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1961-02-07 第38回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月七日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 辻原 弘市君    理事 平岡忠次郎君 理事 横山 利秋君       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    簡牛 凡夫君       藏内 修治君    田澤 吉郎君       高田 富與君    永田 亮一君       西村 英一君    藤井 勝志君       坊  秀男君    米山 恒治君       有馬 輝武君    石村 英雄君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       堀  昌雄君    武藤 山治君       安井 吉典君    春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  大久保武雄君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達夫君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  賀屋 正雄君         国税庁長官   原  純夫君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月四日  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号) 同月六日  国家公務員等退職手当法及び同施行令中の外地  勤務期間通算に関する請願外二件(上林榮吉  君紹介)(第八号)  同(宇田國榮紹介)(第五五号)  同外一件(上林榮吉紹介)(第五六号)  同(村山喜一紹介)(第八六号)  農業協同組合に対する法人税課税免除等に関す  る請願伊藤宗一郎紹介)(第一六号)  同(増田甲子七君紹介)(第一七号)  同(中澤茂一紹介)(第一八号)  同(保科善四郎紹介)(第一九号)  同(福田篤泰君外一名紹介)(第七二号)  同(佐々木更三君紹介)(第一六一号)  農業協同組合及び同連合会に対する法人税課税  免除に関する請願宇野宗佑紹介)(第二〇  号)  勤労者住宅建設促進のため厚生年金還元融資わ  く拡大に関する請願増田甲子七君紹介)(第  二一号)  砂糖関税に関する請願生田宏一紹介)(第  五九号)  農業協同組合に対する法人税課税免除に関する  請願谷垣專一君紹介)(第八七号)  農業専従者課税控除に関する請願谷垣專一  君紹介)(第八八号)  国民金融公庫資金増額等に関する請願赤澤  正道君紹介)(第九一号)  同(伊能繁次郎紹介)(第九二号)  同(池田正之輔君紹介)(第九三号)  同(一萬田尚登紹介)(第九四号)  同(遠藤三郎紹介)(第九五号)  同(大野市郎紹介)(第九六号)  同(大野伴睦紹介)(第九七号)  同(大橋武夫紹介)(第九八号)  同(岡崎英城紹介)(第九九号)  同(金子岩三紹介)(第一〇〇号)  同(鴨田宗一紹介)(第一〇一号)  同(菅太郎紹介)(第一〇二号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第一〇三号)  同(木村俊夫紹介)(第一〇四号)  同(木村守江紹介)(第一〇五号)  同(倉石忠雄紹介)(第一〇六号)  同(小坂善太郎紹介)(第一〇七号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一〇八号)  同(坂田道太紹介)(第一〇九号)  同(櫻内義雄紹介)(第一一〇号)  同(島村一郎紹介)(第一一一号)  同(鈴木正吾紹介)(第一一二号)  同(田中榮一紹介)(第一一三号)  同(田中彰治紹介)(第一一四号)  同(高橋清一郎紹介)(第一一五号)  同(高見三郎紹介)(第一一六号)  同(竹下登紹介)(第一一七号)  同(竹山祐太郎紹介)(第一一八号)  同(津島文治紹介)(第一一九号)  同(塚田十一郎紹介)(第一二〇号)  同(寺島隆太郎紹介)(第一二一号)  同(富田健治紹介)(第一二二号)  同(中村幸八君紹介)(第一二三号)  同(永田亮一紹介)(第一二四号)  同(二宮武夫紹介)(第一二五号)  同(西村直己紹介)(第一二六号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一二七号)  同(八田貞義紹介)(第一二八号)  同(橋本登美三郎紹介)(第一二九号)  同(花村四郎紹介)(第一三〇号)  同(濱田幸雄紹介)(第一三一号)  同(馬場元治紹介)(第一三二号)  同(福家俊一紹介)(第一三三号)  同(福田篤泰紹介)(第一三四号)  同(古井喜實紹介)(第一三五号)  同(細田義安紹介)(第一三六号)  同(本名武紹介)(第一三七号)  同(坊秀男紹介)(第一三八号)  同(松澤雄藏紹介)(第一三九号)  同(松田鐵藏紹介)(第一四〇号)  同(三池信紹介)(第一四一号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一四二号)  同(毛利松平紹介)(第一四三号)  同(山手滿男紹介)(第一四四号)  たばこ販売手数料引上げに関する請願尾関義  一君紹介)(第一五八号)  同(小平久雄紹介)(第一五九号)  同(福田篤泰紹介)(第一六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  去る四日本委員会に付託されました国民金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 足立篤郎

    足立委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官大久保武雄君。
  4. 大久保武雄

    大久保政府委員 ただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  国民金融公庫は、銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困離とする国民大衆に対して必要な事業資金を供給することを目的として、昭和二十四年六月に設立を見たのであります。その後公庫資金壁は逐年増加し、業務量もますます増大して、昭和三十六年度におきましては千二百億円をこえる貸し出しを予定しているのであります。かかる情勢に即応しまして、職員の増加、支所の増設等所要措置を講じ、機構整備拡充に努めて参ったのでありますが、このような業務の著しい増大機構拡充にもかかわらず、その運営の衝に当たる役員は、総裁一人、副総裁一人、理事四人、監事二人、計八人でありまして、公庫発足以来増員されることなく現在に至っております。今後におきましてもさらに業務増大が予想されますので、この際、公庫業務の円滑な運営に資するため、理事二人を増員することができるよう所要措置を講ずる必要があります。  これが、この法律案提出する理由であります。何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成あらんことを御願いいたします。
  5. 足立篤郎

    足立委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑次会に譲ります。      ————◇—————
  6. 足立篤郎

    足立委員長 税制に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 前々会に引き続きまして、主として首都圏整備法に基づく工業団地造成目的とした土地売り渡しについての税金の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  前会の質問に対して、主税局長は、この問題については土地収用法適用に該当するかどうかということが焦点の問題だ、土地収用法にそういう場合なるのだということになれば、この問題は解決するだろうというような、非常に形式的な答弁があったのですが、そのようなことについて、首都圏整備委員会の方から、大蔵省として、また主税局としてどういう措置を講じてくれという要求を受けているか、その点について一つお答えをいただきたいと思います。
  8. 村山達夫

    村山政府委員 ただいまのところ、おっしゃったような場合について特別の立法的措置を講じてくれという申し出は、私の知っている範囲では聞いておりませんです。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでは、まだ首都圏整備委員会から大蔵省にはそういう要請というものは全然出されていないわけですか。
  10. 村山達夫

    村山政府委員 さようでございます。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それならばそれで、また首都圏整備委員会に対しても私の方から働きかけをしたいと思いますが、この問題は、この前も申し上げましたように、首都圏整備法が三十一年にできて、それから三十三年には首都圏市街地開発区域整備法、こういうものができまして、着々首都圏整備の問題は前進をいたしておるわけであります。今の段階は、既成市街地の問題について、大きな工業団地等が新しく既成市街地内にできることを抑制したり、あるいは都心には住宅地を設けるとか住宅を建てるとかというようなこと、さらにまわりのグリーン・ベルト地帯、こういうようなものについてはかなり進捗をしているようであります。そして、今の段階は、やはり東京都内人口社会増という形で二十四、五万の人口が毎年々々ふえて、九百三十万をもうはるかに突破して、それで中央線等におけるあのような通勤地獄を生んでいる。こういうようなことから、首都圏を理想的なものに整備をしていく、こういう交通地獄通勤地獄というようなものを解消するような方向と、さらに積極的に工場地方分散をはかる、それから、周辺地帯は、あくまでベッドタウンじゃなくて工業都市に仕上げていくんだ、東京都の中心から大体百キロ前後のところにそういう地帯を設けようという段階に今きて、一部もうすでにその指定を終わって、非常に成功を見ておるところもあるわけであります。しかしながら、これは国有地を取得するというような条件がそこにはあった。ところが、それ以外の土浦付近だとか宇都宮だとかいうようなところでは、やはり土地を取得するというようなことは、今大体県、市の事務組合という形で、いわば公共的な、公共団体立場土地を買い上げる、こういうようなことで工業団地造成というものをやっておるわけであります。しかも、この場合に、住宅公団の場合には、土地収用法適用されて租税に関する特別措置もある。そういうことで、せっかくその市街地開発組合ができて土地を買い上げよう、しかも団地として買い上げようというような場合に、住宅の方にならば売るということで——それは税金が半減いたしますから、そういうことでは、これはもう首都圏整備委員会が構想している工業都市を建設しよう、しかもそこに労働者も定着してやれるような都市を建設しよう。いわゆる東京通勤をするベッドタウンを作るのではなくて、工業都市を作ってそこに労働者を定済をする、そういう形のものを作ろうとしておるわけでありますが、それとうらはらの大へん矛盾した関係に立ってくる。そして、住宅の方は、東京都に通勤しようと思っている人たちも、住宅公団という形で、その住宅から東京にまた通う。こういうような矛盾現象というものが出まして非常に困っておるし、しかも首都圏整備の新しい今の段階、しかも非常に国策的にも重要な問題、これは自民党の経済成長九・二%あるいは十年間に倍増だ、こういうような問題ともほんとうに根本的に関係してくる問題だと思うのです。そういうような問題に対して、どうも税制面における配慮が足らないのじゃないか。積極的に、大蔵省としても、この租税特別措置を、今のような形式的な——土地収用法適用団体に、首都圏整備委員会がそういう工業団地を作るということが該当しない、しないから今やれないのだ、それだけのことでいってはいけないと思うのです。そういう点について大蔵省としてはどういうお考えであるか、その点を聞かしていただきたい。
  12. 村山達夫

    村山政府委員 おっしゃるように、首都圏整備法もできておりますし、それに基づきまして首都圏整備委員会が立案し、あるいは実施について勧告できるという法規がありますのですから、この重要性は当然のことだろうと思います。ただ、首都圏委員会は、立案し、あるいは実施について勧告いたしますが、それに基づきまして実際事業実施いたしますのは、公共団体なりあるいは行政機関であります。そこで、さような重要な案を実施する場合に、事案の内容によりまして、あるものは強制力をもっても収用できるかどうかというところに問題があるわけでございます。おっしゃるように、もし工業団地を作るということが非常に公益的に重要であれば、当然都市計画法なりそれらの規定において、強制収用の道が開かれてしかるべきじゃないかと思うわけでありまして、これはわれわれの所管ではございませんが、しかし、それはどうも重要は重要だが、いかにも公共的、公益的に重要といえども強制力をもって収用できるところまではいけないということになりますと、同じ重要性といっても、やはり限度があるということになろうかと思うわけであります。ですから、そこではたして都市計画法なり土地収用法なりを改正して、そういう事態に対して強制収用できるかどうかというのが、私の個人的な考えとしては、先決問題だと思うわけでありますが、現在の整備法は、普通でありますと、譲渡所得は初めから十五万円を引いて二分の一にして課税しているのですから、普通の譲渡の場合には、普通の担税力からいえば大体これでいいのだ。ただ、本人の意思によらないで、強制して無理やりに所得が実現される場合の措置として、さらにその二分の一ということを措置法で規定しているわけであります。もちろん、強制力のない場合につきましても、重要度というものはいろいろあるだろうと思いますが、現在の税法は、強制力を持っているかどうかというところにその限界を置いて、それで二分の一であるかどうかを適用している。税の方でもっていろいろ諸般の事象を見て重要性というようなことを考えるという考え方もありますが、そうなりますと、どうしても、そういう広範な問題に対しまして、税の方が早く進んで判断を下すということになると、ともすると全体としてバランスがどうかという問題がありますので、現行のところは、強制力を持たせられる程度に重要であるかどうかということに基準を置いていく、こういうことでございます。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 あくまで租税特別措置法の第三十一条前提にすれば、今のような御答弁になろうと思うのです。しかしながら、たとえば宇都宮等の場合において、都市計画工業専用地区という指定を県あるいは市でやっておるわけです。そういうことで、土地所有者の個々の意思に反して、半ば強制的に、しかもその市街地開発組合、県、市の事務組合がほとんど一方的に売り渡し価格なんかもきめるというような形の中で、現実に売却が行なわれているわけです。しかも、それもいろいろな条件が整って、もうその土地を手放しても十分食っていけるのだというような人の場合には、それでも済む場合もあるのですけれども、しかし、その団地を作ろうという場合に、その中に、今土地は手放したくはないのだ、手放しても先行き何も保障もないのだというような人たちがあるわけです。その人たちにとっては、たとい常識的に言って適正な税金だと思われる譲渡所得、十五万円を控除して、あと二分の一にしかかからぬというそれだけでも、たとえば五反歩くらい手放すという人でも、そうして今まで五反歩くらいの百姓をやっていたという人でも、七万円近い税金譲渡所得としてかかっているのが現実なのです、そういう方向で行ってもですね。そういう人たちにとっては税金が非常に電荷になる。しかも住宅公団に売ればそれが半分になるのだ、こういうようなことですから、それじゃその方に売ろうということになると、住宅公団へその団地の中のところをとられてしまうということになって、団地として体をなさなくなってしまうというようなことにぶつかって、その方も今度は住宅公団の方にそんなことはやらぬでくれというようなことを頼んだりして、それで話し合いを進める。しかし、話し合いは、依然として、税金がこんなにかかって、しかも先行き不安なのだから、こんなものは売れないというような場面にぶつかって、土地買収工業団地造成というものが非常に伸び悩んでいるわけです。  そういうほとんど実質的には土地収用法適用していると同じような形というものが出ている場合に、租税の面だけでそれができない、こういうことはいかにも不合理だと思うのです。これは、あくまで三十一条前提にして、これを動かさないのだ、それ以外の場合には、工業団地の場合に首都圏整備法に基づいてそういう工業団地造成しよう、そういう非常に公共性の強い、しかも首部圏整備という一つの大きな国策にのっとった事業を推進しようとするときに、これに基づかなくても、何らかの第三の問題提起といいますか、この三十一条土地収用法適用されない限りは、譲渡所得について特例を設けないのだ、そういうことじゃなしに、たとえばこの三十一条以外に一条を起こすというようなことができないものかどうか。たとえば、ほかの特別措置も、譲渡所得以外の特別措置がたくさんあるわけですが、このいろいろな減税の問題だとか、あるいは異常渇水準備金だとか、あるいは貸し倒れ準備金だとか、あるいは減価償却だとか、それに伴ういろいろな問題、そういうような問題についていろいろな措置を設けてきているわけです。だから、同じ税金をまけてやろうということが、これが、私どもの観点からすれば、大資本の利益に片寄っているということを言っているわけですが、今度のような場合に、これはもうほとんど貧しい人たちが多いわけなんです。そういう人たちに対して、新たに一条を起こして——私が言っているのはもう無制限に広げるわけじゃありません。それは無制限に広げれば大へんだと思いますけれども首都圏整備法に基づいて工業団地造成ということをやられるんだ、そういう限定をつけて、それに対してはこの三十一条に準ずる取り扱いをしてやるんだという一条を起こせば、これでその人たちの問題は解決し、土地を売却する人たちに対して優遇を与え、しかも工業団地造成の推進に非常に役立つのだ。こういうことになれば、新しくこういうものを設けたっていいじゃないか、そういうお考えは全然ないかどうか。また、今の体系としてやれないのかどうか。あくまでやれないのかどうか。この点を一つ伺いたい。
  14. 細田義安

    細田委員 ちょっと私関連してお尋ねしたいのですが……。
  15. 足立篤郎

    足立委員長 それでは関連質問を許します。
  16. 細田義安

    細田委員 ただいまのお話は、特に私ども青梅羽村地区とかあるいは日野・八王子地区とかで現在始まっているわけです。これが始まると、千八百円から二千円でやれ、こういうふうに委員会なりあるいは公団は目標を置いてやるわけでありますが、それがまとまって参りますと、すぐその隣地が暴騰するということは歴然たる事実でございます。従って、最初に国策に応じて売買に応ずるというような諸君は、見方によっては一種の犠牲者であって、この人たちがまとまってくれなければ工業地域造成ができないということで、現在の都市計画というものは、現在ありまする都市中心にしての整理を計画的に進めて参るということでございまするが、新しく日本の国土を再編成いたしまして所得を分散する、所得の格差を少なくするというような点にねらいを持っての国の仕事でありますから、私は、これはより大きな都市計画考えて差しつかえないんじゃないかという点からいたしまして、税法上の特別の措置をこれらに与えることによって、国の仕事というものは推進される、こう考えておりまして、従来の法令がどうあろうと、それにかかわらず、新しくできましたこの事態に対応する考え方を取り入れての立法が必要である。先ほど来のお話を伺いまして、私はぜひともこれはやってもらいたい。これはもう党派とか、だれかれの問題ではございません。現実に即しまして、この仕事を推進するにおいては、税はごく一部ですよ。この人たちは、安くなければ買ってくれないという人たちが相手方でございまして、国策に殉ずると申しても差しつかえない、かように私ども思いますので、ぜひとも大蔵省において関係方面と協議をいたしまして、この立法化を進めてもらいたい。それは現実地方工業を分散するということを側面から推進することにもなりまするので、一つまじめに取り上げてもらいたい、こういう点をあわせて要望いたしまして、関連質問を終わりたいと思うのでございます。
  17. 村山達夫

    村山政府委員 ただ、先ほど申し上げましたのは、現行法考え方を申し述べたわけでございまして、おっしゃるように、それよりも重要度の落ちるものについては、それはそれなりに特別の立法化考えられないかということになりますと、これはほんとうに真剣に検討に値する問題であろうと思います。ただ私たちがちょっと考えなければならぬのは、実際に収用の場合にあたりまして、われわれは実務で経験するのでありますが、その収用される方の側の租税負担が高いか安いかという問題は、実際はその人たち負担に帰着する問題も多いのでございますけれども、そうでない場合が多々あるのでございます。と申しますのは、収用する側の収用価格関係してくるということがむしろ多いという実情なんであります。と申しますのは、そういたしますと、かりに今の首都圏整備のためにある程度租税を軽減をする、もしそれが収用の方の対価にはね返るということになりますと、結局工場を作るのですから、民間の工場がそれだけ安く取得するという問題に帰着する場合が多いわけでございます。そういたしますと、なるほど首都圏整備という見地からいえば、これは公益問題でございましょう。しかし、そのことは、結果的にいえば、ある事業ある事業のその収用単価をそれだけ安くする。これは首都圏整備のためにやむを得ざるものであるという問題はあるかもしれませんが、負担関係の実際において、特定の企業のいわば創業費と申しますか、買収価格を安くするという結果に落ちつくという場合も多々あるのであります。その辺を考えますと、その首都圏整備重要性ということは認識しつつも、また一方においてそういう問題を考えつつ、妥当な条件考えてやらなければならぬのじゃないかという感じがするわけでありまして、おっしゃる点はよくわかりますので、さらに建設省等につきまして、実情がどのようになっておるかという点を十分調査いたしまして、この問題についてはさらに慎重に研究いたしたい、かように考えるわけでございます。
  18. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今局長がおっしゃったことも、これは税体系としては当然考慮に入れなければならない問題点だろうと思うのです。しかし、今やはり工業都市を建設しようということが非常に大きな国策的な問題になっている。しかも、それが、地方公共団体がみずからその土地取得に当たり、あるいは県市の事務組合という形で、非常に世間的に信用度の高い、しかも公共的な立場に立って推進しなければ、そういうものはもうできない。首都圏整備法などというものはどこかへふっ飛んでしまって、東京都に対する過度人口の集中を防止して理想的な首都圏整備しようということが、しかも首都圏整備委員会でも非常に意欲を燃やしてやっているようでありますけれども、そういうものが非常に困難にぶち当たっているのだ、そういう点からやはり問題をとらえていただきたいと思います。そういう問題は、先ほども申し上げた三十一条以外の租税特別措置法のいろいろな項目等の均衡というようなことを考えても、私どもは、この程度のものになれば、それはそういうこまかい技術的な議論をされる前に——しかもこれの対象になる人は、今現に私が問題にしているのは、そこに工場ができる場合に、その工場の資本家が得をするかどらかという問題以前の問題として、現に土地を売って高い税金を納めなければならぬという人たち立場というものに対してやってもらいたい。この点なので、今局長がおっしゃったようなことをあくまで貫くならば、第一県や市で土地買収に乗り出すなどということ自体もおかしなことになる。そこまで首都圏整備法は要求をし、そういう形でなければこれができないのだという形でやっているわけですから、そういう点で、あまりにそういうところに重点を置き過ぎて事の本末を転倒しないように、この問題をどうぞ一つ真剣に考えていただいて、大蔵省としても租税特別措置法の一部改正というような形で、この点をぜひやっていただきたいと思うのですが、その点、最後に一つ決意のほどを政務次官の方からお聞かせをいただきたい。
  19. 大久保武雄

    大久保政府委員 広瀬委員からのだんだんの御発言は、最近の首都圏整備に伴いまして非常に重大な問題を含んでおると思っております。また細田委員からも御指摘がありましたところでございまして、この辺は今後税制の体制を固めていきます上におきまして、大蔵省といたしましても、十分慎重に研究をいたしまして善処をいたしたい、かように存ずる次第でございます。
  20. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 最後に、主税局長立場としても、先ほどもちょっと触れましたけれども、この点についてぜひ格段の御努力を一つこの際お約束をしていただきたいと思うのです。
  21. 村山達夫

    村山政府委員 お話がございましたので、実情を十分調査いたしまして、この問題は真剣に取り上げていきたいと思っております。
  22. 足立篤郎

    足立委員長 本件に関して委員長からちょっと大蔵省に御要望申し上げたいと思います。  ただいま広瀬君からの、あるいはまた細田君からの真摯な御発言を拝聴しておったのですが、本件は、首都圏整備事業のみならず、最近国策として重要な問題になっております農村における工場誘致の問題、あるいは中小企業の団地化の問題等、全国にわたって関係をしてくると思います。従って、経済企画庁あるいは通産省、建設省、各省にわたっての問題でありますので、しかも喫緊を要する重要事と思いますから、今広瀬君からも御要望のありました通り、真剣に取り上げて至急御検討いただきたいと、委員長から御要望申し上げておきます。  横山利秋君。
  23. 横山利秋

    ○横山委員 私はきょうは税の行政面について原長官なりあるいは大蔵省の皆さんに伺いたいのであります。  明年度の予算は四千億という、まさに開闢以来の自然増収でありまして、これがどういうふうに徴収されるかということが、実は喫緊の問題になっているわけであります。増税の面はガソリン税だけでありますから、もっぱらこれは徴税面にかかるわけです。徴税面を現状のままで、税法を現状のままで、はたして四千億の自然増収があるかないか。それほど経済は明年度も繁栄し、そして納税者に問題なくこれが納まるかどうかと思いますと、全く憂慮の念を禁じ得ないものが私はある。  そこで、国税庁に二、三お伺いしたい。いろいろあるのですが、きょうは税務職員に対するなた方の指導方針について伺いたいのでございます。それというのは、納税者の立場からいいますと、税法でどんなに減税しても、実際の行政面、税務署の面で伸びを見積もられたのでは何にもならぬ、むしろ税法をそのままにしても、徴税面について考えてもらうことの方が喫緊のことであるということの意見が強いのであります。ところが、先般来私は、税法改正の意見を聞くために、局の幹部あるいは税務署の中堅職員、新規に採用された職員のいろいろの意見を座談会なり何なりで聞いてみました。ところが思いもかけない非常な心配をしましたことが一つあります。それは、一体税務職員はどういう誇りを持っているのだろうかということであります。私は国鉄出でありますが、国鉄にもいろいろな非難はあるけれども、国鉄職員は、おれは汽車を動かしているのだという誇りを持っております。それから、たとえばおまわりさんに例を引いてみますならば、おまわりさんは非常にいやがられる場合がある。しかし、いざとなれば、治安維持の責任はおまわりでなければならないという誇りと信頼感を集めております。そういう点では、税務職員は一体どういう誇りを持っているのだろうかということに懸念なしとしない。座談会で、非常におかしな話でありますが、こういう冗談が出ました。前の晩にクラシックでも聞くと、翌日は仕事が憂うつだ、前の晩に徹夜でマージャンでもすると、何のこだわりもなくどんどんと仕事が進む、こういうのであります。この奇妙な冗談の中に、税務職員の誇りというものが非常な混迷に陥っているという感じがいたしました。つまり、言うなれば、税法通り納税者のところでしらみつぶしにやれば、これは何ら問題はない。自分の仕事について何ら違法でもなければ、職務に忠実でもあって、何ら問題はないのである。けれども、今日税法通り合法的に徹底的にやったら、二つの面から抵抗が起こる。  一つは、自分の心である。今日納税者のところへ行って全部シラミつぶしに徹底的に合法的にやれるはずがないのであるから、たまたま自分の気のついた納税者のところへ行って徹底的にやれば、ほかはどうだという、自分の心に迷いが起こる。さればといって、同業者間の均衡というものをよりどころにしようか。同業者間の均衡をよりどころにすれば、まだ自分の心は休まるのであるけれども、私は上司からそういうふうに指示されてはいない。さりとて、今度は、納税者の反発する税金を取るのはいいけれども、お前さんたち使い方は一体どうしているんだ。そんなことは私に関係したことではないとは言うものの、税の徴収にあたって、その支出面、国家の歳出面について、今日のような情勢が私の心を暗くさせ、私の正義心というものを麻痺させる、こういうことを言うのであります。それから、もう一つは、税務署内部における格差の問題。これも冗談でありますが、こういう話を聞きました。「間接のだんな、法人のおえら方、所得の連中、徴収のやろう」という言葉があるそうであります。このことは、税務署内部におきます職員の諸君の中に、徴収はやろうである、法人はおえら方で、間接税を担当している者はだんなで、所得の諸君は連中だと言われておる中に、職員の心理状態を想像することができると思うのであります。徴収におる者は一刻も早く法人にかわりたい、できれば所得にかわりたい、間接にかわりたいという気持が常に渦巻いておると私には看取をされます。このようなことを考えてみますと、私はりつ然としたわけでありますけれども、私が今例にあげた以外の国家公務員なり公社職員の持っておる誇りというものを、あなた方は税務職員に対していかなる誇りを持たせ、いかに職務に対してあの人たちの正義感をふるい起こさせることができるかという点は、実に重大な問題であり、そういうことが結局、局により、署によって、また人によって、税務行政を高い意味の公平を失わさせておる一つの問題があるのじゃなかろうか。キリスト以来、みつぎ取りというふうに税務関係担当者は外国でもいわれております。そういうみつぎ取りの気持が今もなおあるとするならば、納税者に対して良心を麻痺させて、そして税法通り執行する。あるいは麻痺させないならば、適当なところで話をつける。そういうことであるならば、また心の中に、おれが一生懸命に税の徴収に当たっても、納税の第一線に当たっても、それで集まったお金が、常に汚職や疑獄や、あるいは大へん不公平なところに使われておるという感じが腹の中にあるならば、おれが中小企業でどんなに一生懸命に話をつけても、大企業に対する不当な特別措置が常に存在をしておるならば、いかに自分が良心を持って納税者に当たり縛るかという点については、人さまざまではありますけれども、私の看取いたしましたところにおいては、社会正義心というものがない。私は何も原長官だけにこの解決を求めるものではありません。しかし、全国数万の税務職員を指導するにあたって、いかにしてあなたが税務職員に対する誇りを持たせておるか、その指導方針は一体何なのか、それをひとまず伺いたいと思います。
  24. 原純夫

    ○原政府委員 非常に深い重要な問題でございます。私、昨年の四月に長官を拝命いたしまして以来、ただいまお話のありましたような筋目の問題は、おそらく私の仕事として一番大事な仕事ではないかと思っております。同時に、税務行政というものが、長い国の歴史において、国があれば税制というものはもう必須のものであり、税務行政というものは国の行政の中でおそらくきわめて重大な部面を受け持っておるものであって、歴史的に連綿と続いておる。しかも、五万の職員にそれぞれ努力を傾けてやってもらっておることでありますから、私、原が長官になったというので、その面について私だけでどうということはなかなかできにくい。長く続きました伝統の中で、私としての今の段階での任務を謙虚に一生懸命尽くすという気持でやっております。   〔委員長退席、山中(貞)委員長代理着席〕 そういう角度で物事を考えまして思いますのは、やはりおっしゃいました税務職員の誇りといいますか、そういうような問題について、今まさに十分再思三省すべきときだと思っております。私は実はその誇りを持てというような形では申しておりませんけれども、特に考えてもらいたいことが三つある。これは三つだけではないのでありましょうが、とりあえず私就任以来特に強く申しておりますのは、第一に、税納者に近づきやすいように、一分でも二分でも税務署の敷居を低くして納税者と接するようにということ。それから第二は、ただいまもお話が出ました税務の根本の姿はやはり適正な課税である。従って適正な課税に努めなければならぬ。それで行き過ぎがあったならば、もうちゅうちょすることなく下がって減額をいたしなさい。しかし、また不当にのがれておるというようなことがあってはいけないから、それはちゃんと適正にいただきなさい。第三に、やはりこの職場の一番の支柱は綱紀の厳正なことである。この三つをあげまして、あらゆる機会にそれを言い、部内一般にこれらの面について工夫をするようにというようなことを要望いたしております。もちろんこれだけで事は済むと思っておりませんし、また、これらのことにしましても、ただいま申しましたような長い伝統のある職場で、現に五万の具体的の人がおるところでありますから、なかなかすぐには結論が出ないと思いますが、私としては、そういう角度から問題を取り上げて、そうして具体的に必要なことをときどきに手を打って参るというようにいたしております。  ただいまお話のありましたのに関連して申し上げますれば、一つには、徹底的にやれば十分取れるが、それでは良心がおさまらぬというあたりの問題は、かなりデリケートな問題であると思います。率直には、私十年前に税務行政におりましたとき、主税局の方と一緒にやっておった時期がありますが、その時分にはそういうことを非常に強く私は感じました。当時そのために法律改正をせなければならぬということで、当時は御承知の通り占領下でありましたから非常に制約があったのでありますが、私は、端的に言うと、もう正直に履行できないような税法というものは変えてもらわねばならぬというようなことまで言って、税法改正に努力をいたしたつもりであります。そうして、現在どうなっておるかということについては、私あるいは横山委員と判断が若干違うかもしれませんが、税務行政としては、税法がきつくて、そのままやっては良心がとがめるというような法律であってはならぬというふうに私は思います。今の税法ではとうてい良心的には守れない、また税務官吏としても良心的にはやれないというふうには、私は実はどらも思っておらぬのじゃないかと思っております。そうして、やはり税法には忠実に、そうして適正にという考えで執行するように。そういたしませんと、いつの日かそこの悪循環を断ち切りませんと、税務官吏が、これはどうもきつ過ぎるから自分が権衡をということをやるのでは、やはりどらも暗い面が出て参ります。かつての時期にそういうような傾向がより強かったということはおっしゃる通りであります。それがだんだん減りつつある。その減りつつある段階の見方の違いかもしれませんが、なるべく早く税務官吏は、税法に忠実に、そうして適正な課税をする。もちろんそういう際に、納税者の事情、いろいろな経費その他の見方について、十分思いやりのある、実情に即したやり方をするというようなことはもう当然でありまして、それはただいま申した適正にというのの意味として教えておるつもりでございまするが、方向としてそういう方向に向かいたいし、もう私どもそろそろそういうような考え方でいっていいのではなかろうかというふうに考えております。  もう一つお話の中の、歳出面のいろいろな使い方に対する批判、ないし税制上大企業その他に対する優遇に対する批判というようなものが、税務官吏の税務の仕事のやり方についていろいろと影響するというお話がありました。もちろん、税務官吏も、社会人として、歳出の批判をするという権限は持っておりまするし、また税法についての批判もあると思いまするが、私は、それがゆえに、税務官吏というものが、そういう判断で納得しなければ足が出ぬというのでは困るので、やはりその辺のところは、政府のそれぞれの担当の部局なりあるいはそれらを審査される国会の審査なりということに待って、税務官吏は、与えられた税法のもとにおいて、それに忠実に仕事をするということを、私は期待しておるものでございます。おっしゃる気持は、一社会人としては私はわかりますが、税務官吏としてはやはりその辺は割り切って仕事をしてもらいたいというふうな気持でおります。  なお、加えて、所得、法人、間接、徴収という各部面における税務官吏の間に、いろいろ立場のよい悪いがあるという点についてのお話がございました。この点は私といたしましても実は非常に頭を痛めております。実際そういう——今の言葉はどの程度言われておるか私知りません。まあ耳にいたすこともありますけれども、実際にかなり喜ぶ仕事と、それから非常にじみでやりにくいといわれる仕事があるというのは確かであります。従いまして、具体的にこの人々をどういうふうに配置するかというような問題については、なかなかむずかしい問題であって、私としては非常に心を痛めております。それをやるのにいろいろなことが議論されておりまするが、何分長年の沿革に乗ってきた問題でありまするし、私、まだ今結論としては、どうというふうにきめかねておる。ただ、なるべくこのじみな仕事をやる人たちには、仕事仕事として、いろいろな面で思いやりのあるような扱いができるならばするということで、できる限りのことは今もやっておるつもりでありますけれども、それで問題が解決し切ったというふうには思っておりません。なお今後相当深刻に考えてみなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
  25. 横山利秋

    ○横山委員 原さんの話は回りくどくていかぬのですが、私が例を出したような意味に一つ一つ答弁をしなくてもいいのです。私が例を出しましたほんとうの意味は、税務職員の誇りといいますか、あるいは自尊心といいますか、そういうものについて、どういうふうに自分の職務に一つの誇りを持たせるかということを聞いておるのです。その点については、あなたは三つの例をあげて、親しみやすくせよ、あるいは適正な課税をせよ、綱紀を厳正にせよと言っておる。これでは答弁にならぬのです。税務職員が本質的に持っておる——まあ納税者と税務職員とはどうしても対立的な状況にはなるけれども、そのときに、税務職員として、自分はこういう一つの責任なり誇りなりというものを持ってやっておるという気持をきちんとさせなければいかぬのじゃないか。あなたの言っていらっしゃる三つの項目は、私の答えにならぬのです。そういうものが今日ないならないで、御返事をなさればよろしいのです。いかがですか。
  26. 原純夫

    ○原政府委員 私は横山委員の言われる誇りというものをこう解釈いたします。人間はぽかっとしていゆわる無為徒食というようなことでは誇りはない。やはり自分の使命というものに対してまっ正面からぶつかって全力を尽くす、最もよき人間としての働きをするというところに、ほんとうの誇りがあるのであろうと思います。いわば何といいますか、自分の全生命をあげ、全人格をあげて、自分の天職といいますか、職業に当たるというところに、誇りが出るのだろうと思います。そういう意味でいいますれば、私の申しました、税務職員として、納税者に極力近づきやすい税務署、税務職員になる、それで適正ということについて、りっぱな適正さを発揮する、そうして、誘惑の多い職場であるにもかかわらず、綱紀はぴんと張ってゆるぎがないということであれば、私は、税務職員の誇りというものは、これにまさる誇りはないというつもりで、実は御答弁申し上げたのでございますが、そういうふうに御了承いただきたいと思います。
  27. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの言う天職といいますか、自分の使命に邁進するその天職ないしは使命とは一体何であるかということを聞いているのです。
  28. 原純夫

    ○原政府委員 使命は、国の財政目的のための財源を税という形で賦課し徴収するということであります。そうして、その賦課というのは、納税者も一緒になっての賦課でありまするが、賦課ないし徴収にあたっては、適正にしなければならぬということが一番中心であろうと思いますが、その際、権力行政でありまするから、えてすると高ぶったり押しつけがましくなったりする。そういう点を、近づきやすくというような言葉で、権力行政の弊害を排する。同時に、金に近い仕事でありますから、腐敗が多くなりやすいというような点を十分戒めて参るというようなことが、やはり付帯しての使命ということに相なろうかと考えます。
  29. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、あなたは、さっきから注意して聞いておりますと、適法と言わずに適正な公課ということを盛んに言っていらっしゃるのですが、その適正とは一体どういう意味なんでありましょうか。私が先ほど例を申したように、税法通りということでは、それは戦争直後の状況とは幾分違いますものの、どうしても税法通りやれば、これは非常な打撃をそこの企業に対して与える、中小企業なり納税者に与えるということが想像される。それから、公平という面から言うならば、業種間の均衡なり何なりという問題は常に考えなければならぬという点を考えますと、あなたの言う適正というのは、どういう意味のことを言っていらっしゃるのでしょうか。
  30. 原純夫

    ○原政府委員 適正といいますのは、根本はやはり、税法通りということが根本にあると思います。やはり私どもとして税法通りというのは、少し「通り」というのは言葉づかいがあるいは適当ではないかもしれませんが、根本的に税法に従ってということは、もう絶対にはずしちゃいかぬと思います。そうして、税法に従うということは、やはり税法の根本精神は適正ということを一つの柱にしておられると思います。かつまた、行政でそれを適用いたします場合におきましても、たとえば所得課税の場合に、収入をどう見る、それから経費をどう見るといいます場合に、いろいろなポイントで判断が要ります。その判断については、これはやはり適正という言葉が、つまりそれは行政の仕事であるという意味において、適正という言葉が税務官吏にやはり要求せられる。法律としても適正でなければならぬし、行政としても適正でなければならぬ。法律の適正は、もうそれぞれそれを担当される方面でおきめいただくことでありますから、おきめいただいたもとで、われわれは行政としての適正さを確保するというつもりで、職員に私は申しておるというわけでございます。
  31. 横山利秋

    ○横山委員 お話のように、かりにあなたの言うようにしても、根本は税法通りであろうけれども、これを実際面にあたっては適正な方法ということでニュアンスを持たせる。そのニュアンスこそが、実は第一線の税務職員のいかんによって、何が適正であるか——これは税法通りが適正であるか、労使間の均衡が適正であるか、その企業の存続をつぶしてはいかぬから、存続をさせるというのが適正であるか、それとも、つぶすこと自身も、適法であるならば適正であるかという点について、ずいぶんニュアンスが違ってきて、そこに法律はあるけれども、実際の場合としてはそのさじかげんだという問題が生まれてくるのです。  もう一歩進んでお伺いをいたしますが、最近といいますか、ここ一年内もしくは明年度の国税徴収にあたって、私の承知しておるところでは、この間あなたにお伺いしたのですが、いわゆる基幹調査と称して、そこの業種の中で一軒のうちを、白であろうと黒であろうと関係なく、これをシラミつぶしに数日間数人かかってやってみる。ちょうどそこに偶然にモデルにされた店はまことにいい迷惑です。この間ウナギ屋さんの質問をしましたが、あなたは誤解していらっしゃるけれども、私があのときにも申しましたように、あのウナギ屋さんというのは増差額が全然ない。かえって調査の結果、おかしな話でありますが、もっと安くするのがほんとうであるということが、あとになってわかったそうでありますけれども、こういうのは珍しい話でありまして、そんな白か黒かまずわからぬけれども、基幹調査にそこを選んでやる。あるいはまた特定調査方式ですか、これも課に特調班のようなものを作って、それで一つの重点的なやり方をやる。循環調査方式といって、三年に一回、五年に一回、その店を選んで、そのときは三年間くらいはまあまあにしておいて、三年間ぐらいたったら、今度は徹底的にそこをやってみる。そして水準までに引き上げる。そして三年かかってまたやるというようなやり方や、あるいはそのほかのいろいろな方式をやっていらっしゃるのだそうであります。こういうやり方というものは、非常な不均衡と不公平をもたらすものですね。こういうやり方をやる趣旨についてお伺いをいたしたいのです。全部やるというわけにはいかぬから、一つのところをシラミつぶしにやる、一つの商店街をやる、あるいは三年ごとに一回やるのだ、そうしてやらなければ人が足らぬのだ、こう言わんばかりの話でありますが、そういうやり方というものは、まことに不公平、不均衡を招くやり方ではないかと思うのですが、いかがですか。
  32. 原純夫

    ○原政府委員 お話の通り、いろいろな名前のついた調査をやっております。一日当たり非常に多数の納税者についてやるような簡単な調査から、一納税者当たり何日も日数をかけてやります深度の深い調査に至るまで、いろいろな調査、また日数だけでなく、見る見方にしましても、業況一般を調べるということもあわせて考えて調べるような調べ方もありますし、また各種の資料から特定の納税者について相当脱漏がありそうだというので、脱漏を意識して調べる調べ方、いろいろございます。  そこで、今のお話は、納税者に対して同じ型の調査をするのでなければ公平が期せられない、というようなお話のようにも伺えるのでございますけれども、そういうことも一つ考え方としてはあり得ると思いますが、私どもとしては、どうも必ずしもそうでなくてもいいのではないか。実際には、限られた職員で、限られた時間で、この多くの事案を処理いたすわけでありますから、そういたしますと、深度としてはそう深くない深度の調査になる。やはり深度の深い調査というものをある程度いたしませんと、ほんとうの適正ということの柱がわからないということになります。反面、御案内の通り、ただいま税制は一番中心になります法人税、所得税というようなものが申告納税制度になっております。すべての課税額を税務官署の側で決定することが原則であるというのではなくて、やはり納税者がそういうものの計算については一番できやすい立場にあるので、納税者が正しい申告をしていただくということが一番の柱になっておりますので、調査としては、全部を同じに見直すというのは、その制度の本旨からいいましても、必ずしも必要がないのではないか、むしろそれはかえって、またがっての賦課課税時代のような運営になりはせぬかというような気持もいたします。その両面から、調査には深度のある調査とそうでない調査がある現状を、やはり当分続けていかざるを得ないのじゃないかというふうに考えます。
  33. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、この間のウナギ屋さんの例をもう一ぺん引くのですが、あのときに、局も署もはっきり、このウナギ屋さんは別に白であるか黒であるかの問題ではありません、まあ他の業者間のことを調査するために調べておるのですということを、大体黒でないということがわかったときに初めて言ったそうです。それまでは、ちょっと調査させてもらいますということで、疑わしき雰囲気をばらまいてやったそうであります。それは明らかに質問検査権の乱用じゃありませんか。あなた方が、納税者のところへ行って、その申告が適正であるかどうかを検査をする、質問をするというものは、あるリミットがあってしかるべきでありましょう。八日間二、三人がそのウナギ屋さんの一室を占領して、白か黒であるかを言わずに、あたかも黒であるというようなやり方をやって、ある段階に至って、御迷惑をかけております、これは基幹調査ですと言うて、そうして一般の業者の実情を調べることにあるということを言うことは、全く職権乱用じゃありませんか。私はあのときにくどく言うたのでありますけれども、基幹調査をやるというのであったならば、まずもって納税者の了承を求むべきではないか。一体質問検査権というものについて納税者はどこまでリミットがあるかということは知りませんから、調査するというならば、これはやむを得ないというように思うのですが、それが普通の調査であればともかくとして、あなたの言うような基幹調査なり、あるいは循環調査方式なり、特定調査方式なり、人が足りませんから、あなたのところがモデルになってやらせてもらいますというようなことを内蔵しておるとするならば、これはまことに言語道断な話であります。質問検査権の乱用ではありませんか。
  34. 原純夫

    ○原政府委員 先ほども申し上げましたように、基幹調査あるいは業況調査というものをやります場合に、それに業況の調査をあわせて目的とするということはありますけれども、それが唯一の目的であるのではありません。目的は、やはり正面は——というと語弊がありますけれども、その納税者を調査するのであります。その調査をして正しい申告が出ておるという納税者であるならば、それはそれとして、納税者としては増差がない、あるいは今のお話のようでありますと、増差がないどころか、むしろ減差が出るというようなことになっておるようでありますが、それならそれとして減差を出すということ。それはやはりその納税者の調査なのであります。初めから納税者を見ておりまして、これは正しいかどうかというのは、これはわからないのであります。わからないので、ある数の納税者について深度の深い調査をするという計画を立てますれば、それはそれでやって参るわけであります。やって参った上で、中には相当な増差が出るのもありましょうし、出ないのもあろうと思います。私どもとしては、出ないのが多くなれば、この納税者は記帳の状況も非常によろしい、それから申告の状況もよろしいということになりますれば、先ほどお話の出ましたように、何年に一回というような、そう毎年やらないでもいいようなグループに入れるといいますか、グループに考え措置をするというようなことにもなりますので、やはり計画を立ててやります場合には、すべて脱漏しているものだけを選んでやるといいますか、そもそもわからないのでありますから、必ずしもそういうことはできないわけで、その調査計画というのは、要するにある深度の深い調査を特定の数の納税者についてやる、その際、あるこれこれの業種の業況については、業況全般の状況にも注意しながらやりなさいということを言っているわけでありますから、そういうものとして、私ども税法でお認め願った調査権でそういう調査をやることは適当なことではなかろうか、というふうに考えておる次第であります。
  35. 横山利秋

    ○横山委員 適当ではありませんよ。あなた自身が隠すよりなお現われるような話で、表面はこうであるけれども実はこうだということを、あなた自身で言っていらっしゃる。あなたの言葉をかりて言うならば、どんなところだって基幹調査をする権利を持っている、それが白であろうと黒であろうとかまわないのだ、どんなところでも基幹調査して差しつかえないのだ、大体それは白であるか黒であるかわからないのだから、どんなところでもやる必要があるんだ、またやって何ら差しつかえないんだ、そういう意味合いでは、ウナギ屋さんだって、八日だって十日だってやって差しつかえないんだということを、あなたは逆説的に言っているのじゃないですか。どこにリミットがありますか。あなたの言うようであるならば、納税者は全部適正にやっておると思われる、そのことはだれが証明なさいますか、そう言っていることじゃないですか。私の言うのは、少なくとも基幹調査をやる必要がある、その基幹調査の過程であるいは黒が出るかもしれないということならわかる。けれども、あなたは、前提として、白か黒か問題ではない、どこだって白か黒かわかったものじゃない、言葉は強いですけれども、あなたの言っているところはそういうことになる。少なくとも一歩譲って言うならば、いろいろと日常の調査をしておる、しかしあそこのところはいささか疑わしいと思う節がある、そういう節によって普通の特認なり何なりするというならわかる。それから、基幹調査というのは、白か黒かわからぬけれども、局がその必要に応じてやるのだ、業種、業態の実情を調査するためにやるのだ、これが基幹調査であるならば、偶然選ばれた相手はえらい迷惑千かな話です。それだって、あなたは、いやあそこだって白か黒かわかったものじゃないから、そんなことはいけませんよ、こう言うつもりですか。少なくとも局はその必要で基幹調査をやるならば、納税者にえらい迷惑をかけることなんだから、ウナギ屋さんだって八日間一室に閉じ込められて、それに対する損害補償はどうするのです。しかも白も黒も大へんな白ということが出たのですよ。そういう損害は一体どうだからしょうがありませんと言うつもりですか。かつて大蔵委員会でそのことも議論いたしました。納税者の信用にひどく損害を与えた場合に一体政府はどうするつもりですかと言ったら、国家賠償法がありますということだった。そんなものは実際適用されません。そうだとすれば、実際問題として、税務官庁としておのずから納税者に対するリミットというものをあなたが設定しなければだめじゃありませんか。あなたの言うのは、まるきり、納税者というものは白か黒かわからないから、基幹調査だって黒になるかわかりませんし、どこだって私はやりますよ、多少御迷惑をかけたら済みません。それで済ますつもりですか。原長官ともあろうものが、もう少しそういう言葉は考えてもらわなければだめだと思う。
  36. 原純夫

    ○原政府委員 調査をやります場合に、何といいますか、役目からいいますと、基幹調査というものは、先ほど申しましたように特定の数の納税者について深度の深い調査をやる、あわせて業況も調べるということでありますが、その際具体的にある納税者について調べてみたところが、非常に記帳がよろしい、そういうものについて、もしそういう客観的事情と合わないようなごりごりした調査を長く続けるということをいたすとすれば、それはまことに申しわけないと思います。そういう点は税務官吏としてもすみやかに判断をして、この納税者が優等生であるならば、そういう判定をして早く調査を完結するということにすべきだと思います。ただ、最初に言われましたよか主目的で、そういうことになりますと、私は、「そうではありません。やはり納税者の調査が主目的であります。そして、その調査に深浅があって、またこれは何も基幹調査に限りません。あらゆる納税者の調査、深浅の度合いは異なりましても、たとえば全体として八百屋さんなら八百屋さんの調査の結果はどうであるかというようなことは、それぞれ署において集めてみて、そして八百屋の業況はことしはどうかというようなことは当然反省し分析しながらやる。これは税務署として当然の仕事であろう。そういう面が入るのは当然のことではありませんか。」というふうに申し上げておるわけでありますが、具体的な納税者について、ただいま申しましたように、非常に経理がはっきりして計数も正確だというものについては、これは意味なく納税者を悩ますということがあってはいけないと思います。その点は十分に注意いたしたいと思いますが、趣旨はただいま申し上げた通りであります。
  37. 横山利秋

    ○横山委員 基幹調査の目的であるならば、これはすみからすみまで調べて、そうしてそのモデルとなった業者を通じてその業者間の実態を知るというのが、基幹調査の目的なんでしょう。そこのところの帳面がうまくついているから早くやめようという問題じゃない。だからこそ、もう微細に入るまでやらなければ基幹調査の目的は達しない。そうでしょう。あなたは自分の言っていることに矛盾を感じないのですか。その店が目的でなくて、その店を通じて業者間の実態を知るというのが基幹調査の目的でしょう。そう基幹調査の目的に会わない。だから、私は、その店はえらい迷惑千万な話ではないかと言うのです。それならそうで、最初から基幹調査が目的ですと言って、御迷惑をかけますが、一つ御了承願いますという許諾を持ってやるべきじゃないかと言うのです。
  38. 原純夫

    ○原政府委員 最初から何調査ですというふうにやるのもいかがかと思います。ただ、調査をいたしまして、もしそういう資料を非常に詳細に必要としてとるという意味においてやる場合には、了承を求めるということは、これはその方がしかるべきことと思いますけれども、大体記帳状況のいい納税者のもとで、売り上げの詳細、経費の詳細というようなことを伺ってこれを記録するということは、私は税務官吏としては当然のことのようにも思いますので、今のお話が具体的にどういうケースであるのか。つまり納税者が非常によく記帳しておられる、財務諸表を税務官吏の調査について正しくつけられたものを見せていただくということであれば、非常に調査も簡単に済みますし、またそれがわれわれのいろいろな勉強にも役立つということにもなるわけでありまして、何といいますか、かえってあまり突っつき回すというようなことがどの程度あるのか、恐縮でございますが、具体的なケース、あるいは名古屋のウナギ屋さんのことをおっしゃっているのかもしれませんが、後ほどでけっこうですから、どこのどういうものだということを伺わしていただいて、私それを調べまして、もし行き過ぎがありましたらば、改めるようにいたしたいと思います。
  39. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことではだめですよ。私はウナギ屋さんを例に出しておる。ウナギ屋さんをどうのこうのしてくれということは毛頭言うてはいない。ウナギ屋さんは、増差どころじゃない、かえって少なくなったのです。私は、ウナギ屋さんは例であって、ウナギ屋さんをどうこうしてくれとは毛頭思いません。ものの考え方の問題です。  政務次官も大体おわかりになったと思いますが、あなたの御判断はどうですか。少なくとも、基幹調査であれば、それは中には帳面のりっぱなものもありましょう。しかし、今の中小企業なり何なりでそう完璧な帳面を持っておるものはないです。しかも、基幹調査であれば、もう深度の深いものですから、深く調査をするんですから、その店がどうであろうとこうであろうと問題でなくして、それを通じて業者の実態を知るというのが目的なんですから、むしろ帳面のしっかりしたものよりも、しっかりしていない方を選んだ方が、業者間の実態というものはわかるのです。そういう点に立てば、まことにそのモデルになった中小企業者なり何なりというものは迷惑千万な話ではないか。大体基幹調査を考え出した趣旨というものは、どういうものなのか。長官が今いみじくも言ったように、納税者というものは白か黒かわからぬのだから、これは税務職員の権利なんだから、やったってしょうがないじゃないか、そういう権利があるんじゃないかという考え方で、重点調査なり基幹調査というものを発明されて、人が足りないのだからそれはしようがないじゃないかということで済ませるものですか。私は何回も繰り返して言うのですけれども、それが疑わしき節があるというならば、それもやむを得ないだろう。査察もやむを得ないだろう。しかし、白か黒か、疑わしいことがあるかないかわからぬけれども、業者の実態を知りたいから、偶然あそこをやってやろうというやり方は言語道断だ。もしどうしても調査が必要であれば、それは許諾を求めるべきだ、こう言っておるのが、どこが悪いんでしょうか。政務次官の御意見を伺います。
  40. 大久保武雄

    大久保政府委員 御指摘の点につきましては、税務行政上調査をいたさなければならぬ筋道もあるわけでございますけれども、しかし、一般の納税者を、悪いことをしているとあらかじめ前提を置きまして調査をする、そういうことは考えるべきものではなかろうと存じます。調査をいたします場合におきましても、十分国民の立場というものも考えまして、税務行政の推進と両立するような立場において今後進めていきたい、かように存じておる次第であります。
  41. 横山利秋

    ○横山委員 政務次官に一言苦言を申したいのですけれども、あなたは、政務次官に御就任以来日なお浅くして、税務問題については、また大蔵関係の問題については、よく御存じございません、ですから、私どもも、あなたの御回答については、なるべく穏やかに、政務次官はこのについてはまだ日が浅いから、この辺で一つまあという気持があるんですよ。けれども、あなた、それを利用してはいけませんよ。失礼な話を申しますけれども、今の話はきわめて常識的な話です。納税者なり税務職員の立場と、それから命令をされる国税庁の立場がここで明らかになったのですね。あなたに御判断を願いたいところです。きょうがどうしてもいかぬというなら、あしたでもよろしゅうございます。もうこの辺で、政務次官も腹を据えた答弁一つ二つしてもらわなければならぬところです。いつまでたっても、慎重にだとか、よく何とかという、そんなことを言っておったのでは、私は承服いたしかねます。この間もわが党の委員会であなたのお話が出ました。たとえば金利の問題でもそうでありますが、そういう御答弁ばかりで終始されるならば、大臣の出席をすべて要求する、こういう結論になりました。ですから、今のお話のような——まあ常識的に判断ができる問題だと私は思うのです。ですから、この問題はあなたに一つ解決してもらいたい。どうしてもいかぬというならいかぬでよろしい。直すなら直すでよろしい。もう政務次官もいいかげんに今までのような御答弁から脱却して、政務次官の責任でもって一つ一つ解決するという方向へ進んでいただかなければと思います。
  42. 山中貞則

    ○山中(貞)委員長代理 もうその辺で適当に……。
  43. 大久保武雄

    大久保政府委員 ただいまの横山さんの御質問に対しまして、先ほど申し上げました通り、十分国民の立場考えまして税務行政を進めていくということにつきましては、今後とも特段の考慮を払っていきたい、かように存じている次第であります。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 それではまた同じ答弁でございますが、今のお答えは、私が委員長からたしなめられたほどのことを申し上げたについて、まだ御答弁になっておりません。委員長はよっぽどお考えになって私をたしなめられたと思いますから、そのたしなめられた私に同じような御答弁をなさるというのは、いかがなものでございましょうか。政務次官にお願いしたいのですが、きょうまだ私の質問はほかにもございますから、まことに恐縮でございますが、きょう委員会が済みましたら、本問題について、国税庁の意見も聴取されてけっこうでございますから、適切な御回答を明日していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  45. 大久保武雄

    大久保政府委員 だんだん横山さんから御質問のような事案等につきましては、よく国税庁とも検討いたしまして、先ほどから申し上げておりますような考え方をもちまして十分研究させていただきたい、かように存ずる次第であります。
  46. 横山利秋

    ○横山委員 私の申し上げているのは、明日の大蔵委員会で……。
  47. 山中貞則

    ○山中(貞)委員長代理 大久保君、あした出せるかというんです。——横山君いいそうです。明日政務次官から回答があります。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 それでは明日御答弁を承ることにいたします。  それから、原長官に、先ほどに返って恐縮でございますが、私は先ほど途中でしり切れトンボになりましたが、税務職員の心がまえという問題について一つ注文がある。これは私の意見でございますから、御参考にしていただきたいと思うのでありますが、私なりに、税務職員の誇りというものはどういうようなお考えがあってしかるべきかという点であります。言うなれば、税務職員は、会計帳簿、企業経営についてのある意味において一つのオーソリティだと思う。しかも、非常な責任を持って、第一線で自分で理非曲直を明らかにし、自分であなたの言う適正な判断をしなければならない立場にもあるわけです。そういう点からいいますと、わが国の会社経営なり、あるいは小さくいって会計なり帳簿のつけ方なり、そういうものについて、いかにして納税者としてやった方がよろしいかという点については一つの権威者だと思う。その点が了承されるならば、私はさらに進んで、少なくとも税務職員としては、会社なりあるいは個人なり納税者の税務に対して、また会社経営に対して、それを健全に育成する、そういう誇りがあっていいのではないかという気がする。私の言う意味はおわかりでございましょうか。単にあなたの言う天職なり使命なりが国家の収入に貢献するということだけでなくて、徴税を通じて、会社の経営なり経理なり、あるいは会計なり帳簿のつけ方なりの健全な発展に——直接ではございません。直接では弊害がございますが、間接的に寄与するという考え方があってしかるべきではないか、こう思うのです。これも例で恐縮でございますが、ある税務官吏の話を聞いたことがございます。まあお茶飲み話になってしまったのですけれども、そのときちょっと出た話に、「あそこはばかなやり方をしている。」「どうしてだ」と言ったら、「税も何も知らない。それならばお前教えてやって税金を適正にまけてやったらいいじゃないか。」「そんなことをおれがやる必要があるか。それはそういう人がいるんだからやらせればいいじゃないか。向こうがそういうふうにやっているのだから、その分の適否をきめるだけがおれのあれで、そんなことをおれがやる必要はないよ。」というて、そのままになっております。これは非常に考えさせられるものの考え方だと私は思う。税務職員は税理士ではございませんから、何も進んでそういうことを教える必要はないということは考えられますけれども、しかし、そこに私は、税務職員の誇りなり一つのものの考え方なりを、納税者に対して、あなたの言う第一段のものの考え方が生まれてくる一つのあれではないか。脱税行為を教えろというのではございません。いわゆる当世はやりの節税の仕方というものを教えて、会社の帳簿や経理について貢献をしてやる、そしてそれを通じて日本の会社なりあるいは商売屋さんの適切な会計を発展させるという考え方が、太い筋としてあなたの業務運営方針の中に現われてもいいではないか、こう思うが、いかがです。
  49. 原純夫

    ○原政府委員 ただいまの点は、大筋において私は御同感であります。先ほど申しました近づきやすくという言葉の一つの敷衍でありますけれどもお話の通り、納税者というものはそもそも簿記、会計をよく御存じない方も相当おられるし、またそれを税務に適合するよらな内容にするというあたりについても、なかなかそこまで進んだ人は少ないようです。従いまして、具体的な所得を計算するという場合にまず戸惑いをされる。そして、この種の支出は経費になるのかならぬのか、あるいはたなおろしというものは、よけいいった方が所得が少なくなるのか多くなるのかという認識自体についても、必ずしも全きを持っておる納税者はむしろ少ないと思います。そういう意味で、私は、近づきやすくというやり方の中身には、納税者に対してそういう点を十分に教えるというと少しなまいきな感じでありますけれども、お世話をするような気持でやるということも含めて常時申しております。ある意味においていわゆる節税ということにもなり、節税ということの中には、やはり、そう申すとなんですが、若干乱用的ななにも出てきますので、ほんとうの意味で納税君に正当に主張し得る点を十分主張させるような調査の仕方、また納税者の日常の経理についてもそうなれるようなやり方をお世話をするということは、私は税務官吏としてみんなが心がけなければならぬことだと思っておりますし、できる限り日常もそういうふうに、管下の者に指導と申しますか、申しておる次第でございます。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 あなたがそういう指導をなさっておられるとは私は聞いたことがございません。私は自分の考え方を局なり署なりの第一線の税務官吏に言うたことがある。最近のことですが、あなた方どうしてそういうことをしないのですかと言うたら、そういうことは上司から命令されておりません、こう言うのですよ。私の言うことが弊害がある場合はあります。あまりにも会社経理に税務職員が関与する、そして非常に密接な関係になるということについて、多少の弊害なしとしない。けれども、物事すべて多少の弊害はつきまとうものであるから、私は先ほどから申し上げておる。税務職員の誇り、権威、自分はこういう天職であるというものを持つためには、それが一つの非常なよりどころになる、こう申し上げておる。あなたが言うように、私が平素言っておるというなら、業務運営方針なりに出ているはずですが、私の拝見した限りでは出ておりませんよ。もしもあなたがほんとうに私の意見に賛成をせられるならば、明年度の税の徴収にあたって、一つはっきりこれを管下職員に徹底をさせて下さい。
  51. 原純夫

    ○原政府委員 ただいまの点は、まず法律で青色申告制度というものがございます。これは、納税者に、帳簿をこういうふうにしてきちんとつけていただきたいといいますか、おつけいただくと非常にけっこうですよ、そういうのをおつけになれば、いろいろ特典を与えてなにするというような制度になっております。これは、私が税務運営方針に盛り込む前から、法律で、税務というものが納税者の記帳に対して非常なる、何と申しますか、インセンティヴを与えておるものでございます。その精神は、これは法律に書いてあるだけでよろしいというのではなくて、青色申告者についてますますよくなるように、また白色の者についても、だんだん記帳がよくなって、青色が多くなるようにという気持でやっておることは、年来横山委員も御存じのことだと思います。従いまして、私どもとしてそういう面についてやっていないというのではなくて、非常にやっておる。今のお話ですと、もう少し何か言って、税務行政でタッチする以上に、いわば経理士業務のようなことを進んでやれというようなお話であるかのようにもちらとうかがえるのですが、そうなりますと、やはり少し入り過ぎるなという感じがいたしますが、その辺のところがよくわかりませんので、私のお答えとしては、税務行政で納税者と接触しておる限りにおいて、その接触の間に出てくる納税者の簿記、会計関係の事項については、できる限りいいアドヴァイスを与える、そして青色申告制度というようなものになるべく乗って、ますますそれがよくなるようにお世話をするということは、従来もいたしておるし、今後もいたしたい。さらに加えて、今の経費の見方、つけ方というような点について、たなおろし、各般の支出、それに関する判断、たなおろしが多ければどうなるというようなことも教えるようにいたしたいと申しておるわけでございます。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 聞き方によってそうなるんです。私は、その例外としてそういうことが言えないことはないけれどもというそのことをもって、あなたの聞き誤りです。私の言うのは、直接でなくて間接的に寄与するのだ、だから、従って、納税者の申告の状況なり、あるいは青色申告ばかりでなくても、白色についても常にそういう考えをもって接するならば、今の納税者と税務職員との関係については、あなたの第一段をさらに徹底させることができる。もう少し、出したものを審査するというだけでなくして、こういう方法もありますよということで、そういう意味で、一歩踏み込んで、企業の健全な帳簿のつけ方なり何なりやるべきだ、こういう点を申し上げておるのです。その点を、あなたは青色だけの例を取り上げておりますけれども、税務全般についてそういうことを百尺竿頭一歩を進めて徹底させる、こういうことを言っておるのです。
  53. 原純夫

    ○原政府委員 大へんけっこうなお尋ねで、大へんけっこうな御示唆だと思います。私も実は心の中でいろいろ考えておることに触れるものがあるのです。実は話がかなり抽象的ななんでございますから、私お気持はよくわかるような気がします。今私が申しておりますのは、私の心の中にあるいろいろなそういう角度での問題、これをなるべく早く整理して具体的に、今おっしゃる百尺竿頭一歩を進めるということに努力いたしたいと思います。それで実績でできる限りお答えしたいと思います。
  54. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、時間もございませんからもう一つだけ伺っておきましょう。本来はさらに職員の労働問題についてお伺いする予定でございましたが、時間がございませんから、最後の問題、技術的な問題だけ一つお伺いをいたします。  先般来、本委員会は利子の問題について取り上げて参りました。ここに一つ税の徴収面で、延滞加算なり、利子税なり、無申告加算なり、過少申告加算なりあるいは源泉徴収加算なりの問題があるわけです。この利子を課せられるということは、それなりに納税者にとってはそれだけの理由があるのでありますから、私はこういうものをなしにしろと言うわけではありませんが、それにしてもあまりにも高過ぎるではないかという感じがするわけであります。中には、どうも私その点やや不勉強でありますが、利子税と延滞加算税の二重課税なり、あるいはそのほか重加算のかけ方なり——重加算は五〇%でございましたか、これはまことに過酷きわまるものであって、何も金利の引き下げに対応せよということばかりでなくて、本来的にいま少し軽減をさるべきときではなかろうか。本来これが設定をされましたときには、一罰百戒的な意味があったと私は思うのです。しかし、その点も、あなたが先ほどあなたの立場でおっしゃるように、ややノーマルなような状況になってきたということであるならば、これまた思い切って引き下げをなさるべきときではないか、こういうふうに考えるが、いかがですか。
  55. 原純夫

    ○原政府委員 利子税と延滞加算税が重なってつく重加算税が五割である、それらを初め、重いと思われるような点について手を打ったらどうかというお話でございますが、ただいま、税制調査会では、この問題を例の租税通則法の一環の問題として取り上げて研究が進んでおるようでございます。その通則法はいろんな問題がありますが、その中のかなり大きな問題として、この種の——各種付帯税と私ども申しておりますが、無申告加算税、過少申告加算税、重加算税、延滞加算税それらを含めましての体系的な検討が行なわれております。ただいまお尋ねのことに対しての態度は、私どもとしてはなお調査会の検討を待った上できめたいと思いますので、お答えを留保さしていただきたいと思います。ただいまのお尋ねの点については、そういう御意向として所管の主税局の方にもよく伝えておきます。なお、調査会における議論の中にも、われわれのような議論の筋もあるということを私は承知いたしております。ただいまはその御報告にとどめさしていただいて、なお十分慎重に主税局とも検討して参りたいと思います。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 私がきょう実は聞きたかったのは、職員の労働問題、徴税に関連いたします税理士法及びその運用の問題、それからお酒の免許の問題等各般にわたっておりましたけれども、時間がございませんし、また追ってきょうの質問に対する回答もなされる筋でございますから、この際譲って、きょうの質問を終わることにいたします。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと資料の要求を一つお願いしたい。それは、現在公務員の宿舎が相当たくさんある。政府関係しておる公務員宿舎、これは現在各省庁別に割り当てられておると思うのですが、もととしては大蔵省が予算を組んでやることですから、一つ各省庁に対して資料要求を出して調査していただきたい。大体これは等級別に宿舎が作られておる。五等級用とか、何か俸給の等級別に宿舎が作られておる。ところが、どうも私が少し拝見しておるところでは、五等級用の宿舎に二等級の者が入る。三等級の者が入る。要するに毎年度下級者のために相当たくさんに建築はされておるにかかわらず、実態としては下級者が入れないで、上級者が相当に入っておる実情を私二、三見聞しておりますので、ちょっとこの際、政府が建てておる公務員宿舎の、そういう現状としての各等級別の目的——何等級が入るという目的で建てたそれと、それは何か記号によって区別されておって、個々には別個です。要するにトータルで出せばその等級別の数が出ます。現状では何等級の者が何名入っておるかという格好で出していただいてけっこうです。どうも下級者用に上級者がたくさん入っておるという傾向が見受けられますので、ちょっとそれについての資料を要求しております。
  58. 山中貞則

    ○山中(貞)委員長代理 委員長席からお諮りいたしますが、理事会にかけてきめておりませんが、他の委員さん御賛成なら、資料要求はよろしいですか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 山中貞則

    ○山中(貞)委員長代理 それじゃその資料を政務次官お願いします。あしたでもできるでしょう。——では明日資料を提出願います。  午後二時まで休憩。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  60. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計、税制金融及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。、平岡忠次郎君。
  61. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大蔵大臣の御出席を得ましたので、税制関係の事項と、もし時間がありまするならば、貿易自由化の問題をめぐりまして御質問したいと思います。  まず、税制改正の件でありますが、今回の税制改正で、給与所得者に対しまして、夫婦と子供三人のいわゆる標準家族の年収三十九万円までが非課税限度となりました。現行の三十三万の非課税限度から見れば、確かに減税であることに間違いないようです。しかし、政府の一連の値上げ政策、それにからまるインフレ・ムードによりまして、現実の家計というものは非常に圧迫されております。政府の統計によりますと、昨年の十月におけるところの全都市消費世帯の平均支出が、一カ月当たり三万一千六百七十六円と出ております。これは、この平均世帯の人数が四・五五人ですから、税法の標準家族の五人にアジャストしますと、一カ月の支出が約三万五千円になります。従いまして、この三万五千円を十二倍しますと、一年におけるところの標準家族の実際の他計費が算出されます。つまり、四十二万円が生計費であります。近代国家では生計費には課税をしないというのが原則のようでありますから、もしその原則にのっとる限りにおいては、今回の政府の三十九万円をもって非課税限度とするこの改正案をもってしても、まだタックス・ベーヤーの方に貸し勘定がある。政府はそれだけ借りをしておるということになろうと思うのであります。従いまして、政府の減税の呼号は私は当たらないと思っております。そういうわけで、今後所得税につきましても政府は逐年減税していくことであろうと思うのですが、それに対する大蔵大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たびたび私も申しましたが、減税は今年度限りではございません。ほとんど毎年やっていくというつもりでございます。
  63. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 毎年やっていくことだそうですから、大いに期待をいたしておきます。  しかし、現実には、今回減税の純額が六百二十一億円にとどまったことに対しまして、世論は非常に論難いたしております。しかも、三十五年度におきまして減税がすべて見送られ、国民の期待は三十六年度においてこそ相当な減税政策を政府がやるであろうことを期待していただけに、この点は国民すべて失望いたしておるわけであります。大蔵大臣は今後逐年やっていくということをお約束なさいましたが、現実の実績は、三十五年度と三十六年度をひっくるめて、自然増収が相当あったはずにもかかわらず、六百二十一億円にとどまったということで、二年に一ぺんの減税ということになりますれば、ただでさえ非常に低いところのこの数字が、まことにミクロスコープ的なみみっちい減税になっていることを私どもは指摘しないわけには参りません。  そこで、念のためにお伺いしますが、三十六年度の自然増収は予算に明確に書いてありまして、三千九百三十億円の自然増収を見込んでいる。しかし、三十五年度中に三十四年度に比較しまして一体幾ら自然増収があったのか。この数字を、事務局の方でよろしいですから、一つお教えを願いたいと思います。
  64. 村山達夫

    村山政府委員 ただいまの御質問は、三十四年度の決算に対しまして、三十五年度の決算見込額はどれだけになるか、その差額の御質問だろうと思うわけでございます。それで三十四年度の決算額は一兆二千百二十四億であります。これに対しまして、三十五年でございますが、これは第一次補正のところでございますと、一兆四千八百八十億、こういうことでございます。今度第二次補正——目下提案中でございますが、これに対しまして三百六十五億ふえております。なお本年度内の減税といたしまして五十八億見ておりますので、今年度の減税なかりせぱ、その分はプラスになって参ります。それに、今度の第二次補正では、まだ出しておりませんが、大蔵大臣もしばしば言明しているように、別にガソリン税におきまして八十億程度の増収が見込まれますということを申し上げているわけでございます。これらの数字を合わせますと、今年度は一兆五千二百六十三億になる見込みでございます。それを合わせますと三千百三十九億の増収になる見込みでございます。
  65. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そういたしますと、三十四年度一般会計税収決算額と第二次補正を完了した後の三十五年度決算見込額との間に、今あなたのおっしゃった三千百三十九億があるわけです。そうしますと、三十六年度の増徴分三千九百三十億円をこれに加えますと七千六十九億、こういう数字が出ます。大蔵大臣は将来のお約束はしましたけれども、既往の実績は実に七千六十九億に対しましてわずか六百二十一億円の純減税がなされた、こういうことになるわけです。私どもは、このことから来年の大蔵大臣の大減税を期待せざるを得ないわけなんです。しかし、このことは別といたしまして、私は、ここでは、政府の呼号するところの、しかも政府の政策の三本柱の減税の実態というものが、はなはだミクロスコープ的な鼻くそ減税であったということを指摘するにとどめます。  次に、私は間接税につきましてお尋ねしたいのです。私の悪口を言いましたこの鼻くそ減税でも、これを受け得られる階層はまだしもであります。しかし、答申及び政府予算における税制の態度につきまして、決定的に国民の不満とするところは、国民のいわゆる声なき声をよいことにしまして、間接税につきまして完全にほおかぶりをしておるのみならず、ガソリン税の増徴のごとく、まことに国民のパンを求める声に対しまして石を与えかねまじきこうした政府の処置というものは、われわれは納得できません。ガソリン税等につきましては後日また私質問したいと思いますが、まずお伺いしたいのは、現行三十三万円の非課税限度をもって事足りておる、こういう階層がどのくらいおるのかをお示し願いたいのです。勤労者につきまして、それから個人事業主につきまして、農家につきまして、それぞれお示しを願いたいのです。
  66. 村山達夫

    村山政府委員 今の失格者はどれくらいあるかと言う前に、ちょっと先ほどの非常に減税の規模が小さいと言われたそのもとの計数について申し上げておきますと、今季岡委員は、三十四年度の決算と、それから三十五年度の決算見込みの増差三千百三十九億、これはそういう規模でありますが、それに三十五年度の当初予算対三十六年度の当初予算の現行法による自然増収そのままをプラスするのは少しおかしな計算ではないか。もしその割合でいかれるならば、三十五年度の決算見込みに対しまして、現行法ベースによる収入見込額のその増差額を加えるべきであろう。そういたしますと三千九百三十億は千九百六十二億になるわけです。そういたしませんと、今の三十五年度の当初予算と決算額との差額が二重に計算されることになりますので、減税の規模をごらんになるときには、そういうことを……。それが一つでございます。  それから、課税最低限の問題につきまして、今おっしゃるのは、この課税最低限引き上げによってまずどれくらい失格者が——改正による失格はどれくらいかという問題と、それから全体の有業者のうち、今度の改正によって納税者の割合がどれくらいになるか、この二つの問題を含んでいるんだろうと思いまして、その二点について申し上げます。  今度の課税最低限の引き上げによりまして、改正による失格者は源泉、申告を合わせまして二百十八万一千人でございます。内訳を申し上げますと、そのうち源泉所得税の税法改正による失格者の数が百六十九万九千人、申告所得税の失格者の数が四十八万二千人でございます。次に、有業人口に対してどれくらいの割合になるかということを申し上げますと、これはまだ最近のデータで直さなくてはいけませんが、ちょっと一年ばかり前の古い数字有業人口の方はそういうふうになっておりますが、それでいきますと、給与は五二・三%が有資格者になるであろう、有資格者と申しますのは、給与所得を持っておる人の総数に対しまして所得税の納税者の数でございます。それが給与におきまして三十六年は五二・三%程度になるであろう。それから農業につきましては三・二%、それから営業その他の諸業につきましては一三・九%程度、合計いたしまして三七・七%くらいになります。なお、これは有業者対納税者の数でございますが、納税者を含む世帯数対それの全世帯数に対する割合をとってみますと、と申しますのは、世帯にどれくらい減税の効果があるか、こういう観点でものを見るわけでございますが、大体四八%ないし四九%に及ぶということになります。  それから、御参考までに申し上げておきますと、課税最低限が高いか安いかという点は、いろいろな検討のやり方があるわけでございます。一つのやり方は、いろいろ考えられます最低生活費に食い込んでいるかどうか、この問題が一つございます。われわれはいろいろな調査をやって、三つぐらいの方法で調査しておりますが、いずれも、その課税最低限よりは、現行でありましても、改正案によりましても、その限度は相当上回ると考えております。なお、戦前の基準であります昭和十六年、それはちょうど分類所得税、総合所得税の二本建にいたしまして、全面的な税制改正をやった年でございます。で、そのときの課税最低限は、同じく標準世帯につきまして、現在の物価で換算いたしまして二十六万九千円でございます。そういたしますと、現行法で約三十三万、改正法で三十九万八百七十円、こういうことになりますと、改正法では、物価換算をいたしましてもなお四割五分程度アップしておる、こういうことになります。国際比較をとってみます場合に、その絶対額でとってみることも一つ問題でございます。これはもちろん所得の高さが全く違いまして、アメリカあたり八倍程度とか、あるいはイギリスで三・五倍とか、こういうことになりますと、課税最低限、絶対額そのものはもちろん向こうが高いわけであります。ただ、国際比較をやる場合に一つのめどといたしまして、そこでも平均五人構成といたしまして、平均の家族の世帯の所得に対してそれが幾らになっておるか、その平均世帯の所得に対する課税最低限の比率というものがどの程度にきておるか、何%程度のところにきておるか、これが一つ。これはいろいろの読み方がございますが、一つの比較のめどであろうと思います。それによりますと、アメリカの場合は課税最低限が百二十万。その場合の平均世帯の所得が、円換算でございますが、約四百万くらいでございまして、その割合いは二九・二、その辺にきている。同じく英国の場合は四一・二のあたり、西ドイツでございますと五五・六くらい。これに対しまして、日本の場合は現行法で五八・九、その辺に来ているわけでございまして、今度課税最低限が少し上がる。もちろん所得も上がるわけでございますので、この割合は若干上がるんではないかというふうに計算いたしております。そういうふうにいたしますと、十分とはあるいは言えぬかもしれぬけれども、それほどひどいものではない。戦前に比べましても、各国に比べましても、また実際の最低生活費に比べましても、まずまずこの辺でしんぼうして、引き続く減税に期待すべきものではないかというふうにわれわれは考えている次第でございます。
  67. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いろいろ御答弁がありましたが、急所は、有業人口のうち六二・七%、あるいは世帯を主にしての計算の場合において五二%が今回の減税の恩典に浴していないということだけは明瞭です。従いまして、こうした広範な国民、しかもこの人たちこそ低領層なんですから、この人たちに減税の政策が及ぶ手段は何かということになれば、これはもう間接税をいじるよりほかないと思う。間接税そのものは本来の性格として逆進性を持つものであります。ところで、日本のごとく非常に高率な間接税を課しておる国におきましては、この逆進性向が国民大衆の生活の非常な重荷になることは事実であります。私はその点を強く指摘したいのであります。そこで、具体的な例を申しますと、私ども社会党としまして昨年税制要綱でも指摘したのですが、重い間接税はどういうのがあるかということになると、まず酒税、砂糖税、これは関税と消費税があります。それからガソリン税、たばこ、こういう項目が当然指摘されるわけであります。具体的に申しますと、大衆酒である清酒二級におきまして、四百九十円の小売のうち二百五円が税金です。それから、ビールにおきましても、百二十五円の小売価格のうち七十円十四銭が税金であります。砂糖におきましては、今一キロ百四十円前後の市価であると思いますが、そのうち七十五円前後、正確には七十三円何がしですか、これが税金であります。たばこに至りましては、「いこい」の例をとりましても、五十円のうち三十二円十四銭が税金でありまして、国民にとりましてとてもいこいどころではないわけであります。高級な「ピース」になりますと、一本の原価が約一円でしょうから、十本で十円、自余の三十円、つまり四十円の小売価格のうちの自余の三十円が税金、七五%が税金、こういうふうに、国民生活に密着している、しかも選択を許し得ないような生活必需品に近いところのこうした品目が、まことに世界一の高率課税をもって徴せられておる。この事実を私どもは指摘しないわけにはいきません。そこでどうしても間接税に手を染めていかなければならぬ段階にきておると私どもは判断いたしておるわけであります。大蔵大臣は、間接税の問題については今後検討するとのみ、その財政演説において述べただけでありまするが、いついかなる品目をどのくらい減税するおつもりであるか、一つお示しを願いたいのであります。
  68. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 前にも申しました通り、税制全般の改正について三年がかりで検討してもらうという予定で、税制調査会にいろいろ調査を今願っているわけでございますが、今年度は、第一段階として法人税、所得中心の減税についての答申を待って、大体その通りに実施するという方針をとったわけでございますが、来年度におきましては間接税の問題の検討も願うつもりでおりますので、税制調査会の検討を待って具体的に間接税に対する減税をきめたいと思いますが、現在のところ物品税をどうすると具体的に今きめておるわけではございませんので、今年中の研究によってこれはきめたいと思っています。
  69. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、少なくとも間接税の減税を三十七年度に行なう意思があるかどうか。これだけを一つお答え願いたい。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは意思はございます。
  71. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 どうやら三十七年度に間接税減税に踏み切るというようなことでありますが、私は、非常に危惧しながらも、広範な国民の切実な声を代表するつもりで、御質問を申し上げたいと思うのであります。昨年三月、私どもの党が税制改革要綱を発表いたしました際に、所得税における課税最低限の引き上げによる減税に均霑し得ざる広範な国民の税制上の救済のためには、消費税、間接税を見直さなければならないとの立場に立ちまして、現在国民生活の重圧となっている間接税のうち、特に怨嗟の的となっているものとして、先ほど申した通り酒、たばこ、砂糖、ガソリン税等を指摘し、なかんずく国税の三本柱の一つでありまして、昨年度予算において二千二百五十一億円、本年度予算におきまして二千七百四十二億円に上る大衆重課の頂点をなす酒税につきまして、具体的な試算を提示し、減税方法にも触れまして、政府の善処方を要請したつもりでおります。細目に再び触れませんが、その折の所説は、今後経済基盤に変化のない限り引き続き酒税は相当大幅な消費増を見込み得るのだということ、従って、大衆酒については思い切って減税に踏み切るべきであること、輪番方式をとることによって、予算にさまで影響を与えずして、三カ年以内で全酒類にわたり、現在の世界に冠絶するような、この大衆収奪の高率酒税を大幅に軽減し得ることを具体的に提案しました。結局減税はございませんでしたが、結果は、政府が第一次補正として二百十六億円を捻出し得るほど自然増をもたらしまして、当然のことながら減税の根拠の確かにあったことが示されました。予言は的中しました。ビールは当初予算の八百三十三億円に対しまして百三十一億円の増、率にしまして一五%の増、雑酒は同じく百十九億円の当初予算に対しまして三十億円、二五%の増、清酒は九百三十七億円に対しまして六十三億円、七%の増、その他若干各酒類を是正しまして、合計二百十六億円の補正増となったわけであります。しかし、私の現在の関心事は、予言の的中したとか、しなかったとかいうことにはございません。そうではなしに、むしろ三十六年度政府予算の酒税の積算が全く目一ぱいに盛られ過ぎておりまして、三十七年度の間接税全般の減税の困難を暗示しておるように思えること、これが関心事であります。これはあとからもうちょっと詳しく申し述べてみたいのですが、間接税の頂点をなす酒税というものを相当掘り下げて予算を見ました場合に、私のこの感はいなみ得ないのです。いろいろと税調の答申を待ちながら間接税に踏み切るということをおっしゃっておりますけれども、間接税の頂点をなす酒税につきましては、ほんとうに三十七年度に減税をいたしますか、お答えをいただきたいのであります。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえばたばこのようなものでも、戦前の値段と物価指数の上がり方を比べてみますと、相当高いようであっても、戦前の小売定価に比べたらそう高くないという数字が出ておりますし、酒にしても同じようないろいろな問題がございますが、しかし、私は、来年度は、いろいろな困難があっても、こういう問題の値下げというものはやりたいと思っています。
  73. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大蔵大臣、酒税を下げるかどうか。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 だから、これもやりたいと思っています。
  75. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ところで、私は、非常に困難ではないかということのために、次の数字をちょっとあげてみたいのです。三十六年度は、前年度当初予算に比しまして、酒税全体で四百九十一億円、すなわち一二・八%の増収を見込んでおる。まさに超目一ぱいの収奪予算であると私は考えております。特に清酒において一五%、ビール、雑酒に至ってはそれぞれ三三・七%、四六・二%という、まことに収奪がまえであります。それから、三十五年度補正後の予算に比べましても、清酒八十一億円増で八・一%、ビール百六十六億円で一六・三%、雑酒二十五億円で一六・八%の増収を見込んでいるのであります。いずれにいたしましても目一ぱいの収奪予算でありまして、間接税大幅減税を三十七年度に期待している国民の要望にこたえ得るかどうか、きわめて疑問であると思います。つまり消費税の頂点をなす酒税においてしかり、これがもし全豹の一斑を示すものであるとするならば、これは間接税に対して国民の減税期待はまた来年において裏切られるのではないか、かように考えますが、いかがなものでしょう。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 きのうも予算委員会で申し上げましたが、国民所得に対する国民の税負担の割合、これが幾らでなければならぬかという正確な基準というものはむろんございませんが、税制調査会から意見が前にも出されておりますので、やはり私どもとしては、なるたけ二一%にはならぬ、二〇%台で国民負担を抑えたいという考えを持っております。そうしますと、今の所得倍増計画による施策が進む場合に国民所得はふえていく。そうなりますと、現行税制でいきますと、国民所得のふえる割合よりも税収のふえる割合の方が多いということになりますので、国民負担率というものを調整しようという考えを持っておる限りは、これは直接税といわず、間接税といわず、減税をはかっていくということを毎年考慮しなければならぬ問題になってくると私は思っております。そういたしますと、国に一定の収入が必要であるからといっても、その必要をたとえば酒で満たさなければならぬというようなことはございませんので、全体の収入の均衡をはかって備えればいいのですから、私はさらに直接税の減税にも進みますし、間接税の減税も、これは困難であってもやはりやるべきであり、やっていこうと考えております。
  77. 村山達夫

    村山政府委員 ちょっと数字について御説明しておきますと、先ほど平岡委員は、当初ないし補正予算に対しまして相当出ておる、従って三十六年度は目一ぱい見ておるのじゃないか、そのことは三十七年度の減税を困難にすることになりはしないかということでございましたが、これは、実は見方といたしましては、大体清酒とビールが大部分でございます。清酒につきましては、生産計画で——これは業界でもって大体見ておるわけですが、三十六年度、酒造年度では三十五酒造年度でありますが、四百七十二万石の出産計画を見ておるわけでございます。これを基礎にいたしまして需給計画を立てまして、われわれの方では会計年度中における移出数量、これが課税の対象になるのでありますが、四百七十二万石より少し減らしまして、四百四十九万石を課税数量に見ておるわけでございます。対前年度大体八・四%くらい増になる数量でありますから、この程度は目一ぱい見ておるということでもなければ、また非常に過少ということでもなかろうというように思うわけであります。ビールにつきましても、同じようにいたしまして、今度は五百九十一万石を見ておるわけであります。これは対前年度二%くらいの増になるだろうと考えております。ビールは、過去の実績を見ましても、天候に非常に左右されるわけでございます。昨年、一昨年は天候の状況が夏場非常に暑かったものでありますから、非常に伸びております。その辺を考えまして、過去の国民の消費資金と課税数量との関係をずっと見ておりまして、大体この辺が妥当であるというところを押えて、特にこれも多く見積もっておるわけでもなければ、特に少ないということでもないということでございます。はたして三十六年度がそうであるとして、三十七年度の減税はどうかということは、今大臣がお答えになったように、三十六年度の経済の成長はどの程度であるか、それによって、ひとり酒税のみならず、その他全体の租税収入がどうなって、そして歳出がどうなって、従って減税にどのくらい充てるか、あるいは国民負担関係から、そのうち幾らぐらい積極的に減税に回すべきかという問題が、来年度新たに問題になって出てくると思っております。
  78. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 なかなか含みのあるような回答ですけれども、中身はあまりなさそうです。  それから、大蔵大臣、きのう井手以誠君の質問に対しまして、税制調査会ですか、税調の答申が、国民総所得に対しまする国民の負担率としては二〇%となっておるが、それを尊重したいと言われたあと、なお井手君から畳み込まれたのでしょうか、二〇%まで下げるのかどうかという問いに対しましては、いや実は正確に二〇%ということではない、二一%を上回るようなことはぜひしたくないという、そういうきわめて消極的な、来年になったら逃げ道もあるのだというようなお答えであったように私は思うのです。私は、二〇%あるいは二一%というふうに、一%刻みの議論はあまりしてもらいたくないと思うのです。〇・一%くらいの刻みの議論をしてもらわぬと、来年はどうも二一%とるぞというような——普通の場合にはたった一%だからといって聞きのがしにするわけですけれども、どうも税率問答としてはあまり大ざっぱに過ぎはせぬかと思うので、その点むしろこわくなったのですが、大臣の腹はどうやら来年は二一%になりそうだという、そういう一つ何というか積算上の何か逃げ道を考えなければならぬほど、来年の減税がなかなか困難だというふうに思っているのではないでしょうか。せんさくし過ぎて申しわけありませんが、率直に一つ答弁をしていただきたい。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の減税は、御承知のように私ども最初から一千億円以上の減税をするといって、事実その減税はやるわけなんです。もう国会に法、案の御審議も願っておることで、その通りにやるのですが、ただその場合に、減税だけではなくて、増収になる、実質増税というものも今後行なっていかなければならぬと思っております。皆さんから言われる特別措置の問題も、これを合理化するということは、実質的には増税、増収をはかることですから、これを常に皆さん方に差し引きされて、減税が減っているじゃないか、減っているじゃないかと言われることは困りますので、減税は減税として、またこの及ぶ層は違うのですから、低所得層を中心の減税というものは、さらに今後行なわれなければならぬと思いますし、一方特別措置というふうなものは、むしろ大企業に対する増税というようなことでございますから、こういうことも今後やっていかなければならぬと考えますというと、これを正確に調査会の意見が二〇%といったから、常に二〇%に合わせなければならぬというような必要はないのではないか。また、税制調査会も、二〇%というものの根拠は特に示したわけではございませんで、大体三十五年度当初予算で見た程度負担から上げるなというのが、あのときの趣旨でございましたから、これが二五%にいっても、二六%にいっても、私どもとしては、今後減税はどんどんやっていくし、そのかわり必要な増税もあるべしというようなことを考えております。大体の気持としてはあの前後に国民の負担を抑えたいと思いますが、これを正確にぴしっとこう言ったではないかと言われたのでは、われわれの方も弾力性がなくなりますから、あの前後がいいところではないか、二一%にならぬような減税というものは、今後政府としてはしょっちゅうやっていこうという考えを述べただけでありまして、この減税を逃げようという意図からわざわざ言ったわけではありません。
  80. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大蔵大臣のお話では、減税率二〇%か二一%にとらわれることはないではないか、高額所得層からうんととってきて、そこで埋め合わせをし、なおかつ絶対量の減税というものが出てくれば、これは大衆にはかなり減税をなし得るんだという御趣旨に聞きました。大臣の御答弁そのものは確かにそうであろうと思うのです。しかし、われわれは、既往の実績に徴して、大臣の御答弁になるような格好にならぬことを憂えておるのです。  実はその前にちょっとお伺いしたいのですけれども、三十五年度ベースで租税特別措置によって減税される総額は幾らですか。まずそれをお聞きしておきます。
  81. 村山達夫

    村山政府委員 当初予算ベースで申しますと、租税特別措置的なもので現在減収になっているものは、国税におきまして千四百七億ございます。
  82. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そこで、今回租税特別措置の整理合理化と称して、貸し倒れ準備金制度の改正と価格変動準備金制度の改正並びに退職給与引当金制度の改正、この三日につきまして、それぞれ二十一億五千七百万円、六十億四千百万円、十三億九十万円、合計ざっと百億円手直ししていますね。千四百億円のうちたった百億程度をいじくるのが関の山だということを示しておると思うのです。なお悪いことには、三十一年度の税制改正におきまして、それは政府は表面的はえらく意気込んで租税特別措置を見直すという、そういう大宣伝をしました。そこで提案されましたこの整理なるものは羊頭狗肉でした。むしろこれは租税特別措置を固定化し、永久化したという感をいなみ得ませんでした。それで当時概算所得控除というふうな中小企業とか農民の利害関係に非常に影響のあるそういう所得措置だけをやめたという、こういういきさつがございます。今回やるかどうか知りませんが、やはり社会保障診療制度を推進すべき社会保険診療報酬の特例、それから広く農民層に深い利害関係の及ぶ米穀の特例ですか、これだけは一つ手を染めようという気配を見せておるように私ども伺っておるわけです。租税特別措置法を抜本塞源的に改廃すべしというこの国民世論に対しまして、これは逆手に出たような、まことに納得できかねる当局の態度であろうと、私どもはそう見ておるわけであります。だから、大蔵大臣のおっしゃることはいいのですけれども、実績的には、租税特別措置をいじくること自体が、いつもスポンサー筋の租税特別措置を固着させてきたという事実を指摘しないわけにはいかぬのです。大蔵大臣のお言葉をわれわれがすなおな気持で受け入れ得るように、御処置をもし租税特別措置に対してやるなら、徹底的にやってほしいということを要望しないわけには参りません。この点につきまして、重ねて、私が申したような前提に立っての租税特別措置の改廃を、来年度において徹底的におやりになる腹があるかどうか、このことを御答弁をお願いしたいと思います。
  83. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もう方針としましては、こういう措置は漸次合理化し縮小していくというその方向はきまっておりまして、その方向に沿ってやっていくつもりでございますが、結局こういう措置は政策的なものでございますので、もうこれで政策的な措置の効果が終わったという状態になるのでしたら、これはもう全部整理できますが、自由化とかこういうものを控えてなかなかそういかないことがございますし、むしろ中小企業部門にこういう措置をある程度拡大しなければならぬという必要にも迫られておるというときでございますので、そこらを十分勘案して、漸次整理していくという方向でいきたいと思います。
  84. 村山達夫

    村山政府委員 ちょっと計数で申し上げておきますと、ただいま千四百七億に対して百十八億とおっしゃいましたが、これはやはり平年度ベースで見ていただく方が規模としてはよろしいのではないか。そういたしますと、汗八十五億になります。  もう一つは、租税特別措置は整理するといいながら、非常に足りないじゃないか、こういうお話でございます。これはいろいろの見方はございますが、実は三十一年から租税特別措置で整理いたしましたものは、そのときどきの平年度計算、つまりそのときの貨幣価値で、平年度計算の合計で六百六十八億に上っておるわけです。今日の貨幣価値で換算いたしますと約一千億以上。言葉をかえますならば、千四百七億現在減収がございますが、もし当時の整理なかりせば二千四百七億程度になったであろう。その半分ぐらいは、非常に不満足ではありましょうが、整理はしております。しかし、なお千四百億が多い、あるいは今度の百八十五億が少ないという問題はあるかと思いますが、大体さようないきさつでございます。
  85. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 主税局長のお答えは、強盗をやるべきであったのだけれども、これは普通のこそどろをやったんだからいいのじゃないかというような答弁だと思うのです。大体六百二十一億円という国民全般に及ぶ所得税の減税を、先ほどのように二年がかりでやっとやっている現状に徴しまして、主税局長から平年度百八十五億なんだという御指摘がありましたけれども、そんなのはものの数じゃないと思うのです。だから、まず計数の枝葉末節のお答えよりは、そうした大きな腹がまえでやってもらわなければならぬということを私どもは主張したい、そういうことでお聞き取りをいただきたいということであります。  私が今まで縷説申し上げたのは、間接税に対して政府は重大関心を払っていただきたい、また払う価値があるのだということの強調、しかし具体的に間接税の頂点をなす酒税というもの一つを取り上げてみても、これは目一ぱいの予算を組んでおって、三十七年度において減税ができないのではないかという私の心配を申し上げたわけであります。そこで、消費税の頂点をなす酒税を代表として申し上げたので、もしこうした傾向が全豹の一斑として酒税に現われているとするならば、間接税それ自体の、全体の三十七年度の減税作業はむずかしいのではないか、なお推し広めるならば、所得税とか法人税全部をひっくるめて、三十七年度以降においてはなかなか減税がむずかしくなってくるのではないか、特に大蔵大臣が二〇%を二一%に読みかえなければならぬほど、その問題は大蔵当局においてもかなり危惧を持って考えられておるのではないか、大体こういう趣旨を申し上げたわけであります。  そこで、私自身に与えられました時間の制約がありますから、貿易自由化問題につきましては、また次の機会に質問したいと思いますが、ただ一点だけお聞きしておきたいことがございます。それは、今までの大蔵委員会における同僚と当局との間の質疑応答を聞いておりましたが、政府の低金利政策でございます。大体自由化に対応するために国際金利水準にさや寄せをしたいという政府の意図で説明されております。しかし、このことは別段悪いわけではないのですけれども、私は少しせんさくし過ぎてちょっと悪いように思いまするけれど、低金利政策が戦時中唱えられました。それは戦時公債消化のための地ならし工作として低金利政策がとられた。この事実をわれわれは想起せざるを得ない。ですから、池田さんは、たしか来年、再来年は少なくとも赤字公債の発行はせぬということを言明されたように思いますが、政府には、そろそろ赤字公債にいかなければならぬという、そうしたかまえを始められたのではないか、要するに公債発行の地ならしとして低金利政策を推し進めていくのではないか、こういう疑いをどうも消すわけにいかぬのです。そこで、池田首相のお話は別としましても、低金利政策に対して異常な熱意を持っておられる大蔵大臣の御所見を、この際率直にお伺いしておきたいと存じます。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 低金利政策、特に今私どもがこれに熱意を持っている理由というものは、前から申し上げておる通りの理由でございまして、これを来年度赤字公債の発行を構想しているために急いでいるとかいうような、そういうことは全然ございません。
  87. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 時間の制約がありますから、きょうはこの程度で終わります。また次会に御質問させていただきます。
  88. 足立篤郎

  89. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 きのうの予算委員会で同僚の井手君から財政法違反の質疑がございまして、ちょうど今国会に産業投資特別会計法の一部を改正する法律案が出ておりますから、それと関連して、同僚議員の質疑もありますし、大臣も忙しいことでありますから、できる限りしぼってお尋ねしたいと思います。  一体政府は、私も先回にもちょっと質問したのでございますけれども、財政法を守る意思があるかどうか。この前は、水田大蔵大臣はこれは前例があったからやったのだという話でございますが、前例のときにも、実は同僚の石村委員からも質問があって、わが党は反対をしてあなたの方は多数でもって押し切ったのでございますが、一体財政法というはっきりした法律があっても、やはりこういうものを無視してどこまでもおやりになる御意思があるかどうか、まず一点それからお尋ねしたいと思います。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財政法を無視して無理にやったということじゃございませんで、大体補正予算で予算を補正して資金に繰り入れるという措置は、産投会計にやったのは一回しか例がございませんが、そのほかの資金への補正予算によっての繰り入れということは、もう過去において何回もあることでございますし、そのつどそういう論議は出ましても、大体財政法違反でないということはこの国会において事実的に認められていることとわれわれは思っておりますし、財政法違反をやって、これを無理にやるというような措置であったとは考えておりません。
  91. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 国会で認められたというのは、これは多数で押し切ったのでございまして、何も社会党が納得したというものではないことは、前にも佐藤大蔵大臣のときにやったのですが、これは私たちの方も反対討論をしておるし、同時に今日では、与党の自由民主党の良識のある人の中には、やはりこういうふうなことをしてはいけないから、財政法を改正したらどうかというような意見があると聞いております。財政法違反にいろいろ疑いを持たせるような問題はたくさんありますが、私たちは今度出ました産業投資特別会計法そのものには反対する気持はありませんけれども、先般大蔵大臣が、三十八国会の本会議場で、その三百五十億の産業投資の金を、百五十億は三十五年度、あと二百億は三十六年度に使うというような発言をしておられます。しかし、この二百億という金は財政法二十九条にも非常にもとっておるのではないかという考え方が私するのでありまして、昨日も実は林法制局長官からも詭弁的な補足説明がありましたけれども、やはりだれが聞いておりましても納得がいかない点があるのでございまして、こういう点についてすっきりした形で、これは悪いなら悪い、こういうことはこういうような方法でやむを得なかったというようなことを言われない限り、私たちの方で、なるほどこれはもっともだ、これはこういうことならやむを得ないではないかと言うことができない限りは、私たちは、前例があるからという理由では、今度の二百億の三十六年度の産業投資特別会計についてはどうしても納得いかないのでありまして、その点についてわれわれにこういう意味だから納得してくれというような御説明一つしていただきたいと思います。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 きのう申しましたように、今度の予算編成の経過を御説明いたしますと、私どもは、当初産投会計への繰り入れは、三十六年度の歳入をもってやれる、そういう予定で最初の大蔵省原案を作りましたが、この大蔵省原案を閣議において調整する段階で、産投へ繰り入れ予定になっている百五十億円は他の緊要な経費に回すべきだということになりました。そこで、産投資金からの出資を要望する事情というものは非常に多くなっておりますので、これはどこまでも必要なものでございますが、三十五年度の補正によってこの必要を満たすのが適当だということになって、大蔵省原案からこの百五十億が削除されて、同時に三十五年度の予算補正をするという方針が最後の閣議で決定した、こういういきさつでございます。資金という性質上、当然三十五年度に使わなければならぬというものではございませんし、三十六年度以降生じている必要に対処するための資金でございますので、これを三十五年度中に出資に充てるということは、年度率の原則に反するわけではございませんし、またどの角度から見ても別に財政法違反になることではない。しかも、この国会においてはしばしばもう前例となって認められていることでございますから、こうすることがいいのだというわれわれの判断で行なったというだけでございまして、財政法違反とは私ども考えていません。
  93. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 財政法第六条は、各会計年度の決算上の剰余金のうち、少なくとも二分の一以上は翌々年度までに国債償還財源に充てなければならぬということを規定したもので、その趣旨は、可及的に公債の減少をはかり、もって健全財政の維持を企図しているものであるので、いわば第二次的の減債基金を規定したものであります。これは財政の健全化ということをうたったものでありまして、それで、第二十九条に定めてある追加予算作成の要件に合致する場合を除いて、補正予算をもって決算上の剰余金を故意に減少させるような結果を生ずる財政措置は、形式的にも実質的にも違法だと思いますが、政府は、こういうような関連について、どういうような考えでこういうことをおやりになったのか。これは緊急の場合ならば三十六年度に組むべきであって、われわれはどうしても納得がいかないのですが、この説明一つしていただきたいと思います。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 決算上の剰余金の処置については、財政法でそういうふうにきまっておりますが、まだ今年度は予算の進行中でございまして、自然増収が一定の額見込まれるという限りにおいて、緊急な必要性を満たすということは少しも差しつかえないことだろうと思います。
  95. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まだこれは三月三十一日にならなければわからないわけですが、しかし、その大体三百五十億の中で、百五十億は三十五年度の産業投資に使う、あと二百億は三十六年度に使うということになっておりますが、私たちは、三十六年度に使う産業投資に持っていくのならば、何も緊急な必要はないのではないか、少なくともこれは三十七年度に使う金を三十六年度の予算のやりくりでやったのではないかという疑いを持つわけでありますが、そういう点は大蔵大臣どういうふうに解釈されますか、承っておきたいと思います。
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、三十五年度の当初予算を編成するときとは日本の経済の事情がだいぶ変わっておりまして、あのときは経済の伸び率もわずかしか見ていなかったのが、実際においては当初の見込みよりも倍くらい日本の経済が伸びたというような状態も出て参りましたし、アメリカのドル防衛の問題に関連する問題、自由化の問題、また年末になって、政府が九・二%向こう三年間年率、そういう経済成長をもくろむというような方向もあとになって決定されましたが、そういう情勢に応じて産投の資金から出資を得たいという要望が今非常に強くなり、将来ももっとこれが大きくなるという事情が出て参りましたので、私どもは、できたら第一次予算のときも一定の額をこの資金に入れる必要性とうものには迫られておりましたが、あのときには確実に見込み得る範囲内の補正をやったつもりでございましたので、これができませんでした。当時からすでにこういう必要が出ておったわけでございますので、この際、今年度のこの自然増収を歳出に立てて、資金をここで作っておく。昭和三十一年度にそういう目的で作られた資金は、三十二年度、三十三年度、三十四年度、この三年間にほとんど使ってしまいましたので、これを資金に繰り入れておくということは、ここで緊急必要なことだと私どもは認めて、こういう措置をとったというわけでございます。
  97. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 どうも私たちから考えますと、今度のは財政法の第六条、十二条、十四条、二十九条及び四十四条の規定を政府の都合のいいように解釈して、その盲点をついてこういうようなことを実行されるように考えております。こういうようなことをやるくらいならば、政府は、御承知のように絶対多数を持っておるのだから、財政法を変えておやりになったらどらか。勝手な非常にあいまいな解釈でこれをこのままにしていかれるということは、法を破るというような疑いを国民に持たせるものでありまして、私たちは、少なくともそういうような点では、財政法の運用を曲げてやっておられるように考えられますが、その点について、財政法をお変えになるような御意思があるかどうか、一つ伺っておきたいと思います。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その年の歳入をもってその年の歳出に充てるという原則がございましても、この原則だけではなかなかうまく財政の運用ができない。従って、資金というものを作って、そこに金を持っておるということが財政管理の上に必要だという必要性は十分ございますので、そのために一つの例外規定が会計法の中にできておる。ただし、その資金は、そういう意味で一つのいわば例外的な規定ともいうべきものでありますから、必要である場合には、これは法律できめるということになっております。産投特別会計のこの資金も、そういう必要から法律によってできたものでございまして、その資金に繰り入れることが必要だというときに、この繰り入れをするということは別に違法でもございませんので、私は、そういう解釈で、特に財政法を今変えなければならないとは思っておりません。
  99. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この間大蔵省から出された第二次補正の参照書である予定経費補正要求書の中に、産投会計資金への繰り入れの理由として、「産業投資特別会計の原資を補完し、今後の産業投資を経済情勢等に応じて円滑に行ないうることとするため、同会計の資金へ繰り入れるに必要な経費である。」ということが書いてありますが、こういうようなことを考えますと、現在の財政法ではどうも解釈できないような面が出てくるのでありますが、この点は、どのように今の財政法との矛盾をお考えになるのかならぬのか、この点も承っておきたいと思います。
  100. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいまお読みをいただきました点は、先ほど来大臣のおっしゃっておりまするように、産業投資特別会計の原資を補てんをいたしまして、今後におきます年度の経過中に起こってきます経済の情勢の変化、あるいは今後におきまして投資需要がふえて参る、そういうことに対しましての資金の補てんをいたす必要があるということが書いてあるのでございます。大臣が先ほど来お答えをいたしておりまするところと同じ趣旨で書いてあるわけでございます。
  101. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 これは財政法に違反しているとわれわれは見ておるのですが、先回のときにも実は非常に議論がありまして、三十一年度でありますが、そのときにも社会党から強い反対があって、しかし、政府が多数でありますから、それで押し切ったのであります。しかし、前例があるからといって、こういう疑惑に包まれるような解釈をしなければならぬようなことは、せめて水田さんが大蔵大臣になられたのなら変えて、こういうことはこうだというふうに、すっきりした形で出直す必要があるのではないか。今度の財政法違反の問題については、昨日の予算委員会でも非常に緊張した空気が出まして、法制長官もいろいろ苦しい答弁をいたし、また池田総理も、実はそのとき自分はこういうことをやったのだというような話をしておられますけれども、しかし、こういうようなことがあるたびごとに、絶えず財政法に違反をするかしないか、あるいはそのためにいろいろ疑惑をわれわれは持つわけですが、こういうところは一つすっきりして、間違っておれば財政法を変えるなり、あるいは財政法にもとるようなことをしないような方法で産投特別会計をやられるような御意思があるかないか、この点も大臣に承っておきたいと思います。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 三十一年のときの論議を見ますと、当時法律論を離れた議論がだいぶございましたが、その中で、政府の言っていることは、民間から引き上げた歳入の相当大きい額をそのまま二年先に持ち越すことはどうか、その年に引き上げた歳入である以上は、なるべく早く弾力的に有効に使うことがいいのだという判断でやったというような答弁がございましたが、私は判断としてはそういうことがよろしいので、今回の場合も、こういう産投出資需要が実際に多くなっており、またこの需要に応ずることは必要だという事態がある以上は、この自然増を長く政府が持っているということについては疑問がございまして、これはやはり早く活用するのがいいと思っております。そういう方向が貫けるために、この財政法を今後論議を起こさないでいろいろそういう施策がとれるようにという思惟から、これは検討したらいいではないかという議論なら、私もいいのではないかと思っています。
  103. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まだほかに同僚の委員からもいろいろ質疑があるそうでありますから、私は最後にお願いしておきますが、御承知のように財政法は憲法の付属の法規であって、憲法の規定を補充する財政の総則法とでもいう重要な基本原則であります。従って、こういうような予算を組む場合において、問題になるような疑いを持たせたり、あるいはまた抵触の疑いを持つような措置をとられるということは、今せっかく合法的に財政をやっておられる当局としては、われわれとしてどうも納得のいかない点があります。これは政府が数を持っているから今どんなこともやっていいというようなこととは問題の性質が違うのでありまして、やはり形式的にも本質的にも財政法に抵触しない、これなら自信がある、こういう方法で処理をしていただきたい。特に今度のような膨大な予算が出まして、国民からいろいろ議論の出るときに、財政法に抵触するようなこういう措置がとられるということは、私たち非常に残念でありまして、その点について大蔵大臣はどのようにお考えになっておられるのか。自信を持って私たちは絶対に抵触しないのだ、だれが何と言おうともこれが正しい措置であるというふうにお考えになっておやりになるのか。あるいは予算上の措置で、今度の場合は自然増収がふえたのだから、こういう方面でこういう適用をしたらいいのではないかというふうにお考えになっておやりになるのか。その点については、これから予算が通過するまでにも時間がありますから、われわれももっと研究してこれに向かいたいと思いますが、そういう点について大臣はどのようにお考えになっておられますか。きのうも井手君からもこの問題については保留をしておったようでありますが、こういう点についてのお考えを承りまして、私は同僚議員にかわります。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 三十一年度のときの例を見ますと、あのときは一千億円も自然増が後年度にあった。それをそのまま放置しておくことが政策的にいいか悪いかという問題も加わって、いろいろ論議があったと思いますが、今回の場合は、そういう大きい多額の自然増が見込まれるわけではございませんが、しかし、こういう経済情勢のときにおいて、そういう投資需要というものが非常に強い、今後ますます強くなるという情勢を前にしているときでありますので、自然増収がないというときは別問題でございますが、若干の自然増が見込まれる際においては、政策的にもこういう措置がいいのではないか、実体論としてはそう考えております。それが法律論になりますと、今言ったように前から論議される問題で、その点はいろいろ問題があろうとは思いますが、今のところ、従来の解釈で、一応現行財政法には抵触してない措置だと考えてやった次第であります。
  105. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一点石原さんにちょっとお尋ねいたしますが、三十一年度以外にこういう前例があるのかないのか、その点を一つ説明願いたい。
  106. 石原周夫

    ○石原政府委員 これと全く同じ例は三十一年度のこの産業投資特別会計を設置したときの例があります。  なお、補正予算をもちまして資金、基金を設置いたしました例は相当たくさんございまして、昭和二十五年、六年、七年におのおの中小企業の信用保険の資金、輸出の信用保険特別会計の資金、中小漁業の融資補償保険の資金、こういうものをいずれも補正予算をもって支出をいたしております。  なお、最近の例といたしましては、三十二年度に、御記憶になっていると思いますが、食糧管理の特別会計に調整資金を出しております。これも百五十億当時の三十二年補正をもって作りまして、この金は三十五年度までとなっております。
  107. 足立篤郎

    足立委員長 次に石村英雄君。
  108. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。  政府は、今度の三十六年度の経済の見通しとして、九・八%ですか、そういう成長を見込んでいらっしゃる。それが九%以上になるかならぬか、実際問題としてはいろいろ論議が分かれるでしょうが、いろいろな前提のもとにこういう数字が出ている。従って、こういう前提がくずれれば、こういう成長はしないのではないかというふうに常識的には一応考えるのですが、せんだっての特別国会で、池田総理大臣の御答弁を伺うと、たとえばアメリカのドル防衛によって日本の国際収支に大きい影響があるのではないかという質問に対しても、そういう影響があることは認める、認めるが、しかし、むしろ、だからこそ成長政策を後退はさせない、こう言っておられるのであります。従って、大蔵大臣にお尋ねしますのは、池田内閣として、そのような意欲的な成長政策とは、一体内容は何かということなんです。後退させない成長政策、それは何か、どういうことを考えていらっしゃるのか。いろいろ施政方針演説なんかありますが、具体的に後退させないところの成長政策とは何であろうかということをいろいろ考えてみてもわからないのですが、一つ簡単に、大蔵大臣に、今考えておられる前提条件がくずれようとも、成長政策をとって、必ず九・八%という成長をさせる、あるいはそれ以上にさせるという、その政策の内容をお示し願いたいと思います。
  109. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、御承知のように、向こう十年間に日本の国民総生産を倍にしよう、そういう長期目標を立てて、施策をその線に統一していこうということでございます。そうしますと、日本経済の成長率を毎年どのくらいずつに見ておけばいいかというのですが、七・二%ずつの成長を期待すれば、大体十年間には倍になるということになります。私どもは、今までの日本経済の伸び方から見て、十年たたなくても、政府の施策よろしきを得るなら、国民総生産の倍増を期することができる、できたら八年くらいでこれをやりたいというふうに考えております。そうしますと、その前半の三、四年間にどのくらいの成長を達成したらいいかということになりまして、その目標を昭和三十八年まで年平均九・二%くらいの成長率を確保するような施策をすれば、後年度はむろん経済が大きくなって、その大きくなった経済をもとにした成長率というものはそう大きくなるものではございませんから、七%になり六%になるというふうな線をたどるかもしれませんが、いずれにしろ、できたら八年間くらいにこの倍増計画を実施したいという考えから、前半に一般の平均率によった成長を期待するのではなくて、少し比重を大きくした成長を意欲したということでございます。それが可能か不可能かという問題は、今まですでに何年間かに九%の成長が確保できておるのですから、将来この二、三年の間に前提条件がある程度変わることは予想されますが、しかし、その予想を一応計算いたしましても、これは可能であるというふうに考えて、政府の諸施策をその点に集中しようという方針でやっているわけでございます。ですから、何のためにやるかというようなことですが、要するに、政府としては、日本国民の生活水準を上げるために、こういう長期計画を目標として立てているということでございます。
  110. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣は私の質問を全然誤解されておるようであります。私は何のために経済成長政策をとるかなんということを聞いておるのではない。あなたは、施策よろしきを得れば、こうおっしゃったのですが、よろしきを得る施策とは何かということを聞いておる。たとえば、池田さんは、私の特別国会での質問の終わりごろの答弁に、ちょっと呼んでみますと、「先ほどお話のありましたように、今年の国際収支は六億ドルの黒字があるだろうといわれております。少なくとも、五億ドルの黒字はございましょう。従いまして、私は、ICAの減ることは影響はございます。」文章的には言うことがはっきりしないのですが、おそらくICAの減ることで国際収支に影響があるのじゃないか、こういう私の質問に対して、それを認められた意味の言葉だと思います。次に、「ことに、また、お話しのように、輸出ドライブによりまして、アメリカが相当輸出に熱心になってくるときに、競争相手がふえることも考えなければなりません。従いまして、私は、こういう点を考えまして、成長政策をもっと進めて、幾分ともこれを後退することは全然考えていないことを申し上げて、」こうおっしゃる。これは、私の、国際収支にICAその他ドル防衛によって影響を及ぼすのじゃないか、従って、そういうことはあるいは日本の経済の成長にも影響があるのじゃないかという質問に対しての答弁だと思うのですが、そういうことはあるが、しかし、むしろ言葉を強めていえば、だからこそ成長政策を後退させないのだ、こうおっしゃる。国際収支が赤字になる、あるいはドル防衛によって国際収支に大きな影響が与えられても、むしろ反対に成長政策を強力に進めることによってそれに打ち勝って、九・八%あるいはそれ以上の経済成長を実現させるのだというのが、池田さんの答弁だと思う。だから、そういう強い経済成長政策、それは具体的に何を考えていらっしゃるかということを私は聞いているので、国民生活の向上になりますとかなんとか、そんなことを聞いているわけじゃない。あなた方は、国際収支がどんなに悪くなろうとも、ドル防衛でどのような影響を日本に与えようとも、何らかの具体的な成長政策をとることによって、それに打ち勝って日本の経済は拡大するのだ、こうおっしゃるのですが、その内容は何かということを聞いているのです。どうかその点を御説明願いたい。
  111. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 総理がどういう意味で言われたか存じませんが、おそらく、ドル防衛の影響というものはある程度あるということはわかっておりますので、なおそれに打ち勝ってやるのだということは、政府がしばしば言っておりますように、成長政策を、予定の成長率を達成させるというためには、ここでやはり輸出の増進策というようなものについても一段と努力するというようなことを言ったものだろうと考えていますが、そういうような克服策というものを政府はさらに真剣にとるということを言ったのではないかと思っております。
  112. 石村英雄

    ○石村委員 いやしくも総理大臣の御答弁を、そうじゃないだろうかというようなことで、大蔵大臣にお逃げになってもらったのでは困るのですが、具対策とは何があるか。考えておられるかどうか。考えておられるに違いないと私は思うのです。そういう強いことをおっしゃるわけですが、だからそれは何だろうかというのです。たとえば、あの質問の中で、池田さんは経済に対して非常に明るい方だということですし、大蔵大臣なんかをわずらわすよりも、総理大臣に御答弁してもらえればそれで済むからと思って、大蔵大臣の御答弁の要求も私はしませんでした。ところが、池田さんは、私がたとえば通貨制度等についてどう考えるか、金融政策等についてどう考えるかということをある程度具体的に聞いたのに対して、それは大蔵大臣の所管のことだと逃げておられて、あまりはっきり答弁されておりませんが、今の国際収支に関連して言うならば、たとえば国際収支が予定通りの黒字にならぬというときには、これは金融に大きな影響を与えると思う。金融はその意味においては締まると考えなければならぬ。この締まる金融を締まるままでほうっておいたのでは、成長ということはできないのではないかと私は思う。それに対してたとえばどういう方針をおとりになり、そうして成長政策を続けられるのか、その成長政策とは何か、金融が締まったって、それに対してどういう緩和策をとるのだということがなければ、できないことだと私は思う、国際収支が政府の見通しよりもはるかによくなる、黒字が大きくなるというなら、それは金融が締まるということはなしに、反対にゆるむと思います。しかし、一応予想せられることは、ドル防衛によって日本の国際収支に影響があるのじゃないか。この影響があるということは、同時に、金融的には、日本の国内金融が引き締まると考えなければならぬ。それに対して、締まれば締まったままに、ほったらかしにしておくということでは、おそらく政府の所期するような成長ということは困難になってくるのじゃないか。そこで、政府としては、それに対してどういう金融政策をとろうとするかということが、当然少なくとも考慮のうちには生まれてこなければならぬ。あの質問の中で、私は、その一つの策として、去年の八月ですか、五百億円か何ぼかの買い戻し、売り戻し条件付の売りオペレーションをやったが、今後は無条件の買いオペをやるのじゃないか。売り戻しなんということをしないで、市中銀行が持っておる公社債——国債はあまりありもしないでしょうが、この前は政府保証債を一時買ったそうですが、それだけでなしに、金融債も買うとかなんとか、しかもそれも売り戻しなんて条件をつけずに買う、そういう形で通貨の供給をするというようなことでも政府考えておるのじゃないかということも聞いたんですが、財政法違反じゃありませんという答弁だけで、金融政策としての池田さんの説明はなかった。そして、大蔵大臣の所管事項だ、こういうことをただ言われて、大蔵大臣も、いや、それに対してはこうでございますという答弁を買ってはお出にならなかった。一つこの機会に答弁をしていただきたい。具体的な内容の一つとして私の方から申し上げるわけですが、こういう点はまずどのようにお考えになっておるか。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは政府の輸出見込みが狂った場合に起こるというだけの、そのときの措置とは限っておりませんで、経済の成長政策をとる以上は、これに対処するための資金供給というものはどういうふうに行なわれることが円滑かという一般問題ともなりますので、そういう点につきまして、私どもは、資金の供給方式を、従来の日銀の貸し出し調整一本のやり方でなくて、買いオペというような新しい方式が加わってもいいとか、そういうような問題はいろいろ今後の問題として考えておりますが、そういう方向政府の見通しがうまくいかなかったようなときには、もう適時適切な処置をとる以外にはないと考えております。しかし、今のところは、私ども、今年度の輸入輸出の見込みを立てるときには、大体今考えている九・二%の成長というものを確保するためには、昨年度の輸入よりも一割一分、一一%ふえる程度の輸入を確保すれば足りるという見込みになっておりますし、それに対応して輸出は一割程度もし伸びるんなら、国際収支はおおむね均衡がとれるという計算でやっておりまして、今のところはまだこの見込みにそう大きい狂いがあるだろうとは思っていないところでございます。
  114. 石村英雄

    ○石村委員 先のことだから、そういうことはないだろうと言われれば、先のこと自体はそれで済むと思います。しかしこれは政府の施策として考えられておるいろんなことなんです。ただ自然の成り行きに経済をまかしておくというなら、それは先のときはそういうようになるだろうと思うが、ならなかったときはそのままだといえばそれきりですが、少なくとも政府の実質九%の成長という意欲的な政策があるとすれば、いろいろな条件のときには、それに対して、こういう条件の変化に対してはこう対処するという方針がきまっていなければ、それはできない。そのときには九・二%が八%になるのございます、六%に下がるのでございますというなら、それはそれでけっこうです。そんなことはさせない、成長政策は後退させない、こういう池田さんのお考えなんです。しかも、池田さんは、ドル防衛によっての国際収支の影響があるということは、同時に一方では認められておるわけなんです。また、それと、やはりこれは国際収支に関係しないで、ずっと日本銀行の貸し出しによってやってきたこれまでの通貨供給方式というものが、ここまでくれば、相当壁にぶつかってきたといわなければならぬと思う。だから、その意味において、いい悪いは別として、何らかの方針が考えられなければならぬ。池田さんは、ただ財政法違反ではないとああいう答弁をなさったのですから、私は、あのとき、おそらく買いオペというものを、無条件の買いオペという、無条件という言葉を落としたのかと思ったのですが、会議録を読んでみると落としてない。今まで買いオペをする、日銀がやるときには、大体いつでも売り戻し条件付で——向こうからいえば買い戻し条件といいますか、売り戻し条件、そういう条件で買いオペをやった。ところが、それではやっていけないのではないかという段階に、そういう方針のいい悪いは別として、日本の現在の金融情勢はある程度到達しているのではないか。そうすると、政府として何らかの方針を打ち出さなければならぬ。まして、こういう実質九・二%の成長という意欲的な成長政策をとるという以上は、金融がこれに追いつかなければやっていけませんよ。どうしたって金融の円滑化ということは、それを考えなければ成長は不可能です。ストップせざるを得ないと思う。そうすると、何らかの金融政策というものが、今までとは変わったものが打ち出されるのではないか。また、日銀が買いオペをするにしても、国債だけではなしに、あるいは政府保証債だけではなしに、一般的な金融債を買うとか、あるいは事業債を買っておく、そういうことも一つの問題になってくるのではないかという点でお尋ねしているわけであります。そのときはそのとき何とか考えるじゃ、答弁にならないと思うのです。何らお考えはないのですか。
  115. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府にはむろん考えはございますが、たとえば今のような通貨供給方式というような問題も、これは政府がきめることではなくて、現在の立場では、日銀自体が検討してきめるということでございますので、おそらく、政府経済成長政策に対応して、日本銀行当局もそういう問題についての研究をしておられることと思っております。
  116. 石村英雄

    ○石村委員 なるほど、法規的に、形式的には、日本銀行の政策委員がきめることだと思います。しかし、これは、国の、あなた方の大事な成長政策の基本になることだと思う。それを、日本銀行が適当にやるだろうというようなことは逃げ口上にすぎない。また、現に政府代表、大蔵省代表の委員が政策委員の中におるじゃありませんか。議決権はそういう人にはないかもしれない。しかし、政府の政策を、日銀の政策委員会で、このような政策をとるべきだ、政府経済成長政策に合わせてこういう金融政策をとるべきだという発言が当然私はあると思う。ただ黙って聞いておくなら、何も委員として出す必要はない、政府の方針を打ち出して、議決権は法律的にはないかもしれません。しかし、政府として日銀の政策委員会をそのように引っぱっていくということは、政治的に当然のことだと思う。また、現に、今度の金利引き下げでも、だれが考えても、あれは日銀が自発的にやったとは思っていない。政府が強引に無理押しにあれは引き下げたのだ、こう世間的には見られている。おそらくそれに間違いないと思う。それを、今ここで、そんなことは日銀の方できめることで、水田大蔵大臣も知りませんなんて言うのは、そんなことはむちゃな答弁だと思う。もっと率直に——何も私ここであなたとけんかして議論をしているわけではない。政府としてはどういう方針で金融政策をおとりになるか。そうして、それがいいか悪いかは今後の論議の発展によってきまることだと思う。率直にお答えを願いたいと思う。
  117. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ずいぶん率直に答えているつもりでございますが、政府は、成長政策をとるなら、これに見合った資金供給が円滑に行くように期待しております。金利の問題も、政府は何を期待するかという意思は、事あるごとに表示しておるような工合でございますので、むろん、成長政策をとる以上は、円滑な資金の供給方式がとられることを私どもは期待しているというわけでございます。
  118. 石村英雄

    ○石村委員 その円滑な方式とはどんなことをあなたは考えていらっしゃるか、こういうことを聞いておるのです。日銀が考えるだろうというなら、日銀の人をここへ呼んできて聞くより仕方がない。大蔵大臣として、池田内閣としてどう考えていらっしゃるかということを聞いておるわけです。日銀がこう考えているだろうということの答弁を要求しているわけではない。あなたのお考えを具体的に御答弁願いたい。
  119. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体期待するということは、私の考えだと思っていただけば間違いないと思います。
  120. 石村英雄

    ○石村委員 期待の内容がわからぬから聞いたので、期待はしていらっしゃるに違いない。そんなことは聞かぬでもわかっている。どのような方式を期待していらっしゃるかということを聞いているのですが、一向にお答えにならぬ。大事な問題だと思うのです。いずれ日銀の総裁にもここへ来ていただいて、こうした問題をさらに論議する必要もあるいは起きてくるのじゃないかと思うのです、そういうことなら。  次に、今度の金利の引き下げ、これは、政府説明を聞いてみますと、国際水準にさや寄せさせるとか、割高だから下げるということで、輸出増強というようなことにも関連しておとりになったことだ、このような説明なんですが、それに間違いありませんか。
  121. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間違いありません。
  122. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、これはだれも言っていることなのですが、今の日本金融情勢の実態自身は、このような引き下げをする状態にはない。しかし、政策として、金利が日本の産業に与える影響ということを考えて、政策的に政治的に、強引に実態に反して無理に引き下げをやったのだ、こういうことだと思うのです。これはいい悪いは別問題ですよ。あるいはそういう強引なやり方もいいかもしれません。しかし、ほっといたのでは下がらないから下げたのだ、こういうことだと思うのです。その点についてもおそらく御異論ないと思うのですが、その通りなんですか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 強引ということはよくわかりませんが、私どもはそういう措置が民間で自主的にとられることを希望はしておりましたが、ようやくこの希望が今度実現したということでございます。
  124. 石村英雄

    ○石村委員 強引に、いやというのを無理に下げたのではないかというような議論は、あるいはやぼな論議かもしれませんからやめておきますが、少なくとも今の日本金融情勢の実態というものは、金利が下がる状態にはないということ。その実態の把握が問題だと思う。実際、これはちょっとやれば下がる本来の状態にあるのだというのと、いやそうではないが、しかし金利が高いのはよろしくないから下げるのだということとは、だいぶ違うと思う。その点について、強引であったかないか、自発的であったかないか、そんなことは言いませんが、今の日本金融情勢というものは、金利を引き下げるという状態にあったのかないのか、その点を一つ……。
  125. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本のように経済成長の早い国では、資金需要がなくなって金融が緩和するという時期は、これはその時期を求めようとしたら、いつになっても金利を下げる時期というのは私はないと思います。しかし、金利の経済調整機能というものは私どもは重視しておりますので、金利を上げたり下げたり、経済情勢に応じてこれを動かすことは一向差しつかえない。必要があれば金利を短期的に上げるという措置をとることは、またそうすることがいいとは思っていますが、この問題とは別に、日本の金利水準を国際水準にさや寄せする、レベル・ダウンをするという必要は絶対にございますので、一番やりやすいときにやる以外はなかなかできない仕事だと考えますが、今の経済情勢を見ますと、非常に経済が今こういうふうに落ちついているときでもございますので、ここでレベル・ダウンに一歩金融界が踏み切るということも、そう大きい刺激を与えるときではないとも私ども考えておりますし、また民間もそういう判断でこの金利引き下げをやったものと考えております。
  126. 石村英雄

    ○石村委員 金利が下がる方がよいというのは言うまでもないことだと思います。常識的にそれだけを取り上げればそういうことになると思います。ただ問題は、今度の金利の引き下げというものは、いろいろわかったようなわからないような御答弁があるわけですが、私は自然に下がった金利じゃないと思います。やはり政府なり何なりが金利は下げなければならぬという政策によって、これはやられている。あるいは、その政策をとるについて、今引き下げをやったら、金利が下がったために資金需要が急激に拡大して大へんなことになる、というような情勢ではあるいはないかもしれません。しかし、金利というものは、本来からいえば需要供給できまるはずです。その需要供給で自然に下がるという状態でなしに、下げたのだということだけは間違いないと思います。そうすると、はたして政府や白銀あるいは銀行が下げるといっても、現実にその通りに金利が下がるか下がらないかという問題が起こってくると思います。これは、何かヒトラーみたいに、金利を下げるということになったら、一切がっさい下げる、下げなければ首を切るということなら下がるかもしれませんが、自由主義経済のもとでは、金利というものはそう簡単に、一厘下げたからといって全部が必ず下がるとは考えられません。またそんな公定価格的なものを作るわけにはなかなかいかない。いろいろな信用状態で金利が高いことも安いこともあるわけですから、それを一律に自由主義経済のもとできめるわけにはいかないと思います。従って、そういう自然の形で下がるのではなしに、下げたというこのときに、はたして金利が一般的に下がるか下がらないか。たとえば今度の金利一厘引き下げの恩恵をまっ先にこうむるのはもちろん大企業だと思います。ところが、中小企業なんかは、この金利引き下げの影響で、われわれはむしろ逆作用があるいはあるのじゃないかというようなことを心配しております。大企業はそれはすぐ下がりましょう。しかし、銀行へ頭を下げて借りに行かなければならない人たち——また今度は預金の金利も下げるということの結果、どういう資金が銀行に集まるか、あるいはふえるか減るか知りませんが、常識的にいえば、預金金利が下がれば、それも強引に下げられたわけで、実態が下がるはずがないのに政策的に下げたわけですから、預金は、今までふだんならする人も、ほかの方の投資に回すかもしれません。むしろそう考えるのが常識的でありましょう。そうすると銀行の資金は減ると考えなければならない。そうすると、ますます中小企業は、今だって銀行からろくに金が借りられない。幾ら頼んでも貸してはもらえない。金利も、あるいは歩積みとか両建とかいうようなことが今はかなり減ってきておりますが、今度は、表面は大蔵省がやかましいから一厘下げたということにしても、実際は歩積みをやる、両建をやるということで、むしろ逆に金利は上がるのじゃないか。自然の形でなされた引き下げならばそういうことはないということが一応考えられるわけです。実態が引き下げのような、金融緩和の状態でないときに下げるという、政治的な政策的な行動の結果というものは、いろいろなことを想像して対処しなければならぬと思う。そういう予想は政府としては全然持っていらっしゃらないわけですか。それとも、そういうことに対しては、どういうような取り締まりというか、指導というか、どういうようなことを考えていらっしゃるか。何かその点のお考えがあるならある、ないならないで、一つ大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  127. 石野信一

    ○石野政府委員 ちょっと技術的な問題も含んでおりますので、私からお答えさせていただきます。確かにおっしゃる通り、金利が自然の需給状態できまっていくということは、一番望ましいと思います。しかしながら、今の日本の情勢で、資金の需給関係にだけまかせるということになりますと、どうしても資金需要が強いという関係から金利が上がる一方になる。また下がるということはなかなかむずかしい。こういうことになるわけでございますが、先ほど来大臣がおっしゃいましたように、そういう点に貿易・為替の自由化というものの進展を考えまして、それに対処する意味では、やはりみんなで考え、みんなで努力してこの金利を下げていかなければならぬ。そこで、資金需給できまるべきものじゃないかということだけで割り切っておりますと、おっしゃる通りなかなか下がりませんので、やはり金利引き下げは必要だということを、先ほど大臣がおっしゃったように、政府としてもそういう方針なり必要を説いて、金融機関としてもそれを理解して、今回の引き下げということになったわけでございます。そこで、資金の実態的な需給関係が改まらないのに、そういう意味で下げた場合に、はたして実際金利が下がるかどうかという御質問、まことにごもっともな御質問だと思いますが、ただ、最初に申しましたように、そういった意味で、みんなで考え、とにかく金利を国際水準にさや寄せする努力を今から漸進的にやっていかなければならないということを考えますと、できる限りそういう弊害を避けながら、その金利の引き下げもやるということでないと——それだから金利を下げなくてもいいというふうにも割り切れない問題じゃないかと思うのです。そういう意味におきまして、金融機関に対する監督において、申し合わせなり、きまったことを実行するように、できる限りの指導もいたしますけれども、そこにやはり経済情勢との関連を持った金融政策というものがあるわけでございまして、過熱の心配があるというような状態においては、また金融政策というものはそうゆるやかにもできません。また、あらかじめそういうことをいつからゆるやかにするとかいうようなことは申せませんけれども、経済情勢というものをながめながら、確かに今そう経済がすぐに刺激されるような状態にないというようなときには、日本銀行では、おそらく先ほどお話しの買いオペレーションのような考え方、これは去年の八月に通貨の供給方式を多様化する方針としてはきめておるわけでございます。従いまして、そういったことも通貨供給方式の中に加味していくということを考えることになると思うのでありますが、そういう金融政策とも相待って、実態的にも需給関係があまり無理にならないように、特に従来金融が需給関係で非常に逼迫いたしました一つ理由に、財政が非常に揚げておったという点もあるわけでございますが、そういった点は、今度の予算ではかなり歳入歳出関係——見通しとしては初めから揚げると思っていたわけではなかったのでございましょうが、今度は歳出の方もかなりふくらんでおりますから、そういった意味の当然の歳入の超過ということはないんじゃないかというふうに私ども見ておるわけでございます。そういうような関係等、いろいろな関係で、需給関係の方でも、経済情勢の実情に即しながら、いろいろきめこまかく考えていかなければならぬとは思うのでございます。ただ、それらの点も加味しながら、しかもみながやはり一つここでレベル・ダウンした金利水準で経済の調整をやるという考え方になって参りますと、そのレベル・ダウンされたものが基本になるということもありますので、やはり基本的には金利を下げていくことが必要だという前提での話でございますから、おっしゃっていることは、いろいろ注意しなければならない、示唆に富んでいるとは思いますけれども、逆にそれだからといって、金利引き下げの方針が必要でないということにはならない。これは先ほどの御質問の中にもそういう御趣旨があったと思いますけれども、そういうふうに考えている次第であります。
  128. 石村英雄

    ○石村委員 今の石野さんの答弁は、さっぱり答弁にならない。ただ時間をとっただけの話です。たとえば中小企業なんかにはそういう影響があるのではないか。ただあるいは銀行がそんなことを考えるのはけしからぬ、政府のそういう金利引き下げの大精神にのっとって、そういう歩積み、両建なんかはやってはいけない、金利はどんなものでも下げてしまえという趣旨で動けば、大へんけっこうなんですよ。ところが、銀行も商売です。もうかるところからもうけたいというのが彼らの本能です。使命です。だから、中小企業なんかますます金を借りにくる。どうしてもそれほど借りたいというのなら、当面の金利はこのくらい一厘下げるが、両建をこれだけやってくれという要求をしてくるというのは、むしろ当然ではないか、現在でさえもなお両建制度があるのですから。こんなものはとっくの昔になくなった、そうしてガラス張りで、全部一切がっさい銀行は、もうまるで孔子のような聖人が銀行家でやっているというのなら、それはあなたの御説もけっこうなことです。私も引き下がるかもしれませんが、もう両建、歩積みというのは天下に歴然たる事実です。最近こそ幾らか減ったというだけのことです。こっちがあまり質問しないでしゃべるようでおかしいのですが、あなたがそうして答弁されるから、しょうことなしに、こっちが言わなければならぬことになりますが、政府の中小企業金融公庫とか、あんなところの代理貸しをやっておりながら、資金はその方から出ておりながら、両建の要求をしておる。これは事実なんですよ。そういう事実があるにもかかわらず、政府が今度一厘下げる、金利は安い方がいいという大勢に順応して銀行がやるだろうということをおっしゃったのでは、これは答弁にはなりません。やはりあなた方は——私は、下げるのがいいか悪いか、相当問題だと思います。あまり賛成ではありません。  これまたしゃべり過ぎて恐縮ですが、いつかの委員会でも、私は、日本の金利はほんとうにそんなに高いのかと聞いた。なるほど公定歩合は高い、あるいはコール・レートは高い、しかし、一般の貸付金利というものがそんなに国際的に見て高いかどうかと聞いたときに、たしか石野さんは、それほど高いものではありませんという答弁だった。これはいつの委員会だったか、ここに調べてきておりませんが、私も外国のいろいろな金利を調べてみて、日本の金利が特に高いとは言えない。公定歩合は確かに高い。コール・レートも確かに高い。これはやはり、日本の中央銀行と金融界との関係とか、いろいろなことが影響していると思いますが、一般の貸し出し金利は、少なくとも西ドイツなんかと比べてみると、日本の方が非常に高いとは言えないと思います。しかし、それはそれとして、金利が下がるということは大へんけっこうです。それだけ取り上げればけっこうなことです。しかし、そのけっこうなことが、ただ一部の大企業だけがけっこうなことになって、あとのものがみなしわ寄せを食うようなことなら、けっこうなこととは言えません。大企業なんか、今度は社債をどんどん発行する。あるいはこういうこともできるかもしれません。中小企業なんか社債の発行はできますか。処置なしだと思うのです。こういうことに対して、どういう——少なくともそういうことも起こり得るということを前提に、いろいろな諸施策を講じて引き下げるというのなら、いい悪いは別として一応わかる。それを、何ら施策なしに、下がった方がいいから下げました、そうして銀行も金利が安い方がいい、日本の産業のためにいいから、それにのっとってやるべきだというような説教をしてみたって、何の役にも立たぬ。苦しむのは中小企業だけで、大企業が喜ぶ。それだけ。それじゃ、所得倍増は下のものが三倍にも四倍にもなるのが所得倍増だという池田さんの答弁にも反する金融政策だといわなければならない。むしろ中小企業の金利はうんと下がる、大企業は下がらぬが、中小企業はうんと下がるというような方策を講じていく低金利政策なら、それはいいと思う。今までの答弁では何らそれはないじゃありませんか。これは大蔵大臣一つ答弁願いたいと思う。
  129. 石野信一

    ○石野政府委員 ちょっと、先ほど答弁は、私の説明がまずいので時間をとったというお話がありましたが、内容を簡単に申しますと、銀行と申しますか、金融機関の監督、そういうものは歩積み、両建等が起こらないように、私どもとして指導を強くやりますということを申し上げたと同時に、やはり資金の需給関係の実態というものも考えなければいけない。先ほど来のお話のようなオペレーションの問題、これは日本銀行がいつやるかは別にするということになっておるわけでございますが、そういったことも加味して、金融の実態の方からも金利の実勢が下がるようなふうに、いろいろのきめのこまかい政策が必要だ、財政と金融との調整ということも必要だ、そういうお話を申し上げたわけでございます。おわかりいただけたかどうか……。
  130. 石村英雄

    ○石村委員 いや、あなたの言われることはわかったが、賛成しないだけなんです。  大蔵大臣の御答弁をいただきたいのですが……。
  131. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、そういうふうに実体的な問題の解決もすると同時に、今申しましたようなこの取り締まりの面も当然大蔵省が強化すべきものでございますので、そういうことはする、こういうことも申してございます。また、市中銀行にならって、信用金庫にしろ、何にしろ、地方金融機関がこれにならった措置をずっととっていくという機運でございますので、かりに歩積みとかそういうものが、今までのやり方が改善されないとしましても、この金利の引き下げの効果というものは、一応中小企業にも全部及んで今後浸透していくだろうと私は思っています。金利が下がったために、歩積みの要求とかいうものがもっと強くなるということになりましたら、大へんでございますので、むろん十分の指導はいたします。また、今金融機関は相当競争の激しいときでございますので、そういうことをやった金融機関は自然に自由競争で負けていくというようなことにもなるでしょうし、この点は、今後金利を引き下げた意味が減殺されるようなことのないように、十分骨を折るつもりでいます。
  132. 石村英雄

    ○石村委員 歩積み、両建が今後強化されるようなことはおそらくないだろうという前提に立っておられると思うのです。また、現在のままでも、歩積み、再建なんかは漸次やめさせていくということに自信をあるいは持っていらっしゃるのだと私は解釈しますが、今までだって大蔵省は歩積み、両建がよろしいといって奨励したわけじゃない。たびたび通牒を出して、あんなことはやめろ。ところがなかなかこれはやまらないのです。ただ以前ほどの金融状態にない結果、幾らかそれは減ってきた。確かに減ってきた。政府の中小企業の金融機関も、最初よりはだんだん資金量もふえてきたという影響もあって、幾らか減ってきたが、今度金利の引き下げということをやったって、それに応じて必ず下がるということにはならないのじゃないか。むしろ反対に大企業の方に資金がどんどん行って、中小企業の方にはなかなか回らないということ、あるいは預金金利の引き下げで銀行の預金はどうなるかという問題もある。そうなると、中小企業が銀行や何かから借りるということはむしろ困難になっていきはしないか。そこにしわ寄せがくるのではないか。金融が緩慢になっての一厘の引き下げなら、そういうことを予想することも一応はないと思う。しかし、金融は緩慢ではない。金融はやはり締まっておる。今後国際収支がだんだん黒字になって、短期資金だろうと何であろうと、日本に外国からどんどん金がきて、それが日銀に特別会計を通じて出ていくということになればゆるむかもしれませんが、アメリカのああいう状態から見ても、そういうことはあまり期待できない。そうすると、やはり金融は今のままあまりゆるむとは考えられない。このままでいくのではないか。もちろんオペレーションということでどんどん政府、日銀が通貨を供給していくという安易な何らかの方策をとれば、これはまた別です。だから私はさっきオペレーションの問題を聞いた。ところが、それに対して、さらにはっきりした水田さんの大蔵大臣としてのお考えはお示しにならない。買いオペにしても、無条件か無条件でないかということは、やはりいろいろ大きな問題をはらんでおると思う。市中銀行が一応公社債を引き受けて出して、そしてそれを今度日本銀行にどんどん売るということなら、無条件でどんどん売り、日本銀行が買い取るのだということになれば、これは、一応理屈の筋としては、事実上は日本銀行が引き受けて公社債を発行しておるということと同じことにならぬとも言えない相当な問題をはらむ方策なんだ。やり方、程度条件、いろいろ問題があるから、そういうことをお尋ねするわけなんです。そんなことは日銀だとかなんとかいって、それはうまくやるだろうというようなことで、肝心の御答弁は全然ない。これはあまりじゃないですか。大蔵大臣として、こうしたことはやはり慎重に考えて率直に答弁せられ、また世間の批判も受けられて、お変えになるなり、進めるなら進めるなり、いろいろな方針があると思う。私がいかぬと言ったからと言って、別にきまったことじゃないわけです。私が、それはいかぬことだ、こう言ってみたところで、いいことならいいわけです。世間一般の批判もあるし、考え方もある。少なくとも政府の方針というものを、国会を通じて、こういう重大問題は明らかにすべきだと私は思う。日銀の政策委員だということで逃げるようなことはいかぬ。どうですか。大蔵大臣としてのあまり積極的な御答弁が期待できないなら、もう私はやめます。これほど申し上げてもお聞きにならぬことなら、言ってみたってしょうがありません。石野さんや大月さんなんかと論議するのなら、無理に大蔵大臣が御出席にならぬでもいい。きょうは大蔵大臣に来ていただいたのだから、大蔵大臣として政治的な高い視野に立っての御答弁、お考えが率直に出されるものだと私は期待してお尋ねしたわけです。単なる技術的な問題、よその例がこうだああだというだけなら、これは石野さんや大月さんに、しかも今度の金利引き下げの陰の二人武者だといわれているお二人から、よく聞いた方がいいわけであります。大蔵大臣に聞く必要はないわけであります。どうか、そうした点で、もしお考えが今すぐ発表できない、もっとまとめた上でこの次に発表するというのなら、それでもけっこうです。無理に今すぐ右から左に聞かなければどうにもこうもにならぬという問題でもないわけであります。しかし、少なくとも私は重大問題だろうと思うから、政府としての基本的なお考えを率直にこの委員会を通じて発表していただきたい。早急に、あまり先でなしに発表していただくことをお願いするわけです。今あれば、今伺いたい。今はできない、もっと考えをまとめた上で発表するというなら、近い将来においてそれをやるということをお願いするわけです。
  133. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、通貨の供給方式につきましても、従来の方式一つじゃなくて、買いオペ方式というものが併用されるというようなことが好ましいと私ども考えています。ただ私が筋をつけて申しているだけでございまして、ちょうど警察の中立性というものを確保するために、政府が警察にこうしろああしろという圧迫を加えたりしないような機構になっておりますが、金融においても同様で、金融の中立性というものを確保するために、政府がすべきことと日銀のすべきことを分けて、私は筋をつけて申しているのでございまして、この点はおわかりだろうと思います。
  134. 石村英雄

    ○石村委員 私は、政府としての方針をお尋ねしているわけです。日銀の政策委員会の方針を聞いているわけではないのです。しかも、日銀の政策委員会には、大蔵省の代表が出ている。おそらく政府の方針を日銀政策委員会で発表しておられると思う。そして、そのことは、やはり日本金融政策に大きな影響があると思う。もし金融のことなんか日銀が全部やるのなら、大蔵大臣の財政演説で、金融政策だなんだというようなことは言わないことにしたらいいと思う。やはり金融政策がどうだこうだとおっしゃっているでしょう。それは当然のことなんです。それを聞いておるわけです。それは筋をつけて言わないのだと言われる。私はそれは筋をつけて言わないことにはならないと思う。そんなことを要求しているわけではないのです。
  135. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それじゃお答えします。政府金融政策というようなものについては、財政演説でも申しましたように、ああいうのが大体の政府の政策でございますが、今お聞きになりましたのは、さっきの通貨供給方式とか、そういうものについて特にどうするのだというような御質問ととりましたので、今のようなお答えをしたわけです。政府金融政策はたびたび申し上げている通りでございます。
  136. 石村英雄

    ○石村委員 どうするのだと私が聞いたということならば、それは私の言葉の間違いです。大蔵省は、政府はどう考えるかという政府考え方を私は聞くつもりだった。それを具体的にやるのは日銀の政策委員会が決定してやることだと思う。しかし、政府としての見解はどうか、方針はどうかということを受けて、日本銀行が具体的に出すのだろうと思う。その政府考え方を聞いておるわけです。
  137. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府の方針、政府はどう思うかということでしたら、私はやはりああいう買いオペ方式を併用するのがいいと考えております。ただいつこれをやるかどうかというふうなこと、またそれをどうやるかということは、さっき申しましたように日銀が決定をすることと思いますが、私どもはどういう考えを持っているかといいますと、成長政策を遂行する上において、通貨の円滑な供給の一つの方式として、こういうものが採用されることは望ましいと考えております。
  138. 石村英雄

    ○石村委員 政府のお考えをさらに聞きますが、それなら、政府考えとしては、買いオペは無条件の買いオペであるか、それとも今まで通りの売り戻し条件付の買いオペが望ましいと考えていらっしゃるのか、またその対象はどこまで広げたいという希望を持っていらっしゃるか、その点をお尋ねいたします。
  139. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 どう考えるかということですが、それは無条件でもいいと思っております。何を対象にするかというような内容の問題は、これは当然日本銀行自体が研究することと思います。
  140. 石村英雄

    ○石村委員 内容がなければ、これは買いオペすると言ったって何にもならぬ。こういうものの買いオペでなければ……。内容は日本銀行が考えるだろうじゃ、あまりにどうも内容なしに考えていらっしゃる、こういうことになる。しかし、そういうやり方は、さっき私が言ったように、下手をすると日本銀行引き受けで公社債が発行されるのと同じ結果にあるいはなるのじゃないか。売り戻し条件というものは弱いといえば弱いかもしれませんが、そういう条件がついておれば、日本銀行として、こういう金融情勢なら、これはもうお前は買わなければならぬと言って売ることができる。無条件なら、そんなことはできません。財政法では国債の日本銀行引き受け発行は禁止しておるはずなんです。国債は禁止された。しかし、こういう手でどんどんしりの抜けた形でやられたのじゃ、財政法の規定なんか無意味になる。だからそこにやはり問題があるのじゃないか。この点についてどうお考えになりますか。
  141. 石野信一

    ○石野政府委員 非常に恐縮ですが、技術的なことですから私からお答えします。  買い戻し条件付であるか、売り戻し条件付であるか、無条件であるかというようなことになると、これは売り戻し条件付にしておいて、実際去年の八月にやったような意味で、いつになったら必ずということでなく、売り戻しを希望したときにはできる。しかし、初めからいつには必ずということではなしの条件付というようなことも考え得るわけでございますから、その辺はまだきまっておりません。従って日本銀行がきめる建前になっております。そういう意味で、これはなるべく日本銀行が独自の判断できめるという建前をできるだけ尊重しておる意味でありますから、先ほど来大臣もそういう筋を通しておっしゃったわけであります。対象につきましては、政府保証債は八月にやりました。従って、政府保証債というものが一応対象になるのは、やる場合には問題ないと思いますが、それ以上のことをどうするかということになると、これはやはり日本銀行政策委員会のきめる問題として、そちらの考えを尊重するという筋合いになるわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  142. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、財政法がああいう日銀引き受けを禁止しておる。あの趣旨から考えると、下手をするとあの禁止の脱法行為ということにならぬとも言えないわけですね。一応普通の銀行が引き受けた、そしてそれをすぐ日本銀行に持っていって売ってしまうということになると、日本銀行が初めから引き受けたのと同じことに結果においてはなる危険性があるという問題が起こってくるんじゃないか。それは程度問題だ、そんなわずかのことを目にかどを立てて言うこともないじゃないかという見方もあります。しかし、下手をすると、それが悪用される危険性のある、ルーズなやり方にならぬとも言えない。財政法であんなことをきめたのが無意味になる危険性もあるわけです。そういう点については、大蔵省としてはどうお考えになりますか。
  143. 石野信一

    ○石野政府委員 オペレーションというのは、結局市中の金融機関が消化をいたしております有価証券を日本銀行が買い上げるわけでございまして、最初からの引き受けとは違うわけであります。実体的に同じことになるとまずいぞという御注意でしたら、それは確かにそういう意味で、実体的にどんどん最初から引き受けを前提としてやるというようなことにならないように、当然市中銀行として考えるべきことでございますから、そういうふうにならないようにいたすことは当然でございますが、すべてそのオペレーションをやる、そういうことで法律の趣旨に反するというふうにはもちろんならないわけでございます。市中の金融機関から証券を買い上げて通貨の調整をやる、こういう考え方は許されていいことだ、こういうふうに考えております。
  144. 石村英雄

    ○石村委員 そうしたことは実際の運用によってきまることだと思うのであります。下手をすれば、ただ形式的に市中銀行を中へ通しただけでやらぬとも限らないのです。以前はやったわけです。直接日本銀行が引き受けたわけなんです。今度もっと通貨を楽にするなんということで、どんどん今の財政法の抜け穴としてそういう方針をとる危険性もないとは言えないわけです。日本銀行はやらぬだろう、政府もそういう非常識なことはやらぬだろうということだけなんです。昔からそんなことをやった例もあるわけですから、安心もできないわけですが、一つ大蔵大臣ももっと率直に答えていただくことを期待するわけなんです。  今の範囲の問題ですが、公社債、金融債まで及ぶか及ばぬか、及ぼすことを政府が望ましいと考えておるかどうかということは、やはりこの際明らかにしていただきたいと思うのですが、大蔵大臣はまだ考えがきまっていないとすれば、石野銀行局長、技術的な立場に立って一つどうですか。
  145. 石野信一

    ○石野政府委員 技術的にと申しましても、こういう問題は非常に政策的な問題でございまして、特にそういった問題についてまで政府がきめて押しつけるような形になりますと、御心配のようなことになってくるといけないということで、できるだけ日本銀行政策委員会の技術的な決定というものを尊重していこうというのが今の政府考え方でございますから、そういう意味において、こういうものの範囲等につきましても、政府保証債については八月にやったので、一応その対象に将来やるときはなるだろうということは、私の想像として申し上げましたけれども、その辺は、やはり日本銀行政策委員会が決定すべきものだという筋を通させていただきたいと思います。
  146. 石村英雄

    ○石村委員 押しつけるのは、金融債でなくても、何であろうと押しつけたんじゃいかぬと思う。だから、政府としては、金融債まで範囲を広めても差しつかえないという判断を持っておるかどうか、政府の判断を聞いておるわけなんですが、どうも答弁はあまりしたくないようですから、もうこれもあきらめましょう。  そこで、私は、むしろ財政資金の揚超による一時的な金融に及ぼす影響、このことに対する処置というものをもっと考えるべきじゃないかと思うのです。その点においては、日本のオーバー・ローンということをいろいろ言われておりますが、やはり数字的に調べてみると、相当財政の揚超が影響しておるわけなんです。見ようによっては、オーバー・ローンなんというものは、あんな財政の揚超があれば当然だという見方も出てくると思う。従って、これに対して、預託金制度というか何というか知りませんが、財政資金を引き揚げた、それに対する、金融に対する影響等については、もっと技術的に検討する余地がありはしないか、一般金融に及ぼす一時的な影響について検討する余地があるんじゃないかという気が——これはしろうとの私ですから、具体的にそんなことがあるのかないのか、どういう方針がいいのか悪いのか、それは知りません。しかし、数字だけ見ると、問題はそこにあるのではないか、むしろ無条件の買いオペ、下手をして財政法のしり抜けのようなことをやる危険性のあることをやるよりも、むしろそのほうを先に私は考えるべきではないか、こう実はしろうと考えで見ているわけです。この点については、石野さん、どうお考えですか。
  147. 石野信一

    ○石野政府委員 確かに財政と金融との調整につきましてはいろいろ問題がありますことは、御指摘の通りでございます。従いまして、これの改善策と申しますか、解決策につきましても、いろいろの考え方なり案もあるわけでございますが、これまた一長一短というようなことになりまして、当面考えておりますことは、やはり日本銀行の窓口での調整によって財政の揚超、払い超というものを相殺するというような考え方が一応適当なんじゃないか。もっといい案が研究の結果できますれば、なおまたさらに採用されていいかもしれませんが、さしあたりの問題としては、そういう意味で、昨年の八月国庫の揚げが非常に大きいという見込みのもとに、例の買いオペレーションを行なったわけでありますが、これもかなりそういう意味での効果はあったかと存じます。そういう点で、とにかく金融が常に非常に引き締まっていないと、経済が行き過ぎる危険があるという感覚の場合は別でございますけれども、そうではなくて、だんだん経済情勢も落ちついて、それが続いていくということになりますと、そういう点も割とやりよくなるのではないかと思います。これまた日本銀行がやることでございますけれども、そういうことを期待しているわけです。
  148. 石村英雄

    ○石村委員 これでやめますが、一つ大蔵大臣に希望を申し上げておきます。  先ほど、私は、この金利引き下げということによって、むしろ中小企業にはしわが寄るのではないか、中小企業の方は金利も下がらぬ、金も借りられない、反対に実質金利は上がる、そういうことになるのではないかという危惧を表明したわけですが、大蔵大臣の御答弁では、そういう危惧は一向払拭されていないのをすこぶる残念に思う。どうか、この次の機会に、そういうことは絶対にないのだ、中小企業も金利は下がる、資金難にあえぐというようなことも決して起らない、この金利引き下げはまことによろしいものだということがはっきりわかるような御説明をお願いして、きょうは質問をやめることにいたします。
  149. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この次の機会でなくて、もう今でも……。  まず、中小企業に関する政府関係金融機関の利子は、御承知の通り率先して下げましたし、今後中小企業金融機関、民間の機関もこれにならって金利引き下げをいたしますので、今度の金利引き下げは中小企業にまではっきり及ぼすというつもりでおります。
  150. 足立篤郎

    足立委員長 横山委員にちょっとお願いしますが、あなたの御質問はきょうの日程に入っておったのですが、けさの理事会で申し合わせました時間を三十分以上すでに超過してしまいましたので、恐縮ですが、この次大蔵大臣が本委員会に出席できるときまで質問を御延期願いたいと思いまするが、いかがでしょう。
  151. 横山利秋

    ○横山委員 大臣は先ほどから長時間にわたり御疲労の色顕著なるものがあるので、こちらは張りきっているのですが、委員長お話もございますので、私の問題も割合に緊急な問題ですが、きょうがきょうとは申しません。来週予算委員会との関係もございますが、予算委員会の合間を見てぜひ本委員会に出席していただくということを御了承下さるならば、きょうはお疲れでございましょうから、次回に延ばします。
  152. 足立篤郎

    足立委員長 次会は明八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十九分散会