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1961-10-13 第39回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十三日(金曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 辻原 弘市君    理事 平岡忠次郎君 理事 横山 利秋君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       大久保武雄君    岡田 修一君       金子 一平君    久保田藤麿君       田澤 吉郎君    高見 三郎君       永田 亮一君    濱田 幸雄君       坊  秀男君    吉田 重延君       有馬 輝武君    石村 英雄君       佐藤觀次郎君    藤原豊次郎君       堀  昌雄君    武藤 山治君       安井 吉典君    春日 一幸君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         農林事務官         (農林経済局長)坂村 吉正君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    有吉  正君         農林技官         (農林経済局金         融課長)    立川  基君         参  考  人         (日本銀行総裁山際 正道君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 十月十一日  委員藤井勝志辞任につき、その補欠として井  出一太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員井出一太郎辞任につき、その補欠として  藤井勝志君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業近代化助成資金の設置に関する法律案(内  閣提出第一〇号)  証券取引に関する件  金融に関する件について参考人より意見聴取      ――――◇―――――
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。本日は、当面する金融政策上の諸問題について、山際日本銀行総裁より御意見を聴取することといたします。  山際総裁には御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございます。  では、まず山際参考人より御意見を述べていただき、その後に質疑を行なうことといたします。山際参考人
  3. 山際正道

    山際参考人 いろいろの最近の金融経済情勢についてのお尋ねに多少とも御参考になろうかと考えますので、まず最初に、最近における金融経済情勢一般につきまして、ごく概略でございますが申し上げておきたいと思います。  私は、本年二月でございましたか、当委員会出席を求められまして、その当時における金融経済情勢についてお話を申し上げたと記憶いたしております。当時は、昨年秋以来の諸般の経済動向が大体において落ちつきぎみ推移いたしておりました。しかしながら、なお前途を考えます場合に、輸出の先行きの見通しについてはなかなか楽観を許さざるものがある。また企業設備投資意欲というものは、各般の動機によりましてなかなか強いものがあるということを御報告申し上げました。従って、現在の段階においては割合落ちつきぎみ推移はいたしておるけれども、今後の推移については、私どもとして十分これを注意していく必要があるということを申し述べたように記憶いたしておるのでございます。さらにその後、三月及び五月に参議院及び衆議院の予算委員会、同分科会におきましても、国際収支等情勢につきまして御説明を申し上げたのでございますが、その際、経済成長のテンポがあまり早過ぎますと、どうしても輸出意欲が鈍りまして、国際収支均衡を維持して参るためには、政府計画されておる以上に設備投資行き過ぎないように、各種の角度からこれを調整していくことが望ましいということを申し上げたように記憶いたしておるのであります。  日本経済は、御承知通りここ数年来非常な好況に恵まれまして、おのずから経済にも力がつき、また企業家にも自信ができて参りました。それだけに、ある一つ政策的方向が示されますと、企業家の心理といたしまして、その目標に向かって突進するという可能性があるという点を、私は当時実は最も懸念しておったのでございます。しかして、もしさような事態が発生いたしました場合には、政府といたされましては、その考えられておる方向との偏差をなるべく臨機に修正していけるような態勢をおとり願いたいということを申し上げて参ったと思うのであります。  日本銀行といたしましては、かような経済の動きに対処いたしまして、すでに当時、四月ごろから金融の量的な引き締め実行いたしておりましたが、さらにその後、融資の抑制に努めて参りまして、あまり経済投資行き過ぎが起こらぬように努めて参ったのでありましたが、その後の経済推移を見ますと、内需の増勢は引き続ききわめて旺盛であります。それに伴いまして、御承知通り輸入増勢が続きまして、一方輸出の伸張も十分でない点がございました。従って国際収支は、五月以降総合収支においても赤字に転ずるに至ったのでございます。そこでわれわれ金融当局といたしましては、国内需要の一段の増勢調整する必要を認めまして、そのためには何といっても、われわれに認められておる正統的な金融政策手段に訴えることはやむを得ないという判断のもとに、七月の下旬でありましたが、公定歩合を一厘幅引き上げたのでございます。また、この引き上げを背景といたしまして、窓口規制等による量的引き締めも一そう強化することに努めて参ったのでございます。ただ、その際輸出増進を念願いたしまして、輸出金利につきましては、一般金利引き上げますのと反対に一厘方引き下げて、輸出増強に資したいという考え方をとったのでございます。かかる推移をたどりまして、金融市場及び資本市場は漸次一般的に引き締まりの度合いを強めて参りました。企業段階にもこの趨勢は漸次浸透して参ったと思うのでありますが、それにもかかわらず、企業投資態度は依然として強気が多い。従って、経済拡大の歩調はそれほど鈍化する気配も見えませんでしたので、また二面において国際収支につきましては、季節的な輸出増を待望する向きもございまして、この機会に好転するのではないかという期待も持たれたのでございますが、しかしかような経済情勢を映じまして、現実には国際収支赤字は縮小せず、そればかりか、急速には国際収支均衡を回復する見込みというものはだんだん薄らいで参るような気がいたしたのであります。  そこで、本行といたしましては、九月の下旬に再び公定歩合引き上げをするとともに、同時にあわせて全般的に金融引き締め態度を強める意味において準備預金率引き上げあるいは日本銀行から資金を借り出します場合の高率適用強化措置等を併用いたしまして、一段と金融引き締めを強化する態勢をとりまして、国内需要を極力抑制することに強い態度をもって臨むことといたしたのでございます。ただ今回、九月の措置につきましては、七月の場合にも申し上げました通り輸出振興の見地から輸出貿易手形金利は、前回公定歩合引き上げの際には、今申し上げました通り逆に引き下げたのでありますが、九月の場合はそれをそのまま据え置きまして、さらにこれが輸出増進に資することを期待いたしたのであります。同時にまた、これは毎々申しておることでございますけれども、とかく金融引き締めの影響は中小企業にそのしわが寄るということをあらかじめおそれまして、極力金融機関に対して、この点に関して十分の配意を求めて参った次第でございます。  幸いに、かかる情勢推移に応じまして、政府におかれましても、過般発表されました国際収支改善対策ということで、日本銀行金融引き締め強化措置と相待って、財政その他の施策を通じて、景気調整について本腰を入れてこられる態度を示されるに至っておるのであります。かかる政府及び日本銀行態度を通じまして、経済界全般における最近の事態は、その認識がようやく深められて参ったように思うのであります。もちろん、であるからといって、国際収支逆調が短期間に改善されるということは、かかる大規模程度に発展いたして参りました経済界趨勢から考えまして、なかなか期待しにくい点であります。従いまして、私といたしましても、今回の金融引き締め態勢はかなり長期にわたって続くものと覚悟せねばならぬと考えておるのであります。またこれが十分な効果をおさめるためには、財政その他の施策協力を十分に発揮せられまして、経済全般にわたって必要な調整がはかられることがぜひとも必要であるということを確信いたしておる次第でございます。  かようにいたしまして、今回われわれといたしましては、かなりきびしい金融引き締め措置を講ずるに至ったことは、結果から申しましてまことに遺憾なことでありますが、私は、日本経済は過去数年の著しい好況を通じまして、その蓄積せられた力というものは相当なものに達しておる現在、ある程度のきびしい施策を打ち出して参りましても、そのために経済が慢性的に不況に陥る、あるいは弱体化するというようなことはなく、むしろかかる試練に一そう鍛えられまして、将来一そう健全な発展が再び期待せられることを確信いたしておる次第でございます。日本経済は、俗に申されますけれど、これは年令にたとえますならば、いわば青年期にあると思うのであります。決して老衰期にあるわけではないし、また他の十分な保護、保育を必要とする乳児の時代でもない、いわば青年期に入っておる時代であると思いますので、力余ってこの潜在的なエネルギーが特に過度に発揮されるという傾向は生じがちでありますけれども、かかる行き過ぎに対して、適時に適当に調整措置を講じる期間を与えますことは、将来さらに一そうの飛躍をここに期待できるということに相なろうかと実は考えておるのでございます。  先般、私はIMFの総会に出席をいたしまして、各国の代表者の諸君とも会談をいたしたのでありましたが、大多数の人は、日本経済の驚異的な過去の成長に対しては、むしろ非常に羨望の念を抱いておったのであります。しかして現在の国際収支の悪化が、幾たびか過去において日本がかかる機会に遭遇しながらも、よくこれを克服して次の飛躍段階に臨んだということを思い出しまして、今回もおそらくは同様の経路をたどるであろう、かような意味において日本経済に対しての信頼をつないでおるような実情に接したのであります。私どもといたしましては、かかる国際的な信用にこたえる意味におきましても、この際各界の御協力を得まして、今回の景気調整措置効果を十分に今後おさめて参ることに一そうの努力を払いたい考えでございます。  以上、大体において最近の金融経済情勢についての御説明を申し上げた次第であります。
  4. 小川平二

    小川委員長 続いて質疑を行ないます。通告があります。これを許します。堀昌雄君。
  5. 堀昌雄

    堀委員 ただいま総裁から現状につきましてのお話がございましたけれども、私は、まず今の経済情勢――私出身が医者でございますから、これはやはり経済全体が病気にかかった、こういう状態判断をいたします。そうしますと、われわれ医者の常識からいたしますと、一番肝心なことは、この病気の根本的な原因が何かということをはっきり突きとめませんと、それに対する的確な治療方針というものは出て参らないわけでございますので、今ちょっと抽象的にはお触れになりましたが、現在のこの状態の一番根本的な原因は、総裁はどういうものだというふうにお考えになっておるか、そのことについてお考え々承りたいと思います。
  6. 山際正道

    山際参考人 そのお尋ねの点の分析は、なかなかむずかしい問題を包含しておる。人によっていろいろ所見も異なろうかと考えますが、私自身として考えておりますことは、根本的には、御承知通り戦後わが国の経済はいわゆる自由経済組織基本といたしまして、対内的にも対外的にもなるべく統制をはずして個人創意工夫を十分に生かすことによって、最も合理的な経済運営をいたして参ろうという体制にあることは御承知通りと思います。かかる体制がさらにさらに進行を続けておる際に、ここに一つのまとまった成長計画なるものを考え出して、それを実行して参るということは、これは実行上非常にむずかしい問題をそこに包含するという事態であろうと実は思うのであります。私は、政府なりその他責任者が、国民に対して一定成長目標を示され、国民に希望を抱かせるということは、非常にけっこうなことと実は思います。ただ、これを的確にやっていこうといたしますと、根が自由経済組織であります。自由経済組織は、御承知通り個人創意工夫によって需要が起こりあるいは供給が生じるということになりまするので、特に景気行き過ぎということは伴いがちであります。すなわち、いわゆる景気の循還、景気変動ということは、自由経済組織からなかなか取り除きにくい点であります。それらの点と、それから一定の、何と申しまするか、予定というか、計画というか、これによって成長の速度を進めていこうという考え方、その調整という問題が、ここに私は非常にむずかしい技術的措置を要する点ではないかと実は思うのであります。この意味におきまして、私は両者とも、別にそれ自体としてあやまちはないと考えておりますが、いかにしてこれを調整していくかという技術の問題につきましては、これは一般にわれわれがもっと真剣に考えなければならぬということを実は考えておるのであります。世間往々この成長計画を示しますと、何でもかんでも一本調子に年々同じぺースでそこまで行くものだと考えがちであります。景気で申しまするならば、万年景気の幻想を抱きがちであります。しかし、現実自由経済主義の基盤に立っておりますから、特に暑気の変動があるということは免れがたいのであります。その両者をいかに調節するかということについてのいろいろな工夫なり手段なりというものは、漸次これから、この経験を基礎といたしまして研究されていってしかるべき問題ではないか。私どもといたしましても、この調整手段としては、金融政策は最も重要な地位に立っておりまするが、それらの点について今後十分その目的を達しまするように勉強をいたしたい、お互いに戒め合っておるような次第でございます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 根本的な原因は、自由主義経済というものと計画の問題との間の調整だというふうにおっしゃったわけでありますが、それは私もその通りだと思います。その調整を一体どこがするのかということが、次の問題として私は重要だと思いますが、その前に、原因についてもう一つ伺っておきたいことは、一般的には、今この過熱の原因民間設備投資行き過ぎであるというふうに伝えられておるわけでございますが、民間設備投資のこういう行き過ぎが可能であったのは、一体どこに原因があるのかという点についてお伺いいたします。
  8. 山際正道

    山際参考人 御指摘の問題も、分析上なかなかむずかしい問題だと思いまするが、私自身考えでは、たとえば労働需給の点についても、ある程度のゆとりを存したというようなこと、あるいは資金の過去における蓄積というような新しいかかる投資、しかも、それはたまたま合理化技術革新時代に遭遇しておりまして、よく投資実行を可能ならしめるということ、あるいはまた海外の市場状況が、ごく最近までは割合に有利に展開をいたしまして、ある程度貿易規模拡大し続けることができたというような状況が、幸いにいたしまして今日までここに参ったと実は思うのでありますが、おのずからさような好条件にも限度があります半面において、投資意欲というものがますます強くなって参りますると、なかなかその両者の調節ということがうまく参りません。そこで、それがいろいろな形で現われて参りまして、日本経済の最も厚い壁と申しまするか、弱点と申しまするか、国際収支の面に露呈し始めたというのが現状ではないかと考えております。
  9. 堀昌雄

    堀委員 そこで、おっしゃったようなことが、確かに成長原因だと思うのでありますけれども、急激に最近スピードがついておりますうちに、ことしの経済白書でも、投資投資を呼ぶという表現でされておるわけでありますが、最近の日本経済をマクロで見てみますと、国民総支出は大体年率一〇%ぐらいでありますし、個人消費は七%ぐらいであるのに対して、民間設備投資は二九%近くでありますし、大体政府投資が一〇%ぐらいというふうに見て参りますと、この中には異常なアンバランスがあると思います。ですから、私は、この民間設備投資の中には確かに投資投資を呼ぶという格好の部分、さらに最近の限界資本係数がだんだん高くなってきておる部分、こういうものを含めて異常な状態が続いておる、かように判断をするわけでございますけれども、それについては日銀総裁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  10. 山際正道

    山際参考人 大体において、加速度を増して参りました原因につきましては御説の通りだと私も考えます。それに加えまして、投資過程を通じて散布されました購買力消費意欲増大となって現われて参っております。一方においては投資が進められると同時に、その過程を通じて一方においては消費が進んでおる、両々相待って、これが今申し上げました日本経済弱点である点に露呈してきておる、かように考えております。
  11. 堀昌雄

    堀委員 もう一点。私は私なりに一つ原因があると思いますのは、日本企業の内容は、自己資本を高めよう、高めようといいながらも、実は最近の様子はますます他人資本増大をしつつあるという傾向だと思います。そういたしますと、企業自体が本来ならば自己資本でやるという原則が確立をしておるならば、おのずからそこには企業としてコントロールせざるを得ない問題が生じてくるかと思うのでありますけれども他人資本に依存をして経営を拡大をしていく、こういうことで設備拡大などに夢中になるということになりますと、そこには過当な競争が止まれる根本的な原因があるのではないか。結局端的に申しますと、過去五、六カ月の間に、日銀貸し出しが五千億から一兆円に伸びてきたというこの問題の中にも、異常な過度成長を支えた一つ原因があるのではないか、かように私は感じるわけでありますが、総裁はこの点についてはどうお考えになっておられましょうか。
  12. 山際正道

    山際参考人 異常に過度成長を助長した原因一つとして、日本銀行貸し出しの量が非常に多額に上り過ぎたのではないかという御議論でございます。この点に関しましては一方におきまして、本年は特殊の事情として財政引き揚げが非常に多いのであります。今詳細に金額的に申し上げる材料は持ち合せてませんけれども、むろん経済界拡大に伴いまして、その間の取引の円滑を期する上におきまして、所要の資金増大するということは経済上やむを得ない問題でございます。が、一面において、今申し上げました財政引き揚げ多額に上ってきたということもまた、市中資金が枯渇する原因でもあります。両々相待って日本銀行貸し出しは相当の巨額に達したのでありますが、私どもといたしましては、貸し出し、ないし信用の確保によって建設が行なわれるということは常道ではないと考えます。極力これは抑える方針でやって参ります。拡大された全体の経済取引が支障なく円滑に運行されるために必要な最小限度ということを目標にいたして参りましても、なおかつこの程度貸し出しを増加せざるを得なかったという心情にあることを御了承願いたいと思うのでございます。
  13. 堀昌雄

    堀委員 もちろん八月までで約二千五百億円くらいの揚げ超になっておりますから、貸し出しがふえることは当然だと思うのでありますが、どうも私は全体として見ておりますと、市中銀行日銀に対して貸してくれというときに、いろいろ査定をなさり、窓口で締めておいでになることだと思います。これは日本銀行が非常に気前よくお貸しになった例はあまりないのじゃないか。不断に締めておるのであって、慢性的な窓口規制ということで日銀窓口はなかなか貸してくれないと市中銀行も思っていらっしゃると思うのでありますが、にもかかわらず、実はだんだんとふえてきておる、こういうことでありますと、いかに高率適用四厘、六厘というようなものをおつけになっても、ほんとうに貸してほしいということになれば貸さないというわけにはいかないような仕組みになっておるのではないかと私は感じるわけでございます。準備率をお上げになったらその分を積み上げる、あるいは高率適用金利を払いましょうということになって参りますと――私は今の金融の問題でちょっとあとのことに関連しますけれども引き締めというものがほんとうに確実に効果が生まれにくいような条件が、原因と関連して私はあるのではないかと感じますが、その点について窓口での規制といいますか、引き締めとおっしゃることは、本来どの程度に実際は力があるのか、やはり何らか他の法律的に措置か何かがない限りは、率直に申すと、狭くはなるが底抜けといいますか、断わり切れないというような条件うしろにあるのではないかという点が感じられるわけでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  14. 山際正道

    山際参考人 この点は年初来、ただいま御説明申し上げたごとく、引き締め政策をとって参りまして、現在すでに相当浸透いたしておると思います。今日の情勢においてもし銀行等お尋ねがあれば、この量的に引き締めは非常にきいてきておる。われわれとしてはほとんど新しく金融的に活動する能力がないぐらいに強くきいてきておる、こう答える、だろうと実は思います。が、私どもといたしましては、なかなか今日の段階に相なりますと、金融措置だけでこの大きな力、勢いというものをとめることがなかなかむずかしい。むろん取引の平和を害し、あるいは手形の不渡りを生ずる、あるいは企業が取りつぶされる、あるいは銀行が店を締めるというようなことがあれば別であります。そうでなしに、最小限度経済運営を円滑に進めながら、しかもよけいな資金は極力抑制していくということに相なりますと、どうしてもこの程度資金というものは供給せざるを得なかったということに相なります。私といたしましては、現在の事態はただに金融措置だけで解決し得るものとも思いません。そこで、財政上の措置としてもいろいろ御配慮を願いたいし、また行政上の指導等の方面においても、その基本であるところの投資意欲自体あるいは投資計画自体について、根本から一つ調整をおはかり願いたいということでお願いをして参りましたわけでございます。今回の国際収支改善対策として政府で御発表になりましたものの中にも、その財政的手段と同時に、また行政的手段考えられておりまするということは、これらのものが相待ちましておそらく今後相当効果を発揮して参ることであろう、かような事態考えております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 大体原因については伺いましたので、今度は現状、症状でございますが、今、非常にはっきりしない言葉でございますがデフレという言葉がございます。今の現状は私はもうデフレ政策が行なわれておるというふうに感じておるわけでありますが、日銀の方では、最初お話をいただきましたが、現状をどういうふうにお考えになっておられますか、伺いたいと思います。
  16. 山際正道

    山際参考人 巷間いろいろ言われますデフレ政策なるものは、その意味するところが非常にはっきりいたしません。が、もしそれが経済取引を円滑に行なうのに通貨の童が足らない。そのために方々に摩擦を生じていろいろな社会的な犠牲を生ずるという意味であるならば、決して現状デフレ段階に入っておるとは考えておりませんし、またそうすることは賢明でない。もっとさかのぼってもとを断つことによって、さような症状に入ることをとめていく方がより賢明であると実は考えてやっておる次第でございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 その次に、先ほどお話しになりましたが、国際収支赤字は短期間には、なかなかこれまで大規模に発展をしてくると回復が期待しにくいから、長期にわたる引き締めをやらなければならない、こういうふうにおっしゃったわけであります。日銀としては国際収支の回復の時期を大体いつごろとお考えになって引き締めをおやりになるつもりなのか、その点を一つ伺いたいと思います。
  18. 山際正道

    山際参考人 現在考えておりますことは、これはなかなかむずかしいことでございますけれども、少なくとも来年の今ごろ、すなわち来年の下期ごろには国際収支均衡を回復するということをめどにして策を進めたい、かように考えております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 来年の下期に輸出入バランスが回復をするということになりますと、私は大体鉱工業化生産がある程度横ばいの状態にならないと、そういうふうにはならないのではないか、昭和三十三年の例を見ましても、三十三年は鉱工業生産はずっと横ばいでございます。そういたしますと、来年度もそういうことで、あのときは在庫投資の関係で今度より問題は簡単であったかと思いますが、今度はもっと症状が深部に達しておる状態に対して、来年の下半期終わりごろに回復するということになるならば、私は当然鉱工業生産というものの動き方はほぼ横ばいでないと、輸入の増加を押さえ切れないのではないか、こう考えておりますが、いかがでございましょうか。
  20. 山際正道

    山際参考人 実は私は、今申し上げましたような目標でやって参ります場合に、鉱工業生産が横ばいと申しますか、何%ぐらいの増減によって落ちつけるかというこまかい計算を持っておりませんので、はっきりしたことは申し上げかねますけれども、どうしても抑制措置をとって参ります関係上、鉱工業生産が少しスロー・ダウンするということは避けがたい結果であろうと私は考えますが、よく均衡をとりながらそういう趨勢に持って参りますならば、経済上大した破綻を生ぜずしてその目的を達し得るではないか、現在のところさように考えております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 実はこの国際収支均衡を回復する問題と、先ほどからお話のありますあまり無理のないように経済調整したいとおっしゃる、この考え方とは、ちょっと根本的には対立をする問題があると思うのでございます。国際収支をバランスさせるということのためには、ある程度いろいろな抑制というものをかなり強くやらなければならない。病気が重ければ重いほど治療についてはかなり思い切ったことをやり、長期にわたってやらなければならないというのがわれわれの側の医者としての原則でございます。経済でも私は同じだろうと思います。要するに、なまはんかな治療を長く続けておれば、病気はなおらないというのがわれわれの現在の医学の考え方でございますから、そうなりますとどうしてもここでかなり思い切ったことをやらないといけない。どっちをとるか、病気を早くなおすためには、体に少しこたえてもなおすという側の考え方と、もう少しゆっくりと、長期間かけて養生をしようということと、二つ態度があるかと思いますが、総裁はいずれの方を重くお考えになりましょうか。
  22. 山際正道

    山際参考人 その点はなかなか経済診断上むずかしい問題でございますが、私といたしましては、一方において患者の体力というものを考えなければならない、今日まで発展をいたしまして、相当内部蓄積も多くなって、いろいろ風雪に耐えるだけの力も備わって参っておるように思いますので、相当きつい手段はとる必要があると思いますけれども、そのために角をためて牛を殺すようなことには及ばずして、なお大体所期の目的が達成される、かように考えております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 全くお話のようにいけば、私はもう山際さんは名医だと頭を下げざるを得ないわけでございますが、やはり問題は、最初お触れになった、体質が十分強いのかどうかということが、私はこの問題の非常に重要な点になるのではないかと思います。ですからほんとうに体質が強ければかなりな引き締めに耐えられると思いますけれども、その中にも、実は体質というのは、人間ならば体が一つでございますけれども経済の問題の場合には大企業中小企業という格好で全体が一つの体質ではなくて、強い体質と弱い体質が混合いたしておりますから、なるほどその強い部分は耐えられる。しかし一番弱いところにピントを合わせるとすれば、それは相当ゆるやかでなければならない、こういう格好になる点に、私は人間の体より少し日本経済の方は――諸外国は大体人間の体に近いようでありますが、日本経済構造はどうもその点バランスが少し違いますので、ここで非常に問題になってくる。そういたしますと、かつて池田さんが中小企業の二軒や三軒つぶれても大したことはないじゃないかとおっしゃった時代があったわけでありますが、いみじくも今の引き締めをする際の資本主義的現象をそのまま率直にお述べになったことじゃないかと感じますが、そういう場合の見通しであります。一番弱いところにピントを当てながらおやりになるのか、一体どういう体質としておやりになるかをちょっと伺っておきたい。
  24. 山際正道

    山際参考人 実際問題といたしまして、現状において企業設備拡張の条件を備えておるのではないかと思われる点は、主として大企業の側だと思います。むしろ中小企業の場合におきましては、自由化を控えて国際競争場の合理化要求が非常に強うございます。またその必要もあろうかと存じます。従って、今回の引き締めにあたりましては、まずその間を差別いたしまして、なお引き締めて大丈夫という方面には十分な圧力を一かけますけれども、この点は手心を用いねばならぬということで、たとえば先ほど申しました中小企業方面の金融問題につきましては別段の考慮をするという、やや複雑な処置が必要かと実は考えております。前回の引き締めの場合にも私はそう考えておりました。極力今度もその間は差別していきたいと存じております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 過去の例によりますと、いつも日銀政府もそういうふうな気持でやりたいとはおっしゃるのですが、結果としてそうなっていない事実があるわけでございます。これはやりたいという希望とやる人たち、これは市中銀行が主体でありますが、立場がちょっと異なっております。市中銀行の方は、さっき最初に申し上げましたように、多量の貸し出しをやっておいでになるわけで、その大企業設備投資行き過ぎの本体でありまして、その密接さの程度においてはこれはもう不可分な状態にある。そうして、中小企業の方は市中銀行とのつながりはきわめて弱いということになりますと、私は、金融引き締めという格好は、幾ら御希望になっても御希望の通りになかなか進まないのではないかという不安がいたすわけであります。今回のいろいろな取り扱いについて、前回と何か異なる、取り扱いを新たにおやりになっておるかどうかについて、今、選別と言いますか、別の方法とおっしゃったことについて、新しく何かこの前と異なっておやりになっておる方法があれば承りたい。
  26. 山際正道

    山際参考人 金融措置はいつも大体同じようなことになりますし、またただいま申し上げました前回の場合においても、中小企業にそのしわが寄るということがないように、極力バランスのとれた措置をとっておりました。そのためには無論金融機関自身も努力しております。のみならず、特殊の政府金融機関の側からいろいろ設備資金を特に中小企業のためにお流し願うということもいたしております。先般も大蔵省から各金融機関に通牒が参りまして、公定歩合いが上がったけれども中小企業の方面においては金利はなるべく上げないように、また少なくとも今まで貸し出しておる中小企業に対する融資の比率、たとえば全国的に申しますと、市中銀行、地方銀行を通じまして三十何%かの中小企業向けがありますが、その比率を上げこそすれ落とさないようにというようなこまかい配慮はいろいろ出ておるように伺っております。従って、これが単に通牒のみならず、どの程度実現されて参りますか、十分にその点の監視を続けて参りますならば、御心配のような点が極力少なく済むのではないかという考え方であります。特段に何か新しい措置考えるという程度までにはまだ至っておりません。
  27. 堀昌雄

    堀委員 大蔵省との関連もございますので、この問題はここまでにいたしますが、私は何らかやはり新しい措置がとられなければ、歴史は繰り返すという危険が非常に大きいのじゃないか、特に前回に比べて今回の方が私は大きいのじゃないかと心配をいたしておるわけでございます。設備投資につながっております資金は、やはりある程度継続的な資金供給ということになりますので、どうしてもこれを削減するということは、銀行側としてもなかなか私は困難な問題だろうと思いますので、前回に比べてその危険がさらに強い状態にある中で、新しい何らかの措置がとられないといたしますならば、希望に反した結果が生ずるのではないかという点を私はちょっと心配をいたしますが、この点については、特に日銀側としても何らかの方途を一つ考えが願えれば非常に幸いだと考えるわけでございます。症状はそういうことでございますが、七月から一厘お上げになり、九月末一厘お上げになって、九月末の様子はまだ今お上げになったところですからわからないと思いますが、そういう治療をなさったところで、大体今の症状はおおむねお考えになったようにいきつつあるかどうか、ここをちょっと伺っておきたいと思います。
  28. 山際正道

    山際参考人 七月に公定歩合を一厘引き上げます直前に、大蔵省とも御相談いたしまして、一割設備投資金融の削減方を要請いたしました。それについて最近またその実績がどうであるかということをいろいろ大蔵省の方と御協力いたしまして、調査をいたしております。まだ最終的な結論には、ごく最近のことでありますから、報告には接しておりませんけれども、中間的な感想といたしましては、大体において所期の目的は達成しておる、あるいは結果としてややそれ以上に上回る削減が行なわれ得るのではなかろうかという報告を実は聞いておりますので、この点は総合的にいろいろとられております、すなわち金融上のみならず、財政上並びに行政上の措置が浸透いたしますならば、漸次これによって私は頽勢を挽回していくことができるのではないかと実は望みをかけておる次第でございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 新聞紙上でいろいろ公定歩合の問題等についてはやかましい議論があったわけでございますが、私さっき最初総裁お話しになったところを静かに聞いておりますと、どうも病気が発生しておるのは気がつきながら治療が少し手おくれではなかったのか、ここまで大規模に発展をしてくると、なかなか早期の回復は期待しにくい、病気がここまで重くなってくると早くなおりにくいということは、治療のスタートがおくれたのではないかと私は感じるのでありますが、日銀としてはあれでよかったとお考えになっておるのか、ちょっとこの点はいかがですか。
  30. 山際正道

    山際参考人 御承知通り、国内調整の問題と同時に日本貿易為替の自由化の問題を控えております。これはなかなか前回の場合と比べまして、その処置、処方箋の書きにくいところで、日本銀行といたしましては、日本経済現状は、ことに金融界の現状は、金利の機能が欧米諸国の金融界におけるほど鋭敏には実は働き得ない状況になっておると思います。従って、むしろ金利の方面よりも量的税制の方がきくという体質と申しますか状態考えますので、すでに申し上げました通り、四月からそれにはもう取りかかっておるわけであります。だんだん事態の進むにつれまして、それを強化いたしてはおりますけれども、さっき申し上げましたように、かかる膨張いたしました経済方向のスロー・ダウンということは、なかなかそういう金融的体質を持つ日本といたしまして、金利並びにその量の引き締めだけでも十分な摩擦のない効果は上げにくいと考えます。切に政府当局としての財政上もしくは行政上の措置があわせ行なわれんことを希望しておりましたのですが、幸いそれが現在の段階においては実現の段階に入っております。これらの諸措置をあわせ用いることによりまして、この病気は大体において改善してくるのではないか、かように実は考えておるわけであります。
  31. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっと一番最初にお触れになった自由経済成長計画の問題で、私はここへ問題がまた返ってくるかと思うのでありますけれども、結局実行上の調整とおっしゃいましたが、私は計画というものは、本米計画がこうございますならば、それと同じように何らかのコントロールをする力がついていないものは計画ではないと思うのでございます。要するに、自由主義経済というところは、本来計画というものは成り立たないところなのではないか。計画をするということになると、統制といいますか、コントロールする力がその経済の中に働いたときに計画というものが成り立つというふうに私は考えるのです。どうもいろいろ国会で私伺ってみますと、言葉計画だけれども、気持は目安だ、こういうことをおっしゃった。この違いが、実は経済の担当をしておられる方に非常に心理的に悪い影響を与えている。計画なんだから、この通りに行くだろうという心理的安心感が、投資投資を呼ぶという非常に危険な状態を発生させた一つの大きな原因じゃないかと私は思っているわけです。もう一面から見ますと、現在一兆円、年末には一兆五千億円の日本銀行貸し出しというようなことは、私は世界的に例のない状態だと思うのでありますけれども、国家資金がこのような格好で供給をされるということになるのならば、反面的にある程度の統制が加えられざるを得ないような客観的な情勢も生じてくるのではないか。自分たちの資本のワクの中でおやりになることならば、自由主義経済でどのようにおやりになろうと問題はありませんが、そういうふうな点で成長計画というものが出てきたことが、ちょっと基本的な問題があるし、それが出たために実行上の調整ということが困難なことになるというふうに私は感じるわけでありますけれども、この点、自由主義経済というものと成長計画というもの、最初にお触れになった調整については一体どちらの方に比重がかかるのか、おかけになってごらんになるつもりなのか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。
  32. 山際正道

    山際参考人 むろん私ども自由主義経済体制を整備すべく努力すべきである、それが基本考えております。対外的な自由化の問題にいたしましても、なおそれに備えるために鋭意努力をしたいという気持でおるのでございます。一方また申し上げました通り一つ目標と申しますか、努力の基準を持ちますことは、これはただに政府御当局のみならず、民間にとりましても、ある意味においてはやはり一つの助けになろうと思います。問題は、今御指摘のこの両者調整をどうするか、申し上げましたように、自由経済には景気の波が起こりがちでございます。一方において、片方の計画なるものが存在するという場合に、この両者をしょっちゅうつき合わせまして、少し今行き過ぎる、あるいは少し行き足りない部分が出てくるということを常時調査してコントロールし得るような調整手段というものについては、私は一段とこの際工夫をこらす必要はあろうかと実は考えております。かくのごとくすれば、自由主義経済基本とする社会においても、ある程度経済計画なり成長計画なりというものは円滑に取り運ぶ道があるというように考えている次第でございます。
  33. 堀昌雄

    堀委員 自由主義経済には循環があるということは、私どももさようだと思っております。最近の様子は、四年目に一回はこういう状態がきているわけであります。ところが池田さんは、昨年、九%三カ年成長政策ということでおっしゃったわけですから、この表現の中には、どうも循環がない、一本調子だというふうに国民は受け取ったのじゃないかと私は思うのです。政府は循環なしの強気一本の成長だ、日銀は循環がある、私は、基本的にここにちょっと考え方の相違が感じられるわけであります。そこで、私これにあわせてちょっと伺っておきたいのは、こういうことの場合に、一般にはどうも日銀政府の方に非常に引っぱられてやられているのじゃないか、 いろいろな操作が非常におくれているじゃないかというのがわれわれの耳にすることでありますが、この中立性との関連において、今の政府は九%三年一本調子、日銀景気循環があり得る、こういう基本的なお考えの相違の上に立って、中立性の問題はどういうふうにお考えになっておるかをちょっと承りたいと思います。
  34. 山際正道

    山際参考人 この際に、日本銀行の立場について各方面でいろいろと御検討をいただくことは、われわれとしては非常にしあわせだと思います。われわれとしてはそれらの御意見を十分に参考にして進むべきだと思います。しかしながら、私どもといたしましては、法律によって与えられたわれわれの地位は十分その責任とその権限を確信いたしておるつもりでございます。ただ、私の最も配慮いたしておりますることは、日銀のみが独走いたしましても、なかなか現在の趨勢においては効果をおさめにくい点がある。できれば関係の方面、政府、産業界、金融界等を説得いたしまして、同じ歩調、同じ向きにそれをみんなそろえて進んでいくということの方が望ましい、そのために実は非常な努力を費やしておるわけでございます。それは、すでに各方面においていろいろ研究の結果の論議でございましょうけれども意見が出まして、あたかも百家争鳴のようなことになっておりますのはまことに遺憾でございます。考え方といたしましては、全体の協力を得、納得を得て進んでいくことの方が効果が多いという見地からやっておることでございますので、私どもといたしましては、法律によって認められた中立性を軽んじておるわけでは毛頭ございません。どこまでもみずからの責任において判断をいたしております。
  35. 堀昌雄

    堀委員 お話はそうだと思いますが、四月から量的な引き締めをやり、七月から公定歩合引き上げをおやりになったということは、今のお話からするならば総合的な政策もそこらで始まらなければならなかったにもかかわらず、実はやはり金融独走の格好で、四月から引き締めをやり、七月から公定歩合をやり、最後の公定歩合を上げるときにようやく総合的な施策ということになった経緯を見ますと、私は必ずしも今おっしゃったような問題がスムーズにいっておったというふうにはちょっと理解できないし、総合政策が非常におくれたということが、さっきお触れになった大規模に発展して、早期の回復が期待しにくい原因じゃないか、私はこういうふうに感じますが、その点はいかがでしょうか。
  36. 山際正道

    山際参考人 申し上げましたように、日本銀行といたしましては、その与えられた権能を最も有効に果たせるにはどうしたらいいかという見地に徹しまして、実は今日まで参りましたわけでございます。政府その他の財政行政等に属する問題につきましては、これは政府にいろいろお考えがあろうと思いますけれども、私どもといたしましては、金融問題に関する限りさような気持で今日まで参ったようなわけでございます。ただ一つやや遺憾に存じましたのは、昨年の秋から将来の国際貿易自由化を控えまして、日本資金コストをなるべく安くしたいという考え金利の引き下げが行なわれております。ところがこれに非常に時間を要した、時間を要したということは、最後に残ったのは税制の問題もございましたが、もう一つ郵便貯金の問題もございました。法律の改正によらざれば、行ない得ないという障壁があったわけでございます。事態はどんどん変わりつつあるのに、非常に機会の少ないというべきこの立法の手続によらずんば、その金利の改定ができないということであるために、やや予定より遅延いたしましたということは、私、今日率直に申しまして遺憾に思っております。
  37. 堀昌雄

    堀委員 どうも今のお話は、きょうは時間がございませんから、また大蔵省にゆっくり尋ねなければならぬ問題だと思いますが、そのときに、私一月に申したわけでありますが、ちょっとそれに触れて、預金金利が実は上がっておりません。公定歩合が二回上がりましたが、頭金金利は上がっていない。新聞で伺いますと、預金金利は上げたくない、上げない方針だというふうに総裁は申しておられるように思いますけれども、これは一体なぜか、それも経済の自然現象の中ではなくて、何か政策的に預金金利を上げないのかどうか、これを一つ……。
  38. 山際正道

    山際参考人 預金金利の問題につきましては、もしも事態が予想以上に長期化するような形成でありますならば、これは当然蓄積を増加する意味において触れなければならない問題だと思うのでございます。しかし、この際に非常に配意すべきことは、金利の関係は関連する範囲が非常に広うございます。あるいは社債の金利、ただいま申しました郵便貯金の問題であるとかあるいは税制の問題であるとか各般のことに関連をいたしますので、投資者の側からいたしましても、そうひんぱんにはこれは変えない方が計画的な貯蓄ができるというような点もございましょうし、また取り扱いの実際から申しましても、これはやや期間をかけて、考える場合に考えればいいのじゃないか。今の段階はそこまでいかずして、方向の転換を比較的短期間に解決し得るのではないかということで触れないでおるわけでありますが、将来の情勢のいかんによりまして、絶対にこれは触れぬという問題ではございません。さよう御承知願いたいと思います。
  39. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと前段にお話になったことと今とつじつまが合わないのですが、比較的早い機会に今の公定歩合を上げておる状態が解消できるのだという期待のもとに上げないのだとおっしゃったのですが、引き締めは長期にわたって来年の暮れでなければ国際収支の改善にならないとおっしゃるならば、その間に公定歩合が下がるような条件は、私は今の前段のお話ではないと了承しておるわけですが、後段の今のお話とちょっと矛盾をいたしますけれども、その点はいかがでしょうか。
  40. 山際正道

    山際参考人 長期、短期ということは、なかなかこれはその場その場の比較的な問題でございます。預金金利に手を触れねばならぬ情勢までいかぬうちに、国際収支の改善、均衡をはかりたい、かような意味で申し上げたわけでございます。御承知のように、今も申し上げましたが、関連金利も非常にたくさんございまして、これを一挙に直さないと金利のひずみが出ます。これがまたいろいろ立法関係等に手続を要しまして、そう簡単にはいかない問題であります。もしどうしてもそれさえもあえてしなければならぬという情勢判断がつきますれば、お願いしてそれもやっていただかなければならぬと思いますけれども、今のところではしばらくこの問題に触れないで進んでいきたいという程度考えでございます。
  41. 堀昌雄

    堀委員 現在の状態は、消費を抑制して貯蓄を増強しなければならぬ段階に参っておると私は思いますが、貯蓄をふやすときに、政策的に下げられた金利を上げないということは、私はどうも経済の原則的な考え方からしても納得がいきませんし、この際、それでは一年ぐらいのことは、長期か短期かが問題になりますが、私は一年という期間は長期だと考えますが、そうなりますと、さっきのように立法の問題があるからとおっしゃることならば、現在も国会開会中ではありますし、さらに通常国会がすぐ開かれることでありますが、どうも責任をちょっと立法の技術的な問題に転嫁をしていただくと、われわれはちょっと納得いたしかねるのですが、いかがでしょうか。貯蓄増強の必要性、金利を上げる必要性というものと、それを上げられない他の情勢との比較をしてみた場合に、すみやかに私は上げるべきだと考えますが、いかがでございましょう。
  42. 山際正道

    山際参考人 その点はただいまも申し上げました通り、大体の今の見込みといたしまして、各般の問題を上ずる、たとえば産業の資金コストが高くなる、輸出上の不利益を招く、いろいろな問題とも関連いたしまして比較研究いたしました場合に、もし、相なるべくはその問題に触れることを必要とせずして事態を回復し得るならば、それに越したことはなかろうと実は思っておりますので、貯蓄増強、そのために預金金利が高いことが望ましいということについては、確かにその効果はあろうと思います。その他の問題と全体的に考え合わせまする場合に、いま少しく情勢推移を見てしかるべきではないか、かような考え方で今その問題を取り上げておらぬわけであります。
  43. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとさっきおっしゃった中で、自由化を控えてコストが高くなるのに関連があるようにおっしゃいましたが、預金金利が関連があるのではなくて、貸出金利が関係があるのじゃないかと私は思うのですが、貸出金利は、公定歩合二厘お下げになって、それに伴って約定金利を全部下げろとおっしゃっているのだろうと思いますけれども公定歩合は上がってきておるわけでありますけれども、だからそのものと金利コストに関係する。金利の方は現状が上がっておるのであって、これから預金金利を上げたからさらにそれがコストに響くものではないと思うのでありますが、そこは預金金利が上がると貸出金利に影響するわけでございましょうか。
  44. 山際正道

    山際参考人 直接に輸出入品等のコスト計算から申しますると、貸出金利は問題になりません。が、問題は、要するにどの程度の期間を目安にこの均衡回復を考えるかということになろうかと実は思います。その見地から申しますると、今の産業の拡大気勢をスロー・ダウンする意味においては貸し出し金利は上げざるを得ない。さればと申して回復の期限が、基本的に預金の利息を上げてまでも長期的な態勢で臨まなければならない大勢であるかどうかという点については、いささかまだ自信を持っておりません。申し上げましたように、また再度申し上げますが、それまでも必要とする長期的な情勢であるならば、それはまたそのとき問題にしなければならぬと実は考えております。全然問題にする必要がないということは考えておりません。
  45. 堀昌雄

    堀委員 大へんしつこく伺うようですが、そうしますと、次に預金金利を上げなければならぬときは、さらに公定歩合が動くときだというふうにお考えになっておるわけでございましょうか。
  46. 山際正道

    山際参考人 私は必ずしも両者を直接に関連させて考えておりません。むしろやはり一般に蓄積の状況消費状況等の趨勢考えまして、それがいかに国際収支の改善に影響を持つかというような点を考え合わせまして、主としてその問題は考えていきたい、かように考えております。
  47. 堀昌雄

    堀委員 それはそこまでにいたしまして、最近証券業界の方で、非常に何か救済の手を伸ばしてもらいたいということが言われておるようでありますが、総裁現状では特にそういうことは考えていないというふうに新聞紙上で伝えられておりますが、この問題については大体どういうふうなお考えを持っておられるでありましょうか。
  48. 山際正道

    山際参考人 日本銀行が何か特別な金融措置をとるという必要があるかどうかという問題は、結局株式市場の価格の低落が社会的に一つの問題として大きく影響を持つに至るかどうかという見通しの問題であろうと思います。株式の売買、これはきわめて自由でありまして、原則としては、自己の責任、危険負担においてその損益をカバーすべき建前のものであろうと思います。しかしながら、それがもし社会的に影響をして、信用の秩序を破壊するというようなおそれがありまする場合は、何らかの方法において介入をするということは、これまた日本銀行の与えられた使命の一つかと心得ております。現在の段階ではまだ直ちにそこまでいく情勢とも実は思っておりませんので、率直にそのことを申しましただけでございます。限界はその辺に置いて考えております。
  49. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 関連して日銀総裁お尋ねいたしますが、最近急激に株価が下落しました。それで御承知のように一千万人くらいの投資家が非常に不安を持っておるわけであります。先日山際総裁は記者会見で、株価の対策は何も考えていない、金融措置は全然とらないということを声明されておりますが、どの程度まで悪くなったら金融措置をとられるのか。あるいはこれ以上悪化してもそのまま捨てておかれるのか。これは平素は大蔵大臣の権限でありますが、株が上がればそれに対していろいろな施策がとられるわけですが、下がるときにはどういう場合にこれの対策をやるのか。これは金融政策と関連していろいろな問題があると思いますが、最近、きょうの新聞にも出ておりますが、四大証券がいろいろ防衛の対策を考え政府あるいは日銀の方ヘもいろいろそういうものに対する注文やいろいろな要求があると思うのですが、そういう点について、現在の段階ではそういう措置はとられませんけれども、将来悪化すればどのような金融措置をとられるのか、そのことを関連して少しお伺いしておきたいと思います。
  50. 山際正道

    山際参考人 現在でも日本証券金融会社というのがございます。日本銀行資金は、証券取引を円滑にするために必要な限度においてはそのルートを通じて出しております。あるいはコール市場との関係もございます。コール市場も証券界の取引円滑に相当の役目を果たしておりますが、その情勢は見ております。それから、なお先般大蔵省の方で多少の技術的な措置をとられました。本行といたしましても、今申し上げました日本証券金融会社、日証金に対する貸し出しについては、担保率を今までは五掛半くらいに見ておりましたけれども、その持ち込んだ株式に対する担保を六掛半くらいに見るという程度技術的な手直しはいたしております。ただ大きく金融措置と申しまするほどのことは実はございません。しかし何と申しましても、最近の証券界は以前の証券界と違いまして、非常に大きく金融措置と関連を持つ大事な資本市場の一翼をになうことになって参りましたから、われわれとしては十分に関心を持ちましてその成り行きは注視いたしております。どういう場合にするかというお話になりますれば、ただいま申し上げました通り、社会的に信用の秩序を維持しなければならぬという段階に参りますれば、われわれとしても当然そこで考えなければならぬ。しからばいかなる方法をとるかということは、そのときに現われておる事態に応じて最も有効適切な方法によるということにお答えを申し上げるほかはないと思います。
  51. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 池田さんの高度成長政策のあおりで大衆投資家は一千万人以上じゃないかと思いますが、社会不安のような状態が起きた場合でもそのまま日銀は捨てておかれるのか。日銀というのは心理的な影響が非常にあるので、日銀金融的な措置をとるということだけでも相当影響すると思いますので、その辺のことだけお伺いいたします。
  52. 山際正道

    山際参考人 申し上げましたように、株価の情勢が単なる投資個人個人の利害ということを離れて、一つの社会の秩序を大きくゆすぶるということになりますれば、これはむろん日本銀行が介入すべき段階だと私は考えております。その辺は情勢をよく見まして措置して参りたい、かように考えております。
  53. 堀昌雄

    堀委員 最後に一つだけ。第三・四半期におけるいろいろな揚超、散超の関係でありますけれども、本日の新聞を拝見いたしますと、日銀の方では、外為の揚超が大体八百億円くらいになるという計算で第三・四半期における資金計画をお考えになっているように伝えられておりますけれども、大体こういうことでございましょうか。
  54. 山際正道

    山際参考人 実は私はその新聞記事をよく承知いたしておりませんけれども、どの程度いわゆる国際収支改善のための総合対策というものが今後影響してくるかということは、なかなか判断がむずかしい問題であります。ある程度は見込んでの数字かと思いますけれども、なかなか第三・四半期もむずかしい事態であるということは、私は率直に申し上げざるを得ないと思います。むろん散超期に入りまして金融的には多少楽な気持になろうと思いますけれども、一方今の外国為替の問題もございます。全体といたしましてどの程度目標を立てていくか、これは今の政策の遂行が時々刻々事態を変化させるかと思いますので、常時それらを追いまして数字を改訂して参りたいと考えております。
  55. 堀昌雄

    堀委員 それでは一応現状では八百億くらいにお考えになっていると了承してよろしゅうございますか。
  56. 山際正道

    山際参考人 新聞に出ておるという数字、今お示しの数字というものは、私の方で出しておる数字じゃないようでございます。なおその点はよく精査いたすことにいたします。
  57. 堀昌雄

    堀委員 じゃ今現状では大体どのくらいにお考えになっておるかだけ伺っておきたい。
  58. 山際正道

    山際参考人 外為関係だけから申しますと、第三・四半期は大体三百億前後の揚超は覚悟せざるを得ないと実は思っております。
  59. 堀昌雄

    堀委員 大体全体にわたって伺いました。最後に、医者というものは予後を必ず見ることが一番肝心なのでございまして、予後は大体来年の下半期には回復するという御診断のようでございます。しかしこれは結局今後の症状と治療との関連できまることでございますので、私どもは、本日お越しいただいただけでなく、今後もときどき症状も診断していただき、処方箋もときどき見せていただきたいと思いますので、重ねてお願いいたしまして終ります。
  60. 小川平二

    小川委員長 横山利秋君。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 先ほど山際さんの冒頭のお話を注意深く実は聞いておりました。おそらく書いていらっしゃったと思いますから、よほど準備をされておっしゃったと思うのです。その中にこういう言葉がございました。企業家の自信が日本では非常に強いから、それに対して一定政策的方向がはっきり示されると突進をするという状態がある。これは非常に注意をされてお書きになったと思うのでありますが、言葉じりをつかまえるようでございますが、御注意なすって書かれたと思うのでありますから、あえて聞くのでありますが、そういう企業家が自信の強い今の日本の事情では、逆に申せば、はっきりした政策的な方向を示さなかったらかかることはあるまいにというお考えが内蔵されておるのでございましょうか。
  62. 山際正道

    山際参考人 お話の前段の、どうも日本企業家のみならず、日本人全体でございますが、やや大きく幅広く動くという性格はある、これは現実の社会生活においても私は認めざるを得ないと思うのであります。従いまして、一つ目標が示されました場合に、自分のシェアということを考える、そのためにいわゆる過当競争になってもとにかくやるというような性向というものは、私は否定できないと思います。  しからばなかりせばどうであったかという問題でありますが、これは私は全体を復興期において秩序よく持っていくためには、やはり何がしかの方向なり何がしかの目標なりを示す力が親切だと思いますが、無用な競争をより一そう高める、あるいはむだをより多く費やすということを避けるためにも、そういう考え方自身は私はいいのではないかと考えております。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 抽象的な論議をしておるのではありません。私はあえて申しますけれども、きょうはあなたを私どもとしては激励する、そういう意味でいやみをたらたら述べるのではない。現在の日銀の最近の推移というものにきわめて不満を感ずる、そういう意味合いで、私はもっとしっかりしてもらいたい、もっと日銀というものがきぜんたる態度をもって、みずからの使命に徹してもらいたい、そういう意味で、私はこれから苦言を呈するのであります。まさかあなたが先ほどおっしゃったことは抽象論であって、現実的な今の課題を言ったのではないとおっしゃるはずはないと思います。ですから、こういう企業家の自信の強い日本で、ああいうはっきりした政策方向を示されたから突進したのだということは、あなたも用意の上でおっしゃったと思うのでありますが、この点については一般論でなくて具体論として、もしも高度成長政策というものがああいうはっきりした形でなかったならば、このような状態には全然ならなかったとは言えないけれども、カバーされたのではないかというあなたの所信を私は承ったと思うのでありますが、違いましたか。
  64. 山際正道

    山際参考人 私が申し上げましたところと、お述べになったところとは、やや違うように思います。私は申し上げましたように、ある程度の復興期にこの目標を掲げるということは、民間をも非常に稗益するだろうと思います。ただ問題は、申し上げましたように、自由経済体制で動いている場合に、そういう目標を掲げた場合に起こり得るいろいろな摩擦を調節するための手心なり手段なり、そういうものについて、私はなお研究を要するのではないか。そうしてそこに十分な伸縮性をもって、臨機応変に調整を加えていくということに対する用意というものを、もっともっとわれわれは研究すべきではないかということを実は感じておるわけであります。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 せっかく久しぶりにおいでになって、私どもが議論をいたしますのは、当面どうあるべきかということと合わせて、根本的に日銀はどうあるべきかという大事な議論でありますから、できるならば山際さんも歯にきぬを着せずに、この際はっきり日銀の立場というものを宣明せられんことを私は望むのであります。  あなたは七月二十一日に一厘引き上げて、わずか一ヵ月を経ない八月の下旬に記者会見で、なるべく早く公定歩合を再引き上げをするべきだというような意味のことをおっしゃいました。これが一つの導火線のようになって、やれ引き上げるべきではない、引き上げるべきだというような、あなたの言う百家争鳴となったわけであります。そういう意味ならば、七月二十一日の引き上げというものは、一厘が適当であったか、あなたの判断として、かりに二厘が適当であったと思われたのではあるまいか。一体、一カ月間の見通しがあなたには立たなかったものであろうか、そういう点については私は疑義を持つのであります。堀委員が先ほど申しましたように、もう少し手早く深度の深い措置をとったならば、このようなことにはならなかったのではあるまいかという気持があなた自身の中にも実はあるのではございませんか。七月二十一日の措置は適切でございましたか。
  66. 山際正道

    山際参考人 七月二十一日、公定歩合引き上げの直前に、先ほども申しましたが、産業界並びに金融界の協力を得まして、設備投資一割削減という問題を提起いたしました。喜んで各界は協力をするということに相なった事実があるのです。その経過も考えまして、この際の引き上げ幅、両々相待って一厘でよろしいというふうに判断いたしました。これは無論私の責任でございます。八月幾日かに再引き上げの要ありということを私が申したように新聞でごらんになったということでありますが、私はさようなことを申した記憶は全然ございません。公定歩合の問題は、引き上げが行なわれるあるいは引き下げが行なわれば、それによって説明さるべきであって、事前にそれを云々するということは、当然日本銀行側からは出るはずのものでないと思います。従って、それは私は存じませんことであります。  それから、公安歩合の操作をいたします場合に配意しております点は、先ほど申しました通り、何とか独走にならずして、上げたけれども何にもならなかったということでなしに、その機会に関係各方面に実情を訴えて、その共鳴と申しますか納得を得て、できるだけその措置効果をあらしめたいというのが私の実際経験いたしました事実でございます。さような心境のうちに、七月並びに九月の引き上げを行なったということを申し上げたいと思います。
  67. 横山利秋

    ○横山委員 その点は不十分だと思うのであります。まさかあなたは新聞やラジオをごらんになったりお聞きにならないことはあるまいと思います。七月二十一日に一厘引き上げて、わずか一カ月を経ない八月の下旬からけんけんがくがくと、あらゆる経済閣僚はもちろん、経済評論家はもちろん、ジャーナリズムはもちろん、全部が公定歩合の再引き上げを論ずるゆえんに至ったものを、一番その心臓であるあなたが、全然考えてもいなかった、思ってもいなかったということは断じてあるまいと私どもは思っておるのであります。わずか一カ月の間に、再引き上げの議論が起こるゆえんのものは、一カ月前の措置が適切でなかったという証拠ではございませんか。そう思われませんか。
  68. 山際正道

    山際参考人 いやしくも日本銀行が行ないます金融措置において、一カ月間にそういうような激変が起こるということを予想するかしないかという問題はあまりないと思います。大ていは多少の時間を置いて情勢判断いたします。いかなる新聞によって御承知になりましたか存じませんけれども、私ども日銀当局者といたしましては、その必要ありということを申した覚えは全然ございません。もし真にその場合に必要ありとすれば、その場合に具体的な措置をとりたいと思いますけれども、私はさようなことを申した覚えはありません。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 不十分でございますけれども、あえて私は、あなたの御答弁に不満の意を表して次の質問に移りたいと思います。  あなたはここで盛んにおっしゃることは、金融政策日銀に許された権限だけではうまくいかないのだということを言うておられるのでありますが、これは逆に言葉をかえて言えば、この金融引き締め政策について、あなたがその直接的な効果を疑っておられる、ないしはその直接的効果ということについての主張を非常に消極的に解しておられる。公定歩合引き上げの心理的効果だけを考えて、直接的効果を世間に認めさせようとしてはいないと考えます。そういう考えは本来日銀考えであってはならないはずでありまして、金利引き上げ政策効果をみずから放擲しているようなものだ、私はそう考えられてならないのであります。大体三十二年のあの金融引き締めが短期間でうまくいったという点について、私どもはあのとき議論をしたわけでありますが、短期間でうまくいったということは、日銀政府のその話というよりも、日銀も用意、手段が適切であったと思う。同町に政府の閣僚間における意見の不統一というものが急速に解消されて一本になった。今回は、だれが考えても、政府日銀の間にほんとうに見苦しいばかりの意見の不一致があったとみんな思っておるのであります。こういうことはないとおっしゃるならば、どうしてそんな話が世間にそうも伝わるのかということに御反省を願わなければならぬ。閣僚の中で、ある者は引き上げるべきだと言い、ある者は引き上げるべきではない、総理大臣までが、通産大臣までが、大蔵大臣までが、金利引き上げについて車中談を発表し、新聞記者会見をやる、こういう状態について、日銀総裁として、どうお考えでございましょうか。
  70. 山際正道

    山際参考人 むろん、すべての人か社会の事象について自分の意見を述べることは自由であります。ただ、今のような状態は、日本銀行としては実に迷惑千万であります。従って、相なるべくは、さような問題はむしろ専門家の力におまかせ願うほどの、何と申しますか、態度に出てもらいたいことがわれわれの希望であります。  ただいまいろいろお述べになりましたけれども、私は金利機能を軽視するものではありません。これは世間がそれほど問題にするだけやはり日本においても金利機能の影響というものはあるものだと私は信じております。ただ、現実の問題といたしまして、欧米金融界におけるほど金利操作というものが鋭敏に働くという体質には実はまだなっていないという気がいたします。そこで、事態は遺憾でありますが、過去にもその例がございましたが、金利操作だけで鎮静できる場合もあります。またそれだけではいかぬ、もう少し幅広く各界同じような歩調の統一を求めなければならぬという事態もあろうと思います。今回はその事態が自由化の問題あるいは各秘の合理化要請等を控えまして、金利機能だけではなかなか十全の目的を達しがたいと思いましたので、つとに私は各方面のその目的達成のための協力を求めておったわけであります。従って、政府におかれてもあのような御決定を願ったということは、私としては実は満足をいたしておるわけであります。そのことは決して日本銀行が与えられた機能を放棄したということではないと確信をいたしております。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの確信で、それが社会がその確信を認めればいいのです。けれども残念ながらその社会はあなたの確信を今回は認めていないのです。これは多くの経済評論誌、多くの新聞、多くの人によって語り伝えられておるところであります。私は今回の体験というものはきわめて重要な実績を残してしまったという感じがしてならないのであります。何のために数年かかって日銀法の改正が学者間であるいは委員の間でけんけんがくがくとやって、そしてああいう終末を告げておるのか、それが今回このような経済引き締めの一番せとぎわの中になると、日銀は自分の主張が政府のペースに巻き込まれてしまって、池田さんが金利引き上げたという印象しかだれも持っていないのであります。将来日銀法の改正をあらためて議論いたしますときに、今回の経験というものに大きく左右されるということを私は心からおそれるのであります。ところが、いや、そうではない、あくまで日銀がイニシアチブをとって、この金利引き上げという問題は日銀が責任を負ってやったのだということが、どこをもって立証されるのでございましょうか。それでどうしてあなたは国民に対して説得力ある説明をなさろうとするのでございましょうか。
  72. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの点は、私としては非常に賛成でございます。私自身としては、私の判断で決行したという確信は抱いております。ただ申し上げましたように、なるべく関係者方面に同調を求め、なかなか金利政策だけでは解決しないならば、他の方面にも同じような施策を求めるという努力は払うべきだ、それは私は払ったつもりであります。しかしながら決定自身は、これは私どもがその責任において決定いたしたことでありますので、お尋ねのような御批判を受付けることは非常に残念でありますけれども、私どもといたしましては、さような確信で実はおるわけでございます。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 あえて私がいろいろ苦言を呈しておりますのは、冒頭に申しましたように、ぜひ一つしっかりしてもらいたいという気持で申し上げておるのでありますから、どうぞあなたの今おっしゃることが将来にわたって継続されるように私は心から要望してやまないのでございます。  もう一つ、いやみみたいなことで恐縮なのでございますが、お伺いしたいと思うのは、こういうことなんです。それは予算委員会でも本会議でもいろいろな議論が出ておるのでありますが、私ども考えまして、今の金融引き締めの非常にシビアな情勢国民の皆さんに十分知ってもらう、そうして自覚してもらうために必要なことは、今どうなっているかということと、どうしてこうなったかというその責任の帰趨を明らかにすることだ、こういうふうに考えておるのであります。あるいは山際さんにそういうことを聞くのは少し間違っておるかもしれませんが、私ども考えますのは、何か政策転換という印象を与えることをおそれるの余り、今やっていることは間違いないのだということだけを言って、一番大事な、今非常に危険な情勢ですよということを率直に語ることが不足しておる。そういう考え方がしてならないのであります。この点について、あなたの差しつかえない範囲でけっこうでございますから、率直に御意見を伺いたい。
  74. 山際正道

    山際参考人 私といたしましては、その点は非常に大事な点と思います。機会あるごとに、今春来、私の見る経済の前途というものについては、何と申しますか、俗に申せば、しばしば警告を発してきておるのであります。また機会を得ては、できるだけ現状のありのままを国民に訴えて協力を求めるという方途を尽しておるつもりでございますけれども、力及ばず十分にその成果を上げていないという感じもございましょうが、非常に私は大事な点だと思いまするので、この点は将来とも極力努力をいたしたいと考えるのであります。いかなることを過去において申したかということは、たとえば銀行大会における私の演説でございますとか、あるいは各協会における私の公表されたいろいろな所見というものをごらんいただけば、私といたしましては、あらゆる機会をとらえて、率直にその事実を申して訴えて参ったつもりでございます。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 先ほどあなたがおっしゃいました中小企業の問題でございます。三十二年の経過もありとおっしゃいました。しかし三十二年はあなたもよく御存じかと思うのでありますが、池田さんのときに、私ども大蔵委員が一生懸命に、それこそ超党派で政府金融機関あるいは買いオペ等を実施して、いささか大蔵委員として自負したことがございました。ところが、その年の全金融機関の大企業向け及び中小企業向けの金融の実績を見ますと、大企業には驚くなかれ激増して、中小企業には激減をいたしておったものであります。ああいう失敗を今回は繰り返してはならぬと痛感をしておるのであります。ですから、今政府金融機関にどんなに金を投げ込もうとも、買いオペをどのくらいいたそうと、それを結局大企業が利用をして、手形をおそくしなくてもいいものをおそくしたり、あるいはまた系列融資を大銀行から大資本にしたり、そういう大本で根っこをつかまえなければならぬと痛感をされておるのであります。その点では、先ほどあなたがおっしゃいましたように、融資割合をきちんと抑えておくということも一つ必要だと思います。また私どもはかねて主張しておるように、先般の千葉銀行から埼玉銀行に至る集中融資ということを何らかの方法で規制をしなければ――全体的にこれをきちんと規制をしなければ、ただ目先だけのことばかりやってもだめだということを痛感しておるのであります。その点では中小企業金融を確保する、歩積み、両建は遠慮させるというような抽象的なことが実際に三十二年の経験からよってああいう失敗を繰り返されない方途というものが保証されるのかどうか、今の現状でそれが守られるのかどうか、百尺竿頭一歩を進めてもう一歩具体的な措置をとらなければならぬのではないか、こういうことを痛感するのでありますが、いかがでしょうか。
  76. 山際正道

    山際参考人 御指摘のように三十二年の経験も私はよく記憶をしております。あの場合に中小企業の俗に言われる黒字倒産というような問題を惹起しないために極力配意いたしたつもりでございます。今回も前回にも増してその問題は重要だと考えます。これは大蔵省ともとくと相談をいたしたいと思います。すでに申し上げました通り、大蔵省におかれましても、数日前にこれに関するこまごまとした通牒を出して、この際における中小企業というものを不当なるしわ寄せ、あおりを食わぬようにという、配慮を十分にいたされております。私どもといたしましても、十分取引関係を通じましてさような弊害の起きませんように、今後できるだけの注意を払っていきたいと考えております。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 あとの委員の御質問がありますから、私はこれで終わります。ただいまの問題を具体的に解明することができず非常に残念でございます。くれぐれもその点を私は要望をいたしまして質問を終わります。
  78. 小川平二

    小川委員長 春日一幸君。
  79. 春日一幸

    ○春日委員 私は今まで日本銀行がおやりになって参りましたさまざまな金融政策、通貨政策、これは堀君も横山君も指摘されました通り、たとえば昨年の八月に二厘下げられて、また一月に一厘下げられた、当時われわれは強い批判をいたしました。そうかと思うとすぐ四月に資金量を減らす措置をとられ、七月には逆に公定歩合を上げられ、九月にはまたもやそれを高められた、そういうような工合に、なされることが凹凸がはなはだしいのでございます。このことは日本経済をしてはなはだ歩みずらくしておる、つまづきやすくしておる結果、さまざまな障害が、大きな業界にも、わけて中小企業にも多く現われておること、これは御承知通りであろうと思うのです。従いまして、こういう問題についてはわれわれははなはだ強く非難的であり、全く不満であります。けれども、こういう論議は本日わずかな時間では尽くすことはできないと思いますので、主としてこの際今横山君からも述べられました通り日本銀行は何と言っても日本銀行法第一条が明示をいたしております通りに、究極的には円価値をいかに確保するかということにあろうと思うのでございまして、そのためには国家的な信託を受けられておると思うのでございますが、こういう意味で今さらながらもう一ぺん確かめておきたいと思いますことは、日本銀行法第一条の中に、「国家ノ政策二即シ」こういうことが書いてあります。私は日銀総裁特に山際総裁は、この「国家ノ政策」というものをどのように理解をされておるのであるか。すなわち、時の政府政策というふうに読んでおられるのであるか。すなわち「国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為」云々という文字のもとに、こういう「国家ノ政策」という文章が明示されておるのでありまするが、「国家ノ政策」というものは、そのときどきにおける政府政策考えられておるのか、それとも円価値を確保しなければならぬという民族的至上命令の方から判断されて、そこには政府政策ももとより含まれてはおるけれども、そこにさらに大きな規模において国家経済というものが一つあって、それを発揮せしめることのために、日銀はいかにあるべきか、そこの中から通貨政策あるいは金融政策信用制度を確保するための諸施策日銀独自で案出されなければならないと判断されておるのであるか、この問題は重要な問題であろうと思いますので、山際総裁がこの第一条を理解されておるあり力について、まず第一番に伺っておきたい。
  80. 山際正道

    山際参考人 実は今お示し下さいましたことは、私が当時大蔵省に在勤いたしまして、銀行局長としてみずから立案いたしたものであります。私は、その字句は具体的な特定の政府のことを言っておるつもりはございません。むしろ政府なり国会なりを通じて国の方針として認められたものがあれば、それに従っていくのが日銀の当然の義務と思いますけれども、ただ一つ御指摘のように通貨価値の安定維持ということは、これは至上命令でございます。その至上命令を侵害しない範囲においては、今のような要請に対しては極力協力していかなければならない、かように実は読んでおるわけでございます。
  81. 春日一幸

    ○春日委員 私は理解のあり方としては正しいと思う。あなたが案を書かれて、それを審議した国会の意思もまたそこにあろうと思うのでございます。先般来平岡君、私たちがここで強くあなたに論じて参ったのでございますが、いずれにしても国立銀行の使命というもの、性格は、政府のらち外にあってしかるべきものである。きょうの政府はあしたかわる。たとえば今日池田さんがああいうことを言っておられるけれども、同じ保守党の中でも、たとえば藤山さんあたりが、そのステップマンになられるような場合には相当変わってくる。特にまた社会党が組閣するということになれば大転換をする。そういうようなときに、そのときどきの政府金融政策あるいは経済政策日銀が追随するということになって参りますならば、この第一条の精神というものが意義をなさぬと思う。かかる意味において、池田内閣の所得倍増計画とか、高度成長政策とか、こういうようなものはある程度むろん国の経済目標の中の一部ではあろうけれども、それが全部ではない。だから私は時の内閣によって、あなたが金融政策や、あるいはまたいろいろな通貨政策について大きな圧力を受けておられるのではないか。こういうことについて、われわれはもとよりのこと、今横山君の指摘されたように、広範なる国民各階層の中で大へんな不信感というものがあるのであります。日銀というものは、われわれ日本民族の独自のものである。そうして公定歩合のごときも、これは日銀に与えられておる専属固有の権限であって、あなたが大蔵大臣なんかと相談さるべき筋合いのものではない。あなたが日銀政策委員会にかけて、そこであなたがかくあるべしと判断をされたら――日銀政策委員会の中で政府から出ておるところの二人の委員は、大体これは表決権すらも制限されておるくらいなものであって、日銀政策はかくあるべしと考えたら、池田さんが何と言おうと、水田さんが何と言おうと、あなたがばんとやっておけばよろしい。それをあなたが会ってみたり話してみたり、ごちゃごちゃされておる経過が一々新聞に出てくるものですから、それでこれは日銀というものは機能を喪失したのではないかと、期せずして国民の心の中に不安感がわいて、少なくともその信用の総元締めでありますところの日銀が――その日銀の生命は信頼感、国民信用の度合いいかんにかかって、そこに初めてあなた方の機能が果たし得ると思うのでございます。こういう意味におきまして、今後は池田さんが何と言おうとも、水田さんが何と言おうとも、銀行局長なんかがとぼけたことをぬかしても、全然そんなことは片耳にもはさまないで、少なくとも日本国民に円価値を委託されたその責任を痛感して、断々固として所信を貫いていくか、志入れらずんば、辞表をたたきつけて国へ帰る、このくらいの決意を持って事に当たっていただかなければならぬし、われわれがことさらにこのことを強調しなければならぬような、そういう背景にあることをきわめて遺憾に存ずるものであります。この点十分一つわれわれの意のあるところを御銘記願いたい。  そこで私は、そのような見識の上にあなたが立たれて、今これからお伺いをしますが、三、四点の問題について、日銀としての独自の見解を明らかにいたされたい。日銀景気観測をいかに行なっておるか、円価値の確保を国民から信託を受けた最高の責任者として、その見通しをどのように立てておるのであるか、この機会を通じて日銀の見解を明らかにお示しを願いたいと思います。  その第一点は、日銀国際収支回復の見通しをどのように立てられておるのであるか、この一点についてお述べを願います。
  82. 山際正道

    山際参考人 現在の国際収支状況がいつ均衡を回復するかというめどにつきましては、実は私ども考えは先ほどお尋ねがございましたのに対しましてお答えを申し上げました通りであります。大体において来年の輸出期には均衡を回復したいというめどでやっております。その点は日本銀行といたしましても十分に検討いたしまして、そうして十分円滑な経済運営を維持しながら、しかもなおきびしく押えるべきところは押えて、そのくらいのテンポでもって回復をはかっていくのが妥当ではないかという考え方で今やっております。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと日銀景気観測も、特にこの国際収支に対する見通しも、これは回復期は池田さんは大体において昭和三十七年の輸出期の、なかんずく十一月ごろにとんとん、そこから黒字のきざしが現われるのではないかと予算委員会で述べられておるところでありますが、日銀の見通しも、大体池田総理の見通しに合致したものでありますか。
  84. 山際正道

    山際参考人 総理大臣が答えられたと言われるところも、各種の、政府その他の持つ材料から積み上げられた結果だろうと思います。おそらく同じような材料を基礎にいたしまして、私どもの方でも判断を立てておると思いますので、別に打ち合わしたわけではございませんけれども、大体において来年下期という目標で進んでおることは事実でございます。
  85. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、昭和二十八年の不況時代、昭和三十二年における金詰まり、こういうようなときにおきまする金融引き締め政策というものは、その記録をたどってみますると、昭和二十八年のときには大体十二カ月間、昭和三十二年のときには八カ月問大体引き締め態勢が持続されました。そこで日銀の見通しといたしましては、今回立てられましたところの総合引き締め対策、これが持続される見通しは大体において来年の今ごろあるいは十一月ごろ、かくのごとくに見通しを立てられておるのであるか。それとももっと早期にこれは緩和され得ると見通しを立てられておるものであるか。その辺に対する御見解をお述べ願いたいと思います。
  86. 山際正道

    山際参考人 もちろん国際収支状況に関しましては、非常にたくさんの要素が重なっております。対外関係等の要素もございますから、的確な見通しを立てることは非常にむずかしい仕事でございまするけれども、大体において私は来年の、今申し上げました程度の回復を期するためには、せっかく立てられました総合対策というものは、やはりなお明年に入ってその近くまでは持続されなければむずかしいだろう、かように考えております。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、やや明らかになりましたことは、この金融引き締めの総合対策、こういうものは向こう大体一カ年間、半長期にまたがって強化されることあらんとも、これがゆるめられるようなことはあり得ないであろう。国民はかくのごとく了承して差しつかえございませんか。
  88. 山際正道

    山際参考人 私の見通しと申しますか、考え方といたしましては、ただいまお示しの通りと思います。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますると、これは二カ月、三カ月というような暫定的な一時的な措置とは言い切れない面があると思うのでございます。一年といいますると、今このようなスピードのテンポの時代におきまして、これは短期というよりもむしろ半長期と称すべきものであろうと思うのでございます。こういうようなときにおいて、なるほど金利政策について相当の関連施策を講ずるということは、私は当然にして必要欠くべからざることではないかと思うのでございます。たとえば社債金利の問題にいたしましても、堀君から指摘されましたところの貸出金利引き上げに伴うところの預金金利の問題にいたしましても、これは一連のバランスのある対策をとってしかるべきではないか。一カ月や二カ月や三、四カ月の問題ならば、われわれはこれを論ずるところではございません。けれども、今から来年の十一月といえば十三カ月の長い間この間日本経済活動がアンバランスのままにこれが一時的な措置の名において捨てておかれるべき筋合いのものではないと思うのでございます。たとえば郵便貯金の問題が関連すると申されまするけれども、御承知通り現在国会は開会中である。わけて十二月からは通常国会も開かれます。そういうことで法的措置、量的措置、しようと思えばきょう案を起こしてあした議決することも不可能ではない。こういうようなときに、とにかく貸出金利引き上げられた。ところがその原資は何でありますか。これは大衆預金者の金である。一兆円をこえるところの膨大な金は国家の金である。こういう国家の金は引き揚げられておるから別といたしましても、国家の金を引き揚げたについて貸出金利が高められたことによって、私は積算をいたしました。銀行局から資料の御提示を願いましたけれども、これは大幅に食い違いまして、私どもそれぞれ権威ある筋からさらにいろいろ検討を願ったところによりますと、何といってもこれは二百億近いものが銀行の増差益となって現われて参ります。日銀からも資料を提示願いましたけれども、それは相当低い数字が現われて参っておりまするが、とにかく正確には百八十何億といういろいろな負担増によりまするマイナス要件を引きまして、これは後ほど御検討を願うことに相なるでありましょうが、いずれにしてもかれこれ資金量が相当来年一年にまたがって増大することを別にいたしまして、現在の銀行資金量の中において百八十億円という、相当の収益増がみなされるのでございます。私は政策的にすなわち貯金奨励、消費抑制の政策的意図は別といたしまして、とにかく預金者に帰属すべきところのその利益を、これを銀行が自分に一方的に独占することを許すという、この日銀政策のやり方は、これは少なくとも一カ年にまたがって、しかも来年度の資金量というものは相当増大するであろう。政府成長計画によっても相当ふえていく。ふえていく中においては私は相当の増差益というものが現われてくる。こういうようなものが公正に処理ざれなければなりません。消費抑制の政策に伴って、それは十分重視されなければなりませんけれども銀行が得るところの利益というものは預金者に還元するということは、これは必要にして欠くべからざることであると思うのでございます。こういう意味で私どもの作りました、いろいろと積算をいたしました資料も十分参考にされて、半長期にまたがるところのこの金融引き締め政策によっていろいろと生じて参るところのアンバランス、社債金利の問題もあわせて考慮を願うべきでございましょうけれども、たとえば郵便貯金金利もまた同然であります。こういうことがなされなければならぬと思うのでありまするが、こういう問題について推移を見ましてから対策を講ずべしとあなたは今も述べられておりますし、この間新聞にも述べられておるようであります。今の時点においてあなたの所見は何でありまするか、あわせて御答弁を願いたい。
  90. 山際正道

    山際参考人 ただいま御指摘の点につきましては前の質問に対してお答えを申し上げた通りの心境におるのでございまして、今後の情勢推移いかんによりましては当然考えるべきものであろうとは思いまするけれども、今なおその段階にすでに入っておるというふうには実は取り扱っておりません。十分将来の問題として考慮いたしたいと考えております。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 総合引き締め政策なるものが十三カ月の将来にまたがるであろうということは、 これは短期の臨時的、一時的措置とは言いがたいと思うのでございます。この問題を十分御判断を願いまして、あらためて慎重な公正な御検討のあらんことを要望いたします。  最後に、私時間がありませんから、一点集約いたしましてお伺いをいたしまするが、中小企業に対するしわ寄せ排除に対する日銀の対策でございます。先般来の本会議でも論じられて、水田大蔵大臣も答弁されておりまするが、ここに今回の補正によりまして中小企業金融資金源として、三公庫に対して買オペレーションによって若干のもの、五百五十億のものが見込まれておりまするし、自民党さんから、その後これでは足らぬからといって、総額一千億というものが出されてはおりますが、結局こういうものは私は実際的には問題にならないと思うのであります。と申しますのは、今中小企業が使っておりますところの資金量が五兆何千億という膨大なものでございます。銀行から借りておりまする額はそんなに大きいのでございます。そういう五兆何千億の資金によって、中小企業がそれぞれ金融を受け、事業を行なっておる。ところが今回の引き締めによりまして、しわが寄って参ります。金額というものは、銀行局が何と言ったって、日銀が何と言われたところで、やはりこれは貸し倒れの心配のないところ、さらには信用度の高いところ、これは資本主義自由経済のもとにおいては、それが一つのオーソドックスな貸し出しの仕方であって、回収の心配のあるところ、信用度の薄いところ、担保のないところには貸せと育ったって貸しません。資金総ワクが今度減ってくる、減ってくれば、結局は大企業に対してはああだこうだと言いながら、設備資金が制約を受ければ運転資金、そんな形になってくると、結局貸し出し量を確保する、もとで締められておりまするから、それは中小企業にしわが寄ってくる、また大企業自体におきましても、資金量が現実に減ってくれば、これは何といったところで、現金払いを手形に、手形を払っておったところは期日の延期ということになって、これは実質的に寄って参ります。これは大きなものでございます。各地におきまして、非常にみんなが困って参りまして、今まで現金でもらっておったのが手形になり、さらに手形の支払い期日が延長されて、このごろでは二百十日の台風手形をもらったということで、大へんなことでございます。東京手形交換所においても、あるいは東京商工興信所においても、これらのその数字が歴然と現われて、日銀が把握されておる通りであります。私はこのときに、一体この中小企業金融難を緩和するためのきめ手は何か。それは財政資金の投融資、これは一時的な効果にはなりますけれども、きめ手にはなりません。きめ手ある措置をとらなければなりません。ただいま諸君によって述べられました通り、今回のこの引き締めというものも、元凶はだれか。これは投資設備がいろいろと描いたところの投資オーケストラが、こういうような形にしてしまう。中小企業者は罪もとがもないのでございます。元凶はとにかく自分でいろいろとそのしわを他に転嫁する余地があるけれども、転嫁された中小企業者は、それに耐えるか、耐えずしてつぶれるか、二つに一つしかございません。これを政策的に耐えさせる策をとり得るものは、私は日銀であり、政府であろうと思います。だから今ワクを減らすなと言ったところで、相手が減らしたらどういう罰則があるのでございましょうか。実際問題として、私は銀行に対して大蔵大臣の訓示やあるいは日銀総裁の慫慂、勧告などが行なわれても、それは決定的なきめ手になりません。何らかのきめ手になるべき措置というものが講ぜられるにあらざれば、これからの年末資金硬塞、来年第四・四半期におきますところの金融恐慌、これを切り抜けて中小企業者がその命脈を保つということが非常に危ぶまれる。あなたはこれに対して何らか深く考えられておるところがあるようでありますが、単なる勧告であるとか、懇請であるとか、協力を求めるとかいうようなそんなものではなくして、何らかのきめ手になる措置をお考えになっておる、そんなことはありませんか。またどうなすべきであるとお考えになっておりますか、総裁の御意見を承りたいと思います。
  92. 山際正道

    山際参考人 私は中小企業金融金融引き締めの際におけるしわ寄せの問題につきましては、中小企業がわが国の産業構造上非常に重要な地位を占めておるにかんがみまして、極力そのしわが寄らぬようにということを各金融機関に要請をいたしております。この点につきましては、たとえば公定歩合引き上げましても、中小企業金融の方にはその影響が及ばぬように、特に引き上げないでおいてくれ、あるいは今御指摘がございましたように、一定貸し出し比率の実績が今まで出ております。三割何がしでございます。これらのものはその率が上がることこそすれ、下がることのないようにという要請をいたしております。しかして要請なり勧告は何にもならぬじゃないかと言われればそれまででありますが、私は相当な効果があると実は考えております。むろん行政措置は同じように大蔵省がその趣旨でやっておられると思いますが、時おり情勢をチェックいたしまして、その勧告なり全体の時の趨勢に反するような現象が起こる場合には、私はそこに格段の措置を協議したいと考えておりますけれども、今のところでは別にこれという手を特に用意いたしておるわけではございません。また私の方では、三十二年の場合でもそうでございましたが、特に各支店に通牒を出しまして、その趣旨の徹底をはかって、中小企業なるがゆえに不出にしわが寄り、また不当に倒産等の起こらぬように、万全の注意を怠らず、もしさような点があれば、直ちにそれを本店に連絡をとりまして、適当な措置考える組織を実は内部では考えておりますようなわけで、この問題は実際の推移とともに、情勢に応じまして特に注意深く考えていきたいと考えます。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 御決意のほどは明らかになっておりまするし、その方向はこのように示されてはおります。けれども、私どもの心配は、それは決定的な効果をもたらさないであろうというこの一点にあるのであります。と申しますのは、先般予算委員会でも明らかになりましたが、たしかことしの七月でありましたか、中小企業に対する貸し出しシェアは三一%であったが、この八月、九月においては、わずかであるけれども、三〇・八%でありまするか、とにかくわずかではあるけれども現実に減ってきておると、大蔵大臣は心配しつつ答弁をいたしておるのでございます。わずか一ヵ月、二ヵ月でそんな工合に現われて参りました。貸し出しシェアの既存の率が減る方向に向かっておるのであります。これから年末になりますので、御承知通り、外為特別会計の揚超、それから農林中金に対する売りオペもあるようであります。日銀自体の手による資金の回収もあるようであります。税金の徴収もあるようであります。そういうようなものがいろいろとしわが集約をされて参りますると、現にその傾向が現われておるのでありまするから、その歩調がさらにテンポを早めれば、年末に至って中小企業者の破産、倒産が現われてくる。現実に去年の八月でありましたか、九月でありましたか、東京における中小企業者の破産の数字が昨年同期に比して三三・七%の激増を示していると言われておるのでございますから、そういうものが破産したり倒産したりしたあとで、何らかの手をお打ちになるということではいけません。やはり事前措置、予防措置というものが必要なことは言うを待ちません。そういうのでありますから、私は今から直ちに法的措置を講じろといったところで、これはなかなか困難ではございましょうけれども、しかしそれに見合うところの、少なくとも強い格調の勧告の仕方というものを私は関係銀行責任者を全部あなたが集められて、そうして日銀総裁として、少しでもこの率を減らしてもらっては困る、すなわち三十六年七月の実績を少しでも減らしてもらっては困る。このことを厳重に布告するとともに、全国の中小企業者に対しては、ワクを減らされたら、私のところへ言ってきてくれ、その銀行の頭取を呼びつけて、私どもの方で問題を解決してやるくらいの強い決意を銀行と全国民に対して明らかにされる。このような形でもって、法的措置によらずして中小企業者に対する被害を排除していく、あなた方としてはそれだけの良心的な行動をせなければならぬときであろうと思う。なぜかならば、あなた方の誤まりによって、すなわち下げてはならないところに下げたり、早く上げるべかりしときに上げなかった、そういうことでこういうふうになってきたのでありますから、自分でまいた種は自分で刈るという、こういう気持で、起きておりまする諸問題について、十分一つあまねく対策を講じていただきたい。そこの中の具体的な一つとして、たしか戦前その例があったそうでありまするが、中小企業専門の市中金融機関、たとえば相互銀行、それから信用金庫に対して、日銀として中小企業の特別ワクを設定するの意思はございませんか。たとえば六百億とか一千億とかいう資金ワクを設定されまして、そうして相互銀行はブロック別にある一定の金を出して、信用金庫については、全国連合会一本で日銀の国家資金を流して、そうして中小企業専門機関に対して、絶対資金量の減ってくるであろう面について、日銀自体として積極的な策をあわせてとっていくという、これは戦前かつて考えられたのか、あったのか、私はその点つまびらかではありませんが、そういうような中小企業特別ワクを設定して、そうして中小企業専門機関に国家的性格の金を流し込んでいく、そういうことについて何か御研究、御検討になったことはございませんか。
  94. 山際正道

    山際参考人 御指摘の御趣旨はよく私にはわかりました。十分尊重いたしたいと思います。現在の段階において、具体的に、一に信用を拡張することによってさような資金をつけていくということは、実は今のところ考えておりません。むしろ、今やっておりますることは、他へ回す資金を節約して、極力中小企業への貸し出しを減らさぬよう、あるいはこれが金利引き上げぬようにということを注意し、勧告いたしておるのであります。今後とも注意深くその推移をよく見まして、必要に応じてできるだけ適正な方途を考えていきたいというのが今の段階でございます。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 いろいろ総合的な問題がたくさんございますけれども、もはや時間が終わったようで、ございます。  最後に、特に強調いたしたいことは、中小企業者は金利なんか一厘や二厘、三厘、五厘ぐらい高くてもかまわない、量さえ確保できればというくらいの状態であろうし、また日本経済そのものの体質が、総裁がかつて述べられた通りそこにあるのでございます。でありまするから、金利の問題よりも資金量の問題でございます。中小企業資金量が今回の相互引き締め政策によりまして、みじんたりといえどもこれが減るようなことがありませんように、あなたの全責任において善処されることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  96. 小川平二

    小川委員長 石村英雄君。
  97. 石村英雄

    ○石村委員 時間がありませんので、簡単に、しろうととして不審に思っておる点をお尋ねしたいと思います。  実は、社会党としては、日銀総裁にはこの際大いに言いたいことがたくさんあります。まあ先ほど堀君なり横山君なりが申しましたが、この前、金融制度調査会が日銀の問題について答申を出したときに、又工的な答申を出しましたが、あのとき社会党は日銀の中立性の堅持という意見を強く出した、そういう社会党としていろいろ申し上げたいことがたくさんありますが、時間がありませんから差し控えまして、冒頭申しましたように、私の不審に思うしろうとの考えを専門家のあなたにお聞きしたいと思います。  それは、今度の日銀公定歩合引き上げにあたって、たとえば佐藤通産大臣、元の大蔵大臣の佐藤さんが、日本銀行公定歩合引き上げると中小企業にしわ寄せになるからいけないのだ、こういう言明をしていらっしゃる。また数日前の当委員会でも、大蔵大臣がやはりそのようなことをおっしゃった。しかし私は、これはしろうとの考えですが、どうも日本銀行公定歩合引き上げということと、中小企業に対して金融がこのように梗塞した現実事態のもとにおけるしわ寄せとは全然別個の問題であると思う。もちろん、風が吹けばもうかるおけ屋もあることですから、どこの部面にも全然影響がないとは申しませんが、公定歩合引き上げるか引き上げぬかという問題について、これを否定するだけの強い影響があるものとは私には考えられない。それをいかにも公定歩合引き上げたら中小企業にしわ寄せになるというようなことを言うのは、むしろ現実の、中小企業金融梗塞の事態においてはいつでもしわ寄せを非常に受けるという、その現実事態を隠蔽することになると私は考える。この点専門家として、はたしてそれほど強いしわ寄せが公定歩合引き上げによって必然的に中小企業に起こるものかどうか、御説明を願いたいと思います。
  98. 山際正道

    山際参考人 わが国の実情に照らしまして、中小企業金融の方は、実際問題として大企業に対する分よりも元来金利が高く融資されております。で、今度の引き上げもしくは引き締めのねらいは、主として大企業の方面において自粛を求めるということがねらいであります。中小企業金融金利をさらにこれ以上引き上げることによって資金の疎通を害する、あるいは少なくすることは毛頭考えておらぬのであります。従って、先ほど申し上げました通り、数日前に出ました大蔵省の通牒の中にも、中小企業に対する金融金利引き上げは遠慮してくれということをきつく各金融機関に通牒されておりますので、今回はお話通り公定歩合引き上げて参りましたけれども、それによって直ちに当然に中小企業金融金利が上がるということの変化は見ずして済むのではないかと実は期待しておるのでありますが、これはなお今後に属することでございますから、十分に注意して参りたいと思っております。
  99. 石村英雄

    ○石村委員 もう時間がないので恐縮ですが、どうも総裁は私のお尋ねしておる趣旨を誤解なさっていらっしゃるのではないかと思います。言葉が変で、実は口の中を手術しておりますので大へん恐縮ですが、お許しを願いたいと思います。  私の申し上げるのは、今度の公定歩合引き上げで、中小企業金融金利があらためて上がるだろうかということを問題にしておるのじゃない。中小企業金融引き締めというか、むしろ私は引き締まりのしわ寄せだ、こう考えるのです。そのことの方が根本問題ではないか。だから、いかにも、もし現実公定歩合引き上げ中小企業にしわ寄せになるという考え方に立つならば、公定歩合引き上げなければいいじゃないか、こういうことが一つ意見として出てくると思う。私は中小企業金融問題はそんな単純な、簡単なものではないと思う。金融が締まればそのしわ寄せは、日銀公定歩合を上げようが上げまいが、常に中小企業がひっかぶらざるを得ない制度のもとにおかれておるということです。制度というか経済の自然の姿というか、そのことをわれわれははっきり見なければならぬのではないか。いかにも、日銀公定歩合引き上げがなくさえすれば、中小企業には金融梗塞というしわ寄せがこないように考える、という結論を生むことはむしろ危険ではないか、こういうことを私はお尋ねしておるのです。
  100. 山際正道

    山際参考人 その点に関しましては、私もあなたの御説と同感でございます。当然中小企業金融にも及ぶべきだという性質のものではないと思います。それを大企業とは区別して考え得る余地は十分にあると思う。現にたびたび申します通り、その理屈に従いまして、今回は特別の通牒を出しまして、一般金利が上がっても中小企業金融金利は上げないようにということで、きつく各金融機関の自粛を求めておるのであります。まだ大蔵省の通牒は出たばかりでございまして、実績をうかがう余地はございませんけれども、今後ともその趣旨は十分注意して尊重して参りたいと考えております。
  101. 石村英雄

    ○石村委員 一言申し上げたいのですが、私の考えからいくならば、大蔵省や日銀が通牒を出そうが出すまいが、中小企業金利は先に上がっておる、中小企業に対する貸付の量は減っておる、減るということなんです。まあここはあまりこんなことで論議はしたくありませんので、私のお尋ねしている意味は大体わかりましたから、これで終わります。
  102. 小川平二

    小川委員長 この際、委員長より一言ごあいさつを申し上げます。  参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。      ――――◇―――――
  103. 小川平二

    小川委員長 証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。佐藤觀次郎君。
  104. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最近の株式市場の諸問題について、特に最近緊急を要する二、三の問題について質問いたします。  これは大蔵大臣が見えるといいのですけれども、参議院の予算委員会に行っておられるから、政務次官、理財局長お尋ねします。  御承知のように、最近株式市場が非常に暴落いたしまして、今週の初めの九日には旧ダウ平均で千三百四十五円四十銭に落ちて、七月十八日の高価の千八百二十九円七十四銭と比較すると、値下がりが四百八十四円一、一十四銭、下げた率は大体二六・五%にたって、昭和三十二年度の暴落を上回っているような数字を示しております。しかるに池田総理大臣は先日の予算委員会において、私が首相に指名されたときよりもダウは下がっていない、こういうふうに言っておられますが、なるほど旧ダウから見ると、まだ三百円近く高くなっておりますが、その実際の平均で見ますと、二十円くらい下回っておるのです。池田首相の言明が当を得ていないと考えざるを得ないわけです。このような株価の暴落に関係いたしまして、実際の動員数が三百五十万といわれ、延べ人員は一千万人以上も今投資家があるといわれておりますが、非常に不安を持っており、今後これ以上下落するようになりますと、社会不安をかもすのではないかということが心配されております。従来大蔵省はこの三年の間に非常に株が上がった場合には、いろいろの規制やまた行政的な指導をやっておられますが、こういう下落したときには一体どういうような処置をとられるのか。上がるときにはいろいろ文句をつけ、下がったときにはそのままでは、やはりいろいろな問題が起きるわけでございますが、まずその御意見を伺っておきたいと思います。政務次官あるいは、宮川理財局長お尋ねします。
  105. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御指摘のように最近非常に株価が下落したことは事実でございます。政府といたしましては、株価というものは経済の先見性と申しますか、経済の動向を反映して自然に形成されるものでございますので、株価が高いからといってこれを無理に下げ、あるいはまた低いからといって無理にこれを引き上げるような措置は、原則として取るべきでないと考えておるわけであります。お話のように、株価が上昇している過程におきまして、政府あるいは証券取引所が規制措置を講じたことは事実でございます。これはしかし、株価が上昇するからというわけではございませんで、株価が形成される過程におきまして、かなり投機的、人気的な傾向が見られましたので、これに所要の規制措置を加えたわけでございます。従いまして、今回の下落を見ましても、投機的あるいは人気的な傾向は見られませんで、むしろ経済の実態を反映しているものと見られるのであります。さようなわけでございますので、特にてこ入れするというような措置をとりませんでしたけれども、御承知のように従来加えて参りましたような規制措置、たとえば第一類銘柄に対する規制の緩和、あるいは第二類銘柄に対する売買関係の報告、あるいは値幅制限を緩和するという措置をとりましたし、最近におきましては株式売買の委託保証金の保証金率を引き下げ、あるいはまた代用証券をもって代用されます場合の担保掛金を引き上げるというような措置を講じて、適時、適切な措置を講じてきた次第であります。
  106. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 専務当局でありますから、私の聞きたいのは政治的な意見を聞きたいのでありますが、大蔵大臣がおられませんので、そういうことは申しませんが、ただ御承知のようにこの三年来池田さんが総理になられましてから、非常に一般投資家を刺激するような、いろんな機構の改革とかあるいは証券界のいろいろな手だてをしたことがあります。しかしこれは投資家がやるのは勝手でありますからそれはやむを得ないけれども政府としても今度の下落の問題については、やはり責任があるといえば責任があるというように考えております。今実は日銀総裁にもお伺いいたしましたら、社会不安が起きた場合にはやはり手を打つというような意見がございました。まだ社会不安までには至っておりませんけれども、一体どういう程度措置をされておるのか、また現在大蔵省も二、三の点でいろいろ事務的に処理をされておりますが、このままに何もしないでやっていかれるのか、また四大証券の問題とかあるいは中小証券の問題についてもいろいろ問題があるかと存じます。そういう点で何か新しい手を打たれるのかどうか、このままにほかって、勝手にやったやつは、投資家は仕方がないんじゃないかというように放任されていくのかどうかをお伺いしたいと思います。
  107. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 率直に申し上げまして、お話のございましたように、株式投資というものはもともと投資家の責任と判断において行なわれるものでございまして、値下がりによってあるいは損する人が出てくることも、ある程度やむを得ないのじゃないかと思います。しかしながら株価はやはり経済指数でございまして、これが暴落するということは経済秩序に対する案乱でありますし、またお話のように大衆投資家の保護ということも考えねばなりませんので、当局といたしましては、最近、きのうあたりから株価は多少持ち直っておることは御承知通りでありまして、いましばらく事態の静観をいたしたいと思いますけれども、さらに大幅に引き下がるというような事態が起こりました場合は、なお所要の措置を講じて参りたいと思います。
  108. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 東証理事長の井上さん等も四大証券の社長などと会って、いろいろ対策を講じておられるようでありますが、おそらく私は中小証券はもっと深刻な金詰まりがきておるのじゃないかと思われます。そういう点で投資家を保護するというようなことはなかなか簡単にできませんけれども、大蔵省は今のような状態を捨てておいて、それでも大丈夫だ、まあおそらくこのまま捨てておくと首つりなどのような事件が起きるようなことも考えられますし、それから今まで大体三年間くらいは株がずっと上がるままでありまして、下落したことがないので、今度のような場合が起きるとそういうことは相当な影響が考えられますけれども、しかし何といっても最近の投資家というのは非常に幅がふえたので、そういう点でいつまでも放任しておいていいものか、あるいはその他の、きょうも堀君がいろいろ日銀総裁にも質問しておりましたが、来年の後半期でないと国際収支赤字が黒字にならぬということもいわれておりますが、このまま放置していくならば、相当のところまで下落するように予想されます。そういう点について大蔵省はそのままま捨てておかれるのかどうか、これは天野政務次官に大臣にかわっての答弁と同時に、事務当月の方々にお伺いしたいわけです。
  109. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、今日の段階においてはいましばらく静観をするのが適当でないかと考えておりますが、今日のように株価が下落しましたのは、これは御承知のように一つ経済動向に対する先行き見通しの暗さによるものでございます。従いまして国際収支の改善その他の経済施策を講じまして、経済をできるだけすみやかに安定せしめることが、株価立ち直りの第一条件ではないかと考えております。しかしながらそれに関連いたしまして、株価が下落しておりますのは、市場内部の要因にもよると思います。三ヵ月前、七月十八日のピークを前にいたしまして、信用取引で買い建ていたしましたものが、決算期を控えましてこれを転売しておるというような事情もございますし、各会社が株式を持っておりましたのが、非常に金詰まりになりまして換金するために株を売っているというような事情もございましょうし、証券会社が金に困っておるというような事情もございましょう。従いまして、証券金融をもう少し緩和するということが必要じゃないかと思いますけれども、これは日本銀行総裁からあるいはお答えがあったかと思いますが、今日の段階においては証券金融を緩和すべき段階ではございません。しかし今後株価が暴落するというような場合には、証券金融の緩和といったようなもの、あるいは信用取引規制というようなものをもう少し積極的にやったらどうか、かように考えております。
  110. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この大蔵委員会で第二市場の問題が問題になりまして、先日その市場が開かれたのでありますが、この第二市場の今度の株の暴落というものとは関連があるのかないのか、また影響があるのかどうかということについて、これは調査官来ておられますから、調査官からお答え願いたい。
  111. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 今回の株式下落につきましては、特に市場第二部の設置と直接の関連はないと思います。
  112. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 第二市場状況、どういう状況ですか。
  113. 有吉正

    ○有吉説明員 局長の申しました通り直接の関係はございません。ただ、一部におきましての株価の下落ということが二部におきましても同様な状態で続いている、かように考えております。
  114. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一つ有吉調査官にお伺いしたいのですが、第二市場が上場されたために労働条件が非常に悪くなったというような問題で、組合側とのいろいろないきさつがあるということを聞いておりますけれども、そういう問題はどういうような処理がされておるのか。まあこの間もちょっとそういうような問題がありましたけれども、深くは入ってないと思いますけれども、そういう問題がどういうような影響を持っておるかということも、これは現実の現場に関係をしておられる有吉さんに一つ伺っておきたい。
  115. 有吉正

    ○有吉説明員 お尋ねの件でございますが、十月二日の市場第二部の発足の日に、午後十二時三十分より一時三十分まで組合がストを行なったのでございます。実際におきましては立ち会いが一時からでございますので、三十分間立ち会いに影響を及ぼしたということでございます。この原因につきましては、取引所側におきましては第二部の発足に際して売買管理等を強化する意味におきましても、管理要員を相当に充実するという意味におきまして、従来株価の公表をやっております黒板の記入という職務を才取会員に委任して行なわしめる。これに対しまして組合側におきましては、職場の狭隘あるいは有効な争議手段の剥奪ということでこれが反対を唱えた。かような原因をもちましてストライキが行なわれたということでございます。私どもといたしましては、取引所におきますところの株価の公表ということが、取引所の責任におきまして適正に行なわれている限り、黒板への記入ということは単なる技術的な問題でございまして、法的には何ら問題はない、かように考えております。取引所の活動というものが一刻も早く正常的に行なわれますように、労使間における話し合いが円満に行なわれるように希望いたしておる次第でございます。
  116. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後にお伺いしたいのでありますが、投資信託や証券の問題について、私たちが考えても行き過ぎのような、少し過大な広告や宣伝が行なわれているんじゃないかということが心配されます。前からも、これは大蔵委員会で昨年からも私たちがたびたびそういう警告を与えてきましたが、まあ大衆は、上がるときはもうかるのでどんどんやりますけれども、下がるときにはそういうことを忘れてやはり不平が起きるということは、現実の事実がそれを証明しておるわけでございます。そういう点で、大蔵省はその監督の省として、こういう問題に非常に影響力を持っておる関係もあり、また大蔵省自体投資家に対する認識を新たに持っていくということが、こういうような時期に際会して非常に大きな問題になると思うのですが、そういう点で、宮川さんは最近理財局長になられたのでありますが、一体そういうことに対してどういうような対策を持っておられるのか、その点をお伺いしておきます。
  117. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御指摘のように、証券会社の誇大な広告等もございまして、また人情といたしまして、株価は上がるものだというような気持で今まで買い進んできたという向きが相当多いだろうと思います。それが今回のような反落に会いますと、長期的な観点でじっとしんぼうして持ちこたえている人には大して損害はないと思いますけれども、換金の必要に迫られ、あるいは先行き非常に不安を持ちまして直ちにこれを処分するということになりますと、ここに損害が起こるわけであります。そこで、私ども、かねがね当委員会の御注意もございまして、証券業者に対しましては、何回となく、誇大広告をやらないように注意いたしておるのでございますが、最近の株式市況の状況にかんがみまして、なお厳重に、誇大広告をいたさないように、投資勧誘の適正化を行なうように注意いたしておる次第でございます。今後とも十分に配意して参りたいと思います。
  118. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に天野政務次官にお尋ねしますが、証券のような仕事は非常にデリケートな仕事であって、大蔵省の符に理財局は非常に膨大なものでありますが、そういうものを、一つ証券局というような構想があるのかないのか、あるいは今のままでこの証券の仕事をやっていかれるかどうかということを、これは政治的な問題でありますので、そのことだけお伺いしておき・ます。
  119. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいま御質問がありましたり、また答弁申し上げましたような観点で、証券対策につきましてはいろいろとやっているわけでございます。証券の重要性にかんがみまして、大蔵省といたしましては、証券部というものを作ろうという考え方で、鋭意研究をいたしておる段階でございます。
  120. 毛利松平

    ○毛利委員 ちょっと関連して。大体今の御説明で、株価の下落というものが経済の実勢からきておる、さりとてまた政府の高度成長経済と四大証券を中心とする非常なあおりと、いろいろ原因はあると思いますが、これはきょうは責めないで、私は具体的に、先般大蔵省でとられた処置が非常に時宜に適した処置である――しかし、現在の株価下落の深刻さというものをもっと認識してもらいたい、いろいろ例をあげて、幾らでも御説明できますけれども、それも省略いたします。従って、具体策の中で、信用取引保証の問題で、法律上三〇%以上認められておるものを六〇を五〇にしたというのを、四〇ぐらいに落とす意思がないかというのが一点。それから、日証金の問題で、東京、大阪、名古屋と約百八億円の増がありました。合計四百五十億、これをもっと四十、三十あるいは十二と、七、八、十億をも一つとふやしてやらなければならぬ。その意思はないかどうか。さらに、信用取引のいわゆる担保代用有価証券のワクの拡大ですね。全体の数が、きのう調べますと、東京だけでも九百二十五、全国では銘柄が千二百八十五あります。このワクを百拡大しておりますが、もうちょっとワクをふやす意思がないか。あらためていつか機会を見まして本質的に御質問をしたいと思いますが、この時限において、この大蔵省のとられた三点につきまして、いま少し深刻さを認識していただきまして、銘柄ワクの拡大、同時に率ですね、今までの担保率が六〇から七〇に上げられたがこの率をもうちょっと上げてやる必要があるのじゃないか。この三点をいま少し配慮すれば、かなり深刻さを解除するのに役立つのじゃないか、こういう工合に考えるのですが、その点に対する局長の御見解を伺います。
  121. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 最近の株価下落の状況を勘案いたしまして、御指摘のように、委託保証金の保証金率あるいは代用証券の担保ワクをどの程度見るか、これは御承知のようにいろいろございました。われわれといたしましても、どの程度の率にするか、いろいろ検討したのでございますけれども、昨今の下落状況から見まして、今回とった措置が適当であろうと思ったのでございますけれども、なお今後市況の状況を見まして、弾力的に考えて参りたいと思います。
  122. 毛利松平

    ○毛利委員 もう一点だけ。考え方は同じでありますけれども、ややもすると政府のやることは時宜に適した処置に対して勇敢でない。しかも七月十八日を契機として下落しておる。これに対して抜本的処置をとれないまでも、やり得るところの処置はもっと思い切って、深刻さに相応じてとってもらいたい。こういうことをお願いしまして私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  123. 小川平二

    小川委員長 農業近代化助成資金の設置に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
  124. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私は農業近代化資金の助成法案について二、三の点についてお伺いいたしたいと思います。  この近代化資金の問題につきましては、前国会におきましてもわが党から資金ワクの問題と、それから利率の問題、おもにこの二点から農林省の見解をお伺いしたわけでありますが、問題は、利子補給をいたしましても七分五厘という高率が、せっかくの政府考え方が一部の富農層だけに限定されまして、最も資金を必要とする、たとえば果樹をやりたい、あるいは家畜を導入したい、こういう中間的な層に及んでいかない、こういうきらいがあるわけであります。県によりましては、この国の補助に合わせまして地方自治体として補助しておる県もあるやに聞いておりますが、その県がどの程度になっておりますか。立川さんの方からお聞かせを願いたいと思います。
  125. 立川基

    ○立川説明員 ただいま有馬先生が御指摘になりましたように、政府がやります利子補給なりその他の措置以外に、県単独として、その県その県で特殊な事情によりまして、あるいは果樹の植裁とか農機具、ことに大農機具の購入とか、それぞれにつきまして県単独で利子補給をしておるものがございます。この数カ年の間にかなりふえて参りまして、県の数といたしましては、私の記憶では三十数県になっておると思います。  それからそういうふうな利子補給をいたしますのと平仄を合わせまして、やはり府県で保証協会を作りまして、民法上の法人格を持ちます保証協会とそれ以外の任意の団体としての保証協会と二つございますけれども、前者が大体二十九の法人格を持った団体になっておると思います。後者が、法人格を持ちませんのか大体九という数になっておるような状況でございます。
  126. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 坂村局長にお伺いしたいのでありますが、この前、私は本委員会におきまして、当時の安田畜産局長に畜産の今後の見通しその他についてお伺いをいたしたのであります。この畜産とも関連するわけでありますけれども、いわゆる近代化の方向というものについて、ただ農家がここに畜産を導入したい、豚の値段が上がったから豚を買い入れたい、あるいは少し下がったからこれもやめにしてほかの果樹をやってみたい、とにかく農家の心理といたしまして、長期の展望に立った経営計画の近代化ということじゃなくて、とかく目先の農産物の市場価値というものに幻惑されてとまどっておるというのが、少なくとも現在の大方の状態じゃなかろうかと存じます。そういう意味で、当然これは農業基本法の成立に伴いまして、農林省としても長期の展望に立った計画を持っておられると思うのでありますが、畜産と果樹、園芸に限りまして、どの程度規模のもので全国的に持っていこうとしておるのか、そしてそれにはどの程度資金を必要とするのか、局長の方からその展望についてお聞かせを願いたいと思います。
  127. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 お答え申し上げますが、直接の所管でもございませんのであるいは不正確なものになると思いますので、数字的なことは申し上げられないと思います。  御指摘のように、今後の農業の近代化という方向は、個別に取り上げてみますと何といいましてもやはり畜産と果樹というようなものが大体おもなものになってくるんじゃないかと思うのでございます。こういうものはえてして、御指摘のように非常に無計画に伸びて参りますと、たとえば価格の下落を来たすとかあるいは需要が詰まるとかいう問題がありますので、これは基本法にもございますように、需要の動向を毎年農林省は調査をいたしまして、こういうものを把握いたしまして、長期的な計画のもとにこれを進めていく、こういうつもりで考えておるわけでございます。ですから、そういう動向の実態につきましては国会にも御報告を申し上げまして、そうして長期的な展望のもとに、近代化して参りますものが中途で挫折をするようなことのないように持っていきたい、こういう考えでおるわけでございます。
  128. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 専門の局長ではないのでということで、数字の問題については全然タッチされなかったのですけれども、問題は、やはり数字に――豚を何万何千頭にするということじゃなくても、やはり大体の傾向というものをお聞かせ願わなければ、ただ抽象的に御答弁があっても納得しがたいのですが、その点についていま少し具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  129. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 畜産局では畜産についてのいろいろ今後の増殖計画、それから振興局におきましては果樹とかその他園芸作物についての今後の姿というものをおのおの描いておりますけれども、率直に申しましてそこまで大体私の方に資料もございませんし、頭にもございません。ただ方向といたしましては、近代化の方向はやはり果樹とか畜産とかいう方向が相当ウエートを持って参る、こういうことは申し上げられると思うのでございまして、お答え申し上げましたわけであります。
  130. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次にお伺いいたしたいと思いますが、私どもの党では農家の負債整理に対する法案を準備いたしておりますが、問題は、たとえば開拓等におきましては特に顕著なのでございますが、負債の整理に追われておるというのが現状であります。ですから、たとえば農業近代化資金等にいたしましても、せっかく借り入れたものが生計費に回る、前の負債の整理に回るということで本来の目的にそぐわないような形の運営がなされておるのが現状であります。この農家の負債整理という問題について、近代化資金との関連の中で、どのような指導あるいは処置を講じられようとしておるか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  131. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農家の負債の問題につきましては、全国的に見ますると、各県につきましての調査はございませんけれども、大体今までの実態から見まして、主として北海道が非常に負債が積もりまして問題が大きくなっておりましたわけでございます。その他内地の府県につきましては、特に開拓者等の場合におきましては、負債の問題が相当深刻な問題がございました。その他の場合におきましては、それらの問題に比べますと、それほど負債の問題を今直接取り上げて気にしなくてもいいのじゃないかというような程度であろうというふうに考えておるわけでございます。そういうような状況でございまするので、北海道につきましては、昨年負債整理の調査をいたしました。政府も予算を組みまして、百万円前後――百六十万円でございますか、予算を組みまして、大蔵省と農林省が一緒になって調査をいたしました。そういう資料に基づきまして、北海道につきましては非常に大きな負債をかかえておりましたので、これについての対策を、さしあたり自作農創設維持資金を使いまして、負債の整理をやろうということで今までやって参っておるわけでございます。大体今年度で一応の負債の整理を片づけよう、こういうようなことを考えておるわけでございます。  それから開拓者につきましては、御承知通り本年の通常国会でございまするが、一億の政府の予算を計上いたしまして、これを基礎にいたしまして、開拓者についての特別な融資を一つ考えたい、こういうようなこと、その他開拓者については、全体について開拓者の今まで非常に困っておる状況を解決してあげようというような、いろいろな特別な施策を講じておるわけであります。一応そういうような、特に困ったところにつきましては特別の措置を講じて参ります。一般的な問題といたしましては、現在のところ、近代化資金に関連をいたしましてどうこうしようという考えはございません。
  132. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 北海道に対して、それから開拓者に対して一億の金額云々というお話でございましたけれども、問題はさっき申し上げましたように、順送りに、せっかくの計画に基づいて負債を整理するために貸し出しを行ないましても、それがまた生活資金に回ってしまう、あるいは前の負債整理をし切れない、こういう状態になるのが落ちじゃなかろうかと思うのであります。その程度規模で、はたして全国の開拓者の負債を整理し得るような状態になっておるのか、見通しとしてはどうなんですか、そういう点をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  133. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 まことに申しわけございませんが、農地局の所管でございまするので、正確に申し上げることはむずかしいと思うのでございますが、大体そういう見込みのもとにそういう措置を講じておるというふうに聞いております。
  134. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 前の問題と関連して今の負債整理の問題等も実はお伺いしたのでありますが、先ほど非常に抽象的でありましたけれども、果樹、畜産を主体とする今後の近代化の方向についての農林省のお考えが述べられたわけでありますが、その計画に従って実施するためには、どの程度の――これは込みでけっこうでございますから、どの程度資金を必要とするか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  135. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 非常に大ざっぱな話でまことに恐縮でございますけれども、御了承を得まして申し上げますると、来年度の予算要求といたしましては、これはまだ政府部内で固まった数字ではございませんけれども、農林省が大蔵省に対して予算要求いたしております考え方は、大体公庫の資金につきましても、近代化資金につきましても、主として果樹、畜産、こういうようなものを取り上げてみますと、本年の二倍の規模で要求をいたしておるわけでございます。最終的な決定というものじゃございませんけれども、農林省の一応の目安というものはそういうようなところで考えておるわけでございます。
  136. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 問題は、たとえば今度も国が三億円の基金を用意するというようなことをやっておりますけれども、そういった額では私は全般的にいってその需要に応じ切れないのではないか、このように考えておるわけです。その点につきましては、当然これはまた来年度予算でも検討いたしたいと考えております。  次に、生産協同組合の法案について準備しておられるようでありますが、この近代化資金の取り扱いについては、今度準備しておられます協同組合法の改正の中で生産協同組合の役割というものをどのようにしようとしておられるのか。たとえば貸付限度額も生産法人には一千万円以内というような一つの基準がございますが、この生産協同組合等の場合にはどのように扱われるのか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  137. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 おっしゃる通り生産農協ということを一応前国会では考えたわけでございまするが、この前の国会で、審議未了になりましたので、その後いろいろ検討いたしまして、現在農事組合法人という形で農業の協業化を進めていくことを考えておるわけでございます。これにつきましては、近代化資金の融資の考え方は、大体限度額一千万円ということで考えておるのでございまして、実態をいろいろ当たってみますると、この前の国会に近代化資金法案が上程されましたので、それを大体当てにいたしまして、末端では、たとえば共同養鶏であるとか、共同養豚であるとか、そういうようなものがいろいろ現実には生まれております。そういうようなものの実際の資金需要状況を見ますると、私現実に行ってみましたものを見ても、大体六、七百万円から七、八百万円というようなもの、ほんとうに地道に堅実に築いたものにおきましてはその程度需要のものが多いようでございますので、大体私は、一千万円限度額で考えて参りますれば、そういう末端の協業化というものは大部分がカバーできるのではあるまいかというように考えております。     ―――――――――――――
  138. 小川平二

    小川委員長 御報告いたします。信委員会よりテレビジョン受像機及びラジオ聴取機に関する物品税の減免に関する件について申し入れがありました。申し入れ書につきましては、印刷物にいたしてお手元に配付しておきましたから、御承知おき下さい。  次会は来たる十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午後零時五十九分散会