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1958-10-07 第30回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月七日(火曜日)    午後一時三十九分開会   —————————————   委員の異動 十月四日委員雨森常夫君辞任につき、 その補欠として青山正一君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     野本 品吉君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            青山 正一君            大谷 瑩潤君            安井  謙君            藤原 道子君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君   政府委員    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省保護局参    事官      佐藤  豁君    最高裁判所事務    総局家庭局第三    課長      森田 宗一君   —————————————    本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (少年犯罪対策に関する件)   —————————————
  2. 野本品吉

    委員長野本品吉君) これより本日の委員会を開会いたします。  今日は、検察及び裁判運営等に関する調査の一環といたしまして、少年犯罪対策に関する調査をいたしたいと存じます。  申し上げるまでもなく、二十九年以降青少年犯罪の数が激増いたしまして、それから非常に悪質化傾向が顕著になって参りましたのみならず、犯罪原因も複雑化しております。こういう実情に対処いたしまして、この際、少年犯罪対策を根本的に検討いたしますこととともに、少年法等関係法令の整備に資したいと、かように考えておる次第でございます。  なお、本日は本件調査に関連いたしまして、岸総理出席を要求しておったのでありますが、やむを得ない要務が重なっておりますために遺憾ながら出席いたしかねるとのことでございますので、この点御了承願いたいと思います。  それでは最初に最高裁の家庭局第三課長森田君から、本木町の事件につきまして経過の御説明を願いまして、その後順次質問に入りたいと思います。
  3. 森田宗一

    説明員森田宗一君) いわゆる本木事件と言われ、世上いろいろ論議せられました東京足立本木町一丁目七百八十番地の、いわゆるバタヤ部落と言われる環境のよくないところに起りました二人の娘が、いずれも年少の少女でありますが、その父親を殺した事件でございます。この事件につきましては、御承知のように、新聞雑誌その他あらゆる方面でいろいろな見地から検討せられましたし、国会におきましても、衆議院社会労働委員会においてこの種の事件関係のある社会福祉あるいは少年保護観察等の諸機関専門家の御意見も徴せられたわけで、詳細はすでにいろいろなものに記載され、速記録等もあるわけでございますが、ここでは簡単にその焦点と申しますか、私ども立場からの問題点という点にだけしぼって申し上げてみたいと思います。  順序といたしまして、簡単に非行の事実を申し上げたいと思います。すでにお手元家庭裁判所において審判の結果、保護処分が行われたその決定書の写しを差し上げてございますので、それを御参照願いたいと思いますが、その冒頭に本件の事実として掲げられているのが、いろいろな調査審理を尽した結果の正確な事実と、かように考えていいと思います。それによりますと、以下少年といいますのは、少年法少女も含めて二十才未満の者を少年といっております。ので、本人のことでございますが、少年は、昭和三十三年六月十五日午前十一時五十分ごろ、東京足立本木町一丁目七百八十番地自宅において、実妹(当十三才十カ月)と共謀し、実父斎藤正躬(四十四才)が泥酔して熟睡中を同人の頸部に三尺帯を巻き、両名にてその両端を持ってこれを引き、急激に被害者頸部を締めつけ、もって即時その場において被害者を窒息死せしめたものである。かような事実であります。この事件につきましては、すでに御承知のように、直ちに自首という形になったわけでございまして、警察官の特別な捜査の上での、まあ犯人を見つけるという点での苦労はなかったと思いますが、非常に珍しいといいますか、まれな事件であるという点で、その捜査に当った司法警察員においても、相当慎重にこの事件捜査を始めた様子は、家庭裁判所送致せられました一件記録からもうかがわれるところでございます。この少女の、本件主謀者というような言葉が適当かどうかは存じませんが、姉の方は申しおくれましたが、昭和十七年三月二十六日生まれということでございますから、十六才をわずかにこえたわけでありますが、これはやはり刑法上尊属殺に該当するわけでありますので、司法警察員捜査に乗ったわけでありますが、妹の方は十四才未満でありますので、これは児童福祉法関係、あるいはその他の保護措置にゆだねられたわけであります。姉の方が本件少年犯罪事件としては—本件少年と申しますのは姉の方だけになるわけでありますので、この姉の方につきましては、ただいま申しましたように、警察においていろいろな捜査、いわゆる捜査という形で犯罪事実の確認その証拠資料収集というようなことが行われて、身柄刑事訴訟法規定によって拘置せられまして取調べが行われました。そうしてその事件は法律の規定に従いまして警察官の一応の捜査の後、検察庁送致せられまして、検察庁におきましても法の規定に基いて、さらに詳細な捜査を遂げ、家庭裁判所少年法規定に基いて送致をせられる、かような順序になるわけであります。家庭裁判所送致せられましてからこれを在宅のまま調査審判をするかあるいは身柄少年鑑別所にとどめて、かつ心身鑑別等鑑別所に依頼するという形をとるか二つの道があるわけでございますが、本件事件関係等諸般事情にかんがみまして、直ちに観護措置をとって、練馬にあります東京少年鑑別所身柄を移したわけであります。移したと申しますより、正確に申しますと、観護措置によって収容されたわけであります。観護措置の間は、これも御承知のところでございますが、ただ身柄をとどめ置くということだけでなくして、その間に身柄の保全、おもに行動観察をする、あるいは医学的、心理学的な立場からの資質、少年精神状態あるいは心理的な条件というようなものについて詳細な科学的な鑑別をするのが趣旨でございます。それと並行いたしまして家庭裁判所調査官社会環境家庭の状況、本人成育歴等のいわば社会的な面の調査を担当しておるわけであります。並行して調査鑑別が行われたわけでございます。その鑑別の結果どういうことが本人の、主として心身の面について、性格の面について明らかになったかということにつきましては、やや専門事項でもございますし、お手元にすでに差し上げてございます決定書にその要点が抜き書きして記載されておりますので、それに譲りたいと思います。  家庭裁判所調査官調査の結果は、少年調査表を申しますある一定の詳細な調査表にその要点を記載し、必要な事項は別に書面を作成して貼付して、これらを一括して社会記録少年調査記録と呼んでおりますが、社会記録というものにまとめて裁判官手元に報告せられております。と同時にこの事件につきましては慎重を期する意味であったと思いますが、鑑別における医学的、心理学的な鑑別のほかに、家庭裁判所科学調査室と申しますのがございます。そこの調査を経ております。この科学調査室は主として心理学的な立場からの科学調査をする専門の機構でございます。またそれと同時に家庭裁判所医務室におきまして、主として精神医学的な面から、あるいは精神分析的な手法によって、まあ鑑定と申しますか、鑑別診断が行われたわけであります。従って本件少年につきましては、社会的な調査のほかに科学的な調査診断といたしましては、鑑別所における所定の鑑別のほか、家庭裁判所における科学調査室及び医務室診断を経ているわけでございます。それらの要点決定書の中に記載されておりますので詳しくは省略したいと思います。ただここまでの段階で気がつきます問題点一つ申し上げますと、この三者の鑑別はもちろんそれぞれ学問的なある理論と立場に立っておるわけでございますから、一致しないということがそう不思議なことでもございませんが、しかし具体的な少年事件を目の前にして、臨床的に診断をし、鑑別をした結果として見ますと、まあかなりの食い違いがそこにあるということが一つ気がつく点でございます。それでいいのかどうかという批判もあると思いますが、それでいいのだと、おのずから角度といいますか、診断の基礎になっている学問なりあるいはその方法なりが違うことによってそういう結果が出た、ということはどういうふうに判断になりますか、いろいろな、人によって違うと思いますが、とにかく虚心に決定書を見ますと、そこに一つの問題があるということだけは言えるだろうと思います。これは私の、私見でございますが、印象でございますが、鑑別所鑑別と、それから特に科学調査室における診断との間の違いは、まあ専門的な点、私の誤解があるかもしれませんが、鑑別所の方によりますと、爆発性というような傾向が強い。そういうところにパーソナリティの変調があるというような点が出ておるのでありますが、科学調査室の方の検査によりますと、むしろ衝動性爆発性はなくて、忍耐性努力性、つまり自分を規制する力というものがむしろある。そのところにこの本人の問題が要保護性があるのではないかというような判断をしておるのであります。で、医務室診断はそのいずれとも言いがたいのでありますが、さらに詳しい調査の結果を出しております。この点、私の個人的な印象でございますけれども、相当本件の問題に深い関係があるのではないかというふうに思っております。それはさておきまして、この環境面につきましての詳細も、この決定書に盛られております。詳細なことはここでは省きたいと思いますが、そこに現われております問題点は、まず家庭崩壊ということ。それからその崩壊原因となったアルコール中毒の問題であります。それと、この家庭の置かれている長屋といいますか、広い意味ではその部落社会環境ということが大きな問題だろうと思います。それからもう一つ家族関係意味環境で申しますと、兄が二人ございますが、いずれもが問題の少年でありまして、すでに少年院送致せられており、あるいは一人は退院して間もなくであるというような要保護青少年であるということであります。この一家が現在の本木町に住むようになるまでの経過、あるいは家庭が、ただいま申しましたような崩壊状態にまで立ち至った経過につきましても、その要約決定書の中にございますので、これを御参照願いたいと思います。で、本件非行直前、つまり本人本件非行への直接の動機といいますか、あるいはその行動直前事情につきましては、これは相当事件関係の深い事情だと思いますが、決定書にもその要約が出ておりますが、母親がしばしばこの父親には手を焼いて困り切っていた、その実情を、長女である本件少年が非常に同情もし、何とか一家を立て直さなければならない。一家のガンを除いていかなければいけないというような気持にだんだん追いやられてきた事情がございます。  で、この少女は、本件を犯す少し前に、母親に、この父親さえいなければ一家は何とか救われるのだというようなことを言って、直接間接、暗に、というよりもかなり強く、母親に、父親殺害することを慫慂しているような事情がございます。しかし、母親はそれを受け流しておったわけでありますが、母親家出をするという事情が起ったわけであります。その間のことも、詳しくここに出ておりますが、そのことが前からの母親との話によりまして、母親が家を出たときはお前がしろ、こういうふうにみずから言いきかしておる。あるいは、母親が、そういう意図であったというふうに、長女はこれを受け取って、母親の出たときを、殺害時機だと、かように判断して、直接父親を殺すというような決意を固めた、こういう順序になっているようであります。そうして、妹にその犯行の、父親殺害決意を話して、そうして確かめております。  たまたま六月十四日の朝、と申しますと、本件事件が六月十五日の午前でありますから一日前の朝であります。この少年は、勤めておった雇われ先の雇い主に、ささいなことで叱責されて、非常にそれを憤慨しておったというような、心理的な差し迫った事情もあったわけでありますが、そのようなときに、父のことをあれこれ考えて、単独でも父を殺そうというような決意をして、主家を飛び出しております。  そうして、そのかねてからの計画を実行するために、父の好きなしょうちゅうを買って帰宅いたしましたところが、その晩、ただいま申しましたように、母親が勤め先から帰ってこない。つまり、母親は前に言っていた通り家出をしたというふうに思って、それは自分が殺すということだ、殺さなければならない時機なんだ、こういうふうに思って、ただいま申しましたように、妹に殺害決意を語った。そうして、妹もそれに同意して二人でその晩父を殺すということを計画したわけであります。ところが多少のいきさつがありまして、その晩はその目的を遂げなかったという状態で翌朝、犯行の朝でありますが、少年本人と弟妹それから父に連れられて母を探しに出かけて行ったわけであります。ところがあるところの母は職安で働いておりますが、その職安の仲間の家をたずねたところが、前の晩から母からかせぎ代だと預かっていた三百円の金と職安手帳を渡されて、母には会えなかったわけであります。それで少女としてはこれで母ははっきり家出したのだということを明らかに受け取ったわけであります。ところがその帰り道に父親は居酒屋に寄って、その母から預かった貴重な金で焼酎を飲み、さらには酔いつぶれてくだをまくという状態になりました。そこで本人たちはタクシーに父を乗せてようやく家に連れ帰ったというふうなことになりました。  そこでこの少年本人は、もう事ここに至っては父親を殺す以外にないというふうに決意を十分固め、母の家出ということもそこではっきり確認したという状態になって、そうして本件犯行に及んだわけであります。で、それ以下これをどういうふうに、つまり社会調査の結果、あるいは家庭環境、その崩壊された家庭、父の行状、アルコール中毒である父とその妻である子供たち母親との関係、あるいは親子関係というものをどう判断し、またそれと本人の個性というものをどういうふうにからみ合せて本件判断し、処遇をきめるべきかということにつきましては、その決定書にその要約が出ておるわけでございますので省略さしていただきますが、特に本件刑事処分にしないで保護処分にした理由については、裁判官は相当詳細な見解を述べております。また、本件少年少年院送致を相当とする理由につきましても、かなり詳しくその見解を述べております。それらはやはり決定書でごらんいただきたいと思うのでありますが、この本件のただいま簡単に申し上げました事件発生及びその経過それから調査官による社会的な調査、三つの機関による専門的な科学的な診断等の結果浮び上って参ります問題は、すでに世上言われておるような問題あるいは先般衆議院社会労働委員会で指摘せられたようなところにあると思いますが、若干といいますか、一つだけつけ加えたいと思いますことは、私の個人的な所見でございますが、とかくある立場から事件を見る、そうして同情するということが多かったのではないか、つまり、その事件そのものに即してその発生なり問題点あるいはどうするかという点の論点が少しぼやけていたような感じがいたします。それはたとえば本件のような事件が起るのは親孝行の道徳が稀薄になったからであるとするならば、そういう観点から何かないかというような見方、もちろんそういう面もある程度あると思います。  それからそれと相対照的な立場は、これは社会政策あるいは社会福祉の谷間の問題である。もっと早く社会福祉的な手をかければ十分救われた問題である。そういう点が本件にはたくさん露呈されている。もっぱら社会政策なり社会福祉事業なりあるいは政治の問題である。こういうふうな見方であります。相当理屈があると思います。いずれにも相当な理由があり、どちらが重いか軽いかということは、また見解の相違になると思いますが、本件はそういう社会的な要素、家庭の問題ということが大きいとは思いますけれども、しかし本件の語っているところ、事の起ってきた経過というものを虚心に見ますと、もっと複雑な問題がそこに語られている、浮き彫りになっているということであります。  その一つで、とかく世上十分浮び上ってきていなかった意見と思われますものは、やはり本人性格に根ざした問題であります。この犯行経過、ただいま申し上げました程度の簡単なことでもわかりますように、かなり特異な動機といいますか、決意をし、その計画をし、実行をし、それを遂げております。しかも年少の少女が相当用意周到なその意図を実行しているというところは、同種の尊族殺あるいは親が子供を殺したといったような事犯に比べてかなり特異な点であろうと思います。それはやはり端的にそのケースが語っているところは、本人性格に根ざしたものというふうに見ることができると思います。そのことは爆発的な傾向もあったかどうか、それはともかくといたしまして、むしろ自分を抑制し、ある判断をし、自分計画してやっていくという点では、年令から比較してみますとかなり進んでいる。むしろその点に要保護性というものがありはしないかという判断にある合理性があるのではないかというふうな印象を受けるのであります。  しかし、もう一度突込んでみますと、そういう本人冷情性といいますか、あることを計画して、あわてずに、普通ならば周章ろうばいする、あるいはそういうことはどうしてもできないというような正常の線からこういうことを計画し、実行し、冷静にやり抜くという性格を作り上げたものは何かということになりますと、これはやはり本人責任ではなく、家庭なりあるいはその家庭崩壊させ、またその背景にあるいろいろな社会の問題ということに還元されるかもしれませんけれども、具体的な事案をどう見てどう処理するかという点には、やはりそこはぼやかさずに、あるがままを見て、その上でどう判断していくか、さらにはその対策をどうするかということにならないと、ただ本人に対する非常に気の毒な、確かに気の毒な少女で、その点は決定書も終始述べておりますが、それだけではぼやけるおそれがあるのじゃないかというふうな印象を受けるわけであります。  まあこれが一応ここで私からお答えしておきまする経過及び決定書判断に至るまでの要点でございますが、なお念のため誤解のないように申し上げたいと思いますことは、少年院送致にしたということは、また見方によりますと、それはずいぶん酷ではないかという意見もあったかと思うのでありますが、この点はやはりおそらく当該の裁判官は、本人性格の上にも、あるいは長い将来の上に矯正教育にゆだねる必要のあるということを確信してこの処置に及んだものであろうと思います。私がただいま私見として印象を申し上げましたのは、若干その裁判官の個人的な意向を私も伺っておりますので、決定書に現われていない気持を私が付度して申し上げた、かようにお聞き取りいただいても差しつかえないと思います。一応この程度で終らせていただきます。
  4. 野本品吉

    委員長野本品吉君) それではただいま森田課長から本木町の問題に対します経過決定判断、その他のことについてのお話を一応伺ったわけでございますが、これに関しまして、またその他いろいろのことについて御質疑のあります方は順次御発言願いたいと思います。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょうど少年法に大きいメスを入れるときがもうすでに参っていると思っております。そのときに際しまして、最近このような少年凶悪犯が続出するということにつきましては、私どもといたしましても十分にこれを調査し、研究し、そうしてそのことは少年法をやり直します上の大きい参考にもなると思っておりますので、少し時間をちょうだいして伺ってみたいと思います。  まず森田課長の今の説明を伺いまして伺うのでございますが、この事件に対しましては検察庁は逆送の意見をつけてきましたか。
  6. 森田宗一

    説明員森田宗一君) さようでございます。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ただ逆送するようにということで、そのほかの文字はございませんでしたか。
  8. 森田宗一

    説明員森田宗一君) 文字の詳細は記憶しておりませんが、たぶん特別な付記はなかったかと思います。
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ただいまの説明で、少年院送致は酷だという考え方もあるし、また家庭裁判所の方でも裁判官がそういうお考えもあったかのように受け取りましたが、その意味はどういう意味なんでございましょうか。一体少年院子供を送るということは酷だということはどういうわけですか、その説明を願います。
  10. 森田宗一

    説明員森田宗一君) 別に公式な意見あるいは公式な場面で少年院送致することでも酷だということを私ども聞いたことはないのであります。つまり本件のような親が第一非道な親である。それから環境が非常に悪い。その他の、先ほども申し上げましたような、また決定書にも記載されているような情状からすれば、本人はむしろ責めるべきところがないのではないか、また特別本人矯正教育をする必要もないのじゃないか、もっぱら保護一本で、問題は家庭にあり、社会にあり、殺された親にある。かような観点に立ちますと、少年がとにかく少年院に相当の期間収容せられるということについては何か調和がとれない、こういう印象を持つ人があったのだろうと思います。裁判官の中にといいましても、本件責任裁判官は一人でございますし、合議ではございませんから、公式にそういう意見が出たとは思われませんし、私は直接ほかの裁判官からは聞いておりません。ただ新聞雑誌その他投書等も非常にたくさんございます。そういうものの中にさような意見があったという意味でございます。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 もちろん一人の担当の裁判官考えによってこれは処分されたことには違いございませんけれども、大体の空気といたしまして刑事処分を相当とすべきじゃないかというような、これはただいまもおっしゃったように、新聞その他世評といたしましては同情の声が非常に高かったのでございますが、まあそれになびいてというと語弊があるかもしれませんけれども、私どもとしてはもう少し本筋に考えるべき問題じゃないか、だから伺うのでございますが、これを刑事処分にして、そうして少年法にはちゃんと抜け道の五十五条で子供を救う道が作ってございますが、その五十五条で救ってやったらどうかという議論はないのでございましょうか、お伺いします。
  12. 森田宗一

    説明員森田宗一君) ただいま申し上げましたように、公式な意見としては私ども聞いておりませんし、私個人といたしましても他の裁判官から、そういう道をとって一たんとにかく刑事手続に回し、その審理を仰いだ結果五十五条で再び家庭裁判所に移送する、かような道をとるべきだというようなはっきりした意見は聞いておりません。ただまあそういうことも考えられるのじゃないか、あるいはとにかく刑事責任というものを刑事裁判の法廷であれば一応これは確認をするといいますか、そういう判断がなされるわけでありますから、そのことによってかえって教育的な機能というものが果されはしないかというようなことは、本件に限らず二十条送致をする場合、あるいはするかしないかという場合に常に考えられる問題であり、また意見がそういう大きな事件ですと非公式にお互いに話が出るわけでありますから、こういう程度では出たかもしれませんが、私はそれを聞いておりません。  これは私の個人的な意見で恐縮でございますが、現在の運用上二十条送致検察官に送致し、裁判所の法廷に回しますと、宮城委員の常に御指摘のところでありますが、五十五条によって再び家庭裁判所送致されるという場合はきわめて少くて、実刑になるかあるいは執行猶予になる。執行猶予の率が家庭裁判所としては、意外なぐらいに高率でございます。しかも保護観察という制度がありますが、この保護観察のつけないいわば野放しの執行猶予になる。家庭裁判所としては、よくよくというと語弊がありますが、これは保護処分になじまない、情状も相当重いというような判断で送ったものが相当なパーセンテージ野放しの状態の執行猶予になるということはたえがたい。家庭裁判所保護の面と同時に少年法は司法的といいますか、公共の福祉の維持の機能も持っておると私ども心得ております。そういう面からいたしますと非常に不思議な感じのすることがあるわけであります。従って本件のような場合にも今までの運用の実績から申しますと蓋然性は保護観察のない執行猶予あるいはせいぜい保護観察の執行猶予に終るという場合が非常に多いということを計算に入れてないと適正な運営が結果としてできなかったというようなことになるということも考えられるのじゃないかと思います。しかしこれは私のここでの御質問を受けてのものでございますから、その程度にお聞き取りを願いたいと思います。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 森田課長のおっしゃることはよくわかりますが、多分五十五条の問題を問題にならないで保護処分に付されたのじゃないかと私は想像しておりますが、この五十五条の処分を受けておりますものは昨年度は全国で二十八件ございます。昭和二十七、八年の年度なんかは百件以上あるので、私はこの五十五条がある以上、実は私はこの事案が起りましたときに、どうしてもこれは刑事法廷に行くべきだ、またやらなければならない事件で、これをただこっそりいろいろ小さい場面から同情する人がたくさんあって、警察へ来た金だけでも、同情金が十七、八万円もあったようなことが報告されておりますけれども、ただ世間が同情するからというようなことでこの問題を片づけていいか悪いか、もっと刑事政策の上から申しますというと、これもほんとに重大問題で、軽々にただ保護処分にしていいか悪いかということがございますので、私はおそらく、これは正しくいくならば刑事裁判に回る、そういう場合に五十五条—はなはだ失礼な言い方しますけれども、気がつかないという場合に、この少年自体はかわいそうだからどうしても救いたい、だけども社会政策上から申しますというと、刑事政策の上からいっても、やっぱり殺人の中の最も重大な尊属殺ですから、これをそのまんまただ保護処分をするということは道でない。それで刑事裁判にかかりました場合に、はなはだ僣越なことを申しますけれども、これは母親立場を、大きい母親立場を持つ私がどうしてもその裁判所に出まして、五十五条で私特別弁護をしようとほんとは思ってたんです。それをしてでも救ってはやりたい子供ですけれども、一方これは刑事政策の上に立ちまして、私はこの特別保護処分ということがどうだろうか、そしてこの少年院送致ということが、これはかわいそうだとおっしゃるのは、私は少年院送致というものはかわいそうだ—一般の場合を言うんですけれども、決してかわいそうなことでなくて、非常に少年法にのっとった少年院送致というものは子供に適しておるなら一番いいことだ、だがこの少年の場合に、少年院送致はどうかということは私しょっちゅう—この間少年院に行っている子供にも会い、ほかの少年院子供がこの事件からいかなるショックを受けておるかということも調査して参りました。ところが私が思っている通りに、少年院にこういう子供を送るということは本人のためにもならない。本人は実に悲しがっておりました。ということは、みんなが親殺しだ、親殺しだと言うて、百五、六十人もおる者が自分に対して色めがねを使っておる。そしてほかの考から言います。というと、私ども少年院に来てほんとにいい子になって出ていこうと思うのに、親殺しが来たんだ……それで少年院全体に対するところの非常な動揺があるのでございます。私はむしろこういう人を入れる少年院であってはならない。やっぱりこの娘はどうしても個人委託でもして特別なところにお願いして、そうしてもちろん保護観察はつけなければなりませんけれども、私は特別の措置を要する事件じゃないかというように考えておりまして、それには刑事裁判に回して、そして五十五条でもって救ってやるという考えを持っておりますが、その道のほんとうの専門家でいらっしゃる森田課長の個人的な御意見でも伺わして下さいませ。
  14. 森田宗一

    説明員森田宗一君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、具体的な事案は非常に複雑であり、その語っているところは詳細な書面を見ましてもなお判断を誤まるというのが、私ども実務の経験から痛感しているところでございますので、本件の処置をかりに他の裁判官がやったら、あるいは私がしたらという仮定は、お求めのようでございますが、差し控えさせていただきたいと思います。ただ五十五条という道がせっかく開かれ、二十条によって公訴提起がなされる刑事裁判の法廷において、その行為についての責任の追及といいますか、そういう結果そこで実刑でなしに、あるいは刑事処分でなしに、もう一度家庭裁判所に戻すというこの運用の妙を得れば、御指摘のように非常に妙味を発するものであるということは言えるわけでございますし、私もそのように考えておりまして、しばしば御指摘のような点は私どもの方から刑事裁判官の方の会同なりその他の機会に意見を申し上げておるわけでありますし、一昨年でございましたか、少年刑事裁判についての運用をめぐって、全国の刑事裁判官の会同の際に、相当とろいろな角度から論じられ、御指摘のような点も十分検討していかなければならないというようなことも意見が出たわけでございまして、たまたまこの事件がその道を通らずに、すぐ少年院送致ということになったことについて御批判のようでございますが、果してその道を今度は通ったことによって、また果してどうであったろうかということも考えられるので、私としては一応裁判官なり、調査官が、非常に手を尽し考慮をめぐらした結果なされた判断でございますので、それに対してはどうも私個人として批判はできかねるのでございますが、ただ御参考に、昨年でございましたが、家庭裁判所で二十条送致をいたしました事件が、やはり殺人の事件でございます。これははっきり覚えておりませんが、やはり少女が、小さな子供、嬰児殺の事件でございます。その事件家庭裁判所といたしましては、検察送致をいたしまして、ところが、山岸裁判長の係だったと思いますが、詳細な理由について五十五条で再び家庭裁判所に戻って参りました。この事件については、本件とは逆にいろいろなまた角度から批判が実はあるわけでありまして、むしろそれなら最初から保護観察なり、少年院送致なり、保護処分の線にいった方がたらい回しのような結果にならずによかったのではないかという批判もあるわけなんでありまして、批判は常にあり得るし、またその処分には、その時として正当な場合というものも常にあるのではないか、こういうふうに考えております。
  15. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと伺いますが、今試験観察はどういうことになっておりますか。全体の事件について。
  16. 森田宗一

    説明員森田宗一君) その点についてちょっと統計上の数字を今用意して参りませんでしたけれども、交通事件を除きますと十数%、これはあとでもし間違っておれば修正いたしますが、そうたくさんございませんが、試験観察が行われております。これは調査官が試験観察をするわけでありますが、法の建前といたしましては、在宅のまま調査官が最終決定のあるまで経過を見守り、ある程度の補導の手を加えるというものと、それから適当な施設、団体、個人等に本人を委託して、そしてその観察を遂げるというのとございますが、調査官の手不足、あるいは具体的な方法の隘路等で、前段の在宅のまま試験観察というものは、数の上ではある程度あるのですけれども、十分には行われておらないという状態であります。実際に試験観察の手がその趣旨に沿って加えられておるのは、適当な施設、個人、団体等に本人を委託して行われる場合でございます。
  17. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この事件少年は、一日も試験観察を受けておりませんですね、いかがですか。
  18. 森田宗一

    説明員森田宗一君) 受けておらないと思います。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは何か理由がございますか、今この医学の方の調査でも、必ずしも一致していないという、これは重大問題だと思っておりますが、私どもせっかくそういう措置ができるのですから、どうして重大問題について試験観察をなさらなかったか、その点はなはだ私はふに落ちないのです。御説明願います。
  20. 森田宗一

    説明員森田宗一君) その点は御批判の点も一応ごもっともだと思いますが、試験観察と申しますものは、御承知のように、最終処分に至るまでの間の中間的な処置でありまして、最終判断をするに熟した、あるいは判断に到達するだけの資料が十分である、あるいはそういう判断の時期であるというふうに考えました場合は、試験観察をしないというのが法の建前でありますので、裁判官としては、この段階で詳細な資料を調査診断の結果、最終の判断に熟すと、かように考えたからだろうと思います。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これは少年法で一番困っている問題の、決定機関とそれから執行機関とが別でございますから、つまり判決は裁判所でするが、その後の跡始末は法務省がするという、この二つの建前になっておるという少年法の大きな欠陥のためにこういうことになっておると思って、非常にこの点が大きい問題なんでございます。ところが今度の場合なんか、それが実に大きく表われておりますが、家庭裁判所の方は判決をしっぱなしで、そうして少年院に送って、少年院でどういうことをやっているか、いかなる影響があるかということは、今度その困ったことが一体法務省が責任をもってやらなければならないという、これは法の建前の間違いでございまして、これは重大な点なんでございますけれども、しかし少年をあそこに送っておって、あれでよかったかどうかということを、その後法をくぐってやるということでなしに、判決を下した判事は、一体少しは調査をなさったでございましょうか。その後の様子はいかがですか。
  22. 森田宗一

    説明員森田宗一君) 本件につきまして、少年院送致した後の経過がどういうふうであったかということを、当該の裁判官あるいは調査官調査したかどうか、視察したかどうかは、私は聞いておりません。ただ、現在の審判と執行の機関が分離されております建前でも、法及び規則は、当該の裁判官あるいは調査官は、随時、本件の場合でいえば、少年院でありますが、その執行機関に出向いて、その少年の動向に注意する、あるいはその処遇について、もし意見があれば必要な勧告をして、適正な処遇の行われるように協力するということは明記されているわけでございまして、しっぱなしでもしあったとすれば、それはその法と規則の建前にも忠実でないことになるわけでございます。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは次の点に移りますが、今の点は法務大臣に少し伺ってみますが、次の点。本事件がございましたのは昼の十一時五十分なんですが、夜も母親は家へ帰ってこない。それからその帰ってこないで泊りました宿には、その母親を守るといって、警察の方の調書をよく見ますと、違う男が泊っておりますね。そうしていわく、その事件を知らなかったといっているようでございますが、知らなかったらその母親のからだを守るために、女のからだを守るために何も男の人がついているということはないので、しかもはなはだけしからぬ、私はここで言うことを恥じますから申しませんけれども、肉体的の説明母親がしております。そこで私は母親の調べがもう少し足らないのじゃないかと思いますが、森田課長の御意見いかがでしよう。  第一番に、これは普通の常識でいいますと、大てい母親父親とけんかしまして家出をする。それも本気かどうかわかりません。しょっちゅう出たり入ったりしているようでございますが、そういう場合に、三つになるわが子をおいて出るかどうか、調書によると、三つの男の子がおりますが、おいて出ました。それから、それも少しわからないのでございますが、事件を知らなかったので母親は家に寄りつかなかったということも言っておりますが、その点のことが少し変じゃないか、もう少し調べてみたらどういうもの、だろうか。  それから父親というのは非常に近所近辺で評判がよくて、むしろ近所隣で評判が悪いのは母親であった。そうして父親はいつも今度殺した姉娘の方は自分子供でないということをいっている。これはこの間少年院で院長その他の方の話を聞いてみましたところが、母親やその妹なども二、三回あそこに訪問したようでございますが、ほかの兄弟とは全く違っているそううでございます。そういうことはあり得ることなんです。同じ兄弟でも違っていることはあるのですれども、そういうことをもとにして、非常に父親が最近になってやけ酒を飲み出したのだということが調書に出ているのでございますけれども、そういったような意味合いで、私は母親の調べ方がもっと足りないのじゃないか、ということは、父親は何といったって死んでしまいました。ですからこの母親子供をつれて子供を育てなくちゃならない、この母親についての私は調べが非常に簡単で粗漏じゃないかというように思っておりますが、いかがでございますか。
  24. 大川光三

    ○大川光三君 ちょっと関連しますが、ただいま宮城委員から御質問になりました点は、実は私もその点を伺いたいと、かように思っておったのでありますが、付け加えて申し上げたいと思いますことは、調書の上では、母親が家を出てしまえば少年父親を殺すということを母親は知っているのです。自分が家を出れば少女父親を殺すということを知っておりながら家を出たという点に、母親としての大きな私は刑事上の責任があるのではなかろうか、かように考えるるのでありますが、その点の御見解をもあわせて御答弁をいただきたいと、かように考えます。
  25. 森田宗一

    説明員森田宗一君) 私は申しわけないことでありますが、すべての事件記録調書を十分検討して読んでおりませんので、どの程度にしか母親の調べができていなかったかという点は、はっきり申し上げられないのでありますが、ただ担当裁判官が、本件事件がまだ少年観護措置中、つまり最終の審判の行われる前に、どうも家庭環境が十分調べられない、というのは、母親だろうと思います。父親は死んでしまいましたからいたし方がないわけであります。母親がどういう人であり、どういう素行であり、どういうふうに考えているかというような点が十分つかめない、それは母親がどこにいるかということがどうも今のところわからない、十分会えないというようなことを語っておりました。そのときの私の印象では、その点に、もう少し、もっと一番先に調査をしたい、当りたいという気持を持っておるにもかかわらず、それが十分なし得ない事情にあったというふうに受け取れたのでございます。で、そのことが結果的に御指摘のようなことになったのだろうと思いますが、もう一点は観護措置の期間が御承知のように原則として二週間、もう一回更新して二週間、通じて四週間の期間しか法律的に許されておりませんので、その間にその調査の、しようとして十分なしがたいという場合もあるわけであります。そこで先ほどの御批判に戻るようなことになりますが、そのために観護措置はてこでもう続けられないが、何らかの方法で試験観察をして、十分納得のいくまで調査のとことんまで尽して最終の決定をするということも試験観察に託された一つの機能と思うのでありますが、この点は先ほどお許しを得ましたように、私としては批判を当該事件の扱いについてはいたしかねますので、裁判官としても、もうすべて万事が十分尽したというふうに考えられたかどうか、私の印象では、なお母親については十分調べたいが所在がはっきりわからない、十分面接ができないといううらみは気持の中にあったのじゃないかというふうには承知しております。  それから大川委員からも重ねて御指摘のありました母親責任といいますか、さらには刑事責任というものが本件に現われた程度でもあるのではないかという点につきましては、これはもちろん家庭裁判所裁判所でございますから、当該少年調査環境調査、その関係者の調査に関連してそういうものも発見されますときは、所定の方法による手続をとらなければならないわけでありますが、直接にはこれは捜査の方の関係になるかと思いますので、そちらの方の御意見もあわせてお聞き取りを願いたいと思います。
  26. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私も今大川委員のおっしゃったように、母親も共犯では「ないかと重ねて伺いたかったのでございますが、それか調書を見ますと、初めは毒殺しようというので毒を盛った。それでそれを母親がちょっと味を見たところが大へん苦かった、これじゃ酒に入れても苦くて気がつくかもしれぬからと言って、置いてあったその苦い毒殺の薬を眠れないときに少しずつ入れて飲んだということが調書に見えておったようなんでございます。そういうことから考えましても、私はどうしてもこれは母が手を下さないにしましても、これは十分母の責任があるのじゃないか、そうして結論としましては、これは母に対する調査というものは非常に私は疎漏じゃないかというように思っております。それと初めの父親の生きておりますときは非常に生活は苦しくて、家も転々としておるようでございます、子供らもみんな奉公しておった。その娘も奉公しておったのでありますが、その後の生活が非常に楽になって、今はりっぱなアパートに住んでおるというような報告を受けておりますが、その点家庭裁判所の方では、その後の調査あるいは手当というものはなさっておるでございましょうか、どうでしょうか。
  27. 森田宗一

    説明員森田宗一君) その点は私どもの方には少くとも十分な報告がございません。ただ家庭裁判所といたしましては、少年本人の処分が済めばそれでいいというものではございませんで、やがてはその環境に入っていく、あるいは帰ることもあるわけでありますから、その環境がどうであるかは事件調査中のみならず、常時関心を持たなければならないわけでありますが、どの程度この少年母親あるいはその家庭状態についての調査ができておりますかどうか、ただいまのところはっきりわかりません。
  28. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 きょう保護局長見えておりませんね。
  29. 佐藤豁

    説明員(佐藤豁君) 保護局長のかわりに私が参っております。
  30. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この今問題になっております少年の兄二人は、二人とも少年院に送られておりますようです。それでその上の兄は、少年院を退院してのちに行方不明になっているように出ておりますが、それから二番目の兄はちょうど六月十五日のこの事件の起りました日は、まだ少年院在院中で、七月の十五日に仮退院をするというようなときのできごとらしゅうございますが、この二人ともすりで、すりの常習犯です。兄二人はそれで一たん退院いたしましてからの手当というものは、どういうふうに一体法務省の関係なっておりますでしょうか。そうして今もまだ行方不明調査不十分でございますか。
  31. 佐藤豁

    説明員(佐藤豁君) まだこの点について私の方では調査いたしておりません。さっそく調査いたした上でお答え申し上げます。
  32. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 二番目の兄でございますが、斎藤公亮と申します。これは仰せのごとくすりで六回も検挙されたことがあるのでございます。これは今小菅の刑務所の方で服役中のようでございます。それから三番目の兄の敏正と申しますのは、これは関東医療少年院を七月に仮退院をいたしまして、目下映画館で雇われ中ということになっておるようでございます。おそらく観察所の方で保護観察なさっていらっしゃるのじゃないかと思いますが、ちょっとその点はっきりいたしません。
  33. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 二人もの兄がすりの常習で少年院に入るような家庭でございますが、今日一番やかましく言われておる家庭環境の調整というようなことが事実力を入れて一体法務省の方でやられておりますか、どうでございますか、これは一つ大事な点でございますからお答え願いたい。局長からお答え願いたいと思っております。それといま一つ、この前小松川の高校生殺しのあの朝鮮人問題でございます。これは三度も家庭裁判所審判を受けておりまして、そうして今は保護観察中のように伺っておりますが、これは保護観察が一体どういうことになっておりましたか、事実保護観察中にこのような事件が起るということであったら、十分ゆゆしい問題じゃないかと私考えておりますが、これ事実でございますか、保護観察中だという……。
  34. 佐藤豁

    説明員(佐藤豁君) 御指摘の通り、この少年は、窃盗という非行によりまして保護観察中でございます。
  35. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは保護観察の十分手が届いておりますが、どうですか、こう事件が起りましてから、この保護観察をしておる保護司の方に法務省として調査をなさったでございましょうか、なさったらその結果を一つお話し下さい。
  36. 佐藤豁

    説明員(佐藤豁君) 先ほどお話の小松川高校事件少年につきましては、さっそく東京保護観察局長から報告がございまして、あれは自分の方で保護観察中のものであったということでありましたので、調査をいたしたのでありますが、あの少年につきましては、心身についての鑑別というようなことが行われておらなかったように聞いておりまして、本人は単純な窃盗として扱われまして、まあ単純な窃盗の事件というふうな考えで扱っていたらしいのです。その見地から見ますと、非常に保護司との連絡もよろしいし、接触状態ども非常にまじめに接触をいたしております。窃盗犯としてはきわめて優秀な保護観察の対象だというふうに報告を受けていて、そのまま保護観察を継続しておったというような状態でございまして、まことにこれは申しわけない次第でございます。あるいは本人性格をもう少し調査しておりますればそれがわかったのではないかと思いますが、非常にこの点、私どもで不十分であったというふうに反省いたしております。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今、保護司は何件ずつぐらい手持ちがおありになるのでしょうか、受け持ちが。あまり大ぜいで手が回らないというようなことはございませんでしょうね。
  38. 佐藤豁

    説明員(佐藤豁君) ただいまのところ、保護司の平均はたしか二・七%ぐらいの担当件数であったと記憶いたしますが、そういう意味で、平均といたしますれば、そう負担が過重には相なっておりませんけれども、まあ保護観察官の方が大体一人当り三百件くらいの負担になっておりますので、非常にデスク・ワークが多くて、実際のケース・ワークに当るだけの余裕を持っておりませんために、少年事件も、成年事件も、一様に非常に重点的に、これはと思った危険な事件だけに努力を集中せざるを得ないような実情にございまして、この点もまことに保護観察官と保護司とが力を合せて保護観察をするという実が、まだあげられていないような実情にございます。
  39. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはまた隘路はどこにございますか。それは聞き捨てならない問題です。保護司が、担当件数が二・何。パーセントくらいなわずかなもので、それじゃ、手が行き届かないということはいえないと思っております。そして観察官が三百件も事件を持っておる。これはまあ机の上の仕事ではございますにしましても、それは一体どういう結果なんでございますか。どこをどうすればもう少し調整がとれるのでございましょうか。初めて聞きましたが、それはゆゆしい問題じゃございませんか。ちょうど法務大臣もおいででございますから、一つ法務大臣から御答弁願います。
  40. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど来、宮城さんの御質疑と、それに対する答弁を承わっておりまし、いろいろの点で問題の核心をついておるように思われるのであります。この機会に、ちょっと私からも申し上げたいと思います。それは非常に広範な問題でございますが、今の最後の御質疑の点でございますが、小松川の少年の問題に関しましても、私のところへ報告がきておりますのは、この少年は、要するにあの前に四回、まあ常識的にいって警察の門をくぐっているわけです。最初の間は、あの少年が比較的学校の成績がいいというようなことや態度などから見て、いわゆる微罪と申しますか問題にされなかった。ところが、あの事件が起り、比較的短期間の間に、最後にこれはいよいよいかぬということで保護観察に付されたようでございます。あの少年自身が保護観察に付されてからの期間というものは比較的短かった。従って保護観察が十分行えるだけの時間的な余裕も私は実はなかったのじゃないかと思います。さらに進んで、四回も警察の門をくぐったような者に対しての処置がよろしかったかどうかということになると、私は、これはもう今後の問題としても非常に残念に思いますし、この経験を大いに将来生かしたいと考えるわけでございます。  そこで、保護司の数が足りないか、あるいは保護観察官の数が十分であるか、どうかというような点でございますか、これは私なりの意見を申し上げたいと思います。これは、ぜひ法務省としては取り上げたいと思っておるのでありますが、人員を増加するということも一つの問題でございましょうが、再犯を防止する、あるいは進んで理想的にいえば、犯罪の予防をするという観点からいって、もっと科学的に、効果的に保護観察等を私はいたすべきだと思います。最近、私自身としても、非常に興味と熱意を持っておりますのは、科学的な調査ということであります。また、犯罪の予防から進んで、予防し切れなくて少年院その他に収容されるようなことになった者の処遇、それから、さらに、その後におけるアフター・ケアと申しますか、保護観察、これは一貫して総合的に取り上げなければいけない。御案内のように、外国においても、いろいろこの種の問題には研究も調査も進んでおるようでございますが、たとえば一例として、グリュック博士夫妻の業績などは、この際私は、日本においても情熱を持って取り上げていかなければならないと思うのであります。少くとも再犯の防止、あるいは一度警察の門をくぐった者に対して、少くとも科学的に、もっと念を入れた調査ができれば、たとえば千人なら千人の該当者があっても、その中の百人なり、あるいは二百人なりが、いろいろの調査の結果、非常に危険性が多いというようなことであるならば、そこに集中して、現在の人員なり、あるいは施設なりを活用していくことができるのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございまして、この点については、最近起ったいろいろの不幸な事件から、逆に何と申しますか、禍いを転じて福とするようにぜひやりたい。そこで、たとえば来年度の、具体的に申しますと、新しい事業といたしましても、刑事政策の総合研究所というものをまず作りまして、そうしてその中において、今申しましたような研究や調査、同時にそういうことがすぐ実際の政策の上に反映するようなやり方をやりたい。私の意見をもってしますると、必ずしもこれは人員が少いのではなくて、その人員の活用の方法に将来の問題があるのではないかと考えるわけであります。千人なら千人の人口に対して一律に、まんべんなしのマンネリズムに陥ったような保護観察をやっておれば、こういったような事件を将来においてもまた防ぎ得ないのではなかろうか、まあ大体の考え方としては、そういうような考え方をいたしております。同時に、法務省の本省自体といたしましても、できれば少年の問題については、徹底して、今申しましたような総合的な立場から一貫した仕事を担当するような一つの機構も確立いたしたい、こういうように思いますので、なるべく既存の人員を活用し、なるべくわずかな経費でもって、私は必ず一つの新しいやり方ができ得ると、こういう確信のもとに、鋭意、今、準備を進めておるようなわけでございます。
  41. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 引き続いて、ちょっと法務大臣に伺いますが、この間の検事長、検事正の会同において、少年問題が議題に出ておりましたが、あの結果はいかがでございましょうか。おそらく年令引下げ、それから検察官先議の問題が出たのじゃないかと思っておりますが、いかがでございますか。
  42. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その通りでございまして、検察長官会同は二日間でございましたので、この少年問題について、もっともっと議論を戦わしたいと思いましたが、それだけの十分の時間がございませんでしたが、しかしながら、かねがね問題を諮問してございましたので、書類その他において非常に詳細な各検事正からの意見が出ております。その中には、年令の問題もございます。検察官の先議制の問題もございます。それから、処分に対する抗告の問題も取り上げられております。ただこの検察長官の諸君の間でも、まとまって、みんながみんなこれだけはどうしてもやらなければならないというような、具体的に結論づけられるような、何といいますか、意見は出なかったわけでありまして、やはり相当各人各様に違った意見でございました。しかし、この貴重な経験から出ておりますいろいろな意見は、現在刑事局が中心になりまして、取りまとめておるわけでございまして、将来の少年法の改正の問題等については、重要な参考にいたしたいと考えております。
  43. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 少年法の改正のお話でございましたが、これは、売春対策でさえも売春対策審議会が政府にできておりますので、この重大な青少年問題について、私は、どうしてもこの対策の審議会、もしその審議会が何か予算等の関係でできないというような場合には、協議会でもよろしゅうございますから、これは、十分にその道の権威を集めて一つ研究をしていただきたいということをこの際お願い申しておきます。  きょうは、総理がおでましでございませんから、総理に伺いたいと思うことを大臣にちょっと伺いますが、今もこの犯罪少年が非常にふえたお話でございましたが、実際の統計を見てみますというと、今まで私ども少年で検挙されました者十万だ十万だと言っておりましたが、昨年の統計を見ますと、十四万四千幾らということになっております。私は、この数が非常にふえたということはちっとも苦しく思っておりません。ただ、たとえばこの間の殺人、親殺し、また引き続いて子殺しというような問題は、社会問題として激しくなりますというと、どこの家でも茶話になって、家庭の話題となり、社会の話題となり、そういうことがどれだけたくさんの子供たちに影響するかもわからない。聞くところによりますと、少年法の研究者は、犯罪少年だということを言っております。私は、それは必ずしも当っておらないとも言えないと思って、ほんとうに少年法の研究を十分やっておっても仕事でございまして、だが、あの問題は、私は、そういうことはそういうことで、専門家なりそうしてその為政者がその統計なんかについての苦労をすればいいし、実情によっても苦労すればいいのですが、こう世間の話題になるということは、何とかして防いでいただけないものか。その手当を、法務大臣に具体的な具体策を一つお手を打っていただけないも一のでございましょうか。そうして、もう言ってみれば、親を殺した親を殺したということがもうだんだん大きくなるというと、実際各家庭の親たちも、何かわが子が今にもそんなことをするんじゃないかと思いますというような話をする人もありますが、私も、それも一つの心理だと思う。だから、知る人ぞ知るでいいと思います。だから、あとの人にはどうかいい話を一つ盛り上げてゆくような処置というものはできないものか。これは、犯罪者を追い回すばかりが能じゃございませんで、そういうことも法務省としては、私は、親心をもって処置すべきじゃないか、これは一つ、法務大臣にお願い申し上げておきます。  余談でございましたが、続きまして法務大臣にお伺い申すんでございますが、それは、さっきもちょっと申しましたんですが、今私一番問題になりますことは、さっきからの決定機関と執行機関が別である、そのことを何とかしてここで手当をしなければ、これは大人の犯罪でしたら、これは大人の刑を着せればいい。幾ら今日教育刑といっても、刑は刑なんです、大人に対しては。しかし子供の場合は、その大人にならって、みんながやはり刑だと思っておるもんだから、すぐに刑らしいことをふるまう。だが、決してこれは子供に刑を着せてはならない。そうしてそれは、十八才以下に年令を引き下げるというようなことになりますというと、これは日本で子供たちが大へん漏れることになる。実際申しましても、人殺しをしましたような子供は、みんな十八才以下なんです。最近に起った問題は全部十八才以下だ。これは、二十才を十八才に下げてみても、つまり政府の方では慈愛の処置とお思いになるかもしれませんが、それは大いに違っております。私が調べてみましたところ、大へんおもしろい何が出ておりますが、殺人でございますね。殺人は、昨年の統計を見ますというと、十四才未満の者が、殺人犯であげられました者が六人おります。それから十四才から十六才までの殺人犯十五人、それから十六才から十八才まで、それは八十人、それから十八才から二十才までが二百十七人、それから、驚いたことに、強姦でございます。これは、今申しましたような関係凶悪犯でございますが、強姦は、十四才未満の者が強姦罪であげられている者四十九人おります。それから、十四才から十六才までが三百三十七人、十六才から十八才までが何と千三百四十九人、これは十八才以下でございます。そうして十八才から二十才までは、それよりも数の点においては低い、千百三十七人ということになっております。だから、十六才—十八才が一番強姦罪は多いんでございます。それから、ついでに申しますと、強盗は、十四才未満が四十二人、十六才未満が二百四十六人、十六才から十八才が七百六十一人、十八才から二十才までが千百六十人。それから放火でございます。これはまことにおもしろい。放火は、十四才以下が百十二人、それから、十四才から十六才までが八十一人、十六才から十八才までが六十二人、十八才から二十才までが六十八人という去年の統計が出ております。それで、おもしろいことは、最近窃盗事件よりも知能犯が非常に多いということでございます。これは、非常に窃盗が多いというわけではございませんが、知能犯がこんなに窃盗よりもはびこってくるという事態は、一体これはどういうことでございましょうか。実は、統計を見ながら私は心痛いたしておるんでございますけれども。いろいろ申し上げましてはなはだ失礼でございますが、先ほどに戻りまして、決定機関、執行機関についてのお考えと、そうして何か少年法も手っとり早く手をお入れになるような一つ工夫をお願いしたいんでございますが、御意見を伺います。
  44. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) いろいろとお話がございましたが、いずれも私もごもっとも千万と思うのでございます。で、このただいまおあげになりました統計でございますが、実は、私もこの統計を見まして、非常に驚いておるわけでございまして、従って、この少年法の改正の問題にいたしましても、ただ単純に、一部の世論にございますが、年令を二歳引き下げるというようなことだけでは、これはもうとうてい解決できる問題ではないと思うのでございます。  それからもう一つ、このいわゆるティーン・エージャーの問題は、実は日本でも非常な大問題でございますが、世界的に各国の風潮らしいのでございまして、アメリカでもソ連でも、そのほかの国でも、非常にこれに対する対策には頭を悩ましておるようでございます。従って、できるだけこの各国の状況もよく研究をいたしまして、その長をとって参りたいと思っておるのでありますが、たまたま最近ストックホルムで第五回の国際的な社会防衛会議が持たれまして、法務省からも係官を派遣いたしたのでありますが、御参考までに申し上げますると、やはりこの会議でも、議論の中心は、少年の年令の問題、それから非行少年の取扱い機関の問題、ただいま御指摘の決定機関と執行機関、あわせていろいろと論議が行われておるようでございます。で、こういったような点を十分取り入れまして、日本の実情に合うように、ただいま、いつまでと申し上げるまでのまだ自信はございませんが、できるだけすみやかな機会に、総合的な立場から少年法の改正というものを検討いたしまして、御審議をお願いするような準備を始めておるようなわけでございます。  それから、先ほど総理の意見というようなお尋ねもございましたが、案は、毎々の施政方針演説にも、特に青少年問題ということには必ず触れておるようなわけでございまして、これは、岸内閣全体の政策として重点を置いておりますことは、御承知通りでございます。審議会の設置の御提案でございましたが、これは、ただいまのところは、実は、法務省でもっと積極的な対策をやれというお話でございますが、法務省だけでもこれはなかなかむずかしいことで、御承知のように、先般中央青少年問題協議会、総理府が所管しておるわけでございますが、これを充実いたしまして、ただいま御指摘の審議会というようなものにかわるようなこれは役割を期待いたしておるわけで、これまた法務省が参加しておるのみならず、実は相当指導的な立場で、熱心にこの会議をリードしているつもりでございます。  それから、これも御案内の通りでございまするが、消極的な防犯という観点から申しますと、最近問題になりました、いわゆる深夜喫茶につきましても、すでに法律案を御審議をお願いをしておるようなわけでございます。さらに進んで、映画あるいは出版物というようなものにつきましては、業界や関係者の方々の自主的な発意によって、こういった面についても画期的な改善を、世論を背景にしてぜひ一つやっていただきたいということで、いろいろの手を通じまして、各方面にお願いをいたしておるようなわけでございます。  それから、積極的な面につきましては、実はこの役所の受持から申しますと、私どもの方だけであまり進んだことも言えないわけでございますが、御指摘のような点については、各省こぞっての協力と発意を求めまして、御趣旨に沿うように、今後とも努力を続けて参りたいと、まあかように考えておるわけでございます。  それから最後に、御質問の中にもお触れになっておられましたけれども、私は、先ほどあげました、たとえばグリュックさんの説、あるいはその結論、あるいは取り上げられておる政策を見まするに、結局これは、父親母親、あるいは家庭の問題というものが非常に大きな要素であるということを痛感するわけでありまして、父親のしつけが適正であり、母親の愛情や監督が行き届いており、そうして家庭内のつながりというものが、喜びも悲しみも、ともに喜び合い、ともに悲しみ合うというようなところからは犯罪が出てこない。これは、諸国の例から見ましても、そういうことが実証的に結論づけられておるわけでございまして、そういう面からいたしますと、私どもは、世の親御さんたち、あるいは家庭のしつけといいますか、いい家庭ができ上るように、先ほど御指摘ありましたように、ただ単に非行少年が多いということを嘆いているだけではなくて、これは政府だけの施策ではございませんで、日本の社会全般において、国民的な一つ積極的な反省と心がまえというようなことを盛り上げるように、何とか皆様の御協力でやって参りたいものだと、こういうふうに痛切に感ずるわけでございます。
  45. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法務大臣から外国のお話をいろいろ聞きまして、大へん参考になりましたが、諸外国——欧州でも、米国でもそうでございますけれども、小さい子供犯罪事件についての警察官はたいてい婦人でございまして、その婦人も、日本の警察のあのお茶くみ警察ではなくて、ほんとうのおっかさんとしてのおっ母さん警察で、アメリカなんかで、みなシティー・マザー、シティー・マザーと言っておりますが、市のおっかさんというのがほんとうは警察なんで、その警察官によって子供たちは逮捕されるのでありますけれども、その扱い方なんというものも、ほんとうの家庭のおっ母さんがわが子を扱うようなやり方でやっております。ヨーロッパにおいても、婦人の警察官というものは、この子供犯罪者の取扱いをあのように親切に、周到に、恥をかかせないようにやって、子供の将来に何も関係ないように、でございますので、私はこれは、きょう総理がお出ましでございましたら、総理に特にお願いしたいと思っておった点でございますが、日本にもあのおっ母さん警察一つ考えていただきたい。法案の準備は、私がちゃんといたしておりますので、いつでも出せることにいたしているのでございますけれども、これは、予算の面が大へんです。でございますから、問題の多い大きい市だけでもおっ母さん警察を置いていただいて、そうして今の警察官、特におもしろ半分にやっているような警察官に天下の大事な子供を扱わしてほしくないのでございます。この点を私は大臣に要望しておきます。  いま一つ、仰せのように、過日も総理大臣は、日本の青少年対策問題について、大へん私どもを喜ばして下さるような意味の御演説がございましたのです。だけれども、それはただ声の上だけではどうも弱りますので、実質問題といたしましては、予算を伴わなければならない。でございますから、一ついろいろな点について、たとえば警察の問題でも、審議会の問題でも、みな予算を要することでございますから、この青少年の問題、ことに犯罪者の問題を解決する上に、私は、特別な国家の予算を一つ按配なすっていただきたいということをお願いしまして、まだたくさんございますけれども、一応私の今日の質問はこれで打ち切ります。
  46. 大川光三

    ○大川光三君 いわゆる本木町殺人事件というものが教えるものは、大体三一つあると私は考えているのでございます。  その一つは、先ほど森田課長に伺いました母親責任問題、いま一つは、泥酔者とか、酒ぐせの悪い者に対する取締り、第三点は、ただいま宮城委員からも御説が出ましたが、青少年問題の審議会を設けるべしという三点でございます。  そこで、まず第三、これは竹内刑事局長にお伺いいたしたいのでありますが、われわれの今日までの法律常識をもっていたしますると、不作為が犯罪になる場合がある。たとえば、幼児が井戸をのぞいて、今にも井戸にはまりかけておるというような場合に、それを見て知らぬ顔をして通り過ぎた、その結果が井戸にはまって死んだという事実がありますれば、これは刑事責任が私は起ってくると、かように常識上考えております。そこで、本件本木事件のごときは、母親が、少くとも自分が家を出たときには、少年父親を殺すのだということだけは、よくこれは認識をいたしておるのでありまして、自分が家を出ること即子供が殺人をやるのだということを知っておりながら家を出ておるということに対しての責任というものは、よその幼児が井戸にはまりかけているのを助けずに見過ごしたというより以上の大きな責任があろうかと考えます。宮城委員からも御説があり、法務大臣からもお話がありましたが、私は、やはり少年犯罪から救う道、それは、大きな母親の愛がなければならぬ。愛による子供のしつけというものが非行少年を少くする唯一の道だと考えております。それだけに、母親の子に対する責任は重いのです。その重い責任を持っておる母親について、本件のような具体的な事例において、裁判の過程においては別でありましょうが、捜査の段階において、また法務省当局として、この具体的な母親責任問題についての御検討をせられたか。また、母親刑事責任にまで訴追されなかった意味がどこにあるのか。むしろ私は、この母親子供に対する愛情を強める意味からいきましても、こういう母らしくない母に対する制裁というものは、これは必要だと、かように考えるのでありますが、その点を竹内刑事局長からまず伺っておきたいと思います。
  47. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 不作為による作為犯と申しますか。この構成要件は、積極的な作為行為を類型といたしております場合におきましても、不作為によってその構成要件を充足する場合に、今申します不作為による作為犯という概念が学問上も法律実務の上におきましても成立するという積極説になっておりますことは、大川委員承知通りでございます。本件父親殺しの娘たちの行動、それを見守っておった母親のその直前における行動が、果してここに申しますところの不作為による作為犯という概念に当るものであるかどうかという点につきましては、地検の捜査の段階におきまして十分検討されたように聞いております。しかしながら、事は結局法律的には結びつき得ないという結論からいたしまして、はずれたようでございますが、しかし、法律的に殺人の共犯というようなことにならなかったといたしましても、この具体的な事態を見ますると、母親責任が非常に重い。先ほど大臣が申されましたグリュック方式によって点数をつけるということになりますと、これは大へんなバッ点になるわけでございまして、こういうことが少年犯罪の温床というか、直接の動機にさえなっておるわけでございまして、この点は、私どもとして、刑事政策的な観点から非常に注目をいたしておるところでございます。法律的には共犯というようなことで処分できなかったことはやむを得ないのでございますけれども実情は、非常にこの犯罪と密接な関係があったように思うのでありまして、はなはだ遺憾に考えております。
  48. 大川光三

    ○大川光三君 次に、法務大臣に伺いたいと存じますることは、泥酔者、酒くせの悪い者に対する問題でありますが、最近東京検察庁におかれては、かりに泥酔の上で犯した罪であっても、従前のようにそういう寛大な目で見ないのだ、むしろ厳罰をもって臨むという方針をきめられたやに伺いまして、私ども大いに共感おくことあたわないところがあるのであります。もとよりこれは、刑法の根本改正も必要でございましょうけれども、さしずめの問題として、検察当局がそういう態度に出られたということに対しては、これは賛成をいたします。しかし、泥酔者、酒くせの悪い者を処罰する、たまたまそれが刑法に触れるゆえをもって処罰をするという以外に、それ以前において、泥酔者または酒くせの悪い者を十分取り締る、そうして酒くせの悪い者や泥酔者からこうむる被害者を守らなければならない、これが一つの先決問題だ、かように存ずるのであります。売春防止法に関連して、たとえば補導処分というようなことも設けられました。しかし、日常そういう酒の上で社会あるいは家庭に迷惑をかけておるという者に対して、何らか犯罪以前に取り締るというような法律がぜひ必要かと、かように考えるのでございますが、その点に関する大臣の御所見を伺いたい。
  49. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただいま御指摘の通りに、この泥酔者の問題は、結局刑法の問題になりますので、御承知のように、刑法の改正につきましては、法制審議会を中心にいたしまして、ただいま鋭意検討中であるわけであります。  それから、この機会にちょっと御報告を兼ねて申し上げたいと思いますが、政府といたしましては、今明日中に警察官の職務執行法の改正案を国会に提案いたしたいと考えておりますが、その中で、従来の執行法の第三条に改正を加えました。泥酔者に対する保護の点を、従来の法律に若干の改正を加えようといたしておるわけでございます。これは従来は、他人の泥酔のために他人の生命、身体、財産に危害を及ぼすおそれのある場合に保護ができることになっておりましたが、これを広げまして、公開の施設もしくは場所において公衆に対して著しく迷惑をかけるおそれがある者というようにこれを広げまして、泥酔者はまず表において他人に著しく迷惑をかけると認められるような場合には、そのおそれがある場合には、保護ができる、こういうことに立案をいたしまして、御審議をお願いしようと思っておるわけでありますが、かようにいたしまして、できる点から一歩ずつ泥酔者に対する処置というものを広げていきまして、そうしてさらに一般的な社会的な効果として、酒飲みのエチケットを心得てもらうように、漸次社会的な風潮も馴致いたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  50. 大川光三

    ○大川光三君 ただいまの御説明まことにけっこうでありますが、いずれこの改正案が出ますれば、十分私どもとしても検討いたしたいと思いますが、ただいまの御説のうちに、他人という言葉がありました。これはおそらく自分以外の人を他人と、こう呼ぶんだろうと思います。法律的には。それと、場所的な問題で、あるいは道路であるとか、あるいは公共の施設であるとかいう場合に取締りの対象になるというのは、これはけっこうであります。しかしながら、今日までの少年、ことに少年犯罪を見てみますると、家庭内における主人の酒の上の横暴、家族に対する虐待、これが非常に犯罪を生んでおる。本件の事例もその一つでありますが、私、最近自分で扱っておる事件でもそういうのがございまして、これは、兄貴が非常な酒飲みで、そうして親をなぐる、物を売りとばす、弟、妹を虐待するというので、末の弟が義憤を感じて兄貴を殺したという事件で、これはまあ青年でございましたから公判に回り、しかも罪刑を課せられると、こういう事件でございました。酒ゆえに家庭悲劇が非常に多い。そういうときに、どこかに家族の一員が救いを求める場面がなければならぬのではなかろうか。まあ自分のたとえば親のことでありますとか、自分のせがれのこと、兄弟のことでございますから、なるべく事は荒立てたくないでしょうけれども、どこかそういう場合には補える場所というものがあって、そうしてそういう酒ぐせの悪い者は、たとえ家庭内においてのものでも保護するというようなところまで、こいねがわくはただいまの改正案を広げていただきたい、かように考えておりますが、その点について重ねて御意見をお伺いいたします。
  51. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点はごもっともでございまして、できればそういうところまでいきたいわけでございますが、最近のと申しますか、人権の尊重というような点や、あるいは保護ということは、相当客観的な事実がはっきりしているところにしぼりませんと、いろいろ警察官側の行き過ぎということもまた考えられるかもしれませんしいたしますので、それらの点は、一つとくとさらに引き続いて検討させていただきたいと思います。
  52. 大川光三

    ○大川光三君 ちょっと御参考までに申し上げておきますが、先ほど設例に出しました事件は、親も兄弟も親類の人ももてあました。親自身も、こんなやつは早く死んで上まった方がいいんだと言うし、兄弟も、また近所までが、あれはなっとらんと言って、ほんとうのならず者だったのですね。けれども、人権の尊重もさることながら、そういう場合に、どこかに救いを求めるところがなければどうにもならないと私は考えるのでありまして、そういう家庭悲劇が起る原因を未然に防ぐために、保護を加えてもらいたいということを、あるいは社会福祉事業の面とか、あるいはその他の面で、そういう事実がわかれば、これを何とかして助けようという意味の施設をお考えいただきたい。これは、希望として申しておきます。  それから、青少年問題の審議会に関する点でございますが、実は、現内閣の施政方針の中で、本会議で総理のこの点に関する御演説を聞きまして、一応われわれも政府の意のあるところはわかります。しかしながら、ただ、あの本会議で聞かされものは言葉だけであって、実際こうするのだ、ああするのだという具体的なことは少しも述べられておりません。そこで、私どもの特に具体的に提案したいのは、この青少年問題審議会という、まあこの審議会制度であります。これは、御承知通りに、今日の西ドイツにおきましては、つとに国家が、政府が青少年問題審議会を設けまして、非行少年のみならず、一般青少年に対する対策をここで審議をいたしておる。それがために、たとえば、今日の青少年に対して、犯罪面におもむかれないように、大いにスポーツを奨励する、体育を奨励するのだという面で、犯罪におもむかれない防止策を考えておる。あるいは映画とか、あるいは書籍の検閲とか、それに対する取締りも必要でございましょうけれども少年を他の面に向けて、犯罪に陥らないようにするというようなことも、この西ドイツにおける青少年問題審議会で取り上げたことでございます。かたがた、これはまあ法務省だけの問題じゃなしに、法務省が案を出していただいて、これは、政府の大きな仕事として、そういうことを一つぜひやっていただきたい。もちろんこれは、世論の喚起も必要でございましょうから、各政党におきましても、青少年特別委員会と申しますか、そういうものを設けて、各政党においてもこれを研究する、また政府も、公式に審議会制度によってこれを検討していくという、この根本問題がなされなければ、せっかくの総理大臣の施政演説も空虚なものに終りはしないだろうか、かように考えまするので、私の意見を申し述べまして、大臣の御所見を伺いたいのであります。
  53. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この審議会の問題でございますが、先ほどもちょっと申しましたように、実はこれは、第四国会—だいぶ古くなりますが—昭和二十四年に、当時の衆参両院で、青少年非行化防止に関する決議というものが行われまして、それから、それに基きまして青少年問題協議会設置法が制定せられました。私ども、これを中背協と略称いたしておりますが、現にまあ相当の活動はいたしておるつもりなのでありまして、委員が二十五名で、国会議員初め関係各省の次官その他が参加をいたしてやっておりまして、それから、ことしの初めであったと思いますが、事務局をこれまた法制化いたしまして、置きまして、これで、青少年非行防止だけではございませんで、積極的な対策につきましても、いろいろと御審議を願っておるわけでございますが、この活動ぶり等も十分参酌いたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと存じます。  それからなお、まあお願いを申し上げるようなことで恐縮なのでありますが、まずこの政府部内におきましても、先ほどもちょっとお話し申し上げましたように、一貫した、総合的な、できれば科学的な面も取り入れた調査なり政策の実行をいたしたいと思いまして、この問題を中心にした国立の総合刑事政策研究所というものをぜひ来年度は発足させていただきたいと思いまして、いずれ所要の予算案や法律案の御審議をお願いすることといたしたいと思いますが、ぜひ一つ皆様方からも、これが成立いたしますように、お力添えを願いたいと存ずる次第でございます。
  54. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと簡単に二、三点。  私は、先ほどから伺っておりまして、ぜひこの際、大臣のほんとうの御決意の二、三を伺っておきたいと思います。青少年問題が今ほどお互いの心を痛めておるときはなかったと思うのです。それについて、法務省単独では解決のできない問題が多々あると思うのです。私は、最近の悲劇を見ておりますと、泥酔による家庭悲劇から発展するものがたくさんある。第二点は、精薄、いわゆる精神異常なども含めた問題が相当ウエートを占めておると思う。それからさらに、貧困がまた決定的な問題になるというように考えられてならないのです。貧困から来る住宅の問題、これらをもあわせ解決しなければ、この青少年問題の解決はできないように思うのです。で、先日も売春対策審議会で、法務省からも検察庁からもおいで願って、いろいろ討議いたしましたときにも、婦人補導院に入れた女で、九〇以上の知能指数の者は一人しかいないということになると、もう絶対、全部と言っていいくらいが精神薄弱者であると言っても過言じゃないように思う。ところが、この精神薄弱者がどういう待遇を受けておるかというと、わずかに保護されておる者が一%くらいしかないのじゃないでしょうか。あとは野放しです。諸外国の例ということを先ほど大臣はおっしゃいましたが、諸外国では、八十になっても九十になっても、精薄者は施設で保護されている。ところが、日本では、二十才になると、これは野放しになってしまう。二十才までの者も、一%か二%しか保護されていない。こういうことになれば、一体どこで解決していくか。いつか本院において受刑者の知能指数をお伺いいたしましたときにも、やはり性格異常者、正常な知能を持っている人は半分くらいだというふうなデータが出ております。ということになれば、ここにも大きな問題があるかと思いますが、さて、大臣は、これらに対しまして、精薄から生ずる犯罪、これの解決に対しては、どういうようなお考えを持っておいでになるか。
  55. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 実は、先ほどちょっと言葉が足りませんでしたが、この国立総合刑事政策研究所というものを、私どもその必要を痛感いたしまして、今立案いたしておりまするのは、その中に、やはり犯罪原因になるような精薄者の対策というようなことも実証的に検討をいたしまして、そしてその結論が、研究しっ放しではなくて、逐次具体的な政策に表われるようにしたい。これは、それこそ諸外国の例を見ましても、文明国では日本だけのように思います。そういったような総合的な刑事政策を科学的にも検討し、原因を追求して、その対策を打つようなやり方をやっていないところは日本だけのように思われます。これは一つ、ぜひ新しい政策として、この精薄の問題を取り上げて参りたい、こういうふうに考えております。
  56. 藤原道子

    ○藤原道子君 そうした科学研究所ですか、そういうものは、予算はどのくらいあってできるのか。大臣は、予算があって、できる確信がおありになるのでしょうが、私たちは、作文ではいやになっておりますから、具体的にできる方法をお聞きしたい。
  57. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは、先ほど申しましたように、皆様方に大いにお力添えも願いたいのでありますが、私どもは、これは絶対にでかすつもりであります。その場合に、何もこれは、人の多きをもってよしとせず、金の多きをもってよしとせず、最も効果的に、現在の国の財政の状態も十分考えまして、非常にまともな、大蔵省も絶対にこれでは承知せざるを得ないようなよい案で、謙虚に、かつ、誠実にやって参りたいと思いますから、さしあたりの発足については、予算の額はわずかで発足いたしたいと思います。ただ、先ほど申しましたように、文部省の系統の仕事につきましても、実は人員の増加ということが非常に要請されているのでありますが、これはまあ余談になって恐縮でございますが、最近の経済の発展等に伴って、たとえば法務省の系統の登記、登録などというところでも、非常な人員の増加が要請されております。むしろ、そういった面にも重点を置くと同時に、こういったような総合研究所のようなところには、現在までにもいろいろの面で相当やっておる専門家が多いのであります。そういう人たちをできるだけこういうところへ収容いたしまして、今まで持っている経験や識見を総合的に積み上げていく。従って、そういう考え方でございますから、これはいずれ予算案ができると思いますが、私といたしましては、もう確信をもって、法律を実現させていきたいと思います。
  58. 藤原道子

    ○藤原道子君 いろいろお伺いしたいのですが、時間もないようですけれども、もう一点お伺いしておきたいのです。  先ほど大川委員も、母親責任の追及ということをお話しになった。私は、それは確かにあると思いますが、私が考えるのは、本木事件の問題を見ますときに、母親責任の追及をするならば、それ以前に、政治的な、政治の責任の追及ということが私は先行するように思う。もしもこういうような状態のもとに置かれましたならば、一体人間がどういうふうな精神状態になるかということを真剣に考えてみなければならないと思うのです。ところが、法律では、生活保護法もあるし、児童福祉法もあるのですね。環境の悪い者は国家が保護しなければならないという法律はすでにあるのです。けれども、この法律が適用されていない。児童福祉法には、精神薄弱者に対する保護規定もあるけれども、これが実行されていないというところに私は問題があると思うのでございまして、こういう点を考えまして、この生活保護の問題、母子保護の問題、こういう問題は、法務省だけではできることじゃございませんので、関係の厚生省その他とも十分連絡をとって、再びこういう悲劇が、政治的責任のもとに行われていると言っても過言でないような悲劇が起らないように対処していただきたい。  それから、先ほどの、今度出る警察官職務何とやら、むずかしい名前だけれども、その第三条で泥酔を取り扱うんだけれども、それのただ取り締ることができるだけでは困るのでございまして、保護というものが、どういう方法で泥酔者を保護しようとしているのかという点をちょっと伺わしていただきたい。
  59. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 前段の点につきましては、私の方だけでもおっしゃるようにできないわけでございますが、これはしかし、ほんとうに誠意をもってやっていかなければならないことと私は思います。従来もそのつもりでおりましたが、なお一そうその点は、各省の関心を呼び起しまして、御趣旨に沿うようにしなければならないと思います。  第二の点は、いずれ法律案を御審議願う際に、詳細に御説明を申し上げたいと思いますが、先ほど申したように、まあ昔の違警罪即決処分といいますか、それにだんだん似たような格好にすれば、とにかく二十四時間以内最小保護できるということになれば、泥酔して、とにかく保護されて、留置場に入れられるということになれば、酔っぱらいの心情というものを考えてみると、そうこれは泥酔をしてあばれるというようなことはできないということになり、また、そういった面で、心理的に酒飲みに対する非常な圧迫になって、自然、先ほど申しましたように、泥酔者が少くなるということをねらっておるわけでございます。さしあたり今度の改正案でやらせていただきたいと思うのが、要するに警察官が、その泥酔者が相当人に迷惑をかけそうにあばれたり酔っぱらったりしておる場合には、とにかく保護ができるという点を中心にしているわけでございます。これは、二十四時間立てば保護を解くわけでございます。
  60. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、非常にこの本件のごときを見ましても、すでにアルコール中毒というのでしょうか、一つの中毒状態になっている人が家庭の悲劇の中心になっていると思う。ですから、そこまで解決することがなければ、泥酔問題の解決はできない。こういうふうに考えております。これは、今後の問題に譲ることにいたしますが、とにかく岸さんは、三悪追放が国民に対する公約であるのです。従って、この公約を必ず実行していただければ、悲劇は少くなってくるはずなんでございまして、この貧困と、それから精薄の問題、それからさらに泥酔の問題等は、私ども直接関係しております問題だけに、特に熱意をもってやっていただきたいことを強く要望いたしまして、幸い与党内においても相当な発言力をお持ちの大臣をいただいておりますので、よほどしっかり働いていただきたいということを要望いたしまして、時間の関係で、きょうはこれで終ります。
  61. 野本品吉

    委員長野本品吉君) ほかに御発言がなければ、本日はこの程度にとどめたいと存じます。  なお次回は、十月十四日午前十時から開会、少年犯罪対策に関する件並びに警察官の職務執行上における保護行為の問題等につきまして調査いたしたいと思います。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十二分散会