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1962-03-13 第40回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十三日(火曜日)    午前十時四十分開議  出席委員   委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 神田  博君    理事 齋藤 憲三君 理事 始関 伊平君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君    理事 中村 重光君       藏内 修治君    澁谷 直藏君       白浜 仁吉君    中村 幸八君       南  好雄君    井手 以誠君       田中 武夫君    滝井 義高君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      樋詰 誠明君  委員外出席者         議     員 勝間田清一君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      井上  亮君         労働事務官         (職業安定局調         整課長)    北川 俊夫君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月九日  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号) 同月十二日  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二名提出、  衆法第一九号)  炭鉱労働者雇用安定に関する臨時措置法案  (勝間田清一君外二名提出衆法第二〇号) は本委員会付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七六号)  産炭地域振興事業団法案内閣提出第七七号)  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二名提出、  衆法第一九号)  炭鉱労働者雇用安定に関する臨時措置法案(  勝間田清一君外二名提出衆法第二〇号)      ————◇—————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  去る三月九日付託になりました内閣提出鉱山保安法の一部を改正する法律案議題として、まず政府提案理由説明を求めます。森通商産業政務次官
  3. 森清

    ○森(清)政府委員 今回提出いたしました鉱山保安法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  鉱山保安法昭和二十四年に施行されまして以来、すでに約十三年を経過し、この間において、鉱山保安の状況は、漸次改善され、鉱山災害は、減少の傾向にありましたが、最近におきまして、特に石炭鉱山において、御承知のような重大災害が発生いたしまして多くの罹災者を生じましたことは、政府としてまことに遺憾とするところでございます。  これがため、政府におきましては、昨年五月閣議決定をもって鉱山保安対策を強力に推進することとし、保安監督強化保安施設等の設置についての融資及び補助石炭鉱山保安臨時措置法による措置等を講じて参っている次第であります。  特に鉱山保安に関する法規につきましては、さきの国会の御決議にもございましたように、鉱山における保安確保の基礎をなすものでありますので、その根本的な検討を行なうこととし、現在検討を進めております鉱業法改正におきましても、鉱山保安見地からする十分な配慮をするとともに、鉱山保安法につきましては、その改正及び運用の各般にわたって、中央鉱山保安協議会において慎重審議を行なって参ったのでありますが、このたび、当協議会において、すみやかに、法改正を要するものとして結論を見た事項について中間答申がなされましたので、これに基づいてここにこの法律案提出することとした次第であります。  次に、本法律案要旨を御説明申し上げます。  改正の第一は、鉱業権者は、保安委員会に対して、保安に関する重要事項を通知しなければならないものとしたことであります。保安委員会は、保安管理者保安に関する重要事項についての諮問機関であり、鉱山保安確保のためには、これが積極的に運用されることが肝要でありますので、少なくとも、通商産業大臣鉱山保安監督局長または部長鉱業権者に対する保安に関する命令等の特に保安に関する重要事項につきましては、鉱業権者がその内容保安委員会に通知しなければならないこととして、保安委員会においてこれらに関する改善対策等がその議題となるよう措置したものであります。  改正の第二は、鉱業権者がその使用人以外の者を鉱山作業に従事させる場合の規制であります。  近年、鉱業権者がその使用人以外の者を鉱山における作業に従事させる事例が増加しており、このようないわゆる請負作業におきましては、その性質上鉱業権者保安のための指揮が必ずしも徹底していない面もあり、災害発生可能性を高からしめておりますので、請負については、あらかじめ届出を要することとし、鉱山保安監督局長または部長は、保安管理の面その他届出にかかわる事項のうち、保安上不適当と認めるものについて必要な変更を命ずることができるものとして、作業の安全を期した次第であります。  改正の第三は、鉱山保安協議会についての改正であります。  従来、鉱山保安協議会の会長は、中央においては通商産業大臣地方においては鉱山保安監督部長となっていたのでありますが、これをそれぞれ、学識経験者である委員のうちから委員が選任することといたしますとともに、新たに部会を置くことができることとして同協議会の民主的かつ円滑な運営をはかることとしたのであります。  改正の第四は、罰則強化等法規順守確保するための規制強化したことであります。  鉱山保安確保基本は、鉱山保安法規順守にあることは、もちろんであります。このためには、鉱業権者鉱山労働者保安に関する理解と認識に基づいた順法意識の自発的な高揚をはかることが肝要であることはもとよりでありますが、法規違反により生ずる鉱山災害人命等に対する影響の重大性にかんがみまして、法の面におきましても、この改正により罰則強化するとともに、鉱山保安法規に違反した鉱業権者に対しては、鉱山保安監督局長または部長鉱業の停止を命ずることができることとして、鉱山保安法規の一そうの順守を促すこととしたのであります。  以上がこの法律案提案理由及び要旨でありますが、その他の点に関する鉱山保安法改正につきましては、今後における中央鉱山保安協議会審議の結果及び現在検討中の鉱業法改正内容等を勘案して、慎重に検討を進めて参る所存であります。  何とぞ、御審議の上御賛同下さるよう切に希望いたす次第でございます。
  4. 有田喜一

    有田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 有田喜一

    有田委員長 速記を始めて。  それでは、午後三時より再開することといたし、暫時休憩いたします。    午前十一時四分休憩      ————◇—————    午後三時三十六分開議
  6. 有田喜一

    有田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昨十二日付託になりました勝間田清一君外二名提出石炭鉱業安定法案及び炭鉱労働者雇用安定に関する臨時措置法案議題として、まず提案者提案理由説明を求めます。勝間田清一君。
  7. 勝間田清一

    勝間田議員 ただいま議題になりました石炭鉱業安定法案につきまして、提案者を代表し、その提案理由説明を申し上げます。  今日の石炭鉱業危機は、わが国石炭産業前途にはかり知れない暗影を投じているのみならず、産炭地域におびただしい失業者を停滞させ、関係自治体は衰退の一途をたどり、炭鉱労働者を生活不安のふちに追い込み、重大な社会問題を醸成せしめているのであります。  この危機を打開するために、本院は、去る三十九臨時国会において、石炭産業危機打開に関する決議をし、石炭産業を安定させるために、当面の緊急諸問題の解決政府に強く義務づけたのであります。しかるに政府は、この決議を尊重せず、当面する緊急課題解決すら回避して、首切り合理化と呼ばれるスクラップ・アンド・ビルド政策の一そうの強化推進を提案してきたのであります。  急激な消費構造の変化に対応して、今日最とも強く石炭産業に求められているのは、その構造的な欠陥を抜本的に解決することであります。従来の整備計画に加えて新たに昭和三十七年度から三カ年計画で六百二十万トンを追加整備するような政府合理化計画石炭危機が打開できるとするならば、これはあまりにも安易な政策といわざるを得ません。というよりもむしろ、ますます石炭産業混迷状態に追い込むことは明らかであります。しかも石炭資本は依然として、首切りと大巾な賃金切り下げ労働条件引き下げのための第二会社租鉱権への分離政策等一連労働者への犠牲のみを強行する態度を変えていないのであります。石油自由化を今年秋に控えて、こうした合理化計画は、一そう過酷な方向へと進もうとしております。このような事態に直面して炭鉱労働者は、石炭政策転換を要求して、ゼネスト体制確立し、関係地方自治体初め多くの国民がこの戦いを全面的に支援して、政府総合エネルギー政策確立石炭産業の安定を強く迫っているのであります。今こそ、石炭需要長期に安定させ、しかもコストを切り下げて、雇用拡大させる政策をとることは、今日われわれに課せられた緊急の政治的課題であり、国民の切実な要望にこたえる道であると考えるのであります。  石炭鉱案重要性は、今日依然として減じていないのであります。その一つはわが国将来のエネルギー需要の面から指摘できます。エネルギー需要の伸びは、国民経済成長テンポとほとんど並行して増加の一途をたどり、政府所得倍増計画におきましても昭和四十五年度には石炭換算で二億八千万トン以上と見込まれているのであります。このエネルギー需要の驚異的な拡大に対する供給源としての水力はその開発がすでに限界に達し、また、原子力にしてもその実用化に相当の曲節が予想される状態において、輸入燃料にのみ依存する考えは間違いであり、石炭鉱業に課せられた役割は依然として無視することはできません。しかも、わが国石炭は、今日の出炭ペースで進んでも、なお百年以上もの確定炭量を埋蔵しており、国内エネルギー資源に乏しく、また国際収支弾力性が少ないわが国においては、最大のエネルギー源であります。  その二は、エネルギー供給安全性保障の面から指摘できます。世界各国とも、エネルギー供給安全性保障については異常な関心を示し、その供給源分散化が進められていることは、最近海外のエネルギー政策を視察してきた各調査団の報告で毛強調しているところであります。とくに英、仏、西ドイツ等の諸国では六割から八割を国内エネルギー資源としての石炭に依存しているのであります。輸入エネルギーへの依存度を無計画に高めていくことはきわめて危険だといわねばなりません。  その三は、雇用の面から指摘できます七石炭鉱業における雇用吸収率は他産業に比して非常に高く、機械工業とともに今後もその傾向を低めるものではありません。労働市場逼迫といろ最近の現象があるとはいえ、なお外数潜在失業者を有し、年々百万人以上もの生産年令人口の増大するわが国経済において、雇用問題は経済政策中心課題であり、かかる観点からも石炭鉱業の地位はゆるがせにできないのであります。  このように重要なエネルギー産業である石炭鉱業に対して、わずかな資金融通による細々とした近代化計画や、弱小炭鉱の買いつぶし等消極的政策解決できるほど、問題は簡単ではありません。石炭鉱業はすでに資本主義的経営自体に対しても、鋭い改革のメスが加えられなければならない段階にきているのであります。イギリスにおける炭鉱国有化政策を初め、西欧各国とも公有化その他の特殊な経営形態のもとに、国民経済拡大発展に寄与させるものであります。こうした世界的な傾向から、ひとりわが国だけがおくれた投げやりな石炭政策を進めることは許されません。  従って社会党は、今日石炭鉱業が当面している危機な打開し、構造的欠陥を克服して、これを将来のわが国重要エネルギー源としての要請にこたえさせるため、長期的な展望を持った抜本的対策を講ぜんとするものであります。  まず第一に、石炭生産過程に対するわれわれの基本的な考え方を明らかにいたしたいと思います。  わが国石炭鉱業は稼行の進捗に伴って、採掘地域が漸次深部に移行し、坑道の維持、通気、排水、運搬等の経費が増加するため生産費の増大を見ております。これを最小限度に食いとめ、さらに高炭価問題を解消するためには、合理的、計画的な開発を行なって炭鉱若返り策が講ぜられなければなりません。生産体制集約化は、そのための前提条件であります。前近代的な古い生産機構である鉱区の独占はすみやかに排除し、鉱区整理統合を断行して、炭鉱適正規模に再編成することが最も肝要であります。さらに、休眠鉱区の解放も行なわれなければなりません。これらの諸課題は業者間の自主的解決では不可能であり、法の強制力を必要とするものであります。  第二は、流通過程における整備の問題であります。  石炭流通機構昭和年代になってからだけでも、過剰貯炭を処理するために昭和石炭株式会社、戦時中の日本石炭株式会社、戦後経済再建のための配炭公団、そして最近では昭和石炭等設立を見ているのであります。このことは単に石炭重要物資であるためのみでなく、石炭需給関係調整困難性を物語るものであります。需給関係調整し、価格の安定をはかるためには、流通機構一元化こそ絶対に必要なのであります。  第三は、石炭需給計画化し、その安定的確保をはかることであります。  石炭鉱業はその持つ特性から必然的に需給計画化を要求いたします。しかも、その計画化長期に進められなければなりません。政府は今日、石炭需要の減退に対して縮小生産方向をとっているのでありますが、これでは問題の高炭価をも解決できないのであります。高いレベルの拡大生産こそ必要なのであります。さらに、積極的に新需要開拓等が講ぜられなければなりません。このためには社会党は、固体燃料としての石炭を流体化し、電気やガス等流体エネルギー転換して、石炭需要拡大をはからんとするものであります。  以上の見地から、石炭鉱業の当面している危機を打開し、その安定を期するため、本法案を提案する次第であります。  以下、本法案内容を簡単に御説明申し上げます。  第一章総則は、目的と定義についての規定であります。石炭鉱業基幹産業としての重要性にかんがみ、石炭鉱業の継続的安定を期するには、石炭生産近代化推進するとともに、流通機構整備して、その価格の低下をはかり、その需要拡大するための諸施策を実施することを目的といたすものであります。  第二章は石炭鉱業近代化計画に関する規定でありますが、五年ごとに石炭鉱業安定基本計画及び毎年、石炭鉱業安定実施計画を定め、政府実施すべき工事に必要な資金確保に努めるよう規定したのであります。  第三章は、未開発炭田開発についての規定であります。石炭資源開発が十分に行なわれていない地域であって、石炭鉱業の安定のためにはその開発を急速かつ計画的に行なう必要がある地域を指定し、基本計画に従って石炭資源開発計画及び実施計画を定める旨の規定をいたしたのであります。  第四章は、石炭鉱業開発株式会社に関する規定であります。未開発炭田開発目的として石炭鉱業開発株式会社設立し、政府は常時会社発行済み株式総数の二分の一以上を保有する等のほか、会社設立に伴う所要の規定を設けたのであります。  第五章は、採掘権及び鉱区整理統合並びに坑口開設制限についての規定であります。鉱業権の交換、売り渡し、鉱区の増減については鉱業法規定するところでありますが、特に、安定実施計画で定めるととろに従って急速かつ計画的な開発を行なうために鉱区整理統合はきわめて必要でありまして、政府は適切な措置をとらなければならないとしたのであります。坑口開設についても許可制といたしました。  第六章は、需給の安定についての規定であります。政府は毎年、石炭関係及び学識経験者よりなる石炭鉱業安定会議の意見を聞いて需給計画を定め、その需給計画に基づいて鉱業権者租鉱権者に対し生産数量の指示をするものといたしたのであります。石炭需要を増加させるため、都市ガス火力発電石炭化学等に対し、資金確保その他適切な措置をとるべき旨の規定を設けたのであります。  さらに前述のごとき観点よりして、石炭販売一元化を行なうこととし、それがために石炭販売公団を設け、石炭の一手買い取りを行なうことといたしたのであります。しかし石炭販売公団が全生産量を取り扱うことは実際上困難でありますので、鉱業権者または租鉱権者をしてその販売業務の一部を代行させることといたしたのであります。また、小口需要については販売業者を指定して、その販売をさせることといたしたのであります。近代化による生産費引き下げ価格に反映するために、政府買取価格および販売価格決定することといたしました。買取価格をもってしては石炭生産費を償うことができないものにつきましては、価格調整金の制度を設けたのであります。  第七章は、石炭販売公団についての規定であります。公団資本金は百億円とし、政府が全額出資することといたし、役員、業務、会計、監督についてそれぞれ規定を設けました。  第八章は、炭鉱補償事業団についての規定であります。政府石炭需給調整措置実施に伴い、石炭調整金を含む買取価格をもってしても採算がとれなくなったため、事業を休廃止するのやむなきに至った鉱業権または租鉱権者事業について、採掘権の買収、鉱山労働に対する救済、鉱業等に対する善後措置を講ずるため、炭鉱補償事業団を設置することといたしたのであります。これに要する財源としては石炭販売公団からの納付金のほか、国庫補助の道も講じたのであります。離職する労働者に対しては平均賃金の六十日分を支給すると同時に、未払い賃金については債務者たる採掘権者または租鉱権者炭鉱補償事業団との連帯債務としたのであります。また、鉱害賠償に関する裁定についても必要なる措置を講じました。  第九章は、石炭鉱業安定会議についての規定であります。この安定会議石炭鉱業安定基本計画並びにその実施計画決定採掘権または鉱区整理統合需給計画決定生産量決定買取価格販売価格決定雇用の安定その他この法律に関する重要事項を調査審議するため、鉱業権者及び租鉱権者労働者石炭消費者炭鉱所在地方公共団体を代表する者、学識経験者をもって構成することといたし、これに関する規定を設けました。  第十章雑則、第十一章罰則といたし、法律施行期日は公布の日から九十日以内に政令で定めることといたしたのであります。以上、この法案の概要について説明申し上げた次第であります。  日本社会党といたしましては、わが国エネルギー源における石炭鉱業重要性にかんがみ、石炭鉱業の安定をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与せんとするため、本法案提出いたした次第であります。議員各位におかれては何とぞ御審議の上、本法案に賛意を表されんことを切にお願いするものであります。  引き続いて、ただいま議題になりました炭鉱労働者雇用安定に関する臨時措置法案につきまして、提案者を代表し、その提案理由説明を申し上げます。  重大な社会問題に発展した現下の石炭鉱業危機を打開するため、去る第三十九回国会に衆議院本会議並び参議院商工会委員会において、石炭産業危機打開に関する決議をし、政府に対し総合エネルギー対策確立と当面する緊急問題の措置を強く義務づけたのであります。ことに労働者雇用安定についてはその決議に「炭鉱労働者雇用確保に努めるとともに、労働者雇用安定については、最大限の努力を払い、転換職場生活保障のない合理化とならないように指導を行なうこと。」と述べているのであります。  本来石炭鉱業合理化生産体制集約化でなければなりません。第一次大戦後のドイツの炭鉱合理化切羽集約による機械化的合理化であり、第二次大戦後のイギリス、フランスの合理化鉱区整理統合による適正規模炭鉱への再編成であり、そのための国有化公社化であったのであります。しかるに現在進行している合理化の態様は、依然として政府の買いつぶしによる整備計画の遂行と、経営者首切り賃金その他の労働条件を大幅に切り下げることを目的とする第二会社租鉱権炭鉱への移行に終始し、全く労働者への犠牲のみによって強行されているのであります。しかもこうした非近代的合理化計画は、石油自由化を前に、一そう強化方向に進もうとしているのであります。中高年令層の多い炭鉱離職者就職はまことに至難なことであり、政府炭鉱離職者対策推進も、その何分の一しか救済されていないのであります。ことに、失業者の多数滞留した産炭地域受け入れ体制のないままにこれ以上失業者を増加させることは、全く人道上ゆゆしき問題であり、政府としては極力防止すべきであるのであります。このような事態に直面し、炭鉱労働者炭鉱前途に全く希望を失い、かえって若い者、技術を身につけている労働者は逐次炭鉱を去りつつある現象が現われ、近き将来炭鉱労働力の面より産業そのものの基盤を失うことすら憂慮されるような状態になっているのであります。ゆえに炭鉱労働に対してその生活の保障を行なうとともに、安定した転換職場のない限り解雇は行なわないようにして炭鉱労働者の不安を一掃することが肝要であります。  本法案は、炭鉱労働者最低賃金制度設定とともに、炭鉱労働者雇用の安定をはかることにより、石炭鉱業の安定を期せんとするものであります。  本法案規制の第一は、一時大量解雇の場合における解雇制限であります。この法の趣旨は、西ドイツヴイルテンベルグ・バーデン邦における、大量解雇における従業員保護に関する法律並びに連邦の解雇制限法と大体同様なものであります。すなわち再就職が困難であると認められる場合においては、その解雇はこれを認めずして、当該経営者雇用を継続する社会的義務を負わせようとするものであります。このことは政府並びに経営者をして転換先安定職場確保に努めさせ、このことにより離職者対策は血の通ったものとして著しく前進することになると考えるのであります。  次に本法案規制しようとする第二の問題は、最近とみに多くなった大手炭鉱の第二会社設立租鉱権設定という、経営形態変更による労働条件大幅切り下げ政策禁止と、請負夫という雇用形態変更による低賃金政策禁止の問題であります。第二会社といい、租鉱権といっても従来と同じ大手炭鉱が、その採掘された石炭は自己の銘柄として販売しているのであり、ただ経営形態を変えることにより、賃金の三分の一程度の切り下げを初め福利厚生費等の削減、農民関係被害者への鉱害補償軽減等により、利潤を得んとするものであります。これは資本主義経済における真の合理性追求政策ではなく、わが国資本主義経済における低賃金を利用しての合理化であって、福祉国家建設を目標とする現政府としては許容してはならない問題であります。  また請負夫、臨時夫の問題は、単に炭鉱のみではなくして、他産業にも見受けられるところでありますが、最近炭鉱の経営不振に伴い急激に請負夫が増加し、昨年七カ所の坑内爆発事故中、四カ所までが請負夫作業現場であり、全く放置できない状態にあるのであります。坑内作業というきわめて保安上危険な個所に、しかも基幹職場に、保安教育も十分なされない請負夫の使用は当然禁止すべきであると思うのであります。これらの禁止大手炭鉱より第二会社中小炭鉱へ、さらに中小炭鉱より租鉱権零細炭鉱へという非近代的合理化方式の悪循環を断ち切り、政府並びに経営者に対し、安易な方法を避けて真の生産体制集約化という近代化方向をとらし、石炭鉱業安定への道に向わすことになると思うのであります。以上の見地から本法案を提案いたした次第でありますが、以下法案内容を簡単に御説明申し上げます。  第一条、第二条はそれぞれ目的並びに定義について規定いたしました。目的は、前述したごとく一時に大量の炭鉱労働者解雇されることによりその再就職が困難となる事態の発生及び炭鉱労働者労働条件の低下を防止するため必要な措置を講じ、もって炭鉱労働者雇用の安定をはかろうとするものであります、本法案法案の性格上、臨時措置法として三年間の臨時立法といたしたのであります。  第三条は、解雇制限は一時に大量解雇しようとする場合は三カ月前までに提出し、労働大臣の承認を必要とすることにいたしました。しかし、保安上危険であるとして廃止の勧告を受け事業を廃止する場合は、これを要しないことにいたしました。炭鉱労働者の再就職が困難であると認められる場合には、承認してはならないことといたしました。これに対しても当該鉱業権者石炭鉱業事業の全部の継続が不可能である場合は例外規定を設けました。  第四条は、承認を与えなかったことにより欠損を生じた鉱業権者に対しては、炭鉱離職者臨時臨置法に規定する雇用奨励金相当額を補給金として支給するものといたしました。  第五条は、鉱業権の譲渡を受け租鉱権設定による事業が、従前よりも賃金その他の労働条件の低下を企図するものであると思われるときは、当該事業にかかる坑口の使用は禁止されることにいたしました。  第六条は、坑内作業に従事する労働者は縦坑開発その他省令の定める若干の例外を設け、鉱業権者の直接雇用する者に限ることといたしました。  第七条は、労働大臣の諮問機関として労働者鉱業権者学識経験者三者によって構成される炭鉱労働者雇用安定審議会を設け、解雇制限の場合の審議並びに雇用安定の場合の調査審議をいたすことにいたしました。  第八条は、労働省令への委任、第九条以下は罰則規定いたしました。  以上が法案内容でありますが、本法案炭鉱労働者のきわめて熱烈な要望事項であり、本法案の制定は緊急な社会的問題の解決となり、石炭鉱業安定に資するものであることを確信し、提案いたした次第であります。従って、議員各位におかれては、何とぞ慎重御審議の上、賛意を表されることをお願いする次第であります。  特にこの際、委員長並びに議員の皆さんにお願いをいたしたいと思います。石炭産業の問題につきましては、委員長初め各議員の皆さんが、非常に御熱心に今日まで審議を続けていただき、過般の国会においては決議案まで上程していただいたのであります。離職者の面については、若干の成果をおさめたことも確かであります。また近代化に要する資金等についても、若干の増加を見たことも明らかであります。しかし現に働いている鉱山労働者の今日の状況は、第二会社租鉱権あるいは引き続く首切り、これによって、全く困難な状態に陥っておるのであります。従って、どうか議員の皆さんにおかれましては、従来の御熱意をさらに一歩前進させて、現に働いている炭鉱労働者の生活の安定というこの一点に、どうか皆さんの御努力を切にわずらわしたいということを、この際申し添えて、私の提案理由を終わる次第であります。(拍手)
  8. 有田喜一

    有田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は、後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  9. 有田喜一

    有田委員長 次に、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興事業団法案議題として、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので。これを許します。始関伊平君。
  10. 始関伊平

    始関委員 ただいまこの委員会審議中であります石炭鉱業合理化臨時措置法に関連しまして、炭鉱合理化資金などいわゆる資金対策に問題を限定いたしましてお尋ねしたいと思います。  昨年の十月三十一日に、衆議院の本会議で、三派共同提案のもとに、石炭産業危機打開に関する決議というものが行なわれたのでありますが、その一番大きな柱の一つは、石炭産業近代化合理化ということでございまして、そのために必要な資金を大幅に確保するものとするということになっておりますことは、御承知の通りでございます。石炭対策は離職者対策あるいは産炭地振興その他いろんな面で前進して参っておるのでございまして、その点、大臣初め政府当局の労を多とするものでございますが、一番大事な資金対策については、遺憾ながら十分であるとは申しかねる。これは国家資金の投入についてもそうでありますが、私が特にここで注目したいと思いますことは、興銀なりあるいは長銀なりを初めとする市中銀行の動向でございまして、運転資金の方は別として、設備資金についてはいずれも逃げ腰でございまして、この傾向は三十六年に入りましてから特に顕著であります。ただいまお手元に表をお配りしましたが、これは石炭協会の調査にかかるものでございまして、市中銀行の設備資金の貸し出しの期末残は、三十五年の二百七億に比べて、三十六年の上期末におきましては百九十八億というふうな減少を示しておるのであります。  こういったような事柄につきまして、私は大臣にお尋ねをしたいのでありますが、今日の日本では、石炭産業というものは民営という形で経営されております。しかし、民営でありながら、たとえば金融がうまくいかなければこれは全部政府の責任だ、自分たちの掘った石炭をどこでだれが買ってくれるか、それも政府が責任を持てといったふうに、今日の石炭産業というものは、実は民営企業としての実体をなくしておるといっても差しつかえないような状態であります。非常に遺憾であるし、また、世界じゅうにこんな醜態な企業というものはないだろうと私は考えております。そこで社会党の言うように、これを国有に移すということも考えられるのでございますが、私は、国有に移すということは、現状では必ずしも利口な、また有効なやり方だとは思いません。とすれば、この石炭産業が民営企業としてほんとうに自立のできるような、従って自分で資金の調達もできる、そういったような態勢を作ってやる、あるいはそういう環境を整えてやるというふうなことに、石炭対策のねらいというものがなければならないと思うのでございます。政府がいろいろな施策をおやりになる、また政府の方では、非常ないい政策だということで自画自賛しておられるようでありますが、石炭長期取引というような政策をもっていたしましても、石炭産業は自信を取り戻すに至っておらない。またそれと相応いたしまして、ただいま申しましたように、商業金融機関というのは全面的に石炭産業にそっぽを向いておる、これは石炭産業が民営産業であるという建前から申しますと、非常に困ったものだと思うのであります。私は、社会党の言うように、いわゆる石炭政策の根本の転換を考えるとかなんとかいうことを考えておるわけではございませんが、今日までの政府のやっております石炭政策では、何かきわめて重要な点において欠けておる点があるのではなかろうかという感じがいたすのでございますが、どうもばく然たる質問で恐縮ですけれども、その点大臣のお考えを伺いたいと思います。  それから第二点として、こういう状態のもとにおいて石炭産業の再建を考えていかなければならぬとすると、少なくともここしばらくの間は、設備資金についてはほとんどその全額を国家資金で見てやるよりほかはないじゃないか、と申しますのは、増資もできませんし、また市中金融もできない、しかも一方、石炭産業がつぶれちゃ困るのだ、国際収支あるいは雇用エネルギーの安定供給というような点からいたしまして、五千数百万トンの石炭確保することはどうしても必要だということになって、しかも商業金融が相手にしないということであれば、少なくとも設備資金については、その所要額のほとんど全部を国でめんどうを見てやるよりほかに——私はそういう議論をするのは非常にいやでございますが、ほかにないのじゃなかろうかという気がいたしますが、これが第二点。  第三点としましては、これに関連して長興銀初めいわゆる商業金融機関に石炭合理化資金の調達等について協力してもらうような方法というものはないものだろうかという、この三点を最初にお尋ねしたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまお尋ねの点は、石炭産業の根本に触れた御議論でございます。私どもの悩みも、ただいま御指摘になったような点にあるわけであります。石炭産業が最近はいわゆる斜陽産業だといわれておる。その言葉を私とやかく言うわけではございませんが、他のエネルギーと競合し、そうしてその競争の観点に立つと、どうも経済的に立ち行かない非常に劣性な地位にある、そういう立場からこれに対して民間金融をつけるということ、これはコマーシャル・ベースで金融をするという考えに立つ限り、今のような状態に実はなるだろうと思います。問題は、石炭産業がいわれるごとく基幹産業であり、安定産業であり、相当の収益をここで生ずる産業である、こういうことが約束づけられ、そして同時にそのことを信頼されるということになれば、必ず一般の市中金融も金融の道が開けてくるだろうと思うのであります。  ところで、石炭産業というものは一体どういう地位にあるのか、この委員会ができまして以来、いろいろ私どもの考えも申し述べました、また関係の方々も、そういう意味について石炭産業重要性を強く説かれて参りました。私どもも石炭産業重要性、これを認識し、しかもまた、これを斜陽産業というような立場に追いやる、あるいは将来末細りの状況に追いやるということは好ましいことではない。特に国内資源開発という意味においても、あるいは石炭エネルギーの安定供給であるとか、あるいは雇用の問題等から見ましても、この重要性は十分認識しなければならない。これが困っておる点にやはり力を貸してやって、そうしてこれを自立できるようにする。ただいま国有論等が出ておりますが、私は石炭産業が国有でなければ立ち行かない、国有になれば必ず立つという、こういう結論はそう簡単に出すべきじゃないと思いますが、私どもの考え方からいたしますれば、自由経済のもとにおいてりっぱに育ち得る、りっぱに活動し得る産業に育成すること、これが第一の目的だと思います。しばしば申しますように、基幹産業として、安定産業としてやるということは、この前も私申し上げたのでございますが、相当の利潤を生む産業でなければならぬ。相当の利潤を生むように合理化を進めていくとか、あるいはそのための必要な機械設備を進めていくとか、あるいは鉱区等の開発計画を進めていくとかいうことにあるだろうと思います。だからこそ、政府自身も近代化についての積極的な支援をしておる。あるいはまた需要確保という点について、あっせんし得るだけの需要確保、そういう方向には努力して参ったわけであります。長期引取契約を結ばしたのも、その例だと思います。ところが、その本筋はおそらく納得していただけると思いますが、実際にはなかなか言う通りになっておらないのじゃないか、金融は行き詰まっておるのじゃないか。ただいま御指摘のような結果が出てくる。これを単にここ一、二年の特殊な状況からかような事態に追い込まれたり、あるいは金融の状態、あるいは石油の乱売とでも申しますか、そういうような結果から石炭産業にしわ寄せされた、こういうように見ることができるのか、本質的なものか、この点でありますが、おそらく、両々相待って今日のような苦境にあるだろうと思います。今回御審議をいただいておりますいろいろの法案なり、あるいは施策等にいたしましても、金額としては不十分ではございますが、ただいま御指摘の民間金融がうまくいかないから、そういう意味において世話をするという観点に立っておるのでありまして、一例を申し上げれば、石炭産業は運転資金確保自身にも困っておる。だから、そういう意味で、運転資金政府自身が世話する方法はないか。昨年は信用をつけるというか、信用保証というような立場で政府が金融のあっせんに乗り出しましたが、どうも信用保証供与の程度では十分ではない。今度は政府自身の資金で必要な資金を貸すようにしなければいかぬのじゃないか。これはどうも、それが退職金に使われるというようなことで、本来から申すと、退職金なら金融の道はつけるが、その他の所要の事業経営にはあとにしているんじゃないかというおしかりを受けるかもしれませんが、合理化を進めていく場合に、どうしても生ずる離職者に対してその手当もできないということはいかにも残念だ、こういう意味から、金額はわずかでありますが、退職金も直接政府が貸し付けるようにしよう、こういう道を開いたわけであります。ただいま御指摘になりましたように、協調融資等の道もございますし、あるいは政府の施策自身はわずかではあっても、呼び水的な効果が必ずあると思います。そういう意味の施策が今回開かれたわけであります。しかし、私どもこれをもって十分だとは考えませんから、さらに必要な場合には政府資金あるいは政府関係金融機関の資金を豊富にする、あるいは協調融資あっせんの道を開くとか、積極的に金融についても相談に応ずべきだ、かように思います。一、二、三とおあげになりましたが、大体そういうような考え方で今取り組んでいる次第でございます。
  12. 始関伊平

    始関委員 私は、今の石炭政策に欠けておる一番大きな問題は、引取数量とかなんとかいうような数量の問題ではなくて、結局、最終的に石炭価格がどのような点で安定が確保されるか、こういう価格政策の問題になると思うのでありまして、そういう意味において、一番問題は石油価格との関連の問題だと思うのでございますが、この点はいずれ石油業法の審議の際に、もう一ぺん一つ御高見を伺うことにいたしまして、先に進ませていただきます。  三十四年の三月を起点として千二百円の炭価引き下げを目標として合理化計画が進められて参ったわけでありますが、このためには毎年どの程度の合理化資金つまり設備資金が必要であるのか、これは中小と大手がございますが、私は話を簡単にするために大手だけについて伺いたいと思いますが、毎年必要とする設備資金の額いかん。それからその調達方法に、自己資金によるものを借り入れによるものと二つ考えられますが、その割合はどんなふうになっておるかというような点をちょっとお尋ねします。
  13. 今井博

    ○今井(博)政府委員 合理化計画を立てましたとき、長期の設備投資計画というものをそれに関連して樹立いたしました。その計画は三十五年から三十八年までの間に全体で、大手、中小合わせまして——今大手だけというお話でございましたが、大手だけで見ますると、この四年間で千三十一億の計画を立てた次第でございます。これを年度別に申し上げますと、三十五年度は二百七十八億、三十六年度は二百七十七億、三十七年度は二百四十四億、三十八年度は二百三十二億。当初は三十五年、三十六年に重点を置きまして、三十七年、三十八年は、その計画が達成されれば次第に資金量が減ってくる、こういうことで当初計画を立てた次第でございますが、三十五年、三十六年が当初計画通り資金の調達ができませんので、三十七年度、三十八年度につきましては、この当初計画を相当改定しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  14. 始関伊平

    始関委員 そこで、またこの表をごらんいただきたいのでありますが、合理化が始まる前の年の三十三年は国家資金の年間純増額が三十五億、それに対して、民間資金が六十億、合計九十五億でありました。ところが合理化が始まるようになりましてから、三十四年度で七十億、さらに三十五年度では五十八億、それから三十六年上期だけでは十六億、これは下半期の方がやや多いかもわかりませんが、こういったような実情でございまして、ただいまお話しの二百七、八十億、あるいは、二百三、四十億というものに比べて、これは社内留保と申しますか、自己資金による分もあると思うのでありますが、合理化が始まってからかえってだんだん減っておるというのは、非常にいかぬのじゃないか。これで一体合理化ができるのかどうか、また、どういう理由でこうなったのかということを御説明願いたい。
  15. 今井博

    ○今井(博)政府委員 三十三年度のここに出ておりまする数字は、三十二年度が御承知のように非常に好景気でございまして、相当石炭のポジションがよかったということと、三十三年度は、全体といたしまして、エネルギーの非常な不足が予想されまして、長期エネルギー計画としては七千万トンくらいの規模にしなければならないだろうというふうな議論も行なわれておりまして、従って三十三年度の設備投資計画は全体が実は非常にふくれ上がったわけでございまして、石炭のポジションもよかったという関係もありまして、年間の純増額が九十五億というふうに非常にふえた次第でございます。三十四年度以降につきまして漸次これが減少して参っておることは、いただきましたこの表で明らかな通りでございますが、この点は、最初に御指摘のように、興長銀関係、市中銀行関係、そういうものの資金調達が非常に苦しくなってきたということ、それから値段を順次下げておりますので、もうけがだいぶ減ってきた、そういうことに実は原因しているかと思います。従いまして、この点につきましては、必要な合理化計画が達成されないのじゃないかということで、実は非常に心配をいたしております。三十四年度、三十五年度につきましては、基本的な合理化計画、いわゆる大きな縦坑を掘るとか、大きな巻上機を作るとか、そういう合理化のかなめになるような基本計画につきましては、これは資金を十分に充当いたさせまして、この点については計画通り実はやって参っておるわけでございますが、遺憾ながらその他の付属的な設備、あるいは住宅とか、そういった点にしわが寄って参っておる。その関係の資金が漸次ショートしておる。この点が実は三十四、三十五年度の経過でございまして、三十六年度になりますと、順位の少しおくれておるそういう合理化工事にしわ寄せするということが今後は非常に実は困難になってくるのじゃないかと思いますので、この点については、資金調達について一段と努力いたさなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  16. 始関伊平

    始関委員 まあ過去のことはしようがございませんが、今日までの合理化資金の調達は、政府のかけ声にかかわらず、実際上はうまくいっていないということがわかって参ったのであります。  それで三十六年度の問題でございますが、これは現在の問題ですから何か対策を考えればまだ間に合う、こういうわけだと思いますが、大手十八社の設備投資計画は当初二百七十七億だった。その後、資金調達難の実情からこれがおくれて参りまして、その計画も大体二百七十億に圧縮された。しかし、その二百七十億が全額確保できるのかと申しますと、そうではないようでございまして、資金の調達面では四十億程度の資金不足を生じておる。このままで推移しますと、今日まで金繰りが非常に窮屈になっております上に、さらに工事代金の支払い遅延とか、あるいは工事の繰り延べ等をしなければならない、そういったようなことで、企業の経営にも圧迫が加わり、また合理化も進まないというようなことで、非常に遺憾な状態になって、合理化基本計画というものが実際上遂行できないということになると思うのでありますが、いかがでございますか。なおこれにつきまして、年度夫でございますが、大臣、何かお考えになっていらっしゃる点がございますれば、お聞かせをいただきたいと思います。なお、大蔵省もお見えになっていると思いますが、この点につきましてお考えになっている点がございましたら、あわせてお聞かせを願いたいと考えます。
  17. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 三十六年度の資金がショートしておる、これはただいま始関委員の御指摘の通りでございます。過日来、事務当局で大蔵省ともいろいろ折衝しておる段階でございます。できることならば年度までに問題を片づけたい、かように思っておりますが、交渉の経過を事務当局から御説明をいたさせます。
  18. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいま通産省から、いろいろ本年度の不足資金についてのお話でございます。まだ大蔵省全体といたしまして、どういう結論にするかきめてはございませんですが、われわれの今考えております段階で、私見になるかもしれませんが、それでよろしければお話し申し上げたいと思います。  開銀その他からいただきました本年度の不足資金の実情は、開銀から実は二十六億円ほどの要求がございます、通産省からはもうちょっと大きい数字だと思いますが、その内容を見ますと、国家資金の方は計画通りにいっております、調達面の方から見ますと、自己資金の減とそれから市中の減、これによりまして、この原因は、金に色はございませんからいろいろむずかしい点でございますが、主として長期の運転資金と申しますか、整備資金による点が大きいというふうに分析されております。そういう関係もございまして、ただいまこの委員会で、来年度は直接政府資金がそういう長期運転資金に出せるようなことを御審議願っておるわけでございます。ことしは、そういう事情でもございますし、なお、期間的に申しましても、すでに三月でございますので、四月早々現に御審議願っております法案が成立すれば、できるだけ早い時期に事業団を通じてそういう資金を流す。また場合によって、その結果なお不足の事態があれば、その際にいろいろ検討する、そういうことにしてはいかがかというふうにただいまのところ考えております。
  19. 始関伊平

    始関委員 実は退職金の金融の問題は、あとでお尋ねしたいと思ったのですが、退職金の方も足りないし、また三十六年度の設備資金の方も足りないし、両方ともそれぞれ足りないので、退職金の方を出すからこっちの方はよろしいのだというふうには参らぬと思いますが、その点は一つ通産、大蔵両省に善処をお願いいたしまして、次に進みたいと思います。  三十七年度の資金計画というものを、大ざっぱでけっこうでございますが、お聞かせ願いたい。
  20. 今井博

    ○今井(博)政府委員 三十七年度の設備の投資計画につきましては、まだ詳細は実は固まっておりませんが、当初われわれの計画としましては、二百九十億の計画をいたしておりましたが、開発銀行の資金の関係、それから興長銀の、先ほどから議論になっておりまする、むしろ回収増というふうな問題、それから自己資金関係で計画の若干修正というふうな点を考えますと、この二百九十億に対しまして、四、五十億減って参るのじゃないか、こう考えております。  なお、これの詳細なる計画につきましては、ただいま年次計画でもって作業をいたしておりますので、その上で詳細に御説明いたしたいと思いますが、これでは現在考えておりまする合理化計画の達成、千二百円ダウンという問題については、やはり三十七年度につきましては、先ほど申し上げましたようにいろいろな不要工事、と申しますと語弊がありますが、順位の低いところにしわ寄せするということが、三十五年度でほとんどその余地がなくなっておるという事情からいたしまして、三十七年度の投資計画につきましては、こういう現象が予想されますが、できるだけ一つ今後努力いたしまして、投資計画をふやすようにやってみたいと思っております。なお詳細は、年次計画を作りました上で御説明いたしたいと思います。
  21. 始関伊平

    始関委員 石炭局長、開銀は幾らですか。
  22. 今井博

    ○今井(博)政府委員 開銀は、三十七年度の計画は八十億です。
  23. 始関伊平

    始関委員 昨年は……。
  24. 今井博

    ○今井(博)政府委員 昨年も八十億でございます。
  25. 始関伊平

    始関委員 せっかく大臣がいらしておりますから大臣にお答え願いたいと思うのですが、私どもが資金の大幅確保ということを申しました際に、一番頭の中にありましたのは開銀資金でございますが、昨年と同じではどうも大幅確保ということにはならないように思うのでございますけれども、これは適当な機会に何か考え直していただく余地があるものかどうか、その点ちょっと伺いたい。
  26. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 開銀資金の増加額をいろいろ協議をいたし、また折衝いたしたわけでございます。ところが開銀の総体の資金はなかなか困難な状況にあるものですから、やむを得ず八十億というところで最終的に決定を見たわけでございます。しかし、石炭産業重要性を考えまして、必要な資金はもちろん確保しなければならないものであります。開銀資金そのものを今この際いかがするとかいうことはまだ早いように思いますが、実施計画等ともあわせて見まして、必要な手続を実施の途中において考えるということにしてしかるべきだと思っております。
  27. 始関伊平

    始関委員 それから、小さい問題であるかもしれませんが、これは石炭局長にお尋ねをいたします。この表を見ますと、近代化資金の三十五年度貸付が七億、三十六年上期で七億、この近代化資金の総額、またその中で占める大手十八社の重要性からいいまして、こういう数字はちょっと納得ができかねるのですが、これは合理化事業団の怠慢か、どういう事情によるのか、またこれでいいと思っておられるのか、ちょっと御説明を願います。
  28. 今井博

    ○今井(博)政府委員 近代化資金は、全体といたしまして三十六年度は二十二億程度の金額でございます。三十五年、三十六年のこの表では非常に少ない数字になっておりますが、これはおそらく、三十五年度は、合理化事業団がこの仕事を始めるのが、法律改正が、国会の関係で一度流れて、それからあとで成立したというふうなこともございまして、事業団の店開きが非常におそかった、その関係によるものかと私は思います。なお三十六年度の上期におきましても数字は非常に小さくなっておりますが、これはいろいろな手続関係で資金の出方がおくれておるのではないか、大体政府資金は、上期よりも下期に集中して出るという傾向がございまして、この点は資金の出し方の大きな欠陥かと思いますが、まあ手続の関係等でそういうふうに上期は実は非常に少ない、こういう事情だろうと思いますが、この点は一つできるだけ改善を加えたいと思っております。
  29. 始関伊平

    始関委員 次に、問題をちょっと変えまして、いわゆる整備資金、退職金の金融の問題でございますが、これは先ほど大臣もちょっとお触れになりましたが、現在では非常に重要な意味を持っていると思います。先般杵島炭鉱では、争議のあと、退職者が決定したのでありますけれども、退職金の調達ができないために数カ月間も退職者に迷惑をかけたというような例もあるようでございますし、首切りを奨励する資金ということではございませんで、労使双方が納得済みであるというのに、金がないためにそのことがうまく運ばないということは、これははなはだ困る問題でございまして、これがひいては炭鉱の経営を圧迫したり、あるいは合理化を阻害するというような結果を招来しているのであろうと存じます。こういったような金融は、一般的に申しまして、いわゆる金融ベースでは資金の調達が困難でございますが、特に石炭産業の現状では非常に困難だと思うのであります。そういったような趣旨から、先般の予算決定の際に、財政投融資十五億というものが見込まれたのであります。実は、この法案が今この委員会にかかっておりまして、まだこれを通過もさせないのにいろいろ言うのは、ちょっとどうかと思う点もございますけれども、十五億という金でございますと、たとえば三井一社分にも足りない。目下の事情から申しますと、やや焼け石に水の感があるのではなかろうかと思うのでございますが、これは年度が始まったばかりでございますけれども、しかしでき得れば、将来適当な時期ということではなしに、できるだけ早い機会にもう少しこれをふやすようなことを考えていただくことが適当ではなかろうかと思うのでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは、今の予算の成立といいますか、衆議院を通りましたばかりで参議院にまだかかって審議の最中でございますから、これをふやすということはなかなか容易ではないと思います。これが金額が非常に多いことは、一面安心というようにもとられるかと思いますが、同時にまた、退職者の出方の問題がございますし、また先ほどちょっと触れましたように、金の使い方も実はあるわけでございまして、そういう意味から、適当にこれを使ってみたい、かように実は考えております。今すぐふやせといわれましても、すぐそう簡単にふえるものではございませんし、またこれがたくさん計上されてありますと、あるいは退職者を非常にたくさん出すんじゃないかといっておしかりを受けるかもわかりません。必要な資金には事欠かさないような使い方があるんじゃないか、かように私ども考えております。
  31. 始関伊平

    始関委員 大臣のお話でございますが、局長、三十七年度の退職金と申しますか、その所要見込み額というものは大体見当がついているんだろうと思いますが、お聞かせを願いたいと思います。その所要見込み額のうちで、合理化事業団の保証などで自己調達のできる額というものはどの程度あるかということをお尋ねいたします。
  32. 今井博

    ○今井(博)政府委員 ただいまお尋ねの退職金の調達の所要額といたしましては、全体で百億というふうに実は考えまして、いろいろ予算要求をいたしたわけでございますが、どうして百億ということを考えたかと申しますと、炭鉱離職者の数が全体で七万七千人という非常に大きな数字になるわけでございますが、実際は出たり入ったりする関係もございまして、純減としましては二万七千人程度というふうに考えたわけでございます。この場合に、実際に事業団が買収する山もございますし、あるいは自然に消滅する山もございますし、退職金の規定のあるそういった鉱山の中で、実際に退職金金融としてわれわれが対象として考えなければならぬものを一応一万二千人と実は押えまして、それに対する平均的な退職金というものを職員と工員に分けてはじきましたのが、百億というわけでございます。しかし実際はもっと要るわけでございますが、最小限度確保しなければならぬぎりぎりの数字として、百億というものを考えているわけでございます。
  33. 始関伊平

    始関委員 ただいままで私がお尋ねしましたところは、結局問題が三点に帰するのでございまして、三十六年度の設備資金の不足額については、何とか急速にお考え願いたいということが一つ。退職金は非常に足りないので、これは先ほど大臣のお話にもございましたが、年度初めの比較的早期に何とか御善処願いたいということ、第三点は、開銀資金等についても、期の途中ということになると思いますが、善処いただきたい、また、できるだけ考えたいということでございますので、一つ御善処をお願いいたしまして、私の質問を終わりますが、最後に一点、現在の炭鉱の経理の状況、その他物価の値上がりの関係、それから離職者に関する問題等からしまして、千二百円引き下げを若干ゆるやかにと申しますか、時期を繰り延べてやってもらいたいという要望が業界等にずいぶんあるようでございます。この点につきまして、お差しつかえのない範囲で大臣の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 財政投融資の関係の資金につきましては、随時増減が——減はおかしいのですが、ふやすことは可能でございますから、必要に応じまして、その手当をしたいと思います。  最後に炭価の千二百円下げの問題でございますが、千二百円下げをめぐりまして、いろいろむずかしい問題にただいま当面しておりますが、これは私が申すまでもなく、最近の諸物価値上がり、あるいは人件費の高騰等、千二百円下げを計画いたしました当初といろいろ情勢の変化もございますので、これを当初の計画通り実施することが可能なりやいなやということで、いろいろ私どもも検討しておる最中でございます。もちろん本来が合理化の大目標でございますから、これは関係筋の積極的協力を得てぜひとも実現したい、かように思いますが、今までしばしば申し上げておりますように、今回きめた千二百円そのものも、いわゆる石油の値段と絶えずそれをにらみ合わせて作るというわけにはいかない事情があります。と申しますのは、石油の方は非常に乱売していて、だんだん安くなっておるということでありますから、千二百円下げを計画したときはその根本も変わっておりますが、さらにまた、当時予想しなかった事情があって、これは非常に困難であります。私ども、昨年来当委員会でも申し上げましたように、石炭石油価格の面で競争さす考えは毛頭ございません。とにかく、私どもの計画している千二百円下げ、これを何とかして実現させたい。それから後は、ここで一服していただいて、炭鉱炭鉱としての合理化を進めていただく、それが将来の安定産業になる基礎になる、こういう方向で一つ勉強していきたい、こういうことを実は申しておるのであります。将来のことはわかりませんけれども、おそらく石油価格が安定する方向へいくだろう、かように思います。だから第一段の合理化計画、それだけを実施する、これをまずとりあえずの達成目標、かように考えておるのでございますが、それにしても千二百円下げについては、この四月一日からこれを実施するとかいうことはなかなか困難な事情もございますので、それをどういうように工夫したらいいか、事務的にいろいろ検討しておる最中であります。早く結論が出れば、その結論通りにいたしますが、結論の出方がおそいと、どうしても実施の時期がややおくれざるを得ないというのが、今の現状でございます。これは差しつかえのない範囲と言われますが、差しつかえの有無にかかわらず実情を申し上げ——このことは、あるいは石炭業界の方から見ると、あまり急いで結論を出すなとも要望されるのではないか、かように思っておりますが、すでに政府が掲げ、公約した目標でありますから、できるだけの工夫をしておるというのが現状であります。やや決定の時期がおくれるんじゃないかというような今見通しをしております。
  35. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 関連して一、二点資金問題で御質問したいと思うのですが、前に政府から出してもらった資料と、今始関委員の配付した資料で、特に復金と見返り資金の関係では残高がずいぶん数字が違うように思うわけです。通産省から出してもらった資料ですと、復興金融金庫の残高は、三十六年九月末で五十億四千二百万の残高があるわけですね。この内訳は設備資金、炭住資金その他坑木代金、こういう工合に実はなっておるわけです、この違いがあるわけです。いずれにしましても、復金及び見返り資金の関係は、これは実際問題としては返す一方になっているわけです。今日特に資金事情が、今質問の過程でも明らかになったように、非常に逼迫してきておるわけですね。従って、復金あるいは見返り資金資金については、一応繰り延べをするとか、あるいは、できれば一時たな上げにして、利子については考える、こういうような措置がむしろ手っとり早くとらるべきではないか、このように私は考えるわけです。この資料の数字の違いは別にして、まず復金、見返り資金について、そういう点について検討する意思があるかどうか、お尋ねしたいと思うのです。
  36. 今井博

    ○今井(博)政府委員 最初に、数字が若干違うようでございますが、業界の方から出ましたのは、大手十八社の資料でございます。われわれの方が岡田先生に差し上げましたのは全体の、中小も含めた数字でございます。  それから復金あるいは見返り資金の返済の問題でございますが、たとえば復興金融金庫の三十六年の十二月末の残高は、この前差し上げました資料では、約五十億程度になっておりますが、これの返済につきましては、約半分程度がやはりなかなか返済が困難であるということで、実際はまだ返済計画が立っておらない格好になっております。あとの半分につきましては、それぞれ返済計画を実情に合わせまして相当長期にわたって返済する、そういうことで、実際には実情に合うような返済の処理方法——今先生が言われたような方法で実は処理が行なわれておるという実情でございます。
  37. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今言った数字の違いでいきますと、大体二十二億程度が中小炭鉱であるということになりますと、大手と中小の比率は、返済していない額は大体半々、五五、四五くらいの比率になるわけです。従って特に中小炭鉱は、大手ですらも、今始関委員が質問したように、資金上非常に困難な状態にあるわけですから、たとえば返済が思う通りいっていない、こう言われても、実際は三十三年から三十四年には九億、三十四年から三十五年には九億、三十六年に入って三億程度九月末まで返済されておる。ですから大手のみならず、中小の場合を考えますと、より一そう資金の事情が困難な状態にあると思うのです。やはりこれらの資金については、特に返済計画については、返す一方の金なんですから、しかもああいう条件の中で、あとは返さなくてもいいというような雰囲気の中で返した金も実際はありますし、私はこの点特に善処方を要望しておきたいと思う。  それともう一つは、近代化資金は、御存じの通り、四割政府資金が出ておるわけです。あとの四割は開銀、あと二割は自己資金、こういう形で近代化資金が出されておるわけです。最近の資金状態から判断をしますと、これからの近代化は、その程度の金融政策では解決できないのではないか、近代化方向というものをより普遍的に、大胆に取り上げていくということが非常に必要な状態に直面しておるのではないか。私ども各炭鉱を視察いたしまして、特にこの要望が強いわけです。ですからむしろこの際、政府炭鉱近代化をするというのであれば、六割程度政府資金を出す、あとの四割は開銀等から融資をする、こういう思い切った施策をとることが必要ではないか。特にこれは設備資金ですから、全体的な金融の関係からいっても、こういう政策をとると近代化が進み、しかも従来言われておるように、非近代的な合理化首切り、賃下げにたよるということに反発して、政府は、今近代化が進んでおるというのでありますから、むしろそういう大胆な政策をとられたらどうかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  38. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今岡田さんが言われますように、なかなか金融がむずかしいということは私どももわかりますが、同時に、一般産業に対する金融措置等と比べてみまして、現在でも炭鉱については特別な留意が払われております。さらにこれを厚くすることは、相当問題があることだと思います。また炭鉱を安定産業たらしめるというためには、今の一時資金といいますか、一時資金はやむを得ないが、これだけやれば将来の見通しができるのだ、こういう議論も成り立つかとも思いますけれども、ただいま御指摘になりましたような政府資金四割というような融資でまず自立できるということが望ましいのであります。そういう点もあわせてとにかく検討いたします。非常に手厚い保護は望ましいことではありますが、やはり炭鉱が自立するという面から見ますと、将来にまずい点が残りはしないか、こういう心配もあります。
  39. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 特にこの点は十分検討していただきたいと思います。石炭産業というものは、日本の農業と同じ状態ではないかと思うのです。農業近代化の場合には六割、近代化資金を無利子で五カ年なら五カ年貸すという制度があるわけですから、石炭の場合にもそういう感覚で近代化資金については考えてもらいたいということを、私は特に強く要望しておきたいと思います。  それと、千二百円コストを下げていく場合、物価がどんどん上がってきておる。もうすでに七百五十円の炭価の引き下げ、これに加えて、結局二百円以上のはね返りがあるわけです。ですから、実質上すでに九百五十円程度コストを引き下げたというのが、今日炭鉱合理化の実情であるわけです。大体千円はもう下がっているわけですよ。政府の当初の計画は物価横すべりというわけですから、そういう非常に無理をしてきているわけですね。しかも資金需要はなかなか円滑にいかない。先ほどの大蔵省の答弁でも、首切りの方の資金が、早く法案が通ってもらえばその分だけ円滑にいくのではないか、プラスになるのではないかという話ですが、だから、首を切ったり賃金を下げるところに合理化のねらいを集中しているのではないか、こう私は指摘をする最大の理由があるのですよ。この点をよく考えてもらいたいと思うのです。ですからやはり近代化資金なり設備資金については、少なくとも——今よたよた歩いているわけなんですね、これは注射をするのではなくして、むしろ何か血液をその人からほかの人に輸血をするような格好で取り上げる、こういうような方向で今の政策を行なわれておると思うのですね。ですからずんずん弱まって、歩けなくなるのはあたりまえのことなんですね。ですから、石炭産業は普通の状態ではないのですから、元気のいい人でも輸血した場合には少し休まなければならぬのですから、そういう意味で特に資金問題については、国会決議もありますから、いずれあらためて詳しくこの問題は質問したいと思いますが、特段の検討を願いたいということを要請いたしておきます。
  40. 有田喜一

    有田委員長 中村重光君。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは幸い大臣が見えておりますし、合理化法の一部改正法案を中心にして、今議論された千二百円のコスト・ダウンの問題をいろいろ質疑をしてみたいのですけれども、時間がだいぶたちました。そこでそのことは他日に譲りまして、きょうは産炭地振興事業団法のことについて、先日政務次官並びに局長に質疑をいたしましたが、納得がいかないので、それから疑問の点を一つ大臣にただしてみたいと思います。  御承知の通りに、さきに三十九国会において、画期的な決議といわれた石炭危機打開の決議がなされたわけです。三党提案、満場一致の決議ということになりますと、えてして最大公約数の妥協の産物といったような、そういう形の提案、決議というものがなされるわけでございますけれども、石炭危機打開の決議案というのは、事前に各党十分に慎重に案文を作ることについても討議を重ねて、そしてあのような前向きの決議というものがなされたわけであります。従いまして、今度の四十回国会においては、石炭産業の安定のために相当画期的な法律案の提案がなされ、また予算の計上もあるのじゃないか、そうして期待を私どもは持っておったわけでございますけれども、ふたをあけてみますと、予算にいたしましても非常に少ない、また法律業にいたしますと、離職者臨時措置法というものは別といたしまして、通産省関係では、今議題となっておるこの二つの法律案、それから保安法の改正、そういったようなことになっておるようであります。合理化法の一部改正にいたしましても、決議の中に盛られた鉱区調整の問題であるとか、あるいは流通機構整備の問題、そういった石炭産業の恒久的な対策といったようなものは、法案の中には出ていない。どうひいき目に見ましても、これは首切りを中心とした合理化を強く推し進めていく、そうした内容であるというように見られるわけであります。特に私がこれからお尋ねしてみようと考えておりますこの産炭地域振興事業団、この法律は、産炭地域振興臨時措置法という法律の趣旨に沿って提案された、私はそのように理解いたしております。ところが、先日私が質疑をいたしましたのは、この産炭地域振興臨時措置法の目的の中にあった石炭需要の安定的拡大をはかっていく、このことが削除されておるわけであります。私どもは、この事業団というものは、やはりこの石炭需要の安定的拡大をはかっていく、このことがこの事業の中心であるべきだというように期待をするわけでありますけれども、このことは削られておる。どうしてこれを削ったかということを私がお尋ねをいたしますと、当初の通産省の草案にはこれは入っておった、しかし、いろいろと関係方面との折衝の結果、これは除いたのだ、しかしこれは除いたけれども、石炭需要の安定的拡大をはかっていくということは、これはできるのだし、またやるのだ、需要拡大に不可欠の問題である産炭地発電の問題にしても、これはやれる、そういったような答弁であったのでございます。しかし、この法案の中身を見てみますと、そうした答弁では私どもはどうしても満足できない。大臣はこの点に対してどのようにお考えになっておられるか、まずその点を伺ってみたいと思います。
  42. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 第一段についてですが、昨年超党派で決議をいただきました。その結果、普通の状態ならなかなか予算編成も困難なものが、でき上がりました。おそらく通産事務当局といたしましては、画期的な石炭対策を推進することができる、かように思っておるように思います。もちろん、私どもただいま御審議をいただいておりますような各種の法案なり施策等で満足しておるわけではございません。また、予算の金額等については非常に不十分であり、不満足でございます。しかしながら、とにかく新規なものが計画できる、これは非常な前進だと思います。とりもなおさず各党の御鞭撻の結果だ、かように私ども感謝いたしております。  そこで、今でき上がっております事業団にいたしましても、そういう見方が一つあるわけでありまして、とにかく一応店開きをした、これから順次内容整備される、かように考えてしかるべきだと思います。そこで、積極的にこの事業団で発電所まで経営さすかどうかという問題になるわけでありますが、すでに御承知のように、電力関係については、電力の一応の統制ができておりますし、また、これからも山元発電について積極的に協力の意思を示しております。可能な範囲のものについては、そちらに譲って毛しかるべきじゃないだろうか。これがまあ、ただいま中村さんが御指摘になりますような経過をたどって、今日参っておるわけであります。私は、今の山元発電等が不十分だ、こういう結論になれば別でございますが、ただいまのところで一応の要望には沿い得る、むしろ資金計画を豊富にしてやるならば、山元発電による火力、これは将来も見込みがあるものだ、かように実は考えておりますので、事業団があえてそこまで手を出さなくてもいいのじゃないか、実はかように思っておりまして、むしろこの炭鉱地自身で新しい事業を導入する、こういう事柄にこの事業団が働きかけることが、労務の移動等の面から見てもいいのじゃないか、あるいはまた炭鉱ででき上った都市、市町村にいたしましても、やはりその場所に事業を持ってくることが町村の疲弊を防ぐことになるんじゃないか、事業団は幅広く仕事をするように指導してみたらどうだ、そういう意味で市町村なり、また関係の方々の御協力を願うべきじゃないだろうか、実はただいまさように考えておるのでございます。私はこの産炭地の振興あるいは炭鉱合理化等につきましても、これがはたして可能かどうかわかりませんが、炭鉱経営者はもう一から十まで全部炭鉱経営に終始する、ここにくぎづけするということはどうもまずいんじゃないのか、もう少し幅広く経営の範囲の拡大もできるんじゃないだろうか。これは現にドイツなどでも、炭鉱経営者が電力を作ったり、あるいはまた石油にまで手を出しておる。やはりどんどん範囲を拡大していって、従業員をその方面にも吸収していくというような処置をとられるわけであります。私は、地方の衰微というようなことともあわせ考えると、もう少し経営の範囲が拡大される、その適当な職種をやはり考えてもいいんじゃないか、そういう方向そのものにやはりこういう事業団等が協力する余地が多分にあるんじゃないだろうか、こういうふうに私は相当幅広く考えているつもりでございます。他の面で経営可能な方は、その行政指導と相待って、それを進めていく、そういうことが望ましいんじゃないかなというような気持がしております。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと関連して。今の炭鉱経営者が幅広くという話は、何々鉱業会社という、その企業は確かに安定します。しかし、これは非常な危険性があるんですね。炭鉱本来の業務から、だんだん乖離する可能性があります。会社自体はよくなるけれども、日本の石炭産業はよくならぬという、こういう事態が起こる。それは石炭に関連をする点はいいでしょう。しかし観光なんかにどんどん金を出したら、これはやっぱり問題が起こりますよ。今経営者のモラルの問題が非常に出ておるのですね。とにかく今の経営者はモラルがないということを言われておるのですよ。この問題とやっぱり関連があると思うのです。私は幅広くやるということを否定はしません。しかし本来の業務を放擲して、炭鉱に金を貸したつもりでおったら別のところに投資されておったというように、金にひもはつきませんからね。こういう事態も起こるんですな。問題は、たとえば炭鉱労働者雇用を吸収するための事業であるとか、あるいは石炭産業をさらに安定さすための事業であるとか、これが必要ではないかと思うのですが、一つその限界を、抽象的でけっこうですが、お示し願いたい。
  44. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もちろん本業を忘れていくような事柄については、事業団もなかなか協力はしにくいと思います。私が申しますのは、非常に極端なことを申すと、石炭合理化を進めていくと必ず過剰人員というものが出てくる、その過剰人員がその土地で吸収されるならおそらく移動の問題はございませんから、これは一つのいいことじゃないかと思う。しかしながら職業の選択の自由がございますから、離職した人が、少々離れても他の場所へ就職するという方もありましょう。またもう一つは、一つの山によってその土地の繁栄というか、それが結びついておる。そういうことを考えると、極端になると、山自身が閉鎖してしまう、そうすると、やはりかわった事業がその土地に興らないと、その町村は疲弊してしまうということです。だから石炭自身ももちろん大事でございますから、これはもう安定産業、基礎産業たらしめるこの努力はいたしますが、個々の具体的な場所については、その山自身も閉鎖しなければならないような場所も出てくる。しかも従業員は全部よそへ移らざるを得ない、あるいはまたその町自身もそれで疲弊してしまう、それについてやはりかわったものを一つ考えていく。これは国もそういうかわったことを考えますが、考えるのは国ばかりじゃない、事業者自身も考えてしかるべきじゃないかということを実は私申し上げたのです。りっぱな山があって、その山の経営に金さえつぎ込めば、また機械さえつぎ込めばりっぱに成り立つ山があるにかかわらず、他の方がもっと魅力があるからといって、その山を捨ててよその仕事にかかれ、かようなことを申すわけじゃございません。だからそういう意味で、この事業団はやはり幅広くやるべきじゃないか、また山自身に見込みがあるなら、甲の経営者がそこを見捨てましても、必ずそれにかわった者が出てきて、その山の経営をするに違いない。だから石炭ということはもちろん大事なことでございますし、産炭地振興とまで銘打っておるのですから、産炭を第一に考えるというのは当然です。産炭地振興という限り、石炭を出すのが唯一の産炭地振興じゃないか、これは非常にわかりいい議論だと思うのですよ。しかしそれができない場合に、ただいまのような必要性ができてくる。それがやはり事業団がやるべきことじゃないか、かように申し上げたのであります。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 今大臣が言われた、相当広範囲に事業を推し進めていく、あるいはまた、この法案の中にありますが、いろいろ他に委託させてやらせるもろもろのことが考えられておるとは思うのです。ところが私がこの法案目的の中で指摘いたしておりますのは、今議論されたこととも直接的に関係を持ってくるのです、運用でどうにでもなるじゃないかと言われますけれども、やはり法律というものが一つできてくると、その目的に反するようなことをやると、いろいろ罰則の問題等にもそれはぶつかってくる、また政府問題化してくるということもあるでしょう。そう考えてみると、この産炭地事業団法というこの法律も、ただ石炭を掘るという事業をはかっていくことだけが目的ではないのであって、ほかの事業もやってその地域の振興をはかっていく、そうして雇用対策といったようなこともやるのだ、それはそれでよろしいわけです。ところが肝心の産炭地振興、石炭需要の安定的拡大をはかっていくという目的そのものをこれからなくしてしまうということになってくると、これは問題があるじゃないかということを私は言っている。それをなぜになくしたのか。ところが、やれるからこれをなくしたのだ、なくしてもやれるのだ、こういうことでは、積極的に産炭地振興をはかっていこう、さらに、産炭地振興をはかっていくためにこの事業団を作るという、その意欲というものが欠けておるではないか、このことを私は強く指摘をしておるわけです。まず、その点を一つはっきりお答え願いたい。
  46. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは私、中村さんの言われることがわからないじゃございません。御承知のように、産炭地発電というものをどんどん進めております。また電力会社も、そういうことで積極的に協力しておる。これが事足りないという事態になれば、今言われるように発電をやること必ずしも悪いとは申しません。申しませんが、それぞれの事業分野がございますし、ことに電力というものは各地域に統制的な会社を作っておりますので、それをして計画を進めさすことが需給計画が立つゆえんだ、こう実は思っております。この分野はやはり電力会社をしてやらせることが望ましいんじゃないか。すでに御承知のように、九州なら苅田、若松あるいは大村、最近はまた佐賀あるいは大牟田、次々に火力発電計画があります。北海道においても、釧路その他の地域においてそういうものを計画しておりますから、これが地元で使われるということになる。そういう計画もあり、どうも電力会社にまかしたら思う通りにやらない、だからおれの方で電力を作って、電力会社に買わしてやる、こうまで進むのはどうかと実は考えておるわけであります。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今釧路の話が出ましたが、釧路は火力発電をやるわけですか。
  48. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そのつもりでおります。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、三十七年度の計画に入るわけですね。
  50. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 この三月の末に審議会を予定しておりますが、それにはまだ入っておりません。しかし今大臣がおっしゃいましたのは、通産省の方針として、ぜひやらせたいということで、今非常に強い行政指導をしておるわけでございます。たとえば九州の佐賀火力、これは今までずいぶん問題があったわけでございますが、やっとこのほど通産省のあっせんが功を奏しまして、通産局長室で電力会社の社長と佐賀県知事と共同発表をされたということで、これは需給計画等を考慮して、十月の審議会にかけるということを正式にお互いに確認し合ったわけなんです。釧路につきましても、これはまだそこまでいっておりませんが、われわれといたしましては、何とか十月の審議会にかけられるように——実は電力会社自体も、釧路方面の需給状況から考えまして、三十九年の三月の審議会には出したいということは今まで言ってきたわけであります。しかしこれはあまり長いのでもっと縮めぬかということで、今のところ、三十八年でどうだというくらいのところまできているわけであります。これは御承知のように、北海道電力はまだ全体で八十万キロくらいしか出力がないわけです、電発も全部入れまして。その中で今度、非常に需給の苦しい新江別十二万五千キロといったようなものも作ることになっております。現在すでに新江別の方でもいろいろやっておるわけでございます。そういうことから、資金繰り等も非常に苦しいということで、資金の事情さえ許せば、最可及的に釧路の方にも取りかかるということは、これは会社も考えておるでありましょうし、われわれ公益事業局といたしましては、極力ねじを巻いて、この十月の審議会には出せるというようなところまで持っていきたいということで、せっかく努力中でございます。きまったというわけではございませんが、その方向で微力を尽したいと考えております。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょうど釧路炭田は、大体三十七年度に決定していただきますと、それが稼働いたしますころには、三百万トンくらいの精炭になるわけですね。三百万トンといいますと、低品位炭がかなり出てくるわけです。釧路のような石炭は、どちらかといえば、かなり長距離輸送をしなければならないのですから、悪い石炭を輸送するというのは、日本経済から見るとマイナスなんです。あそこの需要を見ると、大体五億キロワット・アワーくらいあるわけですね。ですから、七万五千キロワット・アワーの発電をやれば、大体需要がまかなえる、こういうことになる。すでに水力の関係で事故が起こりまして、ちょうど正月であったものですから、被害は比較的少なかったのですが、それでも一億を優にこえている被害が起こっておる。ですから、精炭のいいのを輸送して、悪い石炭は地元で消費するという体制が全国的には必要ではないか、それがためには、やはり今長距離輸送をする関係で十分な活用ができていないし、また比較的低品位炭も輸送しなければならぬ、こういう状態にありますから、早急にそれをきめてもらいたい、こう要望しておきたいと思います。
  52. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは、偶然にも皆様と私ども政府側の考えとが一致しておるようであります。大へんしあわせに思いますので、ぜひともこれは実現するように、最善の努力は払っていくつもりです。
  53. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう一つ、電力の場合は、初めから第一期、第二期と工事の計画がありまして、土地の造成についても最初からそういう計画をしておるのですね。ところが電発の若松の場合は、西日本火力は第一期、第二期と計画が続いたわけですが、電発関係の場合は一期工事だけ計画をして、二期工事にかかるまでの間にかなりブランクが今ありそうなんです。そうすると、結局金利の面からいっても、施設の計画からいってもむだになる。ですから、これはやはり遠賀川の汚水処理と関連をして、そういう遠賀川の改修、それと一緒に合わせて早急に計画をしてもらいたい。と申しますのは、電力会社すなわち九電力の入っている場合は、自分のところで使いますから、比較的まま子にしないのですが、今、電発の関係は、九電力と関係がないというので、比較的まま子にしておる。ですから、先に生まれた子があとになって、あとから生まれた子が続いて二人も生んだ、こういう形になっておるわけですよ。これも私は全体の計画から見ると、やはりマイナスの面があるのじゃないか、こう考えますから、早く汚水処理の計画と一緒に推進をしてもらいたい。
  54. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 遠賀川の汚水処理は、もうずいぶん長くいわれております。もう多賀谷さん御承知のように、今の総理が通産大臣時分非常に積極的な計画を進めたわけでありますが、なかなか思うように進まない。それほど実は困難な問題である。これは地方の方であられるだけに、よく御承知の通りであります。今言われますように、この大目的はやはり産炭地発電といいますか、せっかく出ている石炭を使うこと、また使うならばもりと掘り出せる、こういう状況にあるのでございますから、いずれにしても緻密な石炭火力発電計画を立てることを一そう私ども検討を進めて参りたいと思います。その意味では、通産省は、それぞれ局は違いますけれども、非常に連携がよくとれております。十分御期待に沿うことができるのじゃないか。一そう努力するつもりでございます。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 火力発電の問題は、いろいろ今質疑が行なわれたのですが、私も、この事業団に火力発電はぜひやらせなければならぬ、そういう窮屈なことを言っておるわけではありません。また決議案でも、そのことはぜひ事業団にやらせなければならないんだときめつけていないわけです。しかし産炭地振興、こういうことで石炭需要拡大をはかっていくんだということを強くこの決議は主張しておるわけですね。それに基づいてこの事業団というものは作られた。ですから、先ほど大臣が御答弁されたように、産炭地という名称がついている。そこで、石炭生産であるとか需要という問題を推進をしていくということは、これは事業団としては当然なことだ、こういったような御答弁であった。かつまた、先日の委員会において私の質問に対して、政務次官並びに局長もその通り御答弁になった。この事業団で石炭需要確保していく、これに伴って当然生産拡大をしていかなければならぬ。そういう関連するものをこの事業団は強力に、積極的に推進していく役割を果たす、こういうことであるというように確認してよろしゅうございますね。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今の通りでいいと思います。そこで私は、いわゆる産炭地に興る事業について、なるべく石炭を使うということを実は勧めておるのです。けれども、なかなか経営者自身が思う通りにいかない。産炭地の学校で、給食用に石炭を使わないでガスを使ったり、あるいはまた、産炭地の近くにできる新しい工場が、わざわざ港から相当奥まで重油を取り寄せて、そうしてその工場のモーターを動かす、こういうようなものがあるのですね、これはやはり政府自身が気をつけなければなりませんが、また炭鉱経営者自身が炭の売り込みの努力もいたしましょうけれども、やはりみんながこの産炭地振興というか、石炭産業を育成強化するという、そういう気持にならないと、なかなか効果が出てこないと思います。具体的に申しますと、中村さんも御承知のように、北海道で製糖会社ができる、製糖会社がわざわざ重油を使う、私など非常に憤慨した方で、そんなところで重油を使うなら、そんな製糖会社は作らぬでもいいとまで言った次第です。だからみんながそのつもりになってやれば、確かに経済性から見ても、山元に近いところの工場なら安いのです。ただ重油を使うことがいかにも近代的であって、石炭を使うのは旧式だというような気持がどこかにある、これはとんでもないことだと思います。そういう意味で一般のPRが非常に大事だ、こういうふうに思いますので、これは全部が監視するようにしたいと思います。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、あとでいろいろ問題を起こさないために念を押しておきたいのですが、この十九条で業務の範囲をきめておるわけです。ところが三十六条で、この十九条に示す業務以外の業務をやったならばこれは罰則規定がある。この十九条を見ると、石炭需要安定的確保をはかっていく事業というものは、ここでは行なわれないのです。先ほど大臣が答弁された、いわゆる石炭産業というものがなくなってしまった、そしてその他の鉱工業を興していく、そういうことのみにこの業務が限定されておるということです。これ以外のことをやったならば罰金三万円を課せられる。それから十三条によると、理事長とか理事は非行行為、法律に反する行為をやったというので首を切られてしまう、こういう規定になっておる。これはまことに問題があるわけです。これはどういうことでそうなさったのか、この関係はどうなのか、その点を明らかにしておいてもらいたい。
  58. 今井博

    ○今井(博)政府委員 法律の第十九条に業務の範囲をきめておりまして、その範囲外にわたるならばもちろんこれは罰則の適用があるわけであります。従って、それ以外の仕事をいたします場合は、法律改正を必要とするわけであります。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 そういうでたらめな答弁では困る。事業団はこういうことをやることを目的とするのだという法律を、あなたはお作りになった。その目的に基づいて、十九条の「業務の範囲」をお作りになった。この業務以外のことをやるならば、三十六条による罰則というものがあるのですよ。まだこの事業を遂行もしないでおいて、肝心かなめの目的の中においては、私がいろいろと指摘いたしましたような石炭需要安定的確保はやるんだ、この目的の中に入っていなくても、当然事業団の業務としてやるんだし、やれるんだと御答弁になった。また私が確認をいたしましたように、大臣もその通り御答弁になった。それ以外の業務をやるならば、法律改正すればいいのだというようなことでは困る。全然予測しないような事業が将来興るという場合は、ただいまのあなたの答弁でよろしいわけです。そうじゃないですよ。これは当然やるんだということがはっきりしておる。この事業団の主たる仕事であるということを御答弁になっておる。その御答弁になったことが、三十六条においては罰則規定という形において排除される、こういうことになる。法律改正すればやれるんだというようなことでは、これは問題にならぬですよ。どうです。
  60. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 中村さんは何か具体的に、どういう仕事をやったらということでもお考えになっていらっしゃるのかと思いますが、ただいま申し上げましたように、この事業団で計画しておるもの、これはその通りやってもらわなければならない。第一条に書いてある目的と十九条の範囲が——十九条は非常に狭められておる、こういうことを御指摘になって、だから非常に拡大したら困るだろう、こういうことなのでしょうが、今予想しておる面から見ますと、一通り仕事はできると思っております。また発電事業そのものは、なるほどこれはやらないことになっておる。何かこれにあえて抵触するようなものがございますか。一応こういう事例がある、これはどうだというような具体的な問題があればともかくですが、私は一通りこの一条と十九条を関連して読んでみて、今まで予想されているものは一通り入るようになるのじゃないかと思いますが、何か特に不都合なものでもございましょうか。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 私は大臣の今のお答えは、私の質問に対する反論と受け取ります。先ほど私は、あなたといろいろ質疑応答をかわしたのです。そして産炭地振興、石炭需要確保をはかっていくのだということをあなたは御答弁になったのです。それは間違いないはずです。そうすると、その目的に基づいて当然事業というものは生まれてこなければなりません。具体的な問題を言えと言われるならば、石炭需要をはかっていく、そのためには石炭生産拡大もはかっていかなければならぬ、それに関連しては、流通機構整備の問題等いろいろな問題もこの事業団において行なわなければならぬという形になってくる。この十九条の業務の範囲は、もう石炭というものを離れて、過去においては石炭地域であった、ところが買い上げであるとかその他いろいろな形において、もう石炭産業はそこからなくなってしまった、そこで石炭以外の鉱工業をそこで興してこなければならない、そういう考え方の上に立って、十九条の業務の範囲は規定されておるということなんです。そうすると、先ほどいろいろ論議した問題とこれは異なってくるのじゃないか。今あなたは私の質問に対して、あんた具体的な問題があるかとおっしゃるなら、それじゃあなたはそういうことを全然お考えにならず、石炭生産であるとか需要確保というようなことは全然お考えになっておらぬのですか、こういうことを私はあなたに反問しなければならぬことになる。先ほど来いろいろ御答弁になったことは、うそなんですか、こういうことになる。
  62. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは、うそは申しておりません。鉱工業の誘致ができることは、その石炭の山自身にとって必ずしあわせだと思います、これは先ほど電力の例でもお話がございましたが、また私も例を一、二申しましたように、その土地に鉱工業が誘致されるならば、その山元の石炭は必ず使われるという方向だと思うのです。別に先ほど来申し上げたことと矛盾しておるわけではございません。私が申し上げたいのは、石炭直接の問題としては、今日いろいろの手を打って、石炭のために特別な融資をしたり、あるいは近代化合理化推進させたり、いろいろやっております。非常にわかりやすい例を申せば、日本の石炭産業というものは産地と消費地が非常にかけ離れておるということがいつも問題になりますが、産炭地自身で適当な鉱工業が誘致されるようになれば、これは産炭地自身に事業が興るのですから、炭は必ず使われる、こういうことになるだろうと思うわけでございます。そういうことをやるのが実はこの事業団が本来の目的とするところだ、かように実は思うわけでありまして、私が先ほど来申しておることと矛盾しておることなりその他のことは別に申しておらないつもりであります。さっき私が申した言葉が、あるいは誤解を受けておるかもわかりません。一番最初、産炭地振興ということを私聞いたときに、産炭地振興なら石炭さえ出ればいいのじゃないか、そのためにいろいろやっておるんだ、ところがその炭が出てこない場合にその地域が困る。それを産炭地と実はいっておる。あるいは炭が出ても、距離が非常に離れておるために十分の利用ができない、それが問題なんだ、そういう意味で産炭地振興ということを実はいわれておるわけでございまして、中村さんの言われることと私の言うことと、別に矛盾はないように思います。だからこれは、その地区で鉱工業が興るようにする、そうすると山元自身で使われる。先ほど来山元発電を御指摘になりましたが、これなどもやはり、山元で石炭が使ってくれれば両方がいい。これはあえて発電所には限らないのです。あるいは製糖会社の例も申しましたが、あるいは学校の給食用の燃料炭のお話もいたしましたが、その土地自身で石炭を使ってくれる、それにはやはり鉱工業を誘致することが先じゃないか、こういうことを実は申しておるわけであります。
  63. 中村重光

    中村(重)委員 それじゃ、大臣が石炭需要ということをそれほど広い範囲で解釈なさるならば、なぜに産炭地域振興臨時措置法の目的にあった石炭需要の安定的拡大というものをこの事業団の方においては削られたのですか。産炭地域振興臨時措置法の目的の中に入っておったのをわざわざ削るから、こういう疑義が起こってくるのです。だからこれは、確かに落ちているのなら落ちている、委員会においてこの点措置してもらいたい、こういう御答弁があれば——これはそう言われぬでも措置しますよ。しかし、あまりそういうようにいろいろ強弁なさるからこういうことになる。
  64. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 この法案を作ります当初においてどういう案ができていたか、これは私事務当局から説明させますが、私どもが今日まで取り組んでおるのは石炭産業の安定、あるいは基礎産業としての基礎を作る、これはあらゆる面で所信は表明をいたしております。表明をしておりながらも、なお十分の効果を上げておらない。それが昨年の超党派の決議を見たゆえんだと思います。その一つ一つの具体的な案として、ただいま産炭地域振興事業団というようなものが出ておるわけです。あるいは、鉱業保安法というようなものも一面に出ておるわけです。これは今の言葉があるとかないとかいうことでなしに、十分に一つ御理解をいただきたいと思います。
  65. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今、中村委員も申されたのですが、こういうことなんです。今年度の予算要求で、産炭地事業団は揚地発電をする、こういう予算要求をしたけれども、電力会社といろいろ話した結果、三百万トンの石炭を引き取るということで、産炭地事業団は揚地発電をしない、こういうことに経過として予算折衝でなっておるわけです。そこで産炭地事業団の内容としては、振興法からいくと、産炭地発電という面が強く出ておるわけです。そういうことも予想されているわけです。たまたま事業団が出てきた場合に、もう産炭地発電は一切やらぬで、今、電力の系統というものがあるわけだから、そこでやるのだ、こうなっておるわけです。そこでわれわれが主張するのは、もちろんそういう原則は認めるけれども、発電をしないということはことしは認めるけれども、石炭と電力とのこれからの話し合いがいろいろあるではないか、そういう場合に事業団はいかなる発電もしないのである、こういうことはどうか。だから、今年度やる計画のあることはけっこうだ、将来またそれが順調にいけば問題ないでしょうけれども、その場合に積極的に予算をつけてやる、今打ち出すのではなく、やり得るということをこの事業団の事業範囲に含めておいて、あと認可するのは通産省がやるわけですから、事業計画は全部通産省がやるのだから、その前の根拠を持っていなければ、事業団というものは弱いではないか、こういうことをわれわれは主張して、実は前に私から石炭局長に質問しておるわけです。この点はペンディングで残っている問題なんです。通産大臣としては、こういう調整をはかったり、いろいろな将来の展望に立って考える場合に、今すぐやるということを言わなくても、やり得る根拠だけは持つ必要があるのではないか、こういうきわめて親切な質問をしておるわけなんです。この点いかがですか。
  66. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 非常によくわかりました。当初産炭地発電あるいは揚地発電、いろいろな議論をいたしました。これは御承知の通りであります。電力会社自身もそういう事柄で、せっかく自分たちが発電しているのに、第二の電源開発みたいな会社ができることはあまり好まないというようなことでございます。いろいろ行政的な折衝をいたした結果が、自分たちの方で三百万トンの引取長期契約をする、これで十分信頼していただけるだろう、こういうことで、しからば私どももそういう方向で指導していいじゃないか。先ほど、通産省内で企業局と石炭局の間の連絡が十分とれておると言いましたのも、そういう意味なのであります。そういう意味で一応の見当はついておるので、ただいまのような法案の御審議をいただいておるわけでございます。私はこれを非常に強弁して、あえてそれを作らなかったことを落度でないと申すわけでございませんし、ただいまのような経過でこれをはずした、この点を御了承いただきたいし、またただいまの状況ならば、みずからが発電計画事業をやらなくても、石炭需給の点では御心配はかけたくて済む、こういう感じが実は強くいたしておるのであります。将来非常な必要性に迫られれば、これは先ほど今井局長から御説明いたしましたように、その事業を追加することも必要だと思います。ことしなどはわずかな金額でございますし、まだようやく店を開くという程度で、その中身までとやかく言うのにはちょっとおもはゆい感じがございます。とにかく一応これで店を開かしていただいて、その運転上からの必要に迫られたときに、法律そのものも必要なら改正しますし、資金的にも十分なものをつけていくというようにしたいものだ、かように思っております。
  67. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 それで、この業務範囲を読むと、解釈の問題なんですが、若干無理して、やることもできるんだ、こういう解釈が成り立つではないかという感じがする。だから法文を修正するとか改正するとかということは別にして、解釈でやることもできるのだ、しかしそれは主たる事業としてやらないのだ、よほどのことでなければ、事情変更がなければやらないのだ、解釈としてその程度の解釈のできるようなものでなければならぬではないだろうか。この事業団を作ったんですから、来年度も予算がつくわけですが、当面の事業としてやらぬということは当然言い得るわけだが、解釈からいってこれはやり得るのだ、しかし当分はやらぬのだ、よほどの事情変更がなければやらぬのだ、こういう意思統一が必要ではないかという考えなんですが、いかがでしょう。
  68. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 それは、いろいろ法文の作り方があろうかと思います。しかしこの種のいわゆる政府機関は、仕事の範囲を明確にして、そして民間事業との競合を避ける、そういう建前が実は望ましいのじゃないか。この辺になりますと、あるいは政党の立場の主張もあろうかと思いますが、そういう意味で私どもとしては、なるべく明確に書くという考え方でございます。
  69. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は大臣、電源開発促進法を審議いたしましたときに、政府提案では電発は水力のみやる、火力は九電力でやるという考え方であったのが、国会で修正して火力を入れたのです。そして若松に、電発が低品位炭を初めて使ったから、西日本火力ができたのです。その経緯を見ると、そのとき修正された議員に先見の明があったことを喜ぶわけです。電力が今資金がなくていろいろお困りの状態である。それは石炭の方がなお困った状態ですが、しかし道を開いておくことは必要じゃないかと思うのです。ですからむしろこれは、政府でなかなかむずかしければ、われわれでやりますけれども、石炭需要拡大というのは、あるいは石炭需要確保というのは、率直に言うと火力発電しかないですね。ほとんど一般炭は今後は火力発電需要を待つのみです。原料炭は鉄鋼その他ありますけれども。私は率直に言って、電気会社石炭会社が合併すればいいと思う。そのくらい一般炭は電力にその需要を仰ぐわけですから、産炭地振興法が石炭需要拡大ということを、鉱工業の急速な発展のほかに、特に振興法の中に目的を二つ入れた。この点を考えると、この産炭地事業団の方は一つの目的だけで生きておる、両輪のうち片一方だけでいっているという形ですね。ですからこれも一つ、需要拡大の面から火力発電というのを入れられたらどうか、こういう皆さんの御議論です。それに対してどういうようにお考えですか。
  70. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 想像されるところから何でも書いておけばいいじゃないかということよりも、もう一歩進めて、これは必要だから書いておいたらどうか、こういうことですが、問題は関係業者の積極的協力というか、これが望ましいことだと思います。電源開発の場合もここで修正されて火力発電ができるようになったからいいとおっしゃいますが、おそらく修正されてすぐはそういう事態ではなかったと思います。おそらく相当の年月がたって、それぞれ関係業界の協力を得るということになって、こういうようになったと思います。今回ようやく三百万トンの長期引取契約をしたということは、これはよくやったと実はほめていただきたいところなのでございますが、そういうこともありますので、やはり協力ができるような態勢が望ましい、実はかように思っておるわけであります。お前の方がどうしても引き取らなければ、こっちはどんどんやるぞ、こういうことになりますが、それでは、やって、その電力を買ってくれないときにどうなるのか、電力を作っただけではどうしようもないのでありますから、やはり今ある九電力の線に乗せなければならないし、そして今度は、石炭ではなくて電力としてそこへ売らなければならない。そういうようなことなど考えますと、やはり関係業界の協力を得るということ、これが実は望ましいことだと思います。あえて私皆様方の審議なさることについて異を唱えるわけではございませんが、行政の面から申しますと、関係業界の協力を得ること、これが望ましいと思います。特にその点を一つ御考慮いただきたいと思います。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 大臣が第一条の目的にはずしたということの正当性をあまり強く主張されると、大いに議論をしていきたいと思いますが、国会石炭危機打開の決議の趣旨を十分尊重してこの事業団というものを作った、こういうことであるわけですから、これから先は委員会がどう修正するか、委員会の権限なわけです。ただ私が非常にこれを疑問視し、問題にしましたのは、先ほど岡田委員から十九条の業務の範囲というのは、無理に解釈すると、そうした火力発電所というものの事業もやれるのだ、そういうことであったわけですか、第一条の目的からわざわざはずしたということ、そこから十九条の業務となっているところが実は問題になりますから、私はこの点を強く主張したわけです。ですから大臣の先ほどの御意見、決議の趣旨を尊重して、この事業団をやって、それに乗っているわけですから、目的のことについては、与党の人たちもみんな聞いている、ここで修正なら修正というようなことでいく以外に——この点については、これ以上の議論はやってもしょうがないと思います。  そこで、資本金は五億円、先日お尋ねすると、財政投融資十億で船出するのだ、こういうことであったわけですね。ただいま大臣は、非常に金額が少ないということをおっしゃった。全くこれは少ないです。せっかく決議を尊重して大臣が、この事業団を作るためには、第一次査定から落とされたこれを復活して、そうしてこういう形になってきたわけです。この十五億円の出資というものを、もっとこれはふやしていくべきではなかったか、こういうふうに考えるわけですが、予算は衆議院の方は通過をして参議院にいっておるわけです。いろいろこの事業のことについては、こういうこともやりたい、またやらなければならないという積極的な検討もあっただろうし、具体的な検討もあっただろうと思うのですが、それらの点についてどういう気がまえで財政的な問題とあわせて対処していこうとするのか、それらの点についてお聞かせを願いたいと思います。
  72. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 せっかく作りましたが、資金的に非常に貧弱だというおしかりごもっともでございます。私どもも実はこれで満足したわけではございません。ただ新しいものがこうして生まれたということで、将来の発展性に期待をかけて、今回はわずかな金額で発足することに決意いたしたわけでございます。ところで、先ほど来いろいろの御意見が出ておりますが、今の疲弊する産炭地、そういうことに思いをいたしますと、おそらく中小企業に対する融資というものが大きなものになるのではないか、そういう意味の指導をこの際すべきではないかと、いろいろ実は考えておるわけであります。他の施策ともあわせていたしますならば、相当な効果を上げ得るのではないか。たとえば筑豊地方に工業関係の団地ができる、こういうものとあわせてこれが使われれば、おそらく役立つのではないか、こういうふうなことも実は考えております。何かとできたものもございますから、そういう意味で工夫をして、その地方事業を興すという、そういう一つの手づるにぜひともしたいものだ、かように考えております。
  73. 有田喜一

    有田委員長 中村君、だいぶ時間がたっておりますので……。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 時間がだいぶたちまして、委員長からお聞きの通りやかましく言われておるのですが、委員長に協力する意味でできるだけ簡単に御質問申し上げたいと思います。  十九条の業務の範囲についてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのですが、先日の蔵内委員の質問に対して、工作物の建設に対しては、ダム等を考えていない、こういったような御答弁であったように記憶いたします。そうしますと、肝心の工業用水というものはどう考えておられるのか、それから土地の造成ということに対しては、土地の確保というようなことも考えておられるのか。それらの点が明瞭でありません。かつまた、この一号の面からだけで申しますと、きわめてこの事業というものは限られた範囲だ、こういうことになってくるわけですから、この点について詳細にお答え願いたいと思います。
  75. 今井博

    ○今井(博)政府委員 この前も御答弁いたしましたように「これと関連を有する工作物を建設し」、こういうことでございまして、土地を造成し、これと関連を有する工作物ということになりますと、もちろん水の問題も、非常に広く解釈すれば入るという解釈もあるかもしれませんが、これは法制局でこの解釈を統一いたしましたときには、そこまでは考えておりませんで、たとえば、御指摘のダムをここで作るという問題は、この中には実は入らない、こういう解釈になっております。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 それは、解釈の問題ということじゃないんですよ。工業用水をどう考えているのかというのですよ。これは決議の中にも大きく取り上げている問題です。少なくとも鉱工業の振興をはかっていくということになると、水とは切り離せない問題なんです。そういう法制局との、この法案を作ったときの解釈の問題という消極的なことであってはなりません。まずあなたの方では、その問題をどういうように考えているのか、どう解釈しようとするのかということが問題です。
  77. 今井博

    ○今井(博)政府委員 産炭地振興に工業用水が非常に重要であるということは、十二分に承知いたしております。しかし工業用水の問題は、御承知のように非常にむずかしい問題でございまして、今まで工業用水をやる機関としましては、一応府県並びに市町村、自治体がその水の問題はやるということになっておりまして、この場合におきましても、産炭地振興上必要な工業用水につきましては、調査費を十分につけまして、それででき上がった計画については第一次的には府県、市町村でこれは極力やっていただくということに実は考えております。そのために必要な地方債の発行については、これは自治省とも相談しまして、地方債をできるだけ確保できるように話し合いをいたしております。ただ問題は、そういうことでは水資源の確保というものが非常に困難だというふうな事態になり、そういう計画ができ上がって参った場合には、この事業団でそれをやるかやらぬかという議論は当然に出てくると思いますが、現在は工業用水はまだ全部調査の段階でございまして、まだはっきり結論が固まっておりません。また府県でも、それは自分でやるというつもりで調査をいたしております。われわれとしましては、事業団の出発にあたりましては、一応土地の造成に関連する工作物に限定いたしまして、水の問題につきましては、これは非常に複雑な広範な問題がございますので、いずれ各方面ともいろいろ相談いたしまして、話を十分固めてから、事業団でやるならやるというふうに実は持っていきたい、その方が結果がいいと私は考えております。
  78. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように、水の問題になりますと、通産省がいわゆる工業用水の確保はいたしておりますが、やはり建設省関係あるいは自治省関係と、関係省もいろいろ拡大して参るわけでございます。工業用水の確保の大事なことは、御指摘の通りであります。産炭地振興事業としていろいろな、非常に広範なものが考えられます。その中の一部を、事業団として今回取り上げているということでございます。先ほど来お話しになりますのは、今一応私どもが考えた狭い範囲の事業計画内容では、必ず将来行き詰まるだろう、こういう意味から、御意見が幾つも出ておると思います。確かに将来、産炭地事業団がいわゆる振興事業全部に関連することができれば、これは問題のないことでございますが、今回の法律制定の過程等において、省内においては他の局で一応責任が持てるところはそちらへ譲るとか、あるいは、他の省との関係のあるものはできるだけ避けて、話をまとめやすくした、こういうことで、御不満のあるところは先ほどの政府の答弁で御理解いただけるだろうと思います。もちろんこれが将来ともくぎづけになるものとも思いませんが、今回一応始めるのには適当な規模のものを考えた、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 工業用水の問題等も、各省にまたがるものをいろいろやって一本の法律にまとめてきた、それほど強力にやっていかなければならぬ、こういうことであると私は思う。産炭地振興の問題等も、私どもは積極的な意欲を持って取り組んでもらうのでなければならぬと思う。そういう面から工業用水という問題をこの事業団の業務からはずすことについては、慎重に検討していかなければならぬ問題であると思います。それらの問題と、また退職資金の問題等いろいろ質疑をしなければなりませんが、一応次に質問を留保して、終わります。
  80. 有田喜一

    有田委員長 次回は明後十五日午前十時から理事会、十時半から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会