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1958-11-04 第30回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十一月四日(火曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   委員の異動 十月三十一日委員小笠原二三男君辞任 につき、その補欠として江田三郎君を 議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     前田 久吉君    理事            西川甚五郎君            山本 米治君            栗山 良夫君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            梶原 茂嘉君            木内 四郎君            郡  祐一君            木暮武太夫君            土田國太郎君            廣瀬 久忠君            宮澤 喜一君            大矢  正君            野溝  勝君            杉山 昌作君   政府委員    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省管財局長 賀屋 正雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業投資特別会計貸付財源に充  てるための外貨債発行に関する法  律案内閣送付予備審査) ○接収貴金属等処理に関する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから委員会を開きます。  まず、産業投資特別会計貸付財源に充てるための外貨債発行に関する法律案提案理由説明を聴取いたします。
  3. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) ただいま議題となりました産業投資特別会計貸付財源に充てるための外貨債発行に関する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  政府はかねてより、電源開発事業等の推進をはかるため、国際復興開発銀行からの借款につき努力を重ねて参りましたが、今般この借款計画とあわせて、産業投資特別会計貸付財源の一部に充てるため、昭和三十三年度において、三千万ドル(邦貨換算百八億円)を限り、外貨債発行しまたはこれにかえて外貨借入金をすることができることとした次第であります。  なお、右金額のうち昭和三十三年度において発行または借入金をしなかった金額があるときは、当該金額を限度として、昭和三十四年度においても外貨債発行または外貨借入金をできることとしているのであります。  しかして、本公債の消化を円滑にするために、その利子等に対する租税その他の公課については、国際慣行にならった非課税措置を講ずることとしているのであります。  以上のほか、本公債発行による収入金産業投資特別会計の歳入に受け入れる等、同特別会計法に所要の改正を講ずることとしているのであります。  以上、法律案の大要を申し上げた次第でありますが、何とぞ、御審議の上すみやかに賛成せられるよう切望する次第であります。
  4. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 質疑は後日に譲ります。   —————————————
  5. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、接収貴金属等処理に関する法律案質疑を行います。
  6. 栗山良夫

    栗山良夫君 ちょっと、資料をお願いしておきたいと思います。今国会の冒頭に、大蔵省の方から民間所有者業種別等件数調というのをいただきました。この業種別のはこのままでけっこうですが、その業種別に持っておる貴金属種類別数量ですね、これをお願いしたいと思います。  それから、もう一つ、主として法人の方だろうと思うのですが、業種別のうちで、戦時中に一般国民から供出せられた部分ですね、これは買上営団などの手を経たものもあるだろうと思う。ダイヤモンドとかいろいろなものについて、航空機工場だとかその他のメーカーに、政府国民供出を命じた部分を、政府が買い上げて、それを軍需産業関係工場政府が渡した部分がある。そういうものが業種別に現在分類されておる。それが返還対象物件の中に入っているのじゃないかと思いますが、それがもしわかりましたら、その表をいただきたいと思います。わかりにくいかもしれませんから、たとえば、例を申し上げますと、そこに機械工業というのがございます。機械工業は総計二十五件ある。この二十五件のうちの貴金属種類別数量は、今お願いしましたから、この二十五件の中にどういう貴金属がどのくらいあるかということはわかります。そのうちで、戦前に一般国民から供出のあった部分政府が買い上げて、あるいは政府代行機関が買い上げて、それを軍需生産のために向けた部分ですね、そういうものがどのくらいあるか、それをいただきたい。
  7. 平林剛

    平林剛君 接収貴金属等処理に関する法律案は、今日まで政府から何回か提案をされておるのでありますが、本臨時国会提出をされた法律案は、従来の法律案と比較検討いたしますと、一カ所だけ相違する点がございます。あるいは前の委員会で御説明があったかもしれませんが、付則第七項に、「大蔵大臣は、政令で定めるところにより、連合国占領軍から政府に引き渡された第二条第三項各号に掲げるもののうち、昭和二十七年四月二十八日からこの法律施行の日の前日までの間に返還したものの明細を、この法律施行後すみやかに、公告しなければならない。」とあります。付則第七項が特に追加されているのでありますが、この条項を特別に添加した理由はどこにあるか、この際あらためて御説明願いたいと思います。
  8. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お答え申し上げます。この点につきましては、補足説明の際に詳細を申し上げたのでございますが、御指摘の通り政府接収貴金属の一部分もと所有権者に、返還と申しますか、引き渡したのでございますが、所有権者と申しましても、これはすべて政府でございます。政府日本銀行でございまして、そのときにも御説明申し上げましたように、日本銀行の分は、昭和二十七年、IMFに加盟いたします際に、わが国に割り当てられました金による出資の一部に充当するため、十五トン、日本銀行接収前にもっておりました金を、日本銀行引き渡しまして、それを政府が買い上げまして出資いたしたわけであります。それから、先般閣議決定に基きまして、百円硬貨素材といたしまして銀が払底いたしましたので、政府一般会計、それから貴金属特別会計、それから造幣局特別会計、この三者が持っておりました銀の一部を、合計約四百三十六トンばかりでありますが、それぞれの官署に引き渡したのでございます。  これは、そのときも御説明いたしましたように、接収によって所有権の所在が決して変るものではないという法律的な見解に基いたものであるのでございますが、のみならず、事実関係におきましても、諸般の証拠、資料等をしさいに調査、点検いたしまして、これらの会計が確かに接収前に所有しておったという事実を確認いたしまして、引き渡し措置を講じたのでございまして、私どもは、現在、これによりまして民間その他の所有権者所有権を侵害したというような事実は全くないものと確信はいたしているのでございます。しかしながら、異例な措置といたしまして、この法案成立前にこのような措置をとりましたのでありまするから、万々一にも事実関係相違等が後ほど発見されまして、その他の所有権者の利益を侵害したというようなことがあってはいけませんので、その場合の救済をなし得る前提といたしまして、このように、いついっかこれこれのものをもと所有権者返還したものであるということを公告いたしまして、明確にし、もしそうしたことによって権利を侵害されたものがあるといたしましたならば、これによってその所有権者法律的に救済措置を求め得る、その便宜と申しますか、その措置を講じ得るように、この規定を置いて明らかにしようとしたのでございます。
  9. 平林剛

    平林剛君 ただいまの御説明によりまして、昭和二十七年の六月、国際通貨基金への加盟に伴い、日銀から接収された金十五トンを日銀返還し、これを政府が買い上げて出資に充てたことや、三十三年七月に、閣議決定で百円銀貨地金に使用するため政府所有の銀四百三十六トンを処理したことに関連をして、特別に添加したという御説明があったわけでありますが、接収貴金属等処理に関する法律案政府において第一回提出を見たのは、昭和二十八年十二月であります。第二回の政府提案は三十年三月、第三回の提案は三十年十二月、それぞれございました。しかるに、その三回の法律案には、昭和二十七年六月において行われた措置については、今回提案をされたごとき法律案追加がなかったのであります。これはいかなる理由でございますか。
  10. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お説の通り、二十八国会におきまして廃案になりました法案にはこのような規定がなかったのでございまして、先ほど御説明いたしました日本銀行返還いたしましたものは、二十七年に返しておりまして、法案提出前でございます。この点につきましては、出資をいたします際に、別の出資関係する法案審議いたされまして、その際に御質疑等によりましてこの点を明白に申し上げたのでございまして、ごく一部の例外でございましたので、まあそのような国会における審議におきまして御答弁申し上げたところにおいてはっきりしておるという関係から、しいて法律にまで明記する必要がないのではないかというふうに考えまして、規定をいたさなかったのでございますが、今回またやや多量の四百三十六トンというような銀を使いました関係上、この際あわせて、法律を改める機会があったわけでございますので、そのような規定を設けるのが適当であろうというふうに考えまして、今回の法案付則に一条を設けたわけでございます。
  11. 平林剛

    平林剛君 大へん苦しい御説明がございまして、ただいまの御説明のように理解することをはなはだ私としては困難に感ずるのであります。同時に、この付則第七項は将来において、民間所有権を侵害しないと確信したが、万一の場合その救済措置をとるようにという意味だという御説明がありまして、これまた私の疑問とするところであります。あげ足をとるわけではございませんけれども、先の質問に進める前に、そのことについても御説明いただかないと、私としては理解ができがたい。この条項から、後に救済措置をとるようにという趣旨というのがどうもうかがい取れないのでありまして、ただ政府がやったことを公告するというだけでありまして、これが後に民間所有権を侵害したというときの救済措置になるという意味には解せられないのでありまして、その点、もう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  12. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 私の御説明が悪かったので、当然御疑問が生じたことと思うのでありますが、決してこの規定そのもの救済措置をとっておるわけではございません。返還されましたものの明細を見まして、どうもこれはおかしいということが万一起りました場合には、自分所有のものが国のものとして誤まって返されておるのじゃないかということになりました場合には、一般民事訴訟に基きまして損害賠償請求権ができるという趣旨でございまして、救済措置をとるための前提としてこの条文を設けた、こういう趣旨でございます。
  13. 平林剛

    平林剛君 いろいろ御説明がありましたが、結局、率直にいえば、昭和三十三年七月閣議決定において、百円銀貨地金に使用するため政府所有の銀四百三十六トンを処理するために、またこれを処理したために、このような法律改正が行われたと見るのが最も正しい解釈ではないか、こう考えるのでありますが、その点は私の考えが間違いでございましょうか。
  14. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お説の通り、百円硬貨素材に充てるために接収銀返還いたしましたことに基いて、この条文ができたわけでございますが、それにあわせて、日本政府占領軍から引き渡しを受けまして講和条約発効返還した他の例を、あわせて規定したわけでございます。
  15. 平林剛

    平林剛君 結局、ただいまのように、百円銀貨地金が不足いたしまして、接収貴金属の中から政府所有の分だけを処理し得た、またさかのぼっては、昭和二十七年においては金十五トンを処理された、こういう事実は、政府所有のものであると明確に区分できるものについては、今後といえども政府処理できるという道がこの付則で明らかにされたものと解釈できるのであります。従って、今国会接収貴金属処理に関する法律案審議されておりますが、場合によっては今国会においても成立しないということがある。この場合も、政府はこの条項を使って必要なものを処理できると解釈できるのでありますが、さように理解してよろしゅうございますか。
  16. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 事実関係も、法律関係も、政府のものであるということがはっきりいたしたものを処理いたしますのは、決して付則のこの規定があるからというわけではございませんで、私ども考え方では、繰り返し申しておりますように、所有権接収の事実によって影響されないという根本的な考えに基いて、もと所有権者に返すということから来ておるのでございまして、従いまして、万が一法案成立いたしません場合、特に国家的なあるいは公益的な必要がありました際におきまして、その接収貴金属を使用する必要が生じました際におきまして、なお、その具体的に返還いたします貴金属等の事実関係法律関係を詳細に検討いたしまして、あやまちがないという確信を持ちました場合には、今後といえども同様の措置をとることができると考えておりますが、それは何もこの付則規定を設けたからという趣旨ではないと考えております。
  17. 平林剛

    平林剛君 付則追加がなくとも、政府においては、民間所有権を侵害しないと確信した部分については今後もその措置ができる、こういう御解明がございましたが、それならば、今日まで提出をされた資料によりますと、なお相当部分政府自体で自由に処理できる貴金属がある。それをわざわざこの法律の中に含めて処理をせなくても、自分でその権限において処理できるとするならば、従来法律提出して参ったこともはなはだ疑問でありますし、今回の政府提案をした法律案についても、民間所有の分だけを処理するという趣旨法律案提出すれば事足りるのでないか。わざわざ国会承認を求めてこなくてもよろしいというふうな理解ができるのであります。従来それを提案してきたというのは、まことに不可解である。民間所有の分だけの処理を、それならばなぜ提案をしてこないか、こういう疑問に逢着するのであります。これについてはどういう御見解をお持ちですか。
  18. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 純粋に割り切った法律論から申し上げますれば、お説の通りでございます。ただ、私ども十九国会からこの法案提出いたしまして、御審議をわずらわしておりましたのは、敗戦に伴いまして、連合国占領軍がこのような異例な措置をとったのでございまして、私どもは、その事実関係等国会の御審議に持ち出しまして、はっきりと事実を明るみに出しまして、この処理をするというのが適当ではなかろうかというふうに考えまして、純法律論から申しますれば、特定物に、少くとも特定物に関する限りにおいては法律は必要でないかもしれませんが、なるべくこの接収貴金属というものを一体として考えまして、これを一つ法案によりまして事実関係等も明白にした上で統一的に処理するのが適当ではないかというふうに考えて、この法律案を前々から御審議をわずらわしておったのでございまして、繰り返して申しますように、純粋な法律論からいえば、民間の方々の所有されておりました分につきましても、それがはっきりと個人、特定のAならAという人のものであるということがはっきりいたしますれば、返還法律的には可能であろうと思うのでございます。  しかしながら、特に民間のものについて申し上げますれば、Aという人のものは、接収されたときのそのままの形で特定物として残っておる。ところが、Bの接収されました貴金属は、たまたま連合国占領軍考えでもって、ほかのC、D等接収貴金属溶解等によりまして混和したという場合におきましては、Aには返すが、B、Cはこの法律案によって特別な返還方法規定した、その法案が通るまで返還しないというのでは、これは行政措置といたしまして不公平ではなかろうかということも考えられますので、できますれば、この法案通過いたしまして統一的に処理するということを願っておるわけでございます。さらに、民間の方につきましては、まあこの法案通過前におきまして、かりに特定物を返すといたしますれば、一割はおろか、おそらく全然この納付金は取ることができないと思うのでございますが、一部の人について納付金を取り、この法案通過してから返す人方に対しては納付金を取り、それ以前に返す場合には納付金を取らないというようなことも、これは行政的措置としてもまずいのではないかというふうに考えまして、この法律案成立を期した上におきまして、全体として処理する。ただ、その過程におきまして、特別な国家的な要請等がありまして、緊急やむを得ない場合に限りまして、例外的に返還するということは、法律関係、事実関係がはっきりいたしました場合にはやむを得ない措置ではないかというふうに考えまして、その場合にはこの付則の七項によりまして、明細を明らかにする、こういう措置をとった次第でございます。
  19. 平林剛

    平林剛君 ただいまの答弁は、はなはだ勝手な解釈だと私は思うのであります。また、国会に対してもはなはだ適当な態度ではない。なぜかといえば、御説明のように、今回の政府提案を、民間所有の分だけの処理をすることができる理屈ではないかというのに対して、統一した処理、全体としての解決をはかる、こう御説明になった。まことに矛盾をしておるのであります。国会提出をして統一をした処理をし、全体としての解決をはかるというならば、この付則第七項などを設けないで、あくまで首尾一貫をして処理をはかるべきだ。もしもそういうふうにしなければ、あとは政府の勝手な理由で、処分ができる。結局、民間所有の分と政府のやつを抱き合せにして通さなければこの法律は通らぬというところに、政府の隠れたる苦心があるのではないか、こんな邪推さえ起り得るのであります。しかも、従来私どもが真剣に審議し、また政府から提案説明を聞いたときには、ただいまのようなことは一言もなくて、勝手に処理する。われわれの審議に対して、まことに勝手な解釈でそういうものをしているという印象を受けるのであります。また、事実もそう。  ただいまお話があったように、結局、付則第七項を特に添加したのは、百円銀貨地金に使用するため、政府所有の銀四百三十六トンを処理するためにつけられた。しかも、それは政府においては緊急やむを得ないと解して処理をした、こういうことになる。百円銀貨を作ることを、私どもは緊急やむを得ない措置とは認めがたいのであります。どうしてもそれが必要であれば、通貨政策の上においては、百円紙幣があるわけでありますから、百円紙幣を増発して通貨政策の充当に充てればいいわけです。百円銀貨を新たに作るということを、今日国家における緊急やむを得ない場合と認めるというのは、これは酷なんじゃないか。百円紙幣があるんですから、これを増刷して間に合せればいいのじゃないか。そんな程度のことを緊急やむを得ない場合として勝手に処分できるならば、政府処理できるものはことごとく抜かして提出をすればいいんじゃないか、こういうことに相なるわけです。こういう私どもの抗議に対しては、いかがですか。
  20. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 私どもは決して、法案通過を容易ならしめるために、民間のものと政府のものとあわせて、抱き合せたような法案を作ったというわけでは決してございません。私ども考えましたのは、先ほど申しましたように、純法律論からいえば、一部のものについては法律を要しないかもしれないが、しかしながら、その全体は、こういった特殊のケースでございますので、国会の御審議対象といたしまして、それに関する法律を作って、それに基いて統一的に処理したい、こういう根本的な考えを持っておりまして、その考えは今でも変りないのでございまして、ただ、その間におきまして、法律審議がおくれておるという関係から、その間におきましてそうした国家的な必要を充足いたしますために異例の措置をとったわけでございます。  しからば、銀貨を作らなくても紙幣を作れば間に合うのではないかというお説はごもっともでございます。しかしながら、これには、私どもの所管ではございませんが、通貨政策上のいろいろな問題がございますし、また、造幣局の予算の関係、あるいは作業能率を維持するといったような関係等もございまして、どうしても銀貨を継続的に作って参らなければならないという事情がございまして、その素材に充てるためにこれを造幣局に使用させるための措置をとったわけでございます。
  21. 平林剛

    平林剛君 そうすると、緊急やむを得ない場合の措置というよりは、あなたの管轄とは違うけれども造幣局貨幣事情その他を勘案をして処理をしたというふうに説明を願いたいのですが、緊急やむを得ない場合と政府が認めてこれを処理したというのでは、これは納得できない。百円紙幣でも十分間に合う。いわんや、国会には十分こんな措置をとらずに、提案をしてきておるのに、勝手におやりになった。国会審議というものを無視して、国会承認を求めるといって丁重な態度をとっておりながら、緊急やむを得ない場合でないにかかわらず勝手に処分をする。そんなに勝手に処分できるものならば、政府自分勝手に処分できるものと民間所有のものと切り離して提出をしたらいかがですか、こういうことに相なるわけであります。私は造幣局の仕事の状態も深い関心を持っておりますから、政府がそのことを表に掲げて説明をすれば、まだ筋は通る。それを緊急やむを得ない場合なんということをいえば、理解に苦しむ、こうなるのです。  すなわち、こういうふうに政府自分処理できるものを区分をしないでくるというのは、明らかに、民間所有の四十三億円だけを浮き彫りにすると、この法律そのものがきわめて批判の対象となってしまうので、それをおそれて、抱き合せでわれわれの審議をカムフラージュをしている、こういう解釈もできるのです。現実に、あなたは静かに胸に手を当てて考えて、今日まで、昭和二十八年の十二月に第一回提出以来今日まで、この法律案審議未了もしくは継続審議になった最も焦点はどこにあるかというと、この民間所有四十三億円の処分をめぐる疑惑なんです。だから、そこに最大の原因があるということに気がつかなければならない。そのために今日まで、この法律案に隠れた何らかの問題がありはしないかという慎重な配慮から、審議に慎重を期しておる。これが実情なんです。今のお話のように、いろいろ諸般事情があって政府処理できるというものがあれば、これを区分してこなければいけない、区分して提案をするというのが、私は筋であろうと思うのです。民間所有と認定される貴金属政府所有と認定される貴金属を分離して処理することのできない理由は、もう一度伺いますけれども、一体どこにあるのですか。
  22. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) この法案をごらんになりますれば、おわかりいただけますように、この法案の一番の骨子は、何と申しますか、この不特定物の分割と申しますか、返還方法につきまして、一般の民法の規定の例外的な規定を設けている点にあるのでございまして、不特定物と申しますものは、今さら御説明いたす必要もないかと存じますが、先ほども申し上げましたように、連合国占領軍の都合によりまして、多数の者の所有しておりました接収貴金属等を、接収中におきまして溶解をいたしまして、混和した状態においたということで、接収されましたときの形がそのまま残っておらない、形を変えているという場合でございます。そういった場合におきましては、国のものと民間のものとが混和している例もたくさんあるのでございまして、そうした場合にはやはりこのように、国と民間の持っておりますものを合せたものを、両方を対象とした法案を作りませんければ、この処理ができないというわけでございます。  しからば、特定物だけを除いてはどうかということが言われるわけでございますが、この特定物につきましても、必ずしもはっきりと当初から特定物であるということがわかるものはごく少いと思われるのでございまして、よくいろいろな点を資料その他によって確認いたした後、結果的にこの特定物というのがわかるのでございまして、私ども考えておりますものの中にも、国のものが民間において接収されたり、あるいは民間のものを国が戦時中に接収したというような事例もあるのでございまして、そういうような事実関係の入り組んだものも多数あるわけでございますから、そういった点は、この法案にございますように、審議会にかけまして、いろいろな点を調べました上で認定するという措置が必要となってくるわけでございます。はっきりと初めから、この民間のものと政府のものとを区別した法案を作るということはなかなかむずかしいのでございまして、そういったような関係から、このような法案提出いたしている次第でございます。
  23. 平林剛

    平林剛君 私は、ただいまの御説明はどうも納得できないのでありますが、納得はできませんけれども、もう少しざっくばらんにお尋ねをいたしますと、あとの残されている政府所有貴金属の中に、政府として民間所有権を侵害しないと確信できるものはまだあるんでしょう。どの程度あるか、私はその点をお聞きしたいのでございます。すなわち、大体、今日の調査によりますと、民間所有の分は四十三億円程度あるという総括的な判断ができております。そうして、法律案全般を見ますと、特定物はもちろん証拠によって返還をする、そうでないものについてはその代替の品物を与える。しかし、総括的には、大体四十三億円ということがほぼ認定できる。従って、その代替できるものを残しておけば、あとは大体政府処理ができるという判断も大ざっぱにいってできるのではないか。しからば、それができるとするならば、民間所有と認定される貴金属あるいは代替品四十三億円分を区分し、他はすみやかに政府処理をする、そうして問題の多い部分についての処理について法律規定をする、こういう考え方も成立すると考えるのであります。これが、ただいまのように、混合したとかなんとかという御説明があれば、今日やったこともおかしいことに相なる。私は、困難であっても二つに区分することはできるという見解に立つのでありますけれども政府が困難だといえば、まあそれもやむを得ない。私はそれを了解いたしませんけれども、やむを得ないとしてお聞きしておきますが、念のために、民間所有権を侵害しないと確信されるものはまだあるかどうか、大体どのくらいあるか、その認定もできないか、こういうことをお尋ねしておきます。
  24. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 先般造幣局その他に返しました接収銀と同程度にはっきりとこの所有権が認定いたされるものも、まだ若干はあるかと思いますが、その数量等ははっきりいたしません。そのほか、資料によりまして、いろいろなこの段階があるわけでございまして、はっきりと数量を確認いたしますには、やはりこの法律にございますように、民間からも含めまして返還請求を取りまして、この五条に規定してございますような措置をとって、いろいろな審査をいたしまして、はっきりするわけでございまして、今お説のような一応予定される四十二億程度のものを民間分として留保しておいて処理するということは、どうも困難ではないか。万一それによって民間の権利を侵害するという場合も、そのような措置をとった場合は非常に出てくる危険性が多いのではないかというふうに考えまして、私どもはそういう措置をとらないわけでございます。
  25. 平林剛

    平林剛君 総額七百三十億円の接収貴金属の中で、今日までの調査や政府の御説明によりますと、大体四十三億円が民間のものである。この中には、特定物も不特定物もある。そういうことをすなおに解釈すれば、他を大体政府所有のものと認定ができる。が、その中には造幣局のものもあれば、日銀のものもあり、あるいは専売公社、国有鉄道、その他あるかもしれません。しかし、これは政府部内において従来処理したように処理できないということはあり得ないことです。政府部内のことであります。民間の四十三億円の部分については、特定物はこれははっきりしておる。不特定物は、それに相当する金銀その他の地金を用意しておけば、この法律に書いてあるように、代替措置でもって処理するのでありますから、その保有分を除いておけば、あとは大体政府において民間所有権を侵害しないと確信できる範囲に入るのではないか。それが、若干はあるけれども、はっきりわからないというようなことでは、お答えとして納得できないのであります。いかがでしょうか。審議を促進する意味におきましても、若干はあるという御答弁では満足できませんから、大体どの程度あるという数量等を、至急御検討の上、御回答願いたいと思います。いかがですか。
  26. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) この数量をはっきり明示しろというお説でございますが、四十二億といいますのは、まあ、過般とりました臨時貴金属数量等報告令によって出ております報告等を基礎にいたしました一応の推定で、政府民間の分の割り振りをしたという程度のものでございまして、個々に積み上げて出た数字では決してございません。従いまして、はっきり民間の権利を侵害しないようにということでありますれば、やはり民間からもう一度返還請求を出しまして、それに証拠資料等もつけ加えて出していただきまして、よくこれを審査した上でなければ、確定できないわけでございます。同じように、政府のものにつきましても、果して政府所有しておったかどうかという点につきましては、六百七十四億から四十二億を引きました全部につきまして、事業関係をもう一度資料によってはっきりさせませんければわからないわけでございまして、その作業はなかなか、全部についてやるわけでございまして、早急にはいたしかねると思いますが、まあこの前返還いたしました四百三十七トンの銀につきましては、まあこの事実関係がきわめて明白と思われる分から手をつけまして調べまして、まあこの程度ははっきりしておるということでございまして、まあ全部を調べれば数字は出るわけでございますが、その作業はなかなか四百三十七トンにつきましても、非常に膨大な資料を集めまして、万一の誤まりのないようにということで慎重な手を尽しまして、この金額を確定いたしたわけでございます。同じように、他の権利を侵害しないようにという立場から調べますと、この残りの政府所有分と思われる接収貴金属について、この特定の度合いを調べますためには、相当の時日を要すると思われるのでございます。  まあ、しかしながら、私が先ほど、あると思うと漠然と申し上げましたのは、それは当然、この資料を調べていけば、この前返しました四百三十七トン程度のものも出てくると思うと申し上げましたのでありまして、数字を確定的に申し上げますには、ちょっと今早急にはいたしかねるのではないかと考えております。
  27. 栗山良夫

    栗山良夫君 関連して。私、今両氏の質疑応答を聞いていて、非常に私自身としてわからない点が一つありますので、お尋ねしておきます。それは、通常国会で、この前ずっと提案になっておりました政府案というものが、一応廃案になりましたですね。その廃案になる前に、あまり長く国会審議が終らないので、私は途中で、ごく雑談的であったと思いますが、賀屋局長にこういうことを申し上げたことがあります。いずれ、民間所有の物件は四十億ばかりで少額でありまして、ほとんど全部政府に帰属するのではないか。従って、銀貨の鋳造のために非常に急ぐということであれば、政府に帰属が明確になった分についてはこの法案からはずしてしまって、そうして他の国有財産の処分と同じように処分されたらいいじゃないか。民間のものだけを、これはいずれ所有権侵害の問題が出てくるのだから、所有権を認めるということであれば、法律処理しなければならぬでしょう。そういう工合になさったらどうですか。そうすると、非常に問題は簡単ではないかということを申し上げたことがある。そうすると、あなたが、いや、そういうことは理論的にはできるのだけれども、実際問題として、どこまでが国のものなのか、境界線がはっきりしないのだ。だから、実際はできないのです。それは理屈としてはできるのだけれども、実際にはできないのですから。そういう工合におっしゃって、こういう一応の表の分類はできておるけれども、この表の信憑性というものを疑わざるを得ないような発言があったのです。私は一応ああそういうものかというので了承しておったところが、今度問題が、法律案が廃案になると同時に、相当多額な銀塊を銀貨の鋳造にずっと回さなければならぬ。こういうことになるとですね、あなたの、ずっと前からお話しになっている話と、今度この法案に出てきた話と、どうも私はわからない。たとえば、理論的には、国の所有物件はこういう特別の法律を作らなくても処分できるものです、やりたいのだけれどもできないのだ、というお言葉が一つ。それから、ところが、実際にはおやりになったということですね。ところが、今度の法案では、先ほど平林君の質疑にもありますように、そういう処分したものを、事後承認のような格好で、この法案にこの処分の内容について求める法文が入っているということについて、どうも理解ができない。だから、この点を一つ明白にしていただきたいと思います。
  28. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 同じ接収貴金属でも、この不特定物につきましては、民間のものと政府のものとが混和しておりますから、これをはっきり分けることができないということは御了解いただけるかと思うのでありますが、そのほか、特定物はそれでははっきりするじゃないかということが言われるかと思うのでございますが、この特定物につきましても、この特定の度合いが非常に千差万別でございまして、やはりいろいろ、所有者から返還請求も受け、いろいろな証拠書類も御提出願って、それを審査いたしました結果、はっきりするものがまあ大部分であろうかと思うのであります。また、それの提出を待って審査するまでもなく、初めからもうはっきり政府のものだ、あるいはこれは民間のものだということが明白なものもあろうかと思うわけでございまして、程度の相違もございまして、机の上で考えますように、はっきりと民間特定物政府特定物とを区分する、そうしてそれぞれについて——まあ民間の分についての法案を作るということは技術的にもちょっと困難ではないかということで、このような法案の形になっているわけでございます。
  29. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、私は一番最初にそういう工合に伺った。そのことは委員会の速記録にはもちろん残っておりませんが、それを私がそういう工合に理解していることと、今度おやりになろうとすることとの間には、少し関連性がないように思うのです。それでお尋ねしているのです。たとえば、ここで一般会計、交易営団等、貴金属特別会計造幣局特別会計、その他の特別会計等、日本銀行民間と、こういう工合に分れているでしょう。そこで相当な金額ですね、民間以外は。ところが、ここまで分類されているにもかかわらず、不特定物はよくわかりましたが、特定物件についてなおかつよく帰属がわからぬというのであれば、一体これらの会計の事務的処理というものはどういう工合にやられているのか、そういう怪しげな事務的処理が行われているのか、こういう工合に私どもはさらに言及せざるを得ない。一般会計というので百十二億円あったというならばですね、これのうちの何%かは、今あなたのおっしゃったように、不特定なものかもしれません。しかし、少くとも絶対過半数の数量くらいは一般会計分だということは、はっきり太鼓判が押せるでしょう。交易営団の分だってそうだと思う。私どもは常識ではそういうふうに考えるのです。ところが、今あなたのお話を聞いていると、この間の通常国会のときには造幣局へもやることはできないとおっしゃったやつが、急にやれるようになっているのですよ。それをやってしまったら、今度は残りは非常に怪しげな帰属のもので、一つ一つ、一品々々チェックをしなければならぬ、こうおっしゃるのだけれども、もう一国会やったら、今度はまたこの前の数量くらい造幣局にやって、それからまた同じような議論を繰り返すことになりはしませんか。そこなんですよ、伺いたい点は。
  30. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) この接収貴金属等返還見込調という表をお配りしてございまして、これには数量が非常に、キログラム単位ではございますが、非常にこまかく出ております。まあ金額の方は何億という、億単位でございます。しかしながら、これは、この注2のところにも書いてございますように、接収貴金属等数量等の報告に関する法律という法律昭和二十七年に出ておりまして、この報告に基きまして、これを基礎として大体のこの旧所有者別の割り振りをいたしました推計の資料にすぎないのでございまして、大体持っております貴金属数量は、これは自分が保管しているのですから、はっきりわかるわけでございます。これは六百七十四億、通常国会当時は七百三十五億という数字になっておりましたが、これを、国会の御審議をお願いいたします御参考までに、どういうところが持っておったかという数字をお示しするために、この報告に基きまして大体の割り振りをしてみた推計の資料にすぎないのでございまして、ここにも書いてございますように、法案成立いたしまして、正式に返還請求を取りまして、それに証拠資料等もつけて出していただきまして、そして接収貴金属等処理審議会ではっきり認定をいたしましてから返還するわけでございまして、その返還の数字はここの表とは必ずしも一致しないというふうに私ども考えております。従いまして、この一般会計に何キロあるという数字は、一応のこういうざっとした割り振りになるという程度に御承知をいただきたいと思うのでございます。
  31. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、それはよくわかっているのですよ。この第二項に書いてあるのを、私どもも読んでおりますからね。その絶対値が完全に現物と一致しているのではないということはわかっております。どの程度この数字に信憑性があるかということなんですね。  で、従って、民間政府との間の境界がはっきりしない不特定物については、私はよく理解します。その点は理解するのですよ。するのだが、じゃ一つ政府機関の中の各部門々々の所有物が明らかにならないと、こうおっしゃるけれどもそれじゃ、現在の国有財産というものが、大蔵省一般会計分、それから各省分ですね、そういうものが乱れて、どうも処分がつかないというときに、一々法律を作って、そうして区分けされるのですか。それは行政処分でできるのでしょう。大蔵省と他省との間に、国有財産の処理について若干の紛争が起きたようなときは、これを法律処分するのですか。行政処分でしょう。行政的にこれは整理できるわけでしょう。今のあなたのお話を聞いているというと、何だかわからぬ、政府のものであるということだけはわかるのだが、その内訳が、はっきりと証拠書類がないからわからぬ、こうおっしゃれば、それは政府のものであるということさえわかりさえすれば、あとは大蔵省と相手方との政府機関内同士において、話し合いで、証拠をもとにした話し合いで、十分処理できるのじゃないですか。そうじゃないですか。
  32. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 一般の国有財産の場合ですと、お説の通り、台帳等にだいぶ登録されておるわけでございますので、この区分ははっきりするわけでございますが、この貴金属等につきましても、それぞれ一般会計が幾ら持っておった、あるいは貴金属特別会計が幾ら持っておったという、それ自体の会計におきましては、経理ははっきり分れるわけでございますが、これが接収という事実——まあ全部が接収されたわけでございませんで、この接収という事実によりまして、一応報告は取っておりますが、それがどの程度正しいものであるかどうかという点を、やはり被接収者に返すという、所有権を認めて返すという立場に立ちますと、やはり民間の方々の請求とともににらみ合せまして、確定する必要が生じてくるわけでございます。また、一口で政府と申しましても、特別会計は別の建前になっておりますので、一般会計、その会計と話し合えばわかるということかもしれませんが、そういった点を、資料をあらためて提出を願いましてよく審査しようというのが、この法律でございます。
  33. 栗山良夫

    栗山良夫君 それはわかり過ぎるほどわかっているのですがね。なぜこんなわずらわしい手数を法律を通じてやらなければならぬのかという疑問があるから、私は申し上げておるわけです。もっと極端に、私、表現しますが、要するに、この六百七十四億の貴金属というものは、大ワクにするならば、民間のものと国のものとに分ければいいんでしょう。民間所有のものと国の所有のものとに分ければいいのでしょう。ところが、民間所有のものにも、はっきり民間のものというのがわかっているのがある。この間日銀の倉庫で見せていただいたような、宝の舟なんかはっきりしておる。そういうものと、溶解してしまってはっきりしない不特定物がある。それから、もっと私あとに質問しようと思っておりましたが、あまた証拠々々とおっしゃるけれども、証拠なしに現物だけ持ってきているものもあるわけです、接収の場合に。そうでしょう。証拠なしに、これは国の倉庫の方に残っている。もう一つ逆にいいますと、民間の人が証拠をちゃんと持っているけれども占領軍がどっか勝手に処分してしまって、現物のないものもあります。そういうややこしいものもあるが、一応そういうものの整理は別に考えてやるとしても、民間のものと国のものとに分けるということであれば、まず民間のものだけを、証拠をもとにして全部調べて、そうして分けて、これだけは返しましょう、そのほかのものは全部国のものです、国のものは国の内部機関で話し合いをして分けましょう、こういうことにならないと、これは分けようがないでしょう。今の民間の中でも、申し上げましたように、本人は出したと思っておっても、現物がなかった。私は確実に出したけれども、何にも証拠はもらっていないから所有権の主張はできないという人もある。そういうものの調整はどうする、そういうことがあるでしょう。だから、どうしても、政府機関の内部のそういう分け方などというものは行政措置でできるのだし、しかも政府部内のものについてこれだけ、六百七十四億のうちの六百億をこえるものがあるわけですが、これのうち、この間造幣局に出したそれ以外のものはどういうふうになっているのかさっぱり区分けがわからない、こういうようにおっしゃることは、ちょっと理解ができないのですよ。そのうちの何%はまだ怪しげである、大よその見当をつけて何%明らかである、半分くらいはこの分類通りですと、あるいは二〇%くらいが怪しいのですとか何とかおっしゃればいいんだけれども……。この前の通常国会のときの議論は今の通りなんですよ。それで、一応われわれは、そういうものかなあと思っていたわけです。そうすると、造幣局へどかんと行って、それならもっとやったらよさそうだと思うと、今度は通常国会と同じ議論をなさるから、まさにわれわれの頭が混迷してくるわけです。どういうふうに理解したらいいか……。
  34. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) たびたび申し上げておりますように、特定の度合いといいますのは、なかなか千差万別でございまして、まあここにございます表は、この報告に基いて大体按分して作りましたものでございますが、この報告は、まあ国でありますればそう誤まった報告はないということを考えますれば、大部分特定しているということも言えるかと思いますが、その基準の求め方によって、ちょっと今この何パーセントということは出てこないということでございますが、まあ、お話にたびたび出て参ります四十一億とそれ以外のものとは、はっきり分けられるのではないかということでございますが、これにつきましても相互に、先ほど申し上げました不特定物関係で、入り組んでいるわけでございますので、必ずしも四十一億とそれ以外ということではっきり分けることもいかがかと考えております。
  35. 栗山良夫

    栗山良夫君 もう一点、それじゃ、また逆な質問になりますが、まあ、かりに今の御説明をどうしても了承しなければ審議が進まぬということであれば、もう少し先の方からお尋ねをしていきたいと思います。それでは、過般造幣局にお渡しになった分ですね、これは正確にどれだけでしたかね、数量は。四百三十六トンですか。
  36. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 総純量四百三十六トンでございます。
  37. 栗山良夫

    栗山良夫君 この四百三十六トンなるものはですね、これは、それでは伺いますが、どういう——政府所有でありますが、政府所有の中でどういう性格のものですか、それをはっきりしておきたい。政府所有物件であるということがはっきりした理由ですね。
  38. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) この四百三十六トンは、大きく分けますと、管理しております官署は造幣局と、それから貴金属特別会計一般会計、この三つでございます。数字を申し上げますと、造幣局が百四十一トン、一般会計が百五十一トン、貴金属特別会計が百四十四トンでございます。これはいろいろな内部記録、たとえば造幣局のものでありますと、造幣局に一回ごとのリストがございます。それから、貴金属特別会計の分について申しますと、たとえば日本銀行政府寄託品保管高帳というのがございまして、これに個数、それから全体の数量、それから全体の純量がはっきり記載されております。また、日銀の銀塊の試金表というものがございまして、これに回ごとのリストが載っております。それから大蔵省の分は、これは旧軍から引き継いだものが多いのでございますが、これには旧軍需省発行交付通知というものがございまして、これに重量等がはっきりしておりまして、また大蔵省側におきましても各回ごとのリストを持っております。そういったように、内部記録を調べますと、この所有関係がはっきりするわけでございます。それから接収——先ほども出て参りました二十七年の法律に基く報告書も提出されておりまして、それとつき合せましても数字がはっきりしておりますし、また米軍から接収の際にとっております受領証あるいは確認証といったようなものもはっきりと残っております。それから連合国占領軍が管理中に記録をつけておりましたが、その記録の中にも、はっきりこれはどこから接収されたものであるというようなもの、それからその個数、品質、重量等の明細もこまかく記載されておりまして、こちらの内部記録とぴったりと一致するというような点をよく検討いたしまして、この分は間違いないというふうに考えまして、引き渡し措置をとった次第でございます。
  39. 栗山良夫

    栗山良夫君 だから、今のような具合に、四百三十六トンというのは、私は、一般会計で非常に明白なものがこれだけまとまってあったのかと思ったのですが、そうでなくて、造幣局関係貴金属その他が入って、いろんな資料をつき合せてまとめられたということが初めてわかりました。このことは、おそらくこの前の通常国会法案が通れば、すぐ整理に入って、そうして銀貨の鋳造をやろうというお考えであったところが、あれが審議未了になってしまった。銀貨の鋳造をしなくちゃならぬということで、大急ぎでこういうことをやられたのだろうと思うのです。それ以外にちょっと説明方法がないわけですね。そうすれば、これと同じような方法でさらに確認していけば、もっと政府物件であるということがはっきりする数量というものがまだあるわけでしょう。書類上で、書類と現物とつき合せて、デスクの上だけでチェックしていけば、これは政府のものだとはっきりするものは、相当な数量になるのじゃありませんか。それはどうですか。
  40. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) このように各種の資料を調べていけば、これと同程度のはっきりするものは決して私はないとも申しません。一等最初の答弁で、若干あるだろうということを申しました。その数量を示せということでございますので、ちょっと今は持っておらないということを申し上げたのでございますが、確かに、このように各、銀なら銀の塊をとりまして、これがどれだけはっきりしておるかということをしさいに検討いたしますれば、少からざる数量が出てくるものと考えております。しかしながら、どうしても残り分はやはりあるわけでございます。それは必ずしも民間のものだけが残る、はっきり区分して残るというものではないのでございます。従いまして、やはり法律案といたしましては、民間のものと政府のものと合せ対象とした法案を作らざるを得ないというふうに考えたわけでございます。
  41. 栗山良夫

    栗山良夫君 それで、今少からざるという言葉を使われたので、私も了承しますが、たとえば銀だって、この統計を見ますと、千七百三トンあるわけですね。千七百三トン。そのうちで過日造幣廠へ渡された分が四百三十六トンですから、だから、まだ千二百トン以上あるわけでしょう。そうですね。ところが、その千二百トン以上あるものについて、おそらく今と同じような調べをしていけば、民間の分は二百七十七トンですから、まあ千トンくらいは政府のものになっている。だから、チェックしていけば相当あるわけですよ。そういうふうにして政府所有物件であるということが確認できるものは一応はずして、そうしてその怪しげな、民間との境界のはっきりしていないものについて処理をどういたしましょうという御提案をなさったらどうか、ということを私はこの前申し上げたのです、通常国会のときに。そうしたら、それはできないとおっしゃって、しかも、この間私の申し上げた通りのことをおやりになったところまではいいのですよ。私は、個人的にはいいと思うのですが、それをこの法案で事後承認を求めるような格好をおとりになったことがよくわからないのだ。どうしてそういうことをおやりになったのですか。
  42. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お説の通り、一応この表から考えていきますと、千トンばかり民間以外のものが残る。それについてしさいに記録、資料等を点検していけば、この前返還いたしました、銀貨製造のために返還いたしましたものと同様に、はっきりするものが出てくるということは、お説の通りであるわけでございますが、そのようにして千トンがだんだん九百トンになり、八百トンになり、ずっと減って参りましても、最後に残るところは残るわけでございまして、それは処理するための法案がどういう形になるかといえば、やはり結局、ただいま提出しておりますと同じような法案になるわけでございます。従いまして、結局、この法案は、その政府が使うという点からいたしますれば、今すぐ必要がないということは言えるのでございますが、法案の形といたしましては、考えられるところは今の法案と同じ形でございまして、それを早く法案を作るかどうかという問題でございますが、まあ、民間のものはあとへ残しておけばいいという理窟は私どもはない、政府が使うのであれば、民間のものもやはり……。
  43. 栗山良夫

    栗山良夫君 それはあとのことです。
  44. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 同じように所有権があるものでございますから、いつまでも不安定な法律関係に置いておくのはよくない、こういう考えで、この法案を出したわけでございます。法案の形としては、今お説のようなことをいたしましても、結局、出しますときの法案は今の形になるということを、御了承いただきたいと思います。
  45. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから、私はもう一つ疑問を持っておるのは、国の所有だと思われておる日本銀行の分ですね、この中に、戦時中に、要するに勝つまではの、あの国民運動で、国民からどんどん、半強制的に供出を命じましたね。そういう分は入っていないのですか、入っているのですか、この中に。半強制買い上げを戦争中にやりましたね、貴金属の。そういうものはこの中に入っていませんか。金、銀、プラチナ、ダイヤモンド、その他個人の所有のものを、ずいぶん戦争中に、供出しなきゃ戦争は負けてしまうんだ、供出しろというので、指輪までどんどん供出しましたね。それは入っているんですか、この中に。
  46. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 海軍省の軍需部でありますとか、あるいは海軍艦政本部、陸軍兵器行政本部、軍需省航空兵器総局というような所に白金を渡したとか、あるいは軍需省航空兵器総局に銀を渡したとかいうような事実、数量は、一応推計があるようでございますが、先ほども申しましたように、一般会計としてここに掲げております分には、こういった旧軍から引き継ぎましたものがあるわけでございますし、それから交易営団の分も回収したものでありますし、そういった関係で、この数量に入っておるわけでございますが、引き継ぎ等の資料がはっきりいたしませんので、これらの会計あるいは交易営団が管理所有するに至りました前の関係は、必ずしも数量的にはっきりと私どもつかんでおりません。
  47. 栗山良夫

    栗山良夫君 先ほど、私は、民間の方の特に法人関係業種別所有貴金属数量と、それからその中で供出関係のものが国から逆に、譲渡か支給か何かしりませんが、せられたものがどれくらいあるか、統計表を出していただきたいということを申しましたが、今、国の所有と一応みなされているものの中で、戦時中に一般国民から戦争に勝つ運動の一環として貴金属供出をせしめられた部分ですね、それが今の政府機関の中に入っている数量がどのくらいあるのか、この総額を一つ資料としてお願いしたい。
  48. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 正確な数字が出ますかどうか疑問でございますが、できるだけ資料を検討いたしまして、推計でも御提出いたしたいと思います。
  49. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから、あわせて研究しておいていただきたいことは、これはいずれお尋ねしますが、民間の分は、この前から繰り返して申し上げているように、あの当時はあれだけ供出運動が起きたにかかわらず、右に逃げ、左に逃げして、供出をさぼった連中が最後に接収せられたのが多いでしょう。今の場合は個人の場合ですがね。法人の場合は若干違うでしょうが、そういう物件がたまたま占領軍接収せられて、占領軍の没収方針が変って返還をせられ、それが現在の時価のままで本人に返っていく。ところが、今、国の機関にある、戦争中に非常に国に協力するために供出をしたそういう人々の物件というものは、その当時完全に所有権の移動が行われている、民法上いささかも疑義はない、こういう理屈で大蔵省当局は割り切っておいでになるけれども国民の感情としては、民間のものはそういうふうに返ってきた、しかし私どもが戦争中に出したものはそれでおさらばで、返らない、全部国の庫に入ってしまう、こういうことで割り切れないものを持っておる。そこで、一ついい方法としては、そういう国民の零細な供出の集積ぐらいは、国が使うときに社会事業に使うとかなんとかはっきりしてあげれば、国民ももう少し釈然とし得ると思うのです。だから、私はそういう気持を持っておるが、そこまでの気持があるかないかということを、私は研究しておいてもらいたいと思う。これはいずれ大臣にもお聞きしますがね。
  50. 平林剛

    平林剛君 結局、私が指摘をしたのは、第一番に、政府所有の分と民間に帰属すべきものとは、常識的に見て、また実際的にも、ある程度区分できるのではないか。政府部内の金属については、それぞれ調整することが可能ではないか。政府としてはそういう措置をとるべきであったにかかわらず、今日までこれを分離してこなかったということが、法律案に対する最大の疑問となって、今日まで前後四回にわたるも審議が促進されない最大の理由である、こういうことを指摘しておきたいと思うのであります。そうして政府としては、これを分離をして国民の疑惑を解く必要がある。それをせないのは、結局民間に帰属する四十三億円を浮き彫りにいたしますと、これに国民の批判が集中して、法律案そのものがかえって通過困難になるという思惑があるのではないか、私はこんな疑惑を抱いておるのであります。できれば、その疑惑を解くためにも、先ほど私がお願いしたような大まかな数量についての調査を進めてもらいたいと同時に、確かにある部分においては混合溶解をしておりますが、残りの部分が出てくることは事実であります。しかし、これは冒頭に指摘したように、付則第七項ができて、あとで万一真の所有権を侵害したと思われるものについては救済措置をとるという意味でもあるという説明があったのでありますが、これを活用すれば、あとでその措置はとれないことはないだろう、まあこういうことにも相なってくるわけであります。この点は後にまた政府のお考えを、進め方に応じてさらにお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、また、次に私がお尋ねしたいことは、連合国占領軍が、その管理中、処理を行なった例がございます。政府から提出をされました資料を読みますと、「米国内における処分、あるいは第八軍中央購買局における処分、イヤマーク金の返還として対フランス、中国、イタリアに引き渡したもの、占領軍が略奪品と認めてイギリス、オランダ、中華民国、フィリピンに返還したもの」など明らかにされておりますが、この処理を行なった日時と、ただいま述べました四つの分類ごとの価格はどの程度になっているか、それから今回提案された接収貴金属の七百三十億円との関係はどういうものか、これらが後の質問のために必要でありますから、明らかにしていただきたいと思います。
  51. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) できるだけすみやかに資料として提出いたします。
  52. 平林剛

    平林剛君 まだ重要な質問が二、三ありますが、時間の都合もありますから、青木さんに譲りまして、後に質問を続けることにいたします。
  53. 青木一男

    ○青木一男君 私は、憲法に保障されている所有権の保護という見地から、一、二点質問してみたいと思います。  この法律施行されると、今進行中の接収貴金属返還訴訟については、裁判所はどういう判決をすることになりますか。
  54. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) この法律成立いたしますれば、訴訟の提起を待つまでもなく、この法案によりまして、所有権者は自己の所有物の返還を受けるわけでございますので、おそらく裁判所では却下するものと考えております。
  55. 青木一男

    ○青木一男君 法案の第十六条の納付金の制度ですが、説明によると、保管費用というような説明になっておりますが、そういう意味と解してよろしいのですか。納付金法律上の本質は何かという……。
  56. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お説の通り、大部分保管に要しました費用、そのほか鑑定等にも政府が若干の支出をいたしておりますので、それの補償の意味もあるかと思います。
  57. 青木一男

    ○青木一男君 保管費の意味で徴収するということは、接収行為が占領軍の一方的占領行為で、何も所有者の利益とかあるいは同意を得てやったということでなく、所有者から見れば迷惑しごくのこれは接収行為であったので、保管費を払うどころじゃない、むしろ賠償金をもらわなくちゃならないというふうな関係に立つのではないかと思うのですが、純法律論からいえば……。特に一例をいえば、戦時中買い戻し条件付で日本銀行が買収したあの貴金属というものは、相手が日本銀行であるから、最も信用して、そうして契約をして譲渡したわけです。従って、そういう買い戻し条件付で売って、買い戻しを受けるに当って、保管費を払うというのはどういう点から出てくるのか、その点を伺いたい。
  58. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 接収貴金属につきまして、保管費という意味納付金を取りますのは、お説の通り占領軍が勝手に接収いたしまして、本人のあずかり知らないことのために取られるのでございまして、まことに不都合であるというお説ごもっともでございますが、また、政府の側からいたしますれば、これまた政府の都合で決して管理をしたわけでございませんで、いやおうなしに政府に管理を移されたわけでございます。民法にも事務管理の規定がございますが、事務管理をいたしました場合には、有益費を投じますれば本人に対して償還が請求できることになっておりまして、そのような思想に基きましてこれを徴収しようという次第でございます。  それから、日本銀行に買い戻し条件つきで売却いたしました場合、返ってきたときに納付金を取られるという点でございますが、これは民間の被接収者につきまして、日本銀行にたまたま売っておった場合には取らない、自分で持っておった場合に返ってきたら取られるということでは、実質的に公平を欠くのではないかということで、日本銀行自体の所有物につきましては、これは日本銀行法による納付金の制度がございますので、この法律による納付金は取りませんが、実質的な所有権民間人にあるという場合には、やはり同一に取扱いをするのが妥当ではないかというふうに考えた次第でございます。
  59. 青木一男

    ○青木一男君 今の説明ははなはだ非法律的で、私よく理解できないわけですが、政府も保管しておったのは迷惑だとおっしゃるが、たとえば所有者の明らかであったような場合には、どんどん返してやればよかった。民法の原則に基いて、所有者に返すのが当然の原則ですね。接収ということが一方的な行為で、それが占領行為がなくなった以上は、政府に移された場合、所有者がわかっておる場合はどんどん返せばよかった。何も、持っておる必要はちっともなかった。それであるから、それがために保管費を取るという観念は、どうも私には出てこないように思う。  それから、日本銀行の買い戻し条件付で売った金属等についても、個人のものであるから他の権衡上管理費を取るということも、これも私は法律的にはどうも理由がないように思うわけです。ことに、日本銀行の買い戻し条件付の貴金属については、政府から出された資料でも、終戦後すでに六割が返還されておるという報告でありますから、それとの権衡から考えても、残った四割の人だけがあとになって、かつ一割保管費を払うということは、今おっしゃった権衡論から考えて、非常に合理的でないように考えますが、その点はどうですか。
  60. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 法律的には御納得がいけないようでございますが、私どもは、納付金は保管の費用を償う意味において徴収しようとするわけでございますので、日本銀行に買い戻し条件付で売却いたしましたもののうち、約六割は返還されたということでございますが、これにつきましては、実際に管理、保管をいたさなかったわけでございますので、その方との均衡ということよりも、むしろ実質的に、今回民間所有権者に返します場合、実質的な所有権を持っておるということに着目いたしまして、その間の公平を欠かないようにというふうに考えた次第でございます。
  61. 青木一男

    ○青木一男君 時間がないから、きょうはこの程度に……。
  62. 前田久吉

    委員長前田久吉君) じゃ、暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩    —————・—————    午後二時十九分開会
  63. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、接収貴金属等処理に関する法律案質疑を続行いたします。  御質疑のある方は御発言願います。
  64. 平林剛

    平林剛君 午前中に引き続きまして、質疑を続けますが、先ほど青木委員からいろいろのお尋ねがありましたが、結局、ああいう議論が出てくるというのは、接収貴金属の根本的な問題について誤まりがあるのではないかと、そういう感じを一そう深くするわけであります。そこで、政府が現在民間返還をするための措置を進めておる貴金属が、いわゆる接収か没収かと、こういうことにつきまして、今日まで政府説明していたことに対し、私としては大きな疑問を持つのであります。  特に、一九四七年、対日貿易十六原則に関する極東委員会の政策決定によりますと、「金、銀、その他の貴金属及び貴石、宝石のストックで、明らかに日本の所有のものと実証されたものは、終局的には賠償物件として処理すべきものである。」と、賠償に充当する意思が表明されておるのであります。そこで、もし、仮定の問題ではありますけれども昭和二十七年の四月、接収貴金属が解除せられるまでに、極東委員会の決定によって賠償引当貴金属として処理されていたものとすると、一体どうなるか。今日のような法律案提出の仕方はなかったのではないだろうか、こういうことに相なろうかと思うのであります。この場合には、政府がかりに民間所有権ありとして四十三億円を返還するという立場をとりたくてもとれないということに相なる。時間の経過があって今日のような提案考え方になったのでありますけれども、仮定の問題ではありますけれども、こうした場合一体どうするのか。政府はこの場合でも、やはりあらためてどこかからお金を集めてきて、四十三億円分に相当するものを民間に返さなければならぬという立場に立つかどうか。私はそこに問題があろうかと思うのであります。政府としての見解はいかがでしょう。
  65. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お話に出ました極東委員会の決定で、当初は賠償物件として処理する考えもあったようでございますが、これは執行機関であるマッカーサー司令部が取り上げず、結局、平和条約発効後に返還して参ったわけでございます。仮定のお話で、まあ十六原則の通りに賠償に充てられておったとしたらばどうだったかというお話でございますが、まあおそらくその場合はこうした問題は起らなかったであろうと考えるのでありますが、これはまああくまで仮定の問題でございまして、私どもは講和発効後、総司令部自体が旧民間所有者に返還する計画を立てることをオーソライズするという覚書をつけて参りましたので、それにその通りの処置をとろうとしておるわけでございます。
  66. 平林剛

    平林剛君 ただいまのお答えでもわかるように、かりに一九四七年に極東委員会の政策決定が行われて、その通りに即座に実行に移されておるとすれば、これらの金額は賠償に充当されておったかもしれない。そうして当然今日政府が積極的に、その賠償に設定されたために所有権が失われたから、四十三億円はこの際政府が何かの形でお返ししますなんという積極的な法律は当然出せなかったと、こういう想定も成り立つ性質のものだと私は考えるのであります。今日までいろいろ政府からお話を聞くと、一九〇七年にヘーグで調印をされた陸戦の法規慣例に関する条約によって、敵国といえども私有財産は没収し得ない、こうあるから、さようなことはないとか、あるいは現実問題として、連合国占領軍接収した貴金属を没収しないで平和条約の発効とともに返してきた、またただいまの説明のように、日本政府大蔵省あての覚書には「私人所有の財産であることが判明した個々の物件を返還する計画を立てることが認められる」と、こう明示をされておるからだということは、だんだんとお聞きをしたのでありますけれども、もう一つ私としては疑問に思いますことは、わが国はポツダム宣言、平和条約第十九条に服さなければならぬという義務を負っておるのでありますから、かりにヘーグの陸戦規則によったといたしましても、ポツダム宣言と矛盾する部分は無条件という立場にあるわけでありますから、このポツダム宣言をとらざるを得ないのじゃないだろうか、こう思うのであります。この点についての政府見解を聞いておきたいのであります。  それから、第二には、平和条約の発効と同時に大蔵省あてに覚書が寄せられまして、「平和条約発効後、裁判により確定された私人の利益を調査し補償する計画及び私人所有の財産であることが判明した個々の物件を返還する計画を立てることを認められる」とありまして、裁判によって確定したもの、私人所有の財産であることが判明した個々の物件と、こういう工合に限定をしてあるわけなんです。政府提案法律案を見ますと、この覚書を越えて、積極的に民間所有四十三億円の返還を固執をしているように見られるのであります。従って、その背後に一体何があるかという疑問が何回かの国会審議において発せられたのでありまして、この点、私は今回の法律は覚書を越えているのではないかという疑問を持っておるのでありまするが、この点についてはいかがなものでありますか。  以上、二つの点についてお答えをいただきたいと思います。
  67. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 連合国占領軍といえども、これは当然国際条約を順守すべき義務があると思うのであります。ただ、お説の通り、無条件降伏をいたしまして、ポツダム宣言を受諾することによりまして、わが国の統治権が最高司令官の権限下に置かれ、また、その後講和条約におきまして、十九条によりまして一切の請求権を放棄いたしておりますので、かりにこの連合国占領軍民間から接収いたしました貴金属を没収いたしましても、これはその点からいえば、当然わが国はそれに服さなければならない義務を負うものと思うわけでございまして、従いまして、先ほどのように、そのような事実がかりにあったとすれば、この法律が出なかったであろうということは、確かにそうであろうと思うのでございます。しかしながら、事実は仮定と相違いたしまして、今申し上げましたような覚書をつけて返して参ったのでありまして、これは最高司令部が所有権を認めるという考えもとに返してきたものと了解せられるのでありまして、この司令部の覚書の民間所有の財産であることが判明しているものについては個々の所有者に返還する計画を立てることが認められるというのは、その趣旨と私ども解釈いたしておるのでございまして、証拠資料その他によってはっきりと民間のものに所有権があるということが判明したものについてはこれを返還するということは、何ら覚書を逸脱するものではないと考えております。
  68. 平林剛

    平林剛君 極東委員会の政策決定が後に変更になった理由、これがどこにあるか、それは所有権を認めるという立場に立って現実問題として返還してきたのではないかと解する、こういう政府の判断については、私はなお疑問を持っておるのであります。なぜかといいますと、極東委員会の政策決定によって、はっきりと終局的に賠償物件として処理すべきものであると意思表示された現実が一つある。これはきわめてはっきりしておる。その後一九四五年十二月七日に、中間賠償計画によるポーレー大使の声明によりますと、これは日本で集積された金その他の貴金属をサンフランシスコの合衆国造幣廠に輸送する際に発せられたものと承知いたしておるのでありますが、その中で、後日これを占領費の支払いに使用するか、輸入品のために使用するか、賠償のために使用するか、または返還するかについての決定に対して、何らの影響を及ぼさないと、こういう声明がございます。この声明を、私の解釈に従えば、少くとも一九四五年十二月当時においても、接収貴金属を少くとも占領費の支払いに使用するか、輸入品のために使用するか、賠償のために使用するか、あるいは返還するかと、表面に現われただけでも四つの方法があったわけです。おそらくこういう幾つかの方法によって処理されるということが当時の連合軍の考え方ではなかったかと、これは想像できるのであります。これが、その意思が、後に接収を解除した、私はこの事実は認めるのです。解除された事実は認める。しかし、それが果して前の日本人の所有権を認めて返還をしたのであるか、あるいはその他の事情であるか、これは私は政府の言う通りには認められない。明らかに接収当時の政策を変更したものであるということは認める。しかし、その変更した理由がどこにあるか。この中には、ヘーグの陸戦規則による立場で変更したかもしれない。しかし、これはもし占領軍の立場に立てば、日本はポツダム宣言で無条件降伏したのだから、これを越えることがあるのだといってがんばることができたはずなんですね。良心的にこれに基いて返したという理由も、成り立つかもしれない。しかし、それ以上のファクターがあったのじゃないか。たとえば、接収当時の政策変更は、結局、その後のわが国の占領費の支払いとか、賠償その他全般的なものを含めて、対日関係を考慮して返還をされたのじゃないか、こういう想定も成り立つわけであります。  私は、その意味で、単に私有財産だから返還せよ、こういうことだけでなく、これは一部の国民が主張はしております、接収を受けた一部の国民はこれを主張しておるけれども、それ以上のいろいろの事情が相重なって返還されたとみなすこともできないことはない。俗な言い方をすると、今日まで相当の賠償をわが国民は共通の責任として負担をしておるわけです。国家に帰属するものは別にして、民間四十三億円に相当するものは、国民が賠償をかわって払ってやっておる。あるいは国民の血税から、占領費の支払いなどについても処理をしてきた。そういう総合的な諸判断から、接収が解除された、こう見るならば、単に私有財産だから返せということをわれわれは認めるわけにはいかないのじゃないか。国民が賠償やその他の税金によってこれが負担をすることによって返ってきたということに相なりますと、こういうところからも割り切れない気持を国民は抱くわけなんです。  私の言わんとするところは、私有財産だからただ返還せよ、こういう国民の主張は当らないし、また接収を解除した理由が、単にヘーグの陸戦規則だけによってもとに返すということだけではないのだ、こういうところにあるわけですが、これについてあなたのお答えを一つ聞いておきたいと思います。
  69. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 御指摘になりました昭和二十年のポーレー大使の公式声明には、いろいろ接収によって意図するところを考えておったようでございます。それから、先ほどの極東委員会対日貿易十六原則にも、賠償に充てるという考えがあったようでございます。それがどのような考え方のもとに変更せられまして返還せられたかにつきましては、私どもははっきりとはいたしておりません。まあ平林委員のようなお考え方もあろうかとも思いますが、とにかく私どもといたしましては、返還されました以上はその所有権を尊重するというのは、これは憲法の大原則でございますから、憲法を守るという立場からこれを返すというだけのことでございます。
  70. 平林剛

    平林剛君 今お話ししたのが、前段は私は率直な考え方だと思います。連合軍がなぜ接収貴金属を、当初の政策決定に反して、それを変更して返してきたか。この理由は、単に個々の所有権返還する、個人でいえば四十何名、法人でいえば幾らという人たちだけのことを考え返還したのか、それとも、当初考えておった賠償の引当金やあるいはその他の占領費の支払い等について、その後具体的な話し合いが進み、諸般の情勢を考えて、対日政策の上から返還してきたものか。もし、私の仮定が成り立つとすれば、単に一部の国民だけに返してそれでいい、こういうわけのものにはならないのじゃないか。その間には多数の国民の共同負担による賠償額、占領費の支弁がある。この犠牲の上に立って、なおかつ、一部の国民だけに接収貴金属返還することが妥当なりやいなや、こういうことに私は帰結するのではないか。  そこで、ちょっとお尋ねしておきますけれども、今日までわが国が、敗戦の結果、旧連合国に支払った賠償の総額は幾らになるか、おわかりでしょうか。
  71. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) ただいま資料を持ち合せておりませんが、至急調べましてお答えいたしたいと思います。
  72. 平林剛

    平林剛君 賠償の総額と同時に、占領費の支払いその他、私が指摘したものに相当するものについて、お調べを願いたいと思いますから、その点をお願いいたしておきます。  その次に、法律案についてお尋ねしなければならぬことがありますが、もう一つ、その以前の問題として、国民感情から考えた問題点につきまして、お尋ねをしておきたいと思うのであります。これは、ただいまお話ししたように、占領軍がどういう気持で返したかということがわからないのでありまして、それを単に一部の国民だけの法律関係だけをそんたくして、かような法律案を出すことは当らない。私に言わせれば、これはすべて国家に帰属せしめるべきだ、どうしても所有権を争いたい人は、民事訴訟法によって争えばよろしい、何も政府が一部の国民のためにおぜん立てをして、便利な方法をとってやる必要はない、こう考えることは国民大多数の感情だろうと私は思うのであります。しかるに、大蔵委員会調査室で、この問題点を調査した中で、ちょっと疑問な点があるのです。三十三年九月二十九日に調べた資料の中で、国民感情からの問題点の中に、「連合国占領軍は、二十一年五月、臨時貴金属数量等報告令に基き、民間所有貴金属等を報告せしめたが、報告者は個人一〇・〇一〇人、法人二七一社であり、そのうち実際に接収されたものは個人七人、法人五二社に過ぎなかったことをも考慮する必要がある」、つまり、これはこんなにたくさんの人が報告したのに、実際に接収された者は少いのだから、この少い人たちだけをいじめるようなことは権衡上よくないのではないかという趣旨で列記をされておるものでありますけれども政府提出した資料によりますと、個人は百九十三名、法人は百四十八とありまして、これと違うのであります。少くとも個人については百九十三名でありますから、そのパーセンテージは比較的少いのでありますけれども、法人におきましてはまあ半数ということに相成っております。これはどちらが正しいか。それから、これに漏れた人たちは多分ごく少量の接収貴金属であって、接収された者は相当の貴金属所有していた者ではなかったか、こんなふうに理解されるのでありますが、実際これに携わって調査を進められた政府当局は、どういう工合に把握をされているか、この点を一つお尋ねいたします。
  73. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 調査室のお調べになりました資料にあります通り、二十一年五月の臨時貴金属数量等報告令に基きまして報告のありましたものの中で、接収せられたものが七人でございました。報告は一万人余りあったわけでございますが、現実にその中から接収せられた方が七人にすぎないということでございます。この間の事情は、果してその残余の方々がごく少量しか持っていなかったために接収せられなかったかどうかという点は、まあそういうこともあろうかと思いますが、つまびらかにいたしておりません。ただ、そのように推定せられますことは、この前お配りいたしました資料の中でも、個人の分につきまして見ますと、十万円未満が百九十三人のうちで百五十一人というふうになっておりますので、まあほかの方々は比較的少いのではないかというふうにも推測せられるわけでございます。まあ、結局、そういうこともございますが、まあ、この七人というのは、この報告を見まして、何と申しますか、任意に接収しやすいところから接収をしたのではないかというふうにもまた考えられるのでございます。まあ、いずれにいたしましても、これは推測でございまして、はっきりいたしません。しかしながら、報告を現にして接収されなかったという方々と、この接収された人との間の均衡ということは、やはり私ども考えなければならないのではないかというふうに考えております。
  74. 青木一男

    ○青木一男君 関連質問ですが、先ほど平林委員は、占領軍接収したときの目的について、賠償に充てる等の目的が当時含まれておったかどうか、従って、もしそれをやめて一般国民が賠償を支払うことになるとすれば、その接収された人の損失が一般国民に転嫁されることになるのじゃないか、こういう趣旨の御質問であったように伺ったわけであります。そこで、これはまあ重要な問題ですから、私あらためて質問したいのですが、占領軍貴金属接収したのは、降伏条約に基いて占領軍が日本の最高の統治権を把握し、つまり憲法以上の権力を行使することができたから、接収行為ができたものと私は思うのであります。そこで、まあその当時もしそれを実行してしまえば、当時の権力行為によって済んだことであるし、それはまあ合法化されておるわけであって問題がないわけですが、この占領軍の計画なり、あるいは接収行為というものは、講和条約ができて日本が独立した以上は、そういう憲法以上の権力に基く行為が日本の独立後においてもそのまま効力があり、あるいは価値があり、日本政府はそれを尊重しなければいけないというような法律関係は、私は全然ないものであると思うが、政府はどう考えるか、これがまず第一点。
  75. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お説の通り考えております。
  76. 青木一男

    ○青木一男君 そこでですね、この憲法が行われることになった以後の行政措置としては、やはり憲法に基準して行政をしなくちゃいけないことは当然である。そこで、伺いたいのは、この賠償の支払いということは国家の義務であるから、私は国家予算を通して一般の歳出の形で賠償を支払うことになっておるので、特定の財産を持っておる人だけがその賠償義務を特別に負担するという立法もなければ、先例もないように思うのでありますが、事実どうなっておるか、伺いたい。
  77. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) ただいま政府が行なっております賠償は、御指摘の通り方法によりまして、国会の御承認を得まして、賠償の関係の予算を組みまして、支払いをいたしております。
  78. 青木一男

    ○青木一男君 それでは、やはり賠償の支払いは、予算の形を通して、一般国民の負担という形で行われておることは、われわれも承知しておるわけでありますから、そこで、占領軍がさっき平林委員の言われたような特殊な目的で接収したことが事実としても、占領を解除されて日本が独立をとげた以後の憲法治下の政治としては、それに拘束されることなく、やはり賠償の支払い義務は国民一般が負担するという建前でなければ筋が通らないことになると思うのでありますが、今度のこの法案提出については、そういう過去の接収の経緯ということをまあ無視するというか、考慮に入れずに立法されたのは、そういうような考えから来るものかどうかということを、はっきり明言していただきたい。
  79. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) ただいまの御質問、ちょっと趣旨がはっきりいたしませんでしたが、この法案は、たびたび繰り返しておりますように、賠償という考えもあったかもしれませんが、実際は、現実の事実は、賠償には充てられなかった。そして講和条約が発効されて返還されたそのときには、新憲法がございまして、所有権は尊重をしなければならないというのでございますから、その通り処理をしようということでございます。
  80. 青木一男

    ○青木一男君 もう一点、午前中の管財局長の私の質問に対する答弁の中で、政府占領軍から接収貴金属の保管を言いつかって迷惑な仕事をやむを得ずしておったんだ、というような意味の御答弁があったわけですが、私はその考えはおかしいんじゃないかと思う。占領軍の行為は条約に基いて当時として効力があったとしても、占領が解除されて日本の憲法が行われる以後になっては、そういう時代において効力のない昔の占領軍のなした行為は、当然政府が承継せなくちゃいかぬ。つまりですね、接収の跡始末というものは政府が当然の任務として承継して善後処理をすべきことが、私は法理上当然であって、これは別に占領軍から委託されたとか、そんな関係ではないと思う。当然の政府の職務権限として、返還をすべき立場にあったんだろうと思う。ただ、先ほど、午前中いろいろ質問になったように、内容についてそう明確でないものがあり、権利関係が複雑だから、特別立法をしたという考え方自体はあったかもしれないが、法理観念としては、占領軍のやったあとのことは、別に占領軍に頼まれたからやるのではなくて、その仕事を承継した日本政府として当然の職務権限としてなすべき義務があったと思うが、その点はどうですか。
  81. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 一割の納付金の計算の思想は保管料という意味でございますが、これは占領中の管理費用はもちろんその計算には入っておりません。政府が、講和条約発効後保管を移されてからの保管費用というものを一応想定いたしまして、いろいろな角度から検討いたしまして、はじいた数字でございまして、これは頼まれたからどうということではありませんで、ちょうど民法の事務管理というように、たまたま日本政府が保管せざるを得なかったということに基いて、その費用を償う意味においてこの納付金を徴収しておるというのでございまして、占領軍接収いたしました跡始末を私どもは無償でもってしなければならない、ということにはならないのではないかという考え方に基いておる次第であります。
  82. 青木一男

    ○青木一男君 今の局長の答弁は、私は非常に理解できないが、占領軍のやった行為の跡始末をするんでなければ、それじゃどういう仕事をしているんですか。私は、当然占領軍の占領下における行為の跡始末をしているのがこの接収貴金属処理だと思うが、どういう関係政府はやっておるのか。
  83. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) これは、所有権を尊重して返すということは、政府が当然やるべきことをやったということに基いておるわけでございます。
  84. 青木一男

    ○青木一男君 私は、今の答弁ははなはだ理解できない。つまり、所有権を返すもんだから返すということは、結局、所有権を取り上げた占領軍の跡始末をするんだということに帰するのではありませんか。先ほどそうでないと言ったのは、どういう意味で返すんですか。
  85. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) その点は、確かに跡始末という意味には違いございません。
  86. 平林剛

    平林剛君 その点、私、別に論争するつもりはありませんけれども政府が今日まで接収貴金属がわが国に返還されても処理しなかったというのは、処理し得ない事情があったと、こう見るべきではないかと思います。それには、先ほど私が指摘したように、単に個人の所有権だけの尊重という意味でなくて、賠償とか、あるいは占領費の支払いとか、その他諸般事情を考慮して、連合軍、占領軍の政策決定があったと見るべきで、その唯一の、また最終的な連合軍からの覚書が大蔵省に渡された今日は、もし単に所有権の尊重ということであれば、すでに整理されていなければならない。それは青木先生の御議論の通りです。整理されていない事情は、やはりそこに単にそれだけのものでないということを裏書きしているということに相なる。今日は、われわれは占領軍の意思がどうであったからこうであったということは判断すべきではない。自主的な日本国民の立場として審議し、その処分を決定してよいわけです。それだからこそ、現実にこの法律案が議会に提出され、全国民審議を求めておる、こう解すべきではないか。単に占領軍の跡始末をするだけだというならば、覚書にありますように、平和条約発効後裁判により確定された私人の利益を調査し補償する計画、これだけでいいわけです。裁判により確定されていないものまで返すなんということは、私は政府の越権行為である、大多数の国民の意思を、あるいは素朴な感情を無視する立法措置である、こういうところにわれわれの主張の論拠があるわけであります。多少議論になりましたけれども見解はそういうところにあるわけで、従って、政府提案した法律案は、連合国が言われた意思以上のことを、あまりに少数の国民の利益ばかりを強調されておるきらいがある、こう判断をするのであります。  先ほどの国民感情論にもう一回戻りますけれども、私はそういう意味で先ほどの点を指摘したのでありますが、同時に、政府が今日まで説明して参りましたように、この法律により返還を受ける個人、法人が、戦時中供出を怠った非国民でないとか、あるいは終戦の混乱時に不正に着服した者でないと推定できるという説明がございましたけれども、この説明だけでは納得できない国民感情がある。たとえば、戦時中第一線の将兵として戦死した者、足や腕を失った者、これは接収ではない、没収というふうな言葉では言えませんけれども、ある意味においてはこれと相通ずるものがある。これと比較して、わずかに一割納付金だけを払えば時価相当の手厚い返還を受ける、こういう国民と比較をしたら、あまりにも不権衡ではないか。これはそろばんではありませんよ。国民の率直な感情である。こういう感情に対しては御説明がなかったのでありますけれども、今日自主的な立場で日本国民全般がこの処理について考えるには、当然このことについても考慮を及ぼさなければならない。こういう素朴な感情論については政府は何と弁明をなさるでしょうか、政務次官、一つ
  87. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) 私も終始一貫このことに携わっておったわけではないので、多少的はずれなことになるかとも思いますが、しかし、本質的には間違いないと思いますのは、今平林委員のおっしゃったようなことも、確かに国民感情の上からあると思います。しかし、戦争中におきましても、無事に帰った人もありますれば、今おっしゃったような不幸な人もございます。従いまして、これはしかも接収されて返ってきたと、返されたという点からいいますれば、私どもは新しい日本の新憲法下におきましては、できるだけ個人の権利は尊重するという建前で、多少のそこに今おっしゃるような割り切れないものがあると思いますけれども、しかも、これが本人の意思によって承諾の上で取り上げられたものでもないのでありますので、しかも、これが先般来議論になっております、また説明されておりますように、大部分が営業用に使われておったという事実もありますし、多少の御不満はございましょうけれども、やはり個人の所有権というものはできるだけ尊重したいという建前に立って、すみやかに返還したい、こういうことと御了解を得たいと思う次第であります。
  88. 平林剛

    平林剛君 どうもそれだけでは、われわれとしては納得できない理由があるので、今日までこの問題については審議を続けておるわけであり、同時に、個人の権利を尊重するといいましても、やはりこれには限度がある。しかも、われわれが今日まで審議を通じて感じますことは、この少数の国民の個人の権利を主張する裏に何かありはしないか。残念ながら、今日までそれを具体的に指摘するまでには至らないのでありますが、こういう疑問があるということは、政府においても十分考えておいていただかなければならない性格のものであると私は思うのであります。まあ、これは証拠をつかんで話をしておるわけではございませんので、水掛論でございます。  そこで、もう一度私は別の角度から、法案の第十六条の納付金についてお尋ねをしておきたいと思うのであります。これを質問をするのは、決して個人の所有権を認めるという立場で聞いておるのでないことは、言うまでもありません。その点は誤解のないように願いたいと存じます。  私は、連合国占領軍貴金属接収した当時の事情、その後国が負担した占領費、賠償、その他総合的事情の影響から連合国軍政策の決定が見られたと、こう判断をしておること。また、現実の接収貴金属は、その大部分溶解混合、あるいは米国内における売り払い、旧日本軍による被略奪国に対する返還など、いろいろな処分がありまして、政府資料説明にありますように、今日だれのものが幾らあるかということを認定することはきわめて困難であります。実質的に処理することが不可能なものである、特定物はこれは別にいたしまして……。こういう問題の処理は、結局、国に帰属させて処理することが最も適当な措置ではないかと考えるのでありますが、百歩譲って、所有権との調整をはかる意味で、この際それなら納付金を一割なんということを言わないで、八割くらい取って、そして解決したらどうだろうかという調整案も考えておるのであります。八割というと、大多数を納付させるのでありますから……。ずいぶんひどいなとお考えになるかもしれませんが、決して不合理な主張ではない。一割取るということだって、不合理といえば不合理。青木委員の説のように、一割取ることも、何もお願いを申して保管していただいたわけではないのでありますから、一割取るのもおかしいじゃないかということに相なる。一割であろうが、二割であろうが、八割であろうが、そんなものは理屈のつけよういかんによる。従って、八割を納付さすべしという国民の意思がきまれば、諸般事情から考えて、それも妥当なりという国会の意思として通用できるわけです。私はそういうふうに考えておる。  一割の根拠をいろいろ説明受けましたけれども、あんなものといっては失礼だけれども、これも適当につけたものでありまして、考え方によってはもっと別な考えもできると思うのであります。たとえば、納付金の算定根拠を政府の一割説に従えば、昭和二十七年四月から法案成立までの保管費用その他の諸経費をあげておりますけれども昭和二十年九月占領軍が直接行動として貴金属接収をした時日から計算すれば、一体どうなるか、こういうことも考えられるのじゃないか。まあ、これは二百歩ぐらい下った質問でありますけれども昭和二十七年四月から算定をして、二十年九月直接行動を起した当時は算定の基礎に入れなかったという理由は、どんなところにあるのですか。この当時もやっぱり保管をされていたのだ。その保管代は占領軍だから負けてやった、二十七年以降は日本国のあれになったから負けないで一割取るのだと、こういう御説明なんですか。
  89. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) お説のように、占領軍のやっておりましたところの部分につきましては、算定をいたしておらないわけでございます。なおまた、先ほど平林委員の御意見の中にもございましたが、八割にしてもいいじゃないか、六割でもいいじゃないか。これも議論の立て方だと思います。あるいはもっと時価がいいじゃないかというふうな議論も、意見もあると思いますが、立案者といたしましては、やはり一つの根拠がなければいけない。そこで、倉敷料、保管料、こういうふうな社会的に通念として用いられるものを用いるのがいいじゃないか、こういう根拠に立っておることは、平林委員も御承知だろうと存じます。従いまして、根本が所有権尊重という建前にある以上、特に持てる者だけが非常な利益を得るじゃないかというふうな国民感情もわからないことはございませんが、まあできるだけそういう特に特段な見方をしないで、やはりどなたのものであろうと、できるだけ早くもと所有者におさめたい、返してあげたい、こういう根本に立って、考えに立っておりますのでございまして、この一割ないしその後の加算につきましても、そういうふうな考え方で、もっぱら経済的な実情からやっておるわけでございます。
  90. 平林剛

    平林剛君 これは国民感情論の議論で、少しく法律論を離れるかもしれませんが、返還を受ける少数国民は、一割でも不当だと考える。そうでない国民の大多数は、全部国家に帰属せしめて、先ほど栗山委員が指摘されたように、社会保障やその他のものに使うたらいいではないか、おそらく私の説を支持するだろう、こう思うのであります。百歩あるいは二百歩譲って、納付金の問題に言及をすれば、八割なり九割取ることで、国民の意思としてきめればいい。それも政務次官がお話しになったように、いずれにしても、根拠々々と言うけれども、まあ理屈をつければどっちも根拠になるのです、私に言わせると。  お尋ねいたしますけれども接収貴金属処理に関する法律案の成否をめぐって、すでに三回議会で議論をされた。その最終の議会当時に、政府与党の方から、どうだ一つこの際二割か三割ぐらいの納付金を納めることで話し合いがつけられないものかということを、非公式でありますが、私の方に申し入れがあるくらいです。政務次官にお聞きすると悪いかもしれませんけれども、政治的に質問でありますから。一体、そのときの根拠は、どんなところにおいて二割なり三割なりをお考えになったのでございましょうか。
  91. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) 確かに、平林委員のおっしゃるように、前国会の末ごろでございましたか、そういうふうな話をなすった方があるということは聞いておりましたけれども、しかし、当時政府といたしましても、今の根拠は、平林先生のおっしゃるように、一割でも高いというでしょう。それから、一割なんかじゃ安過ぎる、同じ返すなら八割ぐらい取れ、こういうふうな御意見の方もあるでございましょうが、なかなかこのつまみでやるということになりますと、非常にむずかしくなります。従って、今申し上げましたように、倉敷料というふうなものの考え方で、それは本人の意思であったものでも何でもないんですけれども、一応預かって、ことに日本銀行へ行ってごらんになりますと、広い倉が三つもふさがっておるという状況から考えますれば、やはり一応そういうふうなものをものの考え方の根拠にしようということで、出発いたしておるわけでございまして、これはなかなかむずかしい問題だと思います。前国会では確かにそういうお話でございましたけれども、まあ、私どもとしては、そういう計算の基礎だけは明らかにいたしておるつもりでございます。
  92. 平林剛

    平林剛君 先ほど私が申し上げたように、本来、賠償に充てらるべき性質のものであったかもしれない。ところが、その後の事情の変化によりまして、期せずして、はからず返還になった。まあ思いがけない拾いものである、こういうことにおそらく返還を受ける人たちも腹の中では思っているんじゃないかと思うのであります。しかも、この私の説に従えば、返還を受けたという事実は認めるけれども、この裏には、国民の大多数が、賠償あるいは占領費の支払いなどにおいて相当の犠性を払った。四十三億円が賠償になれば、その分だけ国民の負担が少くなった、こういう仮説もなり立つわけです。しからば、個人のある人が拾いものをしたというときの犠性には、その分があるのだから、それをはずせば何割になるということも、それもやはり一つの計算の基礎にしたって悪いことない。これが国民の意思であるということになってもいい。  もう一つ言えることは、政府の一割説の根拠は、単に保管費その他だが、政府提出法律案成立するというと、訴訟をしないでもおそらく手元に入る勘定になるわけですね。私は、こんなものは返らなくて、民事訴訟を起して争う国民があれば争いなさい、争わない者は所有権を放棄したものとして政府所有すればよろしい、こういう言い方をしておるわけでありますが、この法律が通れば、別に訴訟してまで取ろうなんと思っていない、あきらめておる国民も、ごそっとふところに入ってくる。大きなのは一億五、六千万円から、小さいのは五千万、何千万円と入ってくる。不当利得とまでは言わないけれども、あきらめていたものが入ってくる。訴訟をして、本来の筋道で争って取るべきものであるのですから、裁判の費用も相当かかるであろうし、訴訟が帰結するまでには二年、三年かかる。その経費がただで済むわけです。従って、保管費だけでなく、そういう分に相当するものも、国会議員の国民代表が審議してこれを省略し得て、その分だけは、何というか、訴訟費用を払わないで済むわけです。政府の方がお膳立てしてくれて、ちゃんとふところに入れてくれた、こう相なりますれば、こういうものについても計算に入れて、納付金の一部に入れるということも、私は無理な根拠ではないであろう。訴訟を起せば、弁護士料も相当要りますよ、一割や二割。青木先生おられなかったから、弁護士料がどれくらい要るのか知らぬけれども、かりに一億円の所有権を国と民事訴訟で争えば、弁護士料規定によって一割や二割は取られる。なかなか判定がむずかしい訴訟でありますから、二年や三年はかかる。国を相手の訴訟ですから、おそらく第一審で帰結するなんていうことはしないでしょう。最高裁までいくとなれば、三年なり五年なりかかる。こういうことを考えれば、一割なんていうのは安過ぎる、もっと取っていい、こういうことに相なるわけです。これが素朴な国民大衆の意見です。これについては、ただ所有権ということだけで解決をしていいかどうか。こういう国民の声があったら、あなた方は何と答えられますか。
  93. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) 平林先生に言葉を返してはなはだ恐縮でございますが、一、二、非常に辛らつなお言葉で恐縮いたしておりますが、しかし、まあこれは訴訟で返すという方法もございましょう。しかしながら、やはり感情にはいろいろな要素も加わることと思いますけれども、返されるということになると、やはりおっしゃるように、欲目も出てくることも人間当然でございましょう。この今の納付金の額の問題にいたしましても、私どもはそういう見解もとにやっておりますが、これが高いか安いか、こういうことも一つの論点でございましょうし、返すか返さないかということも一つの問題でございましょう。あるいは返すにしても、訴訟によってやるかどうか、こういうことも問題でございましょうが、しかし、戦争という大きな犠牲を払った日本国民でございますから、この接収されるということも一つの不幸でございましょう。千何ぼのうちから六人、七人が選ばれるということも、まことに迷惑なことであると思います。従って、国民感情もそういうふうな点に目を向けますと、やはり日本国民としてできるだけ不幸の者の少くなるように、また犠牲も少くなるように考えて、一つ御賛成をいただきたいと、かように存じまして、所見を申し述べて恐縮でございますが、御了解を得たいと存ずる次第でございます。
  94. 平林剛

    平林剛君 政務次官は多分、政府提出した法律案であるから、一日も早く成立してもらいたいという意味で強調されておると思いますが、この法律案が難渋している裏には、もっと複雑なものがあるのではないかとわれわれは見ておるのであります。この問題についてはもう少し、後にお尋ねをいたしますが、この際に資料一つもらいたい。というのは、法人と個人、それぞれに分れて返還を受くべき数がございますが、その中のそれぞれの金額によるベスト・テン、法人の会社名、それから個人の名前、現在の地位、さようなものが多分わかっておると思いますけれども、提示していただけましょうか。
  95. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) 委員会の御要求とあれば出さなくちゃいけないと思いますが、しかしながら、個人の財産に属することでございますので、お話をするぐらいはどうかと思いますが、しかし、公式書類として提出するということはお許し願った方がいいんじゃないか、かように考えます。いかがでしょう。
  96. 栗山良夫

    栗山良夫君 それはいけないですよ。この前の法案審議未了になる前に、その資料提出があったことがありますよ。それだから、廃案になって出し直しだから、一ぺん出してもらわなくちゃ……。
  97. 平林剛

    平林剛君 今、栗山委員お話しになったことがあれば、提出しないという理由はなくなるわけでありますが、かりにそうでなかったとしても、すでに接収貴金属に関する陳情というのが提出をせられておりまして、佐野修二郎とか、大阪変圧器株式会社とか、保阪某とか、渋江叶だとか、いろいろな個人名が委員会提出されておるわけでございます。これは個人の自由で請願をしたのだから、委員会資料として出されたということは、言い得ることはそうですけれども、私はやはり、少くともそのベスト・テンのメンバーを知ることによって、この法律案を背後から促進しておるその関係がわかるのではないか。あるいはわからぬかもしれません。しかし、それを提出して、私どもが見れば、ははあこの裏にこんな動きがあったぞということがわかるかもしれないので、政府は、進んで誤解を解く意味においても、御提出願った方がよろしかろうと思いまして、要求をいたしたような次第でございます。
  98. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) 前回は陳情のあった人の名前をお示ししたそうでございますが、平林委員仰せの通り、これは私、別に擁護するという意味じゃございませんが、今おっしゃった言葉の裏を考えてみると、どうも出てきた人の名前によっていろいろ御判断があるということは、どうもこれを通していただきたい、返したいという政府といたしましては、少しいかがかと存じましたので、私、名前を個人的にお見せするという程度で、お許し願いたいと存じます。
  99. 平林剛

    平林剛君 個人的に見せられると、大へん困るのです。おそらく個人的に承知しておる人たちもあるかもしれませんよ。しかし、私は個人的に知りたいのでなくて、委員会として判断をする資料として、御提出を願った方が穏当ではないか。これを疑問に思いますのは、結局、三回にわたって、午前中指摘しましたように、政府に所属すべきものと民間のものとが、私に言わせれば、分離できるにかかわらず分離してこない。分離して処理をすれば、もっとスムーズに通り、かつ数百億円に相当する接収貴金属を死蔵させないで済むにかかわらず、一生懸命になって固執しておる。私は、政府当局にその疑いがある、こういうことは言いませんけれども、何か割り切れない感じを持つのであります。従って、むしろ政府が積極的にさようなことはございませんよといって、メンバーを御提出願って、われわれのこの不当なる疑問を解明する方が必要ではないか。どうか個人に示すということでなく、委員会に御提出を願いたい。私の理由はそこにあるわけでございます。
  100. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) まず、先ほど栗山委員お話で、前国会にお約束したような御発言がございましたが、私どもの記憶いたします限りでは、お約束をいたした覚えはございません。個人あるいは法人のベスト・テンを資料として出せというお話でございますが、これはやはり個人の財産の秘密に関する事項でございまして、その内容を公けにするということは穏当を欠くというふうに考えております。  ただ、今お話に出ました、何か背後における圧力をそれによって御推察になろうというような御発言がございましたが、私どもは決して、そういった圧力によってこの法案を通していただくようにという努力をいたしておるわけではございません。また、現に民間の運動等につきましても、別段ほかの農地の補償の問題でありますとか、あるいは在外財産の補償の問題でありますとか、そういったような圧力団体と申しますか、期成同盟といったような式のものがあるわけではございません。ただ、先国会にお示しいたしましたような陳情がある程度でございまして、決してその背後、特定の個人の圧力によってこの法案を早く通したいという考えでおるわけでないのでございますので、その点は一つ御了承をいただきたいと存じます。
  101. 平林剛

    平林剛君 私は、そのお答え、了解できないのであります。御承知のように、接収貴金属処理をめぐる法律案につきましては、国会審議で明らかになりましたように、交易営団におけるダイヤモンドの詰めかえの事件、中央物資活用協会における貴金属の疎開の際における不正事件、佐竹大佐のダイヤモンドにかかわる事件、あるいは陸軍航空本部のダイヤモンドの処理の疑問、宮内省御下賜のダイヤモンドの紛失事件、数えあげたら切りがないけれども、疑惑の種がまかれておるのであります。巷間伝えられておる国民の声を、政府はどういう程度お聞きになっておるか知りませんけれども、四十三億円の接収貴金属民間に返るという法律案が通れば、ここに相当のリベートが流れるなんといううわさもなきにしもあらず。私はまあ事実を握ったわけでもありませんから、これを信じてはおりませんけれども、やはりそういう疑問は政府が積極的に解くべきではないか。この裏にあるいろいろな運動がどういうものかということを把握する上においては、そのベスト・テンを一瞥いたしますと、私もわかるような気がするので、むしろ誤解を解く意味でお出し願いたい、こう思うのであります。この取扱い、できるできないということだけでは審議は進みませんから、委員長一つ何とか善処していただきたい。
  102. 前田久吉

    委員長前田久吉君) どういうお考えですか。
  103. 佐野廣

    政府委員佐野廣君) 平林先生おっしゃるのは、人の名前が非常に御必要のようにも伺えますが、かりに銀行等でよく書類を出すときに、ABCDとか、こういうような方式ででも、数量その他を出さしていただけば、どういう数量のものが、またどういう価格のものがあるというふうなことは、おわかりいただけると思います。しかし、どうも人の名前ということになりますと、一応私どもも、これを別に授護する意味じゃございませんが、公式の場合にいかがかと思います。また、不肖私ども大蔵省でこの法案を取り扱っておりますが、昔は知りませんが、今私どもの方に別に陳情があるわけでもございませんし、ただいちずにこれを通そうと私ども思っているわけなんで、何の働きかけもないわけなんで、かつていろいろ不正事件のありましたことは、私も引き継ぎ当時聞きましたが、これはいずれも日本政府に保管以前の問題であるようでございまして、当時このどさくさまぎれにいろいろあったことも記録に残っておりますけれども、最近におきましては、そういうふうなことも、あまり正直に、率直に看取できませんし、できますればそういうふうにして、ABCDと、数量金額等を織り込んで、なるべく詳しいのを出さしていただくということでごかんべん願えれば、一番いいかと思います。それから先はどうも私の方で取り扱いかねますから、委員長さんにおまかせするよりしようがないと思います。
  104. 平林剛

    平林剛君 私は暗号文みたいなものを出されたって困るので、すでに政府から提出をされている民間所有者業種別等の件数調では、業種別の区分はできている。これじゃわからないですよ。ただいまのお話のように、AとかBでは、暗号を解くようなもので、ちっともわからない。私が希望しておる点はそういうところにないのでありますから、そんなに秘密にすることはないんじゃないか。私はやはり、これは今の暗号文じゃ困る。
  105. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ちょっと、速記をとめて下さい。
  106. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記を始めて下さい。  本日はこの程度で終ることとし、次回は十一月の六日午前十時より委員会を開きます。  これにて散会いたします。    午後三時三十八分散会