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1960-09-01 第35回国会 衆議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年九月一日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 生田 宏一君 理事 川野 芳滿君    理事 木村 俊夫君 理事 關谷 勝利君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 土井 直作君       赤澤 正道君    高橋清一郎君       竹内 俊吉君    塚原 俊郎君       平井 義一君    福家 俊一君       島口重次郎君    山花 秀雄君       内海  清君    菊川 君子君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 南  好雄君  委員外出席者         運輸政務次官  山田 彌一君         運輸事務官         (船員局長)  土井 智喜君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)     辻 英雄君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    上原誠之輔君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道常         務理事     兼松  學君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海運に関する件  日本国有鉄道経営に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  海運に関する件について調査を行います。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保委員 特定地区を例にしてでありますが、特に漁船乗組員労働条件あるいはその監督等について政府お尋ねしたいわけであります。  まず第一に、現在ありますところの船員法でございますが、これは一つ特定地区の例でありますけれども、実際は的確にこれが守られていないように思うわけであります。これが一つであります。もう一つは、一般労働行政の面と、特に船員労働の面では内容も質も違うと思うのでありますが、現在の時勢にもはなはだしく合わぬものが多いのであります。こういう点について、まず政府当局はいかなる監督をやっておられるか。もちろん各末端においては、相当努力はされていると思うのでありますが、何といいましても、中小企業を主体にした漁業の場合は、御案内通り古い因襲にとらわれまして、主従関係というか、そういうものが今日も前時代的に行なわれ、近代的な労働慣行などはあまり行なわれていないのが実態ではないかと思います。そういう総括的な問題について、政府当局はいかなる見方をしておられるか、これをまず第一にお尋ねしたいのであります。
  4. 山田彌一

    山田説明員 大臣が所用がありますので、私からかわってお答え申し上げます。船員法につきましては、一般と違っておりますので、その詳細につきましては、局長にお答えいたさせます。
  5. 土井智喜

    土井説明員 ただいまお尋ねがございましたように、船員法は、船舶乗組員並びに予備員を対象としておりますが、この船員の中には、大型船乗組員と、それから漁船あるいは機帆船のような小型乗組員と、そういうものを包含してございます。そこで、一般的に申し上げますならば、漁船については、三十トン以上の漁船船員には、適用がございます。そこでそういったものの規定適用は、近代的な大型外航商船小型漁船との間には、法律体系の上で違いがございます。たとえば労働時間のごときは、遠洋航海船舶には詳細な規定がございますが、漁船あるいは近まわりの船に対しましては、労働時間の適用が緩和されておるというようなのが実情でございます。そこで第二点のお尋ねの、漁船については労働関係が、いわば一般商船乗組員と違った、前近代的な労働関係にあるのではなかろうか、そういうようなお尋ねについて申し上げますと、まことにその点につきましては、国際的にも、ILOの条約も、漁業労働者に対しますものは、一般商船乗組員と違った規定の仕方がなされておるわけでございます。船員法体系から申し上げましても、一般商船乗組員漁船の場合とは、いろいろ違った規定がございます。たとえば、労働時間のことは先ほど申し上げましたが、休暇制度のごときも、一般商船漁船とは違っております。あるいは賃金給料支払い方法等におきましても、漁船労働の形態が歩合制による等のために、一般商船のような月ごとにサラリーがきまっているというような場合と、若干そこに規定の仕方が違えてございます。しかし法律は、そういう労働関係実態に基づいた規定でございまして、ただいまお尋ねがございましたように、漁船労働関係が、それでは一般商船に比べて、より非近代的な要素があるのじゃなかろうかというような点につきましては、これは今までのいろいろ沿革の事情もございます。それから漁業の態様についても、たとえば北洋漁業であるとかあるいは鯨漁業であるとかと違ったような近海の漁業、ことに近まわり漁船につきましては、従って、そういうような労働関係について、普通の労働関係と違った慣行がございます。そういうようなものは、船員法でもって詳細に規定するよりも、どちらかと申しますならば、労働協約にまずゆだねる。労働協約の定めのない場合においては、就業規則規定がございますから、就業規則届出等によって、官庁もそれをにらんでおる。それが現在の船員法建前でございます。
  6. 久保三郎

    久保委員 ただいまお話がありましたが、これは三十トン未満等については労働省の方の御関係だと思いますが、いずれにしても、全体を通じて、現在の漁業労働者の身分安定というか、これは前近代的な形になっていることは、事実であります。そのために一つ経営もうまくいかない、さらに船主というか企業主はその前近代的な労働慣行に乗っかって、それによってわずかに今日の命脈を保っておる。ほんとうの漁業の発展というか、そういう問題には必ずしも積極的でない。労使ともども何か一つの中にいてかきに相せめぐというか、そういう格好になっているのが今日の漁業の大半ではなかろうかと思うのであります。従って私はそういう観点からお尋ねしているわけなんですが、特に労働条件の問題でありますが、一つには、たとえば雇い入れ契約の例がございます。これは茨城県の那珂湊地区に起きておる実態でありますが、雇い入れ形式は、船主がやるのではなくて、実はその下にいるところの漁撈長、地方では船頭と称しますが、この船頭が船方、いわゆる乗組員との間に一つ契約というか、そういうものをやっていく。この雇い入れの場合も、明確な労働条件の提示などはほとんどない。よくて海運局その他に届け出るところの海員名簿に登載して、これを届け出て承認をもらうということになっておりますが、これしもそのまま実行されているかどうかは疑わしい実情なんです。こういう点一つをとりましても、これはもう少し運輸労働両省とも本腰を入れて、もう少し確立すべき必要があるのではないか、かように考えているわけなんです。この雇い入れ形式で、いわゆる船主が雇い入れるのではなくて、全権委任を受けたような漁撈長が雇い入れる、こういうことははたして妥当な形であるかどうか、これを一つお尋ねいたします。
  7. 土井智喜

    土井説明員 ただいまお話がございました雇い入れ契約でございますが、雇い入れ契約制度は、船員法では一般の陸上の産業の労働契約とは違った関係でございます。なぜ雇い入れ契約というような文句を使っておるかと申しますと、要するに船員法規定しております労働関係というのは、特定船舶に乗り組む関係でございます。従ってその船に乗り組むための契約、これを海員の雇い入れ契約としまして、船員法では一般労働法とは違ったいろいろな規定をしております。ただいま久保先生からお尋ねがございましたように、那珂湊地区でございますか、漁撈長が実際はこの雇い入れをしておるのだ。これは労働関係から言うなら、本来使用者であるべき船舶所有者がやるべきなのを、漁撈長がやっている。それに対して、まあ雇い入れ契約公認と申しますか、管海官庁である那珂湊海運局支局等が見ているのだけれども、そういうものに対して役所としての監督はどうか、こういうようなお尋ねだと思います。商船乗組船員の場合の雇い入れ契約は、これは御承知のように船長が雇い入れ手続をいたします。そうして管海官庁に対しまして雇い入れ契約公認を申請いたします。船員はそれに基づきまして、船員手帳に認証を受けるのが一般商船の乗り組みでございます。ところが漁業におきまして、ことに近まわり漁業におきますと、その関係船長と申しますか、ただいま御指摘がありましたような船頭である漁撈長というものが漁業労働の方では船長と同じ役目をしておるということになるわけであります。それでは、その漁撈長は、その場合において労使関係でどういう立場にあるかということになりますと、これはやはり使用者側という関係になるのではないか。ここに代理関係あるいは委任関係というものが行なわれてそういう結果になっていると思います。もちろん、その雇い入れ契約公認する場合におきましては、役所がその公認手続をとるわけでありますから、もし船員側に不当な労働条件あるいはその他でもってその雇い入れ契約に対して不満がございます場合においては、管海官庁に申し出れば、その雇い入れ契約に対して官庁側がチェックするというのがこの船員法規定でございます。今までのところ、その雇い入れ契約自体に対しましては、私どもの報告では、格別そういう点で争いがあったということは聞いておりませんが、個々労働契約、すなわち雇い入れ契約につきまして、もし船員側について労働条件等紛議がある場合においては、当然官庁公認のときにそれが申し出られ、それに対して公認手続上チェックを受ける、こういうことに相なっておるわけでございます。
  8. 久保三郎

    久保委員 届出船員名簿に登載しての公認手続とか内容とかいうものと実態とが違う場合が相当多いということを私は申し上げておるのです。これが監督は、海運支局というか、その所轄官庁が当然なされるはずだと思うのでありますが、実態はなかなか困難のようである。しかし、これをほうっておくわけにいかぬだろうから、これについては一つ積極的にやってもらわなければいかぬ、こういうふうにわれわれは考えておる。  さらにもう二、三点、いろいろ実情がございますが、たとえば乗組員は、先ほどお話があったように漁船でありますから、定期的な給料というか、そういうものはなくて、漁獲高に応じての歩合制のものである。ところが、この報酬の決定は漁期ごとの決済になっているようであります。春職あるいは秋職というようなときの最終清算ということになるのです。ところが、漁民の生活というものは御案内通りでありまして、毎月の生活に追われるということでありますので、その間は前借制度ということでやっておる。この辺に、主従関係というか、古い労働慣行のもとがあるわけです。本来ならばこれは報酬として受け取るべき筋合いのものを、実は漁期ごとの計算であるから、その間前借という格好で、船主の方へ頭を下げて、自分報酬の一部であるにかかわらず、これを借りている。そして漁期ごと清算をするわけでありますが、この清算の場合も法的には制限があるはずだ。前借であるならば、報酬から三分の一以上を相殺することはできない。しかし、それもやっている。残額がどうあろうとも、前借はてっぺんから天引きしてもらわねばならぬ。こういうようなことも一つあるわけです。  もう一つは、雇い入れの場合も、船員手帳を全部船頭が預かってしまうということでありまして、先ほどの御説明によりますれば、そこに承認というか、書き込んでその船員手帳船員に返すことが法的にきめられておるようでありますが、実際は船頭が預かるということでありますから、身分全体を船頭が預かって、その船員の自由が拘束されるという実態もあるわけであります。こういう点についてはいかように考えておられるか。  さらにその報酬の取り方、あるいは前借制度というものはどういうように考えるべきか。これは労働省の方にも御関係があると思いますから、あわせて労働省の方からも御見解を承りたい、かように考えます。
  9. 土井智喜

    土井説明員 ただいまお尋ねの雇い入れ契約とその実態については、契約面に現われた内容と違っておる点があるのではなかろうか。ことに漁船の場合であれば、歩合による報酬の実際の支払い方が、あるいは法律なり契約で定められておるよりも実態とは違っておる。それが主従関係に影響を与えておるのではなかろうか、こういうお尋ねでありますが、その点につきまして船員法規定を申し上げますと、とにかく給料を、一般の船であれば、これは月給制度でございますから、商船の場合は毎月一回支払うというのが建前でございます。しかるに漁船の場合ですと歩合という制度になっておりますので、歩合の場合でもやはりある一定額だけは毎月支払わなければならない、こういう規定になっております。その規定を申し上げますと、船員法の第五十三条に、「命令の定める報酬を除いて、給料その他の報酬は、これを毎月一回以上一定期日に支払わなければならない。」とありまして、命令の定める報酬というものは、これは命令で譲っておりますけれども歩合制の場合でも一定額だけは毎月一回、これは生活保障として支払うということになっております。しからばその歩合制給料についてはどうかと申しますと、これは第五十八条に「船員報酬歩合によって支払われる場合においては、その歩合による毎月の額が船舶所有者の定める一定額に達しないときでも、その報酬の額は、その一定額を下ってはならない。」そうでございますから、漁船船員は、一応歩合による場合は一定額——その額はもちろん少ないわけでございますけれども、毎月とにかく最低限度の額だけはこれによって法律的に保障されておることになろうかと思います。ただ、ただいま御指摘になりましたような一般的な法律関係はそうでありましても、これは実態関係で、たとえば船員報酬前借りする、そういうようなことは慣行上よくあるわけなんで、その前借りしたことによって、先ほど御指摘になりましたような主従関係と申しますか、そういうような関係がとかく生ずる。そうして歩合制度のやり方に対しまして、結局法律上予測しなかったような、船員にとって不利な結果が生ずるのではなかろうかという点につきましては、これは漁業実態から見ましてやむを得ない事情も発生しておるのではなかろうかと想像されるのでありますが、そういうような場合があればこそ、一応労働協約というようなものがもし力を持つならば、労働協約を締結することによって船員側保障を受ける。それから労働協約が結ばれるまでの間は、それではどうなるかということになりますと、これは一応就業規則というきめがございます。就業規則役所にも届け出なければならないわけでありますので、それによって法律上こまかいことが規定されない範囲のことでありましても保障ができる、こういうことになるのでありますが、おそらく労働協約というのは団体交渉の結果得られるものでありますので、お尋ね地区においては、従来スムーズに労働協約によってはまだ獲得されておらぬ点もあったのであろうと思われますし、就業規則につきましても、船員との間にもし紛議がございますならば、その就業規則自体についても問題があろうかと思うのであります。そういうような点につきましては、管海官庁すなわち海運局支局には、労務官が配置されておりますので、そういう点についていろいろ不服の声、あるいは不満の声、紛議があった場合には、その労務官が乗り出してやって、できるだけその点について法令違反のないように、あるいは就業規則に定められたことが実行できるようにするのが建前になっておる点でございます。そういう点について今まで労務官等の活動が不十分であれば、われわれも今後一そう督励したいと思っております。  それからなおただいまのお尋ねに、船員手帳漁撈長が預かってしまって、船員はよく実態がわからぬのではないかというお尋ねにつきましては、これはそういう場合もあり得ようかと思うのでありますが、船の乗り組みの、普通の慣例で申し上げますと、一般商船でも、個々船員自分船員手帳を持つということは、まあ上陸するような場合にはどうしても持っておりませんと、また外国等では困るんでしょうけれども、普通の場合は船長のもとで、しかるべき船の中に保管をされておるようであります。ただいま御指摘になりましたように、漁撈長保管をしておるというのは、船の実態にはよくありがちのことだと思うのであります。もしそういう点で、かりに船員の方に不服な場合があり得るならば、これはそれぞれ申し出ていただければ、そういう点についても船員手帳受有義務者船員でございますから、今後その点に不明朗なことのないように監督もいたしたいと存じております。
  10. 上原誠之輔

    上原説明員 船員労働条件につきましての御質問でございますが、船舶乗組員である船員につきましては、船員法適用になります船員以外の者につきましては、労働基準法適用になるのであります。従いまして、この賃金支払いの問題につきまして労働基準法上いかなる規定があるかということについて申し上げますと、基準法の二十四条におきましては、「賃金は、毎月一回以上、一定期日を定めて支払わなければならない。」こういう規定がございます。従いまして歩合給を取っております場合におきましても、基準法適用になります船員につきましてはこの規定適用になる、こういうことになろうかと思います。それから歩合給あるいは出来高払い制度の場合におきまして、漁業関係の場合には特に問題があるわけでございます。その場合におきましては、船員法と同じような形で、二十七条では、出来高払い制その他の請負制で使用いたします労働者につきましては、使用者は、労働時間に応じて一定額賃金保障をしなければならない、こういう規定があるわけでございます。
  11. 久保三郎

    久保委員 それぞれお話がありましたが、一定額を支払うということは、船員法適用のものも適用でないものも、今の御説明ではっきりしているわけなのです。これをやっているものはほとんどないといって過言ではない実情のようであります。先ほど船員局長は、管轄であるところの那珂湊支局労務官というものがあるから、そういうものを通して問題を解決すべきである、こういうような意味お話がありましたが、実は労務官も一生懸命におやりになっているようであります。私もそういう話を聞いておりますが、残念ながら労務官の力ではこれは今の船主に対抗といっては語弊がありますが、これを監督し指導することはなかなか困難な実情があるように私は推測しております。というのはこれは悪い意味ではなくて、実際は力がどうも向こうが強過ぎるのではなかろうかと思う。そういう点でもう一つ、これは総括的に両省に要請をいたしますが、実態一つ、本省からなり、あるいは支局上部機関から行ってお調べになって対策を立てるべきであろう、こういうふうに私は思う。それはもちろん船員は今出漁中でございますから、その土地にはおらぬと思うのでありますが、これをいつ調査されるかは別にして、近い時期において両省とも一つ合同調査をされて、近代的な労働慣行を確立されるようにした方がいいではないか、こういうふうに思います。  それからもう一つ労働協約でいろいろきめるということでありますが、もちろんまだそこまではいっておらない実情であります。そうするならば就業規則によってこれはやるのだというのでありますが、それはその通りでありましょう。ところが就業規則そのものを守っている船主というものはほとんどないくらいなのであります。ほとんど守っておらないというのが実情であります。それからもう一つは、具体的な例としては那珂湊の問題ですが、那珂湊支局に届けてあるところの就業規則は、これは三十二年に作って届出ができたわけです。ところが実際にはこれは三十三年に一部改正されまして、届け出されてはおります。これは海運支局の御指導もあってやったと思うのでありますが、この改正された就業規則をもって実は雇い入れ契約はやっているわけなのでありますが、この改正された部分についてこれは問題があるようでございます。でありますから改正された部分についての雇い入れ契約というものは無効ではないだろうか、こういうふうに思うわけです。それからこれを知っている海運支局は、私どもより十分その内容は御存じなはずなのでありますが、支局自体はこれについて何もやっておらぬというような事実をわれわれは聞いております。これは非常な怠慢ではなかろうかと思うのであります。最低限のよりどころであるところの就業規則さえ守られないし、あるいは勝手に改正をしてやっておるというような実態を、今日まで見のがしていること自体も、私は監督官庁の力が弱過ぎるのだ、こういうふうに考えます。これに対してはどういうふうに考えられているか。さらにもう一つは雇い入れの場合ですが、雇い入れ契約は先ほど申し上げたように船員には明示されないままになっているし、また契約自体も、船員自体内容は全然知らぬ者の方が多いようであります。船員手帳の問題は先ほどの御説明でわかりましたが、いずれにしても契約内容がわからぬ船員が多い。こういうことでははなはだしくどうも、何と申しますか、労使慣行からいっても一般労働問題からいっても、今どきあるはずがないような事例だと私は思っております。それから雇い入れの期間も、これは不定期のようであります。でありますから、港に帰りまして、次の漁期までの間は、全然賃金は支払われない。支払われてもこれは全く百二十円とか二百二十円とかいうことで、船の修理に携わったときだけもらうような実態だ。こういうことがはたしていいのかどうか、こういう点を一つお聞かせを願いたいのであります。
  12. 山田彌一

    山田説明員 ただいま久保委員の方から船員労働協約が現実から非常に遊離しているのではないかという御質問でありまして、まことにごもっともだと思うのであります。この点につきましては、今まで地元の支局並びに関東海運局船員部長等も現地に参りまして、極力努力して参ったのでありますが、御承知のように二十八日船団が出発以来膠着状態になっているような状態でありまして、この点につきましては、重ねて関東海運局を通じましてお説のように十分努力いたすつもりでおります。  その他の点につきましては局長から答弁いたさせます。
  13. 土井智喜

    土井説明員 就業規則につきましてお尋ねがございまして、その最初の就業規則昭和三十三年二月にできておる。ところが、それが最近改正をして、それによってやっているけれども、その改正部分については雇い入れ契約はおかしいではないか、こういうお尋ねがございましたが、その点につきましては、役所の方もこれを傍観しておるわけではございませんので、実は船員就業規則法律によって届出をすることになっております。その届出によってこの就業規則内容をよく見るわけでございますが、その就業規則はもし法令等に違反する場合あるいは不当であるという場合に対してはどういう処置があるかと申し上げますと、「就業規則監督」ということで、船員法の九十九条は、「行政官庁は、法令又は労働協約に違反する就業規則変更を命ずることができる。」「行政官庁は、就業規則が不当であると認めるときは、船員労働委員会の議を経て、その変更を命ずることができる。」そうでございますので、三十三年二月の就業規則につきましては、これは役所の方も届出を受理しておりますが、実はこの春にこの就業規則改正につきまして届出がございました。ところがその内容を検討いたしてみましたところ、若干規定が、就業規則として法令建前から見て問題の個所があるということで、海運局からはその訂正を勧奨しております。従ってまだその改正されたものにつきましてはわれわれの方も受理しておらないというような状況でございますので、ただいま政務次官からも御答弁がございましたように、われわれもその実情に十分注意いたしまして、法令違反あるいはそういったことのないように努めたいと思います。  なお何分にもサンマの漁期でありますので、船の出航というようなことで、就業規則についてはそのままになっておりますが、ともかく船員労働条件をよく熟知することが何より大切なことでございますので、そういったような点についても遺憾のないようにいたしたいと思っております。  最後に雇い入れ契約の期間について、期間の定めのない場合のお尋ねがございました。一般に期間の定めのない契約というのは割合多いのでございまして、ことに漁船のような場合ですと、春、夏等の漁期によって契約慣行的にきまるような関係から、期間の定めのない場合が多いわけであります。しかしながら期間の定めのない場合でも、雇い入れ契約が存続している場合におきましては、船員法によってその間給料支払いという義務はあるわけでございますので、たといその給料歩合給で低い場合でも、一定額だけは船員法支払い保障されておるというのが実情であります。  なお船員の方で、そういう法規の規定と実際の就業規則内容個々労働契約内容等について、十分確かめた上で、また問題がございますれば、労務官等によく事情を述べていただきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  14. 久保三郎

    久保委員 船員局長、私がお尋ねしているのは、就業規則の届けになったものが法令に違反しているかどうかという問題と、もう一つは、届出されてあなたの方で認可した就業規則実情に守られているかどうかの問題なんです。むしろその後段の方に今日問題がある。届出されたものが法令に違反していれば、これはあなたの方で届けを却下する、あるいは今お話しのようにこれを勧奨して訂正させるということでありますが、それは当然あなたの方で届けられた文言上の問題としてであって、私がお尋ねしているのは、届け出された最低限の就業規則というものが守られていないから問題がある。これについてはどうされるか。守られていない場合には監督官庁としてどうするか、これをお尋ねしているのです。
  15. 土井智喜

    土井説明員 ただいまのお尋ねに対しまして、あるいは私の申し上げ方が混同したような印象を与えたので、恐縮であります。そこでこの就業規則官庁に対する届出、そういったようなことにつきましては、先ほど条文から申し上げました最初の就業規則は、管海官庁の方も受理しております。それから、ただいま改正されました就業規則に対しまして、役所の方では、船舶所有者に対しまして内容を改めるように今勧めておる状況でございます。そこでただいま久保先生からのお尋ねのように、いやしくも役所が受理した就業規則できめられてある内容にも違った実際の労働条件ではなかろうか、そういう点については役所はどうするかという点でございますが、その点につきましては労務官制度というのがあるわけでございまして、個々労働契約の実体がもしそういう点で損をしておるならば、やはり役所の方なりあるいは労働委員会なり、そういう機関があるわけですから、そういう機関で取り上げるように、まあ成規の手続で申し出を願えればと思うのであります。ただいまのお話もございましたので、われわれの方も管海官庁を通じて十分調査させるつもりでおります。
  16. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんから、簡単にあと二、三点ばかり申し上げますが、とにかく船員局長、あるいは労働省の法規課長——監督課長おいでになりますか。作られたもの、届け出されたものだけを監督しておるなら——この条項は違反になるとかならぬとかいうことを皆さんにお願いしておるのではない。受理されたものが、実際にその通り行なわれるかどうかを監督するのがあなたの立場なんです。ただ船員から、あるいは漁船労働者から提訴があれば取り上げるというのでなくて、今の漁船とか漁民の立場からいけば——監督官庁として事実わかっておるのですから、わかっておるなら、強力にそれを守らせるように指導監督すべきではないかというのが私の真意です。これは約束して下さい。  そこでもう一つ申し上げますが、この出航をする前に団体交渉を何回かやった。中途におきまして海運支局が入って、団体交渉をやらぬような格好でありましたが、幸い県の方の御援助をいただいて団体交渉をやったのであります。この団体交渉をやったことは前進だと思いますが、それでもその中でいろいろな問題がありましたが、船員法について守ってほしいという要求に対して、できるだけ守りましょうというのが船主協会の回答だという。できるだけ守りましょうではちょっとどうかと思う。そういう点に、今の古い、いわゆる前時代的な漁業というものがあると私は思う。これはもう少し労働省運輸省も力を入れてほしいと思うのです。  それからもう一つ申し上げたいのは、先ほどの賃金の問題等についても、これは最低賃金法の問頭がございます。これは作る必要があると思うのでありますが、あなたの方ではどういうふうに考えられているか。労働省の方も大体同様だと思うのでありますが、違っていれば、労働省の方からも御見解をいただきたい。いわゆる最低報酬の問題はどうするか、きめる必要があると思うんだがどうなのか、これを伺いたい。
  17. 土井智喜

    土井説明員 ただいまのお尋ねの第一点の、団体交渉において、とかく船主の方が前近代的な交渉態度であるというようなお話がございました。団体交渉内容等につきまして、たとえば賃金をどうするか、そういうようなことになりますというと、これは官庁団体交渉自体に関与するのは禁ぜられておるわけでございます。われわれの方もそういう点の団体交渉に対しては関与すべきではないと思うのであります。ただいま御指摘になりましたように船員法を守れというような点につきましてはまことにごもっともでございますので、もしその船員法に違反するような点につきましては十分調査をし、また交渉自体についても注視していきたいと思っております。  それから第二点の最低賃金の問題でありますが、御承知のように船員には最低賃金法が読みかえになっております。そこで船員の最低賃金一般労働者と違いまして、運輸大臣の所管のもとに地方では船員地方労働委員会がその賃金審議会の役目をしておるわけでございます。ただいまの進捗状況はどちらかと申しますと、一般大型船舶等は団体協約で最低賃金制度がしかれております。それから機帆船等につきましてはただいま各地区でそれぞれ業者間協定あるいは労働協約等によって、その賃金審議会であるところの船員地方労働委員会に目下提出されておりまして着々決定を見ようとしておるわけでございます。しかしながら、漁船につきましては労働慣行が多少違っておるために、今まで最低賃金の問題については立ちおくれておるのが実情でございまして、ただいま御指摘通りであります。もとより最低賃金法のねらうところがやはり中小企業の近代化という点もございますわけでありますので、こういった点についてもわれわれ関心を持っておるのであります。やはりその行き方としては、使用者側の業者間協定というものが今の最低賃金法の一応第一の段階であろうと思うのであります。そういう点についてやはり使用者側の方が協定をしていく、それを地方労働委員会に申請をするというような行き方で進めていったらと思うのであります。
  18. 上原誠之輔

    上原説明員 最低賃金法の問題でございますが、昨年四月に最低賃金法が制定せられまして、昨年の七月から全面実施になったわけであります。労働省といたしましては、最低賃金法に定めております四つの方式に従いまして、当面のところは業者間協定というものを中心にいたしまして、最低賃金の決定というものを促進して参っておるわけであります。先ほどから船員局長お話がございましたように、最低賃金法の施行ということは、低賃金労働者労働条件の向上という点に役立つのみならず、企業経営そのものの近代化につきましても寄与をなす制度でございますので、これが促進につきましては今後とも努力を払って参りたいというふうに考えております。特に漁業関係につきましては、賃金形態というものが御指摘通り、非常に前近代的と申しますか、そういうような色彩の強い部分がございますので、最低賃金を決定いたします場合に、技術的にかなり困難な面があろうかと思います。そういう技術的な面につきましても慎重に検討いたしまして、漁民につきましての最低賃金が円滑にできますように私ども今後十分に努力をして参りたい、こういうふうに考えております。
  19. 久保三郎

    久保委員 時間もたくさんないようでありますから、最後に私は総括して申し上げますが、いずれにしても大臣はあとからいらっしゃっておわかりにならなかったと思うのでありますが、特に大臣に要望しておきます。政務次官から御答弁いただきましたが、きょう取り上げた問題は、ある一定地区船主乗組員労働条件の問題であります。これは実際中小企業の部類であります。それで大企業から押されて中小企業経営もなかなか思うようでないのが実態です。ところがそういうことからしてしわ寄せがどういうふうになっているかというと、いわゆる前・近代的な労働慣行によってのみ今日の中小漁業というものが成り立っているということでありますから、結局船主も企業をさらに積極的に伸ばすという工夫は早く言えばやれない、あるいはやらないかもしれない。そうしてそのしわ寄せが先ほど申し上げたような古い因襲にとらわれた格好に今日なっておる。それではいつまでたっても中小企業を振興させることはできないと思う。そういう面からいけば運輸大臣と農林大臣あるいは労働大臣、三者の問題になろうかと思うのです。これは一地区に起きた一つの小さい問題でありますが、これはどこの地区でも私は同じだと思うのです。よって、これは池田内閣のいろいろ施策がございます。所得倍増論もございますが、けっこうであります。そういう底辺におるところのいわゆる中小企業と漁民労働者の問題を扱うということが今日の最大急務ではなかろうかと思います。しかも法律はできている。法律による形式上の届出とか、そういうものはできておるが、実際は守られておらぬというところに今日の問題がある。どうぞそういう問題で一つ大臣取り上げていただきたいと思うのでありますが、どうでありましょうか。それに船員局長に申し上げますが、くどいようでありますが、単に法律の条文上だけの問題でこの問題を解決することは不可能であります。だから最低賃金法にしても、労働省も今御見解の発表がありましたが、これは早急に——やはりむずかしい問題だから早急に取り上げていってもなかなかすぐには解決できない問題であります。早急に対策を両省協議して作っていただきたいと思いますが、この点は船員局長どうお考えになりますか。
  20. 土井智喜

    土井説明員 先ほど政務次官から御答弁がございましたように、本問題はサンマの漁期逼迫ということでありましたので、出航もすでにしております。そういうような関係でありますので、乗組員の出航の上で迷惑になってはいけないわけでございますので、そういう期間的な制約がございましたが、いろいろただいまもお話がございましたような実情を承りまして、われわれも今まで調査をやりました以上に調査を進めていきたいと思います。なお団体交渉につきましても従来とかくふなれな点がありましたためにおそらく団体交渉のワクの上でやや逸脱と申しますか、そういう点もあったかのように聞いておりまするので、そういった点についても労働法上の、むしろこれからは教育と申しますか、教育と申してははなはだ語弊があれば、そういう点の労働関係について正常なルールを引かれるようにわれわれも努めていきたいと考えております。
  21. 南好雄

    ○南国務大臣 私、途中で参ったので、今、久保さんから概要を承った上での見解をどう思うかというお話でありますが、承った範囲内においてはごもっともな点も多いと思います。中小漁業者の問題につきましては、私もかねがね関心を持っております。従って、まだその事情等も私はっきりは存じておりませんが、研究いたしまして、農林大臣あるいは必要があれば労働大臣等ともよく協議いたしまして、御趣旨になるべく沿うように善処していきたいと考えております。      ————◇—————
  22. 永田亮一

    永田委員長 国鉄の経営に関する件について調査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。福家俊一君。
  23. 福家俊一

    ○福家委員 運輸大臣並びに国鉄総裁にお聞きいたしたいのであります。過ぐる八月の二十日十三時二十分、国鉄の臨時職員が倉庫内の喫煙の吸いがらから出火して旧高松駅及び四国支社の庁舎を全焼せしめ、しかも民家に類焼、その全焼すること五十一軒、半焼数好、罹災世帯数は百十軒に及び、これがため重傷及び負傷者は二十数名を数えるという大事態を起こしたのでありますが、これに関し、監督官庁たる運輸大臣は被害者に対してどういう処置をお考えになっておられるか、お聞きしたいのであります。
  24. 南好雄

    ○南国務大臣 福家委員のただいまの御質問でございますが、私、就任早々のことでもあり、先般四国支社長が上京してその間の詳細な事情を聞いたのであります。あまり人のけのないところから発火をしたようでありまして、臨時職員の不始末らしいということで、検察庁に事件が移っております。そういう個人的の刑事責任の問題はいずれはっきりするのを待つといたしましても、ああいう問題を起こして、国鉄のみならず、これに接続しております民家の方々に非常に多大の御迷惑をおかけしたことにつきましては、私、大へん恐縮に存じております。さっそく国鉄当局にも補償その他の措置につきましてできるだけ十分にするようにと厳重に申し渡しておいたのでございますが、その後の経過につきましては、まだ報告を聞いておりませんが、おそらくこの種問題につきましては、できるだけの誠心誠意を国鉄もすると存じておりますので、いずれどういう処置になりますか、はっきりいたしましたならば、あるいは委員会においてでも、あるいは福家さんの方に文書によってでも御回答申し上げるようにいたしたいと考えております。
  25. 福家俊一

    ○福家委員 ただいまの南大臣のお言葉を罹災者にかわってそのまま信頼し、かつ誠心誠意対処されんことを望むものであります。  私も出火と同時に、幸い高松におったものでありますから、火災の現場にはせ参じた一人であります。火災現場における処置またはその後の矢山四国支社長を初め国鉄職員の懇切丁寧なる態度は、すなわち罹災者の心をくみとり、罹災者の立場に立ったつもりで献身的に努力されたという結果は、怒りと不安と焦慮に燃えておりました罹災者もこの誠意には非常に満足して平静に戻ったのであります。その後もきわめて善後処置について友好的交渉に入っていることは、私ども地元選出選良としても喜びにたえないところです。その一例としましても、こういう大問題が起きれば責任者の更迭というような声が当然地元から起こるものでありますが、この際は穏便にして、もし更迭するような場合があるならば、留任運動でもしようではないかという声が県市有力者間から出たというような喜ばしい現象でありまして、国民に奉仕する、サービスを旨とする国鉄の、私は範とすべきことだと思います。一幹部の一挙手一投足がいかに重大な結果を民間に及ぼすかというよい実例だと思うのであります。それにひきかえて国鉄首脳部は、暑いさなかといいながら、昼寝をしておって居留守を使うというような不心得者が現におる。私はあえてその人の名前をここで申し上げようとは思いません。しかし第一線におる職員が、誇りとこれほど美談というくらいな献身的努力を払っているにかかわらず、かかる首脳部が本省にいるということは遺憾しごくなことというべきでありまして、運輸大臣及び国鉄総裁はよく注意を喚起していただきたい、こう思うのであります。
  26. 南好雄

    ○南国務大臣 福家さんのお言葉なんでありますが、国鉄首脳部もいろいろ忙しいのでありまして、おそらく居眠りをしているというようなこともないと私は考えております。後ほどそういう事実があるかどうかよく調査いたしまして、事実がありますならば私の方から厳重に訓告をしておくつもりであります。何か行き違いからだと私は考えておりますので、そういう事実は私としてはないものと考えておりますが、特に福家さんに御了承をお願い申し上げたいと思います。
  27. 福家俊一

    ○福家委員 大臣はわれわれの最も尊敬する先輩の一人であります。あえて御答弁に逆らいたくはございませんが、現に私はその被害者であり、確認している本人だ。よっぽど部屋に入って君、君と起こして注意をしようかと思ったのでありますけれども、われわれも国会議員として忙しいのです。たとえば、そうおっしゃるからあえて申し上げますが、きのう以来委員長を通じて国鉄総裁あるいは副総裁のこの委員会への出席を求めてある。だが大臣みずからがおっしゃったように、旧高松駅及び支社を焼失してこれだけの事態を起こすということは相当な大問題だ。それにこの委員会に首脳部自体が出てこない。何か聞けばほかに式があるそうでございますが、主権在民の今日において国会が最高の権威である、私はこう思うのでありまして、単なる昼寝の問題ではなくして、そういう問題こそ十分注意を喚起していただきたい。一本くぎをさしておきます。  本論に入りますが、罹災者のうちに実は保険に入っている人が少ない。しかも入っておっても非常に少額です。また全然保険に入っていないというのも多数あります。またこういう人が、駅前のことでありますし、直ちに復興に着手しなければならぬ。ところが、保険に入っておっても先ほど申し上げたように少額である。あるいは全然保険に入っていないという人たちが復興資金に当面困っている。これは私ども承知いたしておりますところでは、まだ検察庁において捜査の結果は出ませんけれども、警察、消防等の取り調べた結果によりますと、明らかに国鉄臨時職員の倉庫内におけるたばこの吸いがらから火が出たということは一般に認められているところでありまして、これに対する補償金の問題であります。国鉄として一体どういうふうに考えているか。特にお願いしたいことは、先ほど申し上げたように復興資金がない、銀行に借りに行っても信用がないから貸してはくれぬ、非常に困惑している状態なんです。役所のことでありますから、これが解決までには時日を要する。ところが、罹災者は直ちに復興しなければ寝るに家がない、こういう状態でありますから、せめて半額程度のものでも、国鉄として補償は大体この程度はする、その半分の程度でも先に前渡金といいますか、復興資金として支払ってもらえないだろうか、あるいは銀行あたりに、実はこういう実情だから国鉄がこの程度まで支払う見込みがあるからというような裏づけといいますか、保証をしてもらいたい、こういう要求が非常に強いのでありますが、先ほどの運輸大臣の御答弁によりましても、誠心誠意罹災者にはおわびと誠意を尽くすということでございますから、国鉄当局としてこの三点についてどういう御処置をお考えか、御答弁を願いたいと思います。
  28. 兼松學

    ○兼松説明員 総裁がちょっとおくれておりますので、恐縮でございますが、私からお答えさせていただきます。  国鉄構内からの出火によりまして、多数の方に御迷惑をかけましたことは、まことに申しわけのない次第であると考えております。出火の原因の責任につきましては、目下司直で取り調べ中でございます。従来ならば、過失の場合には、出火の責任の法律もございますので、お見舞ということになるのでございますが、本件につきましては、今、福家先生からもお話がございました通りに、私どもの臨時職員の過失であるということは、一般的に信じられている事実でございますので、司直の最終的な御判断を待たないで、すみやかに処理をいたしたいということを、私たちの第一の方針にいたしております。そのようなわけで、現地につきまして法務の関係者も出しまして、公の金でございますので、筋の立った一応のいろいろな御相談は必要なのでございますけれども、あらゆる手続をできるだけ早く済ませまして、御趣旨に沿うように最善の努力をいたしたい、こういうつもりでございます。  なお、過失であるという場合には、保険が払われた方に対しましては、保険会社から国鉄側に求償をして参ることになりますので、私どもといたしましては、こういった点で、保険に入っておられる方、入っておられない方という場合においては、一般的には結果としては大きな違いがない処理になるのじゃないか。従って、保険金の部分だけは差し引いた処理になるということは、保険がこちらに求償されるという形から申しまして、やむを得ないことだと考えております。何分にもいろいろごたついておりますけれども、支社を私ども当面の責任者といたしまして、支社と、本社からも職員の一部を派しまして、すみやかに必要なできるだけ早い手続をしてやれるようにいたしたい。なおもし大体の額が確定といいますか、了解に達しましたものにつきましては、その一部でもすみやかにお払いすることもできるだけ措置をいたしたい、こういう所存で、いずれにいたしましても、すみやかに誠意を持ってこの事態を処理したいと考えております。
  29. 福家俊一

    ○福家委員 問題は補償金の額によると思うのですが、もちろん罹災者は誠心誠意正当な額を提出すると思います。それに対する当局としての思いやりといいますか、たとえばせんべいぶとんを焼いた。しかし今それをせんべいぶとんだから千円か二千円に評価するというのか。新しいふとんを買うならば、やはり相当な金額になります。こういうところのさじかげんといいますか、思いやりが非常に影響するところ大と思うのでありますが、そういう点にはどういう配慮をされておりますか。こまかいようなことでありますけれども、罹災者としてはこういう点が一番触れてみたい、聞いてみたいという心配をしている点なので、誠心誠意のほどの片鱗がどういう程度か、一例にあげてみたのですが、お答え願いたいと思います。
  30. 兼松學

    ○兼松説明員 ただいまの点につきましては、もちろん現実の損害額が原則ではございますけれども、御指摘のような点は十分考慮に入れまして、特に生活の最低必需品の取得というものは、個人としてどうしても大事なものでございます。その実際の措置がとり得るように善処いたしたいと考えております。
  31. 福家俊一

    ○福家委員 以上で終わりますが、総裁もあとでお越しになるそうですが、もうすでに質問の趣旨は終わりましたから、どうか国鉄側にいたしましても、罹災者の立場になって十分の処置をお講じ願いたいことをつけ加えまして、私の質問を終わります。
  32. 永田亮一

    永田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午前十一時四十五分散会