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衆議院議員(
角屋堅次郎君) ただいま
委員長よりお示しになりました
法律案につきまして、順次
提案理由の
説明をいたしたいと思います。
まず第一に、
農産物価格安定法の一部を改正する
法律案に対する
提案理由でありますが、ただいま議題となりました
農産物価格安定法の一部を改正する
法律案につきまして、その
提案理由を御
説明申し上げます。
農産物価格安定法は、昭和二十八年に制定されまして以来、今日まで、米麦に次いで重要な農産物であるイモ類、菜種及び大豆について、生産者団体が行なう自主的な調整販売と相待って、これらの農産物等が正常な価格水準から低落することを防止して参り、農業経営の安定をはかる上において相当の効果を発揮してきたことは疑いないところであります。なかんずくイモ作農家の経営の安定のために寄与した役割については見るべきものがあったと存ずるのであります。
しかしながら、
政府は、さきに制定された農業基
本法を基軸として、今後、主要な農
畜産物につき、その生産の選択的な拡大と縮小を実施して参る過程において、価格政策面ではいわゆる需給均衡価格を中心とする価格形成方式を大幅に取り入れ、また、
政府の買い入れ、売り渡しによる安定制度の運用は逐次これを縮小し、終局的には廃止する方針のようにうかがわれるのであります。そこには、農
畜産物の
国内自給度を向上せしめつつ、農家所得を引き上げ、他産業との所得格差の均衡化を期するという積極的かつ
建設的な意欲に欠けているのみならず、他の有利な作物に転換すべく有効適切な技術的、
資金的裏づけを持たない大多数の中小農民を切り捨てることによって農業の
資本家的転換をなし遂げようとする政策意図が潜在していると断言してはばからないのであります。その端的な事例は、
政府から今回提出された大麦及びはだか麦の生産及び
政府買入れに関する
特別措置法案と大豆なたね
交付金暫定措置法案であります。
特に大豆なたね
交付金暫定措置法案によりますると、現在農安法の
対象となっている大豆及び菜種は、同法の適用から除外されることに相成なるわけでありまして、しかもこの
法案は貿易自由化が農家経済へ与える悪影響から大豆、菜種の生産農家を保護することをねらいとしておるにもかかわらず、実質的には、現在の農安法が保証する最低価格は最高価格にすりかえられておるばかりか、さらにその保証価格は漸次引き下げられていくものと予測されているのであります。かくて、現行のきわめて不満足な農産物価格安定制度は、いよいよ大幅な後退を見ることとなるのであって、さきの
国会において
政府提出農業基
本法の審議にあたり、われわれが
指摘した安上がり農政の現実の姿は遺憾なくここに露呈されて参ったと言わざるを得ないのであります。
われわれは、このような
政府の政策に強く反対するのみならず、むしろ農
畜産物の価格安定方策の改善強化をはかることこそ、農民の所得向上のための最も重要かつ基礎的な要件であると確信し、さきの第三十八
国会において、わが党が提出した農業基本
法案におきましては、その第十四条に、「国は、米麦等の管理制度を
維持管理し、生産費及び所得補償方式の原則に基づき、主要農畜物の価格を支持してその安定に努めなければならない」旨を規定したのであります。しかして、この生産費及び所得補償方式による価格支持政策は、米麦はもちろんのこと、さらにその範囲を拡大して、
農産物価格安定法の
対象農産物や、牛乳、果実、食肉、たばこ等に対しても、順次拡充して参る所存であります。そこで、われわれはわが党の農
畜産物価格安定対策の基本性格を鮮明した農業基本
法案の精神を具体的に展開するため、別途
畜産物価格安定法案、
畜産物価格安定特別会計
法案を提出するとともに、ここに本改正案を提出し、
農産物価格安定法の
対象品目として新たに小豆、インゲン等を加えるとともに、食管特別会計を通ずる農産物価格安定政策を一そう強化して、二重価格制を採用し、また、農産物価格安定審議会の設置をはかること等としたのであります。
以下本改正案の主要な内容について御
説明申し上げます。
まず第一に、現行法によって
政府が買い入れる
対象農産物は、カンショなま切りぼし、カンショ澱粉、バレイショ澱粉、菜種及び大豆の五品目となっておりますが、新たに小豆その他政令で定める豆類を
政府買い入れの
対象に加えることにいたしました。しかして、政令で定める豆類としては、とりあえずインゲンを
予定いたしております。
すなわち、小豆、インゲンは大豆と同様、北海道が主産地となっておりますが、内地においても広く栽培され、それらの生産額は年間百八十億円にも上り、しかもその八割以上のものが市販され、農家経済ときわめて密接な
関係を持つ畑作物であります。しかし、その価格はきわめて不安定でありまして、これら生産農家は絶えず不安な状態に置かれており、かねてからこれら農産物に対する価格安定対策の確立が要望されて参ったのであります。そこで今回、これら農産物を
農産物価格安定法の
対象品目に加え、その価格安定をはかろうとするものであります。
第二に、農産物等の
政府買い入れ価格は、現行法では、農業パリティ指数に基づき算出した価格、生産費及び需給事情その他経済事情を参酌して算定する建前となっておりますが、生産費及び所得補償方式によりこれを算定するよう規定を改めることといたしました。
第三に、農産物等の売り渡し価格についてでございますが、現行法では、新規の用途または販路に向けるため必要がある場合等の例外的な場合を除き、売り渡し価格は買い入れ基準価格及び時価を下回ってはならないこととなっているのであります。したがいまして、現在のところ、この例外規定を適用して、
政府手持ちのカンショ澱粉を結晶ぶどう糖用に売却する場合に限り、買い入れ基準価格より幾分安くしているのであります。しかしながら、一方においては、
政府手持ち澱粉が累増し、他方においては、年間四十万トンにも達する水あめ、普通ブドウ糖工業が原料高製品安に悩み、これらの関連中小企業が危殆に瀕している等の
現状において、これら製品の一そう積極的な消費拡大策を推進する必要性が著しく高まっておりまするし、また、大豆の輸入の自由化が強化された場合には、国産の大豆及び菜種につきましては、その生産と需給の
現状より判断して、当然
政府による相当量の買い入れ及び売り渡しが現実に行なわれざるを得ない事態に立ち至るものと推測せられますので、今後は、これらの農産物については二重価格制を採用することとし、
政府が買い入れ基準価格を下回って売却しても差しつかえがないよう規定の改正を行なうこととしたのであります。
第四に、
農林省に新たに農産物価格安定審議会を設置することといたしております。すなわち
農産物価格安定法運用上の最も重要な事項の
一つは、農産物等の買い入れ数量及び価格を決定する機構でありますが、現行法の規定によりますと、
政府が生産者団体の
意見を聴取し、それを尊重して決定するという仕組みと相なっておりますことは御承知のとおりであります。しかして、米麦の価格決定にあたりましては、農林大臣は米価審議会に諮った上で、その決定が行なわれておりまして、この点に関しては、イモ類、菜種、大豆は、米麦に準ずる重要農産物でありながら、生産、流通、消費の各方面の
関係者あるいは学識経験者等の
意見を徴する機構に欠け、単に生産者団体の
意見だけを聴取して、その決定を行なうことといたしておりますことは、行政上全く片手落ちな措置と申しても過言でないと存ずるのであります。これにかんがみ、この際、農林大臣の諮問機関として、生産者団体のみならず、
国会議員及び学識経験者等をも含めて構成される農産物価格安定審議会を設置することといたしたのであります。しかして審議会は、農林大臣の諮問に応じ、農産物等の需給の安定、流通の改善、消費の拡大及び価格の安定に関する重要事項を調査審議するとともに、必要に応じ、如上の事項について、
関係行政庁に建議することができること等としております。
なお、専門の事項を調査するために、審議会に専門
委員を置くことができることとし、専門
委員は、学識経験のある者のうちから審議会の推薦に基づいて農林大臣が任命することといたしております。
最後に附則において、この
法律は、公布の日から施行すること。その他、
農林省設置法に所要の改正を加えることといたしております。
以上が、
農産物価格安定法の一部を改正する
法律案の提案の理由とおもな内容であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御可決下さるよう
希望する次第でありります。
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次に、
飼料需給安定法の一部を改正する
法律案について、その提案の理由を御
説明申し上げます。
飼料需給安定法は、
政府が輸入飼料の買い入れ、保管及び売り渡しを行なうことによって、飼料の需給及び価格の安定をはかり、もって畜産の振興に寄与することを
目的として、昭和二十八年三月より施行され、その後昭和三十一年に
政府の保管する輸入飼料について、その品質低下のおそれがある場合、これを買いかえ、または交換できることとする一部改正が行なわれ、今日に至っているのであります。
本法の基本的な性格は、前述したところにより明らかでありますように、
政府が輸入業者の輸入する飼料を買い付けることによって飼料の
国内供給を確保するとともに、売り渡しにあたってはその用途、価格、数量、時期、
地域等各般の事項にわたって規制を行ない、間接的に
国内の飼料の需給及び価格の安定をはかることにあるとされ、自来、九年間この線に沿って法の運用がなされて参ったのでありますが、その間、家畜飼養頭羽数の著しい増加に対応して、需給
計画の規模は拡大し、
政府の取り扱い実績も増大し、昭和三士二年度をとってみますると、第一回の
計画に比しおおむね二倍の数字を示しているのであります。
しかるところ、三十四年ころより、特に鶏、豚、乳牛等の多頭羽飼育ないしは集団飼育等の動きが急速に高まり、飼料事情はこれに伴って急激に変化して参ったのであります。かくいたしまして、三十五年秋には需給の逼迫は憂慮すべき状態にまで立ち至りたのであります。すなわち、三十六年二月のトン当たり飼料価格を見まするに、前年同月に比し、トウモロコシを除き、輸入ふすまは二〇%、
国内ふすまは六%、脱脂米ぬかは二三%、大豆かすは
一般品で三七%、漁かすは五%、澱粉かすは九四%というふうにいずれもはなはだしい高騰を告げたのであります。
政府は、かかる事態に対処すべく、三十五年度の当初需給
計画を大幅に改訂したのでありますが、これをもってしても及ばず、本年三月には急遽、飼料緊急対策を講ずることとなり、三月以降ふすま、油かす等はもとより、食糧として買い入れた大裸麦の大量放出を行なうこととし、辛うじて当面の非常事態を脱しましたことは各位のすでに十分御承知のとおりであります。
このように飼料をめぐって非常な混乱を生じた原因は、
政府の飼料対策の不手際にあることはもちろんでありますが、より根本的には、現行の
飼料需給安定法が、適切かつ機動的な飼料行政を実施して飼料の需給と価格を安定せしめる上に数々の欠陥を蔵していることを見のがすわけには参らないのであります。すなわち、
一、食糧行政と飼料行政との
関係につき
政府部内にしばしば
意見の不一致が生じているのでありますが、特に食糧として買い入れた大麦等を飼料として払い下げる場合の根拠規定が欠けているため、敏速な飼料行政を実施する上に少なからざる障害となっていること。
二、
政府が飼料需給
計画を策定する場合の前提となる家畜飼養頭羽数の把握が不十分であり、また、これと関連して、自給飼料、流通飼料ないしは輸入飼料を通ずる飼料需給の見通しが的確でないのみならず、
総合的な飼料需給
計画の作成の義務が課せられていないこと。
三、製粉業者や配合飼料業者等の思惑的な買いあさりにより
国内の飼料の価格が不当につり上げられた場合等において、
政府がその対応措置を講ずるための規定が不備であること。
四、
政府が輸入飼料または
政府所有大麦等を売り渡す場合に
国内の
畜産物の価格とつり合いのとれた価格でこれを行なう配慮に欠けていること。
等であります。
わが農業の飛躍的発展を期する上において畜産農業の果たす役割がいよいよ重大となっております今日、飼料問題の解決は、養畜農民の死命を制する重要条件であり、飼料対策の改善は刻下の急務であると信ずるのであります。以上の
趣旨にかんがみ、前
国会に、
飼料需給安定法の一部を改正する
法律案を提出したのでありますが、遺憾ながら審査未了となりましたので、その後、検討を加えた結果、若干の点を加えた同一
趣旨の
飼料需給安定法の一部を改正する
法律を今回再び提出することとした次第であります。以下
本案のおもな内容について申し上げます。
第一点は、現行法による飼料需給
計画は、輸入飼料についてのみこれを作成することとなっておりますが、
国内飼料を含む
総合的な視野のもとに飼料需給
計画を作成するよう改めたことであります。
第二点は、現行法によれば、飼料の売り渡しは、
一般競争入札を原則とし、特別の場合に指名競争契約または随意契約の
方法によることとせられておりますが、
政府の保管する輸入飼料は、本来、実需者団体である農業協同組合または農業協同組合連合会に売り渡し、もって中間利潤を極力排除すべきものでありますので、そのように改正することといたしました。
第三点は、
政府の
所有にかかる飼料を売り渡す場合の価格は、
国内の飼料の市価その他の経済事情を参酌して定めることとなっておりますが、
畜産物の価格を第一義的に参酌して決定すべきが当然でありますので、そのように改めたことであります。
第四点は、現行法第七条に規定する飼料の需給が逼迫した場合の特例措置についてでありますが。
政府がこの条項の発動に遅疑しゅん巡している間にふすまの価格は暴騰した最近の事例にかんがみまして、
政府はその
所有小麦を製粉業者等に売り渡す場合には、
一般的に、ふすまの譲渡使用に関し、
地域指定、時期指定、価格制限等を行なうことができることとし、しかも譲渡価格を制限する場合には、製粉業者等の超過利潤を制約するため、小麦の
政府売り渡し価格、製粉費用、小麦及びふすまの市価等を参酌して最高価格を決定するように改めたことであります。
第五点は、過般
政府が大、裸麦の緊急払い下げをいたしましたように、飼料の需給が逼迫しました場合における
政府所有の大裸麦の実需者団体である農業協同組合または農業協同組合連合会に対する売り渡しの特例措置に関する根拠規定を新たに設けたことであります。
第六点は、飼料需給安定審議会の
委員の構成が適当でないので、これを改めたことであります。すなわち現行法によれば、審議会の
委員は三十人以内をもって組織し、その会長は農林大臣をもって充てることになっておりますが、今回、
委員は二十人以内とし、会長は
委員のうちから
互選することに改めました。しかして、
委員の構成についてでありますが、現行法によれば、衆参両議院
議員が八名、
関係行政機関の職員のうちから農林大臣の任命した者五人以内、飼料に関し学識経験のある者、農業者の団体を代表する者、飼料の消費者を代表する者その他飼料の
関係者のうちから農林大臣の任命した者十七人以内計三十名以内となっておりますが、今日までの経験によりますと、このような
委員構成では、しばしば飼料業者に有利な蠢動の場を与える等弊害を起こした例も少なくないと考えられますので、行政機関の職員は全員削除し、また、農林大臣の任命する飼料に関し学識経験のある者のうちからは三人以内、実需者団体を代表する者のうちからは六人以内、輸入飼料の輸入業者または飼料の生産者を代表する者のうちからは三人以内に、それぞれ改めることとしたのであります。さらに、新たに専門の事項を調査させるために、審議会に専門
委員を置くこととしたのであります。
その他これらの改正に伴い、若干の条文
整備を行なっております。
以上が、
本案提出の理由と内容の大要でございます。何とぞ御審議の上すみやかに御可決賜わるよう
希望いたす次第であります。
———————————
次に、
畜産物価格安定法案の
提案理由の御
説明を申し上げます。
ただいま議題となりました
畜産物価格安定法案について、その提案の理由及び内容を御
説明申し上げます。
戦後、農業経営の安定、向上及び
国民食生活の改善等のため、畜産の振興が強調せられ、農民諸君の熱意と相まっていろいろの施策が講ぜられて参りました結果、わが国の畜産の発展はまことに目ざましいものがあるのであります。すなわち、その状況を見ますならば、主要家畜の飼養頭羽数においては、すでに昭和二十八年に戦前の水準を突破し、その後経済の発展につれてますます進展し、なかんずく乳牛、豚及び鶏の飼育の伸長は著しく、三十六年には乳牛八十八万頭、豚三百万頭、鶏約八千万羽を算し、乳牛は戦前の五倍以上の、また、豚及び鶏は過去五カ年間に六割以上の増大を示し、最近では、多頭羽飼育の傾向はいよいよ強まってきているのであります。しかして、牛乳の生産量は、二十八年に三百八十万石程度であったものが、三十五年にはついに一千万石の大台を突破する等、飛躍的な伸びを示し、したがって、これらの
畜産物の生産額が農業総生産額のうちに占める割合におきましても年ごとに増大を示し、三十四年の農業生産額一兆六千五百九十五億円のうち畜産の生産額は二千百二十八億円、その割合は一二、八%を上げるに至っているのであります。また、消費の面を見まするに、厚生省の栄養調査によりますと、最近の十カ年間で牛乳は七倍、鶏卵は五倍、食肉は三倍半の伸びを示しているのであります。
しかしながら、このような発展にもかかわらず、一たびわが畜産業の内部に眼を転じますならば、そこには多くの混乱と矛盾が見られ、数々の不安定要因が横たわっておるのでありまして、
国民生活の向上と相待って今後ますます需要の増大が見込まれる
畜産物の円滑な供給をはかると同時に、農民が安んじて生産に精励することができる畜産業を打ち立てる上には、すみやかに解決を要する幾多の諸問題をかかえていると申さざるを得ないのであります。すなわち、畜産の生産基盤の未
整備、飼料価格の割高、
畜産物価格の不安定及び家畜
畜産物の消費流通機構の未
整備等の
現状は何人の目にも明らかであり、さらに最近においては、水産会社等の巨大
資本の畜産部門への進出により、豚小作、鶏小作等、生産農民に対する新たなる収奪が懸念されるに至っているのであります。しこうして、これらの畜産の振興を最も阻害している要因は、流通飼料の価格の割高と
畜産物価格の割安という事態であります。たとえば昨年来の豚肉の大暴騰にもかかわらず、生産農民は何らその恩恵にあずからず、かえって、昨年秋以降の飼料の大暴騰によって、生産費をすら割る始末であったのであります。かくて、今日、飼料及び
畜産物の価格の安定対策こそ、最も早急に解決すべき課題と申さねばなりません。
しかるに、前
国会に制定を見た
政府提出の農業基
本法中において、畜産業は選択的拡大の
対象とされておるにもかかわらず、これを裏づける具体的施策の面においては何ら有効適切な措置が講ぜられておらないのでありまして、畜産振興のかけ声はまだから念仏の域を出ていないと断ぜざるを得ないのであります。
政府は、前
国会にわずかに
畜産物の
価格安定等に関する
法律案を提案しましたが、審議未了となり、今
国会に再び若干の訂正を加えた
法案を提出して参りました。われわれ社会党といたしましては、
政府案を慎重に再検討いたしましたところ、遺憾ながら今回の
政府案をもってしても、畜産の飛躍的な発展と畜産経営の安定とをはかる上の抜本対策とはなりがたいとの結論に達したのであります。すなわち、
政府案によれば、畜産振興事業団を設け、この事業団が農林大臣の定める
畜産物について、安定価格による買い入れ及び売り渡しを行なうこととされているのでありますが、この案の致命的欠陥としては、先ず第一に、買い入れの下位価格の算定基準が不明確であり、生産農民の生産費及び所得を補償することとなっていないことであります。
農林省の
予算の示すところを見ますると、三十六年度の買い入れ
予算単価は指定乳製品の生乳換算一升当たり価格四十四円、豚肉一キロ当たり二百十五円、三十七年度要求
予算では指定乳製品四十六円八十銭、豚肉二百三十五円となっておりますが、
農林省調査による三十四年の生乳生産費五十五円二十六銭、全国農協中央会の算出による三十六年の七十四円二十七銭より著しく低いのであります。また、豚肉一キロ当たり全国農協中央会の三十六年の調査による三百八円九十五銭よりきわめて低いものとなっているのであります。第二に、買い入れ
方法等が不明確であり、
予算規模のいかんによって銘柄、規格等を通じて買い入れを不当に規制されるおそれがあることであります。第三に、輸入の規制が弱いことであります。第四に、生産者団体に対する自主調整保管等の
施設の拡充措置が何ら講ぜられていないことであります。
したがって、わが
日本社会党といたしましては、この際、畜産の飛躍的な振興を期する上に、その抜本的な措置を講ずべく、
畜産物の価格は生産費及び所得補償の原則によって決定し、流通飼料を規制して農民に安価な供給を確保し、取引の適正化のために卸売市場を国の管理下に置き、国はその責任において
総合的な施策を講ずるに必要な
予算等の確保をはかること等、わが党が年来主張しております畜産農業振興のための基本政策の線にのっとり、ここに
畜産物価格安定法案を提出することとした次第であります。
なお、
畜産物の価格の安定をはかるために、価格が基準価格より低落する場合、国が生産農民の組織する農業協同組合等から直接
畜産物を買い入れ、また、売り渡しを行なうため、国に
畜産物価格安特別会計を設けることとし、
本案と表裏の
関係において、別途、特別会計
法案を提出いたすこととしております。また、流通飼料の需給及び価格の安定を期するために、これまた前
国会において審議未了となった同一
趣旨の飼料需給価格安定法の一部を改正する
法律案を提案いたすことを付言しておきます。
以下
本案の内容について申し上げます。
まず第一に、この
法律は、主要な
畜産物の価格の安定をはかることにより、畜産の健全な発達と農民所得の向上に資することを
目的といたしております。
第二に、農林大臣は、毎年度年度開始の日の一カ月前までに、
畜産物価格安定審議会の
意見を聞いて生乳、飲用牛乳及び指定乳製品、指定食肉並びに鶏卵について、前年度からの繰越数量、生産見込み数量または輸入見込み数量、
国内消費見込み数量、
政府買い入れ見込み数量、輸出見込み数量、翌年度への繰越在庫見込み数量等を内容とする需給
計画を定め、これを告示することとし、毎年度この
法律の
対象となる
畜産物の需給の動向を把握し、これを公表することといたしております。
第三に、農林大臣は、毎年度、年度開始の日の一カ月前までに、
畜産物価格安定審議会の
意見を聞いて、生乳、飲用牛乳、指定乳製品、指定食肉及び鶏卵についての基準価格を定め、そのうち、生乳、指定食肉または鶏卵の基準価格は、生産費を基準とし、物価その他の経済事情を参酌、生乳、指定食肉または鶏卵の再生産を確保することを旨として定めることとし、この場合、生産費に含まれる自家労働の価額は、他産業に従事する労働者の賃金の額と同一水準のものでなければならないこととし、もって、生産費及び所得補償の原則を打ち出しているのであります。なお、飲用牛乳または指定乳製品の基準価格は、生乳の基準価格に処理または加工に要する費用等を加えて定めることとしております。
また、乳業者が、生乳の基準価格に達しない価格で生乳を買い入れ、または買い入れるおそれのあるときは、農林大臣または都道府県知事は、その乳業者に対し、基準価格に達するまで引き上げるべき旨の勧告ができること左も規定しております。
第四に、指定乳製品等の生産等に閲する
計画についてであります。
まず、生乳の生産者が直接または間接の構成員となっている法人で
農林省令で定める、生乳生産者団体は、生乳の価格をその基準価格まで引き上げ一またはその基準価格の下がることを防止するため、毎年度、年度開始の日までにその構成員の生産する生乳を原料とする指定乳製品の生産(他に委託する生産を含む)、保管または販売に関する
計画を定め、農林大臣の認定を受けることができることとしております。
次に、乳業者、乳業者が組織する中小企業協同組合または乳業者たる農協もしくは同連合会が直接もしくは間接の構成員となっている農業協同組合連合会(乳業者等)は、指定乳製品の価格をその基準価格まで引き上げ、またはその基準価格の下がることを防止するため、毎年度、年度開始の日までに、その者またはその構成員の生産する指定乳製品の保管または販売に関する
計画を定め、農林大臣の認定を受けることができることとしております。
次に、指定食肉にかかる家畜または鶏卵の生産者が直接または間接の構成員となっている法人で
農林省令で定める、指定食肉生産者団体または鶏卵生産者団体は、その構成員の生産する家畜にかかる指定食肉または鶏卵の価格をその基準価格まで引き上げまたはそれらの基準価格の下がることを防止するため、毎年度、年度開始の日までに、その構成員の生産する家畜にかかる指定食肉または鶏卵の保管または販売に関する
計画を定め、農林大臣の認定を受けることができることとしております。
次に、農林大臣は、右の生乳生産者団体の指定乳製品の生産、保管または販売の
計画、乳業者等の指定乳製品の保管または販売
計画、指定食肉生産者団体または鶏卵生産者団体の指定食肉または鶏卵の保管または販売の
計画が、それぞれ
農林省令で定める基準に適合すると認めるときは、その認定をするものといたしております。
なお、農林大臣は、生乳生産者団体が、指定乳製品の生産、保管または販売の
計画を定め、農林大臣の認定を受けて他に委託して、その生産の
計画を実施しようとする場合に、当該乳業者が正当な理由がないのにその生産の委託に応じないときは、その生乳生産者団体の申し出により、その乳業者に対し、その委託に応ずべき旨を命ずることができることとしております。
また、
政府は、生乳生産者団体等が、それぞれの生産、保管または販売の
計画の認定を受けた場合には、それらの団体に対し、その
計画の実施に要する
経費について必要な助成を行なうことといたしております。
第五に、指定乳製品または指定食肉の
政府の買い入れ、売り渡し及び交換についてであります。まず
政府の買い入れは、生乳生産者団体がその構成員の生産する生乳を原料とする指定乳製品の生産、保管または販売の
計画並びに指定食肉にかかる家畜の指定食肉生産者団体の構成員の生産する家畜にかかる指定食肉の保管または販売の
計画について農林大臣が認定した指定乳製品または指定食肉について、生乳生産者団体または指定食肉生産者団体の売り渡しの申し込みにより、それぞれの基準価格に金利、保管料等に相当する額を加算した価格で、かつ、数量につき無制限で買い入れることとしております。
次に
政府の売り渡しについては、
政府が買い入れもしくは輸入した指定乳製品または指定食肉の売り渡しは、これらの需給事情を勘案し、それらの時価がその基準価格の水準において安定するように売り渡すものといたしております。
なお、
政府の売り渡しは、
一般競争入札の
方法によることを原則としておりますが、
学校給食その他特定の用途に売り渡す場合には、随意契約その他の
方法によることができ、時価よりも低い価格で売り渡すことができるものといたしております。
次に、
政府の保管する指定乳製品または指定食肉が、品質の低下により損失を生ずるおそれがある場合は、これと同一規格及び数量によって交換することができることとしております。
第六に、乳製品又は食肉の輸入についてであります。
国内産の生乳、乳製品、指定食肉等の価格を安定せしめるため、これらの輸入には当然制約を加えるべきものでありますので、乳製品または食肉のうち政令で定めるものに限り、これらの輸入は、農林大臣の許可を受けることとし、また、これを輸入した者は、農林大臣が定める価格により、全量を
政府に売り渡されなければならないことにしております。
第七に、飲用牛乳の時価がその基準価格をこえて著しく騰貴し、またはそのおそれのあるときは、農林大臣または都道府県知事は、飲用牛乳にかかる乳業者等に対し、時価が基準価格の水準において安定するため、必要な勧告ができることとし、飲用牛乳の消費者を保護することといたしております。
第八に、農林大臣は、この
法律を施行するために必要があるときは、生乳生産者団体、乳業者等、指定食肉生産者団体、鶏卵生産者団体または乳製品もしくは食肉の輸入業者等から必要な事項の報告を徴し、またはその職員をして、それらの者の事務所、事業所、倉庫等に立ち入らせ、帳簿書類その他業務に
関係のある物件を検査させることができることとしております。
第九に、牛乳、乳製品、食肉及び鶏卵の安定、流通の改善、消費の拡大及び価格の安定等に関する重要事項を調査審議し、あわせてこれらについて
関係行政庁に建議するため
農林省に
畜産物価安定審議会を設置することといたしております。この審議会は、
委員十七名で組織し、
衆議院議員のうち衆議院の指名した者五人、参議院
議員のうち参議院が指名した者三人、生乳生産者団体、乳業者等、指定食肉生産者団体、鶏卵生産者団体等を代表する者六人以内、学識経験のある者三人以内といたし、また、審議会に専門の事項を調査するために、専門
委員を置くことができることとしております。以上が本
法案の
提案理由及びその内容であります。何とぞ慎重審議の上、御可決下さいますようお願い申し上げます。