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1960-02-16 第34回国会 参議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十六日(火曜日)    午後一時二十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員近藤信一君辞任につき、その 補欠として大矢正君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山本 利壽君    理事            川上 為治君            栗山 良夫君            牛田  寛君    委員            井川 伊平君            上原 正吉君            斎藤  昇君            鈴木 万平君            高橋進太郎君            阿具根 登君            阿部 竹松君            大矢  正君            藤田  進君            吉田 法晴君            島   清君   国務大臣    通商産業大臣  池田 勇人君   政府委員    通商産業政務次    官       原田  憲君    通商産業省石炭    局長      樋詰 誠明君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告   —————————————
  2. 山本利壽

    委員長山本利壽君) これより商工委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日近藤信一君が辞任され、その補欠大矢正君が選任されました。   —————————————
  3. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、去る十一日の委員長及び理事打合会において協議の結果、本日はまず派遣委員報告を聞いた後、夕張炭鉱その他の炭鉱災害対策について質疑を行ない、ついで本日より明後十八日までは、過日説明を聴取いたしました昭和三十五年度予算及び施策に関する件について質疑を行なうことに決定いたしました。また法律案は付託されたつど提案理由説明を聴取することにいたしましたので、御了承を願います。   —————————————
  4. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、派遣委員報告に関する件を議題といたします。  先般夕張における炭鉱ガス爆発による災害状況調査のため、委員派遣を行ないましたので、これより御報告をお願いいたします。
  5. 川上為治

    川上為治君 去る二月一日午前一時五十分、北海道炭礦汽船株式会社夕張鉱業所第二鉱におきまして発生いたしました爆発災害事故につきまして、参議院商工委員会及び社会労働委員会の決議によりまして、商工委員会からは阿部委員と私、社会労働委員会からは徳永、坂本、村尾の各委員の五人の委員は、二月八日より十日まで三日間北海道に出張いたしまして現地を視察して参りましたので、その御報告を申し上げます。  まず、事故発生しました夕張炭鉱第二鉱は、製鉄用などのいわゆる原料炭月算約六万トン生産しておる鉱山で、灰分七・五パーセント、カロリー七千五百と、日本におきましても最も優秀な原料炭生産しておるところであります。現在わが国におきましては、御承知通り一般炭生産過剰ぎみでございますが、原燃炭につきましては不足しておりまして、年間需要約千五百万トンに対しまして、国内生産は約千七十万トン、その他は輸入しておるありさまであります。国内生産のうち夕張炭鉱年間約百二十万トンで、そのうち第二鉱からは年間七十万トン以上で、きわめて重要な地位を占めておるのであります。夕張鉱業所従業員は、約八千人でありますが、第二鉱で働いておられるのは約三千人であります。  私ども一行は、八日午後千歳飛行場経由札幌に行き、同地にて通産省札幌通産局長と、労働省札幌労働基準局長より事故発生の当時の状況及び災害の程度並びに原因、またその後の状況の詳細を聴取して、夕刻夕張鉱業所現場に到着、直ちに通産省鉱山保安現地最高責任者であります札幌鉱山保安監督部長より前記同様事故について詳細事情を聴取いたしました。そして翌日は早朝夕張鉱業所事務所にてまず会社側責任者である同社副社長及び夕張鉱業所長などより同様事情の詳細を聴取いたしました。私どもはその後災害現場である坑内に入る予定でありましたが予定しておりました第三区域縦坑の下の地域におきましては、なお数カ所火災が起きており、現場探検隊少数人員でさえも同日午前十一時ごろまでには全員待避させるという危険きわまりない状態でありましたので、私どもの入坑はやむなくこれを断念して、人車斜坑口救護隊本部等を視察して、さらに罹災者を収容し手当しつつあります病院を訪問、罹災者を慰問し、また労働組合及び労働組合代表者と会見いたしまして、これを通じまして志望者及び被災者の家族を慰問いたしまして帰任、たしました次第であります。  爆発事故発生は、二月一日午前一時五十分でありましたが、前日は公休日で三番方が入坑しておるときでありました。普通ならば約七百名か八百名ぐらいは入坑しておるのでありますが、公休日のことでありますので、六十二人の、主として保安関係修理関係などの人たちが入坑しておりましたが、そのうち三十四名が爆発によるいわゆるあとガス、すなわち一酸化炭素の中毒によって死亡され、一人は爆風により死亡され、これらの死体が逐次収容されておりましたが、他に四人が行方不明となっておりました。私ども調査の目まではこれら四人の方の死体はいまだ収容されておりませんでした。生存者は二十三名で、目下入院手当中の者十五名で、全部が生命に別条はないようでございます。災害爆発とともに第二鉱の全区域にわたっておりまして、特に第三区域の上部及び第四区域がひどく、随所崩落などがありましてまた坑内火災も起きており、とりあえず第四区域と第三区域とは中間を密閉して、第四区域の一部は行方不明者二人を残したまま水を注入、浸水によって消火を行なっておりましたが、第三区域縦坑下におきましても前述のごとくいまだ数カ所火災が起きて、もっぱらこれに対する消火措置に努めておりましてきわめて危険な状態でありました。消火されましても随所崩落などがありますので、復旧はおそらくあと数カ月ないし半歳を要するものと思われます。  爆発原因につきましては今なお不明であります。現場におきましては、北海道炭礦汽船株式会社の各鉱山の救援を得まして、約二百人の救護隊員救護措置不眠不休の努力をするとともに、原因につきましてもいろいろ検討をしておりますが、いまだ不明であります。しかし、私どもが各方面の意見を総合して考えました場合に、次の数点に問題が残っておるのではないかと考えられますので、今後これらの点につきまして十分検討の上対処する必要があろうかと存じます。  すなわち第一点は、事故発生の前日、公休日を利用して約三時間にわたって扇風機をとめて坑内ガス発生の測定を行なっておることで、このガスが十分取れないでどこかに多量にたまっていて、これに引火したのではないかとの疑いであります。かかる事例は今日までほとんどないことでありますが、今後の鉱山保安対策については十分考慮すべきことではないかと考えられます。  第二点は、事故発生の地点が現在のところ第三区域縦坑底の、すなわち縦坑の下の付近ではないかといわれておるのでありますが、この付近の一部はガス発生の危険がほとんどありませんので、いわゆる鉱山保安の上で特免区域と称されておるところでありますが、何らかの突発事故誘導ガスの配管が亀裂してガスが放出され、それが特免地域に漏出し、それに何らかの事故で引火したのではないかとも考えられますが、かかる地域と非特免地域との完全なる遮断など、その保安対策についても今後検討すべき点があるのではないかとも考えられます。  第三点は、現在各炭鉱とも合理化対策を進めておりますが、もちろん合理化保安対策とは併行して実行しており、保安対策をゆるがせにはしていないと思いますが、最近の大炭鉱爆発事故の多いことにかんがみますときは、合理化を急ぐあまり保安対策が少しおくれておるのではないかと考えられる人たちもないではないと思いますので、この点についても十分検討してみる必要があると思います。  第四点としましては、保安規則が徹底して守られておるかどうかという点でありますが、この点につきましても検討の必要があると思います。  以上数点につきまして検討すべき点があると思いますが、私ども調査団といたしましては、一日も早く消火作業が済んで、本格的な復旧作業が行なわれることを切望いたしますとともに爆発事故発生原因を徹底的にかつすみやかに突きとめて、今後の鉱山保安対策に万全の措置を講ぜられることを関係官庁及び関係鉱山界に要望し、再びかかる事故発生しないように措置していただきたいと思います。私どもはこのため法律改正を必要とする場合にはそれに対しまして協力することにやぶさかではありません。  以上御報告申し上げます次第でございます。
  6. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいまの御報告に対して御質疑がございましたら御発言をお願いいたします。なお、これらの報告に関連いたしまして、政府側に対する御質疑がございましたら、池田通産大臣ほか樋詰石炭局長小岩井鉱山保安局長出席がございますから、あわせて御発言をお願いいたしたいと存じます。
  7. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの調査団報告をお聞きいたしましても、たまたま日曜日であって六十二名の方が坑内におって、そしてこの事故で四十名死んだ、こういうことになるわけです。そういたしますと、これが通常の日であった場合、調査団報告でも三千名と言っておられますから、私どもの常識で考えれば一番方であったならば千三百名くらいの人が下っておると思うのです。そこでこの爆発事故が起こったとするならば三分の二、八百名からのまことに目をおおうような悲惨な状態が起こっておる。  なお、通常の日の二番方、三番方であっても、最低見積もって四、五百名の死傷者が出ておる。かような観点から、四十名の罹災者ということでなくて、この爆発は史上まれに見る大きな爆発だと、かような観点から質問をいたしたいと思っておりますが、その前に、夕張爆発のあります一カ月前に、福岡三井山野三菱新入、こういうところが爆発を起こしておりましたし、私は社会労働委員会におりましたので、小岩井局長にも意見をお聞きいたしましたし、その当時にも、こういう爆発というものは続く、しかも合理化が行われておる、こういう際に限ってこういう事故が起こるので、起こらないような厳重な処置をとっていただきたいということを私警告しておったはずでございます。そのあとまだ死骸も上がっておりませんが、福岡筑紫野見山炭鉱では七名の水没者を出しておる。こういう事故が非常に続いておりますので、その中でも一番大きい三井山野三菱新入夕張の実情について小岩井局長から御報告を願い、なおまた、小岩井局長現地において発表された談話についても疑問を持っておりますので、十分御説明を願って、そのあと石炭保安生産労働面について、どういう所感を持っておられるか、今後の対策通産大臣から十分お聞きいたしたい、こういうように思っております。
  8. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 最近、大手炭鉱につきまして災害が頻発いたしておりますことは、大へん当事者といたしまして申しわけなく考えております。昨年の三井山野三菱新入、これはいずれも非常に大きい災害でありまして、いずれも自然発火というものに起因いたしまして起こされておるというふうに考えております。山野災害後、非常にこれも火がございましたので、直接消火をいたしまして、ドライアイス、その他の岩粉をつめたり、いろいろ方法をとってみましたけれども、なかなか完全にこれが消火ができないという判断から密閉のやむなきに至りまして、現在かなり広範囲に密閉をいたしてしまっております。従いまして山野原因につきましては、今直ちに調査をするということが不可能な状態になっておりまして、一応私の方としましては、旧坑の自然発火に伴う爆発である、旧坑の自然発火によって爆発が起きたものであるというふうに一応判定をいたしておるわけでございます。それから新入炭鉱につきましては、これも爆発後二十数回の爆発を続けましていかんせん、もう人力において直ちにとめることができないという判断をいたしましてこれは水没をいたしたわけでございます。現在水没を完了いたしまして、もちろん火災の起こっておると思われる個所は完全に消火をいたしたものというふうに考えておりますが、現在これが排水にかかっておりまして、排水後の状況は非常に崩落個所が多く、予定の日数が延び延びになっておりまして、まことに申しわけないのでありますが、一応今の予定では五月一ぱいくらいで取りあげが完了するのではないかというような見通しをつけております。従いましてこの新入炭鉱原因調査は、取りあげ完了後になりませんと調査ができないといったような事情になっております。いずれも、この二つとも、直接原因究明ができないという点につきましては、まことに申しわけないと考えておりますが、当時の状況判断からやむを得ない処置というふうに考えております。夕張炭鉱につきましては、これもほとんど全坑爆発というような様相を呈しておりまして、端的に表現しますと、手のつけようがないというような状態でありまして、爆発後、数個所火災が起こりまして、これも直接消火でぜひとも食いとめたいという方向で進んでおったのであります。しかしながら、四区におきましては、もう三日の目に——一日に起こりまして、三日の日に保安管理者の最後の判断をさせたのでありますけれども保安管理者自体現状を見ましてこれ以上直接消火は不可能である。それから三区の間の密閉作業としては困難であるという見通しに立ちまして、全員待避、四区注水という点に踏み切ったわけであります。もちろん踏み切りますときには、私ども現地監督部長鉱業所長保安管理者、それから組合、それからたまたま東京から炭労の保安部長現地に出られておりましたので、保安部長の参加もお願いいたしまして、遺体が二名入っているという関係から、遺族にも了解を得まして注水に踏み切ったわけでございます。その後、かなり消火も進みまして、現段階ではほとんど消火が済んだような報告を受けておりますので、さっそく取りあげにかかることと考えております。まだ消火が済んで取りあげにかかったばかりでございまして、もちろん監督官は人数をふやしまして、最も原因を多く含んでいると思われる縦坑坑底附近の取りあげにつきましては、監督官を三交代にいたしまして、各山の作業にそれぞれ一人は必ずつけるという方法をとりまして、原因究明に粗漏のないように努めているわけであります。  大体、概略の事情を御説明しますと、以上のようになるわけであります。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 ガス爆発は、今日まで北海道では御承知のように、茂尻があった、太平洋があった。太平洋で三十数名、茂尻で六十名、こういう大きな事故を出しておりますが、事故の直後には非常にそういう原因究明ということを言われておりますが、時間がたつにつれてほとんど原因らしい原因がつかめておらない。それは爆発した現場がほとんど崩壊している、あるいは現場におった人がほとんど死んでいる、こういう事情から非常に原因がつかみにくいことも私はわかります。ところが、今度の爆発を見ますと、通産省以上に、保安局以上に技術屋も多いし、施設設備も十分持っているべき大手中の大手が、三井三菱北炭、こういうところがこういう爆発を起こしている。八百もある全国の炭鉱の中で、中小炭鉱に対しては、これは相当監督官の力も入れなければならん。しかし大手は、監督官の指導を受ける前に、自分たちの方がもっといい技術者も、もっといい施設設備もあるいは資金も持っているはずである。それがこういう事故を起こしているということに、私は非常な大きな何ものかがあるのじゃないか、かように思うわけです。ということは、今までこういう事故が起こった場合に、この直接監督の任にある人に対しては、どういう処分方法がされたか、どういう処罰がされたか。僅かな罰金刑で済んだ人もあるようです。ほとんど該当しておらないようです。そういう重大な保安の任にある人が、人の生命を守るべき人がほとんど法の対象になっておらない。たとえ罰金刑であっても、僅かな罰金刑で、これは会社が出すから何もその責任を感じておらない、こういう現状があるのではないか。今までのこういう爆発において原因がはっきりわかって、どういう処分方法をされておるか、それらがあったら教えていただきます。
  10. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私ども災害が起こりましたあと処分につきましては相当厳重にやっておるのでありまして、もちろん最近はもう保安管理者初め係員解任まで実施しておるわけであります。しかし、実際には違反件数は年に一万五、六千ぐらいな件数になりますけれども、実際に送検するというような、送検の数は大体四、五十件ぐらい、まあ非常に違反件数に比べまして送検の数が少ないという感じはするのでありますけれどもあと処分につきましては、特にもう最近厳重にいたしまして、要綱も作っておりますし、もう二度以上重ねたような場合には解任をする、事実また解任をした者もございます。災害あと処分につきましては、鉱業権者初め係員に至るまで相当厳重にやっておる。毎年事情をずっと数年の推移を見ましても、だんだん強くなってきているということは、はっきり申し上げることができるのではないかというふうに考えております。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 私の質問の要領が悪かったかもわかりませんから、そういう御答弁になりましたが、私がお聞きいたしたいのは、会社保安に任じておる人、こういう人は会社のどういう地位にあるかということを考えてみますと、極端な言葉で言えば、ほとんど生産の部門からはみ出された人——これは当たらないかもわかりませんが、うば捨て山的な人が保安管理者になっておる、非常に多分にあるのではないか。そうすると、保安よりも生産担当者の方が実権を持っておる。だから少々の危険があっても、生産管理者の言うことによって保安が動かされておる。これは動かすことのできない私は実態だと思うのです。そういう点はどういうふうにお考えになりますか。だから保安管理者だけの責任ではなくて、私は生産者責任を問うておるわけです。たとえば社長、あるいはその坑の坑長所長、こういう者に対してどういう考えを持っておられるか、これに法の不備があるならば、私はそういう人たちをやはり法の前に明らかにするだけの方法考えられなければならない。人命の軽視が一番多く炭鉱で言われるのではなかろうか。こういう点からただいまの保安管理者会社が存命しておる保安管理者、これはほとんど生産から離れた人である。技術屋であるけれども生産者の第一人者はその上のクラスで指導しておる、こういうふうに考えるのですが、どうでしよう
  12. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 大部分会社におきましては、保安管理者という保安最高責任者も、もちろん生産を担当しておるのが大部分であります。しかしながら、大会社におきましては、保安監督室というような名称の特別な部屋を設けまして、生産から離れた人を任命しておるようなケースがございます。しかしながら、まあ大部分におきましては生産関係保安関係生産保安は一体というような見地から大部分のものは、生産保安も両方見ておるというような形が多いのであります。保安管理者決して生産を全然離れているというわけではございません。一緒にやっておる場合が大部分でありますが、特殊の大きい会社におきましては監督室というような名称で特に保安を重点を置いてみる機構を作っておる所もございます。そこで保安管理者がいわゆる所長の下に機構としてはある場合が非常に多い関係上、もちろん所長保安管理者を兼ねておる場合もありますけれども、大きい炭鉱におきましては所長の下に保安管理者がある。従って保安管理者としてなかなか十分に所長にいえない場合も考えられるのではないかというような点がございますので、私どもが、変災を起こした場合には、管理者がいろいろ施設の面において鉱業権者に十分に意見を述べて、その意見が実施されてないという事態があれば、もちろん厳重に鉱業権者に当たるつもりでおりまするけれども大手では保安管理者の意向が鉱業権者によって、特に保安の場合抑えられるというような事態はほとんど私どもの方では見てないのであります。中小におきましては、なかなか保安管理者のいうことが直ちに鉱業権者の承認を得られないというようなケースがございますので、特に中小の場合には管理者が十分に、こうしたいああしたいという意見があって実施に移されないかどうかという点については、十二分に調査をいたしておるつもりでございます。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで大臣にお尋ねいたしますが、ただいまの保安局長答弁にもありましたし、先ほどの調査団報告にもございましたが、合理化保安並行でなければならない、もう一つ生産保安は同等でなければできない、こういうことがいわれておりますが、大臣はこれに対してどうお考えになりますか。まず、私の考えを言わしていただくならば、生産も大切でしょうけれども、あるいは合理化も大切でしょうけれども、それ以上に大切なのは人命だと私は思うのです。それを監督官庁そのもの生産保安を同様に考えておる、合理化保安を同じように考えておる、そこにこういう弊害が私は起こってくるものと思うのです。人命生産をどういうふうにお考えになるか、通産大臣にお尋ねいたします。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 炭鉱のごとき特殊の産業におきましては、これはお話の通り保安があってからの生産、あるいは合理化、これは実例が示しますように、毎月六万トン、年七十万トン、これが原因はわかりませんが、半年も休まなければならぬということは、これはもう生産合理化も何にもないことなんで、私はまず保安あっての生産保安あっての合理化、これは私はもう何人も異存はないと思います。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産大臣の御答弁、きわめて明快でございます。局長はどうですか、現場に行かれても、合理化が優先しているようだから非常にそういうことになれば因る、合理化保安並行でいかなければならない、こういうことを発表されておる。ただいまの答弁でも、生産保安を両面担当しておる会社が非常に多い、生産保安並行でなければならない、こういうお考えで、大臣のお考えとあなたの考えは非常に差があるようですが、どうお考えになりますか。
  16. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私ども、もちろん生産保安表裏一体、たての両面、車の両輪、こういうふうに考えております。とうていこの二つは離すことができない。従って合理化であろうが何であろうが、とにかく鉱業を行なう場合には、セーフティ・ファーストという点でいくべきだという点においては、全く大臣とちっとも違わないつもりでございます。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 車の両輪表裏一体という言葉と、大臣の言われた言葉は違うのです。かりに保安が保てないために生産ができないという場合と、生産を行なうために保安を犠牲にしなければできないというような場合に、あなたはどちらを先におとりになりますか。表裏一体だ、車の両輪といえば、同じことなんです。どちらが優先ということはないのです。人命生産、どちらをあなたはおとりになりますか。あなたは表裏一体だ、車の両輪だとおっしゃる、大臣は、はっきり保安が大切だ、保安を保ち得て初めて生産合理化もなり得る、こういうことを言っておられるわけなんです。保安最高責任者であるあなたが、当面の責任者であるあなたが、生産保安は車の両輪だとおっしゃるならば、私は全然違うと思う。大臣と同じだとおっしゃるけれども、あなたの考え方は全然違う。しかも保安の担当にあるあなたです。生産の担当にある石炭局長なら、そういうことを言われるかもしれない。あなたは保安担当者である。保安担当のあなたが生産保安とは車の両輪だと、私はそういうことはとり得ない。保安責任者であるあなたがそういう考えであるならば、日本からこういう災害が防げるということはあり得ない。私はこの災害でもこれは不可抗力だと思ってない。あなたは坑内に下がられたかどうかしらないけれども、私は夕張でも下がってきました。山野にも、新入にも行きました。しかし新入ではまだ煙が出ておったし、山野ではかえってじゃまになるから坑内に入るのは遠慮いたしました。あなたは部下からお聞きになったかもしれませんが、私は三カ所とも現地に行って直接調査してきております。しかもあなたはどなたからお聞きになったかしりませんが、私は実際現場におった連中に聞いております。あなたのようなお考えがあるから、こういう災害が起こるのかもしれませんが、やはり生産保安は車の両輪ですか。
  18. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私の説明の足りないところは補足したいと思いますが、もちろん生産の中に保安をぴったりつけてやるという意味で、生産を行なう場合に人命の問題が出た場合には、セーフティ・ファーストでいくのはもちろん当然だ、かように考えております。
  19. 阿具根登

    ○阿具根登君 あなたはだれに遠慮してそういうことを言っておるかわからないけれども、まず保安が第一だ。人間がそういう危険な場所に入る場合、炭鉱というものはどこでも危険と思わなければできません。その場合まず保安を点検して、保安が大丈夫であって、初めて人間が入るというのが当たりまえのことなんです。それをだれに遠慮して言っておられるのか。生産生産ということを言っておられるが、まず保安の場合考えることは、あなたは生産のことは抜きにしていいと思うのです。生産のことは抜きにしてまず保安を守ってもらって、それから生産考えてもらわなければ困りますというのがあなたの立場じゃないですか。あなたは会社生産部長か、重役かの気持で言っておられるのじゃないですか。私はまず保安が第一、坑内に人を下げるならば、絶対大丈夫だということにして坑内に下げてもらっても、そういうところだから不可抗力あるいは人間のすることであるから、どういうあやまちがあってけがが出るかもしれない。爆発するかもわからない、それならわかります。しかし生産両輪だということになってくれば、私はあなたの言っておられる言葉に矛盾を感じるわけです。その点はっきりしておいていただかんと、ここでのあなたの説明は、全炭鉱の業者、全炭鉱の労働者が全部見ます。そうした場合に、国会で取り上げられたこの保安の問題が、保安生産と一緒だというような感覚を植えつけるならば、私は非常に大きな問題になると思うのです。だから一つすっきりとそういう生産ということでなくてまず保安だ、それから生産にいってもらいたい、こうどうして言えないのですか。
  20. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私の申し上げている意味も先生と同じだと考えておるんですが、ただ生産保安とよけいな説明をしてかえって混同をきたさせましたが、セーフティ・ファーストということを私も最後につけたつもりでありまして、もちろん私自身の仕事の分担から考えまして、まず私自身としては当然セーフティ・ファーストでゆくべきであると考えてもおりますし、またその気持でやっておることも事実でございます。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 わかりました。  それでは大臣にお尋ねいたしますが、これは長い間国会でも数回取り上げられておりますが、ただいまの論争からもお聞きのように、生産保安という問題が取り上げられるのは、同じ通産省の中に生産保安を担当しておるから、こういう問題が起こってくるんだと思うんです。人命、労働問題は当然これは労働省の所管でやるべきであろうと思いますが、この前の緊急質問においては、保安設備その他が通産省所管にあるから、通産省保安を担当しておるんだと、こういうお話しでございましたが、実際坑内の実情を見る場合に、保安設備で、たとえばガスならガスでどれだけの設備をされておるかということを考えてみますと、もちろんこれは扇風機もありましょう、検定器もありましょう、いろいろの問題もありますが、保安優先ということを考えるならば、当然これは労働省の所管で、労働条件の一つ、労働者の人命ということになりますと、労働省が監督すべきだと、かように考えるんですが、どうして通産省でやつていかねばならないか、その点をお尋ねいたします。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この点は阿具根さんと私と考え方が違う。鉱山というものは労働行政でも企業行政でもあります。そうして保安ということはその企業の絶対的の問題でございますので、これは企業につきものだと私は考えまして石炭企業というものの保安というものを、これは労働者というんじゃない、企業自体の前提基礎でございますから、私は通産省で所管するのが当然だと。しこうしてまた労働関係からの点につきましては、もちろん労働省が通産省に勧告するとか、いろいろな点を考えることが必要だと思います。私は石炭企業については、保安というものがもとでございますから、これは企業自体として考えなければならぬ、こう思っております。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 企業である、企業であるから保安もその中に含まっておると言われるが、企業は何かということになると、企業は生産であり、利潤であると私は思うんです。そうすると、生産が優先、利潤が優先となってくる、そうすれば企業の中で一番薄れてくるのは保安だということになってくると思うんです。企業は利潤がなければ成り立ちません、私企業においては特に。また生産がなければ成り立ちません。そういたしますと、生産と利潤が優先しておる、こういうことになってくると思うんです。だから私は保安は切り離して労働でやるべきじゃないか、こういうことを考えるわけですがね。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、石炭企業のような事業は、私は利潤とか生産とかいう問題の前に保安というものがなけりゃならぬ、これがもとなんです。保安のないところに増産も生産も利潤も上がってくる企業じゃない。だから保安が第一だと私は考えておる。従ってこの保安というものは企業の面から見て、一応完全な設備も、できるだけりっぱな設備対策を講じる。そしてそこに働いておられる労働者の待遇とか、いろいろな点につきましては、これは別個の意味で労働省が通産省に勧告する、あるいは企業自体に話しをする。私は保安というものは企業のもとであるから、これを企業から離すわけにいかぬ、こう考えております。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はたしかきょうであったかと思いますが、大臣炭鉱の業者に対して保安に対する戒告か警告か、そういうことをされるとか、されないとかいうことをきょうお聞きしたわけです。そういう点については非常に感謝しておりますが、今の考えでは、少し納得いきませんから、私が局長ともうしばらく質問いたしますからお聞き願いたいと思います。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般来火薬の爆発あるいはまた最近の炭鉱のあれから申しまして、火薬関係の方々には先般集まって、特に厳重な警告を発しております。なお、私はえてして忘れやすいものでございますから、二カ月に一ぺんとか、三カ月に一ぺん通牒を出して予防措置に万全を尽すよう、これは随時出していきたいと思います。炭鉱の経営者につきましては、明日私呼んで事情を聞き、今あなたに申し上げたような気持で経営者に話す考えております。明日でございます。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで保安局長にお尋ねいたしますが、大臣がそういうようなお考えであられても、通産省所管である以上、これは精神的な面であると思います。精神的な面で大臣から御忠告がなされる、こう思うわけなんです。これは形によっては変わらないわけなんです。ところが私が聞いた、新入の今度の爆発の直前の状況を聞いて参りますと、きょうはここに持参しておりませんが、必要でありますならば、録音をとっておりますから、私が持って参って皆さんに聞いていただいてもけっこうです。この爆発現場におった作業をしておった方々が最初二%のガスがあった、だんだん仕事をしていきよるうちに三%になった、だから三%も越えてきた、ここはもう作業が危険になったから早く変えてもらいたいということを上の方々に申し入れておる。それでも聞かれなかったので、交代をするときに次の交代者の方にもう三%越しておるからここは危険で係員の方にも十分連絡してある。だからなるべく早く作業を変えるなり場所を変えるなり手当をするなりしてくれということを申し継いで坑外に出ているわけです。ところが今度はその作業を申し継がれた人たちが三%が四%になった、すでに五%になった、何とかしてくれということを再三連絡をしておった事実がございます。それでもこれに手当ができずに、そうしてこういう現実が起きてしまった。こういうことを実際そこに働いておる人がなまの声で言っておりますのを録音にもとってございますから、必要であればいつでも取り寄せてお聞き願えると思うのですが、こういうことが炭鉱の実態ではなかろうかと私は思うのです。そうすると、通産大臣がいかに社長所長あるいは技術者を集めて言われても、次々の責任者の方に渡っていく場合には、生産会社ですから、利潤を主に考えておる会社ですから、やはりそれが下に伝わるときには薄れていっているわけなんです。そして現場では五%にもなったガスの中で働いておる現実があるわけです。六%以上になれば御承知のようにもう爆発点に来ておるのです。だからこういう事故が起こってきておる。これについて保安局長はお調べになりましたか、そういうことをお聞きになりましたか。
  28. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) まだ私は全然聞いておりませんけれども三菱鉱業は私どもの一番信頼しておる会社だと私自身は考えております。こういう大平の坑内ガスが三%以上もあって、労務者から特に特段の注意があった場合に、係員が放置しておくなどということはとうてい考えられませんし、もしそういった事実が確かにあったのでしたら、ぜひとも私どもに一つ資料を御提供下さいまして、至急私どもで厳重調査をいたしたいと考えております。しかし私どもも、こうして大きい事故が頻発しおりますと、何をやっているかというお気持があるのは私当然だと思いますけれども大手坑内につきましては、もちろん係員初め、技術職員は国家試験も経ておるし、あるいは国家試験を受けていない者は試験審査も特別の審査も受けておりまして、一定の資格を持った者以外は使っておりません。そういうような関係で相当な教育もしておりますし、中小炭鉱ですと、私は今のような事実があるいはもう間々あるのではないかという懸念もありますけれども大手炭鉱におきましては、かくのごとき事実は、まず私自身は絶対ないものというふうに考えておりますので、もしかような事実がありましたら、ぜひとも資料の御提供を願いたい、かように考えております。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはここでお約束申し上げておきます。録音をとったテープがございますから、これは早急に九州に手配して局の方にお届けいたしますが、えてしてこういう保安問題のときには、そういう過剰信頼が私はあやまちのもとだと思うわけなんです。ここなら大丈夫という所がいつも爆発を起こしておるわけです。さらにお尋ねいたしたいと思いますのは、三井山野では特免区域を中心にしてガス爆発が起こっておる。これははっきりいたしております。それから今度の夕張の場合も特免区域を入れたその範囲内で爆発が行なわれている、御承知のように切羽は全然爆発しておりません。私が一現場監督官に聞いた話によりますと、保安日誌を調査して、そうして切羽では一・五%から二%のガスであったということをはっきり言われている。そうして一番疑問に思われるのは、特免区域の周辺だと、こういうことを言われております。私も現場に下がってそういう感じを非常に強く持つものです。そのほかでも特免区域爆発したのが一、二件最近あったはずです。そういたしますと、特免区域についての考え方を直さなければならない。特免区域というとまあ当局の皆さんも十分御承知と思いますが、ガスはないんだと、電車も通してよろしい、火薬庫も作ってよろしい、ガスのないところだということになっております。そういうところではガスの検定等をする人はおりません。ところがそういうところで爆発したというようなことになれば、特免区域を許可した通産省責任というものは、これは許しがたいものだ、こういうことになるわけです。特免区域についての考え方はいかがですか。
  30. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 特免区域につきまして、もうすでに山野で六回目、もし夕張が、これはまだわかりませんが、もし夕張原因が判明しまして特免区域内で起こったものであるということになりますると、もう今までに七件ということになるわけであります。私どももかねがね特免の扱いについては非常に憂慮いたしておりましていろいろ検討を重ねているのでありまするが、理論上からは必ずしも特免制度というものが悪いということがなかなか言えない実情があるわけであります。特に大手炭鉱におきまして人気側からは相当な風量の風を送っております。この人気の近辺を、これを何もかも甲種炭坑の扱いで施設すべてを防爆にしなければならぬ、あるいはこれは一例でありますけれども、いろいろな甲種炭坑全般の施設を人気の坑道にとらなければならぬという理由はないわけであります。従って私どもも特免の許可につきましては、これはまあ大臣がいたすことになっておりますので、慎重に必ず現地調査をいたしまして許可をいたしているわけであります。許可をする場合にも非常にたくさんの条件をつけております。この条件を炭鉱側で厳守してもらえますれば、もう絶対にまず災害は起こらぬという判定がつかなければ許可をいたしておりません。そういうところでなぜ災害が起こるかという点を検討いたしますると、もちろん条件を完全に守ってない場合がございます。それから夕張の場合もそうなのでありまするけれども、私どもがなかなか予想していなかったこと、たとえて申し上げますと、夏など北海道で停電がありますると扇風機がとまりますから、もう坑内は風の放任のままになるわけであります。そうすると特免の区域にずっと逆流してきて、安全であるべき区域がかなり危険な状態になるというようなケースがわかったわけであります。そこでこの、ガス・コンターと申しまして、夕張災害の直前に実施をいたしました扇風機を停止いたしまして、坑内ガスの湧出状況を見るということを、ちょうどたまたま変災の何時間か前にやっているのでありますけれども、これは私どもも冬期間は強調しておりませんけれども、夏期の場合はむしろ炭鉱にやってほしいということを申しているわけであります。夏の場合に停電などで扇風機がとまりますと、通気の関係がわれわれの想像している以外の、想像外の経路をとるということがわかりましたので、夏の期間におきましては扇風機をわざわざとめまして、坑内ガスがどんなふうに動いてくるかという点を係員にも十分に納得さしておきませんと、冬の停電がありましたときに、どこにガスがふえるか、このガスがどういうところへ流れるという坑内状況を知っておきませんと、非常に危険な状態になるというところから、わざわざ扇風機をとめて坑内ガス量の移動の状況というようなものを把握させておるわけであります。で、まあ北炭は、おそらく冬期間にやりましたのは、冬期でも、一体どんな状況になるものかということを、もちろん炭鉱側としましては十分に知りたかったんではないか、かように考えておりまして、ガス・コンターをやること自体、私どもは決していかぬということは申すどころか、かえって坑内の実情を十分に把握するという意味で保安上好ましいというふうに、私ども自体は考えておりますようなわけであります。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 私が現地で聞いた、あなたの監督の任にある方、あなたが指導されておる、その方の話を聞いても、特免区域に対する自信をなくしました、もう特免区域災害が数件起こってきた、私どもは、特免区域に対して再検討しなければならない時期に参りましたと、切実な声で言っているわけなんですよ。あなたの指導にある方が、現場に実際行ってきた方が、そういうふうに嘆いておられるのに、あなたは、それに対してちっとも感情を動かしておられないということになると、あなたも、あまり中央におられたので、もう炭鉱から遠ざかって感度がにぶったのではないかと私は思うのですがね。  そういうように、特免区域なら大丈夫だという考え方が、会社も、ほとんどガスの検定をやっておらない。また、特免区域となれば、働いておる人も全部安心してしまいます。だから、特免区域に対しても、もう一度考え大臣の認可だとおっしゃるけれども大臣が、特免区域を知っておられるわけがありません。大臣はそんなことは知らない。あなたの書かれた書類に判を押されるだけです。そういうところまで大臣が知っておられるわけがない。そんなひまがないはずです。しかし、人命の問題だから、あなたがこうやられれば、相当これは調査をした上だということで許可するのは事実で、実際の責任者は、あなたです。また、現場の人でしょう。そうすると、現地監督官というものは、十分会社と、そういう話し合いはなされた上に許可されているはずです。そのなされた上に許可された現場監督の任にある方が、特免区域に対する考え方を変えなければ、大事な人の命がなくなるおそれがあるということを慨嘆されておるのに、中央のあなたが、そういうことを考えておられないというなら、どうもおかしい。坑内であるから、特免区域の場所でも安心だということは言えないはずです。それは同じ炭鉱でも、長崎等に行きますと、どこへ行きましても、ガスが全然ないところがあります。坑内で、たばこを吸っていい所もあります。裸のカンテラをさげて行っている所もあります。そういう所は、ガスが全然ない。今特免区域というものは、周囲にガスがあるけれども、その一個所だけは行っていい個所は、特免されているわけです。そうすれば、その周囲にガスがあることは事実ですから、そういう特免区域という所は、整備その他に金が要らない、手数がかからない、こういうことで私は許可されていると思うのです。とするなら、これは、保安を放置した考え方である、こういうことになってくる。先ほどの論議を蒸し返しますけれども生産と利潤が先行しておる、こう言われても仕方がないと思うのです。  だから、特免区域に対しては、これは再考慮する。もしも特免区域で、こういうことが起こったならば、許可した監督官庁は、責任をとらなければいけません。どうお考えになりますか。
  32. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私の申し上げましたのは、特免を許可する場合は、これはガス・コンターについて、危険があったら許可ができないわけであります。まず、私どもとしましては絶対に危険がないという断定がつかなければ許可ができないことになっているわけであります。従って、許可する以上は、私どもは、もちろん大丈夫だというんで許可しておるのですが、今私が申し上げましたように、すでに、もう七件も起きておるということになりますると、まあ私どもも、もちろんこれは放任するわけには参りませんので、現地の係官が言う言わぬは別問題といたしまして、私どもも、目下もちろん検討いたしておるわけであります。まあ限られた予算の中で二カ年ぐらい限りまして、全部一応当たってみたいというふうに考えております。  まず相当な自信をもって認可しておりまして、夕張の場合でも、あの特免は、十年以上、あの特免のままで現在まで——原因は、わかりませんけれども、もしあの特免の区域でやったといたしましても、もう十数年認可したままで事故なしでやってきておるわけでありまして、もちろん十数年でも、一回やるということになりますれば、当然検討しなきゃなりませんので、今後全特免の区域につきまして、全部総検討いたしたい、かように考えております。でき得る限り早い機会に総当たりをいたしまして、少しでも危険が予想されるというようなケースが出てきた場合には、いつでも廃止取消というふうにしたい、かように考えております。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 特免区域で七件もあったということを、今局長もおっしゃったんですが、現地監督官も、非常に心配されております。だから、再検討もしていただかねばならないけれども、まず特免区域は許可すべきであるか許可すべきでないか。十年に一ぺん、それは、結果論でお前たちは言うじゃないかと言われても、当初言いましたように、一番方が入っておったなら、七百名から八百名私は死んでおると思うんです。そういたしますと、それは会社から言わせれば、そんなむちゃなことを言うならば、コストは上がるばかりじゃないかと言うかもしれんけれども、八百名も人間を殺しておったら、夕張炭鉱はつぶれます。だから、もしもあれが時間がずれておったならば、夕張炭鉱は、もうつぶれてしまった。あの夕張の騒ぎですよ。八百名の主人なり自分の肉親を失った人が出た場合に、一体夕張炭鉱は、どうするかということになれば、私は、相当な金が要っても、もっと保安のためにはやるべきであるし、夕張自身からでも、ほんとうなら、特免区域の解除をしてもらいたい、原因はわからないけれども、どうも特免区域方面にも、そういう疑いがあるというならば、私のところは特免区域を取り消してもらいたい、もう一回やります、というくらいの責任があってよかろうと思う。また、監督官も、そういうことを調査する調査しない前に、取り消してしまって、そうして私は出発してはどうかと思うんです。  もしもあれが、何時間かずれておったならば、それこそ、世界に類例のない大爆発事故です。坑内区域にわたって、火がついておったのは御承知通りです。だから、十年に一ぺんであろうと、二十年に一ぺんであろうと、そういう膨大な災害が起こる可能性があるのならば、私は、厳重な処置をしなければならない、かように思います。  それからもう一つ、さきほどのを蒸し返すようですけれども、この保安管理者というのが、会社からの生産担当者か、あるいは生産担当者からはみ出した方、言葉が悪ければ直します、生産技術屋であった方が、保安監督をやられておる。ところが、実際生命を失っておるのは、労働者です。働く人です。そうするならば、その中にも、国家試験に通って、りっぱに保安監督の任につくことができる人がたくさんあると思う。そういう人を保安管理者に任命する考えはあるかどうか。これは大臣にお尋ねいたします。今の問題は、会社が、自分の機構の中の人を管理者に任命しておるわけなんです。そうすると、私ども考え方では、やはり会社だから、生産と利潤が先に頭に入ってくる。だから、そうでなくて、利潤や生産考えないけれども実際、自分たちが働いておる生命のことを考えておる方、そういう方を保安管理者にするような道を講ずる考えはございませんでしょうか。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、会社機構内の人事の問題でございます。私から、どうこうただいまのところ申し上げるわけにいきません。  しかし、本会議で申し上げましたように、生産管理機構保安管理機構というものにつきまして、私は今後十分検討してみたいと考えておるのでございます。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 局長保安管理者は、通産省監督も何もなしに、会社が勝手に任命したら、それで終わりですか。
  36. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 保安管理者は、鉱業権者が選任しておることになっておりまして、これは経営者に一任しておるわけであります。  ただ私の方は、保安管理者の選任がありましたときに、資格のない者を選任して参りましても、これは受けるわけに参りませんので、資格がありさえすれば、鉱業権者が選任してきたままを採用しておるわけであります。
  37. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこに問題があるのでございまして私は、大臣にお尋ねいたしておりますのは、そういう機構であるから、会社の命ずるままの監督官がおるということになるわけです。  そうすると、会社社長なりあるいは副社長なり所長なりという人が任命をするわけなんです。そうすると、その人たちは、保安ということよりも会社ということを考える。個々の人間というよりも、会社の企業ということを考えるのが先に立つと私は言うわけなんです。だから、何も保安監督者が、ほかの人になったからつて、会社をつぶすわけじゃないのですから、やはり労働を提供しておった、その労働者の中から、そういう管理者を出すように、認定するように、方法を変えたらいいじゃありませんか。そうすれば、会社が勝手に、会社の幹部を任命することはできない。しかし国家検定を受けて、それは、国家の試験を受けて、当然保安監督者としての資格はありますという労働者の中から、それを任命すれば、私は保安というものに対して、万全の処置が少なくともとれる。それも万全とは言えません。しかし、それは坑内の立地条件がございますから、そういうわけにはいかない。だから、それを少しでも少なくするために、同じそういう国家の試験を受けた人、しかも労働に任じておる中から、これを任命するのだ、こういうことをしたらば、安心して働ける率が多くなるのじゃないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  38. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 先ほどちょっと説明を落としましたが、もちろん鉱業権者が資格のあるものに限って、保安管理者を選任してくるわけであります。私どもの方も、もし一度選任されました保安管理者が、災害その他を起しまして、保安管理者として不適任であるという認定がつきました場合には、もちろん解任を命ずることができるように法にきめられております。  従いまして鉱業権者が選任してきた保安管理者を、何でもかでもそのままにしておくというような形ではございません。私どもの方で見ておりまして、保安管理者として不適任だという場合には、もちろん解任をいたしておりますし、また内々の意向を伝えて変えていただいておる場合もございます。
  39. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは監督局が、そういうことをやられる場合には、その人に前歴が、そういうのがあったか、あるいはこういう事故を起こしたときのことを言っておられるので、そうじやなかったならば、ちゃんと国家検定試験を受けて、そうして会社から申請された人を、これはだめだということはあり得ないと思うのですよ、できないと思うのですよ。だから、その人は、その前にどこでどういう手ぬかりをして爆発したとか、あるいはその他の事故を起こしたというような前歴のある人とか、あるいは今度こういう問題を起こしたからという、これは事後処置だと思うのですよ。  私の言っているのは、そうじゃないのです。そうじゃなくて、同じような資格を持っておりさえすれば、会社の営業ということじゃなくて、保安の任に携わる人ですから、自分たち保安の仲間から、仕事の仲間から、それをお命じになったらいいじゃありませんか、こう言っておるわけなんですよ。そうしませんと、会社機構の中でいかに保安を言われても、それは利潤を犠牲にして、保安を第一にする人はおりません。またそれをやっておったら何にもできないかもしれませんが、保安を無視してでなければ、生産は成り立ないという炭鉱はございません。完全にやって成り立つのです。  だから今のように会社が任命して、そうして通産省が許可する、そういうことじゃなくてほんとうに、その保安の任にたえられる人をやったらどうかと、こういうことを言っておるわけなんです。だから会社の人じゃ、なかなかできぬ、労働者じゃ、できぬということは、何もないと思うのですが、これは、大臣どういうふうにお考えでしょうか。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 炭鉱労務者出身の人で、国家試験を通った人を任命する、私はそういう条件をつけるべき筋合いのものじゃない、保安管理者というものは、その前歴が何であろうと人命第一という主義でやるべきであって、しこうしてまたこの問題は、会社企業の責任者が、自分の責任を持ってやるべきことであると思います。
  41. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじゃ大臣の逃げ口上なんで、それでは、その責任はどうなんだと、これだけの人間を殺した場合には、これは労働問題になりますから、ここでは申し上げぬのですけれども、そのあとの問題は、どこまで責任を持ってもらっておるか、ほとんど基準法できめられた線以外のことはやっておられない、また大炭鉱は、それで通るようだけれども、そういうことでなくて保安の、人命の問題は、営業をやっている人の責任ということにするのでなくて、国民の生命は、政府が責任を持つのだというぐらいの考え方でやられるならばいいではないか。  たとえば会社がきめた場合でも、その人は、会社の雇用人じゃないというような姿にでもするか、あるいは私がいったような姿にするか、どちらが保安に対してはほんとうに真剣になってやっているだろうかということを考えていただきたいと思うのです。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 議論になるようでございまするが、私は責任の問題は、まず法規の整備、監督のいたし方等によってきまるものだと、これが労働者出身の保安管理者だからどうとか、あるいは会社の職員出身だからどうだとか、こういう問題ではないと思います。労働者出身であったならば、責任はその人が負うのだ、こういうものじゃない。やはり会社自体が、経営のもとは保安にあるという考え方でいくのが筋だと考えます。
  43. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう事故が起こったから、責任をどうするという問題はおくといたしましても、どちらが保安のために、少くとも本気になってやっていくかということを純心に考えてもらいたいと思うのですよ。  これは思想の問題じゃないです、思想の問題じゃなくて人道上の立場から、責任云々ということを離れてみても、どれが一体、ほんとうに保安ということについて考えているだろうかということを考える場合に、私どもは、どうしても会社の幹部の方であるならば、私はやはり生産と利潤の方に重きがいくのじゃなかろうか、かりにそうでないとしても、一名でなければできぬという理由はないはずです。それならその人を両方から指名するとか、あるいは一名ずつ出して、十分に話し合いさせると、一名ふやすということなんです、そういうことでもできると私は思うのですが、そういうことも、大臣はだめだと思われるのでしょうか。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の保安管理者機構というものにつきましては、先ほど申し上げているように、生産管理機構あるいは保安管理機構、この部分については、私は研究するといっておるわけです。そういうときに今結論を出せといわれるのは早過ぎますと、私はこういう考えです。  今のあなたのおっしゃるのは、保安管理者が一人の場合は労働者から出せ、その出身、前身が労働者であるべきものがいいと、こういわれますが、それは、必ずしも私は賛成しない。そういうことで、前歴を基準にしてきめるより、ただ機構の問題として、どうやっていくか、こういう災害の多いときでございますから、業界の人の意見あるいはまた他の国々の、諸外国の状況等を調べまして検討いたしたいと思っております。
  45. 阿具根登

    ○阿具根登君 私が言っておりますのは、保安管理者が、その山の常時保安責任に任じておられる人であるならば、一番いいのは、やはり通産省の所管にある方が、そこにおられるのが一番いいのですよ。ところが予算がないから、そういうことはできない、甲種炭鉱でも、そういうのだけならば、爆発の危険のあるところ、あるいはまた水の危険のあるところ、そういうところに、そういう人がいるのが一番いいと思うのですけれども、今の場合は、それは大臣としてできないとおっしゃるに違いないから、その保安そのもの、全然ほかのものを考えずに、保安そのものを考えてみる場合には、やはりその働いておる人が、一番いいのではないかという理論を申し上げているわけですよ。  ところがそういう保安の問題は、やはり会社の管理内容であるからということになるならば、それならばその会社の枢要な地位にある人だけでなくて、労働者の中からも、そういう資格のある人を入れてやる、こういう三つの考え方が、私にはあるわけなんです。三つの考え方がですね。  一番好ましいのは、最初言ったので、その順番にいって三つ申し上げたわけですが、その中でも、その問題は、思想とか利潤とか生産とかという問題をまず離れて、保安という問題は人道上から考えなければならない。また、極端な人に言わせれば、それなら保安だけ考えて、生産せぬじゃないか、こういう人もおられるかもわかりません。そういう方は、思想でものを言っておられる。そういう方は、利潤だけを考えてものを言っておられるのであって、坑内で働く人は、利潤を上げなければ、生活ができないということはみな知っているのです。だから、保安を守ったから全然生産ができないなんということは、だれも考えておらない。  そういう純真の立場から私は申し上げておるのでございまして、今度こういう大災害が起こりましたので、これを機に、通産大臣のお考えが、保安を第一だというお考えでございますので、その保安をより以上に守るためには、こういうことも国会で強く要望しておるということを一つお考えになって、対処していただきたいと、かように考えます。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 承知いたしました。御意見十分検討してみたいと思います。
  47. 大矢正

    大矢正君 私は、二点について局長さんにお尋ねをいたしたいのですが、今度の夕張事故発生を見ますると同時に、局長現地までさっそく出かけられたことについては、私も非常に喜んでいるものでありますが、それはそれといたしましても、今回のこの夕張爆発事故が、こうだから、従ってこうなんだという質問で私はなくて、連続して爆発と出水事故が起きているという現況にかんがみて、局長考え方を聞いてみたいと思いますが、その一つは、石炭生産する会社というのは、先ほど保安生産の議論がありましたけれども会社としては、石炭を掘るために会社を作っているのだし、石炭を掘るために従業員を雇っているのですから、石炭を掘ろうとする意欲が先に立つことは、私は、ある面では資本主義経済の今日の状態としては、否定することはできないと思います。  しかし、そういうような事態に対処して、これをチェックするのが、いわば通産省の行政官庁としての鉱山保安局の私は立場じゃないかと、こう思うのです。  そう考えてきますと、たとえば山野あるいは新入、そしてまた夕張というように、連続してガス爆発が起こり、これは保安監督機構のどこかに欠陥があるのか、あるいは不足があるのかというようなことも、一般的には私は考えられてしかるべきじゃないかと思うのであります。夕張爆発というものが、保安監督機構の不備のために、ああいう爆発事故が起きたとは、私はもちろん思っておりません。そういうことではないにしろ、行政官庁としての監督局としては、これだけ災害が連続して起こるとすれば、一体どこに原因があるんだと。そしてまた、それは、単に山々に起きた部分的な現象ではなくて、監督機構それ自身においても、どこかに欠陥があるんじゃないだろうかというくらいの、私は判断をされてもけっこうじゃないかと思うのでありますが、今日までの小岩井さんの説明、それから新聞、ラジオ等を通じての談話の発表を聞いておる範囲においては、そういうことをうかがい知ることはできないわけです。  それから、もう一つ大事なことは、小岩井さんも、私とともに北海道へ行かれて、よく御存じの通り、三区と四区の連れ坑道とベルト坑道を密閉する際に、私自身坑内に入って立ち会っております。そこで、あの密閉作業に入る鉱員が六十名、私と一緒に入坑して来ましたが、そのときの鉱員の顔や、それから考え方、言葉というものは、実に悲壮なものです。何とかして一時間も早く、いっときも早く同士を坑内から救出しなければならないという悲壮な気持がある反面に、あわせて、いつまた連続して爆発が起きるだろうか、あるいは危険性はないとはいいながら、みずからが検定したわけじゃないんでありますから、一酸化炭素がどこにあるかもわからない。そうすれば、呼吸を一度か二度やるだけでも、ころりといってしまう、そういう危険性から、非常に緊張した面持でありましたけれども、阿具根さんと私が中に入って、いろいろ話をしていたから、参議院議員が先頭を切って坑内に入って行くのだから、もう大丈夫だろう、こういう安心感で密閉作業が開始されたと言っても過言じゃないと思うのです。しかし現実に深層から、立ち入り坑道に入っていくに際して、坑内から煙が出てくる、あるいはにおいが出てくるということになりますと、ここでも非常に驚いておりまして、何か、しり込みするような気配もありましたけれども、しかし、みなが入っていくから大丈夫なんだろうという、それだけの人間的な、単に安易な気持で作業員というものは入っていくわけであります。  そうすると、実際問題としてあなたも御承知通りに、作業員というものは、たとえば検定器一台持っているわけじゃありません。ガスの測定ができるわけじゃない。みなが、あぶなくないから入れと言うから、そうかなと思って、入っていくわけでありますから、ましてや、一酸化炭素の検定をしているわけじゃないから、なおさらのことであります。  そうなって参りますれば、もちろん保安管理者たる質任もあるでしょう。あるいは、それの下につく保安の課長、保安の係長の責任もあるでしょうけれども、同時に、そういう現場の実情も絶対に心配がないのだということで安心させる最大の立場の者はだれかといえば、やはり保安関係の職員であり、そうしてまた、保安関係と付随する生産関係の職員じゃないかと思う。  従って、鉱山保安局としても、これからの坑内事故を未然に防止する意味合いにおいては、先ほど生産保安との競合関係における管理者と、それからまた、経営者という立場との両面があることが指摘されましたけれども、それを徹底的にもちろん究明はしなければなりませんけれども、あわせて実際の現場で、作業員を直接指揮してあぶなくないから、お前ら何も心配しないで作業をやれという、保安管理員それ自身についても、これからある面では、鉱山監督局が、何らかの形で教育の方法考えていく必要があるのじゃないか。これは単に罰則を付するとかなんとかいう問題で解決する問題じゃなくて、こういった第一線で働いている保安管理員というものの教育や、あるいは意識の向上という、そういう問題については、十分鉱山保安局としては考えていかなければならぬ問題だということを、私は実は非常に感ずるわけであります。  それからもう一点、非常に考えさせられることは、坑内保安の技術というものが、現実に進歩していることは事実でありますけれども、しかし、遺憾ながら、まだ今回の夕張のような、ともすれば偶発的と思われるようなガス爆発事故については、それを事前に察知することができない段階であります。しかし今、工業技術院その他でも、盛んに、ベルによる警報とか、ガスが、ある一定の濃度になった場合には、警報装置と同様な方法でやったら非常によろしいのではないか、もしガスが停滞して警報が鳴ると、直ちにガスを引けば、未然にそういうことも防止できるのだというような意見も出ているのでありまして、こういう面については、多少政府も努力されているようでありますが、私が本年度の予算の中で察知している範囲内の、工業技術院の鉱山保安に関する、特にガス爆発に関する予算の内容というものは、必ずしも満足するものではないように思います。炭鉱の経営者は、何とかして生産をよけいやりたい、そうすれば、どうしても保安がおろそかになるという実体があり、これをチェックするのが、保安監督官庁としての鉱山保安局であるとすれば、鉱山保安局としては、それを未然に防止するための施設の面においても、経営者が、やるやらないにかかわらず、私は、事故防止のための施設を、これからどうしていくかという研究のための費用を積極的に盛り込む必要性があるのじゃないかということを、今回の三山の爆発の事例から見ても、非常に痛感しているわけであります。  従って、私は最終的にあなたに御質問したいことは、やろうとすれば、何らか保安局としてやる方法があるのじゃないかと思うのでありますが、あなたが、今日まで発表されておる内容では、あまり目新しいものはない。ただ、経営者に対して警告を発する、こういう連続してガス爆発が起これば大へんだから、お前らが注意せよという、単なる精神的なもの以外にないように私は感ずるのでありますが、当事者としての監督局長は、もっと積極的に、もっと能動的な対策というものがおありになるのかないのか。その点について、この際承っておきたいと思います。特に池田通産大臣に聞きたいところでありますけれども通産大臣は大蔵省出身でありまして、詳しいことは、これは当然おわかりにならないと思いますから、私は大臣にお聞き願いつつ、一つ局長からこの際、御答弁をいただきたいと思います。
  48. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 保安法の目的の一番大きなものは、人に対する危害の防止、私ども、項目四つございますけれども、私は、この人に対する危害の防止が、一番大切だというところで、大半の力をこれに注いでおるわけであります。  しかしながら、炭鉱災害につきましては、ほとんど、まあ大きく罹災者を同時に出すという災害は、わずかな種類に限られております。御承知のように炭鉱爆発と、あるいは坑内出水、あるいはガス突出、ほんの三つか四つ、もちろん落盤とか、運搬とかの頻発する災害は、これは実質的には、和が多いのでありますけれども、まあ一度に大きく罹災者を出すという種類のものは、ほとんど三つ、四つに限られおります。  従いまして、これらの対策につきましては、非常に入念に対策ができておるわけであります。ただ一つ、変災が起こりますと、私どもはすぐ、こういう変災が起こって、あとどうするか、と、こういう質問を受けるのでありますが、非常にその回答がおざなりになるのは、もう手はきまっておるのであります。爆発の防止の対策というものは、現段階におきましては、こういうことをやるという点は、微に入り細にわたりまして、非常に入念に要綱ができておるわけであります。しかしこれも、もちろん時代によりまして要綱が変わって参りますので、新しい技術の進歩がありました場合には、要綱を漸次直しておるわけでありますが、大体大きい手というものは、きめられております。  従って非常に私どもの話に新味がないのは、そういうような点から出てくるのではないかと考えておりますが、しかし一方、保安の技術の検討につきましては、いろいろな機構もございますし、私の方の省内におきましては、工業技術院の資源技術試験所で、一括して資源関係の研究をやっております。従いまして、私どもの問題になるような点につきましては、この資源技術試験所で検討してもらっておりまするが、現在私どもの方でも、一番災害の点で目下考えさせられておりまするのは、事故救命器の点でありまして、これは私も、今回の災害も、特に夕張罹災者が、ほとんど火傷とか、あるいは外傷を受けてないというような非常に大きい点がございますので、かねがね私もアメリカから帰りました直後、もうそれ以前からも、そういうような話が出ておりましていろいろその後のわが国の災害におきましても、簡易な救命器を持っておれば助かると、いうケースがかなりございますので、いろいろその辺の器具の研究をしてもらっておるのでありますが、いかんせん、現段階では、日本にはまだしっかりしたメーカーもなければ、あるいは製品も出てない。まあ一応、製品として出たものはありまするけれども、試験所で、いろいろ検討してもらいました結果、まだ不向きであるというような点もございましてまあこれを使用する段階に至っておりませんが、できる限りこれらの点につきましても、至急に研究を続けてもらいまして、ごく近いうちに、私の考えといたしましては、炭鉱の必要な区域の労務者には、でき得る限り早い機会に使用してもらえるようにいたしたい、かように考えております。  ケーブルの点におきましても、ベルトの点におきましても、坑内で火がついた場合に、今までのやつですと、一たん火がつきますと、ずっと燃えさかってしまいますが、最近はこれを、火がついたところが消えさえすれば、あと燃え移らないというような、不燃のベルト、不燃のケーブル、そういったものも、漸次坑内に使用、拡大いたしておりまして、決して保安の技術を粗略にするというような考えは毛頭ございません。  私は、まあ保安の一番の柱は、保安の教育、保安の技術の改善にありという点は、もうずっと長い間変えたこともございませんし、また当分変える必要もないのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  49. 大矢正

    大矢正君 もう一つだけ……。  この間、実は北海道べ参りましたら、新聞記者が言うのには、小岩井鉱山保安局長は、最近炭鉱災害が非常に多いのは、労使の間にみぞがあるからだ。すなわち労使関係が正常化されないから、ために炭鉱災害が起きるのだ、こういうように北海道で、各山の保安関係責任者を集めて講義か講演かされたと、これは一体、あなた方どう思うかという、実は質問を受けたのであります。おそらくこれは、小岩井さんの言葉足らずか、あるいはまた新聞記者の聞き違いではないかと思うのでありますが、事実、あなたがそれを考えておられるとすれば、これは非常に重大な問題であります。たとえば山野にいたしましても、三菱新入にいたしましても、北炭夕張にいたしましても、労使の間が、それほど急迫を告げて、感情的に大きくみぞがあるなぞという私は実態を知りません。今問題になっている三池のようなところで災害が起こったならば、あなたの言うようなこじつけも、これはまあできるかもしれぬけれども、しかしそういう面では、むしろ労使関係がうまくいっているのではないかと思われるような山で、そういう災害が起こっているという事実に対して、あなたが、もしそういうふうに認識されておるとすれば、大へんなことになるし、それから坑内事故が起きるということは、本人みずからの生命を断つことでありますから、たとい労使の間で要求の問題や、団体交渉の内容において、たとえば感情的な問題や、意見の相違があったとしても、事保安については、労使の間に私はみぞというものはないと思うであります。おそらく労働組合は、これでも保安が足りない足りないといってむしろ積極的に働きかけても、労働組合みずからが労働者の生命を断つような、保安をおろそかにする、そういうばかげたことは、私どもとうてい、これは想像がつかないのであります。  そこであなたが言われたことが間違いなのか、私が言うように、あなたが誤解をされているのか、その点念のために、この際承っておきたい、こう思うのであります。
  50. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 保安の点につきましては、労使、もちろん立場は同じでありまして、坑内に下がる者、あるいは炭鉱関係ある者、みんな一応保安の重要であるという点については、全くどの階層も変わりがないというふうに考えております。  ただ、おそらく私の説明の不十分、あるいは取り違いというような点ではないかと思いますのは、私は、こういった意味の話をしたのであります。それは、まあ最近、労使の間で非常に交渉する問題がたくさん出ているのであります。そこで保安管理機構の面におきましては、保安管理者を初め系列の技術職員が、この交渉にかなり時間をとられる、こういう点が、かなり訴えが各方面にあるわけであります。そこでまあ私どもは、そういった問題の話し合いについては、できるだけ早く話をまとめて、そして保安管理機構の人間が、十分坑内に下がれるようにしていただきたいという気持を述べたのでありまして、それがまあ労使間の紛争が激しい、それが保安に影響がきておるというふうに端的にとられたのではないか、かように考えておりますが、私ども保安の面につきましては、この問題だけは、組合の方々であろうとも、経営者の方々であろうとも、一番一致した基盤の上に立てる問題ではないか、かように考えておる次第でございます。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの局長答弁には、非常に私ども納得することのできない問題も含めておりますが、何か先入観があるようですが、きょうは大臣が、今から本会議に出られるそうですから、御質問はこのくらいにしたいと思いますが、まだ原因も、はっきりしておりませんので、一応保留いたしまして、この次の炭鉱問題のときには、外国の実情あるいは日本の実情等も十分対比して、質問をいたしたいと思いますし、まず、新入で十六名、北炭夕張で三名の遺体が、まだ上っておりませんので、早急に、その遺体を家族に返していただくように、手段を講じていただきたい。質問を保留しまして、今日はこれで終ります。
  52. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 本日の質疑は、これをもって終了いたします。    午後三時一分散会