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説明員(小出栄一君) お答えいたします。去る六月十七日の御母衣電源開発会社の
御母衣ダムの落盤事故につきましては、ただいま御
指摘の
通り、きわめて奇跡的に、幸いにして全員救出されたというわけでございますが、お示しの
通り、こういう事故で助かったのは、むしろきわめてまれな例でございまして、従いまして、私
どもといたしましては、かねてから電源開発の工事に伴いまする災害の防止につきましては、その工事を施工いたしまする企業主体である電源開発会社なり、
電力会社を通じまして、実際に工事をやっておりまする請負
関係の、土木建築
関係の工事施行者に対する
注意なり監督の指導につきましては、万全を期するように督励をいたしておるのでございますが、今回の六月十七百における落盤事故につきましては、経過を申し上げますると、御
承知のように
御母衣ダムは電源開発会社がただいま施工しておりまする工事の中では最も大きな工事の
一つでございまして、しかも、その地域が御
承知のように地質が必ずしもよくない地方であることは前から判明をいたしております。従いまして、ただいま工事を進捗いたしておりまする発電所の放水路のトンネルの掘さく中に起った落盤事故でございまして、その放水路の掘さくの個所につきましては、相当花崗岩が風化し、やわらかくなっておるという地質
関係は前から、もちろんこれは相当精密な地質
調査をやり、ボーリングをやりまして、すべて電源開発の工事を始めまする前には地質の
調査からまずかかるわけでございまして、従って、どの地点にダムを建設したらいいか、それから放水路はどういう地形を通ってどこへ流したらいいかということは、もちろん技術的に設計をいたしました上で工事にかかるわけでございますが、その工事にかかりました際におきましても、その放水路の個所が相当風化軟質した花崗岩地帯であるということが判明いたしておりましたので、工事の施行方法につきましても、特に万全を期しまして、鉄筋でもって捨て巻きをやりながら進んでおったのでありまするが、不幸にして落盤事故が六月十七日の午後一時に起りました、坑口から約四百三十メートルほど奥の地点に発生したのでございまして、この作業に
関係しておりました者は、酒井建設という会社の作業員として全体約七十名くらいでございましたが、そのうち三十一名がトンネルの中に閉じ込められてしまった、こういうような状況でございました。従いまして、直ちに現場に災害本部を設けまして、全力をあげてその脱出作業に努めました結果、幸いにして、六月十九日の午前十時二十分という時間に全員が無事に脱出に成功したわけでございます。もちろんこれは御母衣の電源開発会社といたしましては、現地の御母衣の建設所長が
中心になりまして、工事の施行者であります酒井建設が直接の
責任者として万全の救出作業に当ったわけでございます。
それで事故発生時の作業といたしましては、先ほど申しましたような切羽の付近の作業、それからだんだん捨て巻きのコンクリートを打設しながら奥へ奥へと進んでいく作業をやっておったのでございまして、トンネル内の作業でございまして、昼夜二交代で勤務をいたしまして、先ほど申し上げましたように片番七十人、延べで日に約百五十人が就業しておるというような状態でございました。そして先ほど申しましたような事故が発生いたしましたので、直ちにその閉じ込められました、
内部にとどまっております三十一名の人との
連絡の方法につきましてまず苦心をいたしたようでございまして、それには排水の鉄管を切断をいたしまして鉄管を通じまして幸い坑内との、中と外との
連絡はとれました。電話
連絡がとれるようになりました。そうしてまず三十一名の諸君がどういう状態であるかということをまず確認いたしまたところ、とりあえず、中ではまだ全員無事であるという情報をまず得まして、それが午後一時五十三分ごろのことであるというふうに報告を受けております。従いまして、事故が起りまして約五十分後にそういうことが判明いたしました。そういたしまして、それからさらに夕方までかかりまして、夕方の五時三十分ごろに坑内との
連絡のために、その鉄筋にマニラ・ロープをくくりつけまして坑内に送り込みました。そのロープを伝いまして三十一名の方に対する飲食物あるいは衣料、薬品あるいは電灯、さらに進んで新聞、雑誌というようなものも、中からいろいろ電話で
連絡がありまして、そういうものがほしいというようなこともあって送りまして、割合にまあ、そういう状況でございましたので、
内部の方も比較的気分的に、まあそれほど比較的一般の場合よりは楽な気持でおられたようでございます。そういたしまして、とりあえずそういうような
連絡をとりましたあとで、さらに脱出作業のために外側から掘進を開始いたしまして、そうして翌日一日かかり、さらに十九日の午前十時になりまして、全員を脱出せしめた、こういうような状況でございます。これは脱出いたしました後におきましては、もちろん直ちに坑口に検診所を設けまして、全員の健康状態を検診いたしました。特にけがをした人あるいは病気であるという人は認められなかったのでございますけれ
ども、やはり相当精神的にも打撃を受けておりますし、肉体的にも多少弱っておるということで病院に一部を収容し、静養してもらった人もあるわけでございます。
これが大体の事故が発生いたしまして、幸いにして、まあ全員救出するまでの状況でございますが、この事故の発生の原因につきましては、もちろんこれは所管官庁でありまする労働省の現地の高山の労働基準署において、御
調査の途中でございまして、まだその結論は承わっておりません。しかし、いずれにしましても、先ほど申しましたように地質が本来比較的悪い地方でございまして、相当の
注意を払って参りましたけれ
ども、やはり落盤という事故がそこに起ったんで、その落盤の原因につきまして、ただいま技術的にさらに検討——これは労働基準局としてではなくて、電源開発会社として、また
通産省といたしましても、技術的に検討を続けてほんとうの原因を突きとめたい、かように
考えております。
そうしてこの酒井建設の就労の状況でございますが、この事
業者は、従来は相当、安全につきましては関心が比較的高い建設
業者であるというふうに認められておりまして、過去においても数回安全の表彰を受けたこともあったくらいでありまして、そういう点につきましては、かなり意を用いておったということは
考えられるのでありますが、何分にもこういうような大きな事故を発生いたしましたわけでございまするので、さらに正そう技術の向上なり
設備の改善、作業動作の一そうの改善というようなことについて、十分啓蒙、指導を行なっていきたい、かように
考えております。概略でございますけれ
ども、一応経過を申し上げました。