○大原
委員 先般、
中曽根国務大臣に社会労働
委員会に御出席いただきまして、放射線の影響
研究の問題につきましていろいろ御質問いたしたのですが、あとで
会議録をよく調査いたしてみますと、なかなか
中曽根国務大臣の答弁は明快なのですが、上手過ぎて、中身がよくわからぬ点もございましたし、あるいは、その後のいろいろな問題等も考えまして、きょうは、文部省、厚生省にも御出席いただき、
大蔵省の
関係官にも
一つ聞いていただきまして、放射線の影響、特に、今まで広島や長崎における原爆の被爆者、あるいはビキニの実験の結果による被爆者、あるいは、最近はサハラでフランスが原爆受験をいたしましたけれ
ども、そのずっと以前まで各国がやりましたそういう実験の結果、そういう影響、こういう諸問題につきまして、
日本の
政府は、国としてどういうふうな体制と責任を持ってそういう
研究を進めておるのか、こういう点につきまして、時間も十分じゃございませんけれ
ども、
一つ、きょうは、最初そういう諸問題につきまして、ここで
審議いたしまして、そして、その点を明らかにいたしたいと思うのです。特に、
政府におきましても、今回、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部改正案を出されました。そういうことから考えてみまして、また、その
法案の中には、私
どもが考えておりました。また、地元においては、与党の
諸君を含めまして熱望いたしておりました放射線の影響、いわゆる原子爆弾の被害の
研究をいたしますそういう総合的な
研究所、みんなが求めておる
研究所が欠けておる、こういう点もございまして、これは非常に大きな、致命的な欠陥であるというふうにいわれておる点から見ましても、一体、
政府はどこで、どういう体制でそういう
研究をするのか、そういう問題につきまして、
一つこれから逐次御質問申し上げたいと思うのです。
その前に、私の方で申し上げたい点は、先般の社会労働
委員会におきましても御質問申しあげましたけれ
ども、放射能の影響というものが、時間的に考えてみましても、あるいは医学的、生理的に考えてみましても、これははかり知れない大きな影響を人体に及ぼす。時間的に見てもそうだ。たとえば、遺伝という問題を含めてもそうなんだ。それから、被害の実相から考えてみましても、被爆当時、大体その瞬間に死んだ人も含めまして、広島、長崎で原爆によりまして約三十万人の人が死んでおります。その後、大体その数と同じような三十万人の人々が、当時二発の原子爆弾によりまして、人体に影響があって、いろいろな不安を持って生活いたしておるということも、統計上出ておるわけです。そういうふうな非常に大きな被害につきましていまだその正体がはっきりいたしていない。人体にどういう影響を及ぼすかということがはっきりいたしていない。こういうことも、権威者である日赤中央病院長の都築博士初め、そういう人々の一致した
意見であります。だんだんとわかりかけておりますけれ
ども、一致した
意見、まあ、そういう結論は出ていないわけです。それから、国の責任という面から考えてみましても、先般も藤山外務
大臣に御出席をいただきまして、これは平時の実験はともかくといたしまして、広島、長崎において戦争中アメリカが原爆を投下いたしたことは、へーグの陸戦法規その他戦時国際法規に違反しておる。しかし、サンフランシスコ条約第十九条で、
日本はアメリカに対して賠償を放棄いたしておるのですから——この戦時
災害の賠償という点からいいますと、これは本質的には、人道上の立場から陸戦法規、国際法規はあるのでありますから、被爆者の立場からいえば、被爆者を人道的な立場で保護するという、そういう加害国に対する責任を明らかにしたものですけれ
ども、サンフランシスコ条約で、賠償を放棄いたしました結果、これは
日本の国がそういう賠償については肩がわりをしておるのだ、そういう人道上の影響に対しましては、国が責任を持って処理するんだ、私は、国際法上の精神からいいましても、そういう建前であると思う。これは藤山外務
大臣も、いろいろ
質疑の中におきまして、最終的、結論的にはそのことを認めました。そういう点から考えてみましても、国といたしましては、現在、なお生きておる三十万人、これは原爆被爆の影響による精神病患者、ノイローゼ、そういう人々が非常に多いのですけれ
ども、この原因がわかっていないというところに、私は一番大きな問題があると思う。治療法についても、責任あるそういう方法が、今日なお治療医学や臨床医学やその他の面においてなされていないという点に問題があると思う。そういうふうで、人道上の立場から見ましても、
国家の責任という、法律的な、あるいは国際法上の精神からいいましても、私は、これは、国といたしましては責任を持って取り上げて、この問題を
処置すべきである、こういうふうに前提といたしまして考えるわけです。そういう点から御質問申し上げたいのでございますけれ
ども、まず、その点につきまして、
科学技術庁の長官、あるいは国務
大臣といたしまして、
中曽根国務大臣の方から総括的に御所信をいただきまして、それから逐次質問に入りたいと思います。