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1958-07-02 第29回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月二日(水曜日)    午後一時十九分開会     —————————————   委員異動 六月三十日委員横川正市君辞任につ き、その補欠として松本治一郎君を議 長において指名した。本日委員藤原道 子君辞任につき、その補欠として横川 正市君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            大谷 瑩潤君            小林 英三君            亀田 得治君            横川 正市君            辻  武寿君     —————————————    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  横田 正俊君    最高裁判所長官    代理者    (総務局長)  関根 小郷君    最高裁判所長官    代理者    (人事局長)  守田  直君    最高裁判所長官    代理者    (刑事局長)  江里口清雄君    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長)  菰淵 鋭夫君   事務局側    常任委員会専門    委員      西村 高兄君   説明員    自治庁財政局財    政課長補佐   牧園  満君    法務省民事局長    心得      平賀 健太君    法務省矯正局長 渡部 善信君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○継続調査要求の件 ○参考人出席要求に関する件 ○委員派遣承認要求の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件(裁判書の作成浄書問題に関す  る件) ○戸籍改製経費全額国庫負担に関する  請願(第八四号) ○東京都府中市に婦人補導院建設反対  の請願(第二八八号)     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。七月二日付藤原道子辞任横川正市君選任、以上であります。     —————————————
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日は、都合によりまして、初めに継続調査その他手続上の事項についてお諮りいたしたいと存じます。  会期も切迫いたしておりますので、検察及び裁判運営等に関する調査につきましては、例の通り閉会中においても継続して調査を行うことにいたしまして、この旨要求を行いたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それでは、要求書並びにその手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。     —————————————
  5. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、先般当委員会において調査いたしました本州製紙江戸川工場事件に関しまして、人権擁護の立場から、佐藤金蔵君、小松川警察署長外関係者参考人として出席要求の件につきましては、去る二十七日の委員長及び理事打合会において閉会中実施することに打ち合せをみておりますので、この際、本件調査について参考人出席要求決定いたしておきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それでは参考人具体的人選日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  8. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、委員派遣についてお諮りいたします。検察及び裁判運営等に関する調査に関しまして、閉会中、委員派遣を行うこととし、調査事項派遣委員人選派遣地、その他手続につきましては、委員長及び理事に御一任願うことにいみしたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それではさよう決定いたました。
  10. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは本日の調査に入ります。  裁判書の作成浄書問題に関する件を議題といたします。前回におきまして、本問題の経過等について説明を聞いておりますので、御質疑の方は御発言願います。
  11. 大川光三

    大川光三君 ただいま議題となりました裁判書拒否問題に関連いたしまして、私は特にこの際、最高裁判所当局に希望を述べまして、その御意見を伺いたいのであります。  いわゆる裁判書浄書とはいかなることであるかということにつきましては、昨日の予算委員会で、亀田委員質問に対しまして横田事務総長から、浄書とは裁判官が作った原稿を清書するだけではなく、決定命令の典型的なもので、原稿なくして確定し得るものは書記官に作らせることを含めて浄書といっているという御見解を明らかにされましたが、これはまことに当然過ぎるほど当然のことでございまして、裁判所における長い間の慣行である。その間何ら疑義を生じたこともない。われわれとしては全く常識でありまして、私もまた横田事務総長の御見解を是認することに少しのちゅうちょもいたさないものであります。しかるに、世の中には決定命令裁判で去る以上、裁判と名のつくものはことごとく裁判官がその原稿を作らなければならないというように極論する学者もあります。しかし、それは今日の裁判の実際を知らない人のいわば机上空論である、一つ理想論にすぎないのでございまして、われわれはにわかにその説に左和するわけには参りません。と申して私はこの理想論を永久に葬り去ろうとするものではありません。それよりももっと切実な問題がある。それは今日のわが国の裁判があまりにも遅延し過ぎるという一事でございます。申すまでもなく、憲法第三十七条の第一項において、被告人は、公平なる裁判所の迅速な裁判を受ける権利を保障されております。しかし、実際にはこの憲法の保障が有名無実になっておる場合が少くない。ということは、裁判所側におかれてもすでに御了承のことと存ずるのであります。現に去る六月の三十日には、仙台高裁で平事件についての判決事件発生後九年目に言い渡されました。控訴審判決でございますが、私はこの仙台高裁が言い渡した判決の是非をここで論じようとするものではありません。しかし、かりにあの判決が名判決であるといたしましても、この九年という長い間、百五十数名に余る被告人やその家族の人々が心の落ちつかない不安定な気持において今日に至っておる。しかもこれが上告審に継続するとなりますと、なお数年間この不安な精神状態が続くのでありましょうが、少くとも裁判遅延が刑罰以上の精神的苦痛を多くの訴訟関係人に負荷いたしておるということは、これはとうてい見のがすことはできないのでありまして、しかもこれはひとり平事件だけではない。他にも多くの例がございます。裁判所側はすでに御承知通りでございますから一々実例は申し上げません。また、民事事件におきましても、せっかく勝訴判決を受けていても裁判がおくれたために相手方が行方不明になったり、または無資産状態なので判決の執行ができない。判決が空文に帰するという例はこれは枚挙にいとまないのであります。かくのごとく、裁判遅延するために国民の間には裁判を尊重する気風が次第に衰えて参り、ひいては裁判を軽べつされることにも相なりまするが、このことは法律に対する順法精神が失われておるということを雄弁に物語るのでございまして、現在の社会秩序をささえておる最も大きな柱であるこの法律が軽視されるようなことでは、やがて社会は当然無政府状態に陥る危険をはらんでおるというように憂える者は、ひとり私だけではないと存ずるのでございまして、この日本社会秩序を維持するただ一つの道は、一日も早く裁判遅延を平常に取り戻すことであろうと私は強く確信をいたしておるのであります。  しからば一体裁判遅延する原因はどこにあるか、これを詳しく申し上げますることは釈迦に説法でございますから簡単に申し上げますが、何といいましても第一因は、最近のように訴訟事件が激増いたして参りますと、・事件内容が複雑で審理に手数がかかるものがふえて参った。このような事件数に比べましてこれを裁判する裁判官の数がほとんどふえておらない。これは厳然たる事実でございまして、幾ら裁判官精励恪勤審理努力をしても実・際は事件をさばき切れないのであります。これが偽わらぬ実情である。しかるにその裁判官に対して決定命令に至るまで一々原稿を書くべきだというようなことはこれは全くできない相談です。実情を知らない学者机上空論である。かように断じてもはばからぬのでありますが、ただ私が最も遺憾に存じますることは、この実情こそ裁判所書記官諸君はよく知っておる。実情を熟知しておる書記官諸君が、命令決定一定の型にはめて作成して、裁判官署名捺印をもらうまでに仕上げることが、これわが職分にあらず、として、ことさらにこれを拒否するというようなことは、これは裁判遅延をますます助長するものでありまして、いわば、いわゆる職務上の義務に違反することはもちろん、国民全体の奉仕者であるという精神をはなはだしく欠除いたしておると断ぜざるを得ないのでございまして、しかも、永年の慣習を無視してかかる挙に出るということ自身は、何か、ためにせんとする意図があるやに疑われてもやむを得ないのではなかろうか、私はこういう意味で、今度の裁判所書記官諸君に対して、世論が同情を寄せない大きな理由であろうと考えておるのでありますが、それは別といたしまして……。
  12. 青山正一

    委員長青山正一君) 大川君、御意見一つあれして、質疑をお願いいたします。
  13. 大川光三

    大川光三君 結局、先決問題は、裁判官をふやさねばならぬという問題に帰着して参ると思うのでありまして、今日、日本法制や国情の似通っておる、人口約五千万人の西ドイツにおいてさえ、裁判官の数が八千人ないし九千人であると言われております。これに比べて、人口九千万人を擁する日本裁判官がわずかに二千二百人というようでは、とても比較にならない少数であります。私は、この点をあわせ考えまして、特に裁判所当局といたされましては、今後、この裁判遅延を平常に戻すためには、どうしても裁判官増員ということをやらねばならぬと信じておりますが、一体当局として、裁判遅延を平常に戻すこと、ないしは裁判官増員ということについて、どういうお考えを持っておられまするか、伺っておきたいのであります。
  14. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 訴訟遅延いたしますることは、私どもといたしましてまことに申しわけないことでございます。われわれもその点は日夜、心を痛めておるわけでございます。その解決策といたしましては、ただいまお話のございましたように、判事増員ということが、これはある程度必要であろうと思いますが、現在は定員に対しまして欠員が相当あるような状態でございますので、まずこの欠員を埋めまして、さらに適当な数の増員を願いたいと考えております。ただし、この判事の質が下りませんように、質を保持しつつ増員をするということはなかなかむずかしいことでございますが、あらゆる方法によりましてその道を開きたいと考えております。  なお、民事刑事ともに、おくれました事件につきましては、個々の事件についてそのおくれておりまする原因を、ただいま民事局、刑事局、いずれにおきましても詳細に調査をいたしておる次第でございます。その結果によりまして、また次のいろいろな手を打ちたいと思っております。  なお、判事増員だけでなく、実は、たとえば東京刑事裁判も、実情をごらんになりますると建物−法廷が足りない。そのために、幾ら人をもらっても、もうこれ以上仕事ができないというのが、現在の東京刑事裁判実情のようでございます。あるいは簡易裁判所、特に東京その他の非常に忙しい簡易裁判所におきましては、やはり建物関係から、もうこれ以上、いかに人がおっても事件処理できないというような悲しむべき状態も見えますので、この点はそういう建物を新設、あるいは増設いたしますることによりまして、もう少し仕事が能率的にできるようにいたしたいと考えております。この点はいずれ予算等の形において出て参るわけでございます。その際には皆様方の御同情ある御協力をお願いいたしたいと考えております。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 質問に移る前に、この前、最高裁長官出席の問題で、前回法務委員会は一応実質的な審議に入らないで散会したような格好になっております。この問題は非常に重要でありますので、ちょっとだけ私見解を申し上げて、委員長の御努力もお願いしたいと思いますが、憲法第六十二条の例の「国政調査権」。——今回起きているような、これは純然たる司法行政上の問題です、そういうものも当然国会としては調査権の対象にできると、これはもう何らの異論が学者間にございません。政府法制局長意見もこれは同じです。まあそういう点が私基本的に一番大事だと思っております。しからば、国会がその国政調査権を行使する場合にどういう手続をとるのか、これは国会法等できめておるんです。大まかに言って、出席を求めてそうして説明を願い、こちらからも質問をする、こういう形が一つ。もう一つは、証人として来てもらう。大まかに言ってこの二つなんです。ただ、出席をしてもらうという点については、国務大臣等については、これは法規上明確に義務づけられておる、ただ裁判所関係はそういう趣旨の規定にはなっておらない、そこに一つの不便さがある。ただし、証人ということになれば、これは国会で決議さえすれば最高裁長官であろうが、何であろうが、呼べることになっております。まあそういう二通りの道なんです。私は、事きわめてこれは重大な問題であるので、長官出席を求め、そうしてお互いの誤解があればそれも解き、また、私どもの主張にしてとるべき点があればそれもとり入れてもらい、改革すべきものは改革する、こういうふうにならなければならぬので、そういう意味出席を求めておったんですが、ただこの出席説明という点についての国会法規定が不備であるために出席されない、こういうわけだったんです。これと同じことが予算委員会でも起きたわけです。で、私どもとしても、これは再三のことでありますので、強く予算委員長にもこの点は要求いたしました。その結果、各会派の代表の相談の結果、ともかくこれは重要な問題だから、一つ予算委員長としては、議長並びに議院運営委員長にこの問題の適正な処理を求めるから——もちろんその処理を求めるという中には、検討の結果不備であるという点があれば、国会法の改正ということも含めた意味処理を求める、そういう意味です。まあそういうことにするから、一つ質疑だけは・事務総長出席でやってもらいたい、こういうことになりましたので、私もあまり長官自体出席にこだわるのもどうかと思いまして、予算委員会ではそのように進めたわけです。そういう事情がございますので、実は問題としては、この法務委員会で先に起きているわけですから、まあ予算委員会で私がそういう態度で了承した以上は、もちろんここでも一応そういう意味で了承して進めたいと思います。ただ委員長の方で一つ予算委員長はそういう処置をとっておられますので、まあ各委員会の中で一番関係深いといえば、これは法務委員会なんですから、法務委員長の方におかれましても一つ議長並びに議院運営委員長の方に連絡をされて、国会裁判所間のいろいろなやりとり、接触の状況というものがスムーズにいくように一つ促進をしてもらいたい、この点一つお願いしておきます。どうでしょう。
  16. 青山正一

    委員長青山正一君) 亀田君の御意見よく拝聴いたしました。明日午前中に理事会を開きまして、よく検討した上、必要とあらばすぐに議運の方べその点申し入れたい、こういうふうに考えております。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 議運議長ですね。
  18. 青山正一

    委員長青山正一君) ええ、議長の方も…−。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 裁判書の問題に移りたいと思いますが、まあただいま同僚で先輩の大川委員の方からの御質問の中で、若干裁判書問題に対する御意見等も私は拝聴していたわけですが、専門家であらせられる大川さんにしてああいう御意見を吐かれるということになると、この問題はなかなか一般の人にはより一そう理解しにくい点がるのじゃないかと、そういうふうに感じますだけに、私としては十分一つできるだけ具体的にきょうは質疑をしてみたいと思います。  まず、事務総長に、この前ちょっと概略の数字をおっしゃったかと思うのですが、もう一度お聞きしたいのですが、一年間に出る判決の数、決定命令の数、こういうものはどういうふうになっていたでしょうか、先だってちょっと朗読の中にあったようですが、もう一度お伺いをしたいと思います。
  20. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ただいまお問い事件数のことでございますが、おそらく横田事務総長が先般申し上げたのは、略式命令年間に百二十万件、逮捕状が約三十万件、支払命令が約十五万件、それから保全訴訟、こまかに申し上げますと、仮差し押え、仮処分、これが約五万件、合計約百七十万件、これはただいま申し上げました通り判決を除いてでございますが、判決は今ここに判決の数の資料がございませんが、大体大まかに申し上げまする、民事刑事両方訴訟事件の毎年十五万件、合せまして十五万件ぐらいございます。それ−で先ほど訴訟写し書きということでお話がございましたが、この十五万件の事件を全部そのまま一年間に片づけるというわけには参りません。大体これに近い数が既済となって、判決となって出てくる。しかし、この訴訟事件のうちには、御承知のように、和解、取り下げ等民事についてはございますので、十五万件までの数はございませんが、それに近いものが出てくる、判決はかなりこれよりも下回りまするけれども、全体の事件は十五万件ぐらいでございます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 これに従事される裁判官書記官の数というものは、どの程度になっていますか。これも大まかでけっこうです。
  22. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ただいま申されました、これにというお話が、全体の訴訟事件、それからただいま申し上げました略式命令等決定命令事件等を加えまして、全体となりますると、裁判官総数約二千二百人余、それから書記官が、書記官補を合せまして五千人余、事務官が約四千二百人ばかりおりますが、事務官司法行政の方に中心として働いておりますので、今申し上げました裁判書記官の数は大体これらの訴訟事一件を扱う人ということになろうかと思います。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 裁判官が約二千二百、書記官が約五千、その中で、判決関係でどの程度がさかれ、あるいは決定命令関係でどの程度がさかれておるか。まあ大きなところへいけば全然分離しますから、割合仕分けがはっきりするかもしれぬが、小さいところじゃみんな兼務——あれもこれもやっておるから、その辺の計算の仕方がはなはだむずかしいでしょうが、だからたとえば東京なら東京大阪なら大阪などの例を一つとって考えてもらえば、大体その比率ですね、つまり裁判官の二千二百名全体のものを、一つの百という力として考える、そのうちの何パーセントが決定命令の方にさかれておるのかという点ですね。
  24. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今亀田委員のお問い、実はそういった分類的に事務分担量を正確に申し上げることは非常に困難でございまして、たとえて申し上げますと、同じ公判をやりながら、しかもかたわら仮差し押え、仮処分をやる、あるいはまた、その他の決定命令事件を扱うということがございまするので、その分量は非常にむずかしいのでございますが、何と申しましても訴訟のいわゆる判決を書くことが中心になりまして、それから裁判官書記官公判事務中心になることは、これは当然でございます。しかし、それだからと申して決定命令をないがしろにするということはできない。でございますので、どちらに重点を置くということはございませんが、結局重点は何と申しましても公判中心仕事重点が置かれるわけでございますが、この分量的な事務負担量、ただいまちょっと簡単に結論的なことを申し上げかねる。あるいはこれを一つ裁判所に例をとって調べれば調べられないことはないかと思いますけれども、御承知のように、裁判所は大きい裁判所、小さい裁判所とございまして、これがまた非常にむずかしいことになろうと思います。ただいまのところは、なかなかその事務分担割合は簡単に申し上げられませんので、御了承願いたいと思います。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 私たち裁判所に出入りして感ずるのですが、今また総務局長お話しになったように、判決関係ですね。これには非常な努力をされ、そうしてまた、これが上へいって破れたりしても困る、まあいろいろなことで結論は同じにしても、理由一つについても慎重におやりになる。証拠調べなどについても十分底を固めていく。判決なり、裁判を粗略にやっていいものは一つもないわけですが、実際からいうと、そこまでせぬでもいいと思われるようなところまで念を入れているのが実際です。これが私は訴訟遅延一つ理由にもなっていると思うのです。まあ私たち、特にそういうめんどうくさい事件ばかりに関係するからかもしれませんが、若干そういう感じを持つ。  ところが、率直にいって、決定命令、こういう関係は、はなはだこれはお粗末なんです。それは裁判官を配置するにしたって、大体一番悪いのをそっちにもつていったり、もうすべてがそうです。全体の裁判官二千二百名の労力の使い方なんというものは、ほんのわずかですよ。おそらく私は、これもなかなか分量的には一音えないかもしれぬと思うのですが、十分の一の労力というものはそっちにいっていないと思う。二千二百名のうち、もっとそれ以下なんです。十分の一として二百名、五分として百名。この百名で、たとえば百七十万の仕事処理する。とてもじゃないが、これは寝ずに機械的にやっておったってできないですよ。そういう仕組みになっている。だから、それが非常に矛盾なんです。ある人は、そういう状態だからそれは書記官にやらすのが当りまえではないか、こう出てくるわけです。皆さんのやはり腹の中では今そういうことを思っておられるわけなんでしょう。そこが問題なんです。書記官には、そういう裁判についての判断をする権利は、これは絶対にないのです、憲法上。これは、この問題の解決は、結論的には判事増員、まあなかなか優秀な判事はそう一ぺんにはできないとおっしゃるが、優秀でなくてもいいから、ともかく増員することが一つの問題でしょう。  それからもう一つは、どうしてもそれができぬということになれば、じゃ書記官なら書記官一定の範囲の判断権というものをまかすということが一つの大きな第二の問題です。  だから最高裁では、判事増員ができないから、じゃそれでいこう、そういうふうにすぐいくかもしれぬが、これは憲法疑義が出てくると思う、その点は。すぐそこへもっていけない理由もまたあるわけでして、その最後の百解決の問題はもう少し先にしましょう。たとえば、私の大まかな計算をしてみたいような百名くらいの者で、年間百七十万にも及ぶところの決定命令、これは私は実質的に判断して、処理することは絶対できないと思う。横田さんはもう盛んに、いやそれは形式はどんなになっていようと、とにかく判断は加わっておるし、責任は持っておるのだ、こう盛んにおっしゃる。総務局長もそうおっしゃった。これはもうそう言わなければ大へんなことになる。とにかく忙しいからまかしておるのだということを最高裁の人が一言でも言ってごらんなさい、これは大問題になる。だからそういうことは一声えないということだけなんです。だけれども、実際はそうじゃないですよ。だからそこの事実関係を私たちがどう判断するか、これからまずこの議論を始めてほしいのです。悪い点は悪い点で認める。そういうふうになっておるのに、そうなっておらぬということを言うておったのではその対策が生まれてきません。ほんとうの意味の……。だから今度の書記官の処分の問題ということは、最後にまた出てくる問題でしょう。それは一応その問題はおいておきましょう。何もそこだけにこだわって私はこの質問をしているのではないから。たまたまその問題を契機にして、年来だれでも、いいのかなあというような感じを持っているのですよ。それについて議論が出てきているわけですから、まず私は、この実態を皆さんが認めるのかどうか。百人で一体百七十万件のものに対して判断が加わっているというふうなことをほんとうに責任をもって最高裁が言えるかどうか。その点どうでしょうか。大まかなところを聞かして下さい。率直に一つ。怪しいなら怪しいということを言うてもらいたい。
  26. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ただいま亀田委員からのお問いの百七十万件は年間の数字でございまして、今仮定論として百人の裁判官がそれをやることはほとんど不可能じゃないか——その数字だけから見ますと、確かに非常な困難を伴うように思われますが、しかし、いやしくも裁判官となりました以上は、決定命令であろうと、判決であろうと同じく裁判でございまして、判断を加えずして裁判をやるなんということはこれは絶対に考えられない。今実際はそうじゃないのだというお話でございましたが、われわれも裁判の経験はかなり長くやりましたが、絶対にそういうことは考えられない。また、実際そういうことがもしあったとしたならば、これは弾劾の対象になり得るわけです。そういうことがあり得たら、これは弾劾の対象になってしかるべきだと思うのです。絶対にないことを申し上げて、しかも非常に困難の伴うことは間違いありませんけれども、しかし、判断を加えないで裁判をするということはこれもまた絶対にない。困難を伴うということと、間違ったことをするということとは違います。その点御了承いただきたいと思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 そういう答弁ではなかなかこれは納得できないのです。中にはそういう者もあるかもしらぬというふうなことならまだわかるのですが、そういうふうにはっきり言われると、これはもうそれじゃ改革の余地がないということになる。そうじゃないならば、ぼつぼつ一つ聞きますが、せんだっても少し聞きかけたが、時間がなくて中途半端にしているのですが、浦和地裁の熊谷簡裁で戸籍法違反事件、これはこれに対して新井徳次郎という裁判官が小川書記官に表をちゃんと渡して、そうしてこの表の通りにやってくれ、戸籍法上の過料をかける場合の表です。これは裁判所でも手に入っているかもしれませんが、これによりますと、一週間以内は処罰をしない。一月以内怠った場合には百円、二月以内の場合には百五十円、三月以内怠った場合二百円、六月以内は二百五十円、一年以内は三百円、二年以内は三百五十円、三年以内は四百円、三年以上は適宜加算とこうなっておる。これでやってくれということで、小川書記官に新井判事が渡した。そうしたら、小川書記官は、いや、こんな表で書いてくれと言われても困る。そうしたら、新井判事は、いや責任はおれが持つのだというて押しつけたから、仕方なくそのままになっておるのですが、これはよく検討してもらいたい。せんだっても申し上げたように、戸籍法の百二十条、あるいは百二十一条、百二十二条、これなんかみんな届出を怠った場合にはどういう過料に処すと、こうなっているだけです。ところが、その上に、正当の理由なくしてとこうみんなついているのです。だから、私は正当の理由なくしてとこうなっておるのですから、こんな表だけ渡して、ともかく怠った期間の長短だけでこれでやってくれ、そんなことを言ったって、少し良心的な人なら、これは非常に矛盾を感ずると思う。せんだっても申し上げたように、これは場合によっては、二年、三年怠っておった人でも、ほんとうにこれは事情があったのであって、天災にあったとかいろいろなことで事情があって、そんなことをしようと思ってもできなかったというようなこともあるだろうし、そういうことであれば、三年以上であろうが、四年以上であろうが、そんな過料なんか課する必要がないものがたくさんあると思う。それから一月以内であっても、それが非常にほかの重要な問題に関連するものだから、ことさらにそれを届け出ないことによって、ほかの何か悪らつなことをたくらんでおったとかいうような事情があれば、これは一月だからといって百円で済ましていいものであるかどうかは、これはむずかしい問題だと思う。  それからもう一つは、最後には三年以上は適宜助算なんて、そんなことを書記官に言うのは無理です。お前適宜加算しておいてくれ、あなたの方は、いやともかく表なんかはこれは包括的な指示をしているのだというふうなことをおそらく言いたいところなんでしょうが、適宜加算なんというようなものは、どうして包括的な指示になるのですか。だから、これ一つとったって、実際裁判所にしてみれば、懲役とか禁固とか、こういったようなことがつまりほんとうの処罰だと思っておるかもしれぬ。だから過料なんというものは、こんなものは大したものじゃないのだ。おそらく大体そういう考えが若干あるのです。だから軽く考えておるかもしらぬが、しかし、ともかく裁判所の厄介には一生ならぬというようなことを考えておるような人から見ると、これは大へんなことなんです。これが実態ですものこういう場合でも、どうですか、裁判官判断がそこにちゃんと加わっている、こういう認識をされるのでしょうか。私が裁判書の問題を言うているのは、そんな何も裁判所原稿を作れというようなことを言うておるのじゃない。そんな子供らしいことを言うているのじゃない。裁判所の価値判断というものは少くとも入らなければだめだ。あとの手続はタイピストを使おうと何を使おうと、そんなことはいいですよ。これはどうして裁判所がこれを裁判したと言えますか、こんなやり方三章えると思いますか、この表についてお答え願いたい。
  28. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ただいまのお話しの戸籍法違反につきましての過料事件、これは確かにお話がございましたように、過料事件につきましても、それぞれ具体的の問題になりますると、非常にいろいろな性質、あるいは事情があるかと思います。その点の調べをすべき事件かどうかということは、送付されました書類を見まして、そして裁判官判断するわけでございます。今お話がございました包括的に何年、あるいは一ヵ月は幾ら、何年になると幾らというような、そういうような指示がかりにありましたといたしましても、その後、裁判官がいよいよ過料を決定をいたします際には、十分また判断が加わるわけでございます。最後に裁判の仕上げと一なりますときは署名捺印が出る段階がありますのですが、そのいよいよ署名捺印をする前に、裁判官としては十分考慮して記録全部を調べまして、もし正当の事由があるという考えになりますれば、その今まででき上っておりまする原稿を破棄せざるを得ないという事態が出てくる。ですから、お話しのように、この表に基いて書かせて、そのまま何も見ずにめくら判押す、あるいは人に署名捺印してもらうというような事態があれば、これはもう絶対にいけないわけでございまするけれども、そうではないので、その後必ず裁判官判断が加わるわけです。ですから、前に判断があるか、あとから判断があるかという違いだけにすぎない、そういう考えでわれわれはおります。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 この場合はともかく判こをどういうふうにしているかということは、私ども手元にまで、調査をしておりません。しかし、この表でやれ、そして三年以上は適宜加算というようなことまで書く判事ですから、だからこれはもうこの表でまかしているわけです。文句言ったらともかく責任はおれが持つ、こうなっているのですから、この人は判こまでおそらく預けている判事じゃないかと思います。ただ社会がちょっとやかましくなっているから、今はどうなっているかわからのが、おそらくそう見ていいわけなんです。じゃ適宜加算なんていうことは、こんなことはどうなんです。こんなことを書記官命令していいですか。
  30. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今お話しの、もし適宜加算というまかせ方がありとすれば、これは命令はできない段階だと思います。これは書記官の方でそれに応じまして便宜奉仕的に書くということはあり得るかもしれませんけれども、それに応じたいからといって、命令だと称して強制的にやることはできないと思います。適宜ということになりますと、やはり判断が入る。今お話しがございましたように、そういう段階になりますれば、断わり得る段階だと思います。ただそれを受けまして書記官の方が適宜書き入れまして、そして持ってきた、そのときに裁判官はこの適宜の判断の仕方が、実際に署名捺印するときには、その段階において、適宜のやり方がいいかどうかは判断が入るわけでございます。ですから、最後の段階になりますれば、裁判はちゃんと裁判官判断のもとにできるということになろうかと思います。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 総務局長はあくまでも過程がどうであろうかと、最後には裁判官が見て判断する、そういう建前をくずさぬように、そこを注意して答弁されておりますけれども、そんなことを最後におやりになるくらいなら、たんで初めやらないのですか。初め書類を見て、大体これはこういう事件だから百円、あるいは二百円、それならわかるのです。だからそんな判断なんというのは、書類ができてしまったものに対して絶対やっていやせぬのです。そんなことをやるくらいなら初めからやっていますよ。そこに私、日本決定命令に対する非常な、これはもう裁判官みずからがそういう重大な問題を軽く見ている欠点があると思うのです。判決というと、実に実際は、結果的には大して影響がないようなことでも、理由一つでもやかましくやっておるくせに。だからどんな小さな裁判であっても、やはり判事が目を通すべきものです。目の通し方を簡単にするということは私は仕方がないと思うのですよ、ものによって。だから私たち映画を見ておっても、外国なんかでも簡単な裁判がある、しかし、やっぱり判事がタッチしている、タッチして、きわめて簡単だが必ずタッチしてやっている。だから大阪裁判官会議で実はせんだってもそういうようなことをいろいろ六月十六日でしたか、全部が集まったときに意見が出た、中にはそんなことを書記官にやらせたなんていうことはもってのほかだ、そういうことを言って逆にやっぱり全部これはわれわれがやらなければならぬ、そんなことをまかせては絶対いかぬ、そういうくらいに言う人もおるくらいなんです。私はそれが正しいと思う。ただ建前はやはりそういうことにしておいて、あとをじゃあどういうふうにするかということは、技術的にはいろいろ問題があろうと思いますが、少くと承現状ではこれはだめですよ、とてもじゃない、書記官にまかしているのです。だからそこをあなたの方が認めたければ、この問題の前進はないわけですよ、そこを認めなければ。たくさんの件数があるのだから、それは当然だとおっしゃっても、そういうことを当然だと言ったらそれはもう重大な憲法違反ですよ。裁判判事がやる、裁判官がやる、裁判官以外にはだれも裁判できない、ですから、そのために裁判官の特殊な地位を保障されているのですから、書記官はそういう質的にまるで異った問題に入ってくる余地はこれは全然ないのですよ。だからこの現実を私はもう少し率直に認めてほしいわけですね、そうすると何ですね、さっきのお答えですと、少くとも熊谷簡裁の新井判事が指示した、一番あとの方ですね、三年以上適宜加算、少くともこういう部分ははなはだ間違いだ、こういうことだけは言えますね。その前の方は別として、多少具体的に意思表示が出ているわけですから。
  32. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 私が申し上げましたのは、そういったことはおもしろくないやり方じゃないかと思うのです。これをそういったやり方であくまで書記官にやってこいということになると、書記官の方は断わり得るということで申し上げたのでございます。  もう一点、先ほどお話しがございましたように、あとから見るなら先に見たって同じじゃないかというお話しがございました。あるいはこれはそのことだけを承わっておりますると、非常にもっともなようなことに相なろうかと思いますので、一応簡単に申し上げますと、この何百件という事件が参って、しかもその日のうちに処理しな仕ればならぬ。これはたとえて申し上げますると、自動車関係の交通事故ですね、これなんかは御承知のように、自動車の運転手としては一刻も早く裁判してもらいたい、待っているわけです。そういう事件になりますると、書記官からずっと書類が回ってきて、齢判官が署名するという段階になるわ汁ですが、その前に裁判官の方が書類を全部見ておりますると、書記官にまた戻さなくてはならない、それから事件が多いだけに能率的な処理をはからなければならぬという点から考えますると、当事者の名前とかその他の住所の問題とか、これなんか定型的にきまっておることです。書類を見ればすぐわかる、判断が加わらない、そういうことにつきましては、書記官にあらかじめ書いてもらい、それであとで見た方がはるかに能率が上るわけです。そういった点から考えますると、どうしてもあとからやった方が能率的処理に資するということになるわけであります。それからあとから見ましてこれはいかぬということになりますれば、もう裁判官としてはそういった書記官が書いてきたままの裁判をするわけがないわけなんです。これは実際裁判官になってごらんになればおわかりかと思いますが、そういうような裁判官として自分の判断を加えないという裁判ということは、これは何度も繰り返して申し上げますが、絶対にない、あり得べからざることなんですね。   それからもう一つは、御承知のように、裁判には謄本を作る、写し丸作らなくちゃならぬ、当事者に渡さなくちゃならぬ、あるいは記録に保管するというような関係でいわゆる謄本あるいは正本を作らなくちゃならぬ。そうなりますると、先に写しなんかの用意もしておいた方がいいじゃないかというので、書記官の方が先にわかり切ったことは謄本になるやつも一緒に作っておく、こういったことからあわせて考えますると、どうしても、早く能率的に裁判をするというためにはその方がベターである、そういったことはございますので、先にやってもあとにやっても同じだというわけにいかないのです。裁判官判断は、そういった−事情から、あとから裁判官判断が加わるということが是認されるのじゃないかと思うわけであります。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 何ですね、交通事故の略式裁判などのことについては、後ほどもう少し私それはそれとしてお聞きしたいことがあるのですが、今言っているのは過料の問題ですが、正当の理由なくというようなことがある場合に、書記官に事前にそういう裁判書を作らしていいものかどうか。これは一ぺん作ってしまえば、あとから判事がちゃんと見て、悪ければそれを破ってまた作り直さすのだと言うけれども、実際はそうはならぬです。人情としたってそうなんですよ。人に仕事をやらしておいてそんなわけにいくものじゃない、結局は素通りしていく、だからいやしくも法文にそういうふうな文句のあるものは、これは私はもう絶対にいかぬと思う。そういうものじゃなしに、法文自体がきわめて機械的に処罰でも計算できるようなものであれば、多少趣きが違うでしょう。だけれども、正当の理由なくして云々というようなことが書いてあるのに、表だけ渡して、これへ一つどんどん書き入れておけというようなことは間違いですよ。そう思いませんか、正当の理由のところです。
  34. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今お話しの点は、正当の事由ということは、書記官に定型的なことだけ書かしてあとで判断を加えておるわけであります。  それからもう一つは、正当の事由と申されますのですが、書類の上から見まして正当の事由があれば、あとから判断を加えましても、はっきりとどうもおかしいということがあれば、当事者を呼びまして審尋して過料を課さないということは考えられるわけであります。ただ全般的に申し上げれば、これは判断書記官にまかせておるということは絶対にないわけなんですけれども、概括的に申し上げれば正当な事由ありゃいなやということは、過料事件で一番多いのは戸籍関係あるいは戸籍関係で届け出なくちゃならぬことを忘れていてやった、ただ忘れていたのでは正当な事由にならない、正当な事由があるということは非常に例外的なことなんですね、だから一件書類から見ましてどうしても怪しいということは非常に少い。でありまするから、実際の例といたしますると、正当の事由であるといって過料を課さないという例は少いのじゃないかと思いますが、しかし、それだからといって、裁判官書記官にその判断をまかせておるということはないわけであります。ただ先かあとかということだけなんです、これは繰り返して申し上げるわけでございますが。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 結局は、そんなことはないはずだ、ないわけだと、こういうことに尽きるのです。私は事実を言っているのです。でお聞きしますが、こういう表なんかを渡して、書記官にいろいろなものを、裁判書を作らしているというよ、うなことはほかでもあるのですか、どこの裁判所でもこんなことをやっているのですか、自分の、裁判官の主観で。どうでしょう。
  36. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) その包括的に書記官に定型的な限度において判断を下さずしてそういった書面を作るということ、これはほかの裁判所にもあり得ることだと思います。ただどことどこの裁判所であるかということは今つまびらかにはいたしませんが、実際にはあるのではないかと思います。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 それは最高裁としてはそれでもいいというふうに考えておられるのか、そうしてまた、もしそういうことをやっている場合にはどんなふうに表を作っておるかということで、それを収集でもされておるのかどうなんでしょう。
  38. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今お話のそういった委任の仕方ということが適法だということになりますれば、それは悪いということにはならないわけでございます。それから全国的にそういった事例を今最高当局で集めてはおりません。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 私たちの資料によりますともう一カ所あるのですがね。秋田の地裁でやはり過料事件、ところが、この慨怠期間並びにそれに対する科刑の標準が全く浦和の場合と違うのですね。非常な違いがあるのです。私はこの一点だけ見ても、もちろん裁判裁判官のこれは主観といいますか、まあ一つの合理的な主観というものは出ていいし、また、出るべきだ。私たちはむしろそれを要求しているわけだ。具体的で個別的でなければならぬという立場からして。ところが、同じ過料の問題について、表の出し方によって非常に違ってくるわけですね。おそろしく違ってくる。表を出すこと自体が画一性を持ってくるのですが、ところが、一方の判事と一方の判事が違ったものを書記官に出したといったら、同じことをやっていながら国民はえらい違ったことを画一的に強制される。こういう結果にもこれは事実になっておるわけです。まあそんなことについて忙しいものだから一々皆さんのとろに文句は言ってこないだろうが、実際考えてみたら人を処罰することですから、処罰される側が文句を言ってこないからといってほっておいていいわけではないと思う。こんなことは私ははなはだおかしい。そういう矛盾をどんなふうにお考えになるのですか。そういう包括的な指示というようなことを認めるかのごときことを言い出しますと結局はこういうことになる。二つ違うのですね、表が。矛盾と感じないわけですか。
  40. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) お話のように、地方によりましてその表が違う。従って、具体的に同じようなケースによりましても結果の過料の額が違うということ、これはおもしろくないことであろうことは間違いないと思いますが、しかし御承知のように、過料の罰のきめ方が何千円以下というようなことになって参りますると、その範囲が裁判官の裁量にまかされているわけでございますので、それを全部同じような事件には同じ額でやれということは何人からも指示できないわけでございます。でありまするから、非常におもしろくないことではありまするけれども、現在の規定の仕方から申しまして、裁判官の裁量にまかされておられます限界においては何人も容喙できない。ただいかにも同じような事件で額が違うということはおもしろくないという結果が出ますので、そういった事態がありますれば、これは裁判官の打ち合せと申しますか、会合等におきましてできる限りその是正を抽象的にいたしたい。たとえて申し上げれば、これは刑罰の問題におきましても同じ問題があり得るわけです。外国の例などではこういった違反については十年、あるいは無期、死刑というふうにはっきりきまっておりまして、裁判官の裁量を許さない、法律でもう裁判官の裁量を許さないということになりますれば、そういったことはないわけでございますが、日本のこういつた過料の規定の仕方は裁量の範囲が非常に裁判官にまかせられております。具体的にきまりました額が違っておりましても、これはやむを得ない。ただそれを是正するために、抽象的に裁判官の会合等において話し合いをいたしまして、なるべくそういったことのないようにしたいということは考えております。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 だから、それはもっと統一するのが私はいいと申し上げているわけではないのですよ。統一するのもこれはちょっとまた問題があるでしょう。しかし、これほどばらばらの表を裁判官が勝手に書記官に渡しているのもこれははなはだ問題です。だからそうなりますと、ばらばらでも問題だし、統一しても問題だ。ということは、つまり裁判をしないうちからそういう表を作って書記官に渡すところにこれは問題がある。やはりそこへ戻ってくるわけですよ。めんどうくさくても、これは裁判官がやはり一件書類、これは書記官が整理してもいいですよ、裁判官の見やすいように整理してもいいですから、それをちゃんと見て、そうして場合によっては本人を呼んで、君どうなんだと聞いてですね、大事な点は直接確かめて、そのかわり手続は私はそういうところは簡略にやってほしいと思うのです。その場で金を持っていたら、あんた、これだけだから納めなさいと言ったら、もう一ぺんで済んでしまう。ところが、日本の国ではわずかなことで、旅費の方が高くつくようなことを行ったり来たりさしてみたり、そういうところが端的でないということを私は言っているのです。だからこんな裁判をやるのに、書記官に表を渡してそうして原文をちゃんと作らしてしまうなんと、そんなことを言ったって、いやそれは裁判官の責任でやらしているのだからそれでいいと言ってもこれは成り立たぬですよ。判事の数が少いからやむを得ぬのだということならば意味はわかります。しかし、あなたはなかなかそうは言わないのだ。これでもいいのだと、こうおっしゃっているから。これは過料の場合です。ところが、逮捕状でも何でもみんなそういう格好が出てきているわけなんですよ。もっともっと人権に重大な関係のある問題、だからそっちの方を少しお聞きしますが、先ほど略式命令の問題にちょっと総務局長触れられたわけですが、実際は東京でも大阪でも、忙しいところは検察官から略式の起訴状、略式請求書、科刑意見書、こういうものが裁判所へ来る。そうすると、書記官の方でそれを受けて、そうしてもう略式のやつは、略式同意書がついておれば検察官が言うている通りの事実を書く。そうして罰金の額もその通り書いてしまう、書いているのですよ、実際は。あと多少良心的な判事はそれは一応判は自分で押すかもしれませんが、判を預けている場合もある。現実にそういう状態なんです。こんなことは私はもう実際われわれ忙しいものだから、そんなことに一々ひっかかって、どうもこの手続はけしからぬなんといって裁判所にそんなことで文句を言いに行っておったら幾らからだがあっても足らぬですから、それは放置しているような関係にもなっておりますがね。しかし、これは間違いだ。たとえば刑事訴訟法の四百六十三条に、はっきり幾ら検察官からこれは略式請求をやってきて、そうしてまた、被告人本人も略式でけっこうだ、こう言うてみても、裁判官がこれは公判請求すべき事件だ、こういうふうに一件書類を見て判断をすれば、罰金を出させないで公判に回す。こういう手続規定されているわけです。それから検察官が一万円の罰金だと言っても、いや事情によってこれは五千円にしてやるべきだ。あるいは一万円と書いてあるが、いやこれはもっと一万五千円にすべきだと、こうやるのがこれが判事でしょう。ところが、現状の略式請求の段階というものは全然そんなことはないですよ。で、私どもも特に気の毒な交通違反事件など事前に実は相談を受けることがあるんです。そういう場合にはあらかじめ言っておいて下さいよということをあらかじめ裁判所でも言われますよ。そうせぬと、書記官の方でみんな書いてくるんだから、書いてきてしまっては困りますから、非常な理由があればもちろん変更もできるだろうけれどもね。だからこれはちょっと特殊な事情があって、裁判官へ陳述しなければならぬ問題があるんだから、書記の方にこれは罰金を書かないでおいて下さいよ。裁判官がその人が来てから検討すると言っておった。そういうのは例外なんですよ、これは。特殊な人がついてやる場合。一般はちゃんと全部書いて持っていって、良心的な人だけがちゃっちゃっと手落ちがあったらいかぬということで、一通り見て判こを押しておるだけのことです。私はこんなものがどうしてあなた裁判官裁判をやっていると言えるものですか、言えぬですよ。実情がそうなんですよ。皆さんは上の方の裁判ばかりごらんになっておるでしょうがね、これでいいですか、全くこの通りなんですから。
  42. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今申されました略式命令。確かにお話のように略式命令の請求がございましても、請求書通りの罰金を課す、そのままであってしかるべきではない。やはり裁判官判断を加えまして、事件によりましては罰金に執行猶予をつける、あるいはお話がございましたように、公判に回すということが法律上できることになっております。それで今お話のように、良心的な裁判官は、略式命令記載通りに書いてきた、書記官の書いた書面にさらにまた検討するというお話がございましたが、裁判官で良心的でない裁判官はいないわけなんです。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 それはあなたそんなことを言ったら弾劾裁判にかかる人もあるでしょう。
  44. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 弾劾裁判にかけられた人は別ですけれども、それで今申されました中で数字的なことを申し上げますと、昨年度におきまして略式命令の請求がございまして公判に移した事件が全国で七百件をこえております。それからまた、執行猶予を受けた事件が二百件をこしております。そういった点から申しましても、事件によりましてはそういった検察官の請求通り決定はしておりません。そういった数字からごらんになりましても、裁判官判断を加えないということはないわけでございます。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 それでは念のために聞きますが、最初の御説明のときに略式命令百二十万件とおっしゃったのですけれども、たしか百二十万件のうち七百件や二百件程度のものはちょっと検察官の請求と違って取り扱われたといっても、そんなもので大勢を推しはかることはできぬですよ。それはたくさんの中だし、それからひまな裁判所にいけば略式命令でもずっと見ておった方がいいというふうなところもこれは確かにあるわけなんです。じっと見ておるところへ今度は弁護人の方からいろいろ事情を言うてきて、これはこういうふうなことになっておるんだ、ああそうかということで、実際にそれは裁判になっている。そういうところもあります。これは事前にそういうふうにできる条件のところもある。ところが、大部分はそうじゃないのですよ。考えてみてごらんなさい。公判になった場合では検察官の請求通りに結論が出ているというのはほとんどないでしょう。ほとんどないということもないが、しかし、何といっても裁判の結果、半分以上のものは違うのです。ところが、略式の場合には七百や二百というものは、全体で百二十万もあるのですからね。九牛の一毛です。いわゆる先ほど申し上げた特殊なそういうひまな裁判所もそういうところで出てくる。それから特に事前に——私も経験があるんですよ。これは非常に気の毒な問題があったので、事前にこれをお願いに行ったこともある。そういう特殊なことだけなんです。だからこんな七百や二百でそんな大勢なんか推しはかって、総務局長が安心しておったらこれは大へんなことになりますよ。絶対そうじゃない。まあ一つ事件処理するのに四十秒ぐらいという計算になるんですがね。大阪簡裁の人なんかのやっていることは、四十秒で実際そのいわゆる判断ということにはならぬでしょう。実際上当事者が間違っていはせぬかとか、裁判官として最小限確かめておかなければならぬところだけですよ。内容的にそんなことができる人がいたら大した傑物ですよ。できっこないでしょう。幾ら簡単な事件だって、一件四十秒で総務局長できますか。あなたも裁判官の経験者ですからね、どうですか、一件四十秒で。
  46. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 先ほど申し上げましたように、四十秒で一つ裁判をする、これは非常に困難であろうと思いますが、しかし、大体略式命令の請求がございまして、同意書がついて参れば、大体は被告人の側としては異議がないことでございまして、しかも法律的に非常に明確な事件についてならば、四十秒でできないことはあり得ないと思います。私は外国で公判廷を見たときでも数秒で終る事件がそうでございました。これはたとえばストリート・ガールの事件なんかはあっという間に終ってしまう。そういうことは、事件の内容によりましてはあり得るわけでございまして、非常に書類も厚くなっておりませんし、法律上の問題もないということでございますれば、本人が同意をしている場合などにおきましては、そういったことも考えられるわけでございます。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 それは幾ら本人が同意しておったってそう簡単にいくものじゃないですよ。四十秒や五十秒というものはばかってごらんなさい、じきだ。だから実際は無理なことをしているんですよ。  それから例の逮捕状ですよ。これはしょっちゅう問題になるんですがね。ともかく警察の方から一応書類を持ってくる。大体書記官の方でいろいろな関係書類というものを作ります。抜けていると、警察官と相談して、そうして補充して、警察官も手伝ったりいたします裁判所がやるべきことを最後の逮捕状の内容まで作っちゃって、それで裁判所に持っていく。大部分がそういう状態ですよ。特殊ないろいろな社会的な事件関係じゃこれは慎重にやりますよ。けれども、大部分のものはそういうふうにやる。だからその際、まあ判こまで預けているというようなのは例の白紙令状というような高井判事のような問題をまあ起しているわけですけれどもね。白紙令状であろうがなかろうが、現実の状態というものは同じようなことをやっている。ともかく警察から持ってきて、一応そろっておればもうそれで判を押している、こういう状態ですよ。逮捕の必要性なんというものをほんとうにまじめに裁判官は検討しておりませんよ。第二回目の検察官からさらに勾留を請求するという段階になると、多少慎重になってきます。最初の警察官からの段階なんというものは、非常に形式的ですよ。勾留のための尋問なんかやっておりますけれども、もう尋問の前に書類ができ上っておる。こういう状態は実際把握されておるのですか。そんなことはないと思っているのですか。
  48. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 逮捕状でございますが、裁判官が署名、記名捺印する前に、書記官の方で請求書を書き写しをしたり、あるいは請求書をそのまま引用して持ってくるということは事実でございますが、署名あるいは記名捺印をする場合に、裁判官がそれに対して、罰を犯したことを疑うに足る相当な理由があるかどうか、すなわち署名書類と突き合して判断をいたしております。また、逮捕の必要性につきましても、逮捕の必要がないことが明らかな場合には出しておらないのでございます。その点、あらかじめ逮捕状たるべきものが作成されて持ってこられておるという  ことから、判断されておらないという  ことにはならないと思います。現に、裁判官逮捕状を出す場合におきまし  ては、これを出すべきかどうかという点につきまして十分考えた上でやっております。高井判事が白紙逮捕状を出たということで問題になりましたので、それ以後は簡易裁判所裁判官、あるいは裁判官の会同におきましてこういうことのないように終始注意いたし、指導いたしておるのであります。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 裁判官が一件書類を見るまでに、最後の逮捕状まで内容的にできておる。判を預けておるのは、もう判まで押してある。知らぬでしょう、そんなことは。判だけはまあ判事が押すという場合がある。その場合でも、ちゃんと作り上げてしまったものを破るということは、まあそういうことをする人もあるだろう。あるだろうが、なかなかできにくいことだと思いますね。だから、やはりそこまでいかないで、資料だけはそろえて判事に渡して、これは逮捕状を出すということになって初めて、それじゃ書記官の人に若干手伝ってもらって書いてもらおうか、そこはまた別の問題ですけれども、そういうことになってもこれはおそらくない。先におぜん立てが全部済んでしまって、最後の判断はおれがやるのだからそれでいいのだと、結局そうなれば、じゃ右するか左するかわからぬというようなボーダー・ラインにあるようなところは、結局は逮捕状が出るということになってしまう。当然そうなります。そうならぬと思いますかね。これは、世間の常識としてはそうじゃないですか。すでに全部書類が作ってあれば、どうかなあと思っておっても、まあこの程度なら出しておけと、こうなってしまうじゃないですか。そういうことが、つまり逮捕状の乱発という問題にもなるだろうし、そういうことをやっておればどうしたって審査というものが不十分になるから、間違った逮捕状が出たり、そういうことになるのですよ。だから、現状がいいなんというようなことをお考えになったら大へんですよ。なるほどこれは現状は問題があるということくらいは、あなた方は認めてくれなきゃね。問題があるが、しからば亀田さん、あなたは、裁判所も困っているのだが、どうしたらいいのかと、こういうふうに開き直られるなら、それはこっちもいろいろ検討すべきですよ。だけれども、このままでいいのだ、いいのだと言っておったって、これは割り切れぬですよ。逮捕状というような問題についてたとえ判を押してないとしても……、事前に判を押しておるのまで、これは今でもありますよ。次にそういうのを一つ出しましょう。どうも皆さんの見解だと、それであっても、実際にそれを出す場合に、判事が自分の責任で出すからいいのだと、どうもこういう見解らしいのだが、どうも危険です。私は、警察から持ってきた材料の整理くらいは、これはもちろん受付の方でしていいでしょう、判事が見やすいように。だけれども判事が右左きめないうちに、書記官が先にそれを書いてしまう、いわんや判を押すと、こんなことは全く間違いですよ。さっきのあやまち以上に、これは人権に重大な関係がある。そう思いませんか。最後の責任は判事が持つからいいじゃないかという考えですか。
  50. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) あらかじめ書くと申しましても、それは引き写しにすぎないのでありまして、別に判断を加えてやっておるわけではございません。それから、事前にできておりましても、裁判官が出す場合に、これを十分判断を加えて出すべきか出さざるべきか判断を加えてやっておるわけでありまして、ただ裁判官が責任を持つというわけではございません。判断を加えた上で出・していく、そうしてそれに対して責任を持つというわけでございます。それから、印を頂けて押さしておるというようなことは、そういうことのないように十分会同等で注意をいたしておるわけでござ一いまして、そういうものがあるということは聞いておりません。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 こうなれば、印のことはむしろ第二義的になるかもしれないのです。最高裁の気持を聞いていると、責任を持つという立場ならもういいのだというふうな感じもするのですね。それなら、判を預けておいたって、判をちょんと押すくらいなことは、これこそ機械的な事務かもしれぬですよ。私たちの要求しているのは、いやしくも人権を拘束するのですから、拘束するかせぬかということ自体については、判事の真剣な判断というものがまず入って、それからあとの仕事を手伝ってもらうなら手伝ってもらいなさい。実際は逆になっているのですよ。事実そうなっているのに、いやそれでも責任を判事が持つことになっているから判事判断しているのだと言っても、ちょっとこれは無理ですよ。世間の人はそんなことはあまり知らぬから、一般に知ったら、これはちょっと文句が出ますよ。最後の逮捕状までちゃんと作っているところはざらですよ。判の問題は別として調べて下さい。法務委員長としても、おそらく今度実情調査するということになると思いますがね。
  52. 大川光三

    大川光三君 ちょっと関連して伺いますが、先ほどの決定命令が大体百七十万件、そのうちで略式命令が百二十万件、こういうふうに伺いましたが、この決定の中で、保釈決定、あるいは保釈不許可の決定というのは、一体何件ほどあるでしょうか。
  53. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 保釈決定、あるいは保釈不許可決定が何件あるかという点は、これは統計に表われておりませんので、現在わかりません。
  54. 大川光三

    大川光三君 先ほど亀田委員から、いろいろ略式命令なりあるいは逮捕状のことについて御意見がございまして、私も大いに拝聴いたしておった。ところが、たまたま保釈に関する決定ですね、これがもう、まあ不許可はもちろんでありますが、許可決定などというのはどうしても裁判所の指図がないと、これは許可が下りません。しかも忙しい裁判官が保釈を決定してくれないというために、弁護人なり何なりが、早く保釈の決定をしてもらいたいと、非常に急ぐ場合があるけれども、これは一々裁判所裁判官意見を聞かぬと、書記官の方ではどうしても便宜取り扱うということは、これは絶対ない。そういうことを考えても、保釈に関する決定などはことごとく裁判官の一意思が入っているのじゃないか。しかし、裁判官自身が入る以上は、事務的には書記官が気転をきかして、早く命令を出してもらわぬと、関係人が非常に困るというような実情にあるのですが、もし他日わかりましたら、保釈決定の数もお知らせをいただきたいと、かように思っております。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 保釈なんかの場合には、私どもの経験もそうですね。ともかく人権を尊重して釈放するという面は実に厳重なんです。厳重です、その点は。それは大川委員から言われた通りだ。だからそういう点と、そっちの方をそれだけ、ともかく釈放するということになりますと、なかなかこれ厳重にやっておって、一方の方はまるっきりルーズですよ、要求された逮捕状で認めなかったのはどれくらいあるのですか。要求の数とそして認めなかったのと、出してごらんなさい、はっきりしますから。
  56. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 令状の請求があってそれを却下した数という数はただいまわかっておりません。よく調査いたしてみたいと思っております。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 そんなものはほとんどないのです。
  58. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 相当ございます、それは……。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 それは全体の数が多いからね。
  60. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 私がやりました経験においても、逮捕の必要性がないということで却下したり、あるいは警察の方で、逮捕状が出ないなら取り下げるということで取り下げた例もございます。  それから判断をするについて、判断をしていないと——ほとんど判断が加わっておらないという亀田委員の御意見でございますが、たとえば裁判官といたしまして逮捕状を出す場合に、この逮捕状によってこれから逮捕されるのだという点を十分考慮した上で逮捕状その他の令状を出しておるわけでございまして、決して軽々に裁判官は出しておらないのであります。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 だからそこの数を私聞いているわけですが、逮捕状の請求の数というのは非常に膨大なはずです、これは。だからそれ、たまたま知名の人とか、選挙違反の関係とか、いろいろ公安関係事件とか、そういう問題ですと、事前にいろいろ事情も話をするから、そういう関係等で多少予定通り出ないのがあるというだけで、ほとんど出ておりますよ。問題にならぬですよ。ほとんど出ているということは、見ようによっては判断が加わっておらぬということになる−直ちにそう結論はできませんがね。ところが、人権を尊重して保釈をするという方面になってみると、全くからい、その通りですよ、実情は。それだけ裁判官の頭というものはまだやっぱり古いのです。なるべく縛っておけというふうな考え方が抜けない。これは私は、きょう大体過料とか、そういう略式とか、逮捕の関係だけを若干申し上げて、これもまあ概括的に申し上げているわけですが、これはわれわれの方としても、実際の実情というものをよく調査したいのだ。絶対これは場所によっても相当違うと思いますが、これは最高裁でもやはりほんとうに検討してもらいたいのです。裁判所の権威を失墜するのではないかということでそこに無理な理屈をつけぬようにして、実態そのものにやはじ打ち当って検討してみたい。それでその対策、これはまた別個ですから対策はまああとにしましょう。——実態関係というものについての意見がなかなか一致しないわけですから。大よその私の意見を申し上げておけば、最初申されたような膨大な裁判事件を、二千二百名の裁判官、五千名の書記官、こんなものでとても処理できないです。これは裁判らしい裁判をしているとしたら。しかも実際裁判所のエネルギーの使い方を見ていると、いわゆる公判関係、こういうことに非常なエネルギーが出されている。数の上では非常に多い。しかも人権問題には非常に関係のある部分についてのエネルギーの使い方がほとんどわずかなんです。きわめてこれは不自然なんです。そこでいつか総務局長——法務委員会裁判官の現在の定員あるいは職員の定数、こういうものについてお尋ねしたところが、現在の数で十分である、こういうふうなことをおっしゃった記憶があります。定員法の改正の問題でしたがね。私は先ほど大川委員に対してまあ横田総長がお答えになっていた感じでも足らないということだけは私は認めておられると思うのです。あの総務局長の答え、あれは非常に裁判所の職員の方はああいうことに対しては不満を持っていますよ。最初に何というのか、足らぬなら足らぬということをはっきりして、そしてこれをどうよくしたらいいのかということを考えるならこれはまた別なんです。十分なんだというふうにお答えになっていて、私ども十分ならまあほっておいたらいいはというふうに思って、その場合はそういうことで済ましていたわけですが、しかし、実情はこういう状態なんですから、神業でなければできないような状態にしておいて、だからこういう不自然な状態を、総務局長はもうそういう点について是認する立場なんだな。実際そうでなければ、そんな言葉は出てこぬはずですよ。横田総長のさっきのお答えでは、足らぬこと自体はお認めになっている。非常にそこに食い違いがあるように私ちょっと感じたのですがね。お二人に、もう一度総務局長事務総長が、そんな大方針で食い違っているようなことじゃ、とてもじゃないがそれこそ最高裁長官に出てきてもらって、長官自体どう思っているか確かめなければならぬ問題ですよ。方針の問題ですから、お二人に一つその点もう一度はっきりお答え願いたい。総長から先へちょっと答えて下さい。
  62. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 私の考えは先ほどはなはだ不十分ながら申し上げました通りでありまして、裁判官書記官も、その定員につきましてなお大いに検討を加える必要があるというふうに私は考えております。もっともこの問題は、裁判事務のやり方・人の数をふやすことだけでなく、いわゆる効率化と申しますか、能率を高めるためのいろいろな合理化をはかる必要はあると思います。おそらく関根局長は、私もその速記録をよく読んでありませんけれども、局長はむしろそういう能率化の方を主にして言われた結果、あるいは増員ということは、そう必要はないというふうに申し上げたのかもしれません。私は先ほど申しましたように、この定員は大いに検討する必要があるというふうに考えております。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 その総務局長の前に、その定員を検討する必要があるということは、もちろんこれは建物関係もあるでしょう。しかし、建物も、これは定員がふえれば建物もふえるのは当りまえなんですから、そういうことは言わずもがななんですが、建物はまあ別として、検討するということは、つまりこれ以上減らしてくれという意味じゃないのだから、不足しておるという意味なんでしょう、そこをはっきり答えて下さい。
  64. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) おっしゃる通りの方向で検討するということでございます。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 では総務局長、この前、私は参議院の法務委員会ではなはだ不満なんですよ。ああいうことを総務局長自体が言われるということは、私はああいう速記録が大蔵省の手元へ入っておったら、なかなか来年度からでも、裁判所書記官の職員や裁判官自身がいろいろ考えておることが大きな私は支障が起ると思います。だからあんなことを、あまり、いやその人間の能率化を考えておったのだとか何とか、そんな理屈をつけないで、人間の頭なんか能率化したり、仕事のやり方を能率化したって、この膨大な件数に対するあれだけの人数自体、そんなことは限度があるのです。幾ら能率化って言ったって、判断の問題はそんなちゃっちゃかちゃっちゃかとオートメーション式にやれるわけではないのですから、ですから私はあんな言明は、おそらくそんなことは裁判官の人−はだれも考えていない、取り消すなら取り消すで、今がよい機会ですから取り消して下さい。
  66. 青山正一

    委員長青山正一君) 関根局長、今たしか亀田さんがおっしゃったようなことは言うたわけなんですが、その前後の関係がどういうふうなことになっていますか、そのときの、別に弁明しろというわけではないのですけれども……。
  67. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 非常に亀田委員からありがたいお言葉を賜わって……。実は私が申し上げたのは、現在の状況で増員がいかんということは申し上げておりません。むしろ私がこの前申し上げたことに疑義があるとすれば、この際、亀田委員がおっしゃったお言葉で非常にありがたいのです。むしろ増員を要求して、毎年予算上も、われわれの立場から増員を要求しておりますが、私の申し上げたのは増員にも限度があるということを申し上げたのであります。むやみやたらに増員々々ばかりではいけない。これは先ほど大川委員がおっしゃいましたように、ドイツでは約一万人近くの裁判官がおります。しかし、この一万人に、今の日本の二千数百名の裁判官を一万人にふやしましたときには、必ず待遇が下ってくるということが考えられる。ドイツの現状を見ますると、非常に裁判官が俸給が低くて困っておる。この現状を見ましたときに、いたずらにふやすばかりが能じゃないのだ、増員にも限度があるということを申し上げて、現在の数では足りないということも、あのときの速記録にたしか載っていると思います。もし私の申し上げたところから、現在の数でも十分なんだと、おとりいただく向きがあるとすれば、大いに亀田先生に感謝の意を申し上げなければならない。そういう疑いがあったということは私非常に遺憾でございまして、よくお読みいただければ、そういう増員に限度があるということだけ申し上げたのでございます。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 そんな意味じゃなしに、現在の裁判所の予算も定員も十分であるとおっしゃった。そういう理屈を言わないでああいうものは取り消すなら取り消す、早く取り消しておかぬと、大蔵省に入ると大へんなことですよ、実際のところ。
  69. 青山正一

    委員長青山正一君) 亀田君、そのときにたしか大蔵省の主計官も出ておったのと違いますか。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 来ておったかもしらぬ。
  71. 青山正一

    委員長青山正一君) だからあのときの前後のあやというものは何かあったはずですが、たしかそうだった……。
  72. 大川光三

    大川光三君 あれはたしか僕も発言したと思う。裁判所側ではやはり十分でないのだ、やはり増員が必要だという言葉があって、大蔵省側の政府委員に、裁判所の意思がそうだから大いに予算を出してくれというようなことを私は言うたような記憶があるのですが……
  73. 亀田得治

    亀田得治君 そういうふうなこともありましたが、結論的にそういうふうに総務局長が言うたわけなんです。私が言うたのは、なぜ不十分なものなら政府から押しつけられる人数というものをのむようなことをしないで、裁判所のずっと計算からいくとこうなるん一だと、通る通らないは別として、こちらの主張だけははっきりしておくべきじゃないか、そういう意味のことを言うたところ、いや十分であると、こうおっしゃるものですから、本人がそうおっしゃる以上こっちは言いようがなくて、そのままにしておいたんです。だけど、ああいうことは全くこれは間違いなんです。僕らは何も国会議員としてそんないわゆる各省に付属して、その省の予算さえ取れればいいと、そんなことを応援すると、そんなことは僕らはちっとも考えておりません。裁判というものはほんとうにりっぱに行われるということは即これは国民の幸福の問題に関係する・そういう立場からこれはやっておるんでね。それに対して局長が確かに言われた。これは私速記録を写した抜き書きのものを持っておるのですが、原文をちょっと調べてくれませんか。私はあれは取り消してほしいと思っている。そこに書いてあるでしょう。十分であると書いてある。
  74. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) いや、先生のおっしゃるようには書いてありません。
  75. 青山正一

    委員長青山正一君) 関根局長読んで下さい。
  76. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ちょっと長いですけれども、いいですか−…。「裁判所に勤めております職員の総数は、相当数に達しておると思いますが、大体におきまして判事裁判官の数、判事補、簡易裁判所判事を含めまして二千三百人です。これを標準としまして書記官事務官、その他の職員の数も大体のところはきまるわけでございますが、われわれといたしましては、今年度の予算に一おきましても百数十名の増員要求をいたしました。これは裁判官の方でございますが、この百数十名の増員が果して認められたといたしましても、それで満足のいくような司法の運営ができるかどうか、この点についてはかなり疑問がありまするけれども、ただ全体的に申し上げますと、裁判官の数あるいは職員の数をふやすばかりが能ではない。われわれは増員が認められれば一番いいのですけれども、しかし、手続の改善なり、その他いろいろな工夫を加えまして、増員ばかりが能でないということも考えざるを得ないと思います。」大体こういった趣旨です。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 いやそうではない。そういうこともおっしゃっておるが、しからば定員法改正の問題に関連して最終的にはどうお考えなのかということを聞いておるはずなんです。そのときにはっきりおっしゃったわけです。
  78. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ちょっとそこを読みましょう。よろしゅうございますか。
  79. 青山正一

    委員長青山正一君) どうぞ。
  80. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 亀田先生が、「事務官書記官の方はどうですか。裁判官については今二千五百名で先ほど御説明のあったような前提が入っているわけですが、一応お聞きしたい、事務官書記官と同じような立場から見て。」これに対しまして私が申し上げておりますのは、「この裁判所裁判官以外の職員、すなわち書記官事務官これらの方の数も、戦前よりはかなり上回っております。でありまするから、裁判官の数に限度があると同様に、やはり書記官事務官の数にも限度があると思います。これも、一体どの程度に、裁判官の数の割に書記官事務官をふやすべきかという点については、非常にむずかしい点がありますけれども、われわれといたしましては、ある程度戦前に比べましても相当数に達しているという気がいたします。」その次が「先ほど申しましたように、この常勤職員を定員化することにつきましてなるべくそういう定員化をして安定な地位を与えたいと考えておりますが、全体としては、そうこれからふやす必要はないのじゃないか、これは非常に大まかな考え方でございますが、そういった工合でございますので、理想の線をどこに引くかということは非常に困難でございますが、非常に大まかに申しますると、裁判官増員にも限度があると同様に、一般の職員の増員にも限度があるという考え方でございます。」  以上であります。  これは、定員の、本年度の、この前の国会におきましての予算につきましては、どうしてそこで線を引いたか、これは大蔵省と折衝いたしまして、現在としてはやむを得ないということを申し上げただけでございます。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 まあそこの具体的な問題になると、結局はやむを得ないということで、政府とこれはもう妥協してしまっておる。私が了承できぬと言ったのはその線なんです。いやしくもほんとうに最高裁というものがりっぱな裁判を、小さな裁判に至るまでやっていきたいという場合には、やはり件数等も全部発表して、どうしてこれだけのものについて、これだけの人数の頭で判断できますか、資料をちやんとそろえて説明すればこれはわかることなんでしょう。私ども実態を知っているだけに、酷ですよ、それはあなた、あれだけたくさんの書類をぽんぽん突きつけて、そうして間違いがあれば、人権問題としてやっぱり追及されるわけです。また、われわれとしても間違いがあれば追及しなければいかぬ。そういうことを最高裁のそういう問題を扱う人自身は毎年々々のそのときの予算の事情といったようなことで、ことしはまあやむを得ないというようなちっぽけなことを言わないで、どうしてもっと基本的な線をはっきりして、毎年その線ではっきり交渉していくということができないのか、こういうところなんだね、違いは。それで前のことはその程度にして、この逮捕状の数は大よそのことはわかりませんかね。逮捕状請求数あるいは実際に逮捕状を出した数の大よそのものは。
  82. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 逮捕状の請求の数でございますか。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 請求でもいいし、あるいは実際に裁判所が出した数でもいいのです。
  84. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 逮捕状を出した数は、昭和三十一年度におきまして二十九万三千七百八十二十出ております。却下の数は今手元でわかりませんが。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 この二十九万……ずいぶん大きな数ですねこれは。だからこれだけ私はほかの決定などと非常に性格が違うと思うのです。逮捕状の場合は、出すか出さぬかということの判断は相当これは時間をかけていい。やっぱり僕ら裁判所に考えてほしいことは、何か公判中心に優秀な裁判官を配置する、ああいう考えはやっぱりやめてほしいのです。逮捕状なんかは、これは両方兼務している場合が多いでしょうが、逮捕状なんか一つとってみたってこれはもう優秀な人を相当数そこへくぎづけしておいたって十分値打ある問題です。   〔委員長退席、理事一松定吉君着席〕 まあ、東京大阪はそういうふうにやっておりますがね。十分値打がある。余裕をもってそれが出せるようにしてもらわなければいかぬです。それだけにだって、とてもじゃないですが、今の裁判官じゃ足らぬです。皆さんが毎年裁判官なり書記官増員を要求しておるのは、仕事のやりふりを現状のままでまあいいと思ってはおらないだろうと思うのですが、これはこの基本的な問題は一応そのままにしておいて、そうして、何名足らぬ、何名足らぬ、これなんだ。私どもの今要求しておるのはそうじゃないので、もう一度、裁判というものを一つ裁判官が本気に取っ組む覚悟で、一体人数をどれくらい配置すべきか、これをやってほしいのです。逮捕状とか、あるいは先ほど大川委員から言われた保釈の決定ですね、これなんかも、ともかくも保釈の決定はなるべくけっておいたらいい、こんな考えなんですね。そういう考えでやっているから、いろいろ連絡をすると出て来たりする。だから純粋な立場で保釈の要求があった場合、その必要性はどうだろうとか、そういうことまでなかなか言っておらぬですよ、これは。紙一重ですもの。逃亡のおそれがあるとかないとか、証拠隠滅のおそれがあるとか一ないとかいうことは、紙一重でしょう。それで、これはまた、どう判断したって、その判断は絶対に間違いじゃない。これもまたなかなか言いにくい問題である。それだけになるべく放さなければいいというふうなことでやられては、これは困るのです。だから、逮捕状の請求がきた場合でもあるいは保釈の要求があった場合でも、ほんとうにその事件と取っ組む立場でやっぱりやってほしい。それにはやはり優秀な裁判官を、時間をとって、そこにその期間だけはあなたをして一つ頼むということで配置をしなければこれはできないでしょう、片手間のようなことでは。そういうことを私ども考えておるのですね。そうなると、裁判官の数の不足なんというのは、これけ絶対的ですよ。大まかに言ってどれくらい……。どういうふうに感じますかね。とても二千二百名なんてできませんよ。どういうふうなお考えを持ちますか。
  86. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) たとえば、今、大まかにというお話でございましたが、大体地方裁判所判事の方が公判事件判決を書く事件が、一ヵ月に約十五件平均ございます。現在十五件と申しますると、かなりむずかしい事件も入りまして、二日に一件判決を書かなければいかぬことになりますので、これはもう少し少くして、負担量を軽くすべきだという考え方が出てくる。これを理想件数といたしまして、一ヵ月に半分の七件ないし八件ぐらいにするとなれば、やはり裁判官の数を倍にしなくちゃいかぬということになると思います。やはり多々ますます弁ずということが考えられますのですけれども、先ほど私が限度があると申し上げましたのには、いろいろな理由がありまして、俸給が下るということも自然に出てくるのじゃないか。それからもう一つは、質のいい裁判官がそうたくさんいるものじゃない。それでございますので、いいろな考え方の一つといたしまして、現在の弁護士の方が、そのままの姿で、裁判事件の特殊なものについてはパート・タイムでやっていったらどうか。これは、弁護士連合会長の島田さんが現在提唱されておりますが、こういった一つの考え方で、法曹一元の線を強くして、そしていわゆる職業的裁判官の数というものをふやしながらも、実際上できない点を、現在の弁護士の方に補充していただく。こういった考え方も、一つの行き方ではないか。外国の例でも、やはり各国に、そういった弁護士のままでお仕事をやっておりながら、裁判官の席にすわる……。これがどういった形で出てくるか、あるいは特命の− 特別に命ずる裁判官というような形で、許され得れば、そういったところからこの裁判官の少いのを助けていただくということも考えられる。裁判官をふやすということは、非常にいいと思いますけれども、現実の姿とそれから質のよさということを考えますと、どうしても限界が出てきますので、そういうことを私が強調いたしますると、大蔵省に対して非常に損じゃないか——これは確かにおっしゃる通りで、その強調の仕方が私のまずさから出てきたので、この点は非常に遺憾でございまするが、   〔理事一松定吉君退席、委員長着席〕 そういったこととあわせて考えていただきますると、現実では、やはり実際の弁護士の方の御協力を仰がなくちゃならぬという事態が出てくるのじゃないか。こういうふうに考えております。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 判決をゆっくり書かすだけでも、判事を倍にしなければならぬというくらいですから、これはもう、大体この問題の本質論ははっきりしてきているわけですよ。だから、そのほかに決定命令等の百七十万件ぐらいに及ぶこの膨大な処理ですね、これを、ほんとうに判事が一々手に取るようにというところまで、もちろん私ども考えているわけじゃありませんが、少くとも、国民が納得する程度判事の気持が加わってくるような、そういうことにといったら、これはもうとてもじゃないが、本気に考え直さなけりゃいかぬです。そこで、私ども閉会中にも、まあ裁判所にもあちこち一つお伺いして、よく委員長にこれはお願いしておくのだが、実情を見さしてもらいたいと思っております。われわれに、その点、裁判所としてももっと便宜をはかってもらいたいわけですが、これに関連して出てくる問題は、最初ちょっと申し上げたように、書記官そのものに、しからば現在のようにいわゆる浄書——まあこれははなはだあいまいな言葉ですが、いわゆる浄書としておきましょう——これがどっちの権限かどうかといったようなことを抜きにして、ともかく、書記官の方自体の地位をもっと高めて、従って、高めるということは、権限を与えるということと同時に、月給も上げなきゃいかぬ。現在、一般公務員より相当低いでしょう、平均するというと。だから、そういうふうにして、裁判の中でも比較的事務的な面を持ってもらう。そのかわり、これは正式に持ってもらう。これも一つの道かと思うのですが、どうでしょうか、そういうことについての可否。
  88. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今お話しの点、書記官裁判官の現在やっております仕事を移譲いたしまして、そのかわり、裁判官事務の負担量を軽くする。あわせまして書記官の質をよくしてしかも待遇をよくする。これは一番典型的な例が、西ドイツで認められました司法補助官——レヒツ・フレガーという制度がございましてこの制度を現在検討しておりますが、この制度によりますると、書記官の中の質のよい書記官一つのランクを設けまして、これらの人に、現在の裁判官のやっておりまする事務を移譲する。先ほど亀田委員がおっしゃいましたように、たとえば、略式命令逮捕状などについても、そういった司法補助官にまかせられるかどうかという問題が出て参ります。しかし、これを憲法裁判官でない司法補助官にそういったことをまかせることは非常に問題がある。もしまかせるといたしますれば、これはやはり司法処分じわ、なくて行政処分的なものに変えて参りまして、文句があれば、今度は正式に裁判官がタッチするというふうにもつていかなくちゃならぬ、ですから、書記官仕事を移譲するということにおきましても限度があるわけでございます。それで、現在そうなりますると、問題のある点を抜きにいたしまして、裁判官仕事書記官にまかせる、明らかなものといたしましては、現在の裁判官のやっておりますうち、裁判的なものでなく、たとえて申し上げますれば、法廷で証人に宣誓をさせる。これは外国で行われております実際のやり方、あるいは映画などでごらんいただいてもおわかりかと思うのでありますが、書記官が宣誓の仕事証人などにやらせております。そういった工合に、事実的な行為、あるいは事実的と申しますか、行政作用的な仕事はまかせてもいいんじゃないか。いろいろ裁判官のやっております仕事の中にも、通知、嘱託等の仕事がある。こういったものをまかせるということがまず第一に考えられて参ります。まあ非常に権限の移譲につきましては、憲法上の問題に触れる点がございますので、現在検討しておりまするが、もしある程度譲るといたしますれば、書記官の待遇を上げざるを得ない。これはさらに大蔵省と折衝いたしまして、相当高い待遇にせざるを得ない。こういう考えでおります。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 ほかの案件もまだおありのようですから、できるだけ、あとまとめて結論をつけたいと思いまするが、横川委員の方でもちょっと関連質問があるようです。そこで今総務局長からお答えになった点、これは非常に重大ですが、私もこれはまあ自分自身の気持もまだその点についてはどれがいいのかよく判断がつきません、つきませんが、ただ疑問として残るのは、行政事務的なことはまだいいんですが、問題は司法事務的ないわゆる価値判断のところの問題ですね。そこの領域に入れるか入れぬか、そこに入れぬということになると、ある程度権限を移譲したといってもなかなか……。あるいはある程度移譲したといって承非常に判事の負担が軽くなるようになるかどうかということは、ちょっと疑問があると思うのですね。だから、そういうわけですから、問題点はある程度判断的なことを書記官に移譲をする。  これはもちろん地位の向上も伴うわけですが、そういうことが憲法上可能かどうか、この点が非常に重大で、私どもはそこがはっきりしませんと、これがいい、あれがいいというようなことはちょっと言いにくいのですが、その点はどうでしょうか。さっきもちょっとあなたおっしゃったのですけれどもね。
  90. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 亀田委員お話のように、確かに憲法上の問題にも触れまするので、非常に問題があろうと思います。これも非常に、戦前の問題で申し上げると、たとえば警察犯処罰令、あれは裁判官でなく警察官がいろいろの処分をしておりまして、これなどは司法処分ではない、しかも行政官がやっておりました。これは戦後廃止になりました。こういふううに、もし書記官に、裁判的なことをやらせるとすれば、やはり本質は、行政処分的なものに持っていかなくちゃならない。そして当事者の方で、被告人の方で、それに満足すればそのままでいい。不服があれば、最初から裁判手続をして入っていかなくちゃならない。こういうことが憲法上許され得るのじゃないかという議論が出ております。この点については、いろいろむずかしい問題がありますので、まずできることから、書記官の方に譲っていこう。これは現在最高裁判所におきまして、書記官に関する事務移譲のための委員会を設けまして、今検討中でございまして確かに亀田委員おっしゃるように、いろいろの疑問が出て参ります。しかし、疑問は疑問として、疑問のないところから移譲していったらいいじゃないか。先ほど申し上げましたように、宣誓の問題などは、まずでき得ることに入るんじゃないか。これもまあ、問題がないわけじゃございませんけれども、また、反対討論もございますけれども、その他通知、嘱託等、それによりましても、裁判官の負担は、やはりかなり軽くなる。できることからということも考えられますので、現在検討中で、いろいろの議論は出ておりますが、できるだけ早い機会に結論を出したいと思っております。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 実質的に裁判的なことを、名称だけ第一段階の行政処分だといったようなことで、果して疑義が起らずに済むかどうか、また、事件処理が合理化されるかどうか。これも問題だと思いますね。だから、この点は、一つもう少し、私どもも検討しますが、皆さん方でももっと検討になって、しかし、基本的な方針がきまらぬうちに、ともかくとりあえず書記官に、現状のままで、いろいろなものを移譲していけばいいんだ、これもまた、ちっと問題があろうかと思うのですね。どんどん移譲したわ、そのうちに判事がふえてきたわ、ということでも矛盾を生じます。だからその辺は、私は総合的に、いろいろほんとうにこう一つ日本の大きな司法利度として考えてほしいと思いますね。毎年々々人はふえているのですから、人がふえれば、必ず裁判仕事だってふえるのですから、今のうちにこういうものは、やはりこういう機会にうんと検討してほしいですね。それからもう一回委員会がお開き願えるようですから、そのときに私は譲りたいと思います、きょうは時間が迫っておるようですから…−。で、ただ、いろいろ問題のあることについて、今度十九名処分されておるわけです、これは次回に譲りますがね。結局これは、公平委員会で、いずれ検討されることになるわけです。で、普通の国家公務員ですと、首切られたと、どうも理由が納得いかぬと言えば、人事院の、つまり第三者的な委員会に持ち込んで、そこで事情を話して判断してもらうということですが、最高裁の場合には、特殊な事情があって、結局は最高裁の中の公平委員会に持ち込み、それに不服がある場合には、行政訴訟が起せるが、結局は最高裁が最後に判断する。どうも、自分がやったことを、自分で聞違っておったということは、裁判所の体面からいっても、なかなかこれは言いにくいことであるから、だからこういう場合にも、公平委員会の持ち方は、私は、よほどやはり、ざっくばらんにやってほしいと思うのですね。ただでさえこれは裁判所の中の公平委員会だ、それは、どんな結論を出したって結局、訴訟になればおれの方が判断するのだと、だから、初めからあんな公平委員会はだめなんだと、こういうふうに人は見がちですね。だから従って、私は公平委員の任命だけでも、やはり第三者の人に、こうなってくればやってもらう、ざっくばらんに第三者で、まあ、法律のしろうとの人でも困るでしょう、在野法曹なりいろいろ適当な方がありますよ。これはだからそういう方を一つ裁判所の中の公平委員会は、人そのものの任命はこれは自由ですから、ほか  の人を任命されてもいいのですから、そういうふうにやってもらいたい。これは非常に強い希望を持っているのです。まだその公平委員の任命が終っていないようですから、その点だけ私、注文しておきたい、これは任命終ったあと、次の委員会あたりで申してもおそいですから。今私は注文をつけて、御意見もちょっと聞いておきたいと思うのですがね。その点だけ−処分の問題についての論議はこの次にしますが、この点だけ一つお考えを聞いておきたい。で、私の希望というものが、相当尊重してもらえるものかですね。
  92. 横川正市

    横川正市君 関連して、先般横田事務総長も列席されている席上で、私は最高裁判所長官から「処分の内容について、第一点は裁判書の問題に対して、きわめて反裁判所的な行動があり処分をいたしました、ところが、そのあとから続いて実はそれだけではありません、ことにその、ある裁判所のごときは、裁判所を敵視するような行為がありましたので、あわせて処分をいたしましたのですよ」と、こう答えられておりますが、私は正式の会議の中での長官の御答弁でありませんから、この際それをとやかくは言いませんが、実は私は、秋田の鈴木禎次郎所長と会って、この件について二、三質問をいたしたのであります。「おそらくはこれは合議の上で行われたことでありますから、その合議の中に、部分として重点があって、他に幾つかの問題があったということはわかるのでありますけれども、その部分の中でも最も重点としてとらえた問題で、たとえば裁判書反対の行為が断続的に行われているような場合には、もちろんこれは考慮する余地がありました。ところが、非常に持続的に永続的に行われましたので、裁判所事務処理が、いわゆるこれらの反対闘争のために非常に積滞してくる、こういうことからこれを称して裁判所を敵視しているというふうに考えました」——あの人は判事で、いろいろ慎重な形で答弁しておりますから、重点としては私は問題がないと思うのでありますが、そうなると、私はいささか最高裁判所長官が、敵視しているということが、単に行為が持続的であり、永続性があったということだけで敵視の判断にしたということには、どうも少しそつがあったのではないか、こういうふうに考えられますが、まず、その鈴木所長は直接のいわゆる任免権者としてやったわけでありまして、総長自体はそれぞれ相談にはあずかったかと思いますけれども、その点についてのことわりを明らかにしてもらいたい。
  93. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) その点は、まず横川委員の御質問の方からお答え申し上げます。最高裁判所あるいは秋田の地方裁判所が処分いたしました理由は、処分の説明書に書いてある通りでございまして、もちろんあのほかにいろいろないきさつはございましたのでございますが、私どもが、裁判所側であの人々を処分しなければならないと思いました主要な事実は、処分説明書に書いてあるのがすべてでございます。社会党の皆さんと長官がお会いになりました際に、私も列席いたしまして、たしか職員の中には、何か裁判所を敵のようにしておる者がある、廊下で朝のあいさつもしないというような人もあるというようなことを言われまして、飛鳥田さんが、それは親子だってけんかしてるときにはおやじに朝のあいさつなんかするもんですか、というふうなことを言われましたが、そういうようなごく軽い気持で私は言われたように感じました。それがそういうことが理由でこの処分がなされたというふうに私は見ておりません。結局浄書の問題に関連いたしまして、その拒否を永続的にやりました者及びそれをあおった人々という点に尽きておると私は考えております。  それから亀田さんの御質疑の、公平委員会の組織の問題でございますが、御意見はまことにごもっともでございまして私どももせっかく皆様のそういう御意見をしんしゃくいたしまして、よい顔ぶれをそろえたいと思っておりますが、実はこの特別国会に入ります前に、公平委員会をもう発足させなければならぬと思っておりましたが、いろいろそういうような御意見もございますし、ことに国会においてその点についての御議論も伺えると思いましたので、実はこの発足を延ばしまして、国会が済みましてから正式の決定をいたしたいと考えております。
  94. 横川正市

    横川正市君 次回にこの問題に触れられると思いますので、二、三だけ、要点だけを質問いたしておきますが、結局先ほどから亀田委員大川委員からの質問の中にもありましたように、裁判書の問題での決定的な判断というものは、これは皆さんの考え方と、それからこの事実を実際上第三者の立場で見た場合とでは、およそその意見というものは違っているというふうに私ども質疑の中から感知したわけでありますが、そこで先ほど関根さんですかが答弁されましたように、事務官が行わなければならない事務の範囲等について、これはまあできるものから逐次実施していけばいいんであって、憲法上の問題は自後困難な問題で検討するんだということで、書記官事務範囲などについても最高裁判所としては一応考慮の態度をとっておられるようであります。前回ども長官とお会いしたときも、私はこの点に触れて十分書記官と話し合って、一枚々々書類の中で浄書とは何か、あるいは裁判官が権威を持って書かなければならないというのは何か、この点を明らかにして、その上に立って規則なり、あるいは運営なりをきめられて、なおかつ反対をするような場合には、あなたの方では断固として人事権というものを発動するということは、これはやむを得ないかもしれないが、判断のいろいろな立場に立つとはいいながら、相当多種多様な意見があるのに、こういう事態が起ったからといってばっさりとやってしまうということは、少し事態をあまり重く見過ぎてはいないか、こういうふうに私は申し上げた。それがおそらく、私は私の言ったことがこうなったとは思いませんが、最高裁判所がこのように一応の判断をする場所を小委員会として持ったということは、私は非常にいいことだと思うのであります。そこで最近まで行われました、大体官公関係、国家公務員関係の馘首問題等に触れて、大体こういう傾向が出きております。たとえば公労法等の場合の判断としては、タフト・ハートレー法の趣旨を相当程度受け入れている。その趣旨によれば十八条による馘首については、ある時期をもって個別に判断をして復職せしめるということで、アメリカあたりではそういう方式をとっておるということを伺っておるわけです。今度の場合は、私は国家公務員法による処分の内容は明らかにされましたが、きわめて重い判断の上に立って処分がされておる、しかも何ら個人の犯した罪ではなしに、団体の共同責任を問われるような内容のものについて、次善の策が全然なしに考えられた内容が行政処分である、しかも馘首であるということは、きわめて私はその内容は重いのではないかということを考えたわけでございます。  お尋ねしたいことは、あなたの方で書記官の・事務範囲について小委員会を持ったということと、それから当然事実行為が行われてしまって処分に入っておるわけでありますから、この小委員会はおそきに失したと思いますが、この小委員会の結論がどのように出るかは別問題といたしまして、これらに対しての結論が出た場合に、処分その他の問題については、あなたの方では再考するというような結果を予測できるかどうか、あるいはそういう考え方を持っておるかどうか、この点についてお伺いしておきたい。
  95. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと横川さんにお伺いしたいと思いますが、横川さんの今のお話しの中に、そういった事柄について長官と折衝した、そのあとに第二次の首切りがあったのですか、どうなんですか。
  96. 横川正市

    横川正市君 全部事前にあって、そのあとで……。
  97. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) ただいまお言葉の中で小委員会ということを申されましたが、これは多分先ほど関根局長からお答えいたしました書記官の処分権限に関する小委員会のことであろうと思いますが、この小委員会は先ほど亀田委員がおっしゃいましたような趣旨で、書記官の権限をどのくらい広めていくかという問題の小委員会でございまして、これはかなり真剣に議論され、かなりもうあとは決断と申しますか、いろいろの考え方はもう出尽しておるようでございまして、あとはもう腹をきめるというような段階であるようにも思います。私も書記官にはかなりむずかしい試験を課しあるいは研修をするというようなことで、書記官の資質向上ということにかなり努めておりました。現在におきましては何らかそこにその結果が出てこなければならぬもう時期にきているのではないか、また、それを書記官の諸君は非常に熱望しておられるのではないかというふうに私どもも考えますので、この小委員会が一日も早く適当な結論を出していただくということについては、私も非常な関心を持っているわけでございます。ただし、この小委員会は今申しましたような趣旨で、今後の制度のあり方としまして議論をいたしておりますので、実は今までの裁判所のこういう裁判のやり方あるいはいわゆる浄書のやり方というようなものについては、まだそれを当面取り上げて研究はいたしておらないようでございます。私どもとしましては、処分問題は処分問題としまして、せっかく公平委員会もできますことでありますから、そこでいろいろの点をよく御検討をお願いしましてその結論に従いたいというつもりでございますので、この小委員会とこの処分問題とは、ただいまのところ直接につながっておりません。
  98. 横川正市

    横川正市君 まあ、なお掘り下げての質問はやめます。次回に譲りたいと思いますが、そこでもう一点お聞きいたしておきたいと思いますのは、ことしの秋田で実際裁判所長と会って、いろいろ話をいたしましたが、そのときの弁をかりましても、大体、裁判官判事の業務の量というものは、現在定員では大よそこれはもう無理だ、現在定員よりは約二倍程度は絶対に必要だと思うと、しかも最近開かれました裁判所長会議でも、自分はその点を十分主張をして参りました。こういうふうに言われておりました。ですから、私は、プライベートで会ったにせよ、あるいは個々の裁判官にどういう機会にめぐり会ってお話を聞く機会があるにせよ、おそらく現在の日本裁判所の運営に裁判官が不足をしているということは、実際の当事者が一番よく知っているのではないかと思うのであります。この当事者が、一番よく知っている人が、裁判書の問題は、書記官がもしもこれを反対をいたしますと、裁判所の機能が停止をいたしてしまいますと、こういうふうに言っておるわけであります。そこで、私は端的に、裁判官がみずから行わなければならない行為を、まずこれは日常二分の一しかさばけない。しかし、無理をしてさばいても、四分の三である。そうすると、あとの残された四分の一というのは、こういうような人たちの手をかりなければならない。それを拒否されたから積滞をしてきた、こういうふうに考えるがどうですかと言ったところが、その通りです。それでは、なぜこういうような問題が起きたのかといいますと、これは何か通達が二、三本出ておりましたが、慣例という言葉が非常にたくさん出てくるのであります、あなたたちの答弁の中に。今までもこういう慣例で行なっておりました、戦前もそうでした、戦後もそうでございました、こういう慣例で首を切られては私は大へんだと、こう感じましたので、その点について鈴木さんの意見をただしましたが、非常にこれは明快な答弁が得られなかったようであります。あなたの方で出しました二百五十五号の裁判書に対する見解というものが地方の所長さんの手に渡っておりまして、それが統一された見解として、今度の馘首を合法化している、こういうふうに私は見たのであります。そこで、先ほどからのいろいろな質問の中にも出ておりましたように、あなたの方では、慣例ということによって起った事態を懲戒処分、懲戒免職で対抗しなければならなかったそういう事実について、一、二最も重点と思われる点を一つ明らかにしていただきたい。
  99. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今、横川委員お話の中に、慣例によって、慣例に従わないから懲戒処分に付したというお言葉があったように承わりましたが、決して慣例によってやったのでなくして、やはり法律上の義務がある。法律上の義務のあることを従来異論なくやってきたという意味で、慣例という言葉が出たかと思いますが、でありますから、根本的には法律上の義務ありということで懲戒処分をしております。ですから、慣例だけで懲戒処分なんかは当然考えられませんので、慣例と申し上げたのは、法律上の義務のあることを異議なく長年やってきたという意味で申し上げただけでございます。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連して、この処分の問題、次回に、これは横川君もまだあるようだし、私もありますから、お願いしたいと思いますが、一つだけ、先ほど事務総長が言われたように、適当に人選をされて公平委員会一つ発足させてもらいたい、そこで十分一つ客観的な検討ができるようにしてもらいたい、そういう検討の過程におきましてこれ以上組合に対して、たとえばILOの団結権の条約、これは日本はまだ承認はしておりませんが、ああいうもの等から見てもどうもどうかと思われる、こういうふうな感じのするようなことをさらにどんどんおやりになるというようなことは、どうも私はこの問題に関しては少し適当ではないと思うのです。出てしまっているものは仕方がありませんが、さらに追い打ち的にそういうことを何かおやりになるような考えがあるかどうか、公平委員会等もせっかく作ろうとしている過程において、こういう点も、一点だけちょっと確かめておきたい。
  101. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 問題は、いわゆる浄書拒否ということで起っておりますが、御承知のように、現在はそういう事態もなく、円満に仕事が行われているようでございます。やはり今後、組合あるいは職員の側から浄書拒否というような問題が起って参りますれば、これはやはり私どもとして相当関心を持たなければなりません。それ以上の問題がございませんければ、この際さらにどうするというようなことはわれわれとしては考えておりません。ことに、処分問題につきまして公平委員会もできるということになりますれば、私どもとしましては、謙虚な気持でその結論を待ちたいと思います。
  102. 横川正市

    横川正市君 私は日本の最高裁判所国民の信頼と負託にこたえて正しく運営されて、しかも少くとも法治国家としての体面を維持していくということについては、当然これは国民の一人として義務を負うていると思うのであります。ただ、そういう立場に立って、非常に裁判所自体が、通常社会でいわれているような、世の中でいわれているようなことを行わないで、きわめて理不尽な行為をとるということになれば、これは国民からの信頼も失墜することでありましょうし、日本の国にとっても大へんなことだと思うのです。そこで、きたない言葉でいえば、どうも最高裁判所の公平審理委員会に対するいわば試案といいますか、そういったものを仄聞いたしますと、やくざの二足わらじのように、自分で処分をしておいて、今度裁判するときに自分でやるのだというような形式をとられるのじゃないだろうかという懸念を実は持っているわけであります。もちろん最高裁判所が十五人合議ないしは小法廷で考えられたことは、これはいわゆるおきてでありますから、これに従わざるを得ないというのは国民の義務なんですが、しかし、いかにおきてを作るところであっても、私はそこで行われた行政上の処分を、同じものがやはり同じ手で、よかったか悪かったかを判断するような、そういう機構というものを作るということになれば、これは私は日本の国のあらゆる識者から指弾を受けるでありましょうし、国際的にもこれは日本裁判所に対する信用の失墜ということは火を見るよりも明らかだと思う。私どもの仄聞したことが危惧であればいいわけであります。が、亀田委員も言われていることでありますし、先ほどの意見その他から、私からも特に公平審理については間違いを起さないような方法でやっていただきたい、裁判所に労働問題が起って、それを処理するということは、前代未聞のことなんで、なかなか皆さんにとっては扱いにくいことかもわかりませんが、ぜひ一つ一般常識的に考えられることが最高裁判所で通らなかったというようなことのないようにしていただきたい、その点を私は要望しておきます。
  103. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件に関しま・する本日の調査はこの程度にとどめまして、本件に関し、明後四日午前十時から調査を続行いたします。
  104. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、請願の審査を行います。  まず、請願第八十四号を議題といたします。  西村専門員の説明を求めます。
  105. 西村高兄

    ○専門員(西村高兄君) 請願八十四号の御説明を申し上げます。  この請願は、戸籍改製経費全額国庫負担に関する件でございまして、請願者は愛知県の春日井市議会議長であり、紹介議員は青柳先生であります。  現在の戸籍法は昭和二十三年一月一日から施行されておりまして、その戸籍法第百二十八条によりまして、旧法の規定による戸籍は、これを新法による戸籍とみなされておりますが、新法施行後、つまり二十三年一月一日から十年を経過いたしましたときは、これを法令の規定によりまして定めるところによって、これを改製することになっております。ちょうど十年、ことしが十年たっておりますので、これを改製しなければなりません。その省令が、お手元に差し上げてございます一覧表の中の「昭和三十二年六月一日法務省令第二十七号」であります。  そこで、この経費負担の問題でございますが、この経費負担が、現在は特別交付税で算定することになっておりますのを、請願者は、国庫委託金として、全額国庫で負担してほしいという一のでございます。一 この問題は、一市の、一地方団体だけの関係でございません。そうして経費負担区分の重要問題になりますことでございますので、法務当局、自治庁関係、両方幸いに御出席でございますので、その説明をいただきますと幸いでございます。
  106. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件について御質疑並びに御意見のおありの方は御発言願います。  なお、政府筋から、法務省平賀民事局長、自治庁牧園事務官、このお二方がお見えになっております。
  107. 一松定吉

    ○一松定吉君 まず、今当席に見えられておりまする関係当局のもっと詳細な一つ説明を聞いて、その上でわれわれは質問をしたい。
  108. 青山正一

    委員長青山正一君) それでよろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは平賀民事局長。
  110. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 戸籍事務に要しますところの経費は、現在の地方財政法によりまして、市町村が全額負担をすることになっておるのでございます。この戸籍改製の事務につきましても、やはり戸籍事務の一部といたしまして、地方財政法の建前上、市町村が負担することと相なることは必定であります。そういうわけでもありまして、国がこの戸籍改製に要する経費の全額を負担するということは困難であると考えておる次第でございます。  ただ、戸籍改製の事務は、経営的な戸籍事務ではなくて、特別の事務でございますので、財源措置を講じなくちゃならぬことになるわけでございます。で、その点につきましては、地方交付税法によりまして交付金を交付することにいたしておるわけでございます。それによってこの改製に要する経費はまかなわれることになるわけでございます。
  111. 牧園満

    説明員(牧園満君) 戸籍の改製事務につきますこの負担の経費につきましては、ただいまお話がございましたように、負担区分といたしましては、一応地方団体の事務といたしまして地方団体の一般財源をもって支弁するという建前をもって、現在の財政法あるいは自治法の考え方はそういう考え方の上に立っておるわけでございまして、自治庁といたしましては、今回の改製事務に要しまする経費につきましても、一般財源である地方交付税中の特別交付税をもって措置したい、かように考えておるわけでございます。
  112. 一松定吉

    ○一松定吉君 請願者がこういうような請願をすることは、自分の所属町村に負担をかけまいという意味であることは、これは察するに余りがあるのでありますが、これを全額国庫負担にするということになって参りますると、一つこの春日井市だけでなくて、全国がこの例にならうということになりましょうが、そうすると全額国庫負担の金額が合計どのくらいになる見込みでしょうか、それを一つ説明願いたい。
  113. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 戸籍改製に要しまする総経費として、私ども計算いたしましたところで、約六億七千万円程度の金額が要る見込みでございます。
  114. 青山正一

    委員長青山正一君) 補足説明ありますか。
  115. 牧園満

    説明員(牧園満君) 総額といたしましては、ただいまの金額でございますが、これを御承知通り三カ年でやるということになっておりますが、さしあたり、来年度におきまして三億三千万円程度地方財政計画の上にも計上いたしまして、予定いたしておるわけでございます。
  116. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、一億七千万円を三年間負担するということにななると、五億一千万円というものを国庫が負担するということになるのだね、三年間に国庫の負担が……。
  117. 青山正一

    委員長青山正一君) どうなんです、民事局長。
  118. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 総額は、先ほど申し上げました通り六億七千四百万円でございますが、そのうち、初年度は三億三千七百万円、それから次年度が二億二百万円、三年目が一億三千五百万円ということになっております。合計いたしまして六億七千四百万円になるわけであります。だんだん、最初の年が一番たくさん支出をするわけで、二年目、三年目になりますと、改製が済んでおるところも出してくるわけでありますので、二年目、三年目になりますと、だんだん経費を減らしてくる、そういう関係で初年度が一番多いわけでありますが、合わせまして六億七千四百万円、そういう計算になるわけであります。
  119. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういたしますと、この愛知県の春日井市の負担するものは、全額国庫負担をせいということになりますると、初年度が幾ら、二年度が幾ら、三年度が幾らと、こうなりますが、具体的にこれを一つ説明してもらいたい。春日井市だけに限って今質問している。全国的のやつは今お答えでわかりましたが、春日井市がこの請願をしておるのでありますから、国庫で全額負担をして、春日井市がまたそのうちの幾分かを負担するということになると、三年間に、春日井市が負担する金額は、初年度が幾ら、次年度が幾ら、三年度が幾らと、具体的に説明してもらいたいと、こういうことです。
  120. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) ただいま、これは資料を持っておりませんので、幾らと御答弁できないわけですが、法務省の方で計算しましたところ、大体一つの戸籍を改製しますのに要しまする平均の単価が五十二円四十九銭ということになっておるのであります。これを積算の基礎にいたしまして総額を計算いたしておるわけでありますので、春日井市で改製を要する戸籍が幾つあるかということがわかりますと、その金額が出てくるわけであります。ただいま全国の市町村の改製を要する戸籍数、資料を今手元に持っておりませんので答弁いたしかねます。
  121. 一松定吉

    ○一松定吉君 よろしゅうございます。
  122. 青山正一

    委員長青山正一君) ほかに御意見質疑ありませんか。——本件はいかが取り扱いましょうか。
  123. 大川光三

    大川光三君 ちょっと御説明の中でわかりにくいのですが、特別交付税で出す場合と、国庫委託金として全額国庫負担する場合と、その総額において変りがあるでしょうか。それとも請願者がこういう請願をしてくるのには、何か国庫負担にした方が地元負担が少くなるというようなことになるのでしょうか、それを伺いたいのです。
  124. 牧園満

    説明員(牧園満君) 国庫負担として支出してもらうという御請願になっております御趣旨として、まあ考えられますことは、御承知通り、国庫負担という格好をとって予算が流れていきますことによって、非常に予算の性格がはっきりしてくるというような点も一つあるのじゃないか、かように考えるわけであります。で、ございますけれども、現在の地方交付税でいきますというと、そういう特に戸籍の改製のために幾らというような金額の明示がない。いわゆる一般財源として総体の財源が行くわけでございますから、まあ端的に申しまして、戸籍に幾ら現実その団体が支出しますかということは、それも、国庫支出金の場合に比べまして明確を欠くというようなことになるわけでございます。しかし、また他面におきまして、国庫支出金ということで財源措置をいたしますということになりますと、戸籍事務というものが、これは全国各市町村を通じまして、ほとんど普遍的にある事務でございまして、これを個々の団体における補助金として流すということにつきましては、非常に事務的にもこれは煩瑣でありましょうし、能率の点からいっても非常に感心しない面があるというようなことで、地方交付税の中にこれを入れまして、交付税として財源措置をするということになっておるわけであります。そういう観点からいたしまして、私どもの立場といたしましては、そういういわば零細な補助金のような格好になりますけれども、そういう制度の方法はとらないで、交付税として財源措置をしていく方がより能率的、また効果的じゃないかというふうに考えるわけであります。
  125. 青山正一

    委員長青山正一君) 保留ですな。——いかがですか、御意見のある方は……。
  126. 大川光三

    大川光三君 本請願は、いわゆる予算を伴っており、しかも、全額国庫負担にするかどうかということについて、全国的に非常に大きな問題であり、影響するところも多いと存じまするので、本請願は保留せられんことを希望いたします。
  127. 青山正一

    委員長青山正一君) 請願八十四号、それではこれを保留することに決定いたします。  次に、第百六十八号を議題といたします。  専門員の説明を願います。
  128. 西村高兄

    ○専門員(西村高兄君) 請願百六十八号の御説明をいたします。  本件は、東京都の府中市に婦人補導院建設反対に関する件というのでございまして、請願者は、府中市に住んでおられます本山千代子さんほか十二名でございます。ほかと申しますのは、この本山さんはPTAの関係者でございますが、会長の大島さんのほか、PTAの方々多数が署名しておられるわけであります。紹介議員は安井謙先生であります。  で、請願の趣旨は、現在、本年三月二十五日、法律第十七号によって制定されました婦人補導院を法務省で建設されるに当りまして、その建設地を、府中市の法務省建設用地を設定されておりますのでございますが、現在のその候補地が、府中市の府中第六小学校の正面に当っておるわけであります。それと関連いたしまして、なおそのほか、この府中市には関東医療少年院でございますとか、府中刑務所でございますとか、矯正関係の諸施設がございますので、こういうものをこの市内にそれを集められることについて、請願者の方々は反対しておられる次第であります。
  129. 青山正一

    委員長青山正一君) 請願の要旨は、ただいま西村専門員のお話通りでございますが、昨一日、棚橋委員のほか、宮城、大谷、辻、こういった委員の皆さんが現地を視察されまして、関係者からいろいろ陳情を受けられましたが、棚橋委員お話をお伺いいたしたいと存じます。
  130. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 昨日、宮城、大谷、辻、それから私と、四人の委員が午後一時から五時ごろまで現地を視察いたしました。なお、府中市の消防署の二階の方で市の方、それから市会の代表者の方、それからこの反対の何か同盟のようなものがありまして、その代表者の方、それからPTAの代表者の方、そういう方々からしてそれぞれ陳情をされて参ったのであります。  大体、この反対をされておるおもな理由は、ここにも書いてありますように、府中市の第六小学校のちょうど真正面、道を一つ隔てて前のところに約  一万一千坪くらいの法務省の所有地があるのでありますが、そのところのうちを七千坪さいてこの補導院を建設するというのであるが、学校の面前にそういうものを作られては教育上非常に支障を来たす、こういうPTA等の方々の御意向が強く出ておるわけであります。それからもう一つは、このあたりを市の住宅地にしたいと思うのであるが、そのまん中へそういうものを作られては、非常にこれも将来の発展上差しつかえがあるからして、それは取りやめにしてもらいたい、こういうような趣旨が一つ理由になっておるようであります。  まあ学校の教育上こういうものがよくない、ない方がいいということも、一応理解ができますのでありますが、しかし、それについてはもっと十分に話し合いを私はする余地があるんじゃないか。つまり言えば、補導院というものが何か刑務所のようなものである、あるいはまた、前身売春婦のような人を更生させる機関であるのだが、何か、だらしない格好をした女性が出入りするといったような印象があるのではないか。そういうことに対して法務省の方でも、もっと補導院という一ものはそういうものでない。つまり売春婦のようなものではあったのだけれども、それを更正させるところの一つの道場で、学校のような修練道場のようなものであるからして、決してそういうだらしない格好をして出入りをしたり、決して刑務所みたいなものでないのだということをもっと親切に説明す出るのが足らぬのじゃないか。これは法務省の方の、どうも補導院というものに対する初めからのお考えが、何か刑務所みたいな感じを持っておる。これは当委員会でもずいぶん問題にしたのでありますが、そういうところがやはりここに現われているのじゃないかという一つは印象を受けたわけであります。  それからもう一つは、その地区を住宅地にするというのでありますけれども、そのまん中のところには約八万坪の府中刑務所という膨大な刑務所の施設があるわけでありまして、そのまたそばには医療少年院という施設もあるわけでありまして、もしそこをほんとうの住宅地区にするというのならば、これをまずどうするかということが問題になるだろうと思うのでありまして、地元の方々に言わすというと、刑務所であるとか医療少年院であるとか、また補導院であるとかいうものを、どうして府中にばかりねらって持ってくるかというような御意見もだいぶあったのでありまして、こういう点もごもっともな点と思うのでありますが、もう少し私は、これは地元の方と法務省の方が親切に話し合いをする余地があるのじゃないか、こんなふうな印象を受けて参ったのでありますが、地元の方々の言われる意味も確かに一理あるということを見て参りました。  これが大体の報告でありますが、一緒においでになりました他の委員の方々から、足らぬところを補足していただきたいと思います。
  131. 青山正一

    委員長青山正一君) 辻さん、補足説明ありませんか。
  132. 辻武寿

    ○辻武寿君 説明ですか。
  133. 青山正一

    委員長青山正一君) 棚橋さんの今のお話のほかに足らぬところを一つ……。
  134. 辻武寿

    ○辻武寿君 足らないというよりも、私は実際行った感じでは、刑務所と少年院と婦人補導院と三つも並べる必要はないじゃないかという地元の人たちの希望がほんとうに妥当である。私がもし地元民だったら、やはりこういうふうにいくだろうという感想を持ったのです。それから、ああいうような大きな建物をそのまん中に建てるということ自体、あれ何だということになって、あれは。ハン。ハンの集まりだというようなことから、まあ教育上にも確かに影響すると思うのです。ですから私としては、これは大いに取り上げて検討すべきであると思います。
  135. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件について御質疑並びに御意見のおありの方は御発言願いたいと存じますが、当席には渡部矯正局長が見えておられます。
  136. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私はこの問題を取り上げる前に、少し根本問題について局長に伺いたいと思います。  私の調査しております範囲では、つまり、東京にほんとうは百人くらい収容し、それから大阪と福岡とに九十人くらいという三つの施設をお作りになる予定だったのでございますね。ところが、その私の調査がもし間違っておりませんなら、今、東京でその補導院ができてそこへ収容する前に、かりの収容所として栃木の女囚監をお使いになっておる。そこに四月一日からあの法律が実施されまして、今日まで一人も収容者がないということを伺っておりますが、その点いかがでございますか。
  137. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) ただいま宮城委員の仰せのごとく、東京では栃木の刑務所の一部を区画いたしまして、分院を設置いたしております。東京の方にはいまだ補導処分を受けた者は現在ございません。従いまして、まだ一人も収容されておりません。
  138. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は、初めから少し局長さんと意見が違いまして、わんさわんさと百人ものあの売春婦たちが来るようなことはないと、私は委員会で申しました。それから局長さんは、そうでない、わんさわんさの盛況だろうとおっしゃいましたが、私の見通しでは、たとえ東京に施設を作りましても、ちょうど現在、三カ月間に一人もいないということがそれを証明しているのじゃないか。しかし、このことはいい状態だということではございません。その陰にまた心配なことがたくさんございますけれども、収容施設を作りますについては、このことは十分に考えてみなければならない。それで三カ月一人もないというところにもつてきて、これだけ百人の者を収容する施設を、しかもまあ刑務所とは少し違っておりますようですが、少年院式と申しましょうか、少年院式のこういったような施設を一体作るということについては、私は初めから疑問を持っておりますが、今なお法務省は作ろうとして今土地を定め、そしてこういう設計図ができておりますが、その点いかがでございましょうか。
  139. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 今後東京の方で補導院に入って来る者がないのじゃないかという御説でございますが、実は、現実の問題といたしまして、東京にはまだ一人も入っておりませんけれども大阪の分院の方には、すでにきょう現在で十二名収容されておるのでございます。なおそのほか拘置所の方で、裁判を受けまして、この確定するのを待っております者が十名ばかりおるようでございます。近くまあ二十人くらいになる予定でございます。九州の方は一人もまだございません。従いまして現在大阪に集中したような形に相なっておるのでございます。これがなぜそういうふうなことになっておるのか、一つよくわれわれとしても検討しなければならないと思っておるのでございますが、あるいは補導処分というものについての理解、裁判官の方でのいろいろなお考えもあるかと思うのでございますが、これは一つの問題といたしまして、まあ私の考えますのは、まだ本格的な補導院ができておりませんので、あるいはできるまで手控えるというふうなお気持もあるいはあるのじゃなかろうかと実は心配しておるのでございます。従いまして、一日も早くこの補導院を作りまして、売春防止法のほんとうの精神一つ生かすような処置を早急にとる必要があるんじゃなかろうかというふうに、実は考えておる次第でございます。
  140. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この建物につきましては、あるいは設備につきましては、私と局長とは初めから意見は一致しておりませんのでございます。でございますが、今日、三カ月たっても一人もないと、それがずっと続こうとは私も思っておりません。もちろん、やり方ではずいぶん出てくると思っておりますけれども、現にこういったような者を大きい建物へ入れようとして、しかも内容を検討してみれば、刑務所か少年院のごときもの、つまり共同生活をするところのものを建てるということについてでございます。地元から反対がありましても、局長、なおそこに考え直そうという意思はございませんでしょうか、どうでしょうか。
  141. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 実は地元の方々にも、私三回ばかり参りまして、いろいろ御説明いたしたのでございます。ただいま棚橋先生から、どうも地元の方の方々がこの設置の問題について協力されないということは、結局この施設そのものについての説明が法務省として足らないんじゃないかというお話を承わりまして、私も実は非常に申しわけないと思っておるのでございます。これは私もさように思うのでございまして、地元の方々が御反対になりますのは、結局、今まであすこに刑務所がございますし、刑務所をまた作るというふうなお気持で反対なすっていらっしゃるのが根本のように私考えるのでございます。従いましてこの婦人補導院がさようなものでないということを十二分に御説明を申し上げ、そうして御理解をいただきますれば、おのずから協力していただけるんじゃないかというふうに私も考えておるのであります。できるだけ現地へ参りまして、いろいろと御説明申し上げるつもりをいたしております。で、市長さんの方にも、まあ反対委員の方々にも、いつでも私は何べんでも、十ぺんでも二十ぺんでも現地べお伺いして御説明は申し上げますということを実は申し上げておる次第でございます。私といたしましては、この補導院の性格をほんとうに理解していただきまして、現在の場所にできるだけ早く作りたいというのが私の念願でございます。ただ私といたしましても、この施設が決して好ましいものではないというお気持、また今までになかった施設でございますから、一体どういうものができるかということについて、皆様方が御不安を持っておいでになることも私無理からぬことと存ずるのでございます。従いまして、現地の方々のそういうお気持も十二分にしんしゃくいたしまして建築その他の問題につきましては、十二分に考慮を払い、さような悪影響のないような施設に持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  142. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 局長の御苦心もよくわかりますけれども、あの法律の内容にもうたってございますように、補導院というのは、生活指導をし、職業補導をするという、その目的をかなえるために作るものでございまして、この設計されておるようなもの、この莫大な建物を見ましても、一体どこで、どのところで職業を補導し、ことに、婦人の生活指導をするというお考えは一体どこにあるのだろうかと思います。そこで私は、こういう建物−刑務所やら少年院やらわからないようなものを持っていくから、どこへ行ってもきらわれるのだと思うのです。ところが、本質的に申しますと、これは刑務所やら少年院よりもよほど−私は皆さんの協力を得て、ことに御婦人方の協力を得て、あのふしだらな生活になれております人を、ほんとうに日本のりっぱなおっかさんに指導しなければならないという責任は皆さんに、婦人にあると思うのです。それならそうきらわれないで、皆さんからも大いに歓迎されるようにやってほしいというのが、私の立法する初めからの、耳にタコができるほど申し上げたことなのです。ところが、それをこういう建物にして、へいを作って、いかにも悪いやつだ、いかにもこれは子供にも害を及ぼすものだというように取れることは、私はこの建物がたたるのじゃないかと思う。私は、生活指導をするといったら、ほんとうにわが家をたくさん建てればいいという、つまりコッテージ・システムに、ちゃんと建物、設備をすれば、だれが文句言うでしょう。私は、その近所のおっかさんたちがみんな寄ってたかって大いに生活指導して下さる、協力して下さるはずだというように考えておるのですけれども、そこの点が初めから考え方に、私の考えとはそごしておると思うのでございますが、しかも開店休業になるだろうということを思いましたが、これだけ莫大な建物をお建てになって、そうしてわずか——今はもうだれもおりません。三ヵ月たって一人もいないということは、これは先になって全くその反対の現象を現わすかもしれませんけれども、私は初めから開店休業になると、その開店休業になることはありがたいことなのです。だれも入らないほど問題がなければ、最も私ども喜ぶ点なのですけれども、しかしそうはいかぬと思っております。だから、どうかして今変えられるものならば、ほんとうに私どもの家庭をたくさん作っていただいて、こんな刑務所か少年院みたいな施設でなしに、そして場所も、その意味からいいましたら、ずっと山の静かなところべ持っていって、少し静まって、ほんとうの日本婦人、ことに日本の母の生活を指導するということにお考えいただいて、お変えいただくわけにいかないものでしょうか、それはすでにおそうございますか。
  143. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 宮城先生のコッテージ・システムは十二分は私お伺いもいたしました。これも行き方としてはまことに私けっこうだと思うのでございます。しかしながら、実はこの婦人補導院を設置するにつきまして、人的な面と、それから財政的な面からいろいろと制約を受けることになるわけでございます。御承知のように、この婦人補導院は、一つ施設に二十五名の職員を配置されておるのでございます。このコッテージ・システムにいたしますと、どういたしましても、一つ建物の中にまあ十名程度を収容して、そこに生活を作るという形か、まあせいぜい入れましても十名ないし十五名を一団としてのコッテージを作っていくというふうな形になるかと思うのでございますが、かようなことになりますと、実は一つの、そういうコッテージ一つ一つに職員がつかなきやならないわけでありまして、従いまして夜の勤務、すべての配置状況を考えますると、どうしてもこの二十五名の範囲内ではこのコッテージ・システムというものをなかなか運営していくことはむずかしいのでございます。それともう一つは、やはり施設として運営して参ります限りは、われわれは施設としての管理ということをやはり考えて参らなければならないのでございます。さような面から申しますると、なるほど先生のお説——コッテージ・システムというのは、なかなかいい施設だと思うのでございますが、この陣容、この予算ではなかなか私はまかない切れない。それからもう一つ問題は、職員を得るという問題でございますが、これもわれわれとしては、十分に職員のいい者を採用したいと思っておりまするが、四六時中収容者と生活をともにし、ほとんどこれには私生活というものは返上しての勤務ということになるわけでございますが、かような人をわれわれとしても得たいのでございます。得たいのでございますが、なかなかさような者ばかりをそろえていくということは非常に困難な問題でございまして、現実の問題として考えますると、やはりこういうような形を持たざるを得ないと実は結論いたしたわけでございます。そこで、この建物でございますが、仰せのごとく、これは一応七尺のへいをめぐらした施設でございますが、ただいま宮城先生のおっしゃったこのコッテージ・システムの趣旨をこれに私は十二分に取り入れておるつもりなんでございます。このブロック建築の——お手元にお配りしておると思うのでございますが、この二階建のものにいたすのでございます。階上と階下は、これはやはり別個になるわけでございます。それと階段を利用しての廊下の区切りで、大体この施設は五つないし六つのブロックにこれは運営ができるように実は設計いたしておるのでございます。で、先生の仰せのそういう趣旨は十二分に今後の補導の面に生かしまして、先生の御趣旨を処遇の面で、運営の面で生かしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  144. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今、栃木の支所でございますね、三ヵ月も職員はただで、俸給をもらっておるんでございますか。一人も女がいなかったが、どうしておりますの、それから伺いまししょう。
  145. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 現在栃木の令院の方に職員三名——四名でございましたか、おります。これはいろいろと準備をいたしておるわけでございます。それから調度品等につきましても、いろいろと考慮を払いまして、それから自分でいろいろと勉強もいたしております。そして今後収容されたときにまごつかないように、十二分に本人たち準備をいたしております。
  146. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そういう説明は私には納得できませんけれども、職員が給料をもらって、そこで準備をしたり、休んだりしているというようなことも、ことに勉強をしているということもうれしいことで、こういう状態が全国的に続けば私はうれしいと思うのです。だけれども、ここに法務省としてお考えにならなきやならないことは、今職員の問題が出ておりますが、この補導院の職員の研修をいつかおやりになりましたときに、あれは、今までの少年院の職員あるいはまあ鑑別所といったような、関係している職員のみを集めて研修なさったと思っております。だが、今のお話を聞くと、やはりその以外からも職員を得なければならない、そして適当な職員がいないということなんでございますが、私はかねがね委員会において、またじかに局長にもお話しましたけれども、これはそういう、くさみといったらあれですけれども、刑務所なんかで刑務所の囚人を扱ったような者に私は売春婦を扱わしてもらう、あるいは少年院におるところの少年を扱わしてもらうというその考え方が、私はどうしても納得できない。これはどろぼうじゃないんですから……。それは売春いたしておりますのは、いたした者については私ども、五条違反は縛ろうということに、それはここできめて、ここで法律を作ったことで、それは女性の立場から私は非常に残念だったんです。だけれども、それもやむを得ない。けれども、千年以上の歴史を持って時にはもうおいらんというものはほんとうに羨望の的になっていた時代さえありますよ、女性の。そうしてあがめ奉ったものが、急転直下、私どもみたいな者がきゃあきゃあ言ってあれの反対者になった。これに対して私どもは、それは売春は悪なりとして罰する道は立てておきますけれども、ほんとうのところは、ここへ落ちてくる女性があってはいけない。あるとすれば、幸いですからこれを日本の母に育て直そうというのが私どもの念願なんです。そのことは局長さんにもよくわかっておると思います。そこで今、職員がないとおっしゃるけれども、職員は、私は、りっぱな子供を育てたおっかさんで教育に経験のある者、あるいは学校教育に経験のある者といったような人で、幾らでも私は願えば、それこそ無給で来る人もあると思います。私はあの際にも言いましたけれども、研修をおさせになるのに、その内容も、私はだいぶ調べております。けれども、ああいうことで今度の売春婦を指導しよう。売春婦の経験ある者を指導しようということは、少し的がはずれておるのじゃないかというように思っております。まあ今ここでそんなことを文句言っても仕方がございません。きょうの問題は、この建物をどうするか、あすこへ持つていくか、いかないか、おっしゃる通りに、あすこは関東医療少年院があるし、府中の刑務所がありますが、きのうもちょっとあの席で申しましたように、府中刑務所というのは日本におけるモデル監獄でございますし、それから関東医療少年院は、これはもうほんとうに日本一つしかない医療少年院、その他ございますけれども、あの式のものは一つです。ということで、土地の人が非常に協力していらっしゃるのです、口では困る困るとおっしゃるけれども。だから私はそういうところに、もし建物がよくて、ほんとうにここでたくさんの母を作り出すのだと  いうことになったら、私はあの土地の方は、ことにおっかさんたちは、どのくらい協力して下さるだろうかと思いますが、それを建てるには刑務所の近所ではいけない。どうしても場所を違えて、ほんとうにおっかさんを育てるところらしい場所を一つ選び変えてやっていただきたい。それから建物については、もうこれは法務省でこんなことをしたら、それを御破算にするわけにいかないものですか、私はよく知りませんけれども。私はどうしてもこの建物には反対です。
  147. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 刑務所の職員一をこの補導院の職員に充てたということについてのおしかりでございますが、実はこの前もちょっと御説明申し一−上げたと思うのでございますが、実はこの全職員が七十五名でございます。全職員七十五名のうち、全部が予算がついていないのでございます。新しく採用いたします職員につきましては六ヵ月分の予算しかついていないのでございます。従いまして、このずっと全期間にわたっての職員の数は十名と、それから常勤労務者が二十五名、これは九ヵ月分の予算がついておるのであります。従いまして、仰せのごとく、今までの刑務所の職員をこれに充てるということについては、私も実は反対でございます。反対でございますが、この刑務所の職員の中にも、婦人補導院の職員としてふさわしい者もおるわけでございます。そういう者を選抜いたしまして二十五名実は研修をいたしたのでございます。この職員は、刑務所の職員もございますが、少年院の職員あるいは鑑別所の職員で、非常になれた優秀な人たちだけをよっていただいたのでございます。これに特別な研修を加えまして、私もこちらの方でのいろいろ御審議の御様子もよくわかっておりますので、研修の際には、従来の刑務所臭をとにかくここで一擲して、新しい観点から、今後この売春対策としてのりっぱな先達となるべくみんなに実は要望いたしたのでございます。みなそのつもりで実はきておるのでございますが、私は、そればかりでなくて、今仰せのごとく、新しい観点から、ほんとうに教育に従事した方とか、そういうふうな経験をお持ちの宗教家等で、いろいろ指導をなすった御経験のおありの方もあるかと思うのでございますが、そういう新しい観点からの方々を募集いたしまして、そうしてこれにやはり研修をいたしました上で、ついていただきたいと思っておるのでございます。これは、ただいま申し上げますように、実は六ヵ月の期間しか給与の予算がついておりませんので、これから十分に採用いたしまして、人員を整えていきたい、かように思っております。
  148. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちょっと伺ってみたいのですがね。婦人補導院の必要であること、これはもう議論ないです。それから、構成員としてはどういうことにしなければならないかという点についても、今、宮城委員のお考え方ごもっともでありますし、また局長の御答弁もごもっともであります。本件は、そういうようなことよりも、この場所にこの補導院を置くことがいいか悪いかのこの問題を研究すればいいわけだ。  そこでお尋ねしたいのは、この請願者の言うのには、市立の第六小学校がある。この学校の門前にこういうものを置くことはなはだ困ると、こう言うのです。そこで、局長にお尋ねしたいのは、この場所以外には適当な場所はないのですか、あるのですか、まずそれを伺いましょう。
  149. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 実は、きのう府中の近くの耕転地その他をごらんになっていただいたのでございます。そこで、刑務所のすぐ近くに耕転地がございます。これが刑務所のすぐ近くというところは、どうしても刑務所と類似のものというふうな感じを持たれますし、われわれといたしましても、なるべくさような所から離れた場所を選定したいというところからこの場所を選定いたしたのでございます。従って、ほかに場所があることはございます。刑務所のすぐ前の官舎の前に、約七千五百坪ばかりの土地がございます。これはすぐ学校の前というわけじゃございませんが、すぐ見えるところにやはり学校はございます。たしか第一中学校だったと思いますが、それから先の方には高等学校もあるようであります。それからさらに、刑務所をすぐ出た所でございますが、細長い約三千坪ばかりの土地がございます。これは幅が非常に狭うございまして、ちょっと建てにくい所でございます。それからさらに刑務所のすぐ横に、これもやはり耕転地でございますが、約三千坪ばかりの所がございます。これも細長い所でございましてちょっと建てる余地のない所でございます。なお、この土地の選定につきましては、実は大蔵省の管財局の方にもお願いいたしまして、国有地をいろいろお世話願ったのでございますが、現在ではほとんどさような場所がないのでございます。従いまして、やむを得ずその土地ということに相なった次第でございます。
  150. 一松定吉

    ○一松定吉君 刑務所の前に広い地所がある、そこにこういう施設をすることは、補導院という性質にかんがみてどうだろうかと思う。ゆえに、この市立第六小学校の前にやむを得ず選定したのだ。こういうことになってくると、あなたの言うのは、刑務所の前よりも小学校の前の方がすべての点においていいというようなふうに聞えるのだ。この補導院をこしらえなければならぬことは当然のことであるし、また、その職員等について選定しなければならぬことも当然のことであるのだが、ただ問題は、小学校の門前にこういうのをこしらえるということ、それ自体がいいか悪いかの問題、これについて、設備をりっぱにするとか、構造をよくするとか、あるいはいろんな非難を受けないような施設をするだとか、人員を選定するだとかいうことによって、小学校の生徒に及ぼす影響というものが是正されるものではないということは、これは考えて選定しなければならぬわね。私どもは、そういう意味において、これをこの場所に設定することがいいか悪いかということを判断したいと思うのだが、私は、ほかの場所に、小金井町とか、ほかに学校のないところだとか、あるいはこういうような妙な感じを起させることのないような人家離れた場所に置くというようなことが、法務省に土地がなければ、その補導院をこしらえる土地を、他に交換するとかあるいは売却して、買い入れというような方法もあるのだから、これはよくあなたの方として考えなければならぬ。御承知通りに、これは別の問題だが、大阪のあの拘置所の問題で、最初は天満に置くことになっていたのに、地元民の反対を受けてそれから別所の地を選び、またも地元民の反対により都島に置くことになったが、これも反対を受けて、結局都島は、われわれの非常な説得によって、設備を完全にし、絞首台というものをほかに設けて、悲鳴を上げる声が外部に漏れないようにするとか、いろいろな条件をつけてあれはやったわけです。ことに小学校の門の前というのは、これは何と考えても、われわれは賛成できませんがね。だから、ほかにかえ地もないというのなら、どこか人里離れたような所で、こういうような完全な設備をすれば、その土地は繁栄して、その土地の人々は喜ぶようなことを、わざわざ苦労して小学校の前に持っていかなくてもいいと考えるのだが、その点についてのお考えはどうです。
  151. 青山正一

    委員長青山正一君) 簡単に。
  152. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) わざわざ小学校の前へ持っていかなくてもいいじゃないかという仰せでございますが、さような点もあるかと思います。ただ、私の方では、図面にお示し申しておりますように、実はこの地所のちょうど南西の方でございますが、約三分の一ばかりが小学校にかかっておるのでございます。図面にございますように、補導院を学校から離れた方に持っていきまして、その間を官舎その他で囲みまして、そうしてちょっと学校の方から見られないように今後作っていきたいというふうに考えておるわけでございます。従いまして、この施設がじかべたに学校の生徒なんかの目に触れるということのないように設計いたして、御了解を得たいというふうに考えておる次第でございます。
  153. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと宮城さんの質問の前に私から質問したいと思いますが、婦人補導院法案を可決した委員会はどこですか、内閣委員会ですね。その際に、その法律の中に「東京都府中市」に置くと、こう書いてあるのです。その府中市に置くということを書いてある結果、そこでこういうふうな問題まで進展しておるわけなんですが、どうなんです。これは東京都に置くというようなことはできないのですか、やはり市まで書かなければ工合が悪いのですか、そうなんですか。そうならば、府中市に置くというのは、あらかじめ府中市と了解をつけて、そして内閣委員会でそういうふうな説明をなさったわけですか、どうなんですか。それとも、たまたま法務省にそういうふうな関係の地面があったから、ここを補導院にして使うのだからということで、了解なしに、府中市と全然話し合いせずに、内閣委員会説明して、そして可決確定したと、こういうことになったわけですか、その点をお聞きしたいと思います。
  154. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) この法務省設置法の一部改正法案は、内閣委員会の方で御審議いただいたわけでございますが、これは行政区画を単位として書かなければなりませんので、どうしても東京都だけでは工合悪いわけで、市まで記載しなければならぬわけでございますが、で、府中市ということで通ったわけでございますが、これの法案を出すに際しまして、府中市の方の了解を取った上でやったかという点でございますが、これは事前には府中市の方には申し上げておりません。ただ、この法案が通りましてから御了解を受けに参ったわけであります。
  155. 青山正一

    委員長青山正一君) それならお伺いしますが、府中は、人口の点はどうですか、非常に緻密なところですか、どういうものですか、全般的に考えると。それから設置するに都合のいいところですか、いろいろ人間が非常に集まっておってちょっと、そういうふうなたぐいのものはちょっと困るじゃないかというような感情がその地元にあるのじゃないですか。その点一つお伺いしたいと思います。
  156. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 府中市の人口はたしか、私はっきり存じませんが……
  157. 青山正一

    委員長青山正一君) その人口じゃなくて、緻密の程度がどのくらい……。
  158. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 六万程度の市のように伺っております。割合、新興都市でございまして、住宅が割合多いように私感じております。この近くにも、刑務所を中心とした地区にも相当住宅が建っております。都営住宅その他が建っておるのでございます。商店街はおもに京王電車の近くが多いように考えております。住宅の近くでございますが、もう一つわれわれとして考えまするのは、これは新しく土地を選定いたしまして持っていくということ・は、なかなかむずかしいのでございます。従いまして、われわれといたしましては、やはりこのわれわれの持っております地所をまず考えざるを得ないわけでございまして、さような面からいろいろと摩擦を起す原因に相なっておる次第でございます。
  159. 青山正一

    委員長青山正一君) 先ほど局長から、人間をそのために配置しなければならぬ。そのためにどうしても宿舎とか、あるいはそういった施設とか、あるいは今年度の予算のためにこうだとかいうことは、これはへ理屈だと思うのです。ただできるところからやっていくというふうなことで、たとえば、栃木あたりに重点を置いてそれをやっていくというふうなことで、どうしても、たってやらなければならぬ——どうも府中の反対があるということは、先ほど棚橋さん並びに宮城さんもおっしゃっておるわけだが、納得済みでいろいろ折衝していくのだが、それがどうにもこうにもできないという場合は、いろいろ法律も変えなければならぬ点もある、こういうわけですが、その辺は一体どういうお考えなんですか。
  160. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) これは委員長の仰せのごとく、法律を改正していかなければならない問題でございますが、ほかのところに持っていってそこで建てるということでございますが、これも適当な場所がございますれば、これも考慮の余地があると思うのでございます。実は府中市の方からも、適当な場所があるからこれを見てくれというお話がございまして、きのうも実は見てきたのでございますが、四カ所ばかり見せていただいたのでございます。まだこの土地についてのその後の交渉はいたしておりません。ただ、われわれ見せていただいたのでございますが、こういうふうな土地につきましても、われわれも十分に検討いたしまして、そうして決定いたしたいと思うのでございますが、それにつきまして、やはり府中の方の御協力を得まして、十二分に考慮いたしたいと思っておる次第でございます。
  161. 青山正一

    委員長青山正一君) それは府中の内部ですか。
  162. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) いや、府中市外です。
  163. 青山正一

    委員長青山正一君) そうすると、その法律は改正しなければならぬ…・−。
  164. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) そういうことになるわけであります。そうしますと、ちょっと時間的の面が……。
  165. 青山正一

    委員長青山正一君) 時間的とか、そういうことはへ理屈です。そういうことはかまわない。吉原のどまん中あたりにそういうふうな設備を作るということを研究してみたことありますか、一つそういう点もやはり研究すべき必要があろうと思うのです。
  166. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私の最後に質問しようと思いましたのは、今、委員長と同じ趣旨でございましたから、その点はよろしゅうございますが、これは法律を変えることはたやすいことなんです。少し時間がたつかもしれないけれども。あの施設を完全にするのには、これから、それこそ一人もいないかもしれないが、何百人、何千人の大事な日本の娘たちをやり直すためには、一番最上のことをしていただきたい、私はこれを願っておきます。  それから、さっきこの五つぐらいなコッテージにしてみたいとおっしゃったのですが、私が申し上げておる家庭システムというのは、少し見当が違うようでございます。これは時間が惜しいから、私あとで局長室に参りまして少し申し上げたいと思いますが、どうかこれは少し考えていただきたい。場所的にも建物にもどうかお願い申し上げます。
  167. 辻武寿

    ○辻武寿君 あそこの土地は、建築基準法で住宅専用地区に指定されておって、ほんとうはあのような施設はできないというように聞いておりますけれども、これは御承知でやるわけですね。
  168. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) その問題は、実は府中べ参りましたときに、地元の方々からお話があったのでございます。これは建築基準法に基きますと、この住宅専用地区につきましては、いろいろ制限があるようでございます。寄宿舎その他のこれに類するもの、これは設置が可能でございます。それから学校、図書館、その他これに類するもの、これもやはり設置が可能でございます。かような趣旨から申しまして、この建物は、われわれといたしましては再教育の施設として運営いたすわけでございますし、ことに、ここには常時収容者を収容いたしまして、それの生活指導もいたしていくわけでございますから、大体ただいま申し上げましたような範疇に属する建物として私は許さるべき建物だと、かように考えておる次第であります。
  169. 辻武寿

    ○辻武寿君 まず学校のあまりにもまん前過ぎるということですね。それから、おれたちの住宅にするのだというふうな市民の人たちが思い込んでおるところに無理に建てるということは、私はちょっと、なかなか今後も説得ができかねるであろうし、できかねるということは語弊があるかもしれませんが、困難だと思います。そこに無理に建てると、その寮に入れられている人たちが出て買いものに行く、そういうときにも、あいつはパン。ハンだ、やれ売春婦だということを言われて、なかなか建てた効果が減殺されるのではないかと思うのですよ。  もう一つ最後に申し上げたいことは、婦人補導院というものは、私は個人指導が必要だと思うのです。あそこは団体訓練をやるところではないと思う。そこへもっていって大きな建物を作る、人目を引きやすい、そこへ一ぺんに入れていろいろ訓練をされる。また、いかにも入れられているのだ、押し込められているのだというような雰囲気が出てくると思うのですよ。それよりも、宮城先生もおっしゃっていますように、都営住宅のような簡単なものでもいいと思うのですよ、幾つか建てて−人件費が非常にかかるようなことをおっしゃっていますけれども、何千万円もかけて大きなりっぱなものを作る必要がないから、簡単な簡易住宅でもいい、都営住宅でも作って、そうしてそこでほんとうにあたたかみのある家庭生活を経験させて上げるということが私は大事じゃないかと思うのですよ。その点、局長さんももう一ぺん考えていただきたいと思うのですね。
  170. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件をいかが取り扱いましょうか。
  171. 大川光三

    大川光三君 本件の請願の願意はきわめて妥当であると思量いたします。しかし、先ほど当局の御説明にもございましたように、いましばらく地元の皆さんに御了解を得る期間を置くことと、いま一つは、設置法の関係もございまするし、かつまた、かりに現在の場所を変更するとしても、府中の市内、あるいはその他において、場所の選定について地元の協力を得なければならぬと、かように存じまするので、本件請願は保留すべきものと思量いたします。
  172. 青山正一

    委員長青山正一君) 皆さんの御意見はいかがですか。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  173. 青山正一

    委員長青山正一君) よろしゅうございますか。——それでは、保留することに決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時十三分散会