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1960-03-08 第34回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月八日(火曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 村瀬 宣親君    理事 西村 英一君 理事 保科善四郎君    理事 岡  良一君 理事 北條 秀一君       秋田 大助君    天野 公義君       小平 久雄君    橋本 正之君       石野 久男君    大原  亨君       岡本 隆一君    松前 重義君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         科学技術政務次         官       横山 フク君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君         大蔵政務次官  奧村又十郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局アイソト         ープ課長)   鈴木 嘉一君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局放射線安         全課長)    亘理 信一君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局原子力開         発機関監理官) 武安 義光君         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより会議を開きます。  日本木原子力研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する御質疑はございませんか。——他に御質疑もないようでありますから、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  3. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより討論に入る順序でありますが、別段討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、本案原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  5. 村瀬宣親

    村瀬委員長 本案につきまして、岡良一君より附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  提出者よりその趣旨説明を求めます。岡良一君。
  6. 岡良一

    岡委員 まず、決議案の案文を朗読いたします。    日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、日本原子力研究所運営に関し、研究者処遇利用者利便等について、特殊法人たるの実を発揮しうるよう指導するとともに、万一の場合を考慮してその施設周辺における放射能障害防止及び災害補償等につき、速かに適切なる措置を講ずべきである。   右決議する。   昭和三十五年三月八日 以上でございます。  簡単にその趣旨説明申し上げます。  日本原子力研究所は、昭和三十一年に、予算約七億五千万円程度をもって発足いたしました。私どもは、発足の当初から、この研究所日本における原子力研究開発中核体であることを強く要望し、期待をいたしておったのでございます。私ども期待に沿うて、すでに今日では研究所予算も四十四億をこえ、その固定資産は、おそらく、動力試験炉が設置されますならば百五十億にもなんなんとすることでございましょう。私どもは、この原子力研究所が、さらに国際原子力機関等の援助を得、協力を求めて、アジアにおける原子力研究開発中核体たらしめることを強く念願をいたしておるのでございます。  ただ、しかしながら、今日までの日本原子力研究所運営については、私どもとしては、多々遺憾な点がございました。事実を申し上げましても、昨年まで過去三カ年間引き続きまして、原子力研究所研究者の組合は、毎年スト態勢を大会において決定しておるという状態でございます。日本原子力基本法には、研究自主性研究民主化ということが強くうたわれておりますが、あの研究者諸君意向を聞きますと、まず、研究所内部における研究民主化という点において大いに欠けるものがあるということ、いま一つは、われわれがこの研究所特殊法人として発足せしめましたゆえんは、研究に関する予算並びに研究者処遇についても、他の研究公務員に比較してこれを優越しようという意図があったのでございます。ところが、これらの発足当時のわれわれの意図にもかかわらず、研究自主性、特にまた研究者処遇等については、大蔵省その他の御意向もありまして、どちらかというと、研究公務員の方向に年々レベル・ダウンされておるということが、研究者諸君の大きな不平、不満のもとでありました。私どもは、このようなことがあっては、日本原子力研究所の名誉をそこなうだけではなく、国民の研究所につなぐ大きな期待にも大きくそむくものと存ずるのでございます。その意味合いにおきまして、われわれは、まず研究者処遇について、ぜひとも発足当時における研究者の意欲をかき立てるに十分な処遇確保することを要求いたしますと同時に、先般もこの委員会において、産業界あるいは学術会議諸君参考人として、それぞれ意見を求めたのでございますが、いよいよCP5も運転に近づき、さらにまた、国産原子炉も運転され、動力試験炉も運転されるということになりますと、これに対する利用者利便についても、また格別な計らいを必要と存ずるのでございます。あるいはその利用料の軽減なり、あるいはまた、利用者受け入れ態勢等については、いまだ東海村においては十分な施設がないように聞いておりまするので、このような点についても、十分に利便を取り計らっていただきたいと存じます。  また、御存じのように、東海村の周辺は、ここ四年の間に道路が整備されると同時に、その沿道にはどんどん家が建ち並ぶというような形でございまして、万一、この原子力研究所の炉において事故でもありました場合においては、あの周辺に及ぼすところの災害というものも、心ある者は、あそこを訪れれまする場合に憂慮せざるを得ないのでございます。そういう事情もございまするので、施設周辺における放射能障害防止については、さらに格段措置を講じていただくと同時に、また、そのような場合における第三者に対する災害補償についても、政府といたしましては、今、問題となっておりまするところの原子力災害補償法等の成立について、大蔵当局においても、この際格段誠意を示していただきたい。これがこの附帯決議案趣旨でございます。  以上でございます。
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員長 以上をもって趣旨説明は終わりました。  この際、御発言があればこれを許します。——西村英一君。
  8. 西村英一

    西村(英)委員 ただいま岡委員から提案になりました附帯決議案に対しまして、私は、自民党を代表いたしまして賛成をいたすものでございます。  今回の改正法律案は、理事の定員を一名増すというだけの法律案でございまするが、私は、日本原子力研究所が、ただいまも御説明がありましたように、非常に大きい金を使っており、また、その着手する業務も非常に多面的になっておるということから申しますると、むしろ、理事一名の増員では少ない、もう少し増したいという気持も私たちはあるくらいでございます。しかし、いろいろな都合で、今回は理事一名の増員にとどめたのでございます。この附帯決議案に盛られましたことは、それ自身と直接の関係はございませんが、何と申しましても、原子力研究所は、日本原子力平和利用指導的立場にあるところでございまするし、また、科学技術振興上から言いましても、その中心的存在であるのでございます。従いまして、この研究所運営はもちろんのこと、そこに勤められる研究者の問題にいたしましても、また、これだけ莫大な金をかけました施設利用の面につきましても、一つ特段注意政府として払っていただきたいというのでございます。従いまして、この決議案に私は賛成をいたすものでございます。  さらに、後段の周辺土地の整備の問題、これも政府はいろいろ考えておるようでございまするが、やはり原子力というものは特殊な事業でございまするから、特別な考慮を払って、施設された土地に対しまして十分の注意を払ってもらいたい。  さらには、特殊な事業でございまするために、一般の大象に対しまする万が一の災害につきましても、これは国家として考えてもらわなければならぬ、これなくしては、原子力平和利用の健全な発達はできない、かように考えておりますために、本決議案賛成をいたすものでございます。
  9. 村瀬宣親

  10. 北條秀一

    北條委員 私は、ただいま岡委員によって説明されました附帯決議案に衷心から賛成をするものであります。  民主社会党は、原子力産業開発は今世紀の非常に重要問題であり、われわれも、またそれに全力を傾倒すべきであるという態度を持ち、さらにまた、原子力産業開発国家の力で——簡単に言いますと、国営でもってやるべきであるというふうな基本的な態度を持っておるわけであります。しかるに、今日まで、原子力研究所が設置されましてからすでに四年の年月を経ておるわけでありますが、この間におきます政府の本研究所に関します諸般の措置を見ておりますと、きわめて不十分だと考えるのであります。ことに、最も問題になりますのは、一つは、これは日本人の悪い癖かもしれませんが、こういった新しい産業、新しい科学の分野が開けますと、われもわれもと、それにとっついていくわけでありまして、しかも、原子力というふうな非常に大きなエネルギーを持っておるものは、他面、大きな危険性を持っておることも、本附帯決議案に出ておる通りであります。従って、原子力研究及びその平和利用という仕事が、この附帯決議案にも書いてありますように、相当に放射能障害なり、あるいは災害というものを伴うものでありますから、それらに対しますところの安全性確保ということが、今後問題になっていくことは当然なことでございます。  今朝の新聞を見てみますと、日本損害保険協会では原子力災害保険を考えておるというふうなことになって、民間においても、早くもそういった態勢をとっておるようなわけであります。しかるに、今日、政府措置されております点は、そういった災害防止対策というものについて何ら権威ある措置がとられていないのではないか。先日、中曽根大臣から、現行、欧米のそういった災害補償について、あるいは災害対策についての研究をしておるので、いずれその研究成果の上がった後に措置したいという、きわめて良心的な発言がありまして、私ども、また期するところがあるわけでございますが、そういう点を十分考えて、今後処置をしていかなければならぬと考えるのであります。従いまして、こういった問題につきましては、党派のいかんを問わず、政府もわれわれも一体になって、今後最善の措置をとるべきであると考えておりますので、以上のことを申し上げまして、本決議案賛成の意を表する次第であります。
  11. 村瀬宣親

    村瀬委員長 他に御発言がなければ、これより採決を行ないます。  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、本案附帯決議を付することに決しました。  ただいまの附帯決議に対し、政府の御所見があれば、この際、これを許します。中曽根国務大臣
  13. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を体しまして、誠心誠意、実現に努力するつもりでございます。特に原子力研究所研究者処遇改善利用者利便等につきましては、数年来、関係各位の御心配をわずらわしまして非常に恐縮に存じておるところでございました。今回の予算におきましては、ある程度の財源の確保ができまして、やや御期待に沿うことができると思いますが、それでもまだ十分とは参っておりません。特に研究者処遇改善につきましては、今後も努力するつもりでございます。  なおまた、施設周辺における放射能障害防止及び災害補償等につきましては、目下法案を至急整備すべく努力しておる最中でございます。特に災害補償の問題は、急を要する問題でございまして、関係各省と鋭意折衝いたしておりまして、全力を傾倒しておる最中でございます。なるたけ早期に法案を整備いたしまして、今国会提出して御審議をわずらわすべく努力をいたしております。関係各省の中にはいろいろな議論もございますが、最近におきましては、大体認識の統一を得つつあるという状況でございましてもうしばらくの努力で、あるいは見通しがつくのではないかという状況に立ち至っております。ぜひとも今国会提出して御審議をわずらわすべく、努力を傾注する所存でございます。どうもありがとうございました。
  14. 村瀬宣親

  15. 奧村又十郎

    ○奧村政府委員 大蔵大臣かわりまして、ただいま決議になりました日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議に関してごあいさつを申し上げます。  附帯決議にありますところの原子力研究所運営についての研究者処遇利用者利便等についての予算措置につきましては、ただいま中曽根大臣からお話がありましたように、ただいま御審議中の予算案の中にもできるだけの計上はいたしたつもりでありますが、今後とも、なお附帯決議趣旨に沿うように努力いたすつもりであります。  なお、この放射能障害防止及びその災害補償という問題でありますが、災害補償は、原子力災害補償法というべき法律案を提案成立させるということで、ただいま政府部内でよりより検討中であります。大蔵省内に関連することにつきまして私も相談にあずかっておりますので、できるだけ早く大蔵省として結論を出して、ただいま大臣お話のように、すみやかに提案成立するように努力いたしたいと思います。しかし、こう申してはまことに恐縮ですが、原子力災害というようなことが起こったら、これは補償法補償できる力というものは限りがあるので、まずもって、災害防止ということが大事であろう、それは中曽根大臣の御配慮に特に期待するところでありまして、両々相待ちまして、附帯決議の御趣旨に沿うように努力いたします。
  16. 村瀬宣親

    村瀬委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止
  17. 村瀬宣親

    村瀬委員長 速記を始めて下さい。
  18. 奧村又十郎

    ○奧村政府委員 ただいま、私が「大蔵大臣かわりあいさつ」と申しましたことを取り消しまして、「大蔵大臣かわりに私の所信を申し上げます」と訂正いたしたいと存じます。
  19. 村瀬宣親

    村瀬委員長 ただいまの議決に伴う委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  21. 村瀬宣親

    村瀬委員長 引き続き科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、この際、これを許します。岡良一君。
  22. 岡良一

    岡委員 今朝の新聞を拝見いたしましたところ、いよいよ日本原子力発電株式会社安川社長英国原子力公社の総裁との間に、いわゆる燃料購入に関する基本的な仮契約が終結をしたと伝えられております。この委員会においてもしばしば政府注意を喚起しておったのでございますが、御存じのように、あの燃料は、閣議において、すでに繰り返し、これを国有にする方針であるという決定がされておりますので、日本原子力発電株式会社安川社長に対して、政府としては授権等についての手続をされたのであるか、まず、その点をお伺いいたします。
  23. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今朝の新聞に出ておりました英原子力公社安川原電社長との話し合いは、いわゆるヘッド・オブ・コントラクトという内容でございまして、これは正式の契約ではないのであります。ヘッド・オブ・コントラクトの性格につきましていろいろ原子力委員会でも検討いたしました結果、これは正式契約ではない、正式契約を行なう前の段階において、大体契約方針といったようなものについて打ち合わせておく、そういう内容でございますので、原子力委員会並びに閣議了解の従来の方針を堅持したまま、へッド・オブコントラクトを今回締結することを認めたのであります。原電からも伺いの書が出ておりまして、それを検討いたしました結果、差しつかえないという返事を公文書をもって答えました。それによりまして安川社長ヘッド・オブ・コントラクトを締結したものでございます。
  24. 岡良一

    岡委員 私も、このヘッド・オブ・コントラクトというものの意味がよくわからないのでございますが、それでは、今般のいわゆる両者の間に妥結を見た契約内容として、まず第一点は、三年後に予想される本契約の基本的な線が両者の間に確認をされたということなのかどうか。  いま一つは、今度の交渉において、特に燃料数量あるいはその形態と申しますか、成型あるいはその価格等において、一応事前に取りきめが決定したのでございますか。
  25. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 内容につきましては、原子力局長から説明させますが、このヘッド・オブ・コントラクトの一番大きな点は、この契約の主体になるものはいつでも変更し得る、そういう条項がございます。また、契約内容につきましても、いろいろな変更の条項等がございまして、いつでも弾力的に運用し得る態勢になっております。具体的なポイントにつきましては、原子力局長から御説明申し上げます。
  26. 佐々木義武

    佐々木政府委員 ヘッド・オブ・コントラクト内容で、ただいま御指摘がありましたような、いわゆる売買契約と称する民法上の契約に必ず必要であ条項と申しますか、ただいま御指摘になりました数量あるいは価格等がどういう内容になっているか、あるいはそのヘッド・オブ・コントラクトを履行しなかった場合にはどういうふうな扱いになるのかといったような、本来の契約にぜひともなければならない条項は非常にぼんやりしておりまして、たとえば、価格は幾らであるとか、あるいは数量も何トンというふうに明示しておりません。それから、このヘッド・オブ・コントラクト両者が違えた場合には、そのための罰則と申しますか、民事責任がどうなるといったようなこと、あるいはその契約は、ヘッド・オブ・コントラクトを結びましても、今後三年間、本契約を結ぶ間にさらに交渉を進めまして、そして細部の事項は、検討を進めながら、変え得るものはそのときに変えるというふうな、非常に弾力性のあるものであります。  もう一つは、いわゆる契約外と思われるものは、この両当事者が片一方の当事者を変え得るという点で、その場合には、今のヘッド・オブ・コントラクトの部分に関しましては、大体継承し得るという建前ではありますけれども、両当事者が変わってもよろしい。もちろん、これはこの前もお話がありましたように、現在そのまま本契約ということであれば、衆議院の科学技術委員会におきまして、公社というところから、本契約なりやいなやという点については非常に重大な問題となりますので、その点を吟味いたしました結果、ただいま申し上げましたような条項でございますので、これは契約とは言えない。いわゆる売買契約と称するものではなくて、従来の交渉の一段階をここで画して、交渉の過程を現在の段階確認し合い、その限りにおきましては、確認を主たる条項と申しまするか、柱のようなものができてきますけれども大臣が先ほどお話し申し上げましたように、これはいわゆる売買契約でないということで、政府といたしましては、とりあえずの処置として差しつかえないのじゃなかろうかというふうに考えます。
  27. 岡良一

    岡委員 いろいろ問題が含まれているように感じますので、そのヘッド・オブ・コントラクト内容を、具体的に資料として一つ委員会に御提出をお願いいたします。
  28. 佐々木義武

    佐々木(義)政府委員 もちろん資料を出すことは差しつかえないのでございますが、ただ、内容におそらく秘密的な色彩の問題もあろうかと思いますので、少し原電か、あるいは向こう公社側とも御相談の上、差しつかえない分だけお出しいたしたいと思います。それでよろしゅうございますか。
  29. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ヘッド・オブ・コントラクトを結ぶ前に、委員会公社の者に来てもらいまして、その内容もいろいろ説明して、公社側も了解いたしまして、原子力委員会としては原電返事を出したものでございます。なお、内容につきましては、向こうとの契約でございますので、一方的にその契約全文を出すことがはたしてできるかどうか、今のところ、私確信ございませんが、できるだけ御期待に沿うようにいたしたいと思います。少なくとも、要綱のようなものは当委員会提出することができると思いますので、主要な点を盛った要綱は、できるだけすみやかに御提出申し上げます。
  30. 岡良一

    岡委員 とにかく、今、佐々木局長の御説明によれば、ヘッド・オブ・コントラクト内容には、いわゆる商業上の機密と称すべきような技術的な条項はないようでございまするし、また、英国も、御存じのように、イタリア、日本のあと、海外からの動力炉の発注もとだえてしまっておる現状でございます。そういう事情からも、特にこれを秘密にしなければならないという理由は非常に少ないと思いますので、できるだけありていなヘッド・オブ・コントラクト内容資料として御提出を願いたい、こう思います。
  31. 村瀬宣親

  32. 西村英一

    西村委員 ただいまも決議案でちょっと申しましたように、原子力開発に対しては、この災害補償の問題が非常に大きい問題であるから、科学技術庁といたしましても、いろいろその手続をとりまして、一つの案を持って大蔵省といろいろ事務折衝をいたしておるということを聞き及んでおります。その問題は、大蔵省としてどういうふうな考え方をしておるのだろうか。ただいまも大蔵政務次官が申しましたのには、補償のこともさることながら、安全を第一に考えてもらいたいという御発言がありまして、この安全につきましては、日本の今持っている科学技術士の知識を動員して考えるのはもちろんでございますが、しかし、これは何と申しましても人事でございまするので、この原子力に限っては、非常に不安定なものもあるわけであります。従いまして、普通一般の尺度からは考えられない多くの問題がこの補償の問題にもあるのでございます。私は、こう申し上げてははなはだ大蔵省に失礼でありますが、大蔵省といたしましては、やはり一般的レベルでものを一応考えてみるというふうな考え方ではないかと思うのです。そこで、大蔵省といたしまして、事務的折衝でどういうことが問題になっており、また、どういうふうな考え方をしておるということを、一つ担当官からお聞きいたしたいと思います。
  33. 大村筆雄

    大村説明員 原子炉災害補償法案につきましては、現在、私どもの方の法規課におきまして、科学技術庁から法案内容等につきまして御相談にあずかっておるところでございます。その内容につきましては、こまかい点につきまして、若干まだ意見に不一致の点がございますが、考え方の骨子といたしましては、五千億円までは民営保険措置して、五十億円をこえる場合、あるいは民営保険でカバーできない場合におきましては、どういう措置をとっていくか、その場合に、国が事業者の責任についてどこまでカバーしていくかという点につきまして、なおお互いに若干見解の一致しない点があるのでございます。
  34. 西村英一

    西村委員 これは法案を、さいぜんの決議案にもありましたように、なるべく早く出してもらいたいということでございまするが、従来の考え方にとらわれずに、今、折衝中でございましょうから、大蔵省としても特段の努力をしてもらいたいと思うのでございます。  もう一つお聞きしたいのは、政府が直接原子力事業をやっておるという場合と、民間がやっておる場合についての政府の救済の考え方はどういうふうに思われますか。政府がやっている場合と民間がやっている場合について、どういうふうな大衆に対する補償の仕方をしますか。
  35. 大村筆雄

    大村説明員 政府が直接やっている場合とおっしゃいますのは、たとえば、政府が直接原子炉なら原子炉を用いて事業をやっているという場合の御質問かと存じますが、現在、政府が直接やっている場合はございません。たとえば、原子力研究所にいたしましても、これは政府、民間の共同出資にかかる特殊法人でございますので、民間と同じというふうに考えてよろしいかと存じます。
  36. 西村英一

    西村委員 私の質問が、何かわかりにくいようですが、政府がやっておる場合は、大蔵省は、やはりこれは政府がやっておることだから全面的に政府が責任を持たなければならぬ。そういう場合に、法律的には何で救うかと申しますと、国家賠償法というようなことでやるのかもしれませんが、大蔵省がそのことを考える場合に、民間のものについてはなるべくタッチしまい、あるいはそういうような考え方が起こりやせぬかしらと思うのです。そこで、私が言いたいのは、この原子力の問題に限って、これは一般のものとは非常に違うのだという認識を——科学技術庁の方は、その事業に日ごろ接触しておるからそういう認識ができるけれども大蔵省としては、やはり、ほかのものはどうかと、こういうような考え方が出るのは当然でございまするが、その辺について、一つ原子力というものは特別なものであるのだ、あるいはアンノーン・ファクターが非常に多いものであるから、当分は、民間であろうと国家事業であろうと、政府が大衆に対して、被害が起こった場合には御迷惑をかけぬというこの根本思想を一つ考え直してもらいたい。これは大いに考えておられることだろうと思いますが、そういうことを申し上げたいのであります。これは質問よりは意見になっておそれ入りますが、何かその辺につきまして、大蔵省は、いや、そうじゃないのだというようなことがございますれば、お聞きしたいと思います。
  37. 大村筆雄

    大村説明員 今、御質問のございましたように、原子力産業と申しますのは、非常に新しい、アンノーン・ファクターの多い産業でございますので、それに対する特別な損害発生の場合の対策、これにつきましては、外国の立法例等にかんがみましても、特別な配慮は払いつつあるという状況でございます。従いまして、そういう見地に立ちまして、大蔵省といたしましても検討いたしてございますが、ただ、最近、時おり新聞で見ますように、火薬工場の爆発事件とか、あるいは高圧ガス工場爆発事件とか、類似の災害形態もございます。そういう類似のものと、どこで線を引いていくかという問題もございますので、なおしばらく慎重に検討させていただきたい、かように考えております。
  38. 西村英一

    西村(英)委員 これでよろしゅうございます。
  39. 村瀬宣親

    村瀬委員長 大原亨君。
  40. 大原亨

    ○大原委員 先般、中曽根国務大臣に社会労働委員会に御出席いただきまして、放射線の影響研究の問題につきましていろいろ御質問いたしたのですが、あとで会議録をよく調査いたしてみますと、なかなか中曽根国務大臣の答弁は明快なのですが、上手過ぎて、中身がよくわからぬ点もございましたし、あるいは、その後のいろいろな問題等も考えまして、きょうは、文部省、厚生省にも御出席いただき、大蔵省関係官にも一つ聞いていただきまして、放射線の影響、特に、今まで広島や長崎における原爆の被爆者、あるいはビキニの実験の結果による被爆者、あるいは、最近はサハラでフランスが原爆受験をいたしましたけれども、そのずっと以前まで各国がやりましたそういう実験の結果、そういう影響、こういう諸問題につきまして、日本政府は、国としてどういうふうな体制と責任を持ってそういう研究を進めておるのか、こういう点につきまして、時間も十分じゃございませんけれども一つ、きょうは、最初そういう諸問題につきまして、ここで審議いたしまして、そして、その点を明らかにいたしたいと思うのです。特に、政府におきましても、今回、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部改正案を出されました。そういうことから考えてみまして、また、その法案の中には、私どもが考えておりました。また、地元においては、与党の諸君を含めまして熱望いたしておりました放射線の影響、いわゆる原子爆弾の被害の研究をいたしますそういう総合的な研究所、みんなが求めておる研究所が欠けておる、こういう点もございまして、これは非常に大きな、致命的な欠陥であるというふうにいわれておる点から見ましても、一体、政府はどこで、どういう体制でそういう研究をするのか、そういう問題につきまして、一つこれから逐次御質問申し上げたいと思うのです。  その前に、私の方で申し上げたい点は、先般の社会労働委員会におきましても御質問申しあげましたけれども、放射能の影響というものが、時間的に考えてみましても、あるいは医学的、生理的に考えてみましても、これははかり知れない大きな影響を人体に及ぼす。時間的に見てもそうだ。たとえば、遺伝という問題を含めてもそうなんだ。それから、被害の実相から考えてみましても、被爆当時、大体その瞬間に死んだ人も含めまして、広島、長崎で原爆によりまして約三十万人の人が死んでおります。その後、大体その数と同じような三十万人の人々が、当時二発の原子爆弾によりまして、人体に影響があって、いろいろな不安を持って生活いたしておるということも、統計上出ておるわけです。そういうふうな非常に大きな被害につきましていまだその正体がはっきりいたしていない。人体にどういう影響を及ぼすかということがはっきりいたしていない。こういうことも、権威者である日赤中央病院長の都築博士初め、そういう人々の一致した意見であります。だんだんとわかりかけておりますけれども、一致した意見、まあ、そういう結論は出ていないわけです。それから、国の責任という面から考えてみましても、先般も藤山外務大臣に御出席をいただきまして、これは平時の実験はともかくといたしまして、広島、長崎において戦争中アメリカが原爆を投下いたしたことは、へーグの陸戦法規その他戦時国際法規に違反しておる。しかし、サンフランシスコ条約第十九条で、日本はアメリカに対して賠償を放棄いたしておるのですから——この戦時災害の賠償という点からいいますと、これは本質的には、人道上の立場から陸戦法規、国際法規はあるのでありますから、被爆者の立場からいえば、被爆者を人道的な立場で保護するという、そういう加害国に対する責任を明らかにしたものですけれども、サンフランシスコ条約で、賠償を放棄いたしました結果、これは日本の国がそういう賠償については肩がわりをしておるのだ、そういう人道上の影響に対しましては、国が責任を持って処理するんだ、私は、国際法上の精神からいいましても、そういう建前であると思う。これは藤山外務大臣も、いろいろ質疑の中におきまして、最終的、結論的にはそのことを認めました。そういう点から考えてみましても、国といたしましては、現在、なお生きておる三十万人、これは原爆被爆の影響による精神病患者、ノイローゼ、そういう人々が非常に多いのですけれども、この原因がわかっていないというところに、私は一番大きな問題があると思う。治療法についても、責任あるそういう方法が、今日なお治療医学や臨床医学やその他の面においてなされていないという点に問題があると思う。そういうふうで、人道上の立場から見ましても、国家の責任という、法律的な、あるいは国際法上の精神からいいましても、私は、これは、国といたしましては責任を持って取り上げて、この問題を処置すべきである、こういうふうに前提といたしまして考えるわけです。そういう点から御質問申し上げたいのでございますけれども、まず、その点につきまして、科学技術庁の長官、あるいは国務大臣といたしまして、中曽根国務大臣の方から総括的に御所信をいただきまして、それから逐次質問に入りたいと思います。
  41. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原爆病関係の問題については、私は、国内的には二つの問題があるように思います。一つは、過般の広島、長崎で災難を受けられた方々に対する救済、医療の問題であります。もう一つは、そういう放射線の防護をどういうふうにしていくか、国際的に、国内的に、どういうふうに取り扱っていくかということだろうと思います。それで、原爆病におかかりになった方々の対策は、これは主務は厚生省であります。それから、その放射線関係からくるいろいろな病理そのほかの研究調査は、科学技術庁を初め各省の研究所がやっておりますが、大体科学技術庁の麾下にあります放射線医学総合研究所が主としてこれに当たるというふうに解釈して差しつかえないと思います。さきの原爆被害という関係からの対策に関する調査研究連絡協議会は厚生省に設けられておりまして、その観点からは、厚生省が主務になって各省の連絡をとっておるわけであります。それから放射線や病理その他の研究につきましては、放射線審議会等が審議会としてもございまして、これが科学技術庁と連絡をとってやっておる、こういう状況でございます。いずれにせよ、この二つの問題は日本の特殊な大問題でありますので、政府といたしましても力を尽くしまして、国民の皆様方に御心配をかけないように努力をして参る所存でございます。
  42. 大原亨

    ○大原委員 ただいま概括的な御答弁がありましたが、私は、こういうふうに思うのです。放射能の障害を防止するための法律がここにはあるのですけれども、たとえば、研究の過程において放射能のいろいろな影響が出てくる場合もありますし、そういう場合には、放射能の影響、いわゆる治療の研究もあわせてされると思うのです。そういうふうに考えてみますと、奥村次官は先ほど、そういう災害が起きないようにするのが一番大切だ、こう言われた。これは原水爆の爆弾としての戦時利用の禁止とか、あるいは平和利用におけるそういう諸問題があると思いますけれども、しかし、現在までありました放射線の影響、被害の研究と、実際に今言われました科学技術庁の稲毛における放射線医学総合研究所、そういう分野等の研究、こういうものは、そうぴしっと分けることはできぬと思うのです。放射能の影響を研究する際に、この場合はこう、この場合はこうと、実際上は分けることはできぬのではないか。しかし、そういう点から見てみまして、たとえば、政府の機関において、端的に質問いたしますと、広島、長崎の放射線の影響、原爆の被害の研究を専門的に、責任を持ってやっているのは一体どこの機関なんですか、こういうふうに私は端的に質問してみたい。これは、次の質問でお答え願うことを言っておきますと、文部省においても、学術研究の面から、あるいは医大等の研究の面から、この問題が一つあるのじゃないか、あるいは公衆衛生の面から、予防研究その他の問題を含めまして公衆衛生上の見地から、厚生省にもあるのじゃないか、もちろん、科学技術庁関係では稲毛の放射線医学総合研究所があると思うのですけれども、そういう二段階に分けて質問いたしますと、各省においては、こういう問題をどう取り扱っているか。つまり、広島、長崎の影響についてだれがどこで、たとえば、どういうふうな人が専門的にやっているのか、こういう点を一つ明らかにしたいと思うのです。
  43. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 端的に、簡単に申し上げますと、患者対策は、つまり、病院的色彩のある患者対策は、厚生省だろうと思います。それから、学理とか研究という面になりますと、これは関係各省がおのおのの分野からやはりやっておる。たとえば、文部省系統は、大学においてそちらの面からの研究、あるいは厚生省でも、環境衛生という面からやっておる部分もございますし、あるいは科学技術庁では放射線という面からやっている。ある一つのところだけで、すっきり割り切ってやるというわけに参らない学問の領域でございますから、端的に申し上げますれば、患者対策は厚生省、それから、それ以外の研究は各省が分担してやっている、こういうことだろうと思います。
  44. 大原亨

    ○大原委員 たとえば病院関係、治療関係は厚生省だ、こう言われるのですが、そこで大臣に聞いてもらいたい。実際において、現地のいろいろな人々の、今日までいろいろ政府のやった施策、研究につきましての批判というか、意見というものは、こういうことなんです。原爆症に対しましては応急治療があるでしょう。いろいろな病気が発生いたしました際の、たとえば白血病とか白内障とか、ある場合には原爆ぶらぶら病といって、原因がわからない、こういうのもありますけれども、いろいろな病気に対しては応急療法もあるでしょう。それから原爆症の、主として放射能の影響を含めまして、熱風とか、そういう問題は度外視いたしましても、そういう問題を含めまして、いわゆる根治的な、原爆症の影響の本質をきわめて、そして、それをどういうふうに治療医学の上において活用するかという面もあるでしょう。しかし、これは応急的なものと根治的なものと非常に密接に関連しておるわけです。今日までの研究というのは、白血病というのが原爆症に関係があるとかないとかいう抽象論、そういう問題がしばしば学術論争になっているわけです。この問題については、だんだんと帰趨がはっきりいたそうとしておりますけれども、そういうふうに考えてみますと、現地の実際に臨んでおる人は、今日まで広島や長崎その他全国的に見てもあるでしょうが、治療の過程において、いろいろと応急療法や根治療法についてお医者さんその他学者が意見を持っておる。持っておるけれども、国としては、全体としてこれを集約いたしまして、応急療法としてはこう、根治療法としてはこうと、こういう問題について研究しているところもないし、研究が前進しているという態勢もないのじゃないか。そういう現場の要求に即し、患者の要求に即したような研究機関が要るのじゃないか。そのことは、昨年の十一月にも、いろいろと坂田委員発言をめぐって問題となっておりますけれども平和利用における放射能の影響、安全という問題からも、やはりこれは大きな問題だと思うのですが、そういうことはないわけです。たとえば、稲毛における放射線の医学総合研究所にいたしましても、やはり、そういう現地の患者の要求や、臨床医学やその他の研究を集約するような仕組みになっていない。どうも根治療法が学問的にもはっきりいたしていない。そういう現状において、私はしろうとですから、そういう用語その他については不完全だと思いますけれども、そういうことは、やはり現実離れしているのじゃないか。実際に苦しんでいる人を医者が扱ってみて、応急的な治療を含めて根治的な治療をどこが責任を持ってやってくれるのだろうか。こういう問題は、世界じゅうでただ一国だけ、日本が被爆した、そういう経験を持っているわけだけれども、その基本的な研究と治療研究、こういうものは貴重な人類の遺産になると思う。人類の遺産あるいは平和利用の大きな問題につながると思う。そういうことをやっているところがない。私どもは、治療法の問題に関連いたしまして、総合的な、そういう現地の要求に即した、患者の要求に即した研究所がほしいと、こう思っておった。治療をしながら研究をしていく、治療と研究が両々相待って、そして、そういう貴重な私どもの体験なり、そういう経験というものを科学的に集約して、国が責任を持ってこれを処理すべきじゃないか、こういうように思っておるのだけれども、そういうものは一体どこだろう。私は、その点は、中曽根大臣は、簡単に、病院は厚生省、学術研究関係各省、特に科学技術庁、こういうふうなことを言われましたけれども、それでは済まぬのじゃないか、こういうふうに思います。厚生省から一つ答弁して下さい。
  45. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの、主として原爆の被爆者の治療の研究の問題について申し上げます。独立の研究所がないというお話でございますが、確かに、現在、政府直轄の原爆被爆者の治療を目的とする研究所はございません。しかしながら、現在までこれに関する研究に力を入れていないというわけではないのでございまして、被爆直後から、この原爆被爆者に対する研究のグループを厚生省の下に置きまして、原爆被害者対策に関する調査研究連絡協議会というものがずっとありまして、当初の間は、広島部会、長崎部会という部会編成でございました。これは、それぞれ都築博士初め権威者を網羅しておりますが、これによりまして、ずっと治療を通じて研究を続けて参りました。すでに大原委員も御承知の通り、これに関する眼科並びに外科的方面等につきましては、将来にわたるこういう放射能被害の治療法全部は網羅しておりませんが、当時の原爆被爆者のその方面の治療法の指針というものがすでに発表されまして、これに基づいて治療を行なって、かなりよい成績を——現に全国的に、冬医療機関がこれに基づいて行なっておるわけでございます。そのほかに、この原爆の治療研究につきましては新たな組織を設けて、人を新たに集めてやるということも、あるいは将来あるかもわかりませんが、現実には、この十数年間、それぞれの医療機関で、散在いたしました患者を多数扱われまして、非常に経験豊富な方々が多いのでございます。この方々にそれぞれの研究をお続け願う、ただし、その場合に、ダブったり、あるいは不能率になってはいけませんので、今申し上げました調査研究連絡協議会を調整連絡機関といたしましてテーマ等もきめる研究費につきましては、国立大学あるいは大学関係におきましては、今のような分担テーマに基づきまして、科学研究費が文部省からそれぞれ交付されるという形で、三十四年の実績を見ましても、この治療関係の一番中心になっておりますのは、塩田博士を中心とします原水爆被害に関する総括的研究という班がございまして、多数の班員が入っております。こういうようなやり方を中心に、幾つかの研究テーマごとのグループに科学研究費が交付されておる、こういう形になっております。それから、行政に直接非常に近いものにつきましては、厚生省の方で、原爆者の調査研究費というものを年々とりまして、これがまた厚生省直轄といたし示して、毎日治療に当たっておる研究者にこれを分配いたしまして、特定テーマを研究する、こういう形になっております。  それから厚生科学研究費、これは毎年総ワクでとりまして、その年の五月、六月に研究テーマをきめて分配いたします。三十五年度予算については、まだどういうふうになるということはきまっておりませんが、たとえば三十四年度のことを申し上げますと、この方面では被爆者の死因の調査研究をする、これを続行しております。そのほかに、予研の支所が広島と長崎に置かれておりますが、その支所の国立機関としての直轄研究費というものも予算に組まれておりまして、ここで大体四テーマの——これはまたここでなければいかぬテーマの研究を続行しておる、こういう形になっておりまして、実際には、長い経験を持ったところが、それぞれ向き向きの研究費を分配されましてやっておる、それを常に連絡調整をするために協議会に集めまして、そこで十分意見を交換し、また次の計画の調整をする、こういうふうにいたしております。そこで発表されました重要な研究テーマについては、御承知のように、昨年もいたしまして、りっぱな本になっておりますが、かような形でこれを刊行いたしまして、さらに、そこに参加できなかった全国の被爆者を扱う治療機関にこれを配付いたしまして、新しい知識に基づいて治療を続けてもらう、こういう形になっております。従いまして、現在のところでは、今のように研究は積極的にやる、ただ、その形を、特定の人をあるところへ集めてやるよりも、現在までのところ、十分知識を総合して連絡調整をしてやり、それに対する研究費を、それぞれの向き向きに応じて、使いやすい研究費を多額に増額するようにはかっていくことが適当ではないかということで、厚生省としては進めておるわけであります
  46. 大原亨

    ○大原委員 都築博士が、これは昨年ですが、ある新聞に書いておられるのです。日本では放射線の影響の事実を客観的事案として研究しておる、そういう研究に専門に携わっておる人は一人もいない、自分にしたところで非常に忙しい仕事を他にかかえながらやっておるのだ、それに、文部省からの研究費もわずかだと書いておられる。研究費もだんだんふやすと言われておりますが、たとえば、厚生省にいたしましても、昨年は委託研究費を大蔵省は百万円出しておったが、今度は七十万円に削ったでしょう。だんだん先細りになっておる。ABCCの予研の支所の運営についても意見を持っておりますが、これはあとで申し上げることにいたします。個々には、民間のお医者さん、公立病院の医者、大学病院の医者等、たくさんの患者の中における臨床的な経験を持っておる方があるわけですが、これは専門ではないわけです。それらを集約して機能的に——この問題は最初の経験ですから、研究していくような態勢がないように私は考える。ずいぶんたくさんあげられましたけれども、ないのではないか。  中曽根国務大臣はちょっと時間をお急ぎのようですが、この前の答弁では、稲毛の放射線医学総合研究所は、これは予算といたしましては、放射線の影響を研究する各分野においていろいろ調査をいたしてみますと、一番金額が多いわけです。スタッフも充実しておる。あのときの御答弁によりましても、つまり放射線の影響を研究するのと、放射線による治療を研究するのと、二つがあると言われましたが、私もいろいろ機構を調査してみましたところが、開店休業みたように、開店早々で、まだ何も始まっておらない。非常に不十分であるけれども、とにかくそういう構想が出ておるわけです。そこで、稲毛の放射線医学総合研究所について端的に御質問いたしますと、広島、長崎などに支所を設けたりいたしまして、そうして、尾村局長も言われましたけれども、相当の研究スタッフ等を委嘱し、相当の研究を委嘱されて、そうして各方面の貴重な資料や経験を稲毛の放射線医学総合研究所でまとめて集約をする、そういう端的な提案を申し上げるのです。原爆被爆者の医療法改正案では、研究所というものは与野党とも望んでおった。特に、私どもは絶対に必要であったと思っておったけれども、ばっさりやられてしまった。そういうところから、現在の機構などをいろいろ検討してみますと、ABCCにある予研というものは、日本側に自主性はない。今までの本数年間の研究は一体何のためにやっておったか、私ども追及したいと思うけれども、実際は統計的な研究で、白血病が原爆症であるかどうかという論争ばかりしておる。そういう資料を出して、できるだけ被害のないようなことをやっておる。これは資料をあげればあるのです。私は、絶対にこれは廃止せよということを言っておるのではない。民主的に、要請に即すようにしてやってもらいたいということを、意見としては持っておるのですが、しかし、日本政府の機関としては、これはやはり稲毛の放医研がそういう体制をとって、放射線の影響については、治療とか、あるいは基本的な研究とかいう抽象的に分けないで、広島や長崎の治療経験や貴重な資料を総合的に研究すべきではないか。そのことを科学技術庁長官が進めていただくことが必要だと私は思う。文部省と厚生省がこういう研究について、放医研を作るときにもいろいろ問題があって、科学技術庁の放医研が油あげをさらったということはないけれども、総まとめをするということになったらしい。私は、その当時おりませんでしたが、あとでそういう話をいろいろ聞きました。そういう経過からいってみても、官庁はなかなか事務の分担でやかましくて、文章だけで書いてみますと、現実に合わないという結果が私は出てくると思うのですが、こういう審議等を通じて、大臣がそういうふうに政治的に踏み切っていただく、こういうことも一つの問題じゃないか。そこで、公衆衛生上の見地から、厚生省の研究ともそういう面がぴったり合うようになればいいのじゃないか。私は、大臣が急いでおられるから、逆に結論の方から一つ提案をしておきます。いかがでしょう。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 基礎研究と臨床実験というようなものは不即不離の点もございます。それで、今度放医研に病院部を作りまして、五十ベッドばかり患者さんを収容して、基礎研究、臨床研究ともにやるというところまでことしから始めますが、今お話趣旨にあります広島、長崎に放医研の支所を設けるということは、これは一つのアイデアであるだろうと思います。従いまして、将来ABCC、厚生省等と相談をいたしまして検討いたします。そうして、私の今個人的な感じでは、いずれ放医研が成長していく過程には、あるいはそういうことまで持っていかなければならないだろうという感じがいたしておりますが、具体的には、関係者と相談いたしまして善処いたしたいと思っております。
  48. 大原亨

    ○大原委員 それから、文部省にお尋ねしたいのですが、文部省は、ことし広島、長崎の大学の病院を増設される、こういうことになっておるということを新聞で見るわけです。それを一部の現地の人、特に被爆者関係の人は、原爆病院だ、こういうふうに一部の新聞で宣伝があるわけです。一億円ずつかけてやるわけですが、この出所をいろいろ聞いてみますと、余剰農産物の見返り資金二十三億数千万円の中から一億円ずつ予算の中へ組み入れて文部省のそういう病院の増設費にしたらしいのだが、それは原爆病院というふうに銘打って正真正銘よいものですか、どうですか。
  49. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 お答えいたします。このたびの予算で広島大学及び長崎大学に原子医学関係研究訓練の施設を作ることになったわけでございますが、これは実は、前からのいきさつがございまして、ただいま大原先生のお尋ねの中にもございましたように、余剰農産物協定が締結されました当時から、この両大学では、原爆関係と申しますか、原子医学関係研究治療施設を作りたいということで、いろいろ関係当局に要請をいたしておったところでございます。今回の円資金の使用に関する交換公文でそれが初めて認められたわけでございまして、ただいまお話のございましたように、三十五年度におきまして、両大学に病室または臨床研究室を作るということになったわけでございます。これは、そのまま全部が原爆病院であるかというお尋ねでございますが、確かに表面的には、原子医学の基礎的な研究、あるいは治療方法の研究を推進するということで建物を作るわけでございます。ただ、大学病院は、御承知のように医学者の養成、また基礎的な各種の研究を行なうということになっておりますので、原爆の関係だけの研究をするということにははっきり言い切れないと思いますが、ただ、先ほど来お尋ねのございましたように、両地とも原爆の被害を非常に深刻に受けたところでございますので、地元の要求からいたしましても、そういった面に非常に大きな重点が置かれることになろうと思います。
  50. 大原亨

    ○大原委員 その、原爆病院というのは、設置法その他病院の設置についての規則や運営において、あるいはスタッフについて、そういう一つの目標を持った病院になりますか。広島には被爆者関係のそういう資料や患者が多いから、たまたまそういうことでありましたら、今までの各病院も全部そうです。原爆患者の一部を治療する病院ということになる。大学の病院のあり方は、私の大体の考えでは、やはり大学の研究室と結びついた病院があって、その研究室へ研究が集約され、資料としてまとめられるような態勢の中で、治療医学と本質的な研究というものがくっついているところにあると思うのです。そうすると、これは研究室を作る費用も加わっているのですか、それとも、そういう大学の研究科目あるいは教授——まあ、研究室の問題ですが、そういう問題と結びついた病院の新設なんですか。たまたま広島、長崎に病棟を作るから、これが原爆病院だというようなことを言って宣伝するのであったら、それは羊頭を掲げて狗肉を売るということになるから、はっきり事実を言っていただく方がいい。その現実の上に立って、今の中曽根長官の発言のようなことがあるわけです。宣伝だけでは困りますから、そういう点は事実をお話し願いたい。研究室をそういうものと体系づけた、原爆病院にふさわしいような、名実ともにそういう中身を持っておるものですか、これをお尋ねいたします。
  51. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 この原子関係医学は、御承知のように、診療科目といたしましては内科以下各般にわたっておるわけでございまして、そういう科目の総合的な施設として、この施設運営していくことになろうと思います。ただ、病室と申しますか、ベッドだけであるかということになりますと、これは、病棟のほかに臨床研究室も一部入ってこようと思いますが、しかし、先ほどお答え申し上げましたように、原爆の被守関係の基礎的な研究及び臨床的な研究が一番大きな重点になろうと思っております。
  52. 大原亨

    ○大原委員 それは病院の拡大のための費用でしょう。研究室の新設や、あるいは専任教授、あるいは主任教授ということはないだろうけれども、そういうことを含めての研究施設の充実も含んでいるのですか。
  53. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 病棟でいきますと、原子関係の各科にわたっての治療関係が主になって、それ以外のものは、あきが出たときに入るというような程度のものになろうと思っております。
  54. 大原亨

    ○大原委員 原爆関係の人が入る場合に優先的に扱って、そして、あきがあれば一般の疾病も病棟において扱う、こういうふうになるのですか。
  55. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 大体そういうことになろうと思っております。
  56. 大原亨

    ○大原委員 そういうことでありましたら、これは一つの方法だろうと思うのです。  そこで、私、文部省と厚生省に一つの提案をし、御所見を聞きたいと思うのです。これは大臣がおられたらいいのだけれども、局長ではちょっとむずかしいかもしれない。ABCCの中に予防研究所の支所があって、日本側の方からお医者や職員を出しておることは御承知の通りです。しかし、これは治療とくっついた研究でないために、やはり統計学上の研究になっておって実態に即していない。研究はするけれども、治療はしないという非常に大きな不満もあった。やはり、これは治療の実態に即しながら、統計的にも医学的にも研究の集約をするのが私はいいだろうと思うのです。病院が余剰農産物の見返り資金でできておるということについては、私は論議しない。そういうことが政治的にどうこうということについては言わない。しかし、アメリカが贖罪の意味においてそういう見返り資金の流用を認めたということについては、私は、その趣旨はわかる。しかし、これは外務省にも聞いてみたいけれども、ABCCというのは、研究はすれども治療はしない、広島の患者をロボットにしておる、こういう感情もあるし、実際に被爆者のことを親身に考えておる研究じゃないというふうにだれもが思っておるわけです。これは予防研究所を作った日本側の厚生省にも責任があると私は思う。非常な責任だと思うのです。結局は、予研の支所というのは、アメリカのABCCにおいて調査を進める、そういう一つの、日本人側に対する緩衝地帯だけになっている。日本の予研支所があって、日本人もおるんだというだけの、ABCCあたりの宣伝になっておる。そして日本人は主体性がないわけです。研究の結果は、アメリカの軍事機密になっていて、原爆症の問題が政治的に扱われているのだという意見も一部にはあるようだけれども、私は、そういう点で今までいろいろ追及した結果については結論を持っていない。だから、これは、民主的に、平和的にそういう研究の結果が利用されて、人類のために、治療研究や放射線の影響の研究が役立てばいいと思う。そういうことをさすべきだと思う。そういう見地からいうと、この際大学に病棟を設けたのであるならば、ABCCというのは、予研の支所で、人件費もそういうふうにつぎ込んでおるということは——専門的にやっている人といえば、そういう人だけなんだけれども、しかし、それは機能を発揮してないという点からいうと、たとえば、大学に研究施設その他を寄付するなり、あるいはそれと密接な関係を持てるようにして、日本人側が主体性を持った、また、現実の患者の要求に沿うような、そういう実質的な、総合的な研究施設にする。できれば、文部省関係に寄付する、あるいは厚生省関係に寄付する、あるいはそれに予算をつぎ足して、原爆病院その他を含んだ病院の研究費等をつける、そういう点でこちら側の主体性を明確にするような改善の方法をとることはできぬものか。ABCCは現状のままではいかぬと思いますが、それについて、厚生省の方の御意見をまずお聞きしたい。
  57. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ABCCの問題でございますが、これは終戦直後、原爆の影響、ことに、そのうちの公衆衛生上の影響に関する研究ということで、アメリカの施設としてABCCができまして、その際、日本側としても、この影響に関する研究も必要であるということで、日本の予研の支所として、広島と長崎に、そのABCCと密接な、一体のような形で研究が進められる機関を設置されまして、現在、両方合わせて職員四十名を置いて進めております。確かに、御意見の通り、これは治療とか、あるいは治療に関する研究はいたしておりません。というのは、原爆の被爆者に対する研究は、影響がどうあったかという研究、あるいは、今後の遺伝その他の関係研究、さらに、治療そのもの、あるいは治療法の研究というように、幾つかに分類されておりますが、そのうちの一部をやるという形で、現在続行中でございます。これは占領終了後、二十七年に行政協定が結ばれたときに、外務省と大使館の間で覚書が交換されまして、広島市当局も、この継続趣旨賛成され、土地等は無償で提供されて、その上に施設がそのまま継続してこの研究を続行中だ、こういう形になっております。  この研究テーマについてはいろいろと変遷がございましたが、現在、一番重点を置いて続行中のものは四項目ございます。これを申し上げますと、今の被爆に関する調査研究のうち、どういう点を研究いたしておるかおわかりと思いますが、一つは、影響の遺伝学的な調査、第二は、小児の発育成長にいかなる影響があるかの調査、三番目が、成人に対しましていかなる病気をその後発病させ、ないしは、それによって死亡したかというその影響の調査、四番目が、これの影響のための死亡者を中心とした病理解剖学的な調査、この四項目を主としてやっております。この点は、今のような日本側の支所とアメリカのABCCとの共同研究における被爆調査の中でも、この部分が一番中心をなしております。この成績は、占領後におきましては全部秘密にはしないということで、必要な資料は全部公表をされておりまして、日本側の学者も全部これは入手できるような形になっております。ただ、一番被爆者の要望しております自分らの治療ということに対して、そこまで研究機関が手を伸ばした方がいいかどうかという点でございますが、これはいろいろな問題がございます。先ほど中曽根長官から御説明がありました通り、この人BCCを、従来、性格も今のような形がございますし、それで今のような施設もできておりますが、これを改善して、稲毛の放射線医学総合研究所の支所として、同様な研究日本の主体性でやるという点については、十分これは検討して、まじめにそういう改善策を考える必要があるかと思います。厚生省といたしましても、政府部内におきまして、その方がより能率も上がるということの結論を得ますれば、さようにいたすことにやぶさかでないのでございまして、先ほど、各省の権限を一木に持つというようなお話がございましたが、この点につきましては、決してさような考えを持っておらぬわけでございます。ただ、被爆調査のうちの研究機関が、治療も治療研究も必ず一元的に、全部一組織の中で、一地域のところでやらなければ目的を達せられないかという点につきましては、これは相当検討の余地がございます。たとえば、広島市ないしはその周辺に、それぞれ一番適した原爆の治療機関、あるいはそれに伴う臨床研究機関と一般の公衆衛生上の調査機関とがある、ないしは、少し離れておっても、密接な連絡協議の形が十分とれるならば、必ずしも一人の長を置いた一本化ということが絶対必要だとも存じておりません。治療機関と臨床研究は、これは離せませんが、一般の統計的ないしは遺伝的な研究とは、必ずしも同一の組織内でやらなければならぬとも、狭く考えておりません。その点は、将来にわたって厚生省としても検討いたしたい。一番能率が上がるという点については異存がございませんので、これから改善策について、改善する点があればということで検討を続けたい、こう存じております。
  58. 大原亨

    ○大原委員 施設がない場合に、研究費を年度々々ごとに出していく、こういうことも一つの方法でしょうし、それは、あちらこちらに散在している経験とか、資料を集約するのにいいと思うのです。そして、その中で、おのずから研究協議の中で方向が見出されてくると思うのです。たとえば、いろいろな専門家に対して研究費をやる際にも、私ちょいちょい聞くのは、去年は百万円だった、一昨年は百四十万円だった、今年は、逆に少なくなって七十万円だ、こういうことになると、研究者が長期的な資料を集めて、腰を落ちつけて研究することができないというのです。来年度どうなるだろうかなと思って研究するというのです。金を出す方も、同様になってくるわけです。研究グループごとの研究というものには、私は、そういう欠陥があると思う。だから、今までの政府研究というのは、グループ研究が主であったと思う。ABCCやその他、稲毛に放医研が新しくできましたが、そういういろいろな機関があって、ABCCについては今お認めになったように、私は、これをくどくど宣伝的にあげつらうということはしませんけれども、これらは、いわゆる平和共存ということがあってもいい、いろいろな機関が共存しておってもいいと思う。しかし、厚生省が予研の支所をあそこに設けているというふうなことから考えてみて、中曽根長官も、研究すると言われたけれども、今までABCCのアメリカ側から提供した器材、医療器具にいたしましても、レントゲンにいたしましても、優秀なものがあるらしい、一級品を持ってきておるらしいから、そういう設備なんかを利用いたしまして治療とも関係づけるようにして、そうして、日赤の病院や、あるいは公立病院や、その他あるわけですから、それは私は一元的にやったらいいと思う。厚生省側の御意見もまとまった意見はなかったが、私は、その点は、一つの大きな前進だと思う、その点は、一つ研究してもらいたいと思います。実際には、ABCCに対しては、現地の人々は原爆症の研究をしているとは思っていない。医者も思っていない。僕らの意見とはまるっきり違う、実際に原爆症の患者を扱っているおれたちの納得できるようなものじゃない、こうみなが言っている。専門家の臨床医学を含んだほんとうの研究になっていない。だから、それを一元化していく、そうして放射線の影響を研究して、平和利用の際における障害防止の問題にも関係があるのだし、この影響が非常に深刻であればあるほど、原水爆禁止の運動も決意を固めてやるわけで、日本としては、これはもちろん大切な問題だから、そういう点をぜひとも私は一元的に進めていただくようにお願いしたい。  きょうは、それぞれ検討する、考慮する——あるいはそういう面において問題として一応取り上げられましたから、私は、これ以上追及いたすことは、大臣もいないことだし、いたしませんが、若干問題として残っている点を、もう一回文部省にお伺いしておきたいのです。  文部省は、学術研究の立場から、大学病院あるいはその他の関係の中で総合的にやるということは当然だと思う。公衆衛生その他科学技術庁と離れてやることは当然です。そこで、私が今まで認識した範囲よりか、原爆被爆者を優先的に扱ってやると言われたが、たとえば、大半の研究者、教授、助教授、そういうスタッフを研究室に呼応するように充実していく、こういう問題について一つ御見解をもう一回聞かしていただきたい。
  59. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 広島大学、長崎大学の原子力関係医学の施設については、先ほどお答え申し上げましたように、本年度は建物を整備するということでございまして、実際に運営の始まりますのは明年度以降になります。この場合に、やはり人員その他の問題が起こって参りますので、それらにつきましては、それぞれ両方の大学の当局とも十分相談をいたしまして、必要な人員の整備につきましては努力をいたしたいと思っております。
  60. 大原亨

    ○大原委員 私ども社会党といたしましても、民社党でも、そういうふうにきのうも出されておったと思うのですが、現地におきましては、与野党を問わず、こういうふうに要求している。現在の原爆被爆者の医療法を完全にするためには、やはり応急療法や根治療法をきわめていって、こういうようにすればいいのだということを示すことが、やはり一番ノイローゼを解消したり、あるいは遺伝やその他の取り越し苦労をなくするのだ、そういう点では、医療を国の責任でやるということは、所得保障と一緒に、研究機関を国の責任で建ててやるのだ、こういう建前なんだから、そういうことを通すべきだ、国が責任を持って研究すべきだ、こういう建前で私どもは改正案を出しておるから、撤回する意思はありませんけれども政府で一応予算を立てて、昭和三十五年度の予算措置がやられておるから、私は、現実的に各方面でいろいろ対立しておるわけではないが、無意識的に運営されておるそういう研究の現状について、若干問題点を御質問申し上げたのであります。この点につきましては、一つ、できるだけ近い機会に関係者がお寄りいただいて、中曽根長官の見解の表明もあったわけですから、国として、現在の実情、要求、そういうものに沿うように、どういう方針でやるか、こういう問題について、公衆衛生上の見地からも、あるいは原子力平和利用の見地からも、もちろん原水爆禁止という立場からも、政治的に大きな問題があるわけですから、とにかく、そういう問題で一つ御討議いただいてまとめていただいて、現在までの貴重な経験やアルバイトというものが生きていくような方向で、建設的にやっていただきたい、そういう点を強く要望しておくとともに、文部省の方においてもせっかく今御答弁になりましたが、これは来年度以降の問題でありますけれども、十分大蔵省ともお話しいただいて、そういう地方々々に医大があるということは、地方の実情に即するということが学術研究の上からも、あるいは大学病院の趣旨からも、そうあるべきだと思うので、そういう点は、日々忙しい民間の病院や公立病院ではむずかしいから、大学病院が大所高所から、この大切な問題をやっていくべきだと思う。そういう面では、いろいろな機関があっていいのじゃないか、また、それらを集約していけばいいのじゃないか、こういうように思います。そういう点は、特に来年度は考えるということですが、戦後十五年間ではずいぶん長い、その間放置しておったということは人道上許されないのだけれども、この問題の論議は、社会労働委員会で医療法の論議のときにするといたしまして、きょうは研究所の問題について御質問しておきまして、あとで、また別の機会に、あらためてお集まりいただきまして質疑を続けていきたい。本日はこれで質問を打ち切りたいと思います。      ————◇—————
  61. 村瀬宣親

    村瀬委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、原子力委員会設置法の一部を改正する法律案に関し、原子力委員会原子力基本計画及び安全審査機構に関する問題について、教育大学学長朝永振一郎君及び日本学術会議原子力特別委員会委員大塚益比古君を参考人と決定し、来たる三月十一日、本委員会において意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます、よって、さよう決しました。  次会は来たる十一日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十九分散会      ————◇—————     午後零時三十九分散会