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1961-02-14 第38回国会 参議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十四日(火曜日)   午前十時二十七分開会   ——————————  出席者は左の通り。    委員長     平林  剛君    理 事            北畠 教真君            近藤 鶴代君            豊瀬 禎一君    委 員            下條 康麿君            杉浦 武雄君            野本 品吉君            千葉千代世君            矢嶋 三義君            米田  勲君            常岡 一郎君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    文部政務次官  纐纈 彌三君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    大蔵省主計局主    計官      佐々木達夫君   ——————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (昭和三十六年度文教関係予算に関  する件)  (当面の文教政策に関する件)    ——————————
  2. 平林剛

    委員長平林剛君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打合会経過につき御報告いたします。前回の委員会終了後、理事会を開会し協議いたしました結果、本日は、昭和三十六年度文教関係予算及び日教組のILO提訴に関する件を議題とし、調査を進めることとし、調査の順序については、文部大臣出席を勘案して適宜定めることに決定を見ました。なお本日、文部大臣は、午前中、衆議院予算委員会、午後、本委員会出席いたすことになっておりますので御了承願います。従いまして、本日は、まず昭和三十六年度文教関係予算について調査を進め、午後、文部大臣出席を求めてILO提訴に関する件につき調査を進めて参りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平林剛

    委員長平林剛君) 御異議ないと認めます。  それでは昭和三十六年度文教関係予算議題といたします。  質疑のおありの方は順次御発言願います。
  4. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、次官、局長もおいでにならないで質疑をするということは正常な状態でないと思うのですが、会計課長に事務的な点だけまず伺いましょう。本格的な質疑は次官なり、局長が来てから伺います。  会計課長に伺いますが、まず幾つかの予算編成段階についての疑問点を伺いますが、一つには高等学校急増対策に対する予算です。これはいろいろな経過があったけれども、最終的に工業高等学校に限って補助金を出して、それに至る段階においては高等学校施設費補助金を出すということは筋が通らない。従って補助金は出さないというのが大蔵当局主張であったわけですね。ところが最終段階に、工業高等学校に限って、二億円足らずですけれども補助金を出したということは、戦後におけるベビーブームの特殊なケースであるから、だから戦後処理の一環として、三十八年から急増する高等学校生徒に対する高等学校建築補助金暫定措置として、特例として出すというのが適当だ、こういう見解に、政府部内、事務当局で一致したものと私は認識しているのですが、その点お答え願います。
  5. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 高等学校生徒急増の問題でございますが、これは御指摘のように、三十八年から始まるわけでございますが、これが対策につきましては、私ども一般校舎につきまして大幅な補助金を計上したいということで最終段階まで努力したわけでございますが、御指摘通り、最終的には工業高等学校補助金として新規についたにとどまったわけでございます。考え方といたしましては、戦後のベビーブームの一連の問題でございます急増対策という面と、それから所得倍増対策に伴う工業高等学校整備拡充という面、この二つの面があるわけでございます。結論的に申しまして、後者についてのみ補助金が認められるということで、一般的な高等学校生徒急増という問題につきましては、今後検討すべき問題だというふうに考えております。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣の所見を聞きたいと思うのですけれどもね。私が今あなたに聞くところは、あの経過からいって、そういうわけで佐々木主計官も呼んでいるわけだが、ともかくベビーブームの特殊なケースとしてあの高等学校施設についても補助金を出すことは適当だ、こういう見解に立ったので最終段階に一億九千何がしという補助金が出たと思うのです。その前段階においては、高等学校補助金を出すことは筋が通らないというの一点で大蔵省抵抗しておったわけですね。その点で、私は事務当局見解というものは、三十八年からの高等学校急増対策としては暫定的な措置としても、起債によるだけではなくして、補助金を出すのが至当だという文部省の意向が、事務当局間の折衝において前進し、認められたものと、かように私は考えているということをあなたにお尋ねし、確認願っているのです。そういうふうに了解していいのですか。
  7. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) その点が非常に問題でございますが、私ども大蔵省と打ち合わせをいたしまして考えております点は、現在ついております一億九千二百万の補助金は、これは工業高等学校整備拡充のための補助金だというふうに了解をいたしておりまして、従いまして、一般的な生徒急増に伴う補助金につきましては今後検討をしたいというふうに考えております。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点はそこでとめておきます。  それからもう一点伺いたい点は、起債がだんだんと額がせり上がっていって、最終的には三十億円になっているわけですね。この三十億円の中には老朽校舎の改築とベビーブームに伴う急増対策とが含まれていると思うのですが、その内訳は、大蔵自治省当局との話し合いではどういう内容になっているのか、お答え願います。
  9. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 高等学校分の三十億の起債内訳でございますが、実はまだ自治省大蔵省等とこの実行の面につきまして折衝中でございまして、最終的な結論はまだ出ておりません。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 所管局長にはこれはいずれ伺いますがね。そういうようなことで三十八年からの高校生急増対策として十分だという、所管局長は、認識のもとに会計課長予算折衝をおまかせしたという形になっているのですか。所管局長はそれで大丈夫だということをあなたに言っておりますか、いませんか。
  11. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 予算折衝経過を申し上げますと、ただいま問題になっております高等学校に対する一億九千二百万の補助金大臣折衝段階でついた補助金でございます。最後まで私ども高等学校急増対策ということで大蔵省折衝いたしたのであります。結論的にそういうふうにきまったわけであります。で、今日の段階におきましては、一応、工業高等学校整備に重点を置くということでございまして、高等学校生徒の一般的な急増に対処する分につきましては、今後努力したいというふうに考えております。これで国の措置が十分であるというふうには考えておりません。
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 会計課長を相手に政策論争はいたしませんが、予算編成段階会計課長が非常に努力された点は私は多とします。非常に骨を折られたようです。しかし、本年度文教予算の中で一番の欠点はここにあると思う。これはいずれ所管局長大臣と私は論争をやりますが、本年度文教予算の中で一番大きな欠点一つとして、この対策が不十分だということは指摘される。そういうふうに私は認めまして、その角度から、後日、あるいは後刻、機会あるときに大臣見解を伺います。  それから次に明解にしておきたいことですが、私は本会議でもちょっと触れたのですが、学校給食用補助金ですね。これは当初十七億何がしが全面削除を受けた。そのときの例の査定権を持っておる大蔵当局主張は、貧乏人も金持ちにも同じように給食費補助するということは、筋が通らない、これは直接、佐々木主計官から聞いた話です。ちょっと論争をやったのですが、だから補助を打ち切るのだ、そうしてその十七億という金は広く社会保障の面に使用するのが筋が通る。これが査定をやった大蔵当局主張である、この点については私は異議があり、論争をやったわけですが、ところが最終的には昨年通り復活をいたし、そうしてここに予算案として出ておる。その過程において、この一年に限って補助するのだ、昭和三十七年からはあらためて検討するのだ、こういう事務当局間に含みといいますか、申し合わせがあったやに聞いておるのですが、それは事実かどうかを伺いたい。
  13. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) そういう了解の点でございますが、それは単に事務当局の間だけでなくて、大臣折衝段階においてもそういう話が出たということを私承っております。本年度限りという意味でございますが、私ども了解では、現在のような形における学校給食に対する援助は一応今年度限りだ、従って今後の学校給食に対する国の援助がどうあるべきかということについては、別途一年間の時日をかけて慎重に検討したい。その結果に基づいて三十七年度以降の予算には対処したい、こういうふうに考えておるわけであります。全然学校給食に対する援助を三十六年度でもって打ち切って、三十七年度以降やらないというようなふうには了解をいたしておりません。
  14. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで、事務当局はどういう見解を持って、また所管局長からどういうことを聞いておるかということを聞いておきたいのです。これは本会議における大臣答弁は、現状維持の上から、さらにこれは教育的効果の面から推進したいということを私の質問に答弁いたしております。それから所管局長並びに課長としては、百グラムについて一円の補助であるが、しかし、その一円あるがゆえに運用がうまくいって、実質面においては市価と四円程度の差が生じて、それで学校給食都市部、農村部通じて均等にうまく行なわれているのだ、従って、この百グラムについて一円の補助というのは、最小限必要欠くべからざるものだという、局長課長はそういう見解を持っていると思う。そこで、本会議における大臣答弁文部省見解からして、昭和三十七年度以後においては、現行の補助額をこえるとも下回るようなことはあり得ない、文部省としては、それは了承できない、そういう立場において、今後、文部省事務当局もそういう立場を堅持し、努力するものだと、かように私は認識しているのですが、それに相違ありませんね。
  15. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 現在の百グラム一円の補助金効果につきましては、ただいま矢嶋先生からお話がございましたように、都市部農村部等との価格均衡調整をこの補助金によってはかっておるというような面があるわけであります。そこで、来年度以降の問題でございますが、たとえばそういう実態にあるということが調査の結果はっきりいたしますれば、たとえば小麦の輸送費地域差の問題であるとか、あるいは加工費地域差の問題であるとか、そういった形でこの補助金をさらに考えるという方法も考えられるわけであります。最終的にはどういう形になるか、まだ未確定でございますが、たとえばそういうような方法一つ考えられるということでございます。そこで、そういう方法をとった場合に、金額的に幾ばくになるかということでございますが、これはさらに詳細に検討してみなければ何とも申し上げかねる点でございますが、私どもといたしましては、学校給食にできるだけ多額の国の援助が行なわれるよう努力したいと思っております。
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この項について、もう一点事務当局の答えを伺っておきます。私は本会議で、学校給食用小麦粉輸入に当たって、食管特別会計が約二十一億円の利潤をあげているじゃないか、食管特別会計が二十一億円の利潤をあげておりながら、十七億円の補助を打ち切るとは何ごとか、二十一億円そのまま学校給食助成していいじゃないか、こういう角度で伺ったわけです。そうしましたところが、文部大臣は、二十一億は、まあいわば、もうけていると言えば、四億円程度学校給食用小麦粉輸入に当たって、輸入価格販売価格との差から食管会計に繰り入れられておる、こういう大臣答弁をしましたが、この数字は違っているのじゃないですか。私は食糧庁、それから文部省の内面を、予算編成段階に相当突っ込んで調査した、その出所は言いませんけれども、私はちゃんと資料を持っているのです。政府売買価格政府買い入れ価格の諸経費をこみにしたものはトン当たり幾らかということは、食糧庁並び文部省のしかるべきところを調査して資料を持っているのです。これから見れば、明らかに約二十一億円の金が学校給食小麦粉輸入に際して食管会計にプラスとして入っている。この二十一億の数字は間違いないでしょう。あなたは事務当局として予算編成をする場合に、あるいは大蔵当局、あるいは農林当局折衝する際にどういう数字を使われたのか、文部大臣は四億というような数字をあげておりましたが、あれはあなたの方から出されたのかどうか、これは私は非常な疑義を持っておりますので、承っておきたい。
  17. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) ただいま御指摘数字でございますが、二十一億という数字は、私どもは事務的にもそういう数字を聞いております。
  18. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それだけ確認しておけばよろしいのです。私、あまり長くするとほかの人が質問できなくなりますから、もう一、二点お伺いしておきますが、次は、地方公務員退職金制度地方公務員共済組合法ですね。これは三十五年の四月から実施するということは、政府公約であったわけですね。その前の国会国家公務員共済組合法政府提案の形で出されて、われわれに審議を求めて、われわれはこれを可決成立さした。そうして、三十五年の十月からこれは施行されたのは御承知通りです。このときの提案理由並びに大臣政府委員答弁は、三十五年の四月から地方公務員国家公務員に準じて地方公務員共済組合法国会提案して御審議願うのだ、実施するのだ、準じてやる、これが前提となってあの国家公務員共済組合法は成立した。ところが、三十五年の予算編成段階でちょっと頭をもたげてきたけれども政府部内の不統一のために、昨年の通常国会には提案されて参らなかった。三十六年の予算を編成するに当たって、今通常国会には必ず提出されるであろうとわれわれは期待し、また、文部省もそういう決意でおったわけです。ところが提出されて参らない。その原因が、事務当局見解を念のために第一の前提として聞いておきたいが、国家公務員の場合は、御承知通り組合と国とが四五対五五の負担になっている。そこで、地方公務員に対しては一〇%の国の補助金、それから事務費全額負担、これが文部省側の要求であった。これは国家公務員に準じてやるとなれば当然出てくる数字であり主張です。ところが、この補助大蔵当局の入れるところとならなかったから、それではやれない、やらないというのを、まず自治省の方からそういう抵抗を示して、その結果としてこの提案がなされなくなったのが予算編成段階における経過だと僕は判断しているのだが、これに相違があるかどうか、お答えいただきたい。
  19. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 予算編成段階につきましては、大体、矢嶋先生がおっしゃった通りでございます。
  20. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それで事務当局自治省に対してどういう主張をし、抵抗をしたのか、会計課長としての答弁を求める。ということは、地方財政調整財政力の強い県と弱小の県との財政調整というのが問題になってくる。これが強力県の圧力によって、この調整をすることが適当かどうかということは僕はきょうは論じない。ところが、この財源調整がつぶれた、その報復手段として、自治省が、われわれが提案したその財源調整がつぶされた。その上に補助金を出さぬというならやらぬ、こういう報復手段自治省が出たということは、僕は許すべからざることだと思う。いずれ安井自治大臣をここに呼んで追及するつもりなんですが、こういうことをあなたは認識しているかどうか、認識していないとしたら、あなたの責任について質問します。そういうことをからませるべきではない。国家公務員共済組合法をやるときに、これは公約である。地方公務員はこれを放っておいてよろしいのかどうかという立場から、文部省としても強力に政府部内において主張し、意見の調整をはかって、一〇%の国庫補助事務費全額負担とは確保して法案が提出されるように取り運ばなければならぬはずだ。そういう立場において事務当局大臣を補佐し、助言を与えなければならなかったと思うんですね。そういう立場において事務当局はどういう認識をし、どういう努力をされたかということを私は承っておきたい。
  21. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) この問題でございますが、ただいま矢嶋先生から御指摘がございましたように、問題点二つございまして、一つ長期給付に要する経費の百分の十の国庫補助の問題と、一つ事務費全額補助の問題、この二つ。で、まあ何と申しましても一番大きい問題は、前者の百分の十の国庫補助の問題でございまして、これは私どももちろんそれを希望をいたしておりましたが、自治省といたしましても、ぜひそれがなければこの制度は実施されない、実施することはできないというような強い方針で、まあ大蔵省に協同して折衝をいたしたわけでございます。最終的には大蔵省の御了解を得ることができないで現在のような状況になったことは、まことに残念でございます。最初矢嶋先生のおっしゃいましたように、三十四年の十月から国家公務員についてこの制度が始まっておりまして、私ども三十五年の四月からぜひやりたいということで努力をしたわけでありますが、それも流れて、今回再び三十六年度についても同じような状況になったのであります。まあ文部省から自治省に強力にかけ合うということもございますけれども、むしろ自治省文部省共同歩調大蔵省に交渉したというのが実際でございます。それから財源調整の問題とからんで、報復手段として云々というお話でございますが、その点については、実は私、自治省との折衝には直接関係いたしていなかったこともございまして、その点につきましては全く聞いておりません。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は私はあなたに注意を喚起する。国家公務員共済組合法は、これは提案者大蔵大臣ですよ。だから大蔵大臣給与課長とは国会ではっきり言明しているわけですよ。だから一〇%の補助事務費補助しないために地方公務員共済組合法は出せなくなったとなると、これは大蔵大臣大蔵省給与課長主計局長委員会に引っぱり出されたら、もう食言問題として全然頭が上がらない。だから痛いのは文部省側自治省側でなくて大蔵省側なんですよ。そこで自治省としては、財源調整をやられたから、よし、それでは地方自治体もやれないと、大蔵省抵抗してやれというような底意があって、自治省はやらないという方向にぐっと主張して、それで文部省を引きずっていったんですよ。その経過というものは百パーセント間違いない。だからそういう点、よくやはり事務当局は分析をして、大臣助言をして、そして真の意味における自治省との共同戦線を張って、大蔵当局国会における答弁を根拠に、たてに、予算編成をすべきだったと思うんです。これは私は百パーセントの自信をもってあなたに今後のために注意を喚起する。  で、もう一点だけあなたに伺っておきます。それは、いずれ大臣に伺いますが、先国会大蔵大臣文部大臣は、私学授業料引き上げは遺憾である、好ましくない、だから、私学授業料引き上げなくて済むように予算編成において努力をすると、こういう言質を国会で与えているわけです。そこでまあいろいろの過程があったが、私学関係を含む予算案がここに上程されて参っているわけですが、大臣はその公約を途中であきらめたのかどうか。まあこの私学振興会出資金を五億ふやした、それから助成金を若干ふやした、そういう段階において、私学側授業料その他の引き上げについて、内々でも、この程度であまり学生に負担が多くならないように善処してほしい、それじゃ善処しましょうというような話し合いが行なわれてこの予算案ができたのか、それとも、もう大臣としては、国会で一応答弁したけれども、これは処置なしというような形でこの予算案というものはできたのか、この事務当局間における把握の仕方ですね。その点と、それからもう一つのポイントは、このきょうの本題でないからあまり論じないが、外国でも相当私学には助成しているわけですね。御承知のごとく、英国のごときは、ひもつきでなくて、私学側十分自主性を持たせて運営をさせながら、相当の金額を助成しているわけですね。だから私学経営——人件費補助するというようなことは、建前上からいっても、やはり予算編成技術面からいっても、まあ問題点はありましょう。しかし、そういう方法をとらないで、まあ私学は小中学校生徒をあずかって教育している学校もありますしね。それから所得倍増計画に基づく科学技術振興という立場から、そういう人材養成努力している面も多分にあるわけです。今、日本から私学というものを除いたら、日本教育の問題というものは重大事態が起こって参ると思うのですね。だから、研究費助成とか、適当な名目で飛躍的な助成策というものは考えてしかるべきだと思う。いずれ本格的に論ずるときに僕はやります。たとえば、産業界でも、飛行機をこしらえるといえば、国民の税金で国家助成もし、低利で長期の金融の便宜もはかっているのですよ、そういう基幹産業に対しては。ましてやその人材を育成する私学に、これは企業だといっても、観点を変えれば、研究費助成というような名目で大幅な助成策というものは考慮されてしかるべきですよ。そうすることによって、私学と官学の父兄の負担均等をはかるということは、教育機会均等のこれは原則でなくちゃならぬ。で、そういう点については事務当局考え方の是正を僕はずっと迫まり、要請して参ったものです。で、この予算を編成する段階において、文部省事務当局と、それから予算査定する大蔵省事務当局とはどういう見解認識のもとにやられたのか、最初の一点とこの二点を念のために伺っておきたい。
  23. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 最初のこの授業料値上げ私立学校助成の問題の関連でございますが、先般お配りいたしました資料にもございますように、私学振興全般といたしましては、従前の十四億を二十四億というふうに十億円の増額をいたしておるわけでありまして、私学に対するこの授業料値上げの問題も、結局は私学財政と申しますか、経営全般の問題の一部でございますので、私学経営に何らかの形で国の貸付なり補助なりが行なわれれば、全体として私学経営が何と申しますか、楽になりまして、そのことがひいては授業料値上げを若干抑制することにもまあ相なるというふうに考えまして、全体といたしまして私学振興に十億円の増額をしたというふうな趣旨でございます。なお、国のこういった助成のほか、寄付金の免税でございますとか、あるいは高等学校以下の私立学校に対しまする府県の補助につきまして、地方交付税の上において何らかの算定要素を付加するといったような点については、さらに今後努力をしたいというふうに考えております。それからなお私立学校に対する一般的な経常的な経費助成の問題でございますが、ただいま諸外国における事例等についても御指摘があったわけでございますが、たとえばイギリス等日本私立学校制度、もっと広く申しまして学校制度全般は、これは基本的にかなり立て方が違うわけでございますので、直ちにイギリスと同じような扱いをするというふうには参らないかと思いますが、ただ御指摘通り、今後の問題といたしましては、経常費の助成の問題について真剣に検討する段階にきておると考えます。で、経常費を補助するということになりますと、この助成の限界でございますとか、あるいはその助成に伴う監督の問題、それと、それに関連する私立学校の自主性の問題等いろいろ関係する問題が多いわけでございまして、管理局におきましては、別途、学校法人運営調査会にこの問題をかけて、慎重に検討したいというふうに申しておるわけであります。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それに関係することで、もう一つ聞いておきますが、私学への寄付金の免税ですね。これは先国会から論ぜられて参ったことですが、一体、事務当局としてはどのくらいな腰がまえで大蔵折衝をやっておるのか、租税特別措置法では約二千億円の減税の恩典をやっているのですよ、租税特別措置法では。若干手直ししてきておるけれども、それでも約二千億円の国は減税、免税の恩典を与えておるのですよ。この私学人材育成に当たって全面的に僕は免税をやるべきだと思う。このくらいのことは、文部省、腰を入れて要求すべきだと思うのです。若干最近、所管局長が交渉を持たれておるようですけれども、全く重箱の隅をつついたような交渉で、わずかに広げる程度、手さぐり程度のことをやっているようですが、それじゃだめですよ。事務当局としては、私学への免税を全面的に免税してほしい、会社の損金に算入するようにしてほしい。そうすることによって、外国にもあるように、篤志家のあまりひものつかない寄付金私学は受ける、それで私学は発展していくというような方途を私は講ずることはきわめて簡単なことだと思う。事務当局は今どの程度の決意を持って免税の問題を事務当局間で折衝しているのか、数字一つ伺っておくが、一体現在、金額にしてどの程度私学は寄付に当たって免税の恩典を今受けているのか、どの程度の税の免税を国がのめば私学への寄付の税金の問題は解決すると、その数字をつかんでおられるのか、それだけ大臣質問の前提として聞いておきます。
  25. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 免税の問題につきましては、これは私立学校ももちろん非常に大きい問題でございますが、それを含めまして、学術研究団体に対する免税の問題でございますとか、その他各種の団体に対する免税の問題を含めまして、現在、大蔵省折衝中でございます。金額等の数字につきましては、実はただいま資料を持ち合わしておりませんので、別に御報告することにいたしたいと思います。
  26. 平林剛

    委員長平林剛君) ほかに御質疑の方ございませんか。
  27. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと今の私学の問題、授業料値上げの問題に関連して二、三ただしておきたいのですがね。今度の値上げで大体総額どれくらいですか、収入源になるのは。この点が一つ。もう一つの問題は、今度助成金を十億ふやしたわけですね。そういうとき授業料の問題が問題にならなかったのかどうか、それとの関係ですね。そういう話し合いについては何ら私学との折衝をやるとき問題が起こらなかったのか、その二点お聞きしたい。
  28. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) 私立学校授業料値上げによって、どのくらい私立学校側の増収になるかという点につきましては、ただいま数字を手元に持っておらないのでございますが、ただ、この値上げの原因になりました点が、御承知通り国公立学校の教職員の給与改訂の問題でございます。これに準じた給与改訂を私立学校の教職員について行なうといたしますと、私学全体で約四十九億円の財源が必要だということになっております。この財源でございますが、これは授業料値上げということもあるわけでございますが、たとえば入学志願者数が増加いたしまして、それによって受験料がふえますとか、そういった関係の自然的要因による収入の増等もあるわけでございまして、それら合わせましてこの四十九億円という経費がまかなわれるというふうに考えておるわけでございます。個々の学校の、個々のと申しますが、学校の種別によりましては、授業料引き上げの率等が区々でございます。また全然値上げをしないという学校もあるわけでございますが、しかし、多くの学校につきまして授業料値上げが計画されているという点は御指摘通りであります。なお、最後にお話になりました授業料の抑制について、私立学校側と具体的にどういう話をしておるかという点でございますが、これはあらためて一つ主管局長からお聞き取りをいただきたいと思うのです。
  29. 岩間正男

    ○岩間正男君 この点ですね、私たち知りたいのは。今度のこの賃上げがどのくらいに見込まれて四十九億というのか、そうしてその財源をどういうふうにまかなうのか、この問題については、今度の十億の助成金増額のとき当然問題になったと思う。先ほど私がお聞きした点で一つ漏れているのは、十億今度増額するに当たって、こういう問題が起こらなかったのかどうか、授業料値上げの問題が、これと関連して一つ議題にならなかったのかどうか、その点どうなんです。
  30. 安嶋弥

    政府委員安嶋弥君) それは当然問題になりまして、私学助成の拡充に努力したわけであります。先ほど矢嶋先生の御質問にも申し上げましたように、これは私学経営全般の問題でございますので、授業料値上げを抑制するために、具体的にこれとこれの措置を考えるというような方法ではなくて、私立学校全体に対する貸付なり、補助において改善の措置を講ずれば、それがひいては授業料値上げの抑制にも若干の効果があるというふうに考えまして、私学助成全般の拡充に努力をしたという次第でございます。具体的にこれだけ出せば、授業料がこれだけ下がる、これだけ抑制されるというような計算等はいたしておりません。
  31. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは簡単な資料でいいですけれども、今度の私学の教職員の給与の引き上げ、それに要する財源、そういうような問題、それから今度の授業料値上げによって総額どれくらい一体増収を見込んでいるのか、経営の概要でもわかれば、そういうものを出してもらいたいと思う。  それから今のお話ですけれども授業料値上げの問題は、非常にこれは一つの社会問題になってるわけですね。大へんな騒ぎがあったわけだ、去年の暮れから今年にかけて、こういう問題のときに、文部省が十億という私学助成増額をやるときに、この授業料値上げの問題をとらえて、この問題と関連させないで、単に私学経営の一般的な改善のためにという形でそれを出したもので、どうもそのところ、世論に対する対策としてはまずいのじゃないかと考えるのだが、これは議論になるから、あとで担当の局長がきてからお聞きしましょう。  その次にお聞きしますが、初中局長にお聞きしたいのですが、今度の予算をもらいまして、この中でたくさん質問したいことがあるのですが、きょうは時間の関係から二、三の問題だけ伺っておきます。全般については、さらに大臣出席を求めて行ないたいと思うのですが、その中で充て指導主事というのがあるわけですね。これは私たちどうもよくわからないのです、実際。充て指導主事という名前もちょっとなじまないのですね。当て馬という言葉があるのだが、(笑声)当て馬じゃないのかという感じがする。それを充て指導主事というのはうまくない。大体六百人今度ふやすというのであるけれども、今までは四百何がしで、今度は何人になるのか、大体その点お聞きしたいのです。
  32. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 主事というのは、教員の身分のままで指導主事の職務を行なう。こういう制度でございまして、現在までのところ、府県の段階で、一応四百六十人ほど確保しておりますが、さらに今回市町村の教育委員会の指導の充実をはかるために、大体一郡に一人ということで六百人を計上したわけでございます。
  33. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、この充て指導主事というものの身分は、現職のままで指導に当たる。こういうことなんですが、しかし、どこにこれは所属するのですか。所属は市町村の教育委員会に所属して、そうしてそこの仕事を援助する。充てですから正式じゃないわけだから、そういう形でこれを補助する。そういう機関になるかどうか。それから仕事は何をするのか。その仕事の内容、それから身分、そういう点についてはっきりしてもらいたい。
  34. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律に、指導主事の職務が規定されておりますが、一般の指導主事と同じ職責を行なうわけでございます。ただ身分が教員の身分のままで指導主事の職務を行なう。つまり学校における授業は行なわないで、指導主事の職務を行なうというのがこの制度の特色でございます。そこで、従来は府県の段階に置いたわけでございます。ですから、府県が本庁に置くか事務所に置くか、府県の段階——今回置きましたのは、特に新しい教育過程も四月一日から小学校は始まることでございますし、中学校も移行措置段階でございますので、指導力を充実強化したいという点から、一郡に一人、置く場所は事務所に置くか、あるいは特定の市町村に置いて、管下の学校について、あるいはその郡なら郡全体のお世話をしていく、こういう考え方でございます。
  35. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、指導主事は教育委員会に所属するわけですね。
  36. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これも同じです。
  37. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、この充て指導主事もそういう形ですか。二重人格ですね。教職員の現職にあって、同時に管理を受ける立場教育委員会に所属する。これはいいですか。法制的に差しつかえないでしょうけれども、二重人格ですね。私、お聞きしたいのは、日教組の組合員ですが、組合員であることは妨げないのですか、それとも籍を抜かなければならないのか。
  38. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 組合員であることは差しつかえございませんけれども、私どもは、少なくとも同じ職場ではないと考えておりますので、指導主事は本来指導の任務に当たるのでございまして、この点については充て指導主事であろうと指導主事であろうと、これは関係ございません。同じ扱いをいたしております。
  39. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、あなたの今の希望からいえば、当然、日教組をやめて、そこから籍を抜いてこっちにきなさい、こういうことも、勧告なんかは表面はやらないけれども、内密にはあり得るということが予想されるが、そう考えていいですか。
  40. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは身分がただ教員であるということだけでございまして、指導主事の職務を行なうのでございますから、職員団体を結成するとか、加入する場合は、原則として都道府県の教育委員会の方に入るべきものと考えております。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもそこのところが、ヌエ指導主事と呼んだ方がいいじゃないか、二重性格だね。現職であって、しかも教育委員会に所属して、しかも教員組合との関係においては、なるたけそこに所属しないどころじゃない、所属してはならないと、あなたの考えから言えば。そうすると、こういうようないわば管理機構の一役をになうところの充て指導主事に対して、これは教員給与のそのワクからこれを支払うという考え方というものは、これは差しつかえないんですか。これはあなたたちは法的には何だかんだということで、おそらく説明をするでしょうが、どうですか、通例上、慣行上、はたして認められるかどうか、その点どう考えますか。
  42. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律第十九条の四項にございます。その中で、「教員をもつて充てることができる。」と、こういうふうに規定がございますので、その法律上の根拠に基づいて、教員の身分のままで指導主事の職務を行なうことができるわけでございます。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 多分そうあなたは説明されるだろうと思っておったのですけれども、しかし、望ましい立場から言えば、僕は明白にするために、身分をはっきりすべきであり、そうして当然、教育委員会に所属して身分も明白に、私はやるならやらなくちゃならぬ問題だと思う。ところが現職にありながら同時にそのような仕事をやらせる。しかも、その生活費はこの教員給与の中からまかなわれてくるということになりますと、非常にそこがあいまいであり、今の文部行政の中で私は実に不明瞭なものがあると思うのですが、この点あなたはどうお考えになりますか。
  44. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教育委員会に専任の指導主事を置くことになっております。ですから専任の指導主事を置くのが原則でございますが、しかしながら、教員の身分のままで指導の任務を行なった方が適切であると、こういうふうに考えて、これは特例としてこの十九条に認められておるわけなのですから、法律上何ら差しつかえないわけでございます。ですから、公務員としては一般的にはその教員なら教員の職務専念の義務があるわけですから、特別に専念の義務を免除して指導主事の職務を行なうことができるという明文に基づいて行なっておるわけでございます。
  45. 岩間正男

    ○岩間正男君 法案そのものが非常に問題になるわけですが、労使の慣行から言って、労使の慣行というものは頭にないらしい。しかし、労使の慣行というものは厳然としてなくちゃならぬし、こういう点から言うと、法律に認められておるのだからやっておるのだ。しかし、望ましい態度としては、正式の指導主事をあなたたちの立場からいって置くべきだ。なぜこういうことをやっておるか。一つには給与の問題なんです。この給与の総額というのはこれは幾らですか。今年度たとえば六百人ふやす、これは市町村段階の問題、それから今までの県の段階で四百六十人になった。そうすると、今までの府県の段階では幾ら、今度ふやすのに幾ら、総額どれだけ見込んでおるのですか。
  46. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今回六百人見ましたのは、半額で一億三千三百万でございますから、その倍になるわけでございます。で、四百人の場合はその十分の四と考えていただければけっこうだと思います。
  47. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはその他一切の諸手当ですね、たとえば教員として受けておる一切のその他の諸給与ですね、こういうものをみな支給されたわけですか。それから、むろん全部現職だから昇給昇格、それから恩給、こういった特典の適用というのは、これは全部適用を受けるわけですか。
  48. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) おっしゃるように教員としての特典は受けるわけでございます。なぜこういう制度を設けたかと申しますと、現実に教員の給与は事務局の職員よりはいいわけなんでございます。そこで、事務局に指導主事が入ってくる場合には、原則として相当俸給を下げて入ってくるのが通例なんです。教員の身分のままですと、おっしゃるように退職手当、その他の点についても大へん便宜が多いので、こういう制度を設けたわけでございます。
  49. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはあなたたちの怠慢からくるのであって、給与をもっと上げなくちゃならない。その必要があるなら当然法律的にその措置をするべきである。これは実にあいまいです。そういうことは諸外国でもあまり聞いていない。こういう例を文部行政の中でやっていくということは、まことに私は不明朗だと思う。今度の予算の中で不明朗なことはたくさんありますけれども、その中で特に不明朗な一つである。しかも名前も充て指導主事、こういう形で行なわれている。それで、私はこの問題と関連して考えるのですが、一方では専従の数を制限する。専従の数は文部省はどれぐらいに押さえようとしているか。
  50. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 千人をこえておると思います。
  51. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも充て指導主事ということも明白になったような気がするのですが、そうじゃないですか。ずばりじゃないですか。専従対充て指導主事、こんな文部行政をこういう形でやっていくということはわかりますよ、こういう意図は。こんな意図をもって、そういう実に不明朗な形で実施をしていく文部行政というものはこれは明瞭ですよ。法的に見たってその法律そのものが問題だ。だからこれはやっぱり法律そのものについてわれわれは問題にしなくちゃならない。こういうふうな残根を残して、何だか不明朗で全くやり切れない。そうして労使の慣行からいえば実にこれは前近代的の考え方にまた戻ってしまう。こんな形に一体置いて教育行政を明朗化するということはできますか。私はこういうところにこそ一つの暗示があると思う。専従の方はどんどん制限する。専従制限と同時に一時は指導主事もこれを減らしたのでしょうが、今年度に至って六百人ふやす、今までの一割五分ふやす、こういう形に行なわれているのですが、こういう意図は、その必要性は、そうして仕事の内容はどうなんですか。ここんところを明白に、もっと具体的に。
  52. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今日教育の指導力が落ちておることは、これは一般に認められているところなんです。私どもは一番大事なのは教職員の資質の向上だと思う。こういう点からいろいろな研修会をいたしております。また同時に、現場の先生に的確な指導を施して教育の充実をはかっていきたい、これが趣旨でございます。特に教育課程の全面的な改正を控えまして、この三十六年の四月一日から小学校は教科書も全部変わる時期でございますので、こういう点を考えまして、現場における指導力を充実したい、こういう趣旨からこれをふやしたわけでございます。
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは文部省は指導すると言っておる。はっきりとそうなんですね。文部省はそういう意図をもって予算措置までしておる。しかし教職員自身がこれくらいのことは自分でやれますよ、自主的に。あえて文部省の指導を待たなければ指導力が向上しないなんということは考えられない。しかも現場の今まで机を並べていた職員の一人が、たまたまおめがねにかなったからといって充て指導主事という名前を与えてこれが指導する。実際われわれもこれは現場にいたものです。そういうものから見て、たまたまどういう連中がこの充て指導主事になるかということは予想がつく。覚えがおめでたい、あなた方の考え方に同調するような、そういう連中がこれはピック・アップされるのではないか。実際同じ立場にいてそれを指導するというような形で実際に指導が行なわれるかどうか。私から言わせれば、これは明白だと思う。そういうことはできませんよ。そうして一方では教員自身が、今年の大会を見ましても実際にあるような教研をやっておる。そういう中でこの問題はどうですか。
  54. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 市町村の教育委員会とか、都道府県の教育委員会から大へん強い御要望がございまして、むしろ市町村の教育委員会の当局者にお聞きいただければもっと明確になると思いますが、私どもとしては、何とか指導力を充実したい、こういう強い御要望に沿って、こういう強い措置をいたしたわけでございます。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは全く、たとえば五十万の教員に聞きましたか、聞かないでしょう。市町村長、教育委員会、そういうものの要望だ、しかもそれは非常に大きな要望だということを、はたして具体的にあなたたちはつかんでいるのか。一部の要望を全体の要望だということを言っておる。こんなことを言うことは朝飯前ではないですか。そういう形で、しかも現場の教員のほんとうの要求を聞かないで、そうして指導力が落ちておる、こういう認定のもとに、いわば教員不信の根本的な立場に立ってこういうような行政を行なう。そうして実際はどうかというと、これは教員の監督機関であり、ある場合には弾圧機関になることは明白だ。そういう意図のもとに、しかも一般教員の乏しい予算の中から、教員給与の中からこういうものをさくということは了承できない。しかし、あなたと議論をやってもわからぬから——一番本拠はあなたかもしらぬけれども、しかし教育行政の責任者についてこの問題を聞きたいと思う。  第二にお聞きしたい。中等学校生徒全国一斉学力テスト、約一億の予算を使って今年度行なわれるわけなんですが、この概要、その目的、それから具体的な運営の方法、こういうものについてお伺いしたい。
  56. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 現在、小学校、中学校高等学校で学力テストを過去五カ年ほど行なっておるわけでございます。この場合、文部省でサンプリング調査をいたしておるわけであります。その予算は大体五%程度でございます。今日までのところ各府県の非常な御協力を得まして、大体五〇%をこえておるわけでございます。そこで、今回、中学校が義務教育最終段階でもございますので、このサンプリングで行なった調査を悉皆にしたい。できるだけ学校差、地域差をなくしていきたい。それが趣旨でございます。その中身は、国語、社会、数学、理科、外国語、この五教科を選んだわけでございます。この五教科を選んだ理由は、その他の図工とか、あるいは音楽等は実技を要しますので、ペーパー・テストには適当でないと考えまして、この五教科にいたしたわけでございます。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 この学力テストによって起こる将来の問題についてあなたたちはどう検討されましたか。いろいろ私はあなたたちの言うような、あなたたちのいわゆる有利な点、こういうことを力説されるだろうけれども、そういうことだけですか。私は昔の学校の中に起こったあの試験制度、あれとの関連から考えて非常に重大な問題を含んでおるのじゃないかという気がするのですが、この点についてあなたたち検討しましたか。
  58. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 現在考えておりますのは、先ほど申しましたように、従来のサンプリングの調査を悉皆にする、こういうことで、義務教育最終段階である中学校のところを、できるだけ学校差、地域差をなくしていきたいというのが趣旨でございます。入学試験の問題については別途十分検討したいと考えております。
  59. 岩間正男

    ○岩間正男君 結局ね、この問題で学力テスト中心の教育というふうに大きく教育内容が転換されるという事態が起こる、そういう可能性は十分にこれはあり得ると思うのですが、これについてあなたどういう検討を行なっておりますか。
  60. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは従来から、先ほど申しましたようにサンプリングでやっておるわけなんであります。で、それはその地域の学校差、地域差というものが非常に激しいので、これを少しでもそろえていきたい、水準の向上をはかっていきたいというのが趣旨であって、学力テストの勉強というのは、これはまた非常におかしなことなんであります。指導要領を中心に教育課程が組まれておるものでございますから、指導要領の目標なり内容をどの程度到達しているかということを絶えず把握していくのがいいと思っております。また、アメリカあたりでも非常にテストはよくやっておりまして、むしろテストに明けテストに暮れるといわれるくらいテストをやっておるであります。できるだけ回数を多くいたしたいのですけれども予算の都合で、二年と三年というふうにしたわけでございます。
  61. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたはたての一面を見て、そしてしかもその一面の中にも私は問題点がたくさんあると思うのですが、これはまあしばらくおくとして、大切な一面を忘れているのじゃないか。今までのサンプリングでやった調査の問題とか、それからそういう内容もこれは資料としていただけばなお明らかだと思うのです。この中にずいぶん弊害が起こっておるのです。たとえばある中学校では三百名のテストをやる、そのうちの優秀な者だけ百人発表しちゃう。それでそれをやっていく、そういうような態勢の中で非常にテスト中心の教育の方向に変わりつつある。競争心だけあふって、そうしてテストを何とか通り抜けて百人の中に入る。その努力だけするために、実際は一般の、あなたたちも言っておる人格を陶冶する、それからほんとうの教育内容を向上させるという点がおろそかにされる、こういう点がはっきりきていると思う。それから今度は、進学の際に、有力校、それから有力でない校、こういうものとが差がついているのじゃないですか、どうですか。たとえば日比谷高校だったらどうなっておるのか、それからこの付近の関東の県庁所在地の高校だったらどうなっているか、それからそれ以下の高校の場合にはどうなのか、これははっきり順位がついているのでしょう。そういう形をますます今度は統制して、今までの一つのサンプリング段階でなくて、全国一せいにこれはやるというので一億のこれは予算を計上した。そうすると、この結果がとうとうとそういう方向に流れていく、そういう点についてあなたたちは一体検討されなかったのか、されたのか。これは私、日本教育を根本的に変えていく、しかも文部省のそういうような学力テストというようなやり方で変えていくところの一つの大きな危険をはらんでいるのじゃないかと思う。どうですか。
  62. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今、岩間先生のような御心配はなかろうと思っております。と申しますのは、すでに五カ年間実施いたしまして、大へん各学校の御協力を得て、だんだんと教育水準が上がっておるわけであります。ですから、五〇%以上になっておりますので、これを悉皆にしたということでございまして、テストによる弊害がありますれば、それは十分検討いたしまして、むしろ弊害をなくすようにしたい。あくまでも学校差、地域差があることは好ましくないと思うので、全体的に義務教育の水準を上げていくのが本旨であろうと考えております。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 学校差のあるのは、この格差というのは、そういう問題からだけ論じたら私は当然違ってくると思う。これは設備なり施設の問題もありますよね、それから教員の問題もありましょう。さらに一番大きくこれを左右しているのは、これは父兄の生活の貧富の差です。格差なんです。こういう点が非常に大きいんじゃないですか。そういう問題に力を入れないで、そういう問題の方はあとにして、上の方からだけテストによって、そうしてここのところを学力の平均化をねらうというやり方、これは全く私は逆だと思う。こういう点についてはあなたたちも検討されなかったかどうか。これは弊害はないような話だけれども、実際今言ったように弊害が起こったじゃないですか。日比谷高校なんかはもうものすごいですよ。そういう一つの実際の運営の中で、進学問題というのは非常に機械化されてきている事実というものは目をおおっているのです。こういうものをますます助成しますよ。私はなぜこういうことを言いたいかというと、この戦前の教育というやつは、全くこれはテスト中心の教育です。そのためにどうなったか。これはここでくどくど申し上げる必要はないと思うけれども、全く教育というものは圧殺された。そうして点数取りだ。あなたたちのいう学力というものを見たいというのは、実はあなたたちの出しているこの試験の問題ですね、この問題。どういう点で一体人間を判断していくのか、そういう点が、しかもこの中等教育——まだ義務教育段階である中等教育段階で、もうすでに強烈に行なわれようとしておる。これは非常に私は重大な問題だと思います。この点はどうなんですか。
  64. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) まあこのテストはいわば健康診断のようなものですから、どういうところに病状があるか。お話のように、施設、設備が悪い点もあるでしょうし、教員の配置の適正を得ない場合もあるでしょうし、いろいろそういう条件を把握し、また的確に指導するためにどこがウイークであるか。そのウイークのところを十分に指導をよくして、全体的に教育水準を上げていきたい、こういう趣旨でございますので、岩間先生のような御心配はなかろうと思っておりますが、なお心配な点がありますれば、いろいろと改善をし、工夫をして、よりよいものにしていきたいと考えております。
  65. 岩間正男

    ○岩間正男君 これ以上あなたとやりませんけれども、それは非常に私はこの問題を簡単に見ていると思う。一つのやはり教育統制の具体的な現われ、そういう形でこれは運営されるということになったら重大な問題だと思うのです。それから戦争前の、あのほんとうに試験中心のああいうものは、どういうふうな道を歩んだか、どんな要求によってそういう体制が作られたか、この点を考慮することなしに、このようなテストの問題を形の上だけでやるということについては非常に大きな問題を含んでいる。しかし、この問題についてはもっと詳しく、私は具体的な例をあげてあとでまたお聞きしたい。ただ先ほど申しましたように、このテストの概要を説明する資料は、これは出していただきたい。それから今までやった試験問題のようなもの、これは全部は要りませんけれども、とにかく相当の量を出していただきたいと思います。いいですか。
  66. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 御要望の資料につきましては、できる限りのものを出したいと思っております。
  67. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連質問いたしますが、先ほど内藤局長の方から、充て指導主事の任務をおっしゃいましたですね。現場の教師に対して指導力の充実ということをおっしゃったのですが、その指導力というのはどの限界だかということを伺いたいのですが。たとえば教育課程の問題であるとか、いろいろございますけれども、その点ちょっと伺いたい。
  68. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) たとえば国語の教え方をどうするとか、あるいは理科の教え方をどうするとか、算数の教え方をどうするとか、あるいは特別教育活動の指導をどうしたらいいか、こういう点で、やはり小学校は小学校なりにたくさん悩みがあるわけです。中学校には中学校の悩みがある。それについて現場の先生方は大へん自分たちも研究し、努力していらっしゃるわけです。なおかつ、いろいろ指導、助言を受けたい、こういうことで市町村の教育委員会が大へん強く要望しておる、こういうことでございます。
  69. 千葉千代世

    千葉千代世君 よくわかりましたが、そういう観点からしますというと、指導力の限界を越えた、たとえば人事権に介入したり、組合活動に干渉したりしている充て指導主事は、これは任務を間違っているわけですね。具体的に申し上げますと、たとえば僻地の学校を指導して回りました充て指導主事が、家庭科教育の問題についてもう少し充実してやりたい、設備がほしいと、こういうふうに考えます。そうして設備の要求を学校で話し合って、そうして県庁の当局へ、あるいは組合活動の中で、そういう問題で一つ教育予算の要求を父兄と一緒にやろうと、そうするというと、その充て指導主事はそういうことはしてはいけない、これはちっと行き過ぎている教師がいるからとマークして帰るわけです。そして帰りに校長さんに、あの教師はどうも教師としての中立性を欠いているからというリストを作るわけです。そうして今度は転任の時期に参りますというと、そのリストによって僻地へ飛ばすとか、あるいは自分の都合のいい場所に配置するとか、こういうことがございますが、そのことに対して、これは行き過ぎでしょうか、指導力の限界を越えているでしょうか、どうでしょうか。
  70. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 本来、指導主事の任務はあくまでも教育内容を改善、充実するということで先生の相談相手になる、いわばティーチャー・コンサルタントが本務でございます。ですから教員の身分をどうしろ、こうしろというようなことは指導主事の本務ではございません。
  71. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、今の指導主事は、これは適格性を欠いているわけですね。
  72. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) その指導力があるかないかということで、指導力がないということになると、これは適格性を欠いていると思います。ただ、今お話程度では適格性を欠いているという明確な判断が下せないと思うのは、いろいろな人事の問題について、ある程度の御相談を校長さんから受けるという場合もあるし、教育委員会から指導した結果についていろいろと御相談があるかもしらぬ。その場合に自分の意見を述べるということは、これはあり得ると思うのです。かりに私でも、いろいろ人の話を聞いた場合に、あの人がいいか悪いか聞かれた場合に、あれはいいとか悪いとか申し上げる機会があると思う。それだからといってそれが適格性を欠いているとは申し上げられないと思います。
  73. 千葉千代世

    千葉千代世君 どうもあいまいなんですが、その意見を述べるということ自体が、充て指導主事が意見を述べる、それを受けた校長が、指導主事がこう言ったからといって、教員に、今度職員会議で言うわけなんです。もう一つの例を申し上げますと、これは東京のある区でございますけれども、組合員が組合の会合に出るときに、公務上差しつかえないと、こういうわけで校長さんとの了解を得て出るわけなんです。そうすると、二十校ある校長さんの中でも、十校の校長さんはそういうふうに公務に支障ない限りというので非常に職員とよく運営をして円満に出すわけです。ところが、かりにあとの十校の校長さんはなかなか出ししぶる、そうすると、その充て指導主事が回っていって、どうもこの校長はよくない、校長のリストを作る、それから許可した件数を今度は書いて出させるわけです。ですから指導主事の意見というものが、取りようによって校長さんの方では二十人がまちまちに受け取っていくわけです。そうすると、その指導性というものは公平を欠いているわけなんですね。そういう点についてはどう思いますか。もう一ついえば、その出ました組合についても、回数が多過ぎるとか、役員を選ぶ場合にはあれは今度しない方がいいという意見を持ったとします。そうすると、そういう意見ばかり持つ指導主事がたび重なり、そういう行動を起こした場合には、これは影響力は非常に大きいし、指導主事の任務を越えていると思いますけれども、いかがですか。
  74. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) まあ現実の問題なので、私もその事実を詳細に承知いたしませんので的確な意見を述べかねますが、指導主事が各教科の指導と同時に、学校の運営についての指導をすることは、これは当然だと思う。学校運営のあり方として非常に子供たちに迷惑がかかるような運営の仕方はしてはならぬと思う。そこで校長さんがどういう判断でおやりになるか、それはその事件を見なければわからぬと思う。まあ校長さんがよろしいというお考えであれば、おそらくそれはいいと思いますけれども、たくさんの子供が自習をしておる、こういうような状態を見ると、その校長さんのやり方が的確であったかどうかということは、これは問題があろうと思う。いずれにしても校長の了解を得て組合会議に出たということは、これは合法でございます。しかし、その結果が必ずしも適切であったかどうかという点については、これは批判の余地があろうと思う。それを指導主事が言うたから、これはけしからぬというわけには私は参らぬと思う。ただ、あなたが最後に述べられた組合の役員にしちゃいかぬとかいうことを言えば、これは私は干渉にわたるおそれがあると思う。
  75. 千葉千代世

    千葉千代世君 どうも充て指導主事の任務がはっきりいたしませんけれども、端的に申し上げますと、何かお目付役をしているのではないか、人事権に介入しているのではないか、もちろん教育課程の指導とか何ということはやるでしょうけれども、それ以外のことに力を入れ過ぎている指導主事が相当あるのじゃないか、これは私は現場の先生方からいろいろ伺ったのです。そうすると、まあきょう総会なら総会に行くのはいいけれども、あまり発言しない方がよい、これは個人的だけれども、あなたに好意を持って言う、異動期なんだからねえ、こういうことを言うのです。そうすると、それに対して、いやこれはこうですからといってちゃんと意見を述べます。そうすると、指導主事に対していつもへ理屈いうと言われた先生がかなりあるわけなんです。これは実際のをとりましてございます、ある区では。ですから、それは私はっきり指導主事さんにおっしゃったらよろしいでしょう、それは少し違やしませんか、自分たちは公務に支障のない限りという、そういう話し合いをし、東京では教育庁ですか、たとえば総会なんかありますときでも、労働慣行によってふだんの日でもできる、こういういろいろな慣行がございますから、そういう中でやはり最大限に組合員の権利を保障していくし、教育にも打ち込んでいくという、そういう裏づけをするために一生懸命になっている。ところがそれを今申し上げましたように、ウエートをはき違えていって、まあ私どもからいえば不当に干渉する部類に属するものがあるわけですから、指導主事の任務については一番初めおっしゃいました局長さんの現場の教師に対する指導力という問題については、もう少しやはり明確にしていく必要があるのじゃないかということで重ねて伺いますけれども、解釈すればしようによっては、学校運営全体に対しても指導力があるのだという、直接間接に関連があるのだというお話なんでございますけれども、これはやはり教育委員会の人事部があり、いろいろございますので、指導主事の限界というものをはっきりしていただきたいと思うのです。
  76. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 先ほど来申しましたように、各教科の指導及び学校運営についての指導は当然でございますが、指導主事は人事については権限は持っておりません。いろいろ御相談があれば、それは意見は述べますけれども、直接人事権には介入しない建前になっております。
  77. 千葉千代世

    千葉千代世君 人事権には介入しないということがはっきりいたしましたのですが、介入した実例がございますので、後の機会に少しとくとお話し合っていきたいと思いますけれども……。
  78. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと関連。今の充て指導主事が自分の何というか、職権を乱用して、それでいろいろな学校の運営とか、人事権に関与した例がある。私はこれと関連してお聞きしておきたいのだが、そういう事態が起こったときどうするのですか。この充て指導主事と、それと、それに対してそういう介入は徹底的に排除してよろしい、こういうあなた言明されなくちゃならないと思うのですが、それはどうなんです。明確にして下さい。
  79. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 指導力を充実するというのは、各国とも一生懸命やっておるので、イギリスあたりでは数千人も置いておるわけでありますが、日本の場合に、管理主事と指導主事と、二つ建前があるわけであります。管理主事の方が人事を扱っているので、指導主事は、教科内容とか学校運営についての指導をしておるわけであります。ですから、おのずからそこに限界があるわけであります。ただ、いろいろその人事の問題について、意見を聞かれることは、私はあろうと思います。その意見を聞かれたときに、意見を申し述べることは、一向に差しつかえない。しかし、指導主事が、あたかも人事権を持っているような格好で運営をするというようなことになりますと、これは私は弊害が大きいと思います。それは実情を見ないと、具体的に判断できないと思います。
  80. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう事態が起こった場合です。私は、意見を述べることも、先ほど千葉委員が質問したように、これは問題がそこから始まると思うのです。そんな自分の職権外のことに容喙しない態度をきちっと守るべきだ。とにかく現行法を、かりにこれを認めるとして、そうですね。その上に立って、そうでしょう。それから、それを逸脱した場合には、はっきりこれについて処断する。これはあなた少なくとも明言されなければ守れないですよ。あなたが今のようにあいまいな、わけのわからぬような答弁をしている限りでは、これが根拠になるのだ。この国会のこの応答が一つの根拠になるのだ。だから、その点をはっきりしておいてから、あなた自身が、少なくともそういう権限外のそういう逸脱をやった場合には、はっきりこれについて適当な処断をする。こういうことは明言されてしかるべきだと思う。そうでなければ、守る意思はないのだということをわれわれは確認するほかない。あいまいにしてはならぬ問題です。明確にして下さい。
  81. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 先ほど申しましたように、指導主事は人事を直接扱っておるものではない。この点ははっきりいたしております。ですから教科の指導とか、あるいは学校運営についての指導が本務でございますから、当然そこに限界があるわけであります。ただ、先ほど来申しましたように、いろいろ指導主事に意見を聞かれる場合に意見を述べることは、人事権を直接持っているのでないから、それは私は差しつかえないと、こう申し上げたのです。そのことをもって不法だとか何だかと言えないと思うのです。
  82. 平林剛

    委員長平林剛君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  83. 平林剛

    委員長平林剛君) 速記をつけて下さい。
  84. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうですか。あなた、そこのとろはっきりしないのだ。法を守る立場に立っていない。はっきり言うべきだと思うのです。それも言えないというのはおかしいのですね。今言ったような人事権については発言の自由がある。逸脱の範囲というのは、そこのところ非常に不明朗なんだ。だから私は、やはり自分の定められた職責内で、それ以外のことは容喙すべきでないです。そうして、そのためにいろいろな不当なことが行なわれる根拠になってはまずいから、私はそういうことをしないように、そういう事態が起こった場合には、これについて厳重な態度をもって処断をする。こう明言されるのは当然だと思う。そうでなければ、あなたの発言はおかしい。何かそういうものを残しておる。そういうことが根拠になって、下の方ではどういうふうに行なわれるかということ、そこのところが非常に不明朗になります。ですから、そこのそういうところ、あなた自身望んでいないと思うのだから、望んでいられないなら、そこのところ、はっきり明言されるべきだと思うのです。
  85. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 公務員が権限内のことをやるのは建前ですから、権限外のことがあれば、それは当然無法なことであるし、またそれについて著しく権限をこえた場合には、適当な処置が講ぜられるものと思います。
  86. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 佐々木主計官がお見えになりましたから、今の問題と、先刻、事務当局にただした二、三点の問題について主計官の見解を伺っておきたいと思うのです。質問する前に申し上げておきますが、佐々木主計官は、数多い主計官の中で私の最も尊敬する主計官の一人であるので、そこで、今の岩間委員のことにぶつかりますが、学校教職員を除く都道府県行政に携わっている公務員の人件費を、半額国庫負担することができるかできないか、お答え願います。
  87. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) お答え申し上げます。  地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第十九条第四項に、「指導主事は、教育に関し識見を有し、かつ、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験がある者でなければならない。指導主事は、大学以外の公立学校の教員をもって充てることができる。」、この教員をもって充てた場合に、これは義務教育費国庫負担の対象になるというふうに考えております。
  88. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私のお伺いしていることをお答ええにならなければいけない。よけいなことを聞いていない。都道府県行政——学校教職員を除く都道府県行政にもっぱら携わっている公務員の人件費を、半額国庫負担することが、義務教育費国庫負担法から許されるか、許されないかということです。
  89. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 義務教育費国庫負担法からは許されないと思います。
  90. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 都道府県自治体行政に必要な公務員の人件費というものは、基準財政需要額に算定して、その面から確保することが日本の行政から筋の通った正当な手段であるという点についての御所見を承りたい。
  91. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 矢嶋先生のお説ごもっともの通りだと思います。
  92. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 都道府県教育行政官として、教育委員会に常時勤務を要する必要にして十分な人員の確保とその人件費等は、当然、地方財政計画において基準財政需要に算定することによって、措置することが筋道であるという点について、御見解いかがですか。
  93. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 矢嶋先生のお説の通りだと思います。ただ、基準財政需要をいろいろ測定する場合の算定の方法といたしまして、国庫負担している職員、ほかにも、義務教育以外にもございますけれども、そういうものについては、この裏を基準財政需要で一応みるというような形になっておりますので、そういうことで基準財政需要は算定いたすのでございます。
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 都道府県教育行政を進めていくのに指導主事というものは必要である、これは法でもこれを認めている。これは都道府県の教育行政をやるに必要な指導主事ですね。この人件費を、義務教育費国庫負担法の二分の一補助でまかなうということは、義務教育費国庫負担法の立法精神に反する違法行為である。これに抗弁できますか。これに限定してお答え願います。
  95. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 教員に対して俸給を払うのが義務教育費国庫負担法の建前でございます。従いまして、ただ、教員がほかの仕事を兼ねてやっている場合、たとえば指導主事というようなものを兼ねてやっている場合は、これは教員として義務教育費国庫負担をする。教員としてですね。
  96. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは次の段階、私の今聞いていることだけお答え願えばいい。
  97. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) そういう意味において、教員である限り、義務教育費国庫負担をするというのが、義務教育費国庫負担法の建前だと思います。
  98. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで内藤さん、伺いますが、さっき岩間委員に答えておられましたが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第十九条第四項をあげていらっしゃいます。これはあなた、私も文教委員として一緒に審議したのです。あなたの御答弁では、この十九条の四項というものは、こんな充て指導主事なんか予想したものではない。教育委員会人材を確保したいと思っても、たとえば音楽とか、図工とか、なかなか人を得られない場合に、特に学校教職員の身分を持った者を指導主事に充てることを認める、そういう形でこれは審議されたのですよ、当時。もう一ぺん言いますよ、指導主事を教育委員会に置こうといっても、たとえば音楽とか、図工とか、手工とか、そういう特殊な教員は少ないので、なかなか得がたい場合に、特例の特例として、学校に籍を置いた人を、そのときは常時でなかったのです。一週間のうち何日間か指導主事の仕事をするように、特例として認めるのだ、これが当時の答弁ですよ。六百人というような人数を一年中、年間を通して、学校に籍を置いて、教育委員会というところの職場で働らくようなことを許す、これは条文ではないですよ。そうして、この義務教育費国庫負担法で半額何するということは、ある意味においては文部省は法の乱用、運用を誤まって、どろぼうしているような感じがする。お互いに質疑応答した仲ですからね。一片も抗弁できないと思うのです。だからその指導主事が常時必要ならば、その立場において、都道府県当局に要求してやるべきです。二分の一負担なんか適用すべきではないですよ。それでなかなか人が得られなくて、一週間に一日か二日、学校の差しつかえない程度に指導主事にそれを充てるとか何とかいうのなら、それは法の十九条の四項から適当だと思う。それからさっきの岩間委員の問答から聞いていると、六百人というのは、常時指導主事は自分の籍を置いている学校にはこないんです、出勤簿には判をついているが。そういう職員を置いて、そして半額国庫負担の対象にする。一方では、学校には公費負担でないPTA負担の職員が、学校で事務員とか、養護婦というのがいるというのはむちゃくちゃではないですか。どうして佐々木さん、あなたは査定したのです。私の尊敬するあなたが、どういうわけでこんなものを査定したのですか。佐々木さん御記憶があるでしょう、あなた方はこういう通達をかつて出した、学校に身分を置いて、人件費を半額国庫負担されながら、教育委員会にたくさんの人が勤めていることは好ましくないようだ、だからこれは切りかえろという指示を政府は都道府県教育委員会にかつて出したことがある。この趣旨からいっても、明らかに自己矛盾しているじゃないか、どういうわけでこういうものを査定したのか、指導主事が不必要だということを言っているのではないのですよ。法の運用を誤まっている、乱用だ。だからこれは法律違反の予算だから、こういうものは審議の対象にはならないというのが基本的な問題です。
  99. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この法律が審議されましたときに、私は矢嶋委員とやりとりした記憶はございません。これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律でございまして、おそらくこの法律は、参議院でも大へん問題になった法律でございます。
  100. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは緒方次官だ、訂正します。当時の初中局長緒方事務次官。
  101. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) そこで、この法律を見ますと、「指導主事は、大学以外の公立学校の教員をもって充てることができる。」、こういう文面なんです。それから先ほど矢嶋委員が、一般的に教員の給与、教員のままで事務職員になっている方が相当いるわけでございます。事務職員というか、事務職員の事務をやっているのが。そこで通達を出しまして、できるだけそれは制限するようにいたしまして、しかしながら、指導主事の者だけは、大蔵省と協議して、四百六十人ほどでございましたが、これだけを認めた、それ以外の職員については、全部負担金の対象から切ったわけです。そこで、今回は教育課程の改正もございますし、指導力の充実をはかるという趣旨から新しく増員した趣旨でございまして、決してこれが教育委員会の一般行政事務をやるようなものを対象にしているわけではございませんで、どこまでもあくまでも義務教育の充実という点に主眼が置いてございますので、指導主事をこれをもって充てることが適当である、こう考えたわけでございます。
  102. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 佐々木主計官、おかしいでしょう、どういうわけでこれを査定したのです。
  103. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) お答え申し上げます。義務教育費国庫負担の関係は矢嶋先生が先ほどおっしゃったように、あくまでも先生が対象だと思います。教員、教職員といいますか、が対象だと思います。しかし片方においていろいろ兼務といたしましてやっている場合、従来四百六十人につまして兼務の仕事で、指導主事という形で現在まで認めているわけでございますが、その兼務の幅を今度、今、内藤初中局長が申しましたが、教育制度のいろいろな問題がございますので、その点を充実するという意味において今までの幅を若干拡げたということで査定を認めた次第でございます。
  104. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 兼務ではないのですよ、そこでそれじゃ証拠がなくちゃお話しにならぬから、内藤さん、念を押しておきますよ、緒方事務次官が当時の初中局長で、僕らとのやりとりで、今僕が申し上げたような速記録が出てきたならば、これは撤回いたしますね、念のために……。
  105. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) それは私存じませんが、私はこの法文の通り解釈して一向さしつかえないと考えておりますので、どういういきさつがあったかどうか存じません。
  106. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 法文の通りといっても、提案理由を述べて、国会から許された政府委員の資格において議員の質問に答えて、それを前提として国会で可決というものがなされているわけです。だから行政府がその法を運用するに当たっては、その立法府における審議の過程というものを十分尊重して運用しなければならない。でなければ行政の独走ということになるわけです。だからさっき私が申し上げたような文部当局の実績、事実があり、それに基づいてこの法律が成立したということになれば、今のあなた方の考えはお改めにならなくちゃならぬと思うのですが、それをお答えをいただきたい。なかった場合には私が……。
  107. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 法の制定の当時のいきさつはともかくとして、現実において私どもは今私が述べたように解釈しておりますし、それでさしつかえないと考えております。
  108. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 じゃ、その点は大臣が来たときにして、佐々木主計官に二、三点お伺いします。  あなた方査定する場合に、大臣国会答弁したことを尊重して査定をされますか、それともあなた方は主計局の独自の見解査定をされますか、基本的態度を伺いたい。
  109. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 査定する場合の心がまえと申しますか、態度だろうと思いますけれども、これは一応予算編成方針というものができますので、予算編成方針、それから基本的な考え方というようなものにのっとりまして、大体私どは査定いたします。ただ、この事務的な査定は、官庁組織はそうでございますように、だんだん上の、主計局、それから大蔵省というようになりまして、大臣の最後の判断に基づいて予算を編成されるということになります。
  110. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 国会における大臣答弁というものをあなた方は、査定官としては尊重するのですか、しないのですか。
  111. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) もちろん大臣の御趣旨と申しますか、われわれ大蔵大臣の指示に従って査定しておるのでございますから、大臣の発言の趣旨は十分尊重いたします。
  112. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一、二点伺っておきますが、給食費補助ですね、これはプライベートな話だけれども、貧乏人と金持ちの子の論議がありましたね、ところが教育効果の点から、この補助は続けていくということを本会議で荒木文部大臣答弁したわけですね。従って過去どういう経緯があったかはともかくとして、今後は補助の方針を続けていく、そういう立場において今後あなた方査定されるものと私は判断するのですが、そういうふうに了承してよろしゅうございますか。
  113. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 学校給食費の補助につきましては当時いろいろ論議がございます。私ども内部で十分検討いたしました結果、いろいろ問題点があるということでございますので、今度調査経費も入れまして、この一年間十分に調査し、その結論を待って来年度予算から措置したいというような態勢になっております。
  114. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次は、あなたのかって上司であった大蔵大臣並びに給与課長国家公務員共済組合法の審議を国会に仰ぐ場合、地方公務員もこれに準じて、地方公務員共済組合法を次期国会提案する、すなわち昨年の通常国会提案する、こういう前提のもとにわれわれ審査を求められたわけです。その当時、一〇%の国庫負担事務費全額補助というものは、準じてやる場合には当然だという答弁をされている。どういうわけで今度査定の場合に削減して、退職年金制度を見送るというような事態に追い込んだのですか、御見解を承りたい。
  115. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 公立教職員の退職年金制度は、片方の自治省の担当している地方公務員の退職年金制度、それから警察官の退職年金制度というものを三者一体的に考えまして、この三つともに国庫負担というものが、ほかの専売とか、電電とか、あるいは国鉄とかいうような公企業体あたりと関連いたしますので、国庫の負担といたしましては一〇%行なわない、ただ、退職年金制度を実施する場合には国庫負担しなくても実施できるという見解で臨んだのでありますが、最終の段階におきまして、国庫負担をやらないならば一応見送るというふうに決定したというふうに私ども了承いたしております。
  116. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 国家公務員の場合は存じませんが、やはり一〇%の負担事務費補助というのはなされるのが妥当なんじゃないですか。それを再検討されるというお気持でおられるのですか、お答え願いたい。
  117. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) これは今申しました三つの関係、それからほかの専売、国鉄とか、いろいろな年金制度を総合的に考えて検討しなければならないと思います。私どもの単独の見解ではいけませんので、私ども役所全体で、今後一年間さらに検討するというふうになっております。
  118. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間が参りましたので簡単なことを二点だけお聞きしたい。あなたは、昭和三十八年以後の高等学校急増対策は、戦後処理の一つとして相当重要な問題だとして御認識なさっていることを承っているのですが、そうじゃありませんか。
  119. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) もちろん重要なことと認識しているつもりでございます。
  120. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 高等学校の建築関係を補助することは、建前としては一般的な場合には問題があるのですが、しかしあれも一つの戦後処理ですから、暫定的でも、これは都道府県に若干の助成をしなければ、あのベビーブームに対する対策としては十分ではないだろう、こういう見解のもとに、いろいろ経過がありましたが、最終段階に一億九千二百万円の補助金を出されましたが、本年、それ以後は未解決で、予算として非常な欠陥が出てきたと思うのですが、来年度からいよいよ本格的になってくるのですが、それらの点については、従来の見解を若干是正して検討されるという心境に主計当局はあると、ともかく大臣大臣ですが、あなたの赤鉛筆の入れ方いかんというのが予算の性格をきめるのですよ、それで私は念のために伺っているんですが、御見解をこの際承っておきたい。
  121. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 来年度、三十七年度以降の場合は私ども検討しなければなりませんし、私ども必ずしも成案を得ていませんけれども補助の政策を直ちにとるかどうかということは非常に大きな問題だと思います。地方財政の来年度以降の現況、それから起債の現況、いろいろ勘案いたしまして、そうして、どうしても補助金政策をとらなければならぬかどうかという点を検討しなければならぬ。何でもかんでも政策だからすぐ補助金政策をとるというやり方については、私らは批判的でございますので、今後十分検討して、真に補助金政策が必要かどうかということを今後さらに一生懸命勉強いたしたいと思っております、私個人の見解として……。
  122. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に一点、主計官と内藤局長答弁を承りたいと思います。詳しいことは本格的にやるときに論議します。  俊敏なる佐々木主計官に伺いますが、教職員の査定をする場合、どういう気持で査定しているか。すし詰め学級解消というけれども、本年度なおかつ前進しないで、中学校五十四人に一人、小学校五十六人に一人ということです。そうして最初に出ましたように、公費負担でない学校図書館に勤める人とか、事務補助員とか、あるいは養護婦とかいうような形で、PTA負担の職員がたくさんいるのです。それで最小限というので、文部省は科学的なデータで約一万二千人を要求したわけです。ところがあなたは六千六百五十七人に査定した、第一次で。そうしててんやわんやでやっと最終的には八千五百六十六人という数字をはじき出したわけです。これはどういう根拠でこういう数字をはじかれるのか。その結果というものは学校教育の現場に非常に響くのです。それからまた予算的には父兄負担の増となって現われてくるわけです。あなた方主計局で主計官会議をするときの参考に言いますけれども、たとえば自衛隊ですね、あれは去年の九月現在で二万一千人という欠員があるでしょう。その欠員が今二万人あるにかかわらず、今度一万三千余人ふやそうというのでしょう。こういうことについては主計官は何とも検討されないのかどうか。憲法の二十六条には、いまさら言うまでもなく、義務教育無償となっているわけでしょう。ところが、公費負担でないPTA負担の職員が学校にはたくさんいるわけでしょう。憲法二十六条には何と書いてあるか、あなた知っているはずです。一方では二万一千人の欠員があるのに、さらに一万三千人もふやすというのを、あなた方主計官会議並びに省議でこれをのむ。ところが一方では、憲法二十六条で義務教育無償ということがあるのに、文部省のぎりぎり一ぱいの一万二千人を削減して、六千六百五十七人という、僕から言えば非常識です。そういう査定をやって、てんやわんやしてやっと八千五百六十六人というような数字をはじくというようなことは、俊敏なるあなた方の良識を疑わざるを得ない。何とも心に苦しみがないのかどうか。もう少し主計官という人はがんばってもらわなければ困ると思うのです。それで、本格的なことは、きょう聞いておいて、いずれ大臣出席を得た上で何しますが、事務当局としてどういう反省をし、どういう気持でおられるのか、伺いたいわけです。あなた方を私は責めているわけじゃない。尊敬する人であるわけですが、こういう点、納得できないのです。だから内藤局長佐々木主計官の両者の答弁を承って、きょうのところは終わっておきます。
  123. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 三十六年度の義務教育費国庫負担法−定員の問題でございますが、これにつきましては、中学校生徒が百万人ふえますので、私ども五カ年計画を作るときに、三十六年度は一年足踏みする、こういうことで大蔵省話し合いを進めたわけでございます。と申しますのは、大体一年に一万人程度の増員で処理したいという基本的な考え方もあったわけでございます。そこで、昨年はたしか六千人ほどの増員をみたわけですが、なお足らなかったので、補正予算におきまして約四千人近くの増員をみたわけでございます。そこで本年は八千五百六十六人をみましたけれども、昨年度の当初予算に比べますれば一万二千三百人の増になっているわけです。大体私どもはこれで百万人の急増に対する手当は可能であると考えております。しかし、五カ年計画がございますから、五十人以下にするということを、三十七年、八年の二カ年で、お約束通り五十人以下にする、こういう方針を堅持して参っているわけでございます。
  124. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 今、内藤局長から説明されたこととほとんど同じでございますが、三十六年度は児童生徒の自然増減、小学校の場合には減りますけれども、中学校の場合には約百万人、九十七万八千人の増加になります。そういうことでございますので、そこら辺を勘案いたしまして、前年度と規模を同じくいたしますと、大体九千百六十六人という教職員の数の増加になります。この程度が現在の段階からいって一応無理のない数字じゃないかということを文部当局と話し合いまして決定いたした次第であります。もちろん私ども査定も、神様ではございませんから、非常に間違った点もあろうかと思いますが、その点は、初めに大蔵省が発表いたしましてから、担当省と十分話し合いまして、無理のない数字査定する、もちろん財政の許す限りでございますけれども、そういうつもりでおります。  また、先ほど防衛関係のことがございましたが、主計官の担当はそれぞれきまっておりまして、あと、防衛担当の方は私は遺憾ながら聞いておりません。(矢嶋三義君「主計官会議があるじゃないですか」と述ぶ)主計官会議はありますが、主計官会議では、個々の問題でなく、全般的な問題——それは定員なんかやりますけれども、そういう個々の問題はそれぞれ担当の主計官がやっております。あとは予算省議、全体で取りまとめる段階でございますが、防衛関係はいろいろ私ども疑問もございますけれども、そこら辺は……、疑問とか、それからほかの査定、私ども内部の査定でも問題があろうと思いますけれども、とにかく自分のところの仕事で精一ぱいでございますので、頭がなかなか回らない、これは非常に遺憾なことだと思いますけれども、その点御了承いただきたいと思います。
  125. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 お二人が予算編成段階で口角あわを飛ばしてやり合っておいて、ここではウマを合わしてやっている。さすが善良な公務員ですけれども、佐々木さんに最後に一つお答えいただきたい点は、高等学校はもちろん小中学校に公費負担でない職員がたくさんおるのです。そういう職員というものは公費負担職員に切りかえていくべきものだという原則論については、主計官の御見解いかがですか。
  126. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) まさに矢嶋先生のおっしゃる通りと思います。公費負担でない職員で真に教育遂行上必要な人間であるならば、あくまでも公費負担にすべきだろうと思います。
  127. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今の点は、今、地方財政計画の三十六年度予算で、公費以外の職員については公費負担に切りかえるべく自治省とせっかく折衝中でございます。
  128. 平林剛

    委員長平林剛君) 他に御質疑のある方ございませんか。——他に御質疑がなければ、本件に関する質疑は本日のところこの程度にいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  129. 平林剛

    委員長平林剛君) 速記をつけて。  午後は十三時三十分より再開いたすこととし、休憩いたします。    午後零時二十二分休憩    ————・————    午後一時五十九分開会
  130. 平林剛

    委員長平林剛君)午前に引き続き委員会を再開いたします。  それでは、日教組のILO提訴に関する件と、当面の文教政策に関する調査を進めます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  131. 米田勲

    ○米田勲君 二月三日の参議院本会議において、わが党を代表する矢嶋委員の質問に対して行なわれた荒木文部大臣答弁の中に、不見識もはなはだしいと思われる発言がありますので、われわれはこれを重大視して種々検討を加えた結果、きょうは荒木文相の発言の理非を明らかにするために、ただいまから質疑を行ないたいと思います。  まず、本題に入る前に、私は初めて文教委員会に入りましたので、念のために荒木文相の発言に対する態度をすなおによく理解するために、以下数点にわたってあらかじめお尋ねをいたします。  あなたは、文部大臣として今までたびたびにわたって記者会見を行ない、談話や見解を発表しているようでありますが、記者会見は何のために行なっておるのか、また、その場合にどんな心がまえでやっておるのかということについて最初にお尋ねをいたします。
  132. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) お答えいたします。  記者会見は、ずっと以前から、閣議がありました日に、閣議の課題を中心に定例の記者会見をやる。そうして、記者諸君から当面の問題等について質疑があったりいたします。さらに、時間が許す場合には、雑談等を相当長くやることもございますし、そうでないときもございます。そういう格好で、毎週二回原則として定例の記者会見をいたしておるのであります。
  133. 米田勲

    ○米田勲君 私があなたにお尋ねをしたのは、記者会見をやっているかいないかという質問ではなくて、記者会見をやっておられるときのあなたの心がまえをお聞きしておるわけです。お答えを願います。
  134. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 心がまえといって、格別いろいろと深く考えて記者会見をしておるわけじゃございませんが、文教の責任者として閣議に列席いたしますから、そのことを中心に話をすることと、また、文教の責任者でございますから、文部省に記者クラブがあって定例の会見もすると心得ますから、質問に応じて率直に自分の考えを述べるという気持で記者会見に臨んでおります。
  135. 米田勲

    ○米田勲君 それでは、次にお尋ねをいたしたいことは、国民の一人としての荒木萬壽夫の発言と、国会議員としての荒木萬壽夫の発言と、文部大臣、国務大臣としての荒木萬壽夫の発言と、それぞれの立場においてあなたの発言は、その発言に対する責任やその与える影響の度合いについて、すべて同じものであるというふうに考えておるかどうかということについて、あなたの認識をお伺いいたします。
  136. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そのときどきによって意味が違うこと——意味と申しますか、責任とおっしゃる立場から申し上げれば、それぞれ違うこともあり得ると思いますが、原則として、代議士であると同時に、個人であり、国務大臣でありますから、私の国務に関した発言というものは、国務大臣として、あるいはまた政治家として責任をもって話もしておるつもりでございます。ただし、いわば雑談的なときには、必ずしもそれほど厳粛な気持が一貫してないこともございますから、常にそうであるとも断言しかねますけれども、自分の気持としては、今申したような心がまえで記者会見に臨んでおります。
  137. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣にあらためてお伺いしますが、あなたは、記者会見をなさるときに雑談をする場合があるというようなお話でしたが、私は、定例の記者会見などは、文部大臣として文教行政の最高の責任者としての立場をはっきり意識もしておるし、また、その記者会見においてあなたの発言せられる内容等については、文部大臣として国務大臣として当然責任をお持ちになってお話しなさっておられるのだと思いますが、どうですか。
  138. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) もちろんそうでございます。ただ、雑誌と申し上げたのは、まあ率直に申し上げれば、これから先は新聞記事にいきなり書いてもらっても不都合なこともあるだろうからという前置きをして雑談に入ることがありますが、そういうことに対しましては、必ずしも厳密な意味での責任は持ちかねることはあり得ます。そうでない限りは、新聞記者諸君にお目にかかって話をしたことは責任を感じて、責任を必要の場合にはとるべき心がまえで記者会見をいたしておるのであります。
  139. 米田勲

    ○米田勲君 よくわかりました。  それでは、次にお尋ねをいたします。先ほどからあなたもおっしゃっておられるように、文部大臣という重要な立場にあるあなたが、事実無根のことや、自分では考えてもいなかったことを不用意に発言をするというようなことはもちろんないであろうし、また、そのような非常識な発言をあなたの立場上許すわけにはいかないし、許されないことだと考えておるわけです。しかし、念のためにあなたにお伺いしますが、あなたは、従来文部大臣として公式な場所で、記者会見などの場所で発表せられた談話や見解で、全く事実無根のことか、または事実に反することか、自分では全然考えてもおらなかったようなことにわたって発言をするような傾向がおありの方かどうかについてお伺いをいたします。
  140. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ちょっと自分ではわかりませんけれども、神ならぬ身の間違いも当然あり得たかと思います。しかし、自分、主観的には、ことさらうそをついたり、事実無根のことを言ったりすることは罪悪だという気持をかねて持っておりますから、そういう気持で人様には接しておるつもりでございます。
  141. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣もよく御承知だと思いますが、日本は、満州国の問題で、満州侵略の方針を強引に推し進めるために、当時各国に非難をされた。その立場から国際連盟から脱退をいたしました。それをきっかけにして、昭和十三年ILOを脱退する手続をとったのであります。その後、太平洋戦争に破れて、国際連合の加盟国になるということを承認せられた日本政府は、昭和二十八年、国際労働機関憲章第一章第一条第三項の規定に従って、ILO憲章の義務を正式に受諾をいたしますということを、総会の席上各国の代表に対して誠心誠意態度を明らかにしました。それが認められまして、その後、手続を経て再加盟したのであります。従って、自後日本は、ILO憲章に定める義務の履行について責任を負わなければならないという立場に立っておりますが、荒木文部大臣はこの点をどういうふうにお考えになっておられるか、それをお伺いいたします。
  142. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今、御指摘のようないきさつで今日日本があるということを意識しております。
  143. 米田勲

    ○米田勲君 それでは次に、文部大臣は去る一月二十日、閣議が終わったあとで記者会見に臨みましたが、そのときにあなたの発言せられたことは、国際的にも国内的にも重大な影響を与える発言を行なっております。去る二月九日の文教委員会で、わが党の豊瀬委員から一月二十日の記者会見において文部大臣の発言した内容を資料として提出してもらいたいという要求がありました際、あなたは、私の発言は新聞が報道をしておる通りであります。こういうように大体述べておられます。そこで、私は特に念入りに毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、東京新聞など数紙にわたってその報道せられた内容を検討をいたしました。そこで、これらの新聞報道、つまりあなた自身が言われた文相の発言について、具体的にこれから質問を進めたいと思います。  第一にお尋ねをいたしたいことは、ILOは労働条件の改善によって国際正義を実現し、ひいては世界の恒久平和を確立せんとする人類の希望のもとに設立せられたものであります。そしてまたそのことを日本政府も認めて、義務の履行をするという決意に立って加盟をしたはずであります。そのILOのその後の運営等について、私から、今さらあなたにお尋ねをする必要もないと思いますが、どうもあなたにこの際一応知っておられるのかどうかということを念のために確かめておきたいと思いますのでお尋ねをしますが、ILOはその目的を達成するために各国の労働条件、生活状態に関する各種の資料を収集配付して国際労働条約及び勧告として具体化される国際的基準を設定し、立法及び行政慣行及び監督制度の改善に関し、各国政府に技術援助を供与し、総会及び理事会の命ずる特別の調査を実施していることをあなたはよく御承知になっておられるのかどうかということについてお伺いをいたします。
  144. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今、読み上げられましたことがことごとく常に念頭にあるわけじゃむろんございませんけれども、その性格を持ち、機能を持ち行動をしておるというILOの性格なり一応心得ておるつもりでおります。
  145. 米田勲

    ○米田勲君 文章を一々暗記しておる必要はないが、あなたはILOの運営なりその憲章の精神なりをよく理解しておるというふうにお述べになったことを私は確認して次の質問をいたします。  ILOの条約及び勧告は、加盟国の政府、労使の三者構成代表が出席をして、総会は世界の社会的良心と称せられます人々によって意見及び経験を交換をして十分な調査と討議を通じて総会の三分の二の多数で採決されることになっておるわけであります。あなたはこの運営について一月二十日以前、状態をよくお知りになっておられたかどうか、それを念のためにお聞きします。
  146. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これまた御指摘通りの正確さにおいてはむろん知る由もなかったのですが、およそのことは承知しておりました。
  147. 米田勲

    ○米田勲君 およそのことというのはどういう点ですか。
  148. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 三者構成であることと、三分の二の定足数までは知りませんでしたが、いずれは自由主義国家群の集まりの議事運営方法の常識からいいまして、必ずや多数決で意思は決定されつつあったのであろう、まあそういう程度のことは常識として心得ておりました。
  149. 米田勲

    ○米田勲君 今まで念のために幾つかの点についてあなたにお伺いをし、あなたの御答弁をいただきました。そのお答えによって私はILOの結成されている目的、活動、あるいは会議運営等について文部大臣は十分に理解をし、そういう理解をお持ちになった上で一月二十日の記者会見においてあえてあのような発言をせられたということは私は十分に意味のあることであり、また、あなた自身はあの発言について確信と責任をもって発言せられておるというふうに私は理解しないわけにはいきません。そうでないとするなら、今まであなたが御答弁になったお答えの中に偽りがあるということになるわけであります。ところで、あなたはこの一月二十日の記者会見でこういうことを言われました。これは各新聞が報道をしたものを全部私は目を通した上で間違いなくあなたがこのことを発言せられているということを確信してあなたにお伺いをしますが、ILOはソ連のような労働者の団結権も団交権もない国が内部をひっかき回しているのが実情で云々ということを言われております。これを言われたことについてあなたは認めますか。言いわけは要りませんよ。認めますかということを聞いているのです。
  150. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 豊瀬委員の先日の委員会における御質問に対して一応申し上げましたが、それ以前に矢嶋議員の本会議における御質問に対しまして私はお答えを申し上げました。私の申し上げるべき結論的なものはすでに本会議で申し上げた通りであるというふうに御理解をいただきたいと思う次第でございます。もちろん先ほどのお尋ねに応じて申し上げた通り、新聞記者会見をしておりますときに申し上げたことについては、むろん責任を負うべき気持においてお話しておったという心境において変わりはありませんけれども、また事実新聞に述べられたことと、そのことと一言半句同じではございませんが、そう受け取れることを申したことも事実でございます。そのような点において責任を感じました。その結論が先刻申し上げた通りのこととなって現われておると理解をいただきとうございます。
  151. 米田勲

    ○米田勲君 私はまだ本会議であなたが矢嶋議員の質問に対して答えたことに言及していない。そのことに問題があるからお尋ねしているわけです。間違わないようにお答えをいただきたい。私があなたにお伺いをしたのは、私は新聞社の報道したものをみなここに持っておりますが、あなたはどの新聞を見ても、ILOはソ連のような、労働者の団結権も団交権もない国が、その次が問題だと私は思っているのです、内部をひっかき回しているのが実情で、ということを言われたのかどうかを明確にして下さい。あとの答弁は必要ございません。
  152. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そういうふうにとれることを言ったと記憶しております。そのことを正確に繰り返し申し上げかねますけれども、大体記者会見の、恒例による会見は一応終わったと自分では感じまして、それから先は一種の雑談的な話の連続であると、記者クラブの方でどう受け取られましょうとも、私はそんなふうな気持でおりました。弁解するわけじゃございませんが、率直に当時の心境を申し上げるとそういう心境でございました。そのときに、(米田勲君「よくわかりました」と述ぶ)いろいろと仮定の質問が次から次に続出をいたしまして、それに一々軽く応じるような気持で話しておりました。結末が今御指摘のようなふうにとれる発言になったことをむろん記憶しております。その意味は、そのとき言葉で言ったかどうかははっきり記憶しませんけれども、私の常識に従えば、ILOはまさしく先刻御指摘のような、(米田勲君「委員長、私はそんなこと聞いていない」と述ぶ)中正なる構成によって運営されておることはたしかでございましょうが、ソ連ないしはその他の共産圏の代表がたとえば総会の席等に入って参りますると、一体共産圏の代表は労働者の代表か使用者代表かという半畳が飛ぶということがちょいちょい見受けられるということをうわさに聞いておりました。現場におったわけじゃございませんから真偽のほどはむろんわからないわけではございますけれども、私の既成の常識はそういうことを聞かされておりましたので、そのことが念頭にあって記者諸君からはひっかき回していると私が申したように受け取られたのであろう、従って新聞に、どういう私の主観的な気持がありましょうとも、新聞に活字となって現われたそのことを私は否定するわけも参らない。率直に申せばアフレコの宣言をしながらお話しつつ雑談に移るということであるべきであったろうと思うのですけれども、その注意が実は欠けておったことを私自身としては自問自答しておるわけでございます。ですから、ひっかき回しておるのだということを明確にそう信じ、先刻御披露したような私の常識とは違ったきつい表現になって現われたことを自分としては自責の念を持って迎え入れておりますから、そのことを遺憾千万でありましたと表現したような次第でございます。
  153. 米田勲

    ○米田勲君 私は委員長に希望を述べておきますが、今のような文部大臣の御答弁は私の聞いておることと違います。お互いにこの委員会の運営を円満にするために私の聞いていることについて率直にお答えをいただきたいのです。弁解めいたことを長々とつけ加えられることは次の私の質問を阻害せられますので、委員長の方でしかるべく今後は取り扱っていただきたい。  私はただいま文部大臣の御発言の中で、このILO問題に関する一月二十日のあなたの発言を雑談で行なったようなお話をしておりますが、あなたはそう言い切る自信がありますか。ILO問題について話したことはすべて雑談であった、こういうふうにあなたは言い切るつもりですかどうですか、ちょっとその方を先にお尋ねします。
  154. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど私は私の主観を申し上げました。新聞に書かれておる活字そのものを否定する資格は私はない、こういう気持でお答えしておるわけでございます。
  155. 米田勲

    ○米田勲君 私は、先ほどあなたは雑談で云々ということを言われたので、私の認識と違うわけです。事ILOの問題に関して、文部大臣であり国務大臣であるあなたが、公式の記者会見の席上で言われたことを、今になってから雑談であったというふうに答弁をせられても私は納得ができないのです。あれは雑談であったとあなたはわれわれに言い切るつもりであるかどうかということをもう一度重ねてお伺いします。
  156. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私だけの心理描写を申し上げればそうであったということでございます。であればこそ、新聞に出ましたことについて遺憾の意を表した次第であります。
  157. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 委員長、関連して。先ほど米田委員があなたにお尋ねしたように、前回私が資料要求をした際に、新聞記事だけをとって委員会で取り上げたくない、こういう気持があったので、談話について責任を持たれるかどうか、新聞記事についても同様の責任を持たれるかどうかを問いただしたはずです。その際大臣は、新聞に載っておるものを資料と考えていただいてよろしいと、こういうことでしたね。従って、私ども文部省に別個の資料を出すことを求めることなく、あのことに関する限りは、新聞記事を大臣がそのまま認めたという立場に立って質問を続けておるのであります。だから、大臣は心理描写であるとか、あるいはそのときの零囲気が雑談的であるとかいったことを、無用の回避をされずして、最も重要な問題である共産陣営がILOをひっかき回しているという問題の中心については、あらためて新聞報道をそのまま資料として提出していいという立場を明確に確認していただきたいと思いますが、どうですか。
  158. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 雑談であったということを今さら申して、新聞記事に現われたことそのことを逃げようという意思はございません。用語が適切でない、話し方が適切でなかった結果が私の主観とはいささかニュアンスの違った新聞記事となって現われたという私の気持を率直に申し上げているような次第であります。新聞に書かれたことが、あれがうそであると申す資格は私にはない。ただ、私が自分だけとしてはある程度雑談的な気分であったということにつきましては、私にそのときにいろいろと質問をした新聞記者の属する新聞には一つも載せられていなかった。その他一、二の新聞にもそうであった。他の新聞には今御指摘のような記事として現われたという事柄それ事態が、私は私の今の心境を申し上げたことを裏書きしてくれているのじゃなかろうかと、これは自分だけではそう思っているわけでございます。書かれました新聞記事そのものを、私は記者会見でともかくそれらしきことを言ったことは事実でございますから、その新聞記事を否定する資格はないと、かように思っております。
  159. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一つだけ。そうすると簡単に申し上げて、大臣は自分の当時の認識として、ILOは共産陣営がひっかき回しているという立場について、用語の問題は別として、そのようなILO自体の運営に対する認識を新聞記者に報道したと、発表したと肯定されますね。
  160. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それが今申し上げたように、私の一応の聞いた話ではあるけれども、そのことが念頭にあったものですから、不用意に新聞記事に現われたように受け取れることを言ったであろうと、こういうふうに考えるわけでございます。今にして思えばひっかき回されておるなどというのじゃなしに、半畳が飛ぶくらいのむしろ状態だ、言うとすればそう言うべきではなかったろうかということは思い至りますけれども、あくまでも新聞に出ましたことそのことを否定することは、当時の新聞記者諸君を前にして私はできない。それらしきことを申したことは否定するものではむろんございません。
  161. 米田勲

    ○米田勲君 豊瀬君から念のために、あなたはこの前のこの委員会で、記者会見のときに発言をなさった内容を参考資料として出してもらいたいということをわざわざ要求した際に、あなたははっきりこの場所で、新聞に報道せられたことが大体その通りであります、こう言っている。今ごろになってからあなたは、らしきことだとか、言ったであろうとか、もう一つ変な言葉を使いましたな、それらしき、そういうことであろうこと、というようなあいまいなことを今になってから言っているが、あなたはときどきそういうふうに発言を豹変されるのですか。私はもう一ぺん聞きます。あなたはこの前の委員会で、新聞に報道せられたことは、一月二十日の記者会見の私の発言の内容はその通りであります、とはっきり言っている。あなたどうしてもそれを言わないというならば速記録をここへ持ってきてあなたと対決をしてもよろしいが、そんな必要はない。あなたは記憶に新たなんだ、そのことは。なぜ今ごろになってから逃げようとされるのですか。そういうことは雑談になりますから私は本論に入りますが、もう一ぺんあなたにお聞きをいたします。どの新聞を見てもはっきりあなたはILOはソ連のような、あるいは共産陣営の連中が内部をひっかき回しているのが実情だと言ったことは事実であります。それを、らしきこととか、言ったであろうなどというあいまいなことではないことをもう一度確認いたします。はっきり答えなさい。
  162. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) お答えする前に申し上げますが、先日豊瀬委員から念を押されたことはよく記憶しております。新聞記事に活字となっている部分、それと同じことを言ったことは毛頭ございませんけれども、あれらしきことを言ったことは認めるかというお尋ねと理解いたしまして、その通りでございます、とお答えいたしました。ところが相当長い時間いろいろな仮説的な質問が出て、お答えして、ということで会談は経過いたしておりますから、新聞記事に出たあれだけかといえば、それはたくさん申し上げなければならない、その前提となるべき前後のニュアンスも申し上げなければ真意は御理解いただけない。しかも、そう申し上げようにも、資料を出せとおっしゃっても、速記録をとって証拠をもってこの通りでしたというものがないもんですから、お尋ねに応じて、いずれは委員会でそのときの気持も、あるいは話した内容等も順次思い起こすのであろうことも念頭に置いて、さしむき新聞に出たこと、そのことを否定するかいなかという角度からのお尋ねと思って、そういうふうに書かれるようなことを申した記憶はございましたから、その意味において豊瀬委員の御質問にお答えしたつもりでございます。
  163. 米田勲

    ○米田勲君 いろいろあなたは苦しい御答弁をなさっておられるようですが、結局私の聞きたいことは、ILOの運営に関して重大な発言をしておるということはお認めになるでしょう。その運営についての重大な発言というのは、結局ソ連あるいは共産陣営の国が内部をひっかき回しておるという運営についての批判をあなたがなさったことを認めるでしょう、認めませんか、それ。言葉はこの通りでないとしても、とにかく正常な運営が行なわれていないという結論になる言葉をあなたは使われてその際に発言をされておる。それをお認めになりますか。
  164. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻御披露しましたような私の常識を念頭に思い浮かべながらそれらしきことを言ったことは事実でございます。
  165. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣も相当に心臓が強い方ですなあ。私はあなたの言った通りまじめに新聞を調べてきた。あなたは新聞に報道されたことは私の発言だと言っている、この前はっきり。そのどの新聞を見ても、内部をひっかき回しているということは確かに言っておる。どの新聞も報道しております。一々読み上げてみますが、むだです、そういうことは。あなたはそれを言っておる。それで、私はあなたがこういうような発言をなさるということは、今も申したように、ILOの運営について、運営の実態についてあなたは端的に批判をした、従って私はあなたが何とこの際言われようとも、文部大臣として公式の記者会見の席上で、ILOの運営が、ひっかき回しておるというような言葉で表現するがごとき運営であるということをあなたは知っておられて、この発言をなされておるということは、先ほどからのあなたの答弁をずっと集約すれば理解できるわけです。従って私は、あなたは先ほど一つの例を言いました、ヤジの話を。しかし、たったそのヤジが冒頭に飛んだからILOはソ連などがひっかき回しておるんだという、そういう無謀な発言を、あなたのような良識のある者が言うはずがない、これは確かにあなたはこういうILOの運営に対して重大な誹謗を加えるような発言をなさる限り、まだ多くの運営が思わしくないという事実を明らかに知っておられて、そうしてこういう発言をなさったというふうに理解せざるを得ない。そうでなければ、あなたの精神状態がそのとき痴呆状態にあったか、錯乱状態にあったかということしかないんです。そんなはずはない。あなたはりっぱに今文部大臣として答弁をなさっているんだから、理由もない、根拠もない、事実もないようなことをこういうふうに発見なさるはずはない。従って私はひっかき回しておるというごとき運営に対する重大な誹謗を世界に向かってあなたが発言をせられたという限り、これから私はあなたの持っておるILO運営の実態に対するこのような言葉を、あなたをして言わせたその具体的な事実をあなたにお聞きをいたします。細大漏らさずあなたの知っておる事実のうち、ひっかき回しておるという運営を誹謗する言葉に該当するような事実があるなら、この際詳細に承りたいと思います。私はなぜこういうことをあなたに突き詰めて言うかというと、あなたがいかに雑談であろうとも、あなたがそのとき不用意であろうとも、事はILOという国際的な重要な機関、しかも、日本が再加盟するときには、本会議政府代表がこもごも立って、ILO精神に沿うてその義務をりっぱに履行します、ということを発言しておる。そういう日本政府の閣僚の一人であるあなたがこんなことをむやみやたらに言うはずはない。あなたは何かお知りになっておる。その事実を細大漏らさず一つ私にお聞かせを願いたい。
  166. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) いや、そのほかのことは私は存じません。ただ、しいて申し上げれば、ソ連圏の加盟により、代表派遣により、本来自由主義国家群の組織として発足をした当初の気分からは幾分、何と申しますか、変化が来ておるということは、ILO内部におきましても、別に自由主義国家群だけのILOを作るという必要性もあるんじゃなかろうかという話が行なわれるそうだということを聞いたことがございます。まあ、しいて言えば、先刻申し上げたこととこのこと以外に私は存じません。そこで、ひっかき回されておると新聞に報道されるような用語を使いましたことは私の言い過ぎであり、誤りであったとしみじみと思っております。もっとそのことを、今御披露したことを念頭に置いたといたしましても、他の妥当な言葉で言うべきであったろう、言ったことそのこと自体すらも無用なことであったと今反省をいたしておりますが、そういう意味で本会議においても遺憾の意を表明する結論として意思を表示したような次第でございます。
  167. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 話がちょっと進んできておりますから、ちょっと戻して、関連してお伺いしたいと思います。大臣、官報号外三十六年二月一日、この五ページの三段のところですね、私の質問に対してこう述べられているんです。「ILOは、正義と人道と世界の恒久平和を確保するため必要な労働条件の改善を目的とする公正な国際機関であると承知いたしております。」。これ、いつごろから承知しておるのですか。
  168. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これは第一次大戦後の国際連盟の関連機構としてできまして以来、性格は同じように続いておると、私は私なりに承知しております。正確な知識はないにいたしましても、私が申し上げた、今お読みになったような趣旨の機関であると承知しておりました。
  169. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いつごろからですか。失言された一月二十日の前ですか、あとですか。
  170. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 一月二十日以前も、答弁申し上げた通りの表現能力はありませんでしたけれども、性格的にはそういうものであるということは知っておったつもりであります。
  171. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう二問ほどお伺いいたします。ILOの理事会——ILOの運営は、総会も一年に一回ありますけれども理事会が実質的に非常に中枢になって運営されておるということを御承知になっていらっしゃいましたか。
  172. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 承知しております。
  173. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 理事は四十名ですね。それで四十名ということは御承知になっておったかどうか。その四十名の構成で、共産圏から何名入っておるかということを御承知なさっておられたかどうか。
  174. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 正確には存じませんが、理事国に入っていましてもわずかだろうと思います。
  175. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 何名であると御存じですか。
  176. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 十余名ぐらいでございましょう。
  177. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 驚くべき発言ですね。ここは大臣、問題ですよ。非常な認識不足な発言ですよ。ILOというのは総会が一年に一回ありますけれども理事会が中枢になって運営しているのですよ。ちょうど国会の議院運営委員会とか委員長理事打合会みたいな格好で、その理事会というのは四十名で構成されておる。政府代表と使用者代表、それから労働者の代表ですね。その四十名の中に入っておるのは、共産圏は二名ですよ。ソビエトとルーマニアだけですよ。共産圏は四十名の中に二議席しか持っていないのですよ。これは外務省、労働省を通じて正確に調べたのです。あなたは十名ぐらいと考えている。そこからひっかき回しておるということが出てきたのです。だから、今米田委員が質疑されたのですが、何か根拠があるであろうと、ひっかき回しておるというふうに新聞に出ておるのですが、四十の議席の中に二つでひっかき回そうといったってひっかき回せるものではない。実は不思議に思っておったが、あなたは十名ぐらいだとおっしゃっておる。これは重大な認識不足じゃないですか。ただ、そういう感じのことをおっしゃったというようなことでは済まされないのではないでしょうかね。ジュネーブに向かってあなたはどう答弁します。矢嶋に対してはよろしい。ジュネーブのILO本部、理事会に対して、これに参加しておる全世界の人々に対して厳粛な気持であなたは答弁しなくちゃなりませんよ。ともかくあなたがさっき認められておるように、あなたの発言は新聞記事となって日本国民にまみえた。電波となって聴覚に訴えた。それがはね返って世界の各国に伝わっていっている。もちろんジュネーブの本部にもこれは入っているわけです。しかも、理事の四十名のうちに共産圏は何議席あるかということを御存じないというに至っては、私どもはILOの諸君にまみえる顔がないですよ。日本というのはそんな国かという——六月に総会があるでしょうが、何のかんばせがあって池田内閣の労働大臣出席できますか。事実重大ですよ。だから、矢嶋に対する答弁よりは、その席を通じて全世界の加盟国の皆さん、ジュネーブのILOの本部に対してお答えするような気持で答弁なさっていただきたい。
  178. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 確かに、私がILOについてああいう新聞記事になり得るような意味のことを言いましたことは、いわば表現過剰と申しますか、私の認識不足もむろんあったわけでございますが、軽率であることをはなはだ恐縮千万に思っております。その気持を、本会議の御質問が幸いございましたので、全国民にも、あるいはまた加盟国にもおわびをする意味合いにおいて、気持において遺憾の意を表したつもりでおります。
  179. 米田勲

    ○米田勲君 私はあなたがILOの内部をソ連などの国がひっかき回しているという運営に対する重大な誹謗をしたのには、何か重大な理由がある、根拠がある、こう理解したのです。しかし、あなたはさっきから述べられた二つ、この中にたくさんお聞きになっておられるが、だれ一人としてあの二つの理由でこの重大なILOの国際的な機関に対して、運営に対して、ひっかき回しているというようなでたらめな、無責任なそういう発言ができるとは、だれも理解できない。これは何か、あなたはおっしゃらないけれども、運営について、実態についてまだ何か証拠をお持ちになっている。それをあからさまにこの際はっきりしてもらいたい。そうでなければ理解できないのです。あなたは失言であったというふうに簡単にこのことを考えておられるかもしれない。しかし、あなたは文部大臣である限りそうは許さない。具体的な事実もなしに、今あげたような二つの事実でこういうことが言えるということになったら、大へんなことであります。私は納得ができない。もう少し具体的な、運営をこのように誹謗するような事実がこれこれあるではないかということをはっきりしてもらいたい。
  180. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ほかにもう一切ネタはございません。今申し上げたようなことが念頭にあって、つい不用意に新聞記事に出るようなニュアンスのことを申したであろうことを恐縮に思っております。私の言い過ぎであり、あるいはまた、実情認識不足からきました不用意な用語であったことを今思い返して恐縮に思っている次第でございます。
  181. 米田勲

    ○米田勲君 それでは、あなたはこの内部をひっかき回しているという、ILOの運営を誹謗する言葉は、先ほど述べた根拠にも何もならないような、そういう理由以外には全く理由がない、根拠がない、そういう事実がない、こういうふうに私が理解してもよろしいですか。
  182. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) その通りでございます。
  183. 米田勲

    ○米田勲君 それではそのことについては、後ほどまたお話をいたします。  そこで、次の問題ですが、あなたはさらにこういうことを言っている。ILOがもし私の立場を不当として、日本政府に勧告をするような場合は、内政干渉であるから何度でも勧告を突返す、こういう意味のことを言っておられる。各新聞は同じように報道している。勧告が出たら、日本政府に対して勧告が出たら、内政干渉だから突っぱねる、その勧告を突っ返す、何度でも突っ返すと言っている。この発言は、あなた自身がなされたことをここで再確認しますかどうか。
  184. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そういうふうにとれることを言った記憶があります。
  185. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣、あなたは先ほどから自分の言ったことに対してはきわめてあいまいにぼかそうとして言葉を使っておられる。何か意図があるのですか。お答えになるときにははっきりして下さい。責任を持ってあなたが言ったのだから。
  186. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) お答えしますが、私が言ったことをことさらぼかそうという意思をもってお答えしているつもりは毛頭ございません。先刻も申し上げた通り、録音にする、速記にでもとっておりますればその通りと申し上げられますけれども、一言半句同じことを繰り返すことは困難でございますから、不可能でございますから、ということを念頭に置いて、きわめてまじめな気持で、そうととれることを言った記憶がございますと申し上げております。
  187. 米田勲

    ○米田勲君 ILOからもし勧告が出た場合は、それをすなおに受け取るという、そういう態度でなく、これを突っぱねる、拒否するということをあなたはおっしゃったことを確認しますね。そういう意味のことを言われたことを。
  188. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そういうふうにとれることを申した記憶がございます。
  189. 米田勲

    ○米田勲君 私は、とれるようなことなんというばく然としたことでなく、日本政府に対して勧告が出てきた、あなたはそれをすなおに受け取るという態度ではなくて、何度でもこれを拒否する、突っぱねる、それは内政干渉だから、こういうことを言っておられることを確認なさらないのですか。
  190. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今申した通りでございますが、もしお許しいただけば、その当時の心境を思い起こしまして、どういう話の順序でついそういうところまで言ってしまったかということを申し上げたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  191. 米田勲

    ○米田勲君 いや、そんなことを聞いているのではない。心境をお聞きしているのではなく、あなたの発言、私は一方だけではうまくないから、ここでこれをあなたは言われたでしょうということを確認した上で質問を続けようとしておるのです。だから、あなたが言われたのであるならば、言われたことをはっきりさせられたらいいじゃないか。あなたは人に向かって、人を責めるときにはきわめて過酷な責め方をするでしょう。人に対してだけきびしく責めて、みずからに対してはきわめて寛大な態度は文部大臣としてはよくないですよ。あなたが言われたことを、私はそう言いましたとなぜすなおに言わない。私は新聞の言葉通りで話をしているわけではない。勧告が出てきてもそれをすなおに受け取るという態度でなくてそれを突っぱねる、受け取らない、拒否するという意味のことをあなたははっきり言われたでしょうと私は聞いておる。
  192. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 問題と内容によりましてはそういうこともあり得るという意味合いのことを申した記憶がございます。
  193. 米田勲

    ○米田勲君 私はあなたが何度立ってお答えになっても、はっきりしないことを言いますけれども、あなた自身新聞報道は、私の発言した通り報道していますということをこの委員会で発言をしている限り、あなたはもし日本政府に対して勧告が出てきた場合には、それをすなおに受け取るという態度ではなくて、それを突っぱねるのだ、拒否するのだということを言われておるのです。そこで、私のお聞きしたいことは、ILOが会議手続を経て出した結論に基づいて各国の政府、今の場合は日本政府政府に勧告をすることは内政干渉だということをあなたは言っておる。ILOがある国の政府に対して出た結論を勧告することは内政干渉である、そういう主張の根拠を私はあなたにお伺いをしたいのであります。お答えを願います。
  194. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 新聞に出ました活字だけだと、いきなり御質問のようなことになるわけですが、それにはいろいろと前提があるわけでございます。限りある紙面に全部を書いてもらえなかったためにずいぶんひどいことを言うじゃないかという印象を与えるような表現になりましたことを遺憾に思うわけですが、それは日教組から提訴された事柄の中に、文部大臣は日教組と交渉すべきであるということを日本政府に勧告するということを要請した一項目があったと記憶します。そのことをめぐって記者諸君との間にいろいろと仮説的な質疑があり、それについ私もつり込まれていろいろとお答えをいたしたのであります。それで、私は日教組のその提訴事項というのは、法律的に、日本の法律制度上から見て適当でない事柄を勧告するように要望しておると考えます。また事実問題といたしましても、実際上会うか会わないかということを仮定いたしましても、文部大臣が第一義的に当面の相手方でなくて、地方分権制度の建前で教育行政が行なわれておる日本におきましては、都道府県と地方教育委員会が、結社の自由ないしは団結権の擁護を、条約を初めとするILOの精神を伸ばしていった場合の相手方は、地方の教育委員会が持つべきである。そうして法定事項について交渉権も認められておるという筋道でございますから、事実上日教組代表と会うべき相手方というのは、かりに考えるとしますれば、都道府県教育委員長協議会とでもいうような連合体、そういう立場の人がお会いすべき筋道じゃないかと、こういうことが私の常識でございます。またそういう気持で政府側の回答もいたしたのでございます。そういうことを前提としていろいろ仮説的な御質問に対しまして、よもや中正なるILOの判断が会わねばならない、会った方がいいじゃないかという勧告となって現われることは万あるまいと自分は思うと、万あるまいと思っても、もしそういう勧告がきたらどうだ、質問は、だんだんと仮定の質問が深刻化して参りまして、そういう段階にまで及んだわけでございます。そんなばかなことはあり得ないのだが、かりにそんなことがあったとするならば、何べんでもこっち側の考え方を、ILOが誤りないとは思うけれども、間違った判断をした結果、そういうことになることがあるかもしれぬのだから、そういうことがあった場合は何べんでも事情を疎明する責任を感ずる、何度もそういうやりとりをしても、なおかつ勧告がきたらどうであるというここになってきまして、つい新聞記事になったような意味にとれることを私が申した記憶があると申し上げるのであります。それにいたしましても、そういう話に油がのり過ぎてきた結果だと申したところで、新聞記事に出ました活字そのものを否定するわけには参らない。せめて私の気持というか、心境をみずから反省もし、そうして結果がよろしくないことは確かでございますから、衷心遺憾の意を表する以外には、これは私のなすべきことはないと、こう考えまして、今日までそういう気持であり、そういう結論を表明し続けてきておるようなわけでございます。
  195. 米田勲

    ○米田勲君 あなたのこの記者会見のときの話の流れを、今私、ずいぶん詳しくお聞きをしましたが、どう話の順序が説明せられても、ILOが勧告を日本政府にしてきた場合に、これをすなおに受け取る、何も受け取るということは実行することとは別ですからね。あなたも知っているでしょう、ILOの勧告はどういう性質のものか。それを受け取らないで突っぱねる、こういうことを言ったことは、あなたの話がどう置きかえてみても、これはどうも私には理解できない。あなたはILOという機関が、その定めに従って出した結論によって、政府に勧告をする必要があると出た場合には、日本政府に勧告をしてくることは、これはILOの当然の権利であり、義務ではありませんか。それを考えたら、私はどのように話の順序が置きかえられたとしても、内政干渉だといってこれを突っぱねるということはILOという機関、ILOに再加盟をしたときに日本政府が河とあの総会で各国代表に言ったかということを何ら理解もしていないし、そういう日本の態度に対して責任も感じておらないから、勧告がくれば内政干渉だから突っぱねる、こういう発言が出てくるものと思いますが、そうでないですか。
  196. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今のお尋ねとおしかりは少し私は残酷過ぎるという気持で拝聴いたしましたが、それは勧告がきても内政干渉だから突っぱねると申した覚えは毛頭ございません。端的に直接法で、そういう論理関係で突っぱねるなどということを言うはずがない、そういう覚えはございません。ただし、こういうことを申した記憶はあります。今申し上げた日教組の提訴事項に対して会うべきだという勧告がかりにきたとする、それから勧告がきましたことをいきなり突っぱねるなどということは、それはむろんあるはずがございません。勧告は政府としては受け取る義務がある、受け取りましたその勧告内容について検討をして、さらに申し開きすべきものがあれば再度の回答をすることも認められておると私は承知いたしますが、そういうことを念頭に置きまして、今のような勧告がきたとしますれば、それはむろん受け取って、そうして検討を加えて、そうしてそのしからざるゆえんを一再ならず理解してもらうために答弁書をまた送るということがあるであろう、そういうことを申しました。それでもなおかつ同じような勧告がくるとするならば、それは日本政府にとってはゆゆしき大事になる、すなわち地方分権の教育のあり方は適当でないから中央集権的に改めろということを意味するとも言えぬことはない。もしそうだとするならば、まともに交渉相手になるというためには、地方公務員国家公務員にする、あるいは都道府県の教育委員会が人事権を持っておる、給与決定権を持っておるその権限を召し上げて、文部大臣に帰属せしめるような法律制度の改正までもするのでなければ、そういう勧告というものは実行できない道理でございますから、ILO本来の趣旨からいってもあくまでも労働者の条件を向上せしめるために、幸福のために、労働者の側に立って、世界的な視野から、その角度から勧告をする権限も認められておるわけでありますが、あくまでもこれはその国の法律制度を一応尊重しつつ、まともに結社の自由や団結権の擁護の趣旨にぶつかるようなことがあるならば、それは国内法を改正してでもILO精神に沿わなければならないことは、これは当然といたしましても、今の提訴事項に関連します限り、今申し上げたようなことで、もし勧告がきますれば、誠意を尽くして日本における教育行政のあり方を十二分に理解いただく努力をすべきだ、そうして勧告が事情の不知に基づく誤りであるかもしれないということもあり得るだろう、そういうときにあくまでも誠心誠意をもって、事実に即してありのままのことをILOにお答えをして、そうしてその勧告を取り消してもらうなり何なりという努力をするのが、文部当局、政府側としては当然のことであろう。それでもなおかつそうであるというなら、それは内政干渉をするということにしかならないので、よもやそういうことがあるはずがない、そういうことを私は申したのであります。勧告がきたらば勧告がどんなことであれ、それが内政干渉だから突っ返すと申した覚えは毛頭ございません。
  197. 米田勲

    ○米田勲君 それでは文部大臣、もう一度お尋ねしますが、あなたはILOから勧告があった場合、その勧告をすなおに受け入れる場合もあるし、勧告をすなおに受け入れない場合もあるのだというようにあなたはお考えになっておるというように理解していいですか。
  198. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これは大体仮定のことをお答えをすることになりませんでいかがかとはむろん思いますけれども、事柄によりましては、神ならぬILOがひょっと事実根拠等が不明確なゆえに、あるいはまた私どもの側の説明が十分でないために、いわば誤った判断をすることが絶無とは言いかねる。従ってそういう仮定に立てば、ものにより、内容によりましては、今申し上げたように、ILOに対して再度疎明をして事情をよく認識してもらう努力をすることはあり得ると思います。
  199. 米田勲

    ○米田勲君 そういうお話を聞きますと、先ほどから文部大臣の言っておるような話であれば、これは話はわかる。となってくると、新聞に報道されていることは、あなたの発言と違うことが報道されている。これは記者諸君があなたの発言を間違えて記録したということになるわけですか。私はそのためにこの間の委員会であなたの発言の内容を参考資料としていただきたい、こういうことを豊瀬委員からお願いしたわけであります、それは事実と間違っては困るからであります。事実と間違ったことを前提にしてあなたにお尋ねをすることはうまくないから、わざわざ発言をしたのであります。そのときあなたは、新聞に報道されておる通りなんだということで、あえてあなたの発言なさったことを資料として出さなくてもよろしいというふうに責任ある答弁をなさったではありませんか。そうなりますと、今こういう問題が重大になってきて追及をされて、初めて話のわかることを今あらためてあなたは言っているとしか考えられない。当日各新聞社の記者諸君がこんな重大な問題を報道するときに、あなたが今お話をなさったようなことであれば、こういう記事となって国際的に反響を与えるような、そういう記事となって報道されるはずがない。これはあなたの言われていることが事実なのか、新聞記者諸君の誤りであるのか、もう一度私は念のためにお聞きします。
  200. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げますが、新聞記事に活字となって現われているあの部分がうそであると申し上げる資格はない、こうお答えしておるわけであります。紙面に限りがございますから、先ほど来申し上げておる相当長い間やりとりをして、話をしましたことが全部載せてもらえないがゆえにニュアンスが違って受け取られて、見た人には受け取られていることも私は知っております。また、先ほど来私がるる申し述べましたことは、文部省の記者クラブの諸君もおいでですが、言葉の端々の違いはあろうかと思いますが、話の筋なり結論、新聞記事には結論的なものだけが出ているわけですけれども、あのことにたどりつきますまでの質疑応答のニュアンスなり何なりというものは、先ほど来私がお答え申し上げているのと大同小異であり、ほとんど同じだと私は新聞記者諸君も御理解いただいておることと思っております。ですから、新聞記事に出ましたことをあれはうそですと申し上げるわけにはいかない。しかし、全部あの通りかとおっしゃればそうではないわけでございまして、従って答弁資料を出せと豊瀬委員が言われたときに、記憶をたどって作文をして提出した方がよかったかなと今思うのでございますが、いずれは新聞記事を中心に御質問がございましょうから、そのときに私の心境なり、話の、小うるさい内容ではございますけれどもるる申し上げるチャンスも与えられるであろう、こういうことを期待しておったものですから、あえて書いたものとして差し出さなかったわけでございます。
  201. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連質問。今の文相の、何か心理描写だか何だかわからないけれども、心境を述べるとか、あれを聞いていると非常にこれは問題が複雑になってきたと思うのです。あなたは衆議院の野原委員の予算委員会における質問に対して、過般の失言というものはこれは認められたわけですね。二つの問題についてこれは認められた。一つはソ連の失言、第二の問題は勧告を押しつけてきたら脱退する、こう言ったことが非常に誤りである、実は失言である。はっきりこの点は私は結論を下されたものと思っておったわけです。従って、あなたの決意から言うならば、当然私は出てくるものは勧告が出てくればこれを当然受理して、そうしてそれを忠実に実施するのだ、こういうふうに国民も了解しているだろうし、私もそう了解しておった。ところが、今あなたの心理描写なんかによると、それは受ける場合もあるだろうし、実情が違うときにはそのことを何回もこれを押し返して事情を説明する。こういうことなんですね。そうすると、取り消しの意味というものは、どういうことになるのですか。あなたのはっきりした決意を伺いたい。決意としては、私はILOの運営というものを認め、そうしてその正しさを認める、そうして世界的なそのような労働問題に対する結論については、日本政府は責任をもってこれをやはり実行する方向に態勢を切り開いていくという前提なしにはどのようなあなたが失言を取り消しても意味をなさない。それじゃ追及をされて苦しいから、予算委員会を言いのがれて、参議院本会議を言いのがれ、本委員会を言いのがれるために一応ここで頭を下げておくという印象を与えるのでありまして、非常に私はこの点重大な発言だと思いますが、この点あわせてはっきりした決意、答弁をしていただきたいと思います。
  202. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私が参議院の本会議で遺憾の意を表しましたのも、衆議院の予算委員会において野原委員の御質問に対してお答えいたしましたのも同じ気持でございます。それは何が遺憾であったかといえば、私は雑談であると思っておったにせよ、少なくとも定例記者会見の延長の席上において、それとおぼしきことを言ったことが、ああいう簡潔な結論的なことだけが歴然として記事に出たということ、そのことの私のしゃべったやり方、表現の仕方、あるいは事情を十二分に知り尽し得ないままの未熟な言葉の表現、そのことがああいう結果となったことに対して遺憾の意を表し、おわびをしたわけでございます。しかし、あのことがどうして卒然とああいう活字に、単純なああいう表現として現われたかという経過を先ほど来るる申し上げ、私の心理状態も、そのときの場面も御理解をいただこうと思って申し上げているにすぎないのであります。従って、先ほど米田委員の御質問に対してお答えいたしましたように、仮定のことですから、すべてILOの日本政府に対する勧告は忠実に即座に実施すべき事柄であろうと思います。思いますが、絶対しからば、再度事情を疎明して理解してもらわなければ困る、こういう勧告が出ない——絶対出ないのだと断言する気にも参らんので、万に一つもそういうことがあった場合は忠実に、誠実に真相を疎明して御理解をいただく努力をすべきこともあるだろうということを申し上げたのであります。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、あなたは言葉の上だけの取り消しをされたのですな。基本的態度については何ら変わっていない。こういうふうに了承していいですか、
  204. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは先刻来お答え申し上げております通り、結論的立場は今申し上げました態度と同じ態度でございますから、私の不用意な失言をめぐってのいきさつをお尋ねにあずかりましたから、そのことを中心に申し上げておるにすぎないのであります。基本的な態度は終始変わるはずはございません。ただ、ひたすら私の失言と不用意であったことを恐縮に思っておるのであります。
  205. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は重要な発言だと思うのです。言葉の上だけのやりとりについて訂正をしたが、何ら基本的には変わっていない。こういう態度では私はILOに対しまして与える影響は——今日段階においてあなたは取り消しをされた。それでこれは世論は、あなたが少なくともその方向を尊重するというふうに変わりつつあるというふうに了解しております。国民もそう、われわれもそう了解しておりました。ところが、基本的には何も変わりはないということでは、何らILOに対する態度の表明にはなりませんな、そうとられますよ。そういう国際的反響を持ちますよ、その点確認しておきます。
  206. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほどの米田委員の質問に関連しての岩間さんの御質問なので、その気持でお答えをしておるわけでございまして、ILOが中正な公正メンバーによって構成され、運営されておる。そうして原告、被告、両方からそれぞれ資料を要求し、それを慎重に検討した結果の結論が勧告等となって現われるわけですから、万々不公正な結論——再度疎明しなければならないような判断が現われるはずはないと思います。思いますが、絶対にしからば勧告があったらすべてそれを直ちに実施するかというふうな御質問でございましたから、そういう仮定についてお答えすることはいかがとは思うけれども、しかしILOといえども神様じゃないのだから万一そんなことがあった場合は、ただ内政干渉は、ごめんこうむるという態度はむろんあってはならない。それはちょうだいに及んで、そうして内容を検討して、もしこれは何らかのこちらからの疎明の理由なり証拠なりというものが不十分であり、説明が不十分であるがゆえの誤った、期待しない結論が出たと仮定するならば、そういうときには誠実に実情を疎明して考え直してもらう努力をすることもあり得るであろうということをたまたま申し上げただけであって、そう申したこと、そのことが相変わらずILOを軽視しておるとか、あるいはILOが中正な機関でないがごとく私が思い続けておると断定して今のようにおっしゃることは、私の真意とは違うわけでございますことを御理解いただきたいと思います。
  207. 米田勲

    ○米田勲君 いろいろ考え方についてお話を伺いましたが、そういたしますと、新聞に報道せられておる一月二十日の記者会見の席上言われた勧告が出てきた場合に内政干渉だから突っぱねるということはあり得ない、そういうことは考えておらないということをはっきり答弁できますか。
  208. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私はあり得ないと思います。
  209. 米田勲

    ○米田勲君 あなたの、このILOから勧告が出てきたら内政干渉だから突っぱねるという言葉は、ここで唐突として出てきたのじゃない。あなたの言葉はその前に言っておる。ILOはソ連などがひっかき回しているのだと、この運営に対する認識、その認識前提になって突っ返すということが出てきておる。きわめて筋が通っておる、あなたの言い方は。前のその運営を誹謗した言葉は何ら根拠がない。そうしてまた内政干渉などと勧告が出てきたときに言うこと自体が不見識である。それはなぜですか、日本がILOに再加盟したとき、私は何度も言いますが、何と国際的な立場でその考え方を表明しましたか。ILOに再加盟を許され、みずから申し入れをして、立場を釈明してそれを各国に承認してもらって加盟した限り、ILO憲章を十全に尊重するのがあたりまえではありませんか。何ですか、勧告が出てきたら自分らの考え通りにいかなかったらそれは何度でも押し返すのだというものの考え方、これはILOに再加盟したとき、日本政府が発言をしている態度、考え方と全く反する態度です。それが一連のあなたの発言で理解できるわけです。しかも、あなたはその次に最も重大なことを言っている。あなたにお伺いしますが、あなたの総理大臣は、国会においても、国民に対しても、国連を中心とし、国連を強化する外交路線に立ってやっていきますと外交方針を明らかにしている。そういう外交の基本的なかまえと、勧告があって、日本政府考え方と違えば何度でもこれを押し返す、それでも聞かないようなら——あなたはこう言っている、それでも聞いてくれないなら脱退も辞さない、脱退すべきだという言葉か、脱退も辞さないという言葉を使って最後の結びをしている。そういうように、日本政府考え方と、ILOが成規の手続によって出した結論に基づいて出てきた勧告が、意見に相違があるからといってそれを突っ返したり、内政干渉したりしているのだという見方で、聞いてくれないなら脱退をするというそういう主張は、池田内閣の国民に公約をした外交方針と相反しはしないか。閣僚の一人であるあなたのILOを脱退するという、脱退も辞さないという、脱退をすべきだという発言は、もう一度聞きますが、あなたの内閣の外交方針と相反しはしないか、その点をお伺いします。
  210. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘通り、内閣の方針という以前に、日本が国連に加盟しておるという事実から考えましても、矛盾していることだと思います。ただ、私はあえて言葉じりをとらえていろいろおっしゃっているとは申しませんけれども、このときにも話の勢いと申しますか、たとえば女房を離縁する意思もないのに、こんなことがお前にわからないくらいなら、このことを聞かないくらいならもう別かれるぞという、離縁するぞというようなことは、一種の何というか、メタファーとして使うことがあるわけでございまして、そういうふうな、いわば、しからば軽率な気持でそんなふうにとれる表現をしたことはけしからぬじゃないかと、その点をおしかりになれば一言もございませんけれども、一連の私の考え方が、まさしく国際連盟脱退のときにつながるようなふうに断定していただくことは、少なくとも私の真意ではないということだけは御理解いただきたいと思うわけであります。表現の不十分さ、不十分さのゆえに新聞記事に現われましたことの影響を申しわけなく思いますから、遺憾の意を表しておりますことを繰り返し申し上げます。
  211. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣、あなたはこの話の最後に、脱退も辞さないとか、脱退すべきだとかということには触れていないのですか、脱退ということを言っていないのですか。どうもあなたの答弁からわからない。
  212. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ちょっと言葉が足りませんでしたが、夫婦の問題になぞらえて申しましたことで御想像いただいたかと思って、具体的に触れませんでした。脱退などということが行なわれるべきはずがない。
  213. 米田勲

    ○米田勲君 言ったのですか、言わなかったのですか。
  214. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 言いました、それらしいことを言いました。言いましたが、その意味は脱退などということが現実にあり得ようはずがない、考えてもいないという気持であればこそ、そういうわれわれの主張は正しいと思っているわけですから、日教組は日教組でまた思っておられると思うのですが、そういう立場で話をしておりますときに、そういういわば内政干渉にわたるかもしれないとおぼしきことが、目的からそれても——なおかつ何度も出てくるはずがないという気持の上の前提があって、つい失言が重なっていった。そのことは言い過ぎであったし、用語が不用意であったし慎重を欠いた、そういう点を私は遺憾に思っておるわけでございまして、申さなかったわけじゃございませんが、それはあくまでもあり得ざることを、たとえが極端過ぎたかしれませんけれども、あり得べからざるものと思えばこそ、そういうわれわれの主張が通らないことはないということを強調するの余りそういう言葉になってしまったものだと、今から思い起こしましてそういう気持であったことをはっきり記憶いたします。
  215. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣、あなたはどうもあり得べからざることを仮定して、何のために脱退するというようなことを口にするのかということを私は一切わからない。あなたは先ほど女房を離婚する話にたとえて申しておりますが、そんな比喩とこの問題とは同列に並べて論ずべきことだかどうか、あなたは常識的にわからないのですか。あなたは性格的にそうなのか、それは私は理解しませんが、日本政府の考えと違った勧告があった場合に、それを突っぱねるばかりでなくして脱退も辞さないというものの考え方は、結局逆に返っていくと、ILOに対するあなたの認識なり、日本政府が加盟をしたその加盟をしている立場、理事国の一人であるその立場をわきまえておらないから、こういうことが次々に出てくる。大体あなたは文部大臣ではありませんか、一市民の荒木萬壽夫であれば、女房を離婚するときと同じ論法で、ILOを脱退するぞと言っても大した反響はないでしょう。しかし、あなたは閣僚の一人なんですよ。先ほどから私がずっと聞いてきたら、この新聞に報道されている重要な部分はすべて根拠がない、あなたの発言には。どれ一つ聞いてみても根拠がない。そういう根拠のないことを、国際的に重要な機関であるILOに対して数々の誹謗をしたりすることがあなたに許される立場にあるかどうか、その責任をあなたは一体どのように感じておるのですか。私には、どうも先ほどからずっと一貫してあなたの態度には、こういう重大な失言をしたという責任感が大してない、その点についていかがですか。
  216. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど来るる申し上げておることで、少なくとも気持だけは御理解いただいたかと思うのですが、予算委員会なりあるいは本会議場におきまして、私の表現の誤りあるいは認識不足の部分があった結果として、自分の意思とは違った結論的な新聞記事が出ましたことを衷心遺憾に思いますから、その遺憾の意を表する最高限度の意思の表示が、私は国会における遺憾の表明であると心得て、遺憾の意思を表明しておる次第でございます。先ほど来の御質問によりまして、せめて新聞記事があんなふうに出るに至った経過だけでも、この機会に御理解いただければありがたいと思って、くどくお答えを申したような次第でございます。衷心遺憾に存じております。
  217. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 関連。大体大臣の記者会見のいきさつなり気持については、説明についてわかりましたが、どうも私、米田委員の質問を聞いておって了解に苦しむのは、本会議における大臣答弁を読んでみますと、先ほどから基本的な考え方は変わってないとおっしゃる。その基本的な考え方というのは、単に先ほど大臣答弁なさった、ILOが間違った勧告をしてくる場合には、これを拒否することもある、こういうことだけではなくして、何度も答弁なさったように、少なくとも一月二十日現在においては、あなたの認識矢嶋委員の質問によると、本会議答弁通りILOを認識しておったと、こうおっしゃるのですね。ところが、この本会議答弁を見てみますと、「私の発言の中で、話がはずみ過ぎたとは申しながら、その用語において穏当を欠いた個所がありました。」いみじくも大臣はILOに対する基本的な考え方をここで率直に述べられた。私のILOに対する基本的な考え方は、ソ連陣営がひっかき回しておる運営が行なわれておるということ、それからILO勧告そのものは神様でないとか、いろいろな言葉は使われましたけれども、やはりひっかき回された勧告の結論が出てくるという前提に立っておられる。ほかの言葉で言いますと、ILOの勧告は、御承知のように、その国の国内法が国際労働慣行に合わない場合には、国内法の改正を勧告することもあり得ます。従って、その国のすべての法律、規則、慣行を前提、尊重してのみ勧告がなされない場合もあり得ると思うのです。それはたとえ日本の法律がすでに定められておっても、国際労働慣行に基づいて四十カ国、四十人の理事の結論として尊重しますというのが、米田委員がたびたびやったところですね。ところが、大臣の基本的観念、認識は、一月二十日現在においてILOに対する認識は、本会議答弁そのままを読んでみましても、用語は不適切であるけれども、ILOは共産陣営にひっかき回されておるということ、それから先ほどあなたがいみじくもおっしゃったあれを発表される時代には当初の気分とは幾らか変わってきておるので、自由主義陣営だけでILOを作ろうとする動きもあるというこの認識大臣のILOに対する認識は、共産主義国家陣営の撹乱するところであるし、その勧告の結論は、従って一方に偏したものであるという基本的観念を、あなたの答弁を一貫して聞いておると、いろいろあなたの真意なり、気持はあったにしても、ここに固定しておるということを私は端的に大臣答弁から認めざるを得ないのです。すなわち、ひっかき回しておるという認識と、勧告を拒否する、脱退するというあなたの観念とは直接精神分裂でなくして、結びついて、その言葉が基本的態度になっておるということ、この点を大臣はここではっきり先ほどの答弁のように、私の基本的観念はごうも当初より変わっていないということ、ただ大臣が本会議その他で表明されたのは、用語の不適切である。本会議議事録に明らかに用語の不適切と。あなたの基本的観念は変わっていない。そうして、大臣、そのことについて答えていただきたい。  もう一つ大臣にお尋ねしたいのは、これは矢嶋さんも指摘しましたが、「恒久平和を確保するため必要な労働条件の改善を目的とする公正な国際機関であると承知いたしております。」と、本会議で。ところが、先ほどの矢嶋委員の質問に対しましては、一月二十日以前からそう認識しておったけれども、自分の判断、思量はヤジも飛んだり、あるいはおもしろくない気分になっておる一、二の条項ですね。従って、本会議のこう認識しておるという答弁と、大臣が一月二十日に記者に発表された見解とは非常に大きな食い違いがあるのですね。その矛盾をおそらくこれは事務当局が書いたのでしょうが、論理的に明らかに矛盾をすることを本会議でも答弁をしておる。従って、前段に申し上げたように、大臣は少なくともILOに対する基本的観念は、国際労働慣行に基づいて民主的に運営されておる機構と認められないで、共産陣営にひっかき回されておる。従って、自由陣営だけで別個に作ろうとしておる。日本もその方向に指向していきたい。そうして国際法と多少矛盾する国内法の改善を要求するような勧告がなされても、これを尊重していこうという基本的観念に全く欠如しておる。このように米田君の質問から把握するのですが、間違いありませんね。
  218. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 根本の考え方において変わりないと申し上げたゆえんは、先刻もちょっと申し上げましたけれども、ILOというものが三者構成で、しかも今読み上げられましたような趣旨で、公正な国際機関として厳然として存在しておる。そのILOの審議の結果出てきました勧告等の事柄、そういうものが当然加盟国によってすなおに受け取られ、受け入れられるべきもの、そういう認識は、そういう性格のものであるということについての基本的な感じは、前後相違はございませんと、こういう気持で申し上げたのであります。用語が適切を欠いて云々と本会議で申し上げましたが、それは今御指摘のように、何度も申し上げたように、ヤジが飛んだり何だというふうなこと、そういうふうなことを率直に雑談でありましょうとも話しておったにせば、自分の真意と違った活字とならないで済んだかとあとで思うわけでございますが、そういうことでなしに、抽象的に簡単な言葉でその気持を言っちまったもんですから、受け取られる方では活字になったような結果になったと私としてはまあ思っておるわけでございまして、その気持を用語の不適切からああいうようなことが記事に出たということを恐縮に思います、こう表現したつもりであります。
  219. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先ほど申し上げました国際労働慣行に基づいて四十の理事が民主的に討議をして一つの勧告を出してくる、この際に、国内法とある程度そごする内容を勧告してきた場合でも、ILOの精神、あるいは加盟の際に日本政府の誓約した事項、こういう点から考えると、やはり国内法を改正していくという基本的な、常にそうあるということではないですけれども、拘束されるという意味ではないですけれども、基本的にはその勧告を尊重していくという立場大臣には根本から欠如しておるというふうに米田君の質問に対する大臣答弁から受けたんですが、その点については大臣は態度をもう少しはっきりして下さい。
  220. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは豊瀬さん引例されましたようなことは当然あり得ると思います。ひとりILO条約に限らず、条約の結果として国内法の改正を必要とすることが多々あると思います。そういう意味で国内法を改正しなければ受け入れられないからといって、それにまた抗弁せねばならない課題だとは私は思いません。事柄によりけりだと思います。(岩間正男君「内政干渉……」と述ぶ)内政干渉だと申し上げたのは、先刻ILOに対する日教組の提訴事項の一つ文部大臣が交渉の相手方たるべしということだけを取り立てて、それを中心に記者諸君と話のやりとりをしたときに、日本の基本的な教育行政のあり方まで変えねばならぬということまではよもやILOは言ってこないだろうということを感想を述べたことに関連して申し上げただけのことでありまして、一般的な問題としてILOの勧告が豊瀬さん御指摘のように、日本の国内法をある程度改正しても受け入れるべき本質を持っておる、それだけの権威を持つおるのだという一般的認識は、あなたと同様同感でございます。
  221. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。先ほど大臣は、ILOが間違った判断をしてきた場合に云々とおっしゃいましたが、間違った判断という基準はどこでおきめになりますか。
  222. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは一般的に間違えることがあるということを申し上げたつもりは毛頭ございません。先刻来引例しましたように、今度の日教組の提訴事項に、文部大臣は日教組の代表者と交渉相手にならなければならぬぞという勧告をしてくれという課題が一つあったと思いますが、そのことは先ほど申し上げましたから省略しますけれども日本の根本的な制度のあり方を考え直さなければ、もし万一そういう勧告が日教組の言う通り出てきたとするならば、受け入れは困難だということもかりにあったとして、なるべく私はノーと言ってほしいわけですけれども、あったとして、その場合に、日本の労働事情も、諸外国と相当違うところが多々あると私は想像しますが、たとえば専従者制限の問題にいたしましても、われわれが一応通り一ぺんに知っておる限りにおいては、本来労使双方が、御用組合でもない限りは、専従者なんというものは、通例ならばあり得ない。しかし日本では、沿革的にいろいろと形を変えて、各労働組合内にある。そういう事情を日本語で言うならば詳しく言えるけれども、不自由な英語を通じて、それからまた理事会、総会等のたくさんな発言があるときに、そう至れり尽くせりの説明もできないであろう、こういうことから万に一つ、ILOが、日本の国情、特殊事情、あるいは私ども政府側として申し立てておることに、しさいにわたって検討することがかりに困難であった、そのゆえに、誤ったと申し上げるのは適当でないかもしれませんが、われわれの期待しない結果が出ることがなしとは保しがたい。そういうときには、もしそういう意味においてわれわれの期待通りの回答がこなかったときには、われわれはわれわれの主張が正しいと思っておる立場に立ってものを考えまして、再度、実はこれこれですということを十二分に御説明申すべきこともあり得るであろう。そういう意味で申したわけでございます。
  223. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますというと、間違ったということは、大臣がお考えになっていることと違った勧告なり、あるいは注意書がきた場合に、それをおさしになるわけですか。具体的には、今大臣がおっしゃったように、日教組と会見するのは違法云々ということをおっしゃったんですけれども、義務教育の国庫負担半額の問題、教員の給与の交渉の問題、予算編成権が文部大臣におありになる、そういうような点で、教師たちが集まって改善についてお話し合いをするということ、そのことは間違っているという大臣見解なんですね。ところが、国際労働機構の内容を見ていきますというと、やはり一方的な解釈をして、時の政府の都合のいいようなことを聞かない者に対しては、往々にして独裁的な傾向があるという、こういう歴史が世界の中にございますために、政府側あるいは労働者側、それからいろいろな、三者が集まりまして、公正な判断をする、世界の国の中で一人でも不当に泣く者があってはならない、こういうふうな機関だと私ども承知して信頼しているわけです。そういう機構が、あらゆる検討をし、日教組の申し立て、文部省見解、世界の情勢、こういう中で縦から横から討論されて、これは日本政府は少し行き過ぎではないだろうか、あるいは国際常識として、勧告として出るか、注意書として出ますかわかりませんが、かりに注意書として出た場合でも、やはりこれは国際慣行上、勧告と同じか、それ以上の責任を持つものじゃないだろうか、こうした考えでいった場合に、大臣答弁を聞いていますというと、基本的には変わらない云々ということを再三再四おっしゃっている。基本的に変わらないというのは、記者会見をなさるその前の態度と今の態度が変わっていないと、こういうふうに理解してよろしゅうこざいますか。
  224. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それはさっき豊瀬さんにもお答えしたのですけれども、基本的に変わらないと申し上げたことは、ILOという機関が国際機関としての中正なものである、またそこで慎重審議せられてきめられた結論に従って勧告されるであろう、その勧告が中正なものであり、すなおに受け入れらるべきもの、また国内法のある程度の改正を必要とするとしても、ILOという条約の精神から見て当然と考えられる限りにおいては、国内法を改正しても受け入れるべき勧告であるということ、そういうふうな認識においては、私もおぼろげながら前後同じ考えでおります、こういうことを申し上げたのであります。ただ、問題は、くどくなりますが、先刻来新聞記事を中心にいろいろお尋ねだったものですから、具体的な例として今も申し上げた、文部大臣は日教組と交渉に応ずべしという趣旨の勧告があったとする、そのことは少なくとも今の私ども考え方、今の日本教育制度のあり方、これは相当本質的に根本的な変革をしないならば、受け入れ得ない課題じゃなかろうか、こう思われる。ですから、そういう仮定の問題ではございますが、その問題に関連して申し上げれば、そういうことが、かりに万一勧告があったとするならば、私どもの側から提出した資料が不十分であったか、あるいは説明が十二分にILOに理解されなかったからではなかろうかということも考えねばなるまい、もしそういうことであった場合は、一切ならず、場合によっては事情を十分に御理解をいただく努力をせなければならぬという場面もあり得るだろう、そういうことで、何と申しますか、一種の内政干渉みたいになって、言いかえれば国内法を根本的に変えなければならぬというがごときことを、ILOはよもや勧告はなさるまいというような前提をもって、その仮定の課題につきまして申し上げていることを中心に、先刻来るる申し上げたのでありまして、一般的な考え方として、今千葉委員のおっしゃるように、ILOの何たるやということは、一応は心得ておりましたつもりであるし、それは一月二十日以前と今日と同じ気持でおります、こう申し上げたわけであります。
  225. 千葉千代世

    千葉千代世君 今、大臣はおっしゃるのですけれども、たとえば間違って勧告した場合には、これこれの釈明をする、それでも聞かなかった場合には、国内法を改正して云々ということをおっしゃったわけですけれども、先ほどの御答弁の中には、どうしても日教組と会見をした方がいいという勧告があった場合にですね、国内法を改正していく、その改正は、教育の地方分権はよくないのだから、中央集権にしていって、一切がっさいを握ってしまうと、こういうことをおっしゃっているわけです。そうするというと、口では誠心誠意を披瀝して、そうして妥当な判断の材料を再提出してもいいと口ではおっしゃいますけれども、その心の底の中に、中央集権をやっていくという、ほんとうのねらいはここなんでしょう。それが気に入らなければ何度でも言うと、こういうことなんでしょう。そこをはっきりして下さい。
  226. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そもそもが言わずもがなの将来のことに対しての質問に応じまして答えましたことが端緒となって、新聞記事になったということから、いろいろと話が発展するものですから、とかくこんがらかる傾向でございますが、今の日教組の提訴事項だけをとって考えますならば、提訴事項にありますように、交渉の相手方にならねばならぬという趣旨のことは、相当根本的な国内制度の改革をしないことには、その受け入れば困難ではなかろうかと今は思っているわけなんです。そういう勧告がくるともこないとも、今後のことですから、一切仮定には論及しない方が無難では、ございますけれども、かりにそれをとって考えればそうであったということを先ほど来申し上げておることと御理解をいただきとうございます。
  227. 千葉千代世

    千葉千代世君 今大臣は、日教組の申し立てだけ云々とおっしゃったんですけれども、これは、この二十二日に開かれる結社の自由委員会では、このことだけではないわけなんです。総評はあげて国鉄の問題、全逓の問題、日教組の問題等々をやはり総合的な労働者の利益という観点でもって提訴しているわけなんです。そうすると、単に日教組だけの問題として把握をなさって、大臣は、文部大臣だからおれに権限があるんだからといって、ぽんぽん勝手なことを言っていいものかどうか、そのことを一つ
  228. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今おっしゃるような気持は毛頭ございません。一般的にはILOというものの国際機関としての存在意義というものはすなおに一応理解しておるつもりでおりますということだけをお答えした方がよかったわけでございますが、いろんな派生的な設例は申し上げないことにして、繰り返し申し上げますが、ILOの国際機関の本質的な意義及び使命は及ばずながら心得ておるつもりでおります。
  229. 岩間正男

    ○岩間正男君 官房長官見えておるから私は簡単にやりますけれども、今の文相の説明によれば、あなたの発言の中で、日教組と会わないと、団体交渉をしないというようなことは、これをしろという勧告をしてきた場合には内政干渉だ、脱退も辞さないということはあり得ると言われておるわけですね。この前言を取り消されますか、今の内政干渉云々という言葉を取り消されますか、これはいかがです。この点はっきりして下さい。
  230. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今の質問はどういう点かわかりませんが、先刻来申し上げましたことで尽きておるかと思いますけれども……。
  231. 平林剛

    委員長平林剛君) 岩間君、あと一問だけ、一つ簡単に願います。
  232. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなた、そういうふうに言っておりますけれども、たとえば今度八十七号を批准しますね。政府の態度できまっておりますね。御承知のようにこれは国内法を改正する。しかし、これはあなたの言い分で今の日教組、つまり日教組の団体交渉云々について勧告してくれば内政干渉だという前言を取り消さなければ、今度のこのやり方ですね、これも内政干渉の結果こういうことが行なわれるということになるわけですね。だから、私は内政干渉云々という言葉ははっきり取り消すということがこれは重要と思うのです。あなたの取り消しの中にはソ連がひっかき回した云々、脱退云々と、この二つだけ言っておるけれども、日教組の団体交渉勧告をした場合には内政干渉にわたる、こういうようなことは、非常にこれはあなた自身の独断的な考え方、国際慣行を優先して、それに合わせて日本の労働行政を民主化するという立場から言えば、最初にあなたたちが論陣を張って、内政干渉だというような圧力をILOに加えるということは非常に不当なことだと思います。従って、当然これは取り消さなければならぬと思うのですが、この点明確にしておいてもらいます。この点については取り消しをしてない、はっきりしてから議論に入るわけですから。これは関連して官房長官に私聞きたいと思います。
  233. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 繰り返し申し上げますように、新聞記事を中心にいろいろな御質問に応じて経過、心境等を申し上げたわけであります。ILOが内政干渉をすると私は申した覚えもない、また内政干渉なんかするはずがない、こう思っております。
  234. 米田勲

    ○米田勲君 それではだいぶ中断されましたが、あなたは参議院の本会議で発言をなされたことは今さら私がここで申し上げなくてもいいと思いますけれども、あなたの答弁はこの個所、こうなっておる。「第一に、去る一月二十日、私が文部省の記者クラブとの会見におきまして、私の発言の中で、話がはずみ過ぎたとは申しながら、その用語において穏当を欠いた個所がありましたことは、率直に言って適切を欠いたものでございまして、まことに遺憾に存じております。」こう言っておる。この言葉は、決してあなたの発言を取り消してはいない。本会議のこの答弁は取り消していない。衆議院の方の予算委員会で何を言われたかは私はわかりません、少なくとも。しかし、あなたは一月二十日の記者会見のうちの、どの言葉をも取り消してはいない、この発言は。これがまず私のこれから申し上げることの主張の根拠になっておる。取り消してはいない。  そこで先ほどからいろいろ長い時間にわたってお尋ねをしましたが、まず第一点のILOの会議運営に関するあなたの発言、ソ連などがひっかき回しておるということは、何度もお聞きしましたが、全く根拠がありません。あなたもそれを認められると思う。こういう誹謗をすべき根拠もないし事実もない。しかるにこういうことを言っておる。この言葉をあなたにはっきり取り消していただきたい、この委員会で。ひっかき回しておる、まずこの言葉を一つ——ひっかき回しておるというILOの会議運営を誹謗したこの言葉を取り消しますということをはっきりしてもらいたい。これが第一点。  それから第二点は、勧告をしてきた場合、内政干渉だから突っぱねる、これはあなたが言わないというような意味のことを言っておるが、しかし、あなた自身が自分の発言した条件の中で私らは話しているんですよ。あなたは、新聞には、新聞にはと言っておるけれども、あなた自身が、われわれをして、新聞に報道せられたことを根拠にして、あなたと話し合いをしなければならないような条件に、あなた自身が置いた。あなたが自分の発言をなされた要旨を、われわれに資料として出していただけば、何も新聞報道をこの際出さなくてもよかった。あなた自身が新聞報道を認められたんです。従って新聞報道だということは即あなたの発言だというふうに考えざるを得ないんです。そういうことできょうは論議をしている。その報道の中に、どの新聞を見ても、内政干渉だから勧告があれば突っぱねると申しておる。勧告があればILOに加盟しておる限り、ILO憲章の規定に従ってそれを守りますという誓約を、総会でした日本政府としては、その勧告を受けるという態度をはっきり持ってしかるべきだ。従って、勧告があった場合には、内政干渉だから突っぱねるという種類のILO勧告に対する発言は一切誤りであるから取り消しますと、これが第二点。  三つ目は、まだこれははっきりしていない。先ほどからいろいろ聞いておって、あなたは、日教組と文部大臣話し合いをしなさい、交渉をしなさいと、かりに勧告があった場合には、これはやっぱり内政干渉だから突っぱねるということに、依然として今も変わりがない。何度も突っぱねる、聞かないなら最後はあなたはどうなさるのか。三点目はまだ明確でない。しかし、長く追及しても時間が非常にかかるので、この三点目は、勧告があればILO憲章の精神に従って義務を履行しますという誓約をしている日本政府としては、勧告をすなおに受け入れます、一月二十日の記者会見で、勧告があれば内政干渉だから突っぱねると言ったのは、私の全くの誤りであります、従ってこれを取り消します、こう言ってもらいたいことと、もう一つは、勧告があって、またこちらから意見を述べて、何度言っても日本政府の言うことを聞いてくれない場合は脱退をするというのは、全くの誤りであります、そういう考えはありません、前に申したのは私の誤りでしたというふうに、この三点、この委員会で明確にして下さい。そのあと、本会議の問題については、別途議運等でまた話をしますが、しかし、この委員会で少なくともこの三つは明確にして下さい。あなたの言っておるように、話がはずみ過ぎたなどというごまかしの言葉で、問題の済むはずの性質のものじゃない。しかも、穏当を欠いた個所があるなどという、そんな詭弁で、この重大な発言を糊塗できるものではない。そうしてまた、これは遺憾に存じておりますというのは、日本語の中で最もあいまいな言葉です。あなたは最大限の自分の誤りに対するおわびを、このILOに対しても、国民に対しても、国会に対してもとるべきなんです。そういう態度を表明すべきなんです。そういうことから私はこの三点について、この委員会で明確にしてもらいたい。明確になさらないのであれば、もう少しあなたと話し合いを進めなければならない。
  235. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私が本会議で遺憾であると申し上げたのは、取り消し以上の誠意を込めて申したつもりでおります。記者クラブにはあの翌日、私の舌足らずの、あるいは表現が適切でなかった、あるいは誤った認識不足の常識に基づいて発言しましたことを反省しまして、翌日再び臨時記者会見を求めまして、新聞紙を通じておわびのつもりで訂正をいたした次第であります。  第一の、繰り返し申し上げますが、ひっかき回されておるという表現は、事実と相違いたします。そのことは、取り消しどころか私は遺憾に存じております。ILO脱退ということは、先刻来るる申し述べましたような心境においてつい言葉が走りまして、これまたいささか軽率であり申しわけないと思っているのでございます。  さらに、ILOに対する日教組の提訴案件について具体的にどうするかということにつきましては、今後のことに譲らしていただきたいと思います。まだ審議も始まっておらないのにどうだこうだと言うことそのことを、この前の失言に省みまして慎むべきだと思いますから、今後のことに譲らしていただきたいと思います。
  236. 米田勲

    ○米田勲君 もう一点の、勧告があった場合に内政干渉だという認識をこれを改めて下さい。はっきり発言して下さい。
  237. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 勧告がすべて内政干渉だとは毛頭考えません。むしろILOの今までの慣行からいたしまして、内政干渉にわたるような勧告はいまだかつてしたことはないと私は聞いておりますから、内政干渉にわたるようなことをILOがするはずがない、そういうふうに認識いたしております。
  238. 米田勲

    ○米田勲君 それであれば、あなたが記者会見で言われた、勧告がくれば内政干渉だから突っぱねる、この言葉は取り消して下さい、はっきり。あなた自身がそう思っているのなら取り消して下さい。
  239. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 勧告が内政干渉にわたるなどということは私は言った覚えはない。繰り返し申し上げますが、ILOはあくまでも中正なる機関であって、各国の利益のために、世界の労働者の利益のために存在するものでありまして、内政干渉をあえてするようなことを今までしたことがない、またそういう内政干渉にわたることは遠慮しようじゃないかという空気であるということも伝え聞いております。勧告が内政干渉であるなどと申した覚えもございません。もし申したとしましても、取り消すことはこれはもう当然なことでございますが、ILOの勧告即内政干渉なんと申し上げたことはないことをこの際はっきり申しておきたいと思います。
  240. 米田勲

    ○米田勲君 私は最後に一つ文部大臣にお尋ねをしますが、あなたは重要な個所についてそれぞれきょう取り消しました。これは私も了承をいたします。そこで、これは重大なあなたの発言、失言であります。しかも私は、文部大臣であるあなたが、閣僚の一人であるあなたがこういう重大な失言をしてそれを当委員会で取り消した。取り消したらそれで大体責任は終わった、この問題は終わったと、こういうようにあなたが認識しておられるのかどうかですね。取り消されたことについては了承しますよ。しかし、取り消したらこのことがもう落着をした、このことがこれで片がついたのだというふうに認識をしておられるのかどうか。それをお尋ねした上で私の言いたいことを申します。
  241. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど来るる申し上げましたようなことを御理解いただけば、私は遺憾の意を表したことによって御理解をいただけるものと心得ております。
  242. 米田勲

    ○米田勲君 文部大臣はこの委員会で、きょうの審議で、話し合いで、取り消せば、あるいは話し合いをすれば、それで事はこの問題は終わったのだというふうに考えておるようであります。しかし、あなたは非常に認識が不足しております、それは。それは日本の国内の問題にしても、閣僚の一人であるあなたが失言をなさることは責任重大であります。ましてや、国際的なこのILOの機関に対する誹謗をしたり、再加盟を申し出て、るる憲法の条章についても説明を加え、憲章の精神や規定に沿うてその義務を果たしますと約束をしている日本政府立場からいって、きわめて私は国際的に重大な問題だと思うのです。そういうあなたのような失言が、あなたのような立場の人が国際的な失言をするから、それで日本の国際的な信用というものが、そういうところからくずれるのだということを忘れないでもらいたい。国際的な信用云々の問題は、よく自分の都合がよいときには使われます、あなた方は。しかし、あなたの今回のこの重大な失言は、国際的に日本の信用を大きく失墜をしておる重大な問題なんです。ただ、当委員会で取り消したら、それでそのことは落着したのだなどという簡単なことではありません。私なら、これだけの大きな国際的失言をした文相は、日本の文教行政の最高責任者として適任者ではない、あなたは。話がはずみ過ぎたというようなことで、こんな重大なことを言えるようなあなたは適任者ではないと思う。あなたになってからどうも文部省と教職員組合の間が極端に悪くなっておる。あなたは国内法を抜本的に変えなければ日教組の代表と会うことはできないというようなことを先ほど申しておるが、それでは、あなた以前に最近文部大臣になった人たちは、すべて日教組の代表と会って話し合いをしている。これは国内法を抜本的に変えたか。現在の国内法のままで話し合いをしているではありませんか。あなたは日教組の代表とあえて会見をしないのには意図がある。それは後日また大いに論じたいと思います。しかし、あなたのようながんこな態度で、このような国際的な失言をしても大した痛痒を感じていないような神経で文部行政をやっていかれるのでははなはだ迷惑である、国民は。辞職する考えはありませんか、こういう失言をして。お伺いいたします。
  243. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ございません。
  244. 米田勲

    ○米田勲君 それでは私は、この本会議発言についてはこの一点だけでなく、さらに大いに文相の意見をたださなければならぬもう一カ所があるのですが、これはまた理事会等で話し合いをした上で、適当な日に十分追及をしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  245. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先刻以来米田委員を中心に各委員から質疑がございましたが、それに関連してお伺いいたします。  私は官房長官は内閣総理大臣の代任として御出席を願ったわけであります。で、ただいま問題になっております本会議の速記録ですがね、大臣の一月二十日の記者会見の発言に伴って善処を要望したのに対して、総理大臣は、任免権者であるが罷免権を行使しようとする考えはございませんいという答弁があり、文部大臣から一部遺憾の意と、依然として高姿勢の答弁があったわけです。それに対してさらに反問いたしましたところが、総理大臣は、「再度私はひざを交えて文部大臣の意見を十分聞きまして、そうして善処いたしたいと思います。」こういう速記録が残っているわけです。それから先般の委員会で、文部大臣にはまあ宿題を出しておったわけですね。その答えを最終的にいただきますが、そこで内閣を代表しての官房長官に一、二伺います。  まず、一月二十日の文部大臣の記者会見が、国内的に国際的に報道された。二の二とは好影響を与えたか、それとも悪影響を与えたか。好ましくなかったと、あるいはそれほどでもなかった、どういう認識を池田内閣として持っておられるか、お答えを願いたい。
  246. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 荒木文相の記者会見につきましては、その後文部大臣自身におかれまして、再度記者会見を求められて御処置をとられたと伺っているのです。
  247. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういうことは承知しています。いや、私の質問のピントに合わしてお答えを願います。好ましき影響を与えなかったとお考えになっておられるのですか、どうですか。池田内閣として認識の仕方ですよ。あまり好ましからざる影響を与えたとお考えになるか、そうでないか、こういうことなのです。
  248. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) その限りにおきましては好ましきものであったとは思っておりません。ただ……。
  249. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 日本語を使いなさい。直説法で言って下さい。
  250. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) ただ、内閣といたしましては、政府部内の各機関の手続を経まして、閣議できめましたことに対しまして責任をとらなければならぬわけでございまして、各閣僚その他個々の公務員の御発言というものを一々調べまして、これにいろいろな論評を加えるということは私どもの仕事の限界の外にあるのではないかと、そう考えております。
  251. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 旧憲法下における内閣と現在の内閣と若干違いますけれども、その一蓮托生の責任の取り方においては。しかし内閣総理大臣は組閣責任者で任免権者ですよ。自分が任命した閣僚の一人の言動というものに対しては、内閣総理大臣は当然責任を持たなければならない。そうでなかったならば内閣の責任というのはどこにあるのです。そういう立場から私は伺っているのです。そこで、あなたの答弁では好ましくない影響を与えた、あまり笑顔で迎えられなかったということはわかります。そこで次に伺いますが、池田内閣としては、自由主義国家群だけでILOに相当するようなものを作る必要があると考えられておられますか、おられませんか。
  252. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) そういうことは議題にもなっておりません。
  253. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 自由主義国家群だけでILOに相当するような国際機構云々というようなことを、国会で閣僚が述べるということは国際的影響を考えるときに好ましいとお考えになりますか、好ましくないとお考えになりますか。
  254. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 先ほど申しましたように、内閣の議を経ましてきまったことでございませんから、私どもとやかく論評……。そういうことがあったかないかも調べておりませんから、そういう論評を差し控えたいと思います。
  255. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、官房長官、あなた優秀な人だから判断つくはずです。閣僚のどなたが言ったとか、言わぬとかいうことを言っておるのじゃないのですよ。閣僚の一人が国会で、国会の論議というのは、国内的、国際的に通じているのですから、そういう中で、自由主義国家群だけでILOに相当するような国際労働機構云々というような発言をすることは、この世界が小さくなった今、国際影響等を考える場合に、閣僚の一人としての発言、好ましいことだと思いますか。そういうことはあまり発言しない方がよろしい。慎重である方がよろしいという認識に立っておられますかというのです。
  256. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) そういう事実をまず調べましてから……。
  257. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あったとしたらどうですか。簡単な問題ですよ。
  258. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) よくそういう事実があれば調べまして、検討してみますが、ただいま私存じませんから、そういう事実を存じませんから、何とも申し上げられません。
  259. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大平官房長官、逃げちゃいけませんよ。問題だけはっきりいたしましょう。そういう御発言があることは好ましくないでしょう。あなたも国際的センスを持っているはずです。そういう発言が国会で論じられるということは、私はゆゆしきことだと思うのです。願わくは閣僚諸君にそういう発言をしてもらいたくないという気持をあなたお持ちになっていらっしゃるでしょう。お答え願います。
  260. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) そういう事実がございますれば、それを検討の上お答えいたします。
  261. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それなら提示しましょう。事実がある。きょう文部大臣はここでそういうことを発言された。国際的センスとして適当ですかね。どうですかね。これは国際的に、ジュネーブの本部に入る。日本大臣でこういうことを言っている人があるといった場合に、どういう影響があると思いますか。こういう問題は慎重にしてもらわなければ困るじゃないですか。池田内閣としても、池田総理としても、そういう発言をしてもらいたくないでしょうか、それともしていいという発言ですか、はっきりして下さい。この答弁はジュネーブに行きますよ。通じていますよ、ジュネーブに、電波は。
  262. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) よく調べまして検討してみます。
  263. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういうことは好ましくないという気持だと思うのですが、それを明確にしなかったらば、これはジュネーブに重大な影響を与えますよ。官房長官、これははっきりしていいと思うのですよ。荒木さんは荒木さんで人間的にいいところもあるのですよ、欠点もあるけれども。しかし、そういうのを、公私をごっちゃにして日本の国際的信用を失墜するということになれば重大ですよ。  それでは、これは勝負がきまったようですから、次に伺いますが、あなたの池田内閣は国際感覚からILOは間違った勧告をするであろうとお考えになられますか、なられませんか。池田内閣の国際感覚から、ILOの認識から間違った勧告を特定国にするであろう、そういう懸念があるという認識に池田内閣は立っておられるか、おられないか、お答え願います。
  264. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) ILOという国際機関は過去において間違った勧告をしたことがあるとは聞いておりません。今後もそういうことはないものと信じます。
  265. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで問題を考える場合に、ILOは間違った勧告をする場合があるだろという、そういう確率というものを予想してものを考える、国会で発言をするということは妥当でしょうか、慎重を欠くものでしょうか、どう認識をされておりますか、池田内閣は。おわかりですか、私の質問、言うことは。あわてないでゆっくりお答え願います。非常に重大ですよ。
  266. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) おそらく荒木文部大臣の……。
  267. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、荒木さんということは言っていない。
  268. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 御発言に関連しまして、そういう御質問があると思うのでございます。その点につきましては、文部大臣があらゆる機会に釈明されているはずでございますので、その前後の文部大臣の御発言の論議を通じまして、政府としては御理解をいただきたい、そう存じております。
  269. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 官房長官、焦点をぼかしてはいけません。歯車を合わせましょう。ぼかしちゃいけません。池田内閣の国際感覚のバロメーターになるのですよ。その点をお伺いしているのですから。国際社会の一員として、わが池田内閣はどういう認識を持っているということを明確にしなければ国際的におつき合いはできませんよ。それで私は伺っているわけですね。ILOが今までいろいろ過去において勧告してきた、今後も日本にあるいはするかもしれません。それが間違った勧告をILOがする場合もあり得る可能性がある。だからそういう場合にはこうだという、そういう前提でものごとを考える、そういうILO観を持って、その上にそういう発言をその国の最高機関で速記をつけて発言するということは、池田内閣の国際感覚からいって適当とお考えになられますか。そういう点は好ましくない、慎重にせなければならぬというILO観、国際感覚を池田内閣は持っていらっしゃいますかどうですかということを伺っておるのです。非常に重要なことですよ。明快にお答え願います。
  270. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 慎重にすべきものと思います。
  271. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部大臣どうでしょうか、ああいう発言というものは問題があるのじゃないですか。さっき他の委員からも話されておりましたが、あなたがまじめに、きょうは低姿勢で率直にお答えになられたその心は了としますよ。私は真情は了とします。しかし、いやしくもわが国の国務大臣が、こういう会議で速記をつけて——これはジュネーブに通じているのですよ、大臣。そういう席で、どこで聞いたか知らぬけれども、自由国家群だけでILOを作る必要があるというような話を自分は聞いたことがあるから、そういうのも根底にあって、ついはずんで記者会見のときにああいう発言があったのかどうか。ILOは判断が間違うことがあるかもしれないから、それを前提として考えた場合には、さのき問答のあった内政干渉云々で、何べんもこちらで申請をして、そして受け入れないのだ、それであなたの中には、ちゃんとあなたは信念を持っているわけですよ、考えは。自分と同じ考えが出てくれば、これはILOは適当なる、公正なる判断、勧告をしたのだというので受け入れる、しかし今自分が持っている考え方、たとえば日教組と話し合いをする必要はないという考え方と違ってくれば、これは何べんも反論をするのだ、これらはILOの間違った判断に基づく勧告となるのだ、そういう場合があり得る、可能であるとあなたは心の隅で思っておっても、それを速記をつけて口に出してはいけませんよ。これは私は非常に重大なことだと思うのです。その発言を取り消される意思はありませんか。取り消されたらいいでしょう。率直に私は取り消されたらいいと思うのです、国際的影響がありますからね。
  272. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 大体新聞記者を中心に話が発展しまして、そもそもが仮定の質問に対してお答えしたことからずっと話がきているものですから、くそ正直に申し上げたわけですけれども、御指摘のように、そのことが国際的な日本全体にとりまして適切でないとすれば、お許しを得れば取り消させていただきたいと思います。
  273. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、さっきからありましたが、米田委員からも不適任だという話がありましたが、あなたはよく、たとえば日教組は暴力団だと言ってみたり、隣の家に入るどろぼうとか何とか、被害を受けたが破防法すれすれで適用云々だとか、ずいぶんきわどい発言をされているのですね。国内的にはそれで何とか押しのけるかもしれぬが、国際的にあなたはよほど注意されなければ、荒木個人の問題でなくて日本の問題ですからね。そういう国際感覚というものが一月二十日の記者会見に出てきたのですね。この点については、あなたは心静かに一つ考えていただかなきゃならぬことが私はあると思うのです。そこで、もう二、三問ですがね、官房長官に伺いますが、官房長官、ILOから日本に勧告があったならば、極力これは尊重して日本政府は善処すべきものでありましょうか、それともどういうお考えを持っていらっしゃしゃいますか、池田内閣の見解を伺います。
  274. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 当然尊重して善処すべきものと思っております。
  275. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 閣内は不統一ですね。荒木文相の今までの米田委員に対する答弁のニュアンスと、さすが大平官房長官、今の答弁りっぱな答弁だ、相当の開きがあるのですよ。速記録を読んでごらんなさいまし。荒木文部大臣、あなたの答弁はくるくる変わってきているわけですよ。官房長官が来てから特に変わった。内政干渉云々とか——それは国際的感覚が、僕らなんかあまり外国を旅行をしたことがないから国際的感覚がない方ですがね、その矢嶋のささやかな国際感覚をもってしても、日本にこういう国務大臣がおってびっくりするような国際感覚が現われているのですよ。文部大臣、反省点ございませんか、国内的だけで済むならいいのですけれども、ここの論議というのはすぐにジュネーブに通ずるのですからね。それで、私は聞きのがすわけにいかないというわけで伺っているのです。いかがでしょうか。
  276. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど来、私は各委員の御質問に対して誠心誠意をもって率直にお答えを申したつもりでございます。ほかに他意は毛頭ございません。なお、ついでながら、ILOの会議の席上における空気等を申し上げたのですけれども、これは何も私だけでなしに、新聞にもそういうことはもうすでに出ておるくらいでございまして、そういうことが一応念頭にあっての、ついした失言であったという意味で、先ほど御説明を申し上げ、御理解をお願いしたような次第でございます。
  277. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 間もなく終わりますが、率直ということはいいですよ。しかし、こんな表座敷の会議の場合と、それから廊下で話した場合の率直とは、おのずからそこに差があると思うのですがね。それはあなたがしゃべればしゃべるほどボロが出てくるから、あまり発言されないようにした方がいいと思う。私はそう思うのですが、それには唯一の方法があると思うのですが、それはさておいて、そこで、もう時間が長引きましたから、きょうは米田委員を中心にILOのごく一部分だけ伺ったのです。次の段階に発展しないでお答えいただきますが、まず、官房長官に通告しておいたわけですが、池田総理大臣、荒木文部大臣とひざをつき合わして話をした結果はどういうことでありましたか、お答えいただきたいと思います。
  278. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 荒木文部大臣の御所見といたしまして、日教組を相手にいたしまして団体交渉をする義務も権限も文部大臣にはないという法律上の御見解については、その通りだろう、第一点はそれでございます。  それから第二点といたしまして、ここが問題になっておると承知いたしておるのでございますが、事実上、日教組と文部大臣がお目にかかるかどうかという問題でございます。この点につきましては、総理大臣といたしましては、文部大臣が全人的に御判断された御判断にかませる、これはひとり文部大臣ばかりでなく、各国務大臣にとりましても、事実上お目にかかるか、かからないかというようなことまで総理大臣が一々指示するということは、組織体の機能を発揮する上におきまして適切じゃない、文部大臣の御判断にまかせる、こういうことでございます。
  279. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これについてもう一問発します。それは、池田さんは池田長期政権を頭に描いているのですね。だからある時期の文部大臣の更送ということもありましょう。しかし、池田内閣の政策に対する抱負経倫の具現、その中における日本文教政策、自分の任命した文部大臣のとるべき態度というような点、いろいろお考えになっておられるのですね。そこで、私は池田総理としては権能、義務はない。これは他日また論じますが、それはともかくとして、事実上、五十万の教職員の結集体がある。教研集会をやると、ともかく一万数千人という人が一堂に会して教研集会を持たれる、こういう実情から、実態的には、文部大臣は会われて、そして話し合いをされて、文教の最高責任者として善処されるのが望ましい、適当だ、それを大臣に強要するかしないかは別として、そういう気持だ、かようにただいまの答弁は了承されるのですが、よろしゅうございましょうか。
  280. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 先ほどの私の申し上げたところで御理解いただきたいと思います。
  281. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の私の質問に対して……。
  282. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 文部大臣の、そういう場合における善処におまかせしたい、こういうことであります。
  283. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 結論はそうですが、前段は矢嶋の発言の通りなんですね。あなたのさっきの答弁は。
  284. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 全体を含めまして文部大臣の善処におまかせしてあると、こういうこうことでございます。
  285. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先日、文部大臣、あなたに対してちょっと失礼なことを申しましたけれども、わかりやすいから宿題というような言葉を使ったわけなんですが、それでその後、あなたは直接総理大臣とお会い下さったわけです。それで、総理大臣とお会い下さった結果がどういうものであり、あなた、文部大臣自身としてどういうふうに総理の意向を判断をし、それからあなたは今後いかに善処、行動しようとする決意を今の時点においてされておられるかという点についてお答えを願います。
  286. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今、官房長官からお答え申した通りでございます。
  287. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 官房長官は、文部大臣の判断というものについては融れていないわけです。おまかせすると、そこまでは私はわかります。だから、その点に立って文部大臣は総理の心境をどういうように判断をし、今後あなたはいかに対処しようと今判断をし、決意をされておられるかという点についてお伺いしたい。
  288. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 現在のところ今まで通りでございます。
  289. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後です。要望を含めて伺います。  総理大臣の代理の官房長官、一月二十日の文相のあの発言は非常に日本にとってはマイナスの影響を与えていますよ、誤解も与えています。池田内閣にとっても非常に不利な発言ですよ。それに対する池田内閣の反省というものがない。そうして、今あなた方はジュネーブに公務員を出張さして、これは相当のドルを使いますよ。今後いろいろ進展するにあたってジュネーブに日本のドルが落ちますよ。私は一国民、納税者としては迷惑だと思う。荒木さんが文部大臣になられる前、松田さんの時代にはこういう事態にまでは発展しなかった。決して日本教育界が、文教行政がスムーズで円満であったとは私は申しませんよ。しかし、松田文相時代に、国際舞台において日本の貴重なドルを使って争うというような事態にまではいかなかったわけです。ところが荒木さんは、いろいろお考えはあるでしょうが、あなたが文部大臣になられて、まずい方向へまずい方向へと進んできているわけです。しかも一月二十日にああいう国際的影響ある発言をされたわけです。ILOがどういう勧告を結論として出されるかということは私はここでとやかく申しません。公正な判断を下されるだろうと全幅の私は信頼を持って見守っている。しかし、そういうことで内閣は大した反省もなく、文部大臣は善処する考えもない。今まで通りだというようなことで、公務員を次々とジュネーブに派遣して各国の代表に働きかける。国民の税金によってドルをジュネーブの地で消費するということについては私は了承できません。その点において私は池田内閣の不信任をぶっつけます。再度、私は文部大臣みずからと池田内閣の善処を要望いたします。第一ひざをつき合わせたときひざが合っていないのじゃないですか。あなた方のひざが合わなかったら矢嶋が総理に会いましょう。直接確かめましょう。官房長官、それを取り次ぐ御意思がございますか。あなた方はひざが合っていない。池田さんという方はそういう考えじゃないと思う。政策的な問題はあるけれども、人間的にはあの人は正直ないい点もありますよ。僕らは直接総理大臣とひざをつき合わせて、それは速記なんかつけんでもよろしい、御所見をただしましょう。それをお取り次ぎなさるお考えがあられますか。
  290. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 文部大臣と総理が会われました場面には、私も同席いたしておりまして、私とそうして文部大臣からお話申し上げたことにうそ偽わりはございませんから、私どもが申し上げたことを御信頼いただきたいと思います。ひざが合っていないとか、距離があったとかいう御判断のようでございますけれども文部大臣と私が会った結果を公けの委員会で表明いたしたわけでございますから、それに御信頼をいただきたいと思います。なお、一般的に申しまして、総理大臣と会見を希望されるということにつきましては、あっせんするにやぶさかでございません。
  291. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文相に最後に。私はあなたはわからぬことはないと思うのだが、もう一ぺん申し上げてあなたの御答弁をいただきたいと思いますが、ちょっと角度を変えまして、科学的に一つ説明してお答えいただいてみましょう。ちょっとこっちを見て下さい、おそれいりますけれども文部大臣は力を持っている。そうして部下を持っている。それから一方、教職員というものがある。それで力が互角に引っ張っていると静止しているが、あなたの方が強いとこういく。もし五十万の教職員の力が強いとこういく。この文教政策というのは右往左往の文教政策です。混乱文教政策です。これがかりに両方の力が合うということになれば、こう向くわけですから、あなたが高等学校で習ったように合力の方向に向くから、少なくとも日本文教政策というものは前進し——よくなる方へ方向づけられるということは間違いないですね。ところがあなたのように、本会議において、日教組は暴力団だというようなああいう不遜な発言をし、一月二十日のような発言があると、あなた、そうしてあなたの駆使している部下の力というのはこっちの方へ行ってしまう。こちらを向く。そうすると、日本教育界の力というものがこうであれば、これのあなた合力はこちらに向くでしょう。そうすると、日本文教政策というものは前進じゃなく下降の方向づけがされるということになる。だから今あなたのとっておる態度では、右往左往混乱文教政策というか、マイナス文教政策以外の何ものでもない。そこをあなたが政治家として最小限ちょっと幅を持って、ちょっとこちらへこう向く、具体的にいえば義務、権能がないなんと言わないで、話し合いをするというようなことになれば、力は若干ずれておってもこういう合力で進んでいくと思う。これは力学的にそういう説明が十分成り立つでしょう。この説明ではあなたも納得がいかれたと思うのですが、今すぐ御答弁ができなければ、一晩ゆっくりお考えいただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  292. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今、数学で御説明になりましたことそれ自身はわかります。わかりますが、文教政策と申しますものは、文部省が中心になりまして国民に責任を持って行なうべきものと心得ております。日教組という団体は広い意味での労働者、地域職員団体、その集合体を日教組と称しておるようですけれども、これはあくまでも、勤労者があるいは教職員という立場においての経済条件の向上を目ざすところの一つの団体であろうと心得ます。文教政策そのものは日教組とは関係ないと思います。ありとしますれば、現場教師としての体験に基づく意見があり得るともちろん思いますけれども、それも私は窓口はやはり都道府県の教育委員会ないしは教育庁を通じて意見が開陳せられ、そのことがその地域的特色をもって結論づけられて、それが中央に集まって文部行政ないしは政策の改善の資料となっていくところに前向きの文教政策ないしは行政のよりよき前進があると、こう考えておる次第でございます。でございますから、団体交渉という意味合いにおいては、立場においてはお互いがそういう制度上の立場を持たない。残るところは、事実上会うか会わないかということですが、その意味においては、いかなる種類の団体とも会うか会わないかという問題と実質的には同じような事柄だと心得ております。そういう考え方で今日まできておりますが、事実問題として会う会わないということはお互いの自由だと、こちらから日教組の代表者にお目にかかるということも、日教組側から私に会いたいと言われることも、それはお互いの自由の問題だ、そういうふうに心得ておる次第であります。(「恋愛と違う」と呼ぶ者あり)
  293. 岩間正男

    ○岩間正男君 官房長官が見えたので、私は時間がないから簡単にお聞きしておきますが、先ほどの答弁で、文相は日教組に会わない。この方針はまかせる。これは閣議で決定したのですか、これは閣議の意向ですか、こういう点について。
  294. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 総理大臣が言うことです。
  295. 岩間正男

    ○岩間正男君 閣議決定とみていいんですか。閣議決定じゃなく総理大臣個人の意向ですか。
  296. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 総理大臣個人の意向です。
  297. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはどうですかね。この方針で貫いていますか、池田内閣は。かつて去年の八月だったと思うが、池田総理は小林委員長に会っていますね。御存じでしょう、あなたも当時官房長官されていて。それなのに、池田総理の任命したところの文相は日教組に会わない、こう言っているわけです。日教組の代表者の一番最高責任者の小林委員長に会っている。それなのに、日教組には会わないと文相は言っている。こういう不統一なやり方、つまり総理は会っているが文相は会わない。こういう方針というのは貫いていないわけです。首尾一貫してないわけなんです。この点についてはどう考えますか。
  298. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 総理大臣が労働団体の結集された中央の組織体の総評と全労の幹部の皆さんにお目にかかりましたことは事実でございます。その総評の会見にこられた中に小林さんがおられたことも承知いたしております。これと、それから荒木文部大臣が会う会わぬという問題は、これは別だろうと思います。
  299. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはおかしいと思うんです、別だと言ってるけれども。これはしかも、労働組合の全国の組織体である総評の一構成員として認めて会ってるわけです。労働組合として会っている。ところが文相の場合は、そういうような従来の慣行というようなものは全然頭にないわけですね。歴代の文相は会ってましたよ。日教組に会わない文相というのはこれは一人もないわけです。ところが、池田内閣になって、荒木文相になってから急転回しているわけです。絶対会わぬということで今まで会っていない。この変化は何なんです。そうして、こういうことは閣内の不統一になるのじゃないか。池田内閣の方針としては、私は非常に支離滅裂、こういう感じを免れないと思うんですが、これはどうですか。
  300. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 文部大臣がお目にかかる、かからぬの問題は文部大臣にまかせてある、こういうことは先ほど矢嶋委員の御質問に対して答えた通りでございます。お目にかかるようになるか、依然としてお目にかからないのか、これは文部行政の最高責任者としての荒木文部大臣におまかせしてあるという態度で行っているわけなんであります。
  301. 岩間正男

    ○岩間正男君 まかせてあるといったって、これは相当重要な方針なんだね。その方針を検討しないで自分は会っている。しかも自分の任命した文相は会わないというのを承認するというのは、これは池田総理自身の、これはどうもおかしいですよ。そう考えませんか。——まあいいです。この問題はそれはなんぼあんたが弁解しても、私たちは、ある意味では精神分裂的な行動だと見ていますよ。こんなことで一貫した方針でそれを貫いているなどということはこれは言えない。この点全くごまかしです。
  302. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今のに関連して。それは後日またやることになっていますが、今、岩間委員から内閣の不統一ということが言われておりますが、自治大臣はどういうわけで自治労に会っていますか。自治大臣は自治労に会っている。都道府県の連合体のそれに会っている。大平さん、あなたいい人だから、僕はきょう大きい声を出さなかったけれども大臣にまかせてあるなんて逃げるのは言語道断ですよ。そういう点を閣議で官房長官はぴしゃっとまとめなきゃいけないんですよ、総理の意向を受けて。自治大臣は自治労に会っているじゃないですか。それを、そちらは会っている、こちらは会っていない。そのために教育界はごたごたしている。それをまかしているからといってのほほんとしているようなことでは、官房長官、職務を果たしていないじゃないですか。答弁できますか。あなたは私は非常に尊敬している人だから大きな声を出さなかったけれども、(笑声)笑いごとじゃない。岩間委員の質問に対してそういうことを言っているというのは、そんなことできないですよ、実際。だから、われわれはあなたのあっせんも得て、国会議員として同僚議員と池田総理と直接会って確かめたいと申し上げた。答弁できますか、この点。
  303. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) さきほど矢嶋委員の御質問にお答え申し上げた通り、各省大臣を任用した以上は、各省大臣の善処にまかせると、こういう態度で一貫いたしているつもりであります。
  304. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の答弁は、それはあんた人情論としてはいいだろうけれども、国政の中で筋を通すという点ではだれも了承できませんよ。そういう問題を検討して基本方針を明確にする、指導する、これが任命権を持った総理大臣の当然の職責だ。そうしてそれを助けるあなたの直接の当然の職責だ。  この問題はさらに後日に譲りまして、ILOの九十八号に対してこれは調印しておりますね。これは荒木文相御存じですか。九十八号に調印されていることを御存じだと思うんですが、この内容、そうしてこれが今のあんたの団体交渉権の問題とどういう関連を持つか、この点の見解を、簡単でいいです、時間もあまりないから、この点明確にして下さい。
  305. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 批准後の問題のわけでございますが、批准しましたからといって、当然に文部大臣が日教組の代表者と交渉相手にならねばならないということにはならないと思います。
  306. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間がないからこの次にやりますけれども、あんた、ILOの勧告があったって、そういう態度で今度やる気じゃないんですか。重大問題ですよ。それはそのままで実行しない、ただ聞いただけでほっておく、こういう格好になったら重大問題です。  もう一つお聞きしたい。これは文相に時間の関係があるから、この次詳しく聞くのだが、どうですか、教職員の組合員の代表にあなたは会ったケースはないですか。日教組とは言わない、ほかの教職員の団体に会った事実はありませんか、ありますか。
  307. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 教職員の方に私は個人としてはずいぶんお目にかかっております、たくさんの方に。
  308. 岩間正男

    ○岩間正男君 個人として会ったのですか。
  309. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) もちろんそうでございます。
  310. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここに教団連情報というのがあります。これは代表として会っているのです。組織の委員長と書記長が行ってあなたに会っているのです。何日ですか。あなたは忘れていないでしょう。
  311. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) いつでございましたか、日は忘れましたが、議員会館の部屋にたずねてみえまして、お目にかかったことがございます。あくまでも私は教職員個人の方々が、先ほども申し上げましたような意味で、前向きの建設的な意見を聞かしていただくという限り、もう例外なしにたくさんの方にお会いをいたしております。
  312. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、そういうことを言って逃げられると思ったら間違いです。教団連の情報の中で、荒木文相とちゃんと会見したということを情報としてはっきり流している、組織的に流しています。これは何方ある組合か、これの性格、そういうような問題については、この次詳しくお聞きするわけだが、そこで私は官房長官にお聞きしたい。あなたどうですか。全国の教員が六十万からいるとすると、そのうちの五十何万を組織している、パーセンテージから言えば八五%ぐらいになっている、そういう組織の代表者と会見をされない。会わない、会わないと、何回の要求があっても、それに対しては拒否している、がんこに拒否している。歴代の大臣はひとりも会わない人はない。総理大臣さえ、その最高責任者には会っている。そういう点、いつまでもがんばっている。そういうときにまた教職員団体のある代表に対しては会う。こういう態度を……今言った個人として会ったなんということを言っていますけれども、中央委員長あるいは書記長という任務というものは、そういうものではない。そうしてちゃんと会った結果については、会見の内容を明細にこれは機関紙を通じて明らかにしているのです。こういうことは好ましいことだと考えますか、これはどうですか。現情勢の中で、日教組に対してこういう態度をとっているときに、あなたはどう考えますか。
  313. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) そういう事実問題についての判断は、文部大臣の方におまかせしてございます。
  314. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうまかせ方であなたは一切の責任を負わぬのだろうけれども、こういうような一体ごまかしが日本の民主主義を守るということに、これはなりますか。この詳細は私はこの次の委員会に譲ります。譲りますけれども、教団連の一部の教員の中のごく一部の、しかも、この組合というものの性格については、ここで私は申し述べません、この次に詳細に話をしますが、こういう代表だけ、特定の代表だけと会う。そうして全体の、大部分の組織体であるところの代表者に対しましては、何だかんだという口実を設けて会うことを避けているということは、これが文教行政で最も公平な、そうして民主的な運営だ、こういうふうに考えられますか。考えることはできないだろうと私は思う。ここであなたたちの答弁を求めようとはしない。しかし、この問題については、徹底的にこの次の機会にこれは明らかにしたいと思うのです。こういう問題と関連なしにILOの問題を私は論ずることができないと思う。こういう事態を一方で擁護し、一方で非常に団体交渉権を否定する、さらに団結権に対してさえいろいろな疑惑を投げかける。性格的にいえば、破防法適用すれすれの団体だということまで極言する、そうしてそれが根拠があるかどうかということは、今後明らかにしなければならないたくさんの問題を持っております。ILOの問題は、そういうような意味で私は性格的に大きいと思う。そうしてその背景になっている問題は何か、その問題まで追及しなければならない、日本の現政治情勢との関連において。しかし時間の関係がありますから、私の質問を終わっておきます。ここで終わりますけれども、この次に十分にこれらの問題について検討して、責任のある答弁をしてもらいたいと思う。場合によっては、池田総理もやはり文部委員会に私は出席すべきだと思うのですが、これは矢嶋君に対して、先ほど池田総理と会う便宜をはかると言われたので、官房長官もこれは時間を見て、池田総理の出席を私は要求したいと思いますが、これに応じてほしいと思いますが、あなたのこれに対するお考えをお聞きしておきたいと思います。
  315. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 総理大臣の都合を見まして、皆さんの御発言をお伝えいたしまして、あっせん申し上げることにやぶさかでございません。
  316. 北畠教真

    ○北畠教真君 いろいろと御質問がありましょうが、きょうは大臣の御都合もおありと存じますので、これで打ち切っていただきたいと思います。
  317. 平林剛

    委員長平林剛君) よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  318. 平林剛

    委員長平林剛君) 本件に関する質疑は、本日はこの程度で終了いたします。  これにて散会いたします。    午後四時五十七分散会    ————・————