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1962-04-19 第40回国会 参議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十九日(木曜日)    午前十一時三十八分開会     —————————————   委員の異動 四月十七日委員横山フク君及び佐藤芳 男君辞任につき、その補欠として林田 正治君及び西田隆男君を議長において 指名した。 四月十八日委員林田正治君、西田隆男 君、阿具根登君及び山田節男辞任に つき、その補欠として横山フク君、佐 藤芳男君、椿繁夫君及び村尾重雄君を 議長において指名した。 本日委員勝俣稔君及び椿繁夫辞任に つき、その補欠として吉江勝保君及び 阿具根登君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高野 一夫君    理 事            鹿島 俊雄君            村山 道雄君            阿具根 登君            藤田藤太郎君    委 員            勝俣  稔君            徳永 正利君            山本  杉君            横山 フク君            村尾 重雄君            石田 次男君    発議者     阿具根 登君  委員以外の議員    発議者     阿部 竹松君   政府委員    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    大蔵省主計局給    与課長     平井 廸郎君    厚生政務次官  森田重次郎君    厚生省年金局長 小山進次郎君    厚生省援護局長 山本浅太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○国民年金法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○じん肺法の一部を改正する法律案  (阿部竹松君外九名発議) ○労働基準法の一部を改正する法律案  (阿部竹松君外九名発議) ○炭鉱労働者遺族補償特例法案(阿具  根登君外九名発議) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一  部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ただいまから本日の社会労働委員会開会いたします。  四月十八日付をもって、阿具根登君が辞任され、椿繁夫君が選任され、山田節男君が辞任され、村尾重雄君が選任され、本日付をもって椿繁夫君が辞任され、阿具根登君が選任されました。     —————————————
  3. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 理事補欠互選を行ないます。  ただいま報告のとおり、阿具根登君が一時理事辞任されましたため、理事に一名の欠員を生じております。この際、理事補欠互選を行ないます。慣例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。阿具根登君の補欠として、阿具根登君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 国民年金法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 徳永正利

    徳永正利君 大臣がお見えになっておりませんから、大臣に対する質問は保留いたしまして、局長に二、三お尋ねいたしたいと思います。この中の制限規定で、まあいろいろな制限規定があるわけでございますが、扶養義務者が五十万以上の所得がある場合にはこれを切る、いわゆる福祉年金は切るということに相なっておるのですが、こういったいわゆる制限規定を設けている法律は、他にどういうものがございますか。
  7. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 他にありますものというのは非常に例に乏しいのでございまして、恩給法一つございますが、これも、もらいます額が非常に多額な場合だけを例外的に抑制するという趣旨のものでございまして、実際に働いている程度は、これに比べて非常にゆるうございます。それから、もう一つ引揚者給付金の場合に、多少これに類似した考え方制限が入ったことがございますけれども、しいてあげてみますとその程度でございまして、ほかにあまり例がないと申しておいたほうがすなおかと思っております。
  8. 徳永正利

    徳永正利君 ほかの法律も、おそらく国民年金にならった思想に立っておると思うのです。これも御存じのように、子供がちりぢりばらばらになって、今日の状態でございますから、なかなか五十万円くらいの所得があっても、親を離れて住んでいるときに、完全に扶養するというようなことは困難であることは、もうこの前の、前委員会における藤田委員の御質問においても表明されているわけです。この点について今後改正される用意があるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  9. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先生仰せのごとく、物事の筋道からいいますと、私どもも、この制限は、かなり実際上無理のあることと思っております。特にこの金額が五十万という、都市生活を営んでいる場合において、扶養親族が五人でございますから、家族六人ということになるわけでございます。六人で五十万という、家庭によったら、もう受けられないというのは、どうも少し強過ぎるということを痛感しているわけでございます。方向としては、ぜひこれを緩和していきたい、少なくとも当初五十万を設定したときよりも、実際上緩和される程度緩和というものを、ぜひ明年度においてははかりたい、こういうようなことでいろいろ研究を進めているという事情でございます。
  10. 徳永正利

    徳永正利君 特に一緒の世帯に住んでいるというような場合にはまだいいほうで離れ離れに住んでおるというようなときでも、なかなか厳密な御審査の上で支給されておるようでございますけれども、ただいま伺いますと、前向きの姿勢で前進をするというお答えでございますが、この点は特にひとつ緩和の必要があると思いますので、お願い申し上げる次第です。  それから、次に、今度初めて併給の問題が頭を上げたわけですが、この併給も二万四千円、七万円という、いわゆる頭打ちを食わしておる。この二万四千円、七万円にはそれぞれ意味もあろうことはよくわかるのですが、五十万円の扶養義傷者所得というものと、もう一つ十五万円の本人所得という二つにしぼっての大前提に立ってしぼりがかけられておるのですが、他に収入が、たとえば公的年金であろうと拾った金であろうともらった金であろうと、十五万円という所得の中に、また公的年金だから七万円だ、あるいは二万四千円だというところにどうしてしぼりがかけられたのか、どうしても納得いかないわけです。御存じのように、何か憲法二十五条を受けて、そうしてこの国民年金の目的というものを、第一条で見ますと、そういうような点から見ましても、とにかく年をとって非常に不遇な人には福祉年金を差し上げようということに立っておるのでありますから、私は、その公的年金の金が、百円の金が二百円に使えるとか、あるいは一万円の金が二万円の価値があるというならば、これは私はわかる。しかし、そんなことはないので、公的年金をもらっておるから、そういうところに制限を加えなければならないということが、どうしてもこの立法の精神からいって納得できない。この点についてどういうふうにお考えでございますか。
  11. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先生仰せのような考え方も、これも一つのりっぱな考え方でございまして、実を申し上げますと、制度創設当時にもそういう議論がございました。およそ所得制限という一つの線を設けるのでありますなら、その所得の源泉が、公的年金であれその他の年金であれ、これを区別するといういわれはない、こういうような議論もあったわけでございますが、現在公的年金について特別な扱いをしておりますのは、いわば沿革的な理由からでございまして、国民年金福祉年金というのは、その当時において、まだ年金に守られていない人々に対して年金の利益を及ぼすという趣旨から行なわれたものでありまするので、まずそういう人々に対する年金として考えていく、ということを考えましたので、現在すでにほかの年金をもらって、一応ほかの年金で乏しいながらも守られておる人には御遠慮願う、こういうような趣旨で今のようなところに落ちついているというような事情でございます。
  12. 徳永正利

    徳永正利君 先日の御説明を聞きますと、たとえば厚生年金にしましても、国庫負担は一五%ないし二〇%、たとえば三万円の厚生年金をもらっている人は、たとい二〇%の国庫負担としても、六千円しか国庫負担はやっていないわけです。そうすると、まるまる自分掛金雇用主半額負担でその二万四千円を御本人はもらっているわけです。国は何ら関係はない。中身を洗っていきますと、ただ年金が重複するというような思想からだけでこれを押えられるということは、いささか私どもは腑に落ちないわけです。国民の税金によってこれをカバーしておるから、こっちは御遠慮願いたいということはどこからも出てこないわけです。この点についてはいろいろ御議論があったそうでございますが、さらに御検討をいただいて、とにかく十五万円以下の所得の者には、どこからもらおうと、どういう性質であろうと、私は、いわゆる老齢福祉年金というものは差し上げてもいいんじゃないかと考えるわけです。中身を洗ってみると、他の公的年金とは言っておっても、みんなそれは自分掛金や、自分の仲間の金でそれをもらっている。国庫負担というものは全然ないわけです。この点については、なお今後十分御研究をいただきたいと思います。  その他御質問申し上げたいことがございますが、きょうは大臣もお見えでございませんから、他の質問は保留いたしまして、きょうの質問はこれくらいで私は終わります。
  13. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  14. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。  本件に対する本日の質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。暫時休憩いたします。午後は一時から再開いたします。    午前十一時五十四分休憩      ——————————    午後一時二十五分開会
  16. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  じん肺法の一部を改正する法律案並び労働基準法の一部を改正する法律案(参第十二号)を一括して議題に供することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。  まず提案理由説明を願います。阿部竹松参議院議員
  18. 阿部竹松

    委員以外の議員阿部竹松君) ただいま議題となりましたじん肺法の一部を改正する法律案及び労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び概要説明申し上げます。  金属鉱山炭鉱及び窯業等粉じんを発散する事業所に働く労働者は、現在の医学をもってしても治癒方法のないじん肺という職業病に犯されることは御承知のとおりであります。このじん肺の大部分であるけい肺並びにこれと同じように治癒方法業務上の外傷性脊髄障害については、第二十二回特別国会において特別保護法が制定され、次いで第二十八回国会において臨時措置法を制定してその保護期間が延長され、さらに、第三十四回国会においてこれらの法律を根本的に改正して、新たにじん肺法が制定され、保護対象範囲けい肺以外の粉じんによる患者にも拡張され、粉じん作業に従事する労働者に対しては、じん肺の予防及び健康管理に関して必要な規定を設けるとともに、労働者災害補償保険法の一部を改正して、じん肺等長期にわたって療養を必要とする業務上の疾病に対しては、従来の打切補償制度長期傷病者補償制度に改めて、療養を必要とする期間これを保護することとし、重度の障害が残るときは、その障害の存する期間障害補償を行なうこととしたのであります。しかしながら、この制度が実施されて二ケ年あまりを経過した今日、じん肺等職業病健康管理について、さらにその強化の必要が痛感せられるとともに、諸物価の騰貴に伴い、療養中の労働者及びその家族生活が困難に陥るなど、保護の実態についても改善すべき点が多々あることが明らかとなったのであります。  また、最近における化学工業の著しい進歩に伴い、化学薬品による中毒等、新しい職業病も発生を見るに至りましたので、これらの対策も早急に確立の必要を認められるのであります。以上のほか、けい肺等特別保護法の制定以前に労働基準法による打ち切り補償支給を受けた者等は、新しい制度による保護を全く受けられないで、貧窮のうちに病床に苦しんでいる気の毒な状況でありますので、これらの人々の救済も緊要と認められるのであります。よって、関係法律所要改正を行ない、じん肺等業務上の疾病に対して、さらに適切な保護を加えようとするものであります。  次に各法律案についてその概要説明申し上げます。  まず、じん肺法の一部を改正する法律案について申し上げます。すなわち、その要旨は、第一に、粉じん作業に従事する労働者健康管理の徹底をはかるため、使用者は、新たに、労働者を常時粉じん作業に従事させることになったときは、都道府県労働基準局長に届け出ること及び労働者がその作業から転退職するときには、じん肺健康診断を行なわなければならないこと、また、労働基準局長は、常時粉じん作業に従事する労働者じん肺労働者手帳を交付し、労働者はその手帳に必要な事項の記載を受けなければならないこととすること。  第二に、労働者粉じん作業からの転換を円滑に行なうため、使用者作業転換をさせた労働者を引き続き使用する場合には少なくとも従前の賃金を維持しなければならないこととすること。また、じん肺療養のため休業していた労働者が復職したときも同様とすること。  第三に、業務上のじん肺に関しては、労働基準法による休業補償障害補償及び遺族補償を行なわず、これらにかえて、この法律により、生活費補償及び障害補償並びに平均賃金の二百十九日分の遺族年金補償を行なうとともに、じん肺管理二または管理三となったときは、その区分に応じて、それぞれ平均賃金の百分の十または百分の二十のじん肺障害補償を行なわなければならないものとすること。  第四に、この法律による生活費補償等補償は、いずれも労働者災害補償保険法において、保険給付として支給できるものとするとともに、じん肺については、療養開始後三年以上経過してなおらない場合であっても、長期傷病者補償を行なわずに、そのまま療養補償生活補償を行なうこととすること。  第五に、じん肺に関する保険給付に要する費用のうち、労働基準法上の補償をこえる部分は、療養補償及び生活費補償についてはその四分の三を、その他の保険給付についてはその一部を国庫負担とすること。  第六に、外傷性脊髄障害または政令で定める職業病にかかった労働者については、じん肺障害補償を除き、じん肺と同様の災害補償を行なうべきものとすること。  以上のほかに、補償額スライド制じん肺労働者作業所の設置、厚生年金保険法による障害年金支給を受ける場合の減額措置の廃止及びこの法律施行前に、業務じん肺等にかかった労働者または労働者であった者で、現在療養補償等を全く受けてない者に対する補償等について所要改正を行なうこと、等であります。     —————————————  次に労働基準法の一部を改正する法律案について申し上げます。  じん肺その他の職業病等にかかって、療養のため休業する場合において、療養開始の前には、身体の衰弱等により、稼働日数一般労働者より少なく、作業量もまた少ないのが通常でありますから、現行法に基づいて算出される平均賃金は、したがって、相当低額となりますので、これを是正する必要があります。すなわち、賃金日給制、時間給制または出来高払い制その他の請負制によって定められている労働者についての平均賃金最低保障額は、算定期間中の賃金総額当該期間中の実労働日数で除した金額の百分の六十とされているのを、その百分の八十に改めようとするものであります。  以上がじん肺法の一部を改正する法律案及び労働基準法の一部を改正する法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  19. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 両案に対する質疑は次回以降に譲りたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  21. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に、炭鉱労働者遺族補償特例法案議題といたします。提案理由説明を願います。阿具根登参議院議員
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいま議題となりました炭鉱労働者遺族補償特例法案提出理由及び概要を御説明申し上げます。  石炭鉱業は、最近におけるエネルギー資源需要世界的変革に伴い、企業の急速な合理化を迫られているところであります。企業においては合理化促進のためとして、大量の人員整理を行ない、労働を強化し、また、保安要員の削減など、坑内保安軽視傾向にあることが憂慮されるのであります。中小炭鉱、特に租鉱権炭鉱にあってはこの傾向が著しく、また、合理化事業団に買い上げ申請中、あるいは近く閉山予定鉱業所における坑内保安はきわめて憂慮すべき状態にあります。  このような情勢を反映して、各地の炭鉱においては、重大災害が頻発し、多数の犠牲者を出しているのでありますが、その遺族は、現行法によれば、平均賃金の千日分という僅少な遺族補償支給されるにとどまり、にわかに一家の中心を失った遺族は、就労の特に困難な産炭地帯において、直ちに明日からの生活に苦しむという悲惨な実情であります。よって、労働者業務上の災害に対する十分な補償が将来確立するまでの特例として、これらの遺族を救済して、その生活の安定をはかるため、本法律案により、炭鉱労働者業務上死亡した場合には、労働基準法及び労働者災害補償保険法規定による遺族補償の額を三百四十日分増額して千三百四十日分とするとともに、その最低額を百万円とするために、平均賃金最低保障額を七百四十七円としようとするものであります。また、長期傷病者補償に移った場合の遺族給付も、同様の比率で引き上げることといたしました。  以上が本法律案提案理由及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  23. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 本案に対する質疑は次回以降に譲りたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  25. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  26. 徳永正利

    徳永正利君 佐藤副長官はまだお見えになりませんね。  それでは給与課長にお尋ねします。この法律の中で、御存じのように、戦地勤務の有給の軍属について、昔の陸軍関係海軍関係というものがそれぞれ不均衡があるというふうに私どもは考えておる。この点についてどういうふうな工合になっておるか、その点を御説明願いたい。
  27. 平井廸郎

    政府委員平井廸郎君) ただいま御質問の点は、旧陸軍共済組合所属組合員並びに旧海軍共済組合所属職員の処遇について差があるという点と理解してお答えをいたしたいと存じます。御承知のとおり、戦前、旧陸軍共済組合、旧海軍共済組合がございまして、それぞれ公傷等職員福利厚生並びに退職給付の実施に当たっておったわけでございますが、手元に詳しい資料がございませんので、やや正確を欠くかもしれませんが、昭和二十年の三月末に、まず海軍共済組合のほうで規則改正を行ないまして、それまで公務傷病に対する退職者については一時金手当で処理いたしておりましたものを、二十年四月一日以降の退職者、つまりそれ以後における退職者については、年金制度に切りかえるという措置をとったわけでございます。これにならいまして、陸軍共済組合におきましても、二十五年の五月に規則改正を行なったわけでございますが、その際には、必ずしも海軍共済組合と同一の方式をとらず、大東亜戦争開始前にさかのぼって年金支給する道を開いたわけでございます。ただし、その場合におきましては、年金支給対象といたしましたのは、戦災による傷病者ということに限られておったようでございまして、期間の点におきましては、海軍共済組合のほうが、遡及法がないという意味におきまして、劣っておったわけでございますが、同時に、また、陸軍のほうにおきましては、その適用範囲戦災による傷病者に限られておるという点でございまして、必ずしもどちらが有利であり不利であるかということは、にわかに即断しがたいところであったわけでございます。その後、主として旧海軍関係共済組合員であった方々から、陸軍の場合は、遡及して退職年金制度を採用したのであるから、われわれについても年金制度に切りかえてほしいという御要望等がありました。先ほど申し上げたような事情もございますし、また、一般的に共済組合制度の建前といたしまして、本来、掛金を基礎として、保険数理に基づいて運営されておる関係上、一応一時金で処理されたものを、さらにこれを改めてやり直すという考え方はとらないということで、お断わりをいたしておった次第でございます。ところが、さらに昭和三十六年に至りまして、この戦傷病者遺家族年金法改正によりまして、一般に徴用された方々戦災にかかられた場合、このような場合におきましては、一応五年間の有期年金をつけるということになったわけでございます。その場合に、旧海軍組合員の中で、この条項に該当する者につきましては、いわば追加的な年金給付が行なわれることになりまして、その限りにおきまして、その適用を受けられない方々、つまり戦災でなくて、一般公務傷病による方々については、依然としてこのグループからはずれておるという御議論が出て参ったわけでございます。しかしながら、先ほど私が申し上げましたように、陸軍年金考え方というのは、戦災による年金という考え方をとっておりますし、その点からいたしますと、今直ちにこれを広げることが妥当であるかどうかということも、かなり問題があるわけでございます。言いかえますならば、先ほどの沿革でも指摘申し上げましたように、陸軍の場合の年金受給者というのは、戦災を受けた方々に限られるわけでございまして、その限りにおいては、海軍関係の今論議されている方々、つまり戦傷病者戦没者遺族等援護法適用を受けない方々までは考慮していないという事情もございます。こういった点から、直ちに陸軍並みにすることがいいかどうかという点については、陸軍並みと申しますか、無期限の、あるいは有期年金にすることがいいかどうかということは、今後さらに検討しなければならぬところであろうと思います。  それから、第二点といたしまして、戦災によって死亡したというような場合でございますと、先ほどの遺家族援護法の、戦没者等援護法改正によりまして、五年の有期年金がついておるわけでございます。しかし、これはまた陸軍戦災年金制度よりは、期限が限られておる点において不利である、この点は御指摘のとおりでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、一方では、海軍の側については、その支給範囲が広がったという点もございましたので、そこらのところも総合勘案して、今後さらに慎重検討していかなければならない。いろいろ制度が、今私の非常にまずい説明でおわかりにくかったかと思いますが、錯綜いたしておりますので、その間の総合調整をどのようにはかっていくかということは非常にむずかしかった。それがまだ今日までなかなか手がつけられなかった理由でございますが、今後においても、さらに慎重に検討していきたいと考える次第でございます。
  28. 徳永正利

    徳永正利君 この問題は今ごろ始まった問題ではないので、慎重に御検討を何年おやりになるか知りませんが、慎重に御検討なさることはけっこうですけれども、ひとつ前向きの検討をやっていただきたい。給与課長からはいろいろ御説明がありましたが、一応御説明の点についてはよくわかりますけれども、実際支給される立場にある人たちから見れば、何としても納得がいかないわけです。陸軍海軍の場合になぜそんなに違うんだろうかということは、これは何と説明しても了承のできない問題でございますから、まあお急ぎのようですから、これ以上は申し上げませんが、慎重御検討をいただくのはけっこうですけれども、早い期間に結論をひとつ出してもらいたい。毎年、去年の委員会においても私はお尋ねしたのです。慎重に検討しようということであったのです。その後どういうふうな検討をされたのか、あるいは不均衡を認めておられるのかおられないのか、重ねてお尋ねしたいけれども、お急ぎのようですから、どうか早い期間に検討していただいて、私どもはこれは明らかに不均衡であるというふうに考えております。どうかそういう点において、前向きの検討を早急の間に進めていただきたいとお願いしておきます。
  29. 平井廸郎

    政府委員平井廸郎君) ただいま先生御指摘のとおり、この問題の検討に非常に手間どっておることは、申しわけないことであると思っております。御指摘の点もございましたので、法律案改正等に関連する問題でございますかり、早急にと申しても、短時日の間にできる問題ではないかもしれませんが、今年度中くらいには何らかの結論を出すようにしたい、このように考えております。
  30. 徳永正利

    徳永正利君 今年度中に間に合うようにやって下さい。
  31. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 主計局に御質疑ありませんか、主計局から見えておりますが……。
  32. 徳永正利

    徳永正利君 きょう大臣がお見えになりませんし、総務長官も副長官もお見えになっておらないようですから、事務的な点で答えられる範囲でお答えを願いたいと思います。  これは援護法関係ですけれども、恩給局長よく聞いておいていただきたい。いずれにしても、両方にまたがった、関連した事項ばかりでございますから、恩給局長にとぎおり御所見も途中で承りますから、そのつもりでよく聞いていただきたいと思います。  まず第一に、これは大臣お答え願いたいと思っておりましたけれども、今度の戦争で、遺族あるいは傷病者、あるいは未帰還者、こういう戦争の犠牲者の援護について、まあ二十七年から順次改善されて今日に至っておるわけでございます。まだ援護の対象から多くの人が漏れておる。あるいは援護が不十分であると思われるものもあるわけです。このような戦争犠牲者に対して、国に一体どういうふうな理念に基づいて政策を進めていく考えかということを大臣からお答え願いたいと思ったのですが、まず大臣の意をくんで仕事をしていらっしゃる援護局長の御所見を承りたい。
  33. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 非常に高邁なお立場に立ってお尋ねで、私から十分答えられますかどうか、私ども考えておりますことを率直に申し上げますならば、今次の大戦によりまするところの戦争犠牲者というものの範囲は、まことに広いもの、また、深刻なものがあると考えておるのでございます。従前御存じのように、国が雇用主としての立場において国家補償をするという恩給のほかに援護法が制定されましたゆえんも、やはりただいまお尋ねのような、従前の恩給では網羅できないという点が痛感されたためと思うのでございます。援護法には、御承知のように、第一条に、国家補償の精神に基づき援護するという規定が立法の趣旨として強調されておるところでございます。したがいまして、今次の大戦によりまする犠牲者につきましては、国は手厚い援護を行なう当然の責務を持っておるのである、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、これまでたびたび法の改正を行ないまして、援護の推進をはかってきたところでございますけれども、ただいま御指摘のように、なお援護の手が漏れておるというような方々も確かにあるのではないかというふうに考えております。また、その程度におきましても、あるいは均衡の点等につきましても、いろいろ御論議があるところでございまして、こういう諸般の問題に今後真剣に取り組みまして、援護の拡充、適切な施策の充実といったような点を誠意をもってやらなければならない、そういう見地に立って行政を進めていく気持でございます。そういう気持でございますので、国会の皆様方におかれましても、私どもの至らない点はおしかりをいただき、かつ、御協力をいただきますよう、この機会を借りましてお願いをしたい気持でございます。
  34. 徳永正利

    徳永正利君 そういった方たちを今現実にそういうふうな格好へ追い込んでいるということは、これは国の責任なんです。国は責任を持ってやらなければならぬと思うのですが、今までの改正でいろんな改善が重ねられましたけれども、どうも積極性がない、議員提案というような格好が多いわけなんです。もう少し政府はその点に考えをいたされて今後推進をはかっていただきたいと思うのです。  次に、いくさが終わってからもう十七年になるのですが、まだたくさんのいわゆる未帰還者と称する人がおる。こういう実情は一体どうなっておるか、御説明を願います。
  35. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) お答え申し上げます。いささか古いので恐縮でございますが、昨年十二月一日現在で厚生省といたしまして氏名を把握しておりまする未帰還者、つまり留守家族援護法第二条に書いてある法律上の意味の未帰還者の状況でございますがその総数は一万七千六百余人でございます。これを方面別に見まするというと、樺太を含めましたソ連地域が二千五百人、中国が一万三千六百人、北鮮が九百人、その他の地域、これは主として南方各地でございますが、六百人でございます。こうした未帰還者の方々が今日どれだけ生存しておるかということは、おそらくは当該国それぞれの国におきましても把握がむずかしいという現状に立ち至っておるのではないかと推察されるわけでございます。厚生省といたしまして多年未帰還者の調査を続けました結果の資料に基づきますというと、こうした数の未帰還者のうち、現に生存しておると一応推定されます方は六千八百人でございます。これを先ほど申しました方面別に振り分けいたしますと、ソ連地域が約七百人、中国が約六千人、北鮮が百五十人、まあこうした数の同胞が生存しておるのではないかと推察されるのでございます。したがいまして、これ以外の未帰還者の大部分は、諸般の状況から見ますというと、すでに不幸にして死亡しておられるのではないか、こういうふうに推定される現状でございます。
  36. 徳永正利

    徳永正利君 政務次官がお見えになりましたからお尋ねしますが、今いろいろな外地において、まだ帰られない、あるいはなくなられた方も多数あるかと思いますが、いわゆる未帰還者という方々一万七千人も戦争のまだ跡始末がつかぬ現状にあるわけであります。政府においては、厚生省においては、こういう未帰還者の処理についてどういうふうな対策を持っておるか、どういうふうなお考えか、その点をお伺いいたします。
  37. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) ただいま御指摘になりましたように、現在一万七千余人の未帰還者がありまして、そのうち約二割程度の方が生存していると推察されるような実情にあるのでありまして、その生存の事実、そのどんな姿であるかという事柄、あるいは内地に帰りたいという意思があるかどうか、これをまず確認いたしまして、それで帰国の促進をはかるということをまず考えているのであります。一方、本人の意思によりまして、外地に残りたいと希望する者につきましては、大体本人の意思を尊重し、政府の手続を進めていきたいと、こんなふうに大体考えておる次第でございます。
  38. 徳永正利

    徳永正利君 新聞なんかの報道によりますと、中共地区なんかで、日本人で帰りたいというような希望を持っている者が相当数あると聞いております。その実情を厚生省は把握しておられるかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  39. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 仰せのように、中国におきましては、先ほど申しましたような未帰還者及び生存推定状況でございますが、私の記憶に間違いがなければ、約三百人ぐらい故国に帰りたいという望郷の念にかられたような手紙を、留守家族なり、あるいは日本赤十字社によこされております。私どももその数通を見せていただいたことがございます。そういう帰国希望者がありながら、なぜ帰れないのであろうかというような点について、非常に心を痛めておるところでございます。この点につきましては、日本赤十字社を通じまして、中国の紅十字会に、なるべく早期に本人の願意がかなえられるように助力してほしいという御依頼をしておるのでございます。また、中国紅十字会におきましても、好意的な御返答はせられておるのでございますけれども、現実はなかなかはかばかしく処理されておらないというのが現状でございます。こういう事情を私ども推察してみますると、問題が二つあるのではないかと思われます。  第一は、中国におきまする日本に帰るための出境許可手続というのが要るのでございますが、これがなかなかおりないというふうにうかがえます。  それから第二は、ああいう非常に広大な、汽車に乗りましてもずいぶん経費のかかる国でございますので、帰国のための経費がなかなか本人が負担できないと、いったような面があるようにうかがえるのでございます。この点につきましては、本年の四月から、日本赤十字社におきまして、そういう方々の経費、つまり本人の居住しておられる地点から香港まで出ますところの汽車賃を日赤が負担するという経費を組んでいただくことになりまして、これで相当問題が解決するのではないかと思います。香港から日本への経費は今までどおり政府が負担いたしておりますし、また、香港に船待ちのために滞在する経費も国が負担しておりますから、香港まで出ればそうした問題は解決するのではないかと思います。  それから、第三には、これも推測が相当入るのでございますが、帰国を希望せられる方々の大部分は婦人の方であろうと思われます。そういう方々は中国の人と結婚をせられた、そういう点から、本人は帰りたいという一部のお気持がありましても、家庭生活の上で、直ちにそれが実現しにくいといったような事情もあろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、現地の事情が許しますならば、すみやかに本人に帰国の機会を与えることは、人道上の問題として大事なことでございますので、今後日本赤十字社なり、あるいはいわゆる引揚三団体と称します他の二団体の方々ともよく緊密に連絡をとりまして、留守家族に寄せられました手紙を中心といたしまして、御本人の希望が達成せられるように、今後とも政府として側面から力をいたさなければならんと、こういうふうに考えておる次第であります。
  40. 徳永正利

    徳永正利君 先ほどのお話にもありましたように、一万七千のうち、半分ぐらいまだ生きておられるだろうという推定なんですが、たまたま新聞でちらほらしたのが中国関係だけでございます。ほかにもまだたくさんあるだろうと思います。こちらではもう戦争は終わったようなつもりでおりますけれども、残っておられる八千人なり、七千人なりという人は深刻なものだろうと思う。ですから、中共地区ばかりでなくて、ほかの地域に対しても、一段と積極的に帰りたい人はすみやかに帰るような対策を講じられるように、また、情報を、取られるようにお願いをいたしておきたいと思います。  それから、なくなられた方が半分ぐらいある。これがいわゆる前の特別措置法の戦時死亡宣言の申し立て云々の中に入ってくるわけでございます。現在の戦時死亡宣言の申し立ての進捗状況はどういうふうになっておりますか。
  41. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 戦時死亡宣告は、昭和三十四年の四月に、未帰還者に関する特別措置法という法律に基づきまして設けられた制度であることは申すまでもございません。この法律が施行されまして以来、本年の一月末までに戦時死亡宣告の家庭裁判所におきまする審判が確定いたしましたものが五千九百九十六件でございます。次に、審判の申し立て中でございますが、まだ家庭裁判所の審判が確定しないもの、これが三千九百三十五件でございます。次に、留守家族の同意を得まして審判の申し立てを準備中のものが千五百四十件でございます。このほかに、最近におきましては、戦時死亡宣告の趣旨が、留守家族遺族方々に非常によく理解されておると思われるのでございます。一部の面におきまして、十分の理解が得られなかった面もあったようでございますが、最近私どもそういう人々とよく話し合いをいたしまして、厚生省がこういう制度を設けました趣旨をよくお話いたしますと、非常によくわかったということで、今後早急に自分たちもこの申し立てに応じたいというようなお気持を端的にお述べになっておりますので、今申しました数字のほかに、今後相当数急速にこの申し立てに御同意せられるようなことになるのではないか、そういうふうに考えられる状況でございます。
  42. 徳永正利

    徳永正利君 内容は大体わかりましたが、戦時死亡宣言を受けられたあとの問題が残っていると思うんです。これはもうその人々の心情をくんでみますると、いつか帰って来るのじゃないだろうか、もう、とうになくなられたという昔の死亡通告をもらった方でも、ソ連でなくなったといえば、舞鶴に引揚船が毎回入るたびに出てみて、ひょっとするとあの中にまじってうちのむすこが帰りゃせぬだろうか、うちの亭主が帰りゃせぬだろうかと思って見に行く人がたくさんあったことは御存じのとおりです。今一片の戦時死亡宣言によって、お前はなくなったんだ、自分もそうあきらめざるを得ぬというところに追い込まれたわけなんですけれども、そのあとに、政府としては、当時の国家権力によってこれを召集していくさに出したんですから、なお私はどういう状況でなくなったか、どこでなくなられたかということは、引き続いて私は究明していただく責任があるのじゃないか、この点について厚生次官どういうふうにお考えですか。
  43. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) お説ごもっともでございます。終戦後相当の時間はたっておるわけでありますけれども、やはりなくなられた遺家族方々の期待、やむにやまれぬの人情からくるそれはただいまお説のとおりだと思うのであります。この点につきましては、御高見に沿うような方向へ厚生省としては努力を傾けたいと思っております。
  44. 徳永正利

    徳永正利君 先ほど中共地区のいわゆる生存者のお話を申し上げたんですが、遺骨をまだ収集できていない地域というのは、どこどこ残っているんですか。
  45. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 今次の大戦は、御承知のように、アジア全域に広がる非常に広範な戦いでございました。しかも負けいくさでございますので、遺骨の収集が十分にできかねた地区は、アジア各地全域といってもよろしいと思うのでございます。そういう状況でございましたので、政府としては、御案内のように、数年前から南方八島を初め、東南アジア各地、あるいはアラスカ、アリューシャン群島といったような方面に、それぞれ遺族の代表の方々とともに、政府職員、宗教家の代表の方々等を派遣いたしまして、各地域ごとに遺骨収集を行なったのでございますが、もちろん大戦のあと歳月が相当たっておりますので、十分的確な遺骨の収集は、各地とも、ありていに申しまして、できていないわけでございます。それで、政府といたしましては、各地とも、主要な戦場におもむきまして、まだジャングルの中に遺骨が放置されておるような不幸な状態をなくしたいということで、航海練習船の生徒等の応援も得まして、でき得る限りの収骨はいたしたのでございます。そのうち、氏名の判明いたしますものは全部持って帰り、氏名のわからないものにつきましては、その一部を象徴的に持って帰り、一部現地に手厚く仮埋葬して墓標を立ててきたという状況でございます。そういう政府の行ないまする遺骨収集船が、あるいは飛行機で行った所もございますが、そういう収集団が派遣されなかったのは、結局インドネシア地区がございます。これは政府のほうでいろいろ計画をいたしましたところ、現地の事情が悪化いたしまして、それができにくかったということで、インドネシアの大部分が残っておるということが言えると思います。  次に、中国でございますが、中国大陸につきましては、いわば終戦の直前までは、いわゆる進撃をしたほうの戦争でございましたので、大体遺骨はほとんど全部戦友が持ち帰った状況でございます。ただ、満州地区につきましては、約二十万の軍民が、ソ満国境において、あるいは新京等の都市を中心といたしまして、満州各地で非常な混乱に陥りましてそのような大きな犠牲者を出したのでございますが、これらの方々の遺骨の状況、あるいは埋葬の状況というものは、今日不幸にしてわからないという状況でございます。なお、このほか全地域を通じまして、いわゆる法務関係死亡者、いわゆる戦犯の死亡者につきましては、そういう方々の墓地を現地に置くことが、諸般の事情から見て、好ましくないというような事情もございますので、政府としては、各地域を通じまして、戦犯の遺骨は日本に持ち帰るようにしております。そのうち、まだそのことが十分にできません地域が、やはりインドネシアの一部と、それから中国のごく一部、こういう状況でございます。
  46. 徳永正利

    徳永正利君 ソ連地区においても、慰霊参拝が今年も行なわれれば、二回にわたって、行なわれるわけでございますが、中共地区といったって、こういう問題は政治を乗り越えて、私は、やろうと思えばやれぬことはないと思う。ですから、今後とも、中共、インドネシア地区においてもひとつ促進していただきたいと思います。  それから、援護法並びに恩給法に関連して、こういったような裁定の事務、あるいはその改定ですね、改定が非常におくれておる。改定の請求を出すと、二カ月たってもまだこない。二カ月たってくるのはいいほうで、はなはだしきは半年もかかるという声があるんです。この裁定あるいは改定がどのようになっておるか、その状況を恩給局長と援護局長からお伺いしたい。
  47. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 恩給の、特に軍人恩給の関係の裁定事務がどのように流れておるかということを申し上げたいと思います。  御承知のとおり、軍人恩給の中での大宗を占めますものが公務扶助料でございますが、これの初めての裁定というものは、大体もう終息いたしまして、初めて請求するというものは月千件に満たない程度に減少して参りました。これとても、厚生省のほうで遺族年金が裁定になったということの証明がありますれば、自動的に公務扶助料に転化するというような法制の仕組みになっておりますので、受け付けましてから少なくとも一カ月以内くらいにはさばけておる。また、転給と申しますのは、すでに裁定を受けて証書をもらっておる方、その方がなくなるとかいうようなことで、その次の方に転給になる、こういうような場合、あるいはその人の扶養家族が減少になるということで金額が変わる、こういうよう場合に書きかえをするというようなことがございます。この数は相当ございまするけれども、これとても、やはり一カ月以内で大体片づいておる、こういうことでございます。ただ、一番むずかしいのは、傷病恩給のように、公務の認定が非常に困難である。すなわち、それを立証する資料が未整備のために、その認定が困難であるというようなものにつきましては、その立証資料を整備するために、御本人なり、あるいは経由庁である県の世話課、あるいは厚生省の援護局というところを通じて書類の往復が行なわれるというような関係で、長引く場合もございます。こういうようなものにつきましては、私どものほうへ参りましての段階でも、三、四カ月から六カ月くらいかかるというのもございます。その前の段階といたしまして、世話課から厚生省の援護局においても審査をなされるわけで、この段階で、いろいろな本人のための資料を整備されるという仕事もございますので、相当ひまのかかる仕事でございます。しかしながら、これらの問題につきましても、いろいろと人員を整備いたしまして、極力早くやるように努力しておるわけでございます。
  48. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 次に、援護法関係の点をお答え申し上げます。  先生御存じのように、この遺族援護法は、これまで実に二百三十万件余の膨大な件数を受け付け、そのうら二百三十万件の裁定を終了いたしてきておるわけでございます。実に膨大な案件を処理してきたわけでございますが、しかし、現在御指摘のように、局といたしましては、なお八千五百三十六件の未処理の案件を抱いておるわけでございます。もっとも、この未処理の件数、八千五百件は、前年に比べますというと、まあ半分になっておるということから見ましても、非常に努力しておるという跡はお認めいただけるのではないかと思うのでございます。しかしながら、御遺族にとりましては、当該一件がそのすべてでございます。したがいまして、このような未処理件数をかかえるということは、遺族のお立場を考えまして、私どもまことに相済まないことと考えておる次第でございまして、これにつきましての裁定の促進を、局員一同、非常に大きな任務として努力して今後もいきたいと考えておるわけでございます。ただ、この機会にいささか釈明めいて恐縮でございますけれども、私もその典型的なものはよく見るのでございますけれども、なぜおくれておるかという理由一つに、本人がお出しになったものだけではとうてい受理できない、あるいは裁定の見込みがないといったようなものも相当あるわけでございます。こういう末期でございますので、それぞれがまたむずかしいケースが多い。一般的にいってそうでございますが、しかしながら、やはり私どもとしては、何とか御遺族の申し立てがかなえられるように、たとえば準軍属の場合に例をとりますというと、本人がどこにおったという軍需工場は現在ございませんし、それを継承した会社というものも的確につかめないというような現状がございます。それから、ただいま恩給局長が申されたように、死因の証明等につきましても、どうかと思うようなものもございます。あるいは自分が属しておった所属部隊がどうしても間違いだと思うので、私どものほうのカードからはどうしても出てこないというのがございます。しかしながら、そういう本人の申し立てだけでは何ともならないというようなものにつきましても、何とか調査の壁を突き破って、御遺族のお気持が達成できる道はないかという善意でもって握っておるというのも実は相当たくさんあるのでございます。そういう事情ではございますが、総じて、先ほど申し上げましたように、一日も早く事務を裁定するということは非常に大事なことでございますので、大臣、政務次官からも常にその御指摘を受けておるところでございますので、事務当局といたしましては、十分ただいまの御趣旨に沿った努力を今後も重ねたいというふうに考える次第でございます。
  49. 徳永正利

    徳永正利君 援護局長は何か自画自賛して、ほめてくれてもいいのじゃないかというような口ぶりですけれども、これは決してほめられたことじゃないと思うのです。で、裁定事務が非常にむずかしいということも、立証の問題等がむずかしいということもよく承知しているのですけれども、これは恩給局長も援護局長も、どうも私どもの目から見ると、何か法律で金縛りにして、出すまい出すまいといったような感じを非常に受けるのです。少しでも何か法律で、こうすればここがだめだから——もういくさか終わって十七年たっている。しかも、いくさが終わって七年間というものは、もう何もなかった空白な期間があるのです。その間に、将来恩給でももらおうと思えば、いろいろなものを取っておくでしょう、きっと。ところが、その七年間のうちに、もういろいろな事情で、なくなったり、立証の材料をそろえるといっても、なかなかそろわないのです。ですから、恩給局においても援護局においても、まあ立証のいろいろな資料を集めるのは、申請者、遺族の個々に責任を負わしている。そういうようなこと自体おかしいと思うのですけれども、厚生省、恩給局におかれましては、十分何とかこれで救ってやろうというつもりで今後とも裁定に当たられるようにお願いしておきます。  それから、不服の申し立ての裁定が非常におくれているということを聞くのですが、今現在何件くらいのものがたまっており、そうしていつごろになったらこの不服申し立ての処理がつく見込みか、その点をお伺いいたします。
  50. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 不服の申し立て状況でございますが、本年の二月一日現在の数字を申しますと、受付の件数が一万二千二百八十二件でございます。このうち、処理を終えましたものは九千百六十三件、未処理のものは、したがって三千百二十でございます。言いわけはやめますが、不服の申し立ては、先ほど申しました初度裁定の場合に比べまして、複雑難解中の難解のものがほとんど全部といっていいと思います。そういう事情で、ただいま申しましたように、三千余件の未処理があるわけでございますが、この問題につきましても、諮問機関でございます援護審査会の御協力を得まして、事務の簡素化をはかる、あるいは私どものほうの局内に専門の特別の不服関係だけを処理する班を最近作りましたなど、部内の事務態勢の整備、強化をいたしまして、案件の急速な処理をこの点についてもやりたいと考えております。これも昨年の同期に比べまするというと、未処理の処理促進の度合いは倍加しておる、数字の上からも倍以上になっておるような現状でございますが、なお努力いたしまして、おそらく今後も若干は出てくると思いますけれども、ともかくこの三千百二十件という、この事態については、本年度中には絶対に処理してしまうという固い決意を持って臨みたいと思います。  それから、先ほどのおしかりでございますが、お言葉を返すようでございますが、厚生省としては、何とか救ってあげたい、何とかならないかという善意をもってやりたいという基本の気持でございまして、何とかはねたいというような気持は絶対持っておりませんので、これは御遺族方々にもよく理解していただきたいと思うので、あえて弁明さしていただきたいと思います。
  51. 徳永正利

    徳永正利君 まあ法律でございますから、そう野放しに簡単に右から左にぽっぽとお出しになっても困るのですたが、ただ、底に流れるものが、何とか救ってやろう、いろいろな実情を勘案して救ってやるというあたたかい気持があれば、まだまだ救えるのじゃないかというものがたくさんあると思うのです。たとえばマラリヤか何かで帰って来た、マラリヤを長い間わずらって帰って来たというところまではいいんですけれども、その後の病気が、あるいはかぜをひいてなくなったというような診断、肺炎でなくなった、それがマラリヤに原因しているということは、その当時みてもらった医者であるとか、あるいは遺族の立場に立って見れば、もうわかるはずなんです。ところが、一片の書類となって厚生省に回ってくると、援護審査会なるものも、学者の方々がおられて、これはどうも関連がないらしいというような判断が得てありがちなのです。特にマラリヤ関係の余病というものが私は現在多いのじゃないか、相談を受ける中でも、非常に多いわけですから、この点についてはさらにひとつ御留意を願って、先ほど援護局長の御答弁があったようなつもりで裁定していただきたいと思います。  それから、遺族給与金の年金化の問題でございます。これはすでに厚生大臣が、予算委員会だったか、あるいは内閣委員会だったか、忘れましたけれども、ひとつやるんだという決意を表明されたように伺っておりますが、あらためてひとつ、大臣がおられませんから、次官から、安心するような御答弁をいただきたいと思います。
  52. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) この大臣の答弁の内容はこうなっております。遺族給与金の年金化については、できるならばこの通常国会で御審議願いたいものと考えていたが、予算案作成の際に政府部内で話をした結果、今回は見送ることとした、こう灘尾大臣が言明いたしておるのであります。そこで、厚生省といたしましては、遺族の立場を尊重いたしまして、次の通常国会までには、ぜひとも努力して国会で御審議を願えるようにいたしたいと考えております。
  53. 徳永正利

    徳永正利君 次のおそらく予算要求には具体策が出てくるだろうと思いますが、その際に、年金化ばかりではなくて、この徴用者あるいは学徒、そういう方々の戦時災害による者に限ってこれを出しておるのです。で、そういうものもあわせて撤廃していただきたい。この点についてはどういうふうにお考えになりましょうか。
  54. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) この点につきましては、ただいまの御一局説の点を十分考えまして、遺族の心労におこたえできるよう、十分検討いたしたいと考えております。
  55. 徳永正利

    徳永正利君 十分検討していただくのはけっこうでございますけれども、これは成就してもらいたい。御高説を拝聴していただいたのですから、検討検討で逃げられないように、成就するように処置するのだ、厚生省は責任を持って処置する。厚生省だけやったっていろいろな問題がありますから、むずかしかろうということは承知しておりますけれども、とにかく厚生省としては踏み切ってやるという決意をお伺いしたい、こういうことなんです。
  56. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) ただいまの答弁は不十分であったようでありますが、御期待に沿うよう、厚生省として十分努力いたすつもりであります。
  57. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  58. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記を始めて。
  59. 徳永正利

    徳永正利君 佐藤総務副長官、あなたそこにおいでになって、これは人ごとのようにお聞きになったらたいへんなことでございますから。この審議を通じて、詰めていくところはあなたのところに落ちる。だから、その間の状況をよくお聞き願いたいと思います。未帰環者の問題にしてもしかり、給与金の問題にしてもしかり、みんなあなたのところに関連のあるものばかりなんです。ですから、よく聞いておいていただきたいと思います。お退屈のようですから、あなたにもそろそろお答え願いたいと思いますが、給与金の問題を片づけておきたいと思います。父母の要件が、遺族年金支給を受ける軍人軍属の父母の要件よりもきつくなっている。この点も遺族年金の場合のような緩和の策をとっていただきたい。これもひとつ来年度は踏み切って、厚生省としてはやりますというようなお答えをいただきたいと思います。
  60. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) この問題につきましても、厚生省として十分考えておりますので、御期待に沿うよう努力をいたしたいと思います。
  61. 徳永正利

    徳永正利君 御期待に沿うよう、ぜひ期待に沿うようにやっていただくようにお願いいたします。  それから、次に、学徒なんかの傷病者がおります。これは爆弾に当たったり、あるいは機銃掃射にあったり、いろいろのいまだ非常な大けがをして、そうして苦労しているこういう方々に対する傷害年金が、普通の場合の半額なんですね、これは。で、こういう人を何とかもう少し、いわゆる傷害年金の額等についても考慮する余地があるのじゃないかというふうに考えるわけですが、政務次官のお考えを伺いたいと思います。
  62. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) お答えいたします。徴用工等の準軍属は、国との身分関係において軍人軍属とは異なっているので、これに軍人軍属と全く同様な処遇をするということは、他の一般戦争犠牲者との均衡上、適当でないという臨時恩給等調査会の報告にかんがみ、準軍属に対する傷害年金の額を、軍人軍属のそれと同額ないし大幅な引き上げを行なうことは相当問題であると考えているが、今後慎重に検討いたしたいのでありますと、以上のような趣旨大臣は述べておるのでありまするし、事務当局としては、大臣のこの発言の線に沿いまして、この点十分研究いたしたいと考えております。
  63. 徳永正利

    徳永正利君 たまたま私の質問が想定質問にひっかかったようで、原稿をお読みになったのですが、これはこの間のいわゆる国民年金のときの審議の状況を見ても、厚生年金のほうでこうなっているから国民年金をこうしたとか、いろいろな関連でみんな逃げられているわけなんです。これでは今度給与金が半額なんだから、これも半額なんだというようなものの考え方に立っておられると思うのです。だけれども、給与金が半額でこれが半額にせざるを得ないというならば、給与金を上げればいい。そうすると、今度は特例扶助料は恩給局のほうにひっかかってくる。それが障害なら、それをお上げになればいい。ただ、今現実がどうなっているのだ、だれの責任においてこうなっているのだということをもう少し認識して、厚生省独自のひとつ決意によって、お考えなり、あるいは措置を講じていただきたい、こういうわけでございます。で、るる申し上げぬでもわかると思いますけれども、この年金額、傷害年金額、給与金の額等についても、今後十分前向きの姿勢の検討をして、しかも、その措置ができるようにひとつ御努力をお願いしておきます。  それから、内閣委員会のこの前の恩給の一部改正のときに、附帯決議がたしかついておったと思います。この援護法年金にしましても、あるいは公務扶助料にしましても、だれもこれが適正額であると言ってくれる人がおらないわけなんです。公務員であれば人事院というものがあります。いろいろな機関があって、これが適当であろうというような、いわゆる勧告がなされるわけでございます。こういうものについては、何ら勧告も何もないわけなんです。研究する機関もなければ、何もないわけです。ですから、みんな集まってわっしょわっしょ騒いで、そうしてこの増額なりをやるという結果に相なっておるわけです。まあ騒げるうちはいいですけれども遺族もだんだん年をとって、もうなかなかそう騒げぬだろうと思います。で、そんなことをしなくても、ちゃんと年金額においても公務扶助料の額においても、適当なものを適当に政府自体が責任において考えるというような機関をお作りなさいというのがこの前の附帯決議であったと思いますが、総務副長宮は、その後この附帯決議についてどういうふうな研究をされ、措置をされたか、また、お考えであるかをお伺いしたいと思います。
  64. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) ただいま徳永委員からお話がございました問題につきましては、内閣委員会で確かに附帯決議がございます。お話のとおり、公務員の給与につきましては人事院という機関がございまして、いろいろ民間給与との比較におきまして公務員の給与を検討いたしまして、毎年勧告するようになっておりますが、恩給につきましては、現在そういう機関がないことはお話のとおりでございます。この問題につきましても、政府部内においていろいろ検討はしておりますが、現在のところ、まだ人事院のような機関を作って、そこで検討するような機関を設置するというような結論になっておりません。現在の建前といたしましては、現在あります恩給局その他の諸機関を鞭撻いたしまして、今後ともこういう問題につきまして、十分検討していきたいというふうに考えております。
  65. 徳永正利

    徳永正利君 今お答えがございましたけれども、実際は、まだその附帯決議について、真剣に附帯決議と取っ組んで、どうしたらいいかというような私は衆知を集めた詰め方というものはなされてないのが実情だろうと思うのです。ですから、この点については、今後慎重に検討いたしますということでありますけれども、早急にこれをおやりいただきたいと思います。なお、そういう場合においては、何か今までの増額の点を見てみましても、予算をまず取っておいて、つかみ金で分けるというような格好の感じがするわけなんです。ですから、もう少し合理的に、たとえばイタリーなんかでやっているように、公務員のベースに見合ったスライド制をとるとか、あるいはどういう点が妥当であるか、どういう増額が妥当であるかというようなことは、私は真剣に政府で御検討いただければ、何らかの結論が出るのではないかと思うわけでございます。現にそういう例は各国にもあることでございます。この点につきましては、なお一段と慎重に御検討でなく、早急に御検討お願いしたいと思います。  それから、軍人あるいは準軍属の死亡に関しまして、いわゆる恩給の特例法ですが、この特例扶助料というのは、在職期間の経過後一年、結核、精神病は三年ですが、これはたしか議員立法だと思います。議員立法の趣旨は、この程度でいけばだいたいいいんじゃないかというような当時の考えであったわけでございます。今日になってみると、実際にやってみたけれども、これではたいへんいろいろな問題にぶつかっている。この制限を撤廃あるいは期間の延長をしたらどうかということであるわけなんですが、総務副長官はこの点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  66. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) ただいまの御質問でございますが、一年、三年、これを撤廃または延長するという問題につきましても、これは厚生省の援護の関係等もございますし、いろいろ検討していきたいと思っております。まだ現在のところは結論が出ておりませんが、これから検討していきたいと思っております。
  67. 徳永正利

    徳永正利君 この問題は、総務副長官は、昨年の暮れからを通じて、よくお存じだろうと思う。これは援護法の問題で、厚生省の問題であるからというお話ですが、これは事実中身は恩組局の問題がほとんど大半なんです。おそらく九五%までは恩給にはね返ってくる問題だと思う。で、この前も厚生省では、これは一応やろうじゃないかというので一応原案を持っておったようです。しかも、私どもも、みんな党としましても、これはやらなければいけないというので、大蔵省との折衝をやって失敗した問題です。ついに去一年はできなかった問題です。ところが、当時においてもそういうふうに、これは厚生省のおもな問題だというようなお考えのようですけれども、これはいささか私は違っているのではないか。これはいわばあなたのほうで取り上げて、そうして御研究いただかなければならぬ、推進していただかなければならぬ問題なんです。当時は恩給局長は、厚生省がやってくれれば、あとは私のほうはついていきますよというような態度なんです。これではいかぬと思う。まずそこが、最初私が申し上げましたような、何とか出すまいとするような考えに立っているのではないかとすら疑わざるを得ないような格好になっている。今後厚生省と恩給局というのは、こういう援護法恩給法というのと密接な関係があるのですから、これは兄弟法案です。どうか密接に御連絡いただいて、厚生省がまあやるならやってみろ、ことしはだめだろうというような態度でなくて、両方がよく詰めていただいて、少しでもよりよいものになるようなひとつ考えで進んでいただきたいと思います。重ねて総務副長官の決意をお伺いします。
  68. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) 私お答えいたしましたのは、厚生省の問題だからということでお答えをしたわけではありません。厚生省の援護関係とも関連がございますのでというお話をいたしましたので、われわれといたしまして、厚生省の御意見も承りまして、十分連絡いたしまして今後改善いたしたいと思います。
  69. 徳永正利

    徳永正利君 厚生省は、この点については昨年もう踏み切っているわけです。ことしはブレーキをかけないように、あなたのほうも一緒に歯車の中に飛び込んで推進していただきたいと思います。さらに今度の改正によりまして、六十才未満の、不具、廃疾でない父母に対しては、六十才未満であったら、かたわでなければいかんという制限規定があるわけですが、五万一千円の遺族年金支給することを規定した理由をひとつ援護局長からお伺いしたい。
  70. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 確かに御指摘のような問題があろうと思うのでございますが、今回のベース・アップにつきましては、いろいろ考えたのでございますけれども、御案内のように、六十才以上である方々、それから不具、廃疾であって生活の資を得ることができない、こういう人々に比べまして、ただいま御指摘のような方々は、まあどちらかといいますれば、援護の緊急度合いといいますか、そういう必要性といいますか、そういう面がやや弱いのではないか、一応通念的に考えられるということでございますが、より端的に申し上げれば、いろいろのお考えが成り立つと思うのでございますが、御承知のように、昭和三十三年のベース・アップの際も、今回と全く同じような方式をとりましたので、今回の改正にあたりましても、前回の方式を踏襲させていただいた、いろいろ議論はあろうかと思いますが、端的に申せばそういうことでございます。
  71. 徳永正利

    徳永正利君 この点についても十分御検討いただきたいと思います。  それから、そればかりではなく、今度の増額は、六十才以下の方については、全然何も増額になっていないというような事情もございます。これは、はなはだどうもその御当人の身になってみるというと、いかがなものであろうかと思いますが、もうこの改正にどうこういうわけには参りませんけれども、今後ともこういうようなことのないようなひとつ含みをお願いしておきます。  それから、さらに、入営とかあるいは応召の途中で、赤紙をもらって、万歳に送られて、当時国からであったか鉄道省からであったかわかりませんけれども、五割の割引券をもらって、そうして入営しよう。行く途中で船が沈んだり、あるいは自分の責任に帰することができない事由でなくなった、機銃掃射を受ける場合もございましょうし、当時でございますから。そういうものに対する処遇というものがいったいどうなっているのか、こういうものにも私は何らかの処遇をすべきではないかと思うのですが、どうでございますか。
  72. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 確かに数は非常に少のうございまけれども、そういう方々があったと思います。現に台湾から内地の部隊に応召する、あるいは逆のような場合がございました。そういう場合に、内外連絡船が撃沈されたといったような例もございます。  そういう方々につきましては、国民の通念上からも、ただいま御指摘のように、何もしないということは、情理上も忍びがたいところでございますので、援護法の実際の運用におきましては、こうした方々につきましては、戦闘参加者として、準軍属としての処遇をいたしております。それ以上のことは、何と申しましても、本人がまだ軍人という身分を持っておりませんので、いわゆる軍人としての在職上の公務死亡ということには見られませんので、援護法の許し得る限り、先ほど申しましたような、善意の運用でもって戦闘参加者としてのお取り扱いを現実にいたしております。
  73. 徳永正利

    徳永正利君 これは復員の途中においてのことも言えると思います。せっかく部隊から自分の家に帰る途中で船がひっくり返ったとか、東予丸事件というのがございましたが、そういうものについての処遇、あるいは取り扱いはどうなのか。
  74. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) お答え申し上げます。ただいま御指摘のような点につきましても、非常に気の毒な事情でございます。そういうことで、二十七年に、四条の二が援護法に設けられまして、「昭和二十年九月二日以後海外から帰還し復員後遅滞なく帰郷する場合に、その帰郷のための旅行中において、自己の責に帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかったときは、この法律適用については、軍人軍属が在職期間内に公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。」という規定が追加されましたことによりまして、ただいまのような御指摘の場合は全部救済されておるはずでございます。  ただ、この四条の二は、海外からの復員でございまして、国内におきまして復員したような方に若干問題があるのではないかと思うのでございますが、御案内のように、海外からの引き揚げは、復員は舞鶴とか佐世保とかというようなところにあがりまして、北海道の果てまでやはり帰郷しなければならないといったような特殊な事情があるのに反しまして、内地の部隊を復員したものにつきましては、ごく近回りの地域から、おおむね部隊の所在地と御本人のおうちとが非常に近距離であるということから、特に四条の二にこのような海外の場合だけを書いたものと思います。そういう事情でございますので、非常にお気の毒な事情にある人があるかどうか、私まだ不勉強でよくわかりませんが、現在の法制としては、そういう外地からの復員者だけにつきましては、ただいま申し上げましたような救済規定が設けられております。
  75. 徳永正利

    徳永正利君 海外から帰郷ということになると、帰郷というのは自分の家のことですか。それとも日本の本土にあがったということですか。どちらですか。
  76. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 帰郷という意味でございますが、単なる舞鶴といった援護局のございました地点ではなく、それぞれのおうちへ帰るまででございます。
  77. 徳永正利

    徳永正利君 東予丸の事件の中にもいろいろな問題があるのは、当時からおられる方はよく御存じだと思いますが、この点についても、あるいは法律を曲がった解釈はできないにしても、何とか救済の規定を考えるならば、あるいは法運用においてできるものならやるというようにお願いしたいと思います。  それから、これは総務副長官に御意見を伺いますが、昭和二十一年二月一日に恩給というものが停止されましたですね。それから二十八年七月三十一日に出てきた。それで、これはいろいろな法律の解釈で、いわゆる潜在的な権利があっただろうか、あるいはその間が眠っておったか死んでおったかという議論はたびたびされたところなんです。しかし、そのいずれにしましても、その間が空白であったことは事実なんです、七年間。そこで、いろいろな事情があったでしょうけれども自分の主人がなくなって再婚した。これは明らかに再婚には違いございませんけれども、恩給というものが将来浮かび上がる、あるいは援護法が制定されようとかというのは全然考えなかった以前の問題、その間に一ぺん再婚して解消したという、その間の再婚あるいは、離婚というものについては、恩給法は、あるいは援護法も同じでございますけれども適用せぬということになった。これはどうも私どもは納得がいかぬわけです。恩給が現にずっと引き続いておるものなら、そういうものは醇風良俗に反するし、法上からは許しがたいものでございますけれども、そういう全然空白の期間に、そういう時代に含まれたというものを除外しても、これは私は非常に納得がいかぬ点ですが、どうお考えになりますか。
  78. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 恩給法で、いわゆる遺族の失権、失格条件は、婚姻による失権というものがございます。したがいまして、遺族が再婚するということになりまするというと、その後その再婚が不縁になりまして、また再び未亡人になったと、こう仮定いたしましても、現在の法制の建前からいいますと、失権あるいは失格する、こういうことになっておるわけです。この立て方がいいかどうかという根本になるわけなんですが、この立て方というものは、諸外国の例からいいましてもいろいろあるわけなんで、あくまでやはり一ぺん再婚したならば失権するんだという方式をとっているのが英米あたりでもとっておる方式なんです。また再婚すると、それが何らかの正当な理由といいますか、特定の理由によって不縁になって再び未亡人になった、こういうふうな場合には年金が復活する、こういうふうな規定を設けておるところがフランスあたりにございます。婚姻を失権、失格の事由にしたということは、恩給の体系の中で、あるいは将来年金なり退職年金もそうでございますけれども、その遺族が、遺族としてのつまり新しい生活設計に入って、扶養する義務が、国家的に、あるいは共済組合というふうなものから、扶養するだけの必要がなくなったという意味をそこに着眼しての立法措置だと思うのですが、これをにわかにフランス式に変えるかどうかということに対しては、非常に問題があるわけです、今のお尋ねの点は、恩給が空白であった時代に起こった問題ならば目をつぶっていいじゃないかということに限定されておるようでございますけれども、この問題は、やはり制度全体の立て力の問題でございまして、たまたま空白期間だからいいという筋のものではないんじゃないか、こう思っております。
  79. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  80. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。
  81. 徳永正利

    徳永正利君 今、恩給局長は、フランスの例やらいろいろ出されましたけれども、それとこれとは話が違うのです。恩給法自体が、私はもう少し脱皮していいと思うんです。健保だってそうですよ。現実をどう処理するかというのが健保です。時代が変わって現実が変わっていけば、もちろんそういうような解釈とか、いろんなものは変わってしかるべきだと思うのです。今いろいろお話があったんですけれども、私は、これはなかなか理解できません。この点については、十分ひとつ御検討いただきたいと思います。全然死んでおった間のできごとなんです。これをこのままに放置するということは、私は何としても理解しがたいのでございます。  最後に、もう時間がございませんから、こまかい問題は残しまして、日本の国がこういうふうに安泰に伸びてきた、この陰には、先ほど援護局長が申しましたように、二百三十万人の命を積み重ねて今日きているわけなんです。こういう方々に対して、政府は、かつて新しい憲法を発布する前日に、新宿御苑で追悼式をおやりになりました。それ以後、まあ金さえあればという考えでもないと思いますけれども、精神的な面は何ら私は解決されていないと思うのです。で、あるいは戦場に死し、職域に殉じた方々、これは新しい国作りのいしずえだと思うのです。こういう人に対する慰霊の碑と申しますか、あるいは国民あげての追悼の誠をささげるような行事というようなものを私は政府として考えてしかるべきだと思うのです。今後そういうふうな方向に努力される決意があるかどうか。これは厚生政務次官と副長官、どちらからもお答えをいただきまして私はこの質問を終わりたいと思いますが、どうかひとつ誠意のある御答弁をいただきたいと思います。
  82. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) たいへん傾聴に価する御高見を拝聴いたしました。私は、もうその趣旨において同感でございます。ただ、これをどんな姿において具現するかということは、相当検討を要する問題だと思いますので、十分研究いたしまして、なるべく御期待に沿うよう努力いたしたいと思います。
  83. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) ただいま厚生政務次官からお答えのありましたとおり、われわれといたしましても、十分検討いたしたいと思います。
  84. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  85. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私も、徳永委員がいろいろ御質問されました関連事項を二、三質問したいと思うのです。一つの問題は恩給の問題なんです。これはやはり軍人の生活遺族生活の問題、本人生活の問題、その当時きまっておった支給において、そしてそれが年数がたってくる。それで当時においては、一応何らか生活ができる道を開こう、十分にできるできないにしても、一応開こうということになっておったとすれば、社会が進歩していく、そうすると、それに応じて生活の手段が上がってくるということになりますと、やはり恩給の対象になるものは、いつの期限からどうのこうのということでなしに、一応その機構が存続している限り、現状の経済状態の中で生活をしていけるというところに自動的にスライドしていくということが私はいいのではないか、また、そうしなければ生活ができないのではないか、そう思うのですが、どうもそれが十分な規律がついていない。今の質疑にもありましたが、私はそのとおりだと思うので、だから、これは私はやはり何らかの処置で、恩給、年金というようなものは、その社会の進歩に応じて対象を上げていく、自然に作れたシステムというのですか、そういう角度で上げていくというのが私はいいのではないかと思うのですが、その点はどうですか、もう一度聞きたい。
  87. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) ただいまお尋ねのございました点、公務員の給与は、民間給与と比較いたしましていろいろ検討して定めるようになっております。もちろん退職公務員、また、軍人遺家族等の恩給扶助料につきましても、物価事情でありますとか、その他の事情国民感情等を考慮いたしましてこれを定めていくべきものであるということには私ども異存はございません。ただ、いろいろの事情によって自動的にスライドするということにつきましては、私どももう少し考えさせていただきたいと思いますが、社会情勢の変化に伴いまして、恩給のベースも上げなくてはならないということにつきましては、私どもも同感でございます。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今のお話で、もう少しこれから——今はないですから、考えるということはわかるけれども、そうしなければ実際の意義というものは、恩給とか年金とか、そういうものの意義が消えていくんじゃないですか。だから、当然そうするべきである。そういうところに熱意を持って実現するように努力いたしますというのならわかるけれども、どうも今のお話を聞いていると、そういうことでないので、別個のものとして扱うということに問題があるのじゃないですか。そういうところの熱意のほどを聞きたいのです。私は、やはり徳永委員も触れておりましたけれども、給与の問題、時限によって何年度までは幾らのベースという格好じゃ、ちょっとおかしいじゃないか、こう思うのです。だから、やっぱり全般が社会制度の中で幸福になっていくということでなければ意義がないのじゃないか。私は根本的にそう思うのです。その辺の熱意のほどをもう一度聞いておきたい。
  89. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) 私の言い方が悪かったかも存じませんが、社会事情に応じまして、恩給のベースも上がるようにわれわれといたしましては努力いたしますということにつきましては、異存ございません。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはまあひとつ何かの仕組みを作って、そういうことを積極的に考えていただきたい。それでないと、早くやめた対象者で非常に困っている方が、軍人恩給や一般文官恩給にしても、いろいろありますから、私は特別な配慮をしていただきたいと思います。  そこで、お聞きしたいことは、今の軍人恩給、扶助料を含めて、戦争の犠牲になられた方々の救護措置というものは、だんだん年ごとに、遺族のお年寄りやその他で、減っていっているというふうに思います。だいたい今の現状のベースで、今度改正されたべース、改正しようとするベースで、五年、十年、十五年、二十年というものを見計らって、財源上はどういう推移でございますか。
  91. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 恩給費のこれからの見通しでございまするけれども、今回の恩給増額措置によりまして、昭和四十年度が一番予算がふえる時期でございまして、千四百四十億ということに相なります。で、それから先そのままで参りまするというと、約二十億前後落ちていくという推定をいたしております。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 一年にですか。
  93. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) はい。これは遺家族等の老齢者の方の平均余命もございますので、そのほうの失権、その他いろいろ失権だけを考えて参りまするというと、三十億ぐらいずつ落ちていくわけなんでございますけれども、一方、昨年法律改正いたしまして、旧軍人の加算復元ということによる新しい資格者が随時出て参りますので、その分の経費が毎年十億ぐらいずつふえていくというような関係で、おそらく今の見通しでは、二十億前後の目減りというものが恒常的なものじゃなかろうか、こう思っております。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、機械的な話になりますが、二十年たったら四百億減ると、こういう格好ですか。そういう二十年たってもそれぐらいの率で減っていくということになるのですか。そうでもなさそうですね。
  95. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) これは今申し上げましたのは、四十年以降のまあ十年ぐらいの間のことでございまして、二十年、三十年になりますと、先ほど申し上げました失権率のほうが非常に高くなって参ります。現在失権率が千分の四十ぐらいのものであれば、その先になりまするというと、千分の五十とか六十とかというふうに失権率が高くなりますから、したがいまして、その財源の落ちというものも相当低くなる、こう思っております。
  96. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 わかりました。  それではもう一つお聞きしておきたいのですが、先ほど外地の未帰還者のお話がありました。そうして一万七千六百余人ということでありましたが、ソ連、中国、北鮮地区を除いて、その他六百人と、こういうことでしたが、六百人ぐらいでしょうか。私は、どういう人を対象にしておられるのか、その国に帰依されているような人は除いておるのかどうか、こういう問題ですね、そういう点はどうですか。
  97. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 説明が少し簡略に過ぎて、あるいは誤解をお与えしたのではないかと存じますが、先ほど申しましたように、先ほどの数字は、未帰還者に留守家族援護法にいう未帰還者でございます。したがいまして、俗に法外未帰還者と称しますが、そういう方は先ほどの数字に入れませんでしたので、あらためて申し上げますが、留守家族援護法上の未帰還者といいますのは、軍人軍属については地域を問わないで、今日未復員の状況にある者でございます。それから、一般邦人につきましては、ソビエト社会主義共和国連邦内における、いわゆる未復員者と同様の実情に置かれた者、つまりソビエトに相当抑留せられましたが、ああいう本人の意思によらないで帰ることができない特殊な環境に置かれた人、軍人軍属以外の一般邦人につきましては、そういう人だけを留守家族援護法、あるいは未帰還者に関する特別措置法にいう、いわゆる法律上の未帰還者という表現になっております。したがいまして、それ以外の邦人、たとえば終戦のとき以前にすでに消息が断たれておって、その後も今日引き続き状況がわからない、あるいは終戦後生まれました子供、そういう方々は先ほど申しました数字からはずして申し上げたのでございます。したがいまして、ただいま藤田先生のお尋ねの分を追加して申し上げますと、南方等の諸地域におりますいわゆる法外未帰還者千八百五十五人がそのほかにおるということでございます。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃソ連、中国、北鮮には、そういう人はどうですか。
  99. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) これはもうきわめて少数でございまして、もう九分九厘が南方及び中国でございます。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それから、もう一つ聞いておきたいのですが、これは直接この援護法には関係はないのですけれども、在日朝鮮人の帰国の問題がどうなっておるかということをこの際聞いておきたいと思います。
  101. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 本年の四月七日現在で申し上げますが、北鮮に帰還したいと本人が申し出られました申請者の累計は九万五千三百十二名。それから、今までの敗戦によりまして、北鮮にすでに帰還せられました者の累計が七万五千五百十七名。それから、一たび本人が帰還申請をせられましたが、後に取り消されたもの、あるいは事情が変わったといったようなことで、将来に態度決定を留保されたような、いわゆる意思変更とわれわれ申しておりますが、そういう方々の累計が一万四千二百三十五名ということでございますので、今日一応数字の上で帰還予定されるものは五千五百七十名になると思います。これらの帰還予定者の相当数も、いろいろ現地の事情を日赤からお聞きいたしますと、必ずしもこの全部がなるべく近い便船で帰りたいということではなくて、相当まだどうしようかといったようなお気持のものも含まれておる、こういうふうに聞いておる状況でございます。
  102. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ただいま残っておる五千五百七十人の方の今後の便船の取り扱い、その他配船の関係、時期、方法というようなことをひとつ……。
  103. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 新潟−清津間の帰還輸送船、配船の関係でございますが、昨年の暮れ及び本年の初めに、北鮮の赤十字の方々と日本赤十字社の代表が新潟で会談いたしまして、今までの方式を若干改められまして、月二回一船というふうに原則をしようということにせられたのでございます。途中一、二月の冬季は、そういう建前ではあるけれども、一船にしようというお話もございましたが、現在では、やはりただいま申しましたような会談の線に沿いまして、月に二回配船をするということで、今後お帰りいただくことに不自由はおかけすることはないと思います。
  104. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 動いておるわけですね。
  105. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) はい。
  106. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 一隻に大体何人ぐらい乗れるのですか。
  107. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 五百人以上は乗れると思いますが、定員としては五百名は乗れると思います。最近の帰還者は非常に荷物が大量でございますが、今申した数字は、相当荷物がございましても大丈夫なはずでございますが、ごく最近におきまする実績は、相当その定員を下回りまして、ごく最近を申しますと、三十七年の一月は八十七人、二月は百四十一人、三月は二便二船で合計二百八十三人、四月の第一便は二百二十七名、それから四月の第二便はまだわかりませんが、おそらく三百名から三百五十名くらいではないかといわれております。  以上のような状況でございます。
  108. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これはどういうことでこうなるんですか。五百人の定員のところを八十七人、百四十一人、これは具体的には事務的にどうなんですか。
  109. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) 日赤といたしましては、先ほど申しましたように、帰還予定者というリストを持っているわけです。したがいまして、原則としては月二回配船があるということは、朝鮮総連を通じまして、よく御承知になっておるところでございます。したがいまして、北鮮側から、相当前もって何月何日に新潟に船が入るという連絡を日赤が受けますので、日赤はそれを都道府県を通じまして、帰国申請をいたしてまだ帰っておらない人々に正確にお伝えするような連絡を市町村を通じてやっておるわけでございます。ところが、現実はこのように非常に少ないということでございまして、それがどういう事情によるか、われわれいろいろ推測はいたしておりますけれども、家事の取りまとめ等もございましょうし、何か向こうへ帰ると一たん気持はきめたものの、さて今の時期がいいかどうかという足踏み的なお気持も帰還者の方々の中にはあられるんじゃないかということで、よく事情はわかりませんが、定員は相当大幅に余りながら、現実の帰還者は少ないというのが実情でございます。
  110. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 船が出る時期、時間がきまっているから、それまでにその船に乗られた限度において船は出て行く、こういう格好になっておるわけですね。
  111. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) さようでございます。
  112. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、新潟の援護局で、船の着くまでの滞在の何は厚生省がめんどうをみておるわけでしょう。
  113. 山本浅太郎

    政府委員山本浅太郎君) さようでございます。
  114. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記とめて。   〔速記中止
  115. 高野一夫

  116. 高野一夫

    委員長高野一夫君) この際、委員の異動について報告いたします。本日付をもって勝俣稔君が辞任し、吉江勝保君が選任されました。     —————————————
  117. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 本件に対する本日の質疑はこれをもって終了いたしたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。  本日の審議は終了いたしました。次回は来週火曜日午前十時から開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時十七分散会      ——————————