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1960-04-06 第34回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月六日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 村瀬 宣親君    理事 小坂善太郎君 理事 西村 英一君    理事 平野 三郎君 理事 前田 正男君    理事 石野 久男君 理事 岡  良一君    理事 北條 秀一君       秋田 大助君    橋本 正之君       細田 義安君    南  好雄君       八木 徹雄君    岡本 隆一君       原   茂君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         科学技術政務次         官       横山 フク君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長 ) 法貴 四郎君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局アイソト         ープ課長)   鈴木 嘉一君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局放射線安         全課長)   亘理  信一君         総理府技官         (科学技術庁放         射線医学総合研         究所長)    塚本 憲甫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  放射性同位元素等による放射線障害防止に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出第  七一号)      ————◇—————
  2. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより会議を開きます。  放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告があるので、この際これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 中曽根国務大臣の御出席を、できるだけすみやかにお願いいたします。  そこで、まず、専門の事務当局の方にお尋ねをいたしますが、一昨年の九月に国際放射線防護委員会ICRPが新勧告決定いたしております。この新しい勧告と従来の勧告とは、きわめて質的に趣を異にしておるような感じもいたしますが、この点について、その骨子をこの機会に述べていただきたいと思います。
  4. 塚本憲甫

    塚本説明員 ただいまの御質問に対して、ICRPの一九五四年の勧告以来一九五八年の改定されました勧告の相違について、簡略に申し上げます。  従来の五四年の勧告におきましては、週線量という線量率によっていろいろなことを規定して参りましたが、今度の勧告におきましては、集積線量——受胎から生殖年令三十才に達しますまでの集積された線量ということを規定して参りました。これは、国民遺伝線量ということを新たに考慮したためであります。そして、従来は、放射線を取り扱います職業人に対します線量の十分の一以下ということで一般人に対する線量を規定しておりましたものを、今度は、全人口に対するという考え方から、職業人、その周辺に働く非職業人、あるいは一般人というふうに分けて考える。この点が非常に変わった点でありまして、この点、昨年の八月二十八日に、ICRP勧告特別部会において考慮しました点を委員長を通じて答申してございます。その後われわれ引き続き審議を行ないました結果、職業人に対する線量考え方は、国際勧告の線に沿うて考えることが妥当であるというふうに考えました。それは、つまり、その線量をD=5(N—18)という式、つまり、その人間年令に対して蓄積された線量を、そういう式によって規定している国際勧告の線に賛成であるということであります。  なお、事故時の場合の考え方、そういうことも国際勧告の線に沿うて考えることがいいのではないかという考えに賛成しております。  さらに、そういう事業所周辺の人人に対する考え方は、やはり国際勧告の線に沿うのであります。その規定の仕方は、わが国の国情とかいろいろなことを勘案いたしまして、そして被曝線量というものを、たとえば、職業人に対しましてはフィルム・バッジ等で十分にそれをはかることができますけれども、そこに働いている非職業人に対しましてそれを管理することはむずかしいために、これはその責任者にその管理方法を依頼しまして、その責任者において国際勧告の線以下に線量を保てるように、施設その他を考えていくというふうな考え方をして参ったわけであります。  なお、いろいろなそういう事業所から出て参ります廃棄物に対しての考え方といたしまして、これを従来のように、たとえば排気口のようなところで厳重に押えますといろいろな問題が起こって参りますので、それをどういうふうに取り扱うかということをいろいろ議論いたしましたけれども、結局、その事業所管理し得る場所ということを考えに入れまして、そこを越す場合には、危険のないように、国際勧告の線で処理できるように、管理者において責任を持ってやらなければならないという考えを採用いたしました。  さらに、これが私たちによくわからなかったのでありますが、そういう事業所幾つもできて参りますと、一つ事業所においてそういう制限を守られたといたしましても、二ないし三の、そういうところからのいろいろのものの総和が、国民に対して影響があってはいけないということを考慮いたしまして、こういう点をどういうふうに考えていただいたらいいか、当然これは考えなければならないことだと思って、その点を取り上げておるわけであります。  大体そんなところが今まで審議いたしました内容でございます。
  5. 岡良一

    岡委員 そこで、この国際放射線防護委員会の一昨年の新しい勧告に従って、先般二月に、放射線審議会内閣総理大臣意見を具申しておられます。この審議会には塚本所長も親しく参画せられたと思うのでありますが、この意見答申の具体的な内容について、一つこの機会にお尋ねいたしたい。
  6. 塚本憲甫

    塚本説明員 先ほど申し上げましたように、職業人に対しましては年間レムというICRPの線を取り入れることを、われわれの審議会としては賛成いたした次第であります。もう少し詳しく申し上げますと、十三週間に三レム以内の曝射ということでございます。それと、その線を保ちますために、記録を取ってそれを保存するという方法考えております。ただ、職業人の場合に、すべての人間記録を取るということは、たとえば日雇い労務者とか、あるいは非常に危険のない微量線量を扱っているところに対しても、全部そういうものを取って、その個人の一生のあれを追及するということがこの段階では非常に困難が伴う場合がございますので、可能な職業から逐次それを行なっていくようにしたらどうか、こういう考えでございます。それから、やはり従業員以外の者の被曝線量というものは年間〇・五レム以下という線にも同意して、そういうふうに措置をとるつもりでおります。  次に、特殊グループ、すなわち、職場におります放射線取扱者に対しましては、施設において年間〇・五レムというところが保てるような施設をすることにしておりますし、その管理区域と申します〇・五レムから一・五レムに到達するであろうような地域に出入りしなければならないような仕事をする人間に対しましては、そこに出入りする時間がそれ以内であるように制限をする、あるいはその周辺におります住民に対しましては、その職場からの影響が常に〇・五レム以下であるように、あるいはそこにいろいろな表示をいたしまして、みだりにそういうところに近づかないということを義務づけておるわけでございます。それらが審議会答申したおもな点でございます。
  7. 岡良一

    岡委員 中曽根原子力委員長に御所見を伺いたいのでありますが、今、塚本所長から、国際放射線防護委員会の新勧告趣旨並びにそれに基づく国内における放射線審議会答申の具体的な内容をお聞きいたしたわけでございます。結局、新しい国際的な放射線障害に対する基本的な立場で、従来と大きく異なったことは、要するに、放射線曝射というものの人類に与える遺伝的な障害ということが非常に重要視されておる、その結果として、遺伝的障害ということになると、たといごく少量の放射線曝射であっても、それが持続的に集積した場合においては、不測遺伝的な遺伝子突然変異を呼び起こすであろう、そういうものが通婚をする人類の集団においては、それが重なり合い、組み合わせられて不測の不幸を起こし得るであろう、こういう観点から、いわば許容量という考え方を捨てて、遺伝的な将来の不幸を防止する立場において、いわゆる集積線量制限という観点に立ったことが、この新勧告の大きな骨子であります。そういう立場からいたしまして、たとえば、従来は、職業人許容量週当たり〇・三レムとなっておる、これが三分の一にいわば落とされるということになった。あるいはまた、一般国民については年間〇・五でございましたか、それからまた、特殊グループについてはやはり〇・五レムというふうに、非常にきびしい制限勧告されておるわけでございます。そういう決議に基づいて、放射線審議会といたしましては新しい意見内閣総理大臣あて提出をされました。そこで私は、当然今後における日本のアイソトープなり原子力なりの平和利用の発展に備えまして、政府としてはすみやかにこの放射線審議会答申を具体的に実施する必要があろうと存ずるのでございますが、この点についての御所見を、まずお聞きしたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御意見の通りでございまして、放射線審議会答申がありましたときに、私は、直ちに閣議にその内容を報告いたしまして、目下関係政令その他法令改正の準備を作業中でございます。
  9. 岡良一

    岡委員 この放射線審議会答申に基づいての作業は、当然最終的な責任原子力委員会にあると存じますが、そうでございますか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 告示やその他は、科学技術庁長官というのが行政上の責任をしょっております。科学技術庁長官でございます。
  11. 岡良一

    岡委員 作業はどこが担当しておられますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原子力局におきまして政令その他の法令関係は所掌しておりますものですから、いろいろ準備しております。
  13. 岡良一

    岡委員 原子力委員会設置法第二条第五号には、「原子力利用に伴う障害防止基本に関すること。」と相なっておりまするが、これは原子力委員会が企画し、審議し、決定する事項に相なっておるわけでございます。してみますると、当然この答申を受けて、その趣旨に沿う行政的な措置をするための作業は、原子力委員会が進められるべきものではないでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行政事務関係原子力局科学技術庁が担当しておりますので、具体的な政令その他の用意というものは、局がやるわけであります。ただし、そこに「基本」とありますように、基本政策決定原子力委員会が行ないます。従って、総理府付属機関である放射線審議会答申につきましては、原子力委員会がこれを検討いたしまして、そして大体この答申をのむという基本方針をきめまして、その線に沿いまして、今、局におきまして事務処理をいたしております。
  15. 岡良一

    岡委員 この放射線審議会庶務原子力局が担当しておられる、原子力委員会庶務原子力局が担当しておられる。委員会あるいは審議会の運営の庶務を担当せられることはさることながら、委員会あるいは審議会決定について具体的な作業をするということになりますと、これはたとえば、どこの局にも担当の課があるようでございますが、その課で、実際力の関係でやり得るのかどうかという点、率直なところどうです。
  16. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 事務的な事項のようでありますから、私からお答え申し上げます。  放射線安全課がその任に当たるわけでありますけれども、御指摘のように、この課は大へん業務量が多い課でございまして、こういう障害防止法令等に関する事項ばかりでなしに、実際の放射線を扱うための許認可事務もこの課で受け持ち、同時にまた、検査事務を持っておりますので、非常に事務量が多い課でございます。従いまして、予算たびごとにこの課の人員等を増加して内容充実をはかってきつつあるわけでありますが、現在の段階で、客観的な事態が進むに伴って、それに並行的に充実しておるかと申しますと、必ずしもそうは申し得ないような苦しい状況であります。けれども、内容は質的に非常に充実した課でございまして、一騎当千の士が多うございますから、少数精鋭でもって何とか処理しているのが現状のように考えております。  ただいま大臣からお話がございました、勧告に片づいての政令府令等改正に関しましては、ただいま作業中でございますが、それが完成いたしますれば、当然また審議会にもおかけし、原子力委員会の方にもお諮りいたしまして、いろいろ御審議をいただいた結果、各省とも相談の上、これを実施に移したいというふうに考えておるのでございまして、ただいまのそういう法的な規制整備段階では、それほど不自由はしていないというふうに考えております。
  17. 岡良一

    岡委員 この放射線安全課は、かなりたくさんな仕事を持っておる。そしてまた、これらの法律実施についても、やはり不断にいろいろ監視、検査を持続するという仕事もあるし、大へん仕事だと思う。そこへこういうきわめて重大な答申提出をされ、これをまたその課でやれということは、まことに大へん仕事をしょわされたものであって、やはり原子力委員会下部組織として幾つかのセクションがあるわけでございますが、その中には、放射線防御に関するセクションを設けて、あるいは、あるならそれを活用して、そして現に放射線審議会には日本のエキスパートもおられるわけですから、こういう人たちの協力を得るなり、参加を願うなりして、すみやかに答申の線に沿う決定を下されるという措置をとらるべきではないでしょうか。ただ、原子力局放射線安全課の諸君にのみまかせておるということでは、実際問題として、とうてい審議会答申が具体化し得ないと私はその点を心配している。どうでしょう。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体放射線審議会答申府令ないしは政令にそのまま盛り込むという作業をしておるのでございますが、技術的な、あるいは法律技術的な面がかなりあるように思います。従いまして、答申に疑義があるとか、あるいは内容についてよくわからぬというような場合には、放射線審議会権威者の御意見を承るということもけっこうだと思いますが、法律に作り直すということ程度のことなら、今までの放射線安全課の能力で私はできると思います。しかし、念には念を入れた方がいいと思いますから、そういう案ができましたならば、この審議会の方々に案を見ていただきまして、これでよろしいかどうかを承ってから、正式に提案するようにいたしたいと考えます。
  19. 岡良一

    岡委員 この国際放射線防護委員会勧告というものは、その国その国のいろいろな特殊の事情条件の中で具体化すべきことをうたっておるわけです。してみれば、わが国におけるそれぞれ特殊な事情条件というものを十分に把握して、その上で、この勧告をいかにして具体化するかということが結論として生まれてくる。この作業というものは、こう申し上げては恐縮でございますが、なかなか安全課だけでは耐えられない仕事だと私は思うわけです。  それでは具体的にお聞きしますが、たとえば、この勧告によって非常に重要視されておる遺伝子突然変異でありますが、新勧告立場から見て、たとえば日本国民に対する遺伝的影響というものはどういうようになってくるものでありましょうか。たとえば奇形児、身体あるいは精神の発育の不全、あるいは寿命の短縮とか、こういう面もある程度まで推定がされ得ると思うが、どういう予測を現在放射線審議会で持っておられるか、また、その上に立って答申を出されたものかどうか。その基礎であるデータをお示し願いたい。
  20. 塚本憲甫

    塚本説明員 お答え申し上げます。旧勧告週線量〇・三レムというその線で従来個人に対して非常に認めらるべき障害が起こったから、今度それを少なくしたという意味ではないことを、まず第一につけ加えさせていただきます。  それから、従来のこの考えをもって遺伝的な影響考えに入れてわれわれもいろいろ討議したわけでありますが、現在の日本において、近い将来国民の受ける遺伝線量というものは、この国際勧告の線よりも、職業人あるいはその周辺人、それを平均いたしまして、国民遺伝有意線量というものを考えましたときに、今世界でそういうことが一番盛んに行なわれております国におきましても、全人口の〇・一%からたかだか〇・二%の間だ、つまり、千分の一から二がそういうことにタッチしておるという状態でありますが、わが国ではまだそれ以下の数でございますので、国際勧告の線を取り入れてやるということであれば、まず、そういう意味放射線によるマイナスの面がふえてくるということは考えないでいいのではないか、こういう立場国際勧告の線を審議会として受け入れたわけでございます。
  21. 岡良一

    岡委員 しかし、答申に基づいて政府として一応の基準を定めるということになれば、やはり実験的データというものが基礎となり、また、各国におけるそれらのデータというものを十分取り入れる必要がある。と同時に、やはり将来における日本放射能施設原子力施設増大にかんがみ、おそらく核実験等に基づく放射能禍というものも、今後成層圏等に蓄積しておるところの放射能灰の降下とともに、これも集積される可能性がある。そういうもろもろの条件をやはり十分に検討してもらいたい。まあ、九千万のうち九万以下でもあろうし、さらに、それよりもはるかに以下でもあろうから、今のところはさしつかえがないという考え方では、私は、科学的には良心的じゃないのではないかと思います。  しかし、それはさておきまして、その次に、それでは、今、皆さんの方で、一応遺伝的な突然変異というものは、ネグリジェンスまたは核実験等に基づく、現在のいわば人工的な放射線曝射、その将来の傾向、これはどういうふうに計算されておりますか。
  22. 塚本憲甫

    塚本説明員 お答え申し上げます。国連の科学委員会などにおきまして、地表あるいは成層圏から落ちてくる量その他について、各国データを持ち寄りまして、それに基づいて、今まで行なわれた核実験などの結果、地上にどれだけの影響があり、それがまた回り回って食品その他から人体に結局どれだけの影響を及ぼしているか、これは日本だけでない大問題でございますので、できるだけ世界じゅうのデータを持ち寄って、それから世界人類の受ける影響を計算しようということを一方においてやっております。もし一九五七年、八年の核実験がさらに続くということでありますと、いろいろ憂慮すべき状態になりはしないかということがこの委員会でも非常な問題でありまして、それを年次を追うていろいろ見ております。幸いなことに、核実験が停止されまして以来、急速にその影響が減りつつある、こういうことがこの前の一月の委員会の報告でございましたが、そういう意味におきまして、なおこれは一日本だけの問題でなしに、科学者としては十分番犬的な立場をとっていきたいと思っております。  さらに、先ほど御質問にございました、実験的にこういうことをやって、基礎的なものを固めていかなければならないというような点、ことに、私の研究所など、その責任が重大だと思っておりますが、何分にも、微量放射線を長期にわたって放射された場合の影響というものは、各国とも——規模実験をやっておりますところもございますけれども、まだまだこれで大丈夫とか、これでいいとかいう結論にまで達しておらない点もあるように思います。この点についても大いにそういうデータを集めまして、万遺漏なき線を出していきたいと考えておりますが、どうも、それにはかなりの時間をいただかないと、なかなか簡単な問題ではないように思っております。
  23. 岡良一

    岡委員 こういう問題は、厳密に科学的な問題でございますので、政治的判断の間に間に左右さるべきものではないと思います。それで、国際放射線防御委員会がここまでいわばきぜんたる態度をもって、従来の許容という考え方を、制限という考え方にとりかえる、集積線量全体を取り上げて、これを大きく問題にしてきているということは、いわば今後の世界における遺伝的な、劣勢的な長い影響というものに対する人道的なとりきめをしたものだ。しかも、そのとりきめは、その国その国の特殊な事情の中で具体的に消化されてとりきめなければ相ならぬことになるわけでございます。そうすれば、わが国としては、やはりそれに対する科学的なデータというものを把握し得るだけの施設がなければならない。そこで、たとえばアメリカではナ  ショナル・ビューロー・オブ・スタンダードあたりで、核実験等に伴う放射能曝射というものがどの程度であるかというような数字がすでに出されておると思うが、わが国では、まだそういう作業はなされておらないのでありますか。  それから、いま一つ。あなたの研究所で、特に新勧告遺伝上の悪影響というものを非常に重大視しておるとすれば、それについてどのような実験施設を持っておるか、どのようなスタッフでこれに従事しておられるか、そういう点についても、この機会にお答えを願いたい。
  24. 塚本憲甫

    塚本説明員 第一の点は、私のところだけでなしに、日本全国にそういう微量放射線を測定するセンターがございます。厚生省関係センターもございます。それから、科学技術庁関係から予算がついてやっておるものもございます。そこで集まりましたストロンチウム90とかあるいはセシウムというものに対する日本データかなり詳しく出ております。そういうものをもとにいたしまして、われわれは食品関係とか、そういうことを常に報知しておるわけでございます。  次に、私自身のところの研究態勢といたしましては、やはり許容線量と申しますようなものが、いろいろ各国民生活環境と申しますか、食事事情栄養関係、そういうことによっていろいろに左右されはしないか、ことに、日本人の食事の場合には欧米人のそれとかなり違っておりますので、そういうような点について、はたして国際勧告の線でいいかどうかというようなことに特に重点を置いて本年度は研究を進めようというような計画をしております。われわれのところができまして、ちょうど稲毛に参りましてからまだ一年足らずでありますので、大々的な規模実験を開始しておるというわけには参りませんけれども、そういう意味でお役に立つような基礎的な実験をやろう、そういう計画をしております。
  25. 岡良一

    岡委員 この核兵器の実験に伴う放射能照射増大量と申しますか、日本ではいろいろ大学等におきましてもそのつどカウント計算等がされ、それが新聞に発表されておりますが、厳密に、科学的にどの程度このことに基づく放射線照射増大が起こっておるか、具体的な数字調査されておられませんか。
  26. 鈴木嘉一

    鈴木説明員 お答えいたします。実は、従来までの日本放射能調査現状及びそれの数字的な内容につきましては、昨年原子力委員会の名前でもって、ここにございますような「放射能調査展望」、俗に放射能白書と申しておりますが、これを発表いたしまして、この中に具体的な数字が上がっておるのでございます。なお、その後の調査の概要につきましては、随時速報的なものを作りまして、関係方面に配布いたしました。こまかな一々の数字は、ちょっと記憶しておりませんが、グロス・カウントにおきましては、最近は空中からの雨の放射能ちり放射能がずっと減ってきております。ところが、最近サハラのフランスの原爆実験によりまして、約一週間後に、急激に日本の雨あるいはちり放射能がふえたといったような事実も、最近速報として発表いたしております。
  27. 岡良一

    岡委員 この「放射能調査展望」の中の百八ページに、若干数字をあげて書いてある。それで、1〜4×10−12μc/mlなどというような数字が書いてあるが、この調査は一体どういう方法で、どこがされた調査でございますか。
  28. 鈴木嘉一

    鈴木説明員 これは、放射能を含んでおりますものによって分かれておりますが、大体、大気それから雨、この関係のものは気象庁が主として調査いたしました。それから土壌、そこにはえます野菜とかいうようなものは、農林省の各試験場が調査いたしました。それから食べものとして出ましたものは、厚生省方面で調査いたしております。なお、これらはルーティンの調査でございますが、そのほか、大学方面では、そういうルーティンでなくて、もうちょっと突っ込んだ、深い御研究をなさっております。こういうものを、原子力委員会の下部機構に放射能調査専門部会というのがございますが、そこにデータを集めまして、そこでいろいろ分析、検討せられております。この展望の発表も、その放射能調査専門部会が主として行なっておるわけであります。そういう仕組みになっております。
  29. 岡良一

    岡委員 私が先ほど中曽根長官に申し上げたのもそれです。すでに原子力委員会の下部機構には、放射能調査に関する専門部会がある。これは両三年前に、気象庁、厚生省あるいは各大学等において、放射能雨等の持っておる放射能というものを、ただ割拠的に調査するのではなく、これを集約して、国民放射能禍から守るためにどうすべきかという立場から、原子力委員会が当然最高の責任をとって調査し、この基礎に基づいて放射能障害防止対策を立てるべきであることを、私どもこの委員会で強調いたしたわけであります。そこで、当時藤岡由夫博士がその責任者になるということに原子力委員会は御決定になったわけでございます。そういうふうに、ちゃんと一応のやり方についての方針がきまっておるわけでございますが、これを十分に、しかも、すみやかに活用せられて、そして新しい放射線審議会審議方針に準じた政令等の改正をやるべきだと思います。  そこで、さしあたりの問題でございますが、今も御報告にありましたように、職業人については年間レムということに相なっておる。そうしますと、従来のわが国の取り扱い方を見ますと、現に電離放射線障害防止規則を見ますと、大体週間の許容量〇・三レム、これが年間レムということになれば、週間にすれば、〇・一レムということになる。一週間を単位にとるのがいいか悪いかは別として、少なくとも三分の一に下げなければならない。これくらいのことは、すみやかに防止規則を改正するよう取り上げられていいのじゃないかと思いますが、この点は、委員長として、あるいは長官としての御見解はどうですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ早期に改正するようにいたします。
  31. 岡良一

    岡委員 それから、先ほど塚本所長から御説明がございました国際委員会勧告にもあるようでございますが、特に日本では、原子力施設が複数で存在をしておるわけでございます。この複数で存在している原子力施設から、その平常運転において拡散される放射能というものに対する対策は、特別に考えなければならないようなことに相なるかと思いますが、これについての方針は、どういうふうな方針を持っておられますか。
  32. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 この問題は、なかなかむずかしい問題でありまして、先般コールダーホール改良型炉の設置の許可に際しましても、あの地帯には、原研の原子炉等が現在もございますし、また、近く設置も予定されておりますので、そういうものが集大成と申しますか、合わされていかれた場合には、どういうふうな影響を及ぼすであろうかという点が問題になったわけでございます。そこで、その問題につきましては、一つ一つこれを検討いたしまして、各試験炉等を加味した場合にはどういう結果になるだろうかという点を、いろいろ検討したのでございます。その結果、まずまず大丈夫じゃなかろうかということで、ああいう結論を出した次第でございますが、なお、本件に関しましては、まだ今後ともさらに研究の余地もあろうかと思いますので、引き続いて、炉の競合した場合の放射線線量の計算の仕方等に関しましては、さらによく研究する必要があると考えております。
  33. 岡良一

    岡委員 それから、これは日本エックス線技師会の雑誌、昨年の十二月の第七十六号に、「診療エックス線技師実態調査の結果について」というのが報告されております。これを見ると、調査対象が千七百九十四人、その中で、血液障害のある者の数字が出ております。白血球についての要注意者は百六十六名、従ってパーセンテージでは一〇%、それから白血球の異常のために療養を要する者十九名、一・一五%、赤血球については、注意を要する者が三三%、療養を要する者が九%、こういうような数字が出ております。異常のない者は四二%、従って、過半は赤血球なり、白血球なり、あるいはまた、その両者について注意を要し、あるいは療養を要するということになっている。これは医療の分野におけるエックス線技師の実態調査の結果です。そうなって参りますと、アイソトープが、あるいは農業なり工業なりに利用され、あるいは原子力施設がどんどん増設されると、その周辺の住民というものは、こういう結果が日本に現われておるというこの事実から見ると、おそらく非常に不幸な結果が起こり得る心配もあるかと思います。そこで、一体医療の分野において、エックス線技師においてすらこのような状態が出てきているのはなぜであるかということは、今後の放射能障害防止のためにはきわめて重要な、基本的な問題だと思うのでございますが、これについて塚本所長、どういうふうに考えておられますか。
  34. 塚本憲甫

    塚本説明員 お答え申し上げます。ただいまのエックス線技師の血液の実態調査、これはわれわれも従来非常な関心を持っておるところでございます。そこにありますのは、私の聞いております限りにおきましては、おそらく、かなり古くから相当古い施設などを使ってやっておった特殊の人間も入っておるかと思います。戦後の状態を見ましても、血液像などは、年次を追って改善した数値——これは栄養状態あるいは施設の改善等がございますけれども、おそらくそれらの人々は非常に気の毒なことだと思いますが、長年月にわたってそういうことを取り扱っておったために、先ほど来の国際勧告の線などよりはるかに多い線量がかかっておったのではないかと想像するにかたくないわけであります。従いまして、最近のいろいろな医療施設におきましては非常な改善が行なわれましたし、いろいろな規制も行なわれましたので、おそらく、最近そういうことに従事する方については、医療の面でもそういうふうな障害を起こすというようなことなしにいくのじゃないかと思っておりますが、さらに新勧告の線となりますと、職業人以外に、たとえばコバルトとか、いろいろな治療機械もございますので、その周辺人間の実態が、はたして先ほどの〇・五レム以下に抑えることが日本で可能であるかどうか、あるいはそういう実情であるかどうか、これはやはり科学技術庁の方にもお願いいたしまして、調査を、かたわらやっておるわけでございます。そういうのが現状でございます。それから、これは将来においても絶対に大丈夫だということは言い切れないので、そこで審議会でも、現在及び近い将来はこの線で大丈夫だが、もし原子力産業が日本でも非常に増大した場合には、これに対して、あらためて考え直す必要があるという答申をしてあるわけでございますが、この点につきまして、全体として、たとえば医療からくるとか、あるいは空からくるもの、あるいは自然の放射線等、すべてのことを勘案して、国民全体の線量というものを当然きめてかからなければならない、そういうふうに考えております。
  35. 岡良一

    岡委員 これは私の強い要望として申し上げたいのでございますが、現に、保健所が結核のための集団検診をやる。間接撮影機を持ち出して、保健所の従業員が、専門の技術者もおれば、そうでないお手伝いも、毎日々々間接撮影機を取り扱っている。それで八時間どころか、十時間もやっておるという状態が現在もある。今ここでは、血球についての障害を申し上げましたが、看護婦の不妊というようなものが大学の放射線科に非常に多い。そういう状態がそのままに放置されるということは、そのこと自体が、私どもはまことに遺憾千万だと思うのでございますが、これは中曽根長官、新しい放射線審議会答申に基づいて制限の基準というものが設定されると同時に、レントゲンは厚生省、また、通産省が工業用のコバルト60をやることになるかもしれないが、そういうセクショナリズムをやめて、やはり全国民を対象として、共通の基準に基づいて厳正に生物学的な、身体的な障害なり、自然的な障害防止するという、やはり一本の体系でやっていかなければなるまい、それをやっていくことが将来における原子力平和利用のための大前提ではないかと思います。当然、将来そういうふうな方向に発展させなければならないと思うのでございますが、御所見はいかがでございますか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 科学技術庁が主としてこの問題につきましては責任を持ちまして、関係方面につきましても予算の調整権等はあるわけでございますから、そういう面で、なるたけ統一的にやるようにいたしたいと思っております。
  37. 岡良一

    岡委員 わかりました。  それから、放射線施設に出入する人とか、あるいはその近郊に居住するとかいうような特殊な者について、特に国際委員会は今度大きく関心を払っておるわけです。この構想は、中曽根長官がかつて原子力施設周辺整備について示された関心に同調するものだと思うのです。そこで、私どもも、この勧告があればあるほど、特に日本などは周辺において相当高い人口密度があるわけでありますから、なおさら、原子力施設等の周辺の整備が、こういう観点からも必要だろうと思うのでございますが、原子力施設周辺整備に関するかつての長官の構想を今国会において御提出になられるのでございましょうか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その目途で今努力をしておりますが、当面は、例の原子力災害の場合の損害賠償法を今一生懸命仕上げておりまして、それが終わりましたら、次にそちらの法案の方へ取りかかって、至急整備いたしたいと思っております。
  39. 岡良一

    岡委員 原子力災害の補償も、また周辺の整備も、ある意味においてきわめて関係の深い、不可分の関係にある。また、労働者、特に放射線従業員職業人の問題につきましても、国際勧告が三分の一以下に落としてきたわけでありますから、これは御存じの通り、ILO四十四回の総会も、国際条約として勧告するという方針がすでに決定されておる。日に新たなる新しい制限線量に基づいて、各国は労働者の保護に当たるべきだという方針がきめられようとしておるわけでございますが、特にわが国のように、放射線障害について、国民感情としても非常に敏感な特殊な状態にございますので、ぜひこういう点を抜かりなく、責任を持って進めていただきたいと存じます。  なお、放射線障害防止ということになると、平常運転の際を問わず、また、緊急の事故の際を問わず、やはり問題は、原子力施設の、また放射線施設そのものの安全性が大前提になるわけでございます。そして、新勧告趣旨は、一面においてはこの安全性を確保するということについて大きな警告をあわせて発しておるものとも考えられますので、この点についても、今後十分な責任を持って対処していただきたいと思います。  それから、この審議会は、諮問に応じて意見を具申するということになっております。原子力平和利用、アイソトープの平和利用に伴うもろもろの発展をわれわれが期待すればするだけに、この放射線審議会の機能も非常に重要になってくるし、また、大いに期待いたしたいと思うのであります。そういう意味で、この放射線審議会決定については、政府としても尊重しなければならないというような、権限をより高いものにし、より権威あるものにし、そうして、答申あるいは勧告に対しては、政府責任を持ってこれを尊重し、実施するくらいの権限を与えるような考慮があっていいのではないかと私は思うのでございますが、その点についての御所信はいかがでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 放射線審議会が取り扱いますことは、国民の保健の上にも非常に重要な影響を持っておることであります上に、非常に専門的なことでございますので、この答申あるいは勧告というものは、政府といたしましては最大級に尊重いたしまして、法律その他の措置をとるようにいたしたいと思っております。現に、今までの例を見ましても、大体その通り採用しておるのでありまして、別に法律を変えなくても、現行の慣行通りやっておってそう心配はないように思います。もし、これがこういう専門的なことでないならば、政治的裁量の余地というものがあると思いますけれども、専門的なことでございますから、ほとんど政治や行政上の裁量の余地というものはないと思います。おそらく、政府としては、今まで通りにそのまま受け継いで法令化していくことになるだろうと思っております。
  41. 岡良一

    岡委員 いずれにいたしましても、答申が科学的なデータに基づいて、さらに大きくこれを実施するということになりますと、答申をいかに具体的に法制化するかという手続上において、かなり人なり施設なり、それを裏づける予算も伴ってくるというようなことになります。それがないということになると、結局、放射線審議会答申というものが事実上空転をする可能性もあるわけであります。現在のように理解深い原子力委員長がおられればいいのですけれども、そうでない場合を考えますると、非常に心配なので、私は申し上げたわけです。  それから問題は、こういうふうに放射線審議会なり、国際防御委員会が、どのように科学的な、厳正な基準の設定を勧告し、提唱いたしましても、やはりこれに対する国民の理解というものが伴わなければならないと私は思う。レントゲン技師においてさえも、先ほど申し上げましたような事例が起こっておる。これからいよいよアイソトープが各方面に利用され、原子力施設がどんどんふえてくるということになりますと、やはり国民のこれに対する理解がなければならぬ。特に国際勧告では制限量というものを五レムといっておる。ところがその五レムの中には、医療用や自然放射能というものは除いておりましても、やはり今後原子力施設がふえてくるとか、いろいろな条件のもとで、その中にいわゆる与えられた貯金というものを食いつぶしていく要素がふえてくる、できるだけ、これはやはり国民としては予備を持って、食いつぶさないようにしなければ、その瞬間に、日本原子力平和利用というものが一つの壁にくるという心配がある。少なくとも、原子力平和利用に対する不安が起こってくる可能性もあるわけです。そういう点を考えますと、こういう国際防御委員会勧告なり、あるいはこれを受け取っての日本放射線宿議会の答申なりというもののありていな実態というものを広く全国民をして理解をさせ、国民にみずから協力をせしめるというふうな措置がやはり必要ではないかと思います。でなければ、どんなにりっぱな勧告ができ、また、どんなに正しい政令ができましても、それのみをもってしては、特にこの問題は十分に効果を上げがたいと私は思うのでございます。そういう点で、たとえば、中学校なり高等学校なりの教科書の中にちゃんとこういうものを設けて、小さいときから国民がこのことに理解を持ち得るようにする、こういうような措置も当然必要な時代になりつつあると私は思うのでございますが、この点についての長官の御所信を承りたい。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私も同感でありますので、その趣旨に沿いまして努力をいたします。
  43. 石野久男

    ○石野委員 関連して一点だけお尋ねしたいのです。診療エックス線技術者の実態調査の結果は、先ほど岡委員からのお話があったような状態が出ておりまして、国際防御委員会のものよりもはるかに上回ったような悪い状態が出ております。今、岡委員からも言われたように、いろいろな施設原子力平和利用の形で各所にできて参ります。そういたしました場合に、特に工業用の場合もさることながら、農業などにコバルト60などが利用されます場合には、ある一つ施設をいたしますと、案外にこの放射線障害について関心と理解の足りない方々が、農業技術の上昇という側面から非常に大きな興味を持つことになって参ります。そういたしますと、そういうところの見学とかなんとかいうことが各地からずっと出てくるような事態が起こるわけです。そういう施設の行なわれた現地におけるところのいろいろな問題もありますけれども、数多くの見学者というようなものが出て参りました場合に、コバルト60が出すところの放射線障害というものから防護するためのいろいろな手だてなり、取り扱い規定というようなものが相当厳重に考えられなければいけないのじゃないか、こう私ども思っておるわけです。そういう観点から、このコバルト60などが利用されたガンマ・フィールドの利用といいますか、それに対するいろいろな関心というようなものから、一般の、ほとんど平時無関心である人々がそういうところを見学し、あるいはそれを利用しようというような場合の放射線障害防止するための注意事項といいますか、注意しなければならないような問題が数多くあろうかと思うのです。そういう問題について、どういうような構えで、こういうところの放射線障害防止するための注意をしなければならないかという点について、一つこの際御説明をしていただきたいと思います。
  44. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 先ほど来、エックス線と、いわゆる放射性同位元素の扱いの問題が少し混合されておるように考えますので、この際、私から若干御説明申し上げますが、放射性同位元素障害防止法を国会に提案いたしまして御審議をいただいた際に、さんざんこの委員会で問題になりまして、なぜ、いわゆるエックス線を放射性同位元素障害防止法から除くのかということで非常におしかりをこうむりました。それにはいろいろ理由があったわけですけれども、一つの大きい理由は、エックス線を長い間各病院でお使いになっておられて、いまさらこの法律を強化して取り締まろうとすると、なかなか困難である。しかし、放射性同位元素の方は、ただいまお話しのありましたコバルト60等に関しましては、まだそれほど普及もしておりませんので、今から厳重な取り締まりをすれば、二度とエックス線のようなあやまちを繰り返すことはなかろうというので私ども決心いたしまして、せめて放射性同位元素の分だけでも厳重な取り締まりをしようというので、思い切って行政も一元化し、検査その他も一本にいたしまして、従って、罰則等も非常に厳重な罰則でございます、そういう法律を作ったわけですが、その際、前田先生とか岡先生から、それではどうしてもいかぬというので、あくる年になりまして、せめてエックス線も合わした放射線の技術的な基準だけでも一本にして、そうしてそれぞれの取り締まりは従来の医療法なりその他でもって取り締まっていいじゃないか、こういうところまで参りまして、去年でございますか、この基準法を作ったわけでございます。ところが、その基準法を用いて実際に施行する際に、その基準を守り得るかどうかという点は、それを守らせるための法律が一本であるかと申しますと、ただいま申しましたように、障害防止法の方は、アイソトープ関係は一本でございますけれども、その他の関係は、あるいは医療法とかいろいろ法律が分かれておりまして、必ずしも一本の扱いにはなっていない。しかも、罰則等も、片方は届け出、こちらの方は許可というような、非常に厳格な相違等もございまして、従来のエックス線とアイソトープ関係の扱い方は、必ずしも軌を一にしておらないという点は十分御承知いただきたいと思います。これはいろいろむずかしい問題をはらんでおりまして、なかなか一挙には改善できにくい点もございますが、ただいまの段階では、せめてアイソトープ関係だけは厳重に取り締まりたいと考えてやっておる次第でございます。  第二段のお話の、それではガンマ・フィルードに使うコバルト60はどうかということでございますが、これに関しましては設備、使用方法、それから貯蔵方法等一切、厳重な防止法による規制がありましてこれを監視いたし、同時にまた、検査官等もしょっちゅう出回って検査するようにいたしますし、使う方におきましても、それぞれ安全に対する規則等を、私どもの許可を得まして、その通り施行するようになっておりますので、この点は万々間違いのないように運用いたしたいと考えております。かりにガンマ・フィールドが設置されたといたしましても、周辺の住民等に障害を及ぼすというようなことは絶対にあり得ないというふうに考えております。
  45. 石野久男

    ○石野委員 施設を行ないます場合には、周辺の住民に障害を及ぼさないような万善の施策を講じてもらわなければならぬし、また、そうするということですから、それはわれわれとしても一応了解いたしますが、こういうところには、農業関係の新しい技術というようなものをここで生み出そうという考え方があるわけでございますから、やはり各地から熱心な人がたび重なって見学に来るだろうということが予想されているわけです。そういうような、全然周辺地でない人も非常に関心を持ってたび重なって見学とか何とかに来るだろうと思う。われわれ関心があるだけに、そういうような見学はできるのか、どうなんだろうか、また、させていいものだろうか、どういうものだろうかということが、私たちはわからないから心配しているわけです。そういう点について、どういうような考え方を持っておりますか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ厳重な規制のもとに見学や何かも許すようにいたしまして、原子力に対する認識を深めるようにいたしたいと思います。  ただ、今お話がございましたように、そういう厳重な規制をいたしませんと、不用意な事故が起こるということも考えられますので、地元の市町村その他関係団体とよく連絡をとりまして、連絡会をやるとかということで周知徹底の機会を作る、そういうことをもやるようにいたしまして、事故を起こさないようにいたしたいと思います。
  47. 石野久男

    ○石野委員 私は、しつこくお伺いをしますけれども、実は、こういう施設ができますと、現地では、むしろ、その施設一つの観光のようなものの考え方で取り扱うような傾向が出てくる危険がある。われわれ、新しいものができるのだから、それを普及することに努力することに決して反対するわけではございませんけれども、そういうことが観光的な意味で奨励され、また、そのことのために障害が出てくるというようなことがありますと、かえってまずいのではないかということを考えるものだから、そういう問題はきびしく規制しなければいけないのではないかということを思うわけです。そういう点についての配慮が十分でありませんと、現地ではそういうところへどうしても走ってしまうということがありまするので、監督官庁として、そういう問題をどういうふうに考えておるかということを私は聞いているわけです。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 適当な管理のもとで見せるということは、やはり国民原子力ですから、私は必要だと思うのでありまして、管理が適当にできているかいないかということが問題だと思います。そういう意味におきましては、厳重に監督するようにいたします。
  49. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 ガンマ・フィールドのコバルト60は照射する際にだけ上に出しまして、それ以外は全部厳重に貯蔵しております。一たん照射したら、貯蔵してしまえば、人体に害を及ぼすようなことは絶対ありませんので、その照射する際に十分な管理をしておきますれば、障害はないはずでございますから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。  それから、もし使いました水等いろいろ放射線を帯びましたものが周辺に流れたりするようなおそれがありますれば、それに関しましては、貯蔵方法なり使用方法を立て、十分監視もし、同時に、周辺は始終検査をいたしまして、放射線の強さその他もはかっておりますので、一般の人に迷惑をかけるというようなことはなかろうと考えます。
  50. 石野久男

    ○石野委員 佐々木局長は、コバルト60を照射するときだけ出ているので、それ以外のときは地下二メートルのところに置いてあるから危険はない、こうおっしゃいましたけれども、照射するときだけが問題で、あとは問題でないというようなことは、私は理解できない。そこから出た放射能というものがある限りは、それの弊害が出ているはずです。それが全然ないなら、オープンにしてもかまわないわけです。だから、照射するときだけで、あと、そういう放射能がその辺に散っているものは全然無害だということは、子供だましのようなものです。そういうものの言い方はやめてもらいたい。
  51. 亘理信一

    ○亘理説明員 お答え申し上げます。放射線放射能と若干混同なさっておられるように思うのでございます。農林省の今予定しておりますガンマ・フィールドというものは、一般人がみだりに容易に立ち入れない場所の中に保管するわけでございまして、その制限というものは、国家試験をパスして、十分管理のできる人が管理しております。一般の見学者が、そういうふうな強力なガンマ線の出ますところへすぐ行くというようなことはあり得ないような管理をするわけであります。しかも、それは十分遮蔽しておりますから、それによって、近づかない限りにおきましては、放射能影響がいろいろ一般人に及ぶということはあり得ないわけでございます。空気中にラドンが出るかどうかということにつきましては、それが漂ってどこかへ流れていきますと、それを吸うということはあるかもしれませんが、今のコバルトの成型というものは固型のものでありまして、それが盗まれない限り、かぎが二重、二重にかかって、物好きなどろぼうでも持っていけないようになっておりますから、その心配はありません。
  52. 岡良一

    岡委員 最後に、一点だけ要望をかねてお伺いをいたしておきますが、そういうわけで、国際勧告にしても、また、新しい放射線審議会答申にいたしましても、先ほど繰り返し申し述べましたように、職業人なり、特殊人のグループなり、また、一般国民を少なくとも対象として、生殖年代にどれだけの集積線量をもって制限をすべきかという、後代への無限的な悪影響をおそれたところに大きな意義がある。そうすれば、年間に五レムということになれば、われわれがすでに何レム照射されているかということを具体的に把握する必要がある。非常に困難ではございましょうけれども、この勧告趣旨実施しようとすれば、少なくとも、職業人あるいは特殊人グループについて与えられた制限線量の中から、すでにどれだけの照射を受けたかという記録をとらなければならぬ。それは答申案にもその旨うたってありますが、これは現在どういう方法でやっておられるか、現在の方法で足りるか、足りなければ、どういう構想を将来においては持っておられるか。この点を、この機会に最後にちょっとお伺いいたします。
  53. 亘理信一

    ○亘理説明員 お答え申し上げます。今の御質問に対して考えておりますのは、直接個々のいろいろのレベルの国民を厳重に調査していくという方法は、十分の経験も能力も今のところございませんので、第一段階といたしましては、まず、一番頻度の多い、つまり職業人として放射線に従事する方々に対して、まず最も精密度の高い実態調査をやらなければならぬ。その次には、こういう施設のございます周辺におります一般人——人口の中で〇・何%になりますか、あるいは数%になりますか、その人間の把握すらまだ十分にいっておりませんが、そういう周辺人に対する調査を、やっと三十五年度の調査費ということで芽が出ましたもので、それに対する予備的な、本格的な三カ年ぐらいのしっかりした調査の第一年調査をやるつもりでおります。それからその他の九〇何%の一般人というものに対しましては、個々に調べるということは、今のところなかなかいい的確な、信頼度の高い方法というものはまずなかろうと思われますので、一般人のバック・グラウンドなり、フォールアウトの調査なり、そういうものの測定の精度を上げまして、そして、いわゆる平均的な、国民一人当たりの——一般人としてはおよそどのくらいのものが全身なり生殖腺なり、そういうところにあるかというふうな推定をしていく、こういうふうないろいろの方法を総合いたしまして、その精度を考えまして、必ず毎年毎年そのデータ放射線審議会提出いたしまして、放射線審議会はそのデータによって総合判断をする、そして片方で国際的な尺度の、今のICRP国民線量というものがございますし、なおかつ、御承知のように、あれは一応五レムというものの、職業人なり、周辺人なり、一般人、あるいは今後の事故なりいろいろなことを考えての保留分という四つに区分いたすにつきましても、ICRPといたしましても、これ一つがいい方法だという絶対的な自信をもってきめておりませんので、一つこういう方法もある、その方法考えましても、たとえば職業人に対して一レム、すなわち、五レムの二割を割り当てましても、およそ全人口の〇・七%が十分職業人としてやっていける。そうしますと、職業人が全人口の中で最も大きなウエートを占めておりますアメリカの二十年、三十年先の将来図を描いておるのではないか、日本におきましては、もし〇・七%まで、いわゆる医師なり原子力関係などの放射線従業員がふえましても、一億の人口に対して七十万人ということは、これは相当先の将来図であろうと考えられますので、そういう時間的な職業人の増加のテンポを考えますと、三年ぐらいは十分腰を落ちつけて、しっかりした、周辺人なり職業人なりを重点にした、一般人をも考慮した調査をやっていくのでいいのではないか、こういうふうに今のところは考えております。
  54. 岡良一

    岡委員 非常にそれは非科学的な考え方だと思うのです。やはり遺伝学的には、漸次そうした放射能に照射される機会が多くなってくるということになれば、それだけやはりごく微量でも突然変異遺伝子は増加していく、その組み合わせは幾何級数的な影響を及ぼすこともあり得るわけです。ですから、これまでショウジョウバエその他の研究の結果によれば、きわめて直線的な比例をしておると思いますけれども、人間の場合はそうも言われないという考えもあるようでありますから、やはり十分にこれは放射線医学総合研究所あたりで科学的な検討を遂げられて、すみやかにそういう措置をしていただきたい。二年から三年先でもよかろうというような、のんびりした考え方ではなく、ちゃんと態勢を整えるように、長官に一つ希望いたしまして、私の質問を終わります。
  55. 村瀬宣親

    村瀬委員長 他に御質疑はございませんか。——別に御質疑もないようでありますから本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  56. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより討論に入る順序でありますが、別段討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  本案は原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十六分散会