運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-02-21 第28回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十一日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君    理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       小川 半次君    大橋 武夫君       太田 正孝君    上林山榮吉君       小坂善太郎君    坂田 道太君       須磨彌吉郎君    中曽根康弘君       永山 忠則君    楢橋  渡君       野田 卯一君    船田  中君       古井 喜實君    松浦周太郎君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手 以誠君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    岡  良一君       岡田 春夫君    島上善五郎君       松前 重義君    門司  亮君       森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松永  東君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   石井 榮三君         経済企画政務次         官       鹿野 彦吉君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    松井佐七郎君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十一日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として八  百板正君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八百板正辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算  昭和三十三年度特別会計予算  昭和三十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。  内閣官房長官より発言を求められております。この際これを許します。内閣官房長官愛知揆一君
  3. 愛知揆一

    愛知政府委員 一昨日の当委員会におきまして、予算関係法律案の国会への提出を取り急ぐようにという御発言がございまして、そのときに概略申し上げておったのでありますが、ただいま現在のところを御報告申し上げたいと思います。  昨日までに予算関係法律案を提出いたしましたものが四十七件、条約が一件、こういう状態でございましたが、今朝来さらに努力を新たにいたしておりますが、すでに閣議決定いたしましたものが、そのほか十八件に現在なっております。これは閣議決定をいたしましたので、印刷を取り急ぎまして、順次、今朝来すでに数件は提案の運びに相なっております。ただいままでに閣議決定をいたしましたものをすでに提案いたしましたものと合計いたしますると、六十五件に相なります。それからなお本日中にでもさらに持ち回り閣議等によりまして、それ以外のものも促進をいたしたいと考えておりますが、今明日中に持ち回り閣議決定を予想いたしておりますものが四件ございます。こういうふうな予定通りに運びますると大体七十件程度に相なるわけでございます。そうして残りますものが約十件ほどございますが、これは主として給与関係法律案、その中には通勤手当の支給というようなものが入っておるわけでございます。そういう関係が約六件でございます。そのほか残りましたものでは、いわゆる重要案件といわれるようなものはまずない、こういうように御了解になって差しつかえないかと思います。  以上、ただいままでの状況を御報告申し上げた次第でございます。
  4. 江崎真澄

    江崎委員長 質疑を続行いたします。松前重義君。
  5. 松前重義

    松前委員 私は科学進歩に対する政府施策について、内政、外交あるいはまた科学技術研究等に対しまして、若干の質問を試みようと考えております。  岸総理施政方針演説におきまして、先般次のようなことを発言しておられます。「最近、科学技術は、日を追って飛躍的に進歩を遂げつつあり、現代は、まさに技術革命の時代ともいうべきである。特に国土は狭く、国内資源に恵まれないわが国が、世界の進運に伍していくためには、科学技術の画期的な振興をはからねばならない。政府は長期的な観点に立って、基本方針を確立し、試験研究とその実用化を推進するとともに、科学技術教育の充実をはかっていきたいと思う。ただ科学振興に関し、私が痛感することは、科学を支配すべきものは人間であって、人間科学に支配されてはならないということである。科学飛躍的進歩に道義が取り残されるところに、実は今日の世界平和の根本問題があるのである」。この発言に対しまして、私は総理はお見えになりませんけれどもあと総理の御答弁を願うことを要求いたしまして、まず大蔵大臣に次のようなことをお尋ねしたいと思うのであります。  科学技術予算面におきまして、相当の増額を見たかのごとき数字が現われております。しかしながら、この総理発言に基いて、科学技術試験研究等に対して政府は相当な予算を組んだということで大体政府予算の原案の中に盛られておるのでありますけれども内容を探ってみますと、まことにその中にドレッシングがあるということを私は発言するのであります。政府はいたずらに予算数字を大きくするために次のようなことをやっておる。まず第一に文部省国語研究所費用が三千二百万円、文部省教育研究所が三千四百万円、厚生省の人口問題研究所が二千二百万円、運輸省の気象研究所経費が一億一千三百万円、総理府北海道開発土木研究所が手九百万円、これらかつて雑計の中に入っておったものをわざわざ科学技術振興に回しまして、そうして全体の数字をふやすためにドレッシングしている問題であります。これにつきまして大蔵大臣は、このような科学技術振興の正直なところを出さないで、わざわざ従来の国語研究所とか教育研究所とか人口問題研究所——これは直接科学技術振興という狭義の今日要求されておるところの自然科学研究関連性の薄いものでありますが、これをしも科学技術振興費の中に入れなければならないという取扱いをされたことに対しまして、一体どういうわけでこういうふうなやり方をされたかを伺いたいと思うのであります。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話がありましたように、三十三年度に新規に科学技術振興費にそれを計上いたしたことは事実でありますが、こういうような科学技術振興ということを特に取り入れたのは、これらのことを明確にいたしまして、そうして相互の間の関係も緊密にしたい、かような意味においてやっておるのであります。今回のこの科学技術振興につきまては、予算面におきましても実際に即して必要と考えられる分を特別に重点施策として計上いたしたのであります。御承知のように今回この科学技術振興費としては三十五億、前年に比べて約一九%の増額をいたしておりまして、この三十五億は原子力関係で十八億、一般で十七億、かようになっております。特に原子力関係等は昨年に比べて三〇%も増加しておるというような状況で、各所の研究所費用を充実いたしておりますし、また今お話のような試験研究所機関経費も八億以上、約九億を増額しております。かようにいたしておりまして、できるだけ科学振興には予算面においても裏づけをいたしたつもりであります。
  7. 松前重義

    松前委員 ただいま科学技術振興のために相当な金額を増しておるという御説明でありましたけれども、実際上原子力関係を除きますれば、科学技術振興予算の国家総予算に対する比率は、三十二年度は一・五七%、三十三年度は一・六四%、わずかに〇・〇六%の増加にすぎないのであります。すなわち一万分の六、千分の〇・六しか増加しておりません。一体これでも政府はあのような施政方針演説にまでうたつて科学技術振興をはかろうとしておるということが言えるかどうか。熱意のほどがあるのかどうか。大蔵大臣としてどいういふうなお考えであるか伺いたいと思います。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは昨年比におきましてそれほど大きな増加がないじゃないかというお話でございますが、三十二年度には特に原子力につきまして巨額な金を使っていろいろな施設をいたしました。ところが三十三年度では一応それほど多くの金は使わない、従いまして一般研究費一般科学振興につきましては、先ほども申しましたように十七億以上の増額で、昨年はそういうものが非常に小さかったのであります。ただこの総額がどういうというよりも、内容の点におきまして十分三十三年度は科学振興が充実される、かように考えております。
  9. 松前重義

    松前委員 原子力予算外国でやつております原子力予算に比べますと問題にならないほど少いのであります。これを盛んに原子力を中心にしてやったとおっしゃいますけれども世界の現状から見て、これっぽっちのことで日本原子力行政が、原子力関係科学技術進歩が一体なし遂げ得るかどうか、世界に伍していけるかどうか、この点は非常に疑問であります。これはあとで申します。  ただいま十七億くらいそのほかに増しておるというお話でございましたが、その内容を解剖してみますと、約二億円というものは試験研究所におきまして当然人件費等にこれを充当いたしますために増加する部分であります。すなわち昇給の部分とかそういうふうな意味におきまして、ほっておいてもこれだけは当然増加せしめなければならない。それから補助金の増が約七億円、文部省が五億、そのほかが二億程度でありまして、通産省の産業振興費一億四千万円等をこれに含んでおります。このようにして補助金は七億円という相当な額を、多くはありませんけれども、ある程度ここに計上してあります。そうして増加された部分のうちで、研究公務員待遇改善には四千六百万円を計上してあるにすぎません。すなわちすべての国立研究所研究公務員待遇改善にはわずかに四千六百万円。しかもこれは管理職だけでありまして、管理職手当が一人当り一年間に四千であります。従って一カ月には三百何十円にしかならない。超過勤務手当が一人当り一千円でありまして、一カ月当りわずか百円足らずであります。合せて五百円足らず待遇改善費を計上してあるにすぎない、しかしながら研究公務員待遇というものは、普通の各省事務官待遇に比べまして、大体五千円程度の差があります。差があるというのは、それだけ待遇が悪いのです。冷遇している。そうしてこの科学技術研究をやれというのであります。外国とはまるで逆であります。その五千円の差があるのに、両方合せても待遇改善が大体五千円だけに到達しない、こういうような状況で、一体ほんとうにこの科学技術研究というものを政府は本腰でやられんとしておるのかどうか、まことに疑わしいのであります。このようにしまして、その他必要なる経費としては科学研究所関係費が三億三千万円が計上されております。こういうような状況でありまして、内容から見れば国立研究機関研究費増額というものはほとんどありません。これで一体科学技術研究というものの奨励並びに科学技術振興ができるかどうか、この点についてはまことに羊頭狗肉の感を私は深うするものでありますが、大蔵大臣のただいまの御説明とはまるで違った結論を得ておる、私どもそのように見ておるのでありますが、どういうふうにお考えであるか伺いたいと思います。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 科学技術に従事されておる方々の給与関係は、私も一般に比べて悪いように聞きましたので、それではやはり安心してできないから、できるだけこの悪い点を直すようにということを考えまして、今回もできる限りやったのですが、何しろ一挙にというわけにもいきかねる事情もありまして、これは御説の趣旨は十分体しまして、まあ一応こういうところになったのでありますが、今後十分私は検討を加えて、安心して研究に没頭ができるような態勢に、財政の許す限りしていきたい、かように考えております。それからその他の研究費、いろいろありますが、実は私は今度は科学技術振興については非常に金を出しておりますので、実はそちらの方面も非常に満足をされて、今度は一言の不平もない、非常に科学技術予算を出してくれた、こういうふうにいわれておるくらいでありまして、教官等研究費につきましても四億五千万円程度のものを増額いたしますとか、あるいは原子力研究費もふやす、研究所も増設していく、こういうふうにやっております。しかしまたこの専門の方から見られれば、何さま日本は少しおくれておりますから、不満の点が多いと思います。がしかし、おくれておればやはり基本的なところから始めていかないとどうにもならないので、ただ金をかければいいというわけにも——こういう点御意見もありましょうが、金をかければいいというわけにもいかない。やはりじみちにまず研究から行く。これはおくれておる国はいたし方ないのじゃないか、かような考えもいたしております。
  11. 松前重義

    松前委員 ただいま研究公務員待遇は一挙にはよくならない、まだ各省事務系統のところまでは待遇改善はいかないが、だんだん近づけよう、こういうお話でありましたが、これは優遇でなくてまだまだ普通のレベルにも達しなというだけの話で、これで一体科学技術奨励なんというものができるかということは、これはもう明瞭なことであります。  そこで私は一例を引きまして、これは農林大臣に伺いたいのでありますが、農林省関係試験研究所経費予算は、三十二年度では二十五億、三十三年度では二十六億一千万円であります。従ってこの差は一億一千万円の増額になっております。この一億一千万円の内訳を見てみますると、まず第一に人件費がこの予算のうち、三十二年度が十七億二千五百万円、ところが三十三年度にはこれが増加いたしまして、二十六億一千万円のうち十八億六千万円、これは給与の値上りその他によって自然に増さなければならないものであります。ところが旅費におきまして、三十三年度、本年度が四千七百五十九万円、そうして三十三年度は四千二百五十万円でありまして、大体五百万円以上の減額になっております。旅費は減っております。それから庁費といたしましては、三十二年度が七億二千八百万円で、三十三年度は七億二百六十万円、すなわちこれまた千八百万円ばかり減額になっております。このようにいたしまして、この人件費は自然にふやさなければならないものであって、これのために旅費庁費は片っ端から減っておる。従って研究用施設研究費用もない、こういう状態で一体この研究ができるかという情勢になっておりまして、私はこれで満足をするはずはないと思う。これは一体科学技術研究を重要視しておられるかどうかという問題に対して、私どもは疑問を持つのでありますが、一つ農林大臣からあなたのお気持を承わりたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業関係技術を尊重し、また農業関係に携わっておる人々の待遇等を改善しなくちゃならぬということは私も強く考えておるわけであります。ただいま減った面の御指摘がありましたが、御承知のように農林省におきましても農林水産技術会議というものを特に置きまして、技術方面には非常に力を注いでおるわけであります。ただいま御指摘がありまして、いろいろ数字等の問題もありましたので、簡単に御答弁を申し上げますが、研究方面その他にしわ寄せになって十分な研究ができないじゃないか、こういうことでありますが、私といたしましても十二分にこの方面研究を進めていきたいと考えております。数字の点でちょっと申し上げますと、研究機関施設費でありますが、これは三十年までは多くても二億円程度でありましたが、三十一年度には三億六千九百万円、三十二年度には四億六千万円、三十三年度には五億一千六百万円として、施設近代化をはかっておるわけであります。その他御専門の方の原子力平和利用関係の支出といたしましても、トレーサー実験室ガンマー線照射室等を設置することといたしまして、三十三年度におきましても七千五百万円をこれに充てております。また新しい研究用機械器具の購入のためには、特殊機械整備費といたしまして三十二年度に四千七百八十万円に対しまして、三十三年度は五千五百八十万円を充当いたしまして、研究高度化に応じまして機械器具近代化をはかっておるわけであります。こういう個別的、基礎的な研究の進展に応じまして、総合調整をはかるために、一そうこれの推進をすることが必要でありますので、先ほど申し上げましたように農林水産技術会議を設けまして、これが技術研究調査費を三十二年度には二億二千二百万円、三十三年度には二億三千三百万円、各種重要な研究をいたしておるわけであります。しかしながら今御指摘のように、試験研究費といたしましては三十年度の二十六億一千万円から急激に増加して、三十一年度には二十九億三千万円、三十二年度は三十二億四千万円、三十三年度の御審議願っておるのは三十四億二千万円、実は全体といたしましては増加しておるわけであります。しかしながら昨年度の豊作というようなことの一つの大きな原因も、農業技術進歩が寄与するところが大であるということなども一般の常識になっておるようなわけでありますので、農業技術進歩につきましては、御指摘の点などを十二分に考慮いたしましてなお進めていきたい、こう考えております。
  13. 松前重義

    松前委員 私があげた例は決して農林省だけの現象ではなくて、これは各省にまたがる試験研究機関に対する政府羊頭狗肉の措置の一つの例にすぎないと思うのであります。大蔵大臣はこういうふうな内容から見て、まるで人件費自然増だけに依存して、ただいま農林大臣は三十年度あたりからずっと引っぱってこられたのでありますが、しかし私の言うのは、ことしわざわざ総理施政方針演説で、ああいうふうな熱心な科学技術振興ということを主張された。それが果してこの予算面において具体的に実現しているかという問題であります。去年は言われなかった、ことし言われた。だからことしは思い切った政策が具体的に予算面に出てきているだろうと私は思っておったら、まことに意外な現象でありまして、先ほど来申しましたような、従来雑件で出しておったものまでも科学技術振興費の中にぶち込んでしまって、全体の数字のワクを大きくして、いかにもふえたようにドレッシングをしてあるというようなこと、あるいはまた、ただいまのような農林省の例から見ましても、旅費も減らし、庁費も減らしまして、ほとんど研究ができない、昨年より減っている。こういうことでは、ほんとう科学技術振興をはかっておられる予算ではないと私は思うのでありますが、大蔵大臣一つこの点について伺いたいと思います。同時にまた科学技術庁長官に、一体こんなもので御満足であるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどからお答え申し上げましたように、三十三年度におきましては、特にこの科学技術振興ということは、単に政府重要施策であるばかりでなく、日本が今日国際情勢下において当面しておる非常に重大な事柄である、かように考えまして、できるだけ予算裏づけをいたしたつもりであります。先ほどからそれらの内訳についても申し上げたわけでありますが、しかし要するに科学振興については、この事自体はより重大であるが、同時に科学振興を推進していく行き方について、特に日本は従来おくれておっただけに、どういうふうに対処していくのが一番いいかという点についても、やはり十分な検討を加えて、そういう意味におきましてじみではあるが当初はやはり謙虚に基本的な点を身につけていく、それから順次国費の許す範囲内においていろいろな設備等も拡大していくような行き方が適当ではないか。これらについても専門家のそれぞれ意見を聞きまして、今後予算裏づけもできるだけ努力をいたしていきたい。決して今の状況満足しているのではありません。しかし出発といいますか、科学技術振興について、ここから一つほんとうに力を入れてやろうという踏み切りとして、こういうところでいいだろう、かように考えております。
  15. 正力松太郎

    正力国務大臣 科学技術予算につきましては、実は大蔵省も割合に好意を持ってくれたのでありまして、額が御指摘通り十分でありませんけれども、何分日本科学技術は非常におくれておったのでありますから、従って急にこれに持っていこう、また予算ばかりたくさんとってもいかぬ、これは松前さんは科学技術専門家だから、私が申し上げなくても御承知のことだと思いますが、とにかく大蔵省としては今度——あるいはさっき大蔵大臣説明したか知りませんが、昨年度よりは三十五億、原子力の方で十八億、ほかの研究費で十七億ふえているわけであります。とにかくこれだけの予算をとればまあやっていけるだろう、だろうじゃない、やっていけると信じているわけでありますから、どうぞ……。
  16. 松前重義

    松前委員 やっていけるというような抽象的なお言葉では、正力さんも外国のことは十分御承知でありましょうから、私どもはあなたの本心から御発言になったことであるとは思いません。それは日本をどのような経済的なまた政治的な地位にまで押し上げようかというその目標によるのでありまして、その目標が低ければそれは何だってやっていけるのであります。けれどもこのくらいでやっていけるというようなお考えでは、私はなかなか科学技術振興はあり得ないと思う。少くとも科学技術庁長官だけはうんと不平を持つくらいでなければ、私はとても日本が各国に伍していくだけの今後の運営はできないと思うのでありますが、もう少し一つ張り切ってうんと不平を持ってやっていただきたいと思うのです。ただしかしそれはこれ以上問題を追及いたしません。  その次にお伺いしたいのは、外国特許料として支払っている金額——大蔵大臣おいでになりませんか。
  17. 江崎真澄

    江崎委員長 今大蔵大臣は参議院の本会議へちょっと出かけました。間もなく戻ることと思います。主計局長はおります。
  18. 松前重義

    松前委員 特許料として外国に支払っておるロイアルティ、すなわち科学技術料でありますが、これはどのくららい外国に支払っておるか伺いたいと思います。
  19. 石原周夫

    石原政府委員 今すぐ取り調べましてお答えを申し上げます。
  20. 松前重義

    松前委員 お取り調べになるそうでありますが、それでは私がお教えしましょう。大体特許料は一億ドルであります。その一億ドルが、ただ日本科学技術的にアメリカその他の国よりも低いために、海外にただ——ものを日本に買うことの代償、その代金でなくて、その頭脳的な知識が低いために支払われておるところのお金であります。これを支払わなくてもいい地位まで急速に上らすということは非常に重要であるというのが、私は岸総理が言われる科学技術振興一つの経済的な面に対する目的ではなかろうかと思うのでありますが、科学技術庁長官はどういうふうにこの点についてはお考えになりますか。
  21. 正力松太郎

    正力国務大臣 特許料の莫大な額を外国に支払っておることはまことに遺憾に思っておりますが、御承知のごとく日本科学技術において戦後非常におくれておるのでありまして、自主的に研究もしておりますけれども、どうしても外国より取り入れなくちゃならぬ点がありますので、実はその点に対する対策といたしまして、今理化学研究所技術開発部というものを置きまして、そうしてこれは相当の予算もとりまして、大いに研究させることにいたしております。
  22. 松前重義

    松前委員 非常におくれておる、そうしてたくさんの特許料を海外に支払っておる。だから何とか支払わぬようにしなければならぬが、これに対しては現在の予算で十分であるとさっきおっしゃったのですが、私はそこを伺っておるのであります。一体十分これで相当急速にできるのでありますか。
  23. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど申し上げました通りに大へんおくれておるので、これを取り返すために予算ばかりそうたくさんとれてもしようがないのでありまして、こういう程度の開発団でやらせればよくないか、こう思っております。
  24. 松前重義

    松前委員 その次に防衛庁にお伺いいたします。防衛庁の防衛技術研究のために二十二億五千万円でありましたか予算をおとりになっておられます。昨年よりも相当に増額されておりますが、一体防衛庁ではどういう御研究のためにそういう予算をおとりになっておいでになるのですか、大よそのところを一つ伺わしていただきたいと思います。
  25. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。防衛庁では御承知のように技術研究所において科学技術研究開発をいたしております。ただいま仰せになりました金額は、あるいは予算数字として一部であるかと思いますから、一応数字を申し上げます。技術研究所予算として三十三年度では十九億一千百万円でございます。これは固有の予算でございます。それ以外に陸海空各幕からその方の予算技術研究所研究をさすという予算もあるのでございます。これらの予算は大体十四億を三十三年度で予定いたしております。従って固有の予算並びに各幕の研究のためにする予算を合計いたしますと約三十三億になる。こういう数字でございます。この予算をもって何をするのかという研究開発の題目でございますが、これは非常に雑多でございます。まず第一に誘導飛翔体といった研究、すなわちAAMであります。あるいはSAMまたAAR、これはロケットでございます。その他迎撃関係に関した武器の研究であるとか電子力の研究、また対潜関係、潜航艇に対する防衛の方法、これにもいろいろございます。さらに陸の関係においても特車その他の武器の関係、装備の関係、こういったものでございまして、大体これを技術研究所におきましては八部に分けまして、おのおのその担当の事項について調査、研究、開発といった段階まで進んでおる、こういうのでございます。
  26. 松前重義

    松前委員 いずれ防衛庁関係あと総理の御出席の後に質問いたします。  大蔵省では科学技術振興のために会社その他の法人に対する租税の特別措置を講ぜられるというので本年度十億の租税の減額予算を出しておられるのでありますが、この内容について伺いたいと思います。実際これを運用される面において非常に重要な問題があると思うのでございますから、その点を伺いたいと思います。
  27. 石原周夫

    石原政府委員 今すぐ担当者が参りますから、そのときにお答え申し上げます。  ついでをもちまして恐縮でありますが、先ほど松前委員からお尋ねがございました技術援助のロイアルティの関係についてこの機会に申し上げさせていただきます。三十一年度におきまして外資法の関係におきます甲種技術援助と申しますものが二千八百四十一万八千ドル、乙種に属しますものが百七十七万二千ドル、合計いたしまして三千十九万ドルという数字に相なります。
  28. 松前重義

    松前委員 今の特別措置に関する問題をお答え下さい。
  29. 石原周夫

    石原政府委員 今主税局長が参りますので、参りましたらお答えをすることにさせていただきます。
  30. 松前重義

    松前委員 ただいままでのところは、大体政府科学技術予算というものには相当に重点を置いたというようなことでありますが、総合的に見てみますると、防衛庁関係研究費は大幅に増額されておる。それから第二は、原子力関係は、日本としてはよほど一生懸命になってこれに力を入れられたつもりでありましょうが、一応これは増しておる。けれども世界の実情から見ると、まだ足元にも寄れない程度である。けれどもとにもかくにも日本科学技術に対する予算の一応の増額を見ておる、こういうことになるのでありまして、大体総合的に見て、科学技術に関する総理施政方針演説の中に、あのような熱心な文句があったにもかかわらず、現実においては、いろいろその中にドレッシングがあったり、従来よそのワクの中に入れておったものをわざわざここに持ってきて数をふやしてみたり、あるいはまたその内容をしさいに検討すると、人件費自然増は認めるけれども旅費やその他庁費など研究費はほとんど認めない、昨年より減額されておる、こういうような現実を私どもは発見するのであります。あと総理の御出席のときに総理のお気持を伺いたいと思うのでありますが、こういう意味において、政府科学技術振興に対する熱意は、一応熱意があるごとくに見せかけてはおるけれども、現実にはその内容はまことに貧弱であるばかりか、ある意味においては、むしろ科学技術振興の逆をいっている面を見出すことができる、こういうように私は痛感するものであります。こういうような予算で、先ほど正力国務大臣は十分やって参れますということでありましたが、十分やっていかれるという目標は一体どこにあるか、どの辺まで日本を持っていこうとしておられるのか。この問題について伺いたいと同時に、もう一つは、西ドイツなど非常に経済力が増大しております第一の理由は、やはり科学技術振興に第一に着目したからでありまして、それを重点にして、会社でも何でも科学技術研究を中心にして経営されているからであります。これは皆さん方御承知通りであります。そこに経済政策の根本問題があるのであって、西ドイツを一応参考にして見るときにも、こんな程度で一体科学技術振興をはかり、日本の経済力の培養をして、そして多額の特許科を支払わなければならない日本の現状を打破して、日本の経済的な発展を企図する、輸出の増大もはかる、こういうことができるとお思いでありますか。いいかげんな答弁はやめていただいて、まじめなお考えを伺いたいと思います。科学技術庁長官からお願いいたします。
  31. 正力松太郎

    正力国務大臣 科学技術について欧米先進国に劣っていることは、先ほどお話しした通りでありますので、どうしても先進国に追いつかなくちゃならぬという考えを持っているのであります。それについては、まず第一に科学技術教育をこの際大いに進めなくちゃならぬと思って、すでに文部省には、昨年、一昨年提案をしておるわけなんでして、それで文部省も今度四月から科学技術教育に対してだいぶ進んだ考えを持ってきております。それからなお、われわれが考えておるのは、どうしても研究費増額しなければならない。先ほど指摘がありました通り、確かに研究費は少いのでありますから、この研究費一つ広く公私学校等に対して増額したらどうか。公立学校のみならず、民間の方にもしなければならぬと思っておりますが、いずれにしても研究費増額すること。それから先ほどたびたび御注意がありましたが、待遇の改善、確かに今まで日本科学技術者に対する待遇は悪かった。これをぜひ一つ改善しよう。先ほどだいぶ金額が少いじゃないかというお話がありました。確かにあの程度では十分でないと思いますが、先ほど大蔵大臣が言ったごとく、一挙にいきませんから、まずこの程度増額する。私どもはこの三つの点に重点を置いてやっておるわけであります。
  32. 松前重義

    松前委員 私がお尋ねしておるのは科学技術研究その他の施策を実行される上において、一体何を目標にしてやっておられるのか。どの程度まで、どのくらいの期間に追いつこうとしてやっておられるのか。その総合的な目標、これに対する現在の予算がどういう役割をその目標に対して演ずるのか、ここのところを伺っておりますので、これを一つ伺いたいと思います。
  33. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど申し上げましたように、目標としておるのは、一つ先進国に追いつこうということであります。それについてはまず私どもは、先にも申したように、どうしても技術教育を強化しなくてはならぬ、研究費もふやさなくてはならぬ、また待遇も改善しなくてはならぬということで、それにつけてもこの際に一つどうしても根本の重要総合政策、こういうものを十分一つ練らなくてはならぬと思いまして、今度原子力会議といいますか、そういうものを作ったのであります。そしてすべて総合的研究をやらしたい、こういうふうに考えておるのであります。
  34. 松前重義

    松前委員 先ほど来申し上げましたように、科学技術研究は、少くとも経済政策には切っても切れない関係を持つものであり、西ドイツなどが今外貨百億ドルを持つに至って、しかも輸出奨励どころか輸入奨励をやっておる。そして世界市場の獲得をはかっておる。輸出もそれとほとんどバーター的にやりながら、世界市場の獲得をはかっておる。日本よりひどくやられた西ドイツが今日まで来たのは、非常に大きく科学技術研究費があずかって力あるのであります。そういう基本的な政策を、今後の日本の経済復興のために打ち立てなくてはならない。岸総理が、科学技術振興に対する施政方針の演説をわざわざされたゆえんのものは、何らかそこに科学技術研究を通じて、日本の経済力の培養に、具体的な御計画と目標とがあるかどうかということを——また多分あるであろう、こう思って実は予算書を見たのでありますが、ところがどうも支離滅裂でありまして、一つも総合的なたくましい御計画をお持ちにならぬような感じがしたのであります。もちろんこれは、科学技術庁だけでもって方々御努力になりましても抵抗が多くてできなかった、抵抗が多くてできなかったというならば、これは内閣全体の歩調がそろっていないことになるのでありまして、私はこういう意味において正力国務大臣ばかりでなく、最後に岸総理にも伺いたいと思うのでありますが、そのお言葉の通りにどうもこの予算はでき上っていない。同時にあなたの今のお言葉を伺っても、明年以降来年、再来年、何年後にはここまでいくのだという具体的な御計画をお持ちになっていない。これでは私は日本の経済復興はできないと思う。もう一ぺんお尋ねしまするが、そういうふうな意味における経済復興に資するための具体的な計画、西ドイツが今日まで復興したような、あのような非常な希望的な光を与えるところの科学技術振興の御計画、経済力培養のための科学振興の御計画があるかどうか、これを伺いたいと思います。
  35. 正力松太郎

    正力国務大臣 お話のことにつきまして、私ども科学技術庁として長期計画を練りつつあります。しかし私は、この科学技術庁だけではいけないのだ、先ほども申し上げました通りに、ここで技術会議というのを作って、総理大臣を委員長として、文部大臣あるいは大蔵大臣、経済企画庁長官、それに私どもも入って、そのほか必要に応じて関係閣僚に出てもらう。そういう態勢をとると同時に、これには民間の有識者、学識経験ある八四名、しかもそのうち二名を常任として、そうして研究してもらいたい。お話にもありましたが、各省の抵抗といいますか各省のセクショナリズムです。これに困っております。これを打破するのは、僕はこの機関ででき得る、こう思っておるわけであります。
  36. 松前重義

    松前委員 どうも正直な御発言でありまして、内閣の不統一を具体的にここに露呈されたような感じがします。とにかく行政機構の改革と申しまするか、一つ科学技術会議のようなものを作ってこれでやるんだという。それは私は今年度の予算面に現われた具体的な岸総理発言の実現の姿ではないと思うのでありまして、言いかえると、まあこれから考えようというのんきなお姿でありまして、この問題については後刻また岸総理にお尋ねをすることにいたします。  次に原子力に関して私は少しばかり伺いたい。原子力に関する国際的な原子力の問題につきましては、後刻同僚岡議員より質問をいたすことにいたしておりまするので、私は原子力に関する予算と、これに関連した二、三の問題について伺いたいと思います。  まず第一に原子力に関する研究に伴うところの予算、これは一体今日の程度予算で十分であるとお思いになりますかどうか。これは外国から比べますると、大体フランスあたりの四分の一程度じゃないかと思うのであります。西ドイツに比べてもはるかに少い、英国に比べても大体十分の一程度だと思う。アメリカに比べてももう問題にならない。ソビエトその他に比べたら問題にならない。インドよりも少い。こういうような状態で、世界に追いつこうというお話が今ありましたけれどもあとから行ったやつがどうもおなかがすいておったんじゃ、追いつけるものじゃありません。一体それができるかどうか、正力国務大臣に伺いたいと思います。
  37. 正力松太郎

    正力国務大臣 原子力予算につきましては、先ほどお話通り外国に比して、ことにアメリカあたりに比して、大へん少くなっております。しかし御承知のごとく日本原子力に対しては非常におくれておったのであります。従って今急に予算ばかりとってもそうはいきませんので、私はこのくらいの予算ならば十分いき得ると信じておるわけであります。
  38. 松前重義

    松前委員 どうも抽象的な御答弁で、のれんに腕押しみたいなことでまことに何でありますが、その次に伺いたいのは、原子力発電株式会社の問題であります。原子力発電株式会社というものは、大体電源開発株式会社が株の四割を出資して、各地の電力会社等がその他の三割、それからメーカーが三割、そういうふうな資本構成でお作りになっておられた。ところが電源開発株式会社なるものは、こういう原子力発電に出資ができるかどうかという法律的な問題があるのであります。この点については法制局長官にもあとで御答弁を願いたいと思うのでありますが、電源開発株式会社というものは一体どういう事業をなすことができるかと申しますと、いろいろ書いてありますけれども、こういうことが書いてあります。電源開発促進法の第十三条第二項に、「基本計画において会社が行うべき電源開発の地点を定める場合には、その地点は、左の各号の一に該当するもののうち、会社以外の者が具体的な計画を附して電源開発を行うべきことを通商産業大臣に申し出たものであって審議会においてその計画の内容が適当であり、且つ、その計画の実施が可能であると確認されたものに係る地点を除いた地点に限る。」その第一、「只見川その他の河川等に係る大規模な又は実施の困難な電源開発」、第二、「国土の総合的な開発、利用及び保全に関し特に考慮を要する北上川その他の河川等に係る電源開発」、そして第三としまして、「電力の地域的な需給を調整する等のため特に必要な、火力又は球磨川その他の河川等に係る電源開発」、すなわちこの電源開発株式会社の目的なるものは、このような只見川や北上川やあるいは球磨川のような、水力の開発、発電所の建設に困難なようなところをこれが引き受けてやるというようなことであり、特に火力においてこれに許されるところは、その需給に対する調整のための火力発電所を建設してよろしい、こう書いてあります。ところが電源開発ではなくて、原子力発電株式会社に対してこれが出資し得るような条項がどこにあるかといえば、どこにもないのであります。原子力発電ということはどこにも書いてない。この電源開発促進法なるものができましたときには、原子力などということは考えてもいなかったときでありまして、そのときにできたところの法律のどの条項を適用して、この原子力発電株式会社にこれが出資するようにされたものであるか、その点法律的な解釈を一つ伺いたいと思うのであります。
  39. 正力松太郎

    正力国務大臣 電源開発促進法に火力という点がありまして、原子力はその火力の中に入るという考え方を持っております。
  40. 江崎真澄

    江崎委員長 松前君、御質問の途中ですが、さっき大蔵省側で留保しました答弁を、ただいま説明員が見えておりますが、今ついでにいたさせましょうか。
  41. 松前重義

    松前委員 これが済んでからでよろしゅうございます。  原子力発電は火力の一部分であるという御解釈でございますが、どういうわけでそういう御解釈をおとりになったか、お伺いします。
  42. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律の解釈でございまして、私からお答えいたしますが、この問題は松前先生も御承知通りに、昨年の九月と十一月の衆議院の科学技術特別委員会でも問題になりまして、私ども政府委員から一応実はお答えしたところでございます。お答えする根拠はあのときに申し上げたことに尽きるわけでありますが、もう一ぺん申し上げますと、いわゆる電源開発促進法は電源開発としては水力または火力と二つをあげております。そこで原子力発電というものが水力に入らないことは御承知通りであります。火力に入るかどうかという問題がここにあるわけであります。そこで火力と申しますのは、日本語では火力と申しておりますけれども、これは御承知通り、英語または原語でいえばサーマル・パワー、熱力、つまり火力とは次の力を直接使うものではありませんで、火で起した蒸気をもってタービンを回す、つまり熱の力を利用するのが火力と考えられると思います。私も技術的なことはよく存じませんが、現在のところ考えられております原子力発電は、やはり原子力によって起した蒸気をもって発電機を回す、こういう性質のものだと私は存じております。従いまして現在における原子力発電、これはやはりいわゆるサーマル・パワーを利用したものと考えていいもの、かように考えるわけであります。火力という言葉の中にそういう意味原子力発電、将来技術の発達によって原子力から直接電気を作るという方法ができた場合、これはどうかとおっしゃる御疑問もあろうと思いますが、私はそうすぐには言えないと思います。現在における原子力会社がやろうとしておるもの、これは熱力を利用するものでございますから、火力という言葉の中に入る、かように考えてしかるべきものと思います。何ゆえに電源開発促進法の立法当時においては水力または火力として、原子力を入れなかったか疑問ではないかとおっしゃる疑問もあると思います。確かにおっしゃる御疑問もあると思いますが、当時は原子力という問題はそれほどに考えておらなかったということは事実だと思います。しかしこれは実は法律解釈の第一歩と申しますか、釈迦に説法になるかと思いますが、立法当時のことはもちろん解釈の有力な資料でございますが、私どもとしては法律を解釈するのは、そのときにおいて合理的にどの範囲において解釈ができるかということが法律解釈の態度であると考えております。現在において熱力を利用する原子力というものが火力に入らないということは、むしろ解釈としておかしな解釈で、むしろこれは入ると考えた方が合理的である、かように考えております。
  43. 松前重義

    松前委員 まことに奇妙な御議論でありまして、あなたのおっしゃることをたとい私どもが一応肯定したと仮定する——それは肯定できません。何となれば火力と原子力は少くとも違います。これは何といっても、あなたがどんなに強弁されても、または法律の専門家であっても、法律が科学を歪曲するわけには参りませんよ。私はそれほど法律は私学に優先していないと思う。だからそういう意味におきましても、これはもうあまりここでいろいろな議論をする必要はない。けれども、もしもあなたが今おっしゃった通りのふうに仮定したといたしましても、もうすでに、ここにありますが、ニュー・クリオニクス誌というアメリカの雑誌には、この原子力の放射線を熱に変えないで、途中で熱という手段を講じないで、電気に直接これを変える方式がすでに提案され、研究されておるのです。だからこれは違うのですよ。途中でちょっと熱に変っただけの話であって、もともとは火ではないのです。原子力は火じゃありませんよ。これはよくお考えになるとわかります。だからしてこの点は私は根本的な法律の違反であると思う。もしもあなた方が必要とあるならば、ここの論文を教えてあげましょう。ございますよ。直接電気力が与えられるプラズマの研究というのがちゃんと出ております。それは火というものは化学変化を起して、そうして熱が出る。ところがこっちのやつはいわゆる核分裂でありまして、いわゆる化学変化ではない。そこのところ明確に学術的に区別されておるものであります。それをわざわざ火力の中に入ると、苦しまぎれであったかどうか知らぬけれども、法律的に勝手に解釈しておいでになるということは、私は根本的な法律違反をおやりになったと思うのでありますが、一つもう一ぺんこの点について御答弁願いたい。
  44. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま申し上げました通りに、実は松前先生が今おっしゃいました、原子力が直接に火を熱に変えないで電気を作る方法、これについては先ほど私がお断わり申し上げたはずであります。つまり現在考えております原子力発電は熱の力を使っておるわけでございます。熱の力を使う原因として石炭をたくか原子核の分裂を使うかという問題だと私は思うわけでございます。そういう意味において、熱力を利用しているということが言えるのであります。これは実は常識上の問題でございますが、御承知のように、原子力を第三の火あるいは第二の火と申す人もあるわけであります。これはそういう意味において、つまり熱力を作るもとを今考えておられる。ところが法律の解釈といたしましては、火力というものをそう固定的に化学の定義と合せて考えなければおかしいということには私はならないと思うのでございます。この点は、これも言うまでもないことでございますが、旧刑法時代に電気窃盗という問題が起りまして、いわゆる窃盗は有体物に限るということでございましたが、この電気というものが新しくできて、電気の窃盗ということが窃盗になるかどうかということで、裁判所は電気を物と考えるべきである、効用の見地において物と同様に考えるべきだという有名な判決がございます。法律の解釈は私は実はそういうものではないかと思っております。法律の解釈としては、現在の法律において合理的にどの範囲まで解釈が認められるかという見地から考えるべきものだ、かように考えております。
  45. 松前重義

    松前委員 これは科学技術庁長官に御見解を伺いたいと思いますが、一体化学的現象にしても学術的なこういうふうな解釈の問題にいたしましても、法律がこれらの学術的な解釈、学術的な内容に対しまして優先するものであるかどうか、やはり化学は化学としての純粋な立場で考えるべきものであるかどうか、この点に対しましては正力国務大臣は直接の御関係者でありますから、あなたの御見解を承わりたい。
  46. 正力松太郎

    正力国務大臣 法律的な解釈は法制局長官意見に従うよりほかないと思います。私はまだしろうとであり、これは法制局長官の言うことに従います。
  47. 林修三

    ○林(修)政府委員 私のただいま申しましたことは、決して科学に対して法律の力が優先するとかそういうことを申したわけじゃございません。法律の言葉の解釈の問題であります。これはもちろん化学的の問題については、化学の常識に従って解釈すべきことは当然でございます。言葉がどう用いられているかといことは、やはりその社会通念に照して、社会常識で解釈し得る範囲、これは絶対にできないんだといっていれば実は法律解釈は非常に楽でございますが、やはり合理的な解釈というものがそこに法律解釈の第一歩として出てくるわけであります。御承知のようにこれも例を引くまでもございませんが、現在電気事業について適用しております公益事業令、あの法文を読んでみますと、水力と火力しか実は予定していないような法文になっております。しからば今の電気会社は原子力発電ができないかということになりますと、これは私は現在においても当然認められるべきものだ、かように考えております。
  48. 江崎真澄

    江崎委員長 松前さん外務大臣はいいですか。
  49. 松前重義

    松前委員 一番最後になります。
  50. 江崎真澄

    江崎委員長 あなたの時間はだんだん超過して、ございませんので、総理は今参議院を終ってここへ来るそうでございますが、できましたら一つ先に外務大臣の方におやり願いたいと思います。
  51. 松前重義

    松前委員 どうも常識的に考えて、社会通念としてというお話でございましたが、私の言うことは常識的でなくて、社会通念に反しておるような御発言のようにどうも耳が痛く聞えます。けれども科学技術特別委員会におきましてこの論議が出ましたときに、自民党の平野三郎君は立ち上って、この電源開発促進法が制定されるときには、全然原子力発電は考えていなかった。大体この問題についてはその当時の論議の中にも全然出てこなかったところの原子力発電を、この火力発電の中に含むとかいうようなことを考えるのは間違いであると自分は思う、これはすなわち、われわれは科学者ではないけれども常識的判断に訴えて、それは解釈の間違いであると自分は思うのだということを、堂々と彼は自民党の代表として発言しておられます。従って科学技術特別委員会は、あなたの意見に反して、これは法律違反である、だからして穏便に頼むというような申し入れが実はあったのです。というのは、もうこの法律を変えるから何とか一つ過去を追及しないでくれ、正力さんをいじめないでくれというような妥協が申し入れられておるのであります。それがいまだに解決しないから私はここで問題にしておるのであります。これでもあなたはやはりまだあなたの説を固執されますか。
  52. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律上疑問のある点について立法的解決をしていただくことは私はもちろん賛成でございまして、私といたしましては、先ほどから申し上げました解釈で正しいと思っております。しかし疑問のある点について、それを立法的にはっきりさせることは、これはもちろんやるべきことでございまして、当然そういう措置があって私はしかるべきだと思っております。しかし先ほど来私が申し上げました解釈は、いわゆる立法当時の立法者の意思というものは、解釈上尊重せらるべきことは当然でございますが、しかしそれのみが後まで、何年たっても解釈を固定するというものではないと思います。立法当時に予定されなかった事情が起った場合に、その事情をその法律に当てはめて解釈しているものかどうかということは、法律解釈学の第一歩だと私は思います。それに従って解釈した場合に、私は入り得るものだと、かように申し上げておるわけであります。立法当時に予想されなかったことはお説の通りでございます。それは先ほど電気窃盗と刑法の関係について申し上げたと同じであります。立法後に起った事情が果して解釈上含み得るかどうかということは、法律解釈の問題であります。これは、私は合理的にやれば、先ほど申した理由によってできるものである、かように思っております。しかし今おっしゃったように、それを立法的に明らかにすることは、もちろん私はやるべきことだと思っております。
  53. 松前重義

    松前委員 どうも最後まで固執されるようでありますけれども、大体常識的に見て、社会通念として、しかも学術的にそうへんぱな考え方じゃなくて、原子力発電なるものを火力に含ませることは少し奇想天外であるということは、大体党派を超越して皆さんが考えておられるところでありまして、この点については、法律の改訂を必要とすることは当然なことであると私どもは思うのであります。ところが、このような法律を改正しなければならないという情勢になりますときに、過去におやりになったところのいわゆる原子力発電株式会社に対する電源開発株式会社の出資を政府から慫慂され、そうしてその電源開発株式会社に対するところの資金運用部資金等の融資の問題等は、当然この予算案に載っておるところであります。そうすると、この予算の根本問題にこれがさかのぼると私は思うのでありますが、これに対して正力国務大臣はその解釈通りに、もし火力発電が原子力発電を含まないという結論に到達した場合においては、この予算案の内容に相当な影響を及ぼすものでありますが、その場合においてはどういうふうな処置をおとりになるか、伺いたいと思います。
  54. 正力松太郎

    正力国務大臣 私は先ほど法制局長官から説明した通りにやっておるのであります。なおその出資の関係につきましては、これは通産省の関係でありまして、そちらにお願いしたいと思います。
  55. 松前重義

    松前委員 通産大臣は、要求してありましたが、お見えがないですね。
  56. 江崎真澄

    江崎委員長 今参議院が終りましたから、間もなく来ると思います。そこで繰り合せて、おる大臣のを先にやってもらいたのですが、どうぞ。
  57. 松前重義

    松前委員 それでは外務大臣お忙しいようですから、先にやりましょう。いろいろ論議をいたしておりますが、最後に総理に御質問申し上げてからあなたに御質問申し上げるのが当然でありますけれども、しかし問題は科学技術に関連した外交上の問題になります。総理に対する質問の後の方が明白になりますけれども、ここで簡単に話の順序を狂せまして質問をいたしたいと思っております。  それはいわゆる科学技術進歩に伴いまして国のあり方というものが非常に変りつつある。わけても、私が昨年アメリカや英国の政治家に会いまして、科学技術進歩に伴って国のあり方をどのように変えつつあるかということを質問しましたときに、彼らは、ソビエトに対抗して少くともここに水爆を持たなければならないというようなことを言う。日本が水爆を持ち得ないことも当然でありますが、とにかくそういうことを言う。そうして現在国連の軍縮会議というものは、ソビエトの人工衛星が打ち出されましてから、ソビエトの態度が強くなって、ほとんどまとまらなくなって、最近はいろいろ書翰戦争になって参ったようでありますが、とにかくここにそういう多少危険な状態が現われてきた。それは人工衛星がいわゆるミサイルというようなものの可能性を立証しておるばかりでなく、いろいろな意味において、科学進歩が国の防衛とか戦争とかに対して大きな影響を与えておることは、一見してわかるところであります。でありますから、この大勢の中にあって、アメリカは爆撃機に水爆を積んだ飛行機の編隊を大西洋の上空を常に旋回さして四六時中空中にその飛行機を置いて、いつでもソビエトの爆撃ができるというような態勢をとって、ソ連の攻撃に対処しようというようなことになっておる、こういうようなことであります。これは現実にやられておることでありますが、こういう中にあって、アメリカあるいは英国等の政治家に、しからば水爆戦争をおやりになるつもりかと聞いたところが、水爆戦争は断じてやっちゃいけない。もし水爆戦争が起るならば、世界の人類はどうなると思うか。それは、結局全部だめになってしまう、殲滅される。人類の生存が許されない、人類ばかりでなく、生物の生存が許されない。このことは、彼らもちゃんと自覚しておるのでございますが、それにもかかわらず、水爆を積んだ飛行機が大西洋の上空を旋回しておる。こういうような情勢下にありまして、かつてアメリカのモスクワ駐在大使でありましたケナン氏は、ロンドンで十回にわたる講演をいたしておりました。ちょうど私がロンドンにおるときにしておった。その中で非常に大きなセンセーションを与えたのは、東ドイツ、西ドイツの統一によって、それにポーランドその他の回廊を含めて、これを中立地帯にして、ヨーロッパを危険より防がなければならない。あの辺で小ぜり合いでも起れば、それが全面戦争の原因になるから、それを非武装地帯にしなければならない。こういうことをケナン氏は主張し、英国内におきましても、世論はこれに相当に共鳴しておる。フランスも共鳴し、NATOの諸国も、大体これに共鳴する傾向を持っておった。そのやさき、ソビエトが、両独の統一を通じて、これに一つの非武装地帯の提案をするというようなことになっておった。こういうような情勢下にありまして、この危険な水爆戦争、愚かな戦争、全人類絶滅への戦争に追い込まないために、こういうことをする。そればかりではなく、ヨーロッパを救うために、まず彼らは考えたであろうと私は思う。こういうような提案に対しまして、方々で賛成論が出てきておる。この現状において私が考えたのは、しからばアジアは一体どうなるのだろう。やはりアメリカにしても、英国にいたしましても、大体白人でありますから、彼らはまずヨーロッパのことを考える。ですから、ヨーロッパの非武装地帯をまずもって考えて、アジアのことには全然言及していないばかりか、それをやっていない。アジアのことを考えるのは、やはり日本ではないだろうか。アメリカはやはりあっちばかりを向いておる。あっちが安全であれば、大体ホーム・グラウンドは大丈夫ということになる。ところがアジアは一体どうなるか。私はきのうこれを御質問しようと思っておりましたが、けさ新聞で見ると、ソビエトは、何か南北朝鮮の統一を通じて、これを非武装地帯にするというようなことを言い出しておる。非常に先手を打っているような感じがいたしますが、これらに対して、藤山外務大臣はどういうふうな御見解を持っておるか。科学技術進歩に伴う外交の基本的な方針を、将来の地球上の重要な問題でありますので、伺いたいと思います。
  58. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お答えいたします。ただいま松前委員が言われましたように、科学技術が発達し、それが武器に使用されますことは、人類の全滅に通ずる道でありますので、これは、どうしても世界の政治家が心を合せて中止の道をたどっていかなければいかぬと思います。ただいま御指摘のありましたように、ジョージ・ケナンが言いましたのは、欧州非武装地帯の問題は、ポーランドのラパッキー氏が、昨年の十月二日に国連でそういう意味のアイデアを述べております。その後逐次案を練ったと思いますが、一月になりまして、米、英、仏、ソ連等に対して、初めて正式にいわゆるラパッキー案というものを出しております。この二月十五日にワルソーにおきまして、日本の大使がその写しを渡されたということが出ておりますが、これは整理中でありまして、まだ届いておりませんが、届きましたらラパッキー案につきまして、われわれも検討してみたいと考えております。今まで知っておりますところでは、最初の提案はポーランド、東独、西独、その後チェコも入ってるようであります。また議論といたしましては、ソ連から、イタリアも含めたらどうかというようないろいろな案があります。批評と申しますか、意見と申しますか、そういうものが出ておるわけであります。ヨーロッパの政治情勢その他から見まして、われわれがそういう問題を必ずしも身近に感じない点もありますことは当然でありまするが、しかしながら、ヨーロッパが、戦争状態から脱却することについては、私どもは十分注目して参らなければ、世界平和のためにならぬと思っております。ただ日本といたしまして第一に考えて参らなければならないことは、日本のかねての主張であります核兵器の生産、保有、使用の中止ということが、結局一番最終的な解決として、しかもこれが全面的に行われることが好ましいことでありまして、今日まででもそれを主張しております。部分的に核非武装地帯を設けることは、ある意味からいえば、その地帯だけは非武装にするけれども、その他は保有していくという状態であれば、必ずしも終局の、日本の国民の要求してる核戦争からのがれというわけにいかぬわけであります。従いまして、そういう点につきまして、十分努力いたして参らなければならぬと思います。従って、軍縮委員会等ができるだけ円滑に進んでいくことを希望するのでありまして、従って、ソ連が先般国際連合におきまして、軍縮問題について、委員の数を増すというような問題についても、日本としては、できるだけソ連の希望にも応ずるように、ふやす方に提案をしたわけでありますが、必ずしもすぐ委員会等で十分なる妥結にはいきません。ソ連が軍縮委員会をボイコットいたしましたことは、残念だと思います。しかし、日本も非常任理事国の一員として、何らかの形で軍縮委員会が再開されて、この核兵器の問題が全面的に軍縮とあわせて進んでいくことに、熱心に努力をいたさなければならぬと思うのであります。一方でそういうことを十分推進しながら、しかしながら、部分的なそういう問題が、全面的な核武装の制限その他に何らかのステップになるということでありますれば、それらの問題についても、十分関心を持って研究して参らなければならぬ。またヨーロッパの問題とアジアの問題につきましては、政治的にも、あるいは地理的にもいろいろな条件が違っております。そういう問題について十分検討をして参らなければならぬ、こう私としては考えております。
  59. 江崎真澄

    江崎委員長 松前君に申し上げます。一般質問には、総理は出席しなくてもいい申し合せになっております。たまたま分科会主査の報告がありまするので、総理が出席されました。従って、松前君に御質問の便宜をお与えしたわけでございまするから、どうぞ御質問は簡潔に願いたいと思います。
  60. 松前重義

    松前委員 総理大臣のおいでにならないときに、科学技術振興について総理大臣が施政方針演説に掲げましたあの熱意が、どうも予算の中に盛られてないじゃないかということを、実は今ここでだいぶやったのであります。私は、熱意が盛られていない、もう少し内閣を督励して一つやっていただきたい、こういうふうに実は思うのでありまして、そういう論議が今まで行われました。  ところが、科学技術振興に対しましては、列国の状態を見ても、行政機構においてやはり欠けるところがあるのです。これは、やはり科学技術庁というようなことではどうもいかぬのでありまして、国務大臣正力松太郎先生がおすわりにはなっておられますけれども、しかしながら、どうも各省と肩を並べるまでに至っていないところに、私はまだあなたの御発言の具体化がそこに現われていないのじゃないかというような感じがいたします。従って、科学技術省というようなものにして、一つ強力に推進される意図があるかどうか、この点についてお伺いしたいと存じます。
  61. 岸信介

    ○岸国務大臣 科学技術の問題につきましては、いろいろな点からこれを推進していかなければならぬ一つの点は、やはり国民がこの点に関しての非常な認識を深め、強い国民的世論がこれを推進するという空気ができなければいかぬ。また同時に、今御指摘になりました行政機構は、どうしても政府がこれを推進していく上において、強力な行政上の処置を講じていかなければならぬ。従来この問題が各省に分属しておりますために、どうしても各省の連絡が十分でもないし、また思い思いになり、それぞれの立場から別個な歩みをしておるというような点も感じられまして、あるいは戦時中に技術院が設けられ、今日科学技術庁が設けられておる、長官には国務大臣をもって充てるという強力な制度になっております。さらに今松前委員は、科学技術省というような一つの省にしたらどうだというお考えでありますが、私は、それが全然無意味なことじゃない、今言ったような一般の機運を作り、また行政力を強化し、各省の間の行政措置を強力に総合してやっていく上から言って、相当な効果のあることだと思います。ただ現在のところにおきましては、科学技術庁というものが設けられて、相当な努力をいたしておりますし、また今回科学技術審議会というふうなものを設けまして、強力にこれらのことを進めていきたいと考えておりまして、今日のところ、直ちに科学技術省を作るという考えを私は持っておりません。これらの機構と、それから今言った審議会と両々相待って一つやっていきたい。しかし、さらにそのことにつきましては、将来とも研究することにいたしたい、こう考えております。
  62. 松前重義

    松前委員 科学技術進歩と防衛の問題について、その基本的な政府の態度について、防衛庁長官と総理にお伺いしたいと思います。  まず第一に、この科学技術進歩に伴い、いわゆる人工衛星の出現、すなわち、これはミサイルの可能性を証明したものであります。同時にまた、水爆という大きな力が生まれてきた。こういうために、非常な危険な時代が発生したのは、総理施政方針演説にあった通りであります。そういう時代におきまして、とにもかくにもこの科学技術進歩に伴って、国のあり方というものが基本的に変化しつつある。この事態に対処しまして、日本の自衛は当然であるということでございまするが、政府としては、日本の防衛のために、陸海空の態勢をどのように総合的にお考えであるか、これを伺いたいと思いまするが、話を縮めまするために、具体的に一つお伺いしたいと思うのです。一体今後における戦争というものの姿が、どのように変化していくか、これを中心にいたしまして、国のあり方をどういうふうに変化させるかという問題については、いわゆる空の自衛隊、陸の自衛隊というようなものに対して、どういうふうな構想をお持ちであるか、これをまず伺いたいと思います。
  63. 江崎真澄

    江崎委員長 今防衛庁長官は、さっきもちょっと了解を得ておきましたが、内閣委員会に行っておりますから……。
  64. 岸信介

    ○岸国務大臣 わが国の自衛隊の組織の点は、すでに昨年国防の基本方針をきめておりますように、とにかく日本の国情、国力に応じて、国の安全を保持するために最小限度の自衛力を持つということにいたしております。ただ、これをどういうふうに増強していくかという点については、今おあげになりましたような最近における科学技術の非常な画期的な発展にかんがみて、質の改善ということに重点を置いて考えるということを申しております。これが根本の考え方でありますが、その中において陸上自衛隊、さらに航空自衛隊、海上自衛隊というものをどういうふうに考えるかということであります。これは、日本の地理的な地位や、あるいは日本を取り巻くところの国際情勢から考えまして、やはりこの三つの自衛隊は、それぞれこれが存置の意義がある。しこうして、御承知通り航空自衛隊や海上の自衛隊につきましては、これを裏づけ日本における防衛産業というものが、戦時中のものはほとんど破壊され、なくなっておりますから、これらのものの育成と相まって、これが増強を考える必要がある、こういうふうに考えております。三つの間には、やはりいろいろな点から考究しながら、三者の総合的な力を発揮していくような意味において、どこに重点を置くとか、どこに主眼を置くとかいうような議論もございますけれども、やはりその間にはいろいろな点から研究したバランスをとってやっていきたい、かように考えます。
  65. 江崎真澄

    江崎委員長 松前君に申し上げますが、だいぶ申し合せの時間を経過しておりますので、あと一、二問にして、簡潔に願います。
  66. 松前重義

    松前委員 総理の御出席がおそかったものですから……。  防衛の問題につきましては総理は水谷長三郎氏の質問に対しまして、「防衛費の問題につきまして、一万名の陸兵の増加の問題についての御質問でありました。この点は、すでに国防会議においてきめました防衛の長期計画に基いて、われわれはこれを本年度の予算に盛っております。しこうして、いろいろなこの軍事科学の変化が将来の防衛の上にいろいろな影響を持つことはもちろんでありますけれども、今日、どの国といえども、普通兵器によるところの防衛力を決して減員はいたしておりません。この現状におきましては、この程度の増員は必要であると認めたのであります。」一万名の今度の自衛隊の増強に対して、こういう答弁をしておられます。特にどの国も「普通兵器によるところの防衛力を決して減員はいたしておりません。」この点について、特に今どういう意味を持っておるかを、ちょっと伺いたいと思います。
  67. 岸信介

    ○岸国務大臣 最近の大国における軍備が、御承知のように原水爆その他核兵器を中心として装備される傾向がございます。また先ほどおあげになりました人工衛星の打ち上げ、ミサイルの発達というようなことから、非常な大量殺戮の兵器もどんどんできておりまして、これが戦略的の兵器とし、また戦術的の兵器として大国間にやられております。この問題については、国際連合においても、われわれはこれが実験禁止、さらに製造、使用等の禁止について提言をしておることも、御承知通りであります。しかし、そういういわゆる核兵器の問題といわゆる普通兵器——普連器と申しまても、これも科学の発達で、ずいぶんいろいろな点において、すでに第二時大戦当時の兵器とは、改善もされ、進歩しておることも御承知通りでありますが、私ども考えでは、この核兵器でもっては日本の自衛隊は装備しない、またそういうもので装備されておる軍隊の駐留は認めないという方針をとってきております。軍縮会議におきましても、一般従来からの観念によるところの装備による軍備の縮小問題それから原水爆及び核兵器の問題という二つの問題が、あるいは関連して、あるいは別々に取り上げられておることも御承知通りであります。私は、現在のこの核兵器その他のもので装備されておる大国においても、一方まだ普通兵器によるところの陸上、空中及び海上の防衛力というものに対して、今日これを減少せしめることの必要であり、また一般的に軍縮の必要であるということは、各国が認めておりますが、現実はそうなっておらない。こういう現状において、われわれは、日本の自衛のために必要最小限度の陸上、航空、海上の自衛隊はやはり持とう、その一環として一万名の増員を認めた、こういうことでございます。
  68. 松前重義

    松前委員 ただいまの御答弁ではっきりいたしました。これは、非常に重要な問題でありまして、特に一つ考え願わなければならぬ点があります。どの国も、普通兵器による装備、軍隊を決して減らしてない、こういうことでありますが、私、昨年アメリカからヨーロッパを旅行して帰りましたが、そのときに調べてきたところによりますと、アメリカにおきましても、英国におきましても、すでにいわゆる従来の海軍の戦闘艦、巡洋艦は廃止いたしております。これらの軍艦には油を塗って、ビニールで包んでしまい込んでしまっております。これは必要がないからであります。役に立たないからであります。これは、英国も、それからアメリカも同じでございます。第二に英国におきましては、一昨年まで七十万の地上軍隊を持っておりました。普通兵器による装備を持った陸軍を持っておりました。それを、もう要らなくなったのでありますから、従ってこれを三十五万に減らした。七十万を半分に減らしております。今総理のおっしゃるように、ふやしてはおりません。どんどん減らしております。聞いてみたら、本年もまた減らすと言っておりました。失業問題が出るから、漸次やるのだということを言っております。ソビエトでも、二十万くらいをこの間減らしたという報道がありました。このようにいたしまして、いわゆる頭数を減らして新しい時代に対処しうというときに、一万名の自衛隊をふやすなどということは、これは、私は時代逆行もはなはだしいちょんまげの考え方であると思うのであります。この点は、一つ現代の歴史にさおさしておる日本の現状といたしましては、特にこれは政治家として考えていただかなければならぬので、今の認識では、ちょっとこれは工合が悪いのではないか。しかも今度の予算では、今のような御認識の上に立っての予算が編成されておることを、非常に遺憾に思うのであります。また戦闘機に関しましても、自衛隊は戦闘機の機種を決定するなどということを言っておられますが、すでにアメリカでさえも、戦闘機の生産をうんと手控えて、ほとんどやめております。英国でも、戦闘機は使わないと言っております。ミサイル時代には、こんなこんなものは要らぬと言っておる。現に私がせんだって東北大学の金属材料研究所へ行ってみたときに、今までチタンがアメリカにどんどん売れておったが、売れなくなったのは、ジェット戦闘機をもう作らなくなったからであるということを、すでに研究所でも言っております。このようにいたしまして、今までわれわれが通常兵器だと考えて、これで国が防げるなどと思っていたことが、まるで役に立たないものになってしまっておる。そうして各国は、どんどん姿を一変しつつあるというのであります。こういうときに当りまして、日本の自衛隊の一万名の増強、これはまた逆行であります。英国は、七十万を三十五万に昨年減らしたばかりです。しかも英国におきましては、もう頭数が要りませんから、すでに昨年の国会におきまして、従来英国の労働党が主張しておりました徴兵制度の撤廃の問題を、保守党も一緒に取り上げて、全会一致をもって、実は徴兵制度の撤廃を決定しました。一九六二年には、英国から徴兵制度はなくなります。日本はこれに対して、憲法を改正して徴兵制度をしこうと思っておられるのではないかと思うのでありますが、これは、まことにこの新しい原子力時代、そしてまた人工衛星時代において、この新しい現代科学進歩の姿を現実に直視しない政治の姿ではないかと私は思って、非常に憂えるのであります。こういう意味におきまして、とにかくこのような原子力の前に何の役にも立たないようなものを、どこもここも減らしておるのに日本だけはふやすというような昔の考え方では、私は、これは非常な日本の税金の浪費になるのじゃないかと思う。これを私は非常に心配するのでありまして、ことに頭数をふやす、そうしてまた徴兵制度を、場合によったら憲法を改正して復活させる、こういうような問題につきまして、特に一つ総理の御答弁を願いたいと思います。徴兵制度の問題のごときは、英国では、もうすでに撤廃しておるという現実の上に立ってお考え願うと同時に、これに対して御答弁を願いたいと思うのであります。
  69. 岸信介

    ○岸国務大臣 憲法改正の問題は、今憲法調査会で、その必要ありやいなや、必要があればどういう内容を盛っていくかということを研究、調査いたしておることは、御承知通りであります。この憲法改正が、徴兵制度をしくための改正であるごとく、一部において反対の議論をしておりますが、これは全然事実をしいるものであります。われわれは、今日まで憲法改正の議論をいたした場合におきましても、かつてそういうことが論じられたことはございません。  それから陸上自衛隊の一万名の増強の問題につきましては、御承知通り日本の陸上自衛隊の現有の勢力、またわれわれがこの自衛隊を作りましてから今日まで、国力、国情に応じて漸増の政策をとって参っておりまして、その長い間の長期計画の一環として、十八万名の陸上部隊を置くということになっております。だんだんとこれを充実して、最後の一万名という問題が残っておるわけであります。ただ各国の実例から見ましても、日本の陸上自衛隊の勢力というものは、決して大きなものでないことは、松前委員も御承知通りであります。イギリスが減額したといっても、まだ三十五万も持っておる。あるいはソ連が二十万減らしたと言いますけれども、ソ連の全体の数から申しますと、ものの数でない減額であります。日本の一万名というのは、今言ったように、総額においてもまだきわめて大きなものじゃない、こう私は思います。それからなお陸上自衛隊というものを、かつてわれわれが頭に置きました歩兵——オイッチ二、オイッチ二とやっておったような兵隊というふうにお考えになりますと、これは非常に内容が違うのでありまして、今度ふやそうという一万名も、最近の新しい科学的な発達に伴いまして、装備も、そういうできるだけ質的に改善されたものであります。新しい情勢に応ずるような、しこうして陸上において勤務し、自衛の任務を果すところの性格を持っておるところのものでございます。こういう意味におきまして、われわれはこの必要を認めておるわけであります。なお全般的に言って、こういう非常な科学技術、特に軍事科学の発達に伴なって、どういうふうに装備なり、それからこれにおくれないようにやっていくかということにつきましては、われわれも研究開発について努力いたしておりますし、それからまた日本の自衛を全うするために、常に原子力——全面的、無制限の原子力戦だけが将来の唯一の侵略の何であるというふうに考えることも、これも非常な誤まりであって、われわれとしては、むしろそういうことではなくて——そういうことは人類社会の文明の敵であり、人類社会からそういうことをなくしようとして、われわれは努力していることも御承知通りであります。しかし、われわれの安全な生活のできる、自衛の安心してできるためには、国力、国情に応じて最小限度の兵力を持つということは、現実に即して当然のことである、こう思っております。
  70. 松前重義

    松前委員 時間がありませんから、これ以上質問はいたしません。ただ問題は、国のあり方に対して、どうも今度の予算等を見ましても、世界の現状の流れにも即応してない。そうしてまた、ただいま二十万くらいは少いというような話でありましたが、英国のごときは、七十万を三十五万に減らし、また本年も減らすそうであります。こういうふうな傾向にあるときに、この原子力時代において、ああいうものは意味をなさないことになることは、これはもう当然のことでございまして、その他戦艦や巡洋艦もやめてしまっておる。あるいはまた航空機の中でも、戦闘機などでもやめてしまう。こういう時代に、戦闘機を持つとか持たぬとかいうようなことに国費を浪費すべきものじゃないと私は思うのであります。実は私は、この点を特に強調して、今度の予算内容に対して批判を加えたつもりであります。同時にまた各国はこれにかわるべく、科学技術教育の充実に非常に力を入れて、そうして徴兵制度は撤廃する、こういう方向に行っておりまして、科学技術教育につきましても、文部大臣に伺いたいと思ったのでありますが、時間がありませんので、御出席もおそかったのでありますから、この程度で、いずれまた文教委員会等で伺うことにいたしまして、私の質問を終ります。     —————————————
  71. 江崎真澄

    江崎委員長 この際、第三分科会及び第四分科会主査より、それぞれ分科会における審査の報告を受けることといたします。第三分科会主査、八木一郎君。
  72. 八木一郎

    ○八木(一)委員 第三分科会は、昭和三十三年度一般会計中、農林省、通商産業省及び経済企画庁所管、並びに特別会計中、農林省及び通商産業省所管について、審議をいたしたのでありますが、詳細は会議録に譲り、ここでは、簡単にその経過並びに結果について御報告申し上げます。  第一に、農林省所管については、予算編成手順、土地改良、開拓施策、干拓地農漁民補償問題、蚕糸振興対策等、諸般にわたって審議されたのでありますが、今その二、三について申し上げます。  まず予算編成の手順について、大蔵省の最初の内示額は三十二年度より大幅に下回ったことは、農業対策を無視したものではないか、復活要求後若干増額されたとはいえ、一般会計予算総額に対比すれば七・七%であり、過去数年間、農林予算額の一般会計予算総額に対する比率は、逐年下降している。また本予算案は、長期経済計画との関連も明白ではない。かかる事実は、ひっきょう農山漁村の生活水準をどこまで引き上げるべきか、国民の食生活の変遷はどうあるべきか、耕地の配分、造成をいかにすべきか等々の諸条件を総合的に勘案した、確固たる農林政策が立てられていないためではないか等の質疑が行われました。これに対し政府は、農林予算の第一次査定は、政府重点施策から遠ざかっていたことは事実である、また自由経済体制のもとでは、長期計画の内容が寸分たがわず予算面に具現されるというわけにはいかないが、三十三年度予算は、長期計画を基本として編成してあるとの答弁でありました。  次に土地改良事業について、特定土地改良事業は、果して計画通り七カ年の期限内に完成できるか、見通しはどうか、また建設省所管のダム工事におけるごとく、継続費予算をもって遂行してはどうか、また一般会計の国営、県営並びに団体営の進捗程度はどうかとの質疑がありました。これに対し政府は、特定土地改良事業の予算は、年次別に均等割で計上していないが、工事別には七年以内に完成し得る見通しである、また継続費制度は、具体的な地区につき、具体的な設計の成り立っているものについては検討する、また一般会計によるものは、国営、県営とも、三十二年度より増加し、団体営については、補助及び融資を通じ、おおむね本年度並み、またはそれ以上を計上してあるが、その伸びは必ずしも十分とは言えないとの答弁でありました。  以上のほか、コンニャクの輸入問題、酪農振興と乳価問題、輸入食糧と輸出貿易との関係等についても、それぞれ政府側に活発な質疑が行われました。また食糧管理特別会計については、本会計に新たに設置した資金の意義、同会計損失の発生原因等につき質疑が行われ、なお同会計の健全化対策の一つとして、加工品原料として輸入している砂糖を同会計に吸収してはどうかとの意見が述べられたことも付言いたしておきます。  第二に、通商産業省所管について審議の対象となりましたおもなる点は、科学技術振興対策、中小企業振興対策、砂糖、ノリ等の輸入に関連して外貨割当問題等でありました。  まず科学技術振興については、電子工業対策、科学技術者の優遇措置等について論及され、電子工業は、原子力の平和利用と並行してきわめて重要であるにかかわらず、その予算は微々たるものであるが、政府の対策いかん、また現行特許法の規定では、公務員が発明等をした問題、その発明が公務員の属する機関の業務の範囲であり、かつその公務員の任務の範囲である場合には、当該発明に関する特許権は、その公務員の属する機関に帰属してしまう結果、公務員の技術研究意欲が沸き上らないから、別途優遇措置を講じてはどうかとの質疑が行われました。これに対し政府は、電子機器の試験設備、電子技術の特別研究費等には、総額四億円余を計上し、三十二年度より大幅に増額しているほか、電子工業振興法に基き、開発銀行の融資等も行われることになっており、おおむね十億円ないし十五億円のスケールで考えている。また公務員の発明等の場合の報償制度については、十分考慮するとの答弁がありました。また中小企業対策については、三十三年度に計上された予算額は三十一億円余できわめて僅少である。機械工業の振興は、エネルギー、雇用、輸入の面できわめて効果的であるにかかわらず、積極的助成策が講ぜられていない。また中小企業振興の一策として、一兆七千億円に達する官公需品を中小企業に発注せしめるための法的措置を講じたらどうか、また政府は、中小企業団体法の成立をはかり、中小企業の組織化を推進せんとするとき、商工中金に対する資金措置を、三十二年度は三十五億円であったが、これを三十億円に減額しているが、その理由いかん。また商工中金の金利の低下をはかるため、資金運用部資金を直接貸し付け得る方法を講じてはどうか等々、委員政府との間に活発に質疑が行われたのであります。これに対し政府は、中小企業の体質改善については、特に力を入れ、技術指導及び設備近代化等の補助にその施策を指向しているが、設備近代化補助金は四億円を六億円にふやしたから、府県の分と中小企業金融公庫等からの自己調達分を加えるならば、四十五億円以上の設備の更新ができることとなる。また商工中金の資金については、その運用総額は、三十二年度の二千二百億円に対し、三十三年度は二千五百三十億円で、三百三十億円の増加となっており、回収見込額の増加考えるならば、三百五十億円の増加となる見込みであるが、必要に応じて債券引受額をさらにふやすことも考えている。預金部資金の商工中金への直接貸付は、その建前上不可能であるとの答弁がありました。以上のほか、中小企業対策と独占禁止法改正との関係、並びにサウジアラビヤ石油資源開発問題についても質疑が行われました。  第三に、経済企画庁所管については、政府のエネルギー対策、特に電力問題について審議が行われました。すなわち、エネルギー資源としての電力は、ますますその重要性を増しているが、豊富な電力を一定の目標のもとに確保するためには、景気の動向いかんにかかわらず、工事の繰り延べ等を行わないで、継続的に一定の資金量を投下して行く必要があるが、三十三年度の設備資金は減額されているのではないか、また電力料金の低廉をはかるため、政府はいかなる具体策を持っているか、設備資金の金利、特に開発銀行の電力会社への貸付金利の引き下げをはかる意思なきや、また政府は、九電力の再々編成を行わんとしている風評もあるが、その真偽いかん等の質疑が行われました。これに対し政府は、電力のための設備資金は、景気のいかんにより増減させる考えはない、電源開発のための資金計画は、九電力関係、電源開発会社、公営その他を合せて約三千億円の資金を確保している。長期経済計画五カ年間の開発資金は、一兆五千億円であるから、一カ年平均三千億円とすれば、おおむね平均額に近い線になっている。また電気料金については、是正を要する点が多々あるから目下検討中であり、開発銀行の金利を引き下げる意思はない。九電力の再々編成については、再々編成をしなければならぬという結論に立っているものでもなく、また現在のままでよいという結論に立っているものでもない。将来の日本の産業分布等が強く要請せられている折柄、その可否について目下各方面研究を依頼しており、その結論を待って善処したいとの答弁がありました。  以上のほか、石炭鉱区の整理問題、雇用労働等の諸問題についても質疑が行われました。  またさきに政府の発表した三十二年度年次経済報告に関し、その内容に関し、政府の自己批判が足りないこと、また政府は常に日本経済の安定的成長をはかることを主張しているが、計画立案者においては安定を破壊する要因についての認識を必ずしも明確に把握していないこと等の意見が述べられました。かくて質疑終了後、討論採決は、これを本委員会に譲ることといたしました。  以上をもちまして第三分科会の報告を終ります。     —————————————
  73. 江崎真澄

    江崎委員長 第四分科会主査山本猛夫君。
  74. 山本猛夫

    山本(猛)委員 第四分科会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  本分科会は去る十三日より十七日まで、日曜日を除く四日間にわたって、運輸省、郵政省、及び建設省所管に関する昭和三十三年度一般会計、特別会計及び政府関係機関の各予算について慎重審査いたしました。  まず十三日は、政府側より各所管について一括説明を聴取し、翌十四日から質疑を行いました。各委員におかれては、政府側に対し、終始熱心に質疑を行なったのでございますが、その詳細につきましては、時間の関係もございますので、会議録をごらん願うことといたしまして、ここではその若干について簡単に御報告申し上げます。  まず第一に、運輸省所管について申し上げます。町村合併に伴って学校統合が行われ、義務教育の通学が汽車もしくは自動車を利用するため、必要以上に父兄の負担を増し、ところによっては、町村自体が乏しい財政状態の中から通学費の補助を行なっているところもある。運輸当局は、この際せめて義務教育である中学生の通学に限ってだけでも、小学生並みに運賃を半額にする配慮がなさるべきではないかとの質疑がございました。これに対しまして運輸当局から、運賃制度の問題については、運賃制度調査会を設けて、国鉄の収入面を考えつつ絶えず検討を加えているが、これまではもっぱら貨物運賃制度について検討を行なって参ったので、今後は、質疑の趣旨を充分勘案して、旅客運賃の制度についてもこの問題を検討して参りたいとの意思の表明がございました。また三十年度を初年度とした国鉄の五カ年計画は、三十三年をもって第二年度に入るわけであるが、これが実施の進捗状況及び計画達成の見通しについての問いに対しまして、当局から、三十二年度は一千七十二億円、三十三年度は一千六十二億円の工事勘定予算の中で、新線建設を除く改良についての進捗状況は、通勤輸送において全体の四八%、幹線輸送で一八%、幹線電化で二六%、電車化で三五%、ディーゼル化で二五%、車両の増強整備で二八%、その他改良で二九%、取りかえ、諸改良、老朽施設の改善等では全体の六〇%程度となっており、総計で三六%弱の進捗率を示している。三十二年度及び三十三年度は、主として緊急改善を要するものに重点を置いているが、三十四年度以降には、設備の近代化、輸送力の増強に重点を向けることになっているので、ただいまのところ、五カ年計画はおおむね所期の計画通り達成できるものと考えるとの答弁でありました。  次に、共産圏との航空路をすみやかに開設すべきではないかとの問いに対しまして、運輸大臣から、共産圏との航空路の開設については、航空協定を締結することが必要であり、今直ちに二国間において開設することはむずかしい。ソ連及び中共との間には航空管制、運営状況技術的、経済的な面においていまだ十分なる条件が満たされていない。しかしながら、わが国としても、この問題についてはきわめて深い関心を持っているので、今後各種の条件を整えるべく努力をいたし、善処して参りたいとの答弁がございました。  次に、郵政省所管について申し上げます。郵政事業の窓口改善、サービス向上のため、四等郵便局設置の構想があると聞くが、この四等局の性格、立法及び予算措置等について、その構想を伺いたい。また、貯蓄控除制度の創設に伴い、郵便貯金に対する減税についての構想を示されたいとの質疑がなされたのでございますが、これらに対する郵政当局の答弁は、俗にいわれる四等郵便局の性格は、現行特定局と簡易局の中間的性格のもので、三十三年度中におおむね二千局の設置を考えている。立法措置については、ただいまのところ郵政省設置法の改正、現行簡易局設置法の改正、あるいは単独立法等、いずれの方法をとるか目下慎重に検討中であり、定員についても、当初一局一名ないし二名程度が必要と考え関係省と折衝した結果、三十三年度は、一応請負制度でいくこととし、三十四年度から考慮することになっている。予算については、三十三年度予算の成立を待って十分運用できるものと考えるとのことでございました。貯蓄の奨励と預金者の優遇をはかるため、政府は貯蓄控除制度を創設することとし、一定の定額預金に対する減税の措置を講ずることにしたのであるが、郵便貯金に対しても、これと見合って、今回六カ月以上の定額預金者の所得から年間積み立てた預金額の三%、最高六千円を限度として、年末調整または確定申告の際に減税を行うことにしているとの構想が述べられました。  次に、建設省所管の中では、政府は、重要施策として道路整備事業を実施するため、道路整備五カ年計画を策定しているが、その目標総額、年度割額及び事業区分をどのように考えているか、さらに計画の遂行に当り、法律をもってこれらを規定する考えはないか等の質疑がございましたが、これに対しまして、全体の投資額は九千億円を目標としている、そのうち、地方単独道路に一千九百億円、有料道路に一千五百億円、残り五千六百億円を一般道路に予定している、計画の完全遂行を期する意味から申して、概算額並びに年度割額を明確に規定することはきわめて望ましいことであるが、一方将来において、この計画を変更することもあり得るので、明確に規定はしないが、近く国会にこの計画を実施するに必要な法律案を提出する準備を進めているとの政府答弁がありました。  その他予算に関連した行政各般にわたり、委員各位よりきわめて貴重な多くの意見の開陳並びに質疑が行われたのでございますが、ここではすべて割愛させていただきます。  討論、採決は先例により本委員会に譲ることにいたしまして、散会いたしました。  以上簡単でございますが、御報告を終ります。
  75. 江崎真澄

    江崎委員長 以上をもちまして分科会主査の報告は終りました。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  76. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡良一君。
  77. 岡良一

    ○岡委員 私は、政府重点施策と言っておちれる科学技術振興政策について、その所信をお伺いいたしたいと思うのであります。午前中は、同僚の松前委員から、特にその予算規模等についてしさいな御質問がありました。私は、特に政府原子力政策についてお伺いいたしたいと思います。  外務大臣も御存じのように、最近は原子力外交という言葉があるくらいに、外交政策と原子力政策というものは、不離一体な関係にあるわけであります。そこで、まず第一点としてお伺いいたしたいことは、政府は、昨年の十月に発足をいたしました国際原子力機関、この運営に対してどういう御方針をもって臨まれるおつもりであるか、この点をお伺いいたしたいのであります。と申しますのは、機関は、その目的にも明らかなように、全世界の平和、人類の繁栄、保健という非常に崇高な目的をもって、八十余カ国の大きな期待のもとに発足いたしました。幸いにして日本もその理事国に選ばれたわけであります。理事国に選ばれた以上、当然その運営については、重大な責任をわかたねばならない立場に立っておるのであります。そこで政府は、国際原子力機関の運営に当って、具体的にいかなる方針をもって今後臨まんとせられるか、この点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  78. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 答弁申し上げます。昨年十月二日でございましたか、国際原子力機関が発足をいたしまして、その後二回ほど理事会を開きまして、機構、組織の整備というような問題につきまして、種々協議をして、その準備を進めてきております。いよいよこれから、今お話しのような平和目的に対する崇高な任務をもって、仕事を開始するようになっております。わが国といたしましては、幸いに理事国に選ばれましたわけで、従いまして、この機関の中におきまして、日本としては、当然今お話しのような、原子力を平和目的に使って、そして人類の福祉に貢献する道に向って進んで参らなければならぬと思います。同時に、お話しのように、八十二カ国の多数が集まりまして機関ができております。この中には、原子力を現に実用化しつつあるような大国もあります。またそうでないような小国もあるわけであります。原子力の平和利用ということは、その利益を小国が受けることが多い。また小国は過去の、平和的な、たとえば電気の問題その他につきましても、未開発の状態でありますから、そういう新しい技術を採用する可能性が十分あるというようなことから見ますと、できるだけこの機関の中におきまして大国が対立しないように、そうして小国の利益、あるいは何と申しますか、そういう国の利益になるように努力をいたして参らねばならぬと考えております。
  79. 岡良一

    ○岡委員 外務大臣は、大国の優先的なあり方というものはできるだけ抑制して、努めて原子力の平和利用を小国に普及せしめねばならぬという御方針は、私どもももちろんきわめて賛成であります。そこで、そういうふうな方向に向ってのわが国の原子力政策、また機関の運営に当ってのわが方としての具体的な方針は、一体何であるかという点であります。私が特に外務大臣にお伺いしたい第一点は、御存じのように、機関は八十数カ国が参加し、しかも平和と繁栄というような大きな目的を掲げて発足をしておる。ところが一方においては、あるいはアメリカを中心とする四十数カ国、あるいはソ連邦を中心とする十数カ国、こういう形で、いわゆる国際緊張というものが、原子力の分野においてもはっきりと打ち出してきておるというのが現状であります。私どもは大国の恣意を押えると同時に、このような原子力の分野、その平和利用の名のもとに、国際緊張の一環として、原子力を中心とするブロックが形成されつつある、こういうふうな現在の実情に対して、日本はいかなる手を打つべきであるか、これは私どもとしても非常に心すべき問題だと思いますが、具体的に御所信を承わりたいと思います。
  80. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 原子力の利用が分派的になりますことは、好ましいことではない、またそういうことのために、原子力を兵器に使うというようなことで、お互いに優位を争うというような状態は好ましい状態でない。平和利用の面においても当然そうでありまして、お互いに知識を交換し、意見を交換し、そうしてほんとうにこれを平和利用に向けて参りますためには、できるだけお互いがかきを作ってせめぐようなことのないようにして参らなければならぬ。日本といたしましてはそういう意味におきまして、大国間のそういうふうな問題についても、できるだけ平和利用の目的に沿いますように、御趣旨のような点で努めて参らなければならぬと思います。
  81. 岡良一

    ○岡委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、その立場から日本国としては、他のいかなる国と原子力に関する協力の協定を結ぶといたしましても、国際原子力機関の憲章は常に優先をする、こういう根本的な立場において協定の締結に臨むべきである。原子力委員会もこの方針を採択しておられますが、外務大臣の御所見はいかがでしょうか。
  82. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私といたしましても、その方針にのっとって参るわけでございます。従いまして、英米等と締結いたします本協定等についても、国際原子力機関憲章第十二条に持っていくように努めたいと思います。
  83. 岡良一

    ○岡委員 そういうお気持で日本の政策を進めるということになりますと、私はさらに具体的にお伺いをいたしたいのでありますが、日本科学技術、特にまた原子力、電子工業等の分野における立ちおくれを克服するためには、当然日本は、すぐれた先進国から謙虚に学ぶべきであると思います。ところが現在の日本科学技術振興は、ともすればアメリカに傾いている、これはまぎれもない事実であります。技術援助、あるいはノー・ハウの支払い等、非常に多額なものがほとんどアメリカに集中されている。そこで、まず基礎科学の分野で、外務大臣はソ連邦とすみやかに文化協定を結ぶ、そして日本科学者、ソ連邦の科学者の交流をはかる、こういう御決意をぜひ持って、実践に移していただきたいと思います。すでにアメリカも文化協定を結んで、相当大量な科学者の交流をやっておる。英国では、昨年有名なクルチャトフ博士が英国のハーウェルを訪れて、核融合反応についての成果を堂堂と発表しておる。われわれもこういう姿において、国境を越えた科学と真理というものを、今日の国際緊張の緩和のために役立たしめるという立場から、日本は当然ソ同盟、ソ連邦、あるいはそれに属する国々とも大きく文化協定、科学者の交流、こういう政策をお進めいただきたいと思うのでありまするが、大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私といたしまして、先進国から科学技術を入れますことについては、大いに歓迎をいたしておるわけであります。従いまして、ソ連との関係におきましても、御承知のように平和条約を将来考える場合に、積み重ねていろいろな友好関係を作っていく。従って、通商関係の問題などはすでに条約ができたわけで、今後そういうだんだんの処置として、文化協定の問題も考えていきたい。科学技術の交流というものも、それに伴ってくると思います。
  85. 岡良一

    ○岡委員 科学技術庁長官、あるいは外務大臣のこの問題に対する御答弁は、前会も他の委員からお尋ねがありましたが、まだまだ私どもは納得しがたいのです。科学技術、真理の世界というものは、人為的な国境を越えた問題でありますので、やはり科学技術振興のためには、堂々と思い切った措置をとっていただきたいということを強く要求いたします。  その次に、私は国際原子力機関が現在当面しておる大きな矛盾、これは何であるかと申しますると、国際原子力機関では、なるほど小国は機関の援助を受けて、情報や資材や施設、あるいは資金のあっせんまでも受けることができることになっております。一たんこの援助を受けた場合には、あのきびしい保障措置というものを受けなければならぬということになっております。機関は平和なり人類の繁栄という大きな目的を掲げながら、援助を受ける小国、まじめに平和を求めておる小国に対しては、わずかな援助をもってしても、これをたてにとってきびしい保障措置を適用している。ところが現在機関に加盟しておる大国においては、原水爆の実験などは、全く野放しの状態になっておる。私は国際原子力機関が現在持っておる最も大きな矛盾は、この点にあろうと思います。外務大臣が、大国を押えて小国の原子力平和利用を進めようというお気持であるならば、当然日本理事者として、この原水爆の大国による自由な実験というふうなものを積極的に押えてかかるという方針を、具体的に立ててもらわなければならぬ。この点、私は国際原子力機関が持っておる非常に大きな十字架の姿だと思いまするが、これに対して、外務大臣はどういう御所信を持っておられますか。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際原子力機関は、むろん平和利用のために発足した機関であります。しかし、平和利用を十分に達成していくために、他面においては、やはり武器として使用するというような問題には深い関心が起ってくると思います。従って、直接であるか関接であるかはわかりませんけれども、しかし国際原子力機構を通じての平和利用の拡大ということが、おのずから軍事目的のための核実験を押えることになろうと思います。
  87. 岡良一

    ○岡委員 大臣の御答弁は、非常に抽象的な、期待的な御答弁でございますが、御存じのように、現在貴重な原子力研究、発明というものは、おおむね軍事目的という名のもとに、秘密のヴェールの中に追い込まれておるわけです。機関原子力の平和利用を大国、小国の別なく普及させようというならば、当然秘密のヴェールの中にある原子力情報というものを開放しなければならぬ。これは機関を強力にしようという、そのことを目的として運営の衝に当らんとする日本政府の当然の使命でなければならぬ。そこで、私は具体的にお尋ねいたしますが、それならば、機関が、今日大国の原水爆の実験は、これを無制限に認めている、小国に対しは、きびしい査察をもってこれを迎えている、こういう矛盾を打開するには、機関憲章の改正が私は必要だろうと思う。特に機関第二条です。第二条の後段に、私は今日の機関の大きな矛盾が出てきている理由があると思う。この第二条の目的を見ると、前段では、人類の繁栄、世界の平和とあり、後段では、援助を受けた国々に対しては、保障措置をもって管理するとあって、大国の軍事利用を何ら制限していない。機関憲章は、十一条で、はっきり理事国としては、憲章の改正ができることになっている。だから機関ほんとうに強力に発展をするというならば、この第二条の後段で、暗々のうちに大国の原水爆実験を認めている、製造や使用も認めかねまじいような、こういう不穏当なところを改正して、大国も絶対に、平和目的にのみ原子力は使わねばならぬという方向に進めていく、具体的にこの憲章の第二条の後段の改正をやる、私はそこまでの決意があってしかるべきだと思うのです。ただ、あらゆる方法によって原子力の軍事利用を押えていこうというような抽象的なことではなく、具体的な行動として、政府としては、機関憲章第二条の後段を改正する、そうして原子力の平和利用には、大国といえどもこれにならうべきであるという、強い日本原子力の軍事利用禁止に対する国民の悲願というものを織り込んでいく御決意があるかどうか、この点を承りたいと思います。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 原子力平和機構につきましては、発足したばかりでありまして、これが目的を達成するためには、いろいろな、機構の上におきましても、あるいは憲章の上においても、今後十分討議をして参らなければならぬ問題があろうかと思います。そういう点につきまして、先ほど申し上げましたように、単に大国の立場ということでなしに、小国また平和利用をしようという利用者の立場も十分考えまして、そういう国々と十分相談した上で、今後の問題をいろいろ検討したい、こう思っております。
  89. 岡良一

    ○岡委員 とにかく先般日本が国連の安保理事会の理事に就任したときには、国連の松平大使は、拒否権についてかなり率直な批判をしておられたことを、私は承知しております。これは同様なことなんです。国際原子力機関における大国優先主義は、これを改正しない限りは、ぬぐうことはできません。そういう意味で、特に日本は被援助国、またはいわばアジアの国々というものを代表する資格で理事国に就任しているんだから、当然この目的を追求するためには、考えてやるというのではなく、積極的にぜひやってもらわねばなるまい、私はこう思うわけであります。  そこで、次にお尋ねをいたしたいのでありますが、昨年の九月に、政府は国連総会に、核兵器の実験禁止に関する決議案を御提案になっておられる。藤山外相も、わざわざニューヨクまで出かけられて、お骨折りをいただいたことと思っておりますが、しかし結果においては、あのわが方の決議案なるものは、東西両陣営から支持を得ることができなかった。もろくも敗れ去ったということも、これはいなみ得ない事実であります。そこで国際原子力機関においても、やはり政府があらゆる機会に総理も言うように原子力の軍事利用を全面的に禁止しようという強い立場に立つならば、まず原子力を取扱い、その平和利用をうたい、それをもって平和だ、繁栄だという機関において、政府は積極的に具体的にこの憲章の改正というような旗じるしを持って戦っていただくということが、被援助国、アジアの国々を代表する日本の大事な務めである、私は、このことを強調いたしまして、ぜひ政府の善処を促したいと思います。  そこで、なお先般外務委員会における総理の御答弁を拝聴しておったのでありまするが、ブルガーニン首相から書簡が参っております。大臣のお答によれば、近いうちに返事を出そう、こういうことを言っておられました。そこで私は、この際、すでに世界の世論もその段階にまで来ておると思うのでありまするが、東西両巨頭会談というものを、単に期待するのではない、促進をする、そうしてその議題には、当然核兵器の禁止問題というものを議題として、東西両巨頭が合意に到達をする、人類の不安を解消する、このようなことを議題として、東西両巨頭会談が設けらるべきものであるというような立場で、単に返事を書くだけではない、この機会に、私はアイゼンハワー大統領にも、各国の元首にも、この原子力の軍事利用の禁止を議題として大国の合意に到達するということを希望する、その大前提としての東西両巨頭会談を開く、これくらいに積極的に政府としても出るべきだと思います。政府の御所信はいかがでしょう。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 平和をもたらし得るためのあらゆる方法を考えますことは、当然であります。ことに、この段階におきまして巨頭会談を開かれるということは、平和にいきます大きな道であり、いろいろ緊張しておりますものは、大国間の不信の念にあるということは半ば事実であります。従いまして、そういうお互いの不信を払拭するためには、それらの国の首脳者が相集まって、ひざを交えてざっくばらんに話し合いをするということが必要だと思います。この前のジュネーブ会議は、相当成果を収めながら、あとの外相会議でもって必ずしもその結末がつけ得られなかったことは、残念であります。従って、巨頭会談を開くについて、あるいは事前に外交機関を通じ、もしくは外務大臣の会議を開いて準備をしたらいいだろうとか、いろいろ方法についても議論はあろうかと思いますが、ぜひとも巨頭会談を開いてもらいたい。またそういう際に取り上げらるべき大きな議題というものは、お話のように、核兵器の問題であること、軍縮の問題であることは申すまでもないわけであります。ことにまた将来国連を中心にして考えます場合には、国連における拒否権の問題等も、やはり巨頭会談等においていろいろ話し合いをなさることが必要ではないかというふうに考えております。
  91. 岡良一

    ○岡委員 私は、外務大臣の感想をお聞きしておるのではないのです。政策として、ぜひこのような具体的な行動に出られるかどうか、出るべきではないかということを私はお尋ねしておるのです。なお非常に遺憾なことには、またしてもアメリカは、中部太平洋で水爆の実験を四月から夏ごろまでやろう、その禁止区域の広さは大体前回同様とする。これに対して、一体政府はどういう態度で臨んでおられますか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 昨年九月十七日に、アメリカの政府は、本年エニウエトク付近におきまして原爆の実験をやるという発表をいたしました。直ちに日本政府としては、抗議を申し入れたわけであります。日本の今日までの態度は、いずれの国とを問わず、これらの軍事上の核兵器の実験、爆薬の実験というものに対しては、強い抗議をいたしております。最近に、御承知のようにその実行の時日並びに禁止区域等についての発表がありましたので、重ねてアメリカ政府に対して、強硬なる抗議を申し入れております。
  93. 岡良一

    ○岡委員 イギリスの場合でも、アメリカの場合でも政府区はすぐやめてくれという抗議をしておられる。そして万一損害があったら、その損害の賠償を要求する権利を保留すると、いつでも同じうたい文句です。ところが、いつでもそれを相手国が聞いてくれたことは、ただの一度もありません。またあなたのおっしゃるところでは、毎度同じことをする。私どもは、おそらく国民もそう思うだろうと思いますが、幾らやっても聞いてくれないのに、また同じことを繰り返すということは、国民に向っての言い訳にはなるかもしれませんが、実際国の政策としては、全然見通しが立たぬ。もし同じことを繰り返した、しかしこれもだめであった、一体政府は、そういう場合に責任をとろうとされますか。こうなったら、こう繰り返しやってもだめであるということになれば、私は、もっと決意もあり、具体的な手もあってよかろうと思う。その点の一つ御所見を聞かせていただきたいと思います。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 核実験のそれぞれの国の発表に対しましては、当然直ちに抗議を申し込まなければならぬと思います。同時に、やはり核爆発の実験、あるいは核兵器の問題等につきましては、国連を通じ、一方では実際的に一日も早くこの問題がとりやめになるように解決の道を努力して参らなければならぬ。また日本国民としては、人道的な立場から、広く世界の世論にも訴えて参らなければならぬ。そういう線を、われわれは今後強力に並行に進めて参りたいと考えております。
  95. 岡良一

    ○岡委員 それは、もう七、八年前からの政府の方針であった。ところが、それだけでは一向実効が上っておらない。そういう一片の文書や、あるいは出先にまかせておいては、この問題の処理はできない。真剣に政府が実験の禁止をさせようということで立ち上られるならば、もう一片の文書や出先の人たちにまかせないで、政府の代表なり外務大臣みずからがワシントンまで乗り込んで行って談判をする、私はそこまで踏み切るのが、あなたの一番大事な政治的責任だと思う。それだけの勇気を持っていただきたいと思うが、どうでしょう。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、ワシントンにも、あるいはロンドンにも行きまして、こういう問題を話し合う、強硬に抗議を申し入れるということに対して、決して努力を惜しむものではありません。昨年国連に参ります直前に、この発表がありましたので、ワシントンにも行って、十分に強い意味で私は話をしております。またイギリスに参りましたときに、この問題について、相当長時間にわたって外務大臣に話をし、また抗議したわけであります。その点については、話し合いをしたが、並行状態であったということを共同コミュニケにして出しておりますが、そういう努力をいたすことについては、決してやぶさかではありません。今後とも努力して参りたい、こう思っております。
  97. 岡良一

    ○岡委員 とにかくぜひ出かけて行って、責任を持って解決するくらいの勇気と決意を持っていただきたいということを、私は要望いたしておきましょう。  そこで、次には原子力発電が今いろいろの問題になっておりますので、この点について政府の所見を伺いたいと思います。ここ一両日新聞紙を拝見いたしますると、日本原子力発電会社の調査団が、ロンドンでいろいろな声明を出しております。要約すると、十五万キロワットばかりのコールダーホールの改良型の炉の買付をきめた、しかもこれは東海村に置かれて、一九六三年には、運転されれば、東京の電灯もこの動力炉の電気でともされるであろうなんてなことも言っております。一体、まだ一般協定も国会に提出されておりません。しかも原子炉を置くか置かないかという最終的な決定権は、原子炉等の規制法によって、これは総理大臣の許可事項になっております。ところが、動力炉を入れるための大前提となる動力協定の審議もされておらないどころか、まだ国会に提出もされておらない、目下折衝中であるというようなやさきに、こうして日本原子力発電株式会社の一行がロンドンで買うことにきめたようなことを言っておる。私は、まことに越権千万だと思うのです。こういうものに対しては、政府はきびしく措置すべきだと私は思う。正力国務大臣の御意見を伺いたい。
  98. 正力松太郎

    正力国務大臣 発電会社がコーダーホール型を買うことにきめたと新聞紙に報道されておるということでありましたが、まだきめたという事実はありません。御承知通り、まだまだこれから見積りも取らなければなりませんし、それからまた競争入札もしなければなりません。どうしてもまだ半年は十分にかかります。ただ、今のところは調査をしておる。第一耐震の問題はどうか、それからまた原子炉の器材についてはどうか。ただすべての調査が順調に進んでいることは事実であります。しかし、これはきめるについては、条約を協定しなくちゃいけませんし、むろんこちらも急いでおるのでありまして、話が順調に進んでいよいよ締結になれば——それまでには、もちろんこの前申し上げたように、近くきめなくちゃならぬと考えておるわけであります。できたらば、今国会に提出したいと思っていますけれども、かりに提出しなくても、今度の国会でなくても間に合う見込みでおります。
  99. 岡良一

    ○岡委員 そこで、今お話しの一般協定に私は話を進めていきたいと思うのであります。私は、政府のこの一般協定に対する態度、特にイギリスが提案をしておる一般協定に対する態度については、若干の疑義を実は持っております。そこで、重ねて確認をしておきたい。十八日のこの委員会で、同僚委員の質問に対し、正力国務大臣は、外務省において交渉中であるから、これにまかせると答弁しておられます。外務大臣は、免責条項を拒否しながら交渉を続けて、今日に至っておると言っておられます。要するに、現在は、科学技術庁も、原子力委員会も、外務省も、英国が最近修正として提出をいたしました免責条項、すなわち燃料の成型加工については、日本に引き渡したあとは、いかなる事故が発生しようとも、その損害賠償の責任はすべて日本政府にあるというこの提案は、これを拒否する、こういう態度に立っておられるのであります。十八日の御答弁は、このようでありましたので、重ねて私は確認をいたしたいと思います。両大臣からお願いをいたします。
  100. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日までのところ、そういう態度で交渉いたしております。
  101. 岡良一

    ○岡委員 正力国務大臣もそういう態度でございますか。
  102. 正力松太郎

    正力国務大臣 条約は、締結はしたいとは思うております。そうして今までは、やはり外務大臣の言うたような態度でいっております。しかし、何とか条約は締結したいと思います。
  103. 岡良一

    ○岡委員 しかし今の、原子力委員長として、科学技術庁長官としてのあなたの御方針は、外務省は免責条項を拒否しつつ今日まで折衝いたしておる、こう態度に御同調でございますか、同意を与えておられるのでありますか。
  104. 正力松太郎

    正力国務大臣 今日までは、できたら拒否してまとめたいと思っておりますけれども、しかし、いずれにしても締結はしたいと思っております。
  105. 岡良一

    ○岡委員 免責条項について、私はあなたの所見をお聞きしておるのです。外務大臣の御答弁では、免責条項はこれを拒否するという態度で、今対崎をしておられる。ところがあなたは、なるべくならば締結をしたいということは、免責条項をのみたい、それで国会に一つのんでもらいたい、率直に言えば、そういう御希望なんですか。
  106. 正力松太郎

    正力国務大臣 早く締結したいとは言うておりますけれども、でき得べきことならば拒否して締結したいと思います。
  107. 岡良一

    ○岡委員 それでは、私は、両大臣とも現在のところは、英側が提案をした一月九日の免責条項の修正案については、これを拒否するという態度で英側と交渉の段階にある、ごう理解をいたします。それで差しつかえございませんね——そこで、私は正力さんのただいまの御答弁を伺っても、どうもはっきりしない感じがいたします。先般も小松委員の質問に対して、外務省と同じ態度であると言う口の裏から、国際通念に基いて措置したいというようなことを言っておられる。ところがその御意見は、十八日の委員会だけではありません。新聞にも、やはりそういうことをあなたの見解として、しかも中央の各紙がこぞって報道しておる。西ドイツやイタリアの例をあげて、これらの国々は、英国と一般協定を結んだ、こういうことを前置きとして、国際通念に従って日本としても一般協定に臨みたい。こうなれば語るに落ちて、イタリアもドイツも協定を結んでおるのだから、日本も右へならえをして結べばいいのではないかというあなたの底意が、私は感ぜられてならない。あなたが国際通念に基いて措置したいとおっしゃるのは、そういうお気持を込めてのお話でありますか。
  108. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほどもたびたび申しましたように、現在まで拒否しておるし、拒否して締結できれば非常にけっこうだと思います。これ以上のことは、外交に関することだからあまり申し上げかねます。
  109. 岡良一

    ○岡委員 秘密外交は一つやめてもらわなければならぬ。それでは、正力国務大臣にお尋ねをするのですが、国際通念に基いて処理すると言われますが——外務大臣にも、私は国際通念という言葉の通念を教えてもらいたい。現在のところ英国と一般協定を結んでいる国は、わずかにイタリアだけです。ドイツはまた折衝の段階で、海のものとも山のものともわかりません。現在国際原子力機関には八十数カ国が入っておる。その中で、わずかにイタリアだけが英国と一般協定を結んでおる。従って厳密に言えばイタリアは英国と一般協定を結んでおるということは原子力機関加盟国の一つの例外にすぎない。ところがあなたは言葉をすり変えて、国際通念という言葉で右へならえをした方がよかろうというような底意を言っておられる。外務大臣、国際通念というのは一体どういうことなのです。これから教えていただかなければ……。
  110. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 原子力行政に関しますこまかい国際通念につきましては正力国務大臣の方から……。
  111. 正力松太郎

    正力国務大臣 大体今外務大臣が言われた通りであります。要するに外交のことはあまりはっきり言いにくいのですから、この点は御了承願いたい。
  112. 岡良一

    ○岡委員 私は何も外交のことを聞いているのじゃないのです。私のボキャブラリィが貧弱でわかりかねましたので、国際通念という通念はどういうものですかと聞いておるわけです。何も外交のことを聞いておるのじゃありません。さらに具体的に申し上げれば、原子力に関心を持つ八十数カ国の中でたった一カ国だけがたまたま英国と一般協定を結んでおる。これをたてにとって国際通念に立って処理するということになると、あたかも一つの特例が国際通念というものの内容になってくるということでは、私は非常に頭が悪いので概念の混淆を来たしておるので、この点を一つはっきりさせてもらいたい。
  113. 正力松太郎

    正力国務大臣 なるほどイタリアのは一つの例にすぎませんけれども、やはり燃料に関してはアメリカと日本と協定を結んでおります。それですからそういうようなことも含めて申し上げたわけです。
  114. 岡良一

    ○岡委員 ちっともわかりません。  それでは次に移りますが、実は免責条項について若干お伺いをいたしたい。外交のことは秘密だと言われますが、すでに新聞紙上に明らかになっている点でありますから、そういう逃げ言葉ではなく一つ率直にお答えを願いたい。  第一点は燃料の管理の問題です。新聞紙上を見ると、あの免責条項を受け入れれば政府が補償をしなければならないことになる。だからそうなれば政府が買い取るべきである、こういうような意見も一部に出ておる。そうかと思うとまた一方では、いや政府がこれを買い取るということになってしまうと、原子力発電というものの国家管理というような性格が非常に強くなる、これはわれわれとしては反対だから原子力発電会社が買い込んで、とにかく事故が起った損害は政府が持ってくれというような意見も出ております。こういうようにして原子力委員会、その参与会議、あるいはまた原子力産業会議の諸君もこれらの趣旨に従ってそれぞれ陳情をしておられる。実際こういうような新聞報道を拝見いたしますと、われわれは非常に迷います。もう政府はすでに免責条項を承認することにきめてしまったというような印象さえも受ける。これは拒否しつつ交渉するなどという段階じゃない。もうこれは承認をするという前提に立ってこの諸君が論議をしておられるということは、この論議の内容を見れば明らかであります。そこで災害を補償する責任が一体だれにあるのか、燃料の管理は何人が当るべきか、こういうようないわば原子炉に関する形式論の前に、この免責条項というものが示しておる原子炉というものの持つ潜在的な危険性というものに、私どもは大いに関心をそそがねばならぬのではないかと思います。原子力委員会は、経済性については非常な関心を示しておるが、その安全性については、国民をして納得をせしめるに足るものがない。これでは日本の真の原子力発電を育てるゆえんではないと思う。この点について原子力委員長としての正力国務大臣の御所見を伺いましょう。
  115. 正力松太郎

    正力国務大臣 イギリスの免責条項というものは、今お話のありました通りに、イギリスから燃料を受けた場合、これに対して国家が責任をとってくれということなんでありますが、それが民間に所有権があるのか、国家にあるのかということがきまっておらぬから、それを今論議しておるのであります。先ほどお話通り安全保障の点について十分今考究しつつあるのであります。
  116. 岡良一

    ○岡委員 原子炉の事故に基く災害の補償、あるいは燃料の政府買い取り等は予算にかかわる問題でもありますので、あと大蔵大臣からも御所見を伺いたいと思います。  そこで、それでは正力大臣にお伺いします。英国が七月の終りに一般協定の第一次草案というものをわが方に示しております。ところが、その免責条項の部分が十二月に大きく変り、一月九日にはまた大きく変っております。英国はそのとき免責条項の修正は、いかなる理由でこのような修正を出したか、当然これは外務省としてもお聞きになったことと思います。外務大臣あるいは正力国務大臣、英国は何でこの一月九日に昨年の七月下旬に出したのと全く事変った免責条項を出して参ったのでしょうか、その理由について英国側の説明をこの際明らかにしていただきたい。
  117. 正力松太郎

    正力国務大臣 実はイギリスが突如として昨年の十二月、ああいう免責条項を持ち出したのでありまして、どういう理由のあれかということははっきりしません。あるいはこちらで想像しますには、この間英国において牧場などで事故が起りまして、そんなことでも気にしたのではないかということは、率直にいえば思っております。いずれにしても今度安川電発社長がイギリスに行っておりまして、もうすぐ日本へ来るから、その事情もよく聞いてみたいと思います。
  118. 岡良一

    ○岡委員 外務大臣、英国がこの一月九日にああして大幅な免責条項の修正案を提出した理由を、英国側は何と説明しておりますか。
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 第一次案については、日本は強力に押し返しをしたのであります。従って、正力国務大臣も言われましたように、その理由ははっきりしませんけれども日本は押し返しました。それに対応して第二次案を出したと思います。
  120. 岡良一

    ○岡委員 それでは、その第一次案を出したときの英国側の理由は何でありましょう。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 詳しいことにつきましては、政府委員から……。
  122. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 英国が第一次の免責条項を出してきた理由は、われわれにはわかっておりません。
  123. 岡良一

    ○岡委員 しかし、問題はそこにあるのではありませんか。最初の提案では、きわめて抽象的な免責条項であった。今度は成型加工、そうして燃料燃料にしぼって、これについて日本が引き取った以上は、その事故に基いてどういう損害が起り、損害の補償をしなければならなくなっても、これはすべて日本政府の責任で、英国側は関知しない。英国原子力公社がこう言ってきている以上、先ほどども指摘しておるように、原子炉の安全性ということに多くの関心を寄せていくならば、外務当局としては当然いかなる理由でこういうような免責条項の修正をいたしたかということが最大の関心事でなければならぬはずだ。それがわからないということではあまりにも無責任ではありませんか。外務大臣、私は無責任だと思う。いかがですか。
  124. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 イギリスが出しました問題については、技術的な問題がたくさんあると思うのであります。そういう技術的な問題につきましては、外務省として十分の知識を持っておりません。従って原子力委員会その他の意向を体してわれわれはやりたいと考えております。
  125. 岡良一

    ○岡委員 もちろん外務省としてはこれを把握することができないとすれば、当然その技術者の意見を求めて—これは要するに大事な燃料の安全性というものに英国としても非常に自信が持てなくなったから、引き取った燃料というものは、全部それの事故に基く損害の賠償は日本政府がやれとやってきた。これは当然ではありませんか。そうすればどういうわけでこの燃料の安全性に対して英国がみずから信用が持てなくなってきたのか、ここのところをはっきりさせるということが、免責条項をのむかのまないかということの大前提ではありませんか。もし技術者がおられるなら、技術的な説明をしてもらいたい。
  126. 正力松太郎

    正力国務大臣 申すまでもなく、今度調査団が行きましたのは安全性の問題を中心に考えておるのであります。能率も考えておりますが、安全性です。それで先ほど申し上げました通りに、それが順調に進んでおるというところでは、安全性は大丈夫だろうというふうに調査団は見込みをつけたのではないかと思います。
  127. 岡良一

    ○岡委員 私は何もそんなことを聞いておるのではないのです。英国政府が免責条項を大きく修正をして日本側に要求をして提示してきた、その場合なぜ修正をしなければならなかったかという技術的な理由を確かめるか確かめないかということは、日本が万一その炉を導入したときの安全性にかかわる問題でありませんか。だからこの点は技術者でもけっこうだからはっきりさせていただかなければならぬ。
  128. 正力松太郎

    正力国務大臣 繰り返すようでありますが、その安全性の問題を調査するために行っておるのであります。従ってそういう免責条項を提出したことについて十分調査団が調べておるはずであります。それを非常に重要に考えております。
  129. 岡良一

    ○岡委員 日本原子力発電株式会社の調査団というものは、政府の代表でも何でもないのでしょう。当然十二月の暮れに向うが免責条項の修正を持ち出したときに、英側から何らかの説明がある、そこで日本側からもさらになぜこの修正をしなければならないかという理由についても納得のいく説明を聞かなければ、交渉に応じられないのではありませんか。日本原子力発電株式会社という私法人の団体が行って調査するとか調査しないとかいうことは、国会や国民とは無縁なことです。政府の責任においてそれをすべきではありませんか。そのことを私はお尋ねしておるのです。
  130. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お許しを得ますれば、説明員から説明いたさせます。
  131. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 向うの真意はわかりませんけれども、われわれの想像するところでは、英国の国内事情、英国の裁判権の問題、そういうような問題が出ましたので、それで初めには入っておりませんでしたけれどもそういう免責条項を出してきた、それからさらに第二の修正も、そういう見地から見て差しつかえない限度だけ譲って参った、そういうふうにわれわれは見ておるのであります。
  132. 岡良一

    ○岡委員 最初に英側が日本側に提案をしてきたときの免責条項の対象は情報、資材、施設となっている。ところが今度は燃料に限定してきている。燃料の成型加工ということに限定してきている。ここに問題があるのではありませんか。裁判の問題とかそういう問題ではない、もっと技術的なところに問題がある。ここを解明をしなければ、炉を買い入れた場合における安全性について、われわれとすれば納得ができないじゃありませんか。ここをどういうふうに確かめられたのであるかということを私は聞いている。
  133. 松井佐七郎

    ○松井説明員 御説明申し上げます。イギリスとの一般協定の交渉案の初めの案の中には、岡先生の御指摘なさったように、今日イギリスが出してきた免責条項に関する規定はございませんでした。その後こういう条項を突然提示したことに対する理由につきましては、こちらの執拗なる追及にもかかわらず、公的な説明は避けております。しかしながらそのこれに対するきわめて強い態度から判断いたしまするに、イギリスの燃料要素の成型加工に関しまして、売却国から購入国政府にある一種の保障を要求することを必要と判断するに至ったからであろうと思っております。もちろん一班の事情は、牛乳の事件が関係のあったことは時間的その他の関係から考えまして推測するにかたくはございませんが、イギリスの政府としましては、公的にはこれに対する真の理由については極力言明を避けております。
  134. 岡良一

    ○岡委員 どうも松井君は外務省の原子力博士ではあるが、われわれを納得させることにはいかぬ。しかしこれが一番のかなめではございませんか。なぜ抽象的に情報、資材、設備などと言ったのを加工成型の燃料とこう指定して、これの事故に基く損害については賠償の責めを負わない、日本政府が全部負えと言うてきたか。技術的な問題がある。ここを私は聞きたい。
  135. 松井佐七郎

    ○松井説明員 イギリス側の説明の根拠は、アメリカの原子力法の五十三条に御承知通り免責条項という条文がございます。この条文に基いたアメリカ政府が多数の国と結んだ一般協定の中にある条文を、イギリスと日本との協定の中に入れたい、その理由につきましては、原子力工学というものは日進月歩の新しいテクノロジーである。従って今日はあらゆる最善の知識と努力をもってするにもかかわらず、将来あるいは明日予測のできない事態が起るかもしれない。こういうふうな新しい産業に伴う危険というものは、ある程度国家で責任をとるべきである。イギリスの原子力公社の設置法の規定によりますと、イギリスの原子力公社が所有しているところの工場から出ましたところの放射線の害、あるいは廃棄物の処分から発生するところの件につきましては、イギリスの公社が無限の責任を持っている。しかし一方においては日本政府が将来膨大なる原子力発電をなされるならば、この新しい分野におけるところのリスク、それはあらゆる人知の粋を傾けた防御措置は講ずるかもしらぬけれども、万一——アメリカでは十億分の一の危険だと言っておりますが、そういう事件が発生した場合には、もちろんこの場合には民間の保険契約その他によってあらゆる第三者賠償責任その他に対する危険負担はあるべきかとも思いますけれども、なおなおそれでも足りない分については政府が補償してもらいたい、これはイギリスの政府がきわめて強く申しておることでございまして、燃料の入手の形態その他形式的な要件は若干違いますが、アメリカが多数の国と結んだ一般協定あるいは日本がアメリカと結んだ研究協定に基く細目取りきめの中におきましても、同一の条文をすでに国会の御承認を得ておる次第であります。
  136. 岡良一

    ○岡委員 それは大蔵大臣予算折衝のときに言われればいい話だ。私が聞いておるのは、なぜ成型加工された燃料と限定して特にこの免責条項の対象をこういうふうに変更してきたか。これには当然変更の理由がある。ところが、説明員のお話では、これは言わない。言わないがままに——言わないというのはどういうことかということです。成型加工された燃料に対して英国が自信を持たない証拠であることは明らかだ。たとい百万分の一であろうとも、とにかく潜在的な危険というものを英国は意識しておる。これについてはなぜかという理由は言わない。言わないで、そうしてこれをのむかのまないかという論議をしておるということは、一体どういうことを意味するんです。万一大きな災害があったときには大へんな損害が起るかもしれない。そういう国民に与える大きな影響などというものを全く度外視して、言わないから言わないがままに、免責条項をのむかのまないかという論議をするから、燃料の国家管理とかそういうような形式論議で空転しておる。私がこういうことを申し上げるのは、日本原子力産業というものを育てたいからですよ。今ここで万一事故が起ったらどうなりますか。こうして非常に原子力に対してセンシブルな国民感情というものは、政府原子力開発を推進しようとする努力というものにまっこうから抵抗してくるでしょう。だから、安全の上にも安全を期する、これが外国に対する交渉においてもあなた方の持つべき一番の大前提でなければならぬ。そうなってくれば、英国は特に成型加工された燃料について自分は責任を持てないと言ってきておる。しかも、申し上げるまでもなく、ウィンズケールにもあの大きな事故が起っておる。私はちょうどウィンズケールの事故の翌日にイギリスに行ってロンドンに一週間おった。英国では上を下への大騒ぎなんです。いまだにその事故の原因はわかっておりません。わかっておらないが、成型加工された燃料にその原因があるであろうということが言われておる。そこで、英国はその燃料というものにどうも自信を失ってきたから、事故に基くところの損害については英国は損害賠償の責めを負わないと言ってきたんじゃありませんか。そういう危険なものを、危険であるかどうかということを確かめもせずに、ただばく然と、言わないからということで、免責条項をのむかのまないか、燃料を国家管理にするかどうかなどという形式論、これが原子力というものをまじめに育てようという態度では断じて私はないと思う。正力大臣、どう思われますか。
  137. 正力松太郎

    正力国務大臣 それは、申し上げるまでもなく、安定性がなければ買えませんですよ。そうして今度安川団長が民間の会社からも政府からも連れていっているのです。そうして、この国家がやるとかやらぬとかいう問題、これはアメリカとの細目協定に出ておるのです。何もそれほど珍しい話ではないのであります。ですから、その点をもう少し……。
  138. 岡良一

    ○岡委員 それは答弁にならないのです。アメリカでは政府が買い取ることにちゃんときまっておる。しかも濃縮ウランを作る過程というものは向うでも極秘中の極秘となっている。だから、これはもう日本政府として受け取る場合には全的な責任を持っておる。天然ウランは原子力公社が日本の私法人にも売ることができるものです。これに責任が持てないものです。問題はそこにあると思う。たとえば、今正力国務大臣は、なるほど安川さんを団長とする一行が行って、これには地震の関係者も行っていろいろ調査しておる。そうして、先ほどお話を聞けば、安全だと言っておるが、これほど科学技術庁の長官として非科学的な御発言はありませんよ。原子力のシンポジウムで、原子力の動力炉の安全性については日本の一流の権威というものがほとんど確信を持っておらぬではありませんか。一体、日本の人たちが行って、一カ月余りを青写真で向うの原子力公社の専門家と論議をして、それで地震の対策は安全だ、そういうことが言えますか。常識をもってしてもわかるじゃありませんか。大体、私から申し上げるまでもなく、コールダーホールの改良型というのはダクトが非常に長い。曲りくねっている。ジョイントが多い。だから、これがもっと短かいものでも、やはり日本では火力発電が地震でやられた経験があるのですよ。だから、設計をしたらもっと実験に実験を積んで、これならば大丈夫だというところで、初めてこれが安全であるかどうかということがわかるはずなんですよ。わずか一ヵ月ばかり行って、こちらから青写真を持っていって、向うも売りたいからオーケーと言ったというようなことで、軽はずみにも安全だなどと言うことは、責任ある原子力委員長としては私は慎んでもらわなければならぬと思う。もちろん、この問題は、当然われわれも別の機会に動力炉の安全性については十分論議もし、また多くの人の意見も聞きたいと思います。  そこで、大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、今申し上げましたように、たとえばかりに免責条項をのんだ、そして一般協定を結ぶというような場合には、当然向うの言い分をそのままに受け入れたということになると、政府としては事故の場合には相当の損害補償をしなければならぬということに相なるわけでありますが、こういうことについては大蔵当局としてはどうお考えでございますか。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の質疑応答でも明瞭でありますように、今の段階といたしましては、大蔵大臣は、この核燃料物質とか、あるいはまた原子炉につきましては、法律によってこの扱い方について規制、監督はきわめて厳重にしなければならぬということになっておりますから、そういうふうな事故が起らないということを申し上げる。その段階以上に、私がここで仮定に基いて、いや政府はどうするということを言うのは適当でないと思います。
  140. 岡良一

    ○岡委員 ウィンズケールの事故があったというので、大蔵大臣も御存じだろうけれども、英国でも五百万ポンドばかりの保険というふうなものについて考慮する。アメリカでは、原子炉の事故については、その災害が非常に大きかろという予定の上に、すでに民間の保険会社のプールで一件について最高額六千万ドル、それでもなお不足するということになると五億ドルを政府が補償する。五臓六千万ドル、二千億ですよ。それほど原子炉というものについてはまだ安全性が確実でないと同時に、その及ぶ災害というものが非常に大きいということは、原子炉をどんどん作っている各国の立法例を見てもわかるはずだ。そういう点を、なるほど安全だ——しかし、今私どもの質疑応答の中で大蔵大臣もお察しのように、なぜ一体成型加工された燃料が特に免責条項の対象とならなければならないかということの説明は、向うも言わないし、こちらも聞いておらない。そうなれば、一番肝心かなめなところで安全性がない。こういうような状態のまま免責条項をのんで、そこで政府として補償する、そういう勇気がありますか、大蔵大臣。今の問答の過程であなたはどう考えますか。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話のようにこの原子力の扱いですが、これにつきましては安全だという前提に立たないと、安全であるか安全でないかわからぬというような扱いで国家補償ということを考えることは、財政当局ではとうてい賛意を表しがたいのであります。
  142. 岡良一

    ○岡委員 なお念のために、この際外務大臣にただしておきたい。先ほど、英国が免責条項を出してきた、その理由の説明は一向言わない、こういうふうなお話であります。ところがこういう文書があるのです。この文書は外務省から出た文書で写真でコピーしたものです。この標題は、「日英原子力一般協定における免責条項そう入の件」、こういうことになっておる。この内容を若干申しますと、説明は全然しないと外務省は言っておるが、これではちゃんと説明しておるではありませんか。「英側としては原子燃料の特殊性及び原子力災害が一旦起った場合の損害波及の範囲の大規模なること等にかんがみ、英国から購入する燃料については絶対に日本政府による危険負担が必要であると一貫して主張しておる。」英国は日本に渡すところの燃料については自信を持たないと言っておるじゃありませんか。なぜうそを言っておるのです、あなた方は。こういうことは外務大臣御存じですか。
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 向う側が出してきたそういう問題については、当然免責条項の問題になりますれば、やはり何らかの危険があるということを向うも承知しているからだということは、われわれも推測できるわけであります。従って、そういう危険なものについて政府がいたずらに責任を負うというような問題については、われわれとしては相当考慮しなければならぬのではないか。従って今日までのそういう問題に対する拒否の態度もその通りであります。ただ国内原子力行政の上からいいまして、今後犠牲を払ってもそういうことをやらなければならぬという結論になりますかどうですか、そこは外務省の関係するところでないのでありまして、国内原子力行政の立場から判断して、われわれはこれに対処します。しかし今日まではそういう意味において考えておるのであります。
  144. 岡良一

    ○岡委員 私はそういうことをお尋ねしておるのじゃありません。外務当局の先ほどの御答弁では、燃料について、特に燃料を指定して免責条項を修正してきた以上は、燃料について英国は自信を持っておらないのではないか、そうなればそういうものを受け取って、うかつに原子力発電をやったのでは大へんだから、その理由を聞いたら、何も言わない、ただ法律的なことを若干言ったという御答弁だった。ところが外務省から出ておるものには、今読んだように「英側としては原子燃料の特殊性及び原子力災害が一旦起った場合の損害波及の範囲の大規模なること等にかんがみ、英国から購入する燃料については絶対に日本政府による危険負担が必要であると一貫して主張しておる。」これをなぜ発表しないのです。これが国民の一番重大な関心事ではありませんか。日本が入れる動力炉の安全性というものは、この一語で十分に物語っておるじゃありませんか。なぜこれを発表しないでひた隠しに隠しておるのです。なぜ発表しないのですか。
  145. 松井佐七郎

    ○松井説明員 先刻どういうわけで免責条項を出してきたかということの御質問に対しまして、われわれは、最初出してきていなかったのに途中になって出してきたというその理由をお聞きになったことと思いまして、どういうわけでその時期に出してきたかということは、究明できていなかったということをお話し申し上げました。その交渉の過程におきまして、そういうふうに英国政府の代表が言っておるかどうかということは明瞭になっておりません。ただそこに書いてありますような内容のことを、いろいろな会談から推測してわれわれの方で結論を出しておるだけであります。
  146. 岡良一

    ○岡委員 そこで外務大臣にお尋ねいたしますが、交渉の過程の中で英側が免責条項の修正を持ち出した理由は「原子燃料の特殊性及び原子力災害が一旦起った場合の損害波及の範囲の大規模なること等にかんがみ」というふうに、交渉の過程から新しく免責条項を提示されたときには、英側の底意はこれであると外務大臣は認めておられますか。正力国務大臣もこれを御承認になりますか。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういうふうに推測いたしております。
  148. 正力松太郎

    正力国務大臣 今外務大臣から言われた通りであります。(笑声)
  149. 岡良一

    ○岡委員 それでは次に、この文書にはこういうことが載っておる。「よって、外務省としては前記二により次のラインで交渉妥結方を折衝すべきものと考える。」いいですか、免責条項は拒否する、そういう状態のままで今日に至っているというのが、あなた方お二人の話ですよ。ところが外務省は交渉のさなかにこういう文書を出しておる。「免責条項は英側再修正案を受諾する。」とはっきり書いているじゃありませんか。「ただし、右免責条項そう入に伴い、政府としては英側から引渡される燃料について自動的かつ無条件に免責義務をうけ容れることは甚しく彼我の建前の均衝を失することになるので燃料要素の性能、瑕疵の有無等について引渡前に日本政府が検査する権利を認め、かつ英側がこの検査実施に便宜をはかるべき旨の規定をさらに第八条に追加するよう提案する。」あなた方は国会では免責条項はあくまでも拒否する、こうはっきり答弁しておられる。ところが一月に発表されておる外務省のこの文書の中では、まず第一に免責条項は修正案を受諾する、次の条件で、と言っているじゃありませんか。これはどういうわけなんです。
  150. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それは事務官の試案だそうであります。
  151. 岡良一

    ○岡委員 それでは現在のところ外務省としては、やはり前段に述べられた通りな御意思を持って交渉に望む、こういう御態度でありますか。
  152. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私としては引き続きそういう態度であります。先ほど申し上げた通りであります。
  153. 岡良一

    ○岡委員 事務官の試案とあなたは軽くそう言われます。軽く言われますが、この中にはこういうことも書いてある。「去る一月十日自民党科学技術特別委員会が英案は燃料要素の検査の権利を協定上規定することを条件に実質的には受諾し得るものであるとの見解を表明した経緯があるが、外務省としても英側の根強い基本的態度にかんがみ、協定の早期妥結が期待される客観的情勢においては前記党側の主張する条件を付し、この際英側再修正案程度のラインで譲歩せざるを得ないものと認める。」こういうふうに与党側の決定事項もこの中にうたってあるのです。そして論理的に、長いから一々読みませんが、帰結として私が先ほど申し上げたような結論が出ておるのです。一体こういうものが事務官の試案、そう軽く扱って外務大臣としては責任が済みますか。これはあなたの人間的な良心において私はお答え願いたい。事務官の試案ですか、これは。
  154. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、私はその点について関知しておりません。事務官がそういうふうに報告したことであります。
  155. 重政誠之

    ○重政委員長代理 岡君に申し上げます。申し合せの時間が経過しておりますので、結論をお急ぎになるようにお願いをいたします。
  156. 岡良一

    ○岡委員 わかりました。こういう文書が、外務省内で何か原稿として机の上にでもあったものならいいでしょう。これはプリントにされ、マル秘として、しかも外部に出ているものじゃありませんか。それが事務官の試案。都合が悪いとなれば事務官の試案。それであなた方は責任を免れて済むのですか。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の関知しないところでありますので、十分調査をいたします。
  158. 岡良一

    ○岡委員 私はこういうものは事務官の試案だとして責任を回避すべき問題じゃないと思うのです。もしこれが事実この通りであるとするならば、外務省としては、全く国会というものの審議権を冒涜しておる。ありのままのこれは二枚舌外交あるいは欺瞞外交です。これを事務官の試案と私は簡単に済ますわけにはいきません。従って委員長におかれても、これが果して事務官の試案であるのか、あるいはその上長官等の決裁があるのか、この点を明らかにするために、暫時一つ休憩をお願いいたします。
  159. 重政誠之

    ○重政委員長代理 そうは参りません。ただいま外務大臣が答弁をせられた通りに、そのプリントはよく調査をする、こう言っておられるのでありますから、その調査を待って、一時御質問はこの点については留保をせられて続行されたらどうですか。——それでは主管局長から答弁せられるそうでありますからお聞きとりを願います。
  160. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 御承知のように、原子力問題及び一般協定の問題は、非常に複雑かつ困難な問題でありまするから、十分事務官レベルでまずよく研究をいたしております。それでありますから、いろいろ文書を作りまして、そうして関係者に配付して、研究の際にそれを資料といたすわけでありまするけれども、その段階におきましては、決して外部にそれを配付するというようなことはございません。部内だけで事務官レベルで研究することにいたしております。従いましてまだこの文書は幹部その他上司の方には届いておりませんものであります。
  161. 岡良一

    ○岡委員 関係する局課長の間においては、このような方向に意見が大体一致を見たと言われるのですか。
  162. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 事務官レベルだけでありまして、まだ上司の方へは見せてありませんものであります。
  163. 岡良一

    ○岡委員 事務官レベルでは一応この方向に意見が一致したと言われるのですか。
  164. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 事務官レベルの研究資料として作ったものであります。
  165. 岡良一

    ○岡委員 時間もありません。事務官の試案ということで、責任を回避されるならば何をか言わんやです。とにかく私が先ほど来いろいろお尋ねをいたしましたが、結論としての希望だけ若干申し上げておきます。  一つは、一般協定、原子力発電というものには絶対に安全性というものを政府は責任をもって考慮してもらわなければならぬ。これはいかに申し上げても言い過ぎることはないと思います。政府は、いたずらに経済性にのみとらわれて、そして原子力発電を急ぐ。しかもその結果、きわめて不平等な免責条項などをのむということは、日本原子力発電、原子力開発のためにかえって百年の悔いを残すものであるということを申し上げておきたい。  もう一つは、あまりにも政府は炉を買うに急ぎ過ぎる。炉ばっかり買う必要はない。もっと基礎研究のための原子力予算というものを十分に張り込んでもらわなければならぬ。労多くして益なしというけれども、どうも原子力研究所は原子炉建設所になっておる。こういうことではなくて、もっとみっちり腰を据えて、基礎分野における研究にはたゆまざる努力をしてもらいたい。いろいろ申し上げたいこともありますが、時間も参りましたので、この程度で私の質問を終ります。
  166. 重政誠之

    ○重政委員長代理 島上善五郎君。
  167. 島上善五郎

    ○島上委員 私は最初に外務大臣に二、三御質問申し上げます。  先般当委員会でも質問されましたが、はっきりしませんし、国民の不安がかえって増大しておるという状況でございますから、念のためにもう一ぺん伺いますが、日本の上空を核兵器を搭載したアメリカ軍が飛来するという危険に対しまして、今まで当委員会並びに外務委員会における質疑によって明らかになりましたことは、行政協定の第五条と航空法の特例によって、アメリカの航空機が日本の飛行場に出入りする。あるいは日本の上空を飛ぶということは自由な権限を与えられておる。従いまして、たとい核兵器を積んだ飛行機であっても、条約や協定上ではこれをはっきりと拒否することはできない。しかしアメリカは核兵器を積んだ飛行機を、日本の上空に飛ばすようなことはなかろう、これは相互の理解と信頼の問題である、大丈夫だというような意味答弁をされました。しかしこれでは国民は少しも安心はできないと思う。核兵器を搭載したアメリカの飛行機が、太平洋上を始終旋回しておるということは、ほとんど公然の事実のようでありますし、そうだといたしますれば、日本としては日本の上空に、そのような危険な飛行機が飛んで来ないように、国民に安心させるためには、はっきりと両国間で約束をする。行政協定の五条を改訂するとか、その他必要な約束をするということが必要ではないか。そうして国民に安心をさせるということが政府としては当然とるべき措置ではないかと思うのです。いかにアメリカがそんなことをしないであろうといって、岸さんがアメリカを信頼しましても、岸さんと同じようにアメリカを信頼する国民ばかりではないのです。むしろアメリカに対しては不信を持っている国民が相当多い。これに対して外務大臣は国民に安心を与えるための何らかの具体的な措置をお考えになっていないかどうか伺います。
  168. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日の日本とアメリカとの関係におきまして、日本が核兵器を拒否しておりますことは、その友好関係の信頼の上に立って、日本の立場を十分了解いたしておると思います。従いまして現在そういう事態がないということを私は確信しておるわけであります。将来の問題につきましては安保委員会等におきまして、いろいろ両国民の願望に沿うように、この問題を考えていきたいと思います。
  169. 島上善五郎

    ○島上委員 現在はそういう心配はないから将来については考えたい、こういうふうにお答えになりましたが、しかし、これはごく最近の新聞ですが、「米海軍及び国務省当局者は十五日、米第七艦隊所属の艦船及び航空機が核兵器で装備されていることを認めたが、これらの艦船が横須賀基地に入港する場合、核兵器をどう処理するのかという問題については言明を拒否した。」という記事が大きく出ております。横須賀の基地に出入りする艦隊が核兵器によって装備されておる、航空機ももちろんそうです、こういうことをはっきり言明しておるわけです。現在そのような心配がないという根拠は一体どこにありますか。     〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  170. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもはアメリカの艦隊が核兵器で装備されておる、されておらないかは存じておりません。しかし日米両国の今日の関係におきまして、日本が核兵器を拒否していることは十分了解をいたしておると思っております。従いまして日本において核兵器を持ったものが遊よくしているというようなことはないと確信いたしております。
  171. 島上善五郎

    ○島上委員 日本国民の核兵器持ち込みに反対しておる気持をアメリカは十分承知しておる、承知をしておるからそんなことはなかろう、こうおっしゃいますけれども、現に横須賀基地に出入りする第七艦隊及び航空機が核兵器によって装備されているということを認めておるのです。ただこれが横須賀の基地に入港する際に、核兵器をどう処理するかという問題については言明を拒否しているだけです。もしこれがはっきりと横須賀の基地に入港する際に、こういうふうに処理するんだということを言える状態にあるならば、言明を拒否しないだろうと思うのです。ここに私ども国民の不安が一そうつのる原因がある。あなたが、主観的にそんなことはないだろうと言っても、こういうような事実がある以上は国民は安心するわけにいかぬと思うのです。そこで国民に安心を与えるためには行政協定の第五条を改訂するとか、あるいはその他の必要な両国間の約束をするということが必要ではないかと思うのです。将来ではなくて今それが必要ではないか、私はそう思う。
  172. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在の日米友好関係の上からいいまして、私はないことを確信いたしております。将来の問題については今後研究して参りたい、かように考えます。
  173. 島上善五郎

    ○島上委員 これは非常に大きな問題です。確信しておると言いますけれども、確信するに足る根拠がありますか。私どもは心配しなければならない根拠がちゃんとこの通りあるから言うのです。私の主観で多分飛んでくるだろうということを言っているのではない。核兵器を装備したアメリカの飛行機が太平洋上を旋回しておる、横須賀の基地に入ってくる第七艦隊が核兵器によって装備されていると言明されておる。こういう根拠に基いて私どもは心配だから、その心配を取り除くような措置が必要ではないか、こう言っている。あなたの答弁は、そんなことはないだろう、何らの根拠のない単なる主観です。私はあなたがそういうふうに安心される根拠があるならその根拠をはっきりさしてもらいたいと思います。
  174. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日米間の今日の友好関係において、そういうことはないと私は確信いたしております。同時に核兵器を装備するといいましても弾頭を持っておらないと私は思っております。ですから私は必ず核兵器を持ってきておるとは考えておりません。
  175. 島上善五郎

    ○島上委員 そういう、私はそう考えておりますといったような根拠のない、のれんに腕押しの答弁を何回聞いても同じことですからやめますが、ただ私どもはそういうことでは納得しませんし、国民も安心しないということだけは事実で、これだけははっきりと申し上げておきます。  それから沖縄の問題です。これも質問しましたが、これまた私どもの同僚が質問した後に新聞に大きく出ております。「沖縄行政権返還見込みなし、米軍は四、五十年駐留」こういう大きな見出しで出ておりますが、簡単ですから参考にちょっと引例します。「沖縄の米当局筋は十七日、米国が日本に沖縄の行政権を返還する見通しはほとんどないと述べ、その理由として次の諸点をあげた。一、米国は沖縄の行政権返還によって得るものは何もない。一、日本と米軍当局が二重管理をすることは、日本ですでに問題化している基地紛争に導くおそれがある。一、米国は沖縄に当分とどまる意向で、その期間はおそらく四十年ないし五十年になる見込みである。一、沖縄住民と米側との関係はよくなることが期待されている。」こういう理由でもって四十年ないし五十年駐留する、こういうことを言っておりますが、もしこれが事実であるとしましたならば大へんな問題だと思うのです。たしか昨年九月、岸総理大臣が訪米しましてアイゼンハワーと会談した際には、極東に脅威と緊張の存在する限りというような表現を用いておったと思います。そしてこれについては岸、アイクの間には意見の相違があったと私ども聞いておりますが、しかしそれにつきましても私どもは四十年も五十年も、今後米軍が沖縄に駐留するなどということは夢想だにしなかったことであります。おそらく外務大臣もそうだろうと思いますが、こういうようなことがもし事実であるとしましたならば、これに対して政府は何らかの措置をとるというお考えはないかどうか、外務大臣のお考えを承わりたい。
  176. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 沖縄の施政権返還の問題については非常に重要でありますので、たびたび申し上げておりますようにわれわれも極力機会をつかまえて話をいたしております。ただお読み上げになりましたような新聞等の情報もあるかと思います。先般来社会党の皆さんも御指摘のように、アメリカにはまた反対の世論もわいてきております。そういう意味におきまして、われわれはできるだけ強力に一日も早く返還できるように努力を続けていきたい、こう考えております。
  177. 島上善五郎

    ○島上委員 もしこれが事実であるとするならば大へんなことだと思うのです。そこで私は外務省においてはこの真否を確かめて、もし事実であるとしましたならば、これに対して何らかの意思表示をするというお考えがあるかどうか。
  178. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 新聞紙上の記事につきまして、一々真否を尋ねることははなはだむずかしいのでありますが、なおよくアメリカ軍の意向も聞き、われわれとしましても、先ほど申し上げましたようにアメリカにも他の意見も台頭してきておるわけでありますから、そういう意味において今後研究して参りたいと思っております。
  179. 島上善五郎

    ○島上委員 それからもう一つ外務大臣に伺いたいのですが、先般韓国人の送還の際に、浜松の収容所から大村に向けて二百人余りを汽車で移送しました。その途中名古屋か大阪の駅で少し紛争と申しますか、問題があったようでございます。そうして結局十人ほど逃亡したという事件があったわけであります。私はそういうような逃亡するという問題が起った裏には、相当複雑な理由があるのではないかと思います。どういう理由が伏在しておるのか、それからこの問題はその後どのように処理されたかということをお伺いしたい。
  180. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外務省もその問題については関心を持っておりますが、主管官庁が法務省でありますので、法務大臣から答弁いたします。
  181. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまの浜松から大村への護送中に十数名の者が逃亡いたしましたことは、当時新聞紙にも出ておった通りでございます。また今お述べの通りでございます。この送還の責任を持っておる私どもといたしましては、まことに遺憾のことと存じておる次第でございます。御承知のようにこれらの人々は密入国でございまして、その意味においては、わが国の国法に触れてはおるのでございますけれども、ただその意味からして、一般の犯罪者扱いにするというようなわけにも参らない事情もございます。多人数でございましたのと、そうして監視するためについて参りました人々も、その多人数に比較すると、それほどの大ぜいではなかったというようなことで、一般の犯人護送の際に一人に一人、一人に二人、三人というような場合とは非常に違うものですから、十分注意いたしましたけれども、逃亡者が出たということははなはだ遺憾に存じております。逃亡者の行方については警察にも協力を願って、今捜査いたしておるところでございます。
  182. 島上善五郎

    ○島上委員 新聞紙の報ずるところによりますと、たばこを買う機会も与えなかった。見送りに来た人たちとの面会の時間もきわめて短かかった、そういうことが不平となって、それが爆発して何か騒ぎになった、その騒ぎになったすきに逃亡した、こういうふうに伝えておりますので、もしそれが事実であるとするならば、これは当局にもずいぶん手落ちがあるのじゃないか、この間の事情を、もう少しお聞かせ願いたい。
  183. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 新聞紙に今お尋ねのようにも伝えられておりますので、法務省としては今真相を調査いたしております。まだその調査の結果ははっきりいたしません。手元にまだ報告が届いておりませんから、どうぞ御了承願います。
  184. 島上善五郎

    ○島上委員 日韓会談が開かれようとするやさきでございますから、こういう問題は手落ちのないように慎重に取り扱ってほしいと思います。  次に、実は総理大臣に聞きたかったのですがおいでになりませんから、主として法務大臣になるかと思いますが、岸内閣は昨年組閣以来、三悪追放ということを非常に強調しておられる。また自由民主党は昨年の秋に新政策を発表いたしました際に、その第一項に国民に信頼される清潔な政治ということをうたっておられる。先般の施政演説の際にも総理は、道義に貫かれた民主政治ということを強調しておられる。まことにけっこうです。まことにけっこうですが、言うまでもなく政治は、こういう美しい言葉を並べたわけでは何にもならないわけで、これを実行するということが必要です。国民はこういう美辞麗句を求めておるわけではない。絵にかいたもちを求めておるわけではない。昨年の予算委員会の際にはこういったことに関連して私も質問しましたが、当時は検討するとか研究するという言葉で答弁しました。組閣当初ですから研究する、検討するでも済んだかもしれませんが、一年たった今日ではそうはいかぬと思う。そこで今言ったような国民から信頼される清潔な政治、政界から汚職を追放して政界を刷新するといったようなことについて、一体具体的にどういうことをお考えになっておられるか。あっせん収賄罪法を立法するということは聞いており、法制審議会に諮問しておることも承知しておりますが、これなどもずいぶん穴だらけのざる法のようであります。これにも私は意見がありますし、不満がありますが、その他どういうような措置をお考えになっておられますか。
  185. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 政治の清潔を招来するために、その一つとして、たとえばあっせん収賄罪の刑法改正案を出すというようなことは、すでに総理からもお話のあったところでございます。この政治の清潔、公務員の公務の純潔性というようなことを確保いたしますためには、ただに私どもの担当しております法務省だけでは事足りません。政府全体にわたりまして、まず綱紀の粛正をはからなければならない。その他各省関係においていろいろな方策があると考えるのでございますが、私の担当いたしております関係におきましては、まず現行法を厳重に守りまして、そうして非違のあるところはどこまでも正していくということも一つであろうと思います。それから今御指摘になりました新しく立法をするその一つといたしましては、あっせん収賄罪の新しい立法をするというようなことも考えられておるのでございます。
  186. 島上善五郎

    ○島上委員 もちろん法律一点張りで、これらの問題が解決するとは私も思いませんが、しかし政治に関する法律といっても非常に範囲は広いのでありますが、たとえば今お答えになりましたあっせん収賄罪にしましても、どういうものが出てくるかおよそ見当が一ついておりますが、非常に抜け穴の多い気休め程度のものではないかと思われる。それから、だんだん質問して参りますが、その他選挙法にしても政治資金規正法にしても非常に穴だらけです。このあっせん収賄罪は、きょうの新聞によりますと、小委員会の答申がほぼきまったようで、二十五日の総会で答申がきまるらしいと伝えられております。そういたしますと、この答申に基いたものを早急に提案して、今国会ではぜひ実現させようという熱意をお持ちですか。
  187. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 あっせん収賄罪の立案につきましては、ただいまお話のありました通り、昨日刑法の部会で一応の決定を見ました。二十五日に法制審議会の総会の議に付せられるわけでございます。その日に答申案が決定になりますれば、私の手元へ出てくることに相なっております。私といたしましては、その答申案を見まして、そして法務省としての成案を作りまして、なるべく早くそれぞれの手続をとりまして、提案して御審議を願いたいと考えております。
  188. 島上善五郎

    ○島上委員 ところで、このあっせん収賄罪の内容でございますが、学者の間にもいろいろ意見があるわけでございまして、私ども法律にしろうとの人間考えましても非常に大きな抜け穴がある。法務大臣はこれで十分に所期の目的が達せられるとお考えですか。
  189. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 あっせん収賄罪の内容につきましては、いろいろ世上にも批評があるごとと思います。去る四日法務省で作りました一応の案を法制審議会に付議いたしました際に、その案も新聞に発表してありますからごらん済みのことと思います。あるいはざる法、穴だらけとおっしゃいますのは、その案をごらんになってのことかと思うのでございますが、いずれこれは提案いたしました上でこまかく御質疑をいただいてお答え申し上げたいと思いますが、今さような御批評もありますので、ごく簡単にお答え申し上げることにいたします。  この法案は、私が今さら申し上げるまでもなく、わが国の刑法法典ばかりでなく、各国の刑法法典において最も規定のむずかしい条文の一つと相なっておるわけでございます。わが国におきましても学者、専門家の間にいろいろの議論がございます。この法律の必要性を主張する側から見ますると、なるべく広く、なるべく強く規定して、そして公務員の公務の純潔性を確保したい、こういう考え方の方と、それとはまた反対の立場におきまして、この法律は非常に危ない法律である。この法律の書き方によっては公務員の善意の活動すらほんとうに制約を受けてできなくなって、その副作用の方がかえって大きい。さらにこの適用を誤まれば、いわゆる検察ファッショを引き起す危険もあるから、この法律は軽々しく制定してはならない。あるいは制定するにしてもなるべく狭く厳重に書かなければならぬというようないわば相反する二つの立場において議論が戦わされておるのでございます。  詳しく申し上げる必要もないかと思いますが、さような事情がありますればこそ、今日まで学者間にいろいろと議題になっておりながら、刑法改正の運びに至らなかったのでございます。これはわが国ばかりでなく、諸外国の立法例を見ましても、これを規定しておるところもあれば規定しておらぬところもある。また規定しておりましても非常に具体的に一、二の例を列挙して規定しておるようなわけでありまして、御承知のわが国の刑法は昔のドイツの刑法に範をとったと言われておりまするが、このわが国の刑法の母法であるドイツにおきましても、戦前長いことこのあっせん収賄罪を制定することの可否が学者、専門家の間に論議されましたが、ついに成文化せずに世界大戦に入ったようなわけであります。  以上のような事情でございまするから、どういう案できまるか——どもの一応作りました案は新聞に伝えられた通りでございます。これに対して法制審議会の答申があり、その上で最後案を決定するつもりでございますが、どういう案ができましても、この法律を広く強く規定しろという考え方の方からごらんになりますれば、ここも落ちておる、あそこも落ちておるということで、狭過ぎる、極端に言えば適用がない、ざる法だ、こういうような御批評も必ずあろうと思います。またこれと反対の立場に立って論議される方からごらんになりますと、これは危なくて仕方がない、一歩誤まれば検察ファッショになる。これは広過ぎる、こういう御批評もあるのではないかと思います。国会関係におきましては、昭和十六年でございましたか、当時の貴族院において一応可決を見たのでございますが、衆議院に回って参りまして、この法律は非常に危険だというような御議論で否決になったような例もあるわけで、これは非常に内容のむずかしい法律でございますから、私といたしましては、各方面意見に耳を傾けて、最も適当だと思うところの案を立てたいと考えております。
  190. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまお答えになりましたような反対論その他いろいろの意見があることも知っております。そうしてこれも新聞の伝えるところですが、このような反対論と妥協するために、ほとんど適用されないような役に立たぬような骨抜きのものを法務省では出そうとしておる、こういう批判があるのです。私は、その妥協するためにこうしたという裏のことは存じませんけれども、しかしこの法務省が用意しておる法律案を見ますと、どうもそういう感じがしてならない。特に顕著なのは、たしか現行刑法では、通常の収賄罪に関連して、公務員が収賄罪になる場合には、自分でわいろを取らずに、親戚や知人、いわゆる第三者に取らした場合も罰しておるはずなんです。しかるに今度のあっせん収賄罪にはそれがない。政治献金の形で後援団体に寄付したり、政党に寄付したり、政党の支部に寄付したりというような、いわゆる第三者に渡した場合の処罰規定が全然ない。私は、これはあっせん収賄罪の立法措置を講じましたという申しわけにはなるかもしれませんが、あってなきにひとしいものだと思う。こういう点に対してどうお考えですか。
  191. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまのお言葉の通り、私どもが法制審議会に付議いたしました案は、いわゆる第三者供賄と申しますか、第三者に財物を提供させるようにした場合の規定はございません。これについて、やはりそこに穴があるのではないかという非難のあることも承知いたしております。しかしながら、私はもう重ねて申しませんけれども、この規定は非常にむずかしい規定でございまして、ことにこのあっせん収賄罪に限らず、およそ贈収賄に関する刑法の規定は、専門家から意見を聞いてみましても、非常にむずかしいもののようでございます。現行刑法におきましては、自分で収賄するという罪のほかに、その罪の条文として、自分は財物を取らぬけれども、あるいは自分の秘書なり、自分の関係しておる団体なり、第三者に財物を提供さした、これが犯罪になっておることは今御指摘通りで、これまですっかり網羅しなければ、なるほど十分とは言えないかもしれませんが、この規定といえども初めはなかったのでございます。私が講釈みたいなことを言っては相済みませんけれども、贈収賄に関する規定は、まず収賄罪だけが初めにあったようでございます。そうしてだんだんと適用して参りまして、贈賄罪も規定しなければいけないということで、まず贈賄罪の規定ができたそうでございます。そうして贈収賄罪だけ入りましたけれども、これでは第三者供賄が逃げるというので、そういうケースもあったから、第三者供賄も罰するという規定ができたそうでございます。さらに進んで、ただの贈収賄だけでなくて、収賄をして、その上に法を曲げた不正なことをやったというのは刑を加重したがよかろうというので、またいわゆる応報収賄と俗に言われているものができたそうであります。大体収賄、贈賄に関する規定を調べてみますと、刑法の制定の歴史においては非常に慎重を期しております。そうして順次試みて、これでも足りないというときにさらにこれを補正していくというようなやり方のように私は読み取っております。今度もあっせん収賄罪だけの規定でございまして、そして自分があっせんして、自分が財物を取らずに、今のお話のように、第三者に提供させるようなことをしたような場合は書いてございませんが、まずこの規定は長年論議の的であった規定である、そうして今度初めて立法するのでございますから、まずこの点だけ規定をして、これで踏み出してみよう、こういうような考え方から第三者供賄ははずしたわけでございます。  なお、念のためにつけ加えて申し上げますと、御承知のように、わが国の刑法法典の全面的改正を企てまして、たしか大正十年からでございますが、学者、専門家、また裁判や検察などに一経験を持っておる朝野の識者が集まりまして、二十年間かかって作りましたのが、今日、法律でなくて、六法全書などにおさめられております例の改正刑法仮案と称するものでございます。この改正刑法仮案のうちにもあっせん収賄罪の規定が一条ございます。その規定は、詳しくは申しませんけれども、ただ収賄をしたというだけでなくて、その人が要求をして収賄をした場合だけを罰するということになっております。これは要求をした、しないにかかわらず、社会悪であることは同じでございますけれども、広く規定したのでは、これはもう検察ファッショになるかもしれない、危ない、どこかでしぼらなければいけないということで、学者、専門家が知恵をしぼって、そうして要求して取った場合だけが犯罪になる、こう規定したようでございます。当時の速記録も残っております。いずれにいたしましても、この規定はそれぞれの考え方によって強過ぎるとも批評できましょうし、また弱過ぎるとも批評できる。私はその間におりまして最も中正妥当と考える案を作って参りたいと思います。先ほど妥協云々というようなお話がございましたけれども、私は学者、専門家その他の識者の意見は幾らでも傾聴いたしたいと思いますが、いわゆる妥協というような文字で表わされるようなことは、いたしたくないと考えております。
  192. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの御答弁で明らかにされましたように、最初は第三者供賄はなかった。しかしだんだんやっているうちにそういうことが必要になってきた。必要になってきたから、つまり第三者供賄がないことが、その法律をして不十分であるということが事実によって立証されてきたから、そういう必要が生じたからそうなったのだと思うのです。そうだとするならば、この法律にも当然そういうようなものをつけるべきではないかと思いますが、これは私の意見ですから、これ以上内容にわたって議論しても仕方がないと思いますが、これは今法務省が用意している程度のものではざる法で、実際にほとんど適用されることのないようなものになってしまう、こういうものではないかと思います。  次に伺いたいのは、政界をきれいにするためには、国民から信頼されるような清潔な政治にするためには、政治資金を公明にするということが最も大きな一つの要件ではないかと思います。今日政治資金規正法というものがありますが、これも大へんなざる法でして、全く価値のないものです。先般予算審議の際に同僚のどなたかが、本年度は財政投融資が非常に多い、本年度の予算は政治資金かせぎのにおいがする、というようなことを言っておりましたが、財政投融資を多額に予算に計上して、その金がめぐりめぐって政治献金になというようなことは、これは現行法によって禁止されていないにしましても、私は政界腐敗の温床だと思うのです。このことについては昨年岸総理大臣がはっきり答弁されているので、私は総理大臣に伺いたかったのですが、財政投融資、補助金、交付金、利子補給というようなものを与えた会社から、政治献金を受けるということは望ましくないと、はっきりと岸総理大臣は答弁しておる。さらに今の法律は、わずかに国と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者が、選挙に関して献金をしてはならぬと、こう禁止してあるだけです。選挙に関してでなければ幾ら献金しても一向差しつかえない。これが現行法です。昨年の暮れに自治庁で発表しました昨年の前期の政治資金の報告をしさいに見ますと、国と請負関係にある会社が献金しておる例もありますし、補助金、交付金を受けている会社が献金をしている例もあります。これは今言ったように、現行法では禁止されてないから合法的です。合法的ですけれども、しかしたとえば防衛庁の飛行機や軍艦を作る請負をした会社が献金をする、補助金を受けている会社が献金をするというようなことは、どう考えても私は望ましいことではないと思うのです。そういうことが野放しでどんどんされるということになりますれば、現行法上違法ではないにしましても、政界を腐敗させる原因になるのではないか。はっきりと岸総理大臣は、これは望ましくない、そこで法律的にどういうふうにしたらいいかということは今答弁できないが、検討してこういう望ましくない事実を取り除くようにいたしますと、はっきりと一年前に答弁しております。おそらく法務省に命じて検討されたことと思いますが、こういうようなことに対して法律的にどうしたらよいかという検討をされましたならば、その結論をお聞かせ願いたい。
  193. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 政治資金規正法の内容につきましては政府当局におきましても鋭意検討中でございますが、まだ結論を得ておりません。
  194. 島上善五郎

    ○島上委員 私がこう言うのは、選挙が遠からず行われる。ことしは総選挙の年であり、来年は地方選挙、参議院選挙の年である。もし今私が指摘したような、国会から財政投融資を受けたり、補助金、交付金を受けたり、あるいは請負をしたりというような、利害関係を伴う当事者がどんどん献金をすることは望ましくない、好ましくないと、岸総理大臣がはっきり答弁したことがほんとうであるとするならば、この選挙を前にして、政治資金を公明にするための措置をとるべきではないか。一年前に答弁した検討、今もまた検討では、ことし行われる選挙にはもちろん間に合わない。おそらくこれはどの党でも同じことですけれども、選挙を前にして選挙資金の用意をされて、相当苦労されていることと思う。これは政党としては当然です。ですから、今言ったような政治資金についての措置をする必要があるのではないかと私は強調したいのです。この点、検討した結論がまだ出ていないとおっしゃいますが、法務大臣はどうお考えですか。
  195. 郡祐一

    ○郡国務大臣 政治資金規正法につきましては、いろいろな御議論のあることは承知しておりますし、十九国会で各党の間でも合同して検討をいたされました。ただ政治資金規正法の一つのねらいは、これが単に禁止をするという法律ではなく、有権者の前にそれぞれの政治資金というものを公開するという点に一つの特色がございます。現にごらん下さいましても、アメリカには同種の法律はございますが、イギリスその他のヨーロッパ系統の国にはございません。これはそれぞれ政党の発達なり、その他に応じてきまって来ております。しかし私どもも現在の政治資金規正法をいろいろな角度から考えなければならないという点は承知いたしております。また各政党においても御検討いただいておることも承知いたしております。政府といたしましても大切な問題でありますから、現在の資金規正法自身で禁止しておりますことはもちろんでありますし、この公開という特色を生かして参ろうと思いますが、さらにいかなる点で改正するかというような点はこれは十分関係省の間の研究を進めて参ることにいたします。
  196. 島上善五郎

    ○島上委員 一年前と同じような答弁を聞くとは私は思いませんでした。これは一時しのぎの答弁としか解釈できない。もちろん現在の政治資金規正法は、公表するというのが大きな建前であることも事実です。しかし一方においては禁止もしておる。特定の寄付の禁止という項目があって、ちゃんと禁止しておる。国と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者は、選挙に関しては寄付してはいかぬ、こういうことでちゃんと禁止しておる。しかしそれでは、今言ったように選挙に関しなければ、選挙に関してという特定の時期でさえなければ、去年のように選挙のない年であるならば、国と請負を結んでおる会社が、どんなに寄付しても差しつかえないことになっておる。また請負その他特別の利益を伴う契約の当事者でなければ、補助金、交付金を受けておる団体が寄付してもよろしいということになっておる。現に寄付した事実がある。そういうようなことではいかに清潔な政治を唱えても、その源に腐敗する原因がひそんでおる。これを取り除かなければならないということを私は強調しておるわけです。それを一年前と同じように、検討します、検討しますということでは、私はどうしても政府の誠意を認めることができない。国民に信頼される清潔な政治、道義に貫かれた何とか政治、新聞でもこれは言葉のから回りだと、こう言っております。言葉のから回りだと言われないように、言ったことは責任を持って実行する、こういうふうにしていただきたい。  そこで私は質問を進めますが、選挙が近いというので、今いろいろの形の事前運動が行われておりますが、これは私は分科会で聞きましたので繰り返しませんが、この中で今あげましたのは一昨年の例ですが、一昨年の例の国連恩赦で選挙違反関係が七万人余り大赦を受けておる。今度皇太子殿下の御成婚がある。多分このときも大赦が行われるだろうということを当て込んで、かなり大胆な事前運動をやっておるということがうわさされておる。新聞にもちらほらそういうことが出ておる。もしそうであるとするなら、これは今のうちからはっきりと阻止しなければならぬと思います。今までもこの種の質問がありまして、総理大臣並びに法務大臣がお答えになっておりますが、今までの御答弁の限りでは必ず除外するという保証は何にもないわけです。そのときに唐澤法務大臣が法務大臣をしておるか、岸総理大臣が総理大臣をしておるかということはわからない。そこで私は、もし今までに答弁されたようなことをほんとうにやろう、選挙違反を皇太子殿下の御成婚の際の恩赦から除外するとということをはっきりと約束するためには、恩赦法を改正して——現に参議院では提案されております。恩赦審議会を設けてその答申によってきめるというような改正案が出ておりまするが、そういうようなはっきりした法的な措置を講ずるというお考えはないかどうか。
  197. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまお言葉がありましたように、いずれは皇太子殿下の御成婚がある、その際には相当大幅の恩赦があるであろうというようなことを見越し、手放しで選挙運動をする、選挙違反もかまわずにやる、いずれは許されるだろうというようなことで選挙運動が行われるということでありますれば、まことにそれは遺憾なことでございまして、政府といたしましてはこれらの運動は十分に戒めていかなければならぬと考えております。しかしながら御成婚のことはまだ先でございまするし、先ほどお言葉にもありました通り、もちろん私がおるかどうかということもわかりません。先のことを今この席でこうするああするということを明言することは御遠慮申した方がよかろうと思うのでございます。御成婚の際に恩赦をするかしないか、またするとしてもその中に選挙違反を加えるかどうかということについては、今ここで言うことを私は差し控えたいと思います。ただ、この前も申し上げました通り、先例といたしましては、今上陛下が皇太子当時、御成婚の際に恩赦が行われました。それは大正十三年一月の恩赦でございますが、これは大赦ではございません、勅令減刑でございます。従いましてすでに刑の確定いたした者だけに対する恩赦でございまして、過般の国連恩赦のような、大赦令を出して、そうして既決も未決も捜査中も未発覚の者も一切がっさい合せて、今お言葉にもございましたような約七万人前後もあるだろうというような、そういう広い意味の大赦は出ておりません。特定の減刑だけが出ておるだけであります。前例は以上の通りでございます。しかしながら、繰り返して申せば、御成婚の際の処置については、私としては今はっきり申すことを御遠慮申し上げたいと思います。  最後に、参議院で今審議中の、恩赦制度のうちに審議会を設けたらばどうかということでございますが、この点につきましては政府としては、今慎重に検討をいたしておるところでございまして、まだ結論が出ておりません。
  198. 島上善五郎

    ○島上委員 先のことについてはっきりしたことは言えないということは当然です。私は、皇太子殿下の御成婚が一年先か二年先かわからぬのに、そのときにどうするということを今ここで聞こうとしていない。皇太子殿下の御成婚もあるだろうし、あるいはその他の理由による大赦恩赦というような事態が生じないとも限らない。私がこう言うのは、今まで選挙違反というのは、控訴上告しておりますると三年も四年もかかっておる。そうして過去の事例を見ますると、全部とは申しませんが、選挙違反の多くは恩赦によって許されておる。そこで皇太子殿下の御成婚その他の今後あるべき恩赦、大赦等に際して、悪質な選挙違反を除外するということをあなたはここで言明することはもちろんできませんけれども、悪質な選挙違反を従来のように許すことは適当でないというお考えがあるならば、少くとも公正な意見を聞くために、恩赦審議会を設けて、そこに諮問するというくらいの措置は私はとるべきではないかと思う。前例はこうであるからといって、その前例通りしなければならぬという規制も何もあるわけではない。政府がやろうと思えば、今の法律ならば行政措置でできるのです。牧野良三君のように、私の法務大臣としての最大の仕事はこれであるといって力み返って七万五千人も大赦をするという人も出てこないとも限らぬと思う。そこでそういうことのないように、公正に扱うためには恩赦審議会のようなものを作ってそこに諮問する、こういうような法的な措置を今のうちに講じておく必要があるのではないか、こう言いたいのです。それをまだ検討中だと言われる。今検討しているのではもちろん今度の国会には間に合わぬでしょう。大急ぎで検討して今国会に出すとか、もしくは今提案されている案に政府が賛成して通すとか、こういうようなお考えはありませんか。
  199. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 恩赦制度のことはきわめて重要と考えますので、恩赦審議会を付置することの可否というようなことにつきましては慎重に慎重を重ねて検討いたしておるところでございます。なるほど恩赦審議会というものを付置することによりましての利益の面もございますが、またこれと同時にそれに伴ういろいろと配慮しなければならないような面もございます。これらあらゆる面について検討を進めておるところでございまして、まだ結論を得ておらないということを申し上げるにとどめておきたいと思います。
  200. 島上善五郎

    ○島上委員 その検討については早急に結論をお出しになるというお考えはありますか。また来年の今ごろになってまた検討中という答弁は私ども聞きたくない。
  201. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 その検討の結果いつ結論を得るかということにつきましては、今ここではっきり申し上げるだけの自信を持っておりません。
  202. 島上善五郎

    ○島上委員 どうも誠意をくみ取ることができないで残念です。  それでは質問を進めます。たしか私の記憶に誤まりがなければ、岸内閣であったかと思いますが、もし岸内閣でなければ、その前の石橋内閣かと思いますが、閣僚の私企業、営利企業への関与をある程度制限しようといったような申し合せをしたことがあるような記憶があります。今の内閣でそのような申し合せをしたことがありますか。それから申し合せをしたとしますならば、それが今なお実行されておりますか。これはどなたからでもけっこうです。
  203. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 これは、私がお答えするのは僣越かもしれませんけれども、便宜申し上げますと、私の記憶では、私企業へ関与することをやめようというような決定ではなくて、それだけでなくて、ともかくみんないろいろの関係を持っておるけれども、そういうものは掃除して身軽になろうじゃないかというような申し合せをして、皆さんそれぞれいろいろの役員なんかをよしたようでございまして、これは厳格にやっておるように感ぜられます。しかしほんとうのお答えは官房長官なりどなたからかお聞き取りを願いたいと思います。
  204. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは、これはあなたでもどなたでもいいのですが、閣僚が私企業特に国の財政投融資その他国の政策と関係の深い事業に社長とか重役とかで関与していることは好ましいことと思いますか。私は好ましいことではないと思いますが、どうでしょう。
  205. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 第一のお答えにつきましては、私の記憶をたどりまして私の知っておるだけを申し上げたのでございますが、今のようなお尋ねになりますと、これはそれぞれの立場にあられる閣僚からお答え申し上げた方がよかろうと思います。私がお答えするのは潜越と思いますから御遠慮申し上げます。
  206. 島上善五郎

    ○島上委員 大臣三人しかいないから……。これはさっき私が言いましたように、たしか岸内閣の当初か石橋内閣の出発かに際して、大臣の私企業関与は一つお互いに遠慮しよう、整理しようという申し合せをしたはずです。これは大へん殊勝なことだと私は思うのです。しかし単なる申し合せだけでは、これも時がたてばだんだんゆるんでしまう。私は、どの範囲にするかということについては議論があろうと思いますけれども、閣僚が今言った国の財政投融資や補助金や交付金を受けるような、あるいは請負をするような、そういう国と利害関係を伴うような営利企業に関与して、重要な地位についておるということはやめるべきではないかと思うのです。それも単なる申し合せではなくて、できるならば法律的にそういうふうな措置をすべきものではないか、こう考えておるわけです。 大蔵大臣にこれに対するお考えを承わっておきます。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私の大蔵大臣としての考えですが、むろん私は閣僚が営利会社に関係することは好ましくないと思います。ただしかしこれを法律で禁止する——そこまでいかなくても、いやしくも閣僚でもある人はそういうことは当然やらない、その方が私はいいと思います。
  208. 島上善五郎

    ○島上委員 法律で禁止しなくてもちゃんとそのようにやってくれればけっこうなことです。私は政治を清潔にするにはそういうこともやはり考える必要があるのではないかと思うわけです。  そのほかいろいろあろうと思いますが、しかし先ほど答弁にもありましたが、法律一点張りでもって政治をきれいにすることはできない。どうしても国民の政治的な啓蒙と申しますか、政治的な水準を高めるという方面の仕事をもっと積極的にやる必要があると思う。ところが、この点に対しては公職選挙法の第六条に規定がございますが、義務的な規定でございますが、これが実行についてははなはだ熱意がない。今度の予算でも全国の選挙管理委員会つまりそういうような仕事を直接やっておる当事者が、ことしの予算では、選挙がある年であるから、また来年の選挙もあるから、少くとも三億程度はほしい、こういう強い要請をしておったにもかかわらず、臨時費を含めて一億五千万円、こういうような数字を見まして、大へん失望しておる。これに対して、私は今後もっと積極的にやることが必要であると考えますが、これは自治庁長官からお考えを承わりたい。
  209. 郡祐一

    ○郡国務大臣 常時啓発の経費は明年度一億五千万見ております。しかし本年の実績によりましても、六百万人くらいの有権者を相手に常時啓発をいたしておりますし、また交付税の単位費用のうちにも、一億の金を見ております。私はこうした金を合せまして能率的に実行いたしますならば、常時啓発の目的を十分——それは金が多いにこしたことはございませんが、こうした国から出ます金、また交付税に見ております金、これらの金を合せまして目的を達したいと思っております。
  210. 島上善五郎

    ○島上委員 目的を達したいと思います。こういうお言葉でしたが、少くとも今日まではそういうような目的が達せられていないことは事実です。悪質な、口にするさえ遠慮しなければならぬような事前運動が、半ば公然と行われておるということも、そういうことによって効果が上る実態であるからなんです。つまり国民の政治的水準が、そういうような運動に惑わされる程度であるという実態であるからなんです。これは少くとも今までの啓発運動の効果が上っていないというりっぱな証左であろうと思うのです。法的な措置も巖重にする必要がありますけれども、同時に国民の政治的な水準を高めて、悪質な選挙事前運動に対しては、国民が冷笑を浴びせる、何ら効果が上らぬというようなところまで持っていかなければならぬと思うのです。今後自治庁がこの方面に対してもっと積極的に、少くとも現地でその問題に取っ組んでおる当事者の意見に耳を傾けて、その要求を入れるような積極性を持ってほしいと思うわけです。  次に伺いたいのは、暴力追放を盛んに言っておりますが、このごろの暴力団の横行、目に余るものがあますし、特に最近では、例の三笠宮の紀元節復活反対に対する言論に対して、かなり露骨な脅迫的な行動がとられておる。しかし、このような事例は何も今に始まったことではないのです。昨年も幾つかあったのです。映画会社に因縁をつけていって脅迫したり、文筆を業とする人々に脅迫を加えたりというような事例がたくさんあった。言論の自由が十分に保障されてこそ民主主義というものの保障がありますけれども、こういうふうに、言論に対して暴力をもって威嚇する、言論の自由を抑圧するというようなことが、公々然と、あるいは半ば公然と行われるようなことでは、言論の自由というものは保障されていないと思う。三笠宮の言論に対しても、皇宮警察を護衛につけたということだけは聞いておりますけれども、それ以外に何らかの言論の自由を守るための措置をおとりになったかどうか伺いたい。
  211. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 三笠宮殿下の身辺についてのお尋ねでございますが、今お言葉にありましたように、暴力、脅迫をもって言論の自由を制圧するというようなことがありましては、これはゆゆしきことだと思うのでございます。これは第一陣といたしましては警察の担当でございまして、警察の方ではそれぞれ適宜な処置をとっておるということだけは承わっておりますけれども、まだ詳しく報告を受けておりません。いずれ警察の側から詳細に御報告申し上げる方が適当であろうと思います。
  212. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 お答えいたします。暴力の取締りということにつきましては、私ども警察といたしましてはかねがね力を入れて経続的にやっておるのであります。具体的に申しますと、一昨年の夏以来私は特にこの暴力の取締りということを警察の仕事の重点の一つといたしまして、長期、継続的にこの問題には取っ組んで成果を上げるべきであるというふうに、第一線の各方面の警察本部長に指示をいたしておるのでございます。こうしたものは、御承知のように一時的に暴力取締り月間というようなものを設けて取締りをいたしましても、その期間を過ぎますとまた再び台頭してくるというのが、われわれの過去の経験に徴して言えることでございますので、私はこの問題につきましては、どこまども長期、継続的に、たゆまざる努力を積み重ねていかなければならない、根強いものがあるだけに、それだけに表面的なものをただ単に取り締まるというだけではなしに、抜本的に、特に組織的なものにつきましては、最後の中心に至るところまでメスを入れる熱意と努力を持って、これに臨まなければならぬということを申して参っておるのであります。手前みそになりますが、一昨年来相当成果を上げて参っておるのでございまして、いわゆる街頭のチンピラ暴力と申しますか、そういったものが相当影をひそめたと思うのでありますが、組織的に暴力は依然としてかなり根強いものがあり、執拗なるものがありまして、いろいろな形において、ただいま御例示になりましたような形の暴力は依然として跡を断たない状況にあるのであります。そこで私はこうしたものに対しまして、先ほど来申します通り、根強く、しんぼう強く継続的に取締りをやっていくようにということを強調しておるのでございまして、今後この方面につきましては十分力をいたして参りたい、かように思っております。  なお特に御指摘のございました三笠宮殿下に対する一部の者の言動の適切でないものがあるという問題につきましては、具体的に申しますと、かねがね三笠宮殿下は紀元節の復活について反対の御意見をお漏らしになっておるのでございますが、それをいわゆる右翼団体の一部の者がこれに反対の態度をとりまして、今月の十一日でございましたか、右翼の団体のある会合がありましたそのあと、数名のものが宮家に面会を申し入れて参ったのでございます。いわゆる面会強要の形になるような事態もございましたので、所轄の警察におきましてこれを制止いたしたのでございます。そういうこともございましたので、当分の間三笠宮殿下に皇宮護衛官を一名つけることにいたしました。その後三笠宮殿下が名古屋に御旅行いたされましたときにおきましても、地元のいわゆる右翼団体の一部の者によって、宮様の身辺に危害を加えるというまでのものではありませんけれども、面会を強要する、あるいはビラをまくというようなな計画もございましたので、そういう点につきまして取締りの遺憾なきを期した次第でございます。
  213. 島上善五郎

    ○島上委員 今あなたは組織的なものに対して、その中心部までメスを入れるほど積極的にやる考えであるということを言われましたが、その考えはけっこうです。しかし抽象的に考えているだけでは仕方がありませんので、それでは伺いますが、この三笠宮に面会を強要し、その他言論を抑圧するような行動に出た東京の団体、名古屋の団体をはっきり言ってもらいたいし、所轄の警察で処置をしたとおっしゃいましたが、どのような処置をされましたか。
  214. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 二月十一日の、三笠宮家に面会を申し入れて参りました右翼の団体は愛国党であったと記憶いたしております。それから名古屋におきまして宮様に面会を求める、あるいはビラをまくといったような計画をいたしましたものは、大日本生産党の東海支部と申しますか、名古屋支部と申しますか、そういった団体の関係であったと記憶いたしております。
  215. 島上善五郎

    ○島上委員 今、私は所轄署でどういう処置をしたかということもあわせて聞きましたが、どういう処置をしたか。それから両団体の責任者はどなたであるか、はっきり一つおっしゃって下さい。
  216. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 所轄署におきましては、取締り警察官を約十名くらい出しまして、面会を求めて邸内に入り、玄関口まで参った者を邸外に排除したのであります。
  217. 島上善五郎

    ○島上委員 これは私の記憶ですからはっきりしませんが、どうも今あげられた団体か、もしくはこれに類似する団体で、ときどきこういったような問題を起している団体があるやに記憶しております。ただ面会強要に来た者を排除したという程度の手ぬるい措置ではまた何回も何回も同じことをやるというおそれがあると思うのです。そういうことに対しては何らかの措置をお考えですか。
  218. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 それぞれの具体的行為に対しまして、各法条によりまして処罰すべきものは処罰をいたしております。従来ともその種の団体で不法行為を犯したものに対しましては、それぞれ処罰をいたしております。
  219. 島上善五郎

    ○島上委員 先ほどあなたが答弁したように、組織的な暴力に対しては、心臓部にまでメスを加えて、そういうものを絶滅するように積極的に努力するということがほんとうであるならば、もっと強力な手が打たれるべきではないかと思う。それがほんとうでありまするならば。ここで答える答弁の言葉のあやとして言われるならば、どういうことを言っても一時のがれになるかもしらぬ。しかし私はあなたの今答弁した、組織的暴力に対しては、心臓部にまでメスを加えてその絶滅を期する、積極的にやるというお考えを、今後ぜひ一つ具体的に実行に移してみせてもらいたい。この種のことがまたぞろ次から次へと行われるようでは、これはあなたの言葉は単なる言葉に終ったということになってしまうのです。  それからあなたは今、何か町のチンピラはだいぶなくなったと言っておりましたが、このごろの新聞を見ると、きょうの新聞でもきのうの新聞でもいいですが、暴力団といっていいか、ぐれん隊といっていいかわかりませんが、その殺傷事件がひんぴんとして起っておる。これらの連中は例外なしに法律で禁止されておる凶器を持っておる、ほとんど例外なしに法律で禁止されておる凶器を持っておる、こういう者に対してはふだんどういふうにやっておりますか。私は取締りに手抜かりがあるからこそ、そういう禁止されておる凶器を半ば公然と持っておるのじゃないかと思う。新聞を見てごらんなさい。きのうの新聞でもその前の新聞でも、ピストルで撃ち合いをしたとか、日本刀で刺し殺したとか、ほとんど毎日のように新聞紙上に現われておる。こういう法律で禁止された凶器が、どうしてこういう一部の人々の手に入っておるのかということを言うと、これは取締りが手抜かりだから、なまぬるいからそういうことになるのじゃないかと思うが、どうですか。
  220. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 暴力取締りにつきましては、私先ほど決意の一端を申し上げたのでございますが、それはただ単に表面だけの言葉ではなく、私はそういった気持で、全国の各郡道府県警察があげて真剣にこの問題に取り組むことを要請し、また事実そういう方向に向って努力しつつある状況でございます。今後着々成果を上げていくものと期待をいたしておるのでございます。  なおいわゆる暴力団あるいは暴力をふるう青年等が凶器を所持しておる場合、確かに私ども取締りをした結果、凶器を発見するという場合がきわめて多いのでございます。そういう場合に、そういう事件を通じて、検挙を通じて、潜在している凶器の発見押収には努めておるのでございます。現在潜在しておる、不法に所持しておるそういった凶器というものも、まだかなりあるものと考えております。今後あらゆる方途を講じまして、そうした方面についての取締りを厳に徹底して参りたい、かように考えます。
  221. 島上善五郎

    ○島上委員 そういう凶器を使って人殺しをやって、殺傷事件を起してからその凶器を取り上げるということでは、これはおそいと思う。今御答弁にもありましたが、潜在しておる凶器がかなりあるものと私どもも想像できる。こういうような潜在している凶器については、使用する前に摘発して処分するというような積極性がなければ、こういうような物騒な事件を社会から一掃することはできないと思うのです。  私はこれで質問を終りますが、ぜひ一つ、暴力追放ということをほんとうにやる気があるならば、さっき言った言論や出版物、映画等に対する暴力団の恐喝、凶器携帯といったようなことに対して、もっと積極的に、今あなたがお答えになった言葉を実地に一つ生かしてもらいたい。これを希望して私の質問を終ります。(拍手)
  222. 江崎真澄

    江崎委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十八分散会