○中川
政府委員 今御指摘の
信託統治制度の基本目的ということで、国連憲章に四つあげているわけでありますが、この基本目的というのがどういう
意味のものであるかということで、おそらく岡田委員の御
質問は、この基本目的として掲げてある四つの全部を
沖繩の
信託統治制度は満足していない、従って七十六条に合致しないということがまず第一の点だと思うのでございますが、ここにあげております基本目的というのは、これは原文で見ますと、この
信託統治制度の「ザ・ベイシック・オブジェクティブス」と書いてあります。これについては、たとえば国連自体の目的というところが第一条ですか、第二条ですかにございますが、これの方は「パーパシス・オブ・ザ・ユナイテド・ネーションズ」という、目的が何であるかということでございます。この
信託統治制度の基本目的の方は、むしろできました
信託統治をどういう
方向に持っていくべきか、施政をする場合の基本的なオブジェクティブ、つまり施政の結果到達すべき目標というようなニュアンスが強いと思うのでございます。その例証といたしまして、ここにあげておりますたとえば第四の基本目的でございますが、この第四の基本目的を見ますと、この
信託統治制度の基本目的として、すべての
国際連合加盟国に対して平等の待遇を確保しなければならない、その
国民に平等の待遇を与えなければいけないというようなことが書いてございます。つまり
信託統治制度を作る際に、国連加盟国全体に平等の待遇を与えるために
信託統治制度を作るというなら非常に論理上おかしいのでございまして、できました
信託統治をどう施政するかという場合に、各
国民に平等の待遇を保障するようにとの運用をしなければいかぬ、むしろこういう趣旨であろうかと思うのでありまして、従って、こういうことからいいまして、
沖繩がもしかりに
平和条約第三条によりまして
信託統治に付せられましたならば、その
信託統治協定には、当然この七十六条に掲げているようないろいろな四つの原則を盛り込んだ
一つの
信託統治協定ができ得たであろうと思います。しかしこれはまだ付せられておりませんので、こういう協定ができておりませんが、むしろそういうふうに解釈すべきではないかと思います。
その次の
信託統治制度にどういうものが置かれるかという規定でございますが、これは三つのものをあげております。「現に委任統治の下にある地域、第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域、施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」、この三つの制度を掲げております。われわれは、この
サンフランシスコ平和条約によって
平和条約を受諾したのでありますが、その際に、もしこれが第三条によりまして
沖繩が
信託統治制度に付せられる場合には、おそらくこの第二のbとして掲げております「敵国から分離される地域」、これによって
信託統治に付せられるのであろうと推定いたしております。それはその席上におきまして、ダレス全権の説明にそういうことが言ってあります。また大体この三つのうちでどれに当たるかといえば、おそらくbが最もそれに適合する項目ではないかと思っているわけでございます。従って、この七十七条に特に違反するということはないと思います。
その次の七十八条でございますが、これはこの条文の読み方が国会でも常に問題になるわけでございますが、これは国連加盟国はお互いに平等の原則に基づいているのであるから、
信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しないというように書いてあるのでございます。これがどういう
意味がということは、国連憲章を採決いたしましたサンフランシスコの
会議におきまして十分明らかになっておるのでございまして、これはかつて
国際連合の委任統治区域であった地域、たとえば
シリアでありますとか、レバノンでありますとか、こういうものが
国際連合加盟国に認められた際には、これは
国際連合の
信託統治地域にはしないのだ、これは独立国として
国際連合に加盟するのだ、こういう趣旨の規定でありまして、一国のうちの
一つの地域を何かの理由でその国が
信託統治制度に付するということはこの規定とは関係ないのでございまして、これは現にその前の条項におきまして、第三の理由としてあげております「施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」という規定がすでにございますがこれによって、その一部が自分の施政下にある地域を自発的に
信託統治に付するという場合が当然あることを予定しておるのであります。従って、一国の一部がその国によって
信託統治に付せられるという場合は当然あるわけでございまして、この規定にも特に違反はしていないというふうに
考えております。