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1959-03-05 第31回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月五日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 赤澤 正道君 理事 秋田 大助君    理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 岡本 隆一君       佐々木盛雄君    西村 英一君       保科善四郎君    内海  清君       堂森 芳夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       石井  桂君         総理府事務官         (科学技術庁長 原田  久君         官官房長)         総理府事務官         (科学技術庁原 佐々木義武君         子力局長)  委員外出席者         参  考  人         (東京大学名誉         教授原子力委員         会原子力災害補         償専門部会長) 我妻  榮君         参  考  人         (損害保険協会           専務理事) 葛西  浩君     ————————————— 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇三号)      ————◇—————
  2. 小金義照

    小金委員長 これより会議を開きます。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、参考人より意見を聴取することといたします。御出席参考人は、東京大学名誉教授我妻榮君、損害保険協会専務理事葛西浩君、以上のお二人であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用のところ、本委員会法律案審査のためわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。本委員会は、ただいま核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案について審査をいたしておりますが、本案につきまして参考人各位の忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。なお、御意見は約十五分あるいは二十分程度としていただきまして、そのあと委員諸君の質問によりお答えを願いたいと存じます。  まず、参考人我妻榮君より御発言を願います。我妻榮君。
  3. 我妻榮

    我妻参考人 私は、ただいま御紹介のように東京大学名誉教授でありますが、同時に、原子力委員会設置されております原子力災害補償専門部会部会長をしております。本日お招きにあずかりましたのは、多分その関係だろうと思いますので、最初に、この部会長となったときの気持を一言説明させていただきたいと思います。と申しますのはこの部会で何をしておるのか、何をしようとしておるのか、また、この法案に対して私が個人としてどう考えるかということと関係するからであります。  御承知のことと思いますが、私の専攻としております民法の中で、災害補償あるいは損害賠償ということが大きな問題の一つであります。最初は、過失がなければ責任がない、他人に損害を加えても、その加えた者が現代の科学でできるあらゆる設備を講じておるときには、損害を与えても責任がないという原則が行われておりました。しかし、その後科学技術が発達いたしまして、どうしても避けられない災害を伴う産業がいろいろ発生することになりました。たとえば、鉱山業とか、あるいは化学工業、あるいは飛行機とか、自動車とか、鉄道とかいう近代の交通企業というようなものがその例であります。そこで、民法理論といたしましても、過失がなくとも責任を負わねばならぬ場合があるという、いわゆる無過失責任理論がだんだん盛んになって参りまして、学説の上だけでなく、各国法律でもそういうことを規定するようになりました。この原子力を平和に利用するということにも、御承知通り非常に大きな災害を伴いますので、この正原子力災害補償するということが、無過失責任一つの適用として新しく登場して参ったわけであります。それで、私も専門関係から、この問題に非常な関心を持ったのでありますけれども、何分問題が新しく、また、そうしたケースが非常に少いというので、研究が進んでおりません。東京大学でもその点に目を注ぎまして、法学部の同僚が集まって、文部省から資金をもらって研究班を組織しております。もっとも、この東京大学研究班は、損害賠償の問題だけでなく、国際法の問題、あるいは行政法の問題にもわたりまして、広く原子力法律関係ということを研究の課題にしております。そして私もその一員となっておるわけであります。また、これも御承知のことと思いますが、原子力産業会議あるいは保険関係方々も、この問題をそれぞれの立場から研究しておられるようであります。かような事情のときに、先ほど出しました専門部会部会長となることの交渉を受けたのでありますが、もう年をとっておりまして、この問題に自分で取り組むだけの気力もないのでありますけれども、各方面で行われておる研究を総合して、できるだけりっぱな災害補償制度を確立するようにお役に立とうかと決心して、わが国の学問をその点に集中していこう、いわば、そのブローカーのような仕事をしようと思ってこれを引き受けたわけであります。  以上、部会長となりました事情を御説明したわけでありますが、その部会が何をしようとしておるかということを次に申し上げます。  部会が設けられてからまだ日が浅いので、研究成果は十分に上っておりません。上っておりませんが、アメリカを初めとして、先進国がこの問題を研究しておりますので、まず最初仕事としてこれを研究し、また、すでになされている研究成果を徹底させることに努めて参ったわけであります。各国制度と申しますと、アメリカはすでに法律を作っております。イギリスドイツスイスなどは目下法案審査中であります。その法案も、審査中にいろいろ修正を受けておるようであります。ドイツなんかは現在第三次の草案審査しているという状態でありまして、確定案がどうなるかということは、まだ必ずしもはっきりしないという状態であります。アメリカ法律を作ったと申しましたけれども、これもしばしば大きな修正をしております。法律修正するというのは、大てい何か適用すべき事項が生じて、適用してみた上で、不都合があったら修正するというのが常道であります。ことにアメリカあたりではそれが常道でありますけれども原子力災害補償という問題、まだ一度も適用すべき事態を生じていないようであります。それにもかかわらず法律改正しているというのは、いろいろ頭の中で考えてみると不都合な点が考えられるというので修正する、あるいは世論の反響を聞いて修正するというようなことであろうと想像されます。また、一方ドイツあたりでは、アメリカ法律参考としながら、ドイツ人一流理論でそれをいろいろ修正いたしますので、ドイツ人は、アメリカ法律をまねてはおるけれども、おれの方の草案の方がより進んでおると言っておるのであります。アメリカは、またそれに刺激されて修正するという事情もあるのじゃないかと想像されます。かように、各国法律は、大ざっぱに申しましてはっきりしていない状態であります。しかし、はっきりしないと申しましても、いわば最大公約数というようなものはつかまえることができます。それは相当はっきりしております。それを大ざっぱに申しますと、各国補償制度は二本建になっておるといっていいだろうと思います。一つは、その設備を動かす者、オーナーオペレーターと申しますか、設備を運用する者に一定限度保険に入らせる、そうして、その保険で、生じた損害賠償させる、その額は各国によって違っておりますが、一定マキシマムをきめまして、そこまでの保険には入る、そうして、災害が生じたときには保険金の全部を賠償に出せば、それ以上責任はないことにするというのが、二本建のうちの一本であります。それから他の一本は、その保険マキシマム金額を出しても、なお賠償しきれない損害があった場合、あるいは保険ではカバーできない災害が生じた場合には、国家補償するということであります。  さらにこまかに申しますと、各国——各国と申しましても、先ほど申しましたように、主としてアメリカイギリスドイツスイスでありますが、その二本建の、まず第一のマキシマムをどのくらいにするかという点が相当違っておるようであります。これも先ほど申しましたように、アメリカでは法律が変るたびに変ったこともありますし、ドイツあたりでは第一次案、第二次案、第三次案がそれぞれ違っておりますので、はっきりした金額を申し上げかねるのでありますが、大ざっぱなところを申しますと、アメリカが飛び離れて多くて、日本金に換算して申しますと二百億以上、二百十六億くらいまでの保険をつける、イギリスに五十億くらい、ドイツは、さらに下りまして十五億見当スイスは二十億見当アメリカから比較すると非常に少くなります。これは何によってこの額が定まるのかと申しますと、おそらく国民所得とか、あるいは生活水準ということも影響しておるだろうと考えられますけれども、この金額を決定している最も大きなファクターは、当該国保険業界消化能力、どのくらいまで保険をつけ得るのかということが、おそらく決定的なファクターになっておるのじゃないかと思われます。決してアメリカ原子炉が危険が多いとか、あるいは災害が多い可能性があるので額が多いというわけではないということだけははっきり言えるようであります。そして、この保険をつけるという点では、最大公約数として最もはっきりしておる部分だと申し上げていいと思います。二本建の第二の方の、国家補償するということにもマキシマムがきまっておる国もあります。アメリカは、大体千八百億円くらいまでは国家補償するように明示しておるようであります。ドイツは五億マルクといいますから、大体四百十億円くらいに見ていいでしょうか。そうしてアメリカドイツとは、国家が必ず補償するということを法律ではっきり規定しております。それに反してイギリススイスでは、国家補償するということをはっきり言っていないように見えます。そのたびに国会補償を決定するというような法律になっております。しかし、これはイギリススイス国会のフアンクションが、わが国ドイツと多少違うという点にも由来しておるのではないかと思います。イギリススイスでは、国会がそれをきめることができるという法律になっておりますと、個別的に間違いなくやるという保証が、わが国の場合なんかよりはずっと強いのではないかと考えられますので、先ほどイギリススイスをも含めて国家補償するということが最大公約数だと申し上げたのでありまして、おそらくそう言って間違いないだろうと思います。  以上、繰り返して申しますと、二本建の一つ保険制度であり、一つは、それでカバーしきれないところを国家補償するということでありますから、私が部会長をしております専門部会でも、まずこの二つに沿うてわが国でどうすべきかを考えようということになりまして、その第一の方の保険制度については、先ほども申しましたように、保険関係方々がずっと前から研究しておられまして、相当詳細にその研究内容を定めておられますので、それと協力しながら——強い言葉で申しますと、監督しながら一緒になって、少しでもりっぱな保険約款を作ろうということに努力しておるわけであります。これは、もちろん世界の保険、他の国に再保険していくという関係もありますので、保険約款内容はそっちの方からも牽制されることであろうと思われます。再保険をする場合の保険約款、それからわが国保険業界消化能力というようなことを考えながら、約款内容を定めることをやっております。これは、おそらく近いうちにはっきりした答えが出せるものであろうと考えております。  第二に、国家補償の問題でありますが、これは私個人意見といたしましては、ぜひわが国でも国家補償という制度を作らねばならないものだと信じております。ただ、それについてどういう制度をとるか、マキシマムを定めるか、あるいはそれに費すフアンドを何らかの方法で積んでおいた方がいいのか、その他いろいろな問題がありますので、これは目下極力研究中というところであります。  それから、実際の問題といたしましては、二本建の研究で済むようでありますけれども、実はこの二つの問題の基礎について理論的な問題がひそんでおります。これは先ほど申しましたように、無過失賠償という理論をとった場合に、原子力災害にもこの理論を適用するということがなぜ正しいのかということも、やはり一応理論としては固めておかねばならない。それから、たとえばさっきも申しましたように、オーナーオペレーター保険に入った、マキシマムを出せばそれ以上は責任を免れさせるということをはっきりさせるわけでありますから、その点についても理論を固めておく必要があるであろう。のみならず、さらに進んで賠償を得るという場合に、たとえば多数の人が一緒災害をこうむった場合に、その補償を受けるのに何か特別な方法が必要なんじゃないか、あるいは御承知通り原子力災害はずっとあとになって、十年もあるいはそれ以上もあとになって生ずることもあるので、そういう人に対する補償をどうしたらいいかというような問題、その他一口に申しますと、理論的に損害賠償が取れるといっても、それを取る方法をできるだけ公平、迅速に解決していくのに何か特別な手続が必要なんじゃないかというようなことも考えねばなるまい。そこで、保険ということと国家補償という二つ制度のほかに、両方共通基礎として、理論的なことから技術的なことまで研究すべき多くの問題が残されているだろう。これは各国でもそれをやっておりますけれども日本でもそれをやらねばならない。以上の三つの点、保険国家補償と、その両方基礎となり、あるいは実現の手段となる方法研究するということで、私の専門部会が今全力をあげて勉強しているという状態であります。  終りに、さような事情のもとにある専門部会部会長として、今度の改正をどう考えるかという問題でありますが、この改正は、御承知通り二十三条の二項に九号を追加する、あるいは二十四条第一項に五号を追加するというのでありまして、原子炉設置許可するときの許可条件として、損害賠償措置を十分に講じさせようということであります。これは提案理由説明にもありますように、「とりあえず、民間の保険をかける程度措置を講じようとするものであります。」とあります。これは、一定限度保険に入れ、それに入っていなければ設置許可しない、おそらくこういうところで押えようという趣旨だと思います。これは、先ほどからも申し上げましたことでおわかりかと思いますが、最小限度しなければならないことであって、けっこうなことだと思います。そして保険約款もまだ十分固まっていないと申しましたが、その際申しましたように、これは最初から非常に研究の進んだ部門でありますから、おそらく近いうちにはっきりした形をとることができる、この法律の施行のときまでにはりっぱに目鼻がつくことだろうと私個人としては予想しております。しかし、第二の国家補償という問題は、この法律では全然触れていないわけであります。原子炉を動かすことによって損害を生じた場合に、保険でカバーしきれないところを国家補償するかしないか、あるいは補償するならどこまでかというようなことは、全然触れておりません。そのことは、この法律核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律でありまして、原子炉規制していく、つまり、原子炉設置するもの、あるいはそれを運営するものを国家規制していくという立場でありますから、従って、この法律としては、保険に入らなければ許可しない、あるいは運転することを許さないということをきめただけで十分でありまして、この法律としてはそれで完全だろうと思うのです。しかし、国家法体系全体から見ていきますと、それで不足なときにはどうするのだという問題が欠けているということになります。従って、私個人意見としては、その方もはっきりさせる必要がある。これはこの法律に規定すべきものではないと思いますが、どういう法律にしますか、あるいは特別の法律を作りますか、いずれにしても、この法律賠償措置を講じておって、それで足りないところは国家補償をするという法律がぜひ必要だと思います。それが欠けておるのでありますから、全体から見て不十分だといわざるを得ない。  そこで、問題は、そういう不十分なものを残しながらも、これを今法律にしていいか悪いかという問題に帰着すると思います。しかし、この問題は、まさに国会検討されるべき政策を含んだ問題だと私は考えるのであります。と申しますのは、常識から申しますと、保険のことだけでなく、国家補償の問題も法体系として全部完備した上で許可をするということになるのが常識だと思います。しかし、原子力あるいは原子炉というものは、御承知通り許可を受けてからいよいよ運転するまでの間に、相当長い期間を必要とするようであります。その期間のロスを忍んで、つまり法体系ができるまでは許可も受け付けない、建設もさせないということにいたしますと、原子炉を動かすことが非常におくれるわけでありますから、おくれてもいいのかという問題になります。政府当局の意図を推測いたしますと、おそらく、それではわが国原子力開発が非常におくれるから、一応許可条件として保険をつけさせることだけでも、つまりミニマムのギャランティがあれば許可をする、そうしていよいよ運転を開始するまでには法体系を整えようという考えではないかと思います。それは最初に申し上げましたように、普通の場合の法律常識から言うとはずれているようでありますけれども原子炉というものの特殊性から考えて、これもやむを得ないことかとも考えられます。のみならず、先ほどから申しておりますように、イギリスドイツも、まだ法律はできていない。それにもかかわらず建設はやっているのであろうと思います。ですから、原子炉に関する限りは、あるいは建設許可していくということと、いよいよ動かすまでに法律をはっきりさせるということと並行してやっていくということが、むしろ現在の諸国家常識であるのかもしれませんから、ここでは私の解釈する常識というものは通らない。かえってその反対が常識になっているといってもいいかとも考えられます。  これを要するに、国家補償ということについての法律がはっきりしていないということは欠陥であるに相違ない。しかしながら、わが国原子産業開発の理想から見て、とりあえず保険をかけるというミニマム許可を与えることにして、同時に、法律を作ることを急いでいって、運転するまでに国家補償のこともはっきりさせるという措置をとっていくことが、わが国政策から見ていいか悪いかということを国会で御審議、御決定なさることが重要な点ではないか、こう考えるわけであります。  この点に関して私個人意見を申し上げますと、私の専門部会は、先ほど申しましたように、私は、ただそのブローカーのようになって、若い諸君を激励して研究してもらっているのでありますから、私自身でいつまでにできるということは申し上げかねるのでありますけれども、およその予想を申し上げますると、わが国原子炉がいよいよ操作されるときがいつになりますか、そう今年中とか来年中とかいうわけにはいかないだろうと思いますので、それまでには、おそらく法律を作ることが可能だろうという予想を持っております。私、専門部会部会長ではありますけれども、一学徒がそういう立場で、おそらく可能であろうと言っていたことをも考慮の中にお入れになりまして、その点の決定を願いたいと考える次第であります。  以上で私の口述を終ります。
  4. 小金義照

    小金委員長 ありがとうございました。  次に、葛西参考人
  5. 葛西浩

    葛西参考人 参考人としてお呼び出しを受けました損害保険協会葛西でございます。私が本日参考人として御指名を受けましたのは、先ほどお話のあります、本委員会でただいま御審議中の核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に関してで、提案理由の御説明を拝見いたしますと、原子力賠償責任保険制度発足が予定されているというふうな御趣旨が述べられております。その点につきまして、私ども保険業者のこの保険引き受け態勢がどういう状態に進んでおるかという点を御報告申し上げることが、呼び出しを受けた御趣旨に沿うのではないか、さように存じて出ましたようなわけです。  私ども業界では、この原子力保険の問題がぽつぽつ話題になりましたのは、大体昭和三十二年の初めごろからであったと思います。その当時は、一部分関心を持っておる会社が、それぞれの会社の内部、あるいは志を同じゅうする数社が個別に集まりましていろいろと検討を進められておったようでございます。その後、原子力産業会議あるいは原子力委員会等からいろいろとお話もあるようになりました。また、業界としても、さらに全般的にそういう論議がかわされるような段階に相なりました。昭和三十三年の三月にこの問題を協会の問題として取り上げまして、自来全社的な基盤といいますか、全体の会社が集まってこの問題を一つ検討しよう、それには、従来いろいろ研究が進んでおった会社の適格だと思う諸君特別委員を委嘱いたしまして、七人ばかりの特別委員で、自来熱心に検討が進められて参ったのがその経過の実情でございます。ただ、何と申しましても、先ほどお話もありますように、この保険は従来全く経験を持っておらぬもので、しかも、万一損害が起ったときには、その及ぶ範囲あるいは損害の起り得る時間的の幅というようなものについて、きわめて予測しがたい要素を多分に持っているように考えられます。普通の保険検討よりも非常にむずかしいわけなんでございます。先進諸国研究資料等もできるだけ参照いたしますし、また、日本の置かれております特殊な事情というふうなものも十分勘案をいたしますし、また部分的には、やむを得ず一応の推定なり、予想なりに立って考えざるを得ないというふうな実情検討が進められてきたようであります。そうして、一応基本的な考えがきまりましたのが、三十三年の暮れでございました。委員会の一応の基本的な結論を得まして、そうして本年の春に至りまして全体の会社に報告をして、まだ細目については検討し尽されない不確定部分多分に残されてはおりますけれども、一応その基本的な考え方は全会社了承を得た、こういう段階になっておるわけでございます。ただ、御了承をいただきたい点は、私どもの方で原子力保険検討する場合には、施設の所有者の直接こうむるいわゆる財産保険という問題と、それから本委員会で御審議中の賠償責任保険というものと、両方を常に保険会社立場としては考えつつ検討を進めなければならぬという事情でございます。この並行的にと申しますか、双方をあわせ考えつつ、引き受け方式検討されたのが実情でございます。  それからもう一つは、この財産保険責任保険を通じまして大前提がありますこと、何分にも非常に長期にわたって担保責任を果す用意と申しますか、そのためには、一般の従来営業をしております保険とは区分いたしまして、この責任の裏づけとなる責任準備金の積み立ての方式とか、また、これと関連する税法上の特別措置というふうなことも関係当局にぜひともお考えを願いませんと、現実の発足がむずかしいという事情一つございます。  それから、賠償責任保険につきましては、現在のところ、私ども協会会員会社は全体で二十社ございますが、この全体の会社が、現状においては賠償責任保険の営業免許をまだ得ておりません。従って、この原子力に関する賠償責任保険に参加するとしますれば、どうしてもやはりその会社の定款を変更して、営業の免許を得ることの手続も前提として必要である。こういう事情一つあらかじめ御了承をいただきたいと思う一点でございます。  そういうふうにして検討を進めて参りましたわけで、昨年の秋ごろから原子力委員会の方からも、ともかくも保険会社としてこの引き受けの要綱なり、あるいは引き受け得る金額の最高限度なりを、現状において可能な範囲でできるだけすみやかにその案を示してもらいたい、こういう御要請もありました。先ほど来申しました委員会でいろいろと検討をいたしました結果、各保険会社の資本金勘定というふうなものを一応計算の基準として、最高限度どのくらい日本の二十の会社引き受け得るかという原案を作りまして、これを各会社に諮りました結果、ようやくこの財産保険責任保険とをあわせまして、施設の一構内を単位といたしまして最高十五億円までは引き受けが可能であろう、こういう一応の結論に現在到達をいたしております。もっとも、これは日本会社だけの引き受けの能力から見た最高限度でございます。これに先ほどお話も出ております、外国の会社へどれだけ再保険が売り得るかということによって、この担保の金額というものが相当拡大されることとは思います。また、再保険につきましても、できるだけわれわれは努力をいたしまして、幾分でもお役に立つようにいたしたいと思っておりますが、この点は、まだ十分な御報告を申し上げる段階に至っておらないわけでございます。  それからもう一つは、ただいま申し上げましたこの十五億円というのは、財産保険責任保険と双方をあわせて施設の一構内単位、こういう意味にお聞き取りをいただきたいのでございます。それで、その財産保険責任保険をいかに区分するかという問題につきましては、大体は半分ずつ、金額で申せば七億五千万円ずつ、半々ということが考えられておりますけれども、この点は、一律に二分の一ずつということをあまり窮屈に考えないこと、ケース・バイ・ケースで判断をいたしまして、若干の弾力性を持たしてもよいのではないか、こういう意見が現在出ておりますことをお含み願いたいと思います。さようにいたしまして、引き受け方式は、この全体の会社がプールを結成いたしまして、そのプール機構で引き受け、共同の保険証券を出す、こういうふうな考え方で現在おりますわけであります。また、外国の会社へ売ります再保険につきましても、個々の会社から売るのでなく、プールを通じて一本のルートで再保険をする、こういう考え方でおります。  大へん概略でございますけれども、以上がただいままで保険会社といたしまして原子力保険につきまして検討の結果、一応到達しております現時点における引き受けの要領でございますが、何分、冒頭にも申しました通り、従来経験のないむずかしい要素がたくさんに含まれております関係上、なかなか一挙に細目にわたって自信のある確定案というものは非常に得がたいわけなのでありまして、まだ今後大いに研究に待たなければならぬ諸点が多数残されておりますわけであります。また、関係官庁等の御意見もできるだけ委員会審議過程において伺いつつ検討は進めて参りましたけれども、今後とも関係当局のお力添えを願わなければ、保険業者だけではなかなか解決のつかぬ問題も相当残っておるように考えられますわけであります。  簡単でございますけれども、現状における私ども業界実情を一応御報告申し上げまして、御参考に供したいと思います。
  6. 小金義照

    小金委員長 ありがとうございます。  以上で参考人方々の御意見の発表は一応終りました。  引き続いて質疑を行います。質疑は通告がありますので、その順によってこれを許します。岡良一君。
  7. 岡良一

    ○岡委員 我妻先生にお伺いいたしますのは、先生は、国家補償といわゆる損害賠償保険、こういう形で原子力災害補償をできるだけ全からしめたい日本の共通する若干の問題があって、部会でも掘り下げようということでございましたが、その共通する若干の問題というのは、具体的にどういうような御趣旨のものでございましょうか。
  8. 我妻榮

    我妻参考人 つまり、一つ理論的な問題としては、原子力あるいは厚子炉の操作によって損害をかけたときには、過失の有無を問わず責任を負うという原則ですね。それを基礎として保険もできております。保険は、オーナーオペレーター賠償責任を負うときの、その賠償責任を保証するわけですから、責任があるということを前提として保険ができておるわけですけれども、また、それは学説理論としては、おそらくだれでも異議がないと思います。一応責任を負うということをはっきりさせる必要があるのだ。御承知かもしれませんが、自動車の損害賠償保障法ができております。あれには保険にかけるとか、あるいは保険のない場合には国家補償するということになっておりますが、あの法律の中に、自動車を運転して人にけがをさしたやつは、過失の有無を間わず責任を負うということをはっきりさしているわけです。その基礎の上にいろいろな制度ができておるわけですから、やはり、理論としては、原子力による損害過失の有無を問わず責任を負うということを一本言わなくちゃならぬだろう。しかし、その責任保険マキシマム——ただいまのお話ですと、十五億なら十五億以上は責任を負わないという基本線をはっきりさせる必要があるのですね。そうでなく、民法のようにいきますと、そこがくずれるおそれがあるわけです。それから同時に、十五億なら十五億で切るのだが、それは普通の場合を言っているので、オーナーオペレーターに故意または非常に大きな過失があったというときにも、十五億で切っていいかという問題が残ります。それから、被害者が禁止区域に入っていたり何かして、被害者の方に過失があるときには何か考えなくてもいいかというような問題もあると思います。それから、原子炉建設した請負業者に過失があったとか、あるいは燃料を供給したサプライヤーに過失があって、非常に悪い面を及ぼしたという場合に、その場合にも一応オーナーオペレーター責任を負うことにして、そこからサプライヤーにいくのか、それとも被害者がいきなりそっちへいかなくちゃならぬのかという問題ですね。そういう問題、多くは、今非常に技術的に保険で簡単に片づけるのですけれども、やかましく理屈を言うと、それらの点がみんな予定されたことにして保険が進んでおる。ですから、その裏づけとしての理論がどうしても必要だろう、これが両者に共通した理論としての問題だろう、こう申し上げたものの例であります。  それから、もう一つ技術的なことということもちょっと申しましたが、大ぜいの被害者が一緒にできたときに、一体普通の自動車にひかれた場合のように、被害者が自分で弁護士を頼んで請求をするのがいいのか、あるいは何か被害者を一緒にして、一緒損害審査をして、そうして分けてやるというようなことが必要なんじゃないかというような問題、それから十年、二十年の後に損害を生ずる場合もあり得るわけですが、そういうもののために金を取っておく必要があるのかないのかというような問題で、これは理論的に認められた賠償請求権を、実際迅速、公平にやるには、何か普通の場合と違う方法を必要としないか、そういうような問題もあるだろうというようなことを申し上げたわけであります。
  9. 岡良一

    ○岡委員 葛西さんの御意見の中で、賠償責任は構内に限定されるということがありましたが、構内とはどういう意味でございますか。
  10. 葛西浩

    葛西参考人 お答えをいたします。この点は、いろいろむずかしい点があろうと思いますが、一応は、何といいますか、原子炉施設のあります、たとえば東海村に例をとりますれば、いわゆる原子炉設置の構内というのは、一応常識的に考え得ると思うのです。ワン・コンパウンドとわれわれはふだん言っておりますが、そういう概念で申し上げた構内でございます。廃棄物の処理というふうなことから、相当構外にパイプが走っておるとかいうふうな、例外的なケースも実際問題としてはあり得ると思います。そういう問題は、先ほども申し上げましたように、まだ完全に、細目について確信のあるお答えができる段階研究が進んでいませんのが現状でございますが、一応現在考えております構内というのは、今申し上げましたような概念に立っての構内、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  11. 岡良一

    ○岡委員 そういたしますと、たとえば、東海村の原子炉設置の敷地というものが一応区画されているわけでございますが、その内部において、あるいは放射能等の障害を受けた場合の損害賠償、こういうふうに地域的に限局をされるわけですね。たとえば、逆に言うと、万一非常に大きな事故が起って、その構外に放射能が放散するというようなこともあり得るわけですね。こういう賠償責任は、現在損保協会の方では保険賠償責任の範疇に入らないのだ、こういうお考えでございますか。
  12. 葛西浩

    葛西参考人 お答えいたします。その点は、ちょっと私の言葉が足りなかったかもしれません。この十五億円を単位としまして引き受ける場合に、その引き受けの対象というものは、構内の施設によるわけでありまするが、その施設から放射されました放射能の被害は、これはもちろん構外にも及び得る、こういう考えでございます。そのようにお受け取り願います。
  13. 岡良一

    ○岡委員 我妻先生にお伺いいたします。若干政治的な立場もあるわけでございまするが、先生もいろいろ外国の立法例もお引きになりました。そこで、御存じのように、日本の国では原子力研究開発が非常に立ちおくれておる。そこで、何とかこれを急速に進めなければならぬというのが、これは政府なり与野党共通の考えであるわけでございます。ところが、御存じのように、長崎なり広島で苦い経験をわれわれは浴びておるというところから、原子力そのものに対するいわば不当な恐怖も、これは偽わらざるところ、国民の間にある。この恐怖を克服するにはどうしたらいいか、それは原子炉を安全に運転をして、そうして、おそらくアパートの台所にも、また団らんの茶の間にも、原子炉の電気をともしてやるということで実証することが、恐怖をなくする一つの大きな道ではないか、しかし、それをやるために、やはり原子炉は、各国共通の権威者の意見として、まだまだ確実に安全だとは言い切れないという立場にあるので、補償については何らかの形で安全を期するようにということ、この二つ日本のおくれた原子炉を発達させるための一つの大きなそこではないか、こういうふうに考えるわけであります。そこで、たとえばアメリカの例もお話しになりました。英国あるいはドイツスイス等についてもお話しになったわけでございますが、私どもの見るところでは、これらの国々における原子力災害補償については、いろいろな、いわば異なった態度を示しておる。一つは、御存じの通りアメリカではAECが民間のメーカーに対して原子炉設置を認め、むしろ民間の手によって原子力研究開発を進めようという方針をとっておる。コントロールはAECが強くとっておりましても、事実はそういう方式でやる。そこで、やはり民間のメーカーの損害補償する、またそれに基く第三者損害補償するという立場が強く出てきて、そこにアメリカ原子力災害に対する政府の方針というものもある。英国の例なんか顕著だと思いますが、御存じの通り、AEAが設置者として絶対責任をとるという立場をとっておる。ところが、最近になって十四百万ドル見当の、いわば保険というものに入らなければならぬということを動力省あたりから国会に対しまして出した。これも、AEAから、今度は民間にも原子炉設置させようという方向に英国の原子炉というものが動いてきておるというところに、やはり保険の問題が当面の問題として起ってきた。でありますから、AEAが絶対責任をとる。英国は御存じの通り、やはり国会の権威と申しますか、ケース・バイ・ケースで国家の支出を認めるという立場に立っておる以上は、それは認められる慣行がありますからそれでよかったけれども、いよいよ民間ということになりますと、やはり、そこに保険制度というものもある程度まで規定しようという方向が出てきたのではないか、こう私は見ておるわけであります。西ドイツの場合は、御存じの通り、実用の動力炉をやるという方針は切りかえられて、原子力発電はまだ試験段階であるという方針を最近とってきている。スイスも同様であります。ところが日本では、やがて、いわゆる実用規模の動力炉の仮契約が今月中にも結ばれるのではないかというようなことが伝えられてきている。そういうことに相なりますると、何といたしましても、やはり、先ほど申しました特殊な事情からも、日本としては、国家補償並びに損害賠償についてのその保険に、どうしても入らなければならないという原子力災害に対する補償体制というものは、完備した体系というものを国として国会に諮るというのが国の当然の責任ではなかろうか、誠意ある対策とすれば、当然そこに帰着すべきだ、こう考えておるわけでございます。そううう観点からいたしまして、特に日本の特殊な事情にかんがみまして、我妻先生の御所見をお伺いいたしたいと思います。まず、第一にお伺いいたしたいことは、これは法律的にどう解釈していいのか、私も結論を持っておりませんが、ただ事実の経過からだけ申しますると、まず原子力基本法では、原子炉は国が管理するということになっておる。規制法では、内閣総理大臣が許可する、しかも、許可条件としては安全性を重視するということであります。ところが日本が現在建設をし、また建設をしようとしておるいわゆる原子炉なるものは、御存じのように、アメリカあるいは英国との間の協定に基いて日本に導入されるものが多い。その場合に、この協定の内容に、御存じのようにいわゆる免責条項というものがある。従いまして、原子炉の設計あるいは特に核燃料物質というふうなものについては、相手国はできるだけこれが完全であるように努力はするが、しかし、最終的に安全であるというわけにもいかないので、そこで、これを受け入れて、それを運転し、それを使用した場合、万一事故が起った場合には相手国は免責されるということになっておるわけです。問題はそこから出てくるわけなんですが、そういう協定に基いて外国から導入するということになれば、しかも、導入されたものは基本法によって政府がやはり管理をするという建前をとっているということになりますると、当然政府としては、いわば瑕疵のあるものを承知しつつそれを受け入れることになる。瑕疵のあるものを受け入れながら、しかも、それを安全である、基準に照らして差しつかえなしということで設置許可し、運転さすという場合に、日本としては、特に政府としては、国家的な補償責任というものが強くあるのではないかと私は考えるのでございます。これはきわめて常識的な三段論法的な考え方ではありまするが、まず、この点、私の考えは間違っておるでございましょうか、一つ我妻先生の率直な御所見を伺いたいと思います。
  14. 我妻榮

    我妻参考人 国家が管理をするという立場をとる、ただし、それは国家が直営するという意味ではなく、許可を与えて民間のものにもやらせる、その際、許可を受けたものにも十分な責任、できるだけの責任を負わせとる、それで不十分な点は国家補償する、そういう立場は、純法律的に言いまして、管理という言葉から当然出てくるものではないかという意見は、これはまさにその通りだと思います。ことに最後に言われましたように、外国から導入してくるときたは、免責条項があるものをも受け入れなくちゃならないようなわが国状態にあるんだ、そうだとすれば、それを許可する国家は、ますます責任を負わなくちゃならぬのじゃないかとおっしゃる点も、まさにその通りだと思います。大体、私がさっき、わが国状態としては、保険でカバーし切れないところは国家補償をしなければならぬだろうと申しましたことについて、一つ有力な根拠をお示し願ったと思っております。
  15. 岡良一

    ○岡委員 それからこの法案改正でございますが、便宜上、経過的な改正として一応よろしかろうという御所見もございましたし、また先生の主宰せられる部会において、この補償体系を、保険国家補償の二本建で、十分に論点を究明しながら、できるだけ早い機会にこの作業は完了することも可能であるというふうな御意見でございました。しかし、私は、政府においてこのような経過的改正をやろうとした根本は、やはりはっきりしなければならないと思うのでございます。要するに、最近の損害賠償というふうな問題についての考え方が、ローマ法から、いわゆる絶対責任主義という方向に漸次発展をする、移行をしておるというふうに承知をしておるのでございます。しかし、原子力の問題は、普通の鉱山やアンモニア工業、石炭工業というものと違いまして、もう完全に無過失絶対責任主義、無過失賠償と申しますか、責任と申しますか、絶対責任主義の立場に立つべきだというこの基本的な立場が明らかになって、そこからこの保険の問題も考えられてくる。これがやはり立法の段取りとして、その前提が欠けているのじゃないかという気持がするわけです。この点がまず明確にされるということが、この法律改正基礎としてまず必要な要件ではないかと私は考えるのでございますが、先生の御所見をお伺いいたします。
  16. 我妻榮

    我妻参考人 先ほど申しましたように、いわば、常道からいえば、そういう法体系をはっきりさしてから、その一環として目下御審議中のこの改正案も考えらるべきだろう、先ほど申しましたように、その点はお説の通りだと思います。ただ、どこの責任ということになるか知りませんが、まだそれがはっきりしていない。それから、私の部会発足して日が浅いので、それはそう簡単にはできまいという現実ですから、その現実に立って、それができるまでこの改正案は待てと言うべきか、それとも、すでに建設しなくてはならぬのだ、だからミニマムとしてこれだけは認めていこうか、どっちがいいかということは、まさに国会政策的にお考え下さることだろうということを先ほど申し上げたわけです。もちろん、御承知だろうと思いますけれども、最近大学あたりで、ことに小さい研究用の原子炉設置するというようなときにも、その場所を選定するのに、その地方の人々が、その賠償制度がはっきりしていないのではいやだということもある。そこで、せめて保険で、十五億になりますか、あるいは再保険を認めて二十億になりますか、それだけのものは黙っていても出てくるのだ、それ以上のことも国家が今考えているのだという具体的なことを言えば、地方の人も納得してくれるというような御事情にあるのだということを聞いておりますから、そういうことに対する意義をどう認めるかということだろうと思う。それで、御質問からはずれるようになって恐縮でございますが、この法律の施行は九カ月以内に政令で定めるということになっております。私がここにいて考えることは、この九カ月の間にどうしてもやらなければならぬことは保険のことだろうと思います。これは、ただいまいろいろお話しになりましたように、保険協会としては大綱はすでにきまっておるし、約款のこまかいことも遠からずきまるという事情におありになるようですが、御承知のように、これは大蔵省がまた認可しなくてはならぬ、そのほか保険運営に当っても、税の問題その他で認可しなければならない、そういう特別の措置をとらなくてはならぬということになりますから、率直に言って、保険協会と大蔵省その他の関係官庁が九カ月以内に保険制度発足させる、これはミニマムの要件で、これができるかできないかをきめなければ、九カ月以内にという文句を改めなくてはならぬということになるだろうと思います。しかし、それから先のことは、繰り返して申し上げることになりますが、同時に法律を作っていくというのでいいか、それとも、法律ができるまでは基礎がないから、この改正もしないかという、そのにらみ合いで御決定を願うことだろう、こう思うのです。
  17. 岡良一

    ○岡委員 原子炉は、この七月には二号炉の運転に入る予定になっております。そこで原子力局に聞くのだが、一号炉、二号炉は保険に入っているのか、あるいは保険に入る態勢になっておるのか。
  18. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 一号炉、二号炉に関しましては、いわゆる責任保険まで含めました原子力保険と申しますか、こういうものにはまだ入っておりません。ただし、先ほど両先輩からお話がありましたように、保険プールが結成され、この一部改正法律案通りますと、当然これに加入しなければならぬことになりますので、予算といたしましては、本年度の予算にその準備の資金を見込んでございます。
  19. 岡良一

    ○岡委員 幾らですか。
  20. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 まだ保険料がはっきりしませんので、予備金の中に含めております。
  21. 岡良一

    ○岡委員 大体の予算は……。
  22. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 金額はまだはっきりきめておりません。しかし、今の原子力研究所の予算の中から十分出せるように、予備金の中に組んであります。
  23. 岡良一

    ○岡委員 その予備金は幾らあるのですか。
  24. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 大体三百万くらい見込んでおりまして、そのほかに必要であれば、さらに予備金の中から出せるようにいたしてございます。
  25. 岡良一

    ○岡委員 三百万の保険料では、一体どれくらいの保険契約ができることになりますか。
  26. 葛西浩

    葛西参考人 この点は、実はまだ保険料が的確にきまっておりませんので、本席で申し上げるという段階にまだ至っておりません。せめて、日本会社引き受け得る限度の分だけでも、できるだけ早くきめたいと考えております。再保険の分になりますと、これはやはりケース・バイ・ケースで、引き受ける側の意向も参酌をいたしませんと、特に現在のところではまだ申し上げ得ない、こういうのが実情であります。はなはだ遺憾でございますが、そのようなことで御了承願いたいと思います。
  27. 岡良一

    ○岡委員 保険に入らなければならぬが、一体保険は十五億引き受けていただけるのか、どうも保険料もはっきりしないし、三百万計上してあるが、それでどれだけの保険契約ができるのかということは、法律改正される根拠としてわれわれを納得させるべきものが非常に不十分なわけなんだな。これは何か御意見があったら聞かしていただきたい。
  28. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ちょっと私説明が足りなかったかもしれませんが、先ほど説明がありましたように、かりに十五億の日本保険額がありまして、それに再保険を加えますと、ただいまのところ数倍というふうに見られておりますけれども、数倍といたしますと七十億なり六十億という金額になるわけであります。その中で財産保険責任保険をどういうふうに分けるか、これは先ほどのように今後の問題に残されておりますけれども、かりに半々といたしまして二十五億というふうに考えますと、ただいまの考えでは、その額が保険額になるわけでございます。そして、その炉の形態によりまして、あるいは人口の密集地帯とか、いろいろな立地の条件等を勘案して料率がきまっていく、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  29. 岡良一

    ○岡委員 すでに保険料を支払いするだけの資金の用意が予算上あるなら、その裏づけとして、特に保険に強制的に加入させようというなら、政府みずから範を示すぐらいのところで、ちゃんとした、ある程度の数字的な——これは保険に入るということになると数字の問題なんだから、まだそういう見通しというようなことでは、私は責任を十分果しておられないと思うのです。  それはそれでいいとして、それでは我妻先生にお聞きしますが、すでに政府の予算で日本原子力研究所は第三者損害賠償も含めての補償をやろうとしておるわけですね。このこと自体は、ひもをつけるわけじゃないが、これは国家補償ですね。その点、法律的にどうなんでしょう。
  30. 我妻榮

    我妻参考人 それは考え方なんですね。つまり、私のわずかな知識からいいますと、アメリカなんかは、国あるいは公共団体がやるという場合にも、民間がやる場合と同じように全部コントラクト、契約方式をとって、同じような保険にかけるというやり方をしますね。それに反して日本は、国家というものは決して破産しないというような考えで、国家のものは全部特別に保険なんかに入らなくたっていいという考えなんです。先ほどちょっと申しました自動車損害賠償なんかも、もちろん保険に入っておりません。火災保険もおそらく入っていないだろうと思いますが、国家の方には保険はつけないという考え方であります。どっちがいいかということになると、これはいろいろ意見があると思いますが、私個人考えで、国家は破産しないだろうけれども国家財政を合理的に運営していくという立場からいえば、やはり保険があるなら保険に入る、あるいは保険にかわる積立金を、保険と同じような合理的な基礎としてやっていくというふうにした方がいいのじゃないかと思うのです。しかし、そこはいろいろな意見のあるところだと思います。今の原子炉については保険に入るというお話ですが、これは私の考えから言うと、非常にもっともなことだと思うのです。それを国家補償とするかどうかということは、これは言葉の問題じゃありませんが、結局は国家の金であり、そしてそれはタックス・ぺーヤーの金でありましょうが、タックス・ぺーヤーの金を払うにしても、いろいろ保険財政を合理的に分けて利用しているわけですから、まず一段では保険料というものを払って、その保険でかわしていくという国家財政の使い方、それで足りないときには、今度は別なフアンドから出して国家補償をしていくということになるのですから、結局タックス・ぺーヤーの金になるという意味では、国家補償考えてもいいだろうと思いますけれども制度としては、やはり二段に考えてもいいだろうと思います。
  31. 岡良一

    ○岡委員 原子力研究所は国の直営のものでもございませんし、おそらく聡明なる佐々木局長の英断によって国家補償への一歩を踏み切られることだと思います。非常にけっこうだと私は思うのだが、こういう問題は、もっとはっきりした根拠の裏づけがあっていいと思うのです。まだ相談中だとか、数カ月以内にできるかできぬかわからないようなものを、ばく然と期待してもらいたいということで法律改正をされることは、果して責任ある態度かという点、私は問題だと思う。そこで、これは我妻先生の御見解ですが、この原子炉の事故の責任者は一体何人であるかということ、そして、またその責任はやはり無過失責任であるということを明確にうたうべきであるという原則の上に、原子力災害補償というものは考えらるべきじゃないかと私は思うのでございますが、先生の御所見はいかがでしょうか。
  32. 我妻榮

    我妻参考人 お説の通りだと思います。そうして、それをさらに法律の上にはっきりさせるべきだと思います。
  33. 岡良一

    ○岡委員 現在ある日本法律を調べてみましても、国家賠償法にしても、鉱業法にいたしましても、原子力研究所法などにいたしましても、該当する規定というものが何ら見当らない。そこで、法的に整備するということになりますと、これは新たなる立法措置を講ずべきものでございましょうか、それともまた、既成法等に新しく条章を設けて、そこにうたうべきでございましょうか、いかがなものでございましょうか。
  34. 我妻榮

    我妻参考人 大へんむずかしい御質問で、まだ私もそこまではっきり考えていないので申し上げられないのでありますが、先ほども申しましたように、現在御審議中の法律にはちょっと入れにくいだろうと思います。基本法に入れるべきか、あるいは基本法に大方針をきめておいて、別に法律を作るべきか、それらの点は、もう少し研究しないと御返事申し上げられません。
  35. 岡良一

    ○岡委員 これは葛西さんにもあわせてお伺いしたいのですが、我妻先生の御意見の中にもありましたように、アメリカは最高六千万ドル、国家補償五億ドル、英国も最近の新しい立法措置をもって十四百万ドルを民間保険、それ以上については国が責任をとるという態度を示しておる。これは御存じの通り、実用規模の原子力発電所が設けられている国では、みんな着々こういう補償態勢というものを作っておるわけです。ところが、日本でもいよいよ仮契約が結ばれようとしている。そこで、私どもは、いわゆるコールダーホール型というものの安全性と経済性について、昨日も当事者に来ていただいて、原発会社と学者の諸君の御意向をいろいろ聞いたところが、その両者の御意見の間にも、また私どもがお尋ねをいたしましたお答えを通じてみましても、多々納得のいきかねるような点もあったわけでございます。そこで、これについては、たとえば、原子力発電炉の実用規模の動力炉に対しては、損保協会としては、この賠償保険を含めて、保険約款等について大体どういう御方針でございますか。
  36. 葛西浩

    葛西参考人 実用炉と特に従来あります研究用の施設と、保険の面では区別して考えておりません。設けられる場所の環境、条件等によりまして、料率あるいは引き受け限度というふうなものに若干の変化はあり得るかとは思いますけれども保険立場からは、実用炉であるとか研究用の炉であるというようなことについての区分は、特に考えておりません。金額は非常に違いましょうけれども、しかし、私どもとしましては、最高限度を、先ほど申しました十五億ということに一応置いてありますので、おそらく小規模のものといえども、その以内というものはあり得ないだろうと思います。ただ保険の役立つ部分が、大規模な施設に対してはきわめて少いということの御批判は受けるかもしれませんが、力一ぱいのところ現在ではその程度、こういうことにお取り願います。
  37. 岡良一

    ○岡委員 大規模な原子炉災害の事故について公けに発表された資料として私どもが現在まで入手しておるものは、一九五七年の三月にアメリカのAECが、アメリカの両院の原子力合同委員会の求めに応じて作った報告書、これはその後OEECの損害保険に関しての作業の中でもかなり重要視されておるのでございます。これなんか見ると、とにかく、災害の規模、範囲、金額などは、万一の場合は非常に大きい数字が出ておるわけです。とにかく、最大七十億ドルということを公式な報告書は言うておる。もちろん、アメリカとてもそこまでは背負い切れないし、その確率が少いということから、五億ドルということに限定はしております。最大の数字は七十億ドルということを報告書は出しております。そういう状態のところへ持ってきて、経験のない日本が、いち早く実用規模の動力炉を入れようという方針になりつつある。ところが、それに対しては民間の会社としては十五億程度しか保険契約としては支払いに応じがたいということになると、格段な相違が出てくるわけでございます。これは御研究のことと思いますが、十五億がまず限度であるということが一つわかりました。そこで、その限度内においてさらに保険契約をするかどうかということになると、いろいろ炉の置かれる環境——環境というのは、気象条件とか人口密度ということでございましょう。あるいはまた、炉の出力の大きさということも当然問題になりましょう。それから燃料の型とか燃料の量ということ、あるいは設計の安全性、制御そのものの安全方式、いろいろな条件が出てくるわけでございます。こういう点について、損保協会としてはコールダーホール型について何らか御研究を進められたことがございませんか。
  38. 葛西浩

    葛西参考人 この点は、先ほど申し上げました専門研究委員会におきましては、若干委員において研究をしたこともあるかもしれませんが、私自身が、まだ実は本日お答えする程度研究過程聞いて、おりませんので、特にコールダホール型についての御研究ということになりますと、実は私は答弁の知識を持っておりませんことをおわびいたりします。
  39. 岡良一

    ○岡委員 現在シカゴに近いドレスデンのコモンウェルス・エジソン社では百十八万キロワットの発電をやっている。コモンウェルス・エジソン社の百十八万キロワットの沸騰水型の保険料金は年額二十五万ドル、日本の金にして約九億でございますね。そして保険金は五千万ドル、こういうことになっておるわけでございます。しかも、私は現地も見て知っておるのでございますが、これはシカゴから約二十六マイルくらい離れたところでございますけれども、環境は東海村とは問題にならない。ごく狭い半径においては人口密度は一マイル平均五人、こちらが七百六十名です。気象的な条件を私十分存じておりませんけれどもアメリカのことだから十分な安全性を考え設置許可したと思っております。そのほか、技術的な問題といたしましては、炉の方式そのものは、私どもの中にはいろいろ意見があるわけでありますが、こういうような事例と比較された場合、民間の損保協会としては、保険約款等において、保険の契約等についてなお考慮すべき問題があるのではないかと思います。こういう点はまだ御研究になってはおられないようでございますが、今私が申し上げたような点からいたしまして、あなたの率直な、個人的な意見を聞かせてもらえばけっこうだと思います。
  40. 葛西浩

    葛西参考人 御指摘の通り、冒頭に私御報告申し上げました通り、従来、全く経験を持っていないということと、それから、ただいま岡先生も御指摘の、きわめてむずかしい複雑な要素が多分に含まれておる。従いまして、その保険責任をわれわれが引き受けるためには、十分それらの問題について約款その他を検討して、いかなる場合にも約束しただけの責任は完遂し得るという覚悟を持たなければ実行できない仕事だということは十分自覚をしております。従いまして、金額等も海外のそれと比較いたしますと、財産責任を合せて十五億ということはいかにも少いという御意見もあるかもしれませんが、やはり保険会社の負担能力というふうなものを考え、また、従来多数の契約者に、その他の保険におきまして多大の責任を負担しております現状におきまして、新しいこの種の保険で他の被保険者の利益まで万一にも侵さなければならぬというような事態が起っては相済まぬ、こういうような観点から、金額的には十分大事をとって考えておるわけでございます。  それから、約款その他につきましても、本日は私自身もあまり十分な御説明の知識がございませんし、また、時間等の関係もありまして、十分お聞きいただけないかもしれませんが、やはり、ただいま申し上げましたような観点から、保険会社の経営自体を危うして、その結果が、火災保険なり、海上保険なり、既存の大多数の契約者に累を及ぼすようなことがあっては相ならぬというような点から、自信のないといいますか、十分確信のない部分については、一応やはり免責ということに約款考えざるを得ない、こういう点もございますので、ともかくも、原子力委員会方々からお聞きしましたときも、いろいろと不確定な要素、諸君が経験しないような要素があるであろうから、十分なことを今認めてもそれは無理だ、現状においては、ここまでは間違いないという方向を示してくれることが先決じゃないか、こういうような御要請もあり、また業者自身も、まさにそのように考えまして、現在、先ほど来申し上げましたような一応の引き受け方式というものを取りきめ、これに伴う財産保険責任保険それぞれの約款を一応用意いたしてございますが、追ってまた御批判を仰ぎたい。また、御審議を願う対象になるかもしれませんけれども、本日は、業者として、大体そういう気組みでこの問題に向っておるということだけを一つ了承願いたいと思います。
  41. 岡良一

    ○岡委員 ほんとうに御説の通りで、これは保険会社も無理な損をして破算をしてもらっては困るし、原子力を導入して運転する会社も破算してもらっては困るし、特に、万一の場合に多数の国民の損害がそのまま放任されても困るという、三者三すくみをどうさばいていくかというところに、特に我妻先生の大岡さばきを私たちは期待をしておるわけなんでございます。  そこで、今私例を申しましたが、こういうわけで、一発電所が十八万キロの動力炉を置く、保険は五千万ドル民間契約をしている、これは百八十億ですね。保険料は二十五万ドル・約九億の保険料をかけているというようなことなんです。もちろん、この保険料は六〇%くらいは十年後には積み立てておいて返してくれるそうですが、いずれにしても、そういうことになっている。そこで外国の、いわば再保険ですな。これは私全然知らない分野でございますが、損保協会といたしましては、どういうところに当りをおつけになるのか、現在どの程度の期待が持てるのか、この辺のところを少し具体的にお教えを願いたいと思います。
  42. 葛西浩

    葛西参考人 これも十分御満足のいただけるような御回答のできないことを大へん残念に思いますが、大体の見当というお言葉がございましたので、現在、財産保険責任保険十五億というものを、日本会社が最高限度引き受けるという決意をいたしております。主として再保険をいたします市場といたしましては、現在のところイギリスアメリカ考えられておるわけであります。それで、もう一つお含みいただきたいことは、大体イギリスの方の情報として私ども承知いたしておりますところは、従来の火災保険、海上保険というものに対する海外への再保険は、日本会社が元受けをした金額の何倍、あるいは何割というふうな仕組みで、大体自動式に、元受けの責任の開始と同時に再保険責任を持って参る、こういう建前でいっておりますのが再保険の結果なんでございますが、今回の原子力関係保険につきましては、一体日本会社が全体でどれだけ引き受けられるのか、その引き受けた数字なり、あるいは全体のバリューなりをにらみ合して、その超過部分をどのくらい外国の会社なりプールなりが引き受けるか、こういう割合で再保険を向うで売るということはどうもむずかしいようであります。まず、日本会社の全体で十億引き受けますか、十五億引き受けますか、それをきめますと、大体そのリスクについては、外国会社はその超過分に対してどれだけ引き受けるか、こういう仕組みで引き受けるというように承知をいたしております。それから、大体の見込み額でありますが、これは戦争保険とか地震保険とか、約款関係のある保険の免責をどの程度に織り込むかということにも十分かかっておると思います。特に、外国の会社が、日本は地震国であるという関係から、地震に基因した損害を含むか含まないかによって、再保険引き受け程度が格段に違うように聞いております。大体私どもの現在の約款は、地震を含まない考え方で作られておりますので、それによりますと、賠償責任だけを言いますと、半々として七億五千万でございます。これに対して三、四十億程度は行き得る、五十億を最高とするくらいのところじゃないかというふうに現在関係者は考えております。しかし、これは先ほど申し上げました通り、やはり、個個の元受け契約の各条件が整いますれば、それに基いてできるだけ多くの再保険がさばけるように、われわれとりしては努力いたしたいと思いますけれども、見込みとしては、きわめて概要ではありますけれども、その辺のことが考えられておりますのが実情であります。
  43. 岡良一

    ○岡委員 具体的に再保険の期待ができるのはアメリカと英国というお話でございますが、そういたしますと、イギリスは、先ほど申しましたように、今度原子炉を民間が設置する場合においては保険に入らなければならぬ、民間の引き受け額は千四百万ドルということなのです。だから、大体五十億程度でございます。そこで、英国は、この五十億程度を民間会社引き受けるという前提の上に立って国家補償考えようということのようでございますが、再保険を英国の保険業界に期待した場合、日本は十五億しかしないのだという立場で、英国に対して五十億期待できますか。これまでのいろいろな関係もありましょうが……。
  44. 葛西浩

    葛西参考人 これは、先ほど申し上げましたように、まだ十分確信のある、はっきりした数字とは申し上げかねますけれども、大体今まで、その方面の要望なり、仕事に関与しておりました業界人の意見を聞きましても、その程度はいくであろうという一応の見込みをつけております。現実にはやはりこちらの元受契約というものが成立しった上で、時を移さず、このものについての再保険はどれだけ引き受けるかという具体的な交渉に入りませんと、確定的な数字は申し上げかねますが、大体そのくらいいくだろうという一応の予想でございます。
  45. 岡良一

    ○岡委員 それは英国で五十億期待できる、そういう……。
  46. 葛西浩

    葛西参考人 これは英米を合してでございます。外国再保全体ということで……。
  47. 岡良一

    ○岡委員 そこで、もう一つの問題は、アメリカ引き受けるかどうかということなのです。私は、コールダーホール型について申し上げておるのでございますが、アメリカでは、おそらく、正原子力の会の諸君、あげて英国のコールダーホール型の安全性というものに根本的に疑惑を持っておる。これは公式に、最近のジュネーヴの平和利用会議でも、口をときわめて英国のコールダーホール型炉の持っておる固有の不安全性というものを強調しておる。問題にならないと言い切っておるということが一つ。もう一つは、アメリカは、実用規模の動力炉でも、いわゆるコンテイナーという鋼鉄の格納庫、絶対にこれで包めということを主張している、そういうふうにやっているわけです。今度日本に持ってくるのは、これがないわけです。そういうことであれば、アメリカとしては引き受けっこないのじゃないかと心配しているのですが、そうなると、英国だけで一体どのくらい持ってもらえるのか。アメリカと英国は割に仲のいい国だから、おれの方はかんべんしてくれよということになってしまうと、これはえらいことになるのです。そういう点はどうでしょう。
  48. 葛西浩

    葛西参考人 この点は非常にむずかしい問題だと思いますが、私ども引き受けなり、あるいは海外再保の見通しというのは、一般的に原子炉施設に対して考えておりますので、特定の原子炉の性質とか、あるいは国際的な感情というふうなことも、現実問題としてはございましょうけれども、一般的に私どもが今検討しております段階では、そういう個々のケースを対象としないで、大体この辺までいけるだろうという見通しをつける段階に今日おるわけなのです。いろいろ御注意もいただきましたので、今後また現実にこの問題と取り組む場合、十分御指示のありましたような点も加えて、誤まりないように期していきたいと思います。大体、しかしアメリカ等でも、原子炉施設の再保険というものについては、英国の市場を通して、日本も含めて世界各国引き受けの要請があるというような過去の経験も持っておりますので、今のような国際間の特別な考え方とか、あるいは原子炉の性格いかんというふうなことによっていろいろと影響はございましょうけれども、全然日本の市場からの再保険をシャット・アウトするということは、アメリカにおいても考えられないという期待に基いて考えを立てておる、こういうことであります。
  49. 岡良一

    ○岡委員 これからの問題でございますので、それぞれ一つ研究願いたいと思います。最後に、我妻先生にお願いいたしておきたいことは、御存じのように、国際原子力機関というものがございます。国際原子力機関は、国際的な規模において原子力の低開発国にも力こぶを入れて、そして、原子力の平和的利用における恩典を世界の加盟八十二カ国すべてが受けよう、こういう趣旨で、現在発足三年目を迎えているのであります。昨年も、ここにお見えの菅野先生あたりも、原子力機関の責任者とも会いまして、ぜひとも原子力災害補償について国際機関が責任を持つという態勢をすみやかに作ってもらいたい、ということは結局、日本保険業者とか、アメリカ保険業者とか、英国の保険業者とかいう関係でなく、国際的な原子力保険プールを作るという方向にぜひ御努力を願いたいということを強く要請をいたしまして、最近国際原子力機関も、特にそのための専門部会を設けたという報道も聞いているわけでございます。この原子力災害補償の問題、これは国内においてなかなかやり切れるものでもございませんし、といって、これからの問題であり、しかも、原子力は、おそらく将来は産業、社会、人間の思想にも非常に大きな影響を与えるかもしれないというふうな、非常に大きな、歴史的な一つの要素をはらんでいるだけに、国際的な規模においていかなる保険プールが設定さるべきかというようなことも、これは国内における損害賠償の問題とあわせて、ぜひ我妻先生の主宰せられる部会等で御研究願いたい。わが方としてのどうあるべきかという態勢を、せっかく国際原子力機関の理事国としてわが国も参加しておりますので、低開発国を代表して国際的に発言し、そして将来の原子力災害における国際的な補償問題の解決についても、日本もぜひイニシアチブをとるというような方向に御努力を願いたいと思うのであります。この点をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  50. 我妻榮

    我妻参考人 御注意ありがとうございました。私の専門部会では、御承知通り諮問された事項を審議するわけでありますから、直接御注文のようなことがどこまでやれるか疑問だと思いますが、最初に申し上げました東京大学研究班は、さっき申しましたように、国際公法の学者や国際私法の学者もたくさん入って、まさに御指摘の問題も取り上げて研究の一部門としておりますので、その方の研究を進めるのはもとよりのことでありますけれども、この研究成果をもって、私の関係している専門部会でもできるだけこれを政府において取り上げてくれるように努力するつもりであります。ありがとうございました。重ねて御礼を申し上げます。
  51. 小金義照

    小金委員長 参考人各位からの意見の聴取はこの程度にとどめます。  参考人御両氏に申し上げます。長い時間にわたって、しかも貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して、私から厚く御礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会はいずれ公報をもってお知らせいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十分散会