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1960-03-01 第34回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月一日(火曜日)    午前十時三十分開会   —————————————   委員の異動 本日委員赤松常子君辞任につき、その 補欠として田畑金光君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            佐藤 芳男君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            秋山 長造君            片岡 文重君            小柳  勇君            村尾 重雄君            竹中 恒夫君   委員外議員            阿具根 登君   国務大臣    労 働 大 臣 松野 頼三君   政府委員    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    労働省労働基準    局長      澁谷 直藏君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働省労働基準   局労災補償部長  村上 茂利君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査  (夕張における炭鉱爆発事件に関す  る件)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、ただいまから委員会を開きます。  労働情勢に関する調査の一環として、夕張における炭鉱爆発事件に関する件を議題といたします。本件について、二月二十一日派遣委員からの報告がございましたが、この報告に対し派遣委員に御質疑がおありの方は質疑をお願いいたします。——別に御質疑もないようですから、派遣委員の御報告は、これを御了承願うことにしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  4. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、夕張における炭鉱爆発事件について、政府当局に対する質疑を行ないます。ただいま政府からは、通商産業省小岩井鉱山保安局長鉱山保安局矢島石炭課長労働省からは、渋谷労働基準局長村上労災補償部長山口安全課長等出席をいたしております。質疑のおありの方は逐次御質疑をお願いいたします。
  5. 坂本昭

    坂本昭君 夕張炭鉱爆発事件後ちょうどまる一カ月目になっておりますが、その後の原因調査実情がどうなっておるか、御説明を承りたいと思います。
  6. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 夕張炭鉱の今回の大爆発につきまして、ごくあらましお話し申し上げまして、特に先生のおいでになりました以後わかります範囲内で御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、二月一日一時五十分ごろに、夕張の二鉱本坑で大爆発を起こしまして、これが一応全坑爆発というような様相の大爆発であります。従いまして、ほとんど当初内容がつかめませんような状態でありましたが、爆発坑内の数カ所に火災が起こりまして、大体はっきり火の個所を認めておりますのは、六カ所ぐらいありましたのですが、もう私が現地に参りました三日の昼ごろには、非常に険悪な状態になりまして、また、いつ二次爆発が起きるかわからないというような状態で、もう三日の午後一時半ごろには全員退避をいたしまして、四区には水没というような方向をはっきりきめたわけであります。その後現在に至るまで、もちろん四区の水没状況は着々進んでおりまして、目下八分ぐらい水没が完了いたしております。おそらく数日後には予定水没が完了するのではないか。大体十二万立方余りは、すでに注水を終わりまして、おそらく数日後、あるいはおそくとも一週間ぐらい先には、予定水没ができるのではないか。その上にもう一カ所、前々から燃えておった個所があるのでありますが、これはちょっと水没ができませんが、坑口から注水をいたしております関係でおそらく今の状態では、漸次火勢が衰えて、消えるものではないかというふうに考えております。それから三区方面、あるいは二区方面には、爆発後も火災個所が相当ございまして漸次これらは直接消火をもちましてほとんど消火はいたしましたが、現在一個所かなり猛烈に消えない所があるのであります。で、この個所につきましては、もちろん直接消火の方法をとっておりますが、一方、もしこれがどうしても消えない場合を予想いたしまして、非常に作業が困難になるといった場合には、その区域をごく小区域取りかこみまして密閉をいたします準備を今進めております。先生の参られました十日前後から以後におきましては、大体火の状態はかようなことでありまして、個所も非常に少なくなり、現在はまあ一個所中心消火作業をしておるというような状態でありますので、現在ではもっぱら崩落しました個所の取り明けにかかっております。御承知のように、下部方面は、あまりひどい損傷がございませんので、これはかなり人員をもちまして、ベルトの修理あるいは坑道の崩落個所修理というようなものに当たっておりまして、下部半分は割合に急速に回復するのではないか、しかし、上部は非常に大きく破壊されておりますので、これらの取り明けにつきましては、現在一日総人員約二千人くらいの人数を使いまして、これは非常に作業が困難なために四交代作業をいたしております。従って、一番多く入りますときには、七、八百名、三番、四番あたりの少ないときでも二、三百人といったような、かなり人数を入れまして、急速な坑内の取り明け整備に着々進んでおるわけであります。今、一番心配になるのは、三区の上部火炎個所でありますが、これはごく最近の報告では、かなり火勢の強いものでありまするけれども、ただいま申し上げましたように、万一の場合には、小区域密閉をはかるという作業も並行してやっておりますので、まず直接消火で、坑内火災につきましては、一応処理がつくのではないかという見通しはつけております。  それから、全般見通しとしましては、当初立てました、約半年くらいかかるのではないかという予想に対しまして、現状のところ、大体予想通りに進んでおって、目下変更する必要はないのじゃないか、大体早くて半年くらいかかるというようなごくあらまし状態でございますので、さよう御了承をお願いいたします。
  7. 坂本昭

    坂本昭君 原因調査は……。
  8. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 原因につきましては、もちろんただいま申し上げました四交代で、肝心な三区の上部の取り明けを上下からかかっておりますので、従って、監督官も、四交代で、全部各方に一人ずつつけまして、原因と思われる予想いたしました事態の出てくることを入念に調査をいたしておるわけであります。はっきりこれであるというような点につきましては、まだ確証を得る段階に至っておりません。従いまして、現在のところ、原因が何であるという点につきましては、まだはっきり申し上げかねるような状態でございます。
  9. 坂本昭

    坂本昭君 本日、資料を出していただきまして、それを点検しますと、第二鉱三区坑の保安日誌、これは非常に厖大なものになるので、ごく一部だけしか実は提出していただいておりませんが、それを見ますと、若干気のつく点がございます。十二片の材料昇、これは通行禁止になっておるところですが、一月三十日の午前八時三十分、ガス濃度四・八%、そして午後になりますと十九時三十分、五・五%、三十一日の十八時、四・八%、非常に高い濃度通行禁止地域があります。これは位置としては三区の切羽にだいぶ近いところでこの辺はガス・コンターの結果を見ましても比較的メタンガス濃度の高まるところだと思われます。しかし、いずれにしても、こういうところがあるということ。さらにもう一つ、第二鉱の第二運搬鉱保安日誌で見ますと、やはり密閉された旧深部捲室、これも通行禁止のところ、これが一月三十日の朝、八時五十分にスケールアウトという印がついております。これは三%ではかったのか一〇%ではかったのかわかりませんが、スケールアウトとなって、あとの一月三十一日の、時間は書いてありませんが、二方と書いてありますから、たぶん午後だと思いますが、これで八%というのが出ております。この旧深部捲室の密閉した通行禁止区域がどの部位に当たるか、この資料の中に地図があります。この密閉地域爆発中心地に比較的近いのではないかという、夕張炭鉱に長くおられた人の意見を今聞いたのであります。どうもこういう重要な密閉個所について夕張保安規程を見ますと、保安規程の中にも指示があることはあります。こういう重要な密閉個所について特によく点検しろということが書いてありますが、一応こうやって書いたままで、そのままになっておる。ガス抜き操作も何もやっていない。私はこの二つの点で一つ切羽に近いところ、一つは問題の爆発中心地に近いところに非常に濃度の高いところが現に保安日誌に記載されておる。しかも、それに対して何らの措置がとられていない。これは一体どういうわけでこういうことが行なわれておるのか。また、夕張保安規程でも、一応は注意しろということが書いてあるが、具体的にその後何らの措置がされていない。これは一体どういうわけでこういうことになっておるのか、局長のお考えを承りたい。
  10. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 炭鉱坑内におきまして規定ガス量以上になる場合はままございます。今お話個所が、日誌では相当のガス量が出ておるというお話でございますが、もちろん次の方の係員は、前方の日誌によりまして、あるいは本人から直接に連絡を受ける場合もありますが、それによって当然措置をしなければならぬという義務を持っておりますが、まだ私ども現地のものも日誌領置したままでまだ十分日誌を見るだけの余裕がございません。完全に領置をして、もちろん余裕が出てくれば見ておると思いますが、まだ火災も十分にとめきれないという状態で、もうかなり見ておるのではないかと思いますが、非常にお話がこまかくなりまして、具体的にその場合どういう措置をやったかという点については、今ちょっと御説明ができかねるのでありますが、私の方といたしましては、もちろん、はっきり規則にも規定がありまして、一・五%ガスがあれば電気関係は一切とめてしまう。それでもなおかつ改善ができないという場合には人間を待避させてしまう。二%もあれば交通はとめてしまう。通行は遮断してしまうというようにはっきりいたしております。ただその場合その他の通気改善あるいは人命を救助するためにやむを得ず作業をしなければならぬ場合がございます。この場合には、保安管理者が直接その場につきまして、作業をするときには四%も五%もある場合に、作業をすることはございます。これは例外規定で従来も特にガスの多い場合で通気その他で改善をはからなければならぬという特殊な作業のときには監督部長が認めまして、そうして作業をいたすことがございます。何らかの理由があってもちろんガスがたまっているものと思いますが、そのたまったガスに対してどういう措置を山でとったか、あるいはわれわれの方でとらしたかという点につきましては詳細御説明がまだできないような実情でございます。
  11. 坂本昭

    坂本昭君 今、一番貴重なデータを書いた保安日誌領置して、それを点検してない、これははなはだ私はうかつな話だと思うのであります。もちろん、私がそれを見たのは一月三十日、三十一日、たった二日間だけです。ですから、その前、過去にさかのぼって、一月、二月あるいは一年間にどういう状態であるということは今回点検することができなかった。しかし、それを点検することができれば、坑内における保安規程がいかに守られておるかということもよくわかるだろうし、また、さらに今度の原因についてもある程度専門的にうかがい知ることができるのではないかと思うのです。私たちが調査に行ったときも、実は鉱業所の所長もガス・コンターをやった時間を正確に実は覚えていませんでした。その日誌を見ますというと、九時から大体十二時まで三時間ぐらい主要扇風機をとめている。まあ、こういうことが相当な大きな役割を果たしているのではないかというのは商工委員会川上委員も同じように指摘しておられる。やはり、こういうデータを全部事故が起こったからといって監督官庁で、あるいは何と言いますか、警察関係領置せられてほっぽらかしにしてあと調べないということはいかにも非科学的過ぎると思います。これは当然すみやかにあなたの方で専門家を出してそれを調べて、そうして、こういう点があるということを指摘することによって原因の究明も明らかになる。実はきのう午後今の資料を点検しましたら、通産省の方の方も実はまだよく見てないということでしたが、そういうことでは一体何のために資料を出しているのか、こういう爆発事件調査を一々非専門家国会議員がやるようなことではとても間に合いません。このようなことでは、この重大な事故調査を究明することができない。領置してあるからといって、そのまま放置することは私は職務怠慢ではないか。もっとその点、一体原因調査についての態度あるいは組織、そういうことについて所管局長の御意見を承りたい。
  12. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 言葉を返しまして大へん恐縮感じがするのでありますけれども、もちろん私ども見ていないというのは、全然見てないわけじゃありませんので、爆発当日、あるいは前一週間ぐらい、ごく必要最小限度のものはもちろん目を通しております。しかし、非常に厖大日誌領置しておりますので、私が参りましたときでも箱に三つぐらいぎっしり詰まっておりますので、とてもまだ人員の収容もできない先に限られた監督官がそれを見るというわけにも参りませんので、一応領置しておるというお話を申し上げただけでありまして、もちろん必要最小限度のものは取りあえず当然見ております。もうその後もちろん箱を開けて見ていると思いますが、私は四日に帰りましたので、まだその箱を領置したままの感じを持っておりますので、ただいま申し上げましたが、もちろん、その後、見ていると思います。さっそく連絡を取りまして、どの程度見て、どういう状況になっているか連絡を受けるつもりではおりますけれども、当然これは見ていると思います。それから非常に日誌というものは数多くありまして、これは現地監督部にももちろん報告はございません。これは山の日誌でございますから、山の保安機構責任者がそれぞれの日誌に目を通すという建前の日誌でありまして、これはもちろんこまかいものは現地監督部でももちろん見ておりませんし、まして東京では全然これに触れることがないわけであります。しかし、重要な問題でありますから、平生は目に触れないものではありまするけれども、もちろんこういった事故の場合には、現地では当然まず第一に見なければならぬ問題でございますから、限られた日数のものは必ず見ておると思います。それからもうすでに、大半は日誌内容検討済みだと思いますが、それらにつきましても後日はっきりさせまして御連絡いたしたいと思います。
  13. 坂本昭

    坂本昭君 領知したものについてどこまで点検したかということについてはあと報告するということでございましたが、私も現地監督部長不眠不休でやっておられたことに対しては心から敬意を表したのですが、たとえ一人、二人が不眠不休でやっても、こういうことについては組織的な科学的調査をやる必要がある、そういう点でこの所管の省で、こういう事故に対してどういうふうな対策をもって、たとえば監督官が足りないからというけれども、足りない場合はよそから呼び集めることもできると思う。どういう組織的な対策を持っておるかあわせて御説明をいただきたいと思います。
  14. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 監督官の点でありますが、これはまあ全国二百二十五名現在持っております。まあ本省にはわずか十人でありまするけれども札幌には四十四、五名おると思います。従いまして、ああいう大変災の場合に、人数が足りなければ一応幾らでも部長の判断で出し得る余裕もございます。札幌現地だけで足りないという場合、今まではもちろんございませんけれども、全国的に見まして、一地区で足りないという場合には、全国的にもちろん操作する考えも持っておりますし、その点につきましては現地部長に一任いたしておりますが、夕張の場合も、当初は十名近く現地に参っておりまして、その点では人数が足りないということはないと思いますが、先生のおっしゃる保安日誌までもすみやかに目を通せというような御質問には、あるいはまあもう少し人数をふやして早くそういった点にも手をつけるのが至当かとも思いますが、現地部長一つ変災に多く予算をとられますと、ほかの監督が手薄になりますもので、その点には頭を悩ましておりまして、できるだけ最小限度人数調査、始末をしたい、そしてなるべく一般の巡回監督を薄めないという考え本省も強く持っておりますし、現地部長もそういった考えかなり強くとらわれる関係で、まあやればでき得る増員の人数も、まあ特に手控えておるということはございませんけれども、まあ最小限度に押えているのではないか、かように考えております。
  15. 坂本昭

    坂本昭君 ちょうど前の日にガス・コンターをやって、しかも扇風機を三時間ほどとめておりますが、その三時間の間のガス濃度、そういったものが今の資料の中に出ております。ところが、案外、切羽に近いところで停止後一時間ぐらいで三%すみやかにこえているというような点があって、非常に夕張炭鉱ガス発生が強いというような印象を受けるのであります。さらに主要扇風機を再開後一時間ぐらいしてもうすでにフアンが回っているにもかかわらず、さらに濃度が上昇している、そういう地点も見られております。従って、こういうことから見ますと、内部的に八、九%爆発可能濃度といいますか、そういったガスの存在が考えられるのではないか。それから第二運搬坑の旧深部捲室、ここでは八%というガスが上がっております。従って、こういうことが十分考えられるし、ことに特免区域についても、ガス・コンターをやった後に十二時間で非常に高濃度ガス残溜をして、場合によると偶発的な崩落があって電線をショートさせる、そういうようなことでも爆発可能性というものは十分あると思います。いずれにしても、このガス濃度の高いところで扇風機を停止させる、ガス濃度が高くなる可能性のあるところで扇風機を停止させるということは、これは専門的にいえば非常に問題じゃないかと私は思うのですが、この点は保安規則の上ではどうなっているのですか。
  16. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ガス・コンターにつきましては、もちろん私の方もその必要性を認めておるわけであります。これの始まりました当初は、北海道でたまたま扇風機が停止しましたときに、夏の間は逆流をする場合があります。これはもちろん坑口位置によって、入排気の位置によって変わって参りますが、扇風機がとまりますと自然通風でいくわけでありますが、ときどき停電というものがありますもんですから、特にガス・マインでは停電時の対策は非常に重大な問題になってくるわけです。そこで、停電がありまして、坑内ガスの動き、移動状況湧出状況がどういうふうに移動されていくかということを前もってつかんでおくことが非常に大切な問題になって参ります。そこで、夏の間は私どもの特に必要な山につきましては監督官を派遣しまして、このガス・コンターを実施をやることがございますが、たまたま夕張の場合には冬季に山が自主的に実施いたしておったわけであります。従いまして、私どもの方も監督官は立ち会っておりませんが、もちろん私の方では非常に重要なことでもありますし、必要な問題でありますので、山が自主的に扇風機をとめまして、ガス移動状況を調べるという点につきましては決して拒否するどころか、むしろ賛成をいたしておるわけであります。ただ、どこの山でも簡単にできるという問題ではございませんので、特に夕張のごとく非常に技術陣もそろって設備もいい山が自主的にやる場合においては、私の方で当然認めておるわけであります。ただ、このガス・コンターをやりますときに、もちろん全部電気関係をとめまして、そして一切の扇風機をとめてしまうわけです。扇風機をとめると同時に、もちろん電気関係あらゆるものもとまっておりますから、坑内ガス湧出移動にまかせておるわけです。その状況を調べる場合には漸次、坑口からまずまあ主扇を動かして漸次に改善されていく中を見てくるわけでありますから、一たんすっかり測定ができまして元の状態に復する場合には、もう順々に確実なところから送電を始めていくのでありまして、ガスのたまっておる中で電気が生きておる個所は全然ないわけであります。従って、今御心配のような点は実はないわけであります。確実な区域から順次に区域を占領していきまして、全部の坑内にそれを波及せると、従って、全部大丈夫だというところの区域に限ってその電気を次々に入れて坑内全般に及ぼさせると、そして元の状態に戻すというやり方をとっておりますので、扇風機をとめてガスがたまったからそこの危険な区域電気その他の危険があるということではございません。
  17. 坂本昭

    坂本昭君 それは局長説明は私も当然のことだと思うのですね。ところが、そういうふうな操作がこの保安日誌の上においてとられたということの証拠がないのです。規則の上では当然そうしなければならないし、それからまた、ガス・コンター直後の爆発でないことも明らかですが、どうもそういったような慎重な操作はとられてないふうに私は思うので、これは一つ監督官庁でもう一回保安日誌をこれは専門的に検討してもらいたいと思う。私の見たところでは、いろいろ形式的には符号やらマークやら書いてあるのですけれども、どうも大事な点が欠けているのではないかということを感ずるので、その点もう一ぺんよく御検討の上で実際そういうふうに処理しているかどうかは御調査を願いたい。  それからなお、今のこととだんだんガス濃度関係してきますが、基準局長にもお伺いしたいのですが、労働基準法では四十二条に安全及び衛生の問題としてガスのことが触れられている。それから労働安全衛生規則の百五十三条に、「毎月可燃性ガス含有率を検査すること。」「メタンガス含有率が百分ノ一・五以上の場合には、」「動力を停止すること。」というふうに記載されている。ところが、実際に一・五%以上の場合に労働者を退避させ、もちろん改善措置を講じてかつ動力を停止する、こういう労働安全衛生規則と、それから夕張炭鉱所における保安規則、これはそこにありますけれども、あの中に七十七条には「電気工作物設置個所においては動力を停止する、」そう書いてあって、この労働安全衛生規則に書いてある文章通りとちょっと違うのであります。これはどうしてこういう食い違いが出てくるものか、一つ説明いただきたい。
  18. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまの御質問でございますが、炭鉱鉱山保安につきましては、御承知のように、労働基準法によりまして、通産省所管になっておりますので、この安全衛生規則の百五十三条は、通産省所管になっておりまする炭鉱保安を除いた事業場についての規則でございます。従って、その鉱山保安法規定とは関係のない規定になっておるわけでございます。
  19. 坂本昭

    坂本昭君 それではあれですか、同じようにガスは、メタンガス労働省所管下にあろうとも、通産省所管下にあろうとも、メタンガス化学的性質は同じであり、その危険性も同じなのですけれども、法律の上では労働省通産省で違うということになりますか。通産省一つ鉱山保安規則の面からの御説明をいただきたい。
  20. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 今の保安規程の七十七条というものは、この七十七条の三項にあります保安規程のこれは、私の方の法規の関係では、規則の百二十四条にこれがうたってあるわけです。この百二十四条には「坑内作業場またはその排気の気流中において、可燃性ガス含有率が一・五パーセントを超えるときは、当該係員は、ただちに当該箇所への送電を停止し、」と、こうはっきりあります。この保安規程にも、この趣旨をとりまして、一・五%をこえた場合にただちに送電を停止する、これと符合させておるわけであります。
  21. 坂本昭

    坂本昭君 実は夕張炭鉱保安規程も法的に百二十四条を認めていないということではないのです。しかし、その文章の所を読むというと「電気工作物設置個所において」ということを特に文章にしてあって、あとは石炭鉱保安規則第何条第何条によることはもちろんのことと書いて、特に電気工作物設置個所において守らなければならないということが特に何か強調してあって、まさかこれは専門家ばかりのことだから、これだけがすべてだとは思わないと思いますが、何かその辺で、内容の上において、ルーズになりはせぬかという点を私はおそれるのであります。そういうことが鉱山における保安を厳格に守らないような一端をなすのではないか、そういう点を心配して特に夕張保安規程七十七条について、こういう書き方でよろしいかとお尋ねしておるわけです。
  22. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 各山に作らしております保安規程は、私の方の保安規則でうたってあります以外のことで、その山のそれぞれの実情に応じまして、こまかく規定をする場合に、山に自主的にこれを作らしておるわけであります。しかし、自主的と申しましても、もちろん監督部長がこの内容を認可いたしておりますし、これを出しますときには保安委員会の議を経なければならぬということになっておりまして、各山におきましても保安規程を作る場合には、労使双方の同数出ております保安委員会にはかってそうしてその議を経ましたものもなおかつ監督部長の認可が必要であるということでこれがきめられておるわけでありまして、規則で十分できる。その中でなおかつ山の実情に応じて当然自主的にきめるべきものもこの規程できめさしておりますので、ルーズになるという点はもちろんございませんし——規則以外に特別に設ける自主的な規程でありますから、もう規程全般がもちろんルーズになるという点はございませんけれども、この場合、むしろ規則にうたってあるよりもなおかつ一歩深く入った取りきめをするのが保安規程の任務でありますから、規程をゆるめるというような点は毛頭考えられませんし、規程以外の点でなお一そう山でもってきめておくべきことがこの保安規程に載せられておりますので、やわらかくなるということは全然ないはずでございます。
  23. 坂本昭

    坂本昭君 それは局長説明通りでなければならないことですが、今の百二十四条の「可燃性ガス含有率が一・五パーセントを超えるときは、」送電を停止し云々ということですね。これは実際今の保安日誌を見ますというと、一・五%に近い一・四%とか、そういうものはかなりあります。一体これはどういうことなんですか。
  24. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) これは私係員がはかって一・四と認定しておりますので、私がこれは違うというわけにはもちろん参りませんけれども、私が臆測に臆測を重ねれば、実際にはかったときに一・五とか六はかって、一・五、六になりますと送電を停止しなければなりませんから、これは少し大へんだというので、あるいは一・四とつけないとも限らないという臆測はできまするけれども、係員が責任を持って一・四とつけておりますものを、私がそれを違ういうわけにもちろん参りませんし、正しく一・四であったかというふうに考えております。たまたま一・四のガスが非常に多いという御指摘のようでありますが、それらの点につきましては、今後少し一そう内容検討してみたい、しかし、故意に私は一・四とつけているというふうには見るわけには参らないと思うのであります。
  25. 坂本昭

    坂本昭君 いや、今一・四ということをあげたのですけれども、実はまだこれを見ますと一・七、それから一・五、かなりあるんですよ。そして特別にこのいわゆる通行禁止密閉地でないところで一・五%をこえている数はあがっているんです。これはどうも私のようないわばしろうとにはよくわからないんです。規則には一・五%のときには電気をとめろと、こう書いてある。相当厳格なのにもかかわらず、これを見ると一・四というのもあれば、一・七というのもある。一・五というのもある。そして保安日誌の上では何もあぶないともどうも書いてない。これはずいぶんのんきだなあというふうに思うんです。これは一体規則というものは何のためにあるか、一つ規則は行なわれていないじゃないですか。これは何かもう一ぺん専門的に見ていただきたいですね。私の指摘するのは間違っているのでしょうか。確かに密閉地だということについては、これは特別扱いを受けていますが、数の上にあるんですよ。とにかくこの中に一・五以上の数というものは幾つかあがっている。で、こういう場合にみんな平気な顔してやっている。私のように法律を順守したい人間から見るというと、ずいぶんこれはいいかげんなことをしていると、こんなことで鉱山の保安というものが守れるのかどうか、特に今の労働省の方はかなり一般的に厳格に書いてある。ところが、この労働省通産省とではメタンガスの取り扱いが別になっている。これはおかしいですよ。こんないいかげんなことはないと思う。どうしてこういう矛盾が生まれてくるか、これを一つ特に御説明をいただきたい。
  26. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただ保安日誌だけで見ますと、非常に規定以上のガス量のところがございまして、ちょっと不思議に思われる点がおありと思います。しかし、規則にはかなり入念にこまかく書いてありまして可燃性ガスが一・五%をこえるときには、これはもう送電を停止するということになっております。それでもなおかつ状態を改めることができない場合には、鉱山労働者を当該の区域から退避させる。そして一定の警標を掲げるということになっております。しかし、特例がございまして、電気工作物がなく、特別の事由により特に可燃性ガスの発生量が多い個所であって、かつ保安技術職員が付き添い作業時間中しばしば可燃性ガスの測定をしているときは、可燃性ガス含有率が二%に達するまではよろしい、こういう規定がございます。ですから一・五をこえておりましても、専任の保安の職員が付き添って、そして特に何回もガスの検定ができると、付き添いでやっているというような場合には、二%までいいと、そしてさらに二%をこえましても、特別な事由により特に可燃性ガスの発生量の多い個所について、鉱業権者が鉱山保安監督部長の許可を受けたときは、可燃性ガス含有率が二・五%に達するまではよろしいと、監督部長の許可を得てやる場合には、これは二・五%までよろしいと、さらにたとえば人命救助の場合、それから通気改良の場合、それから保安に関する特殊な作業、その作業かなりガスの中でやりますけれども、その作業を終えれば非常にあと状態がよくなるという特殊作業の場合は、これはかなりガス量でも実際には作業さしております。従いまして、その日誌の中にあります通気改良のために坑道を切り払っていくような作業につきましては、まあ場合によりましては三%も四%も実際には日誌に書かれるような場合もございます。まあそういう特例がございますので、全部一・五以上なら電気をとめてしまえ、人間を退避させてしまうと、そういうわけではございません。かなり微妙な点がございますけれども、まあそれぞれのガス量に応じた特例というものを設けておりますので、そういう点で規定ガス量以上のやつが中にぽつりぽつり現われてくるのじゃないかと思います。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 そういうような場合には、これにも「通行をしや断しなければならない。」と書いてあるし、さらに夕張炭鉱の規程の中にも、特に警標を掲げ、さらに点検した人の氏名を書けというふうに、規則ではなり厳格になっております。実際にそれが行なわれてきた。また、そういう危険な場所が長く続く場合にガス抜きの装置などをやってきた。ただあの保安日誌だけではわかりませんので、この点は夕張の事例にかんがみて、全国の炭鉱について十分な保安の監督方を要望しておきます。  なお、労働省基準局長に再びお尋ねしますけれども鉱山保安法の例の五十四条で、労働大臣あるいは基準局長の勧告の問題が出ておって、この前の説明では、大臣から大臣への勧告は一度もない。基準局長から鉱山保安局長への勧告は昭和三十一年二月二十四日に一ぺんある。しかもその勧告の趣旨は、ガス爆発物及び自然発火等の危険性を内包する石炭鉱山についての保安に留意すべきこと、勧告の趣旨だけ拝見したのでは、はなはだ通り一ぺんなお役所風の勧告にすぎない。こういうことでは、今のように、労働省規則通産省規則と若干矛盾があるようにもうかがわれるし、労働省炭鉱労働者の安全と衛生についてきわめて冷淡であると言わざるを得ない。実際に今指摘した通り、たった一ぺんしか局長保安局長に対して勧告していないのですか。
  28. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 法律によりまして正式に文書による勧告をいたしましたのは、三十一年の一回だけでございますが、その他問題の起こるたびに、あるいはまた、その他法規等について検討を要する事項がありますたびに、鉱山保安局とは常に密接な連絡をとって協調をいたしておる次第でございます。  それからなお、鉱山の労働条件の問題につきましては、労働省といたしましては、これは毎年重点事項の一つとして取り上げておる事項でございまして、現に三十四年度の監督方針におきましても、管内に炭鉱を持っておる労働基準局につきましては、必ず最も重点事項の一つにこれを取り上げて実施するように厳重に指示をいたしておる次第でございます。  なお、三十三年の一月から十二月までに労働省の基準局におきまして、その工場、事業場につきまして監督いたしました件数は、総件数におきまして十六万九千七百二十四件でございますが、そのうち鉱山につきましては、定期監督、申告監督、再監督を含めまして総数におきまして五千五百九十一件の監督を実施いたしておりまして、労働省といたしましては、この鉱山関係について特に手を抜くとか、あるいはそれを怠っておるとかというようなことはもちろんございませんので、私どもは今後ともあくまでもこの方面監督につきましては、重点事項の一つとして遺憾なきを期して参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 出されました資料の中に、保安委員会の議事録が出ております。これは全部ではありませんが、これを見ましても、どうも少し保安委員会が厳格にかつ十分に活動していないのじゃないか。これはもちろん企業家としても、あるいはそこで働いている労働者としても自分の一身のことですから、命のことですから一生懸命になるでしょうが、やはりなれっこになるということは人間の惰性であります。従ってこういうことについてはもっと厳格な指導が必要じゃないかと思う。たとえば、この議事録を見ますと、三十三年の一月の十七日のところには、「要望事項」として、今度問題になった第二鉱方面ですね、これは深部採炭のために不時噴出ガス量の増加が予想される、で、「必ず先進ボーリングを実施し誘導する様に努力されたい。」——必ず「誘導する様に努力されたい。」という、えらい一番最後はなまぬるい私は「要望事項」になっているような感じ がするのですが、こういうことが、その後も誘導施設を強化しているかどうか、どうもこれだけの資料では私は十分うかがい知ることはできませんが、この保安委員会の議事録を見てみますと、こういうことも書いてあるのですよ。三十四年の五月十九日、ちょうど北海道でもだんだんと農耕の時期になる。山にはワラビが取れる時期になる。これにはこう書いてあります。「山菜」、これはワラビだということを書いたのじゃないでしょうかね、「山菜採取及農耕時期」に入ると、現場着のままで炭鉱の中に入る。だから、ポケットにたばこだとかマッチを入れて入るから、特に気をつけて調べて、そういうものを持って入った者は「減俸」及び「叱責」、怒れということを言いてあるのです。ずいぶん、私はね、これはたんぼが忙しくなったときにたんぼ着のまま坑内に入る、それでポケットにマッチやたばこが入っておって非常に危険だからこういうことを取り締まって、たばこやマッチを持って入った者は減俸処分にせよ——何かえらい、保安委員会というようなものはまるでのんきなゆうちょうな議論をしているというふうな私は感じがするのですね。少なくとも、事故が起こってからわいわい騒ぐというよりも、もっと厳格なこの保安規則に対する指導監督というものが行なわるべきではないか。これは私は企業家に対しても労働者に対しても同様に言えると思うのですね。そういう点では、たとえばあの夕張炭鉱では、去年「黒ダイヤ」という非常にりっぱな映画を作りました。私も見ました。しかし、あれは政治的な宣伝映画であって、ああいうことをするひまがあったら、私はもっとこの規則を徹底してやればこういう不測の事故は起こらなかったと思う。社長が慰霊祭のときに涙を流して弔辞を読まれておられるけれども、私はそんな映画を作って喜んでいるひまがあったならば、もっとこの保安規則を徹底してやればこういう事故は起こらなかったと思う。そういう点はまだ問題があるのです。たとえば、石炭鉱保安規則の中には、災害時の救護についてのいろいろな定めがあります。で、七十五条の4には、甲種鉱山の救護隊員については三カ月に一回以上演習をするような定めもある。今度の保安日誌あたりは二日くらいのことですからどういうふうな演習が行なわれておったか、これは知ることができません。しかし、少なくとも救護に入った人が途中でマスクを少し動かしたために一酸化炭素中毒で死んだということは事実であります。しかもかなりな熟練した人であります。しろうとが入って事故を起こしたのじゃない。こういう点はこの規則に定められたことが的確に行なわれていない。私はそう疑わざるを得ないのです。そういう点で労働省もずいぶん怠慢であるが、肝心の通産省自身がこういう規則の厳守について今のようなことでは私は非常な事故が今後重ねていくのではないかと思う。  この間、二月の中旬に、大臣は鉱山経営者を呼んで警告をしております。保安管理を徹底せよという警告をしている。しかし、これをただ言葉で警告したってしょうがない。具体的にどういうふうにこの保安を的確に行なうか、局長の具体的な御方針を聞かしていただきたい。
  30. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 最初の、まあ保安委員会でありますが、保安委員会は山に五十人以上の労働者を持っております山には必ず保安委員会を作れというふうにきめております。従って、各山には保安委員会がございまして、労使まあ同数出ておるわけであります。で、まあその山の保安の重要な事項を調査審議するということになっておりますが、この保安委員会の活動状況というものは、まあ常時私どもの方でももちろん見ることは必要だと思っております。しかし、まあ従来これは自主的に山に設置させている問題でありまして、山の労使の方がこの保安委員会を通じて自主的に保安の改善をはかるというのが趣旨でありますので、当初は——保安法のできました当初は、私どもの方の監督官を立ち会わせたり、あるいは中に入ったりしておりましたが、まあかなりいろいろの点であまりまあ好ましくない点もございますので、むしろまあ自主的におまかせしてまあ時おりもちろん報告はとっておりますが、かなりまあ膨大なものになりますので、まあ全炭鉱のすべての委員会状況はとっているというわけではございません。現地ではそれぞれの者がかなり詳細に見ていると思います。ただ、いま先生から非常にこまかい御指摘がございまして、私もこの夕張かなりのんきに見えますこの保安委員会の要望事項を見まして、実はびっくりいたしておりますが、あのガス・マインにしては非常にのんきな要望事項が書いてあります。仰せの通りであります。これらの点につきましては、十分に一つ実情調査してみたいと思います。夕張は御承知のように、私の方では典型的な、ガス・マインでありまして切羽につきましてはガス量が非常に多いことも十分承知しております。一カ月ばかり前に私の方の詳細な調査もいたしまして、かなりやかましい執達をしております。特にガスが多いという関係で、保安局長からも社長あてに注意がほしいという現地部長から要望がありまして、本年の一月私からも社長あてに厳重なる注意が行っております。従って、切羽にはガスの多いこと、また、ガスのたまります個所も、まあずっと先生のおっしゃる指摘の事項はまさしく私どもも十分に承知いたしておりましてかなりまあ注意を要する。特にガスについては特段の注意を要するという部類の中に入れておったわけであります。そういったまあのんきな状態も中には確かに見られますので、まあこういう点につきましては詳細に調べていきたいというふうに考えております。  それからいろいろの今後のまあ山に対する対策、方針、こういった点でありますが、もちろん私どもの方ではまあ監督方針あるいは監督の実施要領、そういった大きい方針を毎年立てております。で、御承知のように、従来、昨年はもちろんそのガス爆発それからまあ落盤、運搬、こういったガス坑内出水、こういった多数の罹災者を同時に出すようなものにつきましては、毎年ほとんどまあ繰り返されております、ここもう数年ガス爆発あるいは自然発火あるいは坑内出水、こういった危険性をはらんでおります山を中心に巡回の回数をふやしているわけでありまして、予算もまあ限られておりますので、ここにありますように、実はこれは外には全然出しておりませんが、これは一つの私の方のブラック・リストでありまして、全国の坑口をこの爆発、自然発火あるいは坑内出水、そういったその災害の種類を想定しましてそれの危険度によりまして順位がきめてあります。従って、この順位に従って危険性の多く内包している山によけい巡回に行くという目安を全国的に作っておりまして、これは従来はまあ一期に一回ずつ改訂しておりましたが、非常に手数がかかりますので、現在では半年に一回これを改訂しまして、半年ごとに危険性の内包の高くなったものは漸次これの上位に持って参り、監督の結果、これならば大丈夫であるという認定のついたものは漸次下へおろしていくというような、半年に一回ずつ内容を改訂しまして危険性の内包の程度を現地の機関に正しく判断させまして、これを標準に巡回監督をいたしております。従って、ガス、自然発火、坑内出水という点で、相当危険性があるという山には、大体一カ月に一回あるいはまた、二カ月に一回かなり入念に監督官を派遣しております。その他ごく普通の山では、半年に一回とかあるいは年に一回というような非常にわずかな巡回の山もございますが、危険性の多い山につきましては、非常に回数をふやしております。たまたまこの夕張などは直前にも監督に行っておりますし、かなり回数もふやしておりますが、この私の方の格づけでは、かなり管理のいい方の面に入っておりまして、実は回数はあまり多くない方の部類に入っておりましたが、現地部長状況が漸次あまりよくないと見ておりますのか、実際この表よりもよけいに巡回しておるような状態でありまして災害の前には三カ月ぐらい前に行っておりますし、かなり回数をよけい見ておるように私の方で聞き及んでおります。しかし、山の保安の状況としては、かなり優秀な方の部類に現地では認めておったようであります。そういう工合にしまして、現在では監督の方針は坑口別の格づけによりまして、重点監督をいたしております。  それからまあ施策の方としましては、爆発防止対策、自然発火の防止対策ガス吐出の防止対策、それらはいずれもあまり常々起こる種類の災害ではございません。特に常々起こります落盤とか運搬というような頻発災害につきましても、別個にそれぞれの対策を立てまして、これはもうほとんど変災があろうがなかろうが、爆発防止などの方法というものはきまっております。従って爆発が起こったから新しく対策ができるという種類のものではありません。毎年ほとんどもう繰り返してこれらに重点を置いて監督指導をいたしておるというような実情であります。
  31. 坂本昭

    坂本昭君 局長に、時間の関係がありますから二点だけ伺いたいのであります。しさいに点検しますと、この夕張炭鉱では、保安規則に定められている七十八条、十二のイにある可燃性ガスの自動警報器、こういったものがあるかどうかもどうも疑わしい。それから、また、主要扇風機がいつから動いたということについて、自記風圧計とかあるいは水柱式風圧計を備え、かつ云々ということが保安規則九十六条の四に示されておるが、どうもそういうものがあるのかないのか、この資料だけでははっきりうかがうことができない。そういうこまかい点がまだありますが、いずれにしても局長の言われるその最も代表的な大手の炭鉱で、しかもそれがブラック・リストに載っておる、しかもそれが管理が非常によろしいと言いながら事故を起こしたということについては、私はこれは重大な責任問題だと思う。一体この責任問題はどういうふうに処理されるか承りたい。
  32. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 夕張に限らず、昨年暮れから本年にかけて起こりました例の三大産炭会社の災害につきましては、まだ不幸にして原因の究明ができないような状態でございます。山野はそのままどうしても消火ができませんので密閉をいたしましたし、新入は二十数回爆発を続けまして、とうてい人間が入れないというので、これももう水没をいたしまして、今その排水にかかっております。夕張も御承知のように、まだ消火が完全にできませんので、大切な個所の取り明けがまだできていないというような関係で、非常に今私どもの方から申し上げますと、言いわけがましくなって恐縮なんでありますけれども原因がまだはっきりつかめないような実情にございますので、できる限りこれらの原因を早くつかみまして、そしてこの原因究明の結果、会社側に手落ちがあれば厳重にもちろん処置をしたい。それから私どもの方の監督上も手落ちがあれば十分反省をし、それぞれの対策を立てたいと、かように考えております。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 最後に伺いたい点は、この前、社会労働委員調査に参りまして異様に感じたことは、爆発事故でありながら、いわゆる爆発死、外傷死ではなくて、一酸化炭素中毒死であったということであります。これについて通産省からの資料をいただきますと、昭和三十年一月から三十三年六月までに二百四十五名のガス爆発、自然発火、こういうことによる死亡者があって、一酸化炭素中毒死が七十七名、三一%ある。そうしてその中で自己救命器をもし使用すれば助かったのではないかと思われる人が四十五名あった。一八%ある。このことは七十二条に示されている救急用具及び材料、これと非常に密接な関係が出てくると思うのです。特にこの爆発に伴う外傷というものは、これはおおむね致命的なことが多いのであります。ところが、この一酸化炭素の方は救い得るのです、助け得る。助け得る者が三一%もあったというようなことは、七十二条の「救急用具および材料には、左の品目を備えなければならない。」この中には包帯材料、ヨードチンキといったもの、それからチンク油といったやけどにつける薬、それから副木だとか、止血帯といったもの、それから担架、この四つしか書いてない。三分の一を占めるところの一酸化炭素中毒、しかも助けることのできるものに対して、何にもこの第七十二条には書いてない。これは私ははなはだ解しかねるのであります。こういうことについて、鉱山保安規則を改正して、適切な措置をして、この三分の一の犠牲者を救うということについて、局長としては具体的な御方針をどう持っておられるか、御説明いただきたい。
  34. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの点は、私どもも最も苦慮いたしております点でございまして、実は数年前から最近のわが国の炭鉱の災害状態を見ますと、やはり救命器があれば確かに助かったのではないかという実例がかなりもうぼつぼつ出ております。私どもももう数年前からこの自己救命器の必要性を痛感いたしておったわけであります。もうすでにいろいろ検討はいたしてもらっておりまして、すでに一時川崎航空から自己救命器、簡易なものでありますけれども、出たことがあったのでありますけれども、なかなか十分に使用ができないでやめてしまっております。その後、重松製作所の方で出しておりまするが、これは一応技術試験所の試験は通っておるのであります。私がもう二年半ばかりになりますが、アメリカへ参りまして、向こうの係員の一人々々がみんな携帯しております。そういうような点から、なおかつ、ソ連とかベルギー、ドイツ、こういった国におきましては、簡易な自己救命器というものは労働者全部に使用さしております。しかし、まあわが国では直ちにこれを全労働者に使用させるという必要性はないと考えておりますが、特殊な炭鉱におきまして特殊な区域に働く方々には私はぜひ必要ではないかという点から、かなり数年前からこの使用を考えておるのであります。しかし、いろいろテストしてみますと、温度が非常に上がってきて、呼吸が困難になる、あるいは煙が非常に濃厚な場合には効果が非常に薄いといったような、いろいろなまだ悪い面がございまして、完成品には至っておらないのであります。今、至急にこれらに、もう長くやっておりますので、もうあと一歩というところで完成品ができると考えておりますので、もしあまり時間が長くかかるようでしたら、やむを得ず私は外国品を使うことも考慮いたさざるを得ないのではないかというふうに考えておりますが、でき得ればわが国の製品で、もう少し、もう一段というところにありますので、近いうちに、これを完成次第、私は炭鉱の必要な個所には、一つぜひとも簡易な自己救命器というものを使わせるようにしたい。これははっきり御返答申し上げておきます。  なお、いろいろ先輩その他の忠告がございまして、鉱内に引いております排気管などにも、万一の場合に空気を吸えるように設備をしてみたらどうかというような点につきましても、ずいぶん前々から注意を受けておりますが、これもあらゆる切羽近辺に全部そういった施設をするということもなかなか大へんでありますし、かなりこそくな方法でありますので、私はでき得るならば、自己救命器を、早く完成品を作って、そうして必要な区域で働く労働者に対しましては個々につけさせるか、あるいは一定の個所に備えておくか、何らかの形で、必ず、今後万一変災がありました場合に、外傷その他でなしに、一酸化炭素でなくなるというようなケースがありました場合には、必ず救い得るという方途を講じて参りたいというふうに考えております。
  35. 坂本昭

    坂本昭君 今の局長説明について、夕張の実例を見ますと、第三鉱でなくなった二十数名の方は、なくなった後、数時間後にその現場には救命具を携行しないでそのままで入って行き、言いかえれば、一酸化炭素の停溜した時間というのはきわめて短い、従って、マスクによって一酸化炭素の吸入を防止するということと、もう一つ、一時的にどこか酸素のある部屋を作って、そこで待機をして、そのうちに一酸化炭素が外へ出てしまうのを待つ、私は二つのような面を、これは鉱山の実情にうといが、医者としてそういう二つの面を私考えるべきじゃないか。この点は、局長はこの道の専門家で、かなり検討しておられると伺いますので、この点は近い将来に早急に一つ今の点を準備をしていただいて、三分の一から四分の一に近い犠牲をぜひ救っていただきたいことを御要望いたします。  なお、労働省のこの安全衛生規則についても、同じことが言えるのであります。これは担当の方に伺いたい。労働安全衛生規則の第十章の救急用具の中にもこれは全く同じなんですね、鉱山保安規則と同じように一つ、二つ、三つ、同じことしか書いてない、こちらの方は一つ担架が足りません。労働省の方は担架が足りない、労働省の方は担架が要らないと見えるけれども、これを今日、一酸化炭素中毒というのは、かなりの職場において出ることなので、これについて鉱山以外にそういう危険はないか、労働安全衛生規則の改正について具体的にどう考えておられるか、この点を労働省から説明を聞いておきたい。
  36. 村上茂利

    説明員村上茂利君) ただいま坂本先生御指摘の通りでございまして、労働安全衛生規則におきましては、二百二十四条におきまして、救急用具及び材料についの規定を設けておりますが、ただ、ここで規定しておりますのは、「少くとも、左の品目を備えなければならない。」ということでございまして、いわば最低の基準をここで示したものでございます。なお、御指摘の中で特に問題になりますのは、保護具でございますが、ただいま鉱山保安局長から答弁がございましたように、問題は、実効性のあるもの、使用に便利なる保護具をどのようにして作製するかというようなことに問題があるわけでございます。先生承知のように、こういう保護具につきましては、別に検定規則を定めまして、一面におきまして労働衛生研究所等におきましても保護具の研究を推進いたしますとともに、民間におきましても、この検定規則を適用いたしまして、できるだけ適格なる、適正なる保護具の作製を助長いたしているような次第でございますが、何分にも理想的な段階に達するにはまだ若干時日を要するようでありまして、労働衛生研究所における研究などとも相待ちまして、有効にして適切なる保護具を作製するということに当面努力を払っている次第でございます。
  37. 坂本昭

    坂本昭君 最後に、労働大臣に一点伺っておきたいと思います。  先ほど来、夕張炭鉱の爆破問題についていろいろと検討して参りましたが、私たちが感ずるところでは、保安規則が十分に徹底して厳格に守られていないのではないか、そのために、労働者が多数犠牲になる、また、企業の方も非常な損害を受けるのではないか、そこで、たとえその仕事が、鉱山というものが通産省の管轄下にあるといいながら、これは労働者衛生と安全を守る責任はあくまで労働大臣にあるはずであります。しかも、鉱山労働者については、先般本会議でも指摘されたように、鉱山保安法の五十四条に、労働大臣並びに基準局長が勧告をするようになっている。しかも、たった一ぺんしか基準局長は勧告していない。しかも、その勧告の仕方は、はなはだ手ぬるい勧告だと言わざるを得ない。私は、この際、こうして頻発していく事故が、労働省としても労働災害については計画を立てて五カ年計画でやっていくということを先般労働大臣も言明されましたので、この勧告というよりはもっと強い警告をもって、労働者の身命安全と衛生を守るために、大臣としての特にこの鉱山問題についての決意と計画をこの際とくと伺っておきたいと思います。
  38. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 最近特に鉱山の被害が非常に、しかも甚大であることが傾向として私は今後とも注意しなければならぬことだと考えまして、特に夕張等特定ではございませんが、最近の傾向を見ますと、夕張の例に徴しても、多大に注意すべきところが多いと存じます。第一に、やはり安全装置の機械の面、同時に、やはり安全員というものの現実な数とかその機能、こういうものをより以上私は鉱山については強化しなければならないと実は信じております。従って、必要ならばより以上に、今でもございますけれども、より以上に安全員に対する責任と、それから人員というものも厳正にやらせたいという意味で、ただいま基準局長に十分に命を含めまして、労働省としての見解を総合的にまとめるように命じております。夕張調査もだんだん進んで参りましたので、労働省の方向もだんだん進んでおります。やはり安全員の数をより以上にふやす、それから機能をもっと専属的にやらせる、もちろん機械にも影響があると存じます。しかし、何と申しましても、専門的な安全員を、専業にやらせるものをもっと私は厳正にやらせなければならない、ただ、一社内における職員であるというだけでなくして、ほんとうに生命を守るという大事な職務をより以上にやらなければいけないのじゃないか。ことに鉱山の場合には、非常に大きな、人命に直ちに影響いたします。その方向で基準局長にはこの問題を取り上げて、関係省と十分、最高のものを作れ、こういう話を命じているわけでございます。やはり今後ますますこの傾向は特に鉱山については注意しなければならないのじゃないか、こういう感じ労働省の方向をきめております。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は保安局長に二つの点をこの際お伺いしておきたい。  一つの点は、鉱山災害を見てみますと、ガス爆発、出水、こういう関係で、たとえば旧坑に関係したものが非常に、今度の夕張はそうではありませんけれども、多くあります。だから、旧坑の見取図がないからとか、そういう理由で何とかするということをおっしゃっていたのですが、現在どういう工合に動いているかということが一つつ、対策をどう立てておられるか、旧坑を的確につかんで災害の対策にするという……。  もう一つの問題は、今私は専門家でありませんからよくわからないのですけれども事故が起きてから一カ月もたってまだ調査ができていない、最近になって日誌を見たと思いますということを言われるような格好、これはやっぱり組織的活動、科学的分析の活動というものが私はないんじゃないかと思う。だからそういう面から考えてみて、事故が起きたらほんとうの短い時間でその原因を究明する。処罰の問題を重点に考えるからそういうことになっているんじゃないかと思うが、おおむねこういうことで起きたんだと、だから他の炭鉱にも注意しなさい、人を罰するのが先じゃないのです。将来の災害を防止するためにそういう原因を究明し、明らかにするということが先なんですから、そういうことをおやりになる考えはないか。そういう面では実は鉱山監督官に組織的な教育ですか、再教育といいますか、そういうものをおやりになるような考えはないか、この二つをちょっとお伺いしておきたい。
  40. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの最初の旧坑関係につきましては、坑内実測図の関係で、実は、石炭局の方でやっていただいております。しかし私どもの方で聞いておりますのでは、その後非常に調査が進みまして、かなり管内の旧坑状態がはっきりいたしておりまして、もう三十六年までには一応完了する予定のようです。しかし、予算も非常に少なくて、私どもの方の保安関係ではあまり十分なものはなかなかできないのではないかというふうに考えておりますが、かなり作業も順調に進んでおるようでありますので、もうしばらくいたしますと、旧坑関係の概貌はわかると思います。  それから、大災害の原因の究明が非常に長くかかって、一体何をしておるかという御質問でございますが、私どもも非常にその点、特に炭鉱をあまり十分御承知のない方には、当然一カ月もたってまだ全然わからないというような点については非常に説明がしにくいのでありますが、実は新入のように一たん爆発が起こりまして、それからそれを救援に行きましたものが再度の爆発でまた罹災をする、そうしてその後二十何回もぼんぼんぼんぼんやりまして、もうとうてい手がつかないというような関係で、すぐ水没さしておるのであります。従って、現場を調査しようにも全然できない、現在排水いたしておりますが、五月一ばいくらいの予定で、はたして五月一ぱいで完全に排水ができますかどうか、非常に困難な状態なのであります。従って、この排水ができましたあと、十分に調査いたしませんと的確なことはもちろんわかりませんが、もちろん私どもも全然わからないと、こう申しておりまするけれども、大体どんなものでやったかという想像はいたしておるのでありまして、ただいろいろの司法捜査の関係がありまして、私ども責任者原因をこうだということがなかなかはっきり申しあげかねる実情がありまして、原因はわからない、こういうふうに申しておるだけでありまして、ほんとうの調査はやはり現地を見た上でないとわかりませんけれども、一応想定いたしておりますのは、山野にしましても、新入にしましても、これは旧坑の自然発火に基づく爆発ではないかというもちろん見方はいたしております。しかし、これはただいま申しあげますような司法捜査の途上にありますので、まだはっきりわかりませんものを、責任のある官庁でこうこうであるということをちょっと申しあげかねる実情にありまして、原因は目下不明であるという表現を使っておるわけでありまして、一応の、もちろん私なりの原因の想定というものはあらゆる場合にかなり早くつかんではおるのであります。しかし、あまり早く先入主できめてしまってかかるということにもまた一つの問題がございますので、一応長期にかかるようなものにつきましては想定をいたしておれまするけれども、ごく普通の変災の場合でございますと、もちろん数日で原因の究明はできるのです。たまたま今回の三つの大きな災害は、いずれも直ちに原因の究明ができない実情にありますことは大へん申しわけないことで、はっきり原因お話なり説明なりができませんことを私どもは非常に担当者として恐縮に存じております。
  41. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記とめて下さい。    〔速記中止〕
  42. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。   —————————————
  43. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) この際、委員の異動を報告いたします。  三月一日付をもって赤松常子君が辞任をし、その補欠として田畑金光君が選任されました。右御報告をいたします。   —————————————
  44. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、お諮りいたします。阿具根登議員から委員外発言の希望がございます。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。
  46. 阿具根登

    委員外議員(阿具根登君) 委員外発言を許可していただきましてありがとうございます。委員外でございますから、皆さんの審議におじゃまにならないように簡単に要点のみ御質問申し上げたいと思います。  ただいままで坂本委員からいろいろ夕張ガス爆発について御質問があり答弁があっておりましたが、私、本朝皆さんの手元に、九州で私が調査しました資料を差し上げておるはずでございます。ただいまの論争のありましたその焦点は、ガスが一・五%以上あった場合の処置、あるいは二%以上あった場合の処置、こういうことで保安局長から御答弁があったようでございますが、私の調査によりますと、いかにそういう法律案を作っておっても何にもならないのだ、こういうことでございます。しかもすでに九州の爆発は、爆発があってから三カ月に及ばんとしておる。それなのにまだ何ら原因がつかめない、こういうことでございます。今までのガス爆発を詳細見てみましても、ほとんどその原因がつかめたものはないのです。なぜつかめないか。ほんとうに調査しないからつかめないのです。私が出しておりますこの資料は、九州弁そのまま書いてありますからおわかりにくいと思いますが、これはその現地の現場の係員との対談を録音にとっております。その録音をそのまま写してきたわけです。間違いがないようにそのまま写してきたのでございますから、この意味がおわかりでない方がございましたらば、私が通訳をいたします。この中で特に御注意していただきたいと思いますのは、先ほど保安局長説明でも、一・五%の場合には、電気その他の発火物の停止を行なう。あるいは二%の場合には、保安係員がその場につききっておったならばよろしいのだ。あるいは二・五%の場合には鉱業権者が保安部長の許可を得た場合にはよろしいのだ。あるいはそれ以上の場合、あるいは三%、四%等の場合には、特に通気その他の問題で特別な問題に限って許可することもある、こういうことでございます。私が出しておりますこれは、もうそれをはるかに超過して六%のガスが出ておる。しかもそれはガス爆発の二日前の調査でございます。ガス爆発の二日前に六%のところで作業しておる。しかも作業しておる係員が、三%になったからもうこれはあぶないのだ、何とかしてくれということを連絡しております。そうすると、その係員のもう一つ上の係員は、「いや何とかやってくれ」ということを言っておる。この次は四%になっておる。これは四%だからあぶないのだ。一つ金物と金物が触れ合わないようにしてくれ。坑内の現状を御承知の皆さんはおわかり下さると思いますが、坑内で金物と金物が触れないで仕事ができるようなことがあるかどうか。金物と金物が触れたらスパークが出ます。そのスパークでガス爆発させる危険性があるから、だから金物と金物を触れないように仕事をしてくれ、こういうことです。さらにこれが五%、六%になっておる。こういうことが指摘されております。しかもそのときにそのあとでは、「よう爆発せんで、お前助かってよかったね」、こういうことが言われておるわけですが、こういうことが、これはたまたま新入の問題を私は調査しておりますが、各炭鉱であっておるわけです。だからこういう爆発が頻発するわけです。この新入でもまだ十八体の死体は水没されております。まだ上がっておりません。こういうことが行なわれておる原因は何かということを考えていただきたい。商工委員会質問しておりますから、重複しないように申し上げますが、大臣がおられますから大臣に申し上げますと、今の保安法をいかに完全に守ろうとしても守れないのです。今の安保法を、説明のあった保安法を完全に実施しておるならば、私はこういう事故は大部分食いとめることができると思うのです。実施してないからです。実施してないのはなぜ実施してないか。実施してないということは、保安よりも生産を主に考えるからです。保安の監督、保安の責任者はだれか。保安の監督は一カ月に一回かあるいは三カ月に一回か、こういう大きな炭鉱になったならば、おそらく私は非常に少なく行かれるだろう。少なく行かれるのがあたりまえだと思う。中小炭鉱にはそういう設備もない。ガス爆発の危険も非常に多い。水の出る危険も非常に多い。しかし、三井、三菱、北炭、こういうところは、日本でも有数の炭鉱では保安設備やその他も監督官考えておられる以上にできておるところも多い。また、監督官よりももっと古い経験の技術者が多いと思う。もっと経験の多い人が多いと思う。保安監督官が行っても監督部長から習っておるのが私は関の山だと思う。そうするとそういう者に監督をされておっても、それは形式的なものだ。六%ガスが出ておったと保安日誌に出ておるかどうか。出ておらないと思う。そういたしますと、監督もあるいは管理も行なわれておらない、こういうことが言えると思うのです。そうすると、監督官をふやすといっても予算は組んでおられない。これはふやすことはできない。二百二十五名の全国の保安監督官で回っても手が足りない。そういうところはほとんど会社まかせである。会社まかせで確かに保安管理者というのがきめてある。しかし、保安管理者はこれは会社の命令でやっておる。そうしますとあぶないと思っても石炭がたくさん出なければ利潤が上がらない。    〔委員長退席、理事高野一夫君着席〕 だからこれをごらんになりますとわかりますように、「何とかお前がついておってやらしてくれぬか」ということを盛んに言って、保安よりも生産が主です。保安の法規はここでは一ぺんも認められておらない。これに対しまして労働大臣並びに保安局長の御見解をお尋ねいたします。
  47. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 鉱山保安規定というものはもちろんいろいろの研究の上でできておりますが、何といいましても、これを守るか、守らないかが私は一番大きな問題だと思います。その意味で行政官としては、労働省として基準局というものがすべての産業に対し、今回も増員をいたしまして、今後はますます厳重な私は監督を進めて参りたい。なぜならば、やはりこれは一企業の問題というよりも、社会に大きな影響のある問題であります。また、これはひいては日本のすべての労働者に影響するところ多大である。その影響としては労働省としては厳正にこれをやるべきだ、その考えで基準局を通じましてすべての産業に、昨年以来の火薬爆発等につきましても通産省所管でございますが、労働省の立場として作業の安全ということについては、全労働者の勤労意欲にも影響するところ多大でありますし、また、その被害を受けた方々を放置するわけにもいきません。私は生産、採算ということ以前のものでなければならない、こう考えましてやっております。ただ、この鉱山の問題は御承知のごとく、鉱山保安通産省に全部法律で権限が移っております。しかし、労働省としては全然権限がないわけではございません。関連といたしまして勧告権を鉱山保安法の中に規定されている理由も、やはり労働省としては、すべての責任は基本的にはあるべきだと、私は実は自分の責任を感じております。それ以来、実は今回のような夕張の問題あるいは北九州の問題を契機として、私の方のできることは厳重にこれを守ってもらいたい。守れないなら守れないということで、私ども通産省連絡をしてより以上この問題を研究して、完全実施を私の方は前提としてやらなければならない。ことに今回のような炭鉱状況を見ますと、なおその感を私は深めております。従って、現地における内容につきましては、鉱山保安局長からの話を聞く以外に私の方は調査の方法もございませんが、少なくとも基本的には私はこういうものはすべての前提でなければならない。そういう考えで行政を今後厳正に運営して、改善すべきものは進んで改善すべきものだと、私は考えております。
  48. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 私の方におきましても、保安法、保安規則がただいまのお話ですと、ほとんど守られてないというお話でありますけれども、実は私が先ほど申し上げました二百二十五名というものは、全国の石炭、金属、石灰石、全鉱種を入れまして見ている数であります。たまたまほとんど大半の人員が石炭関係に向けられておりますが、これらの監督官によりまして年に一万五千件から、昨年あたりは一万九千件、大体二万件に近い違反件数を実は摘発いたしております。これらの違反件数は非常に厳格に後をトレースいたしておりまして、特に先ほどのお話のような内容の重要なものにつきましては、各監督部長から私の方に連絡が参りまして、私から特に関係の社長には同じ内容のものをダブって忠告をいたしております。私どももこれらの監督につきましては、ただもうおざなりな監督でなしに、一たん悪い点を指摘しました点は、次に行く監督官が必ずトレースする。できておるか、できていないかをトレースして、そしてできていない場合には重ねて違反を追及していくというようなやり方をやっておりまして、私自身といたしましては、少しうぬぼれておりますかもしれませんが、これらの違反件数の厳重なトレースによる実施強制、こういうような点でかなり効果が上がっておる点も私は必ず一部には認めていただけると思っておるのでありますが、全般の災害もかなり改善の方向に進んでおりますのは、私どもとしましては、せめてそれを楽しみにやっておるのでありますが、監督官が多数の違反件数を摘発して、それを改善いたしました内容については、どなたも誉めていただく方はないのであります。たまたま起こりました変災につきまして、しっかりせいというお言葉をいただくのは、私どもはけっこうでありますけれども、まあ監督官にしましても、非常に苦労をしまして多数の違反件数も出し、そして私どもも必ずそれを改善実施させるという強い方向へ進めておりますので、まあ監督官の巡回の効果というものも、私は多少はまああるのではないか。しかし、まあ私どもの力の不足によりまして、こういうような大きい変災を続発しました点については、まことに申しわけないのでありますが、ただいまお話がありました新入に非常にガス量がふえておるにもかかわらず、係員が何らの措置をとっておらない。これはまことに事実であれば非常に大へんな問題なんでありますが、過般の参院の商工委員会におきましても、吉田先生からも強く指摘を受けております。私の方で直ちに実情を調べさせました結果、まあそういった事実は認められない、こういう現地部長からの報告をいただいておりますが、しかし、まあこれだけでもちろん済ませるわけのものでもありませんので、なお一そう先生からのお話も十分に一つしんしゃくしまして、実情をさらに一そう調べてみたいと思うのでありますが、そのときに現地からの要望では、もしできますならば、この会話をいたしました当人の係員あるいは鉱員の名前がもしわかるものなら、ぜひ聞かせていただきたい、という希望が現地からも来ております。これではまあ某係員とこうなっております。ちょっと現地でも、あるいは調査の上に少し調べにくい点があったのではないか、かように考えておりますが、一応私どもからさっそく現地に問い合わせました結果では、そういった事実は認められない、こう言っておりますが、もしできますものなら、この担当の係員と鉱員の名前を一つぜひお聞かせいただきたい、こういう希望を現地から申してきております。私も先ほど来規則はこうなっておる、こう申しておりまして、必ずしも全炭鉱でこの規則通りに実施ができておるということは、私ども考えておりません。年々非常にたくさんの違反件数が、特にガス関係かなり大きな部面を占めておるという点から見まして、非常に違反が多いのではないか。従って、監督官にもガスの点については非常に入念に見さしておりまして、必ずこれはトレースして、その改善ができておるかどうかという点を見させるような強い方法をとっております。従って、先生のおっしゃるような、こういった事実が三菱にもしもあるようなことがありましたら、もちろんこれは非常に重大な問題であります。なお一そうこれらの点について十分現地実情を調べてみたい、かように考えております。
  49. 阿具根登

    委員外議員(阿具根登君) この調査の名前を知らせろということでありますが、この中にもありますように、ただガスを出すという……いわゆるガスがあるから作業を変更するというだけでも、それをやるだけでも、自分の身分に関係があります。いわゆる賃金が下がります。あるいはボーナスが減ります。あるいは作業現場を交代されます、こういうことを言っているわけです。だからあなた方が身分を保障されるなら、いつでもこの人の名前を出しまするだれが身分保障をしてくれるのか、だれが言ったかということを聞いておるのか、これは会社側でしょうが、あなた方はなぜ会社に対して聞かれるのですか。災害を受けた人は労働者ですよ、会社はなるべくそれはそういう災害は出したくないけれども、出したならば、その災害の責任が那辺にあるかということをなるべくはっきりさせないようにする、私はそれがやはり事業をやっている人としては当然だと思うのです。しかし、こういうことを私ども調査してくると、会社側からだれが言ったかということを今度言われる、それを今度は通産省もそのまま会社側の代弁をされる、そういうことじゃおかしいと思う。調査団の名前も書いてありますから、すぐそこの調査をされればだれだれということはわかります。そのかわり身分の保障をしてもらわなければできませんぞ。もしもこれがだれが言ったのだということがわかれば、この人はこの炭鉱にはおられなくなる。しかし、事実という点は間違いない、その人の録音をちゃんととってあります。だから録音を持ってこないのです。録音が消えたら何も証拠はないのです。あなた方が調べてくれればいいけれども、あなた方が調べてくれないから、われわれがこういう苦心の調査をしなければならないわけです。録音がありますから、名前はなくても、すぐその声でもわかるのです。だからもっとだれが被害者であり、だれが加害者であるのか、一面からいえば、会社も被害者であるかもしれません。だれが命を失っているかということを考えてもらわねばならぬと私は思うのです。  それから労働大臣にお尋ねするのですが、労働大臣は労働大臣の立場から勧告をするだけで、これは今の場合それ以外にございません。しかし、労働省というものは、労働者のサービス・センターである、労働者の生活改善あるいは生命保全については、一番の私は責任のあるところじゃないかと思うのです。そうするならば、今のように保安の問題が通産省所管にあったのでは、労働者の生命を完全に守ることはなかなか労働省としてはこれはできないと思う。他の省の仕事なんです。ところが、官庁のなわ張り根性といいますか、当然これは保安の問題であって、労働省にあるべきであると思うのに、生産、営利が一応その目標になっている、経済が目標になっている通産省にそれがある、だから保安優先だ、人命尊重だということを各大臣言っておられるけれども、実際はこの私の調査で明らかになっておるように、保安優先じゃないのです。生産優先です。利潤優先です。そのあとに保安です。もしもこれがよその国であったならば、私は夕張炭鉱にしろ、三菱にしろ、三井にしろ、その所長あるいは坑長等は、とうに私は首を切られたと思うのです。日本だけそういうことはないのです。首を切られた場合はもっと栄転している、こういう弊害が炭鉱にあるわけなんです。だから労働大臣としては、この保安の問題については、これは保安監督局というのは労働省にあるべきだと、こういうお考えでおいでになるのが正しいのじゃないかと思うのですが、今のように通産省であっていいのかどうか、お尋ねいたします。    〔理事高野一夫君退席、委員長着席〕
  50. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 基本的に労働者の生命及びその安全を守るところは労働省であります。同時に、労働基準法の中にも非常な厳正な規定がありましてそれが完全に危険な場合にはいわゆる就業の制限という規定もできましょうし、ある場合にはその工事の危険な場合には設計の変更、工事の禁止ということまで立ち至ってやるというのが、今日の労働基準法の基本であります。これは採算も関係ございません。また、人命を尊重するという基本的な考えは、労働省としては基準法に明言されておる通りであります。そこに私は何ら今でも信念に変わりありません。ただ炭鉱の場合になりますと、炭鉱坑内における問題は、今までの慣例上、その計画とか生産というものが地域的にあるいは特殊性がありまして、通産省に今日一部委譲されておるわけであります。基本的にはやはり労働省というものがありまして勧告権というものを持っている以上は、やはり基準法の中に入っておると私は信じます。ただ運営と監督を、一時通産省の保安局に移譲したという形で日本の場合やっておりまして、諸外国をずっと調べて参りますと、諸外国でも炭鉱問題はいろいろ、所管は各省ございまして、フランスはおっしゃるように労働大臣であります。ただし、鉱山の探索とか開発というものはこれは除いておる。それでイギリスはどうだ——イギリスは燃料動力大臣というのが所管をしております。アメリカは商務長官というのが所管をしております。カナダは保健社会福祉大臣というのが所管をしているわけです。従って、各国ともこの問題はなかなか問題が多種多様のような印象を私は受けますし、日本が労働省であればもちろん労働大臣としてはこれは望ましいことだと私は思いますが、今日まで通産省でやっておりますので、通産行政の中におきましても保安局長は特殊な立場を持っている、特殊な権限を持っている、同時に労働大臣と同じような立場を通産省の中で持っておられるわけであります。従ってもちろん密接な連絡——同じ立場であります。ただ、所管が通産大臣か労働大臣かの差はございますけれども、今日のところ、なお一そう緊密な連絡をしながらこの問題をもう少し研究して参りたい。直ちに労働大臣でなければいけない、通産大臣ではいけないという結論はまだ申し上げられませんが、要するに方向としては、基本的には、保安局長というのは通産省の中では労働大臣と同じような職務の立場をとっている。言うなれば行政問題についてはまだ今後研究すればいいんじゃなかろうか。もし非常に不都合ならば通産大臣ともお話しをいたします。今日ただいま、夕張のまだ調査中のときでありますから、この調査の結果を待たずに、これはもういいんだと結論を出すのは多少早計かと私は考えております。
  51. 阿具根登

    委員外議員(阿具根登君) これは保安局長にさっきの質問とあわせて御答弁を願います。ただいま労働大臣は、まあ精神としてはこれは労働省がやるべきであるけれども、今までは通産省のしきたりであって通産省の中にあっても労働大臣と同じような性格であるというような御答弁をされておられますが、これは当然労働省でやるべきである。しかし、今までの慣習もあってそうはいかぬじゃないかというようなことだと思うのです。そうするならば、人命というものを考える場合には、やはり当然、精神的にあるいは基本的にあらねばならぬ姿に返すのが私は当然だと思う。通産省は労働問題は扱っておりません。これは営利です。経済です。生産です。利潤です。そうするならば、保安と全然違うわけです。それをなぜ通産省が持っているか。だからこうなる。これは保安局長、先ほどの質問も何ですが、なぜそれではこういうことになってくるかといいますと、保安監督官が二百二十五名いると、これは全部だから炭鉱だけを回り切れない。しかし、回っているから相当一万数千件の違反もあげているから功績は相当あるはずだ。功績は言わないで、こういう災害のときばかりたたかれる、そういうことを言われる。その通り、あなたのところは災害を出したらたたかれるようになっている。人が死んだらたたかれるのはあたりまえですよ、あたりまえです。これはまっすぐにいっておってあたりまえだ、何ぼよくやっても一つこういうことがあったらたたかれる、その通りです。気の毒だと思いますが、しかし、人の生命を扱っている人ならば当然です。たたかれるのはあたりまえです。こういう災害を出さないのがあたりまえです。そこでこの皆さんが、二百数十人の人が回って数万件の違反を摘発される、しかし、その方々が常時炭鉱にいることは不可能です。何カ月かに一回炭鉱に回っていかれる。そうしてただいまの坂本委員質問でもわかりますように、その方々が保安日誌もまだ全部見ておられないというのです。保安日誌も見ておられない、災害のあった今日に至っても。何を一体調査されているのか。行くならば、まず保安日誌を見て、それによって私は保安調査をされるべきだと思う。それすらも何カ月に一回しか行かないから、全部のやつを見る余裕がないんだというならば、保安監督の任を全うすることはできません、こういう言葉になるわけなんです。自分らは少ないから、これだけ、今まで一万数千件の違反事項を摘発しているけれども、しかし手が足らないから、保安の万全を期することは私たちはできませんという言葉になるはずなんです。そのできませんのをだれが保護しておるか、だれがカバーしておるかというと、保安管理者でしょう。保安管理者炭鉱におってそうしていつもやっておる。その下に保安係員がおるはずです。その保安係員も保安管理者も、一体だれか。これはみな会社の幹部なんです。そうするとその人たちは、私の調査にあるように保安よりも営利を考えるわけなんです。利潤を考えるわけなんです。だから、それではこの保安の任は全うできないと私は言うのです。そうならば、その犠牲者になるのはだれか。たとえば小岩井局長炭鉱におったなら、あなたは自分のしている所にガスが何パーセント出ておるか知らぬのですよ。保安係員が知っていて、ここでやりなさいと言えば、四%であろうが、五%であろうが、ここにあるように六%であろうが、これは爆発するのだということを知らずに働いておるわけです。知っておるのは保安係員だけです。その保安係員が上と話をして、そうしてガスがこのくらいになりましたから一つ現場を変えていただけぬですかと言っても、お前がついておってそうして石炭を出しなさいということを言われると、その人はあぶないなと思いながらもやらねばならない。その下のほんとうに働いておる人は、何パーセントガスが出ておるか全く知らないのですよ。だから、それの完全なことができないなら——どこまでいっても完全とは言えないかもしれませんが、その保安管理者の中に、働く者の中からも一名入れてはどうかというのです。実際犠牲になるような人たちも入れなければ……。私はこういう資料を持ってきたけれども保安日誌にはついていないと思うのです。保安日誌にこういうことを書いたらその人は左遷です。だからついていないと思うのです。そういううそができないように、実際自分が命を失うような人がそこにもう一名おったならば、話し合ってできるじゃないか。こういうことぐらいできないで、いかに法律論を論じられても、いかに保安監督局で今までやっておったことをやられても、私は保安という問題は——依然としてこういう爆発が続いていくと思うのです。その点どうですか。このくらいのことはできると思うのです。最低の線ですよ。だから、会社が命令をしている会社の幹部の方が保安管理者であるならば、今度は働く人の中からも、国家試験を受けて、当然保安係員として十分責任の持てる人を保安管理者に任命して、両方で保安を見ていくならば私はこういう疑いはかけられぬ、また、こういう現実も起こらぬと思うのですが、そういうことはお考えになりませんか。
  52. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの保安機構の問題でありますが、この保安機構の問題につきましても、先ほど労働大臣がお話しになりましたように、やはり各国いろいろな姿がございます。最近私どもの方で調べた中でも、ベルギーあたりは労働組合からやはり監督官が出ておる場合もございます。いろいろ各国でも様相が違っておりまして、それぞれ非常にいろんな方をそれぞれの国で採用している。たまたまわが国におきましては、現在の法規におきましては経営者ワンサイドの保安機構ができておることは事実でございまして、現在組合から機構の中に入っておる姿は全然見られません。しかし、現行法の中でも、私は正規の、ただいまの保安管理者の問題は別としまして、保安監督員というような問題につきましては、鉱業権者の選任になっておりまして、鉱業権者が適当な監督員を選任してくれば、私の方で、資格さえあれば決して組合出身であるからいかぬとか、経営者側ばかりであるからいかぬということは申しておりません。この点におきましては技術職員全部そうなんであります。保安管理者にしましても、たまたま鉱業権者が組合出身の方を選んでこられれば、私どもは現行法規で資格がありさえすればいずれも認めておりまして、組合出身であるからいかぬというような考えは毛頭持っておりません。しかし、現実としましては、組合出身の方々が現行の保安機構の中に入ってこられていないことはこれは事実でございます。従って、これらの保安機構の問題につきましては、諸外国との関係もあり、今後私どもは必ずしも外国のまねをする気はございませんけれども、どういうふうにしたらわが国の保安機構が完全にいくかという点について、私どももいろいろまあ考えさせられる点がたくさんございますので、できますればごく近いうちに一つ中央鉱山保安協議会に大臣から諮問をいただいて、この保安機構につきまして十二分に協議会で検討してもらいたい、まあかように考えておりますので、この点もうしばらく時間をいただきたい、かように考えております。
  53. 阿具根登

    委員外議員(阿具根登君) これでやめますが、私と局長とは考え方が違いますので、ここで論争しても結論は出ないようですが、それはこの法律を見れば、鉱業権者が選定をしてそうして局長のところに出せば任命されるようになっておりますのが、なぜそれでは組合関係の人を、働く人を任命しないのかというところに問題があるわけなんです。営業を主に考えるから任命しないということにしかならないわけです。だから、そういう指導監督の任にある人の会社の経営者陣営から一名、労働者の中から一名出さねばできないということを作ってやらねばできないわけなんです。業者は保安よりも自分のもうかることを考えるから、自分の言うことを聞く人しか任命しないわけですよ。それを持ってきた場合に、あなた方からこれはだめだということは言わぬでしょうが、あなた方は……。皆これは会社関係じゃないですか、組合関係はおらぬのじゃないのですか、こういうことができないのかどうか、それができるように一つしてくれということなんです。そういうようなもっと抜本的な考え方を持たなければ、あなたが保安監督の最高責任者が何らそれに対する改革案も持たずにそうして審議会に諮るということでは私は日本の保安は守られないと思うんです。今までこれだけ何十人も、茂尻で六十何名、太平洋で三十八名、今度の夕張で四十名、六十二名下がっておって四十名ですよ。この前も申し上げましたように、あれが五時間おそかったならば、おそらく八百名の人間が死んでいる。千二百名の人間が下がっているはずだ、そうしたならば、その率でいくならば、八百名の人間が死んでいる。そういうことを考える場合に、保安局長はだれにも遠慮する必要はないじゃないですか、何も石炭局長じゃないのですから、保安を守るためにはこうあるべきだという線をあなたが出すべきですよ。あなたが出すべきだ。私の意見なんか消極的だ、こういう意見をあなたが出されて、それを省内で調整してやむを得なかったというならばわかるけれども、保安の責任者があなたが今のままの考え方でいられるならば、私はこの保安を守ることはできない、かように思うのです。十分研究をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  54. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 夕張炭鉱爆発事件に対する本日の質疑は、この程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。  暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕