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1958-02-11 第28回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十一日(火曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            柴田  栄君            藤野 繁雄君            清澤 俊英君            鈴木  一君            上林 忠次君            雨森 常夫君            関根 久藏君            田中 啓一君            田中 茂穂君            堀  末治君            堀本 宜実君            安部キミ子君            東   隆君            江田 三郎君            大河原一次君            河合 義一君            北村  暢君            梶原 茂嘉君            北 勝太郎君            千田  正君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  本名  武君    農林政務次官  瀬戸山三男君    農林大臣官房長 齋藤  誠君    農林大臣官房予    算課長     昌谷  孝君    農林省農林経済    局長      渡部 伍良君    農林省農地局長 安田善一郎君    農林省振興局長 永野 正二君    農林省畜産局長 谷垣 專一君    食糧庁長官   小倉 武一君    林野庁長官   石谷 憲男君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農林水産政策に関する調査の件  (農林水産基本政策に関する件) ○狩猟法の一部を改正する法律案(内  閣提出)   —————————————
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  最初に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。中央卸売市場に関する件につきましては、昨年来調査を進めておりますが、いまだその問題を解決するに至っておりませんので、今期国会開会中におきましても、その関係者を順次参考人として出席を求めて、意見を聴取してはいかがかと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。参考人の人選、その日時及びその他の手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし上と呼ぶ者あり〕
  4. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  5. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 農林水産基本政策の件を議題にいたします。  この件について、過日の当委員会における赤城農林大臣説明に対する質疑を続けることにいたします。
  6. 北村暢

    北村暢君 私は過日の大正臣の、本年度に当りましての重点政策についての説明に対して質問をいたしたいと思います。  まず第一番目にお聞きしたいのは、農林白書、それから新しい新農林政策、これとの関連においていろいろな施策に基く予算化ということについて、いろいろ説明伺いましたが、私はまずこの政策を見せていただきまして感じたことは、政府は一体これらの生産基盤確立なり、あるいは畑作振興、あるいは有畜農家の導入、畜産振興、こういうようなことを掲げておりますけれども、これらのことが、白書にもいっておりますように、五つの赤信号を掲げて、これらの赤信号を解決するためには、農業生産性向上することにあるのだ、こういうふうにいっているようでございますけれども、確かに一面においてそういう点は私どもも肯定はするのでありますけれども、今とっておりますいろいろな施策によって、ほんとう日本農業が、生産性が、向上するのかしないのかということについて、これからお伺いしていきたいと思います。  まず、六百万農家のうちの兼業農家というものが、戦前の四五%に比較して、現在六〇%になって、兼業農家がふえてきておるということは白書もいっておる通りであります。そういうような状況の中で、生産性向上するということは、私は日本農業の決定的な要素である。この生産性向上の障害になっておるのは、アジア農業の特徴である零細農家、これの克服をどうするかということによって日本農業生産性向上する。これを解決しない限り、題目で幾ら生産性向上を唱えても、私は実質的な生産性向上、あるいは、日本農家経済の安定というものは考えられない。この問題は非常にむずかしい問題でありまするので、今まで政府はなかなか取り上げなかった。従来の私どもの見ている点では、政府は、一体どこに基準を置いて日本農業生産性をはかろうとしているのかということについて、まずお伺いをしたいのだが、従来の政策は、専業自作農というものを中心にしたところの、いわゆる農家の約三分の一、いわゆる三割農政というもの、この三割に対する農政ではないか。そういうことからいたしますというと、六百万農家のうちの四百万というものは、政府の今とっておる施策では救われないし、生産性向上も期待できないじゃないか。こういうふうに思うのだが、政府は一体農政基本をどこに置いてやっているのか。まずこの点からお伺いをしたい。
  7. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 兼業農家もふえてきておりますし、また日本農業アジア農家と共通に零細農家である、こういうことからして、非常に零細農家が多いが、健全な自作農中心としての農政か、それとも違った考え方があるのかというお問いかと思います。  今お話しのように、零細農家生産性向上一するということにつきましては、非常にむずかしい問題でありますが、農政対象といたしましては、零細農家を切り捨てるというような考え方は持っておりません。全体として農業農林水産業に対する上地その他の生産性と同時に、労働生産性をはかっていく、こう考えておりますが、そういう政策を、今もお話しのように、いろいろやっていきます上におきましては、自然といいますか、どうも上の方の農家によりよくいく傾向があることも承知しております。しかしながら、対象といたしましては、よりいいところを対象とするのでなく、全体として考えますが、全体として考えます中でも、零細な、あるいは兼業農家等に対しては特に力ぞえをしていくということがなければ、農家経営が維持されないと考えておりますので、零細、あるいは兼業農家に対しましても、相当力を入れていきたい、こういうふうに考えております。
  8. 北村暢

    北村暢君 零細農家を切り捨てるわけではない、こうおっしゃられるけれども大臣は一体農政基準をどういうところに目標を置いて農家経営の安定をはかろうとしているのか。どのくらいの規模を持てば——まあいろいろな要素はあります。ありますけれども、どの程度規模を持てば、農家経済が安定するのか、この点の見解を一つ承わりたい。
  9. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 規模をどの標準でとるかということは非常にむずかしいだろうと思うのですが、たとえば土地の広さだけで基準をとると、日本の平均が、北海道を除いて一町近いから、それを基準にするというわけにも参らぬと思います。たとえば農地は少くとも、それに対しまして集約的、あるいはいろいろな施策によって、土地生産性とか、あるいは労働生産性の上る場合も非常に多いのでありますので、土地面積だけでどういう農家基準にするということにきめるわけにもいかないかと思います。しかしながら、たとえば開拓等につきましては、予算にも示してありますように、旧入植者に対しましては融資の道を広げるとか、新しい方法による入植との差をなくするような方法をとっています。また新しい入植等につきましては、従来の営農形態等を変えまして、畜産とか、果樹とかを入れて、あるいはまた資金の量もふやしまして、健全にやっていけるというような形をとる。しかし、従来の農家にとりまして、どういうところを基準にするかということにつきましては、面積だけを基準にするわけにも参りませんので、総合的に、集約化とか、多角化とか、あるいはまた共同化の中の一環としまして、これを見ていく、こういうような考え方を持っておるわけであります。はっきりしたことはちょっと申し上げにくいのでありますが、そういう考えを持っております。
  10. 北村暢

    北村暢君 私はその点がはっきりしてないというと、農家経済を安定するということを口で言っても、私はその目標というものがさつぱりどこにあるのだかわからない。安定する、安定する、どこに安定するのか、これは私は出てこないのじゃないか。まあ、この点については、目標のとり方が、農業だけでとることもできないだろうと思う。いろいろほかの産業の、鉱工業、あるいは流通部門の商業、こういうものとの比較から言って、農家経済というものを一体どの程度に持っていくか、これは統計的に大体出ているのでありまして、終戦前のこの所得比較からいけば非常に農業鉱工業の差がある。これがまあ農地改革の成果によってだいぶ縮まって、現在——まあ終戦後においてはこの開きがずっと縮まって、農業一に対して商工業二くらいまで——戦前は四倍から六倍開いておった。こういうような状況のようでありますが、それが逆に今日の状況ではさらにその差が開きつつある。これはもう政府の出した五ヵ年計画にもはっきり出ておるわけです。一対三くらいの形になって出てきた——なりつつあるわけです。そうすると現在の——戦後の農政のとって参りました政策が、三割農政というやはりいわゆる上層農家に対する施策がとられてきたために、大臣が今零細農家なり、兼業農家なりというものを切り捨てるんじゃないと言いながら、この農家自体の中における差と、それから鉱工業の中における差というもの、こういう二つの形で鉱工業比較して所得が低くなってきているということと、それからもう一つ農家内部自体においても階層分化が進んできている、この事実については大臣は認められるのかどうか。戦後十年の農政の結果今日こういう状態が出てきたということ、これをもう率直に認められるかどうか。
  11. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話通り戦前から比較いたしまするならば、農家所得、あるいは消費水準も二〇%程度上っておりますけれども鉱工業所得、あるいは消費水準比較いたしまするならば三〇%程度違っておりますが、二十七、八年ごろからはその較差がなお開きつつあるという事実は私も承知しております。また農村内部におきましても、上地解放以後大体経営規模の大きい人々などを主として非常にこれがよくなってきておると同時に、経営規模その他の条件上非常に不利な立場に立っておるというようなこともありますので、農村自体における階層分化といいますか、そういうのも進みつつあるということは私としては承知しておるわけであります。
  12. 北村暢

    北村暢君 これは、白書の中にも階層分化の問題には触れていない。これは農林省の役人がそんなことを知らないわけじゃない、知っておったんだろうけれども、この点は白書に出てきておらないわけです。今、大臣はその点階層分化が進行しておるということを認められておられるわけなんですけれども、私もそのように考えておるが、大臣も同感だというのですからその点はそうだろうと思うのだが、それでは実際にそういうことを認められておりながら、現在の施策がそういう兼業農家振興なり、あるいは労働の内容の劣弱化なり、こういうことがはっきり言われておるのだが、これに対して積極的な施策というものは私は見られないんじゃないか。たとえば今度の生産基盤確立のための土地改良事業の効率的な実施の点についても、あるいはこの畜産振興についてもりっぱな施策だと思うのです。と思うのだが、しかし、自作の維持資金についても拡大したと、こう言われるかもしれないけれども、実際にこれを運用する意味において、私は兼業農家振興なり何なりということは考えられて、そういう切実に必要なところに金融もなされない。あるいは土地改良恩恵も受けたくても受けられないという形です。この兼業農家等においては確かに労働力は余っているわけです。余って、使いたくても使えない。ところが一部には、平場地帯においては、これは生産基盤確立してきますし、融資も重点的にいく。こういう形で、労働力が不足をして、なお機械化をし、そうして裏作なり、あるいは還金作物なり、どんどん改善されて、営農基盤というものを確立している。こういうことがどんどん一方では進みながら、ある一面において七割くらいの大多数の農民というものが置き去りにされていくこの現実は、大臣も今階層分化が進行していることをはっきり認めたんだから、この点は私ははっきり施策として出てこない限りにおいて、ほんとう日本農業を考えた農政とは言えないのじゃないか。今までの、戦後十年自民党内閣のとってきた農政というものはそういうものであった。これではいかに生産性向上しようとしたって、六百万農家の約四百万というものが生産性向上しない限り、日本農業が簡単に私は生産性向上すると、こういうようなことにはならないのじゃないか。だから、施策基準をどこに置くかということを私は盛んにお伺いしているのだが、さっぱりあいまいもことしてどこに置いているのだかわからない。こういう状態では私はほんとう農政とは言えないのじゃないか。やはりむずかしいけれども、そこへ踏み切っていくところにほんとう農政というものがあるのじゃないか。こういう考え方を持っているのだが、大臣のお考え方はどうですか。
  13. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 零細とか、小さい農家は切り捨てないと言いながら、それに対する施策がないじゃないかというお話であります。しかしながら、決してないとは言えないのじゃないか。今御指摘になりましたが、生産基盤の拡大ということでありましても、これは大農ばかりを主としているものじゃなくて、その土地土地改良、あるいは開墾等が進みますならば、その中に含まれている小さい農家もこれは当然その恩恵といいますか、その施策によってこれは向上するわけであります。特に今度の予算におきましても、小団地等土地改良というようなこと、あるいは市町村の地元増反というようなことに非常に力を入れ、あるいは耕地整備予算ども相当重きを置いておりますが、こういうことはその人個人としてはあるいはできないかもしれませんけれども一つ共同土地改良等の中に入って、そうしてその生産基盤確立に一緒になるということになりまするならば、やはりそういうところにも施策の浸透はあると思うのであります。あるいはまた土地経営面積の狭いのは畑作地に大体多いと思いますが、そういう点におきまして畑作に関する土地改良とか、あるいは畑作振興のための技術指導とか、こういう面で今までの主食生産のみに頼るわけではなくして、その他の畜産をも含めた、小家畜等を入れた畜産等を含めた農業経営というところに力を入れようということでそれぞれ予算もつけておりまするし、あるいはまたまことに不十分でありますが、流通対策という方面にも力を入れようというようなことにいたしております。でありまするから、お話のように、全く十分にというわけにはいきませんけれども政策の施行といたしましては、こういう一番上とか、あるいは何といいますか、上層農家というものを対象としてやっていくのではありませんで、全体としての農業政策をいたしておりますが、そのうちでも私ども常に注意し、また考えなくちゃならぬと思うのは下層といいますか、そういう方面に力を入れていかなければ農村自体が非常にまずく行くといいますか、方向を誤まるというふうに考えまして、政策といたしましても、そういう方向へ持っていこうということで、それぞれの予算もつけておるような次第であります。全然ないとはいえないのじゃないかと、こういうふうに思考しておる、こういうふうに御了解を願いたいと、こう考えておるのであります。
  14. 北村暢

    北村暢君 今、全然政策がない——全然ないとはいえないかもしれないけれども、実際に戦後十年の農政をやってきた結果が階層分化が進んで零細農家はだんだん処理せられてきて、中農化傾向をたどってきておる。これは否定できない事実として現在あるわけです。たとえばまあ私は、その中ではっきりこの日本農業のこの零細性というものを克服する積極的な手段としていろんな施策があるでしょうけれども、そのうちで一つ土地政策というものを考えて、土地政策について今まで政府にどれだけのこの土地政策に対しての考え方が、明確な考え方があったかどうか。私はまあほとんど全然といっていいくらいないのじゃないか、こう思うのです。今日生産基盤確立ということでもって膨大な金をかけて土地改良をやり、あるいは干拓をやって農地造成をやっておる。その反面において都市周辺においては、つぶれ地がどんどんできておる。作ったと同じくらい農地はつぶれていく。これに対して農林省は何らの施策を持っておらぬ。どうなんですか、これは一体。
  15. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 都市近郊農地転換の問題につきましては、全然施策がないというわけではありませんで、技術的にいいますならば農地法もありまするので、農業生産を阻害するというようなこと、あるいは非常に土地が減って、減歩のためにあとの農業経営ができないというようなこと、こういうことに対しましては、土地転換に対しましては、厳重に私、それを抑制して許可をしない方針をとっております。ただ地帯によりましては、まあ区画整理法律とか、首都建設法律とかいろいろ他法律との関係もありまして、他産業との振り合いから、ときによっては許可すべきものも出てくるわけであります。しかしながら、原則といたしましては、私ども農業経営を主として考えておりますので、そういう方面から考えて農地を宅地とか工場に転換することは極力押えているわけであります。これは一つの例でありますが、農地対策につきましても、私どもは、放任しているわけではありませんので、農地造成とともに一方において農地が減っているような現実に対しましては大きな観点からこれを抑制し、あるいはまた転換後の問題等につきましても考慮を払っておるわけであります。
  16. 北村暢

    北村暢君 今まあそういう考慮とか、抽象的にそう言われて、現実につぶれていっている土地というのはどんどん進行していっている。これを阻止することを、私は全部抑えなければならないということは言わない。言わないが、しかしながら、これは非常に無計画になされているということは私はもうこれは否定できないと思う。そういう面は、私はこの零細性の問題からいけば、土地問題というのは非常に大きな問題なんで、土地だけの面積だけでは解決しないかもしれないけれども、この大規模開拓以外の零細農家を克服するための増反の分の開墾、こういうようなものも新農地法でできることなんです。つぶれ地の問題についても農地法では相当な規制をしておる。しかしながら、現実にこの農地法がその通りに運用されておらぬ。まあ小作料の問題、あるいは地代の問題、こういう問題もくずれてきておる。現在の農地法というのは非常な私は、厳正に守られてきていない法律になりつつあるのじゃないかということを非常に心配しておる。実際にその増反の分の開墾というような、未墾地の買収というような問題についても全くこれは簡単にできそうなところができないというのが実情でないかと思うのです。最近の増反分開墾状況がどうなっておるのか。それからまた今盛んにやっておる、この大機械開墾というものの適地というものの見通しが一体どのくらいあるのか。それから、またそういう点についての土地高度利用という点からいって、農林省の中にこの土地利用についての特別な調査機関を設ける——今度の予算若干とっておるようですけれども、一体これはいつになったらこの土地高度利用計画ができるのか。聞くところによるというと、さっぱり作業も何も進んでおらぬ。五ヵ年計画農業計画を進めるのに、これができない限りさっぱり進まないわけです。いろいろこうあげて参りますというと、政府土地政策について何ら計画性もなければ、何もないのじゃないか。五ヵ年計画は立てたけれども、これは初年度からくずれていくのじゃないか、こういうふうな心配すらあるわけです。どうなんですか、これは。ここら辺のところを明確に一つしてもらいたい。
  17. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今例にあげられた一つでありすが、機械開墾、上北、根釧機械開墾ども非常に成績を上げております。御承知の通りと思いますが、従来は入植してから開墾していくということでありますので、非常にその間に作付もおくれるし、立ち上りが非常におそかったんでありますが、機械開墾によりましては、機械開墾と同時に入って、その年から作付等もできるということで、非常に成績も上っておるわけであります。でありますので、ことしの予算等におきましても、九州方面その他にこの機械開墾ということを拡大していきたいと、こういうことで予算の措置もしております。それにも見まするように、全然無計画で、行き当りばったりにやってるわけでありませんで、機械開墾適地というようなところも調査をしているわけであります。  また、今お話し土地利用調査ということにつきまして、本年度予算も組んでありますが、これにつきましては、大体私の方でも全国に土地改良開墾干拓等をすべき場所、あるいは面積等調査もありますけれども高度利用という面から考えまするならば、あるいはこれを畑作地帯とするのが適当か、あるいは草地造成ということで畜産の方に仕向けた方がいいのか、あるいはまた山林の造成ということに向けた方がいいのかということ等につきまして調査をして、その調査に従ってその事業を進めていった方が、高度利用ということに向くといいますか、適すると、こう考えておりますので、土地利用調査ということをことし——年度予算からなお強化して手がけていきたい、こう考えておるわけであります。  で、五ヵ年計画との関係でありますが、五ヵ年計画の線は非常に大きな線といいますか、少し抽象的な面もありまして、年次計画がまだはっきりしておりませんけれども、しかし、この五ヵ年計画生産性基盤その他につきましては、大体その線に沿うて計画を進められることになっております。いろいろ後ほど御指摘があるかもしれませんが、たとえば愛知用水という問題につきましても、ことしの予算の裏づけは計画よりは低いのでございます。しかしながら、融資面等につきましてこれを補充し、またこの五ヵ年計画の中で次々年度等における計画等とにらみ合わしまするならば、これも五ヵ年以内には確かな見通しを持てるわけであります。でありますので、私どもといたしましては五ヵ年計画に沿うてこの農業水産政策を極力進めていく、合わしていきたい、こういうふうに考えておりますので、そう違ったことでもなく、また無計画でもないと、私ども考えておる次第でございます。
  18. 北村暢

    北村暢君 いろいろ土地政策についても、私はこれは大臣がいかに答弁しようといえども、これは行政として、農政としては非常に貧弱であって、まずやってるかやってないかわからないというくらいだろうと思う。  そこで、そういう点からして、今答弁を避けられておるようだけれども、特に地元増反分開墾やる気でやるのか、どうなのかね。その進め方ですね。現在の農地法ではできることにはなっておるんだけれども、実際にはできないんです。大臣の出身の茨城県等においてこの問題は非常に紛争が起つてるわけなんです。これはとても普通の手段では簡単にいかない状態になってる。これらについて、政府としてはこの新農地法の建前に立ってやる気があるのかないのか、そこら辺のところはどうなんです。
  19. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 本年度政策でもお話申し上げましたように、市町村学位の地元増反というのには力を入れていきたい、こう思っておりまするし、既存の地元増反の問題につきましても、場合によっては計画の変更もある場合もあるかもしれません。あるかもしれませんが、しかし原則といたしましては、地元増反の線はやはり強くやっていきたい、またやらしたいと、こう考えております。
  20. 北村暢

    北村暢君 この点について私は、まあやっているとか、やってないとかということは見解の差になってきますから多くは触れませんが、とにかく日本農家零細性というものを克服する、中農化傾向をたどる、たどっていくということについては大臣はそういうふうに考えられるのかどうか、これをまず明確にしていただきたい。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 零細農がつぶれるというような傾向もありまするし、また零細農が中農化に向いていくという傾向もこれはあります。しかし、私ども零細農を中農化の方に持っていくという政策を進めていきたいと、こう考えております。
  22. 北村暢

    北村暢君 そこで、中農化方向に進めるというのは、それは生産基盤が安定してくるんですから、それはだれしも考えることだろうと思う。ところが、その中農化方向に持っていく方法ですね、いかように指導せられるのか知りませんけれども、現在はこの状態を見ているというと、農地法そのものがくずれかかっている。御存じのようにて地取り上げ、あるいは小作地の取り上げというような問題が進行しておる、これも事実だと思うのです。私はやはり農地法の精神からいって、自作農をせっかく創設したものを零細であるからといって簡単にこれを地主に集中していくということは、これは根底から農地法の精神というものはくずれるんだから、この方法はやはりとるべきではない。中農化方向は好ましい傾向だけれども、その方法はとるべきでない。そうすれば勢い増反をやる、あるいは農地の生産の共同化をやる、こういうような形で持っていく以外に手はないというふうに、中農化方向でできないものは共同化方向に持っていく、そうして生産性を上げる、こういうような方向より方法はないのじゃないかと、こういうふうに思うのです。現在とられている新農村建設計画、いろいろな村作りの計画も行政としてやっておられる、私はああいうような新村作りだけで大臣共同化方向を進めているとか何とかということを答弁されるかもしれないけれども、あれだけでは私は共同化——これは若干ないことはない、共同作業場とかその他あるかもしれませんが、根本的な共同化方向、あるいは増反による中農化傾向をとる、こういう積極的な政府施策というものがない限り、ただ中農化方向がいいんだということで、そういうふうに指導するということになるというと、結局地主制度というものを復活して土地の集中が行われてくる、こういうようなことになる。今の大臣考え方からいけば、自然とそういうふうになるんだから、そういうふうになるのを待ってるというようなことにしか私は考えられない。そういうふうな考え方を持つならば、その方法としての積極的な施策というものがあってしかるべきだと思うのだが、その施策は、先ほど来私が言ってるように、土地政策等においてもその傾向というものは見られない。まあ機械開懇等における従来の開懇の弊害から見て思い切った施策をとった。これも事実である。しかしながら、これは非常に小規模のものであって……私どもはこういうのは賛成であります。だから、大いにこの機械開懇による大規模開墾というものを拡大してもらわなければならぬ。そうして貧農を作り出すところの今までの開拓政策というものを改めてもらうということも賛成でありますけれども、現在、否定できない兼業化に進む、しかも適正農家というにはふさわしくない農家現実にあるわけだ。これもやはり積極的に中農化方向へ持っていく施策というものが、積極的な施策というものがなければならない、これが現在の農政には私はない、磁極的な施策というものはない、こういうふうに考えておる。で、今度の予算の中でも、私はまあ、先ほど答弁がありましたから……、いろいろやっておるように言われておるけれども、実際にはそういう方向にはいってないんじゃないか。この点について大臣はどういう見解を持っておられるのかお伺いしたいと思います。
  23. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今の最後のお話の前に、土地の取り上げの問題でありましたが、農林省といたしましては、農地法に規定されてるような条件に該当しないようなものに対しましては、土地の取り上げを認めておりません。ずいぶん訴願等もきますが、土地の取り上げを認めたようなことはほとんどないくらいであります。ただ地方の農業委員会や何かにおきまして御指摘のようなことはあろうかと思いますけれども、いたずらにといいますか、正当の理由なくして、土地の取り上げということにつきましては農地法を厳格に守ってこれを取り上げさせないという方針でやっているのであります。  なおそれで地主がふえるんじゃないかというようなことでありますけれども、私どもは地主というものを対象として農政を行なっておりません。従来の地主といえば小作料に頼っておるという考え方でありますから、まあ北村さんもそういう意味で申されたのじゃないと思いますけれども、大きな土地所有者という意味で申されたんだと思いますけれども、その大きな土地所有者ということを対象とするというよりも、やはり中小を対象として政策を進めていきたいと、こういう熱意は持ってるわけでございます。そこで、それについては、地元増反とか、あるいは、共同化、こういうことが必要ではないかと、それについてあまり農林当局としてはその施策を進めていないんじゃないかという御指摘のようであります。これにつきましては、今お話がありましたような新農村建設ということもありますが、それは別といたしましても、この三十三年度政策として考えております……繰り返すようでありますが、地元市町村単位の地元増反ということにも相当力を入れておりまするし、今の開墾干拓ということにつきましても、初めは非常に予算を減らそうというような財政当局の意図もあったのでありますが、今のお話のような趣旨を私も考えておりますのでこの方面につきましても、予算の裏づけを強く要求したわけであります。それも大農というようなものよりも、やはり小さい農家が中農になれるような方向へ内容を持っていきたい。あるいは六十五億の小団地等土地改良の利子補給の予算、あるいは法律案というものにつきましても、あまり効果がないじゃないかという見方もあるかと思います。しかし、これにつきましては、六十億くらいの融資ができますから、利子補給につきまして相当な面積の小団地の改良もできるはずになっております。こういう小団地、小さい所の土地改良にも仕事を進めていく、土地改良事業を進めてということは、やはり小農が中農になれるという基盤を作っていくことだと私どもは考えております。  なお、共同化が非常に進んでおらぬではないか、新農村建設の共同施設等はあるだろうけれども、その他はないじゃないかということでありますが、これは一つの、小団地の土地改良共同化一つでもありましょうし、あるいはまた流通対策といたしまして、私ども共同販売とか、あるいはまた団体協約とか、こういうような流通価格対策につきまして力を入れておるということも一つ共同化であろうと考えます。あるいはまた各種の農業団体がありますけれども、農林水産団体等の一部として——これもいずれお話があると思うのでありますが、大農の方が恩恵といいますか深いようでありますけれども、しかしながら、各種の農業団体等を通じて、その組合員としての共同化一つをになわせる、こういうことにも相当強化すべく力を入れておりますので、御指摘のように十分というわけには参らぬかとは思いますけれども、相当私どもとしてこれに考慮を払いつつ政策及び予算の裏づけをしておることを御了承願いたいと思います。
  24. 北村暢

    北村暢君 今、農地法を厳格に守っていくんだ、それは法律を守っていくのは当りまえの話なんで、それは大臣もそのつもりで確かにおられる、しかしながら、そこは行政なんでありまして、実際に大臣の考えておられる農地法にいう上地取り上げの問題なり何なりというものが、実際に訴願がきておるが許可しないとか、するとか、しないかもしれないけれども、実質的にやみの小作料が横行しております。実際には訴願が受け付けられなくても、実質的な形で、裏の形でそういうことが進んでおるということもこれは事実です。だから、それが食管法のように守られない法律が、守られないままにほっとくというならば、行政でも何でもないと思う。やはり農地法に基いて農林省という役所があって、行政権を行使しているんですから、この農地法が守られるような実質的な行政というものが私は末端に生きてなければいかぬ。これがやはり……ところがこの農地法というのは大臣の守ろうという意思にかかわらず、くずれつつあるというのが実際なんです。そこを指摘しておるので、私はやはりその点についてはまだ国会で研究するのだとか何とかいう答弁だけでその行政がうまくいくとは考えられない。今の状況からいって実際にそういうふうに大臣の意思とは違った方向に進んでいるということも事実であると思う。この点については実際に熱意をもって、行政に熱意をもってやられることが必要ではないか。  それと関連して、今度の国会には本会議の質問等にもありましたけれども、自民党の中に補償問題についての特別委員会が持たれ、これについては来年度予算調査費を組むというのを一応大臣の意思でこれを取り下げたようでございますけれども、そういう空気すらあったということも事実なんです。ですから、そういう点からしても、それからまたその自民党の中に設けられている解放農地の補償の問題についてのあり方というものについて、私はこの解放農地の運動そのものについていろいろの利害関係者があってしかも相当の数の人がこれに参画して運動を進めておるということも知っております。そうしてまた形が地方によって違う。それは南の方の香川、その他においては平均反別も少い。そういう点からして解放農地の補償といっても金をもらうことに重点がなくして、これは解放した土地を返してほしいという要求の方が強い。逆に東北等に行けば解放した農地に対して反十万かの補償をせい、こういう金の補償をしてもらいたいという要求で、同じ運動の中でもいろいろ要求が違う。従って、前者の方の土地を返してもらいたいという方向の要求というものは、今の大臣説明にかかわらず農地法というものが実質的に犯される方向にあるということが言い得るのではないか。この運動はなまやさしい問題ではなくて、あれだけの運動をやっておるのですから相当な力で来ている。そういう問題についても、今大臣は信念として農地法を守られると言われたのだから、私はその通りに理解はするけれども、今後ともその考え方というものは変らないのかどうか。念のためにもう一度……。
  25. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農地法のいろいろ根本的な問題につきましてはいろいろ研究する余地があろうと思います。あろうと思いますが、現在私どもは現在の農地法を守っていくということにつきましては私の考えに毛頭変りはありません。
  26. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  27. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を起して。
  28. 千田正

    ○千田正君 先ほど北村委員から農村の零細農家の問題がありましたが、それの一つの問題としまして農村の二、三男対策が今度の予算の上から見ればだいぶ機械開墾あるいはその他において、開拓その他について吸収するというような意味にしかとれないと思うのですが、大臣としてはやはり農村の零細農家ということは一、三男の対策も含めて考えなければならない重大な問題であると思うのです。そこで農村における二、二男対策としての根本的なお考えが何かあるかということを一言お尋ねしておきたいと思います。
  29. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話しのように、一番農村における二、二男対策ということがむずかしい問題でもあり、また何といいますか、この対策が確立されれば非常に農政も推進されると思うのです。それにつきまして具体的な政策を持っておるかどうかということでありますが、これは政策ならば必ず三、三男対策ができるという一つの大きな線で解決できる問題ではなかろうと思います。やはり抽象的になるかもしれませんが、日本のやはり工業力その他が相当伸びていきまするならば、そこへ吸収される面もあろうかと思います。でありますので、人口政策といいますか、人の収容力いかんという問題にも関連するかと思うのです。でありますので、工業化が進んで、そこに吸収される場合もありましょうが、吸収していくような政策もとらなくちゃならぬと思いますし、あるいはまた海外の移住の問題もこれは非常に数は少いのでありますけれども、これも推進していかなければならぬと思います。それからまた今お話しになりましたように、市町村を単位とした地元増反というようなことで進めていくということも一つ政策としてとっているわけであります。あるいはまた土地生産基盤の強化確立ということも一つはそのねらいがありまして従来の単作地帯とか、あるいは畑作の生産力が上っておらぬというようなところにおきまして、単作地帯を解消していく方向にもっていく、あるいは畑作地帯農業振興するということによって土地生産性、あるいは労働生産性を上げることによって人口の収容力といいますか、農村二、三男の収容も進めていくということが一つのねらいでもあるのであります。そういう点から考えまして、総合的に考えて二、三男対策に処していきたいと考えておりますが、一つの方途によってこれは解決するというわけには私どもといたしましても非常に困難を感じておるわけでありますが、いろいろな方法によって二、三男の吸収力、こういうことに政策を進めていく、こう考えております。
  30. 千田正

    ○千田正君 広範にわたった対策をお考えのようでありますが、特に私は農林大臣に要請する点は、あなたの農政の管轄の上において、特に二、三男対策の一つの重点対策として開墾入植という問題が大きな二、三男対策として農林省の管轄の中で重点的な問題だと思う。ですから、この開拓入植、あるいはさらに最近の機械開墾に対する二、三男優先入植という面におきましても予算面における問題、あるいは金融ベースにおける問題等重点政策を強化していく必要があるのではないかという考えを持っているわけです。その点はいかがお考えですか。
  31. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御説の通りにいたしたい、こう考えております。
  32. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この件については、午前はこの程度にいたします。   —————————————
  33. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 狩猟法の一部を改正する法律案を議題にいたします。  この法律案は、去る二月六日閣法第三十号をもって内閣から参議院先議によって提出、即日当委員会に付託されたものであります。  まず、提案理由の説明を求めます。
  34. 本名武

    政府委員(本名武君) 狩猟法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  現行狩猟法につきましては、つとにその不備な点についてその改正を要望する意見が関係団体等から提起され、政府といたしましても再検討を要する点があると認めましたので、研究を進めて参ったのでありますが、この問題につきましては、広く各界の学識経験者の意見を聞くことが必要であると考え、昨年六月、臨時に農林省に野生鳥獣審議会を設置し、野生鳥獣の保護増殖及び狩猟の規制に関する改善方策について諮問したのであります。審議会は、この諮問にこたえるため、数回にわたって慎重に審議し、同年十一月農林大臣に答申がなされましたので、政府といたしましては、この答申の趣旨を尊重して、有益鳥獣の保護の強化をはかり、あわせて狩猟の一層の適正化を期するために、現行狩猟法について次の諸点の改正を行うこととしたのであります。  すなわち、まず第一点は、空気銃の狩猟登録制度を狩猟免許制度に改め、これまでの甲種狩猟免許(銃器使用以外の猟法によるもの)及び乙種狩猟免許(空気銃以外の銃器を使用するもの)のほかに、空気銃を使用するものにつき新たに丙種狩猟免許の制度を設けるとともに、これら各種狩猟免許を通じて免許の欠格条項をこれまでの乙種狩猟免許の場合の欠格条項によって統一することといたしましたほか、狩猟免許に関連して狩猟に関する講習会制度を設けることによって、狩猟を行う上に最小限度必要な知識の普及徹底をはかることといたしました。  なお、狩猟法令に違反しました者につきましては、狩猟免許の取り消しの規定を設けるなど、狩猟免許制度について改善をはかろうとしているのであります。  第二点は、狩猟法違反に対する監視、取締りを強化するため、違反捕獲物の譲渡禁止を一部の加工品にも及ぼし、鳥獣販売業者からも一定の報告を徴し得るようにし、また、狩猟法令に違反する罪について司法警察員として職務を行う者を都道府県の吏員のうちから指名できるようにし、その職務に従事させる職員の範囲を若干広めることとしたのであります。  第三点は、本法の運営の面におきましては、立場を異にする関係者が多く、行政運営の適正及び円滑をはかる上には、広く関係方面の学識経験者の意見を徴することが必要でありますので、このため常置の諮問機関として鳥獣審議会を農林省に置こうとするものであります。  以上が狩猟法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  35. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この法律案の審議は日をあらためて行います。  ここでしばらく休憩して、午後一時から再開いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後一時二十三分開会
  36. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続いて農林水産基本政策の件を議題にし、赤城農林大臣に対する質疑を続けることにいたします。
  37. 東隆

    ○東隆君 私は、大臣に、農地対策についてお伺いをいたそうと思うのでありますが、午前中、北村委員から質問もありましたので、それ以外の方面についてお伺いをいたそうと思います。農林大臣は、農地を解放されておりますので、その間のことを、身をもって体験しておられますし、そういうような点で、今の農地制度の解放後における現状、そういうようなものについて、いろいろ御感想があろうと思うのです。それで、私は、今の農地関係は後退しておるのじゃないか、解放時代におけるやり方から考えてみまして、非常に後退をしておるじゃないか、ことに農地委員会をもってそうしてやっておったあの時代、それが今農業委員会になって、しかも農林省の方では農林経済局の方に所属して、そうしてほとんど農地問題については積極的なことをやらない、こういうような形であります。そんなわけで、私どもは、この前の農業委員会制度改正の場合に、あの中に農地部会を作って、そして積極的にこの方面農業委員会が活動をすることができるような態勢を作ろうと、こういうわけで法律の改正等に当っても、そういうような意図を持っておったわけであります。法律の改正等を見て、農地部会ができるようになっておりますが、そういうような方面についても、今回の予算等については、あまり考えられておらないのじゃないか、こうも考えられます。それからまたもう一つ農地富を府県に置いて、そしておやりになる、こういうようなことも計画をされておったようでありますが、それも実は実現をしておらぬようで、そうしてこの間の御説明を聞きますと、農地対策として特に上げ得べきものは、自作農創設維持資金を五割増して、五十億であったものを七十億にした、あの程度以外にどうも農地対策としてあまりないように考える。そこで、おそらく農地補償の問題であるとか、あるいは農地の引き揚げであるとか、あるいは都市近郊の宅地に転換をする問題であるとか、いろいろな問題がたくさんございまして、そういうようなものに対しての対策その他について、お考えになった点がたくさんあろうと思います。そこで、基本的にどういうようなお考えを持っておられるか、そういう点を少しお話を願いたいと思います。
  38. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今お話のように、せっかく農地の解放ということが行われまして、これも一つの大きな原因だったと思いますが、三年続きの農作と、自作農化した農民諸君が非常な努力を払ってきた結果であると、こういうように考えておりますので、農地解放の効果というものは、私どもも認めておりまするし、従って、この農地法に定めてある制度というものを維持していきたい、こう考えておるわけであります。ところが、今一部後退しているじゃないかというようなお話であります。それは午前中の北村さんもお話しになりましたが、土地の取り上げとか、こういうような問題も事実上あるじゃないかということでありますが、これにつきましては、午前中にもお話し申し上げたんでありますが、正当な理由のないものにつきましては、当然拒否すべきものだと思いますので、厳重に監督もいたしておるわけであります。だんだん人口が多くなる、二、三男対策の問題もある、あるいはまた、土地造成がなかなかそれぞれ思うようにいかないというような、いろいろな点もあって、こういう紛争も起きてきておるんじゃないかというふうに考えております。ただ、そういう問題で農業委員会等において農地部会を設けることになっておるが、どういうふうになっておるかという具体的なお尋ねもあったようであります。農業委員会において農地調査をするというようなことも、少いながら予算を計上いたしておるわけであります。あるいはまた、農地関係について農地官というようなものを置こうという意図であったが、そういうものも置かなくなってしまったのではないかというようなお尋ねがありましたが、その通りであります。実は、農地官を置きたいと思ったのですが、予算の折衝経過におきまして、御承知と思いますが、現在農地法関係の地方職員として、五百名ほど地方庁に補助職員を置いておるわけでありますが、予算の折衝途中において、この補助職員が削られたのであります。そういうことがありましたので、こういう補助職員を予算面から削るということでは、農地法関係をスムースに持っていくために非常に支障があるということで、相当強く折衝いたしました結果、これは復活いたしたのであります。こういう方面に実は相当な力をさいておりましたので、農地官というものを置くことは実現しなかったわけであります。そこで、現在といたしましては、この補助職員は、もう御承知と思いますが、農地に関する権利の移動等の許可とか、農地転用の許可とか、耕作関係の事務等、農地法施行に関する事務を担当しておりますので、農地法の厳正励行のため、これをなお活用していくといいますか、そういうふうに考えておるわけであります。いろいろ問題もありますが、なお大きな問題といたしましては、やはり午前中にも申し上げたように、農地造成ということが根本的に必要でありますので、土地利用調査とかいうことによりまして開墾干拓適地、あるいは草地としての適地、山林としての適地というものを調査の上、適当に農地造成を行なっていきたい。この農地造成につきましては、数字を申し上げまするならば、おおむね二十九年度には三万五百五十六町歩、三十年度には二万二千八百六十五町歩、三十一年度には二万七百二十三町歩というふうに農地造成がされております。しかしこれと同時に、農地の壊滅もあることもまた御承知の通りであります。特に地元増反ということにつきましては、面積といたしましてはそう多い面積ではありませんけれども、新しくこの方面を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。農地関係につきましては、利害関係もありまするし、耕地が割合に少く、人口が多い、こういう日本の農村の実態から見まして、いろいろ紛争的なものもあることでありますが、極力日本全体の食糧の総合的自給化及び農山漁村民の生活水準の向上という点から、慎重に方策を講じていきたい、こういうふうに考えております。
  39. 東隆

    ○東隆君 私は、農地に関する農林省基本的な考え方、態度、そういうようなものについて、特に農林大臣の過去の経験その他から考えて、基本的なものを一つ何とかお伺いをいたしたい、こう思っておったわけでありますが、私は、農地解放という制度は、耕作をする者が農地を持つことができる、自作農になったというこのことが、これが私は農地解放の一番いいところだったと思う。そしてそのときに残されたところの在村地主ですね、これはちょうどいわば沖縄に対する日本の潜在領土権ですか、あんなようなものであって、あまり土地を持っておっても価値はない、しかし、将来耕作をするときにはしやすいような態勢、こういうようなことであれは残したのじゃないか。従って、そういうような形でもって残したものと、自作農になった耕地というものは、これは私は、中心は耕作権だろうと思う。それで、地主の所有権とそれから自作農の耕作権——この中にはもちろん所有権も含まれております、そういうふうに考えてきたときに、自作農中心に考えてみたときに、中心として考えなければならぬものは、耕作権ではないか。それで、地主が持っているところの所有権というものは、現行の法律上においては、所有権というものは非常に強くなっております。そのために、土地の取り上げであるとか、その他のことをやったときに、耕作権が債権として扱われている。しかし、物権として扱われておりませんから非常に弱い点がある、そんな点を農地法その他によって相当耕作権を強めている。こういうふうなのが現行の形だろうと思う。私は、そういうふうに考えておりますが、これは間違いありません。
  40. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 最初のお話のように、耕地に対する農民の立場は、まあかつて孫文が言っておったように、耕者——耕す者がその田を有す、耕作権と所有権とが一致した形が一番いい形だと、こういうふうに考えております。しかし、そのときどきの労働能力といいますか、経営能力等によりましては、足らない場合があったり、あるいは余る場合もあるかと思いますが、そういうような形で、まああの当時も一部保有地を残したというようなことになっておろうかと思います。しかし、地主の立場という立場から考えまするならば、自分で作っているものは、これは耕作者としての立場であり、小作に入れているのはこれは地主としてのその分は立場になろうかと思います。しかし、この小作に入れているというものに対しましては、今小作料の統制といいますか、額も制限されておりまするし、実際面としては、小作料に依存するというような昔の地主的立場ではないと思いますので、今お話のように、潜在的所有権といいますか、こういう形でなかろうかと思います。しかし、場所によりましては、この取り上げというものが行われておりますが、場所によりましては、また人によっては、この所有権というものが非常に弱くなって、法律上は所有権の方が耕作権より上でありますけれども、事実上、土地の取り上げということは不可能に近いというような形で、耕作権が相当強化されているという面もあると思うのであります。これはまあ私の見ておる実態を申し上げたので、それをどうこうというわけではありませんけれども、そこで、農地法の趣旨については、今お話のように、耕作権を強化する、こういう趣旨に基いておることは申すまでもないと思います。ただし、耕作権というものが物権にはなってはおりませんけれども、昔から慣習がありましたように、作離れ料とか、そういうこともありまするし、公共事業等において買収する場合には、耕作権といいますか、そういう権利も相当評価して見ておるわけであります。そこで、農地法の内容について二、三——申し上げるまでもないかと思いますが、農地法の規定の中には、農地または採草放牧地の賃貸借は登記がなくても引き渡しさえあれば第三者に対抗できる。物権ではありませんが、法律上は賃貸借でありますが、登記がなくても第三者対抗の要件を満たしておる。こういう規定もありますし、あるいはまた、農地または採草放牧地の賃貸借について、期間の定めのある場合において、期間満了の六ヵ月ないし一年前に当事者が相手方に対し更新しない旨の意思表示をしない限り従前と同一の条件で更新されたものとみなすということで、相手方に六ヵ月ないし一年前に更新しない旨の意思表示がなければ、そのまま継続するというふうに、この耕作権も強化されております。あるいはまた、農地または採草放牧地の賃貸借の当事者は、都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除、解約の申し入れ、合意解約、賃貸借不更新の通知ができないこととなっておりまするし、都道府県知事がこの許可を行うに当っては、都道府県農業会議の意見を聞くこととなっており、また許可を行い得る場合も、賃借人が信義違反の行為を行なった場合に、法律上限定していることも、私から説明申し上げる必要もないくらいに御承知のことと思っております。その他、小作料の額を一定率にきめてある、賃貸借を文書で契約するとか、その他、民法上は賃貸借になっておりますが、耕作権を物権化はしておりませんけれども農地関係の賃貸借につきましては、非常に物権に近いような保護を与えてありますので、その保護につきまして、農林省といたしましても遺憾ないように措置をいたすようにいたしたい。こう考えております。
  41. 東隆

    ○東隆君 今お話しになったように、農地というものは、耕作権は債権だけれども、物権としてのいろいろな条件を法律は整備さしておる、こういうお話でありました。そこで、在村地主が所有しておるところの耕地ですね、これの評価というような場合ですね、耕作者に譲り渡しをするというような場合、非常に問題がむずかしくなってくるわけです。今の法律ではなかなか解決がつかないのじゃないか。というのは、所有権というものが非常に強くなっておりますから、そのために、自作農を創設するということがはばまれていると思うのです。この点は、やはりもうそこまで条件を備えておるならば、物権とはっきりと規定をされてもいいのじゃないか、こういう考え方を持たざるを得ないわけです。と同時に、都市の宅地だのその他の土地ですね、都市にある土地、あるいは通常の借地権あるいは借家権、そういうようなものも物権化しようとしている動きもあるのです。法律としては農地法の方が進んでおると思う。従って、これを物権化することによって、かえって借地権あるいは借家の権利、そういうようなものが物権になることを醸成することになろうと思う。そういうような意味で、はっきり規定をされるような、そういうお考えはございませんか、法律改正その他の面で。
  42. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 在村地主の小作に入れておる土地というものは、私の考えから言いますると、耕作の権利はないので、所有権の中に耕作権が隠されていると、こういう形、それを自作農に移す場合には、耕作権が顕在するというか、現われてきて、それで評価が高くなる。地主としては所有権だけ持っておっても、小作料が田ならば千円ぐらい、畑ならば六百円という価値なんですけれども、放すときには、これは耕作権が現われてくる、顕在してくるということで、ある程度これは高くなるということはやむを得ないのではないか、これはほかの耕作土地を売買するときにもそういうふうな形になっておりますので、ある程度高くなるのは、これは耕作権が顕在してくるというか、現われてくるということで、仕方がない、こう考えております。  それから農地法について、せっかく物権的な保護を与えておるのならば、いま一歩進めて、これを物権化したらどうかというような御意見のようにも拝聴いたしたのでありますが、現在といたしまして、借地借家法の賃貸借等もありますし、その他いろいろあります。民法上の問題として賃貸借の一応範疇に入っておって、しかもそれを強化しておる形でありますが、これを物権にまて持っていくかどうかということには、法律上の異論もありましょうし、また、実態上なお研究の余地があろうかと考えますので、今直ちにこれを物権化するというふうには考えておりません。
  43. 東隆

    ○東隆君 今、在村地主が持っております農地は、売買をするときには、潜在をしているところの耕作権が顕現をするので、それで土地の値段が高くなるのだと、こういうお話ですが、都市近郊における耕地になりますと、これは耕作権を放棄することによって土地の価格が高騰するわけです。それで、これはプラス・マイナスで代数的にやれば何も問題はないかもしれませんが、しかし、非常に大きな問題を起しておるわけなんです。ことに戦争中に、通い作などをやっておった者が、耕地を獲得した。こういうようなことから、それが宅地に転換をする。こんなような問題でもって、一番農地補償の問題を引き起しておるときの基本的な条件といいますか、理由は、その辺でないかと思うのです。そこの不自然を何とか解決しなきゃならぬ。指をくわえて高く売ってるのを見るのは、どうも何とも忍びがたいと、こういうお話をだいぶ聞くわけです。そこで、本来ならば政府が買い上げて、そうしてそれを耕作者に売り渡す、こういう形をとったのでありますから、従って耕地として取得をしたものを、買い受けたものを、耕地以外のものに転用をされるときには、その増加額の分、そういうようなものを、税金、あるいはその他でもって国が取り上げる。こういうようなことを当然考うべきじゃないかと、こういうことを考えるのですが、この点はどういうふうに考えますか。
  44. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今のお話のように、都市近郊において農地転換をされる場合には、耕作権が顕在する。顕現するというようなことは、逆にその農地を手放す、耕作権を手放すということで、非常に高くなる。こういうふうに見られるのは御説の通りだと思います。そこで、私は考えておるのですが、土地解放のあのときには、解放する土地を買い受ける者は、将来自作農に精進する者ということであったのであります。でありまするから、あのときに二反歩か、その辺ぐらいしか耕作してない者は、土地解放の恩恵に浴さなかったという事情もあったわけであります。その目的が自作農に精進するということであったのに、その目的を変更して、宅地に高く売るというようなことは、ほんとう土地解放の本来の目的と違ってくるわけです。これが非常に高く売られるということにつきましては、解放した人なども不満を持ってるような声も聞きます。しからば、それを税金をかけてとったらどうかという御意見であります。これも一つの御意見かと思います。しかし、事実問題といたしましては、なかなか当事者の売買で、そういうことで税金がかかるということになれば、登記価格を実際にごまかしたり、まあ登記に一定の価格はありますけれども、実際の価格だけを見ない向きもありまするし、あるいは評価でこれをかけるかというような問題もありましょうけれども、これに税金をかけるということは、いかがかと思うのであります。私は、ほんとうは手続がめんどうでも、前の農地改正前のように、一たん国に所有権を移して、そうして国から転換する。こういう形の方がいいのじゃないかというふうには考えておるのでありますけれども、これを法律化するかどうかというまだ結論は持っておりませんが、税金をかけるよりは、農地を改正前のように、自作農に精進する目的を失った場合には、やはり国に戻す、一応国に戻すという形で、国の方から転換をするということが、筋が通っていいのじゃないかという気持はしておりますけれども、結論を得ておるわけではありません。
  45. 東隆

    ○東隆君 今、筋が通っていることをお話しになりました。私も実はそれをおやりになるか、もしやれないとすれば、税金でもって取り上げるか、これよりほかに方法はない、二つしか方法はない、これを解決をするのには。それで、私はなぜこの点を申しますかというと、ほとんど都市が発展をしていくと、こういう形はもう避くべからざる形になって起きてくるわけです。それで、都市が膨張するに従って常にこの問題が新しい問題として起きてくると思う。それで、今のうちに抜本的にこれに対するところの考え方を講じておかなければ、農地制度に対するところの補償の問題を初めとして、その他幾多の問題が起きてくる。それで、在村地主の農地問題は、これはこの宅地転換の問題に比べると、そう大きな問題はないと思いますけれども、この宅地転換をする、あるいは工場に転換をする、その他いろいろな問題で、農地転換は非常に大きな問題になってくるので、何とかしてこの二つの方法のうちの、今、農林大臣が好ましいと、こう言われた、筋道が立っているというその方法を、これは一つ実現について大いに熱意を示していただきたいと、こう思うのですが、どの程度の力の入れ方か、そう考えておるだけというのでは、はなはだもって心細いのですが、どの程度お考えですか、一つ
  46. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 大へん程度の問題になるとむずかしい問題でありますが、実は、そういういろいろの問題が——まだ農地法の精神は生かしておきながら、農地法の中に考えなければならぬ問題があるのじゃないか、こう考えておるわけであります。へたにやりますと、農地法を変な方に持っていくおそれもありますので、なお研究の上、対処していきたいと、こう考えております。熱意の度合いにつきましては、どうもしかるべく御判断願いたいと思います。
  47. 東隆

    ○東隆君 実はこの問題は、やはり所有権と耕作権の関係に関連してくると思うのです。それで、そういう考え方で見た場合に、所有権というのは——農地としての所有権ですね、所有権は次第にゼロの方に近づいていく、それから耕作権というものは、次第に大きくなって、十の方になってくる、こういうのが、これが農地法考え方からいったら、正しい考え方じゃないかと思うのです。農地の所有権というのは、そう強い権利を持っているものではない。権利の行使はできない。しかし、耕作権はこれは非常に強い行使力を持っているのだ、こういうところまでいかないと、今お考えになった国が買い上げるというような場合にも、初めに国が譲り渡したところの価格でもって買い上げるのだといったってだれも承知をする人はないわけです。やはりその農家が持っているところの耕作権というものを評価して、そうして国が農地としてそれを買い上げる。そうしてそれを国が宅地に転換をするという場合には、国の形でもって宅地に転換をするのですから、その場合に宅地としての評価したものは、国が取得をする、こういうことになると思うのです。そういうような意味で、あくまで耕作権というものを強化していかなければ解決つかぬと思う。そういうふうにお考えになりませんか。今の筋道通りにお考えになった場合にでも、耕作権というものをあくまで強化さして、そうしてそれを放棄するのではないが、しかし、耕地として国が買い上げをするという場合に、所有権というものは問題にしないで、耕作権というものを強くする、こういう形になろうと思う。私は、そういう考え方にならなければ解決はつかぬものですから、最初から実は所有権と耕作権の関係一つ伺いしていたわけです。そうお考えになりませんか。
  48. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 耕作権が相当強化されておりまするし、これは保護していきたいと、こう考えておりますけれども、所有権の問題は、これは全般的にも影響する問題であります。いかに耕作権を保護しても、所有権を否定するというわけには参らぬかと存じます。これは、一つの経済の制度上の問題でもありまするから、所有権を全然否定するというわけには参らぬと思うのであります。しかし、実際問題としましては、耕地につきましては所有権というものがあまり力がないといいますか、力がなくて、耕作権の方が強化されてきておるというのが現状であると思います。それで、先ほど申し上げました考え方一つとして、国が工場敷地とか宅地に転換する場合に買い上げるというような場合におきましても、所有権の価格というよりも、耕作権の価格というものが高く見積られるということは、今のお話通りだと思います。これはまあ実態からそういうふうにも出てくると私は考えます。
  49. 東隆

    ○東隆君 今お話しになった通り考え方から、やはり耕作権を強化する、耕作権というものを分離して、そうして考えるという考え方に立たないと、解決がつかないような問題になるのではないか、こう思いますが、今筋道の通ったやり方だということを解決するのにも、やはり所有権と耕作権を分離して考える、この考え方が、農地法の中を貫いてこないと、なかなか解決のつかない問題であろう、こう考えますが、この点はどうですか。
  50. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは、所有権と耕作権はまあ分離して考えないでも、事実分離している建前だと思います。ただ、再々先ほどからも申し上げておりますように、実際所有権を否定することは、私は不賛成でありますが、事実上としては、所有権の行使が非常に薄弱で、耕作権の行使、あるいはこの利益といいますか、この方がまあ非常に強くなっているので、従って、法律上の権利関係からいっても、耕作権が強化される、でありますので、法律的にも所有権と耕作権との二つは、別に考えられるわけであります。お話の意味がよくのみ込めない点もありますので、なお御説明を聞いてからお答えをしたいと思います。
  51. 東隆

    ○東隆君 私は、耕作をしない農地を持っておる在村地主ですね、これは私は農家じゃないと思います。土地だけ持ってそうしてそれを耕作者に小作をさしている人は、これは農家じゃないと思います。もちろんその人が動物を飼ったりあるいは蔬菜を作ったりして、あるいは農家だと言う人もあるかもしれませんが、そういうような意味じゃなくて、土地を貸して、そしてやっているこういう人は、これは農家じゃない、こういう考え方を持つのですが、どうですか。その在村地主ですね、耕作をしない地主、これは農家とお考えになっておるのですか。それとも地主だと、単に。そこの考え方がはっきりしないと、この問題は解決しないと思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  52. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それはいろいろなきめ方によろうと思いますが、大体私ども全然耕作していないで、土地を貸しておるということに対しましては、制度の上やその他についてはこれは農政上の問題もありますけれども農業政策を行なっていく上といいますか、農業政策の上でも、今考えておりますように、国内の食糧の総合的な自給度を高めていくとか、あるいはまた、農山漁村の生活水準を上げるとかいうことの対象にあまりならぬわけであります。これを農家の範疇に入れるか、範疇に入れないかということにつきましては、いろいろそのときそのときで、入れる場合もあり入れない場合もあるんじゃないかと思います。統計等については、入れない場合もあれば、あるいはこういうものも農村民として考えるというような、いろいろな場合があろうかと思います。しかし、実際全然耕作しないで、土地だけ小作に出しておるというのは、農業政策実行上の対象からはどうしても離れがちになると思います。制度の問題としては、別に考えなくてはならぬと思います。
  53. 東隆

    ○東隆君 今の御説明で、はっきりしないと思うのですけれども。私はたとえば商業を町でやっておる、そうしてその人がその行政町村内におったがゆえに土地を保有したと、こういうような場合に、これは農家ではないと思う。そういうたぐいの者の土地を、耕作者に強制的に移す方法をお考えになりませんか。移転をさせることですね。それから農地解放の当時在村しておったけれども、その後その村を飛び出した、そういうような土地もだいぶん残っておるんじゃないか。そういう土地も実際に耕作しておる者に移していくと、その場合に時価でもって、今の話によって移すということになると、これはえらいやみ価格ができていくと、そういうような場合に、やはりこれも補正をしなければならぬ。それは法律の目をくぐってやっただけの話だろう、従って、そういうようなものを是正するために、何らかの措置をとるという考えはありませんか。
  54. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) かつてはその町村に住んでおって、土地を小作に出しておった。しかし、今その土地を離れてどこかに行っておる者に対して、どういうふうにするかという第二番目のことにつきましては、これは今の農地法につきましても不在地主になりますから、土地解放ということで、耕作者にその土地を所有させるということになろうかと思います。  第一のその土地に住んでおって、かりに商業を営んでおる、そして所有地は小作に出しておる、これを強制的に耕作者に売り渡す方途を考えるかどうかということでありますが、これは強制的にやるということは考えておりません。というのは、やはり所有権は所有権でありますので、その所有権が、耕作を伴いませんから、田畑等の本来の目的を果してはおりませんけれども、やはり所有権は所有権でありまして、まあ潜在的な所有権といいますか、場合によっては、小さい例を申し上げまするならば、自分の前を小作人に貸しておくという形でおる場合、その場合は、土地所有者から見れば、自分で耕作するという気持はないけれども、あるいはそこへ、つまらない例でありまするが、家でも作られて自分の家が陰になってもしようがない、だから所有権だけは保有しておいて、小作料等は少くても、そのままにしておきたいというような例もあろうかと思います。そういう例とはまた違った例もいろいろあろうかと思います。それにつきまして、一がいにこれを強制的に耕作人に売り渡すようにするというようなことは、まだ考えてはおりません。なお研究は続けたいと思いますけれども、強制的に売り渡させるということは考えてはおらないわけであります。
  55. 東隆

    ○東隆君 私は、今の問題は、自作農を百パーセントにすることは、これは困難かもしれませんけれども、しかし、それに到達するのには、そういうような方法を講じなければなかなかできるものではないと思う。それから、そのことによって、都市近郊土地その他が非常にまた宅地に転換をするというような場合に、以前に土地を解放した人たちのうらみを買うと、こういうような問題もたくさん出てくる。従って、農地に関する限り、私は、農家でない者にそう遠慮をする必要はない、耕作をする農民中心農地法をお考えになる必要がある、こういう考え方一つ持つわけなんです。それで、今までいろいろお話を伺ったわけですが、もう一つ関連をして、やはり耕作権を大きく見なきゃならぬということから考えることは、例の農地に対する固定資産税です。この問題は、耕作権が非常に強力なものであると、自作農は結局固定資産税をかける対象がないことになる、今の形から言えば。そこで、耕作権を非常に強力なものにするということが、これは固定資産税その他を排除する一つの根拠にもなる。そして、制度として非常にいい制度になるのじゃないかと、こう考える。それと同時に、土地に対する相続税、これも、耕作権を十分に確立することによって、一定の経営面積を保有する、こういうような場合において、やはり相続税も私は免除する対象になり得ると思う。そういうような点を考えてきたときに、単なる所有ということによって、生産手段としての土地を所有しておる、そういう者にのみ固定資産税であるとかあるいは相続税であるとかそういうようなものをかけるべきであって、土地中心にして経営をしておる者、耕作をしておる者、そういう者には、別途の形でもってそこから上るところの収入に対して所得税をかける、こういうような形が、これが正しいやり方ではないかと、こう思うのですが、この点はどうですか。
  56. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 耕作本位ということになりまするならば、今のお話のように、耕作による使用収益、従って、固定資産税というよりも所得税というような形にいくのが筋かと思います。ただ、地方税のいろいろな関係から、現在といたしましては、税金といいますか、そういうことから、固定資産税というような税金もかかることになると思います。相続税につきましては、やはり耕作権が非常に強化されていくということになれば、これは耕作権が所有権と近づいて一体化するという形であります。そうすれば、やはり耕作権そのものにも一つの評価は出てくると思うのであります。そういうことから考えますならば、これは相続税につきましては、収益ということだけではなくて、一つの耕作権に対する相続というものが考えられるので、相続税がかかるということは、これはあり得ると思います。ただ、農家におきましては、実際の収益がそれほど高いものではないのでありまするから、御承知の通り今度の税法の改正の中におきましても、相続税につきましては、大部分の耕作農家が相続税の対象から除かれるというような税制の改正案を出しております。しかし、相続税の場合には、今のお話のように収益だけ、所得だけということではありませんから、耕作権に対する評価、かりに耕作権が非常に強くなって、所有権と同じようなものになっても、これは相続財産としての評価といいますか、耕作権を財産として見るということにはなろうかと思います。こう考えております。
  57. 東隆

    ○東隆君 もう一つ。今のお話ですと、所有権と耕作権が同じものになる、こういうことですが、これは自作農の場合においては、私は所有権はゼロになったって一向差しつかえないと思う。しかし、農地を所有して経営をしない、小作人に渡しておる、こういうようなものは、これは生産手段を単に私有しているだけであって、そのものに対しては社会的な正義からいっても、私は相続税をかけるべきじゃないか、税を公平に分担させるという意味からいっても、かけるべきではないか。しかし、それを占有し、使用しておる耕作者の場合には、おのずから違ってきておるわけで、その土地を利用して、そして収益を上げ、その他のなにをやっておるんですから。所有権から生まれてきたところの利潤、地代、そういうものは、これは別だろうと思うのです。農業じゃないと思います。そういうような意味で、それにかけることは間違いじゃないと思うけれども、耕作者にかけるのは、これは耕作権が所有権と同じになるから、それにかけるのだ、こういうことになると、これはだいぶ違ってくると思う。そういうような点で、私はやはり耕作権とそれから所有権というものをはっきり分けてですね、自作農は耕作権と所有権を持っておるんだけれども、しかし、耕作権というものは、これは十の価値を持っているけれども、所有権はゼロになっておるのだ。ここまでいかなければならぬものじゃないか。従って、ゼロの所有権に対しては、相続税もそれから固定資産税もかけるべきじゃない。それから土地を所有しておる、そこから地代があがる、こういうものについては、これは当然その土地その他について固定資産税であるとか、あるいは相続税というようなものが、対象になれば、かけるべきではないか。こういう考え方が出てくると思う。従って、やはり農地法そのものの中の考え方を、はっきりと耕作権を確保するということを中心に筋を通していく必要があるのじゃないか、そういうことをやらなければ、今のいろいろな農地中心にしてきた複雑な問題がたくさんありますが、それを解決することができないのじゃないか、こういうような考え方をせざるを得なくなるのであります。そこで、農地法中心にして所有権と耕作権を分けて、そして耕作権を確立する。こういう点に中心を置いて、もう一度一つ考え直すときにぶつかってくるのじゃないか。こういうのが実は私のきょうお伺いをした中心であった。大臣考え方は、実はまだ現状を、法律を守ってやろうと、こういうことを強調されておるのであって、今のような問題は、何としても絶えないで、どんどん起きてくる。こういうふうに考えられます。従って私は、きょう大へん委員各位には迷惑だったと思いますけれども基本的な問題についてお伺いをしたわけであります。しかし、その点についてもっと一つ熱意を示して下さって、改正その他について一つ精進をしていただきたいと、こう思うわけであります。
  58. 江田三郎

    ○江田三郎君 農林大臣に初めてなんですが、今まで就任されてから、いろいろの委員会で御見解を述べておられると思いますが、私初めてなものですから、ちょっと今までおっしゃっておられたことに重なるような点があるかもしれませんが、昨年農林省の方で白書をお出しになり、これはわれわれ非常に興味を持って拝見したわけです。それから、それに基いて基本政策を発表なさった。そこで、その白書なりあるいは基本政策で出されておる点、われわれも同感する点がありますし、また同感しない点もありますけれども、それがどのように予算化されるかということで、注目をしておったわけでありまして、この間、農林大臣基本的な見解を伺ったわけですが、どうも今まで農林白書なり、それからそれに基く基本政策からいきますと、ここへ出されたところの、この間説明されました基本政策というものが、少しピントがはずれているのじゃないかという印象を受けるわけです。そこで、まあ順序を追ってお尋ねしたいと思うのです。  まず最初にお伺いしたいのは、あなたの説明の中で、一番の基本として農林水産業については「その生産性向上し、他産業と均衡のとれた所得を確保することに努める」、これが一番の柱になってくると思うのです。この点は、他産業との均衡のとれた所得ということを打ち出されたことは、非常に注目すべきことだと思うのですが、ただそういう言葉だけでは困るわけでして、その内容がどのように具体的に喪づけをされているかということだと思うのです。そこで、私のまず第一にお伺いしたいのは、政府の方で五カ年計画をこの前発表されたわけです。あの五カ年計画の数字でいきますというと、三十一年から三十七年の間の鉱工業生産水準が、年の成長率が八・二それに対して農林水産が二・五、こうなっておって、農林水産業生産性向上して他産業との均衡のとれた所得を確保すると言っておられますけれども、あの長期計画でいきますというと、まず第一に生産水準において八・二と二・五というような非常な開きが出てくるわけです。そこで、そういう聞きが出てもかまわぬのだ、あるいは今後鉱工業の面においての雇用がふえて、農林水産業の方に従事している者がそちらに変っていくのだ、そういうまた説明でもあるのならわかりますけれども、どうもあれを見てもそういうようには思えないのでして、特に国民の個人消費が五・五の上昇率を示すことになっておりますが、一体これは農林水産の生産水準が二・五上って国民の一人当りの消費水準が平均して五・五上るというのと、どういう関連が出てくるわけですか。結局、これはあなたの方は、他産業との所得の均衡をとるのだということを言われておりますけれども、これはこれ、あれはあれであって、ただこれは言葉だけだ、こういうことになりますか。その点からお伺いしたい。
  59. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 他産業との生活水準がだんだん較差を持ってきておる現状でありますので、この均衡をはかっていくということでありますが、鉱工業の実態と農林水産の実態とは、私から申し上げるまでもなく、違っておりますので、これを一緒に同じ率にするということは、これは非常にむずかしい問題だと考えております。そこで、その成長率等につきましても、国民経済の成長率は六・五%、こういうふうに出ておりますが、この数字だけで、じゃ農林水産業もそれと同じように六・五%かと、こう見るわけにもいきませんので、実は農林水産業の成長率は三%だと、成長率で見ますれば低い見方をしております。それから鉱工業との関係でもそういうような関係になっております。これは鉱工業との均衡をとりたいという計画のもとに、またそういう政策を進めたいとは考えておりますが、この実態が御承知の農業生産でありますから、これを同じにするということは、実際問題として参らない、こう考えております。でありますので、均衡はとっていく方向には持っていくといたしましても、これを一致させるというわけには参りませんで、鉱工業の生産の拡大に伴って、農林水産業の生産あるいは生活水準等も向上させていきたい、そういうことで、経済五カ年計画とは別に、また農林水産業の五カ年計画というものを作りまして、その計画の線に沿うて予算措置その他政策も進めていくのが現状でございまして、お話通り、その差を少くするということには、今出ておりません。
  60. 江田三郎

    ○江田三郎君 農林白書の中で、日本農業の問題点として、たしか五つの問題があげられておりましたけれども、あの中で一番大きい問題は、農業所得水準が非常におくれておるということ、それだからして、あなたのこの間御説明になった基本政策でも、「他産業と均衡のとれた所得」ということを第一に置かれたのだろうと思うのです。そこで、そういうことを農林白書でうたい、また二、三日前の予算に関連しての説明でもうたっておられる以上は、もう少しはっきりわれわれをうなずかせるものがなければ、羊頭狗肉だと言われても仕方がないと思うのです。もちろん鉱工業農林水産業とが、同じテンポで生産水準が上昇するものでないということは、これは常識だろうと思います。だからして、やはり産業構造の中において、第一次産業、第二次産業、第三次産業の就業構造がどうなるか、どういうのが進歩的な経済かということは、もう今までも言い古されたことでありますから、私はそんなことを言っているのじゃありませんが、しかし、このように、はっきりと鉱工業生産水準が八・二になるのに、農林生産水準は二・五の成長率しか示さぬということになるならば、それをどこかで補うものが出てこなければならないと思うのです。生産水準ではこういうことだけれども、しかし就業構造においてこういうふうに変ってくるのだ、あるいは国家支出においてこういうふうに変ってくるのだ、何か農民の消費水準が上るような手が打たれてこなければ、ここであなたがおっしゃられるようなことは、全く空文になってしまうのじゃないですか。その点はどうなんですか。もしあなたが、これとは別に農林水産業の方の長期計画をお持ちになっておるというその農林水産業の長期計画が、ここに総合的に示されておるところの成長率二・五というのよりさらに高いものをお持ちになっておるのならばよろしい、それならば私も話はわかると思いますが、一体どういうことなんです。
  61. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 就業構造とか何か方策を考えて、予算あるいは政策を打ち出しておるのか、こういうことでありますが、御承知の通り農業政策問題は長期にわたりがちであります。わたるような情勢であります。そうでありまするから、私どもといたしましても、長期計画のもとにおいて、たとえば、この間申し上げました土地生産性といいますか、農業基盤の拡大強化というように、基盤を確立していくという点等につきましても、私どもの五カ年計画あるいは長期経済計画の線に沿うて、本年度予算もそれだけの裏づけをしてきておる、こういうことであります。あるいはまた畑作振興等により、あるいは畜産等とも結びつけて、これも農家所得一つ基準とはなりますが、そういう点につきましても、たとえば牛乳の生産量をどれくらい見るかというような基準に従って、牛をどれくらいふやしていくか、それにつきましても、牛乳の生産量につきましては、やはりそれに対する消費の拡大というようなことを考えて、予算を提出いたしておるわけであります。あるいはその他生活水準の向上という点につきましても、技術加工面につきまして、それぞれの予算を上げているということも、総合的に今申し上げましたような計画に沿うて予算の裏づけをしているわけであります。今お話がありましたように、予算の裏づけでもあれば、まだ話はわかるということでありますが、予算といたしましては、この間申し上げましたように、相当程度予算をことしは御審議を願って、その内容等につきましても、こういう計画の線に沿うて考えて、予算の裏づけをしているようなわけであります。
  62. 江田三郎

    ○江田三郎君 それじゃ一つも答えにならぬと思うのです。あなた方の政府で発表された長期計画に基いても、年成長率は二・五にしか見ていないわけなんです。農林省の方で、特に農林水産業の面において長期計画を立てられたと言われても、やはりこの企画庁で総合的にまとめられたこの数字のこの計画の一環で、それを上回ったものを、別にお持ちになっているのじゃないと思います。こういう計画の一環としてあなた方が組まれた予算というものは、今ここへ出されたものと私は違うと思うのです。その前に、あなた方はこういうような計画に基いて、農林省としての予算要求をなさったはずです。しかし、それと現実にこの政府提案としてここへ出たものとは、相当違ってくるわけなんです。しかも、かりにこの二・五の成長率として見たところで、今、日本農業の一番の問題点であるところの所得の低さという問題は、いよいよ較差を大きくしていくだけなんです。だから、さらに二・五が成長できるということだけじゃなしに、それをさらに補う何かがなかったならば、鉱工業なり農業なりあるいは一次産業、二次産業、三次産業という均衡は、いよいよもって農林白書で憂慮しているような方向へ進むだけなんでしょう。今のあなたのお答えじゃ答えになりませんよ。それをどうお考えになっているかということなんです。
  63. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) もちろん五カ年経済計画の線に沿うて、私ども農林省五カ年計画とかもっと長期の計画を立てているわけでございます。その成長率が違うじゃないかという御指摘かと思うのでありますが、その成長率に沿うように五カ年なら五カ年を、われわれは年次に分けまして、その年次に従ったような予算を実は出しているのでありますから、別にそれに沿わないということはないと私は考えております。
  64. 江田三郎

    ○江田三郎君 もしそういうふうにおっしゃるなら、この今出されたところの予算で、成長率二・五の方向へはっきりいき得るかどうかという具体的な裏づけができますか。私が言っているのは、かりに二・五できるとしたところで、この総合的な長期計画を照らし合せてみると、鉱工業の方が生産水準は八・二の成長率になっているのだ、あるいは国民の消費水準の一人当り平均は五・五伸びることになっているのだ、かりに二・五できるとしたところで、アンバランスはますますひどくなるじゃないか。しかもその二・五の計画というのは、実はあなた方くずしているじゃないかというのですけれども、あなた方の方で二・五でいくのだということならば——もっとも初年度をゼロにすればいくかもしれません。しかし、少くとも常識的に考えて、二・五の方向にいき得るのだというならば、私はこの予算に基いて、そういう具体的なものを出していただきたいと思う。自信があるなら出していただきたいと思います。
  65. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 成長率に従って年次計画を立て、それに従って予算を出しているというふうに先ほど申し上げたのでありますが、しからば予算のどこに二・五という成長率が出るかというこういうことでありますが、その二・五の農林水産業の総合的な成長率のもとに、たとえば土地生産基盤を五カ年なら五カ年間にどれくらいにしておったらばそれにいくか、あるいはまたそのほかの生産面についてはどれくらいにいくか、こういうふうにこまかく分けて、その結果が成長率が二・五なら二・五、こういうふうにしてやるわけであります。  なお、こまかいことで、もし私の話が不徹底で意味がわからぬということでありますならば、経済計画の方を担当しておりました官房長からよろしければ答弁さしたいと思います。
  66. 江田三郎

    ○江田三郎君 これはまあ予算委員会でないからいいのですけれども予算委員会で今あなたのような答弁をしよったら、また政府は黒星ということになりますよ。てんでこの計画大臣わかっていないじゃないですか。私は何べんも繰り返しておるように、この政府案の通り農林水産の生産水準が二・五上ったとしても、鉱工業とのアンバランスはますますひどくなっていくのじゃないか。そこで、それをそういう生産水準のアンバランスを何か補正する要素があるのか、たとえば就業構造が変ってくるのだ、あるいは国家支出というものが、財政支出というものが全然変ってくるのだ、だからしてこういう成長率の隔たりはあるけれども、ほかのことで埋め合していくというならわかりますけれども、そういう説明一つもないのですよ。そうすると、農林白書の中での一番の問題点であるところの日本農業所得の低さという問題は、解決つく方向じゃなしに、逆の方向へいっているのじゃないですか。これは何も事務当局の答えを待たぬでも、これこそ私は大臣基本的な問題として、大臣が把握されておられなきゃならぬ問題だと思うのです。
  67. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農林白書に他産業との所得水準に非常に差が出てきておる、こういうことを指摘しておることは事実でありますが、そうしてまた、それをなくするようにしたいという政策を考えておることもその通りであります。しかし、農林直書は現実を分析したものでありまして、その較差そのものを直ちに直せるというわけにはいきませんので、較差そのものはあると思います。それを全部補う何かほかの要素を持っておるか持っていないかということでありますが、それを全部補う要素というものは持っておりませんので、国民経済の成長率とか、他産業との生活水準、あるいは消費水準向上と同時に、農林水産業としての生活水準とか、あるいは消費水準を上げていく、こういう目標のもとに政策といたしましても、予算としてもこれを提出しておる、こういう実態といいますか、事実であります。
  68. 江田三郎

    ○江田三郎君 農林白書は問題点を指摘しただけだ、これは無責任な答えだと思うので、問題点を指摘しただけでそれは終るのじゃないと思うのです。いやしくも農林省が問題点を指摘した以上は、その問題点解決に向って進まなければならぬというのは、これは常識でしょう。現にあなた方はあのあとで、農林基本政策というのでしたか、名前は私忘れましたけれども、相当こまかい内容のものを発表なさっておるじゃありませんか。そうすると、まず第一にこの農林白書を一ぺん出して、そうして、何か農民に大きな期待を持たしておいてそうしてその次の基本政策では、それをちょっとぼやかしてここへ持ってきて、しかしまだ失望し切るまでに至らぬようにしておいて、今度になってくると、またそれとは離れたものになってきているじゃないですか。これは私は事務当局の問題じゃないと思うのです。農政を担当されるあなたの基本的な問題であると思うのです。なんぼあなたが説明されたところで、この生産水準にこんな大きな開きがきて、二・五の生産水準で、そうして国民の消費水準が五・五上る、この問題点からいえば、これを他産業に追いつかさなければならぬのに、いよいよ離されるようなこういう数字を、一方において総合計画としてお出しになっておいて、説明のしょうがないじゃありませんか。
  69. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 経済計画によりますと、お話のように国民経済の成長卒は鉱工業においては八・二、農林水産業においては二・五、こういうことになっております。私どもの初年度におきましては、農林水産業の成長率を三%と、こう見ておるのでありますが、また別の方の一人当りの所得水準という計画におきましては、五カ年間に農業の方においては一二五、工業の方においては一二三、こういうふうに計画を見て、それに沿うて予算も出しておると、こういうことになっております。
  70. 江田三郎

    ○江田三郎君 これ、やはり大臣ちょっと無理ですわ。だから、まあ予算委員会じゃないのですから、何も大臣いじめてどうしようというのじゃありませんから、私事務当局でよろしいから、この次にもう一ぺん質問しますから、事務当局にちゃんとした用意を持ってきてもらいたいと思う。大臣の不得手な問題を大臣とやったってしょうがないのです。事務当局の方の責任者に質問しましょう。だからきょうはちょっとやめておきます。どうせ各般にわたるのですし、私は、ここから出発しないと次の質問が出ないから、この次にやります。
  71. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 今、江田委員から御質問のありました点につきまして大臣から全体の考え方を申し上げられたんですが、それになお補足して事実の推移だけにつきまして御説明申し上げておきたいと思います。御指摘のように長期経済計画におきましては、農林業と他産業部門との発展、生産性向上、並びに所得につきまして、可及的に均衡をはかるという考慮のもとに計画を立てた次第でありますが、御指摘のありましたように、農業鉱工業とにおきましては、おのずから業種の性格上成長率に差があることは当然でございます。従いまして、鉱工業におきましては八・二、農業につきましては基準年次に対しては年成長・率三%、三十一年度の実績に対しては二・五%、こういう成長率を一応出して、三十七年度における一応経済における目標といたしておるのでございます。この数字自身につきましては、従来の日本における農業の成長率から見まして、過去における成長率から見まして、また海外における農業の成長率から見ましても、相当大きな成長率であるわけであります。農業だけで見ますと三・三%でございますけれども、これ自身が相当大きな成長率になっております。しかし、鉱工業におきましてはその差が出てきておりますけれども、問題になっております所得の均衡を考えます場合におきましては、当然就業者一人当りの所得について、どういうような推移になるかという点が問題になると思いますが、この点につきましては、一応経済計画におきまして農業における就業人口が、五年後におきましては八十五万に減るという計画——基準年次に対して八十五万に減るという見通しを立っておりますので、その面におきましては、一人当り所得につきましては、さきに大臣からお話がありましたように、鉱工業が一二三%の伸びに対して、農業の方は一二五%ということになっておるわけであります。従って、その面におきましては、若干ではありますけれども、現在の所得較差について改善の目標を立てたということがいえるわけであります。ただ、経済計画の性格でございますけれども、今回の長期経済計画におきましては、年次別計画ということよりも五カ年間の三十七年度における日本の歩むべき望ましい姿を描いて、その姿に達成する一つ目標産業別に掲げて、この目標に照らして、各年度の経済情勢等をにらみ合せながら、毎年度それを一つ基準として計画を立てる、こういうことになっておりまして、従来の経済計画の当初から五カ年計画の年次別計画を立てるという形のものに、今回はなっていないのでございます。従いまして、経済計画におきましては、今申しましたそれぞれの部門における目標を達成するために、基本的な方向をいかにすべきであるか。あるいはその目標を達成するための基本的な施策はいかにあるべきであるかという対策を掲げておるにすぎないのであります。農業の方についていいますれば、その目標を達成するために、資本装備の高度化をはかって、大いに土地の、農地の開発、改良をし、あるいは機械、家畜の導入をはかるとか、あるいは技術指導の体制を整えるとか、あるいは流通の改善をはかるべきだ、こういう対策を掲げておるわけでございます。従って、その対策の方向に沿って、農林省の三十三年度予算につきましても考慮いたしていこう、こういうのが五カ年計画予算の一般的関係と、われわれは了承いたします。
  72. 江田三郎

    ○江田三郎君 時間がありますか。
  73. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私はちょっと失礼さしていただきます。
  74. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  75. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。  この件については、本日はこの程度にいたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後二時五十六分散会