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小倉参考人 小倉でございます。
ただいまの第二の
参考人の
石井さんから、るる今回の
トラック路線等の
規制につきまして詳細に直接、間接の
お話がございましたから、この
速記録を通じまして、私は、強くこれに対して同調するものでございます。御了承を願いたいと思うのであります。ただ、その他多少自分に
考えました点がございますから、これを御
参考までに申し上げたいと思うのでございます。
ただいま
規制の
対象になっております
路線トラックというものは、わずか七百台か八百台のものでありまして、現在の
東京都の
乗用車並びに
トラックは六十五万台前後と存じますから、
規制の
対象は、わずか一千台に一台の
トラックをどうしようか、こういうような問題でありまして、
数字的に見ると、まことに問題にならないのでございます。しかし、第二次、第三次があるぞというような各
方面の空気から見ますと、この点、どうも今日の問題とは少しかけ離れた
考え方をいたさせていただかなければならぬ、こういうように
考えております。
そこで、
トラックをいかに
規制するかということについては、少し過去にわたりまして申し上げなくちゃならないのでありますが、一般の
乗用車の
使命と
トラックの
使命はどう違うかということでございます。十七、八年前の大
戦争の熾烈なときにあたりまして、
ガソリンはなくなりまして、物の
輸送、人の
輸送は非常に困難をきわめたのでございますが、いかにしても
戦時必需物資の
運搬と人間の
生活物資は、これは第一
優先にして扱わなければいかぬというので、今日
規制を発表されました警視庁が
中心になりまして、
ガソリンの
規制委員会というものを作りまして、私も
委員の一員として参った
記憶がございます。そのときには、第一次、第二次、第三次とあわせまして行なったのでございまするが、
バスであるとか、
遊覧バス、あるいはタクシー、ハイヤー、
トラック、
自家用車、その他
特殊車となっておりまするが、
規制の度合いについては、
トラックはやはり一番
重要性があるのだというような建前から、第一回の
規制は、一七%でございます。第二回が二五%、第三回の
戦争最終の時期におきまして、やはり二五%の
ガソリン規制を行ないまして、そして
重要物資の
運搬にいつもわれわれいそしんでおったことは、
記憶を新たにするものでございます。しかし、
パーセントにおいてはかような
数字でございますが、もともとだぶついた
ガソリンに対する
パーセントでございませんので、ほとんど輸入の途絶されている当時におきまする
ガソリンの
パーセントでございますから、
各種別の車は量的にはまことに微々たるものでございましたが、その微々たる中、いわゆる血の一滴と叫ばれたときに、まだ七五%の
配給量をいただいたということにつきましても、時代は変わっておりまするが、
トラックの
使命というものは相当大きいものではなかろうかと、私自負しておるのでございます。ことに、当時は
戦時必需物資としてでございまするが、今日では、
都市の
再建物資というものは、
戦時物資より以上の重点はあろうとも、必ずしも軽いものではないと思います。ことに現在の
路線トラックは、東は仙台から西は大阪、なおその先までも走って、各地のいろいろな
生産物資その他を
東京都内を
中心にして配給し、あるいは搬送しておるのでございますから、この点から見まして、非常に重要なものであるということは、過般 先月の三十一日と今月の十五日に、
商工会議所の
商業部会あるいは
工業部会その他の
部会の
トラック利用の面からの声を聞きましても、あるいは
会議所の関係の大学の二名の教授から聞きましても、今日の
路線トラックの
規制というものは公益
優先を妨げるものであるのだということを、りっぱに力説されておりました。
しかし、反対であるとか賛成であるとかいうことは、これは第二義的でございまするが、われわれも国家に協力するところの精神にはあふれておりまするから、社会のため、国家のためになるたけ円滑なる
交通を行なうことは、当然これは取り締まり官庁とうらはらになりまして、行なわなければならない
使命はよく存じております。しかし、今日の建前として、これを
規制されますと、
業者の死活ということよりは、全体の物資に対して、
トラックの問題が非常に大きくクローズ・アップされてくるのではなかろうかと思うのでございます。こういう点におきまして、第一次はこれでよろしい、第二次はその次大きくするということになりましたならば、国家の産業というものは、非常に角度を変えた曲がりかどに立つおそれがないとはいえないと思うのでございます。かような建前からしまして、
トラック運送
事業というものは、自分の経営の
範囲においてこれを守るべき性格のものでなく、これは公共的な
使命から、大所高所から見ましてこれに臨むべきものであると
考えておりまして、いつもこの点について、われわれは精進している次第でございます。
しかも、今回の
規制は、新聞紙上に現われております通り、車種別の
規制ということを盛んにいわれております。業種別の
規制ということは、一字一句もないのでございます。しかし、
路線トラック営業の車を
規制するということは、これは業種別の
規制であって、車種別の
規制ではないのでございます。その同じ車が同じ
道路で走ることが非常に危険であるのだとしたならば、なぜ同じ車種の車に対して、営業用、自家用を問わず、これを行なわないのかということに、非常に疑問をはさむものなのでございます。
なお、私たちしろうとで法律のことはわかりませんが、道交法の七条を見ましても、あるいは道交法の全体を見ましても、警視庁関係が営業にタッチしてそれを
規制するということは、どこに一体法的の根拠があるかということを、私は疑いたくなるのでございます。もちろん、私たちの経営上の指導、助長の監督は、運輸省にございまするから、運輸省がそういう
立場であるのならば、私一応肯定するのでありまするが、運輸省には何も御
意見がないというところを見ますれば、この点で、いわゆる私たちしろうとでいうところの憲法違反ではないかというようなことを申し上げても、過言でないように自分は
考えるのでございます。もう
一つ法的に申し上げますれば、七条にございますところの取り締まり官庁の
規制について、
公安委員会の
規制につきましては、危険のある
道路については、その区間を限り
交通を制止することができる、
規制することができるということが書いてありまするが、
東京全体のどこであろうとも、全部がみんな掘り返しちゃって、どうにも手にも足にもつかぬということであったらば、あるいは七条が適用されるかもしれませんが、必要な車は、どしどしと六十万台、七十万台と走っておるものが、何を好んで
東京の三十八路線というものを
規制するところの論拠があるかということについては、多少——法の解釈もございましょうが、その危険を及ぼす
範囲において
規制をされるということであれば、私
ども納得いたしまするが、いかにもこの点については、
業者とし、国民として、納得し得ないのでございます。しかし、これは当該の官憲も非常に御考慮の上なさったことであると思いまするから、私もとれ以上の強い
発言は申し上げたくないのでございます。
ただ、再び申し上げまするが、何といっても、わずか七百台の車を
規制して、それでその面目が立つかどうかという問題については、大きい
立場から
考えてもらいたいのであります。しかし、物資の
輸送については、
鉄道に次いで
トラックの存在というものは大きくクローズ・アップされておるのでございまして、ただいま、大体におきまして、日々の運送は、確実に三万トンの物資を東西あるいは東北から運んでおります。しかし、これに加えますのに、自家用で
路線トラックの運輸の類似行為をやっている地方の方々が、たくさんございます。推定でありまするが、その方々の運んでいる
貨物が、またやはり一日三万トン、一カ月に約百万トンというものは運んでおるのでございまするから、こういう点を見合わせまして、この
トラックの
規制を行ないましたならば、どこに一体そういう支障を来たすかということを、十分に当
委員会におきまして御考慮をわずらわしたいと、切にお願いする次第でございます。
なお、
トラックの
規制をいたしますれば、先刻
石井参考人からも
お話しの通り、
夜間の営業については、
夜間の荷受け
設備というものを各荷受け
業者がみなしなければなりません。これがなかなか一朝一夕にできるものではございません。しかるに、四月からやるということを言いましても、それはほとんど昔言う角をためて牛を殺すというような結果になるのでございまして、その
混乱は想像にかたくないと私信じておるのであります。もちろん、現今労働組合の攻勢などございまして、
夜間作業をかようにいたさして、はたして労働者の健康
状態あるいはその他の問題について、完全であるかないか。また、もう
一つ考えますると、よしこれは許されるとしても、その労銀なり、すべての
設備費が非常に上がりまするために、運賃のコスト高というものは相当の額になる。これがみた
都民、需要家の負担に帰せなければならぬ、こういうふうに私
考えております。この点につきまして、昨日、
東京へ入って参ります路線
業者は百二十二くらいと聞いておりまするが、その全体がみな集まりまして、そしてこの暴案に対してあくまでもわれわれは反対せざるを得ないということを決議いたしたのがこの決議文でございまして、お手元に差し上げてございまするが、もう一度ここで読ましていただきたいと思います。
決議文
我々の経営する
路線トラック事業は
国鉄と共に我が国
輸送の大動脈であって国民生活安定の基盤をなしている。
我々は
都内交通混雑緩和について昨年来昼間運行車を
夜間運行に切換え協力して来たのであって、これ以上切換えは絶対に不可能の限界に達している。
然るに今回突如として発表された
路線トラックの
規制は高度の公共性を有する
路線トラック事業の営業権侵害であり物資の流通を阻害し国民生活を危殆に陥れるものであって絶対に容認し得ない処である。
因って本
措置を撤回されんことを切望する。
右決議する。
昭和三十七年二月十九日
路線トラック通行規制絶対反対総決起大会
こういうことが書かれておりまするが、これはほんとうに
業者の真摯の声でありまして、何ら
業者以外の何ものの分子もここに含まれておりませんことを、特に私付言しておく次第でございます。
なお、私たち現在のふえつつあるものをとめたらいいじゃないかと一口に申しますが、これは生産関係もございましょうし、いわゆる国内の情勢もございましょうしいたしますから、生産をとめても、この絶対数は減るものではないと思いまするから、この点については言及を避けたいと思いまするが、ふえつつあるところのこの
交通について、今唯一無二のたよるものは何かといったらば、
交通信号機でございます。ところが、
交通信号機が、事故が多発のところはあれもこれもと立てますために、むしろ非常に多くして、そのためにかえって障害になっておるように
考えております。この
交通信号機を俗に言う系統式と申しまするか、上手に整理をされたらば、まずもって私は、もう一割や二割の
交通緩和はこれによってまた得られるのではないか、こういうふうに
考えております。この点につきましては、警視庁がやっておることでありまするから、あえてこれはそれ以上は申しませんが、例をあげますれば、どぶの水が
一つのごみによって狭まれた場合、そのごみの上のものはあふれまするが、下のものは流れておる。これと同様に、幾らか現在の
交通信号に対してもう少し改善、もう少し努力をしていただいたらば、その効果がもっと上がるのではなかろうかと思います。なお、
交通巡査の不足等もございましょうが、これらは町の緑のおばさんのごとく、やはり町には
交通安全協会というものも、各地にできております。警視庁内にも本部がございまするから、こういうものを動員されて、そうしてその
方面から補助員でもつけられるならば、人とそれから機械力に待てば、まだまだもう一、二年はどうやらこの分で過ごせるのではなかろうか。しかし、必ずしも終局の
目的はそれをもって達せられるものではありませんが、四月からとかというような、あまりにも唐突なことでなく、一応一年たち、二年たったそのうちには、各地からみな相当の識者が出まして、そうして十分なる
交通政策の新しい方策が講じられるのではなかろうかと存じております。
それからもう
一つ申し上げたいのは、あえて私は営業用車のみを申し上げるので、
自家用車を申し上げるわけではありませんが、ただその制度なり、あるいは認可の方式なり、そういう問題に対して相違がございましょうが、
自家用車の車庫並びに常置場所は置くべきことに法律でなっておりまするが、これが、どうも実際に
調査いたしてみますると、ほとんど
調査が行き届いておらぬ。
自家用車は自由奔放に飛び回っておるというような事態も、この車庫並びに常置場所と見合わせまして申し上げても差しつかえはないように
考えておりまするから、御
参考までに申し上げます。
なお、自家用
トラックの問題は、もうすでに私たちが申し上げるまでもなく、当
委員会におきましても、いろいろ御関心があることと存じますから、省略いたします。
なお、この二、三年の間に
交通対策の
緩和をはかるということについて私が、
一つ、二つ申し上げたいのは、旧来の荷受主というものは、やはり
日本橋区であるとか、神田区であるとかという、まあ大げさに言えば明治時代からの商店そのままの方々があるのでございまするが、経済の成長につれて非常に
荷物が多くなりまするから、こういう方々の荷受け場所を疎開していただくことは、こういうお店の方々の非常な幸福にもなるし、またわれわれの運送にも非常に便益になるというので、現在
東京商工会議所にこれを提案いたしまして、なるたけ自主的にやっていただくように働きかけてみたいと思いまするが、何を申しましても、
当局のやはりそれぞれの協力がなければ、土地その他も得られませんから、この点について、自分は一応当
委員会に希望を申し上げる次第であります。
なお、
自動車の問題については、非常に将来も
重要性があるために、縦貫
自動車道というような特別の
道路が作られるようなわけでありまするが、この終端あるいは発端につきましては、何らの
措置が講じられておりませんが、どうぞ国なりあるいは
東京都なり——
東京におきましては、そういうところと、例をあげますると、中央食品市場のごとく、ああいう共同のターミナルを四つ、五つ作っていただきますれば、こういう問題の解決は非常に易々たるものだ。しかも、
都内の経済成長は、もっともっとよりよけいに繁盛になるものだ、かように
考えます。どうぞこの点、何分とも
委員長さんの御裁断を仰ぎたいと思います。特に車種別、業種別ということについては、私
どもはどうしてもあの法律だけでは納得がいかないということを付言いたしまして、御
参考に供したい、こういうことで申し上げた次第でございます。ありがとうございました。