運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-03-20 第28回国会 衆議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十日(木曜日)     —————————————  議事日程 第十六号   昭和三十三年三月二十日     午後一時開議  第一 日本育英会法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  内政省設置法案(第二十四回国会内閣提出)及び内政省設置法施行に伴う関係法令整理に関する法律案(第二十四回国会内閣提出)   撤回の件  日程第一 日本育英会法の一部を改正する法律案内閣提出)  漁業制度調査会設置法案内閣提出)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案内閣提出)  補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  食糧管理特別会計における資金設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出)  厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案内閣提出)  農林漁業団体職員共済組合法案内閣提出)  放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑     午後一時二十分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。  この際暫時休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ————◇—————
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から内政省設置法案及び内政省設置法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を撤回したいとの申し出があります。これを承諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、撤回を承諾するに決しました。      ————◇—————
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、日本育英会法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。文教委員長山下榮二君。     …………………………………     〔山下榮二登壇
  7. 山下榮二

    山下榮二君 ただいま議題となりました日本育英会法の一部を改正する法律案について、文教委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案趣旨は特に優秀な素質、能力を有する学徒経済的理由により著しく修学困難な者に対して、高等学校または大学への進学をあらかじめ保障し、学業に専念し得るよう、いわゆる予約採用英才教育制度を創設しようとするものでございます。  本案内容につきましては従来の一般貸与制のほかに特別貸与制度を設けて二本建とし、また、特別貸与を受けた者が卒業後貸与金返還する場合、一般貸与を受けた場合に相当する額を返還すれば残額の返還を免除できる旨の規定を設けておるのでございます。以上が概要でございます。  本案は、去る二月二十一日文教委員会付託となり、二十八日政府より提案理由説明を聴取して以来、慎重に審議をいたして参りました。  委員会における質疑のおもなものは、本法による特別貸与制度は、現在高等学校対象五千人、一人月額三千円が予定されているのに対して、将来の人員数及び大学段階における金額問題等について質疑があり、これに対して、政府より、この制度を将来拡大したい旨の答弁がありました。大学生に対して月額八千円程度貸与金を考慮していることが明らかにされたのでございます。さらに、従来における一般貸与金返還延滞納が累積して日本育英会運営に支障を来たさぬか。また、本法による貸与学徒選考方法等について、きわめて熱心な質疑応答がされたのでございます。その詳細は会議録により御承知を願いたいと存じます。  かくて、三月十九日本案に対する質疑を終了し、討論を省略して採決いたしました結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  10. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出漁業制度調査会設置法案在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  漁業制度調査会設置法案在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長福永健司君。     …………………………………     〔福永健司登壇
  13. 福永健司

    福永健司君 ただいま議題となりました二法案について、内閣委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、漁業制度調査会設置法案は、漁業事情の推移にかんがみ、漁業に関する基本的制度改善に関する重要事項を調査審議するため、水産庁の附属機関として、委員二十五人以内で組織する漁業制度調査会設置しようとするものであります。  本案は二月十九日本委員会付託され、政府説明を聞き、三月二十日質疑終了討論省略採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、第一に、在外公館新設及び昇格を行おうとするものでありまして、まずアジア、アフリカ諸国との友好親善関係増進並びに西アフリカの経済的意義にかんがみ、ガーナに大使館を設けるとともに、過去数年来各国が交換しております外交機関の国際的な趨勢に基きまして、従来公使館を設けておりましたサウディ・アラビア、ノールウェー、デンマーク、エティオピア、ニュー・ジーランド及びヴァチカンをそれぞれ大使館に昇格せしめようとするものであります。第二に、以上の措置に伴い、在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律にも所要改正を加えようとするものであります。  本案は、二月二十日本委員会付託となり、政府より説明を聞き、三月二十日質疑終了討論省略採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  16. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計における資金設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案、右四案を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計における資金設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員長足鹿覺君。     …………………………………     〔足鹿覺登壇
  19. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいま議題となりました四法律案について、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  補助金等臨時特例等に関する法律昭和三十三年三月三十一日限り効力を失うこととなっているのでありますが、政府におきましては、昭和三十三年度予算編成に当り、補助金等整理合理化について検討の結果、昭和三十三年度においてもなお引き続き同様の措置を講ずることを適当と考え、この法律有効期限をさらに昭和三十四年三月三十一日まで一年間延長することといたしております。  本案につきましては審議の結果、本二十日質疑を打ち切り、社会党を代表して横錢委員より反対討論のあった後、直ちに採決いたしましたところ、起立多数をもって原案の通り可決いたしました。  次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、食糧管理特別会計経理内容をさらに明確にするとともに、この会計運営健全化をはかるため所要改正を行おうとするものであります。  その大要を申し上げますと、まず第一に、この会計国内米管理勘定国内麦管理勘定輸入食糧管理勘定農産物等安定勘定業務勘定及び調整勘定の六勘定に区分するとともに、それぞれの経理分野について所要規定を設けることとしております。第二は、調整勘定資金を設け、一般会計からの受入金及び当該勘定における利益組入金に相当する金額をもってこれに充てることとし、食糧管理特別会計運営健全化に資するための措置を講ずることといたしております。第三は、農産物等安定勘定を除く各勘定利益または損失調整勘定に移して整理することといたしております。なお、この整理をした後に、調整勘定損益があるときは、利益調整資金に組み入れ、損失はその額を限度として調整資金を減額して整理することができることといたしております。また、農産物等安定勘定利益当該勘定積立金に組み入れ、損失積立金を減額して整理することといたしております。その他、この会計の三十二年度末における資産及び負債の各勘定への帰属並びに昭和三十二年度にこの会計に設けられる資金の承継について所要規定を設ける等、必要な規定の整備を行うことといたしております。  本案につきましては、慎重審議の結果、本二十日質疑を終了し、討論通告がありませんので、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  なお、本法律案につきましては、委員長発議による次の附帯決議案が提出せられ、採決の結果、全会一致をもってこれを付すべきものと決しました。附帯決議の案文は次の通りであります。   食糧管理特別会計調整資金設置する趣旨は、同会計赤字食糧証券の増発によつて泳ぐことを避け、同会計運営健全化を図ろうとすることにあるものであるから、今後とも同会計調整資金を超過する赤字を生ずる事態が予見されるようなときには、財政事情の許す限り、あらかじめ一般会計からの同資金への繰入等必要な措置を講じ、調整資金設置趣旨を没却することのないよう政府において十分善処せられたい。  次に、食糧管理特別会計における資金設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、食糧管理特別会計運営の現状にかんがみ、この会計資金を設け、この会計運営健全化をはかろうとするものであります。この資金一般会計から繰り入れる百五十億円を充てることといたしておりますが、これに必要な予算措置といたしましては、別途今国会に提出いたされました昭和三十二年度一般会計予算補正における一般会計から食糧管理特別会計への繰入金のうちに所要額を計上いたしております。なお、各年度損益計算利益があるときは、その額を資金に組み入れ、損失があるときはその額を限度として資金を減額し、その処理をすることができることといたしております。  本案につきましては、慎重審議の結果、本二十日質疑を終了し、討論通告がありませんので、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  最後に、厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、厚生保険特別会計法及び船員保険特別会計法について、それぞれ次の改正を行うことといたしております。すなわち、まず厚生保険特別会計法につきましては、この会計健康勘定歳入不足を埋めるため、昭和三十三年度以降六カ年度間、毎年度十億円を限り一般会計から同勘定に繰り入れることができることとなっているのを、三十四年度以降に繰り延べることといたしております。  次に、船員保険特別会計法につきましては、この会計保険給付費のうち、療養給付部門財源の一部に充てるため、昭和三十三年度以降五カ年度間、毎年度二千五百万円を限り一般会計から同会計に繰り入れることができることとなっているのを、三十四年度以降に繰り延べることといたしております。  本案につきましては、審議の結果、本二十日質疑を打ち切り、討論通告がありませんので、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより採決に入ります。  まず、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案外二案を一括して採決いたします。三案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、三案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  23. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出農林漁業団体職員共済組合法案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  農林漁業団体職員共済組合法案議題といたします。委員長報告を求めます。農林水産委員長中村寅太君。     …………………………………     〔中村寅太登壇
  26. 中村寅太

    中村寅太君 ただいま議題となりました、内閣提出農林漁業団体職員共済組合法案について、農林水産委員会における審議経過及び結果について御報告申し上げます。  本案は、農林漁業団体役職員共済年金制度の確立により、その福利厚生をはかり、もって農林漁業団体事業の円滑な運営に資せんとして提案せられたものであります。  以下、この制度の骨子のみについて申し上げます。まず、本法によって新たに設立せられる農林漁業団体職員共済組合は、各種の農林漁業団体のうち、農業協同組合農業協同組合連合会及び農業協同組合中央会森林組合及び森林組合連合会水産協同組合及び水産業協同組合共済会農業共済組合及び農業共済組合連合会漁船保険組合及び漁船保険中央会土地改良区、土地改良連合及び土地改良事業団体連合会、都道府県農業会議及び全国農業会議所開拓融資保証協会漁業信用基金協会並びにこの組合に使用される役職員のすべてを組合員とすることとなっており、その団体数は約二万七千、その役職員数は約二十六万人と予定せられております。組合の行います給付は、退職給付障害給付及び遺族給付でありまして、いわゆる短期給付はこれを行わないことといたしております。また、掛金は大体千分の七十八程度とされておりますが、これを組合員使用団体とで折半負担することとなっており、給付に要する費用の百分の十五及び組合の事務に要する費用について国が補助することといたしておるのであります。なお、本法施行期日昭和三十四年一月一日となっておりまして、それまでにこの組合設立手続を完了して、同日成立することとなっております。  本案は去る三月十日提出されましたが、堀木厚生大臣その他関係当局出席を求め、慎重審議の結果、三月二十日質疑を終了いたしました。本案に対する主要な論点は、国民年金制度と本制度との関係、本制度農林漁業政策上果すべき役割、財源率整理資源率算定基礎平均標準給与の考え方、私学または市町村共済組合との制度内容比較検討厚生保険特別会計からの移管金問題等でありましたが、時間の関係上、会議録により御承知を願うこととし、詳細な報告はこれを省略いたします。  かくて、本日採決に付しましたが、本案に対し、自由民主、社会両党共同提案により、厚生年金と本制度との間に平均標準給与期間通算を行わない趣旨修正を行うこととし、社会党中村時雄君より修正案が提出され、本修正案全会一致をもって可決され、次いで修正部分を除く原案採決いたしましたところ、これまた全会一致をもって可決されました。よって、本法律案はこれを修正可決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対し、政府農山漁民あっての団体役職員である事実にかんがみ、国民の半ばを占め、かつ劣勢産業のにない手である農山漁民の社会的、経済的地位を考慮し、農山漁民の福祉を積極的に増進するに足る国民年金制度早期実現をはかるべきであるという点、ほか本法の運用に関し、五項目の附帯決議委員会の総意をもってすることといたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  27. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  29. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件を議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件を議題といたします。委員長報告を求めます。逓信委員長片島港君。     …………………………………     〔片島港君登壇
  32. 片島港

    片島港君 ただいま議題となりました、放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件に関しまして、逓信委員会における審議経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  本議案は、日本放送協会昭和三十三年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして国会承認を求めるために、去る三月六日内閣より提出されたものであります。  議案内容につきまして大略御説明いたしますと、昭和三十三年度における事業計画につきましては、その重点を、ラジオにおきましては老朽陳腐化施設改善及び教育放送の時間増等番組充実に、また、テレビジョンにおいては全国普及のための置局及び放送時間増並び教育放送開始等による事業充実に置いております。  次に、収支予算におきましては、ラジオ関係については収入支出とも総額百三十九億八千八百余万円を予定しておりますが、これを昭和三十二年度に比較すれば、収支ともに十二億七千六百余万円の増加となっております。また、テレビジョン関係については収入支出とも総額七十五億七千四百余万円を予定しており、これは前年度に比し四十六億六千二百余万円の増となっております。なお、本年度収支予算においては、受信料を、ラジオ及びテレビジョンともに、昭和三十二年度と同額の、ラジオ月額六十七円、三カ月二百円、テレビジョン月額三百円といたしております。  次に、資金計画は、収支予算及び事業計画に照応する資金の出入りに関する計画であります。  以上御説明申し上げました収支予算事業計画及び資金計画について、郵政大臣は、これをおおむね妥当なものと認める旨の意見書を付しているのであります。  以上が本議案内容でありますが、逓信委員会におきましては、去る三月六日本案付託を受け、翌七日以降数回にわたって会議を開き、政府当局説明を聴取し、質疑を行いましたほか、特に参考人として日本放送協会の会長及び理事等出席を求め、慎重審議を重ねたのであります。質疑応答に当っては、先ごろ伝えられたラジオ受信料値上げの企図が撤回された事情並びに将来における受信料方策、右の値上げ回避の結果として計上されざるを得なかった多額借入金調達方法借入金NHK財政に及ぼす影響、予想される政府からの融資NHK自主性に与える作用等のほか、テレビの全国普及放送番組向上、特に教育教養番組充実等NHKに期待せられる積極的施策赤字財政下において推進する方途、多年懸案の従業員待遇改善方策等NHK運営基本に触れる諸問題が活発に論議されたのでありますが、これらの問答の詳細はすべて会議録に譲ることといたします。  かくて、委員会は三月二十日質疑を打ち切り、直ちに討論に入ったのでありますが、自由民主党を代表して小泉純也君日本社会党を代表して松井政吉君は、いずれも、日本放送協会公共的使命にかんがみ、各般の施策に万全を期するよう関係当局に一そうの努力を要望して、本議案承認を与えるに賛成の意を述べられたのであります。  委員会は、次いで採決の結果、全会一致をもって本議案はこれに承認を与うべきものと議決した次第であります。  なお、委員会委員竹内俊吉君の動議により、本件審議の過程における論議の動向に照らして、全会一致をもって次の附帯決議を行なったのであります。     附帯決議  一、日本放送協会昭和三十三年度収支予算の執行にあたつては放送債券長期借入金を通じ多額外部資金調達を必要とするが、政府財政資金の融通その他によつて、極力これに便宜を与えるべきである。  二、日本放送協会は、その公共性にかんがみ放送番組編成にあたり教育教養番組等拡充及び質的向上を図るべきである。  三、政府ならびに日本放送協会は、国際放送拡充につき更に積極的施策を講ずべきである。  四、日本放送協会は経営の合理化、経費の節減を図り従業員待遇改善に努めるべきである。  右決議する。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本件委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本件委員長報告の通り承認するに決しました。      ————◇—————
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、内閣提出刑法の一部を改正する法律案趣旨説明を求めます。法務大臣唐澤俊樹君。     〔国務大臣唐澤俊樹登壇
  36. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 刑法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  政府におきましては、かねてから汚職と暴力の追放に努力して参ったのでありますが、最近におけるこれら事犯の趨勢にかんがみまして、刑法の一部に改正を加えるの必要を認め、ここにいわゆるあっせん贈収賄罪に関する規定新設並びに若干の暴力取締りのための規定新設及び改正内容とするこの法律案を提出することといたしたのであります。この法律案の骨子は次の通りであります。  まず、あっせん収賄罪に関する規定は、事柄の性質にかんがみ、一挙にそのすべてを処罰するような広範囲なものとすることには、かえって全般の弊害を伴うことを考慮いたしまして、明白に悪質と見られる行為だけを取り上げ、かつ、乱用のおそれのないようにするため、すでに刑法で用いならされている明確な概念によることといたしました。すなわち、公務員の行なったあっせん行為のうちでも、請託を受けて他の公務員の職務上不正の行為をさせ、または相当の行為をさせないようにあっせんすること、またはあっせんしたことだけを対象とするものとし、また、そのことに関する報酬だけがわいろとなることを明らかにいたしておるのであります。なお、これに対応する贈賄罪の規定を設け、また、国外で犯されたあっせん収賄罪をも処罰することといたしました。     〔議長退席、副議長着席〕  次に、暴力取締りに関する規定は、第一に、被害者またはその親族等に対しまして面会を強請するなどのいわゆるお礼参りの行為を新たに処罰することといたしました。第二に、強姦罪、強制猥褻罪等は現在親告罪となっておりますが、これらのうち、二人以上の者が現場において共同して犯した場合においては非親告罪といたしました。第三に、新たにいわゆる持凶器集合罪ともいうべきものを新設して、三人以上の者が他人の生命、身体または財産に対して共同して害を加える目的で集合しました場合に、凶器を準備して集合した者、凶器の準備があることを知って集合した者及び凶器を準備しもしくはその準備があることを知って集合させた者を処罰することといたしました。第四には、現在親告罪となっております器物損壊罪及び私文書投棄罪を非親告罪といたしましたことなどであります。  以上が刑法の一部を改正する法律案趣旨であります。(拍手)      ————◇—————
  37. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) ただいまの趣旨説明に対し質疑通告があります。順次これを許します。高橋禎一君。     〔高橋禎一君登壇
  38. 高橋禎一

    ○高橋禎一君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております刑法の一部を改正する法律案に関して、岸内閣総理大臣を初め関係閣僚に対し、若干の質問をいたさんとするものであります。  岸総理は、就任以来、しばしば、いわゆる三悪追放について所信を表明され、ことに、今国会の休会明け劈頭、衆参両院において行われた施政方針演説中にも、汚職と暴力の追放について、強い信念と、かたい決意を述べられたのでございますが、これはまさに政官界の粛正並びに暴力事犯絶滅に関する国民の要望にこたえんとされるもので、賢明にも政治の要諦に触れられたものでございまして、その見識と勇気に対して私は深く敬意を表するものでございます。(拍手刑法改正法律案は、総理の言われる汚職と暴力追放の諸施策の一環として立案、提出されたものと存じますが、総理はこの新立法の力、新立法の社会的効果をどのように評価されておられるか、私はこの点をお伺いいたしたいのでございます。  申し上げるまでもなく、汚職、暴力、いずれもそのよって起る原因ははなはだ複雑多岐であり、その根ざすところもきわめて深いのでありますから、単純に刑罰の威力のみをもってしては、とうていこれを根絶することは不可能であります。従って、この法の持つ社会的影響力というものをどの程度に評価するかということは、一環の他の施策についての考え方及びこれに対する熱意にも少からず影響を持つものでありますから、もしこの価値判断を誤まるようなことがあって、総合施策の均衡が破れて、予期の成果が上らず、せっかく総理の理想とせられる清純明朗な民主政治確立のために、真に核心をついた政策が万が一にも中途挫折するようなことにでも相なりますならば、国家の一大損失でございますから、この際特にこの点についての総理の御見解を承わりたいのでございます。(拍手)次に、総理は汚職追放、暴力追放のため、刑罰による取締り以外の総合施策について、具体的にいかなる構想をお持ちになっておられるか、ということであります。私どもは、刑罰偏重、刑罰依存の政治のやり方には賛同いたしかねるのであります。もとより、総理におかれても、刑罰主義政治には反対であられることを確信いたします。従って、総理は汚職と暴力を追放するため、この新立法以外に数々の具体的施策をお考えになっておられると思うのであります。すでにこの点について施政方針演説においても若干言及しておられますけれども、私どもといたしましても、汚職については公務員の道義の高揚、行政監察の強化、責任の明確化と信賞必罰の徹底等、また、暴力については特に青少年の保護育成、一般社会環境の浄化等、根本的政策の必見を痛感いたしておりますが、新立法の総合的に考うべき問題でありますので、法案が提出された今日の新しい段階において、あらためて総理のお考えを明らかにしていただきたいのでございます。  次に、唐澤法務大臣にお尋ねいたします。  あっせん収賄罪の規定については、さきに社会党案が国会に提出されておりまして、社会党の諸君は、自画自賛、盛んにその案がりっぱなもののように言われるのでございます。政府案については、ざる法案とか、あるいは骨抜き案だとか、批判の声のあることも耳にするのでございますが、政府筋からいまだ政府案についての自慢話を承わっておらないのでございます。私は、ここで、大いに唐澤法務大臣からその御自慢話を承わりたいのであります。社会党案より政府案がいいと考えられたからこそ提案されたものでありましょうが、それなら、その理由を堂々と明瞭に述べていただきたいのでございます。(拍手)  わが国におけるあっせん収賄罪についての立法史の上から見て、昭和十五年の改正刑法仮案、昭和十六年の刑法改正法律案昭和十八年の戦時刑事特別法中改正法律、これらが注目に値いする立案であると思うのであります。そうして、社会党案は、それらの中から、戦時中でさえ概念が不明確で、チェコスロバキア刑法を除き、他に世界に類例を見ないほどの広範なもので、それゆえに検察ファッショを誘起する危険ありとして、法律としては日の目を見ることのできなかった、昭和十六年の不成立法案を模倣しておられるのでございます。(拍手)これは昭和十八年の戦時立法よりも高度のものであります。戦後は戦前より立法論もはるかに進歩し、刑罰法規は民主的に非常に大事をとるようになっておることを、われわれは反省しなければならないと思います。刑法学の大家であられるところの小野清一郎博士は、今審議中のこの政府案を評して、いみじくも、骨抜き案では断じてない、骨だけの案だと申され、世界のどこに出しても恥かしくない案だと賛辞を漏らされましたが、けだし私は名言であると考えるのであります。(拍手)唐澤法務大臣は、ここに両案を比較し、政府案のまされるゆえんをつまびらかにされたいのであります。  第二に法務大臣にお尋ねする点は、検察官の職務執行の適正の保障、ことに検察ファッショの防止についてでございます。政治的な事件には、よくこの問題がつきまとうのでございますが、誤まった捜査、誤まった起訴、または裁判のはなはだしい遅延によって、ほとんど一生を犠牲にするような、取り返しのつかない損害をこうむった人々が数多くあったことは法務大臣もよく御存じのところでありまして、国家として、それらの人にいかにしてその罪を謝し、その心を慰めんとするか、これは真剣に考えなければならない問題であると私は思うのでございます。(拍手)それと同時に、将来かかる誤まりを再び繰り返すことのないよう、政府は責任をもって万全の策を講じなければならないことは当然であります。法務大臣は検察官を指揮監督する立場におありでありますが、この指揮監督権の運用について、いかなる理念に基き、いかなる構想をもって臨まれるか、また、国民の良識から考えてとうてい許しがたしとする過誤を犯したものに対して、どのような措置をとられるおつもりであるか、法務大臣の所信を承わりたいのでございます。  裁判の遅延については、国民の批判が強く、心ある人々をして憂慮せしめていることも争えない事実であります。日本国民は刑事事件について迅速な裁判を受ける権利を有することを憲法は保障しているのでありますが、この憲法の精神はよく実践されているかいなか、はなはだ疑わしいものが多々存するのであります。裁判が迅速に行われなければ正義は維持されないとするのが世界の常識となっておる今日であります。法務大臣は裁判迅速の方途について、制度的に何かお考えをお持ちになっておられるかいなか、また、これに関連する問題として、理論的にも不合理である無罪判決に対する検事の上訴制度を、英米の例にならい、全廃または制限する意図がおありかどうか、お伺いをいたしたいのであります。  さらにお尋ねいたしますが、法務大臣の諮問機関である法制審議会において、あっせん収賄罪について審議された結果、附帯要望事項として、あっせん収賄の罪について将来いわゆる第三者供賄に関する規定を設けることを考慮することの決議があったのでありますが、政府はこの際第三者供賄罪の立法を意図しなかった理由、並びに、将来この問題をどのように取り扱われるお考えであるか、あわせてお答えを願いたいのであります。  次に、法律問題として、ただ一点だけ法務大臣にお尋ねいたしますが、それはあっせん収賄罪の規定によって守ろうとする法益は何かということであります。今日までのこの問題についての沿革、ことに論議の経過を見ますと、この法益の点は必ずしも明確にされていないのであります。昭和十六年案のごときは、この点が明瞭を欠くため、あっせん収賄の規定は議会を通過しなかったような歴史がありまするし、また、被害法益の点が明らかになりませんと、犯罪主体その他構成要件についての考え方が定まらないと思われるのでありますが、この際政府の見解を明らかにしておかれる必要があると思うのであります。本改正法律案規定趣旨から見まして、一応あっせん収賄罪の被害法益は、憲法に淵源する公務員の廉潔性と公務の公平性ということにあるであろうと思われるのでありますが、政府の御意見をお伺いいたします。  次に、国家公安委員長である正力国務大臣に、警察活動の指揮の問題についてお伺いいたします。  警察の中立性確保は憲法及び警察法の精神でございまして、われわれは、これを尊重し、これを育成せんとするものでありますが、わが国においては、一般的に中立性確保に関する制度と運用とがはなはだ未熟であるように感ぜられまして、いまだその真価と妙味を十分に発揮しておらない段階のごとくに思われるのであります。中立性を維持しなければならない者の団体が、口に中立性を叫びつつ、一政党に偏するの態度に出たり、中立性機構の牙城に閉じこもって、孤立、偏見、独断、横暴の弊に陥ったり、われわれの理解し得ない事象の起ることのあるのが、現在の日本の状態でございます。この現実の上に立って、冷静に警察制度を考えますとき、私どもが疑問と危惧を抱きますことは、警察活動の指揮監督の問題であります。検察官の場合は、もし権限乱用の危険があるようなときには、法務大臣は一般的指揮監督権のほかに、具体的事件についてさえ検事総長を通じて指揮する権限が認められておりまして、いわば検察ファッショの防波堤となっておるのでありますが、警察の場合は、かかる配慮がなされておりません。具体的犯罪捜査について見ますと、緊急事態の場合を除き、特殊のもので警察庁長官、一般的には都警察では警視総監、道府県警察では警察本部長、これらを頂点として、全く警察官僚にまかせっきり、警察のひとり歩きという状態でありますが、世界の警察の今日までの歴史、その職務の性質、内容等から考えまして、単に国務大臣が国家公安委員長であるとか、人事権による間接的監督とか、警察官の教養と良識に待つということだけで、いわゆる警察ファッショを防止し得る自信がおありかどうか、警察活助の誤まりなきを保障し得るものと考えられるかいなか、検察庁法に定むる法務大臣の指揮監督権のごとき制度を必要と考えられないか、これらについて所信を承わりたいのであります。  最後に、唐澤法務大臣、正力国務大臣にお尋ねをいたしたいのであります。暴力事犯は最近量、質とも悪化の傾向にあることは御存じの通りでございまして、これが非常に社会を暗くいたしておるのが実情でございます。かかる事態に対処しますには、事の性質上、法の威力を示し、取締りを強化しなければならないことは当然でありますが、国民一般の目から見ますと、近ごろの警察当局並びに検察当局の暴力に対する活動ぶりに対しては、まだまだ満足いたしかねるものがあるのであります。当局の力で早く暴力からの不安や恐怖を一掃してもらいたいというのが国民の願いであるようにも思えるのであります。警察、検察の責任はきわめて重大であることはもちろんであります。当局は一方、行き過ぎ是正をはかりつつ、他面、怯懦や萎縮を戒め、職責完遂に邁進して、もって国民の期待に沿わなければならぬものと思うのでありますが、両大臣はどのようなお考えであるか、暴力事犯取締りに関する御決意のほどを承わりたいのでございます。  以上をもって私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  39. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 高橋君の御質問にお答えをいたします。  新立法の効果をどういうふうに見ているか、汚職及び暴力の追放のためには総合的政策を必要とするが、その具体的の策はどういうことを考えるかという御質問であるかと思います。言うまでもなく、汚職、暴力ということは民主政治の敵でありまして、われわれが真に明るい民主政治を完成していく上におきましては、いかなる意味においてもこの汚職、暴力をなくしなければならないことは言うを待ちません。歴代の内閣におきましても、もちろん、それを意図して、いろいろな施策を行なってきております。私自身が国民にこのことを公約して参っておりますのは、この問題を取り除くという強い私の念願から出ておるわけでありまして、これは、もちろん、一片の法律改正することによってこれが除けるというふうな簡単なものでないことは言うを待ちません。こういう事態が起っているのは、やはり社会に深いその禍根があるわけでありまして、いろいろな意味における社会環境の改善や、その他おあげになりましたような総合政策をもって進んでいかなければならぬこと言うを待ちません。このあっせん収賄罪及び暴力に関する今回の刑法改正は、もちろん、いろいろな批判がありましょう。足らざるところもありましょう。しかし、政府が、こういう問題に関して、きれいな、明るい民主政治を作り上げるために、汚職と暴力をなくしようという強い念願の一つの現われとして、これを取り上げてもらいたいと思います。公務員の廉潔を維持するためには、その道義の高揚が必要であることは言うを待ちません。また、国民全体における政治道義の高揚もその根底をなしております。さらに、行政監察の強化であるとか、あるいは責任の明確化であるとか、信賞必罰をやらなければならないというような点も、もちろん、私どももこれを遂行して参っておりますし、将来も遂行して参るつもりであります。また、青少年の特に保護育成につきましては、私がしばしばあらゆる機会に申し上げておる通り、これは将来の問題として非常に大事なことであります。また、最近におけるいろいろな暴力事犯等を見ますと、特にこの点においては、われわれは意を用うべきものである、かように考えております。いずれにいたしましても、法律だけでその効果が現われるものではないし、また、刑罰に依存してこういう問題ができるものでないことも言うを待ちません。要は、今申しましたような総合的政策とともに、この法律案に現われておる真の精神を生かしていくということが必要であると思います。(拍手)     〔国務大臣唐澤俊樹登壇
  40. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 私に対するお尋ねの第一点は、今本院で継続審議中になっておりまする社会党案との比較についてのことでございます。社会党案は、御承知のように、あっせんの内容につきましては何ら制限がございませんから、その処罰の範囲は非常に広いのでございますが、あっせん収賄罪の問題は古くから論議されておったのでございまするけれども、この立法の必要を認めながら、なお今日までこれが実現いたさなかった理由の一つは、この法律は、一歩運用を誤まりますれば、善意の公務員に非常な迷惑を及ぼす、民主主義の政治下におきまして、善意の公務員、ことに議員の政治活動が非常な制肘を受ける、一歩誤まれば検察ファッショになるおそれがあるということから、従来、学者、専門家の間におきましても非常に論議があったのでございまして、この立法をいたすにいたしましても、何かこの規定に制限を付せなければいけないということが、多くの学者や専門家の意見であったのでございます。現に、昭和十五年に発表になっております改正刑法仮案のうちにこの条文があるのでございます。御承知の通り、この改正刑法仮案は、過去二十年間にわたって、学者や専門家、朝野の権威者が集まって作った法案でございますが、このあっせん収賄罪に関する規定も、やはり、一つの制限を付して、広くあっせん収賄行為を処罰するのではなくて、そのうちで、自分がわいろを要求した場合だけを処罰するという制限を付しておりました。当時の速記録を見ますると、この規定は、わが刑法においては初めての試みであるから、まずこの程度の制約を加えなければ危険であるという説明になっておるようでございます。さように考えて参りまして、今ごらんを願っておりまする法案は一つの制約を加えております。その意味におきましては社会党案よりは狭いのでございまするが、この案におきましては、公務員が他の公務員に対して不正な行為をしてもらいたいということをあっせんをした、その場合だけを処罰することにいたしておるのでございます。かつ、この法案の乱用を防ぎまするために、文字、用語なども、従来刑法の解釈で習熟しておりました用語を使いまして、そうして、検察官がその法条の適用において誤まりをなくそうというような趣旨をもって作られておるのでございます。私といたしましては、現在のこの政府案が最も適正妥当の案と確信をいたしておる次第でございます。(拍手)  私に対するお尋ねの第二は、検察官の職務は適正に行われなければならないということでございます。これはまことに御意見の通りでございまして、法務大臣といたしましては、検察庁法に基きまして、常時検察官に対して誤まりなきを注意をいたしておるものでございます。ことに重大なる過誤のありました場合におきましては、検察官適格審査会にお願いをして審査をいたすような手続もとっております。  なお、憲法におきましては、国民は刑事事件については迅速なる裁判を受ける権利があるのに、今日の裁判は非常に遅延しておるではないかというお尋ねでございまして、まことにその通りでございます。実に困っておる次第でございまするが、この促進のために、従来いろいろと工夫をされております。しかしながら、その根本的の解決は、裁判、検察、弁護、この三者が一体になり、ことに国民が協力していただかなければ根本的には解決できないと思うのでございまするが、打開の方法といたしましては、裁判官あるいは検察官を増員いたしまするとか、裁判機構を改善する、あるいは保障制度改正を加えるというような諸点でございます。鋭意この改善に向って努力をいたしておる次第でございます。なお、この裁判の敏速化をはかりますために、無罪の判決があった際における検察官の上訴を法律をもって制限するようにしてはどうかというような御意見もあったのでございまするけれども、これは、現在のわが国の第一審の裁判制度におきましては民衆関与の方法がとられておりませんし、また裁判官も、必ずしも、英米等に見るような、すぐれた、真に老練な法曹ばかりではないのでありますので、今急にこの上訴制度を改めることはいかがかと存じております。そうして、実際の運用について見ましても、上訴する際には上級検察官の指図を仰いでやっております。それから、控訴を申し立てました人員は、第一審の審判の言い渡しを受けました人員の、わずか〇・六%が上訴をいたしておるだけでございまして、その上訴をした者の半数以上が、控訴裁判所で検察官の申し立てが入れられておるというような状況でございますから、運用におきましても、さほど心配することはないと思うのでございます。  次に、法制審議会でこの素案を審議いたしました際に、その附帯要望事項といたしまして、第三者供賄に関する規定を将来付加するようにということでございました。この問題につきましては、私ども、法制審議会へ案を付議するときにも十分研究をいたしたのでございます。しかしながら、わが国の刑法の沿革を見ましても、御承知のように、刑法は明治四十年に制定されて、そのときに収賄罪の規定はございましたけれども、第三者供賄の規定はございません。その後、第三者供賄の規定が必要だというので、昭和十六年に至って、初めてこの規定が追加されたのでございますが、その後、この規定の運用を見ますると、その後十数年を経過いたしておりまするが、わずか四名が起訴されておるだけでございます。さようなわけで、理論的にはこの規定が要るというような議論も立ちますけれども、実際はそれほどに実効がなかろうということで、この規定は省いておるのでございます。これは、先ほど申し上げました改正刑法仮案のうちにもこの規定はございません。また、昭和十六年に提案いたしました政府案のうちにもございません。また、現に今継続審議中の案のうちにもないのでございます。これらを参酌いたしまして、現段階におきましては、この第三者供賄の規定は要らない、かように考えた次第でございます。  それから、あっせん収賄罪の法益いかんということでございましたが、これは、お言葉の通り、公務の公正と公務員の廉潔ということでございます。  最後に、暴力の取締りでございまするが、最近ひんぴんとして暴力ざたのありますことはまことに憂慮にたえないのでございまして、法務省といたしましては、警察と力を合せて、現行法を活用して、でき得る限りこの取締りに当っておる次第でございます。なお、足らざるところがございましたので、法律案のうちにも暴力取締りに関する若干の規定を入れた次第でございます。(拍手)     〔国務大臣正力松太郎君登壇
  41. 正力松太郎

    国務大臣(正力松太郎君) お答えいたします。  私に対する、まず警察官の活動、監督の点についてお答えいたします。申し上げるまでもなく、警察官は公平でなくちゃならぬ、正しくなくちゃならぬということでありますので、この意味におきまして、各府県に公安委員会という中立の機関を設けて十分に監督させています。そのほかに、なお、各府県には警察本部長を置き、また警視総監もおりますが、しかし、この点についてはなお私は考究する余地があると思います。そうして御期待に沿うようにしたいと思っております。  次に、暴力の問題であります。暴力の取締りということは、国家の治安上、これほど重大なことはないと思います。従って、従来も警察庁としては努力してきましたが、なお今後一そう努力しまして御趣意に沿うようにいたしたいと思います。(拍手
  42. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 田中幾三郎君。     〔田中幾三郎君登壇
  43. 田中幾三郎

    ○田中幾三郎君 私は日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のございました刑法の一部改正法律案、そのうちで、特にあっせん収賄に関する規定、集合に関する規定について、若干の質問をいたさんとするものであります。  本法案は、ついに、ようやく、今日ここに提案されたのであります。汚職追放は岸内閣の三大スローガンの一つであって、あっせん収賄罪を刑法中に加えるということはその措置として必要であり、岸内閣も、総理も、つとにこれを言明いたしておったにかかわらず、今国会もはや三カ月を経過いたしました今日、ようやくこの法案が提出されましたことは、私は岸総理が果して汚職追放を真に心からやるつもりであるかどうかということについて疑わざるを得ないのであります。(拍手)  昨日、法務大臣は、参議院におきまして、法制審議会の審議に手間がかかったということを申しましたが、ただいま法務大臣も申された通り、この法案はすでに大正五年に立案された古い法案であるのでありまして、今さらこれの審議に時日を要するということは、私ども理解し得ざるところであります。聞くところによりますと、党内にはこの法案に対する非常に大きな反発があって、党内と政府との間に調整を要するがために時日を要したということを聞いておるのであります。(拍手)なるほど、この法案は、まことに国会議員を含む公務員にやいばを向ける法案であります。事によってはみずから作った法律によってみずから逮捕せられなければならぬかもしれない法案でありまするので、この法案審議について関係ある公務員諸君が非常に関心を持たれるのはもっともであります。けれども、ただいま法務大臣の申された通り、各般の行為を網羅すべきであったけれども、さしあたってこの法案を提出したと申されました。これは、この法案に対しまして、世間は、ざる法案である、骨抜き法案であるというこの批評の通り、語るに落ちたものではないかと私は思う。(拍手)各般の行為を網羅せずして何を追放するのでありますか。  私は以下、この法案はざる法案である、骨抜き法案であるという点について、二、三質問をいたさんとするものであります。(拍手)  そもそも、公務員は国家全体の奉仕者であって、その与えられた権限と地位は公的なものである、一身に属する私的な権利ではないのでありますから、その職務に関する限り、公けの給与以外には何人からも不当な金銭その他の利益の提供を受けてはならないのであります。(拍手)この公けの地位、権限を私有化して利益と結びつくところから公務員の倫理が乱れるのであります。規律がゆるむのであります。腐敗が生ずるのであります。公務員が、自己の職務の権限外の行為であっても、その地位を利用して他の公務員の職務行為をあっせんするのであるならば、いわば間接的に他の職務に関与することとなるのであって、これに関係して金銭その他の利益を得るということは何らの合法性もない。公務員の公けの職務権限を汚すことは直接公務に関して利益を得ることと何らの違いがないと信ずるのであります。(拍手)  あっせん収賄を刑罰の対象とする法的理念は、現行刑法が自己の職務に関してわいろを収受することを公務員の公正と純潔を犯すものと解釈するのと同様に、公務員が自分の地位を利用してほかの公務員の職務をあっせんすること自体もまたその公務員の純潔と公正を害するものと理解するからであります。このことは、先ほども申しました通り、すでに昭和十五年の刑法改正仮案においても認められておるのでありまするし、昭和十六年には貴族院は通過いたしましたけれども、衆議院において否決の運命を持ったのであります。公務員がその地位を利用してほかの公務員の職務に属する事項についてあっせんをすること、またなしたことについて、わいろを収受することを、あっせん収賄罪として認めようとしたのが、この法案であります。  わが社会党は、昭和二十九年の第十九国会において、これとほとんど同趣旨法案を提出いたしましたが、審議未了に終りまして、さらに昭和三十二年第二十六国会におきまして提案をいたしまして、目下継続審議中であることは、御承知の通りであります。ただいま法務大臣が説明されました通り、本案はわが社会党の提出しておりまするところの法案と著しくその内容を異にいたしております。ただ、あっせんして、それに対するわいろを取っただけでは、処罰しないのであります。すなわち、本法案によりますと、あっせんされる行為が不正なることを要する。そのあっせんをするという行為に不正であるという制限をつけておるのであります。たとえば、大臣や国会議員や官庁の役人が、他人から頼まれて、他の役人に認可や許可や物件の払い下げや低利資金の借り入れをあっせんして謝礼をもらっても、不正の行為さえあっせんしなければ何ら罪とならぬのでありまして、そういうことになりますと、大臣や議員や役人や、その地位や肩書きを利用する周旋屋が、政界、官界を横行いたしまして、大手を振って公然とこれを行うこととなりまして、官界、政界の粛正どころか、むしろ綱紀はゆるみ、純潔は汚れ、ボスとブローカー横行の腐敗社会を出現するであろうと思うのであります。(拍手)今日までこういう考えのもとにしばしば逮捕された事件がありましたけれども、現行刑法の讀職罪のもとにおいては、この抜け穴を通って、いずれも無罪になっておるのであります。お気の毒でありますけれども、昭電事件の判決に見ますると、外務大臣であり特別調達庁の長官である者が、進駐軍の資材の政府支払いに関することを閣議に持ち込んで、その外務大臣たる地位を利用して閣議の決定を業者に有利に取り計らっても、外務大臣は閣議の決定権がないから、それは職務権限外のことである、職務に関したことではない、こういうふうに認定されております。また、外務大臣が業者を特定金融機関に紹介して、復興金融公庫から融資をするについて有利に取り計らって謝礼を受けても、特定金融機関を直接指揮監督するのは大蔵大臣であるから、外務大臣が口をきいても職務に関したものではないのであって、紹介行為と見るべきであるから、収賄とは認められないというのが、この判決の趣旨であります。  公務員の地位、肩書きというものは一つの威力であります。非常な影響力を持っております。その地位に伴う力を利用して他の公務員に働きかけて、その利用価値に対してわいろを受けるということは、それ自体不純であり、不潔であり、不公正であり、綱紀を紊乱すると思うのでありまして、われわれの倫理観、正義観から見まするならば、この地位を利用する者こそ責任を追及さるべきであると信ずるのであります。(拍手)この欠陥を補うために世間はあっせん収賄罪を要求いたしておるのであります。しかるに、本法案は、この欠陥を少しも救済しないで、むしろ構成要件をきつくしぼって、犯罪の成立を困難にいたしておるのであります。すなわち、こういうことが許されるならば汚職あっせんを公認することになるのでありまして、(拍手)われわれは断じてこの程度のあっせん収賄罪では汚職追放はできないと信ずるのであります。  法務大臣にお伺いをいたしますが、この法案の抜け穴は幾つもあります。すなわち、一つは請託の有無を要求しておりますから、請託を受けたのかどうかということによって言いわけができるのであります。たとえば、みずから進んであっせんに乗り出したり、また、人のやっておることに割り込んであっせんに乗り出したりするような一人は、請託を受けたのではないからといって、免れて恥なきやからとなるのであります。(拍手)その立証をいかにいたしますか。  第二に、不正の行為をなさしめること、また相当の行為をしないことをあっせんした場合に限っておりますが、認可や、許可や、払い下げや、そのような行政行為あるいは金融を頼む等の業務行為をあっせんして利益をとっても、これを見のがすということはあなたの正義観はこれを許すでありましょうか。ここにも逃げ道があると信ずるのであります。しかも、いま一つの抜け穴は、現行刑法におきましては、職務に関してわいろを取った、与えたという単純なわいろの事実行為を罰しておりますが、本法案によりますと、報酬としてわいろを受け取らなければ犯罪にならないというのであります。報酬として受け取らなければ、他日選挙の費用をもらうようなときとか、あるいはそのほかに名をかりて、報酬ではないといってのがれていくおそれがあるのでありまして、われわれのみならず、世間はこれをざる法案、骨抜き法案というのはこういうところが抜けておるから言うのでありますが、法務大臣はいかにお考えでありますか。(拍手)  さらに、先ほどもちょっと触れましたけれども、本犯罪の本質についてであります。すなわち、何をやったことが悪いのであるか、犯罪の対象についてであります。本法案によりますと、不正行為をなし、または相当の行為をなさないというあっせんをされた者の行為を対象とするのであります。あっせんされた者が不正行為をする、相当の行為をしないというその公務員の行為を対象として罰するのでありますか、さもなくて、肩書きや地位や顔を利用してあっせんするという公務員のこの行為を罰しておるのでありますか、いすれを対象といたしておるのでありますか。先ほどは公務員の公正と廉潔ということを申されましたが、その公務員の公正と廉潔は何人によって犯されておるかということであります。この点を御答弁願いたいと存ずるのであります。  さらに、私は、総理大臣に対しまして、今の点に触れて、あなたは汚職追放を念願としておるのでございますし、公務員の公正と廉潔を主張なさっておるのでありますが、ただいまの点に触れまして、かようなあっせんを、公務員がその地位や肩書きや顔を利用してあっせんするというその公務員は果して廉潔であるか、公正を保っておるのであるか、あなたのこの点に対する正義観、倫理観というものを私はお伺いいたしたいのであります。(拍手)  さらに、この法律一つをもっていたしましては、綱紀の粛正、政官界の浄化のできないことはもちろんであります。先ほども第三者供賄罪の話が出ましたけれども、この点は、なるほど、昭和十六年から第三者供賄の犯罪は四人しかなかったということであります。この点は、私は、いかに第三者に供賄をして抜け道があったかということをむしろ証明することであると思う。でありますから、これを罰するがために、やはり政治資金規正法を改正いたしまして、自分ではあっせん収賄することなく、あっせん収賄行為に対して政党あるいは政党の幹部その他の公共団体に金を取らしめるというところに抜け道があるのでありまするから、政治資金規正法を改正して、これとこの法律と相待って実行するにあらざれば、綱紀の粛正も政官界の浄化も不可能であると信ずるのであります。(拍手)  私はさらに、この問題に関係いたしまして、あっせん収賄罪は公務員の職務行為に関係のある犯罪でありますから、ほとんどが政治的背景を舞台に行われる必然性を持っておるのであります。従いまして、その運用におきましても政治的に左右されるのではないかと思うのであります。この犯罪を徹底的に糾明するためには、これに関連して検察権の確立を必要とすると存ずるのであります。かつての造船疑獄のように、指揮権の発動一つによって事件がうやむやのうちに葬り去られるようなことがありますならば、百のあっせん収賄罪を作っても、何らこれを糾明することはできないのであります。(拍手)たとい大臣の運命を左右し、時の政府を倒すようなことがあっても、きぜんたる態度によって検察権を行使しなければ、綱紀の粛正、汚職追放の目的は達せられません。  かつて、大正二年のシーメンス事件におきましても、昭和三年の田中内閣の私鉄事件におきましても、昭和八年の帝人事件におきましても、閣僚から被告を出して内閣が崩壊することを司法権の前にささえることができなかったのであります。有名なる大隈内閣の大浦事件におきましては大隈首相、大浦内相の威力をもってしても、平沼検事総長を弾圧指揮することができなかった。汚職の追放は厳正にして公平なる検察権の存することによって初めて可能であります。内閣と政党の幹部を救済するための指揮権の発動のごときは全く司法権をじゅうりんするものであるといわなければなりません。(拍手)よって、私は、総理大臣に対しまして、検察庁法第十四条によるところの、司法権の、検察権の発動、すなわち指揮権の行使について何らかの法的措置を講ずるお考えがありまするかどうか、しからずんば、法務大臣は政党に党籍のない公平無私なる人をもってこれに任ずるの意思があるかどうか、この点についての総理大臣の御意見をお伺いいたしたいと思うのであります。  私は、さらに、暴力集合罪について、一点、石田労相にお伺いいたしたいと存ずるのであります。本法案における二百八条は御承知の通り、二人以上の者が他人の生命、身体または財産に対し共同して害を加うる目的をもって集合したる場合において、凶器を準備しまたはその準備あることを知って集合したる者を処罰する規定であります。犯罪の形から見まするならば、これは、静止状態、静かなる姿におけるところの犯罪であります。刑法の百六条によりまする多衆聚合して暴行、脅迫を加えるといういわゆる騒擾罪、これを動的の犯罪といたしまするならば、たとい凶器を持参いたしておりましても、集合しておるという事実を犯罪の対象にいたしまするならば、これは静止状態におけるところの犯罪であります。しかし、この犯罪を取り締るためには百七条の多衆聚合罪があるのでありまして、この点につきましては、この法律と百七条の犯罪とは全く同じような姿の犯罪であると思うのであります。しかし、集合しておれば形は犯罪でありますけれども、よく調べてみなければ、その目的なり、所持しておるところの凶器がわからないのでありまして、誤まってこれを見まするならば、集合それ自体を犯罪とされるおそれがあるのであります。私がなぜこのことを申しまするかというと、労働省から昭和三十二年一月十四日に事務次官通牒として出されました「団結権、団体交渉その他の団体行動権に関する労働教育行政の指針について」という通達がございます。これによりますると、ストライキは正当な行為であるけれども、集団示威を行なったり、張り紙をしたり、歌を歌ったり、ピケラインを張ったりするようなものは、それ自体は、ストライキではなくして、これに随伴する行為であると解釈されておるようであります。従いまして、これらの行為は、禁止も是認もされていないのであるから、正当な行為ということはできない。いわば正でも不正でもない中性的な行為のように解釈いたしておるようであります。しかも、この当然性を主張し得るものではないから、ほかの法益を侵害するときには違法の責めを免れない。静止の状態においてはこれを罰することが——犯罪ではないと一応解釈されておるのでありまするが、この法律ができましたならば、集合の姿をもって犯罪であるといって、一応検挙、逮捕するおそれがあるのではないかと信ずるのであります。私は、この意味におきまして、労働省のこのようなストライキに対する法的解釈からいたしまして、本法案による聚合罪を処罰するということは労働運動弾圧への一歩の前進ではないかということをおそれるのであります。この点につきまして労働大臣はいかにお考えになりますか、御答弁をお願いいたす次第であります。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  44. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 田中君の御質問にお答えいたします。  第一に、このあっせん収賄罪の今回の改正をなしたことが非常におそいというお話でありますが、これは、言うまでもなく、先ほど来いろいろな論議がありますように、また、御承知のように、過去の立法例や立法の沿革やあるいは諸国の立法例等におきましても議論のある問題でありますから、これをやるとして、私は、非常な慎重な態度でもって、十分あらゆる場合を研究し尽回していかなければならない重要な法案だと思います。この意味において、われわれは慎重に審議をいたして参ったおけでありまして、何かその間において、党との関係においていろいろなことを御想像あっての御質問でありましたが、決してそういう事態は絶対にないことを明確に申し上げておきます。  第二に、この法律によってわれわれが確保しようとするものは、言うまでもなく、公務員の廉潔と、そうして公正な職務執行でございます。私は、政治家、ことに民主政治のもとにおける政治家が、いろいろと民意——国民の意のあるところを官庁やあるいは地方公共団体その他の方に伝えて、それの達せられるように協力し努力するということは、正当なるこれは政治活動であると思う。従いまして、それが度を越すところに、このあっせん収賄の問題が起るわけでありますから、そういう点について、一方においては検察ファッショやその他人権じゅうりんのことの起らないように、しかも、今申す公務員の廉潔と公正を確保するために必要なあれはどうであるかということを十分に検討して、政府としては確信のある案を提案いたしておるわけであります。  第三は、検察権の行使の公正を期せなければならぬ。これは、御説の通り、われわれもそう思います。従って、これらの汚職追放というようなこと、暴力追放ということに関しまして、私は、検察官の会合等におきまして、政府趣旨を十分に述べております。そういうことに対して、政府がこれを抑制しようというような考えは毛頭持っておりませんし、また、過去においてそういうことをしたことはない。むしろ、私は、遺憾ではあるけれども、過去においてそういう汚職の事実や暴力の事実があるならば、これはあくまでも検挙して、そうしてこれを明らかにし、社会に対してこれを戒めなければならない、そういう犠牲もやむを得ないという態度をとって今日に来ておるわけであります。ただ、そうすれば、検察権に対する指導等について法的措置を講ずる必要はないか、あるいは法務大臣というものを政党員外から選ぶべきじゃないかというお話でありますけれども、私はそういうことは考えておりません。(拍手)     〔国務大臣唐澤俊樹登壇
  45. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) あっせん収賄罪に関する政府案につきまして、いろいろと御批評をいただきましたが、先ほど来だんだんと申し上げました通り、このあっせん収賄罪に関する規定は、おそらくは刑法の条文の中では立法技術上最もむずかしい問題とされておる条文でございまして、これを広く規定いたしますれば、あるいは刑罰の目的は達するかもしれませんけれども、その反面におきまして、あるいは人権じゅうりん、あるいは検察ファッショの端を開くということで、この問題については従来から学者や専門家の間に非常に議論がありましたけれども、必ずしも一致しておりません。各国の立法例を見ましても、まちまちでございまするし、また、わが国の刑法の母法といわれておるドイツの刑法におきましても、長い間学者が論議いたしましたけれども、この二つの要件を具備するような法律ができないために今日まで立法化せられておらないというほどに、非常にむずかしい問題とされておるのでございます。このたびの案におきましては、なるほど、社会党の御提案のあっせん収賄に関する法律案よりは、この処罰の対象は狭いのでございますけれども、これをあまり広く規定いたしますれば、先ほど申し上げましたように、あるいは人権じゅうりんあるいは検察ファッショの端を開く、こういう危険を感じまして、そうして現在のような程度法律案が最も現段階において適正な案と信じておる次第でございます。  その他の点につきましては委員会におきまして、詳しく条文について申し上げたいと思います。(拍手)     〔国務大臣石田博英君登壇
  46. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) だんだん健全になっております労働組合運動が、あの法律規定しております他人の生命や財産を侵そうとする目的を持ったり、あるいは凶器を持ったりするようなことはないと信じますから、この法律は労働組合運動には適用いたしません。(拍手
  47. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  48. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十四分散会