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1962-03-14 第40回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十四日(水曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       安藤  覺君    愛知 揆一君       井村 重雄君    池田 清志君       宇都宮徳馬君    齋藤 邦吉君       椎熊 三郎君    正示啓次郎君       竹山祐太郎君    床次 徳二君       猪俣 浩三君    稻村 隆一君       黒田 寿男君    野原  覺君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    森島 守人君       横路 節雄君    井堀 繁男君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月十四日  委員宇野宗佑君、帆足計君及び横路節雄君辞任  につき、その補欠として井村重雄君、猪俣浩三  君及び野原覺君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。   〔「総理大臣はどうした」と呼びその他発言する者あり〕
  3. 森下國雄

    森下委員長 ちょっとお待ち下さい。——それでは、穗積七郎君、質疑を願います。
  4. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは、特に、国際情勢一般について、その中で最も大事な日韓会談についてお尋ねをしたいと思って、理事を通じて池田総理の御出席を了解を得ておったのですけれども総理がお見えにならない。これはあとまた今後も総理出席問題については与党理事並びに委員長責任を持って約束を守っていただきたいということをあらかじめ申し上げておきます。  時間もありませんから、総理あと出席される予定ですから、それを見込んで総理に関する質疑あとにいたしまして、最初外務大臣お尋ねをしたいと思います。  外務大臣お尋ねいたしますが、日韓会談が、崔外務部長官がやってきて、十二日と今朝と二回すでにあなたと正式な会談をなすったようですけれども、そこでどういう問題が話され、どういう進展を見ておるか、それをまずありのままに報告をしていただきたいと思います。
  5. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国側から崔外務部長官が参りまして、双方で五人ずつ出まして、十二日朝九時から十二時少し過ぎまで会談をいたしました。また、今朝、八時半から約一時間という予定でございましたが、少し開会がおくれまして、八時四十五分から九時半まで一時間足らず会談をいたしました。会談内容は、特に詳細に御報告するということは、会談の性格上できません。外交上の常識でございまして、従いまして、逐一申し上げることはできぬのでありますけれども、従来日韓会談において懸案になっておりました、議題となっておりました日本韓国開請求権の問題、それから在日韓国人法的地位の問題、それから李承晩ライン、いわゆる平和ラインというものを撤廃して漁業協定を結ぶ問題、この三つについて話し合いをいたす、そこで、何から議題として取り上げるかということで、請求権の問題を取り上げる、なお、請求権の問題には船舶の問題と文化財の問題というものも入っておるのでありますが、一応一般的な請求権の問題、それから議論をする、こういうことになりまして、私の方から十二日には主として日本側考え方を述べ、本日は韓国側考え方を聞いた、こういうことであります。
  6. 穗積七郎

    穗積委員 まあ、これからだんだんと交渉の経過、内容についてお尋ねいたしますが、最初に御注意申し上げておきます。  政府は、ややともすると外交権を振り回されまして、交渉の途中であるということで、もうすでに世間周知の事実である、国民もまた非常な関心を持っておる問題について、これを隠蔽いたしまして、そして国民並びに国会審議をいささか軽視する。そういう既成事実を作ってから多数をもって押し通そう、こういう態度は非常に誤りであると思う。   〔委員長退席、稲田(篤)委員長代理着席〕 従って、この外交権の問題をあまり必要以上に振り回さないように一つ注意最初に申し上げておきたいと思います。  そこで、お尋ねいたしますが、それでは、第一回、第二回、今朝までの会談の結果、今まで対立しておった両者意見について多少とも歩み寄ったというか、合意を見せたような点がありますかどうか、進展の状況について簡単に明らかにしていただきたいと思います。
  7. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 特にそういうことはないと申し上げる以外ないと思います。
  8. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、続いてお尋ねいたしますが、あとスケジュール予定、これは一体どういうふうにお考えになっておられるか。十五日以後非公式会談、すなわち、ある意味においては秘密会談のような格好にして、そして、請求権問題について正しい両者主張なり理論というものをそっちのけにして、請求権の額の問題について無原則な非論理的な政治的妥協をはかろうとする、こういうことすら実は伝えられているわけですが、伝えられるような非公式会談というものを予定しておられるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  9. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今後の会談進め方につきましては、本日午後双方から二人人を選びまして相談をする、そういうことにいたしました。わが方は杉代表伊關アジア局長先方日本におります裴代表とそれから文という政務局長、この二人が出る、こういうことになっております。  私どもの方は、何も無原則考え方会談を進めるということは毛頭考えておりません。私どもとしましては、政府外交権を持っておりますけれども、当然国会の御承認を得て初めて条約なり協定なりというものは成立するものでございますから、あくまで国会に御審議を願って御賛成を得る筋道の通ったことでなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 具体的にお答えをいただきたいのですが、いわゆる非公式会談には応ぜられるつもりであるかどうか、お尋ねいたします。
  11. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは、大ぜいで甲論乙駁をやる方がより理解を深めるによろしい場合もございますし、あるいは非常に小人数でいろいろと話し合うという方がいいという場合もございますし、会談人数が多いから公式、少ないから非公式ということもなかろうと存じております。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 私は人数のことを言っているのではありません。なぜ一体非公式会談というものを特にやる必要があるかということを伺っているのです。だから、問題によりましては人数をしぼって少数人数でやるということ自体はあり得ることでしょう。私はそういうことを言っているのではないのです。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、外務大臣といたしまして、他の国の責任者と話し合う場合は、いずれの場合にも国の外務大臣として話をする、こういう立場考えております。非公式会談というのは、世間がそういう名前をつけられる場合もあるいはあるかもしれませんが、私は常に公式に外交的には発言をする、こういう立場でございます。
  14. 穗積七郎

    穗積委員 ついでにお尋ねをいたしますが、その少数会談あるいは外務大臣同士単独会談請求権問題について、額について、両者で出し合って話をするという場合も今度の会談においてあり得ますか、どうですか。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それは今後のことでございますので、やはり、私どもは、それを出した方がいいという場合もありましょうし、出さぬ方がいいと考える場合もあろうと思いまして、両様考えられると思います。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 続いて、最初に一般的にお尋ねしておきたいのですが、今度の日韓会談の大体のスケジュールと言いますか、日本側予定考え方を伺っておきたい。これは、先方は、今度のいわゆる政治会談なるものを継続して、四月にさらに第二次の政治会談をやる、五月十六日の革命のその日に、一周年になりますが、その日に仮調印まで持っていきたい、それから、秋に国交正常化をはかりたい、こういうふうに非常に無理やりに急ピッチにやろうとしておる。しかも、この中旬には、アメリカの方からハリマン並びにボールズの有力な人物が日本へやってきて、特に東南アジア軍事情勢を検討し、さらに東アジア情勢を検討して、この日韓会談促進の問題にてこ入れをしようとする動きを示しておるわけですね。ですから、それとの関連において、今後一体日本外務省並びに政府は、日韓交渉スケジュールについての韓国側の伝えられておる方針に対してどういう態度でお臨みになるつもりであるか、御意見を伺っておきたいと思います。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も、チェスター・ボールズハリマン、この両氏には会いたいと考えております。ことにボールズ氏とは旧知でございますので、ぜひ東南アジアを視察した感想も聞いてみたい、私ども東南アジア繁栄に関する考え方もいろいろ述べでみたいと思っておるのであります。何も軍事情勢ということではなく、それよりも、東南アジア全体の繁栄の問題についていろいろ意見をかわすことは有意義と思っておるのであります。  日韓会談進め方につきましては、これは相手韓国側意見を聞いてみませんと何とも言えませんが、私どもの方は、会談は妥結する方がいいにきまっておるわけでありますが、やはり私どもの方としましては私どもの方の主張というものがあるわけでございますから、それをいろいろ突き合わせて見ていって、双方が合意するということになればそうきめる、こういうのが一番いいと考えております。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 日韓会談本質につきましては、昨日この席でわが党の黒田委員から明確に指摘をして、これがアジアにおけるアメリカ戦略体制無理やり促進である、で、これに従属する日本軍国主義の便乗である、そして韓国に対する日米の軍事的・経済的な進出であるとともに、同時に、アジア東南アジア地域を含む反共軍事体制の強化と、こういうところにものの本質があると思うのです。こういうことは国民にまだ十分理解されていない。ただ一般的に隣国韓国との友好、国交回復であるとかあるいはまた経済的な提携であるというような点を単純に理解しておられるようですけれども、その国民の間におきましても、日韓会談については慎重論が圧倒的に多いわけです。これはものの本質誤り日本立場あるいはまたアジア情勢から見て、これに対する不安、危惧というものがあるわけです。にもかかわらず、最近になって(発言する者あり)——委員長にちょっと御注意いたしますが、自民党席から非常に悪意的な妨害的な発言がありますから、これでは審議ができません。私は外務大臣に質問しているので、与党の諸君に議論を吹っかけておるわけではありませんから、委員長から一つ審議妨害にならないように御注意をいただきたいと思います。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 委員の方々の御静粛を願います。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 そこに問題があるわけです。なぜこういうふうに急ぐかということは、今のハリマン氏の来日、さきにはケネディ弟来日等も、やはり韓国からラオス、ベトナムの線にわたるアメリカ帝国主義軍事政策というものが、国際的に孤立をし、失敗をし、くずれつつある。これをあわてて確保し、さらに反共軍事体制を固めていこう、こういうことがこの会談無理やりに急ぐ態度の背後にあるとわれわれは思うのです。なぜかと言いますと、あなたが外務大臣になられてからでもそうでしたけれども、今まで、日本政府態度というものは、韓国政権安定性、将来性、それから韓国経済安定性なり将来性というものを見ながら、相手が合法的でかつ安定性があるならば、臨んでいこうというような考えであった。従って、この会談については、 いささか慎重な態度も見受けられたわけです。ところが、昨年の暮れ以来というものは、これが急速に変わりまして、朴政権が不安定である、さらに東南アジア地域反共体制がくずれつつある、これに焦燥感を感じて、不安定であるからこそ、なおかっかえって積極的に日本アメリカ韓国に突っ込んでいくのだという、会談に対する態度の変更が見受けられるわけです。われわれはいたずらに揣摩憶測をするのではない。日本政府交渉における態度の変化の中からこれを客観的に証明ができると思うのです。この点については、私ども国会としては非常な関心を持っておる日韓会談本質なり今後の方向というものが、アジアの平和なりあるいはまた韓国平和統一の観点からも問題があるし、さらに進んで日本反共軍事同盟体制の中へみずから好んで入っていって戦争に近づく、こういう点をまず国民は心配をしているわけです。この日韓会談を急速に異常な態度で急いでおられる、こういうことに私どもは非常な不安を抱くわけです。外務大臣の反省を求めながら御意見を聞いておきたいと思います。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、日本軍国主義があるというふうには思いませんし、そういう前提からしてあなたの御意見と違うのであります。ただ、日韓間の関係をよくしようということは、御承知の通り、もう十年以上の懸案でございまして、このことは、非常にすらっと常識的に考えても、近い隣国である韓国との間に国交正常化していないということは、双方にとってはなはだ不幸なできごとであると思うので、これを何とか正常化しようという考え方は、従来日本政府としては一貫して持ってきていることであります。ただ、なかなかその間の話し合いがうまくいかなかったというのは、御承知のように、李承晩政権が排日ということを国是として指導してきたという関係も非常に大きかったわけです。ところが、張勉政権以来その考え方が変わり、また現在の朴政権においてもさような考え方でございますので、双方でどんどん話をしてみよう、こういう機運のあることはあたりまえのことだと考えておるのであります。  その政権が安定しておるがどうか、こういうことについて考慮が払われていないという向きのお話がありましたけれども、私どもは、他国政権安定性等について、率直に言ってこれはまだわからないわけです。しかし、問題は、その政権がきめたことがあとに継続されるかどうか、たとえば日本との間に韓国国交を回復したという状態あと政権に継続されるかどうかということが問題だと思う。その点については私は疑いないと思います。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、前へ進みます。第一、交渉相手である今のいわゆる大韓民国政権、これの国際法上における合法性についてわれわれは根本的に疑いを持たざるを得ない。それから、もう一つは、合法性の問題と続いて、安定性の問題についても、非常な危険な状態がひんぱんに起きておるわけですね。これはこの前この席上で細迫委員からも指摘をいたしております。しかし、今外務大臣は、語るに落ちるように、他国政権安定性の問題については判断がしにくいから、そういうことは検討するいとまがない、だから突っ込むのだ、こういうようなお考えのようですけれども、そこは根本的に国民として納得がいかない。誤りだと思うのです。  そこで、その合法性安定性の問題は、私は、きょうは時間がありませんから次の機会にいたしまして、ここであらためて問題を変えて外務大臣お尋ねしたいのは、あなたが交渉相手として取り扱っておる大韓民国朴政権、これは限定政権として取り扱っておられるわけですね。ところが、韓国側は、李承晩張勉、現在の朴政権に至るまで、わが方は全朝鮮唯一統一政府である、こういう態度で臨んできておる。これは領土問題にも請求権問題にも深い関連のあるところでございます。第一次会談、十二日の会談においてもこの問題が出て、両者意見の不一致があったようですけれども、この問題は非常に重要な問題でありますから、外務大臣にこれから具体的に逐次お尋ねしたいと思います。  第一、いうところの限定政府大韓民国朴政権というものは一体どういう基礎によっておるか、特に領土について大韓民国とは一体どこを言うのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたは韓国政権が非常に不安定であるという前提で御質問になりましたので、私の答弁を、それを肯定したごとくにおとりになりましたようでありますが、私の言っているのは、一般的に他のどこの外国の政府に対しても言っておることであります。その国に政府があって、それが安定しているかどうかということをこちらできめて、そしていろいろとそれについての批判を加えるということは、外交常識上ないことでございます。これは、どこの国の政府でも、その国内事情によって政変があることはあり得るということで言っておるのであります。  それから、韓国に対するものの考え方でございますが、これは、たびたびこの席で言っておりますように、韓国の現在の支配が三十八度から南の地区にある、北の方に及んでいないという事実を頭に入れて折衝している、こういうことであります。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、韓国政権領土は三十八度線南竹島を含まない、こういうのが日本考えであるわけですね。
  25. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもは、竹島日本領土である、韓国施政はそれから北、三十八度から南、その地区施政が及んでおる、こういうふうに解しております。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、今度たとえば韓国との間に国交正常化に対する条約を結ぶとすれば、韓国政府領土については今言われた点が明記さるべきだと思うのですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  27. 中川融

    中川政府委員 もし日韓会談が話がまとまりました際に、どういう内容条約を結ぶかということは、実はまだ先方ときまっていないのでございます。従って、領土範囲がどこどこであるかというようなことまできめた条約を結ぶという考えは、今のところ特にきまっていないわけでございます。その領土のきめ工合というようなことは、全然まだ一つもきまったものはない。むしろ、領土問題等は、すでに平和条約においても朝鮮独立を認めておりますし、それ以上さらに領土のことをきめた条約日韓間に結ぶ必要はない。御承知のように、日本朝鮮半島に対するすべての権利権原を放棄しておりますから、それだけで十分ではないかと一応は考えております。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 これはこの前もちょっと質疑のあった点ですが、大事な点ですから大臣もよくお聞き下さい。これは、すでに既存政権があり、国際的に領土人民も明確になっていて、それとの間に国交がまだ回復されていなかった、あるいは戦争のために中断された、それを回復するということであれば、必ずしも領土条項というものは絶対必要条件ではない。おそらく既定の事実として条約の中へ書かない場合もあり得るでしょう。しかし、今度の朝鮮における政権というものは、日本側にとっては平和条約第二条によって初めて創設された独立国です。それを確定いたします場合には、それを新独立国として設定をし、これを承認をする場合は、それは一体いかなる基礎を持っているか、このことが明確でなければならない。特に、中国の場合と同様に、朴政権というものの合法性をわれわれは疑いますけれども政府の論理に立ってたとい一応朴政権というものを認めて交渉相手とするとしても、今言われるように三十八度線から北の朝鮮人民共和国政権というものは事実認めていくわけですから、その場合における新独立国承認である韓国との条約の中において、特にこの領土条項というものは不可欠のものである。これは国際法既存の国家との国交回復とは本質的に違うという大事な点だと思うのです。明確になっておりません。私はなぜあえてこういうことを聞くかといえば、韓国朝鮮人民共和国政権というものは認めない、日本は認めておる、そのままでずるずるといきますと、あとになって、問題の解釈なり問題を処理する場合に、たとえば今あなたが交渉の問題として取り上げておる請求権問題にしても、これは解決がつきませんよ。それから、もう一つ領土問題です。これはおかしいですよ。はっきりしていただきたいと思います。
  29. 中川融

    中川政府委員 すでに、平和条約によって、朝鮮半島に対する日本権利義務を全部日本は喪失しております。それで、朝鮮独立するというとともまた平和条約で認めておるわけであります。従って、平和条約以後の日本朝鮮に対する立場というものは、これは、ほかの第三国、たとえばアメリカでありますとかイギリスでありますとかが朝鮮に対してとっておる立場と変わりはない、かように考えるのであります。アメリカ韓国との間にいろいろな条約協定を結んでおりますが、それらについても、はっきり韓国領土がどこまでに及ぶかということは何もきめてその条約を作っておりません。しかしながら、それで十分条約としては成立し、目的を達しておるのでありまして、日本が今後いろいろ請求権問題を片づける、あるいはその他の問題を片づけるという条約協定を結ぶ際に、実際のその内容が三十八度線以北には及ばないような内容のものを盛っておけば、それで目的は達するのであります。別段領土範囲をそこで確定するということを特にする必要はないように考えております。しかし、先ほども申しましたように、条約内容については、まだ何ら向こうとの話し合いがきまったものではないのであります。今後の問題としてこの問題は研究することになろうと思います。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 条約局長としては、あなたは条約局長ですからそういう政治的配慮をされる必要はないのです。その点は条約立場上明確にすべきである。アメリカ盗人をすればおれも盗人をしていい、これは政治的なことです。そうではなくて、条約上私は言っておるのです。根底がないですよ。そうなりますというと、大韓民国国際法上の基礎というものの合法性はなくなりますよ。日本との関係から言えば、平和条約第二条で領土問題は明確になっておるのですから、そこで特に朝鮮人民共和国政権のオーソリティは認めるというようなことを言われても、それは主観的で、国際的に見れば、条約局長または当時の日本外務大臣ひとりごとにすぎない。私語にすぎない。この点は、終戦以来、日本保守党政権というものが非常に卑屈になっておったために、たとえば今問題になっておる平和条約におけるクリル列島の問題についても、吉田さんはクリル列島に南千島は含まれないとひとりごとを言ってきた。それから、南の方では、今度は沖繩の問題についても、当然主張すべき固有の領土を、信託統治に付することを放棄して、誤った決定をしている。こういう態度が、いまだに問題をますます解決して解決にならないようにし、やらないよりは悪い混乱を起こしておるわけです。従って、向こう側は、あらゆる会談において、朝鮮人民共和国政権は認めない、われわれは現在は北を支配していないかもしれないけれども唯一統一政府であるという態度をとっている。そうして、こっちは、ひとりごとのように、そうではない、三十八度線南だと言う。そんなことを言って日本国民をごまかそうとしたって、それは通りませんよ。それでは国際的に通らない。だから私は言っているのです。それでは、二つの中国の台湾の問題についてどうですか。領土条項で、すなわち支配する地域というものは明確にうたっているのでしょう。台湾の蒋介石政権というものは、その政権が支配する地域に限る限定政府であるということが明確になっておる。今まで韓国政府との交渉にあたっては、これは全朝鮮唯一統一政府ではなくて、限定政府であるという立場に立って交渉をするという立場をとっているときに、限定政府とは一体どこだ、このことが何によって確保されますか。国会であなた方が国民をごまかすために、おれは三十八度線から南だと理解しておるのだ、そういうつもりで交渉しておるというだけで、相手はそんなことを承知していない。議事録にも残っておらぬでしょう。それで、条約文をどうするかということを私は聞いて、まだそこは考えておらぬとあなたは逃げているけれども、そうでなくて、ものの本質をどう確定するかということは事前に必要なことですから、確定の客観性、そのあなたの解釈の確定したものを、日本政府の解釈を国際法上オーソライズしておく必要がある。それは条約文の中に明記することが一番大事であるけれども、必ずしもそれに限らない方法もあるでしょう。ありますけれども話し合いの中でそれを確定する必要がある。それが必要なんです。それを伺っているのです。外務大臣、いかがですか。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今、日韓交渉をやっておるのでございまして、そういう今御質問のような点も、当然今後の議題といいますか話し合いで、最終的に国交を回復するまでの間には論議さるべきことであるわけであります。しかし、この段階で日本政府はこうだということを申しますることは、私はいかがなものかと思っております。私は、先ほど言うたように、現実にその支配が北に及んでないという事実を頭に入れて言っているということで御理解を願って、今後はそういう問題ができましたときに十分御質疑を願う、こういうことにお願いしたいと思うのであります。もとより、われわれは、そうした協定条約ができたときには、国会に提案するのでございますから、それが国際法的に見て通らぬことであれば否決されるわけであります。通るものであれば御可決を願う、そういうことであろうかと思っております。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 それを国際法上異論のないように明確にしておく手段方法については、私は今から必ずしも厳密な条件をつけません。しかしながら、条文の中に明記する、または他の方法によって、国際法上、日本の主観的な解釈ではなく、客観的にこれが明確になっておるというその方法を必ず講ずる、すなわち、交渉相手になっておる大韓民国政府限定政府であるということを明確にすることを約束したそれなくしては交渉の妥結はやらない、こういうふうに私は今の御答弁を理解いたしますが、それで間違いありませんね。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもは、この三十八度から北に支配が及んでいないという事実を頭に入れて交渉するということを申し上げておるのであります。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 だから、それを国際法上、日本だけの主観的な解釈ではなく、相手をも説得をし、他の第三国をも説得するに足る明確な表示の方法をとる、これを聞いているのです。あなたの腹の中だけ聞いているのじゃない。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一九四八年の国連決議の趣旨に基づいてこの方針をきめる、こういうことが私は一番はっきりしているのじゃないか……。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 伊關アジア局長の間違った入れ知恵だと思いますが、そういうつまらぬことを言って問題をそうしてはいけません。そうではないのです。一九四八年十二月の国連決議というものは非常に不明確なものです。だから、今中川条約局長の言われるように、韓国との国交回復を、つまり、韓国政権承認しておる三十数カ国の承認の手段方法というものも、このあいまいな国連決議にのっとって、そしてそれに追随をして三十数カ国というものが単にはなはだ不明確な形で大韓民国政府承認をするという通告をしておるだけです。ところが、これらの諸国は、この条約に違反をしておるのみならず、それから、その誤りもありますけれども、同時に、かれらのエゴイズムから言えば、韓国との間に係争中の問題、領土または請求権その他の係争の問題がないから、だからのんきに考えて、単純に一方的に政権承認を通告する、それで国交回復しているのだ、こういう形をとっておるわけです。日本は違いますよ。これでこのままやれば、サンフランシスコ条約における北並びに南の領土についてあやまちを犯したごとく、このたな上げ方式というものが、不明確方式というものが、おざなり方式というものが禍根を残すわけです。あやまちは反省して再び繰り返さないようにしなければなりません。外務大臣の御意見をもう一ぺん伺っておきたいと思います。   〔福田(篤)委員長代理退席、委員長着席〕
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたは、大韓民国との間に国交を持っておる三十数カ国が国連決議に追随してとおっしゃいましたけれども、私は、国連決議というものは加盟国が作ったものでありまして、それに従っていくという意味の追随であるならば、これは当然である。何か主体性をなくして非常に無理なことをやっている、こういう意味の追随というお考えであるならば、それは違っておると思う。私は、この国連決議の趣旨を体して韓国との間に交渉する。ただ、その場合に、韓国の現実の支配が三十八度から北に及んでいないという事実を考慮して、そうして交渉する。こう言っているので、交渉の技術等については一つ政府におまかせ願っておきたい。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 非常にごまかしてまた通ろうとしておる。まさに主体性がない、合理性がありません。これはもう、請求権とか漁業問題とか法的地位の問題に入る前の、相手政権そのものの規定からこういうでたらめなことでは、そこに主体性がないし、合理性がない。すなわち、だれかにやらされておるのだろうと言わざるを得ないわけです。われわれの邪推でも言いがかりでもない。このことはみずから証明しておられるじゃありませんか。  それでは、ついでにお尋ねいたします。この朝鮮の新独立国領土の問題については、これは日本との関係からいけば平和条約第二条によってこれが確定されるこれをわれわれはのんだわけです。そうであるならば、ここで言っているところの領土の限界はどこだ、すなわち竹島が入るか入らないかということは、この問題は実は国際司法裁判所へと言っておられますけれども、私の解釈によれば、国際司法裁判所に提訴すべき法律問題ではないのです。この新独立朝鮮国というものを創立した連合国が決定をしたことなんです。それをわれわれはのんであるわけですから、第一の責任者はその境界をきめた連合国です。特に日本国との両方に領土条項があるわけですね。日本については四つの島並びに付属の諸小島と書いてある。その付属の諸小島の限界はどこだということは、これは連合国が決定すべきことなんです。連合国の意見を聞くべきである。連合国の意見を聞いたことがありますか。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 領土問題というようなことについて争いがありまする場合といいますか、双方主張が食い違っておる場合には、これは、たとえば請求権で金額を幾らにきめる、こういうような問題とは解決の方法がおのずから異なるわけでございます。そこで、国際司法裁判所に提訴するのが私は最も妥当である、国際常識から見ても適当な方法だ、こう考えて、司法裁判所への提訴によってこの問題を解決したい、こう考えておるわけであります。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 私は、それは誤りだと思うのです。これは法律の解釈問題についてなら別ですよ。これは、独立国を形成し、日本国の領土を規定する場合に、それは法律問題ではないのです。法律上の解釈の紛争の問題ではないんですよ。そこが一番大事なところなんですね。ですから、もし創立者である連合国がこれを規定しないとすれば、当事国同士で解決すべきでしょう。竹島の問題については、日本相手との間で、当事者同士の間で解決すべきである。その上で、相手政権の規定をはっきりして、それから交渉に入り、妥結をする、こういうことになるべきです。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたのお考えは私は違っておると思うのですが、あまりそれをあからさまに言うと、またいろいろ議論があれするので、まあ黙っておったのですけれども、ポツダム宣言にはそういうふうに書いてあるんですね。日本国の領土は本州、四国、九州、北海道等四つの島並びにこれに付属する諸小島に限る、これはポツダム宣言でございます。平和条約に書いてないのです。(穗積委員「継承されていますよ」と呼ぶ)あなたは平和条約に書いてあるとおっしゃいましたけれども、こういうことは平和条約に書いてない。平和条約の中には、二条でもって、日本朝鮮独立を認めておるわけです。ポツダム宣言の言う趣旨も、日本から離れ得る島、——あなたは継承とおっしゃいましたが、継承しておるという考え方にのっとれば、日本から分離される地域は平和条約に書かるべきであると私は思う。ところが、平和条約の中には、朝鮮独立ということで、竹島から向こうというふうなことは書いてないわけです。従って、竹島の問題は、これはわれわれは日本領土であると固く信じておる。あなたもそう信じられるのだと私は思う。ところが、韓国の側においては、これは独島という島だと言ってがんばっておるわけであります。当事者間にこの問題については意見が平行線になっておるわけです。話し合いをいたしまするが、話し合いは今までいろいろしてまとまらないのです。まとまらないとすれば、これは第三者たる国際司法裁判所という権威のある機関に持ち出すのが一番合理的だ、こう私は思っておるわけであります。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 ポツダム宣言に基づく降伏文書というものは平和条約で法律的に継承されています。だから私は言っているのです。これは平和条約の中に継承されていますよ。そんなつまらぬことを言ってはいけません。米、中、英、ソの四カ国の秘密会談の取りきめとは違いますよ。これは日本側が降伏文書としてこれを受諾し、これが条約の中に継承されているのです。一体のものです。そういうことで言いのがれをされるのは卑怯でございましょう。  そこで、続いてちょっと関連して一点お尋ねしておきますが、領土の問題について非常に不明確な態度をとっておられて、限定政府の規定について、今のような御答弁で国民を納得さしたりごまかそうとしても、国際法上は何らの客観性も権威もありませんから、ますます今後混乱をすると思う。そういう卑怯というか、主体性のない非合理的な立場、これは払拭すべきだと思うのです。われわれはこの会談は打ち切るべきだと思っているけれども政府はやると言っている。やるにいたしましても、これは全く論理の誤りがある。そこで、お尋ねいたしますが、領土の問題は、野原委員にも答え、その前に昨年の外務委員会で私もお尋ねいたしておりますが、国際司法裁判所に提訴することを条件に云々ということで、そして相手が受諾することを条件に云々と、こういうことであったわけですけれども、こういう点が未解決状態平和条約なり国交回復の正式条約というものは私は結べないと思うのです。もし領土の問題についてペンディングのままでも平和条約または国交正常化条約締結ができるというならば、なぜ一体ソビエトとの間におやりになりませんか。ソビエトとの間に平和条約がいまだに締結されていない。それはどういうわけだといえば、領土問題が解決できないから平和条約は結べないのだと、こう言っている。ところが、今度は韓国との場合、論理が矛盾しているじゃありませんか。領土はたな上げしておいて、そして平和条約を結ぶ、正式条約を結ぶと言っている。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 竹島の地位が不安定であるというふうに穗積さん御自身お考えのようですが、私、そう考えていませんのです。竹島日本領土である、こういう強い信念を持っております。また、客観的に見てもそうだと思います。そこで、この問題はぜひ日韓閥に国交正常化される時期には解決したい、こう思っておるのでありますが、しかし、解決するには、当事者同士が話し合って解決するなら、これは割合に早くいくのでございますが、主張は今も言っているように平行線です。そこで、司法裁判所に提訴するという形において双方が合意するということがよろしいだろうと思っておる。もちろん、提訴しましてから司法裁判所が結審を下すまでの間にはある程度の時間はかかると思う。それができてしまってから、結審が下るまではだめだというのもちょっと行き過ぎだろうと思いまして、そういうことにしたいと、こう考えておるわけなんでございます。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 今の御答弁は非常にわれわれ納得するわけにいかない。しかし、きょうは時間が限られておりまして、まだ私ちょっとあと経済問題について一点だけお尋ねしたいと思っているから、ちょっと先に進みますけれども限定政府としての韓国政府との交渉という問題について関連いたします問題は、今の領土の問題だけでなくて、実は、事実上は認めておられる朝鮮人民共和国政府との国交回復並びに請求権の問題、これが関連してくるわけです。平和条約によりますと、今は三十八度線南一つ政権があり北に一つ政権があるということですけれども、これは、一括して、これらの国並びにこれらの国の人民との間の請求権問題、国交回復の問題、独立承認の問題、これは義務づけられているわけですね。南と北というものを分割して限定政府として認められるとするならば、同時平等に両方の政権に対して、やがてこれが統一することを念願しながら暫定的に取り扱うならば、同時平等にこの北の政権とも国交回復なり請求権問題というものは取り上ぐべき義務があると思うのです。その北の政権国交回復ないしは独立承認、それから請求権問題、これに対する義務は日本側が負っておるわけですね。韓国政府との間に請求権問題を解決することによって、この義務を免除するものではないと思うのです。いかがでございますか。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもは、一九四八年の国連決議、あれに従ってこの朝鮮の問題は考えておるわけです。あの決議は、御承知の通り、朝鮮において統一がなされる、そしてそこにすべての朝鮮人によるところの自由な意思の表明があって政権ができる、こういうことを望んでおるわけですが、国連のそうした勧告に従って、自由な意思を表明して選挙を行なったのは韓国だけである。従って、韓国は、そういう地域における自由な意思の表明があってできた唯一の合法政府である、こう言っておるわけでございますね。従いまして、他の問題について今考えるには時期でない。国連決議も、そうした趣旨が実現されるように私どもとしては努力していく、こういうことが必要であろうと思っております。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 国連決議は、実は朝鮮政府のあれをとっておるわけですね。今は暫定的に二政府がある。いずれをとるか、その統一を促進するか。これは、従来の趣旨から言って、統一の促進をすることが関係諸国、友好諸国の当然の義務だと思うのですね。今度われわれ日韓会談に反対しているのは、その正しい国連精神による統一への責任、こういうものをはばむものである、その精神をこわすものであると、こういう立場から反対しておるわけですけれども、今の点は非常に論理が一貫しないわけですね限定政府としての朴政権という場合と、四八年の国連決議というものとは、どちらをどういうふうに理解しておられるのか。国連決議を唯一のたてだというならば、実はこれは私はきょうはいたしませんけれども、次の機会にいたしたいと思うが、そうなると、朴政権というものは、大韓民国というものは認めるにしても、その中における朴政権というものは四八年決議におそろしく違反するものです。それが合法性を持っておるという基礎であるというならば、これはもうむしろみずから基礎を否定するものですね。そういう政権朴政権なのです。そのことは追って明らかにしたいと思うのです。きょう私が聞いておるのはそうではない。ですから、その点をもっとやはり明確にすべきだと思います。  それで、関連して、それについての解釈を伺うために、例をあげますと、今の日本朝鮮人民共和国との間に国交正常化をやるやらない、今すぐやるかやらぬかということの判断は別にして、朝鮮人民共和国日本に対して国交正常化を求めるならば、その求めることは正当な要求である、これが一点。それから、もう一つは、朝鮮人民共和国側がその統治しておる全人民を代表して請求権日本に求めるならば、これもその要求というものは正当性があると、こう理解してよろしゅうございますね。
  47. 中川融

    中川政府委員 北朝鮮政府日本国交正常化しなければならない義務があるという御趣旨のようでございますが、条約上あるいは法律上のそのような義務はないと思います。政治論としては、あるいはそういうことは出てくるかもしれませんが、法律上の義務、条約上の義務として北朝鮮当局と国交正常化しなければならぬ義務が日本にあるかということであれば、これはないとお答えいたします。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 これは、あなた、条約二条、四条の義務というものは北朝鮮にも及びますよ。
  49. 中川融

    中川政府委員 朝鮮というのはやはり一国としてサンフランシスコ平和条約では考えておると、これは当然考えられるのであります。朝鮮独立しましたけれども、二つの朝鮮というものは何もサンフランシスコ条約で認めたものではない。一つ独立国としての朝鮮を認めたのであります。従って、一国には一つしか合法政府があり得ないわけでございますから、第二条、第四条その他で規定しております当局というもの、これはやはり一つ政府予定していると考えざるを得ないのでありまして、現実に二つある朝鮮政府のうちでどちらの政府交渉相手として予定しているかということになれば、やはり国連決議で認めております韓国政府、国連の趣旨に合致した韓国政府というものをやはりサンフランシスコ条約では交渉相手として予定しておる、こう考えなければならないのであります。これは、同会議におきますアメリカあるいはイギリスの代表の発言等から見ましても、いわゆる韓国政府朝鮮国の政府として予定しておる、認めておると考えるわけでございまして、従って、サンフランシスコ平和条約朝鮮国というものにある条項についての権利を与えておりますが、この際の朝鮮国の政府は、やはり国連決議の趣旨にのっとった韓国政府の方であると考えるわけでございます。もっとも、第四条にあります施政を行なっておる当局、これと交渉しろ、協定を結べということがございます。従って、韓国政府協定を結びましても、それは施政を行なっている限度におけるその地域における財産権、請求権についての交渉及び協定であるわけでありまして、施政を及ぼしていない地域、北朝鮮の地域については、従ってこの第四条に基づく財産権取りきめ、請求権取りきめということは行なわれないわけでございます。ここは要するにブランクで残されるというふうに考えるわけでございます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 本来、この連合国の間における朝鮮の取り扱いについては、もとより全朝鮮、一国一政府、これは大原則です。ところが、これを破ったのはアメリカなのだ。アメリカが破ったのです。私の調べによりますと、実は国連監視下において民主的な方法で全朝鮮の選挙をやって、そして統一政府を作るべきであるという決議が国連において行なわれておった。それをぶち破って、そして翌年の一九四八年の五月にアメリカが使嗾、強要をいたしまして南朝鮮だけで選挙をやって、李承晩政権を作って、続いてその年の暮れにそれをオーソライズする決議をやった。あなたは国連決議国連決議と言ってそこからあとを言われますけれども、それで一国一統一政府、しかもそれは限定政府だ、これは論理一貫しないですよ。そういうことを言い出しますと、大体この国連決議というものが、当時決定をいたしました精神に反するものなんです。アメリカの一方的な強要によってこれが利用された。南北朝鮮の統一、これこそが日本並びに国連に加盟しているすべての国が努力すべきであって、従って、正式に言えば、この統一政府ができてから、その国との間の国交回復もやればいろいろな条約締結もやる、これが当然なことなんです。それを無視して、アメリカが先にこの四八年五月に無理やりにこの分離政策をとってしまったわけです。それをオーソライズするための擬装的な決議が四八年決議なんです。それが唯一の理論であるというならば、みずからの弱点を暴露されますよ。そうじゃないのです。その点を私は言っている。  そこで、その議論は他の機会にいたしまして、外務大臣お尋ねいたしますが、今度の請求権交渉にあたって、あくまで三十八度線以南のものに限る、こういう態度は一貫されますか、どうですか。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国の今日の状況というものに対する認識、これは、国連との関係でいろいろお述べになりましたことは、私は違うと思っております。国連決議の趣旨に従って統一選挙をやりたい、こういうことで、国連はそれを勧めたわけでございますが、北鮮側においては、その選挙はいやだと、こう言う。国連監視下ということについて、いやしくも他国の干渉というふうに言って、そのもとにおける選挙はいやだと言って選挙をしなかったので、これは事情が少し違うと思います。  それから、ただいまの御質問でございますが、私は、韓国施政が北に及んでいないということを頭に入れて交渉する、こういうふうに申し上げておるのでございまして、交渉内容等につきましては、これは交渉がまとまりましたときに十分申し上げ、また御審議を願いたい、こういうふうに考えております。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 いや、あなたはすでに交渉に入っているのですから、日本態度を聞いているのです。すなわち、三十八度線以南に限るという態度を貫かれますかと聞いているのです。時間がありませんから、簡単に答えて下さい。
  53. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ですから、私は、三十八度から北に現在の韓国施政が及んでいない、こういうことを頭に入れて交渉している、こう申し上げておるのであります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、それが私の質問に対する答えであるとすれば、それで最後までいくものと私は理解しておきます。  そこで、この請求権については、南北分離の困難なものがありますね。これは伊關アジア局長よく御存じだと思う。きょうは時間がありませんからこれは一々言いませんが、これに対してはどういう方法なり論理で対処、解決されるつもりであるか。
  55. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 南北に関する基本方針は大臣がお答えになりました通りでありまして、あとのこまかい点につきましてどうするかというのは、今後の問題でございます。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 この問題については、きょうは時間の約束がありますから割愛をいたしておきますが、これは交渉にあたってごまかしてあとに紛争の種を残しておくということについては、われわれは納得いきませんから、あらかじめ御注意を申し上げておきます。あさってからやろうとしておるようですけれども、そういうつかみ金勘定のような、昔の博労のやったような、ふところへ手を入れてお互いに握り合ってみて何ぼというようなばかばかしい交渉で、そして、五千万ドルから五億か六億か知らぬけれども、これは一けた違うか違わぬかというようなことで、五本の指を握ったとか握らぬといったような交渉一つされないように、あらかじめ注意しておきます。  そこで、最後にちょっとお尋ねしたいのは、日本の経済進出の問題について、特に交渉妥結前においても民間協力は迎えると言っている。これは、われわれの判断では、朴政権なりそのもとにおける韓国経済というものがもう持てなくなってきている。それで、従来は国交回復をしなければ経済協力は受け入れられないと言っていたのを、面子も論理もなしに、早くやらなければ持ち切れないということで始まったわけですが、それが始まりましてから、北朝鮮はもとより、南朝鮮の大衆の間におきましても、またはアジア諸地域の関係諸国、周囲の諸国の間においても、日本経済の帝国主義的な再進出が始まるのではないかという点を非常に警戒しておるわけですね。これは今までも指摘されたところです。そこで、具体的にお尋ねいたしますが、この間湯川康平という人が民間経済協力の下交渉ということで訪問をして、そして、この人が池田総理の朴首相に対する親書を携えたと伝えられておる。これはこの前私はあなたに調査を御依頼いたしておきましたが、その真否のほどはわかりましたかどうですか。
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 同じ御質問がきのうもこの場所で黒田委員からございました。それは総理からお答えになっておりましたが、私どもは今お尋ねの件につきましては承知しておりません。民間協力について政府関係がある問題が出て参りましたら、政府としてはケース・バイ・ケースで考えるということだと思います。親書の点はありません。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 絶対ありませんね。——それから、湯川康平氏が、向こうとの交渉を終えましてからこちらへ帰って、速記をつけたある公開の席上で報告をしておるわけです。それによりますと、向こうの民間経済進出の四つの条件というのは御承知の通りです。その中で、保税加工方式による場合は第三国に輸出するものに限るということになっている。ところが、湯川氏の公開の席上における報告によりますと、それは韓国の国内市場においても販売することが事前に認られておるということが明らかに報告されております。このことは韓国の土着産業というものを非常に圧迫するものではないかということで、これを警戒しておるわけですけれども、これは事実であるかどうか、報告を受けておられると思うが、これが一点。  それから、第二点にお尋ねしたいのは、実は、この保税加工貿易の問題については、政府伊關アジア局長の名前も出ておるけれども政府で大体延べ払い無為替方式というものを一般的に了解をつけておる、そういう前提向こう交渉に行っておるわけですが、この点はその事実はどうですか。これが第二点。  第三点は、当初、この保税加工方式によるものは、たとえば造花であるとかメリヤス等であったということで、つまり韓国側の基幹産業、重要産業に対しては日本は入らないということであったのが、実際は、そうではなくて、重工業中心に日本から進出することを、日本側もこれを希望し、向こうもこれを了解しておるという。  こういう重要な三つの報告、すなわち、向こうが今までこの問題について四原則を出しておったのと全然違う報告がなされておるわけです。これは民間人としての資格ではありますけれども、今言いましたように、池田総理の親書を携えたとか、あるいは与党内における石井委員会の事前打ち合わせをしたとか、あるいは政府当局の外務省、通産省の了解を得たとか、そういうことで非常にその立場、資格というものが不明確で交渉が行なわれておるわけですね。そういう点で、政府は一体、今私が申しましたその三つの問題に対してどういうふうに理解し、どういうふうな報告を受け、これに対してどういう方針で臨まれるか、これを一括してお答えをいただきたいと思うのです。
  59. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 ただいまの三点のうちで、この無為替輸出並びに延べ払いの許可という政府の内諾を得て湯川氏が向こうに行ったという点は、全然事実でございません。政府としましては、個々の民間のプロジェクトが出て参りました場合に、その個々のケースのメリットを見て考えようということでありまして、包括的にそういう方針を全然きめてはおりません。  その他、韓国の国内生産と競合する問題とか、あるいは手工業的なものが重工業に移っていくのじゃないかという点につきましては、私はまだ湯川氏から報告を受けておりませんし、そもそも湯川氏というものは全然政府とは無関係に動いておるものでありまして、韓国の方もそのつもりで相手にしておると思いますので、これは両国政府としては何らタッチしておらないというふうに考えられると思います。また、実際問題としましても、御承知のように、資本というものは国交がないようなところにはなかなか出ていかないものでありまして、現実の問題としてそういう話はまだわれわれの耳には具体的なものは何も入っておりません。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、政府は、今申しましたような予約は与えてない。それでは、今後は今私の申しました点についてはどういう御方針ですか。私は、今の三つの問題について、今まで報告を受けたかどうか、真否はどうかということと、それから、これに対して政府は今後そういう問題が出た場合にどういう態度で臨むか、その二点を聞いたわけです。あとのことは政治的なことですから外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  61. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はまだ何も聞いておりませんし、仮定の御質問に答えるわけにはいきません。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 それはあなた非常に傲慢無礼な御答弁ですね。おかしいじゃありませんか。われわれは意見の違いはあっても熱心に討議しておる。この問題は現に進んでいるじゃありませんか。そんなことは聞いておらぬからおれは知らぬ、仮定の問題だと言うけれども、仮定じゃありませんよ。現実の問題ですよ、これは。現実ですよ。
  63. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 先ほど申し上げましたように、過去に湯川氏が行く前にそういう承認を与えておらないということ、今後こういう問題が出ましたならば、個々のプロジェクトを見て方針をきめるということでございますから、それがまた、たくさんそういうものが出てくるようになりますれば、あるいはもっと一般的な方針をきめる必要が出てくるかも存じませんが、先ほど申し上げましたように、現在においてはそういう経済協力の話というものはまだ具体的なものはほとんどない状況でございますから、もし出てきましたならばその一つ一つのケースを見てそのときにきめようということでまだ十分だと思っております。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、もう時間が超過しましたから、はなはだ残念ですけれども、割愛して次の機会にしますが、もう一点だけ。  実は、湯川氏については、この民間取引というものは完全にプライベートなコマーシャル・ベースだ、こういうふうに世間は理解している。ところが、向こうに行って、これは多少業界が日本政府から信託を得ておるような格好で向こうへ売り込んだかどうか知らぬが、あなたの言葉によれば関係がないというから、これは売り込んだわけでしょう。ある意味では政治的詐欺ですね。そうして、今度帰ってきて、向こうからは投資に対する向こう政府保証も取りつけてきたといって、日本の民間の業者に宣伝をして、今度はこちらを引き出そうとしている。向こうとこちらと政治的詐欺をやっているわけですね、あなたの説明によれば。これは、善意にして無知なる業界の諸君、欲だけ深い業界の諸君としては、形は民間であるけれども日本政府との特殊な事前了解がある、そうして、向うへ行って朴との特殊関係があるから政府保証を取りつけてきたということでやられるのでは、日本経済を混乱させますよ。総理から、きのうドイツ、イタリアのお話があった。あれは政府協定として覚書になっております。政府間の協定前提になっておる。今度は違いますよ。だから、それをどうしてカバーして引き出すかということについて、今言ったように、あなたの説明によれば、いわば政治的詐欺だ。ありもしないことをあるように言っているのだから、ここでちゃんと言っていますよ。公開の席上、しかも速記をつけた会合で多くの人々に報告をしておる。それで、早く出ろ早く出ろと言って誘引をしておるわけですね。これは非常な政治的詐欺ということになるわけですね。私は、実は、池田さんなりあるいは通産大臣なり、その他あるいはまたコリア・ロビーの自民党内の有力な人、これらの人と何か了解をつけて行ったかと思ってさっきから聞いておったが、そんなことは全然ないという態度である。しかも、そんなことを考えておらぬということなら、今度は向こう政府の保証問題を種にして業界でいろいろな働きかけをしておることは、これは業界を撹乱するものですから、何らかの処置をとるべきだと思う。外務大臣、お考えはいかがですか。
  65. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 まあ、何らかの処置をとる必要がありますかどうかは別問題にいたしまして、大体、日本の業界でもって韓国に何か大きいことを考えられる場合には、まず私のところとか経済局にお見えになりまして御相談がございます。私は、事実の通り、湯川氏に関する限りは今申し上げたようなことを申し上げておりますから、そういう御心配はないんじゃないかと思っております。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 最後に一点だけ外務大臣お尋ねしますが、この間予算委員会であったと思いますが、大蔵省としては、民間ベースは純然たるコマーシャル・ベースである、今後もその方針であるということを言われた。ところが、今申しましたように、いろいろな政治的な不明確な動きが出てきておるわけです。そうなりますと、問題になるのは、日本の雑貨産業の中小企業じゃなくて、独占の重工業の諸君が乗り出してきている。そうなりますと、ここへ全く民間のものとして、しかも不安定な政治情勢政権、不安定な経済状態の中へ投資を進めていくとすれば、それによって今後はこれに対する向こうの保証じゃなくて、日本政府の保証の問題が出てくる。そうなった場合に考えられることは、今はやらぬけれども、将来日韓会談が妥結した、そうすると請求権支払い問題が出てくるので、それが肩がわりをする、または補償する、肩がわりをして相殺をする、そういう方法を政府に要求する、そういう動きが当然考えられる。それから、もう一つは、この民間の権益に対しまして、やがて政府間でどういう協定になるか知らぬが、政府協定なり覚書が交換されて、その中へこれを抱きかかえていく。そして、国民の税金でこの焦げつきなり経済的見込みの失敗なりというものを日本国民政府の手を通じて負担をする。これはもう当然独占の有力なるものが出るということになれば考えられるわけですが、その二つについて、あくまでコマーシャル・ベースでいくということを言い切れますかどうか。大蔵省並びに外務省のお考えを明確に聞いておきたい。
  67. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第一点は、私はあくまでコマーシャル・ベースでいくべきものと考えております。それから、第二点に関連するわけですが、国交のないようなところに資本が出ていく場合には、資本は非常に警戒心の強いものでございます。従って、そういうところにそう大きなものはなかなか困難ではないかというふうに考えております。また、何かされる場合には、当然役所に御相談があるでございましょうし、そういう場合に、役所として、まあ出ていらっしゃい、あとは引き受けますということは、もう申し上げる筋でもございませんし、そういうことは御心配要らないと思います。
  68. 森下國雄

    森下委員長 大蔵省は来ておりません。  議事進行について発言を求めておりますので、これを許します。松本七郎君。
  69. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいまの穗積委員の質問に対して、小坂外務大臣は仮定の問題だと言われたのですが、これは私は不穏当な答弁だと思います。といいますのは、穗積委員がさっきから質問しておった内容は、決して仮定ではないのです。現に湯川康平氏が韓国に調査に行っておる。しかも、これは、民間とはいうものの、行く前には外務大臣にも面会を求めた。しかし、外務大臣は会っておられないでしょうが、外務省の局長は現に会っているのです。そうして、その後には総理大臣も湯川康平氏に会っておる。親書を持って行ったかどうか、そういうことは今後また問題になりますけれども、資格は民間であっても、現に行っており、しかも政府とは公式非公式は別として関係がついておるのです。それが将来どういうふうに発展してくるかということを質問しているのですから、これを仮定の問題として不問に付するというような、そういう答弁態度というものは、私は国会をほんとうに尊重した態度とは言えないと思う。そういう態度を続けられるならば、私どもは、重要な国政審議外交問題について将来の展望に立った真剣な質疑応答というものは期待できない。質問する方もそういう展望に立って質問しておるのですから、その真意をくみ取って、答弁する方も、もう少し真剣な態度で答弁してもらいたい。従って、本日は、ただいまのこの仮定の問題だと言われたことについては、明確に外務大臣から取り消しをしてもらいたい。
  70. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 穗積さんの御質問に対しまして、私は、その御質問の前に、政府にはそういう話は実は来ておらないが、もし来たら、これはまたケース・バイ・ケースでその問題を考えるという御答弁を申し上げたと思うのであります。重ねての御質問でございますが、そういうケースがあったらどうなるかということでございましたと思いましたのですが、私は、そういうことは自分はまだ聞いておりませんし、あったらどうするという仮定の問題では私の立場からはお答えできません、こう申し上げたと思うのであります。しかしながら、私の御答弁申し上げた点で誤解がありますようでしたら、その言葉は取り消してけっこうです。
  71. 森下國雄

    森下委員長 関連質問の通告がありますので、これを許します。川上貫一君。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 私は、関連でありますから、ごく短く、質問は全部まとめていたしますから、その一つ一つについてお答えを願いたいと思います。穗積委員に対する外務大臣その他の御答弁を承っておりますと、韓国朴政権が及んでおるのは三十八度線以南と考え交渉しておる、こういう御答弁と同時に、朝鮮政府一つであるという答弁もあるのであります。ここに非常に危険を含んでおると私は思いますので、この点についてまとめて質問します。それに対する御答弁に対しては、関連でありますから再質問はしません。あとに残しますから、簡略に御答弁願いたいと思います。  第一は、韓国側交渉態度は、全朝鮮を代表する、こう言うておるのです。韓国政府の権限区域は北朝鮮全部に及ぶ、こういう態度なのであります。この態度をお認めになるのか、絶対にこういう態度では拒否なさるのか、これを一つ明確にしておいてもらいたい。これが第一点であります。  第二点は、同じ意味になりますが、政府交渉は、全朝鮮を代表するものと認めて韓国側代表と交渉なさるのか、三十八度線以南に限定をして交渉なさるのか、これを明確にしてもらいたい。  第三点は、あなたの方で交渉の妥結をどうしてもするという態度をとっておられるのですから、そうすれば、その態度の中に協定文、条約文は頭にあるでしょうが、その文章の中にはこのことをはっきり書かれるのかどうか。これは穗積委員の質問にも関連しますから、第三点。  第四点は、三十八度線以北には政権があると思うておられるのですか、政権はないと思うておられるか。これが第四点。  第五点は、大韓民国の憲法第第一章第四条には、「大韓民国領土は、韓半島及びその附属島嶼とする。」とあるのであります。これをお認めになってかかっておるのですか、これは日本政府としては認めないのですか。  その次には、一つの例でございますが、かりに漁業に関する取りきめができるとします。その取りきめは全朝鮮の領海沿岸全部を含むのですか、三十八度線以南の領海沿岸の取りきめになるのですか、これをはっきりとさしておいてもらいたい。  その次には、朴政権との取りきめをするという考え、その基礎には、この取りきめは在日朝鮮人の全部を拘束する、こういうものになるおつもりですかどうですか。意味がわかりますか。よく相談しておいて下さい。  その次には、請求権の問題で、三十八度線以北の部分の請求権をどうするのか、残るのか、解決してしまうのか、ここをはっきりして政府態度を聞かしておいてもらいたい。  最後ですが、例で言います。法的基礎がある請求権は認める、このうちの一つは、たとえば恩給があります。恩給権を認める場合に、三十八度以南の住民、すなわち韓国政府の施政権の及んでおる地域の住民、これだけに限るのですか、これだけに限らぬのですか。限るなら限るとはっきり言ってもらいたい。そこで、これに関連しますが、たとえば、この恩給権は日本におる朝鮮人全部も持っておるわけです。日本におる在日朝鮮人にも基礎さえあればこの請求権はあるはずですが、そうすると、在日朝鮮人には、ひょっとしたら基礎になる人と基礎にならぬ人ができるのですが、この区別はどうして分けるのですか。恩給権の問題、在日朝鮮人の問題、これだけです。  問題がきわめて簡単ですから、簡単に、私は再質問しませんから、お考えを承っておきたい。
  73. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 全部のおあげになりました問題について、私どもは、現に韓国施政の及んでいる地域、現に韓国の施政権が三十八度から南しかない、こういう事実を頭に入れて交渉するわけでございますが、やや技術的な問題もございますし、伊關アジア局長からお答えいたします。
  74. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 御質問につきまして、第一点は、先方は当然全鮮を代表するというつもりでおります。わが方は、この国連決議の趣旨とか、現実に施政の及ぶ範囲というふうな点を考慮に入れて、これに当たっておるわけであります。  第二点の、これを限定して交渉するかという御質問、これも今の御答弁に含まれておると思います。  それから、協定文にこの点をどうするか、協定にこういうものを書くか書かぬかというのは今後の問題でございますが、交渉の実質、中身がきまりました上で、そこでこれを協定文にどう表わすかということになって参るのでありまして、協定文にこういう点が出るか出ぬかという点については、まだ私たちとしてもはっきり考えをまとめておりません。  それから、八度線以北政権ありやいなや、これは、この国連総会のあれを見ましても、要するに、大多数の韓国人が住む部分と言って、それ以外の部分があるということも認めておるわけであります。そこにオーソリティがあるということも認めております。われわれもそういう考えに立っております。  それから、韓国憲法第四条、領土の規定を認めるかということでありますが、先ほども御答弁いたしましたように、領土条項については、おそらく今度はそういうものは入ってこないというふうに考えております。  それから、漁業がどうなるかという問題ですが、これは現在においても事実問題として三十八度線の北には出ておりません。実際問題としましても、先ほども大臣からも御答弁しましたように、現実に支配の及んでおる範囲ということになります。(川上委員「そうすると三十八度線以南の領海ですか」と呼ぶ)そういうふうに書くか書かないかは別問題でございまして、実際問題としては、現実もそうでありますし、今後もそういうことになろうと思います。  それから、在日朝鮮人といいますか、在日韓国人法的地位等の取りきめができた場合に、これが南北に分かれておる、あるいは南北いずれにもつかぬ者がある、これをどうするか、なかなかむずかしい問題だと思います。協定できめたものは韓国人というふうに協定にはきまってくる。在日韓国人ということですから、自分は韓国人ではないという者は、その協定の恩恵に浴するわけにはいかないと思いますけれども、実際問題としましては、そこに不公平がないように、これは十分考慮しなければならぬ、こう思っております。  請求権につきましても、考え方は従来申し述べておる通りでございます。その他はブランクになっておるわけでございます。  恩給につきましても、現実の問題としましては、施政の及ぶ範囲という点を考慮に入れております。在日朝鮮人のうちのその他の者がもし恩給権を持っておったらどうかというただいまの御質問、そういうのがおりますかどうか疑問でございますが、先ほど申し上げたと同じ考えに立っております。
  75. 森下國雄

    森下委員長 この際三十分間休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後一時五十六分開議
  76. 森下國雄

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野原覺君。
  77. 野原覺

    野原(覺)委員 午前中の穗積委員の質問に続きまして、私は日韓会談についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  今回日韓の外相政治会談が持たれておるわけでございますが、まずこの点についてお尋ねいたしたいのであります。政府日韓会談については事務的折衝が煮詰まったという考えのもとにこの政治会談を持たれたかどうかということをお伺いしたいと思います。
  78. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このたびの日韓会談をやりますにつきまして、事務的な会談と政治的な会談というものを並行していたそう、こういうことで約束しておりまして、事務的な話し合いにおきましては双方意見を出しておるわけでございますが、漁業以外のものは相当程度に双方意見を出しております。従って、この辺でより高いレベルでもう一度話し合いをやりましょうというような趣旨で外相会談を持っているわけでございます。
  79. 野原覺

    野原(覺)委員 三月十日でございましたか、韓国新聞・通信社の在京特派員が外務大臣に対して質問書を出しておるのであります。この質問書の第一問に対する回答として、あなたはこういうことを述べておる。日韓会談請求権委員会においては、かねてより、請求権に関する種々の法律論をたたかわせ、合わせて、請求権の裏づけとなる事実関係や資料の検討を行なってきたが、最近にいたり、このような作業は一段落するに至った。」この回答によりますと、つまり事務的折衝というものは一段落をしたのだということです。ただいま外務大臣は、漁業権の問題はまだそうではないということでございましたが、一段落をされたということであるならば、つまり、日韓会談の四つの委員会でございました基本関係の問題はどう一段落をしたのか、それから、請求権の問題は、事務折衝のレベルでは何回会合を持たれてどのように一段落をしたのか、それからまた、漁業権の問題は、これはそうでないと申しますから、このことは外務大臣の答弁を信用して私は申し上げませんが、法的地位並びに処遇に関する事務折衝レベルの話し合いというものはどのように一段落をしたのか、これをお聞かせ願いたいのであります。
  80. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 基本関係につきましては、これは初めからすべての基本関係以外の問題が解決しました上でこの問題に入るということになっております。従いまして、漁業とか請求権とか法的地位解決しました上で、そこで入ることになっております。  それから、法的地位請求権につきましては、何回会合をやりましたか、私は回数はよく覚えておりませんが、昨年の十月二十日から始めまして、少なくとも一週間に一回というものはやって参っております。法的地位につきましても、永住権の範囲というふうな問題その他一、二を残しまして、ほとんど討議を終わっております。  それから、一段落ついたと申し上げますのは、ある意味でこれでもって委員会レベルのものが全部終わったという意味ではございませんで、ある意味で高いところでもって解決をしないともう進めなくなっておるという意味もございます。
  81. 野原覺

    野原(覺)委員 総理が御出席になられましたので、総理に対する質問を、半時間という約束だそうでございますから、いたしたいと思うのであります。しかし、事の順序として、午前中に質疑に立ちました穗積委員総理に対する質問が残っておるそうでございますから、まず穗積委員総理に対する質問が終わって、私も総理に若干お尋ねをし、そうして日韓問題の各般の点にわたって質疑を続けさしていただきたいと思います。
  82. 森下國雄

  83. 穗積七郎

    穗積委員 日韓会談につきまして外務大臣から午前中お伺いしたのですけれども総理がお見えにならなかったので、ちょっと重要な点だけ二点ばかりお尋ねしたいと思います。  今、野原委員からもちょっと話が出ておりましたが、われわれの理解では、事務折衝というものと政治折衝というものと言葉では使い分けをしておりますけれども、たとえば請求権問題について事務折衝と言い政治折衝と言いましても、基本的なお互いの立場というものが理解されませんで政治折衝に入りましても、たとえば額を大体の目見当でどの辺にきめようかというようなことになっても、基本の立場がはっきりしなければ政治的にその総括をすることができないと思うのです。たとえば請求権問題についても、今事務当局の御報告ではだいぶ煮詰まったようなことをおっしゃっていますけれども、基本的に、たとえば平和条約の四条の解釈は一体どういうふうにしておるのか。それから、五五年の四月二十九日のアメリカ国務省から韓国大使館に対する覚書、——これは形式は書簡になっておりますけれども。それから、四五年十二月六日の例の軍令三十三号の問題、それから五七年のアメリカ国務省の覚書としての正式な見解、これは時間的に見ますとそういう順序で出てきておるわけです。そうして、例の相殺をするという問題につきましても、基本的にまだ両者主張そのものの基本が全然一致してない。それから、午前中の論議の中心の一つになりましたが、今度の請求権基礎としては、三十八度線南範囲に限るのだと言われるが、向こうは全朝鮮と言っておる。そういうような状態で、これを政治的に総括をして最終的な妥結、すなわち額をどういうふうにする、それから請求権は幾ら、無償による援助が幾ら、有償による経済援助が幾ら、そういうようなことが出てこないと思う。にもかかわらず、これを急速にやられようとしておる。いわゆる政治会談としてやられようとしておる。基本点が煮詰まってきて合意に達したならば、そこで、最終的に額をどの程度にし、部門をどの程度に分けるかというようなことはできるでしょうけれども、根本的な違いがある。漁業にいたしましても、第一、向こう側は、李ラインあるいは国防ラインと言い、名前は何でもいいですけれども、その問題については全然触れてないで、ただ暫定的な漁業協定ということは合意にだんだん近づいておられるようですけれども、それをとってみましても、この漁業協定内容である資源確保のやり方について、捕獲量でいくのか、船の数で制限をしていくのか、あるいは禁止区域を設定するのかどうか、これも全然まだ意見が対立のままできまっていない。さらに、重要なことは、先般の予算委員会でもわれわれ問題にした竹島問題、きょうも問題になりました。これに対して、向こうは、議題とするのではなくて、議題にするしないは別として、国交正常化のためにはそういうのは別問題である、こういうことで日本政府との間で基本的に違っておる。にもかかわらず、第一次、第二次の政治会談をやって急速にこれをまとめてしまう、こういう態度によって会議が進められておるということは、はなはだしくわれわれとしては矛盾を感ぜざるを得ない。そうなりますと、日本の自主的な判断によって、合理的な基礎によって会談が進められ交渉が進められるということではなくて、だれかの力によって、何かに乗せられて非合理的な基礎によってこれを妥結しようとする、そういう誤った政治的な会談になる危険があるわけです。それを総理は一体どういうふうにお考えになっておられるのか。われわれの疑問は、今申しました通り、事務折衝というか、基本的なものがきまっていない。会談をするレベルは、総理であろうと、外務大臣であろうと、あるいは事務当局であろうと別として、基本的なものがきまってないのです。それを無理やり政治会談で妥結をしてしまうということの理由がさっぱりわからない。そうなると問題は解決されないであとに紛争を残す結果になる。そうして誤った解決になる。こういうふうにわれわれは心配するわけです。その点についての総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年から両代表でいろいろ事務的な問題、基本的な問題等々の折衝をいたしました。大体の話し合いのつく問題と、そうして、あくまで平行線の問題もございます。すでに御承知の通り、われわれは、事務折衝の間では、今の韓国が全朝鮮を支配するかどうかということはほとんど問題にしません、私自身は。ところが、新聞に出ているようでございます。そういうところで大きい問題も残っております。大きい問題も残っておりますが、事務的折衝の中で片づかぬもの、基本的な問題等々も、やはり人を変えて強化すると申しますか、変えて話をする。それが政治的折衝と申しましても事務的なものもありましょう。そういう煮詰まったものを確認すると同時に、平行線のものを近寄らしていって、そうして両者の妥協点を見出そう、こういうのが今の段階であるのであります。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 人を変えてやるということは必ずしも事務折衝、政治折衝の区別にならぬと思う。そういうこととは問題は別だと思うのです。第一、私が言っておるのは、そういうことでなくて、人を変えるとか変えないとかいうことではなくて、基本的な原則について第一両者の食い違いが非常にひどいわけです。まだ非常に幅があいておる。にもかかわらず、これを政治折衝と称して何か妥結を急いでしまう、これは非常に誤りだと思います。ですから、今は総理は基本的なこちらの主張は曲げないつもりだ、こういうふうに今の話では私は理解いたしますが、そうなりますと、午前中に外務大臣にもちょっとお尋ねいたしましたが、先方の妥結に対する今後の方針としては、伝えられるところによりますと、四月に第二次の政治会談をやる、五月十六日に、つまり革命の一周年のときになりますが、そのときに仮調印をやりたい、秋に国交正常化をやりたい、こういうふうに、問題を見て解決の可能性があるからということでなくて、むしろそれとは違った非常な経済的または外交上の弱点を早く補強したいというようなあせりを示しながら、無理やりスケジュールを組んでおるようですが、その点については、今言いましたように、基本主張については、まだ幅はあるけれども、こちらは曲げないでいくということですと、今の折衝については、そういう早期妥結ということに必ずしもとらわれないで、そうして合理的に、あとに問題が残らないように、着実にこれを解決していく、原則は守っていく、こういう態度でいかれるか、そのいずれであるか、向こう側の大体の態度とにらみ合わせながら日本側態度を伺っておきたいと思います。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、なるべく早く妥結したいという気持は持っております。しかし、急いで、われわれの主張すべきところを主張せずに、われわれの譲れないものも譲るというふうなことは考えておりません。交渉というものは、お互いに誠意をもって、そうして妥結点を見出すのでございます。守るべき基本的の問題と、折衝は、妥結するために譲り得るところは譲るという気持はなけらねばなりません。そういう考え方で、なるべく早くやっていこうといたしておるのでございます。  そこで、今いついつまでにどうするこうするというふうなことは、それは、なるべく早くしたいという考え方のもとに事務的には話があるかないか知りませんけれども、なるべく早くしたいというだけで、スケジュールをぴしゃときめてどうこうというわけではございません。今月一ぱいにきまればそれでけっこうですし、また、今月一ぱいにきまらなければまたいつまでかかるか、これは両者の誠意と互譲の精神だと思います。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 総理に対する時間が割り当てられて、もうありませんので、はなはだ残念ですけれども、もう一点だけお尋ねしておきます。  実は、午前中にも外務大臣お尋ねしておったのですけれども先方は当初の方針は、経済協力の問題は国交正常化後でなければという態度であったのが、内部的な事情その他によって急に変わって、民間による経済協力関係は妥結前でもよろしい、こういうことで始まっておるわけです。そうして、あなたの親書を持っていったとか持っていかないとかいう湯川康平氏その他いろいろな動きを示しておる。それから、蝶理その他の商社の間あるいはメーカーの間でもそれぞれの折衝が始まっておるようです。  そこで、それらの問題に関連をしてこの前予算委員会でもちょっと話が出たんですけれども、今のところは日本政府はそういう問題は全くコマーシャル・ベースでやってもらう、そうして政府関係をしない、政府はその資産ないしは投資あるいは債権が焦げついた場合にこれを補償するというようなことは考えないし、それから、交渉内容についても、民間にまかせて、政府はこれに関与しない、こういういわゆる純然たる民間ベースでのみ考えておる、こういうような政府の御答弁であったわけです。ところが、きのうも話が出ましたが、ドイツまたはイタリア等はすでに政府間の協定または覚書によって話が進められておって、レールの上へ列車が走るという形になっておる。日本のやつは、今言ったような非常に不規則な変調の交渉が始まりましたから、先に民間が行っておるわけです。現在行なわれておるのはそうであっても、万一政府のお考え交渉が妥結したとする。そうすると、請求権に伴う支払いの義務がこっちは生ずる。続いて政府間の経済協力の協定がまたできる。あるいは一本の条約の中へ出るかもしれませんけれども、とにかく政府間の協定または合意はあり得るわけです。そうすると、前に進んでおった今の民間のものをこのいずれかの中へ肩がわりをする、たとえば、焦げついたものは、それを保護するために請求権支払いの分で相殺をするとか、あるいは政府間の取りきめの行なわれたものの中へ自後にそれを救い上げていく、そういう動き、——安全と効率をあくまで追求する資本の立場からいけば、そういう政治的な要求が出てくることは当然想像のつくところです。これに対して、そういうものが出てきても絶対にやらぬとおっしゃるのか、そういうものも場合によれば検討して、それに日本の間接または直接の保証の中へ入れていく、こういうふうにお考えになっておられるのか、そのいずれであるかを伺い、同時に、民間であると政府であるとを問わず、日本国交正常化前後から行なわれた新たなる投資または権益が生ずるわけです。その権益に対して、これを保護する政策というものは当然今の与党としてはお考えになるでしょう。その新たに生じてきた、今まで放棄した財産権じゃない、新たに生じてきた権益、財産、政府と民間資本とを問わず、これに対する保護の方法をどういうふうにお考えになっておられるか。続いて関連をしてそれについてもお答えを願いたいと思います。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 他の機会に申し上げたと思いますが、われわれは、今、請求権、漁業権あるいは法的地位、この三つの大問題を中心として国交正常化に入ろうとしておるのであります。これが主であり、全部と言ってもいいのでございます。今までも民間でコマーシャル・ベースでノリを入れたりいろいろな貿易がございました。石炭、無煙炭を入れたりなんかしております。これは民間のあれでございまして、政府は直接に関知しておりません。何か聞くところによりますと、私がだれかに持っていって親書を出したとかいう、とんでもない話で、そんなことを私がするほど大胆じゃございませんし、一国の総理でございますから。こういうことはお考えになること自体がどうかと思うのです。従って、私は、正常化に伴って政府間で経済協力をする、こういうことはありまするが、正常化以前に政府がどうこういう関係は持たない、これははっきり申し上げます。正常化以前に民間の人がコマーシャル・ベースでやるということは、これは何も政府関係したことじゃございません。しかして、正常化以前に民間の人がコマーシャル・ベースでやって、そのあおりとかしりぬぐいを政府に見てくれということは、原則としてすべきじゃございますまい。ただ、これは、経済的の問題でございまして、その投資が非常にうまくいった、——政府は何も責任を負いませんよ。うまくいった、そして正常化後においてこの問題を育成するために政府が今度は公式に今までやりかけた事業に対してどうこうするということがあった場合におきましては、それ以前の行動に対して政府がどうするかということはあり得ましょう。しかし、原則としては、そういうものにはタッチしていないのですから、私はそういう問題は起こらぬと思う。それで、後段の御質問もこれでお答えできたと思います。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 時間もありませんから、これで。
  90. 森下國雄

  91. 野原覺

    野原(覺)委員 若干質問の系統が変わって参るのでありますが、総理の時間の都合がございますから、総理お尋ねをいたしたいと思うのであります。  第一点は、あなたは昨年の十一月に朴さんと東京で会談をなさった。そのときに、対日財産請求については法的根拠のあるものについて支払うことに朴会談で一致をした、こうあなたは発表されたのであります。このことは国会でも答弁をしておる。あなたが朴正煕との間に、法的根拠のあるものについて支払うことに一致したという、その法的根拠とは一体どういうことなんです。これは大事な点ですから私はお聞きしておきたいと思うのであります。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約第四条(a)項、(b)項の規定によりまして、日本政府韓国政府並びに韓国民に対して支払う法的の義務がある、これにつきましては、支払うべきだ、こう考えております。その法的義務とは何ぞやということになります。たとえば、以前に韓国人で日本の公務員であった人につきまして、これは恩給法の規定によって支給できるかどうかということになりますと、国籍を失った場合におきましては恩給権は喪失するわけです。しかし、国際慣例から申しまして、また、あの事態から申しまして、日本の国籍がああいう格好でなくなったから、それは全部だめだというわけにはいきますまい。しかし、日本の恩給法から申しますと、これはもう恩給受給権の喪失ということは法律できまっておるわけです。しかし、こういうことは、今言ったように、法律的義務がないかということになりますと、国際的慣例から申しましても研究しなければならぬ問題でございます。だから、日本の現行法から考えて当然の権利のあるもの、また、国際的慣例から見て考えられるものも、いわゆる厳粛な意味での法的根拠ということは言えませんけれども、やはり通念的に根拠のあるものについては相談に応じよう、こういう意味でございます。
  93. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、法的根拠というのは、たとえば恩給の問題、あるいは韓国人の郵便貯金の問題、あるいは戦時中徴用者として日本に参っておりました、あるいは向こうで徴用された、そういうような処遇の問題といったような個人請求権に限定するという意味合いの話し合いはいたしておりませんか。そういうことではございませんか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 個人的請求権と限定するわけにはいきますまい。たとえば、戦前の朝鮮銀行の本店にありました日本銀行券の問題、この請求権は必ずしも個人的請求権とは申されますまい。誤解があってはいけませんが、個人的請求権に限定するという話し合いではないが、法的根拠のあるものと私は言っておるわけでございます。たとえば、朝鮮船籍の船の問題等につきましても、これも、個人的請求権なりや、韓国請求権なりや、これは問題でございましょう。船籍地が釜山にあった船についてどうするか、こういうことは個人的請求権とお考えになることは少し狭過ぎて、早過ぎるのではないかと思います。
  95. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは、お尋ねいたしますが、日本人が朝鮮に持っておった私有財産、これについて、私は、日本にも請求権があるのではないか、こう思うのです。この点は総理はどうお考えになりますか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、平和条約四条(b)項の規定によりまして、韓国における個人の財産権がどうなるかという問題につきまして、一応疑義がございましたが、昭和二十年の十二月のヴェスティング・デクリーの効力につきまして論争の結果、ちょっと年数は覚えませんでしたが、アメリカ日本韓国との間でこれの取り扱いにつきまして了解ができたと記憶いたしておるのであります。詳しいことは専門家からお答えいたします。
  97. 野原覺

    野原(覺)委員 専門家の御答弁はあとでゆっくり実はお伺いしたいのであります。  大事な点だけお尋ねをしておきたいのでございますが、次にお聞きしたいことは、竹島の問題です。竹島の問題につきましては、外務大臣が予算委員会において私にこう答弁をしたのです。これはよくお聞き願いたいのですけれども、「要するに合理的な解決ということで双方主張が一致しなければ、領土問題については国際司法裁判所に提訴して公正な判決を仰ごう、こういうことについて先方が合意する、すなわち応訴する。それを見て国交正常化する、こういうことだろうと思います。」、つまり、国交正常化のためには、やはり応訴ということは必要なんだ、外務大臣はこうはっきり何回も私の質問に答弁をしておるのです。この点は、あなたの外務大臣でございますから、おそらくあなたと意見が食い違うはずはなかろうと思う。これは重要なことでございますから、総理も同じ見解であるか、私は確認をしておきたいのであります。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓両国が国交正常化していこうという熱意を持っておるときに、竹島領土問題につきまして、いつまでもこれを不確定にしておくということは、両国間の正常化の上から言って好ましくございません。われわれは、ただいま日韓交渉の主題の問題として先ほどあげた三点を中心にしておりますが、これがまとまるまとまらないも、お互いの誠意でございます。従って、一部には、三問題と同様に竹島問題も解決したらどうかという議論があります。われわれも賛成です。しかし、竹島領土問題は三問題とはなかなか事柄が違う。妥結できればそれでよろしゅうございます。竹島領土問題について重要な三問題の妥結ができずに、いつまでも今までのような状態であるということは、両国間にとってよくないと考えます。従いまして、この三問題を解決して正常化する前提としては、この竹島問題について解決の方法を見出すということは、私は両者の道義的義務だと思います。従いまして、この間で妥結すればよろしゅうございます。日本のものだといって承認すれば、これでよろしゅうございますけれども、しかし、なかなかそういかぬときには、少なくとも、われわれが前から考えておった、竹島問題について国際司法裁判所に提訴する同意ができれば、向こうが同意すれば、これは国際司法裁判所の判決によりましてお互いが納得いくわけでございますから、外務大臣竹島問題を解決したいというのは悲願でございまして、これがなければ日韓交渉はしないというのではないと思う。私は、そういう意味におきまして、外務大臣意見が一致しておるのでございます。
  99. 野原覺

    野原(覺)委員 このことは一応あなたの御意見外務大臣のお考えも同一であると私も確認いたしましたが、しかし、これは大事なことですから、やはりもう少し明確にしておきたいのです。  私は逆の面からお尋ねしておきますが、応訴がなければ国交正常化はないんだ、こう私どもは実は考えたいのです。あなたも今、応訴ということは必要なんだ、こう言っているのですから。では、応訴しなかったらどうするのか。これは、総理考えておるようになかなか  あるいは総理はその後朴さんなり金きんなりといろいろお話をしておりますから、一体どういうお話し合いをしておるのかは私ども知りませんけれども、なかなか簡単に応訴しないんじゃないか。十何年間もほうってきたのです。ですから、じゃ応訴しなかったらどうするんだというところまで、竹島問題についてあなたがそういう御熱意を持ち、どうしてもこれは日本のものだ、解決しなければならぬ、これを解決しなければ会談の妥結といいますか国交正常化はあり得ないという、そういうお考えから言っても、じゃ応訴しない場合にはどうするのか、応訴しない場合には、それでも国交正常化させるのかどうか、これはあなたの考えをはっきりさせる意味で私は承っておきたいのであります。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 外交交渉におきまして、特定の問題、それと直接に関係はないが、それと相当——国交正常化においての一つの問題、これについての願いと、それができなかったときには本題をどうするかということについて、政府当局は意見を言うべき筋合いのものではございません。われわれは誠意を持って両国間の国交正常化するのに邁進しておるのであります。一つの条件ができなかったらこっちの条件もどうするというようなことを、交渉をりっぱに成立させようという段階において政府当局は言うべき筋合いの問題ではないと思います。
  101. 野原覺

    野原(覺)委員 時間もありませんから、私の時間を守りたいと思いますが、最後に一点だけお尋ねいたしておきます。  李ラインの問題です。私は、総理の外務委員会なり予算委員会におけるこの問題に対する御答弁の速記を逐一読んでみたのです。どうも納得ができないのです。李ラインは国際法違反だ、国際慣習上も不当である、こういう見解を日本政府は一貫してとって参りました。とって参りましたが、今度の会談の中で、じゃ李ラインの撤廃を要求するのかどうかということがきわめて不明確なんです。これは総理はどうお考えになりますか。漁業問題さえ解決すればおのずと李ラインは撤廃されるものと考える、私はそういう甘いものじゃないと思います。そういう甘い認識であなた方が李ラインの問題を扱われるということになると大へんなことだと思う。この問題については、やはり従来日本政府がとって参りましたように、国際法違反だ、慣習上も不当だ、こういう見解のもとに、国防ラインとしての李ラインは撤回してもらう、撤回させた上で漁業協定を結ぶのだ、これでなければ私は従来の政府態度というものが一貫していないと思うのですが、どうお考えになりますか。これは一つ明確に御答弁を願いたい。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 李ラインの意図するところは、漁業問題だけでなく、ほかのことも意図しておりましょう。たとえば竹島問題等々ございます。従って、お話の通り、われわれは李ラインというものは初めから認めていない、そういう前提に立っておりますから、漁業問題を解決する。李ラインの存続があって漁業問題が解決できようはずはございません。これは当然のことで、われわれは李ラインというものを初めから認めておりません。しこうして、日韓におきまして領海の問題等もございまするが、私は、漁業問題につきまして両者話し合いで両国の利益になるように建設的な妥結をしていきたい。重ねて申し上げますが、李ラインというものは初めから認めておりません。
  103. 野原覺

    野原(覺)委員 崔外務部長官日本に参りまして、日本の新聞記者団諸君の質問に対して、李ラインには二つの目的がある、こう言ったのです。しかし、李ラインの二つの目的については述べなかった、中身は言わなかったそうであります。私は外務大臣お尋ねする。総理は明確に答弁されたのです。あなたが三月十日韓国人記者団の質問に対して回答した文書を私も読んでみましたが、やはりそこでもあいまいです。総理のように李ラインの撤廃を要求するということは明確に述べておりませんが、これは、総理が御答弁されたのでありまするから、総理以上の責任のある方はないのですから、私も信用したいのでございますけれども、しかし、外交交渉責任者として、外務大臣は、李ラインの撤廃、国防ラインとしての李ラインの撤廃はあくまでも要求する、その方針でこの政治会談にも臨み、今後交渉していくのだ、そういう御決意でございますか、承っておきたい。
  104. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 総理大臣がお答え申し上げたと同様の気持をもって考えております。
  105. 野原覺

    野原(覺)委員 では、外務当局にお尋ねしたいのです。最初に戻りたいと思いますが、私はこの事務折衝についてお尋ねしたのであります。この事務折衝で一段落をしたというその中身を私は述べてもらいたいと聞いたのでありますけれども、その中身についてはまだ御答弁がないのであります。一体、一般請求権委員会における事務折衝はどうなっておるのか、その事務折衝の段階で韓国は幾ら金額を要求したのか、日本はどれだけの金額を提示したのか、どうなっておるのか。これは、一般請求権委員会の事務折衝は一段落をしたと外務大臣も答弁しておるし、伊關アジア局長も申されたわけでございますから、この点については何かあるはずであります。お尋ねをしたいと思います。
  106. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 一般請求権委員会におきまして、韓国側は幾つかの項目をあげまして、それを請求する法的な理由、それから、それに関する事実的の関係というものをるる申し述べたわけでありまして、これに対しまして、わが方としましては、その向こうの法理論に対してわが方の法理論を展開すし、それから、事実関係につきましては、これはお互いに確認し合う、足らない証拠等をお互いに探して出し合うとか、向こうもこういうものがほしいし、また、わが方としてはこういう点の資料がほしいというふうなことで、協力関係になるわけでございます。そういうことをいたしたわけであります。先方は、これにつきまして、その各項目ごとに要求金額を出しております。ただし、これは、まだ結論が出ない過程におきまして、これは賠償の場合でもそうでございますが、目下交渉中に、先方が幾ら要求したということは申し上げないのが外交折衝の慣例でございます。わが方としましては、それに対しまして、事務段階におきまして、どれは認めるこれは認めぬというようなことははっきりと申しておりません。それから、どれについてはどういう金額になるというようなことは申しておりませんけれども、おのずから、わが方の法理論その他におきまして、先方としましても、大体日本側はこういうものは認めるであろうというふうな点、それから、事実関係も一致して参っております以上は、その事実を基礎に積算いたしますれば大体の見当はついているのではないか、こう考えております。
  107. 野原覺

    野原(覺)委員 金額については言えないということですが、しかし、私は、請求権の問題はやはり金額の問題ではないかと思うのです。新聞はすでにいろいろ書いているじゃありませんか。しかし、たって言えないということであれば、私はこの問題はまた後日お尋ねいたします。  外務大臣にお聞きしたいのは、私は今総理に財産請求権の法的根拠について承ったのであります。そこで、時間があれば総理お尋ねしたかったのでありますが、この法的根拠は、外務大臣承知のように、たとえば軍令三十三号がある、あるいはサンフランシスコ平和条約の四条(a)項、(b)項がある、それからまた、この四条の解釈についてのアメリカ政府の見解として対日覚書がある、こういうものが結局財産請求権問題の法的根拠としては重要であろうかと思います。この点について、一体韓国側とはその見解の一致を見ておりますか。請求権問題をきめていこうというのに、最もその大事な法的根拠についての意思の統一ということが大事であろうと思うのでございますが、どのようになっておりますか、承りたい。
  108. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 請求権は法的根拠のあるものに限る、こういうことは、池田・朴会談で一致したわけであります。しからば何が法的根拠のあるものとみなされるべきものかというような点につきまして、事務折衝段階にもいろいろ話があったようでございますが、私のところへ崔外務部長官がこられたのも、一つの問題としてはそれがあるといいますか、非常に大きな問題だと思います。こういう点につきましては、一昨日もお話をいたしましたが、これについて完全な一致があるというところまではいっていないというのが正直なことだと思います。
  109. 野原覺

    野原(覺)委員 これは非常に大事な問題です。私はこの問題が解決されなければ具体的審議は意味ないと思います。私は、この法的根拠が不明確のまま金額を出し合って議論をする、しかもその法的根拠をあいまいにしたまま政治的取引で額をきめるということは、とんでもないことだと思う。これは、韓国の朴も、それから池田首相も法的根拠についてということを確約したのはその点であります。だから、どの点が韓国と対立しているのか、お聞かせ願いたい。これは、新聞では、記者会見で、伊關アジア局長でしたか、十二日の会談の当初小坂外務大臣がるる述べたという意見の表明がございましたが、私は正式にお聞きしたいのです。これは日韓問題の最も基本的な問題ですから、私はお聞きしたいのです。これも外交の秘密だといって言えないはずはない。はっきり向こうも言っているのですから、これを一つお尋ねをしたい。どういう点が一体対立をしているのか、明確にお示しを願いたい。
  110. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 わが方の考え方は十分先方に申しましたが、これは会談内容になりますので、一つこの際は御容赦を願いたいと思います。
  111. 野原覺

    野原(覺)委員 全く国会はつんぼさじきであります。これはガラス張りの外交でなければならぬと私は思う。国民の血税でその財産請求に応じようかどうかという問題を、国会をつんぼさじきにして、新聞記者の方々がお尋ねをすることには答弁をしていくというような、そういう国会を侮辱したやり方というものは、私は了解できないのです。これはなぜ言えないのですか。では、一々お尋ねをしていきましょう。軍令三十三号の解釈ですが、これは、日本政府によれば、軍令三十三号によって日本韓国における財産というものは没収をされた、没収をされたその財産が韓国に引き渡された、そこで、その効力発生の期日が問題になっておると私は思うのです。韓国は二十年の八月九日以降持ち帰った財産は全部返せということを主張しておる。これに対して、日本はこの主張承認しておるのですか、どうなんです。
  112. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 軍令三十三号というものは、昭和二十年の十二月六日に実施されたものでございまして、八月九日にさかのぼる点につきましては、日本側は認めておりません。
  113. 野原覺

    野原(覺)委員 では、次にお尋をしたいと思うのですが、その次は、このアメリカの対日覚書の問題です。これは予算委員会でも外務委員会でも外務大臣が何回も答弁をしておりますが、これは、外務大臣承知のように、韓国にある日本財産に対する日本請求権が消滅したという事実は、日韓両国が財産処理問題で協議する場合に当然考慮きるべきであるということで、このことは、十二日の政治会談でも外務大臣から長時間にわたってその見解の表明があったと外務省は新聞発表をしておる。この考慮さるべきであるということは、韓国日本に対する請求権に相当する程度のものは、これは相殺さるべきだと、私どもには今日まで政府は答弁をしてきたのです。やはりこの主張を十二日も明確に出されたのかどうか、この主張に対して、それでは韓国の方はどのような見解を持っておるのか、お聞きしておきたい。
  114. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 そのアメリカの解釈と申しますのは、韓国日本が公私の財産を置いてきた、これが米軍の手を経て韓国政府に渡っておる、その事実によってどの程度韓国の対日請求権が満たされたかということは、まさに日韓両国において取りきめるべき問題であるというのがアメリカの解釈であります。日本請求権は放棄いたしておりますから、全然残っておりませんが、ただ、そういう事実によって、韓国請求権が十なら十あるといたしまして、それをどこまで相殺するかというか、満たされたというか、七であるか八であるかというようなことは、まさに日韓両国の間できめるべき問題でありまして、これはとうてい事務当局の間ではきめ得ない問題である、こういう点こそまさに外務大臣の間できめるべき問題だ、こう考えております。
  115. 野原覺

    野原(覺)委員 では、次にお聞きをしておきたいことは、対日財産請求八項目というのが韓国から出されておるわけです。この対日財産請求の八項目は、実は、韓国側の発表によりますと、アメリカ政府の対日覚書、ただいま私が申し上げました考慮すべきであるというこの覚書を考慮した上の要求だと、こう言っておるのです。考慮した上の要求として財産請求八項目を決定して、これを日本に出しておるのだと韓国側は発表しております。これは伊關局長も御承知の通り。外務大臣も御承知の通り。日本政府はこのことに対してはどういう見解を持つのか、承っておきたい。
  116. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 韓国がそういうふうな発言をいたしたことは過去にございます。しかし、それに対しまして、われわれは、賠償というふうな観念は日韓の間にはないのだ、ですから、もし賠償のような考えを持っておるならば間違いであるというふうに申しております。ですから、そのアメリカ解釈を適用して残ったものがこの八項目であるというのではなくて、この八項目に対してアメリカ解釈というものが適用さるべきであるというのが日本側の解釈であります。
  117. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで、私は外務大臣のお考えを再度承っておきたいことは、ただいま申し上げました対日覚書なり、それから軍令三十三号、それから平和条約の四条(a)項、(b)項の解釈、こういうことは今度の財産請求の法的根拠の最も基本的なものです。これによって財産請求権の問題が処理されるわけでございますから、この点について、ただいま私が申し上げました、基本的な法的根拠についての両国の意思の統一と申しますか、見解が同一になると申しましょうか、そういうことでなければ具体的な審議に入るべきでない、私どもはこのように思うのでございますが、外務大臣、この点はどうですか、承っておきたい。
  118. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもは、外相会談をするにあたりまして、われわれの考え方日本政府考え方というものは一昨日詳しく述べました。それに対しまして、先方からけさ韓国側考え方というものを聞きましたけれども、これについて今後どういうふうに会談を進めるかということに対して、きょう小人数で打ち合わせてもらうということにいたしました。この点、先ほど穗積委員にお答えをいたしたようなことでございます。そういう考え方で、いかに進めるかということを今後考えていってみたいと思いますが、私は、日本政府態度立場考え方というものは、あくまで主張していくべきものである、こう考えております。
  119. 野原覺

    野原(覺)委員 日本政府の見解を主張することは、日本外務大臣である限り当然のことであり、そうしてもらわなければならぬ。しかしながら、韓国韓国主張を繰り返すわけであります。だから平行線だ。事務折衝の段階では平行線だから、事務折衝が行き詰まったからといって政治会談に発展してきたのでありますが、法的根拠の基本的な問題については、十二日にあなたが意見を出され、それに対して、きょう韓国が出された、おそらく反論でしょう。あなたが言いたくないようだから、私は聞きませんけれども、これはおそらく反駁です。あなたが十二日に言ったことと、きょう崔外務部長官が述べられたことは、全く平行線なんですね。この平行を交差しなければならぬ。これが平行のまま非公式会談を持つのだ、金額も何億ドルと出すのだ、あるいはまた高級政治会談を持つのだ、こんなばかげきったことはないのだ。私どもは、これは小坂外務大臣が何回も国民に発表しておるように、これは国民の納得と理解の上にこの問題が解決されなければならぬ。国民はどこで理解し、どこで納得するかといえば、やはり、基本的な法的根拠の問題、これが食い違ったまま金額を出し合って手を打つというようなことは、私はできないと思う。これはできません。いかがですか。
  120. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう問題についていろいろ話し合いをいたしますけれども、かりに妥結いたしました後において、これは国会の御承認をいただかなければ、この協定は成立しないわけでございます。従いまして、私どもは、そういう国民の御納得を得られるという協定を作らなければならない、こう考えているわけであります。
  121. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは、 でき上がった上で批判をしてもらいたい、こう言うのです。でき上がった上で批判をすれば、多数で押し切るというお考えでしょう。そういうことでしょう。   〔「多数決が原則だ」と呼ぶ者あり〕
  122. 野原覺

    野原(覺)委員 委員長、これはよく注意して下さい。椎熊代議士に注意して下さいよ。
  123. 森下國雄

    森下委員長 御静粛に。
  124. 野原覺

    野原(覺)委員 はなはだどうも人の発言を妨害して困る。   〔発言する者あり〕
  125. 森下國雄

    森下委員長 静粛に願います。
  126. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、私は、これはでき上がってから批判をしてもらいたいというべき筋合いではないと思うのです。やはり、大事な基本的なこの点については合意がなければならない。意見が同一になった上で金額を出そうじゃないか、たとえば対日政府覚書についても実はこうなんだ、日本はこう考える、——これは具体的金額の中で折衝するというような伊關局長の考えもあるでしょうけれども、抽象的にでもよいから、こうだという合意がなければならぬ。軍令三十三号の効力発生の始期、没収、引き渡した財産の効力発生の始期については、片一方は八月九日、片一方は十二月の何日とこう言っておるわけでございますから、この点についての合意がなければ、これは、請求権を出したこと自体が、私はまた元に戻ってひっくり返されてしまうと思うのです。だから、そのことを言っているのですよ。そのことについて合意がなければ具体的審議には入るべきではないという強い決意であなたは韓国に当たらなければならぬじゃないかということを言っておるわけです。いかがですか。私の言っていることは何でもないことです。
  127. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私ども主張はもちろん堅持いたしておりまするが、また、その間において先方の側の意見もやはり聞いてみなければなりません。しかし、今申し上げておるように、最後に合意ができましたときに、私は国民の前にこの国会を通じて御批判を得るわけでございます。従って、国民の多数の方から見られて、なるほどこれはもっともだ、こういうような結論が出なければ、私どもはその協定なるものを作るわけにはいきませんし、そういう意味で申し上げているのでございまして、自民党は多数だからどんなものでもいいだろうというようなことはもちろん考えておらない。多数はやはり合理的な多数なんでございますから、この多数の方々の御納得を得るようなそういう考え方をとりたい、こう考えております。また、余分なことですが、社会党の皆さんにおかれても、なるほどこれならよくわかるというような筋の通るような、主観的には、私は、そういう意図を持ってやるべきだ、こう考えておるのであります。
  128. 野原覺

    野原(覺)委員 新聞によりますと、韓国は具体的な金額を出す段階だということを書いておるのであります。あるいは六億ドルとも書かれておるのでありまするが、これは理財局長お尋ねをいたしますが、相当この問題は長期間にわたることでございまするから、日本側もこれは事務レベルの段階でその金額を出されたはずであります。大蔵省は一体この個人財産請求権として応じなければならぬ金額を幾らだと見積もられておるか、承りたい。
  129. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お答え申し上げます。終戦後相当期間を経過いたしまして、資料の散逸等がございまして、的確な数字がつかみがたい事情でございますので、いろいろ積算をいたしておりますが、ただいまここで申し上げる段階にまで立ち至っておりません。
  130. 野原覺

    野原(覺)委員 申し上げることができないというのでありますが、これは、外務大臣、新聞に載っておるわけですね。財産請求権プラス経済協力、それから無償の援助ですか、こういうものをひっくるめて大体一億ドル程度のものを出していこうではないかと新聞に書かれてある。こういったようなことは、これは私どももまた納得できないのです。財産請求は財産請求として、法的根拠に基づいて明確にやはり算出しなければならぬのです。そうして、経済協力をやるならば、経済協力はこうだ、無償の供与はこれだけだということでなければならぬ。この点、財産請求の問題があいまいのまま一括して国民の血税を持ち出すというようなやり方は、断じて国民は納得いたしませんよ。私どもは理解できませんよ。これは、そういうことはしない、財産請求はあくまでも、ここでは金額は言えないけれども、財産請求として法的根拠に基づいて算出をするのだ、そういうことでやるのだという御決意であるかどうか、承っておきたい。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう点につきましては、よく考えまして折衝いたしたい、こう考えておりますが、今折衝の段階でございまして、何か日本政府が意図をきめたようなふうに伝えられることは、私も困ったことだと考えております。
  132. 野原覺

    野原(覺)委員 今度外相政治会談が一週間程度持たれるようでありますが、この中で金額について双方提示するという話し合いが出ておるのかどうか、日程の中でいかがですか。
  133. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 こういう点につきましても、よく考慮してみなければなりませんが、事はやはり相対のことでございますから、よく先方考え方も聞いてみないと、この段階においては何とも申し上げられません。
  134. 野原覺

    野原(覺)委員 韓国の要求についてでございますが、韓国は、南北両鮮が韓国の領域だと、こう言っているのです。韓国から何億ドルの要求が来るのか知りませんが、これは北鮮の領域についての要求も私は入ってくるのではないかと思う。いかがですか、この点は。韓国は南北だと言っておるのですから、韓国の要求金額というものが三十八度線以南だけではない、これはいかがですか。
  135. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 これは非常に専門的になりまして、各項目ごとにまた違って参りますけれども韓国政府としましては、当然これは全鮮を代表する正統政府のつもりで、もちろんそういうふうな考えに立ってきております。
  136. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、これはやはり三十八度線以南に限定をするか南北韓国の半島全体にわたるかということについての合意がなければ、この請求権の問題はらちがあかぬじゃありませんか。韓国韓国考え方で、おれは南北両鮮だと言うことは御自由です。しかしながら、少なくとも請求権の問題を解決するにあたっては、三十八度線以南であるのか南北両鮮であるのかということを明確にしなければ、その金額は出てこないじゃありませんか。いかがですか、これは。
  137. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 その問題につきましては、大臣がしょっちゅうお答えいたしておりますように、施設が現に及ぶ範囲、及ばぬ地域があるということを考慮に入れてやっておるわけであります。ただし、それを条文に書くときとか何かの場合に、韓国国民感情等を考慮いたしましてどういうふうに書くかということは、これはまた別の問題でございます。これは外交折衝でございます。相手立場もございますが、ただし、日本側考えは、いつも申し上げておる通りということでございます。
  138. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、やはり、日本側考えに基づいて、三十八度線以南の請求ということに限定してもらわなければ話し合いはできない、こういう決意で臨むということでありますから、この点はこれはお話として了解しておきたいと思います。ぜひそういう態度で臨んでもらわなければならぬと私は思うのであります。  そこで、財産請求の問題を総括して申し上げますと、これは、先ほど午前中に穗積委員の触れました韓国の領域の問題、それから、私がただいま申し上げました基本的な法的根拠の問題、この二つがやはり合意に達するということが大事なんです。これをあいまいにしたままで請求権の金額を出してみたり、あるいは無償供与だとか経済協力というようなことでごまかすということがあってはならぬということを、私はここではっきり申し上げておきたいのであります。  次にお尋ねをいたしたいことは、在日朝鮮人の法的地位の問題です。これは。総理がただいまここにおられませんけれども、予算委員会で劈頭質問に立たれた田中伊三次氏に対して総理はこう答弁したのであります。「これにつきましては、もう請求権問題以前に相当論議を尽くして大体結論に近いところまでいっておるのであります。」、もう張勉時代にすでに煮詰まったんだ、法的地位の問題はすでに結論に近づいたということだそうでございますから、この問題は政府としても相当確信のあるところを御答弁願いたい。まず在日朝鮮人の法的地位は一体どうなるのかということです。もっと突っ込んで申し上げますと、朝鮮人が今日は六十万前後おるそうでございますが、その朝鮮人の国籍はどうなるかということです。おそらく韓国籍の者と韓国籍を持たない者に分かれるのだろうと思うのでありますが、これは伊關局長にお聞きしたいのですが、現在韓国籍の者が六十万の何分の一か、韓国籍を持たない君はどうなっておるのか、現状を承っておきたいと思います。
  139. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 これは法務省の所管の問題でございますが、日本におります朝鮮人と申しますか韓国人、いわゆる朝鮮人という場合に、最初は全部その国籍を朝鮮として登録しておったわけであります。その後韓国という登録を認めたわけであります。従って、最近登録する場合には韓国と書く人間がふえておりますが、従来の朝鮮のままになっておる者もたくさんおる。従いまして、私はよく覚えておりませんが、六十万といたしますれば、おそらくそのうちの四分の一ないし三分の一が韓国ということに登録の面ではなっておるのじゃないかと思いますが、それが直ちに韓国を支持するとか、朝鮮と書いておるから北鮮を支持する数字を表わしておるというものではございません。そういうふうに、初めは全部朝鮮と書いておるという歴史的経緯があるということでございます。
  140. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなりますと、今度の会談の結果、独立した国民としての地位は韓国籍を持った者だけに与えるわけですか。韓国籍を持たない朝鮮人には独立した国民としての地位は与えないことになるわけなのか、承りたい。
  141. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 韓国との間に法的地位に関する協定ができ上がりました場合に、その協定の規定の適用を受ける者がだれであるかという問題になってくるわけでありますが、その協定に定める手続によっていろいろと申請をしてくる者は、当然その協定による待遇を受ける。たとえば永住権の問題等がございますが、その協定によって定める手続を踏んで申請をしてくる者はその協定による永住権をもらえる。しかし、その協定を認めぬといいますか、その協定によってそういう手続をしない者がもしおるとしますれば、それはその外になるというふうに考えております。
  142. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなりますと、韓国籍を持たない者はどういうことになるのですかね。北鮮を日本は認めないというのですから、六十万の三分の二が現在韓国籍を持たないのですが、この人たちが、いやおれは今のままでいくのだ、韓国籍を持たないのだということになれば、この四十万近い日本におる朝鮮人は、韓国籍を持った朝鮮人と差別をされることになる。片一方は独立した国民の地位を得る、片一方は無国籍の人民としての扱いを受けることになるのですか、これはどうなるのですか。
  143. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 現在、在日朝鮮人六十万につきまして、韓国籍であるとか、北朝鮮の籍であるとかいうふうな区別というものははっきりいたさぬわけであります。そういうふうにわれわれは見ていない。同じように現在は見ておるわけであります。今後、協定ができましで、その協定に基づいて手続をしてくる者が韓国籍という点がはっきりしてくる。ですから、全部してしまえば、それで問題は解消するわけであります。あるいはしない者が残るかもしれない。残る者が出てくるかこぬか、残った者の数がどうなるかというふうなことが将来の問題になってくると思います。
  144. 野原覺

    野原(覺)委員 伊關さん、答弁をごまかしてはいけませんよ。現在、韓国籍と韓国籍を持たないのと分かれておるじゃありませんか。婚姻をする場合にどうですか。片一方は韓国駐日代表部の承認を得た者を届けておる。それを日本の役所は受けておる。片一方の韓国籍を持たない者は、韓国駐日代表部に行けないから、朝鮮総連合の証明を持った者を日本は受けておるじゃありませんか。現在でも差別してやっておるじゃありませんか。あなたは同じ朝鮮人として扱っておるのだと言うけれども、それは違う。いいかげんなことを言っては困りますよ。いかがですか。
  145. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 それは事実問題としてそういうふうになっておるのでありまして、今後日韓間に協定ができまして、初めてその協定に基づいて正規の手続をとった君が韓国籍ということになるのでありまして、現在は事実上そういうふうに分かれております。登録の際にも、韓国と書いている者もあれば、朝鮮と書いておる者もございますが、これらは自由に変えることができるわけでありまして、朝鮮から韓国に変わってみたり、韓国から朝鮮に変わってみたり、こういうものは自由なんです。個人の意思でありまして、政府としてはこれは同じに見ておるわけであります。
  146. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは、韓国籍を持つことのできない者、韓国籍を持たない者は、韓国籍を持った人と、会談の結果、現実にはどういう差別がなされるわけですか。外交保護権とかいろいろあろうと思うのです。これは一つ詳細に述べてもらいたい。一体どういう差別が行なわれることになるのか、あなたは専門家ですから、このことをやはりはっきり述べてもらいたいと思う。
  147. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 今度協定ができましても、これはまだできておらぬわけでありますから、どういうふうになるということをはっきり申し上げるわけには参りません。どういうふうにできるかにもよりますけれども、現在におきましても、在日朝鮮人というものは、かつて日本人であったという事実に立ちまして、外国人といたしましては非常に特殊の待遇、特別に有利な待遇を受けておるわけでありますが、ただ、この在留資格という点につきまして、今は、永住権というものは持っておらないが、事実上期限を切らずにおれるという待遇になっておるわけでありますが、一番変わります点は、それが事実上日本政府の好意でもって期限なしの在留資格を持っておる者が、これが正式に法律に基づくとかあるいは条約に基づく永住権というものを持てる、これが一番大きく変わる点で、精神的に非常に安定するのじゃないか。その他の点におきましては、義務教育の面とかあるいは生活保護法の面、これらはほとんど従来通りでございまして、それほど変わった点は出てこないのじゃないか、こう思っております。
  148. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣お尋ねしたいのでありますが、韓国籍を持つ者には永住権を与え、韓国籍を持たない者には永住権を認めない、あるいはどういうことに協定がなるのか私も知りませんが、これはやはり差別がある。永住権の問題で差別をされる。おそらく、今度の会談の結果は、韓国籍の人々には内国民待遇、それに近い待遇を与えることになるのでしょう。しかし、韓国籍を持たない者はそうじゃないのだ、こういうことになりますと、これはやはり国際法的にもいろいろ問題が出てくるのじゃないかと思う。現実に、朝鮮半島は南と北とに分かれておるわけであります。日本が認めようと認めまいと、朝鮮人民共和国というものが厳として北に残っておるわけですね。そうして、朝鮮半島では三十八度線を境にして争っておる。こういうことをやることによって、この争いに日本が一枚加わることになりはしないか。韓国籍を持てば永住権を持たれるのだからどうなのだということで、みなが韓国籍を持つように日本が仕向けていくという結果になりますと、これは大へんな問題になりはしないかと私は思いますが、その辺は外務大臣どうお考えになりますか。
  149. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどから伊關局長がいろいろ申し上げましたように、発生的には、終戦後朝鮮人ということで一括総称しておったわけであります。その後韓国人という登録を認めて参りましたので、現在の区分は、大体三分の一ぐらいが韓国籍を持っておる。しかし、出生地を見ますと、九〇%以上南鮮地域から来ている人が多いわけであります。それが今度どうなるかということは、これは、今後の会談の結果によりまして、法的地位請求権の問題と一括して、妥結する場合には日韓会談議題としてきめる、こういうことになっておりますので、これは将来のことを今ここで申し上げることはちょっといかがかと思いますので、差し控えさせていただきますが、今お話しのような点は、私どもとしても考えていきたいと思います。
  150. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、このような差別をするということになりますと、国内に大へんな問題が起こってくると思うのであります。どうしても韓国籍を持った方が得なんだ、こういうことになってくるというと、韓国籍を持ちたくない者にも韓国籍を持てという強制が行なわれる。こういうような考え方は、ひいては朝鮮の内政に対する干渉になりはしないか。朝鮮人はどこの国籍を持とうと自由でありますけれども日本に居住しなければ生活のできない人々は、やはり永住権がほしいから、韓国籍を持ちたくない者でも韓国籍を持っていくのでありますから、個人の自由に対して大きな拘束を与えることになりはしないかと私は思う。日本平和条約によって朝鮮独立承認したのも、韓国独立ではございません。私はこの問題は時間がありませんから議論はいたしませんけれども朝鮮独立なんです。朝鮮とは、南も北もひっくるめた総朝鮮独立日本平和条約によって国際的に義務づけられておるのです。そうなって参りますと、北におるから、あるいは南におるからといって人間を差別するということは、日本の国際的義務から言ってもこれは問題が出てくるんじゃないかと思う。このことは、協定がこれからできるようでございますから、その協定がどういうようになるかは別にいたしましても、法的地位と処遇の問題については慎重に考えてもらわなければならぬかと思うのであります。  次には李ラインの問題がございますが、この問題は、先ほど総理から、国防ラインとしての李ラインの撤廃をあくまでも要求する、これが撤廃された上で漁業協定を結ぶのだという明確な答弁がございましたから、この問題はこれ以上私は申し上げません。  それから、竹島問題につきましては、国交正常化の条件という言葉が使いたくなければ、私もあえて申し上げませんけれども、これはやはり国交正常化の条件です。これは外務大臣が何回も申されておりますように、私はそういう見解であろうと実は思うのであります。これにはおそらく反論もなかろうと思うのでございます。  そこで、竹島の問題で若干ここでお尋ねしておきたいことは、竹島の五カ年開発計画の問題です。私もこれは新聞で拝見をしたのですが、日韓交渉を今やっておるこのさなかに、韓国では、これは民間とはいいながら、竹島の五カ年開発計画に乗り出したというような記事が出ておったのでありますが、このようなやり方は、私はまことに非友好的なやり方ではないかと思うのです。外務省も当然そう考えていらっしゃると思う。これは外務大臣もおそらく抗議をされたと思うのですが、どうなっておりますか、承りたい。
  151. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も、民間とはいえ、さような考え方を麗々しく揚げるということははなはだ遺憾に存じまして、韓国代表部を通じて抗議をいたしております。御承知のように、竹島は、六万九千九百坪、非常に小さな無人島でございまして、五カ年かかって何を開発するのでございますか、まことに理解に苦しむのでございますが、いずれにいたしましても、そういう点については強く抗議をしております。
  152. 野原覺

    野原(覺)委員 中川条約局長にお聞きをしたいのです。私は、竹島の問題に関連して、過日、予算の分科会でございましたが、竹島燐鉱の採掘権者の問題を若干お尋ねしたのであります。これはもう条約局長が経過は御承知の通りでありまして、島根県に対する確認訴訟、鉱区税納付義務のない確認訴訟を行なった。それから、国に対しては損害賠償の請求を行なった。これは、竹島問題が解決しないために、昭和二十九年でございますが、島根県から燐鉱採掘権をもらっておりながら採掘することができない。その前年に韓国は実力で竹島を占拠している。その翌年に願いを出したのに、許可がおりたけれども採掘ができない。これは何かと言えば全く政府責任ではないかと、こう私は尋ねたのでございますが、そのとき、中川条約局長は、明確にこう答弁をされたのであります。「これは高度の外交問題に属しますものでありますから、政府が全政治責任を負うべき問題である。」と答弁をされているのであります。この人は裁判所に訴えましたけれども、東京の地方裁判所はこれを棄却してしまった。こういう政治問題を裁判所が扱うのは荷が亜過ぎるから取り下げにしてくれというので、実はこの告訴を棄却したのです。そこで私は質問をした。そうしたら、局長は明確に、「政府が全政治責任を負うべき問題である。」、こう答弁をされ、小坂外務大臣はこう言っておる。「これは事情はまことにお気の毒なことであると思っております。従いまして、何とかして一つこの竹島問題も早く解決したい。そうしてこの点につきましてはこの鉱業権者が何とかお気の毒な立場に立たないようにいたしたい、こうは考えておるわけです。」、これは条約局長並びに外務大臣にお聞きしたいのですが、具体的にはどうするというのですか。これは政府が全政治責任を負うのだ、外務大臣の何とかしてこれを解決してお気の毒な立場に立たぬようにするのだというのは、具体的にはどういうことなんですか、これを承っておきたいのです。
  153. 中川融

    中川政府委員 私の先般のお答え、高度の政治的問題であり、政府が全責任を持ってやるべき問題であるということを申しましたのは、ちょうど裁判所の判決文を実はそのまま引用したのでございまして、法律的に解釈するとそういうことになろうという意味を申し上げたのでございます。しかしながら、この点が非常に重要な問題であるということは、これは外務大臣の言われた通りでございまして、なお、福田議員も非常に御熱心にこの問題を推進しておられるのであります。われわれとしては、国際司法裁判所に提訴するというようなはっきりした公正な方法によりましてこの問題を根本的に一日も早く片づけるということを念願しておるのでありまして、一日も早くこういう解決方法ができ、権利者の方も安心して鉱業権が実施できるような事態にするのが政府責任であろうと考えております。
  154. 野原覺

    野原(覺)委員 条約局長、あなた方は前答弁されたことを簡単に否定する悪い癖があるのです。これは外務省の悪い癖だと思うのです。だから慎重に答弁して下さい。いつも大事な問題がそらされる。つけ加えて質問をしているのです。あなたははっきり言ったのです。断言をしたのです。これは実は速記に二カ所出てくるのです。私は今一カ所だけ読み上げましたけれども、あなたはこう言った。「裁判所の判決にあります通り、これはもっぱら高度の政治性を含んだ問題であり、政府の全責任においてやるべき事柄である。」、こう言ったのです。そうして、さっき私が言ったことがまた加わるのです。いいですか。「裁判所は介入すべき問題ではない、こういうことでございまして、これにはわれわれとしてはもちろん異存がないのでございます。」、政府の全政治責任でやらねばならぬ、政府の全政治責任でやらねばならぬことは、これは国際司法裁判所に提訴をして、そうして解決するということが一つ。もう一つは、現実に起こった問題です。これは辻富蔵という人が告訴をしている。昭和二十九年以来採掘権をもらいながら採掘ができない。近寄ることができない。日本の巡視艇「へくら」まで銃撃をされた。このごろ問題が起こらぬのは、だれも近寄らぬから起こらぬので、近寄ったら大へんな問題が起こる。片方では、日韓国交正常化正常化だ、おめでたい限りです、日本は。そういうことを言って国民に宣伝をしておきながら、片方韓国はいかがですか。五カ年計画だと、こう来ている。竹島の問題が日本国会でやかましく論議されていることを韓国は知っているはずです。それを五カ年計画だといって、ますますそこを舞台にして固める、こういうようなことを何ら抗議もしないで、——小坂外務大臣は抗議をしたというのでありますけれども、この抗議はきわめて軽い抗議です。韓国から金鍾泌が来た、あるいは今度は崔外務長官が来ている。これは劈頭出すべきである。どうもこのごろの韓国に対する、アメリカの勢力圏内に対する日本外交態度というものは、全く軟弱屈辱外交である。国民はこの問題に憤慨しておりますよ。こういうことを聞かれると、ただ、口上書を出しました、抗議を出しました、こういうことを言いますけれども、私は、竹島問題に関する限り、政府態度というものはなっていないと思う。だから、最後に私は聞いておきます。これは速記に残しておきたいと思いますので、お尋ねをいたしますから、大臣は慎重に御答弁を願いたいことは、竹島日本領土だという日本政府の論拠です。同時に、韓国韓国領土だという韓国政府の論拠です。日本政府はどういうわけで竹島日本領土だと言うのか。崔外務部長官によると、明治五年以来の閣議で竹島は決定され、それ以来のことだと、こう実は今東京に来ておる崔さんが言っておりますよ。崔さんの談話が二月一日の朝日新聞に載っておる。小坂さんは仲よく手を握っていらっしゃるかしれませんけれども崔外務部長官は、これは明治五年からの問題じゃないか、こう言って反駁しておる。ばかを言え、こうひどい言葉で言っておる。一体、池田総理というのは定期的発作を起こす男だと、こう言っておる。李ラインと、それから竹島問題で私どもが質問したら、池田さんはいたけだかになってやっぱりやったのです。日本人だからやるでしょう。竹島日本領土だ、李ラインは国際法違反だと、こう言った。それが新聞に載ったら、崔長官、新聞記者に答えて、池田総理はあれは定期的発作だとやゆしておるのです。だから、私はここで確信のほどを聞きたい。日本領土だという論拠ですね。これをお示し願いたい。韓国はどういう理由によって韓国領土だと主張しておるのか。これは実は大事な問題でございますから、慎重に御答弁を願いたいのです。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれは、歴史的な考証、それから島根県の告示というようなものから見て、竹島というものは韓国領土でない、日本領土であるということを常に言っておるわけであります。向こうは、何か歴史的な事実といいますか、現在韓国が占有しているというような、こういうことを論拠にあげておるようでございます。しかし、私は、国際司法裁判所に出して、あくまでこれはわが方の正当なる主張というものを貫徹させたい、国際司法裁判所によって妥当なる判決が下るということを期待したいと思います。ただ、韓国側がそう言っておりますから、両方でこの問題については主張は平行線である、こういうことでございます。ただ、この問題について、政府は非常に弱腰ではないかというお話でございましたけれども、私は極力努力はしております。ただ、いっこういうことをしているということは申し上げない約束になっておりますので、後日明白になることと考えております。
  156. 野原覺

    野原(覺)委員 時間もございませんから、これで終わりたいと思うのであります。  ただ、竹島問題については、韓国が占拠してから十年になるのであります。八年か七年ほど前でございました、奥村外務次官のときに抗議書を渡しただけであります。それからほったらかしであります。向こうは兵隊を入れて抑えておる。これは全く抗議書というものは一回か二回しか渡していないのです。何年も日本政府はこれを放擲してきた。だからして、こういうような長い間の事実が積み重なって参りますと、民法上の占有権ということもあるのです。現実に韓国が占拠している、日本はその間に何も発言をしていない、こういったようなこともあって、私は、国際司法裁判所に持ち出したときに、実は不利な判決が下るおそれもあろうかと思う。こういうことについて外務大臣はどういう反省をされますか。あなたが外務大臣になってから何回竹島の問題で抗議をされたか私は知りませんが、日本政府としてこれは自己批判をしなければならぬ大事な点ではなかろうかと思うのですが、この点についてあなたの所見を承って、終わりたいと思います。
  157. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昭和二十七年の一月十八日に、いわゆる李承晩ラインの宣言がありまして、竹島をその内側に含めておる。これは竹島に対する韓国領土権を前提としたもののごとくでありましたので、日本政府は、この二十七年一月二十八日付口上書によりまして、竹島に対する韓国領土権は断じて認められないという旨を厳重に申し入れておるのであります。政府は、その後、文書あるいは口頭によりまして、韓国交渉を継続しまして、本問題の解決のために努力を続けておるのでありまするが、これは今おあげになりましたような二、三回のものではなくて、これはもう十回以上にわたり、十八回くらいになりすすが、こういうことになるわけでございます。私は、その間に日本が全然ほっておいて時効が完成するというような問題には全然ならぬと考えております。政府といたしましては、今申し上げましたような趣旨で、極力韓国側にわが方の正当なる主張をいたしまして、理解を得ればそれでよろしいのでありますが、目下のところなかなか韓国側が理解いたしませんので、公正なる国際司法裁判所の判決によってこの問題に結着をつけるという考えで進みたいと思っております。
  158. 野原覺

    野原(覺)委員 これで終わりますが、外務大臣の答弁が答弁ですから、もう一言申し上げておきます。奥村外務次官が抗議をしてから九年、それから、奥村外務次官が抗議をいたしましたときには、実は、ときの金という、外務大臣か、駐日代表部の責任者ですか、これは即座に拒否をしておる。それからまとまった交渉というものはほとんどされていないじゃありませんか、記録によれば。私は、どう考えてもこれは納得できない。与党の諸君の中には竹島問題を持ち出して再軍備論を唱えている人もあるのです。だから、そういう方向に利用するためにこれはやってきたのじゃなかろうかと勘ぐられてもしようがないじゃないかということを、実は私はしょっちゅう申しておるのであります。だから、この問題は、私ども政府の怠慢は追及いたしますけれども竹島日本領土でございますから、国際司法裁判所においては、当然これは日本のものとして判決されなければならぬので、そのためにはわれわれも努力しなくちゃいかぬとは思いますけれども、過去の政府の怠慢というものは、これは重大であろうと思うのであります。このことを申し上げて、私は質問を終わります。
  159. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今、おあげになりました奥村次官当時の口上書は、昭和二十九年九月二十五日、これによりまして国際司法裁判所に提訴するということを提案したのでございますが、先方が拒否した、応訴をしなかったという事実でございます。政府といたしましては、この二、三カ月の間に数回抗議をいたしております。(「この二、三カ月に数回か」と呼ぶ者あり)いや、それは前のことはもちろんでございますが、最近の例をとりましても、竹島の問題に関する何か問題がありまするたびに、私どもはこの竹島の領有権を主張する抗議を行なっておるのでございます。二、三カ月の間に数回ということで、どうぞ政府のやっておることを御了承願っておきたいと思うのであります。
  160. 森下國雄

    森下委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会