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1958-07-05 第29回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月五日(土曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員山本經勝君辞任につき、その 補欠として吉田法晴君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君            中山 福藏君    委員            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            鈴木 万平君            西岡 ハル君            阿具根 登君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            吉田 法晴君            竹中 恒夫君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    通商産業省石炭    局長      村田  恒君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    通商産業省公益    事業局長    小出 栄一君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (炭鉱災害に関する件)  (御母衣ダムにおける落盤による災  害に関する件)  (炭鉱災害対策に関する決議の件) ○連合審査会申入れ撤回の件   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) これより社会労働委員会を開きます。  委員異動を報告いたします。  七月五日付をもって山本経勝君が辞任し、その補欠として吉田法晴君が選任されました。   —————————————
  3. 久保等

    委員長久保等君) この際お諮りいたします。七月三日決定いたしました経済基盤強化のための資金及び特別法人の基金に関する法律案について、大蔵委員会連合審査会開会の申し入れば、都合により、これを取り下げることといたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  5. 久保等

    委員長久保等君) 高碕通商産業大臣から発言を求められています。これを許可いたします。
  6. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 昨日本委員会開会されておる間にもかかわらず、私は、私の行方が不明だというようなことを聞きまして、私はまことに遺憾に存ずる次第でございます。私は、衆議院といわず、参議院といわず、この委員会は、私の時間の許す範囲におきまして出席いたしまして、委員諸君の御意見を承わりたい、また私の所存も申し上げたいという観念でおるわけなんでありますが、ちょうどきのう本会議がございまして、本会議出席後、通商産業省といたしましては、今日輸出振興ということが非常に大事な問題でございまして、その内容につきまして、省内におきましてその点につきましていろいろ協議をいたしておったのであります。いろいろ協議関係上、場所を省内からかえてやっておりました。ことに四時から五時までの間は、ぜひ私の意見を聞きたい、こういうことでありまして、私は初めから予定しておったわけです。そちらの方に回っておったのであります。それがどうも私の方の内部連絡がよくとれなかった結果、はなはだ当委員会に御迷惑をおかけいたしましたことは、まことに申しわけない次第でございます。今後連絡を十分とることにいたしまして、再びこういうことを繰り返さないようにいたしますから、どうか御かんべんを願いたい。  ここで一つ、私の昨日における行き違いを弁明さしていただく次第でございます。よろしくお願いいたします。
  7. 阿具根登

    ○阿具根登君 冒頭、通産大臣釈明をされましたので、出鼻をくじかれたような感じがするわけでございますが、四時から五時までと言われる時間はわかりますが、その前からすでに委員会は開かれておるし、委員会を開く前から、通産大臣には相当強く出席を願っておったはずです。しかも、きのうの委員会では、通産大臣の所管の問題でございます。それも商工委員会があっておるならいざ知らず、商工委員会もあっておらない。なおまた、商工委員長の方には、久保委員長の方からもその件を申し入れてあった。それでは、一時から始まるのに、四時までの間でも出られるはずです。私は、きのうの問題をどう考えてみても、大臣が忙しいということはわかります、わかるけれども国会末期です。御承知のように、政党人であり、政治家であるならば、国会末期はどういう忙しいときであるかということは、百も御承知のはずです。しかもそれが国会に出られなかった。しかも、あなたの側近の者が行く先がわからなかった。こういうことは、私はどうしても納得できない。そういうりっぱに、貿易問題で四時から五時まで話があるなら話があるということは、これは当然わかっておるはずです。だれかが作為的にあなたに知らせなかったのか、あるいは作為的にあなたの居所が隠されておったのか、いずれかでないならば、あの日は本会議もあるようになっておりましたよ。私が本会議緊急質問をやるようになっておった。本会議にさえも出られぬじゃないですか。本委員会はきのうで終るはずであった。きょうわざわざ委員会をまた開いてもらって、これだけの人があなた一人のおかげでここまで待たされた。これは、国会を軽視されておる証拠です。きのうだって、それじゃ本会議にも出られないつもりだったですか。きのうは、きのう本会議でやるように、ちゃんと議運でもはっきり両党間の話し合いも済んでおった。それを委員会でやりましょうということになって、忙しいであろう大蔵大臣も一時間近く御出席を願った。その最も主管大臣である大臣が、私は大臣だけを責めるのでございませんが、今までのような習慣でいかれるならば、こういうことが繰り返される。長期間の中の中途でそういうことが一、二あるということは、これはわかります。しかし、短期間の国会で、しかも最終日大臣の行く先がわからなくなったというならば、それは、あなたの直接部下は、広報課長は何をしておったか、こういう人たちに対する処分をどうしますか。わざわざ一日ここに開いて、きのうで本問題は終るはずだった。また労働委員会の仕事もあるはずです。それをあなたの行方不明のためにこういうことになったという責任は、大臣釈明だけでは私は納得できない。どういう方法をおとりになりますか。あれだけ与党の理事も野党の理事も一生懸命かけずり回っていたけれども、全然わからぬじゃありませんか。一時から五時までわからぬじゃありませんか。私は、これは何か作為的なことをされておると思う。そうすると、今まで何の場合でも、ここで質疑応答がかわされたらばそれで終ってきておる。これだから、いつまでたってもこういうことが繰り返される。きのうの問題について、処分すべき者は断固処分してもらいたい。どういうお考えであるか、一応承わっておきます。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今のお話でございますが、これは、内部の統制が悪かったということは、まことに申しわけないわけであります。一時から四時までの間は、私は、もちろん本会議があれば出ることは考えておりました。衆議院の本会議にも出席したようなわけであります。四時から五時までの間につきましては、私は、私の居所がわからなかったということにつきましても、これは連絡が悪かったということは、よく私は存じております。二人の秘書官のうち、一人は私についておる。もう一人の秘書官連絡がつかなかった。これは、私も責任があると存じます。しかし、一時から四時までの間につきましては、これは決して故意でやったことでないということは、ここではっきり申します。この連絡がつかなかったということは、これは私は、責任者は当然よく譴責し、今後再びこういうことがないように努力いたしたいと思っております。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 その点はそれでいいんです。そうすると、大臣は、委員会があって、当委員会出席を要求されていたということは御存じでございましたか。お尋ねいたします。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それは、実際私には連絡なかったわけであります。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はそうだろうと思うんです。だからこういうことを言うんです。そうすると、大臣の意思に反して、あなたの側近の人は、あなたに何も知らしておらない。これは、前日からわかっていることなんです。昨日じゃないんです。その前の日からわかっているんです。その前の日から、昨日の午後一時から、この炭鉱災害の問題については、通産大臣主管大臣であるから、いかなることがあっても通産大臣に出てもらいたいということを、はっきり委員長から申し入れてある。また、委員部の方からも申し入れてある。それを聞いておるあなたの側近が、昨日に至るまであなたの耳に入れておらなかったということは、職務怠慢もはなはだしい。国会軽視もはなはだしい。そういう事務官があなたの下におる限りにおいては、国会はスムースにいきません。この暑いのに、これだけの人間がわざわざきょう一日つぶしているじゃないですか。あなたの耳に昨日の一時から委員会の始まるのが入っておらなかったということは、私はもってのほかだと思うんです。委員長にも、特にその点お願いしておきます。本来ならば、その人の釈明を聞きたいと思うんだけれども事務官をいじめるのは商売じゃないから、委員長として、断固たる処置を申し入れてもらいたい。通産大臣としても、これは大臣が知らなかった、教えなかったという責任は、きわめて重大だと私は思うんです。これは、この委員会できまっておる委員会決定事項を、一事務官が勝手に処理しておったということになれば、これはきわめて大きな私は責任問題だと思う。これをどういう責任をとられるか。あとではっきり、どういう処分をしたということをお知らせ願います。
  12. 久保等

    委員長久保等君) ほかに御発言ございませんか。  それでは、委員長からも、特に通産大臣に申し上げておきたいと存じます。昨日の経緯については、今、阿具根委員からも種々お話がございましたが、当委員会といたしましても、昨日の社会労働委員会一日で終る予定でございました炭鉱災害の問題が、本日さらに一日、社会労働委員会を余計開かざるを得ない結果になったわけでありまして、まことにその点、遺憾に存じております。今後かかる事態の再び起きないように、十二分に一つ注意を願いたいと存じます。この点一つ通産大臣に、当委員会を代表いたしまして、委員長からも御注意をいたしたいと存じます。   —————————————
  13. 久保等

    委員長久保等君) 労働情勢に関する調査の一環として、炭鉱災害に関する件を議題といたします。  御質疑を願います。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 まず大臣に、燃料政策についてお尋ねをいたします。  政府が新長期経済政策を樹立されまして、そうして燃料対策については、本年度五千六百万トン、昭和五十年度七千二百万トン、その他の問題をきめておられますが、この最近一、三年間の実績を見てみますと、昭和三十年度は、四千三百万トンに対して四千二百五十一・五万トン、九九%の出炭がなされております。そうして貯炭量が三百七十一万三千トン。昭和三十一年は、四千八百万トンの計画に対して四千八百二十八万一千トン、一〇〇・六%の出炭率である。貯炭が三百三十二万一千トン。昭和三十三年度は、五千二百七十万トンの予定に対して五千二百二十五万トン、九九・三%の出炭があった。貯炭量が七百四十九万二千トンとなっている。昭和三十三年度におきましては、五千六百万トンの計画が立てられている。これに、五月現在で、業者の手元に三百十五万トン、大口需要者の手持ちが五百一十万トン、合計が八百三十五万トンの膨大な貯炭を見ております。これは、この三年間を見てみても、ほとんど政府計画をした、政府経済計画に乗った出炭がそのまま百%実施されている。政府の言うままに百%動いたために、八百万トンからのこの五月に見ても貯炭ができている。そういう膨大な貯炭を見たために、中小炭鉱は今度は投げ売りをやり出した。これだけの膨大な貯炭があれば、そうしなければ中小炭鉱はやっていけない。そうすると、低い値段で乱売をする。これは、高碕大臣は商売人ですから、専門家ですから、御承知のように、安い値段で売るならば、多くの品物を量でさばく以外にない。だから、ますます量でさばこうとする。そうすると、そのしわ寄せは、労働者に非常に大きくしわ寄せされていく。こういう悪循環が繰り返されているのです。そうなってきて、今度は大手筋は、それでは炭価を乱されるので、大手筋自体中小炭鉱の炭を買い取ろうと、こういうことを言い出した。きょうの日経でも見てみると、今度は大手筋は、ストやその他の問題で、これに二十億くらいの金を出して買い取るような機関を作りたいと言っておったのができないようでありまして、今度は、通産省の方では、それを見越して、二十億くらいの金を出して、買い取り機関を作ろうということを言っておられる。一応私は、その計画はいいと思うのです。しかし現実は、それを可能性のないことだということが言われている。そうなりますと、今の計画でいって、実際政府計画したように、需要と供給がバランスがとれるかどうか。これは、燃料計画を一応検討しなければならないところに来ているのではないか。特に炭鉱は、御承知のように、きょうたくさん製品を出して、あした少く出すというようなことはできないのだ。ほかの産業と違うのです。一応その増産態勢をとったならば、それはあくまでそれで行く。一応減産態勢をとったならば、なかなか上界しない。ところが、今までのやり方を見ておっても、政府の音頭によって増産計画を立てれば、必ず石炭は余るようになっていく。減産態勢をとれば、必ず石炭は足らぬようになっていく。これが今までずっと五・六年間の統計を見てごらんになればわかるように、政府の言ったことを聞けばばかを見る。政府は何も知らぬのだから、政府の逆を行けばもうかるだろう、こういうようなことさえ言われている。こういう計画に対して、政府はどういうお考えをお持ちになっておるか、今後どういう政策を立てようとお考えになっておられるか、まずこれから御質問を申し上げておきます。
  15. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 石炭計画につきましては、ただいまお説のごとく、三十三年度五千六百万トン、これを五十年度に七千二百万トンに上げていこう、この方針は曲げないつもりでございます。ところが、日本の現在のエネルギー消費量というものは、まだまだ大きな勢いで伸びていくわけなんであります。それで、石炭の方は大体そのただいまの方針で進んでいきますが、その間におきまして、その他の輸入資源、つまり石油あるいは輸入炭等をもちまして、日本の現在の石炭計画にはできるだけ狂いを生じないように、安定せしめていこうというのが今日の方針でございます。ただいま御指摘のごとく、本年平均にして貯炭が大体私ども方針では六百五十万トンあれば正常の貯炭と存じておる次第であります。それを上回る、八百三十万トンという貯炭を生じましたことは、これは二つの原因がございまして、御承知通り、昨年豊水のために、電力会社消費が、正確な数字は存じませんけれども、かれこれ二百万トンばかりの消費減を来たしております。その上に、まあ今日の日本経済状態が全面的にへこんで参りましたので、そこで石炭消費も減り、そこでこれだけの貯炭が生じたというように私は存じております。それの対策といたしまして、これは通産省が申し出たのじゃありませんが、よく話合いいたしまして、大体今年は五%くらいの減産は必要じゃないかというようなことになっております。かたわら、この今後の推移によりましては、輸入資源を、エネルギー輸入をある程度チェックいたしまして、できるだけ石炭鉱業を安定した産業に持っていきたいというのが、ただいまの方針でございます。  なお、詳細のことにつきましては、石炭局長から説明をいたさせますが……。
  16. 村田恒

    説明員村田恒君) ただいま阿具根委員の御指摘通り、これまでの実績が、非常に生産業者の努力によりまして、計画を完全に遂行されていく。すなわち、昭和三十年度におきましては九九%、昭和三十一年が一〇〇・六%、三十二年におきましては九九・三%、こういう、計画に対するりっぱな遂行率を遂げておるわけでございます。ただ問題は、御承知のように、長期計画と、それから短期的な、一時的な景気変動というものに対することとのその矛盾でございます。石炭鉱業のように、特に生産弾力性が乏しいところは、一どきに増産しろと言われましても、相当の期間をかけなければ出炭はできない。また、急激に生産を減らせと言われましても、これは膨大なる労働人口を抱え、同時に莫大な設備を抱えております関係上、急速にこれが出炭減ということは、簡単にできないわけでございます。  そこで、しかも一方国際収支の上から申しまして、昭和五十年度におきます国内の総エネルギー需要というものは、まず七千キロカロリーの石炭に換算いたしまして、二億七千六百万トンの需要があるのだ。その場合に、一体輸入エネルギーというものはどのくらいの比率を占めるかと申しますと、トータルの需要の中に対して、四八%の需要エネルギーを入れなければならない。これは、第一次的な需要エネルギー輸入に対して十五億ドル程度の外貨を使うということは、これは大へんなことだと思われます。その意味におきまして、先般樹立されたところの新長期経済計画におきましては、昭和五十年度国内炭を少くとも七千二百万トンの出炭を行うということが決定されました。現在われわれといたしましては、その昭和五十年度の目標に対しまして、各年度別出炭計画を出して、これを進めて参ったわけでございます。その結果、ただいま御指摘のように、本年度におきましては五千六百万トンの出炭態勢、そういう態勢というものをとっておるわけでございます。しかしながら、なぜこういう体制をとったかと申しますと、そういう体制をとっておかなければ、昭和三十七年なりあるいは昭和五十年におきまする伸びというものは確保できないわけであります。その意味におきまして、昨年度わずか三十八億円の開銀投資しか見られなかったものが、本年度約百億の設備投資を見ておるわけであります。この設備投資の対象として考えておりますものも、ことごとくこれは積極的に合理化が進み、あるいは積極的な将来の七千二百万トン出炭に対する役に立つような工事だけをねらって開銀資金を投入するようにいたしております。ところが、そういうような態勢は整えておりましたのですが、残念ながら、ただいま大臣から申しあげましたように、昨年度以来の異常な豊水のために、二百万トンの電力におきまする消費が減退いたしまして、また一般的に、鉱工業生産もきわめて低滞気味でございまして、そのために、炭労のストライキによって百五十八万トンの減産が行われたにもかかわらず、なお貯炭正常貯炭を上回っておるわけであります。これに対しまして何らかの措置を講じなければならないということを考えまして、これは応急措置ではありまするけれども、同時に、今申し上げましたように、石炭鉱業というものが生産弾力性に乏しい、景気変動に対して、それに対応する力がきわめて弱いという特殊な観点から考えまして、貯炭能力を、特に石炭需要する部門貯炭能力をふやしていこうということを今考えております。すなわち、現在石炭の一番大口需要部門でありまする電力部門におきまして、約百万トンの貯炭能力を引き上げてもらいたい。現在電力業界が全国で持っております貯炭能力は、約二百二十万トンでございますが、これを一つさらに百万トン引き上げて、景気のいかんにかかわらず、百万トンだけのプラス・アルファの貯炭というものをかえてもらいたい、こういう構想をもって、本年度九州地区石炭について五十万トン、北海道を中心にいたしまして五十万トン、それだけの貯炭共同貯炭場電力で持ちます共同貯炭場というものを設置しますように、これに対しまする財政投融資も考慮しながら、現在その計画電力部門に頼んで進めておるわけでございます。この計画が完成いたしました場合には、必ずこれだけの貯炭能力は百万トン引き上ると思うのでございます。それから、いま一つは、それにもかかわらず、なお筑豊、北九州中心にいたしました中小炭鉱は、苦しいときにはどうしてもこれはダンピングをいたします。このダンピングをいたしますことによって起ります、経営がつぶれ、あるいはそれによって労務者が離散するという問題は、これは防止しなければならない。と同時に、ダンピングというものが出ますことによって、市場が著しく撹乱されるわけでございます。これらを防止するために、石炭業界大手といたしましては、まず自己防衛のために、それらダンピングをすることが確実と見られる石炭を、ある程度の自分の負担においてこれを買い取っていくという方策を始めたわけでございます。買い取ります場合は必ず金が要ります。その金の心配を、私どもはいろいろ日銀その他と折衝してやって参りました。その結果、先般、これは五月二十九日の経済閣僚懇談会におきまして、昭和三十三年度石炭需給施策についてという閣議決定をしていただきまして、この中で、この今当面しておりまする貯炭に対しまする貯炭金を見てもらいたい、その金額は、下期におきまして九十三億円を出す、こういう、これはワクがきまっておるわけではございませんが、一軒々々それぞれ市中銀行を通じて融資を受けるような仕組みになっておりますが、これを閣議できめていただきまして、私どもとしては、国会にも説明に参り、また日銀当局にも説明に参りまして、日銀からは、各支店にその指令を出してもらったわけでございます。現在まだ相当な金額にはなりませんが、少しずつはこの金融のあれが乗ってきているという報告を聞いております。しかし、これだけでは足りないのでございまして、そういう市中金融に来りますものは、大手炭鉱並びに中小炭鉱でもAクラス炭鉱についてこういうことは適用されるわけでございます。しかしながら、Bクラス以下のほんとうの零細な、北九州にありますような零細な炭鉱につきましては、これらの純然たるコマーシャル・ベースに基いた金融というものになかなか乗らないわけであります。その意味において、新しく私どもは今研究を進めて、どうしてもやりたいと考えておりますのは、商工組合中央金庫からの二十億の金融でございます。この二十億の金も、これを出してもらえるところまで話をつけました。残るところは、その金を受け入れていく態勢、すなわち商工組合中央金庫としましても、これはどうしても返済に対するある程度の保証というものが必要でございます。向うが納得するような保証を取りつけるための態勢というものをどうするかという点につきまして、商工組合を結成するか、あるいは事業協同組合を結成するか、こういうことにつきまして、今私ども研究いたしておりますが、業界としても、この二、三日中にもう結論を出すところまで研究が進んでおります。  大体貯炭対策につきまして、現在やっておりますところを御報告いたしますと、以上の通りでございます。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 貯炭対策は一応わかりましたが、私が懸念いたしますのは、たとえば、先ほどの通産大臣のお考えのように、今年は五%減産をするのだ、こういうことになってくれば、あくる年は何パーセント増産、そうすると、そのためにはやはり人も入れてくるでしょう。ところが今度は、雨が降れば五%減産だ、そうなると、その五%減産分の人が職場を首を切られていく。だから、炭鉱職場というものは一つ安定性がない。そうしてこういう貯炭対策も、お聞きいたしますと一応わかりますが、炭鉱に関する限り、相当な金融その他のあっせんもやっておられるが、ほとんどそれは、業者だけの利益になるやり方になっていると私は思うんです。たとえば、今のようなやり方でおやりになれば、これは業者の思うつぼで、業者はこれを炭価引下げ防止にのみ使う、私は、こういうことになると思うんです。そうすれば、業者は、政府の力を借りて、金を出してもらって、それで石炭を集めておいて、自由に石炭値段をつり上げることもできる。自由に自分たちが思うような価格を作定することができる。そういうことになってくると、やはり経済撹乱の一つにもなってくる。だから私は、これだけの貯炭計画をするならば、その貯炭計画に対しては、政府として、断固たる考え方をそれに織り込んでいって、監督その他の責任を持たなければ、業者だけを喜ばせる結果になってくる。こういうように思うんですが、これに対して、何か政府としててこ入れを考えておられるか、こういう点について一つお伺いいたしたい。
  18. 村田恒

    説明員村田恒君) 仰せの通り、企業の経営の根本が絶えず動揺しているということは、労働者に最も困る不安を与えるものでございます。その意味におきまして、ややもすれば今まで世間から石炭鉱業が批判を受けて参りましたのは、景気のいいときに非常にばかな値段で売る、一期景気が悪くなると、山を閉鎖して逃げてしまう、こういうような悪口が、私はこれが必ずしも当っていると思いませんが、そういう一部に批判があるわけでございます。私は、こういう批判というものを石炭業界から除き去ってしまう、払拭してしまうということは、私ども政府責任であると思っております。その意味におきまして、先ほど来申し上げました長期エネルギー計画長期経済計画というものは、将来国内において七千二百万トンの出炭をやり、外貨負担を軽減していくという理想を持ちながら、同時にこれは、大幅な増産によって極力コストの低減をはかる、そういうことによって、景気の上り下りにかかわらず安定した経営をさせる。すなわち、非常にもうかりはしないけれども、またつぶれてしまうというようなこともないように、安定した経営を行わしめる。それによって労働者の立場というものも、これが安心して操業できる、こういうふうな態勢を目標としているわけでございます。また、その意味におきまして、幾ら尾を確保いたしましても、高い石炭であれば、現在の態勢におきましては、需要者側はこれを買わないわけでございます。安いエネルギーを使った方が有利なのであります。これを強い力をもって国内の高い石炭を使えということは、非常に困難な問題を含んでおるわけであります。そのためには、どうしても石炭鉱業が生きていくためには、毎年々々炭価を引き下げていくということは、決定的の必要があるわけであります。ただ、そのてこ入れといたしましては、現在石炭鉱業合理化法に基きまして標準炭価制度がございます。こういう標準炭価制度それ自体につきましては、まだそれが貧弱であるという御批判を受けると思いますけれども、現在まだ公定価格制度というものは実施いたしがたい段階かと思います。すなわち、配給統制を伴わない価格統制というものは、混乱を招くだけのものではないかと思います。その意味におきまして、現在の段階におきまして、この法律に基いて決定いたします標準炭価制度、これを極力運用することによって毎年々々炭価を引き下げていく。炭価を引き下げるためにこそ、百億の開銀の融資もあるわけであります。合理化のための設備投資というものも、大幅に毎年石炭鉱業に投入することによって、逐次炭価の軽減をはかるというのがわれわれの方針でございます。
  19. 阿具根登

    ○阿具根登君 御趣旨はわかるのですが、炭鉱の実際置かれておる立場からお考えになって、炭価は引き下げる、そうしてこれだけ膨大な貯炭処置で吸収していく、こういうことになって、そうして実際の経済面が立ち直っていくであろうか、こういうことを考えてみる場合に、通産大臣等もお考えになっておると思うのですけれども政府の一、二の方の話を聞いていても、石炭産業労働者は、毎年々々ストライキばかりやっている、こういうことを言われている。私は、今後質問でそれに触れていくのでございますが、そういたしますと、外国と日本のあり方を考えてみる場合に、それでは日本炭鉱労働者は外国よりも恵まれておるであろうか、そのために炭価が高くなっておるのであろうか、こうして見る場合には、これは、御承知のように、アメリカの十分の一、アメリカと比較する必要はございませんが、ドイツに日本労働者が百八十名も行っておりますので、これが一番石炭局でもおわかりと思うのです。日本の倍額以上の給料をもらっておる。こういう点から考えてみますときに、給料は他国の三分の一ないし二分の一、災害は他国の二倍ないし三倍、こういう結果から考えてみて、日本炭鉱業が、私企業ではもう限界が来ておるんじゃないか。私企業で限界が来ておる。私は、今石炭局長が御説明になったことをうのみにいたしておりますが、これを全部数字をはじいてみても、これは、石炭業界が明るくなるというような私は完全な措置ではないと思うのです。もうすでに、日本炭鉱と外国の炭鉱と見比べた場合に、日本炭鉱をこれ以上どれだけ機械化されるとしても、これはわずかなものです。中小炭鉱がこれだけ多い日本の企業です。一年間に六百数十人死んでおります。きのうも申し上げたから、あまり申し上げたくないのですが、数字をはっきり申し上げてみますと、終戦後十三年間で死んだ人が一万二百二十二名、死んだ人ですよ。重傷者が三十六万三百八十七名、三ヵ月以上の重傷者です。それから、二百以上治療を要する軽症者が七十七万七千九百七十一名、合計して百二十万八千五百三十一名、こういう数字が出ております。これは、宮崎県の総人口にも匹敵するわけです。これだけの災害を出しておるわけなんです。こういう大きな災害を出しておる。しかも、中小炭鉱では、ほとんど十一時間、十三時間坑内で勤務いたしております。これは、労働基準法をはるかに上回って破っている。そうしておいてまだ炭価が高い。日本石炭は高いので、非常にやっていけないということがいわれておる。しかも、それを援助するかのごとくに、業者には相当な資金を出しておられる。炭鉱を始めれば、三年間税金がかからない。炭鉱を始めるというだけで、鉱区を持っただけで、何億という金がころがり込んでいる。あまりにも原始的な考え方ではないだろうか。日本国内石炭が先願主義で、勝手に身分のものにきめられてしまう。最初に先願したものが、何でもない日本石炭を自分のものとして、その権利金だけで数億円になってくる。こういうようなあり方で行って、政府の皆さんが考えられておるようなことができるか。私は、もう私企業としての石炭業は限界が来ておる、かように思うのですが、特に造詣の深い通産大臣にお尋ねを申し上げます。
  20. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 仰せのごとく、日本炭鉱労働者が、海外の労働者に比して、きわめて低い生活程度に甘んじなければならぬということは、まことに遺憾に序ずる次第でございますが、石炭業全体を見まして、アメリカ、ドイツ等に比較いたしまして、日本石炭の賦存状態が天恵に恵まれていないということは、これは一つのおもなる理由でございまして、いろいろ経営者、従業員等が十分の努力をいたしましても、なおかつ彼らの生産原価に合致できない、こういうのも事実でございます。結局は、この貧弱なる資源をいかにして開発して、そうして日本石炭鉱業を安定せしめるかということに、官民ともに努力いたすべき要点がそこにあると存ずるわけであります。この結果が今日のごとく多数の犠牲者を出す。あるいは、悪くいった結果が労働者側にのみしわ寄せられるというようなことになっては相済まない。こういうので、政府は年来努力して参っておる結果、ようやくにしてこの災害の方も、昨年度あたりの死亡者の数を見ましても、昭和二十五年が二十人だったものが、三十二年には十二人六分になっており、多少ずつ低下しております。けれども、なおかつこういうようなことはできるだけないようにしなければならぬということに努力いたしておりますが、最近に起きましたこの災害等につきましても、政府は非常に責任の重大さを感じまして、この対策を講じておるわけでありますが、いずれにいたしましても、現在日本石炭というものが、海外に比して悪条件であるけれども、これに打ち勝っていくためには、どうしても合理化も行い、燃料の資源をひとり海外だけに仰がないで、ある程度日本の国家の国内資源をもってまかなっていくという点から考えましても、これは何としても、官民ともに力をあわせて、この安定策を講ずるということの方針をとっていくほかに道がないと存ずる次第であります。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 数字をはっきり覚えておりませんが、日本石炭の埋蔵量は、約四十六億トンと私は記憶いたしております。全日本石炭の埋蔵量が四十六億トンある。そうしてそれを、三井、三菱、古河、北炭等の大手筋がこのうちの二十五億トンは握っておる。こういうことをいわれておるわけです。そうすると、手のつかない膨大な石炭の層が日本の各所にあるはずです。それを一部の人がちゃんと握って、絶対だれも手がつけられぬ。何十年分も百年分もちゃんと手をつけられずに残っている。ところが今度は、片一方では、網の目のように掘り尽してしまったそのあとをむぞうさに通産省が許可されておる。だから災害が絶えない。こういう非常にアンバランスができておる。これは日本国のものです。国民のものであるはずです。それを一部の人は、何十年分も手もつけられないような鉱区を握っておる。こういうところに大きな矛盾があるのではないか。政府として対策考えるべきじゃないか。掘り尽してしまうて、そうしてわずか一尺くらいの石炭の層を掘るのに、坑内夫を入れて、そうして非常な被害を出しておる。こういうことを考えてみる場合に、抜本的な考え方を出さなければ、私は、こういうものを助けることはできない、こう思うのですが、その考え方については、どういうお考えをお持ちでしょうか。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、今日いろいろ災害の問題を起しております原因はどこにあるかと申しますれば、もはや掘り尽されたる老朽の炭鉱に、中小鉱業者がいろいろ力を加えて無理をしておる。その結果であるということもはっきりわかっておりますから、できますれば、その方面に働いておる人たちを未開発の、もっと開発しなければならない炭鉱の方に力を注いでもらって、そちらの方の採炭をふやしていく方が当然いいことでありまして、古い炭鉱につきましては、あるものは、よく検討いたさなきゃわかりませんが、現在の経済情勢においては、もはや経済的にぺーしないというものが相当あると思うのであります。で、そういうものにつきましては国としても何らかの方法を講じて、これを処理してしまう。そうしてそういう方面に従事しておる人たちを未開発の方に振り向けたいというのが今日の方針でございますが、さて、未開発の方に振り向けるということになれば、ある特殊の人たちがこれを占有してしまって、入るチャンスがないということは、これは最も悲しむべき現象だと存じまして、そういうことにつきましては、よほど今後政府といたしましては考慮していきたい、こう存じておるわけであります。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣が言われたように、ぺーしない炭鉱を許可されておるのが通産省なんです。通常であったならば採算の合わない炭鉱なんだ。それを合理化法案ができた当時、三百万トンの石炭を買いつぶさなければできないというような時期に至ってすら許可されておる。ぺーしないのを引き受けて掘る業者は今時分おりません。それを採算が合うようにするために、悪条件で、保安設備もなしにやる。そうして一つ災害があった場合に、それに対する対策を何ら持っておらない。ただ石炭業者は許可を受けて、着炭するまでの金があったならば、あとは何とかやっている、こういうことがいわれております。そうしてその間に、税金のかからない間にうんともうけてしまえば、それから不況になれば、いつでも軽々しく山は捨てられる。もうそれだけの仕事はできておる。こういうことがいわれておる。だから、専門的に皆さんが見られて、これは採算の合わない、危険だというような所に対しては、一切許可をしないことが先決であると思う。とこが、私どもが見ても、こういう山でというような所で盛んに働いておる。そうして災害があったならば、あとは手が出せないでおる。たとえば、本年五月八日の日曹赤井炭鉱の災害においても、まだ死体が二体残っておる。その二体の死体を、もう出すことはできませんということで、遺族も涙ながらにこれを認めてしまった。東中鶴は十八名です。あまり問題が大きいから、これを手をつけた形にしておる。しかし私は、どうもまだ当分出ないと思う。もう七ヵ月になります。きのう申し上げましたから、あまりダブることは言いたくないんですが、もう骨だけですよ。そういうようになっても、これは何も手を打っておられない。打つといっても、七ヵ月もたったら坑内は崩落してしまって、非常に危険度合いも大きいし、作業がおくれることは当然のことなんです。そうすると、こういう場合に、政府はどういう手を打つべきであるか。たとえば許可する場合に、もしもそういう危険な問題があった場合、それに対処するだけの資力があるか、設備があるかというのを調べられたことがあるか。一切ないはずです。そういう炭鉱にもしも水が入った場合に、ポンプの設備があるか。一つもないじゃありませんか。水が入ってくれば、よその炭鉱に一生懸命借りに回っておる。よその炭鉱だって、自分のところに使うポンプぐらいしか準備しておらない。故障だらけのポンプを貸しておる。パイプは、四インチがある、六インチがある、八インチがある。なかなか合わない。だから、早急に手当ができない。そうすると、だんだんバレがひどくなってくる。ますます悪くなっていく。こういうのに対して、政府は抜本的な政策を立てていただかなければ、私は助からないと思うんです。  それで、まず東中鶴の問題で一つ大臣にお尋ねいたしたいんですが、東中鶴では、これは保安監督官が坑内の中に入っておる。坑内の中に入って、施業案からこれははるかに突破しておる、通産省が許可した採掘区域の外に行っておるということも認めておられます。認めて、これを保安監督官そのものが中止できないものだから、通産局の方にその申告をされておる。それが某課長の机の上に置かれてあった。その一週間目にこの水害になっておるということがはっきりわかっておる。それもはっきりここで、この前の委員会で覆われて、中山先生から、そういうことがはっきりしておるとするならば、出先官庁の失態である。出先官庁の間違いであるならば国の責任で、賠償に国が負わねばならないぞということを言われて、非常にあわてられたことがある。こういう問題に対しては、どうお考えになっておるか。こういうことで保安が守られるか。そういうことについて一つお尋ねいたします。  それからもう一つは、私どもが全国炭鉱を回ってみる場合に、保安監督官なる人が、半年に一回か、あるいは一年に一回か、三ヵ月に一回か、行っておられるけれども、非常に経験の乏しい若い方で、学校で習ってこられた方だと私は思う。そういたしますと、中小炭鉱等に行けば、どこの山の人も、坑内で長い間苦労しておったような人たちです。三十年も四十年も石炭と取っ組んでおる人、いわゆる海千山千ですよ。海千山千のところに二十五、六才の若い経験のない方が行かれて、監督ができるとお思いになりますか。監督されておるじゃありませんか、行った監督官が会社でだけ聞いてきて、そうしてやってきておるじゃありませんか。監督する人がされる人よりもはるかに経験も何も持っておらない。鉱内の実情も知らない。監督ができるわけがないじゃありませんか。逆に監督され、逆に教えられておる。私は、そういうことでは、これは監督官としての職務は全うされないと思うんです。  それからもう一つ、最近の新聞に載っておりましたが、高碕大臣は、この国会が終ったならば、炭鉱がこれだけ災害が続発しておるから、自分が炭鉱に行きたいということを言っておられた。非常に私は、大臣のその考え方はありがたいと思う。しかし石炭になれば、いかに専門家大臣でも、石炭屋以上に専門じゃなかろうと思う。大臣は行かれて、だれに会って、どういうところを見て、どういう話を聞かれるのか。  その点、三つまとめて言いましたから、御答弁願います。
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今後の方針といたしましては、いろいろ今までの間違っておった点の第一の、許可というものの条件につきまして、さらに正そう厳重にこれを検討いたしますと同時に、施業案につきましては、これは完全に、今までの官庁だけの人間でなくて、よく業界の、特に中小鉱山の経験者とも話し合って、これはきめていきたいと思うわけであります。  それから、保安監督官の問題につきましては、私は、今の御指摘のような点もあるだろうということは、想像にかたくないのであります。これにつきましても、今後いわゆる海千山千とおっしゃるほんとうの経験者というものの知識を取り入れて、これをどういうふうに活用するかということに持っていきたいと、こう存ずるわけでございます。私は、今一番苦労いたしております点は、たとえば中鶴炭鉱のごとき、これは、死体が収容されずに、七ヵ月もかかっている。そうしてだんだんその作業は困難になってくると、これを、経営者はもう経営が行き詰っておるとすれば、一文の利益もないものを彼らにまかせておいてうまくいくだろうかということを私はほんとうに懸念しておるわけなんであります。この点につきましては、先般亜炭連合組合におきまして、愛知県の方でああいった場合が起ることを予想いたしまして、わずかでありますけれども、三百万円という資金でもって、災害対策のために、対応するためのいろいろの設備をしております。これには業者も半分出し、あとは半分県なり国が出しておるわけでございます。この組織をもう少し大きくして、国の方からも金をできるだけ出して、これは中小企業の方からも出すということにいたしまして、そういう組織を作ってみたいと思っておるのが私の今日の念願でございます。そうせずして手をつかねておることはできない。もちろん、今のこういう災害が起る、こういうことは、直接といわず間接といわず、これは全部政府責任と存じております。こういうことのないようにいたしたいと思っておる次第でございます。そういう結果を、私は今日まで、大炭鉱の方は、高松炭鉱にいたしましても、田川炭鉱にいたしましても、大体私はよく見て、戦争中でございましたけれども、よく見、また大炭鉱に対する経験はあるのでございますが、現在、中小の炭鉱はどういうふうにやっておるか、その労働者はどういう状態か、その経営者はどういう気がまえでやっておるか、また私どもの通産局といたしましてどういうふうな方針でやっておるのかということに主体をおいて、今日この国会が済み、私の手が抜け次第に、すぐ現地に参りまして、現地のその人たちと会って話をしてみたいと、こう存ずる次第であります。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの通産大臣の御答弁は、まことに私当を得たお考えだと思っておるわけなんです。それで、一応念を押すのでございますが、亜炭が考えておる考え方を大きく伸ばしたい、こういうのは、災害があった場合の事後対策である。その事後対策であるけれども、災害の大部分が中小炭鉱であり、中小炭鉱にこういう災害があった場合に、すでに死骸を搬出するだけの能力もないような個所が往々あるので、そういうことのないために、政府資金を出して、中小炭鉱、あるいは大手炭鉱まで入るかもわかりませんが、いずれにしても、炭鉱業者がそれぞれの出資金をして一つの基金制度を作って、その基金を活用して一たん災害があったならば、直ちにそこにその基金を送るとか、あるいはその基金を使って、そういうポンプ、扇風機その他の品物を完備しておくという考え方であろうと思うのですが、それに間違いございませんか。
  26. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまお考え通りでございます。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 わかりました。  それから、一つお願いをしておきたいと思いますのは、官庁の役人さんたちが行なった場合には、ほとんど会社にだけ会っておられる。実際労働をやっておられる労働者にはちっとも会っておられない。これがおしなべてどこでもそうです。お行きになった場合に、東中鶴でお聞きになってもらえばわかる。江口鉱業所でお聞きになってもらえばわかる。本添田でお聞きになってもらえばわかる。災害の起った中小炭鉱で、お役人の方が組合から、あるいは働いておる従業員から現場の説明を聞かれた、あるいは中において話をされたということは、およそ私は聞いておらない。縁遠いことなんだ。だから、そういう点を十分一つ考え願いたいと思います。それから、保安局長がお見えになっておりますので、お聞きいたしますが、今度のこの相次ぐ災害で、保安法を改正するということをお言いになった。私どもも保安法を改正してもらいたい。保安法をどこを改正しようと思っておられるのか、何がこの災害の原因になっておるとお考えになっておるか、それをお伺いいたします。
  28. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 最近の災害は、主として鉱内出水の災害が非常に多い。しかも鉱内出水は、他人の鉱区に侵掘して旧坑にぶつけるというのが非常に多いわけであります。先ほどのお話にもありましたように、監督官自身も監督に参りまして、他人鉱区に侵掘しておるという事実を承知していながら、処置がつかずに災害が事実起っております。しかし従来は、この侵掘につきましては、保安法は適用せずという方針をはっきりとっておったのであります。これは、もともと保安法は鉱業法との姉妹関係にありまして、正当な正しい鉱業においてのみ保安法、保安規則を適用するという建前をとっておりました関係上、侵掘しております事態は正しい鉱業でございませんので、保安法、保安規則は適用せずという指令を私の方から出しておるんであります。そのために、東中鶴のごとき変災が起っておりますので、今後、重複する感はございますけれども、侵掘しておりました場合でも、その鉱区に保安kの危険があるという場合には、監督部長あるいはもうそれだけの時間のない場合には監督官が直ちに侵掘の事態をとめられるというふうに改正をしたい、かように考えております。  それから、保安規則におきましては従来江口炭鉱におきましても、図面の上では百八十メーターくらいあったんであります。それが実際はぶつかっておりますので、図面の上の百八十メーターが非常に不確かである。そういう関係で、従来は五十メーターというものを旧坑からとりまして、その五十メーター以内に入りますときには、必ず先進さっ孔を行うべしという規則になっておったのでありますが、これを一応二百メーターくらいに伸ばしまして、もちろんはっきり旧坑の位置が明確な場合には、従来のように五十メーターでけっこうでありますけれども、不明確である場合には三百メーターをとりまして、二百メーター以内に入るときは、非常に遠いけれども、先進さっ孔を実施していく。こういうように改正をしたい。  それからもう一つは、坑内出水をいたす場合には、大がいの場合には前兆があります。もちろん、特例といたしまして、ほとんど前兆なしに水が出たということはありますけれども、大がいの場合には前兆がございます。おそらく最近起りました出水事故も、前兆があったのではないかという点を私どもは強く指摘しておるのであります。実情は、まだよく詳しい報告は入っておりませんけれども、それを今後、採炭あるいは掘進をいたした場合に水が出てきた、あるいはだんだん掘進の進むに従って水量が増してきたという場合には、簡単な試薬がございましてこの試薬を使えば、古洞の水か、あるいは普通の地下水か、判定がほぼつくのであります。これは必ずしも百パーセントではありませんけれども、大がいの場合は、これで旧坑水かどうかの判定がつく。それで、水が出まして怪しい場合は、必ずこの試薬によって古洞水の判定をつけるということを規則にできればうたいたい。しかし、こういったこまかいことは、これはまあ規則で一々うたわなくても、十分に私どもも知らしてありますし、実施をしてもらいたいんでありますけれども、まあ今までなかなか、特に中小においては実施が完全に参りませんので、一応法にこれをうたいたい。しかし、なかなか法の体制も、いろいろ諸外国に比較しましても、日本の規則は非常にこまかいのであります。私どもは、大きい方向としましては、でき得る限りこういうこまかい規則は取りたいのでありますが、逆に、現況では、ますますこまかい規則を盛り込まなければ完全にいかんという情ない状態にありますので、とりあえず、災害防止という面からは、少し規則上は入念過ぎるかと思いますけれども、至急これらの方向に体制を持って参りたい、かように考えております。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 保安の問題につきましては、こまかに過ぎても過ぎることはないんです。特に中小炭鉱においては、常識で考えられないことをやっておるでしょう。ただいま言われましたように東中鶴も江口鉱業所も本添田も、もう二ヵ月ぐらい前から、三ヵ月も前から古洞の水が出ておることはこれはしろうとが聞いてもわかるくらいに出ておるんです。そうして鉱員は心配して、これは古洞の水じゃないでしょうか、危ないことはないでしょうかということを聞いておる。それを、いや大丈夫だ大丈夫だと言うから、やはり上司の人が大丈夫だと言うから、掘っておってうっちゃっておる。東中鶴でもその通りでしょう。そういうことがあっておって、そうして九本マイトの穴を掘ったところが、その九本の一本から水が吹き出してきた。そうして、これはマイト打っていいでしょうか、いや大丈夫だと、打って水を出してしまっておる。だれが考えても打つべき場ものじゃない。江口鉱業所もその通り。六本掘ったところが、一本から水が出て、しかも古い水が出てきて、マイト込めようにも込められなかったんです。それを、あとの五本にハッパかけている。おそらく常識をはずれたことをやっておるんです。それで、その人たちにただ通達や何で、やれと言ってもやりゃしないです。その人たち石炭さえ掘ればいいんです。人間の命よりも石炭の方を大切にする人たちです。そうでなかったならば、二十九名も死んで、二ヵ月もたって死体の一つも上っておらんのに、この山つぶすなんということを言えるはずはないんです。そういう人たちだから、私は、もっと厳重な法律を作るべきである、かように思います。  それから一つ、保安法の規則の方でございますが、各炭鉱に保安管理者というのがございます。これは、会社の所長なり技師長です。会社の責任者が保安の管理者、これはわかります。人を使ってそういう危険な作業をさせるならば、それは管理責任に当るのは当然でございます、保安管理者が。ところが今度は、その下に保安監督員がおります。これは会社の技術屡で、悪口を言うならば、行き先のない人をそれに当てておる。その人が坑内をいつも巡視して行って、ここは危ないから、ここはどうして下さいということを管理者に言う。どちらも同じ会社から金をもらっておる、会社の月給取りです。その人たちがなんぼ話し合ったところで、ほんとうの保安が守れっこない。だから、そこに実際働いておる人をそこに入れる。そうしてその人が、ここはこういう古水が出てきたから、危なくて仕事されませんよと言って具申をした場合に、保安管理者が大丈夫ですと言って掘らしたならば、保安管理者は厳重なる刑事罰を、これは故意でなかったにしろ、これは殺人罪にも相当するのです。もっと刑を厳重にやるということ、実際自分のからだに危険を感じておる人は、保安のそういう責任のあるところにはちっともやらされないでおって、自分たちは全然身体の危険を感じぬ人が保安の監督ばっかり当っている。政府の役人は無理がありません、これは坑内夫じゃないんだから。会社側だってそうです。保安管理者が死んだというのはどこにあります。だれも死んでおりゃせん。そういう人たちが保安の全責任を握っておるんです。だから、ほんとうに死んでいく人たち、ほんとうにいつもけがしておる人たち、そういう人たちを監督員に任命する。そうして話し合いをするようにしなければ、私はとても保安の完全というのは期せられないと思うんですが、その点はどういうふうにお考えですか。今のままで、全部会社まるがかえで、会社から給料をもらって、会社が監督官と話し合ってやる、そうするならそうするで、監督官と保安管理者その他の人たちは、厳重なる責任をとってもらわなきゃいかん。あなた方も、国民の信託を得て、国民の税金で枢要な地位に立っておられる。そうしてその人たちの監督下にある炭鉱労働者が、年々歳々六百七十人から七百人の人間が死んでいっておる。これは、私が考えるのに、昔から炭鉱には災害がつきものであったから、政府の皆さんも私どもも、新聞の方々も国民も、私はマンネリズムになっておると思う。神風タクシーで無事の人が死んでいった。その点については、あれだけ新聞で騒いで回っておる。あれだけ世論が騒いでおる。これは運転手の責任でなくて、ノルマが重過ぎるのだ。だからこれは、基本給を六割にして、そうして運転手の重荷を少し下げなければできない。これが国民世論になってしまっておる。その通りなんだ。ところが、炭鉱については、ちっともそういう声が上らない。あなた方そういうことをやらない。実際こういう水害の起った炭鉱は、基本賃金というのはわずかなものです。そうしてそれにノルマを倍々にかけてあるから、だから坑内に十一時間も十二時間もおらなければ、生活するだけの給料をもらえないんです。坑内じゃからわからない。神風タクシーは、罪もとがもない学童をたくさん殺した。世論の的になるのは当然です。ところが、その罪とがもない小さい小供を育てる責任のある人は、何の保護もなくて、坑内で六百人も七百人も殺されておる。あまりにも社会的関心が薄い。これはわれわれの責任問題だと私も思っている。だから、この問題については、もっと真剣に考えてもらわなければならない。会社の御都合ばかり考えてもらっちゃ困る。会社の利益ばかり考えてもらっては困る。事人命の問題です。私は、民主主義は、個人の人命を尊重するところに一番大きな意義があると思うのです。そうするならば、今言われたような保安法の改正では保安は守られない。その点、どういうふうにお考えになりますか。
  30. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいま御指摘の監督員につきましては、仰せの通り、完全にこれが活用されていない。また、活用が非常にむずかしいという状態にあるのであります。監督員はすべての山にあるというわけではありませんで、一応規則のしでは、千名以上、労務者が非常に多い山にだけ置いておるわけであります。もちろん必要があれば、千人以下の山でも、監督員は置くようにすることはできますけれども、原則といたしましては、労務者を相当多数かかえておる山に特別に置いておるわけであります。要するに、監督員は、私設の監督官であります。私どもの方の監督官が常時なかなか山に参れません。そこで、特に大きな山は、私設にそういった監督官の制度を持ってもらうというのが規則の趣旨であります。ところが、やはり現状でも、所長の配下になっておりますので、なかなか十分な思い切った勧告ができないというケースもございます。しかし、中にはなかなかこまかいりっぱな勧告をやっております。なかなかこれは、一様に批評ができないのでありますが、非常に有効に行われておる場合と、あまり効果のない場合と、いろいろなケースがあるようであります。概してなかなかこれが活発に動き得ない状態にあるということは、仰せの通りであります。私どもは、この監督員の制度につきましては、何らか検討を加えてみたいというつもりでおりますので、法の改正の機会に、もう少しいい方法がございますかどうか、さらにもう一そうの検討の余裕を与えていただきたいと、かように考えております。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 私たちがここで、この炭鉱災害の問題を論議しておる途中でも、何人かの人がけがをしておるんです。だから、今のような考え方では、働く労務者自体が安心して坑内に下れないから問題を起します。一つの例は、おっしゃったように、中小炭鉱には保安監督員もおらない。これでは、中小炭鉱労働者が安心して坑内で働けないから、炭鉱労働者が、国からお金もらわなくてよろしい、会社からも金もらわなくてよろしい、組合が金を出して、組合の中から保安に経験の非常に深い人たちを何十人か集めて、そして各山を回ろうじゃないか、各山の保安施設を見て回ろうじゃないか、こういうことを今炭鉱労働者が言っておる。それに対して会社は、それは経営権の侵害である、入ってもらっては困る、こういうことを言っておる。これは早晩問題になりますが、この点について、どういうふうに大臣考えになりますか。自分たちの働く職場をそういうふうで、法でも完全な保安を守っていただいておらない。しかもまだ目鼻もついておらない。そして保安監督員もおらない。次々に死傷者が出てくる。これでは、安心して自分たち仲間を坑内に下げるわけにはいかないから、だから、坑内の非常な経験のある、認識の深い人たちに組合が日当を払って、そして各山を見て、注意して回ろうと、まことに自分たちの生命を守るために当を得た考え方だと思うが、これに対して通産大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は、これは組合でやるかだれがやるか、よく実情に即してやらなければならぬと思いますが、要は、実際の経験ある、事実この災害によって自分たちの生命を脅かされておるという人たちが、強力なる発言権を保安管理者に対して進言する機会を作るということは絶対必要だと思っております。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産大臣からはっきりした御答弁をいただいたので、おそらく今後の問題はそれで片づいていくのじゃないかと思うのです。その通りです。小岩井局長がおっしゃいましたけれども、千人以下の炭鉱は、監督員もおらないのです。そして会社が勝手にそういう管理者を置いて保安をやっておる。だから、そういう所には、やはり経験の深いものをやろう、そのかわり会社からお金もらわぬでよろしいと、そこまで言っておる。そこまで人間の命は尊いのだ。それを守りましょう。それをやっても、坑内から完全に死傷者をなくするということはできないのです。これは、人間ではこれ以上はできない。どんなに進んだ国でも、やはりそれは出ておる。しかし、一人でも少くするためには、あらゆる努力をしなければならない。だから、今度保安法を改正されるならば、小岩井局長どうですか。通産大臣は、自分たちの生命を守るためには、このくらいのことでもやらなければできぬでしょうということを言っておられるが、小岩井局長は、保安法を改正する場合には、それくらいのことを改正できますか。大臣の言われました通りに改正できますね。
  34. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) これは、従前にも御相談がありまして、私の方からも大要のお答えはいたしておるのであります。私どもの現在の考え方といたしましては、保安法、保安規則には、もちろん大切な問題がありますので、保安の機構ができております。保安管理者以下係員に至るまで保安機構というものがありまして、この機構の最大の活用というものを私どもは念願いたしておるわけであります。もちろん保安管理者、係員は、すべて国家試験で一定の資格を持った者についてのみこれを配置いたしておりまして、この従来ある保安機構を完全に使いまして、保安の万全を期したいというのが私ども考え方であります。ただいま御指摘のように、山の組合の方々もそういった面に参画しろというお話でありますが、もちろんこれはけっこうであります。けっこうでありますけれども、私どもの行き方といたしましては、ちゃんとした保安機構がありまして、これの完全な活用によって目下進めておるわけであります。そこで私どもは、お山の方で労使がお互いに相談いたしまして、これを作ることがよろしいのだということででき上るのでありますれば、私どもはけっこうでありまして決してこれにどうこう口を差しはさむものではございません。保安機構の上にさらにそういったものができまして、保安の万全を期せられるのであればけっこうであります。しかし、私どもの方から、わざわざこれをまた保安法の中にその点を入れるという点につきましては、現在のところ、まあそう強く考えていないのでありまして、これは、従来あります保安機構もまだ十分に動いておりませんので、せめて私どもといたしましては、従来ありますこの保安機構が完全に動けますように、何とかこの方向に力を尽すように、現在のところ考えておるわけでありまして、仰せのお話は、でき得る限り労使の間で一つまとまりますようにお話し合いを願いたい、かように考えております。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 それができれば、こんなことを私は言うんじゃないですよ。それができないからこそ、これだけの死傷者が出ておるんじゃありませんか。小岩井局長がその考え方で監督される以上、死傷者は絶えません。それは、経営者は、少しでも石炭をうんと掘るために、少々な危険でもこれはあえてやります。労働者は、少しでも自分のからだを守るために、やはり危険な所には行きたくないと思うのです。話し合いができっこないじゃないですか。そういうやつを法律できめてやるのです。話し合いができるやつは、法律を作る必要はないのですよ。話し合いができないから法律を作るのてす。だからこういうことを、自分たちのからだを守るために、ここで自分の方から行く。それは、あなたおっしゃったように、おそらくその行く人は国家試験を通った人ですよ。そういう人たちを各山に派遣する。そうして保安状況を調査する。政府にそれだけの力があるならいいけれども、ないじゃありませんか。やっておらぬじゃありませんか。やれないじゃありませんか。それで、今の保安法を完全に守ればとおっしゃっても、守るためにどうすればいいか、何もしてないじゃありませんか。保安法ができてから何年になりますか。完全に守れないじゃないですか、守っていないじゃないですか。どうして守らせるか、どうするのだということがはっきりできておればいいけれども、ないでしょう。だから、自分たちで保安を監督するというわけです。自分たちで保安を見て回るというわけです。それを通産大臣は、自分の命を守るためには、まあそういうこともやむを得ぬでしょう、法が不備である以上、そういうこともやむを得ぬでしょうということを言っておられる。それに一番当面の責任者である小岩井局長は、これをほんとうになくするだけの保安法の改正すらまだ考えておられぬじゃないですか。あなたの今言われた保安法の改正では決してなくなりません。だから、私が言っておるのは、通産大臣が言われた事後対策、あれはもう私は十分だと思う。どうしてもしてもらわなければならぬ。事後の対策、基金を設定して、そういう災害があった場合には、直ちにそれを使ってやるのだ。これは私はけっこうな考え方だと思う。それは事後対策。そうすると、今度は、それが起らないようにするのが一番大きな対策なんです。そのためには、経営者は相当痛かろうけれども、痛くても人命にはかえられないのです。それくらいのことをやらなければ絶えないのです。今の法律で絶えるのならば、完全に保安を守られるならば、ここでこんなことを言う必要はないのです。保安法を守らなかった人をどんどん罰すればいいのです。そういうものじゃないのだ。だから、私が言うのは、この労働者をそのまま、それは、どこの労働者がどこに行くかわかりませんよ。しかし、国家試験を受けて、保安の責任にたえ得る人を出すのだ、こういうことなんです。それを業者側は、あるいはこれは経営権の侵害だということを言われるのじゃないかということを懸念しておるわけです。で、もしも経営権の侵害だということになるならば、人命に対するそれじゃ損害はどうするか、この問題が大きくなってくる、どちらが大切かということになってくるわけです。だから小岩井局長は、あなたは技術屋だからわかっておるはずだから、この際そういう抜本的に保安法を改正される必要があるのではないかと言っておるわけですが、先ほどの答弁では完全な保安法の改正じゃありません。はっきりして下さい。
  36. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 従来、その趣旨の御質問に対してお答えが出ておるのでありまして、その方針説明したわけでありますが、まあ非常にむずかしい問題でもあり、大切な問題でありますので、さらに再検討をさせていただきたいと思います。
  37. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣は引き続いて起ります炭鉱、鉱山の大きな災害に対して非常な責任を感じて、自分も災害の起った炭鉱に行って今後の防止対策研究したい、それから保安監督機構について、従来の機構にはやっぱり欠陥があるから、生命を脅かされておる労働者の被害者の発言権もさらにふやして、こういう災害の起らないようにいたしたい、こういう答弁でありました。ところが今の監督機構の問題について小岩井局長の答弁はいわば簡単に言うと、今までの監督機構でよろしい、それがまあ十分に生きておらないところを生かしたい、こういう答弁で、それでは大臣の答弁せられました、生命の危険にさらされておる労働者発言を確保したい、こういう答弁の御趣旨には沿わないと思う。先ほどから阿具根君も指摘いたしておりますように、これは政府あるいは保安監督局、部、こういう機構についても欠陥がある、少くとも責任を感じておられるならばこれに再検討を加えられる、という御意思が表明されなければならぬと思う、それが一つ。  それから山の保安機構について、これは阿具根君の指摘いたしますように、鉱業権者が任命をする、あるいはこの保安管理者についても、あるいは副管理者についても、係員についても、あるいは監督員についてもそうです。そこでその保安責任に任じます山の保安管理者なりあるいは係員なるものは、採炭に従属をする、採炭第一になって保安第一にならぬ、生命を守ることが第一になって、石炭を掘ることはその次になるということがない。保安法なりあるいは保安規則の精神が実際に生かされない。そこでその保安監督者なりあるいは係員、そういう機構について労働者発言を確保すべきじゃないか。こういう具体的に指摘をして質問がなされておるのでありますが、それについては何らの答弁がございません。あるいは大臣の言われる趣旨も何ら生かされようとしておらぬ。これが責任を感じておる保安局長の答弁では私はなかろうと思う。なお政府の機構あるいは山の保安機構について指摘をされておりますが、これらについて労働者あるいは労働組合が、機構の改革の前に、現状においては被害者として、あるいは従業員の生命を守るために保安状況についてこの調査をし、あるいは改善を要請をしたい、こういうことで、事故が起りました山なりあるいは事故の起りそうな山については、はっきり意見を述べたい。こう申しておるので、私はこれを抑えられるという手はなかろうと思う、大臣発言の趣旨からいたしまするならば。これは現状においては、労働者の、労働組合の発言力も入れて災害の再発を防ぎたい、そのときはわれわれも努力したい。こういう答弁になっていますが、局長のこれまでの答弁は、私は責任ある態度ではないと思う。重ねて御答弁を願いたいと思う。  なおこの災害防止機構のために、労働者なりあるいは学識経験者なり、監督官庁等で巡回保安調査団を作ったら、こういう有力な意見がありますことは御承知通りだと思うのでありますが、それらの点についてもどういうふうに考えておるか、この際保安局長に承わりたい。
  38. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいまの御質問でありますが、従来の保安法、保安規則の中にあります保安機構、もちろんこれは完全ではないかもしれませんけれども、保安管理者あるいはその下の副保安管理者、あるいはそれらのものはいずれも代理者を置いて、しかもその下には係員を置いて、まあ一連の保安の機構ができているわけであります。その外には先ほどのお話の保安監督員というものが別個におりまして、全体の保安をまた別の面からみている。それから特に保安法の三十八条には、危険のあります場合には労働者でもやはり監督官に随時申告ができる、いわゆる申告の制度もございます。一応私ども考えまして、今の保安法、保安規則の中に一連の保安の機構がありまして、かなりまあ完備しているのではないかというふうに考えておるわけであります。その上にさらに今のお話のような、組合からのそういった代表も出したらどうかというお話で、これはもちろん遠い将来には、そういうふうになるのじゃないか、というふうにはまあ考えております。先進の国でもとうにそういった制度をとっている国もございまして、これがもちろんうまくいけば一番いいわけでありますけれども、まあ少くとも私どもの目下の考え方としましては、これだけ完備に近い機構をもって、これをまず完全に実施して、どうしてもうまくいかぬという場合には当然考えなければならぬわけでありますが、ただいま御指摘の点も、もうとうに御相談も受け、一応御返事いたしておりますけれども、これは至急再検討をさしていただきたい、かように考えております。  保安調査団につきましても、今の保安機構で各山がやり、さらに私どもも相当な二百数十名の監督官、随時十分ではありませんけれども、現地の監督をいたしておりますその上に、なおかつそういったような調査団を、まあお願いしないでも、私どもでできる限りやりたいという気持でおりますので、そういった点につきましては、さらにもう一度一つあわせまして再検討の時間をいただきたい、かように考えております。
  39. 吉田法晴

    吉田法晴君 うまくいっておればこういう災害が相次いで起るはずないじゃありませんか。監督局長として責任を感じておられませんか。これは一人の命といえども地球よりも重いといわれますが、何十人というたくさんの人命を失う大きな災害が相次いで起っておる。これは監督機構も山の保安機構もうまくいっておらぬから起っているんじゃないですか。責任を感ずるならば、従来のやり方あるいは機構について再検討を加えるのが当然じゃありませんか。しかも大臣は被害者である労働者の監督も加えてやるべきだ、こういう御答弁をされておる際に、今までの機構でよろしい、今までの機構でやりたい、そういうことがどうして言えますか。機構の改革については検討をしたい、あるいは保安法の改革については検討をしたい、しかもその検討の方向も、これだけの災害が重なってきて、きょうが初めてではございません、あるいは中鶴のときにも、あるいは中興の問題のときにも、あなたの責任が問われているでしょう。もし、ほんとうに炭鉱の災害を防止することができなければ、あなたはやめなさいとまで言われておるでしょう。重なる災害が起ってここにきて大臣が検討をし、あるいは労働者発言もとにかく保障をしたい、こういう際に、あなたの答弁とは思えません。検討をしようが、差しあたりそれでは、この災害の頻発のために労働者が坑内に入って不備な点を指摘したい、あるいは災害防止に協力したい、こういう際にそれを抑えるという態度がどうして出てきますか。もう一度、責任を感じておられあるいは大臣の答弁を受けて答弁をせられるならば、労働組合の調査についてもできるだけその実現のために努力をしたい、あるいは今後の保安機構の改革についても、私ども指摘いたしました点について、至急にとにかく万全を期するように検討をしたい、こういうのが私は答弁だろうと思うのでありますが、重ねて御答弁願います。
  40. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 私の説明が少し足りなかったかもしれませんが、私が多少ちゅうちょいたしておりますのは、実は災害がふえておりますけれども、この内容を一度検討していただきますとわかるのでありますが、大手炭鉱におきましては、漸次減少いたしております。その減少いたしております数字を、中小が食いましてさらにふえておる。その関係で全体が少し増しておるというようなわけでありまして、大手炭鉱は順調に下っております。下っておるそのスピードが弱いということであれば、もっとこれはもう少し予算もとって、もっとスピーディに下げる必要があると思いますが、一応大手炭鉱は改善されつつあるという状態にありますので、私がちょっと答弁にちゅうちょいたしたわけであります。特に問題は中小でありまして、この中小にはなかなか監督員を置くほどの山も少いわけであります。従いまして、この保安機構一連の問題は、もう少し検討をさしていただきたい。そういう意味で再検討をお願いしておるわけでありまして決してその趣旨に私が全面的に反対しておるというわけではございません。その点御了承いただきたいと思います。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 大炭鉱では減少をしておるとおっしゃいますけれども、あるいは災害、特に死亡はほとんど絶無に近いということであれば私は申し上げません。しかし大炭鉱についても先般の北海道における坑内ガスの災害もございます。あるいは落盤による死亡、あるいはガス爆発が絶無いたしておるかというと絶無いたしておりません。なるほど最近の災害は中小炭鉱が多い。その中小炭鉱における出水等の対策については、これは検討をされておると思うし、また質疑もなされておりますが、しかし最近の災害の頻発を考えますと、従来の中小炭鉱の分も含んで、従来のこの監督機構あるいは保安機構でよろしい、という結論は出てこぬはずであります。検討を加えねばならぬとあなたは言われますけれども、その緊急性が過去の一つ一つの災害の場合にも追及をされて、そしてあなたは検討をする、こう言われてきたでしょう。そしてここにきて大臣も、先日も新聞に出ましたように、災害の防止について最善を尽したい、あるいは労働者発言についても何らかの道を講じたい、こう言われておるその直後に、労働組合から今の現状に対して、災害の起った所あるいは起ろうとする危険な炭鉱について、この危険の再発を防止したい、こういう意味で、この調査あるいは入坑等を要求しておる場合に、それを防ぐという方法がどうして出て参りますか。それを防ぐあるいは機構の問題について、少くとももう今までに検討をせられて、ある程度の方向は出ておるべきじゃないでしょうか。これから研究するというような態度では、過去の災害について私は責任を感じなかったものだと思う。具体的に、一つそれぞれの方策について、あるいは労働者の要求等について、どういう工合に実現をしたらいいか、こういう御意見を承わりたい。
  42. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 仰せのように至急に検討させていただきたいと思っております。
  43. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじゃ、私の質問にも吉田さんの質問にも答えになっておらないのです。あなたがおっしゃったように中小が多いことは事実です。三十三年度を見ても、大手が二十二万三千六百五十二名、それで死亡者数が二百六十名、千人当り〇・四四三。中小炭鉱は十三万五千四百四十二名、それに三十二年度で死んだのが三百九十三人。これで合計六百五十三人死んでおるわけです、三十二年に。ところがあなたが一言われるように、中小炭鉱が最も被害が多い、これはわかる。吉田さんの言われるように、大炭鉱の被害が非常に少くなったというならいいけれども、まだ二百六十人も死んでおる。そこにはそういう保安の設備もできておる。ところが中小炭鉱には保安監督員すらおらない。保安監督官も半年に一回回るということを言っておられるけれども、ほとんど回っておられない。それでは中小炭鉱の保安を確保するわけにはいかないから、だから法律できめていただけなければ、労働者が回りますよと、労働者が回ります、しかも保安に対する相当な経験のある人々を回しますよ。ここまで言っておるわけなんです。それに、大臣は、人命の尊重からお互いの人命を守るためには、労働者がそういうことをやるのもやむを得ません、守るべきでしょう、ということを言っておられる。あなたが、まあしばらく考えさせてくれ、それじゃ何にもならない。どういうようにしたいから考えさしてくれ、ですね。労働者ももちろんそれは入ってもらっていいでしょう、いかなければできない。それにはどういう障害があるからもうしばらく考えさしてくれとか、あなたの考え方をちっとも言っておられぬ。そうして災害が勃発して新聞等でたたかれそうになれば、あなたは保安法を改正するとかどうするとか、二百メーター先進ボーリングをやるとか、こういうことをいち早く発表された。さんざん委員会で言われておるから、これはまたやられると思ったか、あるいはまたこれが新聞が取り上げられて神風タクシーの二の舞いになるぞ、と思われたか知らぬけれども、発表されたけれども中身は何にも持っておらぬじゃありませんか。今聞いてみると、新聞にはうまいこと発表された、保安法を改正すると。今度の問題で、政府もほんとうに本腰になったなというふうに、におわせておるけれども、じゃ聞いてみれば何にも持っておらない。それじゃ全然保安は防がれないじゃありませんか。だから中小炭鉱に対してはどういうことをするんだ、一般全炭鉱に対してはどういうことをするんだという構想を出してもらわなければならない。きょう初めて災害が出たわけじゃない。毎年々々繰り返してきておる。災害のあるたびにここでやっておる。今考えるということじゃ、どうもこうもできぬじゃないですか。だから労働者が行ってそうして保安の検査をする、保安員を出して調査をさしてもらう、こういう問題についても、あなたが、労使双方で話がつかぬならば法律できめなさいと言っておる。労使双方で話しなさい、そんなこと私聞いているんじゃない。そんなことだったら労働者が勝手にやります。そんなことを考えておられるから次々に災害が起っておる。だからここで抜本的な対策を立てなさいということを言っておるわけなんです。だからどういう考えを持っておるから、もう少し研究さしてくれとか、それをはっきりここで言ってもらいたい。
  44. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 災害の一般の対策はもちろん考えておりますけれども、特に今御指摘の監督員、それから炭鉱調査団、そういった面につきましては、労使の関係の問題もあり、早急に一つ再検討の時間をいただいて御返事申し上げたいと、かように考えます。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕は関連して一つ。この前の江口炭鉱の災害が起きたときに、小岩井保安局長から、今の中小企業の炭鉱がどういう工合に動いておるかということは、質疑の中で非常に明らかになりました、自分の利益というものを中心にして、災害を防ぐというような問題について心がされていないのです。そこで論議になって小岩井局長は、今度の国会中に法律改正の要綱を明確にする、こういうことを約束された。それは出ていないじゃないですか、きょう。きょうお話を聞くと、一、二、三と分けられて、たとえば作業中でも危険なときには作業を中止する。五十メートルのやつは二百メートルにする。掘進をしているときにマイトの穴の水が出たようなときには、これを鑑別して危険があるかないかを明確にするような措置をする。こういう三つ言われました。これが今度抜本的な災害を一人もなくするというための一つの方法であるかもわかりません。一番問題になりましたのは、やはり何といっても古洞の位置がわからぬからその図面をこしらえるということが肝心じゃないですか。そういうことが明確にならない間は、危険のあるところには許可しないということを明確にしなければいかんのじゃないか、こういうことも論議された。小岩井局長は、そういうことはごもっともです、だから抜本的な要綱を、法律の一条々々まで明確にできなくも、抜本的な要綱を、これで災害は起きないぞという要綱を、今度の国会に出すとあなたは約束したじゃないですか。約束して出てきたものはこれをだれが判定するのです。事実、問題があっても、この前の災害を見てみますときに、監督官が注意していても、それを危険のところを中止せぬで災害が起っているじゃないですか、具体的に。だから、そこで働いている者が一番危険を知っている。会社の利益のために、会社の利益一本でそういう監督というものが行われておったら、危険というものは一つもなくならないじゃないですか。具体的に災害をなくするのには、どうすればいいかという本来の姿について私はものを考えてもらいたい。これが今の論議ですよ。何も組合代表とか、何のかんのという問題を言っているのじゃない。何としても一番よく知っている者が従業員の代表、組合の代表、危険なときの状態というものを。災害を除去するためにそういう処置を何とかとらなければ、自分自身の生命に関することじゃないですか。これが今度の災害の根本的な法律改正の私は要綱だと思う。それを肝心のところを抜かしてしまって、ずらっと並べられたらだれがこれを判定するのです。だれが判定して——あれはそうじゃなかったと言えば、一言で全部尽きるじゃないですか。この要綱というもので、五十メートルを二百メートルのところでやめるとか、危険があるときは監督官がやめさせると言っても、危険でなかったと言えばこれはそれまでじゃないですか。水が出たからと言っても、これは古洞の水でありませんでしたと言えば、どこにあとで追及してその理由がつくのです。だからこそ、そこで働いている人が、自分の生命のほんとうの真剣な気持から、保安というものを守っていかなければ自分の生命がなくなるという、これが一番のいい鉱山保安。災害、要するに出水事故はたくさんあります、ガス爆発もあります。たくさんの災害を防止するのにはそういう工合にして、一つは国家資源を守っていく、一つ産業振興のためのエネルギー石炭増産という問題もあるのです。そういうところにいくには危険をなくする、災害をなくするという建前においてその役割を果さなければ、ほんとうに災害の起きる危険というものをほんとうに真剣に考えて……。こういう要綱だけでこれはだれが納得するのです。これは炭鉱労働者は納得しませんよ。何よりも災害者の出ないように、法律改正をし、今度の国会へ要綱を出すと約束せられた要綱はこれですか。もっと真剣に考えたらどうだ。これは常識ですよ。大臣おっしゃる通りです、常識ですよ。利益を離れてほんとうに危険な状態のときにはどうするということは、あなたもっと真剣に考えなければ今日の災害というものはなくならない。あなたの約束された要綱というのはこんなものなんですか。肝心なところは保安上の問題だから云々と逃げられる。それじゃ、今度は災害をなくする対策の根本も全然なくなってしまうじゃないですか。それを言ったって一体だれが判定するのですか。そうでありませんでしたと言えばおしまいじゃありませんか。もっと監督局長としては真剣に考えてもらいたい。この委員会で論議して、みんなが災害をなくして生命の危険がないような状態で石炭の採掘、またそれに従って生活をしていこうということを真剣にわれわれ祉労委員会は論議してきたのですよ。その中であなたは何回もここにおいでになって論議の中に入っておられたじゃありませんか。われわれはこんな論議をきょうする必要はない。私はこういう論議をしようとは思っていなかった。今度は、小岩井局長は抜本的な、一人の危険もない、災害の起らないような抜本的な要綱を今度の国会において発表いたします、そうして御相談をいたしますと言われたのがこれたんですよ。私はもう少し考えていただきたい。
  46. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいま御説明いたしました私の内容は、まあ比内出水の防止に対して保安法、保安掛則の改正はどうなっているかということに対するお答えでありまして、もちろん私もこれだけで満足するという上げではないのであります。もうすでに各監督部長の方には連絡をいたしまして、改正の機会にぜひとも改正を必要とするというものがあればとりまとめて出すようにということももちろん申しております。ただ非常に国会の時間の関係で急がれておりますし、私もこの国会で要綱ぐらいはお話を申し上げるという約束をいたしておりましたので、とりあえず出水防止に対する改正の内容を御説明申し上げたわけでありまして、必要があれば決してこれだけの内容だけとは考えておりません。各監督部長からもそれぞれ意見がまとまって参りますし、近いうちに部長会議も開きまして、重要な改正の点がありますれば十分に討議を重ねてみたい、かように考えております。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 重要な改正の点がありますれば、ということはそれは何ですか。私らは専門家でないけれども、あなたは専門家じゃないですか。実際先日も局長は中鶴に見に行ってこられたと言っているじゃないですか。われわれ以上によく知っておられると思う。それに、今時分改正する点がありますれば、とは一体何ですか。一人の災害者も出さないように法律改正をするのだ、とここで言明されたこの気持ということは、われわれ以上によく知っておられるじゃないですか。それが改正する点がありますれば——そういう返答じゃ困る。これとこれとは改正しなければ災害は防げません。その建前からこういう改正をするのだということを明確にしてもらう、そういう立場からものを言ってもらいたい。
  48. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 私が申し上げましたのは、坑内出水に対する改正としましては、私は今の御説明いたしました点で防げるのではないかというふうに考えておりまして、このほかにまだ改正の点が、現地の部長としてぜひこの点を改正してほしい、というのがございますれば同時に改正をいたしたい、かような考え方を御説明申し上げたわけであります。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間を私ばかりとってはいけませんから私はこれでやめますが、小岩井局長の答弁には私は全く不満です。それで災害が防げるならばこれで防げるということを言明していただきます。防げなかった場合の責任も明らかにしていただきます。私どもが言っているのは、中小炭鉱で保安が完全に守られないから、だから実際働く者の中でその保安状況を調査するという問題については、大臣もそれを認めておられる。それにはあなたは反対される理由は何もない。反対されるならば何が反対の理由になっておるか、それを明らかにしてもらいたい。  それから通産大臣に最後に御質問申し上げますが、この出水事故の最大の原因は先ほどからも問題になっておりますように図面がないことです。実際からいうなら小岩井局長なんかここへはこれないはずです。図面がないのにどうして許可しましたか。メクラ判を押すよりももっとひどいじゃありませんか。図面もついておらないのに施業案をどんどん許可されておる。それこそあり得ることじゃないですよ。しかも衆参両院で図面を早急に作るために予算をとりなさいということをやって、そうしてそれを約束された予算が十三万円、小岩井さん十三万円でこの図面ができますか。きのうも大蔵大臣は人命の尊さはわかるから、来年度の予算には相当大幅な予算を組みましょうとここで約束された。だから図面はいつ完成されるのか、どのくらい予算を要求されるのか、その点を一つお伺いいたします。  それから先ほど今後の対策を私お聞きいたしましたが、現在東中鶴も江口鉱業所も、もう自分の自力では脱しきれぬくらいに、これは困っておると思うのです。今のままではこれはもう手も足も出ないようになる、こういう場合にどうして置くか、政府としてどういう対策をおとりになるか、死骸はそこにあることはわかっている。しかしその死骸は出せない、炭鉱だからこうしておる、ほかの場所で死骸が骨になるまであった場合に、だれがほっておくものがありましょうか。だからこの十八人と二十九人、この人の死骸を出すためにはどういう手をお打ちになりますか。その三点をお聞きいたしまして私の質問はやめますが、二言だけ申し上げておきたいのは、これは高碕通産大臣にも関係がございます。きのう国会は四日間延長になりました。四日間延長になったその理由は、経済基盤強化のあの資金を通すためです。あの資金に十五億という基金を出しておいて、労使の教育をされる。映画やテレビやら、新聞、パンフレット、雑誌等で教育されるのに十五億の金を政府はまるまるお出しになる。そうしてその利子の九千万円で国民を啓蒙して下さるそうです。啓蒙する前にこういう人命でも一つ救助されたらどうです。そういうことを啓蒙するために国会を四日間も延長して、啓蒙せなければいかぬようなその金があるならば、そういう金でこの人命でも一つ救ったらどうでしょうか。以上の点をお聞きいたしまして私の質問は終ります。
  50. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先ほど来の保安機構の改革につきまして、これは保安監督員やそのほかに対しまして、労務者としての発言をできるだけ強くするということにつきましては、従前のいきさつがありますから、私はよくああやれ、こうやれということはわかりませんが、できるだけその趣旨に沿うようにして進んでいきたいと思います。  それから図面の問題につきましては、これは私はほんとうに遺憾に思っております。しかしながらわずか十三万円の金をとったということでは、いかにこの大蔵省と当局とが折衝した努力の結果か、これはまことにそんな金がどうしてあるのだということは常識で考えてもわかるわけなんです。苦心の結果、そういうふうになっておるということを御了承願いたいと思います。これはできるだけ早く実行に移して、もっと多くの予算をとって図面を完成したいと思っております。  最後に今回の国会の延長等につきましては、これは私はどういうわけで延長されたかということは、今のお話のごとく政府提案の法律案を通過せしめたいということはもっともだろうと思います。そういうものが通過いたしますれば、ただいま御趣旨のように十分努力いたしたいと思いますが、元来この炭鉱行政の今までの方針といたしますれば、経営者をしてこういう場合には死体の収容をやらす、ということが原則になっているようでありまして、それらに対する今までの保安機構がなかったということは、これはまことに遺憾に存じます。あとの問題になりますが、先ほど申しました通りに、国としてもこの責任を感じて実行に移すようにやりたいと思います。現在あります状態につきましては、全然捨て置くものか、あるいはどのくらい進んでいるかということにつきましては、相当の進捗をしているように聞いておりますが、これがどうしてもできないというものならば、そのときにまた考えたいと思います。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産大臣から今の御意見がありましたので、私は小岩井局長にもう一つだけ質問をしておきたいと思います。出水防止のために三つの問題を掲げたといわれますが、今論議されている根本的の問題はだれが判定するのか、判定次第では、無理な危険が今までも続いてきている、その根本の問題を、そこに働いている人、一番よく知っている人みんな寄って、保安を守っていく素地をここで作らなければ、今の災害は一つも減らないということが現実の問題です。私は長くは論議いたしません。今までずっとやってきている問題ですから、その問題について熱意のない、今言われたように出水の対策はこれで防げる、これでは局長責任になってきますよ。だからこの問題は、今私どもが申し上げているように、具体的に災害をなくするため、この具体的の要綱というものを、どういう形でお考えになってどういう形で改正実施されるのか、その見通しを明らかにしておいてもらいたい。私どもはこの国会中、要綱を出していただいて御相談申し上げるというお話でございましたから、期待をしておったわけであります。その点を明確にしておいてもらいたい。
  52. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 私どもはもちろん現在あります保安法、保安規則は戦後できたものでありまして、完全なものとは考えておりません。従いまして佐世保のぼた山の崩壊、ああいう新しい災害の事実に対しましてはおくれずに改正をいたしております。今回の坑内出水の続発につきましても、考えられる改正をいたして、順次、法の完備を期して参りたい、かように考えております。ただいま御指摘の問題は、根本的な法の改正をやれということでありますが、目下各部長にも改正の意見を求めておりますし、ただいま御指摘の点もございますので、それらを至急に検討いたしまして、改正の方向に持って参りたい、かように考えております。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはいつ明らかになりますか、幾日ほどかかりますか、見通しを言っておいてもらいたいと思います。
  54. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 何日間ということはなかなか私一人で申し上げかねますので、相当むずかしい問題でもありますし、相当な御時間をいただきたい。しかし今国会は日数もございませんし、次の臨時国会には概略お話し申し上げられますように最善の努力をいたしたい、かように考えております。
  55. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 次の臨時国会というと今うわさでは九月半ば過ぎだということです。そうすると二ヵ月半もあるわけですね。相当な長い期間がかかり過ぎるのではないのですか。その臨時国会に改正案というものが出てきて当り前じゃないですか。もっと今やろうとしているこの災害防止の要綱、基本的な考え方というものをもっと努力しておまとめにならなければ、日々災害は起っているのですね。二ヵ月半も先になって、それじゃ要綱的なものを一つまとめてお話ししましょう、これでは私はちょっと聞えにくいと思うのだが、この点どうです。もう一度一つ明らかにしておいてもらいたい。
  56. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) もちろん、私ども最善の努力をして、でき得る限り短期間にやる決意でございます。この規則、法の改正は中央協議会の議を経なければならないということになっておりまして、規則の案ができますと、決定の前には中央協議会に諮ります。中央協議会は労使それから学識経験者と三者構成になっておりまして、特にむずかしい問題ですと相当問題になりますし、場合によれば専門部会も開くようになるかもわかりませんし、相当な日にちを見込んでおかなければなりませんので、かなりな日数をいただきたい、かように考えておるわけであります。もちろん私どももでき得る限り早くまとめまして、そういった機関に早急に諮りまして、早くできるならばもちろんでありますけれども、相当数がございますので、やはりそれくらいの期間はいただかなければできないのではないか、かように考えております。その点一つ御了承いただきたいと思います。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の心配するのは、小岩井さん、今度の国会の中で要綱を出す、これは私は三つ出されたことは、この前の質疑の中で言われたことだと思うのです。この三つの問題は常識だと思うのです。これは要綱じゃないと思うのですよ、私らから見れば。それをこの国会に災害防止の基本的な要綱を出すと言っておかれながら、こういうものをお出しになって、この国会はもう日にちがない。それは何も私たちも、もうあと三日しかありませんから、ここでどうこうせよということを今さら言いません。言いませんけれども、そういう質疑で災害の問題が中鶴からこちら、ガス爆発の問題、それから今度は江口になって、それでここで質疑をされて、お約束されたことも次から次へほごになってきますから、こういうことでは私たちは困るということなんです。もっと真剣に——これはもっと突っ込んでいったら国会軽視じゃないかという議論まで私はしなければならぬと思うのです。だから、そういう点はもっと私たちからいえば真剣に取り組んでもらいたいということなんです。私は、いつ幾日までといったってあなたの方のおつもりがありましょうから、それを突っ込んでいつ幾日までに仕上げろというようなことまで言いませんけれども、しかし、今の例を見ても、そういう不安が——またこのままずるずるとなくなってしまうのではないか、こういうふうに災害が続いていくということは非常に悲しむべきことですから、そういう熱意のほどをお聞きしたわけなんです。だから、いつ幾日云々というところまで私は言いませんけれども、ただ、臨時国会まで今のうわさからいって二カ月半もあるのに、そのときに要綱ぐらいはお話ができるようになるでしょう、というような返答じゃ私は困る。だから、そういうことでなしに、明確にその手続を最大限努力してやってもらいたい。その間にもわれわれ毎月社労委員会を開きますから、それは明確に私はそのときでも、七月も八月も順次この問題は皆さん方と御協議して、よい方向をきめたいと思いますから、そういうことで最大限の努力をして、抜本的な、その災害が起きないという要綱、対策、法改正というものをやってもらいたいということを特につけ加えておきます。これは大臣にも皆さんにもお願いしておきたいのです。それでなければわれわれは忍べませんから、ぜひ一つ早急にこの措置をつけていただきたいということをお願いしておきます。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣とそれから保安局長にお尋ねをいたしますが、江口炭鉱の場合も、二ヵ月前から前兆があったと言われておる。それから東中鶴炭鉱の場合もそうですが、前兆がややあっておる。先ほど阿具根君がマイトをこめるときには、水が出てとめられなかったとさえ言っておる。そういう前兆がある、あるいは危険ではないかと、こういう注意があったときに、労働者の中からも言われておる。それが取り上げられないで、これをあるいは図面を調査し、あるいは今の炭鉱機構で防止し得るようになるまで、あす、あさって、あるいは何日間の後に、そこに再びこういう事故が起らないという保証ができるのでしょうか、今の状態であったならば。これまでの間にどういう工合にして防止すると考えておられるか。その問題として現在あります危険とあるいは不備について指摘をしたならば、調査をしてそれを指摘をしていきたいと、こういう意向に対して通産大臣は、労働者の災害を防止するための発言力はなるべく保証したい、こういうお話でしたが、それを東中鶴やあるいは江口、上添田等々でこれだけの事故が起りました場合に、実際にあったことですが、危険だという前兆がある。だから、採掘をやめて防止策をとるべきだという意向が述べられた。そういうことは述べられるでしょう、今後も。それをどういう工合に取り上げて、そして災害を防止するような方法をおとりになろうというのか。これは大臣局長に伺いたいと思う、具体的に。
  59. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 法の改正のできるまで私どもはこういう次のような方法をとっておるわけでございます。目下本省から係官を現地に出しまして、出水の危険がありそうだと思われる大半の山を監督部に目下呼んでおります。そして各班を分けまして、現地の責任者から旧坑その他の関係を入れまして詳細な調査を目下やらせております。その結果によりまして、でき得る限り、出水指定の強化はもちろん前からやっておりますけれども、今後相当強化をいたしまして、径しいと思われるような山は出水の指定にしてしまいたい、かように考えております。指定になりますれば、危険の対象に対しましては先進搾孔からやらなければなりませんし、また連絡の方法も特別に講じなければならないようになりますので、これでその危険の防止ができるのではないか。指定の強化を中心にして、実情をまず把握しながら指定の強化をはかっていく。それからそのあとに早く規則を改正しまして十分な手を打ちたい、かように考えております。
  60. 吉田法晴

    吉田法晴君 大臣から答弁をいただきませんでしたが、今のお話では、調査をして指定を強化して、それでその再発を防止したい、こういうお話ですが、先ほど申しますように、過去の江口その他の例を見ますと、一カ月前にあった、あるいは数日前にある、それをどういう工合に防ぐかということになれば、そこに働いておる労働者注意をする、あるいは要請をする、それを取り上げる以外にない。そうするとそれを具体的な発言、あるいは今までの災害の頻発からして労働組合についてもそこの労働組合に、あるいは地元の九州の炭鉱については九州の炭鉱生産なり、保安なりを担当している者がおります。そういうものは調査をして、事実知っておるところもございますが、さらに調査を強化して意見を述べたい、こういうことですから、労働者発言を強めるようにしたいという大臣の御答弁からしますならば、そういうものも取り上げられるようにしたいというのが、私は大臣の御意向ではないかと思うのでありますが、重ねて大臣なり局長から答弁をいただきます。
  61. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は、最近の災害の状態が出水のためである。それが主として中小炭鉱に起っておる。わずか二カ月に五十人の死者を出しているということは、まるでお話にならぬことだと思いまして、これをどうか、今われわれが先ほどお話しするごとく、話している間にもそういう災害が起っておるということを非常に懸合心しておるわけなんであります。先ほど御指摘のごとく、実際その先山で働いている人たちが、これは危険だということを感じておるにもかかわらず、経営者がこれを逆行せしめておったということは、これは非常に重大な問題だと思いまして、今後、法律だとか規則だとかということは第二でございまして、まずもってこういう災害を起さぬようにしなければならぬというので、急にこれを警告を発しまして、現に働いておる人たちの意向をよく尊重するようにということを警告いたしたいと存じております。
  62. 吉田法晴

    吉田法晴君 まだ具体的な方法について、私が指摘したにもかかわらず、御答弁がいただけませんが、これからの予防のために具体的に、それぞれの労働者注意あるいは調査が確保されるように一つ大臣から——局長の答弁は大臣の意思を百パーセント取り上げていなかった——省において一つ省の問題として、これは政府の問題でもございますが、大臣から一つ強く先ほどの発言を実現に移されるようお願いをいたしたいと思います。それから図面の提出を求めて整理をする云々ということでございましたが、十数万円ではなかなか困難だと思うのであります。そこで、その図面の調整について、さしあたり、これは予備費の中から出るかもしれませんが、十数万円出されるでありましょうが、なお、全面的な調査とそれから全部の図面の調整をするために、補正予算等を組んでも最善を期せられるのかどうか、その点をもう一度重ねて御答弁を願います。
  63. 村田恒

    説明員村田恒君) ただいま図面の問題について御意見を承わりましたのでありますが、大体人の生命に関する重大問題でございますので、保安規則の改正あるいはそういった法律の改正とか、そういうものが完成するまでを待っておられませんので、まず第一段階といたしまして、私どもは、現在新しくまた掘っていきます場合、こういう事業、こういう採掘をいたしたいという案を出しております——施業案。施業案の認可をいたします場合に、厳格な認可基準というものは、従来一応の基準はございますけれども、それが保安というものを非常に重視したような厳格な審査基準というものはまだ徹底されておりません。その意味におきまして、これは合せて、この次の国会その他を待つまでもなく、きわめて近い期間に大臣名をもって、全国の炭鉱に向って出す措置をとらなければならない、施業案の認可については、これだけの徹底した方法をとれ、たとえば坑内の見取図というものが、これは危ないなと思う炭鉱につきましては、坑内見取図を要求してその坑内見取図が、われわれ担当官が満足できないような場合には、施業案の認可をしてはならない、こういうことを大臣名をもって出す予定にいたしております。それが第一でございます。それから次に、幾ら金を取りましても、人が死んでしまっては何にもならない。その意味におきまして、きわめて従来不備でございました坑内の実測図並びにそれに関連いたしまして古洞の所在というものを徹底的に調査しなければいかぬ、これが予防措置でございます。この意味におきまして、図面はないということでございますが、図面はございます。それはただ過去においての古い図面は全部、福岡の通産局が焼けてしまいまして、業者が出してきたものを全部取りそろえてあるが、これは信頼ができません。従って、官の力をもっても、業者がいやがっても、たとえば財産権に損害があっても、この古洞の所在というものを明確にしなければならないというように考えております。その意味におきまして、補正予算の関係はどうなるかわかりませんが、国会関係でよくわかりませんが、もし補正予算というものがあるならば、今年の十一月ごろまでに、五百万円程度のものはとりあえずこれはほしい、さらに、補正の問題は別にいたしましても、来年度計画といたしまして、三カ年の計画でもって五千万円の費用をもって古洞の所在を全部整備していくという計画を立てております。その計画の内容は、まず大手筋につきましては、現在出ておりますところの坑内の見取図、それを全部担当官を現地に派遣して、現実の状態と照合させる、照合のための実態調査をいたします。その次に古い坑口、これは古老の意見等から、前に古洞があったのではないか、前に採掘した跡があったのではないかということを聞きますが、それを科学的な測点を設けまして、それが基本となります測量の基準を設けまして、それを基礎として個々の実態調査に入っていく、まずもって測量の調査のための費用が何分にも取れなかった、人員が足りなかったという関係で、徹底しておらなかったのでございますが、来年度におきましては、さらにこれをもう少し科学的に調査すべきだと考えるわけであります。その意味におきまして、まず物探、物理探鉱でございますが、これは電気抵抗を利用する物理探鉱、これは当然現在の技術でも十分にやれるわけでございます。それからもう一つは、アイソトープ、ラヂオアイソトープを利用いたします方法、アイソトープを流しまして、別な方にガイガー・カウンターを置いて、アイソトープを流して、水があることを確認するというアイソトープの利用の方法でございます。いま一つは、これは実は現在予防のためにもやっているのでございますが、試薬を、薬を流し込みまして、もし古い水であるならば、そこに必ず坑木の腐敗したものその他の物質がございますので、試薬によって古洞の水であるか、きれいな地下水の水であるか、その他の判定をしたい、そういうことを調査をいたしましてそれからいま一つは、ボーリングでございます。ボーリングを、危ない地域を全部きめまして、探鉱のためにボーリングを打って調べる、これらの措置をとって、特に筑豊地帯におきます古洞の連絡図、基本的な連絡図というものを作り上げなければならぬ、これが基本になりまして、毎年々々基本となります図面が修正されていく、こういう態勢を三カ年計画で整備したい、その費用を今概算でございますが、五千万円で三カ年計画、初年度には二千万円ほど最低取りたい、こういうふうに考えております。予算の点につきまして、いろいろお願いすることが起ると思いますが、その節はよろしくお願いいたします。
  64. 吉田法晴

    吉田法晴君 小さいことを伺いますが、試薬を使われるという点ですが、これは行政指導ですか、それとも測量その他は、これは国でやられるのですから、これは予算があればできます。その関係を聞きたいと思いますが、試薬なり、ボーリングなりというものは、法との関係もございましょうが、行政指導でボーリング、あるいは試薬を使うことを実際に百パーセント確保をしていきたい、こういうことですか。
  65. 村田恒

    説明員村田恒君) これは、ただいま私が申しましたのは、こういうようなことを実施して、こういう内容の予算を組みたいという計画でございまして、これはもちろん大蔵省と折衝しなければならない問題でございますが、それほど具体的になっておりませんが、私ども考えは、国で実施したいと考えおります。
  66. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは時間がございませんから、こまかいことをお尋ねすることは遠慮をいたします。最後に、これは大臣なり、あるいは特に局長に要望いたしておきたいと思うのでありますが、ともすれば炭鉱においても、先ほど申し上げますように、石炭を掘ることが先になって保安、人の命ということが従になってくる、保安法は、これは人の命が第一だと思うのです。何と申しましても人の命が大事だと思うのでありますが、ところが、どうも小岩井さんも含めて、山の鉱業権者にいたしましても、古い従来の炭政なり、あるいは鉱業関係の仕事をしておられます方は、石炭の採掘が先になって人命があとになる、ともすれば鉱山保安法といえども設備、施設というものが先になって命の方はあとになるような解釈をせられる危険があったと思うのであります。先ほど来の答弁を聞いておると、なお、そういう私は古い考え方があるのではなかろうか、あるいは官僚的な、机の上でものを考えるような伝統が、関係者を間違ってやっぱり伝統的に支配しておるのじゃないか、こういうことを心配するのであります。私も炭鉱に十数年おりましたが、これは炭鉱にとって一番言いたい問題は、大事な問題は、私は保安の問題だと思います。人の命の問題だと思います。一つ一つの災害が起ったときに、私どもは命を削られてきた、そして災害が起るたびに、元気で出ていった労働者が上ってくるときには変りはてた姿で上ってくる、これは何とか防げぬだろうか、こういう災害が防げない炭鉱はやめられぬだろうか、こういうことまで実は考えた。これはあるいは通産行政の中であろうと、あるいは組合の問題であろうと、私は一番大きな問題だと思いますが、通産大臣は、これが保安に重点を、人の命に重点を置いて通産行政を考えていただくような御意見等も漏らされましたけれども、しかし、従来の通産行政の中に、あるいは石炭関係する問題については保安監督局、あるいは保安監督機構を通じて、まだ人命よりもあるいは操業、あるいは石炭の採掘の方が、あるいは施設の方が先になるような私は伝統があるやに、これは誤解であれば幸いでありますけれども、そういう杞憂がございます。ぜひ、これだけ責任を追及され、そして従来の保安行政について責任を問われておるこの段階において、一人の命といえどもなくなさないように一つ施策を願いたい、あるいは監督機構の問題、あるいは保安法の問題、あるいは図面等、保安行政の問題等について意見が述べられましたが、私はこれらの意見等について具体的な意見等を申し上げましたが、これについて、あだやおろそかにお考えにならないで真剣にあすから一つ命が保障できるような、災害の頻発しないような、再発しないような万全の措置をとっていただきたいことを要望をして、まだお尋ねをしたいことがございますけれども、あとの問題もございますし、またの機会にしてきょうの質問発言は終りたいと思います。
  67. 久保等

    委員長久保等君) 本件に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  69. 久保等

    委員長久保等君) 次に、御母衣ダムにおける落盤による災害に関する件を議題といたします。  御質疑を願います。
  70. 片岡文重

    ○片岡文重君 最初に、労働大臣、必ず御出席願えるものと存じますが、この点委員長から見通しをお伺いしておきたい。
  71. 久保等

    委員長久保等君) 労働大臣出席を、朝から来る予定連絡を受けております。ただ、午前中会議をやっておるということで若干時間が延びるという連絡があって、その後督促をいたしております。間もなく見えると思いますが、さらに手配をいたします。
  72. 片岡文重

    ○片岡文重君 なるべく早く御出席をいただけるように御手配をいただきたいと存じます。  それから通産省にお尋ねをいたしますが、最初に、これからお尋ねしようとする御母衣ダムの先月十七日における落盤事故によって生き埋めになった三十一人の職員が、奇跡的にも無事に救出されたことに対してこの生還者の諸君に私は心から祝福を送りたいと思いますが、この三十一名の諸君は全く奇跡的に僥幸を得られた。もしこれらの諸君がこの奇跡を得られなかったならばと思い回しますと、全く身の毛のよだつような、はだに粟を生ずるような気持になるのですが、こういう事故は将来再び繰り返すようなことがあってはならない、何とかして絶滅させなければならないという気持が私どもには強くいたしております。今まで議題となっておりました炭鉱の出水事故並びにその他の事故につきましても、私どもとして深く心を痛める問題ですが、このダムの開発、新設によって起る災害は頻度率からいって、強度率からいって、はるかに炭鉱の災害を上回っております。このことは、労災保険の保険料率を見ましても、石炭鉱業の保険料率は特六級です。つまり賃金一円当りが五銭三厘、ところが、この水力発電は実に十二銭八厘、十三割に近い料率を払っておるわけです。隧道建設についてみましても特二級、十銭四厘という高率を払っておるわけですから、このこと自体、政府もこれがいかに危険なことであるか、人命が軽視されておるかということを認めておられるはずです。従って、こういう事業については、十分政府としてその対策を立てておかなければならぬと思う。しかし、残念ながら今日までの統計を見ますと、必ずしもそういう実績が見られません。そこで、私は今回この問題を一つの事例として取り上げてまじめに検討をし、事故の再発を助出したいという切なる念願からお尋ねをいたすわけです。  まず最初に、所管の局長でけっこうですから、この先月の十七日に起りました御母衣ダム放水路工事の落盤事故について、現在までに判明をいたしておりまする原因、それからとられた措置、経過等について、一通りの御説明を願って、その上で御質問を続けていきたいと思います。
  73. 小出栄一

    説明員(小出栄一君) お答えいたします。去る六月十七日の御母衣電源開発会社の御母衣ダムの落盤事故につきましては、ただいま御指摘通り、きわめて奇跡的に、幸いにして全員救出されたというわけでございますが、お示しの通り、こういう事故で助かったのは、むしろきわめてまれな例でございまして、従いまして、私どもといたしましては、かねてから電源開発の工事に伴いまする災害の防止につきましては、その工事を施工いたしまする企業主体である電源開発会社なり、電力会社を通じまして、実際に工事をやっておりまする請負関係の、土木建築関係の工事施行者に対する注意なり監督の指導につきましては、万全を期するように督励をいたしておるのでございますが、今回の六月十七百における落盤事故につきましては、経過を申し上げますると、御承知のように御母衣ダムは電源開発会社がただいま施工しておりまする工事の中では最も大きな工事の一つでございまして、しかも、その地域が御承知のように地質が必ずしもよくない地方であることは前から判明をいたしております。従いまして、ただいま工事を進捗いたしておりまする発電所の放水路のトンネルの掘さく中に起った落盤事故でございまして、その放水路の掘さくの個所につきましては、相当花崗岩が風化し、やわらかくなっておるという地質関係は前から、もちろんこれは相当精密な地質調査をやり、ボーリングをやりまして、すべて電源開発の工事を始めまする前には地質の調査からまずかかるわけでございまして、従って、どの地点にダムを建設したらいいか、それから放水路はどういう地形を通ってどこへ流したらいいかということは、もちろん技術的に設計をいたしました上で工事にかかるわけでございますが、その工事にかかりました際におきましても、その放水路の個所が相当風化軟質した花崗岩地帯であるということが判明いたしておりましたので、工事の施行方法につきましても、特に万全を期しまして、鉄筋でもって捨て巻きをやりながら進んでおったのでありまするが、不幸にして落盤事故が六月十七日の午後一時に起りました、坑口から約四百三十メートルほど奥の地点に発生したのでございまして、この作業に関係しておりました者は、酒井建設という会社の作業員として全体約七十名くらいでございましたが、そのうち三十一名がトンネルの中に閉じ込められてしまった、こういうような状況でございました。従いまして、直ちに現場に災害本部を設けまして、全力をあげてその脱出作業に努めました結果、幸いにして、六月十九日の午前十時二十分という時間に全員が無事に脱出に成功したわけでございます。もちろんこれは御母衣の電源開発会社といたしましては、現地の御母衣の建設所長が中心になりまして、工事の施行者であります酒井建設が直接の責任者として万全の救出作業に当ったわけでございます。  それで事故発生時の作業といたしましては、先ほど申しましたような切羽の付近の作業、それからだんだん捨て巻きのコンクリートを打設しながら奥へ奥へと進んでいく作業をやっておったのでございまして、トンネル内の作業でございまして、昼夜二交代で勤務をいたしまして、先ほど申し上げましたように片番七十人、延べで日に約百五十人が就業しておるというような状態でございました。そして先ほど申しましたような事故が発生いたしましたので、直ちにその閉じ込められました、内部にとどまっております三十一名の人との連絡の方法につきましてまず苦心をいたしたようでございまして、それには排水の鉄管を切断をいたしまして鉄管を通じまして幸い坑内との、中と外との連絡はとれました。電話連絡がとれるようになりました。そうしてまず三十一名の諸君がどういう状態であるかということをまず確認いたしまたところ、とりあえず、中ではまだ全員無事であるという情報をまず得まして、それが午後一時五十三分ごろのことであるというふうに報告を受けております。従いまして、事故が起りまして約五十分後にそういうことが判明いたしました。そういたしまして、それからさらに夕方までかかりまして、夕方の五時三十分ごろに坑内との連絡のために、その鉄筋にマニラ・ロープをくくりつけまして坑内に送り込みました。そのロープを伝いまして三十一名の方に対する飲食物あるいは衣料、薬品あるいは電灯、さらに進んで新聞、雑誌というようなものも、中からいろいろ電話で連絡がありまして、そういうものがほしいというようなこともあって送りまして、割合にまあ、そういう状況でございましたので、内部の方も比較的気分的に、まあそれほど比較的一般の場合よりは楽な気持でおられたようでございます。そういたしまして、とりあえずそういうような連絡をとりましたあとで、さらに脱出作業のために外側から掘進を開始いたしまして、そうして翌日一日かかり、さらに十九日の午前十時になりまして、全員を脱出せしめた、こういうような状況でございます。これは脱出いたしました後におきましては、もちろん直ちに坑口に検診所を設けまして、全員の健康状態を検診いたしました。特にけがをした人あるいは病気であるという人は認められなかったのでございますけれども、やはり相当精神的にも打撃を受けておりますし、肉体的にも多少弱っておるということで病院に一部を収容し、静養してもらった人もあるわけでございます。  これが大体の事故が発生いたしまして、幸いにして、まあ全員救出するまでの状況でございますが、この事故の発生の原因につきましては、もちろんこれは所管官庁でありまする労働省の現地の高山の労働基準署において、御調査の途中でございまして、まだその結論は承わっておりません。しかし、いずれにしましても、先ほど申しましたように地質が本来比較的悪い地方でございまして、相当の注意を払って参りましたけれども、やはり落盤という事故がそこに起ったんで、その落盤の原因につきまして、ただいま技術的にさらに検討——これは労働基準局としてではなくて、電源開発会社として、また通産省といたしましても、技術的に検討を続けてほんとうの原因を突きとめたい、かように考えております。  そうしてこの酒井建設の就労の状況でございますが、この事業者は、従来は相当、安全につきましては関心が比較的高い建設業者であるというふうに認められておりまして、過去においても数回安全の表彰を受けたこともあったくらいでありまして、そういう点につきましては、かなり意を用いておったということは考えられるのでありますが、何分にもこういうような大きな事故を発生いたしましたわけでございまするので、さらに正そう技術の向上なり設備の改善、作業動作の一そうの改善というようなことについて、十分啓蒙、指導を行なっていきたい、かように考えております。概略でございますけれども、一応経過を申し上げました。
  74. 片岡文重

    ○片岡文重君 救出されて手当を受けるまでの大体の事情はわかりました。これは、先ほども申しました通り、たまたま奇跡的に救助された場合でありますから、世間も比較的胸を痛めないで済んだことでしょうが、閉じ込められた身になると、これは実に筆舌に尽されないような経験をされたと思います。週刊朝日を見てもこれらの人の体験が載っております。新聞や雑誌を送っても、とても読む気にはなれなかったと言っておる。これはほんとうだろうと思う。こういう状態に置かれたのですから、救出されてからも、さぞかし精神的にも肉体的にも非常なショックを受けておられると思う。しかしながら、それに対してできるだけの措置をとっておるということですから、十分の上にもさらに手を尽してやっていただきたいと思うのですが、その酒井建設のこれまでの工事のやり方は、比較的安全に重きを置いておる。安全表彰も受けておられるということですけれども、新聞の伝えるところによりますと、事故の原因は坑内の型ワクを早く取りはずしたのと、梅雨どきで地盤がゆるんだためと見ておると、こう報道されております。これはその事故の起った日に伝えられた新聞記事ですから、どこまで真相をつかんでおるかは私も真偽のほどを、というよりも、これが間違いない真相だというふうに信じておるわけではありません。けれども、少くとも現地で、しかも、そう小さな新聞ではなく、五大新聞に数えられるような大きな新聞が伝えておることですから、全然根も葉もないことだとは思わない。今局長の話ですと、鉄筋の捨ワクを作ってやっておったということですが、まあ時間の都合もありまするので、あまりこまかい工事のやり方についてはお尋ねを省略いたしますけれども、この鉄筋の捨ワクを作るまでやっていったとするならば、早くこの捨ワクじゃありません——この型ワクを取りはずしてしまったというようなことは、私は、起り得ないのじゃないかと思うのですが、この点についての詳細な調査は行われておるのですか。
  75. 小出栄一

    説明員(小出栄一君) ただいまの事故の発生原因につきましては、先ほども申しましたように、責任官庁でありまする現地の労働基準局、労働省関係において御調査してございますので、最も詳細な具体的なことは、労働省の方からお答えになると思いますが、私どもで聞いておりますことは、捨てワクコンクリートに六月十七日の朝から着手いたしまして、昼食後に着手すべくちょっと一つの場所に落ちつきました間にたまたま起りましたために、落盤からくる直接の事故でなくて済んだわけでございますが、片ワクをはずしておいたために、そういうような事故が起ったかどうかということにつきましては、私どもとしては報告を受けておりませんですが、なお、労働省の方からお答えがあると思います。
  76. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 今回の酒井建設の事件につきましては、まことに遺憾にたえない次第でございます。  この事故の状況は、ただいま公益事業局長から詳細な説明があったところでございます。その当日の午後一時ごろ、労務者が前記隧道に入坑いたしまして、坑口から四百三十メートルの付近で、捨て巻きコンクリートの巻き立て作業を実施中であったわけでございます。作業開始後間もなく、その上部で作業をしておりました五人の労務者の方が、コンクリート金ワクの形が変っており、岩盤に亀裂を生じ始めているということに、事前に気がつきまして、落盤の発生を察知して付近の人に警告しながら坑口の方に退避したのであります。その地点から奥の方におりました三十一名の労務者の方は、坑口に回れませんでしたので、奥に退避したということでございます。そのために埋没されたわけであります。瞬間でございまするが、事前にこのような異常現象に気がつきましたことが、人命の死亡事故を発生しないで済んだ最大の原因であります。その機敏な動作には、きわめて敬意を表するわけでございます。  そこで、その原因でございますが、これは現地の高山の労働基準監督署におきまして、電源開発、通産省、その他関係者の方々と目下真相究明に当っております。何分まだこの事故の現場が埋没しておりまして、まだ復旧されておりませんので、その原因は、詳細にまだつかまれておらないのでありますが、とにかくその場合におきまして、異常な土圧が生じたということが根本原因でございます。その原因といたしましては、二つの点が目下考えられるのでございます。一つは、先ほども説明がありましたように、ここの地質が粘土をはさんだ風化花崗岩で、非常にもろく、すべりやすい地質なのであります。また、この付近に大きな断層がありまして、この影響で、この隧道にも小断層があったわけでありまして、その小断層の一つがすべり出して、突然崩落したというのが原因になっているのではないかというのでございます。それからいま一つは、事故発生の前々日、すなわち六月十五日の正午におきまして、事故の地点から南方十キロメートルの福島谷という所で、百五十五トンの大きなハッパを実施したわけでございます。この震動が地盤をゆるめ、落盤させた間接的な原因になっているのではないか、このようなことを推定しているわけであります。なお、そのときにおきまする酒井建設の支柱等の工法につきましては、これも調べておりますが、これは非常にこまかくなりますけれども、後光はりと申しまして、比較的安全度の高い支柱を設けておったわけでございます。労働基準法違反の事実等につきましては、目下調査しております、しかし、そのときの使用者の過失に基くものかどうか、これはまだ詳細つかめないようであります。  以上が、一応ただいま推定される事故の原因でございますが、なお、鋭意原因を検討中でございますので、近くその真相が明らかになると考えております。
  77. 片岡文重

    ○片岡文重君 せっかく調査中であるとするならば、その調査の結果が判明いたしました際に、また必要によってはお尋ねいたしたいと思いますが、この事故は、人命にも損傷なく、損失労働日数も、新聞等に伝えられる範囲で、また、今の両局長の御説明の範囲では、そう大したことはなさそうに思われますが、そうなってくると、これは災害統計の中には含まれておらぬのですか。
  78. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) この点につきましては、死亡はございませんでしたので入らないわけであります。なお、負傷とかそのほか生き埋めになりまして、救出されたあと、療養を要するということでございますので、これは傷害統計の方になります。従って、その面では災害統計の中に入るわけでございます。
  79. 片岡文重

    ○片岡文重君 これは労働省でたしか調べていただいたと思うのですが、酒井建設の災害発生状況、それからこの御母衣ダム関係しておる酒井建設、間組、佐藤工業の三事業場の災害発生状況を見ると、なるほどおっしゃるように酒井建設の度数率は非常に少いようです。しかし強度率を見ますると、これは逆に非常に多いということです。で、度数率が少いということは、平素安全ということに注意を払っているから事故が起らないのだということもいわれておる。しかしながら、強度率が多いということになりますと、起ればいつも大きな事故が起るのだということであります。大きな事故ということになれば、人命に損傷を与えるということが当然考えられるということになると、これは必ずしも安全な措置を常にとっているとばかりは言えないのではないかという気がいたします。この点について、局長はどういうふうに見ておられるのか。やはり、たまたま酒井建設には、それだけの注意をしておりながら、強度率が高いということは、間が悪くてそういう大事故にぶつかると見ておられるのか、特に先ほど来両局長の御説明では、ここは危険なことが区域的に予知されておったかのごとくに、私には拝承される。花岡岩の石英斑君とか、あるいは花岡斑岩等の風化作用の比較的受けやすい所である、小亀裂が多いというようなことが言われておりましたが、もしそうだとするならば、なおさらもってこういう落盤事故等が多く察知されるわけですから、それの予防措置というものは十分にされておるべきだったのです。たまたま、いわゆる人工地震等によってその地質試験が行われたとしても、これこそこれは天災ではないのですから、行う時期も、行われる力も全部わかっているわけなんですから、一そう手当をするなり——手当が最高度に今日の科学ですれば防ぎ切れないというなら、少くとも危険の察知される間は、従業員も坑外に出して、危険がおさまってから作業に従事せしめるというような措置をとるなり、何らかの措置があったわけです。それをしておらないからこういうことになっておる。なお、こういう危険なことの予測される区域に対する安全措置というものが、結果論から言うことになるかもしれませんが、不十分であったのではないか。それが一つ。もう一つは、酒井建設の今までの統計を見ると、他の業者に比べて度数率はなるほど少いが、強度率がほとんど倍近くなっている。これは常に大事故を起しておるものだ、こういうことが言えるのですが、これに対する基準局長の御所見を伺いたい。
  80. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 私ども考えとしては、なるほどある時期におきましては、この事故が発生しないで、その時期におきましては酒井建設は成績がよかったということは言えるのでございますが、全体的に見まして、私は決して優良な事業場であるとは思っておりません。ただ、ちょっと先ほど通産省の方からお話がありましたのは、昨年の十二月から本年三月までの間の四ヵ月の間、この酒井建設は、相当災害防止にはいろいろ工夫をこらしまして、延べ労働時間数約四十九万五千時間に上る間、全然一つの事故もなしに四ヵ月を過しました。いわゆるわれわれの方では三種の無災記録と称しておりますが、この種の事業としては、このような一つの記録が出たわけでありまして、その意味においては成績がよかった。こういうことは言えると思うのでございまするが、ただいまの御意見にもありますように、度数率が、全体のこの種事業からいえば、低位にはございます。ございますけれども、強度率は必ずしもそうではない、まあ相当大きいのでありまして、われわれは今後においても、大いに改善すべき点があるのではないか、このように思っておるわけでございます。なお、これにつきまして、労働者の高山監督署等において行いました措置を申し上げてみたいと思うのでございますが、その前に、この電源開発関係の工事が、最近非常に奥地に進みまして、そのせいもありまして、非常に困難な作業が多くなった、こういう面もありましょう。その他、いろいろな面がありまするが、この水力発電の建設工事におきまする災害の度数率は、一般の産業の度数率が逐次相当毎年低下をしておるのに反しまして、まあ低下はいたしておりますが、数年前においては百五十という非常に大きな率であったのでありまするが、三十一年と三十二年におきましては、減少いたしまして、九十二、さらに八十五と、このように減少はしておるのでございまするが、やはりまだまだ相当高い。一般産業に比べて、はるかに高い率なのでございます。この面におきまして、われわれといたしましては、特にこの建設業におきまする重大災害の防止ということに力をいたさなければならないと考えております。本年度の労働基準法に基く監督の計画を立てましたが、その際、第一の重点に、この建設業における重大災害の防止を指定いたしました。そうして今後における事故の減少、絶滅とまでは参りませんと思いますが、事故の減少を期したい、このように考えておるわけでございます。この特別国会が終りましたあとで、この九日、十日に全国の労働基準局長、労働部長合同会議を開催いたしますが、労働大臣からも、この点特に念を入れて指示していただきたいと思っておるわけでございます。また、この高山の監督署におきましては、このような地質の関係もありまして、現地の各関係会社を集めまして、災害防止対策協議会を設けまして、ここにおきまして、鋭意災害の防止の検討を進めてもらうほか、事の重大性にかんがみまして、高山監督署の分室をこの現場に置きまして、監督官を常駐さしておったのであります。それからなお、岐阜の労働基準局からも安全衛生課長、監督課長等がみずから行きまして、そういうものを加えますれば、これはほんとうに重点を置いて監督指導をやっておったわけでございます。ただしかし、今のような異常な土圧の関係で、当日このような突発事故が起きましたことは、まことに残念でございますが、われわれといたしましては、今後の方針といたしましては、ただいま話にありましたハッパ作業、これにつきまして、このハッパの作業の責任者の講習会を行いまして、安全なハッパ作業が行われるように指導いたしたい、このような観点から、昨年末から講習会を全国で開催しております。大体作業者三万名のうち、現在まで大体二万名済んでおりますが、この成績は非常にいいように思われますので、これをさらに重点を置いてやっていく。それから支柱につきましても、最近安全研究所に命じまして、安全な支柱の方法につきまして、考案を願っておったのでありますが、これができ上りました。V型の可縮坑ワク工という方法でございますが、これを今後全国的に普及指導していく。それからこのような作業を取扱う斧指工の技能訓練を行う、これをぜひ始めたいと思っておるのでございます。大体、以上のような対策をもちまして、この水力発電事業現場におきまするところの今後における災害の減少に、われわれとしては十分努力いたす考えでございます。
  81. 片岡文重

    ○片岡文重君 努力下さることはけっこうです。そこで、無事故記録の内容ですが、たとえば非常に危険な事態が起る寸前に回避し得た。奇跡もありましょうし、僥幸もありましょうし、たとえば支柱が倒れて、間一髪これを逃げたという場合に、人命にはけがもなければ、何も事故はないわけです。しかし支柱が倒れて、もし一秒逃げおくれたら支柱の下敷になっただろうというような場合には、この事故記録の中に載ってこないわけです。今それをやはり載せておりますか。
  82. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) この無災害記録につきましては、結局、労働省労働基準同等におきまして認定をするわけでございますが、今回の場合は死亡者はありませんでしたが、傷害者がありましたので、これは当然無事故が破れるわけでございます。なお、かりに今のようなことがありまして、皆うまい工合に逃げて、全然けがもない、療養の必要もなかったという事件がありました場合におきましても、これはわれわれとしては、無災害記録の対象には認定いたしません。これは統計的にはそのように出るといたしましても、われわれとしてはそのようにはいたさない方針でございます。
  83. 片岡文重

    ○片岡文重君 それは無災害に認めない、けっこうです。それはそうなくてはならぬ。けれども、たとえばこの御母衣ダムは大きな工事ですから、あるいは監将官が行っておられるかもしれません。常駐されておるという先ほどのお話ですから、それは私は信用しましょう。けれども、全然こういう所よりもっと小さな工事、たとえばもうちょっと古くなりますが、愛知県の、何か亜炭鉱業か何かで、やはり事故を起しておる。ああいう所には、おそらく監督官が行っておられぬだろうと思います。事業者となれば、そういう不幸な事態が表面化されてしまったときには、なるほどこれは届出もするでしょう。基準法に従った届出をされるでしょう。けれども、今言ったように、支柱が倒れた、一秒の違いで逃げおおせたというような場合には、おそらく基準局にはこれは報告はせぬでしょう。これはあなた方わかるはずがない。かりに報告があったとしても、表彰等の場合には、それは認めるだろう。認めるということは、無事故としては認めない、事故があったと認めるであろう。けれども、災害統計等の場合には、これは載っておらないと私は思う。そういう場合にも記録の上に載せますか。
  84. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) これにつきましては、ただいまのような相当大きな事故になりますれば、これは死亡までは出ないとしても、必ず傷害者ができるわけであります。従いまして、この場合におきましては、これはまさしく統計に載っておるわけであります。ただ、監督署の知らないような所で、たまたま何かくずれた、その場合に、その付近に人間がいなかったという場合におきましては、これは災害統計には載りません。災害統計と申しまするのは、御承知のように、死傷者が何人、それから八日以上の重傷者が何人、それ以下が何人、こういう形で出てくるわけでございます。それには載らないわけでございます。しかし、それは別に人命あるいは身体に影響がなくても、影響のない事故というものは、また別にあるわけでございまして、われわれといたしましては、たまたま幸いにしてその付近に人がいなかったために、人命あるいは身体に影響がなかったという場合におきましても、同じことでございますので、こういうような面については、もちろんこの防止につきまして、十分努力するつもりでございます。
  85. 片岡文重

    ○片岡文重君 まあこれは議論になりますから、それ以上追及しませんが、私は、少くともそういう場合は、記録漏れになっておって、きわめて注意をすべき事項、つまりその事故の起った原因を探求すれば、十分、将来にわたって、将来にその事業者が戒心をしなければならない事項が相当多くあると思うのです。私どもが見聞しているところだけでも例があるわけであります。しかし、それが今度は記録の上に載るかどうかということになると、届出のない限りは、これはやはりやみからやみに葬むられている事例が多いと思うのです。今度は労働協会というものも作られて、相当労使の間における関係等については金を使って宣伝されるそうだが、こういう事故の防止には、やはりもっと積極的な努力をしていただいて、できるならば一つの事故が起ったときには、その原因によって、これはやはり関係者がひとしく戒心すべきものである、こういう事例は起りやすく、しかも戒心しなければいけない、注意さえすれば防げるのだというようなものは、また労働省の関係局長考えられて、これは一般に知らして、改善せしむべきだというようなものは、多少金がかかっても、関係業者の間に周知せしめて、事故の再発防止に資すべきではないかと、こういうふうに考えるのですが、この点について、局長はどういうふうにお考えになりますか。
  86. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまのお説は、まことにその通りでございます。私も全然同感でございます。われわれといたしましても、そのような観点に立って、これはもう全然わからなかった場合はいたし方がございません。しかし、まあわかるようにもちろん努力はいたしますが、わかりました場合において、これが関係業者に参考になると思われまするものは、われわれの安会行政といたしましては、その周知とそれからその原因の探求と、その予防措置につきまして、関係業界を啓蒙しているところが非常に多いわけであります。一つの例を申し上げてみますと、ことしの初めにおきまして、新潟県の二本木におきまする某化学工場におきまして、酸素供給装置の爆発があったわけでございます。この爆発の際に、これは野天にありましたために、付近に人がおらなかった。そのため死傷者がなかったわけでありますが、やはりこれは化学工場として非常に大事な事故であるということで、これは新潟の基準局長が早速現地まで出かけまして、徹夜でその真相究明に当った結果、原因がわかりましたので、付近の化学工場等には、全部その原因と、それから予防措置につきまして、この内容を紹介いたしまして、これを参考にして今後この種の事故の発生防止に資してもらった、このような例もあるわけでありますから、われわれとしては、ただいまお説の通り考えでおりますので、今後上分にこのような面につきましても対策を講じていきたいと考えております。
  87. 片岡文重

    ○片岡文重君 原因については、目下調査中であるということですから、その結果がわかったときに、工事の施行方法等についても一括してお尋ねしたいと思いますから、きょうはまあその点はやめておきまして……。  ちょっと委員長、速記をとめてもらいたい。
  88. 久保等

    委員長久保等君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  89. 久保等

    委員長久保等君) 速記を起して。
  90. 片岡文重

    ○片岡文重君 では、通産大臣に、長くお待たせいたして恐縮ですから、先にお尋ねいたしておきますが、先ほど来長い間同僚阿具根君を初め、炭鉱災害についてお尋ねをしておったわけです。大臣の御答弁を伺っておりますと、人命尊重という点については非常に関心をお持ちいただいているようで、私どもとしては非常に敬意を表するところですが、この石炭とか金属とかいう、この石炭鉱業の保険料率は、先ほどもちょっと申し上げました通りに、五銭三厘です、特六級です。ところが、おそらくこの御母衣ダムの場合、事故の起った所では、隧道建設事業として私は適用されておるのだろうと思うのですが、それでもなお十銭四厘である。一割を越える率です。こういうことは、それだけこの労災が頻発しておるという事態を端的に物語っておると思うのですが、隧道工事とか、金属鉱山、石炭鉱山という所では、けがは当りまえだという先入観を一般に持っておられて、山でそういう事業で死亡事故が起っても、交通事故等の一般の社会事故ほどには関心が沸かないようであります。こういうやはり考え方を、まず関係者は改めなければいけない。そして世人にも、世論として一人の人命をも尊重するということを真剣に考えさせるような措置を、私はとるべきだと思うのです。しかるに、この御母衣ダムを初めとして、最近の事故を見ますると、せっかく政府当局の御努力もおありになった、これは私も認めます。現実にこの発生件数としては減っていっておるのですから、これは私も認めます。ただしかしながら、残念なことには、先ほども質問の中にも申し上げましたように、労働日数に対する損害日数が非常に多い。つまり大きな事故が多いということなんです。人命に重大な危険を与えるような事故が非常に多いということなんです。しかもこれが、労働省所管として労務管理は行われておりますけれども、その事業の主体を監督しておられるのは、大体通産省が多いのです。こういう点からも、やはり通産省としては相当深い関心をお持ちになっていただきたいと、私は強く希望するのですが、大臣は、この点についてどういうふうにお考えになっておられるか。先ほども申し上げました亜炭工業の埋没、これも幸いにして救出されたようですけれども、救出されたときにはそう大きな問題にはならないけれども、不幸な事態に陥ったときだけしか問題にならない、こういうことは、やはりもちろん不幸な事態になった場合にも強く注意を喚起してもらわなくちゃいけませんけれども、奇跡的に逃れた者も、幸いにして命は保ったけれども、まあ救出されるまでの気持というものを考えたならば、全くこれはもう筆舌には尽し得ない苦労をされると思うのです。こういうことをしばしば経験をさせるということは、私どもとして、特に通産行政、労働行政をあずかる責任あるお立場にあられる大臣としては、将来非常に関心をもっていただかなければならぬと思うのです。大臣の御所見を、一つこの際、伺っておきたいと思う。
  91. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 人命というものは、経済というものに優先すべきものであって、人命あって初めて、経済があり、人命があって初めて政治があるわけでありますから、とかく人命を尊重しないというふうな風潮が、あの戦時中あったということが災いしていると思いますが、これはいわゆる民主政治に徹するためには、まずその点の心がまえから考え直さなければならぬということは、私全く御同感でございます。  で、災害の問題につきましては、水上で働く人々、地上で働く人々、地下で働く人々、これは三つとも全然環境が違っておりますが、従前、地上の人はともかくも、水上、地下で働く人については、相当危険があるということもこれは事実でございます。これの自然災害をいかに防止するかということを徹底的に考えまして、文化の向上なんということは、結局、災害が絶無であるということにいかなければならぬと思うのであります。特にただいまの片岡委員のおっしゃいました地下において埋没された人の気持というものは、私は若いときに自分が埋没されたということがありますから、だれよりも一番経験しておりますから、この点につきましては、今後、私ども制度の運営につきまして、十分努力したいと思います。
  92. 片岡文重

    ○片岡文重君 そこで、一つ大臣にもう一つお尋ねしたいのですが、せっかくそういう関心をお持ちになっていただきますものならば、この際、労働省と通産省との間で、これは労働省からも多分賛成とばかりは言わぬでしょう。権限争い等にもなるかもしれませんが、こういう事故の予防対策を専門とする何らか私は機関を設置されたらどうかと思うのです。そうして事故が起らない前に手を打っていく、先手先手と打っていくということを、さらに徹底させるために、労務管理は労務管理、作業管理は作業管理ということで、別々にお互いが権限を主張するばかりでなしに、共同してやっていけるような私は機関を設けられたらどうかと思うのですが、こういう点について、大臣はどうお考えでしょうか。
  93. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは労働関係中心とした労働関係閣僚会議が開かれておりますけれども、私は、これは全く御同感でございまして、これは通産、あるいは水産関係から申しまして農林、労働という省が三つがよく提携をいたしまして、そういうような機関を作っていきたいということは、全く御同感でございまして、できるだけ実現を期したいと思っております。
  94. 片岡文重

    ○片岡文重君 この問題については、なお先ほども申しあげました通りに、どうも私には工事のやり方響についても十分不審な点もありまするし、第一この安全衛生規則の第二編等に抵触するところがあるのではないかという不審な点も多分に感ぜられますし、労務管理等についても、たくさんお尋ねしたい点もありますが、労働大臣もきょうはお見えにならないということでありまするので、残余の質問を次の機会に留保して、本日は、これで終りたいと存じます。
  95. 久保等

    委員長久保等君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  96. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて下さい。  本件に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。
  98. 柴田栄

    ○柴田栄君 私は、この際、炭鉱災害対策に関しまして、お手元に配付いたしましたような決議を本委員会において行われんことの動議を提出いたします。
  99. 久保等

    委員長久保等君) ただいま柴田栄君提出の動議を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。炭鉱災害対策に関する決議案を議題といたします。提案者から趣旨説明を願います。
  101. 柴田栄

    ○柴田栄君 炭鉱災害につきましては、かねがね相当の世論を巻き起して参っておりまするが、最近の、特に中小炭鉱をめぐります出水被害は実に莫大な人命被害を生じまして、これらの原因を探求いたしますると、従来の施策に非常に手おくれあるいは欠けるところがなしとは言えないのでございます。あるいは鉱山保安法の改正の問題、特に中小炭鉱が非常に不整備な地図をもちまして、十分に実情を把握しないで施業案が編成されるというような関係からいたしまして、またこれが許可に当りましても、きわめて不十分なものがある。この際、徹底的にまず地図の整備をする、そうして万全の策を講じて初めて仕事に着手していただくということが、絶対の要件であるように感ずるのでございまして、すでにこの問題は、通産大臣もその必要を十分に認めており、通産省といたしましても、新しくこれが整備のために予算の要求をいたそうとされておりますし、また、必要経費に関しましては、大蔵大臣も十分にこれを取り上げるというような発議もなされておりますので、この際、ただいまお手元に配付いたしておりますような決議をいたしたいと存じますので、案を朗読いたします。    炭鉱災害対策に関する決議案   人命は何ものにもまして尊いことは論をまたない。然るに最近の頻発する炭鉱の災害は目を覆うものがある。   政府は之が対策として左の処置をすべきである。  一、鉱山保安法を早急に改正すること。  一、焼失せる坑内図面を早急に作成するために万全の処置をなすこと。  一、採掘許可については特に慎重を期しいやしくも危険を予想される炭鉱に対しては許可しないこと。  一、現在被害者を出しその死体搬出に支障がある場合は政府責任に於て早急に搬出するよう措置すること。  一、坑内作業労働時間に就いては基準法の定めを厳重に守らしむること。   右の措置を行うために必要なる予算を増額するとともに関係法令の改正を行うこと。   右決議する。  以上でありますが、どうか皆さま全会一致で本決議を御決定いただきまして、政府に要望できるよう御賛同をお願い申し上げます。
  102. 久保等

    委員長久保等君) 本案の御質疑はございませんか。——御質疑もないようでございますから、採決いたします。  炭鉱災害に関する決議案を、本委員会の決議とすることに御賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  103. 久保等

    委員長久保等君) ありがとうございました。全会一致でございます。よって本案を、委員会の決議とすることに決定いたしました。
  104. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御決議は、政府といたしましても十分御期待に沿うように善処いたすことにいたします。
  105. 久保等

    委員長久保等君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  106. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。  本日の委員会は、これにて散会いたします。    午後二時二分散会