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1960-03-03 第34回国会 参議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三日(木曜日)    午前十時五十六分開会   —————————————   委員異動 三月二日委員小柳勇君辞任につき、そ の補欠として江田三郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            秋山 長造君            田畑 金光君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 松野 頼三君   政府委員    厚生政務次官  内藤  隆君    厚生大臣官房長 森本  潔君    厚生大臣官房会    計課長     熊崎 正夫君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省医務局長 川上 六馬君    厚生省医務局次    長       黒木 利克君    厚生省薬務局長 高田 浩運君    厚生省社会局長 高田 正巳君    厚生省児童局長 大山  正君    厚生省保険局長 太宰 博邦君    厚生省年金局長 小山進次郎君    厚生省引揚援護    局長      河野 鎭雄君    労働省労働基準    局長      澁谷 直藏君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    大蔵省主計局主    計官      岩尾  一君    厚生省保険局次    長       山本浅太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査  (昭和三十五年度厚生省関係予算に  関する件) ○じん肺法案内閣送付予備審査) ○労働者災害補償保険法の一部を改正  する法律案内閣送付予備審査) ○身体障害者雇用促進法案(内閣送  付、予備審査)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、ただいまから委員会を開きます。  委員異動報告いたします。  三月二日付をもって小柳勇君が辞任し、その補欠として江田三郎君が選任されましたので、右御報告をいたします。   —————————————
  3. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十五年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は逐次御発言をお願いいたします。  ちょっと速記を落として。    〔速記中止
  4. 加藤武徳

    委員毎(加藤武徳君) 速記を起こして。
  5. 坂本昭

    坂本昭君 当委員会では、いまだかつて新大臣社会保障についての基本的な見解、そういったものをゆっくり聞いたことが実はないのであります。きょうは非常な期待をもって、新大臣の御意見を承りたいと思っておったのでありますが、病のためにまことに残念ながらその機を失したことを遺憾に思います。大臣に対してはまたあらためてお伺いいたしますが、すでに明敏なる次官初め各局長がおられますので、新大臣のもとにおける新しい構想は十分お伺いできる、そう信じて御質問いたします。従って懇切丁寧に、かつ、明確にお答えをいただきたいと思います。  まず最初に、新しい大臣のもとに一体社会保障というものをどういうふうに理解しておられるか、承りたい。
  6. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいま政府からは、先ほど報告をしましたように、渡邊大臣が出られませんので、内藤政務次官出席をしております。なお、厚生省からは、森本官房長熊崎会計課長、尾村公衆衛生局長川上医務局長黒木医務局次長大山児童局長高田社会局長太宰保険局長河野引揚援護局長聖成環境衛生部長等出席をいたしております。なお、大蔵省からは、岩尾主計官出席をいたしておりますことを御報告いたします。森本官房長。(坂本昭君「そんな扱い方があるか。もう初めから言っているじゃないですか。大臣のかわりがやらなくては役に立たぬ」と述ぶ)
  7. 加藤武徳

  8. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 厚生大臣から所信表明があったわけでございますが、厚生省といたしましては、国民年金あるいはまた国民保険、この大きな柱を主にいたしまして、さらに低所得者等に対する対策も十分検討の上、社会保障制度の確立を期したい、かように存じております。
  9. 坂本昭

    坂本昭君 御承知のように医療保障所得保障の二本の柱をお立てになっておるわけです。この二つの柱の政策的な意義をどういうふうにお考えになっておられるか。一つその確信、信念のほどを披瀝していただきたい。政策的な意義であります。  官房長、説明せんでもよろしい。
  10. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 国民保険につきましては、三十五年度にこれが全国の徹底的な実現をはかっていきたい。さらにまた、その内容等につきましては、これが改善を期していきたい。また国民年金のことにつきましては、御承知の本日をもってこれが給付をすることに相なっておるのでございます。その間いろいろとまた問題がありますので、これも十分検討して、所期の目的を達していこう、こういうふうに考えておる次第であります。
  11. 坂本昭

    坂本昭君 私は、政策的な意義を聞いているのであります。少なくとも政務次官ともあろう人が、与党が掲げていますところのこの金看板に対して、どういう意味を持っているかというくらいのことを、これは選挙のときには十分演説しておられたと思う。私は、それを伺っているんですが、また次に一つ伺います。  この間の大臣所信表明の中でも言われたのでありますが、医療保障というものは、皆保険計画で完成すると明確に考えておられますか。まあ政府のいわば金看板であります。まことにりっぱな金看板です。が、この看板に偽りなきやということを私はお伺いしたい。皆保険計画で完成するかどうかということです。
  12. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 要するに、各保険給付内容一つ改善していくということを私たち重点的に考えておるような次第でございます。
  13. 坂本昭

    坂本昭君 答弁落第点だ。局長から聞きます。保険局長、三十六年の三月三十一日までに、皆保険計画が全部仕上がって、四月一日からは、全国に強制的に国保健保の組織で皆保険が行なわれますが、三十六年三月三十一日のときに、国保は何名、それから被用者保険もひっくるめて健保は何名になる見通しですか。数だけでいいのです。
  14. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 私どもの予定では、三十五年度末に国保の被保険者が大体四千八百万くらい、それから片方のいわゆる被用者保険、大体被保険者と被扶養者を会わせまして四千三百万——四百万近く、その辺と考えております。
  15. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、残るものは何名残りますか。そうしてそれは、いかなる階層が、どういうところに皆保険の網から漏れますか。
  16. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 今申し上げました数字と、総人口との残りのものは、ほんのわずかでございますが、大体この中には、生活保護法の適用を受ける人が、これが大体今の見当でやはり百五十万近くのものはどうもあるのではなかろうかと一応考えております。そのほかに、いろいろ御承知社会福祉施設児童福祉施設等に入っている人たちもおります。これは数にすればほんのわずかでございまして、せいぜい二十万前後であろうかと思いますが、そういうような人たちはやはり残るのではなかろうかと思います。
  17. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、まだそれでも数が足りないじゃないですか。それで日本の総人口に足りますか。国保健保合わせて九千百万、それに生保施設で百七十万、九千二百七十万、日本の総人口幾らですか。
  18. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) そのときの三十五年度末の総人口大体九千三百六十万ぐらいと踏んでおります。足して大体なろうかと思います。被用者保険の方を合わせまして四千三百九十万ぐらい。(坂本昭君「それでもまだ足りない」と述ぶ)いや、大体そういうようなことであります。
  19. 坂本昭

    坂本昭君 これはいよいよ皆保険の前の年の三十五年度に入ろうとするのですから、この点、私は何もあなたをいじめようと思って聞いているのではなくて、真剣に、皆保険々々々と言っているけれども、これで皆保険が皆医療になるかどうかを非常に心配しているから聞いている。次官などはてんで答弁にならないことを言っている。少なくとも担当の局長は、あと何人漏れるか、生保の百五十万、施設の人二十万漏れる、やっぱりこういうことはつかんでおく必要があると思うのです。そこで、漏れた人に対する措置を私は次官にお聞きしたいのです。どういうふうにしていくつもりか。そうせぬと、これは皆保険による皆医療ということが伴わない。従って当然これに対する措置考えなければならぬ。次官としてはどういう具体的なお考えであるか承りたい。
  20. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) さような漏れる人等に関しましては、生活保護法でカバーしていくよりほかにないのではないかとわれわれは考えておる次第であります。
  21. 坂本昭

    坂本昭君 漏れる人に対しては生活保護で全部すくい上げる、これは一つの御方針として承っておきます。  局長はとにかく皆保険をやろうというのに、日本人口もつかんでいないというのは困る。経済企画庁の資料では、三十五年度の見通し九千三百三十七万、あなたの見通し九千三百六十万。人口については厚生省の方がしかもしれないけれども、わずか三十万でも、十万でもいいのですよ、たった一人でも皆保険に漏れる人があっては政策として私はまずい。従って、そういう点でほんとうに皆保険の実の上がるように最後の根を固める必要があると思ってお伺いしているのです。ところが、実はこういう例があるのです。これは局長に伺います。  日雇健康保険手帳をもらうけれども印紙の数が足りない。まず足りない場合に、手帳もらっても二カ月間に二十八枚、二十八枚もらわないと日雇健康保険扱いを受けることができない。従って、その最初の二カ月間というものは、これは国民保険から漏れるのです。漏れる人が全国に何人おるか、一体この漏れる期間並びにその家族は一体どうするか、まずその点を伺いましょう。
  22. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) ただいま御指摘の点は、実は非常に大事な問題と私ども思っておるわけでございますが、御承知通り日雇健康保険制度は、日雇い者対象とした健康保険制度でございまして、日々雇い入れるというようなことから非常にやり方がむずかしく、現在はその御指摘のように、まあ二カ月間に二十八枚を張ったと、それで初めて受給資格ができるということになっています。従いまして、その間というものは、日雇健康保険手帳はもらっておりますけれども、いわゆる制度恩恵に浴せないというギャップが、ある面においてできる、これは、皆保険になって参りますと、確かに私ども問題だと思っております。これを、何としてこのギャップを埋めたものかと実は今頭をひねっておるところでございますけれども、これは、ただいままでのところでは、どうもなおこれという結論が出ていない。これは、ぜひとも早急にこの問題を何とか善処せねばならないということ、今私ども重々考えておる次第で、目下検討しておるところでございます。
  23. 坂本昭

    坂本昭君 特にこの印紙を張る二月の間は、いわゆる保険料を払っておるわけなんです。保険料を払いながら、しかも健康保険扱いを受けることができない。のみならず、国民健康保険——国保の実施されておる地域、その地域の人もこの手帳をもらえば一年間は国保に加入できないのです。これは御承知だと思う。従って、国保にも加入できなければ、また日雇い健保現実保険料を払っておっても加入できない。つまり国民保険からはっきりと漏れてしまう、しかも法的な不備のために、しかも再来年からは皆保険をやろうというときに。今早急と言われましたから、これは私は少なくとも来年度中には全面的に法改正をやらなければ、これは皆保険という金看板が泣くだろうと思う。この点を一つ指摘して、さらに実は、それだけではまだ困る問題があるのです。印紙を二月の間に二十八枚張ってもらって、そして三カ月日から保険扱いを受けるのですが、かりに三カ月日に病気にならなかった、そして、その三カ月目の印紙の数が足りなくて四カ月目に病気になったときには、これは日雇健康保険扱いを受けない。従って、たった二月だけじゃない、場合によると三月も四月も、極端な場合には一カ年間この法の制限を受けて、結局あらゆる形の、国保、あるいは日雇健保、このどれにも入らない、こういう人が現実にかなりおります。私は、先ほど生保百五十万、施設二十万が残っておると言ったけれども、これは、全国で私は数万を下らないと思う。ことに、今の二カ月間の人を入れたら、私は数十万になるのじゃないかと思うのです。これは保険局長として重大な問題であるので、これに対して早急ということを言われたけれども、少なくとも予算の問題もありますから、この秋の臨時国会までには出す義務があると思う。局長の明確なるお答えをいただきたい。
  24. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記を落として下さい。    〔速記中止
  25. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を始めて下さい。
  26. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 御指摘通り、二カ月で受給資格を受ける、そして後においてもまた同じようなことが起こり得る可能性があります。この点は、やっぱり日雇健康保険制度についてはそれだけむずかしい面があるということにもなりましょうが、なお私ども考究していかなければならぬという点があることは御指摘通りであります。私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、日雇健康保険制度については、なおそのほかにもいろいろ問題点があるというように考えておりまして、これはぜひ早急に検討いたしまして、その何らかの結論を出して、そして、いわゆる明年度からのほんとうの皆保険に対してそごのないようにいたしたいと目下考えておるところでございます。御意見のところは、私もまことに同感だと考えまして、鋭意検討いたして参りたいと思います。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 皆保険、皆保険と言われますけれども国民保険がこれが即国民医療になる。医療保険医療保障と言えるか。大臣次官もおられなくなりましたから、今度は局長にお伺いいたしますが、医療保険は一体医療保障か。
  28. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 非常に大きな問題でございまして、むしろ大臣からお答えすべきが適当かと思いますが、医療保障という場合にその概念のとり方でございまして、国によりましては、いわゆる英国のように国民医療というような、医療サービスというようなことで、まあそこにおる人は全部国の費用でもって医療を受けるというような制度の国もあります。わが国におきましては、御指摘のようにいわゆる保険制度を中核といたしまして、そしてそこに漏れる人がありましたならば、公的な扶助制度でもってこれを補っていくという式で今日進んできておるわけでございます。そのいずれがいいかどうかということは、私はこれは机上ではどうこう言うことが、理屈はいろいろございましょうけれども現実の面といたしましては、わが国においてはやはり今日の段階はこの医療保険というものを中軸にいたしまして、そしてそれをできるだけよりよいものに育てていきたい。そしてまた各種医療保険の相互間の調整をはかりましてできるだけ形の整ったものにして参る、こういう努力でいくのが現実の問題としてはわが国では最も適当ではないか、かように考えておるわけであります。皆保険が即皆医療ということが言えるかという御質問趣旨はどの辺にあるか、あるいは私の答弁が御質問趣旨に沿わない点があるかもしれませんけれども、私は日本現実といたしましては、今日英国でやっているからすぐそれをまねるということはかえってよろしくない。やはり日本の今日の段階におきましては皆保険というこれを中軸としまして、そして内容を充実していく、そうして公的扶助制度なり各種予防制度と相待って国民医療なり保険を担当して参るのが筋であろうかと、かように考えておる次第でございます。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 保険局長答弁としてははなはだ不十分だと思います。  次に、大正十一年四月二十二日ですか、初めてできた健康保険法、これと昭和三十三年の十二月二十七日の国民健康保険法、これを見ますと、今の保険の問題について私は一つ発展を見ることができると思うのです。まず立法的に医療保険に対す理念の差があります。私はこれは喜ぶべき進歩と考えてもいいと思います。健康保険法の第一条のところで、目的、それには保険者が被保険者疾病に関し保険給付をなし云々と書いてある。こまかいところは省きますが、保険者が被保険者疾病に関し保険給付をなし、それから四十三条には療養給付の項に被保険疾病に関して療養給付をなすと書いてある。それから五十九条には家族療養費のことが書いてある。被扶養者療養を受けたときは費用につきこれを支給する。つまりこの健康保険法ではあくまで明確に被保険者医療保障をして、が、家族については医療費補償しているにすぎない。こういう点ですね、非常に健康保険法では明確であります。ところが、新しい国民健康保険法では、法律の第一条には「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」云々と書いてある。この健康保険法国民健康保険法では非常な考えの違いがある。健康保険法では、あくまで被保険者である労働者対象とした労務管理立法であります。ところが、新しい国民健康保険法では、世帯主家族とを問わずに医療保障するという観念が明確に出ておる。だから、この点私が先ほどから保険医療ほんとう医療保障になるかということを聞いておるのは、こういう歴史的な発展の中で、お互いにそのことを明確にする必要があるから伺っておるわけです。そこでほんとうは、これは大臣に聞きたいのですけれども保険局長としても補佐する任務としてお答えいただきたいのは、一体厚生省は、医療保障考えているのか、医療費補償考えているのか、つまり医療保障制度目的としているのか、それとも医療費補償——最初医療保障はセキュアリティーの、保つ方の保障ですよ。その医療保障目的としているのか。あるいは医療費補償——この補償は補い償う方です。言いかえれば医療費負担を見てやる、そういう医療費負担制度目的としておるのか、この点一つ明確にしていただきたい。
  30. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) まあ、大体社会保険という筋から申しますと、これは医療費を支払うのが合理的な措置で、これが本筋でございます。従いましてその点からいえば、お尋ねの方では、医療費補償というものをねらっているんだといってもいいと思います。ただし、御承知通りわが国におきましては、大体諸外国の、いろいろ例があるようでございますが、現物給付をいたしております。現物給付をやるということは保険自体からいたしますると、やはりちょっと筋からいえば議論があるかもしれませんが、しかし、わが国においては現物給付をやっておるということにおいて、これはどちらかということ、医療費補償という考えよりも、医療について、適正な医療国民保障するんだというようなニュアンスもそこに出てきておるように考えられるのであります。この保険という建前から申しますれば、やはり私は医療費補償というふうに考えるのが筋であろうかと存じますけれども現実のこの給付内容その他から見ますると、今日においては国民医療保障しておるということも言えないこともなかろうか、まあこういうことで、あまりはっきりしない点は多少あろうかと存じますが、かような感じであります。
  31. 坂本昭

    坂本昭君 保険局長がそういうぐらぐらした考えでは、国民保険国民医療だということをあまり金看板に出しては困る。私は何も保険をやめろということをここで言うのじゃない。ただ保険医療全体を見るということは医療保障にならないということを、私はこの国民保険の前の時期、前年度に入ったから、そのことを私は言いたいのです。だから、保険をやめろということを言っておるのでは決してありません。むしろ保険料の受け持つ部分というものを、今までは医療費重点を置いておる、むしろこういうことも考えられやしないか。保険料の受け持つ部分というものの重点を、たとえば、これはたとえばです、傷病手当金に振り向けておるとか、これは健康保険の場合は行なわれていますが、さらに皆保険となってきた場合、国保の少なくとも世帯主について安んじて医療を受けられるようにするために、また生活も安定させるために国保傷病手当金制度を今のような面で考えていってはどうか。たとえば厚生省でも今度の原爆医療の新しい法改正の中でも医療手当金という考え特別手当金というのが出てきております。これは原爆症の人が安んじて医療を受けてほんとう医療を、いわばその恩恵を十分にこうむることのできるようにするために、こういう特殊な手当金ができてきた。私はこれは当然国民健康保険についても自信を持って、そうして働くのをやめて医療に専念し得る、そういう条件を作るためには、傷病手当金という考えは、これは医療保障を進展する上に非常に必要だ。従って今までのように保険医療をおもに、重点的に施行せられておるのを少し変えてはどうか、そういうことを私は今伺っているわけです。特に国保傷病手当金制度に関連して局長答弁を承りたい。
  32. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) まあ御指摘のように、保険では主として手当金傷療手当金というようなものを担当するようにしたらどうであろうかということでございますが、これは御意見としては私は一つのりっぱな御意見だと存じますけれども、これはいざとなりますると、やはり健康保険制度全般の非常に大きな変更が起こりますので、これについては、私どもとしては検討をせねばならない点が多々あると存じますので、この場所において、にわかにどうこう意見を申し上げるわけには参りません。やはりこれは相当大きな問題であることは、実はあえて申し上げるまでもなく御存じだろうと思いますが、これは当面のわが国健康保険の運営について非常に大きな影響を及ぼします筋合いのものでありますから、御意見は御意見として今日のところは承っておきたいというようにいたしたいと存じます。国保についても傷病手当金、これは今の健康保険にも医療給付すると同時に傷病手当を支給しておりますから、国保についてもそういうことができるようになることはけっこうなことだとは存じますけれども、御承知通り、今日の国保はその本質の医療の面につきましても、御承知通り大多数の国保においては五割給付でございます。この残りのあれは被保険者に払ってもらうというようなことでございますので、健康保険に比べましても相当内容が劣っている面がございます。で、そういう血の充実がまず今日のところでは先であろう。傷病手当金のお話は今日あるいはここ近々、なかなかそういうところまで手が届かないのではないか。まあ、こういうふうに私ども考えておる次第であります。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 私はただ、今国保傷病手当金制度だけを取り上げたのではなくて、つまり今保険の問題を取り上げながら、それに関連して理論的に同っておるのです。ただ一つ、これは問題を提起しておくということで、あともう少し話を進めたいと思います。結論的に言いますと、私は今日の皆保険制度というものは医療保障にはなっておらぬと、皆さんが言われるほど皆保険だから医療保障になる……私はむしろいろいろな面で二重にも三重にも医療保障にはならないというのが私の結論的なことです。  そこで保険とはどういうことか、これも局長、釈迦に説法なんですけれども保険という考えはこれは岩波の小辞典ですけれども、これには「保険とは偶然の事故による一時の入用を充足するため多数の……経済単位が集合し、……必要な資金の醵出を行う経済制度である。」途中省略しますが、「個人が被る不慮の災害、あるいは事業がうける偶然の事故による損害を填補し、……個人生活や事業活動の安定を図ろうとする制度」である。つまり多数の経済単位の集合によって行なわれるのが保険制度であるということが、この経済の字引には書いてある。従ってこの通りなんですよ、そしてこの通りに従って保険局長は今まで長い厚生行政をやってこられたので、その点では私は誤っておったとは決して言いません。しかし、この保険金とそれから多数の経済単位とを乗じた積ですね、これが保険財政になっている。この保険財政が保険の本質を決定する、これは私は否定できない事実だと思うのです。従って医療保険とはいうけれども、あるいはまた健康を守るための保険だとはいうけれども、そういうことよりは保険財政を維持すること自体に、今まで行政としても、政策としても、エネルギーを全部集中してきた保険医療だと私は言わざるを得ないと思う。これは歴史が明確に物語っている、このことを私は別に否定するのじゃないのです。過去のこれは歴史であって、今後はこれではほんとう医療保障にならないから、改めていくべきではないかという点で私は伺っているのです。私の見るところ、どうも医療保険、この保険制度では真の医療保障にどうもなり得ない、初めからなり得ない基本的な欠陥を持っている。そういう点で、繰り返して、今日の日本保険医療というものは正しい意味でこれは社会保障ではない、私はそう思うのです。そこで具体的に二つ問題を取り上げて聞いてみたい。  第一は、これはわかりやすく申し上げていきたいと思いますが、医学の発達という点であります。医学の発達の結果、従来のような、具体的に言えば千分の六十五という保険料率による保険財政、こういう保険財政のワクを医学の発達が踏み越えているということ。平たく言うと、今日人間の命というのは非常に守られておって、お年寄りの肺炎などはもう死ななくなってきた。そういう点で生活は非常に確保されてきていますけれども、非常に金がかかっているということですよ。昔は老人の肺炎のときには、キニーネを使いました。安いものでした。今日ではクロロマイセチンやアクロマイシンを使う、非常に商い、しかし確実です。だから老人は死ななくなる、しかし金がかかる。結核の場合でも、昔は燐酸コデインと健胃酸をまぜて飲ませた、だがなおらない、しかし、このごろは外科療法やストレプトマイシンで完全になおっておる、しかし非常に金がかかる。これは局長も御存じの、国立の第一病院の院長であった坂口教授は非常におもしろい比喩を言っておられる。これは皆さんも聞いてもらいたいけれども、昔の戦争は弓と矢だ、だから矢を弓につがえて撃つ、これは一人が当たるだけだ、しかし、当たっても完全に死なない、当たって死んでも一人しか死なない、しかし安い。だんだん進んできて、日露戦争になると、機関銃になった。機関銃になると、一挙にたくさんのものが殺せるけれども、これとてもかなり金はかかるし、殺すといっても一個中隊とか二個中隊に限定する。今日の原水爆になったらどうです。一発で何十万、何百万殺すという、そのかわり一発何百億かかる。これは、戦争の発達と同じように、医学も的確に治療できるかわりに金がかかる。言いかえれば、もう千分の六十五というような保険財政ではやっていけぬところに来ているということを、これを認識しないというと、私は医療保障というものができない段階に来ている、そういうふうに思うのです。この点について局長はどう考えておられるか。
  34. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 御指摘通り、最近におきます医学、医術の進歩というものはまことに目ざましいものがございます。当然新しい薬がどんどん出てきますから、それによって非常にわれわれ恩恵を受けております。しかし同時に、それは相当高価であるというようなことから、医学、医術の発達、進歩というものに伴いまして、医療費はかさむという傾向にございます。それを、先ほどお読みになりましたように、保険という仕組みのからくりの中で、これをどうしてまかなっていったらいいかということについて、これは非常に大きな問題でございまして、これは私どもばかりでなしに、物の本を読んでみますると、世界各国がやはりこれについては相当頭を悩ましておるようでございます。しかしながら、どうしても今国民が……今日のところでは、保険制度でもってこれをさらに充実をはかっていく。どうしても保険制度をやっていけない、とことんまできたかということにつきましては、まだ私どもとしては疑問があるのでございまして、まあ片一方におきまして、私どもはただ漫然と日常の生活を行なっていて、病気になったからといってお医者さんに行き、保険で見てもらうとか、どうのこうのということでなくて、それよりもやはりお互いに日常生活における衛生の知識の向上とか、あるいはそういう方面の活動あるいは環境衛生の充実というものによりまして、かからないでも済むものはかからないで、そして健康を保持していくということに力を入れるという余地も、また先ほど指摘もちょっとあったかと思いますが、私はあるのじゃないか。そういうような点を考えて、なお今日の財政のワクの中で、これはやる余地が私はあると存ずるのであります。で、千分の六十五というワクでやっていけないということで、これをどうしても上げろというようなものが世論になって参りますならば、上げるということも私は必要であろうと存じますが、今日の段階におきましては、なお今の料率の範囲というものは国民負担としてはそう軽い負担ではないし、これをさらに上げるというよりも、さらに今日の料率の中において、先ほど来申し上げたような合理化すると申しまするか、あるいは効率的な運営をはかると申しますか、そういうような面に努力いたしますことによりまして、そして新しい医学、医術の進歩が取り入れられるように持って参るべき段階であろうかと、かように考えております。もちろん国といたしましてもこの保険の財政、それから医療の水準とのこの調整のために国としてもてこ入れすべきことは私は当然だと思うのであります。そういう面につきましては、これは私どもの力がまだ足りないということに相なりましょうが、国家からももう少してこ入れしていただいていきたいものだ、こういうふうにも考えておるわけであります。そういうようなもろもろの努力をいたしまして、なおかつどうにもならぬという場合におきまして初めて国民も、この料率を、千分の六十五なり、六十というものを引き上げるということについてもあるいは賛同してくれようかと存じまするし、また場合によりましては、もう先刻御指摘のように、こういう保険というシステムではいかんから、思い切った他の根本的なものを考えるべきじゃないかというようなことも出て参るかと考えるのであります。くどくど申し上げて恐縮でございますが、私は今日の段階におきましては極力制度の運営の効率化をはかり、同時にまた国の財政でもてこ入れしてもらうところは極力てこ入れしてもらうごとによりまして、先ほど来御指摘の医学の発達なんというものを極力保険に取り入れるようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  35. 坂本昭

    坂本昭君 簡明な御答弁を得たいと思います。従来の保険財政では医学の進歩はまかなえないということを第一点として私はお尋ねしている。その点についてはほぼ局長も認めたと思います。あと具体的なことについては私は触れておりません。料率のことをどうということについては私は今触れておりません。  第二点は、社会保障の近代性、特に資本主義社会における意義、まずこれをどう考えるかということでありますが、これについてはもうすでに厚生白書の第二回、これに当時の堀木厚生大臣がすでに名言を述べておられる。「近年わが国の富の生産には目覚ましいものがあります。これらの富が有効に再分配されることによって、社会のひずみが是正されてゆくのでありますが、このために近代国家の発見した方法が社会保障であり公衆衛生であります。」ちゃんとこう堀木厚生大臣はすでに三十二年に指摘している。私はなお直接本人に聞いたら、これはおれが書いたと。どうなんです、たくさん局長さんがおいでなんですが、ほんとうに書いたんでしょうかね。堀木大臣は、これはおれが書いたと、おれの文章だ、おれはそういう考えを持っておると。私は実は見直したのです。こういう厚生大臣なら長い間働いてもらったらいい。その後はそのひずみを是正するために再分配はなかなかなされていないと思うんですね。ただそれから、この中には——第二回の白書の二十四ページには、「所得の再分配が後進国においてはほとんど行われていないという事実を忘れてはならない。先進国においては、高所得層に対する高度の累進課税と低所得層に対する無償サービス(公的扶助)という二本の太いパイプを通じて活発な所得再分配を行い、財政による所得の均等化がはかられているのであるが、後進国においては累進課税も公的扶助もともに未発達である。」なかなかいいことが書いてある。さらに、こまかいことは申し上げませんが、第三回の白書の中に、このときは橋本大臣でありますが、橋本大臣のときには堀木さんのようなはしがきは書いてありません。が、この白書の中にはもっと具体的に一再分配のことについて書いてきています。「高率の所得再分配を行うことの社会的な効果に大いに期待が寄せられる」、そうしてこの中に幾つかのことが書いてありますが、二点だけ申し上げると、一つは、「社会保障制度全体を経済的に見れば、所得の流れの方向を変化させる一つの再分配機構を考えることができる。」、非常に明確な考え方が出ております。それからもう一つは、「社会保障の経済効果は、その景気調節的機能である。」というふうに、まだあといろいろなことが書いてありますが、非常に重大なことが指摘されている。最初保険財政のことについて触れましたが、この所得の再分配と社会保障ということについて、局長はどう考えていますか。
  36. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 先ほどお読みになった堀木大臣のおっしゃった通りと存じます。
  37. 坂本昭

    坂本昭君 もう一ぺん堀木大臣を迎えなければいけませんな。これは当然あなた方が——太宰さんが書いたんじゃなかったかな。
  38. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 堀木大臣です。
  39. 坂本昭

    坂本昭君 太宰局長が当時どうも書いたらしいと思うんですが、これはどうも私はあらためてここでこの当委員会としても確認しておく必要があると思うんです。つまりここで問題点は、医療保障は現在の保険財政ではとうていやり切れないというところまで来ているということを一点確認することと、それからもう一つは、資本主義社会における社会保障というものの完成は率の高い所得の再分配にある、こういうことは一つ確認をしていただきたいと思います。で、そういう点で肝心の大臣がおらぬから、これは何なら与党の社会保障の責任者でもいいですよ、今回の三十五年度予算の中で一体今の二点のこと、堀木大臣はもうだいぶ前の大臣ですが、それからあとだいぶ進歩があるはずだと思う。この二つの点についてどういう努力をされたか、それからこういう成果が予算の中にどこへ出ているか指摘していただきたい。これは保険局だけでなくて、ほかのところにもあるのなら、おれのところはやった、第一の点はこう、第二の点はこうと、具体的な証拠があるならあげていただきたい。局長も堀木さんの言う通りだと言った以上は、どこか予算に出てきているはずなんです。
  40. 森本潔

    政府委員森本潔君) ただいま御指摘の点でございますが、最近におきましては、御存じのように、一つは各種社会保険におきましてそれぞれ高率の補助を適用しておる。一例をあげますと、たとえば国民健康保険におきましては、従来の予算補助のものを二割五分の高率補助にいたした、かような点であります。それからそのほかの点におきましても若干臓補助の引き上げをいたしております。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 もうちょっと具体的に言って下さい。非常に大事なことだから、若干ずつなんて言ってないで、数字をあげて何千万、何億と。
  42. 森本潔

    政府委員森本潔君) それから、たとえば日雇い保険におきましては、傷病手当金の従来医療給付の二割五分でございましたのを三割に引き上げるというような例、そういうような、法律上の制度としまして引き上げましたのはこの二つかと思います。また、政府としての補助率はそのままでございますけれども、被保険者の伸び、あるいは医療費の単価増、これらの点にからみまして国庫補助金が相当多額に出ておる、こういうことだと思います。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 金額を言って下さい。
  44. 森本潔

    政府委員森本潔君) 金額はあとでちょっと申し上げますが、これが一つでございます。それからもう一つの大きな点は本年度より施行になりました国民年金制度でございます。ことにこの福祉年金の制度の創設でございます。これなんかはただいま御指摘になりました所得再配分の制度としての画期的なものであろうと考えております。なお、それから来年度から実施いたしますところの拠出制年金におきましても、御存じのように、保険料拠出額の二分の一相当額を国庫負担することになっておる。これも制度的にはっきりいたしておるわけでございまして、この二つが大きなものだと思います。それからなお低所得者対策といたしまして、生活保護の保護基準の引き上げでございますとか、これは昨年度におきましては三二%、本年度におきまして三%の引き上げをいたします。それから世帯更生資金あるいは医療費の貸付資金、母子福祉の貸付資金、これらにおきましてもそれぞれ増額をいたして参っておる。その他ございましょうが、おもなものにつきましては大体以上のことが言えると思います。
  45. 坂本昭

    坂本昭君 あまりほめない方がいいと思うのです。大蔵省の担当主計官が来ておりますし、これだけのことをやったといって、これが所得再配分のどれだけの効果があるか、何なら一つこれは計算し直していただきたい。大した効果はないですよ。これぐらいのことは、これは堀木大臣を何なら証人として呼んできて、おそらくおれの大臣のときの方がもっとよかったと言うかもしれません。  そこでもうちょっと具体的なことについて、私はどうしてもこの医療保障ほんとう医療保障するためには現段階では内容を充実していくことだと思います。確かに形式は整ってきました。が、内容を充実していくところが、先ほど来問題になった千分の六十五の比率の問題についても、これを六十三に下げて、これで幾ら一体浮くのですか。たとえば企業主に対して、雇い主に対して、あるいは被保険者に対して幾らずつ浮くか、伺いたい。
  46. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 明年度の見積もりといたしまして二十六億の額になるのです。これを労使が折半いたしますから、それぞれ十三億ずつになります。
  47. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、まあ返してもらった労働者の側でいえば、多分一人十三、四円でしょう。たばこ三本か四本ぐらいのものだと思います。従って今度は患者さんの、今やっているこの前の健康保険法の一部改正以来の患者一部負担ですね、あの一部負担の金額は一体幾らになっていますか、法改正後の負担増。
  48. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 一部負担の増額でございますね、増額はこれは三十二年の七月からたしか実施をいたしましたので、三十二年度としては六億五千七百万円、三十三年度では九億九千百万円、三十四年度では、これは見込みになりますが、十一億八千五百万円、こういうようになっております。
  49. 坂本昭

    坂本昭君 そうしたら、これはもう委員会に出ておられる方、皆さんお気つきになったと思うのですが、今の局長のお考えでいったとしても、医療保険というものは医療保障ではなくて、医療費補償をすることだ、そういうならば今日九億から十一億、大体十億程度の一部負担費用負担です、これを見てやるということが保険の当然の建前になっている、しかもそれは保険財政のワクからいっても二十六億あるのですから、これで十分見得る。見得るにもかかわらず、それをやめて一部負担を残している。これだと、あなたの言われる医療保険医療費用の補償である。その筋からいってもこれは後退ではありませんか。私は当然こういう場合には、負担を軽減する意味において一部負担を除くために、保険財政のこの可能のワクの限りにおいても千分の六十五はそのままにしておいて一部負担は除くべきであったと思う。なぜそういう措置をとられましたか。
  50. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 一部負担制度健康保険制度、これは多数の……、先ほど指摘の経済単位ですか、平たくいえば被保険者になる人たちがそれぞれ毎月何がしかの金を掛けておいて、まあ病気になったときに、それによって医療費をまかなっていく、あるいは医療を受けよう、こういうことでございます。従いましてこの一部負担制度は、私どものはただ保険財政の面からだけで考えておりません。制度全体が健全に運営されていくと同時に、被保険者相互間のバランスというものも考えて参る、それは当然回り回って保険財政に影響してくることにも相なりまするが、とにかくそういう建前からこの法改正をいたしまして、まああの程度のことならば皆さんに納得していただけるというようなことで、これを実施いたしたわけでございます。しかもこれは政府管掌の健康保険だけの問題ではございませんで、各種の医療保険に通ずる全般的な問題でございます。従いまして今回の健康保険政府管掌の考え政府管掌といたしまして、この料率を若干引き下げて、御承知通り恒常率というものが千分の六十でございます。その前後に五ずつ厚生大臣の権限として、そのときの保険財政の状況等にかんがみて上げ下げできるようになっております。今日はそれの緊急分の満度まで、すなわち六十五まで上げました。これは上げ下げできないことになっております。従いまして、これは若干でもゆとりを持たしておいて、そして調節弁としての役を果たさせたい、こういうことがねらいであります。  一部負担の問題は、全般に通ずる問題でございまするから、これはこれとしてもって今後ともその一部負担を何かよくするというようなことについては検討していくことにやぶさかでないわけでございますけれども政府管掌のものとはこれは違いまして、全般に通ずる問題であるということを申し上げておきます。
  51. 坂本昭

    坂本昭君 あなた、一体国民のためにやっているんか、法律のためにやっているのか、あるいは財政のためにやっているのか。これは、先般来厚生省の行政については非常な批判が強い。国民年金についても、福祉年金についても、国民のためにやっているのだか、それとも法律のためか、予算のためかとずいぶんたたかれているはずです。今のようなあなたの考えなら、名前も保険財務局長として、大蔵省に行ってしまったらいいですよ。厚生省に要らぬ、そんな者は。少なくとも厚生行政をやる責任の局長ならば、あくまで国民医療という立場でやってもらいたい。あとの財政については大蔵省にまかしたらいいです。そんなことはあなたの任務じゃない。もっと国民のためということで、少なくともこの千分の六十五については、他の健康保険の審議会においても被保険者の代表者側は千分の六十五でとめても医療内容をよくしてもらいたい、そういう要求が出ているはずだ。あなたの方では、私の見るところ初診料をただにしたり、ずっと軽減すると受診率がふえてきて、それで保険財政がこわれる、そういうことを思っておるのではないかと思うのです。そうじゃないですか。
  52. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) これは一部負掛制度の根本に触れる問題でございますが、先ほど申し上げましたように、多数の被保険者がそれぞれその所得に応じて保険料負担する建前になっているわけでございます。中には保険を利用する機会が少なくて、保険料を掛け捨てになっているという方もあるわけでございます。これはこれでもって保険として一向差しつかえないことでございますが、やはりそういう人たちの気持というものも私どもとしてはくんでいかねばならぬ点もあると思います。それからまた、御承知通り入院料になりますと、今月一カ月一万円をこえるような状況でございます。そういう中で、入院しておりますると、入院中の食費まで全部保険でもって見てもらえる。ところが、たまたま病院がないために、自宅で療養しておる人に対しては、食費というようなものは見られないというようなことから、同じ病気になった被保険者相互間においても、そこの利益を受けまする度合いにおける公平というものもある、こういうようなことで、ある相愛  一部負担は必要なものだということが、これは私どもばかりじゃなく、学識経験者の方々でも今日これは是認されておるわけでございます。さような点から考えてみまして、これはただ何も赤字ができたから、あるいは云々というようなことでは私どもないのでございまして、それはもちろんこういうことによって若干の財政的影響というものは、効果というものはあろうかと存じますが、しかし、それにもましてやはり今のような保険の仕組みでやっております場合におきましては、この制度を運営をして参ります上にこれは必要なものであろう。しかし、これがあまり度を過ごしますると、これはかえって保険を破壊するに至る結果になると思います。そこで、ほどほどのところでやれということになっておるわけで、それで先般の改正にいたしましても、いろいろ国会の御意見等も拝聴いたしまして、現在のように初診を若干上げる、それから入院の場合に一カ月間に限ってとる、こういうふうに改正いたした次第でございます。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連。ちょっと今話を聞いていると、私は理解ができないんですがね。今の百葉の端に、医療を受けるから受益負担だ、この前のこの法律の一部改正のときに大問題になった。これが今局長の口の端から出てきたわけです。問題は、三十二年まではこの料率の操作によって健康保険は、本人は無料、家族は五割給付、この家族の五割給付を、本来なら一〇〇%にしていこうというところに私は医療給付の根源がある。国民健康保険でもそうです。無理をして東京都は七割九分までやる。国民の願っていることは、保険制度ならば、一応これを認めるとして、能力に応じて保険料を支払えば、病気になったときに、また健康の保持のためにはその制度で完全になおすというところまでいかなきゃいかぬというのが本来の姿だと思う。健康の人と、それから、多少からだの悪い人が保険料を払っておって、多少からだが悪くなってお医者さんにがかったから、この人は得したなんていうような、一部受益負担的な考え方が今の国民の中にありますか。とんでもないことを言ったら困ると思うのだ。私はそんな考えを、あなた保険行政で持ってもらったらとんでもないことだと思う。あのときの法改正趣旨は、政府管掌の健康保険に赤字が出た、政府も三十億出すかわりに何とか一部負担は、この幾らか料率の問題は今さわれないから、千分の六十五以上に上げ得ない状態にあるから、何とか見てもらいたいという一点で、この委員会であなた方は主張したのじゃないか。われわれは反対しました。むしろ所得の博分配といいますか、そういう建前で私は国の補助をふやして、一部負担はどうしても納得いかぬということでやったはずですよ。まあ、われわれは反対しましたけれども、この法案は通った。それをまるで受益負担の要素があたりまえだというようなものの考え方で保険行政、社会保障をうしろさがりするのですか。とんでもないことを言ってもらったら困ると思う。僕はここで二十六億を二%下げることと、二十六億、保険のやつは十億じゃないですか。その三十億の、政府が毎年三十億保証して出しますということの金はやめたじゃないですか。今年の予算見たって五億じゃないですか。それでですよ、それは保険財政が医療制限とか、給付制限やなんかでいろいろ理屈ついて黒字になった。黒字になったからというなら、第一番にとるべきものは一部負担じゃないですか。これは受益者負担じゃないですよ。そんなものの考え方で、保険行政やってもらうなんて、とんでもないことだと思うのです。もう一ぺん言って下さいよ。そんな理論がありますか。それをはっきりしてもらいたいと私は思うのです。僕は、ほんとうにそういう考え方はけしからぬと思う。
  54. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 先ほど私がお答えした中に利益を受けるというような言葉を使ったと思うのです。その点はどうも私もあまり適当と思っていなくて、従来適当な文句がないものですから、そういう保険の恩典を受けるということを、そういう表現使ったことは訂正いたします。  そこで、しかしながら、この、私どもは、これは単なる財政対策だけだとは考えておらないことで、これはやはり今日のような、いわゆるお医者さんと患者との間に医療の方はお願いしたい。それで現物給付をやっております。そうしてこの保険の方につけが回ってきて払う、こういうようなこと、しかも、被保険者十割、こういうような保険のからくりの、仕組みの時代におきましては、やはり制度の運営を健全に維持して、そうして保険全体として高い率の保険給付される、こういうような立場においては、私どもは必要なものだと、かように考えております。前の改正時に、国会において政府側の御答弁もたしかそういう線で申し上げておるはずでございます。
  55. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あの当時の議事録を引っぱり出して私は議論したいと思う。そんなものを引っぱり出して議論しなくても、わかり切ったことだと思う。社会保障をやっていこうというのは、私は強く主張します。今の内閣を組織している自民党も主張しておるのです。そこで、医療制度というものは推進されていく。社会保障の柱は、医療制度と、やはり所得の要するに保障の年金の制度だと思うのです。片方は生活をできるように、片方は能力に応じて保険料を出しておる保険制度のもとにおいて、保険料を出しておるから、給付負担をしないようなところにどうして到達するかということが、私はやはり医療制度の焦点だと思う。それを、今のような理屈はそれは通らぬですよ。二%下げるなら、まず一部負担をとって、一%しかできないという理由なら私はわかると思う。政府が三十億出すという約束をほごにしている。その問題は全然たなに上げてしまって、こういう言い方は、私は坂本君の質問時間ですから、関連だからこれでやめるけれども、これは根本的に考えを改めてもらわない限り、われわれ社会党ばかりではなく、自民党の、与党の方々も、その一部負担の問題について受益負担なんということを考えている人は、私は一人もなかろうと思う。それはおかしいですよ。それは考え面してもらわなければ困る。いずれあとで問題にします。私は関連だから、これだけ強く言っておきます。
  56. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 受益という先ほどの表現は適当でないので取り消します。しかし、一部負担のものの考え方、私はそういう御意見も確かにあると思います。まあ、われわれいろいろその道の学識経験者の方々の御意見も拝聴して、政府としても、われわれの考え方を固めるのにいろいろ検討した結果、先ほど答弁したようなことを考えているわけであります。これはしかし、健康保険制度のやり方なり何なりも変わってくれば、また当然それとの関連において変わってくる。今日の制度のもとでは、私といたしましては、やはりこの程度の一部負担制度は必要だと思います。これは御意見でございますから、この程度にしておきます。
  57. 坂本昭

    坂本昭君 今の問題は、これだけでも議論していれば相当長くかかりますが、私はさらにきょうたくさんの注文や意見がありますから、少し論旨を進めたいと思う。今の問題、保険局長の問題ですが、さらに年金局長などにも、厚生省全般に関係してくる問題です。それはいつも保険財政のワクにとらわれておって、ほんとう国民の福祉、国民医療国民の所得ということを考えていないので、今のようなことを行政上においてやる結果になってくる。私はもう少しおおらかな気持になって、たとえば今の一部負担もなくする方向に厚生省は努力する、あるいは、こういうことはどうですか老齢年金の考え方も出てきた、福祉年金の七十才以上の制限という考え方も出てきた。一つ保険と年金との考えを混合して、たとえばお年寄りは六十才以上の人の場合、国保でも被保険者には全部百パーセント給付にする、これは年金の考えやら保険考えやらが一緒になってきております。これは六十才以上としても七十才以上としても、場合によれば、あなた方八十才以上にしてもいいですよ。そういう考えを作ること。あるいは子供の場合五才以下、小学校は今度学校安全会法ができました。これでも半分です。しかし、これでもいいとして、五才以下の子供は全部百パーセント給付する、これはもう必ずしも老齢年金とだけの関係ではありませんが、私はこういう考えも生まれてきてもいいと思う。あるいは五才以下がむずかしかったら一才とか二才とかいうふうに限定してもいいですよ。これこそほんとう医療保障になる、漸進的な。何も革命的なことではないのですよ。こういうことは私は医療保障だと思う。これは与党の人だって別に反対しないと思う。こういう面でそろばんはじいたことがあるかというのです。これは私は例として一つ提案しますから、老人の場合六十才以上全部医療給付を百パーセントするとした場合に、国保あるいは健康保険家族の場合どれくらいのものが出るか、七十才以上にしたらどれくらい出るか、あるいは赤ちゃんの場合、こういうそろばんを私ははじいてもらいたい、そうすれば、これは与党、野党を問わず、厚生省のために推進するのにやぶさかではありません。こういう計画があるかないか。これは保険局長並びに年金局長にもみな関係してくると思います。むしろこれは厚生大臣次官に聞きたかったのですが、一つ官房長や各関係局長から意見を求めたい。
  58. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 私どもは、今の医療保険なら医療保険それ自体でもちろん満足しているわけではございませんし、先ほど冒頭申し上げましたように、皆保険になりまして、内容をさらに充実していく、同時に各制度間の調整もはかっていく、そういうことを従来以上に強力にやらなければいかぬということで、実は今基本構想につきましても、御承知社会保障制度審議会にも諮問しているようなことでございます。当然今後そういうばらばらにあるいは発達してきたと申しますか、こういうような各種の制度の間に均衡のとれたものにして、そうしてそれの全体の上に立って内容を充実していくということを考えなければいかぬ、そのためには、いろいろ検討せねばならぬものがあると思います。これについては、今後精力的に検討して参りたいと思っております。御指摘のようなことも一つの確かに考え方であろうと思います。これは一つ検討さしていただきたい。
  59. 坂本昭

    坂本昭君 大体、検討々々ばかりではだめですよ。大臣のようなことを言ってもらったら困る。局長になったらもう少し具体的に計数をはじいて、そうしてこれは与党、野党にも出してもらったらみんな一生懸命やります。どれやったって選挙にはプラスなんですから、加藤委員長は一生懸命やるだろうと思います。そういうことをやらぬで、ただやたらに一部負担を増すというようなことばかりやっておったのではちっとも進まない。大体私が見るところ、日本では社会保障について個人負担が多過ぎるということなんです。国民あっての日本なんですね。だから、国民が健康でぴちぴちしているときに、日本自体が健康でぴちぴちしてくるのであって、今の国庫負担のことについても、たとえば国庫負担イギリスは八〇%、フランスが四〇%、スエーデンが五七%、デンマークが五四%、ノルウエー三〇%、フィンランド四七%、これにまだ地方の負担がつきます。地方の負担を合わせるとスエーデンで八六%、デンマークが八五%、日本の場合は国庫負担は三十三年度でしたが、一七%、大体最近はこまかく計算してないけれども少し上がってきていましょう、二〇%ぐらいに。その中で今の国民健康保険二五%になったということは、これは私は非常にいいことだと思います。大いに支持します。さらにもっとこれを引き上げていきたい。で、たとえばこういうことを言うと、厚生省の方では二日目には金がない、金がないといわれる。しかし、私は金はあると思うのです。特に神武景気以来だいぶあり余ってきている。特に岩戸景気以来去年のように一三%の経済成長率という世界的な成長をしておる。だから、金はあるのですよ。これはたとえばこのヒルを見てごらんなさい。それから赤坂のナイト・クラブにも、僕は行ったことないけれども、大したものですよ。大蔵大臣の招待のときにはナイト・クラブへ連れて行ってストリップを見せるそうですよ。厚生大臣は見せない。厚生省には資料を出す金さえないという、そんなばかなことないでしょう。社会保障には、確かに金が要る。しかし、あなたがさっき言ったように、受益者負担だから本人に払えというふうなのはもう過去の話ですよ。新しい社会保障の曲がり角にきているのだから、保険局長がこんなことを言っておったのでは厚生行政は、伸びっこないのですよ。むしろ厚生省をつぶしてしまってもいいと思う。私は、受益者の、本人の利益は同時に国民の、国の利益じゃないですか。金はあるのですよ。きょうは大蔵省主計局が来ておられるからあとでお尋ねしますけれども、たとえば租税特別措置法、一体あれでどのくらい措置されているか、昭和三十三年度についてかなりこまかいそろばんをはじいてみました。全部で八百七億程度の租税特別措置による措置が、これが昭和三十三年度で八百七億、このうち法人関係分が四百四十二億、個人関係分が三百六十五億、個人関係分の中には保険局に関係のある社会保険診療報酬課税の特別措置もあります。あるいは早場米を供出したときの農民に対する租税措置もあります。しかし、大体過去の実績を見てくると、多いときには法人関係分だけ六百以上も措置されている。近年やや減ってはきている、しかし、それでも四百億、五百億というものが措置されておる。こういう措置が一体外国にあると思うのですか。なるほどその資本の蓄積擁護の税制というものは資本主義の社会では当然あっていいでしょう。あっていいけれども、アメリカ、イギリス、日本と比べると、日本ほどあこぎな国はありません。そして日本の場合は、終戦直後ならばまだよろしい、しかし、もうすでに十分資本が蓄積されてきている。だから、当然所得の再配分の場合にはこれを当然社会保障に回してもらいたい。堀木大臣ははっきりそういうことを言っておる。言っておるけれども、なかなかできぬというのは、一体これはどういうわけだ。私は、これはどうもあなたに聞いてもしようがない、大臣に聞こうと思っておるんだが、この大方針の特別措置をやめさせ、これを社会保障にくれ、そういうことを大臣に私は言わそうと思ったのですが、少なくともその資料として局長、こういうものを調べて大臣に建言をして、社会保障の金はありますよ、あるから一つやろうじゃないかという、そういう意見具申をする決意はありますか。
  60. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) まあ厚生省といたしましては、一般会計予算は、予算の説明について申し上げましたように、まあ相当増加していることは申し上げるまでもないことであります。しかし、私どもはまさに御指摘のように、これで十分だとは毛頭考えておらないのでございます。これはまあもともと実は率直のところを申しますれば、私は国のてこ入れがほしいと思います。あってしかるべきだと思います。そういう点につきましては、これは政府全体の問題でもございますしするから、まあなかなかすぐ実現しないということは遺憾に思いますけれども、この点については将来とも私ども努力して国庫負担をもう少しこれに投入してそして内容を充実したい、こういうことは考えております。大臣にも私どものできます限りの献策をいたして補佐いたしたい、かように考えております。
  61. 坂本昭

    坂本昭君 健康保険法の第七十条の三によって、先ほど藤田委員指摘せられた政府管掌健康保険の健全な発達をはかるため、一般会計から補助金の繰り入れ、これは先ほど言われた通りですね。昭和三十年では十億だったのが、三十一年三十億、三十二年三十億、三十三年十億、三十四年十億、来年度五億、特に真に発展をはからなければならない来年を目途として国の補助金を減らしている。特にこの問題については、先般の健康保険法一部改正のときに岸総理からも約束をして、当委員会でも竹中委員が再三それを指摘している。にもかかわらず、あなた方はこの所得再分配ということは必要だということを認めながら来年度五億に減らしている。なるほど別の面では医療金融公庫の方に十億出ている。おそらくこの減らした分だけ向こうに回したのであって、私はこれはちっとも積極的な私的医療機関に対する金融政策ということには考えない。しかし、少くともこういうふうに一番大事な年度を控えて五億に減らした。これは最初からの約束と非常に違うと思う。これはあなた、局長としてどういうふうに大臣を補佐し、かつまた大蔵当局と相談をしてきましたか。
  62. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 政府管掌の事業費に対する国庫一般会計負担が五億に減ったことは私も非常に遺憾に存じておるわけであります。この点につきましては、私ども政府部内の話になりますけれども大臣もまた最後までいろいろ折衝に当たっていただいたわけでございますけれども政府全体といたしまして社会保障関係でも相当他の方に回さねばならぬ経費があるわけであります。たまたま健康保険政府管掌については若干の今ゆとりもできているようであるから、まあこの際はこれでしんぼうしてくれということにどうもならざるを得なかったわけであります。この点については大へん御指摘を受けて私ども恐縮に存じておりますが、これはやはり国としては、私はもっともっとてこ入れしていただきたいところだと考えているわけでありまして、これは明年度以降にどうしてもあるいはなろうかと思いますが、さらに努力をいたしたいと思います。
  63. 坂本昭

    坂本昭君 大蔵省の説明を求めます。
  64. 岩尾一

    説明員岩尾一君) ただいま御指摘ございました健康管理に一般会計からの繰入金を昨年十億から五億に減額をいたした原因でございますが、局長からも御説明がございましたように、政府管掌健康保険の収支は、昭和二十九年、三十年の赤字財政、当時七十億といっておりましたけれども、非常にその当時から立ち直りまして、きわめて好調であります。三十三年度末におきまして大体百八十三億程度の積立金を擁するかと思います。さらに三十四年度末見込みではこれに三十億円ほど増加する見込でございますし、三十五年度におきましては、先ほどお話もありました六十五から六十三への引き下げ等を考慮いたしましてもなお二十億程度の増加があるような状況でございます。一方、社会保険費全体から見ますると、国民健康保険の助成費は、御審議いただいております予算にございますように、前年に対して六十二億円の増、日雇健康保険におきましても前年度に対しまして四億円の増というふうに、かなり社会保険全体としての増加額が多うございますので、今申しましたように、勘定自体といたしまして収支の楽な勘定におきましては、その方を減額いたしまして他の必要な方に回したわけであります。なお、先生御指摘のように、医療金融公庫等も新設することになりまして、十億円の出資を国といたしましてはいたしましたので、そういうことを勘案いたしましてやっているわけであります。
  65. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、午前の質疑はこの程度にいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩    —————・—————    午後一時五十分開会
  66. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは午前に引き続いて会議を開きます。  午前中、昭和三十五年度の厚生省関係予算について質疑を行ないましたが、なお、本件について質疑のおありの方の御発言をお願いします。
  67. 高野一夫

    ○高野一夫君 直接予算関係じゃありませんが、至急にただしておきたいというよりは、報告を聴取しておきたいことがあります。それは先般私どもが視察に参りました国立の予防衛生研究所で、屠殺場における肉類について何か新事実が学問的に発見されたとか、研究されたとかいうようなことをちらっと耳にしたのでありますが、それの概略、どういう事柄であるのか、一応公衆衛生局長から報告をいただきたいと思います。
  68. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまの御質疑の点は、尾村公衆衛生局長ももちろん出席しておりますが、国立予防衛生研究所から寄生虫部長代理石崎技官が出席しておりますので御報告いたします。
  69. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) それではただいま高野委員からお話しの、先般の当委員会で御指摘のありました病気につきましての調査のことを概略申し上げます。いろいろ調査しましたところ、御指摘病気はトキソプラズマ病の病源体であるトキソプラズマのことでございまして、これは現在まで約十種類の動物がかかっておる原虫病でございます。ただし、これは人間にもかかる病気で、人間に流行の程度は、調査いたしましたところ、昭和二十七年以来、日本じゅう全体で大体その症状があって報告されたというものは約三十例でございまして、病人からいいますと、非常に希有な病気に今のところになっております。しかしながら、この病気はいわゆる最近逐次問題になってきましたオウム病とか、その他新しいヴィールスによる新感染症と同様に未知であって、しかも相当人間に重要であるらしいとされてきました新感染症の有力な一つとみなされておりまして、従って、これの研究が進みますと、案外人間に広範囲に影響がされておったかもわからぬと、こういうような見込みを立てまして、去る昭和三十二年から科学研究費でこれを重視いたしまして、トキソプラズマ症に関する研究ということで大きな研究班を作りまして、この所長には元伝研所長の長谷川秀治先生を代表者にいたしまして、十四の部門分けをして担当いたしまして、予研もその一端をになって研究をもうすでに三年間続行しており、研究の成果は、中間報告は相当詳細なものが外部に公表されておる。で、先般ちょうど先牛方おいでのときに予研で扱っておりましたものは、昨年の十二月とそれから本年の二月に芝浦の屠殺場で豚から、一例は茨城県平磯から出ましたなま豚、それから本年二月のものは静岡県藤枝市から出ました一頭の豚から発見した当該病気でございます。これは屠畜検査を厳重にやっておりますので、直ちに発見いたしまして、これは屠畜の規定に基づきまして、これは全部適切に処分をいたしました。ただ豚等にはこれは相当かかっておるといういわゆる獣医学上の問題にも相当なっておることでございます。従って、屠殺場での従業員等にこれが相当蔓延しているのではないかということが、これはやはり重要な問題でございますので、その方面にも力を入れまして研究が続けられておりますが、この原虫は非常に弱いものでございまして、摂氏五十五度で五分間で死んでしまうというような弱力のもので、普通の食塩水に数時間入れても死んでしまう、こういうものでございます。ただ、これはチステを作りますので、芽胞を作りますとそれよりはるかに、一週間も生き延びるというような性質を持っておりますので、直接人間からこれを検出するということはまずまずないと思います。むしろそれがかかったあとに多分不頻性のもので免疫を作るらしいということで、免疫反応が成功しておりまして、色素反応といっておりますが、幾つかの血清免疫反応が出ておる。これでやりますと、大体今までの成績では、推定でございますが、全国民の一〇%程度がかかったか、あるいは病変を起こしたかどうかわかりませんが、不顕性のうちに免疫反応を起こしているらしいというところまでようやく類推研究が大体できました。そうなりますと、この一〇%というと、日本人が大へんな数でございますので、これがもし不顕性であるか従来の臨床症状ではわからぬが、もしからだの中に何らかの変化を起こしているという可能性がありますと、明らかにこの症状を現わして、これによりまして不幸に死んだ人あるいは病理学的な今までの知見では、脳を侵すというようなことが相当わかっております。このほかに肺炎症状、それから全身の各臓器を血中で増殖して侵すということがわかっておりますので、むしろこれはちょうど脳性麻痺の原因として胎児中の水痘その他のヴィールス性の母親の不顕性感染が原因しているのじゃないかというようなことが最近有力に言われ出しておりますが、これと同様な類推も立ち得るということになって参りまして、いわゆる未知の精薄であるとか、あるいは今、言いましたような脳性麻痺のような原因の一端を知らず知らずのうちにになっておったのじゃないかということも若干予知されますので、従って、これは現実に起こった伝染病としての病人は、将来もそれほど重要じゃございませんが、さような意味の不顕性を……、どうも免疫を作るからには、流行は相当人類にもありそうだという点からの追究が非常に重要であろう、こういうことでございます。そのほかに、もちろん獣類に相当な症状を、人間と違いまして起こしますので、畜産問題、それから人畜共通として獣の肉と人間との関連ということがやはり大事な点でございますので、さような点で研究を進めておる、こういう状況でございます。従いまして、現在屠畜場でまず生きた獣を入れます場合には、必ず全部体温をはかっておりますが、これは必ず発熱を来たす動物の病気でございますので、これをもって実は発見していく、これを厳重にする。さらに肉、臓器を屠畜検査のときには、これはくまなくやっておりますが、この場合にこれを厳重に間違いのないようにやる、こういう指導はいたした次第でございます。従いまして、今後の研究を一そう増す、こういうような現状にございます。
  70. 高野一夫

    ○高野一夫君 簡単に一、二伺いますが、そうしますると、屠殺場で獣医が来て判こを押しますね。そのときに発見しやすいでしょうか、場合によってはこれはあまり発見されないということだとすると、そういうような肉類が市場に出まして、われわれ皆さん、国民が知らないうちにそういうあぶない肉を食わされておるということは、過去もあったかもわからぬし、今後もあるとすれば、これはゆゆしい問題だと思うのです。これが発見しやすくて、そうして取り締まりやすいかどうか。また、農家の家畜と養豚業ということにも関係しますが、その真意についてはどうなのか、その辺をもう一つちょっと……。
  71. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 犬、ネコ、牛等ほぼ十種類の動物がいずれもかかった症例も多数ございますが、このうち豚が今までの中で一番かかりやすい、こういうことでございます。ただ、いずれも動物にかかりますと発熱をする。非常な高熱を出しますので屠畜場の第一の検査は、あすこに入りますものは、全部生きているうちに発熱検査を厳重にいたしておりますが、これは一番かかっておれば見つけやすいものです。従いまして、生畜を屠殺場に入れましてやりますと、いわゆる屠畜場では、これはほとんど見のがしが少なくて、なおそのほかに少しでも、高熱ではないが発熱のおそれのあるものは、屠畜場で必ず検査方式として血液をとりまして、保存して顕微鏡検査をすることになっておりますが、これで疑わしいもののうちから発見をする、こういう状況でございまして、今度もそういうことですから、これはわかります。従来は、そういう形ではいろいろな病気が発見されますが、これはなかったということでございます。なお、内臓、臓器にまで病変を起こしておる、しかも生きたまま搬入されておるということは、少ないことでございますが、そういう場合には、規定にありますように、臓器は必ず屠畜検査をしておりますので、それで発見されるものは問題ないかと思いますが、ただ問題は、外国から肉になって輸入されるもの、これは屠畜場は通過いたしませんで、いわゆる輸入食品検査でこれを検査いたします。従って、これは、すでに死んでおりますが、肉の方をくまなく検査するということでございます。ただしこれは、欧米でも、日本よりもっと前から、獣類の病気としては日本以上に問題しておったものでございまして、これは向こうでも屠殺前に、日本以上にやはり今まで関心を持っておったものでございますので、日本よりも検査が甘くなって、ひそんで入ってくるということはまずまずないと思われますが、しかし、こういうことが今までよりわれわれの関心を一そう引きましたので、輸入検査のときに厳重にこれをやるということで指導を始めております。
  72. 高野一夫

    ○高野一夫君 一つ要望だけ申し上げておきますが、実際問題として、屠殺場で、かりに熱が非常に高いものなんかこれはわかるかもしらぬが、まだ発病直後のようなことで、わずかしか熱が出ないというようなこともあるでしょうし、そうしてああいうふうに非常に忙しいときには、全く屠殺に追われているという状態で、血液をとって検査をして、その結果を待ってから屠殺するというようなことは、はたして行なわれるかどうか、すこぶる問題だと思うのです。従って、この際一つ厚生省から、早急に全国の屠殺場関係に対して、この発見といいますか、防止に全力をあげるべきであるという指示を出していただきたいと思います。  それからもう一つは、カン詰類、外国から来る肉類の食品関係、これに対する検査はどういうふうにされるかわかりませんが、これも通産省関係と連絡をおとりになって、十分厳密に、今度どしどししばらくの間少なくとも厳密に検査をする、そうしてわれわれが安心して肉類が食えるようにしていただきたいと思う。これだけ要望しておきます。なお委員長、この問題につきましては、後日相当の時間があった場合に、その後の予研における研究の業績をまた詳しく学問的に伺って、当委員会において、もっと、と畜場法その他食品衛生法と関連をして十分研究をすべきであると思いますので、それだけお願いして私の質問を終わります。
  73. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  74. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。
  75. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではただいま高野委員からの質疑がございましたが、午前に引き続きまして、主として予算に関連する事項についての質疑を続行いたします。
  76. 田畑金光

    ○田畑金光君 予算に関連して、私昭和三十二年の法律第百九号引揚者給付金等支給法についてお尋ねしたいと思っておりますが、大臣一つ十分認識してもらって、厚生省並びに政府の方針を承りたいというのが質問趣旨でございますけれども、本日の質問内容については、政務次官から大臣一つお伝え願いたいし、また適当な機会に大臣の見解、方針を承りたいと考えております。  最初数字的な問題になりますので、援護局長にお尋ねいたしますが、この法律に基づく引揚者給付金支給の事務処理状況は、どのように進捗しておるかということです。最近の、たとえば本年の一月末現在において、この法律に基づく認定人員は幾らに上り、国債の発行がどうなり、同時にその金額が幾らに上っておるか、これを最初にお尋ねしたいと思います。
  77. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) お尋ねにございましたように、引揚者給付金等支給法が昭和三十二年にできたわけでございますが、年度の途中から実際の事務が始まった等の関係もございまして、当初、準備等に相当手間取りまして、すべり出しが若干おくれたような事情にございました。その後馬力をかけまして、だんだんと事務の正常化をはかりまして、現在では大体スムースに動いておる、こういうふうな実情にございます。  お尋ねの数字の点でございますが、まだ一月末の集計がそろっておりませんので、昨年末、十二月三十一日現在の数字を申し上げることによって御了承を得たいと思うのでありますが、昨年末で認定いたしましたものが二百七十三万九千人余りでございます。国債が出ますのが若干おくれますので、それに相当する金額が必ずしもはっきりいたしておりませんが、同日付で国債発行しておりますのが二百六十四万一千六百七十五万円でございます。これに相当する金額が三百八十三億六千百万円ばかりでございます。この数字から推定をいたしまして、昨年十二月末の認定人員に対する所要額、これも推算いたしますと、約四百億程度でないか、かように考えるわけでございます。
  78. 田畑金光

    ○田畑金光君 この法律は三年の時限立法で、従って、本年の五月十七日以降はなくなるわけです。そうしますと、今年の五月の十六日までに、当局としてはどの程度の申請件数があって、そうしてまた、それに見合う国債の発行というものをどの程度に見積もっておられるか、それを一つ承りたいと思います。
  79. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 最初にちょっと法律の性格でございますが、ただいま時限立法という御質問ございましたが、法律的に申しますと、ちょっと時限立法というのとは違いまして、お話しのこの五月に期限が参るのがございます。それは時効でございまして、この五月になったら、この法律がなくなるという趣旨のものではないのでございます。時効は個々の人に進行いたしますので、たとえば法律ができたあとに帰ってきたという人がございますれば、その帰ってきたときから三年間申請ができるわけでございます。そういう意味で、この事務は先細りではございまするけれども、まだ相当先まで残るわけでございます。そういうふうな事情がございまするし、いろいろ時効も参ります人が多数ございますので、事務の見通しというものを立てたいと思っていろいろに推算をしておりまするが、なかなか的確な見通しが立ちにくいので、正確な数字を申し上げることができませんことを御了承いただきたいと思うのです。たとえば昨年ちょうど遺族援護法の時効がやはり同じころに参ったのでございますが、時効が参りましても、その後に相当初度裁定の申請がきております。いろいろ書類を整えたりなんかする関係で、市町村のところでも相当手間どるようなケースもあるわけでございます。そういったことで、まだ初度裁定になりますものが時効がきてもまだ相当あるというふうなことから考えますと、引揚者給付金の方もこの五月に大多数の人の時効の時期が参るわけでございますが、それで事務が終わってしまうわけじゃございません。そのときに受け付けたものは全部その後に処理をするというふうなことになりますので、なかなかこの見通しがつかめませんので、今後の見通しについてのお尋ねがございましたけれども、この点はちょっともうしばらく時間をかしていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  80. 田畑金光

    ○田畑金光君 私も思い違いをしておりましたが、時限立法でなくて第十八条に基づく三年の法律時効の問題について実は申し上げたかったので、ちょっと訂正しておきますが、そこで、私の方でお尋ねしたいことは、この法律を出されたとき、厚生省当局としても、その当時の厚生大臣趣旨説明を見ましても、大体遺族給付金あるいは引揚者給付金、この二つの支給件数を三百四十万円と見、これに見合う国債発行総額を五百億と予定されているわけです。先ほどの説明によりますと、認定人員が二百七十三万九千九十七名、こういうことになっておりまして、まだ相当数が申請していないあるいは申請漏れであるとか、あるいは申請の準備中であるとか、また、この法律の手続は非常に複雑であり、証明を必要とする関係上、諸方面に問い合わせ中であるとか、いろいろ引揚者の人方は苦労しておると判断するわけです。そこで私は、現在三百八十三億の公債発行額に上っておりまするが、まだ相当数の人方が手続を終わっていないと、こう見るわけで、しかしたとえくまなく手続はとられたとしても、五百億に対してはある程度の余裕が残るとこう私は見るわけなんです。厚生省当局の方で、なおかつ、まだ今後予定される申請案件に対して、申請件数に対して、見通しをもっていないようでございますが、これは、この一年間なら一年間の動きを見るならば大よその見当はつくものと、こう考えるので、厚生省の方で試算ぐらいはしておられると思うのですがね、どうなんですか。
  81. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 先ほど認定件数を申し上げましたが、当初法律ができますときに、大体予想した人員、ただいまお話にもございましたように、三百三十七万人ばかりでございますが、十二月までに受け付けた数で申しますと、三百万をちょっと上回った数字に実はなっておるわけでございます。これが非常に長期間の事務でございますと、推定が非常にしやすいのでございますが、時効が参ると申しましても、二年半ばかりのことでございますので、その間にも申請のでこぼこが相当ございまするし、それから特効がくるということで、各府県を通じまして相当PRをやっております。失権することのないようにということで、これから時効の時期を差し挾みまして、今までよりは若干上回った申請が出てくるのじゃなかろうかというふうなことを、いろいろな要素を考え合わせますと、なかなか的確な判断ができませんので、お答えができないのは非常に遺憾に思いまするし、また、申しわけなく存じておる次第でございますが、いろいろやり方によってあるいは若干余裕が出てくるのじゃなかろうかというふうなことも全然ないということは申せないと思うのでございます。だけれども、じゃ、どのくらい残るか、あるいは確実に残るかというふうにいわれますと、ちょっとその点につきまして自信がもてませんので、先ほど来お許しを願いたいと、こういうふうに申し上げてしる次第でございます。御了承を得たいと思います。
  82. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の消滅時効の三年のことで、私特に厚生省当局の意見を承っておきたいと思うのですが、地方に参りましても給付金の手続が非常に繁雑で、請求書類を整えるのに予想外の手数や時間がかかってなかなか思うように進まないということは、これは当事者だけでなく、関係当局も取り扱い者もこれは認めておるのです。これは厚生省としても十分理解しておられるものと考えておりますが、そこでこの際、三年という時効がそういうようなことでもう目前に迫ってきておる、相当の人方が該当するのではなかろうかと予測されるわけで、この際、この期間を二年くらい延長して、三年を五年の期間に持っていく配慮がこの種法律の運営を全うするために必要ではなかろうか。ことにあなたも御承知のように、引揚者問題の在外財産処理については、総理府に在外財産問題審議会も置かれて、半年にわたる御検討の結果、この答申を得て、ときの鳩山内閣のときにこれができたわけでございますが、あの審議会における、在外財産問題審議会における議論等を振り返ってみても、この法律によって在外財産問題処理がついたとはおそらく引揚者の方々も納得していないと判断するのです。そういうような事情を顧慮いたしましたときに、この法律は、この際第十八条を改正して三年を二年延長する必要があると私は考えますが、この点あなたとしてはどのようにお考えであるか。また、これらの問題について大臣等とお話しなさったことがあるのかないのか、大臣はこれらの問題を承知をしておられるかどうか、あらためて別の機会に大臣に承りたいと思いますが、まあ責任者のあなたに一つお尋ねしておきたいと思います。
  83. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 事務が非常に繁雑ではないかという御批判は、ことに法律が出ました当初各方面から非常にいただいたわけでございます。私どももそれ以来いろいろ内容検討いたしまして、事務の簡素化に努めて参っておるわけです。当初は見通しも非常につきかねる、実情についての見通しもはっきりしない面がございまして、大体問題のないところから処理をしていく、問題のあるものはこれはあと回しというふうな処理のやり方をいたしましたので、中には相当申請してから時間がかかったという人が多かったと思います。その後だんだんに実情に合うように事務の処理のやり方を変えまして、現在ではそれほど多くの御批判もいただいておらないのではないだろうかというふうに考えておるわけです。  ところで、この時効の問題でございますが、本来時効という性格から考えましても、これを延ばすというのはいかがというふうに私ども考えておるわけです。それぞれの制度にそれぞれの実態に応じたバランスをとった時効制度というのがございますので、一つを延ばすということはほかにも非常に大きな影響を及ぼすことでございまするし、私ども不勉強のせいもあろうかと思いますが、時効を延ばしたという例を実は聞いておらないのでございます。むしろ時効を延ばさないでどういうふうに処置をするかということで対処すべきものであるというふうに考えておるわけでございます。先ほどもちょっと申し上げましたように、時効によって失権者が出るということは残念なことでございますので、そういうことのないように一方で十分PRする。この点につきましては、昨年来各府県を通じまして相当にやっておるつもりであります。昨年遺族援護法の時効が到来いたしました際にも同じようなことをやったわけです。それにならいましてPRを一方においてやっておるわけでございます。それからまた、その書数が整わないということで困られる方もままあるわけでございますが、そういう方々につきましては、書類が不備であっても受け付けだけはするようにというふうに指示をいたしておるわけでございます。これはまた、遺族援護法の際と全く同じ扱い考えておるわけでございます。受け付けさえすれば時効は中断されるわけでございます。その後に不備があれば直していただけばいいわけであります。まあそういうことによって時効を延ばさないで処理するということが制度の建前からいいましても適当であるので、かように考えて指導をいたしておるわけであります。この点につきましては、先般衆議院の予算の分科会でございましたか、やはり大臣出席の際に御質問がございまして、大臣からも同趣旨の御答弁を申し上げておる次第でございます。
  84. 田畑金光

    ○田畑金光君 あなたの説明は、それ自体としてはよくわかりますが、この時効の三年の問題について、その他の諸制度との関連で、これだけを特別に顧慮することはむずかしいというお話ですが、しかし、法律自体がこれは御存じのように特別な法律であって、いろいろな議論がやかましく、長い間の検討の結果これは出てきた法律であって、この問題の本質論までさかのぼって論議をするということはきょうはやめますけれども、しかし、この制度法律の生まれた経緯を考えたときに、時効の期間というものも目前にきておるわけで、現実にこの法律に基づく手続その他の混乱のために出し得ない人方が相当残ると予見されるわけで、府県や末端機関を動員して努力しておられるかもしれぬが、現実に私は相当数申請漏れが出ると、こう判断するわけです。この際一つ私は、そういう実情を当局としても考えられて、この問題について、第十八条については御検討を願いたいとこう思うのです。  それから少し法律内容に触れるわけですが、たとえばこの法律が参議院を通りましたときに、参議院において次の付帯決議がなされておるわけです。「本法は、その適用範囲を終戦日以降に限られているが、その以前に引き揚げた者であっても、その実情が同様の状態であった者に対しては適正なる措置を講ずべきである。」この決議の趣旨に該当するのは、多くは南方地区の人方がその例でございまして、南方諸島から軍命令によって終戦前に引き揚げさせられた人方、この人方はこの法律の建前から言うと当然適用してしかるべき人ではなかろうか、こう考えておるわけです。しかもその人方がこれは正確な数字ではございませんが、当時の軍命令等から引き揚げてきた人方が二万数千名に上っておる、こう言われておるわけです。あるいはまた、そのほか中、南支であるとか、アメリカ、カナダ等こういう地域からも終戦前、戦争に伴う諸種の事情によって引き揚げてきておるわけです。こういうような人方は当然この際、この法律改正によって適用をやることが法の建前からいっても適切な処置ではなかろうか。ことに先ほど私がお尋ねいたしましたように、五百億の、当局は予定を立てておられますが、相当額これは残ると見るわけです。従ってこの際、こういう法の不備については当局としてもみずから善処されるべきだと、こう思うのですが、この点についてはどうお考えになっておるか、承りたいと思うのです。
  85. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) まず最初に、先ほどの続きでございますが、法律ができますまでのいきさつ等から考えて、この際もう少し特効の延長を考えたらどうかというふうな御意見でございましたが、私どもはむしろ逆に考えるわけでございます。三年の期間が必ずしもほかの制度から比べて短くないというわけではございませんが、あれだけもうもんだ問題でございますので、この問題についての引揚者全般についての認識というものは非常に強いわけでございます。従って、こういった制度ができたということについての認識というものは、一般の制度の場合よりもむしろ周知徹底が行なわれている、そういうふうな趣旨法律でございますので、むしろいきさつから考えれば、延長をしない方がむしろ常識的ではないだろうかというふうな感じがいたすわけでございます。  それから南方の問題でございますが、お説非常にごもっともな点があるわけでございまして、この法律を作ります際にもいろいろ議論されたところでございますが、法律を作りましたときの考え方といたしまして、やはり終戦に伴って発生した事態というものに対処するという線を一つ引いたわけでございます。そこでただいまのように、終戦前に帰ってきたというふうな人たち対象の外に置いているわけです。  また、実際から言いましても、終戦前に帰ってきた人と終戦後に帰ってきた人との間には、相当、実態の上にも差があるのではなかろうかという点も考えられるわけです。あれやこれや考え合わせて、この線を引いたわけです。まあ法律を作りますと、その線のすぐそばのもので内外の問題は非常にいつも問題になるわけでありますが、一応法律を作りましたときの考え方は、今申し上げましたような考え方に立っておるわけであります。これらの問題につきましてはまだ事務が全部終わったわけでもありませんし、先ほど来、はなはだ申しわけない言い方をいたしておるわけでありますけれども見通しがはっきりしないというふうな事態等もございますので、今直ちにこれをどうするということをお答えしにくいので、なお十分一つ検討さしていただきたいと、かように考えておる次第であります。
  86. 田畑金光

    ○田畑金光君 大体今日時効の期限が日前に迫っていて、あなたの方では、この五百億の金額がどの程度国債発行で消化されるか、これくらいのことが厚生省当局としてなお今日準備していないというのは、これは怠慢だと、こう思うのです。先ほど申し上げたように、十二月末現在の資料はできているなら、おそらく昨一年間の申請件数の動きを見れば、そうして本年の五月十六日までの件数は大体どの程度申請があるだろうという予測くらいはつくはずです。そのことがなお今日答えられないで、私の質問に対して的確な答弁ができぬということは、私の言わんとするその法の不備について、予算の五百億の範囲内でも少しでも善処できるものは善処してもらいたいというわれわれの趣旨というものが、これ以上の仕事を受け持つことができないという事務当局の怠慢の現われだと私は指摘したいのです。ことにあなたの今の答弁だがあれだけ大きな社会問題でこの法律が作られたいきさつから見ても、引揚者は十分熟知しているはずだから……、これは確かにそのような面もあるのでしょうが。しかし、この法律の第二条の引揚者とは何かというこの定義等から見ました場合に、あの終戦のどさくさにおいて、あなた方がこの法律で要求されるようなりっぱな証明なんというものはそうなかなか手に持っているはずはない。紛失しているのがたくさんあるでしょう。しかも、たとえば昭和二十年八月十五日現在において在外居住六カ月以上、その在外居住六カ月以上の証明をどうもらうのかということ自体が大きな手続上の繁雑な問題です。こういうような問題等を熟知しておりながら、そう簡単に法がこうできておるからこういう建前だというような親切のない態度というものは私は承知できない。  そこであなたに承りたいのですが、法を作る場合にも確かにすれすれの線があることは事実です。しかしこの法の建前というものは、在外における生活の基盤を失った人たち、終戦という異常な事態に伴って外国から、あるいは外地から内地に来て、そこで人縁、地縁の薄いところにおいて新しく生活の基盤を確立しなくてはならぬ、こういう人たちにやはり広く戦争犠牲者の一環として政策的な措置を施そうとしたのがこの法律の生まれた原因だと思う。答申にもちゃんとそう載っておる。そういうことを考えたときに、生活基盤を失ったということ自体は、八月十五日現在で線を引くことというのはまことにこれは形式的にすぎず、南方諸島から、南方の地域がだんだんあぶなくなってきたので、軍命令によって内地に引き揚げさせられたその人たちもやはりリュックサック一つで引き揚げて来ておるのです。八月十五日であったごとによって、たまたま七月に引き揚げさせられた者も、六月に引き揚げさせられた者も、五月に引き揚げさせられた者も、この法律に適用にならぬ。それが約三万に上っておる。しかもこの法律は、今の予測では、私たちは四十数億の金がこれは余ると見ておるのです。この制度の建前から言うならば、それくらいは厚生省としても考えてやったらどうかというのが私の質問内容です。厚生大臣とはそれくらいのことはあなたは相談なさったのかどうかそれを承りたい。
  87. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 厚生省部内でもいろいろ検討いたしてみておるわけでございますが、見通しもまだはっきりいたしませんことは、先ほど来お話を申し上げておる通りでございます。ただいまどういうふうにするというふうなまだ結論まで到達をいたしておらないのであります。今後問題といたしましては、御趣旨もございますので十分検討させていただきたいと、かように考えております。
  88. 田畑金光

    ○田畑金光君 これに類することは左のその他の条項でもこれは私は言えると思うのです。先ほど申し上げたように、第二条のこの引揚者とは何かという定義を見ましても、たとえば第一項を見れば、昭和二十年の八月十五日現在で線を引いておる。第二項を見るとこれはソ連が国境を越えて来たという、これをきっかけにした条文ですが、昭和二十年八月九日で線を引いておる。いずれにいたしましても、六カ月以上在外居住したというこの事実が、この法律を通用されるかされないかという大きな要件になっておるのです。この際、私は——これはやはり長い間引揚者の人たちも強く当局に申し入れをしておると考えておりますが、在外居住という事実があるならば、こういうような制限を撤廃されることが私は必要じゃなかろうか。必要という言葉は妥当でないかもしれませんが、あの当時はほとんど、終戦まぎわは外地の引き揚げはできなかったということも事実であって、少なくとも八月十五日現在に線を引けば、その三カ月前後はほとんど渡航ができなかったというのが事実だったろうと、こう思うんです。でありまするから、かりに六カ月という条件をはずしても、それほどたくさんの人方がこれで浮かび上ってくることはございません。われわれの試算によれば大よそそれをはずしても三万人前後が浮かんでくるだろうという見通しです。もしその六カ月以上という条件をはずすならば、私が先ほど申し上げたように手続等においてももっとスムーズに進捗するから、従って、三年の時効ということも、それはその期間に十分手続もできょうが、こういう複雑な手続があるからどうしても特効の問題とぶつかってくる。この際、私はそういう点について、第二条の第一項、第二項等について、援護局長としては御検討なさったことがあるかどうか、これを承りたいんです。
  89. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 六カ月の問題は、これは特に法律ができました際には、私どもも実情に十分通じてなかった面もございまして、いろいろ手続をしていただきます際に、あるいは今から考えれば過当の要求を申し上げたようなこともあったかと思います。その後まあだんだん反省をいたしましてただいま御質問にもございましたように、事実上渡航ができたかできないかというふうな目安も一方においてあるわけです。従いまして、六カ月ぴっちり根拠を持っておったというふうな的確な証明がなくても、その渡航の状況であるとか、あるいは渡航した目的趣旨、あるいは家族がどうであったかというふうないろいろなほかの方の傍証から、六カ月外地に本拠を持っておったじゃないかという心証が得られるものにつきましては全部これは法律に該当するというふうな扱いにいたしておるわけでございます。また、今後の問題につきましても、先ほど申し上げましたように、若干資料が足らないというふうなこともあろうかと思います。資料が足らないというだけの理由で受け付けをしないということでなしに、資料は不備でも不備のままに受け付けをするというふうなことによって時効による御迷惑をかけないというふうな扱いをいたしたい、かようなことで指導いたしておる次第でございます。
  90. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の点も一つこれは、この際法改正の重要な内容であるので、局長としては念頭に置いてもらいたいと、こう思うんです。それから同じようなことがこの法律には矛盾した点があるわけで、たとえば引き揚げる前に外地にあって死亡した者は全部遺族給付金が支給される。ところが、引き揚げた後、内地に帰ってきた、そうして死亡した、その場合には、死亡当時二十五歳以上の者であれば、遺族に給付金が支給される。二十五歳未満の者の死亡に対しては支給されない。こういうことも矛盾だと思うんです。一体どうしてこうした矛盾した法律ができたかといえば、先ほど私が申し上げましたように、五百億というワクというものが前提に置かれたから、こういう内容の矛盾した法律が条文として残っておるわけなんです。私はそう解釈しておるのですが、援護局長はその当時法律の起案に当たられた方でございますから、あるいはその解釈とは違っておるかもしれませんので、どうしてこういう矛盾した条文が残っておるか一つ御説明願いたいと、こう思うんです。
  91. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 私法律を作ったときには援護局におりませんので、まあ援護局にかわりましてからいろいろ勉強いたしまして当時のいきさつを承知いたしておるわけでございますが、ただいまの二十五歳の問題もまあお説のように、一面割り切れない気持が残ることは私どももよくわかるのであります。ただ二十五歳の線を引いたということは必ずしもワクの線からばかり切っておるわけではないのであります。引揚者に対する引揚者給付金と、なくなった方に対する遺族給付金とは若干考え方が違っておると思うのです。遺族に対する向こうでなくなった方に対する遺族給付金は多分にお見舞的な意味が非常に強いのではなかろうか。引揚者給付金の方はむしろそういうふうなことでなしに再建資金に充ててもらいたいというふうな意味合いが非常に強かったというふうに開いておるわけであります。  そこで二十五歳がいいかどうかということにつきましては、いろいろ議論があるところであろうと思いますが、再建資金と言いますと、まあ一家の中心になるような人がなくなった場合に対して金を出すというような引き方をしたんだというふうに私ども承知をいたしておる。それも確かに一つ考え方であろうと現在も思っておるわけであります。まあいろいろ御指摘にございます点を考えまして、なお、今後の問題といたしまして検討をさしていただきたいと存ずる次第でございます。
  92. 田畑金光

    ○田畑金光君 あなたの御答弁を聞いておりましても非常にわかりにくい御答弁で、外地で死んだ場合は見舞金、内地ではこれは再建資金、立ち上がり資金、ところが、同じ内地において二十五歳以上で死んだ者は立ち上がり資金はもらえるが、二十四才で死んだ者は立ち上がり資金はもらえない。立ち上がりという基盤が二十四才以下にはなかったということになるかどうか知りませんが、なかなかこれはむずかしい答弁です。要するに、これは五百億というワクをどう見るかということでこの法律の各個所に矛盾した不備な点が残っておることは、この法律自体が答申にある政策的な措置に基づく法律として生まれたその経緯から見て私は出てきたものだとこう患うわけです。あの当時における、そうしてまた資料も十分でない、いろいろ確実な統計等によらざる中でできた法律ですから、私はあの当時においてはこれはやむを得なかったとこう思いますが、法律を実施してすでに三年になるわけで、かれこれ消滅時効が目前に来ている今日、五百億という総額を今日考えてみると、今の状況では相当の余裕が出るという実際の状況でありまするから、この際私は、予算の総額から縛られた各条文の矛盾した点は直して、もっと本来の趣旨に即応する方の体裁に改めることが適切ではなかろうかとこう思うのです。そうしてわずか五百億であったにしろ、これは引揚者の人方の言う言葉ですが、わずかという言葉は、そういう人方がせめて五百億で自分たちの在外財産問題の処理について政府はこういう措置を取ったんだということに対する満足するかどうかは別にしまして、せめてその気持をやわらげるためにもこの際私は法改正をやって、この制度を不完全ながら生かしていくことが必要ではないだろうか、こう考えておるわけです。この点に関して厚生大臣はどのように考えておられるのか、本日私承りたいのは厚生大臣所信を実は承りたかったわけです。担当責任者である援護局長としても御相談なさっておられると思いますが、どのように内部の話し合いはなっておるのか、これを一つこの際お聞かせ願いたいと思います。
  93. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) この問題につきましては、関係団体等からもいろいろ御意見も拝聴いたしておりますので、大臣以下上司にも事情はよく申し上げてございます。ただ、先ほど来申し上げておりますような状況にございますので、ただいまのところは法律改正する用意をいたしておらないわけであります。今後の問題といたしましては、さらに検討さしていただきたいと存ずる次第でございます。
  94. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間の関係もあるので、私は大臣出席されないこの委員会でこれ以上質問しても、私の質問に対する期待ある答弁はできませんから、あらためて別の機会に大臣にただしたいと思っておりますが、きょう私の申し上げた趣旨は、局長からよく一つ大臣にお伝え願いたいと思っております。昨年の三月三十一日に衆議院の社会労働委員会においてもこの問題が取り上げられておるようです。今日は、先ほど来申し上げておるように、すでに時効が目前に来ておるという大事なときでございまするから、どうか一つこの法律の建前から申しましても、私が先ほど来述べておることは無理でないと私は考えているので、事務当局も、こういうむずかしいやっかいな法律は早くなくしていきたいという考えでなくして、努力を願いたいと思うんです。どうか一つ先ほど申し上げた諸点についてあらためて、厚生省当局の方針を承りたいと考えておりまするから、十分大臣にも伝えられて善処されるように強く要望しておきます。
  95. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、田畑君の質疑は一応終わつたようでありますが、引き続き質疑の御希望の方は御発言を願います。
  96. 坂本昭

    坂本昭君 ただいま田畑委員からも指摘された通り大臣も欠席しておる、次官も欠席しておる、こういう当委員会ははなはだ遺憾な委員会であると申し上げざるを得ません。ビタカンでもうって一つ大臣病気をすみやかに回復していただきたい。少なくとも、予算がきょう上がるという吉に厚生大臣病気で倒れるというのは、そもそも厚生省計画している医療保障というものがいかにたよりないかという一つの実証であります。これが恥かしいと思ったら、すみやかに厚生大臣病気をなおして、すみやかに登院せしめるということを私は要望しておきます。なお、大臣に対する質問をしても、あとで局長が責任を持ってこれを取り次いでもらいたい。また次官については、すみやかに出席することを委員長においてお取り計らい願いたい。なお局長については、局長もまた欠席をするという向きもあると聞いております。で、私は、責任ある代理者を置いてそうしてせっかくの帯磁が中断されないように、そのかわり、代理者はあとで責任をもって局長にその質疑を伝える、そういうことにして本委員会の質疑を続行していきたいと思います
  97. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと御了解いただきたいと思いますが、厚生省局長、全局長ただいま出席をしておりますが、ただ太宰保険局長は、きょう保険課長会議を招集しておるようでありまして、その席へ三時前後から説明に出席をしたいと、かような希望がございます。なお、保険局の山本次長もその席に行っておりますので、所管の課長出席をいたしますことでお許しをいただきたい。
  98. 坂本昭

    坂本昭君 所管の課長ってだれですか。
  99. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  100. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。
  101. 坂本昭

    坂本昭君 午前中の質疑を通じて数点申し上げました。皆保険医療とは言うけれども、実は漏れる国民が何十万人かあるという事実を先ほど日雇健康保険の例についても申し上げたわけであります。そうして、保険医療では真の正しい医療保障を実施し得ないということを第一に申し上げ、それから次に社会保障の財政は保険財政のみではきわめて不十分な段階に立ち至っているということ、こういうことを申し上げ、にもかかわらず、たとえば健康保険の補助金を五億円に減額をしたり、保険料率を千分の六十五を六十三に引き下げることによって社会保障の実質的な後退をしているということを申し上げた。そうして次に、現社会では社会保障国民所得の再配分の考えの上に立たなければならない、従って、税制改革等によって社会保障の資金を確保すべきであるということまで午前中に質問して参りました。これからさらに、所得の再配分の効果の問題について具体的にまず年金局長にお尋ねをいたしたい。  拠出年金がいよいよ始まりますが、あとでまたこの数についていろいろ御質問しますが、とりあえず、かりに二千万人が平均千五百円拠出するとして三百億、二分の一の国庫負担をやると百五十億、合計四百五十億が積み立てられていきます。しかし、この積立金が再配分されるかということであります。これは小山局長の「年金法の解説」の中にも「国民年金収支対照表」というものが出ていますが、拠出制の老齢年金の始まる十五年後、支出は二百十億です。積立金は約一兆円に近い。それから、老齢年金を受ける人は、そのときはまだ一カ月千円しか受け取っていません。さらに二十五年後には、積立金は二兆円に近い。積むだけでは国民大衆に再配分されることにはならないということです。一体これはどうするおつもりか。大蔵大臣へ資金運用部資金の原資として全部やっておしまいになるおつもりか。局長意見を承りたい。
  102. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 積立金の運用をどうするかという問題が、国民年金の場合に非常に重要な問題でありますことは、前々から先生が仰せになった通り、私どももさように考えておるわけでございます。それで、これをどうするかにつきましては、昨年以来国民年金審議会におきまして、いろいろの角度から研究を続けております。現在、研究の一応基礎的な部分を終わりまして、しからばどういうやり方がいいかということを研究しておると、こういうような状況でございます。なお、研究の現状を申し上げましょうか。
  103. 坂本昭

    坂本昭君 あとでもう少し聞きます。  大蔵大臣それから主計局長、皆さんに聞きたいのですが、きょうは予算担当の主計官が来ておられますから、大蔵省考えをお聞きいたしたい。国民年金の拠出制の始まるについての、今の積立金問題について。
  104. 岩尾一

    説明員岩尾一君) 年金の積立金の運用の問題でありますが、所管といたしましては、大蔵省といたしましても主計局ではございません。理財局で担当いたしておりますので、私から申し上げるのはいかがかと思いますけれども……。
  105. 坂本昭

    坂本昭君 予算の方を。
  106. 岩尾一

    説明員岩尾一君) 大蔵省としては、従来から積立金はすべて資金運用部で効率的な運用をいたしたいと、こういう主張でございます。
  107. 坂本昭

    坂本昭君 それではまず伺いたいのですが、これは局長に伺いますが、この膨大な年金を徴収する機構——徴収というのは、これは強制徴収ですね、強制徴収する機構は、昭和三十五年度——来年度の予算でどういうふうに整備されたか、これを簡単に説明いただきたい。
  108. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 国民年金保険料を徴収する機構は、三十六年度の初めから動き出す状態に置かなければならぬわけでありますが、仰せの通り、おおむね三十五年度内に完了すると、こういう目途でやっておるわけでございます。それで、やっておりますことは、御承知通り国民年金保険料は、国民年金印紙を貼付いたしまして、これに検印をするということによって徴収をするという方式をとることに、これは法律でもきまっております。これに当たりますのが、市町村と社会保険出張所の二つの段階になっておるわけでございます。現在用意しておりますのは、市町村におきまして、適用の事務を初め、この種の事務等の処理に当たるために相当程度人間を置くということで、昭和三十五年度におきましては、八カ月分の予算として十六億二千万程度の補助金を出すということで用意いたしております。これでおそらく、全国の市町村を通じまして、およそ七千名程度の人間が置かれるということになろうと思います。それから、その上の段階といたしましては、全国社会保険出張所のあります所は、社会保険出張所に国民年金の仕事を担当する職員を増置をし、ない所につきましては、あるいは社会保険出張所を設け、もしくは、まだ設けられない所は、とりあえず都道府県の方でやるというようなことで、およそ人間といたしまして、四千名程度の人間を三十五年度中に置く、こういうことになっておるのでございます。
  109. 坂本昭

    坂本昭君 その予算予算説明のときには二千八百名と言っておった。ちょっと食い違った。
  110. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいま先生がおっしゃいました——二千九百三十名というのは、このうち、出張所に置きますのが二千八百五名ですが、これと、それから今年度県に配置しておりました分のうち、二百五十名を出張所に回しまして、出張所の段階で処理に当たりますのが、およそ三千名でございます。それからなお、都道府県段階で一部指導監督その他の仕事をいたします人間が残りの千名で、こういうようなことで、合わせておよそ三千名程度ということでございます。  なお、金額は明年度計上いたしておりますのが十二億でございます。
  111. 坂本昭

    坂本昭君 もっと多かったんじゃないかと思ったんですが、四十五億というのは、いろいろな施設の整備費も含めての話なんですか。十二億というのは少ないような感じがいたしますが、それが正確な数ですか、今の徴収機構整備のための新しい予算
  112. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 四十数億と申しますのは、これは全部の事務費をくるめた費用でございます。このうち、先生おっしゃっておられる徴収機構のための経費というのと、私が申し上げておるものとの間に、若干のズレがございますけれども、ズレはむしろ、徴収機構だけの分というふうに別建の計算ができませんので、ほかの適用その他を含めて申し上げておりますので、徴収だということになりますと、これはさらにそのうち相当低くなる。しかし、それはおそらく、三十六年度でまたその分は、新たに徴収の分はよけい見なくちゃならぬ、こういうような問題が出ると思いますけれども、およその見当は、今申し上げたところでおつけ願って、そう間違いないと思います。
  113. 坂本昭

    坂本昭君 保険局長に伺いたいのですが、三十六年度から強制的に実施される、国民健康保険の三十六年度のことですが、ほぼ、ある見当がついておると思いますので、一世帯平均幾らという見通しですか。
  114. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 三十三年度末が決算でございますが、一世帯三千三百十円でございます。それで、まあ、だんだんと上がっていくとは存じますが、大都市の方が、これは割合に高くなると思いますが、地方の力でございますると、まあその後値上がりを見ましてもそう大きな額にはならないと思いますが、これにある程度まあ加わった額ではないか、かように考えております。
  115. 坂本昭

    坂本昭君 ある程度といってもこれは程度問題なんで、皆保険の実施のときの計算はもうある程度しておいていただきたいのですね。私はどうも四千円近くなってきやしないかというふうに思っておる。もちろんこれは平均ですからね。一番最高は五万円もあれば、いろいろありますが、これはもう少し明瞭な数を出していただかないと、大蔵省の主計官のいる前でもってこれはまずいかも知らぬけれども大蔵省との折衝でも困りゃせぬかと思う。もうちょっと明確な線を出してもらいたい。私は四千円、場合によったらもう少し四千円をこすのではないかと思っている。  そこで、今度は国民年金の場合、いろいろの場合を見ますと、二千万という数が出たり、二千六百万という数が出たり、いろいろあれがありますが、一応国民年金を実施する場合の対象になる数と、それからこれもやはり計算する上においては平均が要ると思うのですが、先ほど私は千五百円ということを言いましたが、一人平均というよりも、これは私は世帯の平均が幾らか、一つこれは説明いただきたい。世帯平均と、その数ですね。
  116. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 国民年金を実施いたします場合に、対象保険者数がどうなるかという問題でございますが、この点につきましては、前回国民年金法案の御審議を願いますとき差し上げておりまする資料の数字をそのまま変更しておりません。  ただ、あの際にも申し上げましたように、二つの事情を考慮してあの資料を読んでいただく必要があるわけであります。一つは、国民年金制度における平常年度の全部の被保険者数が約三千三百万近くになる。これは見込みを変えておりません。しかし、実際の国民年金法の動きから申しますと、御承知通り、動き出しの当初におきましては五十をこえる人々を一応適用除外といたしまして、任意適用にいたしております。この事情は、御承知通り、拠出年金の関係上、これをこえる人に強制適用をもって臨むことに無理があるということで、これはまあこの種の制度を動かす場合に平常行なわれることでございます。従って、その面で平常の年度にいくのに少なくとも十一年程度かかる、こういうことでの減が一つあるわけでございます。  それからもう一つ昭和三十六年度における二千万という数字は保険料を実際に拠出するであろうと思われる数をもとにしての議論の際に申し上げているわけであります。実際上はかねて申し上げます通り、実際の被保険者のうちでまず三割程度は少なくとも免除してかかるという腹がまえで臨まなくちゃいかぬだろう、実際はおそらく免除する人はあるいはこれより少なくなるかもしれませんけれども、あまり初めから厳格な態度をもって臨むと、勢いこれは実際の徴収面で非常に無理のかかるおそれがあるわけであります。従って、その意味で保険収支の計算はある程度無理のない、従って、実施上第一線の諸君が無理な扱いを被保険者との関係においてしないようにということで、三割を免除者と、こう見ております。従って、そういう人を除きますと、昭和三十六年度で千九百四十七万、まあ大体二千万と、こういうふうなことにしておるわけでございます。  それから第二段の保険料のことでございますが、大体今まで調査しました限りでは、おおむね一世帯に二人ちょっとという平均のようでございます。それで、この二人ちょっとの年令別の組み合わせというのが実のところどうもまだ私どもにはつかめておりません。もし三十五を間にはさみまして上と下の人がありますれば、あわせて三千円、それから二人とも三十五をこえておりますれば三千六百円、二人とも下でありますならば二千四百円、こういうことになるわけでございます。
  117. 坂本昭

    坂本昭君 確かにこれの平均を出すのは国保よりもきわめて困難であるということは私もわかりますが、いずれにしても三千円を少しこえるのではないか、としますと、私が一番心配するのは、三十六年度からは皆保険と皆年金になる。国保先ほど三千三百十円と言われましたが、これはかりに四千円近くなったとする。年金の方の平均が日千円をこしたとすると、合計一世帯七千円の新しい徴税が実施される。そうして特に年金の場合は九十五条の国税徴収の例にならうということで、かなりきつい徴収の仕方になってくる。この七千円というものを実際に払えるかどうか。皆保険、皆年金という言葉はできてきたが、まず支払えないのじゃないかという一つの問題。このさらに支払いを促進するためには何かやはり国民が喜んで支払う目標、希望というものがなければならないと思います。そういう点では先ほど来繰り返して申し上げた所得の再分配という中で積立金の使用管理、これを解決しておかないというと、国民はなかなか納得できないと思う。そこで、国民年金、審議会がいろいろと審議をしておられることも承っておりますが、まず第一に、国民年金、審議会の結論がいつまでに出るかという点。  それからこの年金積立金の使用について、その審議会の結論によっては法改正をやらなくちゃならぬのですが、それは当然審議会の結論に基づいて法改正をやるつもりか。  三番目は、そうした場合にそれはこの秋の臨時国会に出すつもりか。その三点を伺いたい。
  118. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 国民年金審議におきまする研究の現在の進行状況とそれから逆に間に合わせなくちゃならぬというそのタイム・リミットの方から申しまして、大体私ども現在では六月の末か、七月の上旬には国民年金審議会で結論が出るものと、また少なくともそのときまでには出してもらうように申し上げておりますので、おそらくさようなことになると思います。  それから第二の法改正の問題でございますが、おそらくどのような内零になりましょうとも、国民年金法をこの面から改正するというものにはなるまいと思います。形としましては、これは昨年先生が当時大蔵大臣にいろいろ御質問になって、昭和三十六年度から国民年金に関する特別会計を設けるということを当時大蔵大臣お答えになったわけでありますが、その国民年金の特別会計を設けます場合にどういうその仕組みをするかということが問題になるわけであります。従来の例によりますというと、特別会計のこの種の金は資金運用部の方に預託をするというのがこれは例になっておりますので、その意味で今度違ったやり方をする場合には違った法律のきめ方をしなくちゃいかぬ、こういう問題が出て参るということでございます。  それから時期は、さようなことで予算との関係もございますので、おそらくこれは次の通常国会の際に提案される、こういう段取りになろうと思います。
  119. 坂本昭

    坂本昭君 これは国民年金の積立金の問題の前に、実は厚生年金保険の積立金の問題があります。これは御承知通り、参議院の十九回の国会決議として幾つかあげられた中で、積立金については、第七番目に積立金の民主的、効率的に管理運用すべきであるという点と、八番目に大巾の還元融資をすべきである。この二つの点が附帯決議されています。そこで厚生年金保険の積立金の問題について四点お尋ねしたい。  第一点は、厚生年金のこの積立金の金額がどうなっているか。二番目にいかに管理運用されているか。三番目に他のこの種基金の運用との比較。それから四番目にこれに関連する法改正についての関連、簡明にお答えいただきたい。
  120. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 第一の積立金が現在どのくらいあるかということでございますが、大体昭和三十三年度末現在が二千九百十八億五千万円でございます。これに、三十四年度といたしましてまだ年度途中でございます一月で、三百四十三億となっております。合わせまして三千二百六十二億三千六百万円というのが一月末現在の積立金及び余裕金の合計でございます。それの管理運用は……。
  121. 坂本昭

    坂本昭君 ちょっと、将来の大体のめど、あとどれぐらいふえていくか。
  122. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) これは大体御承知の厚生年金は終生積立方式をとっておりまして、昨年試算いたしまして昭和百十五年ぐらいになりますか、まあだいぶ先でございますが、そのころにまあ大体平常の状態に入る、それまでの積立金が三十……。
  123. 坂本昭

    坂本昭君 遠い夢じゃなくて、近い資料ありませんか。もっと近いところです。
  124. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 大体毎年利子などと合わせますと八百億ぐらいずつふえております。こういうふうにここしばらくお考えいただければいいと思います。
  125. 坂本昭

    坂本昭君 それじゃいいです。
  126. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) それの管理運用は、大体現在は資金運用部の力に預託するように法律の建前がなっております。資金運用部の方に預託いたしまして、そこで利子は大体六分最高でございます。大半のものが六分で運用をいたしておる状況でございます。それから他との比較でございますが、このような制度は郵政省の簡易保険というようなものが大体似たようなものかと思いますが、郵政省の簡易保険の方ではこれは数年前から自主運用を自分のところで運用する、こういうことをいたしております。それから共済組合がいろいろございます。こちらの方も大体自分のところで運用いたしておるような次第でございます。  そこで、第四番目のすなわち法改正の問題でございますが、これは私どもといたしまして、前々からやはりこの巨額な積立金は将来の年金給付の大事な原資にもなるものでございます。これを安全確実に運用しなければならないと同時に、きわめてまた有利にこれを運用して参らなければならない。それからまた、やはり相当長い間かけていただくことでありまするから、その間の掛金をかけた被保険者の福祉というものについても、ある程度の還元融資という形で、その人達の何か保健福祉に貢献するようなこともこれはほどほどでございますが、考えたいということを考えております。もちろんこれはほどほどと申しましても必ずしもそういう場合は有利に回すということとちょっと考えがが一致しない場合があろうと思います。その点を考慮いたしまして、まあほどほどと申し上げたわけでありますが、そのような安全確実であってできるだけ有利に運用する。同時にまた、被保険者の還元融資の面についても考慮を払って参る。こういうふうにいたすべきであろうと思うのであります。そういう点から考えて参りまして、今日資金運用部の方に預託されておるということにつきましては、どうもこれが最善の道だと思えない節があるわけでございまして、しかしながら同時に、片一方におきましても、これは国家の財政投融資の一柱であるというような意見もあると存じますので、そういう点はやっぱり調整をはからなければなりませんが、私どもといたしましては、これを何とかして自主的な運用をはかるという方向へもっと進むべきである、かような考え方でただいまのところは検討しておる状況でございます。
  127. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連してですが、資料をお願いしたいと思うのです。今保険局長からいろいろ厚生年金積立金の額とか見通し、あるいは運用等についていろいろ述べられましたが、資料を一つお願いいたします。同時にこれは国民年金の方も同様に資料を。
  128. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまの田畑委員の発言の厚生年金の運用については、他の委員の方もいろいろ検討したいというお気持もありましようから、委員会から要求いたしまして、他の委員の諸君にも配付願う。かようにはかりたいと思います。  同時にただいま年金についてもそうですね。(「そうです」と呼ぶ者あり)  その点も同様にいたします。
  129. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと私は質問じゃないのです。簡易保険が自主運営、共済保険は自主運営というのは、その保険経済の中で自主運営しておるということですか。そうおっしゃったんじゃないですか。資金の積立金の品主運営と、こうおっしゃったですね。
  130. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 積立をいたしましたものを、そこの特別会計の中で運用しておる。ただしそれは、その一部は、もちろん資金運用部に行っておるものもあると思いますが、とにかく運用の基本はそこできめておる。
  131. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 両方ともに。
  132. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) はい。
  133. 坂本昭

    坂本昭君 今の私の質問に対する局長答弁だけでは、まだ不十分な点がかなりある。私がまずお尋ねしたかったのは、安全、確実かつ有利と、大蔵大臣と同じ、保険局長いつの間に大蔵省に行ったかと、私びっくりしたんですが、保険局長としての意見を言っていただきたい。なるほど基金の運用の他のものとの比較ですね、郵便年金、簡易生命保険の積立金が、郵政大臣が自主管理をしておる。これは比較というよりももう比較するまでもないことであって、一方は郵政大臣の自主運営、一方は厚生大臣は何ら触れることなし。まあ若干の還元融資はあるけれども、全然別問題、私はそれよりも安全、確実かつ有利と言うけれども、ちっとも右利じゃないじゃないかということ、たとえば市町村共済とか電電公社、専売、私立学校、町村の恩給あるいは国鉄、それぞれこの基金を持っています。私の見たところでは、一番高いのは私立学校、この基金は七分三厘一毛です。それから一番低いところも、電電公社の基金で、六分九厘二毛。これはいろいろほかはこまかいのはあります。これも一つ資料として出していただくといいと思う。厚生年金保険の積立金の方は、五分九厘八毛、一番低いですよ。五分台というのはほかにないんですね。ちっとも有利に運営してないじゃないですか。大蔵省の人ならこれはしようがないけれども厚生省の人が、皆さんの部下が一生懸命集めた金を、一番安い、ちっとも有利でないような扱い方させて、そしてそれで喜んでいるというようなことは、私は許されないと思う。こういうことの事実は知っておられるのですか。
  134. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 私が申し上げましたのは、現在資金運用部に預託しておりまして、それが御指摘のように、約六分で運用されておる、それは私どもも必ずしも有利とは思いません。そこで私どもの建前とすれば、なるほど安全であるかもしれない、しかし、それは有利とは言えないのじゃないか、そこで安全確実であるとともに、有利なものをさらに検討いたしたい、こういうようなことも考えまして、私どもとしては自主運用というものをとっていきたい、こういうことを今検討しておるということを申し上げたわけであります。
  135. 坂本昭

    坂本昭君 それではほかの市町村だとか、電電公社や私立学校では、あまり有利でない、確実でない運用をしているとあなたは言われるのですか。
  136. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) ちょっと私の申し上げようが、あるいはなお下手だったのかもしれませんけれども、現在資金運用部で、大体六分ぐらいで預託されて、運用されておるということは現状でございます。私どもはこういう大切な積立金でございまするから、これは野放図に使ってはいかぬ、なるほど確実に使わなきゃならない、それから同町に、しかし有利にこれを回さなきゃいけないということは、私ども考えているわけであります。そのほかに福利の関係もございます。少なくともこの二つのものを調整させまして、将来できるだけ年金給付の財源として豊かにしておく必要がある、そういう立場から今の資金運用部に預けておることについては、私どもは疑問を持つ、そこでこれを検討いたしたいということを先ほど来申し上げているわけでございます。従いまして、六分というものは、今日私どもこれが一番有利だとは思っておりません。
  137. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめて。    〔速記中止
  138. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。
  139. 坂本昭

    坂本昭君 私は局長意見を聞いておって、はなはだどうもたよりないですね。労働者だけじゃありません。もちろん企業主も入っているところの、全国一千百万という労働者と企業主とが出し合って、昭和十七年から積み立ててきたところのこの莫大な基金、これは当然主として労働者の福利のために、ほどほどじゃないですよ、まるまる返してもいい。もちろん野放図に、消えてなくなるような使い方はいけませんよそんなことはわかり切っている。しかし、今日のような使い方では疑問を持つ段階じゃありませんよ。絶対にいけない。疑問を持つというようなことで局長が思っておられたんでは、それは厚生省の方針は絶対に通りません。わわれわは疑問どころじゃないのですよ、もう明白にこういう使い方というのは間違っている。ことに朝から私は国民所得の再配分の問題、あるいは保険そのものの基本的なことからるる述べてきたつもりなんです。だから保険局長がそういう弱い意思であったのじゃ、この重大な少なくとも社会保障を前進させるために、これはもう与野党を通じて、厚生省予算をどうしてふくらませるか、ということが一番大きい頭痛の極です。それについて、所管の局長は、もっと明確な考えを持って委員会に訴えていただきたい。われわれとしてはこうしたい。そうしてしかもこれは一保険局長だけの問題じゃなくて、当然年金局長にも関係してきます。それだけじゃありません。結核の問題などについてはあとで申し上げますが、もうすでに社会保障制度審議会では、この基金の活用ということを言っている。厚生省局長も所管になっている、全部の厚生省全体に関係してくる。ところが、各局みんなまるで赤の他人のことのような考え方でいるのじゃなしか。肝心の次官どうしましたか。
  140. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  141. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして。
  142. 坂本昭

    坂本昭君 一番大事なことについて、大臣もおらなければ、次官もおらない。こういうことだから厚生省予算はふくらまないのです。私はこういう点で、各局とも十分なるコンビネーションをもってやっていただきたい。で、特にこの年金の積立金が例の八千億に余る郵便貯金、それから五千億に余る簡易生命保険金、郵便年金の積立金、こういったものとともに、財政投融資の原資になっているということは、これはもう周知の事実であります。三十四年度が当初五千百九十八億、来年度が五千九百四十一億ということも、もう周知の事実であります。特にこれは年金審議会の資料だと思いますが、この財政投融資の原資も、零細な人たちの貯金や簡易生命保険の積立金や、さらにこの厚生年金の積立金あるいは失業保険の積立金もこれは入っていると思う。こうした零細な人たちの積立金で占められ、しかもこれと財政投融資に振り向けられて何に使われているか、これはむしろだれの所管になるのですかね、一つ説明していただきましょうか。一体厚生省は指をくわえてぽかんとしているのか。一体この皆さんの行政を通じて吸い上げたところの金がどう使われているか。少なくとも財政投融資の中で、どの程度社会保障、民生安定に使われているか、それくらいのことは厚生省の方、知っておられるはずですから、簡単に一つ説明していただきたい。どなたが説明しますか。
  143. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) その問題については、年金と保険を通じまして、いろいろ研究をしているわけでございますが、その現在まで私どもが研究しているところでは、どうもこれまでのところ、財政投融資の中で、ややせまい意味での民生安定に向けられているものの割合が少な過ぎるのじゃないか、こういうふうな印象を受けているわけであります。一応いろいろやっていまして、試算をしました段階では、これは昭和三十三年の資料をもとにして検討してみたわけでありますが、これでやりましたところ、まず全体のうちでほぼ二割見当が、せまい意味での民生安定に向けられている。それ以外のものは、たとえば産業の振興ということを通じて、国民経済の成長を助長するという方面に向けられるとか、あるいは後進地域の開発というような意味を持った投資に向けられるとかいうような向けられ方をしている。しかし、実はこれはわれわれ試算してみたわけなんですが、これを国民年金審議会において、現在検討してもらっているわけでありますが、これに対する専門家筋の批評は、どうもお前たちのものの見方は少し狭過ぎるぞ、お前たちが取り入れている民生安定というワクに入るべきものを、どうもはずしている傾向なしとしない。それからもう一回、この点は一つたんねんに洗い直してみる必要がある。傾向はみんな確かにそういうふうな傾向を持っていることは、これまでの財政投融資について言えるということは間違いなかろう、しかし、割合として、二割とか何とかいう数字は、そのままではやはり通用しかねる。なお、財政投融資における最近の傾向としては、めっきり民生安定に向けられるものがふえつつある、こういう傾向がある、こういうような考え方が目下年金審議会において痛烈な批判を受けて、いろいろ検討を進めている、こういう事情でございます。
  144. 坂本昭

    坂本昭君 厚生省は虚心にデータを出したらいいのであって、そうむやみに与党化する必要はないのです。データを出していただいて、それを政策の面でお互いが検討したらいいので、めっきりふえてきたなどというのは、とんでもないことだと思います。あなた方の年金審議会のデータでは、住宅に二割ほど向けられている。確かに住宅公団、住宅金融公庫が占めている。しかし御承知通り、住宅公団に入るのは、三万五千円以上の収入がなければならない。三万五千円の人は厚生年金保険にどの程度入っているか、私は非常に少ないものだと思う。長い間こうして労働者並びにその企業主からとってきたところの厚生年金保険の積立金の運用について、実は厚生省自身もっと熱意をもって当たっていただきたい。なるほど中小企業に対する融資、農林中金に対する融資、いろいろあります。あって、私たちも中金に行って金借りたりする世話をすることもありますが、確かに郵便貯金を払っている零細な人たちあるいは零細な商工企業家には、なかなか融資が乏しいということだけは指摘できると思うのです。特にこの厚生年金保険については、還元融資がもちろん一部あるとはいえ、私はこの点についてもっと明確な考えを出していただいて、そして所得の再分配という点を明らかにしていただかないというと、社会保障はもう進まないと思う。ILOの条約のたとえば三十五号の十条、これは一九三三年ですから、ずいぶん昔です。一九三三年にできたこの三十五号条約の第十条にもいろいろな規定があって、たとえば「保険制度は、公の機関に依りて設立せられ且営利の目的を以て経営せられざる機関に依り、又は国の保険基金に依り、管理せらるべし。」こういう規定が第一項にあります。こういう点はわが国においても実施していると思うのですが、この中で第三番目に、「保険機関の基金及国の保険基金は、公の基金より分離して管理せらるべし。」また、第四項には、「被保険者の代表者は、国内の法令又は規則に依り定めらるる条件に従ひ、保険機関の管理に参加すべく、又右の法令又は規則は、使用者及公の機関の代表者の参加に関し定むることを得。」すでに一九三三年の国際条約の規定でも、これらの基金の問題についてはわが国の実情とかなり違った私は扱いをしていると思うのです。これが公平な国際的な私は基金の扱いだと考える。厚生省予算がこれからふくらむか、ふくらまないかの決定的の点は、この累進課税によって税をあるところからとって、もっと予算のワクを広げるということと、それからさらにこうして強制徴収される基金を有効に使うということと、この二つ以外に私は方途はないと思う。そういう点で、もっと各所管の行政官として自信をもって、場合によればもっと勇気をもってやっていただかないと、なかなかこれ以上予算的に伸びる余地がないと思う。これは何も、単なる基金の扱いだけじゃございません。もうすでに皆保険で皆医療をやるとすれば、私は当然この結核の問題が基本にならざるを得ないと思うのですが、すでにこのことについては、社会保障制度審議会が、医療制度に関する勧告を出したときに、特に「結核医療制度の確立」として非常に明確に書いてあります。たとえば、「わが国医療保障制度が、真に確立されるかどうかは、一にかかって結核対策の効果いかんにある。」一番最初からこう番いてある。「予防、医療、再発防止など、資金的にも行政機構的にも、一貫した体系の下に強力な施策を集中的に」行なわなければならぬ、現在のような「微温的施策をもってしては、たとえ一時をこ塗することができても結局、毎年国費を浪費している結果」となる。だから、「予防および医療費用を通じて一本の特別会計または基金をもつ」がよろしい。で、そのために、「保険料の一部をプールさせて、結核医療費のための一極の再保険基金をつくってはどうか」、「財源に関して、たとえば、厚生年金保険積立金や共済組合、健康保険組合などの積立金から一時的に資金を借入れ」てはどうか、そうして最後に、「いまにして、これに対するなんらかの新しい手を打たないときは、結核医療費が癌となって、永久にわが国医療保障の確立は望みえないであろう。」これはもう、すでに今から三年ちょっと前に出された勧告であります。これらのことについては、現在ある年金局、保険局、それから公衆衛生局、私は当然打って一丸となってやるべきだと思うのだが、具体的に各局はこれらのことについて協力をしておられますか。それからまた、この積立金問題について、特に関係の二つの局が、どう協力しておられるか、各今の関係の局長、特に結核医療の問題も出ましたから、局長にお考えを承りたい。
  145. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 今後社会保障の施策を伸ばしていく上において、財政投融資の運用内容をどうするかということが、非常に大きい意味をもっているという点につきましては、私ども、先生仰せの通り考えております。従来、ともすれば、厚生行政の伸展を考えます際に、とかく国の予算でどれだけの費用が計上されるということを問題にする程度で終わっておって、総体的に、一体どれだけの資金最が社会保障の増進のために使われるかということについての考慮がやや足りなかった。このことが全体としての社会保障施策の伸展をやや鈍らしておったきらいなしとしない。こういう点につきましては、厚生省におきましても、みんなそういうふうに考えているわけでございます。そういう反省からいたしまして、明年度以降におきましては、およそ社会保障の基本的なものを進めるために、一体今後長期的に見て、たとえば五年、十年という期間について、どれだけの資金量が必要であるかということを、一つ厚生省として考えて、めどをつけようじゃないかというようなことで、この点、官房長が中心になって、いずれもう少し国会の御審議が済んで、それに専念し得るようになったら作業を進めよう、こういうふうなことにいたしておるわけでございます。  それから、第二に、お話しになりました結核対策との関連の問題については、そういうようなことの基礎になる問題は、現在でも年金局、保険局両方で検討しております。ことに国民年金の積立金の場合に、ただいまお話しになりました構想は、いわば一般会計の方が積立金から金を借り入れて、そうして施策をするという考え方でございます。そうすることによって、従来その年の税収にしはられておった一般会計の規模が拡大され得るという問題が出て参るわけでございます。こういう構想を一体どの程度入れるかということについては、なかなか関連する事項がたくさんありまして、まだはっきり整理され切っておりませんけれども、そういうことも一つ研究議題の一つにするということで、現在年金審議会でも研究的な意見が若干出ている、こういうような実情でございます。
  146. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 結核対策の関連で、今の年金の積み立てとの関連につきまして、今、年金局長からお答えいたしましたように、省内でもこれとの関連を重要に考えまして、今、官房を中心にいたしまして、重要政策の項目をあげた中に入れまして検討中でございます。ただ、従来われわれが結核対策——国会にも常に御審議をお願いして、予算を編成するときにこういう問題をあらかじめ公衆衛生局で、年金の積立金を使用するというようなことを一ぺん計算したり、あるいは計画したことがあるかといいますと、今まではいろいろ検討しましたがなかった理由を、従来までのことを申し上げますと、われわれの考えでは、従来の厚生年金の積立金というのは、還元融資の部分は別といたしまして、この積立金を使う場合には投融資という基本線で今まできているようにわれわれ考えておりましたので、再びこれを借金返しをするという形でこれを利用するのは、今までのやっておりました結核対策の中で非常に少ない。大体、国なり公がこれは出しつぱなしにするというのが対策の中心にしておりましたので、もちろん投資したものが人間の健康という状況で返るということにはなりますが、これでは金として返せないという形で、実は今まで一応これを施策の中に直接取り上げるということは、いたさなかった、また、社会保障制度審議会のあの勧告の要旨も、ただいま坂本委員が読み上げられましたように、どういう形でやるという具体的までは書いてありませんので、一時の借金として、これを臨時的に一時拡大するのに利用して、将来、岡なりの予算でただ長くかかって返せというのか、あるいはこれが広い意味の医療保障基金というような、もう一つの短期の健康保険のような形でその中に含まれてまあこれをふくらます、すなわち有利に運用する部分を使っていくという意味であるかは、明白には説明書きの方にも必ずしもなっておりませんので、現在まではさようなことであります。しかし、これは真剣に考える必要があるということで、先ほど申し上げましたような検討にとりかかったという次第でございます。
  147. 坂本昭

    坂本昭君 これは官房が中心になっているということですが、これは官房長が中心になって、具体的にどういう編成でやっておられますか、もう少し内容を説明していただきたい。
  148. 森本潔

    政府委員森本潔君) ただいま、積立金の運用について御意見ありましたが、それに関してどういうような考え方なり準備をしておるかということにお触れになったようでございます。ただいま両局長が申し上げました通りでございまして、目下の厚生行政におきましていろいろ検討するものがございます。なかんずく私たちが最も大事なことと思っておりますのは、今後におきますところの厚生行政の長期計画と申しますか、五年——少なくとも十年程度の将来にわたりまして、いかなる形に厚生行政を持っていくかという点が、まあ経済の長期計画と並びまして非常に大事なこと、だと思っております。この見地から、厚生行政の長期計画ということを、官房を中心にいたして進めて参っておるわけでございます。  それに関連いたしまして、積立金の問題、一般会計から所要財源をどれだけ出し得るかあるいはさらに所書要経費を他の起債その他の方法でどの程度まかなえるかということでございます。その際、厚生省で所管しておりますところの国民年金の積立金、あるいは、厚生年金の積立金というものが非常に関係を持って参ります。先ほど来いろいろお述べになりましたこの両積立金の管理の問題、運用の問題ということがこれに関連してくるわけでございます。そういう意味におきまして、長期計画の関連において、ただいまの積立金の問題を検討して参りたいと思っておるのでございます。なお、この積立金の問題につきましては、官房とそれから所管いたしておりますところの年金局——予定といたしましては年金局長を中心に、主査と申しますか、委員長と申しますか、この関係を中心として検討して参りたいと思っております。先般こういう方針をきめまして、従来の検討の経過をまとめましたり、結果をまとめましたり、今後の研究の段取り等を寄り寄り協議してございます。まあ、いつごろこれらの結果が出るかということにつきましては、問題が非常に重要でございますから、予定はできません、極力、力をあげまして、これらの問題の検討を進めたい、こういう状況でございます。
  149. 坂本昭

    坂本昭君 今の厚生行政長期計画、これは何カ年計画で、そうしてそのうちのどの部分までが今できておって、われわれに資料としてどの部分まで提出できるか、伺いたい。
  150. 森本潔

    政府委員森本潔君) この長期計画の問題でございますが、御存じのように、経済の長期計画というものが前提になります。御存じのように、この点がまだはっきりいたしておらぬ、あるいは所得倍増計画というものも、これも具体的にきまっておりません。従いまして、どういう形になるかという材料、試算と申しますか、材料を集めたり、それから試算をするという段階でございまして、ともかく、もとになりますところの経済長期計画なり、あるいは所得倍増計画というものが固まらなければこれは具体的なものになってこないということになると思います。まあ個別的な資料を集めましたり、あるいは各種の見地から検討を加えておるという段階でございまして、ただいまの段階におきまして一般に外部に出すということには、これは全然自信を持っておりません。
  151. 坂本昭

    坂本昭君 そういうことでは実ははなはだ困るのです。私が特にきょう強い言葉で申し上げておるのは、三十六年度からは皆保険と皆年金が施行されて、そうして七千円以上の負担がかかってくる、そういう人たちほんとう国民所得の再配分が行なわれなければごの年金の積立金拠出に対しても協力しないであろうと思う。この点は希望を持たすためにはやはり長期計画というもののある程度青写真を見せなければ、これは協力いたしかねますよ。われわれとしても、この皆保険、皆年金にできるだけ協力してもらいたい、そう言って国民に訴えることもできない。私自身は、私の出身地の国民健康保険を作り上げるために医師会やあるいは一部の人たちの強烈な反対を受けながら、なおかつ国保を作った一人なんです。作って、そうしてなおこれをよくしようとして努力しておる。それに持ってきて、また年金の問題もくる。ところが、内容を見ておるというと、はなはだ憂慮にたえないものがある。従って、皆さんの長期計画の青写真がほんとうに希望に満ちたものでなければ、これに協力するわけにはなかなか相ならない。だから、あなたのように、経済企画庁の所得倍増計画が出てこなければとか何とかいって二年たち、三年たち、十年たっておれば、結局厚生省の一番の問題の国保と年金の問題が私はうまく解決しないかもしれない。それを心配しておるから繰り返して申し上げておるのであって、そういうふうなのんきなことではもういけません。少なくとも今の年金積立金の運用については、国民年金については、何か二つの案をお出しになって検討しておられる、そういうことは承っておりますが、少なくとも厚生行政長期計画についてはそのようなのんきなことでは、はなはだ困る。もっと一つ急いでいただきたい、いかがですか。
  152. 森本潔

    政府委員森本潔君) お話の通りでございまして、急いで作る必要はもちろんございます。しかし、先ほども申しましたように、これはただ急ぐだけではできるものではございませんので、関係の計画その他の十分資料をまとめまして、りっぱなものを作り上げなければならぬ。長期計画でございますので——単年度の計画でございますれば、これは予算編成とからみまして、来年度はこうするということは差し迫って措置しなければならぬ問題でございますが、何分にも長期計画となりますと、その辺は十分慎重にやらなければならぬ。しかし、同時にまた、憩いでやらなければならぬということで、まあその辺は極力努力いたしております。
  153. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して。昭和三十三年度の厚生白書に、厚生省は非常にいい意見を出しておられるわけですね。だから、そういう意見を出しておられて、それで具体化の問題では、企画庁の経済計画云々ということじゃなしに、私はやはり、大胆に厚生行政、社会保障はごうあるべきだということをほんとうに出さなければ意味がないと思う。それだけ私は申し上げておきます。
  154. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中正〕
  155. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。
  156. 坂本昭

    坂本昭君 では、ただいまの、官房長が責任を持って、長期計画を作るし、特に積預金の運用について、厚生行政が伸びて、社会保障が充実するために御努力なさるということは、一応了承して、次の問題に移ります。  次は、保険局長と医務局長に伺いたいのですが、明年の四月一日から皆保険になりまして、保険料を全部とることになりますが、無医地区が実は千以上あるように自得には出ております。実際に無医地区というものはそのようにたくさんあるものでございますか、それとももうなくなってしまって、皆保険を実施するときには安心して地域の住民が保険診療を受けることができるか。
  157. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 太宰保険局長保険課長会議に出まして、山木次長が出席しておりますので、御了承いただきます。
  158. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 御指摘のように、数は医務局長の力からあとでお話があると思いますが、仰せの通り、皆保険達成の際にそういう無医地区が残るということでは皆保険の実があがらないということは、御指摘通りであります。それで保険局といたしましては、明年度の直覚診療施設の整備にあたりまして、いろいろ既存の直営診療施設の補修、改修等の緊急なものがございまするが、でき得る限り無医地区解消という点を大きな眼目にいたしまして、予算を振り当てていきたい。なお、今日まで無医地区であるということの原因には、本来的に自然のままでいきますならば、とうてい経済的な採算が合わないというような特別の事情があって、今日なお無医地区として残されておるという実情でございますので、単に普通の考えでそういうところに医療機関を置くということを考えただけでは、保険者の財政事情等から言いましてもなかなか困難が伴いまするし、また、そこへ行きまするところの医師の充足という点におきましても、なかなか容易ならぬものがあろうかと考えるのであります。幸い都道府県の国保団体連合会も、明年度におきましては、予算的な措置を伴うことによりまして数が入れられることになりますので、そういう団体の助力も得まして、その無医地区の一つ一つ異なる事情に適合した、その土地にほんとうに向くところの措置をとっていきたい。従いまして、ある地区につきましては、無理にそこに診療機関を設けるというようなことでなくて、一種の親病院的なものから巡回診療車を出すといったようなこと等も考えていいんじゃないかあるいはまた、親元の病院になるところから、ある一定の期間だけそういう僻地におもむいていただきまして、当該保健所の方から経済的な援助を、お礼をするといったような土地々々の事情に適合したような措置もとっていいんじゃないかというようなことを考えております。従いまして、問題は、言うはやすく実行はきわめて困難な本来問題でございますので、一つ一つの村、町の事情に即応した事情を聴取いたしまして、そこに向くような措置をとっていただくように考え、そのような指導と協力を厚生省としてはとりたい、大体こういうふうに基本的な考えは持っておる次第でございます。
  159. 川上六馬

    政府委員川上六馬君) 厚生省で無医地区と印しておるのは千百八十四、それで無医地区では一応ありますけれども、近所の医療機関から往診などによって医療が得られるというのが四百十六あるわけでございます。それから医療機関がないその無医地区で、そこに医療を経営すれば経営が成り立つであろうというところが百十二あるわけでございます。残りが六百五十六となるわけでありますが、それでその六百五十六がなかなか経営が困難である。経営困難であるけれども、それはその地元の県とか、あるいは町村が助成をすれば、それくらいのことはできるであろう、こういうように思うところがありますのと、それからまた、それは地元の町村あたりが財政事情が悪くて、やはり国が補助しなければならぬだろう、こういうところを二百三十七、国が僻地対策として取り上げているわけでありまして、二百三十七カ所のうちに、現在今までそこに診療所を、公立病院などから出張診療所を作ってもらっておりますのが現在三十四年度、本年度一ぱいまでで百二十五カ所できるわけでございまして、三十五年度は一千六カ所診療所を作る予算は一応計上しているわけでございますが、この二百三十七カ所は私どもの今の計画では、三十七年度までにこれをやらなければならぬ。実際言うと皆保険でありますから、ことし中にやらなければならぬわけでありますけれども、そういうところはちょっとズレがありまして、そういうことになっているわけでございますが、数を一応申し上げますとそういうことになります。
  160. 坂本昭

    坂本昭君 そこで、今の一類、二類、三類といいますか、合計千百八十四ですか、その中でやはり問題になるのは二類と三類、この百十二カ所と六百五十六、この地域の住民の総数はどのくらいになりますか。それぞれこれはお調べになっておられると思うのですがね。
  161. 川上六馬

    政府委員川上六馬君) 今資料持っておりません。大体はわかりますが、あとでお知らせいたします。
  162. 坂本昭

    坂本昭君 これはこまかい数字のようで、実はあまり追及したくないのですけれども、しかし、非常に大事なことですよ。来年から皆保険になるので、私など山へ行くと、皆が皆保険になることを期待している。ところが、病院があったって二里も三里も遠い。車できてもらったら自動車代が二千円もかかる。こういうところは皆保険は成り立たないのです。そういう下々の事情を一つもあなた方知らない。離れ島はどうするのですか。知らぬだけじゃない。今医務局長のお話を聞いておったら、国が補助をしなければならぬのが二百三十七あって、三十四年度末までに百二十五、三十五年度末までに三十六、そうすると百六十一カ所できるから、結局あと七十カ所は三十六、七年度に残る。これはどうするというのですか。これは保険局長にお尋ねします。あなたはどうしても取って取って取りまくりますか。出さないときはどうしますか。
  163. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) ただいまの仰せのように、問題は確かにざっくばらんに申しまして残るわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、本来極端な離れ島のごときは問題であろうと思いますが、相当山奥なんというような所にも、本来は適当な診療機関があることが一番望ましいと考えるのでありますが、そう短兵急にそのことをなしとげるということは実際問題としてとうていできないということもまたやむを得ない事情かと考えております。従いまして、さればといって、全然医療と縁のない世界にそういう人たちが置かれておるという状態にすることは、先ほど来申し述べましたように、皆保険の上からもまことに困る事情でございまして、先ほど申し上げましたように、保険当局といたしましては、巡回診療車を使うなり、あるいはある時期、医師をそういう地方に派遣してもらうなり、これもなかなか困難ではございますけれども、そういう、どうしても頂ちに診療機関を置き得ないという所には、そういう診療機関を置くごとにかわり得る、最小限医療と縁のある、つながりのある格好をつけていきたい。こういうふうに考えておるわけでございます。もちろん、何らかの直営診療機関的なものは、将来の課題としては、各市町村の財政事情ともにらみ合わせまして、できるだけ置いてもらうような指導もとり、助成もしたい。こういうふうに考えておる次第でございます。直ちに一年で診療機関が全部置かれるということはとうていできないという実情でございます。
  164. 坂本昭

    坂本昭君 たとえ山奥に住んでも、離れ島に住んでも、日本人であるということには間違いないのです。国民の一人であるということには間違いないのです。従って、国民保険をやる以上は、これらの人も日本人としての権利を主張し、また、予算としては、この皆保険のワクの中に入れる義務があります。ところが、今あなたは、これほどのたくさん無医地区があとへ残っていくということ、さらに離れ島だとか山奥に漏れ残る人があるということを認めながら、それに対して昭和三十五年度の予算の中で皆保険の前提条件を満たすことを——私の言葉言い過ぎかもしれぬがちっともやってない。例をあげて申し上げます。あなたはさっきから、言うはやすく行なうはかたしと言うけれども、言うことは確かにどうとでも言えますが、親病院から巡回診療車を出す、巡回診療車は、これは一体だれが買いますか。そういう補助金がどこかに出ていますか。先ほど国民健康保険団体連合会補助金一億円のことをあげられたけれども、この中には、保険者から医者へ対する礼のお金は入っていますか。一文も入っていませんよ。これは全然別個の予算です。さらに、直営診療所施設整備費補助金は三十四年度よりも減っていますよ。この減らされた理由は、事務費の節約三%ということで減らされた金額だと思いますけれども、このようにたくさん無医地区があって、それで国民保険をやろうというときに、なぜこの残り部分予算請求できなかったのか。予算請求したのですか、しなかったのですか。
  165. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 今先生おっしゃいました直営診療所施設整備費補助金というのは、今おっしゃるような理由で、きわめて一部ではございますが、削減された次第であります。われわれとしては、もとよりこのようなことでなくて、もう少し大きなものを期待するのでございまするが、これも、先ほど来申しておりますように、今日、こういう地区におきまする町村の財政事情というような点から見ますと、なかなかこちらの方で何とか推進したいというようなお話をいたしましても、比較的財政に恵まれない町村である関係上、にわかに診療機関を明年度において全部完成するということは、地方の実情としてもいたしがたいという事情がございまして、まあほぼ前年並みということでやらざるを得ないということになったわけでございます。なお、巡回診療車の経費は、やはり直営診療所施設整備費補助金の中に入れておるのでございまして、実際に実行をどうするかという問題が残りますが、これは、各地方の事情を現在聞いておりまして、なお明年度はどういうふうにするか、あるいは明年度できないとすれば、再来年度にどうするかという地方の希望も聴取いたしまして、無理押しをするのでなく、しかも可能な限り、先ほど来お話のありますような皆保険の名実ともに達成を果たす意味から、なるべくそういう施設の整備という点を各町村にお願いしつつ進めておるわけでございます。現在、巡回診療車を何合するかというような点につきましては、各地方の実情を聞きまして、できるだけ希望に沿うような処置に進んでいきたい。こういうふうに考えております。
  166. 坂本昭

    坂本昭君 医務局長に伺いますが、直営診療所の補助金は、減額されて三十四年度よりも減ってきている。それからまた、医務局長のただいまの御説明によると、三十五年三十六カ所、新設医療機関に対する僻地医療対策費として三十六カ所、そのうちに、医師住宅十八戸を含めて組まれておる。先はどの保険局の意見によると、市町村の財政の問題、いろいろな隘路があるということを言っておられましたが、こういう隘路を市町村にかわって責任を持つのは国である。これは残務局長もそう言っておる。このわずか三十六で、皆保険の前提として国がかわってこれで十分やり得るとお考えになりますか。
  167. 川上六馬

    政府委員川上六馬君) 今申しました通りでありまして、結局、無医地区を、国民保険を達成しなければならぬと考えております三十五年度一ぱいまでには解消できないわけでありますけれども、これは、先ほどもお話がありましたように、やはり現在の医療機関から往診をしてもらうとか、機動力を強化して往診してもらうというようなことで、ともかくその間をしのいでいくよりほかはないのであります。一番困る問題は、やはり医者の問題でございまして、施設をすることはむしろやさしいのでございますけれども、そこに行く医者がなかなか得がたいということでありまして、その点に非常に苦慮をいたして、最寄りの県立病院その他の公的医療機関から医者に無理に現在出向いてもらっておるような事情にあるわけでありまして、私は、一番むずかしい問題は、やはりそういう所に医者が得がたいということで一番苦慮いたしておるような事情であります。
  168. 坂本昭

    坂本昭君 医務局長がそんなことを言っておったら解決できませんよ。われわれだって、一番困るのは医者だとわれわれが言っているのです。だから、それをどうして解決するか。それは医務局長の責任じゃないですか。その医務局長がまるでよそを向いているから一番困るのは医者でございます。この医者を所管しているのは医務局長でしょう。その医務局長がそんな困ると言って、困りっぱなしでおって皆保険の問題がどうして解決できますか。私は、そんなことでは医務局長の責任は果たされないと思う。県へ頼むとか何とか言っておるけれども、一番困るのは医者だ。医者のどういう点が困るか、それをどうすればいいか、もっと具体的なプランを一つ言っていただかなければ、国民保険は成り立たない。政府金看板、これはうそです。もうちょっと何とか言って下さいよ。困る。
  169. 川上六馬

    政府委員川上六馬君) むろん、そういう僻地に医者を派遣したいと思いまして、医者の待遇を改善いたしますとか、あるいはことしの予算に一部見られておりますけれども、住宅を作りますとか、あるいは学生時代からそういう所に志す人を求めるために貸費制度を設けるとか、機動力を持たすために、自動車、ことに島では船、そういうふうなものを、やはり予算化しなければならぬというふうに努力いたしておりますけれども、まだその実現を見ないのを遺憾に思っております。
  170. 坂本昭

    坂本昭君 けしからぬのは大蔵省だということになりますね。大蔵省意見承りたいですね。なぜこういうような段階を迎えて、しかもなおわずかに三十六の僻地医療対策費としては新設三十六に削ったか、それからまた、直営診療所についてもこんな削り方をしたか、私は多分これは理由がおありだと思うのです。御説明いただきたい。
  171. 岩尾一

    説明員岩尾一君) 僻地医療対策でございますが、ただいまいろいろと御答弁いたしましたように、従来から僻地診療所の施設費あるいは運営費等ということで計上しております金額並びに国民健康保険におきます直営診療所の経費、さらには基幹病院の整備費として計上しております経費によりまして基幹病院を強化することによって僻地の方に及ぼしていく、こういったいろんな施策を関連して考えておるのでございます。まず直営診療所につきましては、先ほどもお話がございましたように、従来かなり多額の経費がついておりましたが、年々直営診療所も逐次普及して参りまして、昨年二億、さらに実行状態等を見ましても、かなり普通の直営診療所というよりは、一種の後保護施設といいますか、そういうものにまで及ぶような段階になってきております。さような点も考えまして、大体二億円増額ということで考えたのでありますが、政府全体の節約の方針によりまして三%を節約したわけであります。それからそれ以外の僻地診療所の経費つにきましては、財源等の関係もございますが、できるだけ考慮を払いたいということで特に先ほど医務局長からも御答弁のございました医師の住宅の問題、これを取り上げまして考慮を払っていきたいと思います。
  172. 坂本昭

    坂本昭君 大蔵省が積極的でなかったということは、どうもいろんな関係から明瞭ですが、しかしそれにもまして、厚生省は積極性をもって折衝しなかったように思われる。それでは、こういうことじゃ、とにかく国民保険は実施はできません。できない場合にこれは新しい国民健康保険法では、厚生大臣が指定をして強制実施を延期するというような方法が考えられていると思いますが、どういうふうにこれを措置しようというおつもりか。大臣に聞きたいのですが、一つ保険局長にお尋ねします。
  173. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 国民健康保険の施行を、明年所定の期限までにできない町村があります場合に、延ばすかどうかということでございますが、現在のところ一番問題になるのは、大都市と、それからもう一つは、今先刻来お話の出ておるところの非常な僻地だろうと思います。しかし、現在のところ、きょうも都道府県の課長に、この点は非常に大きな重点として指示したところでございますが、そういう僻地が医療機関がないということのために、所定の期限までに国保の実施ができないというようなことは絶対起こさないようにということで、いろいろ地方の実情を県の保険課長なり、あるいは国民健康保険課長としましては、当該町村のほんとうのあたたかい相談相手になって、かゆいところに手の届くような助言として、そういう地方の実情を中央に移していただきたいというような指示をしたのでございます。現在のところ、そういう事情でございまして、延期ということは考えておりません。しかし、現実にまあ極端な離島といったようなところで町村の一部が実施できないというようなところが絶無であるということはまた同時に一言えないと思いますので、われわれの努力目標といたしましては、そういうところを、先ほど申しましたように、診療機関はかりに置けなくても、巡回診療所あるいは定時に一週間のうちにある日はそこの島にお医者さんが行けるといったような処置を講ずることによりまして、最小限度必要とする医療機関あるいは医師との結びつきが可能なような処置を考えていきたい。また、先ほどからこれも申したことでございますが国保団体連合会というものが、明年度からは非常な力をもってこうした方面にもいろいろ工夫の手を伸ばすことが、私どもとしては期待されるのでありまして、こういう都道府県の連合会が全県下のそういう困っておる町村に対しまして、必要な助言なり、あっせんをするというようなことも同時に考えておりますので、そういう点からも、今の一つのネックといったような問題は相当片づく、また、どうしても片づけなければならぬという行政努力を払いたい、こういうふうに考るえ次第でございます。
  174. 坂本昭

    坂本昭君 保険局は実際の実情をちっとも知っておりません。知らぬでもってこんなプランを立てたってどうにもならぬですよ。第一国民健康保険の連合会の補助金は、これは全部事務費ですよ。監査・審査のための事務費であって、そういう医者の手当ということには向かない、さらにこの主体をなすところの市町村はみな財政的に困っておる、困っておって一般会計の繰り入れと言っても、それでも間に合わなくて、みな四苦八苦なんです。そういうところで、いかに県の保険課長がかゆいところに手を届かしたところで何にもできないのです。かゆいところに手を届かすのはあなたたちですよ。厚生省自体がかゆいところに手を届かさないでもって何ができるかというのですよ。私は承れは承るほど国民保険は成立しないという確信を持ちました。こういうことでは重大な問題も起こってくると思う。また、大蔵省の見解を承ると、基幹病院の強化ということを主体に置いて、そうして逐次僻地に及ぼしていく、これは机上のプランですよ。基幹病院なんといったらこれこそ要らないですよ。もう福岡でも大阪でも病院はあり余るほどある。病院のないのは僻地ですよ。離れ高ですよ。そういうところをどうして解決するかという具体的なことをしないで皆保険、皆保険と言ったって始まらない。私はこれは大蔵省の見解が間違っておったということよりも、むしろ厚生省が基幹病院強化ということをあまり強く言ったのでこれに吹き込まれてしまって、何かもうこれで十分皆保険ができると思って予算的にこう扱ったのではないかと、私は善意に解釈しておきます。そうでなければ、こういうことで三十五年度皆保険の基盤は絶対にでき得ない。これはあとでまた厚生大臣に、私はこれは非常に重大な責任問題であるから問いただします。とにかくこれでは皆保険ができ得ないという私は見通しを持たざるを得ない。さらに、こういうことで議論しておっても始まりませんから、もっと具体的な問題を申し上げますが、とにかく医療保障はおろか皆保険はできない。さらに国保を四千二百八十万人に広げるということ、これはけっこうなことですね。そしてそのために保健施設活動というものがもう当然必要になってきます。これは従来も非常に問題点があるのであって、いわゆる国民健康保険に伴う保険婦の問題です。これは私はある意味では非常にすぐれた企画に基づいたもので、国保をやっていくときに同時に保健婦活動も助成してきたということはこれはいいのであります。今後は医療保障という問題は当然予防衛生、それから健康の維持、そういうことに進むので、当然この保健婦活動をさらに強化する必要がどうしても出て来ると思う。ところが、こういう意味でのまず保健婦活動が来年度全般的に充実していって、そうしてその面に基づいて全国保険かできなければならないにかかわらず、人類の上においては昭和三十二年、三年前、三十二年と同じ四千四百三十名、実際の実働は私の見るところでは五千人以上だと思う。にもかかわらず一四千四百三十名に落としておる。この前、公衆衛生局長保険局と切り離して、保険婦問題として単価が十一万四千から十二万八千に上がったし、いろいろな点でよろしいと言っておられましたが、はたしてこんなことで皆保険の前提となる予防衛生、健康維持についての保健婦活動をこういう予算で指示できますか。まずこれは保険局長に伺います。
  175. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) お答えをいたします前に、はなはだお言葉を返すようで恐縮でございますが、先ほど、ちょっと誤解を与えるといけませんので、こちらのお答えの仕方が悪かったので訂正をさせていただきますが、国保団体連合会は確かに本来の任務の審査支払いのための経費を来年度予算でいただくということになったことはお言葉の通りでございます。ただ、今までの国保団体連合会は、先生が現地をとくと御承知のように、非常に本来そういう人であることが望ましい人であるかというと必ずしも適格者がないという実情にあったこれは御承知通りであります。しかし、審査支払いの非常に責任のある仕事をするという組織になったわけでございますので、やはり今までの役員とかあるいは職員といったような人々につきましても、十分再検討を加えまして団体の仕事を真に遂行するにふさわしい、よく働ける人を置きたいということを指導目標といたしております。従いまして、本米審査支払いの業務に当たるのが明年度予算の上からは大きな役割になっておりますけれども、御承知のように、国保団体連合会の任務というのは、単にそうした審査支払いの事務だけではなく、その当該府県におきまする国保団体の指導といいますか、あるいは相互連絡といったような非常に大きな本来の任務を持っておりますので、そういう人的方面の整備ができますことによりまして先ほど申しましたように、ある地域にどうしてもお医者さんがほしい。しかし、なかなか得られないといったような場合に、幸い県庁のそばにおりますことでございますので、県庁所在地の公的病院とかそういう方面に事実上あっせんを依頼するというようなこともある程度可能だというような意味で申し上げた次第でございます。  なお、もう一つこれも山間地帯等にはたくさんあることでございますが、村では幾らでもお医者さんの給与をあげる、家も建ててあげる、だから来て下さいといっても、現実にお医者さんはそういう山間僻地でありますので行き得ないというような実情にある所も少なくないものと考えておるのでございまして、そういう所につきましては、一生というか、相当長い間そこに住むという決心をすることは医師として容易ならぬことと存じますので、ある期間を限ってそこに奉仕的な活動をお願いするといったような意味で行っていただくというようなことはある場合においては可能でないか、そういう意味で適当な親元病院ないしはしかるべき公的病院の力にそういう派遣をお願いするというような措置をあわせて考えていきたいという意味で申し上げたのでありますが、少し言葉が足りなかったので、この点重ねて申し上げておきます。
  176. 坂本昭

    坂本昭君 保健婦の問題は。
  177. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 保健婦につきましては、人員につきましては昨年と同数を基礎にいたしております。ただ、監査につきましては、これも非常に各地からの要望が強かったのでございますが、幸い財政当局の協力を得ましてこの点は基準額がある程度増額を得ましたので、今まで通りに比べますと一つの進歩である、こういうふうに考えております。
  178. 坂本昭

    坂本昭君 時期をあなた知っておりますか。来年の四月一日から皆保険になるというこの時期を私は言っているのです。ほかのときと違うのです。いわば保険局行政の中ではもう戦争なんです。その戦争の最中にこれだけの前と同じ四千四百三十人の保健婦でほんとうの皆保険ができるか。皆保険ということに、確かに予防御生や健康維持の点において非常に重要な役割を果たすのだから当然保健婦や何かもふやさなければならぬ。その点について何ら見識を持っておらない。  もう一つ問題を伺いますが、今日保健婦には国保保健婦ともう一つ県で見ている保健婦と二木建になっている。そうしてその給与の違いやいろいろな点で非常に各地で問題が起こっている。これは保険局と公衆術全局と両方の問題だと思う。保険局は国保の保健婦の問題と一般の県におる保健婦の問題をどう考えるか。また、公衆衛生局長はこれをどう考えられるか。将来一体どうするか。保健婦活動は皆保険の中では重大な任務を私は持っておると思う。そういう点で両局長の御意見を伺いたい。
  179. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 御指摘の点は確かに大きな問題であると思います。しかしながら、ともかく国保の直診によりおりまする保健婦についての給与の基準額というものは、非常に低い形のまま今日まで推移してきております。それで先ほど来申し上げましたように、明年度の予算にしましても若干の色合いを見ていただいたのでありますが、もともと勤務地の条件等からみましてある程度の差等のあるということもやむを得ないことだと思いまするが、物事すべて一挙に辛が運ばなかったというのが実情でございます。将来努力をしていきたいというふうに考えております。
  180. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) まず第一に、保健婦の給与の問題でございますが、児と市町村とによる違いでございますが、県の保健婦につきましては大体県庁吏員一般と同じに、国家公務員の給与基準というのが人事院規則できめてありまして、大体これに右へならえ、県によりましてはいろいろと自治庁との取りきめで若干むしろ高いところもあるように聞いておりますが、大体これでいっておりまして、従って、これは医療職員の給与一般として医師もそうでございますけれども、国家公務員のところで給与が相当解決いたしますと、大体それに右へならえして各府県のも上がる、こういう形で私どもの方ではその公務員の給与ベースに大体合わすように見込みまして、これに対する三分の一の国庫補助というのが正確に行なわれるように毎年予算の折衝をし、大体確保する、こういうことでございますが、現在のところ、大体保健婦の平均給与である年額約二十万円の線、これを中心にして大体国庫補助の予算を組んでいる、こういうふうなことになっております。それからもう一つは、しかしながら、市町村の保健婦と、他の市町村吏員もそうかと思いますが、これは県の今言いました給与基準と市町村という自治体の給与基準というものの比較の問題でございまして、保健婦だけを特に取り出して、国の方の公衆衛生の関係の方と同様にしろということを特に取り出して言うことはなかなか困難でございまして、やはりこれは市町村の給与ベースというものが国あるいは府県というものの給与ベースと一致するような基本的な政策の方にお願いする以外にない、こういうふうに存じておりまして、直接これをどういうふうに合わしてもらうということを今まで運動したりあるいは要望したということは、そういう意味ではないのであります。  それから第二の県ごとに保健所の保健婦でございますが、保健所の保健婦と市町村に置いてある国保保健婦との関連は数がほぼ同数に近くなっております。保健所の保健婦の総数が約五千数百名、実際の実績からいいますと、三十三年度の、一年を通じました昨年の実績は五千三百九十一人ということになっております。これは定員より少のうございます。これは逐次増加はいたしております。これと先ほどの四千八百名ほどの市町村保健婦とはほぼ同数に近いのでございますから、保健活動の上では非常なウエートが市町村保健にあるということでございますので、予防あるいは保健増進の活動の上では、これはまあ全然ないがしろにすることはできない、これは両方あわせて公衆衛生の上では大いに活用していかなければならぬ、これは重々感じておりまして、昭和二十四年に保健局長公衆衛生局長の連名の通牒をもちまして、これの協力並びに業務の調整の基本の方針を地方に示達してありまして、従来はそれに基づいてそれぞれの任務を調整して総合力を出す、こういうことになってきたわけでございますので、ただ当時はまだ国保全国にありましたわけでなくて、一部に行なわれておったということでございますので、まあ国保の保健婦の保健活動はあくまで被保険者対象にするという形でございますから、ほんとうの意味で全国的におおっておる保健所の保健婦活動と全部ぴったり合わさっていくということにはならなかったわけでございます。先ほどからの御指摘通りに、国民保険になりますと、被用者保険等のような特別保険を除いた約五千万近くの住民は、全部市町村を単位にいたしまして、これはすっかり重なってくる、こういうことを迎えますので、これは重大なことでございますので、先般来古い指導方針を改めなければいかぬ、真にこれは協力して総合力が完全に発揮できるようにしなければいかぬということで、昨年来、保険局と公衆衛生局とでこの調整案の新方針につきまして打ち合わせを続行しておりまして、最近、大体基本方針が、話し合いができ上がりまして、ごく近くこれの通牒並びに細部のやり方の業務指導指針というものを出す予定で今作業中でございます。これによりまして、大体市町村単位に置いてある保健婦と保健所の保健婦、一番基本の線は保健所の保健婦がこの保健活動の上の技術的な指導ないしは部面を担当するのをまず基本といたしまして、しかしながら、市町村保健婦が必ずしもまだ全国に置いてありませんので、もちろん一部はそれと並行した駐在保健婦的な仕事も、地区によりましては、保健所の保健婦がいたさなければならぬのはまだ当分残りますが、さような建前でいくということと、それから地方のいわゆる保健、地区住民の保健指導につきましての、計画なり、あるいは連絡調整の中心機関は、やはり保健所でございますので、それを中核としてこの両者の力を発揮できるようにというような大きな意味の指導方針で今の業務指針等を作る、こういうふうに作業を進めておる次第でございます。
  181. 坂本昭

    坂本昭君 きょう私が論じているのは、皆保険の前年、三十五年度という意味で実は論じているわけです。従って、皆保険下における保健所の任務、また、ケース・ワーカーとしての保健婦の任務、この保健婦活動のいかんによっては、私は予防がどんどん伸び得ると思う。そうすると、保健財政というものもかなり楽になるめどが十分にある。私はそういう点で、今公衆衛生局でもこの二つの、国保の保健婦と県の保健所にいる保健婦との問題を基本的に考えておられることについては賛意を表します。これは給与の上、あるいは働きの上、いろいろな面で統合して一つ強力な推進体系を三十五年度には作り上げていただきたい。そうすれば、来年度からの皆保険の実施の上において大きな役割を私は果たすと、そういうふうに確信をしておる次第です。  次に、やはり皆保険の問題に関連して、今度は保険局の方になりますが、今でも問題になっている、監査・審査の問題、これはだいぶ衆議院でも議論されましたから、こうした全国に皆保険になった場合に、官僚化といいますか、官僚統制というか、これはもう今までもたびたび論ぜられてきた点でありますが、特にきょうは支払い基金のことを一つだけ例をあげて申し上げたい。それは、結局皆保険になってくると、医師はこの支払い基金を通じて、今でもそうですが、支払いを受けざるを得ない、ところが、この支払い基金というものが例の省令によると、その月の診療費は翌月、二月中のものは三月の十日までに診療報酬請求書が基金に届かなければならないと定められてある。で、これはいろいろな事務的な整理の都合上得むを得ないことと思いますが、しかし、実際の実情は、七日に出せというものあり、五日に出せというものもある。この五日とか七日に出せということは、これは省令できまったことではなくて、各基金の事務的な都合によって要望しているように伺います。ところが日本では何といっても官の立場が強いのですね、従って、お願いするといっても、私は現物を持っていますが、やわらかにお願いするという言葉はあっても、中をよく見ると、たとえば例を上げますと、「十一月診療の請求明細書は、本年に限り十二月五日までに基金へ到着するよう御提出方格段の御協力をお願い申し上げます。」これは十二月五日までのことですが、こういうやわらかな文章でも、受け取る医者の方では非常に強く響いてくる。この場合は、十二月五日までに到着するよう、協力をお願いと書いてありますが、また、別の文章では「七日までには基金に必着するよう」と書いてあります。「必着」と番いてある。これは命令になりますよ。ですから、これは委員会に出ておられる方に申し上げますが、医者というのは、二月中に診療をやったら、三月一日からこのように五日目までに出せとなったら、三月三日か四日まで、何十枚、場合によれば何百枚という診療簿から抜き取って、診療報酬の明細書を書かなければならない。だから病気になるなら、月初めになったら大へんです。医者はよく見てくれません。とにかくねじはち巻で徹夜をして出さなければならない。省令では十日までと書いてあるが、こういうような必着するようにということをみだりに出しているということ、私はこういうことは今日でも許されない、ことに来年皆保険になった場合には、私はこういうようなことで、官僚統制の皆保険ができてくるということは、医療内容を落とすし、ひいては国民に対して大きな影響を与えるものだと思わざるを得ない。こういうことについて保険当局はどういう指導をしておられるのですか。
  182. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 言うまでもないことでございますが、支払い基金の運営につきましては、保険者代表、それから事業主代表、診療代表といったようなところから理事が選ばれまして、業務の大綱、それから重要な方針の決定は相当こまかく現在その理事会で相談されております。ところで、今御指摘の文章の表現でございますが、これは御指摘のように、いろいろ問題あると思いますので、理事会等の席上でそういう御意見が出たということは十分お伝えいたしておきたいと思います。  ところで、今御指摘の十一月分のお話は、私もそのときの理事会に出ておって多少記憶ございますが、診療担当代表から、例年のことであるけれども、暮れはお医者さんにとって支払いが非常に肝心だから、なるべく早く支払いをするようにしてくれというようなお話がございましたので、基金の出先の方ではそういう支払いの繰り上げを医師に対して御通知したのだと思いますが、そういう文言の表現につきましては、先ほども申しましたように、そういう御意見があったということで十分基金側にもお伝えいたしまして、かりそめにも医師に不当な何といいますか、拘束というか、そういうものを与えるかのような印象を与えるというようなことがないように十分注意をいたしたいと考えております。
  183. 坂本昭

    坂本昭君 省令ではちゃんと十日までにと書いてありますから十日まで一日から十日間であります。まあ遠い、離れたところでは、たとえば八日に投函しても十日に着かない場合がある。ある例の場合には、十日が土曜日で、土曜日の午後着いておる。だれもいなかった。そして日曜日をあけて十二日の日に見ている。そうすると、十二日の日に受け取ったことになる。従って、十二日に受け取ったので、これはこの月は払わない、こういう扱いをしている実例もあるのです。私が憂えるのは、こういう皆保険化になってきた場合には、よほど行政官庁はサービスの面で医療担当者を見てやらなくちゃいけない。特に、二カ月おくれて診療報酬を支払うのですから、当然私は利子をつけてもいいと思う。もし利子をつけることが困難だとしても、件数概算払いぐらいは私はしてもいいと思う。たとえば、甲年なり一年診療をやっていけば、その診療所の大体の金額はわかってくる。あるいは内科なり外科なりはわかってくる。そうすれば、件数の概算払いをやって、その月に八割とか九割を払っていい。普通の請負業者でさえ、工事料の八割は払うのですよ。いわんや医療について、そのくらいのことは私はサービスしてもしかるべきだと思う。そういうことも何もやらないで、十日までに出せという省令を作っておきながら、今度は、七日までとか五日までに必着せいということをいうのは、はなはだ法律無視の越権行為だと思う。そういう点特に気をつけてもらいたい。今の、利子をつける問題、件数概算払い、こういう新しい支払いのサービスについて、具体的な方針を持っておられますか。
  184. 山本浅太郎

    説明員山本浅太郎君) 十日までということになっておりながら、七日までに必着するようにということは、先ほど言いましたように、むしろお医者さんのためのサービスのつもりでとったことが、そういう断わりが十分なかったために、一種の拘束的な感じを与えたことだろうと思います。やりましたことは好意から出たというふうに御理解いただきたいと思いますが、先ほどたびたび申しますように、そういう表現につきましては十分注意いたしたいと思います。  それから二番目の、概算払いをしてはどうかという、あるいは利子をつけてはどうかという問題でございますが、これはまあそういう点も一理あることはあると思いますが、今日の一般の経済の世界におきまして、そのようにすることが妥当かどうか相当問題があろうと思います。しかし、十分考え得る問題だと存じますので、将来検討さしていただきたいというふうに存じます。ただいまとしては、直ちに実施する案は用意いたしてございません。
  185. 坂本昭

    坂本昭君 ちょっと速記を落して下さい。
  186. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  187. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。
  188. 坂本昭

    坂本昭君 本日は大臣病気で、次官も衆議院の方へ出られて、十分この審議に参加していただけなかったことははなはだ遺憾に思います。きょうは特に、社会保障予算をいかにしてふやせばいいかというまあいわば超党派的な論議を重ねてきたわけです。その中では、年金の基金の問題、厚生年金と国民年金ですね、そういうものを通じて、何とかして厚生省予算をふやしていきたい。今のような医療保険では不十分だ、特にいろいろと追及して参りますと、来年から始まる皆保険に、三十五年度に無医地区を解消してしまうということさえでき得ないようなそういう予算を組んでいるのです。こういう点はもう一ぺん大臣に直接伺って——こういうことでは、われわれとしては、国民に安心して今日の社会保障を進めるわけにいかない。  なお、きょうは、さらに生活保護の基準の問題や、あるいは年令の予算に関連した問題、それから特に児童対策について、これははなはだ遺憾ながら本会議——参議院の本会議における質問に対して厚生大臣答弁漏れをしているのです。これは次官からきょうのことは大臣に伝えて、責任ある答弁をしていただきたい。速記録の中でもはっきり出ておりますが、高田委員から、「この際、政府の保育対策を徹底的にここで計画的な施策をお示しを願いたいと思うのであります。」ところが厚生大臣はどうしてしまったのか、その徹底的な児童対策を全部飛ばしてしまいました。で、これははなはだ遺憾でありますので、あらためて児童対策について明確なる答弁をしていただきたい。特に保育所の問題、あるいは幼稚園との関連の問題、要するに、乳幼児に対する対策の問題であります。  なお、保育所の運営についてもこれ関連してお尋ねしたいと思っておりましたが、これは次の機会に譲りたいと思います。  なお、次の機会には、これは委員長の奔走によって、厚生大臣と大蔵大臣と出ていただきたい。と申しますのは、やはりこの本会議の席上において大蔵大臣が、明確にこの速記録に残っているのは、「この児童福祉の関係で見ますと、非常に予算措置がおくれておるようでありまして、ただいままでおやつ代は一円も出ておらない。あるいはそこの職員の期末手当等におきましても他に比べまして非常におくれておるという点呼がでございます」つまり、この従来の厚生省の児童福祉対策が非常におくれているということを大蔵大臣が明確にここで指摘しているのですよ。で、一体これはどういう点で指摘したか。また、この責任は一体だれにあるか。このことも私はあらためて委員会で、少なくとも参議院のこの委員会で承っておきたいと思うのです。  で、最後に次官に申し上げたいのは、この数年来厚生予算というものは非常にふえては参りました。ふえては参りましたけれども、最も痛感するのは、この厚生白書のいつのときですか、黒い壁が厚生行政の前に立ちはだかっているという有名な言葉がありますが、ですね、きょうも実は各局長の御意見を聞いてみますと、下情に非常に通じていないのです、下情に。下々のことをお知りになっていない。机上プランが非常に多い。むしろ黒い壁が立ちはだかっているのは、厚生行政ではなくて、国民厚生省の役人との間に黒い壁が立ちはだかっている。これは非常に大半なことだと思います。厚生行政というのは現業であります。だから現場のことを知らぬようなことではどうもならないのですよ。しかし、これは私は局長さんの個人的な責任ではないと思うのです。というのはですね、厚生省の機構がそうなっているのですよ。厚生省の機構が、もう東京に住んで、ペーパー・プランだけやって、霞ケ関のかすみを食ってだんだん上に上がっていって、離れ小島だとかあるいは山の中の診療所のないようなところ、そういうところの実情を知らない、日雇い人夫の人たちの苦しみを知らない、母子家庭の悲しみを知らない。知らないように厚生行政の機構ができてきている。で、結局そういう実情を知らないというと、勇気と決、新が出てこないのですよ。先ほどもね、大蔵省からちょっとその単価を一万幾らふやしてもらったからといって、おかげさまとか何とか言って喜んでいる。こんなばかなことあるものですか。大蔵省に言うこと聞かしたらいいのですよ。それだけの勇気と決断を持ってやっていただきたい。  それからもう一つ、省内の協力がないということです。幸いにして年金の積立金問題について、官房長の責任によって長期経済政策をやられているのでこれは安心しましたが、一番大半なことは、下情に通ずるということですね。これは、最近の、例の北京の中華人民共和国では、やはり社会主義が進むと官僚化していくのですね、人間が。それで下放ということをやっています。下に放つ。局長課長が農村なんかに行って、児童局長に保育所の窓口の受付係りをやらせたりする、こういうことで徹底的にその下情を知らさしている、こういうことを一つやってみる気持は厚生省ありませんか。これは次官おわかりになると思うのです。いかがですか。
  189. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) お答えする前に、衆議院の議席を持っております関係上、御質問趣旨等を十分に拝聴することができなかったことは、まことに申しわけないと思います。またさらに、本日は大臣のおかげんが悪くて、これまた出席ができなかったことは、大へんまことに申しわけなく、おわびをいたしておきたいと思います。いろいろ私の欠席しておる間の御質問等につきましては、関係各局の局長あるいは政府委員等から御趣旨をよく聞きまして、さらにまた、速記録等を読みまして、大臣に私から直接一つ申し上げてみたいと思います。ことに児童福祉の問題等につきまして、大臣答弁漏れ等があるということでございます。この点につきましても、十分厚生省の立場を御納得のいくように御説明申すように、私から申し伝えたいと思います。  ただいまの御質問でございますが、御趣旨ごもっともでございます。私も就任しましてからようやく半年、何ら厚生行政には経験もなければ自信もないものでありますから、秘めて私は、実は各方面に視察に参って、いわゆるあなたのおっしゃる下情に通ずるべく努めたつもりでございます。しかしながら、私はもともと下情に通じているつもりでありますので、貧乏人でございますので、それくらいのことはよく知っておると思います。また、若い時分は相当労働に従事しておりまして、その間のことも多少私は通じておるつもりでございますが、局長あるいは省内で、そういうような方面に通じないような人がおるならば、何とか下情に通ずるように、一つ十分に機構その他を考えて御趣旨に沿うようにしていきたい、かように私は思うわけです。そうしなければほんとうのりっぱな行政というものはできないということは、お説の通りであります。
  190. 坂本昭

    坂本昭君 最後に、三つ、まだ私の考えとしてまとまっていませんが、一応提案しておきたい。  それは第一は、事務系統の事務官が、その現業の第一線を身をもって知るために、局長になる前に課長課長になる前に課長補佐と、そうなってくる途中で、一番行政の末端で身をもって体験するような機構に一つ変えていただきたい、これが一つ。  それから技官については、技官の数が非常に少ない、これは医務局長、医者が足りないで困っていると、自分が責任者でありながらそんなことを言っていましたけれども、足りないからといって、技官が厚生省の中で非常に部分的に停滞をしている、これも同じことです。技官だってやはり霞ケ関でかすみを食っておったらいけません。やはりどんどん出して下さい。こういう省内における技官の停滞。  それから第三の問題は、地方における機関、特にこれは最近問題になってよくいわれているのは、監査・審査の地位にある人が一定の地位に長くおるというと、権力の座にすわること長くしてボス化していく、こういう点ではもっと新陳代謝をしていくという組織をとる方が、厚生行政がほんとうに伸びていって、われわれが、みんながしあわせになる道だと思うのです。この三つのことを、ただいま御即答できないとしても、ただいまの次官のお心の中からでいうならば私はでき得ると思うのです。一つこの点を最後に提案として申し上げて、私の質問を終わります。
  191. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと私資料の要求を申し上げたい。  国保の皆保険に関して、今残っているところが非常に努力をしている。ところが、一番地方財源で、事務費の問題で、残っているところは非常に事務費が高くつくのじゃないかということで、政府予算じゃこれは全額百円上か組んでいないのですが、京都あたりでは二百五十円も事務費がかかるという予想を立てて非常に議会で問題にしているということですから、どうかその資料を、今の現状と、今後行なわれようとする新しい国保の事務費の見通しと、今やっていること、その資料を出して下さい。これは非常に重要ですから、この際要求しておきます。
  192. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) わかりましたですね。それでは厚生省関係の昭和三十五年度の予算案に対する質疑は、本日の質疑はこの程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。  速記をとめて。    〔速記中止
  194. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは速記を起こして下さい。
  195. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではじん肺法案労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案身体障害者雇用促進法案、右三案を一括議題といたします。松野労働大臣から提案理由の説明をお願いいたします。
  196. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) ただいま議題となりましたじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を説明申し上げます。  労働者の業務上の傷病に対する予防及び災害補償につきましては、一般に労働基準法及び労働者災害補償保険法に基づいて実施いたしているところでありますが、けい肺はその予防が困難であり、一度かかると治癒しがたく多くの場合、労働基準法または労働者災害補償保険法により三年間療養補償を受けた後においてもなお引き続き療養を必要とするのでありまして、また、この点については重度の外傷性せき髄障害もけい肺と同様であるのであります。そこでこれら二つのものについては、その特殊性にかんがみ、関係労働者の保護の充実をはかるため、昭和三十年、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法が制定され、石炭鉱山、金属鉱山その他遊離珪酸粉塵を発散する場所で働く労働者に対して定期的にけい肺健康診断を行ない、その結果に華づき一定の者について粉塵作業からの作業転換をはかる等健康管理について特別の措置を実施するとともに、けい肺及び外傷性せき髄障害にかかった労働者に対して、労働基準法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償が行なわれた後さらに二年間引き続いて療養給付及び休業給付を支給することとされたのであります。  しかるに、昭和三十二年秋ごろからけい肺等特別保護法による給付の期間が切れる者が生じ、しかもその大部分の者は依然として療養を必要とする状態にありましたので、とりあえずの措置として、昭和三十三年けい肺及び外傷性せき髄障害の養療等に関する臨時措置法が制定され、けい肺等特別保護法による給付の期間が切れ、なお引き続き療養を必要とする者に対しては、昭和三十五年三月三十一日まで、療養給付及び傷病手当を支給することとされますとともに、政府はけい肺及び外傷性せき髄障害にかかった労働者の保護措置について根本的検討を加え、昭和三十四年十二月三十一日までにけい肺等特別保護法の改正に関する法律案を国会に提出しなければならないこととされたのであります。   そこで、政府といたしましては、昭和三十三年六月に、けい肺昨特別保護法の改正に関してけい肺審議会に諮問をいたし、同審議会では一年有半にわたり審議検討が行なわれた結果、公益側委員意見を中心に、労使各側委員意見を付した答申がなされたのであります。  続いて政府は、補償に関する問題につきまして、労災保険審議会にも諮問をいたし、その意見を聞いた上けい肺審議会及び労災保険審議会の公益側委員意見の線に沿い、これら審議会の労使各側委員意見をも考慮しつつ、慎重に検討をしたのであります。その結果、予防及び健康管理につきましては、最近における医学の進歩、粉じん管理に関する技術的研究の成果等を基礎として粉じん作業に従事する労働者について適切な保護措置を講ずることとし、その対象についても、医学的にその実態が明らかにされて参りました石綿肺、アルミニウム肺等鉱物性粉じんの吸入によって生ずる他のじん肺を含めて、新たに特別法を制定すべきであると考えたのであります。また、補償につきましては、労働者災害補償保険法改正して、けい肺等特別保護法及び同臨時措置法の補償に関する部分を吸収し、けい肺及び外傷性せき随障害に限らず、潜水病、放射線障害、頭部外傷等類似の重篤な業務上の傷病にかかった者及び両手、両足の切断、両眼失明等重度の身体障害を存する者に対して必要な補償を行なうため、これらの者に対する現行の一時金による打ち切り補償費又は障害補償費にかえて長期給付を行なうことが必要であると考えたのであります。そこでそのような考えに基づき、それぞれ法律案要綱を作成し、再度、前者の法律案要綱についてはけい肺審議会に、後者の法律案要綱についてはけい肺審議会及び労災保険審議会に付議いたしますとともに、後者については社会保障制度審議会にも諮問いたし、その結果に基づいてじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、昨年十二月二十九日に提案する運びとなった次第であります。  次に、それぞれの法律案について概要を説明申し上げます。  まずじん肺法案について申し上げます。  第一に、現行のけい肺等特別保護法では、対象をけい肺に限っておりますが、この法律案では、現行法の施行の過程を通じ、ようやくその医学的実態が明らかにされて参りました石綿肺、アルミニウム肺等鉱物性粉じんの吸人によって起こるその他のじん肺をも広く対象としたのであります。これらのものはいずれもその発生原因、治療の困難性等において非常に類似しておりますところから同様に取り扱うべきこととしたのであります。  第二に、じん肺の予防に関して、労働基準法及び鉱山保安法の規定によるほか、技術の進歩に即応した粉じん発散の抑制措置、呼吸用保護具の整備、着用等じん肺の予防のための適切な措置について使用者及び労働者双方の努力義務を定めるとともに、使用者は粉じん作業に従事する労働者に対して、じん肺の予防及び健康管理に関し必要な教育の徹底をはかるべきこととしたのであります。  なお、これら予防に関する技術的措置につきましては、一般事業場における一そうの促進をはかるために政府といたしましても積極的に技術上の援助を行なうこととし、衛生工学に関し学識経験を有する粉じん対策指導委員を新たに設けて、各事業場について実地に技術士の援助指導を行なうこととしたのであります。  第三に、労働者の健康管理のために、使用者は常時粉じん作業に従事する労働者に対して、その新規就労の際及び三年又は一年以内ごとに定期的に、または新たに肺結核にかかったことが明らかにされた者についてはそのつど、それぞれじん肺健康診断を行なわなければならないこととし、これらのじん肺健康診断の結果の資料は都道府県労働基準局長に提出を求めまして、じん肺診査医の診断または審査により労働者の健康管理の区分を決定することとしたのでありますが、これはじん肺の症状等の決定が一般に困難であることと、この決定の効果として、じん肺健康診断の回数が変わり、作業転換の勧告等が行なわれることとなりますので、公の立場から公正的確にその健康管理区分の決定を行なう必要があるためであります。  第四に、じん肺健康診断の結果、じん肺が管理区分三の程度になっている者については、個々の場合の必要に応じ都道府県労働基準局長が粉じん作業からの転換を勧告して療養を要する段階に至らないよう防止措置を講ずることとし、また、この勧告に従って作業転換を促進させるよう使用者において粉じん作業から転換する労働者に対して賃金の一カ月分に相当する額の転換手当を支払わなければならないこととしたのであります。  第五に、作業転換の勧告を受けた労働者について、使用者の努力にもかかわらず作業の転換が企業内において行なわれがたく、そのためにやむを得ず離職せざるを得ない労働者に対して一は、政府といたしましては職業紹介、職業訓練等についてできるだけ適切な措置を講ずるよう努力いたしますとともに、さらに進んでこれら離職した労働者のために就労の機会を与えるための施設または労働能力を回復するための施設を設置経営いたしまして、その労働者生活の安定をはかるよう努力いたすこととしたのであります。  第六に、この法律の施行に万全を期するよう、じん肺の予防措置等について一そうの促進をはかるために関係研究施設等の整備充実をはかるとともに、じん肺の診断については中央、地方を通じてじん肺診査医を置きましてその公正を期することとし、また、労働省にじん肺界議会を設置してじん肺に関する重要事項を調査審議することとし、法施行に遺憾なきょう期しております。  次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一に、現行労働者災害を補償保険法では業務上の傷病が療養開始後三年を経過してもなおらない場合には、平均賃金の千二百日分に相当する額の打ち切り補償費を支払い、以後一切の補償を行わなくてもよいことになっており、ただ、けい肺及び外傷性せき髄障害につきましては、けい肺等特別保護法及び同臨時措置法によりましてその後引き続き約四年間療養給付、休業給付等が行なわれることになっているのでありますが、この改正法律案におきましては、けい肺及び外傷性せき髄障害に限らず、潜水病、放射線障害、頭部外傷等療養開始後三年経過してもなおらないすべての傷病について、必要の存する期間、打ち切り補償費にかえて長期傷病者補償を行なうこととしたのであります。  第二に、以上のような長期傷病者との均衡をはかるとともに、外傷性せき髄陣容等殖産の身体障害者に対する対策といたしまして、療養開始後三年以内に症状が固定した場合でも、半身不随、両手、両足の切断、両眼失明等労働能力を百パーセント喪失した障害等級第三級以上の重度の身体障害を残す者については、従来の一町金による障害補償費にかえて長期給付金である降雪補償費を支給することとしたのであります。  第三に、長期傷病者補償及び長期給付金である障害補償費に要する費用につきましては、傷病の特殊性、使用者負担の増加等を考慮し、長期傷病者補償については、労働基準法による打ち切り補償に相当する部分をこえる部分について、じん肺に関してはその四分の三、その他の傷病に関しては二分の一を国庫が負担し、障害等級第一級から第三級までの身体障害者に対する長期給付金である障害補償費については、政令で定めるところにより、労働基準法による障害補償に相当する部分をこえる部分の一部を、国旗が負担することとしたのであります。  第四に、今回の改正による長期給付については、現行の保険加入制度のままでは、労災保険に加入していない事業場において業務上負傷しまたは疾病にかかった労働者で、三年間療養を行なっても傷病がなおらない者あるいはなおった後、障害等級第一級から第三級までに該当する身体障害を残す者は、労働基準法による災害補償を受けることができるのみで、これらの長期給付を受けられないわけでありますので、このような場合に対する特別の措置といたしまして、その後かかる事業が労災保険に加入するに至ってその事業主あるいはその業場の労働者の過半数が希望するときは、事業主から特別保険料を徴収して、労働者に長期傷病者補償または長期給付金である障害補償費を労災保険から支給することとしたのであります。  第五に、今回の改正は、けい肺等に対する特別保護措置の根本的検討から出発したものである経緯にかんがみまして、けい肺等臨時措置法が失効いたします昭和三十五年三月三十一日において、けい肺等特別保護法または同臨時措置法による療養給付の支給を受けるべきである者であって、同年四月一日以降なお引き続き療養を必要とするものにつきましては、経過措置として、この改正法律案による長期傷病者補償を行なうこととしたのであります。ただ、これらの者は、すでに労働基漁法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償を受けた者でありますから、これを、新たに三年の療養を経過して長期傷病者補償を受けることとなる者に比較いたしますと、少なくとも打ち切り補償分だけは余分に給付を受けていることになりますので、それに相当する額を減額することとしたのであります。  第六に、長期傷病者補償または障害補償費のうちの長期給付金の支給を受ける者が、同町に厚生年金保険法等の障害年金または国家公務員共済組合法の廃疾年金を受けることができる場合には、その者に対する当該長期給付金の額は、これらの障害年金または廃疾年金のうち、国及び使出者の負担割合に相当する額を減じたものといたし、また、長期傷病者補償及び障害補償費のうちの長期給付金につきましては、労働省で作成しております毎月勤労統計による全産業の労働者の平均給与額が百分の二十以上変動した場合には、その比率を基準としてその額を改訂することとしたのであります。  以上申しのべましたこの改正法律案内容につきましては、他の社会保障制度と関連する問題もあり、将来社会保障に関する制度全般の調整がなされる機会におきましては検討を加えなければならないと考えておりますが、そのような見地より国庫負担、厚生年金保険の障害年金等との調整及び賃金情勢の変動に伴う長期給付金の額の改訂につきましては、本法案に定める措置を当分の問のものとし、そのような機会に検討して必要な措置を講ずることとしたのであります。  以上がじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を提案するに至った理由及びその概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。  ただいま議題となりました身体障害者雇用促進法案につきまして、その提案理由及び内容の大綱を御説明申し上げます。  最近におけるわが国経済の進展により、雇用情勢は一般に好転しつつあるどころでありますが、身体障害者は、その障害のために就職の機会が少なく、一般に比べ多数の者が失業または不完全就業の状態に置かれているのであります。  政府といたしましては、これまで、職業紹介の強化、職業訓練の充実等行政措置の推進をはかり、身体障害者の雇用の促進に努力して参ったのでありますが、なお、その就職は困難な実情にあるのであります。  諸外国の状況をみますと、現在すでに本数ケ国が身体障害者の雇用について立法措置を講じており、また、昭和三十年には、国際労働機関第三十八回総会において、「身体障害者の職業更生に関する勧告」が採択されているのであります。  これら諸般の情勢にかんがみ、労働省は、身体障害者の雇用の促進について根本的対策を講ずる必要を認め、各方面の意見を求めつつ鋭意検討を進めて参りましたところ、このたび成案を得るに至りましたので、ここに身体障害者雇用促進法案を提出いたし、御審議を仰ぐことといたした次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。本法案は、身体障害者が適当な職業に雇用されることを促進することにより、その職業の安定をはかることを目的としておりますが、その具体的措置といたしまして、第一に、身体障害者の雇用を促進するため、公共職業安定所は、求人者に対して、求人の条件についての指導、雇用に関する技術的事項についての助言を行ない、また、身体障害者に対しては、就職後においても作業の環境に適応させるために必要な指導を行なう等公共職業安定所の業務をさらに充実することといたしました。  第二に、身体障害者の就職を容易にすることを目的として、都道府県は、事業主に委託して、身体障害者の能力に適した作業の環境に適応させるために適応訓練を実施することとし、これに必要な経費の一部を、国が補助することといたしました。  第三に、国及び地方公共団体等に対しまして、身体障害者雇用率を定め、任命権者はこの率以上であるようにするため、身体障害者の採用計画を作成しなければならないことといたしました。また、民間の一般、雇用主に対しましても、身体障害者雇用率を定め、雇用主は、この率以上であるように身体障害者を雇い入れるように努めなければならないこととし、公共職業安定所長は、必要があると認める場合日には、百人以上の労働者を使用する事業所の雇用主に対し身体障害者の雇い入れ計画の作成を命ずることができるごととして、その雇用の促進をはかることといたしました。  第四に、通常の職業につくことが特に困難である重度障害者に対しましては、その能力にも適合する特定の職種を定め、これについては一般の身体障害者雇用率とは別に重度障害者雇用率を定めることによって、重度障害者についてもその就職の促進が円滑に行なわれるような措置を講ずることといたしました。  第五に、身体障害者の雇用の促進に関する重要事項を調査審議させるため、労働省に身体障害者雇用審議会を設置することといたしました。  以上のほか、身体障害者の雇用の促進について、政府国民一般の理解を高めるため必要な措置を講ずるとともに、労働大臣は身体障害者の職業安定に関し必要な事項についての調査研究に努める旨を規定いたしました。  以上この法律の制定常並びに法律案の概要を御説明申し上げた次第であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  197. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  198. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。  ただいまの三法案に対する細部説明並びに質疑は、次回以降にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれで散会いたします。    午後五時四十二分散会