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1958-03-18 第28回国会 参議院 建設委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十八日(火曜日)    午後一時二十五分開会   —————————————   委員異動 三月十四日委員斎藤昇君辞任につき、 その補欠として松野鶴平君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹下 豐次君    理事            石井  桂君            稲浦 鹿藏君            西田 信一君            田中  一君    委員            岩沢 忠恭君            小山邦太郎君            中野 文門君            武藤 常介君            内村 清次君            小酒井義男君            重盛 壽治君            村上 義一君            森田 義衞君   政府委員    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    建設省河川局長 山本 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   説明員    通商産業者鉱山    保安局管理課長 竹田 達夫君    建設省河川局水    政課長     國宗 正義君   参考人    全国治水砂防協    会常務理事   赤木 正雄君    早稲田大学理工    学部教授    中野  實君    日本石炭協会総    務部法規課長  朝比奈治郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○地すべり等防止法案内閣送付、予  備審査) ○地すべり等による災害防止等に関  する法律案衆議院送付予備審  査)   —————————————
  2. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  三月十四日斎藤昇君が委員を辞任され、その補欠として松野鶴平君が委員に選任されました。   —————————————
  3. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) それではこれから本日の議事に入ります。  地すべり等防止法案地すべり等による災害防止等に関する法律案議題といたします。  本日は、これらの法律案につきまして参考人方々から御意見を伺うことになっております。参考人方々にごあいさつを申し上げます。  本日は皆様御多用のところお繰り合せ下さいまして当委員会のために御出席下さいましたこと、ありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  せっかくおいでを願いまして御意見陳述の時間を制限するようなことはまことに失礼と存じますけれども議事の整理の都合もございますので、御意見を述べていただく時間を大体一人一応十五分程度にお願いいたしまして、そのあとで各委員から質問いたします。それにお答えを願ったらばなはだ好都合と存する次第であります。  それでは最初に、全国治水砂防協会常務理下赤木正雄君にお願いいたします。
  4. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) まず、この法案の各条につきまして一応私の考えを申し述べたいと思います。  第二条の「この法律において「地すべり」とは、土地の一部が地下水等に起因してすべる現象又はこれに伴って移動する現象をいう。」、かように書いてあります。これには大へんたくさんの疑点が将来起りやすい。と申しますのは、地すべりというものの定義が非常にばくとして的確にされていない。なぜならば、御承知通りに毎年水害の状況を見ましても、一時間に相当たくさん——少くとも五、六十ミリの雨が降りまして、その結果、山地あるいは渓流沿岸崩壊を起しますが、その大部分はやはり豪雨地すべりに起因しているのであります。従いまして、一般にいう地すべりと、今申したような豪雨によって起る地すべりとありますから、単に地すべりというだけでは、私は将来地すべり定義において非常に疑惑を生ずるものと考えます。従って、世間でいう地すべりは、まあ少くとも不浸透性粘土層の上にすべる面がありまして、そこに上から浸透した水が入って、その面の上を常時少しずつ移動するものが、これが常識にいう地すべりと思うのであります。そういう事実が各地にありますので、おそらくここにうたってあるこの地すべりというのは、今私があとに述べたよらな不浸透性粘土層の上をやはり常時地下水が流れて、その結果、その上の表土がすべり落ちるものと考えるのでありますから、単にこのように「土地の一部が地下水等に」云々ということは、これはもしも政府が第一条に、今私が申したような一般地すべり意味するならば、これははなはだあいまいで、将来疑惑を生ずるもとになる。この点を十分御検討願いたい。  またここにあるこのぼた山、これはなかなか疑問のある点と思いますが、私はやはりこの法律に当てはまるようなぼた山は、現住存在しているぼた山よりもう堆積が完了したもので、そこに鉱業権者以外の者が所有しているとか、あるいは所有者が不明である、こういうものを指さしているものと解釈するのが妥当だあろうと思います。  その次に、第三条の地すべり防止区域の指定、むろんこれには公共利害に密接な関係を有するものを地すべり防止区域として指定されるのは当然だと思いますが、ここに申し上げたいのは、治水に関連する地域におきましては、あるいは砂防法によって、あるいは森林法によってすでに指定されているのであります。でありますから、そういう地域を何のためにかようにダブって指定なさるか。私は参議院の方から出た全国地すべり調査というのを見ました。実にたくさんの地すべり地域がありました。しかし、この地すべりのうちに果して治水に関連しない地すべりは幾つあるか、おそらく一割もないのであります。それなら、その一割もない地すべりのためになぜこの法案を作るか、それは森林法でも砂防法でも、それを現存適用もしていますし、また今後いつでも適用できる、そういう観点を思うときに、果してかようなことが必要になるか。もっともこれは後に関連しますから、後に法案については申すことといたします。  その次に筑土一案、これは先ほども申しましたように、現在砂防法あるいは森林法等十分治水に関連している地すべり地域仕事をしているのでありますから、ただ後に、ここに記載してある関連事業、これを加えるならばこれで十分である、そろいうふうな感がはっきりするのであります。  次に十二条——順序が前後しましたが、築造等基準、これには一々地すべり仕事をするものはこういう、工事だということを明記されているわけでありますが、これはたとえば、これを読みましても、ロのごとき、「地下水の排除については、暗渠、ボーリング排水孔排水トンネル集水井戸地下止水壁明渠管渠又は導水管を用いること。」、二は「擁壁、くい及び土留は、地すべり力に対して安全な構造のものであること。」、また三にも「ダム」云々と書いてあります。私はこれはお書きになることはかえって自縄自縛と申しますか、なぜならば、地すべりに要する仕事はもうすでに万事が決定していると言えません。また今後、研究して進歩されるべき工事はたくさんある。それにもかかわらず、ここに明記されるということは、この工事研究して進歩させるべきものがかえってできなくなる。また、いまここに申し上げましたように、「安全な構造」と書いてありますが、地すべり地にかえって安全な構造を初めからするということは無理である。むしろこれは移動性構造をやってみてこれで安定するかどうか、それがわかったときに、また次にやる、これが地すべり地域に対するところのほんとうの構造なので、初めから安全な構造——たとえて申しますならば、今地下十メートル掘ったと、そこに岩盤がある、その岩盤に達して初めて堰堤もできるというふうな場合に、そういうことを初めからする場合には、これは愚の上の愚なのです。それでありますから、この構造基準を示すのはこれは妥当でない。やはり河川法におきましても、砂防法におきましても、あるいは森林法におきましても、構造を明記したものはありません。たまたま海岸法にそれはありますが、何もほかの法案を見ても、今までのいい法案はそれに準拠すべきもので、構造基準を示すというのは、これは非常に自縄自縛になって、発達の途上にあるところの工法をかえって阻害する、こういうことをはっきり申しておきます。  次に二十四条の関連事業、これは今まで森林法におきましても、あるいは砂防法においても、うたわれていないところでありまして、かりにこういう条項先ほど申した砂防法森林法につけ加えるならば、治水に関する限り砂防法なり森林法で、今さらこれに類した地すべり法を作る必要はない、かように思うのであります。  次に二十八条、これもやはり砂防法あるいは森林法でできるものでありますが、先ほど述べた通りに、治水に関連しないところがあるからこういう法律お作りになったと思いますが、私の記憶している範囲におきましては、昭和二十七年に、この参議院建設委員会におきまして地すべりに関する補助問題が議題にされました。その際に、治水に関連しない地域でやはり地すべりが起る耕地もあるから、これを何とか処置したい、では、どういうふうな仕事をするのか、それは砂防工事なりあるいは森林工事じゃできないから、簡単な水抜きを作ってその土地移動を防ぐのだ、そういう意味でこの予算を大蔵省に要求する、では治水に関連するものは全然そういう地すべりの今言うボーリングのような仕事はしないかと、あるいは堰堤はしなかと申しましたところ、渓流あるいは治水に関連する地域においては、地すべり工事はしなくとも砂防工事森林工事砂防法森林法によってできるから、そういうことはしないということが明確にされたことは、速記録に明らかに残っております。そういうことによりまして、なお私はこの法案は、これは私の聞き間違いかもしれませんが、昨年九州の水害において、たとえば熊本県のごとき、あの水害のために方々の人家が山が崩壊して埋没し、多くの死人ができた、何とかこれを助けてやりたいというのがこの法案お作りになった動機とも聞いております。しかしそれならば、そういう山くずれの起る場所において、さような人々を救うような個所がこの法案にあるかといえば、全然どの条項を見ても私は見当らない。何のためにこの法案お作りになったか、その根本精神が私はわからなくなってしまうのであります。そういう観点でありますから、いわばがけくずれのごとき、これを何ら処置することができないというのが現状で、それならばこの法案お作りになった根本精神はどこにあるか、かように言わざるを得ないのです。そういう点も十分御検討願いたいと思うのであります。  大体時間もあまりございませんから、私のまずもって申し上げることは以上にいたしまして、あとは御質問に対してお答え機会を与えていただきたいと思います。
  5. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ありがとうございました。  次に、早稲田大学理工単部教授中野實君にお瀬いいたします。
  6. 中野實

    参考人中野實君) 中野であります。地すべり等防止に関して、政府日本社会党の両方から提出されております法案を拝見いたしまして、感想を述べたいと思います。  初め、この法案内容を見ませんで、題目だけを見ましたときには、私、鉱山保安技術の方をやっておりますので、ぼた山の問題が出ておりまして、これは私どもとして非常に関心のあることでございまして、すでに鉱山保安法でかなり熱心に取り締ると申しますか、研究しておるぼた山につきまして、またさらに新しい法律をもって取り締るというようなことではおかしいのではないか、こういうふうに初め思ったわけでありますが、だんだん読んで参りますと、そこはなかなかよくできておりまして、鉱業権に密接に結んでいるものにつきましては、この法案対象としていない、つまり無籍物であるぼた山について関心を持つものであるということがわかりましたので、なるほどこれは鉱山保安立場から見ましても、盲点をついているものであって、なかなかおもしろいものであるというふうな感じがしたわけであります。それから、この「地すべり等」と書いてございますが、元来炭鉱地帯は、こまかい言葉で申しますと、第三紀層関係でありまして、ぼた山が積んであります付近は大体において地すべり地区が多いのであります。従いまして、単にこの鉱山保安技術立場から見ましても、地すべりぼた山を含めましたような安全に関する法律というものは、私ども関係から見ましても、まことに意味が深いと思いまして、この法案は究極においてなかなかうまいことをうたってあるというふうな感じを受けたわけであります。そこで、ぼた山と申しましても、実は私どももしばらく前には全然関心の外にありまして、捨てたやつを積んでおけばいいという気がしましたわけでありますが、この約十年間、鉱山保安法ができましてから、私どもぼた山についてだいぶ考えざるを得ない立場になりまして、いろいろ研究をして、どうかして安全に持たしたい、という気持を持っておるわけであります。それにつきまして、ぼた山安定性というものはどういうものであるかというふうに考えてみたいと思っております。大体ぼた山を構成しております岩石は、何と申しますか、水成岩でございまして、砂岩とか頁岩とかいうふうな風化性を持った岩石が多いわけであります。その風化の度合いと申しますものはいろいろありまして、ある程度半永久的に風化しないものもありますけれども、大体におきまして風化性が強い。従ってこの積み重ねられたあとで、年月がたちますと、当然風化して参ります。たとえば、ぼた山というものは、積み重ねてから年月がたちますに従いまして、多少とも動いているということが言えるわけであります。と申しますのは、つまり風化によりまして粘土化した鉱物が堆積する、それに水が加わるというようなことでありまして、初めは安定しておりましても、次第に不安定な状態になってくる。そこで、その不安定な状態を安定にするために、みずから動いて安定な状態に入っていくわけであります。こういうような動いたものを対象にして、これに安全性を非常に高く持たせようというためには、非常な苦心が要るわけでありまして、先ほど参考人の御説明がありましたように、動いているわけでありまして、これを絶対安全に保持するということはできない相談であります。私ども考えといたしましては、それを最高度安全性に保つということが一番大切なことじゃないかと思うのでありまして、たとえば、話は違いますが、原子炉の問題につきましても同じようなことが言えるわけでありまして、絶対安全ということは考えられないと思います。そこで、われわれ鉱山保安に携わる者といたしましては、安全の程度最高にして保っていくと、従って鉱山保安法で取り締るといたしましても、たまにはぼた山のすべりというようなものが起るわけでざいます。その起った結果を見まして、これは鉱山保安法の取締りがよくいっていないのではないかという考えを表面的に持たれるということは、はなはだ酷なわけでありまして、これは原子炉の場合と同様なことが考えられると思うわけであります。そこで、ぼた山を安全に保ちますためには、どういうふうな方法を講じたらいいかということが考えられるわけでありますが、私は大体五つの立場からぼた山安全性を強調したいと思っております。  第一番目には、積む場所の問題であります。この場所の問題と積み方というようなことが一番大切であると思っております。  次には、積み方にもいろいろありまして、日本のような非常に国土の狭い所におきましては、非常な広大な面積を取るわけにはいきませんので、狭い面積の所で積み方を研究しなければならない。これはまあ鉱山保安局関係でも多少研究しておられるようでありますが、これはやはり、今後さらに研究しなければ、安全性は保てないと思うのでございます。  それから第三に申し上げたいことは、ぼた山について、どんな石でも同じような形に積めばいいというものではないのでございまして、ぼた山自体のそれぞれの岩石風化性というものをよく常時調べる必要がある。そうして、監督する立場にあります者は、この変形とか、そういうものにつきまして不断の観測をして、この安全性についての研究を進めていかなければならないと、こういうふうに考えております。  それから第四番目には、日本はことにそらでありますが、風水害等が多いわけでありますので、洪水、出水というような異常な天災と申しますか、そういう状態が起りましたときの場合を考えまして、排水その他の施設を十分にしておく必要がある。これには相当な金をかけなければならぬと思うわけであります。  第五番目には、このできましたぼた山をいじるということがよく行われております。たとえば、このぼた山の中には、現にまだ有効な石炭成分があるわけでありますので、このぼた山をくずしまして、さらに資源の開発と申せば非常に聞きよいのでありますが、石炭を取ってこれを売るというような行為もあるわけであります。そのためには、せっかく安全にできましたぼた山をまたくずさなければならぬということがあるわけであります。しかし、安全の立場から見ますと、ぼた山変形するということは、みずからの変形は別といたしまして、少くともぼた山崩壊等に密接な関係を持つようなくずし方といろものは禁止しなければならないと、こういうふうに考えております。従って、選炭業というようなものは、それ自体は非常に意味があるものかもしれませんけれども、安全の立場から見ますと、今後ああいうものは禁止せざるを得ないということになるのではないかと思います。  そこで、この法律案政府案の方でありますが、四十二条の中に、ぼた山をいじります場合には、許可を得ることになっております。私は法律言葉はよくわからないのでありますが、許可を得るということは、許可する場合もあるというふうに解釈していいのだと思っておりますが、切土に類似するような仕事許可制になっております。ところが、この許可を間違えていたしますと問題を起すととがありますので、これは私の考えでは禁止をしてしまった方がいいのではないか。少し極端でありますが、そういう建前を持つべきだと考えております。従いまして、これはちょっと言い過ぎのようにも思うわけでありますが、鉱山保安法関係におきましても、ぼた山をいじるということは厳に禁止をして安全をはかるべきであるというふうに考えております。  それからぼた山は将来ともどんどんできていくだろうか。あるいは鉱業権者の手を離れたぼた山が将来できるかどうかといろ点に関連して、ぼた山は将来どんどんできるであろうかどうであろうかということについて、私の見解を述べさしていただきます。  ぼた山と申しますのは、日本には御承知のようにたくさんありますけれどもドイツあたりに行ってみますと、ぼた山はすでに姿を消しております。フランス辺では、まだ少しあるようでございますが、だんだんとなくなって、つまり今後なくなるといろ傾向になっていくようであります。その理由は二つありまして、一つは、坑内が深くなって参りますと、その石を外に持ってくるというととはかなり金のかかることであります。従いまして、ドイツ等では、掘りましたものは掘りあとに全部埋めてしまいまして、そのままにしてしまいます。つまり外に上げてくる金を節約するために地下に埋めてしまうというふうになっております。私が先般ドイツに参りましたところが、ドイツの、ある充填機械を作っております会社で、南アフリカから充填機大量注文があったということでありまして、それでその理由を聞いてみますと、御承知のように南アフリカには世界で最も深いと言われます金山がありまして、おそらくこれは八千フィートをこえている深さにあるわけであります。この程度の深さになりますと、これは金山ではありますけれども、石を掘りました捨て石をぼたという言葉と同じように解釈してよろしいと思いますが、その捨て石を外に上げますと相当の金がかかってしまう。従いまして、これを掘りまして、捨てる場合には、地下の空洞に全部粉にして埋めてしまう、その方がずっと安いので。従いまして、今後は外に持ってこないという方向にいくために、大量の機械注文があったということを言っておりました。まあこんな関係でございまして、今後ぼた山というものは、そういう意味でだんだんできがたくなる傾向にあるというふうに考えております。理由の第二は、ぼたを坑内に埋めてしまうということは、先ほども申しましたように金のかからないという理由のほかに、たとえば土地の陥落を防ぐために、坑内にぼた充填をするとか、あるいは自然発火その他の災害を防ぐために——と申しますのは、坑内の通風をよくするために必要な所にぼたを埋めまして、漏れる風を防ぐというような目的のために、だんだんと坑内充填というものがまた一面多くなってくる。このような二つの理由から、ぼた山というものは、将来日本においてもだんだんできがたくなるというふうに私は考えております。地すべり一般につきましてはわからないのでありますが、ぼた山につきましてはそういうふうに考えております。  それから政府案社会党案の比較の資料をいただいております。私はこれにつきまして、ちょっと簡単でございますが、意見を述べたいと思っております。まず第一に、防止対策についてでありますが、政府案に、山くずれ、がけくずれというものが入っておりません。この入らない理由が私にはわからないのでありますが、もし入ってもさして問題でないということであるならば、まあ社会党案のように、それに類似したすべてのものを含めても差しつかえないのではないかと考えております。それから第二は、地すべり防止区域というようなもので、指定される区域範囲が出ております。その中に公共利害といろととが出ているわけでありますが、これも、私にはこの公共という法律上の意味はよくわかりません。公共ということが、たとえば数軒の農家があって、その農家の財産、生命その他が脅かされるという場合には、これは公共であるのか、公共でないのか。つまり大きな問題になる、集落に対しては注意するけれども、小さな問題には目をつぶってしまうということではいけないのではないか。そこでこれにつきましても、社会党案にありますようなうたい方の方が多少もっともらしいのではないか、こういうふうに考えております。  最後に、地すべり等警報というところの項がありますが、この警報は別に法律警報を出すことを義務づけていないようでありますけれども、私の考えで申しますと、たとえば洪水その他の場合に、危険のおそれのあるというようなときには、何らかの方法警報を発するようにするのが当然ではないか、そういうふうに考えております。  申し上げますことは以上の通りでありまして、今後もし質問がありましたときには、それにお答えするつもりであります。以上の通りであります。
  7. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ありがとうございました。  次に、日本石炭協会総務部法規課長朝比奈治郎君にお願いいたします。
  8. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) ただいま御紹介をいただきました日本石炭協会総務部法規課長朝比奈でございます。地すべり等防止法案に対しまして、意見を述べる機会を与えていただきましたことにつきまして感謝いたします。  この法案目的と申しますか、ねらいと申しますか、その眼目は、地すべり、またはぼた山崩壊による被害をなくし、または軽減するため、これらの崩壊を防止し、国土の保全と民生の安定に資するというのでありますから、この点につきましては賛意を表するものであります。  以下法案内容の一部につきまして、私どもの希望を申し述べさせていただきたいと思います。これらの点につきましては、法案成立過程におきまして、去る二月四日付日本石炭協会会長伊藤保次郎日本石炭鉱業連合会会長武内礼蔵の連名によりまして、関係方面並びに関係各官庁に書面をもちまして陳情いたしました次第でございまして、重複のきらいはございますが、お許しを願いたいと存じます。  すなわち地すべり防止区域内における行為の禁止または制限のうち、鉱業の実施にかかる土地の掘さくはこれを除外していただきたいということでございます。これは鉱業の実施のための土地の堀さくが地すべりの原因となりますことは、経験上ほとんど考えられません。御参考までに申し添えますが、九州大学の野田光雄先生が、九州鉱山学会誌第二十五巻第十一号に発表せられました唐津、佐世保両炭田の地すべりについての論文もほぼ同様の御意見でございます。かような次第でございますから、本法が施行せられました場合には、地すべりとほとんど関係のない、鉱業の実施にかかる土地の堀さくまで行為の制限を受けることになりますし、他方、鉱業法及び鉱山保安法によって厳重な監督を受けるので、いわゆる行政の二重規制ということになります。本法案におきましては、第十八条におきまして、きわめて抽象的に「地下水を誘致し、又は停滞させる行為で地下水を増加きせるもの、」云々、そして「政令で定ある軽微な行為」は、これを除くということになっておりますし、第四十二条におきましては、単に「掘さく又は石炭その他の鉱物の掘採」云々と規定されております。法案成立過程におきまする、土地の掘さくという用語が修正されておりますことは、これによりまして、私どもの希望いたしました鉱業の実施にかかる土地の掘さくを全面的に除外していただいたものといたしまするならば、解釈を明瞭ならしめる上からも、さらに一歩を進めまして、鉱業の実施による土地の掘さくを除外するという明文の挿入を強く希望する次第でございます。  次に、前段と同趣旨でございますが、防止区域内におきます行為の禁止または制限につきまして、鉱業の実施にかかります施設または工作物の新設、変更等の行為につきましても、本法の適用を除外されたいというものであります。すなわち、これら鉱業の実施にかかる行為につきましても、施業案の認可、危害または鉱害のおそれの多い場合に、保安命令による鉱業の実施方法の命令または鉱業の停止等、通産大臣の厳重な監督と指導を受けておりまして、十分その実をあげておりますと確信いたします次第でございます。  なお、この際申し添えますが、私どもの管理いたしますぼた山についてでございますが、前にも申しましたように、鉱業法及び鉱山保安法によりまして、厳重な監督と指導を受けて、これを順守いたしておりますことはもちろんでございますが、危害発生のおそれのある場合は、官庁のお指図を待つまでもなく、企業におきまして、自衛上、防止の万全の措置を講じつつある次第でございます。  はなはだ簡単でございますが、私どもの意のあるところを一つおくみ取り願いたいと思います。  重ねて、この機会をお与え下さいましたことにつきまして、感謝いたします。終り。
  9. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ありがとうございました。  以上でお三人の参考人の御意見の陳述は一応済ましていただいたわけでありますが、参考人に対する質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  10. 石井桂

    ○石井桂君 赤木先生の御陳述の中に、十二条の築造等基準を定めることは、かえって自縄自縛になるのじゃないかと、その中の御説明の例として、安全な構造であるものとすることということをおあげになって御説明になったようですが、まあできれば、この法案のねらいは、やはりあらゆる工夫をして、絶対にということはできないでしょうが、現在の科学の力で災害を防ぐという趣旨が法文に盛られていると思うのですが、かえって自縄自縛になるということは、ちょっと私どもよくわからないのですが、もう一ぺん先生の…・。
  11. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 今、石井議員の御質問でありますが、地すべり地に対しては、果してこういう工夫でいいか悪いか、これはまだ私ははっきりしていないと思うのであります。あるいはもっと研究すべき仕事もたくさんある、かような過程に今日ありはしないかと考えます。たとえて申しますと、かりに堰堤のごとき、きょうも富山県の人が来ましたが、これにコンクリートの堰堤でいいか、あるいはコンクリートでなしに鉄骨の蛇籠の堰堤と、むしろそれはどっちがいいかということも問題がたくさんあるようです。そういうことでありますから、初めからフレキシブルのものをやるとかえってそれを阻害する、こういう過程で地すべり仕事はこれは非常に厄介であります。そういうことでありますから、一々こういう工事をあげておかないで、まだ研究途上にあるというのはたくさんありゃせぬかと思います。たとえて申しますと、傾斜面における仕事におきましても、これにはのり切、切土云々、それからため池云々もありますが、傾斜面に対する方法のごときも、山腹工事に対して、筋工とか、あるいは積荷工、水路石張工とたくさんありますが、全然あげてない、そういうととは非常に不便なんです。そういう観点から、むしろこういう方法をおあげにならない方がいいと、とこう思うわけです。
  12. 石井桂

    ○石井桂君 もう一つお教え願いたいと思うのですが、今回提出された地すべり等防止法案がなくとも、砂防法森林法でも十分じゃないかと思うという御意見がございまして、なるほどそうかもしれません。しかし、諫早が地すべりが起り、ああいう災害があり、また常時長野県下などでは、私は去年行って拝見しましたが、ずいぶん起っているんです。これらから考えると、現在の砂防法あるいは森林法だけでは何か不十分じゃないかという気持も私はございます。その辺をお教え願いたい。
  13. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 実は、今日の建設省といいますか、それで地すべり工事をやった起りはたしか昭和四、五年ころになります。あの山形県の最上川の支流に銅山川——この村は大倉村地域に属して、山の中腹には約三百戸も人家がありましょう。まあ非常に耕地がよい。それが、ある数年は非常に安定している。しかし、数カ年たつと、まただんだんだんだん人家も傾くし耕地も傾斜する。よく調べてみますと、そこには支流があります。谷川がある。谷川のために、粘土層の地盤のために山が侵食されて山が崩壊して、一時その川にかりの土堰堤のようなものができる。そして川床がとにかく安定しているその間は、少しも上流——約それは半道くらいあるが、何ら地すべりを起さない。ところが、その土砂がだんだんだんだん水で侵食されましてまた元の同じような深い川になりますと、そうすると今度はまたずっと移動する、そういう現象がわかっております。これは山腹の地すべりは、のり切とかいろいろな仕事をしますが、渓流に対してわずかに安定度を与えるならばある程度地すべりが防げるというふうな観点から、新潟県の南魚沼郡の鎌倉沢に、これは地すべり地でありますが、そこに堰堤を築いて、あそこから安定した。それ以来、新潟県に行きましても、山形県に行きましても、またこの長野県におきましても、地すべりを安定する方法として非常にその砂防工事が要望されておる。また実施されておる。今あなたの御質問の、長野県にあるじゃないか、あります。これは経費がなくて仕事ができないために起っております。でありますからもしも政府が、砂防なり森林にたくさん経費を出すなら、この法がなくても心配ない、そこを私は言っている。
  14. 石井桂

    ○石井桂君 そうすると、もう一ぺん先生にお教え願いたいのですが、この法案は、先生のお考えで言うと、害にはならないけれども、大して益にもならない、こうおっしゃるのですか。
  15. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 私が申したいのは、治水に関連のない地すべり地帯、これは砂防法にも森林法にも適用はありませんのでありますが、そういう地域に対しては、この法案は確かに必要でございます。またここにあります関連事業でありますが、これは砂防法にも森林法にもありません。こういう条項を、かりにこれを森林法でもよし砂防法でもよし、その法律の一部にこれをお加えなさるならば、これは確かに現在の地すべり地帯に適応した法律でございます。でありますからしてそういう条項を、むしろ砂防法森林法にお加えになった方がはっきりしないか。ただし、申したように、治水関係ないときはその法案は必要でありましよう。
  16. 石井桂

    ○石井桂君 赤木先生に対する御質問はそれだけ。  中野先生にお伺いしたいのですが、いろいろお考えもあるでしょうけれども、これに山くずれとがけくずれの点が規定してないのが、ちょっと物足りない気持でありますが、私ども、山くずれ、がけくずれ、地方のものはあまり実は関心がないわけですが、東京を例にとりますと本郷台とかいろいろな台地がありまして上も下も家が一ぱいできておる。七、八月ごろの暴風雨時になりますと、二、三カ所はがけくずれがある。これを地すべり法案の中に入れて、地すべり地区などを設定すると、どれだけ都民が迷惑するかわからないので、これは建築基準法によってぴちっと取り締っておる。それで先生のお考えの御発表は、そういうがけくずれを、都市も山間も皆含めての御開陳でありましたか、承わりたいのであります。
  17. 中野實

    参考人中野實君) 私の考えておりましたのは、今の御質問の大都会のがけくずれ、そういうものについては考えておりません。すべて炭鉱地帯といったような、まあ炭鉱も多少都会ではありますけれども、都市以外のぼた山に類似のように考えております。
  18. 石井桂

    ○石井桂君 よくわかりました。
  19. 西田信一

    ○西田信一君 赤木先生にお伺いしたいと思いますが、これは第二条のところで定義がどうもはっきりしておらない、こういう御意見に承わったわけです。そのはっきりしておらない点ということは、地下水等に起因する現象とこう言っているが、それ以外のたとえば豪雨等に起因するものが相当あるのじゃないか。こういう御意見のようでありましたが、要するにもう少しこの定義をはっきりさせると同時に、もっと範囲を拡げたらどうだというふうな御意見のように、私、思ったわけですが、その点、いかがですか。
  20. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 私の言い方が非常にまずいものですから、誤解も受けましたが、つまり豪雨等に起因しまして地すべりが起る、そのために起る方が非常に多いわけであります。そこで私は、この法案に盛られておる地すべりというのは、そういう豪雨のときに起る地すべりと違うと思うのです。その間をはっきり区別なすった方がよくはないか。これはたとえて申しますと、昭和十三年に、神戸方面で大水害が起きた。これは多くの地域地すべりがあったのです。崩壊があった。これはやはり豪雨のために、花崗岩の層の上と下の花崗岩との間をあの豪雨が流れて、地下水となった、その上が崩壊してしまった。これは一般通念から地すべりと、言えないのです。ただここに単に「地下水」と書きますと、そういうふうな誤解を招きはせぬかと、こう言ったのです。
  21. 西田信一

    ○西田信一君 そういたしますと、単に地下水に起因するといっているような表現をしておくと、豪雨によって生ずる地下水の影響による地すべりというふうなものが、含まれるおそれがないか、こういう意味でございますか。
  22. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 従ってもう一ぺん言いますと、このここにいう「地すべり」は日頃地下水の流れによりまして、滑落面、あるいは学問的にいいますと下に粘板層がありましてその上を地下水が流れてゆく。そうしてその上に表土、その粘板層の上のすべり面、そういう意味でございますが、滑落面上に滑落現象、すべり面と滑落現象を現わす地域、こういうふうにでも考えた方が、一般通念の地すべりには適用されない、こう思います。
  23. 西田信一

    ○西田信一君 次に朝比奈先生に伺いたいと思います。実はこの法案では、ぼた山対象にしているわけでありまして、先般来この委員会で、いろいろとこれに対する論議がかわされております。ぼた山のうちでも、ここにすでにはっきりしておりますように、鉱山保安法の適用を受けない、要するに鉱業権者あるいは鉱業権者とみなされる者が適当な措置を講じ得るものは除くものとする、要するに古い鉱業権が消滅いたしましても、五年間はこれに対する保安の責任がありますので、それ以外の古いものですれ、これを対象にするのだということがはっきりしておりますが、あなた方御専門の立場から、そういうものが相当数あってそうしてこういうような必要があるというふうに、専門の立場でお考えになられますかどうかということが第一点。  それからもう一つ、このぼた山というのは、昔は無価値であったが、最近は相当価値が出ている。しかもこれは動産であるということが言われておりまして、そこで実際にはその保安の責に任ずる者がいないのですが、さて相当最近価値が出てきているといたしますれば、もしもその所有権者というものが現われてきた場合に、何か問題が起きないかというようなことが、この間から論議されております。この点は御専門の立場からどうお考えになられますか、この二点を二つお尋ねしておきます。
  24. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) お答えいたします。御質問は無権利者のぼた山がたくさんあるかと、で、今後またそういうことで、動産としての所有権というものが生まれてくるものがこれからあるかと、こういうような御質問と思いますが、従来戦前は、石炭の場合でございますが、鉱業権の譲渡につきましては、ぼた山を含めて譲渡するとか、含めないで譲渡するとかいうような、あまりはっきりした意思表示はいたしませんで、鉱業権の譲渡ということで、慣行としてぼた山も当然ついてくるというように扱われていたように考えます。それで現在無権利者と申しますものが、九州辺に多少あるように聞いておりますが、これは非常に古い時代に掘ったもので、そして鉱業権者が会社の場合には消滅する、あるいは個人の場合には全然行方不明とか、あるいはいなくなったというものであろうと思いますが、私のおりまする石炭協会はいわゆる大手筋でございまして、大手関係におきましては坑口を閉鎖いたしましても、直ちに鉱業権を消滅させるというようなことにいたしませんで、鉱業権は依然として保持しておりますし、従いましてそこにできますぼた山の所有権も、当然鉱業権に付随して残っておるということで、大手関係におきましては無権利者になるような事実はあまりございませんです。今後もそういうところで、私どもの方の関係におきましては無権利者になるようなことはないと思います。なおぼた山だけを対象に売買するということはあまりございませんでして、最近ございます水洗業者との契約も、大方はそのぼた山を崩しまして、そのうちの石炭を洗い出すということの権利を認める、これは有償の場合もございますし、無償の場合もございます、そういうことでございまして、ぼた山そのものを動産として取引するという例はあまり聞いておりませんです。従いましてお尋ねの、こういうものがたくさんふえるということは考えられませんし、少くとも大手関係においては全然ないのじゃないか、かように考えております。
  25. 西田信一

    ○西田信一君 ありがとうございました。実は先般来、動産であるか、あるいは不動産であるか、風化して自然に草でも生えれば、土地とみなしてこれは不動産とみなされる。しかしながらぼた山は本来は動産である、というような見解を実は政府当局から説明がございました。そこでその点は御専門の法規課長さんでいらっしゃるお立場からどういうようにお考えになられますか、お伺いいたしたいのですが、同時にかりに表面は風化しましても、中の方は相当鉱物性が残っておる、そこでこれをもちろん法律の適用を受けましても、それを処分するとかということではないのですから、問題は比較的少いと思いますが、そういうものをいじくって、いろいろなことをやるというような場合に、動産であるという観点から、もしも旧所有者がそこに現われて権利を主張するとか、それに対して苦情が出るというようなことが起きる心配はないのですか、どうですか、こういう点をお聞きしたがったのでございますが、どうでしょうか。
  26. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) お答えいたします。動産かどうかということでございますが、これは大正の末期あるいは昭和の初期あたりで同じ幾つも判例がございますのですが、そういうことで理論的には動産だということに扱われておるようでございます。先ほどちょっと申し上げましたように、戦後水洗が行われるようになりましてからまぎらわしいのでございますから、鉱業権の譲渡の場合にも、この譲渡の対象にはぼた山は入っておる、あるいは入っておらぬというようなことを明瞭にして契約をいたしておるように聞いておりますが、まあ動産だからといってこれだけの取引は、あまりやっておるように、聞いておりませんです。今後もそういうことじゃないかと思っております。
  27. 西田信一

    ○西田信一君 それからまた逆戻りして恐縮ですが 赤木先生に先ほど来御説明を伺いましたし、また石井委員に対するお答えで大体お考えはわかったのですが、森林法あるいは砂防法等があるから、ことに九割くらいは二重指定になる、そういうことであって、もし必要があるならば現在の砂防法あるいは森林法の足りないところを補ったらいいじゃないかというお考えを伺ったわけでございますが、結局結論からいえば、この法律はさほど必要性がないというふうに伺えるのです。もしこういう法律を、現在でも若干足りないところがあるがということで、そういう点もお触れになったと思いますので、こういう法律を作るとすれば、この法律の二重になる点あるいは不必要な部分等があって、どういう形においてこの法律を作ったらばよろしい、という逆の立場からお聞きするわけですが、どうお考えになるか。
  28. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 私からお答えしてはどうかと思いますが、たとえて申しますと、あるいは第三条の問題でありますが、これは政府はおそらく砂防法によって砂防法指定地、あるいは森林法によって森林の事業をやると、こういうふうにきめたところをまたダブって地すべり地にする、こういうふうに私は思うのでございます。それならば余計なことじゃないか、かように私は考えます。しかし先ほど申し上げましたように、今までは砂防法に不備な所がありますから、これは何といってもあなた方の力でこれは補足してほしい、こう思います。しかしまた一面において先ほどもちょっと申したときに、この治水に関連ないと、これを正面からうたって下されば、大体この法案でもいいのです。ただ治水があるために、治水ならこれは砂防法で、しかも治水はこれはもう非常に重大問題でありますから、これはもう森林法砂防法、それで十分この目的を達するのじゃないか、かように思います。治水に関連がない、これをどこまでもいってもらえば、大体この趣旨が徹底されると思います。
  29. 西田信一

    ○西田信一君 大体お考えがよくわかりました。そこでこの治水関係のあるタブっておるという点ですね、そういう点でこのままの法律を作った場合に、ただ屋上屋の無駄なものを作るという結果になるか、あるいはまた先ほども御説明があったようですが、何か非常にむしろ有害といいますか、ただ屋上屋で無駄なものであるという程度のお考えでございましょうか、むしろ有害であるというか、邪魔になるというようなお考えでございましょうか。
  30. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) 屋上屋と申しますか、私は同じ目的を達する法案ならば、そのためにまた同じような法律を作る必要はない、いわゆる法律をなるべく簡単にして、一般国民によくわかるように、それが法律目的と思います。従っていわゆる屋上屋と、あなたのお言葉を借りるならば、そういうことはどうかと思うのでございます。
  31. 稲浦鹿藏

    稲浦鹿藏君 私赤木先生に教えていただきたいのですが、砂防法でこの自然現象対象としておるのは、降雨によって侵食されるのを防止する、それから長雨によってあるいは豪雨によって起る例の山崩れとか土砂崩れ、山津波の防止を対象にして、いろいろな砂防工事が行われておるということをわれわれ考えておったのですが、今ここにこの法律を審議しておる前提として、山崩れというものはあなたが言われたように大きな一つの地すべりができて、それが緩慢な運動をしておる。極端にいえば二年か三年もかかって非常な緩慢な運動をしておって、その上に家があるとかあるいは構造物があって、非常に将来危険だというような、まあそういうもののみを対象として、この法律はやっているわけだと思うのですがね。あなたがおっしゃるのは、定義が非常に不明確だということは、もちろん、私もそういうふうに思いますが、砂防法でそういうものを対象として今までやっておったかどうか。
  32. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) たとえて申しますと、長野の市からあまり遠くない、あの昔の川中島の戦争で名高い茶臼山のごとき、これはもう明治以来から仕事をやっております。それがやはり今、稲浦委員のおっしゃる通りに、昔のあの茶臼山は今は低く陥没してありません。それほど昔から移動しております。従って、昭和におきましても昭和七年以来、砂防法として取り上げております。また新潟県の中頚城その他におきましては、そういう地すべりの緩慢に動く所、これを今でも砂防工事としてやっております。なお、これはたとえば今日、おそらく森林でも同じことでありますが、どういうふうな仕事砂防工事でやっておるか、これを行うならば、これは内務省時代に作ったものでありますから、おそらくまだ法律も変っておりませんし、実際私ども方々を回りましても、あまり変ったこともありませんから、やはり内務省時代に作ったものが適用されておると思いますが、それによりますと、昭和十三年三月に、砂防工事とはどういうものか、これを内務省の土木局で審議して作ってあります。この一つに、「地辷は耕地の亀裂或は人家の傾倒等の危害を惹起するが之に対しては地辷地帯の下位渓流に一個或は数個の堰堤を設け又は地辷面を緩勾配に切均し排水工の多き山腹工及護岸工を施して治むるものである。」こう土木局で規定しております。こういうものがありますから、今、稲浦委員のおっしゃるような仕事はしておるのであります。
  33. 稲浦鹿藏

    稲浦鹿藏君 砂防法の一条に「指定シタル土地二於テ治水上砂防ノ為施設スルモノ」と、こういうことになっておるのですな。それで、今の地すべり現象というものは、必ずしもそういうものばかりじゃないと思うのです。それで、砂防法だけではそれを対象とすることになっておらぬような感じがしておるのです。だからこの法律を作って、そういうものを別に取り扱っていこうというのが目的じゃないかと、かように思っております。
  34. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) これも一つの例をもって話します。直江津から北陸線で少しく富山の方に向つた所でございます。これは鉄道の線路のある地域全体に地すべりを起しております。何とかして仕事をやってほしいというふうなことが、その当時ございました。しかし、ここには川もなしすぐ海に面しているのであります。従って、これに治水上の観点から仕事をすることはできませんでした。こういうような部面もありますので、そういう観点から治水に関連しないというものを取り上げるならば、この法案の意義は非常に多いと思います。
  35. 岩沢忠恭

    ○岩沢忠恭君 私、朝比奈さんに御意見を拝聴したいと思うのですが、先ほど朝比奈さんは、大手筋の炭鉱の業界に関係なさっておる、こういうことなんですが、そこで、大手筋の方は、一応石炭をとっても、また廃坑になっても鉱業権というものが存置して、その後の管理ということについては十全を期しておる。こういうお話なんですがそれはそれとして、この法案が出て中小企業炭鉱者が、僕は、悪用するのじゃないか、こういう疑念を持っておる。と申しますのは、中小企業の人は財力が伴わないために、できるだけ自分の利益になるときだけやんやとやって、ぼた山を作って、そうして利益がなくなれば全然雲かかすみとなって、何だかわからぬということになって、その跡始末は、この法案ぼた山というものがあるために、また国がこれを何とかしなければならぬ、こういう傾向が多分に起りはしないかということを私は心配するのですが、あなたの見通しはどうなんですか。
  36. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) お答えいたします。まあそういうことも考えられないでもございませんですが、また徳義に訴えるより方法がないと思うのですが、少くとも私どもの方の関係におきましては、先ほども申し上げましたように、坑口を閉鎖いたしましても、直ちに鉱業権を消滅させるということもございませんので、私ども関係におきましては、御心配はいただかぬでもと思っております。ですが。
  37. 岩沢忠恭

    ○岩沢忠恭君 だから大手筋は、今私が申し上げた通り、われわれも心配せずに、少くとも大手筋の名誉にかんがみてそういうことはない。ただ、従来からのあなた方の御経験によって、ずいぶん、ぼた山が現在においては、もうだれが持っておるのやら、どうしておるのやら、わけがわからぬというのが相当あると思うのです。そういうようなものに対して、あなた方の長い間の経験によって、将来もどうせ起るだろう、しかもこの法案ができて、ぼた山の将来の地すべりとかあるいは危害を、この地すべり法律によって国が何とか始末しなければならない、あるいは府県公共団体が何とか始末しなければならぬ。こういうようなことがすっかりわかれば、また従来より、より以上に中小企業の炭鉱業者はこれを悪用するというようなことになりはしないか。あなた方の大手筋がそういうことはない、ということは重々わかっておりますが、従来の経験によってどうかという見通しだけをお聞きしたいのです。
  38. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) 大へんなむずかしい問題でございまして、このために早く廃業してぼた山を無権利者にして、この法律の恩恵をこうむるというようなことを、故意にやるようなことはありますまいと私は思います。
  39. 田中一

    ○田中一君 赤木さんに伺いたいのですが、あなたもわれわれの大先輩で、この立法の方法、形式その他のものについても、よくおわかりなので、あえて伺うのですが、この法律案を見ますと、大体が山くずれ、地すべり対象とした法律であるということは、もうはっきりとわかるわけでございますが、そこで、ぼた山という対象をなぜここに持ってこねばならなかったか、また、ぼた山を持ってきたということによってこの法の全部がくずれてしまうのじゃないかというような懸念を持つわけなんです。そこで、そのうちの一番大きな問題としては、地すべりに対しては、法律ではっきりとこのようにして地すべりを防止せよということは、きめてあるのでありますけれども、あなたの御意見の中にもあったと思いますけれどもぼた山に対しては、こうすればぼた山地すべりあるいは崩壊がとまるのだという、こうしなければならないのだということは書いておらない。結局、どうすれば地すべりがないか、ということの技術的な方策を示しておらないのであります。むろん、政府はこの立法をするに当って、ぼた山というものの実態を調べてないだろうと思うのです。どこかで聞いたことがあるかも知らぬけれども、河川局長も、まだほんとうのぼた山に対する実際の認識をもっておらないということは、はっきりせんだって、あるいは山本君いれば怒るかもしれませんけれども、そういう印象を受けたのです。そこで建設大臣に伺ってみますと、ぼた山のぼの字も知らない。遠くで見たくらいのことは知っているでしょう。そうするとぼた山は何であるか、それからぼた山ということを入れたためにこの法律がくずれやしないか、同時にこの法律全体の体系を通じてぼた山にかけられたところのウエートというものはどういう量になるか、分野になるかということについて、率直にこの法案そのものの体系というものに対してお考えを伺いたいと思う。
  40. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) なるほどこの法案地すべり等防止法案としまして、だんだん読んでいるうちにぼた山が出てくるというようなことで、大へんにあいまいになっております。まあ地すべりに対する問題は、先ほど私だいぶ申し上げましたからさておきまして、この法案で処理すべきぼた山というものは、大体端的に言うならば、死んだぼた山、ほとんど所有権のないものではないか、これが通常の観念だと私は思います。現に私も福岡県等でぼた山仕事をやりました。だいぶぼた山を知っております。だけれどもそれをやらないということは害があります。そのぼた山のふもとを流れている谷川、渓流とか、あるいはぼた山のふもとの護岸とかいうものをやりました。しかしぼた山そのものの防止策、これは私はむしろ地すべり工事よりもあるいは楽じゃないか、こう思います。端的に言いまして、なぜならば、地すべりは原因がわかっていてなかなか地すべりの面がどの深さにあるか、ということはわからぬというのでありますからやっかいです。ですからぼた山は工法そのものが案外楽で、いわゆる渓流工事、山腹工事の簡単な工事をやればできる、こういうことであります。ここに一々ぼた山の工法を明記しておりませんが、これは田中委員が今みえましたから、私は端的に申しますと、地すべりの工法をあげてあるのはよくない、こういう工法をあげない方がいい。ことに地すべりのことは工法そのものはまだまだむずかしいのでありますから、むしろ工法をあまりあげない方がいい。ぼた山の方は先ほど申したように、これは渓流工事の簡単なもの、あるいは山腹工事の簡単なもの、それで現に治まっている例があります。工事そのものは案外簡単に、あるいは積苗工、筋工、あるいは山腹積石とかあるいは簡単な護岸とか、あるいは水路張石工、そういうような案外簡単な工事で治まるのじゃないかと思います。
  41. 田中一

    ○田中一君 重ねて伺いたいのですが、この提案された法律を見ますと、この法律そのものが地すべり対象としているのか、ぼた山がそういうものに、しいて言うならば社会党が提案している法律案にそれが入っているから、どうもこれは政治的に困るというので、ちょいとあとから載っけたものか、どういう印象を受けましたか。
  42. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) これは私の見ただけの感じですから、これは見る人によって感じが違いますが、端的に言いますと、これは地すべりを主にしておる、こう思います。しかしそれは地すべり法案そのものが果して必要あるかどうか、これは先ほど申しました。
  43. 田中一

    ○田中一君 朝比奈さんに伺いたいのですが、一体ぼた山に対して鉱山保安法はどういうものをどうすればいい、どうせよということを今日まで実際に示しておるのですか。
  44. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) お答えいたします。鉱山保安法の第四条第二項に基本的規定がございまして、あと詳細は鉱山保安規則の方にたくさん規定がございます。あるいは積み方とか、あるいは場所とか、あるいは民家との距離とか、あるいは積みましたものの巡視の規定とか、こまかい数カ条の規定がございます。それによって監督、取締りを受けておるわけでございます。
  45. 田中一

    ○田中一君 大企業の炭鉱も中小企業の炭鉱も同じようにその施設は現在やっておりますか。
  46. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) 大企業の方の私どもでは十分やっておりますですが、中小企業の方はおやりになっておると思いますが、よく事情はわかりませんです。
  47. 田中一

    ○田中一君 そうすると、あなたの日本石炭協会というのは、これは大企業者が集っておる団体ですか。
  48. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) 私の方は会員が大手十八社でございます。それだけが会員でございます。
  49. 田中一

    ○田中一君 われわれもこれは一半の責めはありますが、まことに不適当な参考人を呼んだものと思います。われわれがねらっておるのはやはり・・・。(笑声)われわれも責任があるので反省しております。われわれが考えておるのは、この日本石炭協会という十八の大きな鉱業権者が集っておる方々は、おそらくその法律並びに規則を守っておるものと思いますけれども、それ以外の中小炭鉱がどうしておるかという問題が一番心配だったわけなんです。これはどうもこれ以上朝比奈さんに御質問申し上げても、利害が相反する面もあるでしょうから、お答えを願えぬと思うからこれでやめますが、まことに反省をいたします。(笑声)  そこで中野先生に伺います。従来ともにぼた山が築造されて、ぼた山から、後に炭価が上ったために、もう一ぺん鉱区の設定をして、申請をして、そうしてまた掘さくしたというような例はございすか。
  50. 中野實

    参考人中野實君) 私はその鉱業権についてはわかりませんが、一ぺん作りましたぼた山をまたいじくっているという実例は、見てもおります、聞いてもおります。従って鉱業権を設定するというようなことになるのかもしれませんが、その点はちょっとわかりません、法律的に。
  51. 田中一

    ○田中一君 この法律を見ますと、鉱業権のある者が自分のぼた山を持っている場合には、鉱業権の新しい申請は要らぬ、しかし鉱業権者でない者がそのぼた山に対して石炭の、何といいますか、採掘をする場合には、新しく鉱業権を設定しなければならぬというように私は理解しておるのです。そこでそういう事例が今ありたというお話でございますけれども、じゃその点だけ朝比奈さんに伺いますが、十八の日本石炭協会のメンバーの中にはそういうことが数々ございましたか。
  52. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) 今のお話は動産であるぼた山を修繕しておるというお話なのでございましょうか。それとも土地と一体をなしましてさらに鉱業の手段によって石炭を掘り出す、その場合に鉱業権を設定して掘っているのかどうか、こういうお尋ねでございましょうか。
  53. 田中一

    ○田中一君 動産か不動産かそのけじめすらはっきりわからないのですけれども、少くとも鉱業権というものを設定されるという状態の場合は、これは不動産という前提に立っておりますので、この法律の審議の過程においてわれわれの発見したことは、たとえば鉱業権を持たない者の所有に属するぼた山、これに対して鉱業権を与えようという場合には、それ自体がもう動産の域を脱して不動産ということになってしまったというところに、鉱業権の設定が可能だというふうにわれわれは理解しております。そういう山が現在十八のあなた方のメンバーの方は、掘っておる例がございますか。
  54. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) 動産であるとか、あるいは付合して土地と一体をなしておるというようなことは、判例あるいは学説等で従来いろいろ議論されております。私の知っておる範囲におきましては、土地と一体をなしておるぼた山目的鉱業権を設定した、という例はまだ聞いておりませんが、もちろんこれは面積関係もございますし、また実際の存在状態が、さらに鉱業権を設定して、その炭を取るというようなものがあったというようには聞いておりません。
  55. 田中一

    ○田中一君 動産であるぼた山と、不動産化したぼた山というものとは、どういう状態現象がその分れ道になっておるか。
  56. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) 従来の判例等におきましては、相当年数のたった樹木がはえておるとか、あるいは草がはえておるとかというようなことで、その中の鉱物を取りますのは、いわゆる鉱業的な手段によってそれを取るような状態にあるものが土地と付合しておる、こういうふうに見るべきだというふうになっておりますが、さてこのものがそういう状態にあるかどうか、具体的にこれが問題になったというようなことは聞いておりませんが。
  57. 田中一

    ○田中一君 この法律が、大体所有者がない、鉱業権を持たない者の所有するぼた山は、現在国が面接補助をして防止施設をしなければならぬことになっております。そこで、ぼた山でも、鉱山としてのぼた山もあれば、空地に積み重ねたぼた山もあるわけです。従ってぼた山の性格というものは二つあると思います。鉱業権を設定され得るぼた山鉱山に違いないと思います。そうでない動産として空地にある、石その他を置いてあるという山も、ぼた山とわれわれは通称呼んでおるわけでありますが、この法律を見ますと、鉱業権のあるなしの問題でなくて、鉱業権を持たない者の所有しておるぼた山、これは当然この法律によって国の補助を受けて、その防止施設を公共団体がやるということになっております。国がやるということになっております。鉱業権を持っておる者のうち、鉱山としてのぼた山は自分がやる、鉱業権を持っておる者がやるということになっておる。しかし一面不動産化して、鉱山の形態、本質を持っておるぼた山も、鉱業権者がない場合には、これまた国がやるということになるわけですね。そこのところははなはだ、ぼた山と言いながら鉱業権を設定され得る山と言えば、これは鉱山でしょう。そうするとぼた山というものの定義のうち、動産か不動産か、鉱山か、廃物を積み重ねたものなのか、全くあいまいなわけです。先ほど岩沢委員がちょっと質問しかけたというのも、われわれ委員会においてずいぶん心配しておるのですけれども、中小炭鉱は今不況ですから、第三者にぼた山を譲ってしまえば、一応その現場から離れれば、一応そこまでの熱意を持たない。五年間は当然義務があるのだといいながらも、会社をつぶしていってしまえば、人格がなくなってしまうのです。よそへ売ってしまって、自分の会社は解散する。五ヵ年間の義務があっても、人格のないものは義務を買うことができませんから、そのままになるということが数々行われるのじゃないか、という懸念を感じているのです。これは先ほどもあなたに大へん失礼なことを申しましたけれども、あなたの方のメンバーの十八社というのはおそらくそんなことはないと思いますけれども、それ以外の中小炭鉱にはおそらくそういうことがあるのではないか、ということを懸念しておりますけれども、そういう点はあなたの今までの御経験から、そういう権利の隠匿といいますか、合法的な隠匿とか、あるいは放棄はないでしょうけれども、そういう事例は数々……。
  58. 朝比奈治郎

    参考人朝比奈治郎君) お答えいたします。はなはだ答弁の不適格者でございますが、石炭鉱業権を設定いたします際に、その鉱区内に、すでに他人が囲いておった動産とみなされるぼた山がありました際に、また新しい、石炭鉱業権者ぼた山を築くということになりますと、先からあります、動産でありますぼた山につきましては、理論的にはお説の通りと思います。従来そういうことの事例があったかどうかよくわかりませんでございますが、ちょっと思い当りません。
  59. 田中一

    ○田中一君 中野先生に伺いますが、今話に出ております、私が朝比奈さんに御質問したもの、たとえば動産が不動産化した、私がその点を知りたいのは、何年たってどんな状態になれば、これが不動産だというようなはっきりした、だれもが見分けられるような状態の区分を知りたいのですが、それはどういう工合に分けておられるのですか。動産であるぼた山と不動産であるぼた山というものを、判例があるとおっしゃっても、一々裁判でそれを見きわめるなんてことはとても大へんなことですから、判例があれば、もう一目見てはっきりわかるような状態にあると思うのですが、それはどういうもので見分けているのですか。それがこの法律の一番重大な点です。
  60. 中野實

    参考人中野實君) 私、動産、不動産の定義とか、法律的なあれにつきましては、ちょっと不勉強でございまして、わからないのでありますが、今のお話の筋の、どこからこれの対象としなければならぬかということ、これは現に必要なことだと思っております。私どもぼた山と申しますのは、それが何であろうが、積み重ねたものであれば、年月を経過しようがしまいが、一応ぼた山としておりますけれども、この場合には、おそらく鉱業権の手を離れたものを一応その対象にすべきじゃないか、というような気がいたします。つまり鉱業権者が炭鉱を掘っておりまして、その掘った人がぼた山を築いている。ところがその鉱業権者とそのぼた山とが離れてしまった状態のときから、この法律対象になるのではないか。つまりそうでないと、鉱山保安法で一応やっておりますものですから、その手を離れたときが、この対象になるぼた山になるのではないか。そういう意味で、ぼた山に何通りかあると思いますが、一応二通りあると考えて差しつかえないと思います。
  61. 田中一

    ○田中一君 鉱業権が設定される状態ぼた山というのは、これは商品価値は相当あるわけですね。これは最近あそこからウランなどがとれるのだというような風説もあるようになってきますと、ぼた山それ自体に相当経済的な価値が生れるとこれは当然義務を負わしていいと思うのです。たとえば鉱業権を持たない者でも自分の山なんですから、当然保安の義務があるという解釈をした場合に、それは妥当と考えますか。ということは、これがぼた山というものが全部不必要なものであって、経済的な価値が何にもないのだという前提に立つ場合と、これが相当な経済的な価値があるという場合とおのずから違うと思うのです。鉱業権を持っている者は、そのぼた山というものは鉱山に欠くべからざるものであるから、それがもう一般に天井をついたものは別でしょうけれども、だから鉱業権を持っている者は、それに対する地すべり崩壊等の防止の築造施設をしなければならない義務がある。しかし鉱業権を持たない者でもぼた山を所有している者は、自分の山なんですから、これは当然その義務があるということになってもいいのじゃないかと思うのですが、経済的価値があるならば、その点はどうお考えになりますか。
  62. 中野實

    参考人中野實君) 今のお話の、ぼた山が無価値ではないのじゃないかというお話はまことにごもっともと思っております。たとえば今のウランの問題は私もよく知りませんですが、耐火材、れんがの材料などをとります場合もあり得ると思います。そのれんがの材料になります長石類がもし鉱業法の鉱物であれば、当然それは鉱業の採掘、掘採ということになるだろうと思います。そうなりますと鉱山保安法との関係も出て参りまして、そこで鉱山保安法をもってその安全を期することができるかと思いますが、これを離れまして、私法律のことはわかりませんが、鉱業権対象になってないものがあった場合には、私は本質的には当然所有者が義務をもつべきだと思いますけれども、しからば法律的にどこで取り締っていいかということにつきましては全然わかっておりません。御趣旨のほどは私も同感でございます。
  63. 田中一

    ○田中一君 この定義の二条の2には、「石炭又は亜炭に係る捨石が集積されてできた山」である。「石炭又は亜炭に係る」というのは、石炭または亜炭も含まれるというものでなくして、石炭または亜炭から離れた捨石というようにわれわれは理解しておるのですけれども、従ってこのぼた山の中には石炭が混入することはあるわけですね。そうするとこの定義もちょっとおかしくなってくるのです。それからそれにかかわる捨石が集積されてできたのがぼた山だ、こういうことになりますと、これはもう永久鉱業権の設定なんかあり得ないのですね。石炭または亜炭がないならば、鉱業権の設定ができるのだということは、石炭局長が言ったわけなんですが、不動産化したものに対しては鉱業権の設定ができると言ったものですから、その場合には鉱業法による鉱物ということになるのですが、「石炭又は亜炭に係る捨石」というものだけならばこれは鉱業法の鉱物にならないのじゃないですか。
  64. 中野實

    参考人中野實君) この捨石の定義はまたいろいろ問題となると思いますが、ある時期には捨石であっても、次の時代にはそれが有用鉱物とるな可能性というものは、従来からあります。今回もそうなると思います。従ってこの捨石というものは完全に無価値なものであるという意味でなくて、その当時、その時期におきましては経済的には成り立たないものであるという物を捨石というふうに解釈いたします。そこで捨石の中にも当然有効性と申しますか、石炭あるいは亜炭質の物が一部混入あるいは付着しておるということは当然のことであります。捨石が完全に無価値なものであるということにはならないかと思います。
  65. 田中一

    ○田中一君 そうしますと、現在あります多くのぼた山というものが鉱物であるということになりますか。
  66. 中野實

    参考人中野實君) 鉱物というのはまた法律上の解釈もございまして法律的には有用鉱物という意味になると思いますが、もちろんその中には有用鉱物の一部が入っているわけでございます。それを処理しまして経済的に引き合わない場合には、それは捨石となりますものもあるかと思いますし、技術その他が進み、需要が進みまして価値が出て参りまして、それを掘りまして利益があるという場合には、それは鉱業法上の鉱物に当然なるわけであります。
  67. 田中一

    ○田中一君 そうすると第二条の第2項は、「石炭又は亜炭に係る捨石」というものは、もし石炭または亜炭も含まれておるのだということならば、この定義の仕方はちょつと法律的に疑義があるのじゃないかと思います。それはかすのように一部分含まれておるというものならば、これはまだ言い得られますが、しかし低品位のもの、そういうものは今売ってもどうにもならない。ここに置いておこうといって、初めから作為的に蓄積される場合もあるのじゃないかと思います。そういうことは考えられませんか。
  68. 中野實

    参考人中野實君) 今の御質問に十分お答えできるかどうかわかりませんが、捨石がやはり石炭、亜炭分があるということは、これは故意に捨てるという意味にはならない。できれば十分選炭設備等によってとらなければならない。しかしとればとる金がかかってしまうために、おのずから経済的に限界がある。その当時の捨石はその当時の経済限界以下のものという解釈であります。
  69. 田中一

    ○田中一君 そうするとその場合にそういう時代に作られたぼた山というものは、はっきりと「石炭又は亜炭に係る捨石」というような定義にならなければ、そのものに対する妥当なる説明にならないと思うのですが、どうですか、そういう点は。
  70. 中野實

    参考人中野實君) 今のお説ごもっともと思いまして、この表現をもう少し変えることによりまして、今の考え方も織り込まれようと思います。
  71. 田中一

    ○田中一君 実際にぼた山というものの対象が何であるかということは、概念的には見ますとわかりますけれども、本質的にはわからないのですね。この法律説明されてもわからないのです。そうしてこれが将来経済的な効果が上ってくると、それを掘さくして新しいまたぼた山が生れる、ということも想像されるわけです。ですからぼた山というものに対する定義をもっと明確にしなければならぬと思いますが、そういう点は中野先生はそうした方がいいとお考えになりますか。
  72. 中野實

    参考人中野實君) 捨石というものはその時代々々によってその内容が、つまり品位と申しますか、捨石の品位が異なってきます。これは石炭、亜炭ばかりではありませんで、ほかの金属、非金属鉱物についてもいえることであります。かつてのいわゆる金属鉱山ぼた山を鉱石として処理している例は非常に多いわけであります。それは技術の進歩によりまして、低品位のものが有効にとれるということでございまして、従いましてこの法律のいう意味は私は厳密にわかりませんが、その時代々々によって今お話のありましたように、そのぼた山が一つの有効鉱物の産地であってそれをとることによってさらに新しいぼた山ができる、という可能性も当然あり得ることであります。
  73. 西田信一

    ○西田信一君 ちょっと関連してお尋ねしますが、ただいま田中委員質問に対するお答えといたしまして、「石炭又は亜炭に係る捨石」という表現は、あるいは別な表現をした方がはっきりするのではないかということの御意見のようでございます。私はたとえばこの石炭、亜炭を採掘して捨てられた捨石というものは、それが石炭分あるいは亜炭分が含まれておっても「石炭又は亜炭に係る捨石」という表現で十分尽されているというふうに考えるわけです。この捨石というこの字句が、亜炭分あるいは石炭分が含まれている場合には捨石ということが言えないということではないじゃないか。それにかかわる「石炭又は亜炭に係る捨石」というものは、若干そういうものは含まれておっても、これはその時代々々によって経済限界線が違うでしょうから、それがために石炭分が若干多い場合もあり、少い場合があっても「石炭又は亜炭に係る捨石」という表現で、それらのものが若干含まれておる捨石というふうに解して一向私は差しつかえないと思うのですが、これは工合が悪いという、別な表現をすればいいというお考えのようでございますが、私はその必要はないじゃないかと思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  74. 中野實

    参考人中野實君) 今の御質問で、つまりこの「石炭又は亜炭に係る捨石」という字句がこれではわかりにくいというなら、もっと懇切丁寧に説明してもいいじゃないかという意味のことでございますから、ですからこれでつまり了解がつくだろうという御意見が大多数であればこれでかまわない。それからこの捨石という言葉も厳密の意味のいろいろな慣例とか法律上の意味がありましょうけれども、これなどももっとわかるようにしようという意味で、そういうことを私はもっとはっきり、何と申しますか、まぎらわしくないような表現にするならばその方がさらにいいだろうという意味でありまして、固執しているというわけではありません。
  75. 田中一

    ○田中一君 いやに妥協してはいけませんよ。(笑声)私の言っておるのは、時代の経済価値によって石炭または亜炭をも捨石という状態と同じような行為で蓄積する場合があるというのです。私はないと言えぬと思うのです、これは。その時代に炭の値段も非常に安い、そういう低カロリーのものは今掘っても損なんだという場合にはぼた山に一緒に混入して捨てておくという場合があるのではないかと思うのです。石炭そのもの、亜炭そのもの、ただ低カロリーであってその時代の経済価値でもって採算がとれぬという場合には、掘る場合にはどっちみち一緒に出てくるのですから、捨てておく場合があるのではないか。そうして選炭の度合をかなり高いものにして、出して、そのままにしておくという場合があるのではないか。そういう場合にはそれは石炭並びに亜炭なんです。「石炭並びに亜炭に係る捨石」という捨石ではなく、石炭又は亜炭なんです、それは。という場合があるのではないかということなんです。そういうこともあるから、ぼた山という定義の中には単に「石炭又は亜炭に係る捨石」だけではならないんで、亜炭または石炭そのものも積み出される場合もあるのではないか。そうすれば、亜炭または石炭ぼた山の本質の一つだというように私は見ておるわけなんです。そういう場合にこういう表現ではまずい。本質が説明されておらぬ。こういうことを言っておるのです。そういう点について中野先生が御共鳴なすって下さったわけでしょう。
  76. 中野實

    参考人中野實君) 実際問題として、石炭そのものをぼたの中に入れておくということは、これは一種の貯炭になるわけであります。そのことは私の狭い経験からしましては、故意にそういうことをやるということは知っておりません。しかし理論的には今のお話しはわかる気もします。故意にそれを集積するということもあり得ると思います。しかし経済的には、実際そういうことはないので、そういう場合には石炭を掘らないで休山した方がさらに利益なわけです。そこで、私は常識的にはそういうことはないと思いますが、もしもそういう意向があるとすれば、まあそういうこともはっきりさせなければならないかと理論的には考えております。
  77. 田中一

    ○田中一君 せんだって石炭局長から伺ったのですが、ではぼた山というものはあくまで鉱業権が生まれるはずがないと思う。鉱業権というものは生まれるはずがないと思うのです。そういうものがあり得るとするならば、その中には相当石炭分、亜炭分というものが経済価値のあるものが含まれているということにならざるを得ないと思うのですが、あなたはそういう実例を見たことがないとおっしゃるけれども、実際そういうことはないのですか。同時にまた先ほどぼた山に対して鉱業権の設定を申請したことも自分は知っているというような御答弁があったのですが、その知っておるといった場合の状態は、そのぼた山内容石炭あるいは亜炭というものが相当量蓄積されて貯炭されておったという状態にあるのじゃないのですか。
  78. 中野實

    参考人中野實君) 今の、先ほどの御質問に対します答えは、つまり鉱業法で鉱業権をかけてあるかないかということは私は法律関係に暗いからわかりませんが、現にぼた山をいじっている例は見また聞いておる、そういうことでございます。  それからもう一つの御質問と申しますか、御意見の中の捨石というもの、捨石と申しますか、捨石、ぼた山ですね、ぼた山そのものの中には有効成分というものはあるわけであります。技術が進んで参りますれば、有効成分は少いわけですけれども、中小炭鉱等におきましては、やはり有効成分を一緒にくっつけたままぼた山として積んでしまう場合があるわけです。しかし故意にそこに有効成分を隠すために積んで置くというお考えには私は異論があるわけでありまして、とった方が得なのであります。しかし、とれないままに積んであるというのが実情であると思います。
  79. 田中一

    ○田中一君 私は石炭のことをよく知らないのですけれども石炭風化するような形でどんどん積んで置く。石炭なんか、捨てる前には、石炭でしょうが、積んでおる状態を見たことがあるのです。野ざらしになって風化する状態になっておる石炭をそのまま放置してある例も見ている。私は今の、山をやめた方が得なんだということだけでは解決されないと思うのです。石炭のその時代の価格の問題ばかりでなく、いろいろな要素があると思うのですがね。あなたのおっしゃった貯炭ですか、貯炭をするような状態に中小企業が至らしめられたという事例は、ただ休山した方が得なんだということだけで解決されないものがあるのではないかと思うのです。従ってそうしたものも選鉱しないで、そのまま積み出していくという状態が相当中小炭鉱にあるのではないか、こういうことを的確に私はそれを見たことはございませんけれども、そういうことがあるのではないかというように考えられるのです。
  80. 中野實

    参考人中野實君) 今の、お考えとしては理論的には私はあり得ると思いますけれども、実際問題としては、たとえば石炭を掘って貯炭をして置きますと、それが売れない場合には融資の面でいろいろ困るわけでありまして、どちらを選ぶかと言いましたら、一般的には休山してなるべく貯炭を少くして置きたいということになるかと思います。そこにいろいろな要素があるという考えは全くそうなのでありまして、融資関係その他経済的な要素はありますけれども、常識としてはやはり野積みの貯炭を持つことは不経済であると考えております。
  81. 田中一

    ○田中一君 先ほど赤木先生はこの築造基準などは設けない方がいいという御意見ですけれども、中町先生はぼた山に対しても築造の基準を設けた方が、置いた力がよいとお考えになりますか、それとも赤木先生が地すべりに対する基準を設けない方がよいという御意見のように、ぼた山にもそういうものを現象現象でもって十分にその場合その場合に適当な防止施設をやった方がいいとお考えでございますか。
  82. 中野實

    参考人中野實君) お答えを二つ申し上げます。  一つは、先ほど地すべりに関するいろいろな工法等を命ずるということは、私は地すべり工事その他につきましては全然経験もありませんしろうとでありますが、先ほどのお説はもっともと存じます。私ども鉱山の安全の関係ではむろん石に関係した問題が多いわけでありますけれども、そうすると大体のことは、はっきりいたしますけれども、その他必要な事項というようなふうにして、技術的にまだ余力を残しておくのが常識であります。そこでぼた山崩壊につきましては鉱山保安監督の関係で、ある程度基準ができておりますと思います。具体的には私こまかいことは知りません。しかし何分にも石を対象とした学問というものはなかなか的確な結果が出にくいものでありますので、やはりぼやかすというと非常に語弊がありますけれども、さらに新しい技術が出てくるという場合にはその方法も講じられるということになる可能性が十分ありますので、そんなような表現が必要であるように考えております。
  83. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ほかにどなたか御質疑ありましたら御発言願います。
  84. 田中一

    ○田中一君 赤木さんもう一ぺんちょっと…・。先ほどあなたの御説明の中の、立法の趣旨がはなはだ不明だということを短い言葉でいうと、どういう工合に理解したらいいのですか。
  85. 赤木正雄

    参考人赤木正雄君) お答えいたしますが、この地すべりというものを、もう少し的確に現わした方がいい。こういう例は、地下水がありますが、ちょうど田中先生いらっしゃらなかったですが、御承知通りに大雨が降る場合にはそれがやはり地下水になって崩壊を起すことがたくさんあるのです。これはほとんど山地の崩壊の九割はそうです。そうでありますから、ただ地下水そのものを対象にいたしますと、一般にいう地下水による地すべりと誤解しやすい。それでありますから、ここにいう地すべりとは、日ごろ地下水の流動によりまして、滑落面上に滑動現象を呈する地域を称すと、こういうふうに言っておきますと、私の考えでは一般にいう地すべりを現わすのじゃないか、これは単に地下水だけでは非常に誤解が生じやすいのでこういうふうに思います。
  86. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ちょっと速記をとめて。   [速記中止]
  87. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 速記を始めて。  それでは参考人に対する御質疑も、一応これで御退席願っていいかと思いますが、御異議ございませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) どうもありがとうございました。長時間にわたりましていろいろ参考になる御意見を承わることができました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  89. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 速記を始めて。  政府より建設省山本河川局長、國宗政課長、通産省から小岩井鉱山保安局長、竹田管理課長、それだけお見えになっております。  議題の問題につきまして御質疑のあるお方は御発言を願います。
  90. 西田信一

    ○西田信一君 河川局長にお尋ねしますが、先ほど赤木参考人から御意見を伺ったのですが、この定義で「地下水等に起因してすべる現象」、こう言っておるが、豪雨等によって生ずる、豪雨等に起因してそれが地下水に影響して起る場合が非常に多い。この「地下水等に起因して」ということだけでは適当ではないのじゃないかという御意見がございました。しかしこれは「地下水等」という言葉が使ってあるのですが、この「等」というのはただいまの参考人の御意見等に関連してどのようにこれをお考えになっておるか。「地下水等」ということはどういう内容であるか、これをお伺いいたしたい。
  91. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) これは主として地下水粘土層に含まれましてその滑動を増すということでございますが、地下水以外におきましても地震であるとか、あるいはノリスソが欠けてきて、そういう地下水がふえなくても起る場合があるということで、それで「地下水等」ということにしてあるわけでございます。  それから先ほどの崩落等が含まれてきやせんかということでございますが、私ども考えといたしましては、その滑動面の上の土地は原形をあまり乱さないで、ばらばらにならないで一体となってすべるというところに主眼がおいてあるわけでありまして、おのずからばらばらになって落ちるものは除外される、こういうふうに考えておるわけであります。
  92. 西田信一

    ○西田信一君 そういたしますと豪雨等によって、非常に激しい雨がそれに浸透して、そして浸透性の地盤の上を流れる、地下水の形となって流れるということに起因する、要するに直接原因は豪雨地下水を増すといいますか、そこに肌離れをさせる、こういうことになるのが多いと思いますが、こういうものが当然含まれておると、そういうふうに解してよろしゅうございますか。
  93. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) もちろん地下水のふえる原因といたしましては地上に到達いたします雨の量が多いときが多いわけでございまして、お説の通りでございます。
  94. 西田信一

    ○西田信一君 次に砂防法との関係ですが、先ほど砂防法もしくは森林法というものがあって非常に二重になると、こういうお話がありましたが、私は砂防法の第一条に定義がはっきりしておりますように、地すべり法砂防法とは全く違うというふうに考えるのですが、先ほど参考人の御意見もお聞きになったと思います。そこでこういうふうな屋上屋というような弊害がないのか。また地すべり防止法と砂防法との関係はこれは画然と目的が違い、またそのためにこれは紛淆するというようなおそれがないというお考えかどうか、この点伺いたい。
  95. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) 砂防法あるいは森林法と今回の法律案との関係でございますが、なるほど現在までにおきまして砂防法あるいは森林法によりまして治水上必要なものはやっておったのでございます。しかし最近ことに地すべり現象が多くなって参りまして、地すべりの間から申し出て参ります点は、地すべり現象があるけれども、どこの省に持っていったらいいかわからぬ、非常に迷うと、具体的に申しますと、砂防指定地なり森林指定地に入っていないところが相当あるわけであります。しかし砂防法なり森林法を指定すればその区域地すべりはその法を所管する省のものになるわけでありますが、実情におきましては、まだ砂防法なり森林法を適用していないところに地すべりが非常に多くて、それをどこの省に持っていったらいいかわからぬというようなことで、非常に地方から区域をはっきりしてもらいたいという問題。また工法におきましても通常の砂防とはちょっとやり方が違うわけであります。地下水を抜くということに、主眼がそういうところにございますから、そういうような点がございまして、この法律をぜひ作りたいということに相なったわけでございまして、先ほど申し上げましたように、地すべりの所管というものをこの際はっきりしよう、それから工法等におきましても、これは地すべりといろものは通常の砂防と違うから、これは一つの法律でやれば工法等におきましてもこれば進歩もあるだろう、統一もできるだろう、こういう観点から出発したものでありまして、もちろん砂防法なり森林法を改正いたしまして、治水上必要なもの以外も含めるならばできないことではないとも思いますけれども、便宜こういうふうな建前にいたしたというのが私ども考えであります。
  96. 西田信一

    ○西田信一君 もう一点伺いますが、先ほど参考人のお話しを伺いますというと、現実の問題として砂防法あるいは森林法の指定している地域とダブるものが八割くらいになるだろう、こういうことをちょつと聞きましたが、実際にそのような結果になるのですか。
  97. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) 現在砂防法あるいは森林法等におきまして指定しておる区域に含まれる、先日来御説明申し上げました十余万町歩のうちどれくらい入っておるか、こういう御質問であります。的確な数字は調べて申し上げますが、大体現在の状況では一割くらいしか入っていない、ただ指定するならば、それだけは入り得る、こういうことでございます。
  98. 西田信一

    ○西田信一君 その点は明確になりましたが、次にこのぼた山のことですね、これがいろいろ問題になっておりますが、私はこの前の委員会でお聞きしましたからこれは間違いないことと思いますけれども、将来中小炭鉱等において再びこの法律ができたことによって、何といいますか、ぼた山をこちらの法律の適用に持ってゆくような行為が起る心配があるかないかという問題ですけれども、これは現存できておるぼた山であって、しかも現在鉱業権者もなく、また鉱業権者とみなされる者がないという場合をさすのであって、将来は、たとえそんなものができても全然この法律の適用を受けないんだと、この法律の適用外であるということは、はっきりいたしておるのですか、その点はいかがですか。
  99. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) お説の通り現在あるぼた山でございまして、鉱業権者または鉱業権者と入なされる者が必要な措置を講ずべきものを除いた他の部分ということにたっておるわけでございまして、その後生じてきたものは適用にしないということでございます。
  100. 田中一

    ○田中一君 それはね、新しく破産してだれの所有でもないぼた山であった場合にそれを適用しないということがあってはならぬです。何も建設省が一つの山を所管するしないじゃなくて、災害を受けるような状態にあってこの法律が適用されるという状態ならば当然すべきです。私はそれを一番心配しているんだ、いいですか、これは付近の多くの善良な市民のためにしなければならないものであって、もしも作為であろうと悪意であろうと法律の上からはっきりと義務がなくなった、あるいは義務を負う者が消滅した場合には当然直ちに指定をして防止施設をしなければならぬ、ということが原則なんです、今河川局長は不用意に答弁されておりますけれども、そういう点が一番心配なんです。たとえば五年の鉱業権者があって鉱業権が消滅し、そのぼた山を所有しておるのが個人の場合は生きている以上責任者はいますけれども、法人の場合、それが消滅した場合当然この法律に該当するような状態になるわけでございまして、その際それが付近の住民等に相当な悪影響をもたらすような状態ならば直ちに指定して、それに防止施設をしなければならぬと思うんですよ、そういう点は、もう少しはっきりしてもらわぬと困るんです。そういうことがあるかられわわれは心配しておるんです。
  101. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) この第二条第二項の意味先ほど私が御説明申しあげた通りでございまして、その後発生する問題につきましては鉱山保安法関係の構成によりましてそういうものが起らないように処置する、こういうことでございます。
  102. 田中一

    ○田中一君 起らないようにすると言っても、鉱山保安法が徹底して現在もやっているという先ほど朝比奈ざんの十八社の大企業ならばいざ知らず、その他のものがおおむねやってないのが実情なんですよ、それが鉱山保安法の適用を受けるべき人格がなくなった場合には当然この法律のワク内で防止施設をしなければならないんですよ。これは通産省や建設省のためにあるんじゃないんですよ、ぼた山周辺におけるところの損害を受ける住民のためにこの法律が制定ざれたものでありますから、責任を負う対象が、本体がなくなった場合には直ちに適用してその防止施設をしなければならぬのです。今言う通り、それは鉱山保安法の不徹底によるものでございますから、通産省の責任でございます、というならば、この法律ぼた山に関しては通産省の所管にしましょう、ぼた山の所管だけは通産省にしましょう。
  103. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) その点に関しましてはこの前から御説明申し上げておりますが、鉱業権者あるいは鉱業権者とみなざれる者が消滅することが予想される場合には、その鉱業権者あるいは鉱業権者とみなされる者に処置きせる、そういうこととあわせて国土保全を全うする、こういう趣旨でございます。
  104. 田中一

    ○田中一君 処置させるといってもその人格が消滅した場合にはどうなりますか。
  105. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) それは鉱山保安法を所管する通産省の問題でございますが、それは行政措置によりまして最後まで追及する、こういうことに相なっております。
  106. 田中一

    ○田中一君 私はその点が非常に心配なんですよ。だれもこれは地すべり等防止法によるところの建設省のものだとか、これが鉱山保安法によるところの通産省の責任だとかという責任呼ばわりの問題じゃないのです。事態が明らかになった場合に、付近の住民が非常な損害を受けるよらな状態になった場合には、それを直ちに防止するがための今回提案された地すべり等防止法案のはずなんです。もしそうならばはっきりとここからぼた山だけ抜いていただきたい。ぼた山を抜いて、ぼた山に対する築造基準も炭鉱法でもって一切のものを通産省がやればいいんですよ。
  107. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) それに関連して私がお尋ねしたいのですが、この問題につきましてこの前に私もお尋ねして、そして政府当局に御注文を申し上げておいたのですね。この案では今、田中さんが御質問になっておる、この後、生ずるものに対する取締りができないではないかという疑問を持っておるので、この法律で取り締るような条文に建て直していくか、あるいは通産省で保安法に改正を、あるいは鉱業法に改正でも加えて、そして新しい立法措置でもって取締りの方法を講ずるか、そうしなければ取締りが漏れていくということになっていく。それで法律を作る考えがあるかどうかということを私は聞いたのです。そのときに、石炭局長であったと思います。でその点は十分に研究いたしますからと、政府の方で意見を取りまとめるというようなふうの御答弁があったのです。で、私はその後返事を待っているわけなんです。今、河川局長の御答弁を聞きまするというと、やはり行政措置でやるのだという御答弁を田中さんにしていらっしゃる。それじゃ私もまだ納得ができないわけなんです。私は法律の手続が必要であるかどうか、それを政府意見をまとめてここで答弁してもらいたいというのに対して、行政措置でやられるのだと言われるというと、すっかり見当が違うことになるのですね、その点はどうなんですか。政府の方で通産省と建設省と話し合いがあって、この後の行政措置だけでやって、法律の必要はないということに話し合いがきまったんでしょうか。
  108. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) この前の委員会通産省からそういうお話しがございまして、私どもの方と打ち合せいたしたのでございますが、今後発生いたしまするぼた山につきましては、鉱山保安法関係の法制も整備されておる、それから従いまして行政上の監督指導を強化することによりまして、崩壊のおそれのあるぼた山は十分防止することができるということに相なっておりまして、通産省は十分その面でやっていくということでございますので、本法においては将来の問題は対象にしないで、現存生じておる、しかも鉱業権者あるいは鉱業権者とみなされる者でないものを対象にしていきたい、こういうふうに考えております。
  109. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) もう一ぺん……。そうすると、この法律では取締りができない、この法案では。通産省で取り締る。これは別に立法措置を要しないでも行政措置で責任をもって取り締ることができる、法律は作らないと、こういうことに政府の方では決定したわけでありますか。
  110. 竹田達夫

    説明員(竹田達夫君) この点につきましては、先般石炭局長からお答え申し上げましたのは、現在鉱山保安法によりまして、鉱業権者に責任があります。ぼた山は、鉱業権者の所有関係とは一応別個に、保安法によります公法上の義務、責任を追及いたしまして、万全の措置を講じますので、現存鉱業権者の責任の追及のできない堆積されたぼた山を本法によりまして対象に取り上げていただきますならば、一応の目的は達するでしょう。ただその際に鉱業権者が今後死滅したというような場合にはどうなるかという問題につきましては、非常に異常なケースでもございますし、われわれの方で保安法によりますところの、現におるわけでございますから、現在四月一日におきましては、鉱業権者の責任が追及できないものは本法によりまして取締り、あるいは行為の対象にされるわけでございますので、それ以外のものは一応鉱ご山保安法で追及できるということでざいますから、現時点と申しますか、この法律の施行の際に当りましては一応十分取り締って参れると、こういうふうな答弁を申し上げたわけであります。今後長い将来にわたりまして鉱業権者が消滅した場合という問題につきましては、これはぼた山法律的性格、あるいはいろいろな国民の何と申しまするか、義務、責任の追及がどこまで法律的にできるかというような問題につきまして慎重に検討を要する必要がございますので、さらに慎重な検討をさせていただきたい、こういうふうな答弁を申し上げたのであります。
  111. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) もう一ぺん念のためにお尋ねいたしますが、今承わっておりますというと、理論的には将来取り締らなければならないようなぼた山ができることになるかもしれませんけれども、しかし実際の問題としては非常にまれである。だからそういう非常に実際にまれな場合を予想して法律を作るにどの必要はないと、こういうふうなことなんですか。
  112. 竹田達夫

    説明員(竹田達夫君) 御趣旨の通りでございますが、その必要がないということを断定しておるのではございませんで、実際問題といたしまして、この法律の施行の際におきましては万全を期しますので、その後死滅とか、そういうような鉱業権の消滅という現象がどんどん起って参る、その際にはこの法律でもあるいは鉱山保安法によりましても無籍者というようなものが出るケースがありましたならば、そのときには、このぼた山法律的性格、その他それを所持しております者の義務、責任の追及がどこまでできるかというような点までさらに検討いたしまして新たな立法をする必要があればするようにいたしますと、こういうことをお答え申しましたのでありまして…−。お答え申し上げる次第であります。
  113. 田中一

    ○田中一君 関連してですがね、そうしますと、この法律施行の日から逆算して対象となっている六百二十三カ所のうち、過去五年間——過去五年間ですよ、先五年間ではないですよ、過去五年間にそのぼた山を所有したことが歴然としているものは現存の鉱業権者に保全の義務を課そうとするのか。それが、かりに鉱業権者でない者が今日そのぼた山を持っている場合には、前のぼた山を築造した者、前の権利者ですね。鉱業権を持った者が、過去五カ年、前の人格が明らかになっている場合には、それに遡及して保全の義務を負わせますか。
  114. 竹田達夫

    説明員(竹田達夫君) 鉱業権が消滅いたしましても、なお五カ年間につきましては、鉱業権者とみなしまして、鉱山保安法によりますところの責任の追及をいたすわけでございますので、この四月一日からさかのぼりますことの五年以前に消滅いたしましたものは本法の対象に取り上げていただきまして、あるいは三年なりあるいは二年前に消滅いたしましたものは、理論的にはさらに二年なりあるいは三年の責任の追及ができるということになっておりますので、そういう者につきましては、鉱業権者といたしまして保安法による責任を追及いたします。
  115. 田中一

    ○田中一君 河川局長に聞きますが、先ほど前の委員会でもお話があった六百二十三カ所というものは、これが今回の地すべり等防止法案対象となるべきものだという説明があったのですが、そのうち、不明が七十四、権利が他に移っているものが百三十二ということになっておりますね。これが、現在もそのぼた山を築造したということが明確にわかっているもの、それが他に権利を譲った場合もあるし、あるいは鉱業権のない者にいった場合もあるし、この二つの対象は遡及して、その人格があるならば、それに保全の義務を負わすという考えですか。
  116. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) この前御説明申し上げました資料は、堆積いたしましたものは六百二十三カ所でございまして、そのうちに、鉱業権者以外の者が所有しているものが百三十二、所有権者不明のものが七十四、その合計が二百六、こういうふうに申し上げましたけれども、この説明はまずかったわけでございまして、所有関係で義務が発生するわけじゃございませんで、鉱業権者または鉱業権者とみなされる者が責任を負うわけでございまして、所有関係ではございません。それからまた、さかのぼって鉱業権者とみなされるものはこの法律で適用しない、当然権利義務のあるものは。そういうことでございます。
  117. 田中一

    ○田中一君 そうすると、今後できる問題も、四月一日を基点として不公平な扱いを受けることになってくるのですよ。たとえば、この法律はまだ通過しておりませんから、成立しておりませんから、今名義を変えれば、当然それは対象になると思います。一体通産省は、鉱山保安法という法律がありながら、そうした保全の義務を十分に指導し監督してやらせないからこういう現象が起きてくるのであって今までの責任は、ただ鉱山保安法があるから鉱山業者はすべきであるということだけでは済まないのです。政府政府として、監督なり指導の当然すべきそれらの点を十分にしなかったということじゃないかと思う。私は、先ほど石炭協会の十八社を中心に考えておりません。これはやっていると思います。しかしながら、数多くの中小炭鉱というものが、大企業と一緒になって自由経済の競争場裏に入る場合には、そうしたものを放任して、放置して競争しなければ成り立たぬようなものが多々あると思うのです。実清としてそういうものがあるのを、通産省としても、そう過酷に、これもせい、あれもせいといって経済的な負担をかけるような指導は、人間としてなるべくこの程度ならばというもので済ましておるのが常道ではないかと思う。厳格に鉱山保安法の安全規則を守らしてやっておるならばいざ知らず、私はやってないと思う。そうして、これからこの法律ができたからといって、それらのものにそうした強い義務を負わす場合にはどのくらいの金がかかるものか私はわかりませんけれども、相当な負担だと思う。これはあまりいい政治じゃないと思うのですが、そういう点は、実際においてどのくらいの規模のものはどのくらいの喪川がかかる、現在まで中小炭鉱はどういうような保安施設をしておったかという点について、もう少し詳しく御説明を伺わないといかんと思う。もしそれができなければ、資料としてお出し願いたい。そうして資料に基いて御説明願いたいと思う。
  118. 竹田達夫

    説明員(竹田達夫君) ただいまのお説はごもっともでございまして、われわれの鉱山保安法の適用の対象になりますものにつきましては、崩壊等災害の起らないように、あくまで責任を追及して参る所存でございます。その責任の限界が経済能力の限界を越えておるからと申しまして、本法の適用対象に取り上げていただくということは現段階においては考えていないのでございます。
  119. 田中一

    ○田中一君 理論としては全く一向それで御答弁には差しつかえない。しかし、実際に崩壊が起ると予想しておるようなぼた山があるのを、本人ができぬからといってうっちゃつておくわけにはいかぬ。同時にまた、鉱業権を持たないものがどんどん山をやっておる。この対象となってやるわけですから、鉱業権者がなくなってしまったという場合には、必然的に、その崩壊現象が起きた場合には、それは放任するわけにはいかないです。そういう点がわれわれ一番心配な点なんです。あなたの管理課長としての御答弁は、あなたの立場じゃそれでいいと思いますけれども、実際においては、それでは解決しないということです。そういう点を非常に心配しておるのです。その点は一つ、きょうは時間も時間だから、河川局長一ぺん通産省と打ち合せて、そういう中小炭鉱に及ぼす経済的な負担というものが重くなれば、自然にそれを放置しなければならないような状態に追い込まれると思う。その場合どうするか、そうしてそれに該当するものはどのくらいあるか、そうして、現にそれらのぼた山を、どういう安全施設をやっているかどうかという点を、ただ通産省の報告やデータばかりでなくて、実際人間をやって調べてきて下さい。そうしてここで報告していただきたい。
  120. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) 先ほどちょっと御質問がございましたが、建設省でぼた山の対策、崩壊防止工事をやりました例がございますが、御参考までに申し上げますると、これは福岡県でございますが、遠賀川の上流で三カ所やっております。それの例を申し上げますると、事業費が、遠賀川の上流の一カ所が七十八万五千円、それから一カ所は三百五十七万六千円。もう一つ、遠賀川の支川の笹尾川という川の上流でやったのが二百四十一万九千円というふうな実績がございます。  それから先ほどの御質問でございますが、資力がない者がおった場合に、鉱業権者あるいは鉱業権者とみなされる者がおっても、それができないというような場合も、もちろん理論的にも、あるいは実際にもそういうものが生じてくるおそれが考えられるわけでございます。しかし、現在の状況におきましては、それを国が工事をやってやるとかというような点までは、なかなか私どもとしても踏み切れなかったわけでございまして、鉱業権者あるいは鉱業権者とみなされ得る者がいなくてどうしても困るというものだけを一つこの際は取り上げて、お説のようにそういうようなものが見通しとしてどのくらい生ずるおそれがあるかどうかというような点につきましては、私どもももちろん今後におきまして、通産省ともよく連絡しまして検討は進めていかなければならぬと思いますけれども、今の状況におきましてその見通しの上にこれに入れるということはなかなかむずかしいわけですから、その点は御了解をいただかなければならぬと思いまする
  121. 西田信一

    ○西田信一君 簡単にお聞きしますが、この法律対象となるぼた山は、たしか二百二十六件あると私は記憶しております。その二百二十六件の中に、これは河川局長がよろしいか、管理課長か、どなたでもよろしいのですが、おらく私はずいぶん古いものだと思いますが、この中には、要するに無届というか、無許可採掘といいますか、鉱業権のないような、昔は相当そんなものも含まれていたのじゃないかと思いますが、そんなものがどのくらい含まれておるか、全部りっぱな鉱業権を持ったものかどうか、あるいはそういうものもあるのじゃないかと思うのですが、おわかりでしたら、・・。
  122. 山本三郎

    政府委員(山本三郎君) この点につきましては、この前御説明申し上げたのがまずかったわけでございまして、ぼた山の所有権で対象になるならぬということはきまるわけじゃございませんで、鉱業権者あるいは鉱業権者とみなされる者があるかどうかということできまるわけでございますので、この二百二十六が果してこの法律対象になるかどうかということは、よくその点を調べてみなければならぬと思います。  それから、一々それが場鉱業権等は持たないでやったものであるかどうかという点は、あるいは中にはそういうものもあると思いますけれども、今後そういうものもよく調べまして処置していきたいというふうに考えます。
  123. 西田信一

    ○西田信一君 それから、第二条第二項ですが、先ほどの御答弁で、あなた方の法律の趣旨は明らかになってくると思うのです。そこでこの条文の表現の方法、書き方ですが、これはどうでしょう。ちょっと私は疑問があると思うのです。現在存在するということが一つと、それから、同時に現在鉱業権者もないし、鉱業権者とみなされる者もないと——第四条と第二十六条の関係をここにはっきりさせる条文なんですけれども、これはどうでしょう、ちょっと。私も思いつきで恐縮ですが、この法律施行の際に、現に存在し、かつ今後、こういうような表現にすれば、その点がはっきりすると思うのですが、この法律の書き方は、これで適当でしょうか、この点いかがですか。
  124. 國宗正義

    説明員國宗正義君) ただいまのこの法律案第一条第三項の定義についての、不正確でないかという御質問でございますが、この法律において「「ぼた山」とは、」云々とございまして、二行目の「この法律の施行の際現に」という字が両方にかかるわけでございまして現に存在する山でありまして現に「鉱山保安法第四条文は第二十六条の規定により鉱業権者又は鉱業権者とみなされる者が必要な措置を講ずべきもの」が現にないものをいうというわけでございまして、この法律が成立いたしまして、四月一日ということが施行日にきまりました場合に、その際に存する山でありまして、その際におきまして、鉱業権者または鉱業権者とみなされる者が義務者として存在しない場合をいうというふうに解釈いたしておりますので、これで読あるのではないかと考えておるわけでございます。
  125. 西田信一

    ○西田信一君 いや、あなた方の作られたあれはわかるのです。わかるが、この条文を法律の提案者でなく、国民が読んだ場合に、むしろ、そういう、私が申し上げたような書き方をした方が、その点がきわめてはっきりして、もっと明確になるのじゃないだろうか、その点は一応御研究を願いたいと思うのです。
  126. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめまして、これで散会いたします。    午後四時六分散会