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1960-02-25 第34回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十五日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 山下 春江君    理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君 理事 廣瀬 勝邦君       荒木萬壽夫君    加藤 高藏君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       小西 寅松君    進藤 一馬君       田邉 國男君    竹下  登君       西村 英一君    古川 丈吉君       細田 義安君    山本 勝市君       石野 久男君    石村 英雄君       加藤 勘十君    神近 市子君       久保田鶴松君    堀  昌雄君       山本 幸一君    横山 利秋出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         農林事務官         (農林経済局参         事官)     松岡  亮君         専  門  員 拔井 光三君     ————————————— 二月二十四日  補助金等臨時特例等に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六六号)  治水特別会計法案内閣提出第七〇号)  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。  去る二十二日付託になりました国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び治水特別会計法案の両案を議題といたします。     —————————————
  3. 植木庚子郎

  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま議題となりました国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び治水特別会計法案につきまして、その提案理由概要を御説明申し上げます。  まず、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府におきましては、治山治水事業促進をはかるため、治山治水にかかる各十カ年計画を樹立いたしまして、事業の緊急かつ計画的な実施に努めることとし、別途今国会治山治水緊急措置法案提案して御審議をお願いいたしております。このうち、治山事業について、その経理一般会計と区分し、もって事業収支並びにその成果を明らかにすることが適当であると認められますので、ここにこの法律案提案した次第であります。  次に法案概要を申し上げます。  第一に、国有林野事業特別会計国有林野事業及び治山の二勘定に区分することといたし、国有林野事業勘定におきましては、従来からこの会計で行なっております国有林野事業に関する経理を、治山勘定におきましては、先に述べました治山治水緊急措置法に定める治山事業十カ年計画実施に伴う民有林野にかかる治山事業で国が直轄で行なうもの及び治山事業都道府県等が行なうものにかかる国の補助金負担金交付等に関する経理を行なうことといたしております。  第二に、治山勘定歳入及び歳出でありますが、歳入といたしましては、国が直轄で行なう治山事業に関する費用にかかる国庫負担金及び地方公共団体負担金都道府県等が行なう治山事業にかかる国の補助金負担金に相当する金額等を予定し、歳出といたしましては、国が直轄で行なう治山事業に関する費用及び都道府県等が行なう治山事業にかかる国の補助金負担金その他を予定しております。なお、国が直轄で行なう治山事業及び災害復旧事業に関する事務取扱費は、治山勘定から国有林野事業勘定に繰り入れることとするほか、この会計勘定に区分したことに伴い必要な規定の整備をはかることといたしております。  次に、治水特別会計法案について御説明申し上げます。  政府におきましては、治山治水事業促進をはかるため、治山治水にかかる各十カ年計画を樹立いたしまして、事業の緊急かつ計画的な実施に努めることとし、別途、今国会治山治水緊急措置法案提案して御審議をお願いいたしております。このうち、治水事業につきまして、その経理一般会計と区分し、もって事業収支並びにその成果を明らかにすることが適当であると認められますので、ここにこの法律案提案することといたした次第であります。  次に、この法案概要について御説明申し上げます。  第一に、この特別会計においては、建設大臣が施行する河川、砂防または地すべり防止工事にかかる直轄治水事業及び多目的ダム建設工事に関する経理を行なうことを主たる目的とし、あわせてこれらの事業または工事に関連のある直轄伊勢湾等高潮対策事業または受託工事の施行並びに都道府県知事が施行する治水事業に対する国の負担金または補助金交付に関する経理を行なうこととしております。  第二に、この会計建設大臣が管理することとし、会計経理治水勘定及び特定多目的ダム建設工事勘定に区分して行なうこととしております。治水勘定歳入は、直轄治水事業及び直轄伊勢湾等高潮対策事業につき国庫が負担する部分の金額または都道府県に対する国の負担金もしくは補助金の財源に充てるための一般会計からの繰入金、これらの直轄事業にかかる地方負担金並び治水関係受託工事納付金等とし、同勘定歳出は、これらの直轄事業費治水関係受託工事費並び治水事業費負担金または補助金等とすることとしております。特定多目的ダム建設工事勘定歳入は、多目的ダム建設工事費に充てるための一般会計からの繰入金地方負担金及びダム使用権設定予定者負担金並びに多目的ダム関係受託工事納付金等とし、同勘定歳出は、多目的ダム建設工事費並びに多目的ダム関係受託工事費等とし、これらの歳入及び歳出並びに資産及び負債を工事別等の区分に従って経理することといたしております。  以上のほか、この法案におきましては、この会計予算及び決算に関して必要な事項を定めることとしております。なお、本特別会計の設置に伴って、特定多目的ダム建設工事特別会計法を廃止することといたしております。  以上がこの二法律案提出理由及びその概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  5. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 植木庚子郎

    植木委員長 税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。横山利秋君。
  7. 横山利秋

    横山委員 先般私は予算委員会大臣日米経済協力について意見を伺いました。その際にどうしてもまだ納得できなかった点が数点ございます。たとえば、日米経済協力というものが安全保障条約の第二条によって行なわれるのであり、それが、実施面において、安全保障条約の及ぶ範囲に関係のない、つまり日米に直接関係のない低開発国経済援助日本条約によって協力する責任を負うという理由は一体何であるかという点については、何ら確たる答弁がなかったのでありまして、経済審議庁長官並びに通産大臣大蔵大臣個々別々の御答弁でありました。その条約の内容を条約の解釈によってただすよりも、いま一歩具体的に私は大臣に見解をお伺いしたいのであります。たとえば、この経済協力一つの材料として、今般いわゆる第二世銀をここに設置するということになって、予算に第二世銀に関する日本出資条項が提起されておるのであります。ちょうど今から二年前でございましたか、われわれは、国際金融公社について審議をして、その際に政府にいろいろと質疑をしたことがあるが、なぜこの国際金融公社日本出資をするのか、一体日本国際金融公社から借りられるのか、それとも借りられないのかという点で、外務大臣大蔵大臣意見が一時食い違ったことがある。結局借りられないのだ、これは低開発国へ貸してやるのだということに意見が統一されて、そんなものはというわけで、あとになって私どもとしては反対的な立場に立って終始したことは、御存じの通りであります。その際に、国際金融公社日本出資をして低開発国経済援助をするということになったのであるけれども、その後の国際金融公社実績を見ますと、何と中南米がほとんどである。アジアに対して貸されたのはパキスタンほかほんの少々のものであって、運営状況を見ますと、加盟国か、その属領向けで、アフリカ、中近東、オーストラリア、中南米、ヨーロッパの特別地域といった、そちらの方ばかりである。一体これはどうしたことであるか。どうしてアジアの低開発国についてこの国際金融公社運営ができないのか。それでは政府が二年前に言ったこれはうそっぱちであって、政府所期しておったところで、実際は何にもならなかったではないか。そこでまた、国際金融公社がうまくいかなかったから、もう一ぺん第二世銀をぶっ立てて、これならうまくいきましょうということは、前の本委員会なり国会で明らかにいたしました国際金融公社に対する立場と非常に矛盾をするものではないかと思われるのでありますが、第一に、国際金融公社は、なぜ、当初の目的である低開発国、われわれの所期するアジア後進国に対する効果を上げ得なかったものであるか。それは一体どこかに根本的な間違いがあるのであるか。運営が間違っておるのか。その点をお伺いしたいと思うのです。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなか所期効果を上げなかったのはどういうわけだろうかと言われますが、多分受け入れ態勢が整備されていないということが一つの原因だろうと思います。また、そのプロジェクト等について、その後適当なものも見つけるようにいたしておりました。順次そういうものを見つけ次第貸すというような方針で、現に私どもも努力した実例がございます。しかし、やはり現地受け入れ態勢というものが十分できておりませんと、こういう機関が積極的に効果を上げておらない、こういうことにならざるを得ないというように考えております。
  9. 横山利秋

    横山委員 よくわからないのです。それだったら、あなたのおっしゃるような運営の問題が問題であるならば、第二世銀を設立する必要はない。国際金融公社の当初の目的が、低開発国に対する低利資金の供給であるとかということであるならば、何も今あらためてIDAを作る必要はないのであって、国際金融公社運営を改善させることによって十分に所期目的を達せられるのではないかというふうに考えられるのですが、この点はいかがですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国際金融公社資金あるいは貸付条件その他等、それにはおのずから限度がございます。今回の第二世銀そのものは、大体世銀でやることを本体に考えるが、これと並行してやるという意味で、やや国際金融公社資金量並びに条件等が違っておる、かように私は理解いたしております。
  11. 横山利秋

    横山委員 これは釈迦に説法でありますが、世界銀行は、たとえば日本で言うならば、電力借款とかあるいはまた東海道新線とか、そういう商業ベースに一応乗ったところであり、国際金融公社商業ベースに乗っていない低開発国の私企業に対するものである。従って、この国際金融公社と、今政府が世界的な規模で設立しようとする第二世銀と、一体どこに根本的な性格の相違があるかという点が私にはわからないのです。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 本来から申しますならば、世銀で用を足さなければならないという筋のものだと思います。国際金融公社とはそういう意味でやや性格を異にしておる。ただ、世銀金融をつけます場合にも、世銀金融ベースというものが低開発国経済状態から見ましてやや重い。そういうものを軽くする方法はないかということを主体にしているわけでございます。そういう意味で第二世銀構想というものが考えられる。やはり現地通貨の問題が一つの大きな問題でございます。また、出資そのものに対する交換性付与というような問題が、それぞれ重要な問題として出て参ります。在来の世銀なり国際金融公社等ではそういう点はまかない切れないものである。金利そのものにつきましても特別な考慮を払っていく。こういうような点でございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 わかりました。あなたの言われた第一の点は現地通貨の問題であり、金利の問題である。それじゃ、国際金融公社をわれわれが本委員会審議したときに、その金利についての政府答弁はどうでありましたか。世界銀行では商業ベースでだめだから、低開発国については低金利でやらなければいかぬのだから、従って国際金融公社を設立するのだ、こういうわけです。そこで、そのものずばりで伺いますが、世界銀行金利はどのくらいで、国際金融公社金利はどのくらいで、今回設立されようとする第二世銀金利はどのくらいを予定しておるのか、それを伺いましょう。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 為替局長から詳細に説明させます。
  15. 酒井俊彦

    酒井政府委員 お答え申し上げます。  IFCができましたときには、やはりある程度商業採算ベースというものが考えられておりまして、ただ世銀の場合には出資ということはできない。その計画自身が、貸付ベースできちんきちんと返済に保証がつけられるという種類のものでなくて、出資のような形で、利潤参加という形でできるというところに、金融公社のメリットがあったわけであります。今度は第二世銀の問題でございますが、今後金利がどうなるかという御質問がございましたが、ただ一般的に従来の商業ベースということでなくて、もう少し条件金利あるいは返済計画といったようなものをゆるくしまして、そうして後進国開発のために応じよう。後進国計画のうちで非常によろしい計画がありましても、これは商業ベースで確定的な返済計画というようなもので縛られると、なかなかむずかしいものがございます。さればといって、そういうものをやはり基本的に伸ばしていくことが後進国開発のために非常に必要だというところで、第二世銀というのが国際協力のもとにできたわけでございまして、これの金利をどうするか、あるいは年限をどうするかというようなことは、これから理事会の運用にまかせようということに一応なっておるわけでございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 大臣に伺っておって最後にしぼったところはそれではいろいろ聞いておってもわからないから、世界銀行金利はどのくらいで、IFC金利はどのくらいで、そうして第二世銀もきまっていないにしても——もちろんきまってはいませんけれども、大体どの辺を構想に描いておるのかという点を伺ったら、そのねらうところがはっきりすると私は言っておるのです。
  17. 酒井俊彦

    酒井政府委員 御承知のように、世銀金利につきましても、世銀は、世銀債いわゆる社債を出しまして、それで資金を作っておりますが、主としてその社債を募集しますのはアメリカのマーケットであります。従って、ときどきの状況によって金利が左右されます。現在のところ六分あるいは六分ちょっとというところが世銀金利であろうと思います。もちろんこれは将来ニューヨークの金利が下がりまして安く世銀債が発行されることになりますれば、金利はさらに下がると思いますが、現在のところは六分ないし六分二厘五毛くらいというところではないかと思います。それから、国際金融公社の方は、さっき申し上げましたように、これは利潤参加の形が非常に多いのでございますが、大体におきまして低いもので五%、高いもので七%くらいの貸付実績で出ております。今度の第二世銀でございますが、実は金利をどのくらいにするかということは、後進国各国プロジェクトを見ましてきめていく。もちろんこれは各国が拠出した金でございますから、金利コストがかかっておりません。それをどのくらいで運用するかということは、将来の問題に即しまして、理事会ケースバイケースにきめていこうではないか、こういうことに相なっておるわけでございます。
  18. 横山利秋

    横山委員 もう一つそれではお伺いいたしますが、国際金融公社世界銀行と比べて一分ないし二分くらいの金利の安さである。その国際金融公社でなぜ第二世銀構想が実現できないかという点であります。あちこち幾らでも銀行を作ればいいという問題ではない。なぜ国際金融公社の当初の目的が達せられないかという点であります。
  19. 酒井俊彦

    酒井政府委員 御承知のように国際金融公社資本金は一億ドルでございまして、これは借入金に相当依存する画でございます。そういう意味におきまして、国際金融公社といたしましては、あくまである程度の採算をはずさない。ただ世界銀行のように数十年先まではっきりした返済計画のめどを立ててこれを保証するというものでなくて、たとえば出資しまして、商業ベースにはもちろん乗るけれども、そこが確定利付というものでなくて、利潤参加の形でいけるというふうな目的国際金融公社ができたわけであります。今度の第二世銀は、世銀及びIFCの両機関で足らざるところがある。たとえば非常に長期的な仕事でありまして、後進国開発の根幹をなすものであるけれども商業ベースということをやかましくいうとなかなか成り立ちにくい。しかし、これが完成することによりまして、世銀なりあるいはIFCなりの融資にも乗ってくるし、後進国開発についての各国協力ができるというような部面におきまして、各国協力して、これはソフト・ローンと言っておりますが、金利あるいは返済通貨、そういう点について非常にやわらげたものを作ろう、今のところはまだそういう組織についての話し合いがあっただけでございまして、これから金利は大体どのくらいにしようとか、期間はどのくらいにしようとかいうことは、これは将来ケースバイケースによって、プロジェクトが出てきた場合に、実情に即してやったらいいじゃないかということで、しいて法律と申しますか、協定を作りますときにはきめておりませんし、それは理事会にまかそうじゃないか、こういうことが今度の第二世銀の趣旨でございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、やはり二年前に国際金融公社について外務委員会及び法務委員会において政府が言っておったことと、政府所期しておったことは実現されなかった、また見込み違いであった、実現不可能なことが当時力説されておったと私は了知せざるを得ないのです。あの当時国際金融公社を設立するゆえんのものはというて政府が強調いたしましたところは、確かにアジアの問題を何とかしてもらわなければならぬ。アジアの問題は——日本は借り入れるか借り入れないかということが論争の中心になって、農林大臣でありましたか、だれでありましたか、いや借り入れるのですと言ったために、あちらこちら問題になって、実は日本は借りられません、日本は借りられませんけれどもアジアの国へ貸せますから、事実それができますからということで、国会で押し切ったような格好になった。それが何と、ずっと国際金融公社融資実績を見ていますと、ほとんどが中南米であります。あなたが今言うように、こういう利息では、五分ないし五分七厘ではアジア後進国へ貸すことはできない、アジア後進国ではこれはだめなんだとおっしゃる。なぜ一体だめなんだ。  そこで私は大臣にお伺いしたいのです。なぜだめなんだということです。ほかの国がもっと安く貸しているだろう、ないしはそこの国はこういう金利ではだめなんだと言う以上は、何か目安があってそれが言えるのだろう。そこで、先般も言ったのでありますけれども、一体日本は第二世銀——国際金融公社もそうでありますが、アメリカ片棒をかついで、日本に何の関係もない中南米へ銭を貸すお手伝いをする。それに結局は失敗して、今後また新しい銀行を作るということになる。しかも、日本競争相手は、ソビエトの現在の東南アジア各国、世界の後進国に対して与えておる借款利息条件返済方法ということが問題の目安になっておるのではないか。すでに私が言うまでもありませんが、ソビエトでは利息は二分ないし二分五厘、しかも現地通貨返済を認め、しかも現地において製品の返済も認め、期間も非常に長い。私はそのソビエト融資条件が純粋な経済的条件に立っておるとは必ずしも申しません。ああいう国でありますから、一つ後進国に対する援助も政治であり政策でありますから、それなりのことはやっておる。それに対してアメリカが太刀打ちができない。アリメカが自国においては国際収支の不均衡も手伝ってどうにもうまくいかぬ。そこで日本やイギリスやあるいは西独やそのほかフランス等のいわゆる中進国先進国を語らって、おれの片棒をかつげという結果が第二世銀ではなかろうか、こういうふうに私は感じられてならぬのであります。どうもあなたがアメリカに行ったりあるいは方々に行って銭を借りてくることに一生懸命になって、その実績が外債となりあるいは世銀借款となっておるのでありますが、今の日本は借りる側であって、貸す方じゃないではありませんか。しかし、まあおつき合いということもあるとこの間おっしゃいました。おつき合いならおつき合いで認めてもよろしいです。よろしいけれども、そのおつき合いというものは、日本経済に、日本の実際の願いというものが達成せられるようにならなければいかぬ。それが国際金融公社では何のおつき合いでありましょうか。全く縁もゆかりもないおつき合いになってしまって、今度の第二世銀というものは、ソビエトに対抗する経済借款競争のその片棒をかつぐところのおつき合いではありませんか。私はそういうふうに考えられてならないのでありますが、一つ大臣の率直な御意見を伺いたい。私は、自民党の大蔵大臣としてアメリカソビエトとの競争になれば、アメリカ片棒をかつぐのは当然だとあなたがおっしゃるのが不工合だとは決して思わない。それならそうとはっきりおっしゃった方がいいと思う。どうですか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 後進国経済開発する、この目的は、私はもう昨日申しましたからそれに触れませんが、そういう場合に一国が一国に対して経済開発援助をするという場合もございますし、国際機関を通じて経済開発協力するという場合と、今の実際のあり方から見ましてもこの二つが考えられる。一体どちらが望ましいかということでございますが、それについて一つ受入側気持もございます。ことに、最近の新しい民族独立国家というものが、国際金融公社の場合になかなか受け入れがない。いわゆる出資の形において利潤還元方法では困るという、非常に排他的というか、協力を拒否しておるようなものが相当ある。いわゆる資本による侵略というような意味の事柄なり、あるいはまた過去の実績等から見まして、一国の勢力が入ってくるというようなことについて、非常に鋭敏な考え方を持っているというものもあるように見受けます。従いまして、後進国経済開発は必要だ、こう申しますが、これには十分受入側気持も考えて、効果的な方法をとることが望ましいのではないか。それらを見ますと、やはり国際機関を通じてやることが最も公明であり、最も公正であり、相手方もそれについては非常に受け入れやすい立場になるのではないか。ただいま、横山君は、経済競争立場において米ソ一つの争いがあるから、それに対して、米国は、一国でやれないから、味方と話し合って国際機関という形においてそれをやるのではないか、こういう見方をしておられますが、私は、そういう見方ではなしに、経済開発をいたします場合には、やはり国際協力の形でやることが一番望ましいのではないか、そういうことの方が、相手方に対しましても、真に経済協力の意義についても理解を受け得るゆえんではないか、こういうふうに実は思うのでございます。私は、そういう立場から、国際機関を通じてやるということが最も大事ではないか、かように思いますので、昨年第二世銀の設立について私ども意見を徴されました際に、私が特に注意した点はその点であります。やはりこの種の問題は国際機関を通じてやることが望ましい。いわゆる後進国といわれるそれらの国々の気持を十分尊重して、しかる上で開発する、そういう措置でなければならない。そういう意味では第二世銀構想に私は賛成だということを実は申したわけであります。大きく考えてみると、その二つではないか、かように私は理解しております。
  22. 横山利秋

    横山委員 経済援助が、一国対一国の関係ではなしに、国際的な規模を持って共同してやるということが望ましいということはわかります。けれども、それならなぜ国際金融公社運営を改善してやらぬのですか。あれやこれやとあっちこっちへ作った。きょうの新聞を見ますと、池田さんは、ライス・バンク、米の銀行をまた作りたいと言っておられる。あちらこちらでも銀行々々と言っているが、実際その効果を上げるのには、何といっても私はソビエトとの経済競争の一翼をになうのが第二世銀だと思われますし、客観的にもそう信じられておりますが、それをするためには、少なくとも二分か二分五厘の金利に対抗するものでなければならぬ。私は、つくづく国内の金利と国際金利を考えて、一体大臣はよその国に——少なくともそれは国家百年の大計はあろうけれども、よその国のお百姓さんや中小企業の皆さんやあるいはその他の皆さんに、最後には二分か二分五厘で対抗する銀行を作って貸してやる。ところが国内ではどうですか。政府金融機関だって九分三厘です。その辺のちょっとした相互銀行や何かに行けば、歩積み料だけで二割から二割五分の金利さえ今日あるわけです。国内の金利が世界的な高金利で解決できないときに、何を好んで税金を費やして、よその国のお百姓や中小企業に二分や二分五厘で——しかもそれによって日本の力が手きびしく相手にわかっていく、よくすなおに通じていくのではなくて、アメリカソビエト借款競争の一翼をになうという性格しか私には考えられない。もしもこれを実際にやるならば、もう少しすなおな形でなされなければ、今の状況からいっては何にもならない。国内の納税者に対する説得力もなければ、国内で金を借りたいと思っておる人、また、あなたが日本金利は世界的な高金利で、長期にわたっては低金利政策をとらなければいかぬと何べんも言っておっても実現されない今日において、このやり方はどうも私は納得できないのであります。この点について国内の金利と国際的な金利と両方比較して、今あなたが全力をあげて、まさに今国会においても、第二世銀なりあるいは国際開発協会なり、金となにとを費やして、主力を置いておる理由は一体何であるか。国内の高金利についてどう考えるのか。どちらが一体優先する問題であるのか。その点大臣の腹蔵のない御意見を伺いたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの御意見、私どもも大いに考えなければならない点を含んでおるように思います。ただ実態自身についての認識の度合いがよほど違っているのではないか。私は、今日本の力が非常に強く働いて第二世銀構想が動く、かようには実は考えておりません。日本の持ち分としては、あるいは負担分としては、第二世銀の全体の機構から見ましたならば、きわめて。パーセンテージが低いものだ、その低いものすら日本経済は負担することができないような状態にあるんだ、これがもし横山さんの御議論であるならば、私はそれには賛成しない。かように申しますのは、今後の経済のあり方として、自国経済の強度を増すこと、これはもちろんまず第一に考えなければなりませんが、競争と国際的協力の面は最も大事な部面で、これにも相当の考慮を払っていかなければならない。この国際協力が一面に行なわれ、しかもお互いに競争をしながらも自国の経済が発展していく、こういうときにぶつかるような方法によって経済の発展を計画していくことが望ましい形だ、かように考えておるわけであります。でありますから、日本経済力を度外視して、日本の負担にたえないような非常に大きな負担で、後進国開発日本が乗り出すというならば、これはただいまのようなおしかりを受けましても当然だと思いますが、今日第二世銀に対して私どもが参加して私どもの役割を果たそうというのは、わが経済力から見ましてもその程度は可能だ、そういう観点に立っておりますので、この事実についての認識を十分正確に把握していただきたいと思います。  ところで、わが国経済自身の持つ弱さというものが、ただいま申し上げるような一連の国際競争力というものにたえ得るかどうか、こういう観点についての問題としては、私どもは国内において幾多の施策等を推進していかなければならない。企業の体育改善も必要であるし、あるいは金利の面についても国際金利にさや寄せさせる。いろいろの政策を樹立させて参るわけであります。この点は別に矛盾もなければ撞着もないし、そういう意味では十分に国民の理解も得られる、かように私は確信いたしております。
  24. 横山利秋

    横山委員 それは私は大臣の少しうぬぼれじゃなかろうかと思うのです。今の国内における金利高というものは、大臣もよく御承知の通りであるし、あらゆるところで今の金利については何とかしなければならないと言っておられる。このごろは、労働団体、総評や全労会議のようなところですら、企業をよく知ろう、そうして闘争する過程において、いかに金利というものが大きな影響をもたらしておるかということを痛感して、総評のようなところでも、日本金利については善処さるべきであるという発表をしておるわけです。そういうときに、この間公定歩合の引き上げをいたしました。その際、大臣は、いやこれは一時的な問題であって、自分の長期にわたる低金利政策の根本には変わらない。たしか佐藤委員の質問に対する答えでありましたが、私はそれを記憶いたしておるのです。そうは言いながら、外国に対する援助、外国の商売人やお百姓さんに対する援助については、やれ六分ではいかぬから五分くらいのやつで貸してやらなければならぬ、それでもいかぬから、一つソビエトの向こうを張って二分か二分五厘の低金利の第二世銀を作って、東南アジアの諸君に貸してやろう。至れり尽くせりの考えではないか。それにも増してまた先ほどは一国対一国の経済援助は好ましくないと言いながら、今度国際開発協会を開設して、五十億の金を東南アジアにさらにみつごうというじゃありませんか。私は、素朴に申しますならば、それ自身必ずしもいかぬとは言わないけれども、一方において国内の金利をどうするか、自由化によって今度は逆の面で低金利の外資が入ってくる。それによって一体国内の金利政策はどういうふうにするというのでありますか。こちらの方が全然ぼけていて明確さを欠いている。今国民の目は第二世銀や国際開発協会のことについてはあまり知らない。国民の目は、外資が入ってくるそうだ、安い金利のものが入ってくるそうだという不安と、それから一つには期待、そういう錯雑した状況で問題になっておる。そういう状況のもとで、国内の高金利についてはこの際方向を示して、大臣としてははっきりしなければならぬのに、それについては言うばかりであって、貧乏な日本が外国に鉄を貸してやることにきゅうきゅうとして、予算を差し繰っておるというのはいかがなものであろうか。この答えを私は求めておる。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 世銀を中心にして国際金融公社や第二世銀、これは考え方で見ますと世銀の一部局みたいなものでございますから、これが相互に対立する、いわゆる銀行の数がふえる、こういうようなものではない。これはやはり三つが考え方によれば世銀の傘下のもとにおいて経営されておる。こういう事実は一つお考えおきを願いたい。  どういうわけでそういうものをやっておるのか、後進国開発というものは後進国だけが利益を得るのか、さらにそれが貿易拡大の形において先進国経済の発展に寄与し得るのじゃないか、貢献し得るような状態ができるんじゃないか、そういうことも考えてやはり後進国開発をやるわけであります。だから、後進国開発をやるというのは、利益を受けるのは後進国だけなんだ、日本や何かにはちっとも利益は返ってこないんだ、こういう見方は、国際経済のあり方から見まして、私は実際を正直に認識したものだとは思わない。十分そこに国際協力といいますか、国際貿易を拡大していくという意味においての効果が期待できる。これは十分注意していただきたいことであります。  同時に、国内の金利の高いこと、これはもう御指摘の通りであります。わが国の産業を進めて参ります上において、こういう高金利であることは望ましくない。これは御指摘の通りであります。私どもいつも申し上げる通り、ただいま、お前こう言ったじゃないかということですが、その通りでありまして、絶えず申しておりますのは国際金利にさや寄せする、その基本的方針には何らの変わりはございません。今日高い金利が一日にして生まれたわけじゃない。戦後において幾多の経過を経てこういう金利になってきておる。高いことは困ったことなんだ、これを安くしなければならないのだが、これは一朝一夕にそう簡単に、短期間のうちにこれを引き下げることは困難なんだということを実は申し上げたので、その点は御理解をいただいておるだろうと思います。私どもは絶えずそういう努力をしなければならない。  昨年十二月に公定歩合を一厘上げましたが、これは、やはり金利そのものが景気に対して非常な関係を持つということを考えますと、調節作用としての金利を時に動かすことのあること、これはやむを得ないことなんだ、そうすることによって景気調節をもしていきたい、かように考えますが、長期的に言いいますならば、必ず国際金利にさや寄せするということにならなければならない。最近は、幸いとでも申しますか、日本金利は十二月に一厘の公定歩合の引き上げをいたしましたが、欧米等におきまして順次金利そのものが高くなって参りました。そういう意味では、日本が積極的に金利を下げなくても、いわゆる国際的の金利の差というものはだんだん狭まってきた、こういう実情にもあるわけであります。しこうして、私どもは、長期の目から見まして、今後は国際金利とのさや寄せがなくなって、外国の金利が高くなりましても、これは望ましい形じゃないのでありますから、やはり金利は下げる方向に努力を進めていくべきだ、かように私は考えております。重ねて申し上げておきます。
  26. 横山利秋

    横山委員 重ねてお伺いしなければならぬのでございます。それはなぜかといいますと、あなたの言う低金利政策には変わりはない、外国が今金利が高くなりつつあるけれども、それに対して影響はされないというばかりではなくて、そちらがそうならこちらは下げて初めて合うのだといいますが、その下げる努力をどういうふうにしてやっていくか、今ほかっておいたのでは下がりはせぬ。また自由化、外資導入によって今下げざるを得ない状況というものが生まれてきておるではないか。それに対して具体的にどういう手で順調にそれを実現しようとするのか。それは金融が変化をしていく、引き締まっていく、あるいは緩和していく、その際にやるのではなくして、現在こういう、あなたの言う言い方によれば——どもの見解を抜きにしてあなたのペースに立って言うならば、順調な経済の伸展の状況であるとするならば、このときにやるのが普通ではないか。そうではなくして、引き締まったあるいは緩和したというときにやったのでは、その低金利政策を行なうんだというあなたの意味は出ないのではないか。従って、今単独で低金利政策の足ならしとしてやることが必要なのではないかということでありますけれども、具体的に金融機関に対して——金融機関は公定歩合を引き上げさえすれば喜んでいるにきまっているのでありますが、引き下げなければならないその抵抗をどういうふうに説得をして、どういうふうに実現をさせていくのか。その具体的な方法の二、三をお伺いをいたしておるわけです。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基本的には、金融自身の経営の合理化あるいは体質改善、これをはかっていかなければならない。そういう意味で、預貸率の改善であるとかあるいはその他いろいろ工夫しておる点があるわけでございます。これが基本的な問題だと思います。こればかりでもなかなか積極性を持ち得ないのでございますが、一面にいわゆる政策的金利というものを物によりまして順次作っていく。こういうものは金利体系そのものを乱すということで、なかなか賛成しかねることでございますが、必要やむを得ない場合においては、やはり低い金利のものを作っていく。そういうことが順次銀行経営の体質改善なり経営の合理化と歩調が合っていくという方向にも実はなるのではないかと思います。絶えず私どもが監査を通じあるいは機会あるごとに基本的な方針を述べておるのは、そういう意味で主張しておるつもりであります。さらにまた、一面において当然考えなければならない問題でございますが、今私どもはその時期にない、かように思いますので、触れておらない預金金利を下げる方法ができるかどうかというような問題も、もちろん研究対象になるわけであります。しかし、今日の状況では、預金にはさわらないで、金融の体質改善なりあるいは経営の合理化によって金利を下げていく、銀行コストを減らしていく、こういうことを工夫すべき段階ではないか。一面、先ほど申しますように、特別な政策金利を設定していくということではないか、かように考えております。
  28. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 関連して。  佐藤大蔵大臣にちょっとお伺いしたいのですが、政府は所得倍増論というものを盛んにやっておられるけれども、そういうことの第二として、低金利政策に対してどういうような考えを持っておられるのか。私、この間東南アジアに行っていろいろ話を聞いたのでありますが、そのことについてどういう政策を持っておられるのか。この際、重要な問題でありますから、それをちょっとお伺いいたしたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今一応横山委員に申し上げましたが、やはり金融の場合に考えられますことは、一面金利、一面量ということだと思います。その質と量、この二つが合わないと、十分の目的を達していくことはできない。逆に申しますならば、世界で一番金利の安い国はインドといわれている。そのインドが一番安いが、それでは金融は非常にうまくいっているのかというと、量はきわめて少ない。量が少なくて金利が安いということになっているのは納得ができないという御指摘があるかもわかりませんが、インドの金利の安いのは宗教的な考え方から出ているわけであります。だから、非常に金利は安いが、量が非常に少ない限り、金融目的は達しない。そこで、宗教的な拘束を受けない一部の連中のいわゆる高利貸しが非常に横行しているといわれております。そこで、問題は、やはり量が十分であり、しかる後に金利が安くなるということでないと、真に金融目的を達しないだろう。わが国の場合を考えてみまして、まだまだ金融量というものが非常に制約を受けている。こういう点から、金利自身が相当高いところにとまっているのだ、かように実は思うのです。先ほど預金云々の話をいたしましたのも、そういう点を絶えず私どもは考えておる次第であります。  ところで、所得倍増の計画の問題で大きな問題になりますのは、産業の発展についての所要の資金というものがございましょうし、また国の財政計画というものの裏づけをやはりなさざるを得ない。しかし、この方はなかなか長期にわたる財政計画の樹立は困難であります。こういう意味で、まず生産指数の方についての計画を立て、しかる上で財政的な十分の見通しを立てていく。こういうように、いわゆる経済企画庁の経済審議会が取り上げていくことだと思います。いわゆる経済の成長計画ばかり立てましても、財政計画が立たないと、これは描いたもちになるだろう、かように実は思っておる次第であります。
  30. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つお尋ねしたいのですが、私たちも、東南アジアに行きますと、日本の東南アジア開発協力基金などでいろいろ援助をされている点も、これは理解はできます。けれども、今横山委員の言われるように、国内については非常に高金利だ、しかし東南アジアだけには低金利でやるということが、ちょうど飢餓輸出と同じような関連から、にわかに理解できないような点があるのですが、この点についてどういうようなお考えを持っておられるのか。この点だけもう一回お伺いしておきます。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今国内金利と輸出金利との間に一番問題になるのは輸銀の金利の問題であります。これが現実にただいま御指摘になりますような点の矛盾を実は出してきている。たとえば、造船金利は輸銀の場合は四分です。また国内においては六分五厘である。だから、輸銀を主体にして安く船を作って、それを外国の船にして、そして日本でこれと特約をすれば、安い船価の船を使うことによって運賃コストを下げ得る。最近、新聞等をにぎわしております製鉄会社などが、そういう方法をとって鉱石輸送をやろうということをやっている。これなどは、ただいま申しますような金利が二重になっているというところから出ている一つの困った現象であります。これはこのままほっておくわけには参らない。業界自身も、そういう意味では、わが国産業の育成に協力するという意味で、それを十分避けていただきたい、かようには思いますが、今採算ベースそのものから申せば、製鉄会社の計画などが、その事業自身から見ると、最もしあわせというか、非常に好都合な利益のある方法だと思います。しかし、それが同時に日本の海運界に悪影響を及ぼしておる。今佐藤委員の御指摘になるように、外国には低金利で金を貸した、国内の方は金利が高い、そういう場合に、先ほど私が抽象的に申しましたように、外国の経済を発展させて、逆にそれが同時に日本の国内産業の育成強化に役立つとか、あるいは日本の貿易拡大に役立つ、こういうように返ってくればよろしゅうございますが、反対に貿易拡大のじゃまになるというようなことになっては大へんでございます。今回の東南アジア等に対する経済開発基金の五十億にいたしましても、そういう意味でこれの使い方は十分考えていかなければならない。わが国の経済の発展と、その資金の供与を受ける相手国の経済開発とが、お互いにその利益を同じくする、共通の利益のためにその金が使われるというような方向に使うべきだ、実はかように考えております。こういう点でいろいろ問題のあることは、私ども承知はいたしております。
  32. 横山利秋

    横山委員 国内の低金利の問題はよく議論を尽くして参りましたが、もう一ぺん、この第二世銀をなぜ作らなければならぬかという議論に戻ります。その際に、大臣は、外国へ銭を貸すについては、一国だけが貸したのではひもつきが多いから、国際的な機関を作って、それを通して貸した方がいい。これは私もすなおに、別な問題がなければ、これが正しい、こういうふうに同意をいたしました。そこで、今度は、その前提に立てば、国際開発協会、日本が五十億円の金をもって、東南アジアの国々へ金を貸そうという真意は一体どこにあるか、というところへ移っていくわけであります。その前に前提がやはりもう一つあるわけです。先ほどソビエトの引用をいたしました。ソビエトが二分か二分五厘で東南アジアに金を貸しておる。それでフルシチョフがインドへ行けば三億ドル、約一千億円の借款をする。だから、アイゼンハワーが日本においでになるときは金を貸してもらえるのかと言ったら、金は出ぬそうであります。どうもそれじゃ話が違いはせぬかとこの間話したのであります。もう一つは中国であります。中国がソビエトから金を借りておった。今は金を借りておったときと違いまして、今度は中国が東南アジアに金を貸しておるのを見ますと、イエーメンには無利子、ビルマには二分五厘、インドネシアでも二分五厘、十年、現金または物資による返済、セイロンが二分五厘、エジプトが二分五厘、中国がほとんど貸し手に回っているわけであります。しかも二分五厘という非常に低利の金を貸しておる。これもまた、ああいう国でありますから、経済政策と外交政策とが密接不可分によって行なわれておると見てよろしい。それでは、日本の国際開発協会が今度設立されて、五十億の金を貸すというのは一体どういう意味があるのであるか。先ほど、大臣は、とにかくこれを貸してやれば、今は別としても、貿易の拡大にこれが回ってくるのである、こうおっしゃったのだが、時間の関係上、私はずばりと私の意見を含めて質問をいたします。  その第一は、自由化によって——日本の貿易構造は先進国が四〇、後進国が六〇。これが少しよくなっているのかもしれませんが、よくいっても五〇、五〇の貿易構造。その片一方の先進国の五〇の方に自由化をすれば、東南アジアから品物を買うのが向こうへずれていって、後進国の貿易が少なくなっていく。これは私が言うのではない。ここにあります通産省発行の「経済協力の現状と問題点」、これによると、冒頭に自由化の影響として後進国貿易が減るということが書いてある。これは政府の著書であります。それなるがゆえに、それではいかんからという意味一つこの国際開発協会の中にあるのではないか。それが質問の第一です。  第二番目には、この設立の理由、第二世銀について私があなたに追及したが、靴を隔てて足をかくという感じがあるのではないか。第二世銀を通ずれば、日本の権利主張というものはそう大したことはないから、影響が少ないから、日本も銭を貸しておりますよという気持をそこに現わしておきたいのではないか。これが第二番目であります。  第三番目に、結論的なことになりますが、それならば中途半端な銭ではないか、五十億で一体何をするつもりであるか。こんな少しの金で、しかも二分五厘くらいの金利を取られるかどうか、それは知りません。それも説明してもらいたいのですが、高金利で、五十億ぽっちで対抗しようとする中途半端な考え方ではだめなんではないか。やるならばもっとでかいことをなさらなければだめなんではないか。やらぬならやらぬで、この中途半端な全額では効果がないと考えるが、いかがでありますか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 第一点の第二世銀の問題でございますが、先ほど来国際機関でやるのがいい、そういう前提に立っての第二世銀ということで、横山さんも前提は承認されたわけではないが、一応そういうことで立論しておられます。私ども国際機関でやるということを申し上げますゆえんは、先ほど来申し上げておりますように、今わが国の為替の自由化の場合でも議論になるのですが、外資が日本に入ってきたときに、外国資本によって事業が占領されるのじゃないかということを、一部で非常に懸念した向きがあった。ことに東南アジア諸国においてはそれを非常に警戒をしておる。従いまして、共同経営ということ、その形すら実は絶対にいかぬという言い方をしておる国すらあるわけであります。最も顕著な例がインドネシアだと思います。こういうようなところに対しては、経済開発をやっていく場合に、やはり金を貸すという以外に方法はないだろう。しかも、その金の使い方について、どこまでも自国の言い分でその金を使うということでありますから、金を貸す方もそういうことならということで差し控える。国際的な金融というものはそういう意味でなかなかむずかしいのであります。私は、こういう意味から、日本経済自身についても、将来の為替導入ということを考えれば、もうそういう自国の事業は全部自国でやるのだというようなけちな考え方をしないで、わが国の産業を拡大し、貿易にも役立つようなこと、その目的に合うならば外資は進んでこの国に受け入れる、こういうことでないと、なかなか発展を期するわけにいかないのであります。今日の国際協力ということは、そういう意味において当然考えていかなければならない、在来のような自立経済というようなこまかな考え方じゃいけない、こういうことをいつも指摘して参っておるわけであります。ところで、そういう考え方で東南アジアなりその他の未開発、低開発国のあり方を見た場合に、積極的に日本からの資金の供与を心から望む国もあるし、ただいま申し上げるように、共同経営は一切ごめんだ、金を貸してくれるのはいいが、その使い方は借りた方で自由にやるのだ、こういうような考え方とがあるわけであります。そこにやはり金を貸してくれる日本気持も十分考えている、共同して経済開発もやってもらいたい、こういうような意味のものは私どもも進んでやりたい。これがいわゆる第二世銀の考え方であり、また第二世銀そのものを特に私ども今回申しておりますのは、先ほど来御指摘になりましたように、国際金融公社にしても、あるいはまたこれまで考えられた地域的な国際金融機関というものにいたしましても、非常に地域を限っておる。あるいは中近東の問題が起きた際に、中近東に一つ国際金融機関を作ろうというような計画を持った。しかしこれは成立を見なかった。しかし、ラテン・アメリカについては、特殊な地域をまかなうような金融機関すら生まれている。取り残された地域といえば東南アジアあるいは中近東、それらが取り残された。そういうものに対しては、日本の位置する立場から見ましても、何らかの要望にはこたえ得るような措置をとることが必要だ。第二世銀に私ども参加いたしました際にも、特に東南アジアについての金融を考慮してもらうということを私どもも発言して参っております。同時にまた、先ほど申すような意味合いからも、特に日本経済協力を要望する国に対しては、それにこたえ得るような機構が必要だというので、いわゆる経済開発基金なるものを今回御審議をいただいておるわけであります。この経済開発基金そのものが、金額がいかにも少ない、中途半端だ、御指摘の通りであります。私は、五十億をもって十分だとか、あるいはこれである程度まかなえる、かようには実は思いませんが、まず初年として、わが国の今の財政状態からさき得る資金とすれば、この程度のものに実は限らざるを得ないということでありますので、残念ながらもきわめて少額のものを計上した。一部におきましては、少なくとも二百億あるいは三百億程度は最低必要じゃないか、そういうものでスタートしよう、従って、五十億しか金がないならば、借り入れの限度も考えたらどうかというような事柄まで議論されておりますが、今回は最初のことでございますから、借り入れなどもしばらくはやらないことで、これでまずスタートしてみようということで政府は考えております。しかしこれは非常にきわめて少額であります。中途半端であります。そういう意味では、これで十分目的を達するとは思いませんが、私どもの積極的意図というものは、この制度を設けることによって、十分理解を得るんじゃないか、所要の金額がさらに増額を必要とするような時期がくれば、さらに私どもも工夫をすべき事柄だ、かように思います。  ところで、この第二世銀なりあるいは開発基金なりの問題を通じて、共産圏のソ連あるいは中共等の低開発国に対する融資金利が非常に安い、場合によっては無利子である、ときに二分五厘が普通だ、こういうお話を実はしておられます。一体、これは、経済政策あるいは世界経済政策あるいは外交政策というか、何かそれらの国自身の特殊な関係で低金利を提供すること、これが中共の国力自身でふさわしい状況にあるかどうか、これは私は、実情がわかりませんから、あえて批判はいたしません。しかしながら、先ほど来、わが国経済について、日本の国民生活を向上させ、経済を発展さすためには、国内の金利はもっと安くならなければならぬ、こういうことを指摘されましたが、中共自身の経済の実態が、外国に対して二分五厘の金を相当多額貸し得る、国内産業については、一体どういう処置をとっておるかという点は、よく考えてみなければならぬことじゃないか。私どもしばしば申し上げるのでございますが、いわゆる共産主義国の政治のやり方、経済のやり方と、私どもの自由主義国のやり方とは、基本的に違っておる。その意味で、これを二つ比較してみることは非常に困難だ、条件を合わしてみることは非常に困難でございます。しかし、私は、そういう違いはありますが、現実の問題で、ソ連や中共が非常に低金利融資を低開発国にしている、これはおそらく政治的な特別な意図の結果にほかならないだろうと思います。と申しますのは、中共やソ連における一般国民の消費水準、国民の生活水準というものは、しからば日本の国民生活水準と比べて、どういうところにあるだろうかという点など考えてみますと、これは特別な金利を提供しておる、特別な政治的意図があるんだ、こういうことを申さざるを得ない。しかし、少なくともそういう現実の出ていることだけは事実なんです。借りる方から申せば、安い国から金を借りる、条件がないならばそれに飛びつくということも、これはあり得るだろうと思う。しかし、わが国自身が、ただいま申すような中共やソ連の二分五厘の金利で、こういう国に金を貸し得るような力のないことは、先ほど来御指摘の通りでございます。私どもは、やはり国際機関を通じて、こういうことは開発さるべきじゃないか。真に民族の生活向上を考え、そうして経済開発が自国の経済あるいは貿易の拡大に役立つ、こういうことを考える場合には、これはやはり、最近の国際情勢から申せば、国際機関を通じてやるということが望ましいことじゃないか、実はかように考えております。
  34. 横山利秋

    横山委員 大臣の意図のあるところは、いろいろな意味でわかりましたけれども、しかし、中国、ソビエト日本の生活水準を云々する前に、この金利を、貸してもらう後進国の諸君が、いかなる金利、いかなる条件であるか、しかもそれがどういうひもがつくかということを判断をすることが、一番大事なことだと私は思うわけです。その意味では、私は純粋に比較論の上で言っておるのでありますし、この点は経済雑誌にもとくと出ておるから、あるいは大臣のお目に触れているかもしれませんが、だれがどう考えても、ひもも少ないし、金利も安いし、返済条件その他もソビエト側の方がいいのであります。これを大きな意味でひもをつけようとしておるという議論も、それはしてできないことはありません。しかし、そういうならば、小さい意味アメリカは一生懸命ひもをつけようとしているのだということが、また言えるのであります。現実品題としては、証文を書くときには、ソビエトの方が、また中国の方がはるかにいい条件であるということは、私どもはこの国際開発協会なり第二世銀を作る場合に忘れてはならぬ事実の問題だと私は思う。  それはさておきといたしまして、国際開発協会の、あなたが言う二百億くらいはほしいにかかわらず、五十億しかないのだというたった五十億に、あろうことかあるまいことか、蜜に集まる何やらのように、各大臣が、おれも入れろ、おれのところも入れろといって、運輸大臣建設大臣が八分にされたためにかんかんになって怒っているために、閣議がまとまらなかったという話があるということでありますが、私はまことに見識のないことだと思います。  そこでお伺いしたいのですけれども大蔵大臣にお伺いするのか企画庁長官にお伺いするのかわかりませんけれども、一体この五十億を、どういう金利水準で、どういう条件で、どういう国のどういう事業に貸そうというふうにお考えになっておられるのか。この貸す機構ですが、何か聞くところによれば、別に公団を一つ作るのだそうであります。窓口は開銀かそこらであるにかかわらず、所管大臣経済企画庁長官であるというのにかかわらず、もう一つ役所を、公団か何か一つ作って、関所を三つか四つにして、しかも関所におりたくておりたくてしょうがない大臣が一ぱいおるのだそうでありますが、そういうあなたが言うたったこれっぽっちのお金に、国内でけんか別れをしておるという醜態をしておってはいかぬのであります。どういう機構、金利返済条件、貸す国の事業の対象であるか、この際明らかにされたいのであります。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いずれこれは御審議をいただく予定になっておりまして、近く提出されることでございますが、今政府が考えておりますのは、ただいま申し上げる海外経済協力基金、かように申し上げます以上、やはり役人の性格で扱うよりも、一種の法人格を有するものとして独立の機関を作ることが、これは望ましいのではないか、かように実は考えておりますから、独立の法人格を有する海外経済協力基金というものを作るつもりでございます。この取り扱い地域等については、さしあたり東南アジアを主体にいたしますが、東南アジアに限るつもりはございません。従いまして、これは多分明日あたり閣議決定を見る予定でありますが、その他の地域にも必要ならば出していくという考え方で、中南米等が考えられるだろうと思います。運用につきましては、通常の輸出入銀行金融ベースに乗らないものを扱うということを考えて参りますが、できるだけ経済性を無視した貸付にならないように、運用方針を定めていくつもりであります。役員は、総裁一人、理事二名、監事一名、職員は事務局長一名、きわめて簡素なものにするつもりでございます。その仕事そのものの事務は輸出入銀行に委託した方がいいのではないか、実はかように考えております。  大体そんな点がおもな点でございますが、扱うものといたしましては、大きな方針をきめるためには、総理を会長にして関係大臣審議会を設けて、そして基本方針をきめていく、こういう考え方でございます。
  36. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんから、あと一問ないしは二問。今まで日本に不相応な——不相応だとあえて私は言うのでありますが、不相応な貸す方の話を質問をして参りました。本来日本は、今なおかつ貧乏でありますから、借りる方に回っており、借りることの方が日本経済について重要であることは、今日までわれわれの熟知しておるところであります。それなればこそ、借りる方に一生懸命になっておらなければならぬものが、えらくこのごろはいばって、おれも貸すのだというような顔をしておるけれども、そのふところは実にさびしく、よそ様と対抗できないようなことではないのか。そんなことをえらいみえを張って、しかもうちの子供には何を食わしておるのだということを私は言いたいのであります。一体それじゃ借りる方の話はどうなっておるか。先般私が予算委員会でお尋ねいたしましたところ、外債は、心配をいただいたけれども、五千万ドルは絶対に本年度内に募集できますというお話でございましたが、簡単にお伺いしたいのですが、そうネコの目の変わるように、いかぬそうだ、ブラック総裁の手紙を読んでみてもいかぬそうだ、それじゃ電電公社だけ優先して、あとの方は開銀でやってもらおうじゃないか、いや今度は全く大丈夫だ、五千万ドルは迷惑かけぬというふうに、そうネコの目のように変わるということは、政府の部内における判断というものが疑われるのであります。簡単でけっこうでございますが、あらためてどういうわけで見通しがそうぐらぐらしたのでありましょうか。今実際に新聞に伝わるように、五千万ドルはあやふやなものでなくして、大蔵大臣は、五千万ドルは、予算総則にもあることであるから、責任をもって三十五年度内に募集ができるという確信を持っておられるのか。その点を、簡単でよろしゅうございますから、一つ明確にお伺いしたい。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの電電債並びに開発銀行債につきまして、もちろんまだこれからいろいろ確かめなければならないものがあると思います。あると思いますが、計画といたしましてはすでに予算総則に出しておる通りでありますし、私どもは、この程度は可能だ、かように実は考え、ただいま各方面に努力しておる最中でございます。
  38. 横山利秋

    横山委員 それじゃその理由は伺いません。あれほど政治的に、また新聞でも騒がれた外債が、多少の紆余曲折を経ても、大臣があらためて私がお伺いしたところに対して間違いないとおっしゃる以上は、将来の一つのあなたの政治的な責任として私は理解をして参りたいと思います。  もう一つ、それに関連いたしまして、大臣が努力なさっておられる世界銀行の借りる方の話であります。世界銀行の方は、川鉄や九電や住友が二百五十二億でございますか、また国鉄その他の募集が遊んでおるのでありますが、たとえば国鉄を例に引いてみますと、従来の世銀借款条件というものよりは緩和してきたように見えるけれども、今なお世銀に対して相当の条件があることはだれでも知っておるところであります。金を借りる以上、利息を払わなければならぬ。多少の条件があることは、当然でありましょうが、いやしくも今回政府の一極の機関であります国鉄に外資が入るに際しまして、世界銀行が国鉄の事業計画を承認事項とするとか、特別会計を要求するとか、あるいは政府が保証契約を結ぶのは、今までも例があるでございましょうが、政府がさらにそれに対して融資をする責任を世界銀行に負うとか、あるいは銀行が本来借りるにかかわらず、世銀と国鉄の直接の交渉、直接の契約というものが中に秘められるとかいうような点につきまして、国鉄に少なくとも外国の資本というものが入り、その入る条件というものが将来に尾を引くようなことがあっては、国鉄出身の大蔵大臣としても十分にお考えにならなければならぬところでありますが、一体現在進行いたしております東海道新幹線に対する世銀借款条件はどういうものであるか。それは、国鉄の今後の経営に対して、日本の公共の機関の経営に対していかなる束縛を与えるものであるか。その点をお伺いいたしたいのであります。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国鉄に対する世銀からの借り入れの問題はただいまどの程度になっておるかということでありますが、昨年末国鉄の理事者が参りまして、いろいろ国鉄の現状なり計画なりをよく説明しまして、だんだん世銀も理解を深めてきましたが、世銀から近く調査団が当方へ来ることになっております。その調査を終了いたしました後に、ただいまいろいろ心配な点があるじゃないかというような各種の条件がどういうように出てくるか、それをただいま待っておる段階であります。  ところで、基本的に申し上げておかなければならないことがございますが、先ほど来貸す方の話が出たが借りる方はどうなっておるかということで、今の質疑が行なわれておりますが、昨年私アメリカに参りましてブラック総裁といろいろ話した際に、世銀そのものから申しまして、世銀自身は先進工業国に対しての融資は順次差し控えたいつもりだ、そういう観点に立って日本経済を見た場合に、今後は日本世銀に対して期待する額はそう長期にわたるわけにいかない、現にもうイタリアなどは原子力発電所の計画融資、これを最後にしておる、順次いわゆる先進国に対しての貸付はやめるつもりだ、日本も順次そういうことを考えてもらいたい、しかし、世銀自身は日本アメリカ金融市場から借り入れをするというようなことについてはもちろん協力をするが、世銀自身が直接貸すことについては順次その金額を減らしていくつもりだ、大体一年に一億ドル程度の考え方でおってもらいたいという話を実はされておるのでございます。そこで、最近行なわれております住友金属あるいは川鉄等の交渉などを見ておりますと、ただいままだ最終的段階ではございませんが、世銀アメリカ金融機関と共同して融資する、協調融資をするような方法で今話が進みつつあるように見受けます。これらの場合に協調融資世銀がどの程度負担するかによりまして、それがいわゆる国鉄の一億ドルに影響のあるものかないものか、そこらに私どもやや心配をしている点がある。世銀会計年度はこの七月まででございますので、本年内に片づくものがあとへ引くということは考えられませんが、国鉄のものはおそらく七月以降でないとその結論が出てこない、かように実は考えております。そういう意味で、金額等につきましてもなお十分折衝を要するものがあるじゃないか、こういう点で非常な楽観的な見方は許されない状況にあるということでございます。従いまして、ただいま御指摘になりますような条件等はまだそこまで出てきておらない、今後の交渉に待つ以外に方法がない、こういう状況でございます。
  40. 横山利秋

    横山委員 もうこれで終わるわけですが、条件はまだ出てきていないとい  いましても、私がお伺いをいたしております点は、国鉄の機構、運営に将来束縛を与えるようなことが考えられはしないか、そういう点が今日までの交渉経過の中から考えられるのか。たとえば、一説にございますが、特別会計を作れとか、あるいは東海道新幹線以外の一般の国鉄の経営に対して世銀が注文を発するということが一体あり得るのか。また政府がそれに対する責任を持たしめられるということが一体あるのか。世銀と国鉄との直接の権利義務というような問題が一体あるのか。交渉の経過の中におけるこの条件というものについてお伺いをいたしておるわけでございます。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そういう点についての具体的な意向はまだ出ておりません。しかし、在来の世銀融資いたしました場合に、しばしば世銀自身が指摘しておりますように、当然その資本に対する相当の利益率が必要だとかいうことは必ず指摘するだろうと思います。そういう意味から、国鉄の在来線の収支状況世銀としては満足すべきものかどうかというような診断をすることは、一応予想しておかなければならぬことじゃないかと思います。また、幹線を作ります場合に、当初幹線だけ別途の機関を作れというような議論が一部国内にあったと思いますが、そういう点はもちろん世銀としても要求する筋ではないと思います。ただ幹線についての経理を明確にしろという程度のことは申すかわからぬ。しかし、これは経営の面から申しましても比較的受け入れやすいことかどうかというような点は、その相手方が出してきました事柄によりまして、私どもはさらに考えをまとめていくべきことじゃないか、かように実は思っておりますが、そういう点については一応予想されることじゃないかというような気もいたします。それではただいままでそういう話があったのか、こう言って聞かれますと、そういう話は全然ございませんと、はっきり申し上げます。
  42. 横山利秋

    横山委員 あとの委員が待っておりますので、私の質問はこれでとめることにいたしますが、また将来適当な機会にもう一度振り返ってみて、この貸す立場と借りる立場日本経済協力の現状について、ただいまの大臣の御答弁を速記録で読み返しまして、あらためて御質問いたすことにいたします。
  43. 植木庚子郎

  44. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 昨日来、この委員会におきまして貿易・為替の自由化について論議されてきましたが、私も、補完的な意味からも、政府の所見をこの機会にただしたいと存じます。  わが国におきまして、貿易・為替の自由化の問題が現実の政治日程に上ったのは、まことに急激に、昨秋来のことであります。そこで、もともと米国に対しましてどうもお弱い立場にある現内閣によって取り上げられ、強行されようとする点で、国民の不安と懸念があるわけであります。もとより、他方におきましては、一昨年末西欧の諸国が対ドル為替自由化に踏み切り、次いで欧州共同市場もスタートしまして、そうした一般的な傾向としても自由化は根強いものであります。そういうわれわれの不安と、西欧に見られるような世界の大勢と、交互に織りなされまして、私どもの前にこの問題の解決が迫られておるわけでありますので、私はこの課題につきまして深くえぐって、政府立場一つお伺いしたい、かように考える次第であります。今申し上げたように、世界経済が貿易の自由化の方向に確かに強く前進しているという事実を直視するならば、今日の課題は、貿易・為替の自由化に踏み切るべきかどうかではなしに、むしろ貿易・為替の自由化を進める場合に、いかに自主性を堅持してこれを行なうか、こういう問題になろうと思うのであります。そこで、私は、自由化については慎重の上にも慎重たるべしとの立場に立ちまして、経営取引、資本取引を問わず、対外折衝の場では抵抗の限りを尽くすべきこと、しかして国内施策の観点からは逆に実勢より早めに態勢を整えしめるよう、万端の施策を推し進むべしとの立場から、自由化の二、三の問題点を拾って大臣の所見をお伺いしていきたいのであります。  まず最初に、私が測定のために使いたいと思っているものさし、すなわち対外的には抵抗、国内的には自由化対応施策の万全をという立場は、政府としてもこれをもっともだと是認されますかどうですかをお伺いいたします。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお話しになりました前提によっていろいろ聞くとおっしゃった事柄については、私全然同感であります。ただ、自由化に踏み切ったことが、いかにも最近の政治的考慮の結果であるかのような印象を持っておられる点は、ぜひ払拭していただきたい。これは一昨年来の問題であり、もっと明確に申しますと、昨年の夏時分から——昨年ガットの総会を東京で開くことになって、ガットの総会を開くと当然こういう点についての意見が出てくる、日本政府自身もこれについて十分対策がなければならないということで、諸準備を進めます際に、実は政府としては十分の検討をしたつもりでございます。そうしてこのガット総会に臨んだ。そのとき、たまたま一月の初めになりまして基本的方針を発表したということでありますので、これがちょうど安保調印の時期と前後しておるという意味で、アメリカに対しての、ドル地域に対する六品目というものが一番最初に取り上げられただけに、これは政治的な意図があったんじゃないか、意義があったんじゃないかというような印象を与えておりますが、そうじゃなくて、昨年ガット総会を開きます際に、これが必ず問題になってくるし、これに対しての基本方針を政府としても考えなければならないということで、関係省で大体方向をきめ、そうしてそれが一月になりましてあの発表になった、こういうように御理解をいただきたいのでございます。
  46. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大臣は、先回りしまして、政府の一番のウィーク・ポイントですか、それを最初から防衛なさっておるようでありますが、大臣のお言葉はお言葉といたしまして、私どもの見る見方もございますので、そういう点につきましても質問していきたいと思います。  偶然に日米安保条約締結の時期にちょうどこの問題が取り上げられてきた、こういうことから不当に疑惑の念を持たれておるんだ、こういうお話でございますが、これが不当であるかどうかは、国民といたしましてもいろいろな見方をいたしております。私どもは、特に安保調印渡航まぎわの決定ということでもありましたので、世間で言うようにアメリカへの手みやげだとは思っていないまでも、こうした自由化の問題に対しまして政府は慎重を欠いておるんではないか、こういう感じはいなみ得ないのであります。結局、今回の措置は、直接的にはアメリカの強い要求に屈したものではないかという点に、疑問を持たざるを得ないのであります。そのことは、すでに大臣が先回りしまして、そういうことではないんだということですから、この議論は展開してもしようがないと思います。ただ、IMFにしましても、ガットにいたしましても、もともとこれは自由化を原則とするものではありますが、例外なき原則なしというたとえのごとく、IMF、ガットにも例外規定がございます。そうして、この例外規定こそ、私どもが対外折衝の場において大いによりどころとなるのでありますから、初めからふんどしをはずしてしまったということでなしに、この点は慎重に対外折衝の拠点として考慮されることが必要だと思うのです。世界的な自由化ブームに乗って日本も自由化すべしということですが、昨年末までの日本の貿易における自由化率というものは三一%程度で、西欧のそれがブロック内の九〇%、対ドル自由化率が八〇%に比べますと、まことに確かにおくれております。しかし、そうだからといって、たった一カ月間か二カ月間の時間の経過のうちに、この日本をして三一%にとどめしめた条件がすべて解除されたわけではないのでありまして、そこに問題があろうと思うのです。そこで、お伺いしたいのは、ある時間を置かなければならぬことでありますけれども日本は全面的に貿易の自由化、為替の自由化をやっていくという立場に立っておるのかどうかを、まずお伺いしたいと思うのです。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 全面的というのはどういう意味でお尋ねになるのか、ちょっと私理解いたしかねますが、具体的に、たとえば予算委員会等を通じてお答えいたしておりますように、主食について自由化するような時期がくるのかというと、これは農林大臣も考えておらない、こういうことを実は申し上げております。ただ原綿、原毛というような、わが国繊維産業の基幹をなすものについては、通産大臣もすでに明言いたしておりますように、来年の春を目標として、これはやはり自由化するつもりで今準備を進めておるということでございます。主食というか、農業関係のものは、農産物は非常にむずかしいのでございますが、特に主食については、これは当分とにかく現状は変わらない、かように私どもも考えております。
  48. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 さっそく農業の問題が出ましたので、この点につきましてお伺いしていきたいと思います。結局、大臣のお言葉では、米麦、大豆等の主要農産物について、あるいは酪農製品等につきましてもそうであろうと思いますが、これは自由化を必ずしも適当としておらぬ、こういう見解と解してよろしゅうございますか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大豆は別でございますが、米麦でございますね。ことに米という問題になりますと、これは自由化は考えられぬという状況でございます。
  50. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 実は、対米差別十品目のうち、たまたま大豆が入っておったわけです。そこで対米差別は優先的にとっ払おうということから、この十品目をおしなべて一律にAA化するということを政府はきめました。しかし、この点に多少門雇いがあったのではないかという感じがいたします。これは、シャツのボタンを一つとり違えると、しまいまで間違ってしまうというようにであります。大豆を他の九品目と一緒にAA化することにきめたということが、どうも少し思慮を欠いた処置ではなかったかと私は考えます。まず大豆の自由化に踏み切っておいてから、あとから瞬間タッチだなんて寝言を言ってもしようがないと思う。むしろ、大臣は否定なされましたが、大豆の問題等は正々堂々とガット総会等に対しまして日本立場をこそ主張すべきだ、私はかように考えておりますが、いかがでございましょうか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 対ドル地域に対する差別待遇、言いかえますれば、大豆は、アメリカからくるものについては制限がございますが、その他の地域からくるものはAA制だ。すでにAA制に踏み切っておる品目でございます。ただ、数量が、アメリカ大豆が非常に多いという意味で、今のような制限方式をとっているということでございますので、ガット加入目的としましては、一国に供与されたものは全部平等に取り扱わるべきだという基本的な考え方がございますから、そういう意味で、やはり対ドル地域に対しての差別的な十品目というものは、できるだけ早い機会に平等化されなければならないというので、今回大豆を取り上げたわけであります。もともと大豆の問題は、おそらく御記憶に存することだと思いますが、数年前に一度取り上げて、そうして関税を一割取った。それでこれは自由化するんだということであった。ところが、政変その他がありましていつの間にかやられないでいるという経過もあるわけでございます。従いまして、今回のこの大豆を取り上げたことについては、自由化する以上、他の地域に対して自由化である限り、やはりこれは対ドル地域だけを差別待遇するわけにいかない、かように私は思うのであります。ただ、問題は、そういう場合に、生産者農民の保護なり、また第二次製品の取扱者に対して、瞬間タッチにしろ、関税を引き上げることにしろ、生産者には利益しても、二次生産者といいますか、製油業者なりその他の者は非常に損害をこうむるとかいうような問題がありますので、そういう意味で、その対策についていろいろな工夫が払われておるということは考えなければならないのでございます。そういう意味で、大体の目標だけはきめたが、具体的方途がまだ結論を得ておらないというのが現状でございます。
  52. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 第二次製造業者と第一次生産者としての農民との利害がここで対立するわけです。これは米麦についても同じことなんです。たまたま経過的にこの大豆の問題が特別な形で扱われてきた、そういうことにすぎないので、私は、やはり米麦において消費者と生産者たる農民との利害関係が対立すると同様な範疇において、この大豆の問題もあるのだと考えております。そこで、農産物に対しましてこの自由化の問題が各国で論ぜられ、実際の実施ということに直面しますと、必ずこれを例外的措置にすべしという形でガット交渉等が行なわれておることが実情だと思うのです。私は、自由化というものはレッセフェールの立場である、資本主義の典型的な一つ立場である、これに対して農業それ自身が、これはどうも資本主義、レッセフェールの立場に立ち得ないという本来の宿命的な特質を持っておるように思えてなりません。農業というものは、自然を相手にして年に一回の資本回転率を持っておるだけであります。資本主義の優者というのは、資本の回転率が多いということになろうと思うのです。その立場からすれば、年一回の回転率しか持ち得ない農業は大体非資本主義的な性格を持っておるのだ、かように考えざるを得ません。そこで、ガットの場においてドイツが徹底的に自国の農業保護のために戦った事例を私どもは顧みる必要があると思うのです。一九五七年の春に、IMFは、ドイツはもはや国際収支上の理由による輸入制限を続行する必要はないという判定をいたしまして、次いでガットもこれを受けまして、ドイツに対し輸入制限を撤廃すべきこと、万やむを得ず一部の制限を続行する場合には、ガットにおいて特別の義務免除の承認を求めるべきことを要求しました。ところで、ドイツは、これに対しまして部分的には輸入制限を順次緩和する態度を表明しつつも、全体としては実に頑強に抵抗いたしたのであります。一九五七年、五八年の両年度の総会のほか、五九年度に入りましては、三回にわたり、ジュネーブ、ロンドン、ボンにおいて、わざわざこのために主要関係国からなる特別委員会を開いて、各国が説得に努めたにもかかわりませず、あらゆる口実を設けて争ったのであります。次いで五月、第一回の総会におきましても激しい応酬が繰り返され、あるいはガットはこの問題のために崩壊するのではないかと危ぶまれたほどでありました。最後に、ようやく次の妥協ができて、一応の解決を見ることになったのです。すなわち、農産物については農産物調整法というドイツの国内法がガット制約に優先するという取りつけをしてから、初めて応諾をしたのであります。この事例は大いに注目しなければならぬと思うのです。農業それ自身がもともと資本主義に弱い性格を持っているのだということを、ガット加盟国に対しまして説得する必要があると私は考えているのです。大豆は、従来のいきさつでこちょこちょとそういうようになってしまったというのではなしに、大豆のAA化それ自身が省みられ批判さるべき事柄であって、むしろガットに持っていって、日本の米麦と同様な立場において、特殊な立場を主張すべきが妥当であると私は考える。そういう点から、大豆をめぐるいろいろな論争はそのまま農作物一般に通ずる問題でもあるので、特に農産物輸入自由化についての政府の所見をお聞きしたかったわけであります。  次に、それはそれとして、十月一日から実際に大豆ははずし得るとお思いになりますか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございます。政府もそういう点では非常に慎重に扱うつもりであります。ただ、問題は、大豆と、あるいは米と——これが農村所得に占むる割合など考えますと、米と同一に考えるわけにいかぬだろう。そういう点はやはり工夫していかなければいかぬだろう。また、生産者が——まあ生産者の保護ももちろん大事でございますが、非常に劣悪な条件のもとにおいて改善の余地がないものを、めちゃくちゃな方法で保護を徹底させるということは、一体それは可能なことかどうか、これもやはり考えなければならないことじゃないかと思います。私は、そういう意味で、大豆についての国内の価格安定法による支持価格というものがある限り、一応の保護の方法は立つのじゃないかというような考え方を実はいたすものであります。さらに、この内部的な要素を十分考えてみないと、生産者保護と申しましても、非常に国際的に劣悪な条件下において生産されるというような場合には、これはやはり別な方向へそれを持っていくようにしないと、いわゆる国際経済を無視した手柄でありまして、言いかえるならば経済の原則に反することであって、なかなか長持ちはしないのじゃないか、かように実は思います。だから、やはり自由化のいい点はとっていくようにし、悪い点、非常に国内産業に及ぼす影響を、一面は関税政策その他の保護、同時にまた経営の合理化というようなことで、順次生産条件を整備していくということの努力が払われないと、あるがままの姿において、ただ保護しろというだけでは、私はこれは無理なことじゃないか、実はかように考えております。
  54. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 その点は私も争っておらぬのです。ただそう仕向けるために、日本の国内的観点から確かに時間がかかる。ですから、対外的にはやはり弱気の気配を見せずに、大いに時をかせぐという基本的態度に立たぬと、自由化コースはうまくいかぬだろうということを私は申し上げておるわけであります。  そこで、ついでに、最近ジュネーブからお帰りになりました農林省の経済局の松岡さんにお伺いします。——きょうお見えになっておりますか。大臣、途中ではさんで悪いけれど、あとで関連がありそうですから……。  では、松岡さん、農業委員会にお出になりました経過を、簡単にまず説明をお願いしたいと思います。
  55. 松岡亮

    ○松岡説明員 それでは、僭越でございますが、ガットの貿易拡大第二委員会日本に対するコンサルテーションについて御報告申し上げます。  最初にお断わりしておかなければならぬと思いますのは、この委員会は、全加盟国について、その国の農業政策あるいは保護策を委員国が一緒になって聞くということでございまして、特に日本だけについて行なわれたわけじゃないのであります。しかも、その目的は、ファクト・ファインディング、要するにその場でいろいろな勧告をしたり決定をしたりするのではなく、各国がどういうことをやっているかという実態を調査するということが目的でありまして、その点について、国内において、何と申しますか、直ちに日本の農産物の自由化問題に直接の影響があるかというような報道も伝わっておりますので、その点は私ども誤解のないようにして参りたいと思うのであります。  そこで、日本につきましては、この会期において、八カ国のコンサルテーションがあったのでありますが、日本は最後になりまして、多少時間切れでございましたが、どういう点が問題になったかということを申し上げますが、大体、この委員会目的が、世界費易の拡大を阻害している一つの大きな原因として、特に先進国と申しますか、工業国における農業の保護政策が、後進国なりあるいは農産物輸出国の輸出条件を阻害しておるという立場から、できるだけその阻害する原因を追及して、それに対する対策を検討したいという目的から出ておりますので、日本につきましても、単に輸入制限だけでなくて、国内のあらゆる補助金政策にしましても、食糧管理その他の価格支持政策につきましても、いろいろ質問があったわけでございます。  そこで、あまりこまかい点は省略いたしますが、主要な点だけ申し上げますと、米や麦等の食糧管理については、基本的には、わが国としては、これを直ちに輸入制限を撤廃するというようなことは困難であるという事情を最初に説明したのでございますが、その点について、あまり強く直ちに制限を撤廃せよというような質問なり要望は出ておりませんが、要するに食糧管理の運営について、もっと差益を取らないでよいではないか、あるいはもう少しゆるめたならば消費者のためになるんではないかというような趣旨の質問がございました。これに対しては、日本の現在取っておる差益は、国定税率である関税率に比べて必ずしも高いものではなくて、関税率そのものも列国に比べて決して高いものではないという趣旨で説明をしたわけであります。そのほか、価格決定方式については、これは日本だけでございませんが、要するに各国の価格支持政策が過度になっているとか、あるいは非常に弾力性がないというような点は各国とも指摘されておるのでございますが、日本についてもそのような趣旨の発言がありましたけれども、これについては、現在日本自体において国内的に基本問題調査会等を作って検討しているということで、説明をしたのでございます。  それから、もう一つ大きなポイントになりましたのは、全体といたしまして日本は何と申しましても自由化率が低いために、当初からまず輸入制限の撤廃あるいは自由化問題が最も質問が集中するであろうと予想したのでありますが、その通りでありまして、全体として自由化に対する日本政府の態度を助かれたわけであります。特に酪農関係について、たとえばバターについてその意図がないかというような質問があったのであります。私どもといたしましては、畜産業は日本における農業の将来の方向としては唯一のホープとも言うべきものであり、日本農業の基本的な構造を近代化するためには、酪農を初め畜産等を大いに伸ばしていかなければならぬということで、やはり直ちに自由化の方向で進むことはなかなか困難であるという趣旨の説明をしたのでございます。  そのほか、砂糖とか油脂とか水産物、その他いろいろなものにつきまして、主として自由化に対する日本政府の見通しを聞かれたのでございますが、もちろん、日本としましては、日本自身自由化の方向で進んでおりまするので、自由化の全体の傾向に対して別な方向をとるような答えはいたしておりませんが、できるだけそういった方向で可能な限り進めて参りたい、こういう答えをして参りました。  こまかい点は省略いたしまして、大体討議の経過はそういうことでございまして、第二委員会といたしましては、各国のコンサルテーションを終わって、全体としてどのような勧告を総会に出すかというような点を、四月に委員会を開きましてきめるようであります。特に特定国についてどうしろこうしろというような結論は出さないものと予想いたしております。
  56. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 今度は八カ国と一緒に日本は被告席にすわりまして、いろいろな事情を聴取されたということであろうと思うのです。問題は次の第十六回ガットの総会でどういう勧告が出るかということなのであります。先ほど私はドイツの例を申し上げましたが、輸入制限撤廃方をIMF並びにガットから勧奨されて、それがきめられた後において、ガットの制限に対しまする特定免除規定をたてに、ドイツが三カ年にわたって頑強に抵抗をしたという事実を申し上げました。そこで、次のガットにはあなたあたりが日本を代表しておいでになると思うのですけれども、その場合に、農産物につきましては、やはり一般の農産物以外のものと同様に自由化が原則だが、やむを得ないので宥恕を請うという態度と、保護政策は、農産物に対しては、これはその非資本主義的性格のゆえに当然だとする積極的かまえとでは、うんと違うと思います。ですから、あまりに自由化ブームに自己を埋没してしまって、自主性をなくしてしまうということでなしに、やはり徹底的にがんばらなければならぬ筋と思うのです。私は、大豆問題は、そうした点につきまして少し政府が思慮を欠いたと思っているのです。十品目のうちの九品目はともかくとして、大豆の問題は、やはり米麦同様含みを持って、将来ガットにおいて解決を待つべきものとして残しておくべきであったと私は考えます。  そこで、大豆の論議だけに論議をあまり集中してもいけませんから、次の問題に移っていきたいと思いますが、要は、実際上、自由化を進めていった場合に、日本の農業部門は一番問題になると思うので、この点につきまして政府の腹がまえを大いに作っていただきたい、そういう観点から申し上げたのであります。  さて、農業問題は一応やめたいと申しましたが、もう一つだけ申し上げてみたい。それは消費者と農業生産者との利害関係です。消費者の方は米麦にしても自由化してもらった方がいいのだという理屈が立つと思うのです。そのときに、そうしてはいけないのだということを、やはり国民一般に説得する必要があると思うのです。国民一般に説得するということは、同時にガット総会等においてその妥当性を説得する理由にもなると思うのです。日本の場合、農業人口が四三%、これは二、三男の農外就労者を除いて、農業に依存する人口であります。それで、所得についてはどうかということになりますと、国民総所得が政府の計算で十兆四千六百億でしたか、それに対しまして農業所得は一兆五千八百八十二億円でありまして、一五%に満たないわけですね。ですから日本の農業は、過剰人口をかかえている零細農業で、簡単に資本主義化され得ないことを雄弁に物語っております。さっき言った農業それ自体が非資本主義的性格を持っておるものであるという理由に加えて、わが国のこうした特殊事情を十分ガットにおいて説明して、これを自由化外に置くことはできると思う。こういう点一つ格段の御留意を願いたいと思っております。  それから、もう一つ、デンマークあたりが資本主義として農業を営んでいけるのじゃないかということから、反論があろうかと思うのです。しかし、前回私ヨーロッパに行きましたときに、デンマークのことを少し研究してきました。デンマークでは輸出貿易の六〇%以上が農産物並びに酪農製品であるのですが、農業人口はどいうことかと調べてみましたところ、二五%を切っておるのです。非常に意外な感じがしました。人口的には農業国ではない。産業上農業国だということです。つまり、農業にかぶさっていく比重、人口の圧力等が非常に少ないということと、もう一つデンマークに特有な条件は、イギリス特にロンドンという固定市場を昔から持っておるということ、それから、農作物の輸出よりは、むしろ動物の腹を通して、これを動物蛋白に変えるというところに、営農の主体を置いておるという特殊性から、小じんまりながらデンマークの農業が辛うじて資本主義化し得ておる。デンマークの場合が農業生産において資本主義に伍し得られる最後の立場ではないのかということです。日本の特殊事情、進んでは農業それ自体に内在するところの非自由化要素、特殊的な立場というものは、ガットにおいて大いに論述し得られると思うので、第十六回ガット総会で日本を代表なさる可能性が大いにある参事官一つ御奮起をお願いしたい、こういうことであります。  次に参ります。日本の貿易自由化が完全な形ではできないということは、今言った農業部門において明らかであります。その農業部門を除きましてなおかつ私どもは、為替の自由化とか資本の自由化という問題に対しまして、相当議論しなければならぬと思うのです。今までは、自由化をはばんでいたものは、まず国際収支上の制約、それからもう一つは国内産業保護の問題、この二つであったと思うのです。ところで、私はどうやら日本において自由化をはばむもう一つの要因が出ておりはせぬかと思うのです。それは、先ほど横山委員等から関連的に質問がございましたが、やはり日本立場に立ちまして日本産業のコンプラドール、買弁化の防止という点から、全面的な自由化ということに踏み切るべきではない、これが第三の制約として出てきておるように思うのです。アウタルキー的な狭い考えではなしに、資本も大いに交流して日本経済の一そうの伸展をはかるべきだというきわめて楽観的なお考えもありましょうが、この点に対しましては、日本経済の将来の安危を決定する問題でありますから、特に慎重でなければならぬと思うのであります。特に、きのうの委員会での大臣のお答えは、資本の自由化につきましては、経営取引の自由化のあとにくるものだ。これは時間的にあとという意味であるか、序列において当然あとにすべしという御主張であるか、よく判じかねたのでありまするが、慎重な態度であるように考えられました。しかし、同じ閣僚の一人の通産大臣の方は、この点に対しましてはなかなか積極的であるらしいので、閣内において二つの潮流があるのではないか、かように思われるのですが、いかがでしょうか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 池田通産大臣と私の考え方が、あるいは見方によっては幾分か違っておるという印象を持たれるかもわかりません。しかし、池田通産大臣も、特に財界の、また経済界の協力を求めるという意味において、自由化を強く要望している。そういう意味から、諸準備について政府のやっている事柄についての発言がやや不十分であるというような感じから、印象的なものとしてただいま平岡さんが御指摘されたようなものがあるのかと思います。しかし、私は根本的な相違があるとは実は考えておりません。あるいは、為替の自由化等について、通産大臣は、もっと積極的に、今回も送金緩和あるいは持ち高集中、こういうような制度についてももっと幅広くというような気持があろうかと思いますが、それは程度の問題だけでありまして、方向あるいは基本的なものの考え方、それに食い違いがある、かようには私は考えておりません。
  58. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 具体的に申し上げますと、横山委員が前回予算委員会で質問なさいました。そのときに、外資法と日米通商航海条約ですか、これが多少矛盾するところがある。日米通商航海条約におきましては、国際収支の不安がある場合には制限できる、こういうことで消極的に制限をうたっておるわけです。外資法は必ずしもそうではない。産業政策上の必要からも制限できる。そういう点から、将来法律の改訂がなされる場合には、どういう方向でこれが改訂されるかという横山委員の質問に対しまして、池田通産大臣は、日米通商航海条約の線を原則としてこれを改訂していきたい、こういう意見を吐いております。これに対しまして大蔵大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その通りでいいと思います。そこで、外資法が非常に窮屈だ、こういうお話でございますが、実は外資法は窮屈じゃなくて、建前自身は非常に外資導入を優遇したとも実は言えるのであります。とにかく外資法による外資が入ります場合には、積極的に送金保証をしておる。こういうことは申すまでもなく非常な優遇だということも言える。これは建前の問題です。実際は、送金保証があるために、国際収支の面に非常な影響があるだろうと思うから、なかなか外資法では入りにくいということはございますが、建前自身は、ただいま申し上げるように、その心配はないわけであります。  それから、国際収支上の制約の問題でありますが、国際収支の観点から、外貨準備高等で、ただいまならこの金額でいいのか悪いのかというような話がしばしば出る。日本銀行総裁は、二十億なければだめだ、十三億やそこらでそんなことはできないんだ、こういう言い方をされたので、過日も私いろいろ質問を受けましたが、問題は、現在の外貨準備、これは多額に持っておればそれだけ心配はないということが言えるんでございましょうが、経済のあり方から見まして、外貨が漸次増加する方向にある、貿易その他の国際決済を見ると、絶えず黒字基調を維持し得る、こういうような見通しがある場合だと、これは為替管理の面においても非常に楽な感じでございます。大体世界各国日本の外貨を見た場合に、もう日本もそろそろ、国際収支の上から自由化をはばむような、そういう制約は必要なくなったんじゃないか、こういう見方をしておる。同時に、それが私どもの見方においてもそういう感じが出てきておる。そこでそろそろ自由化をはかっていこうかという考え方でございます。従いまして、ただいま処理しておりますものは、外資法と同時に為替管理、その二つの道で外資の扱い方をケースバイケースできめていくということで、その点は在来より非常に楽だ、こういうことになっておるわけであります。
  60. 横山利秋

    横山委員 関連して。  大臣はちょっと誤解なさっておられるようだし、平岡委員も誤解をしての質問で、誤解と誤解が加わってどうもとんちんかんな話になり出したから、念のためにだめ押しをしておきます。  池田さんのこの間の答弁も実ははっきりはしていなかったが、こういう点ははっきりしていた。日米通商航海条約は直したいと思います。これははっきりした。じゃどういうふうに直すかという点で、僕らの言ったことは、国際収支の点だけで、外資の運用をチェックするという日米通商条約はいかぬのだ、その点では産業政策上外資の入ってくるのをチェックするということも含まなければいかぬのではないか、外資法は両方だ、通商条約は片方の国際収支だけだという矛盾をどうするんだと言ったら、外資法等の点をも考慮いたしまして、日米通商条約を修正いたします、そう言ったように僕も聞いておるのです。だから、僕は、平岡さんの言う、大臣は違いはしませんかという質問に対して、答弁がちょっと食い違ってきたと思うのですから、それをもう一ぺん念のために……。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私、通産大臣に対する横山さんのお尋ねは、通商協定と今の現行法とはぶつかる点があるんじゃないか、こういう質問があり、それはあるんだが、しかし、今日まで国内法についての抗議めいた話もないから、一応これで済んでいるんだ、この点が一番ポイントじゃなかったかと実は記憶いたしておるのであります。ただいまそういう観点から御質疑が発展しているんだろう。そこで、外資法の建前は一体どういうことかといえば、送金保証ということなんです。送金保証ということは、これは確かに優遇しているんだ。ただ、優遇の結果は国際収支に影響ありと考えるから、送金保証のついた外資というものを入れることにはなかなか慎重で、現実には許可が非常に困難だということになる。そこで、通商協定で申しますように、国際収支の観点から云々というような規定だけになれば、これは為替管理の方でいきますから比較的容易でございます。ただいま扱っておりますのは、為替管理と外資法と二つの建前をとっておる。その為替管理の方で入ってくるものを許可する方が比較的容易だ。国際収支に悪影響ありと考えれば、いつでもとめられるということで簡易だ。しかし、それだけに今度は相手方の方が信用しないから、入ってくることがまたむずかしい、こういうことになっておるというように、実は理解しておるわけであります。
  62. 横山利秋

    横山委員 重ねて恐縮ですけれども、それは、池田さんは、相手は怒ってはいませんよとは言いました。しかし、論議上通商航海条約と外資法とは矛盾しているんだから、理屈を言えばどちらに現在焦点を合わせるのかという点では、なるほどまん中をとってアメリカも文句を言ってない、だから外資法でいく、これはよろしい。しかし、三十七年に日米通商航海条約が切れるんだから、切れたときには、成立の過程なんかは別にして、外資法に準じて、つまり現状に準じたように日米通商航海条約を修正するのか、それとも日米通商航海条約に並んで外資法も直すのか。これを現象的に言えば、国際収支の点だけで外資をチェックするのか、産業政策上の点からチェックできるようにするのか、そういう点が問題になってくるわけです。
  63. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点は為替法並びに通商協定のような考え方でやる、こういうことを池田君は言われたんじゃないか、かように私は理解しております。
  64. 横山利秋

    横山委員 条約を直すと言いましたよ。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いや、通商条約を原則にするということは、言いかえますと為替管理法のような考え方で、今の外資導入の方は送金保証をするというようなこと、これはそれだけのフェーバーを与えているんですから、国際収支がどうあろうと、送金保証がついておる限り、とにかく引き上げていかれても仕方がないものだから、通商協定よりも外資法というものはそれだけフェーバーを与えたことになっているということを、先ほど説明しているわけです。
  66. 横山利秋

    横山委員 条約を直すんですか。直さぬのですか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だから、今後の問題といたしまして、為替管理あるいは日米通商協定のような方法でいくことが原則であろうということを池田君は申しておるわけであります。私どもも、今外資法でやることは、フェーバーを与えておるだけに非常に窮屈になる。やはり管理法で外資が入ってくるなら、管理法の適用の方が筋じゃないか。日米通商協定で言っておる通り、国際収支上に支障がない限り云々の方が楽じゃないかというように実は考えておるわけでございます。だから、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  68. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 じゃ、結論は、産業政策上のことは考慮しないということですか。国際収支だけでチェックするということですか。
  69. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 管理法でやります場合に、ただいま御指摘になりましたように、国際収支だけの面からの許可をするわけでは実はございません。やはり、今御指摘になりましたように、国際収支云々は一つの問題だが、同時に、産業に対する考え方も許可をいた、します場合の考慮のうちにはあるわけでございす。しかしながら、これは業界自身で話し合いが済み、またそれぞれの官庁においてもそれを了承しておるというような観点に立ちますから、大蔵省としては、その国際収支だけの観点でこの扱いをする、こういうことになるわけであります。別に矛盾もあるわけではございません。
  70. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 質問を変えます。先ほど、大蔵大臣は、日本の外貨保有高が相当なものだし、黒字基調だ、それから将来の伸びも期待できるから、大体国際収支上の制限のための理由が存在しなくなった、こういうことで自由化していくことを妥当とするという御意見がありましたが、しかし、外貨が現在十三億二千万ドルですか、この程度のことでいいかどうかということ、少なくともこの程度ならIMFから制限を撤廃すべしという勧告はしてこないはずなんですね。してきてからでもそれに抵抗していくべきなのに、してこないうちから、この問題を、政府の当局者の方で、外に向かっていつでもやってもいいというような態度ではならぬと思うのです。これはよく例に引かれますが、ドイツの場合におきましては、当時輸入総量七十五億ドルのときに五十六億ドルの保有、イタリアの場合は、計算方式が違いますけれども日本流に換算すると、三十二億ドルの輸入総額のときに二十億ドルの外貨保有があって初めて勧告されたわけですから、日本の場合は、初めから勧告を予想して、早急にというか、慎重を欠いて先ばしりする必要は一つもないと思いますが、この点はいかがですか。
  71. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体外貨事情等が好転していく、そういうことを見越して参りますと、勧告を受けて、しかるのちにやるということはあまり自慢になることじゃない、かように実は思います。経済の動きについて十分の対策を立てるという意味で必要だと思います。先ほどのいろいろ御意見のありました点ですが、もう一つつけ加えて申し上げておきますが、為替管理法で今外資の導入をいわゆる認定制という制度でやっておるわけです。為替管理で自由にやりますと、実は非常に実態がつかめない、そういうこともありますので、そういうような影響等も勘案いたしまして、ただいま認定制というものを昨年の七月から実施いたしまして、外資法と為替管理法と、この二つによって外資が入ってくることを考える。為替管理法で入る方が非常に容易だから、それを認定制という事柄で優良な外資なりやいなやという認定をして、そして入ってくることを認めておる。大体日米通商協定の趣旨に沿ったという姿でございます。その点誤解のないように願っておきます。
  72. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、次の質問をいたします。貿易の自由化は、コスト競争を国際的に争うということであろうと思う。この点からいいますと、善隣に市場と原料を求むべしという結論になろうと思うのです。論理の必然はそのようになろうと思うのです。この立場から、六億の人口を持ち、地下資源においても豊富な中国が、あらためて自由化の問題を契機として、当然通商の対象になってこなきゃならぬと思うのです。この点については、昨日大蔵大臣も大いにやるんだということをおっしゃっておりますが、これはほんとにやるつもりでおりますか。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当方は心から希望している。何らの支障はございません。ただ、在来の外交的経過等から見まして、両国が今日のような状態になっていることは、私まことに遺憾だと思います。これは何とかして妥結ができることを心から望んでおります。
  74. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 最後に、質問といわんよりは、むしろ国内的観点に立ちまして要望したいと思います。自由化に対処すべき諸問題がいろいろ論ぜられますが、国内的観点からも主張しなきゃならぬことがあります。総じていえば、国内態勢は、自由化のための条件が十分に備わってはおらず、かつまたわが国経済の二重構造ないしは中進国的な性格のために、私どもは国内産業保護の早急廃止は困難だと判断いたします。ただし、率直にいいまして、これまでのあまりにも強い管理政策は、この際再検討を加えらるべきであります。特に、従来外貨割当を独占的に専断して管理政策の恩恵をほしいままにしていた一群の独占企業がありますが、これらの独占企業が自由化されても、必ずまた政府と組んで——こういうことを言うと怒られるかもしれませんが、政府と組みまして、独禁法の緩和措置や輸出入取引法の改正を通じてカルテルを強化し、既得権利の温存をはかりかねないと思うのであります。こういうことがもしありますと、せっかくの自由化が国民の待望する線に展開することができませんから、政府としても心してほしいと思います。他面、中小企業者、農民は無防備で自由化のあらしに立ち向かわなければならないし、その打撃のほども十分想像できるのであります。そこで、政府にしても、自民党にしましても、謙虚に、対農民、対中小企業の産業保護政策という国内観点を重視しまして、これを自由化の前提とする、こういうかまえでぜひともやっていただきたい。このことを特に要望いたします。  以上をもちまして、私の質問を終わりたいと思います。
  75. 植木庚子郎

    植木委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  76. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。作藤觀次郎君。
  77. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 非常に大臣に御都合していただいて恐縮でありますが、実は、災害地の問題について、愛知県を中心として三重県、岐阜県などがいろいろ協議した結果、実際の予算面につきましても政府も非常に考慮していただきましたことを厚くお礼を申しあげると同時に、実は二、三の点につきまして実際に実施されない面もありますので、まず大臣からお伺いいたしまして、あとは関係佐藤次長、宮崎調査官にお願いしたいと思います。  実は、公共事業の復旧について三、五、二の比率で大体施行することになっておりますが、なかなか実際の面では予算のあれが実際に実施されないという面があって、三十四年度の事業についてもまだ実際に行なわれない面があるわけです。少なくとも三十五年度には五〇%以上の認証が得られるかどうか。その点について大臣からお伺いしたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回御審議いただいております三十五年度予算が成立いたしますれば、十分御要望に沿い得る、かように確信いたしております。
  79. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、今問題になっておりますのは住宅の予算でありますが、公営住宅の面でも、御承知のように予算と現在の住宅の標準建設費というのが相当開きがあるのです。こういう点についてもう少し考慮していただいたらどうか。これは一つ事務当局からお伺いしたいと思います。
  80. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 公告住宅につきましては、今回の災害にかんがみまして、三十四年度の補正予算、既定予算を合わせまして十二億二千万円、三十五年度に八億円の予算を計上いたしまして、必要な措置をとるようになっておるわけでございます。この単価の問題につきましては、御承知の通り公営住宅につきましては標準建設単価というものがございまして、これでやっております。そこで、災害の場合でありますると、その直後に建設いたします場合は資材の値上がり等が若干ある場合があるのでございまするが、二カ年度にわたって事業実施いたします関係もございますし、従来の実績におきましても、特に単価そのものにおいて大きく問題になるということはないわけでございます。今回特に御要望の強かった耐火構造のものをたくさん作るという点につきましては、従来の比率に比べまして倍程度にふやして、これにこたえておるわけでございます。単価につきましては、建設省等ともいろいろ打ち合わせました結果、現在きまっておる標準建設単価で十分であろうという考えで対処いたすようにいたしております。
  81. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 現在災害地は多少インフレ傾向がありましてそういうような関係でなかなか事業が進捗しないような面もありますので、十分御配慮願いたいと思います。  それから、これは佐藤次長にお伺いしたいのですが、自作農維持創設資金についてだいぶ政府では考慮されておりますけれども、少なくとも一番因っておるのは自作農でありますので、三十五年度災害資金のためには、ぜひこういうような面について特に愛知、岐阜、三重三県に対して十分な考慮を払っていただけるかどうか。地元の農家が非常に心配しておりますので、その点についての政府の見解を一つ伺っておきたい。
  82. 佐藤一郎

    佐藤(一)政府委員 お答え申し上げます。  自作農維持創設資金につきましては、特に災害地においてはその要望が強いことは、前々から私どももよく承知いたしております。それで、御承知かと思いますが、三十四年度におきましては当初百億円のワクがございましたが、それに対して約三十億円の追加をいたしました。そうして、この百億円の中で特に災害分としては十七億ばかり特定してございましたが、その十七億に対して約三十億円ふやしたわけでございますから、相当の率でふえておるということになっております。特にただいま御指摘のございました一番災害の激しかった東海三県につきましてはこれを重点的に配りまして、そのうちでほとんど六、七割のものを東海三県に増額したというようなことでございます。なお、三十五年度におきましては、そういう点も考慮いたしまして、三十四年に対して三十億円、すなわち総額で百三十億円の自作農資金のワクを見たわけであります。
  83. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 中小企業関係の問題で、政府から国民金融公庫に対しまして相当の貸付をしていただいたことは事実であります。しかし、なかなか災害地も広範にわたっておりますし、それから、この貸付額が二十万円程度ではやや少な過ぎるという非難もあり、一部においては早急にやられた関係上調査の不十分な点もありましたけれども、今なお需要額と供給額とは相当な開きがあるわけでございますが、三十五年度には相当ワクをふやしてもらえるかどうか、この一点をお伺いしたいと思います。
  84. 佐藤一郎

    佐藤(一)政府委員 国民公庫、中小公庫につきましては、御存じのように例の特別金利の設定もいたしましたし、それから災害については特別のワクを設けたわけであります。災害地に対しては特別の考え方で臨むという方針はそのときから確立しておりまして、大体そういうことで実行していくという予定にいたしております。
  85. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 できるだけ一つ災害地のために国民金融公庫に対しての資金量のワクをふやしていただきたいということを要望しておきます。  大臣にもいろいろお願いしておきましたが、学校の災害復旧に対しまして、原形復旧よりは今度は改良復旧という立場で、愛知なども相当鉄筋の学校ができるようになりまして、私ども非常に喜んでおりますが、何といっても災害のために学校が今まで通りのような木造では非常に危険な点がありますので、人心の不安もだいぶ重なっておるわけであります。愛知県では二十二校くらいがどうにか改良復旧になるように内定したそうでありますが、こういう点について学校施設に対してどういうような方針でいかれるのか。これは、私は、先国会の災害特別委員会でも宮崎主計官にいろいろお願いし、また奥野政務次官からも非常にけっこうな回答を得たのでありますけれども、なかなか大蔵省の否定がやかましくて、今なおその点について困っておる面がありますが、一体どういうような考えで今後処理されていくのか。これは宮崎主計官でけっこうでありますが、一つお伺いしたいと思います。
  86. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 公立文教施設の問題につきまして、私ちょっと担当外でございますが、これは御質問の趣旨もございますのでお答え申し上げます。  御承知の通り、公立文教施設国庫負担の問題につきましては、通常の公共土木施設等の災害復旧に準じまして査定を行ないまして、全壊あるいは滅失といったようなものにつきまして復旧を行なうわけでございますが、臨時国会におきまする審議の過程におきましてもいろいろ御要望がありましたので、特に今回の第三次補正予算の際にあたりまして、従来の査定が終了したものあるいは査定中のものにつきまして十分な再検討を行なったわけであります。そういうことによりまして事業費の増額もございましたが、また従来の基準から考えて災害復旧事業として採択し得るという範囲につきましても、親切にこれを見るということにいたしまして、総体として予算として二億三千万円ほどの増額ということになったわけであります。これを三十四年度の補正第三号予算に一億一千五百万円、残額を三十五年度予算に計上いたすということになっております。その内容といたしましては、従来木造と鉄筋との割合をどの程度にいたすかということはいろいろ問題になったわけでございますが、今回の三十四年度の災害の関係につきましては、鉄筋及び鉄骨の関係を全体の約六割といたしておりまして、これは、従来でありますると、たとえば三十三年の災害の場合には四〇%程度であるわけでありますが、相当ここで向上いたしまして、質のよい学校の復旧をやりたいという方針で進められておると承っております。今後の問題につきましては、三十五年度もこの方針を踏襲されるわけでありますから、相当御要望にこたえられるものと、こういうふうに考えております。
  87. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点、災害地特別委員会で問題になった上水道の災害復旧の問題でありますが、これは私たちの方も法律を出しまして最後までがんばったのですが、なかなか、現場へ行きますと、こういう問題が非常にやかましくなりまして、今までの水道あるいは自家水道のような場合には、非常に塩分を含んでおりまして非常に復旧がむずかしいような面があるわけです。こういう点について最後まで私たちもがんばったが、なかなか今までの形式があって、そう簡単にいかないということでございますが、何らかの方法で水道の問題についての御配慮をしていただけるかどうか、この点も佐藤次長あるいは宮崎さんにお伺いしておきたいと思います。
  88. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 上水道あるいは簡易水道の問題につきましては私担当外でありますが、簡易水道につきましては、御承知の通り災害復旧事業として採択をいたしております。それから、上水道の問題につきましても、今回の災害に伴う特例措置としてこれを行なわれるわけでございまするが、その具体的な査定の内容あるいはその範囲等につきましては、私も実はあまりつまびらかにしておりませんので、御要望の点を関係の方に十分お伝えいたしまして、善処させるように努力いたします。
  89. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後に、起債の問題でありますが、これは理財局の問題でありますが、いろいろな実際の事業をやる場合に、補助金とか政府資金だけでは何の仕事もできないので、特に災害地からは特別交付税の増額を申請したり、あるいはそれらの問題についていろいろお願いしておっても限度があるわけであります。それだから結局、地方の方は財源がないので、起債を仰ぐより仕方がありませんので、そういう点について従来のワクからはずして、この起債の問題については、特に災害地に対して今年度、明年度あたりまでは何とか特別の配慮が願えぬものかどうか、この点を理財局長あるいは佐藤次長さんにお伺いしておきます。
  90. 西原直廉

    ○西原政府委員 災害の関係の起債につきましては、お話のように特別にいろいろ考慮を払って、大体十分起債ができるようには考えているわけであります。もちろん個々のケースにつきまして検討はいたさなければなりません。
  91. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まだいろいろお願いしたいことや、またお伺いしたいことがありますが、石村委員の質問もありますので、大体あらかたのお願いをして、なお今後三十四年度の予算が通過しましたあとでもいろいろな問題があると存じますが、どうか一つかゆいところに手が届くように、災害地のためにいろいろごめんどうを見ていただくことをお願いいたしまして、私の質疑を終わります。
  92. 植木庚子郎

    植木委員長 石村英雄君。
  93. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今度の財政演説でも、金融のことにお触れになりまして、金融の正常化というようなことをおっしゃっておられるわけですが、大体、大臣として、また今の政府として、現在の金融情勢なりあるいは明年度の金融情勢というものをどのように判断をしておられ、そうしてそれをどういう形で正常化しようとなさるのか。よく正常化正常化と言われますが、正常化の内容が実はさっぱりわからないわけでありまして、一つ構想をお示し願いたいと思います。それと、現在及び三十五年度の金融情勢の見通し、あわせてそれに対するいわゆる正常化の方向、そういうものをお示し願いたいと思います。
  94. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今、一般的なお尋ねでございますが、金融の実情は一体どうなのかという質問が第一点のように伺いました。昨年来、景気の上昇に伴いまして資金需要が相当強くなっております。また供給力等について不足があるかどうか。これはもちろんときどきの政府対民間の関係において揚超であるとかあるいは払い超であるとか、そういうことも多分に影響しておりますが、まず私どもの見るところでは、金融は順調な傾向をたどっておる。さらにまた、三十五年度の金融情勢につきましても、財政投融資計画等を立て、民間資金協力等もその面では十分得て、なおかつ民間金融に圧迫を来たさないで一応経緯することができる。これが幸いにして私たちの計画通り推移いたしますならば、経済の発展も期し得るのではないか、かように実は考えております。ところで、ただいまいろいろ問題がございますが、その一つの問題で、量的な問題で同時に質の金利を伴っての、量と金利と両方の面からして、はたして国内の需要において満足すべき状況なりやいなやということになりますと、一応の計画的な数字は、まずさしたる支障はないと申しますか、総体といたしましては、資金量においてもまた金利等の面においても、なおなお工夫を要する面が多分にある。現状をもってすれば十分とはなかなか言い得ないというものがあるようでございます。そういう意味から、やはり蓄積拡大の方向の諸政策をとるということ、これは当然でございます。また、外資等の導入等も得まして、国内資金の需要にこたえて参りたい、実はかように考えております。ところで、この扱っておる金融機関が、今後展開されるであろう、また実施されるであろう貿易・為替の自由化等、これにも備えて今日の経済の好況を持続していく、こういう上から金融機関が果たす役割が特に大きい。こういう点は私どもにもよくわかるのであります。  その役割が大きいというだけでなく、その意味においては、金融機関自身の内容の充実、いわゆる体質改善ということを強く要望せざるを得ない。過去の経過におきましても、あるいはオーバー・ローンの解消であるとか、あるいは預貸率の改善であるとか、あるいは経営の合理化等による資金コストの低減ということに特に注意さして参っておりますが、一そうそれらの、面を強く指導していく必要があるだろう。同時にまた、金融融資をいたします場合におきまする融資態度についても、やはり適正、公正を持していくということが必要だ。御承知のように、最近の経済情勢から見ますると、どうしても競争は激化する形でございます。金融機関自身もみずからが同じ立場においてお互いに競争をいたしますが、そういう金融機関の経営上の競争というものが経済界に非常な影響を与えるし、これは同時に金融機関そのものの体質改善あるいは姿勢を正す、こういう意味から申しましても十分自粛自戒してもらわなければならない、こういう点に私どもは留意して参るつもりでございます。抽象的なお答えでございますが、一応ただいま申し上げるような考え方でございます。
  95. 石村英雄

    ○石村委員 大臣のお話は一般的に言えばきわめてごもっともな話で、これに対して別にそれはいかぬというようなこともありませんが、しかし、そのような抽象的な話では問題の解明にはならないと思う。金融の正常化という言葉が常識的にも非常にたくさん使われておる。昨年の夏ですか、稲葉さんや土屋さんたちが金融正常化の提言というものをなさいました。内容自体はなるほどもっともなことだと思います。預貸率を改善しろとか、あるいはオーバー・ローンをどうしろとかということは一応もっともな話でありますが、日本の現在の金融あるいは経済態勢のもとで、そうしたことが簡単にできるかできないかということを判断しなければならないと思います。なるほど価値判断としてはそういうことはいかぬ、だからこういうように改めろということは容易に言えますが、悪いなら悪いにしても、必要悪とでもいいますか、そういうような形でそれが行なわれておるならば、それを簡単に提言ですぐできるわけではありません。これをしいて改善しようとすると、たとえば増資免税しろとかなんとかいう、とんでもない方向の策というものが打ち出されてこざるを得ないと思うのです。従って、現状というものをもっとよく分析した上で、この点が悪いからこうすべきだ、またこうすればできるという具体的な方策が生み出されなければ無意味だと思います。その点に対する大蔵大臣の御見解をただしたわけですが、ただいまのお話ではどうもわれわれ満足するわけにいきません。たとえば——質問したいであまりこっちがしゃべるのも変ですが、オーバー・ローンの解消なんてことを言いますが、これは簡単にはできないのじゃないかと思う。また実際オーバー・ローン自体も一方ではずいぶん解消もされております。オーバー・ローンについての率というようなものについてはいろいろな見方もありますが、大蔵省の発表しておるところによりましても、たとえばオーバー・ローンの比率の見方にはいろいろな方法があるようですが、大蔵省が例として出しておる第三方式によるものを見ましても、二十八年の一月が一二・六%というオーバー・ローンの比率ですが、昨年の九月には五・二%というように事実上下がっております。その後の数字を見ましても、これは私の粗雑な計算ですが、十二月まではやはり五%を割っておるのじゃないかと思う。この五%がいいか悪いかという問題もありましょうが、こうしたことを、簡単にオーバー・ローンはいかぬと言ってみても、なるほどオーバー・ローンは悪いには間違いない。しかし、過去そういうオーバー・ローンが行なわれて発生したのには、発生の理由があるのじゃないか。それを明らかにした上で対策というものを打ち出していただかなければ、われわれは、それを正しいものだ、なるほどそうだ、こう受けとるわけにはいかない。それで、正常化とはどういうわけか、またどうなさろうとしておるのかということをお尋ねしたわけなのです。これは銀行局長に専門家として御答弁をしていただいて、大蔵大臣の政治家としての大局的な判断をお願いしたいと思います。
  96. 石野信一

    石野政府委員 私、部外におりまして、交通がごたごたしていたものですから、おくれまして恐縮でございます。  御質問の途中から伺ったものですから、あるいは答弁がぴったり参らないかも存じませんが、金融正常化の面で一応預貸率がどういう推移をしておるかという点について申し述べさせていただきますと、これは普通銀行で三十二年の下が九九・四と、高いのがだんだん下がって参るわけですが、三十三年の上は九七・九、三十三年の下は九五・二、三十四年の上は九四・三、三十四年の十二月末は九二・九一というふうに、長期的に見ますと預貸率は改善されて参っております。一応預貸率の点が御質問の中に出ておりますので、金融等の面は一応省きまして、そういうものと、経済の全般の条件と申しますか、情勢、こういうものと国の正常化との関係をどう考えるか、こういう御質問かとお伺いいたしましたが、御指摘の通り、金融の正常化と一口に申しましても、経済の成長の速度、それから資金の需要と供給の関係、そういったことが非常に影響を受けるわけでありまして、国庫の支払い超過が非常に大きい、外為が払い超で、国際収支の面での黒字が大きいということでありますと、それだけ国庫が支払いますから、日本銀行の貸し出しが減るという関係においてか貸本が改善されるという条件があるわけであります。しかし、成長が非常に大きくなりますと、通貨の発行量はふえます。そういう意味で、国庫収支の払い超とのかね合いで、どの程度どっちが大きくなるかということで、最初三十四年について期待いたしたほど預貸率が改善されなかったというのは、そういう意味で、成長が非常に大きくて通貨の数量がふえたというような関係もあるわけであります。従いまして、経済の諸条件に関連して金融正常化を進めていく、金利の面にも触れさしていただければ、これも長期的に言いますと下がっているわけでありますが、ただ、資金需要と供給との関係で、金融機関側は供給の方を抑える側にあるわけであります。資金の需要の方が非常に強くなりますと、需要と供給とで金利というものはきまりますから、その辺は、需要の方もあまり行き過ぎて過熱にならないように予防的な措置等を打って参りませんと、やはり一時的には金利が上がるというような情勢にもなるわけであります。長い間には資本の蓄積も促進して参りますし、必要な外資は入れるというようなことによって日本資本蓄積がだんだん豊富になりますと、金利が下がる傾向に持っていけるわけでありますが、そういう意味で、おっしゃる通り、経済の情勢を見ながら金融の正常化を進めていくということであります。しかしながら、銀行そのもの金融機関そのものとしてのあり方としては、これはやはり健全であるべきである。そういう意味において、経済の諸条件でその資金をまかなうという意味において、ある程度の——金融の正常化が予定通りにはいかないというようなことがありましても、やはりこれは方向として必ず預貸率の面での改善を進めていく。金利も長い目でもって下げるように、経費の引き下げ、切り下げその他合理化というような面で、できる限り努力をさせていくということは必要である。そういう観点に立って一応目標を示して、必ずそれにいけというふうに無理やりにやるということは、お説の通り経済の諸条件によって必ずしもそういかない場合があるのでありますが、とにかく方向として一歩々々着実にそういう方向に進めていくように指導して参りたい、こういうふうに考えております。
  97. 石村英雄

    ○石村委員 そうしますと、土屋さんなんかの提言では預貸率を法制化しろという話ですが、七〇%というか何というか、どのくらいが適当なのか知りませんが、まさか体裁が悪くて九〇%というような預貸率を法制化するわけにはいかないじゃないか。だから、結局、今の情勢では、預貸率の法制化なんということは、四年も五年も先なら別ですが、全然無意味な提言になるのではないか。方向としてはそういう構想を持てというのならわかるが、すぐやれということは非常に無理な話で、できもしないことを言っておる空想的な提言にすぎないのじゃないか。これは、今やれという意味なら、そういうことにならざるを得ないのじゃないかと考えるのですが、いかがですか。
  98. 石野信一

    石野政府委員 仰せの通り、今すぐ預貸率を法定しろということになりますと、実際問題として、やはり経済成長に資金を供給していくという場合に、金融機関を通じて金は流れていくという組織になっておる関係から、非常に実際に即さない面が出て参って、経済界に実際に即さない点でいろいろの大きな摩擦が起こると思います。そういう意味で提言が無意味かどうかということは、提言の性格の問題でございますから、一つの目標とか示唆というような意味で提言それ自体は一つの意義はあると思いますけれども、仰せの通り、今すぐ預貸率を法制化しろということは実際に即さないと考えております。
  99. 石村英雄

    ○石村委員 それで、実は昭和二十四年度から三十三年度の終わりまでの日銀券の発行状況を見ますと、この十年間の日銀券の増発額は四千四百三十七億円ですが、大へん増発されておる、こう表面は見えます。見えますが、大蔵省の発表による国庫の対民間収支の実質収支の中で外為関係を見ますと、外為の窓口でなしに、実質では三千六百二十一億円という増発要因があるわけですね。もちろん私はいつでも外為へ外貨が入ったからそれが全部銀行券で出ていってよろしいとは申しませんが、これは原則として、今の日本金融制度のもとでは、こういう外貨が入れば、貿易によろうが何によろうが、日銀券が出ていくのはむしろ当然であって、別にこれを直接問題にすることにはならないと思います。増発額の四千四百三十七億から、この三千六百二十一億というものは、財政収支だとはいいましても、外為関係は純然たる経済関係と見ていいわけですから、これを除きますと八百十六億円の増発にすぎない、こういうことになる。そうすると、この間二十四年の三月末日から今日までの経済の成長から見て、外貨関係を除いて日銀券が八百億出たことが非常な問題だとは言えないのじゃないか。これは大へん政府に都合のいいような質問をするようですが、冷静に見ればそういうことになるのではないかと考える。その点政府の判断はいかがですか。
  100. 石野信一

    石野政府委員 非常に私どもにも参考になる御質問だと思うのでございますが、確かに、そういう意味で、通貨の発行の増加というものが、国庫の支払い超過、それも一般会計は長期的に見ますと大体バランスをすることになりまして、外為の払い超、従って国際収支の受取超過というものと関連して伸びていく傾向があると思います。そこで、通貨の伸びは結局経済成長と関係があるわけでありますが、経済の成長が輸出超過になって、その国庫の支払い超の部分だけで通貨の増量までまかなわれるのがいいか、それだけの払い超、従って国際収支の受け取りを来たすような経済にとっては、それ以上若干国内的な経済の成長が必要だという意味で、通貨の発行の量が若干ふえるかどうかというような問題になりますと、なかなか数字的に分析して計算することはむずかしいのでございますが、ドイツなんかは、そういう意味では、非常に外貨をためて、それで国内に通貨が出ていくという形で経済が伸びて参っておると思うのであります。従って、長期的には御指摘のようなことでございますが、ただ短期的に見ますとそれが狂って参って、国庫の外為が払い出していないときに、すなわち、国際収支が赤字であっても、経済の成長は惰力で非常に伸びるということになりますと、日銀貨し出しが急激にふくらむということにならざるを得ないことになりますので、長期的には大体うまく参っておるようですが、短期的には、そこに起きた波をどういうふうにできるだけ少なくしていくかということが問題であります。そういう意味金融政策でいろいろ調整をやっていくことが必要である、そういうふうに考えております。
  101. 石村英雄

    ○石村委員 もちろん短期的にはいろいろの措置が講じられなければならないことは当然のことでありますが、今の期間についてさらに国庫関係を見ますと——私は外為関係は別にしたのですが、食管もやはり経済一つの動きと考えるのが正当かもしれませんが、まあ食管は米ができたらすぐ金を払うという特殊なやり方でありますから、これを財政の中に一応考えてみましても、この期間国庫の引き上げ超過が二千五百三十七億円あるわけであります。こういう引き上げ超過があれば、そのときの三十三年度末の日銀貸し出しは三千四百四十二億ですか、やはりこれだけの財政の引き上げ超過があるということになります。この二千五百というのは食管を含めての話ですが、引き上げ超過がある。食管の方はむしろ払い超に実はなっておりますが、それを差し引きした財政の引き上げ超過が二千五百億、そういうものがあるとすると、やはりこの程度の日銀の貸し出しはやむを得ないんじゃないか。いい悪いは別ですよ。日銀貸し出しがいいか悪いか、それぞれの立場によっての判断はあるでしょうが、一応の現在の日本経済というものを認めた上なら、このような財政の引き揚げ超過があれば、それに応じて一方で貸し出し超過——日銀の貸し出しが三千億をこすということはやむを得ないんじゃないか、この財政の引き揚げをそのままにしておいて貸し出しが出るのはけしからぬ、こう言ってみても、それは非常なデフレをやれというなら別ですよ。デフレをやれという立場に立たない以上、この三千億の日銀貸し出しはけしからぬ、大へんな貸し出しだという判断は実態を見ない判断で、そういう判断に立っていろいろな論議をするのは、是非を言うのは別ですが、間違いじゃないか、こう考える。従って、政府の方で、この日銀貸し出しをかりに問題にせられるならば、長期的ではありますが、国庫の揚超というものをどうするかということにならなければ話にならないじゃないか、こう考える。
  102. 石野信一

    石野政府委員 現在日本銀行の貸し出しが三千数百億ございますが、これがいいか悪いかということになりますと、結局現在の経済情勢をどう見るかという点で、御質問の御趣旨の通り、筋としてはそれがもう絶対いけないから、これを一つ処分すべきであるというようなことを申しても、それは今の金融通貨の仕組みにおいて経済が今の成長段階にあれば、まあ日本銀行の貸し出しはこういうふうになっておるということはやむを得ないと思います。ただ、そういう意味銀行が自分の準備金を持っておらないで、急に金が足りなくなると日本銀行へかけ込んで行けるというような態勢でいるのは、いわゆる金融の正常化という面から見ると、それは好ましいことではなくて、金融機関としてはできるだけ資金を蓄積して、それを準備金として持っておるということが望ましいわけでございまするから、そういう意味で、金融機関の心がけとしては、できるだけみずからが準備金を積んで、そして貸し出しを抑制する、そういう態勢で、お行儀といいますか、形を直すことが必要であると思いますが、ただ、今ある貸し出しは当然ゼロであるべきである、直ちにこれをゼロにすべきであるというようなことになりますと、金融の仕組み、通貨の流れというようなものの現状において考えますと、それは無理な話だという点は御指摘の通りだと思います。
  103. 石村英雄

    ○石村委員 御指摘の通りだ、こう言われたんじゃ話になりませんが、そんなら、こういう財政の揚超というものに対して政府は何らかの措置を講ずるということがなければ、金融機関が貸し出しをよけいするのはけしからぬ、心がけとしてそんなことをしてはいかぬ、こう言ってみても、財政の揚超があるならば、しかも私の言う財政の揚超は食管の払い超を消しての上の揚超ですから、食管を入れて考えればもっと揚超が大きくなりますが、その点に対して政府が何らかの措置に出るということがなければ、金融機関に、お行儀が悪いからもっとお行儀よくしろ、こう説教してみたって、それじゃ単なる説教に終わるんじゃないか。やはり金融機関にそういうことをやらせないようにしようとするならば、一方そういうことの起こるもとを何とか考えて、政府として手を打つ、おれの方じゃこうするんだから、お前の方はお行儀をよくしろというならわかりますが、自分の方はまあ今まで通り自然の流れに置いておいてそして説教だけをしてみたって、これは始まらないんじゃないか、こう考える。
  104. 石野信一

    石野政府委員 最初にも申し上げましたように、そういう意味において一気に体質を改善する、一気に日銀貸し出しをなくすということは、これは無理な話でございます。ただ、食管も除いてと申されますけれども、これは、財政というものも、パブリック・ファイナンス、大きな意味金融でございますから、そういう意味国庫の方の流れと両方見ていかなければならぬ。そういう場合には食管の方もあわせて考えなければならぬ。そういうことで見て参りますと、やはり国庫の払い超の時期において、また今のように健全な経済を維持して参りますと、若干ずつでも国際収支は黒字を続けるというような態勢になるんじゃないか。そういう限りにおいて、国庫の払い超の時期においてできる限り金融機関がその形をよくする、体質を改善していく、そういうふうに指導をして参る。大きく揚超になります場合は景気が非常に出過ぎまして、予算以上に税が取れるとか、むしろ経済が行き過ぎたようなときに、国際収支関係まで入れますと、経済が行き過ぎて国際収支が赤字になった、こういうときに非常に揚超が大きくなるわけです。従いまして、そういう点ではなるべくそういうことはなくして、若干ずつ国際収支が黒字を続け、そして国庫も払っていく、そういう形で銀行その他金融機関も体質が若干改善していける、こういうふうに経済が伸びるのが一番望ましいのじゃないか。予算以上に急に税がふえたとか、そういうようなことによって揚超になるというようなことでなしに、今申しましたようにだんだんに改善していく、そういう考え方をとって参るべきものじゃないかというふうに考えております。
  105. 石村英雄

    ○石村委員 議論しても始まりませんが、結論としては、金融の正常化というものは、今の日本金融制度のもとでは、やはり国際収支の黒字がもっとどんどんたまらなければ、外貨の蓄積がもっと多くならなければ正常化は不可能じゃないか、オーバー・ローンの解消なんというものも、もっともっと外貨の蓄積でも多くならなければ、これはできないのじゃないか、こう私は判断するわけです。これはどうですか。
  106. 石野信一

    石野政府委員 金融の正常化と申しましても、いろいろの問題がございまして、今の貸し出し態度というような面につきましても、預貸率なり準備的な預金というようなものを常に念頭に置いて、計画的に長期的に考えて金を貸していくのが、これが金融機関としては当然の態度なんで、足りなくなったら日本銀行へかけ込めばという感じではいけないということ、その他金融正常化にはいろいろな項目がございます。資産の健全性とか、いろいろなものがございますが、そういう面ではあくまでも金融の正常化を進めていかなければいかぬ。それからまた、経済全体としては、金融の仕組みの問題として、社債がもっと売れるようになるとか、一般大衆から社債が買われるとか、あるいは自己資本を充実してくるというような形で金融機関への依存が減るということから、金融機関の貸し出しが減るとか、いろいろな考え方がありますから、一がいに今おっしゃったように外貨の蓄積がなければ金融正常化は不可能だ——そういう意味でおっしゃったのじゃないと思いますが、そういうふうにとられますといけませんので、金融機関としては、やはり本来の金融機関の健全性、またいろいろな意味における正常化に努力していかなければならない。私どもはそういう指導をして参りたいと思います。ただそれが、御指摘のように、一応目標になっておる八〇%まで預貸率が下がらぬのはけしからぬ、直ちにこれを法定しろとか、日銀貸し出しは直ちにゼロにすべきだということになりますと、これは実態に即さないということになりまして、実態に即しながら長期になってもできるだけ計画的に着実に一歩一歩進めていきたい、こういうふうに考えております。
  107. 石村英雄

    ○石村委員 どうも抽象的な話ばかりになって恐縮ですが、政府金融正常化を進める、こういうのなら、具体的にこれをこうすればできるからやれという、何か積極的ななにがなければだめだと思うのです。ただ貸し出しをでたらめにしてはいかぬとかなんとかいうことは、これは言わぬでもわかり切った話です。ところが、今の自由経済のもとでは、やはり銀行は貸し出しをせざるを得ない、競争をして自分のところを大きくせざるを得ない。そうして、一方では財政の揚超があると収縮するわけにはいきませんから、やっぱり日鉄にかけつけざるを得ないということになるんじゃないかということを言っているわけなんです。例の準備預金制度も、あれができるとき、私たちは基本的な考え方として準備預金制度というものが悪いとは考えなかった。ああいう制度を打ち立て、金融の調節と申しますか、何かはすべきであろう、こう考えましたが、やった結果は、あのときやはりわれわれが問題にしましたように、準備預金制度というものを発動しても、一方では貸し出しがどんどんできるというので、結局無意味になるのじゃないか。もちろん完全に無意味だということではありませんが、せんだっても新聞には両建になっているというような話が出ておりましたが、そういうことに陥らざるを得ないのではないか、こう考える。だから、政府金融の正常化と言うならば、もっと目標をはっきりさせて、具体的な可能な方針を打ち出すべきじゃないか、こう考えるのです。それじゃなしに、抽象的に金融の正常化を進めます、こうおっしゃっても、これは実は何もできないのじゃないか、何もやる気がないんじゃないか、うたい文句で正常化と言っておるにすぎないんじゃないか、こう判断せざるを得ない。
  108. 石野信一

    石野政府委員 そういう点になって参りますと、若手考え方が違って参りますので、金融の正常化につきましては、先ほど申しましたように、やはり目標を定めて一歩々々進めていくということが必要でございまして、預貸率については八〇%以内に押えたい。さっき約九三%と申しましたが、これを八〇%以内に押えたい。これは金融機関で非常に違うわけです。一〇〇%こえているものもあるし、いろいろある。そういうものを個別に指導して、こえているものはできるだけ早く下に下げるように努力をする。あるいは、流動性資産の比率につきましては、これは三〇%以上にする、経営収支率につきましては七八%以内にするということで、具体的に個別の銀行に対してはそういう意味で指導をいたしておるわけです。従いまして、その金融正常化の努力が、先ほどからのお話で、ただ、日本銀行の貸し出しというものは、経済の成長との関係において必ずしも一挙にゼロにすることはできない、国庫収支との関係において考えなければならないというような点については、御意見の通りでございますけれども、こういう目標に向かって改善をしていくという努力が必要であり、また、それがために、経済全体の持っていき方としても、国庫が非常に急激な揚げに陥ることがないように、国際収支なんかも黒字が維持できるような経済を進めていく。その間金融の仕組みにつきましても、自己資本の充実とかいろいろなことを考えながら、順次着実に改善を進めていく、こういうことでございます。金融正常化ということを申しましたのと関連して、日銀貸し出しがなかなか減らない、または減らないにはそれだけの理由があるというような面からだけ論ぜられまして、金融の正常化は無意味じゃないかとか、うたい文句じゃないかというふうに見られると何ですが、私どもとしては具体的に個別の銀行について努力をいたしておるわけであります。
  109. 石村英雄

    ○石村委員 御努力は多といたしますが、結果においては同じようなことになるのじゃないかと考えるわけであります。  ところで、金利の問題に触れたいと思いますが、実は、私、二週間ぐらい前に地下鉄に乗ったとき、人が持っている新聞を読んだら、日銀金利引き下げか、二月実現はむずかしかろう、とかなんとか書いてあるので、何の新聞かと思ったら、日本証券新聞と書いてある。なるほど株屋さんの新聞ならこういうことをさっそく取り上げるに違いないと思いましたが、一体、現在の日銀金利というものに対して、現存の金融情勢から判断して、そういうことが考えられますか。
  110. 石野信一

    石野政府委員 日本銀行金利の問題は、日本銀行政策委員会によって決定される問題でありますが、ああいう新聞記事が出ますのは私ども非常に困るのです。何もこっちで考えていることでなくて、新聞が出てしまって、これはどういうわけかと聞かれて非常に困るのですが、今、別にそういう意味で、金利のことについて何らかああいう記事が出るような基礎的な動きがあるとかなんとかいうことはないので、また、そういう金利の問題は、あらかじめそれが外に出るとかいうことは非常に弊害も多いことでありますから、そういうものは決定までは全然外に出ないので、ああいう予想記事というものは実態を現わしていない場合が多いわけであります。それについては私としては実は困っておるような状態でございます。
  111. 石村英雄

    ○石村委員 もちろん、日銀の金利をここで上げるとか下げるとか下げないとかいうことを、あなた方がおっしゃられるわけではないと思うのです。しかし、大蔵省として現在の金融情勢をどのように判断しておるか。大蔵省も日銀政策委員会に代表者を出していらっしゃる以上、大蔵省の見解を政策委員会で大いに主張されると思うのです。従って、一部には、ああいう日銀の金利を引き下げる情勢にあるのではないかという判断が、どういうところで生まれるのか知りませんが、あるんじゃないか。政府として、大体金融情勢と日銀の金利との関係をどう考えておられるか。
  112. 石野信一

    石野政府委員 これは、金融機関融資の態度というものを見ておりましても、昨年の六、七月ごろから若干資金需要が強まりがかりまして、その後だんだんそれが強くなるような傾向にあったのでございます。九月に準備預金制度が発動いたしまして、それから十二月に公定歩合の引き上げというものが行なわれまして、金融機関としてもこれに即応ずるような態勢を示しておるわけであります。あるいはそれ以外の原因もございますが、その結果、最近の金融情勢は、金融情勢だけ見ますと、通貨も三十四年末一兆二百九十四億、これは予想されたよりは少なかったわけであります。それから、対前年の比率で見ましても、十一月の公定歩合引き上げの直前には一八%ぐらい通貨が増加いたしておりましたけれども、その比率が若干落ちて参っております。そういうようなこととか、あるいは一月に入ってからの還流の状況が非常によくて、今七千五百五十億ぐらいに下がってきておると思います。そういう関係から見まして、一応金融の情勢だけを見て判断いたしますと、その点からは順調に推移をいたしておるというふうに考えるわけであります。資金需要の方はかなり強いわけでありますから、それで安心していいというわけではなくて、常に慎重に事態の推移を見守っていく必要はありますけれども金融情勢については平穏に推移しているというふうに判断しております。
  113. 石村英雄

    ○石村委員 実はその金融情勢の判断は私の判断と少し違うわけです。私の判断といったって、別に大蔵省のような十分な資料を持っているわけでもなし、まあ常識的な客観的な判断にすぎないので、間違いかもしれませんが、私は今の金融情勢はそう順調という形の情勢ではないのではないか、こう思うのです。資料がありませんから私の判断は間違いかもしれません。目先に見ましても、なるほど日銀券の還流はあるいは順調かもしれませんが、一つの端的な表現であるコールの金利をとりましても、翌日ものだろうが、無条件ものだろうが、月越しものだろうが、みな二銭三厘一本と表示されておるのですね。私たちが実際に聞いておるコールの金利は二銭三厘よりもはるかに高いのです。極端なのは四銭とか何ぼとかいうようなのもありますが、実際は二銭三厘一本だということも非常に不正常なコール金利だといわなければなりませんが、実際はそれ以上——まあやみ金利といえばやみ金利でしょうが、それ以上の金利が非常に多いのです。どういうわけか、それが日銀の報告にも出ませんから、それによって大蔵省は判断しておられるかもしれませんが、実際に地方の金融機関に聞いてみると、コールの金利二銭三厘で貸してくれなんという、そんなばかはいやしない、もっと金利を出しますぞといっているわけです、コールが出せるような地方金融機関に対して。そういうことから考えると、今の金融情勢はやはり実質的には非常に窮迫しておるのじゃないか。そうして、今後さらにこの程度というものは続くのではないか。輸入もふえる見込みのようです。輸入がふえれば当然金融が逼迫することは言うまでもありません。従って現在の金融情勢が順調だという大蔵省の判断は、金融情勢の判断において誤りがあるのではないか。そのような判断をされるから、証券新聞なんかに日銀の金利は引き下げかというようなことが生まれてくるのじゃないかと思うのです。これは大蔵大臣の御判断はやはり金融は順調だとお考えですか。
  114. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来説明いたしておりますように、私は順調だと実は考えております。ただいま日銀金利引き下げかという話が実は出ておりますが、大体昨年公定歩合を一厘引き上げました際に、当の金融情勢、金融市況から見ますと、これは第一次の引き上げであり、必ず第二次がくるだろう、こういうような流説が相当強かったように私は見ております。また、当時のコール・レートそのものを見ましても、なかなか動きが活発だ。ことにやみコール——これはやみでありますから実態をつかむことは非常につかみにくいのでありますが、このやみコールなどになりますと、相当高いものが出ておる。そういうことが一般の人気に、ただいま申し上げるような再引き上げというような感じを強く与えていたと思います。ところが、先ほど銀行局長説明いたしますように、年末金融もその金額が思ったより少なかった。あるいは還流状況が比較的順調にきているように思われます。こういうようなことが影響するのでございましょう。公定歩合の毎引き上げということも私どものところの耳にはほとんど入らない。逆に、ただいま申し上げるような、金利は下がるのじゃないかというような話を一部している。これはいろいろ人気に投じた意見でございますから、そういうものが好ましいことではございませんが、少なくとも金融市況一般を支配している空気を一部現わしておるのではないか、こう言えるのではないかと思います。ことにアメリカ金利そのものにいたしましても、昨年秋から数回にわたって引き上げをいたしましたアメリカ自身で、最近発行いたしました財務証券などは金利が少し下がっておる。こういうような点も、これはアメリカのことでございますが、そういうような手柄もやはり反映しているのではないか、かように実は思っておりまして、コールのやみの実態、ただいま御指摘になりますようなコールの状況というものは、それが非常に強いとは私は思いません。今表現された通りだとは思いませんが、コール・レートのあり方には絶えず私どもは気をつけなければならないのでございまして、そういう意味で、銀行の監査等におきましても、資金の使い方については絶えず注意しておるというような状況でございますが、ただいまのところは、特に心配するような数字といいますか、今の状況に変化を来たすような状況では実はないんじゃないか。これは、一面から申せば窓口規制が非常にきつくて、そういう意味で少し落ちつきを示しておるのではないか、こういう言い方があるかわかりませんが、公定歩合の引き上げなり、あるいは窓口規制なり、あるいは融資態度の是正なり、あるいは銀行相互の過当競争を自粛するとか、こういうような事柄が順次平静な金融情勢を招致している、かように実は私どもは見ておるわけでございます。しかし、いろいろ御注意の点もございますから、こういう情勢の実態の把握については、さらに私どもも正確を期していかなければならぬと思います。御注意の点はそういう意味で十分伺っておくつもりでございます。
  115. 石村英雄

    ○石村委員 別に私は大蔵大臣に注意するほどのなにもあるわけでもございませんが、そうしますと、金融が順調だという意味は、つまり昨年の十二月の初めに日銀金利を引き上げたが、再引き上げをしなくてもいい意味での順調だということなんですね。
  116. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、この十二月に金利を引き上げた。そのときの金融界の含みというものと現状はよほど変わってきている。今は再引き上げというような危険はないとみんなが感じておる。言いかえますならば、私どもが予防的措置としてとったことが十分効果を上げた、かように実は思っておるわけでございます。そして、この効果を上げたその後において、今度は私ども本来の念願である金利を国際水準にさや寄せしていく、こういう方向の処置をとり得る状況になっておるかどうか。そういうことになりますと、まだその辺はもう少し慎重に見ていかなければならない。ただいまのところは、昨年の引き上げ後の状況で一応の小康を得ておるというか、まず落ちつきを示しておる、こういう表現が適当ではないか、かように思っております。
  117. 石村英雄

    ○石村委員 つまり警戒措置として引き上げたが、まだ警戒解除には至らぬが、一そうの警戒をするほどのことはないということなんですね。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体その通りかと思います。
  119. 石村英雄

    ○石村委員 日銀の金利というものは、私は二つの性質があると思うのです。そこでこれはなかなか論議もむずかしいし、また大蔵省の方の答弁もむずかしいのじゃないかと思うのですが、日銀の金利は、やはり十二月の初めに警戒の意味で引き上げたというように、金利一つの政策を示すという面があるとともに、一応具体的な日銀に対する資金需要に対する自然的な金利、この二つの性格があると思うのです。国際的に金利を引き下げるとかなんとかいうのは、その自然の意味金利を下げるということじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  120. 石野信一

    石野政府委員 おっしゃる通りでございます。
  121. 石村英雄

    ○石村委員 この間からおっしゃる通りという御答弁がこの委員会でも大へん多いのでなんですが、そうすると、今の日銀の金利というものは、やはり警戒の意味金利部分と実態による金利部分とが含まっておって、そうして実態による金利の引き下げというのは、もう少し金融が正常化するか何かしなければ下げられない。つまり貸し出しが少なくなる。日銀に対する貸し出し要求が少なくなれば、下げるということになるわけですか。
  122. 石野信一

    石野政府委員 警戒的な意味と実態的な意味は、ある意味では、実態的な金利の引き上げからくる影響が警戒的な効果も表わすわけでありますから、互いに関連すると思うのでございますが、そういう意味において、やはり一般の金利水準、窓口での資金需要供給、これは日本銀行だけでなくて、民間の普通の金融機関の窓口での資金需給、さらに大きな意味での資本取引といいますか、その関係における資金の需給関係、そういうものが資本の蓄積等によってだんだんに改善されることによって、金利が下がって参る。実態的な金利引き下げはそういうことにあると思います。
  123. 石村英雄

    ○石村委員 それから、よく日本金利は高い高い、こう言われるのです。なるほど金利は表面を見ると高いわけですが、一体市中銀行の貸し出し金利というものが、たとえば西ドイツなんかと比べてほんとうに高いのですか。もちろん高利貸金利なんというものは別ですが、一般の経済水準に当たるものの金利というもの——表面金利じゃありません。実際事業に貸し出す金利と、日本金利は非常にかけ離れて高いものかどうか。
  124. 石野信一

    石野政府委員 その点は中央銀行の公定歩合が示すほどの差はございません。御指摘の通りで、西ドイツなんかでも、市中の貸し出し金利になりますと、やはり日本よりは低いことは低いのですが、それほど大きな差、公定歩合におけるような差はないというふうに御理解いただきたいと思います。
  125. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、公定歩合においてそのような大きな開きがある。これは、日本の公定歩合の金利自体を見ましても、戦前の日本銀行金利との開きというものは非常に大きいですね。市中金利の戦前と現在上がり工合というものよりも、公定歩合の上がり工合が非常に大きいわけですが、この原因はどこにあるとお考えになりますか。
  126. 石野信一

    石野政府委員 先ほど来のお話のように、最終的な資金需要のしわが日本銀行に寄って参るという関係で、市中の貸し出し金利日本銀行、中央銀行の貸し出し金利とが、ほかの国に比べて直結している傾向があると思います。そういう意味において、中央銀行の公定歩合が一つの基準になって、全体が体系的に整って金利が上がったり下がったりする。すでに体系的に中火銀行がほんとうに短期金利の象徴のようになっていることにも、今申しましたような意味において、市中のいわゆる貸し出し金利に直結している面がある日本の場合とは相違がある、こういうふうに私は理解するのであります。
  127. 石村英雄

    ○石村委員 もうこのくらいでやめますが、日本金融組織の特徴は、今おっしゃったように日銀と直結しているということなんですね。これに対して何か改めるような方針でもありますか。そういう方向に持っていこうとするお考えでもありますか。
  128. 石野信一

    石野政府委員 それが先ほど来問題になっております金融の正常化ということで、一気にはできないにしても、できる限り日銀の貸し出しも減らす。そして自己資金の充実ということで、他人資本に対する依存を是正していく。これは一朝一夕にはできませんので、御指摘の通り長期的に考えて、かつ着実にやっていくという考え方にならざるを得ないわけですが、そういうことによって改善していく考えであります。
  129. 石村英雄

    ○石村委員 銀行がすぐ直接日銀にいくということでなしに、その中間に一つの割引市場なり何なりを育成していくというような考えでもありますか。こんなことは日本では無理じゃないかと思いますけれども
  130. 石野信一

    石野政府委員 これについては、いろいろの考え方、またいろいろの方法等が諭ぜられていることは御承知の通りでありますが、御指摘の通りちょっと何か工夫すればすぐできるという問題でございませんので、基本的には資本が不足しているという関係からきている面もあると思います。いろいろ工夫しながらできる限りそういう方向に持っていく考えであります。
  131. 石村英雄

    ○石村委員 これでやめます。
  132. 植木庚子郎

    植木委員長 次会は来たる三月一日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。    牛後三時二十七分散会