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説明員(中川薫君)
昭和三十年度
農林省所管の
事項について御
説明申し上げます。
まず、一般
会計の分から申し上げますと、
昭和三十年度の歳出
決算額は九百六十二億余円でございまして、そのうち国が直轄で施行いたします工事及び都道府県に委託して施行いたします土地改良、開拓、干拓等の事業費等が百四十二億円でございます。そのほか公共事業
関係の補助費が三百五十二億円でございまして、右公共事業
関係経費を除きましたいわゆる一般補助が百七十四億余円でございます。
順次各項目について御
説明申し上げますと、直轄工事と代行工事との
関係は、規模の大小によって一応の区分をされるのでございますが、両者とも全額国費支弁でございます。各農地事務局で施行しております工事について前年に引き続き
検査をいたしましたところ、従来直轄工事においても出来高の不足しておる、あるいは疎漏工事となってその所期の目的を完全に果していないというようなものも見受けられましたが、本院
検査と現地の監督並びに自粛等によりまして、著しく改善されまして、この
検査報告に掲記いたしましたものは、積算過大、すなわち現地の
把握が不十分であったために
工事費の積算が過大となっておるというもの、あるいは請負に付するに当って、機械の修理費を積算していたところ、その
内容において定期修理費を積卸していた。これは農地事務局そのものにおいて定期修理は行うものであって、これを請負
工事費の中に積算していたのは当を得ない。それから当初の工事計画に対して、事後設計変更の
事態があったのに、それを考慮しないでそのまま——これは浚渫船の土砂の運搬でございますが、当初二段送砂と一段送砂の計画であったところ、全部一段送砂になったにもかかわらず、設計変更の計算において、当初の単価をそのまま踏襲したために、
工事費が高価となっておるというようなものでございまして、これらのものは、なお今後
注意をとどかせますならば、絶滅を期し得られるものではないかと考えます。
次に、代行工事について申し上げますと、これは全額国費支弁の
内容のもので、小規模の開墾とか干拓等の工事を都道府県に委託して行うものでございますが、全額国費支弁であるという点が災いいたしまして、工事
内容の選択においても、本来の
趣旨と合致しない
内容のものを採択したり、あるいは、それが一部目的を達し得る
内容のものであっても、たとえば道路において、従来の幅員で目的を達するのに、それを越えて路線の拡幅をはかっておるというようなもの、あるいは、土地改良の
内容を持っていて、当然それは国庫補助事業として施行し、地元で応分の自己負担をしなければならない
内容のものを、この代行工事として採択しておる。その他工事に特有のもの、すなわち積算の過大なもの、あるいは出来高の不足しておるもの、または工事が疎漏となっていて、所期の目的を達していないというようなものが相当件数
指摘されております。
それから公共事業
関係について申し上げますと、これは過去数年来
検査の徹底をはかりまして、
指摘いたしておりますが、三十年度におきましても、対象の約八%程度の個所を
検査いたしましたところ、当を得ないで、国庫補助金から除外すべき額の一工事十万円以上のものをあげましても、千三十二工事、三億三千百余万円に達しておる
状況でございます。これの
内容は、工事に特有のもので、出来高が不足しておる、設計が過大となっておる、工事の施行が疎漏であるという
内容のものでございます。そうしてこれに共通いたしておりますものは、事業主体が自己負担を回避して、多くは補助金程度で工事を施行し、はなはだしいものになりますと、補助金を下回る額で工事を終っておるという
内容のものでございます。これは農業施設、山林施設、漁港施設の三項目に分けて記載いたしてございます。
それから公共事業の国庫補助工事で、計画が当を得なかったために所期の目的を達しなかったというものが三件掲記されております。これは現地の実情を十分
把握しないで工事を急いで着手したとか、あるいは現地の実情に適しない施設物を設置したというような
内容のものでございます。
それから公共事業の
関係につきましては、
昭和二十八年当時の災害において、査定の段階における
調査が不十分なために、それが国の損失となる
関係のものがございましたので、査定の段階において
会計検査院で実地を
検査いたしまして早期に
検査して、不当
事項の発生を防止するという考えから
検査を施行いたしましたが、三十年度におきましても、特に災害の多かった地区を選びまして
検査をいたしました結果、三十年度発生災害において一億三千八百余万円、過年度災害において三億一千五百余万円の是正減額の
処置をとる結果となったのでございます。
それから次に、いわゆる一般補助について申し上げますと、
農林省
関係の国庫補助金は、補助費目において百数十項目にわたるのでありますが、そのうち、都道府県、市町村等を経由しまして、末端の事業実施者に交付される補助金を特に選びまして、さらに災害復旧
関係補助及び三十年度新たに設けられました農村振興総合施設整備費補助金などを重点的に
検査いたしました。その結果、従来に比べて、ある程度改善の跡は認められますが、末端に細分されますために、必ずしも適正とは言えず、すなわち経由
機関である市町村等でこれを
使用しないで保有していたり、あるいは補助の目的外に使っている。それから地元負担を全部または一部しないために、事業において事業量が不足しておるというようなものがやはり少くない
状況でございます。それからこれは一般補助の一
内容をなすものでございますが、二十八年度以降の凍霜害、風害 水害等にあいました
農林漁業者に、
農林中央金庫、都道府県信用農業協同組合連合会等の
系統融資
機関を通じて資金を貸し出させ、その利子の一部を国及び都道府県で負担いたしまして、末端の事業者はきわめて低利となるという構想の災害融資金に対する利子補給の
制度がございますが、これが非常に乱れておりまして二十九年度
決算検査報告にもその一端が掲げられましたが、三十年度
決算関係におきましては、それの
検査の徹底化をはかりました結果、末端の農業協同組合等で事業者に貸し付けないで、自己の運転資金に流用しておる、あるいは一応末端の事業者に貸し付けた形態はとっておるけれ
ども、各自の名義の定期預金に預入させて、それを
運営しておる、結局利子補給の効果のない
事態のものが多数発見されまして、これに対する是正の
処置を講ずるよう
当局に要請いたしたのでございます。
以上で
農林省一般
会計の分は終りまして次に食糧
管理その他の特別
会計についてここに掲記されております分を
説明したいと思います。まず食糧
管理特別
会計の三十年度
決算じりは、二億七千余万円の損失となっておりまして、前年度繰り越しの損失を合せまして、三十三億五千五百余万円の損失を翌年度に繰り越したのでありますが、この三十年度におきましては、過去において一般
会計から繰り入れを受けていた百億円を返還不要として処理いたしますとともに、三十年度の損失を埋めるために六十七億円を一般
会計から繰り入れました。そのほか食糧事務所等の土地、建物その他の固定資産を再評価いたしましたその差益、二十五億二千余万円がございますので、これらを一応損失として考えますと、
昭和三十年度の本特別
会計の実損失は百九十四億余万円となるわけでございます。このように損失が多額になりましたのは、
昭和二十九−三十年産の米麦の売り渡し価格に買い入れ原価を十分に見込むことができなかったために、売却するごとに一定額の損失を生ずる、いわゆる売却損が内地米において百四億余円、それから当該年度に売却を了しなくて翌年度に繰り越すこととなりましたものについて、年度末在庫の再評価をいたしました場合の評価損として、内地米で七十三億余円その他がございましたためでございます。
本
会計におきまして、不当
事項として
指摘いたしましたものは二件ございまして、
一つは外米の購入に当って需給計画がずさんであったために、必要以上の外米を購入して、それが年度を越えても多量の在庫品を生じ、保管料等もかさみ、また、水分含有量も比較的多いために、品いたみの心配すらもあるという
内容のものでございます。
もう一件は、外国小麦を購入する場合に、サイロに吸い上げますときには、含まれておる塵芥すなわちダストが除去されますが、買い入れのときにはそのダストも含んだもので買い入れておりますが、売り渡すときには、これが除去されまして品質が向上するわけでありますので、これを考慮して値段を決定しなければならないのに、これを考慮せずに売り渡し、ダストの分は別途きわめて低価に
処分したために、相当額の損失となったという案件でございます。
次に、農業共済再保険特別
会計について申し上げますと、この
会計は
昭和二十二年度に発足いたしましたが、その後も災害が多かった等の
事情によって、毎年一般
会計からの繰り入れがあります。それから共済の事業主体であります農業共済組合及びその連合会の事務費負担金としても、毎年度二十三、四億の支出がございます。その他、共済掛金についても、大災害の場合には国で全額持つ、通常の場合でも三分の一程度を国で負担するというように財政の援助をしておるのでございます。このようにして国の保護の厚いものでございますが、この
制度が農民になじまないために、共済
制度が農民と遊離しておるということは顕著な事実でございまして、あるいは災害があって保険金が入りましても、これを共済組合で留保していて、末端に配分しないで、それから組合の共済掛金あるいは組合
運営のための賦課金を徴収しないで、それに充当するとか、あるいは
損害を実
損害より過大に評価して、そして多額の保険金を連合会から収受するというようなおもしろくないものが多数発見されております。これは過大評価の分は不徳義のはなはだしいものでございますが、その他のものについて
内容を
検討いたしますと、この
制度そのものについても相当問題がありまして、たとえば一市町村の区域内でありますと、
損害の頻発するところも、また無被害に終始するところも、同一掛金率が適用されておる。それから農民の負担としては、税金に次ぐ負担となっておるにもかかわらず、
損害が発生しても、定収穫の三割をこえるものについて補てんを受ける建前であるが、それも十分ではない。それ以下のものについては、掛金等は掛け捨てとなるというような点で、農民のこれに対する協力、理解が薄いためだと考えます。これらの点につきましては、国会方面の御要望もありまして、
制度の改正を
当局において
検討され、完全とはいかないまでも一定の改正がなされまして、三十三年度の一月から新
制度で発足されておりますので、今後においては相当程度改善されるのではないかと考えます。
次に森林火災保険特別
会計について申し上げますと、国営の森林火災保険の
運営は、ほとんど大部分を都道府県知事に委任いたしておりまして、保険料の受け取り等の一部事務を市町村森林組合等に行わせているのでございますが、これらの保険
事故の認定等において適正でないものを本院において見出しましたので、従来
検査が届かなかったことも考え合せまして、これを重点的に
検査いたしますとともに、林野庁
当局に対しても、さらに事実について再
検討するよう要請いたしました結果は、本院の
指摘で百七十八万五千余円、林野庁の是正で百四十六万七千余円に上りました。これらは現地がへんぴな所でありますので、
検査の徹底に困難を感ずるわけでございますが、都道府県等の段階において、なお一そうの
検査を徹底していただきたいものだと考えます。
次に、開拓者資金融通特別
会計について申し上げますと、これも実は便利な場所にございませんで、この
会計における開拓者に対する資金融通の当否を
検討いたしますためには、他の方面の
検査が犠牲になりますので、とかく徹底は期しがたいのでございますが、この資金の融通についても、おおむねかんばしくないではないかというふうに考えます。
次に国有林野事業特別
会計について申しますと、この
会計は三十年度
決算じりとしては二億二千七百余万円の利益となっておりますが、北海道において
昭和二十九年に風害木六千九百余万石の発生を見ましたために、二十九年度で多額の損失を計上いたしました等によって、過去の累積しておる利益を相当額減殺したのでございます。国有林野の
関係の
検査におきまして、従来材積の
調査がずさんであったり、あるいは売り渡し価格の算定要素となる生産事業費等について適正を欠くものがございまして、これらを
指摘いたしましたところ、林野
当局において、それらのことはまず第一に適正を期さなければならないものであるということに反省されまして、
努力されました結果は、それらの
関係の不当
事項は著しく減少したと考えられます。ただ、遺憾なことは、ここに鶴岡営林署で
経理の紊乱をしておるものが掲記されておる点でございます。これは収納すべからざる予納金を収納して、そうして別途に
経理したというものと、それからいわゆる不実の
経理をしたものとに分れますが、不実の
経理の点について簡単に申し上げますと、過去において河川による流送をしていたところを、流失量が多かったが、それを過小に
報告したということと、それから二十八年の暮れから二十九年の初めにかけて、暖冬異変のために雪ぞりが使えなくて、運材の経費がよけいかかって、しかも成績が上らなかった、にもかかわらず、それを計画
通り精算完了したように一応
報告したために、その後においてそれのつじつまを合せなければならないということが不実
経理をする端緒となり、さらに、その不実の
経理を最後まで表面に表わさずに貫徹するために、秋田営林局でこの事実を発見した後においても、架空の名義によって人夫賃をひねり出すとか、あるいは造林費につけかえをするとかいうような操作をして、それのつじつまを合せたのでございます。その他においても、良質の材を価値の低い材と仮装して、それの差額を別途に保有して、接待費等に使ったという
内容のものでございまして、はなはだ遺憾な次第でございます。
もう一件は、国有林野整備臨時措置法によりまして、地元の村に保安林を
処分いたしたのでございますが、これは保安林として極度の制限を付したために、普通林野の評価額から六割を減額して
処分いたしたのでございますが、買い受けた地元では、その後間もなく、その林地の上の立木の全量を木材業者に転売して利得していたという
内容のものでございます。
以上で
農林省の各特別
会計の
説明を終ります。
次に、
職員の不正行為によって国に
損害を与えたものが三件掲記されております。そのうちの代表的なものは、
農林省の
農林経済局農業保険課の課員であった多久島某にかかわる不正行為でございます。これは不正行為金額として五千九百九十万余円が掲記されておりますが、三十一年の十月に千三百余万円の返還を受けましたので、その額だけが不正行為金額から減少しておるわけでございます。その他については一応省略さしていただきます。
以上で
説明を終ります。