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国務大臣(
赤城宗徳君) 最初の
お話のように、耕地に対する農民の立場は、まあかつて孫文が言っておったように、耕者
——耕す者がその田を有す、耕作権と所有権とが一致した形が一番いい形だと、こういうふうに考えております。しかし、そのときどきの
労働能力といいますか、
経営能力等によりましては、足らない場合があったり、あるいは余る場合もあるかと思いますが、そういうような形で、まああの当時も一部保有地を残したというようなことになっておろうかと思います。しかし、地主の立場という立場から考えまするならば、自分で作っているものは、これは耕作者としての立場であり、小作に入れているのはこれは地主としてのその分は立場になろうかと思います。しかし、この小作に入れているというものに対しましては、今
小作料の統制といいますか、額も制限されておりまするし、実際面としては、
小作料に依存するというような昔の地主的立場ではないと思いますので、今
お話のように、潜在的所有権といいますか、こういう形でなかろうかと思います。しかし、場所によりましては、この取り上げというものが行われておりますが、場所によりましては、また人によっては、この所有権というものが非常に弱くなって、
法律上は所有権の方が耕作権より上でありますけれ
ども、事実上、
土地の取り上げということは不可能に近いというような形で、耕作権が相当強化されているという面もあると思うのであります。これはまあ私の見ておる実態を申し上げたので、それをどうこうというわけではありませんけれ
ども、そこで、
農地法の趣旨については、今
お話のように、耕作権を強化する、こういう趣旨に基いておることは申すまでもないと思います。ただし、耕作権というものが物権にはなってはおりませんけれ
ども、昔から慣習がありましたように、作離れ料とか、そういうこともありまするし、公共
事業等において買収する場合には、耕作権といいますか、そういう権利も相当評価して見ておるわけであります。そこで、
農地法の内容について二、三
——申し上げるまでもないかと思いますが、
農地法の規定の中には、
農地または採草放牧地の賃貸借は登記がなくても引き渡しさえあれば第三者に対抗できる。物権ではありませんが、
法律上は賃貸借でありますが、登記がなくても第三者対抗の要件を満たしておる。こういう規定もありますし、あるいはまた、
農地または採草放牧地の賃貸借について、期間の定めのある場合において、期間満了の六ヵ月ないし一年前に当事者が相手方に対し更新しない旨の意思表示をしない限り従前と同一の条件で更新されたものとみなすということで、相手方に六ヵ月ないし一年前に更新しない旨の意思表示がなければ、そのまま継続するというふうに、この耕作権も強化されております。あるいはまた、
農地または採草放牧地の賃貸借の当事者は、都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除、解約の申し入れ、合意解約、賃貸借不更新の通知ができないこととなっておりまするし、都道府県知事がこの許可を行うに当っては、都道府県
農業会議の意見を聞くこととなっており、また許可を行い得る場合も、賃借人が信義違反の行為を行なった場合に、
法律上限定していることも、私から
説明申し上げる必要もないくらいに御承知のことと思っております。その他、
小作料の額を一定率にきめてある、賃貸借を文書で契約するとか、その他、民法上は賃貸借になっておりますが、耕作権を物権化はしておりませんけれ
ども、
農地関係の賃貸借につきましては、非常に物権に近いような保護を与えてありますので、その保護につきまして、
農林省といたしましても遺憾ないように措置をいたすようにいたしたい。こう考えております。