運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-22 第34回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十二日(火曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   委員異動 三月十八日委員田中一辞任につき、 その補欠として山口重彦君を議長にお いて指名した。 本日委員山口重彦辞任につき、その 補欠として亀田得治君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君            高田なほ子君    委員           大野木秀次郎君            林田 正治君            宮澤 喜一君            亀田 得治君            赤松 常子君            市川 房枝君   政府委員    法務省民事局長 平賀 健太君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   参考人    東京大学教授  加藤 一郎君    日本勧業銀行調    査役      堀内  仁君    法政大学助教授 伊藤 道保君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法の一部を改正する等の  法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  三月十八日付、田中一辞任山口重彦選任。本日付、山口重彦辞任亀田得治選任。  以上であります。   —————————————
  3. 大川光三

    委員長大川光三君) それでは不動産登記法の一部を改正する等の法律案を議題に供します。  本法案につきまして、本日は参考人方々から御意見を伺うことにいたしたいと存じます。  最初参考人各位にごあいさつを申し上げます。御承知通り、本法律案不動産権利関係を明確にする登記簿権利の客体たる不動産自体現況を明確にする台帳を統合一元化して、登記制度合理化をはかり、さらに権利に関する登記手続に必要な改正を加えようとするものでございまして、これはわが国登記制度に関する画期的な立法かと存じます。ここにおきまして参考人各位のそれぞれのお立場から十分な御意見を伺いまして、本法律案審査のため、当委員会参考とすることにいたしたいと存じます。参考人各位におかれましては、御繁多中のところを、当委員会の意を了とせられまして御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  それでは、これより御意見を伺いたいと存じますが、加藤参考人司法学者のお立場から、堀内参考人不動産金融の御経験者として、また伊藤参考人司法学者のお立場から、それぞれ問題と思われる点について、御自由に御意見をお述べいただきたいと存じます。なお、時間の関係で、御陳述はお一人三十分程度でお願いいたしたいと存じます。  また、委員各位に申し上げますが、質疑は、参考人方々の御陳述が全部終わりましてからこれを行ないまするから、さよう御了承を願います。  それでは最初に、東京大学教授加藤一郎君からお願いをいたします。
  4. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私は東京大学で民法を担当しております加藤でございます。  今回の改正は、登記簿台帳一元化中心として、そのほかに若干の手続的な改正があるわけでございますが、中心となりますのは、いわゆる一元化の問題であると思いますので、私はその問題を中心意見を述べさせていただきます。  登記簿台帳一元化の問題は、昭和二十五年に地租家屋税地方税移管に伴いまして、従来税務署にありました土地台帳家屋台帳登記所に移して以来の懸案ともいうべき問題だと思われます。同じ登記所台帳登記簿という若干性質が異なりながら、しかもその記載事項ははなはだ類似しているという帳簿二つ並んでおりましたので、これは登記所事務の上からいっても、二重の手間をかけるという意味で複雑である。それから利用者にこっても、二つ手続を場合によってはとらなければならないということで不便である。そういう意味から、私は前から一元化をなるべく早くやった方がいいのではないかと思っておりましんのですが、やっと今日になりましてその法案が出て参りました。私は一元化にはもともと賛成でございます。今日までそれがおくれましたのは、おそらく登記簿をバインダー・システムに切りかえるというほかの事務がありましたり、昭和四十一年からメートル法に書きかえるという問題がありますので、その前に問題を片づけようというところから、おそらく今回の法案が出てきたのだろうと思われます。ところで、この一元化がいいか悪いかということについては、いろいろ議論もございますので、台帳登記簿性格最初考えてみますと、台帳については、これは土地建物現況を把握するという役目を負わされておりまして、一応所有者からの申告をとりますけれども、申告がない場合には職権台帳に載せるというふうにしております。これはもともとは税金関係から作られた帳簿でありますけれども、必ずしも税金だけではなくて、そり他の、たとえば都市計画あるいは土地収用という公のいろいろな計画を作ったりするような場合にも参考になるわけでありまして、そういう意味と、いわば台帳というものは公的な性格を持っていると言っていいかと思われます。これに対して登記簿の方は、御承知のように、わが国では物権変動対抗要件ということになっておりまして、いわば私的な権利を保護するためのものであります。そうしてそれは個人の任意申請によって行なわれる。職権は全然使わないということにはっておりますし、さらに登記の際には、その手数料ないしそれにプラスしたものとして登録税を取るということになっております。これに対して台帳の方は、別に税金はかからぬ、そういう意味で、登記簿というものはいわば私的な性格を持っているというふうに思われます。今回の改正は、従来の台帳記載されていた事項について、新しく不動産表示に関する登記というものを設けまして、それを表題部記載する、これに対して従来の権利関係の行使としての登記は、所有権その他の権利に関する登記として、甲区、乙区というところに記載をするということにいたしまして、従来二つになっていた帳簿をそういう形で一つにまとめたということになると思われます。この二つにまとめる場合に問題になりますのは、台帳職権主義登記簿任意主義ということ、それから先ほどの登録税の問題、この二つの問題をどういうふうに扱うかということが問題になるわけでのります。従来、権利登記をしなければ登録税を取られなかったのに、今度は職権不動産帳簿に載せられて、しかも登録税を取られるというのでは、これは困るわけでありますので、やはり権利については従来の任意主義を維持しなければ、その点からいってもおかしい。もし登録税の問題がなければ、これは職権である程度権利まで記載してしまうというのも一つの方法かと思われますし、それもあまり妥当でないかもしれませんが、登録税がなければ問題が比較的簡単でありますが、その問題があるために若干複雑になってくる。で、今度の改正では、その点についてはいわば慎重な配慮をしておりまして、不動産表示に関する登記については従来の台帳やり方でいく、それから権利に関する登記やり方は、従来とは変えないということでいっておりますので、その点は従来と変わりがないと言っていいと思われます。そういたしますと、これは、いわば二つ帳簿一つにまとめて、登記所の方もまた利用者の方も、それ一つで済ませるということになりますので、いわばその点で便利になるということだと思われます。  これに対して、それに伴う何かの弊害がないかということを考えてみますと、私は弊害がないというふうに思いますので、便利になって弊害がなければ、こういうふうに改める方がいいのではないかと思うわけであります。ただ問題としましては、相当曲用もかかりますし、時間もかかります、人手も食いますので、それだけのものをかけてこういう帳簿一つにするということをやるのが能率的なのか、それがつまり妥当かどうかという問題はあるかと思われますが、しかし便利になる点を考えれば、それだけの費用と時間をかけてやっても十分に利益の方が多いのではないかと思っております。  これが私の直接の賛成意見でございますが、しかし、これに対しては反対意見もいろいろ考えられますし、また「ジュリスト」という法律雑誌に、東京大学社研助教授であります渡辺洋三氏が反対意見を二度にわたって書いておられます。それも拝見いたしましたが、しかし私はやはり賛成でありますから、渡辺氏と意見がちょっと違うのでございます。  そこで、以下考えられるような反対意見——これは渡辺氏の意見中心としておりますが、そのほか私の考えも入れまして、反対意見と思われるものを想定いたしまして、それに対して反駁をするという形で、私の賛成論を裏の方から基礎づけてみたいと思っております。反対論としては私は四点ばかり考えてみたのでありますが、それを順次にあげて参ります。  まず第一に言われますことは、公法的な制度である台帳私法的な制度である登記簿とを一つにまとめるのは、公法私法という区別から考えてどうだろうかという反対論。確かに公法私法とは性質が異なるものであり、それは従来事実として峻別されておりましたし、それにはそれなりの歴史的理由があったと患われます。しかしそれだからといって、今後もその、区別をずっと維持しなければならないかどうか。今の問題について申しますと、台帳登記簿という二つ制度を、別々のものとして今後も続いて維持しなければならないのではないかというのは、どうも固定的な考え方ではないだろうか。私の考えでは、法律というものはそう固定的であるべきものではなくて、便利な制度弊害がなければ、それを新しい制度として作っていっていいのじゃないかというふうに考えております。もっとも、そこで言う弊害というのは、それぞれ直接の具体的な弊害でなくても、たとえば国民権利意識——権利についての考え方に悪い影響を及ぼすという場合も弊害として考えられるわけでございますが、私は、今度の改正にはそういう意味弊害はないのじゃないかと思っております。ここで考えられますのは、所有権——私的所有権というものについての考え方でありますが、しかし台帳とか登記というのは、そもそも手続法であり、一種の技術的な制度でありまして、国民権利意識というようなこととは、それほど密接な関係にあるものでもない、こういう技術的な制度については、手続が便利になるということが大切ではないだろうかというふうに考えております。もっとも手続法にしましても、たとえば戸籍法というようなものをとってみますと、これは昔の戸主があった大きな戸籍を解体して、小家族の戸籍に直しましたが、こういうものは相当国民権利意識影響があるから、よほど慎重に考えなければならないと思いますが、登記のような制度は、それよりもさらに技術的なものではないか、こういうふうに考えております。  次に、第二の点といたしまして、新しい登記簿——これからの登記簿というものの性格が不明確である。従来は登記簿というのは私的な権利を表わしていたのに、新しく表題部というものを設けて、権利でないものを表わす。つまり、ものの現状を表わすということにするのは、登記制度としておかしくはないか、そういう反対考えられます。しかし今回の改正は、名前登記簿ということになっておりますが、その内容は、従来の台帳登記簿とを一つにまとめたものでありまして、たとえば登記制度として職権で調べると可あるいは立ち入り検査をするとか、罰則をかけるのはおかしいというような意見もあるわけですけれども、しかし台帳としてやっていたことを、登記簿という名前になったからといって、やっていけないということはないのではないか。つまり、職権主義立ち入り検査罰則というようなものは、前から台帳制度に伴なっていたものでありまして、もとの台帳制度そのものがいけないというなら別ですけれども、今までの制度を一応前提にして考える限り、それから特に変わったところはないのでありまして、名前登記簿になったからといって、それをやっていけないという理屈はないのではないかと思っております。さらに登記というものが私的な権利だけを扱うものであり、しかも任意主義でなければならないというのも、どうも固定的な考え方だと思われます。これからの登記簿というものを、性質上は従来の台帳登記簿を集めたものだといって説明してもいいわけですが、さらに進んで、そういう新しい発記制度というものが、つまり従来の台帳も含めた新しい登記制度がここで作られたというふうに説明しても、別に差しつかえはないのでありまして、登記制度というものはこういうものであるというふうに、きめてかかる必要はないのではないかと思っております。これは台帳登記簿両方性格を持つものだと説明しても、あるいはそういう新しい登記制度だと説明しても、どちらでもいいと思うのでありまして、これはあとは説明する人にまかしておけばいいことで、個々の問題としては、今考えられているそういう制度がいいのか悪いのかということを考えればいいのでありまして、あと性格は、また学者がいろいろ議論するだろうと思いますが、それはそういう人にまかしておけばいいのであって、それだからといって、今度の登記簿制度がおかしいということは、どうも言えないのではないかと思っております。  次に、考えられる第三の反対といたしまして、今の台帳制度日体がおかしいという議論考えられます。つまり、台帳というものは、もともと税金のもとになるのだから、本米、県でいいますれば、固定資産税を扱う市町村に持っていくべきものである。それを移管のときに登記所に持ってきたことがそもそもおかしいのである。台帳市町村にまかしてしまえ。登記所は本来の登記だけを扱えばいいという議論考えられます。これは確かに台帳登記簿についての根本的な議論でありまして、傾聴すべき点を含んでいるわけであります。しかし、この点につきましても、かりに台帳市町村に、それから私的権利登記登記所にというふうに分けますと、その点で、手続の上で不便が起こるのではないか。今よりもどうも不便になるのではないか。さらに進んで、台帳台帳として登記名儀と別に、違ってもいい、全然別個制度で切り離してもいいという議論もあるわけだと思いますが、しかし税金は払いたい人の名儀にして、別に真実所有者を必ずしも探す必要はないというような意見もあるようですが、しかし、そもそも固定資産税というものは、やはり所有者担税力を認めて、それに税金をかける。そうして払わないときには、その持っている財産に執行もしていけるというようなものでありまして、やはり所有名儀台帳名儀とは一致させるべきものではないか。さらに税金ばかりでなくて、都市計画とか土地収容とかそういういろいろの計画の場合を考えますと、やはり台帳登記簿が全然切り離された別個制度であるということはどうも不便であります。改めて都市計画をするときに所有者がだれかということを調べるというのでは大へんやっかいでありまして、やはり初めから統一的な制度として一応できるだけ完全な地籍簿家屋簿というようなものを備えておくことが適当ではないかというふうに思っております。さらに二つ制度をかりに切り離したといたしますと、登記真実性を確保するということもむずかしくなるのではないだろうか、たとえば昭和十七年までは家屋台帳という制度がなかったわけでありまして、別の形で所有権を認定して登記をしていたのでありますが、その時代には家屋登記というものは大へん間違いが多いということが言われておりました。家屋台帳があって、それと連絡がつけられるようになってから家屋登記というものもかなり信用できるようなものになった。やはり、できるだけこの二つ制度は結びつけていくのがいいのではないかと考えております。さらにまた、今の登記台帳とを別々にするということで、登記簿上の所有者というものは登記したくないものは放っておけばいいのであって、これも真実所有者と違っても差しつかえない、別に登記をしたくないものにさせる必要はないということが言われておりまして、これは現在のわが国登記対抗要件とする制度のもとでは、確かにその通りでありますが、私は登記制度理想としては、やはりできるだけ所有権と一致させるべきではないか。たとえばドイツにおきましては、登記物権変動対抗要件ではなくて、効力発生要件であるということになっておりますが、わが国でも将来の方向としてはそういう方向に向かうべきでありまして、発語の方もできるだけ真実を反映させるということが理想ではないかと思っております。さらにまた、かりに台帳市町村にまかせたといたしますと、これは市町村能力とか熱意というものはその市町村によってかなりまちまちでありまして、統一的な帳簿としてそれを維持していくのはなかなかむずかしいのではないだろうか。以前は税金のことで申しましても、地租家屋税が国税でありまして、税務所台帳を管轄しておりまして、そのために統一が計られていたと思いますが、かりに将来台帳を完全に市町村に還元したといたしますと、市町村によって相当でこぼこができる、また、登記所も現在それほど現状把握能力があるとも思われないのですけれども、将来の方向としては、やはり国としてまとめたそういう帳簿を作っていくべきではないか、まあ、他方で国土調査法などで相当ゆっくりと厳密な帳簿を作っておられますが、ああいうようなものをもっと進行させて、完全な、やはり国として統一された地籍簿家籍簿というものを作るのがいいのではないか、そういう意味からいいまして、今のところ、市町村にまかすのはやはり適当ではないというふうに考えております。  さらに考えられます第四の反対意見としましては、こういう一元化というようなさまつな問題をやるよりも、もっと登記制度としては根本的にやるべきことがたくさんある。それをやるべきで、一元化ということで問題が解決したように思うのは間違いだという意見考えられます。確かに私も、登記制度としてはいろいろやるべきことがたくさんあるという点はまさに同感なんでありますが、しかし、それだからといって、今の一元化をやるべきでない、あるいは、やらない方がいいという意見にはならないと思うのでありまして、それは一応別個の問題として切り離して考えていいことではないか。一元化がいいことならば一元化する。ともかく今の段階でやって、さらにやるべきことがあれば別にまた考えていくということで差しつかえない。また、一元化だけで問題が解決すると思っている人はだれもいないと思うのでありまして、そういう考え方があったらもちろん困りますけれども、一元化だけでは問題は少しも解決しない、今の制度がただ利用しやすくなるという点の利益だけだというふうに考えております。  それでは、さらに登記制度として考えるべき点としてはどういうものがあるかと申しますと、幾つか思いついた点を御参考までにあげてみますと、たとえば第一には、現在の登記制度では土地家屋との関係というものが全然別個になっておりまして、これは連絡がよくわからないのであります。たとえば家屋登記簿の上で調べようと思いましても、これは家屋番号というものが基礎になってできておりまして、探すことが非常に困難である、たとえばある土地の上に家屋があるのかないのか、その家屋登記があるのかないのか、これはたとえば現在では建物保護法建物登記には借地権対抗力が認められておりますから、そういうことを調べる必要があるわけですけれども、それを調べようと思ってもはなはだ調べにくい、もっともわが国では土地家屋が別のものとされておりましたので、一つ家屋幾つもの土地の上に立っていたり、また一つ土地の上に幾つもの家屋があったり、その関係は大へん複雑で、それをいきなり関係をつけろといっても無理かもしれませんが、将来の方向としては、土地から家屋がすぐ引ける、また家屋から土地がすぐ引けるという制度をだんだん考えていくべきではないか、これが第一であります。  第二の点といたしましては、登記簿公信力を認めたらどうかということは昔から問題になっておりまして、つまり登記簿を信じて取引をしたものを保護するべきではないか、現在では幾ら登記簿を信じて取引をしましても、それは権利を取得し得ないのであります。もっとも公信力を認めるためには、登記所で、ある程度の実質的な審査をしなければなならぬ、現在では書類だけで形式的な審査をやっておりますが、実質的審査権とともに公信力を認めるということも検討していいのではないか、この点は、現在いわゆる土地の詐欺というものが大へん横行しておりまして、今のままではもちろん公信力を認めるということは無理だと思われますが、将来は何かそういう虚偽の登記をなくしながら登記に強い力を認めていくということも検討していいだろうと思っております。  さらに第三の点としましては、登記所設備が悪い、あるいは能率がよくないということはよく言われていることでありまして、登記所に入ると大へん印象がよくない、暗いし、何か陰気な感じがするというような点、あるいは登記手続の上で司法君主というものが非常に力を占めておりまして、司法井上を通さなければなかなか登記というものができないという点もございます。そういう事務的な能率とか設備というような点でさらに改善をしていただきたいというふうに考えております。そういうようないろいろな点が、将来の発記制度考える場合に問題になるわけでありますが、しかし、今回の一元化という問題は、それとは一応切り離して、これはこれとして実現させていきたいというふうに私は考えております  これで私の口述を終わります。
  5. 大川光三

    委員長大川光三君) ありがとうございました。   —————————————
  6. 大川光三

    委員長大川光三君) 続いて、日本勧業銀行調査役堀内仁君にお願いいたします。
  7. 堀内仁

    参考人堀内仁君) 勧業銀行調査部におります堀内でございます。  この法案のおもなる目的は、不動産登記制度合理化をはかるため、登記制度台帳制度一元化し、登記手続に関する規定を整備しようとするものでありまして、その実施によって経済界の受ける利益は少なくないと考えます。私ども不動産取引を実際にやっておりますものといたしましては、一日も早く法律として成立するのを希望する次第でございます。  土地台帳並びに家屋台帳制度を廃止して、不動産登記簿に吸収し、両者を一元化することは、私ども実際取引をやっておりますもののすべてが希望するところでございまして、一昨年十月、経済団体連合会から当局に対してこれに対する要望意見を提出いたしましたのは御承知通りでございます。現行法のもとでは、銀行不動産を担保にとって融資をする際には、登記簿台帳両方調査し、不動産表示が両者食い違っていないかどうかを確かめる必要がございます。もし違っておれば台帳面通り記載した契約書を作成し、台帳通り登記面を変更する登記手続をとりました上でなければ、抵当権設定登記申請を受理してもらえないからでございます。従いまして、銀行の係員が、取引に際し登記所に行って調査をする場合には、登記簿台帳両方を閲覧する必要があります。また、謄本によって確かめようとするとすれば、登記薄台帳両方謄本について調査しなければなりません。不動産の売買の場合にも同様のことが言えます。一元化によって登記簿調査だけで済むということになりますと、取引当事者の負担が軽くなるのは明瞭なことでございます。両制度一元化しました場合に、最も問題となりますのは、登記制度登記するかどうかを当事者の任意とする建前をいたしておりますのに反し、台帳制度の方はその性質上、所有者に登録義務を課する必要があることでございます。この法律案では、不動産登記を、表示登記権利登記の二種とし、表示登記だけを所有者の義務とすることによって、実質的には現行法と変わらないようにして、巧みにこの点を調整しております。また表示登記には、原則として登録税を課さないことにしておりますので、表示登記に関する限り、現在よりも手数並びに費用の点で当事者の負担を軽減いたしております。従いまして、両制度一元化の実現は、早ければ早いほどよいと私どもは考えております。この法律案で、私ども実際に取引をやっておりますものが最も問題にしております点は、保証書によって登記申請がされた場合に、現行法では登記義務者に対し事後通知をすることにしておりますのを、事前通知をするように改めたことであります。このため、取引の遅延する場合の多くなることは免れませんし、また、当事者の手数や負担を増すごとにもなりそうであります。聞くとろによりますと、保証書による登記申請の件数は、年間六十万件に上るというようなことでございますから、相当影響があることと思われるのでございます。この法律案によりますと、保証複による登記申請を受けました登記官吏は、登記義務者に対し郵便でその旨を通知し、通知を受けた登記義務者から、書面で登記申請の間違いのない旨の申し出があったときに登記申請書を受け取ったものとして登記をするということになっております。それで、当事者が申請書を出して登記簿登記されるまでには、どうしても数日を要するということになります。この空白期間に差し押え、仮差し押えなどの登記所有権移転の発語、担保権設定登記などがなされる危険がありますので、その間は金銭の受け渡しを行なうことができない。当然それだけ取引が延びる結果となります。もし現在通り登記申請をした自に取引をしようと思うならば、別に仮登記をして、順位を保全するというような措置をとる必要がありまして、その分だけよけいな手数や、費用がかかるということになるわけでございます。すなわち現在よりも取引がおくれるか、手数がかかるかというような結果が出て参ります。なお、私の勤めております銀行でも、ときどき保証書による登記をした旨の通知を登記所から受け取ることがございます。それは取引を終わったときに銀行が返還いたしました抵当権設定契約証井を紛失して、保証書で抵当権抹消登記をされる事例が益々にしてあるからでございます。大ていの場合、取引が終わってから、長い間登記をしないでほうっておかれた場合に起こることであります。しかもこの通知は銀行の本店あてになされるのであります。と申しますのは、登記権利者として支店名が表示されておりませんので、登記所からの通知は、自然本店あてになされることになるからであります。従いまして、銀行では、受け取って調査するのに一苦労いたします。通知書にはもちろん不動産の所在を記載してございますが、必ずしももよりの営業応で担保に取っておるとは限らないからでございます。ところで、現行法のように、事後通知の場合には、調べてもわからなければ、そのままほうっておいても、別にさしたることはございません。しかしこの法律案によりますと、通知をした登記所に対して三週間内に、それもできるだけ早く申し出をしなければ、登記申請人に大へん迷惑をかけることになります。と申しましても、不正な抹消登記がされておる場合でありますと、これを見逃しまして、銀行が間違った申し出をいたしますと、今度は銀行が抵当権を失うというような結果になりかねないのでございます。そういう面でも、当事者の負担が重くなるということが考えられるのでございます。事前通知に改めることによりまして、ある程度真実登記義務者の関知しない登記がなされることを防止する効果があることは確かでございましょう。しかし、それは数えるに足りない程度のものではないかと私は考えるのでございます。地面師のような相当大がかりな組織を持ったものは、当事者の印鑑証明書から権利書まで偽造するので、この方法で被害の発生を防止することはおそらくできないのではなかろうかと思うのでございます。また、事前通知に切りかえることによって、現在のように保証書による申請の件数の増加するのを防止するということにも、あまり期待は持てないのではないかと考える次第でございます。現在保証書による登記申請の多い原因の一つとして、不動産を担保に取った債権者が、担保物権をさらに担保に入れたり、他に譲渡したりするのを困難にするために、権利書を預かる、そういう例が多いことをあげることができます。現行法のもとでは、この債権者の意図はきわめて簡単に裏切られるわけでありますが、それにもかかわらず、政府金融機関を初めとして、この方法をとっております金融機関が相当にございます。ところで、保証書による登記申請が不自由になればなるだけ、債権者としては権利井を預かっておく実益があるということになりますので、この方法を採用するところが、これまでよりもふえることになりかねないからでございます。以上の次第で、私は保証苦による登記申請については、罰則を強化するにとどめまして、現行規定のように事後通知としておく方がまさっておるのではないかと考えるのであります。しかしこの際、どうしても保証書の乱用を防止するために現行規定を改める必要があるとすれば、登記済証の再交付の制度をとるよりも、この法律案が採用しております事前通知の方法をとる方がまだましであると考えます。登記済証再交付の方法をとりますと、取引を、この法律案がとっております事前通知の方法をとった場合よりも、さらに遅延させるおそれが多いと思われるからでございます。  次に、この法律案のうち、経済界で最も問題といたしました点は、外貨幣で表示されております債権の担保権の登記手続を定めた百二十一条の規定でございます。この規定によりますと、外貨債を担保とする抵当権の登記をする場合には、当事者間の特約で、現在の為替換算率にかかわらず、適当な金額を定め、これを担保限度額として登記するということになります。そのため将来の為替換算率が著しくわが国に不利となる場合のあることを心配するのあまり、債権者が過大な担保限度額を債務者に押しつけ、そのために債務者が迷惑するおそれがある。それで、外貨債そのものを債権額として登記することを許すことが適当ではないかという意見が相当強いのであります。しかし、これはすでに現在行なっておることを明文化したにとどまることでありまして、これまでのところでは、ただいま申しましたような弊害も呪われていないようでございます。さしあたりはこの規定で差しつかえないのではないかと私は考えております。  その他の点は、いずれも大体において合理的に改められておりまして、特に不都合なところは認められないようでございます。  はなはだ簡単でございますが、以上で私の参考意見を終わります。
  8. 大川光三

    委員長大川光三君) ありがとうございました。   —————————————
  9. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、法政大学助教授伊藤道保君にお願いいたします。伊藤参考人
  10. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) 法政の伊藤でございます。ただまいろいろ御意見がありまして、現行法を前提とされた上でのこまかい技術的な問題点についてお話があったわけですけれども、私の場合は多少観点を異にしまして、もっと基本的な問題からもう一度この問題を見直してみる必要があるんじゃないかと恐たものですから、こまかい点も触れれば幾らでも触れる必要はあるわけですけれども、一応、最初に基本的な問題点を五つか六つにしぼって御報告申し上げたいと思います。  私は、実は数年前にフランスの不動産登記制度がかなり大きな改正が行なわれまして、——一九五五年に改正があったんですけれども、——それを、機会があって調べることがございまして、その照会をしたことがあったんです。そのときにフランスの登記制度について感じた印象から今度のわが国登記制度改正を見た場合に、かなり基本的な点で問題があるような気がしたんです。ですから、まずその点を中心にして、大ざっぱなお話で恐縮ですけれども、最初は問題点を出してみたいと思います。  で、日本とフランスの場合、制度を比較するという場合ですね、よく、つまり物権変動の意思主義の原則を両方ともとっているという点で、日本とフランスとは共通の——まあ不動産登記制度の論理的前提は共通であるという点で、しばしば指摘されるんですけれども、そのわりには、つまり登記制度それ自体が、フランスはどうなっているかということは、今まであまり論じられていなかったですね。これはどういうわけかということは、これはかなり本木的な問題がここにあると思うんですけれども、実は、御承知のように、民法典全体としてはドイツ民法典をまあ模範にしておきながら、物権変動の意志主義の原則に関してだけはフランスの制度を模倣しているというところに、そもそも根本的な問題があって、そのために、登記制度ばかりではなくて、この財産法の全般的な分野にわたって、かなりむずかしい問題、解釈論上困難な問題が起こっているということは御承知だと思うんですけれども、登記制度について言いますならば、やはり同じことが言えるんで、登記制度そのものの論理的前提である意思主義の原則は、フランスをまねしていながら、登記制度そのものは、まあどちらかといえばドイツをまねしているということがあったために、従来の登記法の解釈についていろいろな困難な点がやはり生じている。そのこともありますし、それと同時に、今度はフランスの場合と日本の場合とでは、意思主義の点では同じだけれども、登記制度の点についてはそういうふうに大へん違うから、あまり比較しても参考にならないんじゃないかということも、従来あまりフランスの場合が問題にされなかった一つの理由ではないかと思うんです。で、私も、ですからフランス法を見る場合には、直接日本の法律にとって参考になるということはあまり意識しないで、フランス法そのものを純粋に見てきたんですけれども、ところが、その立場からたまたま今度の改正の問題を見ますというと、つまり、フランス法で常識的に大前提とされ、あたりまえとされていることが、日本では全然違う。どうしても、そういう点で理解に苦しむという点がずいぶん多いんです。で、この違いが何を意味しているか。同じ意思主義の原則で、こういう制度もある、フランスの制度もあり得るんだ、同時に日本の制度もあり狩るんだ、どちらも近代的な登記制度として両方の建前が成り立ち得るんだということなのか。それとも、日本の法律とフランス、どちらが合理的であるかということは、こまかいところまで論じなければ一がいには言えないかと思いますけれども、私の受けた印象では、かなり日本の登記制度の方が考え方としては古い。さらに物権意思主義の原則との食い違いというものから、論理的な矛盾も至るところにあるんじゃないか、そういう気がしたわけなんです。で、そういう意味で、こまかいところまで実は調べて見なければならないわけですけれども、おもな問題と感じたところを五つ六つにしぼって、これから御報告申し上げたいと思います。  第一点は、この登記制度に対する根本的な考え方の違いですね。この点が一番基本的な問題なんですけれども、これは、さしあたっての問題というのはこういうところにあるんです。つまり、日本で今度職権主義という言葉が、登記制度に説明をする場合に使われるわけですけれども、本来言うならば、この職権主義などということは、登記制度には考えられないことなんじゃないかということなんです。具体的な例から話しますと、こういうことがあるんです。今度改正されますというと、登記所に預けている私なら私の登記簿表題部が、私の知らないうちに取りかえられるわけですね。取りかえられて、そして税務署の課税台帳がそれにくっつけられるわけです。そういうことは、本来、所有者に断わりなしにはできないはずのものじゃないだろうかということなんです。このことを深刻に考えますというと、いろいろな疑問点が出てくるのですね。お話を聞くところによりますと、全国で約二億二千万筆個の表題部のすりかえが行なわれるそうですけれども、これを間違いなく行なわれるかどうかということの保障は、はたしてだれがしてくれるのだろうかということなんです。まあ登記所の手数の関係などから、七五%——実務の七五%までは臨時雇なんかの人を雇って、書きかえが行なわれているのだそうですが、もちろんその場合には、読み合わせなんかは何度もされるでしょうし、厳重に検査が行なわれるのでしょうが、しかし、その場合、第一に、この書きかえをやる人は、ほとんど登記の実務には責任のない臨時雇の人がやるわけですね。で、どういう人が臨時雇になって入ってくるか、わからないので、ここに、悪く勘ぐれば、悪質な地面師のような人が入ってきて、そして変な書きかえをしないということの保証がはたしてあるか。全国で何万人の職員の方がおられるかわかりませんけれども、そういう人の中に、変な人が入ってこないという絶対的な保証はあり得ないのじゃないかということ、これが一つ。  それからもう一つは、現行の登記表題部と、それから税務署の課税台帳表示と必ずしも一致していないものもあるわけなんです。この一致していないものを、これはこの課税台帳はこの部分に当たる、この登記簿のこの部分に当たるのだろうということで、くっつけるわけですよ。これをだれがくっつけるのか。まあ間違いはないだろうということは、お役所の内部では言われるけれども、このくっつけられるのは所有者自身の大事な登記簿なんです。それが本人が知らないうちにくっつけられる、書きかえられるわけなんです。で、こういうことが常識であるように、常識で当たりまえの、大して問題でないと考えられているところに、そもそも日本の登記制度に対する一般の人の考え方の根本的な間違いがあるのじゃないか。これは一般の人から見れば、まだまだ登記制度というものは、不動産取引の中にほんとうに滲透しておりませんので、中には、全然、ほとんど登記もしないで、不動産の売買をなすということすらあるようなんですけれども、そこに一般の人の意識と、それから登記制度というもののズレがある。しかし、そのズレをいいことにして、しかし、一方では登記というのは非常に法律上大事な、強い効力を持っているものなんですから、そのズレというものを見る場合に、登記の方が大事なものか、個人の権利の方が大事なのかということですね。この点をやはり十分考えた上で、登記簿の取り扱いというものはしなきゃならないのじゃないだろうかと思うわけです。ですから、たとえば今度この書きかえられるということについて、役所の内部では間違いなくやったということをきっと言われるに違いない。しかし、権利者の側から見れば、表題部が変えられたということを聞くと、一度はやはり見に行きたくなるはずじゃないか。で、たとえ間違いがないと幾ら言われても、間違いがないということを最終的に確認するのはだれがするのかというと、これは権利者自身以外に確認する人はいないはずなんですね。すると、それを確認するためには、どうしても謄本か何か取らななきゃならい。ですから、私はもしこういうことをやられるならば、二億二千万筆個について、登記簿謄本を作って、権利者に全部読ますべきである。この通り書きかえました、間違いがないか、確認して下さい、もし間違いがあれば、早く異議を申し出て下さいということを言うべきじゃないのでしょうか。おそらく全国の六一分の権利者は、こういうふうに書きかえがなされるということを気がつかないでいるだろうと思うのです。これは気がつかないのは、先ほど申しましたように、権利者は自分が住んでいる家や、自分の家が建っている土地ですね、土地は、自分がそこにいるから自分のものなんだと思っているわけです。登記簿に書いてあるから、自分のものなんだとか、登記簿によってどの程度に法律上保護されているかということは、あまり知らないわけです。その事実を無視して、登記所の内部の都合だけでこういうことをされるということの意味ですね、そのことの背後にある登記制度関係、そういうことが一番問題である。  このことをよくわかっていただくために、もう少し例を申しますと、たとえば本来の登記制度というものは、個人の財産を安全に保管してくれるための国家の機関であるということが前提であるはずです。これは、たとえて言うなら、銀行の貸し出しロッカーがございますが、ああいうものなので、あれは、動産をおもにあそこに保管するわけですけれども、これにたとえますと、登記所銀行に当たるわけです。で、借りた人は、自分のロッカーのかぎを持っていて、そのロッカーの中には、たとえば貴重な宝石だとか、それから預金通帳とか株券とか権利書とか、あるいは遺言書まで書いて、入れておられる場合もあり得るわけです。そうして、そのかぎを銀行に預けているしというようなものだ、こういう例をちょっと思い浮かべていただきたいと思うのです。その場合に、職権主義というのは、かぎを預かった銀行の人が、本人に断わりなしにかぎであけてみるようなものじゃないか、そういう気がするのです。そういう意味で、他人の、個人の私有財産の中で最も価値の多い不動産というものを預かる国家機関としての職権主義というようなものは、本来あり得るかということなのです。  職権主義ということでちょっとお断わりしておきたいと思いますのは、職権主義ということと、登記管理の書類や実体管理の形式や内容に対する審査権ということとは、この場合本質的に違うということです。この審査権というのは、いわばさっきのロッカーの例で言いますならば、こういうことです。私が、ある銀行のロッカーを借りて、かぎを銀行に預けてあるとします。自分でロッカーをあけにいきたいけれども、あけにいけない場合に、代理人をよこす。代理人は、私は伊藤道保の代理人でございます、かぎをいただきたいと言ってきた場合に、銀行側では、大事なロッカーを預かっておるものとしては、その代理人はほんとうに代理権があるかどうか、代理人本人であるかどうかということを調べなければならない、調べるためには、本人の家まで行くことも場合によっては必要でしょうけれども、電話で本人に問い合わせることも必要でしょう。そうして、その人はほんとうに代理人である、代理権を与えられていることに間違いないということを確かめるまでは、かぎを与えることを拒否することがあるわけです。これは権利です。これは登記史のいわゆる審査権に当たる、大事な金庫番としての機能を十分に果たすための機能であるにすぎない。ところが職権主義というのは、それとは逆になるわけなので、断わりなしにかぎをあけられるということになるのじゃないか、こういうことが、日本の登記制度の根本的な考え方としてあるということそれ自体が、この際、もう一度考え直してみる必要があるのではないかということなのです。  で、私は、こういうことを感じましたのは、フランスではこういう場合、すべて自由主義精神をとるのです。これはあとでまたお話ししますけれども、フランスでは一九五五年に大改正があったのです。そのときに、改正一つの技術的な大きな点として、原簿の保管に、原簿を参照するのに参照しやすい索引カードを作ったわけです。これは原簿には全然関係ないんです。ただ、原簿の中の要点を索引に作って、ちょうど図書館の図書の索引カードみたいなものを作っただけです。図書そのものには手を触れないわけです。その索引カードを作ることだけでも、やはり自由主義精神で、権利者の力から、たとえば抵当権の設定とか所有権と移転とか、あるいはおやじがなくなって相続したとかというときに、登記申請書類が出ますね。そのときに、その件に限って新しくカードを作るわけです。ですから、カードが作られたということだけでも本人に必ずわかるわけです。カードの内容は、もちろんそのときに、抄本か謄本か取って見られるわけです。そうして、そこでカードの書き方に間違いがあれば、異議の申請ができるということになっています。従って、非常に不体裁ではありますけれども、カードがほぼ全国的に完備するまでには、少なくとも一世代はかかる。つまり二十五年ないし三十年は少なくともかかる。そうして初めてカードというものが一応そろうということになるわけです。それでいいんじゃないかと思う。本来他人の財産を預かるだけのものであれば、それがほんとうなんじゃないか、そういうふうに思うわけです。そういう常識から見て、日本の場合、職権主義というのは一体どういうことなんだろうかということが、第一に気になってくる点です。  それから第二の点ですが、これは課税台帳登記簿を一本にするということですね。このことは一体どういう意味を持つのか。これは、こまかい解釈論の問題がここから出てくるということもありますが、多少抽象的になりますけれども、一応ここでは基本的なものの考え方ということからまずお話しておきますと、歴史的に見るというと、課税台帳——つまり国家が税金を取るための台帳と、それから個人が自分の財産を保存するための登記簿というものが分かれてきたというのが、近代の歴史の方向なんです。迂遠な話になりますけれども、つまり封建時代などでは、土地の所有、土地の支配をAさんからBさんに移すということは、純然たる個人的、私的な関係ではなくて、そのときの政治的な権力者に対する忠誠、服従のための意思表示というものなしにはこれは行なわれなかった。つまり土地の支配権の移転ということには、必ず権力者の承諾が要るし、また、そうして服従を誓うことによって、安堵せしめられていたということがあったわけです。ですから、土地の売買には必ず権力が干渉し、そうしてそのことによって、同時に最も大きな財政収入の根源にもなっていたというのが、近代以前の社会における不動産取引性格だったわけです。その不動産取引に対する公権力の介入というものを排除して、完全に不動産取引及びその公示制度というものを、公法私法との分離の上に立ったところの純粋な私法の分野に限ったというところに、いわばフランス革命の意義があったわけなので、そういう意味で言うならば、この不動産取引から全く政治権力の介入を排除したということが、まさに革命の中心的成果であると言っても過言でないくらいのものではないかと思うんです。それ以来、徴税制度というものと、それから個人の私有財産である不動産取引及び保存のための制度というものとは、はっきり分かれてきた。分かれるのが当然のこととされてきたわけです。で、今度の改正の場合を見ますというと、これは多分にやはり徴税機構が登記簿におんぶするというようなところも感じられる。これはそのこと自体、かなり時代錯誤ではないかということを感じると同町に、また必ずしもそうではないが、やはり登記簿に徴税機構がおんぶすることだって、公法私法と別々に分かれていて、全然お互いに関係ないということであって、その上でおんぶするというのならばまだわかりますけれども、今度完全に帳簿一つになってしまうわけなんです。そうしますというと、まさに公法私法との混淆になってしまうのじゃないか。ですから、帳簿を一緒にくっつけるということは、少しも差しつかえないと思うのです。そのこと自体は差しつかえないと思うのですけれども、それによって、本来課税台帳にだけしか考えられないところの職権主義というものが、純然たる私法の機関である登記簿に加わってくるということですね、内容が融合してしまうということ、このことが問題ではないかと思うわけであります。おそらくそのことさえなければ、徴税機構が登記簿におんぶして、国家機関として個人の私有財産を登記簿で保護してやるから、そのかわりに税金もかけさせろということになるのは、少しも差しつかえないと思うのですが、それはお互いがはっきり区別されているということを前提にした上での話ではないかと思うわけであります。それが、課税台帳が同時に登記簿の表題になるということであれば、以上言いましたような、そもそも考え方自体が時代錯誤であるというばかりでなく、第三に、そこからいろいろ談論されておりますように、表題部登記私法上の性格いかんということが問題になってくるわけなんです。こういう無理な結びつけ方をするものですから、本来純粋な私法的の性格だけに限っておけば問題ないものを、そこにそんな公法的の行為が加わってくるというと、その行為の私法上の効果ということが、純粋の私法立場から見て、説明がつかなくなる。これはいろいろ解釈はされるだろうと思いますけれども、説明つかないのがほんとうで、当然なんじゃないでしょうかという気持がするわけです。こまかい議論は時間の関係もありまして省略いたしますけれども、その点が第三の点です。つまり職権によって登記されたところの表題部の効力が、以上言ったようなことから、非常にあいまいになってくるのじゃないかということです。  それから第四点として、今度の改正の一番中心の目的は、この登記事務の簡素化にあると言われているわけです。第四点として登記事務の簡素化という問題についてですが、フランスの場合を見ますというと、登記事務はますます複雑化して、分化してきております。フランスの例を少し詳しくお話をしなければなりませんけれども、フランスでは、もともと登記簿というものは日本は——登記簿はドイツのまねをしているので、たとえば所有権が、売買によって甲さんから乙さんに移転したという結果だけが、つまり物権の移転だけが表示されているわけですね。これはドイツのシステムなんです。これに対してフランスのシステムは、意思主義の原則を前提とするからには、民事上当然そうなるわけなんですが、登記の内容というのは、売買契約なら売買契約のその内容を一カ条から全部転写されるわけです。抵当権設定契約書そのままを転写される。そのまま契約全体が公示されるという方法をとるわけです。これは詳しくお話しする必要もあるのですが、本来、意思主義の、原則を前提とする限り、当然こうでなければならなかったのです。これをやらないで、ここの部分だけはドイツのまねをして、権利の移転だけを記載するということをやっているところが、そもそも日本では両方のいいところをとったというつもりでいて、非常に矛盾したことになっているのです。そういうわけで、フランスでは登記の原簿の内容は、一カ条一カ条全部契約の内容が写されているわけですが、それでは索引するのに非常に不便なわけです。だから今度この索引簿というのができたのです。索引簿というのは、先ほど申しましたように、図書館の図書の索引簿みたいのもので、三種類のカードができるのです。図書館の図書カードになぞらえて言いまするならば、一つは著者名による索引薄、それから書名による索引簿、それから問題別による索引簿、この三通りの索引簿ができている。それじゃそれはどういうふうにして記載されるかといいますと、先ほど申しましたように、まず権利変動があった場合に、登記申請がありますね。それを受け付けたときに、それに関する部分だけこの索引簿を作るわけです。そしてその転写の仕事を一カ条一カ条全部原簿に書きます。それから所有者票、土地票、不動産票という三通りの票があるわけです。それぞれのカードに、この問題については第何冊目の第何ぺージに書いてあるという摘要だけを記入するわけです。この仕事は全部登記吏員がするわけです。そうすることによって一般市民は大へんに便利を受けるわけです。Aさんという人の財産はどれくらいあるか、それを引けばすぐわかるわけです。あるいは何丁目何番地何号の土地は、持ち主がだれであるか、抵当権がついておるかどうかということを調べようとすれば、すぐ引ける。非常に索引照合が便利になった。これは大へん市民に対するサービスですね。なぜこういうことをやったかという、もともとフランスでは、不動産取引というのは、事実上、今までは登記所の世話にならないで、実際は公証人が最も重要な役割りを果たしておった。事実上、不動産取引は公証人の目の前で契約書を取りかわし、現金を払うことによって、所有権はそのときに移転したという権利意識が実際当事者の間にあるのです。登記所というのは、単なる国家がそういうものを作ってくれたから、仕方がないから載っけておこうというものであったのです。それがだんだん、それじゃいかぬからということで、これは経済取引のそれからその後の発展段階に応じて、公証人の個人的な役割りだけではとうてい円滑に間違いなく行なわれ得ないということになって、もっと登記所というものをちゃんとせねばいかぬということから、登記所というものが整備されてきたわけです。そういう背景を持っているわけです。そこで、今まででも、やはり登記所というものを知らないで、公証人の目の前だけで取引した。公正証書か私署証書か作って公証役場に契約書を保存してもらうわけです。それでもって取引が終ったと思っている人が多いのですが、そういう人を少しでも登記所の方になじませるために索引簿というものを作ったのです。ですから、これは大へんはサービスなんです。そのためには人員も、そこまでは私は調べてもおらぬのですけれども、相当ふやさなければできないはずなんです。そうなっていくのが、つまり登記制度の進歩の方向なんじゃないだろうか。それに対して、事務の簡素化ということは、目的によって簡素化するということは場合によってはあり得るかもしれませんけれども、今度の場合は、むしろ簡素化といわれるよりも当然すべきことをしないで、手を抜くだけじゃないかという点ですね、そういう気がするのです。いわば会計帳簿で言うならば、だんだん合評帳簿が分化して複式簿記とか何とかなったが、大福帳簿記にしてしまう。そうしてあいまいなところを、工合の悪いところを職権主義でもってカバーしてしまうというようなことになるのじゃないだろうか。そういう基本的の性格があるために、こまかいところになると、数限りないわからないところが出てくるのじゃないか。いろいろ議論されるところが出てくるのじゃないかという気がするわけです。で、私こういうことを言いましても、このためにこういう問題とこういう問題とこういう問題があるという、全部を数え上げているわけじゃないのですけれども、今まで議論されているところを見ますと、今言ったようなところから、根本的な原因が説明されるのじゃないかという気がするわけです。  以上言ったことは、つまり、事務の簡素化はむしろ逆である。登記制度の複雑化の傾向に逆行するということが第四点であります。  それから第五点は、構図ですね、それから課税台帳登記簿との関係ですね。で、先ほど申しましたように構図、課税台帳というのは、登記簿として本米全然別のものであり、そうして税務署が職権でもって作ってきたものなんです。ところが、今度は、一方では私法——私的所有権を保護するための登記簿の方では、やっぱり表題というものが要るわけです。表題を入れるのは、つまり権利の客体を特定する必要があるから、特定する必要がある場合、何によって特定するかというと、さしあたって構図と台帳以外にないわけです。だからこれをやむを得ず借りているわけです。ところが構図や台帳というのは、御承知のように非常にあいまいなもので、決して正確なものではない。しかしほかにたよるべきものがないから、構図や台帳を基礎にして、およそあのあたりの、およそこの広さの、およそ何坪の土地というふうなことで登記簿表題部に書いてある。それ以上のことは言えないはずなんです。だから、実際は百八十坪である所が百五十坪しか書いてないという場合がしはしばあるわけなんです。それでもいいわけなんです。そのかわりに、登記簿表題部表示というのは、ある程度以上法律的な効力が強められない。つまり構図や台帳があいまいである限りは、登記簿公信力を与えたり、その登記が効力要件になったりということはできないということになっている。これはフランスでもやはりそうなんで、フランスでは一八五五年に初めて近代的登記法が制定された。それから百年目の、今までしばしば改正されているが、一九五五年に登記法の大改正が行われた。百年たっていまだに、初めから論じられておりながら、登記の効力というものが強くなされないのは、構図や台帳が不完全なんです。構図や台帳を完備するのには、御承知のように大へんな費用なり、手間がかかり、一朝一夕にはできない。だから一歩一歩完成に近づけるためにということで、非常に慎重な改正の手段をとっている。そういうものですから、そういう点を考えますというと、構図や台帳と、それから個人の私的所有権の限界をきめるための登記簿表題部と、直接くっつけることは危険が多い。あくまで別々のもので、離しておくべきである。離しておくということは、先ほど申しましたように、帳面の上で一ページ目が課税台帳、二ページ目は登記簿というふうにしてくっつけておいてもかまわない。性格が全然違う。これは公法上のものと私法上のものは全然違う。登記簿は、表題部は別なんだということにして、区別はすべきだ。区別をしないというと、課税台帳がそのままイコール登記簿表題部になるということが、やはり根本的に危険を含んでいる、考え方が違うんじゃないか、そういうふうに考えるわけです。従って、技術的な土台の貧弱さ、つまり構図や台帳があいまいであることの貧弱さを無視して、登記の効力を強くすることはもちろんできませんし、私的所有権の保護ということについては、従って慎重に課税台帳との距離を置くべきだ。だから、不便ではあっても、登記簿表題部を書きかえるときには、課税台帳と直接結びつけないで、その間に証明書か何かでつなぐということはやむを得ないんじゃないか、そういうふうに思う。これはいまだにフランスではその通りにやっている。ますます証明書は厳格になってくるばかりなんです。この点は、おそらく不動産取引専門の業者ならば、こういうことは耐えがたいことになるかもしれませんけれども、しかしこれはあとでも申しますけれども、取引の安全ということと、取引の敏活ということとは一緒にされてはならぬと思うのです。取引をほんとうに安全にしようと思えば、多少手間がかかっても慎重にすべきである。この点をごちゃまぜにしていられるのじゃないかと思うわけです。これが第五点でございます。  大体おもな点、以上五つあげたわけですが、以上言ったようなことから、また二、三ただいま思いついたごとを補充いたしますと、今度の経団連の方の御要望のこと、主観的な趣旨はよくわかると思うのですけれども、今申しましたような取引の安全というよりも、むしろ取引の敏活のために登記制度の本質にかかわるような問題に触れるべきじゃないんじゃないか。近ごろの法律制度、司法制度の傾向として、所有の安全から取引の安全へということがスローガンみたいにいわれますけれども、しかし、それはまず所有の安全というものが完全に確立された上でのことなんで、私が今まで申しましたことからおわかりになると思いますけれども、所有者権利の安全ということは、日本ではまだまだ不安定です。そういう現状を無視して、所有の安全から取引の安全に移るということが近代法の傾向であるというようなことで、実はこれは取引の安全ではなくて、取引の敏活にすぎないということが取り違えられておる。これも大へんな間違いじゃないかと思うわけです。ですから、日本の不動産の持主、頭数からいうならば、持主のおそらく九九・九%までは、人に売るために土地を興うのじゃない。自分で直接利用したり、その上に住むために土地を買い、家を建てるわけです。まず、そういう人たちの権利を完全に保護するために万全の措置をするということをした上で、その上で取引の安全をはかるべきである。その取引の安全のために、ある程度やむを得ず所有の安全というものを犠牲にしなければならない。そういうぎりぎりのところで、初めて取引の安全ということが言えるわけです。ところが現在、おそらく、私は存じませんから、こういうことを断定的には申しませんけれども、経団連の方の御要望の中の実質的な一つとしては、不動度取引業者あるいは店頭業者、そういう人たちは、取引はしょっちゅう日常のことですから、それが一々税務署と登記所の間を行き来するのは大へんだ。だからそれを省いてほしいという御要望があったと思いますけれども、それは取引の安全のためではなくて、取引の敏活のためにすぎない。これは所有の安全を犠牲にしてまでも行なうべきことではないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  それからもう一つ、メートル法への書きかえのためにという理由が、どこかで言われているようですけれども、メートル法の書きかえということも、私は今後の表題部の書きかえみたいに、一ぺんに全国一せいにやる必要は少しもないのじゃないか。やはり自由申請主義で、登記の変更の申請をやったときに、そのときにその部分だけ坪からメートルに書きかえればいいことなんで、全部の登記簿がメートルにかわるのは、少なくとも一世代あと、二十、五年から三十年あとということであっても少しも差しつかえないのじゃないか。そういう形式的なことを、体裁を一年、二年で急いで整えるよりは、そのことによって所有者が不安な気持になることの方が、より大きな損失ではないか。民法典を見れば、民法典はかたかな、ひらがな、ごっちゃですから、そういうたぐいのことではないだろうか、そう思うわけです。何もこれはお急ぎになる必要はないのじゃないかという気がするわけです。  従って、結論的に申しますならば、私は日本の不動産取引における登記所の役割というものは、まだまだほんとうに大衆になじんでいないので、こういうことは、ちょうど道路交通取締規則の左側通行から右側逆行みたいに、人の知らないうちに、なれないうちに勝手に左から右に変えてしまいますと、普通、人は道を歩くときに無意識に歩いているので、けが人がたくさん出たりする。それに類したことではないか。従って、むしろそういう急いで、机の上だけで考えて体裁を整えることを急がれるよりは、民衆の取引慣行がどういうふうに成長しつつあるか。近代的な法典というものは。まだまだ日本の民衆にはなじんでいないということは、御承知通りであります。その中で、日本的な取引の慣行というものがどういうふうに育ちつつあるか、こういう意味で、先ほど堀内さんの方からお話のありました、保証書の利用とかというようなことも注目すべきことかと思いますけれども、そういう立場から、もっと取引慣行というものを忠実に調べ、それを育てていく。その土台の上に立って近代化していくということを考えるべきじゃないか。こういうことで、登記法を改正したりする場合のものの考え方が、役所の窓口の内側からものを見る場合と、窓口の外側からものを見る場合と、感じ方が逆だというのですね。むしろその場合、役所たるものは内側だけからものを見るのじゃなくして、外から権利者側の立場に立って見るべきじゃないか、これが今度の改正の基本的方向であるべきである。そういう意味から言いますと、少なくとも今度の改正は基本的な部分において逆行しておるのではないか。たとえば、まさに課税台帳そのままを登記簿そのままの表題部にするということのために、幾らお金を使うかしれませんが、将来、必ず、分割するためにお金を使わなければならぬことになるのじゃないかという気がするわけです。  大体、以上が私の申し上げたいことの中心的な点でございます。
  11. 大川光三

    委員長大川光三君) ありがとうございました。  以上をもちまして、参考人各位の御意見の開陳は終わりました。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  12. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて。  参考人に対する質疑は、午後零時四十分よりこれを行なうこととし、暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩    —————・—————    午後一時八分開会
  13. 大川光三

    委員長大川光三君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  参考人に対し質疑を行ないたいと存じます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 高田なほ子

    高田なほ子君 午前中からいろいろ貴重な御意見をお三方から伺わせていただきまして、大へんありがとうございました。  一つ加藤先生にお尋ねしたいのでありますが、それは加藤先生の御主張、それから伊藤先生の御主張、お二方の御主張を伺っておりますと、基本的にはそうお変わり、なっていないじゃないかとも思うし、また基本的に大へん違うのじゃないかというような疑問を持たされた点があるわけです。その点はどういう点かと申しますと、登記制度に対する基本的な考え方についてどうも疑問に思われる点がございます。ただ加藤先生の場合は、今度の法改正手続法の技術的な改正である。従って、従来と考え方はあまり違わないのだというふうに述べられておるわけですが、それならばそれとして受け取りたいわけですが、元来、一体、登記制度というもののあるべき真の姿というのはどういうものなんだろうか、基本的な登記制度考え方というものはどうなければならないのだろうか、単に手続ではなくて、いかにあるべきかという問題について、私よく存じませんので、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  15. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 今までの登記制度がどうであったかということについては、おそらく伊藤さんと私とそう意見は違いがないのじゃないかと思っております。  そのあと、まあこれからの登記制度をどういうふうに考えていくかという点では、どうも意見が違うようでありまして、伊藤さんの考え方は今までの歴史、それから理論というものに重きを置く考え方だと思われますし、私の考え方は実際ということに重きを置く考え方で、そこで考えが分かれてくるのではないか。まあ私は、確かにその歴史とか法律の理論というものは、それが形成される十分な理由があって出てきたものだと思いますので、それは十分重視しなければならない。従って、それにのっとって将来もやっていくということは、確かに安全な道であるかもしれませんけれども、しかし、それは必ずしも固定的な、あるいは絶対的なものではないので、まあ新しい倒産を考えるときには、それで具体的にどういう危険があるか。そういうふうにしてどういう危険があるか。またどういう利点があるかということを、つまり個別的に、具体的に検討して、そうしてまあ利点の方がはるかに大きいというならば、それを採用してもいいのではないか。そうすれば、法律制度が、まあ人によってはそれは従来の制度二つ合わせたものだという説明をする人もあるようですし、新しい制度が生まれたと説明する人もあるようですが、これはあとの説明の問題で、国民としては、なるべく便利な制度で、弊害のない制度ができるのがいいのじゃないかということだと思うのです。その弊害の点について、具体的な弊害の点について伊藤さんはそれほど指摘をされなかったように思うのですが、まあ一瞬強調されたのは、従来の所有者権利というものが、書きかえによっておびやかされはしないだろうかという点だったろうと思います。その点について私の考えは、どういう形で所有の安全がおびやかされるかということを考えて見ますと、それはおそらくこの表題部のことですから、面積を書き違えるということだと思うのです。まあこれはおそらく書き違えのないように自分外力をされると思いますが、まあ人間のやることですから、間違いがないとは必ずしも百パーセント保証はできないかもしれません。かりにその面積の書き違えが起こった場合にどうなるかという問題なのですが、これは間違いが発見できれば、あと実測するなり何なりしてそれを直すこともできますし、あるいはまた前の帳簿が保存してありますでしょうから、それと照らし合わせて間違いを発見することもできるだろう。またそれによって損害を受けるということはあまりないと思いますけれども、つまり公簿に、登記簿に書いてある面積というのは、ただその帳簿に一応そう書いてあるだけで、それによって面積がかりに狭くなっても、土地所有権が減るわけではありませんから、所有権は実体によってきまるわけですから、書き違い等によって損害が起こるということはめつたにないと思いますけれども、かりに損害が起こって、それが書き違いによるという場合には、国家賠償という形によって賠償もやられるだろう。そういう点で、書きかえによる利点と比べれば、書きかえによる所有の安全がおびやかされるということは、それほど大きく考えなくてもいいのではないかというのが私の考えでございます。
  16. 高田なほ子

    高田なほ子君 所有の安全についての保障は、今国家賠償法等の問題が出ました。また政府もそのような考えを持っておるようであります。ただ、私が基本的なあり方としてお尋ねをしたかったのは、この登記制度、結局私有財産の私有権の安全保障、こういうような面からの登録制度ではないかと考えて参りますと、私有権に対する国家の力の介入というものについては、これはかなり問題があるのではないかという気がするわけです。民法の中にも私有権についての規定はあるわけですけれども、これはあくまで本人の意思というものが尊重されなければならない建前の上に立つものであって、国家権力がこれに介入するということについては、すべて悪いというわけではないのでしょうけれども、これは基本的に尊重されなければならないものではないか。そうだとするならば、登録制度の中に言うところの職権主義というものを強く取り入れるということについては、相当やはり考慮しなければならないのじゃないかというような気がするのでお尋ねしたわけです。この点はどうでしょうか。
  17. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その点は、私有権というものを尊重しなければならないということはまことに同感でございますが、しかし今度の改正は、私有権、つまり権利関係に直接国家が介入するというわけではない。つまり権利関係については職権主義をとっているわけではなくて、この点については従来の任意申請主義、あるいは自由申請主義というものを維持しているわけです。問題は表題部の、つまり面積とか、家屋の構造とかそういう分についての職権主義でありまして、これは従来の台帳から維持されているわけです。ですから今までに比べてより強くなるということはないと思うのです。また、その登記が自由申請主義だと言いましても、その面積とか、家屋の構造などについては、これはやはり真実に合うような登記をすべきものだと思うので、かりに百坪ある土地を百五十坪と申請しても、それを受けつけるべきではないわけで、つまりその不動産の事実状態については、それを真実に合わせるような措置をとることが必要ではないか。そういう意味職権主義をとるというのは別におかしくはないというふうに考えております。
  18. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると登録制度の中のその職権主義をとり入れたということについては、別におかしくはないので、それは単なる技術的な面から行なわれるものだというふうにとっていてよろしいわけですか。
  19. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 大体それでけっこうだと思います。
  20. 高田なほ子

    高田なほ子君 その次にお尋ねしたいことは、この不動産現状把握というのはずいぶん困難な条件がたくさんあるだろうと思うわけですが、加藤先生は、本法の一番基礎になる現在の不動産の状況を把握するということについて、技術面を強く打ち出されているわけですけれども、どのようにしたならばこの不動産現状把握というものが、きわめて正確に、かつ迅速に行なわれるというふうにお考えになっておられますか。純然たる技術面からお尋ねしているのです。
  21. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) これはやはりちゃんとした調査をすることが必要で、また基本的には、たとえば家屋ができたときに、その表題部表示登記申請する際に、ちゃんとそれを正確にはかって載せるというような方法でやっていくほかはないのですね。まあそれが不完全ならば、結局調査をしてそれを正確にしていくほかない。別に国土調査法がございまして、各地で測量をやっておりますが、ああいうものをどんどん進めるというのは、別の手段だと思いますが、個別的にはやはり一つ一つ不動産についてそういう最初の登録なり、その場合の調査を慎重にやるほかはないのじゃないかというふうに考えます。
  22. 高田なほ子

    高田なほ子君 学者としての意見だと私は思うのですが、実際は、表題部に正確に記入するということは、今までの人員では、それは理論としてはけっこうなんですけれども、なかなかそういうふうにうまくいかない。特に本法のこの十七条、十八条あたりに、ちゃんとこうやるべきものだということで法律に書いてあるのですけれども、やるべきものだということはわかっても、現在の定員内で現在の技術というような面から、なかなかそのことがむずかしい。むずかしいところを職権主義でやってカバーしていくということについて、私どもは少なからざる危惧の念をば抱いているわけなんです。
  23. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その点は、一つは、たとえば土地の分筆などを申請する場合には、土地家屋調査士の作った書面をつけるというようなことになって、その場合にちゃんと実測をすれば、そこで今まで違っていた面積が直される。そういう、一つ申請の際に書類を正確に、そういう技術的な能力を持った人に作ってもらうというのが大事なやり方だろうと思うのです。それで足りない点を職権で補っていくということで、実際に調査がもっと完全にできればいいのでしょうが、実際問題としてたくさんのものを調査するのはなかなか困難であるから、そこで、できるだけ申請の際に正確な申請が出るように配慮することがまず第一に必要であるというように考えます。
  24. 高田なほ子

    高田なほ子君 それから堀内さんにお尋ねしたいわけですが、堀内さんは、さっきのお話の中では、大がかりな土地師の不正を防止することはなかなかむずかしいんじゃないか、法改正によってもそういう不正をやろうとする意思を持っている者を防ぎ切ることはむずかしいんじゃないかというようなお話があったのですが、せっかく法改正をしても、このような不正を防止する方法がないとするならば、一そう研究しなければならないんじゃないかという気がするわけです。この点、私の受け取り方が間違っているのか、あるいはまたそのほかに何かお考えがあれば、この際お述べいただいたら大へんけっこうだと思いますので、お伺いしたいと思います。
  25. 堀内仁

    参考人堀内仁君) 先ほども申しましたように、地面師のような大がかりな組織を持っておりますものは、すべて必要書類を偽造するというようなこと等をやっておりますので、四十四条の二というような新しい規定を設けて事前通知をするというようなことをいたしましても、権利書そのものを偽造してこの条文の適用を避けるようにする。そういうことが考えられますので、地面師による犯行を防止するきめ手には、これはならないんじゃないかと思います。と申しましても、これが全然役に立たないとまでは申せないだろうと思うのであります。たとえば息子がおやじの印鑑や権利書を持ち出して登記をするというような場合を考えますと、おやじさんの方が権利計の保管を厳重にしておりますと、そういうことができなくて、またそういう場合にはちょっと権利書の偽造というようなこともおそらくできないと思いますので、そういう場合には防ぐことができるだろうと思いますけれども、こういう身近なものが不正登記をいたしまする場合の例について見ますと、大体においてそういう権利書そのものを盗み出してやっておることが多いようであります。そういう意味で、まれにはこの規定によって犯行の発生を防止することができるかと思いますけれども、その実際的な効果というのはあまり期待できない。そういうことで午前中にお話しいたしましたわけでございます。これにかわる方法として考えられますのは、登記済証そのものを法務局なり、裁判所なりで荷交付するというような方法が考えられると思いますけれども、そういう方法によりますと、再交付するまでの手続が非常に慎重になされるということが推測されますので、急いで取引をしようという場合には、非常に日がかかって当事者が困るということになるのじゃないかと思います。そうしますと、まあ多少弊害がございますけれども、現在のように事後通知にとどめる、そのかわり、いいかげんな保証をしましたものを厳重に罰しまして——今度の法律案では、その点罰則が重くなっているようでございますが、そういうことで満足して、そうして現在の規定を改めないで、そのままにしておく方が私は適当ではないかと考える次第であります。
  26. 高田なほ子

    高田なほ子君 伊藤先生に一つだけお尋ねしておきたいのですが、元の台帳というのは、税務署が民衆に対する税金賦課の基本的な方法として台帳というものを作られたものでしょう。それを税務署が管理、管轄権を握っておったわけです。それを二十五年ですか、登記所に移しましたね。それはどういうわけで登記所に移したのかという、故事来歴ですね、それをお尋ねをしたいことが一つ。  それからもう一つは、明治時代に実測した土地台帳なり、そういうものがいまだずっとそれが伝統的に残っておるわけです。そういうものを基礎にしてこのような、それこそ革命的な全般にわたる法改正をした場合、そういう古いあり方で実測したものの上にこの法律を積み重ねていくということについて、いろいろな面で弊害が起こってくるのじゃないかと思う。加藤先生のお説によると、弊害の方が少なくて効果の方が大きいという結論を出しておられるわけですけれども、そういう点について、もちろんいい面があるから改正するわけでしょうけれども、弊害のある部面についても、もう少し慎重に検討されてもいいのじゃないかという気がするわけなんです。午前中にも一部その点について述べられておったのでありますけれども、さらにお尋ねをしておきたいと思います。
  27. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) 初めの点は、実は私よく存じません。たしか二十五、六年ごろ税務署の方から登記所の方へ課税台帳を移されたが、どういう理由で移されたかということは、聞いたところによりますと、一つはシャウプ勧告ですか、あの機会に固定資産税が国税から地方税に移管になったというときに、税務署で、つまり国税の税務署で持っていた課税台帳を、地方に移管するのでなくて、市町村移管するのは危険だから、だから同じ国の機関である登記所に保管しようということが一つの理由であったようなんですけれども、これはきわめて便宜的な措置にすぎないのじゃないかと思う。まさかそのときに、それでシャウプ氏が、登記所に対してどういう考え方を持っておられるかわかりませんけれども、そのときに登記簿と課税台帳とを将来くっつけさせるという見通しで一貫されたのかどうか、その点、私もわかりませんけれども、あの方はアメリカ人ですから、アメリカの登記制度はどの程度になっておりますか、加藤さんの方がむしろ詳しくはないかと思うのですが、全くそういった行政庁の便宜ですね、内部の行政庁の機構の便宜としか考えられないと思うのです。ほかにもまだあるかもしれません、詳しく存じません。  それから第二の点につきましては、先ほど申し上げた原則論みたいなことになりますけれども、現状を、とにかく登記簿を少しでも改善して、登記の効力というものを少しでも強くするということは、不動産取引にとって非常にいいことなんですけれども、何しろ技術的な一番土台になっている地図があいまいである。それから、その地図をもとにした課税台帳もあいまいであるということになりますと、ほかに、つまり登記簿表題部権利の客体を特定するためのほかにたよるものがないわけですから、どうしてもそれによらざるを得ない。従って、あいまいな土台ということを前提とする限り、その点に触れるような、つまり表題部の確定性ということに触れるような改正は思い切ってすべきじゃない。それからさらに、それを前提としなければならない、つまり登記の効力の強化というようなことはすべきじゃない。あくまでもその両者の関係は、慎重にすべきだ。先ほど申したことをもう一度繰り返しますと、およそどのあたりの、およそ何坪程度ぐらいのことしか表示できない。これが現状やむを得ないのだということをあくまで前提にして法案改正というものを考えなければならぬ。徐々に、もちろんいろいろの国土調査とか何かが行なわれまして、税務関係以外でも信頼するに足る地図がだんだん整備されて参りますと、それに応じて徐々に改革は進められていくだろうと思いますけれども、フランスの例で言いますと、フランスの構図というのは非常にでたらめらしいのです。ところが、それも大都市の周辺から徐々に広げていって、全国に及ぼそうという長期の計画を立ててやろうとしているわけです。この態度は、あたかも先ほど申しましたように、一世代かかって帳簿を変えるというのと同じように、当然そうあるべきだと思います。従って、一国全体から見ますと、ある部分は非常に新しい進んだ制度がある。都心周辺では新しい制度がある。農村の方では徐々に浸透していくのを待つというふうな態度を基本的にとっているわけです。これはそういうふうな態度をとるべきではないか、そう思います。
  28. 高田なほ子

    高田なほ子君 今のお考え、私もごもっともだと思うのです。特にこの点はどういうふうにお考えになりますか。東京都あたりででも、最近は練馬とか板橋なんという所は、どんどん家が建ってきて、たとえば志村中台町二百四なんていうのは、四百軒もあり、住民の不便まことにこの上ないということで、この地名番地というものを早急に変えるべきではないかという議論が非常に強まっております。また自治庁あたりでも、こういう民衆の声にこたえて、ぼちぼち改正というものをしなければならぬのじゃないかというふうに、おみこしを上げかけているわけです。これは大都市の傾向のみならず、どんどんやはり国土計画というものが次第に軌道に乗りつつあるので、おそらく番地の整理、変更というようなことが現に行なわれようとしている、こういうような矢先に、昔の明治何年とか大正元年ごろの地図だの構図だのを持ち出して、この法をその上に重ねていくということについては、今後一そう混乱するというような空気を、一応私、感じ取るわけですが、今の都市の所番地の改正と、それから今度の法改正との関連というものを、どういうふうにおとりになっておられましょうか。
  29. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) ちょっと現状から直ちにそういうふうな方向に向かえるかどうかという現実論はともかくとしまして、理想論からすれば、ちょうど水道の鉄管を埋めるのに、ついでに電話の線も、下水の管も一緒にやろうというように、各局で話し合ってやれば、道を掘り返すのは一ぺんで済むということがありますが、それと同じように、国土計画で地図を一本整備しようということで計画があるならば、それと同時に、国土計画の済んだ所から登記簿を改善していくというようなことも考えていいのじゃないか——ちょっと私、今の思いつきですけれども……。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 加藤さんと伊藤さんの意見の結論といいますか、だいぶ違う点があるわけですが、それで、私もこの問題は相当慎重にかまえていく必要があるんじゃないかと思っておるものですから、お聞きしたいのですが、もしこの改正法案のようなものができ上がったとした場合の登記簿の法的な性格ですね、これは学者がそのうちにいろいろ説明するだろうというようなお話もありましたが、そうじゃなしに、あなた方の意見として、どういうふうにそこを現在お考えになっておるか、御参考までに聞かしてもらいたいと思います。特に表題部と、何といいますか、あと権利関係、これは同じ一つのものと見ているのか、二つと見ているのか、法的な性格として。あるいは何かその辺にいろいろなニュアンスが考えられるのか。なかなかこれは今の段階で断定できないというふうなものなのか。その辺のところをもう少し詳しく御所見をお聞きしたいと思います。  それから同じように伊藤さんにも、もし改正案ができ上がったとした場合の、民法学者としてのその辺の法的な見方。もう少し詳しく、あるいはもっと研究された上でないといかぬのかもしれないが、一応、私たちその辺なかなか疑問をわれわれなりに持っているものですから……。
  31. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 今の表題部とそれから権利登記との関係でございますが、今までの考え方をずっと推し進めていけば、やはり表示登記、つまり今まで台帳部分に当たる分は、これは土地の地籍、あるいは家屋籍というものを客観的に明らかにした公法的な性質のものである。それからあと権利関係の方は、私権を公示する私法性格のものである。それがたまたま新しく登記簿という名称をつけられた一つ帳簿の中に一緒に入っている、そういう説明をすることになると思います。私も、さしあたってはそういうふうに説明したいと思うのですが、登記制度というものの考え方が将来だんだん変わっていかないとは言えないのでありまして、そういう両方一集めにした、公的性格と私的性格両方持ったものが登記簿だというふうな説明が現われてくるかもしれませんと思いますが、そこまでいくのはなかなかむずかしいと思います。なぜかといいますと、権利登記のない表題部だけの登記というものがあるわけですから、それを表題部権利登記両方あるものと比べて、別の性質のものだと言って説明することは非常にむずかしいわけですから、表題部表題部としてやはり公的性格を持っているものというふうに説明するほかはないと思います。そうしますと、私権を表示する帳簿の中に公的性格のものが入ってくるのはおかしくはないか。つまり、全体として一つの私的所有権を現わしているのに、表題部は公的性格というのはおかしくはないかという議論も出てくるかと思いますが、しかし、私権の公示というのは、権利関係の公示でありまして、だれが所有権を持ち、だれがどういう内容の抵当権を持つかという権利の公示なんです。現在でも表題部については、これは客観的な事実の表示でありまして、それが公的性格を持ち、あるいは職権主義が入ってくるということは少しもおかしくないと思います。むしろ百坪の土地所有者が百五十坪だといって登記をするとすれば、それがおかしいのでありまして、表題部はあくまでも事実に合った表示をしなければならぬ。ですから、そこに公的性格が入ってきてもおかしくないじゃないか。先ほどちょっと伊藤さんが、現在のような不正確な台帳、つまり、表題部登記の上に公信力を認めたりすることは困難だというようなことを言われたように思うのですが、たとえば、ドイツあたりでは、登記公信力を認めるという場合には、権利表示公信力を認めているわけで、たとえば坪数が百坪という表示があったので、百坪と思って買ったところが、実は八十坪しかなかったというときに、百坪の土地を取得するわけではないのでして、それはあくまで実際にある土地しか取得できないわけですね。ですから、かりに、登記制度として公信力というものを考えるとしましても、それは表題部にはもともと及ばない性質のものでありまして、表題部表示権利表示とは性質を分けて考えていいのではないかというふうに私は考えます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと伊藤さんのお話を承る前に……。  二つ分けて考えるというお話ですが、たとえば、表題部記載は、所番地とか、面積とか、そういうことだけじゃなしに、だれが所有者か、こういう点も書き込むようになっておるようですね。で、これは多少あとの部分の所有権登記と違う意味のようですけれども、しかし、帳簿が一冊になって、そういう形態になってきますと、だんだん何かこう混淆していくような格好になっていくんじゃないですかね。学者の方は、これは違うのだ、こういうふうに説明されても、一般の人はそういうふうに受け取らない。そうすると、いつの間にか、やはりそういう一般的な事実というものがまた今度は理論の上にも反映して、結局は、その当初は二つだと言って出発したものが、これはもう一つでいいのだというふうなことになってしまうのじゃないですかね。どうですか、その辺は。
  33. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 確かに表題部にも所有者名前を書き込むようになっておりますが、これは今の台帳所有者名前を書き込むとつまり同じ意味で、一応かりに所有者表示しておるということにすぎないで、つまり私権の私法上の登記としての公示ではないわけですね。ただつながりがありますのは、表題部所有者として載せられた者は、すぐそのまま保存登記ができるという点で登記とはつながりがあるわけです。これは現在でもあるわけですが、今度もその点には変わりはない。そうしますと、やはり最初所有者として表題部に書き込むためには、その所有権の証明をしなければならない。証明というか、所有権があるかないかをやはり調べてみなければならないわけですね。たとえば建築許可の書類を持ってこいとか、そういうことで所有権を証明する。それがそもそも登記につながりますから、そうしなければ危険なわけです。職権でやる場合も、やはり職権でほんとうの所有者を探してそこに書き込むわけで、そういう意味でもこれは登記連絡はありますけれども、性質は、やはり違うのではないかというように考えます。
  34. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと加藤参考人に、今の亀田委員の質問に関連して伺いたい。ちょっととっぴなことを伺うようですが、御承知通り、刑法には、公正証書原本不実記載の罰というのがある。その条文を読んでみますと公務員ニ対シ虚偽ノ申立ヲ為シ権利、義務二関スル公正証書ノ原本二不実ノ記載ヲ為サシメタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス」百五十七条でございます。このいわゆる百五十七条の「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」という中に、今問題の表題部表示というものは、このいわゆる「権利、義務二関スル公正証書ノ原本」に相当するかどうかという一つの疑問なんですが、いかがでしょうか。
  35. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私、刑法は専門外でよくわからないので、お答えをしない方が安全だと思うのですが、私がしろうと考え考えますには、表題部だけの登記をする場合には、まだ権利、義務に関する公正証書にはならないし、そうして甲区乙区の、つまり保存登記をしたあとになって初めて権利、義務に関する公正証書になるのじゃないかというふうに意いますけれどもこれは自信がございませんから、そのおつもりで……。
  36. 大川光三

    委員長大川光三君) 伊藤参考人いかがでしょうか。
  37. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) 私もちょっと考えてみたことはございません。
  38. 大川光三

    委員長大川光三君) それでは私自身も一つ研究することにいたします。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどの私の質問……。
  40. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) どういうことだったか……。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 新しい改正ができた場合の表題部及び権利の部分についての公的な性格ですね。
  42. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) 基本的には、私はその点がわからないと申し上げているわけなんですけれども、さらにどういうところがどういうふうに具体的にわからないかということになりますと、実はそれほどいろいろなケースを想定してまだ考えてみたことがあるわけではないのです。ただ、一番考えられることは、たとえば他人の土地を借りて、そこに家を建てたというときに、保存登記も何もしないときには、少なくとも登記簿とは全く関係がないわけです。それが、こっちが気がつかないうちに、全然知らないうちに、登記簿表題部というものがとにかくつけ加わえられることがあるわけなんです、所有者本人に全然関係なしにですね。そうしてそのことは、つまりそこに私は税法が登記法におぶさっていると言うのですけれども、何と申しますか、保存登記をする以前からすでに表題部は勝手に職権によって作られていて、それがある程度私法上の推定効力をなすということになるぞというおどかしですね、それと同時に、それをしないというと罰則が加えられるぞということがあるわけなんです。それが結びついていることによって、たしかに徴税の立場からいえば非常に便利になるだろうと思います。ただそれが、ちょっとそこらをもう少し突っ込んで考えてみなければわかりませんが、実はそこらに一番問題が起こりそうな根源がありそうな気がするので、本来ならば本人のあずかり知らない……私の基本的な登記制度観から言うならば、自分の財産を国家機関に預かってもらうにすぎないものに、そういう職権によって私法上の何らかの形で影響を与えられるような記載がなされるということに、まず第一に問題がある。ですから、この表題部について言いますならば、考え方によってはこれはもう全く課税のための台帳にすぎないのだから、私法上の効力は全くないのだという言い方もある。と同時に、逆に今度は、私法上の推定力あるいは証拠力を持ってきて、それを破るためにはこっちから反証をあげなければならない、これは非常に困難なんですね。そうなりますと、これは全く効力がないとは言えないのじゃないか。だからこの効力は対抗力とも公信力とも何とも名前をつけられていませんけれども、しかし実質上私権の安全というものが、これによって非常に左右されるのではないか。法律上はっきりこの性質の概念というものはできてないはずなんですけれども、全く私法上の効力はないとは言えないはずなのです。じゃその効力は一体どういうものなのか、これからもしこの制度が実現されて、いろいろ具体的な紛争が起こってきたときに、その現実の資料を検討しながら性格がだんだんはっきりしていくべきものだと思うのですけれども、全く問題がないということは全然ないと思うのです。まだはっきりしたことでございませんが、大体そういったことです。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 はっきりしないことをお聞きするのですから、はっきりしたお答えは得られにくいわけですが、加藤さんに重ねてお伺いしますが、あなたの場合だと、二つにきちっと分けてお考えになっておるから割合その立場考えれば一応筋は立つと思います。おそらく加藤さんの見解では、表題部における職権主義とか罰則とか、  これは現在の台帳の範囲を出ないのだ、こういうお考えだろうと思うのです。その点と、もう一つは、たといそうであったとしても、今度の改正法の中で、権利に関する登記の部分について、台帳法において認められておる職権主義というものが多少芽を出しているのじゃないか。権利登記の部分について、その点は現在の登記法以上には全然出ていないというふうにお考えになっているのか。そうなると、私も非常にこまかくはまだそこは見てないのですけれども、もし多少でもそういう職権主義的な部分が、権利登記の部分にあるとすれば、私は、帳簿一つになっていけば、結局は、この性格も大きな変更というものが将来出てくるというふうに思うのですが、そうなると、これはやはり非常に基本的な問題ですから、慎重に扱わなければならぬということにもなろうと思いますが、その辺はどういうふうに検討されているのでしょうか。特に第二のあとの部分ですね。
  44. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) まず第一の、表題部における職権主義が、台帳法と変わらないものかどうかという御質問でございますが、これは、性質上は台帳法の職権主義と変わりはない。具体的に言いますと、たとえば家屋が滅失した場合に、台帳法の場合には、滅失の登録の申告をしなくても罰則がかからなかったのに、今度はかかるというような点はあるようでありますが、これはつまり台帳法のワクの中で、今まで台帳法でも台帳法を改正してそれをやろうと思えばやれるわけで、それがたまたま今回の改正法に表われてきたと見ていいのじゃないか。だから分量的に若干の変わりはあるかもしれないが、性質的には台帳法における職権主役と変わりがない。  第二の、権利登記の方に職権主義が入り込んでいやしないかという点はどうも私は入り込んでいないと思うので、その点は前と変わらないように思うのですが、ただ一つの点は、家屋の増築をした場合、こまかいことも申しますと、増築をした場合に、従来は台帳法にだけ載せていて登記の方は申請を待って書きかえていた。しかし、今度はそれが一つになっていますから、増築をすれば、職権でも、表題部を書きかえるわけです。その場合に、増築になれば当然その増築した分についての登録税を取らなければならないのじゃないかという問題が出てくるわけです。今度の改正法の附則の十条だったと思いますが、その場合について、従来所有権の保存登記がすでになされている建物について増築で面積がふえたという場合には登録税を取るということになっている。この点は前には放っておいて、登録税は今度何か勅かすときに登記をして登録税を取られたのに、今度はそうでなくても黙っていてもとられるという場合が出てきたように思います。これは、ただ保存登記をしてない建物についてはこれは取られないわけです。まあそういう意味での登録税法の改正があるわけですが、この点はしかし従来たとえば十坪の建物として保存登証をしていた、これは、つまりいわば十坪の建物としての保存登記利益を受けるために保存登記をしていた。ですから、かりに増築して十五坪になったとすれば、今後十五坪としての登記利益を受けるわけですから、五坪分については、職権で載せられれば登録税を払うということについては、おかしくないのじゃないのか。十坪だけ利益を受けて、五坪分は利益を受けないというわけにいかない。つまり家屋は一体のものですから、保存登記としての利益を受けるためには、十五坪全体についての、一体として見なければなりませんから、その分について登録税を払わしてもおかしくないのではないかというふうに考えておりますので、この点は若干問題があるかもしれませんが、全体としては、職権主義権利登記の方には入ってきていないと言っていいと思います。
  45. 赤松常子

    ○赤松常子君 関連質問。今のその十坪作ってそれから五坪増築した、それは任意登記でありますから、してもしなくてもいいのでござましょうか。
  46. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) いいえ、職権で……。
  47. 赤松常子

    ○赤松常子君 そうすると、さっきあなたさまは、あまり職権に変わりはないとおっしゃったのですが、そうすると、今のは、出せば、そういう場合は職権……。
  48. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 表題部ですから、つまり表題部の客観的な、どういう建物かということですから、黙っていても十五坪に直されるわけです。そうしますと、それに伴って登録税が取られる場合が出てくる。つまり、従来保存登記をしていればそこで登録税がかけらるれということになるわけです。
  49. 赤松常子

    ○赤松常子君 十坪のものに保存登記をしていたからですね。
  50. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) そうです。していたからです。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 それから伊藤さんに、これも少し基本的なことかもしれませんが、登記簿と、そのほかに台帳のようなものがある。これは各国の制度、大まかに言って今度の改正のようにともかくも一つにまとめてしまえというようなことをやっている例があるのかどうか。こまかい制度をやられればなかなかむずかしいでしょうが、大まかに言って、やはり登記簿登記簿だ、不動産の対象を明確にする制度制度だ、将来まあこの二つ制度が分化してくることについてはお話があって、それをまあ逆に戻すのは何か反革命のような御説明があったわけですが、実情は一体どうなっているのですか、近代国家で。
  52. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) その点については、私実はフランス以外のケースはあまり知りませんで、日本でもフランスのほかはドイツくらいで、そのほかの制度というのがちゃんと紹介された例があまりないのじゃないかと思うのですけれども。言葉もほかの国の言葉はよく知りませんので存じませんけれども、従って、大へん公式的な、一般的なことしか申し上げられませんが、基本的な考え方としては、初め申しましたように、課税のための台帳と、個人の私有財産を保護するという、目的としては全く逆の方向を向いた二つ帳簿なんでございますから、これを一緒にされるべきではない、分化していくのが近代社会の原理であると思っているわけです。従って、課税の台帳が公簿におんぶするということは、将来、国家の形態が変わっていくとどういうことになるか、それはわかりませんけれども……。  それからもう一つは、内容、つまり登記簿の内容が全然影響を受けなくて、課税の台帳だけが、あるいは課税の手段だけがそれにおんぶするをということだったら、これは近代国家でも、あり得ると思うのです。だから、私権を保護するための登記簿の内容というのは全然影響を受けない、ただ税金をかけるときに、課税台帳よりも忠実に権利関係登記簿に反映されているという場合には、これは税務署の方で自分で直接歩き回って調べるより、登記簿に書いてある方が正しいのですから、登記簿に出ているから、お前のところに幾ら税金をかけるぞということを言うことも考えられる。しかし、今度改正されようとする点は、そうじゃなくて、表題部に入ってしまうわけですからね。そうなりますと、そういう意味での先ほど言ったような登記簿と課税台帳との解け合い、融合と私は言ったわけですけれども、そういう現象があるとすれば、これは少なくとも原理としては、近代国家としては考えられないのではないか。だからまあ極端な例で言えば、アラビアのクウェートあたりの王国であると、あるかもしれませんけれども——という考え方の問題ですから、具体的にどこがどういうふうに、どういう制度をとつているかということは、私は存じません
  53. 亀田得治

    亀田得治君 加藤先生、もし御存じでしたら……。
  54. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その点、過去において一つ帳簿だったのが、近代において公的な帳簿と私的な帳簿二つに分れたという点は、伊藤さんと意見が同じなんですけれども、将来、つまり近代の将来において、それがまた一緒になっていけないということはないのじゃないかという点で、意見が違うわけでございます。つまり近代以前の段階においては、大福帳的に、課税台帳も私権も一緒に、ごっちゃにして、つまりほんとうの意味の私権というものはなかったわけですから、私権もつまり公権的な色彩を帯びていたわけで、それを一緒に載っけていたわけで、私権というものが完全な私有権として確立すれば、それが独立するということはそうなんですけれども、しかし、将来いろいろ課税の便宜だけではなくて、それから国家としては、いろいろな国家計画、国土計画とか、あるいは都市計画、その他いろいろな計画のために、客観的に土地家屋を把握するという必要が相当大きくなっていくのではないか、そうなれば、過去の大福帳式の不完全な課税帳簿から、国土調査というような形で見られるように、つまり直接に何のためにというよりも、むしろ客観的にどういう土地家屋の状態になっておるかということを、客観的に調査して、何かのときにそれを役立たせようとしてとっておくということが、だんだん行なわれていくのではないか。この点は、外国の例は私よくは知らないのですが、前にちょっと見ましたときに、スイスあたりでも、かなりゆっくりと国土調査みたいなことをやっているようでありますし、この前もスエーデンの法律家の人が来まして話をしたことがあるのですが、そのとき、スエーデンでも何かそういうようなことをやっているような話を聞きました。それと登記簿とどういうふうに結びつけるのか、どうも私よくこまかいことまでは知らないのですが、そういう意味の国土調査みたいなものがだんだん行なわれていけば、それはやはり国土調査といっても、ただ客観的に土地の状態を把握しただけでは困るので、所有者がだれかということもわからなければ工合が悪いわけですから、そこでやはり両方帳簿が一緒になるということも考えていいのではないか、それが近代の性質に反するということもないのではないかというふうに考えているわけです。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 まあどちらも、何といいますか、多少考え方の違いをお述べになったような格好で、私、具体的な事例等がそういう点でわかっておられれば参考に聞きたいと思ったのですが、そこで、加藤さんにもう少し突っ込んでお聞きしてみたい。  一つは、この権利の対象を明確にする、こういうこと自体は、これは私たちも少しも異議がないし、むしろ大切なことだと思っております。しかし、現実に日本の台帳というものは、実際にはなかなか合わないわけです。ことに農村の台帳なんというのは、非常な不正確なものです。だから、今田として一番大事なのは、台帳をあっちゃったり、こっちゃったりすることでなしに、この台帳を直してもいい、あるいは各自治体にある課税台帳をもとにして直してもいいわけですが、ともかく、何か一つはっきりと、もう土地なら土地というものが、こう君かれているものが一冊できることだと思うのですがね。そのことの方が、よほどいろいろな取引なり、いろいろな面の便宜からいっても大事なことじゃないかと思うのですよ。で、この一元化といえば、これに対して賛成反対、便利あるいは不都合、いろいろなことが考えられますけれども、一応それを抜きにして考えまして、そのことにもっとみんなが力を入れなきゃならぬ。まあ役所の文書が不正確だなんというのは、ああいう帳簿を持っているから、むしろ基本的に農民の方なんかに植えつけているかもしれぬと思うくらい、これは二倍も三倍もある所があるのですからね。公簿と台帳と、実際の面積というものが……。だから、そういう点をきちっと一日も早くして、それができ上がった後に、一つ登記簿関係をどうしようか、ここをゆっくりまた専門家の諸君が検討してやってもらってもおそくはないと思うのですが、どうでしょうね。
  56. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その点は、今できるだけ正確なものを作るというのは、国土調査法でやっているわけですね。あれは非常に慎重な手続でやっておるので、あれが全国回ってくるのは何年かかるか、青年ぐらいもかかりそうな状態ですけれども、今の面積を改めるというのは、ちゃんとやはり正確にはかった上で改めなければいけない。いきなりこの村は大体二倍ぐらいにしておこうというわけにいかないわけです。私は国土調査はあまり厳格にやっていて、もう少しその中間ぐらいのところで、もう少し簡単にはかって、ちゃんとして、たくさん山を持っている者はたくさん税金がかかるようにするのがいいような気がするのですけれども、なかなかその中間のところはむずかしいらしいのです。だから、そういう正確な帳簿を作るということは、私大いに賛成なのです。しかし、それはそれとして、それとは別にこれをやることは、これはそれだけの意義がやはりあるのじゃないかというように考えるわけです。それは、いろいろなやりたいことがたくさんある中で、どれをどういう順序で、どういう費用でやるのが最もいいかということは、これは政治家にお考えを願うところで、私どもがくちばしをいれることでないので、私はこの制度改正することが相当な利益があるだろうという点に限って申し上げたわけで、それ以外にいろいろなことをやっていただくのは、もとより大いに賛成なわけであります。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 それから堀内さんにお聞きしますが、この取引の迅速、そういう点について非常に御意見があったわけですが、これは銀行などで非常に大量に不動産取引をおやりになる場合に、非常に痛切にお感じになることだと思うのです、思いますけれども、実際全国の不動産の動きといいますかね、取引、これはその数からいったら、やっぱり個人の方が多いんじゃないですか。それで、やっぱりそういう個人の人になれば、個人が不動産に手をつけるという場合には、これはやつぱり一生一代ですわな。どんなものでしょう。一生に一度か二度、平均してみれば。だから、これは一つ確実にやってもらわなければならぬ。多少不便があってもいいというようなところが常識じゃないですかね。そういう点をどういうふうにお考えになっているか。あんまりあなたの方は職業意識といいますか、そういうことから気持が勝ち過ぎているんじゃないかというような感じがしておるわけです。それが一つ。  もう一つは、登記所など書類が一度にどっと出ますと、なかなかおっしゃる通りはかどらないという点がありましょう。しかし、だからどこかを簡略にせいというところへすぐ結びつけていいものかどうか、やはり登記所の人をふやすとか、受け入れ態勢ですな、それを人的にも、それから設備からいっても、いろいろ進歩した道具などを使えば簡単にやれるようなことがどんどん工夫できると思うのですよ。何かもっとそういう面で処理が相当できるのじゃないかというふうな感じもしておるのですがね。登記所設備など非常に悪いのです、どこへ行っても。倉庫もないような登記所があったり、そういうことにもっとみなさんの意見を出してもらうべきじゃないか。普通の事務所なんかに登記簿を一緒に置いてある所があるわけなんです。倉庫がなくて。間違いがあったら大へんなことになるわけですからね。そういうふうな面はどういうふうにお考えになっておられますかね。
  58. 堀内仁

    参考人堀内仁君) 先ほどから登記公信力という言葉がときどきお話に出ておりますが、この登記公信力を認めるかどうかということが登記制度の根本問題でありまして、私ども金融機関のものは、登記公信力は認めるべきでないというような主張をしておるものが多いのであります。これは、まさにおっしゃる通り所有者利益をある程度犠牲にしても取引の安全を保護するという立場に徹する議論でございます。しかし、今回問題になっております点は、それほど取引の安全ということを重視した立場に立っての改正ではありませんで、一番主要な改正点であります登記制度台帳制度一元化という点からは、まさにその手続の簡素化というような利益は出て参りますが、これによって所有者権利関係が不安になる。その点を犠牲にして取引の安全がはかられる、そういう性質のものではないと思います。これによって、一生に一度取引をするというような人は、あまり愚息を受けないかと思いますけれども、私どものように始終取引をやっておりますものは、これによって少なからざる恩恵を受けるであろうということは、先ほど申し上げた通りでございますし、それにも増して、先ほど申し上げませんでしたけれども、さしあたりは非常に忙しい目をされると思いますけれども、長い目で見ましたら、登記所の係の方がこのために非常に負担が軽くなって、ほかの仕事に十分な力をお注ぎになることができるのじゃないか。それによってまた私どもが恩恵を受けることになると思うのであります。ただ、先ほど申し上げました保証書の問題については、まさにおっしゃるような取引の安全というよりも迅速、安全を多少犠牲にしても迅速をはかろうということに帰着いたしますが、非常にこれは件数が先ほども申し上げましたように多いので、ほとんどこの法律改正によって救われる、犯罰を防がれる件数と比べました場合に、これによりまして取引の遅延という面の、あまりにそれによる損害が大き過ぎるのじゃないかと……。この点だけは、多少取引の安全ということで、まあ目をつぶっていただきたい、こういうふうなお願いをしておるわけです。登記所の諸設備その他を現在よりももっとりっぱにするということ、これは私ども常々そう感じておるところでございまして、たとえば登記所に参りまして書類を一覧しようといたしましても、十分場所もない、こういう状態はできるだけ早く改善されるようなことになりましたら、はなはだけっこうなことと存じております。
  59. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと堀内参考人に、私、関連して伺いたいのですが、結局、保証書というものが事前通知になってくるというために、取引の迅速を欠くという御意見のようでしたが、あなたの銀行で、かつて保証書によって登記したために抵当権が無効である、あるいは権利を失うたというような事例はあるでしょうか。
  60. 堀内仁

    参考人堀内仁君) まあ私の経験だけから申しますと、そういうことはございませんです。
  61. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと私簡単に加藤先生にお伺いしたいのでございます。加藤先生は、先ほど私法公法一つにするのだけれども、これは単なる手続法だからというようなお話をなさいました。ところが伊藤先生のお話を伺いますと、非常にこの二つが、つまり台帳登記簿性格というものが、全然相反しているということが、私知らされたわけでございます。この私法公法を一本にするというところからくるいろいろなマイナスの面を、加藤先生あまりないとおっしゃったのです。であるからこの改正には賛成とおっしゃったのでございますけれども、私、先ほどこの亀田委員がおっしゃいましたように、二つのものが一本になる、ところがその一本になったものが、もう当然のように二つ性格があるということが、だんだんこうまあよい意味でというか、悪い意味でか、ぼやかされまして、はっきり個人の財産の安全というものが守られるようになるであろうかどうであろうか、職権の広がりというものが不当にきはしないかという心配を非常に持っておるのでございますが、この点、もう一度御解明下さいませ。
  62. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) この点は、今度の改正では大へん慎重に配慮をしていて、表題部登記権利登記とは全然区別をしていると思うのです。私も、今の段階ではそういうやり方をやるのがいい。また将来も、おそらく相当長い間は、そういう行き方でいくほかはないんじゃないか。しかし、また歴史はいろいろ変わってきますから、将来永久にそうでなければならぬというようなことはないので、またそのときになってそちらの方がいいということになれば、また別の改正考えることもあり得ると思いますが、今のままでは、このまま、今までより権利の保護という点では、別によくもならないし、悪くもならないし、ただ、手続が簡単になったということで、弊害というものは別にないんじゃないか。また将来、私権の保護が薄くなるというような心配は、今のところ、もう全然ないといっていいと思うのです。
  63. 赤松常子

    ○赤松常子君 その点について、伊藤先生は非常に御心配でございましたね。それで、先生はたまたまフランスの登記法にお触れになる機会があって、フランスのやり方が日本と比べますと、むしろ逆行的に、国民へのサービスということに非常に主力を注いで、人も置くし、またいろいろ部門も分けて、非常に徹底したサービスをしているようになっているとおっしゃったのでございますが、日本の場合、むしろ私は先生のお話を聞いてみて、従来非常にそういう点、サービスが不十分だ、と思うんです。ですから、むしろ人でも増す、あるいは先ほど伺いましたけれども、七五%がアルバイトであるというような、そういう不安定な事務の扱い方でなく、十分そういう増員もし、また建物も充実するという方向、これは私考えられていいと思うのでございますが、日本の場合に対する今の私の心配ですね、その点について、もう一度どうぞおっしゃって下さいませ。
  64. 伊藤道保

    参考人伊藤道保君) 私も、実は同様にいろいろ心配になることが多いんですけれども、今の事務能率という点からいきますと、やはりむしろふやす方向にいくべきである。これが基本的な線ではないかと私は思うんです。で、先ほどもちょっと雑談のときにお話に出ましたけれども、日本で一番古めかしくて、一番建物も首相で、一番人が寄りつくのをきらう建物は何かというと、登記所と検察庁だということが言われましたけれども、これはまさに不動産取引の上で、登記制度が一そう民衆の間に浸透していかなければならないにもかかわらず、日本の不動産登記制度が、逆に民衆からますます遠ざかりつつあるということの証拠ではないかと思うのでございます。で、なぜそういうことになっているかといいますと、やはり今までの日本の不動産登記制度そのものに対する考え方が、根本的に間違っているんじゃないか。ですから、一番初めに私が御報告申し上げましたように、登記制度に関する根本的な考え方がそもそも問題だと申し上げたわけなんですが、悪くいえばそういうふうに民衆の実際の取引から遊離している登記制度を、ますます遊離させたもので、民衆の気がつかないところで、勝手にこういった差し入れなどをするということ、これはもちろん、主観的にはそういう意図ではないでしょうけれども、少なくとも登記簿というのは、普通の人はどう思っているか知りませんけれども、法律的にはちゃんと対抗要件として重要な効力を持っているわけなんです。表題部登記にしても、たとえ法が改正されましても、先ほどから言いましたように、かなりその私法性格というものは、少なくとも全く効力のないものではない、そういうものが、普通の権利者個人々々の気づかない間に、取りかえたということの通知すらもなくて、取りかえられるということは、何か非常に、言葉は不穏当で失礼ですけれども、知らぬが仏をいいことにしてやっているような気がするわけなんです。もっと親切にすべきではないかというのが、私の基本的な考え方なんです。
  65. 赤松常子

    ○赤松常子君 今度はこの登記制度の大改革でございますが、先ほどちょっと加藤先生のお言葉にございました戸籍法改正を以前にやったわけです。それはどのくらいの年月かかったものでございましょうか、御承知でございましたら……。
  66. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) あれは十年だったと思いますけれども……。つまり初めは、新しい戸籍申請のあったつど書きかえをしてきたわけですが、十年たったところで全部響きかえるという初めの予定で、その書きかえをやったわけです。ですから一応十年ということでございます。  それから、委員長にお願いがございますが、ちょっと補足させていただきたい点がございますが、よろしゅうございますか。
  67. 大川光三

    委員長大川光三君) どうぞ。
  68. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 先ほど堀内さんのおっしゃった点で、私はどうも意見が違いますので、先ほど一元化の問題にしぼって問題をお話し申したものですから、その点抜けておりましたので、ちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。それは、一つは保証書の点でございまして、保証書について、今度のような制度をとると取引がおくれるという堀内さんのお話でございましたが、私は、それは若干取引がおくれるかもしれないけれども、やはり保証書というものは、相当危険な場合もあり得るのであって、やはり事前通知というような形で今度のように直していただいた方がいいのではないかというふうに思っております。で、確かに大がりな地面師のようなものは、権利書まで偽造するであろうから、これではひっかからないかもしれませんが、少なくとも保証書だけの間違いというようなものはこれで防げる、それほど、無視していいほど少ないものではないのじゃないかという気がいたしますので、私は、保証書の点は、これは法案賛成でございます。  それらからもう一つ、先ほど堀内さんが、外貨債権について百二十一条の規定のことをおっしゃいましたが、私は、この点はまた堀内さんと逆でございまして、外貨債権は必ずしも日本円に書き直してこの表示をする必要はないのじゃないか。ドル建てでもポンド建てでも、外貨債権は外貨債権として記載させていいのじゃないか、つまり現在の外国銀行その他の取引の実情からしますと、外国銀行などでは、ドルとして担保を持ちたいわけです。しかしそれを円に書きかえてしまいますと、将来円価が変動したときに、換算率が変動したときに、保護が受けられないおそれがあるということになります。確かにドル建て、ポンド建てで抵当権をつけますと、その二番抵当をつける場合に、将来の外貨の変動まで予測しなければ、二番抵当をつけ得ないという不利な点が生じますけれども、その点はやむを得ないことなので、むしろ勝手な円価表示をするということ自体がおかしいのじゃないか。で、外貨債権は外貨債権として登記をしていいのではないかというふうに考えております。二つの点でちょうど堀内さんと逆になりますので、ちょっと補足させていただきます。
  69. 大川光三

    委員長大川光三君) 堀内参考人、何かただいまの加藤参考人意見について、御意見はありませんか。
  70. 堀内仁

    参考人堀内仁君) 保証書の点については話を省略いたしますが、外貨債については、私も外貨建てで登記ができれば、それも便利ではないかとは思っております。しかし、さしあたりのところは、いろいろ経済界には議論がございますけれども、これでも別に不便はないようですから、差しつかえないのじゃないか、こう考えております。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと追加してもう一点加藤さんにお聞きしておきたい。現在の登記法では、職権主役というものをとらないでやっておる、だから、そういう建前からいいますと1建前だけじゃないですけれども、そういう建前から言っても、こういう制度改正をやる場合に、やはり本人の申請を待つとか、何か本人の意思が加わってくるようなやり方をとるべきじゃないかと思うのですがね。これは伊藤さんが盛んに指摘されているわけですが、どうも知らぬうちに、いつの間にか変わってしまっている。これは大へん不都合じゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  72. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その点については、一応本人に申請義務を課しているわけですね。本人から申請があればそれによる。申請をしなければ職権でやるということで、まあ職権でやるときには本人の意思が加わらないわけですけれども、これはしかし、不動産の客観的な把握をするというためには、どうしても職権主義が入ってくることは必要だし、また、やむを得ないのではないかと思うのです。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 そうじゃないでしょう。現在の一元化をする喝一、二つのものを一つにするのは、これは本人と全然関係なしに、登記官吏がやっていくわけです。どうもここの手続が非常におかしいという感じがするのです、それだけでは。ところが、あなたの理論に立てば、もともとそれは台帳でやれることをやるのだからと、こうおっしゃるかもしれぬが、しかし登記薄という原簿、この原簿自体は、あくまでも職権主義でない立場でできておる。そこへ、あまり意味のないものかもしれぬが、付加されるわけですから、だからそれは性格が違うのだから、勝手にくっつけてやってもいいのだと、どうもその辺が多少おかしいのじゃないかと思うのです。どういう効力が出てくるか、これはやはり将来、少なくとも法律の上じゃ明確じゃない。従来の台帳以上の性格を与えぬのだといったようなことを、別にこの法律の中に若くわけでもないのだし、これはやっぱり将来のいろいろ移り変わりによって変化が生まれる可能性もある。そういうものですから、登託官吏だけがそれをやってしまう、ここの手続がはたして妥当かどうか。
  74. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) それは一書き違いという点の心配でしたら、先ほどちょっと申しましたように、書き違いの点はいろいろ別に保障の道もあるということです。それからそれ本人に通知しろと言っても、本人がどこにいるか、登記簿に書いてある場所というのはわかりませんから、通知するのは実際に無理ですし、五円ずっとしても十億円かかりますから、国民の負担においてそういう通知をやるべきではない。だから、もしやるとすれば、これで一応この登記所の管内の編製を終わりましたから、見たい人は見に来て下さいという程度のことだろうと思います。それがかりに書き間違えがあった場合、かき間違えでなくとも、真実と面積などが違っていた場合、台帳が違っていたというようなこともあり得るわけですが、それはしかし、権利の移転とか抵当権の設定とかそういうことをしない限りは、現実の土地なり建物が減ったりするわけはないのですから、それで不利益を受けることは直接にはない。将来もし権利変動しようという場合には、現在でも台帳表示登記表示が違っていれば、それを一致させて、まず台張とあわせて、台帳が違っていれば、またさらに、実測して台帳も直すということで、さらに合わした上でなければ登記ができないということになっているわけですから、その点は、今度一緒にしても、やはりさらに登記を移す場合には、それはチェックするチャンスがあるわけです。その場合に、もし実際と違っていれば、そこでそれを訂正するという手続がとれるわけで、その点は今より不利になるということはない。今の帳簿が不完全性があるということは認めますけれども、今より不利になることはないというように思うのです。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと今のに関連するわけですけれども、増築をした場合に、登記は強制されるわけでしょう。これは申請主義じゃなく、強制されるわけでしょう。
  76. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) そうです。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 課税も強制されるのでしょう。そうしたら今よりも……。
  78. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) だから、その点は、先ほど申し上げた通りですけれども、今税のかからない場合に、登録税を取られる場合があるのですけれども、それは理屈からいっておかしくないのじゃないか。つまり、現実にある建物の保存の登記をしていて、それに増築をすれば、増築分についても一体として保存登記利益を受けるわけですから、それに税金を課することはおかしくない。つまり、増築をしたあとで保存登記をしたとすれば、この十五坪分の登記税を払わなければならない。現に保存登記をしていて、それにプラスのものが出てくるわけですから、それは税金を取ってもおかしくはないのじゃないかと私は思っております。
  79. 高田なほ子

    高田なほ子君 保存登記をした場合に、その分だけ利益を受けることは確かに受けるわけです。しかし、その利益というものは本人の意思に基づくものであって、少なくとも、国家の権力でこれを強制すべき性格のものでないと私は思うのです。その点どうお考えになられますか。
  80. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その点の利益というのは、つまり十坪の家について利益を受けたいという気持ちじゃなくて、この家について保存登記利益を受けたいということで、その内容は客観的な状態によってきまってくる。ですから、それが十坪のものが十五坪になれば、十五坪のものと直して、そうして、そこで登記税を取ってもおかしくはないというふうに思うわけです。
  81. 高田なほ子

    高田なほ子君 それはそうかもしれませんけれども、受けるとか受けないとかということは、本人の意思に基づくものであって、国の権力がこれを強制すべきものじゃないのじゃないかと言うのです。強制することはよくないのじゃないかと思うのです、原則として。その点はどうなんですか。
  82. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) そこは、結局意見が違うということになるかもしれませんが、私はそれでおかしくないと思うのです。
  83. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは、民法の百七十七条とどういう関連を持つわけですか。本人の意思というものが主になるものではないのですか。
  84. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 民法が言っておりますのは、権利登記で、つまりその権利の内容はどういうものかということは、客観的な状態によってきまるべきもので、民法に対抗要件としているのは、結局登記の部分についての問題なわけですね。ですから、その点は矛盾がないわけです。
  85. 高田なほ子

    高田なほ子君 増築の場合も、それは権利登記でしょう。それだけ切り離してものを考えるということはおかしいのじゃないですか。あくまでこれは登録の強制ということについては、増築であろうが何であろうが、強制しているというそのことについてはおかしいのではないかと思うのです。
  86. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 権利主体が変わるわけじゃなくて、権利の内容が変わるわけですから、その点は、内容は私は客観主義でいっていいのだろうと思うのです。その自分の収得した権利登記するか登記しないかということは、これはその人の主我で、登記をしたくなければ登記をしなければいいのですが、一たん登記すれば、その内容は客観的な状態によってきまるといってさしつかえないと思います。
  87. 大川光三

    委員長大川光三君) ほかに御発言もないようでございまするから、参考人に対する質疑はこれをもって終了いたします。  この際、参考人各位に、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重なる御意見を詳細にお聞かせしていただきまして、まことにありがとうございました。半委員会審査のため、きわめて有益なる御意見を拝聴いたしましたことを、厚く、深く御礼申し上げます。  暫時休憩いたします。     午後二時三十九分休憩    —————・—————     午後二時四十一分開会
  88. 大川光三

    委員長大川光三君) 委員会を開会いたします。これより前回に引き続き、不動産登記法の一部を改正する等の法律案を議題として、政府当局に対し質疑を行ないたいと存じます。御質疑のある方は御発言を願います。
  89. 高田なほ子

    高田なほ子君 この前、この十七条と十八条に関連して私、局長に質問をいたしました。そのときに土地については六百分の一の構図が備えられることになっておるが、現在ではその構図の整備というものが必らずしも十分にはいっていない、こういうふうに御答弁があったわけです。同時に、私は、これと同じように進物については進物の所在図を備えることになっているのではないかということをお尋ねしたわけです。ところが局長は、建物の所在図というものは現行の制度では何も備える必要はないので、そういうものはございません、こういうふうに答弁をされたわけです。ところが、私この進物の方がないということについては、どうも不審に思って調べてみたのですが、どうもあるのじゃないかという疑問を持つわけですけれども、建物の所在図というものは、これは現行制度では、ないのでありましょうか。その点もう一度お尋ねをしておきたいのですが……。
  90. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現在では、もし登記所建物の所在図を持っておるとしますれば、台帳制度のもとにおいてであるわけでありますから、現在の台帳制度には建物所在図という制度はございませんのです。登記所にはこの法律で言っておりますように、建物の所在図というものはございません。
  91. 高田なほ子

    高田なほ子君 この家屋台帳法に基づく建物の所在図というものもないわけでしょうか。
  92. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 私申しますのは、この法律案にあるような、もちろん同一のものであるわけではございませんが、この法律で予定しておりますような建物所在図はないのでございまして、ただ、現行の台帳制度のもとにおきましては、台帳申告の際に、家屋所在図と当該家屋だけの所在図を申告書の添付書類として出させてはおります。しかし、これは構図という筋合いのものではないのでございます。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 私が伺ったのは、現行制度でこの建物の所在図というものはないかということを尋ねましたら、それはないということであったわけですが、今度それではこの新法に基づく建物の所在図というものは、今までのこの家屋台帳法に基づく所在図というものと、内容においてどういう点が違っておるわけでしょうか。
  94. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現在は、たとえば家屋を新築いたしました際に、新築の申告をするわけでございますが、その際の申告書の添付書類としまして、その当該家屋の所在を明らかにしました家屋所在図というものを出させるのでございます。ですから、それは申告書類ということで、登記所で保存はいたしておりますけれども、いわゆる構図というものではないのであります。ところが、この法律の十七条、十八条で考えておりまする地物所左図というのは、これはただいまの予定では地図と同じことで、大体五百分の一くらいの縮尺の地図、それから土地の境界を明らかにしました地図に建物の所在地を明らかにする。ある一つの進物をというのではなくて、その地域内にありますところの全建物の所在を明らかにする図面であるわけでございまして、現在台帳申告の際に添付されておりますところの家屋の所在図とはまるで性質が違ったものでございます。
  95. 高田なほ子

    高田なほ子君 まるで性質の違ったものだということでは、ちょっとわからないわけですが、地図と同じようなもので、全部の建物の所在を明らかにするものであると、こういうふうに言われておりますけれども、現在のこの家屋台帳法によれば、家庭の所在、家屋番号、種類、構造及び床面積、それから所有者の住所及び氏名又は名称。家屋番号、種類、構造及び床面積の定め方に関しては政令でこれを定めるというように、きわめて明細な規定があるわけですが、新法によると全然こういうものではなくて、また別個のものだということになると、どういうものが別個のものになるのですか。そこらもう少しわかるように説明してくれませんか。
  96. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この新しい案のもとでいきますと、ただいま高田委員の言っておられます家屋所在図は第九十三条の二項に規定がございます。進物を新築した場合の建物表示登記申請の規定でございますが、この建物表示登記申請書には建物の図面、各階の平面図そのほかに申請人の所有権を証する書面を添付することを要するのでございますが、建物の平面図、各階の平価図を添付しろという規定があるわけでございます。ただいま高田委員仰せの家屋所在図というのは、建物の図面各階の平面図に当たるわけでありまして、十七条で言っておりますところの進物所在図とは違うのでございます。現行の制度で申しております家屋所在図はこの案でいきますと、第九十三条の二項に定めてある図面のことでございます。
  97. 高田なほ子

    高田なほ子君 九十三条の二項と私が今申し上げた家屋台帳法の第四条の登録事項の内容というのは、どういう点が違っておるわけですか。同じように私思うのですが……。
  98. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまのお尋ねは、台帳の登録事項関係でございますが、ただいまの現行法台帳の登録事項に当たりますのは、この法律案でいきますと、建物登記簿の表題部記載に当たるわけでございまして、この法案では第九十一条に規定しておることでございます。大体現行の台帳記載事項と新しい登記簿表題部記載事項が一致するわけでございます。
  99. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも私ははっきりわからないのですけれどもね、現行の家屋合帳法によると、家屋の所在、家屋番号、それから種類、構造及び床面積、従来までのと全く同じじゃないですか。この内容というものはどこが違っているのですか。
  100. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現在の家屋台帳というのが、やはり建物現況を把握する、建物を測定するための事項を登録することになっているわけでございますが、今度の新しい登記簿表題部はやはり同じことを目的にしておるわけでございまして、台帳登録出項と登記簿表題部登記事項は同じになるわけでございます。仰せの通り同じでございます。
  101. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと、先般も当局で説明されたように、現在の制度における土地の構図は必ずしも整備されておらないということであったわけですが、難物の場合も同様にやはり整備されておらないというように考えてよろしいわけですか。
  102. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 進物の構図は整備されておりません。仰せの通りでございます。
  103. 高田なほ子

    高田なほ子君 その整備されておらないものを、そのままに表題部のところに書きかえられていくことになるのではないでしょうか、この点はどうですか。
  104. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 整備されておりませんのは、この法律で予定しておりますような建物所在図というようなものが現在登記所にないということでございまして、従来の台帳におきましても、たとえばただいま仰せになりました建物の新築の場合の登録の際には建物の図面をやはり提出させておりまして、それからなお登記所の方でも実地調査をいたしまして申告が実体に合っておるかどうかを調査した上で登録をいたしておるわけでありますので、当該の建物表示が実体と非常に食い違うというようなことは、ことに新しく建てた建物につきましては、ないと考えております。ただ、古くからある難物につきましては、現状が変わっておるというようなことがございますので、台帳現状に即応して改められていないという場合は、これはあり得ると思うのでございます。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 まああり得ると、ところが今度の二十一条の改正によりますと、建物所在図の写しの交付及び閲覧の請求を認めることにしたものであるということでありますが、できてないものの写しの交付なんというものは、あるいはまた不誠意な図の写しの交付などということが、絶対許されていいものかどうかという疑問が残るわけです。この点どうですか。
  106. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 建物所在図——この法律で予定しておりますような建物所在図に類するものは、今申し上げましたように、ございませんので、これの写しということは、実際問題して当分の間は不可能でございます。これが整備されるまでは不可能でございます。ただ、地図につきましては、必ずしも完全に正確であるとは申せませんが、大体土地現況を反映しました構図があるわけでございまして、申請人から申請がございますれば、この地図を写しとして交付することに相なるわけでございます。
  107. 高田なほ子

    高田なほ子君 建物所在図の写の交付が当分の間不可能であるという御答弁でありますが、当分の間というのはどういう条件が備わったときに当分という字が消えるのか、具体的に説明をしてもらいたい。
  108. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 建物の所在図ができ上がりましたら交付できることになるわけでありますが、これを作りますにつきましては相当の予算を要することでありますし、人手も要することであります。予算の事情とにらみ合わせまして逐次整備していきたいと、そういう考えであります。
  109. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、その逐次というようなことではちょっと納得しかねるわけです。まあ立法府にある私どもが法律を作るのにあたって、お役所側の適当な答弁でよしとするだけの勇気を私は持合わしておらないわけであります。なぜならば、私が冒頭にこの構図及び建物の所在図につきましてお尋ねをしたのは、現在の定員の中において、制度の中に土地の構図を備えることになっているにかかわらず、それを備えることができない、あるいは建物の所在図を備えることになっておってもそれを備えることができない、こういう現状の中で、さらに法律を改めて第二十一条の改正によれば、地図または建物所在図の写しの交付及び閲覧の請求を認めることにしたと、こういうような、いかにも国民の正当な権利を認めるがごとき条文でありながら、実際においてはその条文通りにならない。要するに空文であるということを認めながらこの法律にただ賛成をしていくという、そういう勇気を打ち合わしていない。でありますから、こういう条文に改めるとするならば、少なくも建物所在図を作るについて人手はどのくらい要るのであるか、予算は一体どのくらい必要なのであるか、またその年次計画はほぼどういう計画によるものであるか、こういうような点が明確にならなければならないのじゃないか。それは一字一句私は止めるわけではないのですけれども、前委員会において資料を要求したのは、そういう気持からこの資料を要求したのでありますが、本日の委員会ではまだ私の要求した資料が出てきておりませんが、この逐次というのは一体どういうことであるのか、ここらの振り合いが私には了解ができないのです。この点について説明していただきたい。
  110. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 建物所在図は、ただいまもるる申し上げましたよりに、現在の制度ではないのでございます。この法律によりまして新たに建物所在図というものを作りまして、建物現況把握の基礎資料の一つにしたいというわけでございます。これから新たに作りますにつきましては、やはり法律の根拠がなくては作ることが正式にはできないわけでございまして、今後建物所在図というものを整備していきますためのまず前提として、この法律案建物所在図の制度を入れまして、御審議をお願いいたしておる次第でございます。で、幸いにこの法律が可決になりましたならば、私どもといたしましては、この建物所在図につきましても、具体的に計画を立てまして、予算の要求をすることに相なるわけでございます。それからなお、目下のところでは、この台帳登記簿一つにするという作業がさしあたりの急務でございまして、私どもの計画では、昭和三十九年度末、すなわち昭和四十年の三月までにこの一本化の作業を終わる予定でおるのでございますが、現在の計算をもちましても、約二十億円を上回る膨大な予算を要する作業でございまして、建物所在図あるいはこの現在あります必ずしも正確でない地図を、早急に整備するということになりますと、膨大なる予算を必要とするわけでございます。そういう関係で、現実的な計画といたしましては、さしあたりまずこの一元化を完備し、その上で地図の整備、建物所在図の整備ということも考えていきたい、そういうふうに段階的に計画を立てていきたいという考えであります。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連して。  今地図と所在図のことが問題になっておるんですが、まあ日本の法律でよく有名無実になっておる条文があるんですね。今のお話を聞きますと、まずその一元化の移しかえをやって、それからだと、こういうお話ですが、どうもその初めから使われぬようなものを、知つとってそのまま通していくと、こういう習慣は、やはりよくないと思うんですね。だから当分こういうものができないのであれば、やはりここから消しておく、もしこの法律が通ってちゃんと一元化が完成したら、あらためてまた一部改正をやっていけばいいのであって、何かこう体裁だけを早く作りたがる、こういう感じがするんですが、そういうことがほかにもちょいちょいあるんですが、これがたまたま今、高田委員から究明されておるわけですが、こんなもの削ったらどうです。
  112. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現在の登記所には、地図は必ずしも正確とは言えませんが、あるわけでございます。これを整備していきますためには、やはり法律にこれを備えるということになっておれば、予算要求の際にもしやすいわけでございます。それから建物の所在図にしましても、これは全国何分二千万戸の建物があるわけでございまして、これを全国一斉に短期間に建物所在図を整備してこれに載せるということは不可能なわけでございます。やはり急を要するところから逐次建物所在図を整備していくということに相なりますので、現在の段階におきまして、この法律の中にはっきり規定をいたしておく、そしてこれはまあ将来の予算要求の足がかりにしておくということが必要であると私どもは考えておる次第でございます。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 予算要求の足がかりに、法律の条文の中にこれを入れておく、こういうこと自体がちょっと問題ですが、具体的にはどうなんですか、今の目標からいいますと、いつごろから地図とか建物所在図というものに手がつくのですか。
  114. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) それからなお、十七条の規定は、この法律の建前から申しましても、これは四月一日から直ちに適用するということにはしておりませんのでございます。登記台帳一元化の完了した所から十七条、十八条も適用されるという建前に法律ではいたしておるのであります。ところが、一元化の完了した登記所では、しからば直ちにこの完全な地図が備わるか、新しい建物所在図が備わるか。私どもとしましては、一元化の済んだ所から逐次整備していきたいとは考えますが、これは何分予算を伴うことでございますので、極力努力はいたしますけれども、一元化の済んだ所は、全部済んだその日からこの完全な建物所在図が備わるということには参らぬかと思っておる次第であります。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 十七条、十八条等は直ちに適用にならないという御説明がありましたが、それは附則かどこかに書いてあるのですか。
  116. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 附則の第三条第二号でございます。一元化のまだ完了しない登記所における登記事務の処理に関して第三条に規定しておるわけでありますが、この第二号では、改正後の不動産登記法改正規定が適用あるものをあげておりまして、ここにあげてある条文は、改正法を直ちに適用するわけで、その他の条文は適用しない、その他の条文は一元化が完了したときから適用するという趣旨を第三条で明らかにしておるのでございます。十七条、十八条の規定は、一元化が完了するまでは適用されない、そういう建前にいたしております。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 それはどうなんですか、一元化が完了した略記所から地図を作っていくのですか、一元化が全部終わってから作り出すのですか、どっちの意味ですか。
  118. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この法律案の建前は、一元化の終った所から整備していくということに相なるわけでございます。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、先ほどのお話ですと、一元化が終わるのが四十年ですか。これは初年度でも一元化が終わる所があるんでしょう。
  120. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) その通りでございまして、その関係を附則の第二条で規定しておりますが、登記所ごとに法務大臣が指定していくことになりますので、ある所は早く済み、ある所はおくれる。しかし、おそくとも昭和四十年の三月までには一元化を完了したいというのが現在の計画でございます。そういう関係で、地図の整備、建物所在図の整備も、順序としましては一元化の早く済んだ所から手をつけていきたい、そういうように考えております。  それからなお地図の整備につきましては、実は昭和三十五年度の予算におきましても、約六百万円ほどの予算要求でございまして、大体その程度の予算が入る見込みがついております。ですから、現在でも地図の整備につきましては、現在の予算の範囲内で逐次完了に努力はいたしておる次第であります。
  121. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと関連して聞きたいことが一つあります。  先ほど十七条はこの附則第三条によって除外しておると言いますけれども、十七条という条文は入ってないのじゃないですか。どこにありますか。
  122. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この三条の第二号では、「第一条の規定による改正後の不動産登記法中第七条ノ二、」云々とございまして、十七条、十八条とここにあげてはおりませんのですが、ずっと条文をあげまして、四十六ページの「第百四十八条から第百五十八条までの規定を除くその他の規定は適用せず、」と、こうあるわけです。「その他の規定」適用されない規定の中に十七条、十八条が入っているわけであります。ここに条文があがっておるのは、改正後の規定で適用のある条文をここにあげておきました。十七条、十八条は「その他の規定は適用せず、」と、この中に入っておるわけであります。説明が不十分で失礼いたしました。
  123. 大川光三

    委員長大川光三君) わかりました。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、私、大へん質問がおくれていたわけですが、若干お尋ねしておきますが、時間がありませんが、まずこの一元化の問題が起きてきたそのほんとうの事情ですね、これはどういうところから出発したのか、まあいろいろこれはあるわけですが、事情があるその最も大きな事情というのは、どういうところにあったのかね。
  125. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 御承知通り昭和二十五年より前までは、地租家屋税というものは国税でございまして、国税徴収の賦課徴収の基礎台帳ということで土地台帳家屋台帳というものが税務署にあったわけでございます。ところが、昭和二十五年にその地利、家庭税が新たに固定資産税ということでもって地方公共団体に移管になったわけでございます。その際、土地台帳、家庭台帳、これをいかにするかということが問題になったのでございます。それで、当時におきましても固定資産税の徴収をいたします市町村土地台帳家屋台帳を移してはどうかという意見も実はあったのでございますが、この土地台帳家屋台帳というのは、税務署が所管しております当時は、直接の目的は課税の基礎とする課税台帳であったわけでございますが、実は、登記の方でもこれを利用いたしておりまして、土地建物現況の把握ということは、職権主義というものを骨子にして作られますところの台帳の方が基礎になるべきである。登記は、何と申しましてもこれは申請主義でありまして、申請権者からの申請がなければ登記されないわけで、そういう関係権利の、客体である不動産を把握するには、登記簿は基準になりませんで、台帳が基礎になっておったわけであります。従いまして、登記申請をする場合には、以前でありますと、税務署に備えてありますところの土地台帳家屋台帳登記簿表題部不動産表示が合っているか合っていないか、あっていなければ不動産の表題都の表示を改めまして、それから登記申請をするということで、登記申請人はまず税務署に足を運びまして、土地台帳家屋台帳謄本を取りまして、そうして登記申請ということをやっておったわけでございます。その当時からすでに台帳というものと登記というものはそういう結びつきがあったわけでございます。市町村にこれを渡しましたのでは、やはり登記申請人にとっては、同じ税務署に足を運んだのを、今度は市町村役場に足を運ぶという工合で、そうして台帳謄本を取ってこなくてはならぬということで、登記申請手続という面からだけ考えても、市町村台帳移管するよりも、登記所の方にむしろ移した方が登記だけの面から考えると便利ではなかろうかということが第一に考えられたわけであります。  それから次に、なるほど従来の土地台帳家屋台帳というものは、徴税の基礎資料ということで、税の関係で用いられておったわけでございますが、ただいまも申しましたように、登記と密接な関連があるわけで、単に徴税の基礎資料たるにとどまるものではない。不動産現況というものを正確に把握して、従来の不動産登記制度の根本でありますところの権利関係登記してこれを公示するという、その権利の客体の現況というものを明確にする、そういう意味でもこの台帳制度というものを整備する必要がある。単なる課税台帳ではない。権利の客体を把握するものである。そうなって参りますと、これはやはり登記所移管するのが筋ではなかろうか。  それからさらに、これを固定資産税の賦課徴収という点だけに着目いたしまして、市町村にまかせた場合、はたしてこの台帳というものが完全に運営されていくであろうか、これは先ほど加藤参考人からもお話がございましたように、市町村によって取り扱いが区々にわたるようなことはないだろうか、でこぼこになるというようなおそれはないだろうか。やはりこれは国の機関が処理するよりも、むしろ徴税というようなそういう現実の必要性のない国の中立的な機関がこれを所管することの方が、正確に不動産現況というものを把握することができる結果になるのではなかろうか。そういうことでもって昭和二十五年に地租建物家屋税市町村に移譲になりました際に、台帳登記所移管されたわけでございます。  それからなお一言付加いたしておきたいのでございますが、市町村も中には非常にりっぱな組織を備え、人手も十分あるという所もこれはあろうかと思うのでございますが、現在の国土調査法による国土調査というのが行なわれているわけでございます。これは土地を一筆ごとに正確に測量いたしまして、地積を明らかにするということで、数年前から国土調査が行なわれておるわけでございます。調査の過程におきまして地図が作られ、地積も明らかになるわけでございますが、その調査の結果、調査の成果は、総理大臣の認証を得て初めて効力を生ずる。認証がありますと、地積図が登記所に送られてくるわけでございます。登記所はそれに基づいて台帳記載の訂正をいたすわけでございます。現在の実情を見てみますと、地籍の調査はとっくに済んでおるにかかわらず、なかなか総理大臣の認証ができない。これはどういう事情があるかと申しますと、従来の台帳記載が必ずしも正確でない、実測をいたしますと、台帳記載面よりも坪数、面積がふえるわけでございます。面積がふえますと、これは直ちに固定資産税に響いてくる、あるいは農村地帯でありますと、米の供出にも影響してくるということで、その国土調査の行なわれましたところの市町村では、これを今すぐ認証されて、それが公表されるということになると、住民としましては税金がふえ、それから米の供出がふえてくる不利益がある、そういう関係でもって市町村の方では所によりましてはできるだけ総理大臣の認証をおくらして、住民に目前の不利益を与えたくない、そういうような関係から、せっかく国土調査をいたしましても、その成果が登記所に利用されるまでには相当の年数がかかる、そういう実情なのでございます。そういうこれは多少余談になりますけれども、市町村にまかせますと、必ずしも現況の把握というものが、正確にいかないおそれがあるということは、そういう一事をもってもわかるのでありまして、そういうような事情も考慮されまして、昭和二十五年に登記所台帳移管になったというのが実情でございます。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 大へん詳しい説明があったんですが、そこで、台帳現況把握だと、こういうふうにおっしゃるわけです、市町村の場合。市町村にそれを処理させた方がいいか、あるいは登記所の方がいいか、理論的な問題はあろうと思うのですが、実際の問題としては人手がそろってなければそれはできないことでございますね。どちらに持っていっても、人がなければ、ちゃんと土地を測量したりは……。そういう点は、法務省では人的な関係の陣容というものができておらぬでしょう。それはどうなんでしょう。
  127. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) その点は仰せのような事情も一応あるようでございますが、私どもといたしましては、この方面の人的、物的な施設の充実ということもこれまで努力をいたしてきております。実は登記所におきましても測量の技術を訓練する必要があるというようなことで、一応全国にわたりまして第一回の測量講習と申しますか、これは昭和三十四年度におきまして一応完了したのでございます。これは登記官吏全員がその講習を受けたわけじゃございませんが、全国八カ所の法務局におきまして、管内の登記官吏を集めまして測量の講習をいたし、若干の測量器具なんかも登記所には備えております。  それからなお、私どもといたしましては、やはり測量の専門家の必要をつとに感じまして、従来も技官の要求をいたして参っておるのでございますけれども、これはまだ不幸にして予算化いたしておりません。今後もこの技官の獲得ということにつきましては努力をいたしたいと思っておる次第でございます。ことにこの一元化を機会にしまして、先ほど来お話の地図や建物の所在図を整備するという関係におきまして、ますます技官の必要が大になって参りますので、この方面の努力を一段と強化いたしたいと考えておる次第であります。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 法務局における陣容の問題ですが、そういう現在のところ技官が一名もない。これはもうはなはだしく不都合なことなんですね、現在の土地台帳法、家屋台帳法において命ぜられている仕事もできやせんのですよ、実際は。だから、これからだというようなことで、これは全く心もとないわけですね、そういう点では。で、先ほど登記官吏に若干そういう技術的な訓練をされたという説明があったんですが、これはしろうとにある程度の訓練をしたって、これは大体たかが知れておるわけです。それで、各法務局単位でいいわけですがね、そういう人員の配置というものがどういうふうになっておるのか、もう少しこまかく現況を示してほしい。  それから、その訓練をされたというのはどの程度の訓練をどういう範囲で……。全員に対しておやりになったようでもないようですからね、ちょっとその点説明して下さい。
  129. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現在の法務局の予算定員は、総員九千二百三十一名でございます。三十五年度からは、さらにこれに百四十二名増員される予定でございます。法務局では各種の仕事を担当いたしておりますが、この法律案関係では、登記台帳の従事職員数が問題になるわけでございますが、従事職員は約七千名でございます。これが大体全国の法務局、地方法務局、支局、出張所の事務量に応じまして、職員が配置されておるわけでございます。  それからなお、この測量の講習の点につきましては、ちょっと正確な数字を今持ち合わせておりませんが、たしか一カ年に二つの法務局管内ということを基準に実施いたして参りまして、ブロックの法務局管内の登記所職員を集めまして、十日前後専門家を招きまして測量の基礎知識並びに台帳事務処理に必要な測量の実務につきまして訓練を受けさせた次第であります。それからなおこのほかに、各地方法務局におきましては土地家屋調査士その他の専門家を招きまして、このブロックの法務局でやりましたのと別個に、その地方法務局の職員に対して測量の実習をやっておる所もございます。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 この七千名のうちで何名訓練されたわけですか。七千名全部じゃないでしょう。
  131. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 七千名は登記台帳事務の方に従事しておる全職員でございまして、このうちの何名が受けましたか、ちょっと私、今数字を持ち合わせておりませんが、大体一ブロック法務局におきまして平均五十人くらいは少なくともやっておると思うのでございます。八カ所でございますので四、五百人は一応このブロック法務局の測量の実習を受けておると、そのくらいの数字は見ていいと思うのでございます。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 まあ一割以下ですからね。まことにこれは少ないものです。それからその中身の程度がそれでわかりましたが、この登記所事務量の増加と法務局の人員の関係がどういうふうになっておるか、これもちょっと終戦後のおもな年度二、三をとって比較してもらいたいと思います。
  133. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 私どもはよく昭和二十六年と現在を比較いたすのでございますが、実は昭和二十六年ごろから登記事件が徐々にふえて参りましたので、昭和二十六年をとりますと、登記の総件数が約一千万件でございます。もっとも、これは私どもの方では甲号事件、乙号事件というふうに分けておるのでございますが、甲号事件と申しますのは登記簿に記入を要する件、乙号事件は謄本、抄本の交付あるいは登記簿の閲覧、登記簿に記入しない、そういう事件、乙号事件の方が簡易で手数がかからないという意味で、甲号事件と乙号事件と分けておりますが、昭和二十六年度におきましては総件数約一千万件、そのうち甲号事件、乙号事件、それぞれ五百万件程度でございます。ところが昭和三十四年度を例にとりますと、総件数がその五倍で約五千万件、五千三百万件になっておるのでございます。甲号事件はそのうち約八百五十万件、それから乙号事件が四千四百万件、大体そういう計算になっております。それからなお台帳事件も若干ふえておるのでございますが、昭和二十六年におきましては、台帳事件の合計が四百五十六万件、昭和三十四年におきましては七百八十六万件、こういうふうにふえて参っております。この登記事件、台帳事件を合わせますと、甲号、乙号全部ひっくるめまして、昭和二十六年を一〇〇といたしますと、昭和三十四年度は約四倍、四・一三倍ということになっております。これに対しまして法務局の定員がどうなっておるかと申しますと、昭和二十六年におきましては八千九百二十七人、約九千人でございます。それが昭和三十四年におきましては、先ほど申し上げましたように九千二百三十一人、かりに昭和二十六年を一〇〇といたしますと、人員の点では昭和三十四年度は三%の増員がなされた、計算ではそういうことに相なるわけでございます。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 それから将来における登記、今度法律が通れば一緒になるわけですが、いわゆる台帳の仕事も含めて登記全体の仕事の増加の傾向、これをどういうふうにごらんになっているのですか。
  135. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは大体昭和二十六年から昭和三十四年度までの趨勢を見てみますと、大体毎年十数パーセントずつの増加を見ているわけでございます。そういう関係で、今後もこの趨勢が続いていくのではなかろうか。もっとも、これは甲号、乙号合わせました総件数でございまして、甲号事件だけをとってみますと、そんなには実はふえておりません。登記所で一番手数を取りますのは、もちろん甲号事件でございます。たとえば昭和三十二年と三十三年を例にとりますと、約十万件、三十三年から三十四年にかけては約三十万件というふうに、それでも徐々にやはりふえております。そういう関係で、今後もこういう趨勢が続くのではなかろうかというふうに考えております。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 人によって多少違うのでしょうが、普通の平均からいうて、登記官吏の一人の扱い件数というものは、どの程度が適正なところなんですか。
  137. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 予算の場合の基礎として、また、あまり無理をしないで処理するという建前でいきますと、大体一日の処理能力は八件というところではないかと私どもは考えております。甲号事件八件であります。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 そういう計算からいきますと、先ほどの件数とそれから人員の関係というものは、どういうふうになっておりますか。
  139. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これはただいま申し上げました数字からいきましても、事件の増加に対しまして人員の増加というものが比例をいたしていないのでございます。そういう関係で、法務局の職員の事務負担量というものが逐次多くなっておるというのが現状でございます。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 計算してみればわかるのですが、一日八件として計算した場合に、先ほどのあげられた数字、二十六年と三十四年、これはいずれも基準量以上の負担をしょっておるでしょう、おそらく。どうなのです。
  141. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 全国平均いたしますと、基準量以上の負担になっております。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 二十六年の数字も、やはり基準量以上の負担になっておりますか。計算したものがあると、それで言ってもらうと非常に都合がいいのですが……。
  143. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 甲号事件だけを対象にいたしますと、約三・三件でございます。ただ乙号事件というのがございます関係で、乙号事件を除外いたしまして、三・三件、乙号事件もそのころは五百件でございますので、乙号事件も合わせますと約七件、このごろは非常にゆっくりしておったと言えば言えるわけであります、全国的に見まして。ただ、これは登記所によりまして、非常に事件の多い所と少ない所がございますので、これは平均しての話でございます。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 この一日八件というのは、どういう計算をされたものですか。
  145. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは同じ登記簿記載を要する事件でも、所有権の保存登記のような比較的簡単なものから、抵当権の設定、それから分合華を伴うものなど、非常に複雑なものもありますので、大体各種の事件につきましてこまかく所要時間というものを計算しまして、それを平均いたしまして割り出した数字でございます。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 この一日八件というのは、登記官吏も標準量として承認されているものですか、普通。
  147. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 私どもは、予算要求なんかの計算の基礎には、日八件というものを使っております。大体現状にマッチしておるのじゃないかと思っておる次第であります。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 まあ一つ実務官に聞いてみたらわかるのですが、それにしても二十六年のころが七件ですから、ちょうどというところですね、乙号事件も入れて計算して。ところが、先ほどの三十四年と比較すれば、件数では四倍になっておって、人員がほんの三%ですから、これは増加をしたもしないも大してかわらぬ程度のものですね。そういう状態で、ここに大きな仕事をやろうというのですから、非常な問題がやはり皆さんの内部から出てきておりますね。  私、委員長にも断りましたが、きょうは時間がありませんので、金曜日にもうちょっとこの点はお聞きをしたいと思いますが、この点は、それは実際職員の方がいろいろ注文され、とにかく一元化が、いい悪いは別として、その点がはっきりしなければ困る。たとえば一元化が政府の政策でおやりになるなら仕方がないとして、これがはっきりしなければ困るじゃないか。当然仕事は繁雑になるし……。これは当然私は筋の通った要求だと思うのですがどうですか
  149. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 登記所の職員のうち、ごく一部の者からそういう声があることは私も重々承知いたしているのでございますが、実は三十四年度におきましても約五十カ所の登記所におきまして一元化の作業、これは台帳の書きかえという形におきまして作業をやったのでございます。その実績によりましても、登記所の職員に非常な負担の増加をかけるということはないという実績を得ておりまして、三十五年度におきましてもその実績を基礎にした予算が組まれる予定でございますので、ちょっと考えると、いかにも大へんのようでございますが、事実はそうでないと私どもは考えております。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 これは次回に……。
  151. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと今のに関連して。先ほど参考人のお方の中に、七五%は臨時の方だというようなお言葉がございましたが、この七千人の数は、それを含めてですか、これ以外に臨時の人が入っていらっしゃるのですか、七五%は正確ですか。
  152. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 七五%と先ほど参考人が言っておりましたが、これは私ども昭和三十四年度におきまして、ただいま申しましたように約五十カ所、正確に申しますと五十八カ所の登記所でこの台帳の写しかえの作業をやったわけでございますが、その実績によりますと、外部から臨時の職員を雇い入れまして仕事をしてもらったわけでございますが、処理をしました全体のうちの七五%がこの外部から雇い入れました臨時雇によってなされております。そういう計算でございます。
  153. 赤松常子

    ○赤松常子君 この七千人以外の人数ですか。
  154. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) さようでございます。
  155. 赤松常子

    ○赤松常子君 今、書きかえのための臨時雇とおっしゃいましたね、それは。
  156. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) さようでございます。
  157. 赤松常子

    ○赤松常子君 そういう臨時の方で響きかえを正確にできたわけでしょうか。
  158. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 臨時の雇に書きかえをやらせまして、経験を積みました登記所の職員がそれをあとで検査をしまして、間違いがないようにということは万全の注意を払って処理いたしておるわけでございます。
  159. 赤松常子

    ○赤松常子君 仕事量が四倍になって人員はたった三%しかふえておりませんが、これはなぜふえないのでしょうか。そういうむずかしい理由があるのでしょうか。その辺のところ、どうなっているのでございましょうか。予算の関係でしょうか。
  160. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 事件数が四倍となったと申しましたのは、先ほど申し上げましたように複雑な事件それから簡易な事件も合わせまして、ひっくるめて四倍と申したのでございます。そういうふうにしましても、やはりこの事件の増加に対応して人手がふえてはいないことは事実でございます。で、私どもの方におきましても、この増員ということをこれまでも毎年念願して参りまして、努力をしてきたわけでございます。まあしかし国家財政全般の見地から、なかなかこれが容易でなく、ことに一面におきましては行政整理の必要も同時に叫ばれておりますような情勢にありますために、なかなかこの増員が実現できなかったのでございます。まあやっと昭和三十五年度においては先ほど申しましたように百四十二名の増員が認められることになったわけでございますが、こういうわけで、増員ということがなかなか登記所の事件の増加の実情に応じて認められるという情勢ではございませんで、私どもの方といたしましては、この増員ということに努力をすると同時に、事務の機械化をするということで、人員不足を少しでも緩和したいということで努力をしてきたわけでございます。それからなお、実を申しますと、この登録台帳一元化、この法律意味しておりますところの一元化も、実はこの登記所の専務を簡素化する、これは同時に国民の負担も軽減するという意味があるわけでございますが、登記所にとりましても、これは事務のかなり簡素化になるわけでございまして、これまた現在の登記所が直面しておりますところの人手の不足を緩和するための一つの大きな手段であると私どもは考えておるわけでございます。
  161. 赤松常子

    ○赤松常子君 どうも本省関係は、どの局を見ましても、どの仕事を見ましても、人が足りないということがほんとうに背から言われております。まあそういう一連のあれだとも思うのでございますけれども、私先ほどから、この人のふえ方というものがあまりにも少ないということに、もっと何かはかに隘路があるのではないか、こういうことを要請するのに何か隘路があるのか、その辺のこともお伺いしたがったのでございます。と同時に、もう一つは、これほど大事業を計画しても、もしこれが通るといたしますと、ほんとうに人手がたくさん要ると思うのでございますが、どのくらいほんとうに御要求なさるおつもりなんでしょうか。どのくらいあればこなしていけるものでございましょうか。その点のお見通しございますでしょうか。
  162. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは先ほど申し上げましたように、一元化を完了いたしますまでには、現在の計算におきましても約二十一億という数字が出ているのでございますが、これらにつきましては、昭和三十五年度が問題になるわけでございます。昭和三十五年度の関係におきましては、この昭和三十四年度の実績を基礎にいたしまして予算の、要求をしたのでございますが、この三十四年度を基準にいたしまして一元化関係の予算と認められる予定でございます。総額は一億四千万円になっておりまして、まあ人手の関係から申しますと、超過勤務手当であるとか事務応援の旅費であるとか、これは他の登記所からその一元化をやっております登記所に応援に行くわけでございます。その旅費でございます。それから外部から雇い入れますところの臨時の職員、すなわち賃金職員、こういうものが入手の関係では必要になってくるわけでございますが、たとえば賃金を例にとりますと、延べ人員にいたしますと、五万六千六百人程度の人員に見合う賃金の予算が入っております。金額を申しますと千七百万円。それから超過勤務手当でありますと千六百万円、正確には千六百六十九万円。それから事務応援の旅費が九百八十万円、約一千万円相当額の予算が入っております関係で、私どもといたしましては、現在の登記所の職員にそうひどい負担をかけないでこの事業をやっていくことができるというふうに考えておるような次第でございます。
  163. 高田なほ子

    高田なほ子君 亀田委員の質問に関連した部分だけきょう質問させていただきたいと思います。大体今説明をいただいたわけですが、その中でちょっと不明確な部分がありますので、この点お尋ねいたしたいと思いますが、先ほど七千名の職員の配置が完了したというふうに話されたわけですが、この七千名の職員というのは、これは一元化のために動員されている職員の数を説明されたわけでしょうか。
  164. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 七千名と申しますのは、これは全国の法務局、地方法務局、支局、出張所に勤務しておりますところの登記事務台帳事務に従事しておりますところの職員数でございます。
  165. 高田なほ子

    高田なほ子君 このほかに五万六千六百名の賃金職員が配置されている、その予算が千七百万円だということを説明されたと思いますが、五万六千六百名というのは、これは延べ人員なんですか。これはどうなんでしょう。
  166. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 延べ人員でありまして、これは一つ登記所を平均しますと、一口約三人の臨時雇を雇い入れる、そういう計算になるわけであります。五万六千というのは延べ人員でございます。
  167. 高田なほ子

    高田なほ子君 この賃金職員の賃金というのは、一日どのくらい計算されておりますか。
  168. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 単価は三百十円という計算であります。
  169. 高田なほ子

    高田なほ子君 三百十円という基礎数字はどこから出てきた数一字でしょうか。
  170. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは現在の実情と申しますか、実績を基礎にしたものでございまして、法務省の予算なんかにおきましても賃金の予算を組みます場合には、この三百十円を基礎にいたしております。これは実際問題としましては地方におきましては三百十円以下でも雇い入れるし、それから都会におきましてはこれより上回ることもあるわけであります。その平均ということで三百十円という単価を今用いているわけでございます。
  171. 高田なほ子

    高田なほ子君 超勤に千六百万円の予算が要求されておるようですが、これはどういう基礎に基づいて、千六百万円が要求されたものでしょうか。
  172. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 総額は千六百万円ではございません。正確に申しますと一億四千八百万円でございまして、そのおもな項目はただいま申し上げました超過勤務手当それから事務応援旅費それから賃金、それから用紙代、これは相当かさむものでございますが、こういうものを合わせまして一億四千八百万円になるのでございます。
  173. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは違いますよ、今の説明は。今のあなたの説明はちょっと違うんじゃないか。私はこういう質問をしたわけです。超勤、それから事務応援の旅費、賃金職員等を含めて本年度一億四千万円の予算が計上されていますと、あなたは説明された。私は、次のように質問したわけです。超勤の予算というのは、千六百万円というふうにあなたが今説明されたと私は聞いたので、千六百万円の超勤の計算の基礎というのはどういうふうなのですかと聞いている。そうしたら、あなたは、超勤は千六百万円ではありません、超勤は一億四千八百万円と答えている。これは一けた違ってくるとだいぶおかしい。
  174. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 私、あるいは聞き違えまして間違った答弁をいたしたかもしれませんが、あらためて申し上げますと、昭和三十五年度の超過勤務の関係を申し上げますと、先ほど千六百六十九万八千円と申し上げましたが、全国約百五十カ所になりますが、この百五十カ所の登記所におきまして、新しい表題部に書きかえをする、そのための超過勤務手当、これが千六百六十九万八千円でございます。それからなおそのほかに、昭和三十四年度におきまして、約五十八カ所の登記所におきまして移しかえが済んでおるわけでございます。新表題部への移しかえが終わっている庁がございます。この庁におきましては、新しく作りましたその表題部登記簿の該当の個所にはさみ込むという編綴の仕事があるのでございます。そのために五百八十九万二千円という超勤でございますが、別に入っておりまして、これを合わせますと、二千二百五十九万円という計算になっております。これはちよとこまかい予算の資料、私持ってきておりませんが、大体大ざっぱに申し上げますと、従事しますところの職員が一日平均三十分超過勤務をすればいいという計算になるわけでございますが、一日三十分の超勤ということで割り出した数字でございます。超過勤務の単価は、百十一円七十七銭という単価になっております。
  175. 高田なほ子

    高田なほ子君 こまかいことを尋ねるようですが、なぜこういうこまかいことを私お尋ねするかというと、先ほどの説明だと、事務量はふえていますね。けれども人員の増加というのは事務量に比べて必ずしもというよりは、むしろ非科学的なくらいに人員がふえていない、そこにもってきて、一元化の作業というものが加わってくれば、自然にオーバー・ワークになってくるのではないかということから、今の質問を私は続けているわけですが、一日平均三十分、一時間百十一円七十七銭、こういうような単価で予算化されているようでありますが、現実に超過勤務しておられる方は、一時間百十一円七十七銭という割合でもって確実に支給をされているものでしょうか。今日までの超過勤務手当というものは、必ずしも超過勤務をした時間だけは支給されておらないというのが実情じゃないですか。
  176. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは、ひとり法務省だけではなくして、政府全体がそうでございますが、超過勤務手当も、現実に超過勤務しました時間まるまる百パーセント超過勤務手当が支給されるという実情ではないわけでございます。予算の範囲内ということになっております関係で、必ずしも百パーセント支給はされていないのが実情でございます。ただ、一元化関係におきましては、事柄が非常に重大でありますし、出違いかあってはいけません。それからまた、職員の負担があまりに過重になってはいけないという点を十分考慮いたしまして、私どもとしましては、できる限り百パーセント、あるいはそれに近い超勤手当が支給できるようにということで、予算の要求もいたしましたし、大蔵省の方でもその実情を認めまして、他の一般の超勤手当と違いまして、一元化の超勤手当につきましては、かなり有利な査定がなされているわけでございます。ごく簡単に申しますと、法務省の職員の従来の一般の超勤手当は、一人当り年額にいたしまして約一万円になるわけでございます。一般の一元化以外の関係の超勤手当の予算は、大体一人当りで割りますと、平均しまして約一万円でございまして、一元化関係だけは一人当たり約二万円になるわけでございます。そういう関係で、一元化関係の超過勤務手当は、従来の一般の週過勤務手当よりもかなり有利に大蔵省の方でも査定してくれている実情であります。
  177. 高田なほ子

    高田なほ子君 いろいろ配慮をされているようですが、とにかく現実問題として事務量だけはふえている。だから三十分は超過勤務しなければその事務を片づけていくことができない。しかし、それに対する手当として十分であるとは言うけれども、従来までの慣行では、やはり予算の範囲内ということで、必ずしも十分に支給されておらない実情なので、私としてはこの点を非常に心配しているわけであります。今日まで一元化が進められない場合に、法務省の一人当たりの超過勤務手当の予算が一万円である。こうなってくるというと、概算すると、大体月に八百円強ということになっておりますが、はたしてこの八百円強というような超勤手当というものは、現実に現場の職員に支給されておりますものでしょうか。どんなものでしょうか。
  178. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 従来の一般の超勤手当は、先ほど申し上げましたように、必ずしも実績にマッチしないのでございますが、この一元化関係の予算は、超勤は三十四年度の実績に徴しますれば、従来とは比較にならぬくらいの割合で支給されておりまして、大体百パーセントあるいはそれに近い支給ができている実情であります。
  179. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、この際あらためて超勤と、それからやがてまた法改正に伴って現場の職員の上に課せられる責任の重大ということを思いますときに、非常にこの待遇問題ということについても、ちょっと道ははずれるかもしれませんけれども、やはり認識をしておく必要があるように考えられるわけです。今のこの登記所に勤めている方の中堅ですね、大体十年ぐらい勤務されている方の手取りというものはどのくらいの手取りになっておるものでしょうか。その人が受ける手取りはどのくらいもらっているのですか。
  180. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ちょっとここでは正確な資料を持ち合わせませんが、大体十年ぐらいで二万五、六千円ぐらいの見当ではないかと考えております。
  181. 高田なほ子

    高田なほ子君 手取りが二万五、六千円になりますですか。
  182. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 手取りにいたしますと二万二、三千円というところじゃないかと思います。
  183. 高田なほ子

    高田なほ子君 税金を抜いて手取りですね。ちょっと局長の認識がお違いになるような気もするのです。実は、私、念のために給与の支給明細書をお借りしてきたのです。事務量が非常にふえるが超勤手当が存外ふえていないというところからお借りしてきたのです。これは無理にお借りしてきたのですが、これによると勤務八年、二十七才の男子の俸給支給額が一万六百八十円、その中から共済組合とか、あるいは税金を引かれたり、村民税を引かれたり、いろいろ引かれまして、結局自分の手に入るものというのは一万二千三百四十六円、しかもこの人は宿日直手当が千八十円ばかりもらっておりますから、他の職員に比べるとだいぶ割がいい方なんです。その上にやはりいろいろなものを引かれているようですね。何だかごまごま法務の研修費というようなものまで月給の中から引かれている。結局まじめに働いて宿日直を一生懸令おやりになって八年もお勤めになっていて手に入るものが一万一千円そこそこである。また九年お勤めになっておる方の手取りは、これまた一万二千円、この中からまたいろいろのものが差し引かれている。こうなってくると超勤手当が適当に取ってありますからというようなことでは、私としては非常にこの職員の立場に同情せざるを得ないわけです。これは給与法に基づいて支給されるものでありましょうけれども、どうも法務局の待遇というものについては、あまり法務省全体としては重視していないのではないかという気がする。こういう中で一生懸令働いている方で、しかも今度一元化が進められる、それに伴う待遇というものが行なわれないということになると、全くお気の毒だと思う。八年も勤めて年が二十七才になる方が毎月まじめに働いても、しかも宿日直をおやりになったり、この方は超勤を七百十五円もおやりになっているのだからだいぶいい方です。これではまだ結婚することもできない。一万一千円ばかりのものでは家庭を持つことができないですよ。はなはだ私は同情せざるを得ないのです。あなたの認識だと二万円なんと言うけれども、どこからそんな二万円なんという数字がはじけるのですか。
  184. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは私も今田では申し上げかねますので、なおその点は詳細調べますが、私どもとしても、実を申し上げますと法務省民事局におきましては法務局、地方法務局いわゆる登記所が私どもの受け持たされている仕事の大部分でございます。で、登記所の仕事が円滑にいきますようにということを念願しますと同時に、この登記所でまじめに誠実に働いておりますところの職責の待遇改善ということについては、実はもう私どもも努力をいたしているところでございます。ただ、何分登記所の職員も政府職員の一人といたしまして、現在の給与体系のもとにおける給与をもらっているわけでございますので、登記所の職員だけ特別の待遇ということを要求するわけにはいかないような実情でございます。もっとも検察庁におきますところの検察事務官あるいは裁判所におきますところの裁判所書記官というものについては、号俸調整というようなものがございまして、優位な措置がとられておりますが、そういう制度のよしあしは別といたしまして、法務省の内部におきましては、検察庁の職員であるとか、あるいはお隣りの裁判所の書記官なんかに比べまして、より楽なやさしい仕事をしているとは私ども決して思っておりません。見方を変えますれば、登記所の職員というのは、まさしく職員の責任において法律問題を判断し、事柄を処理しているわけでございますので、仕事の内容は違いますけれども、独立で仕事をしているという点では、裁判官、検察官と比較してもいいのじゃないか、それだけの責任を負わされた仕事をいたしておるわけでございますので、検察事務官あるいは裁判所書記官なんかよりもより程度の低い、楽な、安易な仕事をしているとは決して考えておりません。そういう関係で、私どもとしましても登記所の職員の待遇改善ということは、もうこれのみといっては言い過ぎでございますが、私どもの最も大きな関心を払っているところでございます。ただいま高田委員の仰せのように、その仕事の重大性、担当しておりますところの仕事の重大性、それからその事務量にかんがみまして、現在の給与を私どもとしましても決してこれでいいとは思っていない次第でございます。今後とも登記所の職員の待遇改善にはさらに一段と努力をいたしたい、そういうふうに考えている次第であります。
  185. 高田なほ子

    高田なほ子君 御熱意のほどはよくわかりましたが、これを機会に、とにかくあなた、九年間もまじめに勤めている人が手取り一万一千円ぐらいのものでは、とても生活もできますまいに。あたら青年が結婚もできないというような現状です。よほどこれは法務局の待遇改善という問題については、木腰を入れていただかなければならない、責任もはなはだ重大でありますから、せっかくやりますと言うが……。臨時職員の場合だってそうでしょう、一日の平均単価が三百十円なんというのは低過ぎますよ、今度日雇の方でもこれよりもうちょっとましでしょう、それよりも低い単価がこのまま素通りしているということは、責任が重大とか何とか言うが、実際はそれにそぐわないじゃないですか。三百十円なんというのは低過ぎますよ。これはもう少し本腰を入れて一つ考えてもらわなければならないし、私どもも、この際認識を新たにして協力しなければならない点だと思っております。しかも今度三十五年度の予算で定員百四十二名やっとふやしたでしょう。百四十二名ふやしたことについては条件がつけられているのじゃないのですか。ただふやしてくれたわけではないでしょう。どういう条件がついておりますか。
  186. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま臨時職員の単価三百十円は安いということでございますが、私ども予算要求の過程では、ちょっと正確な数字を忘れましたが、三百十円で要求したわけではないのでございます。ただ、これは大蔵省の方としまして、政府全般の問題として三百十円という標準がきまっております関係で、私どもこれに従ったわけでございます。これで十分であると思っているわけでは決してございませんそれから三十五年度は百四十二名の増員が認められる予定でございますが、この増員が認められるにつきまして、別に条件はついておりません。
  187. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは統廃合しないという条件がついてこれをふやしたということを聞いておりますが、そうじゃないのですか。
  188. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 統廃合というお話が出ましたので申し上げますが、統廃合も、これは実は人員の不足、それから人員の適正な配分というところから、一昨年あたりから実施を始めたのでございます。これも、人員の不足を補うという意味もございますが、さらにはやはり登記制度というものをもっと合理化する、ちょうど町村合併が行なわれておりますのと同じような精神でもって実施をいたしてきたわけでございます。しかしながら、これは、何分地元といたしましては、従来あった登記所がなくなるわけで、非常に地元には不便をかける結果にはなるわけでございまして、私どもも、こういう登記所の統廃合ということは避け得られるものならば避けたいということで、非常に控え目に実はやってきたわけでございます。幸いに百四十二名の増員も認められることになりましたし、かたがた地元では登記所存置の要望も非常に強いことでございますので、別に条件ということではなしに、統廃合は当分の間はやらなくても済むのではないか、またずっと将来の問題として考えていったらどうかというふうに考えておるわけでございます。で、統廃合をしないという条件で大蔵省は百四十二名の増員を認めたということではございません。
  189. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう時間もおそいですから、私これで切りますが、今の増員問題は条件付ではないというお話ですが、しかし、かなり政治的な動きもあるように私は聞き及んでいる。済むのではないかというような観測的な御答弁があったわけでございますが、一元化とこの統廃合の問題というのは、相当密接な関係にあるものなので、また機会をあらためてこの点についてはお尋ねをいたします。  それからもう一つは、逆戻りするようでありますが、この三百十円というのは、昔からニコヨンなどと言われた人も、今度は少し上がったようですが、どうもこれは低過ぎるように思う。将来この一元化の仕事というのは、かなり私有権にまでも関連を持つような責任の重い仕事でありますから、何らかの方法でこの単価というものが引き上げられなければならないと思います。しかし、本来としてはこういう賃金職員を配置してやるなんということは、これはやはり不規則の形だと私は思うんです。不規則だから賃金が安くていいという理由は成り立たない。たとえ不規則であっても、現在の定員が足りないためにこういうことをやるのでありますから、この三百十円というあまりにも低過ぎる非常識なこの賃金単価というものについては、再度これは考慮してもらわなければならない。それからもう一つは、裁判官に号俸調整があるのに、なぜ法務局の人たちは号俸調整とか何とかの方法で現実ばなれした給与を是正するような方向に持っていくことができないのか、私は疑問に思うわけです。これは民事局長さんにここでもってお尋ねするのは少し無理のような気がするわけでございますけれども、現実に九年間も働いて三十づら下げるような若者が、まじめに働いていて一万一千円くらいの手取りでは、これはもういけない、何とかしなければならないということで本腰を入れて考えていただかなければなりませんが、何か号俸調整か何かの方法でこれをカバーする道というものは考慮できないものなんでしょうか。これはどういうものでしょうか。希望ありませんか、何か。
  190. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 号俸調整というような形では困難かと思いますが、ただ、これはやはり他の各省の同じような地位にある職員との権衡の関係もございますので、そういう全般の給与体系というものも考慮に置きまして、今までも努力して参りましたし、今後も努力いたしたいと考えておる次第でございます。ただ号俸調整という形ではなかなか困難ではなかろうかと考えております。
  191. 高田なほ子

    高田なほ子君 くどいようですが、今度裁判官の方は一億七千万円ですから、号俸調整の予算が組まれているわけですよ。しかし、それの条件として若干時間延長が出されたので、当委員会でも、号俸調整に際して時間延長の条件をつけたことはけしからんということで、だいぶ私ども追及したわけです。ところが、今度登記所の職員というのは、一元化のために一日平均三十分の超過勤務をしなければならないように仕組まれている。一方的に超過勤務をしなければならないように仕組まれているにかかわらず、何らそれに基づく待遇というものが合法的に考えられないということについて、はなはだ私不満なんです。裁判官の号俸調整には時間延長が条件になったが、こっちは時間延長だけが条件で、待遇の面についてはびた一文これは考慮されていない。従来までの超勤なんというのは、平均一万円などといっても、一万円の超勤なんかもらっている人はないのじゃないかと思うんですね。私は最も優秀な人の袋を借りてきたけれども、平均額にもまだいっていないんですね。こういうことから考えても、何かここにその方法というものが講ぜられないものかと思いますけれども、これははなはだしつこいようですが、委員長、少しこの点考えてみてくれませんか、法務委員会としても。
  192. 大川光三

    委員長大川光三君) 承知いたしました。大いに考えてみて、委員会全体として一つ協力をしたいと、かように考えます。
  193. 高田なほ子

    高田なほ子君 委員長に最後に希望いたします。この間の質問のときに、私資料要求のようなつもりで申し上げたわけなんですが、次のようなことを要求したと思うんです。一元化について仕事の量がふえるのじゃないかと、その仕事の量がふえることについて、民事局長さんはさきほど無理はないということを言われておるから、そんな無理がないというのであるならば、何か資料をちょうだいしたいと私は言った。これに対して、あなたの方は、すでにその一元化の仕事をやっている所がだいぶあるから、それの実績を資料としてお出しいたします、こういうような御答弁があったわけなんです。私は、この際あらためて、実績に基づく資料というものをちょうだいしたい。これが一つ。もう一つは、今度は新法を制定するにあたって一応予算としては二十一億の予算が七年間にわたる計画の中で組まれているように承るわけでありますが、一体この人員の配置というものはどういうふうにこの計画の中で配置されていくものであるのか、この点について、立案される以上は、七年間の経過規定を設けての法律でありますから、何かプランがあるはずだと思います。従って、そういうプランがあれば一応資料として提出をしていただきたい。この二つの資料をあらためてここで提出していただくように、委員長においてお取り計らいいただけるようにお願いをしたいと思います。
  194. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまの高田委員の御発言に関連して当局に伺いますが、先ほどちょうだい、しました「昭和三十四年度登記簿台帳一元化移記実績表(三五・一・三一現在)」という表は、先般の高田委員の御要求の資料に該当するのでしょうか。
  195. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 高田委員の御要求の資料に該当すると思います。
  196. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうですが。
  197. 大川光三

    委員長大川光三君) まだごらんになっていませんか。今さっきこの長い表を配ってきました。  そこで、先ほど配付されたこの実績表のほかに、なお、ただいま高田委員御要求の資料を次回に御提出を願いたい。
  198. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 承知いたしました。
  199. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 登記所の職員の任用の条件ですね。それは国家公務員試験か何かに及第した者をやっているわけですか、試験なしにやっているのですか。
  200. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは他の各省とも同じでございまして、原則は国家公務員試験に合格した者、初級試験、中級試験あるいは上級試験、試験に合格した者を採用するわけでございます。    〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕
  201. 大川光三

    大川光三君 私は、本法律案に直接関連を持つ疑問点について、事務的なお尋ねをいたします。  まず第一点として、先ほどからいろいろ御説明を伺いまして、登記台帳一元化の完了の時期は昭和四十年三月を目標にいたしておると、しかも、これに要する経費が二十億円を上回るという点は了承いたしましたが、それに関連して、計量法施行法によるメートル書きかえ作業というものは、一体いつごろから始められ、いつごろ完了するお見込みであるかという点。午前中の参考人のうちには、メートル法の書きかえなどはその必要の事件が起こったつどやっていけばよろしいという意見も開陳されましたが、これに関する当局の意見をあわせて伺いたい。  なお、事務的に、いわゆるバインダー式帳簿改正の状況はどうか、期限を延長する必要がなかろうかと考えますが、この点をまずお伺いします。
  202. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 先ほど申し上げましたように、昭和四十年の三月三十一日までに一元化を完了いたしまして、次の一年間、すなわち四十年の四月一日から四十一年の三月三十一日までの一年間において、全国の登記所におきましてメートル法による計量単位への書きかえを行なおうという計画でございます。  なお、メートル法の書きかえは、登記申請が出るつどやっていいではないかという御意見もあるようでございますが、それも確かに一理あるごとでございます。ただ、しかし、このメートル法施行法の建前が、四十一年の四月以降は土地建物につきましても全面的にメートル法による、そういう関係で、登記申請をしますにも、あるいはその前提になります不動産取引をいたしますにしましても、全部メートル法によってやるということに相なるわけで、一般は完全にメートル法によってやるということになるのに、登記所だけは依然として尺貫法による登記簿しか持たないということでは、建前として不便ではなかろうか。そういう関係で、実は閣議の了解をもちまして、四十一年の三月までに登記簿の書きかえをやるということに一応きまっておるわけでございます。そういう関係で、目下の計画では、四十一年度一カ年においてメートル法の書きかえを実施いたしたいと思っておる次第であります。  それから、ただいまお尋ねの登記簿のバインダー化、これは以前は御承知のように不動産登記簿は大福帳式になっておりまして、中の用紙もはめはずしができない、そのために非常に不便であったのでございます。これを用紙のはめはずしができるバインダー式に改めるという事業を昭和二十七年から八カ年計画で始めまして、昭和三十四年度完了いたすわけでございます。現在、まだこの事業を一部の登記所においてやっておりますが、本年度一ぱい、すなわち、今月一ぱいには全部完了する予定でございまして、期限を延長する必要はないという実情であります。
  203. 大川光三

    大川光三君 ただいまの御説明の中で、メートル法書きかえ作業は、一元化完了後引き続いて実施するということでございますが、予算関係は二十億円を上回るという、その中に含まれるのでしょうか。別にメートル法書きかえ作業予算というものは、そのときになって御計画になるのでしょうか、一応伺っておきます。
  204. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 先ほど一元化の現在の予算の総額の見込みは二十一億円と申しましたが、この中にはメートル法の書きかえの経費は含まれておりません。
  205. 大川光三

    大川光三君 次に、職権調査に関してのお尋ねでありますが、不動産表示登記に関しましては、所有者申請義務を課しておる。たとえば法第九十三条ノ六、八十条の一、三、八十一条の一、三、八十一条ノ八、九十三条の一、三、九十三条ノ二の一、三、というがごときであります。また、一面、登記官吏の実施調査権、すなわち、法第五十条及び二十五条ノ二においては、職権登記の権限が認められておりますが、一体、申請職権と、いずれがその建前とされておるのか、本法律案の精神として、両者の関係についての御説明をわずらわしたいと存じます。
  206. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この法律案のもとにおきましては、現在の台帳制度と同様に、不動産現況に変更がありました場合には、所有者申請の義務を課しておるわけでございます。ただ、しかしながら、申請がありましても、登記所の方で実質を審査いたしまして、それが間違っておりますれば、必ずしも申請によらないで、実費に従って登記をしていく、それからまた、所有者から登記申請がございませんでも、登記所職権調査をいたしまして、登記をするという建前になっておりますので、いずれが原則かと申しますと、職権主義ということが基本の建前であると申しても差しつかえないと思います。
  207. 大川光三

    大川光三君 次に、いわゆる地番の整理に関してのお尋ねでありますが、地番は行政区画ごとに起番して登記所が定めておるのでありますが、今日地番の乱脈ぶりは申すまでもなくはなはだしいものがあります。町名、番地の整理事業として最近自治庁において活動が開始されようとしているやに仄聞するのでありますが、法務省としては、これにいかなる協力をするのか、また、地番区域の変更等にいかに対処されるお考えであるか、さらにまた、現在地帝整理問題に関して具体的な策があれば、承っておきたいと存じます。
  208. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現在地番が非常に混乱いたしましてわかりにくくなっておるということは、全く仰せの通りでございます。吊しますのは、現在の地番と申しますのは、これは税務署が土地台帳を所管しておりました当時に付されたものでございまして、税務署におきましては、地租の徴収ということが主眼でありました関係で、地番が土地の分筆あるいは合筆その他によりましてだんだんわかりにくくなっていくという、そういう実情にありましても、あまり関心が払われない。その関係で、まあ野放しと申しますか、そういう状態で、非常にわかりにくくなってしまっておるのでございます。ところが、もちろん地番というものは徴税の便宜のためにだけあるものではないのでございまして、土地を特定するという機能がございます。しかも、この土地の番号を基礎にしまして、人の住所であるとかあるいは本籍というものが表示されておるわけでございます。そういう関係でありますので、現在、ことにこれは都会地に顕著であるのでございますが、土地の移動の激しい都会地に多いのでございますが、地番が非常に錯雑しておりますために、われわれの日常生活に非常な不便を与えておるのでございまして、登記所としましても、これは台帳移管されました当時からのかねての懸案で、これを合理的に整然とつけかえるということの緊急性は、つとに私どもとしましても感じておったところでございます。ところが、実際問題といたしましては、地番をつけかえるということはなかなかのこれは大事業なのでございまして、先ほど来も話が出たのでございますが、登記所で備えておるところの地図というものが必ずしも正確でない、その関係で、まず地図を整備するということが先決問題になってくるのでございます。その地図を整備しました上で、地番のつけかえをやるわけでございますが、地番をつけかえますと、その結果としまして、市町村におきましては戸籍であるとか、住民登録の関係で使用しておりますところの住民票、あるいは課税台帳、これなんかも書きかえる必要が生じて参るわけであります。それからまた、民間の銀行、会社なんかにおきましても、預金台帳であるとか、あるいは株主名簿を書きかえるとかいうようなことが必要になって参ります。さらにまた、これを一般世間に十分に周知させませんと、郵便なんかが新旧の両地番を使用する、あるものは新地番により、あるものは旧地番によりというようなことで、郵便局においてもこれは非常にめんどうなことになってくるわけで、この地番のつけかえによる各方面に対する影響というものは非常に大きなものがあるわけでございます。そういう関係で、軽々に地番整理に手をつけると、登記所の手数からいいますと、現在でありますと、台帳改正後でありますと登記簿表題部でございますが、これを簡単につけかえればいいという筋合いのものでは決してないのでございます。  それからまた地番整理におきましては、地番を付します単位、地番の区域でございます。大体字あるいは町、町境なんかがその基礎になっておるわけでございますが、この字境や町境、これなんかも現状のままでいいか、飛び地があったり、出入りがずいぶんあるわけでございます。これも同時に整理いたしませんとうまくいかぬわけでございます。そういう関係で、法務省といたしましてもこの字境あるいは町境なんかの関係は、これは自治庁の所管でございますので、自治庁とも十分協力いたしまして計画を立てていきたいと思うのでございますが、さしあたって昭和三十五年度においては約百万ちょっとの予算が入っておりますので、サンプル的にこれを実施いたしてみたい。そこで十分検討をいたしまして、それに基づいて計画を広げていきたいと、そういうふうに考えておる次第でございます。
  209. 大川光三

    大川光三君 今度の改正案で比較的問題になる点が、例の保証書による登記の事前通知という点でありますが、改正案では、この保証書制度の乱用による虚偽の登記の防止のために、保証人の一定行為に対して刑事罰を設けております。すなわち法百五十八条でありますが、どうも一方で念には念を入れ過ぎると申しますか、保証書による登記には事前通知という手がたい方法をとっておる。もうそれだけで事足れりと考えるのでありますが、さらに百五十八条のような刑事罰を設ける、しかも、その刑事罰が重過ぎやしないかということを私は考えるのであります。それと、いま一つ、この百五十八条の条文を見てみますると、非常に新しい言葉が使われておる、すなわち百五十八条「登記義務者ニ付キ確実ナル知識ヲ有セザルニ拘ラズ第四十四条の規定二依ル保証ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又八二十万円以下ノ罰金二処ス」と、かようになっておる。一体「確実ナル知識ヲ有セザルニ拘ラズ」ということは、いわゆるこれは、故意を処罰しようというのか、過失もあわせて処罰しようというのか、どうも「確実ナル知識ヲ有セザル」ということはどういう意味であろうか、具体的な御説明をわずらわしたいと思います。
  210. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この保証書につきましては、この委員会でも問題になりましたように、事前通知の方法を従来と違ってとりましたのでございますが、さらに百五十八条という新しい規定を設けまして、このような罰則を設けましたのは、やはり虚偽の登記がされることによります真正の権利者あるいは無権利者と取引をしましたところの第三者がこうむる不利益をできる限り防止したいということで、事前通知に加えましてさらにこういう罰則を設けることによりまして、あくまで登記の真正を確保したいという趣旨からでございます。御承知通りわが国登記制度におきましては、権利登記におきましては、登記官吏には実質審査権がない。提出されました書類が法律の定める形式的な要件を備えておれば、これを受理して登記をしなくてはならぬ。形式審査主義をとっておるわけでございます。でありまするから、同じ形式審査主義にしましても、提出されますところの書類、これはできるだけ真正であることを確保するというそういう措置が他面において必要になってくるわけでございまして、そういう関係で、事前通知とそれから判別というものをあわせとることにして、権利登記の真正を確保しようというのがねらいなのでございます。  それから第百五十八条は「登記義務者二付キ確実ナル知識ヲ有セザルニ拘ラズ」という表現になっておりますが、これは故意を罰するのか過失をも罰する趣旨なのかというお尋ねでございますが、これは、はたして自分は登記義務者だと言って出てきた者が登記義務者なのかどうか、その本人なのかどうかということを知らないにかかわらず、登記義務者に間違いないということで保証書を書いた場合でございますが、過失は処罰しない、あくまでこれは故意であります。その要件は、その者が登記義務者本人であるかどうかということを知らない、にかかわらず保証書を書いた、登記義務者に相違ないという保証書を番いたということが構成要件になるので、故意犯なのか過失犯なのかといいますと、放念犯であると解釈いたします。
  211. 大川光三

    大川光三君 ただ、そこまで念には念を入れて、一体不動産取引の円滑を欠くようなうらみはないかという考えなんです。御承知のように、この四十四条において証明する資格は、「其登記所二於テ登記ヲ受ケタル成年者二人以上カ」と、こうなって、一応登記所登記をしたという二人以上の成年者がこれを証明するわけですから、その証明までことごとく疑ってかかって、こういう比較的厳罰をもって臨むということは、取引の円滑を欠くうらみはないか、これは午前中の参考人の、ことに実務家はそう見ておるのですが、いかがでしょうか。
  212. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 罰則が必要だと考えますのは、これは現在の保証書の作成の実情を私どもとしては考えなくてはならぬと思うのでございます。と申しますのは、全部が全部そうというわけではございませんが、実はあらかじめ保証人の署名捺印がある書類が準備されておりまして、それに登記義務者の名前を書き込んで、簡単に保証書が作られるという例が必ずしも少なくないのでございます。保証人になる人が登記義務者に直接に会わないで、あらかじめ書類が作ってありまして、それに登記義務者の名前を書き込めばいいという式の保証書の作成というのが、かなり行なわれておる実情なのでございます。本来からいいますと、そういうことはあり得べからざることで、保証人になります以上、必ず本人に会って確かめた上で保証書を作成すべきであるのでございますが、実情はそうではない。その関係で、保証書というものは簡単に作られて登記がされておる実情でございまして、それができないということになりますと、罰則関係からだけでも保証人というものがかなり慎重になる。それで、先ほどの参考人の御意見のように、これでは登記がスムーズにいかぬという御不満も出てくるわけでございますが、ただ、ここで考えておかなくてはならないと思いますことは、まあ大銀行、大会社ということになりますと、これは取引をします場合には十分調査もいたしますし、そのためのスタッフもそろっておりまして、たとえ保証書で登記をやりましても、それが実は虚偽の登記であったというようなことが後日になってわかるという事例は、そう起こらぬかと思うのでございます。一般のしろうとの人々の取引においては、これはよほど注意いたしませんと、やはり役所の方でもって非常にめんどうか知れませんけれども、こういう注意を払ってやるということにいたしませんと、間違いが起こりやすいのではないか。ことに、先ほど地面師の話が出てきましたけれども、こういう虚偽の登記は、戦前に比べると、かなり増加しているのではないかと、私どもとしては思うわけでございます。それから、なお、先ほどの参考人の御意見では、地面師なんかが、権利書を偽造してくるので、保証書の制度をこんなふうに厳重にしても、地面師の方はどうにもならぬという御意見もごさいました。これは一応ごもっともでございますが、ただ、権利書の偽造となりますと、これはそう簡単にはできない。登記所の印なんかも押してございますし、それには受付番号なんかもちゃんと記載してございます。登記所の方としましては、登記済証に押している登記所の印がございますが、これは登記所の職員が毎日使っている判でありますので、見れば大体わかるわけで、登記所の印がおかしいというので、偽造の権利書も発見した例も多くございます。それからさらに疑問を持ちますと、受付書と対照しまして、これは偽造だということを発見した例もございます。権利書の偽造となりますと、これは相当技術を要しまして、そう簡単にはできません。しかし、私どもとしましては、なお登記済証の交付手続一つ考え直す必要があるのではないか。非常に不動産取引の頻繁な登記所、これは全部一律にやる必要はないかと思いますが、土地取引不動産取引の非常に頻繁な所、こういう地面師なんかによる虚偽の登記がされる危険性ある登記所におきましては、その登記済証の様式についても一考すべきではなかろうかということで、私どもも実は具体的にその方法を検討中なのでございます。そちらの方からも一つ虚偽の登記を防止する措置を講じたいと考えておる次第でございます。
  213. 大川光三

    大川光三君 次に、仮処分命令による仮登記を、登記権利者からの申請主義にしたという理由は、どこにあるのでありましょうか。現行法通りでもいいのではないか、もし、いわゆる登記職権主義が原則であるという建前からいきますと、なおさらそういうことが言えると思いますが、いかがでございましょうか。
  214. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現行法は、ただいま仰せの通り、仮処分命令による仮登記におきましては、裁判所の嘱託によっていたしておるわけでございます。ところが、実情を申し上げますと、裁判所の嘱託とは申しますが、仮登記権利者が裁判所から嘱託書をもらいまして、仮登記権利者が登記所に嘱託書を持って参りまして仮登記をする例が実は大部分なのでございます。なぜそうなるかと申しますと、この嘱託書にもし軽微な誤りでもありますと、たとえば仮登記義務者の名字がちょっと間違っておったり、登記簿と会わない、あるいは不動産表示がちょっと違っておる、登記簿と合わないということになりますと、登記所としましては、その嘱託書をそのまま受理するわけにはいきませんので、裁判所に返す、そういう場合に、裁判所から書面で来ておりますと、登記所もどうしても郵送で返すということになる、それが裁判所に返りまして、裁判所の方で嘱託書を訂正しまして、再度さらに嘱託書を送って参るということになりまして、どうしてもその間数日間ギャップができてしまうわけです。仮登記は大体急を要する場合にやるわけでございます。それでは登記が非常におくれてしまう、そういう関係で、むしろこれは現在仮登記権利者が裁判所から嘱託書を持って参りまして、登記書の窓口に持ってくるという現実の姿を法律上の制度にした方がいいのじゃないか、登記が迅速にできる、それだったら申請人にこの点が間違っているからということで、申請書を返しまして、即日補正をさせまして提出させるということになりまして、登記は迅速にできるわけでございます。これは仮登記権利者にとってもかえって手続が便宜ではないかということで、これは裁判所とも十分協議をいたしまして、現行法の嘱託を申請ということに改めたのでございます。
  215. 大川光三

    大川光三君 次に、改正法の百四条に関連しての質問でありますが、土地の一部分について処分禁止の仮処分ができるかどうか、できるとすれば、その登記手続について説明をわずらわしたい。なお、不動産表示登記のない場合はどうするのか、さらにまた、未登記建物の一部について処分禁止の仮処分の登記はどうしてするのであるか、その点をお伺いします。
  216. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 一筆の土地の一部分につきまして、裁判所が処分禁止の仮処分をすることは、これは可能でございます。一筆の土地のどの部分ということを明示いたしまして、その部分について処分禁止の仮処分はできるわけでございます。ただ、この仮処分をいたしますと、登記をいたしませんと実効が上がらぬわけでございますが、登記をいたします場合には、一筆の土地の一部分についての仮処分の登記はできませんので、まず分筆の手続をすることが必要になってくるわけでございます。その場合は、仮処分権利者が債権者代位権によりまして、土地所有者にかわりまして分筆の登記をまず前提としていたすわけでございます。そうして仮処分の登記がなされるということになるわけでございます。この点は、最高裁判所の実は判例もございまして、一筆の土地の一部分につきまして分節登記をしないで仮処分の登記はすることができないという実は最高裁判所の判例もある次第でございます。  それから不動産表示のない土地なりあるいは建物について処分禁止の仮処分がありました場合の手続はどうなるかという点でございますが、これは今度の第百四条の第二項におきまして、不動産表示登記のない不動産について所有権の処分の制限の登記をする場合には、第百二条の規定を準用するということになっております、が、この百二条によりまして、これは仮処分の登記でありますから、裁判所の嘱託でいたすわけでございますが、この登記用紙中表題部に、裁判所の嘱託書に揚げた不動産表示に関する事項記載しまして、職権でもって所有権登記登記所がする、その上で仮処分の登記をするということになるわけでございます。
  217. 大川光三

    大川光三君 さらに、改正法の三十七条、三十八条に関連してのお尋ねでありますが、買い戻しの特約の登記のほかに、権利の消滅に関する事項登記というのが、具体的にはいかなるものをさすのか、これを独立の附記登記とされた理由はどうか、こういう点を伺います。
  218. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現行法で申しますと第三十八条、改正案でも三十八条でございますが、権利の消滅に関する事項というのがあるのでございます。「登記原因二登記ノ目的タル権利ノ消滅二関スル事項ノ定アルトキ」という規定が、当初からこういう規定が入っているのでございますが、これは解除条件付の権利あるいは終期付の権利をさすのではないかと解釈いたしている次第でございます。ところが、現実にはなかなかその適例がございませんが、一つの例をあげますと、たとえば山林なんかに地上権を設定しました場合に、現在生育しております立木が、立木の一代限り、現在の立木が伐採されるまでの地上権、そういう立木一代限りの地上権というのがその適例ではなかろうかと考えている次第でございます。これは、今の例は終期がついているわけでございますが、そういう場合に地上権の設定登記登記事項の中にそれを入れておきますと、一緒に現行法は書くようになっているのでありますが、なかなか見にくい、見落とすことがあるわけでございます。後日地上権の譲渡を受けるという人が、まだその地上権は存続していると思ってうっかりその地上権を取得してしまう、ところが、実はその登記事項の中に立木一代限りという特約があるために、実は消滅しているのだということがわからないで地上権を買い受ける、譲り受けるというような間違いが起こりやすいという関係がございますので、独立の附記登記、地上権設定登記を附記登記として、別に独立してそれを登記いたしておきますと非常に見やすいという、そういう便宜で、こういう買い戻しの特約の登記と同様に、この権利の消滅に関する事項登記を附記登記でするということにいたしたのでございます。
  219. 大川光三

    大川光三君 ただいま権利消滅事項として地上権に関する例をおあげになりましたが、そのほかに具体的に伺ってみますると、たとえば二十年たったら所有権は戻るという特約は、これに該当するかどうか。また抵当物権に関する代物弁済の予約というものがこれに当たるかどうか。さらに、地役権で要役地の所有権が移転した場合、その地役権は消滅するという特約、そういうことがこれに該当するかどうかを伺いたい。
  220. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまお尋ねの二十年たったら所有権は戻るというような特約、これは贈与の登記なんかに考えられると思うのでございますが、これも厳格にいいますと、何も所有権が消滅するわけではないので、権利の消滅するということには該当しませんけれども、まあ実務の扱いでは、かりにこういう二十年たったら所有権は戻るという特約がございますと、この三十八条に該当する場合として、権利の消滅に関する登記だということで実は処理いたしております。ちょっと疑問でございますけれども、そういう処理をいたしております。  それから抵当物権に関する代物弁済の予約でございますが、これは抵当権を設定いたしますと同時に、その被担保債権の弁済が期日になかった場合には、抵当権の目的物を代物弁済として債権者にその所有権を移転すると、まあ移転される結果として、抵当権は消滅する結果になるわけでございますので、この代物弁済の予約は、これはどうも権利の消滅に関する事項というのには該当しないのではないか、代物弁済それ自体としましては、むしろこれはその債権の弁済にかえて抵当権の目的物の所有権を移転するというのが、この代物弁済の予約でございますから、むしろこれは権利の消滅に関する特約として附記登記すべきものではなくて、現在でもいたしておりますように、これは仮登記、一種の条件付の権利所有権の移転ということでもって仮登記をすべきものだと考えるのでございます。従いまして、第三十八条には該当しないというふうに考えます。  それからいま一つお尋ねの地役権で要役地の所有権か移転した場合に、その地役権は消滅するという特約はいかがかというお尋ねでございますが、これは民法の二百八十一条に関するわけでございまして、民法の二百八十一条におきましては、第一項で「地役権ハ要役地ノ所有権ノ従トシテ之ト共ニ移転シ又ハ要役地ノ上二存スル他ノ権利ノ目的タルモノトス但設定行為二別段ノ定アルトキハ此限二在ラス」となっております。この第二百八十一条の第一項のただし書きをもちまして、要役地の所有権が移転いたしましても、地役権がついていかないのです。ところが、地役権は要役地の所有権というものと不可分のものであります関係で、このただし書きの特約があります場合は、要役地の所有権が移転しますと、地役権がついていかないで消滅するという結果に相なるわけでございますが、民法第二百八十一条のただし書きの特約があります場合は、別にこれは不動産登記法の規定でこれは新旧とも百十三条でございますが、「地役権ノ設定ノ登記申請スル場合二要役地ノ表示ヲ為シ地役権設定の目的及ヒ範囲ヲ記載シ若シ登記原因二民法第二百八十一条第一項但書、第二百八十五条第一項但書又ハ第二百八十六条の定アルトキハ之ヲ記載スルコトヲ要ス」となっておりまして、これは地役権の設定登記登記事項になっておるわけでございます。従いまして、解釈としましては三十八条の権利の消滅に関する事項には該当しない。現行法でもそうでございますし、新法のもとでもそうなると考える次第であります。
  221. 大川光三

    大川光三君 次に、建物の滅失登記について伺いますが、一体、建物の滅失というのはどういう場合か。たとえば、全部家を改築してしまったというような場合などもこの滅失に含まれるのかどうか。また前の建物の材木を使用して構造、場所が変われば滅失とされるのかどうか。あるいは基礎ワクがもとのままで、またもとの建物と同じものを新しい材料で作った場合は、滅失といえるかどうか。それと同時に、建物の滅失登記にあたっては、利害関係を持つ抵当権者等の承諾あるいはこれに対する通知を必要とするのではなかろうかと考えますが、その点についての御説明をわずらわしたいと思います。
  222. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 実は、登記におきましては建物に関して非常に問題があるわけでございます。しかし、ただいまお尋ねの建物の滅失の関係につきましては、このように考える次第でございます。  まず全部を建て直した、一度解体いたしまして全部建て直したという場合には、これはもとありました建物が滅失をしまして、新たに建物が新築をされたというふうに解釈すべきものと考えます。  それから、かりに前の建物の材木を使用いたしまして改築をした場合でありましても、しかも、なおかつ構造や場所が変わってなくても、一度解体して建て直したということになりますれば、やはり滅失して新築されたということに解すべきものだと思うのでございます。  それからまた、前の基礎をそのまま残しまして、その上にもとの建物と同じものを新しい材料で作った場合はどうかというお尋ねでございますが、この場合もやはり、従来ありました建物は滅失して新たに新築された、そういうふうに解釈すべきものと思います。現在の取り扱いもさようでございます。  それから、建物が滅失しました場合には、建物の滅失の登記をいたすわけでございますが、その場合には、建物の滅失登記申請がありますれば、たとえば、消防署なんかの確実な証明がついておりますれば間違いないわけでございますが、ただ滅失したからという申請であります場合には、登記官吏としましては職権でそれを調査いたしまして、はたして滅失しているかどうかということを確かめた上で登記をいたしますので、お尋ねのような抵当権者などの承諾書というようなものの添付は必要でないということに相なりますので、現行の台帳と同じように、この九十三条の六におきましても所存者からの単独申請でよろしい、この建物の上の権利者の承諾書などは要らないという建前をとった次第でございます。
  223. 大川光三

    大川光三君 滅失の場合をもう少し伺いたい。たとえば家を引くといいますか、家をそのままよその場所へ移転するのですね、そういう場合にはどれに入るでしょうか、滅失に当たるでしょうか。
  224. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) そのままそっくり引いていった場合、これは滅失でなくて、これは建物の所在場所が変わったというだけでございまして、建物の同一性は変わらない。同じ番地の中でありますと、これはもう現在の台帳上でもあるいは登記法上でも表示の変更はないのであります。たとえば番地が変わりますと、これは所在の地番が変わったというので、表示が変わり、登記も必要になるというだけでございます。
  225. 大川光三

    大川光三君 もう少し法律的なことを伺いますが、共同抵当における高順位抵当権者のいわゆる代位登記に関する質問であります。改正法案では、共同抵当権に対する高順位抵当権者の代位の附記登記手続を明確にしております。すなわち法第百十九条の三、これは民法の三百九十三条に関連しておるのでありますが、抵当権の一般規定を少なくとも準用しておりまするが、この場合に、代位債権額はいかに登記されるのか、新設百十九条の三の具体的説明をわずらわしてそれを明らかに伺いたいと存じます。
  226. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 共同抵当の場合の高順位抵当当権者の代位の規定は、ただいま仰せのように新法では百十九条の三に規定があるわけでございます。現行法ではこの規定がございませんでしたために、かなり不便を来たしておりました。解釈で補なって処理をいたしておったわけでございます。この規定の適用を実際の例を申し上げます。  ちょっとごたごたいたしますけれども、かりに抵当不動産が三つ、A、B、Cとあると仮定いたします。その価額がそれぞれ二百万円、百五十万円、五十万円だとかりにいたします。共同抵当権者をかりに甲と呼びますと、それが二百万円の債権を持っておると仮定いたします。もしこのA、B、C三個の不動産を一括して抵当権を実行いたしますと、これは民法の三百九十三条の規定によりまして、抵当債権者でございますところの甲は、Aの不動産からは百万円、Bの不動産からは七十五万円、Cの不動産からは二十五万円、不動産額の価額に応じてその償権額を割りつけるわけでありますから、百万円、七十五万円、二十五万円という割合で弁済を受けることになるわけであります。  それからなおA不動産に対する荷順位抵当権者としまして丙というものがおると仮定いたしまして、その丙の債権額を五十万円と仮定いたします。そうしますと、この三個の不動産を一緒に競売いたしました場合には、債権者の甲はA不動産から百万円の弁償を受けるわけで、あと百万円残っておりますから、その百万円の中から丙は五十万円の弁済を受けることになるわけであります。ところが、抵当債権者は申すまでもなくこの共同担保の目的でありますところの不動産を全部一括して競売、抵当権の実行をする必要はないので、個々の不動産について抵当権の実行ができるわけであります。そこでまず甲がA不動産を競売いたしまして、二百万円の債権の全額の弁済を受けたと仮定いたします。そうしますと、高順位債権者であるところの丙は、A不動産から優先弁済を受けられないということになります関係で、民法の節三百九十二条第二項の規定によりましてこの丙の地位を保護し、本来ならば甲の共同抵当権は債権の満足によりまして消滅すべきでありますところを、丙の五十万円の債権のためになお存続するということにしておるのであります。従って丙は、甲がB、Cの不動産から弁済を受くべき金額に満つるまで、換言しますとB不動産については七十五万円、C不動産については二十五万円の範囲で自己の債権五十万円の弁済を受けるために甲の抵当権を代位行使することができるということになるのであります。この場合に民法の第三百九十三条の規定によりますと、丙は甲の抵当権の登記に代位の附記登記をすることができることになるのであります。ところが、ただいまも申し上げましたように、その附記登記は一体どういう手続ですることになるのか、現行法ではその点が明らかになっておりません。理論的に申しますと、甲の抵当権が丙のために消滅しないで存続するのでありますから、登記手続の上では、抵当権移転の登記に近い性質を持っておるわけでございますが、抵当権移転の登記というふうに簡単に断定するというのもちょっと疑問があるわけであります。しかも、ただいま説明いたしましたように、丙はB、C不動産についていかなる債権額まで代位して抵当権を実行できるかを明らかにする必要があるわけでありますが、丙が附記登記をしました当時におきましては、B、Cの不動産はまだ競売されておりませんから、B不動産から七十五万円、C不動産から二十五万円まで抵当権を実行し得るというような形式でもってB、C不動産のその登記簿に代位し得べき債権額を表示するということは、まだその段階ではできないのでございます。そこで、A不動産に対する抵当権が実行されて、B、C動産に対する抵当権がまだ実行されていないその段階でなされる代位の登記でございますので、この代位の登記におきましては、債権者、正順位の債権者甲がA不動産について抵当権を持っておりまして、その不動産の競売代価が二百万円である、その競売代価から二百万円の債権の弁済を受けたことを記載しますほかに、丙の債権が五十万円である、その弁済期がいつであるか、その利息はどれだけであるかということを記載しておきますれば、後日、たとえばB不動産が競売されまして、その代価が明らかになりますと、岡順位抵当権者であるAは、そのB不動産からどれだけの弁済を受け得るかということが明らかになってくるわけであります。この関係を、非常にごたごたいたしておりますけれども百十九条の三に規定したわけであります。もう一度要約して申し上げますと、百十九条の三の規定をもちまして登記いたします事項は、ただいまの設例で申しますと、A不動産の競売の代価、それから先順位抵当権者甲が弁済を受けました債権額、そのほかに丙の債権、丙の持っております被担保債権の内容を記載する、これが百十九条の三の趣旨でございます。
  227. 大川光三

    大川光三君 最後に一点お伺いいたしたいのは、改正案の百三十四条によりますと、所有権以外の権利の移転の登記は、すべて附記登記によることとしておりますが、こういうことでは、その権利を目的とする他の権利者を害することにはならないだろうか。たとえて申しますと、地上権の上の抵当権設定登記後、地上権を譲渡する場合、その移転登記を附記によってするときには、地上権移転登記抵当権設定登記以前になされたと同じ効力を登記上生じて、地上権の譲り受け人は抵当権を登記上否認し得る結果を生ずるおそれはないかどうか。非常にややこしい質問でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  228. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この百三十四条の規定を新設いたしました趣旨は、そもそもこれは権利の順位につきまして、混乱が生じないように登記簿を見やすくする、一目瞭然にするというのがねらいで、百三十四条の規定を設けた次第でございます。  ところが、ただいまお示しの例によりますと、なるほどこの地上権の上の抵当権の設定登記を現在のように主登記でいたしますと、仰せのような混乱と申しますか、順位が逆になったような外観を呈することになると思います。この点はそういうわけでございますので、省令をもちまして、地上権の上の抵当権の設定登記その他地上権の差し押えなども同様でございますが、これはやはり附記登記によってするということにすることが、登記簿を非常に見やすくする、附記登記によってしますと、ただいまお示しのような逆になるというような結果は生じませんので、これは省令で、単に地上権その他所有権以外の権利の移転の登記だけではなくして、その権利を目的とする他の権利、あるいはその権利の処分の制限の登記、こういうものはすべて附記登記によってやるという規定を設けまして、仰せのような混乱を防止したいというふうに考えておる次第でございます。
  229. 大川光三

    大川光三君 私の質問は以上をもって終わります。
  230. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) ほかに御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  以上をもって本日の委員会は散会いたします。    午後五時三十六分散会