になりましたことについて、私どもは心から喜びといたしております。ただ、問題は、この事業団が三十七年度においては政府出資五億あるいは政府の融資五億というわずかに十億程度をもって発足するという点において非常に不満を感ずるわけでありまして、この事業団を作り、そういう新たな制度を作られることについて全く賛成でありますけれども、願わくは、この事業団が今後十分なる目的に沿ったところの仕事をでき得るように、十分なる事業団に対する予算の裏づけ措置を行なっていただきたいということをお願いしたいと思います。  最後に、今後の石炭合理化政策について簡単に一、二点申し述べたいと存じますが、四月四日から五日にかけて炭労並びに私ども炭鉱に提示をされましたところの政府の石炭対策に対する考え方を見まして、私どもとしては、実はあの六項目の中にある二、三の項につきましては、従来から経営者との間に労使協議会を持ち、あるいはその労使協議会の中において確認事項を取りかわして、体質改善に伴う労使間の諸問題についての解決のためのルールを確立いたして参ってきておりますから、そういう面では、いわゆる新聞で騒がれておるようなあの第一項の二、三カ月間の労使休戦とか何とかというような問題等につきましても、私どもの組織としては実害もなければ、同時にまた、あの方法がとられたことによって、従来のわれわれの関係において特段にプラスになったと考えられる面もないわけでございますけれども、いずれにしましても、石炭産業全般として、これを見た場合に非常にけっこうなことではないかと考えております。  ただ同時に、先ほど経営者の代表からも述べられておりましたが、要は、あの六項目において、それを今後効果的に実施をいたしていきますためには、何といっても金の問題であろうと思っております。したがいまして、あの六項目で述べられておるところの今後石炭産業に対する政府金融措置というような面について非常に私ども大きな期待を寄せるわけでありまして、そういう面を十分に約束どおり政府が実施してもらうということを期待し、お願いする上に立って、あの政府が提示しました六項目の考え方に全く賛成をいたしておるわけでございます。同時に、あの六項目をもって石炭政策のすべてが終わったわけではございませんから、今後、あれを土台として、われわれはさらに従来から主張して参りましたところの諸施策について御要請を申し上げ、諸般の活動を展開して参りたいと考えておる次第でございます。特にあの六項目でも述べられておりましたところの新たな委員会を作って総合エネルギー政策を検討し確立するという点につきましては、私どもも、その総合エネルギー政策を確立あるいは検討の段階において、いろいろ今後も御意見を申し上げたいと存じますけれども、冒頭に述べましたような基本的な考え方を土台として、いろいろ意見を申し上げ、早急に総合エネルギー政策が確立されることを期待し、お願いをする次第であります。  それから最後に、私ども石炭産業企業の今日の経営形態について、いささか疑問を持っておるわけであります。先ほど石炭協会萩原会長からは、各炭鉱企業は、現在の私企業のままの姿で十分責任を持ってやっていけるというような御意見があったように承知いたしましたが、私どもとしては、石炭産業は、もはや従来までのような私企業形態をもってしてはやっていけないんではないか、同時に、従来までのような私企業形態のままでいくべきではないんではないか、こういうふうに今日考えておる次第でございます。そのことは国営か国管とか、そういうことを必ずしも意味するものではございませんけれども、要するに、従来のように各企業が、それぞれ私企業としての意識のもとに企業を継続し続けていくということができなくなりつつあるし、またそうすべきではないというふうに考えるわけでありまして、そのために、なぜそうかと申し上げますと、従来から私ども、石炭安定化施策として鉱区の調整のための政府意見の介入による必要なる措置、あるいは問題になっておりますところの流通機構の整備合理化のために政府意見を介入せしめることによって、これを抜本的に確立をするというようなことの具体策を御要請申し上げて参りましたけれども、そういうものを行なうためにも、私企業がそれぞれ私企業的な意識のもとに経営するのではなくて、私企業の域を越えて、石炭産業全体として各企業が連携をし、手をつないで、今のような問題の改善、改革に乗り出すべきであるし、同時にそれは、石炭産業経営者だけにまかしたのでは、なかなか実現が困難であり、およそその実現の可能性も見出せないような状態であるから、ここに政府が何らかの措置によって介入することによって、言いかえるならば、一つの立法措置によって、こういう面をうまくやれるような措置を講ずべきではないか、こう考えざるを得なくなってきておるわけであります。そしてまたそのことは、石炭産業を安定化するために、従来からの合理化の線を今後推進するといたしましても、それに付随するところの資金的な助成が重要であり、その面について、今後は政府から膨大な資金措置というものを求めていかざるを程なくなるわけでありますから、それとの関連から見ましても、金は政府からもらった、あとのことは私企業が、それぞれ勝手にやるということでなくて、国から金を出すと同時に、国の強力な規制、統制によって、石炭産業全体としての基盤の確立を行なっていくべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。  したがいまして、私どもの持つそういう思想を土台として、さらに先般政府が出されました五、六項目にわたるところの今後行なう事項等を織り込み、かつまた、それに必要な事項を加えた上に立って、石炭鉱業事業法というものを制定し、この法律によって必要なる規制を加えていくべきではないか、こういうふうに考えております。  なお、参考までに、この石炭鉱業事業法の中において、さしずめ必要になる問題は何かというと、先ほど述べたような鉱区の調整、あるいは流通機構の整備ということも包含されますけれども、それらを行なう前提として、炭田別に問題を検討し、必要、あるいはその条件の共通性等から、割合いかなり早い時点で達成し得るようなところにつきましては、会社の合併、企業の合併ということも、この中で行なう必要があるのではないか。多少回りくどい言い方をしましたけれども、炭田別に検討し、合併をしたほうがよろしいと思うようなところについては、幾つかの炭鉱の合併等を行ない、そのことを通じて流通機構あるいは鉱区の調整、開発等における投資の効果的な措置を講ずべきであろうと考えるわけです。そういうことを含めたところの石炭鉱業事業法というものを、今後政府においても御検討を願い、あるいは石炭鉱業審議会等の意見を十分徴して、ひとつその法律の確立等を考えていただきたいと思うわけであります。  非常に簡単でありましたが、その他こまかい点につきましては、従来からしばしば申し述べて参っておりますので、私どもの基本的な考え方と、並びに三法案についての態度、今後の石炭政策について、今考えておる一つの重要な点について申し述べた次第であります。  以上で、私の陳述を終わります。
  37. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 次に、全国鉱業市町村連合会会長坂田九十百君にお願いいたします。
  38. 坂田九十百

    参考人(坂田九十百君) 私は、ただいま御指名いただきました全国鉱業市町村会連合会の会長で福岡県田川市、長の坂田九十百でございます。本日は当商工委員会におきまして審議されます産炭地域振興事業団法案ほか二法案について参考人として意見を開陳する機会を与えられましたことに対し、厚くお礼を申し上げる次第でございます。  私は法案に対して意見を申し述べます前に、まず加速度的に加わっております石炭の構造的不況が地元産炭地市町村及びその住民にしわ寄せされております惨たんたる実情を申し上げて御参考に供したいと存じております。  まず、全鉱連の責任者といたしまして、田川市のことのみを申し上げることはどうかと考えまするけれども、その一例として、田川市の実情を申し上げますと、本年度の総予算は十二億三千百八十二万六千六百円となっておりまして、財源の見通しのつかないために、予算措置をしなければならないものは三億一千万円あるわけでございまして、その内訳は、生活保護費二億五千万円、一般失対費一千五百万円、給与改定に伴う人件費二千万円、その他二千万円となっておるのでございます。こういたしますると、決算見込額は十五億四千百八十一万七千円となっております。そのうち社会労働費、これは一般失対、生活保護あるいは緊急就労等でございまするが、これが十億二百七十三万三千円となっておりまして、決算見込額の六六・二%となっておるのでございます。  一方、歳入の面を申し上げますと、市税収入総額はわずかに三億二千八百万円でございまして、決算見込額の五分の一にも達せない状況でございます。  また、失業者の実態を申し上げますと、予算の数字が示しますように、一般失対あるいは緊急就労合わせまして、延べ三十七万人の就労が予定されておるのでございます。  また、生活保護の状態は、昨年の十二月一日現在二千三百世帯でございましたが、本年四月一日現在は、二千四百四十二世帯と急激に増大いたしておるのでございます。諸情勢を勘案いたしますると、本年度末までには三千世帯になるであろうということが予想されるのでございます。  その他、長欠児童あるいは欠食児童、青少年の不良化の問題等、関係者の私どもといたしましては非常に心配をいたしておるのでございます。  以上、田川市の実情をかいつまんで申し上げたのでございますが、大部分の産炭地市町村は、田川市と同様な状態でございまして、産炭地市町村の窮状を以上で御了察願いたいと存ずるのでございます。これから、このような窮状にある軸元市町村立場から、今般御審議の三法案について意見を申し述べたいと存じます。  まず第一に、産炭地域振興事業団法案について意見を申し述べますが、結論から申しますると、私どもはこの法案には全く賛成するのでありまして、しかも一日も早く成立することを熱望するものでございます。私どもは、現下の疲弊している産炭地市町村対策としましては、財政、鉱害、保安、雇用等の諸問題に対する対策のほかに、強力な積極的振興対策の必要を確信するものであります。  そこで私どもは、昨年の五月国会開催中、他の関係二団体とともに、産炭地市町村振興対策確立促進全国大会を開催いたしまして、政府及び参衆両院の先生方に御臨席を賜わり、当時、政府から提案されておりました産炭地域振興臨時措置法案の早期成立とともに、その積極的な実施機関として、産炭地域振興事業団の早急設立を要望して参ったのでございます。幸い、さきの三十九臨時国会におきまして、措置法が成立しましたので、私ども事業団設立を熱望し、昨年十二月、私ども立場から政府に対しまして、予算獲得の運動をいたし、十億計上せられるに至りましたが、さらに私どもは、再び他の関係二団体と合同して、本年一月、第二回の産炭地域振興全国大会を開き、このたびも政府及び両院の先生方の御臨席を得まして、お手元に差し上げておりますような宣言、決議を採択いたし、その冒頭に、産炭地域振興事業団法の早期制定を要望して参ったのでございます。かような次第でありますので、この法案が国会に提案せられ、すでに衆議院を通過して、参議院において審議されるに至りました今、私どもといたしましては、この待望の法案の一日も早く成立しますることを切望せざるを得ないのでございます。  ただ、少し法案の内容について二、三の要望がございます。  第一は、この事業団の業務の範囲をもっと広げていただきたいということでございます。十九条の業務の範囲は、土地造成と関連工作物の建設及び産炭地域の事業経営者に対する設備資金の貸し付けが主となっております。これは政府としても、十億程度の予算に縛られた第一段階としての事業範囲を考えられておることとは存じますが、この程度の事業範囲では、とうてい現在疲弊の極に達しておる産炭地域の積極的振興対策としての事業団に、私どもがひたすら託しておる夢を実現し得るものとは存じられません。何と申しましても、工業といえば用地であり、用地といえば道路であり、水でございます。お手元にお配りしておりますように、第二回全国大会での宣言及び決議にもうたってありますように、またその後も機会あるごとに要望して参りましたように、およそ新事業の開発または誘致に、さっそく必要となって参りますものは、水資源の確保であり、産業道路等、産業立地条件の整備でございます。これらは初歩的に業務の範囲に入ってこなければなりません。  さらに産炭地等の発電事業は、私どもの当初からの、そして究極の願いでございます。これをどうしても事業範囲に含まるべきであると存ずるのでございます。産炭地発電事業は、水資源確保の問題とともに、巨額の経費を要し、かつわが国行政機構の関係から他省庁との協議、折衝に相当困難な問題があるとも推察されるのでございますが、少なくともこれらの事業をなし得ることを法制化しないことは、いわゆる画龍点睛を欠くものとして、産炭地域振興対策の不徹底のうらみを残すことになるかと存じます。ぜひこれらの点の御配慮をお願い申し上げたいと存じます。  次に、第二点といたしまして、昭和三十七年度事業団予算は十億円となっておりますが、この程度の裏づけをもっていたしましては、私どもが、以上期待しております事業はできないはずであります。少なくとも来年度におきましては大幅増額措置を講ぜられることを強く要望いたすものでございます。  第三点としては、この機会に、これは主として政府に対して申し上げたい点でございまするが、事業団の運営が地元市町村の振興に直結するようにせられたいということであります。このことは昨年の第一回全国大会の決議以来要望してきたところでございますが、産炭地域振興臨時措置法または租税特別措置法による地域指定におきましては、産炭地市町村を遠く離れた道県内の一般市町村に認められたり、反対に基準のとり方によって、肝心の産炭地市町村が漏れているということがございますので、私ども産炭地市町村直結主義から、これら地域指定の早急の是正を要望するものでございますが、さらに産炭地域振興審議会の中央及び地方の委員及び専門委員の選任におきましても、地元市町村の代表の参加は、まことにりょうりょうとして暁の星のごとくでありまして、かような地元産炭地市町村の軽視は、まことに遺憾であります。この法案が成立し、やがて事業団が発足することになりますれば、おそらくは事業運営協議会のごときものが設けられ、各界から委員、専門委員等が任命せられることになるかと察せられますが、その場合には、ぜひとも私ども全国鉱業市町村会連合会に加盟する北海道、常磐、山口、九州の各地区からこれを代表する市町村長を少なくとも四名は、これに参加し、事業団の運営が地元市町村に直結し、地元市町村の実態から遊離しないように措置せられることを要望するものでございます。  以上、この法案について、事業団の聖業範囲の拡大、事業団予算の増額、事業運営市町村直結という、三つの点にしぼって要望申し上げたのでございますが、参議院におかれましても、これらの要望の実現をされますよう御配慮わずらわしたいと思うのでございます。  他の二法案につきましては、他の参考人から意見の開陳がありましたので、私の意見は省略さしていただきます。  以上、法案に対しまして意見を申し述べましたが、この機会に申し加えたいことは、石炭の構造的不況が関連産業の不況、税収減、離職者多発、鉱害炭鉱災害等の、あらゆる悪循環を通じて、地元市町村の疲弊にしわ寄せされていることにかんがみまして、ここに産炭地市町村の財政確立について、抜本的な措置を講じていただきたいことと、総合エネルギー法を早期に制定されまして、石炭の安定的位置づけをしていただきたいことと、この二つの点を最後に要望いたしまして、私の参考人としての意見の開陳を終わる次第でございます。
  39. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 次に、九州鉱害対策害者組合連合会会長栗田数雄君にお願いいたします。
  40. 栗田数雄

    参考人(栗田数雄君) 本日、ここに石炭合理化臨時措置法の一部改正にあたりまして、九州における鉱害被害者を代表して発言を許していただきましたことを深く感謝いたします。しかしながら発言時間の制限がありますので、石炭合理化臨時置措法の鉱害に関する部分を要点のみ率直に述べさしていただきますので、あしからず御了承を願います。  第一に、石炭鉱業の安定をはかるために合理化を強力に推し進めていく必要があることは考えられます。しかしながら、石炭鉱業被害者は、合理化促進の過程におきまして鉱害賠償の処理問題が困難になることを最もおそれておるのであります。今までは、不良炭鉱、非能率炭鉱は、石炭合理化事業団が採掘権を初め炭鉱設備を買い上げることによって、石炭鉱害に関する限り合理化事業団が鉱害を与えた鉱業権者と連帯して賠償の責めに任じておるので、鉱害被害者は、加害炭鉱の資産や、買い上げ後に発生することを予想される鉱害に対する賠償については、問題があっても何ら危惧の念は少なかったのであります。今回の石炭合理化臨時措置法の改正は、採掘権または租鉱権の消滅の登録が行なわれた後に、定められた基準に適合するときは、石炭鉱整理促進交付金を交付して、その交付金の限度内において未払い労銀、鉱害賠償債務の弁済をさせることにしたために 合理化事業団はただ単に交付金を保留または支払いをなすだけで、鉱害賠償の責任を負わないことになっております。交付金の限度内で百パーセント鉱害が賠償される場合はまだよいとしまして、交付金のうちの一定限度を越えた鉱害賠償については、そのまま放置される心配があります。炭鉱が廃止、閉鎖され、採掘権が消滅した場合、賠償を求めても、よりどころがなくなってしまうために、実際問題としては、鉱害賠償は行なわれない結果となります。その意味では、鉱害被害者は、石炭合理化事業団が賠償の連帯責任を持たないことに大いなる不安を持つものであります。従来の合理化事業団の買い上げをおくらせている大きな原因は、すでに発生しておる鉱害の処理ができないためであり、今回の改正により鉱害賠償が行なわれないものが多くなります。  第二点は、交付金によって、鉱害賠償をどの程度満足させることができるかということを考えると、心配であります。炭鉱不況のおり、特に中小炭鉱の労賃支払いの渋滞、未復旧鉱害は累積しておるのであります。従来石炭鉱業合理化事業団が炭鉱を買収する場合には、すでに認定しておる鉱害については、買収前に解決することが建前で、しかも事業団が採掘権者となって鉱害賠償債務を負うことになっていたために、被害者は賠償をしてもらえないという心配がなかった。これに反してこの改正案は、交付金の一定割合を上回る未払い賃金及び鉱害賠償債務があるときは、実際の被害額より少ない額の弁済しか受け取ることができないので、鉱害被害者の不満は社会問題化することが憂慮されるのであります。炭鉱が閉鎖した後では、残余の被害金額を加害鉱業権者から賠償を受けることは、とうてい期待ができませんし、特に一社一山の場合は、鉱業の廃止により賠償能力がなくなってしまうのが通常であります。このような場合でも、鉱害賠償が十分に行なわれる措置を講ぜられなければならないと思います。鉱害被害者としては、あくまで完全な賠償を要求することは当然のことでありまして、石炭鉱業の健全な発展のために、炭鉱が閉鎖される場合に、賠償請求権が制約されるのは、個人の財産を守り得る憲法上の権利より考えても不当であると思うのであります。交付金の一定割合をこえる鉱害が救われる方途を考えていただきたいのであります。  第三点は、鉱害賠償債務を処理する方策が考えられていないものに、未確認の鉱害と、未発生の鉱害があります。未確認の鉱害とは、隣接の鉱山と、鉱害が競合して賠償責任者がはっきりしないものであります。鉱害らしい現象があるが、鉱害と認められないもの等が、後に閉鎖鉱山の責任であるということがはっきりした場合、処置考えられる必要があります。未発生鉱害と申しますると、御承知のように、石炭鉱害は、採掘をやめてしばらくして起こるので、通常の場合で半年から三年ぐらいの間に発生するといわれております。通産省の、たしか一昨年の鉱害調査によりますと、現在発生しておる鉱害量は二百三十四億で、今後発生するであろう推定鉱害量は、九州だけでも百七十八億となっておるようであります。この数字の中から、整理炭鉱の閉鎖後に鉱害が相当量発生することが考えられますが、改正法案は、炭鉱閉鎖後の未発生鉱害処理について何ら触れてないことは残念に思うのであります。御審議の際に、これらの鉱害処理ができるように考慮していただきたいと思います。債務弁済後の交付金に残額があるときは、事業廃止者に交付することになっておりますが、未発生鉱害の処理を考えるときには、余った交付金でも、合理化事業団で三カ年ぐらいは保留することが望ましいのであります。  第四に、採掘権、租鉱権の消滅の登録が行なわれたとき、被害者で賠償請求権を有するものは、一定の期間内に事業団に対して権利を申し立てることになっております。もし期間内に申し立てをしなかった場合には、その鉱区、租鉱区に関する鉱害については、三十五条の三の規定による債務の弁済を請求することができなくなるよう定められておりますが、告示の公示が徹底するかどうか心配しております。とともに、鉱業法で鉱害賠償請求権を認めておるのに、公示に気づかなかった場合に、この権利を喪失するということは、何か片手落ちの感じがしてなりません。御一考をわずらわしたいと思います。  第五に、鉱害復旧するために、臨時石炭鉱害復旧法による鉱害復旧事業団がありますが、この復旧事業団は、炭鉱の経理の状況に応じて復旧工事に対する納付金の延納を認めて鉱害復旧の促進をはかっておるのであります。未払い納付金がある炭鉱が閉鎖された場合、交付金より支払いを受けられるものかいなか、はっきりしていないのがありますので、法ではっきりしていただきたいのであります。もし交付金より支払いが受け取れないと、復旧事業団の延納制度の運用は勢い慎重になり、ひいては中小鉱の鉱害復旧が延引あるいは停頓することになることが予想されるにかたくございません。鉱害復旧促進のためにお考えを願いたいと思います。  以上、五項目にわたりまして、私の陳述を終わりたいと思います。
  41. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 以上をもって、各参考人の御意見開陳は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  42. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 なるべく簡単に御質問申し上げて参りたいと思うのですけれども、岡さんに最初お尋ねいたしますが、しまいに時間がなかったから、首切りでない合理化の具体的考察について、小し時間が足りなかったようです。生産機構の近代化あるいは流通機構等があげられましたけれども、どうも述べ足りなさそうでしたから、具体的にもう小しお話を承れれば幸いです。
  43. 岡松雄

    参考人(岡松雄君) 今度の四号五日の政府の回答で、調査団の答申があって閣議が決定するまで、石炭経営者は首切りを行なわない、炭労は闘争行為を行なわない、この具体的措置として労使協定を実は行なったところであります。したがって従来の首切り合理化という点について、私ども非常な不満を持っておりますし、それから石炭産業合理化について現状首切りを行なわなければ石炭産業合理化はできないという点について若干申し上げてみたいと思います。  今回の政府の回答も制限除外がございます。その第一は、今度の通常国会で成立した保安臨時措置法によって買い上げられる炭鉱は除外をされています。それからもう一つは、合理化臨時措置法によって買い上げられる炭鉱も除外をされております。今回の合理化臨時措置法の一部改正によって新しく六百二十万トンの、何といいますか、買い上げが提案をされています。加えて、従来三十六年度までに残った量は確か六十万トンぐらいというふうに聞いております。それから保安の不良炭鉱で現在リストに載っているのが大体六十万トン。だとしますと、すでに七百二十数万トンが買い上げの対象になり、ここからはみ出る労働者数はどのくらいあるのか。で、政府の説明によりますと、六百二十万トンの対象炭鉱が約六十八、対象労働者は一万人前後というふうにいわれております。したがって、かりに現在の政府計画による現状炭鉱常用労働者数は十九万六千人であり、将来の昭和三十八年度の段階で十七万六千人という計画がもし実行されるとしても、その差は二万人である。その二万人のうち、約二万人程度は今言う不良炭鉱あるいは合理化臨時措置法によって買い上げられる対象炭鉱の労働者、こういうふうに考えますと、当面そこに重点を置いた雇用対策なり生活保障が行なわれてしかるべきではないかというふうに私ども考えます。したがって、かりに政府計画にいう十七万六千人にどうしてもしなければだめだという固定観念ではなくて、それ以外に、現在合理化をしなければならないたくさんの問題がありますから、私はおそらくその制限除外の問題を除けば、一般的には一年間ぐらいの首切りストップがあっても、決して炭鉱本来の合理化近代化に支障を来たすということではない、こういうふうに合理化の実態上申し上げることができると思うのであります。  したがって、今度政府のほうで設定をされた調査団も行けば、一万人の炭鉱労者の雇用なり生活保障というものは非常に重大で、それが回答の中には、制限除外になっておりますから、その辺に重点を置いた調査を徹底的に、まず当面の緊急対策としてやっていただいて、その後に一体どうするのか、それとあわせて炭鉱の埋蔵炭量なりあるいは石炭の賦存状態を調べて、総合的にやはり石炭合理化計画というものを新しく策定する必要がある。この段階で労働者が余るか余らないのかということになりますが、その時点では、私どもも十分そういう案の策定の段階において組織的に批判を行ないたいと思います。  したがって、従来炭労は石炭の合理化計画について反対をして参りましたが、できれば新しい政策においては、私どもも協力できる範囲のもので石炭政策を立案していただきたい。決してこのことは合理化の現状から無理ではない、こういうふうに判断をしておりますので、どうかその点十分に諸先生方の御検討をわずらわし、加えて調査団は、今言った方向に重点を置いて、徹底的な調査なり対策を立てるということを強く要望したいと思います。
  44. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 坂田会長にお尋ねをいたしますが、産炭地域の指定について、指定漏れがあったということですが、具体的に例示して御説明をいただきたい。それが一点。  それから従来から政府の大庭も調査に参りました。それからそのときに安井自治大臣は、生活保護なりあるいは一般失対なり、産炭地の荒廃に伴う市町村財政の赤字は、これはまるまる見ます、太鼓判を押して腹をたたいて約束された。それで平衡交付金の算定方法についても変えるという方針のようですし、それから三十六年度の特交では、その赤字をまるまる見るという特交の決定を見ましたあと、三十六年度はすでにまあ終わったわけですが、あの言明が、特交なりそれからその年度の末の調整で、大臣の言明されたとおりに全部見られたかどうか、その点をお伺いをいたしたい。それが第二点。  それからこれは主として産炭地域振興事業団についてお述べをいただきましたが、産炭地域振興事業団法の審議にあたって御要望の点は、私どももただして参りたいと思うのですが、ひとつ、口述ございませんでしたが、合理化法改正によって鉱業権が消滅をさせられます。そうすると、被害者のほうからも述べられましたけれども鉱害問題についても残るものがあるのであります。それから閉山後の労働者あるいは失業者が、従来相当やはり滞留をしまして、いろいろ市町村に迷惑をかけておりますが、今まででも十分できなかった、それが住宅やなんぞは買い上げないということになりますと、六カ月過ぎる前後から、すぐに電灯の問題あるいは住宅の問題等が起こってくるのじゃないかという心配をいたしますが、今までの実情も、簡単にお触れ願いましたけれども、そういう点について、合理化法あるいは保安法の改正によって買いつぶしということが起こってくれば、さらに問題が拡大するのではなかろうかという心配をいたしますから、その点についての御所見を承れれば幸いです。
  45. 坂田九十百

    参考人(坂田九十百君) 産炭地域振興臨時措置法の六条で漏れておるのが福岡県の岡垣村、玄海町、長崎の佐世保市など、それから租税特別措置法の四十五条に漏れたのが北海道の夕張市などでございます。  それからこの産炭地市町村の財政補てんの問題につきましては、三十六年度は、相当特別交付税等で考慮されております。三十七年度は今からでございまするので、どういう措置がなされるのかよく存じませんが、おそらく生活保護あるいは緊急就労等の市負担分については、普通交付税あるいは特別交付税等で措置するのではなかろうか、こういうふうに私どもは期待いたしておるわけでございます。  それから合理化法によって買い上げなされた炭鉱が、どういうふうに市町村に影響をきたしておるかと申しますると、これは小さい問題がたくさんありまして、そういうものが市町村の財政を圧迫している。たとえば合理化法によって買い上げを申請する、そうすると、すでに炭鉱はやめてしまって、そして電気あるいは水道もとめてしまう、こういう問題がそれぞれの所在市町村に非常に重荷になってくるわけでございまして、いまだに解決のつかない問題等がたくさんございます。特にこの合理化法によって賢い上げになる炭鉱については、将来水道の問題あるいはこの地域に滞留する炭鉱離職者の問題等については、もう少しそれぞれの市町村にしわ寄せにならないように、政府のほうで十分考慮をお願い申し上げたい、こういうように考えております。
  46. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間がございませんから、十分な質疑はできませんけれども、一人一問ということで遠慮をいたしますが、最後に栗田さんにお尋ねをいたしますが、お述べになりました中心は、要するに買い上げに伴います鉱害の補償といいますか、あるいは復旧というものがどうなるか。従来買い上げ前に片づくものが多かったのか、あるいは買い上げ後に引き継がれるものが相当残っておるのか、もし買い上げ後に未確定鉱害あるいは認定鉱害でないもの、それが事業団に買いとられて後に起こるということになりますと、お話のように鉱業権の消滅をさせると、買い上げ、あるいは閉山をしてしまった鉱山には、なかなかいっていっても話にならぬだろう。それから事業団は買い上げませんから、事業団も受け付けない。こういうことが起こって参ると思うのですが、その辺の実態を多少今までの実例から、抽象的でなくなるべく具体的に、今後の心配をお述べをいただきたい。それから特に臨鉱法のときに問題になっておりました灌漑排水のポンプだとか、あるいは復旧不適地といいますか、残っておる問題等、どうなるのか、その辺をあわせて御説明をいただきたい。
  47. 栗田数雄

    参考人(栗田数雄君) 今まで事業団でやりておりました際の鉱害は、事業団が買収前に鉱害が処理されておったものと、事業団に移ってその後に事業団が処理したものの計数は、私はよく承知いたしておりません。しかしながら実態を観察しますると、約半々でなかろうかと考えております。御承知のように新聞紙上をにぎわしております事業団に多数の人が押しかけて、あそこで混乱したという問題も数度ございまするが、それらの問題が、私が先ほど後段に述べました未発生の鉱害ないしは鉱害の認定がつかないものが後になって、これは事業団が買い上げたところの鉱害であるということが確認された場合に、事業団では自分のところは知らないというようなことを言いますから、例の暴力団が取り巻いて新聞紙上をにぎわした事例もございまするが、常に紛争はそこにあるわけでございます。先ほども中少の長岡さんが、わかっておる鉱害でさえも、十分に補償ができないと、賠償ができないと、未発生のものはなおさらのことのようなお言葉を私は聞きましたが、そのとおりでございます。はなはだ申しかねますが、中少炭鉱については今の現存しておる明らかな鉱害でも、十分な措置がとれないで、まして未発生や、鉱区が御承知のように競合しておる場合がある。上層が某炭鉱がとっており、下層はだれだれがとっておる、要するに鉱区の重複からきた鉱害の限定がなかなかわからないというような、鉱害原因がわからぬために、いろいろ紛争しまして、一年も半年もたつ、そういう場合が、今回のは全然触れてないのであります。私どもは心配しておるのであります。やはり中小鉱業権者が、今度のように打ち切りになりますと、それから先は未発生のものや、鉱害原因のわからないものを後日、私は今の経営者の財政からいきますと、払っていただけるとは予想ができません。そこに私どもは非常な大きな不安を持っておりまして、計数はわかりませんが、今問題になっておりますのは、鉱害原因のわからないもの、未発生のものが主として大きな係争を起こしておるということでございます。  それから次に、特鉱法で問題になっておりましたポンプの問題、これは何か解決するというようなことは聞いておりますが、まだ具体的な問題は私ども承知いたしておりません。臨鉱法では、これは新たにそれだけの維持管理費が工事をする場合について参りますから、一応臨鉱法で復旧する場合はけっこうだと思いますけれども、以前から残りました特別鉱害で残っておるものは、まだ解決していないと思うのであります。  それから不適地の問題は、こうなりますと、おそらく今の交付金制度からいきますと、不適地に属するようなところの復旧はできないのじゃないか。永遠に葬られるのじゃないか。しかも今の交付金の算定からいいますと、その膨大な鉱害賠償というものは、要するに被害者の犠牲においてのみ処理されるのじゃなかろうか。そうしますると、何も罪とがのない地上権者が、知らない間にいつか地下を掘られて、自分の財産はなくなる。それに対する賠償は取れないという結果になると思います。こういうことで非常に心配しておるものでございます。
  48. 阿具根登

    ○阿具根登君 お二人の方に、簡単に一問ずつ御質問申し上げます。  早立さんに簡単に御質問いたしますが、私の聞き違いであるとも思いますが、また時間がなかったので、あなたも十分意見が述べられなかったのではないかと、こう思いますので、ちょっと御質問申し上げたいと思います。五千五百万トンで頭打ちされており、千二百円のコスト・ダウンだということになっておりますが、あとから述べられましたように千二百円のコスト・ダウンができるように政策をせよとおっしゃることは、これはもう私どもも十分わかります。しかし物価が上がってくる、さらには賃金が上がる、運賃が上がる、こういうようになって参ります。そうすると頭は五千五百万トンで押えられております。中小炭鉱にも十分資金を回わせ、金融を回わせ、そのとおりでございます。そうしますと、金融を十分にすると、たとえば先ほど大手中小炭鉱の代表の方がおっしゃいましたように、たとえば言われるとおりの資金を全部やったとすれば、一体どうなるだろうかというのですね、そうしますと近代化は十分にできる。しかし賃金は、これは一般体系から見て、これは上げなければできない。物価は上がってくる。そうすると能率を上げるだけと、こういうことになってくるわけですね。そうすると、かりに二十八トン、まあ最近言われておりますのはこの十八・二トンですが、二十八トンの能率になったとすれば、十六万人でいいということになるわけです。かりに三十トンになったとすると、十五万人でいいということになるわけです。そうすると、あなたの言うとおりにすれば、首がどんどん切られていくだけだ、労働者が切られていくだけだ、こういう一面があるだけでしょう。これは萩原会長も嘆いておられました。御承知のとおりです。一方、それでは五千五百万トンでなければできぬかといえば、そうじゃなくて、需要の面だということを萩原さんは言われた。そうすると日本は一億三千万トン石炭に直して使っているとすれば、五千五百万トンは三〇数%、三七・八%になるわけです。西独では、ちょうどこれの逆です。六〇数%の石炭を使っておるとすれば、それは何かということになって参りますと、やはり油と石炭との価格の比率が、開きがあまりあり過ぎる。だから日本は三〇数%を使おうとしている。  そうすると、日本の将来一億三千万トンで十年間なら十年間、ずっといくかということを見ていますと、政府考え方は、十年後には三億トンになる、それだけエネルギーというのがふえてくる。それならば石炭だげ今のような考え方からいっても五千五百万トンでずっといく、そうすると、これは三〇数%が三〇%になり、二〇%になってくる。そういうことでいったならば、萩原さんが嘆いておられましたように、三億トン近くのエネルギーが要るのに、日本の国内でできるものは、ぴたっと五千玉百万トンでいいだろうか。外国で何かストライキでもあった場合には、日本産業は、これで麻痺してしまうということを私は言っておられると思う。そうしますと、そういう観点から立って、やはり資金もうんと出さにゃできぬ、コストも安くせにゃできぬ、確かにそうだ。しかし、そういう世界の情勢、日本経済の伸びの情勢から見てみても、いつまでも五千五百万トンで頭打ちだということは、これは労働者を結局首切るだけだから、これはやはり、漸次上げていってやったほうがいいんではないか、こういうふうに思うのですが、その点についてのお考え方をお聞きしたいと思います。  それから坂田会長さんにお伺いいたしますが、会長さんという立場よりも、市長さんという立場でですが、たまたま私が先般予算委員会質問いたしましたときに、週刊誌に破産宣告をした田川市ということがございまして非常な悲惨な記事が出ておりました。そこでたまたま、きょう参考人としておいで下さいましたので、アウトラインだけでいいのですが、先ほど聞いていますと、六〇%以上のものが失対あるいは生保等に出されておる、まあ、こういうことでございますので、市全般の財政から見て、たとえば人件費、事業費、こういうような問題あるいは特に炭鉱の中でも一番しわ寄せのされておると思いますし、また三井、田川問題もございまして、二千人からの失業者が出てくるということも拝聴いたしておりますので、その田川市の実態等を、時間もあまりないと思いますので、アウトラインだけでよろしゅうございますからお聞かせ願いたい。  以上でございます。
  49. 早立栄司

    参考人早立栄司君) 私が申し上げました五千五百万トン、一千二百円引き下げの路線を今日まで推進をしてきましたし、今後もこれを推進していこうとしておるという私どもの態度を申し述べたわけでおりますが、そのことは前に石炭鉱業審議会において各層の意見を代表してきめられたところの石炭鉱業安定のための一つの指標であり、同時にその路線である、こういう意味で、私はいろいろ不満はありつつも、発展路線を当面推進することによって安定するしかないし、同時に、そのことによって初めて政府からも必要な助成措置等を受けられるのである、こういう考え方であるわけであります。  したがいまして、そのことは今いろいろ出ましたが、三十八年以降の長期にわたって、あくまでもその五千五百万トンでいくというような考え方でないわけであります。三十八年を目途にした当面の対策として、われわれはまずこの線路を歩み、そうしてその中で態勢を確立しよう。態勢が確立された上に立って、それから先どうするかという点につきましては、石炭鉱業審議会等においても、十分これを御検討願うわけですから、そういう中で石炭産業自体の態勢が固まって、それと対応して石炭の需要が確保されるということになれば、五千五百万トン、六千万トンでも七千万トンでも、需要と対応して生産を拡大するようにしていただきたいと考えておるわけです。それからなお申し上げるまでもないと思いますが、五千五百万トン、一千二百円引き下げ、こう申し上げておるのは、それに基づく近代化のための路線ということでありまして、したがいまして三十七年、三十八年におきましても、数字的には必ずしも五千五百万トンぴたっと一が欠けてもいかぬとか、あるいは一千二百円引き下げについても、年次別の引き下げ計画があるわけですから、そういうことについても、どうのこうのということではないわけであります。  以上です。
  50. 坂田九十百

    参考人(坂田九十百君) 田川市の実情は、さっき申し上げたとおりでございまして、田川市の全市収入は十億二千八百万円、これは昭和三十五年度の決算額をそのまま予算に計上いたしておるわけでございますが、そうした弱い財政力で、しかも十五億二千万円という決算見込額が立てられております。ということは、去る昭和三十一年九月に施行されました石炭鉱業合理化臨時措置法以来、市の炭鉱は全滅でございまして、田川市というものは、炭鉱によって生まれ、炭鉱によって発展した町でございますので、今日のような炭界不況あるいは国の燃料政策によって、こうした市の財政事情に陥っているわけであります。各新聞あるいは先ほどの週刊文春等で取り上げられましたあの実態のとおりでございまして、先ほど吉田委員から、合理化がどう市町村に影響しておるかという御質問もございましたが、いろいろ自治省におきましても、財政措置につきましては、特別交付税等でめんどうは見ていただいております。けれどもやはり田川市におきましては、自主財源によって自主的な運営をやりたい、これにはどうしても、ただこういう状態であるから、どうにかしてもらいたということとでなくて、この自主的な財源を生み出す方法、たとえば具体的な振興対策を作ってもらいたい。これはやはり何といたしましても、目下委員会で御審議中の産炭地域振興事業団の強化以外にはないと思うわけでございますが、この事業団法を見てみますると、実際に産炭地そのものの振興をはかるということは不十分なように考えるわけでございます。もちろん本年度の予算額は非常に少ないのでございまするけれども、これは一応今年度は頭を出す程度であって、三十八年度においては大幅に増額するのだという通産当局の御意見を拝聴いたしまして心強く感じておるわけでございまするが、この事業方法につきましても、まず産炭地と申しますると、きわめて不便な地域でございまして、したがって工場等を誘致するにいたしましても、今のままの状態では、なかなか進出いたしません。そこで工場等が進出するような、要するに受け入れ態勢を作らなければならない。これはわれわれ一市町村の力では、とうてい処理できる問題でございませんので、どうしても事業団によって先行投資をしていただきたい。たとえば工場用地の造成、あるいは産業道路の整備、あるいは水資源の確保、こうした問題を事業団で取り上げていただいて、そうして工場誘致をする。こうしなければ産炭地の振興ははかり得ないと考えております。したがって工場がくる見込みがあるならば用地を造成しようという現在の考え方では産炭地の振興ははかり得ないと、私はこう考えておるわけでございます。  それからもう一つは、その産炭地に、それぞれ地域には資源がございます。その地域の資源を開発すること。たとえば田川市におきましては、周囲連山が石炭でございまして、石灰石を生かすということ。たとえば三井鉱山にありましても香春岳の三の岳を確保いたしております。あるいは工場用地の土地も確保いたしております。けれども、資金のために工場ができないという状態。一方においては、鉱山のほうではさらに千十二名の首切りを断行しようとしておる。これは四月の十六日、組合側も了承いたしましたので、これから首切りが始まると思うわけでございまするが、首切りはするけれども、新しい事業はできない。私は、こういう点は開発銀行の融資のワクを増大していただいて、そうして、この三井のセメント工場が田川にできるような促進方をお願い申し上げたいと思います。なお、小野田セメントにいたしましても、大きな石灰資源を持っております。これを月産六万トンを採石して、八幡の小野田工場で製品化するようになっておりますけれども、せんだって小野田セメント工場に参りまして、現地で製品化してもらいたいという要望をいたしましたが、何といたしましても、資金の行き詰まりでどうにもならない、もし、資金の融資の道が開けるならば、現地で製品化することは、一番経営面からいってもいいわけで、地元の要望に沿いたいけれども、資金難のために工場が設置できぬのだというような話もございます。こうした面で、融資の面を十分、相手は小野田セメントであり、三井鉱山である、各、資格は十分持っている会社でありますので、融資の道を開いていただいて、そうして石炭産業にかわる石炭資源の開発を早急にできまするような御尽力をいただきたい。そうすることによって私ども市町村といたしましても、ただ、この特別交付税に依存するとか、あるいは普通交付税に依存することのないように、市町村の力を十分つけて、そうして今日のように全予算額の五分の四を、いただく財源に待つということのないように、みずからの力によってみずからの自治を行なっていくという方向に進んでいきたい、こういうふうに考えるわけでございますので、何分とも、こういう点につきましての先生方一般の御尽力をお願い申し上げておく次第であります。
  51. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御質疑はありませんか。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を聴取さしていただきまして、ありがとうございました。本委員会といたしましては、本日の御意見を十分参考として、今後も審議を進める所存でございます。どうもありがとうございました。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時六分散会