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1959-03-10 第31回国会 参議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十日(火曜日)    午前十一時十六分開会   —————————————   委員の異動 三月六日委員稲浦鹿藏君及び島清君辞 任につき、その補欠として小沢久太郎 君及び小酒井義男君を議長において指 名した。 三月九日委員小酒井義男君辞任につ き、その補欠として島清君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            島   清君    委員            小沢久太郎君            佐野  廣君            鈴木 万平君            高橋進太郎君            高橋  衛君            堀本 宜実君            阿具根 登君            阿部 竹松君            海野 三朗君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    法制局長官総務    室主幹     吉国 一郎君    通商産業政務次    官       中川 俊思君    特許庁長官   井上 尚一君    特許庁総務部長 伊藤 繁樹君    中小企業庁長官 岩武 照彦君    中小企業庁振興    部長      川瀬 健治君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    特許庁総務部工    業所有権制度改   正調査審議室長  荒玉 義人君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選特許法案内閣提出) ○特許法施行法案内閣提出) ○実用新案法案内閣提出) ○実用新案法施行法案内閣提出) ○意匠法案内閣提出) ○意匠法施行法案内閣提出) ○特許法等の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○商標法案内閣提出) ○商標法施行法案内閣提出) ○特許法等施行に伴う関係法令の整  理に関する法律案内閣提出) ○中小企業信用保険公庫法の一部を改  正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○商工組合中央金庫法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会を開会いたします。  委員変更について御報告いたします。  去る六日島清君が辞任され、小酒井義男君が選任されました。また昨九日小酒井義男君が辞任され、島清君が選任されました。   —————————————
  3. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、理事補欠互選についてお諮りいたします。ただいま御報告いたしました通り島清君の委員変更により理事が欠員となりました。この際、理事補欠互選を行います。互選は先例により委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、理事島清君を指名いたします。   —————————————
  5. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 本日の審査は、まず特許法案外九件に対し質疑を行なったのち、中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案について質疑を行い、質疑が終った場合は討論採決に入る予定でございます。  次に、明日は午前中、軽機械の輸出振興に関する法律案航空機工業振興法の一部を改正する法律案及びプラント類輸出促進臨時措置法案質疑、午後、特許法案外工業所有権関係法案審査を行います。  ただし、出席要求大臣の都合により、審査の順序が変更されるかもしれませんから、あらかじめ御了承願います。  それでは特許法案外工業所有権関係法案を一括して議題にいたします。  これより前回に引き続き質疑を行います。順次密書を願います。
  6. 島清

    島清君 私はこの前参考人においでいただいて意見を拝聴いたしました折に、参考人の人に質問の形でお聞きをしたのでございましたが、その折、井上長官も御列席でございましたので、聞いていただいたことだと思うのですが、それは井上長官のしばしばの御説明によりますというと、この法案が、現行法制定以来非常に長い年月を経ておりまして、どうしてもこの種の改正法案が必要である、それについては、長年の特許庁の懸案でもあり、さらに改正審議会の議を経て、慎重な検討を経られた結果、この法案提出になったというような御説明でございましたし、提案理由についてもその通りでございますが、さらには出願件数が非常に多くて能率を上げなければならないと、こういうような裏の説明でございますが、政府当局も御承知通り、今度の国会は参議院におきましては、半数の改選議員を選挙しなければならない状態にあり、さらに加うるに、各種の地方選挙をしなければならないといったような、政界にとりましては、まことにあわただしい中にあるわけでありますが、このあわただしい中において、言葉をかえて申し上げまするというと、議員が浮き足を立てておりますときに、非常に慎重に綿密に詳細に検討を加えていかなければならぬというところのこの膨大な世紀の法典をお出しになったわけですが、そこで私は政府説明にもかかわらず、この法案をお出しになって、この法案法律となって制定をされたからというて、必ずしも今特許庁でかかえておられまする未処理出願件数というものが、直ちにこれが解決に役立つとは理解できないのであります。ですから、この種の法案というものは、議員が落ちついて審議ができまするような条件のもとにおいて、そして慎重かつ綿密に審議をして完璧を期するべきじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますが、ことさらに、こういったような時期に法案をお出しになりました政府当局の真意について、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  7. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今回国会提出になりました特許法案等法案政府部内におきまする審議経過につきましては、先般の委員会で御説明申した通りでございますので、省略したいと存じますが、われわれといたしましては、工業所有権関係法規改正におきます必要性というものを、つとに痛感して参りまして、長年工業所有権制度改正審議会検討を尽しました結果、慎重審議の上、今般本国会に十法案提案しまして、御審議を願うことになったわけでございますが、実は昨年の通常国会にできれば提案したいというふうなつもりで準備を進めていたわけでございますが、解散気がまえ等の政治的な事情もございまして、今回に延びた次第でございます。  なお、この工業所有権関係法規につきましては、各国事情を眺めてみましても、米国、英国その他ヨーロッパ各国におきましては、戦後いずれも最近の新しい経済社会情勢に即応します方向に、大事な改正を加えておるのでございまして、わが国としましても、国際的性格の濃厚なこの工業所有権制度の分野におきましても、法律改正をぜひ早く実現したいというのが政府の念願でございます。  なお、要綱の詳しいことは、先般申しました通りでございますから省略したいと存じますが、この改正点の中の、一、二の例として申しましても、今回の特許法案改正中、発明新規性判断の基準としまして、外国において頒布された刊行物の記載をも含めることになったわけでございますが、この改正交通通信が非常に国際的に発達しました今日の情勢下におきまして、外国の文献にすでに記載されているような発明について、外国人外国においては特許にならないが、日本においてはそれが特許になるということでは、わが国産業に対する圧迫が非常に著しいものがあるということを懸念する次第でございまして、そういうような事態はできるだけすみやかに改善しますことが、今日の日本産業経済発展を期する点から、絶対必要であると考えるわけでございます。  またもう一つの例として申しますれば、原子核変換により製造される物質発明については今回不特許事由として新規にこれを加えたわけでございますが、こういう改正がない現行法では、これは特許対象とならざるを得ないということになるわけでございまして、原子力に関する技術が日進月歩に進んで参ります今日におきまして、こういう原子核変換により製造される物質発明につきまして、もし特許庁出願がございました折には、現行法のもとにおいては、特許にならざるを得ない。そういう問題は、原子力に関する今日の諸般の事情等から申しましても、きわめてこれは好ましくない事柄でございます。  まあ以上申しましたのは一、二の例でございまして、こういうふうに改正事項中にも、今回の改正を急務とする事項が相当あるわけでございます。  なお、今申されました通り、今度の法律改正が未処理件数の解消ということとすぐに結びつくかどうか1特許庁に今大きく停滞しておりますそういう審査審判に関する事件の迅速なる処理ということに寄与するかどうかといろ点につきましての問題は、もちろんあるわけでございまして、この点につきましては、法律改正の結果に、審判迅速化に寄与する面と、同町にまたそうでない面とが相錯綜しているわけでございますが、われわれとしましては、法律改正と並行しまして、特許事務改善につきましては、人員の増加、あるいはその他の設備の改善能率化、資料の充実、そういうような問題につきまして、並行してできるだけの努力をいたして参りたいと考えている次第でございます。  なにとぞ十分政府の意のあるところをごしんしゃくをこの際願いまして、今回の法案がなるべくすみやかに制定に相なりますよう念願する次第でございます。
  8. 島清

    島清君 まあ今井上長官は、一、二の例としてあげられたのですが、その一、二の例については、私たちも承知をいたしておりますが、しかしながらその一、二の例としてあげられたのが、私は大半の例のように思われるのです。それでまあ改正審議会を設けられて、慎重に審議をされて、その成案を得られたという経過については、私ども了解をするにやぶさかではないのですが、その答申がなされてからも二年余りの年月経過したわけなんですね。それからこの法案を出されたわけですが、私は、まあ一年とか半年くらいはそう待てそうにないような気がするのです。繰り返して申し上げるようで恐縮ですが、今あげられた程度の非常に緊急を要するような問題は、現行法のその部分だけ改正をして、そしてただいま私が申し上げたように、時間をかけてゆっくり綿密に審議をして制定するというようなことがわれわれにはほしかったわけなんですが、その今あげられたような例については、現行法のもとでその部分改正して間に合せる、こういうことについてはお考えになったことがあったかなかったかどうか、御説明を願いたいと思います。
  9. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 何分現行特許法は大正十年の制定法律でございまして、自来四十年近くを経過しておるわけでございます。最近わが国産業に関する各法律におきましても、この新しい社会経済事情に即応するための改正が着々行われて参っている次第でございまして、この点、島委員のすでに御承知通りでございます。そういうわけで、そういう部分的改正では、当該問題点解決にはなりまし、うけれども、今日の、大きく産業界経済界から要望されておる強い改正要求にこたえることはとうていできないわけでございます。で、次に、今申しました一、二の事項以外の点につきましても、できるだけ早く改正しますことが、技術革新と称せられる今日の事態におきまして、工業所有権制度というものが、産業界経済界でますます重要な地位を占めて参っておる今日の、そういう状況下におきましては、その基本になりまするこの法律改正というものが、技術の進歩、ひいては日本産業経済発展に寄与するところがきわめて大きいことをわれわれとしては考えまして、この際、単なる一、二の部分的改正のみでなく、全面的な改正を加えることをむしろ最も適当であると考える次第でございます。
  10. 島清

    島清君 当初の私の質問に対する長官の御答弁の中に、国際的な見地からも法律改正の必要があるという御説明でございましたが、長官は昨年リスボン所有権保護国際同盟条約改正会議に御出席になられたのですね。そこで御出席になられて、今回の法案はこの条約改正会議の成果を何か取り入れられたかどうか、その一点を明らかにしていただきたいということと、さらに改正条約はまだ批准されていないのですが、これはいつごろ批准されるのであるかどうかですね。これが二点と、そして批准されるといたしますと、ただいま提出されている法案にも若干の改正をしなければならない点が出てくるのではないかと、こういうふうに思われますが、これはどういう点をどう改正をしなければならないか、以上三点について御説明をわずらわしたいと思います。
  11. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) リスボンで十月六日から十月三十一日まで工業所有権同盟条約条約改正会議がございましたが、今の御質問はこの会議における審議の結果というものが、今回提出法案中に盛り込まれているかどうかということが御質問の第一点でございます。この点は現行法におきまして、条約改正会議における議論方向のものが、すでに現行法に入っている事柄は別といたしまして、新しく今回提出法律案中に盛り込まれているものはいまだございません。  それから第二の、いつごろ批准予定であるかという御質問でございますが、大体条約会議におきましては、おそくとも一九六三年五月一日までに批准書は寄託されなければならないということが、大体の約束になっておるわけでございますが、われわれとしましては、外務省とも連絡の上、すみやかに国会にこれを提出いたしまして、批准の運びを完了したいと考えておる次第でございまして、まだその時期等につきましては、今日ここで明確に申し上げることができないことを御了承願いたいと存じます。  で、批准の場合に、どういう点が法律改正として再び必要になるかという第三の御質問の点につきましては、いろいろ重要な問題がございますが、その問題点を簡単に申しますと、まず第一に化学物質特許を認めるかどうかという問題が先般の会議重要事項一つでございまして、この会議におきましては、化学物質について特許を認めるということに決定をみたわけではございませんが、満場一致の決議をもって、同盟各国が今後その国内法制において新化学物質発明特許保護を与えるよう規定することの可能性検討することを勧告するという決議がなされたわけでございまして、会議全体の空気から見まして、化学物質について特許を認めるということは、今や世界の大勢になったという感がいたすわけでございます。しかしながら、同時にこれは産業政策としましても、単に特許制度上だけの問題だけではない、産業政策としましても、非常に重要な問題でございますので、今後政府、民間を通じまして、その方向にかなり準備期間が必要であろうかと考えております。今後の推移によりまして、この化学物質特許を認めるという結論に到達しました場合に、この条約批准とこれが同時になりますかどうか、これははっきりしたことはまだ申せませんが、今後の問題としまして、化学物質について特許を認める制度を確立することについて機運が熟しました場合には、法律改正をする必要があると、かように考えておるわけでございます。  それからもう一つ、第二の問題としまして、会議におきまして、やはりサービスマークということが問題になりまして、そのサービスマークに関しましては、条約改正が行われたわけでございます。従来の特許実用新案意匠商標等と並んでサービスマークが変えられ、各国サービスマーク保護することを約束するという規定が新たに設けられました。で、このサービスマーク商標が商品の表示でありますと同様に、サービスの出所を表示するものでございまして、この点につきましても、今後日本経済界としましてどの程度これを立法化することが必要であるか、その要求がどの程度強いかという経済界要請とも関連する問題でございますから、現行法のもとにおきましても、日本におきましては、不正競争防止法あるいは商法中における商号に関する規定等で、ある程度サービスマークに関する法的保護というものが認められていると申してもよい状況でございますので、今日の法律のもとにおいても、条約上の義務は果しているということになるわけでございますけれども、先ほど申しました経済界要請にも応じまして、今後商標法中に、または商標法と別途にサービスマークに関する立法をどういうふうに進めていくか、そういった問題についてなお研究を進めて参りたいと思います。  それから三番目の問題といたしまして、代理人名義登録された商標ということがございますが、代理人名義登録された商標について、商標権者保護するということが今度の条約改正会議できまりましたので、この点につきましては、やはりこの次の批准の機会に法律改正を要するのではないか、そういう考えで、今後検討を進めて参りたいと存じております。  それから第四の問題といたしまして、特許実施の場合の強制実施請求の場合の制限という問題がございますが、これは強制実施の場合におきまする実施権は、その事業とともにでなければ譲渡することができないということが今度の会議できまりました。また従来はその強制実施請求というものは、特許出願の日から三年間はこれを行うことはできないとなっていましたのが、今回の会議では、特許後三年または特許出願の日から四年のいずれか長い期間は取り消しの請求をすることができないというふうに、権利者保護が厚くなったわけでございまして、そういった点につきましては、法律改正が当然必要になってこようかと存じております。  大体以上申しましたような問題につきまして、今後至急検討を進めて参りまして、批准の時期に間に合う問題につきましては、それと同時に法律改正を行うことが適当であろうかと考えております。
  12. 島清

    島清君 総論的なことはこの程度にいたしまして、各論に入ってお尋ねをしたいのですが、実用新案意匠について、許可文字登録に変えてもらいたいという議論も多いことは、井上長官も陳情を受けられていることだと思うのですけれども、これは確かに登録出願というのは今までの用語から見ると、適当とは思えないのですね。そこで、最も人々に長く親しまれておりまする商標については登録出願ということにしているわけですが、この二つの使い分けは法制上差しつかえなく、矛盾ないものであるかどうかですね。この点について一つ説明を願いたいと思います。
  13. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今回、提出法律案で、実用新案意匠につきましては、従来の登録という言葉許可に改めましたこと、御指摘の通りでございますが、この点につきましては、提案理由は、現行法実用新案及び意匠におきまして、この登録という同じ言葉が二様に使われている。すなわち権利設定処分という行政処分登録と申しておる。登録無効の審判というような場合は、この行政処分のことを言っておる例でございますが、と同時に、他方、いわゆる登録原簿に登載して記載するという言葉登録と称しております。で、最近の立法の大きな方針としまして、なるべく、この法令用語の二様性、二重性は極力やめなければならない、そういうことが法律を明快に国民に理解を求めることができるゆえんであるといろ考えがございますので、われわれとしましては、そういう理由登録という言葉のあいまいさ、二重性を除去する意味で、ここに許可といたしたわけでございますが、従来の例といたしましても、鉱業法などは、鉱業権設定行為鉱業権許可と言っておるような例もあるわけでございますが、しかしながら、この点につきましては、いろいろ各方面に御意見のあることは十分承知をいたしております。国会の御審議によって御決定を願いたいと存じておる次第でございますが、なお、今島委員から申されました実用新案法意匠法には許可といい、この商標法では登録といっておる、それの根拠はどういろ理由でいうかという点でございますがわれわれの一応の考え方は次の通りでございます。すなわち、実用新案権対象となるような考案をした人は、実用新案許可を受ける権利を持っておるわけでございますが、この権利国家に対してその考案審査要求することをその内容とするものでございまして、実用新案許可を受けますまでは、その当該考案を支配する権利ということはできないわけであります。で、言いかえるならば、考案というものに対するそれの支配権国家の行う設権処分権利設定処分によって初めて生ずるというふうに考えてよいわけでございますので、この権利設定処分特許法では特許と呼んでおるわけでございますが、実用新案法意匠法において、この特許に近い用語としまして、許可といっても決して不当ではない。こういうふうに思うわけでございますが、しかしながら商標法におきましては、商標に対する支配権というものが、究極的には国家の行う設権処分によって生ずることは、実用新案意匠の場合と同様でございますけれども、そのニュアンスと申しますか、この間多少の違いがそこにあるように思うわけでございます。すなわち実用新案審査の場合には、申請の判断でございますとかいうわけで、その審査内容はかなり実質的であります。そしてまた複雑でございますが、商標法による設権処分前提となる審査というものは、その出願された商標というものは、一定の要件に該当しておるかどうか、すなわちいわゆる不登録事由に該当しておるかどうかということをおもに見るわけでございまして、いわば形式的な審査であって、実用新案等と比べる場合には、かなり比較的簡易であると申せようかと考えます。で、そういうわけで法令による用語としましても、そういう商標審査のような場合には、登録という文字を用いても、必ずしも不適当ということにはならないというふうに考えますし、それからまた他方商標制度というものが、従来の沿革に徴しましても、長年の慣用、その商標を長年使ってきたといろ、長年の使用によって生じた商標に対する支配権というものを、公けに確認すると申しますか、そういう意味登録という、これを登録するということに歴史的にも始まったわけでありまして、世界各国を通じまして、ほとんどすべて登録という言葉を用いておりますことも御承知通りでございます。わが国としましても、明治十七年の商標条例以来登録商標という文字を使って参ったようなわけでございます。  以上が、実用新案意匠におきましては許可という言葉を用い、商標におきましては登録という言葉を用いたその理由でございますが、繰り返して申しますが、当委員会の御審議によって十分適当なる御判断を願いたいと考えております。
  14. 島清

    島清君 ただいま登録のことについてお尋ねしたのですが、その前提になりまする出願については、工業所有権法のすべてにわたって出願という言葉を使っているようでございますが、現行法制定をされたとき並びにこれが改正を見ましたときの日本の国情を見ますると、日本国威というものが、旭日昇天の勢いで世界列強の中に国威を発揚していった登り坂の時でございまして、その時の行政機構というものが、天皇統治権に基いて行政権が行われ、従って、天皇主権のもとに人民がまあ願い出て登録をしてもらうと、こういったような、かみしもといいますか、こういったような階級制度といいますか、これが厳密に行われておった時代的な反映の諸法律だと思っておるのです。そこで出願という言葉が使われておりますが、私は憲法が改正をされ、さらにこういったような古い法律改正をされるという場合には、やっぱり主権在民の精神に基いて、この種の出願ということは、もっと民主的に届出であるとかいうことによって足りるような気がするのです。先般参考人をお呼びいたしました折にも、私は参考人にお聞きいたしまして、弁理士会の代表の方から、そのことについても、弁理士の内部においていろいろと意見があったというような答弁でございましたが、私はせっかく政府当局が国際的な視野に立って、この法律改正と取り組んでこられて、天皇主権時代の行政的な考え方で出願という言葉を使われておるということは、何か近代的なものに欠けているような気がしてならないのです。この点について百尺竿頭一歩を進めて、この出願を届出に改正しようというふうにお考えになったことがあったかどうか。またさらにこれをわれわれ委員の方から直したいという場合に、それを受け入れるだけの用意があるかどうかについて御説明を願いたいと思います。
  15. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 出願という言葉は非近代的ではないか、届出というようにその用語を変える用意はないか、また考え方はどうかという御質問と拝承したのでございますが、申すまでもなく特許実用新案意匠商標を通じまして、これは国家審査を求め、そして結果としましてその権利の設定を受ける。そういう権利の設定を求める国民からの行為でございますので、この場合やはり出願と申しますか、そういう政府権利の設定を要求する行為の名称としましては、届出ということでは性質が違うわけでございまして、届出と言うのは申すまでもなく報告に近い、報告というような一方的な行為でございますから、こういう工業所有権に関する権利の設定という、国の処分を求める行為としましては、出願という文字が適当である、また従来、長年そういう言葉で慣用して参ったことでございますので、われわれとしましては、この言葉をこのまま続けていいのではないかと考えておる次第でございます。なお、申すまでもなくこれは強力なる独占権の付与でございますので、国が慎重な審査の手続を経て、これの対象について審査の上、この権利を与える、認めるという制度であるわけでございまして単なる国民からの届出によって、こういう強力な権利が独占権として発生するというようなことは、立法上決して適当なものとは言いがたいと考えております。
  16. 島清

    島清君 審判制度についてお尋ねしたいのですが、法案のねらいは、第一審制にしたいということでございまして、これに対しましては二審制にしておいてもらいたい、こういう意見と請願要請がありますること、これはまた井上長官承知通りなんです。一審制にして抗告審判制度をやめることは、特許庁審判部の負担を軽くすることは確かでございましょう。一方からいえば、工業所有権制度に関する専門の官庁である特許庁において、審理の慎重を期するために、ここで二審まで実施してもらいたいというのもまた理由があると思うのです。  そこでお伺いいたしたいことは、第一点において、今までの事例において第一審の審決が、あったものが、抗告審判で、最初の審決がくつがえり、異なった結果になった例が相当にあるかどうか、これは特許庁内で二度審判を行う必要があるかどうかの例として、伺っておきたいと、こう思います。  第二点に、一審制にするからには、特許庁として審判に慎重を期する上に格段の心がまえがなければならないと思うのです。その心がまえがあるかどうか、すなわち審判内容強化についての処置について、どのように考えておられるか。  第三に、一審制にすることにより、審判部の負担をどの程度軽減されるお見込みであるか、この三点について御説明を願いたいと思います。
  17. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 従来二審級制でもって、長年運用して参ったわけでございますが、今回われわれといたしまして、これを一審級に改めるというのは、大体三つの理由に基くわけでございます。と申しますのは、まず第一には、従来の運用の経験に徴しまして、必ずしも二審級を続けるということが、効果としてそう大きいものとは考えられないという運用の経験からくる判断が第一であります。  それから第二の問題は、審判は、もちろん公正迅速を尊ぶわけでございまして、この点につきましては、従前同様努力をいたすわけでございますが、一審級にこれを改正するということが、この目的に背馳するものとは考えないのでございます。むしろ従来二審級の二段階において充当しておりました人員を、一審級にこれを充当することによりまして、審判の迅速正確を期することができると、かように考えた次第でございます。  それから次には、従来の二審級を一審級に直しましても、その審決に対しては、東京高等裁判所、最高裁にいき得ること従前通りでございまして、この点は普通の訴訟の場合と比べましても、特に段階が減って、不利ないしは簡略になるというような懸念はないものと考えた次第でございます。  今御質問事項中、従来の二審級を一審級に直すことによって、どの程度減少するかということでございますが、四千二百件中百五十件程度の減少の見込みでございます。ですから対数的に申し上げますれば、そう大きな件数上の変化はない、と申しますことは、従来第二審級というようにわれわれが考えておりまする抗告審判というのには、いわゆる査定系の審判事件というものが圧倒的に多いという理由に、これは基くわけでございます。従来の審判の数から申しますというと、請求数の方から言えば審判が七百件、抗告審判が三千五百七十件、合計四千二百七十件というような数字になっております。
  18. 島清

    島清君 この二審級制度を一審制に改めたい、その改めたいという理由については、今三項をあげられて御説明になったわけですが、そこで私が三点についてお尋ねをいたしましたことは、第三番目のことについては、四千二百件中百五十件ぐらいの減少になる、こういうことでございますがまあそれはそれでよろしいのですが、第一点と第二点は言葉が足りなかったのかもしれませんが、第一点は、第一審で審決がなされたものが、抗告審判で第一審の審決がくつがえり、異なった結果になった例が相当にあると思うのです。それは私のこれは思い過ごしであるのかどうか、それが一点と、それからもう一点は、特許庁として審判に慎重を期する上に、第一審制にするからには、第二審級制を認めてもらいたいという声があるわけですから、第一審制になりまするというと、当然に擁護されなければならない権利保護されないという結果にならないとも限らないのです。それで第二審制度を存置してもらいたいという要望があるわけなんです。それに対しましては、その要望にもかかわらず、第一審制を改正法案のねらいとしておるのでありまするから、それに対しては特段の処置といいましょうか、心がまえといいましょうか、そういうものが納得できるように御説明願わなければならないと思うのです。そこで審判内容強化についてそういったような処置をどのように考えられておられるかということをお尋ねをしているわけです。
  19. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 従来第一審の審決に対して第二審に持ち込まれて、どの程度くつがえったかという問題についての御質問でございますが、これはここ最近数年間の数字について申し上げてみたいと存じますが、三十一年におきましては、当事者系の審判に対する審決五十九件中、第一審の審決の破棄になりましたのは、十一件ですから二割弱、パーセンテージで申しまして一九%くらいだろうと思います。三十二年におきましては、五十七件に対して九件でございますから一六%、それから三十三年におきましては、五十一件に対して六件でございますから一二%、そういうのが第一審の審決が、第二審におきましてくつがえった率でございます。  それから第二の御質問でございますが、先刻もちょっと申しましたつもりでございますが、言葉が不十分であったかと存じますが、従来特許庁審判部の陣容が、第一審級、第二審級の両方に充当されておるわけでございますが、今回は一審級になることによりまして、その全陣容を一審級に注入することができるという結果としまして、審判内容に、従来よりも一そう慎重、正確、迅速を期することができるわけでございまするが、なお、われわれとしましては、そういう数の問題ばかりでなく、昨年来特許庁内部に設けました研修所の活用によりまして審判官の再教育ということを通じまして審判官の質的向上を一そうはかって参りたいと考えております。そういうことを通しまして審級は改正になりましても、審判内容、審決自体というものは、従来に比べて決して簡略になるんだというのではなく、むしろ審理も慎重にやり、また内容検討も正確を期する、そうして審判自体も迅速化するということを、われわれとしては念願しておるようなわけでございます。
  20. 島清

    島清君 やっぱり井上長官、あなたのせっかくの御説明にもかかわらず、第一審の審決が第二審においてくつがえったということが、三十一年は五十九件中十一件もあり、三十二年は五十七件中九件もある、三十三年は五十一件中六件もあるということ、これはやっぱりかなり率は高いものを示しておると思うんですね。ですからこういった事実に基いて、二審制度現行法通り認めてもらいたいということは、やっぱり私は過去のこういったような事実に基いて、相当根拠のある意見であると、こういうふうに思えるんですね。そこでそういう事実が過去においてあったといたしまするならば、それをあらためて第一審制にしようとするのには、相当やっぱりこの事実を救い得るような審判内容の強化というものが、明らかに明示されなければならないと思うんです。今井上長官のお話を承わっておりますというと、私はわかるような気がするんですが、あまり抽象的だと思うんですね。やっぱりもう少し具体的に、これこれこういうことで——しかじかかようかようで、こうなるんだという、やっぱり具体性がないと、説明としては少し弱いような気がするんですがね。
  21. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 審判のことでございますから、具体的事件々々によってもちろん事情は違うわけでございますが、こういうような点があろうかと存じます。すなわち従来第一審の審決の結果が、第二審でくつがえる率が、島委員の御意見としてはかなり大きい。すなわち一九%とか、一六%という率になっている。ということは、これを裏から言えば、第一審の審決が不十分であったと言いますか、審査が慎重、正確でなかったということにもなるわけでございます。この点は特許庁の人事の配置といたしまして、第二審の方に経験の古い者を回して、そしてどちらかといえば、第一審の方に経験の浅い者をこれまで配置しているというような点が、こういう右に申しました数字の結果と関連をある程度持っているわけでございますが、今度二審級制を一審級制に直しますというと、古い、知識経験の豊富な審判官が、直接第一審の審判に関与する度合いがそれだけ多くなるわけでございまして、特許庁審判全体としましては、従来と比べて、慎重、迅速化という大きな目的に沿い得るのではないか、かようにわれわれとしては考えている次第でございます。
  22. 島清

    島清君 要旨の変更についてお尋ねをしたいのですが、要旨変更と認められるときは、これを新しい出願とみなして、新しい出願出願目に出願があったとするとは、これは現行法にあるわけですが、改正案では要旨変更の手続補正書を提出した日にさかのぼって、これを出願日としているわけなんですね。これは出願者にとって非常に有利になるわけではございまするが、これは第五十三条の第四項の規定ですが……。しかし同条の第五項では、このように要旨変更と認められると、前の出願は取り下げられたものとみなされ、全然出願の効力を持たなくなるのですね。変更されない部分の中に、特許と認めらるべきものがあっても、新出願から出願としての効力を持つことになるわけでございまするので、従って、もしだれか他人が、最初の出願の後にこの部分だけの特許出願すると、要旨変更した者よりも先願ということになって、特許にされることがあり得るのではないか、こういうふうに思うわけです。そうなりますというと、最初の発明者は、特許範囲を広げようとして要旨変更したために、かえって自分の特許範囲を縮小される、こういうふうな結果になるわけですが、これが救済の道については、当然に何らかの配慮がなければならないと思うのですが、この救済の方途があるかどうか、これについて御説明を願いたい、こう思います。
  23. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 要旨変更に関する第五十三条の規定に関しましての非常にむずかしい御質問でございますが、今島委員の御指摘のような場合はあり得ると存じます。が、しかしながら今御指摘のような場合を考慮することによって、この要旨変更前の出願を生かす、そしてまた要旨変更後の出願につきましては、ただいま御指摘の五十三条の第四項の規定によって手続補正書を出したときに、新たな出願があったものとして扱う、すなわち両方を生かしておくような扱い方をすることが、果して大きな見地から考えて適当であるかどうかという判断ということになろうかと存じますが、われわれとしましては、今申されましたような面では、両者を生かすということが一見必要、適当であるようには見えますけれども、こういうふうに両者を残しますということが、別の第三者の見地から考えますというと、非常に第三者の利益を擁護することにはならない、不公平な結果になるということを思うわけでございます。と申しますのは、要旨変更といいますのは、客観的にいいますれば、それは別発明と言っていい内容のものでございます。別発明であれば、本来ならば別個に新規出願をするか、あるいは追加特許出願というような道もあるわけでございます。しかしながら、最初に出願しましたものの方からいいますれば、これが、要旨変更になるかどうかということが、主観的にはわかりかねる場合もあるわけでございますので、こういうふうな道をここに設けまして、補正というようなことを認めたわけでありまするが、その場合に、もし両方とも認める、生かすということになりますというと、その要旨変更になりましたような、内容補正を加えたような内容と同じ発明を、たまたま第三者がしました場合に、その第三者の出願とこの場合の出願とを比べますというと、その場合におきましては、補正というきわめて簡易な手続によって出願日の利益の確保ができるわけでございまして、第三者は普通の成規の出願の手続をとる必要がある、そういうわけで、この間第三者との関係についていいますれば、非常に不公平ということにならざるを得ないと思うわけでございます。それからもう一つ理由といたしましては、言い方は適当ではないかと存じますが、どちらにころんでも損はないというような出願を認めることになりますので、そういう結果、要旨変更というような可能性、危険性を含んだ出願を誘発するというふうなことになるだろうと存じます。申すまでもなく、特許出願というものは、形式内容も十分完備したものを出して来て、そしてそれに対して先願主義という原則を適用して権利を設定すべきかどうかをきめるわけでございますので、そういう点から申しましても、大きな見地、特に第三者との公平関係というものを考えました場合に、われわれといたしましては、原案のような立法の方が適当であると考えておる次第でございます。
  24. 島清

    島清君 委員長ちょっと速記を……。
  25. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  26. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記を始めて。
  27. 島清

    島清君 発明者の補正について長官にちょっとお尋ねしたいのですが、最近の大きな発明になりますると、発明者の数が非常に多いのですね。誰が発明者であるか明かでない場合が非常に多いのです。ことに会社や研究機関の発明には、そういうものが非常に多いわけですね。その場合、発明者の誤記はあるかもしれないということが考えられるわけですね。その訂正はどの程度まで認められるか、出願人が発明者から特許発明の譲渡を受けて出願する場合に多く起る問題であろうと思われるのですが、今かりに五人の共同発明者であると考えてみて、五人から譲渡を受けたが、その後、実際には六人の共同発明であったため、あと一名を追加しなければならぬようなことの場合も起り得ると思うのです。公告があってからはできないのかどうか、これは六十四条の誤記の訂正の中には、こういうことまで認められておるものであるかどうか、この点を御説明願いたいと思います。
  28. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今申されました通り、最近は複数人による発明というケースがだんだんふえて参りましたので、発明者の表示の問題について追加をする、削るというような問題が生じてこようかと存じますが、われわれとしましては、これが権利となりました後、特許権となった後の訂正はできないというふうに考えておりますが、出願中でございますれば誤記訂正という運用によって、これをなるべくこのように合うようにやって参りたいと考えております。今申されました例として、五人の発明者を並べていて、一名をこれに追加したいというような場合は、やはり誤記訂正というようなことで、これは第六十四条の問題では必ずしもなく、その運用でもって、これが可能であろうとわれわれ考えております。
  29. 島清

    島清君 複数の異議の申し立ての審査についてお尋ねしたいのですが、複数の異議申し立て、まあABCという場合、これは六十一条ですか、その六十一条に規定があるのですが、その理由は必ずしも同じではないと思うのですが、しかるに六十一条によると、これら複数の異議申し立てのうち、一つの申し立て、かりにAといたしましょうか、Aによって特許が拒絶さるべき査定を受ければ、他の異議申し立て、B、Cとしましょうか、B、Cについては審理をしなくてもよいことになっているのですね。これは当然のことのように思えるのですが、しかしこれがその後になって査定不服の審判請求をされたとき、Aの異議は成立しないというようなこともありましょうし、もしB、Cの理由ならばやはりこの特許は認められなかったが、Aだけの理由ならば特許すべきものだという結論になるかもしれない、従って六十一条の規定で、「決定をすることを要しない。」というのは、審理しても審理しなくとも、いずれでもよいという意味と、審査官としては審理することが親切ではないか、こういうふうに思えるのです。またこれが査定不服の審判になったときは、当然にB、C不服の申し立ても審理しなければならないと思うのですが、その点はどうでしょうかね。これは百五十三条の申し立てない理由についても、審理することができるの範囲に属するものと見てよろしいかどうかですね。この辺の関係をちょっと御説明を願いたいと思うのですが。
  30. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 査定の段階で、審査の段階で、今御指摘のように複数の異議の申し立てがありました場合には、その中の一つでもって拒絶の理由があるという場合には、何と申しますか、数個の攻撃方法の中の一つによって、その目的を達したということになるわけでございますので、今回の改正法案では、これ以外の理由については決定をするを要しないということによって審査迅速化をむしろこの際はかろうと考えたわけでございます。  次の、査定の結果に対しましての不服の審判の場合につきましては、御指摘の通りでございまして、百五十三条におきまして、申し立てない理由についても審理することができる、これは当然審判官がそれ以外の理由についても、これを職権でもって審理しなければならないもの、さように考えております。
  31. 島清

    島清君 確認審判の廃止については、小幡委員が先般質問されたようでございまするので、私はきょうは詳しいことについては省略いたしたいと思いますが、ごく簡単にこのことについてお尋ねしておきたいと思っておりますることは、法の体系上からして廃止した方がいいというその理由について御説明を願いたいと思いますことと、さらに「解釈」でも確認審判と同様の範囲が保てるかどうかですね。それから「解釈」の請求はだれでもできるか、手続はどうすればいいか、「解釈」の方法は審判に準ずるものであるかどうかですね。「解釈」という文字は不適当で、確認とか判定という文字にしては意味が違ってくるのかどうかですね。この点について簡略に一つ説明を願いたいと思います。
  32. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 権利範囲確認審判制度というような重要な制度におきまして、この審決の法律的効力が不明であるということは、何としても適当でございませんので、いろいろ検討しました結果、今回、この法律的性質を明確にするという意味で「解釈」を求める制度ということに直したわけでございます。で、この「解釈」を行います場合の請求適格、あるいはその他の実施の方法、やり方につきましては、これにつきましては、これは審判に準じまして、対審構造をもって攻撃、防御と申しますか、両当事者の言い分も聞くということも考え、かつまた審判官につきましての除斥という問題につきましても、これを別途、そういうような「解釈」を行うについての手続の面につきましては、政令または省令等でこれを規定する予定でございます。なお、解釈ではいかにも弱いではないかというお感じは確かにあろうかと存じますので、この点、判定または確認というような名称に変えるという点につきましては、委員会の御意向でもって、われわれとしては全く異存がございません。
  33. 島清

    島清君 この法律改正で、関係業界に非常に賛否両論の意見がございます。無効審判請求の除斥期間の廃止についてお尋ねしたいのですが、ただいま申し上げたように、この問題は、この法案中の一つの山場なんですね。発明家や特許利用中小企業者は、一切廃止に反対をしているんですが、その是非について、判断してみるのに、理論的には除斥期間を全廃することが正しいようにも思えるのです。外国にもその例がないということでございまするので、これはまあ今までの説明でもわかるような気がするのですが、しかるにこれは日本においては、まあ今まで制度としてあったわけでございまするので、私がお尋ねをしたいと思いますことは、外国にもその例がないからといって日本には制度が設けられたのでありまするから、日本の特殊な事情において、やっぱりその必要性がその制度を生み出したものだと、こういうふうに考えられないこともないと思うのです。そこで大正の十年の改正で、あえてこの制度が設けられてそれで今日まで運営をされたわけですが、その当時なぜこの制度が取り入れられたと思われるか。それで今回これを廃止するに至った根拠ですね。これはやっぱり明らかにしてもらいたいと思うのです。さらに全廃をするならば、理論的にも通るが、公知公用だけに五年という除斥期間を設けた制度が残されるわけですが、これが外国人特許に特別の利益を与えるようなことになるのではないか、こう思うわけです。この点についても御説明を願いたい。この制度を存置することによって、不当な権利設定になり、特許権者に不当の利益を与えて、技術利用工業権者に損害を与えた例としてどんなものがあったか、それを御説明を願いたい。外国人特許で除斥期間を廃止すれば無効になし得るものであるかどうかですね。この点についても御説明を願いたいと、こう思います。
  34. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 無効審判に対する除斥期間の問題は、今御指摘の通り、非常に重要な問題点でございまして、われわれとしましても慎重研究をいたした結果でございます。この除斥期間の廃止につきましては、反対意見のあることも承知しております。その反対意見は、除斥期間を廃止することによって、特許権者が常にいつまでも無効審判請求対象にこれがなるということには、権利の不安定を生ずるということがその理由のようでございます。確かにそういう理由でもって、そういう理由のゆえにこそ、従来、現行法におきまして、この制度が設けられたわけでございまして、ただいま、大正十年の改正の場合に、除斥期間が設けられた理由は何かという御質問に対しましては、やはり当時の立法者としましては、権利の安定化ということに重きを置いて判断したものと考える次第でございます。で、この問題につきましては、島委員も御承知のように、無効原因のある特許というものは、本来権利になるべからざる権利であるということがいえるわけでございます。そういう権利、本来権利になるべからざるものが、一定期間経過することによって完全な権利として確定されるということが果してよいかという問題が残ります。特許権という強力な独占権につきましては、これを何人も納得するような内容のものでなければならないことは申すまでもないのでございまして、それゆえに異議申し立て制度あるいは無効審判制度というものが設けられていますことは御承知通りでございます。で、権利者の立場から申しますれば、きずがあっても、無効の原因がそこにあっても、これが権利として早く安定化するということが望ましいことはいうまでもないのでございますが、それはあくまでも権利者の立場でありまして、権利者以外の第三者すなわちその特許権の存在によって、ある技術を長く使用することができない、そういう制約をこうむる多くの第三者の立場から申しますれば、これは耐え得るところでないと思うわけでございまして、結局われわれとしまして、今回この除斥期間廃止の結論に到達しましたのは、理論的には今申しましたように、どちらにもある程度理由がそれぞれあるわけでございますが、今日まで長年の運用の経験を通しまして、むしろその弊害の面が強く痛感されたということに基くわけであります。  では、その弊害というのは具体的にどういう例があったかという御質問でございますが、これは実は除斥期間経過によって無効審判請求ができなくなって、そしてその権利を振り回されて第三者が広く迷惑したという事例でございますので、特許庁に対する問題としては提起されないわけでございますので、われわれとしましては、その令部について正確につかんでいるわけではございませんが一例として申しますれば、ミキサーのハネに関するこれは権利につきまして、やはり除斥期間経過後になってく随所で使われて、同じ技術的アイディアを使っておる業者に対しまして、権利者がこれに権利侵害として方々訴えて、非常に第三者に大きな波紋、影響があったという事例もございまするし、それからまた実用新案の小さなこれは例でございますが、アイス最中というようなものにつきまして、やはり権利者が除斥期間経過後、自分の権利が無効になるという心配がないという段階に至りまして、方々で用いられておりますアイス最中に対してこれを権利侵害として訴えたというような実例もございまして、従来この除斥期間制度によって権利が安定化するというよい面と同時に、むしろ半面にそういう弊害が非常に多かったということは確かに事実でございます。  なお、この制度の廃止に対しましての反対者の中には、多少と申しますか、誤解があるのではないかと懸念される点がございますので、これは島委員に対するお答えではございませんが、ついでに申したいと存じますのは、無効審判請求によって権利が無効になりましても、当該事業はもちろん続けることができるわけでございまして、事業自体が中止になるというわけのものではなく、第三者に対して禁止するだけの効力、すなわち権利の独占権というものがなくなるというだけの結果だということがその一つ。  もう一つは、現に権利者になっていた者につきましては、現行法のもとにおいてこれは設定された権利でございすので、これにつきましては、新法施行後におきましても、除斥期間制度は従前通り適用があるわけでございましてこの点念のために申し添えておくわけでございます。  それから、外国文献の場合にのみ除斥期間を例外的に残すのはどういう理由かという御質問でございますが、これは一口に申しますれば、国内における公知公用、国内における頒布された刊行物に記載されているという場合は、政府、民間を通じて、相当の注意をすれば、その権利の設定を防止をすることができたであろうという場合でございます。これに反しまして、外国で頒布された刊行物に記載されている場合、すなわち出願の当時には日本に入ってきていないというケースにつきましては、これは関係者が相当注意を払いましても、なお、その無効原因を発見することができなかったであろうというような場合でございます。で、その国内の公知公用文献が出た場合は、何と申しますか、関係者の努力の可能の限界内でございますが、外国において頒布せられた刊行物の場合には、その可能の限界をこえているということが申せようかと存じますので、その場合に限りまして、むしろただいまの権利の安定化、ひいてはその事業の安定化ということに考慮を加えまして例外的に除斥期間を残すことがむしろ適当である、かように考えた次第でございます。  なお、そういう結果、外国人が有利になるではないかという御質問でございますが、これは申すまでもなく、特許法は無色でございまして内国人に不利、外国人に有利というようなことは、われわれとしては考えられない。外国人にとって有利なような場合には内国人にも同様な場合が起き得るものである、かように考えたいのでございます。  大へん簡単でございますが、以上をもって御質問に対するお答えにいたしたいと思います。
  35. 島清

    島清君 今、井上さん、外国人特許で除斥期間を廃止することによって無効になるものがあるかどうかということについて……
  36. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) この点は、そういうものはかなりあるであろうと思います。
  37. 小幡治和

    ○小幡治和君 関連。今の除斥期間の問題、なかなかいろいろ議論が多いので、今島委員も相当詳しく突っ込まれたわけなんですが、結局こういう特許法の精神というものから考えて、発明者を保護してやるということ、ことにその発明者というのはなかなか貧乏人で、貧乏してやっと何年かかかって発明する、それを事業化して、あるいはその発明に今までかけた金が回収される、あるいはそれを事業化されて、やっと労に報いられるというようなところで、発明というものが盛んになっていくと思うのですけれども、それが除斥期間というものがあることによって、五年たてばとにかく確定するということで、発明家は、ことに小さな発明家というものは安心して金融もつけてもらえるし、またある事業家が資金も出してくれるというような利益がある。もう一つは、今特許庁長官の言われた、それはそうなんだが、しかし、第三者というものがあって、五年できまっちゃったものだから、先ほどあなたの設例に言われたように、五年できまったからといって、そうきまったといって、ほかに使っているものをみんな取っつかまえて、そうしていろいろその特許料をよこせ、あるいはそういうやっているものをつぶしていくというような悪いことをするものもあると、こう言うのですが、社会全体から考えて、今までの事例から考えて、どっちが悪いのが多いのか、どっちに悪いのが多かったのかということを、僕らちょっと知りたいと思うのですが、要するにそこの判断の問題だと思うのです。この除斥期間という問題は、結局発明者を保護するか、それとも第三者を保護するかという調整をどこにつけるかという問題なんです。だからそこをどういうふうに判断するかによって、これはさまってくると思うのですけれども、その実例というものは僕はあまり知らないので、今長官ほとんど原案に有利な設例を言われましたけれども、公正に見て今までの実例上どんな事例があったのか、どんな事例が多かったのかということを、少し聞かしていただきたいと思うのです。そうすると、島君の今の質問もはっきりしてくると思うのです。
  38. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 仰せの通りに、特許制度というものが、本来発明者または権利者と第三者の両者の利益の調和、妥協の上に立っていると申していいわけでございますが、この除斥期間制度の論議も、まさにいずれの利益に重きを置いて考えるかという点がポイントであろうと存じます。で、どちらが悪い場合が実際上多かったであろうかということは、これはなかなかむずかしい御質問でございまして、と申しますのは、除斥期間は過ぎたことによって権利が安定化し、ひいては金融もつく、事業としても基礎が確実になると、そういう面からのこの制度の維持を主張する論者の声は確かにございますが、その点につきましては、逆にこれは理屈ぽくなってまことに恐縮ですけれども、それでは五年たたなければ、金融もつかず、事業化も、これを企業化することもできないのであるかということになるわけでございますが、実際問題としましては、いい特許発明、いい実用新案でございますれば、十分関係者はその資料を調査した技術検討の上で、五年以内といえども、金融がつく、また企業も軌道に乗ることもあり得る、十分これはあるわけでございます。また反対に、無効審判請求によって、どこから出てくるかもわからないということにおいて非常に不安定になるという反論があるわけでございますが、では五年以内であれば、どこから出てきても、これはたえられるが、六年目以降になれば、非常にそれが痛裂に企業にとって響くのかというふうに反論も実はしたくなるわけでございまして、この点実例としましては、われわれもまあ反対の例としまして、まさに除斥期間経過する間ぎわになって、特許庁が無効審決を出したことによって、多くの第三者を救ったと言いますか、多くの第三者の利益に寄与したという逆の例はございますが、そういうふうにわれわれとしましては、むしろこれまでの経験を通じまして悪いと申しますか、この制度の弊害の面もいろいろ痛感して参ってきたわけであります。
  39. 上原正吉

    ○上原正吉君 関連してちょっとお尋ねしたいのですが、特許実用新案には除斥期間を廃止した。ところが商標法においては、やはり特許すべからざるもの、あるいは登録すべからざるものがあって、それらは即日その理由が判明すれば、無効審判請求し得るにもかかわらず、商標の方は商標法の三条、四条その他で登録する資格をもっていない、権利を与えられていない登録が行われている。それが登録権が発生してから五ヵ年たつと無効審判を起し得ないという規定があるわけですね、商標法はね。これはどうもあべこべじゃないかと思うのですよ。実用新案特許は、これは当然十年、十五年たてば切れてしまうのだからいいけれども、商標というものは一ぺん登録してしまえば、継続がいくらでもできるのですから、登録をされる資格を欠いたものが登録されてしまう。それを継続すると、五年たったものが五十年でも百年でもそのまま登録商標としてその権利保護される。こういう結果になるので、どうも話があべこべのように考えるのですが、どういうお考えですか。つまり商標には除斥期間があるわけなんですね。これは話が逆なようなんですが、今でなくてもけっこうですが……。
  40. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 商標法の例で申しますと、先願の甲がございまして、後願の乙というものがある。そうして乙について無効原因がそこに嵐る。が、この場合におきましては、定期間をかりに経過しましても、登線が無効になるとしますと、乙は自分の商標を使用すると、甲の商標権の侵害になり、使用することができなくなる、こういうことでございますから、特許法などと異なって、商標については除斥期間を設けております。
  41. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうじゃないのです。商標法案の四十七条にあるのです。最後に「商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。」とあるのです。登録すべからざるもの、登録される資格のないものが登録されてしまっている。それに対しては四十七条その他で無効審判請求ができるのですが、その最後の段階で商標権の設定の日から五年を経過した後は無効審判請求できない、こういうふうになってしまうのです。商標登録無効の審判を起し得ない。これは特許権のように、実用新案権のように十年たち十五年たてば当然切れてしまうというものならともかくも、商標権というものは無限に継続されるのですから、商標登録の資格を欠いたものが一たん登録されてしまうと、五年を経過してしまうと、資格を欠いたものに対して無効の審判請求ができないとなっておる。これは大へん話が逆のように思うのですが、どういうお考えから出ておるのですか。
  42. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) それではただいまの御質問に対しましてかわって御説明いたします。  四十七条におきましては、いわばある一定の事由に限りまして商標の無効審判請求することができないというふうに制度が立ててあるのであります。なぜ特許等と違えたかと申しますと、たとえば四十七条を見ていただきますと、商標登録がたとえば第三条に違反する場合、あるいは第四条の各号があるかと思いますが、そのうちの代表的なものだけ申し上げれば一応おわかりかと思います。たとえば四条の場合に最も代表的な場合といたしましては、十一号にあるわけであります。これは甲という人が先に登録しておりまして、それの同一または類似のものにして乙が出願をしてきたというような場合に、普通の場合ですと乙の出願は拒絶になるわけです。誤まってそれが登録されたといった場合に、乙の簡標登録を無効にするにつきましては、五年が過ぎたらだめだとこういうわけです。その場合に乙がその自分の無効になりましたその権利を使いますと、甲の商標権とぶつかって使えなくなるということが、特許の場合と実質的に違うのではないかと思います。特許の場合ですと、先ほどの例で見まして、乙という人が同一発明につきましてかりに誤まって特許を受ける、あるいは乙が公知になっている発明について誤まって権利を与えられたといいました場合におきましても、乙が無効審判においてつぶれましても、その発明あるいは考案について実施できるということには変りはないわけであります。ところが先ほど申しました商標の場合は、乙が自分がその登録を受けたのを、たとえば六年なら六年平穏無事に使った、自分は国家によって付与された権利行使だと思って使っておったというふうな場合、除斥期間がありませんと、いつでも無効になる。無効になって引っくり返ったら、自分の登録された商標は使えなくなるという意味におきましては、実質的に商標の場合は違っている。たとえば商標はそういう意味の既得権という、要素が……使って出てきた既得権の保護ということを特に商標においては考慮すべきであるというふうな要請商標の場合には強く働きまして、特に商標の場合には除斥期間を残したわけだと思います。
  43. 上原正吉

    ○上原正吉君 先願、後願の場合は特許でも商標でも似たようなものですが、そうでない、たとえば第三条の第一項第三号ですが、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格又は生産、加工若しくは使用の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」、こういうものがかりに登録になっておったとすれば、これは私は実例をたくさん知っておりますが、こういうものは当然登録資格を欠くものが登録されておるというわけで、これは四十七条によると商標権が設定されてから五年経過すると、これが無効審判を起し得ないというのは、大へん、これが継続すれば三十年でも五十年でも百年でも二百年でも続くのだから、これははなはだ不都合だと思うわけです。
  44. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) 先ほどの問題につきましては、商標法の二十六条という点がございまして、たとえば普通名称が誤まって登録されたといたしますと、それは登録商標として一応権利ではございますが、二十六条以下において、実質的には商標権の効力は及ばないということになっておるわけでございます。従いましてあえてその場合におきましては、無効審判というものによって商標登録というものを取り消さなくても、実質的には公衆は二十六条によってお前の商標は効力は及ばないのだということにしていけば、何もそのために除斥期間を除かなければ公衆が困るという面がないのではないかというふうに考えられます。
  45. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩    —————・—————    午後二時三十八分開会
  46. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会を再開いたします。  特許法案ほか九件に対する質疑を続行いたします。
  47. 島清

    島清君 午前は、特許法をおもに中心にいたしまして、御質問を申し上げましたが、実用新案法案についてお尋ねを申し上げてみたいと思います。実用新案特許との関係が、きわめてあいまいになるのが、この改正法案であるように思えるのですが、改正法案の第三条の二項ですか、二項では、「きわめて容易に考案をすることが」云々というてきわめて容易に考案できるものは許可しないことにしておりまして、何が、きわめて容易であるかということについての基準をお示しになっていないのであります。許可になると、十年間は権利になりますし、だれでも権利料を出さなければ、その技術を使えないことになっております。権利者と利用者、消費者の利害が対立するわけでございますが、審査基準を高くすれば、一般工業界には有利だが、考案者には不利になる。存続期間も全く同様でございまして、存締期間を六年にせよという工業所有権制度改正審議会の答申は、一般工業界の意見を入れ、権利者要求に反したものと言えると思いますが本法案のごとく、十年にしたことは権利を持たぬ一般工業界に不利益になったと言えると思うのですが、特許庁では、答申に従わないで十年にしたことは、審査基準を引き上げるつもりなのかどうか。答申でも、附記で基準の向上を問題にしているのでございますが、この辺の方針について御説明を願いたい、このように思います。
  48. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) ただいま御指摘の通りに、審査基準をきびしくするかゆるめるか、あるいは存続期間を長くするか短かくするかということは、考案者または権利者と一般第三者との利害が、相反する結果を生ずる問題でございまして、この点は、今度の法案立案の場合にも、慎重に検討した点でございます。  御指摘のように、工業所有権制度改正審議会の答申といたしましては、実用新案権の存続期間は六年ということになっておったのでございますが、日本産業界には、中小企業が非常に多く、かつまた、従来は実用新案制度は、特に中小企業者の方面において利用されてきた面が非常に大きいという事実にかんがみましてわれわれとしましては、慎重を期します意味で、関係団体の意向を文書で問うたわけでございますが、この結果、日本中小企業政治連盟あるいは全国中小企業等協同組合中央会、あるいは日本中小企業団体連盟及び日本商工会議所、そういう方面の回答は、いずれも、これを現行法通り十年とすることを希望するという旨の回答があった次第でございまして民間の意見を、われわれとしましては尊重いたしまして、現行通り実用新案権の存続期間は、これを十年といたした次第でございます。  もっとも、その起算点は、従来は、実用新案登録の日からとなっておりますのを、出願公告の日からとしまして、特許法との平仄を合せたわけでございます。  十年というふうに、現行通り、六年案から、十年というふうに長く権利孝認めます場合に、当然その基準を引き上げることが適当であろうという点は、まさに御指摘の通りでございます。そういう点から今般御指摘の実印新案法第三条第二項という規定も新たに設けられたわけでございまして、すでに公知しまたは公用あるいは文献に記載になっておる、そういうアイデアから、当該技術分野において通常の知識を有する者が、すぐに考案できるというようなものについて権利を認めることは適当でないというふうに考えたわけでございまして言いかえれば、そこに何らかのプラスアルファ、いわゆる進歩性がなければいけないということで、この第三条第二項の規定が設けられた次第でございます。この点につきまして御質問の「きわめて容易に」という表現は、非常にあいまいではないかという御指摘は、まさにそういう疑問がたしかに残るわけでございますけれども、われわれ、特許権の要件としまして、通常の知識を有する者が「容易に発明をすることができた」というその規定に比べまして、実用新案の場合には、通常の知識を有する者が、「きわめて容易に考案することができたときは、その考案については、」実用新案登録しない、許可しないということにいたしましたのは、この間、多少そこに特許対象としましての発明、言いかえれば、要件としまして、特許の場合と実用新案の場合の要件に、多少程度の違いを認めまして、実用新案の場合には、特許の場合と比べれば、少し基準をゆるやかにしたということでございますが、しかしながら、従来と比べますれば、こういう規定が新たに入りましただけでも、新規であるということだけの理由実用新案権になるということはなくなるわけでございまして新規であるということ以外に、こういうきわめて容易に考案することができるようなアイデアは、これを権利対象から除くという意味で、今申されました審査の基準の引き上げと申しますか、審査の場合に、これを考慮に加えていこう、こういう考えでございます。
  49. 島清

    島清君 特許権を、実用新案権意匠権と同列において考えておられるようですが、実用新案実施しようとすると、どうしても特許をも実施しなければならないという実用新案、あるいは意匠を用いようとすると、それには特許を用いないとできないような意匠、この場合に、法案では、特許権者に対等で協議を求めることができるし、もし協議がととのわないときは、特許庁長官の裁定を求めることができる、これは特許権と実用新案権意匠権と平等に取り扱うというので、特許権者に不満があるわけであります。  この場合、長官は、利用者を全く対等のものとして、どんな裁定をなさろうとするのか、また、長官の裁定は、別に特許法案第九十二条で、特許発明の間で、他人の特許発明実施しなければならぬときの裁定が、ここに規定されておるわけでございます。また、不実施の場合の通常実施権設定の裁定が、特許法案第八十三条に規定されておるのですね。この不実施の場合の裁定には、答弁書を提出させ、審議会の意見を聞き、さらに第八十五条の第二項で正当な理由があるときは、通常実施権を設定させることができないと規定されておる。しかるに、実用新案法でも意匠法でも、この第八十五条第二項は準用していないのですね。これは準用しなくも、正当な理由があれば実施できない旨の裁定をするから差しつかえはないというのであるかどうか。  たとえ、長官の裁定の意図が、その通りであっても、法律体系としては、このことを法律で明示すべきではなかろうかと、こういうふうに考えるわけですが、この点について御説明を願いたいと思います。
  50. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 特許権、実用新案権意匠権につきまして、その特許または許可ないし登録の要件には、もちろん関連がございますが、権利としまして成立した以上、権利者に対する扱い方というものには、甲、乙がないわけでございますから、そういう前提で、ただいま御指摘のように、この実用新案権利者が、その実用新案実施しようという場合には、別にこれと利用関係にある特許発明あるいは意匠というものを使わなければ、その当該実用新案実施ができないという場合に、特許庁長官許可によって、その実用新案権者が特許権者または意匠権者について、通常実施権の許諾について協議を求めることができるという道を設け、そうして協議の成立しない場合は、特許庁長官の裁定という制度を設けました。これは、ただいま申されました通りでございますが、この場合におきまして、御指摘のありました特許法の八十三条ないし八十五条の規定、すなわち特許発明実施にならない、言いかえれば不実施の場合の通常実施権の設定の裁定という場合におきましては、御指摘の八十五条第二項におきましてその特許発明実施が適当になされていないということについて正当な理由があるときは、特許庁長官は通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができないという規定が特に設けられておるにかかわらず、利用関係にあるそういう特許発明実用新案あるいは意匠、その相互間の実施権の設定の裁定の場合に、これと同じ規定がないのは、どういう理由によるかという点、この御質問は、まことにごもっともでございます。  われわれ原案者としましては、この協議及び裁定を通じまして、非常に慎重な手続を規定しておりまするので、両当事者間の利益、正当なる利益については、十分考慮を払って運用するつもりではおりますが御指摘のように、ここに明文を設けて、当該特許権者、言いかえれば協議を受けた権利者の側において、正当なる理由がある場合、あるいはその協議を受けた権利者に対してもし裁定を下すことが非常に不当にその利益を害するような場合には、裁定することができないというようなことを法文上明らかにした方が、むしろよろしいというふうにわれわれも考えておる次第でございまして、御指摘の点については、同感でございます。
  51. 島清

    島清君 意匠許可の点について、井上さんにちょっとお尋ねをしたいんですが、意匠許可の要件が、現行法では「工業的考案」であり改正法案では「工業上利用することができる意匠」であるとなっておるのですね。ところが特許法案実用新案法案では、「工業的発明」という現行法を「産業上利用することができる発明」に改めておるんですね。意匠法案だけ、もと通りにして「工業上」に限定しておる理由が何だかわからないような気がするんですが、その点を一つ説明願えませんかな。
  52. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 特許法実用新案法におきましては、「工業的」という表現を現行法上とっておるのでございますが、実際上は、農業あるいはマイニングの鉱業、あるいは水産業という上に、広く産業一般を包含するものとして解釈運用して参りましたので、今回の改正案では、これを明確にする意味で、「産業上」と直しましたこと、ただいま御指摘の通りでございますが、これと異なりまして意匠につきましては、もっぱら工業的方法によって量産されるもの以外のものについて意匠が存在するという事例は考えられないわけでございますので、意匠につきましては、現行法通り「工業上」——これを「産業」と直しませんで、「工業」という文字を残した次第でございますが、農機具のデザインだとかいうような場合になりましても、これは農機具を作るということ自体は、これは農業ではなく工業でございますので、そういう点からも、やはり意匠につきましては、「工業上利用する」ということで、必要かつ十分ではないかと考えた次第であります。
  53. 島清

    島清君 商標不使用によります取り消し審判請求要件についてお尋ねをしたいのですが、第五十条第一項ですかによりますと、商標を各指定商品について使用していないと、取り消し審判請求の要件になると、こういう工合に規定されているんですが、この「各指定商品」というのは、どの範囲までをさしていうのか。商標が、かりに三つの商品を指定している場合、一つに使っていれば、他の、この場合は取り消されないのかどうか、解釈を明確にしていただきたいと、まあこういうふうに思うわけです。
  54. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 具体的な例について御説明申し上げた方がよろしいかと存じますので、一例としまして、現在の商標法施行規則の商品分類の中の、たとえば第一類に、化学品、薬剤及び医療補助品という項目がございますが、この中で、化学品の中には、いろいろ塩酸、硫酸、硝酸というふうなものが入るわけでございます。ここで、もしその小分類と申しますか、一番小さな分類に基きまして、硫酸なら硫酸というようなものを一つその指定商品といたしましてきめました場合には、硫酸以外の化学品について、塩酸、硝酸等については、不使用取り消しの対象に、これはなり得るわけでございますが、しかしながら、これをもし化学品というふうに指定をしまするならば、その化学品という指定商品の範囲内において、いろいろ化学品がございますが、その中のAならAというものについて、商標を使用しております場合には、B、Cというふうなものについて使用していないような事実がございましても、これは指定商品が、化学品ということになっています関係上、これは、不使用取り消しの対象にならないと、こういうふうに、これは出願人が、商品を指定する場合の考慮のいかんによって、その不使用取り消しを受ける場合の結果、影響が違っているわけでございまして、この点は、この不使用取り消し制度の面からだけ申しますれば、小分類よりは、中分類という分類の商品を指定しておく方が、出願人ないしは権利者にとっては有利だと、かように考えております。
  55. 上原正吉

    ○上原正吉君 ちょっと関連して。  その場合、たとえば第一類の商標出願して、化学品、薬剤及び医療補助品、三つ指定して商標登録をしてあると、そこで製品は化学品だけ作っておると、薬剤及び医療補助品については、不使用取り消しの審判請求を起し得るかどうかということを伺いたいと思うのですが。——同じ類の中で、三つに分れておるというような場合。
  56. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今の御質問は、化学品、薬剤及び医療補助品という指定で、そして化学品にのみ商標を使っておるという場合に、薬剤、医療補助品について使っていないという事実があれば、これは不使用取り消しの対象になるかという御質問であろうと存じます。それは不使用取り消しの対象になると思います。
  57. 島清

    島清君 その類似の商品について、まあ類似商品というものの範囲を、どこできめるかという問題についてお尋ねをしたいのですが、商標法案には、至るところに類似する商品という文字が使われているのですね。その範囲は一体どの程度か。どの範囲か。それがなかなか明確を欠いているのですね。で、その点について、もっと一つ明確に御説明を願いたいと思うのです。
  58. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 商標法上、商品の類似というのは、非常に重要な問題でございまして、この点につきまして、普通、商品の類似か否かということを判定しますためには、いろいろな要素があるかと思いますが、まずその商品の生産者が同じであるかどうか、あるいは商品の材料や製法が同じであるかどうか、あるいは商品の用途が同じであるかどうか、あるいは商品の販売部門が同じであるかどうか、あるいは完成品と部分品との関係に差があるかどうかというような、そういうような基準に基きまして考えるわけでございますけれども、今申しましたような基準の一つにでも該当すれば、商品が類似であると認められる場合もございまするし、また反対に、二つ以上に該当しなければ、類似でないというふうな場合もあるわけでございまして、結局これは、非常にむずかしい問題ですが、商品ごとに、具体的な事情を総合的に勘案してきめるということにならざるを得ないわけでございますが、こう申しましては、非常に抽象的になりますので、一応、従来の審決例中から、二、三のものについて具体的に申し上げてみたいと思いますが、毛織物と綿織物ということになりまするというと、これは、もちろん販売部門だとか用途が同一でございますので、材料はどう違いましてもこれは類似商品になると、こういうふうにわれわれは考えております。それからまた、もう一つの例としまして、たとえば植物性油と、動物性油脂とそれから鉱物性の油、これは、植物性ないし動物性の油と鉱物性の油というものは、これは原料、材料も違う、製造方法も違う、また製造の部門も違うというので、これは従来の審決といたしましては、非類似商品という扱い方になっております。それからもう二つ、また例を申しますれば、電動ミシンと電気通信機だとか、測定器だとか、電池、そういったものは、これも同様に、ミシンとそれから電気測定器だとか、通信機だとかいうものは、製造販売部門、あるいは用途はもちろんとしまして、違うというようなわけで、これはだいぶ前の審決でございますけれども、やはり非類似商品というふうに考えております。  まあこういうふうに、非常に具体的実情に応じて、商品の類似は判定しなければならないわけでございまして、まあ一応の基準としましては、先ほど申し上げたような通りでございます。
  59. 島清

    島清君 防護標章の範囲についても、お尋ねをしておきたいと思うのですが、防護標章が、将来、商標の防護に目的があるならば、第四条の十二号で、同一の商標登録にかかわる指定商品だけでなく、類似の商標出願したり、指定商品と類似の商品について出願しても、これを許さないことにする必要があるような気がするのですが、この点はどうなんでございましょうかね。もっとも十五号で、「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある」ときは登録されないと言っておりますから、これでよいのかもしれないのですが、この点が、もっと明確にならないと、どらも理解しにくいのですが、この点をもっと明確に、一つ説明を願っておきたいと思います。
  60. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 商標権の効力は、同一または類似の商品に及ぶわけでございますが、非類似商品には及ばないということになっておりますので、非常に著名になりました商標保護という点から申しますれば、これでは十分でないと考え、このたび防護標章制度を設けた次第でございます。  しかしながらその防護標章制度を設けましたことに関連いたしまして、ただいま御指摘の商標法の第四条、すなわち商標路銀を受けることができない事由が列挙してございます。この中で第十二号に、「他人の登録防護標章と同一の商標」は、これを登録し得ないということになっているのを、もう少し拡大して、同一または類似の商標についても登録し得ないということにした方がよいのではないかという考え方があり得るわけでございますけれども、この点につきましては、いろいろ検討しました結果、やはり原案通り防護標章と同一のものということだけに限定した方が、むしろ適当であるというふうに考えております。と申します理由は、非常にこれはデリケートな問題でございますので、例として申し上げてみたいと思いますが、ある甲なら甲という非常に著名な商標があったといたします。そしてこの場合に、Aという商品について、その甲の商標が使われている。そしてBという類似商品がそこにある。それからCはAから見れば非類似商品である。そういうような場合につきまして、Aについて甲という商標を使うことは、これは問題がなく、それからBにつきましても、これは甲の商標権の効力は及ぶわけでございまして、もし他人が、Bについて甲という同じ商標を使えば、それは禁止の対象になるわけでございますが、その場合に、Cという非類似商品ならばどうなるかということでございますが、この場合に、そのCについても、甲という商標を取っておけば、甲という著名な商標を持っておる権利者としては安心でございますから、非類似の商品Cの商品について、甲という商標を防護標準として取っておくというのが、この今般の防護標章制度でございますけれども、今御質問中にございましたように、そのCのまた類似商品にまで拡大いたして参りますというと、これはCという非類似商品の類似でありましても、Aと混同を免ずる場合と生じない場合とがあるわけでございまして、その混同を免じないような場合までも包含さして商標の不登録事由と認めますことは、不正競争防止法でも保護されていない範囲にまで、防護標章の権利者の利益を確保するという結果になるわけでございまして、この点は何と考えましても行き過ぎではないかと思われるわけでございます。そういうわけで、今般、新たに設けることになりました防護標章制度につきましては、この第四条の不登録事由といたしましてほ、ただいま申しましたよらな理由で、防護標章と同一の標章ということにこれを範囲を限定する方が、第三者との利益のバランスという点からいっても、むしろ妥当である、かように考えたわけでございます。
  61. 上原正吉

    ○上原正吉君 ちょっと関連して。防護標章について、先ほどのお話に、同じ第一類の中でも、化学品について登録商標を持っておる、その登録商標を、化学品、薬剤、医療補助品全部について、登録商標を持っておる、しかし、使っておるのは、化学品だけだ。そうすると、薬剤、医療品については、不使用による取り消しの審判請求し得るということになります。化学品について、商標を使っておるものは、同じ類の中であるいとうほどよく似ておる、医療補助品、薬剤についても防護標章を取っておかなければならぬ、そうしなければ、防護できないということになるわけですか。非類似のものでさえ防護標章が取り得るのに、類似も類似、同じ類の中であるその品物についても、防護標章を取っておかなければ安心できないということになるわけですね。
  62. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今御指摘のような場合は、御承知のように連合商標制度もございますし、連合商標制度で、それの保護ができるのではないかと思いますが。
  63. 上原正吉

    ○上原正吉君 どなたか、係にちょっと。
  64. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) それでは、かわって御説明いたします。  今の場合ですと、化学品なら化学品が指定されておるとしまして、薬剤については、どうなるかという問題だと思いますが、大体特許庁考え方といたしましては、先ほど商品の類似基準という面から見まして化学品というのと、薬剤というのは、商品としては類似でないというふうに一応考えておるかと思います。その場合におきましては、従って化学品で著名なものにつきましては、薬剤については、一応防護標章を取ることができる。また取りませんと、普通の商標でありますと、先ほどの不使用取り消しの場合でも申し上げましたように、使わないと取り消されるということになりますので、やはり防護標章を取っておいた方が商標権者としては、自分の権利が安全に守られるということになるのではないかと思います。先ほどちょっと連合商標という話がございましたが、これは原則として、薬剤は、化学品と非類似だと思いますが、かりにその中に化学品と類似なものがボーダーライン・ケースとしてあるといったような場合には、これはもちろん類似品については、連合商標という制度によってカバーできるかと思いますが、大部分薬剤の場合は、非類似品だと思われますので、繰り返して申しますが、化学品の商標権者は、薬剤につきまして防護標章を取っておいた方が妥当かと思われます。
  65. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうしますと、現在第一類で化学品、薬剤及び医療補助品について、三つとも商標登録を受けておる同じ商標を、それを薬剤だけを作っておるとか、あるいは化学品だけを作っておるとかいう場合においては、さらにその登録されておる商標のほかに、同一商標について防護標章の登録を受けることができるかどうか。
  66. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) それは、できるということに考えております。従いまして、化学会社で現在、薬剤、医療補助品自体もとっておるものと思いますが、化学会社ですから、将来薬剤に対しては商標を使用しないという事態考えられますので、まあそういった事態に対しては、防護標章をとっておけば、薬剤について使わなくなって取り消されることもありうますので、権利擁護については、とっておいた方が便利だ、こう思われます。また現在の薬剤について、あるものについて、あわせて防護標章をとるということも、別に拒絶する理由にもなっておりませんから、当然とれるものと思います。
  67. 上原正吉

    ○上原正吉君 この場合、防護標章の場合、同一とは——純理論的に同一というものはあり得ないと思いますが、どういうふうに解釈しておいでなのでしょうか。たとえば百円銀貨を二つ並べて、これが同一だとは言い切れない。ですから、同一の商標とか標章というものは、どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  68. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) ただいまの問題は、具体的に申しますと、登録された商標といいますのは、御承知のように商標見本というものを特許庁に差し出したのが、それが登録された商標ということになるわけであります。たとえばかたかなでサントリーならサントリーというふうに、縦書きなら縦書きで登録商標出して参りますと、ローマ字でサントリーと書けば、もちろん当然、同一でないわけであります。縦書きを横に書いても同一でない。原則としては、商標見本通りだというふうに一応考えられるわけであります。ただそうしますと、この、世の中に同じものがないかということでありますが、たとえば、大きさを変えましても、もちろん同一であると思います。それから色につきましては、たとえば三つ菱なら三つ菱というものを黒で登録商標出しておきますと、赤の場合には、先ほどの考え方から言いますと、これは類似でございますが、あとで規定を別に設けておりまして、その場合におきましては、黒の登録商標、黒の三つ菱が登録された場合に、緑で三つ菱を使いましても、同一であるというのが取引上の通念でありますので、その色のことだけにつきましては、先ほどの厳格な同一というのを拡げて、ある程度色をかえても同一でございますというふうに、この改正案では考えておるわけでございます。
  69. 上原正吉

    ○上原正吉君 文字で表現されておる場合には、それでよくわかりましたが、設例されました三つ菱のような格好の場合は同一かどうかということも、いろいろ議論のあるところではないかと思います。ことに図形でございましたら、なかなか同一といわれるものは、少なかろうと思うわけなんです。たとえば花のような格好の場合には、何の花かわからないというふうなもの、それを同一なものだというのは、何かそのどういう呼称が生まれてくるかわかりませんが、何とも呼称の生まれてこないような図形も、当然登録されるわけなんですから、そういうものが同一ということになってくると、そういうものは、どういうふうに解釈なさるか。  それからまた、たとえばウサギじるしというふうな呼称が生れてくるようなウサギの絵、それが商標として登録されておる、そうなると、そのウサギの格好が立っているのも坐っているのも走っているのも、いろいろできてくると思いますが、それがことごとく同一と見なされるかどうか。こういう点もお考えを承わっておきたいと思うんです。
  70. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) ただいまの設例の場合、いろいろ具体的にはケースがあるかと思いますが、大体先ほど申しましたように、同一といいますのは、登録された図形なら図形というものを、どうせ大小その他は、これは具体的には違うと思いますが、一応そのままのものだというのは同一だ、たとえばその場合に、ウサギの格好が、右を向いているのと左を向いておるのはどうかといいますが、やはり右を向けば、一応右を向いた形で具体的な商標は使っていくというふうに考えておりますので、やはり左を向けば、これはまた別な商標としてあり得るかと思いすず。あくまで原則としては、大小は別といたしまして、登録された図型の形のままで使うということが、同一の使用じゃないかと思います。
  71. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうなると結局、範囲の——今までの、いわゆる確認審判で、ここでは、解釈を求めなければならぬということになってくるわけですか。
  72. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) さようでございます。
  73. 上原正吉

    ○上原正吉君 防護標準は、建前としては使わないものだというふうに法文のしかう解釈される、使わないで、自分の使う商標を防護するために登録する商標だというふうに解釈されるわけなんですが、これを使ったら、どうなるかということです。これを商標として使ったら、あるいは他人の登録商標を侵害することになりはせぬかと思うのですが、どうなるんですか、なることがあるわけですか。
  74. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) 防護標章と申しますのは——もともと使うとか使わぬとかいう意味でないんでございますが、使わなくても、不使用取り消しの対象にならないというだけでございます。  従いまして、その商標を、普通の商標ですと、いわゆる登録商標を指定商品について使用することができる権利というふうに、はっきり書いておりますから、登録されたままで使った場合におきましては、他のいかなる権利にも抵触するということは考えられないわけです。ところが防護商標といいますのは、他人がそれを使えば、商標権侵害になりますぞというだけのことでございますので、それを自分が使った場合に、他人の商標権侵害になったり、あるいは不正競争防止法によって排除されるという事態が起りますのは、あり得ることかと思います。
  75. 島清

    島清君 商標の使用権乱用によります商標権取り消しについてお尋ねをいたしたいと思いますが、改正法案は、商標について、使用権を認めることにしたので、使用権者の商品か、それとも原商標権者の商品か、これはまことに不明だと思うのです。  そこでそこから起って参りまして消費者が迷惑する場合があることが想像されるわけですが、そこで改正案が五十一条において、使用権者が乱用して商品の品質を落して一般公衆に迷惑を及ぼすようなとき、だれでも、その商標権の登録取り消し審判請求できることにしてあるんですね、で、右の処置は当然と思いますけれども、一挙に商標権そのものの取り消しに及ぶのは少し厳格に過ぎるのではないか、こういうふうに思えるんです。で、一応使用権設定の取り消しをすれば、それでいいのではないかとも思えるわけなんですが、審議会の答申もそのようになっているかと思います。  そこで、あえてこの審議会の答申と異なるような形をおとりになったのは、どういう理由に基くのか、それを御説明願いたいと思うのです。  それから改正法案では、団体標章をやめて、使用権を認めることによって補っておりますけれども、もし団体の一員が、商標を乱用したために、団体の持っている商標そのものが取消審判請求を受けることになる危険が起るのではないか、こういうふうに想像できるわけですね。こういう場合に、どのような処置がとり得るかどうか。  この二点について、御説明願いたいのでございます。
  76. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 工業所有権制度改正審議会の答申では、ただいまの商標権につきまして、使用許諾制度を認めました場合に、もし商品の品質について誤認、混同を生ずる結果、一般第三者の利益を害するような場合には、これを改善防止する措置としまして使用権の取り消しということが認められるという方法が答申中に加えられましたことは御指摘の通りでございますが、われわれとしましては、その答申の線に沿いまして立案を進めたわけでございますけれども、さてこれを法文化することになりますと、使用権と申しますのは、契約に基きましての債権でございますので、そういう場合に、その使用権取り消しのための審判請求する、そして審判に入るというようなそういう事態が生じました場合には、その商標権者と使用権者との間の契約が解除されてしまう。そうなると、契約解除によって審判によります取り消しの対象としましての使用権そのものは消滅してしまうわけでございます。そして、審判は、目的を達しないで終ってしまいますと、また契約を締結して、その商標権者と使用権者との間で、当該商標の使用が使用権者において続けられるというようなことになりまして、実際上、実効を上げることはできないわけでございます、そういうふうな法律立法上の困難という理由によりまして、われわれといたしましては、むしろさかのぼって、本件自体、すなわちこの場合には、商標権自体の取り消しということを制度として設ける方が有効、的確であるというふうに考えたわけでございますが、しかしながら、その場合には、当該商標権者にとって、あまり酷な結果になりましてもいけないわけでございますので、御指摘の五十三条におきましても、当該商標権者がその事実を全然知らなかったという場合において、相当の注意をなしておったという場合は、これを除きまして、こういう場合には、審判請求はできない、というふうに、反面において、相当の注意をなした、怠らなかった商標権者保護も、同時にあわせて考えた次第でございます。  それから次の団体標章につきましてこの規定を廃止しましたのは、一応商標権の使用許諾制度を設けました結果、従来のように繁雑な方法で、また登録料も高額な登録料によって認めて参りました団体標章制度を存続する実益がなくなったわけでございます。団体の一員が商標を使用した結果、この商標権の取り消しということによって、ほかの一般団体員が迷惑をこうむる場合について、どう考えるかというのが御質問の御趣旨であったかと存じますが、現行法におきましても団体員が、一応きめられました使用以外の使用をいたしました場合には、三十一条という規定によりまして、これを取り消すことができるということになっているわけでございますけれども、今後の問題といたしましても、団体内部の規約その他の方法によりまして、そういう使用の事実について、団体当局におきまして相当な注意をなしております場合には、今申しました理由で、これは審判請求をすることはできない上げでございます。そういった点につきまして団体側の注意、管理を十分徹底さして参るという方向で指導して参りたいと考えております。
  77. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 第一点目から二点、三点とお尋ねしたいわけですが、御承知通り、この法律は、大正十年ですか、今より四十年前にできた法律ですから、法学者といえども、その後時代も変っておりまするし、相当内容が複雑ですからわからないという状態で、十口ほど前の新聞に、大条正義という人の、突如として改正法を出してきたというふうの記事がございましたが、私は、大条さんのように、政府が突如として出してきたとは理解しておりませんけれども、それほど国民が、この法案について関心を持たないし、持ったとしてもなかなかむずかしい法案であるというように考えておるわけでございまして、最前から、島委員その他の委員質問に対しても、頭脳明晰な井上長官ですら、明確に御答弁できないで、それぞれ説明員のお力を借りなければならぬ、こういうような状態で、相当内容が多様にわたっておるわけですが、第一番の、この特許法等施行に伴う関係法令の整理に関する法律案というのがございまして、この第四条に、「第九十六条第三項中、又は第百条第一項第一号」を削る。」、その次に「第百条を次のように改める。」「第百条削除」、こう書いてございますね。これは、前回の委員会法案改正要綱にも出ておりませんし、提案説明にも出ておらぬ、これはどういうわけでこの項が突如として出てきたか、その点をまずお尋ねしたいわけです。
  78. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 先般、この委員会でお配り申しました資料に、特許法等施行に伴う関係法令の整理に関する法律案要綱というのがございました。その法律案要綱の第四項の一番最後のところに、「特許の取消制度がなくなったことに関連して独禁法第百条を削除した。」ということがございます。この要綱につきまして、先般、この委員会で御説明申しました場合に、私としまして、この点についても触れたつもりでございますが、今般、特許につきまして、従来のような取りしという制度がなくなりまして、強制実施を認めるということによって、必要かつ十分であるということになったわけでございまして、この独禁法第百条は、取り消しという制度があることを前提としましての規定でございますので、その関係で、今般、独禁法第百条は、削られるということになった次第でございます。
  79. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その点ですが、これと同じような内容を持った条項が、イギリス特許法の四十条の三項の三ですか、あるいはまた、カナダの独禁法の三十条に明確にこれは載っておるわけです。御承知通り何条か忘れましたけれども、アメリカも、その通りです。何のために日本が突如としてこれだけ、ぽつんと切り離されたかという理由をお尋ねしたいわけなんです。
  80. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今申しまたことの繰り返しになるわけでございますが、独禁法第百条におきましては、特許権を取り消すことができるという制度が、現行法ではございましたが、今回の新法案では、その特許の取り消しという制度自体をなくしたわけでございます。で、今後は、その強制実施ということだけでもってまかなっていくというふうに、特許法上の制度が切りかえになりましたので、この百条、独禁法の百条という規定は、その点から申しまして、これを続ける理由がないということになったわけでございます。
  81. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、この独禁法ですね、公取法の除外例を設けた法律が多々あるわけですね。これもやはり一つの除外例ということに判断してよろしいのですね。独禁法の一部除外例というふうに判断してよろしゅうございますか、どうなりますか。
  82. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 除外例ではございませんで、独禁法中これまでの現行特許法中の制度を取り入れていたその制度が、廃止になった結果として、反射的に独禁法の規定改正になった、こういうわけでございます。
  83. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 独禁法の規定改正されるということですか。その辺、もうちょっと明確に、僕はよくわからないから、質問を重ねてやっておるかもしれませんが、その辺、独禁法との関係、この四条ですがね、それと独禁法との関係が、どういうことになるかということを少し詳しくお尋ねしておるのです。
  84. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) もう一度申しますが、独禁法百条の規定で、特許の取り消しという問題について規定が設けられておるわけでございますが、この特許の取り消しというのは、従来の特許法上、そういう制度がある関係上、独禁法中にそういう規定が設けられていたわけでございますが、その現行特許法が、改正になりまして、その制度自体が——取り消すということ自体が、もう今後は、そういう事柄自体がなくなったわけでございます。そういう結果としましてこの独禁法百条の規定必要性、存続の理由がなくなったというふうに了解して申し上げた次第でございます。
  85. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 了解といっても、あなたの答弁通り解釈すると、特許法は大場正十年にできておりますし、独禁法は昭和二十二年にできておるわけです。そうすると長官の解釈では、全然関係がなくて、何らここに改めるとか改正するとかいう必要がなくなる、あなたの今の答弁で行くと。  これは何のために、こういう条項を設けられたかということを僕はお尋ねしておるのです。長官のおっしゃる通りではちょっと理解しがたいのですがね。
  86. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 特許法の方が、はるかに古い制度でございますが、その従来の特許法中に、特許の取り消しという制度がございましたので、この独禁法の百条におきまして、これは、従来の特許法中にあった特許の取り消しということを引っぱってきておる。そうしてこの第百条という規定が設けられておるわけでございます。  そのもとの特許法規定が、制度が、今度の法律改正でもってなくなってしまいますので、ですから、この引っぱってきておるもとの制度の取り消しという制度がなくなってしまいますので、その関係で、独禁法の百条の方は、これの改正を加えざるを得ない、言わば取り消しという制度がなくなりましたものですから、これを規定として削除するということになったわけでございます。
  87. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、この審議会というところで審議をなすって、長官のお手元、まあ大臣のお手元でしょうが、答申をしておるわけですね。そうでしょう。そうすると審議会が答申をなすっておるわけですね。その改正条項——まあ審議会の意向を全部入れたか入れぬかは別ですが、この点は、いかがですか。審議会で答申をやって、あなたの方で改正案をお作りになった、こういうことですか。
  88. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 工業所有権制度改正審議会で、六ヵ年にわたりまして審議の結果、答申が出ましたわけでございます。でその答申に基きまして今回の法案を作成したわけでございます。
  89. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、私は解釈の相違かどうかわかりませんが、本問題に関しては、審議会の答申と逆になるように、私には解釈されるのですが、全然そういうことでございませんか。審議会の答申した趣旨が生きておると、こういうふうに解釈できるわけですか。
  90. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは審議会の答申には、特許の取り消しという制度をなくするということは入っておりますから、その点では、審議会の答申の趣旨に、これは沿った改正ということになると思います。
  91. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 あなたの方からいただいたあれには、私の解釈の違いかしれませんけれども、必ずしもそうなっておりません。しかしまあ、それは次に譲るとして、その次に、内容をお尋ねする前に、職員の増員計画というものがございまして一二百七十五名、これだけがなければ、法案改正されたとしても、お仕事ができないと、こういうことになるわけですね。  これは単なる机上プランですか。これは大臣にお尋ねした方がいいかもしれませんが……。
  92. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 法律改正を今回行いましても、同時に並行いたしまして、特許庁審査審判事務の促進、迅速化をはかるということは、われわれにとって至上命令でございますので、われわれとしましては、その方向に今後もできるだけ努力をいたして参りたい。そういうわけで、これは毎年予算折衝当時に、予算折衝の基礎資料としまして毎年審査審判処理計画というものを作るわけでございますが、最近、この法案について御審議を願うことに関連しまして、われわれとしましての今後の審査審判処理計画というものを作成したわけでございます。  で、現在、非常に長い月日を要しておりまする審査の実情を何とか改善いたしたい、こういうわけで八ヵ年計画といたしまして、昭和四十一年には特許実用新案については一年二ヵ月ぐらいで、意匠商標については三ヵ月ぐらいまでに、出願から権利としての設定日までを、そういうふうに短縮したい、そういう目標を作りまして、そうしてその目標を達成するために、必要な人員はどうなるかということを、従来の長年の経験によりまして審査官一人当りの処理能力というものを考え、また新人、旧人のその辺の力のニュアンスというものも考慮に加えましてそうして今申しました目標達成に必要な人員としまして三百七十五名の増員を、今後の問題として、この増員の確保にわれわれとしましては努力をして参りたい、そういう趣旨の計画でございます。
  93. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私は、その理由を聞いておるのでなくしてですね、たとえば本年度、人員の予算を含めて三百七十五名が認められたものかどうか。あるいは三百七十五名が二百七十五名になったか、それとも、本法案改正されて実施されるという場合も、この三百七十五名、一人も採用してもらえぬという場合の状態をお尋ねしておるわけでね、  長官から御説明聞くまでもなく、特許庁出願しても半年、一年だと、まことに評判が悪い。しかし、といって特許庁の職員のお方が遊んでいるわけじゃないのです。仕事があまり膨大に重なるから、幾ら努力しても、結局判をつくのがおそくなるというのが実態ですから、人員その他の問題については、先日、栗山委員質問しておりましたから、そういう点には触れませんが、三百七十五名というのは、本年は、一体全部認めてくれるのかどうかということと、これを認めてもらわなければ、いかにりっぱな法律を作って、改正してこうやると言われたっても、仕事ができるのかできぬのかということを、端的に、その結果が、どうなりますかというお尋ねをしておるわけです。
  94. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 三十四年度の予算としましては、われわれは二十名の増員というものを認められまして、目下参議院で御審議を願っておるわけでございます。これ以外に、今後、三十五年度以降の問題としましてわれわれとしましては、今の数字をできるだけ確保をしたいと、そういうふうに考えております。
  95. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 次に特許について、政府で、たとえば工業試験所とかあるいはまた電気試験所その他の政府の研究所その他でやはり出願をして、これは政府名義になろうと思うのですが、大体、件数において、どのくらいあるわけですか。
  96. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) それは三十二年について申しますれば、三十二年で権利としまして、特許実用新案または意匠でございますが、その政府関係機関におきまする研究の結果として、権利として登録になりました件数は全部で百十四件でございます。
  97. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それは全部を含めてですね。政府のあらゆるその試験所、今申し上げましたその他を含めて百十四件、こういうことでございますか。
  98. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは、通産省の工業技術院、それに文部省、農林省、郵政省、運輸省、そういう関係各省を通じました件数でございます。
  99. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで、大臣に一つお尋ねしたいわけですが、そういうところで、工業試験所なり電気試験所、まあこれは水産試験所もあるかもしれません、そういうところで、政府の名義で登録した。それが登録しても、政府は、その製造機関あるいはその商品化する措置を講じておりませんから、そうしますると、その政府が持っておる権限を、どういうふうな方法で、たとえば電気なら電気、一つのコイルならコイルの発明を横河電機にやるとか、あるいは日立にやるとか、三菱にやりましょうと、こういうようなことは、どういうふうな方法で、政府の持っている発明を使用させるかということをお尋ねしたいわけですけれども、こういうふうな一つ政府の持っておる新案、特許ができたら、これを一つ、競売に付してやろうということになるのか。その点を一つお尋ねしたいわけですが。
  100. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) これは、この政府が持っております特許権は、ちゃんと公示されますから、これは民間の希望によりまして、それに一定の料金を課して、実施さしておるわけでございます。
  101. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、井上長官、あれでしょうね、国有財産ということになるわけでしょうね、これは。
  102. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) そういうことになると思います。
  103. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そういたしますと、国有財産処理法によって、これはやるということになるわけですね。
  104. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) そういう国有財産としましての処理ということになると思います。
  105. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 まあこれ以上は、特許庁長官に聞くのが正しいものかどうかわかりませんけれども、そうすると、その種のものが正しく国有財産処理法によって当てはまっておるかどうかというと、これはどうも、私も特許庁長官に聞くのが正しいものか、通商産業省の行政措置の一環としてお尋ねすればいいのかわからぬわけですがね。この点の解釈、いかがでしょうか。
  106. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 特許庁としまして、面接、具体的な点につきまして詳しいことは存じませんが、実施契約を締結いたしまして、そうしてその実施に対する報酬——対価を取り、国庫に収入になっているわけでございますが、三十二年度におきまして、国庫収入が約二千万円に上っておる状況でございます。
  107. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 一件の発明をするにも、二千万円ぐらいはかかるわけですよ、一つ発明をやるにもですね。安いもの、それはもう千円か二千円でできるかもしれませんけれども、電気試験所とか工業試験所で、その種の研究をするときには、一つのものでも二千万、三千万かかるわけですね。しかし、総合計百十四件で二千万とは、実に安いような気がするのですがね。膨大な国費と膨大な人間を使ってだね。どうもそのあたりで、ほんとうに、政府の権限であるから、国有財産であって、国有財産処理法に基いて、正確に正しく日本国民に利用されておるかどうかというところに、私は疑問を持つわけですがね。  そういうの何か調べるデータございませんか。たとえば百十四件のうち、どういう発明は、どこどこ会社にいって、どういう仕事をなさっておるか。そういう発明は、どこの会社にいったというのは、特許庁ではわかりませんか。
  108. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは、その実施料としましての国庫収入に見合いまして、この当該発明者に対しまして、補償金というものを払っているわけでございまして、その補償金に関する事務は、特許庁で便宜上これを担当しています関係上、関係各省の方からの請求書がこちらにくるわけでございまして、この点である程度、今の御質問の、どこへどういうふうに国の発明のその特許技術を使わしているかということは調べがつくかと存じます。
  109. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 たとえば、土地はどこどこの省で持つとか、あるいは国の、国鉄は運輸省が持っているとかというような権限の分野が明らかですが、この国のとにかく権限に属する発明は、どこで管理をしておるわけですか。管理しておるところですね。
  110. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは、工業技術院なり、文部省なり、農林省なり、郵政省なりという、その当該関係官庁でもって、それをやっております。
  111. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、一ヵ所にまとまったものでなくして、大体、その発明したところに——その省なり、局なり、そこにあると、こういうことなんですね。——わかりました。  その次に、まあ戦時中の例をとると一番いいのですが、それぞれ個人個人で、いろいろなものを発見し、発明した。しかし、公共の福祉云々とか何とかという文句で、通産大臣が、これをまとめたり、それを取り上げたり、払い下げたりすることができるわけでしょう。それで、通産大臣が、そういう裁定ができる、しかし通産大臣が裁定して、うんと言わないときには、通産大臣が、どなたかに諮問してやらせることができるということがあるんですか、本改正に当って。
  112. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) ちょっと御質問の趣旨をつかみかねたのですが、それは、国が持っておる特許権についての問題でございますか。
  113. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 いや、個人……。
  114. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 今申されました点につきましては、公益上の理由があるという場合、その当該権利者以外に、その特許技術を使わせることが必要であると認められます場合には、一定の順序を踏みまして、これは通産大臣が、審議会の議を経て裁定することができるという規定が、今度特許法中に設けられております。
  115. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで国の利害に関係してくるからと言って、井上さんが持っておる権利を、通産大臣が審議会の議を経て、よそに使わすことができるわけですね。  しかし外国の例ですね、大体その極端な例になりますが、戦時中とかいうので、その場合は、何と何であるかということを明記しておるようなんですが、しかし今度の法案では、そういう点が明記されていない。ただ単に国の利害とか何とか、そういう簡単なもので通産大臣が審議会の議を経てやることができる、こうなんですが、これは、規定しておく必要はございませんか。
  116. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 特許法の九十三条が、御質問の問題の条文でございますが、特許発明実施が公共の利益のため特に必要であると認めるというような場合には、特許発明実施を希望しますものが通産大臣の許可を得ましてその特許権者等に協議を求めるということになります。協議が成立しない場合には、通産大臣が裁定をするわけでございます。  で、この場合におきましても、一方の当事者から、他方に対しまして答弁書の提出を求めましたり、あるいはこの裁定の場合におきましては、通常実施権を設定すべき範囲をきめますし、また同時に当然対価の額あるいは支払い方法についても、これはきめるわけでございまして、もし権利者の方で、その額等につきまして不服な場合には、これは撤回を提起することができるということになっておりますし、また裁定自体に対しまして不服の場合には、訴願することができるというふうな規定を八十六条、八十七条等に設けまして、この辺につきましては、権利者の利益の保護という点については、十分考慮を払っているわけでございます。
  117. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで長官の御説明がありました、その前段の項の協議を求めることができる、というまでは理解できますが、あとは大臣が裁定をやるのですから、必ずその本人の意思が盛り入れられているかどうかわかりませんし、公共の利害という判断が、何をもって公共の利害と判断するかということが問題になろうかと思います。  ですから、今申し上げました通り外国では、私よりも長官の方が研究なさっているのですから、よくおわかりだと思うのですが、どういう場合だということを、明細に例をあげているのです、私の読んだ外国の例では。しかし日本の場合は、きわめて漠然、公共の利害というのは、何をもって判断するのかということ、もっとこのあたり、もう少し明確にならぬでしょうかということをお尋ねしておるわけなんですがね。
  118. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) できますれば、御意見通りにこういう場合というふうに、限定的な列挙ができればよいわけでありますけれども、公共の利益という見地から、必要になる事態というものは、いかなる特許発明が、いかなる事業について、それが必要になるかということをあらかじめ、予測することはきわめて困難であろうかと存じますので、一応規定といたしましては、こういうような九十三条のような規定の仕方にならざるを得ないかと存じますけれども、これの運用につきましては、ただいま申しました通り、通産大臣が裁定するにつきましても、審議会の議を経るということが必要でございますし、またそのほか、今申しましたように、いろいろ慎重な順序を踏んで対価をきめたり、あるいは裁定の結果につきましては、いろいろ当事者間に対する送達について規定を設けるとか、あるいは今申しましたような、その内容あるいは裁定自体に対して、不服の場合には救済の道を訴願または訴えとして、そういう道を開いているわけでございまして、そういうような点につきまして、権利者の利益というものは、不当に害せられることがないように十分な配慮が加えられているわけでございます。
  119. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それでそのお答えは、よく理解できるのですが、こういう場合の公共の利益というのは、一体、どういうものかということなんですね。公共の利益ということになれば、一つの発見であり、発明であるから、どんなものでも、やっぱり全部の人に開放せよということで、全部に開放することによって、みんなが利益を受けるということに拡大解釈をしていけば切りがないと思うのです。  ですから、長官のおっしゃる趣旨から、公共の利益といって大臣がそれを吸い上げて、審議会にかける、あるいはその他の方と協議するというけれども、具体的な例は、どういうことですか。
  120. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは従来、現行特許法におきましても、四十条という規定がございまして、公益上必要なものと認めた場合には、特許権を制限したり、取り消したり、あるいは政府において実施をすることができるという規定がございましたが、これは七十年間ほどの長年の運用の経験を通じまして、ここまで正式に発動した例はないわけでございます。今、具体的に現実の必要としまして、どういう場合が考えられるか、当面の問題としましては、ちょっと実際問題としましては具体的に、お答えできるような具体的な現実の問題としましてはございません。
  121. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、具体的に言うならば、これは結局、死文になるでありましょうと、こういうことですね。
  122. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 死文と言いますよりは、伝家の宝刀と申しますか、こういう事態、必要な事態が生じました場合の用意として、こういう規定が設けられておると、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  123. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 伝家の宝刀ということになると、これは重大問題ですから、具体的な問題をあげて、どういうときにやるかということをぜひ聞かなければならぬと思う。  あなたが、これは大体、使ったことがないから、あまり大したことでございませんよと言えば、ああそうかなと思うので、伝家の宝刀に使うということになれば、これは一切がっさい伝家の宝刀として取り上げることができるから、それがほんとうだったら大へんですよ。どういうときに伝家の宝刀を抜くのですか。伝家の宝刀ということになれば、これは穏かならぬ御答弁だと思うのですがね。
  124. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 将来、現実の必要が生じました場合の用意として、法律的に一応用意の規定を設けておる、かような考えでございます。
  125. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その次は、法案と直接関係ありませんけれども、各所で、たとえば大企業から中小企業まで、それぞれあらゆる研究をなさっているわけですが、そういう場合に、特許庁としては、出願するのが会社名であったり、あるいはまた個人名であったりするわけだと思うのですが、どういうことになっておりますか、その内容をちょっとお尋ねしたいわけですが。
  126. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 会社名の場合も、個人名の場合もございます。
  127. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 これは、あれですね、そうしますると、パーセントなどはわかりませんか、大体何千件あって大体、法人格、あるいは会社のようなものが五〇%であるとか、あるいは個人が五〇%であるとか、こういうことはわかりませんか。
  128. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは件数も、非常に多いことでございますので、正確にはつかめておりませんが、大ざっぱなところは見当がつきます。例といたしまして、きわめて不正確ではございますが、特許について言いますれば、個人名義が三〇%、実用新案につきましては約六〇ないし七〇%というようなことになろうかと思います。
  129. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 これは、まあ外国の例で、私よく知りませんけれども、私の見た文献では、外国では、会社、つまりそういう法人が出願した場合と、それから個人がやった場合と、特許料金とかその他について、もう格段の差があるそうですね。しかし私よく向うへ行って調べたわけじゃないからわかりませんよ。日本の場合と比較して、どうなんです。
  130. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これは、特許実用新案につきましての出願手数料、あるいは特許料、登録料の違いはございますけれども、出願人または権利者によりましての、会社か個人かということによっての区別はつけておらないわけでございます。私どもの研究しました範囲内では、外国におきましても、そういう例をいまだ寡聞にして聞いていないわけでございます。
  131. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その次にお尋ねするわけですが、これは、もう各委員の御質問があれば、あとで議事録を読むことでけっこうですが、特許を三年なら三年、四年なら四年ですね、出願して、とにかく全然使用しない。それをどうするかということが今度の規定で変っていますね。今度の規定で、負担の分については変っていますね——おわかりにならぬですか。特許出願しておって全然その特許を使わない人がある。特許出願しておって、そこで許可になって三年間たとえば万年筆一本、新発明すると、これはあなたのところでオーケーということになって、三年間万年筆について、全然製造もしなければ販売もしないということについて、前と変ってきたわけですね。今度はどうなんですか。
  132. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) これまでも、不実施の場合の規定でございますが、従来は、四十一条の規定がございまして今回は八十三条で、先ほども問題になりました八十三条の規定に改めたわけでございます。その手続が多少今度は変っているわけでございます。すなわち特許庁長官許可の問題とか、あるいは協議あるいは特許庁長官の裁定、そういうような点につきまして、従来と比べて、一そう手続を慎重にしたという点が変っております。
  133. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 最後に一つ、その点ですが、今までですと、これは私の理解の仕方が悪いかもしれませんけれども、そういう、とにかく状態になったときに、今までですと、第三者の責任においてその物事を処理するように長官に手続きし、今度は、本人がとにかく負担をしなければならない、こういうことですが、ちょっとそこのところを理解ができないのですが、本を読んだだけでは。だから、ちょっとその点を御説明願いたいわけですが。
  134. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 従来でございますと、第四十一条の規定によりまして、その特許があった後におきまして、引き続き三年以上正当の理由なくしてその発明が国内に適当に実施されていないという場合においては、公益上必要があると認めたときには、特許庁長官が、利害関係人の請求によりまして、その実施権を与える、特許庁長官において、すぐ与えるということになるのでございますが、こういう問題につきましては、なるべく順序としまして、当事者間の協議ということをやらせて、しかもなおかつ協議が成立しないという場合に、特許庁長官において裁定する。そうしてその場合にお唐ましても、審議会の議を経てやるというふうに順序を踏んだ方が、手続をこういうふうに厚くした方が、当事者の公正な利益を保護する点において、一そう適当であろうと考えたわけでございます。
  135. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 本案に対する本日の質疑は、この程度をもって終りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  137. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案及び商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  138. 島清

    島清君 ただいま提案されておりまする中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案、これは何か資金量をふやして運営していきたい、こういうことのようでございますが、先日中小企業庁長官質問いたしましたときに指導、監督の面についてお尋ねをしたのですが、それは、ただ指導、監督の面について、私は将来のことを申し上げたのではなくして、現に指導を要する、こういうような面がございまするので申し上げたわけなんですが。と申し上げまするのは、国家資金を扱っておりまする金融機関が、その運営が形式的に流れて、そうして最終的な責任を負うという形よりも、現在ただいまの形式的な責任に流れる危険性があるわけなんです。  たとえばここにこげつきの債権ができてしまいますというと、これを取り立てるにどうするかという問題よりも、これを取り立てるに自分の責任が追及されない形において、ものを処理するというようなことが、しばしはあるわけでございます。それと関連をいたしまして、中小企業の金融公庫の金を借りたいという業者の中にも、組合を作って金でも借りてみようかと、こういうような面か、必ずしもないわけではない。そうして中小企業の資金運営の面を見てみますというと、事業手腕、営業実態に融資をするというよりも、組合金融から参りまする欠点といいましょうか、それから顔といいますか、こういったような、人間的な立場上の力関係というものが、かなり融資を受ける場合に影響を持ってくるのですね。  そうしますというと、事業自体事業腕に融資をするのじゃなくして、この顔に融資をしている面がありますので、事業が失敗いたしました場合には、非常に回収が困難になってくる場合があるわけであります。たとえば顔をおもに融資を出すと、担保物件ということがありますね、担保物件ということになると、顔をおもに融資をしていますというと、家、屋敷は担保にならぬと、そうすると、その担保物件の標準をどうするかということになりまするというと、これは見る人によって、いかようにも評価ができるわけなんですが、さあ、それでは、そうやって融資をしてあげたものを、事業自体についての信用関係からよりも、顔に重きを置いて融資をしたということになりますというと、その事業が失敗いたしまするというと、必然的にその担保に取っておりまする担保物を処分をしなければならぬという段階にくるわけですが、しかし事業が失敗して、それで債権の回収をはからなければならないと言ってみたところで、人の住んでおりまする家、屋敷を取っ払って処分をするわけにもいかぬというような問題等が発生いたしまして、それで、かなり焦げつきになっている債権があるのではないか、あるやに私たちは仄聞をしているわけなんですが、こういうようなことに、さらにまた債務を担保にして金を借りるといったようなことが、信用保証の面で行われている。そういうことをして融資をした、さあ取り立てができなくなる、かりに二百万円の金が、債権が焦げつきしたとしますると、これが回収不能であると、そうすると責任が追及されるので、何とかして、これを一つまぬがれようとする苦肉の策からいたしまして、今焦げついておりまするところの二百万に、さらに百万の追加融資をいたしまして、三百万にしてその三百万を信用保証に保険をかけて保険債券にして、たとえば年賦なら年賦にして取り立てると、こういうようなことがなされているやに聞いているのですね。  ですから私は、商工中金が、質屋みたように、物を担保に取って金を貸すという事態にも、若干根本的には解せない面もありまするけれども、それはそれといたしまして、とにかくそういったような債権の焦げつきがございまして回収不能の不良債権というのが、私の耳にもしばしば入ってくるのです。ですからそれを未然に防止するような意味においても、監督のよろしきを得なければなりますまいじゃないかと、こういった見地からこの前は長官にお尋ねをしたのでしたが、これは何でしょうか、もしそういう事実があれば、決算委員会の問題にもなりましょうけれども、やはり商工委員をやっておりますというと、商工関係の決算事項がありまする場合でも、強い発言ができないのですね、気の弱いせいかしりませんけれども、ですから、起きた事態について決算委員会で取り上げるところの問題よりも、未然にこれが起きないように、多少行政的な面において御指導を願わなければならないのではないか、こういうふうに思われる面が多々ありますので、先日指導強化の面について、御所感を承わってみたのですが、今の具体的な事例ですね、これもあるいは大臣なり長官なり耳にしておられることだと思うのですが、こういうような点については、どのようなお考えでいらっしゃいますか。
  139. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 今、島委員から御指摘がありましたような問題でございますが、これは要しますに、金融機関としての健全な経営をやるように、十分政府としても監督をすべまじゃないか、こういうふうな御意見かと拝聴しておりました。  商工中金は、御案内のように半官半民という資本構成になっております。民間側の出資あるいは預金等も、これは貸付財源としてある、あるいは商工債券によって調達した資金も、民間側の資金もかなりあるのであります。そういう半面をもっているのでございますが、他面、国からの資金量も、全体の三割ぐらい入っているかと思っております。  そこで商工中金の貸し出し態度自体も、御指摘のような情実といったことが加えられては困ったことでございますので、われわれもその点は、日常監督しておりますが、同時に、債権管理に対しまするいろいろな問題、あるいは万が一、不幸にしまして、まあ履行がおくれて滞りがちになるような事態になるということも、あるいは多数の貸付債権のうちには出てくることもあるかもしれません。その点についても、やはりある程度、それを償却し得るような措置も、会計経理上とらしておりまして、そういたしませんと、結局官民双方の資金に対しまして、不測の損害をかけることが起るわけでございますから、そういう点の措置も十分とらしております。なお必要な中小企業の事業でありましても、返済に対しまする信用、こういったものにつきまして、若干の懸念がございますれば、あるいは商工中金といたしまして保険公庫に対しまして、融資保険を付しますとか、あるいは保証協会の保証を求めるとかということも講じておるわけでございます。  そういうふうなことでございまして、十分に金融機関としての、健全な貸し付け態度ということについては、日ごろから、十分監督しているつもりではございます。  なお金の貸し付けを受けまする方の態度におきまして、あるいは御指摘のように、商工中金からの融資を受けるために組合を結成するというようなこと、これは最近ではあまりないのじゃないかと思っております。あるいは戦後のいろいろな資金不足の時代におきまして、そういう便宜のために組合を結成した例も、これは皆無ではないだろうと思っておりますが、これもただ、そういう貸し付けを受けまして、内部の組合員に転貸するということで、その協同組合事業というものが軌道に乗るわけではございませんので、これは、そういうことも事業の一つにはできますけれども、やはり協同組合本来の協同事業事業ということを指導の中心にしております。まあ最近では、どうもそういう目的のために組合を結成するというケースは、割合減っているかと思いますが、これにつきましても、組合は、現在認可制度でございますので、十分に事情を調査いたしまして、もっぱら本来の協同事業のために組合を結成するというふうに指導していくことは当然でございます。  いずれにしましても、中小企業の、金融につきましては、大企業に対しますのと違いまして、資力信用というものの薄いものもあるいはございますので、そういう点につきまして、商工中金が、一面におきまして金融機関としての健全性ということも、かなり必要でございます点は、御指摘の通りでございますが、それが同時に、また特殊な関係のために融資を行うということでは、やはりこれは困りますので、その点は、われわれもできる限り、そういうことの起らないように、厳重な注意をうながしているつもりでございますが、なお、これは御指摘のように具体的ないろいろなケースが、まあ全然絶無とは言われませんが、その辺は一つ、今後十分、そういうことのないように監督して参りたい、こういうふうに御答弁したいと思っております。
  140. 海野三朗

    ○海野三朗君 商工中金から、金を借りるに当って申し込みをしますね。そうしますと、なかなか調べに来てくれるのに日にちがかかる。それをどういうわけかといって、私が責めたところが、人間が足りない。それで、申し込んでから何ヵ月、二ヵ月か三ヵ月目に、ようやく調べにいくというようなところがあるので、それに対して、長官はどういうお考えを持っておるか。地方におっては、そういうことはよくわかりますけれども、中央におって政治をやっておられる側は、少しも御承知ないのです、そういうことは。それ、どういうようにお考えになっていますか。
  141. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) その点は、結局商工中金の事務能力の問題かと存じます。  御承知のように先般申し上げましたが、商工中金は、現在各府県に一ヵ所、支所を持っておりまして、でございまするので、かなり実際問題としまして、その所在地以外のところでございますと、若干、事務的にもおくれることがあるかと思っております。それから、なお信用組合等を通じまして、代貸しもやっておりますので、できますれば、そういうふうな取引のある信用組合を通じてお申し込みを願うということも、これは能率化を発揮するゆえんだろうと思います。  なおこの支所なり、あるいは人員等につきましては、できるだけ増加したいと思っておりますが、これは、やっぱりあまりふやしますと、金利等に響いて参りますので、漸次増加いたしまして中小企業者の利便に資したい、こういうふうに考えております。
  142. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 他に御質疑はございませんか。(「なし」と呼ぶ者あり)——ないようでございますから、質疑は終了し、これより討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。    (「討論省略」と呼ぶ者あり)  別に御発言もなければ直ちに採決を行います。  まず、中小企業信用保険公序法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  144. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 全会一致と認めます。  よって本案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に、賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  145. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 全会一致と認めます。  よって本案は、全会一致をもって可決さるべきものと決定いたしました。  なお、議長に対し提出する報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願います。  明日は、午前十時より開会いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時三十七分散会