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1962-03-06 第40回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月六日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 稻葉  修君 理事 小島 徹三君    理事 牧野 寛索君 理事 井伊 誠一君    理事 坪野 米男君       有田 喜一君    井村 重雄君       池田 清志君    上村千一郎君       岸本 義廣君    小金 義照君       千葉 三郎君    松本 一郎君       赤松  勇君  出席政府委員         法務政務次官  尾関 義一君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君  委員外出席者         検    事         (民事局第二課         長)      阿川 清道君         最高裁判所事務         総長      石田 和外君         判    事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      樋口  勝君     ――――――――――――― 三月三日  商法の一部を改正する法律案内閣提出第一一  五号) 同月五日  平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に  関する法律を廃止する法律案内閣提出第一一  六号)(予) 同日  皇室尊厳をおかす者を処罰する法律制定に  関する請願外一件(佐々木義武紹介)(第一  七一三号)  同外八件(薩摩雄次紹介)(第一七一四号)  同外五十二件(田中伊三次君紹介)(第一七一  五号)  同(古井喜實紹介)(第一七一六号)  同外七件(小澤太郎紹介)(第一七三五号)  同外四件(小笠公韶君紹介)(第一七三六号)  同(佐々木義武紹介)(第一七三七号)  同(坂田道太紹介)(第一七三八号)  同外二件(塚原俊郎紹介)(第一七三九号)  同外一件(床次徳二紹介)(第一七四〇号)  同外四件(坂田道太紹介)(第一八三八号)  同(小澤太郎紹介)(第一八六六号)  同外一件(加藤常太郎紹介)(第一九三七  号)  同外一件(高田富與紹介)(第一九三八号)  同(舘林三喜男紹介)(第一九三九号)  同(藤本捨助君紹介)(第二二四八号)  政治的暴力行為防止法案反対等に関する請願外  六件(島上善五郎紹介)(第一九七八号)  鹿児島地方法務局鹿屋支局庁舎敷地の買収に関  する請願山中貞則紹介)(一九八七号)  鹿児島地方家庭裁判所鹿屋支部甲号昇格に  関する請願山中貞則紹介)(第一九八八  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二日  皇室尊厳をおかす者を処罰する法律制定に  関する陳情書  (第四三一  号)  同  (第四五六号)  同  (第五〇三号)  記名株券譲渡方式簡略化に関する陳情書  (第五四一号)  新株の引受権譲渡に関する陳情書  (第五七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一三号)  商法の一部を改正する法律案内閣提出第一一  五号)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一一二号)  (予)  法務行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 法務大臣に関する質問につきましては、閣議が終わって宮中へ行かなければならぬということでありまして、十一時半に当委員会に出席する予定でありますから、その際に言うことにいたします。  まず最初人権擁護局長お尋ねをいたしたいが、先般私は、報道機関に対していわゆる司法協議会なるものが申し入れを行なった、いわゆる憲法二十一条の報道の自由、表現の自由を侵害するような申し入れを行なった事実がある、これに関して擁護局長に聞いたところ、自分は十分知らない、こういう返事でありましたから、私から調査の上この委員会に報告するように、こういうことを言っておきましたが、どのような調査を行なったか、まず最初にお聞きしたいと思います。
  4. 鈴木才藏

    鈴木政府委員 本件につきましては、赤松委員から調査をするようにという御要求がございました。それでさっそく東京放送報道部長連絡いたしまして、その放送中止動機と申しますか理由というものを聞いてみたのですが、その前にこの放送内容がどういうふうな内容になっておるかということを知ることが根本であります。ところが、そのフィルムはもうすでにございませんで、また本件放送につきましてはシナリオもなかったということでありまして、その内容そのものを見ることは、またその内容がどういうものであるかということを知ることができませんので、ほんとうの調査はできなかったのでございます。結局、この東京放送の方の言い分では、必ずしも司法協議会からの、あるいは最高検あるいは最高裁の方からの決議文に基づく申し入れそのもの放送中止の大きな、また直接の動機でもない。結局、その放送直前の……。(赤松委員「それはいいのです、私は問題にしないのです、放送局自身の問題ですから」と呼ぶ)それで放送直前試写会においていろいろ内容を見ると、内容にいろいろ残虐な点もあり、またその内容がやや弁護士側に片寄ってはいないかという感じがあったので、自主的にこれをやめたということであります。
  5. 赤松勇

    赤松委員 擁護局長に御注意申し上げておきますけれども、私が先般質問いたしました際に、報道機関がその番組をやめようと、あるいは取り上げようと、それは報道機関の自由でありまして、そのことについて私は質問しておるわけではないわけです。従いまして、その部分につきましては、あと法案審議もありますから、時間をとりますので、その部分一つお互い質疑応答はやめにいたしまして、問題は司法協議会がその報道機関申し入れを行なったその事実について私は質問をしておるわけであります。そういう観点からお尋ねをいたしますが、あなたはその報道部長にいつお会いになりましたか。
  6. 鈴木才藏

    鈴木政府委員 これは会う予定連絡をいたしました。それでここで質問がございましたその日でございます。帰りまして岩部という方に電話をいたしました。会いたいと申しまして連絡をいたしましたら、本日は取材関係で会えない、こう言うので、さらに東京放送岡野報道部長連絡をいたしましたら、できたら電話でいろいろお答えをいたしたい、こういうので電話の聞き取りでございます。
  7. 赤松勇

    赤松委員 もう実に驚くべき事実が今明らかにされたのであきれておるわけでありますけれども、これが国民の人権を擁護する当局の御答弁であるといたしますならば、私はこの人権擁護局などは必要ないと思うのです。先般の委員会におきまして、本来からいえば、あなたがこういう問題について無関心であるということ自身がおかしいのだ、司法協議会申し入れをしたにもかかわらず、それに対して事情がよくわからないという答弁に対して私は非常に不満でした。不満ではありましたけれども、あなたの怠慢を責めたかったけれども、我慢いたしまして、そうして調査の時間を作りまして、法案審議があるにもかかわらず、この貴重な時間をさいて再度あなたに答弁を求めなければならぬということになったわけです。ところが今お聞きしますと、電話でもって報道部長の方に連絡をした。取材関係で都合悪かった、だから電話でもって用を済ました、こういうお話なんです。一体こういう重大な問題を電話でもって済ましたということで、それは国会に対する答弁になりますか。われわれをばかにしちゃだめですよ。私は、その問題の起きましたテレビ放送局に行ったのです。そうして責任者に会いました。すなわちテレビ放送局責任者編成局長、それから直接にこれを担当している人は編成局次長なんです。委員会でかねてこれが問題になったということをその放送局では知りまして、あなたの方からおいでになるのを待っておった。ところが全然お見えにならない。そこで向こうの方がといたしましては、その前後の事情を私にいろいろ話をしてくれました。近時、人権問題が全国各所に起きまして、その人権問題をいろいろ擁護局に訴えましても、ほとんどこれが実を結んでいない、その成果があがっていない、私は今のあなたの答弁が最もそのことをよく代表していると思うのです。これほど重大な問題でありますから、あなた自身が直接お出かけになるか、あるいはあなたの信頼される部下を直接向こうへおやりになって、そうして報道部長取材のために会えないというならば、編成局長はいつでもおります。編成局次長だっております。幾らでもスタッフはおるじゃありませんか。どうしてこれらの人と会ってその前後の事情について十分調査しなかったか。しかも調査しただけであって、人権を擁護するという努力はどこにも払われていないじゃありませんか。これについては一体あなたはどう考えておられますか。
  8. 鈴木才藏

    鈴木政府委員 人権擁護局長としての怠慢を責められまして非常に遺憾と存じております。ただ私は、このテレビ放送の件につきましても決して怠慢にしておるわけではございません。たとえば今はっきり申しますが、ダイヤル一一〇番の事件におきまして、私の方は徹底的な調査をいたし、そして放送関係者に勧告をいたしました。その結果、ダイヤル一一〇番の最初のナレーションの部分というものが全面的に訂正されたという事実をはっきり申し上げたいのであります。決して私はこの報道の自由、それに関連いたしますマスコミの最近のプライバシーの侵害事件、そういうものについて無関心であるというわけではございません。ただ本件につきましては、いろいろな関係で私が調査をいたす時間、あるいは非常に早くやるべきその考えがなかったことはここにおわびをいたします。ただ最初本件につきまして、この委員会が終わりましたあとでも東京放送のある方から、これは決して司法協議会からのいろいろの注文あるいはこういう決議文をつきつけられたがゆえにやめたというよりも、あくまでも自主的にやめたんだからというふうなお話も一応伺ったのであります。けれども私は、この裁判係属中におけるマス・コミの事件取り扱い方については、今赤松委員がおっしゃいましたけれども、私は深い一つ関心とまた研究はいたしておるつもりであります。私の今回のこの事件につきましての調査がおそかったという怠慢はここにはっきりと認め、おわびをいたしたいと思います。
  9. 赤松勇

    赤松委員 竹内刑事局長お尋ねをいたしますが、この司法協議会なるものは、先般どなたか答弁がありましたが、いわゆる法曹界有志をもって作られておるものである、こういう御答弁でございました。その司法協議会なるものが、これはあくまで有志のいわば同人グループみたいなものでございましょう。それが一体どういう資格でその報道機関に対し番組の件に関して容喙したのであるか、その真相は一体どうなんですか。
  10. 竹内壽平

    竹内政府委員 司法協議会性格につきましては、私は御答弁申し上げた記憶はございませんが、どなたかの答弁を御記憶になっての御質問かと思います。幸い最高裁事務当局の方々もおいでになっておりますので、司法協議会性格等につきましては、最高裁からお答えを願いたいと思います。
  11. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 司法協議会と申しますのは、在京における一種の法曹懇談会式なものでございまして、従前は法曹懇談会という名前で呼ばれておりましたが、昭和二十五年の五月に司法協議会というふうに名前が改称されたのであります。その目的といたしますところは、東京高等裁判所、同地方裁判所、同家庭裁判所、それから東京高等検察庁、同地方検察庁、それから東京弁護士会、それから関東弁護士会連合会、こういうものの代表者らが定期的に会合をいたしまして、司法全般の問題についてお互い意見を交換する。その結果、司法の円滑な運営裁判の迅速適正な処理というものを期するというところにあるので、何ら公的なものではないのであります。
  12. 赤松勇

    赤松委員 そのことは先般答弁された通りでありまして、私どももそのように了解しておるわけでございます。従いまして、これは単なる法曹界のいわば懇談機関であり、あるいは研究機関にすぎないものである。およそ司法当局とは公の関係は何も持たないものである、このように了解してよろしゅうございますね。
  13. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 形の上においてはそうでありますけれども、懇談会に集まりますのは、いわゆる在京の在朝並びに在野の当局者が集まっておるわけでございます。従って、そこで議せられましたことは、あの程度実効をおさめる性格を持っておるわけであります。
  14. 赤松勇

    赤松委員 実効をおさめるということになりますと、間接的には非常な効果を持つわけでございますね。
  15. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 いろいろな司法運営につきまして、あるいはお互いに約束をしたり、いろいろなことをやりますから、そういった意味においては、実質的に非常な意味がある。
  16. 赤松勇

    赤松委員 意味があるということになりますと、公の機関ではないけれども、今言ったそれぞれの司法関係代表者的なものの懇談会であり、研究機関である。それが申し入れをするということになりますならば、その与える影響力、あるいは客観的な効果というものはすこぶる大きいものがあるということを最高裁は認めますか。
  17. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 司法内部におきましては、少なくとも相当の意味があろうと思います。ただ、対外的にそれをどう評価されていくかということは別問題でございます。
  18. 赤松勇

    赤松委員 最高裁広報課長あるいは最高検庶務課長はそこに含まれておりますか。
  19. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 最高裁は含まれておりませんので、在京のいわゆる東京高等裁判所東京高等検察庁、並びに関東弁護士会連合会、それから在京地方裁判所家庭裁判所検察庁、三弁護士会、そういうものの間の一種の懇談の場であります。
  20. 赤松勇

    赤松委員 ここで非常に明白になって参りましたのは、この機関は公の機関ではない、単なる懇談研究機関ではあるが、しかし司法内部には重大な影響力を持ち、客観的にはその及ぼす効果というものは大きいものがあるということが一点あるわけです。もう一点は最高裁広報課長なりあるいは最高検庶務課長というものがこの中に入っていないということも明らかになったわけであります。そこで今度は刑事局長最高裁事務総長お尋ねをしたいんだが、申し入れを行ないました人は、もちろん日弁連の人もおりますが、決議文を読んで、そして代表的な立場から抗議を行なったのは、最高裁広報課長並びに最高検庶務課長なんです。今あなたは、司法協議会というものは単なる民間の機関で公の機関ではない、いわば有志懇談会だ、私的なものだ、こういうことをおっしゃった。その私的なグループ代表として最高検庶務課長あるいは最高裁広報課長抗議に行くとは一体何ですが、この点はどうですか。
  21. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 それはだいぶ事実と違っております。司法協議会が当日さような抗議をしたということは、少なくも最高裁といたしましては後に知ったことでありまして、司法協議会がさような決議をしたので、その決議に基づいて最高裁広報課長がこう言ったという事実ではないのであります。その点誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  22. 赤松勇

    赤松委員 当日行った者は約十人、最高検高橋総務部長東京地検山本検事弁護士会長柏原語六、第一東京弁護士会会長高屋市二郎、第二東京弁護士会会長山田璋、約十人の抗議団放送局に参りまして、放送局責任者決議文を手交しておるわけです。
  23. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 今お読みになりましたところの最高裁広報課長名前は載っていなかったと思います。
  24. 赤松勇

    赤松委員 その十人の中に入っているんだ。
  25. 石田和外

    石田最高裁判所長官代理者 それは入っていないと思います。
  26. 赤松勇

    赤松委員 あなたが入っていないとおっしゃるならば——私は実際に調べてきた。しかも放送局最高責任者の口から、私はちゃんと文書にし、かつ名刺も拝見しました。あなたが行っていないんだとここで言い張られますならば、それはそれでよろしゅうございましょう。私が調べたのは事実でありまして、それならば、その放送局責任者うそをついておるか、それともあなたの方がうそをついておるかどっちかなんです。事はきわめて重大でありますから、この点に関しましては、私は後日に譲っておきましょう。この問題はそのまま留保しておきまして、あなたの方もよく調べて、それがもし事実であるとしたならば、私はその際あらためて最高裁責任を追及します。そこで今度は最高検の方にお尋ねしますけれども、最高検の、先ほど申し上げました総務部長高橋、彼がこの抗議団に加わって行ったことをお認めになりますか。
  27. 竹内壽平

    竹内政府委員 これは二つルートがございまして、最初検察庁は朝の新聞によりまして、このテレビ放送裁判影響を与えるおそれはないかという点で、内部でいろいろ協議しておった模様でございまして、その結論といたしまして、何らかの意思表示をした方がいいということで、高橋最高検総務部長検事電話でまずTBS当局意思表示をされた模様でございます。しかるところ、同日の夕方になりまして、四時過ぎでございますが、先ほど来お話しの司法協議会でも同様な問題が取り上げられて、一つ決議になった。そこでその決議を、弁護士会弁護士会において、裁判所裁判所において、検察庁検察庁において、それぞれ決議の実現をはかるように努力をしようという申し合わせをした模様でございまして、この申し合わせに基づきまして、今度は地検山本次席検事、それから検察庁では総務部長がこういう仕事を担当いたしておりますので高橋総務部長、この両名がTBSの事務所へ参りまして、決議もあるしということで申し入れをしたところが、その席へ弁護士会の側の方も来ておった、こういうことで、そこではち合わせになったというふうに私は聞いておるのでございます。
  28. 赤松勇

    赤松委員 はち合わせになろうがなるまいが、この東京地検山本検事、それから最高検高橋総務部長が行ったことは事実です。検察当局の意向を代表して行ったことは事実です。そうなんでしょう、それは認めますね。
  29. 竹内壽平

    竹内政府委員 それはそういうことになります。
  30. 赤松勇

    赤松委員 そうなりますと、いよいよこれは報道機関に対する不当な介入だと思う。表現の自由は一体どこにありますか。しかも私が非常にけしからぬと思うのは、最高検にしても、司法協議会にしても、その番組内容を見ましたか。どこで番組内容を見たのです。
  31. 竹内壽平

    竹内政府委員 番組内容は、私はもちろん見ておりませんし、最高検検事も見ておらないと思いますが、三十七年二月二十一日付の毎日新聞の朝刊を見ますと、その内容紹介してあるわけであります。表現の自由でございますから、その内容新聞紹介によってそれが裁判影響を与えるかどうかということを判断するのは私は当然だと思うのでございまして、その新聞紹介を今日私が見ましても、これはどうかと思う次第でございまして、検察庁がそれに関心を持ったとしても、私は当然だと思うわけであります。
  32. 赤松勇

    赤松委員 それは非常に重大な発言だと思う。私は東京放送へ行って調べたところが、試写会をやって、そして最高幹部が集まってその内容を見て、これは少し残酷なシーンがあるということから自主的に番組を取りやめたわけだ。関係者でさえも試写をして初めてこのシーンを知った。問題の個所を初めて知った。一体最高検代表して抗議をするという場合に、番組内容も十分知らないで、ただ新聞テレビ番組内容がちょっと紹介されたということだけで、最高検公式機関代表が、報道機関に対して抗議をするとは一体何です。そういうことが許されますか。それならば私が申し上げたいのは、私は憲法二十一条によるところの表現の自由は、あくまでこれは憲法の基本的な人権一つでありますから擁護されなければならぬ、守られなければならぬ。ただし、もしも最高検なりあるいは最高裁なりが、裁判中のもので若干そこに疑義が生じて、たとえば裁判に重大な影響を与えるというようなことを危惧したとするならば、まず直ちにその放送局に出向いて幹部と会って、そうしてその内容について試写をしてもらって、十分観察をして結論を出すというくらいな慎重な態度があってしかるべきだと思うのです。そうじゃありませんか。そういう手続を踏む時間がないかといえば、十分あるのです。つまり試写会をやって、そうして放送局がこれは番組の中へ組み入れない、流す、もうやめるということをきめてから、最高検なり、最高裁なりが抗議に来ているわけです。だから放送局としては憤慨しておる。それは何も最高裁最高検申し入れによってやめたわけではない。それは全体が集まって、そしてそのテレビ内容を見て、裁判影響を与えるとか与えないとかいう前に、残酷なシーンがあったから、これはやめるべきであるということの自主的な判断に基づいて取りやめたのです。そこへ抗議団の一行が来られて、そうしてあと紹介しますけれども、実は無礼千万な抗議文を突きつけて、そして非常に高圧的な態度でもって、言論機関を圧迫するような、そういう印象を与えるような抗議の仕方をしている、ここに問題がある。私は、何も裁判影響を与えたってかまわない、何がなんでも報道の自由は無制限に守るべきであるということを言っておるのではない。いいですか、そういうことを言っておるのではない。たとえば新聞テレビ紹介によって、司法当局がそれに無関心でおられるわけはない。関心を持たれるのは当然なんです。そのことのよしあしを私は論じているのではない。関心を持たれて、それか裁判の士に重大な影響が与えられる、こういうふうに判断をされたならば、直ちにその放送局に行って、放送局自主性を十分に尊重して話し合って、そうしてテレビ内容なり何なりをさらに十分聞くなりあるいは見るなりして、そして結論を出すということならば、こんな問題など起らない。放送局はすでに中止を決定したにもかかわらず、ぎょうぎょうしい抗議文を持って、そうして最高検総務部長それから東京地検次席検事日弁連会長、そういった者が一団となって、偶然はち合わせで一緒になったとおっしゃいまするけれども、約十人がぎょうぎょうしく抗議文を持って向こうへ行った。これは一体どういう態度です。なぜ私が言いまするように、こういう問題については慎重の上に慎重を期する、まず放送局に対して、一応この点について懇談をしたい、内容はどうだろうか、新聞で見たが、これはどうも好ましくない、そこで内容を聞かしてもらいたい、あるいは一つ試写をしてくれないかと言えば、たかが二十分か三十分かの映写時間しか要しないものでありますから、いつでも見せる、放送局はそう言っているんです。われわれは表現の自由があるから、一切の試写を見るのを禁止する、断わる、そういうことはちっとも言っておりません。何も裁判に対して非協力な態度をとろうとしてはいないのです。どうしてそれだけの慎重さと親切さがなかったか、私はこの点を聞きたいのです。この点刑事局長は、いや、それでもいいんだ、なに、そんなものは新聞でちょっと見て、これはいかぬと思ったらどんどん抗議していいんだ、これからもやるんだ、こういう御意見でございますか。この際、今後の問題がありますから、これは報道機関が非常に注目している。今後の問題もありますから、はっきり答えていただきたい。あなたと人権擁護局長と二人で答えてもらいたい。
  33. 河本敏夫

    河本委員長 関連の発言がありますのでこれを許します。
  34. 赤松勇

    赤松委員 ちょっと待って下さい。答弁を先にやって下さい。
  35. 竹内壽平

    竹内政府委員 こういう場合に放送局申し入れをする仕方でございますが、これは仰せの通り慎重にしなければならぬと思います。その慎重の仕方としまして、赤松委員の仰せになったように、事前に中身を見て、その適否を判断して、これならよしといえば引っ込む、あるいはこれじゃまずいといって意見を述べるというようなやり方も一つの方法でございますが、問題は、放送局当局者は、私は新聞の記事によって知っておるのでございますが、非常に残酷な場面があるので、そういう点は映画倫理規程にも抵触するおそれがあるからというので、自主的におやめになったということでございますが、事検察庁という立場で意見を申し上げますと、そういう内容は見ておりませんからわからぬのでございますが、ただ新聞紹介されておりますところによりますと、現在係属中の事件につきまして、その被告になっております人たちが主張しておりますその主張をみずから指導して録画したものである。これはもう日本で初めての試みだというような最初紹介の仕方から始まりまして、そして内容が残虐であるとかなんとかいうことじゃなくて、現在裁判を受けておるその被告人が、自分らの主張を支持するようなンとは、そういう内容を持ったものであるがゆえに、この場合、検察庁としましては、意見を述べて、これはわれわれとしては穏かならざる内容のものであると思うから善処方を要望するということを申したのでございまして、いきなり高圧的に、やめろとかなんとかいうようなことを申したのではないわけです。この点は、最高裁申し入れられたのも、そういう趣旨のものに私は承知しておるのでございまして、そういう意味で御理解を願いたいと思うのでございます。
  36. 鈴木才藏

    鈴木政府委員 人権擁護局の立場といたしましては、この問題は、いわゆる抗議の仕方、時期にあるのじゃないかと思うのです。私の考えでは、一般的に裁判係属中のものを放送あるいはテレビ放送、そういうものに乗せてはいけないという権利はないと思うのです。問題はその内容であろう。たとえば現に裁判係属中でありましても、一般的に無罪、有罪、非常に深刻に争われております場合に、その事件性格内容によりましては、国民に、どういう点が今問題になっているかということを、ほんとうに公平な立場から、問題提起そのもののような放送であるならば、ある程度許され得ると思います。けれども、それが何らか一方に片寄ったような、そしてまた放送内容によって、その見る人たちが、一方が少しおかしい、あるいは他方が少し誤っていやしないかというふうな一つの偏向的な印象を受けるような内容であるならば、これは一つ放送の自由、あるいは報道の自由、そういう表現の自由を持っておる者自体において、自分でその良識によって判断をすべき問題ではないか。これを外部からの報道の自由の侵害であるとかなんとかいう問題よりも、まずその権利を持っている者が、公平に、良識を持って判断して放送すべきではないかという考えを持つのであります。  それからもう一つ、私は正直に申しますと、この司法協議会決議文内容そのものも、やはり少し問題があるような感じがいたすのであります。
  37. 赤松勇

    赤松委員 刑事局長、今擁護局長がおっしゃったように、裁判に対しては国民は無関心ではおられませんね。みんな無関心でおれ、あなたはよもやそんなことはおっしゃらぬでしょう。関心を持つのは当然なんです。しかも今日の民主憲法下の裁判というものは、これはいわば世論を背景にしておるわけです。世論を無視してやるというのは暗黒裁判です。ですから、その裁判に対して、あるいは判決を支持するとか支持しないとかいう批判の自由はあるわけなんですね。、いいですか、そのことはあなたも認めておられると思うのです。まあそのことは今ここで問題にはなっていない。しかし、狭義に解釈すれば、私は、その放送局テレビ内容というものは、一つの世論の表われかもしれぬわけです。その議論はしばらく別におきましょう。私があなたに質問したのは、今言ったように、時間的な余裕が十分にあるにもかかわらず、どうしていきなりこの抗議文をつきつけるような態度をとったか。そういう態度をとらないで、向こう責任者に会って、そうして内容等について十分これを聴取するとか、あるいはテレビ内容を知るために試写をしてもらうとか、そういう前段の条件を満たした後において措置をなぜとらなかったか、これからも新聞報道だけ読んで、いきなりぱっと抗議をするというような態度をおとりになるのかどうか、こういうことを私は聞いておる。法案審議がありますから、よけいなことを言わずに、その点だけ答えて下さい。
  38. 竹内壽平

    竹内政府委員 これは放送内容のフィルムそのものの性格によってきまることでございまして、内容が残虐であるとかなんとかいうような問題になってくれば、今おっしゃるように見なければわかりませんが、本件の場合には、刑事被告人が、自分が指示して、こういう場面を作らして、そういう映画を録画して、それを放送しようというのでございますから、内容がよしんば公平な態度でやっておりましても、そういう立場で作られた映画を放送しますことそのことが問題であるという意味におきまして、内容を見るまでもなく、そういう企画で作られた映画は放送してほしくない。こういう趣旨でございます。従いまして、中を見るまでもなく、善処を要望したということは、私はこの場合相当であったと思います。
  39. 赤松勇

    赤松委員 そういうことになってきますと、これは大へんなことになりますよ、刑事局長司法当局が、最高検なり最高裁が、勝手にこれはどうもおもしろくないと判断したならば、自由にやるんだ、いつでも申し入れをするんだというようなことであってはいかぬと思うのです。私は何もむちゃなことを言っているのではないでしょう。その前段に、十分慎重に、憲法の二十一条がある限りにおいては慎重にやれと言うのです。たとえばテレビ内容を映してもらって、どういう画であるかということを見るくらいな慎重さがあってしかるべきだ、こう言うのです。それまでもあなたはいかぬと言うのですか、それもできないと言うのですか。その点だけなんですよ。一般論をやっちゃ困るんだ、具体的に問題をしぼって答えてもらいたい。
  40. 小島徹三

    ○小島委員 私、今の赤松君の質問は非常に大きな問題を含んでおると思います。というのは、裁判所の被告になっておる人間がテレビを編成して、そしてそのテレビ放送するということになって参りますと、これは裁判が大へんなことになると思います。でありますから、私は赤松君の言われるように、その抗議について慎重な態度をとってほしいと言われることはごもっともだと思います。抗議することについて慎重であることは必要でありますけれども、最高検が、いやしくも被告になっておる立場の人が監督して編成した、そういうものを出してくれては困るということを言うことは当然だと私は思います。その内容いかんにかかわりません。内容はわかりません。わかりませんけれども、被告たるものが自由に自分が監督して編成したテレビ番組を全国に放送することができるということになったのでは、私は日本の裁判制度というものは成り立たぬと思います。そういう意味において、赤松委員の言われることは、おそらく私の言っていることと同じようなことを言われるのだと思います。ただ問題は、あまりに抗議々々というような高圧的な態度でなく、慎重にしてほしいということを言われておるにすぎないと思いますから、この点は誤解のないように——そうだろう赤松君、そういう意味でしょう。もしそうでないなら、これは大へんな議論になりますから、この問題はまた後日にしていただきたい。というのは、私たちも抗議をすることについて慎重にしてほしいということは事実です。しかし、被告人になっている立場の人がテレビ番組を編成して、その番組が出されるということになったらその内容を大体検察庁が調べた上で、これならよろしい、これでは悪いということを判断すること、それがけしからぬのです。ほんとうのことを言ったら、そんなことよりも、被告人が自分で編成して出すことが大問題だと思う。これは表現の自由どころの問題ではない。これはよほど考えなければならぬ問題があると思うのです。おそらく赤松君もそこまで言われているのではないと思います。はたしてそうだとすれば、私は、これは大へんな問題を含んでおると思いますから、簡単にきょうだけで問題を解決するわけにもいかぬと思います。いずれこの問題は、後日よく赤松君と相談したいと思います。
  41. 河本敏夫

    河本委員長 赤松君に申し上げますが、時間もだいぶ経過しましたので、そのお含みの上で質疑を続けられんことを望みます。
  42. 赤松勇

    赤松委員 今小島委員から何か被告人が監督したというようなお話がありましたけれども、これは放送局のために私が自分で直接調べまして出たあれなんですけれども、ちょっと違うのです。各方面のアドバイスは受けているのですが、しかし、その編成もそれから内容も構成もすべて放送局の自主的な判断でやっておるものであるということだけはこの際明らかにしておく必要があると思うのであります。  もう一点、ただ非常に慎重にやるということさえあなたに言ってもらえば私はいいのです。慎重にやることは当然なんでしょう。その一点だけ明らかにしておいて下さい。
  43. 竹内壽平

    竹内政府委員 これは先ほどもお答えを冒頭に申し上げましたように、慎重な態度で臨まなければならぬと思います。
  44. 赤松勇

    赤松委員 さらに、ここに当日手交されました決議文があります。この決議内容は非常にきびしいものです。少し一方的に片寄り過ぎておるように思うのであります。「一、丸正事件について、TBSテレビによって、今夜午後十時五十分より十一時二十分まで、犯行現場を再現するようなテレビの企画を実施することは、現に進行中の事件につき、裁判の公正を疑わしめることになるので、かかる企画の実施は断じて許さるべきことではない。また、日弁連のさきの声明の趣旨に徴しても極めて遺憾である。この点について、TBSテレビ当局に対して、厳重抗議するとともに、その企画実施の取り止めを求めるのを相当とする。二、従って右の趣旨に従い、担当機関は企画実施の取り止めを実現するよう、努力されることを望む。昭和三十七年二月二十一日 司法協議会」ここでその内容を見てもわかるように、「かかる企画の実施は断じて許さるべきことでない。」あるいは「厳重抗議するとともに、とか、これはちょいと見るとどこか労働団体の抗議文みたいに見えます。およそこれはふできな、司法当局抗議文としては、全く高校の学生でもこんなばかげた文章は書かないと思うのです。その文章の内容は別としても、先ほど私が申し上げたように、こういう「断じて許さるべきことでない。」とか、断固として反対——そんなことは言いませんよ、それはどこかの政党の言うことだから。「断じて許さるべきことでない」とか「厳重抗議するとともに」とか、こういうこけおとしのような文句を使う前に——新聞記事をちょっと見てこれが出てくるのですから、これは少し乱暴だと私は思う。はね上がりだと思う。まさに全学連的な司法当局だと思う。だからこの決議文が出てくる前に、いろいろ取り調べて、あるいは懇談の結果、こういうものが出てくるというならまだ私は了解できるわけなんです。しかし、前段のそういう懇談とかあるいは絵を見るとかいうような条件を抜きにして、いきなり「断じて許さるべきことではない」とか「厳重抗議する」とかというような抗議の仕方をされたのでは、報道機関取材の問題あるいは番組編成の自由について、精神的にいろいろ影響を受けるのではないだろうか、こういうことを私は危惧するわけであります。  それから、あげ足はとりませんが、これは重要な問題でありますから。先ほど、今問題になっている放送局の問題について映画倫理規程云々というお話がありました。これは間違いなんです。私は報道機関全体のためにここで弁護しておきますけれども、これは映画倫理規程に基づいてやっているわけじゃありません。そうでなしに、それぞれ各テレビ放送局ではプレス、コードというもの、一つの倫理規程というもの、基準というものを持っています。その基準に合わないものは落としていく、合うものは採用するということで、すべて最高幹部責任者が、問題になるようなものは試写をしてみます。ミーちゃんハ一ちゃんの、たとえば坂本九の歌なんかは別に事新しく試写をして最高幹部が見る必要はないのでありますけれども、問題になると思われるようなものについては、こういう倫理規程を設けて自主的に判断をして、そうして非常に慎重に番組の編成をやっている。私は別に報道機関代表じゃありませんけれども、あなたは映画倫理規程云々とありましたから、この際一言問題を明らかにしておきます。今委員長からも注意がありまして、しかも小島委員からは非常に重要な問題が含まれておるという御発言がありました。それはそうでございましょう、小島君は御承知のように憲法調査会の有力なメンバ一であります。近く二十一日ですか、アメリカへ憲法調査のために日本を代表して行かれるというほどの有力な委員であります。つまり憲法を変えることがいいか悪いかということなども盛んに議論をされ、まあ変えた方がいいという論者の一人ではないかと私は判断しておりますけれども、いずれにしてもやはり憲法二十一条に関連する問題で、憲法学者であるかないかわかりませんが、小島君といたしましてはこれは無関心でおれない問題です。また憲法を守ろうとするわれわれの立場からいたしましても、これはまたゆるがせにできない問題でありまして、やはり問題は非常に重要性をはらんでおる。わずか一時間やそこらの議論でその結論を得ることは非常に困難であるということを私よく存じております。またの機会に十分、憲法に基づくところのこういう問題につきましては、一般論につきましてはやるとしまして、とりあえず本日は、問題の起きました報道機関に対する抗議の仕方あるいは申し入れの仕方というようなものにつきましては、今後ともある問題でありますから、一つ慎重に慎重を期せられるようにこれを厳重に警告すると同時に、私ども非常に心配しておりまするので、この点を御注意申し上げまして私の質問を一応留保のままで終わって、なお法務大臣に対する質問は、大臣は宮中に行っておられるようでありますから、あらためましてさらに大臣の意見を聞きたい、こういうように考えておる次第でございます。
  45. 小島徹三

    ○小島委員 赤松委員から私の話が出たようでございますから、一言私の立場を釈明いたしておきます。  私は確かに憲法調査会の委員でございますが、私は、表現の自由ということについては極度にこれを尊重するものであります。先般、国民の権利義務の問題につきまして、私は、はっきりと表現の自由というものについては何も修正する必要なしというところまで言い切っております。大体の、今憲法に書いておる権利はそのまま認めてよろしいという態度を私はとっております。ただ問題は、私が先ほど言ったように、検察当局が非常に驚いて——検察当局というより司法協議会の者が驚いた。私は、司法協議会決議最高検などの抗議とは別のものだと思います。ただ一緒に来たのであって、決議そのものに最高検が参加したのじゃないと私は思っております。それはそれとして、問題は、要するに毎日新聞とかに現われた、その被告が監督してこれを作っているという言葉か何かあったらしいそのこと自体が非常に重大なのであって、それが問題になっておるのだということです。そうならば司法協議会の連中は  それは映画を見てからどうだこうだと、試写を頼んでするという慎重な態度も必要でしょうけれども、そのこと自体だけに大きな問題を起こしたのじゃないかと私は思うので、私は決して表現の自由を制限しようという考えは持っておりません。ただ問題は、今言った通りの裁判が公平に行なわれる、間違いなく行なわれるという意味において、そういう点はそれほど慎重に考えなければならぬものだということだけを私は考えておるのでありますから、その点だけをよく御了解を願います。      ————◇—————
  46. 河本敏夫

    河本委員長 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を聴取いたします。尾関法務政務次官。     —————————————
  47. 尾関義一

    ○尾関政府委員 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。  この法律案は、最近における市町村の廃置分合等に伴い、簡易裁判所の名称の設立及び管轄区域に関する法律に所要の改正を行なおうとするものであります。以下簡単に今回の改正の要点を申し上げます。  第一は簡易裁判所の名称の変更であります。すなわち、簡易裁判所の名称は、その所在地の市町村の名称を冠するのを原則としておりますので、このたび長野県南佐久郡野沢町及び中込町並びに北佐久郡浅間町及び東村を廃し、その区域をもって佐久市を置く処分に伴い、岩村田簡易裁判所の名称を佐久簡易裁判所に変更しようとするものでありまして、地元の住民の希望を考慮したものであります。  第二丘簡易歳判所の管轄区域の変更であります。すなわち、土地の状況、交通の利便等にかんがみ、福岡簡易裁判所の管轄に属する福岡市大字田尻ほか十五大字の区域を前原簡易裁判所管轄区域とするほか、四簡易裁判所管轄区域を変更しようとするものでありまして、これらの管轄区域の変更は、いずれも地元の住民、関係機関等の意見を十分参酌したものであります。  第三は下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表の整理であります。すなわち、市町村の廃置分合、名称変更等に伴い、同法の別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行なおうとするものであります。  以上が下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。      ————◇—————
  48. 河本敏夫

    河本委員長 訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案々議題といたします。
  49. 河本敏夫

    河本委員長 まず提案理由の説明を聴取いたします。尾関法務政務次官
  50. 尾関義一

    ○尾関政府委員 訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。  この法律案は、第一に、民事訴訟及び刑事訴訟の証人等の日当等の最高額を引き上げるため、訴訟費用等臨時措置法に所要の改正を行ない、第二に、執行吏の受ける恩給の年額を一般の公務員に準じて増額するため、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律に所要の改正を行なおうとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、訴訟費用等臨時措置法の規定による証人等の日当及び宿泊料の最高額を増額しようとする点であります。御承知の通り、民事訴訟における当事者、証人等の日当及び止宿料、刑事訴訟における証人等の日当及び宿泊料並びに執行吏の受ける宿泊料につきましては、民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法及び執達吏手数料規則にそれぞれその規定があるのでありますが、現在、その額については訴訟費用等臨時措置法の定めるところによることとなっているのであります。  まず、民事訴訟における当事者及び証人並びに刑事訴訟における証人の日当につきましては、その最高額は、現在、出頭または取り調べ一度につき三百円と定められているのでありますが、民事、刑事の裁判における証人の機能の重要性等にかんがみ、その日当の有する損失補償的機能をより充実させる必要があると考えられますので、今回その最高額を引き上げることとし、訴訟関係者の負担の点等を考慮した上、これを千円に改めようとするものであります。  次に、民事訴訟における当事者、証人、鑑定人、通事及び民事訴訟法第三百十条第二項に規定する説明者、刑事訴訟における証人、鑑定人、通訳人及び翻訳人並びに執行吏の宿泊料につきましては、現在、その最高額は、行政職俸給表(一)の七等級以下の職務にある国家公務員が内国において出張し、または赴任した場合に受ける宿泊料の定額に準じ、特別区の存する地、京都市、大阪市、名古屋市、神戸市及び横浜市においては千二百二十円、その他の地においては九百八十円と定められているのでありますが、政府におきましては、職員の旅行の実情等にかんがみ、内国旅行における宿泊料等の定額を引き上げる必要を認め、今国会におきまして、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案を別途提出いたしておりますことは御承知の通りでありまして、証人等の宿泊料につきましても、これに準じてその最高額を引き上げる必要があると考えられますので、今回、これを特別区の存する地等においては千五百円、その他の地においては千二百円に改めようとするものであります。  第二点は、一般の公務員に準じて、執行吏の受ける恩給の年額を増額しようとする点であります。執行吏は一般の公務員と同様に恩給を受けることになっておりますが、政府におきましては、一般の公務員の恩給の年額を公務員のいわゆる二万円ベース給与の俸給を基準として算定した額に引き上げる必要を認め、今国会におきまして、恩給法等の一部を改正する法律案を別途提出いたしておりますことは御承知の通りでありまして、執行吏の恩給につきましても、これに準じてその年額を引き上げる必要があると考えられますので、執行吏の恩給を受ける者のうち、その年額の計算の基礎となる俸給年額が公務員のいわゆる二万円ベース給与の俸給に見合う金額である十二万八千円に達しないものにつきまして、昭和三十七年十月分から、その年額を十二万八千円を俸給年額とみなして算出した年額に改定しようとするものであります。以上が訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。      ————◇—————
  51. 河本敏夫

    河本委員長 商法の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を聴取いたします。尾関法務政務次官。     —————————————     —————————————
  52. 尾関義一

    ○尾関政府委員 商法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。  この法律案内容は、大別して二つの部分に分かれております。一つは、株式会社の計算の内容に関する改正であり、他は株式会社等の事務の簡素化に関する改正であります。  株式会社の計算の内容に関する規定は、株主に配当できる利益を計算するためにも、また、株式会社の資産状態、営業成績等の経理内容を明らかにするためにも重要な規定でありますが、現行商法は、これについて簡単な規定を設けているだけであります。しかも、資産の評価につきましては、原則として、時価以下主義の立場をとっているために、現在の企業会計の理論に適応しないものが少なくないのみならず、会計実務の上でも種種の不都合を生じていますので、株式会社の計算の内容に関する規定を整備する必要があるのであります。この法律案は、このような必要に対処するため、株式会社の計算規定を改正し、あわせて実際界の要望に応じて、株式会社の事務の手続等に関する規定を改正しようとするものであります。  次に、この法律案の要点を申し上げますと、第一に、資産の評価について、現行商法は、時価以下主義によることにしていますが、この法律案においては、原則として、原価主義によることにし、流動資産、固定資産、金銭債権、社債、株式等について、それぞれその資産に相応する評価の規定を設けることにいたしております。  第二に、繰り延べ資産について、現行商法は、設立費用、新株発行費用等のごく限られたものを資産として認めているにすぎませんが、この法律案においては、繰り延べ資産の範囲を拡張し、開業のための費用や、試験研究、新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のための特別の費用をも資産として認めることにいたしました。しかし、これらの資産は、不確実な資産でありますので、これらの資産を計上したときは、配当の制限を受ける場合があることにいたしております。  第三に、現行商法では認められておりませんが、特定の支出及び損失に備えるための引当金の計上を新たに認めることにいたしております。  第四に、株式会社の支店の所在地を定款の記載事項としないこと、その他株式会社の事務並びに登記手続の簡素化をはかるために所要の改正を加えることにいたしております。  以上が、この法律案の主要な内容でありますが、この法律案におきましては、なおそのほかに、附則において、所要の経過措置を定めるとともに、商法の一部改正に伴い、有限会社法、会社更生法その他の関係法律に所要の整理を加えることといたしております。  以上がこの法律案の概要であります。何とぞ慎重審議の上すみやかに可決されますよう希望いたします。
  53. 河本敏夫

    河本委員長 次に、本案について逐条説明を聴取いたします。平賀民事局長
  54. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま議題となっております商法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  説明の便宜上必ずしも条文の順序によりませんで、まずこの法律案の主要な眼目でございます株式会社の計算規定の改正の分から順を迫って御説明申し上げます。  株式会社の計算規定としてこの法律案に盛られておりますのは、第二百八十三条第一項、第二百八十五条、第二百八十五条の二から第二百八十五条の七、第二百八十六条の二、第二百八十六条の三、第二百八十六条の五、第二百八十七条の二、第二百八十八条、第二百八十八条の二第一項第三号、第二二項、第二百九十条第一項、第二百九十三条の五が主たる関係規定でございます。  まず、株式会社の計算に関しまして、流動資産、固定資産、金銭債権、社債その他の債券、株式その他の出資及びのれんの各評価並びに繰り延べ資産、準備金、引当金、利益の配当、財産目録及び附属明細書につきまして、現行の規定を改め、または新たに規定を設けることといたしております。なお、同じく物的会社であります有限会社につきましてもこれらの規定を準用するのが適当でありますので、この法律案の附則におきまして有限会社法の一部を改正して、そのことを規定いたしております。  以下、説明の便宜といたしまして必ずしも条文の順序を追わず、まず先ほど申し上げましたように、株式会社の計算関係から始めて、各項目ごとに該当条文を掲げまして御説明申し上げます。  まず流動資産の評価でございますが、第二百八十五条ノ二の新設規定であります。現行法では、流動資産の評価につきまして、決算期における価額、いわゆる時価をこえることができないこととする時価以下主義の立場をとっております。そのため広く評価益の計上を改めることになりまして、また恣意に多額の評価損を計上することも可能となる結果になっておるのであります。  そこでこの法律案におきましては、流動資産の評価は、原則として取得価額または製作価額によることとし、まだ実現しない利益、すなわち評価益の計上を禁じて、いわゆる原価主義を採用することといたしております。しかし、時価が原価より著しく低くなった場合においても、なお原価主義を貫きますことは、資本維持の原則上妥当でありませんので、時価が取得価額または製作価額より著しく低いときは、価格が取得価額または製作価額まで回復する見込みがある場合を除いて、時価を付さねばならないことといたしております。なお同時に、時価が取得価額または製作価額より低いときは、時価によるものとする低価主義をも認めたのでありますが、これは低価主義が慣行として行なわれているからであります。従って、流動資産の評価につきましては、結局原価主義と低価主義との選択を認めたことになるわけであります。  次は、固定資産の評価でありますが、これは第二百八十五条ノ三の新設の規定であります。固定資産の評価につきましては、現行法の解釈には疑義がありまして見解が分かれております。そこでこの法律案におきましては、会計の理論及び実際に合わせまして、固定資産の評価は、原則として取得価額または製作価額によることとし、毎決算期に相当の減価償却をしなければならないこととし、固定資産につきましては、評価益の計上を禁止することといたしました。これは、固定資産は元来売却を予定しない資産であるからであります。  次は、金銭債権の評価でありますが、第二百八十五条ノ四の新設の規定であります。現行法では、金銭債権の評価につきましても疑義があります。この法律案におきましては、金銭債権の評価は原則として債権金額によることにいたしました。取得価額によらないことにいたしましたのは、会計実務の慣行を尊重したのであります。しかし、債権を債権金額より低い代金で買い入れた場合、その他相当の理由がある場合、たとえば無利息債権のような場合には、債権金額から相当の減額をした価額によることができることといたしまして、債権の実質的な価額によることができる道を講じたのであります。  なお、金銭債権につきまして取り立て不能のおそれがありますときは、現行法の解釈としても、取り立てることができない見込額を減額しなければならないのでありますが、この法律案では、このことを明文で明らかにいたしました。  次は、社債等の評価でありますが、これは第二百八十五条ノ五の新設の規定であります。現行法では、社債の評価につきましては、時価をこえることができないこととし、取引所の相場のある社債については、その決算期前一カ月の平均価額をこえてはならないことといたしております。この法律案では、社債の評価につきましても、原則として、取得価額によることといたしました。ただ、社債の価額は、通常、償還期限が近づくに従い高くなったり、あるいは低くなったりするものでありますから、取得価額と社債の金額が異なるときは、相当の増額または減額をすることができることといたしました。取引所の相場のある社債の評価につきましては、この相当の増額または減額をすることができる点以外は、流動資産の評価と同様であります。取引所の相場のない社債の評価につきましては、その時価が明らかでありませんので、取り立て不能のおそれがあるときは、金銭債権と同様、取り立てることができない見込み額を取得価額から減額しなければならないことといたしました。  なお、国債、地方債その他の債券、たとえば、電電債などの評価につきましては、当然のことでありますが、社債の評価と同様にしたのでございます。  次は、株式その他の出資の評価でありますが、第二百八十五条ノ六の新設規定であります。現行法におきましては、株式の評価については、社債の評価と全く同様に定められております。この法律案では、株式の評価につきましても、原則として取得価額によることといたしました。株式のうち、取引所の相場のある株式の評価は、流動資産の評価と全く同様にしましたが、取引所の相場のない株式及び有限会社の社員の持ち分、その他出資による持ち分の評価につきましては、その時価が明らかでありませんので、債権者及び企業の保護のために、発行会社の財産状態が著しく悪化したときは、相当の減額をした価額によることといたしました。  次は、のれんの評価でありますが、第二百八十五条ノ七の新設規定であります。現行法では、のれんの評価については明文の規定がなく、解釈上疑義があります。のれんは、財産としての価値があるのでありますが、この法律案では、これを有償で譲り受けまたは合併によって取得した場合に限り、その取得価額を付すことができることといたしました。みずから有償でのれんを創設したとき、あるいは無償で取得したときは、通常合理的な評価額を付することは困難であり、また、恣意に評価する危険も多うございますので、これらの場合には、資産としての計上を認めないことといたしました。なお、のれんは、資産としては不確実なものでありますから、その取得後五年内に毎決算期において均等額以上を償却しなければならないものとしたのであります。  次は、繰延資産であります。第二百八十六条ノ二、第二百八十六条ノ三、第二百八十六条ノ五、第二百九十条第一項の規定でありますが、いずれも新設の規定であります。現行法では、繰り延べ資産として設立費用、社債発行差金、建設利息及び新株発行費用の四種だけを資産として認めているにすぎませんが、現在の企業会計の理論上から、あるいは会計実務の必要から、繰り延べ資産の範囲を拡張すべきであるという要望が多かったのであります。そこで、この法律案では、これらの要望にこたえまして、開業準備のために支出した金額、新製品または新技術の研究、新技術または新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出した金額及び社債発行のために支出した金額を貸借対照表の資産の部に計上することができることといたしました。しかし、社債発行費用以外のこれらの費用を何らの制限なしに資産とすることは、その金額が巨額になることもありますので、不確実な巨額の資産を認めることになり、また、会社が恣意に多額の繰り延べ資産を計上する危険もありますから、資本維持の原則との調整が必要になるわけであります。そこで、これらの繰延資産を計上することを認めるとともに配当の制限をする規定を設けたのであります。すなわち、これらの繰り延べ資産の合計額が資本準備金及び利益準備金の合計額をこえる場合において、その超過額は、配当可能利益の計算の上ではこれを資産としないことといたしました。さらに、この法律案では、これらの繰り延べ資産は、不確実な資産でありますので、開業後またはその費用の支出後五年内に、毎決算期において均等額以上を償却しなければならないものとしたのでございます。また、社債発行費用は、新株発行費用に準じ、原則として社債発行後三年内に毎決算期において均等額以上を償却しなければならないことといたしております。  次は、準備金に関する規定の改正であります。  まず、評価益に関する第二百八十八条ノ二第三号を削除することにいたしました。現行法では、一営業年度における財産評価益よりその評価損を控除した額を資本準備金とし、資産に対する控除項目として配当を制限しておりますが、この法律案のもとにおきましては、評価益は生じないことになりますので、右の規定を整理したのであります。  次は、合併差益に関する第二百八十八条ノ二第二項の新設であります。現行法では、合併により消滅した会社より承継した財産の価額が、その会社から承継した債務の額、その会社の株主に支払った金額及び合併後存続する会社の増加した資本の額または合併によって設立した会社の資本の額をこえるときは、その超過額は資本準備金となります。そのために、合併後は、利益準備金の積み立て必要額の増加または任意準備金の減少を来たし、配当可能利益が減少することとなるわけであります。また契約に基づいて積み立てられた任意準備金が消滅することにもなりまして、実際上不都合が生じているのであります。そこで、この法律案におきましては、この実際上の不都合を除くために、合併差益のうち、消滅会社の利益準備金及び任意準備金に相当する額は、これを資本準備金とせず、これを存続会社または新設会社の利益準備金または任意準備金とすることができる道を開いたのであります。  次は、利益準備金に関する第二百八十八条の規定の改正であります。現行法では、資本の四分の一に達するまで毎決算期の利益の二十分の一以上を利益準備金として積み立てなければならないことになっているが、この毎決算期の利益の意義につきましては疑義があり、見解が分かれております。そこで、この法律案では、利益準備金として資本の四分の一に達するまで、株主に対する現金による配当額の十分の一以上を積み立てなければならないものとして、疑義が生ずることを避けることといたしました。  次は、引当金に関する第二百八十七条ノ二の新設であります。現行法では、いわゆる負債性引当金について規定を設けておりません。負債性引当金というのは、将来における特定の支出に対する準備額であって、その負担が当該事業年度に属し、その金額を見積もることができるものというように説明されておりますが、その内容は必ずしも明確ではありません。また、法律上債務でない見越費用を負債とすることにつきましては、理論上疑義がないわけではありません。しかし、会計の理論及び実際の面から負債性引当金を認めるべきであるという要望が強いのであります。そこで、この法律案におきましては、この要望をいれ、特定の支出または損失に備えて引当金を貸借対照表上の負債として計上することかできる道を開いたのであります。しかし、この引当金は、その範囲が広く、また、経理操作に利用されやすい項目でもありますので、株主総会で計算書類の承認をする際に、引当金の目的を明らかにしておく必要上、その目的を貸借対照表において明らかにしなければならないこととし、また、この引当金を目的外に使用するときは、損益計算書においてその理由を明らかにしなければならないことにいたしました。この引当金の項目は、株主の利益に関することでありますから、この項目の内容を株主に知らせることによって株主の保護をはかるという趣旨であります。  次は、利益の配当に関する第二百九十条第一項の改正であります。現行法では、配当可能利益につき、損失を填補し、かつ準備金を控除した後でなければ利益の配当をすることができないと規定しておりますが、規定の表現が明確を欠きますので、この法律案におきましては、株主に配当し得べき利益は、貸借対照表上の純資産額から資本の額、その決算期までに積み立てられた資本準備金及び利益準備金の合計額並びにその決算期に積み立てなければならない利益準備金を控除した額とし、さらにこれに、さきに説明いたしました繰り延べ資産を計上した場合の配当の制限の規定を加えたのであります。  次は、財産目録の除外に関する第二百八十三条第一項の改正であります。現行法では、財産目録を株主総会に提出してその承認を得なければならないことになっておりますが、財産目録は非常に大部なものであり、また、これを総会に提出させる実益も少うございますので、この法律案では、財産目録を株主総会に提出すべき計算書類から除くことにいたしました。しかし、財産目録を作成しなければならないことは従前通りであります。  次は、附属明細書の記載事項に関する第二百九十三条ノ五の規定の改正であります。現行法では、取締役及び監査役に対する報酬は、定款または株主総会の決議で定めることになっておりますが、定款または株主総会で定められた報酬額の支払いに関する報告規定がありませんので、この法律案におきましては、これを附属明細表に記載させることにいたしました。  以上申し上げました点が、株式会社の計算に関する改正規定の説明であります。  以下は手続規定の改定に関するものでございます。  まず、合名会社の社員等の出資の登記であります。これは第六十四条第一項第四号の削除であります。現行法では、合名会社の社員及び合資会社の無限責任社員の出資の目的、その価格及び履行部分を登記事項としておりますが、これらの社員は会社の債務につき連帯無限の責任を負うのみならず、出資の払い戻しも自由にできる建前でありますから、右の事項を登記する実益がございませんので、この法律案におきましては、これを登記事項としないことにいたしました。  次は、合併財産目録等に関する第九十九条の規定の削除であります。現行法では、合併または資本減少の決議後二週間内に財産目録及び貸借対照表を作成しなければならないことになっております。これは、債権者を保護するための規定と思われますが、二週間内に作成することは事実上困難でありますし、また、債権者には強力な異議申し立て権がありますので、この法律案におきましては、この作成義務を強制しないことといたしました。  次に、会社の合併等に対する異議申し出期間に関する第百条第一項の改正であります。現行法では、合併または資本減少の場合における債権者の異議申し出期間は二カ月を下ることを得ないこととしておりますが、二カ月以上というのは長きに過ぎますので、この法律案では、これを一カ月以上と改めることにいたしました。  次は、合名会社等の清算結了の登記に関し、第百十九条ノ二の規定の新設であります。これは百四十七条で準用いたしております。現行法では、合名会社及び合資会社の任意清算の場合に、清算結了の登記をする規定がありませんから、登記簿上清算が結了しているかどうかが明らかでありませんので、この法律案におきましては、清算結了の登記をすることといたしたのであります。  次は、支店の所在地に関する第百十六条第一項第八号、第二百六十条の規定の改正であります。現行法では、株式会社の支店の所在地は、定款の記載事項となっておりますが、支店の設置、移転及び廃止等は、現段階におきましては、会社の業務執行として取締役会の決議事項とするのが相当であると考えられますので、そのように改めました。  次は、払い込みの取り扱い場所に関する第百七十五条第二項第十号、第四項の規定の改正であります。現行法では、株式の払い込みを取り扱うべき銀行または信託会社の払い込み取り扱いの場所は、株式申込証の記載事項になっておりますが、株式申込証の小型化に伴い、取り扱いの場所を記載することが無理になって参りましたので、これを改めることにし、この法律案におきましては、取り扱いの場所を株式申込証に記載しない場合には、株式申込証を交付する際に、払い込みの取り扱い場所を記載した書面を交付しなければならないことといたしました。  次は、取締役等の登記に関する第百八十八条第二項第七号、第八号の規定の改正であります、現行法では、株式会社の代表取締役以外の取締役及び監査役についても、その氏名及び住所が登記事項になっておりますが、この登記はさしたる実益がありません。しかし、代表取締役以外の取締役及び監査の登記を全く廃止するのも行き過ぎでありますので、この法律案におきましては、登記事務の簡素化及び登記申請人の負担軽減のため、代表取締役以外の取締役及び監査役につきましては、氏名だけで、住所の登記はいたさないこととしました。  次は、所在不明の株主に関する第二百二十四条ノ二の規定の新設であります。現行法では、会社が株主または質権者に対してする通知または催告が株主または質権者の所在不明により長期間にわたって到達しない場合でも、通知または催告を省略することができないことになっております。この法律案におきましては、株式事務の合理化の必要から、株主名簿に記載した株主または質権者の住所またはその者が会社に通知した住所にあてて発した通知及び催告が引き続き五年間到達しないときは、会社は、その者に対する通知及び催告をしないことができることとし、また配当金の支払いその他その者に対する会社の義務の履行の場所を会社の本店とすることといたしました。しかし、これがために株主または質権者の権利自体が消滅するわけではありません。  次は、新株の効力発生日に関する第二百八十条ノ九第一項、第二項の規定の改正であります。現行法では、払い込みまたは現物出資の給付をした新株の引受人は、払い込み期日から株主となることになっておりますが、この払い込み期日からという意味について疑義がありますので、これを払い込み期日の翌日からと改め、新株引受人が株主となる時期を明確にいたしました。  次は、社債の登記に関する第三百五条、第三百四十一条ノ三、第三百四十一条ノ四の規定の改正であります。転換社債以外の社債の登記は、これらの規定の改正によりましてしないことといたしましたが、その理由は、社債の登記をすることが会社及び登記所にとって非常に大きな負担となっているにかかわらず、実際上の必要性がきわめて乏しいからでございます。  次は、株式併合等の場合の株券提供期間に関する第三百七十七条第一項の規定の改正であります。株式の併合または分割の場合におきまして、株券を会社に提出すべき期間は、現行法では三月以上となっておりますが、これは長きに失しますので、一カ月以上ということに改めました。合併等に対する異議申し立て期間を短縮したのと同じ趣旨であります。  次に、合併の場合の貸借対照表の備え置きでありますが、第四百八条ノ二、第四百九十八条第一項第二十号の規定の改正であります。現行法では、合併契約書承認のため株主総会の決議に加わろうとする株主が、合併の相手方会社の貸借対照表を閲覧しようとしましても、相手方会社の株主または債権者でなければ、相手方会社において閲覧することができないことになっておりますので、自己の会社において、相手方会社の貸借対照表をも閲覧することができるようにするため、合併当事会社は、合併契約書承認のための株主総会の会日の二週間前から、相手方会社の貸借対照表をも本店に備えて置かなければならないこととし、株主及び債権者は、その貸借対照表の閲覧及びその謄本または抄本の交付を請求することができることといたしました。なお、この規定に違反して貸借対照表を備え置かないときは、過料の罰則があるわけであります。  次に、その他でありますが、第百二十三条第二項、第百三十四条、これは合名会社及び合資会社の清算人の登記及び清算結了の登記の登記義務者は、非訟事件手続法で定めることにしたための整理であります。  次に、第百四十三条でありますが、合名会社の任意清算の場合に清算結了の登記に関する規定を設けたことに伴いまして、会社の帳簿及び清算に関する重要書類の保存期間の始期を清算結了の登記の後と改めました。  以上、申し上げましたほか、この法律案で改正をした規定が若干ありますが、いずれも以上で述べた改正に伴う条文の字句の整理であります。  最後に、附則でありますが、この法律は、あらかじめその内容を国民に十分周知させますとともに、施行前から新法に改めるための準備をする余裕をも与えておくことが望ましゅうございますので、第一条で、施行期日を昭和三十八年四月一日と定め、また、旧法から新法への移行を円滑にするため、第二条から第十二条までにおきまして所要の経過規定を置いております。  なお、この法律の施行の際現に存する株式会社の計算につきまして、この法律の施行後直ちに改正法を適用しますことは、一定の手続を経て行なわれます会社の計算という事務の性質から見まして適当ではございませんので、この法律の施行の際現に存する株式会社のこの法律の施行後、最初に到来する決算期及びその以前の決算期に関する計算関係は、なお従前の例によることにいたしました。従いまして、例えば、決算期を三月末日と九月末日とする年二期の決算期の会社におきましては、この法律の施行後最初に到来する決算期は昭和三十八年九月末日でございますが、この九月末日の決算期に関する計算につきましては、なお、改正前の法律に従うことになり、改正法の規定は、昭和三十九年三月末の決算期に関する計算について、適用されることになるわけであります。なお、第十三条から、第四十九条までは、いずれも、商法の改正に伴って関係法律に必要な整理を加えたものであります。  以上をもって説明を終わります。
  55. 河本敏夫

    河本委員長 次会は明後八日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会