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1959-03-17 第31回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十七日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡本  茂君       木倉和一郎君    始関 伊平君       關谷 勝利君    高橋清一郎君       塚田十一郎君    中井 一夫君       野田 武夫君    野原 正勝君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       櫻井 奎夫君    鈴木  一君       堂森 芳夫君    水谷長三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      小山 康朔君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         通商産業事務官         (特許庁総務部         長)      伊藤 繁樹君         通商産業事務官         (特許庁総務部         工業所有権制度         改正調査審議室         長)      荒玉 義人君         参  考  人         (新潟県知事) 北村 一男君         参  考  人         (新潟市助役) 五十嵐真作君         参  考  人         (東新潟防潮期         成同盟副会長) 田邊 茂司君         参  考  人         (新潟地盤沈下         被害事業者連盟         昭和石油株式会         社新潟製油所次         長)      浦川 倍蔵君         参  考  人         (東京大学教         授)      坪井 忠二君         参  考  人         (帝国石油株式         会社社長)   岸本勘太郎君         参  考  人         (日本瓦斯化学         工業株式会社専         務取締役)   江口  孝君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月十七日  委員中垣國男君、野原正勝君、福田赳夫君、増  田甲子七君及び水谷長三郎辞任につき、その  補欠として塚田十一郎君、加藤常太郎君、高橋  清一郎君、木倉和一郎君及び櫻井奎夫君議長  の指名委員に選任された。 同日  委員塚田十一郎君、加藤常太郎君及び高橋清一  郎君辞任につき、その補欠として中垣國男君、  野原正勝君及び福田赳夫君が議長指名委員  に選任された。     ――――――――――――― 三月十三日  特許法案内閣提出第一〇八号)(参議院送  付)  特許法施行法案内閣提出第一〇九号)(参議  院送付)  実用新案法案内閣提出第一一〇号)(参議院  送付)  実用新案法施行法案内閣提出第一一一号)(  参議院送付)  意匠法案内閣提出第一一二号)(参議院送  付)  意匠法施行法案内閣提出第一一三号)(参議  院送付)  商標法案内閣提出第一五八号)(参議院送  付)  商標法施行法案内閣提出第一五九号)(参議  院送付)  特許法等施行に伴う関係法令整理に関する  法律案内閣提出第一六〇号)(参議院送付)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特許法案内閣提出第一〇八号)(参議院送  付)  特許法施行法案内閣提出第一〇九号)(参議  院送付)  実用新案法案内閣提出第一一〇号)(参議院  送付)  実用新案法施行法案内閣提出第一一号)(参  議院送付)  意匠法案内閣提出第一一二号)(参議院送  付)  意匠法施行法案内閣提出第一一三号)(参議  院送付)  商標法案内閣提出第一五八号)(参議院送  付)  商標法施行法案内閣提出第一五九号)(参議  院送付)  特許法等施行に伴う関係法令整理に関する  法律案内閣提出第一六〇号)(参議院送付)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)(参議院送付)  天然ガス新潟地区地盤沈下)に関する件      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  去る三月十三日当委員会に付託をされました参議院送付にかかる内閣提出特許法案特許法施行法案実用新案法案実用新案法施行法案意匠法案意匠法施行法案商標法案商標法施行法案特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案、及び特許法等の一部を改正する法律案、以上十法案一括議題といたします。審査に入ります。まず通商産業政務次官より趣旨説明を聴取することといたします。中川通商産業政務次官。     ―――――――――――――
  3. 中川俊思

    中川(俊)政府委員 ただいま提案になりました特許法案提案理由及びその概要を御説明いたします。  特許制度は、新規発明をした者に対して一定の期間その発明について独占権を与えるとともに、その発明を広く世に公表することにより、さらに新規発明を促進し、ひいては産業発達をはかることを目的とする制度であります。わが国における特許制度歴史は古く、明治十八年の専売特許条例制定以来、今日まですでに七十四年の歳月が経過しております。その間数次の大改正を経て、大正十年に現行特許法制定されたのでありますが、現行法については、その後大幅な改正を見ることなく現在に至っているのであります。しかるに、最近にれける社会経済情勢の変遷は著しいものがあり、現行特許法は根本的に再検討を行わなければならない時期に達していると考えられるのであります  しかしながら本制度は、国民権利の得喪、変更に関する重要な制度であり、その改正に当っては、広く関係者意見を聞き、慎重な研究を行う必要がありますので、政府昭和二十五年十一月に学識経験者産業界代表者等をもって構成する工業所有権制度改正審議会を設け、六年間にわたっての慎重な審議をしました結果、昭和三十一年十二月にその結論答申されたのであります。  本法律案は、この答申に基き、さらに関係方面意見をも取り入れて、作成いたしたものであります。  次に本法律案概要を、現行特許法との主要な相違点という角度から御説明申し上げます。  第一は、発明新規性判断基準として外国で頒布された刊行物記載をも加えることとしたことであります。現行特許法では、特許出願前に国内で公然知られ、公然実施され、または国内に頒布された刊行物記載されているような発明は、特許を受けることができないものとしておりますが、外国との交通通信発達したこと等を勘案しまして、このように改正することを適当と考えたのであります。  第二は、原子核変換により製造される物質発明を、新たに、特許しない発明の中に加えたことであります。その趣旨は、現行特許法において化学的方法により製造さるべき物質は、特許しないことと同じでありまして、わが国原子力産業保護ということを考えたものであります。  第三は、特許権存続期間は、出願公告の日から十五年とするが、出願の日から二十年をこえることができないこととした点であります。出願公告の日から十五年という点は現行法と同じでありますが同時に出願の日から二十年をこえることができないこととして特許権者利益一般公衆利益との調整をはかったのであります。  第四は、特許権存続期間延長制度廃止したことであります。現行特許法における延長制度は運用上困難な問題が少くなく、他方産業政策上の観点から見ても延長対象となるような優秀発明であればあるほど、早くそれを一般に公開し、自由に利用することができるようにすべきであるという要請も強いわけであります。このような事情を勘案いたしまして本法律案におきましては、存続期間延長制度廃止することといたしたのであります。  第五は、権利侵害に関する規定を新たに設けたことであります。現行特許法には、権利侵害に関する民事の規定はなく、もっぱら民法規定適用されておりますが、特許権無体財産権であるという特殊性にかんがみ民法補助的規定として、差止請求権損害額推定、過失の推定等に関する規定を設けたものであります。  第六は、無効審判請求についての除斥期間を大部分廃止することとした点であります。無効審判請求について除斥期間を設けることは、権利安定化という点から意義ある制度なのでありますが、一方これによって弊害の生ずる場合も少くないので、外国公知文献記載されていたことを理由とする場合以外は除斥期間廃止したものであります。  第七は、審判審級を一審制としたことであります。現行特許法におきましては、特許庁審判機構として審判及び抗告審判の二審級が設けられておりますが、本法律案におきましては、むしろ制度簡素化をはかるを適当と考え、これを一審制とすることといたしたのであります。  第八は特許料現行特許料の約二倍に値上げした点であります。これは主として経済事情変化に伴う改正であります。なお、このほか多くの点において発明者または権利者利益保護の強化、一般国民または第三者の利益権利者利益調整、その他行政の改善をはかる等の見地から、現行特許法の諸規定改善補完いたしております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました特許法施行法案提案理由及びその概要を御説明いたします。  本法律案先ほど提案理由を御説明いたしました特許法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な経過的事項内容とするものであります。御承知のように法律施行に必要な措置は、通常その法律の附則として規定するのでありますが、特許法につきましてはこれらの措置がきわめて複雑多岐にわたりますので、特に独立法律として立案したものであります。なお、特許法施行に伴う必要な措置のうち関係諸法令改正につきましては、実用新案法意匠法商標法と共通する事項も少なくありませんので、これらの諸法案に関連するものも一括して別途提案することにいたしております。  次に本法律案概要を御説明いたします。  第一は、新特許法施行期日規定したことであります。本法律案におきましては、必要な政令、省令等整備し、あるいは法令内容一般の人々に周知せしめるために必要な期間を置くことを考慮して、昭和三十五年四月一日から施行することとしているのであります。  第二は、現行法によって発生した特許権等新法施行後に、どのように取り扱うかということについて規定したことであります。この点につきましては、現行法による権利新法による権利とみなすという考え方をとっているのであります。  第三は、新法施行の際特許庁係属している特許出願等取扱いについて規定したことであります。新法現行法とでは特許出願等取扱いも異なり、新法規定をそのまま係属中の特許出願等適用しますと、出願人の不利益になる点もありますので、施行の際係属中の特許出願等につきましてはその手続が終了するまでは従前の例によって処理することといたしているのであります。なお、このほかに特許料に関する事項特許補償等審査会に関する事項罰則適用に関する事項等について規定してあります。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました実用新案法案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  実用新案法明治三十八年に制定され、同四十二年及び大正十年の二回にわたる全面的な改正を経て今日に至っているものであります。従って現行実用新案法は、大正十年の制定にかかるものでありまして、その後大幅な改正は行われておりませんので、他の工業所有権制度と同様、その全面的検討を行いまして、最近における社会経済情勢に即応ずるよう制度整備改善をはかる必要があるのであります。  本法律案は、特許制度改正案との調整をはかりつつ、昭和二十五年十一月に政府に設けられました工業所有権制度改正審議会答申その他関係方面意見を取り入れまして作成いたしたのでありまして、実用的考案の一そうの奨励をはかろうとするものであります。  次に本法律案概要現行実用新案法との主要な相違点という角度から御説明申し上げます。  第一は、実用新案許可対象を型から考案に改めたことであります。現行実用新案法におきましては、実用ある新規な物品の型について実用新案権を与えることといたしております。しかしこのような制度のもとでは単に型が新規であるということで権利が与えられることになり、既存技術水準から見てあまり考案力を要しないものに独占権が付与されることになるので、このような弊害を除くために改められたものであります。第二は、特許出願実用新案許可出願との間に相互に先願後願関係審査することといたした点であります。  これは実用新案権対象が型から考案に改められたため、特許権対象実用新案権対象が同質のものになったことに基く改正であります。  第三は、実用新案権存続期間について出願公告の日から十年を経過していない場合でも出願の日から十五年を経過したときは満了することとした点であります。現行実用新案法におきましては、実用新案権存続期間は、登録の日から十年ということになっておりますが、実用新案権につきましても、特許権と同様に出願公告の日から仮保護の効力が生じますので、実用新案権存続期間出願公告の日から十年と改めました。なお特許権の場合と同じような趣旨から、その存続期間出願の日から十五年をもって終了することといたしたのであります。なおこのほか、新規性判断基準外国文献を加えること、権利侵害に関する規定整備審判審級の一審制無効審判除斥期間廃止許可料引き上げ等につきましても特許法案に準じて規定いたしております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました実用新案法施行法案理由及びその概要を御説明いたします。  本法律案は、先ほど提案理由を御説明いたしました実用新案法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な経過的事項内容とするものであります。本法律案特許法施行法案と同じく、法律施行に必要な措置を特に独立法律として立案いたしたものであります。なお関係諸法令改正につきましては別途提案することにいたしております。  次に本法律案概要を御説明いたします。  第一は、新実用新案法施行期日昭和三十五年四月一日と規定したことであります。第二は、現行法によって発生した実用新案権等新法施行後にどのように取り扱うかということについて規定したことであります。第三は、新法施行の際特許庁係属している実用新案許可出願等取扱いについて規定したことであります。  これらの諸点につきましては、すでに特許法施行法案提案理由説明で述べましたところと全く同趣旨でありますので、詳細な御説明は省略させていただきたいと存じます。なおこのほかに登録料に関する事項罰則適用に関する事項等について規定しております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました意匠法案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  意匠制度工業所有権制度の一環をなすものであり、明治二十一年の意匠条例制定以来七十年有余の歴史を有するものであります。意匠制度新規意匠保護及び利用をはかることにより、意匠の創作を奨励し、さらには産業発達に奇与することを目的とするものでありますが、現在施行されております意匠法特許法実用新案法等同様大正十年に制定されたものでありまして、今日まで大幅な改正を行うことなく施行されてきたものであります。しかるに最近におきましては意匠産業上に占める役割がますます重要なものとなって参りましたので、産業界における要請社会経済情勢変化等をも勘案し、現行制度根本的整備改善をはかり、意匠進歩発展をさらに促進しようと考え、工業所有権制度改正審議会答申を基礎に本法律案を作成した次第であります。  次に本法律案概要現行意匠法との主要な相違点という角度から御説明申し上げますと、第一は、意匠新規性判断基準外国における公知及び外国において頒布された刊行物記載にまで拡大いたしたことであります。現行意匠法におきましては、国内で公然知られた意匠または国内に頒布された刊行物記載された意匠意匠権を与えられないことになっておりますが、国際的交通通信の著しい発達のためその新規性判断地理的範囲国内にのみ限ることはもはや適当でなくなって参りました。特に意匠はその性質上、外観を通じて観察できるため容易に模倣、盗用ができるものでありますので、外国においてすでに実施されている意匠については新規性かないものとして、権利を与えないように改める必要性は特に強いものがあります。こうした理由に基きまして、外国公知になっている事実をも新規性判断の際に考慮することといたしたのであります。  第二は販売提示等の行為を新規性喪失例外事由にいたしたことであります。現行意匠法におきましては、出願前に販売展示見本頒布等を行なった場合には、その意近はすでに公知意匠となってしまいますので登録を受けることができないものとなってしまうのでありますが、意味につきましては出願前またはその意匠実施化に着手する前に販売展示見本頒布等を行うことによって一般の反響を打診してみる事例が非常に多いのでありまして、このような産業界の現状にかんがみ、本法律案におきましては、意匠許可を受ける権利を有している者が出願前に販売展示等を行うことによってその意匠公知にした場合におきましても、その時から六カ月以内に出願すれば、いまだその意匠新規性を失っていないものとして取り扱うことといたしたのであります。  第三は意匠権存続期間登録の日から十五年とした点であります。現行意匠法におきましては、意匠権存続期間登録の日から十年ということになっておりますが、本法律案におきましては諸外国立法例等も参酌し、さらには産業界意見等をも取り入れ、これを登録の日から十五年に改めることといたしたのであります。なおこのほか、権利侵害に関する規定整備審判審級の一審制無効審判除斥期間廃止許可料引き上げ等についても、特許法案に準じて改正いたすことにしております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決ぜられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました意匠法施行法案提案理由及びその概要を御説明いたします。  本法律案は、さき提案になりました意匠法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な経過的事項内容とするものであります。  意匠法案の経過的諸規定は、きわめて複雑多岐にわたりますので、さき提案されました特許法施行法案と同様、特に独立法律として立案いたしたものであります。なお、関係諸法令改正につきましては、別途提案することにいたしております。  次に本法律案概要を御説明いたします。  第一は、新意匠法施行期日昭和三十五年四月一日と規定したことであります。第二は、現行意匠法によって発生した意匠権等新法施行後の取扱いについて規定したことであります。第三は、新意匠法施行の際特許庁係属している意匠許可出願等取扱いについて規定したことであります。  これらの諸点は、いずれも、さきに御説明いたしました特許法施行法案同様既存権利の尊重と新制度への円滑なる移行を旨として規定いたしておるものであります。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げます。  ただいま提案になりました商標法案提案理由及びその概要を御説明いたします。  商標制度目的は、商標保護を通じて商標使用者の業務上の信用の維持をはかることにより、産業発達に寄与するとともに、需要者利益保護することにあるのであります。  我国の商標制度は、明治十七年の商標条例制定に始まり、以来七十五年の歴史を有するものであります。そして、この間明治三十二年の商標法制定並びに明治四十二年及び大正十年の全面的な改正を経て今日に至っているのであります。  しかるに最近における経済発展は署しいものがあり、その中に占める商標地位重要性を増して参り、このような事態に即応するため商標制度の全面的な再検討が必要となって参りました。政府は和二十五年以来工業所有権制度改正審議会を設け、この問題を慎重に審議いたしました結果、昭和三十一年にその結論答申されたのであります。本法律案はこの結論に基き、さらに関係方面意見をも取り入れて作成したものであります。  次に本法律案概要を、主として現行法との相違という点から御説明いたします。  第一は、国際連合等国際機関を表示する標章及び国、地方公共団体公益団体等を表示する着名標章登録しない理由に加えたことであります。これは、これらの機関公共的性格にかんがみ、これらの標章商標権対象に加えることは適当ではないとの判断によるものであります。  第二は、存続期間現行法の二十年から十年に短縮したことであります。これは、権利者が積極的に存続を希望しないような商標権整理を促進するためであります。  第三は、商標権営業と分離して移転するにと、つまり商標権自由譲渡を認めることとしたことであります。現行法では商標権をその営業と分離して移転することか禁じられており、そのため商標権の財産権的な地位が十分に認められておりません。このたびの改正では、経済界における実際上の必要にかんがみ商標権自由譲渡を認めることとしたのであります。  第四は、商標使用許諾を認めることとしたことであります。現行法では、商標権自由譲渡が認められていないのと同様に、他人に自分の登録標使用さ迂ることも認められておりません。しかし、経済界の実情はこのような道を開くことを必要としておりますので、この制度を新たに作ることとしたのであります。  第五は、防護標章制度を設けたことであります。これは現行法による商標保護範囲が著名な商標については十分ではないので、このたびこの制度を設けて著名な商標信用保護に資することとしたのであります。  第六は、団体標章制度廃止したことであります。これは、先ほど御説明いたしました商標使用許諾制度を設けることにより、団体標章制度を特に存置しておく実益がなくなりたためであります。なお、このほか、権利侵害に関する規定整備審判審級の一審制登録料引き上げ等についても特許法案に準じて改正いたすことにしております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました商標法施行法案理由及びその概要を御説明いたします。  本法律案は、さき提案になりました商標法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な経過的事項内容とするものであります。商標法案の経過的諸規定は、きわめて複雑多岐にわたりますので、特に独立法律として立案いたしたものであります。なお、関係諸法令改正につきましては、別途提案することにいたしております。  次に本法律案概要を御説明いたします。第一は、新商標法施行期日昭和三十五年四月一日と規定したことであります。第二は、現行商標法によって発生した商標権等の新法施行後の取扱いについて規定したことであります。第三は、新商標法施行の際特許庁係属している商標登録出願等の取扱いについて規定したことであります。第四は、現行商標法によって発生した団体標章権の使用者地位について規定したことであります。  これらの諸点はいずれも、さき提案になりました特許法施行法案同様既存権利の尊重と新制度への円滑なる移行を旨として規定いたしているものであります。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げます。  ただいま提案になりました特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  本法律案は、さき提案になりました特許法案実用新案法案意匠法案及び商標法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な関係諸法令改正内容とするものであります。  このような他法令整理に関する事項は、経過的事項規定した附則または施行法案において規定するのが通常でありますが、特許法案実用新案法案意匠法案及び商標法案に共通な事項が少くありませんので、特に独立法律として規定したものであります。  次に本法律案概要について御説明いたします。第一は、他法令において引用されております特許法等の条文を新特許法等の該当条文に改めたことであります。第二は、新法によって制度廃止されあるいは創設されたことに関連して、関係諸法令中の表現を改めたことであります。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました特許法等の一部を改正する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  さき提案になりました特許法案実用新案法案意匠法案及び商標法案におきましては、いずれも特許料等を値上げすることといたしておりますが、その施行昭和三十五年四月一日からとなっており、公布と施行の間にかなりの期間が予定されておりますので、あらかじめ現行法特許料等を新法と同様の額まで値上げをすることにより新法への移行を円滑ならしめようとするものであります。  以上が本法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で十法案についての趣旨説明は終了いたしました。  なお、各案についての質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 天然ガスに関する件について調査を進めます。  本日は、本件に関し、新潟地区地盤沈下の問題につきまして、参考人として、新潟県知事の北村一男君、新潟市助役の五十嵐真作君、東新潟防潮期成同盟副会長の田辺茂司君、新潟地盤沈下被害事業者運の浦川倍蔵君、東京大学教授の坪井忠二君、帝国石油株式会社社長岸本勘太郎君、日本瓦斯化学工業株式会社専務取締役の江口孝君、以上七名の方々が御出席されることになっております。午後に出席の予定であります坪井忠二君を除く各参考人は、すでに出席されておりますので、この際参考人の方々に対しまして、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、公私きわめて御多忙中にもかかわらず、当委員会に御出席下さいまして、まことにありがとう存じます。  本問題につきましては、当委員会といたしましても、事態を重視いたしまして、去る二月一日から三日間にわたり委員会より委員を派遣いたしまして、現地の視察を行なった次第であります。その報告もお聞きしたのでございますが、本日は、直接現地の方々や学識経験者等より御意見をお聞きすべく、御出席をお願いいたした次第でございます。どうぞ忌仰のない御意見をお述べ下さいますようお願いを申し上げます。ただ、時間の都合もありまので、最初に御意見をお述べ願う時間は、大体一人十五分程度にしていただき、後刻委員から質疑もありますので、その際に十分お答え下さいますようお願いを申し上げます。  なお、念のために申し添えておきますが、規則の定めるところによりまして、参考人の方々が発言なさいます際には、委員長の許可が必要でありますし、また委員が参考人の方々に質疑をすることはできますが、参考人の方々は委員に質疑はできないことになっておりますから、以上お含みおき願いたいと思います。  それでは、これから順次参考人の方々に御意見をお述べいただくことにいたします。まず五十嵐参考人にお願いを、いたします。
  6. 五十嵐真作

    ○五十嵐参考人 地盤沈下の問題は、人口三十万の新潟市にとりまして、最も大きな関心事でございます。地盤沈下が初めてわかったのは、昭和三十一年の十二月であります。時たまたま大きな高潮の被害が臨港埠頭に起ったのであります。そのとき、これは高潮ではなく、地盤沈下であるということが初めてわかったのであります。私はその当時からこの問題に関係をいたしまして、自来、地盤沈下に関しまする原因の調査並びに被害に対する対策の計画実施に当って、今日まで参ったものでございます。  先ほど申し上げましたように、新潟市にとりましてはまた前古未曽有の重大問題でございまして、近く行われまする地方選挙においても、候補者の一人残らずがこの問題を取り上げることでありましょうし、またこの問題を取り上げなければ当選もおぼつかないというようなのが、現在の現地の実情でございます。  私は、本日、原因の発表と、これに関連いたしまして処置すべき一連の問題について申し上げたいと思いますが、その前に、この新潟市にとりまして死活問題でもある地盤沈下の問題を、国会におかれましてはこれを取り上げていただき、さきには本委員会委員の方々がわざわざ現地を御視察願ったのであります。本日また本委員会におきまして、地元のわれわれに対しまして意見を開陳する機会を与えていただきましたことは、まことに感謝にたえない次第でございます。深く敬意を表しかつ感謝申し上げる次第でございます。  地盤沈下の問題は、現在、原因の論争よりも、いかにして抜本的な対策を講ずるかということの方が、より緊急な問題であります。この点をよく御理解をいただきたいと思うのであります。原因の問題をいろいろ論議していただくことは、これはまた当然必要なことでもあり、また大事なことでもあるわけでありますけれども、しかし現地の実情はそれを待っておれない、一日も早く抜本的な対策を講じていただかなければならぬ、これが現在の実情であります。この点をよく御理解をいただきたいと思うのであります。従いまして、被害の実情につきましては後ほどほかの方々からもいろいろお話があろうかと思いますので、私は、原因の究明の問題、被害の実情の問題等についてはくどくどしくお話を申し上げないで、むしろ原因の発表と、その後に起る当然処置されなければならぬ一連の問題につきまして、意見を申し上げたいと思うのであります。  国会におかれましても、先月の予算委員会の模様を承わりますと、高碕通産大臣また永野運輸大臣の発言の内容からいたしましても、原因の何であるかということにつきましては、おおよその方向が打ち出されているものと考えるものであります。しかし承わりますると、原因の発表は五、六月ごろであると伺っておりまするが、問題はその内容とその取扱い方であると考えるのであります。内容につきましては、先ほども申し上げました通り、おおよそ想像ができるのでありまするが、問題はその取扱い方だと思うのであります。科学技術庁がどういうふうに発表するか、通産省がこれをとういうふうに受け取るか、この問題が当面最も重要な問題ではなかろうか、かように考えておるわけであります。科学技術庁では通産省が処理をするならば発表する、通産省では発表があれば処理をするというようなイタチごっこでは、この問題は絶対に解決を見ることができない、かように考えておるものであります。従いまして、おそらく科学技術庁の発表の内容も、明確に、原因は何であるかということを示すものではないと思います。むしろ原因は何であるかという示唆を与える、方向を与えるものであると思うのであります。その場合に、通産省がこれをどういうふうにして受け取るか、そしてこれをどういうふうに処置するかということが、きわめて重大な問題であると私どもは考えておるわけであります。この点につきまして、通産省の十分な御考慮と善処を私どもは心から期待を申し上げておる次第であります。  原因の発表につきましてさらに大切なことは、原因を発表される場合においては、政府において十分な責任を持って発表をしていただきたいということであります。いたずらに発表されたのでは、ただ混乱があるばかりだと思うのであります。従いまして原因の発表に当りましては、それに伴って処置すべき問題を、はっきりした見通しを立ててその上で発表をしていただきたい、これが私どもの切実なる要望でございます。  この原因の発表に伴いまして何を措置しなければならぬかという点につきまして二、三申し上げたいと思います。  第一点は、被害を受けておる住民とまた被害に困っておる会社、工場の措置であります。これをぜひとも考えていただかなければならぬと思います。住民は少し雨が降ると、長ぐつをはかなければ自分の家に出入りができない、またすぐ水は床上にも上ってくる、こういう悲惨な状況であります。また会社、工場にいたしましても、あるいは鉄鋼ありあるいは石油あり、あるいは造船あり、その他いろいろな重要な工場がたくさんあるわけであります。これらの工場はいずれも地盤沈下による浸水に悩んでおります。ときには操業を停止しております。このままでいくならば、おそらくあるいは閉鎖をしなければならぬ、あるいは移転をしなければならぬというような状況になろうかと思うのであります。現在すでに地盤沈下の対策に投資いたしました金額が約五億円といわれております。また早急に処置しなければならぬ金額が五億円程度といわれております。そういたしますと合計十億円程度の資金が必要だということになるわけであります。しかもこれらの資金に対しまして設備投資として課税をされるというような矛盾した事態も現在起っておるわけであります。従いましてこれらの資金に対しましても、長期かつ低利な資金の融通をぜひ政府において考えていただかなければならぬ、かように考えておるわけであります。  第二の問題は、県、市における財政負担の問題であります。私どもは、このように国土保安の立場から考えまし、てもきわめて重要な問題でありますので、一地域としての、新潟だけの問題であるというふうに考えていただいては困る、かように考えておるものであります。しかも現在普通の公共事業の補助率しかいただいておらず、都市排水に至ってはわずかに三分の一の補助しかいただいて起らない、こういう実情であります。これでは県、市の財政は破綻するばかりであります。従いましてこの対策事業の補助につきましては格別の御配慮をいただきまして、補助率を大幅に引き上げていただきたい、そうでなければ、県、市の財政は破綻をしてしまう、このことを特にお願いいたしたいと思うのであります。  第三に、ガス産業の助成についてこれまた十分に考えていただきたいと思うのであります。御承知のように日本では石炭石油等のエネルギー資源が非常に乏しいといわれております。そういう際に天然ガス資源というものが、いかに重要なものであるかということは申すまでもないことでざいます。しかも新潟がその宝庫であるといわれております。従いましてこれらのガス産業新潟にいるに大きな役割を持っておるかということもよくおわかり願えることと思うのでございます。従いましてこのガス産業をどういうふうにして伸ばしていた、だけるかということも十分お考え願わなければならぬ、かように思うものであります。たとえば天然ガスのくみ上げが、地盤沈下原因の一部であるとかりにいたしました場合に、おそらく住民の住んでおる市街地における天然ガスのくみ上げはやめていただかなければならぬと思います。その際にほかの地域からガスをくみ上げるといたしますると、排水の関係あるいは輸送距離の延長等の関係等から当然コスト高になり、産業的に採算がとれなくなるわけであります。その場合に、これに助成をしていただくということが新潟のガス産業を伸ばしていく上には、どうしても必要なことであると思うのであります。おそらく通産省では具体的な案もいろいろ考えていただいておることと考えておりますが、この点につきましては、特に善処をお願いいたしたいと思うのであります。  以下申し上げました被害を受けておる住民、会社、工場に対する復旧資金の長期低利の融資と県、市財政の負担の軽減とガス産業の育成、この三点につきまして、原因の発表と同時に、これに対する処置を要する問題として申し上げたわけでございますが、最後に特にお願い申し上げたいと思いますのは、前にも申し上げました通り、これはいずれにいたしましても貧弱な県、市の財政あるいは地元の経済状態で解決し得る問題ではございませんので、あくまでも政府の責任において原因の発表をし、これに対する一連の事業の処理を政府の責任でお考え願いたいということを、特に要望をいたしたいと思うのであります。  以上簡単でございますけれども、原因の発表に伴う処置を要すべき一連の問題につきまして現地の要望を申し上げ、意見を開陳いたした次第であります。
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に田邊茂司君。
  8. 田邊茂司

    ○田邊参考人 新潟地盤沈下の問題に関しまして、県、市並びに政府の特別の御援助をいただいておりますことを、まずもって感謝申し上げます。  三十一年の暮れから確認されました地盤沈下の進行は、その後ますます猛威をたくましゅういたしまして、現在は一日約一・四ミリの沈下速度を示しているような状態でございます。これにつきまして居住市民の不安は非常に大きなものがありまして、早急にこれに対する対策を要望しておる次第でございます。いろいろの今までの現象対策におきまして、一応応急の施設をしていただいておりますけれども、例を申し上げますと、その工事の途中、昨年の二十一号台風のときには、山ノ下だけで床下浸水が一千三百、床上浸水が百八十戸をこしているような状態でございます。こうなりまして特に沈下のはなはだしい地域の市民は、夜寝るときに子供の服装を解かないで寝せているような状態であります。御承知の通り高潮が参りますときには、まことに急激に参ります。夜中にも参ります。朝方も参ります。こういうような状態で市民は不安で子供の服装を解いて安らかに寝せておかれない状態が、もう約二年も続いておるようなわけであります。なお沈下に伴いまして衛生環境の面においても非常に憂慮すべき状態が示されておるのでありまして、市民は一日も早くこれに対する根本的な対策を講じてもらいたいと念願しておる次第でございます。政府におきましては、すでに沈下の被害に対して、ある程度の方策を講じておられることは現実が示す通りでありますけれども、その原因の防止並びに除去に至っては、まだ何らの方法も方策も立てておられないというのが現状でないかと思われます。これについては新潟市民としては非常な不安とふんまんを持っておる次第であります。特別調査委員会の御調査の方も相当に進んでおられるとかで、昨年地盤沈下対策連絡協議会で市民大会を開きました結果、通産省にも陳情に参りまして当時の鉱山局長さんあるいは安芸委員長にお目にかかった際にもお伺いしたのでありますけれども、すでに当時調査はほとんど出そろっておる、本年の一月十日前後にはなされるのであろうというようなことをお伺いいたしまして、喜んで帰って、その旨市民に報告してあるわけでありますが、たまたま安芸委員長の外遊その他の関係もありますとかで、今日に至るも発表がまだなされていないということは、ますますもって市民の不安と疑惑を高めているような状態であります。委員会には何か特別に圧力が加わっておるとか、あるいは政治的な関係において発表を握りつぶしておるのではないかというような疑惑が、市民の間に行き渡っているような状態であります。一日も早く原因を発表なされまして、これに対する根本的な対策を講じていただくことが、現在われわれの一番望んでいるところであります。申すまでもなく、沈下の状態が深刻化するとともに、事業会社の方の支出もただいま五十嵐さんが申された通り、すでに設備の転換あるいは対策費の支出が五億にも及び、また今年も同額程度の支出を要するというようなことでございますが、これは期せずしてわれわれ労働者に転嫁され、しわ寄せされるような状態でございます。そのために当然与えらるべき賃上げの問題も行き詰まっているような状態であり、かつある工場に至っては賃金の貸付とか、賃金不払いのような状態が起きておりまして、新潟市一万六千三百の労働者は非常な不安を持っておるわけであります。また沈下による状況が進むにつれて、たとえば港湾労働者のごときに至りましては非常に労働の過重、危険を伴っておるような状態であります。なお厚生、衛生その他の面におきましても、港湾地帯における安全、道路の破壊等の修理が非常に不完全なものでありますので、この方面における労働者の困難も非常に加重されているような状態であります。われわれ市民の常識的判断といたしましては、特別調査委員会審議を待つまでもなく、これはわれわれしろうとの判断でありますけれども、ますもって一番大きな原因は、天然ガスの採取に際してくみ上げる水の関係ではないかということを考えておるのであります。その他港湾浚渫によるヘドロ説あるいは地殻変動説等もありましょうけれども、われわれが身をもって確かにそうであるはずだと考えられる原因は、地下水のくみ上げによる、かように判断して疑っていないのであります。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、通産省といたしまして、まだ研究発表がなされないので、その対策が云々と申しておられるようでありますけれども、調査は、とにかく沈んでいることは現実の問題です。そうしてわれわれはその上に住んでおるということです。これは一日も早く一刻も早く、その原因を除去して、抜本塞源の方法をとってもらわなければ、安心してあそこにわれわれが生活できない状態であります。この点につきましては、ガス企業者の方も最近なかなか協力的になってきたやに見えまして、山ノ下地帯におけるある程度のガスの自発的なくみ上げ停止というような措置も講じられておるようでございますけれども、業者の方にももっと御協力をお願いしなければならない、あるいは通産省の方でも徹底的な処置を講ずる以前でも、業者に対する運営、指導の面において、しかるべき方法があるのではないかと考えております。どうぞこの点につきまして、発表いかんにかかわらず、一刻も早く御処置あらんことを希望している次第でございます。いろいろ申し上げたいこともございますけれども、一応この程度をもって私の陳述を終ります。
  9. 長谷川四郎

    長谷川委員長 江口孝君
  10. 江口孝

    ○江口参考人 私は天然ガスを使って仕事をしております者の一人としての考え方を申し上げてみたいと存じます。  新潟は御承知の通りに、日本で天然ガスを最も多量に産出いたしております。今から八年ほど前に、私どもがそれを化学工業に利用することを考えまして、最初に天然ガスからメタノールを作ることを考え、現在においては、日本において最大の生産能力を持っておりまして、年産六万トンの化学工業となった。次いで松浜地区に今度は肥料を作りますところのアンモニア、硫安、尿素を作ります工場を建てまして、これまた今春硫安換算年産四十万トンという日本における最大の肥料工場の一つにまでなって参りました。どうしてこういうことになったかと申しますと、ひっきょうするに、経済的に見ますならば、天然ガスが安い、石炭よりも、石油よりも天然ガスが安いから、こういう仕事が次々と発展して参りました。私どもがこの仕事を始めましたについて、日本における同業者二十数社が同じく天然ガスに着目いたしまして、これに転換しようというので、はからずも国内天然ガス・ブームを起したのでございます。ところが、ちょうどこの天然ガス化学工業というものが、やっと日本においても芽を吹いたというやさきに、まことに不幸にも地盤沈下の問題が起って参りまして、ただいまその原因については、科学技術庁において調査して下さっておりますが、あるいは天然ガスをとるための地下水のくみ上げ過剰によるのではないかというような疑問がかけられまして、私どもも非常にこれを悩んでおる。一面においては、やっとこの日本における大産業の一つである肥料の製造ということが、国際レベルまで持っていけるというやさきにこういう難問題が起った。しかし、私どもはやはり市民に御迷惑をかけてまでこの仕事をあくまで強行せねばならぬという筋合いのものではないと思います。どこまでもこれは良心的に行きたいということです。もしもガスにその原因がございますならば、これはまこ」とに大へんなことであるから、早く原因を究明して、私どもに明示してもらいたい、それによって、私どもはいかようにもまた方向転換して適当な措置をとらなければならぬというふうに考えて、その原因のはっきり出てくるのを、実は鶴首して待っておるような次第でございます。ところが、これは大へんむずかしい問題でございまして、日本のみならず世界各国において地盤沈下の問題は、そこにもここにも起っておる。そしてこの問題は、学理的に調べて参りますと、実にむずかしい問題となって、これをはっきりと明言するまでには相当な時間を要するということが、どこの国でもわかってきておる。そこで、それでは私どもは新潟市民の感情も勘定に入れなければならぬということで、このたび新潟地盤沈下の最もひどい場所において、ガス業者は自発的に日産十三万五千立方メートルという大量のガスの採取をとめたのであります。一口に十三万五千立方メートルといいますけれども、これを経済的に見ますと、千立方メートルをもってアンモニアが一トンできる、また一トンのアンモニアから一・六トンの尿素ができる、一トンの尿素は四万円の価値を持っている、従って、これを年額に換算いたしますと、三十億円に相当するのでございます。けれども、私どもはそういう問題でないから、一応このガスをとめて、そのうちに原因もはっきりするだろうからということで、このガスをとめたのであります。そうして、と同時にいろいろ親切に考えて下さる方々がございまして、この原因がはっきりするのに時間がかかるであろうから、しばらくの間新潟中心部からガスの採取をやめて、新潟市の周辺あるいは郊外の方の遠距離にこのガスの採掘というものをずっと疎開していって、これをガス・パイプでもってつないで、それをガス業者に供給してみたらどうかというような議論が、地元においても最近行われるようになり、またこれは相当真剣に考えられてきております。そこで、私はこの考え方はきわめて妥当な考え方であろうと思いますけれども、ガスを取り扱う業者として一吉だけこれについてこの点だけは考慮に入れておいていただきたいということを申し上げてみたいと思います。  ただいま申し上げましたように、天然ガスを使うということは、ガスが原料として安いということでございます。もし天然ガスの値段が一立方メートル八円以上になりますと、もはや天然ガス経済的の値打ちはなくなってきまして、それくらいだったら石油を使った方が安上りということになってしまいます。そこで、国際市場において私どもがこの製品を戦わせるということはもう可能性がなくなってきます。ただ安いということにかかっている。しかるに、かりに私ども新潟と長岡あるいは直江津というふうな遠距離の地区にガス・ラインをもってつないでみるということを考えて、いろいろのケースを勘定してみますと、一立方メートルについて二円ないし三円コスト高になって参ります。そうすると、現状において新潟天然ガスの値段は一立方メートル六円ないし八円くらいのところでございます。それに二、三円プラスしますと、八円以上十円くらいの値段になって参ります。そういう値段で一体製品が国際市場に持って出れるかというと、これは全く不可能であります。  これを数字をもって申し上げます。まず日本の状況を申し上げてみますと、現在国内において四百五十万トンくらいの硫安換算肥料を生産しております。そのうち国内使用は二百七十万トン、外国に輸出しなければならぬというのが百八十万トンで、その輸出をしなければ、この産業は成り立っていかないという状況であります。是が非でもこの百八十万トンの肥料を輸出しなければ食っていかれない、これにつながるところの何万人かの労働者も食っていけなくなる、こういうことになって参ります。その輸出しなければならぬ百八十万トンというものは、たとえば硫安にしますと、一トンについて四十ドルというような安い値段、ところが今日国内においてどれくらい生産費がかかるかというと、やはり五十ドル以上かかっている、従ってこの輸出会社は年々大量の赤字を積み重ねながら現に数十億の赤字を背負って、苦境にあえいでおるのであります。しかるに、外国は一体どういう状態にあるかということをぜひ頭に入れておいてもらいたい、そのために私はイタリアの地図をここに張りました。これはイタリアの北部の地図でございますが、赤線を引っぱってございますのは天然ガスのラインでございます。つまり天然ガスをクモの巣のように引き回してございます。しかもこの天然ガス・ラインは三十気圧ないし四十気圧の高圧力のもとにつながっております。それから青線の引っぱってありますのは、新潟と同じように水とともに上ってくる水溶性天然ガスでございます。これはイタリアにおいては半官半民の会社が全部これをコントロールいたしております。その産額、これは一九五五、六年の統計でございますが、年産実に六千億立方メートル、これを日本に比べますと、日本の約二十倍でございます。そういうものを一つの会社がコントロールしてやっております。そうしてこれは井戸元においては実に一立方メートル八十銭、日本における価額の十分の一であります。そしてこれをガス業者に供給いたします場合には、税金その他を加えまして四円五十銭、これを燃料とする場合には日本の金にして七円というようなことでございまして、日本の業者の使っている原料と比べますと、実に安い原料を供給しておる。しからばそのでき上った品物はどうかといいますと、日本では硫安といたしましてわずか一トン五十二、三ドル、しかるに諸外国、欧米の値段を見ますと五十七ドルから六十七ドルというふうに国内価格は高くして原料は安くする、これほどまでに諸外国、欧米各国においてはこの産業をあらゆる面からよく指導していっておるのでございます。日本の現状におきましては、原料は高い、外国に出すときにはほっちらかして四十何トルというような出血輸出をしなければ食っていかれないという状況になっておる。でございますから、かりに政府におかれまして今後いろいろこの問題をお取り上げ下さいます場合には、どうしても諸外国においてこういうことをよく考慮してやっておりますることを御研究下さいまして、これをお取り入れいただきますようにお願い申し上げたいと思う次第であります。これが私の申し述べたいことの一つでございます。  それから左の方の地図に赤くぬってございますところ、あの付近が地盤沈下のひどいところでございまして、ガス工業者としてはここを自発的にガスをとめております。ところが私どもまだ原因がはっきり明示されないうちに、このガスを中心部から自発的にとめてしまったということは、ただいま申し上げましたように非常な経済的な大きな犠牲の上に立っているわけでございます。従ってこの地区におけるガス井戸をずっと郊外に疎開していきつつございますが、この疎開井戸を開設いたしますような場合には、ぜひとも政府におかれましても御同情あるお取扱いを優先的にいただきとうございまして、これはいろいろと御考慮をいただいておると思うのでありまするが、重ねて業者として懇願申し上げた次第でございます。  それからなおもう一つつけ加えさせていただきたいと思います。これはガス業者からお願いしていることでございまして、天然ガスは一応地盤沈下の原因の一つではないかと申されております。私どももそうであってはならぬのでいろいろと心配いたしております。現に臨港地区に参りまして工場または住民の方々が非常に現実に地盤沈下に悩んでいらっしゃる状況を見まして、ほんとうに私も御同情にたえない次第であります。しかるにここに非常に不思議なことがある。と申しますのは、私はここに写真を持って参りました。これは万代橋ができましたときに、昭和四年に新潟県において編さんされましたパンフレットです。これにでき上ったときの万代橋の写真が出ております。しかるにこれはきのう私が上京いたしますときに、きのうの朝、私は万代橋の写真を撮影してみました。三十年荊の万代橋と現在の万代橋はほとんど変っておりません。つまり臨港地区における地盤沈下はものすごい勢いで沈下しておるわけですが、あれから千メートルばかりしか離れていない万代橋は、三十年間かくのごとくほとんど変化していない。ほんとうにこれはどういうことであるか。また私はガス井戸を疎開するために、ずっと新潟の北の中条の方へ参りました。これからガスを採掘しなければなりませんものですから、地盤沈下でガス業者が悩まされては困ると思いまして、あらかじめ私はそこの写真撮影をいたしました。ところがこれは驚いたことに、ガスを採取しないのにこの地区は神社も民家も道路も水びたしになって、ひどい地盤沈下が認められるのであります。これは私はここに写真を持って参りました。そこでこの付近における地盤沈下というものは、なるほどガスもあるいは御調査の結果、原因の一つとして出て参るかもわかりません。いわゆる護岸地区がこういうひどい沈下、またこの臨港地区からほんの千メートルしか離れていない万代橋がほとんど沈下していない。あれやこれやを考えますと、実に不思議なことがございます。そこで私はこれはほんとうに全力をあげて御調査していただきたい。ことに私どもしろうとといたしまして申し上げたいのは、あの大河津の分水の出口に千町歩からの陸地ができておる。そうしてこの一方において信濃川の川合は、どんどん侵食されていくということと一連の関係があるようにも思われます。従ってこういうこともガスの原因調査と同じウエートを持って、どうぞ一つ御研究、御調査をお願いしたい。もしガスをとめて地盤沈下がとまってくれれば仕合せでございます。しかし私どもがガスをとめて地盤沈下がさらに継続する場合には、それだけ手おくれになるということが考えられますので、この調査というものはあらゆる角度から同じウエートを持って進めていただきませんと、後になって大きな手違いにならぬとも限らないということを私はほんとうに心から考えております。  こういうことを申し上げまして、御当局の何かの御参考になりましたらと思う次第でございます。どうかよろしくお願いいたします。
  11. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に浦川倍蔵君。
  12. 浦川倍蔵

    ○浦川参考人 私は被害事業者連盟の一員としてここにお話しを申し上げることになりました。当委員会の先生方、代表の方が先般新潟へおいでになりまして、被害状況を御視察していただいたのですが、全般のお方に被害の状況をまずもって簡単でございますが、御披露を申し上げたいのであります。  まず代表的な会社から五つばかり取り上げて申し上げます。まず北越製紙であります。これは焼島地区にございまして、御承知のように、紙をお作りになっておる。あそこは地盤がだんだん下って参りまして、貯木場及び構内のところの水位がわずか五センチか十センチぐらいしかグラウンド・ラインとの差がついていない。従ってこれ以上下りますと、そこの工場敷地がこの冬あたりになりますと、全部水びたしになる。現在工場側におかれましては、再々砂を貯木場に入れられておりますけれども、あそこをごらんになりますと、もう泥濘です。従って貯木されておる下の材木は腐食して、製紙の原料にならないというような状態でございます。またあそこは事業の性質上日々十五万立方米の水をお使いになります。これの自然排水が今は困難だというような状態であります。これを繰り返していきますと、もうすでに現在でも水位とグラウンド・ラインとの差がわずかでございますが、この冬になりますと構内が使用にたえなくなる。従ってうんとかさ盛りをするとか、あるいはどこかへ移転するとかというような状態になっております。  またその次に、隣にあります通船川を隔てて向い岸にあります日本鋼管さんでは、今電気製鉄をおやりになっております。これの炉の周囲の水位がやはり高くなっておりまして、御承知のように電気炉の中に水が入りますと、爆発するおそれがあります。従って現在はその炉の門に井戸を掘って排水をなさっております。これは通船川、大山運河という水位から見ますと、ほんのわずかの差がついているだけでございます。  それから信濃川の対岸へ参りまして、新潟鉄工さんの話を申し上げますと、あすこは場所によりまして、もうほとんど水位とグラウンド・ラインとの差がついていないというところがございます。あすこは造船をおやりになっておりますが、船台に年々水が上って参りまして、現在では船の建造のプロペラのドックが水浸しになって工事ができないという状態になっておりますし、またその対岸の山ノ下工場では、あすこはエンジンの鋳物をおやりになっております。これが以前は地下に鋳物の型を置いてお作りになっておりましたが、現在では工場の路面の上に鋳型置いて、作業をなさっている。またその炉も電気炉でございますが、今少し地下にもぐっております。これが一とき水か入りますと、やはり爆発の危険が起る。  それからその次の信濃川河口にございます臨港開発さんの状態は、あすこは漸次護岸が沈下していきますために、港としての機能が今半減されているといっても差しつかえない状態でございます。先般県の手で防潮堤をお作り願ったのでございますが、これがそのままの以前の護岸のかさ上げですと、まだ港の力も発揮できるのでございますが、これがうしろへ五メートル下って工事されましたために、そこのところは荷役ができないというような状態になっております。また自費で護岸のかさ上げをおやりになったところも、昨年の七月はちょうどその境目が水面であったのが、ただいまではその境目が十数センチ水の下になっております。ここも新潟の重要な港でございまして、年間三百万トンの移出入をされております港が、沈下されていくためにその機能が停止してくるということは、非常に大きな問題であります。しかもその周囲にございます倉庫、これは毎年冬の季節風、及び憂の台風の季節になりますと、護岸が下っておりますために、大きな波を受ける。従って倉庫自体がそのときは水没しになって、現在では各倉庫ともコンクリートで一メートルの土台を築いてお使いになっておる状態であります。従って昨年暮れの新潟米の貯蔵も、その機能が半減されてしまっておるというような状態でございます。裏日本唯一の港である新潟港が機能が停止するということは非常にゆゆしき問題じゃないか、こう考えております。  また最後に私どもの工場は、昭和九年程度は、手前どもの工場から海岸線まで相当距離がございました。しかも砂丘があってグミ林になっておったという記録がございますけれども、年々海岸か決壊して参りまして、現在ではもうすでに工場の裏が波を打っておる。しかもこれば地盤沈下関係がないと思いまして、私ども自分の手で護岸を行い、また海岸決壊防止の縦堤を四本築き、それを防いでいったのであります。現在ではその縦堤がすでに一メートル六十センチ水面から下っていってしまっておる。こういうことで私どもの方の工場も現在の水位と地表面との差は、わずか五十センチくらいになっており、しかも潮が上って参りますとその水位が上ってきて工場の一部は水浸しになっております。御承知の通りに私どもの工場では燃料を扱っておりますので、構内が水に侵されますと、これはまた相当危険性を伴ってくる。昨年度の予算をいただき、また今年も裏の護岸かかさ上げされていただくことになっておりますので一応高潮及び季節風による波の被害は食いとめてもらっておりますけれども、ここ一年先、三年先になりまして、現在の状態で推移していきますと、一メートル半、二メートルというふうに沈下してきます。そうしますとせっかくの護岸も年々それだけかさ上げしていかなければならぬ。また私どもの方の装置全体といたしまして、そういうふうな低位置になりますと、これの操業が不可能になるというふうな状態になっております。この問題が一刻も早く解決していただきませんと、新潟市にあります各重要工場そのものの運命実に危いところに行っておりますので、一刻も早く対策を講じられ――しかも年々の対策費というふうなものでなくて、根本的の対策をお考えになりまして、何年継続事業になるかわかりませんけれども、一刻も早く着手していただきたい、こう思っております。もう現在が各工場ともすでにそのたえ得られる限度になってきております。これが一年間先になって原因がどうのこうのと言われまして、その原因がわからなければ対策ができないというのでは極端な例かもしれませんけれども、死亡診断書にならないように一つお願いしたいのです。原因がわかったが、海の中から煙突が出て起ったというような状態ではまことに困ります。  大体被害状況は簡単でございましたが御説明を終りまして、あと私どもの要望を少し申し上げたいと思うのですが、先ほどの一刻も早く沈下対策の根本的対策を立てていただきたいということもその重要な大きな点で先に、ちょっと触れてしまいましたけれども、われわれ事業者といたしまして先般いろいろ会合を持ちまして、この商工委員会あてに要望書を出しました。ただいまお手元にお届けしたと思いますが、ちょっと朗読させていただきます。   「新潟地区地盤沈下に関しては、常日ごろより種々御配慮をわずらわし感謝いたしております。沈下の深刻なことはすでに十分御認識をいただいていることと信じます。この沈下原因探求については、御当局の御努力で大体の原因はつかめたようですが、まだ公的発表の段階に立ち至っていないことはまことに遺憾に存じます。われわれ沈下被害事業者は、このままでは座して死を待つにもひとしい状態と判断し、相集まって昨年十一月連盟を結成し、全力をあげて事態解決のために渾身の力を傾けて参りました。これにより天然ガス鉱業会新潟支部と協議し、同支部よりガス坑井六十本、ガス量一日十三万五千立方メートルの採取停止実行の確約を得ました。これに反し、政府におかれては何ら積極的に新潟地区地盤沈下を阻止する手を打たれておりません。はなはだもの足りぬゆえんです。   われわれが現在まで沈下のために投下せざるを得なかった対策工事費はすでに巨額に達し、今後の予定対策も全く想像以上ですが、二年後の御当局推定沈下量一メートル五十センチにでも達すれば、われわれ事業者はすべてを放棄せざるを得ないと存じます。」  次にその明細を申し上げますと、北越製紙、石井精密、丸肥運送、三菱金属、日本海倉庫、日本鋼管、日本石油、新潟アスファルト、新潟電気工業、新潟鉄工所、新潟臨港開発、新潟硫酸、日新燃料、日東硫曹、小野田セメント、島本鉄工所、昭和石油、杉治商会新潟工場、滝沢運送、これら諸会社の総額をあげますと、現在までに投下した沈下対策費が四億五千万円になっております。また計画中の沈下対策費として五十二億の巨額に達しております。またこの全会社が放棄したという場合には一千十一億の巨額の数字になります。   「このほか沈下によって惹起される危険及び生産上の損失は枚挙にいとまなし。連盟各社でこの巨額に達するから、他の沈下工場、住宅、商店等を計算するなら天文学的数字になる。   以上の通りですが、事態はまことに切迫しております。われわれとしてはこの苦境を切り抜けるために何はともあれ、政府の果敢な沈下防止策を現実に打ち出すことを強く要望いたします。現在われわれが御当局に強く期待する事項は、要約すれば次の諸項目に尽きます。右事情御賢察の上本件強力に推進下さることを懇願いたします。  一、原因の早期究明及び沈下防止の積極的行政措置、  二、沈下対策費の全額国庫負担  三、第二項目が決定するまでの長期低金利融資  四、以上を実現するに可能な立法措置  五、恒久的沈下対策の早急実施  以上、新潟地盤沈下対策被害事業者連会長大久保賢治郎の名前でもって、要望書を皆さんのお手元へ出してございます。これをごらんになっていただきまして、一刻も早く根本的な対策をお取り上げ願って、すぐに実行していただきたい。これは私ども科学屋の一人といたしまして、ガス工業の勃興ということにつきましては双手をあげて賛成をしているものでございます。先ほど来各参考人が申し上げましたように、住民の不安と工場の放棄というような大きな問題がございますれば、これは何らか他の方法でもって、この工業を育成するという手段をすぐにおとりいただかなければならぬのじゃないかと思います。先ほど例をあげられましたが、これがもうすでにわれわれの行く先を示しているのではないか。しかも新潟県全体には相当のガス量がある。ですから沈下に影響のあるところは、まずその原凶の究明とか対策には相当長期にかかりますので、いろいろこれを国家的の点から御検討願って対策費を出すにいたしましても、いずれこの新潟地区のガスはなくなるはずです。そうすればいずれ遠距離から持ってこなければならぬ。そうしますれば将来に起る遠距離から持ってくる点を現在行なっていただいて、今の新潟地区の地盤の沈下の原因をその間にはっきりさせて、またガスの採掘工法も今までいろいろ伺っておりますと、ガス水をくみ出さないで地下からガスを抜く方法はないか、あるいは沈下させないで、何らかとる方法はないかといろいろ御検討下さり、また御研究にもなっていると思うのであります。そういう研究は一日にして成るものではございません、そこに相当時間も必要と思われます。従いまして先ほど申し上げましたように、遠距離からまず持ってきてその間の時間をかす。そうして新潟地区に沈下を起さないような方法が決定されましてから、新潟地区のガスをおとりになるということにすれば問題ないじゃないかというふうに、私しろうとなりにも考えておるのでございます。それからまた新潟港の問題にいたしましても、将来日ソ貿易の開始だとか、あるいは中共貿易の開始、また南方貿易の増額というふうなことから見ましても、先ほど尿素を百数十万トン輸出しなければならぬというようなことを伺いましたけれども、これらもやはり新潟港か活発に動いてこそ、あそこは初めて右利にそういう地区に出せる唯一の港じゃないか、こう思いますので、港の沈下をさせないで強化をさせていくということが非常に重要でないだろうか、こう思っております。私ども被害事業者連盟といたしましては、現在もうすでに巨額な費用をそこに注ぎ込んで、目先の弥縫策でございますけれども対策をやっております。もうこれ以上進みますと、とうていわれわれの負担にたえないというような状態でございますので、抜本的の対策を至急におとりになって、来年度と言わないで、本年度のうちからその御計画の一端を出発されるように、くれぐれもお願い申し上げたいのであります。なおまた皆さん方もぜひ新潟の方にお出かけになりまして、全員の方がすべて調査され、そうしてこういう殿堂でなくて、新潟市においてこういう会議を持っていただきたい。そうして十分認識されまして、すべてに対処していただきたい、こうくれぐれもお願い申し上げまして、私の話を終りたいと思います。
  13. 長谷川四郎

  14. 岸本勘太郎

    ○岸本参考人 私は帝国石油株式会社の社長でありまして、同時に天然ガス工業会の会長をいたしております。  帝国石油は新潟市及びその周辺におきまして約半分以上のガスの生産を受け持っておりますが、この新潟市の地盤沈下の問題は、一昨年秋ごろからやかましくなりまして、非常に心配をいたして参っております。実は帝国石油といたしましても、東洋高圧と提携いたしまして、新潟市にそのガスを利用しての化学工業を興しております。約六十億円の投資もいたしておりまして、新潟市の地盤沈下というものについては会社としても非常に心を痛めたのであります。中にもこの山ノ下地区辺の住民の方々の御難儀というものを見ますと、まことにゆゆしい問題だと思いまして、それで昨年の春、政府におかれては原因調査を進める御意図があるということを承わったのでありますが、ガス工業会といたしましても、至急に中立的に、そして厳正に徹底的に原因の御調査をお願いしたいというので、その促進方についてお願いいたしまして、その結果資源調査会の下部機構として新潟地盤沈下対策特別委員会というものができて、今調査をしておられるわけなんでございます私どもとして、今まで何かあそこのガスを採取することが会社の利益であり、業者の利益であるかのごとく考えられておるやに仄聞するのでありますけれども、決して私どもはそんなものではないのでありまして、私どもとしては新潟市民の御不安を除き、新潟市とともに共存共栄をしたいという一念以外に何ものもありません、  それで、調査が始まりましてから、この辺約二里四方は去年の十一月から新しい井戸を掘ることをやめております。ただいまこの区域で二十四万立米のガスが出るのですけれども、新しいところを掘らないで補給をいたしませんと、六、七年たつと全然とれなくなります。それから赤線の引いてありますところが大体一里半四方くらいのところです。それは青線の中に入っておりますけれども、大体これが一日に十三万五千立米あります。これはこの二月の三日から採取を全然停止いたしております。それによって現地の不安焦燥か少しでも休まっていただけば、調査の進行についても便宜を得れるのではないかということでありまして、今後原因が調査されましたならば、私どもとしては快く政府の御指導に従おうと思っております。何らそこに利己的な考えを持っておりません。ただお願いいたしたいことは、新潟天然ガスというものは、日本にはきわめて少い貴重なる資源でありまして、もしも科学技術庁あたりの力によって、単に原因を究明するだけでなしに、こうすればガスがとれるのだ、あるいは井戸の間隔を広げるとか、あるいは深度に制限を加えるとか、あるいはガス水をくみ上げるのを制限する――いずれそういうことは立法措置に待たなければならぬ問題でありましょうけれども、そういうことによってあそこのガスが利用できるということになれば、これはただ単に新潟市の繁栄だけでなしに、日本の経済のためにも非常に大きな問題じゃないかと思っております。  重ねて申し上げたいことは、少くとも私の会社といたしましては、新潟市とともに共存共栄でいきたい、そうして日本にある貴重なる資源を十分に活用して、日本経済に寄与いたしたい、こう思っておりますので、いずれまた立法の措置とか、商工委員会として御調査もあることと存じますが、何分ともよろしくお願いいたしたいと思います。
  15. 長谷川四郎

    長谷川委員長 北村一男君。
  16. 北村一男

    ○北村参考人 市の助役が申し上げましたように、新潟市の地盤沈下の問題を本委員会でお取り上げになりまして、われわれに参考意見陳述の機会をお与え下さいましたことは、まことに感謝にたえないところでございます。  地盤沈下の苦悩もしくは不安に満ちた生活は、他の参考人からお述べになりましたから、あえて私が申し上げる必要はないと思いますので割愛いたしまして、今おのおのの立場からはっきりはおっしゃらなかったのでありますが、市民の間に、また県議会などの間に、ガス説と、それから港を浚渫したためにすべり出すという説の二通り、そのほか日本海の海底が沈下するのじゃあるまいかというような説がございますけれども、こんなことをうっかり申しますと、五十嵐助役が申しましたように地方選挙の前である、また知事選挙の前でもありますから、これはうっかり申し上げられない、こういうわけでありまして、原因についてはしばらく国の御調査に待つ以外にないと考えております。また県市においてもほったらかしておくのじゃない。やはり国と同様の立場におきまして調査会を作り、それから対策委員会を作りまして、一生懸命に原因の究明と、原因はさておき、日の先に迫った対策をとっているのでございます。何しろこういう目に見えない――いって、やがて見えてくるでありましょうが、今見えないものを相手に対策を講ずるということは、目に見えないいろいろの金がかかる。県の立場からいいますと、新潟市は新潟県において大切なダイヤモンドみたいなところでありますから、これは少々金をかけてもかまわぬ。少々の金ならかけられるが、これが数億をこえますと、新潟県というのは広いんですよ、全国で四番目の県であります。この県全体の土木事業に相当の金が要る。これを知事の立場において、新潟市は大事だから、みなよそのを削って新潟市に持ってこいといえば、新潟市の人はきげんがいいかもしれませんが、そういうわけには参らぬ。現にもう県議会内にば非常な不平が出ておる。新潟市ばかりが新潟県のものでないのだからという不平が出ておりますから、そういう意見を調節しながら、できるだけ金をかけるようにしなければならぬ、こういうところに知事としての苦心があるということを御推察願いたいのであります。  ところで、ことしの予算をお認めいただくとまた相当の金かかかる、こういうことで、国会に対して数次にわたりまして、地元の負担金を軽減してもらいたい、われわれも十分対策を講じたいから軽減してもらいたい、こういうことをお願いいたしまして、あるいは審議会をお設け下さる、あるいは議員立法をしていただけるかのような新聞の記事がございまして、非常に期待をいたしておるわけでございます。どうか地元負担をできるだけ少く、まあ三分の一以下にしてもらえれば非常にありがたいんであります。  それからその次に、今ののは都市の問題でございますが、新潟周辺の亀田だって――いずれ中村先生がおいでになったら御案内申しますが、あの市の周辺の耕地がやはり地般沈下しておる。農地が広範囲にわたって地盤沈下をしている。これまたいながの人がきのう、私がここへ伺うということを聞き知って、新潟の町のことだけ問題にしないで、われわれのを忘れてもらっては困る、こういうことで、かつては東洋一の排水池のあったところが、今や地盤が沈下したために排水ポンプの機能を果し得ない、こういうような実情にあることも、あわせてお考えを願って、新潟周辺の地盤沈下に対しても同様のお考えを賜わりたい、こういうことを痛切の表情で陳情いたしておりましたが、これも一つ特別立法あるいは審議会をお設けになるとき、都市だけでなしに、周辺の事情も考慮をしていただく、こういうふうにお願い申したいのであります。ともかくも市と県は今金のことなんて言うておられませんから、吹雪の中を行くような気持で、まあ何でもかまわない、行くところまで行こう、こういうことで、地元負担をしながらやっておりますが、こんなことが長く続くものでございませんから、こんなことを長く継続させぬで、御同情のある、三分の一以下の線を、一つわれわれの負担に相なりますように御配慮を賜わりたい、こういうことをお願い申し上げる次第でございます。  それから江口日本瓦斯の専務のお話しになりました、パイブ・ラインですね。新潟県なんというのは、どこを掘ったってガスがうんとあるんですから、あに新潟市のみならんやであります。けれども、新潟市に工場があるんだから、自分の軒下からとれば一番コストが安くなることも事実でございます。そこで、私も、パイプ・ラインなんていうのは三年も前から考えたんですよ。私は本米事業家でありますからね。役人上りじゃありませんから、考えたのであります。だけれども、そのときあなたの方があまり賛成しなかったんだ。(笑声)それでこれは私は計画を放棄いたしておりません。しかしこれを作るには、新潟県だけでも数十億の金がかかりますので、委員長初め委員各位におかれましては、新潟県にパイプ・ラインの――まあ私が親方になってやるわけですからね。県が主体になるとなれば、知事か親方にならなければならぬ、こういうので、これもまた尋常凡庸の徒でないから、うまくやります。うまくやりますから、一つ金の心配さえしていただければ、こんなものを一つの会社の――江口専務は自分の会社で作るというようなことを言われましたが、これは何もあなたの会社だけがお作りになる必要はないのであります。県なりそれからあなた方も少しお出しになっそお作りになれはいいのであって、また帝石では近く、上越地方にも豊富なガスが噴出いたしましたから――新潟県全部、もうちょっと掘ればガスが出るのであります。ただそれを需要の盛んなところに持ってくることに距離がある、これだけの話でありまして、このパイプ・ラインの敷設に対しては、沈下問題の御討議をいただくついでと申しては失礼でございますが、どうかその節バイプ・ラインによって、これも有力の解決策でありまして、私がやりますれば、専務かさっき二、三円高くなるなんていうようなことは、いたさせません。これはもう安くやる、何も県は、あの起債を返していけばいいんですから、それ以上もうけるなんていう必要はないのでありますから、これは安くいく、必ずそのコストは合うように、私がさせます。でありますから、どうか御安心下さいまして、その金だけを貸してもらいたい。金は、今新潟衆は赤字県でありまして、私は赤字県十八県の特別委員長をしておりますがね、こんなのはあまりけっこうな話でございませんが、赤字県というのはいろいろの制約を受けておりますから、一つ金だけを御心配下さるように御配慮を賜わりたい。そういたしますれば・一番御心配になっている新潟地区からしいて持ってこなくとも、これは幾らでも持ってくることはできる、そうしてそんなに高くならない、こういうことになりますので、いろいろの御注文を申し上げまして大へん恐縮でございますが――それから被害事業者連の方からお願い申し上げました、いろいろの施設改造あるいはまあ具体的に復旧と申し上げていいと思いますが、災害復旧のために必要といたしまする資金の面について、長期低利の資金を一つお回し願うように御配慮を賜わりたい、こういうことを申し上げまして――市と県はこの問題について一生懸命である。まあことし御決定いただかなくとも、ことしの分はどうやら何とかいたしますが、もうこれが、三十四年にやったんだから、もう一年がまんせいとおっしゃっても、なかなかがまんは相ならぬ、こういう事情をよく御了察いただきまして、以上申し上げたことについてよろしく御配慮を賜わらんことをお願い申し上げまして、私の陳述を終ります
  17. 長谷川四郎

    長谷川委員長 この際午後一時三十分まで休憩をいたします。質疑は午後に行います。     午後零時三十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十八分開議
  18. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  新潟地区地盤沈下の問題について引き続き参考人より意見を聴取することといたします。午前中に御出席されませんでした東京大学教授の坪井忠二君が出席されましたので、まず坪井参考人より御意見を聴取することといたします。  坪井参考人には御多忙中にもかかわらず御出店下さいましてまことにありがとう存じました。午前の委員会におきまして、現地の方々の御意見をお聞きしたのでありますが、学識経験者としてどうぞ忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。ただ時間の都合もございますので、はなはだ勝手ではございますが、最初に御意見をお述べ願う時間を大体十五分程度にお願いいたしたいと存じます。委員からの質疑もあろうと存じますので、その際十分お答え下さいますようお願いをいたします  それでは坪井参考人に御意見をお述べ願います。
  19. 坪井忠二

    ○坪井参考人 私は東京大学の理学部におきまして地球力学ということを専攻しておるものであります。学校を出ましてからいろいろな仕事をいたしましたが、その一つに土地の上り下り、あるいは伸び縮み、傾きというようなことを十年ばかり勉強したことがございます。それで私、実はこちらで問題になっております新潟の問題を数字的には資料も持ち合せませんし、具体的には知らないのでありますけれども、私の今までの研究あるいは勉強いたしましたことから考えて、これがどういうものであろうかということについて述べてみたいと思います。  日本は非常に地盤の上り下りが激しいところでありまして、かつそれでありますから資料が非常に多い。その資料と申しますのはもとの参謀本部陸地測量部、現在では建設省の地理調査所所管の測量でありますが、この測量というのは世界で一番いいくらい非常に丁寧にやってあるものであります。たとえば水準測量といたしましても、ある水準点から二キロ先に行って帰ってくる、そのときに誤差がなければ、もとの高さがきちんと出るはずでありますが、それが三ミリばかり狂っていたならば、その測定はだめということになっております。しかし三ミリをこすというようなことはほとんどありませんで、一ミリないし一ミリを割るくらい非常に正確なものであります。そういうような測定で日本中約一万水準点がありますが、その高さが逐次年とともにどういうふうに変っているかというようなことが、ずいぶんだくさん調べられております。そういうようなことをいろいろまとめた、私の書いたものもあるのでありますが、ここではどうである、ここではこうであるというような、ただ記載的なことでなくて、それを分類いたしまして、こういうような土地は、こういうふうな運動をするくせがある、こういう土地はこんなふうになるというような一般的の法則、規則といったようなものを導き出すというのが、われわれの勤めでありますけれども、そういうような規則は非常にたくさんあります。日本の中央山地、たとえば長野県、岐阜県あたりにかけての日本アルプス、あの辺がだんだん弓なりに持ち上ってくるとか、あるいは中国地方の脊梁山脈のところか持ち上ってくるというようなことがいろいろございますが、その中の一つとして沖積平野、つまり関東地方とか濃尾平野であるとか、今度の越後平野、あめいうふうな平野のところの沖積地は必ず沈むということが、日本のどこでも当てはまることであります。これは事実であります。さてその原因は何だということがすぐ問題になると思います。そこで沖積平野というものは一体どういうものかと申しますと、たとえば東京などお考えになっていただくといいのですが、下に堅いいわゆる第三期層というものがありまして、その上に約百万年昔このかた積ってきた泥、砂、砂利といったようなものが厚く堆積している。そういうものが平らになりまして沖積平野を形成しているわけですけれども、これがだんだん沈む。たとえば東京で申しますと、丸の内はやはりそれの典型的なもので、あそこはどんどん下っております。あそこいらにある建物は土台を下にうんと長く出しまして下の堅い岩盤に用いてあるものでありますから、そちらは沈まないでこちらがだんだん沈む。従って今たとえば三信ビルなどに行ってごらんになりますとわかりますように、道がだんだん下ってしまって、段々でなければ上れないということが東京でも現在起っておる。こういうような種類のことが方々で起るわけであります。  そこでなぜそれが起るかという問題であります。それは原因が二通りあると考えられます。一つは沖積層という厚い層が、自分で縮んでいくという現象、それからもう一つは、たとえば東京なら東京に、何十メートルあるいは場合によっては何百メートルというような厚い地層がそこにたまっているわけです。それがなぜたまったかということが問題なのでありまして、もしも昔からそこが海岸線でくれば、そこに泥なり砂なりがたまるはずがない。泥が川で流されていわゆる川口にあります扇状地に泥がどんどん行きます。そうすると目方でもっと下のところが一緒に下ります。また積りまた下り、また積りまた下るということでありますから、非常に厚い何百メートル、場合によっては何千メートルというような地層ができる。これを地向斜と申しますが、そういう厚い地層がどんどん堆積するという現象があります。昔の、百万年よりもっと昔の、何億年昔の地層というのでも、いろいろな水成岩が流されては下り、流されては下るというようなことが繰り返されて、そういう大きな厚い地層ができるということが、これはもう地球学的に明らかでありますけれども、それの比較的小規模なもの――小規模なものと申しましても、われわれの言葉で小規模なので、住んでいる人間にとっては非常な大規模な現象でありますけれども、しかしそういうことが現に起っております。それでありますから私ここに一九三三年、昭和八年でありますが、測地学的方法で見出された地殻の変動という論文のようなものがございます。その中にもそういうことに対しまして一つの出早を充てまして、昔からそこに川が土砂を運ぶ、その目方で沈むというような現象が現在も起っておるということを書いておきました。そこで濃尾にしても新潟にしてもどこにしても、そういうことが現に行われている。つまりそういう厚い地層を積らせた原因になっているような非常に大きな地球学的な現象というものが、今そういうような土地で起っておることは間違いないことであります、そこでそれの証拠はどうだと申しますといろいろございますが、ほかの土地でもそうであるということでありますが、特に新潟地方の問題といたしましては、日本中の重量、地球の引力のようなものでありますが、私はそれを非常に詳しく日本全国をはかったことがあります。これは中部地方の重力、地球の引力の大きい小さいを示した図でありますが、青いところか引力が少いところ、赤いところが引力が大きいところであります。地球の引力にどうして大小があるかと申しますと、地面の表面に密度の小さい、いわば軽い地層が厚くありますと、それの引力が少いものですからここは重力が小さい。岩盤が出ているようなところに行きますと、重い岩石が表面まで出ておりますからそこは引力が強い。逆にわれわれは重力が大きいか小さいかということによって地面の下がどうなっておるかということを推定することができるわけですが、今問題になっている地域は、重力の大きい間にはさまって重力の少いところが、非常にきれいなV字型になって入ってきております。というわけは、厚い地層か上から見ると三角、横から見るとこういうふうになりますが、くさびのようなものがずっと入ってきておるということが、重力の上からいって、もう間違いのないところであります。そこに先ほど申し上げたかなり厚い地向斜というようなものが、つまり沈殿しては沈み、沈殿しては沈むというようなことが行われて、現在こうなっておるということは、ほとんど疑うことができないと思います。そこでそういうような地向斜がありまして、そこに人工的に何も加えなくてもこれが沈む、つまり自分が固まっていくという作用で相対的に高さが低くなるということもあります。現に新潟の問題は、ここに私書きましたときは一九三三年でありますから、今から二十五年くらい前の話でありますけれども、そのときにすでにきれいにこういうことが出ております。自分自身の目方、その他でこれがいわゆる絞まってくる、そういう現象があるということを、ここに書いておきました。問題はそういうことに対して人為的のいろいろなことが、どのくらい影響するかということだろうと思いますが、これは資料を十分整えないと、私ども学問の立場からははっきり申し上げることはできないと思います。十分な資料というのはどういうことかというと、つまり今申し上げたように、厚い地層がV字型に入っておりますから、水準測量をするにしてもかたい岩盤から岩盤まで用いて、ここをまないだようなものを少くともここに四、五本やりまして、海岸に近い方で沈むのか、あるいは山へずっと入った方もやはり今申し上げたような理由で沈んでいるのかというような資料がない限り、一部分の資料だけでは私からはりきりしたことを申し上げられないと思います。しかしそうかといって、それでは人為的なファクターがゼロであるかといいますと、それはゼロだとは考えられない、何がしかあるには相違ないと思います。そこで私どもにお尋ねであれば、つまりどのくらいがほんとうに自然のものであって、どのくらいが人工的なものであるかということであろうと思いますけれども、それには何分にも資料が足りないように見受けます。少くとも水準線のあそこを横断するのをずっと山の方まで入って、少くともあそこに四、五本、そして土地がどういうふうになっているか、それとくみ出す水との関係がどうなっているか、そういう資料を拝見しない限り、私ははっきりしたことは申し上げられませんけども、人為的のことがゼロである、全然影響がないということを申し上げているのではありません。むしろ逆に、自然でもそういうことが起っているということ、ことにこの地図をごらんになりますと、はっきりしないかもしれませんが、重力のひどい点が非常に混んでいます。混んでいるということは、厚さが急にこうなっていることでありまして、あそこにいわば断層のような非常に激しいものがある。それの東側が地山があり、左側に非常に厚い沖積のぐずぐずなものがあるということだけは、これから見て確かでありますが、そうしてかつこういう地質を形成するために、元来そこが断層的に下っていなければならぬところであるということは確かでありますけれども、現在はかられている沈下のうちの何パーセントが自然のものであって、何パーセントが人工的のものであるかということを申し上げるには、まだ資料が非常に少いということであります。こういうような沈下現象というものはここに限りません。先ほど申しました東京でもそうでありますし、名古屋でも仙台地方でも、あるいは岸和田のところでも福岡の筑後平野も、ああいう平野のところは非常に前に申しましたようにそういうことか多い。しかし人間が住むのがまたそういうところなものでありますから、山のまん中に人間が住むというわけに参らない。人間が住むのはどうしてもそういうような沖積地が住みよいものでございますから……。そこには井戸を掘るとか、そういうような人工的な要素が入ってくる。どれだけが人工的なものであって、どれだけが自然であるかということは、具体的に数字でもって言うことができればよろしいわけですけれども、そういう結論をはっきり数字で出すためには、どこでも資料か少いように思います。  なおこういうことは日本に限らず、日本以外でも、たとえば非常に著しいアメリカのロスアンゼルスのところも、そういうことで困っております。イタリアでもあると思います。そういうようなことは、かなり世界的に共通したことでありますけれども、非常に大事なことはそれは沖積地に起っている。沖積地というところはさっき言った厚い地層を作る地向斜的な運動が昔から行われていたところでありますから、おそらくいろいろなものがまざっていることでありますけれども、自然でもすでにそういうところであるということだけは、私どものやった結果からもはっきりしております。  私一番初めにお断わりいたしましたように、個々の具体的な資料の持ち合せもありませんし、具体的にここの沖積地がどのくらいの厚さで、どうということは存じませんので、大へん一般論になりましたけれども、一般的に私の考えていることはこのようなことであります。
  20. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で参考人の方々の意見の開陳は終りました。  次に質疑の通告かありますので、順次これを許可いたします。高橋清一郎君。
  21. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 まず一番初めに五十嵐助役にお聞きいたしたいのであります。新潟地盤沈下はほかの地区と比較いたしまして非常な速度で沈下しつつある、たとえて申しますと、沈下の率でありますが、尼崎の三倍程度でなかろうか、そのためにますます地元民の不安が助長せられ、何とかしてもらわなければならぬということになったのでありますが、この応急対策であります。先ほど午前中にお話がございました応急対策と恒久対策がございますが、応急対策について昨年度におきましては、政府は一応予備費から六億、今年度は一応予算の通過があったのでありますが、十億五千万円――地元の負担も相当でございます。ともかくこれだけの工事量でもって、一応の応急対策を見きわめようということなのでありますが、はたしてしからば応急対策はこれからどの程度で、金額にしてどの程度の見通しを持っているか、このことを先にお伺いいたしたい。
  22. 五十嵐真作

    ○五十嵐参考人 応急対策の今後の所要見込額についてお答え出し上げたいと思います。昭和三十四年度に政府に予算をお願いいたしましたのは、総額にいたしまして事業費と調査費を合せまして二十四億円であります。従いまして現在三十四年度で十億五千万円予算を認めていただけるといたしますと、残りの約十四億円が当面早急に必要とする予算見込み額になります。  なお現在の沈下状況に対しまして、必要な応急対策の必要額といたしましては、来年度に予定せれております約二十五億円を加えました四十億円の対策事業が現在の状況で必要な応急対策予算である、かように考えられます。しかし今申しましたように、これは現在の状況を申し上げたのでありまして、これが来年度になるというようなことになりますと、さらにまた対策費がふえて参るということを御了承願いたいと思うのであります。
  23. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 ついででございますので、お聞きしたいのですが、県と市との地元負担の割合でございます。どの程度であるか、お聞かせ願いたい。
  24. 五十嵐真作

    ○五十嵐参考人 昭和三十三年度の予備費をちょうだいした分について申し上げますと、県と市との割合は、県の方が多くて市の方が少いというような状況でありますが、数字的に申し上げますと、県市の分を合しまして予備費の分だけで、二億三千万円の地元負担ということになっておるわけであります。そのうち一億二千三百万円が県の負担分であり、一億七百万円か市の負担というふうな割合になっております。また昭和三十四年度の十億五千万円について申し上げますならば、県市の負担はさらにそれよりも非常にふえるわけでございまして、県市の分を合せますと約五億円近い負担になる、かように考えておるわけであります。
  25. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 あなたへの御質問、これを最後にしますが、先ほど帝石の社長さんがお話しになったのでありますけれども、一応この辺であろうと思われる分野について、六十本でございますか、ガスをおとめになったということであります。しからばこの反響でございますが、ガスどめいたしました反響は、何か徴候があるかどうかということであります。相当の年月がたたなければわからぬものか、あるいは二、三カ月でもすぐ見出せるものであるかということについて、あなたも技術者の御出身でいらっしゃると思いますので、お聞きしたいと思います。
  26. 五十嵐真作

    ○五十嵐参考人 このたびガス関係者の犠牲的な協力によりまして、地盤沈下の最も激しい山ノ下地区におにまして、六十本のガス井一戸、一日の生産量におきまして十三力五千立方メートルのガスを、ストップされたわけでございます。しからばそれによってどういう影響が考えられるか、こういうことでございますか、これにつきましては私どもも非常な関心を持って参っております。結論的に申し上げますと、私どもの考え方といたしましては、この程度のガス井戸の中止では、地盤沈下に影響することはほとんど考えられないのではないか、かように考えておるのであります。具体的に申し上げますと、先ほど申し上げました六十本のガス井戸の閉止によりまして、山ノ下地区における運輸省関係の観測井における水位を見ますと、ガス井戸がストップされましてから地下水の水位が約一メートル上昇しております。しかし一メートル程度の水位の上昇では、地盤沈下に対する影響は見受けられないのじゃないかというふうに考えておるのであります。私どもの推定では、地下水位が少くとも四メートル前後上昇しなければ、地盤沈下に影響することは考えられないのではないかというふうに思っております。地盤沈下の影響というものは、ガス井戸をとめてからどの程度で現われるかということでございますが、これに対してそ現在明確な定説というものはないように考えております。しかし私どもの勘といたしましては、場所によっては三カ月ないし半年程度で、その影響が現われるものではなかろうかというふうに考えられる場合もありますし、また場所によりましては六カ月ないし一カ年程度の期間を見なければ、ガス井戸の中止による地盤沈下に対する影響というものは見ることかできない、かように考えておりますので、現在の六十本のガス井戸の閉止という程度では、地般沈下に、直ちに影響するものとは考えておりません。  以上簡単でございますか御説明出し上げます。
  27. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 次に江口専務にお尋ねしたいのでありますが、新潟市の市民感情としましては、ほとんどの者がその原因はガスであるというふうに考えておるわけでございます。でありますが、午前中にあなたのいろいろ御説明になりました中で、いろいろあろうけれども、私どもの信ずるところは、また別の現象もとらえなければならぬというような意味でのお話がございました。従いましてこの際でございますから、あなたのそれに対する、私はこう思うということがございましたら、ここでお述べいただきたいと思います。
  28. 江口孝

    ○江口参考人 地盤沈下の原因につきましては、すでに特別委員会においてその専門の方々が熱意を込めて御調査になっていらっしゃいますから、私が申し上げることは私個人の意見でございまして、その音意味においては御参考にとどまる程度であろうと思います。ただ私は自分の仕事がたくさんの場所を使わなければならぬという立場にありますから、絶えず大きな関心を持っていろんな現象を見ております。そこでそういう立場から、何となくガスが原因であるようにも見えるところもありますし、また一方からそうでないようなところも見えますし、どうもその点が非常にわかりにくいものですから、これこそ専門の方々に各方面からの御調査を、今までよりも一そう多額の予算をもって、またいろんな方面からの総力をあげてこれを促進していただきたいと、こう実は熱願しておる次第でございます。  そこで、ではなぜ地盤沈下がガスと結びつくことに疑問があるかと申しますと、実はこういうことなんであります。これは軽い意味でお聞き取り下さい。多量の水を地下からくみ上げるということは、少々の水でないから、下の方がそれだけくみ上げられてからっぽになる、従って地盤沈下の原因になる、こういうことです。ところがそれは一通りの考え方でありますが、これを今度学理的にいろいろ研究して下さって、たとえば東京大学の応用微生物研究所におかれて、微生物の方から研究なさった。そうしますと、こういうことがわかる。地下五百メートルのところから水をくみ上げる。くみ上げた最初においては微生物は全然いないのだそうです。それが一年後に調べてみると、ガスの中にいる生物あるいは地表におりますところの微生物が非常にたくさん出てくるということを、東大の応用微生物研究所で御確認になった。ということは、地下の水をくみ上げると、それはどこから入ってくるかわからない。くみ上げた水の一部は地表から真水が入ってきて補っておる、こういうことが微生物の存在の方から確認された。また私どもはガス井戸の水の分析を絶えずやっております。そうしますと、ガス井戸の水がだんだん塩分が薄くなって、真水と置きかわっていくということも分析上出てきております。また同じ井戸を長くくんでおりますと、ガスと水との比率が、だんだんガス減がってくるということで、これも真水が入って薄まっていくということを証明しております。こういうふうに考えますと、地下から水を取るからそれだけ下がからっぽになって、それだけ地盤が下る、こういう考え方は、他面においてはそうでない、一部の水は地表からちゃんと補われておる、こういうことがちゃんと科学上証明できるのです。ところがもう一歩今度進んで、しかし地表の水が置きかわっておるのであろうけれども、水の取り方が多いために井戸の水位がだんだん下っていくだろう、これがすなわち地盤沈下の原因ではなかろうか、こうおっしゃる。そこで昨年の秋、私どもは一月にわたって臨港地区のガス井戸をとめたのでございます。そうして第一港湾建設局において御調査になることに協力いたしました。その結果、その水位の下っていくありさまと地盤沈下の状況とか、この調査の結果はっきり出正てきております。その出てきました結果の表になったのを私は見まして、これは全然関係がないという結果になっておるのではないかと思います。その表はここにございます。ここに青い線でこう書いてございますのが地盤沈下のコントゥア、ところが地下水の水位がどういうふうに変っていっておるのかというのを黄の線で表わしております。これが去年の御調査の結果であります。そうすると、もしこの地盤沈下の進んでいく状況と、そのガス井戸の水位の下り工合とが平行であるなら、私どももなるほどそれは確かにそうだ、こう思うのでありますが、この調査の結果を見ますと、直角に交わっている。そうしたら、これをもって直ちに関係があるということは、どうしても考えられないのであります。そうすると、地下水が下っていくということと地盤沈下というものは――この数字のこれだけの話をしておるのですが、これだけでは割り切れないということです。そうしたら一体どういうところに原因があるだろうか、またこういうお話もあります。この付近において地球の重力が多少減っておる。それはこの水くみ上げによる重力の低下であろう、こういうお話でございます。けれども、これもはっきりした証拠にならぬらしく私ども聞かされておる。また一方において、この地盤沈下の問題というのは、いろいろな方面から突っ込んで調べなければならぬと思いますが、やはり地質の問題でございますから地質専門のお方の御意見を私は聞かしてもらいたい。各大学の地質の諸先生のお話を聞いてみますと、やはり地下五百メートルというふうな第三期層に近いところの水をくみ上げたのが、直ちに地表にすぐ現われてくるということは考えられない。それは絶対ないと、こう言うのじゃないけれども、それは他にまだ大きな原因があるらしく思われるということを、各大学の地質の諸先生方はそうおっしゃるわけであります。私は地質専門でございませんからそれはわかりません。そこでそういうふうにいろいろ調査の結果を聞き、また諸先生方のお話を聞かされたり、また一面においては、どうもガスが出る所は地盤沈下がいっているらしいから、この相関性から見るとガスとつながる、こういうふうにもお話を承わった。そうすると実のところ私もどうも――私はその方面の専門家でございません。私はガスを使う方の専門屋でございますから、非常に私も迷うわけです。そこでやはりいろいろな調査の結果を早くいろいろな方面から見せてもらうことを、私は希望しておるのですが、たとえばこの前一建において御調査になりましたこの結果を見まして、これも私は非常にわかりにくい。この赤線が非常にぐしゃぐしゃこうなっておりますのは、井戸の地下水の水位の高低でございます。緑の線は地盤沈下の進行の状況を示しておるそうすると井戸の水が上ったり下ったりいたしますけれども、それにつられて地盤沈下は動いておらぬ。ただいちずにまっすぐにずっといっておる。そうして地下水は、いろいろ試験した結果ですから、こういうふうに地下水は上ってみたり下ってみたりしていますけれども、それは一向に地盤沈下に影響してきてない。これは私ともの一建で試験された結果であります。ですからそういうことをなにしますと、いろいろ私はしろうとにはしろうとなりに疑問か出て参りまして、やはりこういう大きな問題は、陸地が沈むからといって陸地にかじりついているだけでは、ほんとうのことは出てこないのではないか。やはり海の中までこれを調べていかなければ本物をつかむことはできないだろう。と申しますのは、たとえば新潟に住んでおられる古い人たちは、この信濃川の川口は、昔はみな頭にゆかたを乗せて歩いて渡ったそうであります。たとえば村田市長などもこう言っておられる。佐渡行きの汽船は、八十トンの船が信濃川の何メートルのかなたにしか着くことかできない、その間は伝馬船で行き来した、こうおっしゃる。そこで昔はそんなに遠方まで遠浅であったものが、最近になってみますと、あの防波堤の外側は四十何尺、内側もまた四十何尺に掘れてしまっているということは、海の中の状況か非常に大変化を来たしているのではないか。それが今日ある時期に至って急に陸地に影響を及ぼすに至ってきているのではないか。ということは、もう少し具体的に申しますと、これは新潟でも皆さんそういうことはだいぶんお気づきになっていらっしゃる。大河津の分水のつかなたに一千町歩の陸地ができておって、こちらの新潟の方には砂が全然流れてこない状況になっておって、それが昔のままであり得られようはずがないではないが、早くこの信濃川の水を新潟の近くに持ってきて、土砂を付近につけることを考えることが一番重要な問題ではないかということを、新潟地区に住んでおられる古い方々は、このごろようやく声を高くしておっしゃるようになってきた。私はやはりしろうとなりに考えまして、この信濃川の持ち出してくる土砂は膨大なものでございますから、そういう自然の現象をここ何十年かの間はばんでおった、それがここに大きな侵食の問題とか、あるいは沈下の問題とかいうようなものにからみ合って出てきておるのではないかというようなことが特に感ぜられるのでございます。ですから、私はやはり各方面からの御調査を急いでやっていただきたい。もしガスが原因でありますれば、ガスを早く疎開させてしまう、またそういう今のように土砂が、その新潟付近における海底の砂つきが切れてしまって、そのために急速に地盤沈下が始まっておるのだったら、そのことも早く考えてもらいたい。また私はちょうど新潟の突端の近くに井戸を掘りまして、こういう現象が現われておる。今から三年前の地盤沈下の問題が起る前ですが、何気なしに掘ったものですが、そのときの記録を読んでみますと、上の方約十メートルはヘドロと記録に書いてある。もうちょっと詳しくそのとき記録してあればよかったが、上の方十メートルぐらいはヘドロ層だ。ところが、昨年の暮れ、そこを掘って調べられたところを見ますと、地表から五メートル五百ミリまでば砂、五メートル五百ミリから七メートル二百五十ミリまではヘドロ層、七メートル二百五十ミリから十一メートル四十ミリまでは小砂、十一メートル四十ミリから十二メートルまでは植物の腐ったものの堆積とヘドロの混合物、こういうふうになって、最初私どもが井戸を掘ったときと今日においては、ヘドロ層が非常に短くなってきた。ということは、このヘドロがどこへ逃げてしまったかということを考えますと、やはり私は、いろいろなことを調べねばならぬということが思い当るのでございます。私はしろうとでございますから、決定的なことは申し上げることはできません。どうか専門的に今より一そう力を入れて御調査をしていただきたいと希望するのみでございます。
  29. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 坪井先生にお尋ね申し上げたいと思いますが、先ほど午前中に新潟県知事は、それは事実そうなんでありますが、都市だけでの、いわゆる新潟市だけの地盤沈下現象ではございません、周辺の農家、いわゆる田畑が著しい沈下状況を呈しておるというお話がありました。で、私の考えますことは、しからば日地改良工事ということと地盤沈下というのは、何らかの関連があるかどうかということのお尋ねでございます。
  30. 坪井忠二

    ○坪井参考人 土地改良工事というお話でございますが、それは具体的に、物理的にどういうことでございましょうか。
  31. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 それでは知事でんがら一つ……。
  32. 北村一男

    ○北村参考人 土地改良のことは私は専門でございまして、新潟県の土地改良は、灌漑排水の工事が大体土地改良なんです。そこで、新潟県の特徴といたしましては、御承知のように、地盤が低うございますからして、排水工事が主になっております。排水が重要部分である、こういうように考えていただいて差しつかえないのではないかと思います。
  33. 坪井忠二

    ○坪井参考人 また質問になりましてよろしゅうございますか。――その排水灌漑で水がしみ込まないようにしてしまうということでございましょうか。
  34. 北村一男

    ○北村参考人 水がしみ込まぬということよりも――水はしみ込まぬですね。しみ込めば水がたまっておるわけですから、しみ込まぬと同時に、要らない水を流してしまう、こういう工事であります。
  35. 坪井忠二

    ○坪井参考人 今私存じませぬで伺いましたのですけれども、そういうことであれば、地下水に影響を及ほすということは、これは当然のことだと思いますか、とかく私どもはすぐ数量的にそれがどういうことになるかということでありまして、質的の返事はすぐできるのでございますけれども、計量的にこれは何パーセントどうなってということになりますと、そこの泥の性質、粒の大きさというようなことが問題になりますので、数量的には私申し上げかねますけれども、性質的にはそういうことが地下水に影響があることは、間違いないと存じます。
  36. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 鉱山局長にお尋ね申し上げますが、原因の発表は、この五月に行われるであろうという新聞記事が過般出ておったわけであります。この原因の発表というのは、中間発表であるか、あるいは最終結論的なものであるかどうか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  37. 福井政男

    ○福井政府委員 原因につきましては、すでに御承知の通りに、資源調査会の特別委員会検討いたしておるわけでございまして、私ども通産省といたしましては、それがどういう形でいつ発表されるか、今のところ詳細には何ら存じあげていない次第でございます。
  38. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 私は鉱山局長に、過般もあなたのもとへ参りまして、いろいろ市民感情としても非常なものであるので、もちろん対策は講じてもらわなければならぬのであるけれども、何か世上とかくの疑惑を持たれるようなお態度におられては困りますというようなことを、率直に申し上げたことがあるのであります。おそらく原因のすべてはガスと発表せられるかもしれぬ、あるいはそうではない、それは一部であるけれどもというような発表になるかもしれぬ。これは私ともしろうとでわかりませんけれども、いずれにしてもやはりはっきりした態度を早急におとり願うということは、これは新潟県民としましても、非常に要望しているところであろうと思うのであります。過般の委員会におきましても、五月ごろ発表されるという段階でございます。いろいろな御事情もあるやに聞いておるのでありますけれども、ともかくこれについては政治的配慮というものがあってはならぬと私は思うのであります。公平妥当のお立場で、今までの十分検討せられた結果を、結果として御発表願わなければならぬのじゃなかろうかと思うのであります。局長に私は大いに今後御努力願わなければならぬことかたくさんあると思うのであります。先ほども午前中にお話があったのでありますが、まずとりあえず大きな問題は、被害事業者連盟の方々、非常にこの沈下でこんぱいを受けられました関係者の皆様方が設備投資をする、今日まで非常な力をいたしてこられたようでございます。すでに合計いたしまして五億何千万円、今後については五十億を必要とせられるというようなことでございます。この際、この設備投資につきまして、大蔵省は課税するということだそうであります。先般も新潟の商工会議所で非常な問題になっておるのでありますが、これについてどのようなお考えをお持ちか、よたどういうすべで大蔵省に強く当っていかれるかというようなことを、お立場としてはむずかしいところがあるかもしれぬのでありますけれども、ともかく異常な熱意をもってやってもらわなければならぬことである。あなたの部課、あなたの系統のものをかわいがってやるというおぼしめしを御発揮願わなければならぬと思うのでありますが、それに対する御所見を……。
  39. 福井政男

    ○福井政府委員 原因の発表につきましては、私どももできるだけ早い機会に、あらゆる方面から御検討願って、砦さんの御納得のいくような方法で、原因が究明されることを望んでおるわけでございまして、ただいま先生のおっしゃった通りに、私ども存じておるわけであります。  それから被害者の方々が、その被害を除去いたしますにつきましていろいろ設備をせられる、それについて課税をする問題はどうかというお尋ねであろうかと思いますが、この問題につきましては、私どもまた詳細に関係の者から承わってもおりませんけれども、ただ、そういう被害を除去するための設備については、できるだけ税金をかけるとかそういうようなことがないように、今後私どもといたしましても努力をいたして参りたい、かように考えておりますが、ただ法律上の問題もいろいろございますので、今後十分検討いたして参りたい、かように考えております。
  40. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 ほかの方々の御質疑もございますと思いますので、最後に希望意見を付しまして、ぜひ関係の皆様方の御努力をお願いしなければならぬと思うのでありますが、冒頭お尋ねしたのでありますけれども、県市の地元負担の軽減の問題については、実を申し上げますと、異常な関心をお持ちであるわけであります。また、先ほど県知事もお話のように、ともかく財政破綻になるかもしれぬというようなことでやっているわけなんであります。この問題につきましては、社会党の先生方も非常な御努力を願いまして、いろいろ政策審議会等におきましてこの問題を中心課題として掲げていただいているようであります。自民党におきましても御存知じのように、政調会が中心になりまして、去年でありますが、いろいろ大蔵省との折衝その他によりまして、ともかくこの問題を、審議会を設置することによって、その中で十分検討しようじゃないか、というところまで、実を申し上げますと負担分の軽減は、どの程度までするかというところまで参りません。大蔵省との折衝が非常にむずかしかったのでございます。そんなでございますか、しかしごらんの通りのような状況でございます。新潟県におきましては非常な、この問題については何とかしてもらわなければならぬということなのであります。私は委員長初め、商工委員の皆様方に特にお願い申し上げたいと思うのでありますが、ぜひ県知事、先ほどの市長代理としての助役のお話、よく御検討賜わりまして、三分の一以下でございますならばけっこうなんですというような知事の御答弁でございましたが、その意を体していただいて、できる限りの親心の御発揮を、ぜひお願い申し上げたいということを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。どうもありがとうございました、
  41. 長谷川四郎

  42. 櫻井奎夫

    櫻井委員 新潟地区地盤沈下の問題につきまして、参考人の皆さん方に御質疑を申し上げたいと思います。  実は、当商工委員会におきましても、昨年地元の方々の非常な御要望によりまして、十二月初旬であったと思うのでありますが、委員を派遣されて、つぶさに現状を御視察願ったわけでございます。そのとき私も御同道申し上げたわけでございますが、その後実は去る十四日新潟市におきまして国民年金の問題についての公聴会がございまして、そこに両党の先生方、自民党から二階堂君と山下春江君、わが党から多賀谷真稔君と中村君、この四名の方がお見えになりました。ちょうど時間があいておりましたので、現地を私は朝早く視察をいたしたわけでございますが、私どもが見ました去年の暮れから、わずか三カ月しか経てないにもかかわらず、実に急速な速度でもって沈下現象が進んでおる、こういうことを私ははっきりこの目で見て参ったわけでございます。従って地元がこの問題について非常な大へんな危惧、不安の念を持っておられることは、これは当然と思うのでありますが、そこで私は二月二十四日の衆議院予算委員会におきまして、担当各大臣、すなわち通産大臣、運輸大臣、建設大臣、及び大蔵大臣、これらの担当各大臣に対しまして、この新潟地区地盤沈下の問題についての質問をいたしたわけであります。そこで大体今日政府がこの新潟地区地盤沈下というものを、どのような角度から把握しておられるかということが、大体私としては明確になったわけでございますが、本日はこの政府に対する質問でなくて、地元の参考人各位の御意見、こういうものを十分参酌をいたしまして、政府に対する質問は次の機会に、十分これはあることと思いますので、きょうは参考人の皆さん方に一つ質問を申し上げたいと思う次第でございます。  まず第一点は、五十嵐助役さんにお伺いしますが、あなたは先ほど科学技術庁の発表というものは、これはぜひ慎重にやってもらいたい。そうしていろいろこの発表があったために起る混乱を避けるために、通産省として十分態勢が整ったときにこの発表をやってもらいたい、こういうような、通産省の処理、発表があれば必ずこれを処理をする、こういう態勢のもとにやってもらいたいというような御意見でございました。私はこういう意見は、政府当局がそういう意見を出されるといううことならば、まず一応の理由もあるかと思うのでありますが、地元のあなたがそのような意見を出されることは、どうも私には納得が参りません。今日御承知の通り科学技術庁は、やはり発表した場合に通産省が混乱するんじゃないかということを仰せられておる。また通産省も、そこに鉱山保安局長がおられるわけであるが、これも先般私が追及いたしましたところが、かりにガスときまった場合においても禁止をするとか規制する。これは鉱山保安法の二十四条において当然禁止、制限の措置を講ずることができるわけでありますが、これも科学技術庁の発表がないからできないのだ、こういうことでお互いに責任のなすり合いをしておるのが、今日政府の現状であろうと思う。こういう中で、やはり態勢ができてから発表しろ、こういうことが地元の御要望であれば、私は発表というのはおくれる一方であると思う。科学技術庁に設置されたところの調査特別委員会というものは、その構成せられたる使命からして、科学的な十分な判断の上に立って早急に発表すべきが当然であると私は考える。従って、その発表によって、かりにこれがガスであるという結論を得るならば、直ちに通産省はガス産業をいかにするかという措置を講じなければならないと思う。これは同時に行わるべき問題ではなく、発表が先になる、こういうことを私どもは考えておるわけでありますが、助役さんのお考えはいかがでございましょう。
  43. 五十嵐真作

    ○五十嵐参考人 先ほど私が、原因を発表される際は、処理すべきいろいろな問題について十分態勢を整えて発表をしていただきたい、そうでなければ、ただ、いたずらに混乱を生ずるばかりであるからということを申し上げました極り旨は、先ほどお話がありましたように、国会のいろいろな御討議の議事録等を拝見いたしますと、原因は、五、六月ごろ発表されるやに伺っておるわけであります。従って五、六月ごろ原因が発表されるということを前提にいたしまして、通産省におかれましては、それまでに処理すべき問題をいろいろ御検討願いまして、原因が発表されても混乱を生することのないように十分お考えおきをお願いした。つまり五、六月ごろ発表されるということを前提にしまして、それまでに早く準備態勢を整えていただきたい、これが地元として強く御要望申し上げる次第である、かように申した次第でありますので以上御説明申し上げます。
  44. 櫻井奎夫

    櫻井委員 助役五十嵐参考人の御意図はわかりました。そういう意味の発言でございますならば、私も了承をいたす次第でございます。  次に北村参考人にお伺いいたしますが、これはやはり県としても市といたしましても、しばしばあなた方か陳情しておられる通り、これだけの膨大な工事量になりますれば、当然地元の負担が大きくなりまして、この負担に耐えない、これはおっしゃること、もっともだと思うのであります。しかし、この問題を解決するのは、やはり国会における法律改正以外に道はないのでございます。これは御承知の通り港湾は港湾法による負担、災害は災害法によるところの負担、河川はまた河川法による負担というものの率が、みなまちまちでございます。従って、これはいくら御要望をなさいましても、やはりこの国会の中における法律改正というものがない限り、地元の負担と国の負担というものは明確に区分されておるわけでございますので、皆さん方の御要望を満たすためには、やはり地盤沈下に伴うところの諸般の法律整備というものが、私は喫緊の問題でなければならないと思うわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  45. 北村一男

    ○北村参考人 全く櫻井先生の仰せの通りでございまして、この問題を処理して出るためには、もうことしすでに首たけにきているのであります、もうこの上はとても忍べない、こういう状態でございますので、今高橋先生が言われた、審議会ではまだ負担問題のところまでにはいっておらぬと言われるのでありますから、私どもの立場から申しますれば審議会だけではきめ手にならぬ、かように考えますので、ぜひ地盤沈下に対する負担区分――区分だけではありませんで、また諸般の問題を含んだ特別立法をしていただかなければならぬ、かようにかたく信じております。
  46. 櫻井奎夫

    櫻井委員 仰せの通りであると思うのでありますが、実は経済企画庁設置法の一部を改正する法律案といたしまして、経済企画庁に地盤沈下対策審議会を、同時に九州地方開発審議会を置く、こういう法律案が今日これは衆議院を通過いたしまして、参議院の方に送付されております。この経済企画庁に審議会を置くということは、これは今回に始まったことではなく、すでにもろもろの審議会が置かれておるのであります。たとえば離島振興対策審議会というものがございます。私も不肖離島振興対策審議委員を五年間やって参ったわけでございますが、この審議会の答申したことを、政府はほとんど実施していないのが今日の現状でございます。離島振興法は十年間の時限立法としてこれが制定され、この十年間において大体本土並みに達するという目標のもとにこの法律が作られておるにもかかわらず、今日すでに五年間を経過した中において、三分の一に満たざるところの事業量しか遂行していない、こういう事実を考えるならば、この審議会というのは、それはないよりましに違いないが、同時に審議会を作ってここで審議するのだ、するのだということで結論を延ばされたのでは、これは地元として容易ならぬ問題だと思うのです。特に離島振興は十年計画が十五年になるということでもあるいは納得ができるかもしれませんが、地盤沈下の問題は、一日方々と沈下の現象がとどまっていない、しかも年々歳歳その速度が去年までは一・二ミリであったのが今日は一・四ミリと加速度的にふえてきておる、このような状況の中において、審議会においていたずらに小田原評定をしておる時期ではないと私は思う。従ってほんとうにこの地盤沈下の問題を解決しようという熱意があるならば、私は当然地元の熱望にこたえるべく、各補助金の負担の率の制定、これを整備する、こういうような法律の提出があってしかるべきであるというふうに考えるのでありますし、なおまたこのことは、ぜひ委員各位においても、このような地元の切なる御要望というものを一つ十分におくみ取りおきを願いたいと思うのであります。  次に江口参考人にお伺いをいたします。私は日本瓦斯化学の果してこられたところの大きな使命というものには、衷心から今日敬意を表しておるものでございます。特に海軍の残した大きな遺産として燃料の問題、船舶の問題それからレンズの問題、こういうものがありますが、この旧日本海軍の残した燃料の科学技術というものが今日受け継がれまして、これが新潟地区における天然ガスをいわゆるブタノールに触媒を通じて変化する、こういう驚異的な発明をなさったわけです。この功績というものは私は非常に大きなものである、今まで燃料としてしか使えなかった天然ガスというものを、これに科学の光を与えることによってこれを液体と化し固体と化し、将来はまた人造羊毛という、実に前途洋々たるところの産業発展が約束せられておる、しかも新潟地区は御承知の通り日本の全ガス生産量の三分の二というものをここで噴出をし、そのうちのまた九割八分というものが新潟市の周辺から産出しておる、このような貴重な原料によって新しい産業が今日起きょうというとたんに、このような不祥な事件が起きまして、そしてその原因の大部分が天然ガスではなかろうか、こういう事態に直面しておるわけでありますから、これらの非常な発明をなさった方に対しては、当然その業績に対して報いるべきであるにかかわらず、このような事態が起きたということは、私どもも非常に不幸なことだと思うのであります。しかしやはりこの産業が興るために、地元にはどのような迷惑をかけてもかまわない、こういう理論は成り立たない。この点は江口さんも謙虚にそういう意見の発表をしておられるので、私も非常に安心をいたしたわけでございます。しかしいずれにいたしましても、かりにこれがガスでないという結論が出ますならば、私どももこれに越した仕合せはないと思うのでありますが、今日の段階においては、そのうちの大部分の原因はガスではなかろうかという動きが、これはもう顕著でございます。その場合、ガスであるというふうにこれが断定された場合、あなた方の産業に及ぼすところの影響、打撃というものは非常に大きいと私は思う。そういう点につきまして私は予算委員会で高碕通産大臣に種々御質問を申し上げたわけでありますが、大臣としてもこの問題は非常に重大に考えておられる。そうしてやはりこのガス化学工業をどういうふうに将来育成していくか、こういう点については大体の輪郭というものを持っておられるようであります。先ほどあなたがおっしゃったパイプによるところの輸送、こういうものもはっきり述べておられるわけであります。従ってかりにガスというような事態が決定された場合のあなた方の、このガス化学工業の心がまえをどういうふうに――それはもうガスは掘ってはならぬというから、これをかりにパイプで持ってくれば、先ほどおっしゃったように二円高、三円高になってくる、そうすると、企業として成り立たないから石油にかえてしまうのだ、こういうふうに考えておられるのか、それともまたそこに何らかの打つべき手を考えられて、たとえばガスのパイプ・ラインというものに対して、国がこの産業の育成のための補助金出すというようなことも考えられるわけであります。そういういわゆる通商産業上の問題として、万一ガスと断定された場合の御処置を何らか考えておられるかどうか、こういう点を一つお聞かせ願いたい。
  47. 江口孝

    ○江口参考人 ただいま機井先生のまことに御理解あるお言葉をいただいてありがたく存じます。万一ガスが地沈の最大原因であった場合どうするか、これはもうはっきりいたしておりまして、御迷惑にならぬように遠隔の地に疎開せなければならぬということであります。そこでそうすれば先ほど申し上げたように、かりにどうしてもガスを使っていくということになりますならば、やはり遠力からガスを持ってこなければならぬから高いガスを使わなければならぬ、高いガスを使うことにも限度がありまして、もし十円もそれ以上もするガスを使わなければならぬということになりますと、これはどうしても日本の現状からいいますと、約四割ないし五割という生産品を外国に売らなければ、これは立ちいかぬ産業でございます。ということは世界市場において、どこまでも競争に勝たなければ、この産業は成り立たぬ。もし産業が成り立たぬ場合には、それだけの失業者も出てくるというようなことになりまして、まことに残念なことであります。そこで、そうなりますと、どうしてもこれは私ども民間事業として力の及ばぬところになりますから、その場合は、外国の例にもございますように、どうしても力の強い政府でもって、これを導いていただかなければならぬ。たとえば先ほど私はちょっとイタリアの例を申し上げましたか、イタリアの例では、半官半民の大きな会社がございまして、これが国内一般に四千キロメートルにわたってパイプ・ラインをクモの巣のように引いておる。そうして、このパイプ・ライン会社が、国内のガスを全部買い上げてしまう。そして今度は業者にその買い上げたガスを一定の値段で売る。その場合に、特にこの産業は重要であると認めた場合には、その産業に対しては、このガスは非常に安く売り波されるのであります。またそうでないところには、ある程度高くという工合に価格の調整が行われて起りまして、またできた製品についても、国においてそれをちゃんと価格をよく調整して、この産業外国においても発展し、また国内においても十分その役割を果すように仕向けている。そこで、やはり天然ガスの化学工業というのは、日本においては、まだ歴史がきわめて浅うございますから、外国におけるいろいろな例をよく御調査になりまして、わが国の国情に合うように御考慮をいただきますならば、まことに仕合せであろうと思います。それでガスの問題は、ガスをどうしても原料にせねばならぬという場合にはそうなります。一つはこのごろ中東から持ってきます石油は、マンモス・タンカーなどの巨大な船舶によって運んで参りますので、非常に運賃が安くなってきておる。たとえば向うで石油原油一キロリットル四千円くらい。マンモス・タンカーで持ってきますならば七千円以下でもって原油を国に入れることができるのでございます。これをもし特別の産業として政府でお認め下さって、これに免税措置を講じて下さるというようなことでもございますれば、やはりただいま日本で石炭からやっている、あるいは水力から肥料を作っておるというようなものに比べて格安に私はできると思います。そこで道ば二つしかございません。これを石油に切りかえるか、あるいは遠隔のガスを持ってくるかということでございますが、いずれにいたしましても、これは世界市場において各国と熾烈な競争に打ちかっていかなければならぬという特殊の運命を持った産業に対しては、特別の保護をしていただかなければ、この産業は成り立たぬと存ずる次第であります。
  48. 櫻井奎夫

    櫻井委員 実は安芸特別調査委員長を呼んでおるのでありますが、まだお見えになりませんか。
  49. 長谷川四郎

    長谷川委員長 まだ三十分くらいかかるそうです。
  50. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私は最後に安芸委員長からこの中間発表のおくれておる理由をお聞きいたしたい、こういうことで委員長の出席を求めているわけでありますが、まだお見えにならないそうでありますから、次の機会にぜひ委員長を呼んでいただきたい。そのときまで私の質問は保留をいたして、私の質問は終了いたします。
  51. 長谷川四郎

    長谷川委員長 質疑の通告がまだだいぶございますけれども、三時十分から本会議を開くことになっておりますので御了承を願いたいと存じます。  参考人の方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。当委員会といたしましても、この種の問題は非常に大きく見ておるわけでございまして、一日もすみやかにこの解決ができますように努力を傾ける考えでございます。  本日はこれにて散会をいたします。次回は明日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開会いたします。     午後三時六分散会      ――――◇―――――