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1962-03-01 第40回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月一日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 重政 誠之君 理事 床次 徳二君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 淡谷 悠藏君 理事 川俣 清音君    理事 小松  幹君       相川 勝六君    青木  正君       赤澤 正道君    池田正之輔君       井出一太郎君    井村 重雄君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    倉成  正君       田中伊三次君    中村 幸八君       西村 直己君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       山本 猛夫君    井手 以誠君       稻村 隆一君    加藤 清二君       木原津與志君    小林  進君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    中村 高一君       永井勝次郎君    野原  覺君       穗積 七郎君    堀  昌雄君       山口丈太郎君    横路 節雄君       玉置 一徳君    本島百合子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         労 働 大 臣 福永 健司君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    松井 直行君         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 三月一日  委員石田宥全君阪上安太郎君、辻原弘市君、  中島巖君、玉置一徳君及び西村榮一辞任につ  き、その補欠として中村高一君、小林進君、穂  積七郎君、堀昌雄君、佐々木良作君及び本島百  合子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小林進君、中村高一君、穗積七郎君、堀昌  雄君及び本島百合子辞任につき、その補欠と  して永井勝次郎君、山花秀雄君、辻原弘市君、  稻村隆一君及び西村榮一君が議長指名委員  に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 それではこれより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。  なお、自治大臣、まことに残念でございますが、二度目の実は遅刻でございます。あなたのせいではないと思いますが、事務当局と十分一つ連絡がとれるように、これで遅刻の前科二犯になるわけでございますから、国家公安委員長としても十分御注意を願います。  堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 最初に、自治大臣にお伺いをいたします。  今年度の予算では、参議院選挙費用として二十四億二千四百万円余りのものが計上されておりますけれども、この予算の中には、先般政府が、答申をされ、国会提案をされました選挙法改正についての費用は織り込まれておるのかどうか、お伺い申し上げます。
  4. 安井謙

    安井国務大臣 大へんおくれて参りまして恐縮でございますが、実は私、全然この御質問がある予定を聞いておりませんでした。国家公安委員会に出ておりまして、急に聞きまして上がった次第でございます。その点は御了承を願いたいと存じます。  予算は、一応のものは計上いたしたいと思います。
  5. 堀昌雄

    堀委員 一応のものということは、具体的にはどういう部分について考えておられるのか、特に三十四年に行なわれました参議院通常選挙のときは十七億余りも計上されておりましたのが、今回約七億円増加しておるわけです。その主要なる増加項目は、一体何ですか。
  6. 安井謙

    安井国務大臣 ただいま突然のお尋ねでございますので、今資料を調べまして御答弁申し上げます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 それでは、資料が出てくるまでほかのことを伺います。  一昨日行なわれました選挙制度審議会におきましては、人口アンバランス是正の問題はすみやかに答申をして、しばらく休会になる、こういう御決定がございました。そこで、選挙制度審議会の方では、この総会決定に基づきまして、近いうちに人口アンバランス是正定数是正に関する答申がなされると思いますが、答申がなされた場合には、自治大臣はこの国会定数是正提案をされる意思があるのかないのか、お伺いをいたします。
  8. 安井謙

    安井国務大臣 審議会答申は十分尊重する建前を今でもとっておることは間違いありません。ただ、重要法案取り扱いにつきましては、与党、国会関係者とも十分協議の上はからいたいと存じます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 出されるのか出されないのか、自治大臣のお考えを聞いておるのでありますから、その点をはっきりお答えいただきます。
  10. 安井謙

    安井国務大臣 当然出したいと考えておりますが、これは法案取り扱い上の問題がありますので、国会の都合もございますから、今ここで断言をするわけには参らぬことをお答え申し上げます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、審議会がそれを出して休会になっておるという事実を、あなたはどういうふうに受け取っておられますか。
  12. 安井謙

    安井国務大臣 私どもはまだ休会になっておるとは思いません。今の定数アンバランスその他の問題につきましても、これから御審議を願う過程だと思います。ただ、総会のいろいろなお話し合いによりまして、今後それが終われば、しばらく様子を見るために休会をしたいという御意向があるように思いますが、私どもは、できるだけ引き続いて今後も御審議を続けていただきたい、こういう期待をいたしております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 もちろん、今おっしゃったように、定数是正の問題が答申をされるまでは続くわけでありますが、それが答申をされたら休会になるというこの事態を、自治大臣は、選挙制度審議会意思はどういうことにあって休会になったと理解をされておるかということを伺っておるわけです。
  14. 安井謙

    安井国務大臣 第一次答申をめぐりまして、総会でも、それに対する態度について、いろいろな御議論があったやに承知しております。さらに、そういった問題を通じて、今後審議会がどういう運営をされるか、それがきまるまでしばらく審議を休みたい、こういう御意向のように心得ております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 あなたもあの席上において終始お聞きになったのでありますから、何回も申し上げる必要はないと思いますが、これは新聞紙上にも伝えられておりますように、政府取り扱いに対する不満がこの形になって現われて、政府が誠意のある態度を示さない限りは、しばらく様子を見ようではないか、こういうことになっておると私は理解をしておりますが、あなたはそうは理解をしておられないのですか。
  16. 安井謙

    安井国務大臣 政府答申に対する取り扱いにつきましては、各委員の間に非常な御不満があることは十分存じております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、次に、答申をされて、アンバランス是正の問題が出された、それを、あなた方が答申を尊重するという法律建前と、政府の現在立っております立場からするならば、すみやかにこれを国会に提出するのが当然ではないかと思うのですが、これがもし提案をされないようなことになるならば、あなた方は、一体審議会の諸君に対してどういう形でこたえられようというのですか、私はこの法律案が成立をしました経緯から、ずっとこれに参加をしておる一人でありますけれども、あなたはあの当時の公職選挙法委員会で、答申は尊重するのだということを何回も言われたではありませんか。そうすると、答申を尊重するということは、答申が出されればそれをすみやかに法律として国会に提出をするというのは、これは子供でもわかった道理だと思うのでありますが、これがもしなされないということになるとすれば、選挙制度審議会は今後どうなるかということについて、あなたの御意見を承りたい。
  18. 安井謙

    安井国務大臣 答申を尊重するという建前は一切くずしておらぬわけでございます。ただいま申し上げましたように、答申が出ました際、しかしこの扱いにつきましては、これは国会の運営上の問題もございますから、関係筋とは十分な協議をいたしてきめたい、こういうふうに言っておるわけであります。
  19. 堀昌雄

    堀委員 現在の国民世論は、各新聞紙をごらんになっても、あるいはラジオ、テレビをごらんになっても、選挙制度審議会答申をそのままの格好で尊重する必要があるということを連日書かれておるわけでありますが、大田は、この国民世論というものを現在どう考えておられますか。
  20. 安井謙

    安井国務大臣 答申を尊重するという建前は十分堅持しなければならぬものと心得ております。それを口移しの通り答申と一字一句違わないような形で扱わなければならないかどうか、この点につきましては、政府法案を出す責任者としまして、種々の条件を考えなければなるまいと思っております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 表現と一字一句同じにしろということは、世論も少しもそんなことは言っておりません。答申精神を尊重するかどうかということが、現在世論が大きく要求をしておる点でありますが、あなたは、それでは今度あなた方が手直しをしたのは、答申精神において尊重したと言い切れますか。
  22. 安井謙

    安井国務大臣 答申精神を尊重しておるものと確信を持っております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 大体政府答弁が今のようなおざなりであるということが、国民としては大きな不満だと思いますが、時間がありませんから、先ほどの伺った内容についてお伺いをいたしたい、まだわかりませんか。
  24. 安井謙

    安井国務大臣 何分急なもので、今調べておりますので、しばらく御猶予願います。
  25. 堀昌雄

    堀委員 では、仕方がありませんから次に移ります。  実はこの前大蔵委員会でも、あるいは分科会でもいろいろと論議をして参りましたけれども、日本の現在の経済推移というものはきわめて重大な時点に差しかかっておると私は考えます。  そこで、まず最初通産大臣にお伺いいたしますけれども、三十七年度の経済見通しの中で、輸出入の額は、現在の時点でそのままでよろしいのかどうか、多少修正の必要があるのではないかと考えますが、いかがですか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いろいろ議論のあるところだと思います。しかし一月がどうだとか、あるいは二月がどうだとかということで三十七年の基本の考え方を変えるというのはまだ早計だ、かように思っております。
  27. 堀昌雄

    堀委員 もちろん、それはそういう御答弁かと思いますから、それでは少し具体的な点を伺っておきたいのですけれども、三十七年度の輸入為替ベースで四十八億ドル、通関で五十六億八千万ドル、こういうふうになっておりますが、この通関五十六億八千万ドルが出てきた経緯をちょっと伺いたい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から説明させます。
  29. 今井善衞

    今井(善)政府委員 お答えいたします。  ちょっと今資料を調べましてすぐお答えいたします。
  30. 山村新治郎

    山村委員長 堀君、数字的な問題は、なるべくならば前の日に御要求になっておくと非常にスムーズに参るかと思います。
  31. 堀昌雄

    堀委員 言ってあります。
  32. 山村新治郎

    山村委員長 事務当局、すでにきのうから堀さんから言ってあるそうじゃないですか、それならもう少し勉強して下さい。
  33. 堀昌雄

    堀委員 私は、数字でやることは予告してあります。それから資料皆さんのお手元に配ってあります。決して困らせてどうこうなんという気持でやっておりません。その分は質問時間の外にして下さい。
  34. 山村新治郎

    山村委員長 時間は厳格に守ります。あなたもだいぶ厳格のようですから。
  35. 堀昌雄

    堀委員 政府答弁できない時間までも持ち時間なんて、とんでもないですよ。
  36. 山村新治郎

    山村委員長 そういうことは心得ておりますから、御安心下さい。
  37. 今井善衞

    今井(善)政府委員 お答えいたします。  輸出入関係におきまして、通関為替ベースは常に相当な開きがございます。たとえば輸入にいたしますと、為替ベースが今年度――今年度と申しますか、三十六年度におきましては四十八億八千万ドルという場合におきまして、通関ベースは五十五億ドル程度に相なります。その差と申しますのは、たとえば機械等におきまして、現実に機械輸入されます場合に、為替の支払いといたしましては、延べ払いでもって……。
  38. 堀昌雄

    堀委員 あとはいいです。今通商局長は、為替ベースが四十八億八千万ドルのときに通関が五十五億ドルになると言っておりますが、通関五十五億ドルであなた方の方は計算できるのですか。いいのですか、これで。そうすると、一体何をかけるのですか。かける数を言って下さい。だめだ、こんなことでは。
  39. 福田久男

    福田(久)政府委員 通関ベースにおきましては五十六億八千万ドルでございますが、それに対しまして、為替ベース通関ベースのずれが、御承知のように通常ございまして、八四・数%というものをかけまして為替ベースを出したわけでございます。なお、通関ベースにおける輸入見通しにつきましては、三十六年度におきまする通関ベース輸入見通し参考にいたしまして、その後における推移をも考慮し、かたがた昭和二十九年とかあるいは昭和三十三年等におきましていろいろと経済調整を行ないました、つまり、金融引き締めを行ないました当寺の輸入の水準、原材料使用状況といったようなものを参考にいたしまして、計算されたわけでございますが、一口に申しますと、過去二回における経済調整下におきましては、成長率が割合に低い場合におきましては、原材料輸入等あるいはその消費状況は低いというような過去の事実もございまして、かたがた原単位の使用状況、それらをも参考にいたしまして、かように計算した次第でございます。
  40. 堀昌雄

    堀委員 そんなことは聞かなくてもみなわかっています。  そこで、今、通商局長は、為替ベースで四十八億ドルのときには通関五十五億ドルだと言いましたね。これでいいですか。確認します。簡単にやって下さい。もう説明は要らない、 みな知っているんだから。
  41. 今井善衞

    今井(善)政府委員 五十五億ドルじゃございませんで、五十六億八千万ドルでございます。
  42. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、この通関で五十六億八千万ドルというのは、今の時点で、これが出てきた経緯ですね、あなた方の積算の経過をちょっと言って下さい。
  43. 中野正一

    中野(正)政府委員 御説明いたします。  五十六億八千万ドルと計算いたしましたのは、鉱工業生産が今まで二割程度伸びるというものが、五・五%程度に落ちてくるわけでございます。これは三十二、三年のときを見ましても、鉱工業生殖が三%程度のときには、前年度に対して二割以上通関ベースで減っておるわけですね。しかし、今度の場合は、御承知のように景気調整程度も軽い。それから在庫積み増し量も、この前のときほどないんじゃないかということで計算をいたしまして、原材料につきましては、約二億ドル程度三十六年度減ります。それから機械については、現在の設備投資状況からしまして、なおまだ機械輸入は相当ふえるんじゃないか。それからたとえば銑鉄のごときは、ことし二百万トン程度入れておりますが、こういうものは国内の自給度が高まって、五十万トン程度に減るのじゃないかというふうに、機械食飲料あるいはその他の製品原燃料というものを全部個々に積み上げまして五十六億八千万ドル、三十六年度に比べまして一億一千万ドル程度減るんじゃないかというふうに計算をいたしております。
  44. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、三十六年度の原燃料消費は、一体幾らに見られたのか、お伺いします。
  45. 中野正一

    中野(正)政府委員 お答えいたします。  原燃料は、三十六年度が三十五億九千万ドル、三十七年度が三十三億六千万ドルというふうに見ております。ただ、御承知のように、企画庁といたしましては、約二億ドル程度のものが十二月までに積み増しされたんじゃないか、それを本年度中に一億ドルくらい食いつぶして、一億ドルほど繰り越されるわけでありますから、輸入ベースとすれば差引二億ドルの――かりに消費は同じとすれば、三億ドルそこに差がついていい計算になるわけでありまして、消費自体はほぼ横ばい程度でいくのではないかというふうに一応計算をしております。
  46. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、一体、一月までの原燃料通関輸入幾らですか。
  47. 中野正一

    中野(正)政府委員 原燃料の一月までの数字は、今手元にございませんので、すぐ調べて御返事したいと思います。
  48. 堀昌雄

    堀委員 それでは、ちょっとそこは今そこまでにしまして、次は、それでは鉱工業生産に移りますが、昨日、経済企画庁でいろいろな検討がされておるようでありますが、この一月の鉱工業生産季節変動修正指数は三〇七になったことが明らかになりました。そこで、政府は、私どもがこれまでの委員会で聞いておりますところでは、大体十一月がピークで、それから〇・八%ずつ正月まで下がるのだというのが、今度の見通しの土台になっておると思うのですが、これを私なりに計算をしてみますと、十一月が二九九、十二月が二九七、一月は二九五に落ちて、二月が二九二、三月が二九〇、こういうふうに落ちてこなければ、政府の言っておられる〇・八%ずつ下がるということにはならないわけです。ところが、一月で三〇七までこう上がってきて、一体、今後はこれはどういうふうになるとお考えになりますか。これは企画庁長官でも通産大臣でもけっこうです。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 季節変動を入れまして三・八上がったということは、実は予想以上に生産が好調を続けておるというふうに感ぜざるを得ないのでございまして、ただ、季節変動の問題については、若干、過去の数字と申しますか、後ほど事務的に説明してもよろしゅうございますけれども、正確を欠くものがありはしないかというところも見られるわけでございまして、そのままそれをとっていいかどうかということはございますが、しかし、それにしても、大勢から見て、まだ生産活動が相当旺盛だというふうには見ざるを得ない、こういうことでございます。
  50. 山村新治郎

    山村委員長 堀君、自治大臣はよろしゅうございますか。
  51. 堀昌雄

    堀委員 自治大臣答弁するのが残っているのですが、それではちょっと先にやりましょう。
  52. 安井謙

    安井国務大臣 先ほどお尋ね選挙に要する費用の件でございますが、三十七年度には二十二億四千五百万円を計上いたしております。これは昭和三十五年の際の十七億に対しまして、約五億四千万円増加しております。この増加内容は、大体選挙管理委員会その他の人夫賃等の給与の増を約四億円、答申による今度の公営の拡充によるはがき、ポスターの増等に要する経費を、その残額を計上して大体間に合わせるつもりでおります。
  53. 堀昌雄

    堀委員 自治大臣の方はよろしゅうございます。
  54. 山村新治郎

    山村委員長 自治大臣、それでは放免いたします。どうか今後おくれないようにお願いいたします。
  55. 堀昌雄

    堀委員 企画庁長官伺いますが、私が伺ったのは、生産が現在なお下がらないということは、その通りだと思いますが、〇・八%ずつ下がるという前提で見通しが組まれておりますが、一体今後はどういうふうになるか。先までは別として、少なくとも二月、三月は一体どうなるかということを、やはりそれなりにお考えを持っていただかなければならぬと思う。それを伺っておきます。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の趨勢では、一月の状況があるいは横ばい程度に続いていくのじゃないかと見ざるを得ないのではないか、こういうふうに心配をいたしておるのでございます。
  57. 堀昌雄

    堀委員 実は私は、この前の三十二年の引き締めのときと今回の引き締めの状態を、鉱工業生産指数を並べて調べてみました。宙で申し上げては皆さんおわかりがございませんから、今資料を御配付させていただきます。  そこで、昭和三十二年の五月に引き締めが始まりましたときは、季節修正をしました鉱工業生産指数は一五一・五でございましたけれども、それで、ちょうど昨年の引き締めから今日までが約五カ月になるわけでありますが、同じ時期の三十二年の九月のときには、指数の上でマイナス六・一、パーセンテージで四%、実はこの四カ月間に下がっておるわけです。ところが、今回はどうかといいますと、三十六年の九月に二八六・五であったものが、この一月にはプラス二一指数では上がっているわけです。パーセンテージでは七・四%上がっております。一体経済引き締め政府がやって、前回の三十二年のときは、非常に順調に鉱工業生産指数も下がって参りました。その下がり方は、十二月までに指数では一一・四下がりました。さらに、ボトムであるところの三十三年の四月までには一二・七下がっておるわけです。おおむね順調に下がっておるのですが、今回は逆に上がっておる。これは一体どこに原因があるとお考えになりますか。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三十二年のときの状況と若干原因が違っておる点があることは、第一に考えられるわけです。その点は、堀さんも御承知通り、原料の輸入とかいうものが非常に旺盛だった、それを押えたというようなこと自体にあったと思います。今度のは、比較的経済成長が非常に急でありまして、設備投資等が非常に旺盛でもあった。従って、その影響が各方面に現われてきておるというような状況の違いが、一つ考えられると思います。現在どうして下がらぬかということについては、十分検討を必要とすることがあるわけでございますが、一方からいえば、金融引き締めを相当やってきております。そういうようなことで、あるいは原材料で持つよりも製品にして持って換金をするというようなことも、数字的には考えられるかもしれません。その辺のところを今研究問題として、れれわれも十分検討をした上で対処しなければならぬ、こういうふうに存じておるわけであります。
  59. 堀昌雄

    堀委員 私は、一番大きな原因は、今長官がお話になったところにはないと思う。一番大きな原因は、三十二年のときは、池田さんが膨張政策を組んだあと内閣が変わりました。そうして、今度は新たなる態度で、その内閣引き締めの方向に閣内一致して動いたわけです。今度は、膨張政策の本人が、依然として膨張々々とかけ声をかけて、昨年の暮れからことしの初めにかけても、現在は不景気などというものはないんだ、もう経済の先行きは心配がないというかけ声をかけておる、これが私は最大の原因だと思いますが、政府はどうお考えですか。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、経済が過度に成長した、これを抑えるということは、相当困難な点がございます。従いまして、政府としても、総合対策を昨年の四月に作りまして、そして厳重にこれを実施するようにやって参ってきておるのでございまして、内閣としてもその点については極力抑制策を講じておるという点においては、大臣一致して進めているつもりでございます。
  61. 堀昌雄

    堀委員 そこで、実は先ほど季節変動修正鉱工業生産指数が少し高く出過ぎているのではないか。これは通産省の速報もそういうことが書かれておりますけれども、しかし、それでは、これを季節変動修正指数ではなくして、原指数を並べてみましても、これは私は非常に重要な段階にきていると思うのであって、私は、政府が、そういう楽観的な気持というか、これは実態はもっと低いんだけれども、統計の上で高く出ておるのだというような説明の仕方の中に、問題があると思うのです。数というものは、これは池田さんが非常に数をお使いになって、それも数の使い方が私は池田さんはけしからぬと思うのは、相手は資料がなければ、宙でものを言われたらわからないのです。私はそういうことは言いません。数を皆さんの前に出してものを言いますが、その数というものは、その一つ一つの中に問題があるのではなく、その連なっておる連なり方の中に問題があるわけです。だから、それを一つ小さな一カ月、二カ月で見るということでなくして、ある期間の傾向的なもので見るということになるならば、私は、今度の問題は――実は大蔵委員会で二月の中旬でありましたか、日銀の人を呼んで申しましたときにも、私は何も資料はありません。しかし、一月が相当高水準になるであろうことは、過去のいろいろな状況から見れば、これは当然なんです。ところが、当然になっておるにもかかわらず、政府はやはり〇・八%ずつは下がるんだという、そういう気持を盛んに言っておられる点に、私は大きな問題があると思います。そこで、今後のこの問題としては、もうここまでくると、まず第一に、実績見込みは、鉱工業生産の部分については変えざるを得ないというふうに思いますが、どうでしょうか。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今後の見通し、あるいは三十六年度の実績の調査というものについては、十分これをいたしまして、そして将来、そういう基礎の上に立って十分な検討をしてみたいということは、私ども考えておりますが、今すぐにどういうふうに変えるか、あるいはどういうふうに変更するかということまでは、もうちょっとしばらく様子を見なければならぬ、こう思っておるのであります。
  63. 堀昌雄

    堀委員 それは、おっしゃることは政治的でありましょうから、そうですか、私どもは、国会の論議の中で、その場、その場の政治的なやりとりだけで問題を解決してはならないと思うのです。経済というのは、現実にきょう、あすと動いておりまして、それによって影響を受けるのは直接国民でありますから。  そこで、私は、さらに率直なお答えを伺いたいのですが、経済の実績見込みというものは、私は努力目標ではないと思うのです。これは少なくも過去の分析を正確にして、その分析の上に立って来年度を見通すわけでありますから、経済の実績の見込みは、その地点、その地点で私は変わってきて差しつかえないのである。政治的に、これを変えたら政府はどうなるかという問題ではないと思うのです。そうなると、現在の時点に立つならば、通関輸入においても輸出においても、鉱工業生産においても、実績見込みは変えざるを得ない。時間があれば、私はゆっくりこまかい数字で申し上げますが、どうですか、そこは。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私も、しいていい数字を出して悪い結果が出るということを所期しておるものではございません。十分実績に近い数字検討しました上で、そうしてその上に立って――それは統計ですから、ある程度若干の誤差はございますけれども、そういうものに立ってやるべきだ、こう考えております。しかし、それかといって、そういうことをたびたび何度も変動して変えていくというわけにも――実はかえって国民が迷うところもございましょうししますから、そういう場合には、非常に慎重に考えましてやっていかなければならぬ、そういうことを申し上げておるのでございまして、決して政治的にごまかしてやる――そのことがすぐに、実際に出てくるのですから、ごまかしたことは、われわれ言った人がかえって責任をとらざるを得ないことになりますから、そういう点については慎重にはやりますけれども、そういう考え方においては変わっておらぬつもりでございます。
  65. 堀昌雄

    堀委員 さっきの原燃料通関輸入はわかりましたか。
  66. 中野正一

    中野(正)政府委員 実は原燃料輸入通関につきましては、十二月までは私も資料を持っておるのでございますが、通関の中から原燃料を抜き出さなきゃいかぬものでございますから、今作業をさしておりますから、もうちょっと……。
  67. 堀昌雄

    堀委員 それではその前にちょっと伺いたいのですが、先ほどの三十六年度の原燃料消費と三十七年度の原燃料消費の差は、これは何から求められたのでしょうか。
  68. 中野正一

    中野(正)政府委員 原燃料消費につきましては、鉱工業生産がどの程度伸びるかということに対しまして、これは鉱工業生産が一伸びるときに消費がどれくらいふえ、あるいはどれくらい減るかという、いわゆる弾性値というものを一応過去の例から出しまして、それで一応われわれの方としては計算いたしております。ただ通産省の方では、それだけでなしに、今度はおもな物資別に一応積み上げ計算も検算的にやりまして、両方つき合わして出しておるわけでありまして、本年度よりも消費はほぼ横ばい、幾分減りぎみぐらいじゃないか。弾性値は非常に年によって変わりまして、いわゆる生産が一〇%以上あるいは二〇%も伸びるときは弾性値は非常に大きくなるし、四、五%の生産の伸びのときは弾性値がマイナスに達するというような過去の数個が出ておるわけであります。
  69. 堀昌雄

    堀委員 さっきの原燃料消費、三十六年と三十七年をもう一ぺん言って下さい。簡単に。
  70. 中野正一

    中野(正)政府委員 原燃料は、これは一応通関でさいぜん申し上げたのでございますが、三十六年は三十五億九千万ドル、三十七年度は三十三億六千万ドルということで計算いたしております。
  71. 堀昌雄

    堀委員 そういたしますと、原燃料消費がわからないと話が前に進みにくいのですけれども、現状で見ますと通関輸入はさらにふえて、通関輸出はさらに減りそうだということが、一月の通関実績で明らかになっておりますが、今の時点で、大体本年度の通関輸出は幾らになって、通関輸入幾らになると考えておられますか。
  72. 中野正一

    中野(正)政府委員 お答え申し上げます。  一月の状況を見まして、これは先ほど長官が言われましたように、もちろん数字を直すわけじゃございませんが、われわれ事務当局の感じといたしましては、輸出の方は為替ベースで四十一億ドルでございまして、これは大体私は達成できるんじゃないかと見ております。ただ輸入の方は、為替ベースはこの程度であるいはおさまるのじゃないかと思いますが、通関の方が少しわれわれの予想よりもふえるんじゃいかと事務的には考えております。
  73. 堀昌雄

    堀委員 輸出は、通関で今あなたは大体いけるとおっしゃった数は四十三億五千万ドルでありますが、今四十一億ドルと言われたのですが、どういうことですか、通関を聞いているのです。
  74. 中野正一

    中野(正)政府委員 通関は輸出で四十三億五千万ドル、それから輸入の方は五十七億九千万ドル、この通関の五十七億九千万ドルは、もうちょっとふえるんじゃないか、ただ為替ベースでいけばそう違わないのじゃないか。
  75. 堀昌雄

    堀委員 そうすると通関輸出は、一月までは一体幾ら出ておりますか。
  76. 福田久男

    福田(久)政府委員 通関輸出は一月までで三十五億四千二百万ドルでございます。
  77. 堀昌雄

    堀委員 そうしますと、これからあと八億三千万ドルぐらい二月、三月で輸出をしなければならぬということになるのですが、一体これは可能でしょうか。今、調整局長は四十三億五千万ドルはいけるんだと言いましたが、通商局長、いけますか。
  78. 今井善衞

    今井(善)政府委員 一月の通関は悪かったのでございますが、三月の通関はいつでもその年度の最高になりまして、私どもとしましては、四億をある程度突破するんじゃないか、かように考えております。従いまして、二月が四億いけるかどうかというところでございまして、必ずしもいけるということは断言はできませんけれども、その近くにいくんじゃないかと思います。
  79. 堀昌雄

    堀委員 通産大臣にお伺いをいたしますが、来年度の輸出の通関見通しについては、何が大体根拠になっておるのでしょうか。
  80. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 何がとおっしゃいますが、地域別あるいは品種別に相当詳細な数字を積み上げて、そうして数字をまとめたものでございます。もちろんこの中には当方の希望的なものも入っております。その点は御了承いただきたいと思います。
  81. 堀昌雄

    堀委員 今まで伺った中で、もちろん来年度のいろいろな問題については、この前の分科会企画庁長官は努力目標だとおっしゃっておりますし、輸出の問題等につきましては、やはりそういう一つの希望的な観測があることはよくわかります。ただしかし問題は、来年度の経済見通しというものは、輸出入の問題が根底にあって、それを土台としてスタートをしてきておるということになりますと、その希望的ないろいろな条件というものは、できるだけ客観的な分析の上に立てられておらないと、及ぼす影響はきわめて重大ではないかと考えるわけであります。そこで率直に申して、現在の時点に立って見ますと、一つの大きな心配は、やはり輸入が現在の状態では済まないのではないかということが、鉱工業生産のあり方から明らかに見ることができます。輸出の力につきましては、今おっしゃったように、その希望的な部分が一体どうなるかということは、これは単に国外の状況だけではなくて、国内の状況との関連で起きてくると思うわけであります。そこで今後の輸出の見通しについて、通産大臣は、どういう措置がされるならば、国内的にはこの目標に到達できるのか、伺いたいと思います。
  82. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まず第一は国内における消費の問題、他の言い方をいたしますならば、国内金融のあり方、これが一つの大きなポイントであります。積極的な問題としては輸出金融についての円滑さ、これが必ず輸出ドライブなりというものに効果があると思います。国内の一般消費性向というものも、ただいまの金融のあり方でよほど変わってくるだろうと思います。同時にまた、政治的な各種のPRの問題もあります。それから国外の問題としては、やはり市場の確保でございますから、各地域との経済外交の推進であるとか、あるいはまた競争関係の打破であるとか、こういうことにやはり特別な力を用いていくということだと思います。大へん抽象的でございますが、さらに具体的なお尋ねがございますれば、それについて答えたいと思います。
  83. 堀昌雄

    堀委員 今の中で、競争の打破ということをおっしゃったわけです。これは私は今後非常に大きな問題になってくると思うのですが、今これは矛盾しておる段階に立っておると思いますが、どうでしょうか。競争をするためには設備を拡大をして合理化をして、外国からいい機械輸入して、そうして競争力をつけなければならぬでしょう。しかし国内的には輸入はできるだけ制限をし、設備投資は少し抑制をしなければならない。一体この矛盾を通産大臣はどうすれば解決できると考えられますか。
  84. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国際競争力をつけるという意味において、今日までいわゆる自由化対策ということが言われて参りました。その間において、いわゆる設備の抑制という場面に当面いたしたわけであります。しかし今回の設備抑制に際しましても、ただいま申し上げるような点には十分留意いたしております。いわゆる選別抑制とでも申しますか、必要なものは押えない、そういう形で進めておりますので、なるほど設備投資と矛盾のようには見えますけれども内容的には十分意を用いているという実情でございます。
  85. 堀昌雄

    堀委員 もう一つ矛盾がありますのは、現在はいろいろな素原材料輸入原材料だけではなくて、現在の日本の中で占める素原材料は、国内製の素原材料が非常に大きなウエートを占めてきておりますが、一向に卸売物価が下がらない。これは下がるはずはないので、下がりかければ生産統制をやって操短をやる。一体土台を下げないで、そして競争力をつけるということは矛盾しておりませんか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国際競争力は、価格の面におきまして、品質もよく安いこと、これは望ましいことでございます。しこうして、私どもはいわゆる国際競争に打ち勝ち得る、これは今日までの状況のもとにおいて可能だというように思っております。  いわゆる卸売物価が下がらない。これはいろいろな理由があると思います。あると思いますが、総体といたしましては横ばい並びに弱含みでございます。価格がある程度下がることはけっこうですが、貿易の面におきましては、安定度が強いということが非常に必要なことであります。そういう血尿で、矛盾なくその辺の調整はいたしておるつもりでございます。
  87. 堀昌雄

    堀委員 もう一つ、これから自由化が行なわれるわけですが、今の輸入通関等について、この自由化に対応する部分としては、どのくらいのものを見込んでおられるのか、承っておきたい。
  88. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ちょっとお尋ねの点がわかりかねたのでございますが、どういうことですか。失礼でございますが、もう一度……。
  89. 堀昌雄

    堀委員 自由化が行なわれて、かなりなものが輸入がしやすくなります。特に機械は、先ほど調整局長は、ことしが六億八千万ドルであるのを少しふやしてと言われたが、通産省の方の資料で見ると、八億ドルということになっております。私はこれはもっとふえるのが自然の姿ではないか、こういうふうに思うのですが……。
  90. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど申し上げますように、選別設備抑制という形をいたしますと、いわゆる自由化の姿における機械輸入とは実情が変わって参ります。必要な合理化のためならとか、あるいは新技術導入、そういう必要な面の機械輸入はあると思います。しかし自由化になったからということで、今後はふえるだろう。これが、先ほど私が答えたように、為替ではございますけれども、国内金融と対応するものだ。だから、国内金融のあり方が、自由化された後においても輸入に対する抑制力を持つものだということが言えると思います。自由化された後の問題でありますから、今言われるように、金融が楽ならもっと入るだろう、こういう想定は、間違っておるとは私は思いませんけれども、今後の国内金融のあり方によってその実情は左右される、かように考えます。
  91. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣に伺いますが、今のいろいろな諸問題はあげて国内金融にひっかかってきたと思うのですが、きょうの新聞を見ますと、山際さんは、長期債の長期金利は上げるべきだ。これは、この間から公社債問題でだいぶ大蔵委員会でやりましたけれども、どうも私どもが見ておりますと、大蔵省と日銀の見解には相当な相違がある。特に問題になるのは、金融の問題に、どうも政府の政策がおんぶし過ぎておるのではないかという感じが、私はしてなりません。一体このような大きな膨張予算を組んでおいて、あなたは金融だけでこれが処理できると思いますか。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 金融だけで処理できるとは思いません。従って、財政政策においても、金融引き締め政策を基調として、これに対応する予算編成のいろいろな考慮を払ったわけでございまして、前から説明いたしましたように、三十六年度の予算の処理の問題、三十七年度におけるいろいろ景気調整的な考慮を払った問題、減税、そのほか金融政策に対応した財政政策というものを考えて、両方一体になってこれはやらなければならぬものだと思います。
  93. 堀昌雄

    堀委員 この間企画庁長官は、現状のままでいくならば、財政的にも弾力がある取り扱いをしなければならぬだろう、こう答えておられるわけですが、一体どうでしょうか。予算を今審議しておる際に、これから作る予算を弾力的に、使わないでなるべく延ばすように延ばすように、ことしのものが来年に延び、来年のものを再来年に延ばすような予算を組むというような組み方が常識的でしょうか。今の事態でわかっているわけですね。繰り延べはうんと出てくるだろう。繰り延べなければならぬだろうことがわかっておるのに、それを組むということが常識的かどうか。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ある程度の三十六年度の繰り延べはあろうと思います。しかし、まだどれだけのものが繰り延べられるかということも、この月末を過ぎなければ実際にはわからないという状態でございますので、この点は実情を見まして、繰り延べが非常に多くて、三十七年度にこれがずれてくるずれ方が非常に多いというようなときには、やはりそういう事実を考慮して、予算の執行においてのいろいろな弾力的措置を、今後は政府考えればいいのでございまして、まだ今年度のずれ方というものが実態をつかめておりませんから、こういうものがわかりましたら、三十七年度予算の執行については工夫をこらさなければならぬ問題が出てくる、だろうと思っております。
  95. 堀昌雄

    堀委員 どうもわからないのですが、これは政府の支出ですから、なるほどおっしゃるように、三月三十一日にならなければ正確なことはわからないでしょう。それじゃ一体、三月三十一日現在、幾ら繰り延べられているかということはわかっておりますか。
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはまだ正確にわかりません。
  97. 堀昌雄

    堀委員 一体わかろうとする努力をしておるのですか、してないのですか。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 繰り延べを大蔵大臣に承認を求めてくる時期は、普通は三月を過ぎてからということになっておりますので、この月末前後にならなければ大体の実態かつかめない、こう思っております。
  99. 堀昌雄

    堀委員 私は、通常の年度のときならば、そんなことを政府考える必要はないと思うのです。しかし、あとから触れますが、税収の状態等から見て、最近の傾向は、予算膨張化のいちずをたどっているわけですね。いろいろな財政法等の制約もあるかもわかりませんが、しかしそういうときに、政府は何らかの繰り延べの意思を表示しておるならば、現状としては一体どのくらいが動いておるかということを把握しないで、来年度予算を組むということは少し無責任ではないですか。私はアメリカのいろいろな経済統計を見てみますと、アメリカの経済統計はきわめて整備されておって、一月分については二月の十五日になれば、ほとんどいろいろな資料がわかります。われわれの方は一カ月も一カ月半も過ぎなければわからない資料がたくさんにある。そういう状態です。これはしかし民間の企業ですから私はやむを得ないかと思いますが、国がやっておるもの、こういうものについて、それが三月三十一日にならなければわからないなどということを、現在のような財政のあり方のときに言うというのは、私は無責任ではないかと思うのですが、どうですか。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 正確な繰り延べの額ということでこざいましたから、わかりませんが、従来の例から見ましても、今年度の繰り延べは、大体私どもが想像しているところでは、やはり数百億ということに上る額だろうと思います。
  101. 堀昌雄

    堀委員 正確と数百億とでは、数百億というのは、二百億か、五百億か、八百億か、一体これはどこらなんですか。それじゃ数字で答えたことにならないと思うのですがね。大体一千億ぐらいとか、五百億ぐらいというのなら、それは百億、二百億動いても問題はないと思いますが、数百億では答弁になりませんよ。
  102. 石野信一

    ○石野政府委員 これは御承知と思いますけれども、全体の公共事業とか営繕関係等につきましては、工期が非常に長いものですから、設計の関係とかいろいろの関係がございまして、これは地方で実施に移されていくわけでございます。従いしまして、できるだけ年度内に使おうという努力をいたしておるわけでございます。そこで、年度の終わりに近づきまして、このくらいどうしても延びるというようなことで、これまた地方である程度委任をされておりまして、それが最終的にどのくらいになるかということを計算して参りますものですから、現在の段階では、どの程度延びるかということは数字を申し上げられない、そういう段階でございます。
  103. 堀昌雄

    堀委員 それでは延ばしたいというのは、大体どのくらいなんですか。
  104. 石野信一

    ○石野政府委員 延ばしたいということですが、この辺のところは、ちょっと実情を申し上げた方がおわかりいいかと思いますが、この前のは、繰り延べ措置で営繕費等について一割程度、それから公共事業費等の特定のものを除きましたものが五%程度ということで、一般会計と特別会計、政府関係機関、合わせまして、約五百億程度のものがそれに該当するという金額が出ておるわけでございます。ただ、しかしその場合に、それがいわゆる工期のずれと申しますか、設計の関係とか、雪の関係とか、天候の関係とか、そういったもので延びるものとの関係が、それを除いて、それだけというようなことではございません。それは渾然一体として延びて参るわけでございます。毎年、そういう意味では、相当額の繰り延べが出ておりますことは御承知通りでございます。従いまして、それにプラスして、それだけが延びるというふうにも申せない、その辺は先ほど申しましたように、結局年度末になりませんと、どういうふうになるかわからない、こういうことでございます。
  105. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、財政を弾力的にやるということは、現実にはそうしたいという気持があっても、一体どれだけ弾力的に動いておるかわからぬということなんですね。現実には繰り延べをしようと思っても、したいという五百億のほかとの関係になると、その五百億自身も、延びておるか延びておらぬかわからぬということになれば、政府は天に向かって五〇%延ばしたいぞとかけ声をかけるだけで、現実には点検をしないということなんでしょう。そうじゃないのですか。
  106. 石野信一

    ○石野政府委員 確かに五百億ということがきまりますと、その五百億だけ普通に延びるものよりプラスになるということを確保するということではございません。ただああいう時期において、建設関係の需給関係が非常に逼迫しておるというようなときに、建前として、必ずこれを年度内にやるのだという建前で動いておりますと、それだけ景気過熱に刺激を与える、こういう危険もあるわけでございます。そこで、そういう程度に延びることもいいんだというような意味での決定が行なわれますと、そこに工事の実行等について緩和的な要素が出てくる。そういう意味におきまして景気の調整には非常に役に立つ、こういうふうに考えるわけでございます。
  107. 堀昌雄

    堀委員 今のお話を聞くと、積極的に繰り延べるということが起きるのではなくて、消極的に、多少の心理効果を期待したいということだという感じがします。このことは時間がありませんから、ほかの場所で申し上げたいと思いますが、先ほど原燃料のところの消費の問題でしたか、それは出ましたか。
  108. 中野正一

    中野(正)政府委員 原燃料の三十六年度の四月から三十七年一月までの通関の実績は、三十一億千万ドルになっております。
  109. 堀昌雄

    堀委員 今の生産の規模ですね。一月以来の生産の規模で大体妥当な原燃料の一カ月の消費量は、一体幾らくらいに考えておられますか。
  110. 中野正一

    中野(正)政府委員 一カ月に約三億ドル程度と見ればいいのではないかと思っております。一応ラフな計算でございます。
  111. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、この一月の原燃料輸入は二億九千四百万ドルになっているわけですが、これならばもう食いつぶしは起きないということに理解されますか。
  112. 中野正一

    中野(正)政府委員 われわれが見通しを立てたときには、一、二、三月で約一億ドル程度の食いつぶしがあるのではないかというふうに計算をしておるわけであります。
  113. 堀昌雄

    堀委員 いや、そういうことはわかっているのです。それを聞くのではなくて、一月は原燃料輸入がそんなに下がっていないわけですから、当初あなた方が予想したほどに下がっていないのではないかと思うので、こういう状態がもし続くならば、食いつぶしという現象は起きないのではないかということを伺っておるわけです。
  114. 中野正一

    中野(正)政府委員 今のところ輸入通関ベースが高いことから見まして、食いつぶしが幾分先へずれるのじゃないかというふうな見方ができるのじゃないかと思います。
  115. 堀昌雄

    堀委員 原燃料輸入程度がずっと高ければ、なるほど食いつぶしということは先へ延びるかもしれませんけれども、総体の輸入としては、今度は逆にふえてくるわけですから、それは、食いつぶしの問題としての再輸入の問題ではなくて、トータルとしての輸入の問題として見るならば、一体どちらが今後の問題にとって望ましいのですか。
  116. 中野正一

    中野(正)政府委員 われわれは見通しとして、二、三月ごろに生産が少し下がってくるのじゃないかというふうに見て、しかも食いつぶしがある程度行なわれるということで見まして、輸入通関なり、為替通関は一応見通しを立てておるわけでございます。ところが今の情勢からいいますと、ざっとした計算でございますが、一億ドル程度ぐらいは、われわれ考えていたものよりは通関は高くなるのじゃないかというふうに見ておりますので、その意味で、生産が下がらないと、これはやはり食いつぶしが行なわれて、在庫の食いつぶしということになるわけでございます。生産が下がってくれて、輸入がある程度多ければ、それだけ余裕がそこに出てきて、来年度にそれが持ち越される、こういうことになって、非常にそれだけで心配だということはないと思いますが、ただ生産が依然として一月のような状況でいくということになると、これは、今度は輸入がふえてくる時期が早まるということで、国際収支上問題が起こるというふうに見ております。
  117. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これは、どなたか大臣にお答えを願いたいのですが、今ここまで来て、生産は現状ならばあまり下がらないだろう。なるほど在庫は相当ふえてきておりますけれども先ほど企画庁長官がおっしゃったように、非常に各企業とも企業採算としては困難なところに来ておるわけですから、生産を落としてさらに企業採算を悪くするよりも、ある程度生産を維持して、そうして製品を外に出す方が右利だという判断で動く面が一つありましょうし、もう一つは、やはりシェアの拡大という面から見るならば、ここで一歩後退することは、将来十歩後退になるという考えもありましょう。ですから、これは私はなかなか簡単に下がらないと思うのですが、はたしてこのままでいいのかどうか、これは一体大蔵省としてはどういう処理をするべきか、通産省は一体どういう処理をするべきか、企画庁一体どうすればいいのか、一つ各大臣の立場からお答え願いたい。
  118. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもとしては、やはり内需の抑制ということを中心とした金融政策というものは、これは持続していかなければならぬというふうに考えております。前にも申しましたように、政府は、国際収支の均衡を、この下半期、十月前後にこれを回復するという目標を立てておりますが、その目標に経済を持っていくためには、あまりに上半期に早い回復が見られることがいいか悪いか、たとえば材料の食いつぶしも、上半期に終わってしまうというふうな見方をしますと、下半期から牛深の伸びは相当急角度になっていかなければ、年平均の五・六%という伸び率の確保はできませんので、そうなりますと、生産が伸び、輸入が伸びる時期が、私どもの国際収支回復というねらいの時期に重なることになりますので、そこにこの見通しとしてやはりむずかしい問題がございます。ですから、さっきから企画庁から答弁されましたように、一月から生産は相当順次落ちていくという見通しでございましたが、今の見通しでは、一、二月はこの程度の横ばいで、生産が落ちていく時期は三、四月というふうに、少しこれはずれてきていると私は考えております。同時に材料の食いつぶしの問題も、一-三月の間に一億ドルというふうな予想は持っておりましたが、実際にはそう食いつぶしが予想したように行なわれていないと思うのでございます。そうすれば、この食いつぶしの余裕は、また先の方へ延びるということも考えられますので、やはり生産はある程度四月からずれたにしましても、三月、四月というふうに落ちていって、そして今輸入が、予想したよりはまだ多いのですから、それだけ食いつぶしの余裕が、先にずれているというようなものを考えますと、下半期にいって国際収支を安全に回復する、安定して回復するということには、むしろその姿の方がいいのではないかとすら私自身は考えておりますが、いずれにしましてもそういう方向へ持っていくためには、やはり金融引き締め、財政の弾力的運用というようなことについては、これをゆるめないで、この調子でやるという方針を堅持していくよりほかに仕方がなかろうと思っております。
  119. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと今の点だけ先に伺っておきますが、金融は今の引き締めのままでいくということですか、もっと引き締めるというのですか、どちらですか。
  120. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今の引き締め政策が、とにかくある程度といいますよりは、相当の効果を示して、各部門にこの政策が浸透しておるところでございますから、この程度の基調を維持すればいいのじゃないかと私は思っております。
  121. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどからいろいろ御意見がございましたのは、主として鉱工業生産並びに原材料、素原料の在庫指数等についてのお話でございましたが、経済の動向を見ます場合には、さらに製品について、製品在庫指数なりあるいは出荷指数というものが、実は大事でございます。最近の出荷指数の動向を見ますと、出荷指数は下がっておるが、製品在庫指数はふえておる、こういうような状況もございます。これなどを勘案し、さらに製品在庫率そのものを指数的に見ましても、前年度に比べてみるとだんだん変動がございます。それが私は、先ほどのような鉱工業生産指数から見ると、経済はあまり影響を受けていないのじゃないか、こういうような議論も立ちますが、ただいま申し上げるような出荷指数なり製品在庫指数等を見ると、順次経済引き締めの効果が現われておる。こういうことが実は言えるのじゃないかと思います。ただ当初予想したものに比べまして、ややその程度が低いのじゃないか、もう少しきつい状態が出てこなければならぬのじゃないか、こういうことを言われますが、この見方にいろいろあるのでございまして、今の製品出庫あるいは製品在庫等の指数関係は、中小企業の面と大企業の面とでこれまた相違がある、だろうと思います。従いまして、ただ指数だけでなしに、その指数を構成している内容等も十分点検して、経済の動きの実情を把握する、こういうことが大半だ、かように思います。そういう方向で長期の計画を立てるという方向へ進まざるを得ない、かように思います。
  122. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当面われわれとしては、昨年九月に決定いたしました輸出対策、輸入抑制の対策、こういうものをやはり堅持しで、そしてただいま通産大臣からもお話のありましたように、たとえば製品在庫がふえると、それが国内に流れるよりも輸出に向かっていくということになりますればよろしいわけでございますから、そういう面において、きめました総合政策、特に輸出、輸入に対する政策を各省とも十分御努力を願うことと、それから全体としての引き締め政策というものを、現在の段階ではまだゆるめてはいかぬ、そうして安易な楽観ムードを起こさないで、そうしていくことが必要だろうと思うのでございまして、その点につきましては、各省にそれぞれそういう意味においてお願いをいたしておるわけでございます。
  123. 堀昌雄

    堀委員 この問題はこれで終わりますが、今の御答弁を聞いておりますと、新たには何もしないでも、もう現状のままでいいんだというふうに私は全体としては受け取れる感じがいたします。これはこのままでいいという判断でおやりになってどういう結果が出るかは二カ月、三カ月たてばわかることでありますから、これ以上は申し上げませんけれども、私は政府態度はやや安易に過ぎるのではないかという感じがいたしますので、そういう意味で私の意見なりの警告を申し上げておきたいと思います。  次に歳入の問題に移りたいのですが、歳入のいろいろな税収その他をお出しになるのは、一体何をもとにしてお出しになりますか。これは大臣からお答えをいただきたい。
  124. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何をもとにしてということでございますが、これは従来の実績をもとにした積み上げ計算、品日ごとに詳細な積み上げ計算をやって歳入の見込みを立てます。その場合に経済見通し、翌年度の伸び率というものをむろん織り込んだ積み上げ計算ということになるわけでございますが、歳入の見込み違いということはときどきございますが、それは、しょせんは経済見通しの間違いによって起こるものでございまして、大体今までの跡を見ましても、経済見通しにおける経済の伸び率というものの相違と、私どもの歳入の見込みの相違も大体歩調を合わせているのが現状でございまして、一応そういう見通しを織り込んだ実績から判断の積み上げ計算、こういうものの歳入計算であります。
  125. 堀昌雄

    堀委員 なるほど下からいろいろな実績を積み上げるのはよろしいでしょう。しかしその伸びるところはやはり経済見通しをいろいろ使われる、こういうことでありますが、企画庁長官に伺うと、経済見通しは特に来年度あたりは努力目標なんだというが、努力目標ということは何を一体意味するかというと、問題が伸び上がろうとしておるときに、それをあるがままの姿で出したのでは、さらにそれが伸びる心配があるから、少し控え目に今の段階では見通しが立てられておる、そこへ一つ持っていく努力をするのだということになっておると私は思いますが、そうすると過去の例は、企画庁資料で三十一年から三十六年までの見通しと実績見込みの相違、実績見込みから実績の相違というものを各項目について、こまかく昨日皆さんのお手元へお配りしておきましたが、ともかくこれはほとんど全部違う。減ったのは昭和三十三年ですか、ごく例外的なものが少しありますが、その三十三年でも、大体の項目についてはふえておるというのが過去における実績なんです。このことは、なるほど見通しとしてありますけれども、少なくとも見通しというものが、努力目標という格好で出されておる場合が多いということになると、それを土台にして歳入、税収ということを組むということになると、実際のあるべき姿ではなく、それより低いものを目当てにあなた方は歳入を考えておるということになると思いますが、どうですか。
  126. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やはり政府の見込みでございますから、この見込みに応じた税の歳入の見込みも立てておるわけでございますが、この見込みの狂いに対応した狂いは断然出てきておりますし、今までも大体そういう形になっておると思います。ただこの見込み違いの比率が税の見込みの方の比率と合わないのは、御承知のように、時期的なずれが五カ月程度常にあるものでございますから、それだけのものはまた当然出てきておりまして、政府見通しの方とこの比率がぴったり合うということはございませんが、大体いつも対応しておると思います。
  127. 堀昌雄

    堀委員 企画庁の方にお伺いをしたいのですが、現在の税収の見積りというものは、大体暦年が土台になっております。経済見通しは会計年度が土台になっております。やはり私は今の経済見通しの中の非常に大きな問題点は、あなたがこの間の分科会でもおっしゃったように、予算を作るための一つの目標としてこれが要るのだとおっしゃったわけですね、あのときはそういうものがなければ、あるいはこういうものを出すのがいいのかどうか多少疑問もあるとすら、はっきりおっしゃっておる。その経済見通しを出すならば、それが特にその国の予算、歳入に関係があるというのならば、見通しを一つ暦年の見通しもあわせて出すということにならなければ、すでにそこで三カ月ずつも誤差が生ずるということが起きてくると思うのです。企画庁としては特に現状として歳入見積もりのために必要な見通しということになるのならば、年度とともに暦年のものをもあわせて出すというお考えはないのか、どうか。
  128. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうことも将来は考慮する必要があるのじゃないかというふうに考えております。
  129. 堀昌雄

    堀委員 そこで皆さんのお手元にきょう差し上げた資料ごらんいただくと、上に書いておりますのが年度別国民所得の見通しと実績の対比でございます。その中で、大体は似ておるとおっしゃいますが、いろいろありますが、特に著しく問題がある点だけを、二、三指摘をしておきたいと思います。  上の段の個人事業主所得というのが国民所得統計でございます。この昭和三十二年のものは、実際の見通しから実績は八九・九%と下がっております。それから三十三年も九八・一%と下がっております。見通しを立てた税収であるならば、多少の変動があってもほぼ同じくらいのところになるべきでありますのに、下の申告所得税の三十二年、三十三年のところの伸び率をごらんになると、三十二年は一七・四%の増収をしております。三十三年は二八・七%も増収をしておるわけです。経済見通しの方の最初見通しと実際の国民所得統計が下に下がっておるときに、申告所得税、要するにこれは事業所得が主体になっておるものが逆に一七%も二八%も上がっておるということは、一体何によるのでしょうか、大蔵大臣からお答えを願います。
  130. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は主税局長から説明してもらいます。
  131. 松井直行

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  企画庁で作りました国民所得の見通しの見込みと実績の違い、単年度の違いとして上がっております。それから下の欄が税収の本予算と決算の見込み違い、これを対比して説明しますと非常にむずかしい問題でございますが、われわれも実はこういう作業をやっております。第一番目は、上の欄は単年度の見込み違いでございますが、われわれはすでにその前年度においても見込み違いがございまして、それを相乗いたしました数字に幾分修正をいたしたものを用いておりますが、それに対しまして下の欄の相違は、主として、御存じのように先ほどお話しがありました暦年と年度の相違のほかに、税の弾力性がございます。各年度ごとに上の欄、われわれが修正いたしました上の数字に、各年度の税の弾力性をふっかけて下の欄をながめてみますと、おおむね説明がつくという表でございます。そのほかに個人所得税の場合には、年度と暦年の相違、それから失格者の相違、それから譲渡所得等につきまして非常に大きな財産贈与、譲渡がありますときに大きな食い違いができる、こういうことがすべて税の経済見通し関係なしに起こってくるものがございます。このほかに法人税、特に問題になりますのは法人税ですが……。
  132. 堀昌雄

    堀委員 事業所得だけは二八%も違う。
  133. 松井直行

    ○松井説明員 事業所得におきましては、これはやはり弾力性と、それから時期の繰り延べの関係がございまして、このままの姿ではちょっと説明がつきかねると思いますが、われわれが上を修正いたしまして弾力性をぶっかけると、あるいは説明できる数字じゃないかと思います。
  134. 山村新治郎

    山村委員長 堀君に申し上げますが、お約束の時間はすでにあと四分でございますが、特別におまけいたしまして二十分までおやり願います。
  135. 堀昌雄

    堀委員 そこで、こまかいことは大蔵委員会でまた伺いますが、ざっくばらんに申し上げまして、この間の増収額は、申告所得税について三十二年は百億円予想よりたくさん取っておる。三十三年は百五十億円たくさん取っておる、こういう形でございます。特に最後のところに行きまして、三十五年は伸び率が八・四%しかないのに実際の税収では三四%もとって、二百五十億円から当初の見積りよりもたくさんの税収を上げておる。私は申告所得税のこの問題について、この資料は少し皆さんが税収について厳し過ぎる点があるのではないかという感じがしてなりません。これは全体の統計の中ですから、あとは問題がありますから大蔵委員会でやりますが、これは一つ皆さん十分にお考えをいただいておきたいと思います。  その次に、時間がありませんから簡単にいきますが、減税の問題について私はきわめて不公平な問題があると思います。皆さんのお手元に差し上げた二ページのところにありますが、毎年度の租税特別措置で減収になっておる金額と、それから一般減税で減税をしておる金額を見ますと、一般減税の力が租税特別措置で減額されておるものを上回ったためしが一回もないというのが、二番目の数字であります。一つの年度で片や租税特別措置でまけてやる大企業あるいは利子所得等のものは、ずっとここにあげましたように一千億をこえるものが毎年行なわれる。そうして片一方の一般減税は、ようやく三十七年で一千二百六十一億ですか、三十六年では一千百三十八億とありましても、租税特別措置の減免にも届かないというような減税のあり方が、はたして適正かどうか、私は非常に大きな問題が一つあると思います。  それからもう一つの問題は、勤労所得税の場合における減税が三十六年度で五百三億、三十七年度は三百五十九億です。ところがこれに対して利子の分離課税のためにおける軽減と国民貯蓄組合の特別措置に行なわれる減税と、それを合わせますと三十六年が二百十五億、三十七年が二百七十五億に達しておるわけです。汗水たらして働いた勤労所得の総体に対する減税と、単なる貯蓄の利子からくる減税が、一体こういう状態でいいのかどうか。皆さん方は企業の力を向いて見るならば、なるほど貯蓄が必要だから大いに貯蓄をさせるためには減税をしなければならぬ、その意味で特別措置が必要だと言われるかもわかりません。しかし勤労所得税の側からものを見るならば、働かないで貯金としておるだけのものが三十六年に二百十五億、二十七年で二百七十五億もまけてもらっておるにもかかわらず、三十六年は五百億、倍とちょっとです。三十七年はもう約七割くらいを落としておるというようなことでいいのかどうか。これらを見ますと現在租税公平の原則と言われますが、私は少しも公平でないと思うのです。大蔵大臣どうでしょうか、簡単に願います。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今特別措置の減収との比較がございましたが、これは簡単に比較できることじゃございません。御承知のように毎年度税制改正あり、それが累積された規模で減収額を示しておるのが千六百何億という数字でございます。それに対して一般減税というものは、単年度の減税額だけを示しておるのでございますので、この均衡がどうということは、簡単に比較できない問題だろうと思います。単年度で毎年そういう減税をやっておる、もし減税をやらなかったら、今の時点でどれだけ今よりも増税になっておるかと計算しますと、総理がたびたび答えましたように、もう減税が全体で一兆円にも及んでおるということにもなりましょうし、租税特別措置法の力の減収額も千六百億円と言いましても、三十一年度からの整理を今年度ベースで計算しますと、ほとんど同額整理しておる。こういうことで半分は整理しておるわけでございますが、この毎年の累積の規模で示された減税額と単年度の減税額と比較をすることは、これはおかしいと思います。  それともう一つは、今の利子所得、利子課税の問題でありますが、これは貯蓄増強という一つの政策から毎年いろいろな優遇措置が加えられて、これが伸びることを抑えられているという関係もございますし、かりに分離課税をやったからといいましても、全体として総合課税の中に入って上積み課税としてかけられておるものでございますから、この累進課税の最後の姿から見ますと、そう不均衡というようなことも言えない情もあろうかと思います。
  137. 堀昌雄

    堀委員 今のはいろいろ議論がありますが、あと大蔵委員会でやります。  最後に、実は政府は租税特別措置法について過般閣議決定をして提案をされましたものを、一回何かこそこそと持って帰って、そしてまた三十七日にもう一ぺん閣議決定をして出してきた。これは一体どういうことなんでしょうか。あなたは最初にお出しになるときの考えは、どういうことでお出しになったのか、ちょっとお答え願いたい。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは御説明いたします。  租税特別措置法におきまして、海運会社が輸入貨物の運賃についてドルやポンドというような外貨で支払われる場合には、この運賃から生ずる所得について、輸出所得控除が認められている、これは今までそうなっております。そこで、日本にある会社でも、昭和三十五年の二月から、一般的に日本の海運業者に、輸入貨物について外貨で運賃を支払うことが認められております。そこで、外国から外貨建で支払われる運賃の場合と同じように、これについても輸出所得控除が認められることに従来なっておりました。しかし、本来輸出所得控除という制度は、積極的に、わが国に外貨収入をもたらすようなものについて、恩典を与えるという趣旨でございましたので、日本の会社が外貨で日本の海運会社に支払う運賃については、これを輸出所得控除の対象からはずそうという考えで今度の改正をやったわけでございます。私どもは、そういう意味で改正をやったのでございますが、そうしますと、いろいろな問題が出てきまして、今のように運賃から出てくる所得を、輸出控除の対象外ということにしますと、実は昭和三十二年一月以前においても、輸入貨物によってはすでに外貨建による運賃収入を認められて、それを受け取っておった会社もございますし、税務上も輸出所得控除の恩典を受けておったことがございますし、また外国為替及び外国貿易管理法上の非居住者から支払いを受ける運賃についてのみ輸出所得控除の対象外とするというようなことにしますと、たとえば三国間の運送について、たまたま外国商社の支店から日本国内において外貨の運賃を受けるものも対象外になってしまう。こういうことになりますと、いろいろそこに問題が出てきまして、日本の商社の海外支店からの支払いは控除対象となるけれども、外国商社の本邦内の支店から受け取る運賃は対象外となるというふうに、そこらになかなか割り切れない問題も出てきて、海運政策上はあまり好ましいとは言えないというような、いろいろな問題が出てきましたので、この際、この制度はあと二年で切れる制度でございますし、従来そういうふうに行なわれておった問題で、そのときにそこまで厳密な改正を――一律にやめるとすると、本邦の会社と外国会社との支払い間の不均衡とか、そういう問題が起こる。それを無理してまでここで厳重にやるかどうかという問題が政府部内にも起こってきました。いずれにしましても、積み取り比率を改善するということにははっきり役に立っておる問題でございますから、あと二年という時限立法であることにかんがみて、従来通り取り扱いをする方がこの際はいいんじゃないか、そういうくらいの見当が出て参りましたので、一ぺんそういうふうな考えで一応きめましたが、これをまたもとに戻して、そのままにしようということにしたのがいきさつでございます。
  139. 堀昌雄

    堀委員 一たんあなた方は輸出所得控除というものの性格からきめたというのでしょう。一体きめる前にあとで起こった後段の検討をしなかったのですか。検討をしなかったということは、あなたの方の怠慢だということになりますが、いいですか。あなた、怠慢として申しわけございませんでしたということになりますか。十分に検討をして閣議にまでかけて、そこで政府部内の見解が閣議で集約されて出てきている。それを閣議が了承して出した以上は、少なくとも部内には見解の相違がなかったということなんではないでしょうか。見解の相違があったけれども、閣議では覆わなかったということになるのですか。一体どこにこの問題の責任があるのですか。いろいろな準備不十分で思い違いがあったとか、過去におけるいろいろな事情をよく知らなかったというのならば、大蔵大臣の怠慢だと私は思うのです。大蔵大臣はそういうことはなかった、しかし部内の、ほかの、政府のどこかにそういう問題があったというなら、そこに問題があると思うのです。一体これはどこに責任の帰属するところがあるか、それをはっきり言っていただきたい。あなたの力にあったならば、一ぺんちょっとあやまってもらいたい。
  140. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の方は、輸出所得控除制度を置いている趣旨からかんがみて、輸入貨物運賃は、積極的に外貨収入に寄与したものではないという考えから、その恩典をはずそうという考えでございまして、政府間の事務連絡会でもこの問題は出して、一応通った問題でございましたが、これが通ったあとから、そういう従来の実情や、さっき言った三国間輸送の問題に関連したいろいろな矛盾が他の官庁から指摘されまして、そういう問題があるなら再検討しようということになって再検討した結果、そういう措置をとったということでございます。
  141. 山村新治郎

  142. 小林進

    小林(進)委員 私は社会保障の二重性の問題、二重構造の問題とあわせて、雇用と賃金の同じく二重構造の問題について、関係大臣に御質問いたしたいと思います。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕  きわめて限られた時間でございますので、私の方もなるべくこの委員会の速記録を見まして、問題が重複しないように質問をいたしまするから、各大臣におきましても、要領よく一つお答えをいただきたい。わからないのはわからない、間違ったのは間違った、こういうふうに一つ明確に御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  社会保障は申し上げるまでもなく、所得の再分配をして国民にひとしく豊かな生活を保障し、みんながしあわせになる社会を実現しようとする制度であります。社会保障すなわち所得の再分配の必要性は、その国の経済機構、社会構造によってそれぞれ相違があり、一がいに論ずるわけには参りませんが、わが国は欧米先進国に比較いたしまして、特に二重構造という特殊な経済構造を有しておる国でございまして独占資本国家の中でも、特にアメリカとともに非常に貧富の差のはげしい国であります。すなわち所得の格差、収入の格差、生活の格差、その最もはげしい国でございまして、これを俗な言葉で言えば、アメリカとともに、先進国の中では一番貧乏人の多い国であります。かような国は、特に社会保障のために、欧米先進国よりもさらに多くの経費を振り向けて、所得の再分配をはかり、国民平等の生活を楽しめるように努力することが、政治の最も重要な点であると私は思うのであります。しかるに歴代保守党内閣は、口にこそ社会保障を宣伝しながら、実際にはこれを最も軽視をいたしておるのでございまして、卑小費や大企業育成の設備投資等に常に国費を優先いたしまして、この社会保障を最も軽視いたしておりますることは、私の最も遺憾とするところであります。池田内閣も、減税と産業投資と社会保障とを、三大重点政策として掲げられましたが、その中の社会保障費は、全く貧弱そのものであります。経済の成長においても欧米を凌駕して西独に続くと誇示する現内閣が、事、社会保障に関しては、欧米との比較を口にせられないのは、一体どういうわけでありますか。社会保障に関する限りは、欧米における中進国にも及ばぬほど貧弱であるがゆえに、とうてい口にできないというのが私は真相であると考えております。  時間がありませんから、私は、欧米諸国等のその社会保障の一例をお示しをいたしまして、それから答弁をお願いいたしたいと思うのでありまするが、ILOのザ・コスト・オブ・ソーシャル・セキュリティ一九六一年版、それには一九五七年度の各国の社会保障の比較表が出ておりまするが、その中の国民所得に対する社会保障給付費の割合であります。比率でありまするが、それによりますると、第一番目は西ドイツであります。さすがにわが日本より所得の伸びておりまするドイツは、国民の所得に対する社会保障の比率は二〇%、二番目がフランスで一七・九%、三番目がオーストリアで一六・五%、四番耳がルクセンブルグで一六・五%、五番目がベルギーで一四・八%、六番目がイタリアで一四・二%、七番目がニュージーランドで一二・八%、八番目がスエーデンで二一・五%、九番目がデンマークで一一・六%、十番目がフィンランドで同じく一一・六%、十一番目はイギリスでございまして一一・四%、十二番目がオランダで同じく一一・四%、十三番目がアイルランドで一〇・八%、十四番目がノルウェーで九・九%、十五番目がユーゴスラビアで九・五%、十六番目がオーストラリアで八・八%、十七番目がカナダで八・五%、なんぼ読んでいっても日本は出て参りません。日本は驚くなかれ二十六番目でございまして、わずかに国民の所得に対する社会保障費の割合は五・三%でございまして、その比率はまさにチュニジア、南ア連邦が四・四%、ポルトガルが日本よりもさらに上で二十四番目で五・七%でございまして、まさにわが日本は、国民総所得に対する社会保障費の割合は、セイロン、グァテマラ、トルコ、それから南ア連邦のたぐいと同じ比率でございまして、世界各国の比率の中には中進国と後進国と肩を並べているという、こういう実情でございまするが、これくらい恥ずかしい所得と社会保障の比率を、一体大蔵大臣はいかようにお考えになりまするか、御答弁を一つお聞かせ願いたいと思うのであります。
  143. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民所得と社会保障費の比率は、あなたのおっしゃられる通りだと思います。なぜそうなるかと申しますと、問題は国民所得の水準でございまして、ちょうど日本の国民所得が世界で二十何番目といわれておる、それとまたあなたのお示しの統計がぴったり符合していると思いますが、問題は、パーセントがなぜ少ないかという問題は、国民所得の少なさと対応しているのが実際でございまして、今おっしゃられたように国民所得の再分配、そうして生活水準の格差をなくするというための社会保障制度でございますが、この社会保障制度を強化するためには、国民所得が増大しなければ強化ができない。じゃ、どう強化するかといったら、結局国民税負担率に関係する問題でございますが、国民所得の多い国ほど税負担率が多い。なぜ税負担率が多いかといえば、結局社会保障費を年々強化していくから、税負担率は年々上がっていくということでございます。日本はようやく今それらの国の十年前のところへきて、国民所得に対する税負担がようやく二一%、二二%というところへきておりますが、社会保障費の割合の進んでいる国は、国民所得に対して税負担率がみんな二七%、二八%、三〇%ということになっていますが、所得が少なければ、この税負担の率が重かったら国民が耐えられないということでございますので、私どもは社会保障費の今の比率を増大させるためには、国民所得水準をどうしても上げていかなければいかぬ。それにつれて社会保障費の比率を上げていく、そのために国民所得をふやそうといういろいろな改築をやって、私どもは骨を折っておるところでございますので、問題は、国民所得を上げるか上げないか、それによって税負担率に耐えられるか、耐えられないか、それによって社会保障費の比率というものが上がっていくのであって、あなたのおっしゃられる通りでございますから、私ども国民所得をふやして、税負担率を世界並みにだんだんに上げていくという方向で政治をすべきものだと考えております。
  144. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣にお願いしますが、中心だけ一つ要項よくお答え願いたいと思います。限られた時間でございまするので。  そこで、次に厚生大臣にお伺いいたしまするが、今大蔵大臣がおっしゃいました、日本の国民の所得は世界の中でやはり二十五、六番だからとおっしゃいましたが、あなたはこの日本の国民の所得が世界において二十五、六番だという大蔵大臣のお言葉をそのまま承認されますかどうか、簡単に一つお答え願いたいと思うのであります。
  145. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は数字にまことに弱いのでありまして、何番目であるかということは、はっきり承知いたしておりませんが、大蔵大臣が専門でございますので、大蔵大臣の答弁通り考えます。
  146. 小林進

    小林(進)委員 もし灘尾大臣が、日本の所得が大蔵大臣の言われた通り日本は三十五、六番だと言われるならば、私は重大な問題について一つその真意をたださなければならぬ。それはほかでもありませんが、これは厚生大臣にお伺いいたしまするが、今年の一月にW日O、すなわち世界保健機構の総会が、スイスにおいて行なわれたはずでございます。そのスイスで、世界保健機構の総会が行なわれたその席上で、いわゆるWHOの各国の負担金が決定をされたはずであります。そこできめられる負担金は世界各国の国民所得から比例算出するものでございまして、所得の多い国はそれだけ余分に負担金を負担する、こういうきめになっているのでありまするが、そこできめられた日本の負担金は一体幾らかと言えば、六十四万ドルでございました。円に換算いたしまして二億五千万円であります。これが決定をされた。日本の負担金のこの六十四万ドルは一体何番目かというと、これは米、英、仏、西独、カナダに続いて六番目でございます。世界で六番目の高額の負担をすることになりました。六番目の高領の負担金を課せられたことについて、日本政府を代表して出席をいたしました厚生省の某局長は、日本もかつての五大強国の昔に近づいてきた、こうして手放しに喜んでいたということが報告をせられているのであります。少なくともこれを見まするならば、日本の所得は世界において六番目になったということを、これは日本政府みずからが承認をしたことになるではありませんか。もし二十六番目ならば――六番目の高額の負担金を課せられて、この問題に対して一体日本政府はこのWHO、世界保健機構に対して異議を申し入れられましたか。異議を申し入れないで、五大強国の一つになった、世界六番目の高率の所得国になったといって手放しで喜んでいられるという報告がある。これはどうも、今までの大蔵大臣の御説明と、厚生省がこの六番目の負担金を承認したということには大きな食い違いがありまするが、この点大蔵大臣から、もう一度御説明をお願いいたしたいと思うのであります。
  147. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今、二十六番目と言ったのは、私、正確なことではございませんで、私の今までの記憶でございまして、二、三年前にはそういう統計が出ております。この一、二年の間の変化をちょっと知りませんから、正確ではございませんが、国力という問題と国民所得の問題は別でございまして、国民所得の水準を見る場合には、全体の所得と人口の多寡との問題が出てきますので、そうしますと、日本は世界の相当小さい国の国民所得との比較においても、ずっと日本が下がっておるという事情がございます。その問題と、今の国際社会の中において、日本がそういう分担をするときの力とか地位とかいうものは、これは別の問題だろうと思っております。
  148. 小林進

    小林(進)委員 私は、日本政府はこの点が実にけしからぬと思うのであります。国内に向かっては、日本の所得が――私二十六番が二十五番目でもいいです。そういうこまかい数字は申し上げませんが、国内に向かっては日本は国際的に所得が少ない、収入が少ない、貧乏国だ、こういうようなことを言って、あるいは低賃金政策やら社会保障をみんなサボタージュをしておいでになって、そうして今度は海外に向かっては、国際場裏においては日本は五番目だ、六番目だ、所得の比率においても、実力においても。こういうことで、そして宣伝をしながら、そういう負担金などを多くかけられて喜んでおいでになる。同じことを扱うにも、国内的な放送と国際的な放送を、二手に分けて使い分けをせられておるがごときは、非常に私は国民に対する侮辱だと思う。そういうごまかしの政治をやってはいけません。私はこういう問題にこだわっておりますと先に進まぬから……。あなたは全くうそだ。うそなんですから、そういうところがもしうそでないならば、たとえて言えば、あなたのおっしゃるように、日本が二十六番目でなくてもよろしい。二十番目ならば、六番目の所得があるという負担金を、なぜ一体黙っていて甘受しているのですか。六番目じゃございません、二十番目ですから、二十番目なりの一つ分担金にしていただきたいと、なぜ一体正式に申し込まないのですか。申し込まないでいわゆる手放しで喜んでおる。そういうところを一つ大いに大蔵大臣反省をされまして、そういう国民をだますようなことをなさらないようにしていただきたいということをお願いするのでございます。今の日本が所得においては六番目でありながら――まだこればかりじゃない。社会保障の最低基準に関する条約百二号もまだ受ける、たけの資格がない――これはもう前にわれわれの同僚が質問いたしましたから、私は省略いたしますが、また労働政策においても、まだ八十七号の批准もできないで、世界から非難を受けてうだうだしている。こういう恥ずかしい状態が、みなこの予算編成の中に明らかに現われてきておるのでございますから、こういうことを一つ強く反省を促しまして、次に私は、第二番目の質問に移りたいと思うのでございます。  第二番目は、社会保障の二軍構造の問題でございますが、これほど世界各国に比較いたしまして――インドやベトナムあるいはグァテマラ程度の社会保障費しか国民に使っていない。そのわずかな社会保障費を、今度は正しく低所得階層に再分配をしていないという点なんです。これはまた日本の社会保障制度の最大の欠点であります。むしろ低所得層をさらに貧乏に追い込むような社人会保障、むしろ低所得者から社会保障の名においてさらに搾取するような方向にこの社会保障が実施されておるということは、私のとうてい了承し得ないところでございまして、少なくとも日本の低所得階層は、所得倍増計画という誤れる経済政策で、どんどん所得の格差、生活の格差をつけられた上に、さらに社会保障という名のもとに、この格差をさらに広げられ、大きくされて、いよいよ浮かぶ瀬のないどん底に落とされておるというのか今日の実態であります。医療保障において、所得保障において、公的扶助において、この格差を、低所得者と一般の人たちとの生活の水準を縮めるように三十七年度の予算を組んだと、大臣は確信をせられておるやいなや、大蔵大臣に一応まず所見を承っておきたいと思うのであります。貧乏の格差を広めるように予算ができておる。所得の格差がさらに出るようにこの社会保障ができ上がっておる。この点あなたは縮めるようにやったという確信があるならば、御答弁願いたいと思うのであります。
  149. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の社会保障総額は、御承知通り五百億円以上の増額となっておりますので、終戦直後の一ころの予算と比べましたら、三百億円ぐらいの社会保障費が、わずかの間に今日三千億円にも及ぶところまできまして、この社会保障政策だけは今着着と強化されておるところでございまして、本年度の予算の増額を見ましても、一般国民との格差解消という問題については、私は相当大きい改善になっておると思うのであります。ただ問題は、私ども予算の編成でいろいろ苦労した実情から見ますと、社会保障制度自体のあり方によって、社会保障制度間の不均衡というものが同時に現われてきている。こういう問題、やはり今後の問題でございますので、今そういうものの全体の整理統合といったものを、社会保障制度審議会審議されておると聞いておりますので、この結論を待って施策を改めれば、この制度内部の不均衡というような問題と、制度自身と一般国民生活との間の調整というものも、順次これはよくなっていくだろうと私は思っています。
  150. 小林進

    小林(進)委員 大臣に私は御忠告しておきますが、大臣、あなたは、ものをしゃべるときに、いずれも昔よりこれだけ大きくなった、昔は三百億だが、今は二千七百億だ、これはおやめなさい。そんなことを言えば、昔は裸でいたのです。そのまた昔はわらじをはいていたろう。こういう社会保障などを論ずるときに昔と今と比較するようなことは、最も卑怯な、答弁にならない、頭の悪い仕方です。そんなことではいかぬ。社会保障でも、何でも、現在の社会機構、経済機構、この環境の中で、縦、横に比較をすればどうかという比較でなければならぬ。そういうようなごまかしの答弁はおやめなさい。また、あなたの間違いを指摘しますが、それはおやめになった方がよろしい。大臣の格を落とすだけですから。  政府は、国民の皆保険が三十六年四月より実施されたということで、非常に自画自讃をいたしておるのでございまするが、日本の医療保障は六種類の医療保険からでき上がっておることは大臣も御承知通りであります。組合健康保険、政府管掌保険、日雇労働者健康保険、船員保険、共済組合と国民健康保険の六種類でございますが、この中で所得別に見た場合に、最も低所得階層を含んでおるものは日雇健康保険と国民健康保険であることも、大臣御承知通りであります。日雇健康保険は日雇い労働者のものでありますし、国民健康保険の被保険者は総数四千九百万人でございまするが、この四千九百万人の内容を占めておるものは、農民と、五人以下のほとんど家族で経営しておるいわゆる零細営業者のみでございまして、この国民健康保険四千九百万人の内容を所得別に見て参りますと、年間二十万円以下の所得者が八八%を占めておりますし、年間十二万円以下の所得者が一二%、これで満杯であります。こういうもので構成されておるのでございます。この数字は自治省の三十五年度の統計でございまして、私の統計ではございません。所得税の負担能力を有する者が、この四千九百万人の中に一体幾らおるかというとわずかに六・四%、三百万に及ばないのでございます。なおもっと詳しく言えば、この四千九百万人の国民健康保険の中で、いわゆる零細な所得者の中の七一%が農民であります。二九%が今申し上げました五人以下の家族で営業しております零細常業者であります。これが二九%、農民が七一%、これで国民健康保険の被保険者が構成せられておるのであります。今も申し上げましたように、二十万にもならないような低所得所だけででき上がっておるこの四千九百万人の国民健康保険の被保険者に対して、政府一体何をこの社会保障で与えておりますか。名目だけでは、国民皆保険ができたと言いながら、まず医療保障の面から見ても、他の五種類の健康保険から見ても、この諸君は、完全に医療保障からはみ出されておると極言してもいいくらい冷淡に扱われておるではありませんか。社会保障、所得再分配という原則が成り立つならば、何をおいても、この階層にこそ、まず所得保障、医療保障というものは、他の社会保障に優先して与えなければならないものである。全く逆ではありませんか。逆に行なわれておるこの理由は、一体どこにあるか。この矛盾を大蔵大臣は少しでもお考えになったことがあるのかどうかということですね。これをまず私は、大蔵大臣にお尋ねをいたしておきたいと思います。
  151. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、社会保障制度内のこういう格差というものについては、やはり統合を再検討しなければならぬ問題がありますので、今政府でも審議会を通じてこの問題を研究しておるというところでございます。とりあえずそういう問題がございますので、私どもは国保に対する国費負担を今年度五%引き上げて、三割にいたして、五百四十億円以上の予算を計上しておるということで、大体国費で三割負担するということによって、この不均衡を是正したいという考えでございます。
  152. 小林進

    小林(進)委員 たった五%引き上げになったことを大蔵大臣は自慢をしておられますが、側々の国民健康保険の被保険者に対して、それは一体どれだけの負担の軽減になっておるのでありますか。個々の被保険者にとっては何の利益も与えられていないのであります。  時間がありませんから簡単に申し上げますけれども、医療の給付の面で見ますならば、政府管掌保険では、本人は一年間で六千八百四十六円の給付を受けている。組合健保においても、本人は六千三百九十一円の給付を受けておる。日雇健保においても、本人は五千四百十三円の給付を受けているにもかかわらず、国民健康保険だけは本人、家族合わせて、一年間給付を受けることわずかに二千二百十八円でありまして、ほかの人よりはこの医療の給付を受けることまさに三分の一であります。特に農林大臣、よくお聞き下さい。何も百姓だけが病気をしないわけではありません。中小零細業者の者だけが病気をしないわけじゃない。健康で丈夫でいるわけじゃない。社会保障の面から、三分の一も医者にかかれないくらいにはみ出されている原因は、一体どこにありますか。一番気の毒な方々が医者にもかかれないという理由は、どこにありますか。それはすなわち医療の給付にいろいろの制限があるからです。百姓と零細業者だけは、保険税をちゃんととられておって、その上に病気になったら、窓口払いで、半額金を持っていらっしゃい、金を持ってこなければ、お前を医者にかからせるわけにもいかぬし、診療してやることもできない、こういう制度になっていましょう。ほかの人々は、病気になればみんな本人はただだ。入院してもただ、治療費もただ、寝具料もただ、入院したら給食費もただ。百姓や零細業者だけは、病気になれば、窓口へ行って半分払って、病院に入れば、寝具も持っていらっしゃい、食事代も持っていらっしゃい、医者にかかれば、往診料もお払いなさいといって、何も医療の恩典が与えられていないから、保険税はとられっぱなしで、病気になっても医者にかかれない。富山の売薬か何かで、一つ寝ていて何とかしようということで、みずからの命を縮めておるのが今日の現状なんであります。一体この格差を、どうして直さないのか。大蔵大臣、なぜあなたはこういうことをそのままにしておられるのか。いま少し明確にその理由を承りたいと私は言うのです。
  153. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日の医療保険につきまして、国民健康保険の内容が他と比較いたしまして劣っていることは事実であります。それは御指摘の通りでございますが、ただ小林さんも御承知のように、日本の社会保障の中には、いろいろな制度があるわけでございます。ようやく国民皆保険ということがいえるようなときになったのでありますが、ここまでくる間にはずいぶんと歴史があるわけであります。それぞれの歴史を持って発展しておりまして、健康保険は健康保険として、日雇い保険は日雇い保険として発展して参りました。国民健康保険も、その歴史はだいぶ前からでありますが、だんだん発展しまして、三十六年度から全国的に行なうというところまでこぎつけたわけであります。そういうことでありますので、それぞれ沿革を異にし、内容を異にし、あるいは生活の実態を異にしておるということで、今日内容的に見ました場合に、各種の保険の間に相違がある、あるいは優劣があるということはいなめない事実であります。むしろ問題は、その劣っておるところをどうするかというところが、今後のわれわれに課せられた大きな問題だと考えるわけであります。私ども、決して今日の国民保険が、そのままで十全であるというふうには夢にも考えておりません。ただ、ようやくここまできた、これから一つ内容の充実整備に努力していこうという考え方をいたしておるわけであります。  それから、健康保険と国民健康保険との比較のお話もございました。数字はだんだんと変わってきておるように私は思うのでございますが、国民健康保険にいたしましても、三十正年度、三十六年度、あるいは三十七年度と、だんだん被保険者についての医療費は向上して参ったものと思います。小林さんの御指摘になりました健康保険の数字は、被保険者本人に関するものであろうと思うのでございますが、被保険者の扶養しておる方々に対するものは、それよりはだいぶ低い、これがいいとか悪いとかいう問題は別といたしまして、低い。国民健康保険の方も、健康保険の扶養者の方々に対する医療費というものと比べますと、それほど大きな違いはない、だんだん接近してくると私は思うのであります。いずれにしましても、これは五割負担というものがついておるわけです。そこらにやはり医療費が制限されておるという事実はいなむことができないだろうと思うのであります。いずれにいたしましても、今後さらに努力いたしまして、整備充実をはかっていかなければならぬ問題と心得ておる次第であります。
  154. 小林進

    小林(進)委員 厚生大臣は、いろいろお話しになりましたけれども、あなたのお話を聞いていると、結局その生まれやおい立ちが違うから、皆保険からはみ出されても、あるいは入院しても入院料を払わされてもがまんしておけ、そのうちにはなおしてやる、こういうことなんです。これを俗でいえば、同じ子供だけれども国民健康保険、百姓や中小零細業者の力は、めかけの子だから本妻並みの扱いはできぬからしんぼうしてくれ、教育も満足にできない、待遇も満足にできないという、こういう理屈なんです。これはあなたの方からは、正当な理屈とお考えになるかもしれませんけれども国民個々の側から見たら、実に人を軽べつしたものの言い方であります。だから、こういうような格差は――もし差をつけるとすれば、社会保障の本来の目的に向かって差をつけていかなければならない。この社会保障の目的は所得の再分配だから、もし差をつけるとすれば、一番低所得階層にこそ厚い待遇をするという、そういう差のつけ方でなければならないのではありませんか。全く逆なんです。こういうようなことは、日本の政治の最も盲点です。私は了承できませんが、時間がありません。あなたも少し反省しなさい。へ理屈をおっしゃることはわかりますが、反省しなさい。政府は正しく反省することを、強く要望いたします。  特に、私はこの際、農林大臣に申し上げたいと思います。農業基本法は、言うまでもなく、農業所得者の他の産業との所得の格差、生活の格差を縮めるのを目的として立法された法律であることは、私が申し上げるまでもなく御承知だと思う。その格差を縮めるために特に農業基本法の第二十条にそれを設けて、農業政策だけではだめだから、あるいは文教政策、あるいは社会保障、あるいは職業訓練等によって、どうしても農民の格差を縮めるとあなたは言われておる。ところが、そのあなたが言われておる第二十条の社会保障は、今申し上げまするように、かえって、だんだん差を広げて、貧乏に追い込むようにしておる。貧乏人、農民だけから医療費を取り上げる、寝具代も取り上げる、給食費も取り上げるというふうにして、だんだんこれをいじめるように、格差を広げるようにでき上がっておることは、言うことと実際とは全く逆ではないかと私は思いますが、この点に対して、農林大臣は、この社会保障の問題、この格差の問題を縮めるということをお考えになったことがあるかどうか、お聞かせ願いたいのであります。
  155. 河野一郎

    ○河野国務大臣 大へんけっこうなお話を承りました。今、厚生大臣が申しましたように、厚生大臣、せっかく農村に対しても努力をすると言うておられますから、私も厚生大臣にお願いをいたしまして、閣内におきまして最善の努力を払いたいと考えております。
  156. 小林進

    小林(進)委員 今のお話を承っておりますと、厚生大臣の話を聞いて農林大臣ようやく気がついた、今までは知らなかった、これから厚生大臣の驥尾に付してあらためて考えよう、こう御答弁と私は了承します。どろぼうをつかまえてなわをなうのと同じような答弁です。そのうちには百姓は死んで白骨になってしまいますよ。白骨になってからこんなものを改正してもらったところで間に合わない。ここに私はやはり農林行政の非常に大きな盲点があると思って残念にたえないのであります。  事のついででありまするが、通産大臣にも一つお伺いいたしておきたい。四千九百万人の低所得階層を中心とする国民健康保険の中に、二九%の五人以下の営業者をもって営業しておりまする中小商工業者が含まれております。この人たちの生活経済のことを考えて、今通産省では中小企業基本法を立案中であると承っております。この中に、いわゆる社会保障の面で、この人たちをやはり格差をなくして、これを守っていくというような、そういう条項が含まれているかどうか、条文が入っているかどうかをお聞かせを願いたいと思うのであります。
  157. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま中小企業基本法を検討中でございます。いろいろ研究し準備中であります。もちろんその中には中小企業の、ことに小業者に対しての社会保障制度の充実をはかっていきたい、そういう条項も考えております。関係省、厚生省、労働省と、とくと協議を進めていい結論を得たい、かように考えております。
  158. 小林進

    小林(進)委員 時間もありませんので急いで申し上げますが、私は次に――問題は幾つも持っておりまするが、社会保障、医療保障だけにこだわっておりますと次に進みませんので……。
  159. 重政誠之

    ○重政委員長代理 適当に取捨してやって下さい。
  160. 小林進

    小林(進)委員 私は、やはり医療保障ですが、医療保障の給付の種類の格差の制限について承っていきたいと思います。  第一番目には傷病手当金ですね。これも特に私は農林大臣に言いたいのです。これも国民健康保険以外の他の被用者保険は、本人が病気になります。あるいはけがをする、そして営業を休んでいる間は、勤務を休んでいる間は、傷病手当金といってその間は給料の六割ないしは八割あるいは一定金額というものを、六カ月あるいは長きは三年にわたって、ちゃんと手当金をやっている。組合健康保険は六カ月から三年、政府健康保険でも六カ月、船員保険でも三年、国家公務興が病気になれば共済で六カ月から三年というふうに給料の六割ないし八割、ところが国民健康保険は、今申し上げました百姓だけは病気になって寝たときには、窓口払いで現金だけはとられるけれども、一銭の傷病手当金もない、もはや次の日から生活のどん底に落ちねばならない。こういうことをあなたは一体矛盾でないとお考えになりますか、農林大臣。
  161. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知のように、行政はそれぞれ管掌がございます。お話しの社会保障につきましては厚生大臣の管掌で、厚生大臣がその事務を管掌していらっしゃいます。私は、農林大臣として農村の振興、経済の安定を管掌しております。ただ、今お話の点につきまして一言申し上げておきたい点は、月給取りは、その本人が病気になれば一切の収入がなくなる、農村は必ずしもそういうわけではない、経営の内容に違いがある、これらの点について多少の考慮の余地があるということも私は考えていいんじゃないかと思います。しかしあえてその制度を農村に及ぼして悪いということはありませんから、それは将来は及ぼすことに厚生大臣もせっかく御尽力いただけると思いますが、現在の状態においては絶対にがまんができぬかといえば、私は絶対にがまんができぬものではないというふうに考えております。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 小林進

    小林(進)委員 ただ生活手段を持っている持っていないということだけで、こういう医療保障の方からはみ出していいというものの考え方は、実に私は間違った見解だと思う。要は、先ほどから申し上げますように、一体農民の生活がどうなんだ、中小零細業者の生活がどうなんだ、年間十二万円以下の所得者がこれだけ含まれている。生活の実態、所得の実態は、今申し上げた通りだ。こういう低所得の者がいて生存権まで脅かされているものを、お前はいわゆる勤労者ではない、生活手段を持っているから、多少そこに差をつけてそういう手当金は要らないという、それが農民を扱っている、農民の生活を守ろうとする農林大臣から、そういう冷淡なお言葉をお聞きするということは、私はまことにこれは悲しみにたえない。なおそのほか参考までに申し上げますが、なお分娩費といって、これはみな子供を生むときには、ほかの健康保険には全部費用が、これは俸給の五割とか十割あるいは日雇健康保険でも子供を生んだときは四千円、家族の者でも二千円というふうにちゃんと社会保障が行なわれておる。ないのは国民健康保険だけです。今度は育児手当、子供を生んだときには、生んだ子供が育つまでの一定期間というものは、ほかの健康保険には全部育児手当が与えられておる。国民健康保険にはない。農民と零細業苦だけにはない。死んだ場合には一体どうなんだ。死んだ場合にも、埋葬料といって月給の一カ月分なりあるいは一万円なり六千円なりが出る。他の五種類の健康保険には全部あります。ないのはこの百姓とこの零細業者だ。国民健康保険だけには、死んで墓場までは勝手にいらっしゃい、行く所がなければ迷っていらっしゃい、政府の方はめんどうは見ない、社会保障じゃごめんこうむりますという、こういう政策なんです。社へ会保障は揺から墓場まで国家がめんどうを見ますという、これが社会保障の原則でございましょう。しかるに国民健康保険の対象者だけはおぎゃあと生まれたときの出産の手出もなければ、死んだら墓場に行く墓葬料もない、全部これは医療保障からはみ出されている。何で一体これが国民健康保険と言い得るかということなんです。農林大臣。農民のめんどうを見るが農林省の仕事でございましょう。
  163. 河野一郎

    ○河野国務大臣 だんだんお話でございますから、私が申し上げるまでもなく十分御了承のことと考えますけれども、わが国の農村には、農村の美風がございます。相互扶助の格好におきまして、それぞれお互いに助け合っております。旧来の、制度ではございませんが、良風がございます。そういう意味において、相互保険のようなことが各地において行なわれておりますことは、御承知通りであります。従いまして、今お話のように、そういう制度であり、そこまで手が届くことが望ましいことであるには違いありません。私は、お話の点が間違っているとかそういうことは要らぬことたということは考えておりません。望ましいことではありますけれども、しかし今申し上げるように、ほかに緊急なものがあるから農村があと回しになっておる。そのあと回しになっておるものについては、今申し上げるようなことが農村にあると私は了承いたしております。しかし、お前は骨になってもほうっておくのか、何しているのだ。先ほどから統計をしきりに、二十万円だとかお使いになりますけれども、現に今日におきましては、農村の所得も相当上がってきております。またこれを上げて参ることが私の一番大事なことでありまして、私は私なりに、農村の所得を上げていくことに専念いたしておりますということで御了承いただきたいと思います。
  164. 小林進

    小林(進)委員 私は話を先に進めたいと思ったのでありますけれども、農林大臣がそういう御答弁をなさるならば、その答弁に私はやはり私なりの言い分を言わせてもらわなければならぬ。なるほど農村の所得はふえました。ふえたでしょうけどども、三十六年の所得はどうでありますか。日本の農家一戸平均の所得は四十一万何がしです。私はここに数字を持っておる。その四十一万何がしの中に純粋の農業所得は幾らですか。二十一万何がしで、四十一万何がしのわずかに五三・三%だ。あとの十九万何がしの金はそれは非農業ですよ。兼業収入ですよ。もう百姓では食えなくなって、いわゆる季節労働当となりあるいは貸金労働者となって農業以外で働いて得た収入が、すなわち四六・七%だ。百姓と名を打ちながらも、その収入の内容は、もはや百姓でわずかに五〇%そこそこの収入しか得られなくなっている、あとは全部農業以外の収入で得ているということは、これは厳密の意味でいえば百姓が百姓でなくなりつつあることだ。農業という職業があまりにも低所得のために日本から今追われつつあるというこの現状だ。それをあなたは今相互扶助でこれを救ってやるの何のかんのとおっしゃることは、私は農林大臣の御返答としてはまことにちょうだいしかねる。そんなことで農民の生活が守られるものではありません。  私は、もっと言わしてもらうならば、あなたは適地通産主義だの構造改善だのとおっしゃるが、一体あなたのおやりになったその適地適産主義で、現実に農民個々の生活がどのくらい変化して恵まれておりますか。私は、そんな怪しげなと育ったら、大臣に申しわけありませんから言いませんけれども、そういうような農業政策より、できればこの国民健康保険の窓口払いの一つだけでもよろしい、農民も病気のときには全部政府が補償するから、一つただで医者にかかってこい、こういう政策を、再補償一本やっていただくだけでも、一体どれだけ農民はありがたいかわかりません。  もっと私はあとから申し上げまするが、所得保障の問題でもその通りだ。あのせつない農民の生活の中から、国民年金をやりますなんといって、強制加入で国民年金料を貧富にかかわらず引き上げているけれども、そんなものは福祉年金で、農民は一番苦労して働いているのだから六十才になったら、みんな二千円か三千円ずつの福祉老齢年金をやるからという、その線を一本出してくれたら、あなたの、怪しげなとは言いませんけれども、適地適産政策などという農業政策より、どれだけ農民が助かるかわからない。その点を私は真剣にお考え願いたいと思うのでありまするが、いかがでございましょう。
  165. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は議論が全然同じ道を歩いていないと思うのであります。あなたは消極的と言ったらおしかりになるかもしれませんが、出る金を出さないようにしようということに非常に熱心に御主張でございます。私もこれに全面的に賛成でございます。賛成でございますが、私本来の使命は、出る金を押えるよりも、入る金を多くするという方に努力しなければならぬ、こう考えておるのでございます。そこで、怪しげであるかどうか知りませんが、私は私なりに私の農業政策を推進して参ることが日本農村のためである。いろいろ御議論になりますこと、まだやらぬうちから、予算もまだ今ここで議論しておるのですから、議論程度では、農村がよくなるわけはないのであります。これを実行して初めてよくなるのでありますから、その点は一つ御了承いただきたい。
  166. 小林進

    小林(進)委員 いみじくも大臣は私の意見は消極的だとおっしゃった。大臣がしかりその通りだ。農村における社会保障を全面的におやりにならないで、もっぱら積極農政だけに終始せられるというならば、私はその意見にも賛成をいたしましょう。立場をかえても大臣の立場を了承いたしましょう。それならばあなたは、農村においてあまたの階層のある中に、いわゆる旧地主でありますが、旧地主に対してだけは、あえて社会保障とは私は申し上げませんけれども、社会保障に準ずべきいわゆる農地補償の問題を取り上げられた。いわゆる二十億円の貸付の問題であります。これは貸付ですから、純粋の意味の社会保障ではないだろうけれども、この農村の中の低所件名、芳しんでおる農民がいるのを、あなたはそれに一顧もくれないのだ。解放された旧地主だけは、やはり何らか考慮してめんどうを見なくてはならぬ理由が確かにある、こういうことで、農地被買収者に対しては、ああやって調査会を設けて調査法案国会に出して、そしてわれわれは国会の決議においてそれをまかした。しかもその結論が出ないうちにあなたは二十億円の金をこの予算の中に組んで、そしてこの旧地主だけの生活のめんどうや所得のめんどうを見ようとするのは一体どういうわけだ。しかも農地被買収者の調査会の中には、中間報告でございますけれども、旧地主階級は経済的にあるいは耕地の規模において、社会的な地位において農村においては平均して決して困っていない。まれには未亡人や旧地主の中で転落している者もあるけれども、平均してはやはり農村において上位の地位にいるじゃないか、クラスのいいところにいるじゃないか、こういう中間報告が出ているにもかかわらず、その結論を待たずして、国会の決議まであなたは踏みにじって、そうしてそういう旧地主を擁護するような、社会保障的な意味も含めて、二十億円の巨額な金までも予算に組まされている理由は一体――大蔵大臣、これはあなたに質問するのであります。あなた歯なんか掘っていないで、あなたから答弁して下さい――いやいや大蔵大臣ですよ。
  167. 山村新治郎

    山村委員長 先に農林大臣からお答えになります。
  168. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お言葉でございますが、地主々々という言葉をお使いになりますけれども、確かに一反歩持っておっても地主に間違いございません。一体おっしゃる地主とはどういう地主をおさしになるのか、その点を一つ明確になさる必要があると私は思うのであります。われわれが言うところの土地の所市名でございます。これはいわゆる通念で申すところの地主という意味合いじゃございません。従って今お話しの通り、地主々々と、依然として小作人と地主という感覚は、今日農村では通用いたしません。これは農地法という制度を実施いたしましてから今日は、農村にそういう対立もなければ、そういう段階もございません。従ってわれわれは、かつての土地を所有しておった、農地を所有しておった……。
  169. 小林進

    小林(進)委員 だから、私は旧地主と申し上げていますよ。
  170. 河野一郎

    ○河野国務大臣 だから、旧地主といっても大地主のようなもの、いわゆる地主というようなものを対象に考えておりません。そうでなしに、かつて農地を持っておった者で、それが今生業資金になる金があったならば、そこで一つ事業ができる、ああいう仕事をしたい、こういう仕事をしたいと思っておるというような人に資金の供与をいたそうということが大蔵大臣のお考えであり、われわれもそういうふうに考えておるのでございまして、ただ世間からおっしゃられる、依然として農村に二つの勢力があって、それが地主と小作人の勢力であるというような用語を、はなはだ失礼な申し分ですが、どうも社会党さんの方の御発言にはそういう御発言がある。断じてわれわれはそういう意識を持って政治をやっておりません。   〔発言する者あり〕
  171. 山村新治郎

    山村委員長 御静粛に願います。
  172. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今農林大臣がお答えになった趣旨において、生業資金に困っておるという者に対して貸付の道を開くことは妥当な措置だろうと考えて、そういう道を開こうとしたわけでございます。
  173. 小林進

    小林(進)委員 私は農林大臣と旧地主の問題について論争しようとは思っておりません。自小作もありましょう、あるいは自作を中心にした地主もありましょう、あるいは小作であって地主の立場にある者もありましょう。しかし今彼らは渾然としている、むろん小作の立場の者もいましょうし、あるいは地主の立場の者もありましょうし、自作農の立場もありましょうけれども、その中から特に旧地主というものを選び出して、あなた自身がむしろそういう感覚を作られているじゃないですか。選び出して、そうしてそういうもののためのみに二十億円の予算を組んで、今おっしゃるように生業資金やら何やらをめんどう見ようというその感覚は、現在の農村対策としては非常に間違っているではないか。ほんとうに農民の一部分だけのめんどうを見よう――先ほどから言うように、あなたは、社会保障なんというものは消極的だから、積極的な政策に変わるのだというならばそれでよろしいけれども、その中で今のあなたの言われる旧地主とかなにかの感覚がないというならば、なおさらだ。それをあなた自身が旧地主と銘打って、そしてその人たちのめんどうを見ようというそのやり方は、私は非常に間違っているというのでございまするが、大臣、もう時間もありませんから、農林委員会でまた私はあなたに再度面会をさしていただきまして、この問題で一つあなたを啓蒙をさしていただく。私はどうしても農林大臣を全農民のために啓蒙をさしていただかなければならないと考えております。きょうは残念ながら時間がありませんので、私はこの問題はこれで終わります。  自治省大臣に一つお伺いしておきたい。保険料の問題でございますが、国民健康保険税は、やはり市町村民税の所得割でなくて均等割ですね。住民税を……。
  174. 山村新治郎

    山村委員長 小林君にちょっと伺いますが、農林大臣はよろしゅうございますか。
  175. 小林進

    小林(進)委員 農林大臣にはまだたくさん問題がありますから、しばらく。健康保険の問題だけは、農林大臣に対する質問はおさめておくけれども、まだいろいろ問題がたくさんございます。
  176. 山村新治郎

    山村委員長 それでは率直に申し上げますが、せっかくの御名輪中でございますけれども、いろいろ皆さんの生理的関係もございますから、あなたの御質問は四十五分までで、あと約十九分を残して午後に回したいと思いますが、農林大臣はそのときでよろしゅうございますか。
  177. 小林進

    小林(進)委員 けっこうです。それじゃどうぞ農林大臣。あとは午後に保留させていただきますから。
  178. 山村新治郎

    山村委員長 いずれにしても四十五分までお続け願います。せっかくの名調子を折りましてまことに申しわけございませんが、四十五分まで時間がございますし、大臣も全部四十五分までいらっしゃいますから。
  179. 小林進

    小林(進)委員 市町村において、市町村民税を免除されている者はどれくらいか、あるいは国保の保険税、保険料を免除されている者の数字はどれくらいか、国民年金を免除されている者の数字はどれくらいか、これは自治大臣。あわせて、現在の市町村において、いわゆる国民健康保険税は非常に重税ではないか、市町村民税に比較して保険税、保険料は非常に苛酷ではないか、これは大蔵大臣にお伺いいたします。
  180. 山村新治郎

    山村委員長 小林さん並びに閣僚諸君に申し上げます。四十五分まで続けたいと思いますからどうぞ。
  181. 安井謙

    安井国務大臣 国民健康保税を納めております人のうちの、四一%は所得割を納めていないような階級になっております。ことに、この市町村民税を納めないという階級は、廃疾者あるいは無収入者といったようなものになっておりまして、これはごく特殊の例でございます。
  182. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣はお急ぎのようですから、大蔵大臣は午後に回しまして、それでは労働、厚生だけでこれから四十五分まで……。
  183. 山村新治郎

    山村委員長 それじゃ四十五分まで続けることにして、大蔵大臣は退席させていただきます。
  184. 小林進

    小林(進)委員 医療の問題はこれくらいにしておきまして、次に所得保障の二重構造についてお伺いいたしたいのでありますが、御承知のように、年金でもわが日本には、厚生年金保険と、船員保険、国家公務員共済組合、公共企業体職員等共済組合、市町村職員の共済組合、私立学校教職員共済組合、農林漁業団体職員共済組合、それから今問題になっております地方公務員の年金条例というふうに、八種類あるのでございますが、これらの厚生年金を初め、地方公務員の共済年金等々も、大いに改めてもらわなければならぬ。実にこれは貧弱そのものでございまして、改めてもらわなければなりませんが、この問題の改正の点はしばらくおくといたしまして、やはりこれらの年金に比較して、どうして一体国民年金だけを冷淡に差別待遇されておるのかという、この点を私はほんとうは大蔵大臣にお聞きしたいのでありますが、おいでになりませんから厚生大臣にお伺いいたします。  現在、国民年金の強制適用の人員は二千二百四万人でありますが、そのうち現在入っておるのが、これは三十六年の九月まででありますが一千五百六十八万八千人、こういうふうになっておりますが、各地方へ参りますと、一体この加入に、喜んで加入しているとお考えになっているかどうか。この一千六百万何がしの、強制加入させられたこの年金加入者の中の、職業別、階層別の数字を私は一つお伺いします。おそらくこれもほとんど農民と零細業者だけでありましょうが、この職業別を一つお聞かせ願いたい。こういう人たちを加入せしめるときに、今あなた方のおやりになっていることは、納税組合だの、納税貯蓄組合だの、婦人会だ、未亡人会だ、青年団だ、町内会だ、部落会だ、自治会だ、民生委員だと、農協から区長まで動員して、あの手この手で、まるで精神的に強奪をするような形で、その金をお集めになっているという実態が方々に出ているのであります。これは、私は実に間違っていると思う。先ほどから繰り返して言うように、追い詰められている方々にとって、四十五年先に一カ月三千五百円もらえます。四千円もらえますなどということは、これはちっとも魅力のないことだ。こういうような強制の形で苦しみながら、いわゆる一カ月百円なり百五十円ずつなりを納めている実態でございますが、そういうような圧力をかけるのをおやめになって、いま少し福祉年金というものに重点を置きかえられてはどうか。一体この強制的な国民年金を、任意制度に切りかえる意向がないかどうか。内容と、強制を任意にすることと、福祉年金をいま少し充実すること、この三つの点についてお答えを願いたいと思います。
  185. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民年金の被保険者は、大体国民健康保険の被保険者と同様な方々が入っていらっしゃると思うのであります。すなわち、農業に従事しておられる方々が大部分を占めておる、かように私は考える次第であります。他の各種年金保険に入っている人たちは、全部省かれておりますので、そういう結果になろうと思います。  それから、加入の強制というお話でございましたが、法律上はなるほど強制ということに相なっております。しかし、実際これの運用に当たりましては、十分説得もし、理解を求めて加入を勧めておるような状況でございます。また、福祉年金を主体にせよというような御趣旨でございます。御承知のように、まだ実施したばかりでございますが、この国民年金法は拠出年金を主体といたしておるのであります。それの足らざるところを補完する意味におきまして、福祉年金の制度が設けられておるわけでございます。制度実施早々のことでありますので、私どもはこの制度を何とか円満に実施して、将来の発展をはかりたい、かように考えておる次第でありまして、今その原則を変えるというような考え方はいたしておりません。
  186. 小林進

    小林(進)委員 この年金において、他の年金と最も著しい差別がある。今あなたは、国民年金の強制加入をしいられる者は、農民がほとんどだとおっしゃいましたが、この中で他の年金との一番大きな差別は、年金の支給開始の時期です。ほかの年金はみな六十才、早いのは五十五才から年金を受ける受給資格が生まれてくる。国民年金だけ六十五才とは何ですか。五年間おそいじゃありませんか。これは一体どうなんです。  時間がありませんから、二番目に、いわゆる受給資格の開始の期限です。ほかの年金は大体二十年だけ金を積み立てれば――農林大臣、お聞き下さい。これは重大な問題ですからね。ほかの年金は、二十年だけ保険金を納めれば受給資格が生まれてくる。国民年金だけが最低二十五年納めなければもらえない。掛金の方は五年だけよけいふんだくられている。もらうときは五年あと回しだ。六十才まで、四十五年の長きにわたってお金を積んでいかなければならぬ。それで六十才になったら五年間休むんです。休んだ間にみんな殺してしまう、そうすると六十五才にならないから、その金は取りっぱなしで払わぬでよろしい。こう勘ぐれば勘ぐれるような国民年金が、農民だけに施行せられている。これは一体正しいでしょうか。なぜ一体こういう格差を年金の中に設けられているのか、端的にその理由をお聞かせ願いたい。その発生の理由が異なるなどという、本妻の子だ、めかけの子だなどというような理屈では、私はちょうだいできないわけです。そのほかに、なぜ一体こういう差別を設けて、社会保障の二重構造を深めていかなければならないのかという理由を一つ明確にお聞かせ願いたい。
  187. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なるほど厚生年金等と比較いたしますれば、国民年金で老齢年金を受けるいわゆる開始年令は六十五才に相なっておるわけであります。この点は、やはり国民年金の被保険者を構成する大多数の人たちの生活の実態と、どこかで雇われておる、使用せられておる人たちの実態とは若干異なるものがあろうかと思うのであります。御承知のように、定年とか退職年令というようなことについて問題はございますが、農業者の諸君につきましては、その点が幾らか事情が違っておる。従って六十五才を開始年令としても、そう別に不利益を強いておるというふうには私ども考えないのでございます。それから二十五年たたなければというようなお話でございますが、これは確かにその通りになっておるわけであります。御承知のように、現在でも保険料は、大体これから考えますれば、二十才から六十才まで納める、年金は六十五才からもらう、こういうような形になっておりますが、現行法では、この二十五年の間の十年間保険料を納める、あとの十五年間は保険料を免除せられたままでも年金を受けられる形になっておりますが、この点はさらに改善を加えることにいたしまして、今回この国会で御審議を願っておるわけでございますが、保険料をまるまる免除した人に対しましても年金は差し上げる、こういうふうな制度に改善をいたしたいと考えておるような次第でございます。さような意味合いから申しますと、この国民年金は、むしろ低所得の人たちに対しましては相当有利に考えられつつあるというふうに、御理解願ってもよろしいのじゃないかと思います。
  188. 小林進

    小林(進)委員 これで午前の分は終わりますが、国民年金にも免除の規定がありまして、法定免除と申請免除がある。いわゆる生活保護者、そういう方々は法律によって当然に免除をせられておるが、それ以外の低所得者に対しては申請によって免除をする、こういうことになっております。農林大臣にお伺いしたいのでありますが、先ほどから申し上げておりますように、農民の八八%は低所得者だ。年間二十万円です。四十万円といえば、それは他の収入なんです。他の労働の所得なんです。農業所得は二十万円そこそこであります。こういう低所得者に対しては、国民年金を全部免除されてしかるべしと私は考えております。少なくとも一町歩以下の農家に対しては、この一カ月百円ないし百五十円の保険料は全部免除すべきである、こういう要求は、収入の面から見ても正当な要求ですから、この問題を農林大臣が厚生大臣に正式に申し込んでいただけるかどうか、お伺いいたしたいわけであります。
  189. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私からまずお答えいたします。  小林さん、御承知のように、所得の低い方が多いのであります。ことに所得の低い人たちに対しましては、年金では保険料を免除するという規定があるわけであります。現にそれによって免除せられておる人もおるわけであります。今度の法律の改正によりまして、この免除せられておる人たちに対しましても、国の負担する部分だけは出そうということで、年金の改善をはかっておるわけであります。今、二十万円以下というふうなお話でございましたが、大体私ども考えておりますところでは、十六、七万円以下の所得の人たちに対しましては、保険料を免除しようという考え方でもって進んでおる次第でございます。この点も御了承いただきたいと思います。
  190. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は大体今お話を承っておりまして、考え方としてはそういう方向に順次改善していくべきものであると考えます。ただ一点、先ほどからお話のあります兼業農家の点でありますが、兼業農家はわきへ行って月給を取ってくるじゃないか、これは農業の収入と別じゃないか、こういう考え方は、私は了承できないのでございます。農業経営を合理化して、その余剰労力を他の所得に向けておる、これは大へんけっこうなことで、私は兼業農家を育成強化して参ろうと考えておるのでございまして、この所得を農業所得から分けて計算するというようなことは、考えていないわけでございます。しかし、所得が別にいたしましても、今の考え方については、順次そういきたいものだと考えておりますが、なかなかそこまで手が回らぬ。だんだん先ほどから伺っておりますけれども、世の中というものはみなそういうふうに、小林さんのおっしゃるようになっておるでございましょうか。役人をやめたらば恩給をもらっておる、百姓はやめても恩給をもらえぬというようなことを、これはもらわなければならぬというように、――一体、それをもらうようにしないから農林大臣けしからぬと、私は責められなければならぬものでしょうか。そういうものじゃないと思います。程度はあります。程度はありますが、それがみなそうばかりにはいかないと考えておるものでございますから、どうかその点御了承願いたいと思います。
  191. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、小林君の持ち時間は、厳密に申し上げましてあと約十八分でございます。  本会議散会後再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時四十八分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十一分開議
  192. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十七年度総予算に対する質疑を続行いたします。小林進君に発言を許します。小林進君。
  193. 小林進

    小林(進)委員 きわめて限られた時間でございますから、公的扶助の問題について端的に大蔵大臣に質問をいたしたいと存じます。  今年度は昨年度に比較いたしまして一三%生活扶助費をお引き上げになったのでありますが、大蔵大臣は、三十六年度においては、予算編成にあたって厚生大臣の要求いたしました二六%引き上げを一八%に修正をされましたし、三十七年度の予算編成にあたりましても、一八%引き上げ要求に対して、これを一三%に修正決定されました。大蔵大臣がこの生活保護基準をおきめになったのでありますが、大蔵大臣はこの生活保護法第八条に基づく保護基準算定をおやりになりますについて、どういう算定の方法をおとりになったのか、簡単直截にお聞かせを願いたいと思うのであります。
  194. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この保護基準をきめるのは厚生大臣の権限でございますので、私がきめたわけではございません。ただ予算の編成過程におきまして、財政上の問題から大蔵大臣が関与しておるということで、保護基準を私がきめたわけではございません。
  195. 小林進

    小林(進)委員 そういたしますと、大蔵大臣は予算編成及び予算執行の技術の上から、先に生活保護基準の基準額をきめてしまった、こういうことに判断をしてよろしいかどうかということであります。
  196. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 こういうものをきめるときには、いろいろなものの均衡がございますし、またいろいろの実情を勘案しまして、大体この程度の金額がよかろう、国費の配分の上においても一応いろいろの均衡を考えますし、いろいろな点から、私どもはこの二年間に四〇%程度基準を上げることが至当だと考えたわけでございます。
  197. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣は実に重大なる発言をせられました。生活保護の基準をきめるにあたって、経済事情あるいはもろもろの事情を勘案して、今年度の基準を決定されたというのでありますが、これは実に重大なる発言であります。もし別な言葉でいえば、それは現行生活保護法に対し明らかに法律違反を犯されたことになるのであります。これは、朝日事件の第一審の判決でも、この点を明確にいたしまして、最低限度の生活水準を判定するについては、そのときどきの国の予算の配分によって左右すべきものではない、最低限度の水準は決して予算の有無によって決定されるものではない、むしろこれを指導、支配すべきものである、こういう判決をいたしておりますし、また学者は全部、この生活保護基準の決定については、これは予算あるいはその他の経済事情によって左右せらるべきものではない、憲法第二十五条並びに生活保護法第八条は、人間生存権の最低の基準をきめる人権に関する最も重要な問題であるから、この決定にあたっては、あくまでも法に即したきめ方をしなければならないというふうに言っております。各国の例で見ますと、時間がありませんから簡単に言いますが、西独におきましても、イギリスにおきましても、各国はそれぞれこの生活保護基準のきめ方に対しては厳格な法的処置を設けております。わが日本においては、法第八条において、これは厚生大臣が保護基準を決定すると明確にきめてある。大蔵大臣が決定するということはございません。またほかの予算決定とは全然性格を異にするものであります。重大な法律違反でありますが、この点、厚生大臣いかがでございますか。
  198. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 小林さんの御指摘になりました遮りに、生活保護基準を決定するのは厚生大臣でございます。その点ははっきりいたしておる問題でございますので、そのように御了解をいただきたいと思うのであります。ただ、予算の問題と関連をいたしまするので、生活保護基準を引き上げようというような場合において、大蔵大臣をわずらわすことは当然のことであります。この予算で基準の引き上げを今度お願いしておるわけでありますが、それについてごく簡単に申し上げますれば、一体、生活の最低基準とは何かということは、なかなか決定はむずかしい問題だと思うのでございます。現実的には現在の生活保護の基準が、まず最低の基準と申してよろしい、それを引き上げようというのであります。どの程度引き上げるかというところが問題になってくるわけであります。私どもとしましては、小林さんもしばしば御指摘になる通りに、一般消費生活水準との間の格差をできるだけ早く縮めたい、こういう考え方で物事を考えておる。政府といたしましても、国民所得の増加をはかり、そうして生活保護基準の引き上げもやっていこうということは、前々から申し上げておるところであります。そういうつもりで予算上も臨むわけであります。どの程度上げるかということにつきましては、いろいろそれぞれの人によって意見はあろうかと存じますが、私どもとしましては、なるべく早く、所得格差のあるものを縮めていきたいという気持のもとに、予算要求もするわけであります。これを決定するのにつきましては、諸般の事情をいずれも勘案した上で決定しなければなりません。今回の予算政府案の決定につきましては、当初私どもの願っておりましたところへは参っておりませんけれども、この決定につきましては、何も大蔵大臣一人がきめたという問題ではございません。政府全体といたしまして、今日の場合、まずこの程度が妥当であろうという結論になりましたので、一三%引き上げをお願いしたわけであります。私の心持から申し上げますれば、一三%を一五%、二〇%、三〇%と一日も早く引き上げたいところであります。なかなか思うようにまかせぬ点もございますけれども、さような経過をもって、政府全体として、今日の場合において一三%程度が妥当であろうという結論に基づきまして予算ができ上がりましたということを申し上げておきたいと思います。
  199. 小林進

    小林(進)委員 厚生大臣は、予算の基準の決定は、厚生大臣にあるとおっしゃった。これは正しいです。あとの方はごまかしなんです。これについては、田中二郎、清宮、佐藤等の学名が一致した意見を述べております。生活保護法による給付金は生存権保障の本質からいって、単なる政策的補助金と全く異なる点から見て、いかなるものが至当であるかは法律に基づいて厚生大臣がきめる。その厚生大臣がきめた専決に従って内閣または大蔵大臣は、それに要する予算を計上することを義務、つけられている。従ってあなたの行為は、内閣は厚生大臣が決定いたしました基準額を正しく行なうと義務づけられているのみか、これが憲法から割り出された生活保護法の基準です。厚生大臣は基準はきめるけれども、引き上げは大蔵大臣に相談する。一三%引き上げたということは一三%の引き上げによって新たなる生活保護法の基準が決定されたことだ。引き上げたということは引き上げじゃないのです。それは新しい生活保護基準法が決定されたことなんです。それをあなたが一八%要求したことは、あなたが一三%の引き上げの、厚生大臣が決定したその生活保護法の基準を、大蔵大臣がこういう法律を無視して一三%に値切ったということは、あなたが勝手に、大蔵大臣が生活保護法の基準法の基準をきめたということなんです。これは引き上げの問題じゃありません。引き下げの問題ではありません。それば新しい基準をあなたがきめたことであって、これは重大なる憲法違反です。法律違反です。あなた、生活保護法の第八条を読んでごらんなさい。どうぞ大蔵大臣から……。
  200. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予算請求のときの各省からの請求は、これは概算要求でございます。一応こうしたいという予算要求でございますが、これを幾らにするかと、特にこういう生活保護基準の問題をきめるときに、大蔵大臣が自分できめられるものではございません。厚生大臣が承知しないでこの種の予算外というものはきめられないものでございますから、予算折衝において、一三%基準を引き上げるということを結局厚生大臣が承知して、そうきめたので、その予算をつけたということに実際はなろうと思います。
  201. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣、あなたは大へん、とんでもない間違いをしていられるのですよ。ほかの予算要求と違って、先ほどから私が繰り返して申し上げておる生活保護基準の算定は、ほかの政策予算と違って、これは生存権の確保に関する問題だから、この決定は厚生大臣といえども勝手にきめられないのだ。法律に基づいて正しくきめなくちゃいかぬ。そのきめたものに対しては、これはほかの予算要求と全然性格が異なることが法律に明らかにせられているから、これに対しては閣議といえども、各省大臣といえどもそれを正しく行なう義務しかないんだ。これが全部学者の一致した意見です。その厚生大臣が要保護者も入れないで単独にきめるということについても非常に今問題がある。問題があるそのさなかに、厚生大臣を通り越して、あなたがほかの予算要求と同じように勝手にこれを査定するということは、大きな憲法違反であり、法律違反である。間違っているということを申し上げておきます。あなたは勉強が足りませんよ。大蔵大臣、いま一回あなたに間違いがあるなら間違いましたと正直に答弁して下さい。
  202. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間違いません。勝手にきめたわけではございませんで、厚生大臣が結局きめたということになろうと思います。
  203. 小林進

    小林(進)委員 厚生大臣がきめたんじゃない。厚生大臣は一八%、昨年度は二六%の引き上げをもって新たなるその年度の保護基準であるとして要求された。それをあなたが削ったのは、あなたがきめたことになりますよ。それば大きな法律違反であります。
  204. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 補足して私からお答えいたします。  生活保護基準が一たんきまりますれば、大蔵大臣がこれに基づいての予算を奔走することはあり得ない、もし足らなければ予算を補充するという問題になるわけであります。生活保護基準をきめるのは、先ほど御指摘の通りに、これは厚生大臣がきめるわけであります。厚生大臣がその生活保護基準をきめる場合に、やはり国の予算を必要とするわけでありますので、予算折衝の過程を通って、その上で厚生大臣納得の上で予算がきまるわけであります。従ってこの保護基準につきましては、あくまでも決定者は厚生大臣であって、大蔵大臣ではないわけであります。また一たんきまれば、今申しましたように、これにそむいた予算の査定は、大蔵大臣ができないはずであります。
  205. 小林進

    小林(進)委員 厚生大臣の言われる通りであります。通りであるにもかかわらず、わが日本の大蔵大臣は、その厚生大臣の基準決定権を侵害いたしまして、しかも法律を無視いたしまして、この生活保護基準の決定を、ほかの予算要求と同様にこれを扱っている。ずばりずばりと、自分の財布のふくらみ工合によってこれを削るということは、これは実に法律無視であります。  ここで私は委員長に申し上げますが、これは単なる予算委員会の問答で終わることではございません。われわれ立法府のきめた法律が正しく行なわれていない。法律が全部無視せられて、そうして大蔵大臣がそういう無鉄砲ないわゆる保護基準のきめ方をしているのでございまするから、この問題はここで終わるわけではありませんから、どうか一つ、あるいは学者を呼んで、この大蔵大臣のやり方が間違っているかいないか、いま一度これは明確にしておかなければならない。御承知通り生活保護基準の決定は、国民が持つ生活権の最低の既存権であります。人権の問題であります。重大問題でございますから、委員長においてお聞きの通り、実に大蔵大臣は大きな間違った発言をしておられますし、間違った行為をせられておるのでありますから、どう御処置願いますか、一つ委員長の裁定の仕方――あるいは理事会を開いてこの問題を特に考慮するとか、あるいはまた学者によって、生活保護の基準は、やはり厚生大臣が正しく行なったものを、国家はあるいは閣議は、そのきめた基準を正しく行なう義務しか大蔵大臣や内閣にはないのである、こういうふうな線が確認せらるるような御処置を、一つ委員長においておとり下さるか何かの確約がなければ、私はこれ以上論議を進めることはできないのであります。
  206. 山村新治郎

    山村委員長 小林君に申し上げます。  委員長は公平なさばきをしたいと思います。ただいま議論を聞いておりますると、政府答弁で十分理由は成り立っておると私は了解いたしております。従いまして、もしも疑問がございますならば、あなたの持ち時間はもうあと数分でございます。まことに残念でございます。従って、一つ社労その他の委員会におきまして、あなたの議論を十分に展開せられまして、再びその名調子をわれわれに聞かしていただきたいことを、むしろ私の方からお願いいたします。従いまして、当委員会におきまして、せっかくの小林さんの御発言でございますが、善後処置のことにつきましては、今の答弁をもって一つ御了解いただきたいと存じます。
  207. 小林進

    小林(進)委員 委員長のお言葉でございますが、私はこれほどの重大問題を、ここではお取り上げ願わなくて、こういう間違った答弁で十分だとおっしゃるのは、まことに私の不本意でありまするが、残念ながら時間が参るということでございます。仰せの通り一つ社労委員会なんかで、また再びやることにいたしまして、私はその意味において委員長もまた私に御協力下さることをひそかに期待いたしまして、次の論陣を進めたいと思うのであります。  生活保護基準を大蔵大臣がおきめになるときに、所得の倍増に引きつれて、生活扶助の基準というものがだんだん少なくなってきておる。そうでありましょう。あなたは今年度も一三%引き上げて一万三千四百四十七円にした、去年は一万一千なんぼだった、こうおっしゃいまするが、これを国民の一般水準に比較したらどうなるか。その格差はだんだん開いて参りました。二十九年には被保護世帯の一人当たりのいわゆる消費と一般の勤労者世帯との開きは四八・六%でございましたが、池田内閣が生まれたら、この一般世帯の生活水準といわゆる被保護者の生活水準の開きは、驚くなかれ三八・七%に転落してしまった。いわゆる一般生活の水準の三分の一に生活保護者の生活が落とされてしまった。保護基準がです。だから、私は池田内閣を称して、貧乏人製造内閣だと言う。だんだん貧乏人を作っているじゃないか。申し上げるまでもなく貧乏というのは、一般水準よりうんと高いのが金持ちで、一般水準よりうんと低いのが貧乏人だ。池田内閣は一般水準よりだんだんかけ離れていくこういう低所得者を、八百万人あるいは一千万人ずつ毎年お作りになっておることは、池田内閣はまさに貧乏人製造内閣であって、その中心をなされるものは水田大蔵大臣である、私はこう考えるのでございまして、一体どうして一般水準に比してこう三八%まで生活保護基準の生活扶助額をお引き下げになったのか、その理由を一つお聞かせ願いたいと思うのであります。
  208. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今申しましたように、基準は私がきめたのではございませんで、厚生大臣がきめたのを私は予算をつけたということでございますから、一つ厚生大臣の方からお聞き願いたいと思います。
  209. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活保護基準を引き下げたということはございません。ただ、お話のように、一般の消費生活の水準を引き上げました場合、昭和二十六年度でございましたか、その当時の格差がだんだん開いて参ったのであります。池田内閣ができまして、昭和三十六年度予算を組み、また、昭和三十七年度予算案の御審議をお願いしておるわけでありますが、その間を通じまして、生活保護基準は漸次引き上げて参りました。いわゆる格差は漸次縮小しつつある、こういう状況でございます。一時はだいぶ離れて参りましたが、それをぼつぼつ取り返しつつあるのが、現在の状況であるというふうに御了解をいただきたいと思います。
  210. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣にお聞きいたしますが、英国におきましては、製造業の平均賃金を一〇〇といたしますと、生活保護基準は六九%ないし七一%支給されております。一般生活水準と生活保護者の給付金は、わずかに三割程度の開きしかございません。しかるにわが日本は一般生活水準が一〇〇の場合に生活保護者には三八%しかやられていない。今厚生大臣はだんだん引き上げておると言われますが、今年度最高に引き上げても、ようやく四一%になっただけであります。まさに六割以上開きがあるということは、何といっても、この生活保護者の基準というものは非常に矛盾をしておると私は思うのであります。せめて英国や西洋並みの六割ないし七割まで引き上げて生活保護基準を決定するのが、私は憲法に定められた精神であると思いまするが、大蔵大臣、この点はいかがでありましょうか。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは好ましいことと思いまするが、私がきめることならいろいろ考えますが、これは厚生大臣がきめることでございますから、きめたものに従いたいと思います。
  212. 小林進

    小林(進)委員 まことに大蔵大臣は卑怯でございまして、先ほどは厚生大臣がきめて出したものを、ずばりずばりとみんなあなたぶった切っておいて、二六%の引き上げを持ってきたものを一八%の引き上げ、一八%に引き上げてきたのを一三%に切っちゃっておいて、そうして厚生大臣がきめるのでございますから、私に責任がないというがごときは、卑怯千万の申しわけだと思うのであります。その点はどうか一つ自分の良心に恥じて、来年度は、こういう大きな間違いをなさらないようにしていただきたいと思う。私は今予算委員長の非常に寛大なる御処置に基づいて差し迫った時間をしゃべっておりますので、もうこれ以上の追及は残念ながら時間に制約されてできませんのは、非常に遺憾とするところであります。  次に、一問だけ申し上げまして、私の質問を終わりたいと思うのでありまするが、現在の政府の政策の中で、私が申し上げまする二重構造を最も大きくしているものに、雇用と賃金の二重構造があると思うのでございます。それで、その雇用の面におきましても、政府は第一に、賃金におきましても世界の水準に劣っていないなどというようなごまかしをされながら、大企業の中においては、すなわち賃金や雇用の調整機関として、いわゆる臨時工あるいは社外工あるいは日雇いというものを、どんどんつぎ込んでいらっしゃいます。それから中小企業者に対しましては、いわゆるにせの最低賃金法というものを設けて、この物価筒の今日に、二百円内外のいわゆる業者間協定という賃金を普遍せしめて、そして一生懸命に低賃金政策を進めていらっしゃいます。これは私は、わが日本の雇用と賃金政策に対する労働行政の一番の盲点であり間違いであると思うのであります。  そこで、労働大臣にお尋ねするのでございまするが、この臨時工というのは、五百人以上の大企業のみに限られた特質でありまするが、三十一年度から比較いたしまして、一体今日までこの臨時工は減っておりまするか、ふえておりまするか。臨時工のいわゆる数、実態を一つお聞かせ願いたいと思うのであります。
  213. 福永健司

    ○福永国務大臣 わが国の大企業の中に臨時工、社外工等が見られることはおっしゃる通り事実でございます。政府はかくのごとき事態ができるだけ少なくなるようにということを考えて、いろいろ施策しておるのであります。今、小林さんがおっしゃるように、政府がそうせしめているがごとき印象を与えることをおっしゃられると、ちょっとこれは事実と違うのでございます。ともあれ、現実にそういうものがございまして、臨時工というものは、今おっしゃるように若干ふえておりますが、ごく最近はそのふえる勢いがかなり弱まって参っておるわけでございます。ここ両三年前にはかなりその勢いが強かったのであります。ややよくなってはきておりますけれども、いずれにしても、そういうものが相当数あるということにつきましては、私ども非常に残念に思っております。従って、こういうことにならないようにということから、基準法上の監督を厳にしたり、その他いろいろの施策を講じておるという次第であります。詳細の数字は局長からお答え申し上げます。
  214. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま小林先生の御指摘になりました臨時工は、主として常用的な臨時工の意味と解しますが、三十三年から三十四年にかけましては三八%伸びております。それから三十四年から三十五年にかけましては約一三%増加いたしております。すなわち、最近増勢はやや鈍化はいたしておりますが、増加はいたしております。
  215. 山村新治郎

    山村委員長 小林君、瞬間は超過しておりますが、特に御協力の点を考えまして、あと十分許しますから、どうぞ。
  216. 小林進

    小林(進)委員 まことに感謝にたえません。委員長の寛大な御処置に甘えまして、私も簡単に一つ質問を進めたいと思います。  この臨時工というのは、わが日本特有の雇用状況でございまして、この臨時工が、いわゆる企業が非常に発達しているときには、これが夜を日に継いで低賃金で働いて、そうして不景気になれば、退職金もなければ何もなしにあっさりと首を切られていくという、景気、不景気の調整役をつとめておる非常に気の毒な状態でございまするが、今も労働基準局長の言われるように、今は景気が上昇している、しかも、わが日本のこの趨勢の中でこれが年々ふえているというがごときことを、労働省はこれを黙って見ておられるというのは、労働行政の怠慢もはなはだしいと私は言わなければならない。黙って見ておられることは、あるいは労働大臣は御不満であるかもしれませんが、私どもは、実は何回もこの社外工、臨時工の政策について政府を糾弾し、あるいはその実数も出すように要求して参りましたが、今でもその資料をお出しになれない。おそらく実数の数量をあるいは持っていてもお出しにならないで、いわゆるサボタージュをしておられるというのが今日の実情でございまして、いわゆる常用工や、あるいは一般本工だけの賃金を海外に示しながら、日本の労働者の賃金は国際並みだ。実際国際並みではございませんが、そういう宣伝をされて、その陰に隠れて、そうして日の当たらない場所で、生活の保障からいわゆる保険、労災のそういう保障もなしに置かれている臨時工、社外工、特に日雇い労働者というものをぐんぐん増加せしめておる。これくらい冷酷な労働行政はないと私は思うのでありまして、この点は一つ労働省が大きく反省をしてもらわなくちゃならないと思うのであります。  次にお伺いいたしまするけれども、今度は中小企業に対するいわゆる雇用政策でございまするが、この中小企業者に対する雇用政策として労働省がおとりになっておりますのが、業者間協定でございます。いわゆる業者間協定に基づく最低賃金、現在百二十万名くらい、この業者間協定で低賃金で縛りつけて、三十八年度までには二百五十万人にする予定であるということで、一生懸命に進めておいでになりまするが、この業者間協定に基づく最低賃金が幾らか。今まだ日当二百円前後で契約を結んでおる。最高のところで一日の日当が八時間労働で二百七十円、これが実情でございましょう。(「二百五十円だ」と呼ぶ者あり)二百五十円、さようでございましょう。それに比較いたしまして、一体、アメリカの最低賃金はどうですか。スイスの最低賃金はどうですか。アメリカにおいては、今ケネディ大統領が生まれまして、州別に違いますが、一番安い州で今まで一時間一ドル、三百六十円、今度は一ドル二十五セント。一ドル二十五セントならば、一時間四百七十円。八時間労働とすれば大体三千円。一日三千円に対して日本は一日二百五十円とは一体何です。日本の最低賃金二百五十円とは何です。十六分の一、二十分の一にもならぬじゃないか。二十分の一にもならないような、そういういわゆるごまかしの最低賃金に労働省はどんどん力を入れて、そうしてこれを実施していられる。このために利益を得ているのは業者間同士です。お互いに引き抜きがこれでできない。労働者は次の職場に行こうと思ったところで、地域的に二百五十円で縛られておるから、ほかの職場に行けない。非常に業者が利益をしておるけれども、労働者を低賃金に押えつけるために非常に大きな、いわゆる誤れる労働行政をおやりになっておりまするが、労働大臣、これに対する率直な御所見を一つ承りたいと思うのであります。
  217. 福永健司

    ○福永国務大臣 先ほどから小林さんいろいろ数字をおあげになって、最低賃金について、二百円内外という表現をなすったり、二百二十円という数字をおあげになったり、二百五十円という数字をおあげになったのでありますが、大体のところ、業者間協定のものは二百三十円から二百七十円見当であります。まあ三百円以上のも何件かあるわけでございます。ただしその額そのものが、御指摘のように高いものではありません。最低賃金でありまするから、そういうことにもなるわけでありますが、私どもは賃金を安くするために最低賃金というようなことをやっておるわけではないのであります。事実、過去の経緯にかんがみましても、最低賃金が普及されていって、最低賃金に満たないものについて約一五%の賃金の上昇を見ており、また、その最低賃金より上回っておる賃金についても上昇を見ておるのでございます。このことが小林さんなどのお考え方からすれば、十分な賃金の上昇という結果になっていないということは、これはもとよりそういうことでございますけれども、幾分なりとも賃金の上昇に役立っているということは、おおうべからざる事実であると思うのであります。現在、約百二十万に達しましたが、この百二十万という数字の中には、大部分が業者間協定によるものでありますが、一部は労働協約に基づくものもあります。これらを漸次さらに普及いたしまして、三十八年度末二百五十万に持っていきたい、こういうように考えておるわけでございます。もともと、非常に低いところで業者間協定が行なわれていたもの等につきましては、その後、漸次実勢にそぐわないものは改定されつつあるというような事実もあるわけでございます。私どもは、先ほどから幾たびかお話がございましたけれども、決してわが国の賃金をことさらに外国に事実と違ったように伝えるようなことなどはいたしておらない。労働者全体として健全な足取りで、逐次労働条件が向上していくということは、労働省の衷心より願うところであり、従って、そういう線に沿った施策を進めておる次第でございます。
  218. 小林進

    小林(進)委員 私は、労働大臣の御答弁に承服することができません。何といっても、労働省にほんとうに雇用と賃金を正常な状態に戻そうという熱意があるならば、この大企業が労働のダンピングをいたしておりまする社外工、臨時工あるいは日雇い労務者という日本だけの特有の姿に中心的な労働行政を置いて、これを直していかなくてはいけない。それからもし現在の中小企業者の国際的な賃金を比較されるならば、外国の最低賃金と日本の最低賃金を比較対照して、どれだけの比率であるかということを明らかに示していかなければならない。二百三十円がお気に召さないといったところで、それが三百円といったところで、今日のこの労働市場の求人難の中に、高等学校あるいは十八才未満のいわゆる青少年を業者間協定というにせの最低賃金で、二百円や二百五十円で縛りつけるという、そういう労働政策が正しいというお考え方は大きな間違いです。日本の雇用と賃金行政を二重構造に縛りつけているところのこの大企業における臨時工、社外工、いわゆる中小企業におけるにせの最低賃金法、この二つだけは断じて労働省からその政策を改めてもらわなくては、勤労者は浮かぶ瀬がない、私はこう申し上げておきたいのであります。  委員長、もう五分ばかりありましょうか。
  219. 山村新治郎

    山村委員長 もう一問だけにして下さい。
  220. 小林進

    小林(進)委員 それでは委員長の御命令でございますから、残念ながらほんの一問だけで終わりたいと思うのであります。  最後に参りまして、私は、経済企画庁長官通産大臣にお伺いしたい。これは、実は日経連の賃金白書について私はお尋ねをいたしたいのでございます。時間がありませんから、ほんの私の言い分だけを申し上げまするが、最近日経連は本を発行いたしました。それによりますると、急進展する自由化に備えて、生産コストの低減は至上命令であると、こういうことを主柱にいたしまして、いろいろ論議を戦わしておるのでありまするが、その本を読んで参りますると、今のわが日本の経済の行き詰まりは、第一番には、商社、メーカーが従来とかく内需優先で、輸出競争に対する不断の努力を欠いていた、これが行き詰まりを来たした第一の原因だ、こういうことを言っております。これは実に反省の資料で、これは労働者の関知するところではありません。二番目には、海外市場におけるわが国産業の過当競争、あるいは頻繁な意匠の改変、こういうことが原因をいたしまして、貿易赤字の原因を作ったという反省を述べておる。これに対しては、政府も的確な指導とともに、メーカーも商社も自主的にこれを調整しなければならないということが述べてある。ここにも労働者の責任は一つもございません。第三番目には、日経連の本は、企業の財産の中で、つまり資本の中で、土地の価格が非常に大きな割合を占めるようになった。この土地価格が大きく占めるようになったために、結局コストが値上がりになってきて、利潤や競争力が低くなる、こういうことを書いている。この土地の値上がりは労働者の罪ではございません。むしろ労働者はこういう土地の値上がりのために、自分の住宅も作れないでえらい苦労しているのでありまするが、一体土地値上げのこういうような、資本を多く食うような格好にしているのはだれかといえば、もちろん政府の責任もありましょう。あるいは日経連のメンバーたちが無政府的、抜けがけ的に投資をやり、土地を買いあさった結果である。そういうことで自由競争の力を失ったところで、労働軒は被害者であっても自分たちの責任ではない。  第四番目に日経連の本に言うことには、やはり今日この壁にぶつかったのは日本は金利が高いからだ。そうでしょう大蔵大臣、これは日本ほど金利の高い国はない。しかしその高い金利を使って、なおかつ利潤がある商売があるから、こういう高金利の金が日本に入ってくるのでございましょう。これは言いかえれば日本の経営は非常に高金利の金を使っても利潤があるということです。ところがこの高金利、高利潤をそのままにして、今経済のコストを引き下げるのに労働者の賃金を引き下げなければならないというのが、結論的に出る日経連の主張であります。私はこれほど無謀な、これほど自分勝手な主張はないと思う。  この日経連のそれぞれの主張の中に、いま一つ私をして言わしめるならば、経済行き詰まりの第五番目の理由があると思う。それはいわゆる経営の不合理であります。三十六年度三兆七千億円の設備投資をしたという、ことしもまたそれだけの設備投資をするというが、大蔵大臣、一体この三兆七千億円の設備投資は正しく投資されておりますか。あなたは設備投資の金を出したらあとは責任がないということではだめですよ。その設備投資の中には少なくとも、学者に言わせれば、三割は設備投資の名において浪費に使われている。いわゆる外国使節の接待だ、役人の接待だ、供応だ、あるいは金融資本家の金を引き出すための接待だ、供応だといって、毎晩のようにあっちこっちで接待、供応、歓楽の巷と化しているでしょう。そういう遊興の費用、あるいは飲食費や歓待費というものが、この三兆七千億円の設備投資の中に含まれているというのでございまして、これが第六番目の理由、これもしかし労働者の責任ではございません。これはみんな経営者の責任だ。  第七番目には、あるいはお気に召さぬかもしれませんけれども政党資金、ぶっつぶされるようになった企業会社が政党資金や政治献金をおやりになっておる、これがまたみんな設備投資やら何やらの中に計算せられているのでありまして、こういう経営の不合理に基づいて今日の経済が行き詰まってきていると、われわれは判断するにもかかわらず、そういう高金利や高利息や内需優先や、あるいは自分たちの経営の不始末や過当競争や、そういった一連の理由を一つも言わないで、今コストを下げるのが至上命令だから資本家、労働者ともに責任を持って、賃金の引き上げはこれにとどめてくれなければならないというがごときは、私は非常に暴論と思うのでありまして、この点大蔵大臣、通産大臣等は、これは経営陣の行き過ぎで、その中には相当国家の費用も施設投資に使われておるのであるが、これを一体どのように指導し、どのように反省を促しているか、行政的な指導を一つ承りたいと思うのであります。
  221. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま経団連発表の経済についての態度に対して、小林さんの御批判でございます。その中には私も賛成するものもございますが、賛成のできない面もございます。私どもがただいま業界を指導いたしておりますことは、国際競争力を十分つける、そういう意味においての体質改善を業界にお願いをしております。これはひとり資本側、経営者側という意味ではございません。やはり労使双方に対しても協力を実は願っておるわけであります。それぞれの立場にありまして、それぞれ反省し工夫いたしますならば、今日より、よりよくなるところがあるだろうと思います。闘争もけっこうでございますが、調和し、そして双方が納得のいくような方向で産業自身を育成強化する、こういうことでなければならぬ、かように思うのでございまして、私どもそういう立場で指導しておる次第でございます。
  222. 小林進

    小林(進)委員 委員長にきめられた暗闘はこれで終わりましたので、私はこれで終わりまするが、わずか限られた時間でございましたので、私の質問も意を満たしませんし、また答弁についても決して満足するような答弁を得なかったことはまことに残念でございまするが、ここは討論の場ではないのでありまして、私は質問に名をかりて実は半分はお願いいたすのでありますから、社会保障の問題、公的扶助の基準引き上げに対する違法性の問題、あるいは雇用と賃金の二重性等の問題についても政府は十分反省をされまして、どうか一つわれわれの意に幾分でも沿い得るように御努力下さりますることをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  223. 山村新治郎

    山村委員長 穗積七郎君に発言を許します。穂積君。
  224. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは十分時間がありませんが、私は最近の外交問題と貿易問題について、政府の具体的な御方針を伺っておきたいと思っております。いずれ外交問題の詳細にわたりましては、外務委員会で総理または外務大臣にお尋ねいたしますが、きょうは当面の問題についてなるべく簡潔にお尋ねいたしますから、各大臣も簡潔に方針を明らかにしていただきたいと思っております。  最初に外務大臣にお尋ねいたしますが、実は古い話ですが、太平洋戦争開戦のときに、昭和十六年十二月になりますが、日本の当時の政府がアメリカ政府に対しまして覚書を送っております。その中で、アメリカ並びにイギリスの帝国主義は百余年にわたってアジアの諸民族を支配してきた、これに対する反撃の立場を明らかにしておるわけです。これに対してこのアメリカ帝国主義政策に対する当時の規定が外務大臣は正確な、正しい規定であるとお考えになっておられるかどうか。私どもは日本の当時の対米政策の態度、並びに戦争を起こしまして帝国主義的な侵略政策をとったその誤りを犯しましたところに、敗戦並びにあやまちの根本があると思うのです。アメリカのアジアにおける具体的な政策を帝国主義政策と規定したことについては、私は正しい規定であるというふうに考えるわけですが、外務大臣はこの当時の政府文書に対して、これはわれわれが言うのではない、当時の日本政府の明らかにいたしましたこの規定をどういうふうにお考えになりますかどうか、簡潔にお尋ねしたいと思うのです。
  225. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まあ植民地主義といいますか、これは一民族が他民族を支配し搾取するという形においてあるわけでございまして、かつてはそういう政策が行なわれておった。日本もまたそのらち外ではなく、これはもちろん成功しなかったわけですが、そういう意図を持っておったということは言えると思うのであります。今日においてすべてが反省の材料になると思いますが、また一方経済機構の面におきましても、非常に古典的な経済、資本主義というものがあったのでありますが、やはりこの第二次大戦を契機といたしまして、いわゆる資本主義国も新しい資本主義の方向、大衆資本主義の方向に変わっていった。同様に国際的な面においても、そうした帝国主義的なものは排除されてきた。今日においては、植民地の解放ということは、連においても強く決議されておることでございますし、さようなことを真正面から振りかざしてやっておる国は、おそらくないと思います。ただ一部に、旧来の帝国主義はこうだ、あるいは新しい帝国主義はこういう形であるというような論争があることは、これはその通りあると思います。しかし、現実において、自分の国は帝国主義をやっておる、こういうふうに考えておる国はないだろうと思います。
  226. 穗積七郎

    穗積委員 帝国主義政策の問題は、その当事国の主観の問題ではなくて、改築の客観性から生まれてくるものでございます。そこで今外務大臣は私と同様に、当時のアメリカの政策は帝国主義政策であり、並びに日本政府の政策も帝国主義政策であった、こういうふうに承認をされておるわけですね。ところが今の御説明によりますと、その当時は帝国主義政策をとっていたが、今日は経済の変貌と植民地の解放によって帝国主義政策ではなくなった、こういう市純な規定をしてアメリカの政策を弁護しておられるわけですけれども、われわれはそういうことでは承服することはできません。もう少し――帝国主義論争を私はここでやろうとは思いませんけれども、帝国主義の本質的な理解というものは、やはり資本の独占段階に入ってからの支配、対外的な支配を言うわけでございますから、従って植民地すなわち帝国主義は御承知通り特にイギリスを先頭といたしました古い帝国主義、すなわちその国の主権なり民主的な政府というものは形の上だけでも認めないで、そして直接支配の形をとっておる。ところがアメリカによって代表されます新しい帝国主義の方式というのは、いかにも民主的な、その民族の政府を認めるという形でありますけれども、その政府を通じて帝国主義的支配をやる、こういう形をとったわけですね。日本は台湾なり朝鮮におきましては古い帝国主義の方式をとり、満州国に対しましてはアメリカの新しい帝国主義の方式をまねて両方やっていたわけですね。従って今言われるように形の上でその国の直接支配がなくなったからといって、この帝国主義政策はもうなくなったというわけには言えないわけです。経済が変わったといいますが、経済も相変わらず――相変わらずどころか、その当時以上に独占段階へ入ってきておるわけですね。それで国内においては階級的矛盾を持ち、対外的には民族間の支配と搾取がある。あるからこそ一昨年の国連十五回総会において植民地解放宣言、決議案というものが出たわけです。なければ出ません。あるから出たのです。その点についての外務大臣のお考えをもう一ぺん伺いたいと思うのです。
  227. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 帝国主義論争をやろうというのじゃないというお話でありますが、そういう論争は、この場所以外の場所でも私はけっこうだと思いますし、これは別であってもよろしいと思います。しかし今のお話のように、アメリカを帝国主義と規定して、それに対して論評せよというようなお話は、私はこの席から申し上げるわけにいかぬと思います。  なお、私がさっき言った中で少し誤解があるようですが、いろいろな形の外交政策が行なわれるのに対して、あれはまだ帝国主義だという論評もあるし、あるいは自由主義の陣営の中から、形を変えた帝国主義はこういう形のものもある、こういう論評もあるということを私はさっき申し上げたのでありまして、決して一方的に、自由主義陣営だけについて帝国主義であるという規定があると言うのではなく、他民族を別の形において支配するという形の、新しい一つの別の意味の帝国主義が出ておるという論評もあるということも御紹介したつもりです。
  228. 穗積七郎

    穗積委員 私は先ほど言う通り、帝国主義の学問的な規定の論争を、ここでやろうとはしておりません。帝国主義は言うまでもなく、資本主義の独占段階に入った高度の段階のものをさしているのであって、社会主義国に帝国主義支配、植民地政策というものがあろうはずはないのであります。原則的にないのであります。  そこでそれでは具体的にお尋ねしますが、ケネディ政権が平和共存政策をとるであろうという幻想を抱かしめて登場して参りましたが、その政権が最初にとりましたキューバに対する武力干渉、これは賛成をなさいますか、この政策は誤りであるとお考えになりますか、外務大臣のお考えを伺っておきたい。
  229. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういうことに対する論評は、私の立場からすべきことではないと思います。
  230. 穗積七郎

    穗積委員 それではアジアにおけるこの平和の問題、あるいは一昨年の十五回国連総会において、植民地主義解放の決議が行なわれたことに対する日本政府態度というものは、ないということですね、その政策が。あなたのお言葉は、要するにアメリカに対してはもう批判をすることができない。世間で言うように私どもはアメリカに従属しておって、アメリカのなさることはすべて追随しなければならない立場に立っておる。その立場を承認されるものだと思うのです。いかがですか。
  231. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国連における植民地解放宣言は、これはアメリカを目標としてなされたものではないのであります。これは御承知通りだと思います。  なお私は、他国の政策について、外務大臣としてここで論評することを差し控えるというのは、いかなる国に対してもでございます。アメリカに対してだけ論評を差し控えるというのではなくして、あらゆる国の政策に対して、この席で外務大臣としての立場で論評することは差し控えたい、こういうことであります。
  232. 穗積七郎

    穗積委員 そんなばかな御答弁はないでしょう。日本全体の安全の問題あるいはアジアの平和の問題、世界の平和の問題に対して危険な政策をとりつつあるものに対して論評しないでどうしますか。それに対する誤りを指摘しないで平和の確保ができるでしょうか。批判は何もしないということで、どういうことで政策が立ちましょうか。国連総会におきましても、国連の精神に反するものに対しては反対をする、あくまでその政策をやめさせるために、積極的な努力をすることが日本政府の、各国政府の当然の義務であると私は思うのです。そうであるならば、個々の国連に参加しておる国々の政策が、いかなる政策であるかという批判の自由というものがなくてどうしてその国の外交が行なわれるでしょうか。はなはだ私は不思議な御答弁だと思うのです。
  233. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本の外交政策ないし外交の方針は、日本自体の立場から、日本の利益を考えて、日本国民の福祉を増進するために最も適当と考えるものを立てればよろしいのであります。
  234. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、アメリカまたはソビエト、イギリス等が核実験を始めた、あるいは北方の領土の問題についても日本政府はこれに対して批判をし、反対をしておるじゃありませんか。自主的な立場で、われわれの外交方針と平和に関係があるからわれわれは言っているのです。その政策はいかがですか。
  235. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたのお言葉の裏を返せば、私どものやっておる政策を認められて、それがいいということを言っておられることになると思います。具体的事情については、われわれは一々意見を述べております。ただ全般的に相手国を誹謗し、あるいは特殊な批判をせよというようなことはお断わりせざるを得ない、こういうふうに言っておるわけです。
  236. 穗積七郎

    穗積委員 私は何も日本外務省のやっておる方針をすべて賛成するということではない。日本外務省のごとき、自主性のない外務省といえども、ときに反対をし、あるいはときに賛成をするという態度をとるためには、批判の自由というものはあくまで持っていなければならぬわけでしょう。それに対して批判の自由がないというのはどういうわけでしょうか。その一般的なことを言っておるのですよ。基本的な態度を言っておるのです。おかしいじゃありませんか。
  237. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一般的な問題については、先ほど申し上げたように、わが国の利益に合致すると思われる外交方針をとっておる。それでいいじゃございませんか。
  238. 穗積七郎

    穗積委員 私どもとしてははなはだ心外な御答弁でございますが、この問題をここで限られた時間の質問でやりとりしておることは問題を逸しますから、少し前に進みます。  さらに続いて、今度は日本に直接関係のあることをお尋ねいたしましょう。外務省の発表によりますと、わが国の固有の領土である沖繩について、実はアメリカ政府に対してその施政権の返還を交渉したということが発表になっております。これは言うまでもなく、国会において幾たびか決議をいたしまして、その督励を受けてやったわけですが、特にその交渉をしたという中で最も重要なものは、昨年の六月、池田総理とあなたがアメリカに行かれて、ケネディ大統領と会われたときに、最後に施政権返還の交渉をしておる、こういうふうになっておりますが、そのときの経緯を明確にしていただきたいのです。
  239. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その外務委員会の御要求によって出しました資料で明確になっておりますように、池田総理大臣がケネディ・アメリカ大統領と会談されました際、そのあとでコミュニケが出ております。その中には、施政権を持つアメリカと潜在主権を持つ日本が、それぞれ緊密に連絡して、沖繩住民の福祉を増進するために極力努力しよう、こういうことをうたっております。すなわち、日本国民である沖繩の同胞の福祉がますます向上され、経済的な条件もよくなる、さらに、その東西の緊張の緩和されるのを待って沖繩の施政権が日本に移るように、その過程においてもできるだけの努力をする、こういうことでございます。すなわち、その会談の結果、従来認められておりませんでしたわが日の丸の国旗も、沖繩にあげられるようになりましたし、それから教育の問題につきましても、教育主事の問題……(穗積委員「そういうことではありません。施政権のことを聞いておる。日の丸の話ではない。」と呼ぶ)いや、そういうことと関連があるのです。そこで、さらに、沖繩の産業を保護するために、たとえば自由化の問題等についても、沖繩の主たる産業であるパイナップルのカン詰の生産の問題、そういう問題にまでとにかくわれわれの主張というものは逐次いれられつつあるのであります。施政権の返還というものはわれわれは望んでおるけれども、しかし、これには東西の緊張緩和という極東における事態、緊張が緩和されるという状態がやはり一つの必要な条件になります。われわれもそれは当然なことだと思います。その間において、今申し上げたようなことで、できるだけ同胞の福祉を増進する、これに日米協力してやっていこう、こういうことになっております。
  240. 穗積七郎

    穗積委員 緊張の緩和を待って――逆に言えば、今日は緊張が緩和してないから、施政権を返すことができないというのは、アメリカの御都合主義の一方的な言い分でした。それをあなたはオウム返しに、緊張緩和がしてないからまだすぐ返らないと言っておりますけれども、施政権返還の問題と軍事基地の問題とは、国会の決議もこれは区別して行なわれているのです。われわれは軍事基地そのものについて反対はいたしております。しかし、今、日本領土にすら安保体制によって軍事基地がある。われわれが超党派で決議いたしました要求、また、あなた方がアメリカに対して要求すべきものというのは、軍事基地の問題は切り離して、施政権を返還しろ、こういうことなんですよ。混同してそれでごまかしては困ります。施政権の返還は即時行なうべきであるという趣旨になっておる。そういう可能性があるという立場で、基地の撤廃とは切り離して、施政権の返還を要求なさったのでしょう。理由にならぬじゃありませんか。その話はされなかったのでしょうか。アジアにおいて平和がきたら返してくれという話をされたのですか。そうではなくて、軍事基地問題とは別個に、施政権だけは即時返してもらいたいという要求をなさったのではありませんか。そういう決議になっておりますよ。どういうことですか。
  241. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 施政権を返還されたいという申し入れをしておるわけであります。しかし、それはできないと先方は言うのです。そのできない理由は何かということですから、先ほど私申し上げたように、現在の東西の緊張は極東においていまだある、私どもそれは認めざるを得ない。そこで、そういう緊張の緩和がなされる時期を待って施政権を返還する、こういうことで話をしておるわけであります。
  242. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、国会の決議によって表明されている日本全国民の要望、その中に含まれる沖繩の要望、日本人である沖繩県人の要望というものは、全然無視しておりますよ。あなたは、施政権が返らないように、軍事基地の問題と施政権の問題とからまして要求して、軍事基地は直ちに撤廃するわけにいかぬという理由で、施政権まで返らないことを弁護しておられる。これは国民を裏切るものです。国会の決議に反するものです。いかがでしょうか。全然別の問題ですよ。
  243. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 施政権を返してくれということは言っておるわけです。ところが、施政権を返すということになると、軍事基地としての重要性というものが失われる、こういうことをアメリカは考えるわけであります。私もそうではないかと思います。さような状態においては向こうは施政権を返さないと言うのですが、それでは返すようになるまでの間、日本政府の希望というものをいれて十分相談し合って、沖繩住民が日本国民である形においてその生活を向上し、享受し得るようにして大いにやっていこう、こういうことなんであります。
  244. 穗積七郎

    穗積委員 そんなでたらめな態度では国民を欺瞞するものですよ。自民党を支持する方も社会党を支持する人々も、沖繩の人も本土の人も、全国民が一致して言っているのは、最大公約数というのは、軍事基地はそのままにしておいても、それは触れないで、われわれとしてあくまで反対であるけれども、それは安保条約との関連がありますから、そこでそれは切り離して、施政権だけでも即時返還する。そうして、総理もあなたも、幾たびか国会やあるいはその他の談話において、施政権返還は要求しておる、愛国的態度をとっておる、国民の要望に沿っておるということを言いながら、あえて向こうの言うように、向こうの誤った論理にこちらから入って、軍事基地の撤廃の問題と施政権返還の問題をからまして、それで、軍事基地の撤廃ができないから沖繩の施政権も返せないという、誤った論理をあなたは援用し、非愛国的だと思うのです。おかしいじゃありませんか。そういうことは国会できめておりませんよ。それをあなたは正当となぜ認められるのか。認められるなら、その理由を言ってもらいたい。日本の外務大臣の立場として、今のアメリカの論理がはたして正しいのか。そうであるなら、日本の施政権もそのうち取り上げるでしょう、アジアの平和のために必要だというなら。アジアの緊張が今年度においても――あなたの今年度の外交方針の中では、六二年度におけるアジアの緊張は、遺憾ながら激化する危険があるということを指摘しておる。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 そういうことが理由になって施政権が返らないというなら、そういうことになると、日本を信用することができないということで、アメリカと日本との友好関係が増進しつつある、日本はアジアにおけるイギリス並みの対等になったなんということが、よくも言えたと思うのです。おかしいじゃありませんか。もっとはっきりしていただきたいのです。
  245. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、沖繩の状態というものは、平和条約の第三条からきておるわけですね。その条約において、アメリカは三権を持っておる。すなわち、施政の権利を持っているわけです。日本は、しかしそれについて、講和条約の際に行なわれました、ダレスとかあるいはヤンガーという代表の、残存主権があるという演説を援用して、いろいろお話をした結果、今日では、沖繩の日本の潜在主権というものは、アメリカも十分認め、共同声明にも響くようになっているわけです。そこまでだんだんきているわけです。さらに、沖繩におけるわが同胞の地位を向上するために、いろいろな手だてをいたしております。先ほど申し上げたようなことで、日本の考えというものが、沖繩における同胞の中にも十分浸透するような、そういう施策を講じておるわけであります。何か、日本の施政権まで取られるというようなことをおっしゃいますが、冗談言っちゃいけないと思います。これは既存の条約によってあるわけであります。われわれは、そんな日本の施政権まで奪われるような条約を結ぶ考えは毛頭ありません。
  246. 穗積七郎

    穗積委員 サンフランシスコ条約における二条、三条というものは、実は当時の保守党政府の全く自主性のない、非愛国的な態度から生まれてきたものです。それが今日まで、北におきましても南におきましても、領土問題を混淆せしめてきている根本原因なんです。原因はこちらにあるわけです。日本の自主性のないところにある。日本が降伏条約による正しい解釈をし、正しい方針によって臨まなかったから、この固有の領土を誤って信託統治にしておる。ところが、信託統治規定によると、アメリカは十年も十五年もこれを占領するわけにはいかぬ。そこで、その間に、今度は植民地解放の要求が強くなってきた。その面から見ても、沖繩をこれ以上持っておれない、こういうことが明確になって参りました。特に国連憲章七十八条においては、国連加盟国の地域に対して信託統治を続行することは誤りであるということが明記されておる。その点から見ても、アメリカはこの条約によって誤っておるということが明確になってきましたから、そういう空気を事前に察知して、わけのわからない潜在主権というようなものを打ち出して、そして日本人をごまかして、信託統治規定にも反し、植民地解放宣言にも反する、今日の不当かつ不法な占領を続けておるわけです。だから、われわれは、その正当な理由によって施政権は返しなさい。われわれは安保条約には反対いたしましたけれども、安保条約解消前に、直ちに一緒に軍事基地も撤退しろというところまでは、それは国際法上いきませんから、従って、施政権だけは分離して、この条約通りでいきましょう。この条約は、大体日本が誤ったから、信託統治規定なんというものに固有の領土をまかせて、領土権を放棄したわけですね。それが今申しましたような経過になっておるわけです。条約で言うなら、私は、条約をたてにして正しい論理を言っておるつもりですが、その点は、あなたの方が条約を正しく理解しておられないのじゃないでしょうか。
  247. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国連憲章七十八条を引いてのお話のようでございますけれども、これは憲章を正しくお読み下されば、一国全部が信託統治になって、その国が国連へ入ることはないということをいっておるわけであります。それは当時シリア、レバノンの独立を予想して付されたもので、これはもう定説でございます。その国の一部が信託統治になるという規定があるから、国連憲章違反だという御議論は、全く当たらぬと思います。であるとすれば、日本が国連へ入りますときに、ほかの国が賛成するわけもないし、日本自身がそうであったから、日本自身として国連憲章違反の条約を持っておるということであれば、そのことについて言うべきものである。どこも何も言わないで、全員賛成して日本が入ったことは、御承知通りです。そこで、信託統治にするということは、これは、アメリカはそういう権利を第三条によって持っているわけです。しかし、義務は持っていない。私どもとしては、いつ幾日までに信託統治にするという役務は持っていないということは、御承知通りです。私どもとしては、そういう回りくどい形をするよりも、現在の状態から直ちに施政権を返還してもらいたい、こう言っているわけです。この主張は、終始一貫アメリカに対してしているわけです。ただ、アメリカが聞かない、こういうことなんです。
  248. 穗積七郎

    穗積委員 聞かないということか誤っており、それをわれわれは帝国主義政策だと言うのです。国際条約上も誤りである。政治的にも誤りである。そして、友好関係、友好関係と言われますけれども、施政権を返せばあそこの軍事基地があぶなくなる、これは、日本人に対する不信感を抱いてのことです。どの点からいきましても、私は納得するわけにはいきません。国民も納得しないでしょう。あなたは幾たびか話したと、昨日も外務委員会でおっしゃいましたが、一体即時返還を要求されたのですか、気が向いたら返してくれと言ったのですか、どちらですか。
  249. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 直ちに返してくれということを言っておるわけです。しかし、それはできません、こういうことなんです。
  250. 穗積七郎

    穗積委員 その理由を、あなたは正しい論理だと承認されるわけですか。われわれの国会の決議、それから沖繩県人の要求というものは、譲りであるというふうにお認めになるのですか。アメリカのその理由が、誤りであるとお認めになりますか。どちらですか。
  251. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 しかし、アメリカ側は、その気持はわかるけれども、東西の緊張がかくのごときである段階においては、アメリカとしては、沖繩をああいう現状のままにしておく以外にないと思う、こういうのが先方の主張であります。
  252. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、あなたはアメリカの今の誤った論理を認めることになりますね。日本の国会の決議や人民の要望というものは、これが誤りであって、そして、アメリカの返さないという理由、その論理の方が正しい、こういうことでは、日本外務大臣としては、はなはだ――だと言わさるを得ないではありませんか。どうですか。
  253. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 条約によって、アメリカが現在の沖繩における施政権を持っているわけでございます。日本の希望は述べてある。それを向こうが聞かないのを、君はそのまま引き下がってくるから――だとおっしゃいますけれども、私は――であると言われるのは、はなはだ不本意でございます。私どもはできる限りのことをしておりますけれども、できない場合もあります。相手方の意向というものもあるわけです。そこで、そういう段階においては、沖繩の住民の福祉について、日本ももっと積極的に寄与したいということでいろいろの話をして、先ほど申し上げたようないろいろな点が、現在、従来に比べまして非常に改善されつつある、こういうことなんであります。
  254. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、――だと言われたことがくやしいと言われますけれども、あなたが――であるということは、もっとこれから証明してあげます。  続いて、お尋ねいたしますが、去る二月一日に、沖繩の立法院は、満場一致で日本への復帰、施政権の返還の決議をいたしました。これは御承知通りですね。これは日本政府に届いておりますか。
  255. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本政府に来ておりません。
  256. 穗積七郎

    穗積委員 なぜ来ていないか、その理由を御存じでしょうか。
  257. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 立法院の決議は、行政主席のところへ参りまして、行政主席から高等弁務官のところへ申達される。それで、その高等弁務官の指示によって、行政主席がいろいろな行動をなし得る、こういうことであろうと思います。従って、そういう関係があって、まだ来ていないだろうと思います。
  258. 穗積七郎

    穗積委員 この沖繩の立法院の施政権返還の決議というものは、あなたは日本の外務大臣として正しいと支持されますか。
  259. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 しばしば決議がなされておるわけで、その本土復帰への要望という気持は、私どももさようなものであろう、こう思っております。
  260. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、固有の領土の問題であり、あすこには、竹島や南千島の問題と違って、八十万の日本の人民が日夜切々として祖国復帰を願っている。それに対して……(発言する者あり)黙っていて下さい。私は外務大臣に聞いているのですから、委員の方の発言は議事妨害になりますから。それに対して、こないということでほかっておくということがありますか。何をされましたか。重大な関心のある問題ならば、どういうわけで来ないのか、来るように努力をすべきだと思うんです。外務省はどういう手をお打ちになりましたか、それを伺いたいのです。
  261. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 来ませんけれども、報道機関その他を通じて知っておりまするし、来ないのはどうしてかとおっしゃいますけれども、先方からそのうち来るだろう、よこすだろうということだけでありまして、私ども来ないから知らないということを一言も言っておるわけじゃございません。
  262. 穗積七郎

    穗積委員 知らないならまだ罪はないけれども、知っていて何もしないから、そこに――があると言うのです。非愛国性があると言うのです。従属性があると言うのですよ。あなたの君われた通り、この決議は、御承知通り、日本政府、アメリカ政府並びに国連参加の各国政府にアピールをするという決議になっておる。それがどこへも発送されていない。それはなぜかといえば、アメリカの高等弁務官、すなわち、あそこにおる軍人が不当に抑えておるわけです。立法院の決議、施政権を返せということではありませんよ。施政権を返してもらいたいという決議すら、行なわせないという非民主的なやり方ですよ。それに対して事情を知っておられて、何ら大使館なりあるいはアメリカ政府に通じてそのことを要求されませんか。切々たる八十万の人民の代表が満場一致で決議されましたこの決議が、アメリカ軍人の不当なる施政権の弾圧によって、これがどこへも今日まで発送されていないのです。その事実はあなたは知っておるじゃないですか、今育った通り。私も知っております。あなたは知らないで黙っておるかと思ったら、知っておる。知っていて、しかも、報道を通じて決議文というものを見て、これは当然なことである、支持するという態度でおりながら、その要求というものが届かないという。非民主的な支配、弾圧です。これは一体何ですか。これを私どもは非民主的な帝国主義政策だと言うんですよ。そして、あなたの態度を非主体的な――な態度だと言うんです。
  263. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あんまりけんか腰におっしゃらぬで、一つじゅんじゅんとお願いしたいと思うのでありますが、形容詞は非愛国的とか――とか、そういうことはどっちでもいいんですが、お互いに愛国者のつもりでおるのですから、そういうふうにおきめつけにならないようにお願いしたいと思います。私は、決議自体についてまだ論評することはいかがかと思いまするけれども、私は、先ほどのように、気持はわかっておるのであります。ただ、沖繩は植民地であって国連憲章に違反しているということについては、先刻もこの席で申し上げたように、そういうことは事実に反するだろう、こう思っております。  事のついでに申し上げまするが、沖繩の国民所得というのは、非常に逐年上がっておりまして、最近は、一人当たりの国民所得は二百ドルということになっております。これはわが国の同種の八十万程度人口を持っておる県に比べますると、島根県が二百五ドルで、非常に接近してきております。これは、もとより沖繩には第三次産業が多いので、一般的に一次産業の従事者の所得その他をよく分析してみないとわかりませんが、おそらく一次産業の所得等は低いんだろうと思うのでありますけれども、いずれにしても、一九三四年から三六年までの平均が百十九ドルであったのが、今日二百三ドルに上がっておるということは、沖繩住民の福祉が非常に向上しているということは一般的には言えると思います。  それから、先ほど何にもしていないようなことでありましたが、私どもになりましてからいたしました、アメリカと相談してとりました措置については、まず日本の国旗掲揚の制限緩和、それから労働組合の認可手帳に関する布令の廃止、教育内容充実のためにわが本土から協力をする、それから三十七年度の今御審議をいただいておる予算の中におきまして、援助を飛躍的に拡大するというようなことで、相当に私どもとしては、現段階においてやり得る最善を尽くしておると考えております。
  264. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、常にアメリカの政府の外務省の役人みたいに、ぬけぬけと、沖繩における統治がだんだん民主化されたり、あるいは沖繩における県民の生活がよくなってきているというようなことを理由にして、施政権返還の要望を押えようとしておられる。そうではありません。なるほど、前のブース高等弁務官より今度のキャラウエーは、その点は非常に老獪巧妙で、なるべく民主的な粉飾をとろうとしておりますけれども、あなたは今よくなっておると言われますが、われわれは的確な調査資料によって間違いのないもので、この沖繩における法律制度がどうなっておるか、裁判制度がどうなっておるか、言論出版の自由があるかないか、ありはしません。それから労働組合なりあるいは民主団体に対するいかなる弾圧が行なわれておるか。さらに、基本的な人権の一つである渡航の自由すら完全に認められていない。それから社会保障なり土地問題についての非常な弾圧が行なわれております。こういうことを幾らでもわれわれは指摘することができます。そういうおっしゃいましたことは理由になりません。そういうことによって施政権の問題をはぐらかし、国民の施政権に対する要望に水をかけようと、こういう態度は、日本の外務大臣としてはおかしいじゃありませんか。もとより、われわれは、国際的に日本の欲することが、すべて国連においても、二カ国交渉においても必ずできるとは思っていない。思っていないけれども、そういう態度でこの問題を交渉されて、むしろ、私はさっきから聞いておると、日本の外務大臣ではなくて、アメリカの外務省の役人から説明を聞いておるような感じを抱かざるを得ない。おかしいですよ。きょうは時間がありませんから、あなたは、生活もよくなった、民主主義はだんだん沖繩において確立するなんていうでたらめなことをおっしゃいますけれども、これは次の外務委員会の機会において、徹底的にわれわれは指摘をして事実を明らかにしたいと思っております。ただしかし、今申しましたように、この二月一日の決議案すら弾圧されてどこへも発送ができない。これに対して日本外務省は何らその不当をなじらない。これでは一体施政権に対する熱意があるとわれわれは思えないのです。こういうアメリカの不当なる戦争準備のための軍事的なる帝国主義政策、こういう不当な政策を現に日本に対してやっておるということを言っておるのです。
  265. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたの御説のような論法をもってすれば、施政権はいよいよ返らなくなると思います。やはり条約によって施政権を与えておるのでありますから、日本とアメリカとの間に相互に信頼感があって、初めて施政権の返還というものはできるんだ、これが私の信念であります。
  266. 穗積七郎

    穗積委員 そういう主体性のない、もみ手で頭を百ぺんも下げてやるような調子、相手が一言いえばすぐ屈服する。実は私どもの知っておるところでは、昨年の六月二十日並びに二十一日二日間のケネディ大統領と池田さん並びにあなたの会談で、沖繩問題が出ていますよ。台湾の問題も出ています。韓国の問題も出ています。これは冒頭に出ておるはずです。お話しになったじゃありませんか。そうして、アジアの状態を指摘して、特に韓国、ラオス、ベトナムの危機を訴えて、これに対する経済的、軍事干渉の主張を強くして、そうしてそのときに、中国の領土である台湾、日本の領土である沖繩を半永久的に軍事基地化を必要とするという主張がケネディからなされて、あなたと総理大臣はそこで屈服しておるじゃありませんか。だから返らないのです。そういう態度をとっておれば返るとおっしゃるけれども、そういう態度をとっておるから返らないのですよ。態度は根本的にわれわれとは相違する。国民の期待に反するものだと思うのです。ここで主体性のない、従属性の強いあなたをつかまえて、その基本的な態度についての説教をしてもしようのないことですから、次に進んでお尋ねをいたします。  池田内閣は、実は当初、中国政策については前向きである、こういうことを言われた。この間の国会のあなたの演説の中でも、これをまだ取り下げられてはおられない。そうであるなら、アジアの平和のためにも、二カ国間の友好のためにも、国交回復が望ましい。中国政策は一ぺんにはいかないにしても、前向きにやる、こういうことでありますならば、その前向き政策の具体的なものを示していただきたいのです。
  267. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国連におきまして中共の代表権の問題がたな上げになっておりましたのを、今度実質論議に入るというふうに持っていった、これはまさに前向きだと思います。それから貿易関係で見ましても、これは昨年の一-六月で見ましても、往復で一千百万ドルぐらい、ところが、六月から十二月までの下半期を見ますと、この貿易が三千六百万ドルぐらいに往復でなっておると思います。さように貿易関係もふえております。中国大陸との問題は、なかなかそう簡単にしかく考えられない。いろいろ国際間の微妙なる実情、あるいは二国間の問題としても、蒋介石国民政府との関係の問題もある。そう簡単に考えられないことは、穗積さんもおわかりだと思います。
  268. 穗積七郎

    穗積委員 実は非常に大事なことは、先ほどの沖繩の永久基地化の問題と関連をして、台湾問題も話をしておられたのです。台湾の領土は他国のものです。しかも総理は、前の外務委員会において、台湾は中国に帰属するものであるということを認めておられます。その台湾問題に対して、実はここにおいても、アジアの緊張状態から見て、アメリカの車中基地化を半永久的に続ける必要がある、こういう提案がなされたときに、あなた方はこの提案を支持されておるじゃありませんか。この考え方を支持されておるでしょう。そういうことで中国との前向きができるでしょうか、昨年の国会において、総理もあなたも、友好関係については友好三原則を認めてやる、こういうふうに言っておられて、二つの中国の陰謀に加担をした覚えはないし、今後もしないと言っておられる。ところが、今の沖繩に対すると同様に、アメリカの不法にして不当なる政策によって、台湾もまた沖繩と同様に、中国から切り離してこれの永久軍事基地化を策しておる。この二つの陰謀を支持しておられて、これで中国の前向き政策ができるでしょうか。あなた方が約束しておられました友好三原則というものは、これで根本的に変わってしまっておる。さらに重要な点は、この六月二十日、二十一日の会談においては、実は韓国に対する日本のてこ入れの問題が出てきております。これが今の日韓会談です。従って、従来とは日韓交渉というものの様相が一変してきておる。これはいずれまたあらためて論議をいたしたいと思いますけれども、その日韓会談のねらうところは何かと言えば、言うまでもなく、中国を仮想敵国とする卑下強化です。三十八度線軍事強化の問題でしょう。そういうことで、一体中国の前向き政策ができるとお考えになっておられるかどうか。
  269. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 池田総理あるいは私とケネディ大統領初めアメリカの首脳部との会談を、何かすっかり見てきたようなことをおっしゃいますけれども、そういうような話を私はしておりません。池田総理もしておられない。やれ台湾のてこ入れをするとか、あるいは三十八度線を弧化しているとか、そんな話は一つもしておりません。
  270. 穗積七郎

    穗積委員 隠しておられるなら隠しておられてもよろしい。これを知らぬのは日本の一部の国民だけでしょう。世界の人はみな知っております。この会談の内容というものは、ヨーロッパを伝わりみな知っておりますよ。東側でも知っておる。  そこで、続いて、それではお尋ねいたしますが、そういうことで、一体貿易の問題だけですか、中国前向き政策というのは。しかも、千百万ドルのやつが、なるほどあなたの今おっしゃる通り、昨年度は倍以上の三千六百万にふえました。これは何も政府の努力ではありません。友好商社、友好人民の努力によって、一九六〇年の八月からの友好取引によって発展してきているのです。ここにおられる佐藤さんのお兄さんによって遮断された日中貿易というものは、実は政府の努力、政府の政策によってではなくて、それに反対をしてきた友好的な人民の力によって、実はこれが伸びてきたわけです。それができておるから池田内閣の外交政策は前向きだ、それだけですか。
  271. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたの御質問の中に、東側からも伝わっているというお話でございますが、情報はやはり東からおとりになるのもけっこうですけれども、西側からもおとりになって、公正な御批評を願いたいと思います。  それで、今の貿易の話ですが、貿易というものは、これは言うまでもないことですが、やはり必要があって生まれてくるものであろうと私は思います。遮断するということは、政治的にはできるかもしれないが、必要があるものは必要に応じてできてくるのです。政府は特にそれを遮断するとか、あるいはうしろ向きのような政策をとっておりませんために、伸びてきております。これすなわち前向きの証拠であります。
  272. 穗積七郎

    穗積委員 われわれはもとより言葉じりをとらえるわけではありませんが、なぜ東側の諸君まで、この台湾問題と日韓問題がからんで話が出たということが重要視されているかといえば、それは、この間私どもが発表いたしました共同声明に対して、日韓問題に対することはこれは内政だと言われて、自民党の力や皆さんはわれわれに攻撃を加えておられる。ところが、それは内政問題ではないということなんです。安保にいたしましても、それから日韓問題にいたしましても、これは外交問題です。憲法改正であるとか、政防法とか、あるいは社会保障費をどうするということは内政問題でございましょう。しかしながら、安保条約にしても、日韓会談にいたしましても、外交問題である。しかも、それは直接中国に関係あることでしょう。北朝鮮に関係あることです。外交問題です。だから、そういう話をしておられるから、重大な関心を持ってこの問題が国際的に取り上げられ一反対をされているわけです。当然なことではないでしょうか。そういう意味で私は言っているのです。むしろ、何もしないのではなくて、敵視政策をだんだん深めながら、それで一体日中の改善ができると、これは国民を欺瞞するもはなはだしいものだと思うのです。それで、日本の友好商社の悪戦苦闘によって行なわれて参りました貿易の倍増が、いかにも政府の中国前向き政策の現われであるかのごとく宣伝をされる。われわれとしてははなはだ心外なことでございます。具体的にもっと前向き政策の方針を明らかにしていただきたいのです。
  273. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本の外交をいたします場合には、やはり日本の主張というものを持って前向きに行く、こういうことでございます。従いまして、中国の問題、これについては、さっきも言うたように、非常に複雑な問題である。また、日本の立場から見て、この問題をどう処理したら最も日本にとって有益であるかということを考えていかなければ、一がいに、向こう様はこうおしっゃるから、まことにそれもけっこうでございますというようなことだけではいかぬのじゃないかというふうに思っておるわけです。貿易が伸びることはけっこうでございますし、私どもはそういう方向で考えていきたい、こういうことでございます。韓国の問題については、日本と歴史的にも非常に関係の深い隣国である韓国と仲よくするということは、 これは当然な、きわめて自然なことであると思いますから、お互いにそう辛を妙に曲げて考えないで、ことさらに、日本の政府を外国へ行って誹謗なさるという前に、私どもととっくり一つお話を願って、私どもの国自身の利益を十分に考えていくということが望ましいと思います。
  274. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから前へ進みますが、今まで繰り返し繰り返し伺いましても、日本政府の中国前向き政策というものは全くない。むしろ敵視政策を進めつつある。そしてこのことが明確になりました。  そこで私は、次にお尋ねしたいのは、それでは、中国との貿易関係について、政府がそういう態度をとっておりながら、中国と日本との経済的、地理的または文化的な深い関係からして、特にこの問題は進めなければならぬという正しい認識に立って、日中貿易なり友好取引というものを発展させようとしておることに対して、政府一体どういう態度をとるか。これに対しても弾圧をするのか。あるいはこれに対しては、せめてこれだけは――外交政策は、すべて何もないどころか、敵視政策を進めつつあるけれども、この友好取引については前向きに態度をとるかとらぬか、そのことについて外務大臣並びに経済大臣、お二人おられますから、大臣大臣並びに大蔵大臣に伺いたいと思うのです。  実は今までの中国との関係というものは申し上げるまでもない。私は正確な事情をちょっと明らかにしておきたいと思いましたが、時間がありませんから、こまかい説明を省略して結論だけ申しましょう。今までの日本と中国との友好取引というものは、たとえば大豆であるとか、塩であるとか、あるいはまた甘クリであるとか、ウルシであるとか、こういういわば一部は生産財もありますけれども、多くのものは消費資材であったわけです。今まで私どもが幾たびか、外交政策においてアメリカ一辺倒政策をとるならば、日本はアジアの孤児となり、世界の孤児となるであろうということを指摘して参りました。ところがそのことが的中いたしまして、経済の側面から見ましても、このことが明確になってきたわけです。そして今日日本の実情からいきますと、たとえば日本の重化学工業の中心である鉄鋼のただいまの二千四百万トン、四十年の三千六百万トン、四十五年の四千八百万トン計画というものをとってみましても、今日それどころか、二千四百万トン計画から見ましても、その原料というものを見ますと、大体五千キロ以上の距離からこれを確保している。南アメリカ、インド、さらに向こうから、従って五千キロ以上の遠くから確保しておるのが全原料の六六・六%を占めておるわけです。これはこの十月から自由化を迎えて、そしてコスト・ダウンをしなければならぬ、そして経済の成長、国民所得の成長もはかっていかなければならぬというときに、基幹産業中の基幹産業がもうこういう状態です。これでこの三千六百万トンないしは四千八百万トンの原料の確保、鉄鉱石並びに粘結炭両方とも入れまして、この確保は物理的に困難である。物理的に困難であるばかりでなくて、コスト・ダウンができないのです。世界の鉄鋼生産国では、アメリカにしても、欧州においても、ソビエト地区にしても、このような遠距離で高いコストのかかる原料を確保しておる国というものは日本だけでございます。従って同時に、今度は製品についてもどうですか。製品は今のところはまだ国内需要を主にいたしておりますけれども、やがて、先ほど申しましたような成長計画をとっていくとすれば、製品においても海外市場を見つけなければならない。そうなりますと、これはわれわれが指摘するだけではなくて、たとえば本年度初頭において、イギリス鉄鋼連盟の諸君が、この点については明確に指摘しておるわけです。原料の面から見ても、製品の販路の面から見ましても、一々ここで数字はもう省略いたしますけれども、これはもう日本経済の弱点というものが明確になってきておる。そしてイギリスの諸君、EECの諸君すら適確に指摘しておることは、日本の基幹産業の中心である鉄鋼生産というものは、原料の鉄鉱石、粘結炭の両方の原料とも、それから製品においても、中国経済との交流なくしては今の計画はとうてい成り立たない、こういうことをもう的確に指摘しておるわけですね。続いて重要産業中の一つであります化学肥料をとってみますと、本年度は、御承知通り、中国との間でたった尿素十万トンの成約ができました。ところがその他の硫安を中心とする化学肥料をとってみますと、今まで韓国を筆頭にいたしましてインドあるいはパキスタン等は、大体AIDの資金による買付が全輸出の約三五%を占めておる。それが昨年からAIDの買付というものが全部シャット・アウトされたわけですね。そうなりますと、日本の化学肥料生産計画というものは、これまた大陸の農業と結びつく以外にない、こういう段階に入ってきている。繊維も御承知通り同様です。そうして見ますと、今申しました鉄鋼、化学肥料、それから化学繊維並びに船舶、この重要産業は、あげてもう中国市場またはシベリアを含む大陸市場との交流なくしては成り立たないということが、昨年の暮れから明確になってきておるわけです。そういう立場に立って私たちは――実は外交問題についてはあなた方が賛成されない。何もないわけです。何もしないということだから。ところがわれわれはそういう立場に立って、日中間における現在の段階においてすらなおかつ交流を発展すべきである。貿易はすべて両国人民の利益のものであり、その原則は、支配と搾取じゃなくて、平等互恵の原則によって行なうべきものである。こういう立場に立って、外交においては積極中立主義、それから経済においては互恵平等主義というものを、われわれの今後の、敗戦後の日本の正しい路線として、このことを十分説明した上で、そうして池田内閣の政策は、われわれ日本人が見ても遺徳ながら中国に対しては敵視政策を強めておる。しかしながら両国の経済の交流問題については、これは両国人民の努力によっても押し進めなければならぬ。こういう立場で実は話し合ってきたわけです。そうしてそう日本経済自身の側に立つ大陸経済との交流の必要性をわれわれとしてはふんまえた上で話し合った結果、次の七つの点が合憲に達しておる。そのことを私は簡潔に説明いたしますから、まず通産大臣から、それから続いて――外務大臣はアメリカの外務省の役人のような考えだから、それを妨害されようとするかもしれませんが、それから大蔵大臣についてもお尋ねしたい点が二、三ございます。そういう私の趣旨ですから、順を追うて私は時間の節約上申し上げますから、その立場に立って一々御回答をいただきたいと思います。  まず第一は今行なわれておりまする両国の友好取引というものは中断すべきではない、また停滞すべきものでもない、これは発展すべきものであるという立場をお互いに理解した上、先ほど申しましたような互恵平等を原則とする立場を理解した上で、このことを合意に達しております。これに対して日本政府はどういう考えをお持ちになりますか。  第二点は、今申し上げましたように、エビやウルシや甘クリと違いまして、日本の基幹産業の重要物資の取引の段階に入らざるを得なくなって参りました。先ほど申しましたように、鉄鋼を初めとする四大産業におけるこの交流が、目ざましくなってきておる。特に貿易構造について、少し品目別と地域別について、きょうは私は大蔵大臣並びに各大臣にお尋ねをして、池田内閣の外交政策のあり方をお尋ねしたいと思ったのですけれども、それは一々できませんが、ヨーロッパか一九五七年すなわち第四次協定中断後急速に伸びてきております。その伸びておる経過をずっと見ますと、五七年から八年、たとえば西ドイツを一例にとってみましても、これは三倍――三・五倍に急増しております。と同時に重要な点は、内容が変わってきておるわけです。日本として軽視できないのは、鉄鋼を初めとします機械類それから重化学工業に輸出が移っておる、こういうことになってきている。ところが日本の場合は、従来は先ほど申しましたような消費物資でしたが、これから重要産業の重要物資に移りますと、どうしてもやはり長期取引というものが必要な段階に入ってくると思うのです。かの国はむろん計画経済、計画貿易ですから当然ですけれども、日本の場合においても今申し上げましたような鉄鋼を初めとする重要産業においては、これは資本主義経済であっても長期計画をやらざるを得ない、そうなりますと、長期安定性が必要です。この長期取引に六二年度から入る段階ではないかということを、われわれは日本の立場から指摘いたしました。これに対して向こうは正しくこれを理解をして、歓迎するということであったわけです。これに対して一体どういうお考えをお持ちになっておられるか。そこで長期取引段階に入ることについて、私はここで大蔵大臣にもお答えをいただかなければならぬ問題が付随して出てくると思うのです。それは何かというと、言う左でもなく延べ払いとバーター決済の問題がこれに付随して当然考えられるわけでしょう。特に競争国であるEEC諸国と日本との関係を見ますと、EEC諸国、ヨーロッパ諸国というのは、中国に対して売るものがあっても買うものがない。従って今の税状から伸ばすためにクレジット設定、延べ払い制度をやっております。ところがバーター決済はできてない。非常に少ないですね。ところが日本の場合は、鉄鋼を見ましても化学肥料を見ましても、それから化学繊維を見ましても、製品を向こうへ買ってもらうというだけでなくて、それぞれ見合うその産業に必要な原料、鉄鉱石、石炭並びに化学肥料による農作物、それから化学繊維の原料である塩、こういうものがすべてあるわけですから、延べ払いとバーター決済はこの際確立すべきではないか、これは日本の今日の貿易発展のために必要ではないかということを提案いたしました。中国側はこれについても歓迎の態度を示したのです。これに対して通産大臣並びに大蔵大臣はどういうお考えを持っておられるか。これが長期取引に伴う問題でございます。これが第一です。  第三点は、技術協力についての問題でございます。これは単なる技術の知識または資料の交換だけでなくて、今日両国で行なっている経済建設の過程の中で、これに技術者または建設のための資材、そういうものを出して、お互いに建設、開発作業に協力するという技術協力、この問題についてもわれわれはその必要性を、先ほどの重要産業の関連から考えまして思いましたので、これに対して提案をいたしました。これについても中国側は、日本の正しい互恵平等の原則による経済交流が確認されるならば、歓迎する用意があります。こういうことでございます。これが第三点です。  第四点は、中国側の公司の訪日の問題でございます。これは外務大臣にお答えをいただきたいことですから、外務大臣から最初お答えをいただきますから、ちょっと覚えておいていただきたい。すなわち今日は御承知通り百五社ばかりの日本の友好商社が、広州または北京に参りまして取引の交渉をいたしております。ところがこれはこれとして、中国側から、公司の取引の代表が日本を訪問して、その後発展しておる日本の経済の実情を認識しながら、これに対して正しい認識の上に、日本の友好商社との間で日本で取引の交渉をやる、こういうことは非常に望ましいという点を提案をいたしました。これに対しても日本が友好的な態度をとり、そうして必要が生じたときには検討に値することであるという合意に達しております。これが第四点です。  第五点は、日本側からの経済ミッションの中国訪問の問題でございます。これは鉄鋼を初めとする各産業だけではなくて、金融界の一部におきましても、日本全体の総合的な立場から日本経済の孤立化をおそれて、大陸市場との経済交流、そういう必要のために実は各産業代表の訪中の問題が出てきておるわけです。これがもし出てきた場合には、外務省並びに通産省はどういう態度をおとりになるか。個々によって違いますけれども、原則をお尋ねしたいのです。  それから第六番目は、見本市交換の問題です。これは御承知通り中絶前に日本の見本市を中国で四カ所開き、向こう側の見本市を東京、大阪で開き、続いて名古屋、福岡で開こうとしたときに中断になったわけですね。これをこの友好取引発展の過程において、そろそろ検討してみたらどうかという提案もいたしました。これに対しても先方は、この提案を尊重して検討する用意がありますということでしたが、これまた日本政府態度と関連があるわけですから、これも伺っておきたい。  最後の点は、これは三人の大臣に関係していることだと思うのですけれども、実はアジア広域経済の問題です。これはヨーロッパの諸君、あるいはアメリカの諸君も、日本の最近の経済成長の分析と貿易構造の分析をいたしまして、アジア広域経済の問題が取り上げられるようになっておる。日本国内はそういう問題が出ておることも御承知通りである。アジア諸国の間においても、この問題が検討されるようになっていることも、御承知通りであります。そこで、今申しました、戦前の支配と搾取による経済進出ではなくして、互恵平等による経済交流を、日中間において事実上作り上げる。それを基準にして、全アジアまたはアフリカ地区まで経済交流の発展のいしずえにする、そういう展望なり位置づけを話し合ったわけでございます。これについても同様、われわれの考え提案に対しては、中国は全くその原則と方針に対して、賛成の態度をとっておったわけです。真に日本政府は平和共存政策をとり、そしてその中において孤立化しつつあります日本の経済のよって立つ基礎、そのことの成否が、経済の成長政策なりあるいは国民生活の所得の問題に、直接関係しているわけですね。  そういうことでありますから、以上七つの問題を、時間の節約上私は一括してお話をいたしました。ですからこれに対して、まず貿易の責任者である通産大臣から、順次お答えをいただきたいと思うのです。
  275. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中国大陸との貿易の拡大については、私ども、かねてからそれを希望しております。池田内閣の前向き姿勢というのはそういうところでございます。これははっきりしている。そこで穂積さんに伺いたいのですが、互恵平等の原則だと言われながら、先ほど来の言葉を聞いていると、友好取引という言葉を特にお使いになった。友好取引という言葉は私どもちょっと解せない。また友好商社が扱うという言葉も、私どもにはどうも理解ができない。日本の政府に対して前向きを要望されますが、北京政府も、こういうような特定な商社だけを友好商社として貿易を扱わすというような、限定したことをやらずに、またその商社による貿易こそが友好取引だというような観念を作らず、経済に関する限りこれを拡大する、この態度をぜひともとっていただきたい、これは私ども強く主張しております。どこまでも互恵平等の原則に立ってやる、これが必要であります。  長期取引、これはけっこうでございますが、過去においてこれが中断されたということでありますので、そういう意味でまだ十分の信頼を得ることができないかもわからない。これは友好だとかなんとか言わないで、それこそ双方が前向きになれば、そういうことは可能なことです。  それからバーター云々のお話が出ておりましたが、バーターの制度はもうすでにやめている。ただいま現金取引の段階でございます。中国大陸との貿易はバーターの時代じゃないんだ、この認識は、ぜひとも持っていただいて――ただ延べ払いというのは、ただいまの状況ではこれをやるわけにいかぬ、かように実は思います。
  276. 穗積七郎

    穗積委員 理由をちょっと明らかにしてもらいたい。
  277. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはできないということです。  それから第二の問題として、基幹産業への物資についてのお話がございましたが、これなども先ほど申しますように、長期のものが、十分双方で信頼ができるような状態になれば、これはけっこうであります。ことに私ども、共産主義の国とも長期取引をどんどんいたしておりますから、共差益義の政府だから反対だ、そんなけちな考え方は持っていない、これは一つ御了承いただきたい。  技術協力についても同様のことでございます。  経済ミッション訪中については、これもけっこうであります。  また見本市の交換、これは、現に今回の御審議をいただいておる予算にも、ちゃんと元本市開催のための所要の予算は計上してございます。そういうことも必要でございます。  大体基本的に、具体的に述べられた各項目については、一、二を除いて――延べ払いはできない。これは、ただいまの状況ではやや実情は無理かと思います。その他は原則として差しつかえない。基本的な問題として、どこまでも互恵平等であること。取引に友好というような言葉を特に使うというような考え方、これは望ましくない。また友好商社といって、特定の商社を限ることは、これまた望ましくない。日本が前向きであると同様に、中国大陸も日本に対して前向きであることが必要だ、これを特にはっきり申し上げておきます。  最後の、アジアの広域経済の問題でございますが、いろいろ個々になりますと、政治問題に関連して参りまして、純経済問題だけでなくなってきている。ここにむずかしさがございます。最近エカフェも東京で開かれますが、国連に入っていないと、エカフェのごとき国連の下部機構であるこれに、直ちに参加していただくというわけにはいかない、こういう実情にございます。   〔市政委員長代理退席、委員長着席〕
  278. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の考えも、大体通産大臣と同じでございます。ただ、日本は共産圏諸国との貿易も希望して、この貿易も年々伸びているというときに、なぜ中共貿易が伸びないかということについては、実は私は残念に思っています。と申しますのは、昭和三十二年ごろでございましたが、私どもが通産省に関係しておりますときに、あのときにはいわゆる政経分離で、貿易という経済問題は、国連における承認をどうこういうような政治問題と離れて、両国は貿易を進めよう、こういうことで貿易が軌道に乗っておりました。多分あの出時は八千万ドルぐらいまでいったのではなかったかと思いますが、一億ドルに乗ることもこの調子ならもう間近いというところまでいって、軌道に乗っておりましたが、それがあの直後に中断されて、今日のような状態になった。従って、これはいろいろむずかしい問題がございましょうが、私はやはり貿易は両国のためであって、こちらにも必要性がございますが、中国においても現在建設の途上で、日本との貿易を望む必要性というものは、やはり相当あると思います。そうだとしますれば、やはりこの貿易を軌道に乗せるというためには、これが阻害されている原因がどちらにあるかということは、率直にお互いが考えなければならぬ。三十二年当時の方針の、政経分離というような立場に立った貿易政策をお互いがとるということでしたら、非常に貿易は進んで、今おっしゃられている延べ払いとか、いろいろそういうような問題も、基本的なそういう問題が軌道に乗っていけば、私は問題なく解決される問題だと思いますが、これは、やはり両国がお互いに阻害されている問題について考え直すということから出発しなければ、私はなかなか困難な問題だろうと思っております。
  279. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 すでに通産、大蔵の両大臣からお答えがありましたから、私に関連のある問題だけ申し上げます。  まず、私はわが国は中共を少しも敵視していないということを申し上げたい。少なくともあなたが先ほど私に対して使われたような言辞は、私ども使った覚えはありません。  それから貿易でございますが、これは六一年度の一月から十二月までの分を見ますると、中共の輸出が三千万ドル、日本から中共へ輸出しているもの、それが一千六百万ドル、非常に片貿易になって、わが国の一千四百万ドル見当の入超になっておる。倍近いものを日本は中共から買っておるわけであります。今、大蔵大臣から話がありましたように、一九五八年当時は、対中共輸出が五千万ドルで、対中共輸入が五千四百万ドル、大体バランスしておるのでございますから、今後この方向に向かっていくことが望ましいと思っております。  それから入国の問題、調査団が入国するという問題はけっこうだと思います。ただケース・バイ・ケースで、そのつど御連絡があれば、わが方としてそれについてお答えするということになろうと思います。
  280. 山村新治郎

    山村委員長 穂積君に申し上げますが、持ち時間はあと約九分でございます。参考に申し上げます。
  281. 穗積七郎

    穗積委員 区切りがもうじきですから、多少は弾力性を持って下さい。
  282. 山村新治郎

    山村委員長 なるべく結論を急いで下さい。
  283. 穗積七郎

    穗積委員 友好取引はけしからぬということですが、これはここで私説明しておると長くなって、まだ実は具体的にお尋ねしたいことがあるものですから、なんですけれども国会のこういう席上でもよし、そうでなくてもいいけれども、やはり政経不可分なり、中国側の言っておる友好三原則というものは無理のないことなんですから、これはバンドン原則に合致した、特に取り立てたむずかしい条件ということではないのです。だから、この前池田さんも小坂さんも、友好三原則についてはこれを当然なことだと思うという態度をとっておられた。それがそうでなくなったから問題になってきているのです。だから政府を含む全日本経済との本格的な貿易、すなわち貿易三原則による政府間貿易協定というものによる貿易再開というものができないでおるわけですね。ですから、その点は私は、友好原則というものをあくまでも貫いていく、そのことが当時の日本側で十分理解されなかったから、第四次協定というものが御破算になり、それで八幡の稲山氏が行ってやった鉄鋼の長期契約というものも御破算になったわけです。その点は原因はどこにあるかといえば、日本の友好原則に対する理解の仕方が浅くて、そして誤っておったところに実は原因があるわけですから、何も国民の一部だけつかまえて向こうは貿易をやろうというようなけちな考えは持っておらない。この席にも自民党の井出さんもおられますけれども、向こうへ行かれたときに、貿易についての友好取引については、これは正しく話があったわけで、これは十分井出さんからも聞いて理解を深めてもらいたいと思うのです。  そこで私はそのことは、また次の十分時間のあるときに外務大臣には十分――あなたは勝手なことばかり言っておるけれども、敵視政策をとりながら友好政策だなんて、とんでもないことを言っておられるけれども、それはわれわれとしては黙っておくわけには参りません。すなわち、中国のみならず、共産主義諸国との間においても、貿易取引については前向きでいきたい、これは原則一般だ。ソビエトにでもそうです。去年はおととしの倍増、ことしはおそらくまたこの間の取りきめ以上にオーバーするでしょう。北朝鮮についても、昨年の四月から香港スイッチを直送に踏み切って、今日の発展を見ておるわけです。ところが、一つここでお尋ねしたいのは、今の中国側の入国問題や貿易問題と関連をして、朝鮮人民共和国と日本のある商社との間で放送機のプラント輸出について契約が行なわれたことは御承知通りです。この契約条項の中に、これを受け取るために向こうの技術者が入国をするということは当然のことですね。これは貿易のプラント輸出の場合における当然な常識的な契約事項でございます。それに対して佐藤通産大臣は、貿易拡大の見地から、純経済的な立場で、これは西も東もないということで、この技術者の入国について踏み切られた。そして小坂外務大臣不在中の外相代理であった川島さんも、これに対しては反対をされなかった。ところが小坂さんがお帰りになってから、これがついに遮断をされたわけです。当然のこの貿易発展のための北朝鮮の技術者の入国問題というのがシャット・アウトされて、従ってその契約がキャンセルされるかされないかというせとぎわに立ち、同時にこのことが今後の共産圏諸国との貿易に重大な一つのバロメーターになってきておるわけです。どういうわけで佐藤通産大臣は、当然これは入国を許すべきであったと言われたのに、そして省議でも大体おきめになったのに、なぜこれがついに中断せざるを得なくなったか、その間の理由を明らかにしていただきたいと思います。
  284. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その前に、政経不可分の問題が出ましたけれども、フランスも西独もイタリアも、これは政治関係とは別に、中共貿易を大いにやっておることは御承知通りです。それからカナダ、オーストラリアから非常に多くの食糧を中共は買っておることもよく御承知通りでございます。自主性を発揮して、大いにそういう諸国並みに日本の立場を主張すべきものではないかと思っております。  なお北鮮の問題でございますけれども、これは、対共産圏貿易とは若干違うのでありまして、分裂国家の場合には非常に問題がデリケートでございまして、ことに現在日韓会談をやっておりますので、日韓会談が妥結いたしまして、そうして両国の国交が正常化して、わが方の考え方も韓国の政府に十分わからせるようになった段階においては、あとではまたいろいろの考え方もできると思いますが、現状においては、このことが非常に大きく政治的に問題になりまするので、私どもとしてはこれを認めるわけにいかない、こう思っております。
  285. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外務大臣のただいま答えたことに賛成をいたしたわけでございます。
  286. 穗積七郎

    穗積委員 これは私は、これまた日本外交の非常に自主性のない政策の一つの現われだと思うのです。態度の現われですよ。小坂外務大臣、ちょっとこっちを向いて下さい。この原因について実はあなたの部下の武内外務次官が、これは一月二十三日のことです。これを実は取りやめなければならなくなった理由として、韓国側の抗議によるものだ。日韓会談における――非公式会談であるか、あるいは代表部を通じてであるか、いずれにいたしましても韓国側の異議の申し立てによって、日本政府としては、正しいと思う――すなわち昨年の十二月二十二日に、佐藤通産大臣と川島長官と小坂外務大臣の間では、一応これは踏み切ろうと佐藤さんの判断によって決定されたものが、実は一カ月後に取りやめられている。その理由はどこにあるかといえば、韓国側からの異議の申し立て、ただそれだけです。そういう態度一体日本の外交がやれるでしょうか、日韓会談をそういう態度でやれば、まるで向こうの要求は全部通す、アメリカの指図には全部従う、ここでまた非常な非愛国的な態度、自主性のない態度が外交交渉の中に出てくるわけです。小坂さん御存じですか。これを。
  287. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 武内次官がそういうことを言ったかどうか私は存じません。しかし、今申したように全般的な判断から、これは妥当ならずという判断を下したわけであります。通信機一つ売ることはけっこうでしょうけれども、それと韓国との全体の国交ということを引きかえにするわけには参らぬ、こういうのが私の判断でございます。
  288. 穗積七郎

    穗積委員 御答弁はなはだ残念でありますが、これはまた留保いたしまして、続いて武内さんも一ぺん外務委員会に呼んで、よく伺いたいと思っております。  続いてお尋ねしたいのは、最近韓国に対しまして、湯川康平氏を団長とする経済使節団が行かれたわけです。これが池田首相の朴議長に対する親書を持って行かれたようですが、これは一体政府とはどういう関係で、どういう資格で総理の親書をお持ちになりたのか。外務大臣御存じないのか、つんぼさじきにおられるのか知りませんが、その点についての事態を明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一点、時間がだんだんなくなりますから、一緒にお尋ねします。同時に、この湯川氏は、すでに向こうでの記者会見におきまして、無為替延べ払い形式による保税加工貿易をやるのだという、それを日本政府はすでにもう決定しておるかのごとき態度で、すなわち、韓国側の了解さえあればこれを実行するという態度で、了解を求めて交渉を始めておられるわけです。これは言うまでもなく法律を改正しなければ、現行の法律のもとにおいてはこの無為替延べ払い保税加工貿易というものはできないはずです。それをすでに彼は向こうに行って、できる立場で、向こう側の正式代表と交渉に入っておるわけです。これは一体だれがこういうことを湯川団長に内諾をお与えになったのか、国会では一体どういうことになっておるのか、法律の問題でございますが、これははなはだ奇怪な事件でございます。しかも、これは韓国日報との記者会見で湯川氏はしゃべっております。
  289. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 湯川氏が経済視察団を連れていった、行く前に私のところには参りまして、こういう団体を連れていくという話をいたしました。もちろん、政府が関与したというものではございません。湯川君が民間人として、また民間人としてのあっせん、ただそういう事柄があるということを私のところへ報告に来た、かように私は考えております。またそれに対して総理が親書を云々という、その話は私全然知りません。また、ただいま外務大臣もそういうことは全然知らぬということでございます。  それから、その次の無為替輸出という問題でございますが、もちろん具体的な問題が起こらないと、日本政府が許可するかしないかという問題は、具体的な問題として考えなければならぬと思います。ただいまの法制上それを禁止するというものはないようでございます。また、ただいま法律を改正しなければならないと言われますが、そういうようなものじゃなさそうでございます。これは事務的に法律を説明させてもよろしゅうございます。ただ問題は、そういう包括的な許可とかいうようなものでないこと、具体的なものが出てこない限り、具体的に進まない問題だということを御了承いただきたいと思います。
  290. 穗積七郎

    穗積委員 これは単なる延べ払い問題ではありません。保税加工貿易の問題も含んでおります。これはやはりわれわれの理解では、法律改正をしなければできないと思います。大蔵大臣どうですか。
  291. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法律的にはどういうことか知りませんが、許可するのに法律改正は、私も要らないというふうに聞いております。しかし、今通産大臣が話されましたように、保税工場へ無為替で持ち込むにいたしましても、将来の支払い方法とか、そういうものが全然確定しておりませんのに、包括的に方針として政府はそういうことをきめるというわけにはいきませんので、私どもは、そういう問題が起こりましたら、そういうものが調査されて具体的にならない限り、政府の方針というものはきめられないという態度できょうまできております。
  292. 穗積七郎

    穗積委員 いや私は、この保税加工貿易の方式が、単なる行政措置によってできるとは私は思っていない。法の改正を必要とすると思うのです。大蔵大臣どうですか。大蔵省所管ですから、それを聞いているのです。今後の方針とか政策ではない。それを湯川氏が、日本の政府は、もうすでに政府の代表のごとく、または法律が改正された後のような態度で向こうへ行って話をされ、交渉され、しかも談話発表までしておるわけです。これは奇怪な事件だと思うのです。
  293. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から法律を説明させます。
  294. 今井善衞

    今井(善)政府委員 お答えいたします。韓国側におきまして、それを保税扱いにする、しないかという問題は、これは向こうの法制の関係でございますが、わが方でそれに対しまして無為替輸出を認めるか認めないかという問題につきましては、輸出貿易管理令の第一条でもって、場合によりまして通産大臣の承認を要するという事項が列記されておりまして、その場合に、無為替でもって輸出する場合には、通産大臣の承認が要るということになっております。今までは全面的に認めておりませんでしたが、方針のきめ方によりまして、認め得るわけでございます。
  295. 山村新治郎

    山村委員長 穂積君に申し上げますが、だいぶ時間が経過しましたし、あとの野原さんの関係もありますから……。
  296. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、まだいろいろお尋ねしたいと思いましたが、時間が参りましたから、尊重して、外務大臣先にお帰りのようだから、先にちょっと。今の御答弁あとにして伺いたいと思うのです。  それは今度の韓国との国交正常化は、これを復交ではないわけです。平和条約三条で新しい独立国を承認する形式になるわけです。その場合における領土条項というものは、これはもう当然この条約に不可欠なる交渉の問題である。平和条約によりますと、ちゃんとその点は明記いたしてあります。「日本国は、朝鮮の独立を承認して、」これで新国家ができるわけですが、「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原」その他、こうなって領土はこれで確定されているわけですね。それでこれを受けて国連におけるその決議ができてきているわけです。唯一政権としての。ところが、今度はこれを限定政府として、三十八度線南の限定政府としてこれを独立国として初めて承認する形で、日本との国交正常化が初めてできる。その場合に、領土問題を確定しないで、はたしてそういう条約が結べるかどうか、これは条約の例からいきましてないことです。(発言する者あり)今ここで、善意ではあるが無知によるお話で、私語がありまして、ソビエトとの間である、こう言っておられる、ソビエトは全然違います。今度はこれを法源としてやっているわけです。新国家独立の承認の問題です。これは一般的に言いまして、そういう例を私はだいぶ条約を探してみましたがないのです。たとえば西イリアンの問題、ソビエトと日本との問題、このたな上げ方式というものは、この場合には許されません。そう国際法上は当然原則として考えるべきであると思います。外務大臣の御意見を伺っておきたい。
  297. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 われわれは平和条約の第二条におきまして朝鮮の独立を承認しているわけですね。従って、朝鮮というものはすでに独立を承認しているわけです。そこで韓国との国交を正常化する、国交を正常な状態において樹立するわけであります。これは、国交回復ではないと思います。そこでその場合に、その領土権がどこに及ぶかということは、先方の国の憲法によってきめるわけでございますが、われわれとしては、しばしば申し上げているように、韓国の支配が三十八度から北に及んでいないという事実を頭に入れて日韓交渉をやっているわけでございます。
  298. 山村新治郎

    山村委員長 おそれ入りますが、だいぶ時間がたちましたので……。
  299. 穗積七郎

    穗積委員 非常に大事な点ですから……。
  300. 山村新治郎

    山村委員長 大事な点でございますが、時間も大事でございますから……。
  301. 穗積七郎

    穗積委員 私、これで終わりますから――引き延ばしのためじゃない、途中です。いつまでもやろうというのではありません。  これは小坂さん、そんなでたらめな答弁では通りませんよ、国際法上そんなでたらめな答弁では通りませんよ。これは独立国として領土が規定されて、そして唯一の合法政権として朝鮮、しかも国際法の原則からいけば、一国一政権です。それを今度は限定政府として三十八度線から南の韓国とやるわけで、この平和条約の規定とは全然違った変則的な国交回復をやるわけですね。しかも今言われた通りに、昨年の十二月四日の外務委員会で、私の質問に対して、竹島問題に対するあなたの非常に誤った態度が出ておって、それよりさらに誤って、それからこの間野原さんがここでお聞きになって、さらに三転いたしまして、実は総理が応訴を条件としない、こういうことで、でたらめに変わってきておる。こういうことで新独立国との条約締結ができるとお思いになったら、これは社会党が反対するのではない、国際条約上これは違反ですよ、そんなでたらめをおやりになったら。それでは国連決議に違反しますよ。これは確定しなければいけません。
  302. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、韓国と国交を持っている国がたくさんあるわけです。三十数カ国ございます。その国はみんな韓国の現状を認めて国交をやっておるわけでございます。日本が国交を韓国と樹立します場合も、そういう状態になるわけです。それと同じことでございます。現にその支配が三十八度から北に及んでいない、これは事実でしょう。そういう状態において国交を回復するわけであります。朝鮮の独立というものは、これは講和条約の、あなたは三条とおっしゃったが、二条に認めているわけでございますね。
  303. 山村新治郎

    山村委員長 穂積君、外務委員会で一つ……。申しわけありませんが、どうでしょうか、せっかくの約束の時間ですから。あまり超過しておりますので……。
  304. 穗積七郎

    穗積委員 最後にちょっと申し上げて、指摘だけしておきましょう。
  305. 山村新治郎

    山村委員長 それでは特別に許します。
  306. 穗積七郎

    穗積委員 すなわち、三十八度線南を切って、この平和条約二条でした、私の言い違いでした、先ほど三条と言ったのは二条でした。二条並びにあなた方がたてにとっておられる国連決議、これに違う限定政権としての南朝鮮の政権と国交回復するわけですから、従って、そういうやり方をする場合には領土の問題が重要になるということが一点。それからもう一つ、他の国の例があるとおっしゃいますけれども、他の国と日本とは違います。竹島問題という係争中の問題があるわけですね。他の国はありませんよ。だからその問題はその二点からいきまして、これを切り離して御都合主義で、また北でもたな上げ、どこでもたな上げ、全部たな上げだ。たな上げ、たな上げで保守党内閣はいかにも愛国的なようなことを言っておられますけれども、至るところで強きには屈して強い者の言う通り、そして無理が通れば道理が引っ込んで、全部たな上げ、たな上げで、こういう誤った態度でやられようとしておる。今度の場合はほかの場合と、ソビエトの場合と違います。その点は、私はあなたの御答弁で了承したわけではありませんから、指摘いたしておきます。
  307. 山村新治郎

    山村委員長 先ほど穂積君の発言中に不穏当と思われる言辞があったように思いますので、後刻速記録を取り調べの上、委員長において適当な処置をいたしたいと思いますので、御了承を願います。  先ほど理事会での申し合わせにより、この際、特に野原君及び井手君の両君に、それぞれ十分ずつの質疑を許します。時間は守りますから。十分ずつでございます。  まず野原覺君。
  308. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務大臣にお尋ねをしたいと思うのであります。外務大国は過ぐる二月二十日に予算の第二分科委員会が開かれまして、私は主として竹島の問題についてお尋ねをいたしたのであります。ところが、この竹島の問題に対する私の答弁が、一昨日二月二十七日の外務委員会において取り消されたというのであります。私に対する答弁は、野原個人に対する答弁ではない。予算第二分科会というのはこれは予算委員会であります。予算委員会におけるところの論議を、何ら予算委員会の了解もなしに勝手に外務委員会で外務大臣が取り消しておるというのであります。私はこれは許すことができないと思う。そういう事実があったのか、なかったのか、まずこの点について承りたいのであります。
  309. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたの御質問、非常に同じことを繰り返し繰り返し御質問があり、また御答弁を申し上げておった。そのうちに、あなたの今の御質問だけ一つとってみても、私の答弁に対してというお言葉がございます。これは御質問の誤りだと思います。そういう程度の、誤解を与えるような言辞があるというふうな点を指摘されまして、私は、これはよく自分の速記録をその当時読んで見ました。これはまさにそういうおそれがある、こう思いまして、この点が誤解があれば取り消します。こういうことを申し上げたわけであります。  事柄を申し上げますと、あなたは、竹島の問題は日韓会談妥結の条件だ、こういうふうに言っておられる。私は、竹島の問題は国交が回復されるまでの間、国交が正常化するまでの間に両方で話し合って、これを国際司法裁判所に提訴するのが筋だと思う、こういうことを繰り返し申し上げているわけです。最後にあなたがこういうことを言っておられる。「話し合いができない限りは、日韓会談の妥結はしない。そうでしょう、べきものであるのだから。」私はここで日韓会談妥結と言ってないので、国交の正常化ということを言っておる。あなたは会談と、こうきめつけておられる。「だから、日韓会談の妥結の一つの条件だ、国際司法裁判所に応訴するかどうかは妥結の条件になる、そのくらいな強硬な決意でこの問題は会談の中では話をしていくというおつもりですね、承っておきたい。」こう仰せられたのに対して、「私はさように考えております。」その点が私は問題だと思う。「私はさように」というのは、繰り返し同じことを言っておりましたから、私がさように思っておる。そこをそのくらいな強い決意でやれと最後に強くおっしゃいましたから、私もぜひ竹島の問題を解決したいと思っておる、そのつもりを、「さように考えております。」こう申し上げたのでございまして、日韓会談とは竹島の解決と別に扱っておるわけであります。これはしばしば申し上げている。日韓会談は、請求権の問題、それから法的地位の問題、それから漁業、李ライン撤廃の問題、この三つを、やっておるということを申し上げて、それ以外のものを言っておるので、最後にごっちゃになるような印象を与えたということは、私の言葉が足りないと言いますか、ちょっともうろうとした関係もあったのだと思いますが、その点おわびして、そういう誤解があれば取り消したいと思います。
  310. 山村新治郎

    山村委員長 外務大臣、ちょっと伺いますが、そうしますと、予算委員会分科会におけるあなたの御発言を補足なりあるいは取り消しなりすることがあるのですか。
  311. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 補足させていただけば一番明瞭だと思います。
  312. 山村新治郎

    山村委員長 それはまた御相談があれば……。まだ野原君の質問があると思います。
  313. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、ただいま外務大臣の答弁は納得ができないのです。実は、松本七郎さんに対する小坂国務大臣の答弁の速記を取り寄せてみたのであります。こう言っておるのです。「私の答弁を実は御質問があるようでしたからここに持ってきておりますが、」これは私の質問に対する答弁の速記を外務大臣が持っていって答弁をしたようであります。「持ってきておりますが、竹島問題は妥協できない問題、すなわち双方の主張が食い違っている問題でございますから、日韓会談交渉の議題としては、取り上げていないが、日韓国交が回復するという段階においては、当然この問題を公正な国際機関がさばくということが双方に合意されることが必要だと思う云々、こういう話をしておるわけです。私の頭には国交の回復ということがあったわけです。なるほど、読んでみますと、野原さんの御質問は、妥結の条件、こう言っておられる。そして、非常に長い質疑応答でございましたので、私は国交回復の条件と思い、野原議員の質問は妥結の条件というふうで、確かに私は最後にそう考えておりますということを言っておりますが、これはどうも、自分は今まで同じことを何回も何回も言ったものですから、そう考えつつ言ったにすぎないのであって、もし誤解があるようならば、最後の点は取り消させていただきます。私は、国交回復の際には当然韓国側は応訴すべきものであるし、そうなるであろう、こういうことを言っておるわけであります。ですから、この発言をあらためての発言とお聞き取りを願いたい。」、これはあなたの松本議員に対する、私の質問に対する答弁についての取り消しの速記です。そこで、最後の点について取り消したという、その最後の点とは、さようでございます。こういうことだということでございますが、これは大事なことでありますから確認しておきたいと思う。私の質問に対して、さようでございますと答えた。そこのところをあなたは取り消したのですか、その他にはもうあなたの取り消されるところはないのですか、いかがですか。
  314. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最後の、「私はさように考えております。」、このくだりであります。このさようにというのは、私がずっと言っておったことが頭にあるので、あなたの言われたことを速記録を読んでみますと、なるほど、日韓会談の妥結の条件、こう言っておられるので、私は、その点は思い違いでございますから、これは取り消す必要がありますから、こう申したのであります。
  315. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、会談妥結の条件ではないけれども、韓国が国際司法裁判所に応訴するということは国交回復の条件だと、こうあなたは考えておるわけですか、承りたいのです。
  316. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この点は、あとで総理大臣も言われましたように、条件とか何か言わないでも、一応外交というものは見通しを持ってやっておるのだから、また、強い希望を持ってわが国の利益のためにやっておるのだから、外務大臣がそう言うのはその気持の表明だと思う、こういうことでございます。私もさように考えております。私は強く竹島の問題を解決したいと思います。しかも、両方の主張が食い違っておる段階において、これはやはり国際司法裁判所というような公正な機関がさばくべきだと思う。そういう建前からこのことを言っておるのでございまして、私は、大体ある程度見通しと強い希望を持ってこのことを言っておるわけでございます。
  317. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは私の質問に対する答弁でこう答えておるのです。私は、あなたが簡単に応訴ができるようなことを繰り返し申されるものですから、応訴の見通しはあるのですか、こう聞いたのです。この質問の経過から言うならば、これは全くのだめ押しだったのです。ところが、あなたはそれにこう答えておる。速記で申し上げます。「国交が回復するときに、双方とも非常に不満な問題を持っておるということでは、真の国交が回復できないからでございます。国交が回復する瞬間には、これは当然先方は応訴すべきものだ、またわが方は先方が応訴して初めて国交の回復ということを考える、」、いいですか、「またわが方は先方が応訴して初めて国交の回復ということを考える、こういうことは当然だと思います。」、こうあなたは言っておられる。あなたは明らかに先方が応訴して初めて――先方とは韓国でしょう。韓国が応訴して初めて国交の回復ということを考えると言うのでございますから、国交回復の条件じゃございませんか。これを今になって何ですか。また取り消すのですか。またもう一つ取り消すのですか。いかがですか。
  318. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私はそういうふうに思っております。これは取り消すつもりはございません。ただ条件というような言い方をすることは、外交交渉をやっておる間にあまりいい言葉ではございませんので、私の速記録の通りお読み下さって、そのままに御了解を願いたいと思います。私は条件という言葉は一度も使っておりません。
  319. 野原覺

    ○野原(覺)委員 条件という言葉はなるほど速記にはございません。しかしながら、韓国が応訴して初めて国交の回復ということを考える、韓国が応訴しなければ国交の回復ということは考えられない、この中身はどういうことですか。この中身をさして条件と覆うのです。私は。
  320. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 解釈はいかようにも御自由でございます。私の真意はその述べておる通りでございます。
  321. 野原覺

    ○野原(覺)委員 松本七郎氏に対する私に対しての答弁取り消しの中で、あなたはこう言っているのです。これは私が先ほど読み上げてあなたも確認をしたのです。「野原さんの御質問は、妥結の条件、こう言っておられる。そして、非常に長い質疑応答でございましたので、私は国交回復の条件と思い、」さようでございますというのは取り消す、こう言っておる。国交回復の条件と思い、野原議員の質問は妥結の条件というふうで問題があるから、私は国交回復の条件と思って答えたのだと言っておるじゃありませんか。ここに速記に言っておるじゃありませんか。   〔「まだ問題がわからぬ」と呼ぶ者あり〕
  322. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ですから、私は、解釈は御随意であると言っておる。まだ問題がわからぬという声が聞こえますから申し上げますと、日韓交渉というものと国交回復というものは、またその間にある過程があるわけです。日韓交渉は三つの議題というものについて交渉しておるわけです。その日韓交渉の妥結の条件かと言うから、そうではない、しかし国交回復前にはぜひ竹島の問題は司法裁判所に提訴し、相手もそういうふうにさせたい、こういうことを言っておるわけです。これが私の真意でございます。
  323. 野原覺

    ○野原(覺)委員 会談妥結の条件でないということは、実はこの問答によって、このことのよしあしは別にして、あなたの真意というものは私もわかっておるのであります。ところが、国交回復の条件であるとあなたはやはり考えておると言うのです。なぜ私がこういうことを言うかといえば、池田総理が、――委員長、きょうは総理がお見えでございません。私は、実は、この問題は重大問題で、総理の出席を要求したいのでございますけれども、総理がお見えでございませんから、外務大臣にお尋ねいたしますが、私に答弁をした、「先方が応訴して初めて国交の回復ということを考える、」、このことは池田総理も同じ考えを持っておるかどうか、韓国が応訴して初めて日韓の国交回復ができ上がるのだという考え池田総理も持っているのかどうか、伺っておきたい。
  324. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは当然のことじゃございませんか。日本の国民の要望というものがそこに盛られて初めて両国において――これは韓国の側においても要望がある。その両方が盛られて初めて国交が回復するのですから、そんなことは初めからあたりまえのことだと思う。ただ、私重ねておわびしたいのは、実はあれは十時から始まって八時までずっとお答えしておったわけですが、たしかこれは六時半か七時ごろのできごとでございまして、若干最後の点は、どうも野原さんの雄弁に魅せられたような感じでありまして、最後の「私はさように考えております。」という点だけは、言葉に注意したつもりですが、これは若干誤解を生じますから、取り消します。
  325. 野原覺

    ○野原(覺)委員 実はこれは非常に重要な問題です。私は、簡単にこのことは下がることができないのです。池田総理の考えは、先方が応訴してそして国交の回復ということを考えるという外務大臣の考えと違うから、私は聞いておるのです。私は、松本七郎君に対するこの答弁の速記を取り寄せてみて驚いたのです。予算の第二分科会には総理が見えておりませんでしたから、私どもは総理の見解をただすことができなかったのです。ところが、この外務委員会で松本さんは総理の見解をただしたのです。総理はこう言っておる。「日韓の間でその帰属について日本の主張が通るということならば、これは問題はない。向こうが日本の言うことを聞かないという場合につきましては、私は、この問題で正常化をおくらすよりも、やはり国際司法裁判所に提訴した方がいい。」と言っている。つまり正常化が先だ。いいですか、あなたは正常化の条件なんですよ。ところが、池田総理は、正常化が先だ、こう言っておる。もしこのことがあいまいだというならば、もっと明確な総理の見解を私はここで出したいと思う。こう言っておる。「応訴するようにこちらは話を進めてみますと、こういうことでございます。応訴しない場合におきましては、われわれは別の問題として国際司法裁判所に出します。」、その先、「出すときに、向こうが正常化後応ずるか応じないかは向こうの立場でございますが、この竹島の問題だけで、竹島問題がきまらないから正常化はそれまでやらないんだという考えではないということでございます。」、これはどうですか。これはあなたの答弁と違いますよ。
  326. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 いや、少しも違いません。この竹島の帰属をきめる、これはもう話し合いによってきめることが一番望ましいわけです。総理はその点を言っておられるのですね。きまらなければ司法裁判所へ出して、相手が応訴する、これが条件――条件と言いますか、そういうことができてそうなるわけですね。それを言っておられるわけです。ちっとも違わないのです。相手が応訴して初めて提訴ができるのですよ、国際司法裁判所の関係というものは。そこで、国交を正常化する前に話し合いによって日本のものだということにきまれば、これは一番いいのです。総理はそれを言っておられる。しかし、それを向こうが応じないからといって、正常化を先へ延ばすわけにいかないから、司法裁判所へ提訴する。提訴するということは、向こうも応訴する、あなたが知っておられる通り、そういうふうになるわけですね。それでちっとも違わないわけでございます。
  327. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これはあなたは違わないと一人合点をしておりますけれども、これは明らかに違っておりますよ。あなたの答弁は、応訴して初めて国交の回復ができるのだ、応訴がなければ国交の回復はできないんだと、こう言っておる。池田総理は、応訴しようがしまいが、応訴が望ましい、しかし、応訴しない場合には、その問題はあと回しにして国交の正常化をやるんだ、(「そんなことは言ってないんだよ」と呼ぶ者あり)言っておるじゃありませんか。ここにちゃんと言っておるじゃありませんか。正常化はそれまでやらないんだという考えではない、竹島問題がきまらないから正常化はそれまでやらないんだという考えではない……。
  328. 山村新治郎

    山村委員長 野原君に御注意申し上げますが、野原君……。
  329. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そう言っているでしょう。竹島問題がきまらないからそれまでやらないという考えではないと言っているでしょう。もう一度御説明願いたい。
  330. 山村新治郎

    山村委員長 もう一度申し上げますが、先ほど理事会での話し合いは、外務大臣の予算委員会における発言と外務委員会における発言との食い違いの問題に関連してということでございます。総理大臣の問題とはまた別個でございますから、どうかそのおつもりで願います。
  331. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は委員長に対してお尋ねをしたいのですが、実は、この問題については、私が先ほども申し上げましたように、私個人に対する答弁ではないのです。たまたま新聞が書いて、新聞が書いたから、私どもは知って、あわてて速記録を取り寄せて読んでみたのです。予算委員会答弁したものを外務委員会で勝手に取り消すのです。外務委員会答弁したことがまた予算委員会でひっくり返る。これは一体国務大臣の態度ですか、こういうことは。国務大臣がそれぞれの委員会において自分の都合のいい立場で勝手に答弁を取り消してもらったならば、われわれは国政の審議はできない。委員長も議会運営をやって知っておられると思う。だから、この問題は、これは国会審議――予算委員会の単に権威の問題ではない、国政審議のために私どもは徹底的に追及しなければならぬ、こう考えて尋ねておるのです。だから、この点については、今の外務大臣の答弁で私は納得できません。もう一度御答弁願いたい。
  332. 山村新治郎

    山村委員長 もう一度でよろしゅうございますか。外務大臣。
  333. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私もいろいろ誤解の原因について今考えてみていたのですが、こういうことではございませんか。総理大臣の言われるのは、国際司法裁判所へ提訴して、相手が応訴して判決がある。これには相当長い時間かかるわけです。それができ終わるまで、判決の下るまで国交正常化を待っておる、こういうことはないんだ、こういうことでございましょう。あなたの誤解しておられるのは、相手が応訴して、第三者機関へまかせる、そのあとで国交正常化をするということを総理も言っておられるし、私も言っておるのを、何かそこのところを考え違いしていらっしゃるのではないでしょうか。私は、これ以上はどうも少しも違っていないと思うのでございますが……。
  334. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、外務大臣、私は一番最初に指摘いたしました。今二つの事例をあげて指摘したのですが、その最初の方でこう言っておる。これは総理の答弁。「日韓の間でその帰属について日本の主張が通るということならば、これは問題はない。向こうが日本の言うことを聞かないという場合につきましては、私は、この問題で正常化をおくらすよりも、」と言っておる。日本の言うことを聞かないんです。日本の言うことを聞かないとは、応訴をしないということですよ、これは……。  それでは、私はここで外務大臣にはっきり答弁を願いたいことは、応訴するということが国交正常化の条件だ、条件という言葉をあなたは使いたくないようでありますけれども、応訴がなければ韓国との日韓の国交の正常化はあり得ない、こういう見解で政府は統一されておるかどうか、承っておきたいのであります。
  335. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それは初めから申し上げておる通りで、少しも違いはございません。
  336. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、大事な点でまだ……。
  337. 山村新治郎

    山村委員長 よろしゅうございますか、野原君、約束の時間もだいぶ経過をしております。少し時間を守るということを一つお願いしたいと思います。
  338. 野原覺

    ○野原(覺)委員 先ほど外務大臣は、韓国が応訴をするということについては、これは重要な問題であるから、この問題については非常な決意を持って取り組むということを言われたのであります。そして、会談の議題にはないけれども、日韓会談の過程においてこの問題は取り上げていかねばならぬということも、るるあなたは今日まで述べてきておるのであります。ところが、その中で、私がお聞きしたいのは、韓国では第二の実力者と言われておる、朴政権を動かすと言われておるところの金情報部長が先般東京に来たのです。金情報部長が東京に来られたこの機会に、あなたは応訴については金情報部長とどのような話し合いをしたのか、承りたい。
  339. 山村新治郎

    山村委員長 野原君、実は理事会の約束は守っていただきたいと思います。理事会の約束は、先般の……(「よけいだ」と呼ぶ着あり)よけいじゃございません。委員会の権威のために申し上げるのです。はっきりと予算委員会における発言と外務委員会の発言の食い違いについての問題だけでございます。(「要らぬことだ」と呼ぶ者あり)いや、要らぬことじゃありません。理事会できめたことは守るようにしなければだめです。そういうことでは困ります。従って、ほかの問題まで発展をされることは、はなはだ迷惑でございます。こんなおそくまでやっていて、約束を守らないとか、時間を守らないということは困ります。食い違いの問題だけを追及して下さい。ほかの方は野原君に徹底して下さい。(発言する者多し)食い違いの問題だけです。さもなければ発言を許すわけはありません。あとの食い違いは外務委員会でやって下さい。野原君、特別に最後の一言だけ許します。
  340. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この点については、実は重大な関連があるから私は聞いておるのです。いいですか。委員長もお聞きだろうと思うのですよ。私の質問に対して、さようでございますと外務大臣が二月二十日に答弁をしたのです。
  341. 山村新治郎

    山村委員長 私に対する質問はいいです。外務大臣にして下さい。
  342. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そこで、さようでございますということの内容は、これは今外務大臣が答弁されましたように、重大な決意をもってこの問題には取り組むということだ、こういうことなんです。だから関連があるのです。そのことを取り消しておりますけれども、取り消された「さようでございます」と、金情報部長との話がどうであったかということとは、関連があるのです。(「外務委員会でやったらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)これは予算委員会答弁の取り消しだから、私は聞いておるのです。だからこの点については、どういう話し合いをしたのか答弁をしてもらいたい。
  343. 山村新治郎

    山村委員長 外務大臣に申し上げます。一つ野原君に最後のけじめの答弁をしていただきます。野原君の質問はそれで終了していただきます。外務大臣。
  344. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、先般申し上げたように、この問題についてもまた重大な決意を持って解決したいと考えております。金君との話の内容については、これは申し上げるわけに参りません。しかし、私は必ずこの問題は解決したい。またそれについて強い決意を持って臨んでおる次第であります。
  345. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は答弁を求めませんが、最後に締めくくりに申し上げたい。実は二十四日の羽田における記者会見で、金情報部長が重要な発言をして帰ったのであります。小坂外相の発言は、韓国の国際司法裁判所への応訴を、会談や国交正常化への条件という強いものではございませんでした。これは新聞記者からの、小坂外相から応訴について話があったかという問いに対して、金さんは、いや、そういう強いものではなかった、国交正常化への条件という強いものではありませんでした。ごく軽い気持で言ったように思います。あなたは国会では強そうなことを言って、日韓国交回復の、これは正常化の条件だということを言いながら、現実には、金氏に対しては、こういう態度できておるのであります。時間がございませんし、理事会の話し合い等もあったそうでありますから、私はこれで終わりますけれども、この問題は、いずれ後日また適当な機会を見つけて取り上げたいと思います。
  346. 山村新治郎

    山村委員長 次に井手以誠君。  なお、井手君に申し上げます。ただいま残念ながら約二十分以上も超過いたしました。こういう約束を守らぬようなことのないようにお願い申し上げます。
  347. 井手以誠

    ○井手委員 外務大臣にお伺いする前に、通産、大蔵両大臣にお伺いいたします。  まず通産大臣に……。
  348. 山村新治郎

    山村委員長 ちょっと待って下さい。井手君に申し上げますが、通産省の伊藤企業局次長が参っておりまするから、どうぞ。
  349. 井手以誠

    ○井手委員 時間の関係から、ここに速記録もありますが、それを読み上げることは省略いたしまして、結論だけを確認いたしたいと思います。通産省が出された資料によりますと、いわゆる見返り資金の三千六十五億円、米国対日援助物資等処理特別会計から見返り資金に入ったものは、援助物資の売り払い収入二千七百二十億円、価格調整補給金五百八十六億円、合わせて三千三百七億円、それから運賃、諸掛りを差し引いて、見返り資金に入っておるのが三千六十五億円という資料が出ておりますが、これは間違いございませんね。
  350. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 三十七年の二月二十三日付のには、間違いございませんが、なお二十四年度は、貿易特別会計の援助物資勘定でございます。
  351. 井手以誠

    ○井手委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、これも同じく速記録の用意がございますが、価格差補給金を加えた見返り資金特別会計の三千六十五億円、それから引き継がれた資産、使用済みのもの以外の引き継ぎ資産二千二百九十四億円、その中から開銀に出資されたものが千四百十億円、それに使用済みの中の債務償還六百二十五億円、そのほかの十八億円を加えた二千五十三億円、これがガリオア・エロアの返済財源になっておる。それにはもちろん価格差補給金も含まっておるということを先般答弁がありましたが、これは間違いございませんね。それだけでいいです。
  352. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間違いありません。
  353. 井手以誠

    ○井手委員 外務大臣にお伺いをいたします。外務大臣は、先般本会議におけるガリオア・エロアの債務協定の説明にあたって、こういう説明を行なっておられます。「国民が支払いました援助物資の代金は、見返資金特別会計に積み立てられ、昭和二十八年度に産業投資特別会計に引き継がれましたが、その額は約二千九百億円に及んでおります。」「ガリオア債務の支払いにつきましては、開発銀行出資金に対する毎年度の納付金と開銀貸付金の約定に基づく回収金及びその利子収入によっても十五年間に十分完済し得るものであります。」こう説明をされております。なおその際総理大臣は、戸叶議員の質問にこう答えられております。「国民に税金を負担してもらうことなく、アメリカの援助物資をためておいた利子で払っていこうというのであります。」こう答えられております。この外務大臣の説明、これは間違いございませんか。その点を確認しておきたい。
  354. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 間違いありません。
  355. 井手以誠

    ○井手委員 今確認されました、あなたのこの本会議における説明は、援助物資の売払代金、これから引き継がれた資産の運用によって完全に支払うことができると説明なさっておる。ところが、通産省並びに大蔵大臣の説明によりますと、この返済財源になっておる二千億円の中には、私どもの税金から出された価格差補給金が相当額入っておるのですよ。これは通産省も大蔵大臣も確認なさっておりますが、それは外務大臣お認めになるでしょう。
  356. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 認めます。私の演説は大蔵、通産両省と十分相談した結果であります。
  357. 井手以誠

    ○井手委員 それでは入っておれば、今後十五カ年間にお払いなさろうとするガリオア・エロアの返済には、国民の税金が含まれておる。新たに国民の税金によろうとするものではありませんけれども、かつて納められた税金が含まれておることは、ただいまの御答弁にも言われたのですが、間違いないですね。
  358. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御指摘のように、価格差補給金が援助物資特別会計に繰り入れられまして、売却代金とともに援助物資処理特別会計の資金繰り入れとしての役割を果たしたことは事実であります。しかし、見返り資金の積み立ては、法律にも明らかに規定いたしておりますように、援助物資の処理代金ではなくて、援助物資のドル価格の円換算額であることは御承知通りであります。
  359. 井手以誠

    ○井手委員 円価の点についてはよく承知をいたしておりますが、ともかく今後払われようとするガリオア・エロアの返済財源、これは大蔵省の資料によりますと、二千八十五億円十五年間に払わねばならぬもの、その財源として二千二百二億円を予定されております。この二千二百二億円の中には、相当のかつて国民が納めた税金が含まれておるということ、これは今までの答弁に明らかであります。これはお認めになるでしょう。間違いないでしょう。
  360. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 要するに百ドルの援助物資を受け入れた、そして百ドル相当の見返り資金を積み立てるわけです。この児返り資金の積み立ての百ドルをもととして、対米資産の勘定に充てていこう、こういうことであります。あなたも御承知と思いますけれども、あの当時民生安定なり物価政策の見地から、価格差補給金というものを設けて、そして援助物資の受入額より安い価格で割安に払い下げた。これはもう一般にやっていたことでございます。すなわち、この百ドルの援助物資が二十ドル相当額の補給金によって、実際は八十ドルの売価でもって払い下げられた、こういうことはあったのであります。これは御承知通り、お認めになることと思います。それで、国民全体としては百ドルの援助物資を受け取った、その事実は少しも変わらぬと思います。
  361. 井手以誠

    ○井手委員 百ドルのものに二十ドルを価格差補給金で出した。その分はドッジ・ラインによって特に――私は資料を持っておりますが、特に賃金を低め、そのために米価を石当たり千円ばかり安くしてある。しかもそればかりじゃございません。国民の租税負担率は二八%にも及ぶ重税を課されておるのですよ。そういういきさつを私はきょうは申しません。またあらためて機会を選びますけれども、とにかく返済財源の中には、この私どもの税金である価格差補給金が入っておること、これを私は認めてもらえばいいのですよ。
  362. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 どうも妙な方へ引っぱっていこうとなさいますが、そうじゃございません。要するに百ドルで受けたものを八十ドルで――これはさっきの例ですが、八十ドルで払い下げる。二十ドルは価格差補給金で、一般の国民が戦後の苦しいときでありますから、安いものにする必要から、価格差補給金から二十ドル引き当てた。これは百ドルのものをもらった、援助を受けたそれに対しての見合う積み立てをした、これが見返り資金なんです。この額が二千九百億になる、こういう説明をしていることは御承知通りであります。
  363. 井手以誠

    ○井手委員 だから結局、大臣にお聞きしたいのは、私はここで、当時のドッジ・ラインによる低米価、低賃金のためにどんなに農民が困り、労働者が困り、税金でどんなに国民が困ったかは多くは申しません。とにかくあなたに聞きたいのは、あなたは、この説明によると、それは見返り資金の運用の利子だけで払えるんだという説明をなさっているけれども、実際は私どもが納めた国民の税金である価格差補給金が入っておるじゃございませんか、こう聞いておる。もう説明は要りません。内容は要りません。
  364. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 どんなに当時苦しかったか、これは言ってみても始まらぬことですが、とにかく戦争に負けたので、それだけの援助物資がなければもっと困っただろう、これはもうお認めになることですね。そこで、それだけの援助物資が来た、それを積み立てた。その積み立てたものが二千九百億。これから払ったと、こういうことですね。
  365. 井手以誠

    ○井手委員 結論を急ぎますが、あなたの説明にある援助物資の売払代金だけで財源になるものではないということ、これははっきりしたのですから、あなたの説明がこれは間違いですよ。取り消しなさいよ。結論はそうですよ。あなたの本会議における説明は間違いであることを。それだけです。
  366. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 少しも間違っておらぬと思います。要するにその見返り資金の積み立てが二千九百億あるということを説明しているわけであります。
  367. 井手以誠

    ○井手委員 違う。(「百ドルの物を政府が買った、それを政府が自分の負担において安く売ったんだ」と呼ぶ者あり)安く売ったけれども、農民からうんと安く供出させたんですよ。だから私が結論的にお伺いしておるのは、あなたは説明において売払代金だけで、たまっておるから国民には一銭も負担をかけぬで済むというお話をなさっておる。これは間違いじゃないかと私は聞いているのです。実に価格差補給金が入っておるじゃございませんか。国民の税金が入っておるじゃございませんか。それを聞いているのです。それだけですよ。
  368. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 少しも間違ってないです。それだけのものが来て、その代金を政府が積み立てて、その代金から払う、こういうことです。
  369. 井手以誠

    ○井手委員 そうじゃない。違う。一般会計から価格差補給金が回っていっているのですよ。一般会計というのは何ですか、税金ではございませんか。一般会計から特別会計の方に金が回わされているのですよ。その回された価格差補給金と売払代金とを加えたものが見返り資金になっているのですよ。だから税金が入っているじゃございませんか。
  370. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それだけの品物が来て、その品物についての代金を積み立てているのですね。さもなくばもっと高かりしものを安く国民に払い下げている。その補給については価格差補給金を使っている、こういうことであります。
  371. 井手以誠

    ○井手委員 外務大臣、それはあなたは三分の理ですよ。私が聞いているのは、そういう当時のいろいろなことを私が言うとめんどうになりますから、多くは申しておりません。柿の木三本でも税金をかけたあの重税を考えごらんなさい。とにかく国民の税金がそれに含まれているということ、これは間違いないでしょう。あなたもお認めなさった。だからあなたの説明は間違っているじゃございませんか、ということを聞いている。二千九百億円という金の中には国民の税金が一般会計から特別会計に回されているのですよ。だから、あなたのこの説明は間違っていると私は申し上げている。それだけですよ。
  372. 山村新治郎

    山村委員長 アメリカ局長から答弁をお聞きになりますか。
  373. 井手以誠

    ○井手委員 いいや、全然必要ありません。簡単な話です。
  374. 山村新治郎

    山村委員長 ベテランの井出さんでございますから、いまさら申し上げることはございませんが、すでにだいぶ時間が超過しております。
  375. 井手以誠

    ○井手委員 だから私は長く申そうとは考えておりませんよ。大臣も認められた。価格差補給金が入っていることを認められた。だから、本会議の説明において、二千九百億円というこの金は、売払代金でない、税金も入っておることは明らかです。だからこれは訂正しなさいと私は申し上げているのです。売払代金だけだとあなたは言っているから、私はそうじゃないと申し上げているのですよ。それだけです。
  376. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今援助物資の代金はと、こう言っておる、それが二千九百億円になる。そうでしょう、それだけのものが来て、それに見合う代金を見返り資金に積み立てた、それが二千九百億円になる、こういうことです。
  377. 井手以誠

    ○井手委員 それじゃもう一ぺん確認だけいたしておきます。大臣、それじゃ二千九百億円とあなたの説明なさった中には、国民の税金から回った価格差補給金が入っておるということ、これは二回目、三回目ですから間違いないと思いますが、その点だけ確認しておきたいと思います。
  378. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 三分の理とおっしゃいますが、どっちが三分の理か、公平な判断に待たねばなりませんが、要するに安く売ったのですよ。さもなくば、国民はもっと高いものを買わなければならぬ。だから、その向こうの送ってきたものに対してそれだけの、二千九百億円を積み立てた。これは少しも間違っていないと思う。ただその価格差補給金からなんぼか入れた。これは、大蔵省の御計算でそうなっておるから、その通りだと思います。
  379. 井手以誠

    ○井手委員 それじゃまた別の機会に申し上げます。これは総理にも聞かなければならぬことでございますが、ともかくも価格差補給金が入っておることになりますと、いわゆる国民の税金が入っているから二重払いになるということを申し上げまして、質問を終わります。
  380. 山村新治郎

    山村委員長 それでは以上をもちまして一般質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  381. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、これより締めくくりの総括質疑に入ります。  この際、特に申し上げまするが、理事会の申し合わせによりまして、横路節雄君の質疑の前に、本日中村高一君、明日冒頭に淡谷悠藏君に、特別に各十分ずつ質疑を許すことになりましたので、御了承を願います。時間は厳守いたしたいと思います。各十分ずつでございます。  中村高一君に発言を許します。中村高一君。
  382. 中村高一

    中村(高)委員 先日憲法問題について御質問申し上げたのでありますけれども、質疑を保留いたしてありました点について、引き続いて総理大臣に御質問いたしたいのであります。  内閣にあります憲法調査会が、数日前に東京で公聴会を開いております。これから、東京の公聴会を終えてから、全国を九ブロックに分けまして、さらに公聴会を開いて、最後に中央公聴会を開く、こういう方針が決定をいたしておりまして、おそらくその答申の結果に基づいて、政府が改憲を提案をするのか、あるいは国会提案をするのかという段階になると思うのでありますが、先日の公聴会では、われわれが思っておったのとは全然違った結果が新聞で報道されておるのでありますが、それによると、憲法改正に反対だという意見の人が五名で、賛成だ、憲法を改正すべきだという人が四名であったということが伝えられておるのであります。従って、この問題については、国民の間においても、意見がなかなか一致しておらぬということがわかるのでありますが、この際、総理大臣にお聞きしておかなければならぬことは、一体政府はどういう方針なのであるか、現行憲法は改めなければならない点があるというお考えなのか、あるいはこのままでもいいというのか。これは政府として当然なければならぬことであって、漫然、調査会は、こういうような全国をブロックに分けて、公述人の意見を聞いて歩いているのではないと私は思うのであります。政府には政府の一つの憲法問題に対する方針というものがおありになるのだろうと思うのであります。この点を一つ総理大臣から御答弁を願いたいと存じます。
  383. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法調査会法によりまして、憲法改正の要ありやいなや、もし要ありとすれば、いかなる点をいかようにということを調査、審議願っておるのでございます。政府は、憲法改正につきましていろいろ議論がございますから、調査会を設置いたしまして、調査、審議を願っておるわけであります。今政府が改正するかいなかということは、結論を出しておりません。
  384. 中村高一

    中村(高)委員 政府の改正するかしないかという意見は、おそらく調査会の結論が出てからおきめになろうという、こういう用心であろうと思うのでありますが、それより前に、調査会を作って四年も審議をさせて、さらにまた全国をこうしてやって歩くというのには、ただ改正をするがいいか悪いかという研究だけであるとすれば私はまことにおかしいと思う。研究だけするならば、大学の研究室か何かで研究させるか、あるいは法制局でも研究すればいいのであって、政府という行政機関の中に憲法調査会という行政機関を作ってやらしているのですから、ただ大学の研究室みたいに、どうしたらいいかというようなことの調査だけでは、私は政治的な意味がないと思う。おそらくこれは作ったときには、鳩山さんなどははっきり憲法改正の意図を持っておったのでありますが、池田内閣になってからはそういう点がはっきりいたしておりませんから、悪い点、改むべき点があると思うから、おそらく私はやらしているのだろうと思う。ただ漫然、研究をするというものを内閣の中に置くということは、私はおかしいと思う。そんな出たとこ勝負のような調査会というようなものを、国の費用を使って、そして内閣の中に置くということがおかしい。ことにこの調査会の主任の大臣は内閣総理大臣とすと書いてある。ですから、これは単なる右にいくのか左にいくのか研究してみてからなんという性格のものでは私はないと思う。やはりこれは一つの目標があってやらなければ、私は調査会というようなものの趣旨は全くわからないものになると思うので、その点をはっきりしておくのが私は当然だと思うのであります。
  385. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法の問題は、まことに重要な問題であると私は考えておるのであります。従いまして、こういう問題を、一部の大学研究室でやるべき筋合いのものではないと思います。広く一般の有識者あるいは一般の人々の意見を聞いて、十分調査、審議すべき問題と私は考えております。
  386. 中村高一

    中村(高)委員 一般の人の意見を聞くというようなことを、私たち反対をしているのじゃないのです。一般の人の意見を聞くのには、何らかの前提条件がなければ政治ではないじゃないですか。大学の研究機関ならば、いろいろのものを研究して、生徒に教えるのだからいいけれども、政治でありますから、何かの目標を持って、そして調査研究をさせるということがなければ、私は意味のないものだと思う。それならば、ただ調査研究だけであるとするならば、あるいは方々を聞いて歩くのであるならば、何もそんな調査会をものものしくやって、全国を打って歩くなんという必要はないのです。そういう点について、あなたもとにかく日本の政治を動かしておる責任者でありますからして、ことにこの重要な憲法について何にも意見を持たないで、ただ調査会に調査をさしているのだということでは私は済まされないと思うのであります。何かそこには、目的がなければならぬのじゃないか。私はそんな大学の研究室や何かとは違うと思う。何かそこになければ、わざわざ調査会を作るわけがない。ことに鳩山内閣のときには必要があったといってやっておるのですから。それでは鳩山内閣時代の政府の方針を踏襲されたと見てよろしいでしょうか。
  387. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法を改正するかいなかという問題は、中村さん御承知通り、調査会設置以前から、相当議論せられておるのであります。しこうして、先ほどお答え申し上げましたように、この問題は重要な問題でございます。従って、国会の議決によりまして設置法を設けて調査会を開き、熱心にこれが調査審議に当たっておるのであります。目的がないのじゃございません。目的は、改正するが是か非か、こういうことについての検討を加えておるのであります。
  388. 中村高一

    中村(高)委員 改正するが是か非かは目的じゃないのです。目的は、改正をしようとするのだけれども、それに対していいか悪いかの意見を広く聞いているというのであって、改正するのでなければ、何も調査会なんかする必要はないじゃないですか。改正するのでなければ現状でいいということでしょう。現状でいいならば、何も調査をする必要はないじゃないですか。やはり調査をするということは、私は一つの前提があってやっておるのだろうと思う。そんなことは、総理大臣がお答えになっても、結果によって態度をおきめになればいいのであって、ただ目的は、どこかに憲法をやはり改める必要があるという前提があって始めたものである。それだけはお認めになったって、結果においてどうするかはその結論を見てから態度を決することで、それとは別だと私は申し上げておるのです。  もう一つ私が申し上げたいのは、全国を打って歩くというような形をとっているのでありますから、まことにこれは重要なんであります。先日も総理大臣は、国民の盛り上がりをよく見て自分は態度を決したい、こういう御意見であった。ところが全国をこういうふうに大ぜいの委員が打って回って歩くということは、人為的に盛り上がりを製造するような危険がありはしないか。先日も私は調査会長に会って、そういう盛り上がりを無理に作るというような危険がありはしないかということを聞いてみたところが、いや、あれは委員が広く意見を聞いて、委員の頭をどうするかをやっているのが現状だと言うから、それでは、委員が聞きたいならば、東京で、地方から呼んで聞いたらいいじゃないか、わざわざ地方巡業することは必要ないじゃないか、委員が聞きたいならば、みんなに出てきてもらえばいいのであって、わざわざ委員が大ぜいそろって、そして十数名の委員が出かけていって、全国を歩く必要はないじゃないか、こういうことを申し上げたのであります。私は、そういう趣旨でやはり一つの目的はできたときにもあったし、今日もそういう目的でやっておるということを、総理大臣は認めてしかるべきだと思うのでありますが、いかがですか。
  389. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法に検討を加え、調査審議するということは、設置法に載っておるのであります。しこうして調査会の運営は、あくまで自主的にやっていただいておるのであります。われわれからとやこう言う筋合いのものではないと考えております。
  390. 中村高一

    中村(高)委員 先日問題になりました点を、それでは総理大臣と法制局長官お尋ねいたしたいのでありますが、内閣法の解釈については、先日時間がなくて議論をいたしておらなかったのでありますが、政府提案権の問題につきましては、その根拠を、内閣法の第五条の「その他の議案」の中に入るということを法制局長官も総理大臣も御答弁になっておるのであります。ところが、そのときに私が質問をして、そういうことは制定当時からきまっておるのかどうか、こういうことを質問したときに、法制局長官は、私は当時法制局におらなかったから、そういう点については明確なことは言えないというような意味にもとれましたが、しかし、自分が調べてみると、その当時からそういうふうに承っております。こういうことを答えておるのでありますが、この問題については、法制局長官は、先日はややあいまいなお答えでありましたし、事実法制局におらなかったのでありますから、制定当時のことをあるいは詳しく御存じなかったかもしれませんが、今日ではお調べになっておると思うのであります。
  391. 林修三

    ○林(修)政府委員 先般お答えいたしました、いわゆる内閣にも提案権があるという根拠は、別に内閣法に直接求めておるわけではございません。これは、中村委員御了解だと思いますが、結局憲法をもととしてお答えしたわけでございます。いわゆる議院内閣制と、それから憲法七十二条を根拠といたしまして、内閣法がわざわざそれを否定するという趣旨ではない、そういうことをお答えしてあるわけでございます。この点は、その当時の速記録をごらんいただければ、はっきりしておると思います。  それから、内閣法制定当時のことは、実は調べましても、内閣法を国会に出されましたときも、その点に関する質疑応答は全然ございませんので、私も直接タッチしたわけでないからはっきりは存じません。ただ、これは御参考に申し上げたいと存じますが、ジュリストという雑誌がございます。この雑誌に佐藤達夫氏が、「日本国憲法成立史」を書いておられます。そこの中の資料でございますが、昭和三十一年七月十五日号に、憲法制定当時、法制局が内部的に作った想定問答が掲げてございます。そこには、当時の九十二条、今の九十六条でございますが、これについて、提案権は議院のみにありやという問いに対して、いな、そうではない、政府にも提案権ありと解する、そういう想定問答が実は載っております。そういうことがあることだけは私は調べております。
  392. 中村高一

    中村(高)委員 いきなり私も内閣法の規定で、そういう権利があるんだということを聞いておるのではなくして、今までの問答で、憲法七十二条では明確でないから、その明確でない分は、内閣法の五条でこれを補足して、両々相待って提案権があるという、こういうあなたの今までの答弁で、速記もそう出ておるのであります。しかし、私の聞きたいと思うところは、もう一度あなたに念を押したいのは、制定当時の事情は、いろいろこの前の委員会のときにも私は申し上げて、はっきり書くべきだという意見の人もあったけれども、当時の国際情勢から入れなかったんだというあなたの答弁からいたしまして、それももう前に答弁ができておるのであります。だから、それではその当時は、いろいろの国際情勢から入れなかったということがほんとうではないか、あとになってどこかに根拠を求めたときに、初めて「その他の議案」というものに根拠を求めたのではないかということをあなたに聞いておるのであります。
  393. 林修三

    ○林(修)政府委員 今、中村議員もお認め願いましたけれども、要するに内閣法がもとでないということは、何回も私は申しておりまして、結局憲法の解釈問題でございます。憲法の解釈問題から出てくるわけでございまして、内閣法がその憲法の解釈問題から出てくることを否定はしておらない。否定をしておらないとすればどこに入るかというお尋ねでございますから、「その他の議案」に入るであろう、こういうことを申したわけで、「その他の議案」とあるから入るのだということは一ぺんも私は申したことはないつもりであります。これは速記録をよくごらん下さればはっきりいたします。要するに、内閣法にもそれは否定しておらないということは、私は何回も申しております。しかし、もとは憲法七十二条だということは、もう何回も言っておるわけでございまして、その点はよく速記録全体をごらん下されば間違いのないところであります。  それから、今あとから内閣法に根拠を求めたのではないかというお尋ねでございますが、それは、私に対してそういうことを言ったのじゃないかというお尋ねかと思いますが、これは、昭和三十年に憲法調査会法案提案されたときにも、そういうお尋ねがあったかと思いますが、これはその前年の昭和二十九年、私が長官になる前年でございますが、当時の長官である佐藤達夫氏も、九十六条の関係内閣提案権を否定すべきじゃないという答弁をしております。憲法調査会法案提案のときに考えついた問題ではございません。
  394. 中村高一

    中村(高)委員 これは先日の速記録でありますけれども、あなたが答弁している中に「「その他の議案」と書いてあるわけであります。それに含まれると解釈すべきだと思います。」とある。だから、あなたは内閣法に根拠がないと言うわけじゃないのでしょう。
  395. 林修三

    ○林(修)政府委員 要するに私か何回も御答弁しておりますのは、内閣法で創設的に認めたということは一ぺんも言っておりません。憲法七十二条の、総理大臣の内閣を代表しての議案の提案権、これに憲法の趣旨から含まれる。それを、内閣法五条のどこに入っているというお尋ねでございますから、憲法の解釈として入っているものは「その他の議案」の中に含まれるのだ、かようにお答えしたわけであります。内閣法第五条が直接の根拠だということは一ぺんも申しておりません。
  396. 中村高一

    中村(高)委員 その点については、もうすでに速記録もできておることでありますから、明瞭でありますから、これをおくといたしまして、もう一つ、あなたが先日私の質問に対して、外国の例をいろいろ答弁をされた中に、フランスの第四共和国の憲法には、明らかに大統領にそういう発案権があるということをあなたは答えられておるのであります。「フランスの例をとれば、フランスは、法律案の大部分は実は内閣提案でございます。同時に、第四共和国の憲法では、もちろん大統領に憲法改正の提案権を認めております。」こういうふうに答弁いたしておる点があるのですが、この点については間違いがあるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  397. 林修三

    ○林(修)政府委員 実はあのときは手元のメモでお答えいたしまして、ちょっと思い違いをいたしましたことをおわびいたします。  第四共和制には明文はございません。明文のございますのは第三共和制と第五共和制でございます。御承知の第二次帝政のあとにできましたいわゆる第三共和制、これは第八条に明文がございます。第四共和制の場合には明文がなかったわけでございます。それから第五共和制、現在の憲法でございます。これまた明文が置いてございます。第四共和制時代に明文がなかったので、この点は私、本を調べますと、学説は二説に分かれておるようでございます。そういうわけで、第四共和制と申しましたのは、第三共和制または第五共和制の思い違いでございまして、この点は訂正いたします。
  398. 中村高一

    中村(高)委員 この問題については、この点はなかなか重要な点でありますが、特にフランスの憲法をあなたは提案権の例にとろうとしておるようでありますが、第四共和国は間違いとして、第五共和国を例にとるとすれば、私はこれは大へんなあなたの間違った考えだと思う。これはいわゆる非常に強い独裁的な権力を持ったドゴールの内閣のときにできた憲法でありまして、特に議会の権限を非常に制限をして、そうして政府の強権をあらゆる場面において出しておる憲法であります。こういう憲法をあなたは、第五共和国だとしても、フランスの憲法にあるというようなことを述べるとすれば、日本とは大へんな国情の違う憲法であることを、あなたはここで明確にすべきだと思うのであります。
  399. 林修三

    ○林(修)政府委員 第五共和制の憲法についての御批判は、これは人々おのおの見るところが違うと思います。必ずしもこれを独裁制というかどうかは、私は疑問があると思います。それから先ほど申しましたように、実は第三共和制、つまり一八七一年のいわゆる普仏戦争のあとの、第二次帝政のあとでできました第三共和制にもはっきりした条文があるわけでございます。第三共和制は、今中村委員のおっしゃったような第五共和制とはだいぶん違う憲法だと思います。  それからついででありますが、いわゆる第一次大戦のあとにできましたドイツのワイマール憲法、ワイマール憲法も、御承知通りに七十六条あるいは六十八条から、はっきり議員と政府と両方に憲法改正の提案権を認めております。従いましてそのほかに、あとスイスとか、スエーデンとか、オランダとか、あるいは中南米諸国に政府提案権を認めた憲法はたくさんございます。
  400. 中村高一

    中村(高)委員 これでよろしゅうございます。
  401. 山村新治郎

    山村委員長 それでは明日は午前九時三十分より理事会、午前十時より委員会を開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十七分散会