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政府委員(酒井俊彦君) ただいまの
法律案につきまして、若干補足
説明をいたします。
まず第一に、わが国の
国際通貨基金と
国際復興開発銀行に対する出資額につきまして、
国際通貨基金におきましては、現行の二億五千万ドルから五億ドルに増額する。また、
国際復興開発銀行、いわゆる世銀におきましては、現行の二億五千万ドルから六億六千六百万ドルへ追加出資をすることにいたしたのであります。これが第二条の
改正でございます。
この点に関連いたしまして、今回の基金及び銀行の増資のいきさつ、
内容等につきましては、すでに当
委員会におきまして大臣からも御
説明がありましたので、詳細のことを申し上げることは省略さしていただきますが、まず、基金の方につきましては、特にわが国は、カナダ及び西独とともに、その戦後の経済発展が著しいということが考慮いたされまして、
一般普通は各国が五〇%の増額でございますが、これを一〇〇%増ということで、五億まで特別の増額が認められたのであります。これによりまして、基金からの外貨の買い入れ可能限度額は約二倍、すなわち二億五千万ドルまで買うことになり、また割当額の大きさによるわが国の順位は、従来は九位でございましたところ、この特別増額で第八位に上りました。投票権がそれだけ
強化されます結果、
理事会におけるわが国の
発言力が相当強まることが期待されておるわけでございます。このわが国の増額分二億五千万ドル、すなわち円貨換算いたしますと約九百億円でございますが、これにつきましては、そのうち六千二百五十万ドル相当の円、すなわち二百二十五億円は金で、つまり四分の一は金で払い込むことになっております。一%に当ります九億円は円現金で払い込むことになっております。その残り六百六十六億円は、これは交付国債ということで払い込むことになっております。なお、この交付国債は無利子のものでございまして、現実にはわが国が外貨を買い入れる場合に初めて使われる性質のものでございます。
なお、総会による増額決議の採択は、総会が基金として加盟各国の割当額を増額するということを総会として意思を
決定いたしたものでありまして、この割当額の増額を有効にするためには、さらに加盟各国がこの増額に同意する旨を通告をする必要がございまして、この同意を行う前に払い込みができるような
法律及び
予算措置等すべての国内措置を了するということが必要でございます。従いまして、この法案を今日提案いたしたわけであります。
次に、世界銀行の増資について申し上げますと、世銀の融資活動は近年ますます活発になって参りました。世銀といたしましては、貸付資金を調達いたしますために、世銀債の発行等による借り入れを今後ますます活発に行なっていく必要があると見られておるのであります。ところで、これらの借り入れにつきましては、各加盟国株式応募額のうちその八〇%に相当する未払込分がその世銀債発行の保証に充てられておりますので、増資及びそれに伴う応募額の増額によりまして、その保証限度額を増大いたしまして、これによって借り入れの促進を可能ならしめ、また世銀による投資をさらに拡大しようという
趣旨でございます。なお、世銀につきましては、IMFの方と違いまして、
一般的な出資は一〇〇%ということになっております。で、わが国はさっき申し上げましたように、六億六千六百万ドルと特別増額を認められましたので、その一億六千六百万ドルのうちの一%に当るものはドルで、九%に当るものは国債または円現金で出資をするということになっておるわけであります。世銀におきましても、これによりまして順位は九位から八位に上りまして、
理事会におけるわが国の
発言力はますます
強化されることとなり、従来同銀行と密接な関係にあるわが国としては、まことに好ましいことと考えております。
わが国の世銀の増額分四億一千六百万ドルのうち、実際に払い込みを要しますのは、さっき申し上げましたように、一億六千六百万ドルのうち、
倍額以上の超過分について一%がドルで、残りが国債で払い込みをいたしております。従って、これを円に直しますと、円現金の方が十億五千三百七十八万四千円、それからあとの国債の出資につきましては、四十三億二千四百六十一万六千円というものが交付国債で払い込まれるわけであります。第二に、以上の追加出資をいたしますために、所要
財源といたしまして約二百五十億円というものが必要であります。この調達
方法等につきまして、付則第二項ないし第五項に所要の規定を設けております。この規定の骨子といたしますところは、まず大蔵大臣が指定する日において、この
法律施行の日現在で日本銀行の所有に属しておるということがはっきりしておるものとして大蔵大臣が認定いたしました金地金のうち、大蔵大臣が指定するもの、つまり約六十二トン、日銀のものであるというふうにきめられたもののうちこれは六十二トンでございますが、これを金管理法第四条の規定に基く価格、すなわち
国際通貨基金に登録されております一グラム四百五円という形で日本銀行に再評価させまして、その再評価いたしました金額と帳簿価格、これは現在一グラム三円四十五銭と記帳されておりますが、その差額に相当する金額を全額国庫に納付するものといたしまして、
政府はこの納付された金額を基金及び銀行に対する追加出資及びこれに伴う経費の
財源に充てることとした次第でございます。追加出資の
財源を日本銀行の金評価益に求めましたのは、今回の出資の目的、金評価益の使途等種々の
観点から見まして、この
方法が最も適当であると考えたからであります。
なお、この日本銀行から国庫に納付されまする金額は、付則第三項の後段におきまして、日本銀行法第三十九条に規定する剰余金には含まれないということになりますので、
一般の国庫納付金とは別途に、特別の納付金として全額を国庫に納付されるということにいたしております。従いまして、
一般の日銀納付金を納付する場合のように、配当とか内部留保というようなものを行うことなく、またこの納付金額については、付則の第五項によりまして、法人税、事業税の
課税所得の計算上は損金に算入されてしまう、つまり
課税しないということになっております。
第三に、
昭和二十七年のわが国のIMF及び世銀加盟当時の出資におきまして、
政府は、基金に対して出資する金の一部に充てるために、日本銀行から当時の帳簿価額一グラム三円四十五銭で日本銀行の所有する金地金約十五・五トンを買い上げたのでございますが、その際、この実際上の買い上げ価額とその金地金を当時の金管理法第六条の規定による価格、すなわち一グラム四百一円でございましたが、この場合に四百一円で評価したものとの差額、大体六十億円ぐらいになりますが、この額は現行法の第四条第二項につきまして、別に
法律をもって定めるところによって処理するものと規定されておりました。そこで、この機会に、その差額につきましても同時に処理をいたしますことが適当と考えられましたので、
改正法の付則第六項及び第七項に所要の規定を設け、さらに、今申し上げましたように、本則の方の四条は必要でなくなりましたので、これを削除いたしております。
すなわち、当時、日本銀行は
政府の命令によって
政府に金地金を売り渡した際に、実際には一グラム三円四十五銭で売り渡しを行なったのでありますが、それですでに実際の売買は完了しておったのでございますが、これを観念上、旧金管理法第六条に規定する価格、すなわち一グラム四百一円で売り渡しを行なったものとみなして、このようにみなす場合に生ずべき現行法の第四条第二項の差額に相当する日本銀行の益金相当額が、実質的に見まして今回の再評価益と同様の性質のものであるということができますので、その売り渡しが行われましたときにおいて今回の再評価益の国庫納付金に準じまして国庫に納付すべきものとして、そういうふうにみなして処理いたしました。従いまして、現行法の第四条の第二項にいう処理の一切は完了したものというふうに、この
法律が成立いたしますればそうなるわけであります。なお、これはすべて観念上の操作による処理でございまして、
政府の歳入歳出
予算あるいは日本銀行の帳簿上の損益というようなことには何ら
変更がないことは申すまでもございません。
最後に、わが国が
国際通貨基金から外貨の買い入れを行います場合に、従来は対価として円現金を払っておったのでございますが、これにつきましては、従来はそういたしますと、もしIMFから外貨を買い入れまする場合に、現金を調達いたしまするために、たとえば外為特別会計が外為証券を発行するということが必要になって参りますので、そういう措置をとらないで、その場合には現金にかえて国債でとっていただくということにいたしました。これは各国とも、英、仏、オランダ等もそういう措置をとっておりました。IMFでもそれを認めておりますので、さようなことにいたしたわけであります。
改正法の第十二条以下の本則の規定がこれでございます。すなわち、
国際通貨基金に無利子、譲渡不能の交付国債を払い込んでおきまして、外貨を買い入れるという場合に、その場合に交付国債が出せるという
根拠を設けまして、発行限度、償還、買い戻し、償却等に関する規定を置いて、同時に、その他の点は出資の国債に関する諸規定をおおむね準用するということにいたしております。
以上補足をいたしましたのでありますが、何とぞ御
審議の上、すみやかに御可決下さいますようにお願いいたします。