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1958-03-10 第28回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十日(月曜日)    午後一時五十六分開会     —————————————  出席者は左の通り。    理事            大川 光三君            一松 定吉君            宮城タマヨ君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            斎藤  昇君            吉野 信次君            亀田 得治君            藤原 道子君    政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    法務大臣官房    調査課長    位野木益雄君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省保護局長 福原 忠男君     —————————————    最高裁判所長官    代理者    (人事局長)  鈴木 忠一君    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長)  菰淵 鋭夫君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局総    務課長     横井 大三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正  する法律の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○売春防止法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○婦人補導院法案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 一松定吉

    理事一松定吉君) それではこれより会議を開きます。  まず、会議を開きますに当りまして、出席政府委員を御紹介申します。政務次官横川信夫君、調査課長位野木益雄君、刑事局長竹内壽平君、最高裁人事局長鈴木忠一君、同じく家庭局菰淵夫君が御出席になっております。渡部矯正局長と、横井刑事局総務課長福原保護局長は少しおくれます。法務大臣は今予算に出席せられておりまするから、間もなく当委員会出席いたします     —————————————
  3. 一松定吉

    理事一松定吉君) それでは初めに、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、これを議題に供します。  それで、三案のこの問題に対しまして、まず提案理由説明を求めます。
  4. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明申し上げ  ます。  この両法律案は、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官並びに検事総長次長検事及び検事長報酬または俸給の各月額を増額しようとするものであります。御承知通り、これらの裁判官及び検察官以外の裁判官及び検察官報酬または俸給は、一般政府職員俸給に準じて、昭和二十三年六月以降、数回にわたり増額されたのでありますが、右に述べました最高裁判所長官及び検事総長等裁判官及び検察官報酬または俸給は、内閣総理大臣等の他の特別職職員俸給に準じて定められております関係上、これらの職員俸給と同様に、しばしばその増額が見送られたまま現在に至っております結果、他の裁判官及び検察官並びに一般政府職員報酬または俸給に比較して著しく均衡を失しているのであります。今回政府におきましては、他の特別職職員給与一般政府職員給与との権衡等を考慮して改訂することとし、別に特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしましたことは御承知通りでありますが、この改訂の趣旨にかんがみ、この際、前に述べました最高裁判所長官及び検事総長等裁判官及び検察官報酬または俸給についても、これを改訂するのが相当と考えられるのであります。そこで、最高裁判所長官報酬月額を十五万円に、最高裁判所判事及び検事総長報酬または俸給の各月額を十一万円に、東京高等裁判所長官報酬月額を十万円に、その他の高等裁判所長官及び東京高等検察庁検事長報酬または俸給の各月額を九万五千円に、次長検事及び東京高等検察庁検事長以外の検事長俸給の各月額を九万円にそれぞれ増額することといたしたのであります。  以上がこの両法律案趣旨でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。  次に、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  執行吏は、御承知通り一般公務員に準じて恩給を受けることになっており、その年額は、執行吏手数料に対する国庫補助基準額、すなわち執行吏の一年間に収入した手数料がその額に達しないときに国庫から不足額を支給するための基準になっている金額俸給年額とみなして算定することになっているのでありまして、この国庫補助基準額は、一般公務員給与水準に応じて定められているのであります。ところで、このたび政府におきましては、老齢の退職公務員等の処遇の改善をはかるため、昭和二十八年十二月三十一日以前に給与事由の生じた一般公務員恩給について、その計算の基礎となる俸給年額を従来の一万一千八百二十円の給水与準による金額へら一万五千四百八十三円の給与水準による金額に増額する等所要の措置を講ずることとし、そのために必要な法律案を今国会に別途提出いたしましたことは、御承知通りであります。そこで、執行吏恩給につきましても、これと歩調を合わせる必要がありますので、この法律案では、昭和二十八年十二月三十一日以前に給与事由の生じた執行吏恩給について、その年額を、一般公務員の場合と同様に、一万五千四百八十三円の給与基準による国庫補助基準額である十一万五千円を俸給年額とみなして算出した額に増額することとしたほか、一般公務員恩給の場合と同趣旨措置を講ずることといたしました。  以上が訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議のうえ、すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。
  5. 一松定吉

    理事一松定吉君) 以上、三案の提案理由の御説明が終りましたので、続いて質疑をなすはずでありますが、都合により、質疑は次回に譲ることといたします。     —————————————
  6. 一松定吉

    理事一松定吉君) 次に継続いたしておりまする売春防止法の一部を改正する法律案、並びに婦人補導院法案、両案に対しまして、これを一括議題といたします。前回に続いて、質疑の方は御発言を願います。  なお、矯正局からは保護具の現物が提出されておりますから、順次ごらんを願います。御質疑の方は……。
  7. 大川光三

    大川光三君 まず最初に、婦人補導院法案の第八条に関連してお伺いをいたします。  この第八条によりますと、「婦人補導院の長は、在院者更生妨げられ、又は婦人補導院保安支障が生ずると認めるときは、在院者面会について、これを制限し、又は禁止し、及び通信について、その更生妨げとなり、又は保安上の支障となる箇所を削除することができる。」第二項で「婦人補導院の長は、在院者の発受する通信によってその更生妨げられ、又は婦人補導院保安支障が生ずるおそれがあると認めるに足りる相当理由がある場合でなければ、当該通信内容を検査してはならない。」というように規定されておりまするが、ここにいわれておる「おそれがあると認めるに足りる相当理由」ということは一体どういうことか、その一つ基準をまずお示しいただきたいと思います。
  8. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この点につきましては矯正局長から御答弁申し上げるのが相当だと思いますが、ただいまやがて出席をいたしますので、それまでお許しを願いたいと思います。
  9. 大川光三

    大川光三君 それでは、その前に竹内局長がおられまするので、本条に関連して憲法の第二十一条二項の通信秘密に関連して、本条のこの「おそれがあると認めるに足りる相当理由」ということについての法律的な御見解を一つ伺いたいと思います。
  10. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 矯正局長参りましたので。
  11. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 第八条の二項の通信制限する場合のしぼりでございますが、「保安支障が生ずるおそれがあると認めるに足りる相当理由がある場合」ということは、ただそういうおそれがあるらしいというだけではなくて、それを裏づけするだけの客観的な理由がなくちゃならないという趣旨でございます。従いまして、本人通信をなしますにつきまして、その前に面会に来た際に、あるいは出てからの事柄を話をしておったとか、あるいは逃走の相談をしておったとかいうふうなことで、制限を受けたような相手から来た書面とかいうふうな、相当それを信ずるに足るだけの客観的な事実の存することを要するものというふうにしぼりをかけた趣旨でございます。
  12. 大川光三

    大川光三君 そこで、ただ、「おそれがあると認めるに足りる相当理由」ということは、今の御説明でわかりまするけれども、場合によっては、その通信について、「更生妨げとなり、又は保安上の支障となる箇所を削除することができる。」ということに法案がなっておりますが、削除するということになりますと、一応通信検閲しなければわからぬと思いますが、一体この補導院に収容されておる人々に対しての発信にしても受信にしても、たとえば刑務所で受刑をいたしておる人間に対する通信のごとく、一々検閲をするということはなされないんでしょうか。
  13. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 全部を検閲するというわけではないのでございまして、ただいま申し上げましたごとく、二項にありますような「相当理由がある場合」に、その内容を検査いたしまして、検査した結果、八条のような理由がございましたならば、それを削除するということに相なるわけでございます。
  14. 大川光三

    大川光三君 そういたしますと、結局は、本人に手渡す前に、補導院の長は手紙の内容を見ることができるわけですね、一つのこういう条件がある場合には。そういたしますと、それが結局、憲法で保障されておる「検閲は、これをしてはならない。通信秘密は、これを侵してはならない。」という憲法条項を、まあ適正化すると言いますか、適法にその文書が見られるんだという、憲法のこの条項を制約して通信を見られるんだということは、どこの根拠から出てくるわけですか。
  15. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) かような自由を拘束いたしました特殊な施設であるということの性格から出てくることでございまして、これは、刑務所等におきましても、監獄法にも規定があることでございますが、この矯正施設特殊性から、さような場合には、憲法上の制約もこれを認めることができるという趣旨に解しておるわけでございます。
  16. 大川光三

    大川光三君 たとえば、刑務所の場合には、特に監獄法とかあるいは監獄法施行規則という規則があって初めて信書の検閲等ができることになるのですが、そういう規則を設けずしてどうして人の秘密書面が見られるのか。まあ法律があれば別ですが。法律によらずして、ただそういう身体の拘束を受けておる身分の人だからその人の秘密書面は見てもいいんだというその理屈は、私は納得できないのであります。どこかにやはり監獄法と同じような法的根拠がなければいけないと思いますが、いかがでございますか。
  17. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) その必要性から、この補導院法に同じような規定を置きたいというところからこの規定を置いたわけでございます。しかしながら、刑務所とは違いますので、全部を検閲するというのではなくしてさような状況が客観的にうかがわれる場合にのみそれが検閲できるというふうに、監獄法よりもしぼりをかけましてこの制限を認めよう、かような趣旨でございます。
  18. 大川光三

    大川光三君 次に、補導院法案の第十一条に、「婦人補導院の長は、在院者婦人補導院において遵守すべき事項違反したときは、次の各号に掲げる懲戒を行うことができる。」という、ここにいわれます「遵守すべき事項」とは何かという問題であります。これは、同じく売春防止法の第二十七条にも、「遵守すべき事項」という文字が出ておりますので、その遵守すべき事項内容は、補導院法にいう「遵守すべき事項」と売春防止法二十七条にいう「遵守すべき事項」とは内容的に違うかどうか。もし違うとすれば、具体的にはどういう点が違うかということの御説明をいただきたいのであります。
  19. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) この補導院法の十一条にございます「遵守すべき事項違反したとき」ということは、これは、われわれといたしましては、なるべくかようなばく然とした規定でなくして、事項を明示いたしまして、これは細則等によって明示いたしたいと思っております、そうして構成要件をはっきりさせたいという趣旨から出たのでございます。少年院法等によりますと、その点が割合ばく然といたしておりまして、少年院法は、第八条に、「少年院の長は、紀律違反した在院者に対して、」こういうふうに、「紀律違反した」ということで非常にばく然とした規定になっておるのでございますが、今度は、遵守すべき事項というものを明示いたしまして、そうしてそれに違反した場合にこの懲戒処分をかけるという方向に持っていきたいと思っておるのでございます。なお、売春防止法の一部改正法案の二十七条の「遵守しなかったときは、」これは、保護観察の際に定められました遵守事項を守らなかった場合でございまして、これも観察所の方において具体的に遵守事項を明示されまして、それに違反した場合に取り消しということに相なるわけでございます。
  20. 大川光三

    大川光三君 今度は、婦人補導院法案の第十四条に関する質問でございますが、十四条の三項によりますと、「婦人補導院の長は、矯正職員警察官その他の公務員に対し、必要な援助を求めることができる」。かように規定されておりますがここにいわれる必要なる援助とは、同条の第一項、第二項と同じく、在院者職業補導についての必要な援助であるのか、あるいは護送、連戻し、収容等保安上の必要からの援助であるのか、ちょっと不明でございますので、御説明をいただきたいのであります。
  21. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 十四条の三項の援助規定でございますが、これは特定の場合ではないのでありまして、いろいろの場合を予想して、広く外部の援助を求めようというところでございます。従いまして、この職業補導のみに限ったわけではないのでございまして、たとえば資質の鑑別等にいたしましても、必要がありますればその期間援助を求めまして、そしてそこの専門的な知識を聞かしていただくというふうなこともこれは考えておるのでございます。  なお、ただいま仰せのような保安上の必要性もやはりこの中にも含まれております。ただ連戻しの場合は十六条に規定しておりますので、連戻しの必要の場合は十六条によって求められるということに相なっておると思います。
  22. 大川光三

    大川光三君 ただいま連戻しの御説明がございましたが、そこで、この第十六条に婦人補導院の長から連戻しについて援助を求められた警察官も同様であるというように、警察官援助を求める場合には、婦人補導院の長がこれをしなければならない、こういう規定でございますね。ところが、たまたま補導職員が街頭で逃亡者を発見したというような場合はすぐつかまえなければ、また、すぐ警察官援助を求めなければ、せっかく逃亡者の姿を見ながらみすみすのがしてしまうというようなことがあろうと思います。従ってあるいは連戻しとか逮捕とかいうことに警察官援助を求めるということでありますれば、あえて補導院の長でなしに、職員もまた警察官援助を求めることができるという規定にしておかなければ、応急の間に合わぬという感じがいたしますが、それについて他にそういう逃亡者を現に発見した場合に警察官援助を求める、他の法規からそういう法ができるでしょうか、あるいはこの補導院法案によって職員が直ちに警察官援助を求めることができるかどうかという点を伺いたい。
  23. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) この四十八時間をこしました場合には、ただいま大川委員の御指摘のごとく、院長からの請求によりまして連戻しの援助を求めることにいたしておるのでございます。これはこの連戻しということを慎重に考えまして、かような場合は院長からの要求があった場合にのみ限りたいというところからの趣旨でございまして、ただ見つかったからすぐというふうなことよりも、あらかじめさような場合にはあるいは院長の方から当該の行き先、立ち回り先とかいうふうな所に連戻しの援助請求がいっておる場合が大体多かろうと存ずるわけでございますが、さような概括的な院長からの連戻し請求がありますならば、それの具体的な執行といたしまして、促すことは差しつかえないと存じますけれども、全然ない者に対しまして職員だけでその権限を与えるということにつきましてはいかがかと考えまして、その点は院長要求を前提といたしまして、この連戻しを実施いたしたいというふうに考えておる次第であります。
  24. 大川光三

    大川光三君 最後にもう一つ法律問題に関連した質問をいたしますが、それは保護観察補導処分との競合する場合であります。この条文によりますと、第五条の罪との併合罪懲役に処せられた者に対しては補導処分言い渡しをし、同時に、保護観察言い渡しをする場合があると考えますが、こういう場合の両者の関係は同じ保安処分であって、一つ保護観察言い渡し、いま一つ補導処分言い渡しというように、保安処分が競合いたす場合に、いずれを先に執行するかという一つの疑問と、いま一つは、補導処分を先に執行するといたしましても、補導処分期間が経過してしまったときには、その期間相当する保護観察期間も経過したものとするのかどうか、そういうことについての明文がございませんので、その点の御説明をいただきたいと存じます。
  25. 横井大三

    説明員横井大三君) 私からお答えいたします。確かにお尋ねの点は明文がございません。実は保護観察補導処分の場合ばかりでございませんで、懲役との関係につきましても問題はあろうかと思います。まず、保護観察補導処分関係でございますが、いずれも保安処分的な性質を持っております。保護観察の方は身柄の拘束がございません。つまり軽い意味保安処分補導処分の方は非常にきつい意味保安処分、これは理論的に申し上げますと、保護観察では足りないということできつい補導処分が言い渡されるわけでございますが、補導処分の方が先に行われる、その期間保護観察はどうなっておるかといいますと、実は観念的にはございますけれども、現実的には補導処分の方だけが行われるということに相なるわけでございます。従いまして、観念的にはございますが、補導処分期間だけ保護観察期間が長くなるというのではなくて、観念的には両方並行して進行しておる。ただ現実問題としては、補導処分のみが行われていく、こういう形に解釈上なろうと思います。
  26. 大川光三

    大川光三君 その点はよくわかりましたが、いま一つ、これは条文にございますので、あえて伺うのもどうかと思いますけれども、念のために伺っておきますが、いわゆるただいまの問題に関連しまして、第五条の罪と他の罪とによって懲役または禁錮に処せられて補導処分に付された場合でも、なおかつ執行猶予が満了したと見なされないという場合があり得ると思いますが、その点について例を上げて御説明をいただきたいと思うのであります。法文から申しますと、売春防止法の一部改正法律案の三十二条の第二項でありますが、この二項についてのいま少しく詳しい御説明をいただけますると、条文趣旨一般に徹底すると思いますので、三十二条の二項の御説明をいただきたいと思います。
  27. 横井大三

    説明員横井大三君) ただいまのお尋ねは三十二条の第二項に関する御質問でございます。で、「第五条の罪と他の罪とにつき懲役又は禁錮に処せられ、補導処分に付された者については、」とございます。補導処分言い渡しができますのは、五条の罪を犯した場合ばかりでございませんで、五条の罪「又は同条の罪と他の罪とに係る懲役又は禁錮につきその執行を猶予するときは、その者を補導処分に付することができる。」数個の併合罪関係にあります罪のうち、一個が五条違反であるという場合がしばしば予想されるわけであります。たとえば勧誘罪を犯しました者が別にどこかですりを働いたというような場合を予想いたしますと、五条の罪と窃盗罪とが併合罪関係になります。そうしまして、ただいまの十七条によりまして、併合罪刑法の総則の規定を使いまして、そうして懲役何カ月なりの刑が言い渡される場合がございます。それは総体的に執行猶予相当するということで執行猶予になります。そのうちに一部五条違反の罪がございますので、そこでこの補導処分に付せられるということに相なるわけでございます。その場合に、この三十二条の第一項におきましては、これはこの補導院在院期間をおきますというと執行猶予期間がなくなるわけでございまするが、この今の場合を例にとりますというと、一方に窃盗罪という犯罪がございますので、この補導処分期間を終りましたということだけで直ちに執行猶予期間をなくしてしまうことは、その罪の中に含まれております窃盗の面におけるこの執行猶予の効果というものは、この補導処分に入ったということだけで、なくしてしまうのが適当でないというところから、この三十二条の第二項におきましては、「前項の規定を適用しない。」ということにいたしたわけでございます。ただそ。中に、二つの罪がございましても、いわゆる一行為数罪とか、あるいは牽連犯というように科刑上一罪、つまり一罪として扱うというような場合につきましては、これは別個に考えるべきだというところから「五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑によって処断された場合を除き、」と、こういうふうになっておるわけであります。五条の罪の方が重いというので五条の罪によって処断されるということは、つまり、一行為数罪のうちの五条違反の他の罪は非常に軽微な罪であるという場合、具体的にはほとんど想像できないことでございますが、観念的にはあり得る、そういう場合には五条を重視しまして、この場合には執行猶予期間を経過するということにいたしました。それ以外に、たとえば今も申し上げましたが、窃盗のような場合には、なおその面の執行猶予を残そうというのが三十二条の第二項の趣旨でございます。
  28. 大川光三

    大川光三君 最後にもう一つ売春防止法一部改正の第二十六条に「仮退院を許された者は、補導処分残期間中、保護観察に付する。」というので、この面はよくわかるのでありますが、もう一ぺん申しましょうか。第二十六条の「仮退院を許された者は、補導処分残期間中、保護観察に付する。」という明文はこれでよくわかるのでありますが、およそ、この保護観察に付するとか、あるいは補導処分に付するというのは、原則として判決の上にうたわねばならぬのであると考えます。そこで刑法の二十五条の場合に、いわゆる保護観察に付する場合、それはやはり判決の上でうたうのであると思いますが、そのいわゆる判決言い渡しによらずして、この特別法だけで「補導処分残期間中、保護観察に付する。」ということは、法的に見て適法であろうかどうかという疑問が起るのでございますが、その点の御説明をわずらわしたいのであります。
  29. 横井大三

    説明員横井大三君) 確かに裁判所の考えによって保護観察に付するかどうかということを判断させるということも一つの方法であろうかと思います。ただお尋ねの二十六条の場合は、ほとんど要件というものはございませんで、補導処分に付されて、そうして仮退院というそれだけのことで保護観察に付する、必ず保護観察に付するという建前にいたしますので、特に裁判所の御判断を仰ぐまでなく、法律によって一律にいたすということでよろしいのではなかろうか。それ以外にたとえば要件が非常にむずかしいとか、あるいは裁量の余地があるとかいうような場合には、これは裁判所の御判断を仰ぐというのが正しいかと思いますが、この場合には、そこまでいたさぬでも不都合を生ずることはなかろうというので、こういうふうにいたしたわけでございます。
  30. 一松定吉

    理事一松定吉君) ほかにございませんか。
  31. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 渡部矯正局長にお願いいたします。この第二条のところでございますけれども、これはこの前もちょっと伺ったのでございますが、「生活指導」という、その生活指導の内容なんでございますけれども、ここに第二項の趣旨があるのでございますが、「相談、助言その他の方法により、婦人の自由と尊厳とを自覚させ、」云々それからその次に「家事その他の基礎的教養を授け、その情操を豊かにさせるとともに、在院者が勤労の精神を身につけ、その他自主自立の精神を体得するように、これを指導する」ということでございますが、この中に生活指導という、その生活指導は実際家庭生活、彼女らが社会に出ましたときの家庭生活の指導ということも中に入っておりましょうか。つまり実際生活をそこで会得させるという意味合いも入っておりましょうか。  それからいま一つ、売春悪なりということがこの法律の、売春防止法の前段にうたってございますが、あの婦人たちに売春は悪である、いってみれば精神的の教育といいますか、教養といいますか、そういうことは一体どこで取り扱われるのでございましょうか。
  32. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) ただいま宮城委員の仰せのごとく、この生活指導の際には、ただいま仰せのような実際の生活をここで仕込んでいきたいという趣旨でございます。そこでここに「その他の基礎的教養を授け、」というところにすべてを含ませておるのでございます。  なお、ただいま仰せの単純売春の法の禁ずるところであるという趣旨でございますが、これは「婦人の自由と尊厳とを自覚させ」というところの中に含めまして、本人たちの特性を指導の際に十分この点を教え込む考えでございます。
  33. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと今のことは私にはよく納得できませんけれども、それはそれといたしまして、生活指導ということは、日々のいわゆる婦人の生活の指導ということになりますというと、その指導は男の人でできないように考えますが、自然に職員、そこに勤める職員等の問題に関連いたしますけれども、男子の職員でも、つまり院長以下りっぱな人であるなら男でもいいという考え方でもよろしいのでございましょうか。どうでしょう。生活指導というその指導の仕方について、自然に内容から起ることなんでございますけれども、つまり男の偉い人ならいいかという点を伺いたい。
  34. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) たびたび申し上げておるところでございますが、直接かような収容者を指導する職員はもちろん女子でなくちゃならないわけでございまして、教務課長その他も女子でなくちゃならないと思っておるのでございます。なお仰せのごとく、私は御婦人で全部やっていただければこれにこしたことはないと思っております。ただこれでなくちゃならないという趣旨ではないと思います。ことにこれは院長さんの場合でございます。しかし、私は決して男子の院長さんをもっていくという趣旨ではないのでございます。いい方がございましたならば、女子の院長さんもやっていただくに決して私はいなむものではなく、むしろさようにしたいものだと心得ております。
  35. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この院長以下職員を、私はその収容される婦人たちのためを、その立場を考えまして、そのためを思いますと、どうしても男を見せない方がいい、自然にそれは男子の職員を置かない方がいいという論になるわけなんでございます。やってみなきゃ、それはそう心配したことはないということになるかもしれませんけれども、とにかく補導院に入れられます婦人は、私はそうたくさんはないと思いますけれども、御当局なんかのお考えでは、ことに東京は百人を収容する施設をお作りになるような案が出ておりますが、まあその多少にかかわらず、とにかく男子に会うということは、非常に私は落ちつきを妨げて、そのためにいろいろな問題があるんじゃないか。だからしっかりしたお母さん級の人を私は院長以下に持ってくることが彼女らのためになるというように考えております。  それからいま一つは、さっきから言っている生活指導でございますけれども、いろいろ法案に並べられておりますこともはなはだけっこうなことでございますけれども、実際はもう同情をもって、愛情をもって、真実をもって、ほんとうにわが娘を育てるように、朝起きるから寝るまで、院長初めそれこそエプロン姿でほおかぶりでやっているというような私は職員でなければ、生活指導、婦人の生活指導というものは私できないのじゃないかというように考えているのです。そこで、私は自然に院長も婦人でありたいというようなことを願っておりますけれども、そこで、私は少し生活指導の内容が私と御当局と違うんじゃないかというように考えますが、いかがでしょうか。
  36. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) もちろんこの生活指導は、朝起きてから寝るまで、私は寝てからもまだ指導をしたいと思っておるのでございます。さような意味合いから、私はこの生活指導は、ほんとうにただお念仏だけではなくして、その日その日の一挙一動すべての生活態度全部にわたっての根本的な指導を要するものと、かように考えております。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 あげ足をとるんじゃございませんが、夜分までの生活指導という意味合いをちょっと説明していただきたい
  38. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは寝ておる際につきましても、かぜをひく場合もありましょうし、さような場合には脱ぎ捨てておるものはかけてやる、あるいは寝相の悪いものは直してやるとか、かようなところまでも私は気を配っていくべきものだと考えております。
  39. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはわかりました。私の申しますその生活指導ということは、実際は今寝るときのことをおっしゃったんですが、寒いからかぜをひかせちゃならないということはもう申すまでもないことですけれども、私はこういう婦人にかけるふとんなんというものは非常な大事なものである、そうして下着なんというものは何を着せなきゃならぬかというようなこと、これは大事なことなんです。それは目に見えるところの着物なんというものは、これからだんだん問題に出てくると思いますけれども、それ以上に夜具です。そうしてその中へ入れる綿、そういうことが非常に問題です。それから着ている一番下着なんというものはやわらかいものを着せぬというようなことは、絶対あの婦人たちに気の毒なことになる。一体そういうことをだれが考えてくれましょうか。ということを考えますと、私は院長はどうしてもお母さん級の、子供を育てたこともあり、中には苦労した子供もありといったようなお母さんを私はもってきていただかなければおさまりがつかないのじゃないかというように考えているのですが、いかがです。
  40. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 本人たちに支給いたしまする給与、第六条の問題等につきまして、これはもちろんさらに規則を設けまして、細目にわたりまして全部規定をいたします。その際には仰せのごとく、十二分に御婦人の立場からのいろいろなこまかいお心づかいも全部ここに含めて表わしたいと、かように考えておるのでございます。  なお、具体的に本人たちをいかに処遇するかということにつきましては、仰せのごとく、御婦人の立場からのいろいろなこまかい思いやりもあるかと思います。そういう点は十二分に取り入れまして遺憾のないようにいたしたいと、かように考えます。
  41. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今のこの二項の終りのところに、「在院者が勤労の精神を身につけ、」という、その勤労の精神を身につけるために、どういうしつけをしようというような御案がありますか。
  42. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは勤労の意欲を起さしていくというところでございますが、かような婦人たちは、えてして働いてみずから金を得るということについては、おそらくあまり経験を持たない人たちではなかろうかと思うのでございます。いわゆる汗をしてそうして金を得るというのじゃなくて、ほんとうの、売春行為によりまして金を得るというふうな安きにつく習慣がついておるものと考えられますので、働くことによりましてみずから金を得るということについての勤労の喜びと申しましょうか、そういうものを味わわすように指導していきたい、かように考えておるわけでございます。
  43. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 このことと職業補導ということとは連関いたしますのでございますけれども、ただいま仰せになりましたように、汗水たらして働いて、それで、金を得るというその習慣をつけなければならない。これは非常に大きいことなんでございますが、それに対しまして、今御当局はどういう職業を身につけさすように指導させようというお考えでございましょうか。この前ちょっと編みものなんかは大へんいいんじゃないかというようなお話を伺ったように思いますが、なかなか勤労精神を養う——もう一晩で何千円、ときに万という金をもうけておる彼女らでございますから、とても私は指導はむずかしいと思う。そうしてわずかに六カ月の間で、あの人たちをこね直して、ほんとうに勤労精神で、汗水たらしてやっていく。そうして取りました収入によって生活を立てていこうというその生活指導、つまり入ったもので生活しようというその生活指導ということが私は生活指導の根本じゃないか、そういうふうに思っておりますが、一体この勤労の精神を養うというためにどういう職業をもって、どういうふうに指導しようというような御案がございますでしょうか。
  44. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 仰せのごとく、なかなかこの勤労の意欲を持たしていくということはむずかしいことだと思っております。しかし、私はこの金をもうけるということも一つの刺激になると思いますが、私は働くことによりまして、自分のやることによりまして、何らかのものの形が出てくる完成の喜び、これは勤労の意欲を起さす上に大きな力があると私は存ずるのであります。これは戦時中のことを申してはなはだ何でございますが、収容所、これは刑務所の収容所でございますが、この人たちを造船所に出したことがあるのでございます。彼らが非常な成績をあげた。これは自分らが働いて作りましたのが目に見えてでき上ってくる。そうしてそこに、目の前で進水していく。この完成の喜び、これが彼らに対しての勘労の意欲を非常に刺激し、これによって非常な成功をおさめたのでございますが、これはただ単なる一例でございます。私は編入ものをいたしましても、編みものによりましてでき上ってくる。そうして自分が着るようになってくる、この喜び、御飯を作りましても、たくことによりましてりっぱな御飯ができてくる。これによりまして私は勤労というものの喜びというものを味わわすことができるのじゃなかろうか。これは指導の方法によりまして、ただ金ばかりじゃなくて、そこに精神的な意欲を盛り上らせていくということは、その指導者のいろいろなやり方、仕向け方、それによってその目的を達することができるのじゃなかろうか、かように考えておりまする
  45. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ありがとうございました。私と同じ御意見でございますが、その勤労意欲を起させる一番のもとは、売春は悪であった、この一事で足を洗わなくちゃならぬということをほんとうに悟った者のみが私はそういき得るのじゃないかと思います。それには生活指導の一番根本になる、つまり朝早く起きて、朝からそれこそおしりを端折って働くというこの一般の婦人が、そうして一般のいわゆるお母さんがやっていることを彼女らにさせなくちゃならぬという建前で指導するその人は、やはり生活に経験のある、また、苦労をしているというような人をもって生活の指導をきしていただきたいということを私はお願いしまして、この点はこれでおきます。  それから第一条に「在院者の処遇は、本人の性格、医療の要否その他法務省令で定める基準により、存院者を適当な級に分類して行うものとする。」と、こうございます。適当な級に分類するとはどういうふうな分類をなさるのでございましょうか。
  46. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは個別処遇を徹底さしていきたいという趣旨から設けた規定でございますが、かいつまんで申し上げましても、入りましたとき、入院当初の時期というものと、それから一応本人たちが落ちつきまして、そうしてほんとうに生活指導なり、あるいは職業補導なりをしっかりとやっていく時期とか、それから最後本人たちが社会に出ていきまする直前の時期といい、時期的に考えましても、三つの時期が大体考えられると思うのでございます。そのほか本人たちの性格等によりましてあるいは年令の点もあるかと思います。そういうふうないろいろな点から、本人たちを分類いたしましてそういう同じ、何と申しましょうか、性向を持ちました人たちをまとめまして、処遇していきたいというふうに考えているのでございます。従いまして、そういうふうに区分をする処遇のできるような方向に施設をもっていきたい、かように考えております。実は宮城委員のずっと前に仰せになりました各棟を別にいたしまして、そこへ適当のものを収容して分類して処遇していくという、コッテージ・システムというものは非常に私はいいと思うのでありますが、これは管理の面でなかなかむずかしい面もあるのでございます。そういう趣旨も織り込んだ施設の設計をやっていきたい、かように考えているわけでございます。
  47. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その次の賞与金のことでございますが、これは働きますと、ちょうど今の刑務所少年院なんかと同じように、非常に少いお金をもらうということになるんでございますね。非常に少い、問題にならぬような……。それはまあ法務省の規定によっての賞与金でございますから勝手でございますが、その次のところは、「在院者が自己の収支において労作をすることを願い出たときは、これを行わせることができる。」という、これはすべての者がこう願うだろうと思っておりますが、その区別は一体どうなさるんでございますか。
  48. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 第四条の賞与金でございますが、刑務所少年院におきましては仰せのごとく、まことに少額、少額と申し上げるのもどうかと思うくらい実は、わずかな金額でございます。しかしながら、この補導院における賞与金の額は非常に少いのでございますけれども、それから比較いたしますと、非常に思い切って実は額を出してもらうことにいたしたのでございます。これは大体われわれ考えておりますのは、六カ月おりまして大体三千円程度の金を持たして、まじめにやりますれば、三千円くらいの金を持って出られる程度でございます。これは申し上げるほどの額ではないのでございますが、しかし、刑務所少年院から比べますと、相当思い切った額に相なっております。なお、第五条の自己労作の点でございますが、これはなるべく私はさような手の職を持っております者は、この規定を大きく活用したいというふうに考えております。従いまして、かような規定とあわせまして、本人たちが退院の際にはとりあえずの生活をする最低の資金を持たして出したいという気持でございます。
  49. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは何を標準に、自己労作に対してその労銀をお与えになるのでございましょうか。その前の第四条とどう違うのでございますか。違うということは高の認定……。
  50. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 第四条の賞与金の方は、これは規定によりまして、その進度によりまして一応の基準を設けて、それによって支給することになるわけでございます。第五条の方は、これは本人がやっただけこれは全部本人のものになるわけでございます。本人の計算において行うことになるわけでございます。従いまして、これは働いただけの金は全部本人に渡るわけでございます。
  51. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではみんながそう願えばそういうことになるのでございますね。そう考えてよろしゅうございますか。
  52. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) はい。
  53. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではその次に移ります。これは次官か、局長にお答え願いたいのでございますが、一体六カ月間にたった三千円くらいもらって、それを持って出たら、すぐその翌日からかせがなければならない。これは私は危いことだと思います。それから一方から言いますと、勤労意欲を起させるという、つまり第二条のところにやっぱり勤労の精神を養うというような意味合いのことがございますけれども、あの人たちに六カ月も四苦八苦働かせて、たった三千円といったらおかしくて仕方がない。だからこれは一つ別途会計にして働いただけ金をやるぞ、そうすれば一生懸命働くでしょう。できるだけ働くでしょう。けれどもほんとうに三千円なんていう金は宵のうちにかせいでいる彼女ですから、勤労意欲を養うなんといっても、それは、から念仏でしょう、おかしいくらいだと思っておりますが、そのことはいかがでございましょうか。
  54. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) ただいま宮城委員からの御指摘の通り、あの婦人方によりましては三千円という金はおそらく小づかいにも過ぎないような金であろうと思うのでありまして、私自身も、刑務所の賞与金につきましても、かねがね一年相当なる成績をあげましても、千四百四十円程度ではあまりにも少いではないか。出て参りましたら、すぐまた何か罪でも犯さざるを得ないような状態ではないか、もう少し思い切ってふやす方法はないかということを省内でも提唱いたしておるのでありますが、お話のように、三千円という程度では、出て参りますとすぐまた元の道に戻ってしまうという懸念が多分に包蔵されておると思うのでございまして、お話のように、第五条で皆さんが家庭婦人としての訓練を経なくちゃならぬ時間はお互いにやりましてそれ以外は十分働いて、役所からいただくのは三千円でありますけれども、自分たちの勤労でできるだけ多くの金を持って、正しい家庭婦人の正しい道に入れるようなふうに指導してやらなければならない。ただいま宮城委員の御意見と同じようなことを私は考えております。
  55. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 次官はお考えになっておりますが、今の建前では、そういうことはできないのですけれども、そこのところ何とか今度新しい法律ができますについて、一つ大蔵省の方と御交渉下さいまして、別途会計というようなことはできないものでございましょうか。私はそれを切に願っております。少年院の自己労作につきましても、私いつもそれを願っているのでございますが、私、外国をあまりつぶさに知りませんが、私が歩きました少年院のうち、ことにいい少年院というものは、やはり働けば金が取れるよ、勉強すれば偉くなれるよ、そのことを教えて実行させている。だからたくさんお金を取りました子供たちは、食堂に行って自分のお金で、かせいだお金で菓子も買えるし、くだものも買える。それは私は社会生活も同じだろうと思う。六カ月といえどもあまり彼女方の生活とかけ離れておりましては、ほんとうにそれこそおかしくて、おかしくてというような気持で、ほんとうに六カ月忍び、忍びそこにおりましても、そこを出たらまたもとのもくあみではないかと心配しております。だからとにかく朝から晩まで家庭生活と同じ生活をし、その間の時間をもって作業をさせる。それは編みものでも、裁縫、その他いろいろあるだろうと思います。だがその勤労に対する収入というものについては、私はそれだけのものを現にやれば、何のお題目を唱えるより大きな教育じゃないかと考えております。いかがでございますか。
  56. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) ただいま宮城委員のお話になりましたように、自分の勤労によって正しい収入を得る、こういうような点で十分指導していくようにいたしたいと思います。
  57. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それを大蔵省の方に一つ交渉してみて下さいませんか、そういうことはむずかしいのでございますか。
  58. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) なかなか一度できております事柄を変えますときに、特に国庫の支出がふえますというようなことにつきましては、大蔵省はなかなか強い反対をされるのでありますけれども、今後省内の方々ともよく話し合いまして、できるだけ努力をいたしたいと思います。
  59. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 どうぞお願いいたします。  私まだこの条文につきましてたくさん質問がございますのですけれども、条文についての質問はまた次回にいたしまして、今保護局長が見えておりますようですから、ちょっと伺いたいのです。一体この町の女がこの五条違反にかかりまして、女を警察に連れていきますというと、警察で調べて、そして警察にとめ置くのでございますね。それから検事廷に連れてくるのだと思います。そのときに保護司活動はどういうふうにできるのでございますか。
  60. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) 現在その点につきましては、全国の検察庁でそのようにやっていることではございませんが、特にその方面の犯罪の多い地方、たとえば東京とか大阪等においては、従来のような保護司が、検事なり裁判所なりのお調べなり、裁判が終ってから後関与するというのではおそきに失するという面もございますので、必ずしも法規の上からは明確な線は打ち出していないのですが、検事のお調べになる場合に、そのお調べの資料を提供するという意味で、保護司がその人の将来の更生保護の面からどのように考え得る余地があるかという点について、本人に当りましていろいろと聴取しまして、それで資料を検事のお調べの際提出し、そして検事がその職務に際しての参考にする、場合によっては保護の道が開けるという場合に保護司の方に身柄を託すなり、その他の方法をとるというようなことをいたしております。
  61. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その場合に、保護司にはだれが連絡をおとりになるのですか。保護司はどうしてここに問題の売春婦が検事延に出ておるということを知りますか。
  62. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) 今の検察庁にしかるべき部屋を与えていただいて、そこですでにそのような事件がその日来るということがわかっておりますと、事前に検察庁から連絡があります。また、東京のようなところではひんぱんなものでございますので、ほぼ一定の保護司の方が常駐されております。その常駐されている保護司の方は保護司だけの活動部面では狭いもんですから、厚生省の関係の人なり、都道府県関係の人と一緒にそこに来ていただいておりまして、今のような検事のお調ベの参考資料を得るという形をとって待機しているわけでございます。
  63. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはまことにありがたいことなんでございますが、それでは東京あたりでは毎日当番制みたいにして、保護司が検察庁に詰めていらっしゃるのでございますか。
  64. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) その通りでございます。
  65. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると、少年法でいう試験観察、まあそこで試験観察ができるものじゃございませんけれども、その試験観察の内容とひとしいようなことが検事の手で行われておりますか、どうですか。
  66. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) 大体その通り私たちは考えております。すなわち、必ずしも少年の場合の試験観察というのとはすぐそのまま同じとは言ませんが、もちろん宮城委員御存じだと思いますが、試験観察もある時間的な継続を認めておりますが、こちらの場合には検事廷にすでに警察から同行されましたものを検事が取り調べる際に、ちょうど時間的なやりくりをつけて十分なり二十分、あるいは場合によって一時間も対象者を相手に保護司の方がいろいろと家庭事情、その他のことを聞く、こういう形でございます。それを通じてそれが資料になりまして、検事の処分の資料になるものですから、そういう点からいえば試験観察の一つの態様をなしていることは間違いございません。
  67. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 よくわかりました。この試験観察という言葉を私は使わしていただきます。この制度を何とか制度化するというようなお考えはございませんでしょうか。試験観察という名前でなくたっていいのです。だけれども、起訴する前にちょっと何とかならないかという親心でもって保護司でもいい、それから検事廷には相談員、それから観察官も立ち会うのでございましょう、そういう人たちのどういう方法かで、いわゆるちょっと試験観察にひとしいものをする、そういうことを一つ制度化しようというようなお企てはございませんでしょうか。
  68. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) 実は更生保護の面からいいますと、早期の保護がほんとうに効果的だということを考えますので、実はこの検事の起訴猶予という処分があります際に、起訴猶予の処分をなすと同時に、たとえば、保護観察に付するということも制度的には考えられ、また、外国にも必ずしもそういう立法例もないではございません。しかし、試験観察という場合にも、これは裁判所の最終的な決定をなさる前のいわゆるプロベーションという意味でございますが、検事の処分をする場合に、やはり検事の処分の前もまたプロベーション的なものを置くということは、今の日本の制度でいうと、検事の処分というものの前に人権の保障をしている裁判制度と並行してそのようなものを置くということにはなお検討の余地があると思います、それで実は、保護局としては、そのような方向にある程度進めたいという研究を内々ではいたしておりますが、しかしながら、まだ結論的なものを見出し得ない次第でございます。
  69. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは大へんありがたいお話を聞いたのでございますが、実際は旧少年法による今のいわゆるプロベーション・オフィサー、保護司というものが、この間から問題になっている。家庭裁判所の調査官は前の専任保護司です。そして嘱託保護司が今の法務省関係の保護司になっているように私は心得ております。で今の制度によるというと、調査官は家庭裁判所に所属し、それから保護司は法務省の所管になっておる。けれども、この法務省関係の保護司はほとんど五万人に近いという人たちで保護法を張っていらっしゃるようなわけで、私は今度の売春問題について検事の処分をするという場合に、第一の関所だとしたら、どうしてもこの保護司活動を盛んにしてそこで食いとめるようにならないものかというように願っておりますが、そうなるというと、ばく然と数が多いというのでその保護司にたよることはできないで、自然と保護司の専門家、名前はどうつければいいか、売春専門の保護司といったようなものも自然にそこにできてくるという必要があろうかと思いますが、そういう点について、一体保護局あたりで何かお考えになっておったようなことはございませんか。
  70. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) 宮城先生のお話のように、私たちも売春防止法の対象の女性というものが、すぐに検察庁なりあるいは裁判所の法廷に引き出されるということより前に、何か保護の面で手を打つべきものがあるのではないかということを考えております。で、このたびの来年度の予算に入っているのでありますが、さっき申し上げた東京とか大阪なりにある売春関係の相談室というようなものを予算的に手当いたして、実は非常に貧弱でありますが、全国に十四カ所そういうものを捌き、そしてそこに特殊事務処理保護司という名前で、普通の保護司の方と違って一日中そこに詰めてお仕事をやるというところから、日当として大体三百円程度の予算の支出を認めていただいております。これを全国十四カ所に二人ずつというので二十八人、予算的に拙概しております。この十四カ所ということについては、実はいろいろその後考えますと、必ずしも十四カ所で済まないということも考えられますので、ほかの従来の保護司の方で特殊事務処理をしている保護司の方を割愛して、さらに相談室的なものを十四カ所新たに設けたい。このように考えております。それもひとえに今宮城先生のおっしゃったような形で、もし保護の面で早期手当ができるものならばという考えのあれからであります。
  71. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は、五条違反の者をほんとうに憎むわけではなくて、何とかしてこれを刑務所にもやりたくない。それから今のままの補導院でございますというと、私この間もこの法律が、もうまずいと言っていかにも法務省に当ったようですが、それはそうじゃない、私は自分が勉強すればするほど、何というまずい法律かしらと私自身を実はしかっておるのです。それほど私はこの法律については非常に苦しい点が多いということは、何とかしてこの人たちを救ってやる手はないかという、その点がおもなことなんです。それでその意味におきまして、私はこれを事前に防ぐとすれば、やはり全国の保護司を動員して、保護司を教育して、保護司でもってこれを大体食いとめるというような方角に持っていかなくちゃならぬ、いわゆる調査官の問題が非常に強くなっておりまして、私はそういう意味でやはりこの事件は家庭裁判所に取り扱っていただきたい、そうして刑にかえて保護教育していただきたい、こういうふうに私は心から願っておるのです。それにはせっかく今までもうそれこそ三十年以上の歴史を持っている保護司の方に活動してもらうということが、一番防波堤になっていただけるのじゃないかというふうに考えておるわけです。実際はこの全国に五万もいらっしゃるはずでしょうけれども、もう少し売春専門にかかっていただけるような保護司を採用する余裕があるように私は考えますが、その点いかがでございますか。
  72. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) 先ほど申し上げました予算的措置として全国に十四カ所二名ずつの特殊事務処理保護司を採用できる余地がございますが、この保護司の方の選考に際しましては、これはもちろん事柄の性質上、やはり売春防止法の非常な重要な役割を果すという意味の保護司の方をお選びするつもりでおります。なお、先ほど申し上げましたように、それ以外にも売春の保護司の方に多少とも割愛いたしまして、そういう人たちをより多く採用いたしたい、こう考えております。
  73. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 さっきおっしゃったように、日当が非常に少いのは……財政上の問題がおもでございますか。もし財政問題がなかったらもっと手当をして、これはまあ公判に送らなくてもいいことになり、そのためにも私は国家の金を使ってもいいと思うのですけれども、その財政上の問題だけでございますか。
  74. 福原忠男

    政府委員福原忠男君) この特殊事務処理として、そういう検察庁の一部に常勤するという形をとる人の数は、必ずしもそれほどたくさんの数を要するとも思わないのでございます。ただむしろ五万人ほどの保護司の中で、この売春防止法の精神に徹して、その方面の活躍をするということにつきましては、全部の保護司の方に、昨年以来機会あるごとにこの売春防止法の精神というものを、われわれの方では、はなはだ口はばったいのですが、研修ということでいろいろとお話し申し上げております。それですから、その方の面から、特にそういう面に、特に関心の深い保護司の方が出て、自発的にお働き下さるということを十分に期待しているのであります。
  75. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ありがとうございました。よくわかりました。  今の研修の点について私はお尋ねしようと思いましたが、すでに保護司の教育ということに留意なさいまして、研修の機関をお設けになっておりますことを伺いまして大へん心強く思いました。ありがとうございました。  それで、今度は竹内局長に伺いたいのでございますが、この補導員に採用する人員でございますが、東京は百人、大阪、福岡はそれぞれ九十人というふうな形になっておりますようですが、その基礎になる基準はどこにお置きになったのでございましょうか。
  76. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 予算でもって認められております数字は、当初の計画からはかなり小さいものでございます。その点これでやむを得ないということで、予算の折衝を願いました経過につきましては、私から申し上げるよりも、矯正局長からお答えを願う方が適当だと思いますが、私自身は前回のこの委員会でも申し上げましたように、必ずしも適切ではないと思いますけれども、とにかく五条違反というのは軽い犯罪でございますのと、それからまた、過去の罪の実績を見ますというと、公判請求をいたします場合というのは、非常に少いのでございます。そのまた裁判結果も、公判請求の大部分は罰金の方になってしまっているのでございます。こういったような実情をよく分析して考えてみますと、やはり宮城委員のおっしゃったように、起訴、不起訴のこの段階におきまして、更生保護をはかるのが最も実際的な処理方法ではなかろうかというふうに考えるのでございます。その意味合いからしまして、ただいま保護局長からもお話のありました、検察庁における保護更生のための婦人相談室の機能を十分活用して参りたいというふうに考えているのでございまして、この点について、すでに東京におきましては、昭和三十年の十二月からこの仕事を始めております。私はその成り行きを実は非常に注目して見守ってきたのでございますが、その成績にかんがみましてさらに拡充いたしたいということで、予算の際におきましても、十分大蔵省に説明をいたしたのでございますけれども、これはなかなか理解をしていただくのに困難でございます。ほんとうに予算の最終折衝におきまして私自身乗り込んで参りまして、検察庁関係の、婦人相談室関係の予算の了解に努めたというようなことで、金額等も検察庁におきましてはわずか百万円しかもらっておりませんが、すでに過去二年間の実績もありますので、それからいたしまして今後売春防止法の実施と相待って、さらに来年度におきましては、一そうこの制度を拡充して参りたいと思いますが、ただ法的に制度化するということはなかなか、保護局長からも御説明しましたように、いろいろ問題があろうかと思います。現在はとにかく、売春対策審議会におきましても、関係機関と密接な協力のもとに、総合的に推し進めていくというこの考え方にのっとりまして、あるいは東京都の民生局、あるいは警視庁あるいは民間の婦人団体、もちろん東京保護観察所という関係機関と話し合いの上でもっていたしているのでございます。その他の地方で、今現在予算なくしてやっておりますのが六カ所ございますが、その六カ所も、それぞれその地方で、今申しましたような関係機関と話し合いの上で、実際的なやり方としてやっているだけでございますが、もしもこれが非常にいいものでございまするならば、何らかの形でこれを育てていきたいというふうに考えております。
  77. 大川光三

    大川光三君 ただいまの宮城委員の御質問に関連いたしまして、竹内刑事局長にお伺いをいたします。先般資料を要求いたしまして、この売春事犯調というものをちょうだいいたしたのでありますが、この事犯調の見方についてのお尋ねでありますが、これはまず第一の昭和三十一年一月から十二月までというのは、これは全国的な調べでございましょうか。
  78. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さようでございます。備考の第三項のところに書いてございますように、三十一年度分につきましては、東京地検の本庁分が含まれておらないのでございます。東京地検の本庁分というのは、かなり売春婦を扱っておりますので、東京地検の本庁分が抜けておりますことは、統計としての価値がかなり低くなっておるのでございますが、ただこの間に一審判決の状況が出ておりますので、受理の方、処分の方は、今言ったように適切でございませんけれども、判決結果の方は御参考になろうかと思いましてこの表を掲げたのでございます。全国統計でございます。
  79. 大川光三

    大川光三君 それからこの処罰の基礎となりました法令ですね、たとえば市条例であるとか都条例などがありますが、そのほかに基礎となった法令はございますのでしょうか。
  80. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは条例だけでございます。条例の調べの、ここに数字だけを掲げておきましたが、この条例の中で東京都を初めとしまして条例が、本人の勧誘行為を処罰しております条例が四十四ございます。このうちで罰金のみを規定しております条例が三つ、罰金と拘留の罰則を定めておりますのが三十一ございます。それから罰金と科料をきめておりますのが一つ懲役、罰金、拘留、科料と全部そろえてありますのが一つ、それから懲役と罰金と拘留を定めておりますのが九、懲役と罰金を定めておりますのが二十四でございます。そこで売春防止法五条は、懲役と罰金でございますので、この二十四の条例にほぼ似ておるのでございますが、この条例は非常にまちまちでございまして、日露高懲役四カ月、罰金二万円というのが一番重い刑のようでございます。それから、軽いのになりますと、罰金一千円と拘留というようなのでございまして、これらの条例違反から今の起訴、不起訴の処分もこの法令をながめての処分でございますし、裁判所判決もこのような条例の内容をふんまえての判決でございますので、これをもって直ちに公判請求が、今後も同じような推移をたどるというふうには考えては間違いでございまして、どうしても二十四と三十一というような非常に違った基礎となっておりますので、そのままでは推測できないのでございますけれども、一応判断の材料にはなろうかと思ったのであります。
  81. 大川光三

    大川光三君 よくわかりましたが、そういたしますと、昭和三十一年度一年間及び昭和三十二年度の一月から六月までのこの間で、結局勧誘及び類似行為の事犯で実際の体刑を受けた人は一人もないということになりますね。
  82. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さようでございます。
  83. 大川光三

    大川光三君 もちろん今日まで基礎となりました条例には、特に懲役刑を言い渡している条例が一つございましたが、きわめて少いのでございまするから、従って、従前実際の体刑を受けた者はなかったという結果がこの表によって出て参りますが、と申してこの表から見ますると、先ほど宮城委員の仰せになりました補導院の収容人員二百八十人ということは私は容易に数には達しないだろうという考え方と、いや、そうじゃないのだ、二百八十人の収容力の部屋では足りないのだという二つの見方があるのですが、その点についての御見解をもう一度伺いたいのであります。
  84. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 確かにこれでは足りないと、二百八十人でございますか、予定しております二百八十人という施設では足りないという考え方と、そうはなかなかいかぬだろうという考え方と、確かに二つ存在するのでございまして、いやしくもこの補導処分をここへ大きく打ち出します以上は、そこへ入る者が相当あるということを世間では考える人が多いのでございます。また、純粋の統計だけを拾って参りますると、これは四十四の条例でございますが、今度は全国一斉に罰則がかかりますので、もっと検挙者も多いのではないか、警察の予定の数字から推してみますと、八カ所くらい補導院を作りませんと間に合わない数字になるのでございますが、そこにお互いの見方の相違から二百八十という数字を想定されまして、まあこれで一つやってみるかということになったのでございまして、これは今後の運用、推移を見ませんと、いずれとも申し上げかねる問題でございます。
  85. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この前も申しましたように、どうもこの条文を読んでみますというと、気が済まないと申しますことは、やはりこれは補導院を教育の場だと考えたい私どもの願い心でございますものですから、そうしてまた、過日矯正局長説明にも、ここは教育の場だとはっきりおっしゃって下さったとき大へん力強く思いましたけれども、実際この条文を勉強してみますというと、やはりそうじゃない刑の場です。それでまあしかしこの法律の建前からいいますというと、刑の場であっても仕方がない、やむを得ないのでございますが、そこで、私は、ここへ収容されております間にこの婦人たちに一番大事なことは何であろうかといいますと、やはり売春は悪である、売春はやってはいけない、恥かしいことである、恥であるということをしっかり打ち込んでおく。そうして人間の生活というものは粒々辛苦、もう汗水たらしてやるところにほんとうの人間の生きがいがあるよという、その教育というものは私は非常に大事なことではないかというように考えております。そういったような意味で、つまり働いて食わなくちゃならぬのだ。寝て食っちゃいけないのだということを教える、そのことは非常に困難なことですが、同時に六カ月でそれができるかということ、これは私は六カ月ということを私どもがこの売春対策審議会できめましたときも非常にいろいろ問題があったのでございます。とにかく六カ月ということはやはり頭のどこかに刑というような考えもどうしても持たなきゃならない。諸般の事情で、私ども六カ月ということにまあ言ってきた。そうして今日これを再び考えてみますというと、これはほんとうにこの補導院というものが教育の場であり、そして私どもたよらなければならないりっぱなお母さんを作り出す場所だよということになると、これは六カ月はどうしてもこれは短かいし、そうしてその間に私はその女たちを教育し直そうというようなことになりますと、これはほんとうにいろいろの問題があるというように考えて、もう悩みの種になるようなわけなんでございます。そこで、売春は悪であるということを一方には教え、そして働いて食わなくちゃ人間じゃないよというその勤労の精神を教えようというその場であらせたいというようなことから、いろいろこの六カ月間にというように考えてみたのですが、実は私どもは、この第二国会以来参議院の法務委員会におきましては、売春対策のことについてつまり立法することも考えましたけれども、その対策について非常に苦労しました。それで、あるときに、ここにいらっしゃる一松委員などを先頭に立てまして、これはどこか女を働かせる場をきめよう、そしてそのとき一つ夢を持ったのですが、名古屋の近在に機織工場を作って、皆に機を織らせよう、だけれども、売春婦だけそこへ集めてもどうも世間態が悪いから、一般の未亡人も、一般の働かなくちゃ食えないお母さんたちも集めて、そしてその名前は、と言ったときに、希望の町というのはどうだろうかというようなことで、希望の町に皆を収容してやろう、ということは、もう生活さえできれば、家族の生活さえできれば何とかこれを教育し直すことはできるんじゃないだろうかというような夢を見まして、いろいろやりまして、私ちょうどそのころにルーズヴェルト夫人に会い、それからまた、その後にルーズヴェルト夫人がいらしたときにあの夫人が、この日本の売春問題というのは大へんなことで、それはアメリカにも責任があるのだ、アメリカの兵隊がその種をまいたのだから、どうか金が要るときには、私が宗教団体や教育団体から金を集めるからどうぞおっしゃって下さいという言葉を残して、最後に日本にいらしたときもそういう話でお帰りになった。それですでに私は金集めに行こうなんというようなところまでいきまして、いろいろ何回かおぜん立てしまして、相談したのでございますけれども、そのうちにいろいろな事情がございまして今日までそのことは実現しなかった。でも私どもそのときは、ほんとうに今から考えれば夢のようなことで、大規模のことを考えまして、五億の金を集めようなんて、一松委員なんかもおっしゃっていらして、その意気込みで私ども取りかかっていたのです。今思えばほんとうに感無量の点もございますけれども、私はそういう前々からの歴史が、私を左右する、というのもおかしいけれども、考え方がそういうことにこびりついているものですから、だからこの根本には、売春ということは恥かしいことだからかせごうやということをほんとうにあの女たちに思わせて、かせがせたい。そのかせぐ場所です。そのかせぐ場所はこの六カ月の補導院ではなかったのです。私はこれが非常に残念だというように考えますが、これはまあやむを得ぬことなのです。そういう考えから私のいろいろな質問も出てきまして、まことに申しわけないことも申しましたけれども、これは私は自分に対する罵倒をしながら、この条文をいろいろ読んでいっておりますような次第なのでございます。  それで今は、四月一日からこれを実施しなければならないのだから、何でもかんでもこの辺でしんぼうしようと、実は売春対策審議会でも残念ながらここでしんぼうしようといって、私どもはかくのごとき不備な答申案を出したのです。そのことがだいぶ法律面に現われてきて責任を感じておるんです。だけれどもまあ今回は仕方がございませんが、これをもってこの法務省はいろいろな点について一つ格段のお考えをめぐらして下すって、この今、日本で補導院に入る者は、私もそんなにたくさんはないだろうと思っております。いつかも申しましたように、どうせばかか、ほんとうにいなかのぽっと出くらいが縛られるんで、あとのほんとうに悪いやつはみな家の中に引っ込んでしまい、五条違反でやられないだろうと思います。けれども、そういうことで満足することはできません。その裏に隠れているたくさんのお母さんたちが悩んでいる、一つそういうことを思いながら、この法律はこれでもう最後になるということではもちろんないのでございますから、一つそれをお願いしまして、条文については私まだたくさんの質問はございますが、きょうはこれだけで私の質問を打ち切ります。
  86. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっとそれじゃ私から一つ伺いますが、この補導院職員の採用方法ですね、今までの少年に対するものと、売春婦に対する補導院と、これは性質が違うのだから、やはりこの人員を採用して新たに補導員というようなものをこしらえて、そうしてそういうものをほんとうに教育をして、この婦人補導院補導員として採用する必要がありゃせぬだろうかと思うが、その点は渡部矯正局長はどうお考えか。
  87. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 仰せのごとく、特殊な研修をしていかなければならないと思っております。仰せのごとく、この補導院の仕事は期間も短こうございますし、すべての点で非常にむずかしい仕事だと思うものでございまして、十分りっぱな人を集めたいと思っております。従いまして、さような人たちを婦人団体その他からりっぱな人を推薦していただきまして、その中から厳選した上、それらの人たちを研修をいたしまして、特殊な教育を施した上で実務に当らせたい。かように考えております。
  88. 一松定吉

    理事一松定吉君) しかし、もう四月一日だから、その急場の間に合いますかね。
  89. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これはとりあえずのところ、現在各矯正管区から少年院職員あるいは女子の刑務所職員の中から適任者を今選ばしております。これを中央へ集めましてさっそく特殊な教育を施しまして、とりあえずの措置はとりたいと思っております。
  90. 一松定吉

    理事一松定吉君) それはまあそれとして、それから私もう一つ政府にお願いしたいのは、この第一条に、「必要な補導を行う施設」とあるね。それから第三条に、「法務省令で定める基準により、」とある。第四条に、「法務省令の定めるところにより、」とある。それから第十条に「法務省令の定めるところにより、」とある。第十一条に、「遵守すべき事項に」云々とある。それから第十二条に、「法務省令の定めるところにより、」とある。それから第十五条にも同じく「法務省令の定めるところにより、」とある。それから第十五条の三項に「法務省令で定める。」とある。それから第二十一条に「法務省令で定める。」とある。それから同じ二十一条の二項に「在院者の処遇に関する細則を定めることができる。」とある。こういうようなものを、この法案審議に対して、委員は必要なんですから、これを一つ法案審議のできるまでに、急に一つこしらえて出してもらいたい。そうせぬと、ただここで法案の骨子だけはわれわれ審議したけれども、その運用に対しては法務省令で定めるということになると、われわれは何もそれに対してあずからない。あずからないことによっていろいろな拘束を受けたり、いろいろな規則が設けられたりするということになってくると、法務委員会がこの法案審議することについて、骨抜きの審議をしたことになるのですから、それを一つ急にこしらえて出すことができますか、これは一つ横川政務次官に伺います。
  91. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 大体素案はできておりますようですから、御審議の資料として出したいと思います。
  92. 一松定吉

    理事一松定吉君) それならば、今のようなことを法案審議の採決をするまでに、急にわれわれ委員に御配付を願いたい。われわれはそれを基礎にして、この適正、不適正を判断したいと思いますから、これを一つお願いしたいと思います。ほかに質疑ございませんか。
  93. 大川光三

    大川光三君 ただいま一松委員からも御要求がございまして、結局婦人補導院法案というものが数カ所法務省令に委任をしている。そこでその委任の内容を一々委員会でもって伺うのには相当な時間がかかりますので、ただいま  一松委員の御請求のように、至急法令の各内容を私も知りたいと思うのであります。そこでそれに関連いたしまして、ただ一つだけお伺いをいたしたいのでありますが、当委員会請求によりまして、保護具を本日御提出を願っておるのでありますが、一体保護具を使用することができるという規定がございますが、保護具は暴行または自殺をするおそれがある場合に使用するということでございますと、一体保護具を使用する期間というのはどういうふうに予定されるかという問題であります。
  94. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 自殺あるいは自傷行為、または他人に対しましての暴行行為に及ぶおそれのある期間はやはりつけておかなければならないと思います。その気持が静まりましたときにはずすということになると思います。
  95. 大川光三

    大川光三君 そういたしますと、本法案懲戒規定でありまする第十一条によると、遵守すべき事項違反したときは、左の各号に掲げる懲戒を行うことができる第一は、「厳重な訓戒をすること。」第二は、「十日をこえない期間謹慎室で反省させること。」こうございまして、保護具を使用した場合には、暴行または自殺のおそれのある状況の続く限りは、幾日でも、あるいは十口以上でも保護具を使用しなければならぬし、また、使用するのだということになりますと、これはむしろ本人の保護というより懲戒に近いのではないかという気もいたしますのと、ここに懲戒規定で十口をこえたい期間謹慎室に入れるということがございますが、一体保護具を使用した者は謹慎室に入れるのですか、また、一般個室に入れておくのかという点についての疑問が起るのでございますが、一体保護具を使用してその人はどこに置いておくことになるのでございますか。
  96. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 保護具の使用と懲戒とは全然別な観念でございます。従いまして、懲戒に値するような遵守事項違反する行為がありませんでしたならば、決して謹慎の処分というものは行わないのでございまするこれは単独室、普通の謹慎室じゃなくて、単独処分をすべき部屋に本人を置くことになると思います。  なお、そういう状態が続く限りいつでもいるのじゃないかというような御疑念でございますが、今までの実績に徴しまして、さような状態が長く続くことはほとんどあまりないのでございます。数時間の大体使用によりまして、本人の気持も落ちついて参ります。さようになって参りますれば、本人によく言いきかせ、そしてその意図がなくなったならばそれははずすことに相なるわけであります。
  97. 大川光三

    大川光三君 この第十一条で遵守すべき事項というのが、これは別に定められることになるのでありまして、その内容をこの法案では一言にして知ることができない。しかし、遵守すべき事項の中には、暴行を働いたという場合には遵守すべき事項違反になるのかどうか。もし遵守すべき事項違反に暴行というものが加わるということになれば、結局謹慎室で反省させなければならぬ。しかも、暴行するおそれがあるものに対しては保護具を使用しなければならないということになりまして、結局保護具を使用して、かつ謹慎室に入れるという場合が起り得ると思いますが、いかがでしょうか。
  98. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 仰せのごとく、暴行等をいたしました際にはさようなことになると思います。しかしながら、自殺、自傷行為というような場合には、遵守すべき事項ということに必ずしも当らない場合があるのじゃなかろうかと存ずるわけでございます。必ずしもこの保護具の使用と、謹慎室への謹慎というものとは必ず並行するものだということにも参らないと存ずるわけであります。
  99. 大川光三

    大川光三君 しかし、保護具の使用と謹慎室での反省とが並行する場合もあり得ますね。
  100. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) さようでございます。
  101. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっと私関連してお尋ねしますが、精神病者であるということが判定されたらどうするのですか。
  102. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは精神病者であることがはっきりわかりますれば、その際には退院その他の手続をしなければならないと思うのでございますが、その点は十二分に診察をいたしまして処置いたしたいと思っております。
  103. 一松定吉

    理事一松定吉君) そういうことに関するものの規定がないのだが、だれがそんなことをやるのか。精神病者であることが明らかになれば、これを退院させて精神病院に入れるとか何とかしなければ、精神病者ということがわかっていながら、それがゆえに、暴行もしくは自殺をするおそれがあるというので六カ月間保護具を用いて、一定の場所に拘禁して置くことはよくないのだが、何か特別の規定がいるのじゃないかね。
  104. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 十四条に、外部の援助規定がございますが、さような場合には精神病院等に委託いたしまして、その者の治療をお願いするようなこともあると思います。なお、仮退院等の規定も活用しまして、早く出しまして、さような措置をとるということも可能じゃなかろうかと思っております。
  105. 一松定吉

    理事一松定吉君) それならば、十五条に何か例外規定とか注意規定とか設ける必要はございませんか。ただ、十四条だけでは自由に運用がむずかしいですがね。
  106. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これはさようなまだ見きわめのつかない場合でございますので、さような点がはっきりと出て参りましたならば、それぞれ措置ができるものと考えております。
  107. 一松定吉

    理事一松定吉君) だからして、この十五条に、法務省令の定むるところによるという、この定むるところのうちにそれを明確にしておいたらどうですか、そうすればいい。法務省令の定むるところによって保護具を使用するとか、法務省令の定むるところによって、精神病者であることがわかったら、退院さして精神病院に入れるとか、これは一つ私が先刻要求した法務省令の定むるところを委員会にお示しになるときに、御考慮を願っておいていただきたい、そういうことでとどめておきます。  それでは本日はこの程度にいたします。  なお、次回は、三月十三日の午後一時三十分から、企業担保法案について、法務・商工委員会の連合審査会を開催いたすことにいたします。  では、本日はこれにて散会いたします。   午後四時二分散会