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1962-04-30 第40回国会 参議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月三十日(月曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員曽祢益君辞任につき、その補 欠として田畑金光君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     井上 清一君    理事            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            大和 与一君    委員            杉原 荒太君            苫米地英俊君            堀木 鎌三君            山本  杉君            加藤シヅエ君            戸叶  武君            羽生 三七君            田畑 金光君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    外務政務次官  川村善八郎君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省経済局経    済協力部長   甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    外務省移住局長 高木 廣一君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    外務省経済局外    務参事官    平原  毅君    大蔵省為替局総    務課長     森鼻 武芳君    建設省計画局建    設振興課長   原口  隆君   —————————————   本日の会議に付した案件日本国に対する戦後の経済援助の処  理に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を  求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○特別円問題の解決に関する日本国と  タイとの間の協定のある規定に代わ  る協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○海外技術協力事業団法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 井上清一

    委員長井上清一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、海外技術協力事業団法案、以上衆議院送付の三案件便宜一括議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 きょうはガリオア・エロアに直接関係ないのですが、当面する日米経済関係の問題で、非常なこまかい雑件を少しお尋ねしたいと思います。  こまかい点についてはあとからお尋ねいたしますが、最初に、日米間における懸案の経済問題がかなり多いと思うのですが、昨年の十一月の箱根における日米経済合同委員会、その後そのままになっておるわけですが、あの際、日本としても当面する日米間の経済問題でいろいろ意見を述べたようですけれども、結果としては、結局自由陣営の一員として対米協力を求められたということに終わっておるような感じがするわけです。そこで、実質上、日米経済合同委員会というものはあれで終わってしまったのか、その後どうなっておるのか、その辺の事情を最初にまずお尋ねしたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日米合同委員会は、本年度はアメリカにおきまして開こう、時期は大体昨年と前後したような時期というふうに考えておりますけれども先方の選挙の都合等もございますので、若干早まるかもしれませんが、あの会議におきまして双方が顔を突き合わして三日間話をしたということは、非常に親近感が増しておるわけでございます。その後いろいろアメリカドル防衛の問題に関連して厄介な問題が幾つか出ておるわけでございますけれども、その後、これは結論が出るまでは、先方のほうも微妙でございますから、私、この際としてはあまりものを言わぬほうがいいと思っておりますけれども、全体的には、相当効果的な方向にいっているように思っております。一例を申し上げますと、AIDの問題、その後ハミルトン長官をこのためによこして話し合いまして、パキスタン肥料等は従来の方針を変えまして、全体で五万四千トンばかり発注したのでありますが、その間四万五千五百トンというものは日本の落札というふうにしたわけでありまして、一度きめた入札をし直しまして、日本に落とすというようなことになりました。まだ、その他に問題がございますけれども、だんだん私どもの言うことがよくわかるような情勢になってきました。特に最近の対米貿易が非常に輸出が伸びてきておりまして、実はこの二月から三月にかけて、おそらく戦前、戦後通じて最大の輸出アメリカに出る、こういうことになると私承知しております。数字等は、また事務のほうが参りましてから申し上げたほうがいいと思います。非常に対米貿易が伸びてきた。ケネディ政権ができまして、対外援助法でさっきのAIDという今までのICADLF等を一緒にした機関を作ったわけでありますが、箱根会談でそれらの運営等について、今まで非常に気のつかなかった点を言われてよくわかったというようなことが言われておりますが、だんだんそういう効果が表われてきておるように思っております。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 まあ対米貿易が伸びておることは事実でありますが、日本全体の貿易構造からいえば、非常な片貿易になっておることもこれまた事実でありますが、それはまああととしまして、少しこまかい点について伺いますが、綿製品輸入賦課金問題を最初にお尋ねします。  ケネディ大統領が、昨年の十一月に輸入綿製品について、綿花輸出補助金並みのこれはポンド当たり八・五%の賦課金を課するかどうかという調査関税委員会に命じて、その後わがほうの抗議もあり、また二月にはジュネーヴでの国際繊維長期取りきめが採択された結果、米国が綿製品賦課金実施するならば取りきめを受諾しないという態度をこちらが表明したために、一時問題が延ばされておることは御承知のとおりであります。この賦課金問題は、その後実際問題としてどうなっておるのか。アメリカ公聴会が終了後、若干日本側としては楽観的な見解を持っておるような向きもありますが、アメリカのほうではそういう楽観論はどうかという意味のことを言っておる向きもありますし、その後の経過は一体どうなっておるのか。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはそろそろこの諮問委員会の答申が出てくる時期に近づいてきておるということになっておりますけれども、この段階において、私の口からこの場で悲観論楽観論も言うことは全体から見ていかがかと思っておりまするので、その点をお許しを願いたいと思いまするけれども、私としては全力を尽くしてこの賦課金問題を取りやめにしてもらうということにしたいと考えております。先般も一応公聴会の終わったという時期をとらえまして、再び抗議のためのトーキング・ペーパーを先方に渡しましたし、関連いたしまして、毛織製品あるいは絹織物製品等についても長期協定綿製品と同様にやったらどうかという動きがあるやに伝えられておりますので、これも日本としては絶対に困るというととを強く申し入れております。これは、経済問題の外交交渉というのは、ある一定の時期が来て結論が出ませんと評価をしていただけませんので、私も実は非常に心苦しく思っておりますけれども、いずれかの時期に結論が出たときには、あらためて御批判を賜わりたいという気持でおります。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 内容の詳しい点はよろしいですが、大体有望ですか。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはどうも私の口から今申し上げることは、何とも言えないのでございますが、私としては全力を尽くしてこの措置に当たりたい、この程度にしていただきたいと思います。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 アメリカとの互恵通商法改正を控えて、関税委員会各種調査を進めておることは御承知のとおりでありますが、日本関係としては、こまかい点で恐縮ですが、モザイクタイル野球グローブ板ガラスウイルトンカーペット、この四品目の関税を引き上げることが大統領へ勧告されて、そのうちのモザイクタイル野球グローブ大統領が却下した。板ガラスウイルトンカーペットについては三月十九日に勧告いたしまして、引き上げが決定して、本来ならこれが今月実施になるわけでありますが、これについても日本延期要請と、それからもう一つベルギーが同じ要請を出して、その結果、実施は六月まで一応延期になっておると聞いておりますが、この問題のその後の経過はどうでありますか。
  10. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうもこの種の問題は、非常に日本輸出が急増しておりますので問題になりまして、私今はっきりその数字を記憶しておりませんが、たしかウイルトンカーペットのほうは、全体のシェアの二〇%前後でございましたか、それから板ガラスのほうがやはり四〇%−五〇%を占めておるんじゃないか、これがまあ数年来の輸入急増わがほらからすれば輸出急増——が見られておりますので、そういうことになりまして、ウイルトンカーペット板ガラスだけはそういう規制を受けることになりましたのでございますけれども、当初九十日延ばしてくれるかというようなお話がございましたけれども、結局いろいろなことで六十日間延長ということに落ちついたわけであります。ベルギーは、ウイルトンカーペットについては非常に大きなシェアを持っておりますので、これは非常に強く今の段階においては反対をしておる。われわれもまた反対をしております。しかし決定は、六十日延長して実施するということになっております。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 それはただ期間が六十日延長になっただけなのか、六十日延長して、その間にまた新たなる考慮が払われるということになるのか、その辺はどうなんですか。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 前者でございまして、六十日延長して実施すると、こういうことになっております。ただ、私どものほうとしては、それも少し考え直してくれとは言っておりますが、しかし、先方はそれで決定したと言っております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つこまかい問題ですが、白色セメントとレーヨン・ラベルのこの問題については、関税評価が、何の関係ですか、ダンピング防止法違反とかいう疑いということで、財務省の調査を受けて、その間実質関税評価が停止されておる。だから、アメリカとしては実質上この輸入をとめておるわけですね。これは打開の道はどういうふうにしてつけられていくか。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今経済局長が見えますから、経済局長からお願いいたします。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、その間ほかのことを……。先ほど一番最初日米経済合同委員会質問の際に、大臣からある程度お答えがあったことでありますから、重ねてということになりますが、アメリカバイアメリカン政策の結果として、ICA資金による域外調達が停止されて、その後日本としては先ほどお話しのあったパキスタン向け肥料国際入札が一部落札された等の経緯がありますけれども、全体としては大体月平均一千万ドルくらいあったというものが、今日では十分の一程度に減っているのじゃないかと言われておるのですが、こういう点は単にパキスタン例外的処置だけで満足するのか、今後ともさらに強い要求をもって進むのか、その辺はどうでありますか。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども一昨年の暮れにドル防衛の問題がやかましくなりましたときに、やはりこの問題は非常に大きな問題だというので、アメリカといろいろ交渉いたしました。そのときに結局オフ・ショア・パーチァスの中の、軍関係の家族その他の調達、これはもう日本については例外にするということ、当時最高一億四千万ドルくらいあったのでございますが、それが半分くらいになるだろう、こう言われておったのですが、そんなにも減らないで済むようにしようと、こういう話であったのであります。ところが、昨年対外援助法ができてICA資金AID資金にかわっていく、そういう関係から、非常に域外調達日本品をエクスクルードするという方向になって参りました。これはどうも私ども一昨年した交渉と違うじゃないかということで、非常に強く先方に翻意を促したわけです。ところが、先方の申しますには、AIDというものは発足して半年だもんですから、まだ一般のきめのこまかい調達方法等について十分な考え方もまとまっておらない、そのために非常に日本に対して域外調達の今までの慣習、ことにそれによって肥料とか、セメント、こういうものの受ける大きな打撃というものについての考慮が少なかったということを先方も認識してくれまして、それで、その第一着手として。パキスタンが出てきたのだというふうに私ども承知しておるわけです。今韓国肥料の問題もございますし、今後、東南アジアにおけるわが国が伝統的に開拓しに肥料あるいはセメントの市場というものについては、アメリカとしても考慮を払ってくれるだろうという期待を私ども持っておるわけです。パキスタンの問題は、その一つの現われとして考えております。今後とも、そういう問題はだんだん解決していくだろう、こう思っております。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 ガリオア・エロアがかりに成立したとした場合、その結果として日米協力になるし、それから先日外務大臣からも、アメリカに払った金がアメリカでどう使われるかはアメリカの自由だというお話がありましたけれども、事実はそのとおりでしょうが、そういう場合に、韓国に対する経済協力というようなことはかなり重要な考慮の対象になると思うけれども、そういうことは日本にさせておいて、韓国向け日本肥料問題等については非常な冷たい扱いをするということは、首尾一貫しないと思うのです。だから、こういう点は、今のガリオアの結着がどうなろうとも、もう少し日本として十分な要求アメリカにしないと、そういう政治的含みのある仕事は日本に背負わして、それで経済的なうまみはアメリカが吸うということじゃ、あまり虫がよ過ぎる、こう思うのですが、その点どうですか。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点非常に強く申しておりますわけで、先方は、さっき申し上げたように、どうも、ICAの時代は政府資金だったので、政府の一存で行ったけれども、今度ああしたAID機関の金の使い方というものは、間接的な指導の形になるということで、議会がきめた対外援助法による運営方法というものがあるわけなんで、その点では非常にむずかしさがあったと言っておったわけですけれども、最近そういうことがわかったと見えて、全体に周知徹底したと見えて、運営に若干の改善が見られておりますので、私ども大いに、その点は羽生さんのおっしゃられましたような方向で、アメリカ側善処を促しており、だんだんその善処方が期待されてくる、かように思っております。  それから、先ほど私がお答えができませんでした問題について、経済局担当官が来ておりますから……。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 もうちょっとあとにして下さい。  次に、シップ・アメリカン政策関係上、これはバイアメリカン政策とも関連をして、ドル防衛一環として、日本にいろいろな要求がされておるわけですが、輸銀借款の際に、米船積み取り率を五〇%という要求があったわけです。その後日航借款中小企業借款、第十一次棉花借款、あるいは富士製鉄借款等もそれぞれ米船優先要求がつけられたと思います。ですから、この問題はどう対処しようというのか。これは外資を入れるのもけっこうですが、こういうように、ことごとドル防衛一環としてシップ・アメリカン政策が強行されて、借款のつど米船優先政策がとられるということは、必ずしも適当でないと思うのですが、これについては当局者はどういう態度をもって臨まれておるのか。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 輸銀の場合は、ある程度アメリカの金であるわけですけれども世銀の場合は違うので、そういう点は、世銀借款をしたものについてもシップ・アメリカンということになるのは全く筋違いだということで、強くこの問題について国務省抗議をしておるのでありますが、先方としてはそういうことはしなかったというふうな言い方で、まあ、国務省のやることではないわけでございましょうけれども国務省としては、われわれの気持はよくわかるということで、いろいろそういう点について取りなしをしてくれておるのでございます。ものによりまして、そういう米船積み取り主義というものが緩和されておるものもございますけれども、ただ、実際に契約に当たる業者が、それでやっていこうという考えのものも、そのケースによっては出てきております。これは日本国内のことでございますから、そういう業者に対しても、国策的な見地からこれに協力しなければならぬじゃないかということを言っておるようなわけであります。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどお話しのように、確かに対米貿易は伸びておることは事実でありますが、一方、今申し上げたように、アメリカとしてのドル防衛政策を推進する関係上、日本にとっては実質的に不利なようないろいろな条件がつけられておるということは非常に遺憾でありますので、この点はさらに外務省——これは通産大蔵等それぞれ関係あると思いますが、きょうは外務委員会でありますから、特に外務省としてさらに強くこういう点について対処されることを要望しておきます。  続いて外資関係ですが、これは大蔵省がおらぬとちょっと都合が悪いのですけれども、本年秋に予定されておるIMFとの年次協議で、わが国が御承知の八条国に移行することが勧告されるのじゃないか、これは必至と言われております。この場合、日米友好通商航海条約は、現在国際収支擁護のため外資導入を認めておるわけですが、八条国に移行した場合は、国際収支理由としての外資導入規則、これができなくなる。この場合、外資導入規制しておるわが国外資法との関係はどうなるかという問題ですが、これは国内法関係になるので、外務省に聞いてもちょっと無理かと思いますが、大蔵省見えておりますか。  続いて、それと関連して、日本では将来も資本取引についてはある程度制限を残す必要があると、そういう説もあるわけであります。またIMF協定も、「加盟国は、国際資本移動規制に必要な管理を実施できる。」というこの第六条三の規定からいって、この規定の線に沿って条約改正の必要が起こるのではないか、こういうことが言われておるのですが、この外資法との関係は、わが国が八条国に移行した場合どういうことになるのか、この辺を承りたい。
  22. 森鼻武芳

    説明員森鼻武芳君) 御質問コンサルテーション、一応毎年六月に行なわれておりますが、本年はまだ六月という通知が参りませんので若干延びると思いますが、秋ごろというふうに一応言われております。そこで、コンサルテーションの結果どういう結論になりますか、先方との協議の結果きまることでありまして、まだにわかに予断は許さないわけでございますが、御質問のように、かりに八条国になるということになりますると、大体今までの例といたしましては、勧告後一年ぐらいのうちに八条国になる、したがってそれの準備を必要とする、こういうことでございます。  もう一つ質問の点、日米通商航海条約関係でどうなるかという御質問でございますが、仰せのように、外資法の中には資本取引——日本外資法の中には株式等につきまして外国投資家が株を取得しようという場合には認可を必要とする。で、その認可につきましては、一応航海条約のほうにつきましては、国際収支といいますか、支払い準備といいますか、一国の通貨準備のために必要なときは制限してもよろしいということになっておるのは事実でございます。したがいまして、今それで外資法認可制にしておるわけでございますが、八条国になりましてからはどうなるかという関連につきましては、今、通産その他関係省におきまして検討中でございますが、何らか外資法をいじる必要があるかどうか、また通商航海条約等におきまして仰せのような原文がついておるわけでございますが、その点につきましても改訂する必要があるかどうか、これを目下検討中でございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 これも外務省にお尋ねするのはちょっと筋違いと思うが、関連上、もし大蔵省通産省等の方がおいでになればお答えいただきたいと思う。  これは本来大蔵大臣にしなければいかぬ質問なんですが、この外資導入については、一方では経済成長のために外資導入は必要であるし、また成長過程では景気波動調整に役立っておるという見方があるわけです。もう一つ他方には、外資が入り過ぎると国内金融引き締め効果が弱くなって景気調整を長引かせるという理由から規制の強化を必要とするという意見二つあるわけですね。最近のこの外資動きを見て、これからあと若干お尋ねしますけれども、この点はどういうふうにお考えになるのか。外資導入というものは無制限に歓迎するのか、相当程度規制というものも考えないと、国内金融引き締めなんかやっても、外資の点からみななしくずしにされていけば何らの効果も上がらないと、こういう意見もあるのですから、こういう点の調整というものはどうするお考えなのか、これは関係者に……。
  24. 森鼻武芳

    説明員森鼻武芳君) 通産省が見えておりませんので、私のほうからお答えいたしますが、外資法の建前は、認可基準といたしまして二つの柱になっておりまして、一つ国際収支改善に寄与する、それからもう一つは、重要産業といいますか、そういうものの発達に寄与する、この二つが大きな柱になっておりまして、この基準に照らしまして外資導入しているわけでございますが、最近のいろいろの状況を若干申し上げますと、長期外資につきましては、やはり国内金融引き締め基調政策の影響を受けまして、やはり相当業界のほうからも積極的に入れたいということで、アメリカ等にだいぶ長期資本をあさっているわけでございますが、問題はむしろ最近の状況によりますと、短期資金のほうの外資が非常に現地の情報によりますと競争が激化しておりまして、その結果日本側の需要が強い、先方のほうがあまり貸したがらないのに、こちら側からいろいろ押しかけますと、不当に借り入れの条件等が、たとえば具体的に申しますと、金利等が非常に上がってくる、こういうような傾向もございましたので、先般そういう短期外資につきましては特に引き締めるという方針を打ち出し、また長期外資のほうにつきましても、同じように条件等があまりにも悪くなりますので、交通整理と申しますか、外資導入をしようとする場合には、あらかじめ当局の了解を得てやってもらいたい、そういうふうに指導いたしまして、現在不当に借りあさりをやらないようにという趣旨で、関係の銀行、関係証券会社等に通達を出しまして、その協力をお願いしている次第でございます。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 その点は、これはきょうのことに関係のないことですが、私は短期資金でいわゆる設備投資の、特に固定的な資本短期外資を回すのは、日本経済のあり方としては、私は適当でないと思いますが、それはともかくとして、IMF協定第八条で経常取引制限は禁止しておるが、資本取引制限には及ばないという解釈から、日米現行条約においても、資本取引については国際収入上の理由からこれを制限といいますか、規制ができるという説もあるが、その点はどうなんですか。
  26. 森鼻武芳

    説明員森鼻武芳君) その点は経常取引につきましては、仰せのように、IMFといたしましては、制限をなるべくしてはいかぬということになっております。それから資本取引につきましても、自由化と申しますか、なるべく自由にしたほうがいいわけでございますが、ただし、資本取引制限してもIMF協定上は支障がないということになっておるのは仰せのとおりでございます。ただ、この制限の仕方につきまして両国間、たとえば一国と一国が条約等によりましてバイラテラルに権利義務を付するというような点につきましては、別に何ら支障はない、こういうふうに解釈されているようでございます。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 それと関係する問題ですが、外資法自体が自由化の促進に伴って預金保証の廃止とか、投資元本の送金期間現在の二年の撤廃等という問題を初めとして、根本的な検討の必要が認められておると言われておりますが、これは何らかこれについて検討をし、改廃するようなことも考慮されておるのかどうか、その点。
  28. 森鼻武芳

    説明員森鼻武芳君) 外資法にも、今仰せのように、たとえば外国投資家が株式を取得後二年間は持っていなくちゃいかぬ、二年たったらばその売却代金は外国へ送金できる、こういう規定になっておると同時に、その送金を保証しているというのが現行法の体系でございます。これは非常に外資を保護した規定でありまして、その結果非常に外資が入って参りまして、日本経済の再建にも今まで非常に寄与してきたわけでございます。一方、仰せのように、自由化の機運に伴いまして、資本取引につきましても漸次緩和してほしいという要望が各国からあるわけでございますが、先ほどの御質問の、IMFコンサルテーションの結果どういう勧告になりますか、まだなかなか予想はつきませんが、かりに八条国に移行するというような場合も予想されますので、そういう場合に備えまして、今、通産、大蔵、関係当局におきまして、外資法並びに為替管理法というのが別にございますが、その両方がこの自由化関連がございますので、両方の法律をどういうふうに持っていくかということにつきまして、目下事務的にいろいろ検討はしております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵省では、今の問題と関連して、過度の外資導入規制するために、将来は国際金融局を創設するというような意見も出ておるようですが、それはまあ外務委員会関係のないことですから、直接にはかれこれ申しませんが、外務大臣としては、この外資導入については、この今のような何というか、無方針というか、全くの放任された形でいいのかどうか、その辺は日本経済の現状と考え合わされてどういうふうにお考えになるのか、その点だけ承ってほかの問題に移ります。
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、日本のこの経済というものはやはり外貨をある程度どうしても必要とする、こういう事態から見まして、やはり外資導入というものは相当活発に優遇していいんじゃないか。一部論者に言わせますると、この外国資本による国内市場の壟断という問題も心配される点もございますけれども、私は、日本の経済というものはそういう心配のないほど強いものになっておる。しかし問題はその外貨不足によって生ずるいろいろな経済、貿易の問題が非常に大きいのでございますから、私はむしろ自由な優遇措置を講ずるほうがむしろ逆にいいんじゃないかというような気持を、個人としては持っておるわけでございます。  それから、先ほどの御答弁で正確にいたしておきたいと思いますのは、ウイルトンカーペット板ガラスの米国の総輸入に占めるわが国からの輸入シェアについて大まかな数字を申し上げましたが、ウイルトンカーペットは三六・七%、板ガラスは一三%、これが正確な数字でございます。  それからさらにダンピングの問題についてお答え申し上げますが、戦後わが国の商品で調査を受けましたものは多数ございますが、これまでダンピングと決定されたものはございません。現在この調査を受けておりまするものはレーヨン・ラベル、それから白色セメント、電解マンガンのこの三品目でございまして、まだこの結論は出ていないということでございます。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 外資の点については、残念ながら外務大臣と私若干見解を異にしますが、きょうは場所が場所ですから、そういう立ち入った日本経済との関連での質問は、これ以上申し上げません。けれども意見はだいぶ違うということだけ申し上げておきます。  その次に、日英通商航海条約関係ですが、今までずっとこの条約締結交渉がロンドンで進められておって、最近英国のエロル商務相が来日してこの問題についても触れておるようであります。こういう動きから察して、このガット三十五条援用の撤回を求めるためには、イギリスがむしろ三十五条を撤回するためには、英国側としては一部商品の対日輸入については、緊急輸入制限とか要注意品目等の例外的処置をとるように同条約で規定しないと、なかなか三十五条の撤回ということは困難だと言われております。中には、そうしなくともガット十九条で国内産業の保護が可能なはずであるから、という説も、これは日本側の説ですが、あるわけですけれども、もう一つは、エロル商務相が、日本輸出奨励制度のうち重要な役割を果たしておるという輸出所得控除制度、これが英国産業界を非常に刺激しておるというようなことを指摘したようで、いずれにしましても、このガット三十五条の援用撤回を求めて日英通商条約というものを期待どおりのレールに乗せるためには、ある程度日本が大幅な譲歩をしないとなかなか締結——特にイギリスがEECに加盟する前の締結は非常に困難だと言われておる。そこで、英国のEEC加盟前に日本が日英通商航海条約締結を求めるとすれば、今申し上げたような緊急輸入制限とか、あるいは要注意品目等の例外処置を条約中に規定するとか、あるいは輸出所得控除制度、特にイギリス産業界で問題にしておるこの問題について、日本としてはどういう態度をもって臨まんとするのか、外交の今検討中の問題でありますから、こまかい点に触れて言うのはどうかと思いますけれども、しかし、実際に長い間交渉も進められており、エロル商務相も来て大体の意向もわかったんですから、この際、日本の外務当局として、日英通商航海条約を結ぶ基本的な態度についてお伺いをしたいと思います。
  32. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろな機会に申し上げておりますように、私どもは対日輸入差別待遇をしている国に対して、これを均等待遇にならしめるようなことが必要であるということで一連の運動をしているわけでございます。ニュージーランド、ガーナ等も、最近ガットの事務局に、三十五条撤廃の申請を出して撤廃したわけでございます。やはりあと残っております国は、イギリス、フランス並びにそれらの旧植民地であった国の関係、これが非常に多いわけでございます。で、EECにイギリスが加入いたしますることになりますと、現在EECの国の中で三十五条を援用しておらぬ国は西独とイタリアでございます。しかし、イタリアの場合は三十五条を援用しておりませんけれども、やはり相当な差別待遇を持っておるわけなんです。そこで、イギリスがこの三十五条の援用をしたままでEECに加入しますると、あと非常に問題が複雑になってくる。したがって、その前にぜひイギリスに三十五条援用撤回を求めるという気持で、昨年からいろいろ交渉しておりましたわけでございます。しかし、伝統的にイギリスの産業界、これは非常に政府と密着したものでございますが、この意見——日本の産業に対する恐怖心が強いといいますか、ことに繊維とか陶磁器、こういうものに対しては、日本の産業によって国内に商品がいわゆるフラッドするということで非常に危機感を持っておるわけでございます。そこでわがほうとしても三十五条の撤廃と合わせて、セーフガードというものを先方に認めるということで話をしてみようということで、昨年からそういう方向で話をしております。ただし、セーフガードというものは、未来永劫続けるものでなくて、これを一時的に認めて、そうして日本とつき合っておりまするうちに、日本とガット関係にあって通商交渉をやってもそういうおそれはないものだと、日本側における自主規制その他が円滑に行われているということがわかるその段階には、このセーフガードというものを落とす、こういう考え方で進んでもらってはどうだろうか、こういうことで全体のワクをさような方向できめて話をしているのでございます。
  33. 井上清一

    委員長井上清一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  34. 井上清一

    委員長井上清一君) 速記をつけて。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、今のようないろいろなやりとりがあっても、実質上今度日英通商航海条約が結ばれる場合には、そういうやりとりをしても総体的にやはり日本の利益になるということである、程度の譲歩はしてもイギリスのEEC加盟前に締結しようとなさっているのか、その見通しはどうであるか。
  36. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) このセンシティブ・リストというものを作りますわけでございますが、このアイテムをどうするかということがやはり交渉一つの大きなポイントになるだろうと思います。それが著しく利益にならぬようなことになりますのは困りますので、双方で、今おっしゃるように双方として利益になる、こういう条約を結んで、そうして三十五条関係を撤回するということになるほうが利益である、双方で思う限度というものはおのずからあろうと思いますので、そういう方向交渉しております。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、もう一つは、かりにイギリスがEECに加盟した場合ですね、EEC加盟国、今六ヵ国ですが、イギリスが加盟してかりに七ヵ国となった場合、それらの加盟国がこのEEC全体として独自の一つの通商政策を持つわけですね。その場合に、たとえば日英通商航海条約が結ばれた場合、その日英間、それから、今はたしかベルギー、オランダ、ルクセンブルク——ベネルックス三国がEEC関係では日本と通商航海条約を結んでいる。それから西独は戦前のがそのままですね。それからフランス、まあイタリアはない。そこで加盟国が独自の立場をとった場合に、日本とその加盟国内の各個々の国とが条約を結んだ場合、そういう場合にはその加盟国は、日本じゃないですよ、相手の加盟国は、EEC共通の政策に拘束されることがあるのかどうか、それは日本にどういう影響をもたらすのか、その辺の見通しはどうですか。
  38. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点が非常にむずかしい問題であるわけであります。結局、条約のでき方にもよろうかと思うのであります。ベネルックス三国との間のそういう協定によりますと、三十五条は援用しておりますけれども、実際上はそれが非常にその程度がゆるいといいますか、かなり流動的な形になり得るわけであります。そこに非常に条件のきついものが入りますと、やはりならすと一番条件のきつい国のほうへならうわけでございます。したがって、この際イギリスとの関係を何とかもっと正常な関係にしておきたい、双方とも国交関係は非常によろしいのでありますから、問題は通商の問題だけなんで、これはもう少しよくしていく必要がある、こう思っているわけでありますが、今お触れになりました点が非常に微妙な問題がありますわけで、この点はちょっとここで申し上げることは影響がありますので、この程度にさしていただきたいと思います。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 まあ時間の関係上、これ以上お尋ねしませんが、その点は十分御検討いただきたいと思います。これは単に日英通商航海条約締結問題だけでなしに、ずっと、EECができてさらに発展していく場合、アメリカがまた接近する場合、いろいろな影響がそういう点から起こると思いますので、十分の御検討をわずらわしたいと思います。  それから、係の方に一、二点だけ。この今の日英通商航海条約をロンドン交渉から東京へ移すという説もあるんですが、そういうことは現実に若干問題になっておるんですか、どうですか。
  40. 中川融

    政府委員(中川融君) 現在、これはロンドンで御承知のように交渉しておるわけでございますが、いろいろ複雑な条約でございますので、時間がかかる。その関係上、あるいは東京に移したほうが進捗が早いのじゃないかという論もあるわけでございます。まだ別にそうきまっておりません。現在のところは、従来どおりロンドンで交渉していこうということで進んでおります。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 イタリアとフランスは中断中なんですが、その後の経過を、ちょっと事情を説明していただきたい。
  42. 平原毅

    説明員(平原毅君) 御説明いたします。イタリアに関しましては、御存じのように、ガットの二十二条一項によりまして、二国間でイタリアの対日差別の撤廃と縮小という交渉を続けておるわけでございます。御存じのように、今月の十五日までローマで交渉しておりまして、それが一時中止になっておりますが、先方といたしましては、現在、日本に対して約二百八品目ほど差別しておりましたけれども、ことしの三月三十一日に七十一品目追加いたしまして、またつい最近——二、三日前に、新たにまた五十一品目追加いたしました。その結果、残っております日本に対する差別待遇というものは、一部自由化になり、一部不自由化というものがあります関係上、残っております対日差別というものは百八品目ということまで減って参りました。もちろんわれわれといたしましては、今後も交渉を続けまして、この差別というものをどんどん減らしていく、こういう方針でおります。  次に、フランスに関しましては、御存じのように、ことしの一月の二十三日に、ことしの九月末までの一年間の協定を作ったわけでございます。これはサインが一月二十三日でございますが、効果は昨年の十月一日にさかのぼって発する、こういう協定でございます。これによりまして、従来、非常に大幅に残っておりました差別というものが、一応二百三十程度まで減って参りました。またさらに、従来は関税上も、フランスは日本に対しまして最恵国待遇を全部の品目に対して与えておったわけではないのでありますが、ことしの一月二十三日の協定によりまして、関税の面では、ことしの二月一日から完全に無差別待遇をくれる、そういうことになっております。ただいまの予定では、今の協定がことしの九月末には終わるものでございますから、また五月もしくは六月に再びフランスと交渉を再開して、残っておる差別を減らす、こういう努力を続ける、こういう予定になっております。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 イタリアとは、今お話しのように、いろいろ努力が積み重ねられておるようでありますけれども協定締結ということについてはどういうふうに見通されておるのか、その点を伺います。
  44. 平原毅

    説明員(平原毅君) 協定に関しましては、御存じのとおり、先ほど外務大臣が申しましたとおり、イタリアと日本は完全に正常なガット関係にあるわけでございます。したがって、貿易に関しましては完全なガット関係が支配すべきでありまして、むしろ現在のイタリアの対日差別ということはガットに対する批判というものでありますから、われわれといたしましては、一日も早くその批判をなくさせる、そうして完全なガット関係を実際上も両国間に樹立するということで十分ではないか、ガット関係だけで貿易はいいのではないか、こういうふうに考えております。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 最近、AA諸国の対日輸入制限がとみに強化されてきたと言われておるようですが、これはどういう事情から来ておるのか、それからまたそれに対して日本はどういう対策を持っておるのか、その辺をひとつ伺いたいと思います。
  46. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) おそらくベトナムの輸入制限、あるいはカンボジアの輸入制限、あるいはナイジェリアの関税を引き上げたということを御指摘ではないかと思いますが、これはいずれも非常な片貿易でございまして、前々からいろいろな問題があったと思いますが、わがほうといたしましては、できるだけそれらの産品を買い付ける努力をすると同時に、その他の点で経済協力あるいは技術協力というようなことをもって何とか彼らの感情を緩和していくという努力をしておるわけでございます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 その点については、一般的には日本が先進国との貿易で出る赤字を後進国の出超でカバーしておるということですが、これは日本が意識的にやるわけではなく、貿易構造上、あるいは相手国の、特にAA諸国の産物、生産品の結果、やむを得ざる結果とは思うが、何らか打開策を具体的に持っておるのかどうか、その辺はどうですか。
  48. 平原毅

    説明員(平原毅君) お答えいたします。私たちといたしましては、一発で即効的にという方法は、今先生のおっしゃったとおりの理由でないのじゃないか、しかし、いろいろな、ただいま甲斐部長から御説明のあったような各種の方法を用いて、積み重ね方式でやる、これ以外一発という方法はないのではないかというふうに考えております。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 最後に、これは全くの私の個人的な意見ですが、この通商関係の場合、外務当局経済局がやっておる。ですから、これは純外務省所管の条約とか協定という関係ではいろいろ努力をされておるのですけれども国内経済との関連で、私は認識が不十分と言ってははなはだ失礼ですが、その点は今の大蔵省とか通産省とか、私が先ほどお尋ねしたような問題に関連してみて、もう少しそこに何か日本経済の現在の流動しておる形の中で、もっと積極的に経済外交というものと取っ組まなければならぬと思うのですけれども、どうも私の聞いた印象では、条約の締結とか協定締結とか、そういう純外交の技術的問題に重点が置かれて、日本経済の実態との生きた関係の中での経済外交の推進という点が非常にウエートが低いように思われてならないのでありますが、これは外務大臣に言うべきことで、皆さんにかれこれ言う筋でもないと思いますが、そういう点は十分ひとつ御認識をいただきたいと思います。これに関連して、先ほど外務大臣にお尋ねした日米経済合同委員会等の今後のあり方等の問題についてもいろいろお尋ねしたいことがありますが、大臣もおられないことですから、私のきょうの質問はこの程度にしておきます。
  50. 木内四郎

    ○木内四郎君 私も外務大臣にちょっと伺いたいこともあったのでありますが、大臣の御都合もありまするので、これは割愛いたしまして、数点について事務当局、ことに条約局長にお伺いしたいと思いますが、このガリオアの協定タイの特別円の協定、この二案につきまして、衆議院でもいろいろ論議されました。この委員会でもいろいろ論議され、また参考人の意見も聞いたのですが、どうも私どもその全体を通じて、協定についてはわれわれとしては理解できないような議論がしばしば行なわれておるのですが、それにつきまして、まあそれはどういうところから来ておるのかと考えてみたのですが、結局政府のほうの答弁に何か欠けておるところでもあるのじゃないか、もし政府のほうの答弁に欠けておるところがないとすれば、非常にこれを誤解しておられるのじゃないか、あるいはまた特殊の立場に立っての解釈をしておられるのじゃないかと、こうまあ思わざるを得ないのでありますけれども、それにつきまして、私ども両院の論議を通じていろいろ述べられた意見関連して、数点について伺いたいと思うのです。  まず第一に、ガリオアの協定につきましていろいろ反対、われわれと全く立場を異にしているような意見を述べておられる。その理由の第一として、衆議院でも、こっちの参考人などでも第一にあげているのは、政府自身が初めから贈与であった、あるいは債務であったということに対してはっきりした考えを持っていなかったというようなことを言っておる人があるのですが、あのスキャッピンで支払い条件と経理はあとできめる、こういう条件をつけてこっちのほうに品物をよこしたり援助物資をよこした。それをまあ初め吉田内閣、次には社会党内閣、次には民主党の内閣、またさらに自由民主党の内閣と、これがずっと継承して、その条件のもとに物を受けておられた、そこにこの法律関係が、何と言ってまあ表現してもこれは自由ですけれども一つの法律関係を、動かすことのできない法律関係先方との間に生じたということは、これは問題ないことだと思う。争う余地はないことだと思う。これを政府は「債務と心得る」という言葉をもって表現している、あるいは後日処理を要するものだ、こういうようなふうに終始一貫言ってこられたと思うのですけれども、にもかかわらず、今私が申しましたように、政府自身がはっきりした態度を持っておらなかったというようなことを言われるについては、何かこの委員会では私はそういう説明は少しもなかったと思うのですけれども、間違ったような、どこかで何かそういう誤解を受けるような説明でも政府がしたのじゃないかということを疑わざるを得ないのですけれども、そういう点はどうですか。
  51. 中川融

    政府委員(中川融君) ガリオアにつきましては、当初から例の一九四六年のスキャッピン一八四四号、あれについてその支払の条件、計算は後日きめるというのをもらって、それをもらいながら、一方で物を受け取っていたわけでありますから、木内委員の御指摘のように、そこに法律関係が生じた、受け取ったそのときから生じておるということは間違いないわけでございます。これがしかし憲法にいうところのいわゆる確定した債務ではまだないというような事情から、「債務と心得る」という表現を一貫して使っていたわけでございます。したがって、この場合政府自体の態度があいまいであったのじゃないかという御批判が一部にあるわけでございまして、これは結局、思いますのに、「債務と心得る」ということを公に申しましたのは、もらってから三、四年たって、昭和二十五年ごろから大体国会でも政府当局が説明しておるわけでございます。それまでの三、四年というものは、いわばもらうほうが主でありまして、もらうといいますか、受け取るほうが主でありまして、これがどういう性格のものだということは、実は国会においてもあまり御論議がなかったような関係から、政府考え方を表明する機会が、ある意味でなかったということから、どうもそういう誤解が一部に出てきたんじゃないかと思います。しかし、もらいました、受け取りました情勢は、一番最初に申しましたように、そういう条件のもとで受け取っておるわけでございますので、当然これは何らかの処理を要するものという法律関係は初めからあったわけでございまして、それからまた、マッカーサー元帥がアメリカの議会で証言いたしました「日本は慈善を欲するものではない、将来これは何らかの形で返るものだ」という証言は、すでにその当時にももう日本の新聞に発表されておるところであります。したがって、そういう面でよくその間の事情を調べれば、当然国民もまた知っておったはずであったわけでございます。やはり何と申しましても、平和条約が近づくまではこれを具体的に返すという問題が切実な問題として起きてこなかった関係から、どうも国会等におきましてその論議が三年、四年ほどの間なかったということから、そういう誤解が出てきておるのじゃないかと思います。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。今の問題に「債務と心得る」ということを日本政府が言う場合に、これは相手国との関係では、国内はとにかく相手国との関係では、むしろ日本の国会の将来の審議を制約するようなことになるんじゃないですか、実質上。「債務と心得る」とは言っても。実質上は相手国では債務とみなして実施上の制約を与えることにはならないか。
  53. 中川融

    政府委員(中川融君) 「債務と心得る」ということを国会で昭和二十五年ごろから政府当局が言っておるわけでございますが、やはり公の席上である国会で「債務と心得る」ということを政府の責任ある当局が言っておりますことは、一方的な見解の表明ではございますが、やはり一つの国際的な要素にはなると思います。したがって、この講和発効までの間何にも日米間では協定も取りきめもできていなかった、阿波丸の了解事項もこれはいわば了解事項にすぎなかったということで、協定とか契約というようなものはなかったわけでございますが、しかし、日本の責任当局が「債務と心得る」ということを表明してこられたということは、やはり一つの要素として、それだけの価値といいますか、重要性、重さを持つということは言えると思います。したがって、日本としてもやはり全然これを今、たとえば、払わないでいいんだという議論を政府当局がするということは、やはり適当でないんじゃないかと思います。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 私の言うのは、政府はそういう解釈だと思うけれども、私はそういうことを前に日本政府がやったことは、むしろ実質上国会の承認を経て債務と確定をして、それからあの減額交渉等に移るという順序を踏むのが普通であって、これは私は数年前に委員会でだか、本会でだか、議論したことがあるんですが、全体としてガリオア・エロアが債務であるかどうかということの本質論議をして、それが債務と確定した場合に初めて減額交渉に移る、これが筋ではないか、そういう意味で、日本政府が先にたとえ「心得る」という了解事項であったにしても、対外的に相手国との関係で一種の意思表示をしたことは、非常にまずかったんじゃないか、そういう意味で質問したんです。これはよろしいです、答弁は。
  55. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は条約局長の説明は大体納得できるけれど、あとで支払条件と経理はきめるんだという条件で物を渡されて、それを受けたということによって、すでにそこに不動の法律関係が生じてしまっておる。「債務と心得る」とか、あるいはこれはほかの表現をかりに用いておってもいいけれども、それは何らプラスするものでもなくマイナスするものでもないと私は思うんです、阿波丸協定のあの文言はですね。法律関係というものは、そこに一たび不動な関係が生ずれば、それをどういう表現によって政府が説明しようと、やはりあとで支払条件と経理をきめるべき一つの法律関係がそこに生じたと、こういうことで私はあると思うんですが、ちょっと私は条約局長の説明と違うのですが、その点はどうです。
  56. 中川融

    政府委員(中川融君) その点、木内委員の御指摘のとおりと考えております。やはり一種の法律関係、一種の関係というものは、つまり「債務と心得る」という表現をもって表わされる内容それ自体は、要するにスキャッピンに基づいて品物を受け取ったということから出てきておるわけでございまして、政府の責任者がこれを国会等で「債務と心得る」ということを表明いたしたことは、それを外部に政府もそう考えているんだということをはっきりさしたということでございまして、別にそれによって実質が加わったということはないと思います。初めからそういう事実があったということだろうと思います。
  57. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから次に伺いたいのは、反対理由としてあげられるところは、ことに衆議院の最後の段階のことですが、条約に規定してないからこれは平和条約実施後はもう払わないでもいいんだ、債務はない、こういうことを理由の第二にあげておられる。私の考え結論を言えば、その内容のこまかなことはもちろん規定してないけれども、平和条約実施後においても、今私が初めに伺ったこの法律関係が存続しているという意味においては条約に規定があるものと私は思うんですが、まあ国際法の慣例によれば、この間からのお説によると、直接軍事費と間接の軍事費は、これは被占領国の負担になる。これは従来からの慣例ですね。それについて十四条において直接軍事費はこれを放棄する、こう言っていることは、間接軍事費は放棄してないということです。そういう意味においてこれは条約に規定されておるものだと私は思うんですが、条約とかあるいは契約あるいは法律などに規定する場合には、表から規定する場合もあるし、裏から規定する場合もあるし、いろいろの場合があると思うんですが、それを、条約に規定がない、ただしこうこうだと言ってあなた方説明されると、この条約に規定がないというところをたてにとられて、条約にないんだと、こう言われるけれども、私はこの法律関係が条約実施後も続くという意味においては、平和条約に規定されておると解釈するのが妥当だと思うんです。それはどうです。
  58. 中川融

    政府委員(中川融君) この点も、木内委員のお考えと全然同じに考えております。十四条で占領の直接軍事費についての請求権を放棄していると書いている裏から申しますと、直接軍事費以外の占領軍事費というものがありとすれば、それは放棄していないということになるわけでございます。しかし、もちろん間接軍事費というようなものがカテゴリーとしてあるのかどうかということは、これは議論の種になると思いますが、ガリオア・エロアというものを要するに放棄していないんだということは、裏から言うことができるのじゃないかと、そのような意味で木内委員のお説に私ども賛成いたすものであります。
  59. 木内四郎

    ○木内四郎君 今のは間接軍事費の問題ですけれども、たとえば第一次大戦のあとにおいては、占領軍の直接の軍事費はもちろん、今私の申しました間接的の軍事費といいますか、こういう援助物資というようなものは、すべて被占領国が支払わされたという事実もあるし、それで国際法上の慣例と伺っておるんですが、そういうことは間違いないでしょうか。
  60. 中川融

    政府委員(中川融君) いわゆる占領費に該当するものを大体被占領国に負担させるというようなのが、国際法上の慣例であると考えます。問題は、救済費といいますか、民生安定費といいますか、こういうものを占領国が出した場合に、被占領国がこれを当然負担するかどうかということになって参りますと、これは今まであんまり実はその例を、今度の戦争以前にあまり例もありませんし、むしろ従来のいわば十九世紀的な戦争では、いわゆる占領費の観念に入る経費が大部分であったかと思います。今回占領が長くなったというような関係から、民生安定費、あるいは経済援助費というような性質のものがこういうふうにたくさん被占領国に注がれたわけであります。これを払うか払わないかということは、いわば今回の戦争がむしろ初めての例というようなことになるのじゃないかと思います。したがって、前例というものもあまりないわけでございますが、ちょっと今まで第一次戦争ごろまでの例でなかなか律し得ないような状況じゃないか。しかし、ガリオア・エロアについては、もらった経緯が先ほどから申しましたような経緯であり、日本としては何らかの形でこれを決済をするものという事態、法律関係が初めからあったわけでございます。したがって、その法律関係においては、平和条約でアメリカが放棄していない、はっきり放棄していないということから、裏から言うと、これは問題が依然として残されておるということが言えると思います。
  61. 木内四郎

    ○木内四郎君 まあこれを伺わなくてもいいと思うけれども、この前も御説明があったから私はそう了解しておるのですが、陸戦法規では、民生救済は占領軍の負担という義務としてやるわけだから、その経費は別に占領軍が払わなくちゃならぬという規定はないので、これは当然従来の慣例からいえば、被占領国が払うというふうに理解しておるのです。そういう意味でただいま伺ったんですが、それはすでに御説明があったから、私はそれ以上伺いませんが、その次に反対している人たちのあげている理由としては、当時被占領国であった日本は、品物の選択その他について自由がなかった、自由意思がなかったから、これに対して払う必要がない、こういうことを言っているように思うのですが、まあ商取引なら自由意思ということはこれは必要な要素でしょう。ところが、この陸戦法規の予定しておるところの、占領軍はできるだけ民生の救済に努めなければならぬという場合には、私は被占領国の自由意思というものは必要じゃないのじゃないか、ことにこの場合にはスキャッピンによって、憲法以上のスキャッピンによってその条件がきめられておったもので、そこに被占領国の自由意思というものが必要がないのじゃないかと、こう思うのですが、どうですか。
  62. 中川融

    政府委員(中川融君) その点も全然同様に考えております。やはり占領治下に行なわれた現象でございますので、普通の場合における売買契約のようにお互いの自由意思によってその品物を選択できるという要するに関係ではなかったわけでございます。しかし、日本がぜひこの救援物資を送ってくれということを懇請いたしまして、それに基づいてあのスキャッピンが出て、そこで品物を受け取った、あの条件で品物を受け取ったわけでございます。そういう意味でこの法律関係ができている、それはいわば占領のもとにおける特典な事態である、こういうふうに考えております。
  63. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、その次に反対論者がよくあげる理由一つとしては、アメリカは陸戦法規によって民生救済の義務という責任があるのだから、これはこれに対しては払わないでもいいというような議論もありましたが、これについてはすでに非常に明快な御答弁がありましたから、私はこれ以上質問いたしません。  さらにまた、この二重払いになっているからこれに対してさらに支払いをする必要がないと、こういうような議論を反対理由としてあげておるようですが、これにつきましても、二重払いというようなことは全くないのだというきわめて明快な御答弁がありましたから、私はこれ以上伺いません。  その次に反対論者のあげているのは、余剰物資だから支払う必要がない、あるいはこれによってアメリカ資本家が利益を得ているから払う必要はない、あるいはさらに、アメリカがその物資を持ってくることによって、他の国からそういう物資が入らないようにしたからこれに対して払う必要がないのだ、こういうようなことを反対論者で言う者があるのですけれども、陸戦法規のこの民生救済という場合に、私は陸戦法規こまかに読んでいませんからわかりませんが、何かそういう民生救済に充てる物資について制限があるのですか。
  64. 中川融

    政府委員(中川融君) 陸戦法規に民生救済の規定があるかどうかということも実は疑問なわけでございまして、あの陸戦法規の四十三条によれば、むしろ従来の社会生活、公の生活をできるだけ維持確保するということであるわけでございますが、しかし、まあかりにあれを民生安定に必要な物資を被占領国に供給する義務が占領国にありというふうに解釈いたしたとしても、その物資をどうやって調達するか、どこから持ってくるかということは、全くこの規定では何も触れていないのでございます。自分の国から持ってきてもよい。あるいはさらに第三国から調達してもよろしいし、それはどちらでもいいわけでございます。したがって、自分の国から持ってくる場合には、まず考えられますのは、一応自分の国でさしあたり要らない物資を持ってくるということであろうと思います。また第三国から持ってくる場合は、やはり普通の売買か何かで第三国で要らない品物を必ず持ってくるわけでございます。したがって、ガリオア・エロアアメリカで余ったものだから払わないでいいのだと言うことは、どうも筋が通らない。やはりわれわれとしては、最初来ましたあのスキャッピンの条件においてとにかく物資を受け取ったということからすべての法律関係が発生してきている、したがって、これに基づいて何らかの措置を要するのだという性格には変わりないと思います。
  65. 木内四郎

    ○木内四郎君 よくわかりましたが、実はこの間の参考人の意見——ある大学の教授が、今私が伺ったようなことと似たようなことを言っておるのですが、そういう大学で教えられた人が入っている会社にうかうか物を売ると、あれはお前のほうで少しよけい作ったんだから代金払わぬでいい、お前のほうは利益を得ているから払わぬでいいとか、よそから来る道をふさいでお前のほうから入った——同じ空間に同時に二つのものが入れないのだから、一方から入ってくれば、一方から買えば一方から買えないということ、これはまあわかるのですが、そういう理由で代金払わないでいいじゃないかというおそるべき事態を生ずるだろうと思うのですが、私はまあそういうことを非常におそれておりますが、そういう意味で私はこれを伺ったんです。  そこで次に伺いたいのは、反対論者の理由としてですね、贈与と思ったから感謝の決議をしたと、こういうことが一つの大きな理由とされているように私は思うのです。ところで、あの当時、感謝の決議をするときは、まあ議運などでもこれ論議されたでしょう。立案者も案文を書いた人もいろいろ研究したでしょう。また討論した人も、賛成したわれわれも、これはスキャッピンでああいう条件をつけてよこしたものだということはみな私は承知していたものだと思うのですが、あなた方はそういう事態を故意に隠すようなことをやったんですか、どうですか。
  66. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 先ほど条約局長の触れましたスキャッピン一八四四、これはガリオア・エロアを一般に抱括しているものでございますが、そのほかにプレ・ガリオア時代にも、各対日援助物資が入ってきますたびにスキャッピンがございます。その他軍払い下げ物資あるいはその他余剰報奨物資に関してもございます。当時スキャッピンというものが決して極秘のものでなければ、実際問題といたしまして、スキャッピンが来ますと終戦連絡事務局に入るわけでございますが、新聞記者の人々が来ておられまして、おもなものはよく新聞に報道しておられました。非常にこれは秘扱いではなかった、一般のものでございます。現にこういったものは関係省はもちろん知っておりましたし、それからこういったスキャッピンを集めた管理法令研究なんという月刊誌が市販されておりまして、まあ興味のない方はあまりごらんにならかったかもしれませんけれども、決してこれは秘密にしておったわけでもございませんし、おもなものは新聞に出ていたという事情でございます。それから、それに基づきまして貿易庁の責任者がレシートを出しております。したがって、そういった関係から見まして、これは当事者はみんな知っておったと思います。  それからなお感謝決議のことでございますが、これまたたびたび国会でも出まして、従来から出ている御議論でございまするが、感謝したからただだ、ありがとうと言ったからただだというのは、いかがなものかというのが一般の議論でございましょう。事実、この感謝決議の内容を見ましても、輸入物資を、「放出せられた輸入物資」ということが書いてございます。で、当時の状況をいろいろ調べてみますと、政府はたびたび、日本国内の食糧事情の窮境を打開するために、総司令部に食糧輸入の懇請に全力を傾けたと。私の持っております当時の閣議決定の公表された中にも、緊急対策として政府は食糧輸入の懇請に全力を傾けるということを発表しております。これによってもわかりますとおり、懇請して輸入を確保するということをやってきたわけでございます。それに対して、当時非常に世界状況も悪い、国際的な食糧状況も悪い、それからまた金のない日本に物資を快く輸入さしてくれたというので感謝するのは当然で、ここからすぐただだというのはおかしいというふうに考えております。
  67. 木内四郎

    ○木内四郎君 今、政府委員から御説明になったとおりだと思うんです。私ども、二十二年だったと思うんですが、感謝決議をしたときは、少なくも当時の議員、立案者等はよくその事情を承知しておったと思うんですが、政府委員の御答弁で、別にこれは秘として扱ったわけでもないということでありまするので、一般にも相当知られておったものと思うのであります。  その次に伺いたいのは、反対論者は、西独の場合、日本と似たような——実質的には全く同じと思うんですが、西独の場合とは非常に違う、違うから、西独が払ったからといってこっちは払う必要はないんだと、こういうような議論をされておるのでありますけれども、それについてはすでに外務大臣等から詳細に明快に御答弁がありましたから、私はこの点も別に伺わないことにしますが、ついでにちょっと伺っておきたいのは、ドイツは終戦処理費としてどのぐらい一体払っておるのですか。
  68. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) たしか私の記憶では百二十数億、ちょうど日本の倍ちょっと多くぐらい払っておるというふうに承知しております。——百二十七億でございます。
  69. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで次に、交換公文などに対しても反対論を述べておられる方が衆議院などにもおりまして、その理由として、アメリカの腐敗した資本主義的精神をそれによって植えつけたと——文化交流ですね、文化交流の問題についてそういうことを問題にしておるようです。また、東アジアの低開発国の経済援助、これに向ける分については、アメリカの侵略基地への援助に使用されるんだから反対だ、こういうようなことを言ってますが、こういう点については総理大臣外務大臣等から非常に明快に御答弁になっておりますので、私は別に伺う必要はないと思うんです。  そこで、大蔵省にひとつ伺っておきたいんですけれども、よく、今度のわが国の四億九千万ドルの支払いをドイツの十億ドルの支払い、三三・一七八だかのパーセンテージを掲げたこれと比較さすのですが、私は非常にミスリーディングだと思うんです。というのは、こういう国家の間の債務とか金銭債務、債権というものを考える場合に、時の経過ということを無視して単に平面的に比較するということは、非常なミスリーディングなことだと思う。私がちょっと計算してもらったところによると、この四億九千万ドル、これを今度は二分五厘の利息をつけて、初めの二十四回は二千百九十五万九千余ドルですか、それからあと六回は八百七十万ドルですか何か払われるようになっておるんですが、向こうへ払う利子は二分五厘ですけれども国内においては開発銀行あたりにはその間七分以上の利回りで運用されておる。これを考えると、この四億九千万ドルをもとにした今の二十四回と六回、三十回のこの返金の支払いというものは、現在の価値は非常に四億九千万ドルよりも少ないものになるのじゃないか。それからさらに、これを十年間無利子で今日までおいたという状態を考えると、非常に少ないものになるのじゃないかと思うのですが、十年前に、すなわち二十七年で計算すれば、一億九千万ドルくらいのものになりやしないか。あるいはドイツが初めて支払いを開始した二十八年ごろにしても二億ドルそこそこのものになる。それを、時の経過を無視して、今日の時点において四億九千万ドルを、無利子で使っておった十年間を考慮に入れないで、そうしてドイツの場合と比較するというのは、ちょっと単に経済的の問題としたらおかしなものじゃないかと思うのですが、どうですか。
  70. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 木内委員御指摘のように、今回支払いまするお金は、利息を合わせまして五億七千九百万ドルでございますが、かりに十年前の、対日援助を打ち切りました二十七年六月の現在価値で見まして、七分で還元いたしますと、御指摘のように一億九千万ドルくらい、その一年あとの、西独が協定を結びまして支払いを開始いたしました二十八年六月を基準といたしますと、二億ドル程度数字になることは私どもも試算いたしたところでございます。
  71. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから、さっき申しましたように、この四億九千万ドルを三十回で払う。それを開銀の運用利子で還元すれば、現在の価値というものは三億七千万ドルくらいのものになるのじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  72. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 試算いたしました結果はお説のとおりであります。
  73. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうしますと、ドイツと比較した場合、政府が説明しているのよりも非常に少ない金額で、ドイツと比較する場合には日本は一億九千万ドルという数をとらなければ、ドイツと比較したらおかしいのじゃないか。いやしくも数学を心得ておる者なら、ちょっとおかしいのじゃないかという気がするんですが、そういう点はどうですか。これはあなたのほうは、計算そのとおりだと言われるのですがね。
  74. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は、私ども、木内先生言われましたように考えるわけでございます。ドイツと同様の時期に援助を受けまして、それをドイツはすでに九年前に支払いをきめて、現在八億ドル以上払っておるわけでございます。日本はその間何だかんだ言って延ばしておったわけでございますが、その間ずっとその援助総額をただで使っておったということになる。その間から出てくる金利を計算してみますと、これは金利は大蔵省で見てもらうよりないと思いますが、政府としての金利はそういうことでございますが、まあ私どもごく常識的に考えまして、その金利を日本が払うべかりしものと、かりに考えますれば、ただで使っておったものを今度は逆算いたしますと、しかもその十五年間にわたって払うことを現在価値で見て、そしてその差し引きをしてみれば、まあほとんどただのようになるということも言えるんではないかと思いますけれども、一応そういう複雑な要素を抜きにいたしまして、非常に高等数学でなくて、初等数学でいってみましてもこうなる、こういう御説明を申し上げておるわけでございます。
  75. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで伺いたいんですが、四億九千万ドルでなく、ドイツ式にいえば一億九千万ドル、ドイツのように十年間の無利子ということでなくて、一億九千万の価値にしかならぬのだ、非常に有利な状況外務大臣のお骨折りによってこれがきまったと思うのですが、ついてはその金額、まあ、かりに少なくても支払っていくには支払いの財源ですね、これも産投会計から十分にまかなえるというお話ですが、産投会計でその支払い財源として用いる元金、それから年々一体どのくらい入ってくるか。それで二十四回、それからさらにあとの六回のものを利子の中から日本が払っていって余りあるんじゃないかと思いますが、その計算だけちょっと、これは資料にもあるのですが。
  76. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) ガリオア債務の支払いにつきましては、産投会計の資産のうち見返り関係の資産が現在価値で約四千億ほどでございますが、出資金に手をつけましたりあるいは貸付金を期限前の償還といったような方法を用いないで、開銀出資金の配当収入とも言えます納付金、これが十五年間で千七百五十七億円、それに開銀に対する貸付金三百五十四億円並びに開銀に対する貸付金の利子九十一億、合計二千二百二億円をもちまして、二千八十五億の対米支払い額を支払う、こういう計算をいたしております。
  77. 木内四郎

    ○木内四郎君 今財源の問題についても心配ないことが明らかになったのですけれども、ついでですから、援助物資の払い下げ代金をどういうふうに使っていたか、それが経済の復興にどんなふうに役に立っていたかということを、二十四年の四月の前後に分けて説明できますか。資料で見ればあれですけれども、大略説明してもらいたい。
  78. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 対日援助に見合う貿易特別会計から見返資金特別会計に繰り入れられました金額は三千六十五億でございまして、その運用収入と合計しますと三千三百四十三億円となりまして、それを公企業に三百九十九億円、債務償還に六百二十四億円その他学校給食でありますとか、特定教育事業に二十四億八千万円程度使いまして、合計千四十九億円を使用いたしております。さらにその残額の二千二百九十四億円は日本開発銀行に対する出資金、あるいは日本輸出入銀行に対する出資金、農林漁業金融公庫に対する出資金、電源開発株式会社に対する出資金が千五百六十五億でございます。さらに日本開発銀行、一般会計、農林漁業金融公庫に対しまして四百八十七億七千八百万円の貸付を行なっております。それから日本興業銀行、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、商工組合中央金庫、農林中金、日本長期信用銀行に対しまして優先株式を四十七億九千七百万円引き受けました。さらに長期国債に百九億一千万円、短期国債に七十四億六百万円、貸付金等経過利子十億円でございまして、預金一千二百万円、合わせまして二千二百九十四億一千三百万というのが見返資金特別会計の運用になっております。
  79. 木内四郎

    ○木内四郎君 詳細は資料を見ればわかるのですけれども、今の概略の御説明によっても、これによってわが国の経済復興また今日の繁栄の基礎を築く上に非常に力があったということがわかるのですが、次に、私はこの条文についてちょっと伺っておきたいのですが、第一条で「経済援助の提供から生じ又はこれになんらかの関連があるすべての懸案となっている問題」とあるが、この「なんらかの関連があるすべての懸案」というのはどんなようなものがあるでしょうか。
  80. 中川融

    政府委員(中川融君) この第一条に書いてあります「戦後の経済援助の提供から生じ」た問題というものは、これはガリオア・エロアの提供そのものでございます。しかし、ガリオア・エロアそのものでございますが、要するに、計算の際に、たとえば贈与の分でありますとか、返還の分でありますとか、スクラップの分であるとか、そういうものを差っ引いております。この差っ引いたものは一応これから引いて計算したと、こういうのが「戦後の経済援助の提供から生じた」問題というのに入るのでございますが、「これにならんかの関連があるすべての懸案となっている問題」というのが何であるかということでございますが、これはいわゆる俗に申す反対債権として生ずるものでございまして、見返り資金から支出した分でありますとか、あるいは韓国、琉球向けの建設資材の分でありますとか、あるいは船舶運営会の米軍の人員物資を輸送した経費を差っ引いたものであるとか、あるいは韓国、琉球の清算勘定資金の余りを差っ引いたもの、これらが後者になっておるわけでございます。
  81. 木内四郎

    ○木内四郎君 こういうものは、今のお話しのようなものは、ここには明示していないが、そういうものはすべて入っているということは、向こうも了解しているし、異議がないというわけでしょうか。
  82. 中川融

    政府委員(中川融君) これは結局第三条と関連するわけでございますが、大体反対債権のうちの大部分は平和条約の十九条(a)項で日本は請求権を放棄している。いわゆる占領中に起きた問題でございまして、この十九条に当てはまっていない部分がこの韓国、琉球のいわゆる清算勘定の残高、これだけは平和条約によっても放棄していない分でございます。  アメリカにとってみれば、平和条約ですでに放棄した分はここにあらためて列挙する必要はなく、当然これはすでに放棄したものだ、しかしながら、平和条約に当てはまらない今の二つの清算勘定の残高については、この協定で初めて解決して、日本がこれに対する請求権を満足したものとして放棄したということで、これだけは特に書いておく必要があるというので、第三条二項にはっきり韓国及び琉球関係の清算勘定の残高に対して、今後日本はいかなる請求権をもアメリカ合衆国政府に対して提起しないということを書いてあります。その間を明らかにしておるわけでございます。
  83. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、今の韓国の問題ですが、韓国の場合に、一九五〇年の四月一日以前という字を入れたのはどういうわけですか。
  84. 中川融

    政府委員(中川融君) これは実は清算勘定というものが、韓国の場合には二つあったわけでございまして、今の問題として、請求権の残高が残っておりましたのは第一の分、これは一九五〇年の三月三十一日で要するに失効いたしました。その第一の清算勘定の分で余りがありまして、これを日本は権利として留保していたのでございますが、その後第二の清算勘定ができたわけでございます。これは当然自余の各第三国に対する清算勘定の残額と合わせまして、日本政府に、講和条約発効前に引き継がれているわけでございます。これのほうは問題がすでに円滑に引き渡しが済んでいる。その前の分だけが残っておりますので、特にこれとほかのものと識別をはっきりさせる意味で「千九百五十年四月一日前に存したもの」ということを書いているわけでございます。  これに反しまして琉球との清算勘定は一つしかないというわけでございまして、この点は未解決でありましたので、これには特に何月というようなことを書かずに、「琉球との間の清算勘定の残高」という規定の仕方にしておるわけでございます。これで問題になっておる清算勘定が何であるかということがこの条文ではっきりするように書いてあるわけであります。
  85. 木内四郎

    ○木内四郎君 次に、この第四条で、合衆国政府は合衆国政府のすべての請求権をこれだけの限度において放棄するというのがあるのですが、合衆国の国民が何らかの請求権をそれに対して持ち得る場合がないのでしょうか、どうでしょうか。
  86. 中川融

    政府委員(中川融君) ここは規定の仕方が日本国のほうは「日本国政府及び日本国民」ということが書いてあります。それに対する「合衆国政府のすべての請求権」と、請求権を持っておるほうは合衆国政府だけ書いてある点で疑問が出たのだと思いますが、これはよく事情を調べてみますと、ガリオア・エロアの援助というものは、アメリカ政府の予算でもってアメリカ政府がこれを買い付けまして、アメリカ政府の責任でこれを日本に送ってきまして、日本政府に渡し、そして日本の国民に日本政府がこれを分配したわけでございますが、受け取りました日本側といたしましては、政府のほかに個々の国民もこれについて何らか請求権といいますか、何らかの関係が出てくることが予想されるのでありますが、売るほうのアメリカ側といたしましては、これは全部アメリカ政府を通じて実は来ておりますために、特にアメリカ国民の請求権ということをここに書く必要はない、つまり、アメリカ国民がこのガリオア・エロアの援助について何か日本国政府日本国民に対して請求権を持っておるということが事実上あり得ないという関係から、これは先方との間にこの協定を結びます際に、合衆国国民ということは特に書く必要はないということで、これは合衆国政府だけを書いておるわけでございます。
  87. 木内四郎

    ○木内四郎君 次には、第五条について伺いたいのですが、アメリカ政府日本に対して円で一部を要求し得るということがこれに書いてある。日本は円で払ったほうが非常にいいんじゃないかと思うのですが、なぜここで二千五百万ドルという限度を引いたのですか、これを伺いたい。
  88. 中川融

    政府委員(中川融君) これは御指摘のように、できれば、これは日本といたしましては、できるだけ多くの額を円で払うほうが得であるわけでありますが、アメリカといたしましては、そうこの四億九千万ドルの大部分を円で払うということはやはり困る、一応は二千五百万ドル限度でということであったわけでございます。それでこの二千五百万ドルに基づきまして、これをこの交換公文によって日本との間の教育、文化交流計画に使うということが出てきておるわけでございますが、しかし、これは一応二千五百万ドルであります。しかし、協定の書き方としましては、第二条によりまして、この協定のいかなる規定をも必要に応じて両国間の協議でこれを変えることができるという規定も実はあるわけでありまして、将来一応のこの条文上の考え方としては、日米間でさらにこの二千五百万ドルをふやす必要があればふやすように改訂することもできるということになっておるわけでございます。一応今の合衆国政府考え方は、やはり二千五百万ドル程度で円貨はとめておきたいということでございます。
  89. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の御説明でわからぬことはないのですけれども日本の立場だけから円でやりたい、できるだけ払いたいというのじゃなくて、アメリカも必要があればそれ以上を払わせることもあり得ると思うのですが、それは二条によって条文を変えることができると言われるのですが、これはやはり両方の立場からこの条文は書かれていなければならないと思う。これだと、アメリカは限度としてやるのだ、「することができる。」ということになると、それ以上はできぬということにもなるので、アメリカとしてはみずから自分の手を縛ったようなことになって、日本としてはやはりこれに押えられるようなことになるのじゃないかと思うのですが、その点は二条の関係がありますから、これ以上御質問しませんが、それで「法定の複数為替相場がない限り、」という字は、どういうような配慮でこれを入れられたんでしょうか。
  90. 中川融

    政府委員(中川融君) これは全く日本の問題としてここに書いてあるのでございまして、日本は別に今複数為替相場はとっておりませんから、したがって、この規定の必要はないのでございますが、理論的には複数為替相場を設定されることがあるかもしれない、したがって、その場合のことを念のために書いてある。これは、西独とアメリカとの協定にやはり同じような規定があるのであります。理論的な問題として念のために書いてあるというだけのことでございます。
  91. 木内四郎

    ○木内四郎君 次に、この第六条についてちょっと伺いたいのですが、ここに「他のすべての経済援助(ある種の余剰物資を含む。)」と、こう書いてあるのですが、これはどういうことを意味するのですか、「他のすべての経済援助」というのは。
  92. 中川融

    政府委員(中川融君) これは、結局いわゆるガリオア・エロアというものを解決するのがこの協定の趣旨でございます。したがって、大部分を占めますガリオア・エロアというものは、この第六条の初めのほうにある「占領地域の行政及び救済に適用される合衆国歳出法の規定によって認められた計画に基づく経済援助」というのが、いわゆるガリオア・エロアに当たるわけでございますが、そのほかに若干のいわゆるQMとかSIMとかいう余剰物資がございます。それから、その他にプレ・ガリオアと申しまして、アメリカ歳出予算の上では、いわゆる占領そのものにつきまして、軍事予算そのものから出ていきましたプレ・ガリオアというのがあります。したがって、このプレ・ガリオアとカッコの中にあります余剰物資と合わせまして、「他のすべての経済援助」という表現でやったわけでございます。これだけは形式的ないわゆるガリオア・エロアから外に出る。したがって、日本が受け取った経済援助と、こういうことになるわけでございます。
  93. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、きわめて簡単ですから、ついでにタイの特別円についてちょっと伺っておきたいと思うのですが、この点についても、まあ反対論者の意見を私ども個々に聞いておって、やはり理解できない点がずいぶんあるのですが、そういう点から二、三伺っておきたいと思うのですが、反対論者は、新協定は国際法上の通念に反する不合理なものだ両方で必要な手続を経て批准し効力の発生したものをすぐ変えるというようなことは、今申しましたように、国際法上の通念に反する不合理なものだからというようなことを理由にしておりますけれども、これについて曽称委員に対して明快な御答弁があったのでありますから、私はこういうものに反しているものではない、そういう例もあるということをよく御説明になりましたから、これ以上御質問をすることは省略いたします。さらに、反対する人は、米国の対外援助の肩がわりになるから反対だ、軍事援助になるから反対だと、こういうことを言った人もありまするし、また他の諸国の賠償協定の変更の要求を誘発したり、韓国要求を誘発すると、こういうこともあるから反対だというようなことを言われた人もありますけれども、こういう点につきましても総理大臣外務大臣からきわめて明快な、そういうものじゃないということを説明されましたので、私はその点については重ねて言うことを省略いたします。ところで、反対論のうちには、敗戦国が敗戦にした同盟国の相互放棄は慣例だと、こういうようなことを理由にして反対しておる人もあったんでありますが、こういう点につきましても、すでに明快に御答弁になっておるし、この問題は三十年の協定のときに、野党をも含めてこの協定に賛成しているときに、すでにこの問題は解決しているのじゃないかと思うのですが、したがって、この点についても私はこれ以上質問することを避けたいと思います。それから反対している人は、タイの対外政策、国際行動から見て、間接的に軍事援助になって戦争に発展する危険があるから反対だと、こういうようなことを言われた人もありますけれども、こういう点につきましても総理、外務大臣から、そんなものじゃないという説明があったのですが、私はこれに関連して伺っておきたいのは、三十年の協定を結ぶ当時において、すでにタイはSEATOに加盟しておる。当時から、内閣は変わったかもしらぬけれどもタイの対外政策というものは非常に変わっておるとは思わないのですけれども、そういう点についてはどうでしょうか。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろな今までの反対論に対して、これをまとめて明快に区分されて御質問になったことは私ども一々全く木内先生の言われたとおりに考えておるわけであります。タイの対外政策というものも、これは御質問の中にもございましたように、三十年来不変でございまして、何ら私どもはその間に著しい外交政策の変化があったとは考えておらないわけであります。
  95. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこでついでに伺いたいのですが、反対論者はこういうことも理由にしておるようですが、タイは二十年の九月ですか、日タイ同盟条約と附随協定を終止する通告をよこした、これによって万事は御破算じゃないか、だから、さらにこれに対して払う必要はないということを理由にして反対している人もあるのです。これも三十年の協定のときに両国の態度というものははっきり現われておると思うのです。また国際慣行からいっても、条約あるいは約束というようなものが終止された場合でも、その有効期間中の債権債務の履行などというものは、その条約とか契約に従って行なうというのが慣例だと思うのです。これは念のために伺っておきたいのですが、タイの場合に、あの通告によって、何かこの国際慣例と違ったような通告があったでしょうか。私ども読んだところによると、そういうことは全然ないのですが。
  96. 中川融

    政府委員(中川融君) 御指摘のタイ側のいわゆる終止通告といいますか、日タイ同盟条約を、今後これが終了したものとみなすというような通告は、特にそれまでにすでに発生した法律関係を全部無効にするとか、御破算にするとかいうような意図を含んだものではないということは、御指摘のとおりでございまして、われわれとしては、あの日以後、九月十一日以後は日タイ同盟条約関係はなくなるわけでございますが、それ以前に有効であった同盟条約、あるいはそれに基づくいろいろの諸協定から起きました法律関係というものは、これは依然としてその効力を存続しておると、かように考えます。通常の原則に従ってそう解釈すべきであると考えております。
  97. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうなってくると、このタイの特別円十五億円の残額というものに対して、先方は千三百五十億円ですか要求した、いろいろないきさつで百五十億に今落ち着いたというのですが、今の御説明だと、この条約の終結の通告がそういうものであったということになると、もちろん当時は日本の経済状態もそうよくはなかったから、なるべく支払いを少なくするという気持はわかるのですが、一部においては、ややこの当時は少し行き過ぎた、あるいはきつ過ぎたのじゃないかというようなことを言う人もあるのですが、あなた方のお立場からいろいろ言われることは非常に工合が悪いかもしれませんが、どうでしょうか。
  98. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お話しのように、最終の要求が百五十億円というのがタイ側の主張であったわけでございますが、三十年協定はそういういきさつのもとにできたのでありますが、第二条に掲げております九十六億円というものをいかにして実施するかということですね、この投資またはクレジットの形式でもって供給するという供給の仕方、それについての合意がないままにこの協定ができておる、こういうことじゃないかと思います。
  99. 木内四郎

    ○木内四郎君 非常なお骨折りであの金額に交渉された外務省に対して、これ以上伺うのはどうかと思いますから、私はやめますけれども、当時何か無償だというようなことをにおわせるようなことをこっちは言ったことがなかったか、あるいはこちらで言わないにしても、向こうでそういうようなふうに思うような事情が、こちらに責任がないにしても、何かあったんじゃないかというようなことを想像する人もあるんですが、そんな点はどうですか。
  100. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点は私ども、ないと承知しております。ただ、先方が、御承知のように、八月に協定が批准されまして、もうその年の十二月に第二条をわれわれとしても考えるというようなことを言ってきておったわけで、どうもその事情は先方にあったというふうに思わざるを得ないわけでございます。しかし、なぜ先方が曲解をあえてしてきたか、この点はいろいろと聞いてみても、先方国内事情でございますので、これまた先方考え方をこちらがそのまま、ありのままにということは不可能だと思います。いずれにしても、先方は昨年の一月になりまして、この協定文をたてにとって考えられれば日本の言うとおりだということは認めたわけでございますけれども、どうも諸種の政治上、経済上の考慮からいたしまして、いわゆる大所高所に立って日タイ関係をよくするという観点から、今回二条、四条にかわる協定締結した、こう考えております。
  101. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、私もひとつ、さっきのガリオア・エロアと同じく、全く数学上の問題について一つ伺いたいんですが、人によっては、今後の九十六億円を無償で、八年間に年賦で払う、これは現在のところにおいては無償で払うのだけれども日本の今の利回りなどから見れば六十二、三億になってくる、あるいはさらに、六年も、七年もこうやって、無償で、払わないでほうっておいたということを考えれば、三十億台になる、三十八、九億円になる勘定で、そういうようなことを基礎にして、この前の協定によってローン・アンド・クレジットで九十六億円を出して、二十年も先に返してもらうということになれば、現在の価値というものは二十億円になるんじゃないか、そうすると、七十何億円というものを失なうことになり、六十数億円あるいは三十数億円と比べたら、無償で出すといっても、かえってそのほうが計算上は得になるんじゃないかということを言う人もあるんですが、これは数字をもてあそんだ一つの計算ですが、こういうような点については、どうなっていますか。
  102. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) いろいろ問題がございますが、一応私ども、木内先生のお考えになったような計算を用いまして試算してみたわけでございます。九十六億円を三十年協定の際に払ったとして、金利六分で換算いたしますと、約五十億円程度、金利が七分と考えますと、約七十億程度になるという試算をしたわけでございます。
  103. 木内四郎

    ○木内四郎君 この計算上のことは、その程度にいたしますが、結局、大所高所から今後この協定で出すことにしたのでありますが、何かこれに伴う利益というようなものを具体的に御説明になることができましたら、多少でも説明していただきたいんですが、最近伝えられるところによると、この協定締結しただけでタイも非常に喜んで、いい印象を与えている、外務大臣もこの間お話しになったように、小型三輪車ですか、何か多量の引き合いが来たとかいうことですが、こんな点はどうですか。
  104. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) タイとの経済的な関係が一番大きく考えられるわけですが、今お述べになりましたようなこともございますし、それからタイの鉱物資源の調査、これを正式に依頼して参りまして、先日タイのブーン商工大臣が参りまして、これは今までもう全然調査させることを外国に差し控えておった北緯十四度以北の地帯の鉱物資源調査をぜひ日本との間にやりたい、できれば合弁事業をやりたいということを言ってきておるわけでございます。さようなことで、非常に日タイ関係がよくなってくるということになりますと、現在タイには輸出が一億三千万ドルぐらい行っております。輸入が六千万ドルぐらいで、相当わがほうの出超でございまして、今のようなこういう新協定ができます前の状況でやっておりますと、為替管理その他によりまして対日輸入制限をすることも先方としてはできるわけだし、またそういうような情勢がずいぶん伝えられておりましたのが、その点の危惧は全くなくなってきた。これは非常に利益だと思います。それからカンボジアあるいはベトナム等で日本綿製品輸出を、先方では輸入規制措置をとるということを言っておりますが、もしほうっといたら、おそらくタイの場合にも、そういうことはあるだろうと思います。そういうことがない。これだけでも非常に大きな利益だと思います。
  105. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで時間の関係もありますので、簡単に一つ二つ、条文のことを伺っておきたいのですが、前文で、「関連するすべての問題」という字句が入っておる。今度の協定に特にこれを入れられたのはどういう趣旨ですか。
  106. 中川融

    政府委員(中川融君) 今度の「関連するすべての問題を解決し、」ということを書きました趣旨は、まあ三十年協定でこのタイ特別円問題を解決するという趣旨で三十年協定ができまして、一応形式的には特別円問題は三十年協定で片づいたわけでございますが、その中の一つの項目でありました日本側の義務が履行できないために、今回の問題が起きておる。こういうことから今回はいわゆる九十六億円の経済協力のあの問題をめぐって、これが実施できないことから生ずる問題を解決するという実は名目で、「「特別円問題」に関連するすべての問題を解決し、」ということを前文に書いた次第でございまして、これによってあの経済協力の問題から起きた日タイ間のもやもやした問題をこれで解決する、こういう趣旨で前文ができておるわけでございます。
  107. 木内四郎

    ○木内四郎君 もう一つだけ。三十年の協定に紛争の処理の規定がなかった。そのために今度非常に工合が悪かったと言われる人もあるのでありますが、今度の協定にも、これは入っておらない。この間条約局長の話だと、仲裁裁判で解決するからいいじゃないかという話ですけれども、紛争処理の規定というものが入っておれば、やはり都合のいい場合もあったのじゃないかと思うのですが、それを特に入れなかったのは、何か事情があるわけですか。
  108. 中川融

    政府委員(中川融君) 三十年の協定に紛争処理の規定が入っていないことは事実でございますが、しかし、この協定の解釈を法律上争うということであれば、日本としては国際司法裁判所に提訴することをタイ側に協議する手段もあったわけでございます。またそういうことになった場合、タイ側としては当初から、あるいは国際司法裁判所に行く必要があるかもしれないというようなことを言っていた経緯もあり、あるいは国際司法裁判所ということになったかもしれないわけでありますが、いずれにせよ、そういう純粋な、いわば冷たい法律的解釈をするということでは、日タイ間の問題はかえってしこりを残すということから、むしろ政治的な今回の解決方法になったわけでございますから、したがって、三十年の協定で紛争解決の条項がなかったために今回のようなことになったということでは必ずしもないと思うのでございます。と同じような意味で、今回の協定にあるいは紛争解決の条項を入れたほうがいいじゃないかという論もあったわけでございますが、しかし、やはり日タイ間の親善関係を樹立するという意味でできる協定に、そういう冷たいいわゆる規定を入れることは、かえって趣旨を没却することになるのじゃないか。また会議のやり方は、今回は相当念を入れまして、非常にこまかい点も議事録等によってはっきりしておるので、おそらく誤解というのは生じる余地はないのじゃなかろうかと考えて、特に紛争解決規定を置かなかったわけでございます。
  109. 井上清一

    委員長井上清一君) それでは、これにて三時まで休憩をいたします。    午後零時四十六分休憩    ————・————    午後三時三十五分開会
  110. 井上清一

    委員長井上清一君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  この際、委員の異動について御報告いたします。曾祢益君が辞任され、その補欠として田畑金光君が選任されました。
  111. 井上清一

    委員長井上清一君) ガリオア・エロア返済協定タイ特別円協定及び海外技術協力事業団法案の三案件について質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  112. 井上清一

    委員長井上清一君) では、速記を始めて。
  113. 大和与一

    ○大和与一君 私は移民問題にしぼって本日はお尋ねをいたしたいと思うのです。それで、最近新聞その他で、たとえばドミニカ、ニカラグアですね、そういうところの移民が帰ってきて、相当社会問題にもなって、政府も今さらのようにあわてて対策に骨を折っておられると思うのですが、私は、その中でもブラジル、パラグァイなんかいいほうだと思うのですが、そのいいと思われるブラジルなどの移民の状態というものがはなはだ寒心すべき点がたくさんある。私がきょう発言することは生き証人もおりますし、やや正確な資料です。ですから、質問もどんどんやりますが、お答えのほうも、いいかげんに言うと長くなるから、簡潔に一問一答でどんどんやりますから、そっちのほうも知っているだけ正直に答えてもらいたい。そうすれば時間の節約になるのですからね。そういうやり方でお願いしたいと思うのです。  初めはやはり大臣に大筋の話を聞くのですが、日本の人口政策と移民国策というか、それについて大臣の所見を承ります。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 移民問題というものは人口国策と非常に密接な関連があると考えられておりましたのは、むしろ私は戦前のことではないかというふうに思っております。今後の移民というのは、むしろ移住問題としまして、志を海外に伸べる人を、われわれとしては政府としてできるだけその志を伸べることに協力をする、そしてその行った人が受け入れ地において相当社会的にも成功して、そして政治、経済、文化的な活動において一つの中産階級的な、地についた活動をしてもらい、そのことがわが国と受け入れ国との間の経済的な提携にも貢献していく、こういうような問題として移住問題を取り上げていくということのほうがいいのじゃないかというふうに思っております。したがって、技術移住、農業その他の関係で技術移住という問題は熱心に今後研究していくべき問題だと思うのです。かつて、移民政策は棄民政策と言われて、とにかく人口問題の解決だから人を送り出してしまえばそれでいいのだというような考え方は、もう今後とるべきでないというふうに思っております。
  115. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、今のお話で、移住の問題は人口問題の解決じゃなくて、むしろそれによって貿易を伸張するというか、あるいは外貨を獲得するというか、経済的な面を主にした考え方の上に立つ、こういうお話だと思うのです。そうすると、長期計画と当面の具体策とありますが、これの大まかなところはどうですか。
  116. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その前に、何といいますか、経済的な問題だけじゃなくて、やはり国と国との関係、その緊密化にやはり移住の問題を柱にして役に立つような政策をとりたいということでございます。  全体の計画その他については移住局長から……。
  117. 大和与一

    ○大和与一君 簡単でいいですから、要点だけ。
  118. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 移住につきまして、長期計画というのはなかなかむずかしい問題でございます。外務省としても、昭和三十四年に外務省限りでございますが、移住五ヵ年計画というものを立てたことがあるのでございます。それから戦後早々、移住開始早々は、国内のほうも非常に海外からの引揚者が多くて、窒息するような空気であったので、移住によって人口のプレッシャーを緩和するという気持もございまして、できるだけ多く出すということでこのときの移住計画を立てたわけであります。しかし、御承知のように、最近になりましては、日本国内の労働力もむしろ不足しつつある。都市のみならず、農村も減りつつある。それから、出すものは、ただ数多く出すだけじゃなくて、今大臣がおっしゃいましたように、移住先において中産階級としてりっぱに発展するようにめんどうを見ていかなければいかぬ、こういうふうになってきますと、膨大な数字だけをあげた移住計画というものはむずかしくなりつつあります。特に、日本の主たる移住先でございます中南米の国情とそれからその主権下において、これらの国の了解で進めていかなければいかぬという点で、日本が一方的にそういう計画を立てるということもなかなかむずかしいというような状態になっております。したがって、今の情勢に応じた長期移住計画というものを昨年移住審議会あたりでも議論いたしましたのですが、まだ結論に達しないままに今日なっておるわけであります。われわれといたしましては、数よりもむしろ移住者が移住国においてりっぱに発展するための計画ということで今後検討を進めていきたい。現在においては、その意味におきまして、三十七年度一万一千名の移住計画というのは一応予算上ございますが、それ以上の長期移住計画は持っておりません。
  119. 大和与一

    ○大和与一君 考え方は悪くないとして、それでは実際に最近移民の方が帰られて、非常に、これじゃもう生きていけない、こういう具体的事実があったのですが、これに対しては当然政府は反省があるべきだ。それじゃ一体その反省はどういうふうにしたのか、その反省によってこれから移住の対策についてどのようにお考えになっておるか、これは大臣に答弁していただきます。
  120. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今度のドミニカの問題は、これは話ができましたのが昭和二十九年でございます。実際に移住を開始しましたのが三十二年からでございますが、その当時の情勢でございますると、日本が敗戦を喫した、ようやく昭和二十七年に講和条約ができて独立を回復した、そこで何か行き詰まるような気持から解放感があったところへ、また移住の天地が開けた、しかも先方では月六十ドルも金を出して、そして国営農場を移住者に開放してくれる、こういう話だというので、非常に解放感から押しかけたわけですね。どうも移住というものはそう簡単なものじゃございませんで、相当苦労をして初めて成功していくという問題でございます。たとえば、現在ブラジルのサンパウロ等では非常に日系人が活躍しておられるわけでありますが、これも移民史におきましては、全移住者がマラリアのためになくなったというような悲しい事例もあるわけでございます。しかし、われわれは、そういうことを今後の政策としては見のがすわけに参りませんものですから、とにかくその人たちを国援法の適用で、七千七、八百万円かけ、希望者全体をこちらへ帰すということになっておるわけでございます。大体定住者のうち半分近くが帰ってくるということになっているわけであります。で、私どもこの反省としましては、やはりその責任体制が不明確だったということがあげられると思うのであります。一応外務省がやることにはなっておりますけれども、実際問題としまして、最近まで、たとえば地方海外協会等はこれは農林省の所管であって、そうして予算は農林省を通していくというようなことで、やはり中央から末端に至るまで責任を持つのが外務省であるならそういうふうにしてもらいたいということで、今度三十七年度の予算におきましては、これを外務省につけていただいたような事情もございまして、その辺が非常にはっきりしなかったということが一つと思えるのでございます。で、われわれとしては、やっぱり人が向こうに行くのですから、先方の受け入れ国がその移住者をどう待遇するかという受け入れ国の事情を知ることが必要でございますので、これは外務省が責任を持っていたそう、今後の反省としてはそういうことにいたしまして、さようきめたわけでございます。  なお、移住に関する基本法がないのです。御承知のように明治二十七年の移民保護法というのがございまして、これが基本法になっておるわけでございますが、やはり今日の時代に適合したような移住基本法を作りたいということで考えております。で、先般来移住審議会の人選も、今度一部の委員を除きまして、変えました。東畑精一博士に委員長になっていただきまして、ひとつ精力的に、しかもじみちにこの移住基本法の問題をやってもらおうということにいたしておるような次第でございます。
  121. 大和与一

    ○大和与一君 その責任の所在ですが、今の根本はわかったんですけれども、それでは現地のほうは海協連といいますか、あれが、それから在外公館もありますけれども、この辺は今の大臣の言葉ですと、勢力範囲内は在外公館がこれは責任を持つ。それで、その他のアウトサイダーについてはこれは指導するというか、そういうことになるが、それは明確ですか、現地の場合。
  122. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 現地におきましては、大使館が一般在留人の保護に当たります。それから移住者につきましては、特に海外協会連合会現地支部がございまして、支部員が営農指導、必要な補助その他の援助を与え、また必要に応じてさらに援助をするということです。それからそれ以外に、日本海外移住振興株式会社というのがございまして、これが現地におきましては短期、長期の営農融資をやります。ただドミニカにおきましては、原則としてドミニカ政府の植民地に入りますので、ドミニカ政府が全般として指導をするという態勢にはなっておるのであります。日本がこれを補うという意味で指導援助しておるわけでございます。
  123. 大和与一

    ○大和与一君 今のお話は、海協連とか移住振興会の本部が東京にあるのですけれども、今の局長お話ですと、東京の本部が責任を負うのでなくて、東京は外務省が負う、現地はそれらの下部機関が負うのだ、その辺の直結した中身に血が通っているのですか。
  124. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 現地支部は常に本部と連絡しております。それにおいて本部の者が指導監督いたしておりますが、また外務省といたしましては、本省−出先公館のルートで、出先のこれらの移住関係機関の指導監督をしていくという実情でございます。
  125. 大和与一

    ○大和与一君 大臣にお尋ねいたしますが、外務省と農林省と大蔵省の、まあ強い言葉で言えば確執なんですが、これはなかなかそう簡単になくならぬと思うのです。前の移住局長をやった人から聞いたんだけれども、これは大体なっておらぬ、そのために一つもうまくいかぬ、こういう述懐があったのです。今の大臣お話でそれが全部解消されるのか。今のお話はわかったけれども、それは部分が解消されるのであって、全体としてはなかなかそう一挙に全部もうまくいくんだ、こういう一体断言ができるのか。その辺をお尋ねします。
  126. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあこの時点でお答えいたしますと、私の責任においてはいくのではないかというふうに思っております。それから河野大臣も非常にこの点理解が深うございまして、農林省というのはそんなことよりも非常に大切な農村の構造問題もあるし、やることがたくさんあるのだ、だから妙なところに手を広げないで、受け入れ国の事情は外務省が知っているのだから、これにひとつ責任を持たせて、農林省はこれに協力するという態勢にしようじゃないかというお考えのように承っております。今までのところは、まあおっしゃるように、お互いにいろいろ権限争いをしてどうにもやりにくかったということでございますが、今後は何とかいくのじゃないかと思っております。
  127. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、あまり過去のことをあげてもしようがないことになるのだけれども、向こうに行った移民が、行くまではいい、行って非常に困難な問題が起こったときに、それを一体だれに相談するのか。相談相手は公館なのか、例の系統会社なのか。あるいはその公館なり系統会社が現地に行ってやるのか。これは場所にもよりますからね。あるいは現地から出てこなければならぬのか。そういう場合の相談相手が実際にあるのかないのか。なかったためにいろいろな問題が起こってくると思うのが、その辺のルートですがね、それに対する御説明。
  128. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 直接には、海外協会連合会の現地支部が移住者の相談相手になっているわけであります。各地これは全部共通いたしております。ただ、パラグァイとかその他の移住会社が植民地を造成して、これを分譲しておるところでは、移住会社が海協連現地支部とほとんど同じくらいの援助をやっております。それから、これらを通じて出先公館がまた移住者のめんどうを見ているわけであります。しかしまた、在外邦人として在外公館は現地移住者と直結もしているわけであります。
  129. 大和与一

    ○大和与一君 さっき大臣が言われた基本法ですね、これはこれからお作りになるわけでしょうがね。そうすると、農林省なり他の関係各省と十分な内容的な連絡はできておりますか。どうですか。
  130. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 十分な内容の連絡まではまだ行っておりません。しかし、そういう方向政府が諮問をいたしまして、今審議会がこの作業にかかってくれているわけであります。審議会には総理府の推薦する者、外務省の推薦する者、農林省の推薦する者、その他の省の推薦する者、それぞれおりますので、その関係の役人は全部関係いたしておりますので、政府の意向を受けてこれらの役所はもちろんその方向協力する、かようなことと期待しております。
  131. 大和与一

    ○大和与一君 ブラジルに限って、この移民の方が日本の家族とか親類に送ってくるドルの、大体でいいけれども、収入はどのくらいですか、年間。
  132. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 私が正確に覚えておりますのは、在外邦人の年間送金が約三十億円、ブラジルは約その七割ですか、ちょっと正確には覚えておりませんが、六、七割……。
  133. 大和与一

    ○大和与一君 三十億円の約七割ね。約ですね。それとそういう在外邦人による日本との貿易関係、それの収支ですね、それは金額はどれぐらいですか。
  134. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 在外邦人の直接関係する貿易でございますか。
  135. 大和与一

    ○大和与一君 ええ、そうですね。
  136. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) ちょっと今この席には資料を持っておりませんが。
  137. 大和与一

    ○大和与一君 それをあとから出してもらおうかな。それで、できれば戦前と比較してもらいたいのです。それから今の家族に送る分と、商売をして、それによって実際に取引する分ですね、そういう分け方がうまくできるかどうかわかりませんが、それはむずかしいかな。
  138. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) それは非常にむずかしいと思います。
  139. 大和与一

    ○大和与一君 それでは、それはダブってもいいから、しかし、同じであるはずはないのだから、その辺ひとつなるべく区別をして、それじゃ資料として出して下さい。  それじゃ、次。やっぱりこういう人たちに向こうに行ってもらって、それでコーヒーを作ったりあるいはコショウなんというようなものを作りますね、それからパイナップルをやったりする。そういう場合に、現在の立場では相当うまくいくだろう、こう思っておっても、世界経済というか、小さくいってブラジルならブラジルと比べて、その他の国と経済関係あるいは品物の変動、そういうことがあり得るわけです。そういうことについて、やっぱり経済の実態を見ていなければ、販売ルートが確保されぬ、こういうことが考えられるのだけれども、その点についてはどのような注意をされておるか。
  140. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) その点につきましては、移住局といたしまして、外務省関係局課と連絡いたしまして、中南米の事情を十分調べまして、海外協会連合会及び現地の邦人機関を通じまして指導をするという態勢をとっております。たとえばただいまおっしゃいましたアマゾンのコショウの栽培なんかにつきましては、現在まだ年間四、五千トン程度しか出しておりません。これをもっとふやしまして、三万トンあるいはそれ以上の生産をするということが必要であると思われます。この点につきましては、競争国であるインドとかあるいはインドネシアとかその他のアジアの国もございますが、これの主たるマーケットがアメリカ及びヨーロッパであるという点で、ブラジルのほうが有利であるという意味におきましては、もっと積極的にコショウの栽培をやるとともに、販売ルートを強化していく。従来はニューヨークから第三者を通じて売っておりましたのですが、今日ではアマゾンの邦人団体が直接ニューヨーク及びヨーロッパの市場と直結してこの販売を確立しているというようなことをやっておりますが、こういう点につきましても外務省としてできるだけ指導し、相談相手になる。また現在コショウの栽培につきましては、インドで非常に根腐れ病にかかってこれは減産しつつある。ブラジルでも若干その傾向があるということで、実はあわててその根腐れ病にかかったコショウを日本に持ってきて、これは農林省の御協力を得てその対策をする。その他広い経済的な指導につきましても、われわれとしては今後一そう協力、援助しなければいかぬと考えております。
  141. 大和与一

    ○大和与一君 去る三月十日の毎日に、「南米アマゾンに混血少年の楽園」、「沢田美喜さんらが計画進める」こういうすばらしい記事があるのです。それでコショウの一世帯の年間平均収入が一千万円以上だ、こういう桃色ムードというか、いいかげんなことを言って、行くとまるきり違います。一九六〇年のトメアスーの三百十八家族の総収入が三億六千六百万円、一人当たり約百万円。ところが、今お話があったように、コショウの原産地は東南アジア、インドです。それが戦争の直後は億万長者もずいぶんできたそうです、価格の変動によって。しかし今は東南アジアなんかもだんだん復興してきたから、何千万というコショウを植えているはずです。それがだんだん二年、三年たつうちに市場に出回る。こういうことになるのに、これが年間一千万になる、こんなことを吹きまくって、沢田さんのようなっりぱなおばさんが連れていったらひどい目にあうよ。こういうことも今私が質問した中に十分入っておるのだけれども、去年なんかは三千四百トンですか、現地にできたのは。そういうことを十分考えておやりにならないと、新聞だけで行ったんでは、これはたいへんな計画のそごになるから、やはりその責任また総理大臣にあり、こういうことになりますから、十分ひとつこれは具体的に書いてあるから、御注意をいただきたいと思います。  それから次に、関係省との間の連絡は、これは十分できておるか。それでその計画をきめる場合には、たとえば現地のどこに行くという場合に、だれが、どういう人が集まってするか、それをお尋ねいたします。
  142. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 関係省との連絡は、外務省の移住局がその連絡を主としてやっておりまして、各省の連絡会議をしております。それから移住地をきめます場合には、新たな移住地につきましては適地調査というものもやりますが、今日では大体はもうすでに開かれている移住地に入れていくというのが大部分の状態でございまして、入れる移住地にそれだけの移住者を送る能力のほうが少ないというのが実情でございます。しかし、新たな移住地に出す場合には、関係省と今後相談いたしまして、そうしてきめていく。主として今日では外務省と農林省がそれを相談してきめているというわけであります。
  143. 大和与一

    ○大和与一君 その場合の事前調査ですね、これがなかなかむずかしいのですが、関係政府機関、あるいはまたさっき言われた海協連ですか、そういう人たちと相談するだろうが、土地の味とか受け入れ人数とか農業指導とか、呼び寄せ側の調査、こういうものは完備していると考えていいのですか。どうもそれがそうではないような気がするけれども
  144. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) まだまだ完備しているというところまで行っておりません。そういう意味におきまして、われわれとしましては、現地の機関をもっと強化していくということ、それから先生のおっしゃいました適地調査につきましても、今後もっと充実した調査をやるようにいたしたいと思います。従来の場合は、場合によりましたら、現地だけの機関でこれを見るというような場合もございました。あるところにおいてはそれでもいいかと思いますが、全然新しい移住地におきましては、もっと徹底した適地調査をやらなければいかぬのじゃないかというふうに考えております。
  145. 大和与一

    ○大和与一君 さっきも大臣言われたように、政府機関の間の連絡不十分、これは一つですが、もう一つは、ただ人間を一人でも多くやったら成績が上がる、こういうことが実際に役所の中にも、あるいは海協連の中にもあるのじゃないかと思うのです。これはずばりの言い方だけれども、それをやれば事足れりだ。あとは本人もしっかりやらなければいかぬし、できるだけ努力するけれども、そこまでが精一ぱいのことで、これが、数字には出てくるし、これだけ仕事やったということになるものだから、それが非常に僕は多いと思うが、その点は率直に認めますか。
  146. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) そういう傾向が従来ございましたことを、率直に認めます。なお、最近におきましては、われわれとしましては、量よりも質ということで、せっかく関係機関の思想統一をはかりつつあります。  それからなお、ヨーロッパにおきましても、最近におきましては、日本と同じように非常に労働力不足になりまして、海外移住の必要、不必要というような議論までオランダあたりでは出ておりまして、オランダの移住審議会の答申なんか見てみますと、やはり自国の目先の利益からいうと、海外移住はむしろマイナスである、長い目で見て、海外諸国との経済、政治関係の緊密化という意味において移住をやらなければいけないということで、やはり質の移住、数に頭を置かないで、質の移住者を出すということに力を入れているようでありますが、大体これが世界の傾向であります。
  147. 大和与一

    ○大和与一君 それから熱帯農業の指導者、これは日本に何万人ぐらいいるのですか、一体どこにいるのか、教えて下さい。
  148. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これは全般として非常に少ないわけであります。農林省にも若干おられますが、大体戦前は南方で活動せられた方々で、アジア協会その他に入っておられた方々はほんのわずかでございます。そういう意味において、熱帯農業に対する日本の知識というものは比較的少ない。むしろこれは南米移住の進行に応じて充実させていかなければならないという実情にあると思います。
  149. 大和与一

    ○大和与一君 これは南米だけではなくて、日本での、たとえば横浜移住斡旋所に行っても、ちゃんと課目に書いてあるんです。そんなことをほんとにしているのかどうか知りませんけれども、あるいは一体それは学校はどういう学校で、どこでそういう研究をしているのか。あるいはうんと少ないとすれば、これは数を言わぬからわからぬけれども、何万人とほらかけて聞いたけれども、どれくらいいるか。これはやはり一番大事な仕事だと思います。技術指導者は、そういう経験者を探しているのか。あるいは学校なんかで研究しておられる人がいるのか。あるいは現地の方でできるだけやっているのか。この辺はもっとこまかい数字を言わぬと困る。大体でいいです。
  150. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) われわれといたしましては、一応これらの専門家は、海外協会連合会あるいは海外移住振興株式会社の職員の中にできるだけ入れるようにしているわけであります。数と言われるとちょっと申し上げにくいのですが、非常に数が少ないということは言えます。そういう意味におきまして、むしろこれからそういう人を養成していく。それで外務省にも、戦前、ブラジルとかパラグァイの移住に関係した者が今移住関係をやっておりますが、こういう者、あるいは農林省でも、戦後南米の移住地を、従来の知識を基礎にして研究して、熱帯農業に相当知識を持っておる人、こういう者がごくわずかあるわけであります。これらをできるだけふやしていくこと、それから高等農林学校あたりの先生方で南米に関心を持っておる方がおられます。こういう方にもできるだけ行ってもらうようにいたしておりますが、その数は非常に少ないということは言えると思います。
  151. 大和与一

    ○大和与一君 この渡航者の内地での指導ですがね、これはもう一般旅行あっせん業者が受け付けられるわけですね。そうすると、そのことによって事前調査なりその他の連絡なんかが不十分だということは実際上ないか、あるいはこれは一本にしたほうがいいのか悪いのかちょっとわかりませんけれども、そういう点、役所の窓口、あっせん所の窓口、あるいは県の窓口、いろいろあるんですが、しかし、その渡航のいろいろな仕事は一般業者ができるんでしょう、これは。そういう点はどうなんですか。
  152. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 旅行あっせん業者が実際上ブラジルの在留邦人と連絡いたしまして、雇用のあっせんをして、出て行くというケースがございまして、これは海外協会連合会に申請いたしまして、渡航費の貸付を受けて行っておるわけであります。まじめな者も相当おりますが、同時に、非常に弊害の起こっておるのもございます。われわれといたしましては、これの扱いはよほど慎重にやる必要があると考えております。今度の移住審議会あたりでも、移住基本法の制定におきまして、この問題はあらゆる角度から検討したい、これをもっと活用しろという意見と、これをやめてしまえというような意見もございます。国際的にはILOなんかの条約を見ておりますと、許可制にするのが原則となっているようであります。許可制としてこれを認めていくか、あるいは全然これを海協連に入れてしまうか、今後十分検討を要するのではないか、さしあたりましては、外務省といたしましては、出先公館及び海外協会連合会の現地支部で、これらの呼び寄せ者の身元をできる限り調べまして、信頼のできる移住者の呼び寄せでなければ取り次がないように注意いたしておるわけであります。
  153. 大和与一

    ○大和与一君 それは実際に今まで申請をして、それを拒否された例がたくさんありますか、どれくらい。
  154. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これはどのくらいと申せないのでありますけれども、現地の公館において実はそれは見ておりますので、その統計は出ておりません。しかし、信頼のできない者、あるいは前に扱い業者といいますか、お世話した者で非常にふまじめな者という場合には、厳重な注意をするというようなことをやっております。
  155. 大和与一

    ○大和与一君 やはり行ってしまってからの話ですね。大体一応抜け穴があるのだから、今のお話では、今度の審議会ですか、基本法にもからむけれども、ぜひなんとか考えたい、これでよろしいのですね。そういうのがあるために、サンパウロのガルボンブエノというのですが、日本の山谷のドヤ街みたいなものがあって、そこに日本の青年なんかたくさんおって、旅館なんかがあって、これはいわゆる愚連隊が集まっているそうで、その事実はありますか。
  156. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) その事実はございます。これらの者は、大体政府の渡航費貸付を受けないで個人呼び寄せで行っておるわけであります。それの世話を旅行あっせん業者がやっておるということがございます。
  157. 大和与一

    ○大和与一君 ちょっとこれは変なことを聞くのですが、旅行のパスポートの永住権への切りかえがやみでできるのじゃないですか。ブラジルで四千円から一万円くらい出したらデスパンシャンテ、永住権公認手続人に金を払ったらできるという、あまり公にしていいかどうか、悪かったら消してもらったらいいが、そういう事実があるのか。
  158. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これは南米全般につきまして法律上は厳重にやることになっておるのですが、実際これの適用を弾力的にやっておる点は、個人的にやっております移住関係団体だけじゃなくて、税関でもその他でも、ございます。ある程度はございます。
  159. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、さっきのお話の、呼び寄せ移民に対する審査を適確にやる、こうすれば今のも自然になくなるのか、そうでなくて、これは別の話ですかね。
  160. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 政府の渡航費貸付でなくて、自分で呼び寄せられていく場合は、旅券の申請のときにできるだけ注意しております。たとえば、御婦人が何かの高級な仕事で行くというようなことで御婦人だけの渡航申請があった場合、これは少し注意しなければならないということで注意してみますと、何か料理屋へ行くというようなことでございまして、とめたというケースはございます。しかし、渡航の自由は憲法で認められておりまして、相手の国がこれを許す限り、われわれとしてとめるわけにいかぬという点で、非常に悪質な者が出ていく場合に苦労しているわけでございます。
  161. 大和与一

    ○大和与一君 そういう困った現象が起こっている場合に、戦前には領事館に警察があったわけですけれども、今はないんですね。これはまあもし違っておったら訂正してもらって、邦人の取り締まりというか、その力の上の取締まりは、その国に全部まかしてあるわけですか。
  162. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 昔満州及びシナにおきましては領事警察権を持っておりましたので、そこのところは非常にしっかりとできたわけです。南米では領事警察権はございません。相手の国の主権が厳重に守られておるわけでありまして、われわれはこれに容喙することはできないわけであります。非常に悪質な者の送還というようなことも戦前ずいぶん問題になったことがございますが、なかなかできなかったというがの実情であります。戦後におきましても、その点は同様でございます。
  163. 大和与一

    ○大和与一君 あとから詳しく聞きますが、海協連あるいは移住振興株式会社、ジャミックといいますかね、こういうものに対する政府の指導方針、これは大臣はもう政府の中のいろいろな悪いところを反省されたのだけれども、こういうところのつながりにおいて、相当私はいろいろなことがあるのじゃないかと思うんです。それを悪いところは悪いと言ってもらって、それをどういうふうにして直すということも合わせて、前進した御意見を承りたいと思います。
  164. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) この点は、何といっても、送り出しますときに、渡航費補助の移住者につきましては、送り出しますときに厳重な選考をすることと、それからやはり訓練といいますか、たとえば語学講習とか、こういうものをやはりもっと強化しなければいかぬのじゃないかと思います。それから自費で呼び寄せられていく場合、これは旅券の面でわれわれ注意しておりますが、向こうへ行ってしまいますと、ブラジルの場合ですと、ブラジルの警察権のもとにあるわけで、たとえば、先ほど先生がおっしゃいましたガルボンブエノにおける二世の愚連隊——新来と言っておりますが、戦後行なった愚連隊との大騒動、殺し合いに似たようなことがございましたときには、サンパウロの警察は見て見ぬふりをしているということで、われわれとして非常に実は困ったようなことでございまして、こういう場合、中へ入って、適当の時期にあっせんをする、そうして、これをできるだけそちらのほうに参らぬように指導するわけでありますけれども、何分ブラジルの国内のことでございますので、われわれのほうはあまり干渉はできない。ただ、こういうようなものがまぎれて入っておりますと、ブラジル政府としても、日本の移住者に対する考え方が変わってくるという点で、われわれとしては非常に心配しているわけであります。
  165. 大和与一

    ○大和与一君 大体語学力ですね、これはやはり一人前でなければだめでしょう、ちょっとできるぐらいじゃ。まず一人前に認められたパーセンテージ、それから年令はどうですか、若い人と年寄りと、大まかでいいですよ。
  166. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 移住者の年令を申しますと……。
  167. 大和与一

    ○大和与一君 いや、今の指導者というもの、海協と移住振興の。
  168. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これに二十六、七才から四十、五十までの働き盛りの方々が海外協会連合会の本部から現地に行っております。
  169. 大和与一

    ○大和与一君 語学。
  170. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 語学力は残念ながら十分でない。一部にはしっかりした者もございますが、十分でない。この点は日本全体で語学力がある人が非常に少ないということで、われわれとしては今後強化していかなければならないと、非常にその点痛切に感じておるわけです。
  171. 大和与一

    ○大和与一君 少しえげつない言葉だけれども、移民を食う在外機関というか、こういう言い方。もう一つは移民を食う旧移民という事実があるような気がするのですが、この点はどう考えますか。
  172. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これは非常にデリケートな問題でございますが、当事者は移民を食うつもりではないでしょうけれども、結果的には移住者に非常に迷惑をかけるというような旅行あっせん業者、あるいは現地におきまして雇用移住の場合に、非常に低賃金であるというようなことで、移住者のために好ましくないというようなものもございます。こういう点につきましては、われわれといたしましては、渡航費貸付の場合に、賃金があまりに低いのはこれを認めないというようなことも最近から始めております。
  173. 大和与一

    ○大和与一君 その中の一つの例として、コチア青年移民というのがありますね、これの内容は御存じですか。契約はどうなっておりますか。それは実行されておるか。
  174. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) コチアの呼び寄せ移住は、ブラジル政府から計画移住として認められまして入っておるわけであります。ただ、これの賃金が非常に低いということが従来から問題になっております。これに対しまして、コチアのほうはさまった賃金以外に小づかいも与えれば生活費も出すし、独立の場合には援助するのだ、こういうことで、これを正当化しておられるのですが、いわばコチアの移住者に対するやり方は、何というのですか、戦前のでっち式な考え方で、現在の日本には合わないとわれわれは思っております。そういう点で、これを一挙に改めることはなかなかむずかしいのでございますが、徐々に日本の雇用契約式なやり方に変えてもらうように努力しております。一般の呼び寄せにつきましては、最近各省とも相談いたしまして、月八コント半以下の賃金による呼び寄せば認めない。認めないというのは、渡航費を貸し付けないというようなことをやりまして、コチアの場合は、現在これは青年を訓練するのだということを言っておりますので、それではその訓練なり、これからの独立にできるだけ誠意を尽くしてもらうということで、一応コチアの呼び寄せの賃金については、われわれは今干渉はしておりませんが、将来これは十分注意を要するもんだと思っております。
  175. 大和与一

    ○大和与一君 これは契約が四年間で、月給が約千円。ブラジルの最低給料は、大体サンパウロ付近で千三百二十円だ。これ以下ですね。給料は全然くれぬそうですよ。石けんとかタオルとか、ほしいものを買ってやる。そうすると、四年間とてもしんぼうできないものだから逃げていく。そうすると、さっき言ったように、愚連隊になったり、自殺したり、こういう青年もぼつぼつおる。そうなると、そういうことはおそらくあなたもほんとうは知っておって知らぬ顔をしておるのかもしれないが、そういう場合に、聞いたんだから、一体どうしたらいいか。積極的にそれの対策をおやりになる意思があればできるんじゃないかと思うのですが、そういう点はつながりがありませんか。
  176. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これは、われわれもう従来たびたびコチアのほうには申しております。コチア側としては、すでにりっぱに独立したものも相当あるのだということを言っておるのですが、さっき申しましたように、前近代的な雇用方式であって、でっち式な考え方でやっているので、これを改めさすことを考えているのですが、コチアの呼び寄せは、日本の農業協同組合が日本の代表としておられまして、日本の農業協同組合及びブラジルにおける非常な勢力を持ったコチア、その二者を相手にしてわれわれ制度を変えていかなければいかぬわけでありますので、非常にむずかしいのでございますが、だんだん改善を促進したい、そういう方向に実際進みつつあります。
  177. 大和与一

    ○大和与一君 ジャミックですか、ジャミックのバルゼア、アレグロ入植地で最近三年間旱魃ですね。非常に凶作であった。こういうことは事実ですか。
  178. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) それは事実でございます。
  179. 大和与一

    ○大和与一君 だから、やっぱり土地を購入する前に事前調査が十分でなかったんではないかということが一つ。しかし、これはほんとうの天災もありますから、必ずしも済んだことを責めるだけではない。そうすると、一体それに対してどういう対策があるか。たとえば、パイナップルが現地にずいぶんたくさんありますね。そういうものを植える。そうすると、カン詰工場ぐらいは会社で作ってやらなければ、本人たちはできませんから、そういう親切な手を伸ばして、当面の救済策を具体的に考えられるか、もうしておるのか、その点お尋ねいたします。
  180. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 移住会社で現在その対策をやっております。  それで、南米の農業につきましては、旱魃とか霜とかあるいはひょうの害というものはつきものでございます。たとえば、大きなひょうにつきましては、アルゼンチンあたりは年に一回大体ある。二年に一回は確実にある。ブラジルなんかも、五、六年前は全ブラジルのコーヒーの三分の一が霜で枯れてしまったというようなことがありました。したがって、ブラジルにおける農業につきましては、初めからこれを計算に入れていかなければいけない。三年連続の旱魃というのは非常に珍しい例でございますが、これもわれわれは初めから覚悟してやらなければいかぬ。土地の良否とは全然別でございます。これは一例でございますが、三年前に私がブエノスアイレスに参りましたときにも、すごいひょうが降りました。卵より大きなひょうが降りまして、屋根は破れ、自動車はへっこみ、牛は死ぬというようなことでございました。ブェノスアイレスの近くで花及び蔬菜を作っておった邦人はほとんどやられました。このときは、急遽、移住会社の現地の出先の人に救済のための緊急融資をやってもらうように話しました。この出先の係官は、これは申請があってからだと言っておりましたけれども、移住者は申請方式を知らないのだから、会社で作って判こを押すぐらいにしてやるべきであるということをやかましく言いまして、融資してもらうことになって、それならまだ二、三ヵ月かかるということで、現地の邦人がその間のつなぎの融資を翌年やりましたときには、おかげさまで——ひょうにやられたのは日本人だけでない、全部やられたので、金融が非常に適確であったために、かえってもうかりましたというような話を伺いました。こういう点は当然移住会社が積極的にやるべきであると考えております。バルゼア、アレグロにつきまして移住会社に聞きましたら、もうやっているということでございました。
  181. 大和与一

    ○大和与一君 横浜移住斡旋所、大臣もごらんになったと思うのですが、どういうところを見てこられたのですか。その感じは……。家だけ見てきたのか。
  182. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 全体として、少ない予算の中では小ぎれいにできていると思いますけれども、これは全部金に関係してくるわけでございますけれども、それにしても、欲を言えば、もう少しあそこで長く訓練することができるということになりますといいのじゃないかというようなことでございます。さらに、訓練をする人がもう少しおればいい、こういうような感じを受けました。
  183. 大和与一

    ○大和与一君 実は青柳委員と私も行ってきたのです。それだから、どれだけ大臣が勉強したかためしてみたのだけれども、これは副食物が大人一人五十円ですよ。なぜかと言えば、自衛隊並みだと言うのです。どうして自衛隊並みにするのか。自衛隊は若い者で、どっちかというと飯——米のほう。じいさん、ばあさんから子供がいる。しかも、晴れの門出ですから、たった一週間か十日なんですから……。青柳さんも怒っておった。こんなことじゃいかぬ。私は青柳さんに代弁して言っているのだけれども、しかし、一人五十円というのは何とかならぬのですか。こんなことじゃいかぬ。主食も含めて……。短期間で数少ないのだから、何とかめんどう見るということに踏み切らなければならんと思うが、どうですか。
  184. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) われわれも、もっと多くの副食費、及び、できれば主食費まで援助したいつもりでおるのですが、あの副食は防衛庁のほうの兵隊さんと同じレートで実は許されまして、われわれとしては、兵隊さんは非常に数が多いけれども、われわれのほうは非常に少ないので、なかなかそうはいかないからということで、ずいぶん頼みました結果、まあまああの程度になりました。将来はもっとふやしたいと思います。なお、まかない者のほうも苦労いたしまして、できるだけ安くていいものを提供してくれる者を探す。これは神戸あたりは割合においしいものを安く出しておるのですが、横浜はなかなかそこまで行っていないようであります。先日私神戸に行きまして、食物どうですかと聞いたら、移住者は満足しておりましたけれども、横浜のほうはそうではないようで、これはだんだん今後ふやしていきたいと思います。  それから、今大臣おっしゃいましたように、あそこにもっと長くいて、あそこで講習できるように、これは非常に大事なことだと思いますが、これも予算を伴いますので、今後もっと努力したいと思います。
  185. 大和与一

    ○大和与一君 それは、あそこの要求はささやかなものです。主食を国家負担にしてくれとか、雨天運動場を作ってくれとか、地方から来た場合、雨が降るととてもあそこまで行くのがたいへんだから、小型バスを一台——これは買ってしまわなくても、借りてもいいのだから、そんな費用くらい何とかやってやれそうなものだ。医療費の問題も、自分で負担している。薬局があるでしょう。このくらいは負担してやらなければいかぬと思う。それからもう一つ、送別会くらいやれぬですか。酒は飲ましているかしらぬけれども、送別会くらいやってもいい。そういう親心ないですか、局長は。
  186. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 実際は一週間から十日くらいでございまして、あそこにおる間が大体送別のようなあれになってはおります。(笑声)行きますときには、局長あるいはその他の者が参りまして、ある時は大臣まで直接来ていただきまして、送別したわけであります。将来、物質で足らぬところはできるだけ精神でやっていきたいと思います。
  187. 大和与一

    ○大和与一君 まあたくさんありますから、これからひとつ建設省関係に行きましょう。  日本産業開発青年隊は、計画どおりに現地で訓練をされておるかお尋ねします。
  188. 原口隆

    説明員(原口隆君) 私建設省の建設振興課長で、産業開発青年隊の係でございますが、今のお尋ねの件でございますが、私どもの計画といたしましては、大体ことしの予算について申し上げますと、大体百名の南米移住の青年を募集いたしまして、一年間訓練をいたしまして現地に送り込みまして、現地の農拓協のほうに訓練所がございまして、そこでさらに一年訓練をして、自立ないし自立の道に進むということで、われわれとしましては、三十五年、三十六年、三十七年と、ことしも今行っておりますが、大体係官を派遣しまして、現地の様子を見てきた報告によりますと、予定どおりに進んでおるというふうに考えております。
  189. 大和与一

    ○大和与一君 パラナ州のセーラ・ドス・ドラードスというところでしょう。それで、予定どおりやっていると言うけれども、まさか百姓しに行ったんじゃないでしょう。ところが、この写真見てごらんなさい。このとおりみんな豚を飼ったり、キャベツ作ったりばかりしているのですよ。これみんなほんとうの写真ですよ。これは豚、これはきこりのまねしたり、こういうふうな生活をしていますよ。一体それは本旨にもとるのじゃないか。行った人を責めるんじゃなくて、やはり計画性が足りなくて、ほんとうに現地で一年間訓練するといっても、一体何を訓練するのか。その具体的なスケジュールがあるはずです。それに対する予算を伴わなくちゃならない。予算をつけないで、行って、ただ生きておれというのじゃしようがないから、予定の訓練なんかできませんよ、やはり生きているのが大事だから、豚飼ったり、菜っぱ作ったりするほかないでしょう。そういう実情だと思うのだが、明らかに違っておったらはっきり言ってもらいましょう。
  190. 原口隆

    説明員(原口隆君) お答え申し上げます。産業開発青年隊は、内地においてもそうでございますが、趣旨としまして、働きながら学ぶという方針で行っております。ですから、内地の場合も、昼間作業現場で働きまして、五百円ないし六百円の賃金をもらって、それで食費をまかなって、夕方二、三時間がいろいろの訓練を受けるということで進んでおります。向こうに参りましても同じ方式でございまして、働きながら年間の訓練を受ける。この場合の訓練でございますが、一年間向こうで、農拓協の訓練所がセーラ・ドス・ドラードスにございますが、そこでやります趣旨も、まあ内地である程度の技術の訓練をいたしますが、何しろ日本から急に南米に参りますと、気候、風土それから風習というものも違います。そういう点で、一応向こうで一年間そういう開拓の仕事に従事するということは、将来長い目でブラジルに居をかまえる場合においては、貴重な経験ではないかというところから、訓練所には大体二百五十町歩の場所がございまして、それを開墾しながら、そこで食費をまかなって、そういう南米の風土になれる。一年たちますと農拓協のほうで、訓練所のほうで、いろいろ自立の措置を講じてもらえることになっておって、現在、昨年までに、三十一年から三十六年までに渡航いたしました青年の数は二百七名でございまして、ことしの四月にさらに三十三名、今、船に、あるぜんちな丸に乗っておりまして、それが着きますと、大体二百四十名の青年が行っているわけです。  現在すでに向こうにおります二百七名の諸君の実態を申し上げますと、二百七名のうち訓練所を出た者が百二十八名おります。というのは、一年間の訓練を終わって自立で実際に働いているのが百三十八名で、現在訓練所におって、先ほど申しました、いろいろキャベツを作ったり、森林の開拓をやっているのが六十九名でございます。百三十八名の内訳でございますが、建設関係に五十二名就職しております。それから農業関係には五十名、それから商業関係に就職した者が八名、さらに訓練所に残りまして後続部隊の指導、それから訓練所の中にもいろいろ開墾の仕事もございますので、訓練所の中で従事しておる者が二十八名ということです。大体もともとが建設関係に進出するということで出発しておりまして、大体百三十八名のうちの四〇%近くが建設関係に従事するという状況でございます。
  191. 大和与一

    ○大和与一君 生活への努力をすることは私もいいのですが、本来の仕事は、一年間でどういうことをすることになっているのですか。それで器材はちゃんと与えてあるそうですが、私の聞いたところでは。しかし、米とか、副食物とか、ガソリン代とか、こういう運営費はどうもくれていないのではないかと思うのです。そのために、あなたのおっしゃる気持はわかるけれども、食うことばかりが一日の作業になっているのでは、本旨と違うのではないかと、こういう質問をしているわけです。だから、それはそれでやっていいのだから、そのほかにほんとうに建設省としてこの訓練隊に何を与えているのか。そしてそれを技術として現地でなれて身につけながら、今度現地で雇われる、こういう格好になるのではないかと思うのですが、今食うこと以外の本来の仕事はどういうふうなことをやらしているのか、それをお聞きしたいのです。
  192. 原口隆

    説明員(原口隆君) 今の、南米の訓練所で食うことだけに追われて実際の訓練をやっていないのではないかという御質問でございますが、確かにそういう点は見受けられると思います。これは農拓協の経営の問題にもかかろうかと思いますが、たまたま去年ですか、あそこのそばを流れております川がはんらんいたしまして、全然作物がとれなかったというような事態もございます。そういう、経営が相当苦しくなっておるという点で、当面食うことだけに追われて実際の作業はしていないのじゃないか。訓練と申しますか、訓練はあまり重視されておらないのではないかという実態は、私のほうも聞いております。そういう点で、ことし、今、移民船の助監督で長沢が行ってそういう実態も実際に調べてこようということで、今調査に出している最中でございます。
  193. 大和与一

    ○大和与一君 現地での運営費は、私が聞いたところでは、ないらしい。そこで農林省に運営費を出してほしい、こう言ったら、建設省に行け、こういうふうに言われたというのですよ。だから、そうなると、どうもブラジルの奥地まで役所のなわ張り争いがあるのじゃないかと思うのですが、その辺は大臣はあっさりあやまったけれども、現地のほうの役所の間の連絡あるいは緊密さというか、そういう点はやっぱりなかなかうまくいっていないというのが実情じゃないですか。
  194. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 今の件に関して、外務省として御回答申し上げます。この産業青年隊につきましては、昭和三十三年でしたか、農林、外務、建設、三省の大臣の間で青年対策というのが国内的には問題になりまして、農業及び産業建設関係の青年を出すということで始められたのであります。そうして、その場所が、今先生がおっしゃられましたように非常に遠隔なところでございますので、いろいろ不便がございまして、それから運営費あるいは生活費を出すために、自給自足ということで、そうしながら機械の運転をさらに訓練するということでやっておりました。かなり無理なスタートでございました。せっかくこれは始まりましたので、何とか軌道に乗せるようにだんだんと最近努力いたしております。そうしてこれは、今日まで行きますのは、大体農業移住者として行っておるのですが、本来の目的は建設関係の技術者を送り出すということでございますので、日本側におきましては、従来の国内における訓練をもっと高度化してもらうということ、それからブラジル側に対しましては、これは計画移住者として技術者として出すということで、こちらの領事あたりにも話しまして、今後出すものについては、そういうような技術移住者としての計画で出すように努めたいと努力しております。そうしてこの技術研修につきましても、もっとサンパウロに近いところに将来移すようにしたいと思うのであります。今日までのところでは、まだそこまで手が回りません。せっかくスタートしたのですから、できるだけ軌道に乗るように善処していきたい、こう思っております。
  195. 大和与一

    ○大和与一君 今度は違う問題ですが、海外協会の現地の人たちの心がまえといいますか、今、さっきおっしゃったようになかなか全部が十分とは言えませんが、いろいろの人がおるのですが、これはまさか、今ごろ海外に来る人は、昔の一旗組は五十年、百年前の話だから、もうけるつもりで来ているのだ、こんな気持の人はほとんどいないと思うのですが、やっぱりこれはお世話する立場だから、給料をもらってやっているのですからね。そうすると、そういう人が親切が足りぬじゃないか。一体そういう人たちの収入はどういうことなんですか。年寄りは恩給でももらってその上で行くのか、あるいは土地の売買とか、あるいはそういう何というか、中に入って何か手取りがあるのですか、別途収入が
  196. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) ございません。海外協会の与える給与だけでございます。なお三十七年度の予算から退職金の積み立ても認められましたが、従来は退職金もないというような実情で、かなりに待遇が悪かったのでございます。三十七年度の予算で大体二号くらいベース・アップしてもらいまして、まあまあというふうなことになったわけであります。
  197. 大和与一

    ○大和与一君 さっきのブラジルの邦人からこちらに送る金、あるいは貿易による金、その金は相当あると思うのですね。それを一部この移民の問題のために活用するというか、そういうことはできぬものですか。結局は予算にしぼられちゃって、十分な手当ができていないということはたくさんあるわけだから、そうすると、国家の予算からどんどん出してもらえばいいけれども、そうもいかぬ。そうなると、そういう金というものは活用する道はないものであるか。
  198. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) なお、これはよく研究をさしていただきますけれども、私の今の感じでは、やはり送るといっても、これは送る当てがあって送ってきているわけでございますから、それを受けるほうでは、直ちにそれを当てにしたことを考えているのだろうという気がするのでございますが、なおこれはよく研究をさしてみていただかないと、卒然としてお答えして間違うといけませんから。
  199. 大和与一

    ○大和与一君 次は、海外移住振興会社ですね、これが私ちょっとよくわからぬのですが、これが何かアメリカから日本移民のために金を借りたのですか、そういうことで。その金額なり、条件なり、あるいはめんどうくさいことはいいから要点だけ、そうして現在は農業移民以外には貸さないというか、そういうことになっているのですかね。ちょっとその辺少し……。
  200. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 海外移住振興株式会社は昭和三十一年に法律で設置された会社でございます。最初一億七千五百万円、うち一億五千万が政府出資ということでございました。なおそのときアメリカの民間銀行、ナショナル・シティその他バンク・オブ・アメリカとチェース・マンハッタンこの三つの銀行から、向こう五年間千五百万ドルまで金が借りられるという了解がつきまして、そうして今日までで約一千百万円ですか、くらい金を借りております。しかし、もう五年になりましたので、これが最後でございます。これは移住のための運転資金として活用しているわけです。その後政府の出資がだんだん増加いたしまして、現在では二十八億円の資本金です。三十七年度になりまして、さらに五億増資できることになっておりますから、これを入れますと三十三億ということになります。ただ、このアメリカ銀行からのローンは、商業銀行でございまして、支払いが三年ということで、金利が年五分前後でございまして、われわれといたしましては、本年五年になって、この借りる権利はなくなったのですが、商業銀行から金を借りているのではやはり工合が悪い、将来はもっと移住のための長期低利の金融というものを国際的に考える必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えております。これの融資は農業移住者だけではございませんで、移住地における移住地開発のための企業等にも融資する考えでおります。
  201. 大和与一

    ○大和与一君 これは一口約五十万ぐらいでブラジルの金で貸して、現金はドルで返す。それで為替の変動による差額の損は借り主持ちか、そういうふうになっているのですかね。
  202. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 二種類ございまして、ドルで借りる場合と、それから現地通貨で借りる場合とございます。ブラジルの場合、現地通貨で借りる場合には、為替の期限がございますから、ブラジル銀行からいわゆるスワップと申しまして、ドルを積み立てて、それに相当するクルゼーロを借りてこれを貸すということにしているわけでございます。しかし、ドルで借りることもできるようになっているのですが、この点移住者にドル融資ということは非常に負担が重い場合もございます。特に、ブラジルのように為替下落の激しいところでは、そういうことは非常に負担になるというふうに考えまして、われわれといたしましても、何とか現地通貨で貸せるような方法をもっと工夫する必要があるのではないかというふうに思っております。
  203. 大和与一

    ○大和与一君 その利子はちゃんと完済しているのですか。何か事務があまりうまくなくて滞っているのではありませんか。
  204. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 今先生がおっしゃるのは、あるいは渡航前融資のことかと思いますが、渡航前融資というのは、移住者一家族について五十万円まで保証人がある場合——県とか市町村とかあるいは個人の保証がある場合に五十万円まで融資する。これは従来はそのうち三十万円は機械とかその他の資材を買う場合の融資でして、現金として二十万円持っていけるということでございましたが、本年になりましてから、全部現金で五十万円まで持っていけるということになったわけでございます。これにつきましては、支払いは円で返す、つまりドル建ということになっておりまして、これの支払い期限が本年ぐらいから始まるのではないかと思います。あるところではその支払いがむずかしいところも起きるのではないかと思います。
  205. 大和与一

    ○大和与一君 このジャミックかブラジルで四ヵ月くらい土地を買ったのですね。それでバルゼア、アレグロ、そこで相当の土地を買ったらしいのですが、それは全部今どれくらい使われているのか、そしてその使われていない土地は、土地の地味といいますか、そういうものが悪いから売れないのか、あるいはその売った値段が少し高過ぎるのではないか、これはずいぶん、要らぬことをおせっかいに聞くようですが、ついでに聞いておきます。
  206. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) バルゼア、アレグロは、これは全面積が三万六千ヘクタールございます。そうして、確かに今先生おっしゃいましたように、この土地のかなりの大きい部面が地質が悪いということで、現在その二割ぐらいを造成して分譲している、他の地質の悪いところにつきましては、牧畜とかその他の利用方法について会社のほうで検討している、研究しているというのが実情でございます。そういう意味において、この移住地の購入について非常にまずかったのではないかというようなことは、従来からも言われておるわけですが、われわれといたしましては、地質の悪いところの有利な活用方法について全力を尽したいと思っております。
  207. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、一ヘクタール二万五千円くらいでいいやつを三万円くらいで売り飛ばしたとしたら、これは買った人は損をしたというわけですね。そうすると、その土地は悪くて売れないから、その価格が入っておったりなんかすると、少しうまくないのですがね。そういう点は、売ってしまってから、どうも実際は少し見通しを誤った、こういう結果論になったのかどうか。こんなものは相当事前から見ておれば、大体専門家の人がきめるのだから、おわかりになると思うのですがね。その辺は、二十五ヘクタール六十五万円という値段をきめてしまって、そうしてやったのだろうと思うのです。その辺はどうですかね。
  208. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これについては、今分譲いたしましたものは、特に悪いほうを考えて高くかけているということは言えないわけであります。それから、悪いというのも、利用の方法によって、あるいは牧畜とかその他のことをやれば有利に利用できるというようなこともあり得るかと思います。それからもう一つは、持っておれば全般としては土地の値が上がっていくということも一つの傾向でありますので、最後になってみなければなかなかわからないというのが実情ではないかと思います。
  209. 大和与一

    ○大和与一君 それが、そこで作物ができて、カンポグランデという市場がある。ところが、そこに沖繩の人たちがたくさんおって非常に根強いので、なかなか売れないのではないか、こういう心配を現地の人がしているのですが、どうですかね。
  210. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) こういう奥地へ参りますと、日本人が少し固まって同じような野菜とか何かを作りますと、過剰になるというような心配もございます。そういう点は十分指導をよくしなければいけない。ただ、従来見ておりますと、日本人は一人が成功するとみんな同じことをやっていく。少し分けてやればいいのだけれども、なかなかそれがやれない。トマトを作ればみながトマトを作るというようなことがございまして、こういうところの指導がなかなかむずかしいのであります。こういう意味において、よき指導者というものをこれから養成していくことが非常に必要になってくると思います。
  211. 大和与一

    ○大和与一君 そこで、やはりここで問題になるのは、日本から手動耕耘機ですかね、ああいうふうなものを持たしてやったのでしょう。そうすると、放牧地帯だから地質がかたい。そこを一ぺん大型トラクターで掘って根株を掘り起こして、それからやっておる。そんなところで手動耕耘機、こんなものを持たしてやって、一台六十五万円もするのだ。そのほかサントスで入国の税金が要る。それからサントスからバルゼアまで約一千キロの運賃が要る。そこへ持っていったら何にもならないから、かくのごとく雨ざらしになっている、こういうわけなんだね。こういうことを今でもしていますか。
  212. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) しておりません。実はわれわれも、そういう点で移住者ができるだけそういう機械や何かを持っていくのを押えているのです。特にブラジルにつきましては、ブラジル国産で相当農業機械ができております。したがって、新しいものを持っていきますと相当高い税金を取られる。船賃も、超過いたしますと高くなります。ですから、できる限り、そういうものを持っていくのを押えておるのですが、なかなかそれが徹底しなくて、つい持っていきたくなっているというのが実情でございますが、最近徐々に、これはあまり持っていかぬように徹底が浸透しつつあるのであります。
  213. 大和与一

    ○大和与一君 今、やや普通の状態になるのは一年くらいかかるようだから、ひとつ米でも作ってみようというので、配給が少ないから米を作った。そうすると三ヵ月目にようやく三粒か四粒の稲穂ができて、地元の海協連の人ががんばれがんばれと言っている、こういう実情だ。こんなことではいかぬので、やはり適切な指導をしてもらいたい、こういうふうになる。それからまた、このサウバーという大きなアリがおってどうもうまくいかぬ、薬をくれと言ったら亜砒酸を使いなさい。こんなものを使ったらだめになってしまう、植物が。そういう指導をしている。だから、あなた方としてはだんだんよくなると言うけれども、法華の太鼓じゃないけれども、だんだんよくならぬと困るけれども、そういう点を率直に認めていただいて、私は建設的な意見を言いたいので、天下に示して、しかも、現地の人には、これだけニカラグァとかドミニカなんかのように政治的な社会的な抽象的な取り扱いもないようですよ。私はブラジルなんか一番いいと思ったのですが、幸いにして友人がこういう実情を見てきたから、これは率直に言ってやはり今後うまくしよう、こういう意味で言っているのですから、この点は十分理解していただきながら、今言ったようなことがあるということをよくあなた方承知しておるかいないか知らぬが、なお一そう現地を調べてもらいたいと思うのです。  それから次は、アマゾンの問題です。これはどうもブラジル政府は大体南のほうはあまり移民はしたくない、だいぶ人間がおるから。それで北のアマゾンのほうにはいないから、ぜひ入れたい、こういう方針だそうですね。北部のほうが中心であって、中南部はこれは大目に見ている、こういうのですか、そうでもなくて、はっきりしているのですか。
  214. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) そうとも言い切れませんが、やはりブラジルとしては、経済開発を頭に入れて移住を考えております。そういう意味において、ブラジルの移住計画では、アマゾンとかあるいは北東部の移住については相当力を入れているということは言えます。ただ、実際数におきましては、中部のサンパウロ、南のリオグランデ・ド・スールとか、こういう地域の農業移住も数においては相当多いのであります。これもブラジル政府としては歓迎はしておるのであります。
  215. 大和与一

    ○大和与一君 これはやはりアマゾンに入る場合に、事前調査というのはやはりやかましくお願いしなければいかぬけれども、これはどこまで成功するかわからぬけれども、海協連の人とブラジルの政府の担当者と二人くらいできめるのではないだろうか。ドミニカも大体そんなものではないだろうか。こういうのではやはり不十分なので、やはり事前調査が一番大事なんですから、この点は念には念を入れて、そういうふうなきまり方がしているかどうかを調べてもらって、そのようではやはり困る、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  216. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) その点は、先生のおっしゃいましたように、終戦早々、戦後移住再開早々におきましては、アマゾンの非常に奥地、ばらばらのところへ移住者が入った。十家族とか、五家族とか、非常に少なく入った。それが数が少ないし勝手がわからぬ、ずいぶん苦労したということは確かにございます。そういう場合は、一々大きな調査団を出して徹底的に調査をするということはできない。しかし、それは小さい町でありまして、その町の野菜とかその他のものを日本人が補給するのだという形で、現地の関係者がブラジルの政府の人と一諸に行って見ていくというのが実情でございます。最初ずいぶん苦労いたしましたが、最近は大体みな安定してきております。われわれといたしましても、少ない数でばらばらに行くのは確かにまずいと思うのでありますが、これからは、すでに行ったところはできるだけ数をふやして、これが点が線になるように指導したい、こう思っているのですが、実際はまだまだ、点が点のままで、ずいぶん足りないところもあるわけであります。海外協会の現地支部の援助を強化いたしまして、こういうところにつきましては、わずかな家族でもトラックを与えるとか、その他の援助でも、できるだけ強化していきたい次第であります。
  217. 大和与一

    ○大和与一君 いい話は私はあまりしなくてもいい、ここでほめても仕方がない、あまり前のことだから。やはりいろいろよくないことをお願いしなければいけない。たとえば、アマゾン川の支流のリオ・ネグロという川の対岸のビラビスタ、ここは一九五四年に約百二十家族入った。現在は二十家族くらいしかいないようです。そして一九五五年に一世帯当たりゴムを三千本くらい植えております。これでもう七年くらいたっているわけです。僕の友人が一九六一年にそこへ行ってゴムの木に傷をつけたけれども一滴も出ない。これはやはりそういうことも、日光の光が強過ぎるとか、あるいは土壌が悪いとか、継ぎ木や耕作の方法が悪いとか、営農資金もないとか、いろいろな悪条件があると思うのですが、ただ、やはり入る前に、経営の問題ですか、完全なものはありっこないのですけれども、そこはやはり事前に専門の人が行ってわかって、そのままをちゃんと言ってやって、そして入っていく。どうしても悪い場合は、やはりまた違う方法考えてやる。それくらいのことは、やはり責任持ってやらなければならない。それを、やはり海外協会だから、政府と違って責任が半減だ、あるいは少しルーズになっている、こういうことなのか。役人であっても、あの辺まで行ったら人跡未踏で、日本の国がすっぽりはまるような国だから、どこへ行ってもわからないから、仕方がないので適当にやるのか、その辺の指導は一体日本からちゃんと根っこまで届いているのかどうか、それを聞きたい。
  218. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 今先生のおっしゃいましたビラビスタに、私自身は一昨年行きまして、移住者にも会って参ったのであります。そこは最初は、今おっしゃったように、相当な数が入って脱耕したのです。しかし、現在は非常によくやっております。今のお話は、だれから聞かれたのか存じないのですが、私の行きましたときには、脱耕した人は非常に軽率であったということを、残った人が言っております。そして脱耕したあとは土着民が入って、残った連中としてはむしろ非常に困るという、日本人がいてくれたほうがいいんだということを言っておりました。それから営農といたしましては、あそこでもコショウを作っております。コショウは河口で耕作するよりもこちらのほうがよくできる。ガラナという飲みものになる木の実でありますが、これの栽培も大体めどがついたというようなこと、それから食べものの染料になるイルクーという植物を植えている。それで非常に意気軒高たるものでございます。ただ、最初におきましては、アマゾンの支流でありますが、川へ行くまでの間の道路が十分でなかった。それが一番問題でありました。二、三年前から州統領が非常に道路の建設に力を入れまして、りっぱな道路ができましたので、非常に有望なんだと言って、現地へ定着しておられる方が私に話して、数件私実際の営農も見せてもらい、みな集まったところでお話しをしたのでございます。ですから、悪いと言われたのは、あるいは脱耕されて今どこかほかへ行っておられる方が言われたのか、そのときも、脱耕してまた戻ってきた人も一、二件あるようなお話であります。
  219. 大和与一

    ○大和与一君 これはブラジル政府もアマゾン地域にうんと行ってもらいたいという、幸いに非常に積極性があるから、できるだけ政府からも協力してもらうということをどんどん私はやってもらいたいと思います。  ちょっと大臣にもう一つだけ。こんなふうなわけで、私はやはりよそへ行っても割合に体裁のいいことを言っているけれども、もっとどぎついこともあるけれども、やめてもいいが、やはり役人だけではなくて、参議院の外務委員あたりに現地を見せてくれぬですか、そういうお気持大臣にありやなしや、これが大臣への最後の質問であるわけです。
  220. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 議員の皆さんが海外へおいでになって御視察になることは、非常に私どももけっこうだと思って、いらっしゃいます場合には、できるだけの御便宜を現地においては計らいたいと思います。どういう形でいらっしゃるかということについては、議員のおきめになることでございますから、私どもはその視察を歓迎するということは申し上げたいと思います。
  221. 大和与一

    ○大和与一君 それはあたりまえで、大臣はあっせんをやらなければいかぬ。こっちがきめたら行くのは普通の話だから、そこら辺をお考えをいただいて、広く正確な実態を知ってもらうことがいいのじゃないかと思いますので、その点は要望しておきます。  ちょっと局長、ひょっとしたら古い話になるかもしれないけれども、パラグァイの移民ですね、ブラジルの国境ですが、いわゆるジョンソン耕地、あそこへの移民、あのことをちょっと、あれは日本の移民がたいへんなひどい目にあったのじゃないかと思います。その辺少し聞かしてくれませんか。
  222. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これは三年前ぐらいまではわれわれの頭痛の種だったのです。このジョンソンという人の耕地へ契約移住者のようにして行きまして、働いていたわけです。ところが、その賃金を十分払ってくれないというようなこともございましたが、実際は、ジョンソンから金を借り過ぎている人もずいぶんあったというようなこともございまして、そうしてとうとうこのジョンソン耕地は破産になりまして、それからパラグァイ政府も中へ入りまして、少し離れたところに移住者が移った人もございます。これはブラジル国境に非常に近いものですから、ここで作ったものは全部ブラジルに売れるということで、パラグァイの他の移住地、アルトパラナとかその他よりもむしろ一番景気のいいのがこのジョンソン耕地になっているのです。つい三年前までは実は一番頭痛の種だったのが、そういうふうに変わったということが言えます。それでその会社から払ってもらわなかったというような状態であったのは、土地をもらうとか、あるいは結局十分に報償を支払われて、今一番景気のいいところということになっております。
  223. 大和与一

    ○大和与一君 ジョンソンというアメリカ人は、テキサス出身ですか、ほんとうに悪い人だったらしいのですね。たとえば、ブラジルのコーヒーを持ってきて袋に入れかえて売ったり、そんなことをしたのじゃないですか、そういう写真もここにありますよ。
  224. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 私はよく存じないのですが、経営が非常にずさんであったように聞いております。
  225. 大和与一

    ○大和与一君 そういうふうにひどかったものだから、移民がおれなくて、逃げた人がいるんでしょう。そういうことはほかにもあるかもしれません。そういう場合に、ドキュメントは一体どうなるのですか。無籍者になるのですか。
  226. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) それはジョンソン耕地が清算されるまでは全部そこにいたのです。非常に離れたところでございまして、ほかへ逃げようもなかった。それから実際上は賃金が払ってもらえないといいながら、間作は許されて、自分の計算で間作をやっておりましたし、賃金は払ってもらわないといいながら、一部の日本人は賃金以上に借金しているというようなことで、全体としてはそれほどジョンソンは日本側に不義理はしておらないのです。しかし、われわれとしては重大問題で、まじめな移住者にとっては、債権の問題であるということでパラグァイ政府に申し入れまして、パラグァイ政府が中に入って、日本人に有利な解決方法がされたのであります。これは日本人だけでなく、ほかの国民も若干入ったように聞きます。全部移住者側の利益になるように解決されました。
  227. 大和与一

    ○大和与一君 それは、やはりその移民が日本から行く場合に、日本国内で募集された内容の中に、たとえば文化住宅があるとか、あるいは病院があるとか、医療施設とか、そういうふうな話やら、えらいいいことばかりたくさん言って、それで募集して行ったんじゃないですか。文化住宅というのは、これです。こんなバラックだ。ところが、サボテンが出る。こんなところはあまりできないですよ。こういうところでしょう。その辺はどうですか。そんな、局長の言うのは、日本から行った人がそうひどい目にあってないと言うのですか。
  228. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 今は非常にパラグァイでは一番景気がいいですね、できたものはすぐブラジルへ売れますから。それからジョンソン耕地の移住者は、日本から直接に行かないで、ブラジルからあちらに行ったように聞きます。
  229. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、ジョンソン耕地だけじゃなくて、ほかでもやはり雇用条件が合えばドキュメントは預けるわけでしょう、パスポートとか。それが、もしも今度出ていく場合に、どこかそこがいやになってやめていった場合には、それをもらっていかなければまた無籍者だね、そういう人がおるんじゃないですか、実際に、サンパウロとか、どこかあの辺に行ったら。日本人にそういうところで世話になったり、そういう人がおりませんか、一人も。
  230. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) ちょっと正確には覚えてないのですが、今のジョンソン耕地の場合は、結局入りますと、さっそくあすこの酒保というのですか、そこで生活物資とかあるいはその他のものを金を借りて買うというような、つまり債務が先に発生するものですから、多分旅券を預けておいて、勝手に逃げ隠れさせないようにということではなかったんかと思います。しかし、その他の移住者、ことに日本人が日本人を雇用するという場合は、あまり旅券を預けるということは聞いておらないのです。
  231. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、移民の問題で強制送還なんかまずないですか。
  232. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) ボリビアの場合ございます。これは非常に乱暴を働いて、そうしてピストルをぶっ放すとかいうことがございまして、ボリビア政府から強制送還の措置を講じられた。実際は本人が、その結果自分は日本に帰るということで、国援法の適用を受けて帰りました。
  233. 大和与一

    ○大和与一君 ややもう結論に近くなりましたが、私はやはりまあ外務大臣が率直に役所間のなわ張り争いを、これを認めたことは、たいへんな、あたりまえのことだけれども、りっぱなことだと思う。それでここだけでもそういうことは言わなければならぬが、海協連とか振興会社とか今度はあなたのなわ張りで、ここへ行かないからといっていいかげんにやらないで、これは大臣の趣旨を体してやらないと、幾ら大臣がここで意気ばって済まぬ済まぬと言っても、国民に通じない。その点を私はやっぱり具体的に、やや具体的な、こういうふうな指示をした、こういう指導をしたということを、できたらひとつ要点だけでも紙に書いてもらいたい、従来と違うところを。そうして今までの質問でおわかりになったように、やっぱりこれは不十分な点がたくさんあるから、人間のことだから全部いいとは言えぬけれども、たくさんあるのだから、そういう点はよほどやっぱり反省せぬと、現地へ行ったら僕ら聞きますよ。あるいはだれかが言ってくるのですから、幾らうそを言っても最後にはわかるのだ。そういうことのないように、特にこれはアウトサイダー、傍系会社、そういうところに十分重点を置いて、人の選択、質の問題ですね、あるいは親切心とか、そういう点に十分に私は配慮をしてもらいたいと思う。やっぱり全責任は、さっきも言ったように、外務大臣がこういうふうに明確におっしゃったのだから、一移住会社の外地派遣員といえども本部だけにつながっているのではなくて、外務大臣が全責任を負うと言うのだから、その責任の分担を覚悟してもらわぬと、移住問題は今後もやっぱりほんとうにすっきりしないと、こう思いますので、その点を十分ひとつあなたからも現地へも伝えていただいて、やっぱり日本の国の恥にならぬように十分努力してもらたい、こういう建設的意見を付して、きょうは私の質問を終わります。
  234. 木内四郎

    ○木内四郎君 だいぶ時間もたちましたが、この際、海外技術協力事業団法案につきまして、条文について二、三お伺いしておきたいと思うのです。  三十四条の二項によりますと、「外務大臣は、……あらかじめ当該委託業務の対象となる事業を所管する大臣協議しなければならない。」、こういうようなことを書いてあるのですが、これはどういうような大臣を予定しておられるのか、さしておられるのか。  それから、その際、今大和委員からも言われたように、移住行政のほうにおいては、あるいは所管争いとかあるいは責任の所在の明確を欠いている場合がいろいろあったというようなことである。そのために、いろいろな弊害があったようですが、そういう結果を来たすおそれがないだろうかどうだろうか、その点について伺っておきたいと思うのです。
  235. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) この技術協力につきましては、関係各省が非常に多数に上りまして、大蔵大臣は、事業団の特殊な性格から、特に別の条章で大蔵大臣との協議事項は明記されております。この第二項の「あらかじめ当該委託業務の対象となる事業を所管する大臣」との協議と申しますのは、通産、農林、厚生、労働、建設、運輸、科学技術庁等々、まだほかにも出て参りますが、最も関係の深いところは、これらの大臣でございます。
  236. 木内四郎

    ○木内四郎君 今のような、所管争いとかあるいは責任所在の不明確というようなことを来たすようなおそれはないでしょうか。
  237. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) 監督を外務大臣一本にしぼりましたので、責任につきましては外務大臣がすべて負うということになっております。しかし、この事業を円滑に運営していきますためには、外務省が独走することはできませんので、ただいまのような関係大臣協議をしてやっていく、こういうことになっております。
  238. 木内四郎

    ○木内四郎君 それからこの第三章におきまして、運営審議会ですか、こういうものを置くことになっておって、十九条で「学識経験を有する者のうちから、」その委員を任命するというようなことになっておるのですが、それは今伺った所管の大臣が非常に多いから、そのいろいろな事業に関して学識経験を持っておるものから選ぶことになるだろうと思うのですが、大体どんなところを予定しておられるのですか、どういう方面を。
  239. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) 実は、当初はこの運営審議会の委員を大体二十五名と予定したのでございます。それはただいま申し上げましたように、関係各省が非常に多いということと、関係各省ばかりでなくて、できるだけあと民間、いわゆる財界その他民間の学識経験者にもこの運営協議会に入っていただきたいという意図のもとに、二十五名と予定したのでございますが、そういう前例もございませんし、あまり多くなっても運営の円滑化を期しがたいということで、従来の例ではほとんど最大限と言われております十五名以内ということに食いとめたわけでございます。この委員をだれにお願いするかということにつきましては、実はまだ具体的に検討する段階に立ち至っておりませんが、できるだけ関係各省と民間と両方から入っていただきたい。ただし、関係各省につきましては、理事を入れるとか、あるいは往復切符で部課長を入れるところは御遠慮していただくというふうに考えております。
  240. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから資本金の問題ですが、第四条ではきわめて少ない二億円ということになっておりますが、これだけの大きな事業をするのに、資本金二億円じゃはなはだ少ないと思うのですが、その二項で、「必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、事業団は追加して出資することができる。」と、こうなっておるから、この追加出資は予定しておられるらしいのですけれども、これは毎年少しずつでも増額していこうという計画ですか。
  241. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) 当初この事業団の資本金につきましては、実は、この十倍ばかりの二十億ということを考えたのでございますが、それはジェトロ方式で、その資本金の果実で管理費をひねり出すということを考えておったからでございます。その後、大蔵省との折衝の過程におきまして、一般管理費は、別に交付金として八千四百万つけてもらうことになりましたので、したがって、その一般管理費を生む資本金は必要がないということになりまして、さしあたり、事務所、それから研修施設の建造に充てるために二億円の資本金をつけてもらいました。しかし、将来におきまして、さらに研信施設を拡張する、あるいは宿泊施設の建設というような必要が起こりますれば、これはまた増資をしてもらう、あるいはまた管理費の一部を果実をもってまかなうということになりますれば、ジェトロ方式の資本金もつけていただくということになろうと思います。
  242. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうすると、この三十五条にある「事業団の業務の運営のために必要な経費の一部に相当する金額を交付する」、この交付金を八千四百万円、ことしの予算にそれだけ計上してあるのですが、この八千四百万円というのは非常に少ない金額ですけれども、この八千四百万円と、それから今の二億円、これは使うところがいろいろあるようだけれども、それでまかなっていかれると思うのですけれども、それで一応支弁して大体足りるというお見込みですか。
  243. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) ただいま御指摘の二億円と交付金の八千四百万円は、事務所、研修施設及び一般管理費でございます。事業費につきましては、約十億ばかりのものがついておりますので、この一般管理費は決して十分ではございませんけれども、初年度においては、それで出発をいたそうと考えている次第でございます。
  244. 木内四郎

    ○木内四郎君 伺いますが、十億円というものは、どういうところへ行くのですか。
  245. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) これは法文には出ておりませんが、本年度の予算といたしまして、事業委託費に十億四千三百五十八万円というものがついております。その内訳は、研修生の受け入れ、専門家の派遣で約五億六千二百万円、それから海外技術センター事業の委託費といたしまして三億四千五百万円、それから国際協力事業費というものが、これは業務の二十条の一項の一号の二に書いております、いわゆる「公共的な開発計画に関し基礎的調査を行なう」、これに相当するものでありますが、これが約一億三千五百万円ついております。総計いたしまして、十億四千三百五十八万円でございます。
  246. 木内四郎

    ○木内四郎君 今この法文を離れて、予算のことを御説明になりましたから、この機会に伺っておきたいのですが、そうすると、この海外技術協力事業団関係の予算として、資本金と交付金とそれからその十億幾らの予算、それだけですか。そのほかに何かありますか。
  247. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) 国の支出いたしますのは、ただいまの御指摘のとおりでございます。そのほかに若干、この事業が官民合同の事業であるという態勢からも適当であると思われますので、民間から賛助金を集めていきたいと思っております。しかし、この額は、本来の性質——技術協力の性格が政府事業であるべきであるという性格から申しまして、非常に少ないものでございますが、若干はぜひ民間からも賛助会費を集めていきたいと思っております。
  248. 木内四郎

    ○木内四郎君 この法律が通って、そうして予算化もできているのだから、その範囲で海外技術協力事業団をおやりになると思うのですが、その基本政策の重点は大体どういう方面に置かれるのですか。
  249. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) 地域的に申しますと、この事業団の扱います範囲は、アジア、中近東、アフリカ、中南米諸国でございますが、特にアジア地域には重点を置いていきたいと考えております。技術協力の実体でございますが、これは現地から研修生を受け入れて研修をする。また必要な専門家を派遣する。あるいは現地に技術訓練センターを設置し、これを運営する。また公共的な開発計画に関して基礎的調査を行なうということが主たる業務になる次第でございます。
  250. 木内四郎

    ○木内四郎君 じゃ、この程度で終わります。
  251. 井上清一

    委員長井上清一君) ほかに御質疑がおありの方ございませんか。——本日は、これにて散会をいたします。    午後五時二十八分散会    ————・————