運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-03-12 第31回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十二日(木曜日)    午前十一時十六分開会   —————————————   委員の異動 三月十日委員後藤義隆君及び柴田栄辞任につき、その補欠として泉山三六 君及び館哲二君を議長において指名し た。 三月十一日委員仲原善一辞任につ き、その補欠として剱木亨弘君を議長 において指名した。 本日委員剱木亨弘君、荒木正三郎君及 び戸叶武辞任につき、その補欠とし て横山フク君、横川正市君及び上條愛 一君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            鈴木  強君            松浦 清一君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            泉山 三六君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            小幡 治和君            勝俣  稔君            古池 信三君            紅露 みつ君            小山邦太郎君            迫水 久常君            下條 康麿君            杉原 荒太君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            横山 フク君            吉江 勝保君            片岡 文重君            上條 愛一君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            高田なほ子君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            松永 忠二君            山田 節男君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    人事院総裁   淺井  清君    総理府総務長官 松野 頼三君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君    日本電信電話公    社総裁     大橋 八郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について報告いたします。三月十一日仲原善一君が辞任し、その補欠として剱木亨弘君が選任せられました。   —————————————
  3. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 理事片岡文重君より、理事辞任いたしたい旨の申し出がありました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 御異議ないものと認めこれを許可いたします。  次に、理事補欠互選についてお諮りいたします。  現在二名の理事が欠員となっておりますが、この互選成規の手続を省略して、前例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 御異議ないものと認め、委員長より西田信一君、松浦清一君を理事に指名いたします。   —————————————
  6. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を議題といたします。  本日は一般質疑でありますが、理事懇談会で協議しました結果、本日の持ち時間のワク内において、特に総理出席を求め、質疑をすることといたしましたので、総理に対する質問を先に一括してお願いいたします。  それでは質疑に入ります。鈴木強君。
  7. 鈴木強

    鈴木強君 五日間の総括質疑を通じて、きわめて重大な憲法第九条にからむ国防問題、なかんずく核武装の問題と海外派兵の問題につきまして政府部内の不統一、さらにまた憲法第九条の疑義を私たちは持っております。従いまして、この際私は総理防衛庁長官官房長官外務大臣、これらの方々に質疑をいたしたいと思います。  その一つは、去る九日の本委員会において伊能防衛庁長官はわが党矢嶋委員質問に答えて、着弾距離が四十キロ程度オネスト・ジョン核弾頭をつけても、自衛のために、攻撃的なものでなくて防御的なものとして使用し得る、こういうふうにまあお述べになったのであります。これは私非常に重大な発言だと思うのでありますが、このことは岸総理大臣が今日まで何回か国会を通じて、日本はいかなる核武装もしない、将来においてもそういうことは持ち込みませんと、こういうことを言明されておるわけでありますが、これらのお考え方からいたしまして、伊能長官の御発言は大きな矛盾を生じておると私は思うのであります。従ってこの問題に対して総理並びに伊能防衛庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核兵器の問題に関しましては、この憲法上の解釈の問題と、実際上の、政治上の問題と、二つあると思います。私が従来国会においてしばしは言明をいたしました通り岸内閣におきましては絶対に核武装はしない、また核兵器は持ち込ませないという、この方針は厳としてこれを貫いてきております。将来もそれを貫いていく考えでございます。ただ、憲法上の解釈として、核兵器と名がつけばいかなる兵器もこれは憲法違反として、核兵器は用いることができないんだという解釈は、憲法解釈としては適当でない。もちろん、今日あるところの、原水爆のごときものが憲法上持てないことについては、これは何人も異論を差しはさまないけれども、現在の核兵器発達の途上にあり、また、今後どういう発達をするかもわからないが、いかなるものであっても核兵器と名がつけば憲法上持てないんだ、憲法違反だということは、憲法解釈としては私どもはとらない。これも従来から私がお答えをしておる通りであります。具体的にオネスト・ジョンがどうであるかという問題に関しましては、世間の誤解を防ぐために、はっきり申し上げておきますが、現在、日本ではオネスト・ジョンを持ってもおりませんし、これを国内に持ち込ましてもおりません。また、かつてオネスト・ジョン日本に持ち込まれたことがありますけれども核弾頭はこれは厳に用いさしておらなかったという事実も、これも間違いないのであります。ただ、今私は、オネスト・ジョンの具体的の性能やその性質等に関しましては、これは専門の方面からお答えしたが適当であると思いますが、以上の通り考えております。
  9. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答えを申し上げます。せんだって私が申し上げましたことは、速記録等でも明白でございまするが、政府としては核武装はしないということは一貫した見解でございます。ところが、せんだってのお尋ねは、憲法上の解釈の問題として自衛上のもの、また、ただいま総理からも御説明がありましたように、原子爆弾水素爆弾というようなものは攻撃用のものであるから、当然自衛立場からは持ち得ない、しかし、憲法上の解釈としては、自衛必要最小限度のものについては私どもは持ち得ると、その具体的な例はどうかと、憲法上の解釈としての具体的な例について、特に例をあげて説明せよということでございましたので、オネスト・ジョンのごときは弾着距離もきわめて短い、通常三十キロ程度、最大四十キロ程度のものであれば、日本の現在の自衛隊立場、並びに、つとに政府としては自衛隊海外派兵はしないという見地から、防衛上のものとしては憲法解釈上持ち得ないということはない、かように、私はそういう趣旨をもってお答えいたした次第でございます。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 ただいま総理防衛庁長官から御答弁をいただいたのでありますが、私たちが非常に疑問に思うのは、少くとも現在の岸内閣が一切の核武装はしないし、また、将来にわたっても核兵器は持ち込まないということを言明をされている。そういうさなかに、憲法上の解釈ということに名をかりて、少くともオネスト・ジョン核弾頭をつけても——これは核兵器であることは明らかでありますが、その核弾頭をつけた核兵器を持ち込んでもいいんだと、こういうふうに言われておると私は思うのであります。従って、一党の総裁、さらにまた自由民主党として、内閣として、これらの問題に対する政治的な問題と憲法上の問題を分けてお考えになるところに、私たちは非常に疑義を持ちます。特にこの問題が昭和三十年の三月の国会で問題になりました。時の故鳩山首相が、米国は日本政府に無断で核兵器を持ち込むことはない、こういう御答弁をなされておるのであります。ところがその年の八月中旬にすでにオネスト・ジョン日本に持ち込まれてきた。そのとき国会で問題になりました。今、総理からもお話がありましたように、時の外務大臣は故重光外相でございまして、杉原防衛庁長官がそれぞれ立って、このオネスト・ジョンに対する危惧を追及され、その際、オネスト・ジョンには核弾頭をつけないから原子兵器ではない、こういうことを明言されて、あのオネスト・ジョン日本に持ち込まれて富士山のふもとで発射をされた、こういう私たちは事実を知っておるわけであります。私たち岸内閣が今日まで核兵器の問題に対して、国民の世論として、また国会の決議に従ってやられておる姿は正しいと私たちは信頼をしておったのでありますが、今日オネスト・ジョン核弾頭をつけても防御兵器だから差しつかえない、こういうふうな解釈になる。しかも総理はこの前、鉄砲のような小さい核兵器なら使っても憲法上かまわないというふうに、あなた自体が今まで言われた思想とは、憲法上ということはございますが、考え方がくずれてきておるのじゃないか。われわれはそこを心配し、今日の自衛隊吉田内閣以来、戦力なき軍隊だとかいろいろなことを言いながら、相当の国費を使って参り、今日陸海空軍、りっぱなものを持っておる。ですから、何かしら国民をだまして、そうして核武装はしないのだ、持ち込まないのだと言いながら、結局はそういうものが持ち込まれてくるのじゃないか、こういう危惧を持つのは私一人じゃないと思うのです。ですからどうして岸総理の言われるようなはっきりした方針があるならば、ことさら憲法上ということを理由として核弾頭をつけても、そのオネスト・ジョンは持ち込めるのだというような、そういうような考え方をやることは、私は閣内の不統一があると思う。私はこれはきわめて重大な問題だと思うので、今の御答弁では納得いたしません。さらに総理の御見解を承わりたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核武装しないという岸内閣方針は微動もいたしておりませんし、その点において何ら私は別の考えを持っておらない。一貫して核武装しないということは、ここにもまた繰り返して明言いたします。ただ問題は、憲法上の解釈として核兵器持ち込めるか持ち込めないか、日本憲法は、核兵器を、いかなる意味核兵器もこれを持ち込むとか、あるいは武装することを禁止しておるのだという解釈があるいはあるかとも思います。またそういう意味において、たしか三十二年に、この問題についての質疑憲法上の解釈として——何も私の方から進んで憲法上はいいのだが、持たないのだということを申したわけじゃございませんが、憲法上の解釈とて核兵器の問題が論議されたことがございます。そのときに私は今日お答えした通りと同様に、いやしくも核兵器と名がつくならばどんな核兵器であっても憲法違反だ、こう憲法の規定を解釈することは適当でない。あくまでも憲法自衛権範囲である。その最小限度実力を持つということであるけれども、将来の核兵器発達というようなことを考えると、どういうものが出てくるかわかりません。そういう場合に、核兵器と名がつけはいけないのだという憲法上の解釈は成り立たないと思います。しかし具体的に何ならいいのだということに関しましては、私は当時もまた現在も、日本の一体こういう問題に対して核武装しないという考えに立っておりますから、何といっても核武装の、核兵器研究世界先進国から見ると非常におくれております。ほとんどまだ日本には研究らしい研究はないと言ってもいい。それからまた、軍事各国がどういうものを持っておるかということについての軍事情報についてもきわめて不正確なものであって、また各国も非常にこのことは秘密にしておりますが、非常な研究が行われておるということだけは間違いないと思います。そしてあるいは放射能を伴わないものをなにするとか、あるいは原子力潜水艦のごときこれを一つのテネルギーを、放射能を爆発させずして使うというようなこういうものが一体核兵器と言えるのか言えないのかもわれわれはまた観念がはっきり明確になっておらないと思います。そういう時代に、いやしくも核兵器とたまたま名がつけばことごとく憲法違反するのだという憲法解釈は、私は適当でないということをすでに三十二年にも国会において答弁をいたしております。そういうことでございまして、われわれがこの際好んでやらないのだ、しかし憲法上はできるのだということをあわせて特に言うつもりではございませんが、今言うような憲法論として法律解釈議論になればこうお答えするほかはない、こう思います。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 首相政治的な心情としての核武装に対する決意は私たち今も承わりまして意を強ういたします。しかし憲法第九条の自衛権の問題をあげてこられますと、これは私は問題は限りなく発展すると思います。  それでは岸首相お尋ねをいたしますが、もちろん今おっしゃっておるような核兵器というものに対する解釈なり、研究なりは不十分でありましょう。だがしかし、皆さんのおっしゃることは自衛のためであれば、国土を守るためであれば、小型核兵器と言わず、あなたは原水爆というような放射能を伴うようなものについては問題がある、こうおっしゃいますが、しかし憲法上あなたの解釈をとって参りますと、自衛のためであるならばどんなものでも持ってよろしいという解釈に通ずるわけであります。私はそう思います。ですから、その自衛のためということに名をかりて核兵器というものの範囲一つ一つ拡大していくその限度というものは一体どこにあるのですか。私は少くともあなたのおっしゃる御意見やあるいは伊能防衛庁長官お話を聞いておりますと、極端に言えばもう自衛であれば何を持ってもよろしいのだという思想に通ずるのですよ。そうでしょう。ですからここにわれわれが非常に疑問を持つ一番重要な問題があるわけでありまして、ですからこれらの点を明確にするために、少くともあなたのおっしゃっているように、核兵器と名のつくもの、核爆発というものによって人間が殺傷されるというようなことはやらないのだという方針があるならば、自衛権というものの解釈を拡大して、少くとも自衛権であるならば多少の核弾頭は持てるのだというような解釈は非常に危険ではないですか。私たちは十四年前にあの悲惨な原水爆の洗礼を受けて、だれよりも核爆発の被害がいかに悲惨なことかを知っております。ですから、今せっかくあなたがお持ちになっておる政治信念をかけての民主政治家としての信念を貫くならば、そういう国民が心配をし非常に危惧をするような核兵器の持ち込みということに対して、少くとも自衛であるならばこれとこれはいいのだというような、そういう形のものに発展することは、非常に私は国民に対して危惧を与え、あなたに対して不信を持たせることになると思うのです。それだけ固い決意があるならば、まだ研究も十分わかっていないのに、オネスト・ジョン核弾頭をつけて持ち込んでも憲法上は差しつかえないのだというようなお考え方を今の時期において私はやることは非常に不適当だと思う。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法自衛権、これを裏づけるに必要な最小限度実力を持つことは私ども憲法違反でないと思います。そうして科学兵器は非常な軍事科学発達核兵器だけではなくしていろいろな意味におけるところの兵器発達をいたします。そうしてそれが純粋の憲法理論としては今のお話通り自衛のための最小限度実力としてこれが有効であり、その意義を持つものであるならばいろいろな科学兵器というものを持ち得る、その中には核兵器も含んでおる、こう私は解釈をすべきものであると思います。しかしながらそのうちにおいて今鈴木委員のおあげになりましたことは私も全然同感です。私がいかなる意味においても核兵器核武装はしないということを申していることに対しては、世間の一部においておかしいじゃないか、自衛のために必要ならば核兵器は持ってもいいじゃないか、持つべきじゃないかという議論があります。しかし私は日本人のわれわれの体験並びにわれわれが世界に向って核兵器の禁止を要望しているこの人道的の見地から、いかなる意味においても核武装はしない、憲法上たとい持ち得るものであっても持たないということを明白にいたし、またそれを実行してきているのが、私の考え方でありまして、ただ純粋憲法論としてこれをなにされることは、先ほど言ったようにわれわれは自衛権があり、自衛権を裏づけるところの最小限度実力、それは軍事科学発達でいろいろなものがあり、その中に核兵器もあり、その範囲に入ったものならば憲法上の解釈として差しつかえない、差しつかえなくとも核兵器についてはこういう見地から断固としてこれはわれわれは採用しない、ここに私の信念があり、また従来から言っている理由があるのであります。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 後段のお話は私たちは全く同感でありまして、ぜひともその信念を貫いていただきたいと思います。ただ、今私の申し上げた憲法上の拡大解釈のことはこれは依然として残ります。  しかしこの際もう一つお聞きしておきたいのは、これは一つ伊能防衛庁長官からもお答えいただきたいのでありますが、総理のおっしゃっておるように科学兵器はどんどんと進歩発達して参ります。しかし現在われわれが考えておりますオネスト・ジョンというものが、総理の話によりますれば、まだ十分にどういうものであるかわかっておらない。防衛庁長官は最低三十キロ、最高四十キロの弾着距離のものであって、核弾頭をつけたオネスト・ジョンというものは憲法上持ち込めるのだ、こういうような御解釈をとっているのでありますが、私は総理が言われるようにまだ十分に政府全体として、このオネスト・ジョン核弾頭爆発力がどういうものがあるのか、これは一年前のものと今日と、さらに二年、三年と発達の過程において、これは非常に問題が出て参ります。それをどういう根拠によって着弾距離がただ四十キロならこれは核弾頭をつけても憲法上よろしいのだ、そういうあまり研究もしておらないのに断定的にものを言うことは私は適当でないと思う。もう少し慎重な態度で御研究になって、そして今日の状態ではこうだというお話ならいざ知らず、総理のお考えがそうであるならばなおおかしい、そう思います。今日やはりそういう御研究をなされて、またある時期において政府の御見解を発表することは自由であります。しかしながら今この核爆発の問題を中心にして政府の一貫した思想は断じて核兵器は持ち込まないという強い信念のあるときに、中途半端のそういうことで断定的にオネスト・ジョン核弾頭をつけて持ち込んでも違憲でない、こういうお考えを下すことはきわめて軽率だと思う。国民に多大な危惧と不安を与えるような、そういう発言をされることはまことに私はもってのほかだと思う。
  15. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいま鈴木委員の御指摘になりましたことについては私も全く同感で、従いまして先般の私の答弁におきましても、科学兵器発達、ことに原爆水爆のような大きな爆弾は別といたしまして、その他の核兵器世界各国において目まぐるしい進歩発達をしているので、ここにその例をあげることは適当でないというように再度お断わりを申し上げました。ところが憲法上の問題として持ち得るものと持ち得ないものとの例をあげて説明をせよ、という三度目のお話でございました。従って私はオネスト・ジョンのごときはただいま申し上げましたような性能のものであり、ことにオネスト・ジョン等については、最近聞くところによりますと、アメリカ等においては、いずれもの各師団が通常兵器としてすべて持っておる。かようなことも私ども承知をいたしておりまするし、着弾距離等においても、また放射能清浄化の問題につきましても、御承知のように四十キロ程度のものでありますれば、風のつごうによっては、味方の方を放射能によって殺傷するということも当然あり得るわけでありますので、それらの核兵器核爆発清浄化の問題、また小型の弾頭の問題等もいろいろ研究された結果、通常兵器として使用されておるという現状においては、距離その他の点から見て、私ども憲法上の解釈としては、「たとえば」オネスト・ジョンのごとき、という「たとえば」という言葉を私は申し上げておるような次第で、基本的な政策、基本的な精神については全く総理と同様であるということを御了承願いたいと思います。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 これは幾ら言われましても私たちを納得せしめるものではありません。そこでこの質疑は限りなく続くわけでありますが、時間の関係もございますので、最後に総理一つ御所見を承わっておきたいのは、あなたの強い御信念がおありでありますから、私は本委員会において、少くともあなたの御信念である政治生命をかけたこういう考え方憲法上からとはいうものの、そういった国民が非常に危惧を持つようなオネスト・ジョンの問題が、「たとえば」ということは確かに議事録にも載っておりますが、そういうことであったとしても、私は非常に軽率だったと思う。私はそう思うのです。この点に対して総理はどう考えますか。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はあの際の、今でも、なんでありますが、軍事科学核兵器のなにについて専門的な知識を持っておりませんので、抽象的にだけお答えを申し上げたのであります。これに対して、さらにあの際の御質問として、当の責任者である防衛庁長官に、例をあげろという御質問がありまして、防衛庁長官としては私と違いまして、兵器研究につきましてもある程度専門的な資料を持っており、知識を持っておりますから、その御質問に応じて、いわばやむを得ず一つの例としてこれをあげたものであると思います。従って今非常に軽率であるとかいうお話でありますが、やはり防衛の衝に当っておる防衛庁長官として、ああいう質問に際しましてあの程度お答えをすることは、これはやむを得なかったであろうと思います。(鈴木強君「あなたはどうだ」と述ぶ)私自身としては……(鈴木強君「不安を与えるようなことは」と述ぶ)不安を与えるようなことというお話でありますが、それは先ほど来申し上げた通りきわめて岸内閣方針としては明確であり、また事実上これに反した事実は、また疑いを受けるような事実は一切ないのでありますから、ただ純粋憲法論をされたのであるということを、今回の質疑を通じてかく明瞭にいたしておくならば、私は御心配がなく、さような不安を生ぜしめることはないということを私は考えます。
  18. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して……。首相の御答弁を伺っておりますと、憲法上の解釈政治上の問題は別個の問題である、こういうように今御答弁なされたと私は思います。しかしこのことは、まことに憲法上照らしてみましてその考えが腑に落ちないので御質問したい。  御承知のように憲法第九十八条では「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」前段に規定してあることは、政治そのものも憲法に従わなければならない、こういう私は解釈であろうと思う。さらに後段においては「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」すなわち憲法にのっとった法規、命令、その他、これらをもとにした国際条約は国内法に優先的に順守しなければならないという国際法規優先の建前が憲法九十八条の後段に私はあると思う。従って、これを順奉するためには、憲法八十一条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」こういうふうにしまして、憲法解釈は単に行政府のいわゆる政治上の解釈で曲げられることがないように、最高裁判所に違憲をつかさどるための最終審判権をここに与えたことは憲法第八十一条の規定の通りだと思う。従って、この憲法上の解釈ということが時の政府が行政上につごうのよいように解釈するということはきわめて危険なことであって、これを規制するための第九十八条でありますから今の首相の御答弁では、憲法上の解釈政治上の問題は別個のものであっていいという御解釈は、ますます問題を混乱させるものではないだろうか。すなわち、私は、最高裁に違憲裁判をやらせる、こういう手続法というものが当然今日のような国際情勢の複雑な段階においては必要ではないか。むしろそういう方向にいくべきではないかとすら考えておりますので、憲法上の解釈政治上の問題が別個のものであっていいということについて釈明を願いたい。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法の最後の解釈が最高裁判所できまるということであると思いますが、ただ現在の憲法の規定から見まして、単純な違憲ということだけを理由として、それが出訴できるかどうか、その手続問題につきましては議論があるようでありますが、その規定を変えらるべき節があると思われますが、これらは十分憲法調査会においても論議されているところであります。  ただ、私が今おあげになりましたなににつきまして、もしも憲法違反する政治上の行動や、政治的な政策というような考え方は、これは許せないことは言うをまたないと思う。しかしながら憲法九条の解釈がかりにここまでの範囲のことを認めておるとして、この範囲のうちにおいて、核兵器は武装しないという政治信念に基いてその政策を進めて実行しているということは、決して憲法違反した政治的な行動をしているというものではないと私は考えております。
  20. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して……。今の憲法第九条の解釈で、特に私は総理並びに法制局長官お尋ねいたします。  憲法第九条は、その第二項において「国の交戦権は、これを認めない。」と規定いたしております。ここに規定する交戦権とは、具体的にそれは実体的に何をさすのかこれを伺います。法に規定する交戦権とは、日本が相手側を攻撃する場合たけを言っているのか、それがここに憲法第九条第二項に規定する交戦権なのか、あるいは自衛の場合でも共同防衛の場合でも交戦をすれば、これは憲法第九条第二項の交戦権条項に違反するのではないか。私はそう思う。だからその第二項の国の交戦権はこれを認めないという規定は、これはどういう場合にしても交戦をする場合はこれを禁止しておる条項だろうと思う。だから今のような解釈でいけば何でもできるということになり、一体日本国のこの平和憲法というものはどういう意味を持っておるか、これは全く意味を持っていないことになる。これはあとから続けて鈴木委員のお許しを得て一問ぐらいいたしますが、まずこれをお尋ねいたします。
  21. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの憲法第九条第二項の交戦権の解釈でございますが、これはもう御承知通りに、第一回国会以来しばしば解釈をなされております。いわゆる戦時において国が交戦国として持つ国際法上のいろいろの権利の集合、かように解釈されておるのであります。その例としてはたとえば、占領地行政あるいは中立国船舶の拿捕、こういうようなものがそれに入る、かように考えられておるわけであります。そこでいわゆる他国から日本が侵略を受けた場合に、それを排除するために実力行動する、これがいわゆる交戦権は認めないということでできないのかという御疑問だろうと思いますが、これは憲法九条第一項が自衛権を否定しておらないという建前からいたしまして、他国から武力侵略を受けた場合に、自衛のために必要な措置をするということは、自衛権の裏づけとして当然のことであります。この範囲においてのことはこの交戦権を認めないということとは矛盾しない、それはできるという解釈がこれは一貫した解釈であります。
  22. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 羽生君に申しますが、関連質問はなるべく、きょうは私少しは問題の性質上ですよ、あるということは予想しますが、従来の関連質問は簡単にお願いしていますから、それだけ御注意を願いたい。(「委員長、大事なことだからあまり押えないで。」と呼ぶ者あり)
  23. 羽生三七

    ○羽生三七君 これが、日本憲法が戦争放棄を規定したことは、これはきわめて私は厳粛な問題だと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)これが全く今のような法制局長官の事務的な解釈で曲げられることは私ははなはだ遺憾に思います。しかも先ほど鈴木委員からもお話があったように、再軍備が公然と進められて、それから自衛力の増強は、もう際限がないのです。これは日本憲法の精神に照らして自衛力の発展というものと、一体憲法の関係というものとが、どこで規制をするのか、どこで規制をしますか、その条件は何でありますか。これは永久無制限でしょう、このままでいけば。その条件は何であるかということと、他国の憲法と比べてこの日本国のこの厳粛な平和憲法第九条を特に規定した憲法というものが、今のような解釈でいくならば何も意味がない。他国の憲法とどう違いますか。こちらから侵略すればそれがいけないと、それはもう当り前の話なんですよ。だから、そうでなくても日本が太平洋戦争の悲劇からこういう新しい憲法を作って、もう二度と再び戦争をやるまい、そういうことを私は規定したと思う。だからそういう厳粛な意味考えた場合に、それでは自衛なら幾らでも戦争ができるというならば、あえて何の必要があって第九条を特に設けたか。他国の憲法考えてごらんなさい。何にもこの第九条の意味、全然ないじゃないですか。どこに意味がありますか。これは総理大臣から明確に一つ答弁願いたい。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は非常に各国憲法とは違っておると思います。たとえば海外派兵のできないこと、あるいはわれわれが自衛上必要の最小限度実力を持つというものも、先ほど来お話がありましたように原水爆のごとき、もっぱら攻撃を目的としているような兵器憲法で持てないというような点から考えましても、また今、先ほど説明を申し上げました交戦権のなにから申しましても、各国の持っておるものと、われわれが自衛最小限度実力を持つということとの間には、この憲法との間には、非常に大きな差異があると思います。
  25. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 今の総理大臣の答弁に対して、さらに法制局長官からの説明は要りませんか。
  26. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、求めます。
  27. 林修三

    政府委員(林修三君) 御承知のように憲法第九条第一項は、いわゆる国際紛争解決の手段としての戦争、あるいは武力による脅威、武力による威嚇は永久に放棄するということを書いておるのだろうと思います。これは御承知通り、その反面として、いわゆる国の自衛権、独立国として持っている自衛権は否定しないというのは、これはもう確立した解釈と思っております。その自衛権がある以上は、その自衛権を裏づける範囲における自衛行動、外国から武力侵略を受けた場合に、それを排除するに必要な限度における実力行動、それは許されると、いうのは当然の解釈だと思います。  で第二項におきましても、その範囲における実力を持つことはこれは認めてあるというのが従来の解釈であります。これはこういう憲法があるなしによる差異は非常にあるわけでございまして、普通の国においてはもちろん侵略のための戦争ということは普通の国も考えないと思いますけれども自衛のために必要であればその範囲においてむろん無制限に実力を持つことも、これは各国憲法は認めておるわけでございます。日本憲法の場合で言えば、自衛権の裏づけとして必要な限度に限られる。そういうところが出てくる。あるいは自衛権の行使の範囲も限られる。その実力行使もその範囲に限られるし、あるいは用いる実力限度もその必要の範囲に限られる、こういう制限が出てくるわけです。非常にほかの憲法と違うと、かように考えます。
  28. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 羽生さん引き続いてやりますか。もうやりませんか。
  29. 羽生三七

    ○羽生三七君 やります。それでは法制局長官にもう一つ承わりますがね、そうするとこの日本憲法自衛権、この自衛権ということから言ってですね、憲法第九条で一応の制約がある。そこで自衛権ということの名にかりて幾らでも拡大解釈できるわけですね。それを規制する、日本憲法の精神からして、これを規制する限度、限界その条件は何ですか。
  30. 林修三

    政府委員(林修三君) この憲法第九条で、裏から申しまして、国が独立国として自衛権を持つということは、これはもう独立国の一つの条件であると思います。自衛権のない独立国というものはあり得ないと思います。従ってここで日本憲法の九条一項が自衛権を否定しておらないということは、これはもう従来の通説でございます。そこでその場合の自衛権とは何ぞやということになると思います。これは国際法的と申しますか、あるいは国際法というのは少し言い過ぎかと思いますが、自衛権という名前は従来の国際法におきましては非常に広く使われておる例があるわけであります。私ども解釈といたしましては、この憲法による自衛権とはそう広いものではない。要するに他国から武力侵略を受けた場合に、それを排除するに必要な限度、そこにおいて限度もあって、あるいは行使のやり方、あるいは範囲において限界がある。他国の武力侵略を排除するというに必要な限度というふうに私は考えております。普通の場合にこれは国際法的のいわゆる自衛戦争というような場合におきましては、たとえば始まりはかりに自衛権として始まっても、それをどんどんやっていって、他国の領土まで攻め入って他国を降伏させるということまで、これは国際法的には禁止されておりません。しかし日本自衛権はこれはそういうことはできない。すなわち他国の武力侵略を排除するに必要な限度、かように考えております。
  31. 羽生三七

    ○羽生三七君 その限度がわからないから聞いておるんですよ。無制限じゃないですか、今の解釈でいきますと。先ほどの政府解釈でいけばそれは限界というものはないじゃないですか。
  32. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 羽生さん、私が許してから立って下さい。
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうですか。今の答弁ではわからないですよ。自衛隊の地上部隊を幾らふやしてもよろしい、空軍もそう、海軍もそう。それは自衛の名だったら際限がないでしょう。どうなるんですか。普通のよその国の憲法日本と差はないでしょう。それを具体的に言ってもらいたい。抽象論ではない。どれが規制をする条件である、限度、限界であるか、具体的に示して下さい。
  34. 林修三

    政府委員(林修三君) これは具体的に数字をもって示せとおっしゃいましても、なかなかこれはそう簡単には参りません。これはやはりそのときの国際情勢あるいは世界の情勢あるいは日本の置かれた地位によって相対的にきまってくるものでございます。日本の地位によってどの範囲自衛のために必要な最小限度であるかということによってきまってくるわけです。しかし先ほどから総理からも御答弁がありましたように、たとえば原水爆というようなものを、これを考えてみましても、他国から日本が侵略を受けた場合に、自国でそれを防衛するのに使い得る性質のものではございません。これはあるいはよそから来た軍隊をたたきつぶすのには有効かもわかりませんが、同時に日本の国土国民を大きく損傷するのでございます。こういうものは自国の防衛に使い得るものではないと、かように考えます。もっぱら他国に持っていって使う以外に使い道のないものである。そういうものは自衛権範囲において使い得る範囲には入らない、かように考えておるわけであります。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一問だけ、これで終りますから。これは私はこんな短かい時間でこういう重大な問題を論議するのははなはだ遺憾ですが、関連質問ですからやめますけれども、そもそもこの憲法を作ったときのことをよく考えていただきたい。日本が再びこういう戦争を繰り返さないという厳粛な気持で私は戦争放棄を規定していると思うのです。ところが、その精神は全然くまれていないわけです。まるで、事務的に問題を解釈しておる。ただその場をのがれればいいということでしょう。だから今の日本の安全を守る手段は、この前も私申し上げましたが、軍事力の増強だけがその手段であると考えている。つまりもう日本がこういう平和憲法を持ち、戦争放棄をしたという立場に立って、そうして他国にこの日本の特殊的な立場を強く訴えて、むしろ緊張緩和の方向で日本の安全を守るという方法は何もない。だから軍事力だけに依存ということになれば、それは際限のない発展をして、憲法は幾らでも拡大解釈をされる、こういう矛盾を繰り返しておる。私はあえて答弁を求めないが、こんなことで一国の憲法が扱われ、しかも日本の太平洋戦争の終末において得られたこの貴重な教訓というものが無視されるということははなはだ遺憾である。これだけを申し上げて私の関連質問を終ります。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと大事なところを……。
  37. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 矢嶋君に申しますが、あなたの御質問この問題に関連してあるのですか。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あとちょっとのところだから、ちょっと関連して、三十秒あればいい。今出ているところだから、これで片づけますから。林さん、あなたは曲学阿世の徒ですよ。これは世道人心上好ましくないと思う。私も長官の言うことは、それはあとであなたと対決しますが、総理一つ聞きます。  ただいまあなた方の答弁では自衛のために武力行使ができる、戦力も持てるということで論争が行われている。ところが、あなたが尊敬する日本の政界の先輩である吉田さん、その吉田さんは憲法制定国会において総理大臣でありました。その吉田茂さんはその国会において、共産党の議員の独立国には自衛権が必要じゃないか、従って自衛のために武力行使というものは肯定しなくちゃいけないのじゃないかという追及をされたのに対して、吉田茂さんはそのときに、戦争というものは歴史をひもといてみればわかるように、自衛の名のもとに国際紛争が起っておる、だから自衛のために武力行使はできるということはわれわれはこれを認めないのだ、この憲法法案というものはそういう精神でここに上程しておるのだということをきわめて明確に吉田茂さんは答弁しております。このことはあなたはいかようにここで処理しようとされるのですか。世道人心上よろしくないですよ。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる自衛の名のもとにおいて広く武力を行使することが憲法九条にいう自衛権とは言えないと思う。今おあげになりました吉田前首相の言はその後私の承知いたしております限りにおいてしばしばやはり訂正されてきておりまして、自衛権はあるということは、はっきりこれを言明されてきておると私は承知いたしております。  なお憲法上の解釈として、独立国として憲法九条が自衛権を認めないというような解釈は間違っておる。やはり独立国としては必要な自衛権いわゆる他国から侵略を受けた場合においてこれを排除する、そして独立を守るというこの自衛権はすべて独立国が持っておるのであります。日本憲法もこれを否定するものではないという解釈です。あなたがこの限度と言うのは、自衛のために必要な最小限度ということ以外に、これを抽象的でなしに具体的にあげろと言われても、これは私は何人も言えないことだと思います。
  40. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連質問……。総理憲法九条第二項の解釈として、自衛権の裏づけとして、自衛のための最小必要限度実力は持てるこういう御解釈であります。ところが私はここで伺いたいのは、自衛のための最小必要限度、この最小必要限度ということは具体的に何をさすかということでありますが、御承知のように、現在日本の国はアメリカの軍隊と、もっと詳しく言えば、アメリカの主として空軍と海軍とそれから日本自衛隊とで守っております。そこで単にこれを実体的に申しますと、アメリカの陸海空軍、このうちで極東のために備える主力を引いた残りと自衛隊の全部をもって初めて日本の国防を全からしめるいわゆる最小必要限度であると私は思うのであります。そこで総理は、アメリカの軍隊と日本自衛隊とは、これはおのずからその本質を異にしておる、こういう御答弁をいつか伺ったことがありますが、本質を異にしておるということはこれはもちろんでありますけれども自衛のための実体的の内容としてはこの二つを合わせなければ日本の国防の最低限度とは申せません。結論的に申しますならば、今、羽生委員が仰せられましたように、結局、今の岸総理憲法九条二項の解釈では、自衛隊そのものの拡張は無制限である、こういうことに私はなると思います。もっとも赤城官房長官解釈のように、あるいは芦田博士や佐々木博士のように、自衛のための戦力なら持てるので、これは九条二項の禁止するところではない、こういう解釈でありますならば、これは条理が一貫いたしますけれども、最小必要限度という自衛力の一定の程度をお設けになりますと、どうしても実体的な内容として、アメリカの在日空軍を日本の国防の完璧を期するためにはこれに加えなければならぬ、これが最小限度である、こういう解釈にならざるを得ないのでありますが、これに対する御意見を承わりたいと思います。
  41. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条の規定は言うまでもなく日本憲法であり、日本自衛権及びこれを裏づけるところの自衛隊に関する規定でありまして、外国の軍隊の実力であるとか戦力であるとかいうようなものは憲法九条とは何ら私は関係はないと思います。われわれは日本の独立を守るために自衛権を持つ、その自衛権を裏づけるに必要最小限度実力はこれを備えていくというのが憲法九条の精神でありまして、それ以外外国の軍隊等はこれは関係ないと、こういうふうに考えます。
  42. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の総理答弁は、外国の軍隊と日本の軍隊と本質的差異をお答えになったわけでありまして、日本の国防のための自衛のために最小必要限度の内容としてはアメリカの軍隊の持つ力、日本自衛隊と合わせて初めて日本自衛のための最小必要限度の必要量を満たすわけでありますが、御答弁には私はならない。本質論を聞いておるのではなくて、日本自衛のためにどれだけの力が必要であるかという点を聞いておるのでありますから、御答弁にはならない、かように考え質問いたすわけであります。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、先ほど来問題になっておりますのは、日本憲法範囲において自衛権は持っており、自衛権を裏づけ得るところの必要最小限度実力は当然持ち得るものと思う。こう言ったのでは抽象的で限度がわからないじゃないかという、先ほどからの、もっぱら憲法上の解釈としての議論をいたしておるわけでございます。日本がどの程度に現実に自衛隊を国力に応じて漸増していくかという問題に関しましては、われわれは必要最小限度として、この程度が必要である、こう考えておっても、日本の国力が許さない限りにおいては、現実においてはこの程度でもって満足しなければならないという、どの程度に現実に予算をとり、政策的に何するかということにつきましては、日本が安保条約によってアメリカの空軍等の援助を受けて、日本防衛をするという場合におけるその力等を参酌してきめるべきことは、これは言うを待たぬと思うのです。しかし憲法上の解釈としての何においては、これは別途の問題であるということを申し上げておるわけであります。
  44. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ自衛隊海外派兵の問題についてお尋ねをしたいと思います。これは私の質疑の中で受け取っておる解釈は、閣内に不統一があるのではないかというふうに私は感じます。そこで質問いたしますが、この前、やはり矢嶋委員質問の際に、総理は、日本自衛隊が直接他国を侵略し、あるいは敵の基地に進攻していくということは、これはない。これは明らかになりました。ところが日本の米軍基地あるいは日本領土が攻撃を受ける、かりに米軍基地の場合であっても、政府解釈としては、日本に加えられた攻撃だと解釈する、こういう解釈をしております。そこで、日本の基地あるいは米軍の基地を敵が爆撃してきた、あるいは日本に上陸しようとしてきた。そういう場合に日本自衛隊が他に絶対に方法がない場合には、今度は逆に敵の基地を爆撃し、あるいは敵の陣地に進攻していく、こういうことはあり得るという解釈総理解釈であります。ところがこの点に対する赤城官房長官の御答弁は速記録にもありますが、「今の現状から、海外派兵はできないのであります。しかし、日本が滅亡するかどうかという場合においては戦略上の問題で、総理答弁されたような場合もあり得るかと思いますが、そういうことに予期してもいませんし、考えてもおらないのであります。」さらに、私がそのとき最後に関連質問をいたしまして、官房長官総理との間の意見の食い違いがあるじゃないか、こういうことから御質問いたしましたが、やはりその際、赤城官房長官は、そういうこともあり得るかもしれませんが、現実問題としては、そういうことはあり得ないというふうに考えておる、こうおっしゃっております。従って、官房長官のお考え総理のお考えとの間に、やはりこれは私は差異があると思うのです。たまたま先ほど林法制局長官は、原水爆の問題に触れたときに、原水爆なんというものは、これはどこまで自衛のために持てるかということから質問したときに、まさか原水爆なんというものは、これは持たないのだ、それは敵の基地を攻撃するなんということはあり得ない、こういうようなことをおっしゃっておった。しかし、現実に総理のおっしゃっておるように、攻撃を受けた場合に今度はまた攻撃するというかもしれない、そういう場合には、今度は日本自衛隊が出動していくということはあり得るということをおっしゃっておるのです。それなら、そのときに敵の基地に原水爆を落すということはあり得るのじゃないか、そうなれば、自衛のためなら原水爆を持ってもいいということになってきますが、それはさっきのお話にも関連してくるのですが、それはさておいて、海外派兵の問題についてやはり私は、官房長官の言われる思想と林法制局長官の言っている思想というのは大体合っていると思うのです。ところが、岸総理大臣や藤山外相等の言われている考え方の間には差異がある、私はそう思います。この点を一つ明確にしていただきたいと思う。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、私が答弁しておることと、官房長官答弁したことの間に差異があるように思わないのでありますが、それは私の答弁しましたのは、こういうことなのであります。われわれは海外派兵はできない、これについては、今の憲法からいって、この点は全然疑問ないと思うのです。ただ、それでは向うから誘導弾等において日本を攻撃しておる、その敵のそういう陣地に対して、何にもこれに攻撃を加えることはできないのかという質問に対して、私はほかに方法がないと——やはり自衛権があり、自衛の行動を許されているというのは、敵からどういう形の侵略をされても、座して国土が破滅し、また、全国民がこれでもって座して滅びてしまうということを甘受しなければならないのだという意味のものではないと私は思うのです。従って、もし敵のある陣地から誘導弾等でもって日本が攻撃されておる、そうして、これを排除するのには、もちろん日米安保条約がある限りにおいては、アメリカの軍隊でこれに対する攻撃を加えて、これをなくするというような方法がとられていくことは当然のことであります。しかし、万やむを得ない場合に、その陣地を攻撃するということが、いわゆる海外派兵という観念には入らないのではないかということを申し上げておるわけであります。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 論理の矛盾を来たしていると私は思うのですが、あなたのおっしゃっている海外派兵にならないという解釈は、これはあなたたけの解釈であって、われわれがあなたの御答弁を聞いておりますと、そうはとれない、要するに、海外派兵というものの考え方でございますか、かりにこちらが先制攻撃をしないということは、これは明らかになっておるのです。先制攻撃をしないが、やられたときには向うをやっつけるぞ、その場合には、ただ単に、前回の質問でも、空軍だけのことを言っておりません。自衛隊が上陸というようなことも、これはちょっと触れておるのですが、そういうことも含めて、そういう場合に自衛隊が出動するのも、これは海外派兵じゃないですか。これはそういう解釈なんです。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題に関しては、すでに昭和三十一年の衆議院の内閣委員会において、鳩山内閣時代に当時の船田国務大臣が、総理大臣と話し合って、内閣統一した見解を申し述べております。海外派兵ということはできない、海外派兵というのは、ある目的をもって主力部隊を海外に出して、そうして行動せしめる、もしくは行動ということは、戦争ということでなくとも、海外に、ある目的をもって主力部隊を派遣するということは、これは海外派兵になる、これは許せないことは私どもも従来一貫して考えておるのであります。ただ、日本に対する侵略があった場合に、その侵略が、敵の基地から誘導弾等によって日本に攻撃、侵略が加えられておる、これを排除するのに絶対に方法がないという場合に、あるいはその基地を攻撃するために、こちらからも誘導弾で攻撃するとか、あるいはその基地を爆撃するために飛行機が行って爆撃をするというようなことは、いわゆる海外派兵という観念には入らないのじゃないかというのが私たち解釈であります。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私も今、総理あるいは官房長官法制局長官が言われたこととそう変っておるとは思いませんのですが、海外派兵がという、派兵という意味において、できないことはむろんであります。従って海外派兵はできないという原則はそう、だろうと思います。ただ、今言ったように、誘導弾がきた場合に、こちらからそうしたものをやって侵略を防ぐということは自衛立場だと、こう考えております。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 総理お話は、ICBMとかIRBMとか、そういったものを指しておられるのですか、それでもいいでしょう。しかし、そうなるともっとお伺いしたいのは、とにかく海外派兵という考え方ですね、物の考え方ですが、攻撃を受けたときには、それを報復的にやっつけるために兵力が出されるのだということでしょう、そうでしょう。それが飛行機の場合であっても、これは卑近な例で大へん恐縮ですか、日本に非常に近い国のある沿岸に敵が大量に兵力を集めて、日本を進攻しようとするそのときには、先に爆弾がきた場合に、向うから先制攻撃を受けたという前提に立つのですが、そうした場合に、ただ単に長距離弾等、そういうものたけでなしに、その海岸に集結している兵力を壊滅しなければ日本の安全が保てない、こういう場合があると思うのですよ。その場合に日本自衛隊がどこか、下関か、呉か、佐世保か知りませんが、軍艦に乗って向うへ行ってやっつけなければ日本の安全は保てない。座して滅亡を待つことはできないということで出て行くでしょう、そういうことか海外派兵じゃないと言えるのですか。私は少くともパイロットが戦闘機に乗っていく場合でも、爆撃機に乗っていく場合でも、この日本の領土を離れて他国の領空に行って戦闘行為に参加するということは一つの派兵ですよ、そうでしょう。その解釈が非常に不明確ですよ。私は林法制局長官がさっきちょっと水爆問題に触れたのですが、そういう解釈が正しいと思うのです。赤城長官もそれを裏づけたものと思うのですよ。そのところが不明確ですよ。海外派兵ということの定義というか、考え方というものが非常にぐらついている、あなたの答弁はなっていないですよ、この点に関する限りは。
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは戦略上からいって、こうした方が都合がいいとか、あるいはそういう普通の場合において、今侵略が行われようとしている、それを向うがある種の方法で先制攻撃を加えてきた、さらにそれを追加するための大量の攻撃が行われようとしておる、これに向って攻撃を加えるというようなことを、私は実は先ほど来申しておるのではありません。そういう場合においては、いわゆる海外派兵という観念からこれが認められぬことは言うを待たないと思います。私の申しておるのは、そういう場合ではなくて、日本自衛権の発動の限界というものは、いかなる場合においても、どんな場合においても、いやしくも領土、領空を出て行動できないのかということに対して、それはもう領土、領空を出れば、いかなる場合においても、海外派兵なのかという質問に答えるために申しておるわけで、今の設例の場合もしくはそういうような意味において、日本自衛隊が使われるということは海外派兵になるでしょう、今、鈴木委員の設例されるような場合であれば。しかし私どもの従来お答えをしているのは、そういう場合ではなくして、もう日本に現実のいろいろな侵略が行われておって、その侵略を排除するというのは、日本の領土内もしくは領空内においてやるのが本則であり、これをあくまでも何しておるけれども、もうそのほか、基地に対してある種の攻撃を加える以外にない、その場合におきましても、自衛隊を、実力部隊を向うに派遣するということは、これは許せないでしょう。しかし、この向うの基地から日本に対する、日本国民に全滅的な一つの被害を与えるような、何かそれをたたく以外には方法がないというときに、何かたたく有効な方法を講じていくことは海外派兵という観念に入らないだろうというのが、従来からの政府のとってきている考え方でありまして、そのことを申し上げたわけでございます。
  51. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、はっきりしたことは、さっき私が設例として申し上げたような、ある領土の対岸に敵が集結しておる、先制攻撃は受けておるのだが、そういう場合には、日本自衛隊はこちらから向うに報復的なことは絶対やらぬ、これははっきりしましたね。そこで問題は、空軍が問題になると思うのでありますが、たとえば、あなたのおっしゃっているように、長距離弾道弾でこちらから攻撃をしていく、これは非常に問題があるが、一つの例ですから。そういうような場合は、ある程度こっちから撃てますからいいですが、敵の基地を爆撃する、敵の上空に侵入していく、こういう場合がありますね。しかもそれが近代的な戦いの中で、あるいは落下傘部隊をたくさん動員してその敵の上空へ行って、落下傘部隊で降下して、敵の陣地を壊滅させるということもあり得るでしょう。これも海外派兵にならないのですか、こういう場合にはどうなりますか。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はそういう場合は、やはり海外派兵として考えるべきだと思います。そういうことを実は申し上げているわけではございません。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、だんだん後退をしてきて、官房長官の線に近寄ってきたのですが、非常に苦しい答弁総理はされていると私は思うのであります。問題は、戦闘機で爆撃する場合とか、あるいは長距離弾道弾なり中距離弾道弾でやる場合、こういうのは、あなたの解釈でいうと、これは海外派兵ではない、そういう場合は報復的に攻撃することができるのだ、こういう御解釈でございますね。そうしますと、赤城官房長官はこの点に対してどう考えるか。
  54. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 総理考えと同様であります。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 この点については、まあ意思の統一をされたようでありますが、しかし私はこういう重大な海外派兵の問題を、質疑の際にも、少くとも今申し上げたような疑義を残さぬように、総理並びに答弁する方々はやるべきだと思う。ただ単に海外派兵を総括的に言うものですから、いろいろな誤解を受け、いろいろな私たちは心配を持つわけでありまして、きょうの質疑の中で、ある程度整理できました。しかし、また私はそれだけで終っているとは思いません。しかし総理の御都合、またその他で、私のあと、矢嶋委員が引き続いてこの問題に触れるようでありますから、一応私はここで次の質問者と交代いたします。
  56. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 鈴木君の総理大臣に対する御質疑は終りました。   —————————————
  57. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 次いで矢嶋三義君。
  58. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 本問題は国の政治に、さらに国民生活にきわめて重大な関係のある根本的な政策上の問題だと私は思うのです。従って、私は重大決意をもって質問を申し上げます。昭和二十五年、警察予備隊が発足して以来九カ年問、防衛庁発足以来五年間、あなた方と質疑応答をし、私が研究して参った成果をもって本日対決するつもりであります。  まず、総理に伺いますが、総理は保守党、自由民主党に所属する総裁であり、総理であるわけですが、日本の保守党の政策並びに言行については、全部責任をとられるかどうか、それとも具体的に昭和何年ごろから以後の件について責任をとると言われるのか、その点をまず明確にしておいていただきたい。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 抽象的な御質問でありますが、私は具体的の事例をあげて、これについて、総理がどう考え、どういうふうに責任をとるかというふうに御指摘を願いたいと思います。
  60. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、私はそういうことを伺っておるのじゃないのです。日本の保守党が長く政権をとっておるわけです。その過程において、あるいは保守合同というものが行われました、長く続けられたのです。そしてあなたは今、日本の保守党自由民主党の総裁であり、総理であるわけです。過去の日本の保守党がとられた政策並びに言行について、あなたは責任をとるのかとらないのか。自由民主党が結成されて、あなたが総裁になった、その以後の責任をあなたはとつて、その前の責任はとらないか。まず、その点を明確にしておいて進めていただきたい。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が責任をとるべき問題もあるし、あるいは内閣との間におきまして政策をかえまして、そういう問題もあろうと思いますから、具体的の問題でないというと、ただ抽象的に一切責任をとるとか、責任をとらないとかいうことを申し上げることは非常に誤解を生ずるおそれがあるとして、具体的の問題に関しては明確にお答え申し上げますと、こうお答えしておる次第であります。
  62. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではしぼりまして、憲法九条の解釈並びに国の防衛政策についての責任はいかがですか。
  63. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは明確に岸内閣になりましてからの問題に関しましては全責任をとります。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ということは、その前はとらないと言うのですか。
  65. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 防衛の問題に関しましては、私になりましてから防衛の根本の基本方策を定めるについては、国防会議法によって国防会議が設けられ、これによって基本政策がきめられてきております。これは明らかに、私は岸内閣になってからの問題として全責任を負う、こういうことでございます。その前の問題につきましても、それまでにずっとそこまで至りました経路について、私が責任をとらなければならぬ問題がありますならば、これは責任をとって参ります。しかし、抽象的にどういう問題であるからとるとかとらんとかということは、防衛の問題につきましても、各内閣におきまして政策を異にしておる点もあろうと思いますから、その点においては、これは政策を変更したということにおいて御了承を願いたいと思います。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、あなたはよく社会党と政策で対決するということを言われておりますが、本日これからあなたと私と討論をやって、討論上あなたが敗北したら総辞職しますか、どうですか。念のため伺っておきます。
  67. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、この政治的な責任をとらなければならぬ事態が起りますならば、私はもちろん責任をとることについては、進んで責任をとるつもりであります。ただ問題は、これからの議論だと、こうおっしゃいますが、十分、重大な問題についてわれわれが誤まっており、また政治的責任をとらなければならないようなことが明瞭に、矢嶋委員と私との質疑応答の間において明確になれば、そういうことをしなければならないということは、私は考えております。それは具体的にこれからの御議論を聞き、またわれわれの意見を述べての結果でなければ、抽象的に事前にこうだということを申し上げることはちょっとどうかと思います。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次から、私が伺う点については、首相答弁していただきたい。できない場合は防衛庁長官、それでできなければ外務大臣、それでできなければ科学技術庁長官、それで不可能の場合は文部大臣でけっこうです。政府委員は幾ら助言してもけっこうですが、政府委員答弁は求めません。これらの討論をやるに当って、私は問題がわかっていないで論ずるというわけにいきませんので、前提として若干明確にいたします。  原子並びに原子力とはいかなるものでありますか。
  69. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。原子力基本法によりまして、「「原子力」とは、原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギー」のことを申します。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原子の説明がない。科学技術庁長官がお見えになっているのですから、科学技術庁長官からでもけっこうですよ。通達してある。
  71. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) あるいは学問的な答弁にならないかもしれませんが、物質の構成要素は分子でありまして、分子のこわれない、核分裂のできないものが原子と、かように考えます。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原子兵器核兵器原子爆弾、この説明並びに相違をお聞きしたい。
  73. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。私ども原子兵器と申しておりますのは、原子力を利用する装置で、その主たる目的が兵器兵器の原形、または兵器の試験装置として使用またはそれらの開発にあるものを申し上げます。ただし、その装置の輸送、または推進の手段は、それが装置の分離され、かつ分離され得る部分である場合には含まれない。かように解釈いたします。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 核兵器原子爆弾は相違があるのかないのか。あればどういうふうにあるのか。
  75. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器につきましては、原子兵器と私はあまり相違はないと、かように解釈いたしております。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原子爆弾は一ぺんに答えなければいけません。
  77. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 原子爆弾は、原子兵器のうち、核弾頭をつけたものが原子爆弾と、私はかように解釈いたしております。原子爆弾につきましては、原子力を利用する爆弾装置を原子爆弾
  78. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまのは不明確ではないですか。もう一ぺん答弁して下さい。
  79. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 例をもって申し上げますれば、広島に落下せしめられたような爆弾にして、原子核によってその爆発力、爆風、爆発熱並びに放射能等による殺傷をH的とする爆弾原子爆弾と、かように私ども考えております。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の答弁にならないのです。ずっと会議録を見ておりますと、こういう術語は盛んに政府から出ているのですよ。それを明確にしなければディスカッスできないわけなんですよ。私は広島云々を言っているのじゃない。原子爆弾とは、どういうものか。原子兵器核兵器と相違あるのかないのか。あればどうあるのかということを明確にしてもらいたいと思います。
  81. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 十分な研究ができませんで、まことに恐縮でありますが、原子爆弾とは、原子の分裂または核融合による爆発力を利用した爆弾原子爆弾と申します。
  82. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 核弾頭は、そういう原子核の分裂、あるいは核融合を応用してあるものか応用してないものか。
  83. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 応用してある。弾頭にそれらの物質の核分裂もしくは核融合を応用してある弾頭を核弾頭と申します。
  84. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原子核とはいかん。(笑声)笑わないで下さい。大事なんですよ。このことがわからないで論じられないのです。
  85. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 後ほど正確なお答えをいたしたいと思いまするが、原子力、核として、中心として構成をしておるものを原子核と申すように私ども考えております。
  86. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 弾道兵器と誘導兵器の相違があるのかないのか。あればどういうふうにあるのか、お答え願いたい。
  87. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 弾道兵器と誘導兵器の区別につきましては、広い意味において、誘導兵器の中に弾道兵器も包含されるわけでありまして、弾道兵器は、発射後ある程度距離まで誘導されますが、それ以後においては、自体の力で着弾するものを弾道兵器といい、誘導兵器は、最後の弾着点までいろいろな操作によって誘導されるものが誘導兵器、かように考えております。
  88. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 よく使われる言葉でありますから念のために承わりたいのですが、ミサイルとロケットの相違は占めるかないか。相違あればいかん。
  89. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 矢嶋さん、伺いますが、専門的なことは政府委員からでもいいんでしょう。
  90. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここのところは政府委員にしましょう。その方が時間が節約できますから。
  91. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) お答えを申し上げます。ミサイルというのは飛翔体、飛ぶものをミサイル、こういうわけでございます。ロケットというのは、そりミサイルを飛ばす原動力になる推進管、それをロケットというふうに考えております。
  92. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでいいですか。ただいまの定義は、防衛庁長官、就任早早であるにかかわらずよく答弁できております。(笑声)しかし、最後の政府委員答弁は問題がありますが、しかし、きょうは一重点でないのですからペンディングにしておきます。  そこで次に伺いますが、オネスト・ジヨンに核弾頭をつけたら、これは核兵器核兵器でないか、いかん。
  93. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。核弾頭をつければ私ども核兵器解釈いたしております。
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどの答弁で、核弾頭は原子核の核分裂を応用してあるものであるということになりますと、先ほどの定義から、これは原子爆弾の一種ということになりますね。さっきの理論からそうなるでしょう。
  95. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器の一種ではございまするが、私どもはいわゆる原子爆弾水素爆弾とは区別をいたしております。
  96. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さっきの原子爆弾の定義に対する答弁記録を読んでみて下さい。そういうところが不明確になると先に進まれないのです。
  97. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私は、さいぜん申しました点が不明確でありましたので、さいぜん訂正をいたしたと考えておりますが、原子爆弾等は、原子核の融合分裂による爆発力、破壊力、放射能等を利用した爆弾原子爆弾、かように申しまして、ロケットミサイル等の核弾頭をつけた核兵器とは区別して申し上げたつもりでございます。
  98. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 明らかに違います。速記録を調べてみて下さい。さっき核弾頭というので、原子力の原子核の核爆発、それを応用したものが核弾頭だということを言われたでしょう。そういう物理作用を応用して作ったものが原子爆弾というものだ、こういう定義ははっきりしているのですよ。それはその通りなんですよ。
  99. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答えを申し上げます。さいぜん申し上げましたように、爆弾については申し上げた通りでありますが、ロケット、砲弾等につきましては、爆弾と私どもは区別をして申し上げたつもりでございます。
  100. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 速記録を調べてみて下さい。こういうことははっきりしていなければ、先に質問されません。
  101. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 矢嶋君、速記録を調べると長くなりますが、あなたが違うというところを指摘願った方がいいんじゃないですか。
  102. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 指摘しましたよ。防衛庁長官でなくても加藤局長でも……。
  103. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私が核弾頭と申し上げましたのはロケット、砲弾等に核の分裂、融合による爆発力、破壊力等を利用するもので、爆弾爆弾に核分裂、核融合による爆発力、破壊力、放射能の何と申しますか、殺生力を応用したものが原子爆弾である、かように申し上げたつもりでございます。
  104. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 非常に混線しているのですね、頭が。オネスト・ジョンにつける核弾頭はどういう物理反応を応用して作ってあるものですか。
  105. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核分裂反応については、核弾頭であろうと爆弾であろうと、機能には違いはありませんが、弾頭として砲弾もしくはロケットにつけたものを爆弾とは申しておりません。
  106. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただ大きいとか、小さいとか差があるだけであって、さっきの定義からいったら同じものじゃないですか。化学的に物理的に考えた場合にどれだけの差がありますか、示して下さい。
  107. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 兵器爆弾と砲弾とは明確に区別があると存じます。
  108. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではさっきの答弁の定義を訂正しなさい。
  109. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) さいぜん申し上げた点について、私は違った御答弁をしているとは思いませんが、後日、速記録を見ました上で、定義の内容について間違った点は訂正をいたしたいと存じます。
  110. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは核弾頭をつけたオネスト・ジョン原子爆弾なのか、原子兵器なのか、どうなんですか。
  111. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 原子兵器であることには間違いございませんが、私ども原子爆弾とは申しておりません。
  112. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現在、日本憲法上持ち込むことのできる小型核兵器としてオネスト・ジョンをあなたはあげられました。それでは次に伺いますからお答え願います。アトラスはいかがですか。ボマークはいかがですか。これは必ずしも防衛庁長官ではなくても、防衛局長でもけっこうです。
  113. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) お答え申し上げます。アトラスは大陸間弾道兵器でございまして、射程が八千キロくらいあるというふうに聞いております。この間アメリカで実験いたしましたときは、一万キロ以上飛んでおるわけであります。ボマークは、最初できましたときには二百マイルくらいの射程距離でございましたが、だんだんと改良されまして最近は四百マイルくらいまでできていると聞いております。
  114. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は説明を求めておるんじゃないんです。現憲法自衛のため持ち込める部類に入るか、持ち込む場合に触れるかということを、名前をあげて特定してもらうために質問しておる。
  115. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私はせんだっての矢嶋委員お尋ねに対しましては、この問題は科学兵器の進展とともに、なかなか困難であるという問題をしばしば申し上げましたが、矢嶋委員から憲法上の解釈として話をするということでございましたから、たとえばオネスト・ジョンと申し上げたので、そういう詳細な一つ一つについて、憲法上の運用の問題ということについては大へん疑義もございまするので、十分研究した上でないとお答えをいたしかねます。
  116. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは何事ですか。防衛庁は憲法小型核兵器なら持てる。しかし、政策上持たないという以上は、現在アメリカが持っている、あるいは他国にある核兵器について、これは憲法上認められる、これは認められない、入れるか入れないかは政策上の問題で、岸総理が申される通りです。それを伺っているのに答えられないということがありますか。
  117. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 御指摘の通りでございまするが、われわれはその性能々々について、なお十分の検討を遂げたい。私はたまたまオネスト・ジョンについては、さいぜんも御答弁申し上げましたように、最近のアメリカにおいては各師団がそれぞれこれを装備するような、通常兵器化しており、(矢嶋三義君「私の質問に対して答えて下さい」と述ぶ)また同時に、着弾距離もきわめて短かいというような点から、憲法上の解釈としては自衛の観点から持ち得るものではなかろうかという事例をあげたのでございまして、現実の一つ一つの問題になりますと、これは戦略上、戦術上、現実の問題として十分検討した上でお答えを申し上げたい、かように存じております。
  118. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 憲法解釈憲法運用の問題ですよ。だから特定して伺っているのに、イエスかノーか答えられないことがありますか、答えて下さい。長官ができなければ、防衛局長でも……。これが答えられなかったら承知しませんよ。
  119. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 政府の方に申し上げますが、アトラスとボマークが憲法上持てるか持てぬかと、解釈上。
  120. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうですよ、政策上持てるか、持てぬかということを聞いておるんです。
  121. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 政策上は憲法解釈として持てるかどうかということを矢嶋委員が伺っておられるんですが、それにお答えを願います。
  122. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ボマークについては、なお十分な検討が遂げられておりませんので申し上げかねますが、アトラスについては、御承知通り一万数千キロというような、ほんとうの最大の大陸間弾道弾、かくのごときは当然私ども攻撃用としてもちろん持つという考えも持っておりませんし、現実に政府として持たないと声明しておりますが、ボマークについては、なおいろいろの角度から研究の余地があろうかと思います。
  123. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 スパロー、サイドワインダー、ラスカル、いかがですか。
  124. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) われわれは岸内閣方針として核兵器を持たない、かような方針をきめておりますので、当面それらの一つ一つの問題について、憲法上の解釈として詳細な問題については、遺憾ながら研究しておりませんのでお答え申しかねます。(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)
  125. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 答弁願います。そのくらいのことは防衛局で検討していないことがありますか。そういうことで憲法を運用するからでたらめになるんです。答弁を求めます。
  126. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私どもの、十分な研究ではございませんが、サイドワインダーについては、御承知のように、核兵器は、核弾頭はつきません。スパロー、ファルコン等についても、私どもは同様であると、私の知っている限りでは同様であると考えております。
  127. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ホーク、テリヤ、ナイキ、いかが。こんなものはアメリカと話し合いがあっているものですよ。はっきり方針がきまっているわけですよ、憲法解釈は。
  128. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) お答え申し上げます。ホーク、テリヤ、ナイキでございますが、ナイキは地対空の誘導弾でございまして、ナイキの中にも二通りございます。ナイキのアジャクスというのと、ナイキのハーキュリス。ナイキのアジャクスは、核弾頭はつきません。射程距離も四十キロから五十キロというふうに聞いております。ナイキ・ハーキュリスの方は、核弾頭は装備可能でございます。射程距離も百キロくらいというふうに聞いております。それから、テリヤはやはり……。
  129. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 性能じゃなくて、私の今言ったのは、憲法解釈上、その点を聞いているのだから、性能は要らぬのです。時間がかかりますから。
  130. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 内容につきましては、性能につきまして、今、加藤防衛局長からお答え申し上げましたが、持ち得るかいなかの憲法上の解釈の問題については、十分検討した上でお答えをいたします。
  131. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺います。無責任きわまりますよ。昭和三十二年に誘導兵器の供与をアメリカに申し入れた日本防衛庁ではないですか。で、これらの問題について、憲法上持つか持たぬか別ですよ、憲法解釈上保有できるかできないかというその見解が明確でなくて、アメリカから無償供与してほしいというようなことを申し入れる。無責任きわまるものですよ。総理、いかがですか。
  132. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) アメリカヘ要請をいたしました際には、研究開発用として、核兵器をつけないという条件のもとに、研究開発上、供与を要請しておる次第でございます。
  133. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 研究用は、そういうことを将来あるから研究するわけじゃないのですか。これは、あなたは憲法解釈上、運用上どうだということを答弁できないということは、許されません。これは答弁しなければ、質問を続けられません。答弁を求めます。相談して下さい。防衛局長でけっこうですよ。十分研究なさっているはずだと思いますからね、僕は。
  134. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいま申し上げましたように、研究開発用として、核兵器をつけないということで、アメリカへ要請いたしておる次第で、その点については御答弁を、私は明確だと存じております。
  135. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その核兵器をつけた場合、これは憲法上許されるのか許されないのかというのを伺っているのですよ。それをお答え下さいよ。
  136. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 先だって私が一例として申し上げましたのが、現在においては、岸政府としては核兵器を持ち込まないという明確な方針をとっておりますので……。
  137. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 憲法上ですよ。政策を聞いているのじゃないのです。憲法解釈上です。
  138. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 従って、私どもは、残念ながら、いまだ十分な研究をいたしておりません。
  139. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはいかぬです。そんなことで供与を請求したり、国会核弾頭の、核兵器の言葉を使うことは、許されないですよ。何しているのですか。お答え願います。今、協議してけっこうですから。  それは、防衛庁当局が研究する間、総理に伺います。総理、あなたの責任ですよ。最近の各国の国防というのは、非常に高度に複雑化している、兵器というのは。ところが、防衛庁長官は六カ月ごとに交代しているのです。六カ月間防衛庁の職に当って、何ができますか。あなたわかりますか。伊花さんは優秀な人だからここまでやれるのですよ、ほんとうに。ところが、左藤さんは、防衛庁長官に任命するときは、大阪府知事に立候補する箔をつけるというので、条件つきで防衛庁長官に任命したじゃないですか。党利党略の具に供しているじゃないですか。そうして一千数百億円の金を、国民の血税を防衛に使うというのは、無責任ですよ。あなたの責任ですよ。伊能さんは、今一生懸命に勉強しているけれども、今度の内閣改造でかえないで、当分の間防衛庁長官をやらせなさい、いかがですか。
  140. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 左藤前防衛庁長官を任命するにつきましては、先日もそういう御質問がありましたが、私は、将来大阪府知事に立候補せしめるということを条件にして、これを任命した覚えはございませんし、また、そういうような扱いをどの閣僚につきましてもすべきものでないことは、言うを待たないものでありまして、私はずいぶん、閣僚の人選につきましては、責任を持って当っているつもりでございます。
  141. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、内閣改造については重大関心を持っている。特に防衛庁の長官については、関心を持っているのです。六カ月交代にかわっているのですよ。軍事顧問なんかと握手の仕方を覚えるだけですよ。無理ですよ、それは。この前の私の質問のときに、内閣改造はいつ、どのくらいの幅で改造するかということを伺ったのですが、きょう答弁して下さい。
  142. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 内閣改造というようなことを、事前に、いつやるとか、どういう構想でやるとかいうようなことは、これは私は公表すべき性質のものではないと思います。私が、総理大臣として全責任を持って、各種の政治情勢を考え、あらゆる面から検討をして、その必要があれば必要のあるときにこれを断行すべきものだと考えます。
  143. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたは、新聞記者諸君に、必要があるということを仙台でお話しになっておるのですが、新聞記者諸君に仙台で話しても、ここで矢嶋には答えないというお考えですか。
  144. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、新聞の記者会見におきまして、少くともこの国会が済むまでは、私は予算の通過という、予算を成立せしめることに全力をあげるつもりであって、内閣改造というようなことは考えないということを申したのが、その当時の新聞記者会見の内容でございます。
  145. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さあ、さっきの答弁をして下さい。
  146. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) まことに恐縮でございますが、御指摘のように、憲法上の解釈といたしましても、きわめて重要な問題でありますので、ただいま憲法上の解釈として、小型核兵器として、観念上、自衛上持ち得るかどうかという点については、十分な検討を要しますので、十分検討の上、お答え申し上げることを御了承いただきたいと思います。
  147. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) お諮りいたします。  実は、衆議院の本会議で、鳩山前総理の追悼演説が社会党の鈴木委員長によって行われることになっております。参議院といたしましても、異例の措置でございますが、この際暫時休憩をして敬意を表したいと思いますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) では、暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩    —————・—————    午後二時四十分開会
  149. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 休憩前に引き続き、委員会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします。荒木正三郎君が辞任し、その補欠として横川正市君が、戸叶武君が辞任し、その補欠として上條愛一君が、剱木亨弘君が辞任し、その補欠として横山フク君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  150. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) これより矢嶋委員質疑を続行いたします。  まず、政府の御答弁を願います。
  151. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 午前中にお尋ねのありました昭和三十一年に、日本政府よりアメリカ政府に対して要求をいたしました七つの誘導弾もしくはロケット兵器の内容について御説明を申し上げたいと思います。  オネスト・ジョンにつきましては、すでに御説明を申し上げた通りでございます。お尋ねのタロスにつきましては、重量が約千三百六十キログラム、これは地対空の誘導弾でございまして、約八十キロメートル程度着弾距離を持っております。速度は四マッハということでございまして、これにつきましては核兵器はつかないということでございます。それからテリヤにつきましては、重さ千五百三十キログラム、着弾距離は三十二キロメートル、速度は二マッハ程度ございまして、これまた地対空の誘導ロケットでございます。それからスパローにつきましては、重さ百六十キログラム、距離はこれはあまり飛びませんで、十一キロメートル程度、速度は三マッハということで、これは空対空の飛行機より飛行機に向けての兵器でございます。これまた核兵器には関係がございません。次のファルコン、これは五十五キロで大して重くはございませんで、きわめて距離は飛びませんで、六キロメートル程度、速度は二・八マッハ、これまた空対空の兵器で、核兵器には関係ございません。それからテリヤ、これは大体タロスと同じくらいの重さで千五百三十キロ、着弾距離は三十二キロメートル、速度は二・五マッハということで、地対空の兵器でございます。ナイキ・アジャクスにつきましては、大体トンくらいの重さで、距離は四十キロメートル程度で、速度は二マッハということで、これまた地対空の兵器で、核兵器ではございません。最後に、ボマークでございますが、相当に大きな兵器でございまして、六千八百キログラム、これまた他のものに比較いたしまして格段に飛翔する、四百キロメートル程度にまで飛び得る地対空の兵器でございまして、速度は三マッハ、高さが二十四キロメートル程度を飛翔していく兵器で、この点につきましては核弾頭をつけ得るということでございまして、このボマークには、御指摘の憲法上の解釈として自衛上持ち得るものであるか、その限界を越ゆるかという問題につきましては、きわめて重要な慎重な調査を要すると存じまするし、オネスト・ジョンのように短距離で、しかも通常の師団がことごとくこれを備えておるというようなものとは性質が違いますので、この点については今後十分慎重に検討をいたした上で、私どもとしては憲法上のいい悪いという観念的な論議ではありまするが、自衛上の問題として持ち得ると考えられるかどうかということを研究いたしたい、かように存じておる次第でございます。
  152. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ボマークを除いて、六種の兵器について供与をアメリカがする意思があれば、受けるんですか、受けないんですか。
  153. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 現在のところ、アメリカからは供与が得られない、アメリカは承認いたして参りません。
  154. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 アメリカが承認すれば、ほしいというわけですか。
  155. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 当方といたしましては、最初にアメリカに懇請をいたしました事情はあくまで、御承知のように、研究開発という見地に立っておりますので、研究開発の見地に立ち、かつ核兵器ではないという断定のもとに当方として請求をいたしましたので、もしアメリカが供与を承認すれば、われわれの方は研究開発用としてこの研究をいたしてみたい、かように考えております。
  156. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 オネスト・ジョンは、アメリカが供与するといえば、受け入れるんですか。
  157. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 政府統一見解通り核兵器は持たないということで、アメリカが供与をするといっても、現在では受け入れる意思はございません。
  158. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺いますが、憲法上持てるが、政策上持たぬものがある。それではもう一つ憲法上持てないが、現実的政策上持たねばならぬという場合がありますか、ありませんか。
  159. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は最後の点は、ないと思います。
  160. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理は、伊能長官の先般九日の矢嶋に対する答弁をあれでよろしいと思いますか、いかがですか。
  161. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今朝来十分その趣旨を明らかにいたしましたように、私は防衛庁長官答弁は間違っておらないと思います。
  162. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理は三十二年八月十六日、わが参議院内閣委員会において核兵器を持っていないからといって、かりに戦争に負けるような事態になってもやむを得ない、核兵器は持たない、こういう答弁をしていますが、今と相当答弁が食い違っております。御所見を承わります。
  163. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今との……私は絶対に核兵器は持たないということを終始一貫言っておりまして、食い違ってはおらぬと思います。
  164. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたは、今は自衛のためには憲法上は持てるが、政策上は持たないというわけですね、今は。ところが、あなたは何カ月か後に、来年は政策上あるいは持ってゆくという事態が起るかもしれない、小型核兵器は進歩していっているんですから。ところが、三十二年八月十六日には、たとえいくさがあって負けるようなことがあっても核兵器は持ちません、こういう答弁をされているんです。違いますよ。どういうわけで変ってきたのか、お答え願います。
  165. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 少しも違っておらない。私は絶対に持たないということを今日もなお、憲法上の解釈いかんにかかわらず、絶対に持たないということを明言いたしております。
  166. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それほどあなた変っていないと、いくさに負けるようなことがあっても核兵器は持たないというなら、なぜ非核武装宣言決議を、あなたは党をまとめようと努力されないのですか。
  167. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それはしばしばお答え申し上げておりますように、国会が議決としてこれを取り上げるか、どうかということは、私は国会が独自に考えられるべき問題であって、行政府のこれに関与すべきものでないというふうに考えております。
  168. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた、時と場合で、そういうことを言われても許しませんよ。二月二日、衆議院の予算委員会の勝間田氏の質問に対しては、全然私は同感でありますと答弁して、そして、思い出して下さい——二月二十五日、参議院本会議において、矢嶋の緊急質問に対しても答弁をされました。そのときに、私が質問しないやつをみずから問題を設定して、そして答弁されたのですが、その中に非核武装答弁をしています。その答弁を読んでみましょう。「部分的に非核武装を宣言することは、必ずしも安全保障の目的に沿うものとも考えられません。」、なぜその安全保障の目的に沿うものとも考えられませんか。それを二月二十五日、参議院本会議でしゃべり、二月二日には勝間田氏には全く同感だと言っておる。これは非常な相違じゃないですか。どういう御心境なんですか。
  169. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、非核武装宣言というものが、この日本の安全保障を確保する上において、絶対必要であるとは考えません。ところが、この核武装日本が、自衛隊がしない、もしくは持ち得られないということは、私の従来からのこの外交政策の基本をなしておる問題の一つであり、同時に、私は日本国民核兵器に対する過去における悲惨な体験から、国民の一致した要望である、これを代表して申しておるわけでございます。
  170. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 なお、あなたには狂いがあるのですよ。三月四日、本予算委員会において、あなたのお考えと与党の自由民主党とは相違はない、そして現段階においていかなる小型核兵器も保有する必要を認めないということを、矢嶋質問に対して答えました。ところが、翌々の三月六日、衆議院の議院運営委員会においては、社会党の山本委員質問に対して、あなたは与党たる自民党の国会における見解と、政府との見解が必ずしも一致する必要はないと思う、こういうようなことを答弁されている。言った所で、その答弁が違うじゃないですか。責任を追及いたします。
  171. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 矢嶋さんの御質問でありますが、部分部分の言葉の端っこをとらえて、これをお話しになることは、はなはだ私としては迷惑であります。全体の趣旨として私が申し上げていることは、一貫しておると思います。私は核武装しない、また核兵器を持ち込ませないということを、声明をいたしましたのは、岸内閣ができた当初からそういうことで貫いてきております。これに対して、自由民主党がその政策は間違っておる、これはかえなければいかぬということを、かつて私は請求もされたこともありませんし、そういうことは党議できめたこともございません。私の政策を自民党が支持して今日まできております。この点において、自由民主党の政策と、私の申しておることとの間に食い違いがないということはこれは間違いないわけであります。ただ問題は、一つの議案をこの国会においていかに扱うかというような問題になりますれば、これは私はすでに国会自体の独立性から見て、自主的にきめるべき問題である。私としては今申し上げておるような趣旨によって、私の信念として貫いておるところでありまして、そのことを自由民主党が間違っておるから、かえろということを要求したこともなければ、また現実に私の声明を裏切るような実態がどこにもあるわけではございません。この点におきましては、一貫しておると、こう御了解願いたいと思います。
  172. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたにこの速記録を見せたいわけなんですが、たびたび見せるわけにもいくまいから、私は質問を続けますけれども、どうしてもそれは岸総理納得できません。それじゃ、具体的に伺いますよ。あなたは近い将来、核武装を必要とする時代がくると考えますか、考えませんか。
  173. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はそういう時代が近くくるとは考えておりません。
  174. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 考えていないのならば非核武装の宣言に賛成しなさい。
  175. 岸信介

    国務大臣岸信介君) たびたびお答えいたしておりますように、非核武装の宣言を国会の議決としてやるかやらないかという問題については、私は国会が各種の問題からこれを自主的に決定さるべきものであると信じております。
  176. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういうごまかしの両岸、八方岸答弁は、矢嶋は断じて許しませんよ。二月十三日、参議院内閣委員会において、赤城官長房官は、矢嶋質問に対して次のごとく答弁しています。科学の進歩というものが進んでいるから、将来のことまで国会で決議をして行政権を拘束することは慎重を期さなくちゃならないのじゃないか云々と述べて、念を押したところが、総理もこのお考えであります、ということを答弁している。違うじゃありませんか。これは、将来核武装の時代がくるということを予想しているのですよ。
  177. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は先ほど申しましたように、御質問に対してはっきり申し上げましたように、近い将来においてその必要があるとは認めておりません。
  178. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは、小型兵器も持ち込む必要はないと、こういうふうに予見しているということですね、そうしてまた、そうするということですね。
  179. 岸信介

    国務大臣岸信介君) しばしばお答え申し上げます通り、私はその必要を近い将来に認めておらない、従って私が従来とってきておる政策を変更する意思は持っておりません。
  180. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 じゃ、岸内閣はもちろんのこと、自由民主党政権においても、そういう政策は将来とりませんね。
  181. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が私の内閣を組織し、これを支持しておる自由民主党も、この状態においては私の考え方を支持しております。しかし、私は政党というものがこの政策に対してどういうように将来扱うかというのは、そのときにおけるところの党員諸君の総意によってきまるものだと考えます。
  182. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従って、非核武装の問題に関する限り、自由民主党は続いても、岸総裁その人がかわればわからないということなんですか。
  183. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 岸総裁がかわらなくとも、党員というものは、党の総意というものは、党員がそれぞれの党則によってきめるものであります。この意思が今日においては私を支持しておりますが、将来の問題については私は党員の総意に従い、もしくは私が責任をとれないということになれば、責任を明らかにするまででございます。
  184. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたは、悲願であり、それが信念だと申しますが、そのあなたの主張が自由民主党の中で認められないことになれば、事は根本的な問題でありますから、あなたは総裁のいすを去りますか。
  185. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、私、この問題につきましては、少くとも私は政治家としての信念に立っております。従ってその実現には、私の一生を賭してこれが実現をはかりたい、従いまして私のもし考えが間違いであり、これが実現されないということが明瞭になれば、私は責任を明らかにいたします。
  186. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 鳩上内閣の時代——すなわち昭和三十年にオネスト・ジョンが持ち込まれたわけでありますが、そのときに国会におきましては、時の杉原防衛庁長官並びに重光外務大臣、鳩山総理大臣、こういう方々はオネスト・ジョンは、核弾頭はつけられるが、核弾頭をつけないから核兵器ではない、核弾頭をつけたものを持ち込むことは憲法に反するが、核弾頭をつけないから、よろしいのだということを答弁していますが、今や核弾頭をつけてオネスト・ジョンを持ち込んでも憲法上は違憲にならないというのは、大いなる見解の相違です。いかがでありますか。
  187. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の承知いたしております限りにおいて、今お読みになりましたが、鳩山内閣時代に、このオネスト・ジョンの問題については、核弾頭をつけない、つけさせない、こういう意味において持ち込むのであって、憲法違反ではないということを申したのでありまして、核弾頭をつければ憲法上は違憲になるというような点にまで私は答弁されておらないと承知いたしております。
  188. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここに速記録を持ってきているから、読んでみて下さい。その当時の鳩山内閣の主張並びに国会における論戦は、核兵器並びに原水爆弾は憲法上持てないという大前提に立ってこれはずっと論ぜられておるのです、その大前提において。核兵器とは何ぞやといって、けさ明確になったでしょう。核弾頭を持っておれば核兵器である、だからオネスト・ジョン核弾頭をつければ核兵器だということがけさ明確になった。それから原水爆弾と核兵器は、これは科学的に言うならば、その大小はあろうが、同じものなんですよ。爆弾あるいは大砲あるいは兵器と言うから違うとかいうものじゃありません。これは爆弾だって兵器なんですよ。その爆発力、威力というものが問題なわけなんですよ。だから爆弾あるいは砲弾あるいは兵器と言うから違うなんというのは、これは前世紀的な解釈ですよ。防衛庁長官のその解釈というのは、納得できない。だから、午前中私が定義をあなた方に究明した。それからいって、鳩山内閣当時に国会における与野党の論戦、鳩山内閣見解から、前提は、核兵器原水爆弾、こういうものは一切持てない、こういう前提に立っているわけです。それを今になって核弾頭をつけたところの核兵器を持っても、ともかく憲法上認められるということは、憲法解釈というものをそのように同じ保守党で歪曲して解釈してよろしいものですか。そういうことで国民の血税を使ってよろしいのですか。その責任を私は追及いたします。そうして憲法上明確なる解釈をして下さい。なんだったら、これを見せてもいいですよ、速記録を借りてきていますから。
  189. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えは、先ほど私がお答えをいたしましたことと同様でありまして、その当時にそういう憲法上のなにとしても核兵器を一切持つことができないということを前提として議論されておる、こういうふうに矢嶋委員が御指摘になっていますけれども、私はそう考えておりません。
  190. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 考えておるおらぬじゃないんですよ。あなたは一ページか何か読んだらだめですよ。この前後の速記録を読んで下さいませ。明確ですよ。法制局長官、どうですか。曲げて答弁なんかしなさんなよ。その当時の速記録を全部読んでごらんなさい。そういうものが大前提に立っているんですよ。
  191. 林修三

    政府委員(林修三君) 核兵器憲法との関係については、御承知のように、昭和三十二年に、この参議院の内閣委員会あるいは参議院の予算委員会、衆議院の科学技術特別委員会等において繰り返し政府見解が述べられております。その見解は、先ほど総理あるいは防衛庁長官からお答えがありました通りで、はっきりしております。いわゆる核兵器なるがゆえにすべての核兵器憲法違反になるのではない、核兵器の中でも憲法上持ち得る範囲のものはあると、こういうことで、三十二年はっきりそういう答弁があるわけであります。今のお説は、三十一年のオネスト・ジョン問題についてお話だと存じますが、この問題のとき、その前後の問題は、大体原爆、水爆を基礎としていろいろ議論がされております。現在においても、原水爆のごときは憲法上持てないということで、これも理論は変っておらないわけであります。あの当時において、すべての核兵器核兵器なるがゆえに憲法違反だということは、政府答弁しておらないはずでございます。
  192. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた、どうしても曲学阿世の徒ですよ。そういう無責任な答弁をしては困ると思うのです。こういうことであなたと水かけ論をすると時間がなくなってしまうんですが、ともかく鳩山内閣時代の憲法解釈を明確にして下さい。それを与野党とも支持してきているんですよ。だれが読んでも、これを見れば、核兵器なんか持ち込めない、こういう前提になっている。汗を出して答弁したんですよ、最初は。核弾頭をつけられないと言ったが、追及に追及を受けて、二日間にわたって緊急質問も行われた。核弾頭をつけられる、しかし、核弾頭をつけないということを言っているわけです。また、昨年、一昨年、そうでしょう。エリコンの問題が起ったとき、エリコンは核弾頭をつけられないから、だからエリコンはいいんだと、こう言っているでしょう。サイドワインダーの場合もそうだったでしょうが。サイドワインダーにしてもエリコンにしても、核弾頭をつけないからこれは持ち込まれるのだというのが、もう一、二年したら、またそのつけられるものがよろしいというようになっていくんですよ。だから、憲法解釈が非常に無制限でいけないということを言っているわけです。お答え願います、総理
  193. 林修三

    政府委員(林修三君) 私の記憶しておる範囲におきましては、当時の議論は、核兵器日本に持ち込むことがいいか悪いかということで非常に議論になりまして、オネスト・ジョン、これも核弾頭はつけない、従って、核兵器ではないということで政府答弁したのであります。エリコンの場合も同様だと、あるいはサイドワインダーの場合、すべて同様だと考えております。つまり、核兵器を持ち込むことについての是非の御議論だと思います。政府としては、核兵器を持ち込むつもりはない、また、持ち込ませるつもりもない、こういう前提で御答弁しておると思うわけであります。憲法論につきましては、先ほど申し上げた通りであります。
  194. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 了解できません。総理にそれじゃ伺います。総理は午前中、鈴木君の質問に対して、こういうことを答弁しました。ここに敵基地があり、ここに日本がある、いざ万やむを得ない場合は、日本はこれからこれをたたくこともあり得ると、坐して滅びるよりはそういうことがあり得ると、憲法上も許されていると、こういうわけですね。それでは、平素これをたたき得る能力の性能兵器を持っていなくちゃならぬですね。そうでしょう。ところが、その兵器憲法上許されないわけですね。だから、憲法上許されない性能兵器をあなたの方の自衛手段からすれば平素持っていなくちゃならぬということになるですね。どうしますか、これは。
  195. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 鈴木委員の御質問に答えましたのは、海外派兵という問題に関連して、いかなる場合においても領土、領空を出て実力を行使するということはことごとくこれは海外派兵になるじゃないかという御質問に対しまして、原則として自衛力の行使は領土、領空内に限るのが原則である。しかし、ある場合を設例を考えてみて、敵から誘導弾等で放撃されて日本としてはこのまま行くならばこれは坐して滅亡を待たなきゃならぬというような場合に、何らかの手段を講じてその基地をたたくというような事柄は、これをもって憲法海外派兵を禁じておる自衛権の発動のなにからいって、それは許せるものであろう、ということを申し上げたにすぎないのでありまして、私は、平素からそういうことを予想して、そういう場合があり得るのだというのであらゆる意味においてそういう兵器を平素から持つ考えは持っておりません。いわんや、核弾頭をつけ、核兵器でもってそういうことをするということは、絶対に先ほど来申し上げているように私はこれをとらないのであります。
  196. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた方の防衛方策からいったら、そういうものを準備しておかなけりゃどうにもならぬじゃないですか。
  197. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 矢嶋さん、一々断って下さいね。
  198. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今のは時間に入っておらぬよ。
  199. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) もう一ぺん言って下さい。
  200. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたのそれから言えば、坐して滅びるよりは、やらなくちゃならぬという場合には、その使命が果せるような性能兵器、それは今憲法上認められない、それをあなたは保有しておらんならぬじゃないですか。また、それを保有するように努力しなくちゃならぬじゃないですか。どうですか。
  201. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私もしばしば申し上げているように、一つの設例としてそういう場合にも全然できないのか、海外派兵という自衛権の行動というものが、そういう場合に坐して滅亡を待つよりほかないのかと、こういう質問に対して、そうじゃないんだと、そういう場合にやる場合には、これは自衛権範囲内で考えていいのだというのが私の考え方であります。しかしながら、それはわれわれから出した一つの設例であり、観念的な問題として論議しているわけでありまして、実際の問題としては、自衛権のこのふくまでも原則的な使命はそういうことにはないわけでありますから、われわれが、平素から自衛隊実力として考える場合におきましては、私どもはそういうことを予想して、それに対応するようなものを平素から持っていなければならないと、こう考えておりません。
  202. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた方、それでは国の安全という国防問題を預けるわけにいかぬですよ。政策が具体的でない。はっきりしていません。あなた方の主張からいうならば、当然そういうものを準備しておかなくちゃならぬと思う。また、原子核の分裂によって生ずるエネルギー研究、これの兵器への応用研究をしておかなくちゃならぬということになる。これは私、していると思うのですが、防衛庁長官いかがですか。
  203. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 本委員会においても御答弁申し上げたと存じますが、原子力の平和利用に関しましては、科学技術庁を中心に目下研究をいたしておりまして、本庁といたしましては、五千五百メートル以上の高々度における放射能の流れその他に関する研究はいたしておりまするが、いわゆる核兵器としての殺傷力等に関する研究は残念ながらいたしておりません。
  204. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 防衛庁長官、責任をもって答弁して下さいよ。研究開発に約二十二億六千万円あります。それからまた、委託研究費があります。その一部はある特定の学者にこの委託費を委託して、そうして原子核の分裂による云々の調査研究を委託しているじゃありませんか。していませんか。これは明らかに原子力教本に違反です。
  205. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 原子力の平和利用に関する研究はいたしております。特に核兵器の殺傷上の研究について私どもはいたしておりません。
  206. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。それはちょっとおかしいじゃないですか。先ほど矢嶋委員質問に対して、核弾頭をつけるというようなことはとらないと、その他六種の供与については、防衛庁はアメリカに要請をしたが、アメリカは承認をしないので実は今はないのだ。そこで、矢嶋委員はさらに、じゃアメリカが承認をしたならば供与を受けるのかという意味合いの質問をしたことに対して、研究開発をしたい——結論的に言うと、そういうものの研究開発をしたい、いわゆるこういう人殺しの武器、こういうものについて研究開発をしたいという意思を現在防衛庁は持っているわけなんです。このことが、今矢嶋さんの質問に対してあなたの御答弁がちょっと食い違っているということが一つ。  もう一つは、十日のワシントンAPの報道するところによると、ネバダにおける十九回の核爆発の実験報告がアメリカの原子力委員会から発表されていますが、その報告書を見ますと、今後アメリカは、小型核兵器の開発研究に重点的に力を注いでいきたい、こういうような意向を持っておるようでありますが、最近の政府の動向は、この大型の場合はちょっと問題になりそうだ、小さなものならば自衛権の中に入るというような、どうも憲法上の解釈とか何とかわからぬようなことを誓いながら、小型のものに変えていく傾向があるのではないか。つまりアメリカの新たなる核兵器の開発研究と同じような歩調をもって研究開発をしていくのではないかというおそれが多分にあるわけであります。従って、この研究開発についての二点を明確に答えていただきたい。
  207. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。  さいぜん矢嶋委員に申し上げましたのは、以上の列記したもののうち、核兵器に関係のないものについては、現在はアメリカは供与を承認いたしておりませんが、もし供与された暁には研究開発いたしたい、かようにお答えをいたした次第でございます。  また、ただいまのネバダにおける核爆発の実験の実態については私承知いたしておりませんが、核兵器につきましては、小型たると大型たるとを問わず、岸内閣としては持たないということを明確にいたしておりまして、先般来御論議になりましたのは、憲法上の解釈として云々という矢嶋委員からのお尋ねでありましたので、私からオネスト・ジョンについてお答えを申し上げましたので、この点は矛盾をいたしておらない。従いまして、小型核兵器であろうと大型であろうと、岸内閣としては持たないということについてはきわめて明確であります。
  208. 高田なほ子

    高田なほ子君 核爆発兵器、どんな小さなものでも研究はしないと今御答弁になっておりますね。ほんとうにその通りですか。核兵器に類するものはいかなる小型のものであろうと、いかようなものであろうと、これについての研究は絶対防衛庁はやらない、こういうような御答弁に受けとれますがその通りですか、どうかということを伺いたい。
  209. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器に関するものについては、実験研究等をいたしておりません。類するものという意味が私にはわかりませんが、核兵器でない誘導弾その他については書面その他によって研究はいたしておりますが、御承知のように、実物につきましては先般要求をいたしたものもアメリカから拒否されているので、実際の研究はできない。ただ、さいぜん法制局長官からも矢嶋委員の御質問に対してお答えがありましたように、エリコンあるいはその他のサイドワインダー等につきましては、核兵器と何ら関係がないということで研究はいたしている、かような次第でございます。
  210. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは予算審議に伊能さん、大へんなことが起りますよ。自衛用のための核兵器研究はしているでしょう。自衛用のための核兵器研究……、これははっきりしておかないとあとで困るですよ。(「今、しませんと言っている」と呼ぶ者あり)自衛用の核兵器研究はしているのでしょう。
  211. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器研究はいたしておりません。
  212. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いいですか。原子、原子力、核、原子核、核エネルギー、核弾頭核兵器、こういう結びつきがあるのですよ。自衛のための核兵器研究をやっていませんか。基礎研究もやっていませんか。ほんとうのことを言わないと、あとの予算審議のときに困りますよ。
  213. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。さいぜん来私お答え申し上げましておりますように、核兵器に関する実験研究等はいたしておりません。ただ、外国等にありまする書類、皆様方が御研究になると同じように書類の調査収集はいたしているということでございます。
  214. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 研究を委託しておりませんか。
  215. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) さいぜん来申し上げておりまするように、原子力の平和利用等については、科学技術庁を中心に研究開発をいたしておりまするが、兵器に関する実験研究等はいたしておりません。
  216. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それじゃきょうはこういうふうに聞いておけばいいのですか。自衛のための核兵器研究実験等はやっていないが、国の予算は若干使っている、こういうことなんですか。
  217. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。広く世に公開されておるところの調査等については、書類その他について調査はいたしておりますが、実験研究等は今のところいたしておりません。
  218. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ということは、小型核武装は近い将来起ってくる、必要だ、こういう前提に立たれていると思いますが、いかがですか。
  219. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。防衛庁といたしましては、先般来再々お答えを申し上げておるように、核兵器の科学的な各種の機能等に関する趨勢は、御承知のように、さいぜん来御指摘のように、飛躍的な進歩を遂げておりまするので、それらの書類、文献等の調査資料の収集は、これは必然防衛庁としていたさなければならぬ、かように存じておりますが、御指摘のような実験研究はいたしておりません。
  220. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 将来に対する予見を聞いているんです。  委員長答弁さして下さい。
  221. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 将来のことにつきましては、私、先般来お答え申し上げましたように、科学兵器の飛躍的な進歩の状態について、とうてい予測ができない現状については、何とも申し上げかねます。
  222. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 何事ですか。防衛庁長官が将来に対することは何とも申し上げられませんと言う。岸総理は何とおっしゃいましたか。そんなに食い違っては困りますよ。相談して、解釈統一しなさい。
  223. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 矢嶋さん、委員長発言を求めて下さいよ。その前に発言されると、委員長がいなくても同じことになりますから。
  224. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どうもすみません。総理がさっきお答えになりましたね。将来の予見については、防衛庁長官はさっぱりわからないというんです。
  225. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 防衛庁長官お答えを申し上げておることは、防衛庁としていろいろな科学兵器進歩発達世界的の情勢なり動向というようなものを研究するために、必要な資料は集め、これを研究しておる。しかしながら、いわゆる核兵器の試験、実験というようなことはいたしておらない、こういうことを申し上げておるのであります。そうして、そういうことを科学兵器について、その中には小型核兵器についての資料等も集めておると思いますが、そういうことを研究するのは、将来小型核兵器を持つために、準備のために研究しているのではないかというお話でございますが、そういうことではございません。
  226. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そんなつもりでなければ、国民の税金をそんなところに使わぬで下さいよ。時間がないから、憲法の問題がさっき出ましたから、憲法の問題に移ります。  憲法第九条は、国を守るに最小限必要な力、実力、あるいはこれを戦力という人かあるかもしれませんが、そういう最小限の力を持てるが、必要以上の力は持てない、こういう解釈のように私は拝聴するんですが、いかがですか。
  227. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛権を持っており、その自衛権を裏づけるに必要な最小限度、それを越えるものは持てないと、こう思います。
  228. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは伺いますよ。あなた方のこの前の答弁は、いかなる核兵器も持たぬ、また現在持つ必要を認めないということを答弁している。ところが、現在憲法上持てる核兵器の名前を言いなさいといったところが、オネスト・ジョンは持てるということを言った。それでは、現在核兵器オネスト・ジョンを持つことは合憲であるというのですが、それはあなた方みずから認めた。現在持つ必要を認めない、すなわち必要以上の戦力を持つこととなるが、憲法はそういうことを認めているということになるじゃありませんか。おかしくはありませんよ。お答えを願います。ゆっくりと一つ考えて下さい。今小型核兵器は持つ必要はないということを、この問答弁しているんですよ。必要以上の戦力は憲法上持てないということを答弁したんですよ。ところが、私の質問は、現在憲法のワク内で持てるものをあげろと言ったら、オネスト・ジョンと言ったんですよ。その要素をずっと。ピックアップして下さい。
  229. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) この点は、すでに何回となく御答弁を申し上げておると思いまするが、私ども岸内閣においては、核兵器は持たない、一切持たないということは明白だと存じます。と同時に、憲法上の解釈として、自衛核兵器、ことに自衛のための、攻撃用でない自衛のための核兵器は全然持てないかというお尋ねでありましたから、自衛上持ち得るものもあるという観念的な解釈を私は申し上げたのでございます。従って、それと持たないということとは、少しも矛盾はいたさないと思います。
  230. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理お答え願います。断然違う。離れませんよ。
  231. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、われわれがいわゆる自衛力をどの程度まで増強していくかという問題につきましては、もちろん、日本の国情や国力を考えなければならぬのでありまして、従って、憲法上認められているからといって、それを現実な問題として、認められたるものを全部やるかやらないかということは、これは別なのであります。従って、私どもお答え申し上げておるように、われわれが現在やっておる、自衛隊の持っておる実力というものは、いろいろな点からわれわれが許し得るものを持っておるわけでありまして、憲法上は、実際持っておるもの以上は憲法は禁止しているんだというわけでもございませんし、憲法が許している範囲内のことを全部、日本の国力や国情から、今日持っておるという状態でないのであります。そこには食い違いがあることは当然でありますが、憲法解釈としては今言った通りであります。
  232. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連して。先ほど来の総理お答えに二つの問題点があると思うんです。一つは、小さい、あるいは小型、そういうことの一つ意味と、もう一つは、防御あるいは自衛という意味。で、この二つのことを私は少し科学的に掘り下げて検討をした上お尋ねしたいと思うんです。  というのは、先ほど来矢嶋委員から、いろいろ核分裂のことや、原子力のこまかい基本的な質問が出ましたけれども、小さい核兵器というものの限度の問題、これの検討はどうも不十分だと思います。私は一々こまかいことを申し上げませんが、私の承知している限りの科学的な知識をもとにして聞いていただきたいんです。というのは、科学的に核分裂反応が起り得る限界というものは、これは一つの大事な問題であります。で、このことについて物理学では臨界量という言葉でいわれている。そうしてこの臨界量ということを知らないというと、いろいろな点で、たとえば原子ピストルみたいな、あるいは小銃の原子弾というようなもの、そういう考えが出てくるんじゃないかと実は私は心配するのであります。  御承知通り原子爆弾というのは、ウラニウム二三五、さらにプルトニウム二三九、こういうものの核分裂性物質からできておって、そうしてこれらの物質の多数のかたまりを一緒にすることによって爆発が起るものです。ところが、このウラニウム二三五とか、プルトニウム二三九、こういうものに核分裂の連鎖反応が起るためには、中性子が十分に作用し得るところの一つのボリュウム、容積というものがあります。それはほぼ直径でいうと二十センチないし三十センチといわれている。つまり二十センチないし三十センチの直径の中性子の活動範囲がなければ、核分裂反応は起らない。言いかえれば、親指くらいの大きさの総理のたまたま言われる小銃弾みたいなものというのは、実際にあり得ないのです。もちろん、この臨界量というものは、相当最近の研究の結果変ってきております。しかし、ウラニウム二三五に対しては、十三・五キログラムといいますと大体三貫六百匁、それからプルトニウム二三九の場合はもっと臨界量が減ってくるから、もっと軽いものを作ることはできる。  ただ、こういう臨界量というものは、純粋であるということが必要条件で、従って、一番最初にできた広島の原爆、これはウラニウム二三五を使いましたけれども、この当時の燃焼度、燃焼率、燃える程度というものは四%程度でした。従って、非常に不純物が入っていて、非常に重さが大きかった。またビキニのときの原爆実験などは非常に大きくて、丸ビル程度の、ビルディング程度の大きさであって、御承知のように、ビキニの上につき据えて爆発させたので、例のサンゴ礁が爆発して、いわゆる死の灰が非常に降ったのであります。こういう点で、なるほど昔は四%程度の燃焼率であったのが、最近は六〇%ないし七〇%程度に上ってきております。従って、それだけ小型のつまり核兵器というものの可能性ができてきている。しかし、それにしても限度がある。最近の調査では十ポンドのウラニウムで九千トンのトライナイトロトリュイーン、普通TNTという、いつも原爆のときの標準になる火薬、これに匹敵する原爆を作ることができるのであります。でありますから、これはウラニウム二三五が一グラムでTNT二トンの火薬に当る爆発をさせることができる、そういうことであります。だから、燃焼率がかりに五〇%であるとするならば、一グラムのウラニウム二三五があればTNT一トンの爆発をさせることができる。広島のときはTNT二万トンのつまり威力があるものでありました。だから、今日はこの広島の二万分の一のものをも核分裂反応もでき得るということであります。先ほど高田委員発言されたところの、アメリカの原子力委員会の報告によると、たしか三月十日であります、TNT一トンに当るところの爆発力を有するところの小型核兵器ができている。これがバズーカ砲に使われていることは、防衛長官専門家だから御承知のことと思う。そうでしょう。  こういうつまり中性子の作用し得る大きさという点から、幾らでも無限に小さいものはできないということです。ある一定の大きさが臨界量というものによっていつも決定づけられている。しかし、矢嶋委員が指摘された通り、基本的には、常に核分裂連鎖反応によって起るのだから、この小さい核兵器といえども、あるいは原子爆弾といえども、全く原理的には同じなのであります。物理的効果においては同じものであります。これは有名なジョリオ・キュリー、去年なくなりましたけれども、原子物理学の専門家であり、ノーベル賞をもらったジョリオ・キュリーが幾つかの、たとえばあなたのさっき言われた原子爆弾あるいは水素爆弾、あるいは融合の爆弾、これらのものの種類はあるけれども、物理的な効果においては全くどれもこれも同じことだと、そういうことをはっきり指摘しているわけであります。  ですから、私は特に総理に注意を促したい点は、どんどん小さくなる、小さい兵器ならよろしいという言葉のマジックで、自分自身をごまかされても困る。また、国民をごまかされても困る。要は、同じように原子爆弾の物理的反応であり、その力、あるいはその効果というものは、全く同じだということであります。言いかえれば、小型だからこわくない、あるいは核兵器ではないということにはならないのです。つまり、小さいマムシでも、マムシはマムシなんです。やはり毒があって、かまれたら死ぬのです。そういう点のごまかしをなされては、非常な、あなた自身も認識を誤まるだろうし、国民もまた認識を誤まらざるを得ないということであって、少くとも二十センチないし三十センチの直径程度以上のものが兵器としての小型限度だろうということを、まず指摘しておきたいのです。そうして同時に、その威力は相変らずいわゆる原子爆弾としての本質を失っていないということです。ですから、小型だから自衛のために持っておってもよろしいという考えは、私は非常に危険な考えで、これは最近のアメリカの限定原子戦略の構想という考えにわれわれがうっかりすると巻き込まれてしまうおそれが非常にあるといわざるを得ないのです。  そうして、次に大事なことは、小型だから自衛あるいは防御に役立つと言われますけれども自衛のために小型だから役立って、そうして大型だから役立たない、そういう考え方が一体どこから生まれてくるかということです。もちろん、これはある意味では簡単にお答えできるかもしれない。それは、たとえば日本で大型の水素爆弾でも持って自衛のためだといって爆発させたら、敵前上陸してくる一個連隊を全滅できるかもしれないけれども、同時に、日本民族はみんな全滅してしまう。だから、大型の水素爆弾などわれわれは用いることはできない。そういう意味で、小型の原爆を使う、限定原子戦争に使おうということは、それは考えられるかもしれませんけれども、実際、私は、憲法論議ではなくて現実の問題として、一体攻めてくるという敵が、敵前上陸なんかやって攻めてくるかということです。私は、それよりも、もし日本核兵器があるならば、それを口実にして、向うは敵前上陸の部隊なんか送りませんよ、あるいは中距離弾道弾、あるいは長距離弾道弾で、一挙に日本を全滅さしてしまう。私は、そういう点では、いかなる種類の核兵器であろうと、それはほんとうに日本を現実に自衛し防御することではなくして、ただいたずらに敵の長距離弾道弾によるところの攻撃に口実を与えるだけのことにしかすぎない。  私は、そういう現実の問題から、総理に、一体総理小型というお考え、それで正しいか。それで現実の問題として、そういうことでほんとうに防御できるかということ、むしろ敵に口実を与えるだけのものではないか、そのことをお尋ねいたしたい。
  233. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来、核兵器小型とか云々ということを言っているのは、非常なる常識的にただそう言うているだけでありまして、今、坂本委員お話しの通り、それは非科学的な表現の方法であろうと思います。ただ、核兵器発達はまだ過程にあって、将来どういうふうに発達していくか、これはなかなかこうだと、現在これだけであるからこうだということを断定することもむずかしかろうと思います。ただ、そういう見地から見て、いかなる兵器核兵器と名のつくもので——核兵器とは先ほど定義を言った通りのものでありますが、そういう名がつく以上は、ことごとく憲法違反であるという、こういう憲法解釈というものは、私は憲法解釈としては行き過ぎているのじゃないか、こういうことを申し上げているわけであります。  しかし、現実の問題として、核武装する事柄が、私は先ほど来申しているように、これは原水爆の非常なる悲惨な目にあった日本、また、われわれが人道的の見地から、核兵器というものを、原子力を破滅兵器に使ってはいかぬということを世界に訴えておる、この根本の考え方、また同時に、日本の安全を保障する意味において、核兵器を今持つということは、私は適当でない、その必要を認めないという見地から、あくまでも核兵器核武装はしない、また核武装核兵器は持ち込ませないということを一貫して申しており、これを実際の面において実現をしているのであります。私は、その点において十分にわれわれの誠意とわれわれの信念一つ御理解をいただきたい、こう思います。
  234. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 よろしいですか、昭和三十四年三月の時点に立って、戦力に焦点を合わして、憲法解釈並びにその運用を論じているのですよ。で、あなた方は、最小限必要なもの以上のものは戦力として持てない、こういう解釈、それから現時点に立って、小型核兵器を持つ必要を認めない、これを答弁している、はっきり、よろしいですね。  ところが、小型核兵器であるオネスト・ジョンを持ち込むということは、憲法上許されるということは、あなた方必要でないと認めたその小型核兵器オネスト・ジョンを、憲法上、持ち込むことができるというのだから、この憲法解釈は、必要以上の戦力を持てるという憲法解釈になるじゃないですか。これは防衛庁……。笑いごとじゃないですよ。はっきりして答弁してもらいたい——。違うとなれば……。同じだということで、委員長国会の権威のために許すことできぬです。十分協議して答弁さして下さい。よく相談して下さいよ、私は、練りに練って速記録をやっているのですから。
  235. 林修三

    政府委員(林修三君) 実は……
  236. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 長官関係ないです。待って下さい。長官は、一番あとです。
  237. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 長官説明したあとで、まだ足りなければ……。
  238. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、これは防衛庁長官発言から出ているのですよ。
  239. 林修三

    政府委員(林修三君) 実は、御質問を伺っておりますと……。
  240. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 待って下さい。
  241. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 僕が発言を許したのですから。
  242. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 だから委員長に、あなたに希望を申し上げているのです。その希望くらい聞いていいじゃないですか。
  243. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 委員長は、法制局長官といえども政府統一見解を言うのですから、お聞きを願って、それで足りなければ、さらにその他の閣僚に答えていただく。
  244. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは、防衛庁長官発言からきているのだから。私は法制局長官答弁を拒否するというのじゃないのですよ。
  245. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。  私どもは、いかなる場合においても、自衛上も、まあいかなる理由を問わず、核兵器が持てないという解釈はいたしておりませんので、自衛最小限度のものについては、核兵器を持つ場合もあると、憲法上そういう解釈ができ得ると。しかも攻撃的な核兵器という意味でなくて、自衛上真にやむを得ない場合における核兵器というものは、憲法上の解釈として持ち得る、かように申しておりますることと、現実の事態に対しては、最前岸総理からもしばしば御説明をし、また坂本委員憲法論を離れて、核兵器というものは持つべきでないという御主張のお尋ねもありましたが、私どもも、その意見には全く同感でありまして、現実には持たないということを御答弁申し上げておるので、その間に論理上の矛盾は私はないと、かように考えております。
  246. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 繰り返します。現時点で、小型核兵器であるオネスト・ジョンは持つ必要を認めない、よろしいですね。これは、この閥答弁したことです、両大臣が。
  247. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私どもは、憲法上の解釈においては、持てないという態度をとっておりません。しかし現実の事態においては、持つことが適当でないということで、持たないと申し上げておるのでございます。
  248. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 違います、速記録、重大なことです。持つ必要ないと答弁しています。これは大事なところですよ。これは繰り返し繰り返し私は聞いたのですが、お二方の答弁を求めます、とまでやっているのです。  委員長、これ、見せて下さい。委員長を通じて見ていただく、両大臣に。私はこれは羽生さんと加賀山さんの質問のあと、総括的に私は伺ったのですから、そういうようなことでごまかされない。
  249. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) どことどこだ。
  250. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 前に、羽生さんがあって、ここで加賀山さんが質問した。加賀山さんに対して私、関連質問をとって、これだけずっと述べて、ここのところです。休憩しておいてもいい。ここのところ、はっきり、持つ必要がないかと言うと、「必要を認めておりません。」と書いてあるではないですか。だから私は、念のために両大臣から答弁を求めています、総理防衛庁長官の。——総理にも見せて下さい。
  251. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。  私は、御指摘の際に、「お答えを申し上げます。核兵器についての見解は、政府として統一した見解であることを私はしばしば申し上げました。従って、核兵器に関する答弁としては、総理答弁政府の代表的答弁であるということを私はしばしば申し上げました。しかしながら、今お話がありますからお答えを申し上げますが、総理も、先般衆議院における予算委員会、その他の委員会におきまして、攻撃目的を持つような大きな原水爆についてはこれは自衛上当然持つべきではない、しかし、小型核兵器等については、自衛の目的であれば持ってはならぬ、自衛上持つべきではないということではないが、今……(「違うぞ」と呼ぶ者あり)いや、違いません。わが政府としては、今日その必要を認めず、核攻撃に対してはアメリカの抑制力に期待をしておるので、核兵器は持たない、かように政府として御答弁申し上げておきます。」この通りでございまして、私ども憲法解釈としては、自衛核兵器も持ち得るという解釈をいたしております。  しかし現実の問題としては、その必要がない。その必要がないという防衛上の見地は、私がしばしば申し上げておりますように、アメリカの防衛力に依存しておるから、その必要はないということを申し上げておる次第でございます。
  252. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 両大臣は、今あなたの言った、今日小型核兵器を持つ必要を認めぬということを述べているのですね。
  253. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 同時に、憲法上の解釈としては、持てないということはないということも申し上げております。
  254. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 違う、委員長、離れていいですか、これ、大事なポイントなんです。その速記録……。
  255. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 矢嶋君趣旨を明らかにして……。
  256. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長から話していただきます。済みませんが。
  257. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 君、質問すればいい。
  258. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これ、一番大事なことですから……。「必要を認めておりません。」と書いてある。矢嶋三義君が尋ねて——「「第二点は」と述ぶ」——第二点はどうですかと、私の言った速記の方です。「私は現在のもとにおきまして、日本小型核兵器を持たなければならぬという必要を認めておりません。」これは岸さんの答弁です。明確です。  そして、長官はどうかというと、長官も、総理同感だと雷っているんだから、はっきり持つ必要を認めておりませんと。ところが、この前の答弁は、現時点に立って、憲法上、オネスト・ジョンは持てるが、政策上持たぬだけで、憲法上持てると、この前、私に答弁したのです。だから、総理に見せて下さい、総理答弁ですから、明確に速記録に載っております。私は、そんなの聞き違うようなぼけておりません。
  259. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は矢嶋委員が、どうしてわれわれの答弁を御理解いただけないかと思いますが、それにも書いてあります通り、私は憲法解釈として、あらゆる核兵器と名がつくものは、どういうものでも持てないと、こう解釈することは適当でない、将来の核兵器の発展や発達や、いろんな点から考えてみて、これはきめなければならぬ問題であるから、一切の核兵器を持たない、持てないと、こう憲法解釈すべきものではない。しかし現実におきまして、われわれが憲法で許されておるところのものまでは、全部持っておらなければならぬということでは私はないと思います。その範囲内におきましてわれわれが現実の情勢から必要なものを、これは同時に国力、国情等も考えてこれに応じて自衛力を増強し丸おるのでありますから、われわれが現在必要と認めておる限度というものは、憲法が認めておるその限度まですべてが必要であると認めるということは私は適当でないと思います。ここで実際の問題として核兵器を持つところの必要を認めない、こういうことを申しておったのでありまして、ちっともその間に私は矛盾はないと考えます。
  260. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私ははっきり現在小型の戦術的な核兵器を持つ必要があるか、ないかということを聞いたわけです。そうしたところが、私は現在のもとにおきまして、日本小型核兵器を持たなければならないという必要を認めません、私は認める必要があるかないかということを聞いた、現在必要はないと答弁された、そうでしょう。認めますか。
  261. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その通りでございます。
  262. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 小型核兵器オネスト・ジョンを、今の日本防衛上現時点において持つ必要がないのに、憲法上持てるという憲法解釈をすれば、憲法の運用上、戦力ということは、場合によると必要最小限以上の戦力を持てる、という解釈をされることになるんじゃないですか。
  263. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ある時点における政治上、政策上の必要の限度というものと、それから憲法が言っておる客観的な必要の限度との間には差異があることは、私は当然だと思います。
  264. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連。
  265. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 簡単に願います。本来理事打合会ではきょう特に総理がある限定した問題についてのみ……。
  266. 坂本昭

    ○坂本昭君 十秒々々。
  267. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 私語を禁じます。坂本君。
  268. 坂本昭

    ○坂本昭君 憲法上持ち得る小型限度について具体的に今一番言われているのは、TNTの爆発力で示されておりますが、一体爆発力がどこまでのものなら憲法上も持ち得ますか、何トンまで持ち得ますか。
  269. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) きわめて専門的な御質問でございまするが、この点は十分検討をいたした上でないと何トン何トンまでが攻撃的で、何トン何トンまでが防衛的であるというような厳密なことは世界中いずれの国においても私はそういう研究はいたしておらないと思います。
  270. 坂本昭

    ○坂本昭君 それではこの三月十日のアメリカの原子力委員会では一トンの小型核兵器ができている。これはTNT一トンです。そうしたら日本では核兵器じゃなくてTNT一トンの爆弾研究をやったらいいじゃありませんか。それがなぜいけませんか。
  271. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 核兵器以外の兵器研究につきましては、いろいろの角度からやっておりますから、ただいまのお尋ねは十分御参考にして、研究いたしたいと思います(「ごまかしちゃいけない」と呼ぶ者あり)
  272. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはオネスト・ジョンを将来持っても憲法上差しつかえない、という解釈をする時代はあるいはくるでしょう。私がこの間から論じているのは、速記録をはっきり見て下さい、昭和三十四年三月という時点について論じておるのですよ。防衛上必要はない、オネスト・ジョン核兵器でしょう、それを何がゆえに……、私の速記を見て下さい。現在憲法上それは持てるという解釈は下されますか。最小限必要な戦力が持てないでしょう、必要でないもの、戦力は持てないという解釈なんです。そういう戦力の解釈岸内閣憲法を運用しておるということを赤城官房長官内閣委員会答弁しておる。だから明らかに違うのですよ。将来オネスト・ジョン憲法上持てるという解釈はできるかもしれません。お二人の解釈では日本防衛小型核兵器も、オネスト・ジョンも必要ないというのでしょう。その必要ないオネスト・ジョンを今の時点に立って持っても憲法上差しつかえないという解釈はどうして出ますか、この議論がわからぬのですよ。
  273. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) しばしば申し上げておりまするように、私ども憲法上の解釈の問題と現実の政策の問題との間に答弁を異にしても何ら矛盾はないと、かように考えておる次第でございます。ことに私はこの点につきましては、防衛上は米国の防衛力に依存しておるからその必要がないと、かように答弁をいたしておる次第でございます。
  274. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは水かけ論になりますから、もうすぐ終りますが、ともかく午前からずっとわれわれ追及してこういうふうになることは、これはあなた方が憲法を非常に拡大解釈し、御都合主義で解釈し運用するからこういう事態が起るのです。わが日本社会党としては自衛権をはっきり認めておるのですよ。その点ではあなた方と違わないかもしれません。現憲法下における政策としては、あなた方がとっておるところの外交政策、防衛政策というものは、改めなければやれないぎりぎりの限度にきておると思う。その限度を過ぎておると思うのです。これはまさに憲法をじゅうりんし国民をごまかすものだと思うのですが、総理いかがですか。
  275. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私ども日本の安全——独立国として持っておる自衛権、またはこれを裏づけるに必要な、必要最小限度実力を持つことは憲法違反でない、しこうしてどれだけの実力を現実に持つかということについては、国力、国情に応じてこの自衛力の増大をはかってきております。安保条約のこのアメリカ軍との共同防衛とあわせて日本の安全を確保しておる、こういう考えに立っております。
  276. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に。
  277. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 時間過ぎておりますから簡単にやって下さい。
  278. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間が参りましたからこれを最後にします。どうしても私は納得できません。あとであなた方速記録をよく読んでいただきたいと思います。一体こういう国民生活に大きな影響を及ぼし、国家民族に大きな影響のある憲法解釈等は私は厳粛でなければならないと思う。その運用するに当っては国民がよくわかるように、はっきり言って、国民の批判、判断を仰ぐ態度をとるのが私は民主政治のあり方だと思う。そういう形でまた選挙に臨まなければならないと思います。ところがあなた方はそういうごまかしをやっている点は断じて許すことができないと思う。しかも岸さんはこの前も言ったように、川崎代議士からは権力主義者であると批判され、松村さんからは金権政治家と追及を受け、辻君からは総裁選挙で買収したではないかと議員総会で発言され、また山本君からはグラマンの問題について数億の金が動いた証拠があるとあなたを前において発言をした。ところがこれらの人々に対して何らの党は統制をとり得ないじゃないですか。山本君は自発的に党を脱したけれども近く復党を許されるという。党内の統制をこれほど欠いて一体政治が行えますか。党内がこれでしょう。従って反対党、国民からは不信を招き、外は韓国、中共からあなたは軽侮を受けておる。まさに国家民族の不幸これに過ぐるものはないのです。これでもあなたは責任を感じられませんか。私は反対党ですけれども私は筋の通っていることを話しているつもりなんです。あなたが憎くて言っておるわけではないのです。あなたの将来のためにも、国家民族のためにも、私はこういう質問をせざるを得ない、発言をせざるを得ない。忍びがたきを忍んであなたにこういう質問をしておるのです。少しお考えいただきたいと思うのですが、総理の責任ある明確な一つ御所信をこのマイクを通じて国民に答えていただきたいと思う。
  279. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は昨年の五月の総選挙におきまして、国民から圧倒的な支持を受け、さらに、この一月に自由民主党におきまして総裁に再任をされて今日に参っております。私の全力をあげてこの負託にこたえるつもりであります。また、さらに近く行われる参議院の選挙におきましても、陣頭に立ちまして国民に所信を明らかにし、国民の公正な批判を受けるつもりでおります。
  280. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 終ります。
  281. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 総理に対する質疑はこれで終了いたしました。   —————————————
  282. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) それでは一般質問の順序にもどりまして、鈴木強君。    〔理事堀木鎌三君退席、理事小柳牧衞君着席〕
  283. 鈴木強

    鈴木強君 昭和三十三年度の補正予算第2号に特に関連をいたしまして質問をいたしたいと思います。なお、議事の関係で朝来お待たせいたしました政府委員の方には大へん申しわけなく思っております。  最初にお尋ねいたしたいのは、大蔵大臣、それと運輸大臣、それから電電と国鉄のそれぞれの総裁から御意見を承わりたいと思います。  現行三公社の制度によりますと、公社の業務にかかわる現金の取扱い方については国庫に預託しなければならない、こういうことになっております。もちろん、ただし書きがございまして、特に政令によって定める場合には大蔵大臣の御指定になる金融機関に預けることになっておりますが、私は、もうすでに公社が発足して長きは十年になっております。従って、これらの預託金制度については根本的に再検討する必要があるのではないか。要するに公社経営者に、これらの現金の取扱い方についてはおまかせしたらいかがかと、こういう考え方を持っておるのでありますが、まず一つ公社の皆さんから先にお伺いして、最後に大蔵大臣の御意見を承わりたいと思います。国鉄総裁から……。
  284. 十河信二

    説明員(十河信二君) お話の点については、われわれも大蔵省といろいろ検討をいたしておりますが、    〔理事小柳牧衞君退席、理事堀木鎌三君着席〕  従来からずっと、官業時代の後になってもずっとそういうふうな……。
  285. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと委員長、場内を整理して下さい。
  286. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 静かに願います。
  287. 十河信二

    説明員(十河信二君) 取扱いになっております。私どもとしては、なるべく収入をふやし、なるべく経費を減したいと、どうすれば一番いいかということをいろいろ検討をいたしているわけであります。今のところは、今お話しのように四十億までは、一週間までは民間の銀行に預けておくということに相なっております。
  288. 鈴木強

    鈴木強君 大へん恐縮ですが、今の実情はわかりましたが、今後、預託金制度に対して、公社の総裁としては、従来のような形でいいのか、あるいは私が意見を出しておりますように、制度を変えて、公社の経営者が皆さん方の裁量によって自由になる方がいいのか、この制度の問題について御意見が承わりたかったのです。
  289. 十河信二

    説明員(十河信二君) 制度の点については今検討いたしております。民間の銀行に預けましても、当座預金は御案内の通り利子がつきません。国鉄は毎日七、八億ないし十億前後の金を出し入れいたしております。相当額の当座預金を持っていないと経理ができないような次第であります。どうすればいいかということを絶えず検討いたしておる次第でございます。
  290. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お答え申し上げます。  現在の国庫金預託制度につきましては、単に公社の資金運用という見地から考えますると、国庫預託というふうに制限せられないで、自由に民間の銀行をも利用し得るということの方が望ましいということは言えると思います。
  291. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  法律の解釈論としては議論はないと思います。将来の立法論としてはどう思うかということの御質問だろうと思うのであります。独立の企業体という点に重点を置いて考えますると、企業者が自由にその資金を運用した方が望ましいということは、私は当然だろうと思います。ただし、一がいにいえませんのは、一方において政府からいろいろなサービスを受けております。従いまして、全体から見て、純然たる政府と離れた企業体としての運営の方が国民のためにいいか、あるいは政府にある程度までおんぶしていった方がいいかという差引計算を今しきりに研究しております。
  292. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 預託金制度についてのお尋ねでございます。関係公社総裁並びに運輸大臣からただいまお答えをいたしておりますが、大蔵省といたしまして、いろいろ問題のあることも承知いたしております。しかし、ただ、その公社の預託金だけの問題でなしに、国庫金全体につきまして適正な考え方をまとめるべきころだと実は思うのであります。  この機会に、お尋ねの御意思でもありますから、鈴木さんの御意見がいかようにあるか、もう少し伺っておきたいのでありますが、なるべく公社にまかしたらというお気持のお尋ねではないかと思うのであります。ところが、この私自身が公社設立に実は非常に基本的に関係のある人間でございまして、公社を作ります際には、相当公社の権限を拡大するという気持が強く働いて公社制度を作ったつもりでございます。しかしながら、三公社とも、担当いたします仕事が非常に公益性の高い大きなものであります。その観点から、国会等におきましてもしばしば御批判をいただき、必ずしもこの運用そのものを拡大するという方向には、今日までの御審議はいっていないように思うのであります。私は、事業の公益性の高いという点は十分認めますが、今日のような公社制で何もかも縛るような考え方は本筋ではないのじゃないか、実はかような考え方をいたしております。これをただ、預託金だけの問題にしぼられてのお尋ねでございますが、問題は公社制度そのものの基本的な問題じゃないか、かように考えております。で、預託金の問題については、重ねて申し上げますが、国庫金全体の問題として私どもも十分研究して参りたい、かように考えております。
  293. 鈴木強

    鈴木強君 まあ大蔵大臣は、お話通り、公社事業に対しては最初からタッチをされておりますので、経営全般に対する御見識もあると思うんです。私は、今の二公社のそれぞれの経営の現状からいたしまして、やはりこの一律的な預託金制度をとっておるところに多少の無理があるのではないかと存じます。企業の実態からして、その制度がいい企業もありましょう。しかし、そうでない企業もあると思います。ですから一つ公社全般の思想は、公社にまかすという思想で公社は発足しておるわけでありますから、さしあたり、理解のあるお答えをいただけましたので、今後とももっと私の趣旨を十分生かしていただくように御検討をいただきたいと思います。  それから次に、建設大臣にお尋ねをいたしますが、建設省関係の災害復旧事業費が今度補正に盛られております。それで建設省関係の公共土木施設費は、特に三十三年度の災害が伊豆を中心にして相当ひどかったと思うんです。これに対する施策を鋭意努力をされていると思いますが、私は果して今回提案をされておるような金額において完璧が期せるかどうか、非常に危惧を持っておるものであります。従って、この三十三年災害に限って私はお尋ねをいたしますが、これらの災害を復旧される基本的の今後のあり方と、それから、この補正予算で承認を得た場合に、直接建設省でおやりになるものと、地方——県に補助を出す場合と二つあると思いますが、その工事の進捗率、今までのそういったものをあわせて一つこの機会にお尋ねをいたしたいと思います。
  294. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 三十三年度の災害は、御承知のように災害額の査定をいたしました結果、四百五十億以上になっております。それに対して、それぞれ一般予算の予備金を支出し、さらにまた、第一次補正予算を支出し、補正予算の予備金をも支出し、今回また第二次の補正予算の要求をしておるのでありますが、第二次補正予算で、大体十二億一千万円ばかり要求しております。この第二次補正予算の要求いたしておりますのは、法律の所定の復旧をするにどうしても足らなくなったものでありますから、そのために十二億一千万円の要求をしたのでありまして、所定の事業というのは、御承知のように災害復旧の関係の法律で、直轄事業は二カ年間に完成をする、補助事業は、緊急を要するものについては三カ年で完成をすると、こういう法律の規定に基いて、これを完成をするために必要な経費を盛ったのであります。これで法律の要求しておる復旧は十分できる、そういう考えでございます。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今の建設大臣の所管事項についてのお話でございますが、災害復旧全体についての予算並びに見込みを、一応数字について御説明いたしたいと存じます。  三十四年度の予算積算の基礎といたしました面は、三十三年十二月末現在の被害報告、それを基礎にいたしたのでありますが、当時は七百五十一億であります。これは被害報告総額であります。そうして推定査定事業費、このうちの事業費は五百八十八億三千三百万円で、ございましたが、その後の実地調査の進捗によりまして判明したものと、十二月末に発生した豪雨と、風浪による被害を含めたこの災害を、三十四年一月十五日現在で締めて見ますと、金額がふえて参りまして、被害報告額は八百二十二億であります。推定査定事業費は六百三十一億三千万円となっておるのであります。  今回のこの第二次補正を含めた三十三年度末の復旧予定進捗率でありますが、これは直轄事業において五六・四%、補助事業は二四・八%と、こうなっております。これは三十三年度末、これは北海道、東北等の一部では、もう冬は工事はできないのでございますが、そういうものをも含めてのその補助事業の率でございますので、大体三十三年度の予算執行は以上で十分だと考えているのであります。もしもこの第二次補正を計上しなかったならば、補助事業の進捗率はもっと低いところで、二〇・六%程度になったであろうと思います。  そこで、この三十三年度実施分に三十四年度に計上いたしました予算を加えた復旧予定進捗率でございますが、これはただいま建設大臣がお話しいたしておりますように、直轄事業におきましては、農林関係も、建設関係も、また港湾等も全部百パーセントでございます。補助事業につきましては、法律の趣旨にのっとって、緊要の復旧事業は三カ年、その他の事業は四カ年で復旧することとなっておりまして、災害第二年度の平均復旧率は六五%、これが確保されることになっております。  各施設別の点を一応さらに読み上げて御参考に供したいと思います。最初申し上げますのが三十三年度実施分の進捗率であり、次に申します率が三十四年度計上分をも加えた場合の進捗率であります。  こういうことで申し上げますと、農地におきましては、三十三年度末で二七・七%、これが三十四年度計上分を加えて申しますと六五号になります。農業用施設、これは一二・八%が三十四年度計上分を加えた場合には六五・七%になります。そうしてこの場合におきましては、直轄の場合は五二・二であり、三十四年度は一〇〇になるわけであります。補助は二一・二から六五%になります。治山の方は二七・一か六五%になります。林道、これは二七・六が、六五・八%、こういうことになります。漁港、これは二九・六であり、六六・一と、そのうち、直轄分は初年度が四〇・六であり三十四年は一〇〇になります。補助事業の方は二九・二が六五%になります。港湾におきましては、全体としては三〇・五、これが六七・九になり、直轄分は三八・三が一〇〇になり、補助は二九・八が六五%になる。河川等は、総体といたしまして二七・九が六八%になる。この場合は、直轄二七・五が一〇〇、補助は二五・二が六五%。都市におきましては四四・七、これが六五%、大へんいい進捗率を示しております。
  296. 鈴木強

    鈴木強君 この建設省関係の進捗率を今お聞きしたのでありますが、昭和三十三年の年度ぎりぎりまでやって、直轄の方が大体五六%くらいですか、それから、その他の河川の方が二四・八%、こういう今お話を承ったのでありますか、直轄の方はある程度工事が進捗をしていると思いますが、そうでない河川の府県に出す場合に、これが非常におくれているように私は思う。こういうところにいろいろな地域の人たちの不満というものか出てくると思うのですが、建設省としては、各県に委託をしてやらせる場合の監督、指導、そういった問題については、どういう御方針をおとりになっているのですか。  それもう一つは、今お話がありましたが、日本のこの治山治水の基本的な方針というのをおきめになっていると思いますかそういった方針をおきめになって、その後逐次災害が出ておりますが、そういうものをカバーしつつ所期の目的を達成しておるのですか、そういう点もあわせて、お答えいただきたい。
  297. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 直轄事業の方につきましては、建設省が直接事業をやっておりますので、これは非常に仕事をしやすいのであります。お示しのように補助事業につきましては、県か実行いたしますのを建設省が監督をする、促進をするという立場にございます。  三十三年度の災害の復旧の工事は災害の発生時がおそくなっており、補正予算等の関係もありまして、昨年中は仕事がおくれておりました。おくれておりましたが、第一次補正予算を取り、しかも今、第二次補正予算をお願いいたしておるわけでありますが、大体の査定の金額もきまりましたので、どんどん今進めております。この三月の終りまでには、相当進むことと思っております。  なお治水事業の根本問題についてのお尋ねでございますが治水の根本対策を講ずべく五ヵ年計画を定めて、これを大体、三千五百億程度の治水投資をやりまして、根本的な治水対策を講じたいということで、今せっかく準備をしておるところであります。ことしの八月ごろまでに大体の成案を得て、そうして将来永久にわたる河川の根本的な対策を講じて参りたい、そういう考えでせっかく進めておるところでございます。
  298. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣にも、この際お尋ねをしておきたいと思いますか、今の建設省でおきめになる五ヵ年計画、まあこういったものを完遂する場合に、国家財政との関係でやはり建設資金の問題が、非常に問題になるのですが、やはり財布を握っている大蔵省か、それに協力する態勢がなければ、これはやはりきめられた方針が宙に浮いてしまうのです。そういう点は、十分心得て考えていると思いますけれども、私、念のために今後の御方針を伺っておきたいと思います。
  299. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 建設省におきまして、治水五ヵ年計画を検討しておられるということは伺っております。  しかし今日までのところは、冒頭にお尋ねになりましたように、災害復旧とあわせて復旧第一、同時にまた災害防除とかということで、今日の治水事業を計画いたしております。そこで、総予算におきまして、やはりいろいろ制約を受けるのでございます。ただ私が申し上げ得ると思いますることは、治水の災害復旧が、三十一年以降所定の計画に大体乗って参りまして、いわゆる過年度災害の残りというものがなくなって参りました。そういう点を考えて参りますと、将来、治水計画にさらに力を回し得るかと思いますが、そういう点とあわせて、十分考えて参りたいと、かように思っております。
  300. 鈴木強

    鈴木強君 建設大臣、直轄河川でない、県でおやりになる事業に対して、補助をまあ出しているわけですが、それに対して、あるいは建設省がまあ監督をする建前になっているわけです。しかし県財政も、非常に貧困ですから、補助金と合せてやる場合に、大へん困難はあると思う。しかし私は、地方の実情等を見てみましても、工事能力の問題とか、そういう点も絡むでありましょう。予算の問題とも絡むでありましょう。しかし、もう少し積極的に、これは補助金を出すわけですから、建設省でも本腰を入れて、そういう努力をする必要が、もう少しあるんじゃないかという私は気がするわけです。まかせっぱなしにしているとは申しませんか、地方には、またそれぞれお宅の地方機関があるわけですから、そういうところで、十分監督指導はしていると思いますけれどもね。省全体として、もう少し私は力を入れておやりになった方がよろしかろうという気持を持っております。大へん省の運営にタッチするようなことで相すみませんが、その点は一つ大臣としても十分御配意いただきたいと思いますが、大臣、今まで見て参りました感想からして、どんなふうでありますか。そうして今後の私の申し上げたようなことに対して、どうお考えになりますか。
  301. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 災害復旧や治水事業につきましては、地元の要望が非常に熾烈でございます。一刻も早く復旧をしたい、治水工事をやりたいというのが、一般の関係者の強い要望でありますので、私どもも、かねがね治水事業あるいは災害復旧には、非常に努力をして参りました。しかし、一そう私ども、これから強力に指導し推進して参りたいと思います。
  302. 鈴木強

    鈴木強君 私は、この建設省の使命が非常に大きいと思うのです。今おっしゃったような長期にわたる方針を、もっと私は早く立てて、そうして基本的なやはり対策を立てていきませんと、年々歳々、災害が多いわけですから、その手おくれのために、より以上被害が生じて田畑を荒し、山野を荒していると思うわけですね。ですから、そういった治山治水、これはお宅の方は、治水の方でしょうが、そういうことは政府全体として重要施策としてお取り上げになっていると思うのです。ところが今日まで遅々として進んでおらない。そのためにむだな金を私は使うような気もするわけですね。ですから思い切ったやはり施策をして、国土を守り、農地を守っていくというふうなやはり確信を、より強くもって、今後努力していただきたいことを要望しておきたいと思います。  それから、次に農林関係について、農林大臣にお尋ねいたしますが、今のこの災害復旧の問題に関連をして、農林水産の方の所管について、ちょっとお尋ねいたしますが、河川の方の状況はわかりました。  農林水産の力の三十三年度の災害復旧の状態は、どんなになっておりますか、その点を一つ、最初にお尋ねしたいと思います。
  303. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 三十二年度の災害のなにでございますが、先ほど大蔵大臣から御説明をいただいたのでございますが、その通りでございまして、三十四年度には、おおむね六五尾の災害復旧ができるような段取りになっております。同時にまた直轄の事業につきましては、三十四年度で完成する、こういうことでございます。先ほど大蔵大臣、計数をあげて説明して下さいましたその通りでございます。
  304. 鈴木強

    鈴木強君 それから、時間がありませんので次にいきますが、今度の補正に、蚕糸業緊急対策費として所要の経費が計上されておりますが、私はこの問題は、非常に重要な問題でありまして、農林大臣も、大へん御苦労されていると思いますが、少くとも省が決定をした方針に基いて、この養蚕農家に対して繭の増産を呼びかけてやらしてきたわけです。ところが不幸にして、二年目でございますか、三十三年度にお立てになったと思いますが、初年度においてですか、ああいった輸出貿易の不振その他から、繭価の問題、繭糸価の問題が、大へん暴落するような格好で、この関係者に迷惑をかけていると思うのです。それで私は、今度補正に経費を計上しておりますが、非常にこれは苛酷なものだと私は思います。少くとも増産にいそしんで政府方針に協力してきた養蚕農家が、その後の状況からして、今度は、桑を抜いて畑にするというようなことは、これは大へんなことだと思うのです。  それですから、そういう政府に協力した人たちが、政策の転換として余儀なくされる人たちに対して、私が計算してみますと、一反歩、たしか二千五百三十円ぐらいになると思いますが、こんな程度の補助金を出して、そうして耕地に転換をするなんということは、もってのほかだと思うんですよ。農林大臣は、これで満足しているのですか。
  305. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 蚕糸対策でございますが、実は、昨年急激に需供のバランスが均衡を失しておる。同時にまた他の繊維等の関係をもちまして、異常な低落をしておる。こういうことに対しまして、昨年の暮に糸の値段等につきましても、改定をいたしました。その後この施策によりまして、糸価の回復がだんだん顕著になって参りまして、今日では、むしろ高目に過ぎやせぬかと思うくらい上ってきたわけであります。  この間にありまして、一番われわれの心配しましたのは、この生糸が上りました利益を適切に、これは養蚕家の手に入れなければならないということなのでございますが、昨年も補正予算等におきまして、同時にまた予備金の支出等によりまして、対策をとってきたわけでございます。ことに三百万貫のたな上げをして、そうして、その繭糸価の維持に貢献しようということであって、これが奏功してきたのであります。  しかるところ、今日になりますと、農民は、経済的な団結力と申しますか、組織力を持っておらないために、どうしても早目に手放すということで、今日の糸価高騰の影響を享受し得ない。こういうところに、われわれ非常に反省させられたところがございますので、今度は、最低の価格になりますときは、政府の制度によりまして買い上げ等の施設がございますけれども、その中間の段階におきましても、やはり養蚕団体みずから自主的に操作し、そうして繭価を維持していく、こういうことが大切であると考えまして、そうして蚕繭事業団等を呼びまして、その運営によって、繭価の中間的な一つ操作をして、利益を高めるということにいたしたわけでございます。  次に、今御指摘になりました桑園の転換でございますがこれは実は、養蚕地方におきましても、この転換の状態が、だんだん出て参りまして、そうしてつぶさに見ておりますと、あるいは非常に米の生産地でございますと、むしろ米作に転換するということが有利であるというふうな現象も出て参ったのでございまして、これらは、その適地による転換に応じて政府は助成をしたらいい、こういうことから、やはり今度の桑園の整備に伴いまする助成費を出しておるのでございますが、これは桑園の転換等に伴います労力費としてみておるわけでございますが、事情を精査して、一応この標準をもってするならば、所期の効果を上げる、こういうことでやったものでございますから、その点は御了承を得たいと存じます。
  306. 鈴木強

    鈴木強君 私は了承ができないのです。一万五千町歩の桑園転換をやるわけでありますが、今、各地域地域によっては、もちろん大臣のおっしゃるような水田に切りかえた方が、採算がとれるところがあるかもしれませんが、大体私は、養蚕地域というのは、山間僻地が多いと思うのです。だからそこに野菜を植えても、麦を植えても、大豆を植えても、やはり現金収入の少い農村にとっては、この繭というものが、非常によりどころなんです。ですから、こういうところでは、今度政府方針によって、転換をしなさいということで、涙をのんで、今これはやっております。  しかしながら二千五百三十円のこの交付金では、まことに採算が合わない。そうして、これから転換をいたしましても、肥料も十分買えない。そういうことになりますと、軌道に乗るのは、やはり二年先、三年先ということになりまして、非常にそういった農家に対するしわ寄せがあると思うのです。ですから私は、あまりにも一反歩に二千五百三十円という額は少きに失して、これでは農林大臣として農民に相まみえることができないだろうと私は考えているのです。もう少し多少の、その間における損失の補償も含めて、もう少しあたたかい施策ができなかったものか、こういう点を非常に不満とともに考えておるわけなんです。ですから二千五百三十円というのがほんの、労力費に足るかどうか、私はちょっと疑問だと思います。最近は機械で根をこぎます方法もありますが、なかなか機械でこいでやるというところはないのでございまして、結局、くわで掘って株を起すということになりますと、大へんな仕事である。二千五百三十円で、これをやれるという考えを持っておるのでは間違いだと思うのですが、そういう点、確信を持てるのですか。
  307. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) これは、主として労力費を主眼にしてきめたのでございますが、養蚕地帯の転換でございますから、これはもう非常に、われわれ注意しなければならないと思っておるのです。先ほど申し上げました通り、土地土地によってみな違いますが、その土地によって、最も条件のいいものに転換するように指導して参りたい、同時にその際には、農林省といたしましては、あるいは資金の面あるいはその他の助成の道に、いろいろ制度を持っておりますから、これをその地帯に集中的に総合的に、あわせてその転換等について支障なくやるようにして参りたい、そうして今御指摘になりましたが、大体の標準をとりまして運用していくのでございますが、そういう心やりをもって運営して、適切を期したい、さように考えております。
  308. 鈴木強

    鈴木強君 あらゆる施設を集中して、ぜひ一つ……。私は、これでは不十分だと思いますので、その方面のカバーをしていただくように、大臣に強く要望しておきます。  それから、今、三百万貫の乾繭がそれぞれやられておると思うのでありますが、幸いにしての昨今の生糸の値段は、多少曙光を見出してきているように私は思うのです。ですから、この乾繭措置というものが、非常に私はよかったと思うわけですが、これらの価格の維持については、将来とも、ぜひ三百万貫については、従来の方針を変えないように、今後一つ、大臣の御協力を期待しておきたいと思います。  それから次に、文教関係でちょっとお尋ねいたしますが、今度補正に計上されておりますのを拝見してみますと、三十二年度の清算の結果、明らかとなった教職員給与費国庫負担金の不足二十九億、これを要求しておりますが、この支払いは、大体いつごろやられたものでありますか、その内容はどういうものでありますか。私は、非常に三十二年度の清算を、どういう理由があったかお聞きしなければわかりませんが、今ごろになって補正措置をするということは、非常に怠慢ではないかという気がいたします。まず文部大臣から、これはどういう費用であって、何年の何月何日に支払ったか、これを一つ。これは、自治体によって、いろいろ違うかもしれませんが、総体的なところを一つ、お聞かせ願いたい。
  309. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 義務教育費の国庫負担金が、何分にも千億に上るような大きな金額でございまするので、とかく清算金が相当多額に上るのは、まことに遺憾なことでございます。なるべくこの金額を少くするように工夫をし、またなるべく早く出るようにいたしておるのであります。この補正予算に要求をいたしておりまする分は、三十二年度給与費の未精算分が二十九億五千万円でありまして、その他は本年度中途において制度改正の行われました期末手当〇・一カ月分及び薪炭手当、寒冷地手当支給地域改正による増額分、並びに当初見込まれた昇給原資及び退職手当に対して若干手直しを行なったものでございまして、それで総体四十九億何がしになるものでございます。この三十二年度給与費未精算分のもとになりますものが、一体いつごろ払われたものかというお尋ねでございますが、これは三十二年度中にずっとならして支払われたものでございまして、いつの分ということはないのであります。御参考に義務教育費の支払い関係を申し上げておきますが、交付額が巨額に上りまするので、大体三十二年度は十回に分けて地方に交付をいたしました。その総体の精算が昨年の秋に出て参りまして、それ以後大蔵省と交渉をいたしまして、今回の補正予算に計上いたしたものでございます。
  310. 鈴木強

    鈴木強君 この期末手当、薪炭手当等は、これは国家公務員の法律改正に伴って当然地方自治体もそういうことをとられることと思いますから、ただ私は今御説明の中に昇給原資等の問題が述べられておりましたが、これは非常に私は問題があると思うのです。少くとも昇給原資は、それぞれの自治体によって違うでありましょうが、一般公務員の場合、公共企業体の場合大体の見通しというのはあるわけでありまして、特にベース・アップの少い今日において、教職員諸君が期待するのは昇給原資にあると思うのです。ですから年度の途中において昇給原資のパーセンテージが上ったのだと私思うのですが、これはもう文部省をこれは地方自治体との関係がありますから、一方的に責めるわけにいきませんが、もう少し教職員の昇給原資については少くとも年度の途中において変更しなければならないようなずさんなものでなしに、年度当初の予算において、やはり確固たる原資を組むということが私は必要だと思うのです。定員増加や、その他必要欠くべからざるそういうものの補正はわかりますが、結局こういうことが地方自治体に対して——後ほど青木自治庁長官お尋ねしたいと思いますが、しわ寄せがきておる。三十二年度に払ったもの、まる一年間は地方自治体に迷惑をかけているということになると思う。本来なら義務教育費は全額国庫が負担してやるべきものだと私は思うのでありますが、現行制度上における欠陥もございますけれども、こういう昇給原資のことについては私は納得できません。なぜもっと思い切った年間を通じての原資の確保ができなかったのですか。その点を伺いたい。
  311. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) ごもっともな御指摘でございます。それで実は三十二年度の当初予算を組みました際には、前年度の予算の単価に対しまして昇給原資率を二%として計上をしたものでございます。その後三十二年度の決算に基きまして、これでは昇給原資率の見方が悪いので、今後は前年度に比しまして三%増というふうにいたした次第でございます。三十二年度はおくれてこういうことに相なりましたろんやってみなければわかりませんが、一応そういう配慮のもとに三十四年度から改善を加えたわけであります。私どもはこの程度で相当改善されるんじゃないか、もちろん三十四年度の決算を見まして、さらにやらなければならんようでありましたら、当然配慮しなければならぬ。私どもは常に強くこの点は文部省にもお願いし、いろいろ打ち合せをしておるわけであります。
  312. 鈴木強

    鈴木強君 文部大臣にもう一つお尋ねしておきますが、三十二年度中に支払われたものとすれば、これは第一次補正が昨年三十回国会でやられましたね。その際に一日も早く地方自治に対して、借金を返すということから第一次補正にどうして組めなかったのでございましょうか。  それからもう一つは、自治庁の方では借金をしておられるようでありますか、これらに対する利子補てん、こういったものも含めて今度の予算には入っておるのでございましょうか。私は退職手当、薪炭手当、あるいは期末手当、こういったものはそのときの情勢で変って参るものでありますから、そういうものの補正は私はもうやむを得ないと思います。しかし、今の昇給原資の問題につきましては、非常にそういう政策上の問題があるから、私はしつこく聞いておるわけでありますし、それからこういう借財を早く返す意味において、利子だけでも、これは何十億という金でありますから、相当大きいと思うのであります、低利で借りたとしても。ですからできるだけ早く処理をするために第一補正にどうして組めなかったのか、こういう点も非常に疑問に思うのです。
  313. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) なるべく急速にと考えておりましたが、この国庫負担金の精算に当りましては、地方公共団体の出納閉鎖以後その決算を待って行うものでございまして、これが確認に相当な日時を要しまして十月ごろ出そろって参り、それから大蔵省と交渉いたしました。そういったふうな手続の過程で、第一次補正に間に合いませんでした。
  314. 鈴木強

    鈴木強君 これは借金の利息は入っておりましたか。
  315. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの文部大臣のお答えでいいかとも思いますが、御承知のように義務教育費の国庫負担金は精算が済んだその次の年度で、文部、大蔵の両省で監査いたしまして、そうして決算いたすのであります。そうしてその年産末に補正を要求しておるのが通例でございます。だから三十二年のものは三十三年に入りましてその精算を確認し、そうしてそれを補正予算に組むのが三十三年内というのが例年でございます。そこで御指摘になりますように、地方自治体とすれば非常に支払いがおくれると不便ではないか、これはもうその通りでございます。私どもといたしましても精算を急いで確認したい、かように考えておりますが、ただいま御指摘になりますような時期に補正を出すことか事務的には大体できておらない。この点は将来の問題として私どももできるだけ気をつけたいと思います。そこで、事務的にどうしても精算分の確認でございますからおくれて参りますが、精算分をたくさん出さないようにすることが大きな問題だろうと思います。ただいま御指摘になりますように、利子云々の問題もございますけれども、非常にあとで追加して支払わなければならないというような予算は大体組まない方がいい。従って、できるだけ予測できる材料だけは事前に繰り入れて、そうして予算を組むということが望ましいと思います。そこで先ほど御説明申し上げておりますように、三十二年の実績で、特に私どもが予算の面から見まして狂ったと思います点は、自治団体の財政再建といいますか、そういう意味で勧奨退職とでもいいますか、その退職をつのったというようなことがありまして、普通の状態より以上の退職者を出した。同時に増員等も考えていなかったものがあったと、こういうことで、そこでそこを来たしまして、予定よりも金額がふえたように思います。まあ今回はこういう意味で、三十二年度分については、少し弁解がましくなりますが、そういう事情がございました。  そこで今度、三十三年度分につきましては、先ほど来申し上げておりますように、昇給原資をふやすとか、あるいは退職金の方におきましても率を工夫することにいたしまして、こり一十二年内に大体予想されるものを今回計上いたしまして、補正を組んでおるわけでございます。この結果、おそらく三十三年分といたしましては、大したあとは精算分というものが残らなくて済むのじゃないか、かように考えております。ただ本来の筋に返りまして、この精算分がたくさん出ないように十分考えて参りたい。それから、なるほど建前は年度が変りましても仕方ないことでございますが、できるだけ早くやる、こういうことに一そう努めて参りたいと思います。
  316. 鈴木強

    鈴木強君 労働大臣がお見えになりましたので、この失業対策関係の所要経費が計上されておりますが、最近の雇用関係ですね、要するに失業者が相当私はふえていると思うのですが、これに対する労働省としての雇用対策、それから今失業者がどういう状態になっておるのか、こういう点を一つおわかりになっておりましたら、この際お聞かせいただきたいと思います。
  317. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 失業関係全体としましては、御承知のように政府昭和、二十四年度予算を編成いたしますにつきまして、大体の失業状態の見込みというものをつけまして、それには前々から申し上げておるように、去年の経済成長率と三十四年度の予算編成にとりました成長率、すなわち大体産業の伸びを実質五・五%伸び得ると、まあ私どもは現在の工業の稼働率等から見まするというと、三十四年度の下半期においては、われわれが見込んでおる五・五%より確実に伸び得るのではないかと想定いたしますが、ともかくも五。五%と見て、昨年度の完全失業者、すなわち六十万と押えればまず大丈夫であると、そういうことで失業対策を考慮いたしたわけであります。そこで鈴木さんも御承知のように、たとえば昨年の十一月の状況を見ますというと、全体の労働力人口に比べまして、約五十四万ということでございますから、失業率が一・二%、まあこの程度で見込んでいいのじゃないか。それから御承知のように経済調整政策の影響が七、八カ月ずれて失業、雇用の面に出て参りますが、それも御承知のように、昨年の八月ごろから新しい失業保険を受給する人たちも横ばいになって参りました。従って政府の計画いたしております雇用、失業の数字的計画は、およそこの辺で大体大丈夫ではないかと、そういうことで失業対策事業費も昨年度予算よりはやや増額をいたしました。こういうふうな建前でやっておるわけであります。
  318. 鈴木強

    鈴木強君 まあ労働省でお調べになった失業者の数ですね、こういうものはそれぞれの資料に基いてやられたと思いますが、この失業者の数というのは、これはもうなかなかむずかしいと思います。ですから、まあおよその点をお調べになったことと思うのですが、私の心配するのは、失業保険費の国庫負担の問題につきましても、これは三月三十一日までのものが入っておりますからね。ですから、果してこれで大臣のおっしゃるように絶対大丈夫かどうかということに対しては、私はやはり危惧を持っております。ですから、まあ失業者がある程度横ばいになりつつあるというようなお話でありますが、果して楽観ができるかどうかということも疑問があります。しかし、まあこの補正に出されておる点で、大臣としては、さらにまた追加をするというようなこともなくて済む確固たる自信はございますか。私は基本的な雇用関係、失業関係については、時間がなくなりましたから、きょうは触れずに、またこの次の機会に触れますが、心配するのは、これでいいかどうかということを非常に危惧しております。特に船員保険法の一部改正法案が出ております。これによりますと、交付率が三分の一から四分の一に下ってきている。おそらく四月一日からこれは実施されると思うのでありますが、少くとも法改正の意図は私たちとしてはどうも了承できないのでありまして、これはあらためてやりますが、それやこれや考えて、やはりほんとうにこれでいいのかなあという危惧を私は深めるのでありまして、念のために大臣の御確信のほどをお伺いしておきたいと思うのであります。
  319. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御心配いただいております点は、私ども同感でございまして、そのように心配いたしておりますが、補正予算に計上いたしてありますものは十六億四千百余万円でございますが、そのうち一億五千万円は例の政府職員等の失業者退職手当でございまして、これは国家公務員等の退職手当暫定措置法の規定によりまして、退職いたしました政府及び公社等の職員に対する失業中の退職手当を支給するものでございまして、補正予算は主として国有林野関係の受給者の増加によるものでありまして、先ほど来お話のございました、いわゆる失業情勢とは補正予算の点については関係ございません。そこで今度は補正など組まないようにやる自信あるか、これは先ほど申し上げましたようなことで、大体補正予算など組まないでやっていけると思っております。
  320. 鈴木強

    鈴木強君 それから総理長官はお見えですか。
  321. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 松野総理長官がきております。
  322. 鈴木強

    鈴木強君 私この問題と関連をして、時間がないから労働大臣でやめますが、特に駐留軍関係の労務者の問題ですが、行政協定に基いて逐次米軍が徹退をしている。従ってその離職者が相当多数出ております。こういうものに対する政府方針はどうなっておるのでございましょうか。この機会に承わっておきたい。
  323. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 駐留軍の離職者対策に関しまして、基本的には職業訓練というものが一応予算に載っておりますが、総合的対策はさしあたりPD切りかえをやめてもらうように米軍と昨年三月以来この点の意見が一致いたしまして、既存の労務者のまず確保をはかりまして、第二番目には新規産業を誘致するために事前に解除される敷地とか、あるいは解雇される人員というものをなるべく早い時期にこちらに確定してもらいたい。これが一つのただいま問題になっております横須賀の追浜の例かこの例にあてはまります。その他駐留軍の労務者自身に職業訓練するために、基地内の訓練、基地外の訓練をあわせまして、これは労働省が今日やっておられるというふうに、いろいろの面でもやっておりますが、いずれにしましても、基本的には総合対策を立てて参らなければなりませんので、総理府に今日駐留軍の労務対策総合会議を作り、総合対策を今日やっておるわけでございます。
  324. 鈴木強

    鈴木強君 今日まで相当多数の駐留軍労務者が離職をされていると思いますが、先般も労働大臣からいろいろ御苦心なさっている点は承わっております。しかし特に国策上米軍に協力してきたという立場にある労務者でありますから、特別の対策をお立てになっておるようでありますが、今までどの程度が離職して、労働省とタイアップをして、失業救済に職業訓練その他産業の誘致、それぞれおやりになっていると思いますが、全員が救済されておりますか、どうですか。
  325. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 全員が救済されているというわけではございませんが、昨年の昭和三十三年三月まで一カ年間において約三万四千人、さらに昭和三十三年四月以降本年二月まで約二万四千人、三月及び四月の予定者が約千五、六百名となっておりますが、もちろんこの中には新しいハイヤー、タクシーというものをみずから企業組合を作って、企業組合の作成に当っておられる方もございましょう。ある方はPD切りかえによって、企業組合を作成されてみずから請負工事に吸収された方もございますので、正確にすべてかいわゆる月給取りになられるというわけでもございませんので、そういうものを総合いたしまして今日対策を立てておりますが、(鈴木強者「その程度のことですか、概算は。」と述ぶ)概算六割以上残っておるかと存じます。
  326. 鈴木強

    鈴木強君 半数にも足りない救済対策しかとれておらないということは、これは非常に大きな問題だと私は思います。それで非常にこれはむずかしい問題でありますから、産業を誘致する場合にしても、特殊な訓練をする場合にいたしましても、やはり長期の計画を立てて、相当以前から対策を立てておりませんと、ぱっとその場になってからということになると非常にむずかしいと思うのです。従って米軍との折衝、これはあなたの所管かどうかわかりませんが、折衝の中で、大体駐留軍がどういう計画で撤退をされていくか、そうしてどの程度の人たちが離職をしていくか、こういったふうな見通しというものはつかんでおられないのでございますか。
  327. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) なるべく早期に打ち合せはいたしておりますが、アメリカの軍行動と軍事予算に関連がございますので、一年間先を見通すということはなかなかむずかしいのでございますが、大体半年ぐらい先を見込みながら、今日日米間の合同委員会の労務対策会議で時々刻々やっておりますが、アメリカ軍そのものにつきましても、一年先の計画が立たないこともございますので、非常に先の見通しということは、今日日米合同委員会内の労務会議におきましても、なかなか明確に出て参りませんので、その点は非常に今日も苦慮いたしておりますが、一応計画としてわかるものから逐次一つでも二つでも早く知らしてくれるということで、今日日米間でその方向で実施いたしております。
  328. 鈴木強

    鈴木強君 最後に、防衛庁長官は……。
  329. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) おります。
  330. 鈴木強

    鈴木強君 長官に、この北富士演習場の問題に限定して、きょうはお尋ねをしておきたいと思いますが、北富士演習場は、今日米軍が撤退をしてどういう格好になっているか私わかりませんが、とにかく駐留軍がいないことは事案なんです。従って、この演習場については、古い歴史がございまして、地元の農民はできるだけこの演習場を解放してもらいたい、こういう要求を幾たびかやっております。大蔵省、防衛庁、調達庁それぞれに強い要請をしておりますが、幸い皆さんの御努力で、今般東富士につきましては五百何町歩ですかね、演習場が解放されまして、非常にわれわれは喜んでおるわけでありますが、これに隣接をしております北富士は、特に富士山のふもとであり、富士五湖を控えた観光地帯として、ぜひとも国際的にもこれを一つ建て直していきたいという意欲を持っております。ところが私たちが察知しますと、どうもそのあとを防衛庁で使う方針をお持ちになっているようにとれるのです。今日もう現実にあそこで演習をしておりますが、この使い方についても何だかジョイント・ユースとか何とかいう君葉を使っておるようでありますが、奇々怪々で、どうも米軍が使うならいざ知らず、自衛隊がそのままかわって使っておることについても非常に疑問を持っおります。従ってこの演習場の今後のあり方について、防衛庁としてはどういう施策をお持ちになっておりますか。
  331. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 富士の演習場につきましてのお尋ねでございますが、御承知のように北富士の方面が一部解除になりまして、まだ未解除の部分もあるわけでございまするが、私どもとしては、北富士の演習場は御承知のように昔はまあ五千万坪というような膨大な演習場として使用されておりましたが、現在では相当小さくなっておりまして、富士登山道の東の力の部分だけが未解除でございますが、これもやがては解除になるだろう、かように考えておる次第でございます。そうして防衛庁としましては、右の米解除分のうち国有地が約六百万坪、民有地百五十万坪程度が解除されると、かような予定になっておりますが、この分は何とか私どもの方も、御承知のように各地の演習場を大部分解除をして、それが先般来いろいろと農民の方方と、時に問題を起すというようなことに相なって、御迷惑をかけておる向きもあるものでございますから、この地域につきましては、私どもは今後継続して円満に使って参りたいということで、さしあたり富士吉田市、それから中野村、忍野村の三カ町村に関係がある地域だものでございますから、防衛庁としては山梨県知事のごあっせんで目下各地方団体、御承知のように市町村の代表者の方々並びにそれに関係のある方々と円満に話を進めて参りまして、最近演習場付近にキャンプを設けたり、従来の入会慣行を認めるというような条件で、自衛隊が従来通り演習場を使用するというようなことについていろいろと地元と折衝して、ほぼ大体知事の方ではよかろうと言っておりますが、現地の方でなお若干いろいろ御意見のあるところにつきましては、できるだけ現地の御意見をいれるという形にしまして、吉田市、忍野村、中野村というようなところで、まあ若干防衛庁としては不便を忍んでも、住宅地は富士吉田市に設けるとか、それからキャンプは中野村に設けるとか、忍野村については、村民の方の希望等もありますので、いろいろな厚生施設等については忍野村に設けて、なるべく村民の皆さんに大きな御迷惑をかけないと同時に、村民の方々の希望をなさるという方向でもって話をまとめておりますが、御承知のように村民の方々としては、全部といいますか、民有地の方は解放してほしいという御希望もあるわけでございますけれども、われわれの方としても、民有地に皆さんが入会をする等、演習に差しつかえない程度で御利用せられる等の点についてのお話し合い等も進めて、何とかうまくお互いに支障のないような形で使っていこうじゃないかということで、せっかく折衝中でございますが、大体話はまとまるというように私は聞いております。
  332. 鈴木強

    鈴木強君 具体的に現地と折衝されているようでありますが、今のお話ですと、防衛庁が国有地六百五十万町歩ですか、それから民有地百五十万町歩は解放するとこういうお話ですが、逆に今度は演習場の関係で、中野とか大和原とか雁穴とかいろいろありますが、そういう地域を、今民有地あるいは社有地になっておるところですが、そういうところを逆に買収しようという、そういう計画もなされておるようなんです。時間がありませんから詳細に触れませんが、あなたの方では口では地元と十分連絡をして、かりに自衛隊が使う場合でも円満にいけるようにしますということを国会では答弁する。ところが私の知っている範囲では、先般も山梨県知事のところにあなたのところの何とか幕僚長が行って、上の方で取引をしている。これでは私おかしいと思う、言っていることとやっていることと。なぜ関係市町村の方に先に行って、地域の住民の方々にも、こういう方針でこうやってもらいたいのだという御説明をして、それは判断はまかすとしても、もう少し私は親切なやり方をしていただかないと、こじれなくて済むものもこじれてくる。これは地元の農民の人たちは払い下げをしていただきたいというような非常に強い希望があります。しかも、入会権が認められておりましても、実際立木の補償とか、あるいは演習によって荒らされて、そのために水が増水をして、あそこに桂川という川がございますが、その地域は相当にはんらんをしておる。そうした損害補償を十分にやられてないという現状の中で、また自衛隊が使っていくということになりますと、これは相当私はあなたが楽観するようなものでないと思います。現地の事情は。ですから国会で御答弁し、長官がお考えになっているように、できるだけ地元と話そうという思想があるならば、私は今までのやり方は非常にけしからぬと思っているのです。ですからもう少し直接地元へ出向いて、それぞれの責任者の方々とお話し合いをするという手順を踏んで、それから私は知事のところに行くというのが普通の手段であって、いきなり甲府へ行って知事と会って取引をするということに対して不満があるようですから、この点は一つ今後十分御注意をいただきたいと思うわけですが、その点確約していただけますか。
  333. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。本件につきましては、一昨月私が就任してからいろいろと事情を聞いておりまして、ちょうど鈴木委員承知のように、山梨県知事改選の時期でもございましたので、私どもとしては富士吉田市の市長さん、それから市会議員の方々、また地元の直接関係者、一方中野村、最前申し上げたのは逆でございましたが、中野村に厚生施設、それから忍野村にキャンプというような形でございますが、どちらかと申しますと、地元の方々その他は、固定資産税等の関係から自分の方ヘキャンプ場を持ってこい、官舎も全部持ってこいというような話もかなり強うございまして、私どもその辺はなるべく公平に防衛庁自体の仕事、業務上からは若干不便であっても、地元の御希望をいれるようにという私ども相談をやっておりまして、たまたま知事の更迭の際に、当方の建設本部長がごあいさつかたがた経過報告と今後のごあっせん方をお願いするということで、出張せしめましたことは私も承知をしております。しかしながら、今のそういうような声もあるということになりますと、先々ほかの場所と違って、御指摘のように比較的円満にいっているところでございますから、ほかでがたがたを起すような轍を踏まないように、この点は十分私ども下の者に言って円満な処理をいたしたい、かように考えます。
  334. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  335. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 次に森八三一君。
  336. 森八三一

    ○森八三一君 私はこの機会に、議題になっておりまする昭和三十三年度の予算補正(第2号)の問題を中心にして、大蔵大臣に二、三お尋ねをいたしたいと思います。  その第一は、昨年ちょうど今ごろ三十三年度の予算を審議いたしまする場合に国際収支の問題が相当論議の対象になったことは御案内の通りであります。その際に三十三年度の輸入の見通しは三十二億四千万ドルというようなことが計画として発表されました。もちろん生きておる経済のことですから、その通りにいかなければならぬということを強く主張するものではございません。ところが、今年度の予算の審議に当りまして、経済企画庁の方から出されております資料によりますると、実績の見通しは二十四億五千万ドル程度に縮小される見通しであるということであります。これはもう事実がそういうことでございますので、そのことを私今ここで論議をするわけではございませんが、昨年予算を編成されるときには、三十二億四千万ドルの輸入というものを前提にして定められておる。関税定率法を基礎として御計算になった結果が、関税収入は四百四十三億六千二百万円ということに策定をせられて、国会の承認を経ておるのでございます。ところが今申しまするように、三十二億四千万ドルの計画が二十四億五千万ドルにずっと減ってきて、関税定率法はその間に修正が行われておりません。にもかかわりませず、今度の補正予算に四十億円の関税収入の増というものを見積っておられます。これは実績が上っておられるのですから、その四十億円があるとかないとかいう議論ではございませんが、こんなに多く輸入数量に激変を来たしておるにもかかわらず、関税定率法を変更せずして四十億円、予算額に対比いたしますれば、おおむね一割というものが増収になるんだということは、どうしてもこれは常識論としては理解ができない。結果がそうなっておるとすれば、最初の見通しのときに相田、悪い言葉で言えば、隠し財源というものを留保せられておったということにならざるを得ないような気もするのですが、こういうような結果になっておりまする経過なり、状態についての御説明をいただきたいと思います。
  337. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘になりますように、輸入の数量は激変しているというか、金額的には激変しております。そこで、関税収入がふえておるのはおかしいじゃないか、こういうことでございます。ただ、その関税収入は実際にふえておるのでございますから、これはもうその通りでございます。詳細は事務当局に説明さしていいと思いますが、大まかに申しますと、いわゆる輸入品のうちに課税品と非課税品とございますが、非常に今回減ったという場合に、非課税品が相当減っていて、課税品の面においてはそう大した変りはない、こういうことが大体言えるのではないかと思います。大体事務当局の、傾向として指摘しておりますのがその通りであります。
  338. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) ただいま大体のことは大臣からお答えをいただいたわけでございまするが、やや具体的に申し上げますると、工業原材料の、たとえば鉄鋼材料でありまするとか、あるいは繊維でありまするとか、無税あるいは低税のものが相当減っております。その反面に機械、あるいは砂糖というようなものが相当ふえておりまして、四十億の増加をいたしまする一応の内訳として見ておりますものは、機械類が二十八億ほど増加をいたす見込みであります。砂糖が十五億ほど増加をいたす見込みでありまして、鉄鋼原材料は大体無税でございます。繊維関係におきまして五億四千万ほどの減を見るというような、大体原材料関係が減りまして、今申し上げましたような、機械、砂糖というような有税品の方が増加をしておる。従いまして、差引プラス・マイナスを見まして四十億の増加を見た、こういうことでございます。
  339. 森八三一

    ○森八三一君 私も四十億円の増というものは、これは現実に出ておるのですから、そのことをかれこれ論議をしておるのではございません。今お話で一応抽象的には了解をするのですが、そういたしますと、ことしも三十一億八千万ドルですか、本年の輸入計画が。これが相当狂って参りましても、またそこに内容の異同によって相当の増収というものが、自然増収が予見されはせんか。これは推定でございますから、そういうことをここで論議いたしましても始まりませんけれども、そういうことから、今審議されておる昭和三十四年度の予算に関連して、大臣が新しい施策として打ち出されておる高級織物の課税だとか、それから道路整備に関連をしてガソリン消費税でありますとか、こういうものを相当増徴するという税法改正が出て参っておりまするが衆議院の段階では、まだ結論は出ておりません。新聞紙等の伝えるところによりますると、与党の内部でもいろいろ意見がある。ことに参議院の選挙を控えておるやさきであるから、これを少しいじってみたいというようなことがあり、大蔵大臣もちょっとよろめいていらっしゃるような新聞記事が出ておるのであります。そこで、もしガソリン消費税の百九十何億の増徴ですか、こういうものにひびが入ったり、高級織物の税金にひびが入るということになりますというと、昭和三十四年度の国庫収入に非常な影響を来たす。自然これは歳出の面に影響を持ってくるわけですから、既定の仕事ができなくなるというようなことにも関連してくる。がしかし、存外のんきに考えていらっしゃるのは、こういう関税のところあたりでやってみるというと、また五十億なり、六十億なり出てくるのじゃないかという予見があるので、そういうような税法改正について多少いじられても、そう苦にならぬというような安易なことをお考えになっておるのじゃないかというような感じを持つのですが、昭和三十四年度の税法改正につきましては、与党が多数を持っていらっしゃるわけでございますので、これはおそらく提案になりまする過程においては党内でも十分論議を尽されて提出されておるという限りにおいては、改正税法というものの是非については議論があってよろしいと思いますが、少くとも成立してくるという前提がなければ、昭和三十四年度の予算を審議するということは非常に問題になると思うのであります。そこで、そういうようなことで問題が巻き起るといたしましても、三十三年度予算に、今お話のありましたように、一応抽象的には了解できまするが、数億ドルの輸入減が起きても、内容の関係で税収では逆にふえるのだといったようなことが、本年度も予見されるから、大した心配はないということに、こういうことにつながっているのか。その辺を少しお伺いしたい。
  340. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 関税収入につきましては、先ほど事務当局から説明いたしましたように、原材料等の非課税品のウエートよりも関税のかかる品物の方がふえておる結果が、三十三年度決算の上に出てくるだろうと思うのであります。そこで、三十四年の貿易の大体の形でございますが、私は三十四年になりますと、輸入数量は原材料が相当伸びるのじゃないかと思います。今回の関税収入におきましては、実績を十分に加味いたしまして、最終的な予算を立てておりますが、金額がふえただけ関税収入がふえるというようなことではなくて、おそらく原材料が相当伸びて参るのじゃないか、こういうような見方をいたして、今回の予算、収入予算を立てておるわけであります。ただいま国内のガソリン税あるいは物品税等についての御意見を伺ったのでありますが、大蔵大臣別によろめいてはおりません。御承知のようにただいまのこの予算の内容に重大な関係を持つ税の問題でございますし、私どももちろんこの案を作りますにおきましては、十分検討した上でございまして、ただいま原案が成立することを心から願っております。しかし、ただいまお述べになりますように、一部においていろいろ御議論のあることは私どもの耳にも入っておりますが、私どもどこまでも原案のままの成立を強く期待いたしております。
  341. 森八三一

    ○森八三一君 時間がございませんので、いずれまたこの問題は、一般質問の際に衆議院の動向もはっきりしてくると思いますので、その機会に譲りたいと思います。  次に、今回の補正予算に専売納付金の三十億というものが見積られております。もちろんこれも関税収入と同じように、現実にそういう利益が上っておるわけでございますので、三十億という金額について私問題を提起するものではございません、ございませんが、承わりますると、専売納付金につきましては、専売公社の収支差引幾ら残りがあるからその残りのうちから、あるいはその全部を、国庫の力に収納をするという建前になっておるやに承わるのでございますが、そういうことでありますると、せっかく大蔵省の外局としてあった専売局を独立した公共企業体ということに変えた意味というものがなくなるのじゃないかというような感じをいだくのであります。これはやはり専売納付金につきましては、ピース四十円なら四十円のうちに何がしか消費税的な存在として一般会計に納付さるべき額であるということをきめて、そうしてその額だけの吸い上げはよろしいが、関係者の努力によって生産コストが下るとかというような場合には、これはやはり企業体の本質を認めてやるような経理にすべきではなかろうか。そうでございませんというと、せっかく外局を独立した企業体に変えたという本質というものが失われてくるのではないかというような感じを持つのですが、こういう点について、大蔵大臣どうお考えでございましょうか。
  342. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今の専売益金の納付金の問題ですが、いわゆる一部は税金的性格のもの、また一部は企業努力による利益、こういうものに区分して、企業努力による利益の分は公社に保留さして使わしたらどうか、こういう御意見であるようにうかがうのであります。なかなか今までの建前は、今日直ちに改正するような考え方は持っておりませんが、今御指摘になりまする事柄、一応抽象的、概念的には理解ができるようでございますが、現実に、しからば金額幾らがこの企業努力によるもの、こういう計算を出すことは非常に困難ではないかと思います。と申しますのは、御承知のように、専売益金のうちで葉タバコ収納の価格、あるいは景気、不景気等によりまして高級タバコがのまれたり、またその数も必ずしも一定ではない、こういうようなことでございますので、いわゆる企業努力というものをどういうようにその成績の上に出したらいいか、なかなか疑問の余地があるのではないかと思います。いずれにいたしましても、今回三十億の専売益金を納付いたさせますが、全部が全部国に納付さすというものではございませんし、もちろん業績手当等は、公社としては任意に見得るようなものを残しておるように私どもは実は考えております。
  343. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げることも結局数字的な結論は一緒になると思います。これは入り用な費用だけはどうしても要るのですから、差し引き結論の数字はそうなると思いますが、外局を独立企業体にしたという本質から考えまして、今のようなやり力では、これは従業員諸君、総裁以下企業に対する情熱というものを傾ける度合いというものが変ってくるのではないかという感じを持つ。おそらくそういう点を思考されたからこそ外局をわざわざ公共企業体に変えられたのではないかというふうに私は受け取っておるのでございます。でございますので、非常にむずかしいことがある点について、私も了解いたします。いたしますが、むずかしいからといって相変らず外局の専売局的な扱いをしておったのでは、これは企業体に変えたことが意味をなさぬということでございますので、この点については十分一つ御検討願いまして、企業体らしく、努力によって成績の上ったときには、当然それは従業員諸君に報いられるものがある。従って、努力が非常に払われなくて、業績が落ちたというときには、総裁以下の諸君がその責任を負うというような態勢にしなければ、企業体にした値打がないと思います。この点は、今後の問題として十分一つ御検討をいただきたいと思います。  それから直接災害復旧に関連する問題ではありませんが、一つの例をあげて申しますと、名神国道が着工せられて、今測量その他が進んでおるわけであります。ここでだんだん工事が進んで参りますと、その敷地に当りました地点は、当然これは正当な価格をもって買収せられるということになります。さらにそのことによって生ずる道路のつけかえであるとか、水路の変更等、その地域における農作業等についても、当面の措置は必ず講ぜられるものと承知をいたしておりまするが、ただ、広い農地の場合には、直接それによって生ずる道路の関係だとか水路の関係だけを整理するだけでは、問題は解決しないのであります。これは大臣も十分御承知になっておると思いますが、広い畑、水田の真中に三十メートル、二十メートルというような非常に幅の広い、しかも相当高さのある道路が建設されるということは、豪雨等の場合には、それが一つの滞水を作る原因をなすということになりまして、ただ、今あった水路をそのまま暗渠排水にして変えてやるとか道路が中断されたから迂回道路を作ってやるということでは、生産を維持していくことにはならない。それで、当然関係者はそれに対応するためのいろいろ土地改良の仕事だとか、あるいは区画整理の問題だとか、いろいろのことを考えて、それに対応する諸般の基本的な土地条件の改良に心を砕いてくると思うのであります。その場合に、それは直接目で見たところでは、そういうような高速道路を作ったための問題ではないように映りますので、そこで、それは団体営の土地改良として当然やらなければならぬ、それには国庫としてこういうような法律のもとに援助しておるということで打ち切られる場合がある。実際そういうもし道路ができなければ、そういう区画整理をやらなくても済んだものを、道路ができたために、この地点だけの買収の問題と水路だけの問題ではなくて、非常に広範囲な土地改良、区画整理をやらなければならないという場合が、具体的に発生するのであります。そういう場合に、関係者の農林省なり建設省の方面ではそれぞれそういうことに対応する予算の要求があろうと思うのでありますが、ややもいたしますと、そういうような予算については、大蔵省の査定で打ち切られておる場合が非常に多いということを聞くのでありますが、今申し上げまするようなダムなり、あるいは将来東海道の新線ができる、現に名神国道が始まっている、そういうような場合に、敷地に当りました部分の正当な価格をもっての買収は当然だが、それによって生ずる直接的な水路なり道路の新設、つけかえ、これは当然なことでございますが、それ以外に、今申し上げましたような、そういうことによって生ずる非常に広範な土地改良等をやらなければならぬ場合における措置、こういうものは当然これは直営なりあるいは県営として措置さるべきものあると私は思うのでありますが、そういう場合の予算査定に関する大蔵大臣の心がまえと申しますか、お気持はどういうものでありましょうか、承わりたいと思います。もしこれがそうでないということになりますれば、おそらく計画されておりまする東海道の新線の問題にいたしましても、あるいは名神国道にいたしましても、ただ直接の買収だけでは農民諸君は応じないということで、せっかくの公共事業が進展をしないという非常に憂慮すべき事態を生じてくると思いますので、その点については十分一つお答えをいただきたい。
  344. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように公共事業を施行いたします場合の公共事業施行に伴う補償要綱であるとか、あるいは電源開発の場合の水没その他に対する補償要綱といったようなものがすでに整備されております。従いまして、直接買い取られる土地の対価だけではないと私、思うのでありまして、問題は、御指摘になりますような地主に対して十分の補償措置がとられたかどうかということが一つの問題だろうと思います。私は、現在の補償の方式から申しますと、十分の補償がなされておる、またなされると、かように実は確信をいたしております。従いまして、道路ができました後の土地改良なり、その他の事柄につきましては、在来あります法律をそのまま適用してしかるべきものではないか、かように考えておる次第であります。
  345. 森八三一

    ○森八三一君 今私の申し上げましたのは、もちろんそういうような区画整理なり、いろいろな関係の施行に関する法律、あるいはダムなり道路が建設されます場合に、それに対する補償の措置に関する法律はございますございますが、そういう法律だけできちょうめんに考えて参りますると、今私の申し上げましたような地点までは入ってこない、非常に広範な区域の区画整理等をやりませんというと問題の解決にはならぬ、その非常に広範な地域を取り上げますと、それは当然普通の団体営の土地改良事業なり、区画整理事業としてやるべきである、こういうことに多くの場合押しつけられている。それは道路ができなければやる必要がなかった所をやるわけですから、それは当然そういうような感覚ではなくて、もう少し視野を広げて、農業生産が従前のように維持されていくということを前提としてお考え願わなければならぬ、こう思うのであります。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 申し上げたいのは、十分の補償ができるかできないかということが一つであります。十分補償ができておりますならば、その他の施設は、普通の施設より以上に程度の高い施設を要求するという場合があるかもわかりませんが、その方の費用は在来の法律をそのまま適用していいんじゃないか、森さんが言われましたように、補償が十分できていないというような場合になりますと、将来のあと作なり、あるいは転換なりその他の整理方式におきましても、いろいろ工夫を必要とするかと思いますが、十分補償ができておれば、その関係はそれで済みだ、かように考えまして、あと要する費用についても、また設備等についても適当なものを考えていくということではないかと思います。
  347. 森八三一

    ○森八三一君 最後にもう一つお伺いいたしたいのは、鈴木委員も触れられたと思いますが、今度の補正予算に桑園の問題が出ております。このことは、現在の生糸の需給状況から考えまして、一応首肯し得るところでございまして、この取り上げられた施策をとやかく申すのではございませんが、ただ、一反歩何千円かの助成金をやって、そうして桑園を整理さしたということだけでは、これは問題の解決にならぬので、その整理せられた桑園をどこへ持っていくかという問題の解決をしてやらなければならぬと思うんです。それには当然、主管省である農林省が、あと作には転換土地に対する作物はどういうものを選定したらよろしいという指導もありましょうし、あるいは生産物の流通機構等につきましても、今日の牛乳のように、奨励してみたがすぐ行き詰まるというのではいけませんので、これは十分考えるとか、あるいはその生産物に対する価格安定の施策などを、これは当然主管省としてお考えになると思いまするが、何と申しましても、その整理桑園を次の新しい作物に転換をして参りまするためには、基礎条件である土地が、新しい作物その他に適合するように整備をされなければ、これは解決はなされないと思います。そのことなくしてこれを進めて参りますと、また二年か三年先になって、どうもよき場所がない、労力は余っておる、そこでまた桑を植えてしまう。これではさいの川原で、何をやったかわからぬ。これは過去にもそういうことがなかったとは言えぬと思うのであります。そこで、どうしても今度のこの施策を有終の美あらしめまするためには、その基礎条件である土地を、十分次の作物等に適合するように改良してやるということが、付随的になされなければならぬと思う。ところが、そういうことについて、三十四年度予算には出ておらぬとは申し上げませんけれども、そこまで考えての予算は組まれておらない。本来でございますれば、三億九千万円のこの施策の補助予算と申しまするか、この予算をお出しになるときには、これにくっつけて、当然それに対応する予算はこういうように組まれておるんだから、農民の諸君は安心してやりなさい、私はこういう思いやりがなければならぬと思う。それは、本年はまだ桑を抜くまでいかぬのだから、来年度の予算ででいかぬの、だから、来年度の予算でやってやるよと、こうおっしゃっても、来年度の予算にそれが盛り込まれておると言えば言えるし、おらぬといえばおらぬ。どっちでも、これは札にはしるしがございませんので、御説明はつかぬだろうと思います。ただ予算がここで通過すると、ただいまの御説明のようなことになってしまうかもわからぬ。それは十分三十四年度予算に組まれておるとおっしゃるでしょうが、実際はそこまで考えられておらなかったのではないかと思います。そこで、この三億九千万の桑園整理の費用というものを、ほんとうに活用して参りまするためには、当然私は、三十四年度予算で、このことに要する土地改良の施策費というものは追加せられなければならぬと思うのでありますが、これは今日またどういう点がどうなるということは、具体的に出ておりませんから申し上げるわけにいきませんが、そういう事態が発生した場合には、これは予備費その他において措置をするということは、確約願ってしかるべきと思いますが、いかがでございますか。
  348. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) ただいまの問題につきましては、先ほど鈴木さんからのお尋ねの際にも申し上げたのでございますが、これは土地々々の事情にもよって施策を考えて参らなければならぬと思うのであります。まあ一例をあげますならば、山形県等におきまする桑園の転換等は、むしろ小団地の土地改良をして、そうしてむしろこれは米作に転換したいというふうな計画もすでにあるのでございます。同時にまた、昨今のてん菜糖等のだんだんの発展に伴いまして、この方面にいきたいというのもございます。土地によっては、これはどうしても採用しなければならぬと考えております。さらにまた、果樹方面等につきましても、相当伸び過ぎてはおりますけれども、土地によりましては、これを採用する余地があるわけです。かように、土地の立地条件に即して、この桑園改植等の指導に適正を期したいというのが第一であります。次に、これに伴いまして、直ちに動力費の助成だけではなく、土地の改良あるいはこれに伴う諸施策をあわせて計画して予算を計上するのがしかるべきではないかという御趣旨でございますが、本年は若干ではございますけれども、畑地灌漑の施設あるいは畑作の土地改良、さらにまた小団地の土地改良等につきましても、投融資方面に相当資金等もふやしておりますから、これらを、今の、特に事情の緊迫しておりましたかような養蚕地等の方面には、集中的に総合的に運用して参る所存でございます。予算のことでございますから、多々ますます弁ずるとは考えますけれども、これらの農林省の諸施策を集中的に総合的にいたしまして、そうしてその急に応じて参りたい、こういう所存でございますから、御了承をいただきたいと思います。
  349. 森八三一

    ○森八三一君 時間が参りましたので、これで打ち切りますが、これはもうこのことを幾ら聞きましても、ただいまの農林大臣の御答弁の域を脱しないと思うのです。それは三百数十億の予算があるのですから、それを使うのだとおっしゃれば、結局そういうことになります。それは、腰にさした棒のように、前の方を短かくすれば、あとの方が長くなるのは当りまえなので、どっちにしても融通無碍なものでございますから、そういう御説明になるのは当りまえですが、この三億九千万円の新しい施策をお考えになったときには、これに要する土地改良資金というものは、ちゃんとそれに付随して、別ワクとしてお考えになることが正しかったのではないか。もちろん今日ただいま農林大臣お話のようにてん菜糖に持っていくのやら、あるいは何に持っていくのやらきまっておりませんから、それによって土地改良をするという具体的なあれがございませんから、予算を組むことができなかったということはわかります。わかりますが、そういうような具体的な方向が定まった限りにおいては、既定の予算ではなくて、このことを完成するために必要な土地改良に要する資金というものは、これは別ワクとして組まなければ、うまくいきっこない。結局既定の仕事がこっちへ食われていったかもしれませんが、既定の仕事が足ぶみをするということで問題の解決にはならぬと存じますので、将来の問題として具体的に方向が定まって参りました場合には、このことに対応する土地改良その他の基本条件の改良につきましては、別ワクで措置をするということについて御考慮をいただきたいという希望を申し上げておきます。
  350. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) これにて森君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。
  351. 鈴木強

    鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)に対し、反対の態度を明らかにして討論を行わんとするものであります。  政府説明によりますと、本補正は、昭和三十三年度の予算編成後に生じた事由により、当面必要とされる最小限の予算補正措置を取ったということであり、その内容は、生活保護費、義務教育費国庫負担金、災害復旧事業費等、おおむね法令により必要とする経費の追加を行うものであり、これに必要な財源は相続税、砂糖消費税、関税、専売納付金等現在までの状況に照し、その収入見込みが予算額を超えることが確実なもののみとしておるとのことであります。しかしながらその内容をしさいに検討するまでもなく、実際には、おおむね法令の規定により必要とする経費の追加を行うものだというのは、ごまかしであって、蚕糸業緊急対策費、災害復旧事業費、義務教育費国庫負担金、失業保険費負担金、生活保護費等々、そのほとんどが昭和三十三年度当初予算編成の際取った政府の政策の欠除と見通しの誤りによって生じたものであることは、あまりにも明白であります。私はなぜこの点を政府が認めて、国民に対して自己批判をし、災害復旧対策、蚕糸業緊急対策、生活保護費等、重要施策については思い切った対策を立て、思い切った予算補正をしなかったのか不思議に思われるのであります。最近特に岸内閣に対する国民の声として言うこととやることが違うという世論が盛り上ってきておりますが、補正二号の説明の仕方の中にも、はっきりとこのことが現われているのであります。岸内閣のやり方は、何でも表から見ないで裏から見なければだめだという定評があります。昭和三十四年度国家予算総額は一兆四千百九十二億となっておる。自民党と政府諸君は、この数字を横に並べて表から通り一ぺんにこれを読み、一兆よりくにだと盛んに宣伝されておるのでありますが、世論に従って裏から、すなわちに逆にこの数字を読んでみますと、一兆にくいよとなり、全くよく世論の定評にマッチしたものだと思います。私は本補正予算提案に際してとられた政府のこのような誠意のない欺瞞的な態度に対して、限りなきふんまんと憤りを感ずるものであります。  次に反対の理由を逐次申し上げます。その一つは、生活保護費、国民健康保険助成費、失業対策費等についてであります。予算書によれば、生活保護費は十三億九千百万一千円、国民健康保険助成費は十二億一千百四十八万二千円、失業保険費国庫負担金は十四億九千百三十一万八千円、それぞれ計上されておりますが、これではきわめて不十分であります。岸首相は、本国会の施政方針演説において、経済発展の一面、低所得階層の人々がふえているという事実を認めておるのでありますが、予算補正に当っては、その対策と措置がとられていないのであります。それどころか、生活保護の面では福祉事務所やケース・ワーカーによって過酷な保護打切り、保護拒否等が行われ、保護対象人員が政治的に低く押えられていることを知らなければなりません。厚生省とも関係の深い日本社会事業大学が保護廃止世帯の調査を行なったところ、たとえば金がないので野草をとって、それでうえをしのいでおる保護世帯に対し、野菜基準額を認めても買わないだろうという事由をつけて、野菜は一部は自給しているということにして、その分の保護費支給を打ち切っていたと報告されております。現在の保護費の基準は、東京都の場合で一日一人当りの食費がわずか四十円程度でありまして、これでは最低のそのまた下の生活すらできないのでありまして、まことに重大と言わなければなりません。私は、これらの恵まれざる人々の上に、政治のあたたかい配慮がめぐらされないことを非常に遺憾に思います。わが社会党は、少くとも現在の二倍程度増額を要求するものであります。また、失業対策費関係においても、対象人員を適当にしておき、加えて船員保険法の一部を改悪して国庫の負担率を現行の三分の一から四分の一に引き下げようとしておりまして、われわれの絶対に納得ができないところであります。  反対理由の二つは、災害復旧対策事業費についてであります。昭和三十三年中に発生した災害による公共土木施設、農林水産業施設の災害の復旧費として十五億八千五百十六万一千円が計上されており、これは第一次補正と合せて六十八億となるのでありますが、昭和三十三年災害については、昨年十月の第三十回臨時国会において、佐藤大蔵大臣は、当時調査済みの被害総額は七百二十二億と報告したのでありますが、最終的調査の結果は、昨年十二月発生のものを含めて、被害額総計八百二十二億に達しておるのであります。これに対する事業費の査定は、六百三十一億円としております。この査定率そのものが被害総額に対して七七%ということになり従来までの平均査定水準七五%より見れば、多少関係者各位の御努力のあとはうかがえるのでありますが、まだまだ不十分と言わなければなりません。昭和三十三年度歳出として結局六十八億円が計上され、これに補正予備費支出十億円を全額加え、さらに既定予算よりの支出済みを加えてやっと百億程度であります。政府は、明年度予算案において三十三年災害復旧事業については事業の大半を占める補助事業のうち、緊急を要するものは三カ年で復旧するということでありますが、最も緊急計上を要する初年度予算が、わずか百億円程度で終っておりますので、どこまで信用していいのかわかりません。災害の最もひどかった伊豆、狩野川流域の住宅が復旧事業が遅々として進まないのを嘆いているのを知るにつけても、政府のへっぴり腰をたたかざるを得ないのであります。われわれは政府案に反対し、この分だけでも百八十億円し補正を要求するものであります。  反対理由の三つは、蚕糸業緊急対策費についてであります。この費用は三億九千万円計上されておりまして、これは一万五千町歩の桑園整理に対する補助金の追加所要額なのでありますが、一反歩当りの単価はわずか二千五百三十円で、きわめて少額に見積られております。桑を植えろ、蚕を飼え等奨励に努めた政府であります。ところが情勢の変化によって、桑をこげ、野菜を作れと、勝手に号令をかけておりますが、号令の変更によって損害を受け、被害を受け、痛めつけられたのは働く養蚕農家であります。政府の政策の誤まりによって転換を余儀なくされた農家に対して、なぜもっとあたたかい思いやりができなかったのでしょうか。政府が与えた損害と被害を補償するのは当然のことであります。わずか二千五百三十円でお茶をにごそうとする政府の態度に、断固として反対をいたすものであります。  その他、すでに昭和三十二年度に支払われた義務教育費国庫負担金四十五億円等を見ても、今ごろになって補正措置を行うごときは、政府の怠慢もはなはだしいと思います。そのために地方自治体に迷惑をかけ、さなきだに苦しい地方財政に、ますます苦しさを加えさせる結果を招来していることは許せないことだと思います。質疑の中でも明らかになりましたように、昇給原資の見方等については、抜本的な対策をたてなければならないことが大きな要因となっているので、今後十分検討し、この二とのないよう厳重に注意を喚起したいと思います。今からでもおそくはありません。政府自民党はわれわれの要求を入れ、本補正の修正を行い、もって国民の期待に沿うべきであることを強調して、私の反対討論を終ります。(拍手)
  352. 近藤鶴代

    ○近藤鶴代君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)の政府原案に賛成の意見をきわめて簡単に申し述べたいと存じます。  この補正予算は、総額歳入歳出ともに百十八億五千三百万円でありまして、昭和三十三年度予算成立後に生じた事由に基いて、当面必要とされる最小限度の予算補正措置を講じようとするものであり、歳出は昭和三十三年に発生した災害復旧事業費を初め、社会保障関係、義務教育費国庫負担等、法律によって規定された国家の義務支出であり、財源としては関税、相続税、砂糖消費税、専売納付金等確実な増収見込み額をもってこれに充てられております。昭和三十三年発生災害復旧事業費については、その緊急性にかんがみ、種々の行政措置を講ずるとともに、さきの予算補正(第1号)によって対処して参りましたが、その後の調査の進捗に伴って、さらに不足額として十五億八千五百万円を追加するものでありまして、これにより一そう復旧の進展を期待できると思うのであります。社会保障関係費四十一億及び義務教育費国庫負担金四十五億七百万円の追加計上は、いずれも法令の規定により必要とされる既定経費の不足額の追加であって、まことに妥当な措置として賛意を表するものであります。  なお、今回新たに追加計上されました蚕糸業緊急対策費三億九千百万円は、三十三年度における生糸の需給事情の悪化のため、政府がさきに蚕繭価格維持のため種々の対策を講じてきたのでありますが、今回さらに養蚕農家の転業等のための桑園整理を奨励補助することに充て、三十四年度予算による諸政策とあわせて蚕糸価格安定対策を組織的に行わんとするもので、繭価低落防止、養蚕農家の経営改善に資するところが多く、きわめて時宜にかなった措置として敬意を表したいのであります。  以上、簡単に述べましたように、本予算補正は、立場によっていろいろの議論もありましょうが、私はいずれも適切妥当な措置であって、三十四年度予算の成立により、さらにこれが健全なる成長を期待せられるのであります。従って、この三十三年度予算補正は、政府原案をもちまして十分であると信じ、全面的に賛意を表し、討論といたします。  なお、この機会に議案に直接の関係はなく、場所柄いかがとは思いますが、この委員会に関係のあることであり、他に適当な機会もありませんので、この際発言いたしますことを委員長並びに同僚各位にお許しをいただきたいと存じます。  さきに、参議院予算委員会の公聴会公述人を公募し、その選定の打ち合せの際の私の発言が、九日の一部の新聞紙上で私の真意に反する報道がなされ、影響するところがきわめて大きく、まことに困惑いたしておりますので、一言釈明いたしたいと存じます。  私の真意は、伝えられたように、婦人が予算など語る資格はないというような意図では毛頭なく、むしろ女性の立場において同性を庇護する意味での発言であったのであります。言葉足らずと申しましょうか、その意を尽さず、各方面に御迷惑をかけた不注意については、私も十分反省いたしますが、かりそめにも、私が議員であるみずからをも冒涜するような意思の発言でなかったことをここに明らかにしておきます。婦人の声、あるいは台所に直結する主婦の声が公聴会において聞かねばならぬものでありまするならば、正々堂々と正規の公述人の中にも婦人代表を推薦することが本筋であろうと思います。もちろん公募者の中に適当な人があれば、男、女にとらわれることなく、多くの意見を聞くことも当然であることは申すまでもありません。  以上が、私の意のあるところであります。貴重な時間中に議案外の発言を許されましたことを感謝いたします。(拍手)
  353. 千田正

    ○千田正君 私は、きわめて簡単に討論をいたします。  私は、ただいま議題となりました昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)に対し遺憾ながら反対するものであります。さきに政府は、三十三年度に発生した災害復旧のために、五十二億の予算を計上した総額九十億に及ぶ第一次補正を行なったのでありまするが、今回の第二次補正は、その後の事態の推移により最小限度必要とされる補正措置のみを講じておるたけであります。これははなはだ事務的であると思うだけでなく、現在の経済情勢から見てかかる補正予算の提出の仕方はきわめて妥当を欠くと断ぜざるを得ません。今、かりに、今年の経済成長の見通しについての誤り、不景気とそれに伴う雇用問題の大量的発生等々、政府の経済政策の根幹についての諸問題には触れないといたしましても、毎年のごとく繰り返される災害の復旧事業一つをとってみましても、政府の施策は全くこそくそのものであります。たとえば、昭和三十三年度における災害にいたしましても、その被害は、実に七百四十億円以上との調査報告を得ても、査定を四百六十億とし、それに対して第一次補正ではわずか五十二億、今回の第二次補正では十五億の予算しか計上されていないのであります。ごく最近の新聞紙等の報道によりますれば、災害発生以来すでに数カ月を経ている伊豆においてすら、流木その他がそのままの格好で散在し、一たび雨が降るとあのおそろしかった当時の状況を思い出して戦慄さしておるような状況であります。全体に、風水害、冷害等々の被害は年を迫ってますます大きくなるばかりでありこれは天災というよりもむしろ人災であり、政府の施策よろしきを得るならば未然に防止し得るものであることは、世論の多くがすでに何回となく指摘しておるところであります。しかも、地方自治体の多くは、政府の施策が緩慢で時宜に適していないため、また地方財政の窮迫のため、金がこない間は何もできないとして、そのままに放置しておく現状であります。私は、この際、政府に対し、大勇猛心を起して政策転換を行い、百年河清を待つようなこそくな方法をやめ、根本的施策の樹立と、その果敢な実行を求めてやまないものであります。かかる見地より、私は今回の補正予算において、災害復旧事業費を単に法令の規定により必要とするという事務的な取扱いをし、あまつさえ、わずか十五億程度を計上したということに、どうしても納得がいかないのであります。かかる一時しのぎの方法は、復旧事業の緩慢化により、その後に続く被害をさらに大きくするような結末を招くおそれがあります。その他四十五億を占める義務教育費国庫負担金の追加のごとき、三十二年度の精算、同じく三十三年度の精算分を含んでおりますが、いわばその分だけを地方財政の負担で今まで過ごしてきたわけであり、政府はそれだけ地方財政を圧迫してきたという結論になるわけであります。私は、ここにもまた政府の中央、地方の財政に対する場当り主義を見るものであります。二十九年までは予算規模が九千九百九十億に対し、予備費が百三十億であったのでありまするが、その後、予算規模が年々増額するにかかわらず、予備費はわずか八十億に押えて、三十三年度に至っては、一兆三千億をこす予算にもかかわらず、これまた八十億と、このようなことを繰り返しておったならば、今後の災害においては毎年々々、幾たびも補正予算を組まなければならないと、こういうことではなく、予算の規模の増額と比例して、予備費もまた相当の増額をして、不時の災害に備えるのが一つの財政政策として望ましいのであります。総じて今回の補正予算は、岸内閣の不確定な、場当り的な政策から生ずるところの、裏づけの乏しい予算案であると断ぜざるを得ません。被害額に対し、その復旧はあまりに少いことを遺憾に存ずる次第であります。ここに、政府に重ねて再考を促して、私の反対討論を終ります。(拍手)
  354. 森八三一

    ○森八三一君 私は、ただいま議題になっておりまする、昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)に対しまして、緑風会を代表して、政府の原案に賛成の討論をいたしたいと存じます。  この補正予算は、歳入歳出とも百十八億五千余万円を追加せんとするものであります。その内容の大部分は、生活保護費だの、あるいは義務教育の国庫負担金など、大部分のものがいわゆる義務的な経費、義務的支出に充足せられるものでありまして、年度の予算の進行の現況にかんがみまして、どうしても不足するであろうと見込まれまする最小限度のものを計上しておる、いわば事務的な追加補正予算と申すべき姿のものであります。ただ、蚕糸業に対する緊急の対策費として三億九千万円が計上せられておりますることが、見る一つの改築的な予算という姿のものであります。私は、この予算に賛成の意を表するに当りまして、以下申し上げまする二、三の問題点を指摘して、政府の留意と善処を要請したいと思うのであります。  その第一は、岸内閣ができまして最初に国民に約束せられました政治信条は、貧乏の追放という問題であったのであります。このことは、国民が岸政府に送ったおそらく最大の拍手であったと思うのであります。非常にその実現を国民は期待をしておったと思うのでありまして私どももその実現に対しましては全幅の協力をすることにやぶさかではありません。できますならば、日本の予算からこういうような生活保護費だの、失業対策、保険費だのというような費目がなくなってしまうことを私は理想として追及をいたしたいと思うのであります。非常に困難なことではありまするが、どうしてもこのことは実現をせしめなければならぬと思うのであります。ところが残念なことに、今回の補正予算にはその費目が減るんではなくて、追加計上をしなきゃならぬという事態、そこには、政府の施策についてさらに十分再考を要する面があるのではないかということを感ずるのであります。貧乏の追放ということがただ一片のゼスチュアや、一票を得るためのお題目になっては相ならぬのでありまして、どこまでも最善の工夫をこらしまして、この実現に一そうの御精進をいただきたいと思うのであります。  それに関連いたしまして申し上げたいことは、この種の費目につきまして、ともいたしますると、会計検査院の指摘にもありますように、不正不当に使用されておるという場合がしばしば見受けられるのであります。その反面、またどうしても必要だという方面に心なしか、予算額に縛られまして、予算がないからということで締め出しを食わしてしまったり、打ち切りをしておるような事例がこれまたないとは申せません。非常に矛盾をした現象と申すべきであります。一方には不正不当に使われておるのに、一方にはどうしてもやらなければならぬというふうなところにまで手が回りません。それが予算の額に押えられて、打ち切り、締め出しというような事態が発生しておる、このことは何としても残念なことでございますので、この予算の運営につきましては、十分一つ運営上の過誤がございませんように留意を願いたいことであります。  第二は、質疑の際にも申し上げたのでございますが、新しい政策的な費用として三億九千万円の蚕糸対策費が計上せられておるのでありますが、このことは、結局整理いたします桑園をどこに持っていくかという問題に真剣に取り組んでいかなければ、この予算の目的を達成するわけには参らぬと思います。そのためには、土地改良の問題であるとか、あるいは転換作物の品種の選定であるとか、生産されました生産物の流通機構の問題、あるいはそのものの価格の安定等、一連の対策というものがきちんと整っておりませんと、せっかくの施策というものも実を結ばないということに相なる次第でございます。このことは今さら申し上げるまでもなく、十分御了承になっておることであろうと思います。つきましてはこの予算の執行と相待って、今申し上げますような基礎条件である土地改良の問題から発生をして、新しい転換作物の品種の選定なり種類の選定なりという問題、さらに流通過程の問題、価格安定等の問題、一連の施策について遺憾なきを期していただきたいと思うのであります。それがございませんと、せっかくの費用がどぶに金を捨てるという結果に陥ることをおそれるのであります。この点につきましては最善の御工夫をいただきたいと思うのであります。  最後に、これまた質疑のうちに申し上げましたが、現在の専売納付金の見積り方については、基本的な観念について、もう一ぺん反省し整理をする要があると私は考えております。それは、公共企業体の本質をきわめていくという観点からでございますので、この点については十分御研究いただきまして、公共企業体たるの性格、本質を十分発揮するような姿に経理をしていただきたいということを要請いたしまして、私の賛成討論を結ぶ次第であります。
  355. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 以上をもちまして討論は終りました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を問題に供します。本案に賛成の方の御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  356. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 起立多数と認めます。よって本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  357. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 御異議ないものと認めます。よってさように決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十六分散会