運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-27 第40回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十七日(火曜日)    午後零時四十三分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       愛知 揆一君    池田 清志君       宇都宮徳馬君    宇野 宗佑君       大久保武雄君    椎熊 三郎君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       竹山祐太郎君    床次 徳二君       福家 俊一君    稻村 隆一君       黒田 寿男君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       松本 七郎君    受田 新吉君       川上貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局次長) 吉岡 英一君         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月二十二日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員濱地文李辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件  日本国に対する戦後の経済援助処理に関する  日本国アメリカ合衆国との間の協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一号)  特別円問題の解決に関する日本国タイとの間  の協定のある規定に代わる協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  国際民間航空条約改正に関する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第三号)  日本国アルゼンティン共和国との間の友好通  商航海条約締結について承認を求めるの件(  条約第四号)      ――――◇―――――
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件並びに日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約改正に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国アルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件、これらを議題といたしまして、質疑の通告がありますから、これを順次許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 本日は主として日韓会談中心質問したいと思いますが、昨年の十月、本会議緊急質問で、日韓会談というのは将来の日本外交に重大な関係のある問題でありますので、政府が何らかの結論を出す場合には必ず国会に諮ってもらいたい、つまり、国会事前承認なしに重大決定をするようなことはないかどうかという点についてただしております。このことは、昨年十月に始まったことでなく、それ以前から、日韓会談が始まって以来しばしば外務委員会でも念を押したところなんでございまするが、そのつど、政府答弁は、あるいは言葉を濁し、あるいは目下事務折衝段階であるということを理由にこの点についての確答を避けてきておるのでございます。  ところが、最近の政府の言動を通じて推察しますると、明らかに事務的な交渉段階以上に進んでおるのではないか。よく言われる高級政治会談に踏み切ったと断じて差しつかえないような情勢にあると言うべきだと思います。つまり、高級政治会談をやって、そして大所馬所からの交渉をするんだということを、政府自身しばしば言明されておりますし、一月下旬には、杉道助日本側代表韓国側ペ代表、両代表間においても、事務折衝を再開するときの条件として、日本国会審議一段落し次第高級政治会談をするということをきめておるようです。このことは、現に、先般再度来日しました金鍾泌韓国中央情報部長も、二十日のNHK記者との会見の席上ではっきり言明されておる。聞くところによると、ペ義煥代表は、昨年の暮れに一応帰国するときにあたりまして、池田総理に、帰国にあたってこの会談を進展させる上の何かいいおみやげはないかということを求めたといわれておるのでございますが、はたしてそのときになされたものか、あるいは本年に入って一月十六日の会談再開の直前であるかははっきりしませんけれども、とにかく、国会審議一段落後に高級政治会談をやるという趣旨については、文書も両代表の間に取りかわされておるということが伝わっておるのでございますが、この点の事実をまずはっきりさしていただきたい。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓会議を始めるに際しまして、この会談につきましては、事務的にも進めなければならない、また政治的な観点からも考慮しなければならないということで、事務政治会談を並行してやろう、こういうことで進めておりますわけでございます。そこで、事務的にもいろいろ折衝がかわされましたが、政治的にも話をされたいということでございまして、私どもの方といたしましても、それは妥当なることである、こういうふうに考えておるわけであります。ペ義煥氏杉道助氏との間に、それでは政治会談を大体目標をいつごろにするのがいいかということが話し合われまして、その二人の間でいろいろ話があったようには聞いております。大体今お話のあったようなことで合意しておるようでございます。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 その際の話し合いというのは文書でもって確認されておるのかどうか、その点を……。
  6. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 正式の文書というものはございません。ただ、何と申しますか、メモ程度に、国会審議一段落したならばこのより高いレベルで話し合いをしましょうということを申し合わせまして、そのときに間違わぬようにメモみたいなものを書いたという程度でございます。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 メモにしろ、そういう書いたものによって、国会審議一段落政治会談をやるということをはっきり約束されておったわけでございますが、今回の、先般来日された金鍾泌氏が総理大臣にも会っていろいろ話をされたということは、これは、常識的に考えますならば、――こう言ってはなんですけれども金鍾泌という人は、中央情報部長という資格、肩書き、地位になっております。それぞれの国家機関における地位から言えば、この人は単なる情報部長ですが、その情報部長と一国の総理大臣みずからが直接会って会談されるのでございますから、これは内容的にもよほど重大な話し合いがあったということは、これは想像にかたくない。また、そう推測するのが常識的だろうと思います。そうなりますと、この先般来ました金鍾泌情報部長池田総理と会われたこと自体がすでに政治会談、実質的な政治会談の第一歩に入ったと見て差しつかえないと思うのでございまするが、この点総理大臣はどのようにお考えですか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 よく、政治会談、こういう言葉が使われますが、なかなかこれが実際問題としてはどれが事務会談でどれが政治会談かということの判定はむずかしい問題だと思います。今回金情報部長と会いましたのは、彼が東南アジアフィリピン等四、五ヵ国を回りまして、いろいろアジア情勢を見聞してきた、そうして、向こう政府当局者と会って、そのときの様子を私に報告するのが第一のあれだったのであります。そうして、また、たまたま会いましたので、今まで両代表がいろいろ事務的に話し合いをしておるけれども、なかなか平行線のところでまとまりが早急にどうこういうわけにいかぬ。だから、やはり、事務折衝すると同時に、一つ大所高所から、政治的という吉葉はどうかと思いますが、大所荷所から事務的な話を別の視野から一つ相談するような会談を始めてはどうかということでございますので、私も、もう昨年の秋からずっとやってきております関係上、ではそういう視野からも一つ会談を始めたらどうかということは言ったのでございます。しこうして、それの会談方式等につきましては今後また両代表で打ち合わせる、こういうことに相なっております。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 いずれにしても、総理がみずから情報部長と会われ、かつ、その後の金情報部長記者会見における談話等を見ましても、かなり日韓会談全体の進展上これが重大な話し合いであったということは、これはもうわかるわけであります。  そこで、これはどうしても確認しておかなければなりませんのは、日本韓国の間に重大な措置をいよいよとろうとするときは、ほんとう国会承認を必ず受けるだけの手だてをしてもらえるのかどうか。国民はこの点に大きな不安を抱いておると思うのです。これほど大事な問題が国民の知らない間に重大な既成事実がどんどんどんどん作られていくのではないか、そういった国民の不安と疑惑を代表して、私は、先般来、今日に始まったことではもうない、何回も何回もこの点については繰り返し繰り返し質問をしたわけでございますけれども、どうも今日の段階になって参りますると、今政府がその国民の不安をよそにして、むしろ国民の目をかすめながらこの重大な交渉を裏でどんどんどんどん進展させるんじゃなかろうか、表の窓口での交渉交渉でやりながら、一方ではいわばCIAの長官ともいうべき立場金情報部長折衝する、いつの間にか日本の将来の外交全般あるいはひいては極東全体に大きな影響のあるような事態が隠密裏に進んでしまうというようなことについて非常に憂慮があるわけですから、この際、ざっくばらんに、総理金鍾泌と会われて話し合われた内容について、たとえば今お答えのあったような極東情勢、この間歴訪した諸国についての金情報部長報告、それから、会談についてはどういう具体的な話し合いをなされたのか、かなり金情報部長自身記者団に語ったり、あるいはテレビ対談等総理と今度は唐島基智三氏との対談等でもそういう内容にわたったお話も出ておりまするから、これはやはり正式に国会を通じて国民に知らせるという観点から、この際できるだけ詳しい御報告総理からしていただきたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えした程度しか、私はほかにも言っておりません。そうして、東南アジア状況等でございますが、ずっと私は聞き流したのでございます。各国復興に燃えている気持とか、あるいは日本に対してのいわゆる経済協力を熱望しているとか、そうして、東南アジア経済はまだ復興の緒につこうとしておるけれども、なかなかいろいろな問題があるというふうなことでございました。  それから、第二の、日韓会談につきましては、先ほど申し上げた程度でございます。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、杉さんと裵代表の間で国会審議一段落してから政治会談という約束を、今後の総理と金さんとの会談では全然話題にならなかったのかどうか。世間では、それから唐島さんとのテレビ対談では、総理は三月に入ったらぼつぼつ政治会談をやりたい、こういうことを言っておられまするが、そういう話、あるいは、さしあたり東京でやって、その後今度はソウルに移すとかいうようなことも新聞では書いてありますけれども、大体いつごろ政治会談を始め、それから代表はだれにするか、あるいはどこでやるかというようなことについては相当具体的に話し合われたように世間では伝わっておるわけですが、そんなお話は全然なかったのかどうか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、今まで事務的にずっとやっておったけれども平行線でなかなか一致点がない、大所高所から一つ話を進めていこうじゃないか、これが普通まあいわゆる政治会談というのか、そういう意味会談を別に持ったらどうか、そうして、今お答えしたように、その具体的の方法につきましては今後両代表一つ相談し合りたらどうか、もちろん、ソウルの方でしたいという気持もありましょうし、われわれは、国会開会中ですから、政府要路の人がその長い間ソウルに行くわけにいかないから、向こうから来てくれたらどうかという話はいたしました。しかし、これは単なるその場の話し合いでございまして、この問題についての具体的の方法両国代表一つ場所、時期、方法等については一応話をしてみよう、こういうことに和なっておるのであります。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 韓国側では、以前から、これは公然なことになっているのですけれども、ぜひ政治会談をやる場合には岸さんに来てもらいたいとか、そういう人の名前まで出して要望しておったようですけれども、今回金さんとの会談のときには具体的な人の名前は全然話題にならなかったのですか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、だれがどうこういうことはこの際申し上げたくないと思います。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 話題にならなかったかどうかということです。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申したように、具体的の問題、すなわち、どこでやるか、いつからやるか、だれがやるかということはやはり両代表で相談して下さい、こういうことです。それ以上のことは申し上げられません。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、それは総理は金さんと話したことの内容はできるだけしゃべらないようにというようなお気持答弁されているのでしょうけれども、しかし、これは、金さんの方でいろいろ新聞記者に語ったり、あるいは韓国の方でその会談内容というものはいろいろうわさにも伝わっておるのですから、従って、私は、最初から言うように、そういうふうに新聞にも報道されている以上は、もう少し国会に納得のいくような御説明をしていただかなければならない。だから、私は、こういう話が進んでおるのではないかというふうなことが世間に伝わっておることを中心に御質問しますが、それを否定されるなら否定されるでいいです。そういう内容は話してないと言われるならいいんですけれども、ただ一切がっさい無返答じゃ困るんです。内容は、われわれはいろいろな情報、それから新聞の報道その他から推測する場合もありますから、内容が違っておれば違っておると言われていいんですが、いやしくもああいう情報部長という地位の人と直接総理が会われているのですから、常識的に考えれば、この日韓会談に関する重大な話し合いがあったということは明らかです。従って、世間でも注目していろいろの憶測も流れるでしょうし、われわれとしては無関心ではいられないわけです。たとえば、この日韓会談でかねがね問題になっている財産請求権内容についても、政府は、今まで説明してきたように、財産権による額はなるべく少なくする、それから、それ以外のものでは無償供与経済援助をやる、そのほかには、いわゆる借款、そういうものでもやるというふうな大体の方針は今までの外務委員会でもずっと話をされてきておるわけですが、それの今日における政府の考え方というものがどういうふうなところに煮詰まろうとしておるのかというようなことは、私どもとしても関心の的になっているわけです。この前の金会談のときにもそうですが、一説によれば、むしろ、財産請求権幾ら、あるいは無償供与幾ら、あるいは経済援助、つまり借款幾らというふうにきちっと分けなくても、全部込みでどんぶり勘定で出してもらってもいいというような空気が韓国側には最近かなり高まっておるように向こう新聞等を通じても観測できるわけなんです。そういうところから、これは一億ドル説というのも実はあるくらいで、これが、はたして、財産請求権と、それから財産請求権に基づく金額だけを一億ドルに押えるのか、あるいは、それに無償供与を含めたものを一億ドルにして、あと借款にするというようなことか、そこのところははっきりわかりませんけれども、とにかく、大体のどんぶり勘定で一億ドルくらいの線をむしろ総理の方から向こうに出されたということも伝わっておるのです。ですから、そういう事実が全然なければないというお答えでけっこうです。その点、いかがでございましょうか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 請求権の額、その他借款等金額の問題、一切出しておりません。私はこの問題について数字を言ったことはございません。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、数字はまだ出されておらないということでございますが、総理大臣は、会談をやられる以上は、大体いつごろまでに妥結したいというような目標を定めておられるだろうと思うんですけれども、私ども関心を持ちますのは、やはり、こういう重要な問題については、国会で十分審議するばかりではなしに、幸いことしは参議院選挙もあるわけですから、その参議院選挙に、やはりこういう重要な問題を一つ対決点とすると申しますか、――私どもはこれに反対している立場なんで、相当の国民代表した立場反対しておる。それから、それに対して自民党の中も必ずしも日韓会談に全面的に賛成の方ばかりじゃないと思います。これはあと自民党から出ておるいろいろな文書についても私は十分立証できることだと思いますけれども、とにかく、政府当局としては、これはなるべく早く妥結したいということをしばしば言っておられるのですから、そういうふうに意見が対立し、しかも国家の将来の運命に大きくかかわるような重大問題については、国会審議はもちろんのこと、やはり選挙国民の信を問うというフェアな態度をとってもらう必要があるのじゃないか。そうしますと、少なくとも参議院選挙前に政府間だけで協定を結んでしまって、そうしてこれを議題にする、あるいは世論に問うというようなことではなしに、そういう決定をする前に、選挙でそういうとろうとしておることのよしあし世論に問う、そういう扱い方をされるのが民主政治を円満に発展させる大事な点だろうと私は思うのですが、この点についての総理の所信をお伺いしておきたい。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれはもう十年近く日韓国交正常化を望んで努力してきたのであります。最近に韓国側もその気持になって、そうして今誠意を持って交渉を続けております。従いまして、妥当な両国合意による話し合いが成立することは、一日も早く望んでおるのであります。しかし、これは相手のあることでございますから、いついつまでにというふうに区切りを切るべき筋合いのものではございません。  それから、また、世論に問うと、こうおっしゃいますが、世論に問うことは、日韓会談をすることがいいか悪いかという問題でございますか。日韓会談交渉を始めて妥結することが、そういう努力をすることがいいか悪いかという問題につきましては、私は、この問題は世論に問う必要はないと思います。われわれは外交権を認められておるのでございます。これは日本国政府日韓国交正常化の問題について交渉するということについては世論を聞く必要はないと思います。しからば何を世論に問うか、こういう問題になります。あなたは、向こう話し合いができて調印する前に世論に問え。こういうことは、外交の手段七むずかしいのじゃございますまいか。普通の常識から申しますと、合意が成立して、そして調印したときにこれを国会に出して、とにかく批准前に世論あるいは国会に問うということは、これは当然のことでございます。だから、われわれは、話し合いがついて調印をすれば、もちろん国会にかけまして、効力発生前に皆さん方の御意見を聞くということは、これは当然のことだと考えております。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 まず第一点は、外交権を持っておるから、だから交渉を進めること自体世論に問う必要はないというようなお話なんですけれども、むしろそこに私は問題があると思うのです。ただ日韓会談を進めることのよしあし、こういうばく然とした問い方では、世論に問うても意味がない。この前、イギリスが、欧州共同市場に加入する問題で折衝を始める、その始める前に、イギリスとしてはこれこれしかじかの方針で今後は欧州共同市場に入りたいのだ、入る方針をもって交渉したいのだ、そういう具体的なイギリス政府方針を明示しながら国会審議にかけておるわけです。だから、これは、池田流に言えば、外交権を持っておるから交渉をやり妥結してから国会にかければそれでいいのだということになるかもしれない。そうではないのです。これはちょうど欧州共同市場の問題に匹敵するような、ガリオア問題にしろタイ特別円問題にしろ、あるいは日韓会談にしろ、重大な問題でありまするから、政府としては、こういう方針でいくのだ、また、これこれしかじかの理由日韓会談というものは進める必要があるのだ、――それが反対がなければいいですよ。しかし、国民の中には非常な憂慮反対意見を持っておるのが現実なんですから、そうなれば、とにかく外交権を持っているのだからおれが交渉して協定を作ってそれを国会にかければいいのだ、批准のために国会にかければいいんだというようなことではほんとう国会正常化はできない、やはり、世論を尊重するためには、こういう重大問題について意見が分かれておるときには、政府立場、それから方針を具体的に明示しながらこれを国会審議にもかけるし、なお足りなければ万全の策を講じて一般世論に問うという慎重な態度があっていいんではないか、こういう点から聞いておるのです。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 総理からお答え通りでございまするけれども外交の問題の場合、条約を作るのでございまするから、条約を作る前にいろいろ具体的な問題を出してお聞きするわけにはいかないわけです。従って、調印をしてきまったものについて国会の御承認を求めて批准をする、その段階においては国会の御意見を伺っていくわけでございます。これはもう条約の性質上そうならざるを得ないことだと思うのであります。  それから、日韓交渉そのものをやって国交回復することがいいかどうか、こういう問題についても、総理お答え通りでございますが、実は、われわれ、この前の衆議院の選挙のときには、日韓国交正常化ということは、自民党としてはそれを言うておるわけであります。その結果、国民の非常にたくさんの支持をいただきまして、自民党が圧倒的に御支持をいただきました。これは事実でございます。二点とも充足されておると考えます。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 それは、はっきりした内容を明示して、いやしくも政府がやろうとする方針ぐらいはこれは出せるはずです。その方針についての国民支持がなければ、そういう交渉はやめるべきです。  総理にもう一つ伺いますが、この前の金情報部長との会談で、先ほど御答弁にありましたように、東南アジア各国を回ってきたいろいろな情勢報告を聞いた、こう言われておるのですが、先般これは産経の新聞に報道されておったのですけれども金情報部長がUPIの記者に語ったところによると、南ベトナムに行った際に、万一南ベトナムで紛争が起こった場合に、必要とあれば韓国照隊を派遣してもいいというようなことを語ったといわれております。それから、反共軍事訓練センターを設置しようという話を金情報部長各国を回ったときに提案しておるのです。そういう提案かあるいは話が総理との会談の席でも出たかどうか、この点を伺っておきたいのです。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう問題は記憶ございません。アジア局長がずっと一緒におりましたから、アジア局長から答えさせます。私の記憶には残っておりません。
  25. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいまのようなお話は全然出ておりません。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 これは今度の話し合いでまだ出ておらないとしても、東南アジア各国を回ってきてそういう話をしておるということは報道されておりますから、これから日韓会議話し合いを進められる過程でおそらくそういう話が出ると思います。反共軍事訓練センターをみんなで作ろうというような話ですね。ですから、今後私どもとしては非常に憂慮すべき一つの考え方が金情報部長から出ておるということで、政府は十分注意しておいていただきたい。  それから、政府はよく国交正常化ということを言われるのですけれども国交正常化国会審議関係ですね。国会承認なしで国交正常化をするというようなことはよもやなかろうということはここで再三聞いておるのですが、政府ははっきりした答弁をここでやっておらないのです。つまり、日韓の問題について言いますると、たとえば漁業協定あるいは在日朝鮮人の法的地位協定、あるいは請求権協定、こういうものをいずれは作るわけですね。そういう協定国会審議にかけて、そして国会承認を得て批准された後に大使の交換をやる、日本で言えばソウルに大使館を設置して、そうして大使の交換をやる、そこまでいって初めて国交正常化ということなんですか、その点を一度確認しておきたいと思います。
  27. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国交正常化の具体的な形といたしましては、双方が大公使を交換するということでございます。その点では、外務省設置法によりましてそうしたものを韓国に置くということを認めなければならぬわけでございますが、すでに韓国の場合は外務省設置法におきまして韓国に大使を置き縛るようになっておりますから、これはわが方が置こうと思えば置けるわけでございます。しかし、これは形式論でございまして、実質的には、事柄の重要性にかんがみまして、この条約国会の御審議をいただき批准を完了したというときに瞬く方がよろしい、こう考えておりますから、政治的にはさように考えております。
  28. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、協定国会審議承認を得て批准完了後に大使の交換をやる、これは確認できますね。
  29. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さようでございます。
  30. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、外務大臣もこれをときどき使われるのですけれども、国交回復という言葉をも使っておりますが、これは今言われた国交正常化と全く同じ意味だ、こう理解して間違いないですか。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国交正常化と同じ意味とお考えになってけっこうであります。回復ということは、もとあった関係が回復することでございますが、韓国との場合は、これは朝鮮の独立を平和条約によって承認して以来のことですから、正常化が正確だと思います。
  32. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと、総理大臣韓国に対する経済協力の問題でしばしば発言しておられるときに、この経済協力は正常な外交関係確立後にやる、つまり、国交正常化後にやりたい、民間は別ですよ。政府がやる経済協力国交正常化後にしたい、こういうことをしばしば言っておられるのですが、そのときの国交正常化ということも、今外務大臣の言われたものであるかという点を、一度ここで確認しておきたいのです。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問がはっきりいたしませんが、私が経済協力と申し上げておるのは、国交が正常化せられてやることでございます。しかし、その正常化する前に、正常化せられた場合にはどういうふうな方法でいこうかというふうな話し合いは、私はし得ると思います。いいか悪いかはまた考えます。正常化があってから政府間の経済協力ということを出すか、あるいは正常化した場合においてはこういう格好で経済協力したらどうかという話をすることはあり得ると思います。
  34. 松本七郎

    松本(七)委員 その場合にあなたの言われる国交正常化というのは、外務大臣がさっき説明されたように、正常化の条件は、政府間の調印の成立ではなしに、国会承認された、つまり批准が条件になっておる、その点を総理から確認したいというわけです。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 大体そういうわけでございます。
  36. 松本七郎

    松本(七)委員 大体じゃ困りますよ。大事なことだから。大体なんということがありますか。国交正常化は、外務大臣の言われたのは、政府間で協定調印したときではなしに、それが国会審議にかけられて、そうして承認を受け、つまり批准が完了してから大使の交換をするのだ、さっき外務大臣はそう言われたので、その点間違いないのだということを総理の口から確認して下さいと言うのです。大体じゃ困ります。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 もう大体で当然のことじゃございませんか。
  38. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃなぜ大体なんと言うのですか。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、そういう考え方でよろしゅうございますということでございまして、批准をしなければ効力が発生しないのですから……。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうことは、大体なんというよけいな言葉を使うからいけない。そうであるということはそうであると、はっきり確認して下さい。それは、政府がごまかしをやらないのならばそういう言葉を使われたってかまわない。しかし、しょっちゅうごまかしをやるから、そういうあいまいな言葉を使われれば、承服できなくなるわけです。そこのところをよく気をつけて答弁して下さい。なぜそういう点をやかましく確認するかというと、とかく国会を軽視し、世論を無視してなしくずしに既成事実がどんどん作り上げられる。そういうやり方が今まで再三出てきておるからこそ、私どもはその点を明確にしなければならなくなるわけです。ですから、答弁についてもそういうあいまいな言葉は使わないようにしてやっていただきたい。  そこで、その点は確認されたのですが、この前の金鍾泌情報部長が二十四日に羽田から飛び立って帰るときに記者会見をやっているんですね。そのときに、記者側から、日本側のソウルヘの代表部設置要望についてどう思うかという質問に対して、金情報部長は、会談がまとまれば協定調印するだけで発効を待たなくても設置してもよいという考えだ、こう述べているのです。だから、韓国側がこういうことを考えておれば、なおさら、私どもは、今総理の言われたような大体そうだなんというあいまいな言葉ではなく、はっきりした答弁を求めなければならなくなる。日本側は、調印するだけでなしに、それを国会審議にかけて批准を完了し発効して、そして大使を交換するということなんですけれども金情報部長は、調印するだけで発効を待たなくても設置してもよいという考えだ、こういうふうなことを言っておるんで、これは今まで私が非常に心配してきたことを韓国側が出してきておる。だから、私は、そういうことには応じないというはっきりした日本政府態度をここで明らかにしてもらいたいわけです。もう一度確認いたします。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国との関係におきましては、東京には韓国代表部があるわけであります。これは一方交通であっておもしろくない、こちらの代表部も韓国側に置かれたいという御要望はこの国会においてもいろいろ伺っておるところでございます。で、私は、日韓会談が妥結いたしましたら直ちに代表部を置きたいと考えております。
  42. 松本七郎

    松本(七)委員 直ちにというのは発効後ですか。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓会談調印せられましたらば直ちに置きたいと考えております。
  44. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃあなた違うじゃないですか。さっきは協定調印して国会審議にかけてこれが批准される、それから大使の交換をやる、これで国交正常化ができるのだ、こういうふうに言われたでしょう。ちゃんと順序を追ってさっき説明されておる。それじゃ大使の交換だけ先にやろうというのですか。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通り申し上げました。大使の交換は批准が終わりましたらいたしたいと思いますが、代表部  の設置はその前にいたしたい、こういうことでございます。
  46. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、事実上の関係は大使館の設置をしたと同じ関係を作ってしまおうというわけでしょう。それをなしくずしの既成事実を積み上げるというのです。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それは違いますのでございます。大使館を置いて正式な大使の交換をする、これは批准後にお願いしたいと思います。代表部という、事実上の、こちらの関係の人が行って、先方において日本人が韓国との関係をいろいろ改善いたしますことについての行動を援助すると申しますか、これについて遺憾なきを期すると申しますか、そういうことのために代表部を置くということは、これは当然なことでございまして、先方の代表部が現にわが国にあるのですから、わが国としても相互主義に基づいて代表部を置くのは当然だと考えております。
  48. 松本七郎

    松本(七)委員 対等な立場の場合はその不平等になっておることを早く平等にするということが必要な場合もそれはあるでしょう。韓国の場合は、もう御承知のように、クーデターという新しい事態も起こっておる。そういう新しい事態の中で、これは非常に国民憂慮しておる日韓会談なんですね。そういうときにこの既成事実だけ――事実上の関係を深めていくというやり方そのものに問題がある。そういう疑惑があるときに、協定調印さえすればとにかく代表部だけは置いていいというようなことでは、これによってどんどん既成事実は積み上げられていくわけです。そういうことこそ、もう少し慎重に、あくまでも、すべて一段落してから正式の関係を結ぶということにやるべきだと思うのです。  それから、これは総理にちょっと伺いたいのですが、この前の予算委員会の席上で、二月五日だったと思いますが、社会党の野原覺委員が李ライン問題でいろいろ質問しておるのでございます。そのときに、総理は、――短いからちょっと速記録を読みたいと思いますが、繰り返し総理は説明された。ずいぶん長い問答なんですけれども、最後の方の要点だけ申し上げますと、「○池田国務大臣 李ライン問題の主軸は漁業権の問題でございます。従いまして、日韓の間におきまして、朝鮮海峡における漁業の資源確保の上から協定ができれば、李ラインというのは当然なくなることと私は考えております。」、さらに、「漁業権を主軸とした李ライン問題につきましては、私は国交正常化で話していくのが適当と考えたわけでございます。」、さらに、繰り返しですが、「李ラインというものは、漁業権を主軸とした問題でございます。そして、ここで漁業権につきまして両者の話がつけば、季ラインというものは当然なくなることと考えなければいけません。」、こういう答弁をしておられる。もっとたくさん同じような趣旨の答弁があるのですが、こういう考え方からいたしますと、当然、日韓会談で漁業問題も話し合いがされ、そして漁業協定というものができるのでございましょうが、この李ラインというのは漁業問題がその主軸をなしているのだから、漁業協定ができればこの李ライン問題も解決するのだ、こういう考えで臨んでおられると理解して間違いないのでしょうか。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 そうでございます。われわれが日韓関係国交正常化と言うのは、やはり、法的地位の問題とか、李ライン問題――漁業権を主軸にしております。これは、向こうで見れば、漁業権ばかりではないのだ、いろいろなあらゆる権利を行使すると言っておられましょうが、私の見るところでは、主体は漁業権である、こういうものを一体として解決しよう、そうして正常化になれば李ラインというものは当然なくなると考えております。
  50. 松本七郎

    松本(七)委員 漁業協定ができれば李ライン問題が解決して当然なくなるのだ、こう言われるわけですが、韓国側は、かりに漁業協定ができたとしても、軍事境界線としては残すという主張をしておるようですが、そういう主張が出てきた場合に、日本ばかり漁業協定ができたのだから当然李ラインはなくなるのだと言ってみたところで、これは解決にはならないと思うのですが、どうでしょう。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは李ラインというものを初めから認めていないのです。向こうがどういうことを言っておりますか、私は日韓関係が正常化しても軍事的線はあそこにあるのだという主張を聞いておりません。そういうことを言っているかどうかということは外務大臣からお答えいたします。私はそういう考え方は持っておりません。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓関係が正常化したのにしかも国防ラインが必要であるとは私は思いません。従って、総理大臣がおっしゃいましたように、私も何も聞いておりませんが、かりにそういう主張があるとしても、全然根拠がないものだと思いますので、われわれはそれを認めるわけにはいかないと考えます。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 ただ認めないと言っておったって解決にはならない。総理大臣は、漁業協定ができれば李ラインはなくなるのだ、だからそれで解決するのだと言っておられるが、解決にはならないのです。向こうがそういうふうな境界線としてはまだこれを残すんだという態度をくずさない限り解決にはならない。それじや、総理大臣、どうですか。魚族保護という意味から、漁業協定ができて、その協定に基づいて李ラインの中に入ってある程度魚がとれるような協定にかりになったとしますか。そうすると、漁業に関する限りは、協定の範囲内で漁業に従事することは、向こう協定を結んだんですから、できるでしょう。しかし、一般船舶が今度はそこに入っていって絶対に拿捕されないという保障がとられるかどうかということになれば、そうはいかないでしょう。総理大臣の方は、漁業協定ができたんだから、李ラインはなくなったんだ、解決したんだ、そう一方的に解釈しても、先方がそれをはっきり認めて承認しなければ、それまでだ。これはもう一切解決で李ラインというものはなくなったんだということにならなければ、漁業に関する限りは解決したようなことになっても、一般船舶にとってはやはり拿捕されるという事態が必ず起こるでしょう。これでは解決にならないんじゃないですか。漁業協定はできたけれども、李ラインの解決はまた先に延びたという結果になるでしょう。だから、そういうことをはっきりした上で、交渉に臨んでいただかないと、漁業協定さえできれば李ラインは解決したんだというような気持では話にならないと思うのですよ。李ラインの問題、どうでしょうか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ気を回されるようでございますが、私は今までそんなことは聞いたことはございません。私は、大体常識上出てこないのであります。――あの公海で日本の一般の船舶を拿捕するというようなことは。これでは、日本海の中ごろで向こうが拿捕したらどうか、こういうことまでやはり交渉しなければいかぬのでしょうか。私は、今の漁業権というものは、先ほど来申し上げるように、李ラインというものは漁業権を主体とするものでございます。これが解決すれば李ラインというものは当然なくなるものと考えております。その他、向こうが不法行為をしたとき、これはもう話に乗るわけにはいかぬことは当然のことだと考えております。また、交渉のときにはこういうことも考えてくれ、ああいうことも考えてくれ、こういう御注意は受けますけれども、しかし、あらゆる不法行為に対して、常に、これもお前らやらぬか、これはやっちゃいかぬということは、私は、誠意を持って交渉する場合にはそういうことはないと思います。しかし、御注意は承っておきます。
  55. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは総理のお考えとしては漁業協定締結するときに、李ライン問題はこれでなくなるということをあらためて向こうとの間に合意を成立させないでも、漁業協定さえ結べば李ラインについては直接ノー・タッチでいき得る、こういうふうに私ども理解していいですか。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういうふうに心得ております。漁業権が主体でございますから、そういうものはなくなる。
  57. 松本七郎

    松本(七)委員 これはずいぶん甘い観測だと思いますが、同じようなことが今度は竹島問題でもやはり言える。これは後ほどまた同僚から詳しく質問いたしますけれども、金部長は、やはり二十四日の羽田の記者会見で、小坂外務大臣から竹島の領有問題について国際司法裁判所への提訴に韓国側も応じてほしいとの話があった、こういうことを金さんが話しているんですね。どの程度話し合いがあったんですか。最初外務大臣から金さんとの話し合い内容だけお聞きしておきます。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先方の言っている通りでございます。大体先方も非常によく話がわかっているように感じました。
  59. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは、総理大臣に伺いますが、この竹島問題を国際司法裁判所に提訴した場合は、これは相手国が応訴しなければならぬ。その韓国の応訴を日韓会談議題にされるおつもりですか。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 竹島の問題は、今の請求権とか法的地位の問題、漁業権の問題とはちょっと性質が――非常に簡単なことであり、そうしてまたむずかしい問題であろうと思います。日韓の間でその帰属について日本の主張が通るということならば、これは問題はない。向こう日本の言うことを聞かないという場合につきましては、私は、この問題で正常化をおくらすよりも、やはり国際司法裁判所に提訴した方がいい。しこうして、向こうが、韓国がその提訴に応ずるか応じないかにつきましては、もう外務大臣が金氏と話をしておるような状況でございまして、われわれは、この問題も話を続けていきたい、こう考えております。
  61. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、もう一度それを総理大臣に確認しておきたいのですが、その韓国側が応訴するということは、日韓会談議題にする、こういうふうに理解して間違いないですか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 応訴するようにこちらは話を進めてみますと、こういうことでございます。応訴しない場合におきましては、われわれは別の問題として国際司法裁判所に出します。出すときに、向こうが正常化後応ずるか応じないかは向こう立場でございますが、この竹島の問題だけで、竹島問題がきまらないから正常化はそれまでやらないんだという考えではないということでございます。
  63. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、もう一ぺんはっきりさしておきたいのですが、総理大臣の考えとしては、日本側は竹島問題は国際司法裁判所に提訴したいのだ、その場合に一つ韓国側も応訴してもらいたいということを日韓会談議題にはする、しかし、向こう側が賛成してくれればよし、向こうが、それは困る、日韓会談でそういうことを言われても困る、一応日韓会談日韓会談でその問題とは別個にやって、そうして、一切の問題が解決し、正常化ができた後にあらためて返事しましょうといって、あいまいな態度で逃げたとしますね。そういう場合でも、そこがはっきりしない、応訴の約束が取り付けられないからという理由日韓会談を中断したり国交正常化をおくらしたりするようなことはしない、その後にまた応訴するように別個に働きかけるんだ、こういうふうな基本方針と理解していいですか。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 理屈はその通りでございます。しかし、日韓会談の正常化の途中におきましてそういうことも話題にして、向こうが応諾すればこれにこしたことはないのです。しかし、この問題を条件付でここで議論するということは、竹島の帰属問題につきまして私はあまりいいことでないと思います。だから、理論的に申し上げたので、実際的には、会談の間において日本への帰属がきまればよし、そうでないときには一つ応訴しようということの合意を成立さすべく努力する、こういうことでございます。その場合にどうするか、そういうふうに考えてどうするかということは、今ここで理論的な問題で答えるだけで必要にして十分じゃないかと考えております。
  65. 松本七郎

    松本(七)委員 これは、理論的と言われるけれども、実際の相手国との交渉、特に日韓会談中心に今論議しているのですからね。そうすると、外務大臣の考え方と少し違うのじゃないかと思うんですよ。これも、この前予算委員会の第二分科会で、やはり同じ野原さんの質問に対して、外務大臣はこの点ずいぶん答えておられるのです。ちょっとおもな点だけを読んで見ましょうか。「○小坂国務大臣 実は竹島問題について政府はほっておいているわけではございませんで、これは何とか解決しなければならぬ、こう考えておるわけです。しこうしてそのために日韓会議を行ないまして、国交が回復する、双方において信頼感が回復するときに、この問題について公正な解決方法を見出そう」、こういう方針だと言っている。最初のころはこういう答弁で、だんだん野原さんとの質疑応答を繰り返して、そうして結論的にはこういうことを言っておられます。「○小坂国務大臣 国交が回復するときに、双方とも非常に不満な問題を持っておるということでは、真の国交が回復できないからでございます。国交が回復する瞬間には、これは当然先方は応訴すべきものだ、またわが方は先方が応訴して初めて国交の回復ということを考える、こういうことは当然だと思います。」、こういうふうに明言されておるのですね。ですから、これでいきますと、順序まできちっと、――これは単なる純理論じゃないですよ。この問題の実際の扱い方についての外務大臣の方針なのですよ。「国交が回復する瞬間には、これは当然先方は応訴すべきものだ、」、だから、さっきから言われている、つまり、国交正常化協定ができた、国会審議批准もできた、それから正式な代表部の設置も行なわれる、そのときには応訴すべきものだ、これは先方が応訴して初めて国交の回復ということを考えるのだ、こういう順序立てて説明されておるんですから、今の総理大臣答弁とだいぶん考え方が違うように思うのですが、どうでしょうか、総理大臣
  66. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 少しも通わないのでございます。総理大臣は、日韓会談をやっておるその際にも話をしていく、こう言われます。それはその通りでございます。しかし、その場合にうまくいけばそれでよし、うまくいかぬ場合には国交正常化までの段階にこちらが国際司法裁判所に提訴して、相手方が応訴する、こういうふうな段階も考えて言っておられるわけであります。  なお、私、先ほど申し上げたように、この問題については先方も十分理解のある態度を示すであろう、こういうことを考えておるわけで、これは金情報部長がそういうことを言いましたし、金情報部長もこれは出先の話でございますから帰って相談されるでございましょうから、ここでとかくのことを申し上げることは差し控えなければなりませんけれども、十分な理解を示すであろうということを期待できる状態にあるというように私信じております。
  67. 松本七郎

    松本(七)委員 総理大臣とあなたと同じだと言われるけれども、そうじゃないです。総理大臣は、一応それは応訴を会談でも出してみよう、しかし、それが賛成を得られなければ、とにかく会談会談で進め、国交正常化をやって、そして応訴の問題は先に延ばそうというのが総理大臣意見なんです。あなたはそうじゃないです。小坂外務大臣は、その国交回復ということは先方が応訴して初めてやれるんだ、こう言われておる。だから、応訴するということがはっきりしてからでなければ、国交回復というものは外務大臣の方針から出てこないわけです。ところが、総理大臣の方は、いや一応は出してみるけれども、先方が賛成しなければ仕方がない、応訴の問題は先に延ばしても国交回復だけはやってもいいという考え方らしい。そこのところが違う。
  68. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓会談は、御承知のように、議題になったものは三つあるわけです。請求権と法的地位の問題と李ライン問題、これが会談議題であります。この議題以外にも、竹島の問題はその間に出すことは考えようと言っていらっしゃるわけです。しかし、それが妥結しまして、それから国会審議の過程を経て、批准の行為に至って国交が回復するわけです。その間に先方に応訴を求める、それは応訴するであろう、こういうことでありまして、ちっとも違わない。
  69. 松本七郎

    松本(七)委員 速記録に基づいていったら全然違うんです。自分の答弁にもう少し責任を持ってもらわなければ困る。  それでは、もう少し先に進んでみましょうか。こういうことを言っているんですよ。まだたくさんありますけれども、その間に外務大臣は、われわれはそうすべきものである、こう信じておるということで、それに対して野原さんが、「そうすると、そうすべきものであるといろお考え」、――そうすべきというふうに言うのは、先方が応訴して初めて国交を回復するというお考え、それを中心に今論議しているわけですが、「そうすべきものであるというお考えをあなたが持っておられるならば、そのことについての話し合いができない限りは、日韓会談の妥結はしない。そうでしょう、べきものであるのだから。」、こう言っている。日韓会議の妥結の一つの条件だ、国際司法裁判所に応訴するかどうかの問題は会談の中では話をしていくというおつもりですね、こうだめを押しているわけです。そうしたら、小坂さんは、「私はさように考えております。」、こう言っておるんですから、その前後の、もっとたくさんありますけれども、そのことから言えば、応訴が一つ日韓会談妥結の条件というところまできちっとしているじゃないですか。(「そうじゃない」と呼ぶ者あり)そうですよ。速記録に基づいて言っているんですから。そのときの答弁が間違っていたなら間違っていたとはっきり答弁しなさい。分科会でこれだけはっきり明確な答弁をしておきながら、ごまかすわけにはいきませんよ。総理大臣、こういう方針でやらないんだと取り消すなら取り消して下さい。
  70. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の答弁を実は御質問があるようでしたからここに持ってきておりますが、竹島問題は妥協できない問題、すなわち双方の主張が食い違っている問題でございますから、日韓会談交渉議題としては取り上げていないが、日韓国交が回復するという段階においては、当然この問題を公正な国際機関がさばくということが双方に合意されることが必要だと思う云々、こういう話をしておるわけです。私の頭には国交の回復ということがあったわけです。なるほど、読んでみますと、野原さんの御質問は、妥結の条件、こう言っておられる。そして、非常に長い質疑応答でございましたので、私は国交回復の条件と思い、野原議員の質問は妥結の条件というふうで、確かに私は最後にそう考えておりますということを言っておりますが、これはどうも、自分は今まで同じことを何回も何回も言ったものですから、そう考えつつ言ったにすぎないのであって、もし誤解があるようならば、最後の点は取り消させていただきます。私は、国交回復の際には当然韓国側は応訴すべきものであるし、そうなるであろう、こういうことを言っておるわけであります。ですから、この発言をあらためての発言とお聞き取りを願いたい。
  71. 松本七郎

    松本(七)委員 かりにそうだとしても、総理大臣答弁はまだ違う。総理大臣は応訴は国交回復の条件とさえ言っていない。場合によっては、国交回復をやって応訴の問題を先に延ばしてもいいという含みが総理大臣答弁にある。外務大臣は、今も言われるように、妥結の条件というものは少し自分の思い違いだ、しかし、国交回復の条件であるということを今も確認される。総理大臣、どうですか、その点ははっきり確認できますか。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 これは私の気持も外務大臣の気持も同じだと思うのです。これは日韓交渉の本筋じゃない、竹島問題というのは本筋じゃございませんが、別に重要な問題でございます。従いまして、われわれは、日韓国交正常化の問題は、李ラインあるいは法的地位あるいは請求権の問題、これが本筋でございます。しかし、日韓の間に竹島問題が横たわって未解決であるということは好ましくない。従って、この本筋の会談をしながら、竹島問題につきましてもわれわれは解決をはかっていきたいという念願は、外務大臣も私も変わりない。ほうとうに日韓が誠意を持って一緒になるときには、本筋の問題がきまると同時に竹島の問題についてもきめていきたいということは、外務大臣も私も同じことなんです。それを、今あなたのように、これをどうするかこうするかといって、向こうが承諾しない場合のことをここで議論するということは日韓関係に私は好ましくないから、理屈でいけばこうだけれども、実際問題としてはそういうことを議題にしたくないと申し上げている。このことも、外務大臣の強気にこの問題も正常化の問題として解決したいという考え方と同じことなんです。ただ、長い質問のときにいろいろな問題がございましょうが、今外務大臣が言っておる気持も私の気持も同じで、とにかく、誠意を持って国交正常化をしようというときに、竹島問題を何にも解決の万遍なしにいくということはよくないじゃないか、外務大臣としては方途を見出そう、こういうことで、もちろん、先ほど申し上げましたように、日本の主張通りにしてくれればこれにこしたことはございません。司法裁判所に出る必要はない。われわれはそのつもりで進んでいる。しかし、少なくとも、正常化のためには、この問題は条件ではございませんけれども日本の外務大臣としては、国際司法裁判所へ提訴する了解がつくことを、必要な条件といいますか、そう言いませんが、そういうことを一緒にしていきたいという、条件とかいうことじゃなしに、誠意を持ってやればそれも解決するということを心から念願して言っておると考えます。そのときそれがいかなかったらどうするかこうするかということは、角をためて牛を殺すの議論になってくる。ほんとうに国交を正常化しようとすれば、そういうときにむずかしい問題をやはりはっきり了解をつけてやりたいという念願であるのであります。私と同じであります。
  73. 森下國雄

    森下委員長 松木君に御注意申し上げますが、約束の時間よりも五分過ぎておりまして、受田さんの時間に五分食い込んでおりますから……。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 ここらで一段落いたしますが、速記録をずっと読めば、外務大臣がどのくらい積極的にはっきりと答弁しているかわかるのです。ですから、私が不思議に思ったのは、外務大臣がそういう気持でいるにかかわらず、金鍾泌部長記者会見でこのことを問われたときに、竹島問題は話は出たけれども、外務大臣はごく軽い気持で言っているようだ、こういうことが新聞に載っている。速記録を見ると、とてもそういうふうにはとれない。それにもかかわらず金さんがそういうふうに理解をしたということはどこに原因があるのだろうかと不思議に思ったので、実は今総理大臣の御意向を聞いてみたのだけれども総理大臣のようにそこのところがあいまいな態度では、向こうがそういうふうに理解するのも無理はない。  総理大臣一つだけ伺っておきたいのは、何とかしてこれを解決したいという積極的な意欲があるか。そして、韓国にも何とかして応訴させようという、日本国民の利益に立って自主性を持って会談に臨もうという心がまえがあるならば、やはり、少しでも応訴させるような条件を今から作るということが必要だと思うのです。にもかかわらず、韓国の方はどうかというと、これも報道されておるように、竹島開発の五ヵ年計画というものを進めておる。それは永久に応訴なんかする意思がないからそういう長期の計画をやっているわけなんです。だから、こういう問題についても、ここで外務大臣が答弁されておるように、ほんとうに応訴させようという強い信念があるならば、あらかじめ、こういう問題は将来日韓関係を良好ならしめるためにも応訴することが絶対必要だ、そのためには一方的に開発計画などは進めてもらいたくない、直ちに中止してほしいということくらいは申し入れるのが私は当然の筋道だと思うのですが、どうでしょう。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣は、あなたの今のようなお話で、(「速記録にあるじゃないか」と呼ぶ者あり)――いや、速記録を言っているのじゃありません。あなたのおっしゃる通りに、この問題を日韓会談と並行して解決したいという強い決意を持って、速記録に載っているようにやっているのであります。私はその気持はわかった。私の気持と同じだ。ただ、あなたのように、これがこうなった場合にどうなるかどうなるかということになると、理論的にいくと私の言ったようになりますが、そういう議論はここでせぬ方がよろしいじゃないですか。私はそう思います。これは私の考えです。議論なさるなら答えます。気持は同じです。ただ、私の気にかかることは、金鍾泌君が竹島なんかは返すかいという気持記者会見をしておるというお言葉は、私のとっておる情報とはちょっと違うようであります。私は相当真剣に考えておるような報告を受けておるのであります。この点につきましては外務大臣から答えさせます。
  76. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 総理お答えでも十分でございますが、一つ、例の五ヵ年計画なるものが、UPIの報道によりますと、韓国において民間の会社で計画されておるということでございましたが、事民間でありましても、われわれとしてははなはだ遺憾なことでありますから、去る二十六日、口頭をもって韓国代表部に厳重に抗議を申し込んで、遺憾の意を表しておきました。
  77. 松本七郎

    松本(七)委員 総理大臣に、竹島の領有権は絶対に韓国に譲るようなことはないかということだけ一度確認しておきたい。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、この間に日本の領土であることを確認してくれればそれでいいし、しなければ、やはり正規の手続をとってあくまで主張いたします。
  79. 森下國雄

    森下委員長 本会議散会後再開することとして、休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十七分開議
  80. 森下國雄

    森下委員長 これより休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。受田新吉君。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 松本君の質問に続きまして私からもまず竹島の問題の取り扱いについて総理大臣に御所見を伺っておきたいと思います。  第一に、竹島というこの島の領有に関する議論というものについて、日本が領有を主張している法的根拠、及び、韓国側が領有を主張している法的根拠を、それぞれの立場で簡明に御答弁願っておきたいのです。
  82. 中川融

    ○中川政府委員 私からかわりまして法的根拠について御説明いたしますが、日本が竹島を日本の領土であると主張しております根拠といたしましては、昔から、日本はこの島を日本の領土であると考えまして、ここに日本の漁民その他が行きまして海産物の採取等に当たっていたのでございます。なお、昔から、これは十七世紀ころからでございますが、日本のいろいろの文献にも、竹島が日本の領土であるという意味のことが散見して出てくるのでございます。なお、明治になりましてから、明治三十八年に日本は正式にこの島を日本の領土に編入する手続をとったのでございまして、島根県にこれを編入したのでございます。従いまして、従来からそういう日本の領土であると心得ていたほかに、近代の国際法に基づきます領有の意思というものをはっきり明治三十八年に表示したのでございまして、その際これに対してどこの国からも異議は唱えられていないのでございます。自後ずっと今日に至るまで日本の領土であることに変わりはないのでございます。  これに対しまして、韓国側がどういう主張をしておるかということでございますが、これは、韓国側は、もちろん最近になりまして、いわゆる李ラインが設定されました以後におきましてこの領有権を主張してきたのでございますが、その根拠といたしますところは、韓国人も昔からこの島に人が行ったこともあり、こういう島があることも知っていた、そういうことが韓国側の文献にも見えているところである、こういうことの主張であります。しかしながら、近代国際法の意味における領有の方法はとっていないわけでございます。この点につきましては、韓国側は、明治三十八年に日本が島根県に編入いたしましたときは、すでにその当時韓国は事実上日本政治的な権力下に入っていた、従って、日本がそういう手続をとった際に、韓国は形は独立国であったけれどもこれを正式に抗議するだけの力がなかったのだ、従って、依然として韓国の領土であるという事実には変わりはないのであるということ。それから、戦後におきまして、いわゆるマッカーサー・ラインというものができました際に、竹島がそのラインの外にあったという事実を取り上げまして、アメリカ占領軍当局もこの島は日本の領域外であるということをはっきり示したものである、平和条約によりまして日本は朝鮮の独立を承認したのでありますが、その独立した朝鮮には当然この島も入っていたというのが韓国側の主張でございます。  これに対しまして、なお韓国側の主張に対する日本の法的な反駁といたしましては、明治三十八年にすでに日本の権力が韓国に及んでいたということは事実に相違する。この島根県編入のことをやったのは三十八年の一月、二月のころでございます。これに反しまして、日本からそのころの韓国政府に財政顧問あるいは法律顧問というものを派遣いたしましたのは三十八年の暮れでございます。従って、三十八年の初めに島根県へ編入の措置がとられました当時は、依然として韓国は完全な独立国であったじゃないか、その際何も韓国は文句を言わなかったじゃないかということが第一の反駁であります。なお、終戦後のいわゆるマッカーサー・ラインにこの島がはずれているという点につきましては、マッカーサー・ラインというものは、マッカーサーの指令それ自体はっきりしておりますが、これは将来の日本の領土帰属問題とは無関係であるということにはっきりなっているのでございまして、従って、何らこれによって日本の領土権から離れたということにはならないのである、こういうのが日本の主張でございました。しかし、日本は、その法的主張を一方的に固執する、一方的に押しつけるというのではなくて、はっきりした国際司法裁判所という第三者の公平な判断に待ってこれを解決しようじゃないかというのが日本の些末的な法的立場でございます。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 私は今の局長さんの御答弁一つ新しい言葉じりをとらえたいのですが、李ラインの問題と前後して竹島の問題が起こっている、こういうことでございますが、李ラインの問題を今度漁業権及び平和ラインという名称を用いて日韓政治会談の大きな柱にしようとしておられるようですけれども、李ラインの問題を会談の重点にとられておりながら、同じ前後する時期に問題になった竹島の問題をなぜはずしたか。平行線をたどるならば、李ラインの方も竹島の方も両方とも主張が相違するわけであります。どうしてこれを分離したのか。総理大臣お答えを願います。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、日韓正常化の問題は、請求権あるいは法的地位、そして李ライン、漁業権の問題を正常化のあれと心得ておるのであります。竹島問題は、正常化の問題よりも離れると申しますか、日本の固有の領土である、こういう考え方で従来進んできておるのでありまして、問題はない、こういう気持であるのであります。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 季ラインの問題にしても竹高の問題にしても、今御答弁をいただいたようなこの二つの問題は、はっきりと双方の意見が相違していることはお認めになっておられる。しかし、一方を正常化の大事な問題に取り上げて一方をはずすということは、今あなたが御説明されたことでは納得がいかないのであります。両方を同時に日韓会談の主目的としてお取り扱いになるという大きな目標をお立てになる必要はないか、お答えを願います。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、李ラインの問題というのは漁業権でありますが、漁業権は、領海の問題もございますけれども、実質問題としては魚族保護の問題で、これは当然交渉段階になるものだと思います。  それから、竹島問題は、先ほど説明いたしましたように、日韓関係の正常化ということよりも離れて固有領土の問題である、こういうふうに性質が違うものだと私は考えます。しかし、これも正常化としては解決しなければならぬ問題でございますから、ただいま、先ほど来申し上げますように、正常化と並行して話を進めていく、こういう考えでおります。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 今あなたが別に考えたいと御指摘されている竹島の問題について、具体的に大きな問題になりそうな点を拾ってお尋ねしたいのでありますが、竹島という島は経済的な価値がどこにあるのか、簡明に答えてもらいたいのです。これをどう経済的に重視しているか。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 私も行ったことがないので存じませんが、経済的にと申しますと、やはり問題は漁業関係だと思います。あの近くで日本の漁民が漁業をしておりますし、何とかいう魚族の特別のものもおるそうであります。また、あの近海で漁業しておる者の避難港にもなり得ると聞いておるのであります。こういう漁業問題が中心でありますが、また、別に燐鉱石があるといわれます。これは多分訴訟に相なっておった問題があると思いますが、こういうのが経済的な価値のある問題と思っております。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 今の燐鉱石の問題に関連し訴訟の原因になったことは、あそこに鉱区権を持つ辻という人の訴訟です。この辻氏の訴訟はついに東京地裁で敗訴させられた。国に対する五億円の損害賠償要求も棄却された。おまけに訴訟費用までも本人負担ということにしているようです。こういう国の責任で非常に損害を受けた人に対して、訴訟費用まで本人に負担せいということをこのまま放置していいかどうか。政治的な問題に対して敗訴した辻氏に対する何らかの措置をどう考えておられるか。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 寡聞にして今の判決の内容を私十分に存じておりませんので、法制局長官から話をさせますが、裁判が、下りましたので、われわれとしてはそれに従うことは当然であると思います。裁判のいい悪いは、私はここで議論いたしたくない。ただ、情状の点がありますので、和解の手続か何かに訴えようとしておることを聞いております。詳しくは関係当局から答弁いたさせます。
  91. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は実は訴訟の判決のことは存じておりません。第一審判決のあとで、その原告でありました辻氏がどういう措置をとっておられるか、たとえば控訴をしたか、あるいは国側が、あるいは島根県の側がどういう措置をとったか、詳しく存じません。実はこの訴訟の形は島根県及び国を相手としての国家賠償法による損害賠償請求の訴訟でありまして、裁判所は国家賠償法の問題にならないという判決を下したわけであります、多少情状論が判決のあとの方に書いてございますが、いわゆる法律問題としての国家賠償の対象にはならない、かような判決であります。これは裁判所の下した判決でございまして、二審になればどうなるかはちょっと予測は許さないのでございますが、第一審判決は、私は、法律論としては大体筋が通っているんじゃないか、かように考えております。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 敗訴した方は、訴訟費用までもこれを本人負担にされてしまっておるのですね。だから、国の政治的な責任の結果この問題が解決しないばかりに、鉱区権を持っている辻氏が大損害を受けている。この辻氏を何らかの形で行政的にあるいは政治的に援助する、保護する、こういう立場のものが判決とは別の角度から要る。私は今法律論を申し上げているのではないのです。
  93. 林修三

    ○林(修)政府委員 御承知のように、辻氏が損害として直接請求したのは、実は鉱区税の問題でございます。で、鉱区税を払わせたのはけしからぬじゃないか、要するに、他国に一時占有されているという状態のもとにおいて国が依然として鉱業権に対する鉱区税を徴収するのはけしからぬという主張でございます。鉱区税を徴収したのは実は島根県でございますが、これは、御承知のように、あとでは県当局はたしか徴収猶予もしているはずでございます。従いまして、新しい税がたまってくる問題はおそらくないんじゃないかと思います。初めの一年か二年の問題、昭和二十九年、三十年のころの問題じゃないかと実は思っておりますが、そういうわけでございます。  それから、もう一つは、私もこれは実態をよく存じませんが、判決から見ますと、辻氏は、採掘権は持っているわけでございますが、実はあそこに施設は何らやっていなかった。従いまして、そういう物的損害はなかった。結局そこを採掘すれば燐鉱石がとれたかもしれない、得べかりし利益の喪失という問題があるかないかという問題でございますが、得べかりし利益の喪失の問題は、実は訴訟の対象になっておりません。主としては税金を取ったのはけしからぬというのが対象であった、かように考えます。  あと政治的配慮の問題は、これは県当局あるいは国としてどこがとりますか、財政当局の問題で、実は私どもは直接関知しないわけでございます。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 行政当局として、この敗訴した、鉱区税を納め、そして訴訟費用を負担した辻氏に対してどう配慮するかということ。どなたか御答弁できる人がありますか。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 事情をよく調べまして、措置につきまして検討を加えたいと思います。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ、今竹島に韓国の警備隊がどのくらいおるのか、どのくらいの装備をしてあるのか、領有権を主張するわが政府としてははっきり御存じだと思うのですが、最近の実情を御報告願いたい。
  97. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 竹島の面積は六万九千九百坪でございます。これは西島と東烏とございまして、西島の方が海抜百五十七メートル、東島がやや低いのでございますが、全体が火成岩でできておりまして、南側の方に若干の雑草がはえている程度の裸島でございます。そこで、昨年の十二月、海上保安庁の巡視船「へくら」号が竹島を視察しました際に、同島には、灯台、アンテナ、それから旗の柱、煙突、物置小屋等の構築物の存在とともに九人の人影を見ました次第でございますが、いずれも武装はしていなかったということでございます。この巡視船は韓国艦艇との衝突を避けますために陸岸より約手メートルの地点から引き返しましたために、これ以上の詳細は不明であるということであります。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 わが領有しておる島に対して、千メートルの沖から、肉眼では見えないようなそういう観察をして御報告されるということは、これは実態を明らかにしてないわけなんです。あなたは、この前の委員会で、この竹島の問題は国連憲章第六章の紛争の平和的処理条項には該当しないのだという御所見でございますけれども、この問題は、あそこへ行かないから紛争が起こっておらないというだけなんです。事実、あそこへ近づいて、過去において砲撃を受けたりいろいろな被害を受けた事例があるじゃありませんか。平和的紛争処理条項に該当しますよ。従って、日本が領有されている島を直接奪い返そうとすれば、当然紛争になる。好戦的な意味ではなくして、わが領土を主張する立場から見たときに、これは紛争の条項に該当するものと認められるはずです。従って、これを解決するのに、二国間でできないという場合には、国連憲章の第六章に基づく平和的紛争解決処理条項の適用を受ける、そういう道をおとりになる必要はないか。お答えを願います。
  99. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 午前中の委員会でも総理からも御答弁がありましたように、竹島の問題は二国間において解決し得る問題ではないか、現状においてはそういうふうに考えられるような非常によい雰囲気が生まれつつございます。そこで、私どもは、この問題はできるだけ二国間で話し合いをして、そうして話し合いがつきません場合には国際司法裁判所に提訴する、利手もこれに応訴するであろうような環境が生まれつつある、こういう認識のもとに立ちまして、ただいまの御意見も傾聴いたしますが、まだその段階よりもこの方がよりとるべき態度ではないか、こういうふうに思っております。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 方法に二通りあって、まず提訴、応訴の方を取り上げたい、こういうことでございます。ところが、提訴した、応訴した、その結果日本が敗訴したという場合に、日本政府はどうぞお取り上げ下さいと向こうへお返しするのですか。
  101. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国連に提訴します場合に、これは国連の関係国の間においてどういうふうに取り上げるかという点で非常に問題があるわけでございます。たとえば、西イリアンの問題等にいたしましても、これはずいぶん長年月を要しまして、なかなか国連の問題として取り上げられなかったというような実情もあります。そこで、私は、この竹島の問題は国際司法裁判所の方がより妥当であろうというふうに判断しているわけでございますが、相手が応訴して負けたらどうするというお考えでございますが、これは、われわれとしては、私どもの主張に十分の理がある、かような考えておる次第で、その先のことについていろいろこの場で論議申し上げることはいかがかと思いますから、差し控えたいと思います。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 必ず勝つという前提でやられても、結果が負ける場合もあり得ることなんです。敗訴した場合にはやむなく向こうへお返しするという前提に立っているという原則ははっきりしているわけですね。
  103. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 公正なる第三者のさばきを受けるのでありますから、そのさばきに従う、こういう前提であります。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ、この竹島の問題で取り上げておきたいことは、今紛争処理規定に従う場合もあり得るということでございますが、順序として提訴、応訴の手続にしたいということでございますが、あそこについて現実に国際紛争の二国間の紛争という立場をおとりになるという前提に立っての御意見であると了承してよろしゅうございますか。
  105. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現状において国連憲章のいわゆる国際紛争という問題として直ちにこれが適用できるかどうか、これは、日本がこの竹島の領有を主張して実力に出るという場合にはそういう場合も考えられますが、現在においては、日韓間に、友好的な雰囲気のうちに国交を正常化しよう、こういう話し合いが進められている際でございますから、そういう問題とは別の問題として考える方が適当じゃないか、こう思っております。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 今の御答弁でお尋ねしたいことが出たわけですが、紛争が現に起こっていないという前提ではない、行けば紛争になるからという意味の御答弁であったように思いますが、現実に日本側が近寄って攻撃をされたり被害を受けておるというこの状況は、紛争段階と見るべきではないですか。これを明瞭にお答え願いたいのです。
  107. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現在紛争があるかないか、どう見るかということでございますが、紛争とはいかなるものかということになるわけでございまして、これはやはり紛争であるという見方もできると思います。ただ、その紛争の結果国際的な非常な緊張になるような状態というふうに見るのは早い、見る段階ではない、こう思います。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 日韓会談のうち請求権に関する四つの小委員会があるのですが、その中に船舶小委員会というのがあります。かつて、わが方から李ラインを乗り越えたと称して多数の船が拿捕された。不法拿捕と日本政府は言明しております。これらの拿捕された船の数は今どれだけ政府は承知しておられますか。
  109. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ちょっと資料を持っておりませんが、たしか百九十隻くらいに上っておるかと思います。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 今度の会談で、この不法拿捕された船が返還されるような要求をされるのかどうか。
  111. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 船舶小委員会というのは四つの問題を取り上げておりまして、一つは、韓国に登録された船を向こうが返還しろということ。それから、置水船と申しまして、八月の九日以降において韓国の港に行って薪炭を補給したもの、これも韓国が請求している。それから、こちらから向こうに貸した船が五隻あります。これが第三。第四にこの拿捕された船が入っております。ですから、議題に取り上げております。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 この船が返還をされなかった場合、及び損壊されているような場合には、それに対する損害賠償要求をすることになるわけですね。
  113. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 それは外務省の問題でございません。水産庁とか大蔵省の国内問題になって参ります。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 交渉段階でそういうことが話し合いできないのですか。不法に拿捕され、かつその所有者の損害を、これは交渉段階ではやらないということになるのですか。
  115. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいま御質問の御趣旨を間違えまして、これが返ってこない場合にどういう補償問題が起こるかという御質問だと思いまして、国内の問題だと申し上げたわけであります。拿捕されて以来今までの損害をどうする、船の古くなったものをどうするというふうなお話でございますが、これにつきましては、先方の返せという船も古くなっております。そういう関連におきまして、総合して研究しなければならぬと思います。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 私は、きょうの委員会でさっきから総理及び小坂外相と松木君との応酬を聞いておって、一つ問題に取り上げてみたい点が出ておるわけです。それは、大使の派遣と代表部の設置である。この問題について、担当大臣の小坂さんも、総理も、大体調印が済んで後に代表部を置く、そうして国会承認を得て正式に大公使の交換をしたいということでございました。調印を済ませて代表部を置くということと、国会承認をとって後に大使を交換するということとは五十歩百歩です。やるのなら今からやられたがいい。代表部の設置は直ちにおやりになるべきだ。生命・財産の保障ができないという段階調印後でなければ解決しないのかどうか。従来政府は、韓国側代表部をお置きになっても生命・財産の保障はしませんよという御意見でございますから置きませんというのが理由のようでございましたが、この点について御答弁を願います。
  117. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私が担当いたしましてからの韓国側の主張は、代表部を置けという日本の主張に対して、――これは私も当然そうあるべきものだと思いますが、ただ、日韓会談を進めておる際でございますから、今代表部を置くと日韓会談というのはなかなかできないという印象を与えるから、会談はもうじきに妥結をするのだと国民に言っておる手前もあり、一つ会談が終わってから代表部を置くことにしてもらいたい、こういう向こうの主張でございます。その他の点については条約局長から……。
  118. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま外務大臣の言われた通りでございますが、若干補足いたしますと、もちろん代表部というものは国交正常化に至る前の段階の問題でございますので、実は今からでもやりたいわけでございます。すでに五、六年前から代表部設置ということは韓国側に強く申し入れたのでございますが、韓国側の事情でこれを韓国承認しない、そのままの事態で今に至っておるわけでございます。最近におきましても、ぜひ代表部を置きたいと申し入れたのに対しまして、やはり、国交正常化の話がある程度固まったところで一つ置くことにしようじゃないか、もし今日本代表部を置くということになると、かえって国交正常化の勢いが阻害されるおそれもある、――まあこれは向こうの理屈でございますが、そういう理屈を言って結局応じないということでございます。日本側としては一日も早く置きたいという希望に変わりはないということでございます。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 一日も早く置きたい希望に変わりないとなれば、調印を待たなくとも、直ちに代表部を設置をされるべく努力をすべきじゃないですか。
  120. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それは言うておるのですが、さっき申し上げましたように、先方としては、会談が妥結したら直ちにそういうことにいたします、今直ちに置きますと、会談がまだまだ先だ、会談が妥結を見る前に代表部ができたということは、日韓会談はなかなか先になるんだ、こういう印象を与えるから、もう少し待っていただいて、会談妥結後にしたい、こういうことを言っておるわけでございます。これは先方の理屈でございますけれども、話が合わないので、そうならざるを得ないのじむ、ないかと思います。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 日本側は即時代表部の設置を希望しておる、向こうがこたえてくれるならば、これを直ちに実現したいという立場をおとりになっておるわけですね。
  122. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうです。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、私がこの機会に指摘しておきたいことは、今日本韓国の間が国交の正常化に前進しつつあるというこの段階、特に李承晩大統領時代とは違って非常に好意的に動いておるというこの革命政府、――革命政府との交渉でございますが、私たちの立場から申しますならば、一応国連で承認された国家としての韓国という立場で、この革命政府の手段方法ははなはだまずかったけれども、一応交渉を進めていくということについてはこれを肯定しているわけです。その過程において問題になることは、北鮮との関係です。李承晩のときにはずいぶん気がねして、あなた方の方では北鮮との折衝をようやっておられなかったが、非常に好意を持っておる革命政府交渉される段階では、気がねなしに今度は北鮮との交流をおやりになってはどうか。もう何らの遠慮もない。経済その他の交流等も、進んでこちらとあちらと行き来をするように努力をされる必要がないか。李承晩時代とは変わった意味で気がねなしに北鮮との一歩前進した経済交流を考える段階に来ておると考えるのですが、いかがでしょう。
  124. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国との間に国交が正常化して、こちらの言うことが先方の政府に十分理解させ得るようになったその次の段階においては、お話のようなことも考えられると思いますが、現状においては、やはり互いに疑心暗鬼を生むことでございますし、北鮮との間にはいろいろな政治的な問題もございますから、現段階においては慎重を期さざるを得ない、こういうことであります。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 気がねなしにやれる段階に来ておるという意味で、そういう日韓交渉の過程においても、北鮮との経済交流、文化交流、こういうものは同時にやられていいと思う。それを待って後にするということでなしに、一歩前進して現段階からそれに乗り出すという努力を一方でされても差しつかえないと思うのですが……。
  126. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今申し上げましたように、国交が正常化されて日本の考え方も韓国政府に十分わかるという段階になれば問題は別だと思いますが、現段階においてはさようなことはできないと思います。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 最後に一つこれをお答え願いたい。日本の国で日本人として大東亜戦争に参加して死亡しあるいは傷ついた者の数、これは一体何人おるのですか。これらの人々に対して扶助料とかその他の資金が今何ら交付されていない。日本として死亡した人々の数をちょっとお知らせ願いたい。
  128. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ちょっと今ここに資料を持ち合わせておりませんが、たしか一万前後であったと思います。日本と申しましても、全部当時は日本人でありまして、軍人、軍属合わせて約二十何万人でございます。そのうち戦死いたしました者が一万前後かと思っておりますが、ちょっとここに資料を持ち合わせておりません。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 これらの人々は何ら、日本国国民として戦死しあるいは戦傷を受けた立場になっていないのです。この点、今度の韓国人の法的地位の問題等に関連して、あるいは請求権の問題に関連して、今なお同じ国内に今在留しているこれらの人々には何ら補償されていない。この人々に対する補償を何らかの形で――内払いという将来の整理の方法もあるのですから、この人々に対する国内的な措置というものを別にお考えになる必要はないのですか。お答え願います。
  130. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国人で戦争中日本軍人及び軍属として戦死した者とか負傷した者、あるいは戦時中動員せられまして現在韓国人になっておる徴用労務者に対する措置等の問題は、現在、日韓会談の中におきまして、請求権交渉において重要な議題として取り上げておるわけでございます。従って、これは双方でいろいろ話し合いをいたしておる段階でございますので、具体的には今これ以上申し上げることはできないことを御了承願います。
  131. 森下國雄

    森下委員長 受田委員 時間でございます。  川上貫一君。
  132. 川上貫一

    ○川上委員 私は、日韓会談の問題ではいろいろ聞きたいことはあるのでありますけれども、時間が非常に少ないので、きょうはせっかく総理大臣がお見えになっておるのでありますから、政治的な問題に限って、今後私ども質問を続けていく基礎という立場で二、三質問をさしてもらいたいと思います。  その最初にちょっと総理のお考えを聞きたいのですが、さっき松本委員質問しました時分に、これは私の聞き違いかもわかりませんが、外交政府がやるのだ、国民なんかの意見を聞く必要はないのである、こういうように私は聞き取ったのでありますが、もしそういうお考えであれば、総理が間違っておられるのじゃないか。それでは、外交立場、内政の立場も、国民を指導して国民の力を合わせてその上に立って政府外交なり内政をやっていこうということに根本的な欠陥が現われてくる。総理はそういう意味で言われたのじゃないと私は思いますが、おそらく速記録を見ればそういう意味になっております。この点についてちょっと総理の御見解を聞いておきたい。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 国民の意思を受け継いで政治をするということは、これは民主主義の今の制度の根本でございます。だから、国民の意向をくみながら――大体池田内閣そのものが国民の意向なんです。国民の負託を受けて政治をしている、こういうことであります。
  134. 川上貫一

    ○川上委員 速記録を調べてみて、外交の権能は政府にあるのだから、国民意見を聞く必要はないということになっておったら、お取り消しになりますか。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 速記録を見てからお答えいたします。
  136. 川上貫一

    ○川上委員 速記録を見ればそうなっておるのですからな。これはよけいなことになるかしれませんが、総理大臣としては少しお慎しみになった方がよい言葉ではないかと思います。腹を立てぬようにして下さい。  第一の質問は、金という韓国中央情報部長が来られたのでありまして、総理もお会いになりましたが、これはどういう用務でどういう資格で来られたのか、これが一つ総理に面会される前後に政府関係のだれだれに金さんは会いましたか、これが二つ。この二点だけお答えを願いたい。これは総理でなければよくわからぬ。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 金という方は朴政権の重要な地位である情報部長であります。私は、昨年の何月でございましたか、九月か十月だったか、あるいは八月だったか、一回自宅でお会いしたことがあります。今回は、前もっての話がありますので、日にちを打ち合わせまして、総理官邸で会ったのであります。金君が私と会います前後に日本のだれと会ったかということにつきましては、私は存じておりません。
  138. 川上貫一

    ○川上委員 総理がお知りにならぬというと、これは勝手に会うたということになっているのですが。いろいろな人に会うておりますが、たとえば、十九日の午後十一時に羽田について、その晩に湯川氏と会うておりますけれども、これは政府関係とは言えない。二十日正午に、公安調査庁長官、これに会うておる。それから、時間がちょっとわかりませんが、関次長にも会っておる。二十一日にはたしか内閣調査室長にも会っておると思います。これは何しに会ったのか、何を話したのか。これを総理は御承知なのか、何もこれはお知りにならぬのか。これだけでけっこう。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、そういう人が会ったことは初耳であります。聞いておりません。
  140. 川上貫一

    ○川上委員 これは、総理は何にも知らぬと言われますのでは、さっぱりどうも話にならぬ。しかし、この人々は治安関係の人です。これは外交関係の人ではありません。小坂外務大臣に会う以前に会っておる。まして、公安調査庁長官には総理に会う前に会っております。これは何しに会ったのかということは、外務委員会としては、また議員としては重要だと思う。総理はこれは知らぬとおっしゃるのだから、内容を言えと言うたってここでは話にならぬ。  そこで、委員長に私は要求します。公安調査庁長官と内閣調査室長をこの外務委員会に呼んでもらいたい。直接私は聞くよりほかに方法がない。総理がお知りにならぬというのだから、このことを要求します。
  141. 森下國雄

    森下委員長 質問を続けて下さい。委員長は手続をとってみますから……。
  142. 川上貫一

    ○川上委員 それでは、委員長にお願いします。  その次に、去年の五月二十日に外務省は情報文化局長の名前でこういうことを発表しておる。韓国に軍事クーデターが起こったことは国民をあげての重大関心事である、事態が一日も早く正常化することを望む、こういう意味の声明が出ておる。今日現在韓国は正常化しておるとお考えになっておりますか、この点なんです。今日、憲法もこれは死んでしもうておる。議会もありません。民主的な手続による法律も多くが停止しております。司法制度も完備しておりません。いわば民主主義の一かけらもないようになっておるのが韓国だとわれわれは考えておるのです。そこで、これは何人も正常化とは言えないと思うのですが、総理大臣はこれを正常化したとお考えになっておりますか、この点をお聞きしたいのです。
  143. 池田勇人

    池田国務大臣 軍事革命を起こしまして、ただいま、正常化、そして国内の安定に努力を続けておるものと思います。
  144. 川上貫一

    ○川上委員 正常化しておるんですか、まだしておらぬのですか。
  145. 池田勇人

    池田国務大臣 正常化に向かって努力しておると思います。
  146. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、正常化はしていない、正常化する方向へ努力をしておる、こう承っておいてよろしゅうございますか。
  147. 池田勇人

    池田国務大臣 それでいいと思います。だから、正常化といっても、それは時期的の問題でございます。正常化といっても、程度の問題であります。そこは常識で考えまして、私は、平穏に、だんだん正常化の度が強くなっていっておる、こう見ております。
  148. 川上貫一

    ○川上委員 まことに奇妙な答弁ですが、これは今後の問題として聞いておきます。総理大臣お答えですから。  正常化の問題についてはあるいはあとで触れるかもわかりませんが、あるいは今後の質問になるかもわかりませんけれども韓国では今アメリカの兵隊による射殺事件というのが続出しております。これに対して適当に処理できる協定がありますかどうですか、これが一点。韓国には現在アメリカ軍と韓国との間の刑事・民事の裁判権について協定があるかどうか、また、土地建物の使用権についても協定があるかどうか、出入国管理についての協定があるかどうか、もしないとすれば、アメリカ軍はこの限りにおいて完全な治外法権を持っておるのかどうか、これが第二点であります。第三点は、アメリカは行政協定韓国とはできない。その理由として、司法制度が完備しておらぬ、第二の理由として、あれは戦闘区域だと言っておる。これで行政協定韓国とは結べない。これが韓国の国情だと思う。この三つの点について別別にお答えを願いたい。一括して答えぬように。総理大臣、あくびをせぬようにやって下さい。
  149. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 韓国とアメリカとの間につきましては、行政協定を作りたいという話がございます。張勉政権の際におきましてもこの話が出ておりました。近く交渉に入ろうということになっておりましたところ、軍事革命が起きまして、この話がそのままになっておりましたが、最近韓国人が間違って射殺されたというふうな事件も起きまして、また行政協定を早く結ぶべきだという意見が出ておりました。近くそういう方向に進むのではないかと思っております。  その他の点につきましては、この土地建物の借用、これは普通に行なわれておるわけでありまして、一般的にそういう民事の手続で行なわれる、あるいは国際法の常識によって行なわれるもの等によって律せられておる、こう考えております。
  150. 川上貫一

    ○川上委員 半分よりわからぬ。協定はあるんですか、ないんですか。なぜ協定がないのかということ。
  151. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 なぜないか、そこまでの事情はよく存じませんが、早く作りたいということで、今話が進んでおるわけでございます。
  152. 川上貫一

    ○川上委員 あなたは日韓会談の担当官ですよ。外務省の高官であります。今無理々々にでも政治会談をやって国交の正常化をしようとしている。よくそんなわからぬというようなことが言えますね。相手の国の実際の状態をほんとうによく知った上で、これで外交というものはできるのです。これはまじめに答えてもらいたい。また、総理大臣はあくびをしたり笑ったりしておる。何という態度ですか、それは。これは笑いごとじゃありませんよ。日韓会談の問題というのは国民の一大関心事です。これは野党だから言うておるのじゃありません。それを外務委員会で質疑をしておる。言いのがれさえすればいいという問題と違う思う。まじめに答弁をして、まじめな態度でやってもらいたいと思う。そうしなければ委員会を侮辱したことになります。
  153. 池田勇人

    池田国務大臣 私はまじめに答弁しております。いろいろな問題があるときに、それは委員も同じようにお笑いになることもありましょう。笑顔でやることもありましょう。そして、疲れたときには手でおおってあくびをすることもありましょう。これをふまじめだと断定されることは、私は心外であります。
  154. 川上貫一

    ○川上委員 委員質問しながらあくびをすることはありません。そんなことがありますか。冗談じゃありません。韓国の国情はこのようなものだということだけを承って、将来の質問の基礎にします。  次にお聞きしたいことは、韓国に駐留しているアメリカ軍は国連軍と称しておるようです。この米軍と韓国軍との関係、具体的に言えば、韓国軍が米軍の指揮下に入る、こういう関係でありますが、これについては、これまで政府は部分的な答弁はなさっております。ここではっきりと聞いておきたい。そして今後の日韓会談その他の問題についての質疑なり討論の材料にさしてもらいたいと思うのでありますが、第一は、どういう場合に指揮下に入るのであるか。第二の問題は、第一線部隊はふだんでも指揮下に入っておるのであるか。第三点は、韓国の空軍は第一線部隊と思いまするから、この第一線部隊としての空軍は、国連軍というアメリカ軍の指揮下に置かれておるのであるか。この三点です。
  155. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 最近の韓国軍と国連軍の関係につきましては、韓国軍は国連軍の作戦指揮権のもとに立つということになっております。ただ、この作戦指揮権は、共産主義に対する防衛に対してのみ行使されるというのが国連軍と韓国軍との間の申し合わせになっております。  空軍は特にどうということはございませんが、海陸空を通じましてそういう申し合わせになっております。  平時におきましてはどういう関係かということは、それだけから見ますと、作戦の際に国連軍司令官の指揮下に入るということになっておりまして、平時の関係については触れておりません。私たちが調べたところによりますと、平時の関係につきましては、人事関係とか、主として被服補給というふうな給与関係韓国側が持っておりまして、武器、弾薬その他の補給というふうなものは国連軍がつかさどっている。これは平時におきましては特にそういうことは問題になりません。お互いに第一線の防備について密接な連絡をとってこの訓練をやっているというふうなことで、平時については何もきまっておらないという状況でございます。
  156. 川上貫一

    ○川上委員 作戦という定義はどうなんですか。外国との戦争に限るんですか。
  157. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 作戦指揮権のもとに立つということが申し合わせでありまして、それを解釈いたすわけでございますが、しかもこれが共産主義の防衛に対してのみ発動されるということでございますから、現実の事態として考えられますことは、三十八度線において再び事件が起きる、紛争が起きて戦争になったという場合に、韓国軍は国連軍司令官の指揮下に入る、こう解釈いたします。
  158. 川上貫一

    ○川上委員 間接侵略と称する場合はどうなるんですか。
  159. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 間接侵略の場合に、程度の差があると思います。警察で対処するものもございましょう。あるいは憲兵が扱う場合もありましょう。海上保安庁式のものが扱うとか、これは韓国の国内の問題であります。
  160. 川上貫一

    ○川上委員 作戦の問題です。国内にいろいろな問題が起こった時分に作戦をする、この時分にどうなるんですか。
  161. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 作戦というふうな概念と申しますか観念と申しますか、国内であり得るかどうかすこぶる――作戦と申します以上は外国との間じゃないかと考えますが、国内でありますと作戦というのはちょっとわれわれの考えを越えておるような気がいたします。
  162. 川上貫一

    ○川上委員 われわれの考えを言われては困るのです。あなたは日本アジア局長なんです。私はアジア局長を通じて韓国の国情を聞いておる。わしはこう思うという解釈を聞いておるのじゃない。これをお調べになっておるだろうからと思って聞いておる。それがわからぬというのならば、作戦指揮下に入るという根拠、たとえばアメリカと韓国との協定合意、このものを全部この委員会に出してもらいたい。というのは、これは韓国の問題を云々しておるのではなくて、政治会談までむちゃくちゃにやって、まだ事務段階合意もできぬうちにしゃにむに協力体制を作ろうとなさっておるのでありますから、こういう状態について明らかにすることは、国民として大きな関心事であるし、外務委員会としても、その点はすっかり聞いておきませんと、この会談の強引な押し進めがよいか悪いかけじめがつきません。この根拠を全部出してもらいたい。これは、委員長、取り計らっていただけますか。
  163. 森下國雄

    森下委員長 よろしく手続をいたします。
  164. 川上貫一

    ○川上委員 国連冠と称するアメリカ軍の作戦指揮下に入るということの根拠の全部、これを資料として提出してもらいたいということなんです。いいですか。
  165. 森下國雄

    森下委員長 よろしく手続をいたします。
  166. 川上貫一

    ○川上委員 それじゃ次の質問に移りますが、作戦指揮下に入った時分の韓国軍は国連軍なのですか、国連軍としての資格を持つのですか。どうですか、この点。
  167. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 厳格に申しまして、韓国軍は国連軍そのものではないというふうにわれわれは解釈いたしております。
  168. 川上貫一

    ○川上委員 国連軍そのものではないが、国連軍の作戦指揮下に入る。国連軍じゃないものを国連が指揮することができますか。そういう取りきめがどこでできておりますか。
  169. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 最初朝鮮事変が起こりました直後、七月何日付か、大田協定というものがございまして、李承晩大統領がマッカーサー司令官に対しまして、韓国の三軍をマッカーサー司令官の統帥のもとに置くという手紙を出しまして、これをマッカーサー司令官が了承しておるわけであります。これは、この事変が続く限り、韓国の防衛のためであるから、韓国の三軍を完全なマッカーサー司令官の統帥のもとに置くということになっておりました。それがそのまま続いておりましたが、御承知の通り、今度の革命でややごたごたいたしまして、そうして、先ほど申し上げましたような、作戦指揮権のもとに置くけれども、この作戦指揮権が発動されるのは共産主義からの侵略があった場合に限るというふうになっておるわけでございます。
  170. 川上貫一

    ○川上委員 そうしますと、こういう点は事務的なことだというようなものではないと思います。国交の正常化、回復、政治会談ということをやる上においては、非常に重要な地位を占めるものだと思う。総理はそれについてはアジア局長だけに答弁をさせておる。これは私は遺憾な点だと思いますけれども、お知りにならぬなら仕方がな  そういうことであれば、韓国の軍用機が盛んに日本に出入りをしておりますが、あれはどういう資格で、どういう手続で日本に入ってきておるのでありますか。この点も一つ聞いておきたい。
  171. 中川融

    ○中川政府委員 今日本韓国の飛行機がときどき入ってくるわけでございます。これは一般の外国の航空機としての扱いを受けておるのでございます。入るごとに日本政府の許可を得て入ってきておるわけでございます。
  172. 川上貫一

    ○川上委員 それは一般航空法によるあれですか。
  173. 中川融

    ○中川政府委員 韓国の民間機が入って参ります場合には……。
  174. 川上貫一

    ○川上委員 いや、民間のことを聞いておらぬ。軍用機だ。
  175. 中川融

    ○中川政府委員 軍用機が入ってくる場合におきましては、一般国際法の原則によって、そのたびごとに日本政府に申請いたしまして、日本政府が許可して初めて入ってくるのでございます。
  176. 川上貫一

    ○川上委員 第三国並みですか。
  177. 中川融

    ○中川政府委員 第三国と同じ扱いになっております。
  178. 川上貫一

    ○川上委員 朝鮮は南北休戦協定中だと思うのです。休戦協定をしておる一国だと思うのです。その立場においては日本は中立的な立場にあるはずです。休戦協定はまだ解決をしておらないのです。その一方の韓国の軍用機を一般並みに取り扱う、いわば野放しにしておく、これは休戦協定の精神に合致するか、へーグの陸戦法規違反ではないかという点についてはどうお考えになっておるかということ、これは総理大臣もしくは外務大臣にお聞きしたい。
  179. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは平時におけるものであります。特に戦時行動によって日本に飛来するということではございません。なお、日本は国連協力の精神によりまして韓国機を扱っておる、こういうことであります。
  180. 川上貫一

    ○川上委員 韓国は国連に入っていますか。
  181. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国における国連軍の行動というものは、この韓国の事態を国連として扱うという建前でおるわけです。その国連軍の指揮下にある韓国の飛行機の行動については、広義の国連ということを言って差しつかえないと思います。
  182. 川上貫一

    ○川上委員 これはちょっと違うですな。そうすると、韓国の軍用機は国連軍麾下にある軍用機として来ておるのですか。これははっきりしない。
  183. 中川融

    ○中川政府委員 先ほど伊關局長から答弁いたしました通り韓国軍は国連軍そのものではないわけでございます。しかし、韓国軍は国連軍司令官の指導下に入っておるわけでございます。なお、韓国における休戦協定というものは、国連軍司令官と、それから先方の軍司令官との間にできた協定でございます。日本は国連の韓国における行動についてはできる限りの協力をするということをすでに約束しておるわけでございます。従いまして、その趣旨から、国連軍協定というものもございまして、日本に国連軍が来ます際には、現在でありましてもこれに特権を供与しておるわけでございます。韓国軍は国連軍ではございませんけれども、戦闘いたしまして、今休戦にあるという事態、その点から見ますれば国連軍と同じ利害関係を持つ軍隊でございます。日本は、この点について、休戦があるから全然第三国的立場に立つ、従って、北の方も南の方も、どちらも、飛行機だろうと何であろうと、全然入れないという義務があるかというと、そうではないのでございまして、朝鮮における国連軍の行動というものは、いわゆる普通の戦闘行為では律せられない国連の決議に基づく行動でございます。従って、国連加盟国はこれに協力する義務がみなあるわけでございます。一般戦時国際法の中立概念をもってこの朝鮮における休戦の事態を律することは適当でないというふうに考えるのでございます。
  184. 川上貫一

    ○川上委員 これは、きょうははっきりせぬかもしれませんが、重要な発言だと思う。韓国軍は国連軍ではないと言われた。ところが、韓国の軍用機が来るということになると、国連軍協力の立場によって取り扱いをする。これは違います。そうすると、たとえば、空軍に限ります、軍用機に限りますが、これは韓国軍なんですか。国連軍としての肩書きを持っておるのですか、全然持っておらぬのですか。日本がこれを許可するにはどういうものとして許可するのですか。
  185. 中川融

    ○中川政府委員 韓国機は韓国の軍用飛行機でございまして、国連軍ではないのでございます。今国連協力ということを申し上げましたのは、朝鮮における休戦事態を基礎にいたしまして、あの朝鮮における休戦協定から日本に中立義務が発生するのではないかということから議論が展開して参りましたので、あの朝鮮の停戦協定から日本にいわゆる戦時国際法による中立義務というものが発生するというふうには考えられない、朝鮮の休戦事態というものは国連の行動に基づく関連しての休戦ということでありまして、従って、朝鮮の事態については、日本は国連軍の行動に関する限りこれに協力する義務がある、こういうことを申したのでございまして、韓国軍がそのまま国連軍になり、日本で特権を供与する、こういう趣旨ではないのでございます。
  186. 川上貫一

    ○川上委員 時間がもうないそうですか、ちょっと問題が一つ残った。そういう答弁になると問題が非常に大きくなる。われわれは、実際は、あれは国連軍だという形で軍用機は取り扱っておるという答弁をなさるかもしらぬと思った。ところが、どうして来るのか、へーグの陸戦法規違反ではないかということを言ったら、国連に協力しなければならぬから入るのだと言う。そうなら国連軍ですかと聞いたら、韓国軍だと言う。ここがあいまいなことがこの日韓関係のあいまいさを証明しておる。ここのところを濁してしまっておる。これは非常に重要な問題です。私はこれは一つの技術問題として聞いておるのじゃないのです。大体政府態度、こういう態度をもってやっておるんだということを立証したいのです。この問題についてはあと質問しますが、時間がありませんから、最後に一点だけ承っておきます。これは総理大臣の御答弁を願いたい。  伊關アジア局長は、ことしの一月一日の韓国日報にこういうことを発表しておられる。韓国国民アジア共産主義を締め出すためにやっておるいろいろな努力に対して敬意を表し、高く評価して協力をするのである、こういう内容です。これは原文が見たければ原文がございます。これは私は伊關局長に聞いておるのではない。局長は外務省のアジア局長です。日韓問題担当の事務的な関係の首脳です。おそらくいいかげんなことを言うたのじゃないと思うから、この方針政府方針であろうと思う。そう理解せざるを得ない。政府方針かどうかという問題が一つ。  時間がありませんからまとめて聞きます。それから、内閣総理大臣はこういう考えで外交をやっておられるかどうか。韓国の今の状態では、さっき私が言うたように、クーデター以後、憲法は死んでしまい、議会はなくなってしまい、民主主義のいわば一かけらもないような軍事独裁のファッショ政権です。こんなものであろうが何であろうが、反共ということでありさえすれば全部手をつないでやるのだという外交方針であるのかどうか。そうでなければこの局長の一月一日発表は筋が通りません。  第三は、総理、こういう考え方で内政をやっておられるのか。たとえば、アジアから共産主義を締め出すということになれば、日本の国政も、ファッショになろうが軍部独裁になろうが、民主主義が全部つぶされてしまおうが、それでも仕方がないというような政治理念でやっておられるのかどうか。  この三点についてお答えを願いたい。私は再質問はあまりしません。時間を守りたいから、あとでこういう問題についてはさらに機会を得て質問したいと思いますから、総理大臣からこの点についてのお考えを聞いておきたいと思う。しかし、あまりひどいお答えであったら、もう一ぺん質問します。
  187. 池田勇人

    池田国務大臣 伊關局長がどういうことを言ったか、私は存じません。――読んでおりませんので。従って、それに対してのお答えは差し控えます。  私は共産主義はとらないのであります。共産主義はとりません。反対ですが、しかも、共産主義を非合法として否定してない。日本の憲法は法律上共産主義を非合法としておりません。だから、趣旨は反対でございますけれども、これを特別の弾圧しようとかなんとかいう気持は持っておりません。こういう考え方で内政をいたしております。
  188. 森下國雄

    森下委員長 川上貫一君、時間もずいぶん過ぎておりますが……。
  189. 川上貫一

    ○川上委員 一分で終わります。これは答弁は要りません。どうも、きょうの政府答弁を聞いておると、まだ私の質問に対して底をつきませんけれども、しゃにむに日韓会談はいろいろなことをねじ伏せてでもやろう、これを推し進めていって国交の正常化をやろうとしておられる。向こうの政情はひどい政情です。総理大臣は賢明な人じゃと私は思う。韓国は今後どうなると思っています。朴政権というものが安泰に続くとお考えになっておりますか。これは、韓国が今のようなことをやって、これにあなた方がてこ入れをして、アメリカがうしろに入ってやってごらんなさい、南ベトナムのようになることは火を見るよりも明らかだと私は思うている。現に、きょうのラジオ放送を聞くと、南ベトナムでは大統領官邸が爆撃されておる。大統領は生きておるか死んでおるかわからぬというような放送が出ておる。こういうような状態が、韓国ではないと思いますか。その時分にどういう覚悟をしておられるか。おそらく、日本は、この干渉基地になって、戦う人民に対する弾圧基地になることはさまっておる。それの片棒をかつごうとしておるのだ。それが日韓会談の結果なんです。こういうことまでほんとうに考慮をして総理や外務大臣はやっておるのかどうか。これは答えを聞きたいのですが、聞かぬでもよろしい。そういう考えでやっておることは明らかなんです。ただ、問題は、あとで、五年、三年の将来にほんとうに覚悟がありますか。国民にこたえるような覚悟がありますか。この危険なことを推し進めておいて、これがアジアの平和にほんまに寄与すると思いますか。南ベトナムのようなものをたとえば韓国に作り上げるということに協力をすることがけっこうなことですか。私はお答えは求めませんけれどもが、ほんとうに、外務大臣も総理大臣も、日本人として胸に手を置いて考えられることを私は希望します。これが政治というものです。この外務委員会でうまいことだけ言うて、言いのがれさえすればいいというのが政治じゃありません。われわれの民族の将来、アジアの将来について、ほんとうに五年、十年の将来を顧み、民族の将来を顧みた外交をしてもらいたい。内政をしてもらいたい。これは私の希望であります。答弁は要りません。これで私の質問をきょうは終わります。     ―――――――――――――
  190. 森下國雄

    森下委員長 愛知揆一君。
  191. 愛知揆一

    ○愛知委員 私は、かねてから本委員会に付託されておりますガリオア・エロア並びにタイの特別円、この二件につきまして主として池田総理大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  この両問題の中で、特にガリオア・エロアの問題につきましては、私は、池田総理大臣日本国民の中で一番よくこの問題に通暁しておられる方であり、また、それだけに十数年にわたって非常に御苦労を承ねてこられたものと思うのでありまして、池田内閣におかれて最終的な処理のこの提案がなされたことについては、池田総理としても非常に感慨が深かろうと拝察するわけでございます。  そこで、私は、まずガリオア・エロア問題について、最初に、専門的であるが同時に一般国民大衆を納得させるようなとっくりとした御説明を総理からいただくことがこの際最も必要なことじゃなかろうかと思うのであります。たとえば、最近におきましては、ガリオア・エロア問題も非常に大衆的な話題になっておりまして、ある週刊誌を見ましてもこういうふうなことが書いてございます。「借りたものは返すのが当り前だと、アメリカに返す約束をしたのは政府。もらったものだから返すことはないよと反対するのは社会党。そこで、国会ではまたもや激しい論戦が展開します。なんだかさっぱり分らないのは国民です。うっかりすると税金に関係する問題なのです。借りたものか、もらったものか、さて、読んでの上のご分別……。」、これは週刊誌でございますから、「読んでの上のご分別」とこういうふうな取り上げ方をしているくらい、世間の、まあお台所の話題にまでなっていると言ってもいいのじゃないかと思います。そういう点から、借りたものか、もらったものか、あるいは借りたという色彩が非常に強いものであるから、その間をとって適当に日米両国話し合いをして国民の納得のいくような処理をするのがいいか、この三つの問題があるかと思いますので、いわゆる債務性の問題ということについて最初にお尋ねをいたしたいと思います。  まず債務性の問題について申しますと、アメリカ側の資料で政府が特に援用されておる債務性があるということの根拠についてはたくさんの資料があるようでございまするが、主としてあげておられるのは、一九四七年六月十九日の極東委員会の決定、これは、申すまでもなく、援助というものは返済させる意図が明らかになっておるという趣旨のものであります。それから、一九四七年二月二十日の、マッカーサー元帥のアメリカ議会に対する証言と申しますか、メッセージでございまして、これは、やはり、援助というものは慈善でない、返すべきものである、また、日本国民の意思から言っても慈善を受けるような国民じゃない、こういう趣旨のものであります。それから、その次は、一九四六年七月二十九日の占領軍の指令書であります。これは、援助物資の支払いの条件については将来決定するという趣旨のものである。私、政府が主としてアメリカ側の資料あるいは国際的の資料として取り上げられておるこの内容はきわめて明白であって疑いをいれる余地はないと思います。しかし、これらの疑いの余地のないものについても、先般の衆議院の本会議での戸叶議員の御質疑の中には、たとえばマッカーサー元帥の米国議会に対する証言にしても、これは、アメリカ政府日本にただやろうとしておるから、それでアメリカの納税者としては納得ができないからいろいろ文句を言う、その文句を押えるためにこういうことをマッカーサー元帥は証言をしたのだ、こういうコメントをしておられる。そのコメントを私は格別ここで批評したいとは思いませんけれども、こういうふうな明確なことについてもいろいろと理屈をつければつけ得るものだなというような感じを受けるわけでございます。  さらに進んで、私は、野党の方々のいろいろ言うておられることや発表されておることを引用しながら一つ総理の御意見を伺いたいと思うのでありますが、たとえば、二月十三日の「エコノミスト」に横路議員がガリオア・エロアについての論文を発表しておられる。それを見ますると、たとえば、一九四六年四月三日付の当時の連合軍司令部が貿易庁を認めるときに発した覚書には、輸入せられたものは一切そのまま受領せられることを要し、その日本政府に輸入した品物の品質や数量や形態やその他一切のことについて何にも文句を言ってはいけないのだというような趣旨の指令が出ている、従って、特に二十四年三月までは、援助が商業ベースによる貿易だったのか援助だったのか一つもわからないということはともかくとしても、こういったような指令が出ておるからには、このいきさつから言って当然これは贈与と解すべきである、アメリカ側の資料から見たって贈与というように見られるものが明白にあるじゃないか、だから払う必要はないじゃないかというようなことがこの「エコノミスト」の論文の中に出ておるわけでございます。さらに、質問が長引いて恐縮でございますが、これに関連いたしまして、同じく横路氏の論文の中には、「昭和二十四年四月以降の対日援助見返資金特別会計が設定されたいきさつから見ても、贈与であることは明らかである。」、こういうことが書いてある。実は、昭和二十四年四月に対日援助見返資金特別会計が設定されたということは、池田当時の大蔵大臣の発案によるものであり、そうして、その以後この関係が明確になったということは世の中で認めておるところでありますが、当時アメリカ側とも最も接触の衝に深く当たられ、そうしてこの特別会計が設定されたこのことは当時の池田大蔵大臣のお仕事であったわけでございますが、その関係から言って、ここに横路氏が言っておるようなことはそういうふうに見得るものであるかどうかということをあわせてお伺いしたいわけであります。と申しますのは、ここにこういうことが横路氏の論文には書いてあるのであります。これを要するに、一九四八年の米経済協力法第十五条第六項第六号の中で、援助を受けた国がその国の通貨をもって積み立てるような特別勘定を作った場合、贈与の分については特別勘定として預金することが必要なんだけれども、供与されたもので返す必要のないものについてはその必要なしと定められているのだから、日本の場合は特別勘定として預金しておるのですからこの分は返す必要がないのだ、そういうふうに解すべきだというようなことがここにあげられておるのです。これは何も知らぬ人から見ると非常にもっともらしく見えるわけだと思います。しかし、総理はこの関係をよく御承知でございますから、場合によりましたらこの「エコノミスト」の二月十三日のところをお読みいただきまして、国民によくわかるように一つ御解明を願いたいと思うのであります。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれが従来債務であると心得ておるということは、愛知委員の御指摘になりましたような点でございます。日本に贈与したものじゃない、日本人も贈与を好まないというあれもあります。また、この援助物資の返還の条件、計算についてはあとからきめるという指令が出ておるのでございまするから、金額はきまっておらないが、われわれは一応これは将来返すことあるべし、返さなきゃならぬものと考えなきゃいかぬ、債務と心得るというのでやってきたわけであるのでございます。  それから、「エコノミスト」はまだ読んでおりませんが、昭和二十四年四月に見返資金ができたんだから、見返資金ができたということは返さなくてもいいという証拠であると考えるということは、これは私は逆だと思うのであります。当時大蔵大臣といたしまして連合軍司令部のその衝の人と当たりましたとき、従来、多額の援助が、輸出補助金あるいは輸入補給金として、やみからやみというのは言葉が悪うございますが、それがどこへ行ったやらわからぬようになっておる、こういうことは経済の上から言ってもよくない、従って、対日援助見返資金というものでアメリカの援助物資に相当する金額をため置いて、――援助物資を国民に売る場合におきましては国民から相当な金をもらう、支払いを受ける、そうしてその金をためて日本経済復興の基盤を作ろうというので、いわゆるアメリカからの援助物資についてはっきり計算をして、そうしてその援助物資は将来返すことになるかもしれぬし、また、そういうことを別にいたしましても、日本経済復興のために、あるいは電力、造船、鉄鋼、石炭等々重要産業にこの金を使った方がいいんじゃないか。ことに、それまでは復興金融金庫がありまして、政府が国債を発行したり日銀から借り入れしたりすることによってインフレを醸成しておった。これを、見返資金をこしらえてそういう産業資金に充てればインフレも防止できるし、援助物資がはっきりわかるし、そうして産業の基盤を作り得るという考えでこしらえたのでございます。これが返さなくてもいいという証拠になるということは、私は逆と考えておるのであります。この間の事情は私はいろいろ思い起こすのでございまするが、こういうアメリカの援助物資があったからこそ日本経済復興ができ、そして、あの当時一千万あるいは一千五百万人の餓死者が出ると内外に言われておったのも、そういうことなしに、とにかく戦後の復興の基をなしたということは、私は援助物資のおかげであると考えるのであります。しこうして、この問題につきましては、昭和二十四年に予想しておった通りに、あるいはそれ以上の効果があがって、今日の日本復興を来たしたものと私は考えるのであります。
  193. 愛知揆一

    ○愛知委員 そこで、その点はもう一ぺん念を押してお伺いしたいのでありますけれども、私今引用いたしましたこの論文の中にはこういうことが書いてあるのです。「あとで返済する借金なら、当然この援助資金は別に特別勘定として積み立てる必要もなかったのに、これを設けたばかりでなく、その使用について、一〇〇%連合軍司令部の許可を要した点から見て、米国の国内法に基づいて贈与として扱ったことは明らかである。」、これは直接御関係になりました総理のただいまの御説明とは全く逆なんでありますが、ここに書かれてあることはうそである、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 そこに書かれてあることはうそでなしに事実でございます。――書かれたことは。それは、横路さんですか、横路さんの考えでございまして、それはうそというんでなしに、私の考えとは違っております。事実に反する、こういうことでございます。で、これは横路さんがうそを言ったとは私申しませんが、われわれがその衝に当たったときと違ったことをお書きになった、こう私は考えておるのであります。また後刻十分読みまして、私からもこういう点は自分らの考えと違っているということを適当な機会に申し上げてもいいと思います。
  195. 愛知揆一

    ○愛知委員 次に、こういうことが一部の方から言われておるわけでございます。昭和二十四年四月十四日、吉田茂外相とシーボルト米国務省顧問の間で結ばれた阿波丸事件請求権処理のための日米政府協定の中で、――これは今日も当委員会の調査室から資料が配付されておるわけでございますが、「占領費並びに日本国降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務である。」、これはもう非常に明確な表現であると思います。そうして私も今日配付せられました資料によっていま一度当時を想起したのでありますが、この点は非常に明確になっておると思う。そうして、これが当時衆議院における本会議の決議案をもとにしてこういう処理がとられ、かつこのとられた処理が本会議報告されて議決をされておるということが明白な事実であったことは、本日配付された書類でも明らかであるわけでありまして、これについて、たとえば憲法八十五条との関係あるいは財政法八条との関係などを今ごろになって持ち出すというようなことは非常におかしいことである、もしそういう論議があるならば当時にやられたらばよかったかと思うのでありますけれども、いずれにしても、有効な債務である、債務性が非常に濃厚なものであるということがここに確認をされたわけでございます。その点は野党の諸君といえども容認せざるを得ないと思うのですが、ところが、これについてこういうことをまたさらに議論として提起されておる。それはどういうことかと申しますと、ここに有効な債務であると規定されたところの借款及び信用というものとガリオア・エロアとは違うのだというのです。ここに、いわゆる借款と信用の中身に問題があって、ガリオア・エロアはこの中に含まれていなのいであるという断定を下しておる意見がございます。そうして、その理由づけとして、「米国務省の対外援助」と書かれてありますが、これはアメリカ国務省であるのかあるいは商務省で出された何か資料であるのかわかりませんけれども、要するに、一九四七年のアメリカの第一次追加予算法、合衆国公法典第六十一巻にいうところの第九項がガリオアに該当するといわれるのだけれども、ガリオアというものは占領国における飢餓、疾病、不安を阻止するに必要な最低の供給である、こう書いてあるのであるから、ガリオアというものはいわゆるクレジットに属する援助ではなくて贈与と解すべきである、ガリオア援助は贈与ときめられているのだ、こういう理屈づけをしておるので、私は非常に取ってつけたような解釈ではないかと思うのでありますけれども、この点は、必ずしも総理大臣でなくてよろしゅうございます。あるいは事務当局からでもお答えをいただきたいと思います。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 向こうの商務省発行の「フォーリン・エイド」に、今お話しのような点がある。私は原本も見ました。しかし、これは、私は、そう言ってはなんでございますが、備考にあるところが読み足りないからそういう結論になってくる。そうして、また、クレジットと申しますと全部返すということが前提になりますので、あえて私は、グラントこう書き、そうして、その説明にまた、これは債務性のあるものだということをつけ加えておるのを見ておるのであります。詳しくは外務大臣あるいは事務当局の方からお答えさすことにいたします。
  197. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今総理からお答えになりましたフォーリン・エイド誌のものでございますが、これは、御承知のように、ガリオアの援助は予算的には陸軍省の管轄に属するものである、商務省の発行のこの雑誌の中に解説を載せておるということでございます。国務省ももちろん関係がございますが、この中には、今お答えがございましたように、援助を二つのカテゴリーに分けて、クレジットとグラントがある、しかし、グラントというものは、一応読み取れるように、そのまま与えるのであるけれども、グラントの中には後日返済方法を協議決定するものが含められておる、こういう解説が載せてあるのでございます。すなわち、クレジットに乗せれば、一分一厘全部貸付金であるから取り立てるということになります。この点は西独の分も同じでございまして、西独の分もやはりグラントに乗せてございます。商務省発行の雑誌によりますと、日本への援助は二十一億数千万ドルということになっておったと記憶しております。
  198. 愛知揆一

    ○愛知委員 もう一つ、この関係で私にわからないのでありますけれども、何かアメリカの方の解釈で申しますと、贈与というものの一般的の定義として、援助をされる国が米国または他の諸国と共同目的遂行の義務を持った場合には贈与になるんだ、こういうのがアメリカにおける通説である、その通説によれば、日本は安保条約をアメリカとの間に結んでいる、ですから、そういう国に対するところの援助は贈与と見るべきである、これがアメリカ流の贈与というものに対する解釈なんである、だから、日本のような国は、受けたところのガリオア・エロアというようなものは贈与であって、返す必要はないんだ、こういうような解釈ができると言う人があるのでありますけれども、この点はいかがでございますか。
  199. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは全然そうではないのでございまして、やはり、その共通の目的を持って世界の進運に寄与しておる国々に対してアメリカが援助する、それはアメリカとしては当然じゃないか、しかし、その援助の仕方にもエイドとグラントがある、こういうふうな分類だと存じます。そこで、このグラントの方に対日援助が記載されているという点について、前の分だけとっていろいろそういう御議論がありますことは、私先ほどちょっと申し上げたように、非常に一面の解釈でございまして、全文を読んで解釈をしなければならぬことはもとよりだと思います。この解説書の中には、戦後の対日援助をグラントに含めて計上しているのは、返済額や返済方法が未確定であって、返済に関する決定を後日行なうという了解のもとになされた援助に相当するものが入っておるということが明瞭にあるわけで、この点、債務と心得ておるわれわれの考え方というものは、まさしくこの解説に一致するということになっておると思います。
  200. 愛知揆一

    ○愛知委員 その次に伺いたいのは、やはりアメリカの商務省のフォーリン・エイドの関係でございますが、第二次大戦後には政治的、軍事的な考慮を一般的にする必要が起こってきた、占領地への民生品の供給は従来の解釈よりも非常に広くなったし、しなければならない、占領軍の当然なすべきことが広くなった以上は、それに対する民生安定の援助というものは、むしろ贈与をすべきではなかろうかというような意見があるやに伝える向きがございます。そして、さらに、それとこれは関連がある議論かと思いますけれども、へーグの陸戦法規の順守ということから言っても、これを今の伝えられるいわゆるアメリカ商務省的な考え方から申しますならば、陸戦法規による占領軍の義務というものは非常に広範になるんだから、従って、あの当時のガリオア・エロア等によるところの援助というものが、やはり贈与といいますか、この際においてはむしろ当然の義務としてやるべきものであって、返済を要求すべき筋のものではないんだ、こういうことをまた言う人がおるわけでありますが、この辺は外務大臣いかがですか。
  201. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これも私どもはその御意見は傾聴しがたいものであると思っております。いただきかねると思うのであります。へーグの陸戦法規は、御承知のように、一九〇七年の法規でございまして、当時の占領という状態は、現今の第二次世界大戦後の占領という状態とは非常に規模も違うし、性格も違うし、しかも非常に一時的のものでございまして、この第二次大戦後の占領下におきまする対日あるいは対独援助というものは、全く新しいカテゴリーのものだと思うのです。しかも、それであればこそ、この援助をああいうふうな形でいたしまして、クレジット以外に、その総額の三分の二切り捨てとか、日本の場合はそれ以上切り捨てたことになりますが、さような新しい援助の方法というものができたんだと思います。従来のと違ったからといって、全部ただだというのでは、これはどうかと思う次第でございます。  なお、事のついでに申し上げますが、西独の場合、先ほども御指摘がございましたように、ECAの援助があったり、マーシャル・プランがあったり、日本と違うのでありますが、西独の場合はガリオアの援助が十五億八千万ドル、ECAの援助が十五億二千万ドル、プレガリオアというのが二億八千万ドルございます。これをみんなひっくるめまして解決をしておるのでございますけれども、ECAの援助もガリオアの援助も同様な方式で西独においてはアメリカに返還をした、こういうことでございまして、マーシャル・プランの援助というものを持ってきて――日本はマーシャル・プランの援助を受けておりませんけれども、それを西独の場合はあたかもそれが全然経理が別であったというような印象を与える議論というものは、私どもとしては、事実に反すると言わざるを得ないと思います。
  202. 愛知揆一

    ○愛知委員 この関係でもう一点伺いたいのであります。この点はすでに論じ尽くされたところかと思いますが、サンフランシスコの平和条約第十四条(b)項との関係でございます。要するに、この規定は、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領軍の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する、こういう趣旨の規定がある。そういう趣旨の規定があるから、ガリオアは払わなくても、返さなくてもいいのだ、こういう説が、これは消えたかと思いますけれども、こういう説も一部にはございますが、これに対する確定的な解釈を……。
  203. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この説は、御説のように、きわめて少数説になって、今や消えつつあると思いますが、われわれ終戦処理費を負担したじゃないか、もうそれですべて済んでおるのだ、こういうことでございます。しかし、西独の場合も、終戦処理費を、日本は五十四億ドル負担いたしましたが、西独は百二十七億ドル、倍以上負担しておるわけでございまして、しかも、ガリオアあるいはマーシャル・プランによる援助は三分の二切り捨て方式で返還をいたしておるのでございまして、これは同様に扱わるべき問題だと考えておる次第でございます。
  204. 愛知揆一

    ○愛知委員 ただいま西ドイツとの比較の話が外務大臣から御説明があったのでありますが、この西ドイツとの比較との問題についても、非常に政府の説明は違うんだというようなことを、やはり週間誌その他で取り上げている向きがあるわけでございます。その週間誌等の資料になっているものは、私の見ましたところでは、先ほど引用させていただきました横路氏の「エコノミスト」の論文がその種になっているのじゃなかろうかと思われるのでありますが、その横路氏の論文を引用いたしますると、ドイツの場合は、もう初めから債務と認めて供与を受けたのであるから、日本とは全く事情は別なんである、――これは戸叶委員の御質問にも出ておったようでございますが、すでに一九四五年のポツダム四国会議で認められておった、四六年の米英西独占領地区統合協定でも確認され、四八年のマーシャル援助の米独経済協力協定でも引きつがれていたのである、従って、それだからこそ、西ドイツは、ガリオア・エロアによる援助物資については、不必要な消費財の受領を拒否し、復興に役立つ生産財に重点を置き、それらの品質、数量など正確に確認のうえ受領したのである、こういうふうに言って、ほかにもいろいろ事例をあげておられますけれども、このことは日本とは事情が違う、それだから、西ドイツとしては、一九五二年の三月でございますか、債務であることを自発的に声明して、翌年返済協定締結したのだ、こういう主張をされる人があるわけです。この点と、それから、時間の関係もございますから、もう一つ関連して伺いたいと思いますが、よく世間話題になりますのは、イタリアは五億四千四百万ドルの援助をかんべんしてもらったじゃないか、オーストリアについては一九四五年の平和条約発効までの分を抹消してもらったではないか、さらに、韓国においては、一九四八年九月十一日以前はアメリカ側が放棄したではないか、だから、政府はドイツの場合よりも有利だと言い、あるいは他の外国に比べて有利だと言うけれども、事実こういう反証があがるではないか、一体政府の言っていることは信用していいのだろうか、こういう疑問が起こってくるのかと思いますが、政府はこれらのところをどういうふうにお考えになっておりますか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  205. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 三点についてお答え申し上げます。  まず第一点のドイツとの関係で、ドイツはすでに債務性を明らかにしておったということでございます。しかし、これは当時の事情をお考えいただくとよくわかると思いますが、ドイツはポツダム協定によりまして四ヵ国によって分割占領されたわけでございまして、いわゆる自由主義地区が、アメリカ地区、イギリス地区、フランス地区とそれぞれ分かれておりまして、地方政権であったわけであります。一九四九年に統一してアデナウアー政権ができました。そこで、今までそれぞれの地区との間に行なわれましたこの援助は、やはり統一政府との間にその援助の実態を確認しておくということはアメリカとしては当然考えたところではないかと思います。日本の場合は、当初から単一政府でございますから、先ほど愛知委員がお述べになりましたような、極東委員会の方針とか、あるいはマッカーサーの証言とか、陸軍省の予算獲得のためにアメリカの高官が証書したいろいろな事実があるわけでございます。これはあらためて申し上げるまでもないことです。さらに、阿波丸の協定でもそのことが確認されておるということでございますので、これは事情が違うわけでございます。しかし、五二年にさような債務性の確認をいたしましても、実際の債務を確定したのは、、五三年に協定ができまして、十億ドル払うことにきめた。日本は今回四億九千万ドルの債務を確定した。こういうことであります。  それから、第二点でございますが、よく西独は自分らの気に入らぬものは断わったということが伝えられております。これは私どもも西独の政府に問い合わせてみたのでございますが、そういう事実は一つもないということでございます。当時の事情といたしましては、やはり地方政権でありまして、その地方政権が一々占領軍の意に反していろいろなものを断わるということはなかった、こういうことはわかることだと思うのでございまして、そういう事実は全然ございません。日本の場合も食えないようなものがたくさんあったということでございますが、主として小麦が一番よけい来ておるのでありまして、特別に全体が非常に悪かったとも思いませんし、そういう事情は全部返す場合なら大いに議論の対象になりますが、三分の二は切り捨てられておるのであります。この点は西独の場合と少しも違わないと思います。  さらに、イタリア、オーストリア、韓国の場合のことですが、イタリアはバドリオ政権が寝返りしまして、終戦の際には連合軍に対する敵国でなかった。オーストリアは解放地区としてあったし、あるいは韓国も御承知の通りで、要するに連合国と戦った国ではない。旧敵国としては日本と西独があるわけであります。  この問題については全く同様な考え方にアメリカは立っておると思います。また、西独の場合も、いろいろ伝えられるようなことはやっておらないということが、私どもの調査の結果明瞭になりました。
  206. 愛知揆一

    ○愛知委員 外国側の資料あるいは外国の事例、こういったようなことについて一応質疑を申し上げたわけでありますが、その次に、日本国内の国民的な感情というか、そういう点から、いわゆる三鷹払いの問題ということがこれまた非常に問題の焦点になるかと思うのです。大体、このガリオア・エロアによって放出された物資は、当時公定の配給価格で国民が代金を支払った。国民が支払ったということは、これは国民の側から言って無償でただもらったわけではないのでありますから、この点は、一つの根拠として、贈与を受けたのじゃない、返すべきものだというむしろ理論的根拠になるのじゃないかと思うのです。  それから、同時に、これは私の卑見でございますけれども政府側が二重払いということに頭をあまりお用いになり過ぎるのではないか。というのは、国民としては代金を日本政府には払ったのですから、日本政府はなるべく国民の負担をそれ以上にふやさないで、新しい税金を課さないで、手ぎわよく海を渡ってアメリカの方へ返してしまえばいいことなんです。ところが、当時の占領下の状態、占領貿易といいますか、そういう関係があったものですから、輸出、輸入の価格の操作というようなことから、貿易会計には非常な赤字が出ている。その赤字は本来ならば税金で負担すべからざりしものであった。しかし、それを、国民からとった放出物資の払い下げ代金が積み立てられておったから、それで補給をしたから、新しい税金をそのとき課さなくてもよかった。これは今野党の一部の方が言っておられる意見でありますけれども、たとえば、かりに三十七年度の予算の上に産投会計だけで始末ができないで一般会計から若干の補填がかりにあった、また、あると仮定いたしましても、考えようによれば、当時価格差補給をもっとすべかりし足らざる部分をこの際補給したのだというふうに観念することができるのじゃなかろうか。こういう点から申しまして、今度の協定のでき上がり方は、あとでもちょっと触れたいと思いますが、通産省その他の血みどろの努力であったと私は思うのであります。当時の受け入れ伝票その他をすっかり泥まみれになって調査をされて、そして集積したものがアメリカ側の承認を得るところとなって、いわゆる受け取りベースになって、そしてそのうちの一部分が返済に充てられることになった。たまたまこの程度の額ならば、まずまず新しい国民の負担なくして払えたんだから、この点は非常によかったというふうに考えてしかるべきものじゃないか。かりに世に言う二布払い、――若干の一般会計からの補填をしてでも返すべきであったけれども、しかし、そこまでいかないでこの程度でとどまったということについては、非常にけっこうなことであったと思うのでありますが、少しこの点は政府側が謙虚過ぎる、不必要にその点に何か神経を使おれ過ぎるのじゃないかと思うのですが、この点は総理大臣から御意見を明らかにしていただきたい。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、私が昭和二十四年四月に見返資金を作ります前に、大体われわれの計算では八億ドルばかりの援助があった。八億ドル余りの援助を、あるいは小麦にしても、肥料にしても、石炭にしても、お砂糖にしても、みんな国民に売ったわけです。売ったその金、産投会計に入ってきたこの金がどう使われたかと申しますと、やはり、アメリカあるいはほかの国から持ってきましたものを、たとえば石炭なら石炭を五千五百円で持ってきたのを、三千円とか三千二百円で売る、その差額の二千三百円というものをどこから出すかということになりまして、国民に売ったお金でその差額を補充したわけです。日本のものを売ります場合におきましても、この前もある機会にお話ししましたが、当時は二百七十円の綿布を持っていけば一ドルに見られた。しかし、生糸だと四百二十円程度のものを持っていかなければならない。そうすると、生糸で損をしたりするときに、その損をどうするかという問題、それはやはり援助物資あるいは国内の予算に組みました補給金でこれを埋めておった、なぜそんなことをするかといったら、たとえば、石炭なんかでは、国内でやりますと七、八千円かかります。それを三千円くらいで売る。だから、こういう状態でおってはいかない、こういうので、今までの八億ドルくらいのやみからやみに行っておったのをやめて、今度は援助物資を売った金は全部ためておったのです。ためたのが相当の金額になる。産投会計に入れた分でも二千二百億円になる。それから、それまでに復金の国債を返したのが六百二十五億円あります。こういうのがみな残っておるわけです。これは、大蔵省の説明では、それで二千九百億円になります、こう言っておるのです。そして、百七、八十億円毎年払うのは、この利子で払えるし、また一部の回収金で払える。しかし、この金額ばかりじゃございません。御承知の通り、国鉄に貸した四十億円もこの金で出しております。それは貸したままになっておる。国鉄は運用しております。それから、百二十億円アメリカの物資で電電公社に出しました。それも残っております。それから、住宅公団に百億円出しました。これも住宅として残っております。林野庁の方にも四十億円出しておる。こういうのはみんなそういう会計でまだ残っておる。そういう計算が要らないのです。要らなくて、見返資金から産投に入れた分と、そうして復金の国債に払って肩がわりした分だけでも二千九百億円あるわけであります。こう言っておるわけです。だから、アメリカからの援助物資を適当な価格で評価し、そしてそれをごく安く売る場合におきましては、これは政府の一般会計の予算で出しておりますが、これは援助物資の評価とは違って、安く売る価格政策のためにやったのです。そこで、昭和二十四年までは援助物資がやみからやみということになったのを、今度はその補助金を政府の一般会計で出して、アメリカの援助物資を売った金は見返資金にためようというので、今までやみからやみの分を政府の一般会計から出さなければならぬ。従って、昭和二十四年の一般会計の予算は七千億円ばかりでございましたが、この価格補給金は当初は二千二十億円組んだ。そして、二千二十億円組んだということは、アメリカの援助物資でやみに使っておったのをやめてやること、そして、価格政策上、一ぺんに自由にできませんから、これを一般会計の方から補給金を出していく、こういう格好をとって、そして援助物資をはっきり出した。だから、これは国民からはもうお金をもらっているわけです。それをためておるわけです。ためた分の利子で払える。だから、新たに税金をとることは要らない。だから、ほかの会計に出した分も、これは計算に入れずにおいてもいいわけなんです。そして、またごく詳しく申しますと、貿易特別会計から外為資金に繰り入れた分も実は二百九十億円、総司令部から外為に引き継いだ外貨が二億ドル、七百億円ばかりございます。これは一般会計からその方へ入れた分もあります。しかし、これも計算に入れずに、産投会計の分だけでも利子と一部の回収金で払える。だから、二重課税に全然ならない。ただ、そういう二重課税の議論がありますから、大蔵大臣としては、そうではないという説明に、ごく内輪に見積ってもこうだという説明をいたしておるのであります。全体から申しますと、援助物資の三分の一足らず、しかも、また、昭和二十四年以来ためた金の全部ではなしに一部、――一部といって半分以上ではございませんが、そういうことをやっておりますので、よほどゆとりのあるものでございます。だから、私は、二重払いになることは全然ないし、そうして、また、アメリカからの援助物資をためた金の利子で払えるほかに、投資した分の利子で各会計に入れた金は言わずにおいて、利子だけで払って、元は大部分残っておる、こういうことなんでございますから、お話のように、私は、まあこれで日本の信用を高めることもできたし、アメリカの恩義にも報いることもできて、実は、何と申しますか、ほっとした状況でございます。
  208. 愛知揆一

    ○愛知委員 非常な詳細な御説明でありますが、もう一つ世間の人の俗耳に入りやすい問題であるかと思うのでありますが、たとえば、占領中における貿易の関係で、なるほど、私が申しましたように、価格差の補給というものはこの積立金でもって相当処理ができたことはけっこうだった、こう考えますが、その根本になっておるところの、たとえば当時は輸入物資は公定価格で安く払い下げる。ところが、輸出物資は高く買い上げた。それから、また、運賃の関係ども考えてみると、ある人が出しております資料によりますと、たとえば運賃について言えば、戦前綿花についてはトン当たり八ドルであった運貸が、その当時においては三十八ドルもアメリカ船にとられておるじゃないか、これは一例でありますけれども、いたずらにアメリカの業者をこれによってもうけさせた結果になるんじゃないかということを疑問に持つ人があるのですが、この点についてもう少し御解説を願いたい。
  209. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、日本には船がございませんから、アメリカの船を借りるよりほかない。また、ほかの国の船も使ったでしょう。そうして、運賃は、御承知の通り、太平洋が八ドルの場合もありますし、十五、六ドルの場合もございます。しかし、これは全体の金の払い方の問題でございまして、あるいは中にはごく一部には小麦の品質のあれがあったかもしれません。しかし、全体を左右するだけの問題ではございません。そこで、われわれは、十八億ドルばかりのうちでいろんなものを引きまして、四億九千万ドルというので済めば、その間における運賃その他の問題を今言うということは、全体を見ずに僅少部分の例外でものを判断しようというので、私は正当な判断ではないと思います。
  210. 森下國雄

    森下委員長 愛知君、約束の時間がだいぶ長くなったのですが……。
  211. 愛知揆一

    ○愛知委員 あと何分ですか。
  212. 森下國雄

    森下委員長 もうだいぶ過ぎておるのですが……。
  213. 愛知揆一

    ○愛知委員 それでは、あと簡単にやります。  大体ガリオア問題について私の伺いたいおもな点については聞いたのですが、このガリオア問題につきまして、この返済金の使途について、これは私の私見でございますが、必ずしも、こういう処理の場合に使途をどうするかこうするかということは、言わずもがなのことではなかったかと思うのです。しかし、幸いにしてと申しますか、アメリカ側の好意によって非常に東南アジアその他についても朗報を得たような感じがいたします。この点について、やはり、世上において、この金でたとえば東南アジアの軍事体制の強化、NEATOの強化というようなところにこれが行くのではなかろうかというようなことをことさらに言う人がある。これについての誤解を明らかに解く必要があるのではないかということが一点。それから、もう一点は、二千五百万ドルの日米文化交流についての今後の使い方はアメリカ側によってきめられることではございますが、たとえば、日米共同の財団を作るというようなことになって、恒久的なファンドとして使い得るならば非常に私はしあわせだと思うのですが、そういう点についての今後の進め方はどうでございましょうか。
  214. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 西独の場合はこの使途に関する問題は全然ございません。のみならず、他に返済に支障のあるような事業計画を立てることもできないような規定がございます。日本の場合は、この二点で非常にわれわれの希望が達せれたらと思います。この使途については、もちろん、このNEATOのごときはわれわれ考えたこともございません。主としてアジア諸国の経済開発ということにアメリカが使うであろうと思われまするし、この点については、一九六一年の対外援助法によりまして、一応ガリオアからの返済金というものも当てにした予算が組まれております。大体その線に沿っていくものと考えております。  第二点の、二千五百万ドルの使途でございますが、これはアメリカ側においても十分日本気持をくんでおるようでございます。先般の日米教育文化の会議あとにおきましても、今愛知先生の言われるような、何かそういう日本の考えも織り込んだ財団構想というようなものについても考えられないかというような議が出ておる次第でございます。十分御意見を尊重して考えたいと思います。
  215. 愛知揆一

    ○愛知委員 時間が超過いたしまして申しわけございませんが、最後にもう一点、タイの特別円につきまして、私こういう角度からお伺いしたいのであります。  総理大臣は、今回の協定はいわゆる大所高所からこれを判断したのである、これはしばしば御説明になっておる点でありますが、私は、もう一歩進んで、過去六年間にわたって、政府としては、前の借款と投資の形においてこれを処理するということについては、これは歴代の内閣もずいぶん骨を折られたことを仄聞しておるわけであります。たとえば、当時の政府でございますか、前内閣か前々内閣以来、九十六億円を現物出資にして、そして日・タイ共同のたとえば紡績会社を作るとか、あるいは石油の精製工場を作るとか、そして、日本の出資に対して得たところの利潤をもってタイの持ち分をだんだんふやしていくということによって、結果において払ったと同様のことにするというようなことも考えられたようであります。それから、また、数年後には九十六億円になるようなファンドを作るような案も考えられたようであって、これは、われわれから見れば、結果においてはタイに対しては同じことではなかったかと思うのですが、これはタイにおいては聞くところとならなかった。これは事実その通りだと思う。ところが、私このごろ考えるのでありますけれども、もしそういう共同出資のような会社を作ったとしても、その後はたして計画通り利潤が起こったかどうかわからない。そうすると、追加投資の問題も起こったのじゃなかろうか。あるいはまた、九十六億円のファンドを新たに作るとしても、たとえば初年度十億円というふうな出資で済んだだろうかどうだろうか、そして、その金の使途がどうなったろうかというようなことを考えますと、総理大臣の言われる政治的な大所高所からの立場ということのほかに、経済的に見ても、私は、前協定と今度の協定とを比較してみた場合に、将来起こり得るいろいろの状態を考えた場合には、むしろあっさりして、利害得失いずれにあったかしらんというような感じもするわけでございますが、この辺のところは、やはり、タイの九十六億円については、有償であるはずが無償になったのだ、ただそれだけの表面的な議論でこの問題について論議をするのは、非常に皮相な、抽象的な、場合によってはばかばかしいやり方じゃなかろうかとも考えるわけでございますが、一つ総理の御所見を伺いたい。
  216. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、三十年に協定ができまして、御承知の通り、第二条によりまして、九十六億円に相当する資本並びに信用を供与する。そのいたし方、方法につきましては、第四条で、合同委員会で協議することになっておるのであります。私は、昭和三十一年から三十二年の六月まで大蔵大臣をしておりましたときにも、今お話にあったような案で、九十六億円出して石油精製工場を作って、そうしてその利潤で九十六億円に相当するように返していこう、こういう案を出した。しかし、お話通りに、たとえば九十六億円現物出資して精製工場を作って、どれだけ利益があるか、そのときの計画から言って、重油や何かが非常に下がるというようなときには、これは九十六億円の投資が何年かかって日本に返ってくるかわからない。それから、また、現金でも、何年でやるか、利子を幾らにするか、九十六億円出して、どれだけの利子で何年間貸してやって、そして九十六億円がいつ返るかということを考えますと、これは、利子の計算にもよって、何年かかるか、大へんなことになる。あとにしこりを残す。それで、私は、一時払いでやめてしまおう。たとえば、九十六億円を年八分の利回りにして何ぼの現在価値――十五年で払うか十年で払うか八年で払うか、そういう現在価値も計算いたしまして、大江大使に交渉させ、いろいろやったのでございます。たとえば九十六億円出して、二分五厘の利子で、利子が九十六億円になるようにするのは大へんな時間がかかるわけです。そういうところを経済的に考えますと、私は、向こうは一度に九十六億円返してくれと言うのを、まあ初年度から十億円ずつやって、最後に二十六億円、八年間なら、経済的に見ても、そしてあとのしこりも残らないし、ごたごたも起こらないし、それでタイが満足するということになれば、経済的にも日本に非常にいいんじゃないか。有償か無償かの問題じゃない。いかにして日本の出費がスムーズにいって、いかにしてタイがこれで喜ぶか、そして今後の日本タイとの経済関係がよくなるかということを考えてやったわけです。たとえば、さきおととしは、日本からは八、九千万ドルの輸出をしております。向こうからは二千万ドルしか輸入しない。四倍を輸出しておる。差引六千万ドルから七千万ドルの輸出超過だ。去年だって、日本から一億一千万ドル輸出した。日本はこのごろタイ米を買いませんから、トウモロコシを増産さして、トウモロコシを買うように努力しておりますけれども、一億一千万ドルの輸出に対して六千八百万ドル、もう四千万ドル以上の差になるのです。特別円をこうやっておったときに、タイ日本に対して、経済断交とまで言いませんが、輸入制限をされたりしたら、とんでもないことになる。こういうことも経済的に考えまして、そして、大所高所から、日本のために、そしてタイの人がこれで納得いくような方法にはこれよりほかにないということで、六年間政府として考え抜いてきたことをやったわけであります。日本経済状態から言って、九十六億円を今貸してやって、そしていつ元が返るかわからぬ、その方法は第四条できめるのですから、なかなかきまらない、こういうとぎなら、すっぱりこうやった方が経済的にもいいんじゃないかという考えであるのであります。だから、有償か無償かの問題じゃなしに、有償でどうやった方が得か、無償でどうやった方が符かということをずっと計算してみれば、あの四条の規定というものがあるのでありますから、私は今回の処置が適当であるという結論に達したわけでございます。
  217. 森下國雄

    森下委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会