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1959-12-08 第33回国会 参議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月八日(火曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————   委員異動 十二月七日委員大沢雄一辞任につ き、その補欠として平井太郎君を議長 において指名した。 本日委員平井太郎辞任につき、その 補欠として吉江勝保君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            小林 武治君            鍋島 直紹君            加瀬  完君            鈴木  壽君    委員            安部 清美君            西郷吉之助君            館  哲二君            西田 信一君            吉江 勝保君            占部 秀男君            大森 創造君            松澤 兼人君            米田  勲君            中尾 辰義君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 碩哉君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君   政府委員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁長官官房    長       原田  章君    警察庁警備局長 江口 俊男君    国家消防本部長 鈴木 琢二君    自治政務次官  丹羽喬四郎君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    厚生省保険局長 太宰 博邦君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    警 視 総 監 小倉  謙君    国家消防本部消    防研究所長   鈴木 茂哉君    公安調査庁長官 藤井五一郎君    大蔵省主計局主    計官      広瀬 駿二君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査の件  (警備警察に関する件)  (国民健康保険の運用に関する件)  (警察庁及び国家消防本部予算に関  する件)   —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員異動を御報告いたします。  昨七日大沢雄一君が辞任せられまして、平井太郎君が後任として選任せられましたところ、本日平井太郎君が辞任せられ、吉江勝保君が後任として選任せられましたから、御報告いたしておきます。   —————————————
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日は、地方行政改革に関する調査として、まず警備警察に関する件を議題といたします。先般発生いたしました国会並びに国会周辺におけるデモ事件につきまして、西郷君から発言を求められておりますので、西郷君の発言を許可いたします。
  4. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 ただいま議題になりました、先般の二十七日におけるデモ隊国会構内乱入いたしました事件について、若干その他の問題について関連質問をして参りたいと思いますが、今日までいろいろこの問題について論議をかわされ、政府関係当局意見の開陳をやっておられまするが、ここではっきり伺っておきたいのは、今回のこの安保条約阻止デモ隊行動というものが、従来と変わりまして、請願形式デモ行為を展開したと、さらに人数等も多かったが、チャペルセンター前に本部を置いて、社会党書記長淺沼君が総指揮者というような立場に立って、請願デモ行為指揮をとられたわけでありまするが、こういう請願というのは、もちろん憲法に保障された国民の権利であるけれども請願は、言うまでもなく、平穏に行なわなければならないわけであり、しかも、ああいう多人数の動員の際に演説をし、しかも、警察官国会正門警備しておるのに、こういうような非常な盛り上がった激しい空気の中で、淺沼総指揮者請願であるというので正門を開かして、それが動機となって、全学連を初め非常に気負い立った団体国会構内乱入したわけでありまするが、私は、かかる雰囲気の中で、請願はほかに平素行なっておる方式はいくらでもあるが、ああいうふうな多人数の非常に激しい空気の中で正門を開いたために、それが今回の不祥事の直接原因をなしたと思うが、もちろん、こういう行為は、警察当局も今回までいろいろ意見を言われておりまするが、この際明確に伺っておきたいと思うが、これは、現行法やあるいは条例等関連して、こういう請願形式によるデモ行為は違法であるというふうに意見を開陳されておりまするが、あらためて伺いたいのでありますが、本日は、国家公安委員長が所用のために御出席になっておりませんので、まことに私は遺憾に思いますが、御不幸その他のためでありますから、やむを得ないと思いまして、警察庁長官、また、法務大臣等も後刻見えると思いますので、御意見を伺いたいと思いまするが、今後も、第九次のデモ行為等もあるし、この二十七日に非常な不祥事件を起こした中核をなした全学連等行動新聞で見ておりますると、何ら反省することもなく、まことに遺憾にも理性を失って、まるで英雄気取りでやっておるというふうに思われて、私はまことに遺憾に思うのであります。国会は、言うまでもなく、国権の最高機関で、しかも、平穏裏に公正に国政の審議をしなければならぬが、どうも最近反対運動が非常に多数で国会を包囲したりして、国会に対して威圧を加えるというような傾向が顕著であって、まことに遺憾に思うのでありまするが、たまたま今回請願形式をとったために、これが直接の原因をなして国会構内乱入した。私もあれも見ておりましたが、かかることはめったにないことだし、こういうふうなことが今後もしばしば行なわれるということになりますると、法治国家としてまことに国家の威信にもかかわるし、また、労組その他の団体デモ行為というものも、あくまでもやはり合法的なものでなければならぬ。言うまでもないことでありまするが、こういう事態が起きましたので、あらためてきょうは国家公安委員長意見を正式に求めたいけれども、おられませんので、警察庁長官に、こういう行為をどういうふうに考えておられるか。また、いろいろ今日まで新聞などを見ますると、淺沼書記長その他両院の議員等もこの際参画しておったようでありまするが、そういう方々につきましても、明確にわかっておられれば、御説明を願いたいと思います。
  5. 松澤兼人

  6. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 何ですか、松澤君。
  7. 松澤兼人

    松澤兼人君 こんな形で委員会をやってもいいのか。初めにお断わりしてあったですか。
  8. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 初めに、理事方々と相談して、始めましょうか、始めましょう、ということで始めておりますから。
  9. 松澤兼人

    松澤兼人君 私の方の理事承知しておられるのならそれでいいです。
  10. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 去る二十七日、ただいまお話のように、請願形式による大衆デモ行為が行なわれたわけでございまして、一部不穏な情報警視庁としてキャッチいたしておりましたので、従来にない厚い警戒警備態勢をとったのでございますが、非常な多数のデモ隊のため、また、一部非常に先鋭な分子の過激な行動のために、警戒線が突破されまして、国会へ多数の者が乱入したという事態を起こしましたことにつきましては、私ども非常に遺憾なことに存じておるのでございます。ただいまお話のように、かりに請願なり陳情なりの形式をとるにしましても、国民に認められておりまする重要な請願権というものは、当然これは尊重をしなければならないものでございますが、憲法にも示してありますように、平穏に行なわれなければならないというふうに考えられる次第でありまして、どういう形式をとろうと、ああいうデモの形をとってこれを行なうということは、それ自体都の公安条例に違反する行為であるというふうに考えるわけでございます。また、国会当局におきましても、ああいうふうな多数の威力を背景としたような不穏な請願というものは受け付けない、代表二、三十名というものであればこれを受けるという態度をとっておりまして、その点につきましては、警視庁もよく国会と連絡をとって措置をいたすようにいたしておったわけでございます。なお、あの国会構外におきまするデモ行為自体が違法であるということは、ただいま申し上げましたけれども、当日の事件というものは、その構外における多衆のデモと、さらに、それに引き続いて起こりました乱入事件と、これを法律的にはやはり分けて考えるべきではなかろうかと思うのであります。淺沼書記長その他の方に対しまする責任問題というようなことにつきましても、今回の事件につきましては、事が重大であるだけに、警視庁としましても、十分に責任の所在というものを追及する態度をもってただいま調査を進めておる段階でございまして、ただ問題を、入ったことあるいはその直後に大ぜい乱入したということだけをもって論ずべき問題ではなくて、全体を十分に検討した上で結論を出すことになろうかと思います。従いまして、目下そういう点では警視庁において検討をされている問題と思いますので、具体的には、私からお答え申し上げる限りでないというふうに申し上げるしかないと思います。
  11. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 今の御見解でありますが、今後ともデモ隊がこういう請願形式あるいは陳情形式をとるような場合もなきにしもあらずと思いますので、今後のそういう不祥事態を予防する見地からも、関係当局から、デモ隊等についても、そういうデモを伴ったあれは違法であるというようなことをよくやはり主催者と今後打ち合わせていかれることが、事前に防止する策の一つではないかと思います。  次に、この問題に関連いたしまして、翌二十八日には、社会党なり総評なりが声明を発表しておるのでございまするが、御承知通り、その声明によると、社会党声明の中にも、警察側で意識的にこの乱入を挑発した点も遺憾であるというふうな文句もあるわけであります。きわめて重大なこういう事件でありますので、野党の第一党である社会党声明の中に、警察側で意識的にこの乱入を挑発した点も遺憾であるというような言葉もありますし、私どももいかがかと思うのでありまするが、さらに総評等声明を見ると、警察側は、いつもなら国会正門前を中心に守っているのに、今度は正門はむしろ手薄で、警察側に挑発しようとのかまえが強く見えたと思う、というような文句も御承知通りあるわけであります。私はこの際、警察当局も、こういう声明に対して、出ておる以上、どういう所見であるかということを明確にされておくべきものであると思いますので、この点の所見を伺いたい。
  12. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 先ほども申し上げましたように、当日は、一部不穏な情報もキャッチいたしておりましたし、相当の多数に及ぶということも予想されましたので、従来にない分厚い警備態勢をとったのでございますが、従来の例から申しますと、ああいう集団請願であるとか、集団陳情という場合には、チャペルセンター前に集まって、そうしてそこから代表を出して代表の報告を受けて、人事院と外務省の間の道を通って流れ、解散をするというのが従来の例でございます。ところが今回は、淺沼書記長を総指揮とし、三隊に分けて、三隊にそれぞれ責任者を置いて、これが国会に向かって進むという態勢をとったわけでございます。しかも、その三隊が警察側によって阻止されますると、その一部が予定されなかった議員会館前の道路にまた殺到するというような状況で、警察としては、これを阻止するには、やはり道路上において阻止するというのが警備技術として一番やりやすいわけでございますので、チャペルセンター前と人事院わきと、それから特許庁付近と、この三方面部隊を配置して、これを押えておったわけでございますが、その間に、今申しましたように、予定していなかった所にも入って来る、これにも部隊をさいて阻止線を作るというようなことでございまして、警察としては、ああいう乱入ということを極力防ぐために努力をいたしたわけでございます。しかしながら、事態をできるだけ混乱に陥れないというために、警察側としましては、終始これを抑止する防御態勢でおったわけでございまして、多数の過激な行動によりましてチャペルセンター前の一角が破れ、また地下鉄から上がって来る連中によって警察部隊の背後を突くというような作戦に出られるというようなことがございまして、一部国会構内に侵入するというような事態に相なったわけでありまして、その後警察としては、少なくとも国会議事堂は十分に守らなければならないということで、道路線上に阻止線を作って置いた部隊まで全部引き揚げて、国会周辺にこれを集結するという態勢をとったわけでございます。従いまして、従来に比べて警察が手薄であるというようなことは決してないのでありますし、また、あのときの警察活動状況をごらんになれば、挑発した、こういうような空気は全く私は見られなかったと思うので、第一線警察官は、私どもとしましては、実に忍苦忍苦を重ねて阻止を全うし、そうして職責を遂行することに努力をしたと考えておるのでございまして、警察側がこれを挑発して、誘導して構内に入れたというようなことは、まことに言語道断な、ためにする悪口であるというふうに私どもは考えておる次第であります。
  13. 米田勲

    米田勲君 関連して。ただいまの警察庁長官説明をお聞きして、ちょっと関連してお聞きしたいのですが、実は、当日私は、国会議員のたすきをかけて、首相官邸の下の特許庁の方から請願に上がって来た人たちの方に私はいたわけです。私のいた位置は、警察官が防いでいたうしろにいた。ところが、当日車で、ジープや何かでたくさん鉄かぶとを持って来ている、それから、請願に上がって来る人たちを押えるために、トラックや車をあの狭い道路に三列に押えて、私のうしろから見ていた状況だと、一番右側の方は、大人が二人通れないくらいの幅であり、まん中の所は、一人がやっと車の間を通れるという幅なんです。そこで、若い人たちが先頭に立って、盛んに争っておりました。私は、社会党人たちのあらかじめの話では、請願に出かける者たち特許庁の前の方から行くが、おそらく警察はこれを途中で阻止するのじゃないか、従って、できるだけけが人を出さないようにめんどうを見てやってくれ、それから、大体四時になったら、ここへ来ている人たちを引き返させて、そうして労働省の方ですか、あちらの方に連れて行かせて、そこで流れ、解散をすると、こういう予定だからということを私はあらかじめ言い含められていたわけです。で、警察のあそこの部隊人たちにも国会議員の私たち話をして、乱暴な状態が起こって、けが人が出ては困るから、もうあとわずかだし、私のわずかだということを話した時期は、もう四時まであと十分ぐらいだったので、それで、私が見ていたのでは、私の方は、まあひっかき傷ぐらいの程度はあったのかもしれませんが、あまり大したけが人は、幅が狭いですから、なかった。ところが、四時十分前ぐらいの時刻になったら、私は警察官うしろに立って見ていたわけですが、急に、その狭い通路を守っていた警察人たちがあけて、なだれを打ってその若い人たちが中へ飛び込んできた。それからあとは全然阻止しませんでした。それから、このまん中の方の、車と車の間に人が一人通れるぐらいの幅の所は、全然それは、十分前ぐらいの時刻からは、だれも警察官阻止しない、なだれるように全部行ってしまうまで。私は黙って見ていたのです。おそらくこの首相官邸付近で、またもう一つ警察の方は阻止態勢をしいているんだから、結局この人らが行ったって、向こうの袋の中のネズミのような状態になるのであって、引き返してくることと思って、私は黙って、全部行ってしまうまで、最後まで見ていたのです。私は、そのときの状況と今の長官の話を比べてみると、従来にない分厚い警備態勢をしいて、徹底的な防御態勢をしいておったんだ、こういう御説明ですが、四時十分前からの特許庁のあそこに集結していた警察部隊は、どういうわけで、あの狭い、車と車の間の、ほとんど自由には何人も通れないような狭い所をあけて、そしてなだれを打ってあの若い人たちがどんどんこの首相官邸の方に走り込んでいくような状態にしたのか、私は不思議に思っていたのです。それで、何にも阻止しないから、私の判断では、先ほど申したように、おそらくもう一つ向こうで、ここよりももっときびしい阻止態勢をしいているから、ここの所はまあ適当でいいんだな、それでああいうふうにして自由に行かせるんだな、こう判断をしておって、全部行ってしまってから、戻ってこないので、不思議に思って行ってみたら、もう首相官邸の前の阻止態勢なんていうものはないんです。これを見ていた私は、今の話を聞いて、どうして四時十分前に——私は、四時になったら、みんなに帰るように勧告をするからという話をしておったのに、十分前になって、急にあの狭い通路を開いてしまって、どんどん人を入れたのか。そのときの警備責任者お話を聞いておられると思いますが、それと今の説明の全力を尽くして防御態勢をしいたということと、あまりにも事実が食い違っていると思う。そのことについて、関連して一つ事情をお聞かせ願いたい。
  14. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 先ほど申し上げましたように、三方面に強い阻止線を作って、警備をしておったわけでございますが、一部チャペルセンター前を突破しました者が、淺沼さんが入られた直後、正門を破って突入いたしました。そういう関係で、これは、場合によっては議事堂にも累が及びはしないかということで、第一線阻止部隊国会周辺に集めたわけで、おそらくその時期であったろうと思うのであります。
  15. 米田勲

    米田勲君 関連して。もうちょっとです。それは違います。
  16. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 米田君、関連質問ですから、簡単に願います。
  17. 米田勲

    米田勲君 それは事情と違います。あの特許庁の所に集結しておった警察官部隊は、全然移動をしませんでした。もとのままです。一人もほかの方に行っていないのです。あなたの説明と違うのです。それはどういう事情ですか。
  18. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 今お話特許庁の所という、まあ場所がどの場所であるか、私ははっきりつかみ得ないのでありますが、おそらく私は、はなはだ失礼でありますが、一部分の所のお感じをもって今お話があったと思うのでございます。全般的に見ますると、特許庁付近に集まりました多数の集団の中に、やはり全学連を初め、激しいものが相当数おりまして、これが、先ほどお話がありました、こちらで制止線として並べました車を乗り越えて入ってこようとする、こういうような事態もあり、また一方におきまして、東大生一部分国会正門の方に早くから来ておりました相当数のものがありまして、これが総理公邸方面、この特許庁に通する方ですね、その方に警察官として制止をしておる。さらに、地下鉄から上がってきております学生あるいは労働組合員、この三、四百人、これもあの方向制止をしておる。そういうような全般的な警備の情勢から、現場における指揮官といたしましては、最も適切なる制止の方法を考えて、行動をいたしておったと思うのであります。  なお、ほとんどけが人もないようなというふうにお話がございましたが、やはりこのもみ合い状況は、テレビ等でも出ておりまするが、かなり激しいものがありまして、グランド・ホテルの付近あるいは総理公邸の坂下あるいは総理公邸の前あたり、ここらでかなりけが人警察官側にも出ておるのであります。決して警察側において何らの措置なく、そのようなデモ隊を通過させたというようなことはないと、私はこういうふうに考えております。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 今の点簡単に、関連して……。
  20. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) いずれ関連の御質問があると思いますけれども西郷君の方に……。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 しかし、今のところは重要なことですから、関連させて下さい、簡単だから。
  22. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 一応やってしまってからされたらどうですか。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 いや、今の事実認定のことは、この開議運のときにも問題になったことで、僕は簡単だから言わして下さい。
  24. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) じゃ簡単に願います。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 今、総監は、総体的な面から見て、しかも、あの当時のあすこの警備の方としては万全を期したと、こういうふうに言われましたが、あの正門を破られたときに、全学連の人に向かって、これを阻止したのは私一人ですよ。あの国会のキャメラのニュースを見ればよくわかるけれども警察官はただぼうっとして、そばに四、五人いただけで、私一人がその中におって阻止して、皆になぐられながら私は阻止した。正門の所でのそういう事態から見たって、万全を期したなんてことは、これは言い得ない。はっきりあのニュースがとっていますから、もう一ぺんニュースを見ていただきたいということが一つと、それからもう一つは、この間の議運のときに、総監が何か、淺沼氏と、陳情団が入ってきたから、その全学連が入った、こういうふうなことを言われたけれども、全然あれは別個なんだから、その点は、私、あの議運のときにも、よく調べておいてもらいたいということで、あなたはもう調べておると思うから、その点についての答弁と、この二つを一つお願いします、簡単に。
  26. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 全学連が入るのをとめたのは自分一人であると、こういうお話でございますが、それは、その一カ所についてだけ言えば、あるいはそういうことが言えるかもしれませんが、そういうことは私は絶対にないと思っておるのでありまするし、また、そういうふうな点は、テレビや写真その他にもたくさん写っておるのであります。現にチャペルセンター前で、全学連及び労働組合の激しいものたちが突破いたしまして、その際には、非常な負傷者を出しておるのであります。そのデモ隊が一時人事院方向に規制されつつあったのでありまするが、片一方における負傷者の救出、さらにその面からの他のデモ隊制止の突破というようなことが重なりまして、人事院方向に規制されつつあったデモ隊国会正門に殺到してくる、こういうような状況であったのであります。そして国会正門警備につきましては、これは、理事会でも申し上げたと思いまするが、相当数警察官をここに用意しておったのであります。しかるに、その警察官のまたかなりの部分を地下鉄あるいは総理公邸あるいは第二議員会館、この方のデモ隊の非常な勢い、状況に応じまして、その方に急派しなければならない、こういうような事実があったのであります。従いまして、国会正門前にデモ隊が殺到してきたという際には、当初配置しておりました警察隊は、それほどの多数の警察隊が残念ながらいない、こういうようなことは事実としてあったのであります。ただ、お話のように、決して警察官が拱手傍観しておったような事実は絶対にない、私はこういうふうに存じます。  それから、淺沼書記長の点は、いろいろ御議論があるのでありまするが、私が理事会で申し上げたのは、淺沼書記長を含めて、社会党国会議員の数名及び労働組合デモ隊関係者代表といいますか、そういう人たちが何名ですか、十数名以上あったと思いますが、その人たち正門を入った時間と、それから、デモ隊正門を突破して構内なだれ込んだ時間と、そういうような時間的な関係は接近した関係にある。しかしながら、これがどのような関係にあったかということは、今後十分調査をいたしたい、こういう答弁をいたしたつもりでございます。
  27. 松澤兼人

    松澤兼人君 さっき長官がおっしゃった言葉、はっきり私も記憶しておりませんが、「淺沼君が一隊を指揮して」とか、「一隊の指揮者として淺沼君が」、という言葉を使われたと思う。この一隊という言葉が重要でありまして、「一般の大衆の中の一隊の指揮者として淺沼君が」、という言葉を使われると、そうすると、乱入の問題にも関連してきます。そこで、「淺沼君が一隊の指揮者として」とか、「一隊を指揮して淺沼君が」、という言葉意味ですね。この意味は、今後淺沼君が衆議院において懲罰になるというような事態に際して、参議院の地方行政委員会における長官発言ということは重要なまた参考資料になると思う。この「一隊を指揮してとか」、「一隊の指揮者として淺沼君が、」という言葉意味をここではっきりしておいていただきたいと思います。
  28. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) 私は、淺沼書紀長について、「一隊を指揮して」、「一隊の指揮者として」と申した記憶はございません。淺沼書紀長を総指揮として三隊に分かれて、各隊にその指揮者を置いてという趣旨で申し上げたつもりでございます。
  29. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 ちょっと伺いますが、今一番重要な問題は、西郷委員質問の、総評または社会党声明によって、挑発的行動があったかないかという、個々の警備がどうであった、こうであったという問題でなくして基本的に、あの声明の中に盛られておるところの挑発的行動を計画的にやられたかどうかという点にあると私は思います。従って、この点について再度一つ明確にお答えを願いたいと思います。
  30. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) われわれとしましては、警察が挑発したことは絶対ないというふうに確信いたしております。
  31. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 今の社会党声明なり総評声明について答弁されましたが、関連質問等があって、いろいろの意見があるようでありまするが、今後そういう点について一段の工夫と対処をお願いしたいと思いますが、このデモ隊乱入事件の中で、最も激しく行動したのは全学連でありまするが、御承知通り、その全学連につきましても、警察当局としては、二十八日に清水丈夫外四名に逮捕令状を出しておられるが、その中心人物の全学連の書記長清水君は、まだ未逮捕であります。なお、三十日に葉山、林両名に対する逮捕状が出たが、これも東大自治会の中に潜入しておって、未逮捕にあるわけであります。今回国民の世論を聞いても、デモ隊の中で最も激しい行動をした学生団体である全学連行動については、いろいろ批判を受けておるけれども、依然としてそういう理性に立った反省が見られないことは、非常に私も遺憾に思うのでありまするが、その中で、今未逮捕の両名は、学内自治という名のもとに大学内に立てこもって、一部の学生がこれを応援しておるというような事態のままに推移しておりまして、しかも、この葉山という学生ですか、これは前の事件で無期停学中であるわけであります。しかも、法治国家である今日に、学生が学内の自治の名をかりて現在これを擁護し、このままに置けば、逮捕令状の出ておるものを擁護しておるのだから、これは犯人隠匿の罪に問われるものです。おそらく当局の考えは、新聞等で見ると、学生のことであるから、善良な学生を無用に刺激したくない、また東大等の学長なんかの意見も、それを心配して、学校の外で逮捕してもらいたいというようなことで、それのひっかかりのために、警察当局も非常に困っておられるのじゃないかと思うが、私は、今日このデモ隊行動は第八次であり、第九次の事態が間近に迫っておるので、法律の権威の上からも、学校の自治は尊重しなければならない、また、善良な学生を無用に刺激することがあってはならぬと思うが、やはりじんぜんやたらにこういうふうに日を費しておくことはいかがかと思うし、また、犯人を隠匿する罪に問われるものをふやすような結果に相なっては、私は非常に遺憾であると思うので、こういう点は、やはり今日まで相当日数もかかったし、また、学長などが説得をしておられる御苦労の点はよくわかります。しかし、これに耳を傾けることがないような相手であるならば、やはりこの際、慎重に考えて行動をすべきじゃないか、学生であるから、また学内の自治を乱したくないということにとらわれ過ぎて法律の権威を失墜するようなことのないように対処していただきたいと思うが、そういう点について、警察当局並びに法務大臣の御意見もあわせて伺っておきたいと思うのであります。  なお、非常に私が遺憾に思いますのは、全学連については、その後その中心人物は何らの反省するところもなく、理性を失って英雄気取りでおって、新聞記者会見等をしても、それを誇らかに話しておるような、まことに遺憾な状態でありまするが、御承知通り、去る十二月四日の日本経済新聞の朝刊には、この全学連について相当詳細に報道されておりまするが、皆さん方もごらんになったと思うが、それを見ますると、私は非常に遺憾に思うのは、いろいろ取り上げてありまして、日本経済新聞でありますから、全く根拠のないことに基づいてやったとは思われない。従って、相当の根拠に基づいてこういう新聞に掲載したと思われますが、その中には、警察官を挑発して暴力的行為を誘発するとか、あるいは「あくまで実力で警官隊の阻止線を突破する」とか、「大衆国会内に誘導する」とか、「国会内に入ったら、四十八時間から七十二時間のすわり込みを行なう」、また、場合によっては、デモ隊を米国大使館に突入させるとか、学生、労働者の双方から十人ないし十五人の行動隊を編成し、国会内に乱入して、警官隊の撹乱工作を行なうというようなことまで詳細に報道されておりましたが、私は、今日非常に世論の批判の前に立っておりながら、何らの反省することもないこういう学生の、全学連行動は遺憾に思いまするが、私は、若い者だけに、こういう者をこのまま放置しておくならば、将来彼らにして理性的な反省がない以上、あるいは労働組合の運動なんかについても、労働組合も非常に迷惑されるような事態に発展するおそれが多分にあるし、今日すでにそういう状況にあるわけであります。私は、労働組合デモ行為等も合法的にあってほしいと思うので、それに参加する全学連のようなものが、非常に行き過ぎた戦闘部隊的な行動を今後も繰り返すということは、わが国の治安を撹乱し、平和を乱すおそれが多分にありますので、ただいま申し上げたような事柄に対して当局はどう考えておられるか。また、十二月四日の日本経済新聞の報道等を見ると、非常に激しいものがここにあるように見受けますので、そういう点について、警察当局なり法務当局はどういうふうに考えておられるか、率直に所見を伺いたいのであります。
  32. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) まず、東大に二名の者がかくまわれておって、大学の自治を名として、警官の学内に入ることを極力阻止するという態勢をとり、むしろ積極的にこれに対決するというようなことを豪語いたしておることは、ただいまお話通りでございまして、まことに遺憾な事態と存じます。警視庁としましても、逮捕状を取っております以上、これをできるだけすみやかな機会に逮捕するという方針に変わりはないのでございますが、何分にも大学当局が、自分らが責任を持って説得に努めるからしばらく待ってほしいという申し入れもありましたので、その善処を期待いたしまして、ただいままでのところ、学内に逮捕に向かうというところまで行っておらぬのでありまするが、ただいま御指摘のように、学校当局としても、何らそうした説得の効果も現われないというような状況でございますならば、じんぜん目を送ることなく、できるだけすみやかな機会にこれを逮捕する方針であることを申し上げておきたいと思います。  また、全学連の性格等について、ここで詳しく申し上げる必要はないかと思いまするが、全学連の、全体の学連加盟の自治会、またその構成員というものが、全体として非常に過激なものであるというふうにはわれわれは考えておりません。しかしながら、全学連の中には、数千名の共産党員がおり、また中央委員会は、大部分の者が従来の共産党員でありまして、現在の共産党からも、その過激性のゆえに排除されておるというような者がその主流をなしておるわけでありまして、先ほど申し述べられましたようないろんな過激な計画をし、また過激な言論を用いておるわけでございます。これらが反省することなく、このまま放置されるということでありますならば、将来もちろん、一面におきましては世間の批判を浴び、また学生の中からも、そうした分子に対しての批判というものが、最高学府である大学の学生の中には当然起こってくるであろうということをわれわれは期待いたしております。そういう意味において、孤立していくということももちろん考えられまするが、こうした狂信的な分子がとにかくも数千名に及ぶということになりますれば、これの影響力というものも決して看過はできない。また、社会に及ぼす害毒というものも、許すべからざるものが起こって参ることも懸念いたされますので、これらの者の不法ということにつきましては、十分に今後も監視をいたしまして、これを未然に防止あるいはすみやかにそうした不法事態というものを鎮圧するように、今後とも努力を重ねて参りたいと考えておる次第でございます。
  33. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) 大学構内の二人の学生の逮捕問題につきましては、今警察庁長官からお答えした通り、私も同様に考えております。学生が、憲法二十三条によって、学問の自由ということを保障されておりますことから、大学構内が治外法権のような気持を持った、間違っておる学生もあるのではないかと思うのでありますが、大学構内は治外法権の場所でございませんので、犯罪があれば、また捜査の執行状が出ておれば、当然逮捕しなければならぬと思うのであります。しかし、大学の自治ということは、あくまでやはり尊重しなければならぬと思いますので、警察当局が大学の総長といろいろ話し合いをして、自治的に犯人を差し出すという行き方は、私はけっこうな行き方だったと思うのであります。しかし、これにもおのずから限度があります。従って、警察当局が、今申されましたような点で踏み切ってこられたことは当然ではなかろうかと、私は思うのであります。
  34. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 さらに伺いまするが、今回のデモ隊の数も相当の数でありまして、警察も慎重に対処はされたと思うけれども、結果的には、請願デモというような形式であったために、また、一部の過激なる団体のために、国会構内乱入いたしました不祥事件に発展しましたが、私は、現在のそういうことが今後とも繰り返されないとも限らぬと思うのでありまするが、今日、警察官の現有勢力は十二万程度であり、特に非常に人口の多い東京都の警視庁管下でも、一万四千名足らずでありまするが、直属の責任者である長官なりまた警視総監として、今日は、その他におきましても交通事犯等も非常に多い、警察官も非常に苦労しておるわけであるが、今行なわれたようなデモ隊の数も、今後もっと増すかもしれないと思うのでありまするが、現行法のもとで、現在の警察官の数をもって十分に今後の事態にも対処し得ると考えておられるのか、あるいは、今日のこの現有勢力では、また今日の治安関係現行法だけでは不十分と考えておられるのか、そういう点について十分所見を伺いたいと思います。
  35. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) ただいま警察官の定員の問題と警察の仕事に関連してのお話がございましたが、今回の事件につきまして、今後もああいうことがあり得ると、私どもとしては、国民の良識が発達し、またああいう大衆運動を指導される方々の見識が高まり、そうしてあのような不祥事件が二度と企図されないことを心から願うものでありまするが、急速にそうした社会の情勢というものが招来するとも、にわかには考えがたい面があると思います。警察自体は、その責任におきまして、現有勢力を十分に活用して、いろいろ、技術面においても、また装備面においても、さらに検討を重ねて善処をして参りたいと思いまするが、率直に申しまして、今度の騒ぎということだけではもちろんございません。ただいまお話の交通関係であるとか、あるいは少年問題であるとか、各種の弊察事象が非常に複雑をきわめて参り、警察の責務というものも、また、警察官個人の負担というようなものも非常に重きをなしてきて、非常に第一線警察官は苦労に苦労を重ねている状況でございますので、そうした総体的に見まして、私どもは、現在の警察官の定員では非常に負担が重過ぎる、十分でないというふうに考えておりまして、この点は、今年度から若干名の増員を認められましたが、引き続き警察官の増員に特に御配慮をお願いしたいと思う次第でございます。  また、法制的の問題につきましても、何か衆議院議長の方で案を考えておられ、各党派においてこれを御検討のようでございます。もちろん、国会周辺の問題につきましては、国会なり政党なりというものにおいて御検討下さる問題と思いますが、これまた、先ほど申しましたように、社会の情勢というものと勘案されて、非常に常識に富み、平穏な国民生活というものが享受されるような社会環境におきましては、できるだけ規制の法律というようなものはない方がよろしいと思いまするが、先ほど申しましたように、現在の状態というものが急速に改まるということでない限り、何らかそうした規制の制度というものも必要な段階に参っておるのではないかというふうに考えます。
  36. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 今、長官の御答弁の中に、いろいろ現在の法規でも不十分ではないかというような御意見もありましたが、私は、今あらためてこの問題について所見をただしたいと思っておったのでありまするが、かように、今デモ隊行動等も今日までの動きを見ると、なかなか激しさを加え、何かというと大きな問題で、国会周辺に押し寄せて、国会を包囲する行動に出るわけであります。さようなことであってはいかぬので、諸外国でも、御承知通り相当そういう問題については規制を加えております。私は、そういう問題は、野党とか与党とかいうような立場でなく、いずれの国においても、国権の最高機関である国会の権威を保持し、また議員が公正な、また静粛の上に国政に参与するというふうな見地からだと思うのでありまするが、前回の大きな問題が起きましたときにも、衆議院においてもいろいろ反省が行なわれて、こういう規制措置に出ようとし、衆議院は通ったが、参議院でそれが不成立に終わった。そういう事例もあるわけでありまするが、今回の不祥事件にかんがみて、すでに衆議院議長から二案が提案されておるようでありまするが、さような事態になっておるので、私は、現在のわが国の治安状況から考えるならば、特に全学連というような無反省な、全く理性を失っている人たちの学生団体等もあることを考えますると、どうしても国会の立場からはこれを規制せざるを得ない状況に今日あると思いまするが、現在すでに衆議院でも論議され、いずれ参議院でも、きょうあたりから論議されるのではないかと思いまするが、私は、まことに遺憾であるけれども、真に客観情勢が現在のようであるならば、法的措置をこういう不祥事を契機にしてやりませんと、非常に遺憾な事態があり得ると思うので、どうしても必要であると思うわけであります。こういう点について、法務大臣としては、何か、今衆議院で議長の提案もあるが、別にこういう事態からこういう具体案を持っておるというようなことがあれば、この際御披露を願いたいし、また、今警察庁長官は必要であるというふうな御意見でありましたが、こういう点について、あらためて両当局の所見をただしておきます。  なおまた、法務大臣に伺いたいのでありまするが、今日は、こういう国会周辺デモ行為というようなことだけでなく、最近裁判所の法廷等におきましても、特に問題が労使関係事件の審理の際には、非常に計画的に法廷で裁判官に圧力をかけたり、また、その周辺で気勢を上げる集団行為が、あるいは集会が頻発しておって、公正妥当な裁判の進行が非常に阻害されておる事態が私は多いと思うのであります。さような状態にかんがみまして、私は、国会乱入のこの不祥事件についても規制措置を必要と考えると同時に、こういう裁判所の厳正な裁判が威圧されて、阻止されるというようなことであってはならぬので、こういう点についても、法務大臣の御所見を伺っておきたいと思うわけであります。
  37. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) 国会周辺デモに関しまして、今日の法令で十分であるかどうかということも、われわれの方で検討はいたしました。今日これに対しましては、東京都公安条例道路交通取締法があるわけでありまするが、これは、東京都一般のこういった問題に対する規定でありまして、国会のように国民の神聖な殿堂であり、しかも、国会内における審議というものは平穏のうちに審議さるべきものであって、暴力等が許されないことは当然であります。特別なる意義を持つ国会周辺でありまするから、ここに何らか新たなる規制の必要も感ずるわけであります。外国の立法例等におきましても、はっきりそういう点を規制しておる事態から見て、われわれもその必要性を感じておりまするが、ただ、国会の問題でございまするから、今、政府といたしましては、国会方面と十分連絡をとりまして、国会方面において何らかの処置をとられればそれでもけっこうであり、また、政府としてあるいは何かしなければならぬかという点については、目下いろいろ相談中でございますので、その気持におきましては、西郷委員のお気持の通りに自分らは考えております。  また、裁判所外のデモ規制行為につきましても、今日法廷内におきましては、法廷等の秩序維持に関する法律という法律がございまして、裁判官が警察権を持っておりまするから、裁判官さえしっかり法廷の秩序維持をはかればけっこうであり、それに対しましても、先般田中最高裁長官が、全国の検事裁判官会同におきまして、はっきりこの点を訓示しております。今後もしっかりそういう点の秩序維持に努力しろということを訓示しておりまするから、おそらくその趣旨もだんだんと徹底されると思いまするし、また、警察官の立場からも、法廷内の秩序はぜひ維持されなければならぬと考えておりますので、法務省といたしましても、警察官に対しましては十分その旨を指示いたしております。ただ、裁判所外のデモ規制に関しましては、その法律の適用がございませんから、これも国会周辺と同じような意味においての規制の必要があるのではなかろうかと考えております。しかし、それらの点につきましては、今せっかく国会と折衝中でございますので、この程度の答弁をもって満足をいただきたいと思います。
  38. 米田勲

    米田勲君 関連質問。法務大臣にお聞きしますが、西郷委員から、今、裁判所の外郭におけるデモだとか、気勢を上げる、そういう行動によって現在裁判の公正が期せられておらないということをはっきり言われておる。それに対して何らのあなたのお答えがないのだが、そういう裁判所外におけるデモや気勢を上げる行動によって現在の裁判が公正を期せられない、公正が阻害されているという事実があるかないか、はっきり言って下さい。
  39. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) 裁判所の問題は、法務省の所管外の問題でありますから、その裁判が公正に維持されているかどうかということを私は批判するわけには参りません。しかし、今日すでに二十数件も裁判所内においてそういった法廷争議の起こったことは、事実ははっきり統計的に出ております。それらの事実をもって、あるいは裁判にそういったことのあったないということを私は申し上げるわけにはいかない立場にありますので、お答え申し上げなかったわけであります。
  40. 米田勲

    米田勲君 私の今質問したことは重大なことなんです。西郷委員の言っていることは、これはだれに答弁を願えばいいのですか。よろしく処置をしてもらいたい。裁判の公正が破られておると断言されておるわけです。私はそう思っていない。これは、だれにお聞きすればはっきりするのですか、現状は。
  41. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 今の米田君の発言について、阻害されたとは言いません。そういう気勢を周辺で上げたりすれば、阻害されるおそれが十分にあると、これはもう常識から当然だと、こういう意味で申し上げたのであります。  なお、引き続いて次の質問をいたしまするが……。
  42. 米田勲

    米田勲君 ちょっと、議事進行について。
  43. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと待って下さい。ただいまの米田君の御発言に対しましては、速記録を十分調べました上で、米田君もお考え下すったらいいし、西郷君もお考え下すって、意思の疎通しない点があれば、十分それを院内でお話し合っていただきたいと思います。それ以外にないと思います。
  44. 米田勲

    米田勲君 委員長発言……。
  45. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 議事進行ですか。
  46. 米田勲

    米田勲君 そうです。私は、法務大臣に聞けば、今のことがわかると思った。私のあれではないから答えられないと、こう言っているのですが、委員長は、裁判の公正が現在気勢を上げる行為デモ等のことで破られておるというような実情にあるのかないのかを、どういう方面の方にここへ来てもらって答弁をしてもらえば明らかになるか、この問題を別にそれでは一つお聞きします。手配をして下さい。
  47. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) これはおそらく、常識から言いまして、最高裁の長官あたりに感想を聞いて、考え方を聞いてみる以外にないと思いますがね。井野法務大臣は、裁判の内容が公正であるかどうかということは、法務行政の範囲外だから、私からは答えられぬということを言っているにすぎないのですから、具体的に裁判の公正が阻害されているかどうかというようなことは、これは、個々の裁判の内容を見て、ほんとうに公正が阻害されているかどうかということを見ていく以外にないので、一般的にそういったことについて御質疑をしようと思えば、最高裁の長官にでも来てもらって、最高裁の長官意見でも聞いてみるという以外には方法はないと思いますがね。
  48. 米田勲

    米田勲君 そうなれば、委員長の今言うように、非常に微妙な問題であれば……
  49. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと待って下さい。
  50. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行について。今、米田君の指摘のような御発言西郷さんの方であったかどうかというのを一応お確かめいただいて、もしそうであって、西郷さんの御意思がその通りであったとすれば、最高裁の事務総長ですか、その方でも来てもらって、十分にその点を、米田委員その他いろいろ御関係質問者から質問をする機会を委員長で作っていただきたい、そのように処置していただきたいと思いますが、どうでしょう。
  51. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) こういうことになっておるようです。最高裁については、最高裁の長官がここへ来て証言をするというようなことは、前例もないし、それはできないことのようです。それで、最高裁に事務総局があって、事務総長がおられるので、そういう事柄については事務総長が答弁に当たるということになっておるようです。ですから、御要望があれば、その公正かどうかということについて適確な答弁はできないかもしれませんが、最高裁の事務総長に来てもらって、意見を聞くなり質疑をされるということは、これは可能ですから、そういう方法をとっても差しつかえありません。ただ、その前提として、西郷君の質疑の内容について、これは速記録によって、どういう言葉を使われたか、私も適確にはその言葉の端まで覚えておりませんから、速記録についてよくごらんになって、さらにこの問題について質疑の機会を作ることにしたら一番よいかと思います。
  52. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 ここに原稿を持っておりますから、ごらん下さい。
  53. 米田勲

    米田勲君 原稿とあなたの言ったの違っておりますよ、調子づいていますから。
  54. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 引き続いて御質問申し上げまするが、先ほど全学連の問題等も論議いたしましたが、御承知のごとく、最近においては、早稲田大学においても、学生が警官を包囲し、官服が破られてしまったというような事態もあるし、その前には、慶応大学の構内においても、放火の容疑のために入ろうとしたところが、これを阻止されておるというふうに、どうも最近のこういう傾向を見ますると、各大学の自治という観念を非常に拡大解釈して、治外法権的に実際に考えておる向きが多いように思うし、そのためにこういう事件が頻発するし、また、全学連全体の行動は、非常に私は遺憾なことと思うのでありまするが、こういう非常に暴力的な全学連行動等を見ると、現行法には破防法等もあるのでありまするから、そういう見地からも、公安調査庁が来ておるのでありまするが、どういうふうにこれは考えておられるか。そういう点について所見をただしておきたいと思います。
  55. 藤井五一郎

    説明員(藤井五一郎君) お答えいたします。  全学連の名において行なわれる学生運動は、最近だんだん矯激を加えてきておるように思われますので、わが公安調査庁といたしましては、破防法の観点からいたして、これを調査する考えでおります。
  56. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 ちょっと関連質問をいたしたいと思いますが、実は、今まで国会の神聖及び尊厳ということについての西郷委員デモに関する御質疑があったのであります。私は、それに関連しまして、国会のみでなくして、地方の都道府県議会あるいは市町村の議会、これらの面におきましても、端的に申しまして、冷静な審議を阻害する幾多の事例が今日まで現われておるのであります。地方自治体の議会というものの冷静な審議が、あるいはデモにより、あるいは、現実の問題として二、三の事例をあげましても、農薬をぶち込んでみたり、あるいは石を投げたり、あるいは議場内に入って審議を未了にしてしまったり、あるいは全然審議不能にしてみたり、または、場合によりましては、どうしてもその村で村会あるいは町村会が開けずして、隣村まで行って開いたり、あるいは地方事務所の中で開くというような、幾多のいわゆる議会軽視といいますか、議会の尊厳を害するところの事例が今日あるのであります。その一つ一つの理由は、あるいは町村合併の問題であったり、あるいは基地問題であったり、または執行部提案のいろいろな給与条例その他の問題が幾多ございますけれども、何はともあれ、大局的な見地から見まして、国会同様な都道府県議会、市町村議会というものが、どうしても冷静なる雰囲気の中において、平穏なる中において行なわれていくということが、これは日本の議会政治の根本であると私は信じております。そのような面から見て、いわば地方行政官庁として担当せられておって、そういった事例があることについて、自治庁としての立場から、どのような所信をお持ちになり、どのようなお考えを持って指導されておるか、この点を伺いたいのであります。  第二点は、これは警察関係にお伺いしたいのでありますが、最近の新聞報道を見ますと、これは基地問題に関連をいたしておるのでありますが、東京都の新島の問題であります。これも、今申し上げましたように、あるいは議場の中にすわり込みをしておる事実、あるいは投石があった事実、あるいはその他執行部をいわば軟禁をしたと申しますか、新聞報道によりますから、私が直接調べたわけではありませんけれども、村長さんあたりが飯も食わないで、八時間も監禁あるいは軟禁状態になったというような等々の事実の中に、いわゆる村会の審議というものがともすれば軽視されておる現実にある。この間において、執行部または議長の要請による警察官の出動あるいは要請の事実ということもあるやに聞いておりますが、非常に警備力が不足であって、非常に不測の事態も起こるのではないかとまで心配せられておる。この間におきまして、警備状況において万全を期せられておるかどうか。あるいは、いわば村当局、議会当局との密接な連携のもとに冷静な審議が行なわれるように、いわば立ち戻るといいますか、冷静さが取り戻せるように現在行っておるかどうか。繰り返して申しますが、警備力の点でどうであるか。あるいは十分の自信を持っておいでかどうか。あるいはその後の事態におきましては平静または平穏裏に村議会等が行なわれるような状況にあるかどうか。この点を警察関係にお伺いしたいと思います。
  57. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいま鍋島委員の御質問でございますけれども、地方議会におきましても、もとより何事も起こらず、脅迫されず、自由な意思で公正な審議をするということが原則でございまして、当然なことでございまして、御趣旨ごもっともでございますが、これを立法措置にするかどうかということは、なお現在の地方の実情その他を慎重に検討をいたしまして、なお事実立法措置によらなくても十分果たせるかどうかという点も勘案いたしまして、十分慎重に検討いたして参りたい、このように思っております。
  58. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 新島におきまして、ミサイルの試験場設置の問題をめぐって、反対派あるいは条件つき賛成、いろいろその立場によりまして微妙な状況にあるのでございますが、この問題につきましては、だいぶ前からの問題でございまして、警察といたしましては、新島における署員は、署長以下十六名、との署長以下があくまでも関係者に話をいたしまして、違法な行為に出ないようにというようなことで、非常な努力をして説得をいたしておるのでございます。先般村議会の議場あるいは廊下に反対派の者が相当数すわり込んでこれを妨害する、こういうような事案があり、さらに、その後新島の村長が軟禁というような状態で、数時間反対派にねばられる、こういうような状況があったのであります。また、これに対して賛成派の方では、そういうことではいけないということで、いろいろな動きに出ようとする状況がございました。先般警視庁から一個小隊、約三十数名でありますが、これを派遣いたしまして警備力の増強をはかった次第でございます。何にいたしましても、ああいうような島のうちのことでございまして、島の者は、賛成派、反対派といいましても、大体顔見知りの者であり、また遠い近いはありましても、縁戚の者が非常に多いのでありまして、こういうような状況でありますので、警察といたしましても、極力村民の従来の気持が将来そこなわれることのないように、あとにしこりを残さないようにという意味合いからも、極力違法の行為に出ないようにということを説得しているような状況でございます。なお、そういうような特殊の事情ということから、村長あるいは村会議長、こういうような人たちも、こちらの方で一般的に見られるような強い態度に出るということもできないような状況も見受けられるのでございます。そこらに、警察としましても、いろいろ中に立ちまして、平穏に事が済むようにということで努力している次第でございます。  将来のことにつきましては、私は、まだそういうような微妙な状況にございますので、このまま平穏に済むという見通しを申し上げるわけにはいかない状況でございまして、今後の事態を勘案いたしまして、警察といたしましても適当の措置に出たい、こういうふうに考えております。
  59. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 これは、自治庁に伺いたいのでありますが、ただいまの政務次官の御趣旨ごもっともと存じます。私もそう思います。ただ、地方議会もやはり国会同様、あくまでも一つ平穏裡の中に議事の審議が行なわれるように、これは、国会のみが、最近二十七日のデモ以来国会の神聖あるいは尊厳ということが話題になっておりますが、やはりどんな村議会であろうと、市町村議会、都道府県議会は、すべてこれはその地域にとって最高の権威なのでありますから、あくまで平静のうちに、かつ冷静のうちに審議が円滑に続行せられることが、私は議会政治の根本であると思います。これが阻害されたならば、最も重大な日本の政治上の問題になるということを痛感いたしております。  そこで、その間におきまして、いろいろ自治庁の御指導の中に、議会運営の法規なり、あるいはたとえば不測の事態があったときの、これは概念な事態でありますが、警察官要請というふうな点に関する手続、あるいはそれに伴う執行部対議会の権限、そういう点についてまだ御指導十分ならざる点があり、また周知徹底していない、一般の住民の方に徹底していない点があるいはあるのじゃなかろうかという点、私は、一つさらに、自治庁においてどういうふうにお考えであるか、この辺の御所見を承りたい。たとえば、住民投票の問題等も新島の問題で出ておりますが、かりに住民投票をした場合において、法的な強制、法的な力というものがあるかどうか。議会との関係において、それをどういう調節をとるかというような点は全然わからないで、ただ住民投票が行われれば、ともすればそれが決定線になるというように解釈されておる面もある。この点の一般の周知といいましょうか、PRと申しますか、常識と申しますか、こういった点もかねて、一つ所見を承っておきたい。
  60. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいま鍋島委員質問の御趣旨は、全然同感でございまして、地方議会の尊厳を守りまして、そうして公平妥当な、何物にも侵されない審議をするということが民主主義の根本でございますので、これが妥当に行なわれるように願っておる次第でございます。実を申しますると、大体地方の自主性を尊重いたしまして、そうして地方議会議長警察要請なんかは職権になっているわけでございますが、これは地方議会にまかしておりまして、われわれの方からあまり勧告などしたことは今まではございません。ただ、地方吏員の講習あるいは地方の幹部の講習会やなんかの際におきまして、そういう権限があるというようなことにつきましては、適時これに対しまして啓蒙はしているつもりでありますが、その程度でございまして、まだそういったような干渉はしたことはございません。私ども、できるだけ地方自治の建前を尊重いたしまして、自治体の良識に待っておるという態度であります。  ただいまもう一つお話の、新島の住民の直接投票の問題でございますが、この点は、御承知通りに、直接投票の効果のあるのは、地方自治法の規定で限定されておりまして、あるいはリコールの問題とか、あるいは特殊の財産処分の問題とか、そういったようなものに限定されておりまして、ただいま伝えられるような、新島の、ことに国家がそれを使用するというような問題につきましては、直接投票につきましても、全然法律的には効力は持っていない次第でございます。この点は、いかなる決議をいたしましても、住民投票いたしましても、住民投票の規定もございませんし、それからまた、その法律上の効果もございません。これははっきりと申し上げておく次第でございます。
  61. 占部秀男

    占部秀男君 今の鍋島さんと、それから西郷さんの質問関連して、柏村さんにお伺いしたいのですが、先ほど西郷さんの、立法化、規制をしなければならぬじゃないか、こういうようなお話の中で、長官は、こんなような状態が急速に改まることができない限り、国会の権威を保持するために立法化をする必要がある、こういうことをあなたは答弁されておる。これは非常に重大な答弁であると思う。というのは、私の考えるところでは、国会の権威を保持しなければならぬということは、これはまあ自民党だけでなく、社会党であろうとどこであろうと、国会の権威を保持しなければならぬという立場は、これは明確に私たちもそうであろうと思う。しかし、国会の権威を保持するためには、二つ私は内容があると思う。一つは、あなたの言われるように、あるいはそうかどうかはわからぬけれども、いずれにしても、警察的な治安的な何らかの規制措置をする、そういうような面もあると思うけれども、それよりも大きな点は、ああいうようなデモが起こらないように、国会の中の政治のあり方というものを民主的にやっていかなければならぬという点が、これが一番大きな点であると私は思うのでありますが、政治のあり方いかんによって、やはり今日の民主的な法律のもとでは、大衆的に集まる場合も、これはあり得ることであり、特に請願権というものが認められている以上、これは基本的な人権として、国会以前の問題としてもこれがあるわけです。ところが、あなたは急速に立法化する必要があると言われているけれども、そういうようなあなたの考え方は、国会の権威を保持するためには、何らかの警察的な規制をすればいいんだ、こういうような考え方でそういうことを言われておるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  62. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) あるいは言葉が足りなかったかと思いますが、私は、目下衆議院議長から提案されて御検討のようである。しかし、こういう事態が起こらないようにするためには、国民の良識というものがもっと発達しなければいかぬ。私は、国会の中で行なわれる問題は皆さん方おやりになることで、国会の運営の仕方が民主的であるとか、非民主的であるというところに私どもが口をはさむべき問題ではないと思います。ただ、あのような大衆行動が起こらないようになるというためには、国民の良識というものがさらに発達して参らなければならない。また、それを急速に期待できないとするならば、少なくとも大衆運動を指導されるような人たちが高い良識を持ち、指揮能力を持って善導されることが好ましい。しかも、それも望めないと、それもなかなか急速には望めない。しかも、一方において非常な先鋭な分子がある。また、それで国会構内への乱入というようなことを防いで、そうして平穏な国会の審議というものを確保しなければならないということであるならば、規制というようなことは本来好ましいことではないけれども、そういうこともやむを得ないのじゃないか。現段階として、もし警察にどうだと聞かれれば、そういう法規があることが望ましいということを申し上げたわけであります。警察の規制があれば国会の神聖は保てるというようなことは、毛頭考えてはおりません。本質的な問題とは別だと思います。
  63. 米田勲

    米田勲君 私は、警察長官先ほど答弁の中から、二、三の問題について質問をいたします。  今、占部委員から質問のあったことでお答えがありましたが、そのお答えを聞いても、なおかつ私は、あなたの見解をはっきりさしたいと思うのですが、先ほど新しい法律によってデモ等の規制を行なわなければならぬのではないかという西郷委員質問に対して、国民の良識が高まらぬ限り云々という言葉を使っておられる。一体良識が高まらないという、良識とは、あなたはどういうことをお考えになっておるかどうか、こういうことであります。さらに敷衍して申しますと、この間の、二十七日に起こった安保改定を阻止するデモ的な現象になった請願行動の発生は、単なる過激思想を持った過激分子がまじっていたから起こったのであるというふうにのみ考えておるかどうかということが一つ。  それから第二には、警察の現在の定員では、どうも負担が重過ぎて警備が十分でないと、こういうお話でありました。ところが、その前提に将来起こり得る事態を予想しておられるわけです。ところが、将来起こり得る事態というのは、だれしもわからないことであります。もっと膨大な問題が、事件が起こるか起こらないかということは予想つかない。そういう状態でありますから、起こるとか起こらないとかいう予想は、あくまでも主観的であります。そういう主観的な立場に立たざるを得ないような将来の問題を見通して、警察官の現在の定員では警備が十分でないという言い方をされるのは、一体ここ近来警察官の現定員では警備が十分でなかった、そういう事態が具体的にあるのかどうか。そういうものなしに、ただ印象的に、主観的に、現定員では警備が十分ではないと言われるならば、はなはだ不見識なことだと思うのです。それをお聞きいたします。  第三番目には、結論的に言えば、良識が高まらなければとか、急速に期待ができなければという、いろいろな前提がありましたけれども、結局、あなたの言葉は、少なくともニュアンスは、現行法以外に新しい法の規定を期待をしているような、そういう印象的な、速記録を見れば言葉がはっきりしますが、そういう印象を私は強く受けました。そこであなたは、現在の警察官の定員をいかほどふやせば警備が十分になると判断をされるのか。  それからもう一つは、あなたは先ほど警備態勢はもっぱら防御態勢であった。その理由に、事態を混乱に陥れないためにという配慮をされたことを前提にされているわけです。現行法規があって、その現行法規で最善を尽くして十分な取り締まりをやって、なおかつ問題が残ったというのであれば、私は、別な問題になるのであるが、現行法規で、この岡の二十七日の問題を百パーセントその法規を適用して、十分に警備に当たり、取り締まりに当たったというふうには考えられない、私の立場から見ると。しかも、現行法規がどのようにあろうと、新しく法親を作ろうと、あなた言ってるように、事態を混乱に陥れないためにということを常に考えるなら、それはどんなに、警察官の定員を百万にしても同じことであります。事態を混乱に陥れないためにというのは言いわけであって、十分に現行法規を発動して取り締まり態勢をしがなかったあなたの責任をこの言葉によってすりかえようとしているように私は考えるわけです。新しい法規の制定を期待しておるらしいあなたの見解は一体どういうものなのか、再度お尋ねをしたい。  それから、あなたに最後に一言お聞きしたいのですが、憲法の問題であります。憲法国民の権利義務の問題のところには、いろいろ慎重に書かれてあります。取り締まればいいとか、法律を作ればいいとかいうような簡単な扱いには、憲法の中でこの国民の権利義務の問題は取り扱われておらない。憲法の十一条には、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」ということをまずうたって、次の第十二条には、「この憲法国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」ということを強く前にうたって、「又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」というふうに消極的に押えているわけです。十王条には、このことをさらに、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」というふうにちゃんと規定してあるわけです。これは、取り締まりを急ぐのあまり、重大な国民の基本的人権をむやみに抑圧してはならないという憲法の精神であります。さらに、この憲法から生まれてきている刑事訴訟法の問題についても、第一条には、「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ」、こういうことを前段で強くうたって、「事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」というふうに、びしっと押えているのです。この「公共の福祉の維持」ということがかりに侵されるか侵される危険があるからという見解で、直ちに法をもって憲法に保障せられておる個人の権利を押えようとするような考え方は、この刑訴法の第一条に定められた、「個人の基本的人権の保障とを全うしつつ」という精神にも反することにもなるわけです。さらに、警察官職務執行法の現行法の中にも、わざわざ第一条に、その行き過ぎをしないようにうたってある。「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない。」国民の権利に対する規制を加えようとするときには、非常に慎重に、最大限の努力を払って、人権を守ろうとする憲法の精神から、これらの法律は発してできている。あなたの言うように、この間の二十七日のあの事件を、しかも、私に言わせれば、現行法規を百パーセントに発揮して取り締まりをやったというふうには見られない。先ほど警視総監は、私の言ったことについてあいまいなことを言っておるが、私は、警察官うしろから、初めから終わりまで立って見ておった、だから、私のこの目に狂いはない。百パーセントに努力して、それを阻止するというあなた方の方針をやってはいないということは、私はこの目で見ている。そういうふうに実際の活動をやりながら、また新しい法律の規定を期待しているというような考え方は、憲法やその他の法規の精神から見ても、どうも警察庁長官としては不穏当な考え方であり、行き過ぎな考え方であると私は思うのです。あなたは、こういう私の見解に対して、どういうふうにお考えになっているか、慎重にはっきりお答えをいただきたい。
  64. 柏村信雄

    政府委員柏村信雄君) まず第一に、良識とは一体何であるかというお尋ねでありますが、良識は私は良識であるとお答えせざるを得ない。ただ、二十七日の事件の問題から見れば、とにかく国会乱入するようなことを平気でやるというような考え方でなくなるということであります。また、指導者層について言うならば、そういうことを大した問題ではないと考えるような考え方、そういうことを申したつもりでございます。  それから第二の、過激分子のみのやったことかということにつきましては、これは、(米田勲君「発生したのはということだ」と述ぶ)過激分外がおったためにあれだけ発生したのかということにつきましては、目下警視庁において、十分に刑事事件としても検討を重ねておりますので、この際、結論的に申し上げることは差し控えたいと思うのであります。  それから警備力不足の問題につきましては、私、慎重にお答えしたつもりでございますが、ああいう事態についてのみ考えて警察力不足、警察力が大きくなれば、ああいう事態は起こらないで済むという趣旨で毛頭申し上げたのではありません。ああいう事件もあるし、さらに、特に交通問題であるとか、あるいは青少年問題であるとか、幾多の警察の事案というものが複雑をきわめておる情勢であるから、現在の警察官の数では非常に負担が重いということを申し上げたのであります。もちろん、警備についても、多い方が使いよいということはございますが、警察力が不足であったために、現在では不足であったためにあれは守れない、もう何万ふやしてもらえれば守れたという趣旨で申し上げたつもりはございません。  それから、法制を期待するのは非常にけしからぬというようなお言葉でございますが、現に衆議院議長という方から四派に提案をされているということに基づきまして、そういうことで、円満にと申しますか、この最高権威である国会においてそれが取り上げられ、慎重に審議されて、りっぱな法律ができるのなら、それはけっこうであるという趣旨で申し上げたので、私ども、今のところ、政府提案で出そうという考え方もございませんし、また、こういうものでなければならぬといって、議長さんの方に申し入れをしているわけでもございません。これは、国会の皆様方が御審議になり、先ほど憲法の問題もいろいろお話がございましたが、そういうことで、十分に人権を尊重し、国民の権利を守りつつ、なおかつ国会というものの平穏な審議というものが確保されるような道として、法律ができるならばけっこうなことであるという意味で申し上げておるわけでございます。  それから、制止の仕方が万全でなかったと、十分のことをやらないでおった、それで、なった責任をすりかえておる、というお言葉でございましたが、私は、警視庁警察官がやったことは、総体的に見て、非常な努力を重ねてやっておったように認識いたしております。もちろん、制止の方法として、ああいう完全な防御態勢のものがいいのか。事態によっていろいろと私は方法は考えられると思います。しかし、当日警視庁のとりました警備措置というものは、遺憾ながらああいう事態にはなりましたけれども、あれ以外の方法によって、はたしてはなはだしい犠牲を生じないで済ませ得たかどうかということは、非常に疑問に思っております。この点は、さらに検討しまして、今後の警備態勢について万全を期するように努力をいたしたいと思いますが、警視庁のとった態度、また、第一線警察官は、私は実によくやってくれたというふうに考えておる次第でございます。決してあれは非常にルーズであった、しかも、それを警視総監も私も見のがしておった、そしてそういう問題を、警備力が不足であったからという、あるいは法律がなかったからということにすりかえようなんというさもしい根性は、絶対持っておりません。
  65. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 少し私の考えを申し上げたいと思います。  ああいうような二十七日の国会への乱入事件、こういうような事件が起こりましたことにつきましては、まことに私どもも遺憾に存じておりまして、将来こういうような事件が二度とないようにということで、私どもも真剣に検討をいたしておるところでございます。当日は、警視庁といたしましても、従来にない数の、五千名という警察官国会周辺に配置いたしまして、懸命の努力をいたしました。三百数十名というような負傷者を出しながら、懸命の努力をいたしたのでございます。百パーセントの法の適用をやっておらないじゃないか、こういうようなことを言われまするけれども、私は、あの当日の状況にかんがみまして、なし得る精一ぱいの努力をいたしておると思うのであります。ただ、ああいうような場合に、数万の集団に対しまして、数千の警察官がこれに対処するという場合に、技術的に非常にむずかしい点があることは、御想像いただけると思うのでありまして、ああいうような場合に、たとえば、警棒を使う、あるいはその他の強力なる武器を使うというようなことは、はたして適当であるかどうか。そういうような武器を使って、死傷者をさらに一そうたくさん出してこういうような事態に当たる、こういうことは、決して私は妥当なことでないと思うのでありまして、そういうような武器の使用というようなことは、ああいう際にはむしろ避けて、ほんとうにお互いの自制心、これで事態を収拾していくべきであると、こう思うのであります。そこで、ああいうような事態が再びないようにということで群検討いたしまして、最も問題点として考えられますことは、要するに、ああいう国会に対する請願という形で行なうならば、どれだけの人数を集めてああいうようなデモ行動をやってもいいのか、(「質問に答えてくれればいいんですよ」「御意見を承る機会は別に……」と呼ぶ者あり)質問に対してです。(「発言に対して……」と呼ぶ者あり)もうちょっと待って下さい。(「長官にということで、初めから指定してきておるのだから」「そういうことを言うと、また質問が重なってくる。」と呼ぶ者あり)御質問に対する私の気持を申し上げます。
  66. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) あなたの名前を指して警察長官質問があったので、それであなたお答えになっていると思いますから、その範囲に限定をして、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  67. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 御質問になりました例の立法問題に関連して、私は申し上げておるのであります。  そこで、ああいうような事態が再び起こらないようにするためにということで、いろいろ検討いたしまして、最も問題点として私どもの考えておりますことは、要するに、国会に対する請願という形で行なわれるならば、ああいうような集団的なデモ的な行為による請願あるいは陳情ということが容認されるのかどうかという、その点をはっきりしていただきたいと、こういう気持を持っておるのであります。といいますのは、私の方としましては、やはり請願というのは、憲法に認められておるように、平穏にこれを行なうということでございますので、ああいうような、何千あるいは何方というものを集めて、請願あるいは陳情という名前で行動を起こすということは、これはいけないと、法に反する行為であるということで、私どもは取り締まりをいたそうというわけで、ところが、(「意見を言うから問題になる」と呼ぶ者あり)ところが、そういうような行為を行なわれる立場の方あるいは指導をされる方においては、そういうような請願という名前で行なうならばそういう行為もよろしいんだと、そういうことでおやりになる。そこで、相互に激しいもみ合いになるのでございます。でありますから、私どもとしましては、一番希望いたしますことは、請願という形で行なわれる場合に、ああいうようなデモ的な行為が認められるのか認められないのかという点を一つぜひはっきりしていただきたい。そういうような気持で、先ほどの御質問に対する考えを申し上げた次第であります。
  68. 占部秀男

    占部秀男君 関連質問の前に、委員長に要望しておきますが、総監がああいうふうなことを言われると、われわれの方もまたやらなきゃならぬことになるので、従って、あれはあのままというわけにいきませんから、あらためて一つ総監を呼んで、その点についてみっちり意見も伺いたいと思いますから、それを一つお願いしたいと思います。  それから、警視総監に二点だけ簡潔にお伺いしておきたいのは、先ほど議運のときに私の方で伺ったことは、時間的なズレじゃなくて、淺沼及び陳情団は、正面から入ったのじゃなくて、側面から入った。正面の隣の門から入って、全学連は、正面の門をぶち破って入ってきた。その点について、必ずしも明らかでないというようなあれがあったので、その点をはっきりしてくれと、私は、あの当時そこにいたのだけれども、淺沼及び陳情団は、側面から入ってきて、そうして門を締めた。ところが、それと、今度は時を違えて、あとから全学連の人は正門を破って入ってきた。それはまぎれもない事実なんだから、その点を明確にしてくれということを私は言ったわけです。その点は、調査してあれば、一つ言ってもらいたいし、また、調査してなければ、あとでけっこうですから、言ってもらいたいと思う。これが一つ。  それからもう一つは、当日の状況判断して、全学連の方があの正門を破ったというのが構内に入った一番早いやつです。その点は認めていますわね。そこで、ああいうようなことがなければ、あとでもってこっちからも側面からも、あるいはその他からも入ってくるというようなことは、私は起こらなかったと思う。全学連の方が門を破って入ったということが結局は動機になって、あちらこちらの形で出てきたと、私はこういうふうに思うのですが、全体のあの当時の状況から見て、総監はどういうふうにその点については判断をされておるか。この二点だけお伺いをしたい。  それから、柏村長官に要望ですが、あとでどうせやるから、要望しておきますが、どうも長官答弁は、だんだんあと下がりになってくるですな。僕が一番初めにあなたに質問したときは——西郷さんの質問は、国会でこういうものが出されているから、この問題についてはどうかということを質問したのじゃなくて、かような乱入騒ぎが起こったということ自体について、立法措置で規制する必要があるかないか、こういう点を西郷さんは質問したわけです。それに対してあなたは、立法措置が必要であるということを言われた。そこで、僕が質問したところが、そうじゃなくて、前段が二つも三つもあるということを言われ、さらに、米田委員質問に対する答弁としては、国会がそういう立法化をしているのだから、それは国会の方でやってもらって、それにはわれわれは賛成だと、それはもう、あなたが賛成しようとしまいと、国会で作ることは、何もあなたのお世話になるわけじゃないのだから、そんなことはよけいなことで、だから、そういうようなじり貧の御答弁にならないようにしてもらいたい。これは希望だけですから、答弁はしてもらわないでいい。
  69. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 第一点でありますが、ただいままでの調査では、社会党議員及び代表と認められる人たちが入りましたのは、中央門の、まあ入る所から見て左の、衆議院の正門というのですか、何ですか、そこからお入りになった。その際に、若干の者が加わって入ったかどうかということにつきましては、さらに検討いたしております。それから、最初に入りました全体の数が三百数十名と言いますが、これが門を突破して入りましたのは中央門でございます。それから、その中央門から入りました三百数十名の中には、全学連のみならず、組合あるいはその他の団体の激しい者が入っております。その点は、さらに調査をいたしております。
  70. 占部秀男

    占部秀男君 それから第二点の、中央門を突破されなければ、夜まで続いてああいうことにはならなかっただろうと、私は、当時の全体的な状況判断から見て、そう思うのですが、総監は、最高の責任者として、どういうふうにその点については判断をされておるかと、こういう点です。
  71. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 中央門から入られなかったら、ああいうふうにならなかったのじゃないかと、こういう点でございますか。
  72. 占部秀男

    占部秀男君 ええ、当日の状況から見て……。
  73. 小倉謙

    説明員小倉謙君) 中央門から入られなかったらということでございますが、その点は、私は、ああいうようなことが中央門でなかったら、当時の状況は、さらに変わった状況になったろうと思います。ただ、周囲の、たとえば総理官邸その他の状況相当激しいものであったということは、付け加えて申し上げておきます。
  74. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  75. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから委員会を再開いたします。国民健康保険の運用に関する件を議題といたします。
  76. 鈴木壽

    鈴木壽君 大臣、やはりさっきお話あった二時半までということなんでございますか。
  77. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) まあ大体そのあたりですけれども、十分やそこいらま……。
  78. 鈴木壽

    鈴木壽君 私、できるだけそれじゃお約束の二時半ということでやっていきたいと思いますから。従って、いろいろこういう国民健康保険の問題についてお考えをお聞きしたい点もございますけれども、きょうは、特に会計問題について一つお尋ねをし、また大臣としての、あるいは政府としての考え方もお聞きしてみたいと思います。  昭和三十六年度から全部国民健康保険が実施されるように、いわゆる皆保険という建前で進んでおられるのですが、およそ現在までの国民健康保険の運営からして一番問題なのは、やはりいわゆる国保会計の問題だろうと思います。仮りに三十六年度から実施しましても、今のような状態でこれがずっと進められていく限りは、やがては、その出発はした、しかし中途でまた脱落するものが出てくると、こういう事態も起るのではないかというふうに心配しておるものなんですが、特に私は、今の国保会計の中で、国の事務費の補助に対しての点をきょうお聞きしたいと思います。これに対して厚生省としては、どういうふうに現状をごらんになり、将来どういうふうに持っていくというふうにお考えになっておられるのか。まずこの点を一つお聞きしたいと思います。
  79. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 事務費は、お説の通り、非常に不足だという声が方々から承っておるのでありまして、今年度も、九十五円を百二十円までに引き上げるべく、財政当局と目下折衝中でございます。昭和三十二年度におきましては八十五円を五円、それから三十三年度におきましてはさらに五円、それから三十四年度におきましては五円、毎年五円ずつ上げているわけでございますが、これではとうてい間に合わない。こういうことで、百二十円に上げたいと、こういうふうに考えております。
  80. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと、今の大臣の御説明の三十一年度、三十二年度と、ずっと数字をおあげになりましたが、三十一年度では幾らになっておったのですか。
  81. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 事務費の単価でございますか。
  82. 鈴木壽

    鈴木壽君 単価でございます。
  83. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) ちょっとお待ち下さい。
  84. 鈴木壽

    鈴木壽君 じゃよろしゅうございます。三十二年度は八十五円でございますね、三十三年度が九十円、三十四年度が九十五円。
  85. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) さようでございます。
  86. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ三十一年度の分はいいでしょう、あまり前のことですから。そういうふうに五円ずつ上がっておるというような御説明でよろしゅうございますね。
  87. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) けっこうでございます。
  88. 鈴木壽

    鈴木壽君 来年度は百二十円にしたいと、こういうことでございますが、これは一つ大臣、単なる予算要求のそれでなしに、そうでないと、私はやっぱりさっき申し上げましたように、結局これは、この点から国保の健全なる発達ということがくずれていくんじゃないか。ほかにもいろいろ問題がありますけれども、そういうふうに思うのですが、それに対する御決意のほどを一つ伺っておきたいと思います。
  89. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 財政当局との折衝でございますから、私どもは、できるだけ強い決意を持ってこれに当たりたい、かように考えております。
  90. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは私、二、三の県あるいは市についての調べもあるんですが、これはまあ今、時間の関係で、そういうこまかいところまで入っておる余裕がないと思いますから省略いたしますが、国の厚生省から出ております国民健康保険事業状況の三十二年度の、こういうのを見ましてもですね。これは事務費と事務費に対する国の補助、その問題がやはり大きな問題として指摘されなければならぬと思うのです。三十二年度では単価が八十五円と、こういうようになりましたけれども、しかし、町村でそのために支出しておる金というものは、相当その計算でいったんでは追いつかない程度の領になっておって、事務費の全部が全部、いわゆる国が考えておるような単価にできるだけ合わせようと、そういうふうな運営をしておらないというようなところもあるいはあるかもしれませんが、しかし、なんといっても、この単価が低いために、町村に対して非常に大きな負担を与えておる。こういうことはいなめない事実だと思うのです。この表によりますと、国会全体で事務費に要した金の被保険者一人当たりの領は、百三十一円四十六銭になっております、三十二年度において。ところが、国の補助というものが八十四円五十六銭だと、こういうことになっておりますから、割合をとってみますと、使った経費の約六五%しか国が見ておらない。こういう結果に私はなっておると思うのです。で、建前上事務費については、単なる一部補助でなしに、全額を国で負担をするんだ。こういうことがはっきりうたわれておるのですから、さっき言ったように、多少運営の面で、あるいは事務費の使い方の点でルーズな団体もあるいはあるかもしれませんが、しかし、全体としては、やはりどうしてもかかった金だけを国では見てやるというふうな建前からすると、ずれたことになっておると思うのですが、財政当局との話し合いも、これはいろいろ問題はあろうと思いますけれども、大臣、これは、国保のほんとうの皆保険というような建前からしても、また、それを健全に発達さしていくという建前からしても、ぜひその百二十円程度の事務費の補助単価をきめないと、これはやはり私は大へんなことになると思うのですが、重ねて一つお考えのほどをお聞きしたいと思います。
  91. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 十分御趣旨の線に沿いまして努力いたします。
  92. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 先ほどの三十一年度の事務費の補助は、六十八円六十銭でございます。三十二年度が八十五円、その間ちょっと飛んでおりますから一つ……。  それから、ただいま大臣がお答えになりましたように、この事務費の問題は、実際市町村で出しておる額、これは調査したわけでございますが、しかし、その出しました額そのものを、そのままうのみにするわけにもいかない。その辺をどの程度にこれを踏むかということにつきまして、いろいろ意見もございまして、先ほど御指摘のように、まあ結果から見ると、低いじゃないかというような額にも今日なっておるわけでして、私どもも、何とかしてこれを実際に妥当な支出まで持ち上げていきたいと言って、予算要求を現にやっておるわけであります。先ほど大臣からお答えがありましたように、来年度は百二十円の要求を出しておるわけであります。これは、私どもとしては、何としてもがんばりたい、かように考えておりますので、あわせてお答えいたしておきます。
  93. 鈴木壽

    鈴木壽君 今の局長のお話でございますが、この百二十円という線は、どういう計算に立っておやりになったか、ちょっと今わかりませんけれども、しかし、従来の八十五円とか九十円、九十五円ではとうていまかないきれないだろうということについては、これは御異存はないわけでしょうね。
  94. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 私どもも、十分でないと考えております。
  95. 鈴木壽

    鈴木壽君 それから私も、いわゆるこういう統計に出てくる役場あるいは事務所で使う金全部が、その使われた結果をそのまま妥当な使い方であると、こういう前提に立ってはおらないんです。先ほどもちょっと触れましたように、中には、そこに働いている人の問題あるいはいろいろな金の使い方について、もっと適正であるべきだというような面も指摘されるところが私はあると思うのです。しかし、私先ほど申しましたように、各二、三県のそれを見ますと、どの市町村においても、この経費の点においてはみんな持ち出しになっているという点からしますと、日本国中どの市町村においても、全部が不適正な、妥当ならざる使い方をしているかというと、そこまではやはり言えないと思いますね。ですから、やはり国の補助単価の低いところは、これはどうしても是正してもらわないといけないと思うのですが、その百二十円とお立てになった、今要求なさっております根拠、これはあまりこまかいところまで要りませんが、そういう点、それからもう一つは、三十三年度ではどの程度の事務費と、国から出ておる国庫補助との関係において、どういうふうな数字になっておるか、もし三十三年度分についてお調べがあるのでしたら、この際、あわせてお聞きしたいと思います。
  96. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 三十三年度の全国の決算というのは、まだちょっと出ていないそうでございます。これももうちょっとお待ち下さい。三十五年度の要求は、大体前年度、三十四年度で私ども要求いたしました額が百十五円でございます。そこで、それの昇給率というものを見込みまして、そうして大体百二十円見当出したわけであります。昨年百十五円要求いたしましたが、九十五円というところにきまったわけでございます。私どもは、そういうことではどうも不十分だと思いますので、今年はその額を、昇給率を見込みまして百二十円というので要求しておるわけであります。
  97. 鈴木壽

    鈴木壽君 三十一年度の国保会計について、これは、あなたの方と自治庁と一緒になっておやりになったのか。あるいは自治庁だけの御見当なのか。前に中間報告というので出ております。これによりましても、三十一年度会計において、その結果から見た補助の単価のあり方、少なくとも百十五円以上なければならぬ、こういうふうに出ておるんです。そこで、来年度はあなたの方で百二十円を要求なさっておるというんですから、それよりも五円上回った数字で要求されておるわけですが、いろいろ、何といいますか、人件費の問題、特に人件費がかさんでいくような状況等からいたしますと、私も的確な数字を持っておるわけではございませんが、主観的な考え方ですれば、百二十円でも、なおかつ私は足りないんじゃないか。あなた方は妥当というふうに言われておりますが、妥当にするために百二十円の線を出しておるんだと、こういうふうにおっしゃるんですが、私は、百二十円でもなおかつ足りないということが言われるんじゃないかというふうに考えておるんです。しかし、一挙に完全にということもできがたいと思いますから、せめて要求の百二十円は、ぜひとも一つこれは確保してもらわなければならぬじゃないだろうか。大臣は、先ほど大いにがんばると、こういうふうに力強くおっしゃっておりますが、三十五年度あたり、今年は九十五円、来年は百円というくらいの線で押しつけられませんか。大臣、どうですか、この点。
  98. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) そのようなことのないように、毎年々々三カ年も続いて五円々々という、前例のような計数を示しておりますので、私も非常に不安感を持っておりますが、この不安感をなくするように、一つ御鞭撻と御指導を願いたいと思います。
  99. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、大権もちょっと御不安に思っていらっしゃるようですが、大蔵省という所は、やはり実績がものを言う所だと思われるので、今さら一挙に二十五円とは何ごとだ、今まで五円ずつ上がってきておるじゃないか、こういうことで押えつけられる心配もあるんじゃないかというふうに私も考えるんですが、この点、さっきも申しましたように、あまりこまかいところまで——私は相当数字的には各県なり各町村に対してとったのもありますけれども、今それを一々どうのこうの言っても始まらないと思いますが、一つこの点は、ぜひ大臣の来年度に対する予算要求の重点の一つとしてこれはがんばってもらわないと、私として、御努力なさるという御決意のほどは伺ったんだけれども、それだけでは私は安心できない。もしそれができなければ、せっかくやっても、みんな投げてしまいます。今まで保険者になってやっておりながら、なぜ一体一時急速に団体の数が減ったかというと、これは、そういうところが最大の原因なんです。七割給付の問題もあり、あるいは国の納付費の補助の問題ももちろんあります。真剣に国が責任を持って負担をすべきいわゆる事務費に対して国がやってくれない、それの持ち出しが二百万というか三百万というか、多い所では相当出ているわけですが、そういうことが繰り返されると、これはとてもやっていけないのだ。もしその市町村において一般会計の方から繰り入れることができるような市町村であれば、それはまたがまんをしてやっていきますけれども、今は、それすら大きなことは私は望めない段階になっておると思う。そうしますと、手をあげて、これはやめなければならぬということになって、せっかくの国民皆保険というような掛け声のもとにやった国民健康保険三十六年度からの実施ということは、形は整うかもしれませんが、実質においてうまくなくなる。従って、これは地域の住民に対しても私は非常によくないことになると思いますので、これはほんとうに、私冗談で、おもしろ半分に言っているのではなくて、この点一つ解決しないと、これは渡邊さん、大臣としてのかなえの軽重を問われなければならないという問題にもなりかねない問題だと思いますが、一つがんばっていただきたいと思います。まあ大臣、非常な御苦心をなさっているので、最後に一言だけ聞かせてもらえば、私はそれでやめます。
  100. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 大いに努力さしていただきます。
  101. 鈴木壽

    鈴木壽君 これについて自治庁の方に、こういう今の保険医の状況からしまして、どのようにお考えになっておられるのか。さっきも言ったように、私、前におまとめになった自治庁の考え方も大体つかんでおりますが、現在の時点においてどういうふうにお考えになっておられるのか、こういう点を一つお聞きしたいと思います。
  102. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 国民健康保険組合の赤字財政の問題は、地方財政全体に関連を持ちます重要な問題だと考えておるわけであります。そういうことで、厚生省当局とも従来も連絡をしながら、その改善に努力をして参っておるわけであります。極端な問題につきましては、今後とも、私の方でも重大な関心を持っておりますので、努力をして参りたいと考えております。今もお話がございましたように、年々収入財源が一般についても要るわけでございまして、四・二%くらい地方財政計画でも見ているわけであります。そのほかに、給与改訂の問題が来年はあるわけでございます。そうしますと、両様の意味におきまして、私たちは、国庫負担率を上げてもらわなければならない、こういう気持を持っているわけでございます。人件費についての補助全体について、大蔵省との間に話もいたしておるわけでございますけれども、特にこの問題につきましても、そういうような点について折衝をしたいと考えております。
  103. 鈴木壽

    鈴木壽君 この問題については、もちろん厚生省の方と十分お話し合いを進めて、これをどういうように改善していくかということについては、御検討なさっておられると思うのですが、その点どうですか。
  104. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 厚生省とは連絡を重ねております。
  105. 西田信一

    ○西田信一君 ちょっと、せっかくの機会でございますから、大臣に一つ意見を伺っておきたいのですが、それは、昨年の法律改正で、調整交付金という制度が新たに生まれました。こういう制度ができた趣旨は、要するに、国民健康保険が皆保険の目的に沿うように、要するに、財政力の乏しい所に対して調整をしてやろうというところにねらいがあったと、このように私ども理解をしておるわけです。それで、この制度ができまして一年足らずですけれども、これが運用された結果を見ますと、必ずしもそのように参っておらない面があるように思う。こういう制度は、十分趣旨が生かされなければならぬと思いますけれども、これは、十分その趣旨に沿うておらない面があるように思いますが、この点は、将来にわたってどのようにお考えでございますか。財政調整交付金という制度が生まれましたその精神からいって、将来どのようにお考えになっておられますか、その一年間の体験を通して。
  106. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 便宜私から御答弁申し上げます。  調整交付金ができました趣旨は、全く西田委員の御指摘のような趣旨でできたわけでございます。これは、新しい法律が本年の一月一日から実施になりまして、いわば昨年度末近く実施になったわけであります。それから調整交付金関係の政令、省令等を作り、それから地方へ年度末の間に配付するというような、非常に忙しい行政をやったわけでございます。そういうような点もございまして、今日振り返ってみますと、必ずしも昨年度やりましたものが十二分にその趣旨に沿っていたとは言えない面もあったかと思います。これは、虚心たんかいに私どももさように考えております。しかしながら、調整交付金を受けました団体の数は、たしか九〇%くらい町村には行っておりますから、まあまあその数の面においてはどうやらいい。しかし、ほんとうにかゆいところに手が届いたかという点は、どうも初年度のせいもございまして、またいろいろ力の及ばなかった点もあったかと思います。今年度は、いよいよそれが近づいてくるわけでありますが、これは、御指摘のような点も私どもも感ずるところがございますので、一つこれから関係の当局間に話し合いをいたしまして、ぜひこの調整交付金制度が生まれた趣旨を十二分に、しかも重点的に盛り入れるようにいたしたい、かように考えております。
  107. 西田信一

    ○西田信一君 それでは、もう少し聞きたいのですけれども、そのお考えは私ども了といたします。私は、この調整交付金制度というものが、たとえば皆保険の制度、皆保険の方針を立てられましても、実際に非常に、何といいますか、民度の低い、負担力が乏しい、ことに町村単位にこの制度が行なわれております関係上、そういう所はとうてい……。要するに、疾病等は、これは負担力のいかんにかかわらず平等に出るわけです。むしろかえってそういう所の方に疾病が多いということも言えると思うのですが、ところが、それが要するに発生する病人に対して、どうしてもやっぱり必要な予算というものを盛らなければならない。従って、負担力の限度以上に重い保険税の課税をするような予算を組む、こういうようなことをやられておるために、結局負担力以上の課税でありますから、滞納がいかに努力しても生ずる、こういうこともあると思う。そういうような所に対しまして、今度はやっぱり一面においては収納率というようなことをやかましく言われるために、実際に怠慢でその収納率が上がらない所と違った、全くそういう負担力のないような所、こういう所はとても収納率が十分に上がらない。そのために、せっかくのその制度がそういう面からの制約を受けるということになって、踏んだりけったりみたような格好になっている所が相当多いと思うのですね。また、実際その事業をやっておらない所は、始めようといたしましても、そういうような面で救済といいますか、措置が講ぜられないために、結局その事業は、皆保険の方向に向かって踏み出したいのだが、踏み出せないという所が非常に多いと思います。そういう所にこそ、この調整交付金制度というものが活用されてしかるべきだと思うのですけれども、具体的なことを申し上げましたが、そういうようなお考えをお持ちになっておられるかどうか、一つ伺っておきたいと思います。
  108. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 確かに、お話のように、病気というものは、貧乏な所であろうが、どこであろうがやって来るので、負担力をこえる場合が間々あり得るわけであります。従いまして、そういうものを調整するためにこの調整交付金制度ができたわけでありまして、特に調整交付金制度の中で、大体二割見当を私どもは特別調整交付金と言っていますが、特別調整交付金の方で、そういう気の毒な町村財政を救うために特に運用をうまくやれば、非常にこれが生きてくる、かように考えておるのであります。そういう点につきましては、先ほど答弁申し上げましたように、必ずしも昨年十二分の力もなかったということを反省しております。ことしはぜひうまくやって参りたい。なお、そういう場合、収納率の問題でございますが、これは、どれだけ努力いたしましても、そういう情勢のもとではなかなか取れないというところがあると思います。この辺は、私どもも十二分に考えて参りたいと、かように考えております。
  109. 西田信一

    ○西田信一君 そこでもう一点、調整交付金に関してお聞きしたいのですが、要するに、医療費の平等負担という趣旨ですね。国民全体が平等な負担ということが理想だと思うのです。そういう点から申しますというと、ある地域において特別な医療費、特別な費用が加算されなければならないというような地域がある。具体的に申しますと、たとえば、北海道のごときは、普通の医療費のほかに、暖房費というものを加えなければならない。それだけつまり北海道なら北海道で生活をしている者は、特別な医療費を支払わなきゃならぬということになっておるのです。こういうのは、要するに保険財政の上から申しまして、あるいは患者の立場からも、非常な負担になっておるわけですが、こういうものは、やはりこういうような制度において平等な負担であるべきで、そういう措置がこの制度の上から考えられてしかるべきだと思うのですが、そういう点に対しては、どういうお考えでございましょうか。
  110. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 先般来、この問題につきまして、いろいろと各方面からお話を承りまして、十分に将来の問題といたしまして検討いたしております。
  111. 西田信一

    ○西田信一君 ぜひこれは御検討願いたいと思いますが、そこで、今いろいろなことをお尋ねしたのでありますけれども、調整交付金という制度が生まれました当時、この立法措置のときにおきましても実はいろいろ問題になった。調整交付金というものが、いわゆる医療費の見込み額の五分ということになっておるために、これが実際に見込み額ということによって十分に五分というものが満たされないという危険がないかというようなことが実は問題になりました。そして当時厚生大臣も、あるいは大蔵大臣も、五分というのは医療費としてはおらないけれども、もしも不足が生ずる場合には、これについては財源措置を講じて、これを補正するという意味の御答弁があったように私は承知をいたしております。ところが、その制度をたった半年の体験でありますけれども、すでに半年のあれで、一億数千万円も実際の実績からいうと不足を生じておる。こういうような結果になっておるわけでございまして、せっかく生まれました制度がそういう面から非常に、見込み額幾らということで、これが十分予算化されないというようなことになりましては、予算化されないじゃない、不足が生じましても、これは追加補正されないというようなことになりましては、これは非常に市町村の保険財政の上に大きな影響があると思うのです。そこで、すでに今年度そういう問題があって、この間の補正予算にもそういうものが現われるかと思ったところが、これが遂に現われないでしまったというようなことを考えますときに、この調整交付金の制度の五分という、これが確保されるかどうかということは、大きな問題だと思うのでありますが、大臣は、この点についてどういうふうにお考えになり、どういうように措置をされ、また、将来にわたってもどういうふうなこれに対するお考えをお持ちになっておられますか、お伺いしておきたいと思います。
  112. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 確かに調整交付金の五分相当額でございます。これは、大体見込みということになっておるわけであります。ただし、大きな食い違いを生ずるような場合には、政府において善処する。こういうふうに申し上げたかと思います。それで、現在約一億ちょっとやはり不足が生じておるように思います。しかし、五分といいますと、約三十数億でございます。まあそれの一部が約六、七億、六億何がし、まあそれとのにらみ合わせのものでありまして、どの程度をもって組まなければいかぬか、ほんとうからいえば、少しでも組んでほしいところでありますが、そういうことにはならぬこともございまして、今日は措置いたしておりません。しかし、将来の問題といたしまして、私どもは、できるだけそういう、まず見込み違いのないように組んで参りたい、見込み違いができました場合において、なるべく有利な方に努力いたしたいと、かように考えている次第であります。
  113. 西田信一

    ○西田信一君 今お答えになりましたけれども、それはちょっとお答えが違うのじゃないかと思うのです。今はっきり不足が生じましたのは、つまり半年分ですね。十何億でしたかに対しまして一億数千万円の不足を生じた。つまり、見込額からいえば、一割以上の不足額を生じたことになっているのです。本年度はまだ中途でありますからわかりませんが、おそらくはそういう結果になるのじゃないだろうか。と申しますのは、要するに、予算要求におきましても、また予算の査定におきましても、要するに医療費の二割という国庫負担額ですね。それを五分、その二分の一を要求されているわけでしょう、常に。また査定もそうなっている。ところが、療養給付費の方は毎年不足を生じている。これは、例外なしに、毎年十何億の不足を生じて補正をしている。だから、そういう要求をされて、そういう否定であるといたしますならば、それが十分に盛られておらない限り、その療養給付費の方の二割というものに不足を生ずる場合に、これに並行して、必ずこちらの方は不足を生ずることは明らかである。だからして、十分に見込んで要求するとおっしゃっても、それに上回っておくならばよろしいけれども、そういう要求をして、そういう査定をしている限りは、必ず不足を生ずることは明らかだ。そういうことであってはいけません。それならば当然、不足を生ずるものに対しまして、一割以上もできましたならば、これは補正をするのが私はあたりまえだ、当然そうしなければいけないと思うのですが、それがどうも等閑に付せられるということでは、せっかくの立法が死んでしまうのじゃないか、そういうふうに考えるわけです。その点は、重大な事態が生じたならば、たとえば一割も二割も三割も生じなければやらないということでは、これは、この法律が死んでしまうというものじゃないかと思うのですが、この点、もう少しそれを明確にされたい。そうして少なくとも療養給付費の二割と同じような考え方でこの予算措置をされないと、これは影響が非常に大きいと思うのですが、大臣、どうお考えになりましょうか。
  114. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 療養給付費の二割ということになっておりますから、十分に検討いたします。
  115. 鈴木壽

    鈴木壽君 今私、西田先生のお尋ねの調整交付金の問題、これは、当初あの問題ができたときには、これは、言葉の厳密な意味ではそういうことじゃなかったと思うのだが、療養給付費が三割、実質的には二割五分なんだ、まず。そういうような説明すら行なわれておったのですがね。しかし、今になってみれば、調整交付金というものの交付の仕方で、いろいろあなた方きめているようですが、全然行かないところもできてきましたし、行ってもきわめてわずかだと、で、町村では、非常にその点で期待はずれだという感じを持っているわけなんです。期待はずれだと、せっかく五分の調整金がつくのだから、五分きちっとじゃなくても、それに近い額は、それこそ調整の意味でもらえるだろうと、こういうふうに期待しておったところが、そうじゃないのだと、こういう格好になって、それは根本的には、今西田さんが指摘されたような、予算のその所要金額の立て方については、これは問題があると思うのですし、それから、何かこうあまり奨励金的な性格に考えが行っているのじゃないかと、あれしもだめだ、これしもだめだ、やはり税の徴収工合がどうだ、いろいろな関係で、あまり奨励金的な色彩が強くなっているのじゃないかと思うのですがね。そういう点でどうでしょう。もっとやはり当初市町村が期待しておったような形に、実質的にそういう工合にいけるような形でやるべきじゃないだろうかと、こういうふうに私は思うのです。もちろん私、税の取り方のうんと成績の悪いのまで、それをカバーしてやるというような考え方に立つのは、これはいけないと思うのですけれども、そういう点についてどうでしょう。
  116. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) ここに国民健康保険法の第七十二条の第二項に、「調整交付金の総額は、市町村の療養の給付及び療養費の支給に要する費用の見込額の百分の五に相当する額とする」と、こういうことになっておりまするので、この法律の建前はかようになっておりまするが、調整交付ということになっておりまするので、十分弾力性のある解釈をいたしたいと、かように考えております。
  117. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、国民健康保険の運用に関する問題につきましては、この程度に質疑をとどめます。   —————————————
  118. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次は、警察庁及び国家消防本部の予算について、米田君から質疑の要求がありますので、これを許可いたします。
  119. 米田勲

    米田勲君 最初に、国家消防本部長さんにお尋ねをしたいのですが、日本は火災の非常に多い国だということで、世界でも有名な話になっておりますが、火災の件数とその被害の状況について、最近の傾向はどういうようになっているかということ、それから、これに対する各都道府県、市町村の消防体制はどうなっているか、それから、この消防体制を一そう強化しなければならぬと考えますが、体制を強化する上の重点は、どういう点に重点を置いて考えておられるのか。それから、この体制を強化していこうとする場合に、問題点は何だろうかということについて簡単にお聞きをいたしたい。
  120. 鈴木琢二

    政府委員鈴木琢二君) 最近の火災の状況を概括で申し上げますと、ここ数年来年々火災件数といたしましては増加の傾向をたどっております。しかし、損害額は逆に減っておる傾向にございます。これを過去五年間の統計を簡単に申し上げますと、昭和二十九年からの件数を申し上げますと、お手元に差し上げてあります「火災の実態と消防の現況」の中に出ておりますので、ごく簡単に申し上げますが、二十九年から昨年までの状況を申し上げますと、火災件数は、二十九年が二万七千八百七十件、三十年が二万九千九百四十七件、三十一年が三万三千三百十二件、三十二年が三万四千六百五十件、三十三年が三万六千百七十八件ということで、相当な率で増加の傾向をたどっております。ところが、損害額を統計で申し上げますと、これは概数で申し上げますと、昭和二十九年からやはり申し上げますと、昭和二十九年が三百二十八億、三十年が三百十八億、三十一年がちょっとふえまして三百七十一億、三十二年が二百六十二億、三十三年が二百十七億と、この統計で見ますと、件数はじりじりと上がっておりますが、損害額はだんだんと減っておりまして、特に三十二年、去年の三十三年、それからことしの概況を今日までの状況で申し上げますと、むしろこれよりも、さらに三十三年よりも減るのじゃないかという見通しを現在持っております。これらはどういう原因に基づいているかということは、いろいろな見方があるかと存じますが、社会文化の発展に伴って生活態様が非常に文化的になり、複雑化しておる。それから、住居関係が非常にこう、何と申しましょうか、一軒のうちに何世帯も住んでいるというような、込み合った生活をしているというようなことがおもな原因となりまして、どうしても火災の発生件数というものはふえてくる。これは、ずっと古くからの状況を見ましても、文化の発展に伴ってどうしても火災の発生件数はふえてくるということは、これは世界共通の状態のようでございます。ところが、逆にその損害が減って参っております原因をいろいろ考えてみますと、これはもちろん、市民の一般の方々が非常に火災に対して注意深くなってきたという問題もございましょうが、一つには、消防各般の施設がだんだんと充実してきたということ、すなわち、電話等の消防署に対する連絡設備が非常によくなってきたということ、それからさらに、消防の出動から消火に至る活動の状態、あるいは機材の性能の状態が非常によくなってきたということ、さらに、消防職員並びに団員の火災出動に対する訓練が非常に行き届いておるということ、あるいはさらに、昨年、一昨年以来非常に減っておりますおもなる原因は、いわゆる新潟の大火のような、ああいう大きな、一つの町が全部焼けるというような種類の大火が一昨年からほとんどございません。これがまあ被害総額を大きく減らしておる一つの大きな原因であります。これは、特に新潟の大火以来、大火防止に対する警備計画並びに警備訓練を各市町村とも非常によくやっておるということと、それから、気象条件の悪いときに一般の市民が非常に火事に対して警戒するという、まあ注意力が強くなってきたということがおもなる原因と思いますけれども、そういうことが大きな原因となって、昨年、一昨年、ことしもそうでございますが、非常に減っております。まあそういう関係で、火災件数がだんだんと増加しておるにもかかわらず、損害額は逆に減っておるという現象を、結果を呈しておる次第でございます。  それなら、現在のわが国の消防関係の施設その他の状況はどうかということを申し上げますと、御承知のように、昭和二十三年自治体消防になりまして以来、日本の消防制度が、その以前とはがらっと変わったわけでございますが、それ以来市町村が非常に消防に対して熱心になって参りまして、非常に機材その他の関係が整備されて参りました。訓練もだんだんと行き届いてくるようになりましたのでございますが、さらに、昭和二十八年から、御案内のように、消防施設に対する国庫補助の道が開かれまして、これは消防施設、すなわちポンプとか貯水槽とか、それから通信機材に対する国庫補助が、まあ十分とは参りませんでも、二十八年からそういう制度が開かれましたために、非常に消防施設の整備という問題が拍車をかけられまして、二十八年以来目立って消防施設が完備されました。そういうことで、二十三年の自治体消防が発足当時に比較しましたならば、非常に消防施設並びに消防職員、団員の訓練というものが整備されて参りました。もちろん、われわれの考えておる理想から申しますと、今日までまだ半分程度しか行ってないのでございますけれども、いずれにいたしましても、二十三年以前に比べますと、強い言葉で申しますと、飛躍的に整備されておると言うことができると思うのでございます。それらのことがいろいろ原因となりまして、先ほど申し上げましたような火災の損害の漸減という傾向を来たしておるのであろうと私は考えておる次第でございます。  今後それならどうするかという問題でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、われわれが一つの標準、これは各市町村の町の態様とかあるいは人口の密度、いろいろな点から考えましての一つの基準を考えておるのでございますが、その基準から申しますと、全国的に申しますと、現在の消防施設の整備状況というのは半分にも満たないという現状でございます。われわれは、努めてこれを標準に近いところに進めて参りたいというふうに努力いたしておるわけでございまして、そのために、毎年国庫補助の充実ということを努力いたしておるのでございますが、何しろ相当な金額のかさむ問題でございますので、急激にこれを整備するということは、今日の国庫の状態からいいましても、また、市町村の財政状態から申しましても、非常に困難な状況であるわけでございます。しかし、何と申しましても、設備自体が非常に標準から申しますと大きく下回っておる状況でございますので、市町村の財政の問題はいろいろございましても、十分市町村理事者当局が消防の施設増強に力を入れてもらうように指導いたしますとともに、また国からのこれの援助も十分増強していきたい、さように考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、日本の家屋の状況をにわかに不燃化するということは困難でございまして、燃えやすい木造建物が何と申しましても当分の間は続くわけでございますので、それに対応いたしまして、火事を少なくするためには、どうしても消防関係の機材を、水とか、通信とか、あるいはポンプその他万般の消防関係の機材をそろえるということ、そろえてそれを十分に駆使するだけの訓練をするということと、それから、それらの機材を最も性能のいいものに発達させていくということが、今後の消防の対策としては一番重要なことであると、そういうふうに考えておる次第でございます。
  121. 米田勲

    米田勲君 自治体の消防体制を強化していく必要があるということは、だれしも考えておることなんですが、国で自治体の消防設備の強化、施設の強化をする場合に、もっと従来よりも積極的な、という意味は、具体的に言えば、補助の率を上げていくといったようなふうに改革はできないものかどうか。そういう努力はなさっておられるかどうか。そういう点でさらに前進した援助ができれば、現在の自治体の財政に非常に困難を来たしておりますけれども、やはり生命財産を守らなければならない消防の施設に対しては、積極的に充実されていく方向になるのではないかと思いますが、それに対する考え方はいかがなものでしょうか。
  122. 鈴木琢二

    政府委員鈴木琢二君) 消防施設に対する国庫補助は、昭和二十八年から開かれたわけでございますが、御案内のように、この補助は三分の一の補助でございまして、それも、希望者全部というわけには参りませんので、順々にその必要度に応じてやっていくという格好でございます。従って、残りの三分の二は、各市町村が自己負担でやるということになっておるわけでございますが、一昨年の消防審議会の答申によりますと、市町村の消防賞金額の二分の一を国庫で負担すべきだという答申が出されておるわけでございます。しかしなかなか、二分の一の国庫負担ということになりますると、現在の市町村の消防費だけでも、全部合わせますと二百四十億ばかりになるのでございますが、私どもが考えております、先ほど申し上げました標準に従ってやろうということになりますと、おそらく市町村の消防費総額は五百億に近いものになろうかと推定されるのでございます。それの二分の一を国庫負担するということになりますと、相当な財政上の負担になるわけでございまして、これらのことは、今日の国家財政の状況では、そう一躍そこに持っていくということは大へん困難な状態でございますので、引き続き三分の一の国庫補助ということになっておりまして、本年度の補助金は、御案内のように、六億五千万予算をいただいておるわけでございますが、先ほどから申し上げましたような日本の市町村の消防施設の整備状況から見ますと、ごくわずかにすぎないという程度の額なのでございまして、何とかこの補助額を増額していきたい、補助率も上げていきたいという考えのもとに、われわれの事務的なことを申し上げてみますと、来年度の予算には、現在相当補助をやり、奨励いたしませんと、なかなか作れない現状にありますのは、水の関係、貯水槽の関係と、それから、一番大事な通信機材の関係であるのでございますが、このせめて一番おくれておる水の問題と通信機材の問題だけでも国庫補助を二分の一にして、これを急速に整備するようにいたさせたいということで、事務的な問題を申し上げて恐縮でございますか、現在そういう考え方のもとに今後予算折衝を進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  123. 米田勲

    米田勲君 広瀬主計官に伺いますが、ただいまのようなお話で、やはり自治体の消防体制を強化するために、施設、資材を充実していかなければならぬ、しかし、市町村の財政は非常に困難だ、こういう状態ですので、やはりこれを解決して大きく前進させるためには、国の補助率を上げていくということがどうしても必要だと思うのですが、大蔵省では、そういうことについて検討を加えたり、また将来そういう補助率を改善していくといったような考え方がないのかどうか。消防本部との間にそういう問題に関して話し合われているかどうか。そのことについてお伺いをいたします。
  124. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) ただいまの消防の補助率の問題でございますが、この問題につきましては、三十四年度の予算の折衝のときにも、ただいま消防本部長から申されたような補助率の引き上げの問題がございまして、この補助の性質それから他の補助金とのバランス等を考えまして、結局現在通りの三分の一に据え置くようなことになったわけでございます。今後の問題につきましては、ただいま消防本部長から予算要求があるとおっしゃったわけでございますが、それにつきまして、われわれの方も検討はしていただいております。まだ、結論を申し上げるような段階には至っておりません。
  125. 米田勲

    米田勲君 私は、自治体に対する年間の六億ないし七億の消防設備なり資材の充実のための国庫補助というものでは、数字からいっても、もっと改革を要する、抜本的に国の援助を増大させて、そうして国民の生命や財産を火災から守るということが大事なことであって、ぜひこの問題については、将来とも積極的に検討をしていただきたいという要望をつけ加えておきます。  次に、消防研究所長にお伺いしますが、消防研究所というのは、昭和二十三年に創設されて、昭和二十七年から国家消防本部の付属機関になっているようですが、創設当時の規模と現在とを比べると、どういうようになっているか、それを、簡単でいいですから……。
  126. 鈴木茂哉

    説明員鈴木茂哉君) ただいまのお尋ねに対しまして、ごくかいつまんで簡単に申し上げます。  昭和二十三年に発足いたしましたときの予算定員を申し上げますと、八十七名でございまして、昭和三十四年までの間に数回の行政整理がございまして、二十六年に五人、翌年にさらに六人、その後二十九年と三十年に各一名、二名というふうに定員が減りまして、三十年には六十九名の定員、三十一年と三十二年と同数でございまして、それで、三十三年には七十二名となっておりますが、その後機構の改革とか組みかえというような関係で、ただいまは六十九名になりました。人数においては、申し上げます通り、発展はないというに近いのでございます。  予算総額におきましては、発足当時、人件費を含めまして、千四百七十四万円、逐次それが二千万円、二千二百万円、二千八百万円、こうなりまして、最近では、去年の三十二年におきまして三千四百万円、三十四年に至りまして、少しく私どもとしましては飛躍的に予算をふやしていただきまして、三千九百万円という数になりました。その間私どもは、昭和二十七年から一方、検定ということを行なっておりますが、検定は、消防機器の改善という上に非常に大きな功績を残したと申し上げることができるのじゃないかと思います。これを、その内容をいろいろ申し上げると、その意味が御了解願えるのじゃないかと思われますが、この検定によりまして、検定料を取りますと、大体発足当時には少しく赤字が出まして、八百七十六万円、それでも検定費を国庫にお返しすることができております。翌年からは千五百万円、次いで千九百万円、千八百万円、二千万円、二千三百万円、二千三百何がしということで、これが三十三年でございまして、三十四年度におきましては二千五百万円、国庫にはその間に大体六百万円、七百万円、ときには一千万円、あるいは九百六十万円というふうに、検定に要しました費用よりもよけいに検定料が入ったという格好でございます。  その間に、研究といたしましては、その成果を研究所の所報に載せまして、二十五年から論文の発表がございまして、その数をざっと読み上げますと、最初に三十九件論文が発表され、次いで十九、四十六、二十二、二十六、最近に至りましては次第に数を減じまして、二十二、十七、十二、十八と、最後は十八でございます。ところが、その論文におきましては、最近の三年くらいからその内容が非常にりっぱなものになったとおぼしく、その論文が火災学会の賞を受けたり、あるいは東京大学工学部に学位請求論文として提出いたしまして、一人はすでに二年ほど前に工学博士の単位を得まして、ただいままさに論文パスするであろうという内報を得ておる者が一人というようなわけでありますし、かたがた、諸外国に送ります文献の反応も、むしろ海外で非常に評価されておるというような実情でございます。その方面では相当成績をあげ得た、ことに外国の一流の研究所からは、所報の交換をしようじゃないかという申し出があるというようなふうでございまして、その点においては、私どもも非常に喜んでおる次第でございます。  一方、研究所の仕事としまして、火災の予防という見地からしましての格づけを行ないまして、これは前後二回やりまして、一回は完了いたしまして、およそ三百くらいの都市の格づけを終えて、第二回には百ほどというところにきております。  以上、あらまし申し上げますと、このようなことになるわけでございます。
  127. 米田勲

    米田勲君 それでは、委員会で資料をもらうことにいたしたいと思います。  次に、これは消防本部長にお伺いしたいのですが、消防研究所の使命というのは、この印刷物でも、なかなか大きな使命を負うて発足をしているわけですが、現在の研究所の活動状況は、消防研究所の設置された目的、つまりその使命を十分果たしておるというふうにお考えですか、どうですか。本部長のお考えはどうですか。簡単でいいですから……。
  128. 鈴木琢二

    政府委員鈴木琢二君) 消防研究所の設置された目的は、すでに御承知通りでございますが、今日、端的に申し上げますると、消防研究所の研究の予算は、必要の点から考えますと、非常に少ないということを申し上げられると思うのでございます。二十三年に消防研究所が発足以来今日まで、ずっと大きな目標を持ちながら、なかなかその目標に沿った研究が遂げられないうらみがあったわけでございます。それは、結局予算の問題で、財政不如意のために思うような研究ができない。しかし、幸いに研究所の陣容は、相当優秀な技術者がそろっておりますために、どうやらこうやらその予算を最も有効に使って、先ほど研究所長からも御説明申し上げましたような研究成果を上げておるわけでございますが、しかし、今日の文化の発達に伴って、消防施設をどういうふうに改善していくか、また、どういう新しいものを研究していくかといういろいろな課題から見ますならば、それを十分に研究し、その結論を得ていくということは、まあほとんどできないというような現状でございまして、従来から引き続きやっておるものを継続して研究する、そのほか、ごくわずかな予算でできる新しい研究を新しく取り上げていくという程度でございまして、研究の設備、資材あるいは消防費というような点から申しましても、そういった今日の時代の趨勢に応じた研究を十分になし遂げるというためには、よほど充実した予算を持たないと、その目的は遂げられないという現状でございます。
  129. 米田勲

    米田勲君 私たち、この間消防研究所にも視察に行ったわけですが、その際に、研究所の人たちが非常にまじめに考えて、一生懸命努力をしているのに頭が下がったのですが、その反面に、純然たる研究費というのは年間九十万円しかないという話を聞いて、あいた口がふさがらなかったというのが実情であります。私、一昨日ラジオを聞いておったところが、川崎のある工場で、技術研究所を会社で設置した。そのことを報道しておるわけです。それはどういう技術研究所かというと、教師が九十七名、優秀な機械設備を七十八台備えつけて、あたかも大きな工場の観を呈しておる。そうしてこの技術研究所の年間予算は一億円だと言っているのです。これは、一つの会社が優秀な技術屋を養成するために独自の力で設けた研究所の輪郭なんです。それと比較して、この日本にたった一つしかない消防研究所、その規模のあまりにも貧弱で、お聞きしますと、設立当時の八十七名より現在は人員を減らしておる。しかも、年間わずか九十万円しか研究費がない。こういうことでは、どんな大きな使命を負わされようと、幾ら研究所の所員が、所長以下優秀な才能を持ち、まじめに努力をしても、成果の上がるはずはないのです。私は、年々火災の件数が、損害額は減っていても、ふえていくという日本の実情から考えて、このたった一つの消防研究所に国がもっと徹底的な力を入れないということは、まことに不思議な感じがするわけです。このことは、消防研究所の所長さんも日ごろ尽力をされておると思いますが、消防本部長や大蔵省は、この方面で何でまたこういう実情のまま今日まで放置されて、十分に目的が果たされているだろうかという質問に対しても、とてもだめですという答弁しかできない実情であるということは、まことに残念だと思うわけです。せっかく研究所を作って、そして重要な消防に対する研究をしてもらおうというのですから、これは、われわれの常識から考えても、徹底した力を入れ、予算をやり、設備も充実し、人員も配置をし、純然たる研究費も九十万などというような貧弱なことでないように、一日も早く改善をしなければならぬと思いますが、消防本部長や大蔵省では、こういう問題について私たちと同感ではないのかどうか、もし同感だとすれば、来年度相当徹底的に、一気にというわけにはいかなくても、相当がんばって、研究所をもり立てようとしているという予算の実態になるような配慮と尽力がなされるものかどうか、それぞれの方からお聞きをいたしたい。
  130. 鈴木琢二

    政府委員鈴木琢二君) ただいまのお話、われわれもほんとうに同じ気持を持っているのでございまして、毎年予算の際には、消防研究所の充実の必要性を取り上げて、折衝いたしているのでございますが、国の財政の都合で十分な目的を遂げないでいる今日までの状況でございます。三十五年度、来年度の予算の概算要求も、ただいまお話しありましたようなことを盛り込みまして、予算を要求いたしているのでございますが、それの折衝は今後の問題になりますので、十分お話の点を含めまして今後の折衝に当たりたいと、かように考えている次第でございます。
  131. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) 消防研究所の研究費が非常に少ないではないかというお話でございます。私どもも、決して現在の段階で満足すべきものであるということを思っているわけではございません。ただ、先ほど純粋の研究費が九十万というようなお話がございましたが、その点につきましては、研究費というものは、どこからどこまでが純粋で、どこからどこまでが広義の解釈の研究費の範疇に入れるべきかということは非常にむずかしいかと思いますが、われわれ各研究機関を比較いたします場合に、大体人件費を除いた物件費でもって比較するわけでございます。物件費で申しますと、消防研究所の物件費は六百万円でございまして、前年度に対しまして約百三十万の増となっております。研究職一人当たりで割ってみますと、四十万円程度のものになりまして、必ずしも低い数字にはなってない。しかしながら、それは研究職の数が少ないとかいう総体の問題もございます。全般的に見まして、決していいとは思っておりません。今後の問題につきましては、先生の御注意もございますように、十分検討さしていただきたいと思います。
  132. 米田勲

    米田勲君 私、今の話を聞いて、いささか心細いのですが、満足すべき状態ではないとかいうような言葉でこの実情を表わすのは、あまりに言葉が適当でないんじゃないですか。ただ消防研究所というものを一つだけにらんでおれば、一人当たりにつき何ぼというふうな計算は、大蔵省としては出てくるかもしれませんが、大体消防研究所の任務なり、その重要性なりを考えてみたときに、すぐ社会党は飛行機の話を出すという悪口もありますけれども、とにかくジェット機を一機だけ減らして、百九十九機にして、そうして五億円ほど消防研究所にぽんと出すという、そういう考え方、それと置きかえてそういうことを言うのは妥当でないかもしれないけれども、とにかく三千万や四千万の年間経費でやっているということだけで、とても消防研究所の使命にうたってある言葉とは実情がそぐわないということは、一見してわかるわけです。だから、あまり消極的な考え方でなしに、もっと本部長も積極的に大蔵省の理解を求め、研究所の所長も、研究の構想なども十分に知ってもらって、そうして飛躍的な強化をはかれるように、今後とも努力を願いたいという要望を私はつけ加えておきたいと思います。
  133. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連して。主計官は、研究所なり同所にある消防大学校というものをごらんになったことはございますか。私ども、この間視察いたしまして、ごらんいただいたらおわかりだし、ごらんいただいておらないなら、一度見ていただきたい。科学的な実験の施設とか何とかいったようなものも中学校以下ですよ。大学校という看板だけ見て、本部長も本部長であると、私たちは大いに憤慨をした。研究所といっても、研究所という名前があるならば、少なくとも研究所の性能を表わすためには、もう少し、ぜいたくとは言いませんよ、あたりまえの格好をつけないで、研究所の成果というものが維持できるかというところに非常に疑問を持ちました。主計官はごらんになりましたか、あの施設を。
  134. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) 拝見しておりません。
  135. 加瀬完

    ○加瀬完君 見ておりませんと、やはり今おっしゃったようた、ただ何か、今質問をしている委員が消防研究所というものに特別の熱意を持って強調しておるようにおとりになるかわかりませんが、そうじゃないのです。見れば、あまりのみじめさに、国立という体面がこれで維持できるかという慨嘆の念に変わって質問をせざるを得ないという私どもの気持です。一度ぜひごらんいただきまして、査定をするからには、ごらんいただいた上で査定を進めていただくように、私ども希望を申し上げます。ぜひとも一つ見て下さい。見てから、私どもの言っておることが一体当たっておらないか、あなたがあれで御満足いただけるものか、実際を御見聞の上で、御検討をお願いをいたします。
  136. 米田勲

    米田勲君 警察大学の視察に参りましたので、幾つかの点についてお伺いをいたしたいと思いますが、警察大学校というのは、日本でただ一つ警察官の最高教育機関であります。設置の目的は、印刷物等で、文書では承知いたしておりますが、一体現在の状態で、警察大学の教育をやっていくのに、施設やら、あるいは教授の陣容やら、そういうものを考えてみたときに、警察大学校という名にふさわしい状態になっておるものかどうか。どういう御認識をなさっておるか、ちょっとお伺いをしたい。
  137. 原田章

    政府委員(原田章君) 警察大学の使命は非常に大きいわけでございますが、施設につきましては、先般も御説明申し上げましたように、ただいま国有地の払い下げという大きな問題がございます。この機会に、施設の整備をいたしたいというように考えておる次第でございます、ただ、施設は、建物はなるほど木造建物で、十分な施設ではございませんが、環境といたしましては、非常にいい教育環境を持っております。従いまして、今後施設の問題を考えます場合にも、教育環境の点を特に考えて参りたいと思います。教授内容でございますが、教授陣営につきましては、警察実務とか、警察関係の法律につきましては、警察職員である高級幹部が教養に当たっております。しかしながら、一般教養——社会学、心理学あるいは経済学、政治学、時事問題という面につきましては、外来講師のりっぱな先生方にたよるというやり方でおるわけであります。警察官を良識あるりっぱな社会人として教養するという面におきましては、この一般教養をさらにさらに強く推進していく必要があろうかと思います。こういう点につきまして、予算面にも関連して参りますが、かような点につきましては、今後努力をしていかなければならぬと思います。
  138. 米田勲

    米田勲君 警察大学校の環境は、行ってみても、なかなかいい所ですが、聞くところによりますと、あの地域を半分かなんぼかに切って売ってしまう。売ってしまって、上った金は、警察大学の充実のために使うのかどうか知りませんが、それは国で巻き上げてしまうんですか。どうなんですか。売るのは、警察大学を充実強化するために売るのか、それとも、その金を国の方へ巻き上げてしまうために売るのか、その点は、環境が非常にいいのに、あれを小さくしてしまうというお話を聞いたので、どういうお考えなのか。ちょっとこの際お聞きしたいのです。
  139. 原田章

    政府委員(原田章君) 現在の木造施設の土地並びに校内敷地を半分程度売却いたしまして、これは国庫収入になるわけであります。それから警察大学建築のための経費をいただくということに相なるわけであります。
  140. 米田勲

    米田勲君 そうすると、いろいろ、校舎だとか設備だとか、その他の充実をはかるために売るのではないのですか。広過ぎるから売るというものの考え方ですか。その点、どうなんですか。
  141. 原田章

    政府委員(原田章君) 警察施設といたしまして、まあ国有財産といたしまして、これを整備しようということで、さっき申し上げましたようなことをいたすわけでございます。
  142. 米田勲

    米田勲君 はっきりしませんが、その点はそれまでにしておいて、ところで、一般教養を高めるために外部から講師を招いているようですが、お聞きしますと、これは、私の記憶に間違いがなければ、その有名な講師の一時間の謝礼は三百円だというお話です。これがもし事実だとすれば、ずいぶん奉仕的なりっぱな人がおって来てくれればいいけれども、とても今どき、常識で、一時間三百円の講師料では、どういう一体りっぱな人を求めて一般教養を高めるための講座が設けられるのか、私はきわめて不思議に思って帰ってきた、この辺は、一体どうなっているのですか。
  143. 原田章

    政府委員(原田章君) 予算単価としましては、一時間四百五十円になっておりますが、講師によりまして三百円ないし千円の幅におきましてお礼をいたしております。
  144. 米田勲

    米田勲君 結局、そんな安い時間の謝礼では、優秀な人は来ないですよ。世間一般の常識ですよ。だから結局、予算単価をどう見積ってあろうが、大学でいい講師を招聘したいということになれば、千円になれば、幾らも呼べないということになる。こういうことになるのですから、もともと講師の謝礼に対する予算単価の押え方が非常識であって、これは、大蔵省ともよく話し合いをして、一般教養を高めるために力を尽くしているのであれば、それらしい予算を作るように努力をしてもらわなければならぬと思うわけです。それから私、一日の学生の日課の説明をお聞きして、こういう感じを持つわけです。一日の日課のうち、授業を受ける、教授の講義を受けるというのですか、そういう時間がどうも大半である。私の感じではですよ。少なくも大学校と名づけられるのだから、個人研究なりグループ研究、こういったようなものを大いに奨励して、そうして自発的な学習活動を旺盛にさせて、大いに学ばせる、自己練磨させる、こういう必要があると思うのですが、ああいう日課のきめ方では、私は詰め込み主義になってしまう、これは、時間的に経済的に短い期間でやるのですから、勢いそういうふうになると思いますが、私は、経営全体について、もっと個人研究あるいはグループ研究、共同研究といったような時間を多く取って、そうして教師が研究テーマは相談をして与えるというようにして、もっと自発的の活動を旺盛にさせた方が、大学設置の本来の目的に沿うようになるのじゃないか。今のやり方だと、詰め込み主義の教育が行なわれるにすぎないのではないか。外来から招聘する一般教養を高める講師の話だけは何しろ喜んでいるらしいです、学生は。その反面に、授業時間をあまり喜ばないというのは、あまり詰め込み主義になっているからじゃないか、こういうふうに私は感じてきたのですが、この大学の経営自体を改善する考えはないかどうかということを、それに関連して、図書室を見せていただきましたが、学長の話だと、大半が寄付で、年間の図書費の予算は何ぼといっていましたか、まるっきりお話にならぬくらいの少ない額です。日本に一つしかない警察大学で、あの図書室ということになると、このごろ新制中学校の図書室にいけば、あれよりもりっぱだし、新しい本もどんどん設備されている。情けないことだと私は思ってきたのです。これは、今の図書室の状態だと金がないものだから、もっぱら寄付だけにたよっているといったような傾向がありますが、こういう点についても、根本的に考え直す必要があるのじゃないか。特に個人研究や共同研究を旺盛にさせるとすれば、一そう図書室の充実ということが大学教育の上では大事になってくるわけです。詰め込みで、個人研究をやる時間をなくすれば、図書室に入ってがんばるという学生もいなくなって、図書室の充実はあまり問題にならないということになって、相関関係にあるのじゃないか。経営の状態と、図書室の貧弱な予算と、その設備は相関関係にあるのじゃないかというふうに見てきたわけです。悪口を言ったようで相済みませんが、私は端的にそういう感じがしますが、その点はどうですか。
  145. 原田章

    政府委員(原田章君) 今後の教養のやり方としまして、詰め込み主義でなくて、グループ研究とか個人研究を伸ばすようにしなければならぬというお説はごもっともでございます。さような方向に推進して参らなければならないということで、先般授業時間と申し上げましたのは、一時限は刑法なら刑法であると申し上げたのでありますが、その刑法の時間は、講義ばかりでなしに、ゼミナールで研究をするという場合もございますし、また、あらかじめ課題を与えておきまして、研究会をやるということもございます。また、講義にいたしましても、視聴覚教養の方式を取り入れまして、いろいろの実物あるいは写真、幻灯等によりまして講義をさせるというような方向に行っております。お話の点は、新しい時代の教養としまして有用のことでございますので、今後もさような面の充実に当たりたいと思っております。  なお、図書費につきましては、まあお見かけのように貧弱のものでございますが、大部分は個人の寄付あるいは先輩の寄付あるいは在校生の醵出による、負担による図書費の購入というようなことになっておりまして、国費としましては非常に貧弱な金額しか組まれておりません。この点につきましても、生徒を預かって勉強させます以上、図書の充実につきましては、今後とも努力して参らなければならぬと思います。
  146. 米田勲

    米田勲君 大蔵主計官にお伺いしますが、今のようなお話なんです。警察大学校のいわば一、二の問題を話題に供したのですが、こういうような話なんです。従って私は、やはりこういうような学校を設置したら、設置したようなやり方を国が考える必要があると思う。名前だけは大学校という名前がついておって、図書室をのぞいてみても、あっちをのぞいてみても、まず新制中学並み以下だというのでは、門の前に立っている看板が泣くですよ、これは。大蔵省としても、あっちにも出さない、こっちにも出さないといって、きょうは消防関係にも警察大学の方にも、貧弱な予算のことでお話をしておりますが、やはりそれぞれもっと検討を加え、実情も見、予算を増加させて、本来の目的が達成できるように、非常識なくらい少ない予算でやらせておるということ自体が問題だと思う。先ほど消防研究所などに行っておられないというようなお話ですが、よく現場の実情をごらんになって、名にふさわしい国でもやはり予算措置をする。それだけまた学校もがんばって、実績をあげていくということでなければならぬと思うのですが、あまりそういうことについて消極的なのは、感心ができないわけです。最高の責任者であなたありませんから、何んでもかんでもここで答弁することはできなくても、少なくとも、あなたの気持ちとしては、今後こういう状態に対してどういうふうにしていかれるかの言葉だけは、ここでいただいておきたいと思う。
  147. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) 経費に関連しまして、二つ御指摘がございました。一つは講師の謝金、一つは図書費でございます。講師の謝金につきましては、官房長がお話しになりましたように、共通の単価を使ってやっております。これが四百五十円というのが非常識であるというおしかりも受けたわけでありますが、警察大学のみならず、他の講師料あるいは研修料、そういうものにつきましても、同じようなことでやっております。全般的に低いという点につきましては、各省からも現在予算要求がある際でございますので、十分検討させていただきたいと思っております。それから、図書費につきましても同様に、各庁、各省の間のバランスをとっておりますので、全般的に低い点は、まことに申しわけないのですが、できるだけの努力はいたしたいと思います。
  148. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連しまして。大学校という名前がついておりますけれども、これは正規の大学制による、学制による大学ではありませんし、短期の高度の訓練機関といいますか、教育機関というべきものだと思うのです。そこで、講師の謝礼にいたしましても、これは普通の大学の講師の一時間の単価と、あるいは大学制の大学に準ずる、あるいはこれに付属する研究所等のいろいろ助教授とかあるいは講師とかいうのに比すべき方々の謝金というものと、これはやっぱり別に考えなければならぬと思うのです。というのは、一定の教養を持って、いわゆる大学教育を受けられるような者ばかりが来ておるという条件ではなくて、これは、教える方からすれば、教えづらい条件があるわけです。それから、期間的にも短期間にある程度のものを与えなければならないという条件もあるわけです。それから、普通の大学ではありませんから、それぞれ専門の講座を持っている陣容というものが整っているわけでもない。臨時によそから頼んでこなければならない、こういう悪条件があるわけですから、しかも、一番今の警察大学校で、警察教育で必要なのは、私は、人権尊重というものを基礎にする民主警察といいますか、民主警察行政の頭脳というものをどう鍛え直すかということにあると思う。悪い言葉で言えば、おかっぴき根性というものでも今までは通用したかもしれませんが、少なくとも幹部に新しい警察意識というものを与えるためには、相当高い教養というものを与えなければならない。それには、もう少しそういったような物質的といいますか、財政的条件というものを与えてやらなければ、警察大学校というものができても、全くこれはナンセンスだと思う。ここでいろいろ捜査、取り締まりの上から高度の技術を与えておるということも私は聞いております。それはそれでいいのですよ。忍術を教えてもけっこうです。しかし、これを使うか使わないか、どう使ってはいけないかという、その警察官の、何といいますか、あるいは一つのみずからの条理を警察官自身が持たなければおそろしいことになる。そういう意味からも、警察大学での一番のねらいは、やっぱり高い教養というものを私は一番身につけさせることだと思う。それから、こういう講師を集めようとしても集められぬような謝金ですね。それから、研究したくても研究できない——一年大体十万円くらいじゃないですか、図書費、これではどうにもならないのじゃないかと私は思う。これは、大蔵省にもお願いしたいとともに、官房長にもお願いをしたいのですけれども、私どもの方で、警察官の一般的教養を高めなければ一般の民衆との接触にどうも円滑が期し得られないというので、非常に進んだ署長が、自分の図書も全部警察に寄付しますし、ほかの篤志の方からも図書を集めて、図書館を警察署長室に作りました。そうしたら、警察官から総スカンを食って、よそから来た関係もあったか、その署長はそこにいることができなくなった。これは、私の方の特殊な例かもしれませんけれども、一般にそういう、一般教養を軽視して、逮捕技術というものには夢中になるけれども、一般的教養というものは、むしろ現場の人たちはやや軽視する傾向が私はあるのじゃないかと思う。一事が万事という例にはならないかもしれませんけれども、しかし、全部この署長のような考え方で、とにかく一般的教養を身につけろ、こういうような教育をすれば、ずいぶん一般国民警察との間の融和というものがはかられるのじゃないかと私は思う。これをやはり現実的に警察大学校でやってもらうためには、もう少し新刊書くらいは、たくさん豊富に与えるということでなく、一年に十万円そこそこの新刊書くらいしか買えないということでは、もう法令集を買えば新刊書は買えないことになってしまう。これでは、私は一般的教養に事欠くと思う。それで、その点は、官房長は、一般的教養というのが一体あんな図書館にある書籍の内容で、警察官みずからが学習できるとお考えになっておるかどうか。それから、もっと警察官の直接職務には関係のない教養書というものを入れるという必要をお感じになっておらないかどうか。この二点を一つお伺いします。  主計官には、やはり見ていただきたいと思う。ごらんになりまして、もう少し何か、特殊な学校でありますから、特殊な財政的な措置というものを考えていただきたい。希望だけ申し上げておきます。
  149. 原田章

    政府委員(原田章君) 一般教養の重要なことは、御指摘の通りでございます。さような見地から図書の充実に当たらなければならぬと思いますが、もちろん、国費につきましても、他の振り合い等もございまして、精一ぱい出していただいていると思いますが、あるいは部内におきまして、机、いす等の修繕費を節約するとかというようなことで生み出して若干はやっておるようでありますが、さらに予算の捻出につきましては、努力して参りたいと思っております。  なお、一般教養図書の充実ということを考えたらどうかというお話でございますが、警察官も、実際そういう書物を読むことを希望しております。もちろん、警察実務に関係いたしまする書物は、各人が購入いたしますので、一般教養図書につきましては、なかなか手が回りかねるということもございますし、また、そういう要望も相当多いわけでありますので、主として図書館におきましては一般教養図書の充実に当たりたいというふうに考えております。なお、警察経理ばかりではありませんけれども警察官の中には、常識円満な、一般教養を身につけた人もございますが、中には、もとよりまだそれに達しない非常識な人もたまにあるわけであります。こういう現実におきまして、教養のレベルを高めて、皆が良識を持っていくという方向に持っていくことが一番大きな警察教養の課題であると私は思いますので、御指摘の点等につきましては、十分考慮して参りたいと考えております。
  150. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十六分散会